キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」九冊目【1】

383 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/06 00:51:01 jqz 118/411

裸の王様の世界 裸王の城 廊下

タッタッタッタッ

ヘンゼル(とにかくグレーテルの所へ急ごう。裸王さんが言うようにグレーテルが不機嫌なら…それは間違いなく僕のせいだ)

ヘンゼル(あの魔女から逃げ出してからグレーテルは感情表現が少なくなってしまった、今では随分感情を表すようになったとは言っても…初対面の裸王さんの前でも不機嫌をあらわにするなんて事をグレーテルは普通、しない)

ヘンゼル「つまり…グレーテルは今、相当に不満を抱えてる。急がないと…」タッタッタッタッ

小夜啼鳥「だからと言って廊下を走るのは紳士としてどうですかね?ここはお城なんですからそれ相応のマナーを持たなければいけませんよ」ピチチチ

ヘンゼル「君は本当に神出鬼没だね、消えたと思ったら突然戻ってくる…でも僕は急いでるんだ、今は大目に見てよ」タッタッタッ

小夜啼鳥「まぁグレーテルちゃんが心配なのは分かりますよ。でもあなたの不躾な行動は周囲からの女王様への評価を貶める事にもなります、妹様方を見る目にも影響するでしょうね」

ヘンゼル「…分かったよ。君は僕を従わせる一番の言葉がそれだって知って言ってるよね、本当によく調べてるよ僕達のことを…ちょっと
憎らしいくらいだ」フゥ…

小夜啼鳥「それはどうも、賞賛として受け取っておきます」ピチチチ

ヘンゼル「…まぁいいけどさ、言ってることは正しいし。でも僕は妹が心配だ、僕に歩けと言うのなら君だけでも先に行ってグレーテル達の様子を見てきてくれないかな?」

小夜啼鳥「その必要はありませんよ、既にグレーテルちゃんとお千代さんの様子は伺ってきましたから。ヘンゼル君が気にしてると思ってずっと陰で様子を見てたんですよ、あなたが一番大切なのはあの二人ですもんね?」

ヘンゼル「…本当によく解ってるよね僕のこと、でも助かるよ。ありがとう」

小夜啼鳥「私はあなたのお目付役なんですから。それに見守るにしろ監視にしろスパイにしろ、かげから様子をうかがうのは鳥類の十八番ですよ」ピチチチ

384 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/06 00:53:13 jqz 119/411

小夜啼鳥「とりあえず慌てて走っていくほどではないかと。とはいえ…まぁグレーテルちゃんは機嫌悪そうでしたね。ああもふくれっ面ばかりだとせっかくの可愛い顔が台無しです」ピチチチ

ヘンゼル「そうなんだ…でもグレーテルはふくれっ面でも可愛いと思うけど」スタスタ

小夜啼鳥「……」

ヘンゼル「何?」スタスタ

小夜啼鳥「いえ、別に」

ヘンゼル「でもグレーテルとお千代をこの世界へ連れてきたのは失敗だったかもね…。僕が君といる理由やアリスと戦うことになった事、色々と話さなきゃいけないから来て貰ったんだけど…」

ヘンゼル「でも僕はライオンやかかしを迎えに行かなきゃいけなかったから、グレーテル達をしばらくほったらかしにしちゃったし……事情も言わずにいきなり別世界に連れだしてほったらかしなんてそりゃあ機嫌も悪くなるよね、悪いことしちゃったな」

小夜啼鳥「確かに少々配慮には欠けてました、一言言うべきでしたね」

ヘンゼル「そうだね、相手が家族だから後で言えば大丈夫だなんて考えはちょっと良くなかったね」

小夜啼鳥「親しき仲にも礼儀ありと言いますからね。ですが…グレーテルちゃんが不機嫌なのは別の理由もあるでしょうね」

ヘンゼル「そうなの?僕、他にグレーテルが機嫌悪くするようなことしてないと思うけど…」

小夜啼鳥「…それならこれを期に自覚した方がいいかもしれませんね、ヘンゼル君」

ヘンゼル「自覚…?」

小夜啼鳥「えぇ、知っておくべきですよ。君がグレーテルちゃんを守るために一人きりで行動すればするほど…彼女の不満は募っていくという事を」

385 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/06 00:56:15 jqz 120/411

ヘンゼル「……」

小夜啼鳥「まぁ君もその事を全く考えてない訳じゃないんでしょうけどね」

ヘンゼル「グレーテルは寂しがり屋だ、それにずっと僕と一緒にいたから…自分で言うのもなんだけど相当なお兄ちゃん子だ。それは解ってるよ」

小夜啼鳥「なら君と一緒にいられない事が、お兄ちゃんの側にいられないというのがどれだけグレーテルちゃんにとって苦痛かわかるはずでは?」

ヘンゼル「それは…わかってる。僕を慕ってくれるのはとても嬉しいし同時に悪いとも思ってるよ。でも…仕方がないことだよ」

小夜啼鳥「仕方がない、ですか」

ヘンゼル「おとぎ話の世界にも現実世界にも悪い奴は大勢いる。とくに現実世界のあの国ではグレーテルの容姿は良くも悪くも目立つ、悪い奴に目を付けられる可能性は高いんだ」

ヘンゼル「お千代は今は大人だから僕達を養ってくれるし守ってくれるよ、でも本来…妹を守るのは僕の役割なんだ。でも僕は子供だし二人を守るための力を十分には持っていない」

小夜啼鳥「そうですね、君は元々は自分を変え…そして強くなるためにこの世界へ来たのですしね」

ヘンゼル「グレーテルが寂しい思いをしているのもお千代に心配をかけてるのも悪いとは思うけど…今の僕じゃ二人を守れない、だからその力を付けるまでは少し我慢して貰わなきゃいけない」

ヘンゼル「今は辛いかもしれないけど…いつの日か僕がどんな悪意からでも二人を守れるようになったらその時はずっと一緒にいられる。だから…僕が強くなるまでの辛抱なんだ」

小夜啼鳥「なるほど…それがヘンゼル君の思いというわけですね」

386 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/06 00:58:22 jqz 121/411

ヘンゼル「そうだね。それに…誰にも言わないで欲しいんだけど、僕だって二人の側にいられないのは辛い」

小夜啼鳥「でしょうね。ヘンゼル君ほどのシスコ…いえ、妹思いの少年が平気な訳ないですから、辛いのはお互い様というわけですか」

ヘンゼル「だからって僕は自分自身を正当化するつもりはないけど…でもやっぱり仕方がないことだよ。僕の旅にグレーテルを同行させるわけにも行かないし…」

小夜啼鳥「おや、どうしてですか?グレーテルちゃんと君が一緒に旅をすれば兄妹はお互いに会えない寂しさを感じず済むでしょう」

ヘンゼル「無茶だよ、そんな事考えられない」

小夜啼鳥「どうしてですか?」

ヘンゼル「言ったじゃないか、今の僕は二人を満足に守ることができない。火打ち箱だって完全に使いこなせているわけじゃない。この【裸の王様】の世界は平和で治安も良いけど、この次にいく世界が同じだとは限らない」

ヘンゼル「おとぎ話の世界には盗賊や殺人鬼が登場するような治安の悪い世界だってある、そんな所にはなるべく行かないようにはしたいけど…やむを得ないことだってあるかもしれない」

ヘンゼル「何が起きるか分からない旅先にグレーテルを連れていけないし連れて行きたくないんだ。僕が未熟なうちはね」

小夜啼鳥「私が思うにグレーテルちゃんは君に守って貰わなければいけないほど弱くはありませんよ、もう少し肩の力を抜いてもいいのでは」

ヘンゼル「弱くないだって?それはグレーテルが魔法を使うことが出来るから言ってるの?残念だけどグレーテルは魔法を使うことを禁止されているし僕も魔力を分けるつもりは…」

小夜啼鳥「違いますよ、魔法が使えるかどうかではなく…もっと精神的なことですね」

387 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/06 01:00:43 jqz 122/411

ヘンゼル「精神的な…?」

小夜啼鳥「えぇ、君が妹を守りたいと考えているように…おそらくグレーテルちゃんもまたお兄ちゃんである君を守り手助けがしたいと思っている…思い当たる節、あるはずですよ」

ヘンゼル「……確かに、僕があの悪い魔女に捕まっているときグレーテルはあの魔女を殺してまで僕を助けてくれた」

小夜啼鳥「私はその件は正当防衛だと思いますしグレーテルちゃんを責めるつもりはありません。ですが…いくら辛くても幼い少女が殺しを選択するというのは余程の事です」

ヘンゼル「それだけあの魔女に虐げられた日々が辛かったって事だ…」

小夜啼鳥「それだけでしょうか?自分が助かるためだけではなく…君を助けるためにグレーテルちゃんは魔女を殺したと考える方が自然では?」

ヘンゼル「…そうかもしれない。でもだから何だって言うの?」

小夜啼鳥「グレーテルちゃんは何もできずに助けを待って泣いているだけの女の子ではないという事です。グレーテルちゃんは君を…大切なお兄ちゃんを助けるために悪い魔女と戦う覚悟を決めたんですから」

ヘンゼル「…それはこじつけだよ。追い詰められてやっただけかもしれないじゃないか」

小夜啼鳥「そうでしょうか?私はそうは思いませんし覚悟を決められるというのはある程度の精神の強さがなければ出来ませんよ」

ヘンゼル「……」

小夜啼鳥「ヘンゼル君は…立派なお兄ちゃんであろうとするあまりグレーテルちゃんの気持ちが見えていないんですよ」

388 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/06 01:04:05 jqz 123/411

ヘンゼル「そんなはずないよ。僕は誰よりグレーテルのことを愛している、グレーテルの気持ちが見えていないなんて事…」

小夜啼鳥「君はさっき言いましたね、自分が強くなるまで離れ離れになるのは仕方がないと」

ヘンゼル「言ったよ。そうでしょ、今は辛くてもそれが将来のためになるんだから仕方ない」

小夜啼鳥「グレーテルちゃんは今…今この時に君と一緒にいられないのが辛いんです。将来を見据えるのは大切ですが…今現在を蔑ろにする理由にはならないでしょう?」

ヘンゼル「……」

小夜啼鳥「それにねヘンゼル君…どんな理由があろうと大切な人と会えないというのはそれはもう辛いものですよ。私にも経験あるので分かりますが」

ヘンゼル「…【小夜啼鳥】での出来事のこと?」

小夜啼鳥「えぇ、ご存じだとは思いますが…私の過去、おとぎ話【小夜啼鳥】の事を少し話しても?」

ヘンゼル「うん、構わないよ」

小夜啼鳥「では失礼して…私はとある国に住んでいました。その国は豊かで多くに旅人が訪れていたのですが…その旅人達は皆様口をそろえて私のさえずりが美しいと誉めてくださいました」

小夜啼鳥「それは素直に嬉しかったです。けれどもっと嬉しかったのは陛下が…その国の皇帝が私の声を気に入り、側に置いてくださったことです」

小夜啼鳥「宮廷での豪奢な暮らしに興味はありませんでしたし自由の利かない鳥籠での生活は息苦しくもありましたけど…けれど楽しそうに私のさえずりを聞いてくれる陛下のことを私は愛していましたし、一緒にいられることを幸せに思っておりました」

小夜啼鳥「しかし…陛下との楽しい生活はある日突然終わりを迎えました」

389 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/06 01:07:51 jqz 124/411

ヘンゼル「確か…皇帝の元に外国から贈り物が届いたんだったかな?」

小夜啼鳥「えぇ、その贈り物…ゼンマイ仕掛けの細工鳥は立派なものでした。空を飛ぶ事は出来なくともその翼にはまばゆい宝石がちりばめられていました」

小夜啼鳥「それに何よりどんなときでもゼンマイを巻けば同じメロディを奏でるのです。その美しい音色に陛下は心を奪われ…その細工物の小鳥を大切になさいました」

ヘンゼル「そうだったね。その結果、君の居場所は…」

小夜啼鳥「なくなってしまいました。私はもう王宮にいることも出来ず…愛しい陛下と離れることを惜しみながらも空へ帰るしか無かったのです」

ヘンゼル「理不尽というか、君のおとぎ話もなかなかに辛い物があるよね…」

小夜啼鳥「もちろん陛下に捨てられてしまったことは悲しいことでした。ただ、それより何より愛する陛下のお側にいられないことがずっと辛かったです。それまではずっと一緒に食事をしたり楽しく過ごしていた相手と離ればなれになったんですから」

ヘンゼル「…そりゃあ、そうだね」

小夜啼鳥「それから数年経っても私の寂しさは癒えませんでした。そしてある時、陛下が病に倒れられたとの噂を聞きつけて私はこっそり宮殿へ向かったのです」

小夜啼鳥「陛下の寝室をのぞいて唖然としました。細工鳥はゼンマイを巻く者が居ないためさえずることはなく、息荒く横たわる陛下の傍らにいたのは死神だったのですから」

ヘンゼル「君の主…皇帝は死神に魅入られてしまったんだったね。そして側近や国の人はもう…陛下の命は短いと言って諦めていた」

小夜啼鳥「その先…この物語に結末がどうなったかヘンゼル君なら知って居るでしょう。ただ、死神に魅入られた陛下の姿を見て私は後悔しました」

小夜啼鳥「どうして言わなかったんだろう、私があのとき陛下のお側にいたいと言えば…そして一緒にいればこんなことにはならなかったのにと」

390 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/06 01:16:41 jqz 125/411

小夜啼鳥「離れていても愛があれば想いは通じるとかそういう言葉を否定はしません。しませんが…側にいなければどうにもならないこともあります」

小夜啼鳥「グレーテルちゃんの身を案じるヘンゼル君の気持ちも理解できます。が…グレーテルちゃんがあなたと一緒に居たいというのならその気持ちを受け止めてあげて欲しいのです」

小夜啼鳥「あなたに何かあったとき…あなたに家族は皆涙を流すでしょう、しかしその時グレーテルちゃんの涙は悲しみだけではなく後悔も含むはずです」

小夜啼鳥「側にいられなかった事を悔いるはずです。自分を責めてしまうでしょう。大切な人を苦しめたのは自分だと…あんな思いをするのは私だけで十分です。ですから、どうか」

ヘンゼル「…分かった、グレーテルがもしも…僕と一緒に居たいと言うなら僕はグレーテルと一緒に居るよ。正直、怖いけどね…」

小夜啼鳥「それが良いです。もちろん私もヘンゼル君とグレーテルちゃんの身を守るために協力しますからご安心を」

ヘンゼル「頼むよやっぱり今の僕じゃ今一つ頼りないから」

小夜啼鳥「お任せください、私にはこのさえずりもあります。お目付役だけが私の役目でないことを証明して見せましょう」

ヘンゼル「そうだね、君の特別なさえずりはとても頼もしい能力だ。よろしく頼むよ、君がそうするよう薦めたんだからね?」フフッ

小夜啼鳥「えぇもちろん。あぁ…でも見たところグレーテルちゃんはとてもヤキモチを妬いていましたからそっちはご自分で何とかしてくださいね。私にはどうにもできませんから」

ヘンゼル「ヤキモチ…?なんでそんなものを?」

小夜啼鳥「なんでって…大好きなお兄ちゃんが突然同年代の可愛い女の子と一緒にいるからに決まってるでしょう」

ヘンゼル「それドロシーの事?いや、彼女はただの友達じゃないか。なんでグレーテルがヤキモチを妬く必要があるの?君の勘違いなんじゃない?」

小夜啼鳥「本当にヘンゼル君は相手の気持ちを汲み取る練習をすべきですね。……まぁ例え刺されても助けを呼ぶくらいはしますよ」ボソッ

ヘンゼル「だからたまに小声で物騒なこというのやめて欲しいんだけど…」

・・・

391 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/06 01:17:59 jqz 126/411

現実世界 キモオタの部屋

ティンカーベル「えーっと、スリングショット持った。弾も大丈夫、ハンカチと着替え良し!イチゴジャムも良し!おやつはキモオタに任せて…うんうん!荷造り完了!」フンス

キモオタ「ティンカーベル殿www荷造りに気合いが入っておりますなwwwいつもは我輩のリュックに雑に突っ込むだけでござるのにwww」コポォ

ティンカーベル「今回は特別じゃん!作戦決行の三日後まで現実世界には戻ってこないつもりだからね。忘れ物して戻ってくるのも時間もったいないし、しっかり確認しなきゃね!」

キモオタ「まったくその通りですなwwwところがどっこい我輩の荷造りは遅々として進まないのでござるなぁwww」コポォ

ティンカーベル「『ござるなぁwww』じゃないでしょ!さっさと準備してくれなきゃ私まで出遅れちゃうんだからね!」プンスカ

キモオタ「面目ないwwwしっかし持って行きたいものが多すぎましてなwww必須アイテムとしてはおはなしウォッチとおはなしサイリウム…マッチ売り殿から頂いたマッチを始めとする魔法グッズなどでござるかねwww」

ティンカーベル「あと着替えと歯ブラシとおかしと…。っていうか…これなに?なんでリュックにポータブルDVDプレイヤーとか入ってるの?」

キモオタ「良いところに目を付けましたなwwwこれにはきちんとした理由があるのでござるよwww我々はこのあと雪の女王殿の宮殿に向かうでござろう?」

ティンカーベル「うん、悪魔の鏡の破片も譲って欲しいし女王なら何かいい感じの特訓してくれるかもしれないからそのお願いに行くんだよね?」

キモオタ「そうですぞwwwただ気になる点があるとすれば…我々は今ひとつ女王殿と打ち解けてないという事でござるな。せいぜい顔見知り程度の関係なのでござる…」

ティンカーベル「あー…確かにそれはあるかもね、こないだ結構お話しはしたけど、まだ仲良し!とは言えないもんね」

キモオタ「そうなのでござる。実際、おはなしサイリウムを振っても雪の女王殿の能力を使うことは出来ないでござるし、ウォッチで呼び出すことも当然出来ないでござるなぁ」

キモオタ「女王殿はそんな事関係なく我々に協力してくれるでござろうし、まぁ言ってしまえば特に問題はないのでござるが……とはいえ我々は目的を同じくする仲間、親睦を深めたいという気持ちが我輩にはあるのでござるなwww」

392 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/06 01:18:43 jqz 127/411

ティンカーベル「うん、だよね!遊んでる時間はないけど…でも折角なんだから女王ともいろいろお話ししたいし、もっと仲良くなりたいよね。困ったときだけ協力して貰うだけの関係なんて寂しいもん」

キモオタ「我輩も同感でござるwwwそこで活躍するのがこのポータブルDVDプレイヤーですぞwww」コポォ

ティンカーベル「だからそれがわかんないんだよ、なんで?まさか…女王と一緒にアニメでも見るの?さすがにそんなわけないよn」

キモオタ「ドゥフフ御名答www雪の女王殿にちなんだディズニーの例のアレを見るのでござるwww一緒にアニメを見ることで仲間意識的なものが芽生え、更にアニメの感想に話題を持って行けば話も弾みますぞwwwこれぞキモオタ式交友術www」コポォ

ティンカーベル「……」ポイッ ガシャーン

キモオタ「ぬああぁー!我輩のポータブルDVDプレイヤーがより一層コンパクトにぃぃぃ!!」ガビーン

ティンカーベル「遊びに行くんじゃないんだからこんなのいらないでしょ!女王とは仲良くなりたいけど、もっと他の方法にしなさい!」プンスカ

キモオタ「ぬぅぅ無念…。しかし女王殿との距離を埋める手立てはこれだけではないですぞwww先程デパ地下で購入したこの総菜やスイーツの数々…!これを手土産にすれば我々は一目置かれること間違いなしwww親睦を深めるのにも大いに役立つでござろうwww」ドッサリ

ティンカーベル「いや、女王と仲良くなることが今回一番の目的じゃないからね?それにあの宮殿には女王とカイしかいないんじゃない?そんなに大量に持って行っても食べきれないよ!」

キモオタ「この料理には我々の分も含まれているのでござるよwww食卓を囲み同じ料理を食べることで親睦を深めていく…名付けて同じ釜の飯作戦ですぞwww」

ティンカーベル「うーん…ご馳走が私の口にも入るならその作戦には賛成だけど、でも一緒にご飯食べただけで仲良くなれるもんなのかなぁ?」

キモオタ「それは確実になれるでござろうwww我輩とお主は同じピザを分け合い、同じ唐揚げの山を崩し、共にバーガーをかじりながら今日まで過ごしてきたのでござるしなwww」

ティンカーベル「あはは、確かな実績があったね。まぁ色々おいしい物食べながら私達は仲良くなったんだねぇ…というかこっちでもおとぎ話の世界でも食べてばっかりで確実に前より体重増えた感あるんだけどね…」

キモオタ「体重計に乗らない覚悟。それこそがうまい飯を食べるための秘訣ですぞwww」

393 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/06 01:20:55 jqz 128/411

・・・しばらくして

キモオタ「ドゥフフwww荷造りに思いの外時間がかかってしまいましたなwwwしかし時間をかけた分、計量でありながら充実した装備が実現できましたなwww我輩のこの完璧な旅支度を見るがいいですぞwww」

ティンカーベル「ふむふむ、魔法具にお菓子に…まぁキモオタにしては上出来だね。合格にしといてあげよう」フフン

キモオタ「ちょwww何故に上から目線wwwまぁ問題ないならいいでござるけどねwww」コポォ

ティンカーベル「それとこれも入れといたげるよ。今回は気が抜けない戦いになるかもだからね~、ティンクさんが特別に妖精の粉を瓶に詰めておいたよ!感謝せよ!」グイグイ

キモオタ「おおwwwそれはありがたいdちょwwwそれジャムの空き瓶でござろうwww妖精の粉、扱いがぞんざいすぎますぞwww」

ティンカーベル「いいんだよ!ちゃんと洗ってるんだから!ジャムとかの瓶もラベルを綺麗に剥がしたらオシャレな容器として使えるって昼間のテレビでやってたの!」

キモオタ「主婦でござるかお主はwwwとはいえありがたく頂戴しますぞwww」

ティンカーベル「そんじゃあ準備もバッチリだし出発しよう!あっ、その前に寒さ対策していかなきゃね!【雪の女王】の世界は極寒の地だし!」

キモオタ「ドゥフフwwwその点はぬかりありませんぞwww『ダッフルコート買ったったwww』というスレを立てたいが為に購入したこいつを纏えば防寒は完璧でござるwww」ファサ

ティンカーベル「……」

キモオタ「ちょwww何故無言wwwどうかしましたかなwww」

ティンカーベル「ううん、完璧ならいいや。んじゃポケットにホッカイロを入れて…と、私はそこに入っとくね!」ポイポイッ

キモオタ「低温やけどせぬように気をつけるのですぞwwwさて、出発ですぞ!ティンカーベル殿、お願いしますぞwww」コポォ

ティンカーベル「任せて!そんじゃ行くよ!【雪の女王】の世界へ!」

キィィィィィン

394 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/06 01:23:02 jqz 129/411

雪の女王の世界 女王の宮殿前

ビュオオオォォォォォ

キモオタ「ブヒイィィイイイィィィ!?さささ寒いでごござるる…!げげ解せぬ…!すす数万したこここのコートのおかげでわわ我輩のののぼぼ防寒はかか完璧のはずず…」ガタガタガタ

ティンカーベル「まぁそうなるよね…日本の冬の寒さはしのげても女王の世界の寒さはしのげないよそのコートじゃあ。だってほら見てよオーロラ出てるし、自然をなめちゃ駄目だよ!」

キモオタ「ちょwwwそそそれ気がついてるならさささ先に言ってもももらいたかったですぞぞぞwww優しさがたりないいいwww」ドドドフゥフフ

ティンカーベル「そ、それは違うじゃん!言おうかなーって思ったけどキモオタが完璧だって言うから私はそれに賭けたんだよ!友達を信じてあえて言わなかったの!」

キモオタ「ちょwwwそんな言い方されるとと責められないいwwwとととにかく女王殿の宮殿はめめ目の前、ここはひとつ急いで向かいいい暖をとらせてもらうとしますぞぞぞwww」ザクザク

ティンカーベル「そだね、せっかくの手土産が凍っちゃったら台無しだもん。保温出来るかなと思って念のためにホッカイロ入れといたから少しは大丈夫だと思うけど」

キモオタ「ちょwwwか唐揚げへの気遣いの半分でも我輩に向けて欲しいのでござるがががwww」コポォ

ティンカーベル「ほら!コポコポ言ってないで急がなきゃ!もたもたしてたら凍え死んじゃうよ!」

キモオタ「そそそれは嫌ですなななwwwそそそれにお主だからぶっちゃけるでござるががが我輩、雪が若干トラウマなのでござるよよよwww実は精神と肉体の両方にダメージを受けているのでござるなwww」

ティンカーベル「雪がトラウマ?あー…マッチ売りちゃんの事があるから?」

キモオタ「そそそうなのでござるよ恥ずかしながらwwwただし女王殿や他の皆には内緒にしていただきたいwww特訓して貰おうというのに気を使わせては悪いですからなwww」

ティンカーベル「…そっか、わかった。仕方ないから私のホッカイロ一個使ってもいいよ!だから頑張って女王のとこ行こうね、おとぎ話の世界が平和になればマッチ売りちゃんもお空の上で喜んでくれるよ」スッ

キモオタ「そそそうだとしたら喜ばしいことですなwwwさぁ、弱音吐きタイムはここまでですぞwwwささぁ先を急ぎますかなななwww」コポォ

407 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/13 00:17:19 xVI 130/411

雪の女王の世界 女王の宮殿 エントランス

ドンドンッ ドンドンッ

カイ「あーうっせぇな…わかってる!んなノックしなくても今開けるから待ってろ!ったく…女王が余計な事に首突っ込んでから客が来すぎなんだよ。毎度毎度俺が客の案内しなきゃなんねぇし…」スタスタ

カイ「何で俺の読書時間が奪われなきゃならねぇんだクソッ。せめて書庫をエントランス近くに移設するとかそういう配慮あるだろうがよぉ…」ブツブツ

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ

カイ「うるせぇ!待てって言ってんだろうが!一体誰だっt」ガチャッ

キモオタ「ぶひいぃぃーっ!!やっと開いたでござるぅ!外寒すぎでござるぅぅ!!」ズサーゴロゴロゴロ

ティンカーベル「いやー、宮殿まであと一歩!ってところ急に吹雪いて来ちゃったもんねぇ、まいったまいった!…あっ、おじゃましまーす」ヒラヒラ

カイ「お、おう…お前等か」ヒキッ

キモオタ「おおっと、挨拶が遅れましたなwwwお久しぶりでござるカイ殿www扉開けていただいて助かりましたぞwww我輩、危うく冷やしラードになるとこでござったwww」コポォ

カイ「さほど久しくもねぇだろ。名前、覚えてるぜ。ヘンゼル達の連れ合いのティンカーベルと…キモオタだろ。しかしまた随分と軽装だな、追い剥ぎにでもあったのか?」

キモオタ「いやいやwwwそう言うわけではなくwwwちょっと自然をなめておりましてなwwwもっと厚着すべきでしたなwww」

カイ「まぁどうだっていいが…んなことより女王に用事があって来たんだろ?あいつなら自室だ、呼んできてやるからお前等は応接室に…」

カイ「いや、その様子じゃあ体を温めるのが先か。ついて来な、先に暖かい茶を淹れてやる、その方がいいだろ」スタスタ

キモオタ「おおおwwwそれは嬉しい気遣いですなwww我輩、サトウマシマシミルクオオメで頼みますぞwww」コポォ

ティンカーベル「あっ!じゃあ私はサトウマシマシマシマシ…」

カイ「増しすぎだろ。今は砂糖の備蓄がそんなにねぇんだ、グレーテルがいねぇからな。ちょい増しで我慢しろ」スタスタ

408 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/13 00:21:13 xVI 131/411

女王の宮殿 ダイニング

キモオタ「くぅ~www吹雪で冷え切った体に温かい紅茶が染みますなぁwwwあっ、カイ殿www紅茶のおかわりを頂けますかなwww」コポォ

ティンカーベル「あっ、私もおかわり!あと何かお茶菓子があったら嬉しいよ!」

カイ「何しれっと要求してんだ。ったく、お前等みたいな図々しい客初めてだぜ…あいつらがいねぇから菓子っつってもラスクくらいしかねぇぞ」コトッ

キモオタ「かたじけないwwwしかし申し訳ありませんでしたなwww急に押し掛けた上にお茶までごちそうになってしまいwww」コポォ

カイ「まったくだ。お前等の相手をしなけりゃ俺はもっと読書に没頭できたはずなんだがなぁ…」

ティンカーベル「まぁまぁそう言わないでよー、今はこの広い宮殿にカイと女王の二人で住んでるんでしょ?たまにはお客さんが来た方が寂しくなくていいじゃん!」

カイ「必要ねぇな、俺は本さえありゃあそれで良い。しいていうなら…数学でも文学でも何でも構わねぇから心躍るような難題に挑戦出来りゃあ上々だな。一人が静かで良い、客だの家族など煩わしいだけだ」

キモオタ「ほうwwwそうは言いつつもお千代殿やヘンゼル殿にグレーテル殿達www家族が次々家を出て行ってしまって寂しいのではないですかなwww」コポォ

カイ「無いな。そもそもあいつらの居場所はここじゃねぇんだ、いつまでもこの宮殿にいる方が間違ってんだろ。所詮あいつらは余所者だからな」

ティンカーベル「ちょっと!家族なんでしょ?そんなひどい言い方しなくていいじゃん!」プリプリ

カイ「事実だろ、余所の世界のあいつらが目的も無くこの宮殿に残っても良いことなんざねぇよ。というかお前おとなしく待ってろ、もうじき女王も来るだろうしよ」ズズー

ティンカーベル「むむぅ…カイは薄情者だよ。ヘンゼルやグレーテルはカイの事ちゃんち家族だと思ってるみたいなのに。やっぱり悪魔の鏡の破片のせいで心が冷たくなっちゃってるのかな?」ヒソヒソ

キモオタ「だとしたら我々に茶を振る舞ったりせんでござろうwwwそれに口は悪いでござるが、ヘンゼル殿や女王殿と家族だということを否定しない辺り…まぁそう言うことでござろうなwww」ムシャムシャ

ティンカーベル「あー確かにそっか。こないだも急に戻ってきたヘンゼルに色々世話焼いてたしね」モグモグ

キモオタ「今だって我々をほったらかしにする事も出来るはずなのにこの場に残ってくれておりますしなwww素直になれないだけの思春期ボーイでござるよwww」コポォ

カイ「チッ…お前等聞こえてんだぞ、黙って待てねぇのか」

409 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/13 00:24:07 xVI 132/411

ガチャッ

雪の女王「やぁ、キモオタにティンカーベル。待たせてしまってすまない、ようこそ私の宮殿へ。そんな軽装じゃあ外は寒かっただろう遠慮なくくつろいでくれ」フフッ

キモオタ「これはこれは女王殿www申し訳ありませんな忙しいときにアポ無しで押し掛けてしまってwww」コポォ

ティンカーベル「ごめんね!でも女王にお願いとか報告とか色々あってねー…あっ!キモオタ、例の物を渡すの忘れちゃ駄目だよ!」

キモオタ「もちろんですぞwww女王殿、これ冷えてしまいましたが手土産でござるwww現実世界のうまいものを色々と持ってきたのでカイ殿と食べてくだされwww」スッ

雪の女王「あぁ、ありがとう。そんな気を使わなくて良かったんだぞ?だがせっかくの好意だ、頂くよ。ほう、これは高島屋の地下の…なんとも美味しそうな物が揃っている」

キモオタ「ちょwwwなんで高島屋だってわかったでござるかwww」コポォ

ティンカーベル「まさかこの世界にも高島屋が……!?」

カイ「何言ってんだお前。そんなわけねぇだろ、お千代がこの宮殿に帰って来るときなんかによく手土産にしてんだよ」

雪の女王「実家に帰るのに手土産なんか必要ないというのに、律儀な娘だよ。しかしキモオタ、この料理は私とカイの分にしては多すぎるように思えるが…さては二人ともこの宮殿に滞在しようと言う考えだな?」フフッ

キモオタ「ドゥフフwwwバレてしまいましたなwww実は我々もご相伴に預かろうかと思っておりましてなwww」

ティンカーベル「実はね、私達は女王に特訓して貰いたいなって思ってるの!アリスとの戦いが近いからもっと強くなりたいんだ!」

キモオタ「魔力も豊富でこんな立派な宮殿を作り出してしまうほどの女王殿ならばなんかこう…いい感じの特訓をしてくれるのではないかと期待しておりましてwww」

ティンカーベル「他にも色々と用事はあるんだけどね、そういうことだからなんかいい感じの特訓して欲しいの!それでちょっとの間だけこの宮殿に泊めてくれるともっと助かるんだけど…」

カイ「いい感じってなんだよ、雑すぎんだろこいつら」

雪の女王「フフッ、随分と買いかぶられているようだ。そういうことならば協力しよう、私はこの世界から離れられないから特訓の相手をする時間も取れるだろう。部屋も貸そう、後で案内するよ」フフッ

410 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/13 00:27:19 xVI 133/411

雪の女王「だが単なる思いつきや気まぐれで私の所へ来たわけではないんだろう?何か理由があって…近々アリスとの戦いを予感している、だからこそ急にやってきて私に協力を求めた。そうだろう?」

キモオタ「いやはや、まったくその通りでござるよwww我々には時間があまり無いのでござる、故に特訓するならば濃密な物にしたいのですぞ。そこで強力な魔力を持つ女王殿を頼ったわけでござる」

ティンカーベル「あのね、実は三日後に私達はみんなと一緒にアリスの世界に乗り込むことになってるんだ」

雪の女王「三日後とは随分と急だな」

カイ「アリスは今回の騒ぎの元凶なんだろ?【不思議の国のアリス】はアリスの領域、乗り込んでいくなんてのは危険過ぎやしねぇか?」

キモオタ「それは百も承知なのでござるが…我々にとっては避けられない戦いなのでござるよ」

雪の女王「何か事情があるというのだな。聞かせて貰おう、何故こうも急にアリスの世界への突入を決断したのかを。他にも私に用があると言うのならばそれも併せて聞いておこう」

ティンカーベル「うん、でもどっから話そうかな…ねぇキモオタ?」

キモオタ「女王殿もご存じの通り、我々はおとぎ話の世界に起きた異変をなんとかするべく…そして世界の消滅を防ぐべく様々な世界を旅しているでござる」

女王「あぁ、そしてその異変の元凶がアリスだと判明した今、彼女を止める事を目標にして動いている。君も、そして私もな」

キモオタ「そうですな、そして我々はその旅の途中で多くの人々と出会い、アリス殿の企みを阻止するという同じ目的を掲げる仲間と出会うことが出来たのでござる」

ティンカーベル「シンデレラの事は知ってるよね?シンデレラも私達の友達で一緒に戦ってくれるはずだったんだけど…今はアリスに連れ去られちゃって、あいつらの世界にいるんだ」

雪の女王「つまり人質ということか?」

キモオタ「なんと言えばいいのか…我々が得た情報によるとシンデレラ殿は以前とは別人のようだったらしいでござる。アリス殿の元で戦っている姿が確認されてましてな…それが強要されたのものなのか、あるいは」

キモオタ「何らかの魔法具による洗脳や精神操作…シンデレラ殿はそういった類の魔法の被害にあっていると我々は考えているのでござる」

411 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/13 00:29:29 xVI 134/411

女王「……精神に干渉する魔法具、か」スッ

キモオタ「女王殿…?何か心当たりがあるのですかな?」

カイ「心当たりも何も…アリスに連れ去られたシンデレラが別人のようになっちまったってなら、間違いなく……」

女王「キモオタ、ティンカーベル。どうやら私は、君達に謝罪をしなければならないようだ」

ティンカーベル「えっ?女王が私達に?なんで?別に何もされてないよね?」

キモオタ「どう言うことですかな女王殿?理由を話していただきたいのでござるが…」

雪の女王「君達も存在は知っているはずだ。この【雪の女王】の世界にはある一つの魔法具が存在する。悪魔が作り出した鏡…砕け散って破片になった今でも魔法の力は失われていない、悪魔の鏡の破片だ」

ティンカーベル「あっ!そうそう思い出した!前に白鳥にも言ったけどさ、私ね魔法具の材料にするためにその悪魔の鏡の破片が欲しいの!なんか催促するみたいになっちゃうけど…それって今すぐ手には入らないかな?」

雪の女王「あぁ聞いている、そのことも君に言わなければいけないと思っていた。だが…今、この世界に悪魔の鏡の破片は存在しない。君に譲ることも当然出来ない」

ティンカーベル「えぇっ!?それって前はあったってことだよね!?」

雪の女王「あぁ、以前は存在した。悪魔とは言うが彼等はおとぎ話の事情を知る味方、強い力を持つ連中だから鏡に破片の保管も彼らに任していたが……私が留守にしている間アリスの襲撃にあった悪魔達は鏡の破片を奪われた」

キモオタ「なん…ですと…!悪魔の鏡の破片を奪われたですと…!」

412 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/13 00:33:20 xVI 135/411

雪の女王「本来アリスは私を消すためにこの世界へ来たのだろう、だが不在だったため侵入者に気がついた悪魔達がアリスを迎え撃ったが……返り討ちにされてしまった」

雪の女王「何匹もの悪魔がやられ、一部の土地は彼女の攻撃の爪痕を残したままになっている。だが幸いなことに物語の筋に影響は無く、悪魔達の奮闘のおかげで物語が消滅することなく彼女を追い返した。だが…」

キモオタ「その時、いくつかに破片を奪われてしまったという事ですな…?」

雪の女王「その通りだ。アリスは去り際に彼等から悪魔の鏡の破片を奪っていった。それは決して…奪われても良いものではなかった」

雪の女王「同じ過ちを繰り返さないため、残った破片は私が処分した。同時に破片の奪還のために白鳥や親指姫に【不思議の国のアリス】の偵察を命じたが…それを取り返すことは適わなかった。予想以上に強固な守りだったからだ」

ティンカーベル「じゃあアリスは悪魔の鏡の破片を持っているって事だよね?あいつが強い魔力を持ってる破片を手放すわけ無いもん…」

雪の女王「…すまない、君たちには一番に伝えるべきだった。だが…余計な不安を与えることも避けたかった、だから私は君たちには伝えずこちらで解決しようと思っていたが…」

カイ「アリスにさらわれたシンデレラがどうやら精神に干渉されてるってなると…もうそんな事も言っていられないがな」

雪の女王「あぁ、悪魔の鏡の破片は…人間に使えば対象の精神に干渉し…性格をねじ曲げることが出来る恐ろしい魔法具だ。そしてシンデレラは恐らくその鏡の破片によって…性格を変化させられている。好戦的な性格にな」

キモオタ「なんという…!」

雪の女王「本当にすまない。全てに責任は私にある、鏡の破片の管理が行き届いていなかったこと…そしてあろうことかそれをアリスに奪われてしまったこと」

雪の女王「そしてその破片によって君たちの大切な仲間を危険にさらしてしまった事…悔やんでも悔やみきれない。私は許されざるミスを犯してしまった」

413 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/13 00:37:11 xVI 136/411

雪の女王「実に情けない話だ。アリスの企みを阻止するなどと言っておきながら、隙をつかれて魔法具を奪われてしまうなど…」

ティンカーベル「確かにやばいしシンデレラが鏡の破片を使われちゃってるならすごく心配だけど…でも悪いのはアリスで女王は悪くないよ!気にすることないって!」

キモオタ「そうですな、それに済んだことですぞ。起きてしまった以上責任の所在などどうだっていいでござる、むしろシンデレラ殿の精神に干渉している魔法具が悪魔の鏡の破片だと断定できるのだとすれば対策も立てやすいでござるよ!」

ティンカーベル「確かにそだね!どうやったらシンデレラを元に戻せるのか分かるわけだし、ポジティブに行くしかないよ!気持ちで負けてたら勝てないし!」

キモオタ「そうですなwww対策さえ分かっていれば魔法具だろうがなんだろうがなんとでもなりますぞwww」コポォ

雪の女王「…君達は随分と前向きだな、悩んでいた私がバカバカしく思える程にな」フフッ

キモオタ「ドゥフフwwwトラブルと遊ぶヤンチャボーイですからな我々www悩んでも仕方ないことは悩まないwww」コポォ

カイ「ただ脳天気なだけだろお前等は」

ティンカーベル「私は違うよ、私はね!まぁキモオタは何にも考えてない脳天気マンだけど」

キモオタ「ちょwww自分ばっかりずるいですぞお主www」コポォ

雪の女王「フフッ、少々胸が軽くなった。だが不甲斐ない姿をさらした事へのケジメはつけるつもりだ、当然君たちへの協力は惜しまない。何でも言うといい」

キモオタ「そいつは助かりますなwwwでは早速シンデレラ殿を脅かしている悪魔の鏡の破片について詳しく聞きたいでござるwww」コポォ

雪の女王「あぁ、シンデレラを救う上で重要になってくるものな。そうだな、丁度ここに悪魔の鏡の破片の影響を受けている少年がいるわけだが…」

カイ「…んだよ俺を説明に使うんじゃねぇよ。ったく、俺も好きで魔法具の影響受けてる訳じゃねぇんだぞ」

414 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/13 00:42:22 xVI 137/411

雪の女王「先ほど少し話したが悪魔の鏡の破片は対象の性格を変化させる魔法具だ」

キモオタ「ふむ、優しいシンデレラ殿が好戦的になってしまったように…でござるな」

ティンカーベル「じゃあ今は口が悪くてちょっと感じも悪いカイは元々は優しくて可愛らしい少年だったって事だね?」

カイ「感じ悪いとか言ってくるお前の方が感じ悪いけどな」

雪の女王「本質は歪んでモノを写す鏡だ。カイは頭が良いうえに控えめで優しく、他人を思いやれる少年だったからこそ、今はこんなに口が悪い」

カイ「テメェ…俺がキレねぇとでも思ってんのか」

雪の女王「だがカイに場合は元々持っていた知識も得る事への探求心も失っていないし思いやりの心も失っちゃいない、相当感じは悪いがな?」クスクス

カイ「面倒くせぇ…もう諦めた、好きにしやがれ」プイッ

雪の女王「鏡に破片がシンデレラにどこまでの影響を与えたのかは分からない。君達を今も仲間だと思っているかもしれないし思っていないかもしれない、優しい心が残っているかもしれないし完全に失われているのかもしれない。そのあたりは今は何とも言えない」

雪の女王「ただ一つだけ確実なのは鏡の破片は対象の肉体に残留する、という点だ」

ティンカーベル「破片がザンリューする…?それってつまり…どゆこと?」

キモオタ「シンデレラ殿の肉体のどこかに鏡の破片が埋まっている、ということでござるかね?」

雪の女王「あぁ、そう解釈してくれて構わない」

415 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/13 00:46:47 xVI 138/411

雪の女王「カイの場合…突き刺さった鏡の破片は胸に残留している。彼を悪魔の鏡の魔法から解放するには胸にある破片を取り除く必要がある」

キモオタ「言うには簡単でござるが難しそうでござるな…破片ってごくごく小さな物でござろう?」

雪の女王「そうだな、視認できる大きさではあるが…肉体の中に潜り込んだそれを取り除くのは容易くはない」

キモオタ「ちなみにカイ殿に埋め込まれた鏡の破片は物語的にはどうなるのでござる?」

ティンカーベル「はいはい!私知ってるよ!カイは物語の最後で鏡の破片を取り除かれて元の性格に戻れるんだよね!」

カイ「そうみてぇだな、一応俺がこの先どうなるかは聞いてる」

キモオタ「ほうwwwちなみにどうやってカイ殿は破片を取り除いたのですかな?」

雪の女王「彼には幼なじみのゲルダという少女がいる。ゲルダは村を出て行ったカイを連れ戻すために旅をしているんだが…やがてこの宮殿にたどり着いたゲルダはカイの為に涙を流す」

雪の女王「その涙は冷え切った彼の心を溶かし、胸に残留していた悪魔の鏡の破片を洗い流すんだ。カイは優しくも勇敢なゲルダの愛によって魔法から解き放たれるんだ」

ティンカーベル「くぅ~!知ってたけど改めて聞くとすんごくロマンチックだよねぇ!私そう言うの大好きだよー!カイも隅に置けないよね!」

カイ「茶化すな。俺のことなんかほっときゃいいのにゲルダの奴無茶しやがって」

キモオタ「しかしおとぎ話に主人公はリア充が多いでござるなぁwww可愛い幼なじみがいる時点で勝ち組なのにしかも好かれているとかwwwカイ殿爆発しろwww」

カイ「しねぇよ。お前が爆散しろ」

416 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/13 00:53:32 xVI 139/411

雪の女王「だがカイの場合、鏡の破片が洗い流されたのはゲルダに流した涙だったからだと考えるべきだ。シンデレラ同じ方法が通用するとは限らない」

キモオタ「むむう…しかし方法は問わずシンデレラ殿の肉体から破片を取り除けばいいのでござるよね?」

雪の女王「そうだ。だから今その方法を考えても実際の彼女の状況によってはその方法が使えなくなるかもしれない…闇雲に考えるよりも実際の状況を見て適切な手段を選ぶべきだな」

ティンカーベル「そっかぁ…まぁでもとにかく体のどっかにある破片を探して取り除く!これ分かってるだけでも違うよね!」

キモオタ「そうですなwwwこの情報は後ほど皆に伝えておくべきですなwww」

雪の女王「他のおとぎ話を読んでヒントになりそうな物を探すというのも手だな、書庫も自由に出入りしてくれ。役立つ本も多くおいてあるはずだ」

カイ「チッ…俺の安住の地にまた邪魔者が来るって事かよ…」

キモオタ「いやはやwww何から何まですいませんなぁwww助かりますぞwww」

雪の女王「だが折角だ、君達は私に特訓をして貰いたいと言っていたな?ならばまず君たちの力量を見ておきたい」

ティンカーベル「あっ、早速特訓開始!?よっし、頑張るぞ!」

キモオタ「我輩も気合い満タンですぞwwwでは早速頼みますぞwww」

雪の女王「あぁ、時間がないのなら少しでも早く取りかかった方がいいからな、今から特訓を開始する。カイ、すまないがその間に皆の食事の準備をしておいてくれるか?それと客間のベッドメイクもだ」

カイ「面倒だがまぁそれくらいはやってやるよ。つーか特訓するのは良いがよぉ…こいつらの事うっかり殺しちまうなよ?」

雪の女王「フフッ、それは彼ら次第だな。訓練ごときで私に殺されるようならそのときは……その程度だって事だ」

キモティン「えっ」

429 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/20 00:20:08 bJm 140/411

ティンカーベル「あ、あはは!もーっ!二人してそんな物騒なこと言って、私達をビビらせようたってそうはいかないよ!」

キモオタ「まったくですぞwwwこんな場面でジョークをぶっこんでくるとは、女王殿はクールな外見に似合わず相当なジョーク好きのようですなwwwしかしジョークのクオリティにおいてはどうやら我々に分があるようですぞwww」コポォ

ティンカーベル「そうだよね!いくら女王がすんごい魔力持ってるからって特訓でうっかり私達を殺しちゃうなんて、ある訳ないじゃん!嘘っぽすぎてバレバレの冗談だよー!」

キモオタ「もっとリアリティのあるジョークでないと我々をビビらせることなど出来ませんぞwww」コポォ

雪の女王「…なぁカイ、私は今、何か冗談を口にしたか?」

カイ「いいや、冗談を言っているようには聞こえなかったが?」

雪の女王「あぁ、その通りだ。だが彼らの反応を見るにまさかとは思うが…『特訓なのだから命に危険が及ぶはず無い』などと考えているのではないだろうか?」

カイ「いくらなんでもそこまで浅はかじゃないだろう。実戦でないとはいえ『雪の女王』の名を冠するお前を相手に戦うということがどういうことか理解していると思うぞ?」

雪の女王「フフッ、そうだよな。自画自賛になってしまうが私の魔力はおとぎ話の世界でも屈指のものだ、相応の覚悟を持って挑んできていると考えるのは当然だ」フフッ

カイ「あぁ、こいつらも生半可な覚悟で挑んできてるわけねぇだろうぜ。『雪の女王』に挑むということは例えるならば冬を強引に夏に変えようとするようなもんだしな、それこそ命を失う覚悟なんざとっくに済ませてるはずだ」

ティンカーベル「…キモオタ、これ多分ガチの奴だよ!うっかりすると死ぬ奴だよ!?」ヒソヒソ

キモオタ「確かにこれはやばいでござるな…ある程度の覚悟はしていたでござるが、まさかこれほどとは…」

ティンカーベル「怖いけどこうなったらやるしかないよね!でもさ特訓だといっても二人対一人なんて卑怯だからまずはキモオタが犠牲n…じゃなかったキモオタが先陣を切っていく感じでいこう」ヒソヒソ

キモオタ「ずるいですぞwwwここはもう覚悟決めてお互いが死なないように立ち回るしかありますまいwww」ヒソヒソ

430 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/20 00:22:00 bJm 141/411

雪の女王「…何かヒソヒソと相談しているようだが、どうする?やはり特訓は中止にするか?」

キモオタ「いやいやwww我々は力を付けねばならぬ理由があるのでwww故に特訓お願いしますぞwww」

雪の女王「死を覚悟しての選択、そう判断して構わないな?」

キモオタ「それは正直微妙なところでござるなwwwとはいえここで死を回避しても、弱いままならアリス殿に殺されるでござろうしなwwwまぁ死に物狂いでやれば大丈夫でござろうwww」

ティンカーベル「まぁぶっちゃけあんな言い方されたらすんごい怖いけどね!」

キモオタ「ちょwww直球wwwティンカーベル殿の魂の叫びがwww」

ティンカーベル「でも口ばっかりでいざ戦うとなったら怖いから止めますー、なんて言ってたらマッチ売りちゃんも草葉の陰で苦笑いだよ!っていうかいっとくけど私だってそう簡単にはやられないよ!」フンス

キモオタ「そうですなwwwと言うわけで女王殿、改めてよろしく頼むでござるwww」

雪の女王「いいだろう、とはいえこの宮殿には特訓に耐えうるような場所が存在しない。少し時間を貰おうか、今から戦いに相応しい場を生成しよう」

キモオタ「なんとwww専用の空間を造るとはwwwなんだか手を煩わせてしまって申し訳ないですなwww」

雪の女王「構わないよ、私も君たちの覚悟に応えねばな。そうだな…二十分後に宮殿の前に来てくれ、もちろん戦いの準備を済ませておくように。行くぞ、カイ」

カイ「あぁ。ティーセットはあとで片すからそのままにしておいて構わないぜ、せいぜい死なない準備をしておくんだな」フフッ

キモオタ「また不穏なことを言い残しておきましたなwwwとりあえず準備して行きますかなwww」コポォ

ティンカーベル「そだね、それに前向きに考えたらこれはむしろラッキーだよ!女王を相手に善戦できたらアリス相手でもそんなに苦戦しないって事の証明にもなるしさ!そう思うことにした!」

キモオタ「ほうwwwそれは確かにwwwならばここは是が非でも善戦して、アリス殿との決戦の前に箔をつけておきたいですなwww」

431 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/20 00:24:56 bJm 142/411

女王の宮殿 宮殿前の雪原

雪の女王「この辺りにしよう。建造物クラスの大物を生成するのは久しぶりだ、シンプルで強度を重視したいところだが…さてどんなデザインにするかな」フフッ

パキパキ…ズゴゴゴゴ

カイ「良かったのか?あいつ等に本当のことを言わなくても」

女王「あぁ、別になんの問題もないだろう。嘘をついているわけでも騙しているわけでもないのだから」

カイ「まぁそうだけどよ…俺は解ってるんだぜ?さっきのはあいつ等を鼓舞するための虚言。俺もそれを察したからあいつ等をちょっとビビらせてやろうと口裏を合わせたんだしな」

雪の女王「まぁそうだな。甘えさせるつもりなど毛頭ないが私が本気を出せば…いや、半分の力でさえ二人とも一瞬で氷の欠片になる。あくまで特訓なんだから彼等を殺してしまっては何にもならない」

雪の女王「私は当然、適度に力のセーブをする。だがそれを前もって言ってしまうと…彼等に体は意識的にしろ無意識にしろ自分はどうせ死なないと慢心した動きになってしまう」

カイ「まぁ、そうかもな。んなことじゃあいくら特訓しても実戦で役に立てるとは思えねぇ」

雪の女王「だから少し、容赦のない女王を演じてみたのさ。彼等はブラフや話術に長けていると聞いていたから見破られるかとも思ったが私の演技もなかなかということだな」フフッ

カイ「調子に乗るんじゃねぇよ。でもよ…その、なんだ…」

雪の女王「どうした?何か気になることでもあるのか?」

カイ「それであいつ等は強くなれるかもしれねぇけど、お前の評判は悪くなるんじゃねぇか?少なくともあいつ等には容赦のない厳しい女だって思われるかもしれないんだぜ?」

雪の女王「なんだなんだ?私のことを心配してくれるのか?可愛い奴め、抱きしめてやるから近くに来なさい」フフッ

カイ「断る。デカい建物造るのは久しぶりなんだろ、集中しろ。それに心配なんかしてねぇよ、俺はヘンゼル達と違ってお前に懐いてるわけじゃねぇからな」

雪の女王「それは寂しいな。だが安心すると良い、君をさらったのは私なんだ。君に気苦労をかけるようなことはしないさ」

カイ「そうかよ。まぁお前のせいで俺が割を食う事になっても俺はどうとも思わねぇけどな。だからお前の好きにしろ」フイッ スタスタ

雪の女王「フフッ、まったく素直じゃないなカイは」クスクス

432 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/20 00:27:06 bJm 143/411

二十分後
雪の女王の宮殿前

ドーンッ

キモオタ「ちょwww先程までだだっ広い雪原だったはずの空間にwww巨大な建物がwww」コポォ

ティンカーベル「わーっ…これはすごい。あれだね、現実世界の体育館?あんな感じだね、規模はこっちの方が全然おっきいけど」

キモオタ「これはもはや東京ドーム一個分ですぞwww我輩、スポーツ興味ない故に実物見たことも大きさも知らないでござるけどwww」コポォ

雪の女王「フフッ、お気に召したか?もう少し時間があれば装飾にもこだわりたかったがな。だが強度には自信がある、広さも十分だろう?」

キモオタ「十分すぎますなwwwこれだけ広ければコミケとか開催できますぞwww」コポォ

ティンカーベル「こんな凄い氷の建物、私達の特訓のためだけに造ってもらって悪いなぁ…」

雪の女王「君達が有効に活用してくれることが何よりの労いだ。くれぐれも私に瞬殺されないようにな?」ニコッ

キモオタ「ここまでしてくれる優しさを持ちつつも容赦ないwww女王殿はこういう場面だとスパルタでござるなぁwww」ヒソヒソ

ティンカーベル「優しいけど厳しいってヘンゼル達口を揃えて言ってたしね」ヒソヒソ

キモオタ「そう言えばそうでしたなwwwアメとムチというやつですなwww我輩としてはアメよりポテチがいいのでござるがwww」

雪の女王「さぁ、無駄口を叩いていないで始めるぞ。時間が惜しいんだろう?」

433 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/20 00:30:32 bJm 144/411

女王の氷ドーム(仮称)内部

ティンカーベル「おぉーっ!中はあんまり寒くないね!」

キモオタ「というか外が寒すぎなのでござるよwww吹雪とかやばいでござるからなwww」

ティンカーベル「それにしても天井は高いしとにかく広いし…これが氷だけで出来ててしかも二十分くらいで造っちゃったとか圧巻だねぇ…」

キモオタ「宅配ピザが家に届くより早いですからなwww」コポォ

雪の女王「まずは君達の力量を計りたい。だから今回は遮蔽物を一切造っていない、今後必要ならば追加で設置していこう」スタスタ

キモオタ「力量を計るといっても…いったい何をするのでござるかな?」

雪の女王「難しいことじゃない。君たち二人で私を倒すつもりでかかってくればいいだけだ。どんな手段を使っても構わない」スタスタ

ティンカーベル「魔法具とか妖精の粉とか…なんでも?どうなったら終わりになるの?」

雪の女王「基本的には降参をするか意識を失ったらそこで終了だ。私に遠慮はいらないから全力出来てくれ。…っと、最初はこれくらい距離をとって対峙しようか」スタスタ

ティンカーベル「結構距離とったね…まぁ私はスリングショット使いだから距離はあった方がいいけど!」

キモオタ「ルールは分かりましたぞwwwとはいえ…本当に全力でもいいのでござるか?我輩のおはなしサイリウムの能力は攻撃特化も多いでござるし、女王殿を怪我させてしまう可能性もありますぞ?」

雪の女王「聞いていたとおり、君はキモいが優しい男だな。だが、手の内を晒すのは頂けない。私が全力で来いと言ったんだ、君は自分の持てる力を余すことなく使えばいい」

雪の女王「さぁ…それじゃあ特訓開始だ」スッ

ティンカーベル「ちょっと待って…!自惚れてもないし女王の凄さも分かってるけどさ、でもそれで女王に怪我なんかさせたら…」

雪の女王「私は『開始』だと言ったんだぞ。既に戦闘は始まっている」ヒュッ

ビュッ

キモオタ「ファッ!?…女王殿が一気に距離を詰めてきましたぞ!?」ブヒッ

雪の女王の声「さぁすぐに敵を見据えろ。相手の心配をしているほど、君達に余裕はないはずだぞ?」

435 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/20 00:32:31 bJm 145/411

ティンカーベル「うわー!マズいよキモオタ!結構距離あったから安心してたけど、あのスピードだと一瞬で距離詰められちゃう!」

キモオタ「初っ端から距離を詰められるのは避けたいですな…。ここはシンデレラ殿との絆の力で一旦離れて距離を取り直しますぞ!」フリフリフリ

おはなしサイリウム「コード認識完了『シンデレラ』 魔法発現状態へ移行……モード『step』」

キモオタ「ここはガラスの靴の如き瞬足で一気に距離を取るでごz…ぶひぃぃぃっ!」ビターンッ!

ティンカーベル「あっ!キモオタが盛大に転んだ!もう!普段運動しないからこうなるんだよ!」プンスカ

キモオタ「いや、運動不足が原因ではないですぞ!?我輩の靴が…床に縫いつけられてるでござる!」パキパキパキ

ティンカーベル「本当だ!いつの間に…っていうかこんなに距離があるのに!」

雪の女王「状況分析も良いが打開策を生み出せなければ無駄に終わってしまうぞ?」パキパキパキ…スラッ

キモオタ「女王殿が氷の槍を生成しましたぞ…!あんなもので貫かれては一溜まりもありませんぞ!」

ティンカーベル「急いで氷を床ごと壊そう!赤鬼の金棒なら出来るでしょ!?」

キモオタ「しかし、破壊したところで床を移動していてはまた張り付けられてしまうのでは…んっ?これは…」

ティンカーベル「ぶつぶつ言ってないで早くなんとかしよ!じゃなきゃ動けないキモオタとかただの気持ち悪い的だよ!」

キモオタ「ティンカーベル殿!我輩に妖精の粉を!」

ティンカーベル「!? わかった!でも妖精の粉じゃ氷を壊せないよ!?」

ファサー

キモオタ「問題ありませんぞ!凍りつけられていたのは靴の部分のみ!靴を脱げばこの通り脱出可能ですぞぉぉ!」バッ

436 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/20 00:34:02 bJm 146/411


雪の女王「危ないところだったなキモオタ。二人が随分と慌てているから私が凍らせているのが靴の部分だけだという事に気がつかないと思ったぞ」フフッ

キモオタ「間一髪でござったけどね、思ったより我輩の脳味噌は冷静だったでござる」フワフワ

ティンカーベル「でもラッキーだったね!女王がうっかりしてて!足ごと凍り付かせてたら完全にアウトだったもんね!」

キモオタ「いや…女王殿がそんなミスをしますかな?これはおそらく敢えて靴だけ凍らせたでござる、我々に対抗手段を残すために」ヒソヒソ

ティンカーベル「そっか、私達の力量を計るって言ってたし…冷静に対処できるかどうか見てたんだね!」ヒソヒソ

キモオタ「恐らく。あのまま氷を壊して逃げても床に面している以上同じ事の繰り返しでござるしな」ヒソヒソ

雪の女王「冷静でいたことは誉めてやろう。だが反撃の好機をお喋りで無為にするのは愚策だな。お前たちが空中に逃げることを私が予測していたとしたらどうする?」パキパキパキ

ティンカーベル「氷柱だ!女王の周りに氷柱!あれこっちに飛ばしてくる奴だよ!どうする!?」

キモオタ「回避か防御…ですぞ!しかし回避するにしてもあれがホーミングしてこないという確証はないでござるし、防御も方法を間違えれば不利に…なんとか戦いの流れを掴まねば…」

雪の女王「考えていても流れなど掴めないぞ?とにかく行動しなければな。さぁ…こっちは射出準備完了したことだし、アドバイスはここまでだ」スッ

ティンカーベル「キモオタ!どうすんの!?もっと高く飛んで届かないとこまで行く!?」

キモオタ「射程距離が分からない以上…ここは防御アンド作戦タイムですぞ!ティンカーベル殿、我輩の側へ!」フリフリフリ

雪の女王「回避は諦めて防御に徹するか?だがこの氷柱は生半可なものではないぞ?」フフッ

ビュビュビュビュッ

437 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/20 00:36:31 bJm 147/411

おはなしサイリウム「コード認識完了『ラプンツェル』 魔法発現状態へ移行……モード『tower』」ドォォォォォッ

ガキガキガキィィンッ

雪の女王「【ラプンツェル】の塔か…護るべき者を覆う強固な壁、あの氷柱で打ち破れないところを見るに相当な強度のようだ」スッ

雪の女王「天井…全ての方向の壁どこをとっても隙がない。大方時間稼ぎをして作戦をたてようという算段だろうが…そうはさせない」

雪の女王「塔が一切の攻撃を寄せ付けないのなら…狙うべきは塔の根元、地面を抉ってやればいい」スッ

パキパキパキ…ズゴォッ!!

雪の女王「どの様な強固な建造物も崩れた地面に建ち続けることは出来ない。そして崩れゆく建物周辺で一番危険なのは…その内部だ」

パキパキパキズゴォッ! ゴゴゴゴゴ

雪の女王「塔が崩れるとなれば君達も逃げ出すしかない。そう、私の目の前にな」

ゴゴゴゴゴ ズゥゥゥン

雪の女王(容易く崩せた…?何か策があると考えたが買いかぶりだったか…?あるいは瓦礫に紛れて攻撃するつもりか?)

雪の女王「まぁ良い、まずは私の吹雪で瓦礫を一掃して……」

キモオタ「そおおぉぉい!ティンカーベル殿!今ですぞぉ!塔の崩壊に乗じた奇襲を受けて見ろでござるぅー!」シュッ

ティンカーベル「まっかせてぇぇー!奇襲からのゼロ距離射撃だよぉぉ!!」ピューン

雪の女王「やはり瓦礫の陰からの奇襲か。だがなティンカーベル、近距離から私を撃つというのは良い作戦だが…それをバラしてしまっては意味がない、君の動きを注視すれば容易く避けられるのだから」スッ

ティンカーベル「そうだよね!私のことをしっかり見てればいいと思うよ!」ニヤニヤ

シュッ

雪の女王「マッチ…!あぁやられたな、大声で作戦をバラしていたのは陽動。本命はマッチ売りの魔法具か」フフッ

ティンカーベル「私の動きを注意して見てたんなら絶対にマッチの炎が視界に入るもんね!これで戦いの流れを掴み取るよー!」

438 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/20 00:39:42 bJm 148/411

キモオタ「ティンカーベル殿!グッジョブですぞwwwここまでは作戦通り、ブラフに煽りに嘘八百!それが我々のバトルスタイルですぞ!女王殿!」

ティンカーベル「きっとこの幻見たら女王は降参するよ!とんでもない地獄絵図だからね!」フンスッ

雪の女王「戦いの最中に勝利を確信する輩というのはほとんどの場合敗北するものだぞ?まぁ、良い…君私が見る幻覚は一体何なんだろうな、少々楽しみだ」クスクス

キモオタ「ドゥフフwwwこれは以前の戦いの場で失策だったものの再利用でござるが…今回はうまくいくでござろうなwww」コポォ

ワラワラワラワラワラワラ

キモオタ2「そうですなwww我々の渾身の策を受けてみよですぞwww」コポォ

キモオタ39「しかしこの人数www幻覚見せるってレベルじゃねぇぞwww」コポォ

キモオタ273「いやいやwww我輩はオタクじゃありませんぞwwwただのアニメファンでしてwww」

キモオタ485「貴様は~wwwだから2ちゃんねるでwwwバカにされるというのだwww」ドゥフコポォ

キモオタ873「ぐえぇぇwww悪霊退散www悪霊退散www」シュシュッ

コポォコポォドゥフドゥフ

雪の女王「キモオタ、ティンカーベル…これは何事だ?」

ティンカーベル「戦闘で適わないなら精神攻撃!マッチ売りちゃんのマッチのおかげで今ここは考え得る限り最悪な空間と化したんだからね!」フンスッ

キモオタ本体「ドゥフフwwwこれぞ雪の女王殿を打ち破る必殺の策略!約千人の我輩が溢れかえるキモい空間に耐えられますかなwww」コポォ

分身キモオタ(およそ1000人)「ちょwww自分でキモイとかwwwクッソワロタwww」ドゥフコポォ

439 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/20 00:41:16 bJm 149/411

キモオタ本体「分身して攪乱というのは以前、対悟空殿戦でグレーテル殿が使った策略でござるwww幻覚といえど圧倒的な数の暴力は精神に圧迫感を与えると同時に本体がどれだか分からないという一度で二度おいしい策略www」

キモオタ本体「惜しくもグレーテル殿の時は相手の悟空殿がリアルな分身を出せてしまったため無効化されてしまいましたがな…しかし女王殿に分身能力はないですぞ!これでかつる!しかも失策の再利用でエコロジーwww」

キモオタ本体「一人でさえキモい我輩が千人居るとなればキモさは千倍!密集することでおよそ三千倍のキモさ!このえげつない精神攻撃に耐えられますかな!?…ところでティンカーベル殿はどうしてだまっているのですかな?www」

ティンカーベル「ごめん…思ったより気持ち悪くて吐きそう」ウゥー

キモオタ本体「なん…ですと…!まさか味方のティンカーベル殿に被害が及ぶとは大誤算ですぞ!し、しかしこの様子ならば雪の女王殿も相当な精神ダメージを受けているはず…!」チラッ

雪の女王「……」ビュンッビュオンビュオン

キモオタ46「ぶひいぃぃっ!」ボウンッ
キモオタ673「ちょwww美女の足蹴で消えるとかwww」ボウンッ
キモオタ912「むしろご褒美(キリッ」ボウンッ

キモオタ本体「ぶひいぃぃっ!無言で分身を殴るアンド蹴るしてらっしゃる!」

雪の女王「確かにキモいが幻覚ならこうすれば消滅すると相場が決まっている、千人は面倒だがな」ドゴッ

キモオタ本体「や、やめるですぞぉ!これ結構精神にクルものありますぞぉぉ!」

440 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/20 00:43:14 bJm 150/411

雪の女王「ほぅ…ならばこういうのはどうだ?」ドゴォ

キモオタ235「ちょぶっwww顔面は無いですぞwww」ボウンッ

キモオタ本体「あああっ!我輩(分身)の顔面がさらに見るに耐えない姿にぃ!」

雪の女王「しかし一体ずつ消すのも面倒だな。凍りつけ、見るに耐えない分身共」フッ

パキパキパキパキパキィ

キモオタ本体「ぶひぃっ!?床の上に立っていた分身が動きを止められましたぞ!?ま、まさか女王殿…!」

雪の女王「幻覚とはいえ醜い姿に生まれ無念だろう、最期くらいは美しく砕け散るが良い」ビュオッ パリーン

キモオタ本体「ぬああぁ!凍った我輩(分身)が砕けていくでござるぅー!」

雪の女王「……」ドゴォ パリーン ドゴォ パリーン

キモオタ本体「こ、股間とか顔面を重点的に蹴るのは止めてあげてほしいでござるぅ!」ウワアアア

ティンカーベル「うげー…げほげほっ」ゲロー

雪の女王「まったく…後先考えないからこうなるんだ、自分達が出した幻覚でダメージを受けるとは情けない、もう続行は不可能だな」フゥ

雪の女王「キモオタ、ティンカーベル。十五分休憩だ、その間に精神を落ち着けて…時間が来たら二戦目だ。次はしっかりとな」

キモオタ「うぅ…分かりましたぞ…」

ティンカーベル「わかった…それより冷たいお水ください…」

・・・

441 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/20 00:45:11 bJm 151/411

その夜
雪の女王の宮殿 客間

ティンカーベル「……あー、死んじゃうと思った、女王スパルタすぎるよぉ」パサッ

キモオタ「ティンカーベル殿が速攻でベッドに墜落とは珍しいですな…そして我輩もダメでござるー」ドサァ

ティンカーベル「今日は疲れた…心身ともにね…」

キモオタ「食事もまだだというのにもう眠りたい勢いですなぁ…」

ティンカーベル「お腹すんごく空いてるのに食べる気にならない…」

キモオタ「ガッツリ泳いだり全力で走りまくったりすると逆に食べられなくなったりするらしいですぞ…まぁどうでもいい情報ですな」

ティンカーベル「みんなも頑張ってるんだし、もっとキリッとしなきゃなんだろうけどとにかく疲れた…」

キモオタ「赤ずきん殿赤鬼殿は別のおとぎ話へ、桃太郎殿も新たな地で修行、ヘンゼル殿ドロシー殿は裸王殿のとこ、ラプンツェル殿はシェヘラザード殿の所…おそらくそれぞれ頑張ってるのでござろう、我々だけ弱音を吐くわけにもいきますまい」

ティンカーベル「まぁね…それに大変だっただけあっていろいろ分かったこともあるし、女王との戦いも最期の方ではうまい具合に連携取れたと思うよ私達」

キモオタ「それでも一度も女王殿を倒せず降参もさせられずでしたがな…」

ティンカーベル「まぁそれは…うん、勝つことが目的じゃないからね。あした頑張ろ、うん、明日また頑張ろう」

キモオタ「そうですな…食事をいただいて早めに休むとするでござる。こんな情けない姿を女王殿に見せるわけにもいきませんからな、切り替えていかねばwww」

・・・

442 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/20 00:49:12 bJm 152/411

同じ頃
アラビアンナイトの世界 王宮

ラプンツェル「ねーねー、シェヘラザード!お願いだってば~!私も皆みたいにしゅぎょーがしたいんだよぉー!」

シェヘラザード「ダメです。ラプンツェルさんは勉学の為にこの場に居るのでしょう?戦いを教えるために招いたのではありません」

ラプンツェル「そんな事言わないでさー、今日だって一日中大変なお勉強頑張ったんだからご褒美として!ねっ?」

シェヘラザード「だからダメです。数字の勉強や物理の勉強だってあなたに必要なものですよ。あなたの髪の毛は自在に操れますがあくまでそれはあなたの意志で動く、あなた自身が賢くなれば今よりも効率的に髪の毛を操れるのですよ。だから…」

ラプンツェル「えーっ!?絶対に実戦っぽくしたほうがいいってば!こう、悪いとーぞくとかをぐるぐるっと一網打尽にするとか!」ワクワク

シェヘラザード「絶対にダメです、私はあなたのお母様と約束しているのです。危険な目に遭わせない、無茶をさせないと、ですからあなたは三日間勉強付けです」

ラプンツェル「えーっ!?実戦の方がいい!体動かしてる方が楽しいもん!だから実戦実戦!とーぞくとか退治しーたーいー!」ジタバタ

シェヘラザード「駄々っ子ですかあなたは…何をしてもダメです。賢くなれば効率的な支援や援護を見極められます、あなたの特性はサポートで真価を発揮すると私は考えてます。戦陣切って戦うのはもっと適した方に…」

ラプンツェル「やだー!私もたたかいたいんだよ!仲間外れっぽいじゃんー!」

シェヘラザード「そんな事はありません。ですから明日も私と勉強です」

ラプンツェル「ぐぬぬ…シェヘラザードの馬鹿!けちんぼ!」

シェヘラザード「また子供のように…でも好きに言いなさい、私はそんな挑発には乗りません」

ラプンツェル「シェヘラザードのいじっぱり!おたんこなす!」

シェヘラザード「はいはい、そうですね。明日も早いのですから今日はもう休んd」

ラプンツェル「シェヘラザードのちび!ぺたんこおっぱい!」

シェヘラザード「……ラプンツェルさん、こっちに来てください」

ラプンツェル「あっ、やっとお願い聞いてくれる気になった!?えへへっ、やったぁー…痛いっ!」ベチッ

シェヘラザード「他人の外見を蔑むなど最も卑劣な好意ですよ。明日、同じ時間から勉強の続きですからね」フイッ

ラプンツェル「むーっ…シェヘラザードのわからずや!もー私勝手にするからいいもんっ!」プンプン

465 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/27 00:31:07 fWS 153/411

翌朝…キモオタ達の作戦決行まであと2日
アラビアンナイトの世界 王宮 

給仕「失礼いたします。国王様、食後のお茶はいかがなさいますか?」スッ

国王「貰おう。今日は特に濃いめの茶を頼む、眠気が覚めるようなものをな」

給仕「かしこまりました。すぐにお持ちいたします」ペコリ スタスタ

国王「さて、茶を済ませたら大臣と会談の打ち合わせだ。数年ぶりに設けられた隣国の王との会談…私自身の行動が招いた結果とはいえ、ほぼ断絶状態にある国交を回復させるまたとない好機だ」

国王「隣国との関係を以前のように良好なものにできれば物資の流通も人の行き来も盛んになる、そうすれば市場は賑わい景気向上に繋がる。経済が活性化すれば国民の生活も潤うだろう」

シェヘラザード「……」カチャカチャ

国王「疲弊したこの国を蘇らせるにはまずそこからだ。他国からの信用は地に落ち、国に若い女は一人としていない、高齢化と労働力の偏り、我が国が…私が抱える問題はあまりに多い」

シェヘラザード「……」カチャカチャ

国王「だが余所へ行くこともなくこの地に残った国民や、会談に応じた隣国の王、そしてお前のようにこの国がかつての輝きを取り戻せると信じて居るものも居る」

国王「疲弊したこの国を立て直したいと言ったお前をあの日の私は夢物語だと一蹴したが…威厳も尊厳も地に落ちた私をそれでも王と認める者が居るのならば、私はその夢物語を現実にせねばなるまい。近頃、そう思えるようになったのだ」

シェヘラザード「……」カチャカチャ

国王「それにこの国が滅びてしまえば、お前の話す愉快で心躍る物語の数々を聞くことも出来なくなる。それは非常に……」

シェヘラザード「……」カチャカチャ

国王「…シェヘラザード、お前は魚を刻んでいるのか朝食を摂っているのか、どちらだ?皿の上が悲惨な事になっているが」

シェヘラザード「あっ…申し訳ありません。悩みごとと言いますか、少し考え事をしていましたので…とはいえ食物を粗末にするような無作法な真似、王妃としてあるまじき行い。どのような処罰でも受け入れる覚悟はできております」

国王「いや、構わん。その様子では私の話も聞いていなかったのではないか?」

シェヘラザード「……恥ずかしながら。陛下のお言葉を聞き漏らすなど妻としてあってはならぬこと、どのような処罰でもなさってください」

国王「もう良い、大したことは語っていない。忘れろ」

国王「だが普段はしっかりしているお前がこんな醜態を晒すなど余程の事だ。話してみろ、お前は何をそんなに悩んでいるのだ?」

466 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/27 00:33:48 fWS 154/411

シェヘラザード「いえ、陛下にお聞かせするような事ではございません。ごく個人的な他愛もないことですので」

国王「私にはそうは見えぬが?思えば昨夜も少々様子がおかしかったように思える」

シェヘラザード「いえ…私は平気です。それに本日は大切な会談の日、このようなことで陛下のお時間を浪費するわけにはいきません」

国王「問題ない。王妃とはいえお前はまだまだ小娘だ、悩み事などたかが知れている。それとも何か?この私に小娘の悩みを聞いてやるだけの余裕すら無いとでも思っているのか?」

シェヘラザード「いえ…滅相もありません。陛下がそう仰るのでしたら、少しだけ…聞いていただいてもよろしいですか?」

国王「構わん。私は夫婦の間に隠し事をするなど許さん、お前が悩んでいることは全て打ち明けよ」

シェヘラザード「でしたら…。実は昨日…その、ラプンツェルさんと口論になりまして…。いえ、口論というほど激しいものでは無いのかもしれませんが…」

国王「普段、お前はあの娘と随分と親しくしているではないか。何かお互いの主張が食い違うことでもあったのか?」

シェヘラザード「お察しの通りです…。どこから話したものか…以前陛下もお会いした事があるキモオタさん、覚えておられますか?」

国王「覚えている。あの強烈な容姿と言動…そうそう忘れられるものではない。妖精と旅をしている男だろう?あのどこか気持ちの悪い…」

シェヘラザード「えぇ、そうです。そのキモオタさんは旅をしながら様々な方を助けていて…近々、様々な場所で悪さをしている者との決戦を迎えているのです」

国王「ほう…あの男の旅先での話は実に興味深いものだったが、物見遊山の旅という訳ではないのだな。それで、それがお前とラプンツェルにどう関わってくる?」

467 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/27 00:37:13 fWS 155/411

シェヘラザード「ラプンツェルさんも私もキモオタさんの事情は知っていましたから、決戦が迫っていると聞いて私達も協力する事に決めたのです」

国王「…話の腰を折るぞ。あの娘はともかく、お前は王妃だ。協力するなとは言わないが、その内容によっては私はそれを止めさせねばならないぞ」

シェヘラザード「ご安心を。私はこの世界から…いえこの国から出て行くことはできません。ですから戦いの場に赴くような事はありません、今までと同じように私は陛下のお側にいます」

シェヘラザード(この世界【アラビアンナイト】はまだ結末を迎えていない。私は物語の筋書き上、毎夜毎夜、陛下にお話を聞かせるという役目がある…それを放棄すればこの世界は消えてしまう)

シェヘラザード(私は皆さんのように、直接キモオタさんの協力をすることが出来ない…残念ですが、この世界が消えてしまえば元も子もありません)

シェヘラザード「しかしラプンツェルさんは違います。彼女はもう居ても立っても居られないようで…キモオタさん達とともに戦い、力になりたいんだと強く思っていました」

国王「あの娘はそうだろうな。良くも悪くもじっとして居なさそうだ」

シェヘラザード「そうなんです…それが今回言い争いになった原因といいますか…。私はラプンツェルさんにはもっと学問に力を入れて欲しいのです、友のために戦うという意志は立派だと思いますが彼女はその…なんと言いますか…」

国王「知恵が足らないようだからな、あの娘は。それを懸念しているのだろう?」

シェヘラザード「…端的に言えばそうです。十年以上世間から隔絶されていたラプンツェルさんは最低限の知識しか身に付けていません。それに精神面が幼すぎます、思慮浅い部分も目立ちます」

シェヘラザード「あの長い髪の毛を操る魔法…体術を駆使すれば強敵を相手取る事もきっと出来ます。ですがラプンツェルさんの場合、精神や思考がその力に対して不足しています」

シェヘラザード「あの長い髪の毛…投げ縄や鎖のような武器は使い手の思考に左右されます。強力な力はうまく使えば敵を苦しめますが判断を誤れば見方を窮地に追い込むことにも…」

シェヘラザード「だから私はラプンツェルさんにもっと知識を与えなければならないんです。彼女のお母様であるゴーテルさんと約束しましたから」

シェヘラザード「そしてそれは戦う力を持たない私が唯一出来る協力なのです」

468 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/27 00:40:37 fWS 156/411

シェヘラザード「ですから私は実戦よりも知識面の強化を優先しました。ですがラプンツェルさんはもっと実戦的な訓練がしたいと考えていたのです」

国王「成る程な。そこで意見が分かれてしまったのか」

シェヘラザード「私はゴーテルさんから彼女をお預かりしている身。危険な目に遭わせるわけにはいきません。それなのに彼女は実戦的な訓練がしたいしたいと意見を曲げなくて…」

シェヘラザード「私は自分の考えに自信がありました、知識を固めることこそ必要であると。ですから聞く耳持たないつもりだったのですが…その、少し私の劣等感を刺激する悪口を言われたもので…手をあげてしまいました」

国王「お前が手をあげるとは…どのような言葉がお前の尊厳を傷付けたのかは知らないが、余程の暴言だったのだろうな」

シェヘラザード「おでこを叩いた程度ではあったのですが…暴力は暴力。意見が食い違い、少し悪口を言われたからと友人に暴力を振るうなど…王妃以前に人間として恥ずべき行い」

シェヘラザード「酷く後悔しました。この事はラプンツェルさんに謝るつもりです、ですが…彼女に会えばまた言い合いになる可能性もあります」

国王「ラプンツェルは考えを曲げない、お前も同様。ならば何度意見を交わそうとも平行線だな」

シェヘラザード「…陛下、私の考えは間違っているのでしょうか?ラプンツェルさんの言うように実戦的な特訓をするのが彼女のためなんでしょうか?」

国王「シェヘラザード、お前はどう思っているのだ?」

シェヘラザード「正直な気持ちを言うのなら、わからないというのが本音です。昨日までは自信を持っていた考えも、今は揺らいでしまっているのです…知識だ学問だと言っておきながら私がとった行動は異なる意見に対する暴力でしたから」

シェヘラザード「そして考えれば考えるほど、自分の意見を押し通して友人を失うのも、彼女の意見に合わせて友人が傷つくのも…今の私は両方共恐ろしいのです」

469 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/27 00:44:55 fWS 157/411

国王「事情はだいたい理解した。そう難しい問題ではないだろう」

シェヘラザード「私にはそうは思えません…。よろしければ陛下のお考えをお聞かせください」

国王「私ならばラプンツェルに実戦的な特訓をさせる。それを中心としつつ知識を得る時間も必ず取らせる」

シェヘラザード「両方する、ということですよね…でもそれではどちらも中途半端な仕上がりになってしまうと思うのですが…」

国王「悪く言えばそうだな。だが完璧を求める必要があるのか?ラプンツェルは戦士ではない、両方ともそこそこ出来ると考えれば寧ろ上々だと思わないか?」

シェヘラザード「それも一理あると言えばそうですが…」

国王「お前は完璧主義すぎる、高水準を求めすぎだ。ラプンツェルが身につけなければいけないのは効率的な戦い方でも無ければ強敵を倒す力でもない」

国王「死なないことだ、それは座学では実感しにくい。あの娘が戦うことは死と隣り合わせだと理解するには戦うしかない、しかし決死の覚悟で戦えとはいわない。適度に戦いの役に立てばそれでいい、先ほども言ったがラプンツェルは戦士ではない、多くを求める必要などない」

国王「知略を百、戦術はゼロ。知略をゼロ、戦術を百にするより知略五十、戦術五十にしたほうが臨機応変な立ち回りが出来るだろう、と私は考える。それに……」

シェヘラザード「…?」

国王「ラプンツェルにやりたくもない学問をじっとして受けられると思うか?あの破天荒で我が道を行くワガママ娘が、だ」

シェヘラザード「ふふっ……いえ、恐らく途中で投げ出してしまうと思います」

470 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/27 00:48:25 fWS 158/411

国王「なんだかんだ言ったところで全てはラプンツェル次第。頭を押さえつけて無理に勉強をさせても続かん。それなら『おまえの意見を飲んでやるから勉強もしろ』と諭す方がずっと懸命だ」

シェヘラザード「確かにそうですね…その方向に方針を変えてみます」

国王「あくまで私の考えだ、もっと良いやり方はあるかもしれないが…結局の所、この手の問題に正解など存在しない。あとはよく本人と話して決めるんだな」

シェヘラザード「わかりました。ありがとうございます、私一人では答えが出せずにいたので助かりました」

国王「小娘の悩み相談に乗る位は悪逆非道な国王と評判の私にでも容易いわ」

シェヘラザード「ふふっ、またその様なことを。近頃、国王様は変わったと皆さん口を揃えておっしゃっていますよ?」

国王「だとしたらそれはお前のおかげだ。お前という伴侶がいるから私は変わりつつあるのだろう。だから、あれだ…遠慮する必要は無いから悩みも思っていることも全て私に打ち明けよ、決して隠し事をしてくれるな」

国王「私はもう妻を疑いたくはない。妻を…お前を信じ続けていたいのだ」

シェヘラザード「ご安心ください。私は陛下を裏切るようなことは決していたしません、それだけは世界が滅ぼうと…有り得ないことです」

国王「…女の言うことは信じないと心に決めていた。だがお前の言葉は信じさせてもらうぞ」

シェヘラザード「はい、私も陛下がこの国を蘇らせることが出来ると信じております」

国王「うむ、任せよ。私が招いた事だ、始末は必ず付ける。だが今は…シェヘラザードよ、もう少し近くへ寄ってはくれぬか?」

シェヘラザード「はい、仰せのままに」スッ

・・・

給仕(やべぇ、お茶持ってきたけどめっちゃ入りづらい…)

471 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/27 00:50:43 fWS 159/411

給仕「どーしよコレ…。国王様が過去のトラウマを乗り越えられるなら俺自身も嬉しいんだけど、お茶持って行かなかったらそれはそれで怒られそうだし…」

給仕「この雰囲気の中突入できる奴なんていないだろ。いたとしたらなんかこう…空気読めない感じの、脳味噌はいってない感じの奴だろ…」

スタスタスタ

かかし「すまン、ちょっと聞きたいんだガ…国王とシェヘラザードが朝飯食べてる部屋ってここカ?」

給仕「あ、あぁそうだけど…。今ちょっといい雰囲気だから入るの止めといた方g」

かかし「そうカ!この部屋であってたカ!国王ー!シェヘラザードー!帰ってきたから挨拶しに来たゾ!」ズカズカ

シェヘラザード「か、かかしさん!?戻ってたんですねっ、お疲れさまでした」アワアワ

かかし「いや別に疲れてねぇけド…何を慌ててるんダ?」

国王「かかし。確かに私はお前に城の出入りを許可したが…部屋に入る前の声かけくらい常識だ。お前に脳がないのは知っているがその辺りは配慮しろ」

かかし「あー…なるほド、そりゃあすまんナ。そうだよナ、二人は夫婦なんだからいろいろあるよナ!俺の配慮が足らなかっタ!俺は出て行くから続きをやってくレ」

シェヘラザード「無茶言わないでください!もう気にしなくて良いですから。むしろ今出て行かないでください、気まずいですから」

国王「お前は動揺しすぎだ。まぁ良い、久々に友と会ってきたのだろう?土産話を聞かせてもらおうか」

かかし「フーム?まぁそう言うならそうするがヨ。人間の大人の心理はいまいちわからねぇナ…」



給仕「あいつのメンタルすげぇ…」

472 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/27 00:53:35 fWS 160/411

・・・

かかし「……っつーわけでナ、ドロシーとライオンの奴はキモオタ達と一緒に戦う事になっタ。俺とブリキはそれぞれ大人しくお留守番だナ!」

国王「成る程な。お前の共の話は以前聞いた。魔法の靴を履いた少女と臆病なライオン、ブリキの身体を持ったきこり…そしてかかしでありながら命が宿ったかかし…」

国王「お前達が出会って悪しき魔女を殺した話は実に心が躍った。そして今回、離れ離れになった仲間との奇跡の再会…そして少女ドロシーの決意!いやはや、やはり旅というものに憧れるな、私は」

かかし「国王はかわってるよナ、なんつーか冒険や旅の話好きすぎるっていうかヨ。俺みたいなかかしもすぐに受け入れてくれたしナ」

国王「私は昔から書物を読みや物語を聞くのが好きでな。シェヘラザードが話すおとぎ話も好きだがお前達のような旅人の実体験はそれとは違う心の高鳴りを感じるのだ」

シェヘラザード「陛下、どんなに疲れていても私のおとぎ話は必ず聞いてからお休みになられますものね」ウフフ

国王「お前の話は多忙な毎日を過ごす中で唯一の楽しみだ。しかし今回かかしは、以前キモオタの話にも出てきたあの半裸の国王の国に行ったと言うではないか!しかも以前聞いた話よりも国が栄えているように感じる」

国王「どういうことだ…国作りにはマニュアルも定石も存在しない、何が国家繁栄に繋がるかなど誰にも分からない。とはいえ半裸でありながら国をそこまで栄えさせるとは…」

かかし「興味あるなら裸王の国のこともっと話してやろうカ?後学のために色々と聞いてきたからナ、土産に貰った裸王マカロンもあるゾ」

国王「興味深い。興味深いが…もうあまり時間がない。だが続きが気になってしまうのは避けたい、また時間があるときに頼む」

かかし「そーかそーカ、じゃあまただナ。でもどうすっかナー、今日はシェヘラザードの勉強会無いんだロ?勉強会あるんだったらそっち行くけどナ、ちょっと街にでも行くカー」

シェヘラザード「大丈夫ですよかかしさん、今日もいつも通りの時間に勉強会やりますから。ラプンツェルさんにもお話ししてありますしね」

かかし「ン?どーゆうことダ?勉強会、今日はやらないってラプンツェルから聞いたゾ?」

473 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/27 00:56:28 fWS 161/411

シェヘラザード「どういうことですか?私は確かに昨日ラプンツェルさんに…。まさか私が話を聞いてあげなかったから拗ねてしまったとか…」

かかし「なんかあったのカ?確かにちょっといつもと違う感じではあったがナー」

シェヘラザード「実はかくかくしかじかで…。いつもと違うとは、どの辺りがでしょうか?」

かかし「いやナ、実は俺早朝にはもうこの世界に帰ってきてたんダ。でもあんまり早くに城に行っても悪いなってなってサ、仕方ないからその辺の鳥と話でもしようとシェヘラザードの実家の辺り通ったんだガ」

かかし「なんかラプンツェルがコソコソ抜け出しててたんだヨ。あのねぼすけが早朝にだゾ?」

シェヘラザード「確かにそれはおかしいですね。それで、どうしたんです?」

かかし「どーしたんだこんな朝早くにーってこえかけたんダ。したらこう言ってたぞ『今日はお勉強会ないから!だからお城に行かなくても良いしシェヘラザードに会わなくても大丈夫だよ!私のことも言わなくてもいいからね!』ってナ」

シェヘラザード「……わかりやすすぎますね」

国王「詰めが甘い娘だな。どこに出かけたか知らないが目的はハッキリしているな」

シェヘラザード「昨日私が反対したからもう勝手に自分で特訓することにしたんですね…すぐに追いかけて話をしないと…」

シェヘラザード「しかしラプンツェルさんは世界移動の手段も持っていませんし…遠くに行っているとは思えませんが…一体どこへ…」

かかし「この辺りにそんな事できる場所ないだろウ?」

チカチカッ

国王「シェヘラザード、今お前の指輪が光ったように見えたが?」

シェヘラザード(別のおとぎ話との通信用の指輪が…。ラプンツェルさんが居なくなったこのタイミングで連絡、嫌な予感しかしませんね…)

シェヘラザード「私は少し席を外します、かかしさん、申し訳ありませんがやはり今日は勉強会は中止させてください。陛下は会談の方、そろそろお急ぎくださいね。成功を祈っております」ペコリ

タッタッタッタッ

474 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/27 00:58:48 fWS 162/411

王宮 シェヘラザードの自室

チカチカッ

シェヘラザード「お待たせしてすいません、シェヘラザードです」スッ

???「ようやく通じたな。シェヘラザード!どうなっているんだこの状況は!」

シェヘラザード「まずは落ち着いてください。その声は【アリババと40人の盗賊】の世界のモルジアナですね?」

モルジアナ「あぁ、そうだよ!でもね、こっちは世界が消えちまうかもしれないってんだよ!落ち着いてなんか居られるかい!?」

シェヘラザード「世界が!?まさかアリスがそちらの世界へ…!」

モルジアナ「それならもっとわかりやすかったんだけどね。実はねこっちの世界で悪さをしている盗賊が何者かに退治されたんだよ」

シェヘラザード「あなたが退治するはずのあの盗賊団をですか!?だとしたらもう既に…!」

モルジアナ「あぁ、いや…あいつらとは別の盗賊団だ。こっちにはいくつもの盗賊団がしのぎを削ってるからな。今んとこ例の盗賊団は無事だ」

シェヘラザード「そうですか、それは一安心ですね…」

モルジアナ「だがな、そいつが例の盗賊団まで退治しちまったらアタシの出番が無くなっちまう!そうすりゃあ筋書きが変わってアタシもアリババもこの世界ごと消えちまうだろうが!」

シェヘラザード「それは避けねばなりません。何か手がかりはないのですか?盗賊団を捕まえたものがどこの誰で、どういった目的なのか」

モルジアナ「実はな、目星がついてるからお前に連絡したんだ。アタシの奴隷仲間がな、見たって言うんだよ。元々この世界には存在しない怪鳥をな」

モルジアナ「…それってよぉ、どうかんがえてもロック鳥だろ!あの軽率なクソゴミナンパ野郎が乗り回してる怪鳥のよぉ!」

475 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/06/27 01:06:39 fWS 163/411

シェヘラザード「……」

モルジアナ「おい、聞いてんのか!?もしあのクソ野郎がアタシの世界を荒らしてるってなら許せねぇんだよ。おい、だから聞いてんのかシェヘラザード!」

シェヘラザード「……えぇ、聞いてますよ」ゴゴゴゴゴ

モルジアナ「お、おう。ならいいんだ、すまねぇ…(な、なんだこの指輪越しに伝わってくる気は…思わず謝っちまったじゃねぇか)」

シェヘラザード「……それで、ほかには?」

モルジアナ「お、おう。退治された盗賊団が妙なもんで縛られててよ…どうやら魔力が宿ってるみてぇなんだよ。ロープでも鎖でもなくてな。そいつはまるで…」

シェヘラザード「長い長い髪の毛…では?」

モルジアナ「そうなんだよ、よく分かったな。なにか心当たりでもあんのかい?あのクソゴミ以外でアタシの世界に進入してる奴にさ」

シェヘラザード「えぇ。私の友人です。そして彼女をそそのかしてそちらの世界へ行ったのはシンドバッドだという確信も持てました」

モルジアナ「そうかい、だったらなんとかしてくんねぇか?王子のアリなら空飛ぶ絨毯ですぐにこれるだろ?あいつが忙しいならイフリートでもいい、頼んでくれねぇか?」

シェヘラザード「いえ、その必要はありません。私が直接向かいます」

モルジアナ「いや待てよ!お前が軽々しく動いちゃなんねぇよ、【アラビアンナイト】が消えちまったらお前…アタシにゃ責任とれねぇしさ。あんたは母親みてぇなもんだからそうなっちまうのは嫌なんだ」

シェヘラザード「ご心配なく。これは私が直接動いた方が話が早いです、彼にそそのかされたであろうラプンツェルさんのことも気になりますし。どちらにしろ時間をかけるつもりはありません」

シェヘラザード「聞き分けのない息子を懲らしめるくらい、あっという間ですから」ゴゴゴゴゴ

490 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/04 00:19:07 D89 164/411

アリババと40人の盗賊の世界 とある弱小盗賊団のアジト

ギャーギャー ワーワー

雑魚盗賊A「クソ!何が起こってるんだ!?別の盗賊団の奇襲か!?突然茂みからロープが伸びてきたと思ったら仲間が何人か捕らえられちまった!」

雑魚盗賊B「お前よく見ろ!ロープじゃあねぇよありゃ髪の毛だ!…えっ、髪の毛!?人間を縛れるほど長い髪の毛とかあんの!?なぁ、どうなの!?なぁおいいぃ!」

雑魚盗賊C「混乱するんじゃねぇ!少なくともあの女は長い髪の毛を自在に操る魔術だか妖術だかの使い手だ!気ぃ抜いたらもってかれるぞ!?」

盗賊頭領「一カ所に留まるのは危険だ!お前ら散れっ散れーっ!女の方だけじゃなくチャラチャラした男の方にも気を配れ!こいつらただ者じゃあねぇぞ!」

ワーワー

シンドバッド「よーし、奇襲が成功したな!こんな具合でうまーく不意を突いてやると相手はただ混乱するしかできねぇんだ、そうすりゃもうこっちのもんだぜ。じゃあ問題だ、ラプンツェル。ここでお前はどう動くべきか解るか?」

ラプンツェル「えーっとね、とーぞくが混乱してる間に攻撃する!」ドヤァ

シンドバッド「よし、正解だ!だが相手はお前の髪の毛を警戒してるからな、それに剣を抜いてっから正面から捕らえようとても髪を切られちまうぜ?さぁ、どーしたもんかねぇ?」

ラプンツェル「うーんとね、それじゃあこーするっ!」シュッ

シュルシュルシュルッ ガシッ

雑魚盗賊A「うおっ!?お、俺の足にあの女の髪の毛が絡みついて…ぬわーっ!?」ビターン

盗賊頭領「おい!大丈夫か!?あの女…足を引っ張ってこかせてくるぞ!お前ら気を付け…ぬおぉぉっ!」ビターン

雑魚盗賊B「へへっ、大丈夫ですぜ頭領!足を狙ってきてるってぇならこういう具合に飛び跳ねて避けりゃあ…!えっ、なんで避けたのに追いかけてきtぐわーっ!」ビターン

雑魚盗賊C「あの髪の毛、飛ばすだけじゃなく軌道さえも自在なのかよ!?この混乱の中であんなもん避けられるわけ…ぎゃーっ!」ビターン

ラプンツェル「ふふんっ!みんなを困らせる悪いとーぞくはこのラプンツェルがみーんな捕まえちゃうからね!ろーやの中で反省してるといいよっ!」フンス

491 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/04 00:21:32 D89 165/411

シンドバッド「ひゅーっ、やるじゃねぇか!だがここで油断しちゃダメだぜ、転かしたら動けないうちに縛っちまえ!…っと、相手を縛るときに注意することはなんだ?さっき別の盗賊捕まえたときに教えた事、覚えてるよな?」

ラプンツェル「えっとね、刃物を持っていないか確認する!それか持ってても取り出せないように両手もぐるぐるに縛っちゃう!」

シンドバッド「よーし、その通りだ!こいつらが体勢立て直す前にとっとと縛っちまえ!」

ラプンツェル「わかった!みんなまとめて縛っちゃえーっ!」シュッ

シュルシュルシュルッ グルグルグルッ

「クソ、俺達盗賊がカタギの小娘に出し抜かれるなど…認めんぞぉ!」ジタバタ
「こんなむちゃくちゃに縛られてたんじゃナイフも取り出せねぇ…」ジタバタ
「追尾してくるとかズルいだろ!あんなもん初見で対処出来ねぇよ!」ジタバタ

シンドバッド「よし、一丁上がりだな!もうこいつらは動けねぇ、街に戻って番兵にでも伝えりゃあとは投獄なり処罰なりしてくれるだろうよ」

シンドバッド「しかしすげぇな!今回はほとんどお前一人で捕まえちまったぞ!俺はちょいと助言しただけだ、お前案外戦闘のセンスあるんじゃねぇか?」ハハハ

ラプンツェル「そうだよね!私センスあるよね!私もそう思う!だってすんごく余裕だったしね!あさごはんまえ!」フンス

シンドバッド「おいおい、誉めはしたがあんま調子に乗るんじゃねぇぞ?今回はうまいこといったけど毎回思い通りになるとは限らないんだぞ、確実に相手を無力化するまでは油断しちゃいけねぇ。じゃねぇと痛い目見るぜ?」

ラプンツェル「えへへっ、大丈夫!私の髪の毛は特別だからね!私が思った通りに動いてくれるし普通じゃ持てない物でも髪の毛使えばラクラクだもんっ!余裕だよよゆー!」ドヤァ

シンドバッド「いや、だからお前そういう慢心が真剣勝負の中じゃ命取りに…まぁいいか、確かにお前の髪の毛はすげぇしな!十分戦力として数えられると思うぜ!」ハハハ

492 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/04 00:23:53 D89 166/411


ラプンツェル「私、シンドバッドに戦いのやり方教えてってお願いして良かったよ!こーして特訓できる場所にも連れてきてくれたし!ありがとね!」ニコニコ

シンドバッド「おう!まぁ、数え切れない程の冒険を繰り広げた俺に相談したってのは良い判断だったな!でもシェヘラザードにバレたらかなりヤベェからこの事は内緒な?」

ラプンツェル「わかった!私、絶対に言わないよー!」フンス

シンドバッド「それにしても嬉しいねぇ、お前には他に頼れそうな奴が大勢いるってのにその中で敢えて俺を選んでくれたんだからな。ラプンツェル、そんなに俺が好きなら俺の女になっちまうか?」ニッ

ラプンツェル「えへへ~、王子のほうがずっとカッコいいからやめとく!それにシンドバッドに相談したのもたまたまお城で会ったから話しただけなんだー」ニコニコ

シンドバッド「なんだよ…まっ、そーだよな。だが引き受けたからには手は抜かねぇぜ、バッチリ特訓してやるからよ!その代わり、約束した例のアレ…頼むぜ?」ヒソヒソ

ラプンツェル「うん!シンドバッドはすんごく頼りになってとっても強くてものすごくカッコいいって事を私の友達に伝えたらいいんだよね!」ニコニコ

シンドバッド「おっと、ちょっと間違ってるな。それを『可愛い女の子の友達』に伝えるんだ、男には別に言わなくても良いからな?どういう事かわかるだろ?」

ラプンツェル「わかってるわかってる!赤ずきんとかグレーテルとかシンデレラとか…あとシェヘラザードにもバッチリ伝えとくから、安心してね!」

シンドバッド「わかってねぇなお前!?子供とか人妻には伝えなくてもいいんだよ!いや人妻はありか…?つーかシェヘラザードには絶対に言うなよ?俺が言わせたってバレたらヤベェからな」

ラプンツェル「そーなの?それよりあれだね、シンドバッドはシェヘラザードにバレたらやばいことがいっぱいあるねぇ~」ニコニコ

シンドバッド「へへっ、まぁな。あいつは何かと口うるさいからよぉ…俺のこと思って言ってくれてるってのは解るが、全部に従ってたら窮屈で仕方ねぇぜ」

ラプンツェル「わかるわかる!私にも言ってくるもん!もうすぐお姫様になるんだから買い食いはやめなさいーとか!つまみ食いはやめなさいーとか!あと手が汚れたときとか裾で拭くのはやめなさいーとか言ってくるよ!」

シンドバッド「いや、それはハンカチとか使えよお前。ガキじゃねぇんだから」ハハハ

493 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/04 00:26:54 D89 167/411

ラプンツェル「まーでもシェヘラザードがホントは良い子だって事は知ってるよ?国を良くするので忙しいはずなのに私やかかしにお勉強教えてくれるし!あとお菓子もくれるし!優しいし旦那さんの事すごく好きだし!」

シンドバッド「まぁ他人に厳しい分、自分にはもっと厳しいしな、あいつ。説教は多いし煩わしいこともあるけどまぁ…良い奴だよ、そうじゃなきゃ俺もわざわざ別の世界の警備なんかしねぇし」

ラプンツェル「うーん…そー考えるとお勉強会すっぽかして来た事、シェヘラザードに悪いことしちゃったなぁ…」

シンドバッド「おいおい、今更そんな事言っても仕方ねぇぜ?」

ラプンツェル「そーなんだけどさ、昨日はシェヘラザードが私のお話聞いてくれないからもーっ!てなっちゃって勝手にするって決めちゃったけど、やっぱりもっとお話しした方が良かったのかなぁ…」

シンドバッド「まぁそれが出来るなら一番良かっただろうがな、まーなんにせよお前は勉強より特訓を選んだんだ。シェヘラザードが思わず納得しちまうくらい強くなればいいんだ、あんまり気にすんなって」

ラプンツェル「そうだよね!もう決めちゃったんだし悩んでも仕方ないよね!特訓頑張るしかないよね!」ウンウン

シンドバッド「あぁ、そうだ。この調子でガンガン盗賊を退治していきゃお前は強くなれるし治安も良くなる!うまくすりゃあ逆に誉められるかもしれねぇぞ?」ニッ

ラプンツェル「そっか!悪者退治して街が平和になれば誉められるかもだね!あっ、でもさでもさ!確かこの世界はアリババって人が盗賊を退治するおとぎ話なんだよね?」

シンドバッド「まぁ正確にはアリババの召し使いのモルジアナっていう女が盗賊を退治するんだけどな。それがどーかしたか?」

ラプンツェル「もしもね?私達がうっかりモルジアナが退治するはずの盗賊をやっつけたら、このおとぎ話消えちゃうよね?それは私嫌なんだけど、大丈夫かな?このまま盗賊退治してても大丈夫?」

シンドバッド「ハッハッハ!意外と心配性だなラプンツェルは!確かに俺たちがうっかり例の『40人の盗賊団』を退治しちまったらモルジアナが連中を退治するってぇ筋書きが変わっちまってこのおとぎ話は消滅する。だがそんな事は絶対にねぇから安心しろ」

シンドバッド「なにしろこの世界には数十以上の盗賊団が溢れかえってるんだぜ?まさに大盗賊時代!そいつ等をうっかり倒しちまう可能性なんてかなり低いぜ、ざっくり五十分の一で計算してえーっと、何パーだ?…まぁとにかくありえねぇから心配すんなってこったな!」

ラプンツェル「そっか、それなら大丈夫だね!私達は安心して盗賊をやっつければいいんだね!」



シンドバッド「おう、俺が適当に標的として選んだ盗賊団がまさかあの『40人の盗賊団』だった!なんて事、絶対にありえねぇよ。ハッハッハ!」

・・・

494 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/04 00:29:38 D89 168/411

とある盗賊団のアジト付近 茂み

ガサガサ

シンドバッド「よーし、ラプンツェル。次の標的はあの盗賊団だ、街で見かけた下っ端盗賊っぽい奴を尾行してたらまんまとアジトに到着だ!丁度良いから退治しとこうぜ」

ラプンツェル「わかった!でもなんだか沢山居るよ?大丈夫かなー?」

シンドバッド「いけるいける。お前さっきも余裕だったろ?確かに人数は多いが、ビビってしょぼい盗賊ばっかり相手にしててもなんにもならねぇだろ?」

シンドバッド「それに安心しな!もしもやべぇと思ったら俺も加勢する、いざとなったら上空を飛んでるロック鳥に奴らを襲わせるってのもありだ」

ラプンツェル「それなら安心だねっ!たくさん盗賊捕まえてもっと強くなってシェヘラザードに私がちゃんとしてるってところ見せたいもんね!」

シンドバッド「おう!お前が成長することはあいつにとっても嬉しいことのはずだ。しっかり頑張って認めてもらおうぜ」

ラプンツェル「うん、頑張る!」フンス

シンドバッド「で、今回の作戦だが…さっきと同じように奇襲をかける。だが今回は人数が多いからな、まずはお前の髪の毛を使ってあっちの方の茂みに石を投げ込め」

シンドバッド「そうすりゃ盗賊共はそっちに気を取られるだろうからその隙に一気に勝負を決める。それじゃあ適当な石を掴んで投げてみろ、気づかれないように高いとっから素早くな」

ラプンツェル「わかった!えーっと…じゃあこれにしよっ」ズシッ

シンドバッド「いやちょっと待て!ちょっと物音立てりゃあいいんだぞ?そんなデカい岩を使う必要なんかねぇって」

ラプンツェル「でも小さいよりおっきい方がいいと思う!よーし、じゃあちょっぴり重いけどこれを掴んであっちの茂みに投げるよ!せーのっ!」

ブンッ ズルッ

ラプンツェル「ありゃ?思ったより飛んでいかなかったなー…って言うか投げるときちょっとズルってなっちゃった。失敗失敗ー、えへへー」テヘペロ

シンドバッド「あーあー何やってんだ、無駄にデカい岩なんか投げるから飛距離足りてねぇぞアレ。お前これじゃあ向こうの茂みに届かねぇじゃねーか、ったく」

ヒューンッ

495 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/04 00:31:56 D89 169/411

ラプンツェル達が標的にした盗賊のアジト

盗賊の親分「えぇい!アリババとかいう男の家はまだ突き止められねぇのか!お前には部下の指揮を任せてんだ、この不手際はテメェの責任だぞ、どうオトシマエ付けるつもりだぁ!?」バンッ

盗賊アニキ「す、すいやせん親分!どうやらアリババの野郎、随分と頭が切れる召使いを従えてるようで…そいつが俺たちを妨害してるようなんで」

盗賊の親分「だから何だってぇんだ!?頭がキレようが相当な手練れだろうと関係ねぇ!俺が殺せと命じたらテメェらはそれに従うだけだろうが!」ギロリ

盗賊アニキ「す、すいやせん!団員一同、血眼になって探してますんで…もう少しばかりお待ちくだせぇ!」

盗賊の親分「ったく、アリババの野郎…ただじゃおかねぇぞ!俺達が居ない間にアジトの洞窟に忍び込んで宝を盗んで行きやがって、素人に癖に盗賊から盗みを働こうなんざとんでもねぇ野郎だ!」

盗賊アニキ「まったくでさぁ。恐れ知らずなのか愚かなのか…どっちにしろ大胆とはこの事ですぜ。大した肝っ玉持ってますよアリババは」

盗賊の親分「何を感心してんだテメェは!いいかぁ!?盗賊ってのはメンツを潰されたらおしまいなんだよ!俺の40人の盗賊団がただに素人に出し抜かれたなんて他の盗賊団に知られたらどうなるかもわからねぇのか!?」

盗賊アニキ「い、いえ…この事が他の盗賊団に知れたらうちの盗賊団の名声は地に落ちちまいやす…!」

盗賊の親分「あぁそうだ、それだけは絶対に阻止すんだ!小さな盗賊団をようやくここまでデカくしたんだ、それを馬鹿な素人のせいで失うなんざ…間抜けすぎる!絶対にそんな事はさせねぇ!」

盗賊アニキ「へい、その通りでさぁ!」

盗賊の親分「いいか?俺はゆくゆくは世界を牛耳る盗賊…そう!盗賊王になる男だ!手下のテメェ等は命を賭けて俺の命令に従い、死に物狂いで俺ために働け!俺を盗賊王にのしあげるためになぁ!ガーッハッハッハー!!」ガハハハ

ヒューンッ ドゴォッ!!

盗賊の親分「ゲボアッ」ドサッ

盗賊アニキ「!? 突然岩が飛んで来やがった!?い、いやそれよりも!だ、大丈夫ですかい!?親分!?」ユサユサ

盗賊の親分「」

盗賊アニキ「し、死んでる…!お、親分が謎の奇襲でやられたァー!?」

496 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/04 00:34:11 D89 170/411

盗賊アニキ「…テメェ等、辺りに気を配れ!親分を殺した奴はまだ近くにいるかもしれねぇ、探せ!探せ!このまま帰すんじゃねぇぞ!」

ワーワー サガセサガセー

盗賊「アニキ!俺、妙なことに気がついたんスけど…そっちの茂みからいい香りがしませんかい?なんか女の子の匂いっていうか…」スンスン

盗賊アニキ「馬鹿!お前、こんな時にお前馬鹿!ここは俺達盗賊のアジトだぞ!?女の子の匂いなんてするわきゃねぇだろふざけんなよお前……あ、マジだな。なんか花の匂いするわ」スンスン

盗賊「でしょ?俺、鼻はすごくいいんス!もしかして親分を殺した女の子がそこの茂みに潜んでいるとか…」

盗賊アニキ「馬鹿お前!親分は相当の手練れだったんだぞ!?こんなフローラルな香りさせてる女の子が親分を殺せるわけねぇだろ!もしそんなすごい娘居たら見てみたいわ!そしてその強さを褒めてやりたいくらいだわ!」

ラプンツェル「あっ、はいはーい!みんなの親分倒しちゃったの私だよ!すごいでしょ!」フンス

盗賊アニキ「!?」

シンドバッド「バッカお前何で出て行くんだよ!やべぇから逃げるぞって言ったろ!?」グイグイ

ラプンツェル「えっ、でも誉めてくれるって言ってたから…シンドバッドだって誉められると嬉しいでしょ?私は誉められるの好きー!」ニコニコ

シンドバッド「なこと言ってる場合か!早く逃げるぞ!」

盗賊アニキ「待て待て!このまま帰す訳にはいかねぇぞ!テメェ等この子らの周りを取り囲め!」

ザザザッ

ラプンツェル「ありゃー…囲まれちゃったね。ねぇシンドバッド、私知ってるよ!こういうのをぜったいぜつめいっていうんだよね!」ドヤァ

シンドバッド「…あぁ、物知りだよお前は。この人数じゃあ正面突破は無理だな。だったらお前を呼ぶしかねぇよな!ロック鳥!降りて来い!お前の見せ場がやってきたぜ!」

497 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/04 00:36:46 D89 171/411

ロック鳥「ルオオオォォォォォォォッ!!」バサバサーッ

盗賊アニキ「なんだこの怪鳥は!あのチャラいのが呼んだのか…!まさか猛獣使いだったとは…いや、んな事言ってる場合じゃねぇ!待て待てお前らちょっと聞け!」

シンドバッド「ロック鳥!盗賊共を一蹴しろ!爪で裂こうが吹き飛ばそうが啄もうがお前の勝手だ!自由にしちまって構わねぇぞ!」

ロック鳥「ルオッ!ルオォォォォォック!!」バサバサーッ

盗賊アニキ「待て待て!そこのチャラいの!勘違いしないでくれ!俺達はあんたらと戦うつもりなんかねぇ!」

シンドバッド「やかましい!俺らを取り囲んでおきながらよくもそんな白々しい嘘がつけたもんだ!今更怖じ気づいてもおせぇ!ロック鳥やっちまえ!」

ラプンツェル「待って待ってー、ロック鳥ー。ちょっと待ってあげて!この人達戦うつもりないっていってるから攻撃しちゃかわいそうだよー」

シンドバッド「おいラプンツェルお前いい加減にしろ!こいつ等は盗賊だぞ!あんなの嘘に決まってる!ロック鳥、いいからやっちまえ!」

ロック鳥「ルォッ」フイッ

シンドバッド「あっ、お前!何、ラプンツェルの命令を優先してんだ!お前のマスターは俺だろうが、なにラプンツェルにすり寄ってんだ!」

ラプンツェル「ロック鳥はさっき自由にしていいって言ってたから好きなようにしてるだけだもんねー?」ナデナデ

ロック鳥「ルオッ!」スリスリ

シンドバッド「肝心なときにお前誰に似て……いやハッキリしてるよな。こうなりゃあ俺が一人で相手するしかねぇか…!」スラッ

498 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/04 00:42:26 D89 172/411

盗賊アニキ「そりゃあ盗賊の言葉なんか信用できねぇか。しかもこの構え、やはりただ者じゃねぇ…!テメェ等、守りを固めろ!」

シンドバッド「この大人数を相手にするってぇのは相当分が悪いが、この程度の逆境には慣れっこだ。数多の海を駆け、いくつもの修羅場をくぐり抜けたシンドバッド様に切り開けねぇ道はねぇ!さぁテメェら覚悟しt…痛ってぇ!」ビターン

ラプンツェル「もーっ!盗賊のみんなが戦う気が無いって言うのはホントだよ、武器持ってないもん!よく見なきゃだよ!ねーっ、ロック鳥?」グルグルグルー

ロック鳥「ルォーッ」

シンドバッド「ラプンツェル!バカお前早くほどけ!そうやって油断させて隠したナイフでブスリといかれたりすんだよ!こいつ等は悪党なんだぞ!?世間知らずなお前には思いも寄らないような卑劣な手を使うんだぞ!」

ラプンツェル「えーっと、はじめまして!私の名前はラプンツェルだよ!こっちはロック鳥で、あのぐるぐる巻きになってるのがシンドバッド。よろしくね!」ニコニコ

シンドバッド「聞けお前!」ジタバタ

盗賊アニキ「俺はこの盗賊団の副団長。と言えば聞こえが良いがこいつ等にまとめ役、盗賊アニキなんて呼ばれてる。それより、俺は盗賊家業に着いて長いが…カタギに真っ正面から自己紹介されたのは初めてだ」

ラプンツェル「初めてあった人には自己紹介しなきゃなんだって!塔の外じゃ挨拶は特に大切だってママが言ってた」

盗賊アニキ「そうかい、だが俺が言う事じゃあないが盗賊相手にする事じゃあねぇ。そこの兄ちゃんが言うように盗賊は汚い手でも平気で使うんだぜ」

ラプンツェル「でもアニキは違うでしょ?さっき言ってたもん、戦うつもりなんか無いって、でしょ?」

盗賊アニキ「まぁ…そうだが、普通は盗賊の言うことなんか信じないもんだ」

ラプンツェル「どーして?」

盗賊アニキ「どうしてもだ。だが…今回俺達に戦う気が無いってのは本当だ。むしろあんたに感謝してんだ、親分を…いやあの男を倒してくれたんだからな」

盗賊アニキ「あんたは俺達の恩人だ、こいつ等を代表して礼を言わせてくれ。助かった、恩に着る。礼にもならねぇが宴に参加してくれねぇか?もちろん無理にとはいわねぇ」ペコッ

ラプンツェル「よくわかんないけど、どーいたしまして!そしてパーティーは大好きだから私もやるやる!」フンス

シンドバッド「…どうなってやがる?普通は親分を倒されたんなら仕返しするもんだ。そもそも戦う気がないってのは嘘じゃねぇのか?」

盗賊アニキ「よぉしテメェ等!宴の支度だぁ!恩人に出来る限りの礼を尽くせぇ!」

499 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/04 00:47:26 D89 173/411

・・・

ラプンツェル「じゃああの親分はとっても酷い人だったって事ー?」モグモグ

盗賊アニキ「あぁ、俺達は盗賊だからあんたらカタギに人並みに扱って貰えねぇ事に不満なんざねぇよ。だがあの男は…団長でありながら俺達団員を人間として見てすらいなかった、宝物を奪い名声を高めるための道具としてしか見ちゃいなかったんだ」

盗賊アニキ「あいつは団員を駒としか思っちゃいなかった。命を落としかねない無茶な任務、明らかに人手が足りない状態での任務なんか当たり前で、自分のみを守るために部下を盾にする囮にするなんざしょっちゅうよ」

盗賊アニキ「精神的にも肉体的にも過酷な生活、それでいて休息なんざまともに取れやしねぇし全員に十分な飯が行き渡らないことも少なくなかった。ほとんど奴隷のようなもんだった」

ラプンツェル「むーっ、ひどいね!休憩できないのもご飯食べられないのも辛いよね!そんな盗賊団やめちゃえばよかったのに!」ムシャムシャ

盗賊アニキ「奴は傍若無人だったが…それを黙認させるほどの力があった。全員でかかれば勝機もあっただろうが、この大盗賊時代だ…親分を失った後、団をまとめられる器がある奴がいねぇと…別の盗賊団の食い物にされちまうだけだった」

ラプンツェル「アニキじゃだめだったの?」ガジガジ

盗賊アニキ「俺はそんな器じゃねぇよ。こいつらは慕ってくれてるが…学がねぇから、読み書きはかろうじて出来るが難しい事となるとなぁ。それで…」

ガヤガヤガヤガヤ

「ラプンツェルさん!ノンアルなんですよね!ぶどうジュースどうぞ!本当、ラプンツェルさんには感謝してるんですぜ、なぁ?」
「おう!あのおっさん無茶ばっかりだったからな。でもよそに行くあてもねぇから従うしかなくてなぁ…」
「でももう違うもんな!俺達はあのブラック盗賊団から解放された!ラプンツェルさん!乾杯しましょ乾杯!」

盗賊アニキ「お前ら!恩人に失礼だぞ!ちょっと下がってろ!」

500 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/04 00:49:40 D89 174/411

「アニキばっかりズルいッスよ!俺達もラプンツェルさんとおしゃべりしたいッス!」
「そうッス!こちとら女の子と飯食うのなんて十数年振りっすよ!この喜びを噛み締めさせてくだせぇ!」

盗賊アニキ「お前ら…情けねぇ事言ってんじゃねぇ!この方はカタギなんだ、俺達とは住む世界が…」

ラプンツェル「もーっ、私あんまりラプンツェルさんとか言われるのイヤだなー、くすぐったいから!ラプちゃんでいいよー」ニコニコ

「うおぉー!ラプちゃんはなんて器がでかいんだ…つーか女の子を愛称で呼べる日が来るとか泣きそうだ俺…」
「泣くな泣くな!涙でラプちゃんの姿が拝めないなんて損だぞ!」
「うおぉー!ラプちゃんの髪の毛くんかくんかしてぇー!」

盗賊アニキ「誰だァ!今失礼なこと言った奴ー!…すいやせん、こいつらは気のいい連中なんですがどうも下品でならねぇ…気ぃ悪くしねぇでくれ」

ラプンツェル「いいよいいよぉ、口悪いお猿さんや妖精の友達とかいるし、あんまり気になんないよ」ニコニコ

盗賊アニキ「ラプンツェルさん、見かけによらず肝据わってんだな…」

シンドバッド「ラプンツェル、お前あんまりこいつ等と仲良くするんじゃねぇぞ。腹の中じゃ何考えてるのかわかんねぇんだ」グルグルマキ

シンドバッド「…あといい加減に髪の毛ほどいてくれねぇか?」

ラプンツェル「ダメ。シンドバッド、ひどいこというもん!みんなは戦うつもり無いのなんかもうとっくにわかってるくせにー!」

501 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/04 00:52:23 D89 175/411

盗賊アニキ「いや、その兄ちゃんの言うとおりだ。あんまり俺達に情を持たない方がいい。俺から誘っておいてなんだがあんたは少々世間を知らなすぎる」

ラプンツェル「えーっ?そりゃ盗むのは悪いことだと思うけど、みんなは良い人だよ?私にも優しいし!もー友達だよ、私たち!」ニコニコ

盗賊アニキ「カタギがそんな事口にするもんじゃねぇ。優しいのはそりゃああんたが恩人だからだ、みんな感謝してるからな。だが結局俺たちは盗賊、悪党なんだ。今だって俺達はある一人の男を殺すために探してたんだしな、あんたらと同じカタギの男をな」

盗賊「そんな言い方…!ありゃああの男の命令で仕方なくやってたことじゃないですか!宝物を盗まれた報復にって…あの男が死んだ今、もうアリババを殺す必要も無いんd」

シンドバッド「ちょ、ちょっと待て。今なんて言った?その宝物を盗んだ男の名だ」

盗賊アニキ「どうしてそんな事を気にするんだ?まぁ今となっては隠す必要も無いけどよ…宝を盗んだのはアリババっていう男だ。俺達『40人の盗賊団』に宝物庫に忍び込んでな」

盗賊「盗賊から宝を盗むなんてトンデモねぇ!ってんであの親分だった男が怒っちゃって、でももう別にどうでもいいんですけどねアリババ殺さなくても…って大丈夫ですかい?兄ちゃん汗すっげぇけど…どっか痛いのか?」

シンドバッド「……」

シンドバッド(おいおいおい!こんな偶然ってあんのか!?この世界にいくつ盗賊団があると思ってる!?よりによってお前…やべぇ、完ッ全にやらかしちまった…!)

シンドバッド(どうすんだこれ…!親分が死んじまったら結末を迎えられなくなってこのおとぎ話が消えちまう!いや落ち着け、この盗賊の兄貴分を新しい親分に仕立て上げて…いやダメだ、こいつらにはもうアリババを殺す理由が無い!)

シンドバッド(とにかくここはシェヘラザードに報告してうまく改変してもらうのが一番の解決策だよな。だがそうするってなると必然的にあいつの耳に入れなきゃ何ねぇ訳で…)

シンドバッド(…駄目だ!どっちにしろシェヘラザードは魔神の如く怒る…防ぎようがねぇ!)

502 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/04 00:54:23 D89 176/411

シンドバッド「あいつに知られずに…いやそうすると…するってぇと…いや無理か…」ブツブツ

盗賊「アニキ、大丈夫すかねこの兄ちゃん…急にブツブツ言ってるけど」

盗賊アニキ「大丈夫じゃねぇか?別に怪我してる訳じゃねぇ。…まぁそういう事だラプンツェルさん、所詮俺たちは盗賊、盗みも殺しもする悪党だ。だから盗賊なんかを友達だなんて言うもんじゃねぇ、冗談だとしてもな」

ラプンツェル「冗談じゃないよ?よくわかんないけど、だったらみんなもう盗賊やめたらいーじゃん、親分ももういないんだしさ!」

盗賊アニキ「そんな簡単なことじゃねぇんだ。こいつらは俺と同じで大体が孤児、身よりもなけりゃ学も金も無い、読み書きできない奴が大半だ。結局悪党に身を置くか奴隷に成り下がるか…そんくらいだ、末路はな」

ラプンツェル「お仕事が無いなら私が探すの手伝ってあげるよ!私、友達もいっぱいいるからお仕事無いか聞いてみる!パパ…あっ、王様なんだけどね、パパにお願いしたら働くところ見つけてくれるかも!」

盗賊アニキ「お、王!?ラプンツェルさん、姫君なのか!?い、いや…だったらなおさら俺たちと関わっちゃあ…」

ラプンツェル「あとは…シンデレラとかシェヘラザードに聞いたらお城のお仕事貰えないかなー。あっ、みんなマッチョだから裸王なら喜んでお仕事くれるかも!あとで聞いてみる!」

盗賊アニキ「…なぁラプンツェルさん、あんたがあの男を倒したのは偶然なんだよな?」

ラプンツェル「うん、そーだよ?」

盗賊アニキ「どうして俺達にそこまで肩入れするんだ?頭領を失った盗賊団の連中に仕事を探してやるなんて…どう考えても普通じゃあねぇぞ、何故そこまでする?ただ成り行きで杯を交わしただけだぞ、俺達は…」

ラプンツェル「一緒にご飯食べて飲み物飲んでお喋りしたらもうお友達だよ?盗賊とかかたぎ?とかよくわかんないけど、関係ないよ。だってもうみんなは私の友達だもん」

ラプンツェル「だから友達がお仕事無くて困ってるんなら私はお手伝いするよ!そんなの当たり前のことだよー」ニコニコ

503 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/04 00:58:53 D89 177/411

その時、盗賊アニキの頬を伝ったのは涙であった。
物心付いた時には既に親は無く、他の孤児達と盗みをして食いつなぐ日々
社会の隅に追いやられ、他人から優しい言葉をかけられることなど…無かったのである

盗賊アニキ「あんたは…盗賊の俺達を友と呼んでくれるのか?散々盗みを働いた俺達を!」

ラプンツェル「だから最初っからそういってるのにー。それにもうみんなは盗賊じゃないでしょ?私がお仕事探してきてあげるからおーぶねに乗ったつもりでいてよね!」フンス

盗賊アニキ「ラプンツェルさん…!俺の心は今、喜びで満ちている。親分から解放されたからじゃねぇ、真っ当な仕事が見つかるかもしれないからでもねぇ!あんたのような心優しい人に出会えたことが、俺はとても嬉しい」

ラプンツェル「アニキが嬉しいなら私も嬉しいなー、でも出来ればラプンツェルさんはやめてよー。友達はそんな風に呼び合ったりしないよ?」ニコニコ

盗賊アニキ「あぁ、わかった…!よぉし、お前らぁ!親分から解放された今、俺達は盗賊団を捨てる!そして今ここに新たな団体を発足する!その名も『40人のラプちゃん親衛隊』だ!反対意見がある奴はいるか!?」

「みんな賛成ですぜアニキィィ!ナイスアイディア!」
「よっしゃあぁぁ!これからもラプちゃんと一緒だぁ!」
「ラプちゃんかわいいぃぃぃ!!ラプちゃんマジ天使ぃぃぃ!!くんかくんかぁー!」

盗賊アニキ「ラプちゃん、これから俺達はあんたに付き従う。だがそれは部下としてでも奴隷としてでもねぇ、友人として…そして親衛隊としてラプちゃんの力になる、構わねぇか?」

ラプンツェル「しんえーたい?とかよくわかんないけど、みんな仲良くできるって事だよね!それなら賛成賛成!」

盗賊アニキ「そうと決まればもう一度乾杯だラプちゃん!お前等ぁ!飲み物準備しろー!ラプちゃんはノンアルだぞノンアル!」

ワーワー ガヤガヤ

シンドバッド(や、やべぇ…名案が浮かばないうちに話がこじれて来やがった…!)

505 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/04 01:01:21 D89 178/411

シンドバッド「な、なぁ…お前等さ、盗賊やめる事ねぇんじゃね?なんつってもプロなわけだしさ。ほら、もったいないだろ、技術がさ。だろ?」

ラプンツェル「もーっ!みんなが新しいお仕事探そうってしてるのに何でそんな事いうの?シンドバッドのイジワル!」プンスカ

「そうだぞお前!ちょっと顔が良いからって調子に乗ってんのか!?ふざけんなよハンサムが!」
「ちょっとモテそうだからって舐めんなよチャラ男が!くたばれ!」
「プンスカしてるラプちゃんもかわいいぃぃぃ!!」

シンドバッド「クソっ…なんだこの結束力…なんとかしてこいつら盗賊やめるの阻止しねぇと…!」

スタッ

???「おやおや、あなたにしては珍しく随分と余裕がなさそうですね…いつもは余裕ぶっていることが多いのに」スッ

シンドバッド「こんな状況で余裕ぶっていられるかってんだ!このままじゃ俺はお前に……ゲッ、シェヘラザード…!?」

シェヘラザード「ゲッとはなんですか。もう少し言葉を選びなさい、あなたはおとぎ話の主人公なんですからね。まぁ今は、それよりも……」

ゴゴゴゴゴ

シェヘラザード「何がどうなっているのか私に説明をしなさい、シンドバッド?」

520 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/11 00:24:03 fIW 179/411

・・・

シンドバッド「──で、今に至るって訳だ…。あとは見ての通り俺は身動きがとれねぇしあいつ等は宴に夢中でこっちに気づいてすらいねぇ…ってな所だ。他に何か聞きたいこと、あるか?」

シェヘラザード「いいえ、大丈夫です。大体の状況は把握しましたから」

シンドバッド「話が早くて助かるぜ。いやぁ、お前はなんつっても俺達と違って頭の回転が速いからな!一度話しただけでぱぱっと状況把握しちまう、やっぱお前は聡明な女だ。流石は俺の作者だぜ」ハハハ

シェヘラザード「ありがとうございます。でもおだてたところでお説教を中止にしたりしませんよ?」

シンドバッド「ハハハ!お前何言ってんだよ、そんな下心なんて無ぇって!……なんで解ったんだ?」

シェヘラザード「当然です。あなたが突然誉めるのは何かやましいことがある時か、お説教回避のおべっかのどちらかなんですから」フイッ

シェヘラザード「まぁ色々と言いたいことはありますが…あなたの性格ではラプンツェルさんの頼みを断ることは出来ないでしょうし、友人として彼女の相談に乗るのは当然だと思います」

シンドバッド「だろっ?困ってる女を見過ごすなんて出来ねぇしそれがダチだってぇなら尚更だ。なんだなんだ、お前今日は妙に話がわかるじゃねぇか!」ヘラヘラ

シェヘラザード「で・す・が!その方法が最悪です!百歩譲って彼女の特訓に付き合うのはいいとしても、どうしてそれを【アリババと40人の盗賊】の世界でおこなうのですか!?」

シンドバッド「そ、そりゃお前…実戦に勝る特訓無しだからな。この世界には数え切れないほどの盗賊団が存在すんだからそいつ等を退治がてら特訓の相手にすりゃ街は平和になるわラプンツェルは強くなるわでwin-winだろ?ハハハ…」

シェヘラザード「何がwin-winですか!確かに物語と関連性のない盗賊団なら退治しても直接的な問題はないでしょう…ですが結果はどうです!?あなた達二人はあろうことか40人の盗賊団の親分を倒してしまっているではないですか!」キッ

シンドバッド「そ、そりゃあうっかりっていうか不可抗力っていうか…わざとじゃねぇんだって!結果的にそうなっちまっただけで俺達には悪気があった訳じゃねぇんだよ、な?」

シェヘラザード「悪気があろうと無かろうと同じです!彼が死んでしまった今…このままにしておけば物語が立ちゆかなくなり、この世界は消えてしまうんですよ!」

シェヘラザード「完結していないおとぎ話に不用意に干渉すればこうなってしまう危険性があることをあなたは知っていたはず。それなのによく考えもせず…いくらなんでも軽率過ぎます!それなのにあなたは言い逃れや言い訳ばかり…!」

521 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/11 00:25:10 fIW 180/411

シンドバッド「わ、わかってるって…悪かった。ついいつもの癖で言い訳しちまったけどよ…流石に今回ばっかりは反省してる。いいや、猛省してる!見ての通りだ!」

シェヘラザード「とてもそうは見えませんけど…」ジーッ

シンドバッド「ぐっ…そうかよ、こういうとき普段の行いのツケが廻ってくるよな…」

シェヘラザード「分かっているなら普段からキチンとしなさい。まぁ…学んだこともあるようですし今回はあなたの言葉を信じます。それに、いつまでも拘束されているのは辛いでしょう」スパッ

シンドバッド「おぉ、流石はシェヘラザード!恩に着る!お前が作者で俺は幸せもんだぜー!」ヘラヘラ

シェヘラザード「言った側から軽口を叩くのですから困ったものです…。事態が落ち着いたらアリババやモルジアナにも謝罪しておくのですよ、特にモルジアナは激昂していましたから念入りに」

シンドバッド「おう、任せろ!にしてもお前がこの程度の説教で許してくれるなんて珍しいじゃねぇか。いつもだったら何時間もガミガミガミガミ…」

シェヘラザード「あら、お望みならば何時間でもガミガミしますけど?」

シンドバッド「そ、そういう意味じゃねぇよ!勘弁してくれ!」

シェヘラザード「まったく、あなたは一言多いのですから…。確かにあなたの行動に関してまだ言いたいことは山ほどありますが…」

シェヘラザード「今回はラプンツェルさんの気持ちを考えていなかった私にも非があります。ですからあなただけを糾弾するのは筋違いです、私も反省すべき所はしなければなりませんからね」

シンドバッド「まっ、そりゃあ一理あるな。お前があいつの話聞いてりゃこんな大事には…おっとやべぇ、また余計なことを言っちまうとこだったぜ」ヘラヘラ

シェヘラザード「……まぁいいです。今はこの状況をどうするか考えましょう。この世界が消滅してしまうという危機から、まだ脱していませんからね」

522 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/11 00:26:25 fIW 181/411

シェヘラザード「このおとぎ話が本来の結末を迎える上での問題は二つ…ひとつはモルジアナが倒すはずの親分が死んでいること。そしてもう一つは…」

シンドバッド「盗賊団がどう言うわけかラプンツェルの親衛隊になっちまってることだな。あいつ等もう盗賊業どころかアリババへの仕返しなんかどうでもいいと思ってるぞ」

シェヘラザード「あなたの話だと彼等は元々親分に尽き従っていただけで根っからの悪人ではなかったのでしょう。とはいえ…この世界を守るためにアリババへの仕返しはしてもらわなければいけません」

シンドバッド「つーかよぉ、このおとぎ話の作者はお前なんだからどうにでもなるんじゃねぇの?ぱぱっとうまい具合に書き換えちまえば万事解決だろ?」

シェヘラザード「随分と簡単に言ってくれますね…。私なら書き換えは確かに出来ます、ですがここまで物語が進行している状態では大規模な改変は不可能です、つじつまを合わせることが出来なくなるので」

シンドバッド「なるほどな、作者の力も万能じゃねぇってか」

シェヘラザード「そもそも物語の改変は現実世界へ影響を及ぼしますからね…本来ならばあまり使いたくはありません」

シンドバッド「そうなのか?でも消えちまう訳じゃねぇし些細なもんだろ?」

シェヘラザード「とんでもない。大規模な改変はこの物語を気に入ってくださっている方、このおとぎ話を元に新たな物語を紡いだり作家を志してくれた方、その方達を裏切ることになりますからね」

シンドバッド「まぁ言い分はわかるけどよ、余所の世界の連中に気を使いすぎじゃねぇか?お前の物語の聞き手はあくまで国王だろ?」

シェヘラザード「確かに私は王に優しい心を取り戻してもらうために物語を紡ぎましたが…現実世界で私の物語が誰かの心を動かしているのなら、私はそれを大切にしたいのです」

シンドバッド「そうかい、頭の良い奴の考えることは良くわかんねぇけどよ。お前がそうしたいってならそれでいいんじゃねぇか」

シェヘラザード「えぇ。ですから、なるべく小さな改変で済むように…出来るだけ些細な変更で済む方法を考えましょう」

523 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/11 00:27:32 fIW 182/411

シンドバッド「まぁ盗賊の連中はどうにか説得してアリババの所へ行かせるとしてもだ…問題は親分だよな。本人は死んじまってる、代役を立てようにも死んじまう役回りを無関係の奴にやらせるのもなぁ…」

シェヘラザード「そうですね。それにあれを見ていると盗賊団の皆さんの命を奪うというのも…」

・・・

ラプンツェル「あっ、アニキもうお酒無いよ?私がついできてあげるよー」ニコニコ

「ラプちゃんのお酌とかアニキズリィー!ラプちゃん俺も俺も!」
「大体さぁラプちゃんの隣占領するのズリィよアニキ!」
「アニキには俺がついで差し上げやす!だからラプちゃんこっち来てー!」

親衛隊アニキ「えぇい、ラプちゃんは俺についでくれるって言ってんだよ!お前等は後だ後!後で頼め後で!」

・・・

シンドバッド「まぁなぁ…あいつ等死んじまったらラプンツェルもショックだろうしな」

シェヘラザード「こうしましょう。物語は当初の筋書き通り進行させましょう、ただし…親分役もあの盗賊達もモルジアナに退治されるだけ。命までは失いません、それなら改変も僅かで済みます」

シンドバッド「そうすりゃ親分の代役も死なずに済むな。でもよ、俺には良くわかんねぇけど死ななくても大丈夫なのか?」

シェヘラザード「盗賊達の生死はこの物語で重要では無いですから、問題ないでしょう」

シェヘラザード「【マッチ売りの少女】のマッチ売りさんや【キジも鳴かずば】の弥平さんのように死ぬ事が物語に重大な影響を与える人物を生かしたままおとぎ話を存続させることは出来ませんが……彼等はそうではありませんから」

シンドバッド「良くわかんねぇけど大丈夫なら問題ねぇな。となるとあとは誰が親分の代役をするか、それとどうやって盗賊達をやる気にさせるかだが…」

シェヘラザード「それに関しては私に考えがあります」

524 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/11 00:29:09 fIW 183/411

シンドバッド「そんじゃお前に任せてりゃいいな。どんな手か知らねぇけど俺が無い知恵絞るよりはずっといいしな」ハハッ

シェヘラザード「どちらにしろ、彼等と話さなければいけませんね。では行きましょうか」スッ

シンドバッド「待て待て!用心しろよシェヘラザード、あいつらラプンツェルにはゾッコンだが俺に対しては辛辣だしな…いきなり余所者のお前が顔を出すのはマズい」

シェヘラザード「そうでしょうか?私には彼らがそこまで悪人のように見えませんが」

シンドバッド「人は見かけによらないって言うだろ?用心するに越したことねぇよ。実際、俺はそうとう嫌われているようだしな…不用意に出て行かない方がいいぜ」

シェヘラザード「それはあなたが嫌われるようなことをしたのではないですか?大方、調子に乗ってヘラヘラしていたのでしょう」

シンドバッド「お前も大概辛辣だな…俺はこう見えておとぎ話の主人公、魅力はあるって自負してんだ。そもそも俺が他人に嫌われるような奴に見えるか!?」

シェヘラザード「あなたは良い人ですよ、相応の魅力もあります。ですがそれは初対面ではわかりにくいです、外見は相当チャラチャラしてますし。もう少し清潔感と誠実さをですね…」

シンドバッド「…あーっ、わかったわかった!もう行くぞ!これ以上話してたらこっちが傷ついちまうぜ、ったく」スタスタ

シェヘラザード「大丈夫ですよ、長くつきあっていれば魅力がわかるはずですから」ウフフ

シンドバッド「っつーかよ、結局親分の代わりは誰がやるんだ?つってもラプンツェルにさせるわけにもいかねぇし盗賊の兄貴分にやらせるのか?」

シェヘラザード「いいえ、親分の代役は盗賊団以外の人物でなければ39人になってしまいますからね。代役はシンドバッドに頼もうかと」スタスタ

シンドバッド「いやいやいや待てお前!何で俺なんだよ!?聞けお前!」

525 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/11 00:30:08 fIW 184/411

ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ ガヤガヤ

「いやー!しかしようやく盗賊から足を洗えるぜ。なぁ、お前はどんな仕事に就きたい?俺は騎士がいいな、白馬の騎士」
「白馬の騎士ってお前(笑)俺は独学だけど剣術くらいしか取り柄ないしなぁ、どっかの城で雇ってもらえりゃ御の字だな」
「俺は仕事はなんでもいいがとにかく彼女が欲しい」
「真顔はやめろよ切実すぎて笑えねぇ」

親衛隊アニキ(うんうん、ラプちゃんのおかげでこいつ等もまともな仕事に付けそうだ。昨日まで将来を語るなんて出来なかったのに、良い事だな)

スッ

シェヘラザード「盛り上がっているところ失礼いたします、少しお時間よろしいでしょうか」

親衛隊アニキ「なっ!?なんだぁ!?今日は次から次へと…!」ザワザワ ザワザワ

シェヘラザード「申し遅れました、私シェヘラザードと申します。シンドバッドとラプンツェルさんの友人なのですが、二人がお世話になったようなので…私もご挨拶をと思いまして」

親衛隊アニキ「ラプちゃんの友達か。俺はこいつ等盗賊の兄貴分…いや、ラプちゃん親衛隊のアニキだ。そんな事よりあんた、随分良い身なりしてるがこの辺は物騒だから気をつけろ…ラプちゃんもだがもっと危機感を持つべきだ」

シェヘラザード「ご忠告ありがとうございます、私には立派な護衛が居ますのでご心配なく。ところでラプンツェルさんはどちらに?」

親衛隊アニキ「おう、ラプちゃんならそこに……ラプちゃんなにしてんだ…?その前髪なんだ?一発芸か…?」

前髪がすげぇ長い人「わ、私ラプンツェルじゃないデース!人違いダヨー」コソコソ

親衛隊アニキ「なぁラプちゃん、あの嬢ちゃん友達なんだろ?何でそんな嘘t」

前髪がすげぇ長い人「う、嘘じゃないデース!シェヘラザードは友達だけど今私がここにいることバレたら怒られちゃうから内緒にしてて!…あっ、内緒にしててデース」

526 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/11 00:30:56 fIW 185/411

シェヘラザード「そうですか。申し訳ありません、友人によく似ていたので」ペコリ

前髪がすげぇ長い人「気にしないでイイヨー。あとラプンツェルに会っても怒らないであげてネー?あっ、私はラプンツェルじゃないケドネ?」コソコソ

シェヘラザード「はい。しかし困りました、これ以上ラプンツェルさんの居場所がわからないとなるとゴーテルさんが心配しますね…きっと食事も喉を通らず夜も眠れない程に…お年を召されていますし寝込んでしまうかも…」

ラプンツェル「…!だ、ダメだよそんなの!ママに心配かけたくないもん!」バッ

シェヘラザード「おはようございます、ラプンツェルさん」ニコリ

前髪がすげぇ長い人「あっ、えっと…おはようデース…」バサッ

シェヘラザード「もうその小芝居は良いですよラプンツェルさん、私はあなたを叱りに来た訳じゃないんですから」

ラプンツェル「本当?シェヘラザード、怒ってない?」チラッ

シェヘラザード「そうですねぇ…怒ってないわけではないです」ウフフ

ラプンツェル「えーっ!?やっぱり叱りにきたんだ!」ガビーン

シェヘラザード「ですがそれは、あなたがかかしさんを巻き込んでまで嘘を付いたこととおとぎ話の世界の事情を知っていながらシンドバッドの誘いに乗ったことです」

シェヘラザード「ですから私の反対を押し切って戦うことを選んだことに関しては怒っていません。むしろ私が謝るべきです、昨日の私はラプンツェルさんの話を聞かずに自分の意見を押しつけてしまいました」

527 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/11 00:32:26 fIW 186/411

シェヘラザード「今では後悔と反省をしています。それと…思わず叩いてしまったこと、本当に酷いことをしてしまいました。ごめんなさい」ペコリ

ラプンツェル「ううんっ、私も勝手なことする前にもっかい話した方が良かったよね…ごめんね!もう二度とぺたんこおっぱいって言わないよ!気にしてるのにぺたんこおっぱいって言ってごめんね!」

「あぁ…確かに…」
「あぁ、ぺたんこだな…」
「お前等!あんまりじろじろ見るんじゃねぇ!ぺたn嬢ちゃんに失礼だろうが!」

シェヘラザード「……。いえ、ラプンツェルさんがわかってくださったのならそれ以上は望みません。では仲直りのしるしに」スッ

ラプンツェル「うん!あくしゅ!なーかーなーおーりっ!はいっ!仲直りしたー!」ブンブン

シェヘラザード「はいっ。でもかかしさんとモルジアナには謝っておくんですよ?迷惑をかけていますからね」

ラプンツェル「うんっ!わかった!で、モルジアナって誰!」ニコニコ

親衛隊アニキ「なんだかよくわかんねぇが、仲直りしたってことは良いことだ。おい、嬢ちゃんにも何か飲み物を出してやれ!」

シェヘラザード「あっ、お気遣いなく。突然押し掛けたというのにもてなして貰っては…」

親衛隊「いいんだよ!ラプちゃんは俺らの友達!友達の友達は友達だからな!」

シンドバッド「そうだよな!いやぁ二人が仲直りできて良かったぜ。俺も二人の友達だから俺にも酒を頼むぜ」

親衛隊「シェヘラちゃんお待ちどうー!ノンアルでよかったかな?」ニコニコ

シンドバッド「おい無視はやめろ」

528 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/11 00:33:24 fIW 187/411

・・・しばらくして

親衛隊アニキ「おいおい待て待て!?余所の王妃だぁ!?嬢ちゃん、案内付けてやるから今すぐ戻れ!そんな高貴な奴が居ていい場所じゃねぇぞここは!」

シェヘラザード「ご心配感謝します、ですが私はそんな大層なものではありませんよ。いざとなればシンドバッドも居ますし」

親衛隊アニキ「しかしなぁ…わざわざ治安の悪い場所にくるんじゃねぇよ。盗賊には女子供だろうと容赦ねぇ卑劣な奴も多いんだぞ」

シェヘラザード「説得力に欠けますね、それが真実ならば私は今頃拘束されているはずですよね?」

ラプンツェル「アニキやみんなはもうとーぞくじゃないから大丈夫!それにみんな優しいよ!」ニコニコ

親衛隊アニキ「ラプちゃんがそう言ってくれるのはありがてぇが…」

シェヘラザード「ところでラプンツェルさんは彼等に新しいお仕事を探してあげるのだと言っていましたね。あてはあるのですか?」

ラプンツェル「えーっとね、お友達みんなに聞いてみようかなって思ってるしパパにも相談してみる!あっ、シェヘラザードのお城でお仕事余ってない?みんな強いらしいからお城の兵士とか!」

親衛隊アニキ「ラプちゃん、気持ちはありがたいがいくらなんでも余所の国の盗賊団崩れを雇うような王族はいねぇよ。あんまり嬢ちゃんを困らせるようなこt」

シェヘラザード「そうですねぇ、陛下に相談してみましょうか?」

親衛隊アニキ「そんな簡単に決めて良いことじゃねぇだろ!?見ず知らずの連中をお前…」

ラプンツェル「うん、お願い!あとあとシェヘラザードは頭良いからみんなが新しいお仕事見つけるいい方法考えつくよね?なにかないかな?」

シェヘラザード「うーん…そうですねぇ…」

シェヘラザード「やはり新たな仕事に就くのなら盗賊時代の行為は清算しておくべきですね」

529 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/11 00:34:54 fIW 188/411

ラプンツェル「とーぞくじだいのこーいをせーさん…?よくわかんない!」

親衛隊アニキ「シェヘラの嬢ちゃんは俺達に罪を償えって言ってるのさ、散々盗みも殺しもしてきた俺らが今更普通の暮らしを手に入れようなんて虫がいい話だからな」

シェヘラザード「どんな事情があったとはいえ窃盗は犯罪です。犯罪を犯せば償うのは当然です」

親衛隊アニキ「あぁ、それは当然の報いだ。だが…自首なんかすりゃいつ牢から出られるか…そもそも出られるかどうかも怪しい」

ラプンツェル「シェヘラザードー、何とかならない?みんなホントは良い人だからろーやはかわいそうだよ」

シェヘラザード「そう言われましてもこの国でも窃盗は罪なのですよね、なら法に則った罰を受けるべきです。ですが…この国から出て行けばもうこの国の法律に縛られることはありません」

ラプンツェル「そっか!別の国に逃げよう!」ポンッ

親衛隊アニキ「あんたら王族なのにとんでもねぇこと言い出すな…要するに高飛びじゃねぇか」

シェヘラザード「厳密には違います、罰からは逃げますが罪を捨てる訳ではないのです。法律ではなくあなた方が出来る方法で今までの罪を償えばいいのでは無いでしょうか?」

親衛隊アニキ「まぁ…そうするしかねぇけどな、この国じゃ働き口はみつからねぇだろうし捕まれば牢屋だしな」

ラプンツェル「じゃあきまり!みんなで別の国にお引っ越ししてそこから仕事探そう!」

シェヘラザード「ところでアニキさん、盗品はまだどこかに保管してあるのですか?」

親衛隊アニキ「あぁ…金はほとんど使っちまったが宝石やら何やらはまだ随分残ってる」

シェヘラザード「出来ればそれは元の持ち主に返しておきたいですね。それは可能ですか?」

530 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/11 00:35:41 fIW 189/411

親衛隊アニキ「盗賊やめるなら盗んだ物は元の場所に…ってか。全てってわけにはいかねぇが…大体はどこから盗んだのかわかると思うぜ」

シェヘラザード「ならば返せるものだけでも返しましょう。返したからといって罪が消えるわけではないですが、その方がいいです」

親衛隊アニキ「そうだな、じゃあお前等!宴が済んだら早速お宝返却開始するぞ!」

親衛隊「へい!しかしアニキ…そうするとアレ、どうします?」

親衛隊アニキ「あぁ、アリババに奪われた宝物か…」

シェヘラザード「まぁ、何者かに宝物を奪われたのですね。ならばそれも取り返した上で元の持ち主に返却しましょう」

シンドバッド(なるほど、名目は違えど盗品を取り返すって部分は同じ。それなら自然にこいつ等をアリババの所へ誘導できるってわけか)

親衛隊アニキ「そうだな、それがいい。だがアリババには頭の切れる奴が付いててな、一筋縄じゃいかねぇだろう…親分もいねぇしな。嬢ちゃん、あんたも頭が良さそうだ。知恵を貸してくれねぇか?」

シェヘラザード「それならば亡くなった親分代わりにそちらのシンドバッドをお貸ししましょう。こう見えて機転も利いて戦いの腕も立ちますよ、皆さんの役に立つはずです」

シンドバッド「来た来た来やがった…はいはい!やりゃいいんだろ!こうなったのは俺のせいだし盗賊の親分でもなんでもやってやるよ!」

「は?お前が親分とかねぇわ」
「女の子ならいいけどよぉ、でもラプちゃんやシェヘラちゃんを危ない目にはあわせらんねぇし…」
「いくら罪滅ぼしのためだっていってもこんなチャラ男の下につくとか形式上だとしてもごめんだわ」

シンドバッド「こいつら…」

531 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/11 00:37:40 fIW 190/411

シンドバッド「お前等俺を舐めるのも大概にしろよ!俺はあの怪鳥ロックを従える優秀な船乗りなんだからな!」

「それロック鳥がすげぇだけだろ、勘違いすんなよ」
「自分で優秀とか言う奴は大概雑魚だよな(笑)」
「つぅか丘の上で船乗りの経験とか生かせねぇだろ、結局一般人じゃねぇかこいつ」

シンドバッド「畜生…おいラプンツェル!こいつらに俺のすごさ教えてやれ!俺は気がすすまねぇが親分代わりはしねぇといけねぇんだ!」

ラプンツェル「うん!えーっとね、シンドバッドはね!女の子好きでいっつも女の子のことばっかり気にしてるけど強いし頭もちょっとだけ良いからみんなの親分の代わり出来ると思う!だから宝物返す間だけ親分にしてあげてよ、ねっ?」

「ラプちゃんがそう言うならもちろんだよー!なぁみんな!」
「おうよ!それに考えて見りゃ親分って目立つし命も狙われやすいから親しい奴より案外どうでもいいこいつのほうが適任かもな!」
「あぁ、確かに。こいつならうっかり別の盗賊に殺されようがどうでもいいしな!」

シンドバッド「……」

親衛隊アニキ「よし、じゃあ頼むぞ兄ちゃん。ありがとなシェヘラの嬢ちゃん、色々と知恵を貸してくれてよ」

シェヘラザード「いえいえ。ただ…あなた達が盗賊をやめようとしていることが周囲にバレては余計なトラブルを招くでしょう。あくまで内密に…盗みを働くふりをして返却した方がいいと思います」

親衛隊アニキ「そうか、そうだな!よし!ここが正念場だぞお前ら!きっちりケジメ付けてまともな生活送れるように頑張るぞ!」

オォォーッ!

532 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/11 00:39:46 fIW 191/411

・・・

親衛隊アニキ「よし、じゃあ宴はここまでだ!ちゃっちゃと片付けて仕事に移るぞ!」ヘーイ!

ラプンツェル「あっ、じゃあ私もお手伝いするよ!」

シェヘラザード「私もお手伝いします。この量ですからね、手は多い方がいいでしょう」

親衛隊アニキ「いやいや、二人には世話になっちまったからな。座っててくれよ。それにシンドバッドの兄ちゃん、気ぃ悪くしねぇでやってくれな、こいつら暗い青春しか送ってねぇからあんたのようなモテそうな男に厳しいんだよ」

シンドバッド「ったく、何で俺がムサい盗賊どもの面倒を…」

ラプンツェル「あっ、違うよ!とーぞくじゃなくてしんえーたい!」

シンドバッド「あぁそうだったな。まぁ俺が代役してこの世界が消えないならそれで良いけどよぉ…もうちょっとなんとかなんねぇかなあいつら」

シェヘラザード「それじゃあシンドバッドに任せて私達は帰りましょうかラプンツェルさん。あなたの特訓をどうするかも考えなければいけませんし」

ラプンツェル「そうだった!じゃあ帰るねアニキ!また遊びに来るしみんなのお仕事ちゃんと探しとくからみんなにも頑張ってねって伝えといて!」

親衛隊アニキ「あぁ、俺たちなりの罪の償いを見つけて必ずそれをやり遂げてみせる。そしてラプちゃんの親衛隊として胸張れるようになるからよ、またいつでも来てくれ。みんな喜ぶ」

ラプンツェル「うん!みんな友達!友達はいつでも会えるんだよ!だからまたね!」

親衛隊アニキ「あぁ、あんたに会えて良かったよラプちゃん。そんじゃあまたな」

シェヘラザード「ふふっ、では行きましょうか。帰りは魔法の絨毯で空の旅です、だからといってあまりはしゃがないようにしてくださいね?」

ラプンツェル「はーい!よーし、次来るときはもっともっと強くなってるようにしよっ!」ニコニコ

・・・

543 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/18 00:36:50 2mQ 192/411


舌切り雀の世界 雀のお宿

舌切り雀「えっ?この世界にあの有名な『桃太郎』が来てるってんですかい?そりゃすげぇ!」

雀の長老「これ、舌切りの!日ノ本一の英雄を呼び捨てにするとは何事じゃ!様を付けんかい様を!」

舌切り雀「へぇすんません。そんで…本当なんですかい?その桃太郎サマが来てるってのは?」

雀の長老「うむ、偵察隊からの確かな情報じゃ。お供として有名な三匹は不在じゃが素性が解らぬライオンを引き連れているとの報告もあるのぅ」

舌切り雀「ほー…まぁ鬼退治のお供が犬猿雉って完全に舐めてますもんね。桃太郎もようやく本気を出したってとこですかね」ハハハ

雀の長老「様を付けろと言うに!まったく…舌を切られても相変わらず口に減らない奴じゃ、お前はもう少し言葉を選んでじゃなぁ…」

舌切り雀「まぁまぁ、今日は小言を聞くために来たんじゃありやせんから。お説教はまたの機会ってぇ事で、じゃないとまた抜け羽が増えますぜ」ハハハ

雀の長老「そうやって思ったことを口にするのを控えろと言うておるんじゃい!お前には雀のお宿の一員だという自覚と気配りが足りん!」

舌切り雀「やだなぁ、長老忘れたんですかい?あっし、雀のお宿の一員として、お世話になったご主人をキチンともてなしてお土産のつづらもバッチリ渡したじゃねぇですかい。完璧な仕事でしたぜありゃあ」

雀の長老「お前はその後に訪れたご婦人にとんでもない仕打ちをしたじゃろ!よりによって世話になった相手に魑魅魍魎の入ったつづらを渡すなど宿始まって以来の不祥事じゃ!」

舌切り雀「あのクソババァはあっしの舌を切り落としたんですぜ!?そのくせ強欲にももてなしを要求しやがって…ありゃあ当然の報いですぜ!」

雀の長老「阿呆!そもそも舌を切られたのはお前が勝手に糊を食い尽くしたせいじゃろうが!」

舌切り雀「まぁ…うん…いやいや、そうだとしても舌を切るなんざやりすぎだ、あっしがババァに復讐をするのは当然ですぜ!」

雀の長老「まったく…そういう考えじゃから自覚が足りないというんじゃ。舌切りの、ワシ等が営む雀のお宿とはどういうものか言うてみよ。きちんと理解しているかの?」

544 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/18 00:39:06 2mQ 193/411

舌切り雀「当然ですぜ!ほら、あれ…客をもてなす宿!来た客をもてなしてつづら渡して…つう感じで…へへっ」

雀の長老「…良いか?我々が作っているのは癒しの空間なのじゃ。訪れた人を歓迎し心尽くしのもてなしをすることで理不尽や不条理のまかり通る社会で疲弊した心と体を癒す場所…それが雀のお宿」

雀の長老「一時だけでも慌ただしい日常から離れて安らいで頂き、帰り際にはお土産のつづらをお渡しする。そして笑顔でご帰宅なさるお客様の笑顔が何よりの報酬なのじゃ。決して復讐に利用して良い場所ではない」

舌切り雀「えーっ?じゃあなんで魑魅魍魎の入ったつづらとか用意してるんですかい?財宝より化物を選ぶ変態用ですかい?」

雀の長老「違うわい!あれは非力な我々が外敵から身を守るための護身用つづらじゃ!お土産用ではない!」

舌切り雀「あーなるほど!てっきり宿でベロンベロンになってゲロる客とか横柄な態度のクソみてぇな客をぶちのめす為かと思ってやした!はははっ!」

雀の長老「まったく…お前のような未熟者が何故このおとぎ話の主人公なのかのぉ…」

舌切り雀「ははっ、なんでですかね?」ヘラヘラ

雀の長老「笑い事ではない!偵察部隊からの報告によると桃太郎様はこの雀のお宿をめざしているようじゃ。おそらくは同じ主人公であるお前に何かしらの協力を求めるためじゃな」

舌切り雀「桃太郎があっしに用事?えーっ、正直相手するの面倒ですぜー?」

雀の長老「様を付けろと言うに!あと面倒とか本人の前で決して口にするでないぞ!」

545 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/18 00:40:49 2mQ 194/411


雀の長老「おそらく、桃太郎様がお前の元へやってくるのは昨今のおとぎ話の世界を取り巻く現状に関連しておる。お前も現在おとぎ話の世界がどのような状況にあるかよく知っているだろう?」

舌切り雀「そりゃあもう。前にあっしの所に来た鬱陶しい白鳥と女版一寸法師みてぇな連中から詳しく話を聞きやしたから!アリスが暴れて世界がヤバい。ってなもんですよね?」

雀の長老「言葉選びはさておき…まぁそうじゃ。本来ならば我々もおとぎ話の世界の住人として、好き勝手しているアリスに立ち向かうべきじゃが…」

舌切り雀「そりゃ無理ってなもんですわ、あっしらは非力でちっぽけな雀ですぜ?」

雀の長老「如何にも。口惜しいかな…我々は戦うことなどできん、出来ることと言えば自分たちだけの力でこの【舌切り雀】の世界を守りきり、他の世界の方々の手を煩わせないことくらい」

雀の長老「しかし、詳しい理由は解らぬが桃太郎様はこの宿に…お前に協力を求めてやってこられる。これは喜ばしく、誇らしい事じゃ」

舌切り雀「アリスと戦う力を持つ桃太郎に協力できりゃあ、間接的つっても世界を守る戦いに一役買えるから、ですかい?」

雀の長老「左様。非力な我々でも力になれることがある、これほど嬉しいことはない。じゃから舌切りの、桃太郎様が訪れたら出来る限りのおもてなしと協力をする事、良いな?当然ワシ等も出来ることはするでな」

舌切り雀「えーっ…それあっしじゃないとダメですかい?ほら、あっし口も悪いし短気だしあんまり接客って向いてないと思うんd」

雀の長老「自覚しておるのならなんとかせい!お前は主人公じゃろ!」

舌切り雀「いや、そんなこと言われてもそれ現実世界の奴が勝手に決めたことですぜー?あっしに言われてもねぇ?」

雀の長老「言い訳無用じゃ!とにかく桃太郎様のお相手はおまえに任せるでな。しっかりと準備を整えて、さっさとお出迎えにあがらんか!」

546 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/18 00:43:27 2mQ 195/411

舌切り雀の世界 雀のお宿から少し離れた森

舌切り雀「長老の話だとそろそろこの辺までたどり着いてんじゃねぇかって話だけどよぉ…桃太郎って強いんだろ?迎えなんかいるのかねぇ?」

舌切り雀「しっかし面倒な事になっちまったなー、あっしが日ノ本一の英雄の接待かぁー…面倒な上に気が重いわなぁー…接待しろつってもなぁ…何しろってんだよ」

舌切り雀「糊食っただけでブチキレるババァとか、わざわざ森の奥まであっしを探しに来たご主人とかもそーだけど、人間の考えってのはイマイチわかんねぇしなぁ…」

舌切り雀「とりあえずあれだ、好物はきびだんごだろうな。厨房の連中にクッソ大量に作っとけって言ったからまぁ問題ねぇだろ」

舌切り雀「しっかしあっしに何の用事なのかねぇ…確かに日ノ本が舞台だって共通点はあるが時代も場所も違うしそもそも世界が違うってのに、何頼まれるんだか知らねぇけどさ」

舌切り雀「まっ、どっちにしろ下手に出てやるか。鬼を倒す程だから相当な手練れでよ、そんでお高く止まってる偉そうな野郎だろうしなー…んっ?」

ドタドタドタ

行商人「うわああぁ!だ、誰か助けてくれぇ!」

流浪の侍「逃がしはせん…!悪いが荷は全て置いていって貰おうか…さもなくば斬る!」チャキッ

舌切り雀(うわー、物騒になっちまったなこの辺も。野武士か落ち武者か…どっちにしろ商人にゃ気の毒だがあっしにはどうにもできねぇ)

行商人「そ、そいつはできねぇ!商品を渡しちまったら村で俺を待ってるお客に申し訳ねぇ!だから勘弁しちゃくれねぇか!」

流浪の侍「…拙者の知ったことではない。こちらも命を繋ぐには銭が必要…荷を渡す気がないというのならば、お主を殺して奪うまで…!」

行商人「くっ、もう逃げ場がねぇ…ここまでか!村の衆、すまねぇ…!」

547 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/18 00:46:16 2mQ 196/411

流浪の侍「退路は断たれた、観念するがいい…!」ググッ

ビュオンッ! ガキィィンッ!!

桃太郎「…罪無き商人を襲うとは不届きなり」グググッ

行商人「た、助かった…!」

流浪の侍「馬鹿な…拙者の太刀が防がれただと!?」

桃太郎「腰に携えた刀、そしてその身なり、侍としての器は整っているようだが…肝心の中身が伴っていなければ侍とは呼べぬ、素人同然」

流浪の侍「拙者を愚弄するか…!主を失おうとも拙者は侍だ、拙者が素人だなどという戯れ言…撤回して貰おう!」ジャキッ

桃太郎「確かに刀は相当な業物のようだが…信念無き刃などナマクラ刀にも劣る、そのような棒きれで斬れる物などありはせん」

流浪の侍「どこまでも拙者を愚弄するというのだな…貴様が相当な手練れだというのなら、一切の容赦はせぬ!」ダダッ

ビュオンッ! スッ

桃太郎「…言ったであろう、信念無きお主では拙者を斬ることは叶わぬ。早々に去るがいい」

流浪の侍「くっ…堕ちようとも拙者は侍!いくら貴様が強かろうとそこまで言われながら背を向け逃げるなどできん!」ズバッ

桃太郎「退くもまた兵法…とはいえその心意気、悪くはない」ビュッ

流浪の侍「ぬぐぉ…峰打ちだと!?くっ、動けぬ…!侍同士の果たし合いに遠慮など…ひと思いに斬れ!」ドサッ

桃太郎「お主は斬るには惜しい。商人よ、この隙に逃げよ。護衛についてはやれぬが…大きな街道へ出ればもう案ずることもないだろう」

行商人「あ、ありがとうございます!助かりました!では私は失礼して…!」スタタタタ

桃太郎「さて…これであの商人は無事村へたどり着けるだろう。次は…お主だ」スッ

548 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/18 00:48:15 2mQ 197/411


流浪の侍「ようやく斬る気になったか。命を捨てる覚悟など遠の昔に出来ている…!斬れ…!」

桃太郎「言ったであろう、斬るには惜しいと。しばらくすれば動けるだろう…もうあの様な真似をするのは止めることだ。お主が侍であり続けたいのならな。これは僅かだが…とって置くが良い」スッ

流浪の侍「銭だと…?このような施しをされるいわれはない!」

桃太郎「お主もかつては主君のために刃を振るう真の侍だったのだろう?」

流浪の侍「あぁ…だが主を失い、職を失った拙者にはもうこうするしか生きる道が無いのだ!」

桃太郎「拙者はそうは思えぬ。今は辛くとも歩みを止めなければいずれまた侍として刃を振るうことも叶おう。この路銀は…それを願う拙者の気持ちだ、受け取っては貰えぬか」

流浪の侍「……」

桃太郎「信念無き刃ではあったが、お主の剣術はなかなか見所が有るものだった。すぐにでもお主を必要としてくれる者は現れるだろう。では…拙者はこれにて」

流浪の侍「待て。お主、名はなんという?」

桃太郎「桃太郎。そう呼ばれている」

流浪の侍「桃太郎。拙者は侍だ、受けた恩義は必ず返す…!次に合間見えるときは名実ともに侍として…お主の前に参ずる!必ず、必ずだ」

桃太郎「うむ…承知した。いずれまた合間見えよう」スッ

549 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/18 00:52:02 2mQ 198/411


・・・

桃太郎「……」スタスタスタ

舌切り雀(へぇー、さすがは日ノ本一だ。商人を助けたうえに堕ちた侍にまで気をまわせるなんてな、少なくともあの侍は盗人にならずに済んだわけだ)

桃太郎「……」

舌切り雀(ただ悪い奴をぶちのめすんじゃなくて改心させちまうなんてすげぇなあいつぁ!あっしなら速攻でぶちのめすってのに、接待にも俄然やる気出てきたってもんだ!)

桃太郎「……ライオン、そこの茂みにいるのか?もう良い、姿を見せて構わぬ」

ガサガサ

ライオン「ガルルゥ…」ノシノシ

舌切り雀(おっ、あれが例のライオンか。丁度良い、もうここで声かけちまって宿まで案内するか)

桃太郎「ライオンよ。今し方、流浪の侍に襲われていた商人を救ってきたのだが……」

舌切り雀「おーい、桃t」

桃太郎「うおぉぉぉっ!ライオン聞いてくれよマジで!あの侍思ったより強くてめっちゃびびった!!つーか最初刃受け止めたとき結構ギリギリだったからねあれ!?泣きそうなの我慢したの賞賛して欲しいくらいだっての!」

ライオン「だよねだよねぇ!?僕も茂みから見てたけどもう何度も目を覆っちゃったもん!見てるだけで漏らしそうになっちゃったよ僕ぅー!」




舌切り雀「は?」

550 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/18 00:53:57 2mQ 199/411

ライオン「それにしても桃太郎さんいきなり飛び出してっちゃうからびっくりしたよもぉー…知らない世界で独りきりとか怖くて想像しただけでたてがみが抜け落ちちゃうよぉ…」

桃太郎「わかるわかる!すげー心細いもんなぁ…でも商人が襲われてたからさ、正直めっちゃ怖かったけど見過ごすわけにはいかないしさー」

ライオン「でもよかったよぉ。さっき桃太郎さんも言ってたけどいくら強くっても信念っていうのが無かったら何にも斬れないんだよね?だったら安心だよぉ」

桃太郎「いやいや!斬れるからね!?信念あろうがなかろうが刀振るえば大体斬れるし避け損なえば血まみれで死ぬからね!?」

ライオン「えぇっ!?でもこれさっき桃太郎さんが言ってたんだよぉ!?あれ嘘だったのぉ!?」

桃太郎「嘘じゃないって!あれはなんていうかこう…精神的な?心意気みたいな?なんかそういうアレで…」

ライオン「そうだったんだぁ…他にもいろいろカッコイイ事言ってたから実は余裕があるのかなぁなんて思っちゃったよぉー…」

桃太郎「ないない!余裕とか微塵もないから!ほんと戦ってる最中ももう英雄やめて柴刈りで生計立てたいと思ってたし!」

ライオン「あっ、それはいいねぇ!平和が一番だもんねぇ~」

桃太郎「ほんとそれ。早いところアリスを何とかして平和な村で暮らしたいー、最近ちょっと畑とか欲しいなーって拙者思っててさー、良い土地探して貰うかなー」

舌切り雀「……」

551 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/18 00:55:35 2mQ 200/411

桃太郎「でもまぁみんなも頑張ってるしアリス倒すのは頑張るけどさ。っていうかもうそろそろ到着しても良さそうなんだけどなぁ…えっと、地図地図」ゴソゴソ

ライオン「この世界の主人公の雀さんの飼い主だったお爺さん、丁寧に地図描いてくれて良かったねぇ」

桃太郎「ありがたいよね。でも言いにくいけど達筆すぎて字が読めないんだよ…なんてよむんだろこれ『大きな…蜂の巣に気を…つけるべし』かな?……はぁっ!?そんなの口頭で言ってよぉぉ!!こえええぇぇぇ!!!」

ライオン「だ、駄目だよ!蜂さんは騒ぐと寄ってくるんだってかかしが言ってた!静かにしようよ!」

桃太郎「マジでか!わかった、静かに静かに…な?」ヒソヒソ

ライオン「はーい、そっと森を抜けようね」ヒソヒソ

桃太郎「蜂はなぁ…マジでヤバいから!うちの村でも蜂に刺されて死んだ奴いるからね?マジで気をつけよう、マジでヤバいからね蜂は」

ライオン「うんうん、僕とかほとんど裸だから刺され放題で怖いよぉ~」

桃太郎「ライオンを覆えるような布無いしなぁ…でも拙者は怖いから顔覆おうかな…蜂ヤバいし」

ライオン「えぇーっ!ずるいよぉー!蜂はヤバいんでしょぉ!?僕も何か欲しいよぉー!」

舌切り雀「テメェ等ァ!男が蜂がヤベェ蜂がヤベェって…つまんねぇことで騒ぐんじゃねぇ!それでもテメェ等男かァァ!!」

桃太郎「うわああああぁぁぁ!!!!」ビクゥーッ
ライオン「で、出たあああああぁぁぁ!!」ビクゥーッ

552 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/18 00:58:22 2mQ 201/411

舌切り雀「うるせぇぇ!何も出てねぇってんだ!ったく、どうなってんだ英雄と百獣の王が実はヘタレだったってぇのか?」

ライオン「も、桃太郎さん!この雀さん喋ってるけど…日ノ本の雀さんは喋るの?」ヒソヒソ

桃太郎「喋らない喋らない!雉以外で喋る鳥なんてうちの世界にもいないって!多分……突然変異じゃないのか?」ヒソヒソ

ライオン「突然変異!ならしかたないねぇ…」ヒソヒソ

舌切り雀「違ぇ!あっしはこのおとぎ話【舌切り雀】の主人公、だから喋れるだけだ。ライオン、オメーと同じだ」

桃太郎「ちょ、ちょっと待って…じゃあお主は拙者のこと知って……?」

舌切り雀「おう、オメー桃太郎だろ?でもまぁまさか日ノ本一の英雄桃太郎があんなヘタレだとは思わなかったがなぁ」

桃太郎「……」

舌切り雀「……?なんだってんだ、急に黙ってよぉ」

桃太郎「ヘタレというのは何の事だろうか舌切り殿。拙者は鬼退治の英雄桃太郎!そんな拙者がヘタレ?舌切り殿は何か幻でも見たのではないか?」キリッ

舌切り雀「今更キリッとしたとこで誤魔化されるわきゃねぇだろが!このドンブラコ野郎がァァ!!」

桃太郎「ひえっ、すいませんっ!」

553 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/18 01:00:41 2mQ 202/411

舌切り雀「おい、ドンブラコ。そっちのライオンは何者だ?つーかオメー等の目的はなんだよ?」

桃太郎「あっ、拙者の名は桃太郎で…」

舌切り雀「オメーみたいな流されやすそうな野郎はドンブラコで十分だろうがァァ!!」

桃太郎「ひいぃっ!ラ、ライオン!早く自己紹介したげて!この雀すげぇ怖い!」

ライオン「あっ、あの…僕はその【オズの魔法使い】のライオンでその…よろしくお願いします」ペコペコ

舌切り雀「よろしく頼む。で、雀のお宿を目指してるってぇ聞いたぞ?このあっしに用があんだろう?何の用事か教えて貰おうか」

桃太郎「うむ。実はお主に折り入って頼みたいことがあるのだ。その頼みというのは…」

舌切り雀「何を格好付けてやがんだテメェ!」

桃太郎「い、いや…拙者はキリッとしてないと実力出せないって言うか…あと体裁とかイメージとか色々あるから人前ではキリッとするようにしてて…」

舌切り雀「普通に喋れ。ヘタレが取り繕ってるみてぇで腹立つ」

桃太郎「な、なぁライオン…ちょ、ちょっと言いすぎじゃない?いくらなんでも…」ヒソヒソ

舌切り雀「文句があんならあっしに直接言えばいいだろうがぁ!ヒソヒソすんじゃねぇぇ!!何の用事でここに来たのかさっさと言えこのヘタレドンブラコ!」

桃太郎「ひぃぃっ!もおおぉぉ!なんなのこいつううぅぅ!!!もうマジ怖いいやだもう拙者ああああぁ!!」

554 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/18 01:03:29 2mQ 203/411

・・・

舌切り雀「なるほどねぇ…大体事情は理解した。とりあえずお前等は本物で、アリスを倒すための修行でこの世界に来たってぇんだな?」

ライオン「う、うん。そうなんだよぉ…ねっ、桃太郎さん?」

桃太郎「そ、そうそう。お主のつづらは魑魅魍魎を出せるって友人から聞いて…ちょっと協力して貰えないかなぁ…って」

舌切り雀「あっしのじゃねぇけどな。まぁ良いだろ、お前等がヘタレだってのはどうも納得いかねぇがアリスを倒す為ってなら協力してやらぁ」

桃太郎「おぉ!かたじけない!できればもうちょっと優しいしゃべり方にしてくれるともっとありがたいんだけど…」チラッ

舌切り雀「でもどうしてこの世界なんだ?他の世界には鬼とか怪物とかいるだろうしそういう奴らを征伐した方が話が早いんじゃねぇか?」

桃太郎「雀に無視された…」ガビーン

舌切り雀「まぁさっきはヘタレだってバカにしたけどよぉ、修行のために魑魅魍魎に立ち向かおうって気概は流石は桃太郎って所だな、そんくらいの相手じゃねぇと修行にならねぇってか」

桃太郎「そ、それはどうも…。修行!そう、修行の為にね!強い相手と戦わないと意味ないからね!ははっ…」

舌切り雀「おっ、わかってるじゃねぇか!ビビりだがやるときはやるって感じかぁ?少しは見直したぜ」

ライオン「うんうん!でも協力して貰えて良かったねぇー…雀さんのつづらから出てきた魑魅魍魎ならもしも危なくなっても引っ込めてもらえるし、これで最初の予定通り怪我することなく安全にしゅぎょうできるねぇ」ニコニコ

桃太郎「ばっ…なんでそういうこと言っちゃうんd」

舌切り雀「ドンブラコ」

桃太郎「は、はい…」

舌切り雀「正座」

桃太郎「わかりました…」

555 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/18 01:06:21 2mQ 204/411

舌切り雀「修行するには強敵じゃないと意味がない。でも本気の戦いだと怪我をするかもしれないし死ぬかもしれない。だからいざという時引っ込められそうって事でうちのつづらを頼った…つうことか?」

桃太郎「はい…」

ライオン「ご、ごめんね桃太郎さん…」

桃太郎「い、いいよ。事実だし…」

舌切り雀「事実なのが問題なんだろうがァ!傷付くのが怖いからいざってときにやっぱり無しって出来る修行を選ぶって…どう言うことだテメェなめてんのか!」

桃太郎「すいませんっ!なめてません!」

舌切り雀「あっしはな…嫌いなもんが3つあるんだ」

舌切り雀「ひとつは調子に乗ってるクソババァ。もう一つは和ばさみ。もう一つ、なんだかわかるか?」

桃太郎「さ、さぁ…なんですかね…」

舌切り雀「オメーみたいな男のくせにビクビクしてるヘタレ野郎だァー!男ならもっと堂々としろこのキビダンゴ野郎!」バンッ

桃太郎「ひぃっ!」

556 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/18 01:09:56 2mQ 205/411

舌切り雀「おい…ひとつ気になってたんだがよ。お前が背負ってる旗はなんだ?なんて書いてあるか読んで見ろ」

桃太郎「あっ、この旗ですか?これは『日本一』ですね」

ライオン「確かアリスちゃんとの戦いが決まってからお爺さんが新しくこさえてくれたんだよねぇ?」

桃太郎「そうそう、じーちゃんばーちゃんには内緒にしてたんだけどさ、心配するから。でもお供がバラしちゃってさぁー、そしたらじいちゃんとお供が協力して旗作ってくれたんだよ!ばぁちゃんは得意のキビダンゴ作ってくれたし、気を使わせて申し訳ないんだよなー」

ライオン「でも優しいよねぇ。家族ってこういうときありがたみを感じるよねぇ」

桃太郎「確かになー。流石にアリスの世界には付けていけないけどみんなの気持ちがこもってるからそれ以外ではなるべく付けようかなって」

ライオン「うんうん、それがいいよぉ」

桃太郎「そうだよなぁ?ははっ、ちょっとこっぱずかしいけど」

舌切り雀「何ほのぼのとしてんだ!おいドンブラコ、テメェは本当に日ノ本一なのか?」

桃太郎「えっ、そりゃまぁ…一応鬼倒してるしね、拙者…日ノ本一って名乗って良いかなって思ってるけど…」

舌切り雀「テメェみてぇなヘタレ野郎が…日ノ本一なわけねぇだろうが調子のんじゃねぇぞ!」

557 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/18 01:13:25 2mQ 206/411

舌切り雀「お前の世界もそうだろうがこの世界も日ノ本なんだ。おめぇみたいな奴が日ノ本一を名乗るなんざあっしが許さねぇぞ!?」

桃太郎「す、すいません!すぐに外します!」

舌切り雀「男が一度掲げたもんをほいほい降ろすんじゃねぇぇぇ!!」

桃太郎「もおおぉぉぉっ!じゃあどうしろっていうんだよお前えええぇぇ!!!」

ライオン「お、落ち着いて桃太郎さん!」

桃太郎「だってあいつが…!あいつが無茶苦茶言うからさぁぁ!!」

舌切り雀「無茶じゃねぇよ。今のお前を日ノ本一と認めるわけにゃなんねぇが…だったら自他共に認める日ノ本一になりゃあいい」

桃太郎「えっ、なにそれどう言うこと…?」

舌切り雀「だからよぉ!お前や俺以外にも日ノ本が舞台のおとぎ話はいくつかあるだろ?今からそいつ等の所に行ってよぉ…お前が本物の日ノ本一だって証明して回れ」

桃太郎「他の日ノ本のおとぎ話の世界で…拙者のことを認めて貰う!?無理無理無理!」

舌切り雀「やる前から諦めんな!あっしがこれから連れて行く世界の主人公に認められたならつづらも貸してやるしお前を桃太郎だって認めてやる、修行にもなるだろ?」

桃太郎「そ、そうかもしれないけどさぁ…いやでもなぁ…」

舌切り雀「ウジウジせずにスパッと決めろやこのドンブラコ野郎がァァァ!!」

桃太郎「は、はいぃぃ!わかりました!やりますぅ!」

576 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/25 00:38:40 WJF 207/411

金太郎の世界 足柄山

ライオン「あ、あの…雀さん、僕達ってもう世界移動してるんだよね?ここってもう【舌切り雀】の世界じゃあないんだよね?」オドオド

舌切り雀「おうよ、ここは既に別のおとぎ話【金太郎】の世界だぜ。それがどうかしたってぇのか?」パタパタ

ライオン「ううん、ただ周りの景色が雀さんの世界とすっごく似てるから不思議だなぁって…遠くに見える建物の造りとかそっくりだもんねぇ」

舌切り雀「そりゃあそうだ、あっしの故郷とここは別の世界に違いねぇ、だが同じ『日ノ本』ってぇ国を舞台にしてんだからよ」

ライオン「うぅーん…それなんだけど実は僕よくわかってないんだ。別の世界だけど同じ国…?この世界には雀のお宿は無くて…?桃太郎さんの家族も住んでなくて…?でもここは日ノ本で…うぅん?」

舌切り雀「あくまで舞台が同じってだけでそれぞれの世界は別モンだって事だ。あんまり難しく考えるこたぁねぇよ」

ライオン「そっかぁ、でもこういうとき頭が良かったらなぁーって思うよぉー、僕あんまり物知りじゃないから…もっと賢かったらあれこれ考えなくてもいいのになぁ」

舌切り雀「ハハッ!面白ぇ事言うなぁお前!【オズの魔法使い】で知識を求めてんのはお前じゃなくてかかしだろ?」ハハハ

ライオン「あははっ、そうだねぇー、僕が欲しいのは勇気なのに知識も欲しいなんて欲張りだねぇ~」アハハ

舌切り雀「おうよ、強欲なのはよくねぇぞ。あのババァみてぇに魑魅魍魎に襲われちまうかもしれねぇからなぁ~?」ケラケラ

ライオン「あわわ…僕は欲張らないようにしなきゃ!とりあえずは勇気だけ、勇気を手に入れることだけ考えようっと」ウンウン

舌切り雀「おう、それが良いぜぇ!…って言うかよぉ」チラッ

桃太郎「うわぁ…マジで来ちゃったよ…別のおとぎ話の『日ノ本』…ここの主人公に拙者を認めて貰う…?いやいや、無理だってマジで…」ブツブツ

舌切り雀「テメェはいつまでグダグダ言ってやがんだ!いい加減覚悟決めろやァァ!クチバシでガッてすんぞコラァァ!」ガッガッガッ

桃太郎「ひいぃっ!痛っ!痛っ!既にガッてやってるだろお前!もうなんなのこの暴力雀マジで嫌だもぉぉぉぉ!!」ヒイイィィィ

577 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/25 00:39:51 WJF 208/411

桃太郎「怖えぇぇ…こいつマジで容赦ねぇ…怖えぇぇ…」コォォォッ

ライオン「その治癒能力本当に便利だねぇ。それにしても雀さんは桃太郎さんに対して特に厳しいよねぇ…も、もうちょっと優しくしてあげられないかなぁ…なんて思ってみたりするんだけど」チラッ

舌切り雀「こっちだってあんまりギャーギャー言いたくねぇんだぜ?でもなぁ…あっしが元々キツい性分だってのもあるけどよ、こいつの腐った桃みてぇな性格見てると我慢ならねぇんだよ。で、つい怒鳴っちまう」

桃太郎「腐った桃!?それ言い過ぎじゃない!?もうちょっと配慮した言い方g」ガーン

舌切り雀「雀ごときに怒鳴られてヒーヒー言ってるような男なんざ腐った桃以下だろうがァァ!」ガッ

桃太郎「痛いっ!雀ごときって言うけどお前気性も荒いし声もデカいから迫力すごいからね!?か弱さなんか微塵も無いからね!?」

舌切り雀「だからってビビっていい理由にはならねぇだろうが!オメェは仮にも日ノ本一を掲げてんだぞ?だったら誰に何を言われようが揺るがねぇ意識だの強いの気概があって当然じゃあねぇのか!」

桃太郎「うっ…一理ある…。確かにビビりなのは拙者の弱点だし…」

舌切り雀「国一番の英雄だろうがなんだろうが結局は人間だからよぉ、一つ二つ弱い部分があろうが隙があろうがそりゃ仕方ねぇよ。どんな偉業を成し遂げたところでそいつは神仏じゃねぇんだから」

舌切り雀「だがなぁ、オメェの場合はあまりに情けねぇ部分が多い!この際だから正直に言うがよぉ…お前の戦いぶりを初めて見た時はスゲェと思ったぜ。剣術に関しては日ノ本一ってのにあながち嘘じゃねぇと思ってるしな」

ライオン「わっ、やったね桃太郎さん!雀さん、誉めてくれてる!認めてくれてるよ!」ワチャワチャ

舌切り雀「ただし!こいつの場合は他がクソ過ぎて剣術の凄さが霞んでんだよ!戦いの後にやれビビっただの泣きそうだのと愚痴るわ…いい大人が蜂に怯えるわ…柴刈りで生計立てたいだの言って現実逃避するわ…些細なことでギャーギャー騒ぐわ…」

舌切り雀「挙げ句に雀なんぞに怒鳴られてすぐに謝るわで…どれだけ自分に自信がねぇんだオメェはよぉ!?」

桃太郎「ぐぬぬ…正直、否定できない…」

舌切り雀「だからそこで否定しろォォ!鬼退治を果たした英雄が何を雀ごときに言いたい放題言われてるんだ!そこをまずおかしいと思えェェ!」

桃太郎「た、確かに…」

578 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/25 00:41:29 WJF 209/411

舌切り雀「あっしはオメェを日ノ本一とは認めないって言ったがな、ありゃあお前の立ち居振る舞いや精神面に不安が…すっげぇ不安が残ってるからだ!」

桃太郎「ええぇ…言い直してまで強調しなくても…。でも確かに言うとおりだよなぁ…拙者、素だとありえないくらい情けないし…」

ライオン「で、でもでも!桃太郎さん普段はキリッとしてるから大丈夫だよ!」

舌切り雀「大丈夫な訳ねぇだろうが!ヘタレな本性隠して取り繕ったところでなぁ…いずれボロがでるもんなんだよ!根本的な解決にはならねぇだろ!」

ライオン「ひえっ、そんな怒鳴らないでよぉ…」

桃太郎「いや…言い方はキツいけど舌切り殿の言うとおりだ。拙者は自分の武術に満足してるわけじゃないけど、精神面の弱さは本当にどうにかしないといけないなって思ってる」

舌切り雀「なんだよ、自覚はあるってぇ事か」

桃太郎「うん。もう本性バレたし開き直って話すけど…拙者は昔から自分に自信が無くて臆病でさ…鬼ヶ島の大悪鬼と対峙した時も自信が持てなくて、失敗するのが怖くて刀を振るえなかった」

桃太郎「でもさ、その時キモオタっていう友達のおかげで…拙者は勇気の出し方を知ったんだ。自分一人じゃ駄目だけど…拙者を頼って応援してくれる人達の為なら拙者は勇気を出せる。英雄でいられる」

舌切り雀「なるほどなぁ、だから周囲の目を気にしてキリッとしてるときだけは全力が出せるってぇのか」

桃太郎「うん、そういうこと。でも…近頃こんな風に考えてた。逆に言えば一人の時とか気心知れた家族友人と居るときはキリッとする必要がないから、もしそんな時襲撃されたら…実力を出せないんじゃないかって」

ライオン「桃太郎さん、そんな風に思ってたんだ…。でも確かにアリスちゃん汚い手も平気で使うからねぇ…」

桃太郎「だからさ、どんなときでも実力が出せるように…いつでも家族な友を守れるように、精神的な弱さの克服をしなきゃいけないってずっと考えていたんだけど…」

桃太郎「やっぱり拙者、筋金入りのヘタレなのかな。自分なりにいろいろしてみたけどうまくいかなくて」ハハハ…

579 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/25 00:43:01 WJF 210/411


桃太郎「頭では解っててもどうしても逃げ腰になっちゃうって言うか…一度染み付いた性格はそうそう簡単には変えられないって言うか…情けない話なんだけどさ」

ライオン「そ、そんなことない!家族や友達のために勇気を出して頑張ろうってしてるのが情けない訳ないよ!ねっ、そうでしょ雀さん?」

舌切り雀「いいや。心構えは立派だがよぉ、結局自分を変えられてねぇんだろ?だったらなんの意味もねぇよ」

桃太郎「まぁそう言うかなって思ってたけど…やっぱ舌切り殿は手厳しい…」

舌切り雀「だが丁度良いじゃあねぇか!あっしはオメェのヘタレな所が気にいらねぇ。オメェは精神的に強くなりてぇ、目的とするところは同じなんだからよぉ」

桃太郎「確かに…精神的に強くなれれば拙者も日ノ本一に相応しくなれる。そうすれば舌切り殿も納得というわけか…」

舌切り雀「おうよ!だがオメェが言うように性格なんざそうそう変えられねぇってのも一理ある」

ライオン「じゃ、じゃあ一体どうやって桃太郎さんはもっと強くなるの…?」

舌切り雀「そうだな…よっし。おい桃、あっしはこれからこの【金太郎】の世界を含めていろんな日ノ本のおとぎ話にオメェ達を連れ回すって、さっき言ったよな?」

桃太郎「うん。拙者が日ノ本一だって認めて貰うために……あっ!もしかしてそれ中止にするっ!?」パァッ

舌切り雀「何を嬉しそうにしてんだオメェ!そうじゃあねぇ!当然、日ノ本のおとぎ話巡りは続行する!」

桃太郎「ですよね…そんな甘くないですよね…」

舌切り雀「当たり前だろうが!で、だな…これからお前は色々な奴に出会って日ノ本一だって事を認めて貰わなきゃなんねぇ訳だが…」

舌切り雀「その間、お前は一切格好付けるの禁止だ。どんな相手でも素の状態で接しろ」

580 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/25 00:44:21 WJF 211/411

金太郎の世界 足柄山の山奥

「グルルゥ…グオオオォォォッ!」ダダダッ

金時「おっ、真正面からの突進か!お前は相変わらずみてぇだな!そういう分かり易い力のぶつかり合い、俺は好きだぞ!」ガシッ

「…っ!ガアァァ!」バシッ

金時「ハッハッハァ!そう易々と投げ飛ばされちゃあくんねぇか!だが、そうこなけりゃわざわざ都から修行に来た意味がねぇってもんだ!」ググッ

「……グルルゥ、グオォッ!」ガシッ

金時「うおっ、危ねぇ危ねぇ!もうあれから二十年近いってのに全然衰えてねぇな!だが俺も都で遊んでた訳じゃあねぇんだぞ!」ググッ

「……っ!」ズオォォッ

金時「ずええぇぇいっ!」ブオンッ

「クマァァァッ!!」ドサーッ

金時「ハッハッハァ!まずは白星一つ!相撲なんて久し振りだったが、意外と身体が覚えるもんだな!」

・・・

ライオン「ひ、ひえぇぇ…あの人熊と素手で戦って投げ飛ばしちゃったよぉ!?ものすごく強いみたい…」

桃太郎「ねぇ舌切り殿、やっぱ格好つけちゃだめ?熊倒しちゃう大男相手に拙者は素でいかなきゃいけないんでしょ?えぇぇ…ちょ、えぇぇ……」

舌切り雀「何を怖じ気づいてんだオメェ!素の状態のオメェを認めて貰うって所に意味があんだろが!そうすりゃ今より自信も勇気もつくだろ!オラ早く行くぞ!」

581 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/25 00:46:17 WJF 212/411


舌切り雀「おい、金太郎ー!見てたぜぇ、相変わらずの怪力だなオメェは!」パタパタ

金時「んっ?その声…舌切りの!おぉ、久しいな!元気そうで何より!」ハッハッハ

舌切り雀「おうよ!へへっ、こうしてガキの頃みたいに熊と相撲とってると、とても都で活躍するお侍には見えねぇな金太郎!」ヘヘッ

金時「山に居ようが都に居ようが俺は俺、何も変わりはしないぞ!まっ、名は『坂田金時』に変わりはしたが『金太郎』の方が呼びやすいだろうからそうしてくれ!」ハッハッハ

舌切り雀「おう。ところでよぉ、今日はオメェにちょいと頼みがあんだよ。修行中悪いが…つき合っちゃくれねぇか?」

金時「おうっ!俺もお前もおとぎ話の主人公同士!何でも言ってくれ!」

舌切り雀「二つ返事で助かるぜ!おい、桃ライオン、オメェ等挨拶しろ。この世界の主人公…今は坂田金時って名らしいが、要するに金太郎だ。名前くらいは知ってるだろ?」

ライオン「あっ、はじめまして!ぼ、僕は【オズの魔法使い】のライオンです。あの、臆病で有名な…えへへ、よろしくお願いします」

金時「おぉ!あの西洋のおとぎ話の!よろしく頼む!」ニカッ

ライオン「う、うん。なんだかすんごくさわやかな人だなぁ…」

桃太郎「金時殿、お初にお目にかかかる。拙者h」キリッ

舌切り雀「おい」ギロリ

桃太郎「……えっと、桃太郎です。よろしく」ペコッ

582 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/25 00:48:58 WJF 213/411

金時「おおっ!桃太郎というと現実世界の日ノ本で知らぬ者はいないという、あの鬼ヶ島の悪鬼を征伐したことで有名な日ノ本一の大英雄!」

桃太郎「いやいやいや!ちょっと持ち上げ過ぎだから!そんな大したもんじゃないから拙者!」

舌切り雀「堂々としてろ!オメェが悪鬼を倒したのは事実だろうが」

金時「ハハッご謙遜を!私はご紹介に預かった金太郎こと坂田金時と申す。まさかあの有名な桃太郎殿にお会いできるとは、感激です」ニッ

桃太郎「あっ、いや、そんな堅い感じじゃなくていいんで!もっと普通に頼みます、拙者ホントに大層な人間じゃないんで!」

金時「…? そう言うことならお言葉に甘えて楽にさせて貰おう!しかし桃太郎殿と会ってみたかったというのは本当なんだ、何しろ日ノ本一と名高い武人!同じ武人としては興味を持たずにはいられなくてな!ハッハッハァ!」バシバシバシ

桃太郎「ハハハ…って痛っ!肩!叩きすぎだから!」

舌切り雀「二人とも鬼退治の英雄だってのにこの差はなんなのかねぇ…」

ライオン「ねぇ雀さん、僕が聞いた話だと【金太郎】って男の子が主人公だったんだけど…あの金太郎さんは大人だよね?桃太郎さんよりもちょっと年上くらいだもん。それに…金太郎さんが鬼退治したって初耳だよぉ?」

舌切り雀「そりゃお前の知識不足だな、さてはあんまり【金太郎】の内容しらねぇな?」

ライオン「う、うん…金太郎さんの名前は知ってるけど内容まではちょっと…わかんない、ごめんね?」

583 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/25 00:51:07 WJF 214/411

金時「ハッハッハァ!確かに現実世界でも俺の名は知っててもどんな内容かは知らないって奴が多いらしいからな!」

ライオン「ひえっ、聞かれちゃってた!?ごめんなさいごめんなさい!」

金時「気にしなくていいぞ、前に来た白鳥と親指姫にも『名前はメジャーなのに内容はマイナー』とか言われたしな。童の俺がお袋に貰った鉞(まさかり)を担いで熊に相手に相撲…ってのがよく知られてる話だよな!」ハハハ

ライオン「ぼ、僕が知ってるのもそこだけで…でも続きがあるんだよねぇ?」

舌切り雀「おう。金太郎はガキの頃から熊倒すくらい怪力だったからな、その力を見込んだ源のナントカって武士に雇われて都で侍になるんだよ」

金時「そうだな。それでいずれ都には酒呑童子っていう狂暴な鬼とその手下が現れるんだ、そいつを退治するのが俺の役割であり、この【金太郎】の結末なってことだ。まだまだ先の話だけどな」

桃太郎「すげぇ…じゃあ金太郎殿は鬼退治の英雄ってことか。うわーすげぇ人と知り合っちゃったなぁ拙者」

舌切り雀「オメェも鬼退治成功してんだろうが!他人事かテメェ!」

桃太郎「いやいや!そうは言うけど金太郎殿はひとりで鬼の軍勢を倒したんでしょ?拙者はお供も仲間も居たから、金太郎殿の方がすごいって!」

金時「いや、俺も一人じゃなく仲間の武士と共に戦う予定だ。それに鬼退治と言えば聞こえは良いが…毒入りの酒を使った騙し討ちなんでな、桃太郎殿の足下にも及ばんよ!ハッハッハァ!」

ライオン「そうなんだ…それでも十分すごいけど、桃太郎さんは真っ向から勝負して勝ってるから、どちらかって言うと桃太郎さんの方が鬼退治としてはすごいのかなぁ…」

舌切り雀「【金太郎】の内容がいまいち認知度低いのも、桃太郎の鬼退治の劣化版っぽからかもなぁ。オメェの鬼退治がすごすぎるからなぁ」ニヤニヤ

桃太郎「や、やめろそういうのは!なんか拙者のせいっぽい感じになっちゃうだろ!」

584 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/25 00:55:43 WJF 215/411

金時「しかし桃太郎殿は思ったよりずっと親しみやすいな!もっとこう…力こそ正義!みたいなガチガチの武士かと思っていたぞ!」

桃太郎「いやむしろそういう人が一番苦手で…平和で優しい世界なのが一番だって思ってるしね、拙者」

金時「それは確かにそうだな!ところで桃太郎殿は何故この世界へ来たんだ?」

桃太郎「えーっと、実は拙者達近々アリスを倒しに……あっ、知ってるのかな?アリスのこと」

金時「うむ、数々のおとぎ話に危害を加えていると聞いた。本来ならば俺もアリスの企みを止める戦いに賛成したいが…この【金太郎】はまだ結末を迎えていない。出来ることはすると雪の女王と約束はしたけどなぁ…易々とこの世界を離れるわけにはいかない」

舌切り雀「まぁ基本的には自分の世界を守るのが優先だよな。戦いたくても何かと事情があって戦えないって奴は結構多いからよぉ」

桃太郎「その点、拙者のおとぎ話は結末を迎えてるから自由に動けるもんなぁ……えっと、それでまぁアリスと戦うことになったんだけど」

桃太郎「それにむけてちょっと精神修行をしたいなと思って、色々な日ノ本のおとぎ話を巡って拙者が日ノ本一だということを認めて貰おうかなって感じで…」

金時「ハッハッハァ!面白いことを言うなぁ桃太郎殿!俺が認めるまでもなく、お前さんは日ノ本一に決まっているだろう?何を今更!」

桃太郎「そ、そう?そう言って貰えるのは嬉しいなぁ。ねぇ舌切り殿、とりあえず金太郎殿は拙者が日ノ本一って認めてくれてるわけで…ひとまずこの世界での目標達成って事でいい、よね?」

舌切り雀「なぁ金太郎よぉ、お前は戦いもせずに評判だけでコイツの力を認めるのか?そりゃあ武士としてちょっとばかりどうかと思うぜぇ?」

桃太郎「ちょ、そういう余計なこと言わなくてもいいから…!」アセアセ

585 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/25 00:58:33 WJF 216/411

金時「確かに…手合わせもせずに相手に力を見極めた気でいるなんて俺もまだまだだ!よぉし、桃太郎殿!俺と手合わせを願いたい!」

桃太郎「いやいやいや!金太郎殿は拙者を認めてくれてるんでしょ!?無意味な戦いはやめとこうって!お互いに戦いを控えた身なんだし命大事に!」

金時「むぅ…桃太郎殿が嫌だと言うなら無理強いするのも…」

舌切り雀「違うぞ金太郎。もう戦いは始まってんだ、桃太郎はこうしてお前が自分と戦うに相応しいか計ってやがるんだぜ?少し断る素振りを見せた程度であきらめる奴なんか戦うに値しないとか思ってんだぞコイツは」

桃太郎「ちょ…そんな訳ないだろ!?あっ、お前ワザとか!ワザと金太郎殿を焚き付けつるためn」

金時「そういう事だったか…やはり俺とは一回りも二回りも格上!鬼退治の先輩として胸を貸して貰うとしよう!」ドスドスッ

ライオン「あれ?金太郎さん、どこ行くの…?」

金時「なに、本気の手合わせならば素手という訳にもいかない。桃太郎殿が刀を使うのなら俺も愛用の武器で挑もうと思ってな!」

ググォッ

ライオン「う、うわぁ…!おっきい斧…あっ、鉞!それがお母さんに貰った奴?」

金時「いや、これは都の鍛冶屋に依頼した特注品でな。俺は刀よりもこっちの方が性に合っているからな!」

桃太郎「デカすぎじゃない!?その刃渡りなんなの!?それに柄も長いから刀じゃ間合い的に不利だって!今ならまだ間に合うからやめとこうって!」

金時「ハッハッハァ!桃太郎殿、お前さん程じゃないが俺だって腕には自信がある。それに強者と戦いたいと言うのは武士の常、いざ…参る!」

桃太郎「もおおぉぉ!なんで強い奴は決まって戦いたがりなの!?っていうか参るなよもぉぉ!!」

586 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/25 01:00:34 WJF 217/411

桃太郎「でもここで逃げちゃ来た意味ないし…こうなった以上頑張るけども!金太郎殿!この手合わせで拙者が勝ったら日ノ本一だって事、マジで認めて貰うからね!?」シャキン

金時「勿論!だがこっちも本気でいかせて貰うぞ!酒呑童子征伐の前に鬼退治の英雄を倒す事が出来れば、俺も自信もって鬼退治に臨めるというもの!」

桃太郎「自信が欲しいのはこっちだっての!……って、うぉっ!こえええぇぇ!!」ヒュッ

金時「先手は取らせて貰ったぞ!どうやら流石のお前さんも鉞相手には戦いの経験が足りないみたいだな!」ビュオンッ

舌切り雀「あー、桃の奴…金太郎に先手許しちゃってんじゃねぇか」

ライオン「金太郎さん強いしあの斧おっきいもんねぇ…。でもあんなに大きい武器だと重たいだろうし、そうなると動きも遅くなって隙が出来ちゃうんじゃない?」

舌切り雀「まぁ見てろ、多分桃も同じ事考えてるんだろうが…そんなたやすい相手じゃねぇぞ金太郎は」

金時「ぜぇいっ!」ブオンッ

桃太郎(よっし、うまく避けれた!鉞みたいなデカい武器は強力だけど隙もデカい!しかも金太郎殿は巨漢だから鉞を降り終えたあとにでかい隙が出来……あれっ?)

金時「さぁて!もう一丁おぉ!」ビュオンッ

桃太郎「ちょ、なんで隙が…!っていうか金太郎殿、この巨漢でその素早さって……うおぉっ!隙ないじゃん!」ヒュッ

金時「ハッハッハァ!刀の方が小回りが効くだろうけどな、俺の怪力なら鉞でも木切れみたいに振り回せる!合間を縫って反撃なんかさせないぞ桃太郎殿!」

587 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/25 01:03:04 WJF 218/411

ビュビュオン ビュビュオン ビュビュオン

桃太郎「マジかよ…あんなデカい鉞、掠っただけでもヤバそうだ…。避けてばっかりじゃダメだ、どうにかして動きを止めないと反撃できねぇ…」

金時「どうした桃太郎殿!この俺に手加減など無用!さぁいつでも攻撃してきてくれて構わないぞ!ハッハッハァ!」ビュオンッ

桃太郎「……っ!」

ライオン「あわわ…これまずい感じがするよぉ…ちょっとでも動きを止めないと…あっ!桃太郎さん!避けるんじゃなくて防御したらどうかな!?鉞を刀で受け止めて、そっから反撃するんだよぉ!」

舌切り雀「おい、素人が見よう見まねで余計な事を…」

桃太郎「それじゃ駄目なんだってライオン!こんな刃受け止めたら刀ごと真っ二つになるから!」ヒョイッ

舌切り雀「おっ、惑わされてうっかり防ぐと思ったがよぉ、あいつやっぱり戦闘に関してはそこそこ冷静っぽいな。あんな細い刀で鉞の刃をうけとめられるわけねぇ、相手が金太郎なら尚更な」

ライオン「ぼ、僕余計なこと言っちゃったね…でも、それじゃどうやって勝てばいいのかな!?桃太郎さん大丈夫かな?」

舌切り雀「心配いらねぇよ。あいつは豆腐みてぇな精神力だしすぐにビビる情けねぇ腐れ桃だが……」

桃太郎「防御は出来ない、刃を刀で受け止めるのもダメ、刀は金太郎殿に届かない…だったら狙うのは一カ所!」ヒュッ

ズパッ ガリッ

金時「…っ!俺を狙うでも刃を防ぐでもなく、鉞の柄を刀で受け流した…?」

桃太郎「柄の部分ならそんな力加わらないから受け流しつつ切れ込み入れていけば…そのうち使い物にならなくなる」ジャキッ

桃太郎「そんなにデカい刃なんだから柄にかかる負担だって相当なもんだ、拙者が勝つには…この一点を狙うのみいぃぃ!!」ヒュッ

舌切り雀「……武術に関してあいつは間違いなく日ノ本一だからな」

588 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/25 01:05:28 WJF 219/411

・・・

桃太郎「これで……終わりだああぁぁ!!」シャキンッ

金時「くっ…これ以上柄で攻撃を受けるわけにはいかない、しかし攻撃の手を休めれば合間を縫って攻撃されるだけだ…!やむを得ないか!」ガガッ

ビッ ズドオォォッ

ライオン「鉞の柄が!折れた!」

舌切り雀「柄があのデカい刃を支えきれなくなっちまったか。勝負あり、ってところだなぁ」

金時「桃太郎殿、参った。俺の負けだ…まさか全ての攻撃を交わしつつ鉞を壊されるなんて考えてみなかった、今までそんな相手は居なかったからな、完敗だ。やっぱり日ノ本一の英雄は……」

桃太郎「……すっ」

金時「す…?」

桃太郎「すいませんでしたあああぁぁ!!手合わせなのに大切な武器壊してすいませんでしたあああぁぁ!!拙者もう必死で…あの、弁償するんでホントすいません!」ペコペコ

金時「…ハッハッハァ!相手の心配までできるとは流石日ノ本一!弁償なんてしなくていい、おかげで貴重な体験が出来た!」

桃太郎「そ、そう…?いいならお言葉に甘えようかな…」

舌切り雀「おい金太郎、こいつ金持ってるから新しい奴買って貰えよ、鉞」

桃太郎「いやいや!別に金持ってないから!悪鬼から取り戻した宝物は返して回ってるからね!?まぁお礼とかで色々貰った分はあるけど…あれ実家だし」

舌切り雀「まぁ何はともあれ、実際に戦ってみてどうだったんだ?金太郎、こいつは文句なしの日ノ本一か?」

金時「あぁ、武術も機転も利く。戦って改めて実感したが…やはり日ノ本一は桃太郎殿にのみ許された称号だ、俺に文句を付ける理由はないぞ!ハッハッハァ!」

589 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/25 01:10:41 WJF 220/411

金太郎の世界 足柄山

・・・

桃太郎「はぁ…マジで疲れた、どっと疲れた…」

ライオン「お疲れ様ー、でも金太郎さん認めてくれてよかったじゃない!鮭とかお土産に貰ったし」

桃太郎「素手で捕まえてたよな金太郎殿、人間技じゃないよあれ…」

舌切り雀「でもまぁ、よくやったじゃねぇか桃。その調子で次行くぞ」

桃太郎「マジでやっぱり次行くの…?金太郎殿相当強かったし、もういいんじゃ…」

舌切り雀「何甘えてんだ!金太郎は腕っ節は強かったが特別頭がいいわけでも妖術使えるわけでもねぇんだ!そういう奴らの所にもいかなきゃあな」

舌切り雀「候補としちゃあそうだな…冷気を操る雪女、動植物の声を聞き取れるじーさん、あと強そうな奴を誰か…あぁ、飯食わない嫁さんがいたな。この中なら誰がいい?」

桃太郎「なんなのその選択肢…でも金太郎殿メッチャ強かったし、次は簡単に認めて貰えそうなところが良いから…飯食わない嫁さんで、いい?」

舌切り雀「おう、わかった。【食わず女房】の世界な。じゃあパパッと行くぞ」

桃太郎「あれっ?楽な場所選んだらすげー怒鳴られるかなって思ったけど大丈夫だった…なんだ!舌切り殿もなんだかんだで拙者のこと気遣ってくれてるんだな、ありがたいなぁ」

ライオン「あ、あのさ…多分だけど【食わず女房】って…多分、楽じゃないんじゃ…っていうかその人確か……」

舌切り雀「おい、よけいなこと言わなくていいぞ。楽しようとした罰だ」ヒソヒソ

桃太郎「よっし、この調子で次も頑張るか!バンバン認めて貰って自信つけて、アリスを倒してみせるぞ!」ハハハ

590 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2016/07/25 01:20:29 WJF 221/411

今日はここまで 『作者』編 次回へ続きます

桃太郎はきっと飯食べない嫁さんっていうのを少食の女性って意味だと思ったんでしょうね
でもその嫁さん、一筋縄じゃいかないんです。頑張れ桃太郎

おとぎ話【食わず女房】
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%9F%E3%82%8F%E3%81%9A%E5%A5%B3%E6%88%BF


次回、遂に『作者』そして物語の核心に触れます。
雪の女王がかつて訪れた現実世界のとある街、そこで出会った人物とは?

複数の作者の想いが交錯する『作者』編、次回をお楽しみに!


続き
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」九冊目【3】

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