妹「起きた?」
男「起きた」ヒリヒリ
妹「状況は理解出来た?」
男「出来た」
男「…いやちょっと待って出来てない!」
妹「そこはそのまま出来たで良いじゃない」
男「いやいや、危うく流すところだった」
妹「もう、物分かり悪いな」
男「整理していい?」
妹「良いよ」
元スレ
妹「私?サンタからのプレゼントだけど」
http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1293287013/
妹「私?サンタからのプレゼントだけど」
http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1293975176/
男「俺さ、妹が欲しかったのよ」
妹「うん」
男「それでさ、昨日の夜に「あ、明日ってクリスマスじゃん」とか思ってさ、「あー、サンタが妹でもくれないかな」とかふと考えたりしたよ?」
妹「ふむふむ」
男「で、朝起きたら枕元に君がいたわけだけどさ」
妹「ようするに?」
男「サンタっているんだな」
妹「あ、そこなんだ」
男「細かいこと考えるのはやめとくわ」
妹「うん、その方が良いよ」
男「結論さ、俺に妹が出来たってことで良いの?」
妹「うん、制限時間付きだけど」
男「制限時間?」
妹「ゲームとか漫画だったら、まあサンタのポケットマネーでプレゼント出来るんだけどさ」
男「あ、サンタ自腹なんだ…頑張ってるんだな…」
妹「妹ってお金じゃ買えないじゃん?」
男「だろうね」
妹「だから、まあ簡単に言うと私ってサンタの魔法で生まれたみたいなもんなんだけどさ」
妹「まあサンタの力も無尽蔵じゃないからさ、制限時間があるみたい」
男「いつまで?」
妹「来年のクリスマスまで」
男「結構長いな」
妹「サンタの力なめんな」
男「いや、凄いのかよく分からないけどさ」
妹「だからまあ、一年間よろしくね」
男「ん、まあ妹が出来て嬉しいよ」
妹「そうだったら私も嬉しいけど」
男「よろしく、妹」
妹「いやいやこちらこそ」
妹「で、私はあなたのことをなんて呼べば良い?」
男「え、うーん…好きに呼んでいいよ」
妹「あなたの名前は?」
男「男だけど」
妹「じゃあ、男」
男「いやいや待て待て」
妹「どうかした?」
男「俺には妹なんていたことないし、妹のなんたるかって全然分からないけど」
男「でもなんかそれは違う気がする」
妹「そんなこと言われても」
男「もっとこうさ」
妹「好きに呼んでいいって言ったくせに」
男「…ごめんなさい」
妹「呼び方の候補をちょうだい」
男「候補ですか」
妹「無ければ男で決定」
男「ちょっと待ってすぐに考える」
妹「そんなに嫌なんだ」
男「妹の呼び方といえば、『お兄ちゃん』とか『兄さん』とかかな」
妹「お兄ちゃん…兄さん」
男「あとは『兄貴』とか、変化球で『にいに』とか」
妹「あにき…にいに…?」
男「まあいろいろあるけど、例はこれくらい」
妹「うーん」
男「俺の希望としては『お兄ちゃん』とか『にいに』とかそういうお兄ちゃん大好きーみたいな妄想がかきたてられる呼び方が良い――」
妹「『にいさん』で」
男「……。」
妹「これからよろしく、にいさん」
男「いや別に良いけどさ」
妹「私の心境に変化があったらまた変わるかも」
男「てことはいつかはお兄ちゃんと呼んでくれる日も」
妹「イライラしてきたら男って呼びます」
男「なんか始めの好感度低くない?」
妹「気のせいだよ」
男「なら良いんだけど」
男「あと何か決めておくことあるかな」
妹「私は思いつかないけど」
男「じゃあまあ、何か出て来たらおいおい決めていこう」
妹「はいな」
男「はいな?」
妹「なにか?」
男「いやなにも」
妹「にいさん、お腹すきました」
男「じゃあ下の階行こっか、きっと母さんが朝ご飯用意してるよ」
妹「二階建てなの?」
男「そうだよ、まあ二階は俺の部屋以外空いてるけど」
妹「お金持ち?」
男「知らないけど」
妹「そっか」
男「母さん、妹見てびっくりするだろうな…」
妹「あ、そこらへんは大丈夫」
男「え?」
妹「うまい具合にみんなの記憶をいじってあるはずです」
男「妹がいるってことに?」
妹「はい」
男「サンタが?」
妹「サンタが」
男「サンタすげえな、いやむしろ怖えよ」
妹「確認しに行ってみる?」
男「行ってみるか」
男「おはよー」
母「おはよう、男」
妹「おはよう」
母「おはよう、妹。二人とも起きるの早いわね」
男「…おー」
妹「サンタなめるな」
男「いや今その力に恐怖すら持ちはじめたところだよ…」
母「サンタ?」
男「いやこっちの話」
妹「たぶん二階に私の部屋も出来てるよ」
男「用意が細かいな…」
母「今日は二人でデートでもするのかしら?」
妹「はい?」
男「え…え?」
母「折角のクリスマスだし、外で遊んで来なさいな」
男「クリスマスってカップルだけの限定イベントかと…兄妹ってそういうものなの?」
妹「私に聞かれても」
男「…遊びに行くか?」
妹「別に構わないけど」
男「この町、案内してやるよ」
妹「…ありがと」
母「仲がよろしいことで」
町
妹「賑やかだね」
男「まあクリスマスだからな」
妹「クリスマスってそんなに特別なの?」
男「カップルがこれみよがしにイチャラブ出来るという意味では」
妹「本来はキリストの生誕を祝う日なのに、その意味で盛り上がってるわけ
じゃないんだね」
男「まあキリスト教の国じゃないし…というかその知識はどこから来てるんだ?」
妹「サンタの力です」
男「サンタすげえ」
妹「あと、一般知識ならたぶん大丈夫」
男「まあカップル以外にとっては平日と変わらないよ」
妹「てことはにいさんにとっては平日なんですね」
男「なかなか内側をえぐるストレートを投げるじゃないか…」
男「でもまあ今日から俺にとっても特別な日かな」
妹「なんで?」
男「妹が出来たから」
妹「……。」
男「願いが叶った日だな」
妹「…そう言われたら、にいさんの妹になった意味もあるというものですね」
男「いやいや、ありがとうな」
妹「まあそれはいい話ということで良いんだけど」
男「ん?」
妹「なんで妹が欲しかったの?」
男「あ、あー…」
妹「なんで?」
男「いや、それには深いわけが」
妹「まさかとは思うけど棚の奥に隠してあったいかがわしい本たちが関係したりしないよね」
男「なぜその存在を知っている」
妹「にいさんが起きるのを待ってる間に」
男「…なんてこったい」
妹「で、どうなのかな」
男「……。」
妹「妹っていう存在にそういう幻想を抱いてたからなんていう理由じゃないよね」
男「……。」
妹「そんな理由で私が生まれたとしたら、まあ思うことがなくもないけど」
男「…なるほど、妹の俺への評価がいきなり低かったのはこういうわけか」
妹「私の兄になる人はどういう人なんだろうなぁって、ドキドキしながら部屋を見渡して」
妹「それとなく本棚を見てみたらこれですよ」
妹「せめてもう少し隠せよと」
男「返す言葉がない」
妹「親があれ見たら泣くよ?」
男「やめて、そういう責め方一番効くから…」
妹「まあ人の趣味をあれこれ言っちゃいけないと思うけど」
妹「私のことそういう目で見たら二度とにいさんだなんて呼ばないからね」
男「……。」
妹「返事は?」
男「はい…」
妹「はぁ…分かれば良いけど」
男「…信じてもらえないだろうけどさ」
妹「なに?」
男「朝起きて君を見てさ、あーこの子が俺の妹なんだって思ったら」
男「そしたらそんな…やましいというか…とりあえず!そんな気持ちすぐなくなったよ」
男「兄としてというか、なんというか…妹を大事にしたいって思ったんだ。ちゃんと君のことをさ、だから」
妹「…ふーん」
男「…いや、信じてもらえないと思うけど。第一印象が悪すぎるし」
妹「態度で示してよ」
男「え?」
妹「これからずっと一緒にいるんだから、ちゃんと私を大事にして」
男「もちろん」
妹「ん、約束」
男「約束」
妹「先が思いやられるけど」
男「返す言葉がない」
妹「…ん」
男「な、なにその手」
妹「なにって、この町のことを案内してくれるんでしょう?」
男「あ、うん」
妹「エスコートしなさいよ」
男「手、繋ぐの?」
妹「つ、繋ぐわけないでしょ!はやく行こうってこと」
男「…おうよ」
妹「案内して、あなたの町を」
男「そして今日からお前の町、な」
妹「なにかっこつけてるんだか」
そんなこんなで、妹との生活が始まるのだが
それはまた別のお話
おしまい
男「……。」
妹「……。」
男「…んー」
妹「…はぁ」
男「……。」ゴロン
妹「……。」
男「……。」
妹「……。」
男「……。」ポリポリ
妹「……。」
ピピピピピピピピピピピピピ
妹「ひっ」ビクッ
男「…ん、あー」カチ
妹「……。」
男「…あ?」
妹「おはよう」
男「一つ質問良い?」
妹「どうぞ」
男「なんで毎日起きたら枕元に座ってるの?」
妹「…にいさんを起こしに?」
男「いや聞かれても」
男「というかいつも目覚ましで起きてるんだけど、俺起こされてないよね?」
妹「お母さんと二人で話すのは緊張するの」
男「親子なのに」
妹「設定はね」
男「設定とか言うな」
男「しかもお前、母さんとは仲良いだろ」
妹「じゃあ、にいさんの監視のためです」
男「じゃあって…まあ良いや」
妹「目覚ましってビクッとする」
男「さいですか」
妹「捨てていい?」
男「ダメ」
妹「残念」
男「目覚まし嫌なら俺の部屋来るなよ…」
一階
男「はよー」
母「おはよう、ご飯出来てるよ」
妹「おはよー」
母「あら、今日も一緒に起きてきたわね」
男「なんか起きたら毎朝こいつ俺の部屋にいてえっ!」
母「なに突然大声出してるのよ」
男「イタいイタい妹さん足踏んでる」
妹「ごめん気が付かなかった」
男「気を付けてください」
妹「善処します」
母「…仲が良いわね」
母「ほら、早くご飯食べないと新学期早々に学校遅刻するわよ」
男「それは困る」
妹「にいさんがトロいから」
男「いやいやお前が足踏んでるから…」
母「まったく誰に似たのかしらね」
妹「私じゃないことは確か」
母「私でもないわよ」
妹「突然変異?」
母「ならしょうがないか」
母、妹「ねー」
男「やっぱりあんたら仲良いじゃん」
妹「早くご飯食べる」
男「はい…」
妹「にいさん」
男「ん?」
妹「ん」
男「ん?」
妹「ん」
男「ん?」
バシッ
男「いてえ!」
妹「分かってる癖に」
男「好き嫌いはよくないぞ」
妹「梅干しはどうしても無理」
男「じゃあ残せよ」
妹「残すのは梅干し職人さんに失礼」
男「じゃあ食べろよ…あと梅干し職人って誰だ」
男「着替えは?」
妹「出来た」
男「忘れ物は?」
妹「ない、はず」
男「よし、じゃあ行くぞ」
妹「あ、ちょっと待って」
男「なんだ?」
妹「歯磨きをしてない」
男「良いだろそんなん」
妹「でも」
男「はい、いってきます」
母「いってらっしゃい」
妹「うー…いってきます」
通学路
男「妹が来てからもう二週間か」
妹「そうだね」
男「ちょっとは生活に慣れたか?」
妹「うん、私の生活見てておかしいところある?」
男「まあ無いと言えば嘘になるけど、概ね及第点」
妹「お、おかしいところあるんだ…」
男「世間一般の妹はそんな四六時中兄の後ろをついて回ったりはしないと思う」
妹「しょ、しょうがないじゃない!にいさんを見ていろいろ勉強しないといけないんだから!」
男「まあそうだけど」
妹「勘違いしないでよね、誰が好き好んでにいさんと一緒になんか――」
男「分かった分かった」
男「まあ、思いのほか馴染めてて安心したよ」
妹「私って器用だから」
男「否定はしない」
妹「えへへ」
男「となると、問題はこれからだよな」
妹「そうだね」
男「学校、どうしようか」
妹「たぶんサンタの力で大丈夫だと思うけど」
男「もともと妹が居たことになってるはず?」
妹「はず」
男「全員の記憶を操作して?」
妹「して」
男「つくづく恐ろしいことだな…」
男「で、妹の学年は中学三年生で良いんだな?」
妹「なんで?」
男「いや確認」
妹「中学三年生で大丈夫だよ」
男「それは誰が決めたんだ?」
妹「気分」
男「誰の?」
妹「私の」
男「大丈夫なのかおい…」
妹「なにか問題でもあるかな」
男「まあ一つ言っとくと、お前の見た目は中三には見えない」
妹「え、どれくらいに見えるの?」
男「…小学生?」
妹「それは私の責任じゃない」
男「うん、まあそうだけど」
妹「たぶん、私の容姿はにいさんの意向が反映されてるはずだけど」
男「へ、へえ…」
妹「……。」
男「……。」
妹「…ロリコ」男「分かった中三で良いよ」
妹「分かれば良い」
男「…これって好感度下がってます?」
妹「下がるほど好感度があるとでも?」
男「……。」
妹「…冗談だよ」
男「え?」
妹「まあ部屋にあったいかがわしい本も捨ててくれたみたいだし」
男「あ、うん」
妹「にいさん、思ったよりも普通の人だったし」
男「それって褒めてるのか、けなしてるのか」
妹「褒めてはいない」
男「あ、うん」
妹「それに…」
男「ん?」
妹「約束したとおりに私のこと、だ、大事にしてくれてるし…」
男「…あはは」
妹「だから、この容姿については許してあげる」
男「ありがと」
妹「体は子供、頭脳は大人」
男「中三はまだ大人じゃない」
妹「うるさい」
男「いたっ」
妹「もお、やっぱり許さない」
男「理不尽な…お、着いたぞ」
妹「中学校?」
男「そう、俺が通ってた中学校」
妹「よ、よおし…」
男「…ほんとに大丈夫なんだよな?」
妹「たぶん」
男「なら良いんだけど」
男「じゃあ俺は高校行くから」
妹「うん…」
男「また迎えに来るからさ」
妹「い、いらないからそんなの!」
男「はは、そっか」
妹「早く行けば?」
男「はいはい」
妹「…じゃあね、にいさん」
男「おう、頑張れよ」
妹「言われなくてもー」
男「じゃあな」
男「…とまあ送り出したのは良いんだけど」
男「…不安だ」
男友「何が不安だって?」
男「いや、なんでもない」
男友「いやいや言ってたべ」
男「空耳じゃない?」
男友「…かなぁ」
女「おはよー!」
男友「おっす」
男「はよー」
女「ねえねえ男君」
男「ん、なに?」
女「今日の朝、妹さんと歩いてたよね?」
男「ぶっ」
男友「おー、噂の小さい妹さん!」
男「なんだよ噂のって」
男友「中学生には見えない見た目だという、マニア必見の」
男「殴られたいのかお前」
女「最低」
男友「やめてそんな目で見ないで」
男(…ちゃんと妹いることになってるんだな)
男友「良いなー、俺も妹さん見たいなー」
女「いつも一緒に学校行ってるの?」
男「いやそういうわけじゃ」
男友「中学校って方向違うじゃん」
男「まあそうだけど」
男友「あ、もしかして不安って妹さんのことか?」
女「なんのこと?」
男「いや、まあ…」
男友「なんか朝からずっと悩んでるのよ、こいつ」
女「へえ、相談なら乗るよ男君」
男「いやいやなんもないから」
女「ふーん…まあ妹さん可愛いから不安になる気持ちも分かるけど」
男「え、なになんか誤解してない?」
男友「このシスコン」
男「断じて違う」
放課後
男「…って、こんな校門で妹を待ってる兄なんて普通じゃ考えられないわな」
妹「なに言ってんの?」
男「うわびっくりした」
妹友「…お兄ちゃん?」
妹「あ、うん。出来損ないの」
男「酷い紹介だなおい」
妹友「こんにちはー」
男「こんにちは」
妹友「じゃあまた明日ね」
男「一緒に帰るんじゃなかったの?」
妹友「大丈夫ですよー、じゃあね妹」
妹「うん、ばいばいー」
妹「来なくていいって言ったのに」
男「いやいや心配だったし。でもまあ大丈夫そうだな」
妹「当たり前じゃない、心配することなんてないし」
男「不安そうな顔してたくせに」
妹「うっさい」
男「友達も出来たみたいだしな」
妹「……。」
男「ん、どした?」
妹「…なんでもない」
男「……?」
妹「帰ろう、にいさん」
男「ああ」
男「どうしたんだよ妹」
妹「…今日突然友達が出来るわけないじゃん」
男「ん…ああ、そっか。記憶操作で前から友達だったってことか」
妹「そう、友達っていう設定」
男「設定言うな」
妹「にいさんも言ってることは同じでしょ」
男「まあそうだけど」
妹「……。」
男「なんかあったのか?」
妹「なんにもないよ」
男「嘘つけよ」
妹「にいさんには」
男「……?」
妹「にいさんには…分からないこと」
男部屋
男「……。」
妹「……。」
男「……。」
妹「……。」
男「あのー」
妹「なに」
男「自分の部屋行けば?」
妹「……。」
男「無視ですか」
妹「……。」
男「どうした、さっきから」
妹「なんでもない」
男「そっか」
男「まあ、言いたくないなら言わなくて良いけど」
妹「……。」
男「でも俺、一応お前の兄だからさ」
男「困ってることあったら、何でも聞くから」
妹「……。」
男「頼りないかも、知れないけどさ」
妹「…自覚はしてるんだ」
男「はは、妹が出来てはじめて分かったこと」
妹「…あのさ」
男「ん?」
妹「私の好きな食べ物って知ってる?」
男「嫌いな食べ物なら知ってるが」
妹「あはは、そうだね」
男「結構お前なんでも美味しそうに食べるよな」
妹「そんなところ観察しないでよ」
男「ごめんなさい、で?」
妹「私ね、甘い卵焼きとメロンが大好きなんだってさ」
男「…なんで他人事?」
妹「今日、学校の子が言ってた」
男「……。」
妹「私、メロンなんか食べたことないのに」
男「記憶操作、な」
妹「…ん」
妹「今日にいさんが校門で話した子」
男「おっとりしてる子な」
妹「朝私が教室に入ったら真っ先に話しかけてきたの」
妹「私の友達」
妹「怖いよね、私にとっては初対面なのに」
男「……。」
妹「あの子だけじゃなくて」
妹「教室にいる子みんなが私を知ってるんだ」
妹「私が知らない私を」
男「……。」
妹「怖かった」
妹「みんなの話してる私って誰なんだろうって」
妹「まわりの子がみんな怖かったんだ」
男「……。」
妹「私の部屋もさ」
男「うん」
妹「すごい女の子らしい部屋で、確かに私の好きそうな物がたくさん置いてあるんだけどね」
妹「それを置いたのは私じゃない」
妹「私の知らない、誰かだから」
妹「そう考えたら凄く気持ち悪くなっちゃって」
男「…だから、いつも俺の部屋にいるのか」
妹「しょうがないんだけどね」
妹「だって私、生まれてまだ二週間だし」
妹「全部『作り物』の妹だもんね」
妹「分かってるんだけど、なんか悲しくなっちゃって」
男「……。」
妹「ごめん、しょうがないことなんだけど」
男「……。」
妹「にいさん、相談してくれなんて言うから」
男「……。」
妹「あはは、こんなこと言われても困るよね」
男「……。」
妹「ごめんなさい、大丈夫だから」
男「……。」
妹「すぐ慣れるよ、きっと」
妹「それに」
妹「たった一年我慢すれば良いことだから」
男「……。」
妹「…ね、にいさん」
男「妹」
妹「え?」
グイッ
妹「え、なに?…きゃッ!」
男「行くぞ」
妹「行くって、え、私の部屋…」
バンッ
男「おーおー、綺麗な部屋だこと」
男「でも」
男「この部屋は暖かくない」
ガンッ
妹「え、なにして…」
男「これも、これも」
ポイッポイッ
男「こんな物使ってる妹なんか、知らないなぁ」
妹「……。」
男「これもこれもこれもこれも」
ポイッポイッ
男「全部、全部いらないよな」
妹「…にいさん」
母「ちょっと、何してるのよ!」
男「ああ、母さん。ちょうど頼みたいことがあったんだ」
男「お小遣い前借りして良いかな、一年分」
母「い、一年ってあんたなに言って…」
男「ちょっとね、買いたいものがあるんだ」
妹「……。」
男「だから、お願い」
母「……。」
男「妹」
妹「……。」
男「自分は作り物だとかさ、一年我慢すれば良いとかさ…そんなこと、言うなよ」
妹「……。」
男「お前は、俺のわがままから生まれちゃったかもしれないけど」
男「お前が苦しんでるのは、全部俺のせいだけど…」
男「俺に出来ることなんて、お前を大事にするくらいしかないけど」
男「でも、お前を悲しませることだけは、したくないから」
妹「…にいさん」
男「お前に出来ることはなんだってやるよ」
男「好きなことも、嫌いなことも、全部教えてくれ」
男「思い出をたくさん作ろう」
男「お前のことは、全部俺が覚えてやる」
男「今はなにも知らないけど」
男「でも、俺はお前の兄だから」
男「お前は、俺の妹だから」
男「わがままの責任は、全部俺の物だから」
男「だから、妹は、悲しまないで」
妹「……。」
男「作り物の記憶は、しょうがないけどさ…」
男「でも、妹はちゃんとここにいる」
男「これからのことは、ちゃんとみんなの記憶に残るから」
男「すぐにみんな、本当のお前のことも知っていくよ」
妹「…いよ」
男「それに俺は、ありのままの妹を見てる」
男「はは、俺にはなんも記憶がないからさ」
男「俺は、本当のお前しか知らないから」
男「だから」
妹「もういいよ、にいさん」
男「…ん」
妹「もう分かったから、十分伝わったよ」
男「…はは」
妹「分かったから」
男「ん」
妹「…にいさん」
男「じゃあ、買い物に行こっか」
妹「……。」
男「この部屋、お前の物でいっぱいにしようぜ」
妹「…でも」
男「返事は?」
妹「…うー」
男「返事」
妹「…はいな」
母「待ちなさいよ、男」
男「…母さん」
母「ほら、一年分」
男「…ありがとう」
母「暗くなる前に帰ってきなさいよ」
男「はい」
妹「お母さん、ありがとう」
母「妹」
妹「はい」
母「あんたがどう思ってても、私はあなたの『母さん』だからね」
妹「…うん!」
母「兄ちゃんじゃ頼りないときは私に相談しなさい」
妹「うん!」
男「…母さん、なにも言わなかったな」
妹「そうだね」
男「きっと言ってること分からなかったよな」
妹「私ね」
男「うん」
妹「はじめて、私のお母さんだなって実感した」
男「いつだって俺達の母さんだったよ」
妹「うん、もう大丈夫」
男「学校も大丈夫か」
妹「うん」
男「ほんとに?」
妹「みんなに私のことを、認めさせてやる」
男「…頼もしいな」
男「ところで」
妹「うん?」
男「俺は、お前の兄になれてるか?」
妹「…うーん」
男「…な、悩んでる」
妹「少しは、頼りがいが出て来たかな」
男「…兄への道は険しいな」
妹「にいさん」
男「な、なんでしょう」
妹「ありがとう」
男「…ん」
妹「商店街まで競争しよ」
男「なんだよ突然」
妹「いいからー」
男「俺としては荷物持ちの体力を残して…って聞けよ」
妹「はやくー」
男「…しょうがない」
タッタッタッ
妹「…にいさんは、はじめから私のにいさんだったよ」
男「は、速い…なんか言ったか?」
妹「なんにも」
男「そっか」
妹「にいさん、遅い」
男「すいません…」
妹「そんなんじゃ、お兄ちゃんになるにはまだまだなんだから」
男「お兄ちゃん?」
妹「…ふん」
男「…まあ、いっか」
妹「にいさん、遅い」
男「勘弁してください」
妹「あはは」
妹が『妹』になるまで おわり
第三話
男友「妹さん見せてくれよー」
男「見たいなら勝手に見に行けよ」
男友「そんなストーカーみたいなことは出来ない」
男「天性のストーカーがなに言ってんだ」
男友「なにその大勢に誤解を与える冗談」
女「最低」
男友「ほら見ろさっそく一人釣られてやがる…」
男「冗談なことくらい分かってるって、なあ女」
女「え、うん」スッ
男友「一歩引きましたけどこの人、俺から少し離れましたけど」
女「でも、近いうちに妹さん見れるかもよ?」
男友「え?」
女「妹さん中学三年生でしょ?この高校受験したりとか」
男友「おー…おー!」
男「そうか、あいつ今受験生なのか…」
女「お兄さんなに言ってるんですか」
男友「妹さんどこ受けるんだ?」
男「え、聞いてない」
男(というかあいつ自分が受験生だって気付いてるかな…)
女「聞いてみてよ、ね?」
男「うん、分かった」
妹の受験
妹「にいさん、次の巻取って」
男「……。」
妹「にいさーん?」
男「一つ質問良い?」
妹「なにさ」
男「なんで引き続き毎日俺の部屋にいるのでしょうか」
妹「この部屋マンガがたくさんあるんだもん」
男「部屋に持ってって良いよ」
妹「わざわざ次の巻取りに来るのめんどくさいじゃん」
男「全部持ってって良いよ」
妹「重いー」
男「俺が持ってってやるよ」
妹「…んーと」
男「……。」
妹「ほら、二人で同じ部屋にいる方が暖かいでしょ」
男「……。」
妹「まだ冬まっただなかなんだし」
男「妹、まだ自分の部屋が苦手?」
妹「そんなことはないよ!」
男「なら良いんだけど」
妹「ずっと部屋にこもってたいくらいだよ、それくらい気に入ってます」
男「こもっても構わないんだぞ?」
妹「う…」
男「う?」
妹「…バカ!」
バタン
男「…え?」
コンコン
男「妹ー?」
妹「……。」
男「俺の部屋で読んでいいぞー?」
妹「……。」
男「別に嫌なわけじゃないからなー」
妹「…いいもん、私自分の部屋気に入ってるし」
男「あー…困ったな」
男「あ、そういえば聞きたいことあったんだ」
妹「……。」
男「俺の部屋で話そうぜ」
妹「……。」
ガチャ
妹「…しょうがないからにいさんの部屋に行ってあげる、しょうがなくだからね」
男「はは、ありがと」
妹「…受験?」
男「やっぱり気付いてなかったか…」
妹「そっか、私って受験生…」
男「いや、早目に気付いて良かった」
妹「受験まであとどれくらい?」
男「…二ヶ月ないくらいかな」
妹「早目?」
男「いや、早くないなごめん」
妹「…うー」
男「あー、泣くな泣くな」
妹「な、泣かないし、バカ」
男「妹って頭良いのか?」
妹「…ん?」
男「授業とかどれくらい理解してる?」
妹「…ん?」
男「三角形の合同の条件は?」
妹「…ん?」
男「……。」
妹「…合同って?」
男「そこからっ!?」
妹「…ん?」
男「マジかよおい…」
妹「だってしょうがないじゃん…」
男「あー、大丈夫誰も責めてない」
妹「数学はちょっと苦手なだけだもん」
男「さいですか」
妹「あ、でも英語はペラペラだよ」
男「え?」
妹「You still have lots more to work on」
男「ほんとだ、発音が英語を話せる人っぽい」
妹「えへへ」
男「でも何故テニプリ」
妹「今読んでたから」
男「…なんで英語は大丈夫なんだ?」
妹「…サンタは全世界を飛び回ってるから?」
男「理由になってない」
男「まあ良いや、出来るなら問題ない」
妹「あと、国語と社会も得意みたい」
男「ほう、なんでだ?」
妹「一般常識としてかな」
男「歴史とか?」
妹「そう、漢文とかも大丈夫」
男「全然一般常識ではない気がするけど、つっこむのはやめとこう」
男「てことは、苦手なのは数学と理科?」
妹「……。」
男「ん?」
妹「…ちょっとだけだもん」
男「その変に高いプライドはなんなんだ…」
男「まあでもそれなら普通に高校行けるレベルか」
妹「…そうなの?」
男「数学と理科が苦手な人なんてたくさんいるだろうし」
妹「にいさんの高校には?」
男「…え?」
妹「私、にいさんの高校には行ける?」
男「…きついかなー」
妹「…なんで?」
男「一応、俺の高校ここら辺でトップだし」
妹「にいさん、頭良かったんだ…」
男「それなりには」
妹「……。」
男「なんだその目は」
男「まあ高校なんて行ければどこでも良いよ」
妹「…うん」
男「なんか俺の友達が妹さんを是非うちの高校にとか言ってたけど」
妹「な、なんで?」
男「いや、気にしなくて良い」
妹「……?」
男「ほんとになんでもない…」
妹「にいさんは?」
男「ん?」
妹「にいさんは、私に同じ高校に来てほしい?」
男「俺は…」
妹「うん」
男「…来て欲しくないことも、なくはない」
妹「……。」
男「あれ、これだと来てほしくないことになっちゃうな」
妹「どっちなのさ」
男「そりゃあ、妹が同じ高校ならうれしいけど」
妹「…そっか」
男「でも、さっき言ったみたいに高校なんてどこでも…妹?」
妹「ん、にいさんのその言葉が聞けただけで良い」
男「マンガ読んでかないのか?」
妹「しばらく、にいさんの部屋からはお別れ」
妹「わたし、しばらく受験生になります」
男「…ん」
妹「目標は、にいさんと同じ高校」
男「……。」
妹「待ってて、にいさん」
男「…無理、すんなよ?」
妹「大丈夫!」
ガチャ
妹「わたしをなめるな」
男「…おう」
妹「えへへ、じゃあ」
男「頑張れよ」
妹「はいな」
バタン
男「……。」
男「まあ、俺の高校そんな甘くないけどな…」
女「じゃあ、妹さんこの高校受験するんだ!」
男「まだ受験するかは分からないけど、目指すとは言ってた」
男友「目指すって…もう二ヶ月切ってるだろ」
男「そこはまあ、いろいろ事情がありまして」
女「来れるといいなー」
男「どうだろ、この高校ってここらで一番難しいからなー」
女「大丈夫だよ、男友でも合格したんだし」
男「…なるほど」
男友「なんだこれ…なんだ俺の扱いは」
男「なんか急に妹は合格するんじゃないかと思ってきた」
女「でしょう?」
男友「……。」
男「そうだよ、実は簡単なんじゃないか?」
女「そうそう!」
男「そうだよな、俺の妹だもんな」
女「そうだ、男君の妹だー!」
男「むしろ余裕で合格する」
女「そうだ、男友を見るんだー!」
男友「……。」
男「ははは、余裕余裕」
女「わはははははー!」
男「…そんなわけなかった」
妹「…うー」
男「……。」
妹「台形の面積を求める公式…」
男「……。」
妹「…台形って何?」
男「そこからっ!?」
妹「わ、わたしゆとり世代なもので…」
男「もう悲しいくらいに関係ない」
妹「うー…」
男「妹、三角形の角度の合計は?」
妹「さんかく…?さん、さん…」
妹「さんじゅう…」
男「はいその時点で違う」
妹「……。」
男「…数学はこのレベルか」
妹「め、面目ないです」
男「理科は?」
妹「……。」
男「…はぁ」
妹「がんばります、がんばりますので」
男「テンパりすぎてキャラ変わってるぞ、妹」
男「ま、気長にな」
妹「……。」
男「焦らず行けば良いから」
妹「そんな時間、ないの分かってる癖に」
男「…妹」
妹「もっと、もっと私に時間があれば良いのに」
男「…ごめんな」
妹「にいさんのせいじゃないよ」
男「……。」
妹「見てて、にいさん」
妹「私、絶対にいさんと同じ高校に行くから」
男「頑張れ」
妹「うん」
女「で、毎日頑張ってると」
男「おう、最近は部屋にこもりっきりだな」
男友「私立はどこ受けるんだ?」
男「私立?」
男友「滑り止め」
男「たぶん受けないのかな?」
女「え、すごいね」
男「まあ、そんなことする前にやることがあるというか…」
男友「落ちたら浪人?」
男「そうなるな」
男友「すごいな…」
男「落ちないよ、妹は」
女「おー」
男「…と、信じたい」
女「あらら」
母「今日も頑張ってるわね、妹」
男「だな」
母「もう晩御飯の時間なんだけど」
男「きっと集中してるんだよ」
母「まったく…ちょっと呼んできてよ男」
男「邪魔しないほうが良いんじゃないか?」
母「だーめ、ご飯はちゃんと食べないと」
母「美味しいご飯を食べさせること、それが母さんに出来る唯一の応援なんだから」
男「ははは、なるほど」
母「だからお願い」
男「はいはい」
コンコン
男「妹ー、ご飯だぞ」
男「休憩しようぜー」
男「……。」
男「…ん、トイレかな」
男「妹、入るぞー」
ガチャ
妹「……。」カリカリ
男「なんだ、ちゃんといるんじゃん」
妹「……。」カリカリ
男「妹、晩御飯食べよう」
妹「…むー」カリカリ
男「…すごい集中だな」
妹「……。」カリカリ
男「……。」
妹「…うー」カリカリ
男「…はは、やっぱり邪魔しないほうが良いな」
男「頑張れよ、妹」ポンッ
妹「ひゃあッ!」
男「おわっ」
妹「あ、集中切れたぁ…」
男「わ、悪い悪い」
妹「あ、にいさん…どうかしたの?」
男「晩御飯の時間だぞ」
妹「んー、あとで食べるって言っといて」
男「了解」
母「妹は?」
男「あとで食べるって」
母「もう、しょうがないわね」
男「勉強頑張ってたよ」
母「そう、一体誰に似たのかしら」
男「俺ではないと思う」
母「あら、男に似てると思うけど」
男「そうなの?」
母「うん」
男「まあ、兄妹だから」
母「そうね」
母「…ちゃんと妹のこと見ててね、男」
男「ん?」
母「あの子、頑張りすぎちゃうところがあるから」
男「はは、かもな」
女「受験まであと一ヶ月くらい?」
男「そうだな、一ヶ月切ったくらいかな」
女「妹さん、頑張ってる?」
男「おう、凄いぞあれは」
女「私も応援してるからね!妹さんにそう言っといてね!」
男「おう、分かった」
男友「妹さんの受験も気になりますがー!」
男友「今日は一大イベントの日でもあるのだよ、女さん!」
女「…あー」
男友「そう!2月14日はバレンタインデー!」
男友「そう!う゛ぁれんたいんでい!」
女「はい男君、チョコレート♪」
男「あ、ありがとう」
男友「女さん一人忘れてますよー!ねえ!ねえ!」
女「妹さんからはチョコレートもらわないの?」
男「いや、それどころじゃないだろ」
女「ふふふ、女の子をなめちゃだめだよ、男君」
男「はは、まあお返しは期待しといてください」
女「お、分かってますねー」
男友「……。」
男「あー、かなりリアルに落ち込んでるから、あいつにもどうか恵んでやってください」
女「しょうがないなぁ、はい男友にも」
男友「…ありがどー」
女「泣くな泣くな」
男「ただいまーっと」
男「…妹は自分の部屋か」
男「がんばれー」ボソ
ガチャ
男「あと一ヶ月か」
男「…ん?」
男「机の上に…チョコレート?」
カサッ
『感謝しなさいよね』
男「……。」パク
男「…甘」
男「こんなん作ってる暇あったら勉強しろっての」
男「……。」パク
男「…うまい」
男「お、妹の…」
妹友「こんにちはー」
男「今から帰るところ?」
妹友「いえ、塾に行くところです」
男「あー、勉強頑張ってるんだ」
妹友「はい、妹ほどじゃないですけど」
男「あいつ家でもずっと部屋で勉強してるからな」
妹友「知ってます、学校でも机から離れませんよー」
男「だろうな…」
妹友「分からないところはすぐ私に聞いてきますし」
男「迷惑かけて悪いな」
妹友「いえいえ!」
妹友「頼ってもらえて嬉しいんです」
妹友「私、妹の友達ですからー」
男「ありがとうな」
男「妹友さんはどこの高校狙ってるの?」
妹友「妹と同じ高校ですー」
男「てことは…」
妹友「はい、お兄ちゃんと同じ高校ですよ」
男「そうだね…って、お兄ちゃん?」
妹友「お兄ちゃんって呼んじゃダメですか…?」
男「いや、ばっちこい」
妹友「よかったー」
男「…妹になんか言われそうだけど」
妹友「どうかしましたかー?」
男「いや、なにも」
男「妹は、高校に受かりそうかな」
妹友「…えっとー」
男「あ、思ってること言えば良いよ」
妹友「…数学がですねー」
男「ですよね」
妹友「でも妹、英語とか国語とかは誰よりも良いくらいなんですよ」
男「あ、そうなんだ」
妹友「それに、数学と理科もどんどん力をつけていますから」
男「妹友さんは優しいね」
妹友「いえいえ本当のことですよー」
妹友「ただ…」
男「ん?」
妹友「妹、頑張りすぎちゃってるから、心配です」
男「あー、うん」
妹友「お兄ちゃん、妹のことをちゃんと見てあげてください」
男「気をつけるよ」
妹友「妹、どうしてもお兄ちゃんと同じ高校に行きたいみたいですから」
男「……。」
妹友「じゃあ、塾に遅れちゃうのでー」
男「あ、ごめんね」
妹友「いえいえー、妹のことよろしくお願いします」
男「任せといて」
妹友「はい」
男「妹友さんも頑張ってね」
妹友「がんばりますー!」
男「妹と二人で来るのを、高校で待ってるよ」
妹友「ぜひぜひ、待っててくださいー」
男「妹友さんも妹と同じ高校を狙ってるのか」
男「優しい子だったな…」
男「女も、男友も、妹友さんも、みんな妹のことを気にかけてくれてる」
男「……。」
男「…よし」
男「俺も、出来ることをやらなくちゃ」
母「良いの?男と同じ高校で希望出すわよ?」
妹「…うん、大丈夫」
母「これでもう変えられないからね?」
妹「うん」
母「…よし、じゃあこれを明日学校に出しなさい」
妹「はい」
男「あと、20日くらいか」
妹「き、緊張させるようなこと言わないでよ」
男「悪い悪い」
妹「じゃあ私、勉強してくるから」
母「無理しすぎちゃダメよ?」
妹「無理するくらいじゃないと合格しないのー」
タッタッタッ
母「…困ったものね」
コンコン
男「妹、入るぞ」
妹「良いよー」
ガチャ
男「…うわ、部屋がプリントだらけ」
妹「ごめん、散らかっちゃってるね」
男「片付けようか?」
妹「いいよ、そのままで。なんか恥ずかしいな…」
男「いや、俺の受験のときも似たようなもんだったよ」
妹「そうなんだ」
男「って、そんな話をしにきたんじゃなくて」
妹「どうかしたの?」
男「妹、最近無理し過ぎだぞ。みんな心配してる」
妹「えへへ、頑張ってるでしょ私」
男「褒めてない」
妹「…はぁい」
男「母さんも俺の友達も、妹友さんだって心配してたぞ」
妹「…分かってるけどぉ」
男「無理して体壊したら元も子もないんだからな」
妹「でも、それくらいしないと…」
男「受からないってか?」
妹「うん」
男「もう十分頑張ってると思うけどな」
妹「絶対に、にいさんと同じ高校に行きたいから」
男「……。」
妹「その為ならこれくらいの勉強なんて、へでもないよ」
男「…はぁ」
妹「だからもう少し頑張らせて?」
男「…無理すんなって言っても聞かないんだな?」
妹「にいさんに言われても、これだけは」
男「そっか」
妹「ごめんね?」
男「まったくだ、そのおかげで…」
ドサッ
妹「…え、なに?」
男「過去問三年分、とりあえず解いてみた」
男「それと数学と理科をざっと復習」
妹「…どういうこと?」
男「お前が無理をするなら」
男「俺もそれに、付き合おうかと」
女「…で、その目の下のクマが出来てるわけですかー」
男「妹が分からないところは、全部俺が教えてやろうかと思って」
男友「すげー…」
男「いや、凄いのは妹。毎日あんだけ勉強してたなんて想像出来なかった」
男友「いやいや、それに付き合うお前も相当凄いって」
女「うんうん」
男「兄として出来ることと言ったら、こうしかないでしょ」
男友「兄貴ってこんなことしないといけないのか…妹いなくて良かった」
女「こんなお兄ちゃんが欲しかったなー」
男「好き勝手言いやがって…」
女「妹さん、絶対受からなきゃだね」
男「ああ、じゃないと困るぞ」
男友「頑張れ、男」
女「頑張ってね」
男「頑張るのは妹だよ、俺は勝手に付き合ってるだけ」
女「妹さんが合格したら盛大に祝うからね」
男友「そういうことは任せろ」
男「はは、妹に言っとくよ」
女「期待しといて!」
男「ん…じゃあ俺は」
男友「うおっと」
男「体力回復に…努めます」
女「ありゃりゃ」
男友「しょうがねえな」
女「おやすみ、男君」
男友「授業ノートは任せとけ」
男「…Zzz」
男「違うだろ、ここは補助線を一本引くだけで途端にわかりやすくなるんだよ」
妹「…あー」
男「違う、公式くらい覚えとけって」
妹「…いー」
男「違う、お前は新傾向問題の考え方が根本的に分かってない!」
妹「…うー」
男「ほら、次」
妹「にいさん、思ったよりもスパルタ…」
男「心を鬼にして、やるからには徹底的じゃないと」
妹「なるほど…」
男「はいそこも違う」
妹「うがー…」
男「まったく」
妹「…えへへ」
男「なに怒られてるのにニヤついてるんだよ」
妹「に、にやけてなんかないし、バカ!」
男「いてえ!シャーペン刺すなよ」
妹「…なんか、にいさんとこんなに長い時間一緒にいるの久し振りだなぁって思っただけ」
男「また、受験が終わったらいつでも俺の部屋に来いよ」
妹「…うん」
男「そのためにも、今は勉強」
妹「はぁい」
男「まだまだいけるか?」
妹「誰に聞いてるのさ」
男「じゃあ次はこの問題」
妹「はいな!」
数分後
男「だから違うって言ってんだろーが!」
妹「ひいぃ!」
男「やる気あんのかお前!」
妹「がんばります、がんばりますので!」
母「…あとで、コーヒーでも持って行ってあげよう」
受験前日
男「…なんとか、ぎりぎり間に合ったか」
妹「……。」
男「あとは、過去問を解いてみて今日は寝るぞ」
妹「…詰め込み過ぎで、頭痛い」
男「よく頑張ったよ」
妹「うん…コホッ」
男「おい、大丈夫か?」
妹「大丈夫大丈夫、じゃあ過去問やってみるよ」
男「いや、大事を取って今日は寝よう」
妹「え、無理ー」
男「体調崩したら元も子もないって言ったろ?」
妹「でも、こんなんじゃあ不安で寝れないー」
男「だーめ」
男「お前が寝るまで部屋出てかないからな」
妹「うー…」
男「ほら、布団の中入れ」
妹「……。」モゾモゾ
男「はい、目をつぶって羊数えてさっさと寝る」
妹「無理言うなー」
男「横になってるだけでもだいぶ違うから」
妹「…はぁい」
男「そうそう」
妹「……。」
男「……。」
妹「…にいさん」
男「なんだ?」
妹「…手、握っていい?」
男「手?」
妹「明日のこと考えたら、不安になっちゃって」
男「いいよ、ほら」
妹「ありがと」
ギュ
妹「……。」
男「……。」
妹「…冷たいね」
男「悪かったな」
妹「ううん、気持ちいい」
男「そっか」
妹「にいさんの手、はじめて触った」
男「そうだな」
妹「……。」
男「……。」
妹「…にいさん」
男「なんだー」
妹「私、勉強頑張ったよね」
男「そうだな」
妹「私、合格するかな」
男「余計なこと考えてないで寝ろって」
妹「……。」
ギュ
男「…妹?」
妹「私、合格するかな…」
男「……。」
男「するよ、お前は」
妹「……。」
男「お前、頑張ったから」
男「それは俺がよく知ってるから」
男「誰よりもお前は頑張ったよ」
男「だから、妹は合格する」
妹「にいさん…」
男「というか俺がここまで協力したんだから合格しないとぶっ飛ばすからな」
妹「…う、プレッシャー」
男「あれ、こう言って欲しいんじゃなかったのか」
妹「…ん、あってるよ」
男「…ん」
妹「にいさんがそう言ってくれたら、私は安心」
妹「えへへ、ありがと、にいさん」
男「お礼は受かってから言え」
妹「受かったらもう一回言うもん」
男「楽しみにしてるよ」
妹「うん、待ってて」
男「合格したら、お祝いしような」
妹「うん」
男「妹友さんも一緒に」
妹「うん」
男「それで、お前が高校生になったらいろんなところに遊びに行こう」
妹「…うん」
男「まだまだお前が知らないものは沢山あるからなー」
妹「…ん」
男「お前がやりたいことは何でもやろう、なんでも俺付き合うから」
妹「……。」
男「まあお金のかかることは出来ないけどな」
妹「……。」
男「…妹?」
妹「……。」スー
男「…寝ちゃったか」
ギュ
妹「…ん…にいさぁん」
ギュ
男「はは、可愛いなあ、こいつ」
男「…よく頑張ったよ、あと少しだからな」
男「…おやすみ、妹」
ピピピピピピピピピピ
男「…んあ」カチッ
男「ふあぁ…」
男「…さて、いよいよだな」
男「はは、受けるの俺じゃないのに緊張してきた」
男「自分が受けたときは驚くほど緊張しなかったのにな」
男「…下の階に行くか」
男「おはよー」
母「おはよう」
男「あれ、妹はまだか」
母「起こしてあげなさいな」
男「ん、行ってくる」
トットットッ
男「まったく、余裕を持った行動を心掛けないと」
男「妹ー、朝だぞー」
ガチャ
男「起きろー」
妹「…ん、にいさん」
男「ほら、早く顔洗って目を覚ましてこい」
妹「……。」
男「…妹?」
妹「……。」
男「お前、顔真っ赤だぞ?」
妹「…気の…せいだよ」
男「おいおいまさか」
ピタッ
妹「…冷たい」
男「……。」
男「母さん!母さんすぐ来て!」
妹「……。」
男「ほら、起きなくて良いから横になれ」
妹「でも」
男「良いから」
妹「……。」
ピピッピピッ
母「…完全に熱があるね」
男「俺のせいだ」
妹「……。」
男「俺が無理させたから…俺が止めなかったから」
母「そんなこと言ってもしょうがないわよ」
妹「…にいさんのせいじゃ…ないよ」
男「おい、起きるなって、寝とけ」
妹「私、試験受けれるよ」
男「無理するなって…」
妹「無理じゃない…コホッ」
妹「私…受けに行かなきゃ」
男「そんなこと言っても…」
妹「私、今日の為に勉強してきたから」
妹「これくらいの熱は…覚悟の上…だもん」
男「…嘘つけよ」
妹「ケホッ…ん…」
妹「嘘じゃない」
男「……。」
妹「お願い、行かせて」
母「……。」
妹「私…こんなことじゃ諦められない」
母「……。」
妹「お願いだから…コホッ」
男「…妹」
母「……。」
男「…母さん」
母「…確か、別室受験とかあったわよね」
男「母さん?」
妹「…うん」
母「妹、約束して」
母「ダメだと思ったら無理しないでちゃんと先生に言いなさい」
妹「はい」
男「……。」
母「私も学校で、妹が受験終わるの待ってるから」
妹「はい」
母「あと」
母「合格したらみんなにちゃんとお礼を言うこと」
妹「…うん」
男「……。」
妹「…にいさん、私」
男「分かった分かった」
妹「……。」
男「母さんと妹は出かける準備しろよ」
男「俺は別室受験のこと電話で確認するから」
妹「にいさん、ありがと」
男「だから、受かってから言えって…」
母「妹、風邪薬」
妹「ん…」
母「さあ、準備するよ」
妹「うん」
母「じゃあ、何かあったら電話するから」
男「はいよ」
妹「…コホッ」
男「まったく、お騒がせな奴だ」
妹「…にいさん」
男「ん?」
妹「…手」
男「…ほらよ」
ギュ
妹「…冷たい」
男「熱のせいだよ」
妹「えへへ、そうだね」
男「大丈夫だから、落ち着いていけよ」
妹「うん」
男「俺がついてるからな」
妹「…頼もしいな」
男「だから、大丈夫」
妹「うん…にいさん」
男「ん、なんだ?」
妹「…あれ、いや、何でもない」
男「なんだそれ」
妹「変なこと言おうとしちゃった…熱があるからかな」
男「おいおい、大丈夫か?」
妹「大丈夫だよ」
男「なら良いんだけど」
妹「私、頑張って来るから」
男「おう」
ブロロロロ…
男「…さあ、あとは祈るだけか」
男「駄目だったときでも、精一杯励ましてやらなきゃ」
男「俺はあいつの、兄なんだからな」
男「……。」
男「がんばれ、妹」
……………………
…………
……
男「……。」
男「……。」
男「…はぁ」
コンコン
男「妹ー、いい加減用意しないと妹友さん来ちゃうぞ」
妹「いーやーだー、私まだ熱あるもんー!」
男「嘘つけ、とっくに治ってるだろうが」
妹「うー、いやぁ…」
男「代わりに俺が見に行ってやろうか?」
妹「それもやだぁ!」
男「めんどくさいなおい…」
ピンポーン
妹「ひっ!」ビクッ
男「お、来た」
妹「いやだぁ、落ちてるもんー」
男「分かった分かった、そんときは慰めてやるから」
妹「慰められたって落ちてたら意味ないもん…」
男「だーもう!なんでも良いから妹友さん待たせるなって、とりあえず部屋から出てこい」
妹「だって…」
男「だってじゃない」
妹「うー…」
ガチャ
男「おわっ!なんだその目」
妹「落ちてるかどうか考えてたら涙が止まらなくなっちゃって…」
男「あー」
妹「だから部屋から出たくなかったのにぃ…」
妹友「おはようございまーす」
男「おはよう、妹友さん。待たせてごめんね」
妹友「いえー、大丈夫ですけど」
妹「……。」
妹友「妹、大丈夫ー?」
妹「大丈夫に見える?」
妹友「あはは、あんまりかなー」
男「こいつ多分途中で何度か逃げ出そうとすると思うけど、ちゃんと連れていってあげてね」
妹友「はい、お任せくださいー」
妹「…うー」
男「自信持てよ、妹」
妹「他人事だからそんなことが言えるんだ…」
男「やばいこいつ今凄いめんどくさい」
男「ちゃんとお祝いの用意もしとくからな」
妹「なにも食べたくない…」
男「そりゃあ、今はな」
妹友「お祝いですかー」
男「妹友さんも是非来てね」
妹友「え、良いんですか?」
男「もちろん」
妹友「わーい、嬉しいです。ありがとうございますお兄ちゃん」
男「いえいえ」
妹「…前から聞こうと思ってたんだけど」
男「ん?」
妹「なんで妹友はにいさんのことをお兄ちゃんと…」
男「ああもう、良いから早く行けよ」
妹友「じゃあ行こうか、妹」
妹「…うん」
男「妹、大丈夫だから自信持て」
妹「その根拠はどこから来るのさ」
男「お前は俺の妹だから」
妹「…ますます不安になってきた」
男「おいこら」
妹友「合格発表見終わったら寄り道しないで帰ってきますからー」
男「頼むよ、妹友さん」
妹友「がってんしょうちのすけー」
男「じゃあ、いってらっしゃい」
妹友「いってきまーす」
妹「…いってきます」
男「…ふぅ」
母「世話のかかる妹はちゃんと行ったかい?」
男「ああ、なんとか」
母「男はずいぶんと余裕があるわね、てっきり妹以上に心配してると思ったのに」
男「ああ、いや実は」
母「実は?」
男「妹に内緒で妹の回答を採点してみたんだけど」
男「英語と国語が満点で、社会が一問だけの間違いでさ」
母「……。」
男「で、まあ問題の数学と理科も数問しか間違えてなかったから」
男「熱のせいでマークミスとかしてない限り余裕の点数なんだよな」
母「…へえ」
男「ま、妹の勉強の成果と言うことで」
母「私もかなり安心したわ」
男「はは、妹もすぐに笑顔で帰ってくるよ」
母「そう、凄いわね、妹」
男「俺の妹ですから」
母「そういうことにしとくわ」
男「頑張ったから、あいつ」
母「そうね、ひやひやしたけど」
男「うん、まあね…」
母「ところで男、聞きたいことがあるんだけど」
男「ん、なに?」
母「妹って、サンタからあなたへの贈り物なの?」
男「ぶっ!」
母「あら、ほんとなのね」
男「な、なんで…」
母「いやいや。私の旦那、あなたを産んだすぐに亡くなってるのに」
母「妹は誰の子ってなるじゃないの」
男「あー、なるほど」
男「…いつから気付いてたの?」
母「はじめからよ」
男「クリスマスから?」
母「そう。なんか変な記憶のせいで曖昧だったけど」
男「……。」
母「母をみくびって貰ったら困るわ」
男「……。」
母「ま、分かったからといってなにも変わらないけど」
母「あの子は私の娘よ」
母「大事な、大事なあなたの妹だから」
男「…ありがとう、母さん」
母「お礼を言われる筋合いはないのだけど」
男「はは、そうだね」
母「じゃあ、お祝いの準備をしましょうか」
男「そうだな、すぐに帰ってくるぞ、あいつ」
…イサーン!
母「ふふ、言ってるそばから」
男「いや、早すぎだろ…」
妹「にいさーん!にいさーん!」
母「ほら、呼んでるわよお兄ちゃん」
男「はいはい」
妹「にいさんッ!」
バッ
男「うわっと」
妹「にいさん、私受かってた!受かってたよー!」
男「とと…そっか、おめでとう」
妹「これで私もにいさんと同じ高校だね」
男「そうだな」
妹「ねえねえ、嬉しい?」
男「おう、嬉しいよ」
妹「えへへ、私も嬉しい」
妹「妹友もね、ちゃんと受かってた」
男「そっか、良かったな…で、妹友さんは?」
妹「…あ」
男「…おい」
妹「にいさんにすぐ話したかったから…」
男「分かったから、早く迎えに行ってあげなさい」
妹「はぁい!」
タッタッタッ
男「…たく」
母「妹、はじめよりずいぶん明るくなったわよね」
男「かもな」
母「…ふふ」
男「なんだよ」
母「なんでもないわよ」
母「このまま、この生活がいつまでも続けば良いわね」
男「……。」
母「…男?」
男「…ああ」
男「いつまでも続けば…良いのに」
母「……。」
男「…ま、今は良いや」
男「今日は、祝おう」
母「そうね」
…イサーン!
男「…主役も来たみたいだし」
母「ふふ、じゃあ用意してくるわ」
男「今は、これで、良いんだ」
妹の受験 おわり
閑話
妹「うー…雲行きがあやしい」
妹友「しょうがないね、この時期だし」
妹「あ、妹友」
妹友「一緒に帰ろー?」
妹「うん、雨が降る前に帰ろうよ」
妹友「あー、それは無理みたい」
妹「え…あ!」
ポツ…ポツ…
妹「あー…」
妹友「…仕方ないねー」
妹「…いいもん、私にはにいさんが買ってくれた傘があるから」
妹「帰ろ、妹友」
妹友「がってんしょうちのすけー」
梅雨のある日
ザー…
妹「本降りになっちゃった…」
妹友「梅雨っていやだねー」
妹「ほんとだよもう」
妹友「妹、その傘可愛いね」
妹「でしょ、にいさんと二人で選んだんだよ」
妹友「そうなんだー」
妹「他にもね、私の部屋にあるものはみんなにいさんが買ってくれたの」
妹友「優しいお兄ちゃんだよね」
妹「えへへ、そうでしょ」
妹友「ふふ」
妹「どうしたの、妹友」
妹友「ううん、妹と話すといつもお兄ちゃんの話だなって思って」
妹「な…べ、別にそんなことないよ」
妹友「うふふ」
ザー…
妹友「妹のクラスは楽しい?」
妹「楽しい…うーん」
妹友「楽しくないの?」
妹「普通、かな」
妹友「普通かー」
妹「妹友が違うクラスになっちゃったからね」
妹友「あ、嬉しいこと言ってくれたー」
妹「高校生って中学生とあまり変わらないや」
妹友「入る前はあんなに大人に見えたのにねー」
妹「折角にいさんと同じ高校に入れたのに、学校であまり会えるわけじゃないし…」
妹友「……。」
妹「なに?」
妹友「またお兄ちゃんの話ー」
妹「……//」カァ
ザー…
妹「今のはナシ!ナシだから!」
妹友「良いじゃん別にー」
妹友「お兄ちゃん、すごく優しい人だし、好きになるの分かるもん」
妹「すす、すすす好きぃッ!?」
妹友「お兄ちゃんのこと好きでしょ、妹」
妹「ど、ど、どこからそんな話になるのさ!」
妹友「好きじゃないのー?」
妹「そ、そりゃあ兄妹としてなら…い、言っておくけど兄妹としてならだよ?それならまあ、頼りにならないこともないし?」
妹「好きか嫌いかって言われたら、そ、それなら好きっていっても、別に嘘じゃないけど」
妹友「妹、目が泳いでるよー」
妹「…あう」
妹友「妹にごまかされるのは、友達として傷付くなー」
妹「べ、別にごまかしてなんか…」
妹友「んー?」
妹「…うー」
妹友「ふふ、私の目はごまかせられないのだよワトソン君」
妹「で、でもにいさんは、私のにいさんだし」
妹友「でも本当のお兄ちゃんじゃないでしょー?」
妹「……。」
妹友「あ、良い意味でだよ?本当のお兄ちゃんじゃないから、お兄ちゃんだからっていう理由で好きになっちゃ駄目なんてことは無いってことだからね」
妹「……。」
妹友「だから、お兄ちゃんが好きなら好きって言って良いんだよー?私にはねー」
妹「……。」
妹友「ふふふ、私は妹の秘密を知ってる親友なんだから」
妹「…妹友」
妹友「なにー?」
妹「私の言ったこと、信じてくれてるんだ」
妹友「うん、もちろん」
妹「信じられないような話なのに…」
妹友「んー、色々調べてみたんだけどねー」
妹友「私と妹がずっと友達だっていう記憶はあるのに、二人の思い出は私、一つも持ってなかったんだ」
妹「……。」
妹友「プリクラの一枚も無いの、おかしいよねー」
妹友「だから、嘘じゃないのはすぐに分かったよ」
妹「それだけで…」
妹友「それに妹の言うことだったら私、どんなことでも全部信じるよ」
妹友「たとえ記憶が嘘だとしても、私は妹の友達だもん」
妹「妹友…ありがとう」
妹友「だから」
妹友「だから…妹に言われるまで、このことに気付けなかった自分が、悔しい」
妹友「少し考えれば分かることなのに、そんな嘘の記憶に騙されてた自分が、とても悔しいよ」
妹友「本当に妹の友達なら、すぐに気付くべきなのに!」
妹「妹友…違うよ、妹友は悪くないよ」
妹友「悪い悪くないじゃなくて、気付かなきゃいけないことだったの」
妹友「だから…ごめんね、本当にごめん、妹」
妹「…うー、そう言われたら困るよ」
妹友「それと、話してくれてありがと」
妹「…うん」
妹「だって、友達に隠し事はダメだもんね」
妹友「…友達」
妹「うん、友達」
妹「えへへ、信じてくれて嬉しい」
妹友「…妹、ティッシュー」
妹「はいはい」
妹友「…ぐす」
妹「妹友が友達でよかった、ほんとに」
妹友「あー、やめてよ、今泣き止みそうだったのにー」
妹「そ、そういうつもりじゃないよ」
妹友「分かってるけど…妹、ティッシュー」
妹「はい」
妹友「ん、ありがと…」
妹「妹友と友達になれたことは、サンタに感謝しないと」
妹友「…サンタも、酷いことするよね」
妹「え?」
妹友「人の記憶をいじって、妹を苦しめて、子供に夢を与える人のすることとは思えないよ」
妹「しょうがないよ、そうしないともっと大変なことになるんだから」
妹友「でもー…」
妹「それに、サンタには十分感謝してるよ」
妹「にいさんの、妹になれたんだもの」
妹友「……。」
妹「それに、もちろん妹友の友達にもね」
妹友「…でも」
妹友「でも、期限付きじゃんか…」
妹「……。」
妹友「妹、あと半年でいなくなっちゃうなんて…そんなの、酷すぎるよ」
妹「…それでも、サンタには感謝してるよ」
妹「私、今凄く幸せだから」
妹友「妹…」
妹「ね?」
妹友「…そんな顔見て、私が嘘に気付けないわけないじゃんか」
妹「……。」
妹友「ずっと、ずっと一緒にいたいって思ってる癖に…」
妹「……。」
妹「……。」
妹友「……。」
妹「……。」
妹友「…ごめん」
妹「…ううん」
妹友「……。」
妹「……。」
妹友「…で、でもさ!」
妹「……。」
妹友「今年のクリスマスでまたお兄ちゃんがサンタに頼んだら、妹は消えないんじゃないかな!」
妹「……。」
妹友「そうだよ、来年も、またその来年も!お兄ちゃんなら絶対に頼んでくれるもん!」
妹友「そしたら…ね!妹とずっといれるよね!そうでしょ?」
妹「……。」
妹友「…妹?」
妹「…え?」
妹友「……。」
妹「…あ、うん…そうだね」
妹友「……。」
妹「にいさんが、サンタに頼んだら、ずっといれるかもしれないね」
妹友「妹」
妹「……。」
妹友「私に、隠し事、してないよね?」
妹「……。」
妹友「なにも…してないよね?友達に隠し事はなしって言ったもんね?」
妹「……。」
妹友「ねえ妹!」
妹「…うん」
妹友「こっち見て言いなさいよ、ねえ!」
妹「……。」ビクッ
妹友「あ、ごめんね…ごめん、なさい」
妹「なにも隠してないよ」
妹友「え?」
妹「ほんとに、不安にさせてごめん」
妹友「……。」
妹「えへへ、ちょっと考え事してたらボーッとしちゃって」
妹友「……。」
妹「そっか、にいさんがサンタに頼んでくれたら私は来年も一緒にいられるかもしれないんだ」
妹友「え…?」
妹「うん、そっか、そうだね!」
妹友「……。」
妹「あれ、どうしたの?妹友」
妹友「……。」
妹「妹友ー?」
妹友「…あはは、なんだそっかー」
妹「なにが?」
妹友「ううん、なにも。妹、気付いてなかっただけなんだねー」
妹「えへへ、盲点でした」
妹友「なにかあるかと思って大きな声出しちゃったじゃんか!」
妹「ご、ごめんなさい」
妹友「良いよー、というか安心したよ」
妹友「お兄ちゃんがサンタにまたお願いするだけで良いなんて、落ち込んでたのがバカみたいだねー」
妹「そうだねー」
妹「あ、でもサンタは良い子の願いしか叶えてくれないから、にいさんに気をつけるように言わないと」
妹友「お兄ちゃんなら大丈夫でしょー」
妹「そ、そうかな…」
妹友「自慢のお兄ちゃんの癖にー」
妹「…そういうからかい方、嫌い」
妹友「照れないのー」
妹「て、照れてないし!」
妹友「はいはい…あー」
妹「え、なに…あ」
妹「晴れたー」
妹友「晴れたねー」
妹「どれくらいここで話してたんだろ…」
妹友「大雨が止んじゃうくらい長い時間?」
妹「あはは…じゃあそろそろ帰ろうかな」
妹友「うん、じゃあまた明日ねー」
妹「うん、ばいばい」
妹友「ばいばーい!」
妹「……。」
妹友「……。」
妹「…上手にごまかせたのかなぁ」
妹「妹友のことだから、分からないフリをしてくれたんだよね…」
妹友「…嘘ついてるときは分かっちゃうって、言ったのに」
妹友「隠し事はしないって言ってくれたのに…」
妹「ごめんね、妹友」
妹友「妹の、バカ」
梅雨のある日 おわり
382 : 以下、名... - 2010/12/30(木) 03:02:47.04 pQ97fxtq0 141/405
閑話だから妹と妹友のほのぼのを書く予定だったのに、間違えた
ごめんなさい、寝ます
第五話
妹「海?」
男「そう、夏休みに俺の友達と。妹友さんも誘ってさ」
妹「妹友も誘って、海…」
男「まあ海だけじゃなくて、花火とかいろいろやってさ」
男「みんなで夏の思い出を作ろうぜい!ってことらしいんだけど」
妹「作ろうぜい?」
男「あ、企画は俺の友達だから」
妹「……。」
男「…そ、そこはちょっと不安だけど」
男「どうかな?」
妹「行く」
男「俺としては一緒に来てくれるとありがたいんだけど」
男「…って、返事早いな」
妹と夏の思い出
妹「…ふわぁ」
妹友「海、これが海ですかー!」
妹「妹友も海初めて?」
妹友「うん、テレビでは見たことあったけどー」
妹「私と一緒だね!」
妹友「一緒だねー!」
妹「着替えは?どこでするのかな?」
妹友「ちっちっち、妹は分かってないなー」
妹「え?…な、それは!」
ヌギッ
妹友「海に来るときは服の下に水着を着て来るのが上級者なのだよワトソン君」
妹「すごい、さすが妹友!」
妹友「ははは、妹はまだまだだなー」
男「…疲れた」
女「電車で片道3時間半って…」
男友「無事に着いたんだから、細かいことは気にしない!」
女「いや、少しは行く場所とか考えようよ」
男「やっぱり男友企画というのに問題があったか」
男友「まさかの不評っ!?」
男「…まあ、あの二人が元気なら良いんだけど」
妹「……!」キャッキャッ
妹友「……っ!」ワイワイ
女「…若いって凄いね」
男「俺らももう歳なんだな」
女「…おかしいね、私たちもティーンエイジャー真っ盛りのはずなのに」
男「だな」
男友「綺麗な海を頑張って探したのに…」
女「妹さんたち、喜んでるみたいで良かったね」
男「ああ、ほんとに」
男「…っておい!」
妹「ん?」ヌギッ
男「ストップストップ!」
妹「どうしたの、にいさん」
男「…何故ここで脱ぐ」
妹「え、水着に着替えないと海に入れないじゃない」
男「まあそれは良いんだけど、何故こんな衆人の前でどうどうと着替えようとする」
妹「ふふん、海の上級者は人の目を気にせずに着替えるもんなんだよ!」
男「……。」
妹友「……。」
男「妹友さん」
妹友「すいません悪ノリしすぎましたー…」
妹「え、嘘なのッ!?」
男「いや、気付けよ」
女「というか海の上級者ってなに…」
妹友「妹が可愛くてついです…」
妹「…帰りたい」
男友「みんながよかれと思って、頑張って探したのに…」
男「あーあー、海に遊びに来たテンションとは思えない」
女「すっごく先が思いやられるね」
妹友「ご、ごめんなさいですー」
男「妹友さんのせいじゃないよ」
男友「申し訳ない…」
男「いや、ごめん。企画してくれて感謝してるよ」
妹「騙されたー」
男「それはお前の常識が無いせいだ」
妹「あう…」
男「とりあえず、みんな着替えてこようか」
女「そうだねー」
妹「……。」
男「はい、妹も立ち直って」
妹「…はいな」
女「妹さん、着替える場所こっちだよー」
妹「…あー」
男「はいすぐ立ち直る」
妹「は、はいな」
男「妹友さんは荷物番を任せて良い?」
妹友「がってんしょうちのすけー」
女「おまたせー」
男「おう」
妹「お、おまたせ」
男友「おー…」
女「男君、この水着どうかな?今日の為に買ったんだけど」
男友「可愛い!可愛いよ女!」
女「男友には聞いてない」
男友「あー…」
男「似合ってるよ」
女「ありがとー!」
妹「…むー」
妹「……。」
男「…どした?」
妹「じろじろ見んなバカ」
男友「ご、ごめんなさい」
妹「あ、先輩に言ったわけじゃ…」
女「自覚あるくらいガン見してたわけね」
男友「……。」
妹友「お兄ちゃん」コソッ
男「ん?」
妹友「あの水着、お兄ちゃんに見せる為に私と買いに行ったんですよ」
男「…ふーん」
妹友「妹、買うときすっごく悩んでましたー」
男「そっか、教えてくれてありがと」
妹友「いえいえー」
女「よーし、じゃあ泳ぎに行くぞー」
妹友「おー」
女「ついて来るんだ、妹友さん」
妹友「呼び捨てで良いですよー」
女「そう?じゃあ、私に続け妹友ー」
妹友「はいです、先輩!」
女「突撃ー」
妹友「覚悟でござるー」
男「…はは、女も十分元気じゃん」
妹「……。」
クイッ
男「ん?」
妹「……。」
妹「…あ、あのさ」
男「うん」
妹「ど、どうかな、これ」
男「可愛いよ」
妹「…ほんとに?」
男「ほんとほんと」
妹「えへへ、ありがと」
男「泳ぎに行くか?」
妹「うん!」
妹友「そーれもっともっとー!」
妹「もっともっとー」
男友「ちょ…待っ…」
妹友「まだまだー!」
妹「まだまだー」
男友「え、動け…」
妹友「深い深ーい!」
妹「深い深ーい」
男友「……。」
男「楽しそうだなー」
女「なに座ってのんびりしてるの、男君」
男「荷物番は必要だろ?」
女「いなくても大丈夫だよー」
男「いやいや」
女「それともそんなに妹さんを見てたいのー?」
男「はは、危なっかしくて見てられないってのはあるな」
女「…むー、男君はいじりがいがないな」
男「え?」
女「いやいやこっちの話」
妹「にいさーん」
妹友「お兄ちゃーん」
男「ん?なんだー」
妹「見て見てー、妹友との合作」
妹友「タイトルは『人柱』ですー」
男友「……。」チーン
男「……。」
女「……。」
男「砂遊びばっかりしてないで海にも入れよー」
妹友「私もそう言ってるんですけど、妹がですねー」
妹「…う」
男「…ん?」
妹「……。」
男「妹、もしかして泳げない?」
妹「…あはは」
男「しょうがない、女」
女「あれですね、あにき」
妹「…?」
妹「……。」
男「装備完了」
女「ウキワ付けてる妹さんも可愛いー!」
妹友「写真撮りたいですねー」
妹「みんな、馬鹿にしてない?」
男「全然」
女「よし、泳ぎに行こう」
妹友「おー」
男友「…あの、俺今指一本も動かせ――」
男「行くぞー、妹」
妹「あ、待ってよ」テッテッテ
男友「……。」
……………………
…………
……
妹「……!」キャッキャッ
妹友「……!」ワイワイ
女「……っ!」キャーキャー
男友「……。」
男友「…うっ…うっ」
男「…お前も大変だな」
男友「お、男ぉ…」
男「ほら、今掘り返してやるから」
男友「ありがどー」
男「泣くなって」
男友「あやうく惚れそうになっちまった」
男「頭から埋め直すぞ、おい」
……………………
…………
……
妹「あー、楽しかった」
妹友「楽しかったねー」
女「もう夕方だよー」
男「来るのに時間かかったもんな」
男友「申し訳ない…」
男「いやもうそれは良いって」
女「妹さんたちも満足したみたいだし」
妹「はい、こんな綺麗な海に連れてきてくださってありがとうございました、先輩」
男友「どういたしまして」
妹友「砂に埋もれてる先輩が今日一番輝いてましたー」
男友「…そりゃどうも」
女「旅館はここから時間かかるの?」
男友「歩いて少しだけかな」
女「なら良かったー」
男「それにしてもよくみんな泊まりの旅行なんて許されたな」
妹友「私の親はそこまで厳しい人じゃないですからー」
男友「うちも放任主義だし」
女「私は交渉頑張ったよー、受験生だからって結構反対されたもん」
男「それはご苦労様だな…」
男友「男のところは?」
男「俺たちは別になにも言われなかったな」
妹「にいさんがいるなら大丈夫でしょって言われました」
女「頼りになるお兄ちゃんだねー」
妹「そ、それなりですけどね」
妹友「ふふ」
妹「そこ、笑わない!」
男友「お、着いたぞー」
妹「これですか」
妹友「…おー」
女「なんというか」
男「…年期が入った建物だな」
男友「予算削減の為です」
女「なるほど」
妹友「あ、でも温泉があるって書いてある」
妹「温泉!」
女「…男友、覗こうとしてないでしょうね」
男友「なんで真っ先に言う言葉がそれなんだ…」
男「妹、気をつけろよ」
妹友「ガードはお任せください」
男友「お前ら…」
男友「部屋は二部屋取ってあるから」
男「男子組と女子組に分かれよう」
妹「え」
男「ん?」
妹「…ううん、なんでもない」
女「ははーん」
妹友「ふふーん」
妹「な、なんでもないから!」
男「……?」
女「よし、妹友たちにガールズトークのなんたるかを教えてしんぜよう」
妹友「受けてたちましょう、先輩」
男友「よし、俺らも濃厚なボーイズトークを」
男「一人でやっとけ…」
女「部屋きれーい」
妹友「ベッドじゃないところで寝るの、久し振りですー」
妹「私も」
女「男友、良い旅館見つけたじゃない、あとで褒めておこう」
妹「にいさんたちの部屋はどこ?」
妹友「廊下を挟んで反対側のお部屋みたいだよー」
女「ねね、早速温泉入ってみようよ」
妹「賛成でーす」
妹友「妹と一緒に温泉入れるなんて幸せー」
男「…男友」
男友「……。」ギク
男「双眼鏡持ってどこ行くんだ」
男友「……。」
男「……。」
男友「…や、やだなー。ジョークだよジョーク」
パチパチ…
男「で、温泉はどうだったんだ?」
妹「気持ち良かったよ」
女「ねー」
妹友「先輩のおっぱいが大きくてびっくりしましたー」
女「ぶっ!」
男友「ほうほう、その話をもう少しくわしぐっほッ!」バキッ
女「はぁはぁ…妹友、大声でそんなこと言うのやめようね」
妹「…にいさん、なに鼻の下のばしてるんですか」
男「いやいや伸ばしてないし」
妹友「妹のおっぱいは見た目通りつるぺ…もがー!」
妹「妹友ー!」
妹友「妹、花火危ない花火危ないからー!」
パチパチ…
女「ちなみに男君は」
男「ん?」
女「おっぱいは大きい人と小さい人どっちが好み?」
男「ぶっ!」
妹「……。」
妹友「どっちですかーお兄ちゃん」
男「いやいや、あんたら酔ってるのか…」
女「ごまかさないのー」
妹友「のー」
男「そんなこと言われても」
妹「私は知ってるけどね」
女「え、そうなの?」
妹「だってにいさんはロリコ」男「わー!わー!」
パチパチ…
妹「にいさん花火危ない花火危ない」
女「んー?」
妹友「妹、よく聞こえなかったのでもう一回ー」
妹「だから、にいさんはロ」男「おいしょー!」
女「男君、さっきからうるさいよー」
妹友「お兄ちゃん、どうかしたんですか?」
男「ちょっと妹借ります」
女「……?」
妹「なにさ、にいさん…って、わーわー!」
男「こっちこい」
妹「じ、自分で歩くって!」
妹「で、なによー」
男「お前はなにさらりと爆弾発言しようとしてるんだ」
妹「ロリコンのなにが悪い!」
男「それは俺の台詞だ」
男「いやいやそんなこと言わないけど」
妹「だって、にいさんの好みは私の容姿に全部出てるはずだし」
男「…う」
妹「私、にいさんの持ってたいかがわしい本の種類も知ってますし」
男「……。」
妹「まさかこれで今更自分がロリコンじゃないとでも言うつもりじゃあないよね?」
男「……。」
妹「被告人、なにか言いたいことは?」
男「…ありません」
妹「じゃあ、みんなのところに戻ろうか」
男「はい…」
女「あ、なに二人で内緒話してたのさー」
妹友「のけ者なのは寂しいですよー」
妹「ごめんごめん」
妹「で、にいさんに質問があるんですけど」
男「…はい」
妹「にいさんは、胸が大きい人と小さい人どっちが好きなんですか?」
男「……。」
妹「はい、どうぞ」
男「…小さい人です」
妹「よろしい」
女「おー、あの男君にこんな質問を答えさせた」
妹友「妹、凄いですねー」
女「…って、小さい人なんだ…うー」
妹友「妹対先輩は妹の勝利ですねー」
妹「そ、そういうことじゃないでしょ!」
女「負けたー」
男友「俺はおっぱい大きい人の方が好きだよ!」
妹友「あ、女先輩に殴られて気絶してた男友先輩が起きた」
女「うっさい」ゲシッ
男友「」
妹「あ、また気絶した」
男「ま、まあ人間大事なのは外見じゃなくて中身だけどな」
妹友「おー、お兄ちゃんがおっぱいのなんたるかについて語りはじめた」
女「おっぱいは見た目じゃなくて、触ったときの中身の弾力具合が大事とか、そういう話でしょうかね」
男「そういうことじゃねえ」
妹「ロリコンがなにかっこつけて」男「わー!わー!」
女「あ、あと線香花火だけになっちゃったよ」
男「そっか…まあ十分楽しんだろ?」
妹「みんなで誰が一番長くまで続くか勝負しようよ」
妹友「さんせー!」
男「ほら、男友起きろ」
男友「んあ?」
女「じゃあみんなで同時に火を付けるんだよ」
妹「負けないもん」
妹友「私だってー」
男「いくぞー」
男友「え、なんの話?」
「せーの!」
パチパチ
女「はあ、今日は一日楽しかったね」
妹「そうですねー」
妹友「私、今日のこと忘れませんよー」
女「私もー」
妹「……。」
妹友「あれ、妹どうしたのー?」
妹「遊びすぎて疲れちゃった」
女「ちっちっち、今からが本番ですよー」
妹友「ガールズトークですか先輩ー!」
女「ふふふ、みんな隠し事なしでさらけ出すんだからねー」
妹友「どんとこいですー」
妹「……。」
女「ほら、妹さんも掛け声掛け声!」
妹「お、おー」
妹友「…って、一番張り切ってた先輩がはじめにダウンしちゃダメですよー!」
女「…Zzz」
妹「…完全に寝ちゃったね」
妹友「だねー」
妹「まあ、今日の先輩みんなを盛り上げるために頑張ってたから」
妹友「優しくて話しやすくて良い先輩だよねー」
妹「うん、まさか男友先輩のことが好きだったのは意外だったけど」
妹友「えー、バレバレだったよー」
妹「妹友は勘が鋭いから」
妹友「ふふ、それほどでも」
妹「先輩、ほんとになんでも喋ってくれたよね」
妹友「うん、隠し事なしって言っただけのことはあったよー」
妹「……。」
妹友「……。」
妹「…妹友」
妹友「なにー」
妹「…この前の、話なんだけど」
妹友「この前のー?」
妹「分かってるでしょ」
妹友「…ん」
妹「あれね、私…その…」
妹友「良いよ、無理しなくて」
妹「え?」
妹友「話したくなったときで、良いよ」
妹「でも…」
妹友「大丈夫、妹がね、私を気遣ってることはよく分かるから」
妹友「だから、いつでも良いよ」
妹「…妹友」
妹友「でも、いつか話してくれないと私、むくれちゃうんだからねー」
妹「…ん」
妹友「よろしい」
妹「あのね、妹友が聞きたいって言うなら、今話しても…」
妹友「今は嫌ー」
妹「え?」
妹友「折角こんなに楽しい日なんだもん、今日はもっと別の話をしよー」
妹「……。」
妹友「ね?」
妹「…うん!」
妹友「じゃあ、先輩も寝ちゃったしガールズトーク2回戦!」
妹「え、2回戦?」
妹友「前回はうやむやになっちゃったからねー」
妹「え、えー、もしかして…」
妹友「ふふ、妹がお兄ちゃんのことを好きなのかどうか」
妹「だ、だからそれは…」
妹友「大丈夫だよ、先輩も寝てるし」
妹「そういう問題じゃないのー!」
妹友「はい、どうなの妹ー?」
妹「…うー」
妹友「まだ妹からなんの答えも聞いてないからねー」
妹「だからね、にいさんは私のにいさんだもん…」
妹友「その理由は既に論破されておりますのでー」
妹「……。」
妹友「ほらー、3、2、1、はい!」
妹「……。」
妹友「…妹ー?」
妹「うっ…ぐす…」
妹友「妹ッ!?」
妹「うー…」
妹友「ご、ごめんね妹、意地悪なことしちゃったね」
妹友「もう終わりだから、はいおしまい。なにも聞かないからー…だから泣き止んで、ね?」
妹「…ぐすっ」
妹友「ごめんね、今日はもう寝よっか?」
妹「ううん、話す…」
妹友「うん、じゃあ今日の楽しかったことでも話そっか」
妹「ううん、さっきの話」
妹友「お兄ちゃんの話は終わりで良いよ」
妹「大丈夫、話すから」
妹友「…んー」
妹「私ね」
妹「にいさんのこと、好きにはならないよ」
妹友「え、どういうこと?」
妹「妹友は、にいさんは本当のにいさんじゃないからって言うけど」
妹「でもね、にいさんは妹が欲しいってお願いして私が生まれたから」
妹「だったら、やっぱり私はにいさんの妹で、にいさんは私のにいさんだよ」
妹「にいさんのその願いを、私が壊しちゃダメだから」
妹「だから、私は…にいさんのことを好きにならない」
妹友「……。」
妹「このままでも、にいさんは私の大切なにいさんだから」
妹「…私は…それで十分だもん」
妹友「…ふーん」
妹「…うっ…うー」ポロッ
妹友「……。」
妹「十分…だもん…」ポロポロ
妹友「じゃあ、なんで泣いてるのさ」
妹「うくっ…ぐす…」ポロポロ
妹友「ねえ、妹。なんで泣いてるの?」
妹「う、うー…ひっぐ…」
妹友「それで本当に十分だと思ってるなら、泣くわけないじゃん」
妹「…う、うっ…ぐすっ」
妹友「もし思ってないなら…そんなこと、言わないでよ」
妹「うー…」
妹友「ねえ、妹」
妹友「私、妹の嘘なら分かっちゃうって言ったよね?」
妹友「なんでそんなに、私に嘘をつくの?なんでそんなに…」
妹友「自分の心に、嘘をつくの?」
妹友「私に嘘をつくくらいなら良いけど、自分の気持ちに嘘をついてるなら」
妹友「いくら私でも、怒るんだからね」
妹「……。」
妹友「妹の言葉だと、お兄ちゃんのことを好きになっちゃ駄目だから好きにならないって言ってるようにしか聞こえないよ」
妹友「私が聞いてるのはそんなことじゃない」
妹友「私が聞いてるのは、妹がお兄ちゃんを好きかどうか」
妹友「好きになっちゃ駄目かどうかなんて聞いてない」
妹友「妹の気持ちを聞いてるだけなのに」
妹友「何回嘘をついたら分かるんだよ、バカー…」
妹「…だって」
妹友「…だって?」
妹「だって…しょうがないじゃんかぁ!」
妹友「……。」
妹「私はにいさんの妹として生まれたんだもん…」
妹「にいさんの願いを叶えるために生まれたんだもん」
妹「だから、にいさんの妹でいないと、私…」
妹友「だから、そうじゃなくて――」妹「じゃないと!」
妹友「……。」
妹「もしにいさんのことを好きになって、にいさんの妹でいられなくなっちゃったら」
妹「にいさんの願いを、叶えられなくなったら」
妹「そしたら私…消えちゃうかもしれないから」
妹友「……。」
妹「私はにいさんの願いを叶えるために生きてるから」
妹「にいさんの願いを叶えられなくなった瞬間、私はもう存在する理由がなくなる」
妹「そうしたら、私の魔法が…解けちゃうかもしれない」
妹友「……。」
妹「私、それだけは嫌なんだ」
妹「ずっとにいさんと一緒にいたい」
妹「ずっとにいさんの側にいたい」
妹「一日でも長く、一秒でも多く、にいさんの隣にいたい」
妹「にいさんのことが知りたい」
妹「にいさんにずっと笑っていてほしい」
妹「にいさんと思い出を作りたい」
妹「にいさんに私のことを考えてほしい」
妹「優しく妹って呼んでほしい」
妹「褒めてほしい」
妹「可愛いよって言ってほしい」
妹「しょうがないなーって、ちょっと照れながら私を撫でてほしい」
妹「にいさんとだったら何だってしたい」
妹「にいさんにだったら何だってしてほしい」
妹「だから私…消えたくないんだ」
妹友「……。」
妹「だから私、にいさんのことは好きにならない」
妹「一緒にいられるなら私、妹で良いから」
妹「このままで私、十分幸せだから」
妹「だから私は…だから…」
妹友「……。」
妹「……。」
妹友「…えっと…妹ってさ、バカ?」
妹「…え?」
妹友「ずっと一緒にいたい?何だってしてほしい?なにそれ、バカじゃないの?」
妹友「それが、好きってことじゃんか」
妹「…うー」
妹友「なにそれ、そこまで言っといて好きにならない?好きじゃない?」
妹友「呆れるよ、ほんとに」
妹友「誰よりも大好きって言ってる癖に」
妹「…うー」
妹友「あんたが今言うことはそんなことじゃないのー」
妹友「ほら、言ってみなよ、分かってるでしょ?」
妹友「簡単だよ、あっという間。それだけで、全部の気持ちが溢れてくるから」
妹「……。」
妹友「ん?」
妹「…き」
妹友「なに?」
妹「…好き」
妹「私、にいさんのこと…好き」
妹友「…うん、それが聞きたかった」
妹「…うー」
妹友「どう、気分は?」
妹「良くない」
妹友「そっか」
妹「でも…ちょっとだけ、良い気持ち」
妹友「…そっか」
妹「言っちゃった…」
妹友「大丈夫、私しか聞いてない」
妹「…うー」
妹友「よく頑張ったよ、妹」
妹「…でも、私はにいさんの妹だから」
妹友「うん」
妹「にいさんのこと…す、好きだから」
妹友「うん」
妹「だから、にいさんのこと好きにはならない」
妹友「うん」
妹「言ってること、おかしい?」
妹友「とっても」
妹「そっか…」
妹友「でも、それで良いと思うよ」
妹「…うん」
妹友「でも、そっかー…ずっとお兄ちゃんの妹なんだよね?」
妹「うん」
妹友「だったら、私がお兄ちゃんのこと好きになっても、構わない?」
妹「え、どういうこと?」
妹友「そのまんまだよ」
妹友「私、お兄ちゃんの恋人に立候補しようかなーって」
妹「え?…え?」
妹友「私もお兄ちゃんのこと好きだからねー」
妹友「妹がお兄ちゃんの妹のままで良いんだったら、私が恋人になろうかなーってね」
妹友「良いよねー、別に」
妹「だ、だめぇ…」
妹友「なんでー?」
妹「…なんでも」
妹友「妹のままで良いんでしょー?」
妹「でもだめなのぉ」
妹友「わがままー」
妹「うー…ぐすっ」
妹友「あはは、じゃあやめとくよー」
妹「え…ほんとにぃ?」
妹友「妹がお兄ちゃんに告白するならねー」
妹「む、無理だってばぁ!」
妹友「頑張れ妹ー」
妹「楽しむなバカぁ…」
妹友「さっきの妹の好きって言葉、先輩にも聞かせたかったなー」
妹「あー、うー…もう妹友嫌いー…」
妹友「あ、冗談だってばー!」
女「……。」
女「……。」
女「…どえらいことを聞いてしまった」
同時刻
男友「――でさ、そしたら俺はこう言ったわけよ」
男友「『お嬢さん、悪いが俺には心に決めたマドンナがいるのでね』ってな」
男友「そしたらまあ…男、聞いてる?」
男「…Zzz」
カセット『うん、うん、聞いてるよ』
男友「良かった、それでさ、そう言ってかっこよく立ち去ろうとした俺に向かって――」
男「…Zzz」
カセット『あはは、なにそれおもしろーい』
……………………
…………
……
男友「お、女子組」
男「おはよう」
女「おはよー!」
妹「お、おはよう」
妹友「温泉に行ってきたんですかー?」
男「そうそう、そっちは今から?」
女「そうだよ、チェックアウトはちょっと待っててね」
男友「まだ時間あるからゆっくり入ってきなよ」
男「妹、眠そうだな。大丈夫か?」
妹「…へ?あ、う、うん。大丈夫大丈夫」
男「…なんでそんな挙動不審なんだ」
妹「い、いやいや、なにもな…」
男「…ん?」
妹「……//」カアッ
男「……?」
妹友「妹とは夜ずっとお話ししてましたからねー」
男「あー、なるほど」
妹友「ねー、妹?」
妹「あ、うん、そうそう…」
妹友「先輩はすぐに寝ちゃいましたけど」
女「え?あ、あははー、ごめんごめん」
男「一番張り切ってたんじゃないのかよ…」
女「いやー、つい寝ちゃってねー、ぐっすりだったよ、うん、ぐっすり」
男友「情けないなー、俺らなんて一晩中語り合ってたというのに。なあ男」
男「え?」
男友「え?」
男「…あ、うん、そうだったな」
男友「だよなー!」
男友「じゃあ、温泉入って出掛ける準備出来たら俺らの部屋に来てくれ」
女「了解ー」
妹友「朝ごはんはどこで食べますかー?」
男友「近くに食堂付きの市場があるらしいから、そこで新鮮な魚でも食べよう」
女「お魚!」
妹友「楽しみだねー、妹」
妹「うん」
男「男友にしてはちゃんと考えてるな」
女「偉い偉い」
男友「…俺の期待値どんだけ低いんだよ」
男「じゃあ、また後で」
女「はいよー」
妹友「ほら妹、お兄ちゃんがまた後でだって」
妹「な、なんでそれを私に言うのさー」
妹友「ふふ、別にー」
女「いやー、満腹満腹」
男「…で、なんで朝飯食べたあとにまた海に来てるんだ」
妹友「このまま帰るのはもったいないじゃないですかー」バンッ
妹「そうそう」バンッ
男「二人とも着替えるの早いな」
女「私も、ババンッ!」
男「いや、あんたは早過ぎだろ」
男友「ま、折角だしもうひと遊びしてこうぜ」
男「帰りの時間は大丈夫か?」
男友「問題ない」
男「なら良いけど」
女「男君も着替えなよー」
男「いや、俺は良いよ」
男友「まあまあそう言わずに」バンッ
男「…いや、お前はいつ着替えたんだ」
妹友「突撃準備完了ですー、隊長」
女「よし、妹さん、うきわの装備は?」
妹「バッチリです隊長」
女「よし、発進ー」
妹友「おー」
妹「おー」
タッタッタッ
男友「男は?」
男「俺は荷物番」
男友「いらないってそんなん」
男「いや、誰か一人でも体力を残しとかないと」
男友「ん?」
男「…いや、すぐ分かるよ」
女「……。」
妹「……。」
妹友「……。」
男友「……。」
男「はい、抜け殻が四つ出来上がりと」
女「……。」
妹「……。」
妹友「……。」
男友「……。」
男「あ、うん、よくそんなになるまで遊んだよ…」
男「よし、帰るぞー」
女「…うん」
妹「あ、待ってー…」
男「ん?」
妹友「お土産…買いましょー」
男「別に良いけど」
男「いや、そんなグダグダになりながら言われても」
妹友「妹ー、おそろいのストラップ買おー」
妹「あ、うん」
女「パパとママにはこれでー、友達にはこれー」
男「元気になるの早いな」
女「男君、おそろいのストラップ買うー?」
男友「はいはい!俺が買う!」
女「最低」
男友「なにゆえっ!?」
男「…はは」
男友「男」
男「ん?」
男友「おそろいのストラップ買うか?」
男「死ねよ、二、三回」
女「妹友、あれ買おうよー」
妹友「ほうほう、先輩なかなかのセンスですねー」
男友「俺も俺もー!」
女「妹友、この先輩が何でも買ってくれるって」
妹友「え、本当ですかー?」
男友「え?」
女「はい、このかごにどんどん入れちゃえー」
妹友「がってんしょうちのすけー」
男友「え?え?」
男「男友もめげないな…」
妹「に、にいさん」
男「ん、どした?」
妹「……。」
妹「…一緒に、お土産見よう?」
男「なんだ、何か買いたい物でもあった?」
妹「そ、そういうわけじゃないけど」
男「…ん?」
妹「…おそろいで何か買いたいなー…なんて」
男「みんなしておそろいで買うのが流行ってるのか?」
妹「だ、だめかな?」
男「いや、良いけどさ」
妹「ほんとに?」
男「何故ここで嘘をつく」
妹「…やったぁ」
男「でも俺、どれが良いかとか分からないぞ?」
妹「大丈夫、私が選ぶから」
男「そっか。良いよ、自由に選んでくれ」
妹「にいさん」
男「ん、決まったか?」
妹「これなんて、どうかな?」
男「パズル型のキーホルダー?」
妹「これね、二つをくっつけると…」
男「あー、ひとつの絵になるのか」
妹「ね、ひとつひとつだと何の絵か分からないの」
妹「持ってる二人が一緒にいないと、この絵が完成しなくなっちゃうんだ」
男「なるほどな」
妹「ね、これで良い?」
男「良いけど、こんなんどこでも売ってるキーホルダーだと思うぞ?」
妹「いいの」
男「旅行のお土産だって分からないぞ?」
妹「私が旅行記念って書いとくから」
男「…まあ妹が言うなら、これにしようか」
男「ほら、買ってきたぞ」
妹「ありがと、にいさん」
男「俺はこっちを持ってれば良いんだな?」
妹「うん…ずっと持っててね」
男「分かった」
妹「私とにいさんの、思い出だから」
男「…おう」
妹「…えへへ、嬉しい」
男「ちなみにこの絵、なにかの花みたいだけどなんの花だ?」
妹「……。」
男「勿体ない、忘れる草?って書いてあるけど」
妹「勿忘草」
男「ワスレナ…グサ?」
妹「別名、「forget me not」。花言葉は…」
妹「私を、忘れないで」
男友「急げー、電車が出るぞ!」
女「なんで、こんなに、ギリギリなのさー!」
男「お前のせいだよお前の」
妹友「先輩お土産買うのにどれだけ悩んでるんですかー!」
女「しょうがないじゃない、みんなにお土産買うって言っちゃったんだもんー!」
妹「で、電車出ちゃいますよ」
男友「待った、その電車乗ります!乗りますって!」
男「…情けない」
妹「…恥ずかしい」
妹友「先輩ー!」
女「申し訳なーい!」
ガタン…ゴトン…
男友「…間に合ったー」
男「一度閉まりきったドアを開けてもらったけどな…」
女「もう…体力ない…」
妹友「左に同じくですー…」
妹「……。」
女「妹さんが疲れすぎて言葉が出てない…」
男友「…ま、まあ無事に間に合ったということで」
男「俺らにしては、ハプニングなく上手くいった旅行だったな」
女「男友の企画にしてはねー」
男友「……。」
女「あ、いや冗談だよ?みんな男友に感謝してるからね?」
男「ほんとにありがとな、男友」
男友「ははは、それほどでもあるかなー!」
男「…こいつに謙虚ささえあれば」
ガタン…ゴトン…
男友「でも、まだ油断は出来ないからな」
女「へ?」
男友「家に帰るまでが遠足ですってな」
妹友「駅を寝過ごしちゃうとか、気をつけなきゃですよー」
女「…私、電車の中で寝ちゃう予定なんだけど」
男友「俺も、海で体力使い切ったからな」
妹友「ねむねむですー」
男「…だから言っただろうが」
男友「なるほど…男が言ってたのはこういうことか…」
男「まあ、俺が起きてるからみんなは寝てていいよ」
妹友「え、申し訳ないですよー」
女「…Zzz」
男友「…女」
男「…ま、そういうわけだから」
ガタン…ゴトン…
女「…Zzz」
妹友「…Zzz」
男友「…Zzz」
男「はは、みんな満足そうな顔で寝やがって」
男「…さて、どうやって時間潰すかなー」
妹「…にいさん」
男「あれ、妹?お前も寝てて良いんだぞ?」
妹「いい、眠くない」
男「嘘つけ、すっごく眠そうな顔してるぞ」
妹「眠くないもん」
男「いやいや、無理すんなって」
妹「…にいさん、隣に座っても良い?」
男「…しょうがねえな、ほら」
妹「えへへ、ありがと」
妹「……。」
男「……。」
妹「……。」
男「…あー、妹?」
妹「…なに?にいさん」
男「この旅行楽しかったか?」
妹「うん、とっても」
男「そっか、良かった」
妹「海も花火も温泉も、夜の内緒話も全部全部楽しかったよ」
男「夜の内緒話が気になるな」
妹「な、内緒話だから内緒に決まってるでしょ!」
男「はは、それもそっか」
妹「……//」カアッ
男「…ん?」
妹「…私ね、この旅行のこと、絶対に忘れないよ」
男「俺もだよ」
妹「……。」
男「妹と買ったキーホルダーのこともな」
妹「……。」
男「忘れないよ、全部」
妹「……。」
男「全部、覚えてるから…当たり前だろ?」
妹「……。」
男「…妹?」
妹「…にいさん」
男「なんだ?」
妹「あと…五ヶ月、切っちゃったね」
男「……。」
妹「クリスマスの魔法が…解けるまで」
男「…そう、だな」
妹「このまま夏が終わって、秋になって…そして、秋が終わって冬になれば」
妹「また、クリスマスがやってくる」
男「…うん」
妹「そしたら、私は…私は…」
男「……。」
妹「……。」
妹「…あーあ、一年なんてあっという間だね」
妹「にいさんと初めて会ったのが、ほんのちょっと前みたいなのに」
妹「気付いたらもう半分以上過ぎてるなんて、ほんとに嘘みたい」
男「……。」
妹「だからきっと…残りの半分もあっという間なんだろうね」
男「……。」
妹「ねえ、にいさん」
男「なんだ?」
妹「手、繋いで良い?」
男「…ほら」
妹「…ありがと」
ギュ
男「……。」
妹「やっぱり冷たいね」
男「ごめんな」
妹「ううん、いつものにいさんの手で安心したの」
男「そっか」
妹「えへへ、にいさんの手だぁって」ギュ
男「…そっか」
妹「知ってる?手が冷たい人は、心が暖かいんだって」
男「ふーん」
妹「その話、本当だったよ」
妹「にいさんの心、とっても暖かいから」
男「はは、どうやって分かるんだよ」
妹「分かるよ、だって私、にいさんの妹だもん」
男「…そうだったな」
妹「私、にいさんの妹で良かった」
男「…俺も、お前のにいさんになれて良かったよ」
妹「にいさん、あと少しの間だけど、にいさんの妹でいさせてください」
男「……。」
妹「……。」
男「…もちろん、お前はずっと俺の妹だよ」
妹「えへへ、良かった」
妹「…ふわぁ」
男「やっぱお前、眠たいんじゃないか」
妹「あはは、ちょっと疲れちゃったみたい」
男「無理しないで寝ろよ…手、ずっと繋いどいてやるから」
妹「…うん」
男「俺さ、まだお前とやりたいことが沢山あるから」
妹「……。」
男「夏だって、秋だって、冬だって…俺、お前の側にいてやるから」
妹「……。」
男「だから、安心して寝てくれよ」
妹「…分かった」
男「…じゃあ、おやすみ、妹」
妹「おやすみ、にいさん」
男「……。」
妹「……。」
男「……。」
妹「…Zzz」
男「…妹」
妹友「なんで、次の春も一緒にいてやるって言わなかったんですか?」
男「…妹友さん、起きてたのか」
妹友「なんで、またサンタに妹を願ってやるって言わなかったんですか?」
男「…妹のこと、知ってるのか」
妹友「今はその話は良いです」
妹友「私の質問に、答えてくださいよ」
男「…そうだな」
男「言っても、妹は喜ばないと思ったから、かな」
妹友「……。」
妹友「どういう意味ですか?」
男「…俺が次の春も、その次の春も妹と一緒にいたいって思ってることなんて、言わなくたってこいつに伝わってるさ」
男「サンタに願ってやりたいって思ってることだってとっくに分かってるよ」
男「俺だって、妹のずっと一緒にいたいって言葉も、サンタに願ってほしいっていう言葉も全部聞こえてる」
男「だって俺たちは、兄妹だからな」
妹友「……。」
男「でも、妹はそれを分かった上で、あと少しで自分が消えちゃうって思ってるんだ」
男「だから、ずっとあんな顔をしてる」
男「なにかを言わないまま、諦めたように残りの時間を過ごそうとしてる」
男「そんなあいつになにを言っても、今の妹には何も届かないと思ってさ」
妹友「…妹が、何かを隠してるのは知ってます」
男「隠してるというか…」
妹友「はい?」
男「いや、なんでもない」
妹友「なんですか?気になります」
男「隠してるというか…言ってもしょうがないって思ってるんだろうな」
男「あとは、言わないことによってその現実から目を背けようとしてるのかも」
妹友「…お兄ちゃんは妹が何を言わないようにしてるのか分かってるんですか?」
男「……。」
私を、忘れないで
男「…たぶんね」
妹友「…そうですか」
男「…なにかは聞かないんだ」
妹友「それに気付くのは私の役目ですから」
妹友「私は、妹の友達だから」
男「そっか」
妹友「でも、一つ聞かせてください」
男「ん、なに?」
妹友「お兄ちゃんは、そんな妹を幸せに出来ますか?」
男「……。」
妹友「出来ますか?」
男「…するよ」
妹友「…そうですか」
男「自信はまだ、ないけれど」
妹友「良いです、お兄ちゃんがするって言ったんだから」
妹友「私は、それを信じます」
男「…ありがと」
妹友「…なにか私に出来ることは、ありますか?」
男「そうだね…」
男「妹と、たくさん思い出を作ってあげて」
妹友「そんなこと、言われなくても作りますよ」
妹友「いっぱい、いっぱい」
男「そっか」
妹友「…じゃあ、後は任せますから」
男「…おう」
妹友「…では、私はもう少し寝ますね」
妹友「あ、妹のもう片方の手は借ります」
男「どうぞ」
妹友「おやすみ、お兄ちゃん」
男「おやすみ、妹友さん」
妹友「あ、あと、私は呼び捨てで良いですよ」
男「呼び捨てはちょっと…じゃあ妹友ちゃんで」
妹友「やった、一歩前進です」
男「おやすみ、妹友ちゃん」
妹友「はい、おやすみなさい」
妹友「…Zzz」
男「……。」
男「…さて、どうやって時間を潰そうか」
男「……。」
妹「…ん」
男「……。」
妹「…にいさぁん…えへへ」ギュ
男「……。」
男「…そうだな、妹のことを考えよう」
男「寝顔でも見ながら、ゆっくりと」
男「今までのことと、これからのこと」
男「時間は、たっぷり、あるんだから」
私を、忘れないで
男「……。」
妹と夏の思い出 おわり
続き
妹「私?サンタからのプレゼントだけど」【後編】

