1 : 以下、名... - 2019/06/19 23:19:32.33 ikHTZENWO 1/13

「あのさ、高木さん」

「なに?」


僕の隣の席に座る高木さんは、からかい上手。

そんなことは、わざわざ説明するまでもない。

しかし、今日の彼女は、少し様子がおかしい。


「もしかして、体調が悪いの?」


僕がそう尋ねた理由は、2つある。


ひとつは、顔色が悪いこと。

これに関しては、あまり自信がない。

女子の顔なんてジロジロ見れないからだ。

それでも、いつもより青白い気がした。


ふたつめの理由は、わりと自信がある。

それは彼女のアイデンティティに関わること。

高木さんの習性は、僕が1番が身に染みている。


高木は、からかい上手。

僕のことを、いつもからかってくる。

それなのに、今日は一度もからかわない。


それは、おかしい。

あまりにも、奇妙だ。

こっちはヒヤヒヤして身構えているのに。

今日の高木さんは、僕をからわない。


以上の理由から、体調を伺ってみたのだが。


「私は平気。大丈夫だから心配しないで?」

「でも……」

「西片って、たまに優しいよね」


そんな言葉と共に、不意に微笑まれて。

僕はそれ以上、言葉を紡げなくなる。

酸欠の魚のように、口をパクパク。


顔が熱い。


すごく恥ずかしくて、照れてしまう。

そんな僕を見て、高木さんは笑うだろう。

どうやら上手くからかわれてしまったらしい。


そう思って、抗議しようとすると。


「ぅぐっ……っ!」

「た、高木さん!?」


高木さんは、顔をしかめて、机に突っ伏した。


元スレ
高木さん「間接キスだね」西片「えっ?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1560953972/

2 : 以下、名... - 2019/06/19 23:21:10.23 ikHTZENWO 2/13

「そんなに心配しなくても大丈夫だってば」

「でも……!」

「ちょっと休めば平気だから」


あの後。

僕はすぐさま、高木さんを保健室へ運んだ。

しかし、保健の先生は不在らしく。

なにも処置が出来ないまま無力感に苛まれる。


「やっぱり保健の先生を呼んでくるよ!」

「だから、大丈夫だってば」

「だけど……!」

「いいから、ここに居て?」


焦る僕に、そう諭す高木さん。

力なくベッドに横たわる彼女は。

ほんの少しだけ、不安そうな顔をした。

彼女のその表情を見て、冷静さを取り戻す。


今、僕は頼りにされている。

不安げな高木さんを1人にしてはおけない。

だから僕はベッドの傍の椅子に腰を下ろした。


「ありがとね、西片」

「へ?」

「保健室まで、おんぶしてくれて」


そう言われて、自らの振る舞いを省みる。

あの時は無我夢中で、必死だった。

だからつい、大胆な行動に出てしまった。

まさか、女の子をおんぶしてしまうなんて。


覚えているのは、甘い香りと、柔らかさ。

特に、おんぶの際に支えたおしりは、格別だ。

その代わりに、背中にはゴリゴリした感触が。


「西片」

「はいっ!?」

「今、失礼なこと考えたでしょ?」

「いえ! 全然!」

「西片のえっち」


体調が悪くても、高木さんはとても鋭かった。

3 : 以下、名... - 2019/06/19 23:22:01.73 ikHTZENWO 3/13

「高木さん、すごい汗だよ」


いつものように僕をからかって。

少しだけ、笑顔になったけれど。

彼女の、可愛らしい丸い額には。

冷や汗で前髪が張り付いている。


僕は思わず、それを取ろうと手を伸ばして。


「西片……?」

「っ……なんでもない!」


即座に手を引っ込める。

危ないところだった。

この状況で女の子に手を伸ばすなんて。

誰がどう見たって、誤解される。


慌てふためく僕を見て、彼女はくすりと笑い。


「西片、手を出して」

「えっ?」

「こうしてると、落ち着く」


きゅっと、細い指先で僕の手を握る高木さん。

あまりのことに、反応が出来ずに硬直。

そして、伝わる彼女の指先の冷たさに気づく。


「高木さん、手が冷たい」

「ごめん、嫌だった?」

「そ、そんなことはないけど……」

「じゃあ、西片があっためて」


たぶん、今、僕の手は熱いくらいだろう。

頬の熱と同じように、火照っている筈だ。

だからすぐに高木さんの指先も温まった。


「ほんとにありがとね、西片」


僕でも彼女の役に立てたことが、嬉しかった。

4 : 以下、名... - 2019/06/19 23:22:59.90 ikHTZENWO 4/13

「西片」

「なに、高木さん?」


しばらく、彼女の容態を見守っていると。

瞑っていた目を開けて、呼ばれた。

すぐに応じると、高木さんは身を起こした。


「起きても平気なの?」

「うん……それより、西片に頼みがあるの」

「僕に出来ることならなんでも言ってよ!」


弱っている高木さんからの頼み。

それがなんであれ、全力を尽くすつもりだ。

無力な僕には、そうすることしか出来ない。


「水をちょうだい」

「水だね! わかった! いま持ってくるよ!」


すぐに保健室の手洗い場へと向かい。

蛇口を捻って、水をコップに注いだ。

そして急いでベッドまで戻ってきた。


「はい、高木さん」

「ありがと」


コップを受け取った高木さん。

すると、なにやらゴソゴソして。

スカートのポケットから薬を取り出した。


それをこちらに見せて、苦笑する高木さん。


「これ、すごく苦い薬なんだ」

「なんの薬?」

「西片も飲んでみる?」

「え? 僕も?」

「一緒に飲めば、苦さも和らぐかも?」


なんだそれは。

そんなのおかしい。

だいたい、僕は健康だ。

薬なんて飲む必要はない。


しかしながら、なんとも意外だ。

高木さんが苦い薬を嫌いだなんて。

なんだか、幼い少女のようではないか。

そんな彼女を見て、僕は優越感を抱いた。


「はっはー! 高木さんは子供だなぁ!」


ドヤ顔をしつつ、彼女の手から薬を受け取る。

5 : 以下、名... - 2019/06/19 23:24:03.07 ikHTZENWO 5/13

「大丈夫、西片? その薬、すごく苦いよ?」

「へーきへーき! 僕にかかれば余裕だよ!」


優越感に浸った今の僕に怖いものなどない。

本当は、コーヒーとか、苦いのは苦手だけど。

彼女を勇気付ける為に、ひと肌脱ぐとしよう。


「それじゃあ、せーので、一緒に飲も?」

「こっちはいつでもおーけーだよ!」


包みを開けて、飲む準備は万端。


「せーのっ!」


彼女の掛け声と一緒に。

僕は薬を一気飲みした。

粉っぽさが口中に広がる。

そこでふと、気づく。

自分の分の水を汲んでないことに。

そんな僕に、すかさず。


「はい、西片。お水」


気が効く高木さんが水をくれた。


「んぐっ……ぷはっ!」


それを飲み干してから、感謝を告げる。


「ありがとう高木さん、助かったよ」

「ふふっ。どういたしまして」


ニコニコ笑う彼女を見て、違和感を覚えた。

6 : 以下、名... - 2019/06/19 23:25:13.34 ikHTZENWO 6/13

「ところで、高木さん」

「なに?」

「薬、そんなに苦くなかったよね?」

「えー? そう?」


苦いと聞いていた先程の薬。

飲んでみると、然程苦味を感じなかった。

そのことが気になって、追求しようとすると。


「ちなみにあの薬って、なんの……」

「そんなことより、西片」

「ん? どうしたの、高木さん」


高木さんは話を遮り、コップを指差した。


「間接キスだね」

「えっ?」


なんのことだかわからない。

このコップは、僕が水を汲んできたもの。

それを高木さんに渡して、あれ?

なんで今、このコップは僕の手にあるんだ?

たしか僕は、一緒に薬を飲んで。

水がないことに、焦っていたら。

高木さんが、コップを手渡してくれて。


「ええっ!?」

「あはは。ひっかかった」


冗談にも程があるよ。

というか、冗談になってないし。

コップを渡した高木さんの責任だし。


「西片」

「な、なに?」

「ちゃんと責任取ってね?」


どこまで本気なのか、さっぱりわからないし。

7 : 以下、名... - 2019/06/19 23:26:47.08 ikHTZENWO 7/13

「なにはともあれ、元気になって安心したよ」


まったく、結局いつも通り、からかわれた。

それでも、あまり悪い気はしない。

彼女が元気になってくれて、本当に良かった。


「実はそんなことないんだけどね」

「へっ?」


そんなことないとは、どういう意味だろう。

怪訝に思って、彼女の様子を伺うと。

片手でお腹を押さえて、なんだか苦しそうだ。


「た、高木さん、大丈夫?」

「あはは……大丈夫じゃないかも」


苦笑いする高木さんは、酷く辛そうで。

先程までの笑顔はカラ元気であったと気づく。

きっと、僕を心配させまいと隠していたのだ。

こんなに悪化するまで気づけなかったなんて。

自分の不甲斐なさを、痛感した。


「やっぱり、保健の先生を……!」

「西川、待って!」

「た、高木さん……うわっ!」


保健室を飛び出そうとした僕の手を引き。

高木さんが引き留めた。

勢いあまって、彼女のベッドに倒れこむ。


「ご、ごめん……平気?」

「うん、大丈夫」

「す、すぐに退けるから」

「待って!」


彼女に覆い被さったまま。

僕は高木さんに抱きしめられた。

甘い香りと、胸にゴリゴリした感触が伝わる。

8 : 以下、名... - 2019/06/19 23:28:06.36 ikHTZENWO 8/13

「西片……また失礼なこと考えてるでしょ?」


耳元でそんな囁きをされて、頭はパニック。


「そんなことは! いや、そんなことより!」

「いいから、じっとしてて?」


じっとしていろなんて、そんな無茶な。


「た、高木さん、マズイよ!」

「どうして?」

「こんなの誰かに見られたら!」

「見られたら、困るの?」

「そりゃあ困るよ!」

「なんで?」

「なんでって言われても……」

「西片は……私のこと、嫌い?」


極度の混乱状態でも最後の質問は聞き取れた。


「き、嫌いじゃ、ないよ」

「それなら、好き?」


なんだこの質問は。

一体全体、高木さんはどうしてしまったのか。

彼女らしくないと思っていると。


「ぷっ。西片、すごい顔」


おかしそうに噴き出す高木さん。

それを見て、身体中から力が抜ける。

今日のからかいは、僕にとって過激すぎた。


「か、勘弁してよ、高木さん」

「やだ」

「えっ?」

「西片の気持ちを聞くまで、離さない」


どうやら、今日の高木さんは、本気らしい。

9 : 以下、名... - 2019/06/19 23:29:17.16 ikHTZENWO 9/13

「高木さん……?」

「ねぇ、西片」


彼女がどこまで本気なのか、尋ねる前に。


「さっきの薬、なんだったと思う?」

「さっきの薬?」

「私たちが飲んだあの薬が、もしも……」


高木さんが意味深に、一拍置いた、その時。


「っ……!?」


ぎゅるるるるるるるるるるるるるるるるぅ~!


なんだ、今の音は。

この世のものとは思えぬ音色。

まるで、地獄の底から響いてくるような。


「下剤、だったとしたら?」

「……えっ?」


そんな、馬鹿な。

嘘だ。信じたくない。

しかし、それは紛れもなく現実であり。


「ふふっ。困ったね」

「た、高木さん……?」

「西片も私も、ここで漏らしちゃうね?」


ぎゅるるるるるるるるるるるるるるるるぅ~!


またあの音だ。

しかし、今度は地獄から響いたわけではなく。

間違いなく、高木さんのお腹から、聞こえた。

10 : 以下、名... - 2019/06/19 23:33:34.65 ikHTZENWO 10/13

「そんな……」

「あは。その顔」


愕然とする僕の頬に高木さんの指先が触れる。


「西片の……その顔が、見たかった」

「じょ、冗談はやめてよ」

「冗談なんかじゃないよ。その顔を見る為に、朝下剤を飲んでから、これまでずっと耐えてきたの」


そう語る彼女の口元はだらしなく緩み。

熱に浮かされた瞳は潤みきっていて。

思わず、僕は生唾を飲み込んだ。


「ごめんなさい」

「えっ?」

「私、西片に酷いことしちゃった」

「高木さん……」


一転してしょんぼりした高木さんが僕に問う。


「私のこと、嫌いになった……?」


弱りきった彼女の瞳が。

背に回される細腕の震えが。

その全てが、僕を打ち震えさせた。


「嫌いになんて、なるわけがない」

「でも、私は西片の優しさにつけ込んで……」

「いいんだ、高木さん」


自分を責める高木さんなんて、見たくない。


「君の悦びの為なら、僕は悦んで脱糞するよ」


君の悦びは、僕の悦び。故に謝る必要はない。

11 : 以下、名... - 2019/06/19 23:35:31.67 ikHTZENWO 11/13

「西片……」

「高木さん……」


僕らは見つめ合って、暫しの時が流れた。

とても静かで、心地良いひととき。

しかし、それも長くは続かないだろう。


刻一刻と、運命の歯車は、進み続けている。


「西片、お願い」

「なんだい、高木さん」

「西片の気持ちを聞かせて」


僕の気持ち。

僕は、彼女をどう思っているか。

それは簡単なようで、とても難しい。


高木さんは僕の隣の席の女の子で。

いつも僕をからかって。

いつも僕はからかわれて。

それでも不思議と嫌ではなくて。

どこまでが本気なのかが知りたくて。


「私はね……西片のこと、好きだよ」

「えっ?」


思わず耳を疑った、その瞬間。


ぶりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅぅ~!


「ふふっ……ふははっ! フハハハハハッ!!」

「あ、あああ、あああ、あああああ!?!!」

「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」


僕は漏らし、高木さんの哄笑が、響き渡った。

12 : 以下、名... - 2019/06/19 23:37:36.12 ikHTZENWO 12/13

「ふぅ……愉しかった」

「うぅ……酷いよ、高木さん」


しばらく悦に浸っていた高木さん。

漏らした僕はシクシク涙を流した。

そんな僕の涙を人差し指を拭って。


「ごめんね、西片。お詫びに手を貸して?」

「へっ?」

「私のお尻が気に入ったみたいだから……」


特別だよと、僕の手をベッドの中に導いて。

柔らかな感触に、手のひらが包まれた。

モチモチで、ふにゃふにゃで、びちゃびちゃ。


そして僕は悟る。

高木さんの尻に触れて。

全てを尻……いや、知った。


高木さんも、漏らしている、と。


「フハッ!」

「水っぽくて、ごめんね?」


水っぽくてごめんだって?

謝る必要なんてない。

全てを尻、全て知った僕は、全てを許そう。


良きに計らえ。


「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」


今この時、この瞬間。

高木さんの愉悦は僕のものとなり。

僕の愉悦は高木さんのものとなる。


高い次元で僕らは深く、知り合い、尻合った。

13 : 以下、名... - 2019/06/19 23:39:18.88 ikHTZENWO 13/13

「愉しかった?」

「最っ高だったよ!」


全能感と充実感が、胸いっぱいに広がる。

鼻腔をくすぐる便の香りはどちらのものか。

どっちでも良かった。最高の気分だった。


「悦んで貰えて、良かった」


心底ほっとした様子の彼女に、感謝を告げる。


「ありがとう、高木さん」

「感謝よりも聞きたい言葉があるんだけど?」


まるでからかうように、こちらを伺う彼女に。


「……好きだよ」


出来る限り、小さな声で、気持ちを伝えると。


「え? なに? 聞こえなーい!」

「もう、勘弁してよ!」

「あははっ! 勘便して、あげない」


改めてからかい上手であると思い知らされた。


【脱糞上手の高木さん】


FIN

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