とあるファミレス
一方通行「……、……」
上条「……、……」
一方通行「……、オマエずるいンですよォ」
上条「えっだからさっきのマジかよ!?」
一方通行「大マジだボケ。情熱的な恋をしてェ、甘酸っぱい恋でも可」
元スレ
一方通行「……情熱的な恋をしてェ」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1271168472/
上条「えー、とりあえずこういうのは俺以外に訊くやついるだろ」
一方通行「オマエ俺にこォいう話できるやついると思ってンのか」
上条「いや全然」
一方通行「……、……」
上条(素直に即答しただけなのに)
一方通行「……数少ねェ相談相手はブチ殺しちまったしよォ、ナンパ上手な知り合いは現在冷蔵庫だしィ」
上条「お前ほんと友達いないんだな」
一方通行「いないンじゃねェ、いらねェンだァ!」
上条「で、一方通行は上条さんに何を頼みたいんでせうか」
一方通行「女寄越せ」
上条「いねえよ!」
一方通行「嘘付け。オマエフラグメイカーなンだろ? 一級建築士の資格持ってンだろ?」
上条「知らねえよ。そんなこと言ったら、お前だって打ち止めいるじゃん」
一方通行「あいつはガキだ。てェかそォいう対象になンねェだろ常識的に考えて」
上条「えっ」
一方通行「はァ?」
上条「……俺てっきり一方通行はロリコ……年下好きだと思ってたんだけどさ」
一方通行「年下どころかあのクソガキ、見た目は10歳頭脳は0歳だぞわかってンのかァ!」
上条「そういえば御坂妹も頭脳は0歳かあ」
一方通行「個人的に同年代の、マトモな女の知り合いが欲しい。ンで、なンかこォ……ときめいたりしてェ」
上条「俺もときめきてえ……」
ズビシッ
上条「いだっ」
一方通行「知ってンだぜ俺は。オマエが紳士だなンだァほざいて数々のフラグイベントをどォにか乗り越えてきやがった、ってことをなァ!」
上条「えええ知らねえ! なんだそれ知らねえ!」
一方通行「そもそもオマエの周りに女いすぎだろォが。ちょっとこっちに供給してくれませン?」
上条「一方通行だって一時期は黄泉川先生とか研究所のおねーさんとか打ち止めとかと四人暮らしだっただろ!」
一方通行「無駄な脂肪つきのババア、ただのニート、クソガキ。チッ、マイナーすぎる」
上条「マイナーどころかほぼすべてのラインナップそろえてないですかね」
一方通行「俺は同級生と甘酸っぱい、もしくは情熱的な恋がしてェンだよォ!」
上条「美人すぎる年上のオネエサマ、構いたくなる自堕落おねえさん、そしてロリ! これ以上何を望むっていうんだ!」
一方通行「だァかァらァ! どーきゅーせー! タメ! そォいうの!」
上条「だいたいお前最新刊ではついにヤンデレも獲得してただろ!」
一方通行「ケッ……ババアにガキふたり。つっまンねェ」
上条「高望みしすぎだと俺は思う。今からでも遅くないから家帰って寝ろよ、お前今日おかしいって」
一方通行「おかしくねェ。俺はいつだって真剣ですゥ」
上条(じゃあおかしいのは元からか、そうだよこいつ笑い方かきくけこだしな)
一方通行「おかしいで思い出したンだけどよォ。この後暇か三下ァ」
上条「へ? まあ暇だけど」
一方通行「バースデーパーリィやンぞ」
上条「唐突すぎやしませんかっ!?」
上条「ちょっと訊いていいか」
一方通行「どォぞォ」
上条「誰の、バースデーパーティ?」
一方通行「クソガキの、バースデーパーリィ」
上条「……打ち止め?」
一方通行「打ち止め」
上条「の?」
一方通行「お誕生日会ですよォ」
上条「すまんがまったく話の流れが読めない」
一方通行「これだから三下はァ……やれやれ」
上条(あれ? 今なんか見下された?)
一方通行「まァ恋がしてェってのは今日呼び出した本当の理由じゃねェ。したいけど」
上条「どっちだよ」
一方通行「世間では誕生日に祝うじゃねェか、盛大に」
上条「あー、まあそうだな」
一方通行「ほら、なンだっけ、イエス・キルストーカーとか。あいつ誕生日すげェよな。どンだけの人間に祝ってもらってンだよまったく」
上条「イエス・キリストな。ストーカー殺してどうすんだよ、あっちが悪いに決まってるけどさ」
一方通行「ンでェ。クソガキがなァ、誕生日ほしいンだと」
上条「そっか、打ち止め達に誕生日って概念ないんだっけ……」
一方通行「しかもォ、『ミサカが自分で考えるのは恥ずかしいからあなたに考えてほしいのってミサカはミサカはお願いしてみたり!』とか言っててさァ」
上条「で? 考えたのか」
一方通行「めンどくせェから『俺と初めて会った日が誕生日でイイだろ、はい終わり』って返したンですよォ」
上条「おお……かっこいいけどなんていうかめんどくさがりすぎじゃねえ?」
一方通行「我ながらけっこォイイ線いったと思ったンだよ。俺と初めて会った日が誕生日発言」
上条「うんかっけーと思ったけど二回目はちょっとないわ」
一方通行「そしたらさァ、あのガキ何て言ったと思う」
上条「打ち止めが? んー、……『やったあ! あなたと出会えた日が誕生日なんてミサカはミサカは嬉しいってはしゃいでみる!』とか?」
一方通行「ざーンねーンでしたー!」
上条「何だよそのしてやったり、みたいな顔!」
一方通行「正解は
『そんなのつまらないんだけどってミサカはミサカはひねりのないあなたに失望してみる』
でしたァ……」
上条「……、……」
一方通行「……、ンだよォ、笑いたきゃ笑えよォ!」
上条「……、いや、なんかごめん……」
一方通行「意味わかンなくねェ? 正直言ってあれ言われたときやりきれなさが俺の心も体もすっかり包ンじまったぞ」
上条「うん、まあ……同情する……」
一方通行「つうか他に返しよォがねェだろ。とっておきのストライクをホームランで打ち返されたときのさァ、ピッチャーの絶望が俺にはよォくわかった」
上条「うん、まあ……共感しちまうな……」
一方通行「そこでバースデーパーリィですよォ」
上条「そこがわかんねえ!」
一方通行「見返してやりてェンだよ。あのクソガキ、最近調子付きやがって……
俺が反応しねェだけで接続切るンだよなァ、反応しねェだけで一気に廃人コースまっしぐらなンだぜェ」
上条「廃人って具体的にどんなレベルなわけ?」
一方通行「あー、言葉わかンねェし自力で立てねェし生まれたての一方通行になる」
上条「子馬か小鹿にしてくれ。一瞬想像してどうリアクション取ればいいかわかんなくなったじゃねーか」
一方通行「基本的にはすっぽンぽン」
上条「なんでそこで想像の補助にまわるのお前!?」
一方通行「困ってる人がいたら助けなさいって、クソガキがほざいてやがった」
上条「しかも諭したの打ち止めかよ!」
一方通行「でェ。三下、いや、ヒーロー。オマエのフラグメイカー的才能を見込んで頼みがある」
上条「そこ見込まれても嫌味としか思えねえよ……」
一方通行「妹達とオリジナル、あと適当にメンバー集めてくンねェか」
上条「何の?」
一方通行「バースデーパーリィ」
上条「本気? ほんとのほんとに本気なんだな?」
一方通行「あァ? 俺が嘘でオマエに頼みごとなンかすっかよォ。ほら、頭下げてるだろォが」ペコー
上条(なんだろう頭下げてるっていうかつむじ見せられてる気しかしねえ)
一方通行「なンならここのファミレス代は俺が奢ってもイイけど」
上条「あ、もしもし御坂? 俺、上条だけど」
一方通行(ちょろい……!)
一方通行(誕生日会なンざ経験したことねェけど、まァ多分椅子取りゲームとかやっときゃイイだろ)
一方通行(で、まァよくわかンねェけどプレゼントも渡せばオーケェ!)
一方通行(あとあれだよなァ、折り紙で作るわっかとか……アレどォやって作るンだか知らねェけど)
一方通行(他に必要なもンってなンだ……? あ、ケーキ)
一方通行(ケーキかァ……クソガキ的に考えてホールケーキかなァやっぱ)
上条「うん、そう誕生日会。いや打ち止めには内緒っぽいんだけど、……お、来る? 助かるぜ。……妹達もつれてく? うわ、サンキュな! うん、それじゃ」
一方通行(……ケーキ屋……前にガキと行って店員に怯えられたっけなァ)
上条「おーい」
一方通行(もういっそ俺が作るって手もあンな……)
上条「おーい」
一方通行「ホールケーキ……材料なンだろォなァ……」
上条「え、お前作るの?」
一方通行「あン? 作っちゃ悪ィのかよ」
上条「いやー、そうじゃねえけど。作ったことないだろ?」
一方通行「まァねェけど、その気になりゃ出来ンだろ。俺人間捌けるし羊もイケるしィ」
上条「さらっとブラックジョーク織り交ぜないでください。洒落になんねえよ!」
一方通行「そォと決まればケーキ作りの練習でもすっかァ。ンじゃな、三下」
スタス、ピタ
一方通行「とりあえず、俺が支払っといてやンよ」
上条「え、おい、ちょっ……」
スタスタスタ
カードデ
アリアトーシター
上条「……さりげねえ……俺が女なら惚れかかってるぞ一方通行……」
とあるホテルの一室
一方通行「しまったァ……意気揚々と戻ってきたものの、ホテルに台所はねェ」
一方通行「たしか下にレストラン入ってたなァ……厨房借りるとしてェ」
一方通行『おらおらおらァ! イイから厨房明け渡しなァ!』
従業員『ひええええええええ』
一方通行『オイコラ誰かケーキの作り方詳しく』
従業員『ひええええええええ』
一方通行「……、駄目だ。うまくいく気がまったくしねェ」
一方通行「グループ……の連中は」
結標『あら、一方通行がケーキ作り? 似合わないわね』
土御門『天変地異の前触れだな』
海原『家庭的な一方通行(笑)』
一方通行「……、俺マジで知り合い少なくねェ……?」
一方通行「あーどォしよ畜生恋もしてェのにケーキ作りで悩みたくねェ」
一方通行「いや、まァ恋は置いとく。そのうち空から降ってくる」
一方通行「問題はケーキ、cakeだァ。心を込めても不味いもンはどォしよォもねェし……三下も頼りにできねェし」
ピンポーン
一方通行「? あァ、誰だ」
?「宅配便でーす、と……」
一方通行「(頼んでねェぞ、刺客かァ?)
あーはい、どォぞォ」
?「失礼しまーす、と……」
ガチャ
一方通行「……、……」
御坂妹「どうもこんにちはご機嫌いかがですか、とミサカは呆然と立ち尽くす一方通行に不敵な笑みで答えます」
一方通行「オマ、ちょ、は? え? なンでここがわかったァァアア!!!」
御坂妹「うちにはひとり、優秀なものがいまして、とミサカは告げます」
一方通行「いやいやいやおかしい、おかしいだろどォ考えても。俺ここ秘密基地、じゃなかった隠れ家なンですけどォ」
御坂妹「隠れ家のうち五箇所はすでにおさえていますがとミサカは案外ガードがゆるい一方通行を批判します」
一方通行「怖ェ……妹達怖ェよ……」
御坂妹「誕生日会をやるそうで、とミサカは意外な提案に驚きつつ参上したことを伝えます。キルストーカー(笑)」
一方通行「オマエ怖い! どっから見てたンだよ!」
御坂妹「失礼な、ミサカはお前なんて興味ねーし見てねーぞ自意識過剰じゃねえの、とミサカは呟きます。見ていたのは他のミサカです」
一方通行(プライバシーねェのか、俺)
御坂妹「上位個体が喜びそうなものリストを作成してみましたが、どうです、欲しくありませんかとミサカはホレホレと用紙をこれ見よがしにひらめかせます」
一方通行「あ? いらねェよンなもン」
御坂妹「!?」
一方通行「ガキが欲しいもンは自分で考える。オマエらの手助けはいらねェ」
御坂妹「……うわ、こいつむかつく、とミサカは露骨に金をせびれなくなって舌打ちをします」
一方通行「人を財布代わりにすンじゃねェ! 欲しいもンがあンならちゃンと言いやがれ!」
御坂妹「え、なにそれ奢ってくれんの? とミサカは新たなる可能性に目を輝かせつつ、身を乗り出します」
一方通行「今じゃねェぞ、今度だ今度。オマエは何号だよォ」
御坂妹「何度もお会いしていますが、ミサカは10032号ですと簡潔に答えます。じゃあもうこの部屋にいる必要ねーや、あばよ、とミサカは片手をあげ」
一方通行「おォ、帰……あ!」
ガシッ
御坂妹「ふぎゃ!」
一方通行「10032号、オマエ料理できっかァ? できねェとは言わせねェぞ」
御坂妹「それ答えイエスしかねーだろとミサカはこっそり反抗します」
御坂妹「ところでなぜ誕生日会なのですか、とミサカは病院に向かいながら訊ねます」テクテク
一方通行「そりゃオマエ、クソガキが俺と出会った日が誕生日ってェのをつまンねェって切り捨てたからですよォ」カツカツ
御坂妹「なんでそうなるんだろうまったくわからないさすがセロリ、とミサカは結論をまとめます」テクテク
一方通行「そォいやオマエらも誕生日ねェよなァ。どォすンだ」
御坂妹「いや、べつにいらないんで、とミサカは遠慮して片手を振ります。ぱたぱた」
一方通行「ま、オリジナルあたりに言やァ適当に考えンじゃねェの? 祝ってもらったほうが楽しいかもしれねェぞ」
御坂妹「……誕生日、ですか……上位個体は否定していたはずでは、とミサカは確認します」
一方通行「あァ、ひねりがねェとか言ってやがったなァ。めンどくせェことに」
御坂妹「一方通行、あなたに誕生日はありますか、とミサカは訊いてみます」
一方通行「そォいやねェかもなァ。ま、俺の誕生日なンざ誰も祝わねェし問題もねェ」
御坂妹「いっそのこと、上位個体と同じ日に誕生日会で祝ってしまえばいいんじゃないか、とミサカは提案します」
一方通行「はァア? ンなかったりィこと」
御坂妹「あなたが彼女の誕生日を(勝手に決めて)祝いたいと思っているように、彼女も祝いたいと思っているかもしれませんよ、とミサカは指摘します」
一方通行「……くっだらねェ。甘ェこと言うなよォ、俺ァただあのクソガキに一泡吹かせたいだけだぜェ」
御坂妹「そのわりに熱心にプランを組んでいるようですが、とミサカは足取りが少し軽やかな一方通行を笑います」
一方通行「アーうっせェうっせェ、足取りが軽やかなのは杖ついてっから音がコツコツいってて軽ゥく聞こえンだよ」
御坂妹「そうですね、上位個体の気持ちも考えられないなんて頭の中も空っぽでいい音出るんでしょうね、とミサカは呟きます」
一方通行「オイコラ」
御坂妹「うれしかったみたいですよ、とミサカは教えます」
一方通行「あ?」
御坂妹「あなたが、自分と出会った日を誕生日にすればいいと言ったことです。ひねりはないけれど、とてもうれしいと。
その日のMNWはBGMが結婚行進曲でしたし、その日のミサミサ動画はエコノミーになりませんでした、とミサカは感謝します」
一方通行(意味がわかンねェ)
御坂妹「祝ってあげたいけど、訊くに訊けないとも言っていました、とミサカは彼女の胸のうちを明かします」
一方通行「オイあっさり明かしてンなよ」
御坂妹「あの人はミサカに闇をみせてくれないから、迂闊に変なことは訊けないの、だそうです。幼女に気を回させるなんて最悪ですね、とミサカは見下します」
一方通行「あンのクッソガキ……」
御坂妹「ですから、ここはミサカが企画したってことにしといてやるからおとなしく祝われろ、とミサカは命令します」
一方通行(なンでこいつこンなに押し強いンですかァ?)
御坂妹「一方通行と打ち止めのバースデーパーリィです。とミサカは告げ、そろそろ病院が近いことをアピールします」
一方通行「俺と、ガキの誕生日会……アクセラレータ、ラストオーダー、バースデーパーリィ……」
御坂妹「あ、ちょっと離れて歩いてください、勘違いされたくないし、とミサカは先に歩きます」
一方通行「……アクセラオーダーバースデーパーリィ……?」
御坂妹「信号青だぞ、とミサカは自分の世界に入り込んだ一方通行を仕方なく引っ張ります」
御坂妹「誕生日会というのは大勢でやるものだそうですが、とミサカは学園都市に存在している妹達の参加の必要性を問います」
一方通行「ン……どォすっかなァ。オマエら数人いてもよォ、正直見分けつかねェし」
御坂妹「なるほど、識別能力がガタ落ちですね、とミサカは演算能力をこちらに補助してもらっている彼を哀れみます」
一方通行「哀れンでねェだろ!? ンだよそのすげェ嬉しそうな顔!」
御坂妹「これがデフォですとミサカは淡々と告げます」
一方通行「嘘付けェェェエエ! オマエら随分表情豊かになりましたねェ!?」
御坂妹「上位個体には負けますが、と常日頃彼女をからかったりかまったり心配したりと世話焼きな一方通行を思い出し、ミサカは胸が熱くなります」
一方通行「ネットワークやだァァアアア!!! 怖ェ! どこまで流されてンだよ俺の私生活はよォ!」
御坂妹「ご安心を、一部のミサカ以外はあなたの私生活に何の興味関心もありません、とミサカは安心させます」
一方通行「安心しねェしむかつくンだけどオマエ」
御坂妹「ところでお聞きしますが、とミサカは手ぶらの一方通行をちら見します」
一方通行「あン?」
御坂妹「料理、というのは材料なしでは作りようがありませんが、病院に材料はありませんよ、とミサカは指摘します」
一方通行「……おォ」
御坂妹「つーかそもそもなんで料理? まさか誕生日会の料理は全部俺が作るぜーとか言っちゃうの? とミサカは男の料理を披露しかけている一方通行にドン引きです」
一方通行「もっとオブラートに包ンで批判しろやァ……いいだろォがべつに料理したってよォ……」
御坂妹(おっと敵は思いのほか落ち込んでしまった、とミサカは思案に暮れます)
一方通行「だいたいオマエ、この悪人面でケーキ屋行ってみろよ。すげェビビられンぞ」
御坂妹「あいにくミサカはこのように可愛らしい少女なので、とミサカはその場でくるりと一回転してみます」
一方通行「ショートケーキくださいって言っただけで『え?』みてェな顔されンだぞ。そりゃ俺ァ食わねェけどあれは客に対する態度としてなってねェ」
御坂妹「おいシカトかこのセロリ、とミサカは若干青筋を額に浮かべつつ無表情に切り返します」
一方通行「あー、なンか思い出したら腹立ってきやがった。オイ、ちょっと行くぜェ」
御坂妹「は? どこに? とミサカは病院とは逆方向を歩き始めた一方通行に舌打ちをかましつつ、仕方がなく付き添います。だって障害者だもんな」
一方通行「うっせェ黙れ、だったらもっと労れ」
とあるケーキ屋
御坂妹「……、……」
一方通行「……、リベンジだァ!」
御坂妹「いや、だからなんでリベンジにミサカを付き合わせるんだよとミサカは青筋を増やしつつ訊ねます」
一方通行「俺なりに前回の敗因を考えてみたンだけどな」
御坂妹「勝手に考察するのはいいんだけど一緒に入りたくない、とミサカは露骨に顔をしかめます」
一方通行「あンときはクソガキと俺、ってェ異色の組み合わせが悪かったンだよきっと。年の差ありすぎンだろ? そォいうことだ」
御坂妹「なにがそォいうことだ、だよ全然そういうことじゃねえよとミサカは嘆きつつ……あ、このチーズケーキください」
一方通行「ちゃっかりしてンな本当に」
店員「かしこまりました。他にご希望はございますか?」チラッ
一方通行「……、……」ボー
店員「ええと……」
御坂妹「おい聞いてんじゃねーか店員が、とミサカは小声で一方通行に話しかけどつきます」
グイッ
一方通行「あァン!?」
店員「うっ」
一方通行「……、そこの、ザッハトルテひとつ」
店員「は、はい、ザッヒャ、……ザッハト、トルテですね! 以上で」
一方通行「(今噛んだなこいつ)……ン」
店員「1,250円になります」
一方通行「カード」
店員「はい」
御坂妹(これは店員じゃなくて一方通行が全面的に悪いな、とミサカは評価を下しま――ん? この店員)
店員「こっ、こちらカードで」
一方通行「どォも」
スッ
店員「ふぇ!?」
一方通行「あ、すみませンぶつかって」
店員「いえいえいえ全然おかまいなく! いやほんと全然おかまいなくアクセ、……お客様!」
一方通行(なンだ今の)
御坂妹「……、あの」
店員「----!」ギロ
御坂妹(……とりあえずお前なんで店員のふりしてんの? とミサカは目の前の14510号にネットワーク経由で質問します)
店員(14510号ってなんのこと? だれそれ? とミサカは10032号を見つめます)
御坂妹「反応してる時点でもう認めてるだろとミサカは思わず声に出します」
店員「しまった、とミサカは、じゃなかった、ええと、またのご来店をお待ちしておりますお客様!」
一方通行「オイ、知り合いかァ?」
店員「いいえ全然! まったく! ちっとも!」
御坂妹(べつにバレてもよくね? 何がだめなんだよとミサカは14510号を不思議に思います)
店員(たまに一方通行様はここの店にくるんだ! ケーキ頼む一方通行様をまだまだ見たい以上、学園都市に遠征してるときはここでバイトしてるなんて知られたくないんだよばか!
とミサカは内心叫びます)
一方通行(なンか見つめあってて怖ェンだけど、店員が妙に知ってるやつっぽいのは気のせいだよなァ……)
御坂妹「ケーキ、どこで食べるんですかとミサカはあてもなく歩く一方通行に問いかけます」
一方通行「……病院以外ねェだろ。ンで、ついでにケーキの材料買ってく」
御坂妹「本当に作る気なんですね、とミサカは驚き呆れます。何ですかその無駄なチャレンジ精神」
一方通行「うっせェ。一度作るって決めたらちょっと燃えてきたンですよォ」
御坂妹「案外ケーキ作りにハマッたりして、とミサカはエプロン装備の家庭的一方通行(笑)を上位個体のように想像します」
一方通行「やめてくンねェ!? ンなもンつけたことねェよ!」
御坂妹「エプロンはふりふりの新婚さんみたいなやつでいいですよね、とミサカはあの医者が持っていたことを思い出します」
一方通行「え、あいつ、持ってンのかァ……? まさか自分で着るンじゃ」
御坂妹「……こちらがまさかと言いたい気分です。これなんてボケ返し? とミサカは打ちのめされました」
一方通行「つっこみよォがねェだろ……」
【本気と書いて】一方通行主催の誕生日会について【マジと読む(笑)】
1 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
幹事やれってお前らが言うからホテル襲撃してきた
2 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka19090
ほう
3 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka13577
それって学園都市にいる俺ら全員強制?
4 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka20000
ホテルkwsk
5 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka14510
お前ばらしてないよな!?
ていうかうらやましいんだけど腕組んでケーキ選んでんじゃねーぞひんぬー!
6 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka14889
お前もな
7 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka16879
お誕生日会とかwwwwwwwwwwww
どこの幼稚園児ですかwwwwwwwwwwwwwww
8 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka18264
あの和気藹々ムードにセロリが加われるわけがねえwwwwwwwww
隅っこで輪に入れず沈黙がオチだろjk
あいつあれかっこいいと思ってんだろうな全然かっこよくないけど
9 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
ところで誰かケーキの作り方知ってるやつ教えれ
10 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka15551
ケwwwwwwwwwーwwwwwwwwwwwwキwwwwwwwwwwwwww
11 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka11098
作るwwwwwwwwwwww気wwwwwwwwwwwwwかwwwwwwwwwwwwwww
ねーよ
12 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka13874
でも器用だし案外うまくいくかもしれん
ちゃんと丁寧に生クリーム使ってほしいなー
13 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka20000
生クリームプレイですねわかります
セロリたん、今、会いに行きます・・・!!!1!!
14 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka18744
誰かー運営呼んできてー
15 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka14889
誕生日会って誰のなんだ?
16 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka19090
運営のらしいお
お姉様から連絡きたもん
17 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
俺的にはぜひ妹達総出で馬鹿にしたいんだが
エプロンつけそうだぞこのセロリ
18 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka13577
エプロンwwwwwwwwwwwwwwwwwww
マジキチすぎワロタwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
御坂妹「……ですよねー、とミサカも頷きます」
一方通行「誰に言ってンですかァオマエ」
一方通行「……オマエ、三下に助けられたやつだよなァ」
御坂妹「はいそうです、とミサカは簡潔に答えます」
一方通行「どォですかァ? 恋の調子は」
御坂妹「っ!?」
一方通行「あ? 違ェのか?」
御坂妹「い、いえ、合ってます、合ってますけど、とミサカは一方通行の口から飛び出したキーワードに目を丸くします」
一方通行「恋してェンだよ」
御坂妹「はぁああああ!?」
一方通行「え、なンですかァその反応」
御坂妹「コイシタイ? それ新しい日本語ですか? そうですよね? でなけりゃアクセラレータ語ですよね? loveじゃありませんよね? とミサカは繰り返し訊きます」
一方通行「いンや、loveで」
御坂妹「ノォォオオオオオオオ!!!!!」
御坂妹「お、お前、うちの妹一筋だったろ!? あんだけ独白のたびにプロポーズしてたろ!? とミサカは動揺し一方通行を揺さぶります」ガクガク
一方通行「だ、からッ、……っぐォ、打ち止めは、ガキ……っく、目ェ、まわ」
御坂妹「ミサカ達は下位個体ですが同時に彼女の姉でもあるんだぞ、こんな不埒な男だとは思わなかった! とミサカはなおも揺さぶります」ガクガク
一方通行「ちょ、ォ、待っ、て……っは、まわる、ぐるぐる、まわっ」
御坂妹「もうだめだ、もうお前には任せられない! 上位個体には金輪際近付くんじゃねえ! とミサカはマジギレで揺さぶり」ガクガク
一方通行「はな、し……聞け、ェ……」パタリ
御坂妹「あ、しまった。とミサカはくたりと動かなくなった一方通行の襟首から手を離します」
べしゃ
一方通行「……ってェ! オマエふざけンなよここは介抱しとけ!」
御坂妹「おや、以前お姉様に揺さぶられたときよりは進化していますねとミサカは案外タフになった一方通行に拍手を送ります」
御坂妹「で? いきなり恋したいとか頭おかしくなったんですよね、とミサカは確認を取ります」
一方通行「頭狂った前提で話進めてンじゃねェ」
御坂妹「あなたは最終信号にベタボレではありませんでしたか、とミサカはふたりの愛に満ちた日々を思い出します」
一方通行「ンなうさンくせェ日々は送ってねェよ。ってェか、元はと言やァ言い出したのもあのクソガキだぜェ?」
御坂妹「いや、あの幼女が自分から敵作るようなヘマはしないと思う、とミサカは否定しつつ首を傾げます」
一方通行「(敵?)よくわかンねェが、ガキがいつだったかテレビ見て『素敵な恋愛をしてみたいなってミサカはミサカはあなたに申し出てみたり』って言っててなァ」
御坂妹「それめちゃくちゃ誘われてますけど、とミサカは気づかない一方通行に呆れます」
一方通行「はァ? 何言ってンだオマエ……ンでよォ、適当にそこらへンで恋愛してこいって言ったンだよ」
御坂妹「それはねーわ、とミサカはさらに呆れます。それはねーよ」
一方通行「そしたらよォ、『あなたはミサカに恋愛のいろはも教えられないくらい未経験なのね』ってほざきやがりましたよォ、あのクソマセガキ」
御坂妹「そのやっすい挑発にまんまと乗っかっている一方通行がなんかもう子どもすぎてお姉さん困っちゃうなー、とミサカは呟きます」
一方通行「だいたいこの俺が恋愛だァなンだァしてるわけねェだろォが」
御坂妹「それはそうですね、とミサカは肯定します。だからセロリって言われるんです、とミサカは付け足します」
一方通行「……あァ、そォ。つうか俺ァ、」
御坂妹「もしや、『愛し方がわからねえんだよ!』とか言い出したりはしませんよね、とミサカは釘を刺します」
一方通行「言っちゃだめなンですかァ!?」
御坂妹「うわっ、まじかよ! まじで言うのかよ! とミサカはびっくりしつつ、予想が当たったことになんともいえない気持ちです」
一方通行「ンだよそれくれェ言ったっていいだろォが! そもそも愛ってなンだよ意味わかンねェよ目に見えねェじゃねェかよォ!」
御坂妹「……、ま、まともなこと言いやがるじゃねえか……とミサカは思わず納得しかけます」
一方通行「どォやって恋愛について教えろってンだよ!? ンなのは三下あたりか、冷蔵庫にでも訊くべきじゃねェのか!」
御坂妹「それで恋をしたい、という発言につながるわけですね、とミサカは思わぬ理由に完全に納得しました。いいでしょう、このミサカも微力ながらお手伝いしてやります」
御坂妹「ところで、具体的にどんな恋をしてみたいのですか、とミサカは一方通行に訊ねます」
一方通行「どンなァ? ……あー……どンなって言われてもよォ。あのガキをどうにかしてぎゃふンと言わせてェだけだしィ」
御坂妹「『おいお前ちょっとぎゃふんって言いやがれ』で済む用件ですね、とミサカは短絡さにめまいを覚えます」
一方通行「うっせェなァ、そォいうオマエはどンな恋愛してンだよ」
御坂妹「一言で言うなら難攻不落です。あの方は鈍いうえにとんでもないフラグメイカーですから、とミサカはため息を吐きます。しかも自分と同じ人間がライバルなんてついてねー」
一方通行「あー、あいつすげェもンな。一万人弱が嫁とか……一夫多妻制どころじゃねェぞ」
御坂妹「もっとも、勝つのはこのミサカですがとミサカは胸を張ります。御坂妹と呼ばれるのはミサカだけです!」
一方通行「あっそ」
御坂妹「ネックレスももらいましたし、とミサカは見せびらかします」
一方通行「興味ね……、あ」
御坂妹「あ?」
一方通行「ガキに渡すもン、どォすっかな」
御坂妹「ちなみに今の上位個体のミサッターの呟きですが、ヤンヤン食べたい、だそうです。買わなくていいのですか、とミサカは訊きます」
一方通行「ミサッタ……? よくわかンねェが、あのガキ一昨日もそォ言ってヤンヤン買ってやったばっかだぜェ? あれァ少なく見積もっても一週間分あったと思う」
スーパー
御坂妹「あれあれー、そっちはお菓子コーナーですよ、とミサカは一方通行に教えてあげます」
一方通行「……期間限定のじゃがりこ買うンですゥ」
御坂妹「へー、じゃあミサカがここのヤンヤン買い占めてもいいですか、とミサカは棚のヤンヤンを一気にがぱっと」
一方通行「あーわかった! わかった何か今奢ってやっからガキの分数箱残しとけ」
御坂妹「いえ、ミサカはこのお菓子を食べる気など毛頭ありませんよ、とミサカはヤンヤン大人買いを一方通行にすすめます。ミサカはこっちのフランがいいです」
一方通行「だったらいちいち俺を試すよォに言ってンじゃねェ! あとフラン一箱でいいのかァ!」
御坂妹「えっ、数種類買っていいんですか!? とミサカは太っ腹すぎる一方通行に感激します。体は細くても太っ腹ー!」
一方通行「やっぱ一箱だけなオマエ」
御坂妹「サーセンせめて棚から取っちゃったフラン二箱買ってくださいとミサカは瞬時に謝ります」
黒子「あらまぁ、あらあらまぁまぁ、お姉様の妹さんと、白い殿方ですの」
初春「白井さーん? インスタントコーヒー飲んでみるって言ったの白井さんなんですけどどれにするんですかー」
黒子「どれでもかまいませんの、それよりわたくしちょっと失礼!」シュンッ
初春「ええー……いっか、一番安いのにしちゃおう」
一方通行「このカゴ持つのすげェ恥ずかしいぞオイ」
御坂妹「いっけなーいケーキの材料買うの忘れてたあーとミサカは棒読みで訴えカゴを一方通行に預けて材料を探しに出かけます」
一方通行「ちょ、オマエ待っ……行きやがった」
一方通行「にしても、ケーキかァ……まァ、店で買ったほうがうめェのはわかってンだけどよォ。
自分で作りゃァカロリー計算もできっから、クソガキも余計なカロリー摂取しなくて済むし、ダイエットだなンだとほざくこともねェだろ」
黒子「んまぁ、随分健気ですの!」
一方通行「のわァ!?」
黒子「ごきげんよう第一位さん。お姉様からお聞きしましたの、お誕生日会をやるそうですのね」
一方通行(情報伝達はえーな)
黒子「つきましてはこの黒子も参加させていただきますの」
一方通行「どォぞォ? 多いほうがいいだろ、ガキも」
黒子「あら、ご迷惑ではございませんの?」
一方通行「べっつにィ。俺とふたりっきりでバースデーパーリィやるほうがあいつも可哀想じゃねェかよ」
黒子「……うふふふふ。そうですわね、ふたりっきりでやるならバースデーパリィと銘打つ必要もございませんものね」
一方通行「はァア? なに言ってンですかァこのツインテールジャッジメントはァ」
黒子「ところで、お誕生日会はいつ執り行いますの?」
一方通行(やべェ、決めてなかった)
黒子「今から買い込んでいるのでしたら、明日あたり……とか?」
一方通行「(それでいいか)アーそォそォ明日。トゥモロー」
黒子「それで、どちらに向かえばよろしいんですの? あと、持ち物その他はありますか?」
一方通行「知らねェ。適当に考えてくりゃいいだろォが。そもそもバースデパーリィ自体、俺はわかンねェしな」
黒子「と、おっしゃいますと……前代未聞のはらはらどきどきお誕生日会、ポロリもあるよ☆ということですのね」
一方通行「いや全然ンなことにはなンねェけど」
黒子「……、……チッ」
一方通行「オリジナルはともかく、クソガキを性的な目で見たら殺す」
黒子「いやですわー、あんなに小さいお姉様にそっくりな妹さんを性的な目で見つめて撫で回し嘗め回すだなんてしてませんの」
一方通行「いや誰もそこまで言ってねェけど」
黒子「……、……ハッ。あなたも同じ穴のムジナでしょうに」
一方通行「ちっげェェエエ! オマエらなンでそォ間違った認識してンだよ!」
黒子「ですが、あの凶暴と謳われていた第一位がここまで丸くなったのは小さいお姉様のおかげなんですわよね」
一方通行「知りませンー。大体俺は喧嘩は買うけど売らねェよ。……オマエが今ここで売るってンなら買いますけどォ?」
黒子「あらまぁ、わたくしがあなたに勝てるわけありませんのに。それに、明日のお誕生日会を潰したくはありませんのよ」
一方通行「ふン、賢明な判断だなァ」
黒子「これでもレベル4ですの。駆け引きは得意ですわ」
一方通行「! ンじゃァ、その駆け引き上手なオマエに訊くが、恋愛の極意ってなァなンだ?」
黒子「れ、んあいの……極意、ですの……!」ゴクリ
御坂妹「え、なに? 誕生日会って明日だったの? とミサカは驚きを隠せません。今からケーキの練習とかマジ無謀すぎるだろjk……」
美琴「あ。アンタなにしてんの? ケーキでも作るの?」
御坂妹「げ、お姉様、とミサカは反応します」
美琴「げって何よげって。そうそう、一応メールしといたけど読んだ? 一方通行が打ち止めの誕生日会ひらくんだってさ」
御坂妹(読んだどころかその一方通行と買い物してるんです、とは言えない。今いろいろ面倒になるともうやってらんねえ)
黒子「いま、れんあいと、おっしゃいましたの?」
一方通行「あァ。クソガキに教えてやンねェとな」
黒子「やっぱり同じ穴のムジナどころかわたくしよりかなり大きい穴に住んでいるムジナですの!」
一方通行「ンだとォ? 誰もガキ相手にどォこォするたァ言ってねェだろォが」
黒子「いいえ、恋愛が行き着く先――それは優しさも愛おしさもすべてひっくるめた欲望、つまり抱きたい抱かれたい触りたい触られたい舐めたい舐められたい、ですのよ!」
一方通行「……うっそォ」
黒子「本当ですわ。これこそが恋愛の真実。
愛とは何か?
これは人類の長い間の疑問ですわね、けれどそんな疑問など欲望――性欲の前では無意味ですの!」
一方通行「お、おォ」
黒子「第一位の殿方さん、あなたにも性欲はございますわよね」
一方通行「まァ、一般人に比べりゃ少ねェけど」
黒子「そ、れ、で、す、のぉ!」
一方通行「!?」ビクゥ
黒子「愛とはつまり欲望の果て! あなたが愛について知りたいと思うのならまずは性欲のスペシャリストにならなければなりませんの!」
一方通行「ハ、ハイ……」
黒子「いいお返事ですの。性欲について詳しくなりたいとあなたがそこまでおっしゃるなら、わたくし秘蔵のとっておき、保健の教科書デラックスをお貸ししましょう!」
一方通行「あ、あァ……! なンかよくわかンねェけどありがとよォ!」
黒子「いいええ、これくらいどうってことありませんのよ」
御坂妹(あいつら何の話してんだよおおおおお!!!! とミサカはシャウトをします。冷や汗がとまんねえよバカ!)
御坂妹「……、……」ダラダラダラダラ
美琴「ちょろっとー、私そっちのお菓子のコーナーに用事あるのよね」
御坂妹「い、いまはちょっとまずいっていうかその、お、お姉様! ミサカと一緒に今から買い物行きませんかとミサカは冷や汗を流しつつ誘います」
美琴「んー、ごめん! 私この後用事あるんだ、ってことで通らせて……」
ズズイ
御坂妹「ミサカはお姉様に誓って言い切りますがこの先に素晴らしいものなどありません行く価値もありません変態しかいませんとミサカは」
美琴「あやしいっ! こうなりゃ全力で通るわよ!」
一方通行「俺さァ、学校の授業なンてまともに受けてねェから保健とかも全然受けたことなくてよォ」
黒子「まあ、第一位なりのお悩みですのね……よろしければ過去数年分の保健体育の教科書およびノートを差し上げますわ」
一方通行「本気か、オマエ……俺なンかにあげちまっていいのかァ? オマエが愛を知ることができなくなンぞ」
黒子「わたくしをなめないでくださいまし。すでに愛のすべては心にしまってありますの!」
一方通行「!! す、すげェ、オマエ……イイ変態だなァ!」
黒子「わたくしにとっては褒め言葉と同義ですの! そうと決まれば早速寮に戻って取ってまいりますわ」
一方通行「おォ、助かるぜェ! これでクソガキに恋の何たるかを説くことができる……!」
黒子「それだは一旦失礼いたしま、あ、あああああああッ!」
一方通行「あン? どォしましたァイイ変た……あ、オリジナルじゃねェか」
美琴「……アンタら、さっきから何の話してるわけ? 保健体育? 愛のすべて? 恋の何たるかぁ?」
黒子「おっ、お姉様、これには深いわけが」
美琴「言い訳は無用ぉぉおおお!」
ビリビバチバチ
一方通行「……あいつ、俺に愛について教えてくれただけじゃねェ?」
御坂妹「内容が問題でしたね、とミサカは答えつつホットケーキミックスをカゴに入れます。今日からケーキは無理ですから、ホットケーキで妥協してください」
さりげなくスーパーから出ました
御坂妹「とりあえず、上位個体はケーキがなくても喜びそうですし、とミサカは言い……あ! ちょっと!」
一方通行「あ? なンだよ」
御坂妹「そういえばケーキ! お店に忘れてきました、とミサカは真っ青になりつつ指摘します」
一方通行「……あァ、そォいや買ったっけか」
御坂妹「どどどどうしようミサカのチーズケーキがぁ! とミサカは地面に手と膝をつきます。ジーザス!」
一方通行「いちいちうっせェな、今から取りにもどりゃイイじゃねェか」
御坂妹「それもそうだ、とミサカは気を取り直し、ケーキ屋に戻ることにします」
一方通行「あの店員、なンか見たことあったよォな……」
?「あくせられっ、じゃなかった、お客様ぁああああっ!!!」
ズドドドドドッ
?「はぁ、はぁ、……よかった、これっ、ケ、ケーキ、で、す……」
一方通行「……、えーっとォ……」
御坂妹「あ、どうも店員さんですよね、ありがとうございますとミサカは慌てて笑顔でケーキを受け取ります」
御坂妹(お前バイトしてたんじゃねえの!? 何追っかけてきてんの!? とミサカは叱咤します)
店員(だ、だってお前がケーキ置いてくからどうしようかな持ってこうかなとか思っちゃったんだもん! ばか! とミサカも言い返します)
一方通行「アー、すンませン。ありがとォございます」
店員「いっ、いいえ! いやほんと全然!」
一方通行「……けっこう走ってきたンじゃないですかァ?」
店員「え? あ、はい、それなりに走行距離はありました、とミ」
御坂妹「うおおっほん! げほっげほっ! 一方通行、ミサカは喉が渇きました」
店員(あっぶねバレるとこだった! 10032号ありがと!)
御坂妹(いいってことよ。それより今さりげなくフラグ立ててやったから頑張って回収しろよ、とミサカは励まします)
一方通行「はァ? オマエどンだけわがままなンですかァ? ……まァ、イイか。店員さン」
店員「はひっ!?」
一方通行「わざわざ持ってきてもらったのに手ぶらで返すのも気ィ引けるし、自販機でよけりゃなンか奢らせてください」
店員(フラグktkrrrrrrrrr!!!!! gj! 10032号gj!!!!!!)
御坂妹(わかったから落ち着いて、ありがとうございますって答えてやれって。
一方通行が返答待ちでちょっとそわそわしてるから、とミサカはなだめます)
一方通行「オマエは何が飲みてェンだァ?」
御坂妹「無難に水をくださいとミサカは要求します。水は最高のダイエットなのです」
一方通行「ハイハイ、っと」
ピッ ガラガシャン
一方通行「ンで、店員さンは?」
店員「ミッ、ミサ……じゃない、わた、しはえっとその水がいいんですけどべつにダイエットしてるわけじゃないので、あの、その」
一方通行「……? えっと、水でいいンですよねェ」
ピッ ガラガシャン
一方通行「ン。どォぞ」
店員「あ、りがとう、ございます……一生の宝物にします……」
一方通行「えっ」
御坂妹「いやあ、店員さんnice jokeですねとミサカは豪快に笑いますあっはっは」
店員「そ、そうですこれジョークですまさかほんとに宝物にしようとか思ってません!」
一方通行「はァ……(どっかでこのノリ経験したよォな)」
店員「そ、それではこのままサボると店長に叱られるので! とミ、えっと、さようならお客様またのご来店を心より! 心よりお慕い申し上げております!」
一方通行「ハイ?」
店員「じゃなかった心よりお待ちいたしております! えっと、その、さようならぁぁぁあああっ!!!」
ピューン
一方通行「……あれでちゃンと接客できてンのかァ、あの人」
御坂妹「きっとああなるのは一方通行の前だけでしょうから大丈夫ですとミサカは不安を払拭します。それにしても大胆だなさりげなく」
一方通行「そンなに俺ァ怖ェのか……」
御坂妹「それとは違う理由ですが、ここで教えなくてもよさそうですね、とミサカは結論を出します」
一方通行「……チッ、いいから行くぞ」
御坂妹「そういえばホットケーキの練習をしなければいけないのでは、とミサカは足をホテルに向けている一方通行に訊ねます」
一方通行「ンなもン練習しねェでも作れる、よって病院に行く理由がねェ。けど、オマエはケーキ食いてェンだろ」
御坂妹「そりゃここにある以上食べたいですけど、とミサカは一方通行の思惑が理解できずに首を傾げます」
一方通行「だァから、隠れ家のひとつがこっから数分のとこにあンですよォ。そこでケーキだけ食ったらオマエ帰れ」
とあるホテル
一方通行「……、……」
御坂妹「……、……」
一方通行「……、走ってたもンなァ」
御坂妹「……、そりゃあれだけ走ってたらケーキも崩れるわ、とミサカは嘆息します」
一方通行「……、正直食いたくねェ」
御坂妹「……、ザッハトルテとチーズケーキが奇跡の合体を果たしているのは少々目に余ります、とミサカは目を逸らします」
一方通行「……ザッハルチーズケーキ」
御坂妹「全然うまくないのでこのテンション低いときにボケないでください、とミサカはつっこんであげます」
一方通行「ちェー」
御坂妹「そんな口尖らせたって気味悪いだけなんですがとミサカは呟きます」
一方通行「……、ンでェ。このケーキであったもの達はどォすンですかァ」
御坂妹「――そういえば、とミサカはツンツン頭の少年の家庭事情について思い出してみます」
一方通行「三下ァ? ……あ、そォいやァやけに食い意地張ったシスターいたっけなァ」
御坂妹「ですよねいましたよねこれは行くしかないですねとミサカは立ち上がり一方通行の腕をむんずと掴みます」
ムンズ
一方通行「うわァ!? は? 何だ何だよ何なンですかァ!?」
御坂妹「地球のためにもこのザッハルチーズケーキは捨てるわけにいきませんし、ていうかほら、上条当麻の家に行きたいとかそういう願望はないんですよ、とミサカはあらかじめ言っておきます」
一方通行「オマエ下心ありすぎだろォ……これで三下の野郎もなンで気づかねェンだかな」
御坂妹「人間誰しも傍観者の立場に立てばわかるのに、当事者は気づかないものなのです。さあ行きましょう、とミサカは一方通行を引きずります」
一方通行「待て待て待てェ! 杖! せめて杖をつかせろォ!」
上条家
インデックス「むむっ、なんだか幸運の兆しを感じ取ったんだよ!」
上条「はいはいおめでとー上条さんに限ってそんなことはありませんー」
移動中
一方通行「っくしょォ……なンで俺が三下ン家に行かなきゃなンねェンだ」
御坂妹「おやまあいやなんですか。友達いないのに、とミサカはぼそりと言葉を吐きます」
一方通行「なンなのオマエ。ちょくちょく癇に障ンだけど」
御坂妹「お誕生日会に欠かせないものといえばクラッカーですね、とミサカは話を変えます」
一方通行「変えすぎだろォが!」
御坂妹「あとあれ、鼻眼鏡とか必要ですよ、一方通行が装着するんですけどとミサカは提案します」
一方通行「宴会じゃねェよ!」
御坂妹「王様ゲーム用にくじも作っておかなきゃ、ああ大変だーとミサカは叫びます」
一方通行「王様ゲーム、だとォ……!?」
御坂妹「え、やったことないんですか、とミサカは自分もべつにやったことないけどとりあえずバカにしてみます」
一方通行「……ねェわけでも……いやあれは黒歴史……」
御坂妹「よくわからんがその黒歴史kwsk、とミサカは詳細を要求します」
一方通行「……ネットワークに流すなよォ? 流してあのクソガキにバラしたらオマエをバラす」
御坂妹(そこまでトラウマなことをこのミサカに教えるとは、……マゾかこいつ、とミサカはすでに約束を反故にする意思を固めます)
一方通行「そもそもあれは、海原のクソ野郎がコンビニで割り箸を3膳もらってきたことから始まった……」
某日 キャンピングカー内
海原『焼き肉弁がうまいですね』
一方通行『においキツい。食いたくなる。死ね』
結標『……あら? なんで割り箸3膳ももらってきたの?』
海原『割り箸がなくて困っている御坂さんを助けようと思って多目にもらってくる習慣がついているもので』
一方通行『……、……』
結標『……、……』
土御門『……、あえてツッコミをくれてやるが、第三位なら割り箸がなくて困るという状況になったら買うんじゃないか』
海原『まあそうなんですけどね。さすが御坂さんだ』
一方通行(いてェ)
結標(いたいわ)
土御門(いたいにゃー)
海原『そこで王様ゲームですけど』
結標『そこでに繋がる理由を教えてほしいのだけれど』
一方通行『てェかこの面子で王様ゲームなンざクソつまンねェよ』
土御門『脱がしてもつまらないしな』
海原『で、ここになぜかサインペンもあるんですよ』チャキ
一方通行『オマエ準備万端すぎンだろ。引くわ、普段からだけどなァ』
結標『あ、残りの2膳使うのね……』
土御門『こんなにまったく萌えない王様ゲームははじめてだな……』
海原『はい、エツァリ特製☆なんちゃって魔術王様ゲーム割り箸くじの完成です』
一方通行『――土御門ォ』カチリ
土御門『仕事に支障が出ない程度なら殴れ』
結標『とりあえず没収ね』ヒュン
海原『えーやだやだやろうよお』
一方通行『うっぜェェエエエ!!! ンだァこいつうざすぎンですけどォ!』
海原『ほらほらうざいんでしょう、うざい僕に一泡吹かせたいあなた。そんなあなたにおすすめなのがこちら、王様ゲーム!』
結標『……頭、ついにおかしくなったのかしら』
土御門『元からだろう。でも、グループで王様ゲームというのも悪くはないな……良くもないが』
海原『ね?(笑)』
一方通行『……、……せんせェ、ボクおなか痛いンで帰ってイイですかァ』
結標『あらだめよ一方通行くん。先生も帰りたいのに』
土御門(結標けっこうノリノリじゃね?)
海原『いいじゃないですか、減るもんじゃないし』
一方通行『オマエ今確実に割り箸無駄にしただろォが。どォすンですかァ? それ王様ゲームの後に再利用するってンなら参加してもいいけどォ』
土御門『エコセラレータ……!』
結標『そんなに環境に優しい子じゃないでしょ、一方通行くん』
海原『返してください結標さん。僕は今猛烈に王様になりたいんですよ』
一方通行『そォはさせるか! 結標、渡すなよォ』
結標『あなたが今後の一人称をボクにするなら渡さないけど』
一方通行『……、……』
土御門(そうか、一方通行は若干カバーできる範囲なのか)
海原『さあさあどうします一方通行さん。ボクになるか、王様ゲームに参加するか』
一方通行『どっちもお断りだァ!』
結標『残念ね、交渉不成立。はい、海原』
海原『よしきたこれで勝つる……じゃあ王様ゲームということで』
一方通行『せンせェ! ボク頭痛いンで帰りますゥ!』
結標『ぼっしゅー』ヒュン
海原『ああっ!』
土御門(あの設定気に入ったのかにゃー)
一方通行『てェか仕事ねェなら帰ンぞマジで』
土御門『まあ待て、じきに連絡が入――』
ドゥルルルルル
結標『……、電話ね』
海原『なんてバッドタイミング!』
土御門『もしもし? ……ああ、……なんだと? ああ、わかった。了解だ』
一方通行『なンて言ってた』
土御門『王様ゲームの時間だ』
海原『ktkr』
結標『つまり、仕事がキャンセルになったのよね?』
一方通行『せンせェ、ボク実はビョーキ持ちなンで早退していいですかァ』
海原『……へえ、逃げるんですか? 第一位ともあろうあなたが』
一方通行『あァ?』
海原『そんな人だと思わなかったなー、そっかあ、逃げちゃうんですねー』
一方通行『……、……ンな安い挑発にゃ乗らねェぞ』
海原『そういえばあなたが大切にしている御坂さんそっくりの少女、警備員と一緒に住んでますよね』
一方通行『……だからどォした』
海原『今度手土産持ってお邪魔しようかなあ、と』
一方通行『よォォオオしやンぞ! 王様ゲームやンぞ!』
結標(弁慶の泣き所よねえ)
土御門(守るものがあるってつらいぜよ)
一方通行「……かくして俺は王様ゲームをすることになったわけだ」
御坂妹「つまり上位個体を人質に取られてしまったので不承不承参加したんですね、とミサカは一方通行の弱点ににんまりします」
一方通行「にンまりすンな」
御坂妹「で、続きはないんですか、とミサカはwktkしながら訊きます」
一方通行「あー、……続きは」
御坂妹「webで! ってなんでやねーん、とミサカはツッコミます」
一方通行「正直言って王様ゲームとか無理もォしたくねェ死ンでもやだ」
御坂妹「……つまんないー、とミサカは露骨に不満顔になります」
一方通行「知るか。後はオマエが適当に脳内補完しとけ」
御坂妹「いやべつにお前のことをわざわざ脳内補完する必要はどこにもねーけどな、とミサカは手を振ります」
そしてふと思い出しましたが、明日が誕生日会なら早急に飾りを準備しなければなりませんね、とミサカは発言します」
一方通行「あァ、それは俺も少し考えたンだけどよォ。わっかとか」
御坂妹「……ワンモアプリーズ」
一方通行「わっかとか」
御坂妹「……一方通行がわっか(笑)」
一方通行「ンだよ俺がわっかって発言しちゃいけねェってのかァァア!」
御坂妹「あれですよ、普段可愛いとかそういう単語とは無縁の人間がいきなりプリティとかキュートとか言い出すと気持ち悪くて笑っちゃう的な、とミサカは告げます」
一方通行「オマエが根本的に俺をバカにしてンのはよォくわかった」
スタスタピタ
一方通行「……折り紙、でいいンだよなァ?」
御坂妹「わっかですか? とミサカは再確認します」
一方通行「おォ。わっか、ねェとガキもテンション上がンねェだろォが」
御坂妹(あなたが祝ってあげるだけでテンションは半端なく上がると思いますが、という言葉をミサカは飲み込みます)
一方通行「オマエは三下ンとこ行くンだろ。俺ァそのまま折り紙買ったら戻る」
御坂妹「一方通行ひとりで大量のわっかが作れるわけがありません、とミサカは目の前の男の無知っぷりに呆れます」
一方通行「あン? できンだろ、それくれェ……」
御坂妹「あれけっこうめんどくさいみたいですけど、とミサカは忠告します。折り紙切って丸めて貼ってつなげて、いやほんとめんどい」
一方通行「……なンとかなる、ってェかなンとかする。オマエらの手ェいちいち借りたかねェンですよォ」
御坂妹「どうやら勘違いをしているようですね、とミサカは一方通行を諭します。誕生日会とは個人で主催して完成、成功するものではありませんとミサカははっきり言い捨てます」
一方通行「へーェ?」
御坂妹「ていうかミサカは一方通行のために手伝おうとしているわけではなく、姉として妹である上位個体を喜ばせたいから幹事を担当しているんです、とミサカは内部事情をチラ見させてみます」
一方通行(幹事……?)
御坂妹「したがって、ミサカはあなたをサポートする義務があります。ですから、わっかを作るのもミサカがお手伝いしなければなりません、とミサカは言い出します」
一方通行「……もしかしてオマエさァ、案外バースデーパーリィの準備に燃えてませンかァ?」
御坂妹「そんなことはないようなこともないです、とミサカは答えます」
一方通行「ふゥン。じゃ、三下ン家でケーキ食わせ終わってオマエも適当にあいつに満足したら俺ンとこ来い」
御坂妹「」
MNWネットワークスレ一覧
1:最近上条派とセロリ派の論争激しくね?(893)
2:【本気と書いて】一方通行主催の誕生日会について【マジと読む(笑)】(722)
3:上条当麻スレ 187そげぶ目(108)
4:一方通行「あいつに満足したら俺ンとこ来い」(88)
5:初めてのキスって何味だった?未経験者は嫌いな野菜でも書いてけ(314)
・
・
・
801:セロリたんの汗なめなめしたい(1)
御坂妹「はっ……しまった意識が飛んでた、とミサカは頭をふりふりします。ではここで別れましょうか、アディオス」
一方通行「……アディオス」
御坂妹「(笑)」
一方通行「ンだよちくしょォォオオオ!!!」
雑貨屋
一方通行「折り紙、折り紙……あァ後クラッカーとか、あの頭にかぶるトンガリコーンみてェなやつとかもいるか……」
ドンッ
?「あ、ご、ごめんね、大丈夫だった? って」
一方通行「……なァにやってンですかァ、ショタコン」
結標「ショタコンじゃないわ、ちょっと守備範囲が低いだけよ」
一方通行「こンなガキでもねェとこねェよォな折り紙だァクレヨンだァのコーナーでうろうろしてる女は変態ですゥ」
結標「うるさいわね、そっちこそ何やってるのよ。言っておくけどこの児童用具コーナーに存在している時点であなたも立派な変態よ」
一方通行「俺ァただ折り紙探しに来ただけだっつのォ」
結標「折り紙……? ま、まさか、『おにーさんは鶴も簡単に折れるんですよー。そこの可愛いお嬢さん、おにーさんが手取り足取り指取り教えてあげるからちょっとおいで』とか折り紙をダシにして誘い込もうって魂胆……!?」
一方通行「それを考えたってェことは、オマエが一度挑戦したって受け止めてかまわねェな?」
結標「やってない」
一方通行「少なくとも一度シミュレーションしただろォ」
結標「したけどまだ実行に移してなかったのよ。先を越されたわ」
一方通行「いや、俺折り紙で鶴なンざ折らねェしィ。わっかつくるだけだしィ」
結標「わっか? って、あの歓迎会とかでよく飾る?」
一方通行「あァ」
結標「ちょっと参加者教えてくれない?」
一方通行「ショタはいませン」
結標「残念ね。仕方ないか」
一方通行「仕方ないついでにちょっと折り紙探してくンねェ?」
結標「私にメリットがないのだけれど」
一方通行「……、ボクひとりだと探せないンですゥ」
結標「今店員に訊いてくるわ」
一方通行(ショタってェか年下だよなあいつの守備範囲)
数分後
一方通行(困ったときは店員に迷わず訊くべきだなァ)
結標「じゃ、私はこれで。ショタ見つけたら教えてくれる?」
一方通行「いやオマエそれおかしいだろ。その気になりゃ幼稚園とかにいっぱいいますよォ」
結標「群れている子より一匹狼が好きなのよ。じゃあね」
移動中
一方通行「クラッカー、三角帽子、あと……なンだァ?」
ガタガタゴトトトトッガタガタタッ
一方通行「……、……」
ガタゴットット ウィーン
一方通行(……、えー、ねェよそれは……)
垣根「よお第一位。相変わらずムカつく顔してんな」
一方通行「とりあえずさァ、オマエ神経すげェな尊敬する冷蔵庫背負ってくるたァさすが第二位。いやほンとすげェ」
垣根「よ、よせよ照れるじゃねえか」
一方通行(だめだこいつ)
垣根「風の噂でお前がナンパしたがってるって聞いたんだけど」ガッタンゴットン
一方通行「オマエに囁きかけた風は信用しねェほうがいいなァ」
垣根「俺の出番だよな」ウィーンガギガゴ
一方通行「うン全然出番じゃねェ。だからお願い帰ってください冷蔵庫と並びたくないンで」
垣根「これさあずっげえ重いの。お前杖ついてるけどこれすっげえ重いんだぞわかってんのか第一位ぃぃいい!」ギィイイン
一方通行「知るかよォォオオ! メルヘン(笑)な翼でも出しとけよ!」
垣根「おまっ、この状態で羽根とか気持ち悪いだろうが!」キシャ
一方通行「今のままでも十分気持ち悪ィから安心しろォ」
垣根「ところでお前なんで折り紙持ってる訳? 折り紙で女は釣れねえよ」ギッタンバッタン
一方通行「歩く冷蔵庫でも釣れねェけどな」
垣根「黙れよてめえこの野郎冷えっひえのブラックコーヒー投げつけんぞ」ガウィーン
一方通行「ありがたく受け取って飲み干してやっからもォそろそろ消えやがれェェエ!」
垣根「まあいいから俺のテクでも聞けよ。せっかくのお出かけだし」
一方通行(どっかで撒こォかな……)
垣根「これも風の噂なんだけどな、お前最近第三位に似てる女とよく出歩いてるらしいじゃねえか」
一方通行「あン? それァクローン共だなァ」
垣根「んな余裕ぶっこいてっと背後から冷やすぜ」
一方通行「洒落になンねェなオマエ……冷蔵庫かっわいそォ」
垣根「お前が原因だろ!? 冷蔵庫これ恥ずかしいってわかってるかお前」
一方通行「わかってるわかってる。できれば20メートル離れて会話してェ」
垣根「最悪だなホント! くらえ未元物質ブリザードォ!」
一方通行「さっむ! ってただ冷凍庫の部分オープンしただけじゃねェかどこも未元物質じゃねェぞ!?」
垣根「寒いだろ? 俺はこの寒さと常に一緒なんだよわかれこの辛さ! 寒さ!」
一方通行「よかったじゃねェか、これでオマエは人間の心の冷たさよりも無機質な冷たさを知ることが出来ただろォが」
垣根「うまいこと言ってんじゃねえよ! 俺は人間の心の温かさだって知ってる!」
一方通行「ンじゃその温かさに免じて俺から30メートル離れろ。オマエと話したくねェ」
垣根「はああ? こんな体にしといてそれはねえだろ、相手しろ第一位」
一方通行「めンどい」
垣根「うっせえ責任取れ! 責任!」
一方通行「俺シャイだからよォ、オマエがかっこよすぎて直視できねェンだわ。ごめン離れて」
垣根「そ、そういうことならしょうがねえな――」
一方通行(マジうっぜェ……よォやく解放され、)
垣根「ってそうはいくか! くらえ未元物質凍らせたみかん!」
ビシッ
パン
ビシッ
垣根「……反射、だと!?」
一方通行「だってオマエこれただの冷凍みかンじゃねェか……自分で言ったしィ」
垣根「……しまった」
垣根「俺としたことが……これ未元物質でもなんでもねえじゃん」
一方通行「気づくのおせェだろ。ナチュラルに冷蔵庫から出しといてオマエ……」
垣根「正直冷凍みかんうまいってことしか最近考えてなかったんでな」
一方通行「今さらかっこつけてンなよ冷蔵庫だかンな外見」
垣根「心配するな、自覚はある」キリッ
一方通行「自覚あンならもォ離れてくださーい。いい加減うっとォしくてクラッカー買いに行けねェンだけどォ」
垣根「クラッカー? なにお前パーティ道具まで武器にしちゃう訳? お茶目狙ってんの? だっせ」
一方通行「だからオマエにだきゃァ言われたくねェよォォオ! だっせェのは全面的にそっちィ! 俺はまだ障害者ってェだけ!」
垣根「逆の発想しようぜ一方通行。前衛的じゃね、冷蔵庫背負ってるとか。あれ? 垣根帝督かっこよくね?」
一方通行「素直にオマエは自分のかっこ悪さを認めて大人しく冷凍されろボケ」
垣根「時に一方通行、マジでその折り紙何に使うんだよ」
一方通行「オマエに関係ねェだろ」
垣根「鶴なら俺すげえ得意だぜ。1ミリレベルの作れるし!」
一方通行「だからどォしたってンだよォ! ンなもン作って何になるンですかァ!?」
垣根「自慢になる」キリッ
一方通行「あァそォですね自慢になりますねェわァすごいやー」
垣根「あとさあ、前にスクールで新歓あってな。一時期、飾りのわっか作るのめちゃくちゃハマっちまった。垣根帝督、またの名をわっかメイカーみたいな」
一方通行「!!」
垣根「あれ単調な作業だけどけっこう面白いぜ? まあ第一位様は作ったこともな、」
一方通行「……垣根くン、ちょっとそこのファミレスでお茶でもしよォか」
ファミレス
垣根「え、お前マジ作れねえの? あんな簡単なわっかを?」
一方通行「むしろ俺は第二位のくせに自分でわっかメイカー名乗ったオマエに引いた」
垣根「あれすげえ簡単なんだよ。折り紙切るじゃん、のりで貼るじゃん、つなげる、おしまい」
一方通行「貼ったあとどォやってつなげンだよ」
垣根「だから、まずひとつわっか作るだろ? その後は一つ目のわっかに通すように作るんだよ。鎖みてえな感じ」
一方通行「……あー、わかった。なンかわかった」
垣根「んで? お前わっか作んの?」
一方通行「あァ。折り紙とりあえず500枚ほど買ってきた」
垣根「多いだろ! どんだけ長いわっか作る気だよお前!」
一方通行「作れるところまで。そォだ、オマエ暇なンだよなァ……?」
垣根「とっても嫌な予感がする、と俺のシックスセンスが告げているわけだが」
一方通行「わっか作ンの手伝えよ」
垣根「はあ? 俺がなんでお前のために作らなきゃならない訳?」
一方通行「せっかくのお出かけなンだろォ? 人助けでもしとけよ」
垣根「お前人じゃねえもん。化け物じゃねえか」
一方通行「冷蔵庫に言われたかねェ。その腕は飾りか、あァ?」
垣根「少なくともわっか作るためにつけてもらった腕じゃねえよ!」
一方通行「作ンねェならとっとと消えなァ。なンならここで稼動停止させてもかまわねェけど」
垣根「活動停止って言えよ! せめて人間扱いしてくんねえ!?」
一方通行「大体よォ、オマエわっかメイカーなンですよねェ? わっかを作ることにおいては他の追随を許さねェンだろォ!?」
垣根「く……っ、さすが一方通行だな……俺のわっかメイカーとしての誇りを突いてくるとは……」
一方通行(だめだこいつ頭おかしい)
垣根「……わかった。そこまで言われて引き下がるほど、俺は落ちぶれちゃいねえ」
一方通行「落ちぶれる以前にオマエもォ人間として間違ってっけどなァ」
垣根「言っておくが、俺のわっかメイカーとしての腕前は超一流だぜ? 心理定規が俺に新歓の飾りつけ全部頼んじまうレベルだからな」
一方通行「それ押し付けられてるだけじゃねェか」
垣根「でもまあ他でもないお前がこの俺垣根帝督に頭下げてんだもんな。ここは腕の見せ所ってやつ?」
一方通行「頭なンざ下げてねェけどまァいいや」
垣根「そうと決まればはさみとのり買いに行かねえとな」
一方通行「……もォめンどくせェしさァ、困ったときは店員に頼めばいいンですよォ。
ってことで、すンませーン」
店員「はい?」
一方通行「はさみとのりとコーヒーブラックで」
垣根「あ、じゃあ俺もはさみとのりとカフェモカ」
店員(自然にはさみとのりまで注文されたしこの人なんで冷蔵庫背負ってるんだろう……)
店員「お待たせいたしました。コーヒーブラックとカフェモカ、はさみとのりになります」
垣根「ありがとうございます」
一方通行「どォもォ」
店員「それではごゆっくり」
垣根「……一方通行、俺には不満がひとつある」
一方通行「……奇遇だなァ、俺もだ」
垣根「こののり――海苔だぞ」
一方通行「まァ、ここファミレスだしなァ……」
垣根「海苔が嫌いだとは言わねえ。うまいと思う、思うけどな! 海苔でわっかは作れねえ!」
一方通行「とりあえずもっかい店員に頼むしかねェな……もっしゃもっしゃ」
垣根「食ってる!? しかもちょっと楽しそうなんだけどお前!」
一方通行「これ味付け海苔じゃねェか……うめェ……もっしゃもしゃもしゃ」
垣根「畜生……さすが第一位、この俺が海苔を食わざるを得ない状況に追い込まれるとは……もっしゃもっしゃ」
一方通行「もっしゃませーン」
店員(なんだろう今の呼びかけ)
垣根「おい聞こえてないっぽいぞ」
一方通行「ア? ンだよ……すンまもっしゃもしゃ」
垣根「声足りねえんじゃね? お前もやしだもんな」
一方通行「だから黙れよ冷蔵庫。あーもォ、すンませン!」
店員「は? あ、はい」
一方通行「のりください」
店員「え?」
一方通行「のりください」
垣根「……海のほうじゃなくて、接着剤のほうです」
店員「はあ……かしこまりました、少々お待ちください」
垣根「今だから言うが、ここの呼び出しボタン押せばよかったよな」
一方通行「もっしゃもっしゃ」
垣根「返事しろよ!」
店員「お持ちしました、こちらスティックタイプののりと液状がございますが」
一方通行「スティックこっちもしゃ」
垣根「え、俺もスティック派なんだけど」
一方通行「こいつ液状のり愛してるンで、スティックのりは俺に寄越してもらえますかァ」
垣根「おい何言ってんのお前俺がいつ液状のり愛してるとか言った訳もっしゃ」
店員「えっと、ではどうぞ」
一方通行「どーもォっしゃ」
垣根「……液状渡された……あの店員俺と一方通行の力関係を完全に看破してやがったもしゃ……」
一方通行「うっせェンですよォ……ン?」
垣根「どうしたスティック」
一方通行「……このスティックのり、かぴかぴに乾燥してて使いもンにならねェ」
垣根「だっせぇぇえええええ!!!! 調子乗ってスティック選ぶからだバァァアアアアカぁって待て待て待て何してるお前今何してる!?」
一方通行「目の前に磨ぎやすそォな冷蔵庫があったンでェ、ちょっと側面使ってのりの上部を削ってる」ゴリゴリベタベタ
垣根「おいやめろお願い冷蔵庫の使い方違う!」
一方通行「おォすげェ、冷蔵庫のおかげでスティックのりが復活したァ」
垣根「……側面がべたつく……なにこれ……」
一方通行「なンかかわいそォだし、ナプキンでも貼ってやンよ」
ペタ
垣根「ぎゃあああああ!!!! てめっ、のりでべたついてる部分のナプキン貼ったらくっつくに決まってんだろ!? 何してんだよ!」
一方通行「吸い寄せられたンですゥ。さてはこのナプキン、磁石でも練りこまれてたなァ」
垣根「んなわけねーだろ常識的に考えて!」
一方通行「あれあれェ? ていとくンの未元物質ってェ、たしか常識とか通用しないンじゃなかったァ?」
垣根「これ冷蔵庫だからな! 未元物質じゃないんだよ!」
ギャーギャー
麦野「向こうで第一位と第二位が和やかに談笑してるんだけどさあ」
絹旗「え、あれ超白いほうは第一位ですけど、超冷蔵庫は第二位なんですか?」
滝壺「……第二位で間違いないと思う」
フレンダ「てかあれ和やかに見えないわけよ」
麦野「はーまづらあ、ちょっと偵察してきてくんない?」
浜面「俺かよ!?」
絹旗「当たり前でしょう。超下っ端の浜面ができることってそれくらいしかありませんよ?」
フレンダ「結局、ここで従っといたほうがいいよ」
滝壺「大丈夫。はまづらが行っても向こうは気にしない」
浜面「滝壺、それどういう意味ですか」
一方通行「そォだった、オマエの相手してる場合じゃねェンだよ。わっか作らねェと」
垣根「……なんか理不尽じゃねえ? お前」
一方通行「いいから手ェ動かせよォ。これ一時間で全部わっかに変えろ」
垣根「500枚あってしかもこれ切るんだぞ!? いくらわっかメイカーでも」
一方通行「ふゥン……わっかメイカーってそンなもンかァ……へェ……」
垣根「……くっそおおおおお!!! 見てろよ、俺の華麗なわっかメイキング!」
垣根「だらあああああああ!!!」
ジャキジャキジャキ
ペタペタ
一方通行「……おォ、なンかオマエ手馴れてンなァ。折り紙切るのとかすげェ等間隔じゃねェか」
垣根「俺が今まで何回わっかを作ってきたと思ってやがる。これくらい目をつむったってできるぜ」
一方通行「ンじゃ、やって」
垣根「……え?」
一方通行「目ェつむれよ。で、作れンだろォ?」
垣根「……、本気?」
一方通行「え、やれねェのォ?」
垣根「いや、まあやれるって言ったけどあれは言葉のあやっていうの? なんていうか」
一方通行「あァ、だめだわオマエ。わっかメイカー名乗る資格ねェって。無理無理」
垣根「……そこまで言うならやってやろうじゃねえかあああああああああああ!!!」
浜面(なんであんないい年した連中が真剣に飾り作ってんだ……? シュールにも程があんだろ)
一方通行(うわァ、マジで目ェつむってらァ)
垣根「心の目で見るんだ帝督心の目だお前ならできるはずだぜ帝督」
一方通行(あ、味海苔余ってンな……もらっとこォ)
垣根「見切ったり! いける!!」
一方通行「もっしゃもしゃ」
垣根「見てろよ一方通行――これがわっかメイカー垣根帝督の本領発揮だぜ!」
ジャキジャキジャキペタジャキペタペタ
一方通行「もっしゃもしゃもしゃもしゃ……うめェな、これどこの味海苔だァ? あとで買ってくっか」
垣根「秘技、わっか同時に5個作成! 俺のわっかに常識は通用しねえ!」
浜面「わっか作ってたぞ」
麦野「はあ?」
浜面「片方はすげえ真剣に目を閉じたままわっか作ってた。もう片方は海苔食ってた」
絹旗「……超わけわっかんないです」
滝壺「きぬはた、75点」
フレンダ「え、高すぎない?」
麦野「仕方ないなあ、ちょっと私行ってくるわ」
フレンダ「味海苔もらってきてほしいわけなんだけど」
滝壺「……ほしいかも」
絹旗「向こうは第一位と第二位です、超気をつけてくださいね!」
浜面「何でお前俺のときはそんな労いの言葉かけなかったくせに!」
一方通行「うめェ、んもっしゃもしゃ」
垣根「はぁ、はぁ……これで10枚くらいは消化できたはず――って何お前俺の海苔食ってんだよ!」
一方通行「うめェ」
垣根「さっき食ったから知ってる! ていうかお前俺が一心不乱で作ってたのにお前!」
一方通行「あァハイハイありがとォ。いやァさすがわっかメイカー」
麦野「……ほんとに作ってた」
一方通行「あン? 誰だァオマエ」
垣根「あ、第四位じゃねえか。すげえなその腕」
一方通行「冷蔵庫には負けるンじゃねェかなァ?」
麦野「うん、冷蔵庫には言われたくないわね。ていうかアンタら何してんの? 第一位と第二位が揃いも揃って」
垣根「わっか作ってんの」
一方通行「そォですゥ」
麦野「……、なんで?」
垣根「え? ここに折り紙があるからに決まってんだろ」
一方通行「山があるから登る、みてェな」
麦野「こんなやつらが第一位と第二位だなんて……」
一方通行「バカですかァ? オマエこれ見て俺達がただわっか作りに勤しンでるとでもォ?」
麦野「?」
垣根「?」
一方通行「手先を活発に動かすことで脳の活性化を図ってンですよォ。演算能力も上がるンだぜェ?」
麦野「!!」
垣根(えっマジで?)
麦野「……さすが第一位……超えられない壁って言うけど、まず発想が違うのかあ」
垣根「あ、ああそうだろ。俺達すげえだろ」
一方通行「ってェことで、第四位だっけかァ? オマエも脳を活性化させてェなら参加させてやってもいいですけどォ?」
麦野「……、……いいの?」
垣根「えっお前大丈夫?」
麦野「やらせてくれるなら、やりたいんだけど」
一方通行「あァ、かまわねェよ。同じレベル5同士、更なる高みを目指そォじゃねェか」
麦野「ありがとう、ちょっと私向こう行って報告してくる!」
一方通行「向こォ? なンならオマエの仲間も参加させてやっけどォ……」
麦野「いいの!?」
垣根「だめだ、学園都市終わってる」ジャキジャキ
一方通行「……思ったより多いじゃねェか」
垣根「つうかさあ、アイテム全員いる訳? 暇人だなお前ら」
絹旗「超冷蔵庫には言われたくないです。暇冷蔵庫ですか?」
麦野「まあまあ落ち着きなさいって。ここでチャンスを逃すわけにはいかないのよ」
滝壺「……チャンス、かなあ?」
フレンダ「まあ強くなれるならどうでもいいわけよ」
一方通行「そこの金髪のガキ、オマエなんか上半身と下半身ズレてねェ?」
浜面「気のせい気のせいだからほんと気にしないでくれ」
垣根「じゃ、早速俺が見本見せるから、よく見とけよ」
店員「あそこのテーブルの客、いつ出るんでしょうか」
店員「わかんない……なんか増えたし……」
麦野「せっかく移動してきたんだし、こっちのテーブルくっつけちゃおっか」
浜面「いいのか? 一応ここ公共の場だぞ」
一方通行「なァに言ってンだァ! 俺達はお客様ですよォ? つまり」
滝壺「かみさま」
フレンダ「息ぴったり……!」
垣根「はいくっつけてくっつけてー」
ガタガタ
ピタッ
絹旗「なんか団体様みたいで超変な気分です。大体超信用できませんよ」
一方通行「はン。お前ら三下と違って最先端の能力開発を受け続けてきたこの俺が言ってンだぜェ」
麦野「そうそう、信用しといて損はないでしょ」
垣根(体力無駄にするだけだと思うんだがな)
浜面「この人数でわっか作るのはきつくないか? はさみものりも足りないし」
麦野「のりなら大丈夫、私が原子崩しで端っこちょっと溶かす」
垣根「原子崩しすげえな、俺の未元物質も負けてねえけど」
一方通行「じゃあさくっと役割決めンぞ。こォいうのは流れ作業が手っ取り早いかンなァ」
フレンダ「はいはーい、私は折り紙切る係!」
滝壺「はまづらと一緒がいいなあ」
絹旗「……まあ、超なんでもいいです」
一方通行「じゃあオマエのり係なァ。そこのチンピラとジャージは厨房からのりとはさみ借りてこいよ」
垣根「俺は? ねえ俺は?」
一方通行「折り紙切る係しかねェだろ」
麦野「あ、間違って失敗したらごめんねえ?」
浜面「なんで俺のほう見て言うんだお前……」
店員「……あそこテーブル合体させたね」
店員「うん……しかもなんか流れ作業でわっか作り始めたよね」
一方通行「……、……」
麦野「あーだめだ、浜面ちょっと折り紙持ってて」
浜面「だからなんで俺!?」
滝壺「はまづらファイト、応援してる」
絹旗「けっこう奥が深くて超楽しいです」ペタペタ
垣根「だろ? なんか手が動くんだよな」ジャキジャキ
フレンダ「結局じゃきじゃき楽しいーーー!!!」ジャキジャキジャキ
一方通行「……、俺やることねェンだけどさァ……まァいっかァ……だりィしコーヒーおかわりしよっかなァ……すンませーン」
店員「あ、呼び出しきたよ」
店員「手持ち無沙汰って感じじゃない? あの白い人。ていうか呼び出しボタン押せよって思う」
店員「そういえばここ来るたびに毎回コーヒーブラックだよね」
30分後
絹旗「さて、残りは超50枚です」
麦野「なんとなく能力開発できたような、いややっぱりそんなことないような」
フレンダ「私は集中力増したよ麦野!」
浜面「原子崩し怖え……折り紙持つ係すげえ怖え……」
滝壺「はまづらなら出来る。ユーキャンドゥーイット」
垣根「まあ、わっかメイカーの俺がいるし戦力として不足は――そういや一方通行がさっきから見てねえな」キョロキョロ
滝壺「……あそこ」
垣根「え?」チラ
離れたテーブル
一方通行「やっぱりブラックだよなァ」プハー
垣根「ふ、ふっざけんなよ……元はと言えばお前の仕事じゃねえのか一方通行ああああああああああ!!!!!」
垣根「なんだかんだで500枚終わったけどな!」
一方通行「オツカレー」
麦野「なんていうか、能力開発って感じしないのよね」
一方通行「ううンそンなことない開発されまくりだぜェオマエら」
絹旗「超楽しかったです! 能力開発はともかく」
滝壺「はまづら……がんばってた……」
浜面「ありがとう滝壺、でも頑張らせないでほしかった」
フレンダ「結局このわっかどうする訳?」
一方通行「俺が回収しますよォ。ってェことで、じゃァな」スタスタスタ
垣根「おいこら待ちやがれ納得いか」
アイテム「「「「「またね(な)ー」」」」」
垣根「いやお前らどんだけ純真なんだよ!?」
麦野「これいじょうここでじかんをさくとはなしがさきにすすまないにゃーん」
垣根「そうは言っても……待て一方通行ァ! 会計はどうするんだ!」
浜面(そっちかよ)
一方通行「あー、このわっか、けっこォ重い……こっからホテルまでってだりィなァ」
垣根「だから待てって言ってんだろ第一位!」ガタガタゴトトトト
一方通行「あー、こンなときに限って結標と会わねェし」
垣根「話聞けええええええ!!!」ガタタタタタ
一方通行「あー、しゃァねェか。なンか幻聴聞こえてきたしィ、ひとまず近くのホテルで部屋取るかァ」
垣根「ア、ク、セ、ラ、レータッ!!!」ゴトンゴットンガタタタタン
一方通行「……あいつらにも、恋愛について訊いときゃよかったかもなァ……」
垣根「わざとだよなお前それわざと無視してんだよなこのもやし!!!」ガタガタンギッタンゴトン
一方通行「……そォだァ……」ニヤ
クルリ
垣根「お、やっと振り向きやがったなこのかっこつけ男! 俺ら全員分の金払いやがってよ……俺だってお前並みに金は持って、」
一方通行「かーきねくゥン、ちょォーっと頼みごとあンだけどさァ」
垣根(なにこの嫌な予感)
上空
垣根「俺はお前のパシリでもなきゃアシでもねええええええ!!!!」
一方通行「すげェ。今わかったぜェ、オマエの両アームは物体を運ぶためにあンだろ? クレーンゲームみてェなさァ」
垣根「んなわけあっかあああああ!!! 今の俺キレてねえけどこれ奇跡だぞ! わかってんのかお前!」
一方通行「快適すぎて感心するなァ。オマエいっそコウノトリにでもなっちまえよォ」
垣根「ただでさえ空飛ぶ冷蔵庫になってんだぞ!? ていうか俺はなんでお前なんかを引っ張って空飛んでんだろうな!」
一方通行「俺がファミレスでオマエのカフェモカ奢った瞬間からすべては決定していたンですゥ」
垣根「ちっくしょおおおおお!!! 俺なんでお前に負けたんだろう!」
一方通行「メルヘンな翼がいけねェと思う」
垣根「黒い翼に言われたくねええええええ!!!!!」
地上
神裂「……目の錯覚でしょうか、冷蔵庫と人間が空を飛んでいます」
ステイル「それが目の錯覚じゃなければ何だっていうんだい?」
ホテル前
一方通行「ありがとよォ。またお宅使わしてもらうわ」
垣根「俺はタクシーじゃねえんだよ! もういい、もうお前とは関わらねえ」
一方通行「先に話しかけてきたのはオマエだからな覚えとけ冷蔵庫」
垣根「一方的にお前に友情を感じてた俺が間違ってた! 最悪すぎる、さすが悪党だよな!」
一方通行「友情ォ? なにそれおいしいのォ?」
とある一室
一方通行「……、……」
御坂妹「おや、随分遅いお帰りでしたね、とミサカはわっかを担いでいる一方通行に声をかけます」
一方通行「……、ナニしてンの?」
御坂妹「チョコレート作りですが、とミサカは現状把握のできていない一方通行に呆れます。これどう見ても溶けたチョコじゃね?」
一方通行「うン、いやオマエがどこで何しよォが勝手ですけどォ……人が借りてる部屋に器材持ち込ンでンのはどォよ」
御坂妹「べつにバレンタインの早期準備ではありません、とミサカは疑いの眼差しを退けます」
御坂妹「ホットケーキは作れるって言いましたよね、とミサカは再度確認します」
一方通行「おォ……クソガキが作れ作れうっせェし、慣れた」
御坂妹「誕生日に食べるケーキにはお誕生日おめでとうプレートが乗っている場合が多いのです、とミサカは尻にしかれっぱなしの一方通行に常識を叩き込みます」
一方通行「お誕生日おめでとうプレート、だァ?」
御坂妹「手っ取り早く言うと、『ハッピーバースデー打ち止めちゃん』と板チョコっぽい台にチョコで文字を書くんですよ、とミサカは教えます」
一方通行「……いらなくねェ?」
御坂妹「形式美、という単語を知っていますか? とミサカは訊ねます」
一方通行「あァ、そォ……」
御坂妹「ですが、ミサカはどうしても手先がふるえてハッピーバースデーが書けないので、一方通行が書いてくださいとミサカはお願いしてみます。じゃん!」
一方通行「……、なァンですかァ? その白いふりっふりのエプロンはァ」
御坂妹「匿名希望さんからのプレゼントです。これを着てチョコレート作ってくださいね、とミサカは念を押します」
一方通行「押すな。誰も着ねェよ」
御坂妹「ああ、カメラの用意ですか? ご安心を、ミサカはしっかりネットワークに繋いでます、とミサカは一方通行の憂いを取り払います」
一方通行「俺の今現在の憂いはオマエだァ!」
御坂妹「でも料理するためにはエプロンが必要ですよ、とミサカは指摘します。それもまた形式美」
一方通行「形式美って言やァなンでも納得すると思ってンですかァ!?」
御坂妹「じゃあこのエプロンどうすりゃいいんだよ捨てろってか、とミサカは逆ギレという名の戦略に出ます」
一方通行「戦略かよ。てェかオマエが着ればいい話じゃ」
御坂妹「上条当麻以外の前で新婚さんエプロンを着るわけにはいかねえ、とミサカは断固たる意志を見せつけます」
一方通行「やっぱそれかァァア!」
御坂妹「ていうかマジ早くこれ着てもらわないとミサカ嘘つきになるんで、とミサカは強制します」
一方通行「は、はァア?」
【超速報】エプロン着用家庭的一方通行動画配信
1 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
アロハサングラスの男からふりふりエプロンもらったんで試してみる
2 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka20000
新婚さんセロリたんが見られると聞いて
3 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10039
うわあ・・・
wktkwktk
4 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka15238
感覚共有の準備はできてるか
5 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
抜かりないおwwww
一応カメラセットしといたしあとでみさつべにうpする
6 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka14510
喜べばいいのか嘆けばいいのかわかんねーよばか!!!!
ていうか今からそっち行っていい?
7 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka14889
>>6
やめとけ
8 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka19090
ところでさっき運営に会ったんだけどさ、セロリが誕生日会ひらくって知らないっぽい
9 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka13577
まじかよ
えっじゃあなに、あいつ秘密裏にすすめてんの?
ドッキリ?
10 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
なかなか着てくれないわけだが
なんか自分でエプロン持ってるとか言い出したわこのセロリ…
11 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka18264
エプロン持ってるとかまじきめえwwwwwwwwwwwwwwww
12 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka17600
こちらスネーク
実はもう同じ部屋のバスルームにスタンバってる
13 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka16711
すげええええええええええええええ
さすがプロスネークさんだ!!!!!!!!!1!!
14 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
ちょっと確認してくる
御坂妹「すみませんトイレ借ります、とミサカは立ち上がり足早に向かいます」
一方通行「あ? おォ、いいけど……このエプロン裏の端っこに土御門って書いてンな、しかも筆記体……死ね」
バスルーム
17600「よっ、とミサカは片手を挙げます。首尾はどうよ」
10032「いや、相手はエプロンをなかなか着てくれない、とミサカは答えます。挙句の果てに自分でウエストエプロン買ってくるとか言ってるんだけど、とミサカは付け足します」
17600「ミサカ的には一方通行がどんなエプロンを着用しようが関係ないけど、ネタとしてならぜひふりふりを希望したい、とミサカは述べます……それにしてもこのホテル、ジャグジーとかまじすげえ」
10032「ああそれすごいよな……一度でいいから使ってみてえよ、とミサカはぼやきます」
17600「とりあえずミサカはしばらくスネーク続行するから10032号も頑張れよ、とミサカは励まします」
10032「おう! とミサカはガッツポーズをとります。ミサカは負けないもん!」
一方通行「ンだァ? やけに遅ェな。おいガキ! なンかあったのかァ?」
10032「しまった、怪しまれた! え、えっとその、じ、事情は察してください! とミサカは叫びます」
一方通行「じじょ、……あ、あァ……いや、すまねェな……その、配慮が足りなかった」
17600(なんという勘違い、とミサカは声に出さずに呟きます)
一方通行「そォだよなァ、ガキっつったってそりゃ性徴くれェ……」
ハタ
一方通行「――打ち止めもいずれは大人になンのか」
一方通行「今は俺に懐いてっけどよォ、そのうち『あなたみたいなもやしとは口もききたくないの!』とか言ってくンのかァ?」
打ち止め『貧弱な男なんて嫌いなのってミサカはミサカはあなたなんてお断り!』
打ち止め『どうしてミサカにかまうのってミサカはミサカはいい加減うんざりしてきたんだけど』
一方通行「……、0歳であの知能だしなァ、あと数年で反抗期、いや思春期になったって不思議じゃねェ。
そォなったらもォきっと『週末は会えるんだよね?』とか訊いてこねェンだろォなァ……」
一方通行「……、なンか嫌だ、ってェか腹立つゥ……」
スタスタスタ
コンコン
一方通行「ガキ、……その、まだかよォ」
10032(思いっきり勘違いされてんだけど、とミサカは自分のまずい言い訳を後悔します)ギューギュー
17600(うんそれはそうとなんでお前ミサカをバスタブに押し込んでんの? とミサカはぎゅうぎゅう押し詰められながら訊ねます)グェッグェッ
10032(え、だって万が一スネークがバレたら運営に怒られるじゃん、とミサカは断言します)
ガチャ
10032「いえ、もう大丈夫ですお心遣いありがとうございました、とミサカは華麗にバスルームから出ます」
一方通行「お、おォ……あのよォ」
10032「は、はい!? いえべつにバスルームには誰もいませんでしたよとミサカは報告しますが」
一方通行「誰かいたらホラーだろ。密偵かよ……じゃねェ、だから……あーもォ……」
10032「?」
一方通行「まァ、あのクソガキは黄泉川ンとこいっから、大丈夫だとは思うンですけどォ……」
10032(何を言おうとしているのかさっぱりわかりません、とミサカは首を傾げます)
一方通行「……だからさァ……、あのガキがァ、……アレになったら、教えてやってくンねェか」
10032「」
一方通行「俺じゃ教えよォがねェだろ。いやまァわかるけど、わかンだけどな」
10032「……しくったー、とミサカは項垂れます。まさかここまで飛躍するとは思いませんでした」
17600(なんだもうすっかり保護者の域じゃんとミサカは嘆息します。なんか張ってる意味を感じなくなってきた)
一方通行「……、……」
10032「……、……」
一方通行「あー、じゃあ、チョコ、作るかァ」
10032「ああはい、とミサカは頷き返します。あの、エプロンとか、もういいんで……ほんといいです、とミサカは声を小さくします」
一方通行「え? お、おォ、着るつもりは最初からねェけど」
10032「それでは、とミサカは板チョコを取り出し一方通行に手渡します」
一方通行「ン。これどォすりゃいいンだ」
10032「とりあえずくだけるまでくだいてください、とミサカは指示します。あ、調理器具は一式ありますからこのボウル使ってくださいとミサカは追加で渡します」
一方通行「あァ」
ベキィ
バラバラ
キシャーン
パラパラパラ
一方通行「できた」
10032「早えよ! とミサカは思わず裏手ツッコミをかまします」
17600(設置しといたカメラから映像が流れてきたけど、これなんて才能の無駄遣い? とミサカは内心爆笑します)
10032「えーっと、思わぬスピードでたまげつつ、ミサカは次の板チョコを渡します。今度はホワイトです」
一方通行「これもくだけばいいンですかァ?」
10032「はい。あ、でもそっちは文字を書く台なので、上位個体のことを思いやりながらくだいてみては、とミサカは提案します」
一方通行「ふン、誰があのガキを思いやるかってンですよォ」
スカッ
パリ
パキ
10032「……先ほどとは打って変わって、かなり手加減して割ってませんか、とミサカは指摘します」
一方通行「うっせェこの板チョコが白いからちょっと共感しただけだっつのボケ」
10032「言っておきますが、上位個体を思いやる=板チョコが上位個体、という発想にはなりませんよとミサカは忠告します」
ドクシャァ
バキバキバキ
シャキーン
サラサラサラ
一方通行「できた」
10032「切り替えも早えよ! とミサカはふたたび裏手でツッコミます」
17600(あの板チョコが数秒で粉末状になっている…だと…!?)
10032「えー、さっきからツッコミどころ満載でいい加減ミサカも疲れてきましたがこの調子でがんばります、とミサカは自分自身に誓います」
一方通行「ンでェ? 次は?」
10032「湯煎ですね。チョコレートを溶かす必要がありますとミサカは伝え、かちりとコンロを点火します」
一方通行「これそのまま湯の中突っ込むのかァ?」
サラサ
10032「ストーップ!!! 薄々わかってたけど初心者が行うミスだなオイ、とミサカは慌てて一方通行を止めます」
一方通行「ンだよ、チョコ溶かすンじゃねェのか。湯とまぜちまったほうが楽だろォが」
10032「湯がまじるだろ、湯が! とミサカは叫び返します」
一方通行「それによォ、いざとなったらベクトル操作すりゃ大抵の料理はなンとか辻褄あわせで成功すンだぜェ」
10032「お前料理する資格ねえよ! とミサカは呆れます」
一方通行「……、資格なンざなくたって作れるしィ」
10032「なんで若干拗ねてんだよもおおおおお! とミサカは壊れ物注意のラベルを一方通行に貼り付けたい気持ちでいっぱいです」
17600(あ、こいつら面白っ)
10032「とまあ湯煎までなんとか辿り着いたので、ミサカはふうと汗をふきます」
一方通行「おいこのホワイトチョコの溶けるスピードすげェ」
10032「そりゃあんだけ細かく、ていうか粉末にしちゃえば粉薬のごとしですとミサカは言い切ります」
一方通行「ところでよォ、これプレートにすンだろ? 明らかにチョコレート多いと思うンですけどォ」
10032「ああ、余ったチョコレートは上条当麻に貢ぐので、とミサカは簡単に返します。あ、そうだった。材料費ください」
一方通行「オマエ俺が材料費負担したチョコレートを三下に渡す気かァァア!」
10032「大切なのは愛情です、とミサカはキリッと明言を吐き出します」
一方通行「大事なもンが欠落してるだろォが! なに他人の金で買った材料使ってちゃっかり貢ごォとしてンのオマエ!」
10032「おや、あなたもミサカお手製のチョコレートが欲しいと。仕方がないので失敗したらあげますよとミサカは慈愛に満ちた表情を浮かべます」
一方通行「ンな義理チョコはいらねェしそもそも失敗作かよ! ってェかその手の差し出し方はこの期に及んで材料費俺にねだる気ですかァ!?」
10032「一方通行=財布、という定説がMNWでは有名です、とミサカは真面目に答えます」
一方通行「ネットワークの管理人をブチ殺してェところだがやめといてやるよ」
17600(上位個体にはとことん甘いよなー、とミサカは苦笑します)
10032「ふと思い出しましたが、このホテルの冷蔵庫ではうまいことチョコを冷やせません、とミサカは盲点に気づきます」
一方通行「ホテルでチョコ作るほうが間違ってンだよ」
10032「ここはひとつ、一方通行お得意のベクトル操作の出番ですよ、とミサカは追い立てます。ほらほら」
一方通行「いやごめン意味わかンねェ。なンで煽ってンですかァ? ベクトル操作で何しろって?」
10032「単純に言うと、この型に流し込んだホワイトチョコをあーだこーだして固めてください、とミサカは指令を下します」
一方通行「できるかァァアア! 冷蔵庫呼べェェエ!」
10032「いいからちょこっと触れてみなよ、チョコだけに、とミサカはうまいこと言って唆します」
一方通行「うまくねェよクソがァアアア!」
ピト
ベタ
キュイン
ヒヤー
カッチコチ
一方通行「できた」
10032「すげえ、とミサカはまさかマジで成功するとは思わなかったので驚きます。ベクトル操作チートすぎね?」
一方通行「なンか適当に操作したら固まった」
17600(一方通行の勘怖え、とミサカは怯えます。なにあれ人間業じゃない)
10032「いやあびっくりです。普通なら作るのに何時間もかかるはずのチョコレートですが、たった10分でできました。
とミサカは驚きのあまり残ったチョコレートを型に流すことを忘れそうです」
一方通行「あーもォわかったからさっさと作れ。あとである意味チートな冷蔵庫呼ンでやっからそいつに冷やしてもらえ。相当時間短縮できンぞ」
10032「よくわかりませんがありがとうございます、とミサカは頭を下げます。さて、ついに文字入れの時間です」
一方通行「おォ。どォやって名前入れンの?」
10032「チョコペンがないので、とミサカは先ほど一方通行が打ち砕き溶かしていたミルクチョコを取り出します」
一方通行「最初のやつかァ」
10032「これをどうにかしてホワイトチョコをデコってください、とミサカは告げます」
一方通行「無理だろさすがに。ほっそいペンで名前入れるンじゃねェのか普通」
10032「ミサカは今まで数々の奇跡を目の当たりにしてきました。
板チョコを数秒で粉末にしたり無理矢理固めたりできる一方通行が、ホワイトチョコプレートに文字入れできないはずがありません」
一方通行「いや、なンか俺が好き好んでやった、みてェに言ってっけどオマエが扇動したってこと忘れンなよォ」
10032「さあさあ、再び奇跡を起こしてくださいとミサカは一方通行に溶けているミルクチョコを渡します」
一方通行「せめてクッキングペーパーとかねェのかよ……」
17600(これでできたら恐ろしいな、とミサカは呟きます)
10032「一応ここに板チョコの銀紙がありますが、とミサカは差し出してみます。使いますか」
一方通行「……、まァ、ないよりはマシだわ」
一方通行(待てよ、さっきみてェにチョコをある程度固めてから銀紙で包ンで先を細くしたあとで、ゆっくり先のほうを溶かしていけばうまいこといくンじゃねェかァ?)
一方通行(うン、なンかいける気がする)
10032「お、いくのか? もうこれできたらすげえどころじゃないけどいくのか!? とミサカは煽りはやし立てます」
一方通行「ミルクチョコレートの成分を解析、アルミホイルと結合、……ッ!」
シュー
ヒヤリン
トロー
カッチン
一方通行「できた」
10032「あとでどこかの研究所に量産型能力者計画一方通行バージョンをすすめとこうとミサカは決心しました。
一家に一台レベルじゃねーかどんだけ万能だよベクトル操作」
一方通行「自分でも今のはちょっとすげェと思った……」
17600(あなたが神か!)
一方通行「で、何書きゃいいンだっけ」
10032「『ハッピーバースデー打ち止めちゃん』ですね、とミサカは考えます。あ、そうでした。下は余白作っておいてくださいよとミサカは釘を刺します」
一方通行「? ……まァいいけどよォ。ハッピバースデー……」
トロトロ
タラーリ
一方通行「ラスト、オーダー、っと。ン、こンなもンだろォ」
10032「素っ気ない、とミサカはプレートを見つめながらため息を吐きます」
一方通行「あン!?」
10032「ちゃん付けしろよ。あと下の余白以外はデコれよとミサカは配慮の足りなすぎる一方通行をたしなめます。そんなんじゃショコラレータは名乗らせませんよ」
一方通行「俺名乗りたいって言ってねェしィ!」
10032「さあさあデコるのです。ハートとか☆とかちょっと洒落た葉っぱとか書くんですよ、子どもは喜びますからとミサカは教えてあげます」
一方通行「クソったれがァ……!」
トロトロ
トローリ
一方通行「……繊細に、優雅に、甘く、可愛らしく、大人っぽく、ガキが喜ぶよォなプレートに……」ブツブツ
10032「目が本気っすね、とミサカはけしかけておきながら引き気味です」
一方通行「で、きたァ……! できたできたできたァァアア!」
キラキラ
10032「うっ、ま、まぶしい……これが第一位の本気の作品、とミサカは眩い輝きを放つホワイトチョコプレートを直視できません!」
一方通行「『ハッピーバースデー打ち止めちゃン』、そしてこの周りを舞う羽根! ミルクチョコだし黒っぽい! いいねェいいねェ、最っ高ォだぜェ!」
10032「では、このプレートはミサカが預かっておきますとミサカは回収します」
一方通行「おォ? あァ、まァいいけどさァ……明日忘れンなよ」
10032「そちらこそ、ホットケーキを作る練習でもしておくべきですよとミサカは指摘します」
一方通行「オマエ俺のホットケーキすげェンだかンな。ふわふわなンだよォ!」
10032「それは明日わかることですねとミサカは大人の対応で受け流します。では、ミサカはこれにてやることもなくなったので帰ります」
一方通行「ン、気ィつけて帰れ」
10032「そうそう、パーティグッズは上条当麻がしっかり準備してくれるそうですよ、とミサカは伝えておきます。クラッカーとかはいらないそうです」
一方通行「え、……わっかもォ?」
10032「わっかはミサカがきちんと一方通行が『作りたくて仕方ない作らないと死ぬ』って駄々こねてました、と教えてきたので大丈夫です」
一方通行「こねてねェよ俺どンだけわっかメイカー目指してンだよ」
10032「それでは、アディオス」
一方通行「アディオース」
10032「……、恥ずかしがってもらわないとなんかつまんねー、とミサカは吐き捨てます」
一方通行「もォいいンだよアディオスくれェ誰だって挨拶で使うってのォ。おら、帰れ帰れ」
ガチャ
バタン
一方通行「……あれ、あいつ三下に渡すとか言ってたチョコ、置き忘れてンじゃねェか……垣根呼ぶのだりィし、固めとくか」
17600(やべえ出るに出れねえとミサカは呟けません)
一方通行「あと、バースデーパーリィでなンか必要なもンあったかァ? ねェよな……あ、プレゼント……ヤンヤンでいいよなもォ……」
一方通行「いやだめだろあのクソガキあれでもマセガキだしよォ……かといってアクセサリーとかは肌荒れるかもしンねェ……ヘアピンでも買ってってやろォかなァ……」
黄泉川宅
10032「ボス、例のものですとミサカはホワイトチョコプレートを差し出します」
打ち止め「わーありがとってミサカはミサカは10032号の働きに感服してみる。えっと、この下の余白でいいんだよね?」
10032「ええ。チョコペンはこちらにストロベリーのものを用意しました、とミサカは出来る部下を気取ります」
打ち止め「うん、本当にありがとねってミサカはミサカは感謝感激雨霰! にしてもあの人、字まで綺麗なのねってミサカはミサカは感心しちゃうんだけど」
とある雑貨店
一方通行「……クソガキに似合うヘアピンねェ、明るい色ならなンでも似合いそォな気はすンだけどなァ」
佐天(あれ、白い人がヘアピン片手にすごく悩んでる……、誰かにプレゼントかな? 見た目ちょっと怖いけど真剣に悩んでるなあ)
一方通行「白よりもっと派手で……、あァ、飾りつきってェのも……」
佐天「(話しかけてみよう)おにーいさんっ」
一方通行「あン?」
佐天「誰かに贈り物ですか? 暇なのでお手伝いしちゃいますよ」
一方通行「いらね……いや、待て」
一方通行(ガキの意見聞くのも悪くねェかもな)
一方通行「10歳くれェのガキに似合うヘアピン探してンだけどよォ。髪色は茶色で、バカみてェに明るいガキだ」
佐天「うーん……好きな色とか知ってます?」
一方通行「知らねェ」
佐天「明るい子かあ。じゃあじゃあ、こっちの小さいひまわりがついてるヘアピンとかどうですかね?」
一方通行「ひま、わり……」
一方通行(バカみてェにころっころ表情変えて、俺を怖がりもしねェでくっついてきやがって、ずっと笑ってやがるクソガキにゃァぴったりの花じゃねェか)
一方通行「気に入った。これにするぜェ」
佐天「おおー、協力してよかったです」
一方通行「世話ンなったなァ。礼と言っちゃァなんだが、この店で欲しいもンなら買ってやるよ」
佐天「へっ? ああ、いえいえいりませんよー。今欲しいものって、努力しないと手に入らない、目に見えないものなんで」
一方通行「……、そォか。がンばりなァ」ナデナデ
佐天「あ、子ども扱いしましたね!?」
一方通行「ガキだろォが。じゃァな」
スタスタ
アリガトーゴザイマシター
佐天「あの人すごく真剣に選んでたし、相手のことがとても大切なんだろうなー」
初春「あ、佐天さーん! 遅れちゃいましたあー!」
佐天「んー、いいよいいよ。人助けしちゃったし」
とあるホテル
一方通行「ふゥ……なンか今日はすげェ疲れた」
一方通行「あァ、明日は飾りつけ終えるまでクソガキをどっかに連れてってもらわねェとなァ……超電磁砲にでも頼ンどくかァ」
ピポポパポ
美琴『はいもしもし? 明日のことならけっこう親しい人に声かけといたわよ』
一方通行「おォ。明日のことだが、参加者についてじゃねェ」
美琴『……?』
一方通行「バースデーパーリィを黄泉川ン家でやるってのはクソババア共も了解済みだ。ただよォ、準備の間、クソガキにいられちゃ困るンでな」
美琴『ああ、連れ出しておけってことね。それくらいお安い御用なんだけど……』
一方通行「あ?」
美琴『……ううん、なんでもない。ありがとね、あの子のために誕生日会ひらいてくれて』
一方通行「ガキのためじゃねェ、ガキをぎゃふンと言わせるため、自分のためだ」
美琴『はいはい。じゃーね』
一方通行「……、ありがとう、ってなァこっちの台詞なンだよなァ……」
一方通行主催誕生日会前日終了
一方通行主催誕生日会当日
黄泉川家
芳川「ふわあー、今日は早いのね、愛穂」
黄泉川「あったり前じゃんよ。打ち止めも早いじゃん」
打ち止め「うふふーってミサカはミサカは笑ってみたり。今日はとっても素敵な日なのってミサカはミサカははしゃぐ心をおさえきれない!」
上条家
インデックス「おいしいもの食べられるってほんと?」
上条「ああ、間違いない。なにせあの一方通行が主催ですから!」
常盤台
美琴「うっし、行くわよ黒子」
黒子「お姉様、約束のお時間には少々早すぎるのではありませんの?」
美琴「私達はあの子をちょろーっと連れ出さなきゃなんないのよね」
ホテル前
一方通行「……わっか重ェ」
海原「おや、一方通行さん。おはようございます、本日はお日柄も良く、結構な誕生日会日和ですね」
一方通行「なンでオマエ知ってンだよォォオオ!?」
公園近く
御坂妹「そろそろ準備に出かけなければなりませんね、とミサカは歩みをすすめます」
佐天「でさー、その白い人ってばヘアピンとにらめっこしててねー、って、御坂さん!」
初春「あ、おはようございます!」
御坂妹(なんかめんどくさいことになりそ、とミサカは内心ため息を吐いてみます)
御坂妹「おはようございます。『お姉様』がいつもお世話になっていますとミサカは丁寧に挨拶を返します」
佐天「あ、妹さんのほうか」
初春「それにしても、朝早くからどこに行くんですか?」
御坂妹「ドッキリパーリィです、とミサカは答えます。ところで、先ほどの話の白い人について詳しく」
佐天「え? えーっと、とにかく頭から服から肌から、そりゃもう白かったんですよー」
御坂妹「ほう。杖ついてませんでしたか、とミサカは確認します」
佐天「あ、ついてましたついてました」
初春(……それって白井さんが言ってた第一位でしょうか)
御坂妹「ほうほう。それでそのもやしは何を買いましたか? とミサカは質問します」
佐天「んーと、私がひまわりのヘアピン選んであげたんですけどね、それ買ってましたよ。満足そうに」
御坂妹「……よくわかりました。ヘアピンとはこれまた日常生活で使えそうなものをチョイスしたんですね、とミサカは納得します。それでは」
佐天「さよーならあー!」
初春「また会ったらお話しましょーねー!」
海原「いやあ、重そうな袋ですね。中身は何ですか?」
一方通行「死体」
海原「へえ、折り紙で作ったパーティ用のわっかですか」
一方通行「オマエどこまで知ってンのォ!?」
海原「いいなあ、うらやましいなあ。御坂さん達と誕生日会だなんて。いいですねえ」
一方通行「いいでしょォ? だからさっさと道開けろってンだよ」
海原「いーいーなーあー。そうだ、その重そうな袋持ってあげますから僕も誕生日会にお招きしてくれませんか」
一方通行「却下」
海原「えーそんなこと言わず、……!!」チラ
一方通行「? ンだァ?」
海原「いえいえ、なんでもありませんよ――なんでも、ね」ジー
電柱の陰
17600(し、師匠だ……さすが師匠、ミサカの視線および尾行に気づいてたあああああ!!!)
ピンポーン
打ち止め「あ、お姉様がきたんだってミサカはミサカは玄関に走ってみたりー!」
美琴「お邪魔しまーす。打ち止め引取りにきましたー!」
黒子「可愛らしいですのおおおおおおおおお!!!!」
黄泉川「こ、個性的なお姉さんと御友達じゃんよ。まあいや、行っといで」
芳川「愛穂ー、トースト食べたいのだけれど……ああ、打ち止めいってらっしゃい」
打ち止め「行ってきまーすってミサカはミサカは元気よくしゅっぱーつ!」
パタン
黄泉川「行ったな」
芳川「ええ行ったわね。愛穂、トースト」
黄泉川「今から準備に取り掛かるじゃん! ていうかトーストくらい自分で焼けよ」
芳川「私甘いから飾りつけとかできないし見てるわね。トーストは愛穂のが一番おいしいのよ」
街中
打ち止め「お姉様とお出かけはめずらしいってミサカはミサカは素直に喜びを体で表現するために抱きついてみる」
美琴「あはは、たしかにそうかもね。なんだかんだで一方通行がアンタのこと守ってるし」
黒子「お姉様ふたりがくっついて……壮観ですの……!」
打ち止め「えっとね、それでミサカはふたりに頼みごとをしたいのってミサカはミサカは上目遣いを使ってみるんだけど」
美琴「うっ! いいわよいいわよなんでも言いなさい!」ズキュン
黒子「この黒子、小さいお姉様のためなら地の果てまでも!」ズッキュン
打ち止め「えへへーミサカは幸せ者ですってミサカはミサカは喜んでみる。それでね、頼みごとっていうのは――」
インデックス「とうまー、あっちに短髪達がいるんだよ」
上条「お、マジだ。……あれ、でもあいつら黄泉川先生んとこ行って先に手伝ってるはずじゃなかったっけ……?」
インデックス「追うんだよ! なんだかおいしい気がするかも!」
とある雑貨店
美琴「一方通行にプレゼント、ねえ。あいつ、打ち止めがあげるならなんだって喜ぶと思うんだけど」
打ち止め「うーん、それはどうかなってミサカはミサカは首を傾げてみたり。
ミサカはいつもあの人からいろんなものをもらっているけど、ミサカはあの人になんにもしてあげてないような、ってミサカはミサカはちょっと落ち込んでみる」
黒子「いいええ、そんなことありませんの! 第一位の殿方さんもきっと、小さいお姉様がそこにいらっしゃるだけでハアハアですの!」
打ち止め「……そ、そうかなー、ってミサカはミサカは引いてみる」
美琴「こいつはこれがデフォだから気にしないで。それで、一方通行にあげたいものってなにかあるの?」
打ち止め「それが、まだ何も決めてないし決められないのってミサカはミサカは意気消沈。あの人、欲しいものを訊いても答えてくれないしってミサカはミサカは案外無欲なあの人を案じてみたり」
美琴「無欲……無欲かあ……そういえば、あいつも第一位だし研究機関からたくさんお金もらってるんじゃない?
ってことはさ、金のかかるプレゼントはいらないわけよね」
黒子「ではいっそ、小さいお姉様のブロマイド10枚ではいかがでしょうか。わたくしがデジカメでしっかり撮影いたしますの」
打ち止め「……えっと、あの人はブロマイドなんて持ち歩かないと思う、ってミサカはミサカはやっぱり引いてみる」
美琴「ていうか打ち止めのブロマイド持ち歩いてるってそれもう漫画のセオリーでいけば死亡フラグよ。さすがにやばいって」
打ち止め「うーん……、あの人普段買い物に出かけてもミサカの物しか買わないからってミサカはミサカはほんとに無欲なのかなって思っちゃう」
上条「おーい、そこの中学生達ー」
美琴「!!」
黒子「チッ」
打ち止め「あ、ツンツン頭のヒーローさんだってミサカはミサカは駆け寄ってみるー」
インデックス「何してるの? 食べ物はここにないんだよ」
美琴「なんで雑貨屋で食べ物探すのよ」
上条「いやーごめんな、口開けば食い物のことしか言わない暴食シスターで」
黒子「まあ、それはともかくとして。あなた方もお誕生日会に出席なさるのでしょう? どうしてここに?」
上条「ん? ああそれはだな、」
インデックス「なんとなく短髪達を追ってきたんだよ!」
打ち止め「人数が増えたってことは、それだけ意見の幅が広がるってことかもってミサカはミサカは純粋に嬉しく思ってみる。
せっかくだし、ここは男性の意見も取り入れてみたいです、ってミサカはミサカは質問するんだけど」
上条「男性の意見? なんかよくわかんないけど、上条さんでいいなら協力しますよー」
打ち止め「わあ、ありがとう! ってミサカはミサカははしゃいでみたりっ! 実は、あの人に贈り物したいんだけどあげるものがないのってミサカはミサカは只今絶賛悩み中」
インデックス「はいはーい、やっぱりここは高級な牛とか羊とか、とにかく肉がいいかも」
打ち止め「たしかにあの人は魚より肉、野菜より肉の人だけど、それはちょっと……ってミサカはミサカは意見を取り下げてみる」
上条「一方通行が欲しがりそうなものって言ってもなあ。俺とあいつじゃ価値観も違うし」
黒子「ここはやはりブロマイド一択ですの! 撮影はわたくしにお任せくださいですの!」
美琴「アンタ、撮影自体は止めないけどブロマイド隠し持ってるのが一方通行にバレたら血液逆流よ?」
打ち止め「今はそんなことしないんだけどってミサカはミサカはフォローしきれずにうんうん唸ってみる。どうしよう、本当に何も思いつかない……」
上条「ありきたりな話なんだけどさ、あいつは打ち止めが幸せならそれでいいって思ってるんじゃないか?」
打ち止め「……それは、わかってるのってミサカはミサカは肯定してみる。
あの人はミサカのためになんだってしてくれるし、嬉しくないって言ったら嘘になるよ、ってミサカはミサカは心中を吐露してみたり」
インデックス「あくせられーたは献身的なんだね。それだけあなたを大切に思ってるのかも」
打ち止め「だけど、だけどミサカだってあの人のために何かしてあげたいし、あの人がミサカが幸せならそれでいいって思っているだけだと足りないんだもんってミサカはミサカは自分が欲張りなことをアピールしてみる」
美琴「……、……打ち止めは、あいつにも幸せになってほしいのよね」
打ち止め「はい、ってミサカはミサカは即答してみる。
あの人がミサカの幸せを願うのと同等、あるいはそれ以上にミサカはあの人に幸せであってほしくて、あの人の笑顔が見たいのってミサカはミサカは呟いてみたり」
スタスタスタ
ポン
打ち止め「!?」
御坂妹「安心してください、とミサカは上位個体の不安を払拭してみせます。ミサカ達の演算能力補助のおかげで一方通行は生活している以上、あなたは決して『なんにもしてあげてない』、なんてことにはなりません」
上条「御坂妹!? なんでここに!?」
黒子「あら、先ほどから店内にいらっしゃいましたわ」
美琴「だったら言いなさいっ!」
インデックス「クールビューティも贈り物なの?」
御坂妹「いえ、ミサカは上位個体の嘆きを聞きつけてやってきただけです、とミサカは答えます。妹が困っているときは駆けつける、それが正しい姉のあり方だとミサカはお姉様から学びました」
打ち止め「……なんか恥ずかしいなあってミサカはミサカは微苦笑してみたり。えっと、10032号はカムフラージュも兼ねてあの人と一緒に準備してる予定だったような」
御坂妹「会場なら問題ありません。警備員とニート、それに一方通行がいれば成り立ちます――それよりもミサカはあることを教えにきました」
上条「あること?」
御坂妹「はい。一方通行が上位個体にと選んだプレゼントは、どうやらヘアピンらしいですよとミサカは入れ知恵します」
黒子「あらまあヘアピン。なるほど、ネックレスや指輪ほど堂々と目立つ贈り物ではないかわりに、毎日さりげなく身に着けてもらうことでこいつは俺のものだアピールができますの」
美琴「そこまで考えてはいないと思うけどね。でも、たしかにいいチョイスだわ」
打ち止め「ヘアピン……きっとあの人のことだから真剣に悩んでくれたんだろうなってミサカはミサカは喜んでみる。
もらったら早速つけないとってミサカはミサカは意志表明!」
インデックス「いいなあ。とうま、私も何か欲しいかも。具体的には食欲を満たすものがいいんだよ!」
上条「はいはいあとでミネラルウォーター買ってやるから。で、どうするんだ? 打ち止め」
御坂妹「おそろいでヘアピン買っちゃえば? とミサカはうりうりと上位個体をつっつきます」
打ち止め「え、えええ!? さすがにあの人にヘアピンは似合わな……くないかもってミサカはミサカは一瞬想像して普通に似合ってたあの人に驚きをかくせない」
美琴「えっ今私想像したけど違和感あったわよ!?」
黒子「人それぞれですのね。あの殿方は中性的でもありますし、ヘアピンもまあ……まあ」
上条「……似合う、か……?」
インデックス「……服装も変えればいいのかも」
打ち止め「それに最近のあの人は髪を無造作に伸ばしてるから、たまに邪魔そうなのよってミサカはミサカはヘアスタイルについて考察してみる」
御坂妹「では決まりですね。どうせなら可愛らしいものにしてはいかがです? とミサカはラメ入り大きいピンクのハートつきのヘアピンを差し出します」
美琴「それはない」
黒子「それはない」
上条「それはない」
インデックス「それはない」
打ち止め「……それはさすがに想像できないってミサカはミサカは押しのけてみる。
えっとね、あの人は白いから派手なものも似合うんだけど――やっぱりシンプルなものでいいと思うってミサカはミサカは黒のヘアピンを手に取ってみる」
黒子「んまあ、それならきっとギリギリオーケーですの。きっと」
美琴「まあ、妥当よね。想像できないけど」
上条「いや待て想像力を働かせれば……サイドをヘアピンで留める一方通行……いけ……たッ!」
インデックス「今私もいけたんだよ! あくせられーた、ちょっと可愛かったんだよ!」
御坂妹「このふたりの想像力もとい妄想力ぱねえな、とミサカは驚愕します」
黄泉川家
一方通行「よォ、準備しに、きたぜェ……」ボロッ
芳川「あら? 君、どこかで派手に転んできたの?」
一方通行「ンなわけあっかァ! 途中でストーカー撃退してきたンですよォ」
黄泉川「おおーさすがじゃん。それで、そのわっかを飾り付ければいいんだよな」
一方通行「あァ。あとキッチン貸せ。一応練習しとかねェと」
芳川「何の? ねえ何の練習? 食べ物なら私が味見してあげるわ、愛穂が朝食作ってくれなかったものだから」グゥゥウ
黄泉川「だから自分でトーストくらい焼けって言ってるじゃんよ……」
一方通行「オマエ……自活できねェのか……」
芳川「あら嫌だわ、ついに君にまで白い目で見られるなんて。ニートなりに職探しに頑張っているのに」
黄泉川「ハロワ行って5分で戻ってくるくせに頑張ってるわけないじゃんか」
一方通行「しかもオマエ酒飲むンだろォ。たち悪ィ同居人だなァ」
芳川「何を言っているのかしら。私はただ愛穂が将来ひとりで暮らしても寂しくないように精一杯思い出をつくっているのよ?」
黄泉川「つい最近までひとり暮らしだったし桔梗がつくってるのは大量の空き缶ばっかじゃん」
一方通行「なンつーか、ニートの鏡だなァ」
芳川「ふふふ」
黄泉川「褒めてない褒めてない。じゃあ桔梗はこっちで私と飾りつけするじゃんよ」
一方通行「おォ、出てけ出てけ」
芳川「私の胃は空腹を訴えているわ。このままじゃ動けなーい」グーキュルンルンルン
黄泉川「……、……」
一方通行「……、……」
芳川「ホットケーキ作るのよねえ。あー食べたいなあー」グッグーキュルルルルゥ
黄泉川「……、一方通行、このニートに食料与えてほしいじゃん」
一方通行「……、あァ。任せろ、とびっきり焦げたホットケーキ食わすわ」
芳川「あら、なんならとびっきり美味しいのでも構わないのだけれど」
一方通行「オマエちったァ自重しろォォオオ!」
芳川「自嘲なんてしてないわ。甘いだけの私は、自分を嘲る余裕も勇気もないの……」
黄泉川「自重! 自分の行いを慎むほうじゃん!」
黄泉川(打ち止めは『あの人には内緒なの』って言ってたけど……)
カラカラ
シャカッシャカシャカキシャー
一方通行「あー、こほんっ……ハァッピバースデー♪……トゥーユー…♪」
黄泉川(たしかにあの様子だと、逆サプライズにはまったく気づいてないじゃんよ)
芳川「歌の練習してなくていいから早くしてくれないかしら」
一方通行「うっせェよ!」
黄泉川(……ていうか、桔梗も忘れてるような気がするじゃん)
カラカラ
ギュルルルルル
シャカシャカシャカカカカカ
一方通行「あは、ギャハはははあハッ!!! おらおらおらァァアアアア!!!!!」
芳川「へえ、すごいわね一方通行。手動の泡だて器を使っているのにミキサー以上の速さで生地がかきまぜられていくわ」
一方通行「男の料理なめてンじゃねェぞ! ふわっとした生地は完璧にかき混ぜることで生まれンだよォォオオ!!!」
芳川「これは期待できそうね。ホットケーキまだー?」
黄泉川「だから桔梗はこっち手伝えって言ってるじゃんよおおおおお!!! わっか飾るの手伝えってばああああ!!!」
一方通行「ン、っと……引っくり返してェ……」
フワッ
芳川「あら……あら、すごいわ。これは愛穂も見習うべきね」
黄泉川「お前はまず世間一般の働いている人全員を見習うべきじゃん?」
一方通行「慎重に火加減を見定める……!」
黄泉川「……まあ、一方通行が真剣だし楽しそうだからいいか」
芳川「ホットケーキが黄金に輝いているわね。さすがよ、一方通行」
一方通行「まだだ、まだもォ少し焼かねェと中までふンわりにはならねェ……!」
黄泉川「なんだかんだで焦がすつもりもないわけじゃんね」
芳川「私、君のそういうところとっても興味深いと思ってるの。ツンデレっていうのかしら」
一方通行「……、今だァ!」
ヒョイッ
パン
一方通行「できた」
黄泉川「見事な盛り付けプレーだったじゃん! 今のちょっとすごかった!」
一方通行「どォだ」
芳川「美味しいわね。文句なし、採点するなら99点」
一方通行「99!? この完璧な仕上がりのホットケーキをもっさもっさと食いながらの採点で99点だってェのか!」
黄泉川「どれどれ……ん、美味しいじゃんよ。普通に満点」
芳川「愛穂は鈍いからわからないのね、このホットケーキに欠けているものを」
一方通行「欠けているもの、だァ……ンだよそれ、教えろクソニート!」
芳川「あ、今ので98点に下がったわ」
一方通行「なンだなンだよなンなンですかァァア!? 教えろよ、俺のホットケーキに欠けてるもンってのをよォ!」
芳川「一度しか言わないからよく聞きなさい」
黄泉川「……?」
芳川「君のホットケーキに足りないもの――それは、愛情よ」
一方通行「……、……」
黄泉川「……、……」
芳川「料理に大切なのは愛情よ」
一方通行「……黄泉川ァ、こいつなンでこンな偉そォなンですかァ」
黄泉川「……誰よりも自分に甘いからじゃん?」
芳川「もう少し君は愛情を込めて作るべきね。さ、もう一枚」
一方通行「オマエにくれてやる愛情なンざ一滴もねェンだよォォォオオオ!!!
今のホットケーキに愛情が足りなくて99点ってンなら! 本番は余裕で120点たたき出すぞコラァァアアア!!!!!」
黄泉川「すごい愛情だな」
芳川「すごい愛情ね」
一方通行「……しまった」
黄泉川「いやー、いいもんじゃん。打ち止めに対する愛情は大幅に加点されちゃうくらいだなんて」
芳川「じゃあ問題ないわね。さ、もう一枚」
一方通行「……、……もォ飾りつけやンぞ! 飾りつけ!」
黄泉川「このわっか、すごい長いじゃんよ」
一方通行「あァ、わっかメイカーとかと作ったから」
芳川「あの伝説の!? 学園都市にもたったひとりしかいないという伝説の!?」
一方通行「はァ? レジェンドだァ?」
黄泉川「ていうかなにそれ」
芳川「わっかメイカーとはその名の通り、飾りでよくある折り紙を使ったわっかを制作することに長けている人物のことよ。
現在のわっかメイカーのすごさはそのおそるべきスピードと繊細な技術、そしてなにより彼の作るわっかはとてもこの世のものとは思えないほどの完璧さを誇る!」
一方通行「オマエ、わっかメイカー目指してたンですかァ……?」
芳川「な、なぜそれを」
黄泉川「そこまで熱心に語られたら誰だって気づくじゃん」
一方通行「今度紹介してあげましょォかァ?」
芳川「!! ま、まだ私は未熟なわっかメイカー見習いなのよ……!? でも、これはまたとない機会!」
一方通行「見た目で驚くなよ、冷蔵庫背負ってっから」
黄泉川「そんなにわっか作るの好きならもうそれで食ってけばいいのに……」
芳川「……ふう、終わったわね」
一方通行「いやソファでくつろぎながら何働きましたオーラ出してンだオマエ」
黄泉川「もう桔梗には一切の期待をしないことにした。ただそこにいるだけでいいじゃん」
芳川「そんな、私が存在しているだけで勇気がわいてくるなんて……嬉しいこと言ってくれるわね愛穂」
一方通行「だめだこいつ。研究者のときも自堕落だったけどもォだめだわオマエ」
黄泉川「……こうならないように気をつけるじゃんよ、一方通行」
芳川「それはそうと、もうすぐ10時よ。さっさと本番用の愛情たっぷりなホットケーキ作るべきじゃないかしら?」
一方通行「……、……やだもォこいつ! マジうっぜェ!」
黄泉川「でも、桔梗の言ってることも正しいじゃん。あとはテーブルとか準備するだけだし、一方通行はホットケーキ作っといで
マンション付近
上条「もうそろそろ時間だな。行きますか?」
御坂妹「いえ、少し待つべきです。一方通行はきっと今ホットケーキを調理中です、とミサカは内部映像を再生しながらお伝えします」
美琴「ホットケーキ……あの一方通行が……」
am10:00
ピンポーン
黄泉川「お、来たじゃん。はーい、どうぞー」
一同「おじゃましまーす」
ゾロゾロゾロ
芳川「いらっしゃい、よく来たわね」
一方通行「オマエさっきから家主気取ってンなよォ。……おい、10032号」
御坂妹「はい、とミサカは素直に頷き、例のモノを準備します。どうぞ」
一方通行「ン。おら、ガキ共はさっさと部屋入れ」
打ち止め「……うわあ、ってミサカはミサカはとっても驚いてみたり。
すごい飾りつけだね、わっかがきれいってミサカはミサカはあなたを見つめてみる。今日は何かあるの?」
一方通行「あン? 何って……オマエのお誕生日会――バースデーパーリィですよォ!」
御坂妹「ええそうですよ、とミサカは協力者達を紹介します。皆さんです!」
インデックス(かっこつけたんだよ)
上条(逆サプライズだって知らないもんな)
美琴(だめだ笑いそう、打ち止めが白々しすぎて)
黒子(心なしか言えて嬉しそうですの)
黄泉川(あーこの子変なとこで可愛いじゃんよ)
芳川(あ、そういえば今日って一方通行主催の体を取ってたのね)
打ち止め「垂れ幕まであるのねってミサカはミサカは感激してみる。誕生日おめでとう、打ち止め……?」
一方通行「どォしたァ、クソガキ」
打ち止め(打ち止め、の文字の下のスペースが不自然に白い紙で覆われているのはきっと後からはがすためだよねってミサカはミサカは苦笑してみる)
美琴「にしても、わっかすごいわね」
黒子「こんな大層なわっか、見たことありませんの……」
上条「これ一人で作ったのか?」
一方通行「いンやァ? わっかメイカーと一緒に」
インデックス「わっかメイカー!? ほんとなの!?」
一方通行「あ? おォ」
インデックス「伝説の……わっかメイカーの名を受け継いでいる人がこの学園都市にもいたなんて……!」
芳川「シスターさん、あなたもしかしてわっかメイカーの本来の存在意味を知っているの!?」
インデックス「当たり前なんだよ! 彼らの存在はおよそ数百年前にも遡る――由緒正しき『人類は皆兄弟』の輪を作り続けてきたピースメイカーだもの!」
一方通行「いやそれ多分違うと思う。全然違うと思う」
御坂妹「はーい、こちらケーキの準備が出来ましたーとミサカは箱で隠されたケーキを運んできました」
黄泉川「おー、ありがとじゃん。桔梗もほら、ソファ陣取ってないでせめて動いて」
芳川「平和を作る……人……」
上条「ピースメイカー……」
美琴「何でアンタまで影響受けてんのよ。いいからさっさと座った座った」
黒子「床に座ってもかまいませんの?」
芳川「ええ、いいわよ」
一方通行「だからオマエ……まァいいか。打ち止め、オマエが玉座だぜェ」
打ち止め「うーんと、じゃああなたはミサカの隣ねってミサカはミサカは端っこに行きそうだったあなたの腕を捕まえてみたり」
インデックス「ろうそくを使うなら、電気は消してくるんだよ」
美琴「え? ああ、電気なら私が軽くビリビリするからいいんじゃない?」
上条「簡単に言ってるけどそれ直るの時間かかるんだぞ!?」
御坂妹「ちなみにこのケーキは一方通行が作ったホットケーキで、上にはしっかりお誕生日おめでとうプレートも乗っけました、とミサカは報告します。
そしてろうそくの件ですが、今回の誕生日会は上位個体の0歳を祝うものなので刺さない予定でした、とミサカは事情を説明します。
ですが、それだと空気が盛り上がりませんので、とりあえずぶっといのを3本ほど刺してみました。では消灯」
パチン
ボンヤーリ
美琴(いい? 打ち合わせどおりに歌うのよ)
上条(わかってるって。インデックス、先導頼むぞ)
インデックス(歌なら任せてほしいんだよ)
黒子(幸い垂れ幕はわたくしのすぐそばにありますし、いざとなったら空間移動できますの)
黄泉川(お、じゃあお願いするじゃんよ)
芳川(誕生日の歌ってどんな音階だったかしら……まあ口パクでいいわね)
一方通行「……、……えー、こほン」
打ち止め「も、もしかしてあの歌を歌ってくれるの!? ってミサカはミサカは喜びを押し隠してみたり」
一方通行「BGMねェとつっまンねェだろォが。オマエらも知ってンだろ、あの歌をよォ」
御坂妹「ミサカもしっかり学習してきました。では皆さん、せーの、で歌いましょうとミサカは司会を買って出ます」
一方通行「……、せーェの、」
御坂妹「あ、待ってください今箱から出してろうそくに火を灯すので、とミサカは制止します」
サッ
パッ
ポッ
一方通行(マジで刺してンなァ……けど明かりが微妙で文字が読めねェ)
打ち止め「おおーほんとに誕生日会だねってミサカはミサカはテンションがクライマックス!」
御坂妹「これでよし。では、――せーのっ」
一同「ハッピバースデートゥーユー」
一同「ハッピバースデートゥーユー」
一方通行「ハァッピバースデーェ、ディーァ、ラス……」
一同「アクセラオーダーッ!」
一方通行「!?」
打ち止め「ハッピバースデートゥユー、ってミサカはミサカはろうそくをあなたと一緒に消すことを要望してみたりー!」
一方通行「え? は? ちょ、……ン?」
打ち止め「ね、初めての共同作業だよってミサカはミサカはあなたの服の袖を引っ張って急かしてみる!
ほら一緒に、ふーっ」
一方通行「ふ、ふゥー……?」
フー シュンッ
ワーワーパチパチパチ
一方通行「……え、っとォ……、なンだァ、これ……?」
御坂妹「点灯します、とミサカは照明のスイッチをオンにします」
カチリ
一方通行「――! ケーキ、の上の……ホワイトチョコプレートが……」
打ち止め「あなたの名前はピンクで書いちゃった、ってミサカはミサカは舌を出してみる」
上条「でな、一方通行。垂れ幕なんだけど」
一方通行「……ッ!?」
【誕生日おめでとう打ち止め&一方通行】
黒子「誤って垂れ幕ごとふっ飛ばさないかどうか心配でしたのよ?」
一方通行「待て、何がどォなって……アクセラオーダー……? いや、そォなンだけど、俺ェ……?」
御坂妹「以前ミサカがあなたに『誕生日はあるか』と訊ねたことを覚えていますか、とミサカは訊きます」
一方通行「あ、あァ、言ってたけどよォ……」
御坂妹「その問いにあなたは『ない。あっても誰も祝わないしいらない』といった答えを返しました、とミサカは説明します」
一方通行「ン、言ったよォな気ィする」
打ち止め「そういうのは嫌なのってミサカはミサカは大否定してみる!」
一方通行「は、はァア?」ビクッ
打ち止め「あなたはミサカに『俺と出会った日が誕生日』って教えてくれたはずってミサカはミサカはまくし立てるのっ!」
一方通行「あ、うン、言った。言ったけどなァ、だからってなンでこンなことに」
打ち止め「だったら! 誕生日がないって言い張るあなたはミサカと出会った日が誕生日でもいいんだよってミサカはミサカは主張するー!」
一方通行「……、……」ポカーン
打ち止め「だから今日からあなたの誕生日はミサカと同じ8月31日で、今度からはちゃんとふたりの誕生日会をひらきたいのってミサカはミサカは」
一方通行「……打ち止め」
ポスン
打ち止め「! え、えっと、その、う、嬉しいんだけど、いきなりミサカの頭を自分の胸に押し付けるのってどうなのかなってミサカはミサカは思っちゃったり」
一方通行「うっせェよ……、あーもォ、なンだよこれェ……ここにいンのはバカばっかりだなァ、おい」
上条「バカ!? この後に及んでバカですと!?」
一方通行「あァ、とンだバカばっかりでよォ。オマエら頭大丈夫かァ? このクソガキになンか変なこと吹き込まれでもしたのかよォ」
美琴「変なことって、――!」
打ち止め「ああまたあなたはそうやってすぐに喧嘩ばっかり! ってミサカはミサカは怒ってみるんだけど前が見えない~!」
黒子「……んまぁ。殿方さん、あなた肌が随分白いんですのね? わかっていましたけれど、こうして見ると……」
インデックス「えーっと、言わないほうがいいのかな? あくせられーた、ほんとに白いんだよ」
黄泉川「羨ましいって思ってたけど、こうなると羨んでばかりもいられないじゃん」
芳川「ほんとねえ。すぐにバレちゃうんだもの、相手の視覚でも奪っておかないと――赤いのがバレバレよ?」
一方通行「こンのクソニィトォォォオオオ!!!!! 誰が! 誰が赤いンですかァァアアアア!?」
御坂妹(配信決定、とミサカはさりげなく感覚共有をオンに切り替えます)
黄泉川「よしよし、それじゃさっそくケーキ入刀じゃんよ。はい、一方通行」ポン
一方通行「待て待て待てェ! ケーキ入刀ってオマエそれ」
打ち止め「ミサカはちゃっかりあなたの上からナイフを握ってみるんだけど、みんな早く食べたがってるよってミサカはミサカは伝えてみる」
インデックス「そうなんだよ。もう目の前のホットケーキに食らいつきたい衝動をさっきから必死で抑えてるんだから!」
美琴「それとも第一位なのに言葉に踊らされてホットケーキひとつ切り分けられないの?」
一方通行「……、ンだとォ?」
黒子「さあさ、早く切り分けてくださいな。ほら、こんなに美味しそうなホットケーキが冷めてしまいますの」
上条「ほんとうまそうだよな……朝食ってないから腹へってんだよ俺」
芳川「たっぷり愛情は込めたんでしょう? だったら120点くらい取れるのよね」
一方通行「ンだこらちっくしょォォオオオ!!! 切りゃいいンだろ切りゃあ!!! クソガキ、ちゃんと上から握ってろォ!」
打ち止め「い、今の言葉はすごくときめいちゃった、ってミサカはミサカはあなたの手を掴みつつ」
一方通行「いっくぜェェェエエエ!!!! 完璧な十等分を見せてやンよォォォオオ!!!!!」
御坂妹(ムードも何もあったもんじゃねえや、とミサカは上位個体にちょっと同情します……ん、あれ? 十?)
インデックス「はむっ……! お、いしい、おいしいんだよあくせられーたっ! すごいねすごいねこれすっごい美味しいかも!」
上条「空きっ腹とはいえ、かなりうまいなこのホットケーキ……材料が高級なのか……」
芳川「あら、この子は普通のホットケーキミックスを使ってたわよ。ものすごく真剣に」
一方通行「オマエマジで黙れよホントいちいち言ってンなよ」
黄泉川「きっとあれじゃん、愛情がたっぷり」
打ち止め「……えへへー、ってミサカはミサカは嬉しくなってあなたにホットケーキを一口差し向けてみる。あーん!」
一方通行「だァれがするかァクソガキ! 調子乗ってンじゃねェ!」
美琴「さっきは真っ赤で面白かったのに、もう赤みが引けてる」
御坂妹「ベクトル操作で血液の流れをコントロールしたに違いありません、とミサカはさりげなく一方通行の電極のスイッチがオンになっていることを報告します」
黒子「本当に微笑ましいですの。最初はどうなることかと思いましたけれど――これは、大成功と言ってもよろしいですのね?」
17600「ですね、とミサカは呟き残っている一切れをいただきます。さて、バレる前に帰りましょうか、とミサカは片手を挙げて去ります」
美琴・黒子・上条「「「」」」
pm4:00
上条「王様ゲームやらツイスターやら大富豪やらやってたらこんな時間か……タイムセール行く時間じゃねえか」
黒子「お姉様。わたくし達もそろそろお暇しなければなりませんの」
美琴「そうねー、今日は楽しかったわよ。またなんかあったら呼んで」
一方通行「誰が呼ぶかボケ」
インデックス「ってことは、次があるかもしれないんだね」
一方通行「ね、ェ、よ!」
打ち止め「この人が素直じゃないのはいつものことーってミサカはミサカはうまく流してみる。じゃあまたね、お姉様達っ!」
上条「おう、じゃあなーって……ちょっといいか? 一方通行」
一方通行「……おォ、なンだよ」
御坂妹「あちらはなにやら秘密裏に会合を開いたようなので、とミサカは片付けを手伝いつつ、一方通行が十等分したのはスネークの分も含めてだったことに気づき愕然とします」
芳川「ああ、そういえば一方通行が入ってきてから数分後になんか来てたわ」
黄泉川「なんで言わないじゃん!?」
芳川「こそこそしてたから面白かったのよ。あの子、結局優しいのかしら……」
上条「あのさ、お前昨日言ってただろ?」
一方通行「……何を?」
上条「『……情熱的な恋をしてェ』」
一方通行「あァ、言ったなァ……言ってた言ってた」
上条「俺も正直言って、恋とか愛とか恋愛とか、全然わかんねえんだよ。だけどさ、今日お前と打ち止め見て気づいた」
一方通行「……、?」
上条「たしかに恋じゃないかもしれない。お前はあの子を守りたくて、あの子の幸せを願ってる。
で、あの子はお前に守ってもらうだけじゃなく、幸せになってほしいって思ってるんだ」
一方通行「……、……」
上条「俺は、お前達の間にあるものの名前をひとつしか知らねえよ」
一方通行「……、なンだって、言うンだよォ」
上条「なあ、そうやって目を背けるのはやめとけって。わかってんだろ?
――お前も打ち止めも、お互いを愛してるじゃねえか。
紛れもなく、俺が知ってる中じゃ相当情熱的な愛だと思うぞ」
一方通行「……あハ。すっげェ台詞吐いて帰りやがったぜェ、あのヒーロー様」
打ち止め「ねえねえ、何のお話してたのってミサカはミサカはあなたに訊いてみる」
一方通行「おーしえねェー」
打ち止め「ずるいー! ずるいよずるいよミサカだってあなたと秘密のお話したいのにってミサカはミサカはー!」
一方通行「ガキにゃまだ早ェンですよォ。素敵な恋がしてェなら、早く大人になるこったなァ?」
打ち止め「む、ううう……あなただって恋なんかしたことないくせに! ってミサカはミサカは怒ってみる!」
一方通行「あーハイハイ、ありませンありませン」
打ち止め「もうー! いなされてる感じしかしないってミサカはミサカはもうあなたなんか知らないんだからー!」
一方通行「あァ、そンじゃオマエはプレゼントもいらねェンだよなァ……アー残念、アーどォしよっかなァー、そォだーいっそ10032号にあげてくっかなァー」
打ち止め「!! そ、それはミサカの! あなたからもらうものはミサカのなの! ってミサカはミサカはしがみついてみる……」
一方通行「ン。だったらおとなしくしてろ、後からつけてやっから」
打ち止め「~~~っ……ミ、ミサカだってあなたに渡したいものがあるんだよってミサカはミサカはプレゼントを後でちゃんと渡すんです!」
一方通行「あァ、期待してる」
end?
952 : 以下、名... - 2010/04/18(日) 23:51:42.71 n3Cqwwzg0 140/148
とりあえずていとくンのターン長すぎたよな
あとちょっと待て
「……ン、あ……ァ?」
くるりと寝返りを打った一方通行は、その指先が何かに触れたことに気づく。
ふに、とやわらかい感触が体を駆け巡った。
随分久しぶりに味わうやわらかさは、彼の目をばちりと開かせるのに十分すぎるほどの刺激である。
視界いっぱいに広がったのは、まだあどけない寝顔の打ち止めだった。
ふに、というやわらかな感触は、どうやら一方通行の手が彼女の頬に触れたことで伝わったらしい。
一方通行は思わず身を硬くした。
なぜ、この少女が自分と同じベッドで寝ているのだろう。
しかも、自分はこんなに他人と接近した状態で眠れていたのだ。
相手が打ち止めでなければありえないとわかっていながらも、油断していた自分に嫌気が差して、一方通行はゆらりと上半身を起こす。
よく眠れた、と正直に思う。
こんなに気持ち良く目覚めたのは久方ぶりだ。
打ち止めと離れて暮らすようになってから、彼の身は一層深い闇に置かれた。
そのためか、睡眠中も緊張は解くことなどできなかったし、従って彼の睡眠が深いものになることもなかった。
今、自分の胸に満ちている安らかな思いは、すべてこの子どもから受け取ったのかもしれない。
打ち止めは一方通行にとって、あたたかいものの象徴だった。
――誕生日がないって言い張るあなたはミサカと出会った日が誕生日でもいいんだよってミサカはミサカは主張するー!
聞いたときは、なんてことを言うのだと耳を疑い、目を疑い、すべての感覚をシャットダウンさせてしまったくらいだった。
たしかに一方通行はいつだったか、少女に言ってやった。
誕生日がほしいと言った少女に、自分と出会った日を誕生日にすればいいと。
それは、その場しのぎの回答でしかない。
自分と出会った日が誕生日だなんて、不吉にも程がある。
クソったれの悪党と出会った――それだけで厄日だ。
そう思う。
打ち止めも、そのときはつまらないと否定していたはずだった。
それがどうして昨日のようなことになったのか、一方通行はいまだにわからない。
面子は予想できるものだったし、そもそも主催として誕生日会の準備をすすめていたのは他ならぬ自分だった。
そう、はじめは軽い気持ちで考えたこと。
誕生日のない打ち止めに、誕生日会でもひらいてやろうかと思っただけ。
この子どもが、自分の発言をつまらないと言ったから。
そんな取ってつけたような理由をもっともらしく振りかざして、誕生日会をひらくと知り合いに伝えたのだ。
いつから打ち止めが自分の計画に気づいていたのかと考えて、どうせ結論は出ないことを一方通行は知っている。
見た目は10歳前後でも、彼女は妹達の上位個体――最終信号。
なにより、一方通行の演算を補助している妹達のトップなのだ。
どこで計画が露見したっておかしくはないし、今にして思えば、10032号がチョコレートを作った後、一方通行にプレートを預けず自分で保管すると言い出した時点ですでに打ち止めは知っていたはずだ。
出し抜かれたという思いがたしかにあった。
ただその思いすら、どこか愛おしく思えてくるものだから、参るのだ。
この子どもに振り回されている自分が、学園都市最強のレベル5、序列にして第一位の一方通行らしくないと、思っているのに。
それでも、この少女のそばにいたいと願ってしまう。
打ち止めが一方通行にプレゼントだと言って渡してきたものは、黒いヘアピンだった。
何に使わせる気だと問えば、あなたは最近髪が伸びてきたから、と少女は答えた。
なるほどと納得し、一方通行は子どもに同じようなヘアピンを与えた。
もっと明るくて、花飾りのあしらわれた、打ち止めによく似合うヘアピンを。
つけてやると言い出したのは一方通行だったのだから、有言実行とばかりに彼は少女の前髪をそのヘアピンで留めてやった。
我ながら買ってきてよかったと彼はそのとき思ったものだが、それ以上に鏡で自分の髪を見つめていた打ち止めがひどくはしゃいで、寝るときもこれを留めたまま寝ると言い出したときはさすがに叱った。
ヘアピンをつけたまま寝てしまうのは危険だ。
しばらく駄々をこねていた打ち止めの髪から無理矢理ヘアピンを奪ったら泣き出したので、さらに一方通行は面倒に思って、明日の朝もう一度つけてやるからとなだめた。
自分でも、ここでチョップを食らわせなかったことに確かな成長を実感した。
そういえば、と一方通行は帰り際のとある少年の言葉を思い出す。
――お前も打ち止めも、お互いを愛してるじゃねえか。
あんな台詞を真面目くさって吐き出せるのは、世界中を探したってそうはいない。
あの少年は、それほどに貴重だ。
自分を負かした相手が言うことであるから認めるのは少し癪だったのだが、目の前の一向に起きる気配のない少女の頬をなんとなくつっついていると、たしかにこれは愛とかそういうものなのかもしれないと思えてくる。
まるで呪文だと一方通行は口端をゆがめた。
その表情が、世間一般で言うところの微笑である、と浮かべている本人が気づくことはおそらくない。
そして、目の前の少女は本当は起きていて、彼がやわらかな微笑みを浮かべていると気づいていることすら、わからない。
数分後、ヘアピンをつけてやろうと一方通行が改めて打ち止めの体を軽くゆすり、それでも反応を返さない彼女に痺れを切らせて頬をぺちぺちと叩いてからようやく打ち止めは起きたふりをしたが、その顔は赤かった。
「なンで顔赤いンだオマエ。そンなに頬叩いてねェぞ」
「べ、べつに赤くないと思うのってミサカはミサカは主張してみるけど……えっと、その、昨日のあなたのほうが百倍赤かったのよってミサカはミサカは反撃してみたり」
「……ネットワークぶっ潰す。マジぶっ潰す。今すぐぶっ潰す」
「朝から物騒なこと言わないでってミサカはミサカは口を滑らせちゃった自分を責めてみたり。
あの……朝になったから、もう一度あのヘアピンつけてほしいなって、ミサカはミサカは要望を伝えてみるんだけど……」
少女の顔が一層赤らんだ。
仕方ねェ、と少年は小さく呟き、そっと少女の前髪に手をのばす。
びくんと少女の体はゆれ、それを見た少年が今度は楽しそうに笑った。
end!!!!!!!!!
990 : 以下、名... - 2010/04/19(月) 00:22:12.67 T/O55k3J0 148/148
なんか最後はもうちょっと長かったんだがデータ紛失したからやっつけ感が半端ないよなすまない
ここまで付き合ってくれてありがとう
最初は2日程度で終わる予定だったんだぜ……何日騙し騙しやってたんだかなあああああああああああ!!!
原作ではシリアスまっしぐらな一方さんを少しでも楽しく朗らかにしてみたかったわけだが成功したのかこれえええええ
まあいっか
ほんとありがとな!
俺変態も好きだけどお前らも大好き!
だけどそれ以上に一方さんと打ち止めを愛してる!
ビール飲むわ
心があったかくなるイィ話だった
創約でさらにシビアな状況になってるから幸せな一方通行と打ち止めが見れてホント良かった