1 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/17 23:11:55 ukB 1/405

???の世界 真っ暗な空間

ヘンゼル「……真っ暗だ、何も見えない。ここは何処なんだろうか?」キョロキョロ

ヘンゼル「あの二人は無事なのかな、お千代!グレーテル!居ないのか?居たら返事をして欲しい!」

シーンッ…

魔女「フェッフェッフェ、どれだけ叫んでもあの二人にお前の声は届かんよ」スゥッ

ヘンゼル「お前は…お菓子の家の魔女!グレーテルに殺されたはずなのになんでこんな場所に居る!?二人に何をしたんだ!」

薄毛のおっさん「…ワシは何もしちゃあいない。だがお前の妹達はもう世界のどこを探しても存在しないのだ」スゥッ

ヘンゼル「今度はあんたか…!それよりその言葉、どういう意味なのか答えてもらうよ。返答しだいじゃあ僕はあんたを…」

ルンペン「おいおい、俺達を憎むのは筋違いだぜぇ?妹を失ったのはテメェの責任だぜ、お前が妹達を護りきれなかったんだからよぉ!」スゥッ

ヘンゼル「また姿が変わって…!やめてくれ、僕は妹を失ってなんかいない!あの二人は絶対に僕が幸せにする、どんな悪や不幸からも僕が護るって決めたんだ」

ルンペン「そうかよ、じゃあそこに転がってる娘はなんなんだぁ?」クックック

トサッ

グレーテル「――」グッタリ

ヘンゼル「グレーテル…!目をあけてくれ、どこか怪我をしているんじゃ…」サワッ

ヒンヤリッ

ヘンゼル「……っ!なんでお前、こんなに冷たいんだ……!これじゃあまるで……!」

元スレ
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」八冊目
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1445091115/

2 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/17 23:14:08 ukB 2/405

過去スレ

シンデレラ編 裸の王様編
キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1411567589/
http://ayamevip.com/archives/41175294.html

泣いた赤鬼編
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」二冊目
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1415360870/
http://ayamevip.com/archives/41665217.html

マッチ売りの少女編
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」三冊目
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1417340965/
http://ayamevip.com/archives/41951714.html

桃太郎編
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」四冊目
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1419508000/
http://ayamevip.com/archives/42358425.html

ラプンツェルとアラビアンナイト編
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」五冊目
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1421750928/
http://ayamevip.com/archives/42744272.html

人魚姫編
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」六冊目
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1424001836/
http://ayamevip.com/archives/45065511.html

ヘンゼルとグレーテル。とある消滅したおとぎ話編
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」七冊目
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1434893141/
http://ayamevip.com/archives/45744496.html


これまでのあらすじ
キモオタは現実世界に住む人間だよ
ある日、妖精のティンカーベルと出会い、おとぎ話の消滅を防ぐために様々なおとぎ話の世界を旅してるよ!
詳しくは過去スレを読んでね!

3 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/17 23:17:13 ukB 3/405

ヘンゼル「違う、そんなはず無いじゃないか。グレーテル…お願いだ!目を開けてくれ、いつものように僕の名前を呼んでくれ…!」ユサユサ

グレーテル「――」ユサユサ

ヘンゼル「なんでだ……どうして何も答えてくれないんだ……!」ポロポロ

アリス「当然だろうヘンゼル、死体は口を利くことなんかできないんだ」ストッ

ヘンゼル「アリス…っ!お前か、お前がこんな事をしたのか!?」キッ

アリス「違うよ、ボクじゃない。グレーテルを殺したのは現実世界の奴らだ、キミ達を利用する作者ども、子供を道具にする大人達。そして…妹を護りきれなかったキミ自身だ」

ヘンゼル「……っ!」

アリス「いくら凄まじい魔力を持っていてもキミは無力だ。実際、キミは今までの人生で何を護る事が出来た?」

ヘンゼル「……僕は、何一つ護れてない。グレーテルの笑顔も、パパさんの事も、お千代の事も、家族の事……何一つ!」

ヘンゼル「僕は無力な子供だ、でもそれを認めるわけにはいかない。パパさんと約束したんだ、僕は妹達を…二人の事を護るって、でも今の僕にはその力が無い…!」

アリス「そうだね、キミの魔力じゃ誰も護れない。いずれお千代や雪の女王、カイ…キミの大切な家族は争いに巻き込まれて死ぬかもしれない」

ヘンゼル「僕は、どうすればいい…?」

アリス「キミはもう知っているはずだよ、どうすれば力を手にする事が出来るのか……いや、キミは強くなる為に必要なものはもう持っている」

ヘンゼル「強くなる為に必要なもの…?それを僕が持っているっていうの?」

アリス「強くなる為に必要なもの…それは憎しみだ。キミの心に渦巻く大人への憎しみ、現実世界、そして大人達への憎悪。それを飼いならせばキミは今よりもずっと強くなれる」

アリス「僕と一緒に来るのならその方法を教えてあげるよ。さぁ、選択の時だ。僕と共に歩むか、護れもしない妹と一緒に居るのか…選ぶのはキミだよ」

スッ

ヘンゼル「待ってくれアリス!僕は、僕は妹達が傷つく姿はもう見たくない…!僕は、僕は強くなりたい……!」

4 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/17 23:18:34 ukB 4/405

現実世界 司書の部屋

ヘンゼル「…待ってくれ!僕は、僕はあんたと……!」ガバッ

グレーテル「……っ」ビクッ

ヘンゼル「……」ゼェゼェ

ヘンゼル(夢を、見てたのか…。外はすっかり真っ暗だ、洗濯物を畳んでいる途中で眠っちゃってたのか)

グレーテル「……お兄ちゃん、どうしたの……?恐い夢、見たの……?」

ヘンゼル「…グレーテル、僕の側においで」スッ

グレーテル「うん……でもどうしたの……?」トテトテ

サワッ

ヘンゼル(大丈夫だ、グレーテルの肌はこんなにも暖かい。夢とはいえ、妹をとんでもない目にあわせてしまった。僕は酷い兄だ)

グレーテル「お兄ちゃん……?本当に大丈夫?どこか、痛いの……?昨日遅くまで起きてた……?」

ヘンゼル「いいや、平気だよ。少しおかしな夢を見ただけだ。昨日夜更かししてあれこれ考えていたからね、お前やお千代の事とか、キモオタお兄さんの事とかさ」

グレーテル「……お兄ちゃん、もしかして……なにか悩んでる事、あるの?困ってる事や気にしてる事があるなら……お兄ちゃんの悩み聞くよ?」

ヘンゼル「グレーテルは優しいね、でも大丈夫だよ。僕は何も悩んでなんかいないから心配しないで」ナデナデ

グレーテル「……本当?」

ヘンゼル(大切な物を何一つ護れてない事、今回の誘拐事件で何もできなかった事、不甲斐ない自分自身の事……悩みなんか言えないに決まってる、僕はグレーテルのお兄ちゃんだ。だから弱音なんか吐いちゃいけない)

5 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/17 23:21:20 ukB 5/405

ヘンゼル「本当だよ、僕の心配なんかしなくていいから早く洗濯物を片づけよう」スッ

グレーテル「あのね、お兄ちゃん……一人で悩んじゃダメだよ……?」

ヘンゼル「……」

グレーテル「私もお千代ちゃんもいつだってお話聞くよ……?私達じゃ頼りにならなかったら……女王さまやカイお兄ちゃんも、きっと悩み事聞いてくれるの……」

ヘンゼル「フフッ、ありがとうグレーテル。でも、大丈夫だよお兄ちゃんは何も悩んでなんかいない。本当さ」ナデナデ

グレーテル「大丈夫ならいいの……お兄ちゃんはいつだって私の事考えてくれてるから……悩み事があっても私には言えないんじゃないかなって……思ったの……」

ヘンゼル「グレーテルは優しい子だね。僕はこれから先もずっと、お前が幸せなままでいられるように頑張るから…だから何も心配いらないんだよ」ナデナデ

グレーテル「あのね、お兄ちゃん……私ね、これ以上何もいらないの。だから私の側にずっと……」ボソボソ

ガチャッ

司書「ただいまー。ごめんヘンゼルー、新しい本運ぶの手伝ってくれるかなー?下の階で宅配便屋さんに会って、注文してた本受け取ったんだけど…量が多くて大変なのー」

ヘンゼル「わかった、すぐに行くよー!…っと、ごめん。グレーテル今、何か言いかけた?よく聞き取れなかったんだけど…」

グレーテル「……ううん、なんでもないの。お千代ちゃんのお手伝いに行こう……」

ヘンゼル「そうだね、どうせまた考え無しに本を買い込んだに決まってる。もしそうなら、女王の代わりに説教してやらないと」フフッ

スタスタスタ

6 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/17 23:23:49 ukB 6/405

グレーテル「やっぱりたくさん本買ってる……お兄ちゃんが言った通りだね……」

司書「えへへ、少し買いすぎちゃったかな?昨日も童話展で絵本買っちゃったし…しばらくは本を買うのは我慢だね」

ヘンゼル「それ先週も言ってたじゃないか。またこんなに買って…図書館に入荷した奴を読めばいいのに。床が抜けて怒られても知らないからね、僕は」フゥ

司書「で、でも読みたい本を我慢するのって凄く辛いし、Amazonってすごく便利だし…司書の私が図書館に入荷した本を一番に借りるのもおかしいし…」ズーン

ヘンゼル「わ、わかったから悲しそうにするのは勘弁してよ。とりあえずお千代の部屋に運べばいい?」

司書「うん、机の上…はきっと置けないね、ベッドの上にお願いしていい?」スッ

グレーテル「うん、わかった……あんまり持てないけど、私もお手伝いする……」

司書「二人ともありがとうね。そうだ、これが終わったらグレーテルは髪の毛結ってあげるよ。今日はこれからおでかけだからおしゃれしようね」ニコニコ

グレーテル「おしゃれ……あのね、髪形……ラプお姉ちゃんが結ってくれたみたいに出来る……?」

司書「昨日ラプンツェルさんに結ってもらった髪型だね、うん似た感じならできるとおもうよ」ニコニコ

ヘンゼル「それはいいけど、おでかけって…こんな時間に?どこにいくつもりなの?」

司書「うふふっ、おでかけって言っても夕飯を外食で済ませるだけだよ。近くのサイゼリヤにね」

ヘンゼル「ああ、そう言う事。でもレストランに行くくらいでおしゃれなんか必要なの?」

司書「せっかくの外食なんだからおしゃれして楽しく過ごした方が楽しいよ、きっと」

グレーテル「私もそう思う……ご飯は楽しい方がいいの……おしゃれ、大事……」

ヘンゼル「そういうもの?まぁ、僕は二人と食事ができるならどこだっていいし、なんだってかまわないけど」

司書「うふふっ、二人ともこの世界のレストラン慣れてないから楽しみだね。きっと楽しい夕飯になるよ」ニコニコ

7 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/17 23:26:08 ukB 7/405

現実世界 サイゼリヤ


キモオタ「ヘンゼル殿ー!グレーテル殿ー!お待ちしておりましたぞwww」ドゥフコポォ

ヘンゼル「……」

司書「キモオタさんごめんなさい、お待たせしちゃいました?ちょっと出がけにバタバタしてしまって」ペコッ

キモオタ「いやいやwwwまったく問題ないですぞwww我輩の方からお誘いしたのでござるから、少々待つくらい何でもないですぞwww」コポォ

ティンカーベル「とか言って、もうドリンクバー何度も往復してるくせに…あっ、グレーテルその髪形可愛いねっ!」ニコニコ

グレーテル「うん……お姉ちゃんに……お千代ちゃんに結ってもらったの……褒めてくれて嬉しい……」テレテレ

キモオタ「ドゥフフwwwグレーテル殿はキュートガールですなwwwさぁさぁ座るでござる、サイゼリヤはパスタもピザもハンバーグも絶品でござるwwwほい、メニューでござるよwww」スッ

グレーテル「お豆のスープ、あるかな……?」ストッ

キモオタ「スープは無いでござるが、豆料理なら温サラダがありますぞwww頼むでござるよwww」

ティンカーベル「ほらほら、司書さんもヘンゼルも座って座って!」

ヘンゼル「……」チラッ

キモオタ「どうかしましたかなヘンゼル殿www今、あからさまに目があったでござるがwww」コポォ

司書「ほら、ヘンゼルも座ろう。何を注文するのか決めなきゃ」

ヘンゼル「僕の分は、お千代が適当に選んでおいてよ。僕はそれよりも……」

スッ

ヘンゼル「キモオタお兄さん、僕はあんたと二人で少し話がしたい」

8 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/17 23:29:03 ukB 8/405

司書「ヘンゼル…?」

ヘンゼル「駄目?店の前にベンチがあったでしょ、そこでさ」

キモオタ「ほうwwwいいですぞwww男同士の語らいでござるなwww」スッ

グレーテル「お兄ちゃん……キモオタお兄ちゃんは悪い人じゃないよ、だからもう酷いことしちゃ……駄目だよ……?」ヒソヒソ

ヘンゼル「平気だよ、お前が心配してるような事にはならないから。さぁ行こう、キモオタお兄さん」

キモオタ「承知しましたぞwwwおおっと、ティンカーベル殿www我輩いつものメニューにするでござるので、注文は頼みましたぞwww」コポォ

ティンカーベル「わかったー、ミックスグリルとラージライスとラージライスだよね?私は店員さんに伝えられないから、司書さんお願ーい」フワフワ

司書「あっ、うん…それはいいけど…」

ヘンゼル「じゃあちょっと席をはずすよ」スッ

キモオタ「では後ほどwww」コポォ

スタスタスタ

グレーテル「行っちゃったね……なんのお話なんだろう……気になる……」

司書「私がキモオタさん達も一緒だって言わなかったから怒ってるのかな…?ヘンゼルは現実世界の人や大人を嫌ってるから、険悪な雰囲気にならなければいいけど…」

ティンカーベル「心配しなくても大丈夫だよ。昨日の戦いでヘンゼルはもうキモオタがどういう人なのかわかってくれたと思うんだ」

ティンカーベル「キモオタがただの気持ち悪いだけのオタクじゃないってわかったなら、大体の人はそうそうキモオタの事嫌ったりしないと思うなー、私は」

司書「うふふ、ティンクちゃんはキモオタさんの事とても信頼してるんだね」

ティンカーベル「そ、そんなんじゃないよ!一緒に居るから何となくわかるってだけだよ!それより早く注文しよ!帰って来た時にご飯無かったらキモオタがブヒブヒ喚いちゃうからさ」ケラケラ

9 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/17 23:30:48 ukB 9/405

現実世界 サイゼリヤ前のベンチ

キモオタ「さてさてwww我輩のようなキモオタと語りたいとは酔狂ですなヘンゼル殿wwwどのような要件ですかなwww」コポォ

ヘンゼル「この食事会はさ…あんたがお千代を誘ったって言ってたよね。どうしてお千代を誘ったの?」

キモオタ「おおっとwwwやきもちですかな?wwwグレーテル殿の件といい、ヘンゼル殿は大概なシスコンでござるなぁwww」コポォ

ヘンゼル「はぐらかさないで欲しいな、僕は真面目に聞いてるんだ」

キモオタ「それは申し訳ないwww実は先ほど図書館に行ったのでござる。昨日の帰り道に司書殿からアリス殿にまつわる情報を聞いていたのでござるが、話の途中で司書殿の自宅に到着してしまいましてなwww昨日は最後まで聞く事が出来なかったのでござるwww」

ヘンゼル「話の途中なんだったっけ、そういえばそんなことも話していたね。それでその続きを聞きに行ったってことなんだね」

キモオタ「アリス殿と戦う我々にとって、あの者の情報は得過ぎという事は無いでござるし…現実世界に住む者の視点とおとぎ話の主人公の視点、両方から物事を見る事が出来る司書殿ならば我々が知らない情報を持っているでござろうし…」

キモオタ「故に司書殿の持つアリス殿の情報にはぶっちゃけ期待していたのでござるが、図書館に行ってみると妙に忙しそうでしてなwww仕事を邪魔するのもアレでござるし、では仕事の後にサイゼリアで食事でもと誘ったのでござるwww」

キモオタ「せっかくこうして出会えたでござるし、ヘンゼル殿やグレーテル殿ともいろいろと話したかったでござるwww丁度いい機会だと思いましてなwww」

ヘンゼル「……お千代に特別な感情があるわけじゃない。そう解釈してもいいの?」

キモオタ「ちょwwwまさかヘンゼル殿、我輩が司書殿の気を引く為に食事に誘ったとでも思ったのでござるかwww」

ヘンゼル「まぁね。いままでだってお千代の気を引こうとしてあれこれ手を尽くしてきた奴が居なかったわけじゃないし」

キモオタ「ほうwwwしかしヘンゼル殿は観察力に掛けますなwwwこんなキモいオタクにそんな度胸があるとでも?無いに決まってるでござろうwwwメタボでキモオタでコミュ障でブサメン、おまけに童貞というスペシャルコンボ状態ですぞ我輩はwww」コポォ

ヘンゼル「そんな風に開き直られても、反応に困るよ」

キモオタ「ヘンゼル殿の心配もわかるでござるが、我輩にとって司書殿とグレーテル殿はキモイ我輩相手でも嫌な顔せず声をかけてくれた優しい図書館司書と異国の少女でござる」

キモオタ「友人として親しくなりたいとは思うでござるが、それ以上の感情など無いでござるよwwwご安心をwww」

10 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/17 23:32:47 ukB 10/405

ヘンゼル「そう…まぁ、その言葉を信用してみる事にするよ」

キモオタ「おおっとwww司書殿とグレーテル殿だけでなく、もちろん我輩はヘンゼル殿と親しくなりたいと思っておりますぞwww」

ヘンゼル「生まれた世界が違うどころか歳だって一回り以上離れてる僕と?不思議な事を言うね。何か企んでる?」

キモオタ「ちょwwwなんwwwでwww友人になるのに性別も年齢も関係ないでござるwww現実世界に住むヘンゼル殿と親しくなれば色々と捗りますからな、孤独を感じる事ももう無いでござるwww」

キモオタ「なにせ我輩、おとぎ話の世界では結構友人居るでござるけど、現実世界には友人居ませんからなwww」コポォ

ヘンゼル「悲しすぎでしょ、それ…」

キモオタ「ところがどっこい事実でござるからなwww」

ヘンゼル「キモオタお兄さんは本当におかしな人だよね。どうして何もなかったように僕と話ができるの?昨日、僕はあんたを殺そうとしたんだよ?普通は警戒すると思うよ」

キモオタ「自慢ではないでござるが、我輩は普通ではありませんからなwww常識の通用しないキモオタでござるwww」コポォ

ヘンゼル「本当に自慢じゃないね、なにそれ」クスクス

キモオタ「ドゥフフwww」

ヘンゼル「……昨日話した通り、僕は僕達を苦しめさせた作者が嫌いだ。そいつらが住む現実世界もね。それに何より大人っていう存在は信用できなかったしただただ憎らしかった」

ヘンゼル「現実世界に来てからも、その想いが薄れる事は少しも無かったよ。ルールやマナーを護れない大人もずるくて自分勝手な大人も当たり前のように溢れかえっていたから」

ヘンゼル「お千代が街で頭の軽そうな男に声を掛けられた事は一度二度じゃなかったし、グレーテルが知らない大人に声を掛けられた回数なんて片手じゃ足りない…」

キモオタ「司書殿は真面目な上に可愛いでござるし、グレーテル殿は良くも悪くも目立ちますからな。良からぬ事を考える大人も少なからずおりますからな…嘆かわしい事でござるが」

ヘンゼル「だから僕はキモオタお兄さんを殺そうとしたんだ、僕が二人を護らなければまた大人達の良いように利用されてしまうと思ったから」

キモオタ「行動はともかくとして、そう思わせてしまう現実世界の我々にも大いに問題がありますな……」

ヘンゼル「僕は今だって現実世界も作者も大人も大嫌いだ。でも、お千代やグレーテルを助けてくれたキモオタお兄さんは少しだけ…少しだけだけど違うかもしれないって思ってる」

ヘンゼル「少なくとも、殺してしまおうなんて事は……今はもう、思っていないよ」

11 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/17 23:36:20 ukB 11/405

ヘンゼル「グレーテルがアリスに酷いことされそうになった時、あんたは身体を張って助けてくれた。アリスに反撃されれば死ぬかもしれなかったのに、ひどい無茶をするよね」

ヘンゼル「でもその時に…なんていうのかな、ほんの少しだけパパさんの面影を見たんだ。キモオタお兄さんとは体型も顔も性格も何もかも違うけれど、それでも…自分が犠牲になってでも護ろうっていう気概は一緒に思えたんだ」

ヘンゼル「パパさんも、僕達に係われば村での立場が悪くなってしまうかもしれなかったのに、薄毛に言いがかりをつけられていた僕達を助けてくれたしね」

ヘンゼル「だから昨日帰ってから夜遅くまで色々と考えてた、そして思ったんだ…キモオタお兄さんはそこまで悪い大人じゃないかもしれないって。少しだけ、ほんの少しだけなら……信用してもいいんじゃないかって」

キモオタ「おお、ヘンゼル殿…!」パァァ

ヘンゼル「なんでそんなに満面の笑みなの。言っておくけど、すこしだけだからね?僕はキモオタお兄さんの事をなにからなにまで信用したわけじゃないから。あくまでほかの大人よりは少しは信用してもいいかもってだけで…」

キモオタ「とか何とか言ってwww大人をあれほど憎んでいたヘンゼル殿が我輩を認めてくれるとはwwwヘンゼル殿ルートに突入ですなこれwww」

スッ バチンッ

キモオタ「おぶっ!…ちょwwwデコピンに魔力を乗せて打ち出すのはずるいですぞwww」

ヘンゼル「調子に乗るからだよ。あんたがお千代やグレーテルを悲しませるような事をしたり、僕が信用に値しないと思ったらすぐに殺すからそのつもりでいてよ」フイッ

キモオタ「まったく心配性ですなwwwもちろん、わかっておりますぞwww」

ヘンゼル「それならいいんだ。あと、なんていうか、その…」

キモオタ「どうしましたかなwww」

ヘンゼル「昨日は、酷い事して悪かったって思ってる。許してくれなんて言わないけど…やりすぎた僕に非がある事は認める。ただあれは二人を護りたい僕の気持ちが本気だったからで…いや、これじゃ言い訳じみてる。言いたい事はそうじゃなくて…」



ヘンゼル「……昨日は僕が悪かった、ごめん」

12 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/17 23:42:32 ukB 12/405

キモオタ「ドゥフフwwwヘンゼル殿ぉーwww素直に謝れるとは偉いですなぁwww我輩、ショタ萌えの気持ちが若干わかったような気がしましたぞwww」コポォ

ヘンゼル「くっ…慣れ慣れしくしないでよ。あんたは二人を助けてくれたから筋を通そうと思って謝っただけだよ。さっきも言ったけどまるっきりあんたの事信用したわけじゃ…」

キモオタ「はいはいwwwわかってるでござるからwwwもう我々の間に確執も貸し借りも何もありませんぞwww」コポォ

ヘンゼル「…まったく、パパさんにしろ女王にしろキモオタお兄さんにしろ、どうしてこうも気楽そうにしてるんだろうね。僕までつられてつい安心しちゃうじゃないか」ボソッ

キモオタ「何かいいましたかなwwwヘンゼル殿www」

ヘンゼル「なにも言ってないよ。僕の言いたい事は伝えた、お店の中に戻ろう」

キモオタ「そうですなwwwそろそろ我輩のミックスグリルが到着している事でござるwww急がねば某妖精のつまみ食い攻撃を受けてしまいますぞwww」

ヘンゼル「グレーテルはきっと僕達が戻ってくるまで料理に手を付けないだろうしね」

キモオタ「律儀というかwww兄想いと言うかwww我輩なんか料理が来たら光の速さで食事開始でござるよwww」

ヘンゼル「あんたと僕の妹を一緒にしないでよ。あいつは家族想いなんだよ、それに兄想いのよくできた妹なんだ」

キモオタ「グレーテル殿はヘンゼル殿にとても懐いておるようですしなwwwおそらく【ヘンゼルとグレーテル】で魔女の家にて離れ離れになっていた故に、ヘンゼル殿と一緒に居られない寂しさを知っているからでござろうなwww」

ヘンゼル「……そうかな?」

キモオタ「ん…?どういうことですかな?」

ヘンゼル「ねぇ、キモオタお兄さん。グレーテルやお千代は、僕が居なくなったら寂しいかな?」

ヘンゼル「二人を護るためって理由でも…しばらく僕が一緒に居られなくなってしまえば…二人は悲しい思いをするのかな?」

13 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/17 23:44:31 ukB 13/405

キモオタ「ヘンゼル殿……?どうしたでござるか、そんな事を言いだして……」

ヘンゼル「……いいや、なんでもないんだ。忘れて」

キモオタ「……」

ヘンゼル「悪かったよ、変な事言って。さぁ戻ろうよ、料理が覚めてしまう」スッ

キモオタ「……ああっとwwwそういえば我輩猫舌なのでござるよwww少々料理が覚めた方が都合がいいでござるwww」コポォ

ヘンゼル「急がないとティンカーベルに食べられるんじゃなかったの?」

キモオタ「足りなければ追加で頼めばいいだけでござるwwwだからもう少し話してから行くでござるよwwwヘンゼル殿も、座って座ってwww」スッ

ヘンゼル「まぁ、いいけど…」スッ

キモオタ「…で、先ほどの返答でござるが…まぁこれは我輩の考えでござるけど、ヘンゼル殿が居なくなれば二人は寂しいでござろうな」

ヘンゼル「……」

キモオタ「家族と一緒に居られなくなって寂しくない者などいないでござるよ、それに二人ともなんというか…大切な家族に会えない気持ちを知ってるでござるしな。ヘンゼル殿も二人にあえないのは辛いでござろう?」

ヘンゼル「辛いさ。でも、今の僕じゃ……二人を護れないから」

キモオタ「……ふむ?護れないとは?昨日ヘンゼル殿は単身で司書殿の救出に向かい、そしてみごと救出したではござらんかwww」

ヘンゼル「僕はお千代を助けられてないよ。お千代を助けたのは拘束を解いたティンカーベルやアリスと戦った孫悟空やラプンツェル、グレーテル…そしてキモオタお兄さん、あんただよ」



ヘンゼル「僕は何もしていない。何も出来てないんだ」

14 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/17 23:46:31 ukB 14/405

キモオタ「仮にヘンゼル殿が言うように、今のお主が二人を護れないとして……どうするつもりでござるか?何か考えがあるでござるか?」

ヘンゼル「……それは、言えない」

キモオタ「それならば聞かないでござる。ただ、聞いた感じだとヘンゼル殿は二人を護るための力を得る為にあの二人から離れると…そういうことですな?」

ヘンゼル「まだ悩んでる。僕だって二人とは一緒に居たい、でもそれは僕の我儘でそれを通せば二人を護る力は手に入らない」

キモオタ「お主が二人と一緒に居たいのなら、無理に力を得る必要は無いのではござらんか?」

ヘンゼル「でも力を得られなければ僕は子供のままだ。何もできないまま……二人が傷付いて行くのを見ることしかできない。そんなのは絶対に嫌だ」

キモオタ「お主は何故にそこまで……」

ヘンゼル「妹を護りたいのは当然だよ。その為に力が必要なら、僕は何をしてでもそれを手に入れないといけない」

キモオタ「二人の気持ちを聞いてみてはどうですかな?一人で悩んでいても仕方ないでござろう?もちろん我輩だって聞きますぞ、ヘンゼル殿さえ胸中を打ち明けてくれるのであれば」

ヘンゼル「僕は悩んでないよ。だから二人に余計な事を言わないでよね、僕はお兄ちゃんだから妹に心配を掛けちゃいけないんだ」

キモオタ「兄とか妹とか関係ないでござるよ、悩んでいるのならそれを打ち明けてキチンと話をして……」

ヘンゼル「……もういいよ、行こう。みんな待ってる」

キモオタ「しかし、ヘンゼル殿……」

ヘンゼル「いいから。ああ…そういえばグレーテルが昼間凄く心配していたからラプンツェルがどうなったか教えてあげてよ。あんたもお千代にアリスの情報、聞かなきゃなんでしょ?」

ヘンゼル「先に行ってるからさ、あんたもすぐに来なよ」スタスタ

キモオタ「……ヘンゼル殿」

15 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/17 23:49:02 ukB 15/405

そのころ……
とあるおとぎ話の世界 ある貴族の洋館


タッタッタッ

ドロシー「ハァハァ……ここまで逃げれば、もうあの人たち追いかけてこないかな……?」ゼェゼェ

カツッカツッカツッ

ドロシー「足音…っ!やっぱりまだ追いかけて来てる…でももうこれ以上走れない、この部屋に隠れてやり過ごすしかないよね……」スッ

カツッカツッカツッ

ドロシー「とにかくあの男の人に見つからないようにしないと…そうしなきゃ、見つかれば私きっと殺されちゃう……このクローゼットの中なら見つからないかも……」ゴソゴソ

カツッカツッカツッ スッ

髭の男「ふむ、この廊下に姿は無し…か。彼女はこちらへ駆けて行ったと思ったのだが、私の見間違いだったかな?どう思うかね、我が妻よ」

新妻「いいえ、見間違いではありません。ドロシーと名乗った娘さんは確かにこちらへ駆けて行きましたから」

髭の男「ふむ…彼女は特徴的な靴を履いていたのだったな、あれほど立派な靴ならば駆ければ必ず靴音が響く。響かないと言う事はこの辺りに身を潜めているという事か」

新妻「この辺りの部屋のどこかに身を潜めているのでしょう……しかし、どの部屋に潜んでいるかまではわかりかねます」

髭の男「私も同意見だ、しかし一つ一つの部屋を探すのも面倒だ。ここは私の鍵に聞いてみるとしよう。我が鍵よ、侵入者の魔力を探知し…その居場所を我に示せ」スッスッ

…カチャカチャン

髭の男「我が魔法の鍵が告げている、ドロシーはどうやらそこの部屋の中に隠れているようだ。ついてきたまえ、我が妻よ」ギィッ

ドロシー「……っ」ガクガクブルブル

16 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/17 23:54:41 ukB 16/405

髭の男「ふむ、姿が見えぬが…どこかに隠れているな?少なくともこの部屋の中に居る事は間違い無いだろう、我が鍵が偽りを示す事は無い」

新妻「身を隠せそうな場所は限られています、少し探せば見つけられるでしょうが……妙ではありませんか?」

髭の男「妙とはどういう事か?」

新妻「先ほど私達の目の前に現れた娘…ドロシーと名乗る彼女は神をも恐れぬような尊大な態度で、私達に迫りました」

髭の男「うむ、私の持つ魔法の鍵を寄越せと言い放ち、その上我々を殺して世界を消滅させるなどのたまっていたな。我々に対する堂々たる宣戦布告……随分と好戦的な娘に見えた」

新妻「しかし、私達が今追っているドロシーはほんの数分前の彼女とはまるっきり別人のようです。私にはただの内気な女の子に見えました、慌てて逃げて怯えた子供のように隠れてしまって……」

髭の男「魔法を掛けられているのか、多重人格の類なのか…どちらにしろ、単なる心境の変化ではあるまい。だが些細な事だ、我々へ宣戦布告をした以上は敵として迎え討つ…尊大だろうが内気であろうがあの娘は殺しておく必要がある」

新妻「旦那様。私には何か事情がある様に思います、それに怯えている女の子を追いつめるなどできません。彼女の無礼には目を瞑り、見過ごすと言う訳にはいきませんか?」

ヒュッ ガッ

新妻「……うぐっ、ゲホゲホ……だ、旦那様……何をなさるのですか……」ボタボタ

髭の男「不抜けた事を言ってくれるな我が妻よ。どこで知ったのか魔法の鍵の存在まで知りそれを寄越せと口にした…あのような小娘に我が物顔でいられる事は私にとって酷い侮辱なのだ。お前は易々とその侮辱を許し、無礼を不問にしろと言うのか」

新妻「し、しかしあの性格の変わりようは普通ではありません…なにか気の毒な呪いか、魔法でもかけられているのなら……うぐっ」ガシッ

髭の男「少し黙っていろ、ドロシーとかいう小娘を許すか否かはお前が決める事では無い。これ以上の指図をするのならば……私はお前を良妻と認めるわけにはいかなくなる」

髭の男「そうなれば夫婦生活は終いだ。それだけは避けたいものだ、そうなれば私はお前を殺さなければならなくなるのだから」クイッ

髭の男「今も我が屋敷の小部屋で永久の眠りについている、前妻と同じようにな」グイッ

17 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/17 23:57:06 ukB 17/405

ブンッ ガシャンッ

新妻「…っ!ゲホッゲホゲホ…」バタッ

髭の男「安心するがいい、例え夫婦でなくなってもお前が亡骸になったとしても私はお前を永久に愛してやろう」

髭の男「なんにせよ今は夫婦で諍いをしている場合ではあるまい。話は後だ、我が妻よ。そこでしばらく眠っていろ」

スッ

髭の男「聞こえるかドロシーよ。お前が欲している魔法の鍵はここにある、何故お前がこれを欲しているかは知らぬが…」スルッ

ジャキン

髭の男「手に入れたいのならば逃げず、私に立ち向かってくるがよい。私は愛した女しか殺さぬと決めていたが……どうやら始めて例外が生まれそうだ」

ドロシー(……)ガクガクブルブル

髭の男「安心するといい、私は剣さばきには自信がある。私は小娘に興味は無いが…お前はなかなか可愛らしい顔つきをしていた、顔を傷つけぬよう殺せばその死体を欲する物好きも現れるだろう。
その物好きに永遠に愛してもらえばいい、それならば辛さも薄れると言うもの」カツッカツッカツッ

髭の男「ああ、だがある程度血を流して貰わねば困るな。私の魔法の鍵は穢れを好む、定期的に人間の血液を浴びねば機嫌が悪いのだ。さぁ、小娘はこの部屋のどこに隠れている?教えよ、我が魔法の鍵よ」

…カチャカチャン

髭の男「なるほど、クローゼットの中か。良くやった我が魔法の鍵よ、後ほど存分に血を浴びせてやろう」

ドロシー(……っ!)ガクガクブルブル

カツッカツッカツッ

髭の男「私の声が聞こえているはずだが…逃げもせず立ち向かいもせず、諦めたか。まぁどちらでも同じ事、私に舐めた口を利いた事を悔やむと良い…!」スッ

ドロシー(お願い……かかし、ライオン……私を助けて……ブリキ……っ!)ガクガクブルブル

18 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/18 00:12:53 uTM 18/405

今日はここまでです
今日から新スレ、物語の謎あれこれが明らかになります。またしばしのお付き合いをお願いします

もうほぼ最終章だから登場したおとぎ話紹介してみる

【ピーターパン】
ティンクことティンカーベルが登場するおとぎ話
ネバーランドに住む永遠の少年ピーターパンやティンクの物語
魔法あり妖精あり冒険あり嫉妬あり
おとぎ話としてのピーターパンは少女ウェンディを巻き込んでのフック船長との戦いの場面が有名

ディズニー版ではティンカーベルのスピンオフ作品も出てるほどの人気だけどこのssの世界では消滅してるのでティンクはそんなこと知りません



かぐや姫とオズの魔法使い編 次回に続きます

46 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/21 23:32:12 6Ma 19/405

ドロシー(どうして、どうしてこんなことに…!また、気がついたら知らない場所に居ただけなのに……ブリキもかかしもライオンも居ないし……恐いよ、助けて…!)ガクガクブルブル

ドロシー(死にたくない…襲われる理由なんて心当たりないし、私がこの屋敷に居た理由もわからないのに…お願い、開けないで……!)

ギィィィッ

ドロシー「ひっ…!」ビクッ

髭の男「おかしな小娘だ、この屋敷に乗り込んできたのはお前の方だというのに戦おうともせずただクローゼットの中で怯えているとは」

ドロシー「あっ、あのっ、私があなたになんだかとんでもなく無礼な事をしてしまったのなら……謝りますっ!ごめんなさいっ!」ペコペコ

髭の男「許すはずが無いだろう。謝罪をすればどんな行いでも不問になるとでも思っているのか?お前は私と我が妻を殺すとまで言い放ったのだぞ?」スッ

ドロシー「そ、そうなんですか…?そんなひどい事…あっ、えっ、そんなつもりじゃないんです、ただ私は…そのっ…知らなくて……」

髭の男「知らないなどとしらじらしい事を…なんにせよ殺すなどと言われて黙っていられるはずが無い、まさか覚悟なく殺すなどと口にしたわけではないだろう?それとも今更になって怖気づいたか?」

ドロシー「あっ……ち、違うんです!私は、その、おかしな病気にかかっていて…記憶が抜けている時が凄く多くあって…その間の事は覚えていなくて、私は…」

髭の男「やはり怖気づいたという訳か……一度は私を殺すとまで言ったのだ、せめて最期の時まで堂々としていろ」ギロッ

ビュオンッ ガキンッ

ドロシー「ひっ、ひえっ…!すいませんすいません、ごめんなさい!ごめんなさい!」ガクガクブルブル

髭の男「避けたか、運の良い奴め…口を噤め、情けない言い訳など聞きたくないのでな。どのような理由があろうとも、殺すなどと口にした以上は殺されても文句は言えまい…っ!」ビュオッ

ドロシー「ひえっ…!」ギュッ



ガッシャーンッ!!

47 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/21 23:34:18 6Ma 20/405

ドロシー「……っ!」ビクッ

髭の男「何事だ…!?」バッ

スタッ

ライオン「い、居たよっ、ドロシーちゃんだ…!ブリキ!かかし!急いで取り返そう、ぼぼっ僕達の大切な友達を!」グルルッ

ブリキ「ああ、やはりここぞという時にはお前の嗅覚が頼りになる。さぁ返して貰おうか、その娘は俺達の大切な連れ合いなんでな」ズシッ

かかし「二人とも油断するナ!あいつはこの【青ひげ】の世界の主人公、妻を殺しては再婚を繰り返す悪魔のような男ダ!相当なてだれだゾ!」

ドロシー「あぁ…っ!よかった…みんな、助けて……!」

青ひげ「ほう、この小娘の仲間か。それに我が名を知っているとは感心だ…しかし随分と奇抜な集団だな?サーカス団かと思ったぞ」クックック

ブリキ「大人しくドロシーを解放してくれれば助かるんだが、そのつもりは…なさそうだな?」

青ひげ「無論。この小娘は私を侮辱した。当然の報いは受けて貰う、この刃によって私が受けた屈辱を晴らさせてもらおうか…!」スッ

ドロシー「…ブリキ!お願い、助けて…!」ギュッ

ガキィィンッ!

青ひげ「ほう、迷わずその身体で受け止めたか。しかしこの妙な手ごたえ…全身を鎧で覆っていると思っていたが、どうやら違うようだ。お前は一体どういう存在だ?」ギギッ

ブリキ「元人間だ。だがそれも随分昔の話だ、今はブリキの身体を持つしがないきこり。それ以外の何者でもない」ギギッ

青ひげ「ほう、呪いか魔法でもかけられたか。だが身を呈して仲間を庇う姿は称賛に値する、普通は殺意を持つ相手を前にすれば多少なりとも恐怖を感じるものだがな」ギギッ

ブリキ「俺は心を持たないブリキのきこり…あいにくだが恐怖などと言う感情は持ち合わせていない」ギギッ…

48 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/21 23:36:18 6Ma 21/405

青ひげ「ほう、実に興味深い。だが所詮はブリキ…鋼鉄の鎧の様にはいくまい、私の一撃もまるっきり無駄と言う訳でもなさそうだ」ギギッ

ブリキ「俺の身体はお前達生身の人間と違って換えが利くんでな、粉砕さえしなけりゃあ少々の無茶ならば問題無い」ギギッ

青ひげ「なるほど、換えの利く金属の身体というのは便利なものだな。殺す事が出来なくとも、動きを封じる事くらいはできるだろう」ビュッ

ブリキ「どうやらやはり話し合いでは解決しそうもない…ライオン、かかし!」

ライオン「うん、わかったよっ!」シュタタッ

かかし「ったク、俺の友人共はどいつもこいつも世話が焼ける奴ばっかりダ!」シュバッ

ライオン「一番素早い僕がドロシーちゃんを助ける!ブリキとかかしはあの人の相手お願い!」

青ひげ「そう易々と思い通りに事が運ぶと思うなよケダモノめ。小娘とまとめて切り裂いてやろう」ジャキンッ

ライオン「うぐ…っ!」ズバッ

ブリキ「怯むなライオン!その程度の傷、お前ならなんでもないだろう!そのままドロシーを奪い返せ、お前の機敏さなら翻弄できる。自信を持て!」

ライオン「そうだよ、そうだよね…僕は百獣の王ライオンなんだ。悪い人間なんかに負けないんだ!グオオォォ!!」グオオォォォ!!

青ひげ「ぐっ…鋭利な爪に鋭い牙…!その姿は見かけ倒しでは無いという事か…だが猛獣に立ち向かえないような腰抜けではない!」グググッ

ザシュッ

ライオン「うぐっ…!ぐっ……!猛獣を前にしても怯まないなんて凄い精神力だ。それとも僕が相手だからかな…?」フラッ

かかし「ライオン!マズイゾ、もろに喰らっちまっタ…!」

49 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/21 23:38:24 6Ma 22/405

ドロシー「ライオン!一旦引いてっ!すごい血がでちゃってる……死んじゃうよ!」

青ひげ「猛獣など、所詮武器を手にした人間の相手になどならない。だがその傷で立っていられるのは称賛に値する…だが小娘の奪還など易々とさせるわけ無かろう!」スラッ

ライオン「簡単じゃなくたって、僕は絶対にドロシーちゃんを助けるんだ。だから恐くっても我慢して…戦うんだよっ!」ググッ

青ひげ「その意気は認めよう、だが私にはその爪も牙も届きはしない」

ババッ

かかし「オイオイッ!俺を忘れて貰っちゃア…困るんだヨ、青ひげえエェェェェ!この俺を倒しテから粋がってなヨォ!」ババッ

青ひげ「邪魔が入ったか…!しかしブリキ人形、ライオンと来て生きたかかしか…まさにサーカス団だな」ババッ

かかし「そりゃあ褒め言葉かイ?お前の相手はライオンでもブリキでもねぇゾ!この俺が相手ダ!」ガシッ

青ひげ「新手の邪魔が入ったか…止むなし、お前から片付けてやろう」スラッ

かかし「そりゃあ出来るかどうか怪しいもんだナ!お前の剣じゃただのかかしである俺を真っ二つにすることさえもできないだろうヨ!」

青ひげ「随分な自身だな。ならば望みどおり、その藁でできた胴体を真っ二つに切り裂いてやろう…!」ヒュッ

ズバッ

かかし「……かかったナ!青ひげッ!」グラッ

青ひげ「なんだと…?」

バッサーッ

青ひげ「何事だ…!切り裂いたかかしの腹部から粉のようなものが…これは、灰か…?」

50 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/21 23:40:09 6Ma 23/405

かかし「灰ヨ!無数の蔓となって青ひげを縛り上げろっ!」

シュルルシュルルッ

青ひげ「灰が植物に!?まさか、あらかじめ斬られる事を覚悟で腹部にその魔法具を仕込んでいたというのか!」グルグルグルッ

ギュッ

かかし「よぉシ!ライオン!早くドロシーをかついで走レ!ブリキも急いで逃げるんだヨォー!」ババッ

ライオン「わかったよっ!ドロシーちゃん、早く僕に乗って!」

ドロシー「う、うんっ!」

ダッダッダッ

青ひげ「クッ…!我が妻よ、目を覚ませ!早急に私を縛る蔓を斬り裂け!…クッ、強く殴りすぎたか…!」

かかし「自業自得だナ!さて俺も逃げテ……お、おろッ…?胴体が斬られてるからバランスが…」グラッ

ブリキ「俺が担いでやろう、まったく一番無茶してるのは誰だ?」

かかし「助かったゼ、まぁ無茶してんのは四人全員だろうがナ!」

ブリキ「とにかく今は逃げるのを優先にするぞ」ダッ

かかし「おうヨ、アリスに命じられた魔法の鍵はとりそこなったけド…人命には変えられン」

ブリキ「ああ、ライオン達は逃げおおせた。俺達も急ごう」

ダッダッダッ

青ひげ「クッ…私があのような珍妙な集団に後れを取るだと…あり得ぬ、あり得ぬ…!」ギュウギュウ

・・・

51 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/21 23:43:58 6Ma 24/405

ドロシー達が青ひげから逃げだしてしばらくの経過した後…

不思議の国のアリスの世界 三月ネズミの家に続く道

・・・

白ウサギ「ちょっとぉぉ!アリスさんマジで急いでくださいよぉ!悠長に歩いてちゃ約束に遅れちゃいますってー!」

アリス「キミは相変わらずせっかちだな、そんなに急がなくともお茶は逃げない」フフッ

白ウサギ「なーに言ってんですかっ!今日はただのお茶会じゃないんですよ!御自分がみなさんに集まるよう命じたのに忘れたんですか!?」

アリス「そう喚かなくてもボクは覚えてるよ。【不思議の国のアリス】の登場人物を集めた作戦会議をする為の招集だ。魔法具も戦力もそこそこ集まったからね」

白ウサギ「そうですっ!みなさんアリスさんの為に集まってくれてるんです!主役が遅れて行っては示しがつきませんってば!」

アリス「時間にルーズな奴らばかりだから、時間通りに行っても誰も居ないさ」

白ウサギ「だとしても!あなたがいなければ始まらないんですから、早めに行くくらいの事はしましょうよ!会議する時間が無くなっちゃいますよ!?」

白ウサギ「皆さんに伝えなければいけない事はたくさんあるじゃないですか!現実世界のキモオタとかいう男の事、アリスさんを邪魔しようとしている雪の女王の件とか盛りだくさんなんですから!」

アリス「そうだね、魔法具収集の状況や捕虜共の様子の報告も受けないといけない。そろそろ【アラジンと魔法のランプ】の世界への襲撃の件も話さなければね」

白ウサギ「でしょう?アリスさんが魔法のランプを狙っている事は向こうも知ってるんですから、相応の戦力で挑まないと!準備を怠っちゃ勝てるものだって勝てませんよっ!」

アリス「わかっているよ。でもね白ウサギ、ボクが焦ったり慌てたりしないのはキミ達を信頼しているからだ。キミ達と一緒なら、僕は願いをかなえられると確信してる」

白ウサギ「そ、そんな面と向かって言われるとなんだか照れちゃいますよー!まかせてくださいっ!僕達は全員アリスさんの願いをかなえる為に全力出してますからっ!」

アリス「それは頼もしいな。だけどキミは急ぎ過ぎだ、時間を気にし過ぎていたら疲れてしまうだろう。お茶会に行く前にひと休みしてもボクは構わないよ?」クスクス

白ウサギ「だーから時間ないっていってるじゃないですかぁぁー!僕の話全然聞いてないじゃないですか!ほら、もう急ぎましょ!」

52 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/21 23:45:26 6Ma 25/405

不思議の国のアリスの世界 三月ウサギの庭

ハートの女王「……三月ウサギよ。アリスはまだ来ぬのか?」イライラ

三月ウサギ「まだじゃね?まぁ、俺達に約束の時間なんかあって無いようなもんなんだし、イライラしてもしかたねーッスわ」ヘラヘラ

ハートの女王「約束の時間からもう二時間も経過しているのだぞ!誰を待たせていると思っているのだ!処刑人を呼べ!このおとぎ話の主人公とてこのような狼藉許せぬ!」

三月ウサギ「だからそうイライラしなさんなって、いつもの事でしょー?死ぬまでには来るって。心配いらねーいらねー」

ハートの女王「数々の魔法具を手に入れて邪魔なおとぎ話を消してこれからが大事だという時に…!奴は主人公だというのに約束の時間も守れんのか!」バンッ

帽子屋「あーらぁ?でも女王様がいらしたのだってつい五分前じゃな~いのっ!アリスちゃんだけ責めるなんて、アタシは感心しないわねぇ~!」ブホホ

ハートの女王「我は女王、他人に指図をするが他人が我に指図をする事は認めぬ。逆らうならば首を刎ねるだけよ」

三月ウサギ「で、でたぁー!女王の『首を刎ねる』頂きましたぁー!」ヘラヘラ

帽子屋「あらやだぁ!女王様が首を刎ねるって言うのこの五分間でもう九回目よぉ?もう口癖ってレベルじゃないわよそれぇ!」ブホホ

ハートの女王「ヘラヘラとしおって…我を愚弄するのならば貴様らの

三月ウサギ帽子屋「「首を刎ねるぞ!!」」ヘラヘラ ブホホ

ハートの女王「キチガイ共が…!貴様等がアリスに協力的でなければとおの昔に首を刎ねているというのに!」フンッ

三月ウサギ「まぁまぁ、仲良くしようぜ女王ー!俺も帽子屋もふざけてばっかりに見えるかもしれねぇけどさぁ、アリスに協力するって気持ちに嘘偽りは無いぜ?なぁ?」

帽子屋「もちろんよぉ~?なんだかんだアリスちゃんの事、みんな大好きですものね!それにここはずぅーっとお茶の時間で時が止まってるんですもの、時間を気にする方が野暮ってものよぉ?」クネクネ

ハートの女王「まぁ、良い。アリスの願いが叶い、全ての件が落ち着いたときは改めて貴様等の無礼を追及してその時こそ首を刎ねてやろう」フンッ

53 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/21 23:46:43 6Ma 26/405

白ウサギ「みなさん申し訳ありませんー!私がついて居ながら大遅刻をしてしまうなんて…なんてお詫びをしていいやら!」トコトコトコ

三月ウサギ「おっ、来た来た!アリスー、俺の隣開いてるぜー!」

帽子屋「お久しぶりねぇ、アリスちゃん!アタシが溢れる女子力で焼いたマカロンあるわよぉ~」ブホホ

アリス「やぁ、みんなお待たせ。さぁお茶会を始めようか」

ハートの女王「アリス!貴様、我をこれほど待たせておいて謝罪の一つもないとは…それほどまでに首を刎ねられたいか!」バンッ

アリス「女王、そんなに怒鳴ってはせっかくの美しくて若々しい姿が台無しだ。でも海底の魔女に作らせた薬が利いているようで良かったよ」フフッ

ハートの女王「我の話をはぐらかすとは……まぁ、良い。あの魔女に作らせた薬は素晴らしい物だ、おかげで我も若き日の美しき姿を取り戻す事ができたからな」

三月ウサギ「魔法ってのはすげぇけど完全に詐欺だよなぁー?すげぇ美人で乳もデケェし腹もへこんでるし見た目は言う事ねぇのに中身はヒステリックなババァだからなー」

帽子屋「いえてるぅー!どれだけ美しいワイングラスでも、注がれているのが汚水じゃあどうしようもないものね!ぶほほっ!」

ハートの女王「もう我慢できぬ!アリス!二人ほど協力者が減ってしまうが問題無かろう?こいつ等の首はここで刎ねておかねばますます付け上がる!」

アリス「落ち着きなよ女王、彼等はボクの大切な仲間なんだから。もちろん女王もね」

帽子屋「あらぁ?アリスちゃん間違ってるわよ?『彼等』じゃなくて『彼と彼女は』っていうのが正解じゃない?心は乙女なのよ?アタシ」ブホホ

三月ウサギ「なぁーにが乙女だよ!身体はおっさんじゃねぇか!」ヘラヘラ

帽子屋「やぁーだぁー!身体がおっさんでも乙女の心を持っていればそれはもう女の子なのよっ!ねぇ、アリスちゃんもそう思うでしょぉ?」

アリス「フフッ、そうかもしれないな。次から気を付けるよ帽子屋」クスクス

ハートの女王「…まったく、貴様等にはついていけぬ。アリス、本題に入れ!早々に茶会を始めるとしよう、怒鳴りすぎて喉が乾いてしまったのだ」

54 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/21 23:48:40 6Ma 27/405

アリス「お茶を飲みながら出構わないから現状の報告をしてもらおうか。三月ウサギ、キミの担当から頼む」

三月ウサギ「うーっす。俺の担当は知っての通り、アリスが不在の【不思議の国のアリス】の物語が問題なく進んでるか監視する事だ」

三月ウサギ「結論から言っちまうと、特に問題は無いぜ。今頃、代用ウミガメやらグリフォンと話でもしてるだろうから…この様子ならもう少しで結末を迎えそうだ」

帽子屋「じゃああの代役のコはうまくやってるのねぇ…アタシ少し心配だったのよ?アリスちゃんったら大切な主人公の役を、あーんな田舎の娘に任せちゃうんだからっ!」

ハートの女王「確か……結末を迎えていないおとぎ話は現実世界の人間に忘れ去られるか、本来の物語から大きく筋がずれてしまうと消えてしまうのだったな?」

三月ウサギ「そうそう!主人公が不在じゃあおとぎ話は成立しないから、主人公がいなければおとぎ話は消滅する。つまりアリスが自由にあちこち行くには代役を置く必要があんだよ。俺が監視してんのがアリスの代役の…」

アリス「ミチルだ、おとぎ話【青い鳥】の主人公兄妹の一人。彼女もまた私と同じでおとぎ話の主人公なんだから、そうそうトラブルを引き起こしたりしないさ」

帽子屋「逆らったり失敗でもしちゃったら大切なお兄ちゃんが殺されちゃうものねぇ!お兄ちゃんの為に必死に頑張ってる女の子って可愛いわよねぇっ!」ブホホ

ハートの女王「ミチルを従わせる為に兄のチルチルを我が城の牢に閉じ込めているのだったな、相変わらず手段を選ばぬ奴だ、アリス」

アリス「願いをかなえる為にはボクは自由に動けなければいけない。代役を立てるとなった時、一番手ごろだったのが彼女だっただけさ」

三月ウサギ「まぁ、ミチルは従順にアリスを演じてるから安心してくれ。なにかありゃあすぐにでも報告を寄越すからよ」

アリス「頼むよ、現時点ではこの世界の消滅の心配は無いという事だな」

帽子屋「あらぁ、素敵じゃなーい?計画は順調って事だものねっ!それじゃあ今度はアタシが報告しちゃおうかしらっ!」ブホホ

55 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/21 23:52:03 6Ma 28/405


帽子屋「アタシの担当はモチロン、魔法具の管理よ~ん♪」ブホホ

アリス「頼んでいた魔法具のリストは完成したかい?それぞれの魔法具がどれほどの魔力を帯びているか…それをまとめてくれと頼んでいたはずだけど」

帽子屋「モチのロンよアリスちゃんっ!アタシ頑張っちゃったんだからっ、はいこれ資料ねっ!」スッ

アリス「ああ、ありがとう」スッ

三月ウサギ「おいおい、どんなゴミ渡したのかと思ったらキッチリまとめてるじゃねぇか!バターのシミ一つねぇし!キチガイの名を冠する帽子屋がなに真面目にやってんだよ!」

帽子屋「あらヤダ、仕事はきっちりこなすわよ。三月ウサギはアタシをなんだと思ってるのかしらねぇ?狂っていてもアタシは商売人なのっ、数字の扱いは慣れたものよっ!」

アリス「キミに任せて正解だったよ、随分と見易い」

ハートの女王「だが…以前アリスが算出した【アラジンと魔法のランプ】の結界を破るのに必要な魔力には届いていないな」

帽子屋「そうなのよぉ!でもアタシ気がついたのっ!例えば世界移動が可能なチルチルの帽子とか幻覚を見せるマッチとかはねぇ、便利なのはいいけれど魔力の量は比較的そこそこなのね?」

帽子屋「でもぉ、ほらっ!ここ見て頂戴、以前アリスちゃんが探し出してきてくれた魔法具、蓬莱の珠の枝の魔力値っ!すっごくおっきぃでしょぉ?」

アリス「本当だ、他の魔法具の数倍はある。蓬莱の枝自体は見た目の美しさ意外に特別な力は無いというのに」

ハートの女王「不思議な能力が無い分、純粋な魔力値が高いのではないのか?」

アリス「どうせなら不思議な力を持つ魔法具の方が戦いにも使えるからと思って優先していたけれど、それが裏目に出てしまったんだね」

帽子屋「そうなのよぉ~!だからさ、悪いんだけど魔力を帯びてるだけの魔法具を見繕ってほしいわけ、そうすればより速く結界を壊せると思うのよねぇっ!」

三月ウサギ「でもそんなもん一口に言ってもよぉ、どの魔法具がそうなのかわかりゃしねぇぜ?」

ハートの女王「確か蓬莱の珠の枝というと、あるおとぎ話の登場する世にも珍しい五つの宝の一つではなかったか?ならば残りの四つの宝も魔力が高い物だと考えていいだろう、確かそのおとぎ話の名は……」

アリス「【かぐや姫】だね、主人公のかぐや姫が求婚者に持ってくるよう命じた世にも珍しい五つの宝…その一つが蓬莱の珠の枝だ」

57 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/21 23:55:56 6Ma 29/405

帽子屋「確か、どれも存在するかどうか怪しい程の宝だったのよねぇ?そんなものを要求するなんて相当な悪女よねぇかぐや姫っ!アタシとおーんなじ」ブホホ

三月ウサギ「五つの宝があるって言ってたけどよ、ひとつは蓬莱の珠の枝として…あと四つはなんて魔法具なんだ?」

アリス「根は銀、枝は黄金、身は真珠で出来ている蓬莱の珠の枝。天竺にあるとされている仏の御石の鉢。炎にくべても決して燃える事の無い火鼠の皮衣。龍が所有しているという美しい龍玉。それと…燕の生んだ子安貝だ。それに火鼠の皮衣は手に入れている」

ハートの女王「聞けば聞くほど無茶な要求をしたものだな、かぐやという娘は」

帽子屋「そうよねぇ?燕が生んだ子安貝なんて、現実的に無理なのにそれでも愛した女の為に危険を冒して探しちゃう…男ってホント単純でそれでいて純粋よねぇ~」ブホホ

アリス「燕の生んだ子安貝を持ってくるように命じられた男は、結局その時の怪我が原因で死んでしまうけれどね」

ハートの女王「愛した女の願いの為に死ねたのならば、それもまた本望だろう」

三月ウサギ「ちょーっと待て待て!なに恋バナみたいな雰囲気になってんだよ!そういうのは女子会でも開いてそこでやれよ」

帽子屋「あらっ、良いわねぇ!女子会、今度やりましょうよぉ~」ブホホ

ハートの女王「貴様は帽子屋だというのに鏡のひとつも持たぬのか?一度その姿を鏡に映してみると良いだろう」フンッ

帽子屋「やぁだぁ女王様ったら!鏡くらいもってるわよぉ!でもいつ見ても絶世の美女がそこに立っているだけなのよぉ~!」ブホホ

ハートの女王「……三月ウサギ、紅茶のおかわりを注げ」コポポ

帽子屋「あらぁ~?女王様ほどの女性に嫉妬されちゃうなんて女冥利に尽きちゃうわねっ!ぶほほほっ」

アリス「…とにかく、時間を見つけて【かぐや姫】の世界に向かう事にするよ。元々、その宝物には目を付けていたから消滅させずに放置しているしね」

58 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/21 23:59:00 6Ma 30/405


アリス「あとは人質の管理を頼んでいる女王から話を聞いておきたい、頼めるかな?」

ハートの女王「良いだろう、その為に出向いたのだから。我の担当とは言うが、女王はその様な雑務はせぬものだ。実際は私の部下に任せている、ハートのキングとハートのジャックにな」

帽子屋「あらっ、王様は相変わらず尻に敷かれているのねぇ~」ブホホホ

ハートの女王「当然だ。そんな事よりも本題に入るが……」

三月ウサギ「あっ、わりぃけどちょっと待って、誰かがこっちに向かってくる足音が聞こえる」

ザッザッザッ

ハートの女王「足音だと?そんな些細なことで我の話を遮るなど、貴様首を刎ねられたいのか!?」ガタッ

ザッ

ブリキ「……」ズシッ

帽子屋「あらっ、ドロシーちゃんのお友達のブリキちゃんじゃないのぉ~。みんなで魔法具収集に行ったはずでしょお?それとももう終わったのかしら?」ブホホ

ハートの女王「誰かと思えば貴様か、足音の正体もわかったのだ。我は話を続けるぞ」

アリス「……ちょっと待って女王。その前に、どうやら彼はボクに話があるみたいだ」フフッ

ブリキ「…アリス」

アリス「なにかな、ブリキ。今日はドロシーやかかしとライオンとは一緒じゃないのかい?」

ブリキ「…その件で話がある。ここでは何だ、俺と共に来てもらう」

59 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/22 00:00:23 rtm 31/405

白ウサギ「ちょ、ちょっと待ってくださいブリキさん!アリスさんは今、みなさんと大切な話し合いをしているところd」

ヒュッ ゴシャアアァァ!!

白ウサギ「ひっ…!て、テーブルが…!」

ブリキ「俺の話の方が優先度が高い。後にしろ、白ウサギ。あるいはこのテーブルのようになりたいのか?」ギロッ

三月ネズミ「っていうか俺のテーブルがああぁぁ!?お前、なんてことするんだよお前!」

ハートの女王「ブリキ!貴様の癇癪のせいで私のティーセットはめちゃくちゃではないか、償いとして割れたカップやらの始末はお前がせよ!断るならば首を刎ねるぞ!」バッ

帽子屋「まぁまぁ女王様落ち着きましょっ?席をひとつずれれば問題ないわよ~っ?でもブリキちゃん、今のは少し感じ悪いわよぉ?」

ブリキ「俺はお前等に愛想を振りまく為にこの世界に居るわけじゃない」

アリス「ほらほら、みんな喧嘩をするのはやめよう。お茶会は楽しくやるものだ」

ブリキ「…おい、アリス」

アリス「わかっているよ、ボクもキミたち一行には話さないといけない事がある。付き合うとするよ」

白ウサギ「で、ですけどアリスさん!」

アリス「心配いらないよ、彼らと少し話をするだけだから。悪いけれど会議は中断だ、すぐに戻ってくるから少し休憩しているといい」

ブリキ「すぐ帰れると思っているのか?俺達が納得のいく回答をお前が出すまで、俺はお前を解放する気は無いぞ」

アリス「キミにそのつもりが無くても、僕が話を終わらせたければ終わらせる。キミに合わせるつもりは無いよ」


アリス「さぁ、行こうじゃないか。話したい事っていうのは大方…ドロシーの事だろう?」クスクス

60 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/22 00:01:27 rtm 32/405

今日はここまでです

ここまでに出たおとぎ話紹介
【シンデレラ】
お姫様が登場するおとぎ話の代名詞ともいえる有名作。
召使い同然の扱いを受けていた娘が魔法使いの協力を得て王子の妃探しの舞踏会へ向かうと言うおとぎ話。詳細は一冊目をどうぞ。
いくつかのバージョンが存在するけどこのssの【シンデレラ】はガラスの靴とカボチャの馬車が登場する日本で一般的なタイプのペロー版です。

このssでは結婚相手の王子が王位を継承した為シンデレラも王妃となっています。
【マッチ売りの少女】の一件と自分自身の境遇から弱い者の立場を考えられるシンデレラは貧しい民衆や孤児への支援協力を積極的に行っており、その信頼は厚いようです。
ただ七冊目でも触れたように【シンデレラ】の世界では『ただの街娘なのにうまいこと王族になった娘が居る』という前例ができた為、玉の輿狙いの女性が急増
婚活女子の間で神格化されているのが近頃の悩みのようです。


かぐや姫とオズの魔法使い編 次回に続きます

82 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/25 23:51:08 pgu 33/405

オズの魔法使い

カンザスという地方にひとつの農家がありました。そこにはドロシーという少女が伯父さんと叔母さんそして愛犬のトトと一緒に暮らしていました。
ある日、ドロシーの家は大きな竜巻に巻き込まれてしまいドロシーとトトはカンザスから遠く離れたオズの国に飛ばされてしまいました。

オズの国に飛ばされた家は偶然にもそこに住む小人を支配していた悪い魔女の上にドスンと落ち、魔女は家の下敷きになって死んでしまいました
悪い魔女から解放された小人たちは大喜び、結果的に魔女を倒したドロシーはとても感謝されました。けれどドロシーはカンザスへ帰りたがっていました、伯父さんと叔母さんが心配していると思ったからです
しかし、オズの国から余所へ向かうにはとても厳しい砂漠を越えて行かなければならず、陸を進んでカンザスまで帰るのはとても無理でした。
そこでエメラルドの都に住むという大魔法使いのオズに出会い、カンザスへと帰る方法を教えて貰う事にしたのです。
ドロシーは悪い魔法使いの持っていた魔法の靴を履いて、トトと一緒にエメラルドの都を目指すのでした。

旅の途中、ドロシーとトトは一体のかかしに出会いました
かかしは毎日毎日鳥達を追い払う日々に退屈していたので、ドロシーはかかしの支え棒をひっこ抜いて自由にしてあげました
かかしは言います「僕の頭には藁が詰まっているだけでものを知らないからいつもカラスに馬鹿にされるんだ、オズに頼めば脳みそを入れてもらえるかな?」
ドロシーは「大魔法使いのオズならそんなことはきっと簡単よ」と答え、一緒にエメラルドの都へと進む事にしました

しばらくしてドロシーとトト、かかしは斧を振り上げたまま止まっているブリキのきこりに出会いました
ブリキは雨にうたれたせいで錆びついて動く事が出来なくなっていたので、ドロシーはブリキの関節に油をさして動けるようにしてあげました
ブリキは言います「僕はブリキの身体だけど、昔は心を持った人間だった。だけどこのブリキの身体になる時に心を失ってしまった。オズに出会えば僕はもう一度心を手に入れられるだろうか?」
ドロシーは「私をカンザスに帰してかかしに脳みそを与えてくれるオズならそんなことは簡単よ」と答え、一緒にエメラルドの都へと進む事にしました

次にドロシーとトト、かかしとブリキが出会ったのは一匹のライオンでした
ライオンは大きな声で吠えながらドロシー達に襲いかかりましたが、愛犬のトトを食べられそうになりドロシーはライオンを叱りつけました。
ライオンは怯えながら言います「僕はライオンだけれどとても臆病なんだ。だからいつも大声で吠えて強いフリをしているんだ、オズさんに出会えば僕にも勇気をくれるかな?」
ドロシーは「私達はみんなオズに願いを叶えて貰いに行くの、あなたの願いも簡単よ」と答え、一緒にエメラルドの都へと進む事にしました

ドロシー達はエメラルドの都へたどり着きオズに謁見しました。オズは悪い魔女を退治してくれたら願いをかなえてやると約束してくれました
魔女を退治するなんてとても大変な事でしたが、ドロシーとトト、かかし、ブリキのきこり、ライオンはそれぞれ力を合わせて魔女を退治しました

しかし、その事をオズに報告すると願いをかなえると言ったオズは言葉を濁します。実はオズは大魔法使いでも何でもないただのペテン師で、ドロシー達の願いを叶える魔法など使えなかったのです。
ドロシー達はがっかりしましたがオズは言います。
かかしはみんなの為に知恵を使って旅を乗り越えた、ブリキは仲間を想う優しい心を持っている、ライオンは敵に立ち向かう勇気を持っている。キミ達の願いはもう叶っているんだよ、と。
願いが叶ったと知った一行は喜びました。カンザスへ帰りたいというドロシーに、オズは気球を用意してくれました。しかし気球が飛び立つ寸前、ドロシーは乗り遅れてしまいました。
そこに良い魔女が現れ、その魔法の靴の踵を打ちならせばあなたはカンザスへと帰る事が出来ると教えてくれたのです

ドロシーは旅を共にした仲間達に別れを告げると魔法の靴を打ちならし、伯父さんと叔母さんの待つカンザスへと帰る事が出来ました。

おしまい

83 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/25 23:53:55 pgu 34/405

不思議の国のアリスの世界 ハートの女王の城へ続く道

アリス「どこに連れて行かれるかと思ったけれど、この道を進んでるって事は目的地はハートの女王の城かな?」

ブリキ「…そうだ、城には俺達が間借りしている部屋がある。かかしとライオンが俺の部屋で傷の手当てをしながら待っている」

アリス「かかしとライオンはいいけど、ドロシーはどうしたんだい?頭数に入っていないようだけど」

ブリキ「……」

アリス「ドロシーには内緒なのかな?キミ達は厳しい旅を共にした仲間だというのに、一人仲間はずれなんて可哀そうじゃないか」クスクス

ブリキ「…あいつには聞かせられない話だ」

アリス「あぁ…もしかして、ブリキはまだあの事をドロシーに話していないのか?」

ブリキ「話せるわけがないだろう。かかしにもライオンにも隠している、だがこの二人にはこの後打ち明けるつもりだ。もう隠しきれない」

アリス「まぁ、そうだろうね。それにしてもドロシーは元々争いなんか望まない優しい性格の娘だから、こんな戦いに身を投じていなければずっと平和な生活が送れただろうに」クスクス

ブリキ「お前がそれを言うのか…!ドロシーを戦いに引き込んだのはお前だろう…!」ギロッ

アリス「フフッ、確かに彼女を戦いの場に引き込んだのはボクだ。世界移動もできる強力な魔法の靴を持っている彼女は協力者として適役だったからね」

アリス「だけど、彼女がおとぎ話を襲う事をキミは止めないじゃないか。原因はボクだけど、ドロシーを止める事もせず戦いを続けさせているのはキミだろう?」

84 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/25 23:57:10 pgu 35/405

アリス「彼等は驚くんじゃないか?本当は優しいドロシーが好戦的になって戦っている原因が薬。しかもそれを飲ませているのがキミだと知ったら…まずいんじゃないか?」クスクス

ブリキ「構わない。覚悟の上での行動だ、二人に糾弾されようと構わない。これは俺の罪だ」

アリス「キミは難儀な性格をしているよ。キミの行動は一見彼らへの裏切りに見える、だけどその本質はドロシーの為だ。ドロシーの幸せを願うあまり、キミは彼女に戦いを強いている」クスクス

ブリキ「…ドロシーが苦しまないためには、これが現状で出来る一番の対応だ」

アリス「確かに、キミにはドロシーに戦いを続けさせること以外に他に方法が無かったかもしれないね」

ブリキ「事実、こうするしかなかった。この選択が悪手だと解っていても…結局はただの結論の先延ばしにすぎなくても…な」

アリス「キミの選択は博打が過ぎると思うよ」

アリス「キミならばいつでもドロシーを戦いから遠ざける事ができた。彼女に争いの無い平和な生活を送らせる事のできるチャンスは今までに何度もあったよ」

アリス「でもキミはあえてそうしなかった、薬を飲ませてまでドロシーの性格を捻じ曲げて…そのうえかかしとライオンにその事を隠して…ドロシーに戦いを強いる」

アリス「キミはボクに非があるように言うけれど、ドロシーを今までずっと戦いの場に留まらせたのは他でも無いキミだろう、ブリキ」

ブリキ「否定はしない。あいつ等に糾弾されても構わないとさっき言っただろう。俺はどうなってもかまわない、だがドロシーを悲しませないためにはやむを得ない事だ」

アリス「まぁ、ボクはなんだってかまわないよ。さぁそろそろ城だ、かかしとライオンに真実を告げる覚悟をそろそろしておいた方がいいんじゃないかな?」

85 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/26 00:01:51 RAx 36/405

ハートの女王の城 客間(ブリキの部屋)

ライオン「えぇーっ!?ドロシーちゃんが今みたいな性格になっているのって薬のせいだったの!?」

ブリキ「そうだ。俺が飲ませていたあの薬はドロシーの本来の性格を捻じ曲げて、今のような好戦的な性格にしてしまう薬だ」

かかし「いや、待て待テ!お前は以前あの薬はドロシーがオズの国で感染した病気を抑える為の薬だと言ったゾ?あれは嘘だったのカ!?」バッ

ブリキ「嘘だ。ドロシーは病気に感染なんかしていないし、あの薬にそんな効能は無い。服用した人間の性格を捻じ曲げるだけだ」

ライオン「えっ、ちょっちょ…ちょっと待ってよ!?なんで?なんでそんな事しちゃったの!?」

かかし「お前はこうも言っていタ。優しかったドロシーが好戦的になったのはオズに騙されたからだト、騙された俺達を想うあまり好戦的になったんだろうト…あれも嘘カ?」

ブリキ「…そうだ」

ライオン「な、なんでそんな事するの!?ぼ、ぼくは前の優しいドロシーちゃんの方が好きだったよ…い、いまのドロシーちゃんも好きだけど…でも、今のドロシーちゃんは時々恐いよ…」

かかし「同感だナ。それでも仲間が詐欺にあっテ、人間不信から性格が荒れてしまったならやむを得なイ。長い時間をかけて改善していこうとおもって居たガ……それも偽りだったわけか」

ブリキ「…黙っていて、すまない」

アリス「フフッ、思った通りのリアクションだ。さぁ、どうするブリキ?このままだとキミはただの裏切り者だ」クスクス

ブリキ「……」

86 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/26 00:03:48 RAx 37/405

ブリキ「……アリスが言うように俺はお前達にとって裏切り者だ、そのことを言い訳するつもりなんか無い」

ライオンかかし「……」

ブリキ「……糾弾してくれて構わない。二人から優しいドロシーを奪ったのは俺だ」

ライオン「ち、ちがうよブリキ!僕達は、その、糾弾なんか…ねっ!僕達が聞きたいのはごめんっていう言葉とかそうじゃなくて…なんでそんなことしたのかって事だよ!」

かかし「……理由を聞かせロ。お前が自分の利益の為にドロシーを利用するわけがなイ、何か理由があるんだろウ。お前がドロシーの性格を捻じ曲げなければならなかった理由、それを聞かせロ」

ブリキ「…結論から言うならば、ドロシーを苦しめない為。ドロシーを護るためだ」

ライオン「ど、ドロシーちゃんを護るため…?で、でも好戦的になっちゃったドロシーちゃんはいろんなおとぎ話を壊して…む、むしろ前より危ない目にあってるよ!?」

かかし「ライオン、ブリキの話を聞こウ。おイ、続けてくレ。何故、その行動がドロシーを護る事につながル?」

ブリキ「話すと長くなってしまうが、わかり易くて確実な事を一つ上げるのなら…今まで散々協力してきたアリスは俺達の味方じゃないって事だ」

アリス「ブリキは本人を目の前にそんな事が良く言えるね。いくらボクでも少し傷付くよ」クスクス

ライオン「そ、そうだよブリキ!ひどいよ、アリスちゃんは僕達やドロシーちゃんの友達だよ?そ、それを悪く言うなんて…」

ブリキ「ひどいというのはこいつみたいなやつに使う言葉だ。アリスは俺達を利用していただけなんだ、ライオン」

かかし「利用、ねェ…」

ブリキ「一番最初にドロシーにこの薬を使っていたのは俺じゃない、このアリスの方だ」

87 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/26 00:05:49 RAx 38/405

ブリキ「知ってのとおり、アリスには現実世界を消すという目的がある。その為には数多くの魔法具が必要だ…その点【オズの魔法使い】の俺達は利用しやすかったんだろう」

ライオン「え、えぇっ!?それってどういう…」

かかし「ドロシーの魔法の靴は相当な魔力を含ム。悪い魔女の呪いを受けたブリキモ、かかしなのに自我を持つ俺モ、魔力を帯びてるって点では魔法具と変わらなイ。それに俺達はドロシー以外最低限の戦闘が可能ダ」

かかし「欲しい魔力モ、戦いに必要な戦力も一度に手に入ル。その上、俺達とドロシーの絆をうまく利用すれバ…意のままに動かす事だって出来ル」

アリス「フフッ、かかしは相変わらず察しが良いね。オズが言っていた通り持ってるじゃないか、脳みそ」クスクス

かかし「否定しないって事は俺の予想がそのまま真実だって考えてもいいんだナ?」

アリス「ああ、構わないよ。僕はキミ達を利用する為に近づいたんだ、思ったよりもずっと役に立ってくれてボクは嬉しい」クスクス

かかし「…ブリキ、そしてお前はその事を知っていタ。その上でアリスに利用される事を選んだって訳だナ?」

ブリキ「ああ、そうだ。それが現状できる最善の手段だと思ったからだ」

ライオン「ちょ、ちょっとまって!アリスちゃんが僕達の事を利用してたなんて信じられないし、あの、その、え、えっと…なんでブリキはその事を知っていたのに僕達に黙っていたの?あ、あの言ってくれも良かったんじゃないかな…?」

ブリキ「アリスに従っていなければ薬を手に入れる事は出来ないからだ」

ライオン「で、でもその薬って…性格を変えちゃうだけの…」

アリス「薬と言っても、正確にはそんな大層なものじゃないけれどね」

アリス「【不思議の国のアリス】の世界の笑顔になるキャンディと不機嫌になるコショウ、ただそれを砕いただけの代物だ。それでも一度に摂取する量が結構なものだからね、精神に与える影響は計り知れない」

アリス「フフッ、それにしても興味深いね。ボクもあんな風な性格になる事は予想できなかった。笑顔と快楽が憎悪と怒りと混ざり合えば、ああなってしまうんだね」クスクス

88 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/26 00:08:41 RAx 39/405

かかし「こいツ……ッ!」グッ

ブリキ「やめろ、かかし。ここは抑えてくれ…頼む」

かかし「……いいだろウ、こいつを今すぐにでもぶん殴ってやりたいガ…お前がそういうのならナ」

ブリキ「さっきも言ったが、ドロシーに最初に薬を使ったのはアリスだ」

ブリキ「だから俺が気が付いたときにはもう、ドロシーはあの好戦的な性格になってしまっていて。既にいくつも世界を消して……何人もの人間を殺していた」

かかし「なるほどナ、気が付いたときにはもうドロシーは引き返せない場所に居た訳カ……」

ブリキ「ライオンもかかしもドロシーが本当はどんな奴だったか知ってるだろ。あいつは優しくて気が弱いところもある癖に仲間の為には危機にも立ち向かう勇気もある」

ライオン「う、うん。ドロシーちゃんは初めてあった時、みんなに襲いかかった僕の事を叱ってくれた…あの時は僕の事臆病なライオンだなんて知らなかったのに、仲間の為に猛獣の僕に立ち向かったんだ…」

ブリキ「だが基本的にはただの女の子だ、それに争いを好む奴じゃない。そんな奴が、自分の知らないところでいくつもの世界を滅ぼして数え切れないほどの殺人まで犯したと知ったらどうなる?」

かかし「想像したくも無いナ…あいつの笑顔が曇る事は確実ダ」

アリス「フフッ、だが都合のいい事にドロシーは好戦的な性格の時の自分の行動は全て夢だと信じている。まぁ、まさか自分の性格が魔法によって捻じ曲げられてやりたい放題してるなんて思わないから当然と言えば当然だ」

ライオン「じゃ、じゃああまり長い間元の性格に戻っちゃってたらいつかは真実を知っちゃうかもって事だね……も、もしも真実を知っちゃったらドロシーちゃんは……」

かかし「…それは避けたいところだナ」

ブリキ「だが一つだけ手段がある、薬が利いている好戦的な性格のままならば…ドロシーが真実を知る事は無い。ずっと悪夢だと思い続けるだけだ」

ブリキ「絶えず薬を飲ませ、常に好戦的なドロシーでいさせれば…あいつが傷付く事も悩む事もない、だから俺はそれを選んだ」

89 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/26 00:10:54 RAx 40/405

かかし「だがそれはその場しのぎでしかないゾ、根本の解決にはならなイ」

ブリキ「わかってる。そうやって時間を稼いでいるうちに状況を打破する魔法具が手に入ればいいと思っていた。願いが叶う魔法具や、記憶を消す魔法具を」

アリス「でも見つからない、そううまくはいかないさ」クスクス

ライオン「そ、それにドロシーちゃんを護るためだからって言ってもそれって他のおとぎ話を犠牲にしてたくさんの人をドロシーちゃんが傷付け続けるってことだよね…?そ、それって、よくないよ…」

かかし「それに尽きるナ、今までやってきた事も償って償いきれるもんじゃねェ…まァ、俺はそれなりの覚悟でやってきたガ…それでも褒められたもんじゃあねぇヨ」

ブリキ「…俺は他のおとぎ話を犠牲にしてでもドロシーに辛い思いをさせたくなかった。それほど、俺の中であいつは大切な存在」

ブリキ「【オズの魔法使い】で俺を変えてくれたのは俺自身でもなければオズでもない、ドロシーだからだ」

ブリキ「何を犠牲にしてでも、俺はドロシーを苦しめたくない…それがどんなに自分勝手で周囲を顧みない行為だとしてもだ」

かかしライオン「……」

ブリキ「とはいえ俺の選択は無関係の連中を巻き込む。だからお前達には言わなかった。言えば、共犯になる。この事で他のおとぎ話の連中に恨まれても狙われても実行犯が俺だけならば、ドロシーやお前達は見逃して貰えるかもしれない」

ブリキ「心優しいドロシーやかかしやライオンと違って俺には心が無い。だからこんな卑劣な事だって平然と出来る」

ブリキ「誰に責められても苦しむ心を持っていない、どんなに攻められてもブリキの身体なら生身よりは多少何とかなる…この役目を負うのは俺が適任だ」

かかし「ブリキ、お前って奴ハ……」

ライオン「こ、心が無いなんて嘘ばっかりだよ。ドロシーちゃんや僕等をを大切に思ってるから自分ひとりで抱えようとしてるだよ…も、もっと早く相談してくれればいいのに」




アリス「だけど、もうそんな事も言っていられなくなった……そうだろう?」

ブリキ「……」

90 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/26 00:12:55 RAx 41/405

ブリキ「…ああ、だから二人にも打ち明けた」

ブリキ「ドロシーに薬を飲ませ続けているうちに…次第に効きが悪くなっていった。効果が持続している時間が毎回少しずつ短くなっていった」

ブリキ「遂には【人魚姫】や【青ひげ】の世界では、戦いの最中に薬の効果が切れて本当の性格のドロシーが表れてしまった」

アリス「フフッ、何度も使っているうちに身体が慣れてしまったんだろう。ボクは専門じゃないからわからないけれど常態的に使うべきじゃなかったんだろうね」

ブリキ「…だが、今更ドロシーに真実を告げるなんて事は絶対に出来ない」

かかし「そうだナ…こうなったら状況を打破できる魔法具を探すしかないだろウ」

ブリキ「アリス、俺がお前を攻撃しないのはそういう訳だ。その代わり、願いを叶える魔法具や記憶を消す魔法具が手に入ったらこっちに廻してもらう」

アリス「なるほど、キミ達は僕が敵だと解っている…でもドロシーの為にボクに利用され続ける事を選択したわけだ。思い切った選択だね」

ブリキ「言っただろう、何を犠牲にしてもあいつに辛い思いはさせたくない」

アリス「だけどかかしとライオンはどうかな、キミと同じ考えでいてくれるだろうか」フフッ

かかし「依存は無イ、ブリキ一人に罪を着せてどうするってんダ。俺も同じ考えダ」

ライオン「ぼ、僕は正直に言うと、なんていうか恐いけど…でも、ブリキやかかしが良いって言うならきっと大丈夫だから…」

アリス「大切な仲間の為とはいえ、その上利用されている事をわかった上でボクにつくなんてね」クスクス

アリス「フフッ、キミ達は相当に難儀な性格をしているよ」クスクス

91 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/26 00:14:36 RAx 42/405

ブリキ「とにかくだ、この事はドロシーには絶対に秘密だ。あいつに真実を知られる事は絶対に避ける」

ブリキ「俺達はドロシーが苦しまずに元の性格に戻れる方法を探す、そのためにはなりふり構っていられない。今まで通りアリスには従う、だからアリス、お前は今まで通り薬も戦闘に必要な魔法具も手配してもらう」

アリス「…待って、何か物音が聞こえた」スッ

ガッシャーン!!

ライオン「う、うわあぁぁあぁ!?な、なんなの今の音!?恐い怖い怖いっ!」ビクッ

アリス「噂をすれば…だな。今の音、ドロシーの部屋の方からじゃないか?」

ブリキ「かかし!ドロシーは一人のはずだな!?」バッ

かかし「あァ!【青ひげ】の世界で相当混乱してたからな、部屋で休むって言ってたゾ!」

ブリキ「アリス!お前、ドロシーに手を出すよう誰かに命じたりしていないな?」ギロッ

アリス「そう睨むなよブリキ、ボクに従うんじゃなかったのかい?どちらにしろボクはドロシーになにもしていない、無関係さ」

ライオン「は、はやくドロシーちゃんの所へ急ごうよ…!なにがあったのか、わ、わからないけど…でも何かあった事は確かだよ」オロオロ

ブリキ「その通りだ、ドロシーの部屋へ急ぐぞ。アリス、お前にも来てもらおう」

アリス「やれやれ、ボクはお茶会に戻りたいんだけどな。仕方ない、ドロシーにもあっておきたいし丁度良いか」スッ

92 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/26 00:17:02 RAx 43/405

ハートの女王の部屋 客間(ドロシーの部屋)

バタバタバタッ

かかし「クソッ!鍵がかかってやがル!」ガチャガチャ

ライオン「ドロシーちゃん!僕達だよっ、と、扉を開けて欲しいな…」

ガタガタガタッ ガシャーンッ!

アリス「そんな悠長にしている場合かな?穏やかじゃない物音が聞こえるけど」

ブリキ「どいていてくれ、俺が扉をぶち破る…!」グググッ

バーンッ

ブリキ「ドロシー!何が起きた!?」バーンッ

ライオン「う、うわぁあ!?な、なんなのこれ…!?ゆ、床じゅうが血だらけだよ!?」ビクビク

かかし「誰か倒れているゾ!?あの髪の色はドロシーじゃなイ、おイ!あんた何者なんダ!」

新妻「……ゲホゲホッ、あぁ…!た、助けてください……あの娘さんが……私達を……」ゲホゲホ

ドロシー「あっれー?みんなそろってどーしたのん?もしかしてドロシーちゃんの事が心配で来ちゃった感じ?でもごめーんね!こいつ隙を見て逃げようとしたからさ、先に始末するよ~」ヘラヘラ

新妻「あ、あぁ…!や、やめてください……!私は、に、逃げたわけじゃ……!」

ドロシー「魔法の靴を履いてる私から逃げられるわけないじゃーん!せっかく頭が付いてて脳みそあってもそんな事も考えつかない頭なら、いらないよねぇ?」ヘラヘラ

新妻「や、やめてくだs」

ガッ グシャッ

ライオン「あぁぁ……あわわわわっ!あ、あの人……あ、頭が……!」

ドロシー「うっわ…靴汚れちゃったー……あぁ、かかしー!ちょーっと踏みつけちゃったけど脳みそいるー?でもあんまり出来が良い脳みそじゃないみたいだけど」ヘラヘラ

93 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/26 00:19:21 RAx 44/405

アリス「ブリキ、彼女も持っていたみたいだね。薬」フフッ

ブリキ「…なんてことだ、目を離したすきに一人で【青ひげ】の世界へ戻ったのか、さっきの仕返しでもする為か…」ギギッ

ドロシー「ねぇねぇどうなのよ、かかしー?」

かかし「……いヤ、必要無イ」

ドロシー「そっかー、まぁそうだよねーん♪さてさて、まだあいつへの仕返しが途中だったからそっちもやんなきゃねー」フンフーン

ガシッ

青ひげ「ぐぐ、ゲホゲホッ……小娘、貴様何者だ……先ほどとはまるで別人……我々を追い回す執念も、その足技も…まるで別人ではないか……!」グッタリ

ドロシー「そんなことないけどさ、さっきのは私のクッソ弱い方って感じかな?まぁ、反吐が出るけどあの雑魚なドロシーもドロシーちゃんなんだよねぇ~……まァそんな事はいいよ」ブンッ

青ひげ「ぐおっ……き、貴様何をするつもりだ…!」ドサッ

ドロシー「駄目じゃーん、もっと愛してる奥さんの事見ててあげなきゃ~!お揃いの殺し方してあげるドロシーちゃんの優しさに感謝しながら死んじゃってよ、青ひげのおっさん♪」ヒュッ

青ひげ「……っ!」

ガッ グシャアッ

かかし「……っ」

アリス「へぇ、今日のドロシーは随分とえげつないね。腹にすえかねている事でもあったかな?」フフッ

94 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/26 00:23:48 RAx 45/405


ドロシー「よっしっ!これでさっき散々追っかけまわされたかりは返しましたよーっ♪そうだ、ついでに魔法の鍵も奪っておこう」ゴソゴソ

ドロシー「ちゃんと仕返ししておかないとね、借りた狩りはキッチリ返すのがドロシーちゃんスタイルだからね~」フフーン

フラッ

ドロシー「…うわっ、良い気分の時に限ってまたあの最悪の目眩か……」フラフラ

アリス「あぁ、まずいね。どうするんだい、ブリキ?」クスクス

ブリキ「クソッ、なんてタイミングだ……まずい。ドロシー!こっちに来い、早く…!」ギリッ

ドロシー「ちょっと、ブリキ…あの薬最近効かないよ?もうちょっと…あ、だめだ…我慢できないや」フラッ

フッ

ブリキ「……クソッ」

ドロシー「あっ……あれっ?私、ベッドに横になっていたはずなのに……あれ、ブリキ……?」

ドロシー「なんだろ、なんだか生臭いっていうか変なにおい……」スンスン

ベットリ

ドロシー「な、な、なんなのこれ…!床じゅうが血まみれで…!このひと達、さ、さっきのお屋敷に居た人たちで、私を追いかけて来た人たちで……!」

ドロシー「わ、私の靴も血まみれ……ソックスも、洋服も血まみれで、あ、あ、これって…私が…!?」ガタガタ

ブリキ「違う!違うんだ、ドロシー!お前は何もしていない!」

ドロシー「ち、違う。そんなはずないよ、私が、このひと達を……!」ガタガタブルブル

アリス「……」フフッ



ドロシー「いっ…いやああぁぁっ!!」ブルブルブル

95 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/26 00:26:01 RAx 46/405

今日はここまでです

ここまでに出たおとぎ話紹介
【裸の王様】
アンデルセン童話のひとつ。愚か者には見えない服に翻弄される見栄っ張りな王様と大人達のおとぎ話。詳しくは一冊目をどうぞ。

元のおとぎ話に王様の名前の記述が無いのでこのssでは裸王と呼びます。名前の由来は『裸』の『王』様。それにムッキムキの某世紀末覇者の名前が掛かっています。
一冊目の事件後も変わらず、国民に愛される非常に豊かな国を収めているようです。時は経過しても筋肉信仰は変わらず、鍛錬は欠かしていません。
六冊目で赤ずきん達が訪れた際に取り組んでいた観光客向けの取り組みの他にも新たな事業にも参加し、さらに国に利益をもたらし国民からの厚い信頼を得ているようです。
国王と言う立場と常に民衆の声に耳を傾け続けるという現場主義が原因で、シンデレラや赤ずきんのように他の主人公との交流がなかなかできていないのが最近の悩み


【王様の耳はロバの耳】
ギリシャ神話のエピソードの一部。
愚かな願い事をした為、ロバの耳を与えられてしまった王様のおとぎ話。
自分の耳がロバの耳だという事を隠そうとする王様ですが、結局民衆にその事実が知れ渡ってしまいます
その事に怒り、犯人捜しをしようと考えた王様でしたが…


かぐや姫とオズの魔法使い編 次回に続きます

112 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/30 23:37:41 6cS 47/405

ドロシー「い、いやっ…!私だ……!私がやったんだ…!私が……!殺した……!私が……!」ガタガタブルブル

ブリキ「落ち着けドロシー!お前は悪くない!」

ライオン「そ、そうだよドロシーちゃん!死んじゃった人見て気が動転してるだけだよ、ど、ドロシーちゃんは悪くないよぉ」

かかし「そうだゾ!こんな場所にいちゃあ良くなイ、ひとまず部屋の外ニ…」

ドロシー「嘘…!だって、私今まで夢で見ていたの…!凶悪な私が、青ひげさんと奥さんに復讐する為に……魔法の靴で、何度も何度も何度も……!」ブルブル

ブリキ「それは夢だ、ただ偶然夢と現実が少し似ていただけだ、この騒ぎを起こしたのはお前じゃなくて別の…」

ドロシー「やめて…!ブリキ…本当の事、知ってるんでしょ……?」ブルブル

ブリキ「……」

ドロシー「夢の中での私はいろんな人に酷い事を言ってたくさんの人を傷つけてた。でもそれは酷い悪夢なんだって、病気が見せてる辛い夢なんだってずっと信じてた。でも、違うんでしょ?」

ドロシー「どれも夢なんかじゃない!全て現実なんだよね?どういう訳かわからないけど性格が変わっちゃった私が…いろんな人を傷つけて、殺してた…そうなんだよね……?それを私が夢だって思いこんでただけ……」

ブリキ「……いや、違う。ドロシー、聞いてくれ。それは…」

アリス「そうだ、ドロシー。君は知らず知らずのうちに多くの世界を消滅させて、数え切れないほどの人間を殺しているんだ」

ドロシー「……っ!」

アリス「キミが見てきた悪夢は、本当は悪夢なんかじゃない。全て現実での出来事だよ。ドロシー」

ブリキ「アリス…お前……!」ギリッ

113 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/30 23:41:02 6cS 48/405

ドロシー「やっぱり……!やっぱりそうなんだ。たくさんの人が殺されたあの世界の夢も、無実の人が死んじゃうことになったあの世界の夢も現実で…私が全部引き起こしたんだ…!」

ブリキ「アリス!お前…なんでそんな事を…!」

アリス「ブリキ、ボクは嘘もついていなければ騙そうとしてるわけでもない。真実を口にしただけ。それに…なんだか、もういいかなって思ってね」

かかし「アリス…!もういいっテ…どういうことダ!?」

アリス「……こう言う事だよ」

スッ

ドロシー「キャッ」トスッ

ライオン「あ、あれっ?ドロシーちゃん急に転んだりしてどうしたの……ああっ、ドロシーちゃん!魔法の靴、どうしたの!?無くなっちゃってる!?」

アリス「慌てないでよライオン、これからはドロシーの魔法の靴はボクが使う」キュッ

ドロシー「い、いつのまに…私の靴、返して…アリスちゃん!」

ブリキ「アリス…お前、まさか俺達を切り捨てるつもりか!散々利用しておいて…!」

アリス「そのまさかだ、もうキミ達には十分に働いてもらったよ。本当はもう少し働いてもらおうと思ったけれど…」

アリス「真実を知って怯えているような女の子は、かえって足手まといになるだけだろうからね。薬が利かなくなったドロシーじゃあ、ボクの願いの邪魔になるだけだ」

カツンカツン

114 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/30 23:43:43 6cS 49/405

アリス「ここからの戦いはきっと激化する。キモオタも力を付けているだろうし、他の連中もね」

アリス「だから足手まといはいらない。キミ達にはこの世界から出て行ってもらうよ。今までお疲れ様、【オズの魔法使い】の主人公たち」クスクス

ブォン

かかし「世界移動のゲート…!あいつ、俺達を別の世界に飛ばすつもりダ…!みんな一か所にかたまレ!別々の世界に飛ばされでもしたら厄介だゾ!」

アリス「無駄だ。キミ達に一緒に居られても困る、別々の世界に飛ばしてあげよう。この魔法の靴でね」

カツンカツンッ

ライオン「うわぁぁぁ!!みんな、離れ離れになるなんて恐い怖い!!いやだあぁぁぁ!!」ビュオォォォォッ

かかし「落ち着ケ!こうなりゃあもう逃げられなイ!それぞれが何とかして無事でいるんダ!生きてりゃあまた会うことだってできル!」

ドロシー「きゃ、きゃあっ!助けて…!ブリキ!ライオン!かかし!」ビュオォォッ

ブリキ「ドロシー!かかし!ライオン!待ってろ、どこに居ようともお前達の元に必ずたどり着く!必ずだ!」ビュオォォォッ

ヒュンッ

アリス「……ふぅ、もう少し利用できれば良かったけれど仕方ないか。あいつ等が居なくても、新しい戦力のアテはあるんだ…慌てる必要なんかない」

アリス「さて、お茶会に戻ろう。本当の仲間たちがボクを待っているからね」

115 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/30 23:45:41 6cS 50/405

蛙の王子の世界 城の訓練所

・・・

桃太郎「……」ジリジリ

ハインリヒ「もう随分と時間が経過しましたが…いつまでそうやっておられるおつもりですか?」スッ

ハインリヒ「私は貴方に『一撃浴びせてみなさい』と言ったのです。私はあなたの力量を測りたいのです、いつまでも間合いを取っているようでは特訓になりませんよ」

桃太郎「…ハインリヒ殿、拙者はお主に異国の剣術を指南して頂くべくこの世界へ参った」

ハインリヒ「ええ、存じておりますとも。だからこそ貴方の剣術を間近で拝見したいのです、そうでなければ指南などできません」

桃太郎「そうだとしても、お主が手にしているのは正真正銘の真剣。拙者の鬼屠りとて同様、訓練に真剣を用いるなど……」

ハインリヒ「赤ずきん様から貴方は日ノ本一の侍であると伺っております。国一番の戦士が鍛錬とはいえ、いまさら木製の剣や訓練用の剣を使うのですか?」

桃太郎「ハインリヒ殿、いくらお主がこの国で一番の騎士であるとはいえ…真剣での手合わせが危険である事に変わりは無い、今からでも訓練用の武器を用いるべきではないか」

ハインリヒ「愉快な事を口になさるのですね、桃太郎殿。では問いますが…危険ではない戦いなどあるのですか?」

桃太郎「…否、戦いとは常に死と隣り合わせ。覚悟と共に刃を振るう事こそ、戦い也」

ハインリヒ「我々は戦場に赴く身、木製の剣など使えば体に染みついた覚悟が抜け落ちてしまいます。私達戦士はいかなる時も覚悟を纏い、いつ訪れるとも解らない戦いに備えなければなりません」

ハインリヒ「騎士であろうと侍であろうと、その本質に大きな違いなど無い筈です。それでも貴方が刃を抜くことに戸惑うのならば」

シュバッ

桃太郎「…っ!なんと俊敏な動き…!」

ハインリヒ「私の方から攻めさせて頂きます。当然、手加減など致しませんのでそのつもりで」シュッ

116 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/30 23:47:35 6cS 51/405

桃太郎(もぉぉぉ!!なんなのこの人!?なんで真剣勝負させられてんの!?拙者は西洋の剣術を教わりに来ただけなのにぃィ!!)

桃太郎(物腰丁寧だから落ち着いた人かと思ったのに、この人絶対戦うことに喜びを見出してるタイプだよ!拙者が一番苦手なタイプだよもう勘弁してよぉぉ!!)

ガキンッ!!

桃太郎「くっ…!なんと重い一撃、その細い体のどこにその様な馬力が……!」グググッ

ハインリヒ「流石は日ノ本一の侍…全身全霊の力を込めても受け切られてしまいますか、感服いたしました」

ハインリヒ「しかし貴方が刃を抜かないと仰るのならば、私は何度でも貴方に斬りかかります。我を通せば私が折れるなどと思わぬように」スラッ

桃太郎「これほどのつわものの攻撃いつまでも防げるものではない…やむを得ぬ」ビュオッ

バスッ ガキンッ

ハインリヒ「なるほど、素晴らしい太刀筋です。と言いたいところですが…ようやく刃を抜いたと思えば峰打ち、ですか。随分と舐められているようですね、鬼のような強靭な相手でなければ刃を向ける事が躊躇われますか?」

桃太郎「拙者はお主に剣術指南を受ける為に参った!意味を持たない殺生を行う為にこの国に訪れたのではない!」

ハインリヒ「ご安心を、私も国一の騎士と呼ばれる身…この場で生を全うするつもりなど一切ありません。当然、日ノ本一のあなたに後れを取るつもりも」

ヒュバッ

ハインリヒ「私は国王様より『鉄』の二つ名を賜りし騎士ハインリヒ。鋼鉄を断ち切る事など出来ぬように…貴方の刃が私を打ち破る事は叶いませんよ、桃太郎殿」

桃太郎「拙者とは考え方に大きな隔たりがあるようだ。しかし、拙者は教えを乞う身…ハインリヒ殿の意を汲まず防戦一方という訳にも行くまい……桃太郎、参るッ!」スッ

ガキンッ! ヒュバッ!

桃太郎(防戦一方じゃ絶対そのうち殺される…!とにかく死なないように立ち回らないと…もうこれ剣術指南どころじゃ無いじゃんこれ…!)

118 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/30 23:49:28 6cS 52/405

ヒュッ ガキンッ! ジャキーン!

新米兵士「す、すげぇ…あの桃太郎とかいう東洋の戦士、ハインリヒ様と渡りあっている…!でも真剣勝負なんて恐くないのかな?お互い相手は国一の戦士なのに」

ベテラン兵士「相手が自分と同等以上だからこそ恐怖など無いのだろう。それに強くなればなるほど、強敵と戦う事は叶わなくなる。ハインリヒ様も久々の強者との戦いに胸躍っておられるのだ」

ベテラン兵士「桃太郎殿も口ではああ言っているが、自身に流れる戦士の血には抗えないのだろう…強敵を目の前にして闘志がたぎっているに違いない」

新米兵士「戦士たるもの強者と刃を交える事こそ一番血わき肉躍る時ですもんね!」

桃太郎(そんなわけねぇだろぉぉぉ!!こちとら既に後悔しとるわ!ハインリヒ殿めっちゃこぇぇよ!殺しにかかってる目だよあれぇぇぇ!!)

ベテラン兵士「しかもだ、桃太郎殿は悪鬼征伐を果たしたらしいが……聞いた話だと数万の悪鬼を相手に単身戦いを挑んだらしい」

新米兵士「す、数万!?マジですかそれ!?しかも勝っちゃったんでしょ?すげぇ…日ノ本一の侍ともなれば、一人で数万の鬼を倒すなんて容易いんでしょうね…」

桃太郎(容易くねぇよ!せいぜい数十だったしこっちももっと仲間居たわ!なんでそんなに話が大きくなってるんだよ!)

新米兵士「もしかして、奥義とかあるんですかね?こう、鬼をも一撃で倒せるような必殺技が」

ベテラン兵士「そりゃあ当然あるだろう。奥義の一つも無くして日ノ本の侍と言えるか?桃太郎殿にも必殺の太刀は当然存在するだろう」

桃太郎(別にそんなの無いよ!日ノ本の侍に夢見過ぎだろぉぉ!でも、期待を裏切って『日ノ本の侍ってなんだかガッカリ』とか思われるのも辛いしなぁ、ここはひとつ適当に……)

ジャキンッ

桃太郎「ハインリヒ殿、覚悟していただこう……!桃太郎奥義…ッ!万鬼殲滅の太刀ッ!!」スバー

ハインリヒ「くっ…!何という気迫!これが数万の鬼を殲滅したという伝説の太刀……!」バッ

ベテラン兵士「おぉ!なんという一撃…!あのハインリヒ様が防御の構えをなさるとは、流石は桃太郎殿の奥義!」

新米兵士「すげぇー!今、桃太郎殿の向こうに鬼ヶ島が見えましたよ、俺!」

桃太郎(そんなわけねぇだろ!今考えた技なんだから!拙者、鬼ヶ島でこんな技使っとらんわ!)

・・・

120 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/30 23:52:00 6cS 53/405

数時間後 
蛙の王子の世界 城の近くの森

桃太郎「はぁー、森の中すっげぇ落ち着く……犬猿キジと野宿してた頃思い出すわ。あー、きびだんごうまいなー…」フゥ…

桃太郎「ハインリヒ殿がわざわざ客室を準備してくれたけど、拙者はこーゆう場所の方が安心できるわ。豪華な部屋は性にあわないっていうかなんというかね、違うよね」

桃太郎「でも駄目だなぁ、観衆に期待されるとつい良い所みせようとするのは拙者の悪い癖だよホントに……」

桃太郎「結局、拙者が即席奥義なんか出しちゃうからハインリヒ殿も火がついちゃって必殺技の応酬みたいになっちゃったし。四回は死を覚悟したよね、マジで」

桃太郎「でもまぁ正直めっちゃ怖かったけど、ハインリヒ殿との手合わせで学んだ事はすごくたくさんあったし、強者と刃を交えるってのは確かに得るモノも多いんだなぁ…いやもうやりたくないけども」

桃太郎「キモオタ達も来たる戦いの時に備えて特訓してるみたいだし、拙者も頑張らないとなぁ。拙者は唯一戦いを生業としてるんだし、何倍も努力しないと」

桃太郎「さてと、一息ついたし…犬猿キジの土産でも見に行こうかな。ハインリヒ殿紹介してくれたお礼に赤ずきんにも髪飾りとか買って行こうかな」スッ

ガサガサッ

桃太郎「! 茂みの向こうに何かが居る…っ!もしも化け物や猛獣なら征伐しないとマズイかも、城も近いし。ここは勇気出して挑むか……!」チャキッ

ガサガサ ガサッ!

ライオン「わああぁぁ!!どこなのココ!?みんなどこに行っちゃったの!?」ドサー

桃太郎「うわああああぁぁぁ!アリスと一緒に居たライオンじゃねぇかああぁぁぁ!拙者が一人の所を狙って殺しに来たんだあああわわわわ」ガタガタ

ライオン「えっ?うわああああぁぁ!も、桃太郎さんだぁ!!ぼ、ぼ、僕今一人なのに!鬼でも敵わないのに僕なんかじゃ相手にならないよぉぉぉ!!」ビクビク

桃太郎ライオン「「うわああぁぁ!!無理無理ぃ!!もう嫌だあぁぁぁ!誰か助けてぇぇぇ!!」」ジタバタ





桃太郎ライオン「「えっ」」

121 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/30 23:54:29 6cS 54/405

アラビアンナイトの世界 街 賑やかな通り

・・・

ザワザワ ザワザワ

屋台のおっさん「らっしゃいらっしゃい!ボリュームたっぷりの作りたてコロッケだよー!らっしゃいらっしゃい!」

じいさん「相変わらず威勢がいいねぇ、今日もいつものを貰おうか」チャリーン

屋台のおっさん「へいまいどっ!熱いから気を付けてな、じーさん」スッ

じいさん「おお、今日もうまそうじゃ。どうじゃな、景気の方は」

屋台のおっさん「ヘヘッ、少しばかり上向きってところだよ、おかげさんでな。これもシェヘラザード王妃様のおかげだ」

じいさん「そうじゃな、この国も少しずつ良い方向にむかっておる。王妃様のおかげでもうこの国の娘が国王に殺される事は無くなったんじゃから、ありがたいことじゃよ」

屋台のおっさん「少しずつだが女の旅人も見かけるようになったしな、以前よりは治安も良くなったし少しずつ状況は良くなって来てるな」

じいさん「ありがたいことじゃな。感謝しなけりゃあいかんぞ、お前さんところの娘さんも殺されずにすんだんじゃろう?」

屋台のおっさん「ん?俺ん所に若い娘なんかいねぇよ?」

じいさん「いやいや、前に売り子をしていた髪の長い金髪の娘さんがおったじゃろ?お前さんところの娘じゃないのかい?」

屋台のおっさん「あぁ、ラプちゃんか、あの子はうちの娘じゃないんだよ。余所の国から観光だかで来てた娘でな、あれでもとある国の王子の許嫁なんだとよ」

じいさん「ほぉ、じゃあ将来はお妃様か…。おおっと、早く帰らんとバァさんにどやされるからのぉ、また来るよ」

スタスタ

屋台のおっさん「おう、毎度ー!……にしてもラプちゃんか、故郷に帰るって言ってたが今頃何してんのかねぇあの娘は」フフッ

ラプンツェル「えっ?おじさんの後ろでコロッケ食べてるよー?」モシャモシャ

屋台のおっさん「!?」ビクッ

122 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/30 23:56:39 6cS 55/405

屋台のおっさん「ら、ラプちゃんか!?おめぇ故郷に帰ったんじゃなかったのか!?」

ラプンツェル「うん、帰ったよー?でもまた来たんだー。おじさんにはこないだいっぱいコロッケ貰ったからお土産持ってきたよ!はいっ!」ニコニコ

屋台のおっさん「おっ、そいつぁありがとよ。それよりよぉ、ラプちゃんは髪の毛切っちまったのか?おめぇ長い髪が特徴的だったから一瞬誰だか分らなかったよ」

ラプンツェル「うんっ!バッサリ切ったよ!でもショートカットってなんだか首がスースーするよー、変な感じー」ニコニコ

屋台のおっさん「女が髪切るのは失恋したときだっていうけどよ、まさかおめぇ…王子と破局になっちまったとかか?」

ラプンツェル「もーっ、違うよ!えっとね、私の魔力は髪の毛にしかないからー、今は魔力を弱める為に髪の毛切ってるんだよー。魔法使いがそうしなさいって言ってたー」ニコニコ

屋台のおっさん「お、おう…何言ってるかよくわからねぇけど。しかし、あれからそんなに日も経ってねぇってのにまた来てくれるたぁ、余程この国の事気に言ってくれたんだなぁ」

ラプンツェル「うん!この国にはお友達が居るからね!あっ、来た来た!おじさん、あの子がこの国に住んでる私のお友達だよっ!」ニコニコ

屋台のおっさん「へぇ、ラプちゃんの友達か。それならあいさつ代わりにコロッケでもごちそうしてやろうかねぇ」クルッ

シェヘラザード「ラプンツェルさん!なんでひとりで走って行っちゃうんですか!私、身体動かすのあんまり得意じゃないんですから…」ハァハァ

屋台のおっさん「おっ、うおっ!?お、王妃様!?どうしてこのような場所に……っておいおい、ラプちゃんの友達ってまさか」

ラプンツェル「うん、シェヘラザードだよ?どーかしたの?それよりシェヘラザードもコロッケ食べようよ、おいしいよ」モシャモシャ

シェヘラザード「もう、また好意に甘えて遠慮なく食べたのですね?申し訳ありません店主殿、お代は私がお支払いします。おいくらですか?」

屋台のおっさん「い、いやいやいや!本当、お代とかいいので!好きなだけもってっちゃってください王妃様!」

ラプンツェル「やった!好きなだけ食べて良いって!やったねシェヘラザード!」

シェヘラザード「はぁ……シンドバッドといいあなたといい私の周りにはどうしてこう破天荒な方ばかり集まるのでしょうか……」ハァ…

123 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/31 00:00:30 HL3 56/405

シェヘラザード「いいですか?あなたはゆくゆくは王妃となる方なんですから。もう少しキチンとしてですね、王妃としての立場をわきまえるべきです」

ラプンツェル「えーっ?わきまえる?どーしたらいいの、それー」モシャモシャ

シェヘラザード「とりあえず歩きながらコロッケを食べるのはやめてください」

ラプンツェル「うん、わかった!急いで飲み込むっ」モグモグゴクン

シェヘラザード「もう…あなたは母上様に心配をかけたくないから…魔法効果を持つ剣で腹部を裂かれた事を知られたくないからこの世界に来ているのですよね?ならば大人しくしておくべきですよ」

ラプンツェル「わかったー!心配かけたくないからママには会わないようにしなきゃ!あっ、でもせっかく髪の毛切ったんだしママに見せてあげたいって気持ちもあるんだよね」

シェヘラザード「どっちなのですか。髪の毛を切る事になったのはあなたを貫いた七星剣に魔法が掛けられていたからですよ?相手は魔女、あなたに魔法が掛けられている事など会えば必ず見抜かれます」

ラプンツェル「とーぜんだよっ!ママは世界一優しくて立派な魔女だからね!」フンス

シェヘラザード「なんで得意げなのですか。しばらくは宮殿に住まう事も王は許して下さいました、この世界では目立たないように過ごしましょう」

ラプンツェル「そうだね!魔法使いが私に掛けられた魔法を解く薬を作ってもらってるみたいだからしばらくの間は大人しくしてなきゃ。でも退屈だよね、何か面白い事して遊ぼうよシェヘラz」

シェヘラザード「…ラプンツェルさん。止まってください、前方から何かやってきます」スッ

ザッザッザッ

かかし「あんタ、シェヘラザードだナ……?」

シェヘラザード「…ええ、そうです。私には藁でできた知人はいなかったと思うのですが……どちらさまでしょうか?」

かかし「俺ハ【オズの魔法使い】のかかしダ。訳あってこの世界に居ル……あんたをこのおとぎ話の主人公と見込んで頼みがあル。話だけでも聞いてくれないカ?」

シェヘラザード「やはり【オズの魔法使い】の…いいでしょう。お話だけは伺います」

かかし「すまなイ、助かル…」

ラプンツェル「すごいすごい!かかしなのに喋って生きてる…!」ワクワク

124 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/31 00:02:49 HL3 57/405

裸の王様の世界 町はずれの小道

・・・

ワー…ワー…

ムキムキ兵士「あーあ、なーんでこんな日に警備の順番が回ってくるのかねぇー」

マッチョ兵士「そういうなって、パレードの日は国民も観光客も裸王様のお姿を一目見ようとメインストリートに集まる」

マッチョ兵士「となるとこのあたりはまるっきり人気が無くなる、誰も居ない時に火事とか事故とかあったら対応が遅れる。それを防ぐためのパトロールだって国を護るために大切な役割だぜ」

ムキムキ兵士「そりゃあわかってるけどさ、今日は特別なパレードなんだぜ?」

マッチョ兵士「ああ、もちろん知ってる。裸王様の新しいポージングお披露目会も兼ねてるんだよな」

ムキムキ兵士「そうだよ!なんでも近隣の国から偉い学者を集めてだな…生物学、医学、数学、その他もろもろのあらゆる学術の観点から見て最も美しい上腕二頭筋のアピール方法を確立したらしい」

マッチョ兵士「相変わらず裸王様の向上心は留まる事を知らない。この功績も我が国の歴史に刻まれる事だろう」

ムキムキ兵士「あーっ!裸王様のニューポージング今すぐに見に行きてぇぇー!なぁなぁ、警備サボってパレード見に行こうぜ!」

マッチョ兵士「駄目だ、パレード中に国民に何かあれば一番悲しまれるのは裸王様だ。それに新しいポージングは次のパレードでも見られるだろ」

ムキムキ兵士「俺は今、今日と言う日の裸王様の筋肉を拝みたいんだよ!」

マッチョ兵士「あのなぁ…お前新しい物好きも大概にしろよ?まずはキッチリ仕事をしてからだな…」

ムキムキ兵士「お、おい…!そんなことよりあれ!あれ見ろよ!」

ガシャン ガシャン

マッチョ兵士「な、なんだ…鎧の戦士ってわけでもなさそうだが…声かけて見るか。そこの鎧?の人ー!」

ブリキ「……」ギロリ

126 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/31 00:06:20 HL3 58/405

ムキムキ兵士「お客さん観光客だよね?この辺りは住宅地だから観光して楽しい物は何もないけど、もしかして迷ったの?」

マッチョ兵士「ちょうど今メインストリートで裸王様のパレードしてるからそっちに行くといい、みやげ物屋とかもいっぱい出てる」

ブリキ「裸王…。なるほど、ここは【裸の王様】の世界か…ならば王に話を付けるのが手っ取り早いか…」

ムキムキ兵士「あっ、でもなかなかパレードじゃあ裸王様とは会話できないよ?列の前の方に行かなきゃいけないからね、最前列は競争率すさまじいから今からじゃ遅いかも…」

マッチョ兵士「なんなら明日にでも謁見の予約を入れておくかい?城まで足を運んで貰う事になるけど裸王様と直接謁見が出来r」

ガシッ

マッチョ兵士「ぬぐっ…!な、何をする…!くっ、なんという力だ……!」ウググッ

ムキムキ兵士「マッチョー!畜生、お前何をするんだ!そいつを離せ!」バッ

ブリキ「断る。裸王は心優しい善王と聞く…こいつの命と引き換えに俺の要求を飲めと迫れば断れないだろう」

ムキムキ兵士「こいつ…!裸王様を脅迫するつもりか!そんな事させねぇ…そんな悪事を企む輩には俺の筋肉を味わってもらうぜ!」ブォン

バシィッ

ムキムキ兵士「ぐはぁ…こいつ、強い…!」ヨロッ

ブリキ「雑兵に用は無い…。俺は、俺はすぐにドロシー達を探さなければならないんだ、なりふり構っている時間など無い。さぁ裸王の元へ向かおうか」

マッチョ兵士「クッ…あんたにどんな事情があるか知らねぇが…俺を餌に裸王様を脅すなんてさせない。そんな事になるくらいなら、この命…筋肉の神にお返しするまで…!」バッ

ブリキ「ナイフ…!お前自害するつもりか…!」ギリッ

マッチョ兵士「ああ、お前の思い通りにはならない。さらばです裸王様…!」グッ

???「はーっはっはっは!その必要は無いぞマッチョ兵士君、自害など…んん、ナンセンスッ!!」マッスル

127 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/31 00:10:22 HL3 59/405

兵士s「こ、この声は…!間違いない、何故この場にいらっしゃるのかわからないが…裸王様!!」

裸王「いかにも、我が名は裸王!この国を統べる…裸の王なりっ!!」ババーン

ブリキ「あんたが…【裸の王様】の主人公、裸王…」

ムキムキ兵士「しかし裸王様はパレード中では?何故このような場所に…」

裸王「うむ。パレードで出会った少女に、寝たきりで家から出られないお婆ちゃんにも我が姿を見せて欲しいと頼まれてな!ならばと足を運んでみるとこの騒ぎだ」

マッチョ兵士「申し訳ありません裸王様、この区域のパトロールは我々の役目。それなのに裸王様の手を煩わせてしまい…」

裸王「ハッハッハ!なんの問題も無いっ!それよりも我の為を想うのならば今後は自害など考えぬようにな!最期まで己の筋肉を信じて生きぬく、それこそ…真の漢というものっ!」マッスル

マッチョ兵士「裸王様…!ありがたきお言葉…!」ババッ

裸王「ハッハッハ!それよりキミは私に用事があるようだが…ふむ、名を聞かせて貰おうかっ!」ムキムキッ

ブリキ「ブリキのきこり…仲間にはブリキと呼ばれている」

裸王「ブリキか!キミは私に何を要求するつもりだったのだ?手っ取り早い筋肉の付け方を聞こうとしたのならば残念だがそんなものは存在しない、筋肉とは日々の積み重ねn」

ブリキ「そんな事じゃない。国王のあんたなら魔法使いや魔女の知り合いの一人くらいいるだろう、そいつに協力してもらいたい」

裸王「ふむ、まぁ…魔法を使える者のあてが無い事も無いが…。その前にひとつ確かめておきたい、君は凄まじい力を持つようだが…その身体からは筋肉の声が聞こえてこない。そのブリキの中身は生身ではあるまい?」

ブリキ「ああ、その通りだ。俺の身体はブリキ製だ、筋肉の声というのは意味がわからないが…少なくとも筋肉は存在しない」

裸王「ほう、ならばこうしようではないか。この裸王と力比べをするのだ!見事この裸王を打ち負かせば、ブリキの望みを聞いてやろうではないか!」ムキムキ

ブリキ「…良いだろう、お前がどんなに鍛錬を積んだ筋肉自慢の王であろうと所詮は生身の身体…俺のブリキの肉体に敵う道理は無い。俺が負ける事があれば逆にお前の望みを聞いてやる」

裸王「はっはっは!では決まりだ!後ほど城に来ると良い、私はパレードが済み次第戻ろう!今から対決の時が楽しみだな、ブリキよ!」ハッハッハ

128 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/31 00:13:02 HL3 60/405

とあるおとぎ話の世界

・・・

ドロシー「…はぁはぁ……なんで、なんでこんな事に……」ポロポロ

タッタッタッ

町人1「追えーっ!そっちに逃げたぞ!」

町人2「見慣れない着物、俺達とは目の色も髪の色も違う小娘…異国の人間か、妖怪変化の類か…いずれにしても野放しにはできん!」

町人3「それよりあの小娘、怪我をしている様子も無かったのに血まみれだった。既に何人か殺していると考たほうがいい」

町人1「ならば一刻も早く捕まえなければ、俺達の街に危害を加えられるその前に!」

町人2「おう、よそ者から俺達の街を護るんだ!」

タッタッタッ

ドロシー「もう嫌……急にいろんな事がありすぎて、なにがなんだかわかんないよ……でも今は逃げなきゃ……!」タッタッタ

ドロシー「逃げなきゃ…捕まったら何されるかわかんない。ブリキもかかしもライオンも居ない…私一人じゃ、なにもできない…!」

町人1「居たぞ!こっちだ!!そこの角に逃げ込んだぞ!!」

ドロシー「……っ!!」

ドロシー(もう駄目…!私、友達と離れ離れになってこの知らない場所で殺されちゃうんだ…)ポロポロ

スッ

???「お嬢ちゃん、こっちにいらっしゃい」ユラッ

ドロシー「えっ、でも、えっと…あ、あの。あなたは…?」

???「知りたい?うふふ、後で教えてあげるわね。そんな事よりも今はあの人たちから逃げる事の方が大切なんじゃない?違う?」クスッ

129 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/31 00:16:11 HL3 61/405

・・・

町人2「おかしいな、こっちの角に逃げ込んだと思ったんだが」キョロキョロ

町人3「俺も見たぞ、そんなに遠くに逃げていない筈だ。どこか近くに隠れているのかもしれないぞ」

スッ

???「今日も清々しい程良い天気…こんな日はきっとお月さまも美しく輝くわね、陽が落ちるのが楽しみ」ウフフ

町人1「月?何者だ君は…?いいや、そんな事はどうでもいい。この辺りで怪しい小娘を見なかったか?怪我もしてないのに血まみれで、きっと既に何人か殺してる凶悪犯だ」

???「見たわよ?見た事の無い着物で、血まみれだったわね…でもとても可愛らしい女の子、でも泣いて居たわ」

町人2「おっ、見かけたのか!?俺達が捜している奴に違いない、どこに逃げたのか教えてくれ!」

???「そうねぇ、教えるのはあまり気は進まないわね。だって教えても意味が無いと思うから、何も見えなくなるでしょうし」ウフフ

町人3「? あんた何を言って…」

ピカッ!

町人達「うおっ!?なんだ!?突然閃光が……クソッ、前が見えねぇ!」フラフラ

???「ウフフ、ほぉら言った通りでしょう?しばらくは何も見えないと思うけれど、泣いている女の子を寄ってたかって追いかけた罰だと思ってなさいね」フフフ

ドロシー「……」ポカーン

???「ほらっ、お嬢ちゃん。早く逃げましょ、急がないと彼らの目が慣れてきちゃうわ」フフッ

ドロシー「あ、あの、はいっ!えっと、助けてくださってありがとうございます。私の名前、ドロシーって言います。あの、あなたのお名前は…」タッタッタッ

???「ドロシーちゃん…なるほど、でも随分と前に【オズの魔法使い】は消滅していたはずだけれど。どこか別のおとぎ話の世界に居たのかしら?」クスクス

ドロシー「なんでその事……えっと、それはあまり、思い出したくない事で……」

???「そう。だったら聞かないで置くわね、誰にでも内緒にしたい事はあるもの。あぁ、ごめんなさいね、名前を聞いてくれたのに申しおくれてしまったわ」ウフフ



かぐや「私の名はかぐやよ、覚えておいてくれると嬉しいわ。でもおしゃべりは後にして今は逃げましょう。それにあなたの着物も何とかしなければいけないわ」フフッ

130 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/10/31 00:18:29 HL3 62/405

今日はここまでです
本編に書くべきだったけどアリスはドロシー達を適当に世界移動させたので各々の移動先は意図していないものです

ここまでに出たおとぎ話紹介
【こびとの靴屋】
グリム童話のひとつ。真面目な靴屋と靴作りの妖精が登場する優しい世界のおとぎ話
真面目だけど貧しい靴屋のおじさんは靴の生地を切り出したところでうっかり眠ってしまいます。
しかし、目が覚めるとそこには立派な靴が出来上がっていました。
おじさんが寝ている間になんと小人が代わりに靴を作ってくれたのです。
おじさんがその靴を売ったお金で生地を買い、またうっかり眠ってしまうとその間にまた立派な靴が…というおとぎ話

このssでは名前での登場のみだけど、現実世界では司書の働く図書館に置かれるくらいには知名度があるようです


かぐや姫とオズの魔法使い編 次回に続きます

146 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/04 00:04:07 Jyu 63/405

かぐや姫の世界 町はずれの小屋

かぐや「ここまで来ればもう安心よ。彼らもこんな辺鄙な場所まで追ってこないでしょう。さぁ、入って」スッ

ドロシー「あっ、お邪魔します…」ペコッ

かぐや「フフッ、狭いところですがどうぞ。…なんてね、そんなにかしこまらなくてもいいのよ?ここは貴族の屋敷でも帝の庭でもないんだから」クスクス

ドロシー「あっ、あの、助けて貰って本当にありがとうございました…!もしもかぐやさんが居なかったら…私、きっと捕まって、殺されちゃっていました」

かぐや「そうね、西洋生まれのあなたの姿はこの世界の人間にとっては少々刺激が強いわ。でも彼らも悪人ではないのよ、街を護るために一生懸命なだけ」

かぐや「とはいっても事情の一つも聞かずに、泣いている女の子を追いかけまわすなんて感心しないわ。まぁ私が灸をすえてあげたから大目に見てあげて頂戴」ウフフ

ドロシー「いえ、仕方ない事だと、思います…私はこの国の人とは髪の色も眼の色も違うから…それに血塗れでうろうろしてたら誰だって怪しいって思うし…」

かぐや「そうかしら?私の眼に映るドロシーちゃんは困り果てて泣きだしてる可哀そうな、ただの可愛い女の子だったわよ?」ウフフ

ドロシー「……私はもう、かぐやさんが言ってくれるようなただの女の子じゃないんです…数え切れないほどの世界で暴れて、いろんな人を傷付けて…罪の無い人をたくさん殺した…悪人なんです」

かぐや「……あら、そうなの?」

ドロシー「……あのっ、助けてくれてありがとうございました。でも、私、もう行きます」スッ

かぐや「何処へ行くつもり?どこか行くあてでもあるのかしら、無いのならしばらくここに身を置いていてもいいのよ?」

ドロシー「行くあてはありませんけど…私みたいな人殺しを匿っていたら、かぐやさんに迷惑がかかるから…ここには居られません。その優しい言葉だけ、いただきます」ペコリ

147 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/04 00:06:31 Jyu 64/405

かぐや「待ちなさいな、そんなに慌てて出て行かなくてもいいでしょう。それに、その服のままこの辺りをうろつけばさっきの二の舞よ」

ドロシー「そ、そうかもしれませんけど、でも私…」

かぐや「ドロシーちゃん、さっき言っていたわね。罪の無い人をたくさん殺したって。いろんな人を傷付けたとも言っていたわ」

かぐや「あなたが本当に悪人なら、私に迷惑がかかるから出て行くなんて考えないわよ。むしろ好意を利用してやろうと考えるものよ、本当の悪人はね」ウフフ

ドロシー「…でも、私は確かに青ひげさんと奥さんを殺した…それに今まで夢の中の残酷な私が殺した人たちも全部…私のせいで…」ブルブル

かぐや「…なんだか深い事情があるようね。よかったら何があったのか、聞かせてくれないかしら?」

ドロシー「でも…こんな事言ったら巻き込んでしまうかもしれません…かぐやさんに迷惑がかかってしまうのは…嫌です」

かぐや「無理強いするつもりは無いけれど吐きだして楽になる事もあると思うわよ」

かぐや「少なくとも私は迷惑だなんて思わないわ、それに言葉にすることであなたが少しでも楽になるのなら私は月が昇って沈むまででもあなたの話を聞いてあげる」

ドロシー「……あの、うまく話せるかわかりません。それにかぐやさんを巻き込んじゃいますけど…でも、私は今の状況がとても辛くて…話を聞いてくれるのなら…かぐやさんに聞いて欲しいです」

かぐや「ええ、構わないわ。続けて、うまく話せなくっても構わないから」

ドロシー「…私はずっと夢を見ていたんです」

かぐや「…夢、ねぇ」

ドロシー「私がいろんな世界へ出かけて、その世界を消滅させる為や何かを奪う為に他人を平気で殺す…そんな夢です」

ドロシー「夢の中の好戦的で残酷な私は、いつだって誰かを傷付け殺していました。いつも愉快そうに笑いながら、楽しそうに蹴り殺すんです……なんの罪もない無抵抗な相手を」

148 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/04 00:08:01 Jyu 65/405

ドロシー「アリスちゃんっていう友達と…いえ、友達だった子といろんな世界に行っていろんな人を殺してほしい物を奪っていたんです」

ドロシー「幸せを求めて旅する兄妹を襲って捕まえたり、願いが叶う道具を寄越せと迫ったり、片腕がカギ爪の海賊船長に魔法の力を貸して世界を滅ぼさせたり、狼を唆して近くの村の住人を食い荒らさせたり…」

ドロシー「アリスちゃんの目的のためにどんな悪いことだってしていたんです。夢の中の残酷なドロシーは私とそっくりだけど、全然違うんです」

かぐや「そう、それはあまり心地のいいものじゃないわね。それに、あなたの洋服が血まみれになっているのは夢の世界での出来事じゃ…ないわよね?」

ドロシー「…そうだったんです。私が夢の中の出来事だと思っていた事は全て、現実で起こっていた事だったんです…」

ドロシー「どうしてかはわからないんです。でも、私は残酷な性格になっている時があってその間の出来事を本当の私は夢だと思い込んでいたんです」

ドロシー「でも、違った。夢なんかじゃ無くて現実の世界で…私は大勢の人を殺していた、たくさんの世界を消していた…それを受け入れる事が出来ないまま、大切な友達と離れ離れになってしまって…」

ドロシー「アリスちゃんに無理矢理この世界に飛ばされて、困り果てているところを…かぐやさんが助けてくれたんです」

かぐや「なるほどね…魔法か魔法具の類で精神を操作されていたという所かしら。それにしても随分と残酷な事をする人も居たものね…」

ドロシー「私は、もう一度友達に会いたい。そして、私が知らず知らずのうちに犯していた罪と向き合わなくちゃいけなくて…覚えは無くても私自信の罪だからその償いをしなければいけなくて…」

ドロシー「でも、いろんな事が一度に起きてしまって何をどうすればいいのかわからないし…友達と再会する方法も罪を償う方法も解らない…どうしていいか、私一人じゃ何もできない…」

かぐや「だったら尚更、誰かを頼ればいいのよ。その相手が私だとしても、私は一向に構わないわよ?」

ドロシー「…かぐやさんは優しい人です。私の友達のブリキとかかしとライオンと一緒で、とても良い人です…だからこそ私は巻き込みたくないんです」

ドロシー「私の友達はみんな、残酷な性格になった私を受け入れてずっと一緒に居てくれたんです。きっと、その為にやりたくない悪事に手を染める事もあったと思うんです…私は知らず知らずのうちに友達を巻き込んでいたんです。そんな事はもう、嫌です…」

かぐや「……」

ドロシー「…だから私は…かぐやさんとはいられません。一人で、友達と出会う方法を考えます、なんとか…してみます」

かぐや「そう…あなたがその気持ちでいるのなら私は無理にとは言わないわ」

149 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/04 00:10:55 Jyu 66/405

ドロシー「本当にありがとうございました、かぐやさん…優しい人にあえて、嬉しかったです…それじゃあ」スクッ

かぐや「……待って頂戴、あなたが出て行くというのなら私は止めない。だけど最低限の礼儀だけは通してほしいわね、ドロシーちゃん?」

ドロシー「えっ、えっと、礼儀…ですか?」

かぐや「そうね、私はあなたを追手から救ってあげたのだから、お礼の一つでも用意するのが礼儀と言うものじゃないかしら?」クスクス

ドロシー「あっ、お礼ですか…。でも、そうですよね…えっと、でも私、何も持っていなくて…魔法の靴も奪われちゃったから…」

かぐや「あら残念、でも私は強欲なのよ。とても物欲が強いの、だからなにかしらのお礼をしてもらうまではあなたを自由にはしないわよ?」ウフフ

ドロシー「えっ、えっと…それじゃあ何を用意したらいいですか…?私は一人じゃ何もできませんけど、お世話になったかぐやさんにはお礼したいです…」

かぐや「フフッ、いい心構えじゃない。そうねぇ…それじゃあ噂に聞く『燕の生んだ子安貝』を持って来てもらおうかしら」

ドロシー「『燕の生んだ子安貝』…ですか?えっと、それは何処に行けば手に入るんでしょうか、それにこの世界の燕は貝殻を生んだりするんですか…?」

かぐや「生まないでしょうね。何処の世界の燕も生むのは卵だけ、貝殻を生む生き物なんて存在しないわ」クスクス

ドロシー「じゃあそんなものこの世界のどこを探しても見つかりっこないんじゃ…。む、無理ですよそんなものを見つけるなんて…他のもので何とかなりませんか…?」

かぐや「あら、困るわね。私はあなたの命を助けてあげたのよ?それ相応のお礼をして貰わないとね、だから『燕の生んだ子安貝』以外は認めないわ」

ドロシー「ブリキ達が…いえ、友達が一緒に居てくれたら何とかなるかもしれないですけど……私一人じゃ、そんなのとても……」

かぐや「そう、それじゃあ代わりにドロシーちゃんには私の付き人になってもらおうかしら?」クスクス

ドロシー「付き人…?あの、それって一体、私は何をすれば……」

かぐや「難しい事じゃないわ、常に私の側に居て私の仕事のお手伝いをしてもらうだけよ。私はこう見えて色々と忙しいの、ちょうどお手伝いをしてくれる人を探していたのよ」クスクス

150 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/04 00:12:14 Jyu 67/405

ドロシー「あの、それは出来ません…さっきも言った通り、私がかぐやさんの側に居たら、迷惑をかけてしまうから、だから……」

かぐや「そう、だったら『燕の生んだ子安貝』を探しだすしかないわね」クスクス

ドロシー「そんな…!」

かぐや「どちらかしか認めないわよ?付き人か子安貝か。それとも口では感謝してる風に言っても本当はそんなに感謝していないのかしら?」クスクス

ドロシー「そ、そんなことないです…!私はかぐやさんには本当に感謝しているんです…!」

かぐや「あらどうかしら?付き人はしたくない、子安貝を探すなんか無理…やりもしないでそんな風にすぐに諦めてしまうのに?」クスクス

ドロシー「わかりました…かぐやさんがそう仰るなら…私はかぐやさんへの感謝を証明します…。私、一生懸命かぐやさんの付き人やります…!」

かぐや「フフッ、それじゃあさっそく今夜の仕事からお手伝いをしてもらおうかしら。でもその前にその服をどうにかしなきゃいけないわね」

ガラガラッ

玉龍「ただいまーッス!あっ、かぐや来てたッスか?」

かぐや「あら玉龍、ちょうどいいところに帰ってきたわね。この子に服を貸してあげて欲しいのよ、私の着物じゃ引きずっちゃうものね」クスクス

ドロシー「あ、あのっ…かぐやさんの付き人のドロシーです、よろしくお願いします…!」ペコッ

玉龍「ドロシー…?どっかで聞いたような気がするッスね…?まぁいっか、うちは玉龍ッス、よろしくたのむッス!それよりえーっと、服を貸したらいいんスよね?」

かぐや「ええ、あなた何故か可愛らしい服ばかり集めてるじゃない?どうせ悟空には不評なんだから、ドロシーに一着譲ってあげたらどう?」クスクス

玉龍「何言ってるッスか!先輩のどんな好みにも対応できるようにするためにコレクションッスよ?貸すのはともかくあげたりしたら意味無いッス!」

かぐや「フフッ、まぁ適当にみつくろって貸してあげてちょうだい。ドロシーには色々と覚えて欲しい事もあるもの、私の付き人としてね」クスクス

151 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/04 00:15:16 Jyu 68/405

町はずれの小屋 裏口

・・・

玉龍「あー、やっぱりこの世界のほうが落ち着くッスねぇー」

玉龍「おっ、柿が食べごろに熟してるッスね。先輩は柿好きッスからもいでおくッス」シュルッ

スタスタ

かぐや「あら、駄目じゃないの玉龍。お尻だけ龍に戻したりして…どこで誰が見ているかわからないのよ?」ウフフ

玉龍「誰も見てないッスよ。それに木登りも竹竿持ってくるのも面倒なんスよ、その点尻尾でしゅるっと取れば一瞬ッスからね!それより、あの付き人の娘はどうしたッス?ほっておいていいんスか?」

かぐや「なんだか着替えを見られたくないようだったから部屋に残してきたの。私にも特にそんな趣味があるわけじゃないから、何となく外の空気でも吸いに来たのよ。隣座ってもいいかしら?」

玉龍「もちろんッス。でも空気なんか吸っても味気ないッスよ?かぐやにも柿あげるッス、きっと甘いッスよ!龍の本能がそう告げているッス」スッ

かぐや「随分と熟しておいしそうね。玉龍、悪いけれどドロシーと…お爺様とお婆様の分も取っておいてくれる?」

玉龍「この玉龍ちゃんに任せておけッス~!それより、珍しいッスね?かぐやが付き人を欲しがるなんて、自分の仕事には他人を係わらせないタイプだと思っていたッス」シュルル

かぐや「まぁ、本当はそうなんだけどね。あの子の境遇には少し思う所があったのよ、洋服が血塗れだったの…覚えてるでしょ?」

玉龍「もちろん、あんな衝撃的な姿忘れないッスよ。でもあの量はそうとうエグイ殺し方ッスよ?血の量でわかるッス、見かけによらず過激なんスかねー?」

かぐや「自分の意思とは無関係に…知らず知らずのうちに他人を殺してしまっていたらしいわ。そして人を殺した償いをしたいとも言っていた」

玉龍「過去の過ちの償いをしたいって事ッスか…。ははーん、わかったッスよ?そこがうちらと一緒だから声を掛けたんスね?」

かぐや「ええ、過去の過ちを悔いてその償いをしたい…でも方法がわからないと言っていたから理由を付けて引きとめたのよ。ほおっておけば良くない道に進んでしまいそうな気がしたから」

玉龍「なんだかかぐやはあの子には甘いッス。うちや先輩にはもっと辛辣ッスよ?ひいきは良くないッス」ニヤニヤ

かぐや「フフッ、そうかしら?でも、ドロシーはどこか私に似ているわ、むしろ過去の過ちの償いをしたいという所なんか一緒だもの」



かぐや「私も、過去の過ちを償うために……この星に居るんだものね」

・・・

152 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/04 00:17:18 Jyu 69/405

現実世界 サイゼリヤ

店員「お待たせしました。イタリアンプリンのお客様ー」

司書「あっ、この子です。ほらグレーテル、こっちのお皿はもう下げて貰うね」ソッ

グレーテル「うん、ありがとう……プリンおいしそう……お兄ちゃん、はんぶんこしよ……」スッ

ヘンゼル「一人で食べてもいいんだよ?もうあの頃みたいに分け合って食べないといけないほど食べ物に困ってるわけでもないんだから」

グレーテル「ううん、お兄ちゃんと一緒に食べた方がきっと……ずっとずっとおいしいと思うの……」

店員(お兄ちゃん思いな子だなぁ。外国の女の子とお兄ちゃんかー、仲良さそうで可愛いなぁ……)ほっこり

店員「えっと…煮込みハンバーグのお客さまー」

キモオタ「あっ、こっちです」

店員「ご注文の品、以上となります。では失礼します」ペコッ

スタスタスタ

キモオタ「ドゥフフwwwようやく我輩のデザートが来ましたぞwww」コポォ

グレーテル「……現実世界ではハンバーグをデザートに食べるんだね……始めて知ったよ……またひとつ賢くなったね、お兄ちゃん……」モグモグ

ヘンゼル「…いや、なってないよ。キモオタお兄さん、妹の前で変な事するのやめてよ。グレーテルは純粋なんだから信じてしまうんだから」ギロッ

ティンカーベル「サイゼリアに来ると大体それやるよね。前に来た時もマッチ売りちゃんがキョトンとしてたよ……」

司書「ま、まぁたくさん食べられるのは良い事ですよ。現実世界は飢饉でも食料難でもないんです、お腹いっぱい食事ができるというのは幸せな事なんですから」ニコッ

キモオタ「司書殿が言うと言葉に重みがありますなwwwさてwww腹も膨れたことでござるしデザートでもつつきながら本題に入りますかなwww」コポォ

153 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/04 00:19:28 Jyu 70/405

キモオタ「前提として…我輩とティンカーベル殿が旅を始めた経緯とこれまで出会ったおとぎ話の住人との事は、食べながら話した通りでござるよ」

ティンカーベル「そうそう、あとアリスの目的でわかってる事やあいつらの戦力っていうかどんな魔法具持ってるかも知ってる限りは言ったよね」モグモグ

司書「はい、キモオタさん達の旅の事は概ね理解出来ました。ティンクちゃんは元々【ピーターパン】を元に戻す為に旅に出たんだよね?」

ヘンゼル「元居たおとぎ話をわざわざ救うなんて、僕には理解できないけどね…」

ティンカーベル「ヘンゼルには理解できなくても私には大切なことなの!ピーターパンにもう一度会いたいしさ…あっ、でもフックの奴は全力でぶん殴る。十回くらい」フンフンッ

キモオタ「まぁそれはさておきwww先ほどお話したとおり、アリス殿を止める為に色々なおとぎ話の登場人物が協力してくれているのでござるwww故に我々も色々と情報を集めて戦いに備えているのでござるwww」

グレーテル「いろんなおとぎ話の人たちが協力してくれてるんだ……キモオタお兄ちゃんが良い人だからみんな手伝ってくれるんだね……たしか女王さまも協力してくれてるんだっけ……」

ヘンゼル「危険な事には間違いないのに女王はなんで勝手にそんな事決めたんだろうね。僕達に一言声かけてくれたっていいのに…」

司書「私達を不安にさせちゃうから黙っていたんだと思うよ。でも困ってるおとぎ話の住人の為に手助けをしているなんて女王様らしいと思わない?」

ヘンゼル「まぁ、思うけどさ。でも僕達も一緒に戦うって言ってもどうせ許してくれないんだよ、子供がする事じゃないとか言ってね」

ティンカーベル「でも元の【雪の女王】だと敵役っぽいのに、女王様ってみんなの話聞いてるとすっごく優しい人なんだね!」

ヘンゼル「うん、優しいよ。でも氷系のお仕置きする時だけはまぁ、うん……恐いけど」

グレーテル「……」コクコク

司書「間違っても感情的になって怒鳴ったりはしなかったけど…。そうね、お仕置きの時は…うん…」

キモオタ「ちょwww満場一致で怒ると恐いタイプではござらんかwww」コポォ

154 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/04 00:20:32 Jyu 71/405

キモオタ「それはさておきwww司書殿には昨日の話の続きをしてもらいたいものですなwww」コポォ

司書「あっ、そうでしたよね。確かおとぎ話【浦島太郎】にアリスちゃんが登場している事についてでしたっけ」

グレーテル「あのね、お話の途中でごめんなさい、だけど……聞きたい事あるの……」

キモオタ「ほうwwwなんですかなwww」」

グレーテル「キモオタお兄ちゃん……ラプお姉ちゃんの事……教えて……?怪我、大丈夫だったの……?」

キモオタ「おおっと、我輩とした事がwww報告していませんでしたなwww」

グレーテル「うん……ずっと聞こうとしてたの……ラプお姉ちゃん、私に優しくしてくれたから……心配……」

キモオタ「それは申し訳ない事をしましたなwwwでは実際にラプンツェル殿に付き添っていたティンカーベル殿に報告お願いするでござるwww」

ティンカーベル「うん!えっとね、ラプンツェルはショートカットになったよ!髪の毛短くても可愛かった!」フンス

グレーテル「……どういうこと?ラプお姉ちゃん、怪我は平気なの……?なんで今髪の毛の話……?」

キモオタ「ちょwwwティンカーベル殿wwwそれじゃあ伝わらないでござるよwww最初から順を追って説明せねばwww」

ティンカーベル「そうだよね、えっとね……」

155 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/04 00:23:41 Jyu 72/405

ティンカーベル「ラプンツェルはお腹を七星剣で切られちゃったでしょ?その傷は桃太郎が治癒してくれたから怪我は大丈夫なんだけど…剣に魔法の力が込められたんだって!」

グレーテル「魔法の力……どんなのかな……」

ティンカーベル「でね、魔法使いに見て貰ったらね、七星剣には切った相手の魔力を弱くする魔法が込められてたんだって!」

司書「七星剣は【西遊記】に登場する魔法具、天界の仙人が作り出した物だから…もしかしたら妖怪や怪物を相手にすることを想定して魔力や妖術を弱体化させる効果を添えていたのかも」

ティンカーベル「うんうん、魔法使いも同じような事言ってたよ!きっと悪い妖怪や妖術使いに対抗する為に作ったんだろうって!」

キモオタ「ラプンツェル殿の長い髪の毛はあれ魔力の影響によるものでござるから、故に魔力を弱体化させる七星剣はラプンツェル殿の身体に影響を及ぼしたんでござるな」

ヘンゼル「ああ、だから髪の毛を切ったってことなんだね」

ティンカーベル「そうだよ!ラプンツェルが元々ああいう性格だから何かあったら危ないからもういっそのこと切っておきなさいって魔法使いに言われてた!」

キモオタ「まぁ何をするかわからない娘でござるからなwwwで、魔力が弱まってるから髪の毛を切っても伸びてこなくなったとwww」

司書「でも、ラプンツェルさんと言ったらあの長い髪の毛なのにもう短いままだと思うと、少しさみしいね」

ティンカーベル「大丈夫だよ!魔法使いが今、他のおとぎ話の魔女にお願いしてラプンツェルに掛けられた魔法を打ち消す薬を作ってもらうんだって!確か、『猛毒の魔女』って言ってた、どこのおとぎ話かは聞くの忘れちゃったけど」

キモオタ「素直にゴーテル殿に頼めば早い話に思えるでござるがwwwあの親子は娘想いが過ぎるのか母親想いが過ぎるのかわかりませんなwww」

司書「お互いに心配し合って気づかいしあえるのは素敵な家族の証拠ですよ」ウフフ

ティンカーベル「だねっ!でも魔法使いは世界移動できないから赤ずきんに頼むって言ってた、薬ができるまではラプンツェルは【アラビアンナイト】でお世話になるって!だから心配しなくても大丈夫だよ、グレーテル!」ニコニコ

グレーテル「そっか……心配しなくていいなら安心……よかった……」

156 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/04 00:27:17 Jyu 73/405

キモオタ「とりあえずラプンツェル殿は一安心という事ですなwww良かったですな、グレーテル殿www」

グレーテル「うん、良かった……。お話の途中に割り込んじゃってごめんね……お千代ちゃんとキモオタお兄ちゃんのおはなし……続けて良いよ……」

司書「あっ、そうでしたね。えっと、お話するよりも読んで貰った方が早いと思って今日は【浦島太郎】の絵本を持って来たんです」ゴソゴソ

スッ

キモオタ「ほう、これがアリス殿が登場しているという【浦島太郎】でござるか…」

ティンカーベル「キモオタ!早く読んでみようよ、私もこのおとぎ話読んだこと無いから内容も知らないし」

キモオタ「そうですな、では…」ペラペラ

ヘンゼル「僕達も元々の【浦島太郎】は知ってるけど、アリスが登場してるなんて知らなかったよ」

司書「現実世界の絵本はどこの出版社のものも有巣という女の子が登場しているの。きっとどこかでおとぎ話の内容が少し変わったのね」

グレーテル「元々のおとぎ話……【浦島太郎】って……どんなおはなしだったかな……?」

司書「猟師の浦島太郎が浜辺でいじめられているカメを助けるの。するとそのカメは浦島さんを竜宮城に招待しますと言って海の中に潜るのね」

司書「竜宮城ではとても美しい乙姫様が歓迎してくれて、浦島さんはカメを助けたお礼とは思えないほど幸せな想いをするの。それでしばらく竜宮城に居ついちゃうの」

司書「でもある時帰ろうと思い立って、陸に帰ると知らない間に何百年もの長い年月が過ぎていてだれも浦島さんの事を知らない。家族も友達ももうずっと昔に亡くなってる」

司書「絶望した浦島さんは乙姫に絶対に開けてはいけないと言われていたお土産の玉手箱を開けるの、するとなかから煙が出て来てそれを浴びた浦島さんは老人になってしまう…というお話ね」

グレーテル「…うん、思い出したよ……その内容のお話は、ずっと前に読んだよ……浦島さん可哀そうだって思ったの……」

ヘンゼル「僕は乙姫に腹が立ったけどね。恩をあだで返すってこの事でしょ、なんで親切にした浦島が損するのか理解できない。そんなおとぎ話を作った奴はどうかしてる」

司書「ヘンゼル。きっとこのおとぎ話だって作られた理由があるんだよ、それに乙姫さんにも何か事情があったのかもしれないんだから悪く言っちゃダメだよ」

157 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/04 00:31:48 Jyu 74/405

・・・

ティンカーベル「もぉーっ!なんなのこの乙姫っていう奴!こんな後味悪いおとぎ話無いよ!」

キモオタ「まったくですなwww親切にしてくれた浦島殿を絶望にたたき落とすとは、とんだ悪女が居たもんですぞwww」コポォ

ヘンゼル「ほら、やっぱり一般的な感想はこうなるよ。乙姫のしたことを考えれば当然でしょ」

司書「…ま、まぁ、感想は人それぞれだから…」

キモオタ「しかし、読み終わったでござるがアリス殿…いや、有巣殿は特に何かしたわけではないのでござるな、おとぎ話の中で」

ティンカーベル「だよね。浦島太郎と冒頭で知り合って、一緒に竜宮城に行って、帰って…ずっと浦島太郎と一緒にいるけど別に何かしたわけじゃないね」

司書「そうなんです。有巣さんはただそこにいるだけ…絵本や本ではアリスさんと浦島さんの間に何があったかまではわかりません」

キモオタ「でもこうして絵本が存在するという事は【浦島太郎】は存在しているわけですな。我輩が旅したおとぎ話の絵本に『キモータ』が登場しているように、きっと有巣殿も【浦島太郎】の世界に居たのでござろうけど…」

ヘンゼル「今となってはそれを知る事も出来ないだろうね、きっとその世界ではもう浦島太郎は死んでる。乙姫が悪人だとすれば竜宮城に行く術もないだろうし」

司書「なんだか、中途半端な情報ですいません。アリスさんを止める為の決定的な情報になればよかったんですけど、私にわかるのはここまでです」

キモオタ「いやいやwwwこの情報も十分有益なものでござるよ司書殿www」

キモオタ「おとぎ話を消しているアリス殿がこのおとぎ話を消さなかった理由…想像もつかないでござるが、確実に何か理由があるでござる。やはりというか、アリス殿には悪事を行う理由があるのでござる」

ティンカーベル「でもさ、どんな理由があってもやって良い事と駄目な事があるでしょ?アリスのやってるのは駄目な事の方だよ!」

キモオタ「まぁそうでござるけど…とにかくアリス殿と【浦島太郎】の関連についてはもう少し考えて見るとして……デザートも食べ終えた事でござるし、そろそろ出るでござるかwww」

司書「そうですね、少しお店の中も混んできましたから。帰りましょうか」スッ

158 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/04 00:34:33 Jyu 75/405

現実世界 サイゼリヤの前

司書「キモオタさん、すいません。今日はごちそうになってしまって…本当はこちらがお礼をしないといけないくらいなのに」ペコッ

キモオタ「なんのなんのwwwアリス殿の情報を教えてもらったお礼でござるよwww」

ティンカーベル「司書さん!ヘンゼルとグレーテルもまた一緒にご飯食べようね!」

ヘンゼル「まぁ、たまにはね」

グレーテル「うん……私も楽しかったの……また行こうね、ティンクちゃん……」

司書「うん、またねティンクちゃん。では私達はここで」

キモオタ「そうでござるかwwwまぁそんなにはなれていないからへいきでござるかwwwではお気を付けてwww」

ヘンゼル「……ねぇ、キモオタお兄さん」

キモオタ「なんでござるかなwww」

ヘンゼル「さっき食事の時、アリスがどんな魔法具を持っているか教えてくれたけど……あれは全て本当の事なの?」

キモオタ「ちょwww当然でござるよwww嘘をつく意味もメリットもないでござるしwww」

ヘンゼル「そっか…数え切れないほどの魔法具、時を止める力、世界移動もできるしいろんな世界の住人を捕えることもできるほどの力……アリスならそれを持ってる」



ヘンゼル「アリスと同じくらい強い力を手に入れたら、僕も……妹達を護れる」ボソッ

159 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/04 00:38:23 Jyu 76/405

キモオタ「ヘンゼル殿…?」

ヘンゼル「……いいや、何でもないよ。じゃあね、キモオタお兄さん」

キモオタ(ヘンゼル殿…先ほどもグレーテル殿や司書殿を護れないと嘆いていましたな。昨日の戦いで何もできなかったと思っているようでござるが……)

キモオタ(しかし、どういうことでござるか?その事を気に病んでいるとはいえ、アリス殿と同じくらい強い力を手に入れたら守れるかなんて言い出すなど……)

キモオタ(……も、もしや!ヘンゼル殿、二人を護る力を手に入れる為にアリス殿と手を組もうなどと考えているのでは……っ!?)

ティンカーベル「ねぇねぇキモオタ、なにぼーっとしてるの?司書さん達も行っちゃったし私達も帰ろうy…あれ?キモオタ?」

ドスドスドス

キモオタ「うおおぉぉぉっ!ヘンゼル殿ぉぉぉっ!!!」ズサァァァー

司書グレーテル「……っ」ビクッ

ヘンゼル「何なの…?全力で滑り込んでくるくらい急ぐ用事でもあったの?というか人が見てるから早く起き上がって欲しいんだけど」

キモオタ「ゼェゼェ……ヘンゼル殿……!」スクッ

ヘンゼル「だから何?僕に用事があるんでしょ、何だか知らないけど早く言ってよ」

キモオタ「お主、二人を護る事が出来る力が欲しいのでござるよね……?」ゼェゼェ

ヘンゼル「……うん。欲しいよ。それで、何?キモオタお兄さんにどうこうできることじゃないでしょ」

キモオタ「確かに、我輩にはどうにもできませんぞ。体力もなければ魔力も持ってないでござる……でも、我輩には仲間が居るでござる」

キモオタ「魔法の事ならば変化の術に長けた魔法使いを、植物の扱いに長けた魔女を…我輩は知っているでござる!体力の事ならば…身体を鍛えることでは右に出る者が居ない程の王を我輩は知っているでござる!その者に協力を仰ぐでござるよ…!」

キモオタ「まずは我輩と共にその王の元で、更なる力を手に入れるのでござる…!そうすれば妹殿達を護れますぞ、ヘンゼル殿…!」

160 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/04 00:39:59 Jyu 77/405

◆おしまい

今日はここまでです。七星剣に込められた魔法の設定はこのss独自のものです

ここまでに出たおとぎ話紹介
【泣いた赤鬼】
日本では泣けるおとぎ話として知名度が高いとされる、敵役としての登場が多い鬼を主人公とした作品
周囲から恐れられているけれど本当は人間と仲良くなりたい赤鬼と親友の為に一芝居打つ青鬼の友情を描いたおとぎ話。詳しくは二冊目参照。
時代背景や鬼の存在から日本昔話である印象が強いが、民間伝承や古典文学が出典ではなくわりと近代の創作童話。

このssでは赤ずきんと空気の精霊となった人魚姫、己の中に住まう鬼神と旅を続けています。
生来のもてなし好きもあって旅先々でその土地でのお茶の文化に触れる事が密かな楽しみ。最近は紅茶を淹れる事にも人間が飲めるお茶の温度にも慣れてきた。
空気の精霊になった人魚姫は飲食する事が出来ないので、せめて香りだけでもと最近はお香やアロマの類にも手を出している

最近の悩みは、自分好みのお茶の温度にすると紅茶葉がぐっずぐずになってしまう事。
それと寝相の悪さを改善する為眠ってる間動かないように毛布にくるまって眠る事にした赤ずきんが、結局毛布ごとベットから落ちている事。



かぐや姫とオズの魔法使い編 次回に続きます

197 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/12 23:51:52 vsp 78/405

現実世界 サイゼリアの前

キモオタ「裸王殿の元で鍛錬を積めばヘンゼル殿も必ず強くなれるでござる!お主の望みである妹殿達を護る為の力だって手に入るでござるよ…!だから…」

ヘンゼル「あぁ…もう、待って。ちょっと待ってよキモオタお兄さん…なんで二人の前で言っちゃうかな…」

グレーテル「……お兄ちゃん……やっぱりその事悩んでたんだ……そんな事気にしなくたっていいのに……」

司書「うん、ヘンゼルの気持ちは嬉しいけどその為に危ない事したりするのは……私達としては心配だよ、ね?グレーテル」

グレーテル「うん……私達は兄妹だから、助けあうの……お兄ちゃんだけが頑張る必要なんか、無いんだよ……?」

司書「そうだよ、ヘンゼルだけ悩まなくったっていいんだよ。私達、兄妹でしょ?一人だけ無理しなきゃいけないなんておかしいよ」

ヘンゼル「…いや、違う違う、そうじゃないんだ。ちょっと待って、二人とも誤解してるよ」

グレーテル「……誤解?」

ヘンゼル「キモオタお兄さんが話を大げさにしてるだけなんだよ、僕が欲しい力っていうのは……そもそも僕が欲しいのは『力』なんて大仰なものじゃないんだ」

ヘンゼル「ほら、三人の中じゃ僕が唯一の男でしょ?何かと物騒な現実世界じゃさ、不審者とかストーカーとか女の子を狙った犯罪も多いって聞くじゃないか」

ヘンゼル「だから僕が格闘技とか護身術とか覚えてさ…日常に潜む危険から二人を護るための手段が欲しいっていうだけの話なんだ。別にアリスやドロシーに立ち向かうほどの強力な力を欲してるわけじゃないんだよ」

グレーテル「そっか、そうなんだ……私、アリス達と戦えるくらい強くなりたいのかと思ってた……。すごく危ない事するって思った……そうじゃないなら、安心……」

キモオタ「いや、ヘンゼルd」

ヘンゼル「そうだよね?キモオタお兄さん…?だから僕に身体を鍛えるよう提案してくれたんだ」

キモオタ「……」

ヘンゼル「そういう事だから安心してよ、僕は少しキモオタお兄さんと話をしてから帰るから二人は先に帰っててくれる?早くその辺の不審者には勝てるくらいには強くなりたいしさ」

198 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/12 23:54:20 vsp 79/405

グレーテル「わかった、無理しちゃだめだよ……?」

司書「ヘンゼルがそうしたいなら止めないけど、あまり無理しないようにね。それにもう遅いんだからあまり長居しちゃダメだよ?キモオタさんにも迷惑が掛かっちゃうから」

ヘンゼル「そんなに言わなくても子供じゃないんだから平気だよ。二人こそ、ちゃんと大通りの明るい道を帰るようにね」

グレーテル「……うん、じゃあ先に帰ってるね……」

司書「それじゃあすいませんキモオタさん。ヘンゼルの事、お願いします」ペコッ

キモオタ「あっ…わ、わかったでござる。お任せあれwww」

スタスタスタ

ヘンゼル「……まったく、誤魔化すのも一苦労だよ。なんで二人の前であんな話をしたの?」

ティンカーベル「誤魔化す…?あっ!もしかしてヘンゼルの今の話、嘘だったの!?」

ヘンゼル「そうだよ。単なる不審者くらいなら魔力でねじ伏せられるんだから」

ティンカーベル「そっか…!良く考えたら魔力持ってるんだからそれくらい余裕じゃん!二人を騙すなんてひどいよ!」プンス

キモオタ「ヘンゼル殿……何故あのような嘘を?お主が欲しているのは、不審者を倒すなんて生易しいものじゃない筈でござる。アリス殿達の脅威からグレーテル殿達を護る為のもっと強力な力のはず…」

ヘンゼル「それをそのまま二人に言えば余計な心配を増やす事になるからね」

キモオタ「しかし、二人も言っていたでござろう。お主だけが頑張る必要は無いと…」

ヘンゼル「僕が頑張らなかったら誰が頑張るの?この世界にはパパさんはもちろん女王だって居ない…強い魔法を使えば暴走するグレーテルと普通の女性のお千代が戦えると思う?」

ヘンゼル「妹達は戦えるわけないんだ、だったら僕が戦う。僕が頑張る必要があるんだ、二人を護れるのは僕だけだ、兄だからね」

199 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/12 23:57:09 vsp 80/405

キモオタ「それはそうかも知れんでござるが…」

ヘンゼル「さっきの行動はうっかり過ぎるけど、これはキモオタお兄さんの純粋な善意だろうから…二人の前であんな話をした事を責めたりはしないよ」

ヘンゼル「……でも僕はキモオタお兄さんの仲間の世話にはならない。だから裸王って人の元にもいかない」

キモオタ「な、何故でござるかヘンゼル殿!魔法使い殿もゴーテル殿も裸王殿も善人ばかりでござる!必ずお主が強くなる為に協力してくれるでござるよ!?」

キモオタ「二人とも強力な魔力を持った魔女ですぞ、ヘンゼル殿の魔力を生かす方法を教えてくれるでござろうし…それに裸王殿にかかればたちまちムキムキになれるでござる!お主の望む力を手に入れるにはぴったりの…」

ヘンゼル「あのね…お兄さんにとっては信頼できる仲間かもしれないけど、僕にとっては赤の他人なんだ。信用しろなんていう方が無茶な話なんだよ、キモオタお兄さん」

ヘンゼル「それに【シンデレラ】の魔法使いもラプンツェルの母親も…僕にとっては素性の知れない魔女でしかない。僕達が魔女に何をされたか忘れた?」

キモオタ「…いや、覚えてますぞ。悪かったでござる、少々軽率な提案でござった」

ヘンゼル「お兄さんのことだから魔女の名を出した事に悪意が無い事くらいはまぁ、解るよ」

ヘンゼル「それに女王がそうであるように善人の魔女も居る事は理解している。けど…それでも、軽々に魔女を信用するなんて考えはとてもじゃないけどできないんだ」

キモオタ「な、ならば…さっき言ったように裸王殿の元で身体を鍛えるでござるよ!裸王殿にかかれば短期間で細マッチョも夢では無いですぞ…!」

ヘンゼル「危険なんてのは急に襲いかかってくるのに、悠長に身体を鍛えている暇なんか無いでしょ。それに、僕には他に頼るあてがあるんだ」

ヘンゼル「だから、キモオタお兄さんとは一緒にはいかない。…僕はお兄さんとは別の方法で強くなる」



ヘンゼル「昨日ね…アリスに仲間になって欲しいと言われたんだ、手を貸せば僕に協力してくれるともね。僕は妹を護れる立派なお兄ちゃんになれる…今度こそ、ね」

200 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/12 23:59:13 vsp 81/405

キモオタ「やはり思った通りでござるなヘンゼル殿…!」

ティンカーベル「はっ!?アリスに仲間になって欲しいって言われたって…!ちょ、ちょっと待ってよ!それじゃヘンゼルはアリスに味方するって事!?」

ヘンゼル「君達にアリスの強さを聞いて…今じゃそう考えてる。言うつもりは無かったけど、黙っていてもいずれは解る事だしね」

ティンカーベル「駄目だよ!アリスの仲間になるってどういう事かわかってるの!?私達とアリスはもう自分達の事情だけで戦ってるわけじゃないんだよ!?」

ティンカーベル「アリスはおとぎ話を消し過ぎてる!だからいろんな世界のたくさんの人からも恨まれてるし嫌われてるんだよ?アリスの仲間になるって事はそういう人たちも敵にしちゃうって事なんだよ!?」

ティンカーベル「それにそれだけじゃないよ…!雪の女王や司書さんやグレーテルや…私たちとも敵同士になっちゃうんだよ?せっかく友達になれると思ったのに…ヘンゼルはそれでもいいの!?」

キモオタ「ちょ、ティンカーベル殿。気持ちはわかるでござるが落ち着いて話をするでござるよ、怒鳴っても解決するわけでは無いですぞ」

ティンカーベル「冷静になんかなれるわけ無いしなっちゃダメなんだよ!今は怒鳴ってでも喚いてでも何してでもヘンゼルを止めないと大変な事になるんだよ!キモオタはそれがわかんないの!?」

キモオタ「わかってるでござるよ、ならばなおさら感情的になっては駄目でござろう。ヘンゼル殿だって考え無しに決断したわけで無いと思いますぞ、まずはそれを聞かねばなりませんぞ」

ティンカーベル「わかった…ヘンゼル、なんでなの?なんでそんな決断しちゃったの?」

ヘンゼル「難しい理由なんか無いよ。僕がアリスの仲間になれば魔法具を譲って貰える、そうすれば僕はずっと強くなれるし二人は今以上に安全に暮らせる」

ヘンゼル「それに、僕が仲間になる条件として『あの二人に絶対危害を加えない事』をアリスに飲ませれば、二人はアリスの脅威からは解放される。その条件を飲まない理由がアリスには無いからね」

キモオタ「お主がアリス殿に手を貸す事で二人を護る…あの二人がそれを望んでいると思うのでござるか?」

ヘンゼル「思わないよ。でも、僕は二人を護る力を手に入れられるし、少なくとも二人はアリス側の攻撃や策略で傷付く事はなくなるんだ」

201 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/13 00:03:05 mk2 82/405

キモオタ「例え安全に暮らせたとしても、ヘンゼル殿が悪事に手を染めたとなると二人とも悲しむと思うのでござるが…それでもいいと?」

ヘンゼル「僕がやらなきゃ二人を護れないんだ、少しは悲しい思いをするかもしれないけど仕方がない事だよ…身の安全には変えられないんだから」

キモオタ「ならば…二人を護る為なら、別の世界を消滅させる事も殺しに手を染める事も厭わないと?アリス殿の仲間になるとはそういう事でござるぞ?」

ヘンゼル「二人を護る事がお兄ちゃんである僕のすべきことだ。その為なら殺しでも何でもする」

キモオタ「……ヘンゼル殿、それは本心でござるか?」

ヘンゼル「……当然でしょ、僕は本気だ」

ティンカーベル「つまりヘンゼルはグレーテルと司書さんの安全のために、アリスの仲間になるっていう決断をした……そういう事?」

ヘンゼル「そうだよ。今のままの僕じゃあ妹達を護ることなんか出来ない、だから力が欲しい…二人を救うための力、魔法具が欲しいんだ」

ティンカーベル「うー…ヘンゼルが二人の事大好きなのは聞いてるし護りたいっていうのも強くなりたいのもわかるよ?でもだからってアリスの味方するのは絶対おかしいよ!」

ティンカーベル「キモオタも言ってたけど、あいつの仲間になるって事は関係ない人をたくさん殺さなきゃいけないんだよ?そんな事しちゃダメだよ!絶対ダメ!」

ヘンゼル「……仕方が無いでしょ、二人を護るためだ。そのためなら僕は悪事でも何でもする」

キモオタ「なるほど、それがヘンゼル殿の答えでござるか」

ティンカーベル「キモオタ…?」

キモオタ「ヘンゼル殿の考えは良くわかったでござる。我々がこれ以上引きとめても無駄でござるよティンカーベル殿、もう好きにさせるでござるwww我々は帰って夜食でもつつくでござるよwww」

202 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/13 00:05:18 mk2 83/405

キモオタ「さて解散しますかなwwwヘンゼル殿、もう夜も遅いでござるから気を付けて帰るでござるよwww」

ヘンゼル「…そうだね、気を付けて帰るよ。それじゃあ」スッ

ティンカーベル「キモオタ!?なんで諦めちゃうの?ヘンゼルはちょっと追いつめられてちゃんと考えられなくなってるだけだよ!このままじゃヘンゼルはもうアリスの仲間になっちゃうんだよ!それでもいいの!?」

キモオタ「そうは言ってもwwwヘンゼル殿がそう決めたのならもうそれでいいでござろうwwwもう我々に出来る事は無いですぞwww」

キモオタ「まぁ、何だかんだ言っても…結局ヘンゼル殿も両親やお菓子の家の魔女や【キジも鳴かずば】の村の連中と同類だったって事でござるよwww」コポォ

ヘンゼル「……っ」ピタッ

ティンカーベル「ヘンゼルがその人たちと同類?どーいうこと?」

キモオタ「だってそうでござろう?自分達が生きる為に罪の無い子供を捨てた両親も、魔力を手に入れる為に何も知らない兄妹を利用した魔女も、川を鎮める為に無実の弥平殿を人柱にした村の連中も…」

キモオタ「結局は自分の都合で罪の無い他人を殺そうとしているわけでござるwww自分の妹達を護りたいからといって無関係の他人を殺そうとするなど、完全にヘンゼル殿もそやつらと同類でござるよwww」コポォ

ヘンゼル「……ちょっと待ってよ、キモオタお兄さん」スッ

キモオタ「おおっとwww聞こえてしまいましたかなwwwこいつは失礼いたしましたなwwwお気になさらずwww」コポォ

ヘンゼル「僕があいつ等と同類?馬鹿げた事を言うのも大概にして欲しいよ、僕はあいつ等とは違うんだ…!同類だなんて言い方はやめてよ」ギロッ

キモオタ「ドゥフフwww完璧に同類でござろうwwwそれとも他の者と違って自分の望みだけは特別だとでも思ってるのですかな?wwwないないwww結局は他の連中と同じ自分勝手な人殺しでござるよお主はwww」

ティンカーベル「ちょ、ちょっと!私が言うのもなんだけど、キモオタ言い過ぎだよ!ヘンゼルが可哀そうだよそんな言い方したら」ヒソヒソ

キモオタ「何を遠慮しているでござるかティンカーベル殿www本当の事なんでござるから遠慮なくそこの自己満シスコンに言ってやればいいんですぞwww」コポォ

203 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/13 00:08:44 mk2 84/405

ヘンゼル「やめてよ、僕はあいつ等とは違う!グレーテルやお千代を苦しめたあいつ等とは違うんだ!」ギリッ

キモオタ「ほうwwwお主が他人を殺せば、その者の家族や友人も悲しみ苦しむのでござるから一緒でござろう?おおっと、お主にはそんなこと関係無いのでござったな。妹の事しか頭に無いのでござるもんねwww」

キモオタ「他人はどうだっていいけど妹が苦しむのは許せないとかwwwこじらせ過ぎているにも程があるというかwwwヘンゼル殿はシスコンの鑑ですなwww」

ヘンゼル「うるさい…!黙れ黙れ!お前なんかにそんな風に言われる筋合いなんか無い…!」ゴゴゴ ガッ

キモオタ「おぶっ」ガゴッ

ティンカーベル「あっ、キモオタが殴られた!そんな風に挑発するようなことばっかり言うから…!」

キモオタ「ブヒヒwww図星ですかなwww今まで散々大人は汚いとか信用できないとか言っておきながら、結局その大人と一緒の事をしようとしているではござらんかwww正直クソワロタでござるよwww」

ヘンゼル「黙れよキモオタ。お前は大好きだった両親に捨てられた事があるのか!大切な妹が奴隷同然の扱いを受けているのを黙って見ていることしかできない事は?家族のように接してくれた人が自分のせいで殺されるなんて事があったのかよ!」

ヘンゼル「あるわけないよね、僕は所詮おとぎ話の主人公。お前達現実世界の人間が作り出した不幸な少年像だ、食べ物にも住むところにも困らない平和な世界でのうのうと生きてるお前に僕達の気持なんかわかるわけが無いんだ!」

キモオタ「そうですな、全然わかりませんぞ。切羽詰まってるとはいえ、アリス殿のやっている事を知りながら仲間になろうとするお主の気持ちなどわからんでござるよ!」

ヘンゼル「仕方ないだろ!他にグレーテルやお千代を救う方法が無い!魔法も使えない子供の僕じゃ、魔法具を手に入れるしかあいつ等を助けることなんかできない!アリスの仲間になるしか方法が無いんだ…!」

キモオタ「そんな事無いでござろう!何故そこでアリス殿に頼るでござる!?お主には困った時に頼れる相手が大勢いるでござろう!何故仲間を頼ろうとしないのでござるか!」

ヘンゼル「そう簡単な問題じゃないんだよ。僕は兄だ、妹達を頼るなんて出来るわけがない。カイや女王に話しても心配かけるだけだ、今更他のおとぎ話の世界の大人に頼るなんて出来るわけがないだろう!」

キモオタ「そうやってつまらない意地を張って…お主を苦しめた者達と同類になってどうするでござるか!お主のそんな姿を見て一番傷付くのが誰なのか、まだわからんのでござるか!」

ヘンゼル「……っ!」

キモオタ「グレーテル殿や司書殿を悲しませてまで彼女等を護る事に何の意味があるのでござるか…!お主がしっかりしなくてどうするでござるかヘンゼル殿!」

204 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/13 00:10:55 mk2 85/405

ヘンゼル「……」

キモオタ「ヘンゼル殿は昨日…司書殿を助ける為に自分は何も出来なかったと思っているのでござったな?」

ヘンゼル「…昨日だけじゃないよ。僕はいつだって何も出来ない、無力な子供だ」

ヘンゼル「両親に森に捨てられた時も目印を失ってしまったし、奴隷同然にされたグレーテルを助けられず、自分のせいでパパさんが人柱にされたのに何もできなかった…!」

ヘンゼル「僕はいつだって家族を助けたかったんだ!でも、僕はいつだって何もできない…!魔力があったって魔法を使えもしない!無力で不甲斐ない兄でしかない…!」ポロポロ

ティンカーベル「そんな事無いよ!昨日だって一生懸命戦ったでしょ!」

ヘンゼル「結果が残せなかったら意味なんて無いんだよ、ティンカーベル。だから僕は、強くなりたかった」

キモオタ「それでアリス殿に頼るという選択をしたわけですな。力を持つ者の仲間になるというのはわかりやすい方法でござるからね」

ヘンゼル「でも、キモオタお兄さんの言うとおりだよ。僕の選択は結局妹達を苦しめる事になる…僕は必死になりすぎた挙句二人を苦しめようとしただけだった」

キモオタ「…そうですな。過去に妹を救えなかった後悔と焦りで視野が狭くなっていたでござる、力を得る事は護るための手段でござるのに、それが目的になってしまっていたでござるな」

ヘンゼル「僕はどうしようもなく不甲斐ない兄だ、護りたいなんて言葉ばかり並べて実際には何一つ出来ない…!」ポロポロ

ティンカーベル「ヘンゼル!まだ大丈夫だよ!ちょっと道を間違えそうになっちゃっただけじゃん!こっから頑張れば良いんだよ!元気出して、ね!」

ヘンゼル「頑張るなんて言っても…僕には、どうしたらいいかすら…わからない」

ティンカーベル「あのね、困った時は誰かに頼ってもいいんだよ?キモオタは食い意地はってるしキモいけど、頼ってもいいと思うよ?」

キモオタ「ちょwww思わぬ罵倒がwwwまぁ事実、我輩はアリス殿のように豊富な魔法具も時を止める能力も無いでござるし、ぶっちゃけ素の戦闘能力ではその辺の野良犬以下でござるwww」コポォ

ヘンゼル「しかし、我輩はおとぎ話の世界の旅で様々な物を得ているでござる。ヘンゼル殿の妹達を護りたいという願い…その手助け、出来ると思いますぞwww」

205 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/13 00:12:38 mk2 86/405

ヘンゼル「…頼っても、いいかな。僕、キモオタお兄さんには散々口汚い事言ったけど」

キモオタ「なーにを気にしているのでござるかwwwもちろんいいでござるよwww大船に乗ったつもりでいてくだされwww」

ティンカーベル「なんだかすっごく自信ありそうだけど、なにかプランでもあるの?またノープランじゃないよね?」

キモオタ「我輩がいつもノープランだと思わない事ですぞwwwズバリ!雪の女王殿の力を借りるのでござるwww女王殿ならば何とか出来るでござろうwww」コポォ

ティンカーベル「えっ…それ雪の女王に問題を丸投げしてるだけなんじゃ…」

キモオタ「丸投げとは失礼なwww他の手段といっても別の魔女や裸王殿の力を借りるのはヘンゼル殿の気が進まないでござろうしwww」

ヘンゼル「いや、女王の力を借りるのは無理だよ。アリスやドロシーが悪さしてるこの状況で僕が二人を護る力が欲しいなんて言えば、危険な事をしようとしてるって思われる。きっと断られるよ」

キモオタ「そうでござろうな、ヘンゼル殿達の話を聞いてると家族想いな方のようでござるから。ヘンゼル殿の身に危険が及ぶ事を良しとしないでござろう」

ティンカーベル「最悪の場合、そんなに危ないなら帰ってきなさいって言われちゃうかも…」

ヘンゼル「それは困るよ、現実世界に留まらないとお千代の夢は叶えられないんだから」

キモオタ「そこで我輩の出番なのでござるよwww我輩が間に入って、女王殿を説得して力をお借りできるよう頼んでみるのでござるwww」

キモオタ「我々がいくつものおとぎ話の消滅を防いだ事は女王殿の耳にも入っているでござろうし、ヘンゼル殿がキチンと生活してる事など織り交ぜて説得すれば問題ありませんぞwww」

ヘンゼル「そんなにうまくいくとは思えないんだけど…言っておくけど雪の女王は相当強い魔力を持ってる。下手な事をすればキモオタお兄さんの氷像が立つ事になるよ?」

キモオタ「またまたビビらせようったってそうはいきませんぞwwwとにかくやってみるでござる、駄目なら次の方法を考えるまでですぞwwwでは早速ティンカーベル殿、頼みますぞwww」

ティンカーベル「うんうん、善は急げだもんね!じゃあ行くよーっ!【雪の女王】の世界へ!」キィィィィィンッ

ヘンゼル「えっ、今から…!?ちょっと待ってよ、僕まだ女王に合う為の心の準備g」

ヒュン

206 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/13 00:14:14 mk2 87/405

雪の女王の世界 女王の宮殿前

ビュオオォォォォ

ティンカーベル「到着ー……って寒い!なにこれ…!すっごく寒いよこの世界!すっごい吹雪…!」ブルブル

ヘンゼル「これくらいの吹雪だったらまだ穏やかな方だよ、ひどい時は目の前すら見えないから」

キモオタ「ぶひぃぃぃぃっ!!冷たい冷たい寒い寒い!我輩の脂肪をもってしても太刀打ちできないですとぉ!?こ、凍えるでござるぅー!」ガクガク

ヘンゼル「というか二人とも馬鹿なの?【雪の女王】のおとぎ話知っていれば…いや、タイトルからして極寒の地が舞台だって解るでしょ…なんで準備なしでいきなり来たの?」

ティンカーベル「そ、そんな事今更言ってもし仕方ないいいいででしょ!」ブルブル

ヘンゼル「ほら、僕の服の中に入りなよ…羽が凍りついたって知らないよ?」スッ

ティンカーベル「うぅー、ありがとね!でもなんでヘンゼルは平気なの?」

ヘンゼル「平気ってわけじゃないよ、実際凍えそうなほど寒い。昔はいつも女王に冷気を吸い取って貰っていたから、身体が慣れているのかもね」

キモオタ「れれれれいきにななななれるなどありりええええるのでででで」

ヘンゼル「何言ってるか解らないよ…幸い女王の宮殿のすぐ目の前だ、急ごう」

ティンカーベル「うわーっ、氷で出来た宮殿なんて初めて見たよ…すっごく綺麗だねー。女王が魔法で作ったのかな?確か冷気を操れるんだっけ?」

ヘンゼル「うん、宮殿に着いたら女王に冷気を吸い取って貰おう」

キモオタ「ぜぜぜひひひそそうししてほほほしいいいいででですすぞぞ」ガタガタブルブル

207 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/13 00:17:58 mk2 88/405


雪の女王の世界 女王の宮殿

ガチャッ

ヘンゼル「ほら、着いたよキモオタお兄さん。早く入りなよ、温かい飲み物でも入れるよ」

キモオタ「ぶひひぃぃぃぃっ!我輩、今なら冷凍豚肉の気持ちを代弁できますぞ!」ドサーッ

ティンカーベル「うわー、建物の中も氷で出来てるんだ…なんか神秘的って感じだねー、外も中もすごくセンスいいよね!ハイセンス!」

ヘンゼル「それ、女王に直接言ってやると良いよ。きっと喜ぶから」フフッ

スッ

カイ「騒がしいと思ってきてみれば…ヘンゼルじゃねぇか、急に来るなんて珍しいな。どうした?」

ヘンゼル「あぁ、ただいま。女王に話があって来たんだけど…今宮殿に居るかな?」

カイ「さっき帰ってきて今は自分の部屋に居るだろうぜ。お前今日は泊まるのか?急に来るから飯もシチューの残りしかねぇぞ、食うか?」

ヘンゼル「ありがとう。でも食事は済ませてきたしグレーテルもお千代もおいて来てるからさ。話がすんだら今日はすぐに帰るよ」

カイ「そうか。話ってのは…そいつらも関係ある話なんだろ?だったら応接間で待ってろ、女王呼んできてやるから」

ヘンゼル「察しが良くて助かるよ。じゃあ、僕はお茶入れてくるからティンカーベルとキモオタは応接間で待っていてくれるかな、そこの突き当たり右の部屋だから」

キモオタ「わかりましたぞwww我輩のお茶熱々で頼みますぞwww」コポォ

ティンカーベル「さっきの子がカイかな?頼りになりそうな感じだったのに、ヘンゼルってホントに周りに頼ろうとしないんだね」ヒソヒソ

キモオタ「家族だからこそ逆に頼りづらいところもあるのかもしれませんな。ささ、我々は応接間とやらへ急ぐでござるwww何か食べ物も出てくるやもしれませんからなwww」

208 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/13 00:22:07 mk2 89/405

女王の宮殿 応接間

ティンカーベル「ねぇねぇ、女王が来たらどーするつもりなの?何からお話するか決めてる?」

キモオタ「そうですなぁ…まずは我輩達の用事を済ませますぞ。アリス殿を止めるべく女王殿も動いているようなので、挨拶しておきたかったでござるしwww」

ヘンゼル「…そうして貰えると助かるかな、いきなり僕の要件を伝えるのはちょっとね…」カチャカチャ

ヘンゼル「グレーテルとお千代を護るための力が欲しい。だから女王に協力してほしい…なんて、やっぱり断られそうで恐いよ」

ティンカーベル「でも、自分の為とか悪い事するわけじゃないんだし、むしろ褒めてくれるんじゃない?妹を護るために頑張るなんて偉いねって!」

キモオタ「確かにそうですなwwwまったくヘンゼル殿は意外とビビリですなwww」コポォ

ヘンゼル「楽観的すぎるよ。女王は優しいけれど厳しいところだってちゃんとあるんだ、それに怒らせたら恐いんだから二人とも失礼な事言わないでよ?」

ティンカーベル「厳しい人なんだ…ちゃんとあいさつしなきゃだからね!キモオタは失礼なことよくするんだから!」

キモオタ「ちょwwwティンカーベル殿wwwそれはお互いさまでござろうwwwっと、噂をすれば来たようでござるぞ…!」

ガチャッ

雪の女王「あぁ、ヘンゼルッ!どうしたんだ急に訪ねてくるなんて、ひょっとして私の顔が見たくなったのか?フフッ、実に可愛い奴だな君は」ナデリナデリ

ヘンゼル「ちょ、女王やめてよ。今日は話があって来たんだよ」グシグシ

雪の女王「なんだそうなのか?だが随分と身体が冷えてしまってるじゃないか…今、冷気を吸い取ってあげよう。さぁ、身体の力を抜いて私に身を委ねると良い」フフッ

ヘンゼル「いや、僕は後で良いから人前でアレするのはやめtむぐっ」バタバタ

ティンカーベル「なんかいきなりヘンゼルが撫でくり回されたかと思ったら今度はキスされてる…!?なにが起こってるのか理解出来てないんだけど…」

キモオタ「我輩もでござるから安心するでござるwwwあれが雪の女王殿www我輩には弟を溺愛してるお姉さんにしか見えないのでござるがwww」コポォ

210 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/13 00:26:17 mk2 90/405

ヘンゼル「…どうにかならないのその冷気吸収の方法」キッ

雪の女王「なんだ、照れているのかヘンゼル?フフッ、可愛い奴だ…次は君だティンカーベル、宮殿の外は冷えただろう?ほら、おいで」クスクス

ティンカーベル「えっ、あの、私は恥ずかしいから遠慮しtむぐぐ」バタバタ

キモオタ「なんというか、なかなか愛に溢れた方でござるなwwwお主の家族はwww」

ヘンゼル「…否定はしないよ。両親の居ない僕達を可愛がって養ってくれてるしね、でももう少し人の目とか気にして欲しいんだよ僕は」フゥ

雪の女王「さぁ、これで寒さを感じないだろう。改めて挨拶しておこう、始めまして私が雪の女王だ。今日は私の宮殿にようこそ、好きにくつろいでくれて構わないよ」フフッ

ティンカーベル「あっ!挨拶遅れちゃった!えっと、【ピーターパン】のティンカーベルだよ!色々協力し合う事になると思うからよろしくね女王!」フワフワ

雪の女王「ああ、よろしくティンカーベル。そして、君が…」

キモオタ「お初にお目にかかりますぞwww我輩は現実世界に住むキモオタという者でござるwww女王殿のお噂はかねがねwww」コポォ

雪の女王「フフッ、君の噂も聞かせて貰っているよ。数々のおとぎ話の消滅を食い止めたという二人に会えて、私は嬉しいよ」クスクス

キモオタ「我輩もでござるwwwそれででござるな、少々言いにくいのでござるが…我輩も吹雪に襲われて相当身体が冷えているので、冷気を吸収をしてもらえたらとwww」コポォ

雪の女王「ああ、すまない。厚手のコートを用意したから、君はそれを着こんでくれ」

キモオタ「ちょwwwなんで我輩だけコートwww冷気吸収はwww」

雪の女王「フフッ、私も一応女王だからな。男性相手にみだりに口づけを迫ったりするような淫らな行動は慎まなければならない」クスクス

キモオタ「体よく断られたような気がするでござるwwwまぁコートでも全く問題は無いのでござるがwwwわずかに残るこの仲間はずれ感www」コポォ

212 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/13 00:29:30 mk2 91/405

雪の女王「さて、挨拶も済ませた事だ。早速本題に入ろうか、私に話があるんだったな」

ヘンゼル「そうだね、えっと…キモオタお兄さん、お願い」

キモオタ「では早速www女王殿に会いに来たのは他でもない、アリス殿の件についてでござるよwww」

ティンカーベル「そうそう、こないだあの感じ悪い奴と白鳥が私達の所に来て、女王様の事を教えてくれたんだ。女王様もアリスを止めるために頑張ってるって!」

キモオタ「そうでござるwww女王殿と我々は同じ目的でござるし、ここはアリス殿を止めるべくうまく協力したいと思っているわけでござr」

雪の女王「ああ、すまない。違うんだキモオタ、ティンカーベル」

キモオタ「違うとはどういうことでござるかな?」

雪の女王「アリスの件について話したい事は多いが…私がまず聞きたいのは、何故この場にキミが…ヘンゼルが居るのかという事だ」

ヘンゼル「……」

雪の女王「ヘンゼル、私に言いたい事があったから宮殿に来たんだろう?きっとそれは相当大切なことだ、違うか?」

ヘンゼル「……うん、大切なお願いがあって来たんだ」

雪の女王「だろうな、そうでなければキミが現実世界の大人であるキモオタと行動を共にするわけがない」

雪の女王「さぁ、私にお願いしたい事とは何なんだ?言ってみるといい」

キモオタ「ヘンゼル殿、大丈夫でござるか?我輩が時間を稼ぐというのも…」ヒソヒソ

ヘンゼル「いいよ、断られるのを恐れてるようじゃ…不甲斐ない兄のままだから」ボソッ

ヘンゼル「女王、僕はグレーテルとお千代を護る力が欲しい。どんな脅威や悪意からも妹を護れるようになりたい、だからその手助けをして欲しいんだ」

213 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/13 00:35:38 mk2 92/405

雪の女王「なるほどな、現実世界に住んでいるとはいえおとぎ話の住人である二人がアリスのたくらみに巻き込まれないとは言い難い」

雪の女王「だから側にいる君が、アリスの脅威から二人を護りたい…そういうことだな、ヘンゼル?」

ヘンゼル「アリスだけじゃない…おとぎ話の世界が混乱に陥ればアリス以外の脅威も生まれる…どんな敵が相手でも、僕は二人を護りたい」コクリ

雪の女王「今、もっとも脅威となるのはアリスだが…彼女は凄まじい戦力を手にしている。魔法具も相当な数を手にしている、キミに強力な魔力が宿っているとはいえ敵う相手じゃない。それは理解しているのか?」

ヘンゼル「…アリスが強かろうと、他の奴らが恐ろしかろうと、僕は強くなりたい。僕は二人の兄だから、だから女王には僕に協力してほしいんだ!」

ヘンゼル「僕はもう妹達が苦しむ姿を見ることしかできない様な弱い子供のままでいるのは嫌なんだ。僕が弱いせいで二人を苦しめてしまいそうにもなった。だから、僕は強くなりたい…!」

雪の女王「そうか、わかった。妹を護れない兄なんて恰好悪いからな、協力してあげるとしよう」スッ

ヘンゼル「えっ…」

ティンカーベル「えっ!?いいの!?なんか思ってたのと違うよ!?」

キモオタ「なんだか拍子抜けなくらいあっさりしてましたなwww」コポォ

雪の女王「そうだヘンゼル、キミに託そうと思っていた魔法具があるんだ。アナスンの書いた【火打ち箱】のおとぎ話は知っているな?そこの主人公の兵隊から火打ち箱を借りて来たんだ、君ならきっと使いこなせる」

ヘンゼル「…女王、なんで僕の頼みを聞いてくれたの?」

雪の女王「フフッ、なんだそれは?断った方が良かったのか?」クスクス

ヘンゼル「そうじゃなくて…絶対、断ると思ってた。僕は散々無茶をしてきたから、きっと女王は僕を止めるって思ってたよ」

雪の女王「なんだ、よくわかってるじゃないか。私も内心、無茶をし過ぎる君にこの魔法具を託すのは心配だ。君は良く暴走するうえに、自分の身を顧みない危うさもある…今この瞬間でもやはりやめた方がいいかもと思っているんだ」クスクス

雪の女王「だが、大切な妹を護れない君の辛さだって理解出来てる。君がその為に強くなりたいというのなら、私はキミに力を貸すよ」

雪の女王「ただ、約束してくれ。全てが終わった時、グレーテルとお千代だけでなく君自身の無事な姿を私に見せてくれるという事をな」

214 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/13 00:37:21 mk2 93/405

今日はここまでです

ここまでに出たおとぎ話紹介
【赤ずきん】

世界的におとぎ話の中でも高い知名度を誇る作品。
お婆ちゃんのお見舞いに向かうも言いつけを破って寄り道してしまう少女と、少女を食べようと策を巡らす狼のおとぎ話。詳しくは二冊目参照。
【シンデレラ】と同様にグリム童話版とペロー童話版など複数の展開が存在する。このssでは日本は一般的なグリム童話版をベースとしています

このssでは猟師から託されたマスケットを携え世界を渡る頭巾をかぶり、【赤ずきん】を消滅させたドロシー達への復讐を目的に赤鬼達と旅をしています。
【人魚姫】の世界での一件でお婆ちゃんに教わったおとぎ話の知識が自分自身の武器であると気が付いた彼女は、時折雪の女王の書庫や魔法使いの屋敷に訪れて新たな知識を得ているようです
以前よりも精神的な余裕を持って旅をする事が出来ているようです。

最近後悔している事は、赤鬼達に知られないよう密かにブラックコーヒーを飲む練習をしている事を人魚姫に暴露されて、照れ隠しにマスケットをぶっ放してしまった事


かぐや姫とオズの魔法使い編 次回に続きます

230 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/17 23:59:20 eWg 94/405

ヘンゼル「…うん、約束するよ。次にこの宮殿に帰ってくる時は三人一緒だ、その時には必ず三人とも元気な姿を女王に見せる」

雪の女王「ああ、その日を楽しみにしておくよ。それと…この約束を破ると悲しむ人間が少なくとも四人いる、それを忘れないようにな?」

ヘンゼル「うん、ありがとう女王。忘れないようにするよ」

雪の女王「よろしい。それじゃあこの魔法具、火打ち箱はキミに託そう。使い方は知っているな?」

スッ

ヘンゼル「うん、知ってる…。これが火打ち箱か…【火打ち箱】のおとぎ話を読んだ事はあるけど、僕に使いこなせるかな…」ゴクリ

雪の女王「使いこなせるさ、私はそう信じている」

ヘンゼル「魔法具が欲しいとは言ったけど、こんなに強力な魔法具を手にする事になるなんてね…扱いには気を付けないと」

キモオタ「ちょwwwどうしたんでござるかヘンゼル殿www珍しく弱気でござるなwwwいつもの自信は何処へ行ったのでござるかwww」コポォ

ティンカーベル「いえてる!なんかビビってる感じだよね!そんなにその火打ち箱って魔法具ってすごいの?」

ヘンゼル「あのさ…二人ともこの火打ち箱がどんな魔法具か知らないのに僕の事煽ってない?」

ティンカーベル「知らない!そのおとぎ話まだ読んだことないしね」

キモオタ「右に同じですぞwwwどんな魔法具なのか教えていただきたいですなwww」

雪の女王「なんだ、現実世界ではあまり有名じゃないのか?ヘンゼル、この二人に火打ち箱がどんな魔法具なのか教えてやるといい」クスクス

ヘンゼル「しょうがないな…火打ち箱はね、一言でいえば召喚装置だよ」



ヘンゼル「この火打ち箱を打ちつければ魔獣を呼び出す事が出来るんだ。主人の命令を忠実にこなす、従順な番犬をね」

231 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/18 00:03:03 bpS 95/405

ヘンゼル「一度打ちつければ茶碗程の大きさの瞳を持つ番犬を。二度打ちつければ水車程の大きさの瞳を持つ番犬を呼び出す。三度打ちつければ円塔程の大きさの瞳を持つ番犬だ」

ティンカーベル「えーっ!?茶碗ほどの瞳ってだけでおっきいのに水車とか塔とか…その魔獣めちゃくちゃ目がでかいじゃん!なにそれ、想像しただけでキモイよ…!キモオタの比じゃないよ!?」

キモオタ「魔獣のキモさ比較の為に我輩を引き合いに出すのはやめていただきたいwww」コポォ

ヘンゼル「別に目だけが大きいわけじゃなくてさ、そもそも身体が大きいってのもあるんだよ。それでも異形である事に違いは無いけど」

ティンカーベル「とりあえず私が居ない場所で呼び出してほしいよね…ちょっと怖いよね、魔獣は」

雪の女王「そう怯える事は無いさ、主人が…ヘンゼルが命令しなければ他人に危害は加えない。ただ逆に言えば、ヘンゼルの命令ならばどんな事でも遂行する」

ティンカーベル「どんなことでも?」

雪の女王「ああ、どんな事でもだ。そこに善悪の区別や正義の有無は関係ない、主人の命令に従う事だけが魔獣達のルールだ」

ヘンゼル「実際【火打ち箱】でもこの魔獣達はお姫様を誘拐するのに加担したり、その罪で捕まった主人公の命令で国王や兵士達を噛み殺したしね…使い方を誤れば恐ろしい結果を招く魔法具だ」

ティンカーベル「外見も怖そうだけど命令の為ならなりふり構わないって、恐いね…」

キモオタ「まさに魔獣というわけでござるか…」

雪の女王「だが正しく使えばこれほど頼もしい奴等はいないさ。道具を生かすも殺すも使い手次第、この魔法具はその部分が色濃く出ると言うだけ」

雪の女王「主人であるヘンゼルが善の心を持って正しく使えば恐ろしい事なんて何もない。ただ、ヘンゼルの心が憎しみに染まっていては悲惨な結果は免れないだろうな」フフッ

232 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/18 00:05:18 bpS 96/405

ティンカーベル「うーん、でもヘンゼルってそこが一番怪しいよね。過去にいろいろあったから…結構、憎しみに染まってるっぽいし。っていうか染まってる」

キモオタ「ちょwwwティンカーベル殿直球www」コポォ

ヘンゼル「…ティンカーベル。キミは僕の手助けのためにここに来てくれたんじゃなかったの?」

ティンカーベル「心配して言ってるんでしょ!ヘンゼルは大人の事も現実世界の人の事も嫌いだから、その人たちにグレーテルが何かされたら絶対魔獣に襲いかからせるじゃん!」

ヘンゼル「いくらなんでもそこまでしないよ、この魔法具は二人を護るための力だ。報復をする為の力じゃないでしょ」

キモオタ「…いや、ぶっちゃけるとヘンゼル殿は確実に報復のために襲撃させると思うでござるwww」

ヘンゼル「……」

雪の女王「フフッ、キミ達は随分と素直だな。なぁヘンゼル、この二人は本当に君に協力しているのかい?」クスクス

ヘンゼル「…僕が聞きたいよ。どうなってるんだよ僕のイメージ」

雪の女王「だが、私も二人の意見に賛成だ。妹達が傷つけられて頭に血が上ったヘンゼルが魔獣達をけしかける…想像するのは容易いな」クスクス

ヘンゼル「女王まで…。確かに僕が今までしてきた事を考えれば、そう思うのも仕方ないかもしれないけどさ、だからって…」

雪の女王「まぁそう拗ねるなヘンゼル。君の事は信用している、だからこそ…君のそういった部分を治す為にも課題を出そう。その課題が達成できないなら適正なしと判断して火打ち箱は返して貰う、それでどうだい?」

ヘンゼル「課題…嫌な予感しかしないけど、何をさせられるの?」

雪の女王「君に世界移動の手段を与える、そして色々なおとぎ話の世界を周って…その世界の人々と交流する事。それが君の課題だ」

233 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/18 00:08:35 bpS 97/405

雪の女王「信用できる相手が家族しか居ないから、結果として誰も頼れず自分ひとりで何とかしようとする…だから余裕がなくなってしまうんだ。信用できる仲間が多く居れば君が道を踏み外しそうになっても正してくれる」

雪の女王「その為には君が他人と交流するところから始めなければな、その為にも様々なおとぎ話に行ってみるんだ」

キモオタ「なんとwwwコミュ症とかヘンゼル殿にとっては難易度くっそ高い奴でござるなそれwww」

ヘンゼル「……信用できるかどうかもわからない他人と交流しろって言うの?」

雪の女王「それは違う。交流して絆が生まれて初めて信用できるというものなんだよ、人間というのはね」

雪の女王「いつまでも家族だけを信じて、他人と触れ合おうとしないキミに本当に信用できる相手なんか永遠に出来やしない。ましてや信用されることなんか不可能だ。そろそろ変わろうとしなければな」

ヘンゼル「……」

雪の女王「それじゃあなければ君の今後の為にならない。これは君のための課題だ、それでも意地を張って家族以外の人間は信用したくないなんて言うなら、その魔法具は残念だけど帰して貰わなくちゃいけないな」クスクス

ヘンゼル「……女王は、僕にそんな事が出来ると思ってるの?ティンカーベルじゃないけど、僕は大人が嫌いだ。結局トラブルを招くかもしれないよ?」

雪の女王「招けばいいさ、それくらいのフォローはしてやれるし、さっき言ったように世界移動の手段だって与える。あとは君がやるかやらないかだ」

ヘンゼル「……」

キモオタ「ヘンゼル殿wwwなんなら難易度低いところで我輩の知り合いの所に尋ねてみるというのはwww例えば裸王殿の所とかどうですかなwww」

雪の女王「私も賛成だな、彼は立派な王だ。君もきっと気にいるさ。どうだ?最初は【裸の王様】の世界で裸王にあってみるというのは」

ヘンゼル「……わかったよ。そうそう簡単にはいかないと思うけど、女王が家族以外の奴らも信用できるようにしろって言うなら努力するよ。本当の所気は進まないけど…」

ヘンゼル「その裸王って人の所に行ってみる。キモオタお兄さん達は僕に協力して来てくれたんだし、女王は僕を信じて火打ち箱を貸してくれたんだ。僕はその信頼に答えなきゃいけないからね」

234 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/18 00:11:26 bpS 98/405


雪の女王「フフッ、決まりだな。さて……出ておいで小夜啼鳥、君には今後ヘンゼルのサポートをして貰おう」

小夜啼鳥(サヨナキドリ)「ええ、女王様が命じるのなら。わたくしはその様にいたしましょう」ピチチチチ

ヘンゼル「小夜啼鳥…!」

ティンカーベル「なんかちっちゃい鳥だ!白鳥のほかにも鳥の知り合いが居るなんて女王は顔が広いんだねー」

小夜啼鳥「あなたはティンカーベルさんですね。女王様は様々なおとぎ話の世界に協力を仰いでらっしゃいますから、協力者は人間だけでは無いのですよ」

キモオタ「鳥がしゃべるのにも完璧に慣れましたぞ我輩www」

小夜啼鳥「さぁ、ヘンゼルさん。今後はわたくしと共に世界を飛び回りましょう、この旅はきっとあなたの心を満たしてくれることでしょう」ピチチチチ

ヘンゼル「君が僕に協力してくれるって言うのなら、凄く嬉しいけれど……ねぇ、女王。小夜啼鳥はただの鳥じゃない、僕が連れて歩いていても良いの?」

雪の女王「もちろん。それに彼女は君に協力するだけじゃない、君が道を踏み外しそうになった時導く役目もある。それと、君の素行不良を私に告げ口する役割もね」クスクス

キモオタ「要するに保護者役というわけでござるなwww」

ヘンゼル「いや、でも小夜啼鳥の能力は僕一人の為に使うには過ぎたものだと思うんだけど…」

小夜啼鳥「ヘンゼルさんは私の事を買いかぶりすぎですよ。それとも鳥はお嫌いですか?以前、鳥にパンくずを食べられたせいでひどい目にあったと聞いてますし」

ヘンゼル「いや、嫌いとかじゃなくて…」

小夜啼鳥「ではご一緒させていただきます。安心してくださいヘンゼルさん、あなたが不安や憎しみに駆られようともわたくしが側にいますから」ピチチチチ

ヘンゼル「…うん、ありがとう。よろしく頼むよ、小夜啼鳥」


ヘンゼル(火打ち箱に小夜啼鳥…。過保護が過ぎるよ女王は…でもそこまでされたら、僕も女王の期待に答えなきゃね…)

235 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/18 00:13:54 bpS 99/405


雪の女王「さて、それじゃあ決まりだ」

雪の女王「ヘンゼルは小夜啼鳥と一緒に様々なおとぎ話の世界を訪れる事、まずは【裸の王様の】世界だ」

ヘンゼル「うん。でもその為に妹達をほったらかしにしちゃ本末転倒だ、現実世界のお千代の部屋を拠点に定期的に別世界へ行く事にする。それでいいよね、小夜啼鳥?」

小夜啼鳥「もちろんですとも、世界移動の能力が必要な時はいつでも助力いたしますよ」ピチチチチ

雪の女王「魔法具は火打ち箱、そして君自身の成長のためには小夜啼鳥を託した。ヘンゼルが望みはそれで叶えられそうか?」

ヘンゼル「ここまでして貰って叶えられなかったら僕は責められても文句言えないよ。他人を信用するなんて正直まだ気は進まないけど…でも、こうなったらやるだけやってみるよ」

雪の女王「君が更なる力を手にして立派に成長する様、楽しみにしておくよ」クスクス

ティンカーベル「うんうん!良かったねヘンゼル!」

キモオタ「まぁヘンゼル殿にとって他の世界の大人と交流するなどハードル高いでござろうが頑張るでござるよwww我々も応援しているでござるwww」

ヘンゼル「うん、二人には感謝しないとね…ありがとう、ティンカーベル。それとキモオタお兄さんも」フフッ

キモオタ「ちょwwwなんか我輩の方がついでっぽいのでござるけどwww」

雪の女王「さて、次はキモオタ達の話を聞かせて貰おうか。君達も聞きたい事は多いだろうが、私も聞きたい事はたくさんある…少し長くなってしまうだろうが、構わないか?」

キモオタ「もちろん構いませんぞwww女王殿はアリス殿の件でかなり積極的に動いてくださっていると聞きますからなwww親睦を深める意味も込めてwww」コポォ

ティンカーベル「うんうん!ヘンゼルとのやり取りとか見てたら私も雪の女王に興味でてきちゃった!いっぱいお話しようね!」

ヘンゼル「二人の事も心配だけど…アリスの件について深く知っておきたいし、僕も同席させて貰うよ」

雪の女王「フフッ、それならば茶が足りそうにないな。君達は待っているといい、とっておきの紅茶を淹れて来てやろう」フフッ

スタスタ

236 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/18 00:16:21 bpS 100/405


雪の女王の宮殿 キッチン

カイ「なんだ。女王、あんたが茶を入れに来るなんて珍しいじゃないか」

雪の女王「流石に客人をキッチンに立たせるわけにもいかないからな。だが丁度良かったよカイ、紅茶を淹れて欲しいんだが構わないか?」

カイ「なんだよ、結局俺が淹れるのか…構わねぇけどよ」

雪の女王「フフッ、そっけない態度をとっているが…私は気が付いているんだぞ?カイ、君は私達の話を立ち聞きしていただろう。弟の事が心配か?」クスクス

カイ「まぁ気が付くよな…そんなんじゃねぇけどよ。でもよかったのか?火打ち箱と小夜啼鳥、ヘンゼルに渡しちまっても」

雪の女王「確かに火打ち箱は私が持つ魔法具の中でも強力なものだ、迷いはしたが…ヘンゼルはもう何度も自分の行動が裏目に出てしまう事を経験してる、恐ろしいほど強い力を渡した方がむしろ慎重になれるだろうさ」

雪の女王「それにそもそも小夜啼鳥には彼等の生活の様子を見守って貰っていたんだから何も変わりはしないさ。その事をヘンゼル達は知らないけれどな」

カイ「……なぁ女王、強力な魔法具や仲間を託すのはなにもヘンゼルの為だけってわけじゃねぇんだろ?」

カイ「何か、理由があるんだよな?」

雪の女王「やれやれ、君には参るな。察しが良すぎるというのも考え物だ」クスクス

カイ「はぐらかすなよ。何か起きてるんだろ?無視できないほど重大な何かがよ」

雪の女王「隠しても仕方がないか…実は私がこの世界を留守にしている間。何者かがこの世界に忍び込んだらしい」

237 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/18 00:19:23 bpS 101/405

カイ「…アリスの一派か?」

雪の女王「いいや、アリス本人だ。大方、私の事が邪魔になって始末しに来たんだろうが…不在と知って標的を変えたようだ」

カイ「おい…!まさかアリスの奴、ゲルダを襲いやがったんじゃ…!」

雪の女王「安心するといい、君の親友のゲルダは無事だ。アリスが襲ったのはゲルダじゃない、アリスは君の性格がねじ曲がる原因を作った奴らを襲ったのさ」

カイ「別に親友じゃねぇけど。しかし俺の性格がねじれた原因…悪魔の作った鏡か。アリスは悪魔の連中を襲ったって言うのか?」

雪の女王「ああ、そうだ。悪魔とは言っても事情を知っている連中だから私が不在の間の見張りなんかをかって出てくれていたんだ。悪魔たちもアリスの事は知っていたし、迎え撃つ用意はしていたようだったが…無駄だった」

カイ「アリスが悪魔の連中を襲った理由ってのは…やっぱり、悪魔の鏡か?」

雪の女王「だろうな…。悪魔の鏡は突き刺した人間の心を捻じ曲げる恐ろしい魔法具だ。奪われたのはほんの何粒かのかけらだが…恐ろしい事に変わりは無い」

雪の女王「油断していたわけじゃないが…まさかあの悪魔たちをねじ伏せるほどの力を持っているとは、読みが甘かったようだ」

カイ「どうするんだ?悪魔の鏡の破片を奪われちまったってなら…悪用されちまったら事だぞ?」

雪の女王「今、親指姫と白鳥…その他にも何人もの仲間がその対応にあたってくれてるが…」

カイ「だから、ヘンゼルとグレーテル、お千代を護るために火打ち箱と小夜啼鳥を託したってのか…」

雪の女王「もちろんヘンゼルの為というのが一番の理由ではあるがな。この期に及んで自分の家族の安全を優先にするなど、女王として失格なのだろうが…」

カイ「誰もあんたを責められねぇよ。でもアリスはもう一度この世界に来るだろうぜ?今度こそあんたを始末しにな」

雪の女王「それは何としても阻止する、私が消えてしまえばこの【雪の女王】の世界も消滅する」

雪の女王「それだけは…絶対に防がないといけない。アナスンが生み出したこの世界を消滅させる事だけは…決してあってはいけない」

・・・

238 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/18 00:20:55 bpS 102/405

シンデレラの世界 城 訓練場



国王(シンデレラの旦那)「見張りの任務御苦労さま。様子はどうだい?」スタスタ

兵士「ハッ!問題ありません!国王様の命令通り、誰一人訓練場には入れておりません!」ビシッ

国王「そうか、ありがとう。君のおかげで妻も気がねなく特訓に打ちこめるというものだ」

兵士「いえ、私の見張りなど国を…いえ、世界を護ろうという王妃様の強い意志に比べれば瑣末なものです。本当に立派なお方ですよ、王妃様は」

国王「そう言ってくれるのは嬉しいが、あまり王妃を焚きつけないように頼むよ。私としては危険な戦いに身を投じる事は避けて欲しい、それにそろそろ後継ぎの事を考えても良い時期だ」

兵士「確かに一国の王妃が戦いに身を投じるなど、前代未聞ですからね…あっ、失礼いたしました!私は決して王妃様の意思を否定しているわけでは無くてですね…!」アセアセ

国王「いいや構わないよ、事実だ。しかし私は彼女の意思を尊重したい、だからこそこうしてベテランの君を付けてまで内密に特訓を行う場を提供しているのだ」

国王「ところで、王妃は…シンデレラは何処に居るんだい?姿が見えないのだけど…」

兵士「丁度、あちらで大鬼殿と手合わせをなさっている最中です。ですが、よく目をこらさないとご覧になる事は難しいかと…」

ヒュンヒュヒュンヒュン ヒュンヒュヒュンヒュン

大鬼「……」

ヒュンヒュヒュンヒュン ヒュンヒュヒュンヒュン

国王「もしかして、大鬼殿の周りをヒュンヒュン移動してるのって…」

兵士「はい、王妃様ですね」

国王「マジなの…?」

兵士「はい、マジです」

国王(……妻が思ったより人間離れしてる)

239 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/18 00:22:28 bpS 103/405

大鬼「ガラスの靴…。視認出来ぬ程の軽快な足さばきを可能にするとは恐るべき魔法具。だが!」

ヒュンヒュヒュンヒュン ヒュンヒュッ

大鬼「捉えた…!」ブォンッ

ヒュッ ゴシャアッ

大鬼「避けられたか。ガラスの靴にかかれば攻撃を避けることなど舞踏を踏むが如く容易いか」

ヒュッ

シンデレラ「いえ、余裕なんか全然ありませんでしたよ。あと一歩気が付くのが遅ければ危ないところでした…!」スッ

大鬼「いや、俺の一撃を避けられるのなら大抵の攻撃をかわす事は容易だろう。そろそろ時間だ、今日はここまでとしよう」

シンデレラ「はい!お相手ありがとうございました大鬼さん。病み上がりだというのに協力していただいて、感謝してます」

大鬼「なに、もう随分調子は良い。それに王妃には借りがある。【桃太郎】の世界で重傷を負った俺の治療をしてくれたからな、鍛錬の相手ならばいくらでも付き合おう」

シンデレラ「ありがとうございます。もっとガラスの靴を使いこなして、みなさんのお役に立ちたいです。そうすれば困っている人を救うことだって、きっとできますから」ニコッ

大鬼「その人柄の良さは既に多くの者の心を救っていると思うが…いずれにせよガラスの靴を使いこなせば戦いの幅はもちろん、出来る事はぐっと広がる。精進あるのみだな」

シンデレラ「はい。みなさん、アリスさんとの戦いに向けて特訓してるんですから。私も頑張らなくちゃ…!」ウンウン

大鬼「頑張るのは構わないがお前は王妃だ。戦う事を優先にして大切な事が疎かにならないようにな。見てみろ…お前の旦那が微妙な顔をしているぞ」

シンデレラ「あれっ、国王様…?今日は公務がお忙しいと聞いていたのに…」

大鬼「王妃が心配で様子を見に来たというところだろう。怪我ひとつないところを見せてやったらどうだ?」

240 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/18 00:24:05 bpS 104/405

シンデレラ「国王様。どうなさいました?今日はお忙しいと聞いていたのに、何か急用でしょうか?」

国王「いや、予定より速く公務が終わってね。時間が取れたからたまには一緒に食事でもと思ったんだ」

シンデレラ「わっ、本当ですか?嬉しいです…!久しぶりですね、国王様と二人で食事なn」パアァァ

国王「大鬼殿、あなたもどうですか?妻が世話になっている礼を兼ねて。構わないだろう、シンデレラ?」

シンデレラ「あっ…、もちろん構いませんよ。いかがですか大鬼さん?予定が無いようでしたらご一緒して欲しいです」

大鬼「…俺は構わないが、王妃はそれでいいのか?国王は多忙故に共に食事をとる事はおろか二人きりの時間が少なく寂しいと先日言っt」

シンデレラ「お、大鬼さん…!声が大きいです…!内緒なんですっ、その事は国王様には内緒ですっ!」ヒソヒソ

大鬼「そうか、すまん。だが王妃よ…夫婦ならば遠慮するような事でも無いだろう。隣に居てくれと言えばいいだけだ」ヒソヒソ

シンデレラ「言えませんよ、国王様は優しいから私の本心を知れば無理してでも時間を作ってくれます。お忙しい方なのに無理させて体でも壊してはいけませんから、内緒にしてくださいっ」ヒソヒソ

国王「はははっ、ヒソヒソ話なんてして何の相談だい?どうですか大鬼殿、特に用事がないようなら是非」

大鬼「…そういう事ならば、お言葉に甘えるとするか。ご一緒させて貰おう」

国王「おお、では早速向かうとしよう。是非とも大鬼殿の武勇伝を聞かせていただきたい。それに日ノ本がどのような国なのかとても興味がある、その様子も是非」

大鬼「武勇伝などありはしない…期待させて悪いが俺はしがない悪鬼にすぎないのだ。だが、日ノ本がどのような国であるかは少しならば語れる。それでよければお聞かせしよう」

国王「おぉ、それは楽しみです。シンデレラ、君も異国の民がどのような暮らしをしているのか興味があるだろう?」ワクワク

241 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/18 00:26:24 bpS 105/405

シンデレラ「あっ…はい、日ノ本というと桃太郎さんや赤鬼さんの故郷でしたね。きっと皆さん優しい方なんでしょう」ウフフ

シンデレラ(二人きりで食事できると思ったのに残念…国王様もほんの少し…ほんの少しだけ私に時間を割いてくださっても良いのに)

シンデレラ(ううん、そんな事考えちゃいけない。灰かぶりだった私がこうしてお城で立派な生活ができているのも国王様のおかげなんだから、わがまま言ってちゃ罰が当たるよね)

スッ

???「あこがれの王子様と結婚できたのに、好きな人と一緒に居ることすらできないなんて…王妃なんて良いものじゃないね」クスクス

シンデレラ「誰…っ!」バッ

アリス「そうやって自分の気持ちを押さえつけて、幸せかい?シンデレラ」

シンデレラ「あなたは…?この訓練場には誰も入る事は出来ない筈なのに…」

アリス「会うのは初めてだけど、名前くらいは聞いてるんじゃないかな?ボクの名はアリスだ、始めましてシンデレラ王妃」クスクス

シンデレラ「アリスちゃん…!ティンクちゃんや赤ずきんちゃんの世界を消滅させた、今回の件の黒幕の一人…私達の敵!」バッ

アリス「そう身構えないでよ、ボクはキミに用事があって来たんだよ、シンデレラ」

シンデレラ「残念だけど、私はアリスちゃんに用事なんかありません…!大鬼さん!国王様!彼女は危険です、ここは逃げてくださ…」

アリス「フフッ、そんな冷たい言い方しないでよ。ああ、ちなみにその二人は逃げようにも動けないよ?時間を止めたからね」

大鬼国王「」カチーン

シンデレラ「そんな…っ!国王様!大鬼さん!しっかりして下さい…!」

242 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/18 00:30:18 bpS 106/405

アリス「無駄だよ、何をしても気が付く事は無い。でも安心しなよ、死んでいるわけじゃあないんだ。止められた時の中を生きているだけ」

シンデレラ「何故っ…!アリスちゃんは私に用があるんでしょう!?何故、関係の無い二人まで巻き込むの!?」

アリス「厄介だからさ。大鬼も国王もボクの敵じゃないけど相手をするには骨が折れそうだ、キミには強い魔力を持った保護者が居るだろう?彼女の相手は流石に避けたい、だからまとめてこの世界の時を止めた」

アリス「それに兵を呼ばれるのも厄介だ。キミは随分と兵や国民に慕われてるらしいからね、少し前にはキミに金を無心に来た継母を追い払ってくれたらしいとか…随分と人徳のある王妃様だ」クスクス

シンデレラ「そこまで私の周辺の事を知っているなんて…!」

アリス「調べたからね。もう一度言うけれど…ボクが用事があるのは君だけだ。でもキミが大人しく僕の話を聞いてくれないなら……」

アリス「この世界の時をずっと止めたままにするのも悪くない。この世界の住人達は永久に眠りにつかなければいけなくなるけど、ボクには関係ない事だしね」

シンデレラ「そんなこと……っ!」スッ

ビュバッ

シンデレラ「私の大切な人たちに手は出させません…!あなたこそ少し眠って貰います…!」ヒュッ

アリス「情報通りだ。シンデレラはキモオタの仲間の中でも一番の常識人……だけど意外な事に、熱くなると感情的になり易い。そしてすぐに熱くなるような奴の動きを読むより容易い事なんて無いよ、例え高速だとしてもね」ヒュッ

ドゴォ

シンデレラ「ゲホッ…!なんて力なの……」ドサッ

アリス「あぁ、気絶させてしまうなんてやりすぎたな…。まぁいいか、どうせ素直にボクの言う事を聞かないなんて解りきってた事だしね」

アリス「さぁ、シンデレラ。【不思議の国のアリス】の世界に招待するよ……って、聞こえていないか」クスクス

243 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/18 00:32:18 bpS 107/405

不思議の国のアリスの世界 ハートの女王の城

・・・

シンデレラ「……っ」ハッ

シンデレラ「私は…確かアリスちゃんの攻撃で気絶して…。さらわれてしまったのかな…ここはどこなんだろう?城の中…?でも、国王様のお城とは違う…」ギギッ

シンデレラ「両腕が縛られてる…!ガラスの靴は無事だけど、これじゃ逃げるどころかろくに身動きをとる事もできない…」ジタバタ

ガタッ

アリス「ようやく気が付いたねシンデレラ。随分と気を失っていたじゃないか、もうすっかり夜中だ」クスクス

シンデレラ「アリスちゃん…!ここはどこなの?私をさらったりして何が目的なの?国王様は…【シンデレラ】の世界のみんなは無事なんでしょう!?」

アリス「ああ、無事だよ。もうキミが居ない事に気が付いて居るかな?」クスクス

シンデレラ「…教えて!一体アリスちゃんは何のために私をさらったりしたの?人質にでもするつもりなの…?」

アリス「あぁ、人質じゃないよ。キモオタの仲間はどいつもこいつも人質には向いていない。裸王も赤鬼も赤ずきんも桃太郎もだけど戦える奴が多いからね、それ以外はちょっとおバカな奴か、逆に頭の切れる褐色娘、それと世界移動出来る妖精だ」

シンデレラ「それじゃあどうして私を…?」

アリス「人質よりももっと有効な方法で、利用させてもらおうと思ってね」ガサッ

スッ

シンデレラ「それは…?ガラスの破片…いえ、鏡の破片……?」

アリス「その通り、鏡の破片だ。でもただの鏡の破片じゃない。悪魔が作った魔法具の鏡…その破片」

アリス「キミをもっと素直にしてくれるすてきな魔法具だ」クスクス

244 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/18 00:38:44 bpS 108/405


アリス「この破片を君に突き刺してやれば…君はどうなると思う?」クスクス

シンデレラ「……わからない、でもキモオタさん達を苦しめる為に私を利用するって言うのなら…私はあなたの思い通りにさせるわけにはいかない…!」ググッ

アリス「動けもしないのに健気というか、素直というか…君はどうしてそんなに善人なんだろうね?あんな事があったのに」

シンデレラ「それはどういう意味…?」

アリス「君は今でこそ王妃だが元々は召使い同然の生活を強いられていた灰かぶり…」

アリス「【シンデレラ】は辛く貧しい生活をしていたキミが魔法の力で王子と結婚して幸せになる話だ」

アリス「その結末通り、キミは王妃となりたくさんの仲間に囲まれてめでたしめでたしだ。……でも、忘れたわけじゃないだろう?」

アリス「キミは長く苦しい召使いの生活を送っていた。継母には良いように使われて、姉達には虐められる悲惨な生活…忘れられるはずないだろうね」

シンデレラ「……」

アリス「本来ならばキミは継母達に復讐したっておかしくないんだ、でもキミはそんな事は一切していないそうじゃないか。ボクの密偵が教えてくれたよ」

シンデレラ「復讐なんかしたって何にもならない。確かにあの頃の生活は苦しかったけれど、もう、過ぎた事です」

アリス「過ぎた事?継母は今でも城に金を無心に来るんだろう?姉達に貴族の男を紹介しろと言われたり、美味しい食べ物を寄越せとせびられて随分と困ってるらしいじゃないか」

シンデレラ「なんでそんなことまで知って…」

アリス「本当は憎んでいるんだろう?辛い生活の復讐をしたいだろう?」

アリス「魔法使いは君のボロ着をドレスに変えた。けれどキミの心に根を張った憎しみは変えられなかった…いくら幸せで覆いかくされたとしても憎しみもつらい記憶も確かにそこにある」

アリス「キミの心優しい性格と心の底に残った僅かな憎しみの記憶、利用させてもらうよ。この魔法具を使えば君は自分にもっと素直になれる」

スッ

270 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/23 00:04:40 Vvg 109/405

シンデレラ「……違う。それは違うよ、アリスちゃん」

アリス「違う?キミの心に憎しみの感情はひとかけらも無いとでもいうつもりかい?」

シンデレラ「ううん…あまりこういう事を口にするのは良くない事だけど、昔は私だってお母様やお姉様の事を恨んでた」

シンデレラ「お母様は私から全てを奪って…亡くなった両親から貰った物もお父さんの財産も全て取り上げられてしまったから」

シンデレラ「お姉様は二人して私の事をいじめて、召使いのように扱われた私は…他の女の子のように勉強をしたり遊ぶ時間はおろか休む事すらままならない毎日を過ごしていたもの」

シンデレラ「苦しくて、辛い日々だった。同じ年頃の女の子はおしゃれをして楽しそうに街を歩いているのに、私はいつも薄汚れた灰だらけの洋服で手を真っ赤にしてお掃除や洗濯を済ませるの…ふふっ、何度涙を流したかもう忘れちゃったな」

アリス「ボクには理解出来ない、継母に良いように扱われていたなら普通は復讐のひとつでも考えるだろうに。キミは王妃だ、継母だろうが姉だろうが処刑する事は容易いだろう」

シンデレラ「確かに今の私の立場なら、お母様を処刑しても誰にも文句は言われないと思う。私の境遇を知らない人はきっとこの国には居ないから」

シンデレラ「でも、私はお母様を処刑しない。だって過去の私はお母様を憎んでいたけれど、今の私は…復讐なんか望んでいないから」

アリス「そりゃあそうだね。召使いから一変して今や一国の王妃様…今の裕福で不自由の無い生活が幸せすぎて復讐や憎しみなんかどうでもよくなったって事か」クスクス

シンデレラ「少し違うかな。復讐なんかしなくても、私の心はもう晴れてるの。今の私にはキモオタさんやティンクちゃん、魔法使いさんが与えてくれた人と人との繋がりがあるから…」

シンデレラ「私はもうひとりぼっちの灰かぶりじゃあない。だからもう過去に捕われてお母様を恨み続ける必要なんか、もう無いの」

アリス「…何を言うかと思えばくだらない。友達が側に居れば辛く苦しい思いをした過去の自分は救われるのか?ボクはそうは思わない」

アリス「友人が側に居ようと大好きな世界で過ごそうと…過去に芽生えた復讐心は絶対に消えない」

271 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/23 00:07:26 Vvg 110/405

アリス「友達ができた程度で忘れられる過去なら、所詮キミが受けた苦しみなんかその程度のものだったって事だ」

アリス「だけどね、ボクにとってはキミの憎悪の大きさなんかどうだっていいのさ。どんなに小さくても憎しみの心があれば、この魔法具で膨れ上がらせる事が出来るからね」

アリス「【雪の女王】の世界から奪った魔法具・悪魔の鏡の破片…これをキミに突き刺せば、心優しい君の心は真っ黒に染まる…たちまち憎悪が渦巻くようになるんだ」

シンデレラ「それが本当だとして…そんな事をする理由は何?わざわざ私を拘束してまで、私を憎悪に染めようとする理由って…なんなの?」

アリス「駒が欲しいのさ。ボク達は【アラビアンナイト】の結界を破る為の魔法具収集にもスパートをかけるつもりだ、そうなればキミ達は…キモオタ達は黙っていないだろう?」

アリス「あいつはもう、ただの気持ちの悪い現実世界の男じゃない。魔法具も仲間も手に入れたあいつを、ボクはもう十分警戒すべき敵だと認識しているんだよ」

アリス「そうなればキモオタ達を相手に戦う駒が必要だ、出来ればあいつらに有利に戦える駒がね」

シンデレラ「…それが、私だというの?」

アリス「ああ、キミが一番適任だ」

シンデレラ「キモオタさん達は大切な友達なの、例え魔法具を使われたとしても私は決して友達を相手に戦ったりしない…!」

アリス「キミの意思なんか関係無いんだよ。悪魔の鏡の破片が突き刺されば憎悪に支配される、そうすればもうキミは目に見える物すべてが狂おしいほど憎らしく思えて…キミの心は殺意に溢れる」

シンデレラ「例え私がキモオタさん達と戦う事になっても…私は腕力も無ければ魔法も使えないただの人間。ガラスの靴があるとはいえ、キモオタさん達なら私を止めてくれるはずです」

アリス「あはは、随分とキモオタを信頼しているみたいだね。きっと、キモオタ達もシンデレラの事を大切な仲間として、深い信頼をよせているんだろうね」

アリス「でもね、キミが思うよりもずっとガラスの靴は強力な魔法具なのさ。単純な脚力強化に見えるけど、身体能力の飛躍的な強化はむき出しの殺意と相性がいい」

アリス「【マッチ売りの少女】でキミはただの蹴りで王の顎を粉砕しただろう?あの時と違って今の君は鍛錬を積んでいる、殺意のままに蹴りを放てばどうなるかなんて想像するまでも無いだろ。今の君は鬼の一撃を見切るまでに成長しているんだから」

アリス「そんなキミの攻撃を止めるには防戦一方では難しい。でも力でキミをねじ伏せる決断が、キミの大切な友達に出来るだろうか?」クスクス

272 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/23 00:09:35 Vvg 111/405

シンデレラ「まさか、アリスちゃんはそれを狙って私を捕えて…!」ゾクッ

アリス「キミは優しい。その優しさに皆が惹かれ、キミが言うようにたくさんの繋がりを与えてくれたんだろう。でも、今回はそれを逆手に取らせてもらう」

アリス「裸王はキミに拳を向けられるか?赤鬼は金棒を振りおろせるか?赤ずきんはマスケットを構える事が出来るか?桃太郎は刃を抜けるか?ラプンツェルはキミを拘束できるか?」

アリス「憎悪に支配されて殺意に満ちた目で襲いかかるキミを、キモオタとティンカーベルは迎え撃つ事が出来るか?」

シンデレラ「みなさんは心優しい方ばかりだから、そんなこと…」

アリス「できない。だろうね、でも魔法具の影響を受けたキミは彼等に全力で襲いかかる。さぁ、彼等は自分が傷付く事とキミを傷付ける事…どっちをとるだろうね?」クスクス

アリス「どっちに転んでもボクにとっては悪い状況にはならない。うまくすれば戦力を削ぐ事が出来る、それが無理でも精神的なダメージは計り知れないだろうからね」

シンデレラ「どうしてあなたは、そんな残酷な手段を平気で…!」

アリス「ボクには目標がある、それを叶えるためにはどんな手段だって使うさ」

アリス「現実はおとぎ話とは違う。夢を持ち続けても、希望を待ち望んでも、清く正しく生きていても、悲しく辛い夜を重ねても…自分から行動しない者は結果なんか得られない」

アリス「どんなに待っていても魔法使いなんか現れないんだ、ドレスも馬車もガラスの靴も努力しない者の前には現れない。まして王子が迎えに来るなんて事は、決してないのさ」

アリス「目標を叶えたいなら、それ以外のものを捨て去る覚悟を持って突き進まなきゃいけない。そうしなけりゃ掴む事が出来ない、それが現実なんだ」

シンデレラ「…アリスちゃん、そんな風になりふり構わずに行動してまで手に入れたい物ってなんなの…?」

アリス「言ってもキミには理解出来ないだろうさ。ただ確実なのは、ボクは目的のためには手段を選ばないし妥協もしない」スッ

シンデレラ「他のもっと平和的な手段じゃアリスちゃんの目標はかなえられないの?自分の目標の為にこんなに多くの犠牲を出して…もうこんな事はやめよう。だって私達は同じおとぎ話の主人公でしょう!?」

アリス「身動きもろくにとれない癖に説教かい?それに…ボクとキミ達が同じおとぎ話の主人公?冗談はやめてくれ、ボクはお前達と同類なんかじゃない」

273 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/23 00:11:45 Vvg 112/405

アリス「【不思議の国のアリス】は世界一愛されているおとぎ話だ。それに…キミ達のおとぎ話とは、そもそもの存在意義が違う。生み出された理由もね」

アリス「【シンデレラ】も相当知名度の高いおとぎ話だけれど、所詮は民間伝承が元になった物語の一つにすぎない」

アリス「ルイスが【不思議の国のアリス】を執筆した理由は優しさと愛に満ちてる尊いものだ。消えても構わない他の雑多なおとぎ話と同列のように語られるのは、気分が良くない」

シンデレラ「消えても構わないなんて、そんな言い方……」

アリス「悪いかい?ボクが手を出さなくても現実世界で忘れられたおとぎ話は消えていく、価値の無いおとぎ話は忘れられるのさ。だから【不思議の国のアリス】が消滅していないのは存在する価値があるからだ」

シンデレラ「アリスちゃんが手に入れたいものって…その作者さんやおとぎ話に関係しているものなの?」

アリス「さぁ?その辺りは想像に任せるよ」

シンデレラ「聞かせてアリスちゃん、あなたは……」

ゴーン ゴーン ゴーン

シンデレラ「鐘の音…?」

アリス「時計塔の鐘の音だよ。…もうこんな時間か、少し無駄話が過ぎたみたいだね」

アリス「そろそろ悪魔の鏡の破片をキミの身体に埋め込むとしよう、これ以上キミと問答を繰り返していたって意味がない」ガシッ

シンデレラ「嫌っ、離して…!私は、もう誰も恨んでなんか…!」ジタバタ

アリス「恐れる事は無い、全て魔法だったと思えば諦めもつくさ。王子との恋愛も魔法使いとの親子のような日々も、キモオタや友達との楽しい思い出や強い絆も、全てはただの魔法…そう思えばいい」



アリス「シンデレラに掛けられた素敵な魔法は十二時の鐘とともに消える……キミは孤独でみじめな、薄汚い灰かぶりに戻るだけだ」

274 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/23 00:14:24 Vvg 113/405

グシュッ

シンデレラ「うっ、あっあああ……!……違う、違う……!」

アリス「随分と痛みが伴うんだね…魔法の靴で魔力を底上げしてやったせいかな?で…シンデレラ、違うって何がだい?」

シンデレラ「私が……私が国王様や魔法使いさん……キモオタさん達と過ごした日々は……魔法なんかじゃない……!」ゼェゼェ

アリス「そうか、でもそんな事はもうじきどうでもよくなってくるだろうね」

シンデレラ「ゼェゼェ……私は……忘れない、魔法使いさんやキモオタさん達が私を救ってくれた事……」ゼェゼェ

アリス「…ひとつおとぎ話を聞かせてあげるよ、シンデレラ。キミと同じように召使い同然に扱われたみじめな女性のおとぎ話だ」

アリス「その娘はキミと同じように継母や姉に虐められて辛い日々を送っていた。そして同じように、城で舞踏会が開催され…それに向かう事になる」

アリス「けれど彼女の所に魔法使いは現れない。ガラスの靴もカボチャの馬車も与えられない、当然キモオタやティンカーベルと出会う事も無い」

シンデレラ「……どうして、そんなおとぎ話を……私に……うっあああっ……!」ゼェゼェ

アリス「これはね、言わばキミのもう一つの物語…とうの昔に現実世界から忘れ去られた、キミのもう一つの可能性だ」

シンデレラ「私の……私のおとぎ話は【シンデレラ】ただ一つ……別の、物語なんか……あああっ!」ズキズキ

アリス「そのおとぎ話でキミを虐めた姉達は両目を抉られてしまうんだ、それにつま先やかかとを削ぎ落すことにもなったんだったかな。ボクはね、報復が行われるそっちの筋書きの方がずっと現実的だと思うんだよ」

シンデレラ「アリスちゃん……なにを……あっあああ…っ!」ドサッ

アリス「痛みで気を失ったみたいだね…まぁ、いいか。悪魔の鏡の破片はシンデレラの体内に埋め込めた、思い通りに事が運んだというわけだ」

アリス「目を覚ませしたころにはキミはもう生まれ変わっているはずだ。これからは憎悪に忠実に生きればいいんだ、シンデレラ」フフッ

275 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/23 00:16:40 Vvg 114/405


翌日
現実世界 キモオタが住む町 TSUTAYA

ティンカーベル「あっ、キモオタ!ほらほら見て見て!シンデレラのポスター貼ってあるよ!」

キモオタ「おおwww以前公開していた実写映画版のシンデレラですなwww遂にレンタル開始でござるかwww借りるでござるか?www」

ティンカーベル「うーん、私達は本物のシンデレラ見たからわざわざ映画観なくても良いような気はするけど…でも興味はあるよ!」

キモオタ「我輩も興味有りですぞwwwガラスの靴やドレスも精巧に出来ているようでござるしなwwwまぁ、女優はシンデレラ殿に全然似てないでござるけどwww」コポォ

ティンカーベル「そーいえばネットの予告編一緒に見たよね、ぶっちゃけ王子も実物の方がずっとイケメンだったよね」

キモオタ「ちょwwwそういう事は言わない方がwwwというかこれ、我々…出てるのでござるかね?www」

ティンカーベル「どーかな…見てみなきゃ何とも言えないよね。あっ、でも貸出中だよ全部!」

キモオタ「人気あるのでござるなぁwww流石はシンデレラ殿www」コポォ

ティンカーベル「……」ジーッ

キモオタ「どうしたでござるかティンカーベル殿www」

ティンカーベル「……ずるい」

キモオタ「ちょwwwレンタルは早い者勝ち、貸出中なのは仕方ないでござるよwww」

ティンカーベル「違うよ!現実世界でこんなに人気があるシンデレラがうらやましいんだよ私は!」プンス

276 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/23 00:18:23 Vvg 115/405

キモオタ「ちょwwwいきなり何を言いだすのですかなwww」

ティンカーベル「もうずーっと考えてた事なの!そりゃあ私の【ピーターパン】は消滅してるから人気どころか存在すらしてないけど…」

ティンカーベル「でももしも消えてなかったら【ピーターパン】だって絶対にぜーったいに映画になってたと思うの、そうでしょ!?」

キモオタ「いやwww知らんでござるよwww我輩詳しい内容知らないでござるからwww」

ティンカーベル「んもー!それなのにシンデレラは実写映画にもなりーのアニメ映画にもなりーの…文房具とかあったよこの前!シンデレラの!ノート!ボールペン!」クワッ

キモオタ「なんでそんなに必死なのでござるかwwwそれにきっとその人気っぷり聞いたらシンデレラ殿逆にビビると思うでござるけどwww」

ティンカーベル「しかもシンデレラだけじゃないんだよ…現実世界でおとぎ話が忘れられつつあるって言っても、メジャーな奴は結構人気でしょ?アニメ映画とかやってる奴は特にさ」

キモオタ「そう言えばラプンツェル殿の映画もやってましたなwwwゴーテル殿、めっちゃ悪役でござったけどwww」コポォ

ティンカーベル「ラプンツェルのマグカップとか売ってた時は戦慄したよ…」

キモオタ「ディズニー映画は人気でござるからなwww女子に人気なのでござろうwww」

ティンカーベル「それは良いよ、お姫様は女の子の憧れだからまだ納得は行くよ。でもさぁ!岡山県とか言うところのお土産屋さんに行くと絶対に桃太郎のグッズがあるんでしょ!?ずるいよ!」

ティンカーベル「アリスなんかキモオタがやってるソシャゲーのキャラにもなってる!しかも課金しなきゃとれないの!なんであんな奴が!」ムカムカ

キモオタ「というかなんでそんなにグッズ化にこだわってるのでござるかwww」

ティンカーベル「私もマグカップの柄とかにして欲しいんだよ…!ソシャゲーのキャラとかになりたいんだよ…!」

277 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/23 00:20:10 Vvg 116/405


キモオタ「まぁまぁwww欲望は抑えていただきたいwww今日は原作に近い【雪の女王】の作品がないか見に来たのでござるからwww」

ティンカーベル「そうだったね…昨日、雪の女王に対してキモオタがうっかり『アナ殿はお元気ですかなwww』とか言うから恥かいたよ…」

キモオタ「女王殿、不思議そうにしてたでござるなwwwそれよりヘンゼル殿の目が怖かったでござるよ我輩www『なんでこの世界に来る前に原作読んでないの?馬鹿なの?』みたいな目でしたぞあれwww」

ティンカーベル「アニメ映画とかは原作そのまんまじゃなくてアレンジ加わってる時もあるから注意しなきゃだよ!次は気を付けてよね!」

キモオタ「了解でござるwww」

ティンカーベル「あー、でも羨ましいよね…【シンデレラ】も【雪の女王も】この世界で人気でさ、きっとたくさんの子供たちが楽しく見てるんだよ…」

キモオタ「まぁまぁwww落ち込むことないですぞwwwいずれ【ピーターパン】を復活させたらきっと映画にもアニメにもなるでござるよwww」

ティンカーベル「だよね!もしアニメ映画になったら一杯セリフあるよね!そしたら私の柄のマグカップとか出るよね!?」

キモオタ「それどころかスピンオフ作品になる可能性もワンチャンあるかもしれませんぞwww」コポォ

ティンカーベル「えーっ?それはさすがにないでしょー!」テレテレ

キモオタ「もっと自信持っていいのではwwwティンカーベル殿、準主役なのでござろうwwwいけるでござるよwww」

ティンカーベル「まぁ、自信はあるけどね!?なっちゃうよねー!スピンオフ!」ヘラヘラ

ズイッ

強面グラサン「おう、随分な自信じゃねぇか」ゴゴゴ

キモオタ「!?」ガタッ

キモオタ(な、何故こんな場所に任侠の方が…!)

278 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/23 00:21:28 Vvg 117/405

キモオタ(というか何故声掛けられたでござるか!?ここは逃げた方がいいですな、ティンカーベル殿……って)

凄く遠くにいるティンカーベル「早く早く!早く逃げてキモオタ!」ヒソヒソ

キモオタ(ちょwwwもう逃げてるwwwずるいwww)コポォ

強面グラサン「…あぁ?なにビビってんだテメェ…?」

キモオタ「わ、私に何か用件でもおありですかな…?」ガクブル

強面グラサン「はぁ?……ああ、なんだオメェ忘れちまったのか?俺だ、俺」スチャッ

キモオタ「我輩には組の若頭の知り合いなんか居ないのでござるけど……ややっ、もしやお主…!悟空殿!?」

強面グラサン「やっと思いだしたか、まぁこの姿でお前にあった時間は短かったから無理ねぇか」

ティンカーベル「もー!悟空に決まってるでしょ!忘れちゃうなんてキモオタは記憶力無いなぁー、私は気がついてたけどね」キリッ

キモオタ「めっちゃくちゃ逃げてたくせに良く言うでござるよwwwしかし何故その様な厳つい格好に変化しているのでござるかwww」

強面グラサン「そりゃあオメェ、俺が本来の姿で現実世界をうろうろしてたらビビらせちまうだろ?この世界には猿人も妖怪も居ねぇんだからよ」

キモオタ「むしろそっちの方が逆に怖いでござるけどねwww」

強面グラサン「そうかぁ?初めてこの世界に来た時に見かけた輩を真似ただけなんだな」

ティンカーベル「っていうか、悟空はなんで現実世界に居るの?もうルンペンなんとかはやっつけたからこの街に居なくても良いんでしょ?」

279 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/23 00:23:46 Vvg 118/405

強面グラサン「おう、そうなんだがよ。テメェらにはすっかり世話になっちまったから今日は礼をしようと思って来たんだ」

強面グラサン「つってもテメェの家も知らねぇしどうしようかと街を歩いてたんだがな、この店にティンカーベルが居るのが見えたから丁度良かったぜ」

キモオタ「我輩以外には妖精を連れた人間など居ませんからなwwwこの世界にはwww」コポォ

ティンカーベル「じゃあわざわざお礼をする為に来てくれたんだね!でも別に気にしなくたっていいのにー」

強面グラサン「そうはいかねぇよ、他人へ善意に見返りを求めちゃいけねぇが受けた善意には礼を尽くすようにってな。お師匠の教えだ」

キモオタ「そういえばそう見えて悟空殿は僧侶なのでござったなwww」

強面グラサン「守護者ってのがただしいかもしれねぇけどな、っつうか『そう見えて』とか言ってんじゃねぇ」

ティンカーベル「でもその様子なら、人質になってた女の人も無事だったんだよね?よかったよかった」ニコニコ

強面グラサン「おう、そいつがテメェらに是非礼がしたいって言っててな。招待して直接礼が言いたいんだとよ」

強面グラサン「それに……あの娘の事、テメェらの耳にもいれておかねぇといけないだろうしな。今から時間あんだろ?」

キモオタ「ん?もちろんオッケーですぞwww我々いついかなる時も暇でござるからなwww」

ティンカーベル「ちょうど夕飯も食べてないしね!…夕飯、食べてないしね!」チラッ

強面グラサン「念を押すんじゃねぇ、一回言えばわかんだよ。まぁ何かしら食いもんも用意してるだろうよ、もてなしの準備するって言ってたからな。早速案内するぜ」

キモオタ「それは期待大ですなwwwどのような美味しいものが我輩を待っているのでござろうかwwwちなみに何と言うおとぎ話でござるか?www」

強面グラサン「おう、えっとだな……おっ、丁度あいつのおとぎ話のエイガって奴があるじゃねぇか。ほらよ、これから向かうのはこのおとぎ話だ」

ティンカーベル「知ってる!それ前に金曜ロードショーでやってたやつキモオタとみたよ!【かぐや姫】だ!」

280 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/23 00:25:54 Vvg 119/405


かぐや姫の世界 上空

ヒュゴォォォー

キモオタ「ぶひいいぃぃぃぃぃっ!!!な、なんで世界移動するのにこんな上空を飛んでいく必要があるのでござるかぁぁぁ!!」ビュオー

孫悟空「ハッハッハ!風を切って飛ぶのは気持ちが良いだろ?俺の世界移動の方法はこの金斗雲で飛ぶ事だからよぉ!なんなら玉龍呼ぶか?あいつは龍だからもっと早いぜ!」ビュオー

ティンカーベル「あはは!私はこんなスピードで飛べないから楽しい!あはははは!」ビュオー

キモオタ「なんでテンションあがってるのでござるかぁぁぁ!!この雲乗るところ安定してないでござるから落ちそうで…ぶひゃあああ!!」

孫悟空「なぁにビビってんだよ、だらしねぇな。猪八戒だって雲に乗る術は使えるだろうが!テメェもこんくらい耐えて見せろ!」

キモオタ「我輩と猪八戒殿関連性ゼロでござるから…ぶひぃぃぃぃっ!!」

・・・

孫悟空「…っとぉ!うっし、到着だ」

ティンカーベル「あーっ、楽しかった!ねっねっ、悟空!また帰りも金斗雲に乗せてよ!自分の羽以外で飛ぶのってすんごく新鮮な感じ!」

孫悟空「おう、いいぜぇ!帰りは行きの倍宙返りしてやらぁ!」ハハハ

キモオタ「エチケット袋持ってくればよかったですぞ…」フラフラ

孫悟空「ったくだらしねぇな…おら、あそこに見えてる建物がかぐやの屋敷だ。少しばかり空で遊び過ぎた、急ぐぞ」

ティンカーベル「あそこって…めちゃくちゃ広いし大きい建物だよ!まさにお屋敷じゃん!」

キモオタ「おぉ…同じ日本でも桃太郎殿や赤鬼殿の世界の建物とは規模が違いますなwww」

281 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/23 00:28:56 Vvg 120/405

かぐやの実家

キモオタ「近くでみると尚の事立派な屋敷でござるなぁ…まさに圧巻ですなwww」

孫悟空「家なんざ雨露しのげりゃ十分だと思うんだがよぉ…おっと、あんまりうろうろすんなよキモオタ、危ねぇからな。あと絶対俺より先に行くなよ?」

ティンカーベル「ねぇねぇ悟空、かぐやってどんな女の人?超可愛いんだよね?だからいろんな人が結婚してって言いに来るんだっけ!」

孫悟空「まぁ顔は悪くねぇんじゃねぇか?俺の感性はアテになんねぇぞ、長く生きすぎてるからな。今は五人の求婚者が来るその少し前ってところだな。そうそう、かぐやもこの世界がおとぎ話だってこと知ってっから」

ティンカーベル「ふーん、どんな人か楽しみだなー」ワクワク

孫悟空「……」

孫悟空(この世界に迷い込んだって娘、かぐやが付き人にした娘は…間違いなく、【オズの魔法使い】の主人公ドロシーだ)

孫悟空(ってこたぁ、キモオタやティンカーベルの敵って事だ。俺達が匿ってやってる事、こいつ等に黙ってるわけにゃあいかないが……)

孫悟空(あいつの事情を聞いちまった以上、敵対しないでやって欲しいところだが…難しいだろうな。ティンカーベルにとっちゃあ自分の世界を消した犯人だって言うしよぉ)

孫悟空(どう切り出したもんかな…言いにくいったらねぇぜ)

キモオタ「深刻そうな顔してどうしたでござるか悟空殿wwwなんなら我輩が先陣を切ってかぐや殿に挨拶してくるでござるよwww……ん?なにやら蔓が足に絡みつきましたな」グイッ

孫悟空「チッ、馬鹿野郎…!俺より先に行くなって言っただろうが…!」バッ

バシュッ ドスドスドス

ティンカーベル「えぇーっ!?なんかいっぱい飛んで来たよ!?」

孫悟空「伸びやがれ如意棒!全部弾き飛ばしちまえ!」シュバババ

キモオタ「ぶひいぃぃぃっ!?茂みから竹槍が飛んできましたぞ!?」

282 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/23 00:31:45 Vvg 121/405

孫悟空「だから先に行くなって言ったんだろうが!っつうかあのクソじじぃ、客人が来るっつったのに何で罠解除してねぇんだ…!」

キモオタ「ちょwww罠ってwwwもしや我々歓迎されていないのではwww」

孫悟空「いや、こいつはお前を狙った罠じゃねぇ。俺を狙ってんだよ、こんな原始的な罠はお見通しだけどよぉ…なぁ、ジジィ。出てきやがれ!」

竹取の翁「…チッ、今日こそ害獣を駆除できると思ったんじゃがな」スッ

孫悟空「クソジジィが!こいつ等はかぐやの恩人でもあんだぞ!もしもの事があったらどうするつもりだったんだテメェ!」

竹取の翁「おお、キモオタさんにティンカーベルさんじゃな?話はそこのクソ猿に聞きました、娘を助けていただいたようで。私はかぐやの父親代わりを務めております、翁です。どうぞ、ささやかではありますが宴の準備が整っておりますのでこちらへ」ニコニコ

孫悟空「聞けよ!俺の話を!テメェがこいつらに危害加えそうになった事かぐやに言っちまうぞ!」

竹取の翁「安い脅しじゃな。ひとりでかぐやを助ける事も出来なかったくせに偉そうな奴じゃ。ほれ、山はあっちじゃぞ」シッシッ

孫悟空「テメェ…ジジィだからと大目に見てやりゃあ付け上がりやがって…!」

竹取の翁「大切な娘を害獣から守るのは当然じゃ。しっかし、所詮はクソ猿じゃな…三蔵法師とかいう高僧の弟子とかいっておったが、大したことないのぉ」

孫悟空「おい、お師匠を馬鹿にするとただじゃおかねぇぞ!」

竹取の翁「たわけ。ワシはお前を馬鹿にしておるんじゃよ」

孫悟空「んだとコラァ!表に出やがれクソジジィがぁ!!」



ティンカーベル「なんだかおじいちゃんバージョンのゴーテルみたいな人だね…」

キモオタ「竹槍を射出する罠を張るなど、随分アグレッシブな翁でござるwwwしかし我々は歓迎されているようでござるし、まぁ問題無いでござろうwww」

283 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2015/11/23 00:34:31 Vvg 122/405

今日はここまでです

ここまでに出たおとぎ話紹介
【一寸法師】
日本の昔話のひとつ。一寸ほどの小さな少年が針を刀代わりに鬼退治を果たすおとぎ話。
一般的な内容は生まれつき身体の小さな一寸法師が名を上げる為に都へ向かい
姫に仕えての宮参りの道中に襲いかかって来た鬼をその身体の小ささを生かして退治する
鬼が落とした鬼の宝である打ち出のこづちを使って一寸法師は大きな身体を手に入れ、姫と結ばれるという内容。

このssでは既に消滅しています。


かぐや姫とオズの魔法使い編 次回に続きます


続き
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」八冊目【中編】

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