キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」九冊目【1】
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」九冊目【2】

605 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/01 00:27:23 DD1 222/411

【九冊目、これまでのあらすじ】

・・・

食わず女房「逃げないでくださいよ桃太郎さーん。アタシお腹が空きすぎてもう我慢できませんよぉ…それとも後頭部に大口開けてる女はお嫌いですか?やっぱり気味悪いですか?」グオオォォ

桃太郎「うわああぁぁ!!別に外見的な理由で逃げてんじゃないから!お主が拙者を食べようとするから逃げてるんだってぇぇ!」タッタッタッ

食わず女房「そんなに怖がることないですよぉ、キチンといただきます言って感謝して食べますし…内臓も骨も残さず食べますから。それとも丸呑みはお嫌いですか?それなら油をたてて天ぷらにします、それならいいですか?」ドタドタドタ

桃太郎「調理方法とかどうだっていいんだよぉぉ!ライオン!舌切り殿!どうして相手が鬼女だって教えてくんなかったんだよぉぉ!このままじゃ美味しく頂かれるから助けてええぇぇ!」

舌切り雀「うるせぇ!オメェが【食わず女房】の世界に来るって決めたんだろうが!一人で何とかしろ!…おいライオン、あっし等はもっと離れとくぞ、まだ死にたくねぇ」

ライオン「わ、わかったよぉ!ご、ごめんね桃太郎さん」スタタタ

桃太郎「あからさまに距離取るなよおおお!鬼だからって女の人は斬れないしさぁぁ!な、なにかちょこっとだけで良いからこの人の弱点とか教えてぇぇ!」

舌切り雀「おーい、食わず女房!そこの桃がお前の苦手なもん教えてくれってよ」

食わず女房「苦手なものはありますけど…それが原因で前の旦那さんを食べ損ねちゃったんでナイショです。でも好きな食べ物は人間ですよ、特に若い男性の生肉が一番好きです。ですから桃太郎さん、もう諦めましょうよー」ガアアァァ

桃太郎「諦めないに決まってんだろおおぉぉ!で、でもちょっと希望見えてきたぞ…何かは解らないけど弱点はあるってことでしょ!?考えろ拙者!考えろ拙者!」

舌切り雀「…さぁて、おいライオン。あいつ待ってる間暇だからこれまでのあらすじやるぞ」

ライオン「えっ」

舌切り雀「もう九冊目始まってから随分経つだろ、内容忘れてる奴もいるかも知れねぇからここらであらすじしといた方がいいだろ」

ライオン「う、うん…その通りなんだけど…こういうのってキモオタさんとティンクちゃんの役目じゃあ…」

舌切り雀「いいんだよこんなもん暇な奴がやりゃあ。ウダウダ言ってねぇでさっさとやっちまうぞ!」

606 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/01 00:29:39 DD1 223/411

おとぎ話の世界を消滅させている黒幕・アリスに対抗するべく旅を続けていたキモオタ達
そんな彼らの元に飛び込んできたのはシンデレラが行方不明になったという知らせだった
どうやら彼女はアリスにさらわれてしまったのだという情報を得たキモオタ達はシンデレラ奪還を計画する
しかし、奪還が目的とはいえ【不思議の国のアリス】の世界に乗り込む以上、決戦は避けられない…作戦の決行を三日後に控え、キモオタと仲間達はシンデレラを救う力を手にするのために別々のおとぎ話の世界へ向かう

キモオタとティンカーベルは【雪の女王】の世界で女王を相手に戦闘の訓練を受け
裸王、ヘンゼルとグレーテル、司書、ドロシーは【裸の王様】の世界で各々に出来ることをより特化させるために動き
赤ずきん赤鬼、人魚姫の三人は【ライオンとねずみ】の世界で仲間との連携を重視した特訓を重ね
ラプンツェルは【アラビアンナイト】の世界で戦闘訓練をしながら勉強に打ち込み
桃太郎とライオンは様々な日ノ本のおとぎ話を巡り精神修行を目的とした旅を…それぞれ続けていた。

最終決戦を前に研鑽を重ねるキモオタとおとぎ話の主人公達
だがアリスも自らの望みを果たすため着実に歩みを進めていたのだった…

舌切り雀「って感じかねぇ…他の連中も苦労してんだな。【雪女】の姉ちゃんも【聞き耳頭巾】のじーさんも一筋縄じゃいかねぇ性格してっからなぁ…桃がどう切り抜けるか楽しみだぜ、ハハッ」

ライオン「桃太郎さん…無事にアリスちゃんと戦うことが出来るかなぁ…」

食わず女房「桃太郎さん、お肉に付けて食べるならお醤油がいいですか?お塩がいいですか?あたしは断然お塩派です、素材の味を楽しみたいのでー」

桃太郎「ぼかしちゃいるけど拙者の味付けをどうするかって話だよねそれ!?そんな事本人に聞いちゃうの!?」

食わず女房「だってどうせ食べるなら美味しく食べたいじゃないですかー。桃太郎さんは桃から生まれたんですしきっとほんのり甘いお肉に違いないです…想像したらよだれ出ちゃいますよ~」グゥー

桃太郎「ちょ、食欲増さなくて良いからぁぁ!とにかく食わず女房殿の弱点を見つけないとこのままじゃマジで食べられる!うわああぁぁ!嫌だああああぁぁぁ!マジで勘弁してよもおおぉぉ!!」

・・・

次レスから本編です

607 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/01 00:31:39 DD1 224/411

キモオタ達の作戦決行まであと1日

雪の女王の世界 女王の宮殿前 氷のドーム

キモオタ「うおおぉぉ!悪鬼をも断ち切るこの刃…受けてみるがよいですぞぉぉ!」ビュバッ

雪の女王「ふふっ、随分と思い切った攻撃が出来るようになったな。でもまだまだ…戸惑いが残ってる、踏み込みが甘いよキモオタ」スッ

ティンカーベル「ありゃ、避けられちゃった…でもドンマイドンマイ!今のはいい感じだったよキモオタ!次ガンバロ、次!」

キモオタ「ガッテン承知www引き続き作戦は『ガンガンいこうぜ』ですぞwwwいい感じの援護射撃頼むでござるwww」コポォ

ティンカーベル「よーし!わかったよ!いつでもいけるからね!」フワフワ

雪の女王「決戦を明日に控え随分と燃えているようだな。だが熱くなりすぎて冷静さを失ってはいけない、どれ私が少し頭を冷やしてやろう」ススッ

ティンカーベル「キモオタ!女王が距離をとったよ!多分つららを飛ばしてくるか吹雪ぶわぁーっ!ってしてくるよ!警戒してよね!」

キモオタ「わかっていますぞwww我々、何度それの餌食になった事かwww」コポォ

雪の女王「ふふっ、何度も戦ったものな。私の攻撃パターンはお見通しというわけか。だが予測できていても対応しきれなければ意味はないぞ?」パキパキパキ…

ティンカーベル「あっ、これ、つらら飛ばす方だ!キモオタ!どうする?このまま避けて攻める感じ?それともサイリウムで塔を出して防御する?」

キモオタ「ここは強気で攻撃続行ですぞ!我輩はあのつららを迎撃するでござるからお主は隙を見て女王殿へ攻撃するチャンスを見極めてくだされ!」

ティンカーベル「わかった!まかせて!バッチリ隙をとらえるからね!」

雪の女王「ここで防御に徹しては私のペースに飲まれてしまうからな、悪くない判断だ。だがこの無数の氷柱をどう捌くつもりだい?」ヒュバババ

キモオタ「とび道具にはとび道具で応戦するのが定石wwwここはクールロリの力を借りますぞwww」フリフリ

おはなしサイリウム「コード認識完了『赤ずきん』武器モード『猟銃』への形状変化を実行」

608 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/01 00:34:53 DD1 225/411


キモオタ「ドゥフフwww赤ずきん殿の射撃テクをもってすればつららなどただの冷たい的ですぞwww」ズダーンズダーンズダーン

パリンパリンパリーン!

雪の女王「大したものだな、私が生成した氷柱がこうも容易く砕けるとは…流石は魔女が生み出した魔法の猟銃といったところか」

キモオタ「ドゥフフwwwこれで迎撃&障害物の除去に成功ですなwwwそして休む暇を与えずこのまま女王殿にダイレクトアタックですぞ!」ガチャッ

ズダーンズダーン

雪の女王「息をつかせぬ攻撃で相手の攻め手を封じる…初日と比べれば随分成長したな。次の一手に繋がる行動がとれている。だが私の氷結は攻め専用ではないぞ?」

パキパキパキ カキンカキーン

キモオタ「ぬぅ、氷の盾で…!女王殿の能力は今更ながらチート過ぎますぞ!万能過ぎますぞ!?」

雪の女王「ふふっ、君のサイリウムと同じで攻守自在なのさ。強度を上げれば盾にだってなる、その分投擲には向かない氷塊になってしまうがな」

ティンカーベル(あの能力なんでもでき過ぎてずるいよ!でもキモオタに気を取られてる隙に後ろから攻撃すれば勝てるよね!よーし…)ヒュッ

雪の女王「それとティンカーベル、奇襲はバレないようにするものだよ」パキパキパキ

ティンカーベル「わーっ!なんで後ろからだったのに気づいちゃうの!?っていうか羽根が凍り付いて飛んでられないy」ビターン

キモオタ「ティンカーベル殿ー!おもいきり顔面打ったでござるが大丈夫ですかな!?」

雪の女王「キモオタ、君も仲間に気を取られていると…手詰まりになるぞ?」パキパキパキ

キモオタ「ブヒッ!?両足が氷漬けに!?ぐぬぬ…油断したでござる…!」ビターン

雪の女王「途中まではいい調子だったんだがな…私の能力への理解が不足している。まずは氷結能力を封じるか弱体化させる事が優先だ、そうしなければ勝負にならないぞ」

キモオタ「それは解っているつもりでござるが…女王殿の氷結能力はノーモーションかつ射程も広いしで隙がなさ過ぎますぞ!?封じるなど難易度ベリーハードでござるよ…」

雪の女王「確かに氷結能力は強力だが私自身は無敵じゃない、この能力を満足に使えなければただの低体温の女だ。不死の体を持っているわけでもなし、ナイフで胸を突けば死ぬぞ?」

ティンカーベル「能力の無力化とか言うのは簡単だけど実際にやるとなると簡単にはいかないじゃん!」プンス

雪の女王「だがアリスも私と同じだぞ?魔法や魔法具で武装していてもアリス自身はただの女の子だ、それらを無効化あるいは弱体化すれば相手をするのは容易いさ」

キモオタ「確かにそうでござるが…やはり言うは易し行うは難しでござるなぁ…」

609 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/01 00:37:50 DD1 226/411

雪の女王「まぁ容易くはないだろうが…君もティンクも確実に成長しているぞ。無茶なごり押しも減ったし正確な判断もできるようになった、そこは誇って良い」

キモオタ「ドゥフフwww誉められましたなティンカーベル殿www悪い気はしないwww」コポォ

ティンカーベル「まぁね!わたしはちょっとブランクあっただけでフック率いる海賊と戦ったりしてたし!まぁ当然ですよ!」フンスッ

雪の女王「ふふっ、そのポジティブさは君達の一番の武器だな。さて…もうそろそろ良い時間だ、今日の戦闘訓練はここまでにして宮殿に戻ろうか」

ティンカーベル「もうそんな時間?でも私はまだまだいけるよ!さっきももうちょっとでいけそうだったし!」

雪の女王「やる気なのは良いことだが君達がすべき事は他にもあるだろう?アリスはまだ手の内をすべて晒していない、どのような魔法具を前にしても問題ないようにしなければな」

キモオタ「そのためにはおとぎ話の世界にどのような魔法具が存在しているのか把握しておかなければなりませんからなwww今日も今日とて書庫でおとぎ話を読みまくりますぞwww」

ギィィッ バタンッ

カイ「なんだ、丁度一段落ついてるみたいだな。キモオタ、ティンカーベル、晩飯できてるから終わったらダイニングに来い」

キモオタ「うっひょーwww飯でござるwww飯でござるwwwこれを楽しみに一日頑張ってるでござるからなwww」コポォ

ティンカーベル「もーっ!意地汚いよ!私達はお世話になってるんだからもっと謙虚にしてなきゃ!でも私もお腹空いたからすんごい食べるよ!超食べるよ!」

雪の女王「ふふっ、彼等は食事のことになると途端に元気になるな。さて、私も夕飯を頂くとしようか」クスクス

カイ「……女王、悪いがお前は応接間へ向かってくれるか。待たせてる連中が居るんだ」

雪の女王「あぁ、それは構わないが…客人かい?」

カイ「いや…白鳥と親指姫だ。詳しくは聞いていないが親指姫の奴珍しく深刻な顔してたぜ、何があったか知らないが…行って話を聞いてやってくれ」

雪の女王「…わかった。キモオタとティンクは君に任せるよ、疲れてるだろうから労ってやってくれ。任せたよ」スタスタ

610 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/01 00:41:16 DD1 227/411

雪の女王の宮殿 応接間

雪の女王(普段は賑やかな彼等が深刻そうにしているというのは確かに珍しい。何か余程の問題があったと考えるべきか…とにかく話を聞かなければいけないな)

ガチャッ

雪の女王「二人とも待たせてしまってすまない。別件で手を取られていてね…それよりどうしたんだい?こんな風に改まって…いつもは私の所に直接報告に来るというのに」

親指姫「女王様…!」バッ

雪の女王「親指姫、何かあったのかい?珍しく君の表情に余裕がない、いつもはもっと毅然としているだろう?」

親指姫「…申し訳ございません!この親指姫…女王様の想いを守ることが出来ませんでした…!こんなちっぽけな私を信頼してくださったのに応えることが出来なかった…!どうかこの首を切り落として頂きたい…!」

雪の女王「落ち着くんだ親指姫。そんな事できるわけがないだろう」

親指姫「いいえ、私に生きる資格はないんです。それだけではありません、私は…私は、戦友を守ることが…彼の世界を救ってやることが出来なかった…!」クッ

白鳥「お前は悪くないよ…だからそんなに自分を責めるなよ…。女王様だって困惑してらっしゃるだろ」

親指姫「……すまない。だが私は…とても平静を保っていられそうもない」

白鳥「女王様には僕が説明するから、だから…少し落ち着こう、なっ?」

親指姫「……わかった」

雪の女王「…彼女がこんなに取り乱すなんて余程の事だ、何か大きな問題があったんだな?」

白鳥「はい…女王様もご存じの通り、僕達は様々なおとぎ話の世界を巡ってアリスの件の注意喚起、それと警備を続けていました。それで…任務も一段落したんで一度この宮殿に帰ろうって話になったんですが」

白鳥「親指姫がその前に寄って欲しい世界があると言うんで、とある世界に寄り道したんです。そこは以前に訪れた事がある世界で…そこの主人公と親指姫はその時すっかり意気投合した親友同士だったんです」

白鳥「女王様もよくご存じの【しっかり者のスズの兵隊】のおとぎ話の世界…そしてその主人公、スズの兵隊です」

612 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/01 00:47:00 DD1 228/411

雪の女王「あぁ…直接会ったことはないけれど、そのおとぎ話はよく知っているよ」

親指姫「スズの兵隊は…あいつは玩具の兵隊だったが、芯のしっかりした男だった…。兵隊だということに誇りを持った、本物の戦士だった」

白鳥「…彼は背丈も親指姫と近いし、数々に困難に翻弄されるという物語にも共通点がある。だからこいつは…スズの兵隊のことを信頼していたし戦友として認めていたんです」

雪の女王「だがその口振りだと、彼は…いや、【しっかり者のスズの兵隊】のおとぎ話は…」

白鳥「……僕達がその世界にたどり着いた時には、もう街は焼け野原でした。状況を察した僕達はすぐにスズの兵隊が居た家を訪ねましたが、もう……」

雪の女王「……そうか」

親指姫「私達がたどり着いた頃にはそのスズ製の体はおおかた溶け出して私の声も聞こえなかったみたいでした、けど…」

親指姫「あいつの傍らには踊り子の人形が寄り添っていました。あいつは…戦士として、守るべきものを守って…死にました。でも、私がもう一歩早ければ…あいつは死なずに済んだかも知れなかった…!」

白鳥「親指姫…」

雪の女王「親指姫、あまり気に病まない方がいい。残念だがどうにもならないという事は…あるものだよ」

親指姫「しかし…あの世界は、【しっかり者のスズの兵隊】の世界は女王様にとても大切な世界のはずです!それを知っていながら私はあの世界を守ることが出来なかったんです!悔やんでも…悔やみきれません、そしてアリスが…憎い…!」

雪の女王「確かにあの世界が消滅したという事実は衝撃的だ。だが…それは君のせいじゃない。なってしまったものは…どうにもならない、受け入れるしかないよ」

親指姫「女王様がお優しい方だという事はよく知っています…ですがあいつの世界を創ったのは私達の作者と同じハンス・クリスチャン・アンデルセンなんですよ!?アリスへ怒りを感じないのですか!?悔しくないのですか!?」

親指姫「女王様は以前教えてくださったじゃないですか!アンデルセンが…アナスンが記したおとぎ話は一つとして失いたくないと!」

613 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/01 00:52:37 DD1 229/411

雪の女王「確かにそう言ったよ。今もその思いは変わりない」

親指姫「それなら一つ提案があります女王様……私はアリスが許せません。今すぐにでも協力者を率いて強襲をかけたいと考えています。スズの兵隊に弔いの為にも」

白鳥「ちょっと待ってって!お前はなにを言い出すんだよ!気が動転してるのはわかるけどそんな事できるはずないじゃないか!」

親指姫「何故だ!?これ以上奴を野放しにすれば他のおとぎ話だって次々消えていく!アナスンのおとぎ話の中には結末を迎えていないものだってあるんだ、それらが餌食になるかも知れないんだぞ!」

白鳥「容易くないからキモオタ君達は必死に努力してるんだろ!僕達が私怨で勝手な事をしてアリスを倒すチャンスを逃しでもしたらどうするんだ!?」

親指姫「だったらどうしろって言うんだ!?このまま私や女王様の大切なものが消えていくのを指を咥えて見ていろって言うのか!?」

白鳥「そうじゃない!慎重になれって言ってるんだ!これは僕達だけの問題じゃないんだぞ!」

親指姫「お前じゃあ話にならない…!女王様はアリス襲撃に賛成してくださいますよね?あいつの命を…アナスンの世界を奪われた無念は晴らすべきです!」

雪の女王「悪いが…君の提案は飲めない。今、アリスの世界を襲撃する事はできない」

親指姫「何故ですか!?アリスはアナスンの生み出したおとぎ話を消した悪人です、殺さない理由がありますか!?それともあなたがアナスンのおとぎ話が大切だというのはその程度のものなんですか!?今すぐにアリスを殺s…痛っ!何をする無礼者!」ガッ

白鳥「無礼者はお前だ!お前はモグラやコガネムシの自分勝手な行動に振り回されて辛い思いをしたんだろ?今度はお前が他の奴らを振り回すのかよ!?巻き込まれるのは嫌だけど自分が巻き込むには構わないって!?」

親指姫「……いや、悪かった頭に血が上りすぎていた。女王様も…申し訳ありません。女王様だって辛いというのに…やり場のない怒りに思わず当たり散らしてしまって…」

雪の女王「いいんだ、気持ちは分かるよ。私だって内心…アリスを全く憎んでいないわけではないしな…だからこそ慎重に行動すべきだよ、親指姫」

614 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/01 00:55:40 DD1 230/411

雪の女王「カイから聞いたかも知れないが…今、キモオタ達はアリスの世界へ向かうための特訓の最中だ、明日にはその作戦が実行される。今私たちが動くのは得策じゃあないんだ」

親指姫「はい、それは…先程聞きました。でも、あいつら…大丈夫なのですか?」

雪の女王「確かに未熟な部分はあるが…全く見込みがなければ特訓の相手をしたりしないさ。少なくとも私はキモオタ達ならアリスを止められるかも知れないと…見込みがあると考えている」

親指姫「私には気持ちの悪い男と不愉快な羽虫にしか見えませんが…」

白鳥「まぁその点はお前も不愉快なこびとだけd痛いっ!」ズブッ

親指姫「随分とあの男のことを評価しているのですね、女王様は」

雪の女王「まぁ確かに気持ちは悪いが…それだけの男ではないよ。なにしろヘンゼルが行動を共にするくらいだからな。目に見えない魅力というのはあると思うぞ」フフッ

白鳥「とはいえ目に見える魅力が一番重要ですよね、この美しい僕のようn痛っ!」ブスリ

親指姫「確かにあの男の想いには共感すべき所もありますが…」

雪の女王「君ももう少し他人と打ち解けるようにすればもっと周囲の人間の魅力に気づけると思うが…あぁ、今頃彼らは食事中だ、是非一緒に食卓を囲むと良い。二人とも空腹だろう?」

親指姫「それは…いささか空腹でもありますが…私はあの羽虫があまり好きではないので…お互い嫌な気分になるだけでは」

白鳥「ンナハハ!ほらほら、女王様がそうやって提案してくださったんだから僕達も夕飯をご馳走になろうじゃないか!」グイッ

親指姫「おい、引っ張るのはよせ!私はまだ行くと決めたわけでは…」

白鳥「なーに言ってんだよ!それじゃあ女王様、急にお邪魔してすんませんでした!僕達しばらくここに滞在するんでよろしくお願いします、ンナハハハ!」スワーン

雪の女王「あぁ、ゆっくりしていくと良い。それと…すまないが私は夕飯はいらないとカイに伝えておいてくれるか?」フフッ

白鳥「わっかりましたー!この純白の翼にかけて必ず伝えまs痛い!やめろ!」ブスリ

ペタペタペタ

雪の女王「フフッ、賑やかな方が彼等らしいな。……ふぅ」

615 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/01 00:58:31 DD1 231/411


白鳥「ンナハハハ!さっき厨房から香っていたのはまさしくシチューの香り!いやはや、楽しみだ!」スワーン

親指姫「お前は強引すぎるぞ。目の前で別のおとぎ話が消えたっていうのに…薄情な奴め」

白鳥「ずいぶんな言い方だなぁ、僕だって辛いに決まってるだろ。それに女王様…きっと一人になりたいだろうしさ。そういうこと考えて僕は動いてるんだよ、気配りできる白鳥だよ僕は」

親指姫「どうだか…。だがまぁ…先程、私が取り乱した時に正気に戻してくれた事には礼を言おう。悪かった」

白鳥「どういたしまして。まぁ気持ちは分かるけど女王様だってあれ普通にしてたけどきっと相当つらいと思うよ?」

親指姫「まぁそうだろうな…酷いことを口にしてしまったな。反省する」

白鳥「まったくだよ。女王様がアナスンの事特別大事に想ってることは知ってるだろ?それなのにあんな言い方はないよ」

親指姫「うるさいな…反省すると言ったろう。まぁ…何者かがおとぎ話の世界を荒らしていると知って、女王がまず私やお前に協力を仰いだのも同じ作者だからだろうしな…」

白鳥「ハンス・クリスチャン・アンデルセン…彼がどういった人物かは僕はあんまり知らないけど、女王にとっては自分の生みの親って以上に大切なんだね」

親指姫「詳しく聞いたことは無いからな…だが女王様の大切なものを守るのも私達の勤めだ、それが形あるものだろうと形ないものだろうとな」

白鳥「そのつもりだよ。まぁ女王様が声をかけてくれたおかげでこの美しい翼で様々な世界を飛び回れるわけだし」

親指姫「あぁ、私も女王様のおかげで小さくても戦えることを知った。せめてもの礼にすらならないが…恩は返したいところだ」

白鳥「そうだね、その一環としてティンクちゃんとは仲良くしてくれよ?仲違いしたら女王様悲しむだろうし」

親指姫「それはあの羽虫次第だな」

白鳥「もうその呼び名の時点で望み薄なんだよなぁ…まぁなんとかフォローするから挑発だけはやめてよ」

616 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/01 01:03:42 DD1 232/411


雪の女王の宮殿 女王の自室

雪の女王「……遂に消えてしまったか、いつかはこの日が来るかも知れないと思っていたが。……思っていたよりもショックが大きいな」

雪の女王「……」

雪の女王「私のワガママでしかないが…アナスンの生み出したおとぎ話は一つとして消滅させたくなかった。今更…そんな事を言ってもどうにもならないが…」

雪の女王(もうあれから…あの幸せな日々からどれくらいの月日が流れただろうか…)

雪の女王(あれは…お千代がこの宮殿で暮らすようになる前、まだヘンゼルもグレーテルも…カイもいない。ずっとずっと昔……)

雪の女王(現実世界の時の流れでは…もう百五十年程前か…)

雪の女王(何もかもが懐かしいな、現実世界で出会ったアナスンの事…ヤーコプ、ヴィルヘルム…もう皆、ずっと昔に亡くなってしまった。おとぎ話だけを後世に残して…)

雪の女王「……ふぅ、駄目だな。私が辛気くさい顔をしていると皆を不安にさせる。ショックな出来事ではあったが…気持ちを入れ替えよう」

雪の女王「そうだな…久々にあの本を読むとしよう。今なら書庫にカイが来ることもないだろうしな…。あの本を開いている間は君との思い出に浸れるからな、アナスン…」

スタスタ

雪の女王(アナスンことハンス・クリスチャン・アンデルセン……私の【雪の女王】を始めとする数々のおとぎ話を生み出した、世界的に有名な童話作家)

雪の女王(彼はおとぎ話を通して様々なことを世界中の子供達に伝えようとしていた。変わり者ではあったけれど貧しい子供達を救うことをいつも考えていて…優しくて暖かくて誠実で、そのくせおとぎ話に関しては考えを譲ることを知らなくて…)



雪の女王(そして…私が生涯で唯一愛した男だ)

626 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/08 00:36:40 9xL 233/411

雪の女王の世界 女王の宮殿 ダイニング

キモオタ「くぅ~www運動後の飯はどうしてこんなにうまいのかwww我輩、今なら無限に食えそうですぞwww」ガツガツバクバク

ティンカーベル「たくさん特訓したもんね!明日もいっぱい頑張る為にいっぱい食べちゃおう!」モグモグムシャムシャ

カイ「お前等少し落ち着いて食えよ。そんな急いで食わなくても誰も取らないだろ…どれだけ腹減ってたんだよ」

キモオタ「いやいやwwwカイ殿の料理の腕前が良い故に我々も手が止まらないのでござるよwww」コポォ

ティンカーベル「私達、現実世界じゃいっつも出前か外食かコンビニ弁当だからねー…私達のために美味しいご飯作ってくれてありがとね、カイ!」

カイ「礼なんて要らねぇよ。こっちも食料庫の整理が出来て助かってるからな、その干し肉とか結構ギリギリだったんだぜ」

キモオタ「ちょwww我々は残り物処理班ですかなwwwしかしカイ殿と女王殿の二人暮らしならば食料そんなに備蓄する必要も無いのではwww」バクバク

カイ「女王が多めに買い込むんだよ、いつヘンゼル達が帰ってきても良いようにな。常に五人が十分に食える量は備蓄するようにしてる」

ティンカーベル「もしかして三人とも食べ物が無かったせいで前の家族失っちゃってるからかな?きっと女王はせめて今はおなかいっぱい食べさせてあげようって思ってるんだねぇ」ムシャムシャ

キモオタ「実に優しい方ですなwwwでは我々は調理してくださったカイ殿に敬意を表してこの料理を食い尽くしますぞwww」バクバク

ティンカーベル「そうだね!出された料理は全部食べるのがマナーだよね!カイも早く食べなきゃ私達が全部食べちゃうよー?」ムシャムシャ

カイ「俺はもういい。でも女王達の分だけは適当に残しとけよ」

ティンカーベル「あはは、言われなくたって女王の分まで食べたりしないよー!私達こう見えて遠慮してるし!」ムシャムシャ

キモオタ「そうですぞwww他人の飯を奪うほど落ちぶれてはいませんからなwww」コポォ

カイ「嘘つけ。あわよくば食い尽くそうって勢いだっただろうが」

627 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/08 00:37:52 9xL 234/411


親指姫「女王様に世話になっている身でよくもまぁガツガツと無遠慮に…まるで家畜だなお前達は」

ティンカーベル「出たな!誰が家畜だおらぁー!キモオタはそうかも知れないけど私は違うし!失礼なこと言うなバーカ!」ムシャムシャ

キモオタ「ちょwwwお主も大概失礼ですぞwww我輩はギリギリ家畜ではないwww」コポォ

白鳥「親指姫!なんで開口一番暴言吐くんだよ!?仲良くしようって話だっただろ!」

親指姫「こいつ等の浅ましい姿を見て気が変わった。それに私は思った事を口にしただけだ、私に非は一切無い」プイッ

ティンカーベル「言ってろバーカ!それより白鳥もこっちで一緒に食べようよ、そんなチビッコの騎士ごっこに付き合う事ないよ!」

親指姫「聞き捨てならないな、私はお前達と違って遊びでやっているわけではない。己を律し、常に騎士道に恥じぬ行動を心掛けているのだ…ごっこ等と言われる謂われはない」

ティンカーベル「へーそっかそっかすごいねふーん。っていうか……騎士道(笑)」プスプス

親指姫「何だその顔は…言いたいことがあるのならハッキリと言え」イラァ

ティンカーベル「べっつにー?……ププッ、騎士道(笑)」

親指姫「羽虫の分際で私を…騎士を愚弄するか!切り捨ててくれる!」チャキッ

ティンカーベル「はぁー?私は別に何も言ってませんー!言いがかりはやめてくださいー!そーやってすぐ暴力に頼るのが騎士道(笑)なんですかぁー?」

親指姫「他人を小馬鹿にすることだけは一人前のようだな…軽口叩いた事を後悔させてやる!剣を抜け羽虫、相手になってやる!」スタッ

628 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/08 00:39:27 9xL 235/411

ティンカーベル「ふんっ!そっちがその気ならこっちだって本気だからね!とびきり痛い奴…食らえー!」ギギッ ビュンッ

親指姫「くっ…空中からとび道具で攻撃とは卑怯な!羽虫!降りてきて正々堂々と戦え!」

ティンカーベル「これが私の正々堂々ですぅー!ふははは!制空権はこちらにありー!」ビュンビュンビュン

親指姫「クソっ…!あまり調子に乗るなよ、羽虫など撃ち落としてやる!」ヒュッ

ティンカーベル「わっ!こいつ小石投げてきた!とび道具は卑怯だって言ってた癖に自分はいいんですかぁー!おかしいと思いますぅー!」

親指姫「黙れ!目には目をだ!すぐに地を這わせてやるから覚悟しろ羽虫!」ヒュンヒュン

ティンカーベル「ふんっ、上等だよ!やってみろやぁー!」ヒュヒュヒュ

白鳥「何やってるんだ親指姫!やめろ!…あぁ、駄目だ。こうなったら僕の言うことなんか聞きやしないんだから!すまないがキモオタ君からも止めるように言っt」

キモオタ「カイ殿、申し訳ないでござるが茶を一杯頂けますかなwww」

カイ「仕方ねぇな…ほらよ。キモオタ、そこの皿こっちに寄越せ。そいつ等の争いに巻き込まれて割られたらかなわねぇから」コトッ

キモオタ「わかりましたぞwww」スッ

白鳥「どうしてそんなに落ち着いているのかな君達は…」

629 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/08 00:41:21 9xL 236/411

キモオタ「女子の争いに首を突っ込むとろくな事がないですからなwww我々メンズは傍観するに限りますぞwww」コポォ

カイ「同感だな、下手に関わると怪我するだけだ。ほらよ白鳥、お前の飯だ」コトッ

白鳥「おぉ、ありがとう!まぁ僕が止めに入ってどうにかなりそうもないし…よし!もう放っておいて食事にするかな!ナハハ!」スワーン

キモオタ「それが賢明ですなwww我々はボーイズトークに花を咲かせるとしますぞwww」コポォ

カイ「ガキと鳥類と気持ち悪いオタクで話が弾むかよ…俺は洗いもんしてくるからお前等でやってろ」スッ

白鳥「おっと待ってくれるかなカイ君!女王様からの伝言なんだが…今日は夕食いらないそうだ」

カイ「はぁ?特に体調が悪いようには見えなかったが…理由は聞いてないのか?」

キモオタ「あれだけハードな運動をしておきながら飯抜きなど我輩なら有り得ないwww」コポォ

白鳥「カイ君ならピンと来るんじゃないかな…実は【しっかり者のスズの兵隊】のおとぎ話が消滅してしまってね、さっき女王様にそのことを報告してきたんだ」

カイ「あぁ…なるほどな。そりゃあ飯を食う気になんかならねぇか、あいつの場合」

キモオタ「ほう…?それは女王殿にとって特に大切なおとぎ話なのですかな?」

カイ「あぁ。正確にはあいつが特に大切にしている話のうちの一つ…だな。なぁ白鳥、あいつの様子はどうだった?」

白鳥「普段通りに振る舞っては居たけど…内心、相当ショックだったと思うよ」

カイ「そりゃあそうか…俺たちに気落ちした姿なんか見せるわけねぇよな」

631 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/08 00:44:26 9xL 237/411

キモオタ「なにやら…深刻そうですな?」

白鳥「まぁね…。おとぎ話の世界を守ろうとしてる女王様や僕達にとって物語に優劣なんかはないけど…あのおとぎ話はアンデルセンが書いたものだから、女王様は特にショックが大きいのさ」

キモオタ「アンデルセン殿…でござるか」

カイ「ハンス・クリスチャン・アンデルセン…【雪の女王】の作者だな」

キモオタ「知ってますぞ。そういえば以前ヘンゼル殿の話にも出てきましたな…確か女王殿が現実世界に直接会いに行ったとかなんとか…」

白鳥「そのことは僕もあまり詳しくは知らないんだけどね…でも女王様にとっては大切な人なんだろうね」

キモオタ「ふむ…。我輩は現実世界の人間故よく解らないのでござるが…おとぎ話の住人にとって作者というのは特別なものなのでござるか?」

カイ「ほとんどの場合は作者に特別な感情なんかねぇよ。ヘンゼルみたいに作者を憎んでる奴も少数派だ、女王はアンデルセンと直接交流があったから特別に感じてるだけだろ」

キモオタ「なるほど。確かに我輩の友人からも作者の話を聞いたことなどほとんどありませんからな」

白鳥「でもきっと…相当な信頼を寄せていたんだと思うよ?おとぎ話を救うって話になったとき、僕達に声をかけたのだってそれが理由だろうしね」

キモオタ「ということは白鳥殿と親指姫殿のおとぎ話も?」

カイ「【みにくいアヒルの子】も【親指姫】もアンデルセンの書いたおとぎ話だ。女王は作者を信じていたからこそ、協力者にこいつ等を選んだんだろうな」

632 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/08 00:46:47 9xL 238/411

白鳥「アンデルセンのおとぎ話の中であの頃既に結末を迎えていて、自由に動ける主人公は僕とあいつくらいだったんだろうね」

キモオタ「その頃はまだアリス殿が黒幕だと判明していませんでしたからな、誰が敵かわからない状態でも信用出来たということは女王殿のアンデルセン殿への信頼は相当のようですな」

カイ「そうだな、まだ情報が不足していた頃だ。事情を知らない連中に事態を伝える必要もあった、それを踏まえての人選だろ」

白鳥「僕なら世界移動も陸海空も自在だからね!それに親指姫はチビだから潜入に向いてる、警備の厳しいお城なんかも楽々さ」

キモオタ「確かにwwwうちのティンカーベル殿もその辺での活躍多いでござるしwww」コポォ

白鳥「もちろん美形だからっていうのも採用理由なんだろうけどね?親指姫もまぁ姫っていうだけあるし僕の美しさは言わずもがな!ンナハハハ!」

キモオタ「出たwww白鳥殿のナルシスト節www」コポォ

カイ「まぁあれだな、女王が気落ちしてるってなら…なんとかしたいところだな」

キモオタ「ほうwww憎まれ口叩きながらも女王殿が心配なのですなカイ殿www」コポォ

カイ「茶化すな。あいつの強大な魔力はアリスを止めるのに必ず役立つ、精神的に弱ってる状態のままだといざって時困るだろうが」

白鳥「そうだね、女王様の過去に何があったか知らないけど…女王様のショックを何とか和らげたいとは思うよね」

キモオタ「我々も女王殿にはすっかり世話になっておりますからなぁ…」

633 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/08 00:49:17 9xL 239/411

カイ「だが…それなら逆にそっとしておいた方が良いような気もするな。俺や白鳥が行っても…あいつは弱い部分を見せようとしないだろ」

白鳥「確かに…でも今の僕があるのは女王様が声をかけてくれたからなんだ。少しでも女王様の力になりたいよ」

キモオタ「作者が同じといえ白鳥殿は随分女王殿を気にかけてますなwww」

白鳥「そりゃあ女王様には感謝してるからね。僕はずっと誰かの役に立ちたいって思ってたんだよ。生まれた頃から誰にも愛されずに蔑まれて馬鹿にされて生きてきたから…誰かに必要とされたかった、それが夢だったんだ」

白鳥「でも自分が白鳥だって気が付いてもその夢は叶えられなかった。だから今、女王様の元で世界を飛び回って間接的でもたくさんの人を救えているって事を僕は誇りに思ってるのさ!」

キモオタ「なるほど…ただのナルシストではなかったのですな白鳥殿www」

白鳥「そうとも!真のイケメンは心もイケメンってね!それは親指姫も同じ気持ちだと思うよ、あいつも昔は周囲に振り回されっぱなしだったからね」

キモオタ「親指姫殿のおとぎ話は知っていますぞwww小さいから誘拐されたり誘拐されたり誘拐されたりしてましたなwwwしかし確かハッピーエンドだったはずwww」コポォ

カイ「確か花の王子と結婚して幸せな暮らしを…って結末だったな。ヘンゼルの言葉を借りるようだが親指姫はどこか納得してなかったんだろ、自分の結末に」

白鳥「そうだろうね、だからあいつは王子に黙って城を抜け出した。周囲が定めた運命じゃなく今度こそ自分の意志で、自分の運命を決めるためにね。だからその機会をくれた女王様には感謝してるはずだ」

キモオタ「あの暴力的な性格はそれまで押さえつけられていた反動なのでござろうかwww」

白鳥「解らないけどまぁ僕はいい迷惑だよ…出会った頃はあいつの暴力でハゲると思ったよ…まぁハゲても美しいのが真のイケメンだけどね?」

634 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/08 00:52:03 9xL 240/411

白鳥「で、ここの書庫で読んだ【一寸法師】にえらく感動してね。それからはもうあの女騎士スタイルさ」

キモオタ「親指姫殿www意外と影響されやすいwww」

白鳥「自分と同じ小さな体なのに自分で運命を切り開いた一寸法師はあいつにとって理想の生き方だったんだろうねー…まぁ今のあいつはイキイキしてるから結果的には良かったのかな、僕を針で刺さなければね。大体あいつは…」

カイ「おい、話がそれちまってるぞ。今は女王をどうするかだろ?」

白鳥「そうだったね!ンナハハハ!僕としたことが!」スワーン

キモオタ「それならば我輩とティンカーベル殿が女王の所にいってくるでござるよwww我々のようなおとぼけキャラと話せば悩みなどバカバカしくなるでござるよwww」

白鳥「それ自分で言っちゃうのか…」

カイ「まぁ多少気休めにはなるかもな…バカな奴と話すのは疲れるが不思議と場が和むことはあるしな、バカ特有の空気っていうか…そういうのは確かにある」

キモオタ「ぶっちゃけそういうことでござるよwww我々そういうの得意でござるしwwwティンカーベル殿!バトルはそのあたりにして一緒に行きますぞwww」

ティンカーベル「…もうちょっとでチビッコを倒せそうだから後にして」ゼェゼェ

親指姫「ふん…ならば一生無理だな…諦めろ」ゼェゼェ

キモオタ「ちょwww息切れしてるでござるwww思ったよりガチで戦ってたwww」コポォ

635 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/08 00:53:53 9xL 241/411

雪の女王の宮殿 書庫

ティンカーベル「なるほどね。女王様は自分のおとぎ話の作者と交流があって、そんでその作者が書いたおとぎ話が消えちゃってショックを受けてるっぽいって事ね?それで私達二人でそのショックを和らげようって話かー」

キモオタ「その通りwww説明的セリフありがとうでござるwww」コポォ

ティンカーベル「でもさー、ホントにそれだけ?」

キモオタ「ちょwwwなんですかなwwwその意味深な問いかけはwww」コポォ

ティンカーベル「知ってるんでしょ?アンデルセンが書いたおとぎ話は【雪の女王】や【みにくいアヒルの子】や【親指姫】だけじゃないってさ」

キモオタ「ドゥフフwwwお見通しですなwww」コポォ

ティンカーベル「わかるよ、これだけ一緒にいるんだし。調べてたんでしょ?マッチ売りちゃんのおとぎ話書いた作者のこと…ググッたんでしょ?」

ティンカーベル「【マッチ売りの少女】を書いたのがアンデルセンだって、知ってるんでしょ?」

キモオタ「まぁ、そうですなwww」コポォ

ティンカーベル「作者と交流があったなら女王に話聞けば…アンデルセンが何を思ってあの救いのないお話を書いたのか解るかも知れないもんね」

キモオタ「そうかも知れませんなwwwしかし女王殿が落ち込んでいるかも知れないから励ます…と言うのが一番の目的なのであってwww我輩の個人的な質問はあくまでついでというかwww」

スッ

雪の女王「フフッ、気持ちは嬉しいが私は落ち込んでなどいないぞ?」フフッ

キモオタ「ちょwww女王殿www我々の話聞いていたでござるかwww」コポォ

636 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/08 00:55:57 9xL 242/411

雪の女王「そんなに大きな声でコポコポ言っていれば嫌でも耳に入るさ」クスクス

ティンカーベル「やっぱキモオタのせいだ!コポコポうるさいからだよ!反省して!」

キモオタ「ちょwwwなんでそこまでwwwしかし図書館的な場所では静かにするのはルールwww申し訳ないwww」コポォ

雪の女王「私達しか居ないんだ、気にすることはないさ。ただカイが居るときは静かにしていないと後が怖いぞ?」フフッ

ティンカーベル「ねぇ、女王…作者のアンデルセンと交流があったって話、本当?」

雪の女王「あぁ、本当だとも。もう随分と昔の話だけれどね」

キモオタ「そのアンデルセン殿のおとぎ話が消えたからショックを受けていると聞いてきたのでござるが…」

雪の女王「…まぁショックだよ。彼がどういう考えを持っておとぎ話を書いていたかを知っているからな。だけど消えてしまったおとぎ話はアナスンのものだけじゃない」

雪の女王「ペローやグリム兄弟、それ以外にも様々な作者が書き記したおとぎ話が消えている。誰が作者だろうとおとぎ話が消えるのは辛いさ…おとぎ話に込められたら想いまで消えてしまうからな」

キモオタ「聞かれてしまっていたようなので正直に話すでござるが…女王殿、実は……」

雪の女王「【マッチ売りの少女】が何故生み出されたか、あの悲劇的な結末に意味があるのか…それを知りたいんだろう?」

キモオタ「…マッチ売り殿は自分の運命を受け入れたでござる。だから我輩も彼女の意志を遂げるためにも交わした約束を守るためにも旅を続けているのでござる。そこに一切の迷いはないでござるよ」

キモオタ「しかし女王殿がアンデルセン殿と交流があったと言うのなら…話を聞きたいと言うのは本音でござる」

雪の女王「…君達になら話しても構わないだろう、【マッチ売りの少女】の話とアナスンと私の過去を。特別な本棚があるんだ、そこへ案内しよう」

・・・

637 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/08 01:05:00 9xL 243/411


ここではない時 ここではない場所

・・・

「何故だ…何故…。何故、私が殺されなければならない…」

「私は願っただけだ…すべての人類が幸福に生きる世界を…」

「大人も子供も老人も、大人も子供も、貴族も奴隷も…その境無く幸福を掴める未来を…」

「私は紡いだだけだ…誰をも幸せにすることができる物語を…おとぎ話を…」

「私が紡いだ物語を…皆は喜んで聞いていたではないか…」

「私が紡いだ物語を…皆は涙して聞いていたではないか…」

「それこそが未来への希望ではないのか…苦しい現実を塗り替える希望ではなかったのか…」

「あぁ…嘆かわしい…。私は思い違いをしていた…おとぎ話が私を救ったからといって…全ての人類を救うなどできるはずがなかったのだ…」

「所詮はただの戯れ言……言葉の組み合わせに過ぎない」

「それを天才だのなんだともてはやされて…私は有頂天になっていたのだ…」

「愚かな自分に腹が立つ…神にでもなったつもりだったのか…?」

「結局私は少々運が良かっただけの奴隷…。私のおとぎ話など…奴隷の言葉遊びに過ぎない」

「そんなものが世界を…未来を変える力を持っているわけが無いではないか…」

「あぁ……今、死を目の前にして…ようやく過ちに気がついた…」

「こんなものは…何の意味もない、ただの言葉の羅列……」



「我々作者に…おとぎ話に…何かを変える力などありはしないのだ…」

・・・

654 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/15 00:54:37 kNn 244/411

現在
雪の女王の世界 女王の宮殿 書庫

・・・

ポツン

ティンカーベル「あっ、見て見てキモオタ!あの本棚だけ他と違うよ!ガラス扉も付いててなんか特別っぽい感じがする!」ピューッ

キモオタ「確かに特別感ありますなwww図書館などでこの手の本棚に収められているのは大抵が貸し出し禁止のレア本でござるしwwwおそらくこの棚に並んでいる本も相当貴重な一品に違いないwww」

雪の女王「大切な物には違いないが、本自体はごく普通の本屋に並んでいた物だ。購入したのは随分と昔だがな」

ティンカーベル「そーなの?それにしては買ったばっかりの新品みたいにピッカピカだよ?」

雪の女王「この本棚には魔法がかかっていてな。ここに並べられた本はあらゆる事象の干渉を受けない。時間の流れから切り離されているせいで経年劣化することもないのさ」

キモオタ「ちょwwwしれっと言ったでござるがそれかなり高度な魔法なのではwww」コポォ

雪の女王「まぁ、かなりレベルの高い魔術だな。この本棚を創るためにおよそ半月の時間を要したし魔力も相当消費した」

ティンカーベル「女王がそこまでして残したいって思った本がこの棚には並んでるんだよね…それってやっぱアンデルセンが書いたおとぎ話?」

雪の女王「あぁ、この棚にはアナスンが執筆したおとぎ話が一遍も洩らさずに収められている。私は現実世界で彼と交友を深めるうちに彼のおとぎ話を特別なものと思うようになったんだ、彼の作品は私にとって宝物なのさ」フフッ

ティンカーベル「そうだったんだ…じゃあ私達悪いことしちゃったね…ごめんね、女王」

雪の女王「どうした突然?君に謝られるようなことなどされたか?」

ティンカーベル「だってさ、女王は知ってると思うけど私達【マッチ売りの少女】の世界に結構干渉しちゃってるんだよね…他にも【裸の王様】とかも……ね、キモオタ?」

キモオタ「ですな…そして我々が干渉したことで物語に変化が現れているでござる。アンデルセン殿のおとぎ話を大切に思う女王殿にとってそれは…嫌な事でござろう。すまなかったでござる」

雪の女王「悪意は無かったんだ、責めはしない。君達が行動しなければ【マッチ売りの少女】や【裸の王様】の世界そのものが消えていたかも知れないんだ、むしろ感謝してるよ」

雪の女王「それに君達やアリスが干渉しなくてもおとぎ話の内容が変化するということは自然に起こるものだ。数百年、元々の内容のまま物語が伝わることはなかなか難しい」

雪の女王「だから私はこの本棚を創り、彼の紡いだ物語を詰め込んだ。百年経とうと千年経とうと人々に忘れられようと物語が変化しようとせめて私だけは彼の本当の願いを忘れないようにな」

655 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/15 00:57:24 kNn 245/411


雪の女王「だからこの棚には消滅したはずの【しっかり者のスズの兵隊】が残っているだろう?」スッ

ティンカーベル「あっ、本当だ!おとぎ話の世界が消滅したら現実世界から絵本もなにもかも消えちゃうのに、この棚の本は消えないんだね!」

キモオタ「流石はハイレベルな魔法なだけありますなwww」コポォ

雪の女王「君達が干渉したという【マッチ売りの少女】も同様だ。この棚の本には君達が登場しない、この通りな」パラパラ スッ

ティンカーベル「本当だね、私達が登場しちゃう現実世界の絵本とは違って元々のまんまだ!」

雪の女王「これでこの棚の本は一切の変更がされていない状態…アナスンが書き記したそのままのおとぎ話が並んでいると解ってくれたはずだ」

キモオタ「バッチリ理解しましたぞwww」

雪の女王「そうか、それならアナスンについて話すとしようか。まずは…丁度いい、キモオタはこの【しっかり者のスズの兵隊】をティンクは…この【ヒナギク】を読んでみるといい」

雪の女王「もちろん、一切改変のない元々の物語だ」

キモオタ「了解でござるwwwちなみに女王殿wwwこれあとで感想とか聞かれるでござるか?我輩この手のレビュー苦手なのでござるがwww」コポォ

雪の女王「聞くつもりだ、しかし別に君たちを試そうというわけじゃないんだ。どちらのおとぎ話も童話作家としての彼の特色が色濃くでているおとぎ話だからな、是非読んで欲しい。それだけさ」

キモオタ「そう言うことならばwwwおっwwwどうやら兵隊が主人公でのようでござるなwwwこれはバトルアクションものが期待できますぞwww」ワクワクコポォ

ティンカーベル「ヒナギクってお花の名前だよね?それじゃこっちはファンシーなカワイイ系おとぎ話かなー?読むの楽しみ!」ワクワク

656 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/15 00:59:17 kNn 246/411

数分後

キモティン「……」ズーン

雪の女王「読み終わったか?やはり二人とも凄まじく暗い表情をしているな」

キモオタ「スズの兵隊殿、理不尽アンド理不尽な目にあった挙げ句、溶かされて死んだでござるけど…」ズーン

ティンカーベル「こっちもだよ…人間に振り回されてヒバリは苦しんで死んじゃうしヒナギクは枯れちゃうし…ちょっと後味悪すぎるよ何これ…」ズーン

雪の女王「ふふっ、とびきり暗い内容だっただろう?気分が悪くなる程にな」

キモオタ「ちょっwww解っててこのチョイスwww以外とおにちくですな女王殿www」

雪の女王「それで…君達の率直な感想を聞こうか、それを読んでどう思った?」

ティンカーベル「私は…人の身勝手な振る舞いがどれだけ酷い事かっていうのがよくわかったし、子供達がこれを読んだら思いやりの気持ちを持てるかもって思ったよ。でも……」

雪の女王「でも?」

ティンカーベル「正直、すごく胸くそ展開だったよ!最後だけ報われてもいいじゃん!よくあるじゃんそういう展開!ダメなの!?」イライラ

キモオタ「ティンカーベル殿おさえておさえてwww我輩が読んだ方もまぁ理不尽エンドでござったけどもwww」

ティンカーベル「もーっ!アンデルセンなんなの!?【マッチ売りの少女】もそうだし【人魚姫】も暗い結末だし…この作者バッドエンド大好きおじさんじゃん!」

657 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/15 01:01:44 kNn 247/411

ティンカーベル「女王には悪いけど私はぶっちゃけこの作者嫌いになったよ!」プンスカ

キモオタ「お主はwww女王殿の前でよくそんな事言えますなwww空気を読むでござるよwww」

ティンカーベル「知ったこっちゃないよ!作者は読み手に何かを伝えたいからおとぎ話を書くって事、私は理解してるつもりだよ?マッチ売りちゃんの結末は悲しいけど意味のあるものだと思ってるし、きっとたくさんの人の心に響いて優しい気持ちにさせてるなって信じてる」

ティンカーベル「でもいくらなんでも多すぎなんだよ!しかもこれほんの一部でしょ?どうせ他にもバッドエンドあるんだろうし…理不尽エンドのおとぎ話のほとんどをこいつが書いてんじゃないかって勢いじゃん!」プンプン

ティンカーベル「私はマッチ売りちゃんの死に意味があるって信じてたけど……バッドエンドが多すぎてなんかこいつのこと信用できなくなってきた!こいつ自分の趣味でこんな結末にしてんじゃないの?」イライラ

キモオタ「こwwwいwwwつwww遂にこいつ呼ばわりwww女王殿、ティンカーベル殿はちょっと興奮してるだけなので無礼は大目に見てあげて欲しいですぞwww」

雪の女王「気にしていないさ、私も初めはティンクと同じ意見だった。私達にとっておとぎ話の世界こそ現実だからな、死の運命を背負った者を生み出すことが残酷だと考えるのは当然だ」

ティンカーベル「だよね!バッドエンドはまぁ仕方ないにしても死なせる必要ないよね!そうすればマッチ売りちゃんだってもうちょっと救われたと思うもん!」

雪の女王「それはどうだろうな…死ななければ本当に幸せなのか?」

ティンカーベル「えっ?」

雪の女王「マッチ売りに会った君達なら解るだろう、君達の干渉が無く、仮に彼女があの世界で生きながらえたとして…本当に幸福になれたと思うか?」

ティンカーベル「そ、それは…なれたかもしれないじゃん!もしかしたらあの神父さんがうまいこと…」

キモオタ「無いでござるな、シンデレラ殿と裸王殿の活躍が無ければ孤児院は作られなかったでござる。神父殿にはどうにもできなかったでござろう」

キモオタ「あの世界に一切の干渉が無く、あの雪の夜に運良くマッチ売り殿が生き延びたとして……あの父親の元では先は見えているでござるよ」

ティンカーベル「それはそうかも知れないけど…」

キモオタ「我輩も…アンデルセン殿は理不尽エンドを書きすぎだと思うでござる。しかし、ただバッドエンドを書きたいだけならもっと惨たらしく殺す展開を選ぶのではないですかな?」

キモオタ「『お婆ちゃんの幻を見て幸せな気持ちで天に召された』などと書いているあたり…マッチ売り殿のを苦しめるつもりなどなかったのでござろう」

658 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/15 01:03:23 kNn 248/411

ティンカーベル「確かにキモオタの言うとおりかも…少なくとも悪意があったわけじゃないのか…」

雪の女王「キモオタ、君はなかなか良いところに目を付けるな」フフッ

キモオタ「いやはやwwwただのキモいオタクの妄想でござるけどwww」

ティンカーベル「でもさ、作者の趣味じゃないとしたらなんでこんなにたくさんバッドエンドのおとぎ話書いてるのかな?」

キモオタ「うむ…白鳥殿や親指姫殿も結末こそハッピーエンド寄りでござるけど、辛い日々を送っていたようでござるしな…」

雪の女王「君達はさっきからバッドエンドバッドエンドと言っているが…アナスンはこう言っていたぞ」フフッ


雪の女王「『【マッチ売りの少女】はハッピーエンドだ』と」


ティンカーベル「はっ!?えっ!?何!?どゆこと!?」

キモオタ「ブヒィ!?どういう意味ですかな!?」

雪の女王「まぁ、そういう反応になるか。まぁ君達もこの話が終わることには…アナスンという人物が少しは理解できるかも知れないな」

ティンカーベル「えーっ、正直、自信ないけど…絶対私は理解できないタイプの奴だと思う、だってあれ…少なくともハッピーエンドじゃないでしょ?」

キモオタ「まぁまぁwwwとにかく聞かせて貰うでござる、アンデルセン殿の事を理解できればマッチ売り殿の運命の事も…もっと深く知れるでござろうwww」

雪の女王「そうだな、少し前置きが長くなってしまったが…彼について語るとしようか」

雪の女王「これは、ずっとずっと昔…この世界が生まれて間もない頃、現実世界で【雪の女王】が発表されてしばらく経った頃の話だ」

・・・

659 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/15 01:06:19 kNn 249/411

ずっと昔…現実世界でおよそ170年前
雪の女王の世界 冬 とある村外れ

ビュオオォォォ 

きこりのおっさん「おぉい、そこのソリぃ止まれ、止まれぇ!ここは通れねぇぞぉ!」

「待ってくれ、通れないってどういう事だ!?俺は急いでるんだ!早く隣村までいかねぇといけないんだぞ!」ズサー

きこりのおっさん「そうは言ってもなぁ、昨日の晩の大雪で橋が壊れちまって通れねぇんだ。まだ修理には時間かかるぞぉ?」

「何とかならないのか!?嫁さんが急に産気づいちまって…今すぐにでも隣村の産婆に頼まねぇといけねぇんだ!」

きこりのおっさん「そりゃ大変だぁ!でも橋はまだ直らねぇ…お前さんそこの村のもんだろ、そこにも産婆はいただろぉ?」

「間が悪いなんて言っちゃいけねぇが…隣の家の奥さんも少し前に産気づいちまって、そっちについちまってる…うちのはまだ少し余裕がありそうだからすぐに隣村から産婆を呼んでくれって言われてよぉ…」

きこりのおっさん「ぬぅ…力になりてぇが、大回りして下流の橋を通った方が早いかもしれねぇな…」

「何時間余分にかかると思ってんだお前!手遅れになっちまったら俺はどうすりゃいいんだこのヒゲモジャが!」グイグイ

きこりのおっさん「お、俺に当たるんじゃあねぇって、そうは言っても…うぉっ、何だぁ!?」

ビュオオオオォォォ

「なんだ!?突然吹雪が…!くっ、前が見えねぇ!なんだってこんな日に!」

ビュオオオォォ

660 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/15 01:08:28 kNn 250/411

ビュオオオォォォ…スッ

きこりのおっさん「ぬぅ…おさまったか。何だったんだ今の吹雪は…突然吹雪いてあっと言う間におさまっちまったぁ…」

「お、おい!?こりゃあどういう事だぁ!?」

きこりのおっさん「ん…?な、なんじゃぁこりゃあぁ!?」

キラキラキラ…

「さっきまで何もなかった場所に氷で出来た橋が…!」

きこりのおっさん「よぉし、ちょっと待ってろぉ!……大丈夫だぁ、強度も十分だ!通れそうだぞぉ!」グッグッ グイグイ

「ほ、本当か!?助かった…これで隣村まで行ける!」ホッ

きこりのおっさん「不思議な事もあるもんだぁ…きっと妖精がお前さんを助けてくれたんだなぁ、それより急げぇ!嫁さんがまってるぞぉ」

「お、おう!それじゃあ俺は行くわ!」ススーッ

きこりのおっさん「うーむ、こんな事もあるんだなぁ…。しかしこんな立派な橋があるってぇなら急いで橋を直すことねぇかなぁ…」

セクシー美女「…その橋、あまり長くはもたないぞ」

きこりのおっさん「!? 姉ちゃん一体どこから現れたんだぁ!?」

セクシー美女「ゲルダの父親…さっきの男が戻ってくるまでは大丈夫だが、その後は次第に溶けていく。早急に橋の修理をした方がいい」スッ

ビュオオオォォォ

きこりのおっさん「消えた…!な、なんだったんだ今の姉ちゃんは…まさか、雪の妖精か…?」

661 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/15 01:11:16 kNn 251/411

雪の女王の世界 女王の宮殿

雪の女王「……さっきのは余計な手助けだったかもしれないな」ファサッ

雪の女王「生み出されて間もないこの世界が消える道理はない、おそらく遠回りをしてもあの男の奥さんも赤ん坊も何一つ問題なかっただろうに」

雪の女王「……まぁいいか、カイは無事に生まれたようだし。あの様子ならば今頃、ゲルダも元気な産声を上げていることだろう」

雪の女王「……」

雪の女王(しかし…未だに私は納得していない)

雪の女王(この世界は現実世界に住むアンデルセンという男が生み出したおとぎ話の世界…作者が書き記した通りの筋書きで人々の運命が定められた【雪の女王】の世界)

雪の女王(私がこの世界で一番の魔力と自在な氷結能力を持つ雪の女王であることも、このだだっ広い宮殿に一人で暮らしていることもアンデルセンが定めた運命)

雪の女王(今日、あの村で産声を上げた二人の赤ん坊…ゲルダとカイと名付けられる二人の子供にも重要な役割が与えられている)

雪の女王(まだ先の話だが…親友同士になった二人、カイは悪魔の鏡が原因でゲルダと決別する。その彼を私がこの宮殿へとさらってくる…それが私に与えられた役割であり運命だ)

雪の女王(私の役割はいわゆる主人公の敵役、悪役。それに関しては何も思わない、私には両親も家族も友人も存在しないから誰かを巻き込むこともない。悪役だろうとなんだろうと引き受けてやろう)

雪の女王(それよりも納得がいかないのは主人公ゲルダの運命の方だ。ある日突然親友カイと離ればなれになり、彼を取り戻すために彼女は一人でこの宮殿を目指して旅をする)

雪の女王(旅の協力者はいる、最終的にカイを取り返すこともできて幸せな結末が待っている。しかし…決して楽な旅ではない、何一つ罪を犯していない少女が何故過酷な旅を強要されなければいけないのか)

雪の女王「少女に…子供に何故そんな過酷な運命を押しつけるのか?私には理解できない」

雪の女王(アンデルセンという男は…私の理解の外にいる。子供は守るべき存在、愛でるべき存在。無用な試練を与える必要があるだろうか…?)

662 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/15 01:14:34 kNn 252/411

それからしばらく経ったある日

雪の女王「……」

雪の女王(私は苛立っていた)

雪の女王(ゲルダとカイが生まれ、この世界の物語が動き出してからというものどうしてもアンデルセンという男のことが気になった)

雪の女王(彼はただの作者。現実世界の男、おとぎ話の住人である私が気にかける必要などなかった)

雪の女王(だがどうしても…その作者が気になってしまったのだ。幸い、私には有り余る魔法の力が存在する。おとぎ話の世界の事情も、他のおとぎ話の存在も知っている)

雪の女王(彼について調べていくうちに一つの真実にたどり着いた。どうやら彼が紡ぐおとぎ話の多くは主人公が苦しみ辛い思いをするようなのだ)

雪の女王(おとぎ話はその全てがハッピーエンドではない。それは当然だ、おとぎ話には教訓を与える役割もあるのだから主人公全てが幸せになるとは限らない。だが…)

雪の女王(彼が紡ぐおとぎ話のいくつかは…理不尽な運命を主人公が強いられている。自業自得とはとてもいえない者も多い、幸せな結末さえ与えられない、救われることのない主人公が大勢いる)

雪の女王(悲恋の末泡と消える人魚、恋実らず焼き解かされる玩具の兵隊、人間に弄ばれるヒバリとヒナギク…。
詐欺師に騙される王、自らの行いが原因とはいえ沼に沈められる娘、同様に終わることのない舞踏を続けざるをえない少女。周囲に翻弄され続ける小さな娘、独りきりで虐げられ続ける白鳥…あげればきりがない)

雪の女王(これほど辛い思いをしている者が居て、その元凶がアンデルセンであると知って…私は黙っていられない)

雪の女王(その多くの主人公は自分がおとぎ話の世界の住人だと言うことすら知らないだろう。しかし…私は知っている)

雪の女王(そして私なら…現実世界へ向かうことが可能。世界を移動する魔法は使える、アンデルセンに与えられたこの魔力を兄弟姉妹たちの為に使うべきだ)

雪の女王(そう、私は決めた。現実世界へ渡り、私たちのおとぎ話を生み出したアンデルセンに出会い、その悪行を止めさせる)

雪の女王「罪のない主人公たちを苦しめる作者は…まさに悪魔だ。その悪魔を、私は成敗しなければいけない」

・・・

663 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/15 01:17:15 kNn 253/411

1840年代
現実世界 デンマークのとある都市

ザワザワ ザワザワ

雪の女王「……」スタスタ

雪の女王(この国、この都市にアンデルセンは住んでいる筈だ。だが正確な場所までは把握できていない、地道に探し出すしかないが…それより)

「おい、あそこ歩いてる女…この辺りでは見慣れない服装だな、外人かな?」
「っていうか、すげー美人だぜ。もう結構冷える季節になったのに妙に露出も多いし…いや、それは大歓迎なんですけどね。乳デカいし!」
「じろじろ見るなよお前、デンマークの民度が低いと思われるだろ…とはいえ綺麗な人だよな」

雪の女王(少々、私のこの姿は目立つようだ…。彼は私達おとぎ話の住人が実際に存在している事すら知らないだろうが、目立たないに越したことはないな。何か変装を…)

スッ

若者「そこのお姉さん、見たところ観光かな?この街は見所多いから悩んじゃうでしょ、俺が案内してあげようか?」ヘラヘラ

雪の女王「そうだな…是非案内を頼もうか。とはいえ観光地には興味ないんだ、できれば路地裏のような人目に付かない場所へ案内して欲しいな」

若者「路地裏?なんでそんな所に…」

雪の女王「フフッ、人目に付かない場所でする事なんかそう多くはないじゃないか。それとも私に皆まで言わせるつもりかい?」クスクス

若者「えっ、マジで?それってもしかして…行く行く!行きます!そこの路地裏なら人通り超少ないからそこに行こうか」ウヘヘ

雪の女王「何処でも構わないよ、誰にも見られないのならな」フフッ



ペキペキペキ ヌアアァァー!

雪の女王「さて、男物のコートだが…これで少しは目立たずに済むな。しかし人目に付かない場所へわざわざ行かないと魔法が使えないのは面倒なものだな」スタスタ

664 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/15 01:20:28 kNn 254/411

雪の女王(さて…あまり派手に聞き込みをする訳にもいかないが…一軒一軒当たっていくわけにもいかない、そもそもアンデルセンの風貌を知らないからな)スタスタ

雪の女王「となると…どうやってアンデルセンの家を探すのが最善か…」

靴磨きの少年「ねぇねぇお姉さん、アンデルセン先生に会いたいの?」ニコニコ

雪の女王「口に出ていたか…。その通りだが、君はアンデルセンの家を知っているのか?」

靴磨きの少年「残念だけど知らないよ。でも先生がよく行く本屋さんなら知ってるよ、そこの店員さんなら先生の住所知ってるかも。ところで…お姉さんの靴、少し磨こうか?」ニコッ

雪の女王「そうだな、世間話でもしながら磨いて貰おうか。代金は銀貨一枚で足りるか?」

靴磨きの少年「うん、十分だよ。じゃあちょちょっと磨いちゃうね……あぁアンデルセン先生だけどね、先生はそこの広場の脇にある小さな本屋によく入ってるのを見るよ」フキフキ

雪の女王「そうか。この後そこの本屋に行ってみるとしよう」

靴磨きの少年「そっか、でもお得意先の住所を見知らぬ女の人に教えてくれないと思うよ?先生に会いたくて来る観光客だって少なくないし、その辺のガードは堅いんじゃないかな。方法がない訳じゃないけど」チラチラッ

雪の女王「フフッ、君は実に腕のいい靴磨きだな。銀貨をもう一枚渡すからもう少し念入りに頼むよ」

靴磨きの少年「そりゃどーも。そういえばあの本屋さん、いつも通りならもう少しあとに本とかインクとかの配達をすると思うよ。もしかしたらアンデルセン先生にお家にも届けにいくかもね……はい、終わり!」キュッキュッ

雪の女王「君のおかげで足取りが軽くなりそうだ、ありがとう」ナデッ

靴磨きの少年「いえいえ、また靴磨きが必要ならいつでもどーぞ」ニコニコ

665 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/15 01:24:29 kNn 255/411

しばらく後…
ハンス・クリスチャン・アンデルセンの自宅

雪の女王「思った以上に容易くたどり着けたな。私が思っていた以上に彼が有名人だったということもあるが…しかし、有名人の割には普通の家に住んで居るんだな」

雪の女王「…さて、いつまでも家の前をうろうろしていて怪しまれても良くない」スッ

雪の女王「そこの路地からなら人目に付かないな、丁度よく小窓もある。鍵はかかっているかも知れないが…まぁそれは大した問題じゃない」

パキパキパキ ガチャン

雪の女王「……家の中から人の気配はしないな。それじゃあお邪魔させて貰おう」スタッ

雪の女王「さて…作家先生なんだ、どこかに執筆作業に使っている部屋があるはずだ。そこで彼が帰ってくるのを待とう」

雪の女王「アンデルセンに出会ったら、まずは奴が執筆した残酷な物語の数々を書き直させる」スタスタ

雪の女王「他人が無理やり干渉すればおとぎ話の世界が消える可能性もあるが、作者ならば問題がない筈だ。もしも私の要求を飲まず…おとぎ話の修正を断るようならば」スタスタ

雪の女王「彼が私に与えたこの氷結能力で脅迫する。アンデルセンがどんな男だとしても…自分のおとぎ話よりも命を優先させるだろうからな…っと、この部屋かな?」スタスタ

ガチャ

雪の女王「ペンにインク、原稿紙…どうやらここがアンデルセンの仕事部屋のようだ」

雪の女王「資料らしい本の他に自分が書いたおとぎ話の本も並んでいるな、私の世界【雪の女王】も並んでいる。この多くの物語の主人公が奴の餌食になっているわけだ…」

雪の女王「なんにせよアンデルセンが帰宅してからだな。それにしても慣れない世界を歩き回って少々疲れた、少し座って…んっ?机の上に原稿が置いてあるな、どうやら書き終えたばかりのおとぎ話のようだが…」

雪の女王「奴はいつ戻ってくるかわからない、退屈しのぎに読ませて貰おうか。この原稿の、このおとぎ話のタイトルは…」

雪の女王「【マッチ売りの少女】…か、せめてこの物語の主人公が他の主人公のように辛い思いをしないことを祈るばかりだな」ペラッ

666 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/15 01:28:50 kNn 256/411


アンデルセンの自宅

アンデルセン「いやはや、参ったな。すぐに家に戻るつもりが…すっかり遅くなってしまった。まだ新作の推敲が終わっていないというのに、さぁ急いで推敲を始めよう」ガチャガチャッ

男の声『待て…妙だ、アンデルセン。お前は家を出る前、確かに鍵を閉めた。何故、家の中から人の気配がする?』

アンデルセン「人の気配?私には何も感じないのですが…」

男の声『私はお前と違って敏感だ、間違いない。しかも…ただの盗人じゃあなさそうだ…おとぎ話世界の住人の可能性が高い、膨大な魔力を感じる』

アンデルセン「おぉ…それは楽しみだ!どこの世界の誰かは知らないがおとぎ話の世界に住む者が私に会いに来てくれたというわけだ!」フフッ

男の声『愚か者、お前はあの様な物語を書き連ねておきながらよくも楽しげに出来るものだ。お前の作風はおとぎ話の住人に愛されると言うよりは恨みを買う方だ』

アンデルセン「そんなつもりは無いのだが…私は自分に作品を愛しているんですよ?」

男の声『お前がどう思っているかなど関係は無い。おとぎ話の住人は作者の決定には抗えない、そして作者に想いまでは知る由がない』

男の声『私に言わせればお前がおとぎ話の住人に恨まれて殺されようが自業自得だ。おとぎ話に人々の未来を変える力があるなどと未だに信じている愚かな男への報いだ』

アンデルセン「おや、あなただって以前は私と同じ志だったと聞いていますけどね」

男の声『過去の話だ。おとぎ話にはそんな力は無い。そして私はもう、決して筆をとらない』

アンデルセン「勿体ないですよ、かつて沢山の名作を生み出した作者であるあなたがもう筆をとらないというのは…」

男の声『……今はそんなことはどうでもいい、どうやら客人はお前の書斎で待っているようだ。早く向かうべきではないか?』

667 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/15 01:38:22 kNn 257/411

アンデルセンの書斎

ガチャッ

雪の女王「……っ」ギロッ

アンデルセン「これは驚いた、私の書斎に忍び込むなんて誰かと思ったが…こんなに美しい女性だとは思わなかった」フフッ

雪の女王「…貴様がアンデルセンだな?」

アンデルセン「あぁ、如何にも。私がハンス・クリスチャン・アンデルセンだ。君の名も是非教えて欲しいものだが…」

雪の女王「その前に答えて貰おうか、この原稿は…何だ?」バサッ

アンデルセン「っ、ぞんざいに扱わないで欲しいものだ。それに何…とはどういう意味かな?それは昨晩書き上げたばかりのおとぎ話【マッチ売りの少女】というおとぎ話だ、まだ推敲を残しているから完成とはいえないが」

雪の女王「私が問いかけているのは内容の事だ」

アンデルセン「内容…?この作品に何かおかしなところがあるかい?」

雪の女王「色々と言いたいことはある、だがこの物語は何だ!?常軌を逸している!正気じゃあない!まともな人間がよくもこんな残酷なバッドエンドを書けたものだ!」バンッ

アンデルセン「バッドエンド…?おかしな事を言う女性だ、【マッチ売りの少女】はハッピーエンドじゃないか、マッチ売りは死ぬことが出来て幸せだったんだからね」

ヒュッ バチーンッ!!

アンデルセン「ぐっ…!何をするんだ君は…!」

雪の女王「…人を殴るなんて初めてだ。だが私の心は決まった…あぁ、まだ名乗っていなかったな」

雪の女王「はじめましてアンデルセン、私は貴様が生み出した雪の女王という名の魔女だ。そしてさようならだ、アンデルセン」

雪の女王「私は貴様を殺すことに決めたよ、無慈悲で残酷な作者様を…!」ギロリ

パキパキパキ ヒュオオオォォォ

678 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/22 00:39:01 kap 258/411

過去、現実世界 (1840年代)
アンデルセンの書斎

アンデルセン「そうか、君は雪の女王か。自分が生み出した物語の登場人物と言葉を交わせる日が来るとは…実に喜ばしい」フフッ

雪の女王「私はただただ不愉快だがな。貴様の思想もその余裕そうな態度も全て気にくわない」スッ

パキパキパキ…! シャキンシャキン

アンデルセン「おぉ、無数の氷の刃で私の動きを封じるとは…いやはや見事な手際だね、流石は雪の女王だ。賞賛と拍手を贈ろう」パチパチパチ

雪の女王「止めろ。嘗めた態度で私を挑発して隙を生み出そうというのなら無駄だ」

アンデルセン「失敬、そんなつもりは無いよ。純粋に君の能力への賞賛さ」

雪の女王「余計な行動はするなと忠告してやろう。今、私は貴様の命を容易く散らせるという事を忘れるな」

アンデルセン「君は随分と物騒な物言いをするね。冷静沈着に見えてその心に秘めた怒りと情熱は『雪』とはあまりにもかけ離れている…『焔』という二つ名の方が今の君にはお似合いかな」クスクス

679 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/22 00:40:40 kap 259/411

雪の女王「訂正する、余計な言葉も発するな。刻まれて死ぬのが嫌ならこの書斎ごと貴様を焼き殺そうか?私はどちらでも構わない」ギロリ

アンデルセン「むぅ…すまない、そう怒らないでくれ。私は場を和ませようと冗談を口にしただけなんだ、悪気は無いよ」

雪の女王「悪気は無い…か。貴様が不幸にしてきた数多くの主人公たちにもそうやって言い訳をするつもりか?」ギロッ

アンデルセン「薄々感づいてはいたけれど…。君がこの世界へ来た理由は私が執筆したおとぎ話に不満があったから…そうだね?」

雪の女王「その通りだ、私は貴様のせいで苦しんでいる者達を救いたい。しかし物語の筋を無理に変えればその世界を消滅させてしまう、一度決められた結末を変えることは出来ない。ただ一人、作者を除いてな」

アンデルセン「なるほど、君の納得がいくように物語を書き直せと言うんだね」

アンデルセン「…確かに作者である私になら人魚姫の恋を成就させる事も、赤い靴の少女の呪いを解く事も、マッチ売りに裕福な暮らしをさせることも容易い…君はそれを望んでいるんだろう?」

雪の女王「そうだ。今すぐに彼女達の物語をハッピーエンドに書き直すというのなら、私はこの刃を収める。だが断るというのならば…どうなるかは言わずとも解るな?」

アンデルセン「あぁ解るとも、だが君の望みには応えられない。私はおとぎ話の結末を決して変えるつもりはないよ」

680 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/22 00:42:26 kap 260/411

ヒュッ ザシュッ

アンデルセン「……っ!」ボタボタ

雪の女王「残っている方の耳でよく聞け、アンデルセン」スッ

雪の女王「貴様のおとぎ話を全てハッピーエンドに書き直せ。これは頼みでも要求でもない、命令だ。次は耳では済まさないぞ?」

アンデルセン「ハハッ…やっぱり君は『雪』なんかじゃないなぁ」ハハハ…

雪の女王「余計な言葉を発するなと私は言ったはずだ、何度も言わせるな。私の命令に対して首を縦に振る事、それ以外の言動は死に繋がると思え」

アンデルセン「君こそ何度も同じ事を言わせないで欲しいな、私は言ったはずだよ」

アンデルセン「おとぎ話の結末は変えない。君がどんな暴挙に出ようこの考えは覆らないよ」

シュッ ピタッ

雪の女王「こんな風に…刃の切っ先を喉笛に突きつけられなければ正しい判断ができないか?アンデルセン」

アンデルセン「……っ」

雪の女王「図に乗るなよ?私は貴様を殺すことに抵抗も躊躇も感じない。これが生き長らえる最後のチャンスだと思え、さぁ…結末を変えろ」

アンデルセン「断る。決して変えないよ、私は」

雪の女王「……っ」

アンデルセン「どうしたんだい?私は生き長らえる最後のチャンスをふいにしたんだ。さぁ、ひと思いにやってくれ…私を殺すんだろう?雪の女王」フフッ

681 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/22 00:44:15 kap 261/411


雪の女王「貴様…!」ギロリ

アンデルセン「いや…女王である君の手を煩わせるのは忍びないな…。目の前に丁度良い刃があるんだ、これで自ら命を絶つとしようか」スッ

雪の女王「……っ!やめろ…!」

フッ

アンデルセン「どうしたんだい?氷の刃を収めては私を殺すことが出来ないぞ?」フフッ

雪の女王「…もういい、茶番を続けるな」

アンデルセン「そうかい?君が言うのならそうしようか」フフッ

雪の女王「やはり貴様は…意地の悪い男だな」ギロリ

アンデルセン「私のおとぎ話を書き換えられるのは私だけ、殺してしまって君は望みを叶えることが出来ないばかりか唯一の希望すらふいにしてしまう」

アンデルセン「でも君はそこまで愚かじゃない。殺す殺すと強気に脅してきたのも、それを悟らせないためだったんだろう?」

雪の女王「……」ギロリ

アンデルセン「そう睨まないでくれ、もう私を脅迫して我を通すことは無理だと解っただろう?ここは一つ話し合いで解決しようじゃないか、君にはそれしか手が残っていないのだしね」

雪の女王「言葉の端々に嫌みを織り交ぜるのは止めろ。私の憎しみを煽って貴様に利益があるのか?」

アンデルセン「あぁ…すまない。全くの無意識なんだ…悪気は全くないんだ、大目に見て欲しい」

682 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/22 00:46:33 kap 262/411


雪の女王「……で、話し合いで解決すると貴様は言ったな?」

アンデルセン「言ったね。あぁ、耳の手当てをしながらでも構わないね?こう見えて相当痛いんだよ」ハハハ…

雪の女王「好きにしろ。話を戻すが…そう言った以上、場合によってはおとぎ話の結末を書き替える、そう解釈してもいいな?」

アンデルセン「構わないよ。そうでなければ嘘になってしまう」ガサガサ

雪の女王「さっきはあれほど頑なに拒んでいたというのに、どういう心境の変化だ?」

アンデルセン「誤解を招かないように言っておくけれど、既に世間に発表されている【人魚姫】や【赤い靴】の結末は決して変えないよ」

アンデルセン「私は自分の納得できる物語を書けたから世間に公表した。これを変えることはありえない。もうこれに関しては諦めてくれとしかいえない」

雪の女王「…それならば、私が結末を変える事が出来るのはこの原稿のおとぎ話だけというわけか?」スッ

アンデルセン「そうだね、この原稿のおとぎ話【マッチ売りの少女】はまだ世間に公表していない」

アンデルセン「作者である私とある童話作家と…それと書斎に忍び込んで盗み見した君の三人だけだ、この童話の内容を知っているのは」

雪の女王「まだ発表されていないから世界も構築されていないというわけだな。だが……」ペラペラ

雪の女王「何度読んでも胸くその悪い内容だ。よくも貴様はこんな物語を書けたものだと心底思う」

雪の女王「可哀想な少女が報われず救われず死んでいくだけなど…そんな結末には絶対にさせない。必ず貴様を説き伏せて彼女には幸せな結末を用意させる」

683 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/22 00:49:28 kap 263/411

アンデルセン「その前に…雪の女王、最初の読者として君に聞きたい。【マッチ売りの少女】を読んだ感想を、聞かせてくれないか」

雪の女王「貴様を殺す決意が固まった」

アンデルセン「いや、そういうのではなくて…もう少し一般的な感想をだな…」

雪の女王「それほどに残酷だった。という事だ」フイッ

雪の女王「それに貴様の口振りだと…おとぎ話を書いてそれが世間に知れ渡るとそのおとぎ話の世界が生まれる、と言うことを知っていたようだな?」

アンデルセン「そうだね、知っていたよ。とある童話作家から聞いたからね」

雪の女王「本来、現実世界ではそれは知られていないはずだ。貴様がどこからそれを知ったのかまでは聞かないが…この事実を知っていたという事は」

雪の女王「【マッチ売りの少女】を生み出すという事はそれと同時に父親に虐待され貧しく食事もできず苦しい生活の末、些細な幻にすがって凍死する…そんな少女を実際に生み出す。それを理解した上で執筆したということだな?」

アンデルセン「そう思ってくれて構わない。それを理解した上で私はこの物語を書いた」

雪の女王「残酷だとは思わなかったのか?このマッチ売りに申し訳ないとすら思わなかったと?」

アンデルセン「…残酷だとは思う、マッチ売りには酷な運命を背負わせたとも思う」

アンデルセン「だが私は童話作家だ、必要があると考えたから彼女にこの運命を定めた。それに…」

アンデルセン「彼女なら…あの女性ならきっと私の考えを理解して納得してくれると信じている。マッチ売りはきっと私の意図を汲んで運命を受け入れてくれると信じている」

684 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/22 00:54:39 kap 264/411


雪の女王「あの女性…?」

アンデルセン「マッチ売りにはモデルがいるんだ。優しくて自分のことより他人を優先する優しい女性だった」

アンデルセン「私は数え切れない程の愛情と恩を受け取ったけれど何一つ返せないままこの世を去ってしまった。せめてこの【マッチ売りの少女】が恩返しになればいいのだが」フフッ

雪の女王「…貴様は不可解なことばかり口にする男だ」

アンデルセン「そうかい?」

雪の女王「そうだろう。こんな残酷なおとぎ話の主人公のモデルにされてその女が喜ぶ訳ないだろう。むしろ普通は憤慨する」

雪の女王「それに貴様はこのおとぎ話をあろうことかハッピーエンドだなどと抜かした。私に言わせれば全てのおとぎ話の中でも屈指のバッドエンドだ、こんな残酷な結末が他にあるか?」

アンデルセン「確かに彼女の境遇は残酷かも知れない。だがあの結末はむしろハッピーエンドだ」

雪の女王「解らない男だな貴様は。死を迎える結末が幸せだというのか?」

アンデルセン「解っていないのは君だと思うが…ならば生きていれば幸せなのか?」

雪の女王「当然だろう、死んでしまっては終わりだ。幸せになる未来すら失うことになる」

アンデルセン「わかっていないな…未来なんかないんだよ、貧民には」ボソッ

雪の女王「何だ?よく聞こえなかったが?」

アンデルセン「いいや、なんでもないよ。すまないがその原稿をよこしてくれ」スッ

685 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/22 00:56:32 kap 265/411

アンデルセン「さて…本題に入ろう」スクッ

アンデルセン「君は私のおとぎ話の主人公を…マッチ売りを救いたいと考えている。それはおとぎ話がただの『物語』ではなく君たちのとっての現実だからだ」

アンデルセン「だが私もそうそう容易く自分の想いを曲げられない。私は必要だと思ったからこの物語を執筆した、当然この結末も必要なものだと思っている」

雪の女王「私はそうは思わないがな」

アンデルセン「君と私は違うからね。だからこそこのおとぎ話を書いたともいえるが…ともかく」

アンデルセン「私としてもマッチ売りには幸福になって欲しいと思っている、だからハッピーエンドにした訳なのだし」

雪の女王「貴様はまだ言うか、あの結末の何処が…」

アンデルセン「それに関してはひとまず置いておくとして…とにかく私にとってこの物語はハッピーエンドなんだ。それを書き換えろと言うからにはこれよりも素晴らしい結末でなければいけない」

雪の女王「…つまり、私に現状よりもマッチ売りを幸せに出来る結末を用意してみろという事だな?」

アンデルセン「そうだ、それに私が納得すれば結末をきちんと書き換えて発表する。それで私に出来る精一杯の譲歩だ」

雪の女王「十分だ。こんな最悪の結末よりも幸せな展開など湧き出るほど存在するからな」

アンデルセン「そうか、ならば君の考えるハッピーエンドを聞かせてくれ、私はそれをメモしていく」スッ

686 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/22 00:59:36 kap 266/411

雪の女王「そうだな…まずは死ぬのは無しだ」

アンデルセン「死ぬのは無し、と。ならばマッチ売りは何故死なないんだい?」

雪の女王「何故?こんな幼い少女が死ぬなど可哀想だからに決まっているだじゃないか」

アンデルセン「そうじゃない。これはおとぎ話だが最低限のリアリティは必要なんだ」

アンデルセン「マッチ売りは貧しい暮らしをして食事も着るものにも困っているんだ、まともな防寒もせずに体調も万全じゃない状態で一晩過ごせるとは思えない」

雪の女王「ならばそもそも貧しい生活という設定を変えるべきだ、彼女は裕福な家に暮らしていて両親からも愛されていてだな…」

アンデルセン「……何故そんなお嬢様がマッチを売る事になるんだ?」

雪の女王「売らなくてもいいだろう、マッチ売りが幸せならば」

アンデルセン「…目だ、そこを変えたらこの物語の意味がない。マッチ売りの境遇はそのままで最後の晩だけの改変しか認めない」

雪の女王「注文の多い奴め…ならばこうだ。その日、マッチがたくさん売れた事にしろ。そうすれば死なないだろう」

アンデルセン「マッチがたくさん売れました、おしまい……では物語を締めることなんかできない。それくらい配慮してくれないか?」

雪の女王「何の問題がある?オチが特にないおとぎ話なんていくらでもあるだろう」

アンデルセン「民間伝承ならともかく私のおとぎ話は創作童話だ、そんな結末では多くの人に読んでもらえるわけがない

687 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/22 01:03:25 kap 267/411

しばらく後…

雪の女王「……」ムムム

アンデルセン「もうそろそろネタ切れではないか?」

雪の女王「待て、今考えているところだ」

アンデルセン「いいよ、いくらでも待つ。でもわかっただろう、これ以上のハッピーエンドなどありはしないんだよ」

雪の女王「黙っていろ。ならばこうだ、マッチ売りが息を引き取る前に心優しい富豪が現れてだな…」

アンデルセン「よく読んでくれるか女王、この街にそんな富豪が居るならもう少しマッチ売りはましな生活が出来ているさ」

雪の女王「何なんだ貴様は却下却下と、結局マッチ売りを幸せにするつもりも結末を変えるつもりもないんじゃないか」バンッ

アンデルセン「…君は魔女としては一流だが作家としては三流だ」

アンデルセン「女王はマッチ売りを可哀想に思うあまり現実が見えていない。世間は彼女のような貧民には無関心だ、手をさしのべる者なんか決していない」

アンデルセン「食事も衣服も不足して、父親からは虐待され、毎日毎日苦しい日々を過ごすマッチ売りを助ける者なんていない…それは君も散々考えて解っただろう」

雪の女王「……」

アンデルセン「もう薄々理解してるだろう?私が何故、死をハッピーエンドだと言ったか」

雪の女王「黙っていろ。私はまだ認めていないし諦めてもいない」

アンデルセン「無駄だよ女王…マッチ売りを、このような貧しい少女を救うのは死しかない」

アンデルセン「この冷たい社会の中で貧しい少女は未来を夢見ることすら許されない。誰見手をさしのべてくれない上に少女が一人で生きていけるほど社会は甘くもない」

アンデルセン「死ぬことでしか救われない、そういう状況もあるんだ。解っただろう、女王」

688 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/22 01:12:04 kap 268/411


雪の女王「黙れ、私は認めない。そうだ魔法だ…魔法を使えばいい!マッチ売りの所へ魔女が現れる、これなら自然な展開だ」

アンデルセン「【シンデレラ】は名作だよ、ペロー先生の童話はどれもすばらしい。でも【マッチ売りの少女】には相応しくない」

雪の女王「貴様…いい加減にしろ、今度こそ問題はないだろう」

雪の女王「【シンデレラ】は人気の高い作品だ、あれも貧しい娘のシンデレラが登場するが魔法で助けられるじゃあないか。ならばマッチ売りも同じように…」

アンデルセン「私の作風はペロー先生のそれとは大きく異なる。民間伝承を元にしたファンタジー色の強いペロー先生の作品と違って私の作風はずっと現実的だ」

アンデルセン「ファンタジー色の強い作品を書くときだってリアリティは残している、そしてこの【マッチ売りの少女】は限り無く現実に近い形に仕上げたいと考えている、だから魔法使いは出せない」

雪の女王「マッチ売りを幸せにしたいとお前は言ったはずだ、ならば魔法を使って助ければいいだろう。何が気にくわない?」

アンデルセン「それなら聞くけれど現実世界に住む貧しい子供たちは…清く生きていれば魔法使いが来るのか?正しく生きていれば王子が来てくれるのか?ガラスの靴を持って?」

雪の女王「…いいや来ないさ。だが別にいいだろう、おとぎ話の世界なんだから多少は都合がいい展開だとしても」

アンデルセン「駄目なんだそれじゃ。ここで魔法に頼っては私が伝えたいことがかき消される、キチンと読み手に伝わらない」

アンデルセン「この思いが伝わらなければ未来を変えられない。貧しい子供たちを取り巻く現状を変えることなんてできないんだよ」

689 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/22 01:16:12 kap 269/411

雪の女王「未来?現状を変える?貴様は何を…」

アンデルセン「【マッチ売りの少女】はただのおとぎ話じゃない」

アンデルセン「私が童話作家として出来る、貧しい子供たちの未来を救うための希望だ」

雪の女王「救う…?世界を、おとぎ話で、か?どういう事だ…?」

アンデルセン「…雪の女王、悪いが今日は帰ってくれないか」

雪の女王「…断る。貴様は何を言っている、話はまだ終わっていないだろう」

アンデルセン「わかっている。この話をうやむやにするつもりはない、ただ…君に見て欲しいものがある。だから明日、同じ時間にこの場所に来てくれないか?」

雪の女王「……」

アンデルセン「私がこのおとぎ話を通して伝えたいことを見せる。言葉では伝えきれないが…女王ならば必ず理解してくれるはずだ」

雪の女王「…いいだろう。つき合ってやる、ただしお前がこのおとぎ話に込めた思いとやらに納得がいかなかった場合は…このおとぎ話を世に出すことは許さない」

アンデルセン「それでも構わない。なんなら両腕をへし折ってくれても構わない」

雪の女王「…いいだろう。ならば明日、もう一度訪れる事としよう」スッ

690 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/22 01:21:01 kap 270/411

女王が去った後 アンデルセンの書斎

男の声『貴様も酔狂な男だ』

アンデルセン「あぁ…いらしてたんですね。声が聞こえませんでしたからどこかへ行かれたのかと」

男の声『傍らでずっと聞いていた。所詮あの女はおとぎ話の住人、作者であるお前がその気になれば氷結能力を失わせることも出来ただろうに』

アンデルセン「その必要はありませんよ。それに…私を殺したいほど憎んでいるという事はそれ程マッチ売りや他の主人公を思ってくれていると言うことです。それは嬉しいことですよ」

男の声『くだらないな。所詮おとぎ話の住人など我々作者の道具に過ぎない。想いを伝えるための道具にな』

アンデルセン「あなたの事、尊敬していますよ。しかしそのような考えには賛同できません」

男の声『お前に賛同して貰おうとも思わん。だが私には無意味に思えてならない』

アンデルセン「そうでしょうか?」

男の声『あいも変わらず貴様はおとぎ話で未来を変えるなどと宣っているしな。不可能な夢を見るのも大概にしろ』

アンデルセン「不可能ではありませんよ。長い時間はかかっても必ず変えられます」

男の声『馬鹿め。実際に私は千年以上もの長い間人間の歴史を目の当たりにしてきた、だがおとぎ話如きに何かが変えられたことなど一度もない。不可能だ』

アンデルセン「……」

男の声『そもそみだ、おとぎ話の住人に現実世界の人間であるお前に考えなど理解できる訳ないだろう、世界が違う』

アンデルセン「そんなことはありませんよ。彼女は心優しい女性です、きっと私と同じ感情をもってくれるはずですよ」

・・・

707 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/29 00:05:56 VlT 271/411

時は少し遡って…過去、1835年
現実世界 デンマーク アンデルセンの自宅

出版業者「いやー、凄いですよ先生!先日増刷したばかりだというのに追加で刷ってくれって依頼がバンバン来てて…更に更に増刷することが決まりました!」ホクホク

アンデルセン「ふふっ、なんだか作者の私よりも君の方が嬉しそうだ」

出版業者「そりゃ嬉しいですよ!自分の所で印刷した本が大ヒットしたんですから、出版冥利に尽きるってもんです!」

出版業者「それにバンバン増刷してるんでぶっちゃけ儲かってます!これもアンデルセン先生と『即興詩人』のお陰ですよ!」

アンデルセン「私のような無名の作家の作品を世に出してくれたんだから君に感謝しているのはむしろ私の方だよ」

出版業者「そんな畏れ多いですってー!でも無名作家なのはもう過去の話ですよ、アンデルセン先生の名前を知らないデンマーク人はもう居ませんからね!よっ!有名作家!」ポンッ

アンデルセン「ふふっ、そんなにおだてなくても次回作を出すときには是非君の所に頼もうと思っているよ」クスクス

出版業者「いやいや!お世辞とかゴマスリとかではなくて…でも今後ともご贔屓にしていただけるならありがたいです!うちもバッチリ高品質な本を印刷し続けますんでまた声かけてください!」

アンデルセン「あぁ、実はいくつか案はあるんだ。まだ完成にはほど遠いのだけどね」スッ

出版業者「おぉ!それは楽しみですね、ちなみにどんな作品なんですか!?『即興詩人』のような恋愛小説ですか?それとも冒険小説?いや推理小説というパターンも…」

アンデルセン「どれもハズレだ。『即興詩人』への反響は非常に喜ばしいが私が目指している作家は小説作家ではないんだよ」

アンデルセン「私が目指しているのは童話作家だ。だから次の作品はおとぎ話にしようと思っている」

出版業者「お、おとぎ話…ですか?えぇ…マジですか…?」ドンビキ

708 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/29 00:09:53 VlT 272/411

出版業者「ちょ、ちょっと待ってください先生!それちょっと考え直しませんか!?」ガタッ

アンデルセン「何故だい?私がおとぎ話を執筆することに何か問題があるのかな?」

出版業者「問題しかありませんよ!おとぎ話っていうのは子供向けの読み物で…!いわゆる子供だましなんですよ!?」

出版業者「世間ではほとんどの場合、童話は文学作品として認められませんし扱いも小説等よりずっと劣ります…それは先生もご存知でしょう?」

アンデルセン「童話という作品を取り巻く現状は知っているよ。しかしおかしいとは思わないかい?おとぎ話には素晴らしい作品だって多いんだ、それなのに子供向けだという理由で一蹴するなんて…間違っている」

出版業者「先生の仰りたい事は解りますけど、それが世間の評価なんですって!先生は『即興詩人』のような名作を執筆できる立派な小説家なんですから小説一本でいきましょうよ!」

出版業者「せっかく世間に認知されて評価もされてるのに、わざわざ童話なんか書いて先生の評判を落とすことは無いですって!」

アンデルセン「童話は近い将来、必ず文学作品として認められて確固たる地位を築く。シャルル・ペロー先生やヤーコプさんにヴィルヘルムさんのような童話作家もこの先増えていくだろう」

出版業者「それでも…!先生は一般的な小説が書けるんですからそっちに力を入れるべきです!」

アンデルセン「その方が君の会社は儲かるから…かい?だから人気の低い童話を書かれては困ると?」

出版業者「…正直に言えばそれも理由の一つです!でもそれだけじゃありません、私は出版業者である前に一人の人間として先生に才能に惚れているんです!『即興詩人』も自腹で買いました!」

出版業者「先生の才能はずば抜けています!だからこそ童話なんて書くのは勿体ないです!これは先生のファンとしての私の気持ちなんです!」

710 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/29 00:13:39 VlT 273/411

・・・

アンデルセン「……何故だ、何故解ってくれない。世間のおとぎ話に対する評価は不当だ…何故だ…」ブツブツ

男の声『机に突っ伏していても作品は仕上がらない。いつまでそうしているつもりだアンデルセン』

アンデルセン「正直、あそこまで強く反対されるとは思っていませんでした。彼は『即興詩人』の出版で私のために親身にしてくれましたから、きっと協力してくれると信じてました」

アンデルセン「そのうえ…彼の忠告は私の作家としての将来を案じているからこそのものです。あれは彼の心からの言葉ですから尚更堪えました…」

男の声『だから私は忠告してやったのだ、童話作家を目指すなど止めろと』

アンデルセン「しかし…私の夢は童話作家です。作品を通して想いを伝えるには童話作家でなければいけません」

男の声『小説家の何が不満だ?小説でも作品を通して考えや想いを伝えることはできるだろう』

アンデルセン「そうですが、子供は小説を読みません。私が本当に想いを伝えたい相手は子供たちなんです」

男の声『お前はおとぎ話というものを高く評価しすぎだ。お前が思うほどおとぎ話は良いものでも力を持ったものでもない』

アンデルセン「かつては高名な童話作家だったあなたが、そんなことを口にするのですか?」

男の声『昔の話だ。今はただの亡霊だ。千年以上も前に肉体は朽ちたが、どう言うわけか私の魂はこの世に留まっている…理由は解らんがな』

男の声『だが現世に残れるなら儲けものだ、私は様々な人間の元を転々としながら長い時間を過ごした。霊で居るのも悪くない、こうして優れた作家の側にいればいつでも新作の小説を楽しめるのだからな。なぁアンデルセン』

アンデルセン「優れた作家などと…買いかぶりすぎですよ。『即興詩人』だってたまたま読者のウケが良かっただけです」

男の声『謙遜するな、お前の才能は本物だ。だからこそ私はお前の元に居る、そしてその存在を明かした。…その童話に夢を見ている所だけは頂けんがな』

アンデルセン「童話作家のあなたですら、認めてはくれないのですね。おとぎ話が持つ力を、未来を変える力を」

男の声『かつて童話作家だったからこそ、千年以上の時を過ごしてきた私だからこそ認めないのだ』

男の声『生きていた頃はお前と同じ考えを持っていた頃もあった。だが結局、おとぎ話などただの作り話に過ぎない。まして希望を託すなど愚かしい事だ』

・・・

711 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/29 00:18:11 VlT 274/411


雪の女王が訪れた翌日
現実世界 デンマーク アンデルセンの自宅

・・・

男の声『起きろ。起きろと言っているのだ、アンデルセン』

アンデルセン「…んん、うたた寝してしまったようだ」ウツラウツラ

男の声『あの女との約束の時間まで僅かだ。寝過ごしてまた家を破壊されては私も居心地が悪い、早急に脳を覚醒させろ』

アンデルセン「あぁ…マズいですね。寝ぼけ眼では彼女に凍らされるかも知れない。えぇっと…蝶ネクタイはどこにしまったか…。フフッ…」

男の声『…何を笑っている?』

アンデルセン「思い出し笑いですよ、先程夢を見ましてね。私が童話作家になる前、丁度『即興詩人』を出版したころの夢です」ゴソゴソ

男の声『あぁ…あの頃か。私はあの時散々忠告してやったのに、結局お前は童話作家になるという愚かな道を選んだのだったな』フンッ

アンデルセン「私の夢でしたからね。ですが今はこうして結果も残せています、ですから『愚かな』という物言いは訂正していただきたいものです」

男の声『何を言っている、当時は滅茶苦茶に酷評されていただろう。あの出版業者の言葉通り、実力ある作家が童話など書くなとまで言われていた癖に』

男の声『まぁまったくの正論だったがな。それなのにどういうわけか…お前の童話は周囲に受け入れられてしまった、私には到底理解できんな』

アンデルセン「私が落ち目の時でも出版を引き受けてくれた彼や、常々文句を付けてくれたあなたのおかげですよ。感謝してます」フフッ

男の声『フンッ、お前のおとぎ話がどれだけ受け入れられようとそれがなんの力も持たないただの物語だという事実は変わらん』フイッ

アンデルセン「あなたは相変わらずですね、あの頃からおとぎ話への嫌悪は一向に変わらないんですから」

男の声『お前も大概だろう。いつまでも無意味な夢を追い続けている辺りがな』フンッ

・・・

712 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/29 00:21:27 VlT 275/411

現実世界 デンマーク アンデルセンの自宅 前

雪の女王「……」ザッ

── アンデルセン「明日、同じ時間にこの場所に来てくれないか」

── アンデルセン「私がこのおとぎ話を通じて伝えたいことを見せる」

雪の女王(あの男が【マッチ売りの少女】を通して読者に伝えたかったこと……)

雪の女王(あの男は、アンデルセンは多くの主人公を不幸にした憎むべき作者だ。だが……この言葉が嘘だとは思えない)

雪の女王(アンデルセンは何を思ってあんな辛い結末の物語を生み出したのか…)

雪の女王「ここで考えても仕方ないか…。奴に会えば全て解る」スッ

リンゴンリンゴーン…

アンデルセン「あぁ、いらっしゃい。来てくれたんだね女王」フフッ

雪の女王「お前が来いと言ったのだろう?それとも来ない方が良かったか?」ギロッ

アンデルセン「そんな事はないさ、歓迎する。ただまた昨日みたいに鍵を壊して進入してくるのかも…と身構えていたから拍子抜けではあるかな」フフッ

雪の女王「そうか。今からでも遅くはないだろう、貴様の期待に応えて扉を破壊してやろうか?30秒ほど貰うが」スッ

アンデルセン「待ってくれ、冗談だ。これから出掛けなければいけないんだ、扉を壊されるのは困ってしまう」フフッ

713 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/29 00:23:38 VlT 276/411

雪の女王「出掛ける…?その先に貴様があのおとぎ話を書いた理由があるというのか?」

アンデルセン「まぁそうだね。少し歩くが構わないだろう?」

雪の女王「いいだろう。そういう事ならつき合ってやる。それで、何か支度が必要か?」

アンデルセン「いいや、女王はそのままの格好で構わない。それ以外には必要なものも特に無い」

雪の女王「そうか。いや…待て、昨日似たような格好で街に出たら妙に目立ってしまったんだ。暗い色のコートを羽織るとかして変装しておいた方がいい」

アンデルセン「あぁ…確かに君の衣装は刺激的だ。この季節にしては露出も多い」クスクス

雪の女王「他人事のように…貴様がそのように生み出したんだろう?問題があるのなら貴様が責任を持ってなんとかしろ」ギロリ

アンデルセン「なんでも私の責任にされても困ってしまうな。だが問題はないよ、むしろ少々目立った方が好都合だ」

雪の女王「好都合…?」

アンデルセン「とにかくその格好のままでいいよ。さぁ、そろそろ行こうか」

雪の女王「待て。結局何処へ行くんだ?」

アンデルセン「そう身構えなくても良いじゃないか。なんてことない、ただのパーティー会場さ」スタスタ

714 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/29 00:29:26 VlT 277/411

現実世界 デンマーク とある大きなパーティー会場

アンデルセン「さぁ到着だ。えぇっと、招待状は何処へしまったかな…」ゴソゴソ

雪の女王「随分と大きな会場だな。無駄に豪奢で、警備も客も多い…身なりに随分と金をかけていそうな輩も多い」

アンデルセン「貴族のお坊ちゃんの主催だからね。さて、女王には一つ芝居を打って貰うが…ここでは私の助手として振る舞ってくれるか?」

雪の女王「私が…貴様の助手だと?私がお前を襲撃した理由を忘れたか?」ギロリ

アンデルセン「忘れちゃいないよ。ただ…私はあまりこういった場には顔を出さないから女性の君を連れていれば周囲の人間は興味本位で関係を聞いてくるかも知れない」

アンデルセン「私もこう見えてこのデンマークでは随分と名の知れている男だ。腑に落ちないかも知れないが面倒を防ぐためだ、頼むよ」フフッ

雪の女王「…やむを得ないか。あくまでフリだ、いいな?」

アンデルセン「あぁ、構わないよ。助手クン、早速荷物を持ってくれるかな?」フフッ

雪の女王「……」ギロッ

アンデルセン「参ったな。こんな調子じゃすぐに怪しまれてしまう、そうすれば目的を達成することも難しいな…いやはや参ったな」ヤレヤレ

雪の女王「わかりましたお持ちします…ただしあまり調子に乗ると後で地獄を見ることになりますよ先生」ギロッ

アンデルセン「あぁ恐ろしい助手だ…まぁお手柔らかに頼むよ」クスクス

715 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/29 00:34:01 VlT 278/411


ザワザワ ザワザワ

アンデルセン「さて…この辺りに彼が居るはずだが…」キョロキョロ

出版業者「あっ、アナスン先生!今日はご足労頂きありがとうございます!なんとお礼を言っていいやら!」

アンデルセン「やぁしばらくぶり。どうだい調子は?」

出版業者「おかげさまで特に病気もなく!どうやら先生もお変わりないようで!……ところでそちらの女性は?はっ!もしかして先生の恋人ですか!?」

アンデルセン「違う違う、そうじゃないよ。彼女は…」

出版業者「またまたー!隠さなくたって良いですよ!私と先生の仲じゃないですか!こんな若くて綺麗な女性捕まえて先生も隅に置けませんね!ふぅーっ!」フゥーッ

雪の女王「こいつが今、違うと言ったのが聞こえなかったか…?」ギロリ

出版業者「ひっ」ビクッ

アンデルセン「彼は私の作品の出版を担当してくれているんだ、随分長い付き合いになる。さぁ挨拶を」

雪の女王「…申し遅れました、私はアンデルセン先生の助手です。先程は冗談が過ぎて申し訳ございません」ニッコリ

出版業者「あっ、ジョーク!?そうですよね!いやいやこっちこそ失礼しました、先生は長らく助手さんをとらなかったので私はてっきり!ははは!」

アンデルセン「もう少しうまくあわせてほしいものだが…」ボソッ

雪の女王「お前のような男と恋仲だと思われた私の気持ちになれ。不愉快意外の何ものでもない」ボソッ

716 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/29 00:38:38 VlT 279/411

出版業者「何はともあれ私がご案内しますよ!先生、どうぞこちらへ!助手の方も」スッ

アンデルセン「それにしても…随分大勢の客を招いたようだ、あのお坊ちゃんは。相当費用もかさんでいるだろうな」

出版業者「えぇ、豪華すぎです…普通はここまでしませんよ。やっぱり貴族の方は体裁とか気にしますからね、著名人も結構来てますよ。それであのー…先生のご友人のグリム様とかリンド様とかには…招待状渡していただきました?」チラッ

アンデルセン「それは手紙で断ったはずだが?」

出版業者「でしたよねぇ…ダメ元で聞きました」ペコリー

アンデルセン「ヤーコプさんもヴィルヘルムさんも何かと忙しいだろうしジェニーには舞台だってあるんだ。例え暇があったとしてもこんなくだらない集まりの為にわざわざ呼べないし呼ばないよ」

出版業者「…いや本当にすいません。失礼なのは承知の上なんですけど、私としても一応頼むだけはしておかないと」

アンデルセン「構わないよ、君の気苦労も理解できる」

出版業者「すんません、でも本当にアナスン先生が来てくださっただけでもぜんぜん助かりました。これでうちの会社も首の皮繋がりましたよ…」

雪の女王「おいアンデルセン…先生、結局この集まりは何なのですか」

アンデルセン「とある貴族の坊ちゃんが先日小説家としてデビューしてね、これはその記念式典を兼ねたパーティーというわけだ」

出版業者「そうなんです。その方はアナスン先生のファンらしくてですね…先生の作品を扱ってるうちの会社にその小説の出版をさせてやるからアナスン先生を紹介しろって言われまして」

出版業者「断ると後が怖いんで…失礼を承知で先生にお願いしていたんですよ。本当はこういう集まり苦手なのに本当にすいません、先生」

アンデルセン「まぁたまにはいいんじゃないか、それに別の目的も果たせそうだ」

717 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/29 00:42:31 VlT 280/411

雪の女王「なるほど…その貴族としてはこのパーティーに貴様…先生が来ていれば箔が付くというところか。こう見えて有名作家だものな」

アンデルセン「貴族というのはやたら見栄を張りたがる。私がいれば『あのアンデルセンが認めた!』とか言いはれる、自画自賛になってしまうが私の名前は出版物を出す時に使えば何かと都合がいいのさ」

出版業者「先生以外にもいろんな著名人来てますよ、画家とか政治家とか歌手やら色々…挨拶回りだけで大変ですよ」グッタリ

雪の女王「他人の威光を借りようって腹積もりか…馬鹿馬鹿しい」

アンデルセン「気持ちは分からんでもないがな、意味があるかどうかは別問題だが」

出版業者「ちょっと先生も助手さんも何処で誰が聞いてるかわかんないんでもうちょっとトーンを…ところで招待状と一緒にお贈りした小説は読んでもらえました?絶対送ってくれって言われてるんで…」

アンデルセン「あぁ、一応目を通しておいた」

出版業者「助かります。あっ、あそこにいらっしゃるのがその小説の作者でこのパーティーの主役の…」

雪の女王「貴族のお坊ちゃまか」

出版業者「先生、ホント軽くでいいんで挨拶して貰っていいですか?一応紹介するって約束なんで、ホントスイマセン」

アンデルセン「あぁ、では行こうか助手クン」スタスタ

雪の女王「…あぁ、行こうか先生」スタスタ

718 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/29 00:47:17 VlT 281/411


出版業者「せ、先生お疲れ様ですー!」ヘコヘコ

貴族作家「あぁ、君か。どうかしたのか?」

出版業者「先生に是非とも紹介したい方がいらっしゃいまして…ささっ、アナスン先生お願いします」ススッ

アンデルセン「本日はお招きいただきありがとうございます。お初にお目にかかります。私、ハンス・クリスチャン・アンデルセンと申します」ペコリ

貴族作家「おぉ、あなたがあの有名な!招待状をお渡ししたもののこの様なパーティーには滅多に足を運ばないと聞いていましたので心配していたのです」

アンデルセン「いえいえ、お招き感謝しております。この度はデビュー作品の出版おめでとうございます」

貴族作家「ありがとうございます。実は私はあなたのファンなのでお会いできて光栄です。立食ではありますが食事も用意しているので存分に楽しんでいただきたい」

アンデルセン「ありがとうございます。それにしても随分と豪勢な式典ですね、これほどに贅を尽くしたパーティーは私といえども見たことがございません」

貴族作家「そうでしょうそうでしょう!数々の著名人を呼び寄せ会場にも装飾にも料理も最上級のものを用意しましたからな」ハハハ

アンデルセン「流石は○○様の御子息、金に糸目を付けないとはまさにこのことでございますな」ハハハ

出版業者「先生ー!アナスン先生ー!口汚いの出てますって!」ヒソヒソヒソヒソ

貴族作家「フフッ、アナスン先生はどうやら冗談がお好きなようだ。ところで私の作品は既にごらん頂けましたか?」

アンデルセン「えぇ、もちろんですとも。非常に興味深い内容でした」

719 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/29 00:53:36 VlT 282/411

貴族作家「そうですか!あのアナスン先生に読んでいただけるとは光栄です。で…いかがでしたか?私の作品は」ウキウキ

アンデルセン「いやはや、あの様な凄まじい作品を目にしたのははじめてと言って差し支えありませんね」

貴族作家「おぉ、そんなに素晴らしかったですか!」

アンデルセン「えぇ、なんと表現しましょうか…読み手の感動を誘う言葉使い、終止収まることのないワクワク感と膨れ上がる期待…それを受け止めるだけの重厚な結末」

アンデルセン「私にはとても真似できない物語でした」

貴族作家「おぉ、アナスン先生にそこまで誉めていただけると自信がつきますよ。次回作も期待していただきたい、完成しだい贈らせますので」ホクホク

アンデルセン「それは光栄ですね…んっ?どうしたかね助手クン?」

雪の女王「は?…………あぁ、そろそろお時間が迫っております先生」

アンデルセン「なんと、せっかくの機会だというのに…先生、名残惜しいですが私は新作の執筆がございますのでこの辺りで…」

貴族作家「そうですか。おい、アナスン先生をご自宅までお送りして差し上げろ」

使用人「はっ!」

アンデルセン「いえいえ、それには及びません。それでは私はこれで…」

720 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/08/29 01:03:35 VlT 283/411

・・・

出版業者「助かりましたアナスン先生!今日はありがとうございました、でも不意に口悪くなるの何とかしてください…」

アンデルセン「悪気はないんだが…さぁすまないが私は用事があるから失礼するよ。新作は出来次第連絡を入れるからもう少し待っていて貰えるかな」

出版業者「あっ、はい!お待ちしています!あの、送迎本当にいいんですか?遠慮なさらなくていいんですよ?」

アンデルセン「あぁ結構、寄るところもあるんでね。それじゃあお疲れ様」スッ

・・・

アンデルセン「ふぅ、少々疲れたな助手クン?」

雪の女王「もうその茶番はいいだろう…それと突然私に振るのは止めろアンデルセン」

アンデルセン「あぁ、すまない。君ならうまくあわせてくれると思ってね」フフッ

雪の女王「調子のいいことを…さっきだってそうだ。ワクワク感だの自分には真似できないなどと感想を述べていたが…貴様あの男の小説読んでいないな?」

アンデルセン「フフッ、失礼だな?ちゃんと読んださ、20ページくらいね」フフッ

雪の女王「そんなところだと思った。感想に内容がなかったからな、抽象的な言葉ばかりでストーリーや展開には一切振れていない」

アンデルセン「見抜かれてしまったな。だが彼は気が付いていなかったから良しとしようか」クスクス

雪の女王「不誠実な奴め。どれだけ興味が無くともそれなりに読んで感想を述べるのもああいった場では社交辞令として必要だろう」

アンデルセン「そうは言うが…実際の感想なんか言えば悪評が広がり私が贔屓にしている出版社が潰れることになりかねないしな」クスクス

雪の女王「大袈裟すぎるな。そんなに酷い出来と言うわけでもないだろうに」

アンデルセン「そうだな、まぁ彼の小説でもっともすばらしいところをあげるなら…鍋敷きとして使うのに丁度よい厚さだったというところくらいだな」フフッ



アンデルセン「さぁ用事は済んだ。次の場所へ向かおうか、女王」

雪の女王「次の場所…?」

728 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/01 00:14:50 agy 284/411


現実世界 デンマーク アンデルセンが住む街 パーティー会場前

アンデルセン「あぁ、夜の風が心地よいな。やはり人混みは私の性に合わない」フフッ

雪の女王「…アンデルセン。私はお前が【マッチ売りの少女】を生み出した理由を知るためにここにいるんだ」

アンデルセン「あぁ、知っているよ。私もそのために君を連れてきたんだ」

雪の女王「ならば答えて貰おうか。このくだらないパーティーに私を連れてきた理由はなんだ?」

アンデルセン「言っているじゃあないか、私が【マッチ売りの少女】を生み出した理由を君に教えるためだよ」

雪の女王「そうは言うが、私にはこの時間に意味があったようには思えない」

雪の女王「貴族が道楽でパーティーを開催し、富や名声のある連中が集まって体面や社交を気にして無為な時間を過ごしていただけだ。そんな場に…」

アンデルセン「【マッチ売りの少女】が生み出された理由があるとは思えない…と言いたいのかな、君は」

雪の女王「そうだな、あれはマッチ売りの悲惨な結末とはかけ離れた場だった」

アンデルセン「昨日、私がこう言ったのを覚えているかい?『このおとぎ話は限り無く現実に近い形に仕上げたい』と」

雪の女王「あぁ覚えている。しかしそれとこのパーティーに参加した事に何の関係がある?」

アンデルセン「マッチ売りが生きる世界は【マッチ売りの少女】の世界だがそれはこの現実世界に限りなく似ている。そしてマッチ売りが住む街をこの街に例えるのなら…」

アンデルセン「さっきの会場にいた人々は、マッチ売りの街に住んでいた裕福な人々だ」

雪の女王「【マッチ売りの少女】の街の連中?あの会場にいた連中がか?」

729 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/01 00:16:21 agy 285/411

アンデルセン「例えるならだ。思い出して欲しい、マッチ売りは貧しかったが何もあの街全体が貧困に苦しんでいたわけじゃない」

アンデルセン「マッチ売りが寒さに震えて売れないマッチを握りしめている時、あの街の人々の多くは暖かく明るい家の中で美味しい料理を食べていただろう」

雪の女王「そう考えると随分と無慈悲な連中だ。その金の一部を使ってマッチを買ってやれば彼女は救われるだろうに」

アンデルセン「気持ちは解るが彼等を責めるのは筋違いだ。彼等の多くは真っ当な仕事をしてそれ相応の生活を手に入れている、後ろ指を指されるようなことはしていないさ」

アンデルセン「だがいくら懐に余裕があっても街の連中はマッチを買わない、絶対に。私がそう書き記したからじゃなく、絶対にマッチを買わない理由がある。それが何だか解るかい?」

雪の女王「街の連中が…マッチを必要としていなかったから、か?」

アンデルセン「それもあるだろうね。他には?」

雪の女王「優しい心を持っていなかったからじゃあないか?例えマッチが必要なくても可哀想な少女を見かけたら手をさしのべるものだ」

アンデルセン「なるほど、どちらも正解と言えるだろうね。でも私の考えはこうだ」

アンデルセン「街の人々はマッチ売りに気付いていない。だからマッチを絶対に買わない」

雪の女王「気付いていない?裸足の少女が一人でマッチを売る姿なんか目立つ筈だ、気が付かないなんて有り得ないだろう。絶対に目に付く」

アンデルセン「私が言っているのは視覚的な意味ではないんだ」

雪の女王「なんだそれは。目に見えているのに気付いていない…という事か?なおさら理解できない…貴様は何が言いたい?」

アンデルセン「私が言いたいこと、私の考え。それを知るために君はここにいるんだろう?」

アンデルセン「ならば容易に聞かずに感じ取ることだ。私が生み出した君ならばきっと同じ考えにたどり着けるだろうからね」クスクス

730 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/01 00:18:07 agy 286/411

アンデルセンの住む街 大通り

雪の女王「…いいだろう、私はそれを知るためにここにいるんだ。貴様の挑発めいた物言いは気に入らないがな」

アンデルセン「フフッ、それならばいつまでもここでおしゃべりをしていても仕方がない。先を急ごう」

雪の女王(もう日も暮れている、こんな時間に何処へ向かうというのだ?)

アンデルセン「さて、行き先だが…この街道を真っ直ぐ向こう側へ進んでいく。ただただ道なりに進んでいくだけだから迷うことはないだろう」スッ

アンデルセン「では私は先に向かう、君は少し後からついてくるといい。ある程度の距離をとりながらな、ただしはぐれると面倒だから私を見失わないように」

雪の女王「待て。同じ場所に向かうのだろう?はぐれると面倒だと解っていながら何故わざわざ別行動する必要があるのか?」

アンデルセン「おやおや、なんだかんだ言いながら見知らぬ街で独りきりなのは心細いのかい?だから私と共に行動したいと」クスクス

雪の女王「茶化すんじゃない。人通りの多いこの街道でそのような意味のない行動をとる必要は無いと言っているんだ」

アンデルセン「私がわざわざ無意味な行動に時間を費やす理由があるのかい?あるというのならその理由を聞かせて貰おう」

雪の女王「そういう訳ではない。だが一般的に考えて……」

アンデルセン「君は雪深い氷の世界で長らく独りで生活してきた、誰とも関わらずにね。だからこそ自分の考えを常に正しく思い、自分の行動に迷いなど無かっただろう」

アンデルセン「誰も反対意見を出す者が居ないし、自分と比較する相手が居たわけでも無いからね。だが女王、同じ場所に立っていてはそこからは同じ風景しか見えない」

アンデルセン「実際の風景は自分の目に映っているものだけじゃあない、見方を変えなければ見えないものがたくさんある。その事に気がつけなければ…」

アンデルセン「君も、君が無慈悲と称したマッチ売りの街の連中と同じだよ」スタスタ

731 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/01 00:19:24 agy 287/411

スタスタ スタスタ

雪の女王「……」ギロリ

雪の女王(結局あの男は私の少し前を歩いていく。そしてそれを見失わないように距離を置いて私は後を追う)

雪の女王(あの男の挑発じみた口調は頭に来る、おそらくはそれが無自覚だということもそれに拍車をかけた)

雪の女王「私が…マッチ売りに手をさしのべなかった薄情な街の連中と同じ?ふざけるのも大概にしろ、そんな訳がないだろう」ブツブツ

雪の女王(私が【マッチ売りの少女】の結末に納得がいかないのは彼女を思ってのことだ、可哀想な少女が可哀想なまま死ぬ結末など…何よりも残酷だ)

雪の女王(だがあの男にはそうしてでも誰かに伝えたい何かがあったわけで…そして奴はそれを私に伝えるためにどこかへ向かっている)

雪の女王(少しの距離を置いて歩くという一見無意味な行動をして、だ)

雪の女王「…見方を変えなければ見えないものがあると奴は言った。おそらく…一緒にいては見えないものを後ろから見ていろという事だろうが…」

アンデルセン「……」スタスタ

雪の女王「有名な童話作家だか何だか知らないが…ただの男にしか見えない。あんな奴の背中を見て何が解ると言うんだ」

雪の女王(…いや、奴は腹の立つ男だが無意味なことをさせたりはしないだろう。今は文句を言うよりも奴が何を言おうとしているのか汲み取ることの方が大切だ)

雪の女王(奴が言うように、見方を変えれば今まで気づけなかったことが見えるかも知れない。今はそれを信じる事にしようか)スタスタ

732 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/01 00:21:36 agy 288/411

スタスタ スタスタ

アンデルセン「……」スタスタ

雪の女王「とはいえ、何も変わった事など…。んっ…?誰かが奴に近づいて来る、カゴ一杯の花束…あの風貌は花売りか?」

花売りの少女「ごきげんよう、素敵なお洋服のおじさま。綺麗なお花はいかがですか?」ニコッ

アンデルセン「花か、そういえば久しく飾っていないな。ひとつ貰おうか、お嬢さんいくらだい?」スッ

花売りの少女「ありがとうございます!こっちの花は銅貨一枚、花束だと銅貨五枚です」ニコッ

アンデルセン「そうか、どれも美しくて目移りしてしまうな…どうしたものか」

花売りの少女「おじさま。もしよろしければこのカゴには無い特別なお花もお売りできますよ?お暇ならいかがですか?」ニコニコ

アンデルセン「…そうか、値段を聞いても構わないかな?」

花売りの少女「一晩で金貨30枚です」ニコッ

アンデルセン「そうだな…せっかくだけど時間が無い、この花束を金貨一枚で貰おう」スッ

花売りの少女「そうですか、ありがとうございます!でも花束はひとつ銅貨五枚ですよ?お釣りは無いんですが…」

アンデルセン「いいんだ。君に洋服を誉められて気分がいいから、とっておきなさい」スッ

花売りの少女「ありがとうございます、素敵なおじさま。では、ごきげんよう」ニコッ

733 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/01 00:24:03 agy 289/411


アンデルセン「……」スタスタ

雪の女王「アンデルセンの奴、花を買ってあげるなんて優しいところがあるじゃないか」フフッ

雪の女王「しかし…あいつ花束似合わなすぎるな…。……なんだ、あいつまた花売りに話しかけられてるじゃないか」

花売りの娘「素敵なお花をお持ちですねおじさま」ニコリ

アンデルセン「ありがとう。見たところ君も花売りのようだね」

花売りの娘「はい、よろしければおひとついかがですか?おじさまはとてもお花が似合いますからきっとより素敵に見えますよ」ニコニコ

アンデルセン「フフッ、君は随分と口がうまいな。いくらだい?」スッ

花売りの娘「花束はひとつで銅貨五枚です。一晩でしたら金貨35枚ですけどおじさまは優しそうな方なので金貨28枚でお売りしますよ」ニコッ

アンデルセン「折角だが気持ちだけ受け取っておこう。金貨一枚で花束をひとつ貰えるかい?」

花売りの娘「はいっ、ありがとうございます」ニコッ

雪の女王「来るときは気が付かなかったが…この辺りには随分と物売りや物乞いが多いな。しかし何故私のところには花売りが来ないんだ?アンデルセンは既に二人に声をかけられているのに」

雪の女王「勝ち負けでは無いが…なんだか妙に悔しいな。これでは私が声をかけづらい女のようじゃないか。花なんていくらでも買ってやるのに」ギリッ

花売りの女の子「あの…お姉さん、今の本当ですか?お花、買ってくれますか?」トテトテ

雪の女王「んっ…聞かれてしまったか、恥ずかしいな。だがいいだろう、君も花売りなんだろう?一つと言わず残っている花束すべて買ってやろう、いくらだ?」スッ

734 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/01 00:25:19 agy 290/411


花売りの女の子「ぜ、全部ですか?本当にですか?でも、それだと……」キョトン

雪の女王「あぁ、カゴごと全部貰おう。いくらだ?」

花売りの女の子「全部だとえっと…銀貨20枚です。あの、でも……」

雪の女王「そうか、ではこれで」スッ

花売りの女の子「あ、あの…とても嬉しいんですけど全部買っていただくとあの、その……」ペコペコ

雪の女王「なんだ?売れ残りが出るよりも売り切った方がいいだろう?」

花売りの女の子「そうなんですけど、でもそれじゃ…花売りが出来なくなっちゃうので…」オドオド

雪の女王「……?」

ザッ

アンデルセン「まったく君は何をやっているんだ、彼女の仕事の邪魔をして…営業妨害かい?」

雪の女王「邪魔とは随分だな、私はただこの子から花束を全て買おうとしただけだ。貴様にそんな言い方をされるいわれは無い」

アンデルセン「私の連れ合いが申し訳ないことをしたねお嬢さん。お詫びに花束を一つだけ頂こう、金貨二枚でいいかな?」スッ

花売りの女の子「えっ、あっ、ありがとうございます。じゃあこれ…どうぞ」スッ

アンデルセン「ありがとう、確かに。さぁ行こうか女王、これ以上彼女の邪魔をしては悪いからね」スッ

雪の女王「何が邪魔だと言うんだ?この少女もマッチ売りのように花が売れなければ親に叱られるかも知れない、それならば全て花を買ってやった方がいいだろう」

アンデルセン「…思った以上に君は純粋なんだな。とにかく行こう、私達が騒いで目立っては彼女も仕事をしづらくなるだろうからね」

735 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/01 00:27:45 agy 291/411

スタスタ スタスタ

雪の女王「流石にこれは説明して貰うぞアンデルセン!納得がいかない」ギロリ

アンデルセン「説明はする、だからそう憤らないでくれ女王。なんならさっき買った花束は君に贈るよ、ほらこれで怒り心頭の君もとりあえず外見だけは美しくて穏やかな女性に見えるぞ」ハハハ

雪の女王「貴様は本当に私を落ち着かせるつもりがあるのか?それとも馬鹿にしているのか?」ギロリ

アンデルセン「馬鹿にしたつもりはないんだが…気に障ったのならば謝るよ」

雪の女王「いいか?彼女は花束を売っていた、私はそれを全て買おうとしただけだ。花が全て売れればそれに越したことはない、これのどこが問題なんだ?」

アンデルセン「彼女達は花売りに扮しているだけだ、自分の本来の仕事を隠すために花売りの姿をしているだけ。だから花を全て買われると困ってしまうわけだな、変装道具を奪われるようなものだからな」

雪の女王「そういうことならば…私の好意が仇となった理屈は解る。しかし何故自分の仕事を隠す必要がある?」

アンデルセン「彼女達は自分自身の身体を売って生活しているからだ」

アンデルセン「彼女達の中には未成年の少女も少なくない。目立った売春行為はトラブルを招きかねないだろう、だから花売りとして客に近づく…表向きの職業が花売りならばいざというとき言い訳も利く」

雪の女王「笑えないジョークだな。貴様の書くおとぎ話にそんな下品な冗談は無かったと思うが?」キッ

アンデルセン「冗談ではないさ。実際、女性の君に声をかけた花売りが他にいたかい?」

雪の女王「いいや、居なかった。しかし…」

アンデルセン「そりゃあ居る訳はないだろう、少女を買う女性なんかいないからね。もし彼女達が本物の花売りならば君にも声をかけるはずだろう。違うか?」

雪の女王「待て、話の筋は通っているが…あまりに馬鹿げている!花売りの中には年端もいかない娘だって紛れていた、彼女達が身を売っているなど…そんなおかしな話があるか!」グイッ

アンデルセン「おかしな話でも何でもない。彼女達はほとんどが貧民街の出身、親もなく金もなく読み書き計算がろくに出来ない者も多いだろう」

アンデルセン「それでも男ならば肉体労働の仕事に就けるが…彼女達はそうもいかない。生きていくには金が必要だが…働き口がない」

アンデルセン「ただでさえ女性の働き口は少ないと言うのに学がなければまともな仕事に就くのは難しい。となるともう身体を売って金を得るしかない」

アンデルセン「信じたくないという君の気持ちは分かるが…これが現実だ」

736 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/01 00:30:35 agy 292/411

アンデルセン「彼女達のような貧しい子供たちは生きるために手段を選んでいられない。食事を得るためには身を売ろうと心を売ろうと金を手にしなければならない」

雪の女王「それなら誰かが手をさしのべればいい……お前は相当高名な童話作家だ。収入だって十分あるだろう」

アンデルセン「だから私に彼女たちを養えと?」

雪の女王「そこまでは言わない、だが少なくともお前になら彼女達が身を売らなくても生活できるようにするだけの資産がある…そうだろう」

アンデルセン「私財をなげうつのは構わない、私は独り身だからな。だがそれで何人の子供たちが救える?あいにくだが貧困に苦しむ子供たちを全て助けられるほどの資産は持っていない」

雪の女王「だが何もやらないよりもずっと良い。少なくとも救われる子供はいるわけだからな…なんだったら私の宮殿の資産も使ってくれ、それならば…」

アンデルセン「私と君が全ての財産を寄付したとしてもそれは一時的な救済にしかならない。根本的な解決策にはならない」

雪の女王「だから何もしないというのか?根本的な解決が出来ないからといって見捨てるのか?」

アンデルセン「そうは言っていない。だがこれは…貧困層の子供たちを取り巻く問題は思いつきの寄付で解決できるような根の浅い問題じゃない」

アンデルセン「同じような苦しみを持っている子供たちはこの街の外…いやデンマーク国外の様々な国々に存在する。そのすべての子供たちを救うなど今の私達には不可能だ」

雪の女王「……」

アンデルセン「今の我々に出来ることはせめて、せめて彼女達から花を買い…わずかばかりの金銭を渡すことくらいだ」

737 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/01 00:32:22 agy 293/411

雪の女王「…馬鹿げている」

アンデルセン「そうだな、私もそう思う。だが…彼等彼女らを取り巻く問題は何もこれだけじゃない」

雪の女王「まだ何かあるっていうのか?」

アンデルセン「もう暗いというのに道の端に子供が多いと思わないか?」

雪の女王「確かに言われてみればそうだが…まさか彼等には帰る家もないというのか?」

アンデルセン「ほとんどがそうだ、スラム街に住む場所があるのならまだ良いが…そうでない子供も多い。この大通りは飲食店や商店も多いから路地裏よりいくらか暖かいし雨をしのげる場所もある」

アンデルセン「だがそれはあくまで最低限だ、野外で寝泊まりして体調を崩すこともあるだろうが当然医者にかかる金など無いわけだ。だがそれを覚悟で路上生活をしなければ他にいくところ等無い」

アンデルセン「無理がたたって病死する子供だって少なくない」

雪の女王「……お前がおとぎ話を通して言いたい事、少しは理解できたかも知れない」

アンデルセン「そうかい、それはなによりだ…ならば最後にそこの路地を曲がろう。より現実を見ることができる」

雪の女王「そこの路地…先が見えないほど真っ暗じゃないか、街灯が赤々と灯るこの大通りと違って薄暗いが…」

アンデルセン「言っただろう、見方を変えなければ他の景色は見えない。ただ…十分に警戒をして進むことを勧めるよ」

アンデルセン「身に危険が及びかねない場所に女性を連れ行くのは忍びないが…現実を見据えるためにはこれも必要だ」

738 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/01 00:35:33 agy 294/411


アンデルセンが住む街 町外れの路地

スタスタ スタスタ

アンデルセン「……」

雪の女王「……おい、アンデルセン。平気なのか?」

アンデルセン「何がだい?」

雪の女王「暗くてよく見えないが明らかに誰かに見られている。いや監視されているといってもおかしくない」

アンデルセン「まぁそうだろうね。私達はパーティー帰りでそれなりに身なりだ。平気かどうかで言えば…平気ではないな」

雪の女王「……予想はしていたが、きっと想像通りなんだろう」

アンデルセン「あぁ、きっと君の予想は正しい。だからこそ決して隙を見せないことだ。そうでなければ……持って行かれるぞ、何もかも」

ガタッ ビュバッ

賊の少年1「…外したか。気をつけろ、この女良い身なりをしている割には素早いぞ」

雪の女王「やはり予想通り…こんな薄暗い小道に入り込めばこうなるのは当然か。貴様は相当無茶をする…」スッ

アンデルセン「あまり悠長にしている場合では無さそうだな、想定よりも数が多い」スッ

賊の少年2「怯むな!相手は二人、数ではこっちが圧倒的有利だ!」

賊の少年3「男の方はそこそこのコートを着込んでいるし女の方は見たこともない生地の洋服だ。剥ぎ取って売ればいくらかは凌げる」

雪の女王「こんな少年たちが追い剥ぎに身を落とすか…嘆かわしく悔しいが、今はそんなことを行っている場合でもないな」

アンデルセン「君のことだから実際に目にしてみないと信じきれないと思ってね。だがこれで信じざるをえないだろう、あとは彼らをいなして帰宅するのみだ」スッ

740 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/01 00:42:04 agy 295/411

賊の少年1「逃がす隙を与えるな、取り囲め。逃げ道を塞げ」ヒュッ

チャキッ

雪の女王「錆び付いてはいるが…子供がナイフなんか握るものじゃないよ」スッ

賊の少年「だったらこいつでブン殴るってのなら構わないよなぁー!」ビュオンッ

パキパキパキ

雪の女王「私相手になら構わないよ。その程度の強度しかない角材なら…氷の盾で十分だ」パキキ

族の少年3「何もない場所から氷が…!何者だこいつ…!」

雪の女王「暗がりでこそ実力が出せるのは君たちだけじゃない。助けてあげたいところだが…理由があろうとも君たちの行為は悪だ、見過ごすことは出来ないな」スッ パキパキパキ

アンデルセン「女王、駄目だ。君の氷結に耐えられるほどの体力は彼等にはないかもしれない…あくまで魔法の類は無しだ」

賊の少年1「ごちゃごちゃとやかましい。一斉にかかれば避けられまい、攻め手を休めるな。生きるために容赦はするな」バッ

雪の女王「アンデルセン、悠長なことを言っているのはお前じゃないか。この力を使わなければ私など腕力もないただの女だ、避けるのが精一杯だぞ」スッ

739 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/01 00:39:17 agy 296/411

賊の少年2「クソッ…まただ!さっさと殺しちまわないと騒ぎを嗅ぎつけて誰かきちまう」チャキッ

賊の少年3「女が手強いなら男の方からだ!見るからにほそっちょろい優男だ、俺たちが一斉にかかれば一瞬だ」ババッ

アンデルセン「その考えは的確だ、私は闘いの心得がないからね。だが私は作家だ、作家には作家なりの戦い方があるというものだ」スッ キュルキュル

ビュンッ ビチャッ

賊の少年2「うわっ!目の前が真っ暗に…何かぶちまけてくるぞ気をつけろ!」グアアア

賊の少年3「クソッ、得体の知れない液体で目潰ししてくるとは…これ以上は無理だ、引き上げよう」

賊の少年1「やむを得ない、引くぞ」スッ

スタタタタ

雪の女王「どうやら彼等は追い払えたようだな。しかし…インク瓶、こんなものを投げつけて応戦するとは呆れた作家根性だな」

アンデルセン「仕事柄必要な消耗品だからな、それに相手を倒すほどの力は私にないからな。そもそも倒す必要はない、追い払えればそれで上々だ。これに懲りればいいのだが…難しいか」

雪の女王「どちらにしろ無茶をする奴だ。賊に襲撃されると解っていながら人目に付かない路地に入り込むんだからな」

アンデルセン「言っただろう、こうしないと君が信じないと思った。本当は彼等にも僅かばかりでも援助をしたいが…悪事に手を染めて利益を得たんじゃあ彼等の身にならない」

雪の女王「味を占めて犯罪に手を染めることが常態化するのは良くないからな」

アンデルセン「さぁ、どちらにしろ…これで見て貰うものは全て見て貰った。予定より遅くなってしまったけれど、我が家に帰るとしよう」

アンデルセン「そしてそこで聞かせて貰おう、君が感じたこと。そして私の想いや考えを理解することが出来たかどうかを」

741 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/01 00:56:54 agy 297/411


アンデルセンの自宅 キッチン

雪の女王「貴様が無茶をするせいで無駄に疲れてしまったな」ドサッ

アンデルセン「そう言わないでくれ、私が口で言ったところで君は容易には信じないだろう?っと、お茶より冷たい水の方がいいかい?」

雪の女王「頂こう。まぁ…それに関しては否定しないがな」

アンデルセン「それで、わかってくれたかな。私が何故マッチ売りを生み出したのかが」コトッ

雪の女王「あぁ、私が今日目にした身を売る少女も路上生活をする子供も追い剥ぎに身を落とす子供も…紛れもない現実。そして彼等は…マッチ売りと同じだ」

雪の女王「おとぎ話の中でマッチ売りは報われずに死んだ、それを私は残酷だと思ったが……少なくともマッチ売りは自分の身体を売ることは無かったし、酷い父親が居るといえ帰る家もあった、犯罪に手を染めることも無かった」

雪の女王「逆に行えば…そこまで身を削ることなく安らかに眠れたのは確かにある種の幸福かもしれない。私が出会った彼等は明日も明後日も辛い生活を強いられる、それならいっそのこと楽になった方が幸せだという考えも理解できなくはない」

アンデルセン「あぁ、彼らは死ぬことでしか幸福になれない」

雪の女王「そしてお前が見えていないと言ったのは…私をあの街の連中と同じにしたのは、その事が見えていなかったからだ」

雪の女王「自分は平和な人生を送っている、不足のない生活が送れている、だからそれに満足して現実を別の角度から見ようとしない」

雪の女王「だから気づけない。同じ街に住んでいても気づけない。同じ大通りにいながらも私やあのパーティー会場の人間はきっと目と鼻の先に貧困に苦しむ子供が居るとは思っていない」

雪の女王「少し角度を変えて見ようとすれば見えるのに、そうしないからあの辛い生活を強いられたら子供たちに気付いてあげられない」

雪の女王「貴様が…アンデルセンが読者に伝えたい言葉はおそらくこうだろう」

雪の女王「『君の隣にいるマッチ売りに気付いてくれ』」


アンデルセン「流石は雪の女王、君なら解ってくれると信じていたよ。…そう、君の言う通り。私の気持ちはまさにそれだよ」

アンデルセン「何処にでもマッチ売りのような子供はいる、お話の中の彼女が特別な訳じゃない。だからその存在に気づいてあげてほしくて…私はこの物語を執筆したんだ、すぐ隣にいるマッチ売りに気づいてほしくてね」

752 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/06 00:17:06 CTj 298/411


アンデルセン「君がこの街の隅で身を削りながら生きている子供達を見て知ったように、私は世界中の人に知って欲しいんだ」

アンデルセン「【マッチ売りの少女】を通して、自分の隣にもマッチ売りが居ることを。すぐ近くにも助けを必要としている人達が居ることを」

アンデルセン「そして自分の生活に余裕があるのなら手を差し伸べて欲しい。自分の生活だけで精一杯だというのなら無理する必要なんかは無い、だがせめて…その現状を知っていて欲しい」

アンデルセン「大切なのは隣にいるマッチ売りに目を向けることだ。世界中の人達がそれを出来るようになれば…それは大きな力となり必ずこの世界はもっと優しく幸せになれる」

雪の女王「…お前が見据えていたのは、世界中の子供達の幸福だったというわけか」

アンデルセン「そんな大仰なものではないよ。ただ私も幼い頃は貧しい家庭で育った。だから隣にいるマッチ売りに気付くことは容易だっただけさ」

アンデルセン「デンマークの田舎に住む貧民の私が、何の因果かこうして童話作家として活動し十分すぎる地位と名声を手に入れた。だから私は自分に出来る形でマッチ売りに手を差し伸べているだけだよ」

雪の女王「確かに…童話作家としてのお前が持つ影響力は絶大だ。お前のおとぎ話はこのデンマークをあっという間に越えて世界に広まるんだろう」

雪の女王「なにしろ世間の評価じゃあお前は有名童話作家。そいつが書いた作品なんだ、ひとたび世に出れば【マッチ売りの少女】とそれに込められた思いが世界中を飛び交うのにそう時間は掛からないだろう」

雪の女王「そうすれば世界中の人々は、隣にいるマッチ売りに気付けるかもしれない。お前がそう願ったように」

アンデルセン「そうだな、きっと気付いてくれる。そうすれば未来は必ず良いものになるだろう…おとぎ話にはそれだけの力がある。改めて私は童話作家であることを誇りに思うよ」フフッ

アンデルセン「一つの想いを、一つの言葉を世界中に伝えるのは容易じゃない。どんなに立派な王でも大統領でも、すさまじい影響力を持つ学者の先生でもそれは難しい」

アンデルセン「だが童話作家にはいとも容易くそれが出来る。作者によって紡がれたおとぎ話は人から人へ親から子へ語り継がれていく。百年後も千年後も、例え私の本が全て朽ちて、この名が人々の記憶から消え去っても…」

アンデルセン「おとぎ話が人々の心に残ることが出来たなら、おとぎ話は消えやしない。それに込められた想いも時を越えて生き続ける、あらゆる時代のあらゆる国々で」

雪の女王「もしそうなれば…それはとても素晴らしいことだな」

アンデルセン「あぁ。長い時間の果てにいつか必ず、必ず訪れるはずだ」

アンデルセン「世界中の不幸な子供達が救われる日が。マッチ売りがマッチの炎の奥に見た幻なんかではない…本当の幸福を手にするときが」

753 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/06 00:19:36 CTj 299/411

雪の女王「……」

アンデルセン「これが童話作家アンデルセンが【マッチ売りの少女】に込めた想いと、このおとぎ話を生み出した理由だ」

雪の女王「あぁ…よく解ったよ。どうやらお前は私が思っていたよりも悪い奴ではないらしい、変わった奴だという評価は覆らないがな」

アンデルセン「そりゃあどうも。だが変わり者はお互い様だ、わざわざ作者にクレームを入れに来るおとぎ話の住人なんかそうそう居ない」フフッ

雪の女王「まぁ…否定は出来ないな。だが私を生み出したのはお前だ、似る部分もあるだろう」フイッ

アンデルセン「ハハッ、それもそうだな。それはさておき…私は話すべき事を全て打ち明けた。おとぎ話に込めた思いも何もかも全てな」

雪の女王「…あぁ、お前の想いも信念も私は確かに受け取った。今まで見落としていたものにも気付かせてくれて感謝さえしている」

アンデルセン「それならば…君の考えを聞かせて貰おう」スッ

アンデルセン「女王、君はマッチ売りの結末に納得が出来たかい?この【マッチ売りの少女】を出版することに…賛成してくれるかい?」

雪の女王「納得は出来たよ。マッチ売りの悲惨な結末は…世界中の不幸な子供を救う光となる。幸せな未来を紡ぐための希望になる」

アンデルセン「女王、君なら解ってくれると信じていた。それならば……」

雪の女王「だが【マッチ売りの少女】を出版することに賛成するかと聞かれれば……正直、答えが出ない」

754 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/06 00:22:26 CTj 300/411

アンデルセン「…そうか」

雪の女王「お前が【マッチ売りの少女】を執筆した理由、お前の信念はとても立派で非常に尊いと私は思う」

雪の女王「不幸な子供達を救おう、未来を変えようと言う心意気に私は共感がもてる、私に出来る事があるのなら協力するつもりだ」

雪の女王「【マッチ売りの少女】の物語を世界中の人に読んで欲しいという気持ちは……ある。だが私もやはりおとぎ話の住人だ」

アンデルセン「気がかりなこともある…そうだな?」

雪の女王「なんだ…私の考えなんてお見通しなんだな」

アンデルセン「私は言わば君の父親だからな。もっとも君は不本意に思うだろうが」

雪の女王「…今ではそうでもないさ。だがお前が言うとおり気がかりなこともある」

雪の女王「それは【マッチ売りの少女】の主人公の事だ。いくらお前の信念が立派で、この物語に価値があろうと、未来を照らす光になる可能性があろうと…」

雪の女王「マッチ売りは不幸になるために生み出される。言い方は悪いがそれは揺るぎない事実だ」

アンデルセン「……」

雪の女王「部外者の私がいくら納得したところで…お前が彼女にどれだけ希望を託したところで…彼女は苦しい生活を送りやがて死んでいく」

雪の女王「幸福な幻に…偽りの幸せに包まれて、ひとりで死んでいく…。それは私達が勝手に運命づけていいことなんだろうか…?」

755 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/06 00:24:42 CTj 301/411

雪の女王「今となっては…もう私はお前を責めるつもりはない。だが…」

アンデルセン「マッチ売りには自分の行く末に意味があるなんて知らない。ただ貧しい生活、虐待、空腹、無関心…様々な理不尽に揉まれて死んでいく」

アンデルセン「現世の苦痛から逃れられるといっても…幼い少女にとって命を失うことは恐怖以外のなにものでもないだろう。だからこそ私は幻を彼女に見せたのだが……いや」

アンデルセン「どんな言葉を並べ立てた所で結局、君たちおとぎ話の住人にとってはこう写るのだろうな」

アンデルセン「マッチ売りは作者アンデルセンに利用されて殺された、とね」

雪の女王「…そこまでは思わないさ。だが…【マッチ売りの少女】を出版して世間にそのおとぎ話が認知されればやがて彼女の世界が生み出される」

雪の女王「その世界ではそのおとぎ話の内容の通りの運命が待ち受けている。マッチ売りは…どう足掻いても死んでしまう」

雪の女王「今ではお前の想いは正しいと思っている、このおとぎ話は世間に公表すべきだと。だが私の選択が一人の少女の命を奪うことになると考えると…決断できない」

アンデルセン「【マッチ売りの少女】の出版に賛成することは君自身がマッチ売りの命を奪うことになると…そう考えているのか?」

雪の女王「そうだ。ここで私が出版に反対すればマッチ売りは死なない。その代わり世界中の子供達が救われることもない」

雪の女王「どちらかを選べと言うのは…酷な話だ。私には答えを出せそうにない」

アンデルセン「……そうか、ならばこうしよう。君との約束は反故にする」

雪の女王「反故だと?どういうことだ?」

756 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/06 00:26:09 CTj 302/411

アンデルセン「私は君に【マッチ売りの少女】を執筆した理由を話して君が納得すれば出版、納得しなければ出版はしないと約束したな」

雪の女王「あぁ、そうだ」

アンデルセン「しかし君がそれほどにまで悩むのならばこの約束は無かったことにする」

アンデルセン「これでは出版してもしなくても君の心にはずっと雲がかかる。いずれその選択を後悔するかも知れない」

アンデルセン「それならば私が独断で出版をすることを決める。それならば君が気に病むことはないだろう、全ては私の責任となるのだから」

雪の女王「しかし、それでは…」

アンデルセン「何も問題はないさ。私は信じているからね、マッチ売りの事を。彼女は…もしも自分がおとぎ話の住人で自分の結末を知ってしまったとしても、それを受け入れる強さと優しさを持っている」

雪の女王「何故そこまで言い切れる?会ったこともない少女だぞ?」

アンデルセン「彼女には…マッチ売りにはモデルがいると昨日話したな」

雪の女王「あぁ、確かお前が世話になった相手だと…」

アンデルセン「マッチ売りのモデルは私の母親なんだ。もう随分と昔に亡くなってしまったがな」

757 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/06 00:28:36 CTj 303/411

雪の女王「お前の…母親。お前は幼い頃は貧しかったといっていたが、その母親もそうだったのか…?」

アンデルセン「私の母は幼少時代とても貧しい家庭に育った。それこそマッチ売りのように父親に暴力を振るわれたという話も耳にしたな」

アンデルセン「それでも母はめげずに生き、やがて私の父と結婚するが…父も母を残して先に逝ってしまった」

雪の女王「妻とお前達子供を残して…か。貧しい生活の上にそれは辛かっただろう」

アンデルセン「それからと言うもの母は女手ひとつで私と兄弟を育ててくれたよ。自分のことは全て我慢して私達のために苦労を買って出てくれた」

アンデルセン「自分の幸福よりも他人の幸せを願うような人だった。周囲が笑っていれば自分が辛かろうと平気な顔をしているような人で…」

アンデルセン「やがて私は夢を叶えるために母を実家に残して都会へ出て行った。母が亡くなったという知らせを聞いたのも葬儀のずっと後で、死に目にも会えなかったよ。とんだ親不孝者だ」

雪の女王「……」

アンデルセン「散々苦労をかけていながら何一つ親孝行出来なかった。童話作家として成功した頃には既に母は亡く…私は墓前に花と自分の童話集を手向ける事しか出来なかった」

アンデルセン「だから母をマッチ売りのモデルにしたのは親孝行のつもりなんだ。【マッチ売りの少女】が…自分自身がモデルとなったおとぎ話が不幸な子供達を幸せにすることが出来たのなら……母はきっと喜ぶ、そういう人だ」

アンデルセン「フフッ、こんな話…いい歳をした男が何を言っているのかと思われるかも知れないな」

雪の女王「いいや、そんな事思ったりしないさ」

アンデルセン「だから彼女は…マッチ売りはきっと解ってくれる、私はそう信じているんだ」

758 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/06 00:33:13 CTj 304/411

雪の女王「…随分と都合のいい考え方だ」

アンデルセン「フフッ、そうかも知れないな。君の言うとおりだ」フフッ

雪の女王「だが…お前は【マッチ売りの少女】の作者だ。お前がマッチ売りの人物像に幼い頃の母親の姿を投影したのなら…マッチ売りの性格もまた母親と同じようになるのかも知れない」

アンデルセン「そうなってくれなくては困るな。マッチ売りが…母が失意の中死んでいくのは嫌だ」フフッ

雪の女王「……いいだろう。ここでお前にだけ責任を押しつけては女王の名が廃る」

雪の女王「【マッチ売りの少女】の出版に賛成する。これでもしマッチ売りが自分の運命を恨んだとしてもそれはお前だけじゃなくお前と私の責任だ」

アンデルセン「ほう、いいのか?後で後悔しないな?」

雪の女王「しないさ。と言うより…お前の母は自分の運命を恨んだりしないんだろう?」

アンデルセン「しないな、貧しい生活に文句一つ言わない人だった」

雪の女王「それなら問題ない。私はお前を信じることにした、お前が問題ないというのなら問題ないのだろう」

アンデルセン「私を評価してくれることはありがたいが…なんだか恐ろしいな、昨日はあれほど私を殺そうとしていたのに。手のひら返しが早くないか?」クスクス

雪の女王「そうだな。なんなら今すぐにまた手のひらを返してお前の腕をねじ切っても構わないんだぞ?」

アンデルセン「あぁ済まない。言い過ぎた、腕は勘弁してくれ…執筆が出来なくなる」

759 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/06 00:37:56 CTj 305/411

雪の女王「ただし、一つ条件がある。それを飲まないなら出版に賛成しない」

アンデルセン「ほう…何を言われるのか解らないが少々恐ろしいな」クスクス

雪の女王「マッチ売りに関しては確かに納得した。だがお前が執筆した他のおとぎ話は別だ、お前がこれから生み出していくおとぎ話に関してもだ」

雪の女王「お前のことだ、どのおとぎ話にも何らかの思いが込められていてそれぞれの主人公のいく末には何かしらの理由が存在する…そうだろう?」

アンデルセン「当然だ。富や名声を得る事が目的の中身が空っぽのおとぎ話は書かない主義なんでね」

雪の女王「だろうな。ならばお前のどの作品にどんな思いを込めているのか…一つ一つ説明してもらおう。それが条件だ」

アンデルセン「……なるほど」ニヤニヤ

雪の女王「…なんだその顔は」

アンデルセン「その条件を飲もう。ただし助手として私につき従う事がこちらから提示する条件だ、飲めるかい?」

雪の女王「勘違いをするなよ?私は別に個人的な興味があるからお前の話を聞くわけじゃあないんだ。助手になるつもりはない、あくまでだな…」

アンデルセン「まぁそういう事にしておいてやろう。この世界に滞在したいのなら部屋を用意してあげよう、これからよろしく頼むよ。助手クン?」クスクス

雪の女王「……お前は本当に一言多いな」キッ

アンデルセン「睨まないでくれたまえ助手クン。それとも何か不服かな?」

雪の女王「……いいえ、何でもありませんよ先生。ただしあまり師匠面するようなら氷の刃がその胸を貫きますからご注意を」

アンデルセン「ハハッ、それは恐ろしい。とんでもない助手をとってしまったな」クスクス

・・・

760 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/06 00:41:35 CTj 306/411

現在
雪の女王の世界 女王の宮殿 書庫

雪の女王「……と、こんな所だ」

ティンカーベル「なるほど…マッチ売りちゃんの話がハッピーエンドっての納得いかなかったけど、アンデルセンが言いたいこと解った気がする」

ティンカーベル「確かにさ、私もピーターパンがやられちゃったのに私一人だけ逃がして貰ったときは辛くて…ちょっと死んじゃいたいって思ったもん、内緒だけどさ」

雪の女王「死ねば苦しみから解放されると言う考えは…良いとは思わないがそれにすがらざるを得ない場合というのは残念ながらあるものだ」

ティンカーベル「まっ、でもさ!アンデルセンがマッチ売りちゃんに不幸な運命を押し付けた理由、解って良かったよ!」

ティンカーベル「少なくとも私は納得できたよ!さっきはアンデルセンバカにして悪いことしちゃったカモ!言い過ぎた!」

雪の女王「いいのさ、あいつは悪く言われても仕方のない奴だ」クスクス

ティンカーベル「女王も大概言いすぎだけどね…」

雪の女王「それでキモオタはどうだい?君はマッチ売りと実際に出会い、交流があったんだろう?私の話を聞いてどう思ったんだ?」

キモオタ「いやはや…我輩、不覚にも男泣きでござるよ…!」ブワァ

ティンカーベル「もー!いいよ泣かなくても!キモイからー!」フワフワ

キモオタ「えええwwwマッチ売り殿のこと思い出して泣いてるんでござるからもうちょっと優しくしてくれてもいいでござろうにwww」

761 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/06 00:50:59 CTj 307/411


キモオタ「女王殿、まずは話していただいてありがとうでござる」ペコリ

雪の女王「どういたしまして。で、君の中で何か変わったかい?」

キモオタ「そうですな…まずはマッチ売り殿のあの結末がキチンと意味や願いがあるもので良かったと安心しているでござる」

キモオタ「昨今のお涙頂戴展開のアニメのように人気取りのためにあんな結末にされていたとしたらマッチ殿も浮かばれませんからなwww」

雪の女王「その点は安心してくれ。アナスンは自分の利益のためにおとぎ話を書いたりはしなかった」

キモオタ「そのようでござるな…それに、アンデルセン殿の考えはドンピシャだったでござるよ」

雪の女王「ドンピシャ?」

キモオタ「マッチ売り殿は自分の死が未来の子供達の為になるのならと自分の運命を受け入れたのでござる。まさにアンデルセン殿が信じたように…彼女は強く優しい少女でござった」

ティンカーベル「うんうん、私達やドロシー達が干渉しちゃったからおとぎ話の事とか知る事になっちゃったけど…結果的には良かったのかな?」

キモオタ「それは何ともいえないでござるな…。とはいえマッチ売り殿は作者や周囲の者、自分の境遇を恨むようなことは無かったでござる」

キモオタ「偶然か必然か、アンデルセン殿の想いもマッチ売り殿の想いも本質は同じ。子供達の幸せを願ってのことでござる」

キモオタ「マッチ売り殿が幸福だったかどうか…我輩は断言できないでござる。しかしそれでも、彼女やアンデルセン殿の想いは確実に【マッチ売りの少女】の中に息づいているわけでござる」

キモオタ「【マッチ売りの少女】が消滅しなければアンデルセン殿が願ったように不幸な子供達は減っていくでござろう、そしてやがて世界中の子供達が幸せになれたとき」

キモオタ「本当の意味で、マッチ売り殿は幸せになれるのでござろうな。そして我輩はそれを願うばかりでござるよ」

771 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/12 00:37:02 eFq 308/411



雪の女王「以前ヘンゼルを連れてきた時にも感じた事だが…君は顔に似合わず優しい心を持っている男だな」フフッ

キモオタ「ドゥフフwwwよく言われるでござるwww」コポォ

雪の女王「マッチ売りは君に出会えて幸せだったと思うぞ。彼女は命を失ったが…その魂が安らかに眠ることを祈り続けてくれる者に出会えたんだ」

雪の女王「少なくとも…君たちの存在は彼女の心を救うことが出来た。私はそう思うよ」

キモオタ「それなら嬉しいのでござるが……しかし我輩は心身共にキモいでござるからなぁwwwマッチ売り殿の支えになれたのかどうか怪しいところでござるwww」コポォ

ティンカーベル「まったくその通りだよね!っていうか今だから言うけどマッチ売りちゃんなんでキモオタに懐いてたんだろう…こんなにキモいのに…」ムムム

キモオタ「ちょwwwずっとそんな事思っていたのでござるかwwwせっかくのシリアスが台無しwww」コポォ

ティンカーベル「あはは!でもさ、大丈夫だよ!マッチ売りちゃんも世界中の子供達もいつか絶対幸せになれるよ!」

ティンカーベル「司書さんが読み聞かせしてた時さ、子供達はマッチ売りちゃんの為に泣いてくれたよ。だからアンデルセンやマッチ売りちゃんが願う未来は絶対に来るよ!」

キモオタ「ですなwwwそうだと超絶喜ばしいでござるwwwそうでござろう女王殿www」

雪の女王「あぁそうだな。私もアナスンの友人として、その未来が訪れることを願っているよ」

キモオタ「ドゥフフwww我輩、女王殿には改めて礼を言わせていただきたいでござるwwwマッチ売り殿が生み出された理由…聞けて良かったでござるよwww」

キモオタ「アンデルセン殿の想いを遂げるためにもマッチ売り殿との約束を果たすためにも…我々がアリス殿を必ずや止めて見せますぞ!」フンッ

ティンカーベル「おぉー!更にやる気が沸いてきたって感じ?」

キモオタ「このキモオタ全力で挑みますぞwww明日は遂に決戦でござるし気持ちを引き締めていきますぞwwwティンカーベル殿www」コポォ

ティンカーベル「そうだね!頑張ろうね!まぁでもキモオタは気持ちだけじゃなくてその出っ張ったお腹も引き締めた方がいいと思うけどね!」クスクス

キモオタ「ちょwww別にそれ今言わなくてもいいのではwww隙あらば我輩をディスるのやめていただきたいwww」ポヨン

772 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/09/12 00:38:46 eFq 309/411

雪の女王「フフッ、作戦の決行は明日だというのに二人とも冗談を飛ばす余裕があるんだな。頼もしいことだ」クスクス

キモオタ「いやぁwwwそういう訳ではないのでござるけどwwwふざけてるのは我々にとって平常営業でござるからwww」コポォ

ティンカーベル「まぁ私の場合は緊張をほぐす意味であえてキモオタをからかってるみたいなところあるけどね!」フンス

キモオタ「ちょwwwものは言い様でござるなwwwじゃあ仕方ないですなってならないでござるぞwww」コポォ

雪の女王「フフッ、まぁ気負い過ぎるよりはずっといいさ。だが二人とも冗談が好きなようだ、ふざけすぎて作戦に影響を出さないようにな」クスクス

ティンカーベル「あーっ!女王ったら私たちがいつも冗談ばっかしふざけてばっかしだとか思ってるでしょ?心外だよねキモオタ!」プンスコ

キモオタ「まぁ割と否定は出来ないでござるけどwwwとはいえアリス殿を止めることに関しては大真面目ですぞwww」

ティンカーベル「そうだよね!今回の女王の話でちょっと気になることもあったし!」

キモオタ「そうですな。現実世界の住人であるアンデルセン殿が…女王殿に出会う前からおとぎ話の世界の存在を知っていたという点でござるな?」

ティンカーベル「そうそう、いきなり女王が来ても驚かなかったんだもんね」

雪の女王「そうだな。アナスンは私と出会う以前からおとぎ話の世界の存在を知っていた。ある童話作家から聞いたと言っていたが…」

ティンカーベル「うーん…誰から聞いたのかな?ていうかその童話作家はどうしてこの事を知ってたんだろうね?」

キモオタ「不可解でござるよね。現実世界の人間におとぎ話の世界を認知する手段はありませんからな…」

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雪の女王「確かに妙ではあるが…このアナスンがおとぎ話の世界について知っていたことはアリスの件とは無関係なのではないか?」

雪の女王「【不思議の国のアリス】が出版されたのは私達が出会ってからずっと後だ、この時代にアリスは存在すらしていないさ」

キモオタ「となるとアリス殿の仕業という可能性は無いでござるか…となると何処の誰がどうやってその事を知ったのか…」

雪の女王「随分と気にしているな、何か理由でもあるのか?」

キモオタ「実はアンデルセン殿の他にもおとぎ話の世界の存在を認知している作者を我々は知っているのでござるよ」

ティンカーベル「【かぐや姫】の世界で知ったんだけどさ、女王はウィーダっていう作者知ってる?」

雪の女王「あぁ、確か【フランダースの犬】の作者だったな」

キモオタ「かぐや殿に聞いた話だとどうやらウィーダ殿はおとぎ話の世界の存在を知っていて、更に【フランダースの犬】の世界へ渡る手段ももっていたとか…」

ティンカーベル「この事がアリスと何か関係があるのかどうかはわかんないけど…でも気になるよね」

キモオタ「アリス殿は現実世界を憎んでいるようでござる。ならば…現実世界とおとぎ話の世界、両方の存在を認知している者が何らかの鍵を握っている可能性も…あるでござるな」

ティンカーベル「アリスはヘンゼルみたいに自分の作者に腹を立ててた感じじゃないし、何か別のところに現実世界を嫌う理由があるんだろうしね」

雪の女王「本来知るはずのない世界の存在を知っている作者達…彼等の存在がアリスが凶行に及んだ理由と関係していると、そう考えているわけだな?」

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キモオタ「ぶっちゃけそこまで考えが固まっているわけではないでござるが…」

ティンカーベル「どんな理由があったとしてもアリスのやってる事は許しちゃいけないことだよ。でも何でこんなことしたのかは気になるし…」

雪の女王「知っていればアリスを止めるためのカードともなり得る、か」

キモオタ「そうですな。雪の女王殿、アンデルセン殿はその事について何か言っていなかったでござるか?」

雪の女王「特には記憶にないな。存在を知ってはいたがアナスンがおとぎ話の世界へ行くことは一度も無かったしその経験が無いとも聞いている」

ティンカーベル「あくまで知ってるだけって事かな、世界移動する手段も無かっただろうし…あっ!でも女王なら世界移動できるじゃん!」

雪の女王「確かにそうだがアナスンを現実世界から連れ出した事はないよ。必要性もなかったし彼が望んだことも無かったからな」

キモオタ「そうでござるか…おとぎ話の世界について知っていた作者は今の所アンデルセン殿、ウィーダ殿と…あとはとある童話作家殿でござるか」

ティンカーベル「うーん…女王は他に心当たりない?」

雪の女王「そうだな…アナスンはあまり他人との関わりをもたないタイプだった。話すとしても余程近しい人物だろうが…」

雪の女王「…実際のところはどうか解らない。だが可能性がある人物はいるな」

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キモオタ「おとぎ話の世界の存在を知っていた可能性がある人物…それは一体誰ですかな?」

雪の女王「数人存在するアナスンと特に親しい人物だ。一人は当時のオペラ歌手ジェニー・リンド…彼女は作家ではないがアナスンとは親しかった」

ティンカーベル「童話作家じゃないけどアンデルセンと仲良かったなら知ってた可能性はあるって事だね」

雪の女王「あとは君達も知っている名だろうが…グリム童話の作者兄弟だ」

キモオタ「確かヘンゼル殿グレーテル殿の世界を生み出した作者でござるな?」

雪の女王「あぁ、君の仲間の【ラプンツェル】の作者でもある。兄の名はヤーコプ、弟をヴィルヘルムと言った」

ティンカーベル「すんごく有名だよね、グリム童話!やっぱ童話作家同士は惹かれあうのかな?スタンド使いとおんなじで」

キモオタ「ぶっふぉwwwお主このタイミングでwww」コポォ

雪の女王「話を進めるぞ?アナスンにとってグリム兄弟は童話作家の先輩であり良い理解者でもあった。アナスンが誰かにおとぎ話の世界のことを話すとすればこの三人だと思うが……いや、もう一人居たな。この事を話しているかも知れない相手が」

キモオタ「ほう…それは一体どなたですかな?」

雪の女王「当時、私達が出会ったとある青年だ。相当変わった奴だったが…才能にあふれた奴で、ユーモアもある奴だったな。私は相当手を焼かされたがおもしろい青年だった」

ティンカーベル「へーっ…女王が言うならきっと相当だよね、その人の話もちょっと聞きたいかも!」

キモオタ「ティンカーベル殿は頻繁に話を脱線させますなwwwしかし我輩も興味はありますぞwww」

雪の女王「そうか?それならば彼との出会いについて話そう。あれは…私がアナスンの助手となってしばらく経ったある日のことだった」


続き
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」九冊目【4】

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