イケメン「お前ってさ、いい声してるよな」
声優「なんだよ、いきなり」
イケメン「さっすがプロの声優だけあるよな~」
声優「別に……大して売れてないし。近頃はヒマしてるし」
イケメン「そこでお前を見込んで、頼みがあるんだけど」
声優「……頼み?」
イケメン「お前……俺の声をやってくんない?」
声優「――はぁ?」
元スレ
イケメン「お前、俺の声をやってくんない?」声優「はぁ?」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1509121270/
声優「お前の声をやれって、どういうこと?」
イケメン「実はさ、ネット上ですごい美女と知り合ったんだよ」
イケメン「で、今度デートすることになったわけ」
イケメン「俺としてはその人をモノにしたいんだけど、その人って“いい声の人が好み”らしくてさ」
イケメン「だけど、俺はこの通り、声はひでえダミ声だから……」
声優「だから、俺にお前の声をやれ、と」
イケメン「その通り! お前、顔は全然大したことないけど、声はすっげえいいからさ!」
声優「顔は大したことない、は余計だ!」
声優「で、お前の声をやるってのは、具体的にどうやって?」
声優「俺があらかじめ色んなセリフを録音して、必要なセリフをその都度再生するような感じ?」
イケメン「違う違う。そんなまどろっこしいことやってらんないよ」
声優「じゃあ、どうすんだよ」
イケメン「お前には俺に付き添ってもらって、リアルタイムで俺の声をやって欲しいんだよ」
声優「は?」
イケメン「分かんないか? つまり、お前には俺なら次にどんなことを喋るかを予想して」
イケメン「口パクする俺に声を当てて欲しいんだよ」
声優「……」
声優「できるわけねーだろ、そんなこと!!!」
声優「リアルタイムでお前の声をやる? お前の言いそうなセリフを予想して? 不可能だ、そんなこと!」
声優「俺はお前じゃないんだからさ……」
イケメン「そう、その通り。この作戦を成功させるには、お前は俺になりきってもらわなきゃならない」
イケメン「だからお前には、今日から俺と共同生活をしてもらう」
声優「はぁぁ!?」
声優「なんでそこまでしなきゃならないんだよ!」
イケメン「もちろん金は払うからさ。な、この通り!」
声優「金は払うって……こっちにだって仕事が……」
イケメン「さっきヒマだっていってたじゃねえか」
声優「う……」
イケメン「それにこんな体験したら、きっと声優としての実力も上がると思うぜ!」
声優「……」
イケメン「決まりだな」ニヤッ
<イケメンの自宅>
声優「へぇ~、お前いいマンション住んでるんだなぁ」
イケメン「まぁな」
声優「オートロックなんだ、すげぇ~」
声優「おぉ~、テレビでけぇ~」
声優「あ、ニンテンドースイッチ。俺、まだ持ってないんだよ」
イケメン「……」
イケメン「おい」
声優「!」
イケメン「お前は俺になりきらなきゃならないんだぞ? もっと俺に興味を持て!」
イケメン「俺に質問をしろ!」
声優「分かった分かった」
声優(っていっても、何を聞けばいいんだよ……)
声優「じゃ、じゃあ……」
声優「お前って子供の頃からイケメンだったの?」
イケメン「イケメンだったよ。ほら、写真」
声優「うわ、美少年じゃん……可愛すぎるだろ、これ」
声優「バレンタインのチョコなんて、すごいもらったんじゃないか?」
イケメン「そうだなぁ……百個ぐらいもらったこともあったっけ」
声優「ひゃっこ……」
声優「今までどれぐらいの女性とお付き合いを?」
イケメン「そんな大したもんじゃないよ。10人ぐらいかな」
声優(俺からすれば十分多いよ……)
声優(てか、ただ自慢話聞かされてるだけになってるじゃん……)
イケメン「……よし。お前もだいぶ俺のことを分かってくれたようだし、風呂でも入るか」
声優「ああ、ごゆっくり。俺はテレビ見てるから」
イケメン「なにいってんだ?」
声優「?」
イケメン「お前も一緒に入らなきゃ」
声優「へ、なんで!?」
イケメン「そりゃあ、デートまでにお前には俺になってもらわなきゃならないんだから」
イケメン「裸の付き合いも当然必要だろうが!」
声優「はぁ……」
ザバァ…
イケメン「たまには男二人で風呂ってのもいいもんだろ」
声優「あ、ああ」
声優(なんでこんな緊張しなきゃならないんだ)
イケメン「ほら、背中洗ってやるよ」ゴシゴシゴシゴシ
声優「あ、ありがとう」
イケメン「お前ってホントいい声だよな。風呂だと声が響いて、余計そう思うよ」
声優「ハ、ハハ……」
イケメン「ん? どうして前を隠す?」
声優「今は見ないでくれ、頼む!」
イケメン「ふぅ~、風呂上がりにビールでも飲むか」
声優(ヤバいな……風呂上がりのイケメンがイケメンすぎる)
カシュッ カシュッ
グビッグビッグビッ…
イケメン「ぷはぁっ、うまい!」
声優「あぁ、うまい!」
声優「ビール代払うよ」
イケメン「いらねえよ! こっちが無理いって、共同生活させてるんだから!」
イケメン「さ、どんどん飲もう!」
声優「お、おう」
イケメン「アッハッハ……」
声優「へぇ~、ホントかよ」
イケメン「あ~……やべ、もうこんな時間か」
声優「そろそろ寝ないとな」
イケメン「じゃ、一緒に寝るか!」
声優「へ?」
イケメン「そりゃあ、俺になりきってもらうんだから、一緒に寝なきゃ」
声優「だけどさ……」
イケメン「心配すんな! うちのベッドはでかいから!」
声優「いや、そういうことじゃなくて……」
イケメン「じゃ、おやすみ」
声優「あ、ああ」
イケメン「すぅ……すぅ……」
声優(寝るの早いな……てか、イケメンは寝顔もイケメンなんだなぁ……)
声優(無防備で、あどけなくて、かっこよくて……いつまでも見ていられる)
声優(って、バカなこと考えてないで、寝ないと!)
声優「ぐぅ……ぐぅ……」
デート当日――
<遊園地>
イケメン「ついに待ちに待ったデートの日だ。今日までよくやってくれた」
声優「ああ」
イケメン「もうすぐ相手がやってくるはず。お前はすぐ後ろからついてきて、俺の声をやってくれ」
イケメン「頼むぞ!」
声優「……任せといてくれ!」
声優「……」コソッ
イケメン(来た! 写真より美人じゃないか!)
美女「おはようございます……あの、イケメンさん、ですよね?」
イケメン『ええ、そうです』パクパク
美女「まあ、ステキな声!」
美女「イケメンさんって、声もイケメンなのね!」
イケメン『そんなことないって』パクパク
イケメン『君こそ、いい声じゃないか』パクパク
美女「うふふ、ありがとう」
イケメン(完璧だ! 俺がいいそうなセリフをいってくれてる! さすが、プロの声優!)
美女「まず、どれから乗る?」
イケメン(俺なら最初は、並ばず乗れそうなコーヒーカップにするところだけど……)
イケメン『手始めにコーヒーカップなんかどうだい? 空いてるし』
イケメン(おおっ! 正解だ!)
美女「うん、いきなり長時間並ぶのもやだしね」
イケメン『決まりだね!』
グルグルグル…
イケメン(運よく、声優が乗ってるコーヒーカップもこの近くを回ってる……)
イケメン『よぉ~し、どんどん回そう』
美女「きゃ~! 目が回っちゃう!」
イケメン『でも俺は君の美しさに目が回っちゃいそうだよ』
美女「もう……っ! イケメンさんったらっ……!」
イケメン(いかにも俺がいいそうな口説き文句だ……成長しやがって)
イケメン『次はジェットコースターに乗ろうか』
美女「うんっ」
イケメン『でも、一時間待ちか……』
美女「イケメンさんと待ってたら、すぐよ」
イケメン『そういってもらえると嬉しいよ』
ハハハ… ペチャクチャ…
イケメン(一時間の長丁場だというのに、声優は俺のいいそうなセリフや話題でそつなく雑談をしてくれた)
イケメン(いくら共同生活したとはいえ……プロの声優、恐るべし)
ゴォォォォォォッ!!!
イケメン『うわあああああああああああっ!』
美女「きゃああああああああああっ!!!」
イケメン『いやぁ~、いっぱい叫んじゃったよ』
美女「イケメンさんったら、悲鳴までイケメンね」
イケメン(俺が叫んだら俺の地声が出ちゃうからな……ちょっと危なかったぜ)
イケメン『ちょっとお腹すいたね』
美女「うん」
イケメン『軽くフランクフルトでも食べよっか?』
美女「そうしよっ!」
モグモグ… モグモグ…
イケメン『食べたら、色んな乗り物どんどん回ろう!』
イケメン(暗くなってきた……)
イケメン(俺ならここらへんのタイミングで、観覧車に乗るだろうな……)
イケメン『観覧車乗ろっか』
美女「うんっ!」
イケメン(声優のやつ……見事なまでに俺の行動パターンを把握してるな。怖いくらいだ)
イケメン(……ってちょっと待てよ)
イケメン(さすがに観覧車の中まで、声優を連れていくわけにはいかない)
イケメン(かといって俺が声を出したら、俺の地声がバレてしまう!)
イケメン(仕方ない……観覧車に乗ってる間は無言を貫くしかないか)
……
イケメン(ふぅ~、観覧車の中では無言でい続けたぞ)
イケメン(あっちから話しかけられたらどうしようかと思ったけど)
イケメン(なぜか美女さんもずっと沈黙してくれてたから、助かった)
イケメン(さて、いよいよ閉園……クライマックスだ)
イケメン(今日のことを礼をいうと同時に、告白して、一気にお近づきになってやる!)
イケメン(で、ベッドへGoだ!)
男子トイレ――
イケメン「お疲れ! ここまでは完璧だったぜ! 上手くいきすぎて怖いぐらいだ!」
声優「そういってもらえると、声優冥利に尽きるよ」
イケメン「いよいよメインイベントだ」
イケメン「とっておきのイケメンボイスで告白してくれ! 頼んだぞ!」
声優「分かった……告白するよ」
イケメン『今日は楽しかったよ。本当にありがとう』
美女「うん……」
イケメン『最後に、俺から君に伝えたいことがあるんだ』
美女「あ、私も……」
イケメン『え? じゃあ君から……』
美女「ううん、あなたから……」
イケメン『じゃあ俺から言わせてもらうよ』コホンッ
イケメン『俺は……君のことが……』
イケメン『いや……』
イケメン『俺はイケメンのことが好きです!!!』
美女「!?」
美女「イケメンさんが、イケメンさんを好きって……どういうこと?」
イケメン(なんだ今のは……!?)
イケメン「ち、違うんだ! 今のは違うんだ! ちょっとしたギャグでね……」
美女「あれ? 今までと声が違わない?」
イケメン「あ、し、しまった!」
イケメン『俺はイケメンのことが好きになってしまったんだ!』
イケメン(また……!)
イケメン「おい、声優! 何やってんだよ! これはどういうことだ!?」クルッ
声優「……」
声優「す、すまない……!」
イケメン「すまないで済むか! 最後の最後で変なことしやがって!」
声優「俺は……俺はこれまでの共同生活で、お前のことがすっかり好きになってしまったんだ!」
声優「だからっ……! お前を美女さんとくっつかせたくなんかなかったんだ!」
イケメン「……っ!」
イケメン「……やれやれ、しょうがない奴だな」
美女「ビックリした!」
美女「ま、まさか……あなたたちも私たちと同じことをしてただなんて!」
イケメン「へ、どういうこと?」
美女「つまり、こういうことよ」
美女「これが私の本当の声なの」
イケメン(うわぁ、顔に似合わず結構ゴツイ声!)
女声優「そうなんです」ササッ
女声優「今までの美女さんのセリフは、みんな私がしゃべってたんです……」
イケメン「な、なんだってーっ!?」
声優「イケメンも美女さんも、自分の声優を雇ってたというのか……っ!」
イケメン「つまり俺と美女さんの近くには、ずっと二人の声優が近くにいたってことか……!」
女声優「そして……私もそちらの声優さんと同じ結論に達してました」
女声優「私……友達として、美女さんの力になりたかった」
女声優「だけど私も、共同生活をするうち美女さんに恋してしまいました!」
女声優「美女さん、お願い! 私、あなたのこと好きなの! どうか私だけのものになって!」
美女「もう……仕方ない子ね」ギュッ
女声優「美女さんっ……!」
声優「イケメン……好きだ! 俺と付き合ってくれ!」
イケメン「ああ……いいとも! 俺も心の底では、お前の声だけでなく全てに惹かれてたんだ!」
女声優「美女さん、愛してます!」
美女「私もよ……」ウフッ
今宵、遊園地にて、二組のカップルが誕生した――
―END―

