1 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2017/12/31 23:54:09.69 57Kb2bxZ0 1/126


けいおんSS + α です。シリアス寄り

キャラが作中で男性と結婚とか、年取ったりしてます。注意



ネタも、題材も、書き出すタイミングも

作中の時系列も何から何までアレだけど、書いてみた


どうか許しておくれ~


元スレ
唯「バイバイ、さん きゅ~♪」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1514732049/

2 : 1 - 2017/12/31 23:55:03.81 57Kb2bxZ0 2/126


【N女子大・寮 唯の部屋】

午前3時21分



(20)「ふわぁぁ……」

「むにゃむにゃ……」

「もう4時か…………」

3 : 1 - 2017/12/31 23:56:42.35 57Kb2bxZ0 3/126


「変な時間に起きちゃった」

「このまま寝るのもいいけれど」

「なんだか、ココアが飲みたい気分」


「……」


「よし、コンビニで買ってこよー」

4 : 1 - 2017/12/31 23:57:41.11 57Kb2bxZ0 4/126


【15分後 コンビニ前】

店員「ありがとうございましたー」

ティコティコティコーン♪


テクテクテク


「ふふふ、ホットココアをゲットだぜ!」

「さっそく一口!」


「……」

「うーん、あま~い!」


「ふぅ~、沁みるなぁ~」

5 : 1 - 2017/12/31 23:59:09.39 57Kb2bxZ0 5/126


「おー、気づけば、今日は雲ひとつない、スッゴクいい夜空♪」


「お星さまが、いつもよりも沢山!」

「沈みかけた満月も、みんなキラキラ耀いてる!」


「今日は、いいことが起こりそう♪」

「ふふふー、何が起きるかなー」

6 : 1 - 2018/01/01 00:00:33.49 TaOAbahR0 6/126


(あー、こうして夜の空を眺めていたら、)


(この前、みんなで行ったキャンプを思い出したよ!)

(あの日の夜は、反対に真っ暗ヤミだったなぁ)




(迷子のあずにゃんを見つけに)

(みんなで日の暮れた山に入っていったけど)

(私たちあずにゃん捜索隊も、森の奥で迷子になっちゃったんだよね)


(まさに、ミイラとりになったミイラ!)

7 : 1 - 2018/01/01 00:02:02.70 TaOAbahR0 7/126


(ドコに行けばいいか途方に暮れて、小雨も降ってきて)

(もう駄目だーっ、死んでしまうー……って絶望してたら)


(ムギちゃんがキャンプ地で着けてくれてた、焚き火が遠くからホンノリ見えて)

(みんなでそれを目印にして、無事に戻ってこれたんだよねー)


(真っ暗を照らす火に、暖かみを感じた一件でした♪)


(ムギちゃんにも感謝カンシャ! めでたしめでたし!!)

8 : 1 - 2018/01/01 00:03:07.93 TaOAbahR0 8/126


「……」

「風が出てきたなぁ」


「さ、早く部屋に戻って、もう一眠りしますかっ!」

「二度寝、二度寝~♪」




テクテクテク

9 : 1 - 2018/01/01 00:03:57.95 TaOAbahR0 9/126


【寮 1階廊下】

ヒックヒック

「ん?」


ヒック、ヒック

「……誰かの、泣き声?」


「共同トイレから、聞こえる……!」

10 : 1 - 2018/01/01 00:05:11.22 TaOAbahR0 10/126


「はっ、そう言えばちょっと前、憂が、」

「音楽室で出た、オバケの話をしていた様な……」

ヒックヒック

(音楽室に響く水音に、床に落ちた赤いシミ……)

(実はその正体は……!)




「うぅ、コワイけど……」

ヒック、ヒック……

「このトイレから響く泣き声も、気になる……!」

11 : 1 - 2018/01/01 00:06:24.58 TaOAbahR0 11/126


「ちょっとだけ、見てみよう……」

「もし、ほんとのオバケだったらスグ逃げよ!」


「…………」







(ポマードポマードポマード!!!)

12 : 1 - 2018/01/01 00:07:47.92 TaOAbahR0 12/126


「そーっ」


「……ヒック、ヒック」


「あれ、何だ。ムギちゃんじゃん」

「……ヒック、ヒック」


(……泣いてるみたいだけど、どうしたんだろ?)

13 : 1 - 2018/01/01 00:08:39.36 TaOAbahR0 13/126


「ム~ギちゃん!」

「ゆ、唯ちゃん!」


「こんな所でどしたの?」


「もしかして、お腹いたい??」

「うぅぅ、うぅぅぅ」



「えっ!?」

ガバッ!

むぎゅぅぅぅぅぅぅぅ

「あわわわわえあわ!?」

14 : 1 - 2018/01/01 00:09:53.73 TaOAbahR0 14/126


(い、いきなり抱きつかれた!?)

「うぅ……」



「ど、どうしたのムギちゃん? 何があったの??」

「ごめんね、ごめんね。唯ちゃん、みんな……」

「えっ??」

15 : 1 - 2018/01/01 00:10:58.34 TaOAbahR0 15/126


「私ね」

「妊娠しちゃってるみたい……」








「…………」

「どぅえええええええええ!??」

16 : 1 - 2018/01/01 00:11:49.53 TaOAbahR0 16/126


5日後

【ムギの部屋 午後10時12分】


「それで、病院で検査結果は!?」

「まちがい、ないんだな!?」

「うん。お腹に赤ちゃんがいるって。1ヶ月の」

全員「ぅぉぉぉ……」


「おめでとう!ムギちゃん!」

「いや、おめでとう……なのか?」

「おめでとうだよ、そういうことにしとくの!!」




「……」

17 : 1 - 2018/01/01 00:12:57.24 TaOAbahR0 17/126


「それでムギ先輩! 相手の方は分かってるんですか!?」

「……うん」


「ち、ちなみに誰なんだ?」

「私たちの知ってるヒト?」

「っていうか、ムギに彼氏とかが居たとか気づかなかった……」


「……ごめんね」

「……相手は、一応みんなも知ってるヒト」

「だ、誰なんです?」


「半年前に、皆でバンドマン同士の合コンに行ったでしょ。その時に来てた、ドラマーの人」


「あー、あの合コンで!」

「えっ、でもあの時は全員が全員に脈なしだったろ?」

「う、うん。その時はね」

18 : 1 - 2018/01/01 00:14:58.51 TaOAbahR0 18/126


「でも。後日、バイト先で偶然出会って」



みんな「へー」



「ライブのチケット貰って、行って見たの」



「勢いあって力強くて、でもどこか暖かくて安心できるドラムを叩く人でね」

「何だか凄いなって思って、連絡先を交換して……」



「そこから一緒にお茶して音楽の話をしたり、」

「スタジオでキーボードとドラムのセッションしたり、買い物に行ったり……」

みんな「おぉ……」

「……」

19 : 1 - 2018/01/01 00:15:44.36 TaOAbahR0 19/126


「なんでもない日に、こっそりあって、二人きりで過ごしたり///」

「映画行って、バーでカクテル飲んで、それから、えーと……」



みんな(お、大人だー)


「……」

20 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2018/01/01 00:17:11.99 TaOAbahR0 20/126


「っていうか、彼氏さんができたなら教えて下さいよ!」

「そうだよ! 水くさいじゃないか」

「ご、ごめん」

「皆で、ムギと彼氏さんのデート、こっそり尾行したかったのに……!」プンプン

「……うぅ、みんなの期待に沿えなかった」



(や、デートに付いて来られるとか嫌だよ。私なら彼氏ができたの、内緒にしとく)


「……」

21 : 1 - 2018/01/01 00:18:53.92 TaOAbahR0 21/126


「それで、ムギちゃんはこの後、どうするの?」



「……この子を、生みたい。あの人と、人生を歩みたい」



「……」


「あの人には話をして、『いいよ。責任とるから』って、言ってくれたんだ」

みんな「おおー!」

22 : 1 - 2018/01/01 00:20:32.47 TaOAbahR0 22/126


「……でもね、琴吹家は許してくれそうにないの」

みんな「ええっ!?」


「あの人と結婚するのも、この子を生むことも……」


「厳格な家だもんな、ムギの実家って」


「でも、家が反対だとすると、どうすりゃいいんだ?」


「……」

「……」

23 : 1 - 2018/01/01 00:21:42.11 TaOAbahR0 23/126


「夜逃げするの、あの人と二人して」


みんな「えええええええ」


「そんな、夜逃げだなんて」

「いや、でも、それしかないんじゃないか?」

「じゃぁ、大学やバンドはどうするの?」


「……どっちも、辞めるわ」

みんな「!」

「……ここに居たら、琴吹家に連れ戻されてしまうから」


「……」

24 : 1 - 2018/01/01 00:22:28.01 TaOAbahR0 24/126


「ごめんね、みんな」

「特に、唯ちゃんに澪ちゃんに、りっちゃんに梓ちゃん……!」

「勝手なお願いになっちゃうけど、どうか、こんな私を、許して……」


「あ、頭をあげてください! ムギ先輩!」

25 : 1 - 2018/01/01 00:23:19.91 TaOAbahR0 25/126


「……それで、いいのか。よく考えた上での、答えなんだな」


「……うん!」


「だったら、だいじょうビッ!」

「寂しくなりますけど、ムギ先輩の意志を尊重します!」



「あぁ。バンドも大学も大切だけど、ムギの人生が、一番だいじだからな!」



「……みんな、ありがとう」

26 : 1 - 2018/01/01 00:24:51.36 TaOAbahR0 26/126


「それで、夜逃げったって具体的にいつから始めるんだ?」

「……今日の、午前零時。日付が変わると同時に、ここを発っていくわ」

「ちょ、急だな!」

「……これ以上遅れると、琴吹家の追跡チームに追い付かれてしまうから」

「……」


「でもでも、それだともう2時間もありませんよ!」

「荷物とか、どうするんですか!?」

「……ホントに迷惑かけてばかりだけど、みんな、纏めるの手伝ってくれないかしら」


「……」

27 : 1 - 2018/01/01 00:26:16.40 TaOAbahR0 27/126


「おうとも! 任せとけ親友(マブダチ)よ!」

「ふふふ~。りっちゃんの旅行収納術を披露する時が来たようだな!」


「あぁ。他にも、できることあったら言ってくれ!」

「私もお手伝いします」

「うんうん!」

28 : 1 - 2018/01/01 00:27:01.20 TaOAbahR0 28/126


「…………私は、ヤだ」

「ちょ、唯!?」

「……唯ちゃん?」




「…………」



「…………」

29 : 1 - 2018/01/01 00:27:56.62 TaOAbahR0 29/126


「勝手だよ、こんなの!」




「……ごめんね。ムギちゃん」

「唯?」

「唯センパイ??」




「……うまく、言えないケド」

「……私は、自分の部屋に戻ってるよ」

「……唯ちゃん」

30 : 1 - 2018/01/01 00:28:48.75 TaOAbahR0 30/126


「見送りとかも、行かないから」

「…………」



「じゃあね、バイバイ。さよならムギちゃん」


バタン!!

「……唯ちゃん」

31 : 1 - 2018/01/01 00:29:57.68 TaOAbahR0 31/126


「行っちゃった」

「ちょ、いいのか? 唯のやつアレで?」


「あー、大丈夫でしょ。唯がいると荷物まとめももたつきそうだし」

「見送りとかも、どうせ寂しくなって自分から来るだろうしな」

「ですです」

「あー、ありそう」



「よっしゃ、じゃぁちゃちゃっと夜逃げ……いや、駆け落ち応援隊スタートといきますか!」



みんな「おー」

32 : 1 - 2018/01/01 00:30:57.65 TaOAbahR0 32/126


【午後11時51分 N女子大 寮の門前】


ビッビー♪

「おお、道路の向こう側で待ってる車が、そうだな?」

「うん。あの人の車」

「しかし、結構時間ギリギリだったな」

「はい。荷物まとめ間に合って良かったです」

33 : 1 - 2018/01/01 00:31:44.38 TaOAbahR0 33/126


「それじゃムギ、元気で!」

「今までありがとう」

「体に気をつけて」

「恩那組のみんな……」


「ムギ、彼氏さんと幸せにな。万一ツラいなら、いつでも戻ってこい!」

「澪ちゃん!」

34 : 1 - 2018/01/01 00:32:53.51 TaOAbahR0 34/126


「梓ならともかく、ムギなら問題ないとは思うが、元気に子を生めよ!」

「そんで赤ん坊の写真を年賀状にして送ってくれ!!」


「律センパイ! セクハラです! まぁ年賀状は私も見てみたいですが……」


「ふふふ。りっちゃんに梓ちゃん。そうするわ」



「それからコレ、みんなからのカンパ。気持ち程度だが、受け取ってくれ」

「……ありがとう。何から何まで、本当にアリガトウ」



「……時間だな」

35 : 1 - 2018/01/01 00:33:53.93 TaOAbahR0 35/126


「おい、大事なヤツが居ないけど、いいのかよ」

「や、唯ならそこら辺の木陰にでも居て、こっちを見てるだろ」


ガサゴソ

「……」ジー



「ほら居た」

36 : 1 - 2018/01/01 00:35:05.35 TaOAbahR0 36/126


「ほら唯センパイ、こっちに来て!

「さぁ、お別れの挨拶ですよ!」

「あわわ、引っ張らないでよ、あずにゃん!」

「ほら早く!」


「わわっ」


ズルッ

ビターン!

37 : 1 - 2018/01/01 00:36:06.13 TaOAbahR0 37/126


「…………こけた」

「す、すみません」

「あいたたた」



「ちょっと、唯ちゃん大丈夫?」

「うぅ、ムギちゃぁん……」

38 : 1 - 2018/01/01 00:36:57.36 TaOAbahR0 38/126


「ムギちゃぁぁん……」

「どうしたの? 唯ちゃん?」



「いやだ。寂しいよ。どこにも行かないでよ。ムギちゃん!」



「……唯ちゃん」


「こんなに急にお別れを言われるなんて」


「いやだ。嫌だよ。あんなにずーっと一緒だったのに、あんまりだよ!」


「……」



「ヒッグ、エッグ…………」


「うぇえええええぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇ」

「ゆ、唯ちゃん」

39 : 1 - 2018/01/01 00:38:48.20 TaOAbahR0 39/126


「うぅぅ……」


グシグシッ!

「……ねぇ、ムギぢゃん?」

「……なぁに?」


「ムギちゃんの為に、私ができることって、何かないがなぁ?」

「唯ちゃんが、できること……」


「私は、大切なムギちゃんのピンチに、大事なお別れの時間に、」

「遠くから見てるだけで、何もしてあげられなかった……」

40 : 1 - 2018/01/01 00:39:41.49 TaOAbahR0 40/126


「このままお別れするだけとか、辛すぎるからさぁ……」

「ここから、私ができることって、ないがなぁ……?」グスッ


「唯ちゃん」


「できることなら、何でもするから…………!」

41 : 1 - 2018/01/01 00:40:45.30 TaOAbahR0 41/126


「じゃぁ、じゃぁね!」

「……」

「それじゃぁ唯ちゃんは、」

「……」





「唯ちゃんは、歌い続けてよ!」

42 : 1 - 2018/01/01 00:42:10.96 TaOAbahR0 42/126


「歌い、続ける?」

「えぇ!」


「私ね。唯ちゃんの歌声が大好きなの!」

「私の、歌声?」

「そっ!」

43 : 1 - 2018/01/01 00:42:50.63 TaOAbahR0 43/126


「温かくて、ふわふわしてて、幸せそうに歌う声が響くと」

「聴いてる私も、なんだか幸せな気分になってきちゃう、」

「そんな唯ちゃんの歌声が、私は大好きで、何度だって聞きたくなるの!」


「……」


「……い、いやぁ///」テレテレ

44 : 1 - 2018/01/01 00:43:50.88 TaOAbahR0 44/126


「……私は、ここでお別れすることになっちゃったけれど」

「……ムギちゃん!」


「唯ちゃんが歌ってくれるなら、いつの日かきっと、」


「それを目印にして、唯ちゃんに、会いにいくから……」

「……うん!」

45 : 1 - 2018/01/01 00:45:47.06 TaOAbahR0 45/126


「私、歌う。歌い続けるよ」

「唯ちゃん……」


「ここでお別れだとしても、サヨナラだとしても」

「いつかまた、みんなが戻ってこれる、」


「この前のキャンプファイヤーみたいな、真っ暗な夜を、遠くまで照らすような」


「そんな歌を、そんな歌っていくよ……!」

46 : 1 - 2018/01/01 00:48:35.26 TaOAbahR0 46/126


「……すぐには無理だけど」


「もし、唯ちゃんの歌声が、この耳に聞こえたなら、」

「私はどこにいても、唯ちゃんを抱き締めに飛んで行くわ!」


「うん。そんな日が来るのを、待ってる!」

「きっと。約束ね!」

47 : 1 - 2018/01/01 00:49:40.59 TaOAbahR0 47/126


「バイバイ」

「また会おうね」


こうしてムギちゃんは、私たちから旅立ちました






けれど、それから今まで、私はムギちゃんに会うことができていません。

そして、『歌い続ける』って約束も、守れていません

48 : 1 - 2018/01/01 00:50:34.33 TaOAbahR0 48/126


……というのも



(21)「えっ、海外発の、百年に一度の大不況!?」

(21)「どこかに勤めないと、趣味で音楽もできない世の中か……」

(21)「うぅ、働かなきゃなのに、就職活動の仕方とか、ゼンゼン分かんないよー」


(22)「お、御社の志望動機は……、自己PRは……」

(22)「ふぇぇ、またお祈りメールだぁ……」

(22)「はぁ、どこにも就職できず、大学を卒業かぁ……」

49 : 1 - 2018/01/01 00:52:25.27 TaOAbahR0 49/126


(23)「こんな私でも雇ってくれる会社があった、一生懸命働きます!」

(23)「仕事量が多過ぎて、ギー太を弾く暇もないよ……」

(23)「ええっ、会社が倒産するかも!? 入ったばっかなのに!」


(24)「ま、まさか勤め先が外資系企業に買われるとは」

(24)「海外転勤できるなら再雇用……できないならクビ…………」

(24)「ここ辞めると就職できる気がしないし、受け入れよう」

50 : 1 - 2018/01/01 00:53:14.38 TaOAbahR0 50/126


(25)「今日からここロンドン支社に出向し、お世話になる平沢唯です!よろしくお願いします!」

(25)「……まさかこんな形でここに戻ってくるとは」

(25)「卒業旅行で来たメンバーとは、今は離ればなれだけど……」


(26)「営業成績が『A』! ありがとうございます!」

(26)「こう見えても、やれば100点を取れる子なのです!」

(26)「はい、これからもロンドンでがんばります!」

(26)「……本当は、帰りたいけれど」

51 : 1 - 2018/01/01 00:55:23.30 TaOAbahR0 51/126


(27)「メアリー先輩。今までご指導ありがとうございました。お達者で!」

(27)「ジョン君は転職かー。新しい職場でも頑張ってね!」

(27)「……どうしよう。仕事量は増えてくのに、人は減っていく」


(28)「……………………」

(28)「はっ!? 寝てたっ!!!」

(28)「うー、3日も徹夜なのに、まだ仕事が終わらないよ~」

(28)「日本に戻れたはいいけれど、余計に重労働になっちった……」

52 : 1 - 2018/01/01 00:57:23.56 TaOAbahR0 52/126


(29)「……つらい、つらいよ。眠れない」

(29)「どこまで頑張っても、休める気が、終わりが来る気がしない」


(29)「あぁ……」



(29)「帰りたい。楽しかった、あの日々に……」

53 : 1 - 2018/01/01 00:59:45.09 TaOAbahR0 53/126


PRRRRR


(29)「もしもし? あ、お母さん!」

(29)「お見合い? ええっ、私に?? ……うんうん」

(29)「そんな、急だよ」




(29)「…………うん。でも、お願いしよっかな」



(29)「私はもう、ここに居たくはないから……」

54 : 1 - 2018/01/01 01:00:51.11 TaOAbahR0 54/126


こうして、私は結婚し主婦になり、一児の母にもなりました



その後も、色々とあったけど


違うようで同じ、同じようで少しづつ違ってく、繰り返す毎日


家事をこなして、家族の面倒を見て

パートに通い、暇潰しにネットを見て、夜は眠る

55 : 1 - 2018/01/01 01:02:38.77 TaOAbahR0 55/126


レコードみたいに、巡りゆく朝と夜

私のものの筈だった人生は、少しずつ少しずつ、サラサラと世界に溶け込んでいく



何年も何年も、大切な約束を守れずに

若い頃に見てた夢も忘れてしまって

いつかあった私の形が、塩の柱みたいに崩れていって


自分が、かつて何者だったか分からなくなるほどの時間がたって




そうして、今に至ります



ただ生きる。生きるために、今日を、毎日を生きてます

56 : 1 - 2018/01/01 01:07:16.73 TaOAbahR0 56/126


【そして、とある未来】

【午前9時01分】






(45)「おーい、朝だよ~」

唯の息子(15)「う~ん……zzz」

57 : 1 - 2018/01/01 01:08:28.28 TaOAbahR0 57/126


「ほら、こーちゃん。今日は大事な日なんじゃないの?」

「うん……? 大事な日…………」ムニャムニャ


「あ、やべ! 今日はデートじゃん!」

「ほら、さっさと起きる!」


「うわわわ!」

58 : 1 - 2018/01/01 01:09:25.69 TaOAbahR0 58/126


「っていうか、イマ何時?!」

「9時を少し回ったとこ」

「よかった、セーフ……」ホッ

「でもでも、準備があるから余裕はないよ」

「まずは顔洗って、ボサボサ頭を整えて、朝ごはんを食べちゃって!」

「おー」

59 : 1 - 2018/01/01 01:10:23.89 TaOAbahR0 59/126


「お、来た来た。遅いよ~!」

「やー、なかなかセットが決まんなくて」

「まったく。この子はモー……」


「ホラ、ごはん用意したげたから、さっさとする!」

「サンキュー、母ちゃん! いただきまーす!」

60 : 1 - 2018/01/01 01:11:31.79 TaOAbahR0 60/126


「うめー」モグモグ

「うふふふ」


「ねーねー、こーちゃん?」

「ん、何?」


「今日のデート相手って、確か同じバンドのベース少女ちゃんだっけ?」

「や、何べん言わすんだよ。同じ部の先輩。3年生で、担当はドラム!」

「あー、そっかそっか。そーだった!」




「ねーねー。因みにどんなコ? かわいい??」

「う、うん。めっちゃいい人だし、すっげーカワイイひと、だよ///」

「ほほー、いいですなぁ……///」

61 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2018/01/01 01:13:21.74 TaOAbahR0 61/126


「ねーねー。今日のデートだけどさぁ……」

「?」

「その、母ちゃんも、一緒に同伴しちゃ、ダメかな???」

「…………絶体ダメ! なにいってんだアンタ!!」


「だったら、こっそり尾行しつつ、記念のビデオ撮影とか…………」

「……カンベンしてくれよ。付いてくんな!」シッシッ

「ヴー、けち~」

「まったく……」

62 : 1 - 2018/01/01 01:14:02.70 TaOAbahR0 62/126


「しかしまー、感慨深いなー」

「えっ、何が?」


「私の子も、自分と同じく高校から軽音部入ってバンド組んだとか。やっぱ遺伝だなーって」

「……まぁ軽音部っていうか、あれだけど」


「…………なぁ母ちゃん?」

「んー?」

63 : 1 - 2018/01/01 01:15:18.76 TaOAbahR0 63/126


「その、母ちゃんも昔バンドしてたって言うけど、それは本当の話なん?」

「ほんとほんと、大マジだよ~」

「え~」

「『え~』とはなにか(怒)」


「だってさ、母ちゃんがバンドしてた風とか、練習頑張ってた様には思えねーもん」

64 : 1 - 2018/01/01 01:16:29.57 TaOAbahR0 64/126


「このー、言うようになったね~」


「あれだよ、こー見えても母ちゃんは、若いときは凄腕バンドマンだったのだからっ」エッヘン!

「……例えば、どのくらい?」

「デビュー曲が、ニ○ニコ動画ランキングで1位取ったり!」

「……えぇぇ」


「文化祭のライブでも、母ちゃん達の演奏を聴きに、めちゃめちゃ人が集まったり……」

「……んん、どのくらい??」

「……ご、五十万人くらい、だったと思う!」

「それは、ウソでしょ?」

「…………すみません、これは嘘でした」

65 : 1 - 2018/01/01 01:17:36.10 TaOAbahR0 65/126


「やー、でもね。練習とかは毎日やってたんだから!ほんと!!」

「へー」


「放課後に毎日集まって、みんなで一時間くらい……」

「一時間くらい……?」

「……お茶会をしたり!」

「……お茶会!?」

66 : 1 - 2018/01/01 01:18:46.81 TaOAbahR0 66/126


「その後みんなでまた、一時間くらい、お喋りしたり!」

「お喋り!??」


「そんでそんで、それから練習をね、ちょっとやってた!」

「……」


「……あー何か『そこはもっと練習しようよ』とか思ってるでしょ!」

「……ん、まぁ少し」

「ふーんだ!」

67 : 1 - 2018/01/01 01:20:00.08 TaOAbahR0 67/126


「いいんだよ。私たちは楽しい一時を過ごせてたんだから!」

「うん、まぁね。楽しいのが何より」


「……ちなみに、こーちゃんはバンドとか、楽しい?」

「あ、俺? うん。スッゲー、楽しいよ!」


「先輩も仲間も、みんないい人でさ。ケンカしたりもするけれど」

「うんうん」


「それでも自分のやりたい事に挑戦できて、上手くいって、」

「でも本当に本当に大事なトコは、思った通りにはならなくて」

「ほうほう」

68 : 1 - 2018/01/01 01:20:58.41 TaOAbahR0 68/126


「大変な事も多いけど、まぁそれでも、あの場所で、あの皆と頑張っていきたいって、思ってる」

「おー、いいね~。私とはゼンゼン違うけど、青春そのものだね~」


「ふふふ。いいことだよー。そんな素敵な場所と、出会えた人達を、大切にしてね!」

「……あぁ」

「きっと、きっとね!」

69 : 1 - 2018/01/01 01:22:38.26 TaOAbahR0 69/126


「自分が望む場所で頑張れたって思い出と、一緒に過ごした仲間との思い出は、」

「この先ずっと、自分を支えてくれる、人生の宝物になるから……」

「……かーちゃん、いいこと言うなぁ」




「あー、でも楽しいコトだけじゃ駄目だよ~」

「うん?」

「しっかり勉強もして、将来できたら、お堅い職業に就きなさい!」

「あぁ、分かってるよ~」

70 : 1 - 2018/01/01 01:24:24.14 TaOAbahR0 70/126


「ま、とにかく今日のデート頑張って!」

「おっと、そろそろ出発の時間だな」



「それじゃ、あーゆーれでぃ?」

「いえっさー!」



「服装や髪形!?」

「バッチリ!」


「ハンカチにティッシュ!?」

「ポケットに!」


「デートプランは!?」

「一週間、練りに練った計画と、そのメモ帳!」サッ

「よろしい!」

71 : 1 - 2018/01/01 01:25:27.67 TaOAbahR0 71/126


「最後に、お財布と携帯は?」

「どっちもココに……って、ああヤベー!」

「どしたの?」

「ケータイの充電が、もう10%もない!」


「また!? 寝る前に充電しときなさいって言ったじゃん!」

「ああああ、どーしよー」

「まったくモー、この子ったらホント残念系男子なんだから」ヤレヤレ

「……母ちゃんには言われたくねーよ」

72 : 1 - 2018/01/01 01:26:45.90 TaOAbahR0 72/126


「まぁいいや。充電なくても問題ないっしょ」


「あれ、もう行くの?」


「あぁ、帰りはあんまり遅くなんねー様にするから!」


「はいはい。気をつけてね。いってらっしゃーい!」ノシ

「行ってきまーす!」ノシ


ガチャッ バタン!

タッタッタッタッタッ♪



(ふふふ、楽しそうな足音を鳴らして走ってった♪)

(……さてさて)

(それじゃ、私も出掛けますか~)

73 : 1 - 2018/01/01 01:28:03.82 TaOAbahR0 73/126


【駅前・待ち合わせ場所】

(ちょっと、早く来すぎたかな……?)






ガサゴソ

(ふふふ、植え込みの陰から、コッソリ観察……)

74 : 1 - 2018/01/01 01:29:50.22 TaOAbahR0 74/126


(いやー、あの子には来るなって言われたケド、)

(こればっかりは、譲れないなー。デートの様子見!)

(……将来、ウチにお嫁にくるコかもしんないし♪)

(途中までなら、付いてっても、バチは当たらないよ、ね???)



ガサゴソ

(確かデート相手って、いい人でカワイイ、同じ部で3年生の先輩らしいけど)

(どんなコだろうなー、楽しみだなー)ワクワク





「き……緊張する……」ドキドキ

75 : 1 - 2018/01/01 01:30:58.90 TaOAbahR0 75/126


美少女「おまたせ~。待った?」

「!」





ガサゴソ

「ふ、ふおおおおおお!」

76 : 1 - 2018/01/01 01:32:10.40 TaOAbahR0 76/126


「先輩……その、今日も一段とカワイイっす!」

美少女「そ、そぉ?」


「今日はよろしくお願いしま~す!」ドゲザー

美少女「あ、や、こちらこそ!」


美少女「男の子と出掛けるなんてあんまりないから、ちょっと服とかも考えちゃったけど」

美少女「よかった~、へへー」クルッ




コソコソ

「……」


(あ、あの美少女が、デート相手の先輩!?)

(ふわっとした金色の長い髪、年上なのに小さくって……!)

(なんていうか、こう。お人形さんみたい!メッチャかわいい!!!)

77 : 1 - 2018/01/01 01:33:39.20 TaOAbahR0 77/126


「オレもいろいろプラン立てました! 頑張りますよ~!!」

「映画でも、遊園地でも!!」

美少女(張り切ってる……)


「まずは……映画か……」

美少女(あんまり、寝てないのかな……)


「えーと、そうすると…………」

美少女(ホント……いつも一生懸命でかわいいなぁ……)クスッ


美少女「一緒ならドコでもいいよ、お任せする!」

「ハ……ハイッ!」


コソコソ

「……」

78 : 1 - 2018/01/01 01:34:47.47 TaOAbahR0 78/126


(あ、あんな美少女さんを捕まえられるなんて……)

(我が息子ながら、おそろしいコ!)



「映画、まだ時間ありますね~」

美少女「どうする?」

「あ、ゲーセン!」




(お、移動するみたい)

(私もついてこ)コソコソ

79 : 1 - 2018/01/01 01:35:50.52 TaOAbahR0 79/126


J( 'ー`)し「……」





J( 'ー`)し「……」コソコソ

80 : 1 - 2018/01/01 01:37:22.67 TaOAbahR0 80/126


【ゲームセンター】


美少女「UFOキャッチャー、いける?」

「任せてください!」


ウィーン ウィーン!


ガシャガシャ! ガシッ♪


美少女「お……お……!」

ウィーン……ガタン♪

2人「やったー!」

「やりました~!」


「センパイ!どうぞ!!」

美少女「ありがとう! 大事にするね!」

81 : 1 - 2018/01/01 01:38:10.25 TaOAbahR0 81/126


(……おお、今のはポイント高いよ)

(ぐっじょぶ!)







J( 'ー`)し「……」


J( 'ー`)し b

82 : 1 - 2018/01/01 01:39:36.45 TaOAbahR0 82/126


【洋服屋】

「センパーイ! このワンピースとかどうすか!?」

美少女「ほほぅ……」


~試着~


ワンピース少女「フムフム、どうかね?」

「先輩!いいっす!! 」

「あ、こっちも」


~試着~

ボーイッシュ少女「こんなのは?」

「先輩いいいっっす!」

「ああ、アレもいい!」

ボーイッシュ少女「え、まだやるの?」

83 : 1 - 2018/01/01 01:40:27.53 TaOAbahR0 83/126


~試着~

着ぐるみ少女「……」

着ぐるみ少女「なにコレ?」

「先輩いいいいひゃっっほいいいいい!」




~着替え~

美少女「……あのさ、服着てりゃ何でもよかったのかい?」

「無くてもいいぐらいっす!」

美少女「それはやだよ……;」

美少女(わかってたけどバカなんだな……この子は…………)

84 : 1 - 2018/01/01 01:41:23.94 TaOAbahR0 84/126


(うぅぅ)

(バカなコに育てちゃってごめんね、美少女ちゃん)






J(;'ー`)し「……」

85 : 1 - 2018/01/01 01:42:34.10 TaOAbahR0 85/126


「あ、そうこうしてるウチに映画の時間がマズイ!」

美少女「よし、ならダッシュだ!付いてこい!」

「はいっ!」

タッタッタッタッタッ♪


(私も追跡!)

タッタッタッタッタッ!


J( 'ー`)し「……」

タッタッタッタッタッタ

86 : 1 - 2018/01/01 01:43:56.30 TaOAbahR0 86/126


【映画館、受け付け】


「えっと、高校生2枚ください!」

スタッフ「はい、こちらになります」

美少女「どうも~」





「えっと、さっき息子が、いや高校生カップルが買ったのと、同じ映画のチケットを!」

スタッフ「は、はぁ………」




J( 'ー`)し「あの…………」

スタッフ「???」

87 : 1 - 2018/01/01 01:44:52.06 TaOAbahR0 87/126


~ 上映中 ~



美少女「やー、面白いね~」

「はいっ、めちゃめちゃ良い映画っす!」



(……ふわぁぁ。いけない、難しくて半分くらい寝ちゃってるよ)



J( 'ー`)し「……」ワクワク

88 : 1 - 2018/01/01 01:46:52.96 TaOAbahR0 88/126


【上映後】


「楽しかった~」

美少女「次は~」



(おー、和気あいあいで、いいね~)




J( 'ー`)し「……」






 そうして、2人のデートは進んでいきました

89 : 1 - 2018/01/01 01:47:55.96 TaOAbahR0 89/126


【夕方】



(いやー、順調順調!)


「人、増えてきましたねー」

美少女「……うん」

「次、楽器屋でもいきます?」

美少女「……」

「先輩?」



(む?)

(……この流れは!)

90 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2018/01/01 01:49:15.09 TaOAbahR0 90/126


美少女「あのさ」

美少女「キミはさ、3年生であるボクが……」

美少女「引退して部からいなくなったら……寂しい?」

「そ、」



「そんなの寂しいに決まってます!」

「というか、オレは……!」


「オレは…………!!」

美少女「……」


美少女「ねぇ……どこかでお話ししない?」

「え」

91 : 1 - 2018/01/01 01:50:56.80 TaOAbahR0 91/126


美少女「何が好き、とか……」



美少女「家族の話とか……」


美少女「どういう風に育ってきた、とか……」



美少女「お互いの知らなかったこととか……」

美少女「いっぱい話そう///」

「……………………はい!」

92 : 1 - 2018/01/01 01:53:00.91 TaOAbahR0 92/126

コソコソ

(ははーん、これは)




(…………)




(オチたね、これは!)グッ

93 : 1 - 2018/01/01 01:55:03.57 TaOAbahR0 93/126


(…………)


(……よし、じゃぁ私はもう帰ろうか)



(お夕飯の仕度もあるし、)


(これ以上2人を追いかけ回すのは、悪いよね)



(この後は何事もなく、)


(デートの最後に告白して、付き合い始める……)



(そんなパターンでしょ、間違いない!)キリッ!


(それじゃ、お邪魔な母ちゃんは撤退~!)テクテク

94 : 1 - 2018/01/01 01:56:31.86 TaOAbahR0 94/126


J( 'ー`)し「……」




J( 'ー`)し(……がんばって!)




J( 'ー`)し b

95 : 1 - 2018/01/01 01:58:08.12 TaOAbahR0 95/126


【駅前】



(と、帰る前に、ちょっと休憩!)

(駅前のベンチに、どっこいしょ!)ドスン♪


(いやー、思いの外歩き回ったなー)

(若いコはホント元気だわ~)



(あのコたち今頃、何してるかなー?)

(もう告白とかしちゃってたりして!?)キャー///


(ふふふ~)


(もし二人が上手くいって、付き合うとか、お嫁にくるとかだったら、大賛成!)

96 : 1 - 2018/01/01 01:59:04.81 TaOAbahR0 96/126


(いいコみたいだし、抱き締めたくなるほどカワイイし!)

(ほんとにお人形さんみたいだったよね~)

(私がこどもの時に一緒に遊んだ、大事なお人形に、ソックリ!)



(…………んん?)



(待って、私はそういう人形とかは、持ってなかった様な気も?)

(あれ、じゃぁ何と勘違いしてるんだろう??)

(…………)

(金色の、ふわっとした長い髪)



(んん。分からないけれど、)

(あのコを見てると、なぜだか、懐かしい気分になるんだよね~)

(なんでだろ??)

97 : 1 - 2018/01/01 02:00:24.73 TaOAbahR0 97/126


J( 'ー`)し(……)テクテクテク


J( 'ー`)し(……アラ?)




J( 'ー`)し(あそこで座ってる人、昔、どっかで見たような???)

98 : 1 - 2018/01/01 02:02:05.14 TaOAbahR0 98/126


(……んん。まぁ、いいや)





(きっとこの後、あの二人は平穏なハッピーエンド迎えるんだろうなぁ……)

(それで二人、気の合う仲間たちと共に、キラキラした人生を歩んでいく……!)


(親元を離れ、自分の行きたい方向へ、自分たちの力で進んでく……!)


(そういうのって、いいよね。本当に青春!)

99 : 1 - 2018/01/01 02:04:16.48 TaOAbahR0 99/126


(…………)


(それに引き換え、大人になったのに、私は散々だなー)



(家族サービスはあんまりだけど、家庭を守ろうと仕事熱心な旦那がいてくれるのは、ありがたいことだし

、)

(息子の成長してく姿や、いつか家族が増えるかもってのは、ワクワクしちゃうけど……)

100 : 1 - 2018/01/01 02:06:30.74 TaOAbahR0 100/126


(それでも私は、私自身は、)


(もう、何もできない人間になっちゃった気がするなぁ……)




(……この後の人生は、味気ないものになっちゃいそう)


(まるで、砂や錆びだらけの、草も生えない不毛な大地を……)


(目的もなく、いく宛もなく、乗り物もなく、ゆっくりお婆ちゃんになりながら、)



(ただただ、1人裸足で、歩き続けちゃうみたいな)

101 : 1 - 2018/01/01 02:09:05.08 TaOAbahR0 101/126


(得意なことも、別にない。好きなことも、できてない……)


(家事とかも、そこまで上手くできる訳じゃなし……)

(パートのお仕事も、社員さんの言われた指示を聞いてるだけ……)


(もし結婚に逃げたりせずに、お仕事を頑張り続けてたり……!)

(大学でも、もっと勉強や就職活動をちゃんとしてたり……!!)

(バンドとかも、もっともっと一生懸命やり続けてれば…………!!!)




(今頃は、アイドルみたいに、キラキラ輝けてる、そんな人生を送れていたかなぁ?)

102 : 1 - 2018/01/01 02:10:07.30 TaOAbahR0 102/126


(…………ううん)



(いけない、こんな暗いことを考えちゃうのは良くないね!)


(そうだ! こういう時は、気分が明るくなって、元気の出る歌を唄っちゃおう!)

(鼻唄で! そう、『ふわふわ時間』を!!)



(たしか出だしは……えーと)


(思い出した! よーし! 久しぶりに歌うぞ~)

103 : 1 - 2018/01/01 02:11:36.09 TaOAbahR0 103/126


「 ~ ♪ 」

J( 'ー`)し「!!?」ピクッ







「 ~ ♪♪ 」

J( 'ー`)し「!!!!!!」

104 : 1 - 2018/01/01 02:12:44.21 TaOAbahR0 104/126


J( 'ー`)し「あ、あぁ…………!」


「~♪」

「…………」


「…………??」


「あれ、2番の出だしはどんなだっけ?」

「…………」

「もう歌うことも、ギター弾くこともないから、忘れちった……」

「とほほほ……」


J( 'ー`)し「うぅぅ、うぅぅぅ」タッタッタッタ!

105 : 1 - 2018/01/01 02:14:16.28 TaOAbahR0 105/126


J( 'ー`)し「唯ちゃん!」


「ほえっ!?」


ガバッ!

むぎゅぅぅぅぅぅぅぅ

「あわわわわえあわ!?」


(い、いきなり見知らぬ人に抱きつかれた!?)

J( 'ー`)し「うぅ……」

「ど、どうしたの? アナタ誰? 何があったの??」

J( 'ー`)し「ごめんね、ごめんね。唯ちゃん、ようやく出会えた……」


「えっ??」

106 : 1 - 2018/01/01 02:15:58.34 TaOAbahR0 106/126


J( 'ー`)し「あ、これじゃ分からないわよね、変装してるし」

「ええっ?」


J( 'ー`)し「こんな姿だけれど……」



J( 'ー`)し「私はムギよ。旧姓、琴吹紬。久しぶりね、唯ちゃん!」


「……………………」




「どぅええええええええ!!???」

107 : 1 - 2018/01/01 02:17:18.44 TaOAbahR0 107/126


【喫茶店】

「それじゃ、再会を記念してかんぱーい!」

「か、かんぱーい! カプチーノだけど」


「うふふふ~」

「…………」

108 : 1 - 2018/01/01 02:18:23.60 TaOAbahR0 108/126


「いやー、まさかムギちゃんと会うことになるとは、ビックリだ!」

「うんうん、私もビックリ!」


「ところで、カーチャン……じゃなくて、ムギちゃんは、さっきまで何してたの?」

「あっ、えっと……その、内緒にしてほしいんだけど、」

「ふむふむ」

「娘が、同じ部の後輩とデートするって言うから、気になってコッソリ追跡を…………///」

「…………ほぇ」

109 : 1 - 2018/01/01 02:20:13.15 TaOAbahR0 109/126


「相手もちょっと心配なトコあるけど、素敵な男の子で、」

「映画見たり、デートもいい雰囲気みたいで一安心だわ~」



「…………え、えーと」

「ね、ねぇ。ムギちゃん?」

「なぁに?」



「その娘さんが見た映画って、もしかして、このチケットのヤツ?」

ガサゴソ

「あっ、それそれ! 唯ちゃんもこの映画を観に行ってたんだ!」

「…………あ、いや、実はね」


「その、私も息子が先輩とデートするって言うから、気になって追跡を…………」

「へー、そうなんだ。奇遇ね~」



「…………」

「えっ」


えええええええええええ

110 : 1 - 2018/01/01 02:22:58.93 TaOAbahR0 110/126


「ま、まさかさっきの美少女ちゃんが、ムギちゃんの娘とは…………」

「そんな、美少女なんて/// ほんと家ではお転婆で困っちゃうもの……///」


「それにしても、唯ちゃんがあの素敵な男の子のお母さんだったなんて……凄い運命よね、奇跡みたい!」

「まぁ、ちょっとおバカなトコあるけど、いいヤツですよ。自慢の息子です!」エッヘン!

「うふふ~」

「それに、思わぬ形で、ムギちゃんと引き合わせてくれて、圧倒的感謝!!」

「ほんとほんと!」

111 : 1 - 2018/01/01 02:23:43.56 TaOAbahR0 111/126


「ね、ねぇ唯ちゃん、最近はどう?」

「最近?」

「お仕事とか、趣味とか。それにやりたい事とか、ある?」

「んーとねー」


「お仕事は、近所のお店でパートしてるよ~」

「ふんふん」

「趣味とかも、家事とかで忙しいし、空いた時間でネット見るくらいかな……」

「へー」

112 : 1 - 2018/01/01 02:32:15.91 TaOAbahR0 112/126


「そんでね、動画サイトとかで、よくバンドとか個人創作の音楽とか観てるんだけど、」

「おなじみの、原点にして頂点みたいな人達だけじゃなく、」

「埋もれてるけど、『もっと評価されるべき』みたいな人や曲がたくさんあるんだ~!」

「うん……??」


「そういうのに、スポットライトを当てるような、まとめサイトとかを作りたいかなーって」

「おー……??」


「…………まぁでも、私はパソコンとか詳しくないし、既にそういう事してる人やサイトもあるし、」

「何より時間もなくて、私じゃできそうにないケド、エヘヘ……」

「そっちの方面はよく分からないけれど、いろいろあるみたいね~」

113 : 1 - 2018/01/01 02:33:07.60 TaOAbahR0 113/126


「ムギちゃんは? どんな感じ?」

「私?」

「お仕事とかはしてるの?」

「う、うん。ちょっと、会社をしてます……!」


「会社してるって、社長さんなの!? す、すごい!!!」

「えへへへ////」



「流石はムギちゃん、すごい! すごいよムギちゃん!!」


「色々と、大変だったんだけど……」

「最近ようやく、余裕がでてきたの!」

114 : 1 - 2018/01/01 02:35:34.70 TaOAbahR0 114/126


「ねぇ唯ちゃん!」

「なぁにムギちゃん?」



「さっき歌ってくれて、ありがとね」

「歌ってくれたから、唯ちゃんに気づけた。また出会えた!!」


「いや、そんな……」




「さっぱり連絡取れなかったのに、ここで会えたのも、きっと何かの縁、」

「単刀直入に、お願いしたいの!」

「……ふぇ?」

115 : 1 - 2018/01/01 02:36:35.84 TaOAbahR0 115/126


「昔みたいに、私たちと、りっちゃん、澪ちゃん、梓ちゃんで集まって」

「またバンドを、復活できないかしら!!!?」









「…………………!!!!!」

116 : 1 - 2018/01/01 02:37:49.70 TaOAbahR0 116/126


それから……

【スーパー】

「えっと、今日のごはんは、おかずは~」


「……しかし、バンド復活か~」



『他のメンバーとは、ちょくちょく連絡とってたの!』

『みんなバラバラの地方にいて、中々会えないけれど』

『唯ちゃんも含め、もう一回、みんなで集まりたいなって』


「…………むむむ」

117 : 1 - 2018/01/01 02:39:08.92 TaOAbahR0 117/126


「まさか、この年になって、バンドに誘われるとわ…………」


「体力とか、若いときより全然ないし、ギー太も、実家のドコに仕舞ったっけ?」

「コードとかも忘れちゃってるぽいし、」

「そもそも、今じゃギー太を持ち上げることも、できるかなぁ…………??」

118 : 1 - 2018/01/01 02:41:14.89 TaOAbahR0 118/126


ミクさん『ラララ~♪』

「お!」ピクッ



ミクさん『ララララ~♪』

「おお、このスーパーのBGM、ミクさんだ!」

ミクさん『ラー♪』




「はぁ……ミクさんは凄いよね。私がバンドし始めた頃から、今まで」

「みんなから愛されて、ずっとずっと、歌い続けてる!」

119 : 1 - 2018/01/01 02:42:19.29 TaOAbahR0 119/126


「……もし、」

「もし私もバンド再開させたら、あの頃みたいな人気が、出るかなぁ…………」

「ミクさんと同じくらいの、すごい勢いあった……!」



ミクさん『ラーララー♪』



「うん」


「よし、決めた!」

120 : 1 - 2018/01/01 02:43:32.21 TaOAbahR0 120/126


PRRRR



やっほー、ムギちゃん。唯だよ~


えっと、今日はありがとね。私もムギちゃんに会えてよかった!


それでね、バンドの件なんだけどさ。


うん、またやってみようかなって


えへへへ

121 : 1 - 2018/01/01 02:45:31.03 TaOAbahR0 121/126


そーそー。昔みたいに、甘いケーキを囲んで


みんなでお茶会して、お喋りして、バンドをするの!


もうオバサンで、小皺とかも目立つから、

ピチピチだった頃みたいな、人気はでないだろうけどさ……




それでもまた、みんなで集まって

素敵な演奏が、できたらいいなって


…………うん。うん

そうだよね。そーなんだよ。

122 : 1 - 2018/01/01 02:46:52.57 TaOAbahR0 122/126


やっぱさ、私の場所は、あそこだったと思うんだ~



今はもう、家族もできて、生活するのが大変で


私たちも世の中も、あの頃とは姿が全然違ってて


望んだ場所は、すっごく遠ざかっちゃったけど

123 : 1 - 2018/01/01 02:48:10.87 TaOAbahR0 123/126


それでも、待っててくれるカモしんない人に向けて


私たちを知らない人や、忘れちゃった人にも向けて


何より、私たちが満足できるような演奏を、


上手くいくか分からないけど



そう、もういっかいでもいいから、してみたいなって!

124 : 1 - 2018/01/01 02:49:17.53 TaOAbahR0 124/126


えへへ


もしかすると、またたどり着くには、


おばあちゃんになるまで掛かっちゃうかもだけど……



でもね。また歩んでいくの



自分の足で、自分の意志で

みんなと一緒に、ちょっとずつでも♪


望んだ場所で、私も、好きな歌を歌い続けるために!

125 : 1 - 2018/01/01 02:51:40.71 TaOAbahR0 125/126


それじゃ、今日はありがとう


誘ってくれて、嬉しかったよ



うん、じゃぁ、また会おうね







バイバイ、さん きゅ~♪

126 : 1 - 2018/01/01 03:00:10.95 TaOAbahR0 126/126


あとがき!

・衰退がテーマの某曲を聴いて、思い浮かんだSSだった

・いや、あれで衰退と言われるのなら、けいおん!や、このSS界隈はどうなるんや!? (´;ω;`)


・だいたい、言いたいことは作中に。1作品があっても解決することはなく、インフラとかから変えないと無理


・曲ネタ、音楽系ネタを入れたけど、気づいて欲しいような、スルーして欲しいような……


・けいおんアニメ3期! まだ待ってます!


・大変なことも多いけど、また1年頑張っていきましょう!


・お読み頂き、ありがとうございました!

記事をツイートする 記事をはてブする