相棒女「依頼人を連れてきたぞ」
殺し屋「ご苦労」
母「はじめまして……」
殺し屋「さっそく標的を聞かせてもらおう」
母「息子を……私の息子を殺して下さい……!」
殺し屋「理由は?」
母「息子は……ニートなんです!」
元スレ
殺し屋「標的は?」母親「ニートの息子を殺して下さい……!」
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殺し屋「ニートだと? それならとっとと働かせればいいだろうに」
母「それがいくらいっても聞いてくれなくて」
母「それどころか、最近は通販で買った武器で武装して、私や夫にも暴力を振るう始末で……」
母「もう手がつけられないんです……!」
殺し屋「だから俺に依頼しようというわけか」
相棒女「ニートの更生は困難と聞く。分からない話ではないな」
殺し屋「気が乗らんな……。たかがニート如きに俺が出向くなど……」
相棒女「いいじゃないか。引き受けてやればいい」
殺し屋「しかしなぁ……」
相棒女「選り好みはよくないぞ。それにどこぞの大物を標的にするより、よっぽど楽だろ?」
殺し屋「まあ、そうかもしれんが……」
殺し屋「分かった……引き受けよう」
母「ありがとうございます、ありがとうございます!」
相棒女「息子さんはやはり引きこもりなんだろう?」
母「ええ、ほとんど部屋から出ません」
相棒女「だったら当然、家にいるところを狙うことになる」
相棒女「二、三日、あなたは旦那と家を留守にしてくれ。その間にケリをつける」
母「分かりました!」
殺し屋「フン……つまらない仕事になりそうだ」
殺し屋「さて、どういう方法で殺るべきか……」
相棒女「やはり、狙撃が一番安全で手っ取り早いだろう」
殺し屋「標的が窓際に来た時に、というわけか」
相棒女「そうだ。いくら引きこもりといえど、窓際に来る瞬間くらいあるはず」
殺し屋「分かった……では武器の調達と場所の選定を頼む」
相棒女「了解した」
相棒女「場所はここだ」
相棒女「このビルの屋上からなら、窓にやってきた標的を狙撃することができる」
殺し屋「ふむ」
殺し屋「では狙撃銃をよこせ」
相棒女「今組み立てる」カチャカチャ
相棒女「できたぞ」
殺し屋「上出来だ。よし……眉間に風穴をあけてやる」チャッ
殺し屋「……」
殺し屋「なかなか出てこないんだが」
相棒女「待つんだ。相手は引きこもりだ、窓際に出ることはそうあるまい」
殺し屋「待つのは……性に合わないんだがな」
相棒女「せっかちなことだ。だが、せっかちでは仕事はもちろん、恋も遊びも上手くいかないぞ」
殺し屋「フン……分かっている」
一時間経過――
殺し屋「……」
殺し屋「出てこない……」
相棒女「耐えろ」
三時間経過――
殺し屋「……」
殺し屋「ふぁぁ……」
相棒女「コラ、気を抜くな」
殺し屋「まったく出てこないぞ」
相棒女「そういう日もある」
殺し屋「寝てるんじゃないか?」
相棒女「永久に寝続ける人間はいない」
殺し屋「もうすぐ夜になるし、気温も下がってきた。このままでは風邪をひくかもしれん」
殺し屋「別の方法を考えよう」
相棒女「……仕方あるまい」
相棒女「毒入りピザを用意した」ホカホカ
殺し屋「なるほど、毒殺か」
相棒女「そうだ。ピザ屋を装い、家に向かう」
殺し屋「だが、注文してないピザを持っていっても警戒されるだけでは?」
相棒女「両親から頼まれていたといえばいい」
殺し屋「なかなかのアイディアだ。では、変装用の制服を用意しておいてくれ」
相棒女「分かった」
ピンポーン…
殺し屋「……」
相棒女「……」
殺し屋「出てこないな」
相棒女「どうやら居留守を使ってるようだな。想像以上に重度の引きこもりのようだ」
ピンポーン… ピンポーン…
相棒女「やむをえんな。こうなれば、ピッキングで入るしかあるまい」
殺し屋「やってくれ」
相棒女「やれやれ……」カチャカチャ
ガチャッ
相棒女「開いたぞ。行けっ!」
殺し屋「……よ、よし」
殺し屋「標的はどこだ……?」
相棒女「おい、あまり音を立てるな」
ニート「なんだてめえら!?」
ニート「さっきからチャイム連打してたのはてめえらか! なんだ、泥棒かぁ!?」
殺し屋「私たちは……ピザ屋でして……」
ニート「ウソつけぇ!」
相棒女「もうそんな設定は通用せん! 正攻法で殺るしかない!」
殺し屋「どうやって……」
相棒女「ハンドガンを持ってるだろう。それを使え!」
殺し屋「よぉし!」チャッ
ニート「なんだそりゃ、モデルガンか!?」
殺し屋「喰らえ!」パァンッ
ニート「ひっ!」
シュゥゥゥ…
ニート「ほ、本物……?」
殺し屋「外した……!」
相棒女「落ち着け! 頭ではなく的の大きい胴体を狙うんだ!」
殺し屋「あ、ああ!」
ニート「くっ、こっちだって銃は持ってるんだぜ!」チャッ
殺し屋「うわっ!」
相棒女「安心しろ、あれはエアガンだ!」
ニート「とりゃああああああっ!」パパパパパンッ
ビシシシシッ
殺し屋「いだい! いだぁい!」
相棒女「たかがBB弾にひるむな!」
ビシシシシッ
殺し屋「しまった! 銃を落とした……!」
相棒女「何をしている!」
ニート「その銃を手に入れれば……!」サッ
殺し屋「あっ!」
相棒女「拾わせるな!」
ニート「どけっ!」ドカッ
殺し屋「ぐあっ!」
相棒女「ちっ!」
相棒女(さっき奴が撃って散らばったBB弾を、奴の足元に――)パッパッ
ニート「うわっ!?」ドテッ
相棒女「こけたぞ! ナイフで仕留めろ!」
殺し屋「分かった!」
殺し屋「てやああああああああああああっ!」ブンブンッ
ニート「わわっ!」
相棒女「むやみに振り回すな! 首だ、首を狙え!」
ニート「ナイフを奪ってやる……!」ガシッ
殺し屋「ぐっ!」ググッ…
相棒女「このっ!」シュッ
バシッ
ニート(BB弾が目に……!)
殺し屋「死ねえっ!!!」
ザクッ!
ニート「ぐはっ……!」
相棒女「まだ生きてるぞ! トドメを刺せ!」
殺し屋「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
ザクッ! ドシュッ! ザクッ!
ニート「……」ビクンビクン
ニート「……」ガクッ
殺し屋「や、やった……!」
相棒女「よくやった」ホッ…
母「ありがとうございました……契約通り、成功報酬はすぐに振り込みます」
殺し屋「ああ、頼むぞ」
母「しかし、あの子に対してこんな手段しか取れなかった自分達の不甲斐なさが悔しくて……」グスッ
相棒女「気にすることはない」
相棒女「ニートの更生というのはとても難しい。あまり自分を責めず、前向きに生き直すことだ」
母「はい……。励ましまで頂いて、ありがとうございます」
相棒女「なに、他人事とは思えなかったものでな」
母「?」
殺し屋「……」
殺し屋「やったよ、お母さん! 感謝されるってのは、気持ちがいいもんだな!」
相棒女「ああ、よくやった。すごいぞ」
相棒女(ニートだった息子を殺し屋にして、ようやくニートを脱却させることができたが……)
相棒女(独り立ちさせるまでにはまだまだ時間がかかりそうだ……)
相棒女(ニートの更生って本当に難しいなぁ……)
― 終 ―

