ー知恵の輪ー
ラフィエル「ガヴちゃんガヴちゃん、見てくださいほら」
ガヴリール「お、知恵の輪じゃん。懐かしいな」
ラフィエル「天界でよく遊んでましたよね。お店で見かけたので思わず買っちゃいました~」
サターニャ「知恵の輪? ってなに?」
ヴィーネ「繋がってる金属のピースとピースをそれぞれ外して遊ぶのよ。頭を使うから知恵の輪」
ラフィエル「簡単そうに見えても意外と難しいんですよ。きちんとピースの形を把握して動かさなくてはならないんです」
ガヴリール「サターニャに一番向いてない遊びだよ」
サターニャ「バカにしてんの!?」
ヴィーネ「バカにされてるわよ……」
元スレ
ガヴリール「特に意味はない」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1556858058/
ラフィエル「ではガヴちゃん、測っててくださいね」
ガヴリール「んー」
ヴィーネ「え? なにするの?」
ラフィエル「……ふー」
ラフィエル「行きます!」
カチャカチャカチャカチャ……
カチャン
ラフィエル「取れました!」
ガヴリール「45秒」
ヴィーネ「はやっ!」
ヴィーネ「え、え? すごくないラフィ。家で練習してきた?」
ラフィエル「いえいえ、ついさっきガヴちゃんのお家に来る途中で買いましたよ」
ラフィエル「うふふ、私こういうの得意なんです」
ヴィーネ「得意って言ったって……」
ガヴリール「ほら知恵って言ったら天使の得意分野だろ。天界でも流行ってたしみんな割とすぐ外すぞ」
ラフィエル「ガヴちゃんもとっても上手ですよ。昔は二人でどっちが早く解けるか競い合っていたんです」
ラフィエル「はい、次どうぞ」
ガヴリール「うむ」
サターニャ「ガヴリールもラフィエルぐらい早いの?」
ガヴリール「んー、ラフィもなかなか早かったけど、私にかかればさらに10秒は縮められるかな」
ヴィーネ「おお……」
ガヴリール「んじゃ測ってて」
ラフィエル「はーい」
ガヴリール「参ります……」
ガヴリール「はっ!」
カチャカチャカチャカチャ
カチャカチャカチャ……
カチャ
ヴィーネ「……」
サターニャ「……」
カチャカチャ
カチャカチャカチャカチャ!
ラフィエル「……」
カチャカチャカチャカチャ…………
【5分後】
ガヴリール「はい取れましたー!」
サターニャ「へー、今年はイチゴが豊作らしいわよ」
ヴィーネ「今度みんなで食べに行くのも良いわね」
ラフィエル「白いイチゴというのもあるんですか。なんだか不思議な感じですねー」
ガヴリール「見ろよお前ら!!」
サターニャ「大口叩いた割にはしょぼくない?」
ヴィーネ「まあ、早いとは思うけど」
ラフィエル「ガヴちゃんなまりましたね」
ガヴリール「ぐ、ぐうう……昔はもっと簡単に外せたのに……」
ヴィーネ「駄天して知能下がってたりして」
ガヴリール「」ガ-ン
サターニャ「なるほどね、遊び方は理解したわ。ガヴリールが5分なら、私は3分で解いてみせる!」
サターニャ「くくく……この大悪魔様の天才的な頭脳を目の当たりにできることを光栄に思いなさい」
ガヴリール「とけないに500円」
ラフィエル「もー、同じ方に賭けたら成立しませんよガヴちゃん」
サターニャ「私が外したら泣いて土下座しなさいよあんたたち!」
サターニャ「さあいくわよヴィネット。3分経ったら教えなさい」
ヴィーネ「う、うん……」
サターニャ「悪魔的開始(デビルズスターティング)!」
ガチャ
ガチャガチャガチャ
ガヴリール「手つきが荒っぽいな」
ガチャガチャガチャガチャッ
ガチャガチャ
ラフィエル「サターニャさん、適当に回したって外れませんよ」
サターニャ「わ、分かってるわよ」
……………………。
……ガチャ
ヴィーネ「……2分経過ー」
サターニャ「嘘でしょ!?」
ガチャガチャガチャ!
ガヴリール「おやおやだいぶ焦っていますねサタニキアさん」ニヤニヤ
サターニャ「うっさいわね!!」
ヴィーネ「残り10秒。……9、8、7」
サターニャ「むぎいいいいいいいいい!!」
サターニャ「ふんっ!!」
ブッチン
サターニャ「あ」
サターニャ「外れたー!」パァァ
ヴィーネ「いやあの、それ外れたっていうか」
ガヴリール「これ普通は無理矢理とれないだろ……」
ラフィエル「力の前では知恵すら屈してしまうものなんですね」
サターニャ「どうよガヴリール!?」フフン
ガヴリール「バカは怖いなって」
サターニャ「どういう意味よっ」
ラフィエル「まだいくつかあるので、ヴィーネさんも時間を気にせずやってみてください」
ヴィーネ「うん。こういうのあんまりやったことないし、面白そう!」
サターニャ「ふふーん、サタニキア様にかかればどんなものでも一発で外してやるわ」
サターニャ「ねえガヴリールぅ? 早く外せた方が一個命令聞くってどう?」ニヤニヤ
ガヴリール「お前知恵もクソもなかっただろ」
ヴィーネ「あー、だめ、戻っちゃった」
ヴィーネ「うーん……」カチャカチャ
ガヴリール「なんか小腹空いたわ。ポテチ食おー」バリッ ボリボリ
ヴィーネ「あっこらガヴリール!!ベッドの上で物を食べちゃダメって言ったでしょ!!?」
ブチッ
ガヴリール「……」
ヴィーネ「あ」
ラフィエル「また知恵が力に屈しましたね」
ガヴリール「あれだな。悪魔、知恵の輪向いてないな」
完
ーバレンタインー
ヴィーネ「今日はバレンタインデーです!」
ラフィエル「たくさんチョコを作ってお祝いしましょうっ」
サターニャ「いえーい!」
ガヴリール「やたらテンション高いな」
タプリス「私、チョコを作るなんて初めてで……上手くできるでしょうか?」
サターニャ「簡単よ。ただ溶かして固めるならコンロさえあればできるじゃない」
ヴィーネ「……湯煎するボウルや型は?」
サターニャ「え? 串に刺して火に当てればいいんじゃないの?」
ヴィーネ「直火!? バーベキューか!!」
ラフィエル「サターニャさんはワイルドですね~」
ガヴリール「で、みんなで作るの?」
ヴィーネ「うん。完成したらそれぞれお披露目会をするのよ」
ガヴリール「ふーん」
ラフィエル「ガヴちゃんもせっかくだしやりましょう?」
ガヴリール「……そうだな、せっかくだしな」
ヴィーネ(お、意外と乗り気)
ガヴリール「審査員は私に任せてくれ!」キリ
ヴィーネ「一番楽なポジション!!」
ガヴリール「私が直々に評価してやろう」
ヴィーネ「あんたチョコ食べたいだけじゃない」
ガヴリール「真面目に審査するから!」
サターニャ「ほんと食いしん坊天使ね」
ラフィエル「なるほど……ガヴちゃんに向けてのチョコレートですか」
【しばらくして】
ヴィーネ「完成~!」パチパチ
ラフィエル「できましたね~!」パチパチ
タプリス「あわわ、少しいびつになってしまいました」
サターニャ「……」
チョコスライムA『ピキキ…』ウニョウニョ
チョコスライムB『ピキーッ!』モグモグ
ヴィーネ「サターニャのチョコまだ共食い続けてるの?」
サターニャ「ふっ、まさかチョコレートが意思を持ってしまうなんてね。この私でも想定外だったわ」
ヴィーネ「何がどうなってそうなるのよ」
ラフィエル「さて、ガヴちゃん。早速審査をお願いしますね」
ガヴリール「任せろ!」
ラフィエル「私のはこれです」スッ
ガヴリール「おー、でっかいハート形の…………なんかやたら凝ってるけど」
ラフィエル「ええ、本命ですから」
ヴィーネ「ぶっ!?」
ガヴリール「は?」
ラフィエル「本命です」
ガヴリール「ちょ、ちょっと待ってこれ、え?」
ラフィエル「本命ですよ」
ガヴリール「い、いやなに言ってんのラフィ」
ラフィエル「ほらほらきちんと評価してください。本命チョコを」
ガヴリール「本命をプッシュするな!」
ラフィエル「ガヴちゃんがきちんとお返事くれるって言うから気持ちを込めて作ったんですよ?」
ガヴリール「私が言ったのはそういう返事じゃないから!」
ラフィエル「あら、ガヴちゃんは精一杯込めた愛情を無視してチョコレートだけを味わうつもりなんですね……」
ガヴリール「お前、私をからかいたいだけだろ!?」
ラフィエル「ああ、ショックでご飯が一日三食しか喉を通りません……」
ガヴリール「充分食えてるよそれ!!」
ヴィーネ「はいはい、次。もう次行きましょう次」
ガヴリール「えっと、じゃあタプリスでいい? お前なら真面目だからラフィエルみたいなことしないだろ」
タプリス「え、いや、その」
ガヴリール「ほら、くれよ」
タプリス「……」
タプリス「……ごめんなさい」スッ
タプリスのチョコ『天真先輩大好きです』
ガヴリール「……」
サターニャ「……」
ラフィエル「あら~」
タプリス「あのあのあの違うんです私下界を勉強した時にバレンタインデーは好意を寄せる人にチョコを贈るって学んでて」
タプリス「本命以外のチョコがあるなんて知ったのついさっき白羽先輩から教わったばっかりで……!」
ガヴリール「いまお前がそう言わなければまだギリギリ本命じゃなかったのにな」
タプリス「なっ、違います紛れもなく本命です!!」
サターニャ「あくまでもそこは譲らないのね」
ヴィーネ「ラフィがもう少し早く気がついてればよかったわね」
ラフィエル「はい。気付いていたけど黙ってました」
ヴィーネ「おい」
ガヴリール「全くうちの天使どもがチャランポランで悪かったな。ヴィーネたちのチョコはちゃんと評価するから」
サターニャ「ほんと天使って間抜けねー……ヴィネット、ほら出しなさい」
ヴィーネ「ん、うん……」
ヴィーネ「……はい、これ」
ガヴリール「……おいおい、なんか桐箱に入ってるぞ」
サターニャ「リボンまで巻かれてるんだけど」
ガヴリール「開けるぞ」ゴクリ
すごく繊細でめちゃめちゃ気合が入ってる全く義理じゃなさそうなチョコ『』ド-ン
ガヴリール「お前こそガチじゃねーか!」
ヴィーネ「だってだって!ガヴに食べてもらおうと思ったら自然とこうなっちゃったんだもん!」
サターニャ「えぇ……2羽の白鳥が首でハート作ってるんだけど」
タプリス「型、ありませんでしたよね……」
サターニャ「ヴィネット、鼻歌うたいながら作ってたかと思えばこんな凄いの作ってたのね」
ラフィエル「愛のなせる技です」ニコニコ
タプリス「あ、白鳥の裏に愛の詩がびっしり書いてありますね」
ガヴリール「なにそれ重すぎて食べるの怖いんだけど」ヒキ
ヴィーネ「え、えぇー……食べてよぅ……」モジモジ
ガヴリール「で、サターニャのは……」
チョコスライムA「ぼくわるいチョコスライムじゃないよ」プルプル
ガヴリール「むり」
サターニャ「う、うぐ……」
サターニャ「ふん、別に私はガヴリールに食べさせる事が目的じゃないもの」
サターニャ「このサタニキア様の悪魔的カリスマを天使どもに見せつけるために作ったのよ。くくく……私にかかれば生命創造すらたやすいわ」
ラフィエル「途中で入れてた魔界通販のアイテムが原因だと思いますけど」
チョコスライムA「あのね、あのね、ガヴちゃん聞いてっ」
ガヴリール「ん?」
チョコスライムA「サターニャちゃんはガヴちゃんのことが好きなんだって!」
チョコスライムB「ガヴちゃんのためにせいいっぱい心をこめて作ったからぼくたちが生まれたの!」
サターニャ「ぶへっ!? ちょ、ちょとこらなに言ってんのあんたたち!!///」
チョコスライムA「だからたべてっ」
チョコスライムB「たべてー」
ガヴリール「サターニャ……お前」
サターニャ「あ、あうう……」
チョコスライム「「ぷるぷる」」
ガヴリール「いやふつうに無理」
サターニャ「そうよね」
ラフィエル『私たちガヴちゃんの事を想って作ったので、きちんとお返事しなきゃダメですよ!』
ヴィーネ『ま、待ってるからっ』
ガヴリール「ってわけで、ホワイトデーにチョコを作る羽目になったんだが……」
上野「すごいね天真さん!」
田中「錬金術だよー!」
ホワイトチョコスライムA「ガヴちゃんはみんなのことだいすきなんだよ!」
ホワイトチョコスライムB「ありがとねっておれい言いたいけど恥ずかしくて言えないのっ」
ホワイトチョコスライムC「ピキーッ!」
ガヴリール「だめだろこれ」
完
ー天の恵みー
ザアアアアアアアアアアアアア
ガヴリール「うわ……土砂降りじゃん……」
ラフィエル「朝の快晴が嘘のようですねー」
ガヴリール「はぁー、これどうやって帰ろっかな」
ヴィーネ「傘持ってきてないの? 天気予報では午後から雨って言ってたわよ」
ガヴリール「知らないよそんなの。テレビ見てる暇あったらゲームしてるっての」
ヴィーネ「ゲームしてる暇があるなら天気ぐらい確認しなさいよ」
サターニャ「んっふっふ、無様ねガヴリール。傘を忘れるなんて愚か! そのままずぶ濡れになるがいいわ!」
ガヴリール「お前だっていつも忘れるだろ」
サターニャ「ふっふーん! 今日は傘持ってるもの。大悪魔様はいつだって用意周到なのよ!」
ラフィエル「そうですね。1週間前ほど前に晴れの日に持ってきて忘れたまま放置してた傘ですね」
サターニャ「う、うるさいわね。使うべきところで使えれば何だって良いのよ!」バサ
ポトッ
サターニャ「ぎゃああああ!? 蜘蛛落ちてきた!!」
ヴィーネ「ガヴ、ちょっと狭いけど私の傘に入ってく?」
ガヴリール「ん、さんきゅーヴィーネ」
ヴィーネ「うわ、結構雨強いわね」
ガヴリール「二人で一本じゃちょっときついかもな」
ヴィーネ「今度からしっかり予報を確認しなさいよ」
ガヴリール「めんどくさー」
ラフィエル「実は私も今日は油断してました。折り畳み傘があったので何とかなりましたけど、普段あまり天気を気にしたことがないので」
ヴィーネ「ラフィもそうなの? 珍しいわね」
ガヴリール「私たちって雪とか雨ってあんまり経験ないよな。下界に来てから天気が身近になったわ」
ラフィエル「いつも降っているところを見下ろす側ですもんね」
ヴィーネ「あ、そっか。天界は雲の上にあるんだっけ」
ガヴリール「私たち降らせる側からすりゃ、わざわざ雨にうたれに行こうなんて思わないしな」
サターニャ「ねぇ、そう言えば雨ってどうやって降らせてるの?」
ガヴリール「知りたいか?」
サターニャ「もったいぶってないで教えなさいよ」
ガヴリール「うむ、あれはな。天使のおしっこだ」
ヴィーネ「」
サターニャ「」
ラフィエル「もー、ガヴちゃん変な冗談を言うのはやめてくださいよ。お二人ともびっくりしていますよ」
ヴィーネ「な、なんだ冗談か……焦った~」
サターニャ「え、で、結局どうやって降らせてるの?」
ラフィエル「私じつは下界に来て初めて傘というものを使ったんですよー」
ヴィーネ「話をそらそうとしないでよ!!」
サターニャ「まさか本当におしっこなの!?」
ガヴリール「そういやこの雨いつまで続くんだっけ」
ラフィエル「えーと、あすの明け方にかけて降るみたいですよ」
ガヴリール「まじかぁ今日の当番めっちゃ長いなー」
ラフィエル「相当我慢してたんですかねー」
ヴィーネ「完全におしっこの流れじゃない!」
ガヴリール「え、その流れって言葉、おしっことかけてんの?」
ヴィーネ「かけるか!おバカ天使!」
サターニャ「……」
サターニャ「ねぇ、あの、さ」
サターニャ「もしかして、ガヴリールの当番も、あったりするの?」
ガヴリール「……」
ヴィーネ「……」
サターニャ「うそ、うそうそ。今のうそだから、ほんと。うそに決まってるでしょ。うっそー」
ガヴリール「えぇぇ~……やっぱりサターニャってそっち系の趣味があんの……?」ヒソヒソ
ヴィーネ「そっち系だとしてもだいぶかたよった趣味じゃない……?」ヒソヒソ
ラフィエル「ガヴちゃんの当番の日にいったい何をするんですかね……!」ヒソヒソ
サターニャ「ち、ちが、思わず出てきちゃっただけで」
ラフィエル「思わず出てくるということは本音という可能性も」
ガヴリール「ごめんなサターニャ、期待させて悪いけどさっきの話は全部冗談なんだ」
サターニャ「もう忘れなさいよ!!」
完
ー世界ー
ガヴリール「なんかさぁ~」
タプリス「はい?」
ガヴリール「思い出せそうなのに出てこない時って、モヤモヤしない?」
タプリス「しますけど……」
ガヴリール「昨日聴いた曲の名前がどうしても思い出せないんだよね。絶対有名なやつなんだけど」
タプリス「えー、なんですか気になります」
ガヴリール「ちょっと聞かせるから協力してよ。いくぞ」
タプリス「えっ、待ってそれラッパ───」
世界の終わりを告げるラッパ『ぷー』
そのとき
世界は終わった
ガヴリール「嘘だろ……こんな事で滅ぶなんて」
タプリス「あわわわわ」
タプリス「なにやってるんですかほんと……大地が更地になってるんですけど……」
ガヴリール「すごいな空が紫色じゃん。世界の終わり始めて見たわー……」
タプリス「ああ、ああ……天真先輩が曲名を思い出せないからと言う下らない理由で世界が終わるなんて……」ガク
ガヴリール「私だってまさかこんな簡単に終わると思ってなかったもん」
タプリス「残された者として少しでも種を残していかないと……先輩、こうなったら二人で第2のアダムとイブになりましょう!」
『おーい、ガヴリール!!』バッサバッサ
ガヴリール「ん?」
タプリス「私アダム役でいいですか!? 精一杯優しくしますから!!」
ゼルエル「世界を終わらせたのはお前たちだな!」
ガヴリール「げっ、姉さん!?」
タプリス「ひぃぃ!? お仕置きに来たんですか!」
ゼルエル「詳しく話を聞こうかガヴリール。場合によっては重い処罰を下すぞ」グイ
ガヴリール「ままままって姉さん! 目つきが怖すぎる!」
ゼルエル「……ふむ、曲名が思い出せずモヤモヤしていたのでメロディを伝えるためにラッパを吹いたと」
ゼルエル「それなら仕方ないな」
タプリス「仕方ないで済むんですか!?」
ゼルエル「私も昔やったことがある」
ガヴリール「まじか」
ゼルエル「よし今回のことは水に流そう。しかし同じ過ちは二度と犯すんじゃないぞ」
タプリス「で、でも、私たちが許してもらっても世界は……」
ゼルエル「私に任せなさい」
ゼルエル「はぁぁぁぁぁぁぁ」パァァァァ
ギュルギュルギュル
ガヴリール「な、なんだ? 時間が戻っていく!」
タプリス「緑あふれる豊かな世界に!」
パッ
タプリス「あっ、ゴミ山あふれる天真先輩のお家に戻りました!」
ゼルエル「これで元どおりだ」
ガヴリール「姉さんすげえ!」
ゼルエル「はっはっは。もっと褒めなさい」
ゼルエル「いいか。ラッパはもう吹くんじゃないぞ! 姉さんは天界に帰るからな!」
タプリス「あ、ありがとうございましたっ」
ガヴリール「今度の帰省は羊羹でも持って帰るよ」
タプリス「……はー、びっくりしましたね」
ガヴリール「まさか姉さんが世界を戻すこともできたなんてな」
タプリス「やはり素晴らしいお方ですね! 改めてお姉さんの凄さを認識しました」
ガヴリール「でさぁ、曲名が思い出せないんだけどさ」
タプリス「このごに及んでまだその話題を!?」
ガヴリール「ラッパは使えないし、どうしたらいいかなぁ」
タプリス「そういえばわたし、初等部の頃に使ってた縦笛ありますよ」
ガヴリール「なんで下界にまで持ってきたんだよ」
タプリス「やっぱり音楽は気持ちが安らぐじゃないですか。ホームシックになった時、たまに吹いてるんです」
タプリス「そうすると隣の部屋の人が壁を叩いてセッションしてくれるんです。とっても楽しいですよ!」
ガヴリール「後で菓子折り持って謝りに行くぞ」
タプリス「というわけで、はい! 縦笛ですっ」
ガヴリール「おっ、いいじゃん。ちょっと借りるぞ」
タプリス(あっ、先輩と間接キスだ)
笛『ぴー』
そのとき
世界は終わった
ガヴリール「……」
タプリス「……」
ガヴリール「なんでだよ!? 私ラッパ吹いてないぞ!! どうなってんだタプリス!!!!」
タプリス「あうあうあうあうわかりませぇん!!」
ゼルエル「おいこらガヴリール! お前はいったい何をやっているんだ!!」
ガヴリール「姉さん!」
ゼルエル「ついさっきラッパを吹くなと言ったばかりだろう! まさかお前、意図的に世界を終わらせるつもりで……」
ガヴリール「ちちち違うって私が吹いたのは縦笛だってば!」
ゼルエル「む、縦笛……少し見せてみなさい」
タプリス「こ、これです」スッ
ゼルエル「……」
ゼルエル「これは世界を終わらせる縦笛だな」
タプリス「世界を終わらせる縦笛!?」
ガヴリール「初等部になんてもん配ってんだよ!!」
ゼルエル「力の弱い未熟な天使ならば世界を終わらせるほどの力も出ないからな。特段問題はないと判断した上で使わせている」
ガヴリール「いやいやいやそれでもヤバイでしょ回収しろよ」
ゼルエル「今回は故意ではないということが分かったし、また私が世界を元に戻してやろう」
ゼルエル「もうラッパも笛も吹くんじゃないぞ!」
ギュルギュルギュル
パッ
ガヴリール「ふぅ、戻ってきたか」
ガヴリール「世界を終わらせるアイテム多すぎだろ。ったくもう」
タプリス「私もこれからは吹かないようにします」
ガヴリール「そうしたほうがいいな」
タプリス(……あれっ、未熟な天使だと世界を終わらせる力がないってことは……)ガ-ン
ガヴリール「あーあ、結局ラッパも笛もダメとか。後はどうしたら……あっ」
ガヴリール「そうだよ、鼻歌でいいじゃん。なんでわざわざ楽器使おうとしたんだろ」
タプリス「職業病ですかね。私たち天使は思わず楽器を選んでしまいますよね」
ガヴリール「よっしじゃあ歌うからよく聞いてろよタプリス!」
タプリス「はい! 天真先輩の歌声ききたい!」
ガヴリール「~♪」
そのとき
世界は終わった
ガヴリール「歌でもダメじゃん!!? 笛とかラッパとか何だったんだよ!!」
タプリス「おねえさん! おねえさーん!?」
ゼルエル「いい加減にしなさいガヴリール。あの術使うと姉さんはお腹がすくんだぞ」
ガヴリール「え、どれぐらい? 餓死しそうなぐらい?」
ゼルエル「おにぎり一個分」
タプリス「少なっ。世界戻すエネルギー少なっ!」
ガヴリール「鼻歌でもダメだったんだけど。どうしたらいいの姉さん」
ゼルエル「うーん、鼻歌でもダメかー。あーじゃあ、もう諦めなさい」
ガヴリール「えー」
ゼルエル「世界が終わるのとタプリスに曲名教えてもらうのと、どっちが大切なんだお前は」
ガヴリール「んー? うーーん…………」
タプリス「いや悩まないでくださいよ絶対前者でしょう」
ガヴリール「だっておにぎり一個分で戻る世界だぞ」
タプリス「確かにだいぶ価値は下がりましたよね。世界」
ゼルエル「お前達にとっての世界の価値なんてどうでもいい。とにかく簡単に世界を滅ぼすなと言っているんだ!」
ゼルエル「お姉ちゃんこれからご飯食べてくるからな! 絶対滅ぼすなよ!」
パッ
タプリス「最後のフリですかね」
ガヴリール「ちょっとそんな感じもしたな」
ガヴリール「あ、やべ、おならが出そう」
プゥ~
そのとき
世界は終わった
ゼルエル「…………」モグモグ
タプリス「お姉さん顔が怖いです」
ゼルエル「さっき食事に行くって言ったよな。どうして邪魔をするんだガヴリール」
ガヴリール「いやいやいや、屁で滅びる世界の方が悪くない?」
ガヴリール「あっ、ていうか何それ海鮮丼じゃん。美味しそうちょっとちょうだい」
ゼルエル「少しは反省しろガヴリール。お前はもう少し世界を担っている緊張感を持て」モグモグ
タプリス「滅びた世界で海鮮丼食べてるお姉さんの方が緊張感ないですよ」
ガヴリール「で、今回はなんで滅びたの」
ゼルエル「ふむ、あれかな? ガヴリールのおならがちょっと旋律を奏でていたのかな?」
ガヴリール「クソほどしょうもない理由だな」
タプリス「私の中でどんどん世界の価値が下がっていくんですけど」
ゼルエル「ん、んん。ごちそうさまでした。ふぅ、満腹だ」
ガヴリール「あと3回分ぐらいチャージできた?」
ゼルエル「ばか者。滅びる前提で会話をするな」
ゼルエル「いいかガヴリール、もう二度とおならをするんじゃないぞ。姉さんとの約束だからな!」
ガヴリール「無理」
タプリス「無理だと思います」
ゼルエル「さぁ、世界よ戻れ!」パァァァァァ
パッ
ガヴリール「……」
タプリス「……」
ガヴリール「はぁ~……戻ったか」
タプリス「なんだか疲れましたね」
ガヴリール「姉さんの海鮮丼見てたらお腹すいてきちゃったよ」
タプリス「今日の晩御飯どうします?」
ガヴリール「よし、ヴィーネの家に行こう。きっとご飯をくれるはずだ」
タプリス「自分で作るという考えはないんですか……」
【ヴィネット宅】
タプリス「急に押しかけて大丈夫でしょうか……」
ガヴリール「大丈夫大丈夫。いつもなんだかんだ私の分作ってくれるし」
タプリス「それ絶対あらかじめ用意してくれてるんですって。月乃瀬先輩の愛情に感謝してください」
ガヴリール「ゔぃーねー、開けてー」
ピンポーン
そのとき
世界は終わった
ガヴリール「……」
タプリス「……」
ガヴリール「思い出したわタプリス。子犬のワルツだ」
タプリス「意外とかわいい曲……!」
完
ー寝言ー
ヴィーネ「……すー……すー」
ラフィエル「……」ペラ
ガヴリール「……」ピコピコ
ヴィーネ「……ZZZ……」
ガヴリール(熟睡してんな)
ラフィエル(珍しいですね)
ガヴリール「……」チュインチュイン
ガヴリール「……」ズキュ-ン
ヴィーネ「んっ、んん……」
ガヴリール「……」
ガヴリール「ん」音量オフ
ガヴリール「……」カチカチカチ
ラフィエル(私、ガヴちゃんのそういうところ好きですよ)ニコニコ
ガヴリール(なんだよ、こっちみんなラフィ)
ヴィーネ「ぁ……ラフィ……」
ラフィエル「えっ? あ、はい?」
ヴィーネ「なに、してるのよ……」
ラフィエル「ええと、いま本を読んでいて……あら?」
ヴィーネ「……くー……くー」
ガヴリール(……寝言?)
ラフィエル(律儀に返事をしてしまって少し恥ずかしい)カァァ
ヴィーネ「そう……そうだったのね……ラフィ……」
ラフィエル「?」
ヴィーネ「今までずっと、胸パッドだったのね……」
ラフィエル「はいっ?」
ガヴリール「ぶふっ」
ヴィーネ「大丈夫、私、誰にも言わないから……」
ラフィエル「いやいやいや、本物ですって、パッドなんかじゃありません」
ガヴリール「案外本当に」ニヤニヤ
ラフィエル「違いますって! ガヴちゃんなら知ってるでしょう?」
ガヴリール「大きい声出したらヴィーネが起きるぞ」
ラフィエル「んぐぐ……っ」
ヴィーネ「……私の前では、外してていいから……ほら……」
ヴィーネ「………………」
ヴィーネ「んふっ」ニヤ
ラフィエル「勝ち誇った顔されました」
ガヴリール「夢の中のラフィ、どんだけ胸小さかったんだよ」
ヴィーネ「……ZZZ」
ガヴリール「お、また深い眠りについたな」
ラフィエル(なんだか辱められた気分です……)
ガヴリール「……」カチカチ
ラフィエル「……」ペラ ペラ
ヴィーネ「こらがゔりぃぃーるぅぅ!!!!」
ラフィエル「怒られてますよガヴちゃん」
ガヴリール「夢の中まで怒られてんのか私」
ヴィーネ「道に落ちてるメロンパンを食べちゃダメって言ったでしょ!」
ガヴリール「んなサターニャみたいな事するか!」
ヴィーネ「全くもうサターニャじゃないんだから!」
ガヴリール「やべ、被った」
ラフィエル「……サターニャさんでもやらないと思いますけど」
ヴィーネ「ほら、こっちのドーナツなら落ちてるの食べても平気だから」
ガヴリール「どんな基準だよ」
ヴィーネ「うふふ、美味しいでしょ?」
ラフィエル「ああ、食べちゃってますね……道に落ちてるドーナツ……」
ヴィーネ「こらこらそんなにはしゃがなくてもドーナツは逃げないから、四足歩行はもうやめなさい」
ガヴリール「私どういう格好で食ってんだよ!!」
ヴィーネ「あっ、チャッピー! 今はガヴが食べてる途中でしょ!」
ガヴリール(……誰?)
ラフィエル(チャッピー……)
ヴィーネ「あ、あぁ……そんな、うそ……」
ヴィーネ「ガヴが……チャッピーに食べられちゃった……」グス
ガヴリール「えぇ~……」
ラフィエル「悲惨な結末を迎えてしまいましたね」
ヴィーネ「ん、んん……」
ガヴリール「お、眉間にシワが」
ヴィーネ「こら、ガヴリール……サターニャ、ラフィ……」
ヴィーネ「ゔ~ん……ゔ~ん……」
ガヴリール「うなされ始めたぞ」
ラフィエル「ヴィーネさん、相当疲れているんでしょうか」
ガヴリール「私たち普段ヴィーネにストレス与えすぎかな」
ヴィーネ「ぐすっ……がゔ、がゔぅ~……」グスグス
ガヴリール「はいはい、ガヴちゃんはここにいますよ」ニギ
ヴィーネ「…………ふへへ」
ラフィエル「あら~」ニコニコ
ガヴリール「ニヤニヤすんなよ」
ラフィエル「ガヴちゃんが手を握るとヴィーネさんも安心するんですね」
ガヴリール「……別に、私じゃなくても天使は悪夢除けにぐらいなるだろ」
ラフィエル「いえいえ、きっとガヴちゃんだからこそ……おや?」
ヴィーネ「んっ、んん~~、ふわぁ」
ガヴリール「ん、起きた」
ラフィエル「おはようございます。ヴィーネさん」
ヴィーネ「あ、ラフィ……」ボ-
ヴィーネ「パッド変えた?」
ラフィエル「パッドじゃないですって」ガ-ン
完
これで終わり