女「へぇ~、小林製薬に勤めてらっしゃるんですか!」
男「うん、まあね」
女「すごい!」
男「いや、大したことないよ」
女「でもCMをバンバンやってるし……『あっ、小林製薬!』って」
男「CMやってる会社なんていくらでもあるじゃないか」
女「いえいえ、小林製薬はすごい会社ですって!」
男「ホメスギン」
女「えっ」
元スレ
女「へぇ~、小林製薬に勤めてらっしゃるなんてすごい!」男「ホメスギン」女「えっ」
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女「あの……?」
男「あ、俺、今なんていいました?」
女「聞き間違いじゃなければ、“ホメスギン”って……」
男「失礼、いつも商品名を考えてるから、たまにうちの商品名っぽい言葉を出してしまうんだ」
女「ああ、なるほど」
男「気を取り直して、食事にしよう」
女「そうですね」
店員「こちら、ワインでございます」
女「どうも~」
男「ブドウジール」
女「?」
店員「ステーキでございます」
女「わっ、おいしそ~!」
男「ヤケタニック」
女「!?」
女「あの……また、どことなく小林製薬っぽい言葉を……」
男「これは失礼! つい……! さ、食べよう!」
女「おいしかった~!」
男「うん、評判通りのレストランだったね」
女「お会計は……半々でいいですよね?」
男「ワラナイン」
女「へ?」
男「あ、またも失礼……割り勘じゃなくていいよ。ここは俺が払うから」
女「そんな……悪いですよ。割り勘にしま――」
男「ココオゴル」
女「!」ビクッ
女「じゃあ……お願いします」
女「ごちそうさまでしたー」
男「ええ、それじゃまた」
女「……」
女(友達に紹介されて会ってみたけど、真面目そうでいい人じゃない)
女(ちょっと変わったところもあったけど……)
女(連絡先も交換したし、あとで『また会えますか?』って送っておこうっと)
……
女「また会って下さるなんて、ありがとうございます」
男「いえ、こちらこそ誘ってもらえて嬉しいよ」
女「あらま。もしかして……私の容姿がタイプだったとか? ……なーんて」
男「ヤヤビジン」
女「ど、どうも」
アハハハ… ウフフフ…
女「私たち、気が合うわね! 今日一日ですっかり打ち解けちゃった!」
男「うん、話してて楽しいよ」
女「よかったら、これから私の家に来ない?」
女「実は私、料理には自信あって、手料理を食べてもらいたいし……」
男「ぜひ、寄らせてもらうよ!」
女「だけど、家についたとたん、狼になるなんてのはやめてね~」
男「ウルフノン」
女(小林製薬っぽくいわれるとかえって不安になる……)
女「まだ時間あるし、ちょっとゲームでもやりましょうか?」
男「いいね、やろう!」
女「じゃあ交代でテトリスでも……まず私からね!」
女「よーし……」カチカチッ
男「ヨコヨコ!」
女「そうね、このブロックは横にした方が……」カチカチッ
男「ヨコヨコ! ヨコヨコ!」
男「ヨコヨコ! ヨコヨコ! ヨコヨコ! ヨコヨコ! ヨコヨコ! ヨコヨコ!」
女「アドバイスうるさい!」
男「これは?」
女「この前買ったゲームで、まだプレイしてないの」
男「へぇ~、勇者が魔王を倒しに行くゲームか。ちょっとやってみせてよ」
女「うん」
女「えぇっと、始める前に勇者の名前を決めなきゃいけないみたい」
男「マオタオス」
女「えっ」
男「マオコロス」
女「ええっ」
男「マオシナス」
女「小林製薬っぽい勇者はちょっと……」
女「そろそろゲームはやめて、ニュースでも見ましょうか」
TV『海外で大規模な暴動が発生し……。警官隊が出動し市民らと衝突……』
女「うわぁ、銃声も聞こえる。これじゃ暴動というより戦争みたい」
男「タコク戦場中」
女「えっ」
女「やっぱり銃って怖いよね……日本に生まれてよかった」
男「ガンコワワ」
女「心なしか、だんだんと小林製薬の発生率が高くなってるような……」
男「気のせいだよ、気のせい」
女「さ、お待ちどうさま~! 手料理を作ってみたわ!」
女「肉じゃがに、味噌汁に、オムライス! ありきたりな料理だけど……」
男「おおっ、うまそうだね」
男「いただきまーす」パクッ
女「……どう?」
男「デリシャアス」
女「よかったー!」
男「今日はごちそうさま。本当においしかったよ」
女「いえいえ、あんなのでよければいつでもどうぞ」
男「星が……キレイだね」
女「ホント……」
男「だけど、君の方がもっとキレイだよ」
女「!」
女「やだ、そんな……くさいこといっちゃって」
男「え、消臭元いる?」
女「いらん」
男「俺と……オツキアインして下さい!」
女「……!」
女(ちょっと小林製薬が混ざったところが気になるけど……)
女「はいっ!」
男「やった!」
女「これからはいっぱいデートしようね!」
男「もちろん!」
……
女(晴れてあの人と付き合うことになったのに……)
女(このところ、全然デートしてくれなくなっちゃった)
女(この間も約束してたのに、ドタキャンしてきたし……)
女(まったくもう……なにやってんだろ……)
女(私のことなんて、どうでもよくなっちゃったのかな……?)
小林製薬にて――
上司「なんだ、このネーミングは! 全部ボツ!」バサッ
男「ううっ……」
上司「いいか、どんなに優れた商品が開発されても、ネーミングがダメならなんの意味もないんだ!」
上司「たとえば薬なら、いかにも効きそうな名前がついてこそ、最大の効力を発揮するのだ!」
上司「君のネーミングは全然ダメ! こんな名前では消費者は救われない!」
上司「ナットラン」
男「残業して、新商品の名前を考えます……」
男「あーあ、今夜もカエレナーイ」
男(……あ。彼女からLINEが……)
<今夜会えない?
<ごめん、今日も残業で会えないんだ
<だったらいつ会えるの?
<今は忙しいから約束できない
<なによそれ…
<スマナイン
<なにがスマナインよ!
男「しまった! ついクセで……」
……
男(やっと今日はデートだ!)
男(今日は大事な話があるっていってたけどなんだろう?)
女「……」
男「お待たせ! 大事な話ってなんだい?」
女「私たち、別れましょ」
男「えっ」
男「どうして……!」
女「理由はいわなくても分かるでしょ?」
女「さよなら」
男「ああっ……待っ……」
男(仕方ないか……約束してたデートをキャンセルしたの、一度や二度じゃないし……)
男「失恋の傷は、いくらキズアワワでも癒やせないか……」シュワワワ
??「……」スッ
男(誰だ?)
男「――ってあなたは!」
社長「……」
男「社長!? なぜ、あなたがここに……!」
社長「オイカケロン」
男「……!」
男「は、はいっ! 追いかけます!」
男「待ってくれーっ!」タタタッ
女「あ……」
男「頼む、もう一度やり直してくれ!」
女「ダメよ、いくら追いかけてきたって……」
男「これをおでこに貼ってくれ」ペタッ
女「これは……熱さまシート!」ヒンヤリ
女「ああっ……頭がどんどん冷えて……クールダウンしていく……!」
女「そうだわ、あなたにも事情はあったんだもの! 今回は許してあげる!」
女「私、やっぱりあなたが大好き!」
男「俺もだよ!」
男「俺はもう君を手放したくない……」
男「結婚しよう」
女「はいっ!」
女「私、あなたのために毎日お弁当作るわ!」
男「嬉しいよ……!」
…………
……
男「じゃ、行ってくるよ」
女「行ってらっしゃい!」
女「はい、お弁当」
男「おっ、ありが――」
男「……」
男「あのさ……このところ、弁当が手作りじゃなくなってきたよね」
男「昔はもっと手が込んでたのに、今はどれもこれもレトルト食品じゃないか」
女「だって私は小林製薬社員の妻よ? お弁当もそれらしくしなくっちゃ」
男「どういうこと?」
女「レトールットおくだけ♪」
男「……俺の心はブルーレット」
おわり