237 : VIPに... - 2013/05/01 20:13:04.56 SG8NEmeAO 1/48喫茶サテンが久々に開店した喜びのあまり書いてしまったものを投下にきました
10レス前後いただきます
元スレ
▽【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-39冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363523022/
第七学区の北西端にある、口は悪いが根は優しい店主が経営する、小さな喫茶店。
そこへ、ようやく少女という殻を破ったばかりの女性が、いつも通りに来店した。
「やっほー、また来ましたよ♪」
「いらっしゃい、ご注文は」
女性は、当然のようにカウンターの真ん中の席に腰を下ろし、
「いつもので」
当たり前のようにそう注文する。
ちなみに、彼女の“いつもの”はマンデリンのブラックである。
「……かぁーっ! この苦さがたまんないね!」
届いたコーヒーをひと口飲み、通ぶった言葉を吐く女性。
「……オイ佐天、その言い方だと飲ンだくれのオヤジみてェだぞ」
本日最初の客である彼女、佐天涙子の発言にツッコミを入れる店主。
「あー、マスターったらひっどーい。女の子に向かってオヤジっぽいだなんて、声に出したらダメじゃないですかー」
「思ってもいいのかよ」
「思うだけなら問題ないですよ、あたし精神感応じゃないから分かんないし。でもまあ、さっきのが言われた通りって自覚はあります」
「そンなら自重しろよ、オンナノコさン?」
「はーい。かしこまりますたー」
軽い調子で忠告を聞き入れる佐天に溜め息を吐き、取り出した生豆を煎り始める店主。
「お、新しいブレンド試すんですか?」
「あァ、そンなとこだ」
佐天は店主の仕事ぶりに食い入る。
彼女に見られていると気付きつつ、素知らぬ顔で彼は作業を続ける。
しばらくして、入口のカウベルが来客を知らせる。
「あ、いたいた。お待たせー、さて、ん……」
シャンパンゴールドの髪の女性が、佐天に声を掛けながら近付き、そして。
「待てコラ。ご注文は」
即座に反転して去ろうとする彼女を捕まえ、無理矢理佐天の隣に座らせる店主。
「なんでよりにもよってココなのよー……」
見るからに不満げな表情になった彼女と店主を交互に見やり、
「え、あれ? マスターと御坂さんって、知り合いなんですか? 因縁の相手って感じの」
「まァ、な」
バツが悪そうに肯定し、彼女達から目を逸らす店主。
「まあそれはともかく、御坂さん何頼みます?」
「んー、そうね……ハワ」
注文しようとした女性・御坂美琴の前に、一杯のコーヒーが置かれる。
「……まだ頼んでないんだけど」
「ハワイコナのラテ、だろ?」
「なんで分かるのよ?」
「アイツらはみンなそれだから、オマエもそうだろうと思って出したンだが」
「……正解よ、ちくしょう」
自分の嗜好を当てられてむくれつつ、出されたコーヒーを口に含む御坂。
そんな二人のやり取りを見て、面白くなさそうに口を尖らせる佐天。
「なあんだ。因縁の相手って割に仲良いじゃないですか」
佐天の言葉にはっとし、御坂は慌てて弁解する。
「あー、えっと、その因縁については一応の決着がついてて、だから、その、そこまで仲悪くもないっていうか」
しどろもどろの御坂に呆れた店主は、彼女をフォローする為に口を開く。
「いつまでもいがみ合ってるとアイツらに暗い顔されるから、いい加減に止めにしようって事で手を打ったンだ」
「ふーん」
納得いかない表情で佐天はカップを持ち上げ、
「……アイツら?」
店主の言葉の中に突破口を見つけた。
自身のミスに気付いた店主は、質問されまいと作業に没頭する。
二人だけの秘密。
そう悟った佐天は、御坂を逃がすまいと隣に目を向け、
「あっ、いつの間に!」
「やばっ」
入口まであと僅かの場所にいる御坂を見つける。
「逃がしませんよ、御坂さん!」
すぐに椅子から飛び降りて御坂を捕まえる佐天。
「……仕方ないか」
観念しておとなしく佐天と共に席に戻る御坂。
「それで、アイツらって誰なんですか? さっきのマスターの話しぶりだと、お二人の因縁と関わりがあるみたいですけど」
少しの沈黙の後、御坂は口を開いた。
「ずっと前、私のクローンが造られてるって噂があったでしょ?」
「ああ、ありましたね。でもあれって、結局単なる噂」
「本当なのよ」
「……マ、マジですか」
「うん。それでね、アイツ……マスターは、その子達の保護者をしてくれてるの」
「ん? それだったら、因縁なんかないんじゃないですか? お二人の因縁ってもしかして、クローン……もとい、妹さん達がマスターになんかされたとかですか?」
「うっ。そこらへんは、アイツも話したがらないし、私もあんまり話したくないから、出来れば訊かないでほしいんだけど」
「そこが肝心なんだけどなあ……まあ、マスターや御坂さんが嫌がる話題なら、これ以上の詮索は止めときます」
「ごめんね」
「あー、つまり。御坂さんとしては、愛しの妹を取られて悔しい! みたいな感じですか」
「まあ、そんなとこ」
「シスコンですね」
「うぐ。いや、そういう訳じゃ」
ある程度掻い摘んで説明し、一応は納得してもらう事に成功した御坂は、ホッと胸を撫で下ろす。
が。
「さーて、そろそろ本題に入りましょうか!」
安心したのも束の間、佐天にここへ来た本来の目的を切り出される御坂。
「ええー!? どうしてもココでするのー!?」
「もちろん! そもそも、その為にあたしだけに声を掛けたんでしょ?」
「それはそうなんだけど……せめてお店変えましょう? ね?」
「御坂さんに店を選ぶ権利はありません!」
「そんな殺生な~」
御坂があからさまに嫌がるので、興味が湧いた店主は彼女達の話に首を突っ込む。
「なンだ、俺に訊かれたら不都合な話題なのか、その『本題』ってやつは」
「いやー全然そんな事」
「ある! ココじゃ困るの!」
いつの間にか顔を真っ赤にした御坂は頑なに嫌だと叫ぶ。
「オイ佐天。本題ってのはもしかして、コイツの恋愛沙汰か?」
「おっ、さすがマスター!」
「なんで分かっちゃうのよ!」
「そンだけ顔真っ赤じゃイヤでも分かるっての」
「御坂さんって、思ってる事がすぐ顔に出ますからね」
「えっ……そんなに出てる?」
「「誰が見ても分かる程度には」」
言われて今までの自分の行動を振り返り、思い当たる節ばかりな事に頭を抱える御坂。
「はあ……分かってはいるんだけどなあ。どうにも体が先に動いちゃうのよね」
「思い立ったら即行動! てのが、御坂さんの良い所ですよね」
「それが恋愛沙汰には一切発揮されねェのがダメな所だがな」
「ぐぬう……」
佐天に誉められ、店主にダメ出しされ、複雑な表情でコーヒーを飲み、
「ンゴッ!?」
途端に顔が真っ青になる御坂。
「あ、それあたしの」
泣きそうな顔で口を押さえ、ゆっくりと飲み込んでいく御坂。
「うう……不幸だ」
彼女の呟きを聞き、顔を見合わせてにやつく佐天と店主。
「あれあれ~? 御坂さんってば」
「想い人の口癖が伝染ってませんかァ?」
「なんで息ピッタリなのよ~……」
御坂にとっては、まさに泣きっ面に蜂であった。
しばらくして。
御坂が落ち着いたところで本題、つまりは恋愛相談が始まり、彼女が悩みを打ち明ける。
「はァ? まだ告白してなかったのか?」
「いや、御坂さん。さすがにそれは純情過ぎやしませんかね?」
二人から痛い所を突かれ、縮こまる御坂。
「だ、だってえ~……」
「だってじゃねェだろ。そンな調子で何年二の足踏ンでやがる」
「んー。あたしが知る限り出会いが中二の時だから、かれこれ六年くらいですかね」
「うっ」
「オイオイ。せめてそれらしいアピールぐらいはしてンだろうな?」
「それは……してる、けど」
「まあ、してもあの上条さんですからね。気付いてない可能性が高いかと」
「だなァ。例えばどンなアピールをしたンだ」
「お揃いのケータイ買ってあげたりだとか、アイツんちの家電を最新のにしてあげたり、安物だけど、このペアリングを」
「ってオイ。安物云々以前に、指輪の時点で重いっての」
「ていうか、やる事極端ですよ。もうちょっとこう、少しずつ少しずつ上条さんの私生活を侵食していく感じにしないと」
「いや、それもそれでどォかと思うが」
「ならどうしろって言うのよお……」
先程より小さくなった御坂が、二人に更なるアピール法を求める。
「うーん……アピールに気付かれないんじゃ話にならないし」
「……もう、告白するしか手がねェだろ」
「ええええええっ!? む、無理、無理だよお~!!」
指先まで真っ赤になりながら、全身を使って拒否する御坂。
「マスターの言うとおり、やっぱり告白しかないですよね!」
「出来ないよお~……」
御坂の様子に溜め息を吐き、発破をかけるべく口を開く店主。
「だったら、他の女に取られてもいいンだな?」
「………………やだ」
「なら、覚悟決めてさっさと告白しろ。もう躊躇ってる時間はねェぞ」
「そうですよ! 上条さん結構モテてるみたいだし、早くしないとヤバいですよ!」
佐天からも追い込まれ、意を決したように立ち上がる御坂。
「……分かった。今すぐ言ってくる! 二人共ありがと! どうなったか必ず報告に来るから!」
今度こそ自分のカップを取って中身を飲み干し、代金を置いて店を去る御坂。
「……上手くいくといいですね」
「大丈夫だろ。なンだかンだ言って、上条も御坂を好いてるみてェだしな」
「さて。美味しいコーヒーを飲みつつ、結果報告を待ちますか。ってわけで、おかわり!」
「ハイハイ」
そこは第七学区の北西端にある、小さな店舗に、大きな間口を持つ喫茶店。
喫茶『かたみち』、またのご来店をお待ちしております。
250 : VIPに... - 2013/05/01 20:48:12.69 SG8NEmeAO 15/48以上、お粗末様でした
267 : VIPに... - 2013/05/05 22:10:11.03 TOiEugGAO 17/48>>238-249の続きっぽいのを思いついたので投下します
第七学区の北西端にある、小さな喫茶店。
その店先に、一台の白いバイクが停車した。
「はろー、お届け物でーす」
荷物を抱えて店に入ってきたのは、セミロングの茶髪に黒いライダースーツの女性。
「よォ相園。つか、豆を注文した覚えはねェンだが」
その女性・相園美央に対し、遠回しに来訪の目的を尋ねる店主。
「いやー。珍しい豆を手に入れたんで、ちょっくら試してみませんか? って事で、持ってきたんですよ」
「……ほォ。どれ、寄越してみろ」
店主は相園から荷物を受け取り、中から生豆を取り出す。
「……成る程。品種を掛け合わせてあるのか」
「うわすげー。豆見ただけでそこまで分かっちゃいますか」
「豆に訊きゃァ分かる」
「さすが第一位サマは格が違った」
「“元”第一位、な」
からかう相園をあしらいながら、店主は豆を炒り始める。
「やっほー、また来ましたよ♪」
そこへ、いつも通りに佐天が来店する。
そして、見知った顔があった為、そちらにも挨拶をする。
「おお、相園さん! お久しぶりですね!」
「お久しぶりですねー佐天さん」
「あン? なンだ、オマエら知り合いなのか」
「ある事件で出会って以来の仲ですよ」
「犯人と探偵、みたいな感じのね」
それはそれとして、と言いながら佐天は身を乗り出し、
「また新しいブレンドですか?」
店主が煎る豆を見て問い掛ける。
「いや。今回は豆自体が新しい」
「新豆?」
「あながち間違いじゃないですね。品種改良の試作品らしいし」
「へー……」
まじまじと店主の作業を見つめる佐天。
そんな彼女を見やり、相園はその思惑に感づく。
(ふーん。佐天さんったら、そうなんだ)
だが敢えて声には出さず、彼女の様子をただじっと眺める。
「出来たぞ。早速試飲会といくか」
しばらくして、淹れたてのコーヒーが三杯、カウンターに置かれる。
「ほえ? あたしもいいんですか?」
「上得意様だから、特別にな」
「てへへ。そんじゃ、お言葉に甘えちゃいますね」
店主のその行動に、相園はそういう事かと言いたげな声を上げる。
「へえ~え」
「なンだよその『へえ~え』は。何が言いてェ」
「べっつにい? 深い意味なんかないですよー?」
ニヤニヤしながらカップを取る相園に舌打ちしつつ、店主は手元のコーヒーを口に運ぶ。
「……うん。悪くないね」
「苦味が強めだけど、後味はスッキリしてますね」
「……まァ、アリだな」
店主の呟きに満足げな表情を浮かべ、
「それでは、コレも今後メニューに入れるって方向でよろしいですね? お買い上げありがとごさいまーっす!」
そう言って領収書を差し出す相園。
「オイ、まだ買うとは」
「にゃんにゃん☆」
「……」
「買ってくれなきゃヤダヤダ☆」
「……チッ、分かったよ」
全く聞く耳持たない相園にげんなりし、渋々購入を決断する店主。
「毎度ありー!」
滑るように去っていく相園を見ながら苦笑いする佐天。
「アハハ……変わってないなあ、相園さん」
「昔っからあンな調子かよ……クソッ、やりづれェったらねェぜ」
にしても、と前置きして、佐天は話を切り出す。
「コーヒー豆の仕入先、“シロワニ”だったんですね」
「あァ。相園ンとこが一番仕事が早いからな」
「しかも店長自ら配達するなんて、よっぽど気に入られてるんですね。わーモテモテーひゅーひゅー☆」
「アイツみてェなテンションで喋るのヤメロ。つか、アイツが店長? 冗談だろ?」
「あー、相園さんかわいそー。言いつけてやろーっと」
「オ、オイ待て、今のナシだ、待てって連絡するンじゃねェ!」
佐天に翻弄されててんやわんやになる店主。
そんな彼等を、やや冷めた視線が射抜く。
「コホン。お客様をほっぽりだして何をはしゃいでおられますの?」
声の主に見えない側の頬をひくつかせた後、店主は応対に移る。
「失礼しました。いらっしゃいませ、ご注文は」
「ストレートティーをお願いします」
「畏まりました。少々お待ちを」
すぐに紅茶を淹れる準備にかかる店主を、やはりじっと見つめる佐天。
「佐天さん。貴女、あまりマスターを困らせてはいけませんわよ?」
「わかってるよう、白井さんは相変わらず堅いなあ」
佐天の隣に座った天然ウェーブヘアの女性・白井黒子は、彼女にも苦言を呈した。
不満げに口を尖らせて文句を返すも、すぐにいつもの調子で話題を切り替える佐天。
「しっかしまあ、こうして会うのも久しぶりだよね。前に会ったのいつだっけ?」
「わたくしが風紀委員本部に配属になる直前ですから、二年程前でしょうか」
「ありゃー、もうそんな経つんだー。なんかあっという間だったねー」
「ええ。しかし、忙しくも充実した毎日だったと言えますの」
「うん、異議なし!」
「時に、御坂先輩はいかがなさってますの?」
「御坂先輩って。よそよそしいなあ、今までみたいに『お姉様』でいいじゃんか」
「先輩には先輩の人生がありますの。いつまでも未練がましくしがみついていたのでは、彼女が先に進めなくなってしまうでしょう?」
「そっかあ、とうとう御坂さん離れする決意が」
「しかあし! 隙あらばいついかなる時でもあの男からお姉様を奪い取って差し上げる所存ですの!」
「出来てなかった!? まったくもって歪みないシライズム!!」
二人なのに姦しい成人女性達の声を呆れ半分に聞きながら、店主はカップに紅茶を注ぐ。
「あら、この香り。ラトゥナプラですわね」
「よく分かったな」
「茶葉の品種、特徴、淹れ方、嗜み方。どれも常盤台では基礎学習事項でしたので」
「学習範囲広過ぎねェか?」
「それが履修出来ずして、一流の淑女は名乗れませんの」
「一流淑女パネエ……」
「普通の学校で良かったな、佐天」
出された紅茶を飲んでひと息吐くと、白井はぽつりと呟いた。
「わたくし、消極的過ぎるのでしょうか……」
「ん? なになに? もしかして、恋のお悩み?」
それを逃さず聞き取った佐天は、すぐに彼女の言葉の真意を問い質す。
「はっ、えっ、いえ、その」
動揺してばたばたと腕を振りながらはぐらかす為の言葉を探す白井に、
「ああ、海原さんか」
更に追い討ちを掛ける佐天。
「な、何故お分かりに、あ、ではなくて、ち、違」
「ふっふっふっ。あたしにはとっくにバレバレなのだよ白井くん」
「うう……」
海原、と聞いて一瞬知り合いの顔を思い浮かべ、
(いや、本物の方か)
すぐに別人だろうと予想する店主。
佐天は様子見中の店主に代わり、更に白井の言動を追求する。
「消極的過ぎって、どういう事? 御坂さんにしてたみたいなスキンシップはしてないの?」
「んなっ!? あ、あああ、あんな恥ずかしい真似、出来るわけありませんの!」
「御坂さんにはできてたのに?」
「あ、あれは、その、女性同士ならば多少行き過ぎても絵的に許されると申しますか、若気の至りであったと申しますか、あの当時のわたくしがどうしようもない甘えん坊であったと申しますか」
必死に言い訳を続ける白井に、いやらしい笑みを浮かべながら責め続ける佐天。
「えーじゃあどんな事したのーおねーさんにおせーておせーてー☆」
「嗚呼、マスター、助けて下さいまし!」
「助けろってェと、ソイツは」
店主は白井に向き直り、
「佐天の追求から逃れてェって意味か? それとも」
カウンターに肘をついて体重を預け、
「恋のアドバイスをして下さい、ってェ意味かァ?」
ニヤケながら問い掛ける。
「四面楚歌!? 答えなくては帰していただけませんの!?」
「当然!」
「さァ、白状タイムだ」
「もう……分かりましたの、話しますの」
頬を朱に染めながら、渋々相談を始める白井。
「彼との出会いは、中学三年の夏休みの時でしたの。いつものようにお姉様を陰ながらサポートしている折、彼の存在が浮き彫りになりまして」
「どういった理由でお姉様を監視しているのか、問い質すつもりで彼に接触しましたの」
「あれ? 海原さんって、常盤台の理事長のお孫さんじゃ」
(……オイ、まさか)
「あ、それについては後程……それで、話をしている内に、彼のお姉様への想いや、叶わぬと知ったうえでもお姉様を守ろうとする心意気に、その……」
「恋、しちゃったんだね」
「……はい」
「で、その海原さんはどんな人なの?」
「本来はアステカ地方の出身で、エツァリという名だと仰っておりました」
(やっぱりな……あの優男。御坂を諦めたかと思ったら後輩に手ェ出してやがったか、さすが妹フェチ)
(なんかショチトルみたいな響きの名前だなあ……知り合いかな?)
「故あって普段は海原さんに扮していらっしゃるとの事でしたので、わたくしが彼をお呼びする時はそれで」
「えっ? いいじゃん別に『エツァリ』って呼べば」
「え゛え゛っ!? む、無理、名前呼び、しかも呼び捨ては、恥ずかしいですの!」
「……オイ佐天、コイツ御坂並に純情だぞ」
「……ですね。初恋恐るべし」
「わたくしの初恋はお姉様に捧げたんですの!」
「でも、異性に惹かれたのは海原さんが初めてなんでしょ? だったらそれも、『初恋』で間違いないよ!」
「た、確かに。仰る通りですの」
(あっさり丸め込まれたな)
「それで、白井さんはどんなアピールをしたの?」
「ええと……出来る限り、手を繋ぐようにしたり、なるべく、同じ料理を注文したり……」
「うわスゲエ御坂と比べて遥かにささやかだ」
「あたしの知ってる白井さんじゃな~い!」
「ですが、いつも逆に優しくしていただいてばかりで……」
(息を吐くようにレディファーストを心掛けるからな、あの野郎は)
ここまで話してしょんぼりと肩を落とす白井を見た店主と佐天は、それぞれこう結論づけた。
「ソイツ、異性からの好意に相当鈍いな。普通ならそれぐらいやりゃァ多少なりとも感づくだろ」
「ていうか、押しが弱い! 白井さんらしくないよ!」
「ええっ!? そんな、もっと過激にしろと仰いますの!? た、たと、例え、ば……」
言って何事かを想像した白井は、顔を真っ赤にしてへなへなとくずおれる。
「む、無理ですの~……」
「コレは酷ェ……」
「純情だ……純情過ぎる……ッ!」
静まり返る店内。
店主と佐天は、白井への的確なアドバイスを見つけられず、思考を続ける。
白井はというと、顔を紅潮させたままへたり込んでいた。
しばらくすると、来客を知らせるカウベルの音が響いた。
「久々に来てあげたわよ……って。何の有り様なの、これは」
来店した、長い赤毛を後ろで二つに結った女性は、店内の状況を訝しむ。
「ン、よォ結標。注文は」
その女性・結標淡希にまずは接客をする店主。
「ジャスミンティー。で、これは何事?」
注文してすぐ、改めて状況説明を求める結標。
「とりあえず座ってくれ。あと、ソイツも座らせてやってくれねェか」
「はいはい。ほら、立てる? 白井さん」
「うにゅ……」
結標は白井に手を差し伸べて彼女を席に着かせた後、自分も右隣に座る。
「さっさとキスしちゃえばいいじゃない」
状況説明を受け、結標が放った第一声がそれだった。
「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ですのおおおおおお!!」
「DIOの親戚かアンタは!? てゆーか、いつからそんな奥手になったの!?」
「自信無さ過ぎだろ、どンだけ純情なンだよ」
「せめてほっぺちゅーぐらいしないと、鈍感野郎には気持ちが伝わらないわよ?」
真っ赤な顔で否定する白井を、三人は半ば呆れ気味に諭す。
「だ、だって、だって、キスというのは、それは、結婚式で、するものであって!」
「古風!? 白井さんの恋愛観は昭和型だった!?」
「はあ? 今時キスもしないカップルなんて絶滅危惧種よ? あまり誉められたものではないわね」
「だって、だってえ……」
「んー、他になんかいい方法は……うーん」
完全に呆れ、早々にアドバイスを放棄して出されたジャスミンティーを嗜む結標。
佐天は知恵を絞るも、いいアイディアはなかなか浮かばず。
すると、店主は携帯を取り出して電話をし始める。
「ちょっと。お客様がいる前で堂々と電話しないでよ」
結標がそれをたしなめるも、店主は無視して電話を続ける。
「よォ、久しいな。今、時間あるか? ちと俺の店に来てほしいンだが……あ? 安心しろ、そンなンじゃねェよ」
話しぶりから、結標は誰に掛けたのかを察し、薄く笑む。
「オマエを待ってる奴がいるンだ。多分、今のオマエにとっては、御坂と同じぐらい大事な奴がな」
結標の表情の変化に首を傾げた佐天も、店主の発言で相手を理解して微笑む。
「まだしばらくはいるだろ。だが、極力早く来い。女は待たすもンじゃねェ、だろ?」
そう言って通話を終わらせる店主。
気付けば佐天と結標が笑いながら見ていたので、理由を問うと。
「「ナイス、マスター」」
息ピッタリにそう言われ、照れ臭そうにそっぽを向いた。
「やあ、お待たせしました」
数分後、見るからに爽やかな青年が入ってくる。
「よォ、海原」
青年・海原光貴--もといエツァリは紅茶を注文すると、白井の左隣に着席する。
「……はっ! う、海原、さん」
「やあ、白井さん。お待たせしました」
「あ、い、いえ、待つという程は、経っておりませんし」
海原に声を掛けられ、慌ててそう返す白井。
そもそも自分が呼び出したのではいない事すら判断出来なくなる程に、白井はテンパっていた。
「あ、えと、お呼び立てしたのには、理由がありまして。じ、実は、わたくし」
白井はイジイジと指をくねらせながら、言うべき言葉を頭の中で紡ぐ。
「う、海原さんの、事が--いえ」
エツァリは柔らかく笑みながら、彼女の言葉を待つ。
意を決した白井は立ち上がり、自らの気持ちを彼にぶつける。
「エツァリさん。わたくしは、貴方を、愛しく感じております。わたくしと、恋人同士になって下さい」
「………………はい?」
エツァリは目を見開き、白井の告白を喉の奥で反芻する。
「えっ……ええええええっ!? そ、そうだったんですか!? ちょ、待っ、待って下さい? 少し、考える時間を」
(うわ思った通りだよコイツ)
(この鈍さじゃ、ショチトルに愛想尽かされるのも頷けるわ)
案の定白井の気持ちに気付いていなかったエツァリは、突然の告白に狼狽え始める。
「ふっふっふっ、待ったはナシですよエツァリさん!」
「いやその、冷静になってきちんと考えたいので、一端帰らせてほしいのですが」
「おォっと紅茶お待たせしましたァ」
「っ!」
「で、返事はまだなのかしら?」
「四面楚歌!? 答えるまで帰していただけませんか!?」
「当然!」
「さァ、告白タイムだ」
エツァリは出された紅茶を飲むと、白井をまっすぐに見据えて語り始める。
「ええと……まずは。自分なんかに惚れていただいてありがとうございます。お気持ちはとても嬉しいです」
「ただ、今の自分が白井さんに見合う男だと言い切れる自信はありません。ですから、自信がつくまで待っていただきたい、というのが正直な所です」
「……ですが。白井さんはきっと、自分が貴女の気持ちに気付くのを、ずっと待ってくれていた。ならば」
「まだ、自信はありませんが。一緒に過ごす事で、貴女に見合う男になっていこうと思います」
「ですから。こちらからもお願いします。自分と、恋人としてのお付き合いをして下さい。自分を、男にして下さい」
ゆっくりと、エツァリが手を差し伸べる。
白井は目に涙を溜めながら、彼の手を握る。
「……はい。よろしく、お願い致しますの!」
二人はしばらくお互いを見つめ合い、ゆっくりと抱き合った。
「おおー。ロマンスですなあ」
「二人共、今日はサービスしといてやる」
「あ、ありがとうございますの、マスター」
「恐縮です」
素直に祝福する佐天と店主に対し、結標は白井達を悩ましげに眺める。
(……はあ。あいつもいい加減、気付かないフリを止めてくれると嬉しいんだけどな)
そんな彼女を見た二人は不敵な笑みを浮かべ、
「「恋のお悩みなら、相談に乗りますが?」」
「ちょっ!?」
次なる標的を定めた。
第七学区の北西端にある、小さな店舗に、大きな間口を持つ喫茶店。
喫茶『かたみち』、またのご来店をお待ちしています。
285 : VIPに... - 2013/05/05 23:05:58.56 TOiEugGAO 35/48以上、お粗末様でした
ちなみに、知らない人の為に簡単に説明すると、相園ちゃんは超電磁砲PSPのボスキャラ的な立ち位置の子です
美琴さんに勝負服を剥がされてました、画像はググってみれば出る、かも
875 : VIPに... - 2013/08/14 00:19:00.68 GPUjLm5AO 37/48喫茶『かたみち』のラストを思いついたので投下に来ました
※佐天通行その他カップリング的な要素あり
第七学区の北西端にある、口は悪いが根は優しい店主が経営する、小さな喫茶店。
昼時の賑わう店内を、商品を載せたトレイを持つ、白い青年が闊歩する。
「お待たせいたしました。こちら、フレンチトーストセットでございます」
「ありがとうございます」
「ごゆっくりどうぞ」
青年は一礼し、他の客への対応にあたる。
「ふう。今日も余裕で捌ききったわね」
二時過ぎ。
店の奥の厨房から出てきた女性が、ふわりとした髪をかき上げながら一人ごちる。
「お疲れさン」
「存外、この人数でも上手く立ち回れるものなのですね」
「店自体も大して広くねェし、客もそこまで多くねェからな」
自嘲気味に店舗を評価する店主。
そう謙遜しなくても、と青年が言えば、ぶっちゃけそうだよね、と女性が肯く。
「私としてはちょっとしたヘルプのつもりだった筈なのに、思いの外楽しくなってきちゃった。このままここに永久就職しようかしら」
「悪くねェンじゃねェの? 料理担当の店員のままでいいならな」
「そんなの当たり前でしょ。だって、あんたの懐に永久就職するのは--」
女性の言葉を遮るようにカウベルが鳴り、佐天涙子が入ってくる。
「こんにちはー! っておお! 麦野さんに垣根さん! 久しぶりですね!」
「お久しぶりです、佐天さん。壮健なようで何よりです」
「相変わらず元気ねえ、佐天は」
青年・垣根帝督は丁寧に挨拶を返し、女性・麦野沈利は半ば呆れたように微笑む。
「いやー、二人が帰っちゃう前に来られるなんて、今日はやっぱりラッキーデイだなー!」
「ふむ。ここに来る前にも、何かいい事があったのですか?」
「星座占いランキングで一位だった、とかそんな感じでしょ」
「交差点で百円拾ったとかじゃねェの」
佐天の一言に対し、それぞれが“らしい”反応を見せる。
そんな彼等に指を振り、
「んっふふ~♪ 実はですね~♪ じゃーん!」
佐天は心底嬉しそうに、ポーチから二枚の映画チケットを取り出す。
「当たったんですよ! 先行上映会!」
「それってこの夏公開の話題作じゃない! うっわ、いいなあ、私も応募しとけばよかったー!」
年甲斐もなく地団駄を踏む麦野に、
「絹旗さんが珍しく応募していた気がしますが」
と言及する垣根。
「マジ!? 確かめてみる!」
携帯を取り出し、同居人に電話を掛け始める麦野。
「では、私はお先に失礼します」
「お疲れ様でーす!」
麦野の様子を見ながら、垣根は一礼して店を後にする。
「さてさて。いつものをお願いしますね、マスター」
「オウ」
いつもの席に着いた佐天は、いつも通りに注文し、麦野に目を向ける。
「ああ絹旗? あんたさ、例の映画の先行上映会って応募した? ……おお! よっしゃでかした! ……ハアッ!? なんであいつらにあげちゃうのよ!?」
「最初からそのつもりだったあ? ふっざけんなよ! あいつらは公開されてから観に行きゃいいじゃねえかどうせ何度も観に行くんだし! 私は可及的速やかに観たいの!」
「……男女ペアじゃないと駄目? なら垣根と行くから私によこせ。いいわね? …… い い わ ね ? ……ありがと。愛してるよ、絹旗。……キモイ言うな。じゃあ、後でね」
通話を終えて携帯をしまうと、上機嫌に鼻を鳴らしながら店の入口に向かう麦野。
「お疲れ様、麦野さん。先行上映会で会いましょう!」
「おーう、まったにゃーん☆」
必死過ぎだろ、と店主は誰にも聞こえないように呟いた。
「ねえ、マスター」
「あン?」
一杯目のマンデリンを飲み終えた佐天は、店主を見据えて話し掛ける。
彼女と視線を合わせ、店主は次の言葉を待つ。
「この上映会の日って、暇ですか?」
「ン……まァ、丁度定休日だから空いてるが」
佐天の思惑を知ってか知らずか、質問された事にだけ答える店主。
「じゃあ、一緒に観に行きませんか?」
期待の眼差しを店主に向けて問い掛ける佐天。
店主はそれに対し、何故自分なのか? と言いたげに質問を返す。
「オマエぐらいイイ女なら、誘いに乗る男なンざいくらでもいンだろ?」
その返事を聞き、不満全開の顔で反論する佐天。
「そんな人いませんよ! もう、デリカシーないんだから!」
ぷい、とそっぽを向いた佐天を、店主は慌てて宥めようとする。
「わ、悪かった、悪かったよ。ほら、二杯目はタダにしとくからよ、とりあえず機嫌直してくれ」
「ふーんだ。コーヒー一杯でなびくような軽い女じゃないですよーだ」
完全に拗ねてしまった佐天に、どうしていいか判らずうろたえる店主。
そこに、
「こんにちは~」
飴玉を転がすような甘ったるい声が、カウベルの音と共に入店する。
「あ、あれ? なんだか不穏な空気……?」
声の主は、困り果てた顔の店主と膨れ面の佐天を交互に見やり、そう漏らした。
「あ、お、おォ。いらっしゃいませ、ご注文は」
来客に気付き、慌て気味に接客する店主。
「えっと、キャラメルマキアートってありますか?」
「あ、は、はい。少々、お、お待ちを」
この店主は、佐天の様子が気になって仕事どころではない。
そう察した女性は、
「あ、そんなに急がないので、本当にゆっくりで構いませんよ」
と言って彼を気遣う。
すると、
「こんなのに気を使わなくていいよ、初春」
佐天は彼女・初春飾利に、自分が不機嫌な理由を遠回しに告げる。
「佐天さん。気持ちは分かりますけど、こんなのなんて言ったらマスターに失礼ですよ?」
流石にいただけないと感じた初春は、佐天の言動を諌める。
「なに、初春ってばマスターの肩持つの? 親友のあたしを差し置いて、こんな唐変木に味方すんの!?」
「そうじゃなくて。どんなに腹が立っていても、一定の礼儀は必要ですよ。それで、一体なんでこんな事になったんですか?」
初春は溜め息を吐き、佐天が不機嫌になった経緯の説明を求める。
「せっかく先行上映会に誘ったのにさ。マスターってば、他の男と行けばいいだろーなんて言うからさ。なんか……なんか悔しいじゃない」
「だからって、流石にその態度は大人気ないですよ?」
「だーってえ!」
「はいはい、気持ちは充分に分かりましたから。まずは悪く言った事を謝りましょうね?」
「う~……」
初春の言い分は正論だが、それでもなお納得いかないといった表情で、佐天は店主に向き直って謝罪を
「済まなかった」
「ふぇっ!?」
しようとした途端に、先に店主に謝られてしまう。
「ちょ、なんで、マスターが謝るんですか!? あたしがつまんない事で怒っただけなのに」
「いや。オマエの言うとおり、さっきのは流石にデリカシーに欠けてた。怒って当然だ」
もう一度謝罪し、頭を下げる店主。
「えっ、も、もう、いいですよ、頭上げて下さいよ! あたしのワガママが過ぎただけですから、マスターは全然悪くないですから!」
今度は逆に佐天が慌てふためき、必死に店主の非を否定する。
「そンでよ、その……詫びって訳じゃねェが。オマエさえよければ、その、先行上映会、だったか。俺が相手でも、問題ねェか?」
店主の提案に目を丸くする佐天。
しばらくの沈黙の後、彼女は静かに首を縦に振った。
「……ふゥ。断られたらどうしようかと思ったわ」
「……こ、断る訳、ないじゃないですか。そもそも、あたしが先に誘ったんだし」
安堵の息を漏らす店主に、いじいじと指をくねらせながら言葉を吐く佐天。
「あー、ちと、暑いな。冷房入れてくるわ」
そう言って店の奥に引っ込む店主。
一方の佐天は、
「あ、あたし、お手洗いに、行ってきますね」
そそくさとトイレに逃げ込む。
「……まったくもう。二人共素直じゃないですよね、垣根さん?」
一人残された初春は、そこにいる筈のない人物に話し掛ける。
『おや、お気付きでしたか』
その一言に、いつの間にやらカウンターに置かれていた、白いカブトムシのオブジェが反応する。
「風紀委員ですから」
『お見逸れしました』
垣根帝督、正確にはそのスレイブに当たるそれが、彼の代弁者となって語る。
『あの二人の関係も、これを機に一歩、せめて半歩でも前進すればよいのですが』
「まあ、私達が心配しなくても上手くいくでしょう。何しろ、あの二人の行く先は」
「『一方通行』」
「なんですから」
『そうですよね』
第七学区の北西端にある、小さな喫茶店。
喫茶『かたみち』、またのご来店を、心よりお待ちしています。
886 : VIPに... - 2013/08/14 00:40:32.90 GPUjLm5AO 48/48これ以上は話が思いつかないのでこれにてお開きなり
お楽しみいただけたならこれ幸い
では、お元気で

