友「よっしゃ、カラオケ行こうぜ!」
男「悪い、俺これから用事あるんだ」
友「あっ、もしかしてデートか?」
男「……まぁな」
友「聞いた話じゃ、お前の彼女ってサバサバ系なんだって?」
男「サバサバ系、ねえ……」
男(ていうか、サバなんだけどね……)
元スレ
友「お前の彼女ってサバサバ系なんだって?」男(ていうかサバなんだけどね……)
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男「お待たせー!」
サバ「あっ、来た来た~」ビチビチッ
男「待った?」
サバ「ううん、全然!」
男「よかったぁ~。それじゃ映画でも観に行こうか」
サバ「あっ、だったらサバイバル映画にしよっ!」
男(さすがサバ……)
男「面白かったね」
サバ「うん、最高だったわ!」ビチビチッ
サバ「特に絶望的な状況でも最後まで諦めない主人公に感動しちゃった!」
男「分かる! やっぱ男ってのはああでなくっちゃね!」
サバ「うふふっ!」ビチッ
サバ「……う!」
サバ「ハァ、ハァ、ハァ……」
男「ど、どうしたの!?」
サバ「息が苦しくて……地上にいすぎたかしら……」
男(かなり長い映画だったからな……)
男「すぐ近くに海がある! 急いで向かおう!」
サバ「あ、ありがとう……」
― 海 ―
ザザーン…
男「さぁ、海だ!」
サバ「嬉しい~!」
男「ハハハ、まるで水を得た魚だね」
サバ「だってあたし、魚だもん!」
男「そっか!」
男「待て~!」バシャバシャ
サバ「こっちこっち~!」スイスイ
男「やっぱり速いなぁ……俺も水泳やってたのに、とても泳ぎじゃ追いつけないよ」
サバ「えへへっ」スイスイ
サメ「青春だねえ……」
友「彼女とはどうだ?」
男「ああ、うまくいってるよ」
友「いいなぁ~」
友「あ、そうだ! 今度お前の彼女に会わせてくれよ! 一度会ってみたかったんだ!」
男「ん~……いいけど」
サバ「こんにちは~!」ビチビチッ
友「こ、こんにちは」
友(サバサバ系じゃなくて、まさかサバだったとは……)
友「えぇ~と、年はいくつなの?」
サバ「17歳ですっ」ビチビチッ
友「へぇ~、若いねえ!」
男(本当はもっと上なのに……サバ読んでやがる)
ペチャクチャ… ペチャクチャ…
男「へぇ~、パソコン壊れちゃったのか」
友「ああ、買い換えたいけど、どれにしたらいいのか分からないんだよな」
サバ「あっ、だったらオススメのパソコンあるわよ!」
友「えっ、パソコン詳しいの?」
サバ「うん、あたしパソコン関係の仕事してるから!」
友「え、意外! そうなんだ!」
男「サーバー管理をやってるんだって」
男(サバだけに、ね……)
2月14日――
サバ「そろそろ冷蔵庫から出してもいいかな……」
ジャン!
サバ「できた!」ビチビチッ
サバ「あたし手作りのチョコレート! 喜んでもらえるといいなぁ……」
サバ「ねえ……」
男「ん?」
サバ「はいっ、バレンタインデーのプレゼント!」サッ
男「えっ、これはまさか……」
サバ「チョコレートよ!」ビチッ
男「……! 嬉しいよ、ありがとう!」
男「さっそく、いただきます!」パクッ
男「……」モグモグ
ギトギト… ヌメヌメ…
男「うん、脂がよくのってておいしい!」
サバ「よかったー!」
男「……ん?」シュゥゥゥゥ…
男「な、なんだ!? 体が急にスリムになって……!」シュゥゥゥ…
男「うおおおーっ! どうなってんだこれ!?」ガッシリ
サバ「きっとあたしの脂が作用したのよ!」
男「そうか! サバの脂には中性脂肪を減らすDHAやEPAが豊富だっていうもんね!」
男「おかげでダイエットできたよ! ありがとう!」
サバ(やだ……ますますステキになっちゃった……)ピチッ
それからおよそ三週間後――
男(明日はいよいよ“あの日”だ……)
男(明日のために用意したプレゼントを、彼女に渡そう!)
男(――ん?)
TV『今日の≪おいしく健康≫ではサバを特集します』
TV『サバはとっても栄養が豊富なんです!』
TV『しかし、いたみやすいという特徴もあるので、サバの水煮缶で食べるのがオススメです』
TV『なるほどぉ~』
男「……」
男(この番組って視聴率高いし、影響力すごいんだよな……)
男(なんだか嫌な予感がする……)
次の日――
男「やぁ!」
サバ「急に呼び出してどうしたの?」
男「実は……渡したいものがあるんだ」
サバ(渡したいもの?)
サバ(ホワイトデーにはまだ早いし……なんだろ?)
黒服A「動くな!」サッ
男「!」
サバ「!」
男「なんだお前……!?」
黒服B「おっと、こっちにもいるんだぜ!」ガッ
男「ぐわっ……!」ドサッ
サバ「何するのよ!」ビチビチッ
黒服A「ボスが昨日の≪おいしく健康≫を見て、サバの水煮缶を欲しがってるのだがどこも売り切れなのだ」
黒服A「女……お前にはボスのために水煮缶になってもらうぞ」
黒服A「お前にはこっちに来てもらおうか!」ガシッ
黒服B「大人しくしやがれ!」ガシッ
サバ「いや……はなして! はなしてぇぇぇぇぇ!」ビチビチビチッ
男「待て……待てーっ!!!」
男(彼女が連れ去られてしまった……)
男「くそう……どうすればいいんだ……」
サメ「取り戻すしかないだろうな」
男「サメさん!?」
サメ「奴らの匂いは覚えた……オレが連れていってやろう」
男「あ、ありがとう……!」
サメ「なぁに、オレもお前らの青春する姿を見て、ずいぶん癒やされた……その礼さ」
ザバババババッ
サメ「着いたぞ。ここが奴らのいる屋敷だ」
サメ「オレはあまり陸では動けんから手伝うことはできん……許せ」
男「ここまで来れば大丈夫!」
男「俺が必ず彼女を取り戻してみせる!」
サメ「フッ、期待しているぞ」
― 屋敷内 ―
黒服A「き、貴様は!? もう追いついてきたのか……」
男「彼女を返せ!」
黒服A「そういうわけにはいかんな……」
黒服A「我らのボスは健康食品の類が大好きでな。あの女はサバの水煮缶となるのだ!」
男「……だったら戦うまでだ!」
黒服A「ちなみに貴様、身長はいくつだ?」
男「170cmだ!」
黒服A(なるほど……ならばこの間合いで戦えば相手の攻撃は届かない!)ササッ
男「でりゃっ!」
バキィッ!
黒服A「がふっ! ……な、なぜ!? この距離、身長170cmの手足では届かないはず……!」
男「実際には173cmだ」
黒服A「油断させるためにサバを読んでいたということか……」ガクッ
黒服B「てめえはさっきの!」
男「さっきはよくもやってくれたな……今度はこっちの番だ!」
黒服B「ふん、また同じ目にあわせてやらぁっ!」
男「むんっ!」ガシッ
黒服B「ぐえっ!?」
黒服B(く、首を絞められ……!)
男「これが……“絞めサバ”だ」
黒服B「つ、つええ……」ガクッ
男「お前がボスか!」
ボス「ほう、よくここまで来れたな……褒めてやろう」
サバ「来てくれたのね!」ビチビチッ
男「彼女を返せ!」
ボス「いいだろう……返してやる」
ボス「ただし……私を倒せたらなァ!!!」
ボス「ゆくぞ!」シュバッ
ガッ! バキッ! ドカッ!
男「は、速い……!」
ボス「フフフ、日頃から健康食品を食べまくっている私に敵はない!」
ボス「死ねぇい!」
バキィッ!!!
男「ぐは……っ!」
サバ「いやぁぁぁっ! やめてぇぇぇっ!」ビチビチッビチビチッ
男「ま、まだだ……!」ヨロッ…
ボス「まだ立てるのか……!」
男「どんな絶望的な状況でも、俺は諦めない……映画の主人公のように!」
ボス「主人公だと? 笑わせるな! 主役はこの私だ! お前はこれから死ぬのだ!」
男「……」ヨロヨロ… ガシッ
ボス「?」
ボス「なに抱きついてきているんだ。とっととはなさんか!」
男「抱きついたんじゃあない……これは――」
男「必殺の“サバ折り”だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
バキボキベキバキボキゴキッ
ボス「ぐぎゃぁぁぁぁぁっ!!!」
ドサッ…
男「健康に自信があるらしいが、カルシウム不足だったな……」
サバ「助けてくれてありがとう!」ビチビチッ
男「無事でよかった……」
男「ところで、はいこれ」スッ…
サバ「!」
サバ「これは……プランクトンで作った結婚指輪!?」
男「ああ、だって今日は3月8日……“サバの日”だろう?」
サバ「あっ……!」キュンッ
男「結婚しよう」
サバ「はい……!」
サメ「青春だねえ……」
こうして二人は結婚した――
それからおよそ10年後……
娘「ただいまー!」ドタバタ
男「お帰り」
サバ「お帰りなさい」
娘「今日も友達とたっぷり遊んできちゃった!」
男「……」
男「お前は俺たちの子供だけど……半魚人ってことでイジメられたりしてないか?」
娘「ん~」
娘「そりゃあ、時々からかわれることはあるけど……」
娘「全然気にしないしー! そんな奴はウロコでゴリゴリしてやるしー!」
娘「それに水泳じゃ、あたしに勝てる奴一人もいないんだから!」
娘「むしろ半魚人って生まれてよかったーって思ってるわ!」
男「我が娘ながら、サバサバしてるなぁ……頼もしい」
サバ「いったい誰に似たのかしらねえ……」
おわり