1 : 以下、名... - 2017/10/28 13:23:43.72 NOidhBLf0 1/39

「なによ、朝っぱらから」

「いいじゃん。結婚して」

「だから、私はあんたなんかと結婚しなーいの。バカ言ってないで顔洗ってきなさい。朝ごはん作ってあげるから」

「はーい…あーあ、またフラれちった。一度くらい結婚してくれてもいいのに」

「結婚するにしても段階があるでしょうが。何年か付き合ってから言うものでしょ」

「マジで?付き合ってくれるの!?」

「なんでそうなるのさ。付き合いません」

「なあんだ…」

元スレ
幼馴染「おはよ、男」 男「結婚しよう」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509164623/

2 : 以下、名... - 2017/10/28 13:24:10.67 NOidhBLf0 2/39

「美味いか?」


「美味しいなあ、幼の料理は世界一だよ。毎朝作ってくれないかな。僕と結婚」
「しませーん」

「ひどい…一世一代のプロポーズを断るなんて」

「1000回くらい言われてますけどね。あんたのプロポーズは軽すぎるわ」

「あ、お弁当作ってあるから持ってきなさい」

「愛妻弁当ありがとうね。今日一日を過ごすための活気が沸いてくるよ。ああ、楽しみだなあ」

「愛妻弁当じゃないわよ。えー…義理弁当よ。義理弁当。ビジネスの関係でしかないんだから」

3 : 以下、名... - 2017/10/28 13:24:44.88 NOidhBLf0 3/39

「早く行こうよ~。男の癖に準備遅すぎるのよ」

「せっかちだなあ。だって、美しい幼の隣を歩くに相応しい男にならないといけないじゃない?」

「殊勝な心掛けですね。あんたは別にそんなことしなくても、いいのよ」

「なんで?」

「……なんでも」

「ほら、いいから!はやく!はやく!」

「よし、よし。うん。行こっか。わざわざ僕のこと待っててくれるんだから、やっぱり幼は優しいなあ」

「待ってないと露骨に落ち込むから仕方ないでしょーが。面倒くさいなあ」

「今日も手、繋ごっか」

「繋ぎません。今日も、って、小学校以来繋いだことありません」

4 : 以下、名... - 2017/10/28 13:25:17.35 NOidhBLf0 4/39

「めっきり寒くなってきたね。雨まで降ってるし」

「最高気温15度だってさ。どんどん寒くなってくるんだから。ああ、やだやだ」

「冬服の幼も素敵だよ」

「そりゃあどうも」

「そんなに寒いならマフラーと手袋編もうか?僕とペアの2つ。僕、細かい作業好きだからすぐ編めると思うよ」

「発想が女の子みたいね。学校で噂立つようなことやめてって言ってるでしょ」

「そっか。じゃ、幼の分だけなら編んでもいい?」

「まあ、いいけど…ありがと」

「色、どうしよっか。青?」

「うん、青」

「幼は冷え性なんだから、風邪には気を付けてね」

「うん。そうする」

5 : 以下、名... - 2017/10/28 13:25:44.30 NOidhBLf0 5/39

「席空いたよ、座って座って」

「いいの?じゃ、遠慮なく」

「相変わらずむさ苦しいなあ。降ってるから一段と湿気が強くて気持ち悪いよ。一日くらいガラ空きにしてくれてもいいのに」

「あはは。パンデミックとか大災害が起きて、人口が減ったら空くかもね」

「そっかあ。うーん、人がたくさん死ぬのは良くないもんね」

「満員電車は社会が正常に回ってる証拠だと思うよ、たぶん。どうせ社会に出ても毎朝こんな風に寿司詰めにされるんだから、予行練習だと思いましょう」

「あ、幼はそんな心配しなくていいよ。主婦は電車に乗る必要無いんだから」

「はいはい」

6 : 以下、名... - 2017/10/28 13:26:12.42 NOidhBLf0 6/39

男友「や、男。今日も彼女と一緒?いーいなあ、おめえ」

「でしょ?いやあ、幼がどうしても一緒にって言うからさあ」

「はっ倒すぞてめえ。男友くんも、こんな奴彼氏でもなんでも無いって何度も言ってるでしょ」

「照れちゃってぇ。かーわいいー」

「照れてない。お前嫌い。バカ、死ね」

男友「ひでえ」

「悪口なんて普段言い慣れてないから、語彙が少なくて幼稚な幼もかわいいなあ」

男友「お前って明るいよな」

7 : 以下、名... - 2017/10/28 13:26:40.36 NOidhBLf0 7/39

男友「なんでお前って幼さんと一緒に昼飯食べないの?仲いいのに」

「幼は学校で一緒に食べること嫌がるからさ。僕だって野郎と食べててもクソつまらないのに、ひどいよね」

男友2「あ?喧嘩売ってんのか?」

「ごめんね。思ったことすぐ口に出ちゃうんだ」

男友「根の性格が腐ってるんだろうな。お前、なんか気持ち悪いし。友達いない理由もよく分かるよ」

「うん。おかげで僕の周りには僕を許せるようないい人しか残らないんだ。だから改善はしないよ」

男友2「勝手な野郎だよ。轢かれて死ね」

男友「死ねは言い過ぎだろ」

男友2「ごめん」

「いいよ」

8 : 以下、名... - 2017/10/28 13:27:15.87 NOidhBLf0 8/39

男友「羨ましいなあ…乳は無いけどすらっとした美人だし。俺も彼女欲しいなあ」

「いいでしょ、僕の幼馴染。女神がいるならあんな姿をしていると思うよ。ああ、かわいいなあ」

男友2「幼さんの話になるとすぐトランスするからよ、きめえなあ」

男友「確かに幼さん優しいもんな。男みたいな無神経クソ野郎と何年も一緒にいてくれるんだから。俺でもたまに殴りたくなるのに」

「この世で一番心の広い人間だからね。僕なんかのことも受け入れてくれるんだ」

「あと、幼には普通に殴られてるよ。あんまり調子乗ってるとすぐ蹴ってくるんだ」

男友「殴られるは殴られるんだ」

男友2「あの子がそんなことするとこなんてあんまり想像できないな。相当ムカつくことばっかしてるんだな」

9 : 以下、名... - 2017/10/28 13:27:51.06 NOidhBLf0 9/39

女友「駅前にクレープ屋出来るらしいよ」

女友2「もう無かったっけ?増えた?」

女友「うん、増えた。9軒目」

「ここらへんバカみたいにクレープ屋多いよね。コンビニより多いんじゃないの」

女友「それだけ需要があるってことだよね。まあ、クレープ嫌いな人間なんて存在しないしね」

女友2「下世話な話、原価もかなり安そうだし、儲かるんだろうなあ」

女友「あ、クレープで思い出した。この前さ、幼って男くんと一緒に公園でクレープ食べてイチャイチャしてたよね」

「げ」

10 : 以下、名... - 2017/10/28 13:28:18.94 NOidhBLf0 10/39

女友2「お?ほんとに?つまり~?ということは~?ふたりは~?」ニヤニヤ

「ちが、違うったら、違う違う!あれはただ、二人で出かけて、公園でクレープ食べたってだけで」

女友「違うも何も、あたしが言ったこと反復しただけだよ。落ち着きなって」

「だから、変な意味なんて無いから!」

女友2「別に認めたらいいのに。家が隣同士の幼馴染みなんて、いかにもじゃん」

女友「二人で話してる時、本当に楽しそうだよ。幸せそ~に笑って。好き合ってる人同士が一緒にならないのは、勿体無いよ」

「……ほんとに、そういうんじゃ無いんだってば………私、なんか」

女友「え?」

「…なんでもない」

11 : 以下、名... - 2017/10/28 13:28:52.74 NOidhBLf0 11/39

「帰ろっか。幼」

「授業終わってすぐにこっち来ないで」

女友「お邪魔みたいだね。二人とも、また明日ね~」

「ごめんね、女友さん」

「先帰ってて。私復習してるから」

「真面目だなあ、幼は。主婦にはそんな知識必要無いったら」

「勉強ってのは必要かどうかじゃなーいの。やることが重要なの。私は別に勉強嫌いじゃないしね」

「そっか。幼が言うならきっとそうなんだろね。僕も一緒にやっていい?」

「いいわよ。じゃ、とりあえず図書室行こっか、クラスのみんなに見られたら恥ずかしいから」

「恥ずかしいんだ。うーわ、かっわいいー」

「黙れ」バシッ

12 : 以下、名... - 2017/10/28 13:29:21.31 NOidhBLf0 12/39

「あ、雨引いてるね、良かった」

「ほんとだ。私は雨好きだけどね。雨の音って落ち着かない?」

「人間の脳の波と同じとかどうとか、なんかなんとなく落ち着く音らしいよ。同じ波は」

「かなり曖昧な情報ね。とにかく雨の音が好きなんだ。雨の音以外何も聞こえなくなるから」

「幼は結構根暗だからね。音が減ると安心するんだろね。高校で友達が出来て安心したよ」

「私は根暗じゃない。外に出るのが面倒で、ぼそぼそとしか話せないだけよ」

「それを根暗って言うんじゃないの?幼が暗い部屋で格ゲーに没頭してる姿とか正直キモいよ」

「うるさいなあ。じゃあ電気点ければいいんでしょ、点ければ」

「幼がどれだけキモくても僕は受け入れるよ」

13 : 以下、名... - 2017/10/28 13:29:51.95 NOidhBLf0 13/39

「おばさんも私の親も留守だからさ、晩ご飯私が作るよ。何食べたい?」

「うーん…寒いから、鍋にしよっか。鶏の水炊きとか」

「あ、私も食べたかった。じゃ、えーと、白菜あるから、ネギもある。よしよし」

「あと、プロテインも買うね。プロテインが切れるとイライラするんだ」

「好きだねえ、鍛えるの…男ってこうして見てみると大きくなったわよね。肩もがっちりして」

「鍛えてないと、いざと言うとき幼を守れないからね」

「守る、ね…」

14 : 以下、名... - 2017/10/28 13:30:19.77 NOidhBLf0 14/39

「ああ、眠い。なんで電車に乗ると眠くなるんだろうね。外国人はあんまり電車で寝たりしないらしいよ」

「へえ、なんでだろ。日本人は仕事の量にスタミナがついてってないからかな。魚ばっか食べてガリガリだから」

「でも、デブはよく寝てるイメージあるよ。アメリカ人なんてハンバーガーとコーラ以外食べないからデブしかいないはずだよね」

「アメリカに対する偏見が凄いわね。所詮、我々農耕民族とは体の作りが違うのよ」

「僕もアメ公に産まれてたらなあ、もっとムキムキになれたのかなあ。僕なんか所詮ミドル級の域を出ないもんね」

「珍しいわね、あんたがそういうこと言うの。自分の産まれを嘆いちゃダメよ」

「そうだね。幼の隣の家に産まれたってことが何よりも大事だもんね。幼もそう思うでしょ?」

「…知らないわよ、そんなの」

15 : 以下、名... - 2017/10/28 13:30:48.14 NOidhBLf0 15/39

「ごちそーさま」

「美味しかった?」

「美味しかったよ、世界一。水炊きなんて誰が作っても同じだけど、愛はその味を億倍にも増幅させるから」

「お皿出して。洗うから」

「僕も手伝うよ。終わったら映画一緒に見よう。バタフライエフェクト3とグラントリノどっちがいい?」

「よく3借りる気になったわね。グラントリノって面白いの?」

「らしいよ」

16 : 以下、名... - 2017/10/28 13:31:16.97 NOidhBLf0 16/39

「うぅ……ううぅー」グスグス

「うん。面白かったね。あ、もうこんな時間だ」ピッ

「ああぁ!?何消してんの?何消してんの!?」

「何って、終わったから。あとはスタッフロールだけじゃない」

「断りもなく切るんじゃないわよ、この野郎!」

「え?スタッフロール見ても仕方ないじゃい、名前流れるだけでしょ」

「余韻を味わいたいの!私は!ED曲を必死に考えてくれた制作側の人にも失礼でしょーが!」

「えー、変わってるなあ、幼は。黒い画面見て泣いてる幼のこと、かわいいけどバカだなあ、っていつも思ってたよ」

「ぶっ殺す!」ゲシッゲシッ

「あはは、痛い痛い」

17 : 以下、名... - 2017/10/28 13:31:50.68 NOidhBLf0 17/39

「あ、そうだ。あのね、この前出かけてたとこ、女友に見られてたの。どうしてくれるのよ」

「ああ、この間のデートね。見られてたんだ。それがどうしたの?」

「だから、見られたくないって言ってるじゃない」

「うーん…でも、僕、幼と並んで歩くのが生きがいなんだ。それでも幼がどうしてもって言うんならやめよっか。あーあ、残念だなあ」

「やな言い方するわね……ああぁ、もう。分かったわよ。我慢すればいいんでしょ!」

「…私もまあ、楽しいっちゃ楽しいしね」

「ありがとう、幼。両想いだね」

「うるさい!」


「じゃあ、おやすみ、幼。また明日ね」
「うん、おやすみ。また明日」

18 : 以下、名... - 2017/10/28 13:32:21.23 NOidhBLf0 18/39

「あ~、眠いなあ。幼が起こしてくれないとどうもスッキリしないよ」

「へえ、大変ね。慣れるまで行かないようにしましょうか」

「そんなこと続けてたらそれこそ永眠しちゃうよ」

「そりゃあいいわね。試してみましょう」

「幼と結婚するまで僕は死ねないよ。ちょっとは僕の夢を応援してよ」

「なんで自分から巣穴に入らなきゃならないのよ」

後輩「先輩、おはようございます!」

「後輩ちゃん、おはよう。今日も元気だね」

後輩「あ、幼先輩もおはようございます」

「あ、はい」

(なんだよ、その目は… )

19 : 以下、名... - 2017/10/28 13:32:53.85 NOidhBLf0 19/39

(あいつもまあまあモテるようになったねえ)

(昔はいつもおどおどしてたのに、自信に満ちた顔するようになったし)

(体もがっちりして、外見は悪くないものね)

(…いつからこんなふうになったんだっけ?)

女友「おっはよー、幼」

「え?ああ、おはよう」

女友「どしたん?なんか呆けて」

「えーっ、と、もうすっかり秋になったなあ、って」

女友「?」

20 : 以下、名... - 2017/10/28 13:33:21.57 NOidhBLf0 20/39

「だからさ、なんでもないんだってば」

女友2「ええ~?ほんとかなあ。あたし、男くんが後輩に挨拶されてるの見たよ」

「相変わらずの恋愛脳ね。それに関しては、本当にどうしたとかは無いの」

女友2「少しくらいは嫉妬しちゃったでしょ?」

「ううん…どうだろうね。嫉妬っていうか……モテる理由がいまいち飲み込めない、というか」

女友「それは嫉妬とは違うの?」

「分からない。…正直、男が女の子と仲良くしてるとイライラするのは認めるけどさ…」

「それとはまた別の部分があるんだよね」

21 : 以下、名... - 2017/10/28 13:33:51.27 NOidhBLf0 21/39

女友2「なんにせよ、グズグズしない方がいいんじゃない。かわいい子に告白されたらあっさり付き合っちゃうかも」

「それは無いわよ、ないない。他の子と付き合ったりしないわよ」

女友「………」

女友2「へ~え、そうなんだー。愛されてんね、男くん」ニヤニヤ

「愛してるとかじゃなくて、あいつはそういう奴だって知ってるだけよ」

女友「ほんとにそう言えるのかな」

「……どういうこと?」

女友「えーっとね…幼が思ってるよりも速く、人は変わり続けてるってこと。なんの努力も無く今の状況を維持し続けられると思ってるのなら、甘すぎる、ってだけ」

「…………」

キーンコーンカーンコーン

女友「あ、予鈴。そろそろ戻ろっか」

22 : 以下、名... - 2017/10/28 13:34:18.59 NOidhBLf0 22/39

(……変わる?)

(今の関係が変わるなんて想像できない)

(もしかして、私が気付いていないだけで、今と一瞬前でさえ、私達の関係は変わり続けているのかな)

(そんなこと、考えもしなかった)

(確かに私もあいつも、私たちの意志なんて関係なく、否応なしに成長させられてる)

(私も小さい頃からはるかに大きくなって、あの泣き虫はその私よりも頭一つ高く大きくなって、妙に男らしい顔をするようになって)

(私の知らない内に。何も動かない私を放っておいて、大きくなる)

(だからって…私にどうしろってのさ)

23 : 以下、名... - 2017/10/28 13:35:04.62 NOidhBLf0 23/39

「今日はわりかしいい天気だね。涼しくて気持ちいいよ」

「そうね。こんなふうに、大人しく秋らしい天気してればいいのよ」

「天気に文句言うのもどうかと思うけど」

「春と秋が永遠に続けばいいのよ。中途半端な季節が一番過ごしやすいわ」

「そう?僕は夏も冬も好きだよ。極端な季節にもいい所はあるからね」

「う~ん…そうかなあ」

「ずっと同じような気候が続くなんて不自然だよ。季節の変化を楽しまなきゃね」

「変化を楽しむ、ねぇ…」

「それに、季節ごとに変わる幼の服が見れるのはありがたいよ。もちろんどんな姿も天使のように美しいけどね」

「結局そこに結びつけるのね…」

24 : 以下、名... - 2017/10/28 13:35:42.07 NOidhBLf0 24/39

「へ~、歩きスマホ禁止条例だって」

「一万件も事故してるんだ。でも、罰金15ドルって結構安くない?」

「そこまで大事故には繋がりそうもないからね」

「でも、信号渡りながらスマホ見てる人とかたまに…」

男母「幼ちゃん、お母さん留守でしょ?家で食べてきなさいよ」

「あ、おばさん。いえ、そんな、悪いですし…」

男母「いーのよ、遠慮しなくて。お母さん留守なんでしょ?」

「一緒に食べようよ。一人で食べてても寂しいでしょ?」

「うーん…じゃあ、ご相伴に与ります」

男母「うふふ、よかった」

25 : 以下、名... - 2017/10/28 13:36:25.05 NOidhBLf0 25/39

男母「美味しいかしら?」

「はい、とっても。すごく美味しいです」

「幼がいるから張り切ってるんだ。それでも愛が詰まった幼の料理には敵わないよ」

「こら、失礼でしょ!作ってくれる人のことを考えなさい!」

男母「いいのいいの。ふふふ、愛が詰まってるんだものね?」

「おばさんまで、やめてください!」

男母「照れないの。幼ちゃんみたいな子がお嫁に来てくれたら嬉しいんだけどねえ」

「大丈夫だよ、僕も頑張るから。必ず幼を貰ってみせるよ」

「ああ、もう…やな親子だわ…」

26 : 以下、名... - 2017/10/28 13:36:56.36 NOidhBLf0 26/39

「ただいまー…誰もいないけど」

「はぁ~……」

(やっぱり、男といると楽しい。今のままでも十分だ)

「お風呂入ろ」

27 : 以下、名... - 2017/10/28 13:37:30.73 NOidhBLf0 27/39

『ほら、泣かないの』

『だって、ぼく……幼に守られて、怪我させて、うぐ…』

『いいのよ。男をいじめるあいつらが悪いの。一緒に先生に言いに行こう』

『ひぐ、う…うん』

『泣き虫。私に守られるのが嫌なんだったら、やり返してやればよかったのに。ずっとあんたのこと守ってやることなんて出来ないのよ』

『っ、うん、うん…ごめん、幼ちゃん……ぼく、もっとちゃんとしなきゃ…もう、幼ちゃんに怪我なんか、させないから』

『そっか。えらいえらい。これからは、ふたりでもっと頑張ろう。男がもっと強くなったら、私を守れるようになったら。え、と』

『私と、けっこんしよう』

28 : 以下、名... - 2017/10/28 13:38:05.19 NOidhBLf0 28/39

(……小さい頃の夢)

(小さい頃の私って賢かったんだな。今よりもずっと。素直でまっすぐ、変わることをなんにも恐れてなかった)

(自分の想いを知っていて、絶対に折りたくないって思ってた)

「あー…もう。なんでこうなっちゃったのかな」

「思い出したくなかったなあ」

(きっと、あまりに心地いい関係に浸かりすぎて、時間を重ねるにつれもっと大切になって。この関係を壊すことが怖くなってしまったんだ)

「ちくしょう」

29 : 以下、名... - 2017/10/28 13:38:40.80 NOidhBLf0 29/39

「おはよう、幼。今朝も幼の美しいご尊顔を拝することができて…どうしたの?」

「え…何が?私、どこかおかしい?」

「ちょっと落ち込んでる?大丈夫?幼の笑顔が失われるのは世界全体の損失に繋がるからね」

「……ええと、ごめん。落ち込んでるかも」

「謝らなくていいよ。えっと、あんまり話したくない?」

「ん」コク

「そっか。話しくなったらいつでも言って。人に言ったら楽になるかもしれないから」

「ありがとう…優しいね、男は」

「え~…調子狂うなあ」

30 : 以下、名... - 2017/10/28 13:39:28.40 NOidhBLf0 30/39

「はぁ~……」

女友「どしたん幼。もうみんな移動してるよ」

「あ、うん。考え事?してると思う」

女友「ちょっと何言ってんのか分かんないです」

「……えっとね、昨日言われたこと考えてて。確かに私、卑怯だったかなって」

「男はいっつも私のこと想ってるとか勝手な考え押し付けて、そのくせ気持ちに答えることはしなくて。だから、私は、う~ん…」

女友「いいよ、ゆっくり話して」

「私は、このままじゃいけないんだろうな、って。変わっていかなきゃいけないのかなって」

女友「…いいんじゃない?そう考えられるのは、きっといいことだと思う」

「そう、そうだよね………分かった。私、頑張ってみる。ありがとうね、わざわざこんな話聞いてくれて」

女友「いいえ、どういたしまして。頑張れ、幼」

31 : 以下、名... - 2017/10/28 13:43:40.08 NOidhBLf0 31/39

「お疲れさま、幼。一緒に帰ろうか」

「わあっ!お、男!」

「え、ごめん。そんなに驚くと思わなかったから…えっと、大丈夫?」

「は、はい。大丈夫、です。帰ろうか」

「?」


「…………」

「…………」

(なんか、気まずいな。やっぱり今日の幼はどっか変だ)

「えっと、どっか寄る?どこでもいいから、ちょっと歩くと気分転換になるかもよ」

「……そうだね。うん、ちょっと歩こう。公園寄ろう。あの………話が、あるから」

「本当?僕、なんでも聞くよ。なんでも話してね」

32 : 以下、名... - 2017/10/28 13:44:12.15 NOidhBLf0 32/39

「それで、話って何かな?その前にどこか座る?」

「そうだね。ここらへんでいっか、人もいないし。男、座ろうか」

「うん」

「…………」

「…………」

「あの……………男って」

「?」

「なんで私なんかのことが好きなの?なんでそんなに私に気持ちをぶつけられるの?」

「なんで。なんで好きか、か」

「………」

33 : 以下、名... - 2017/10/28 13:45:17.55 NOidhBLf0 33/39

「幼だからかな」

「え?」

「なんて言えばいいんだろう。可愛いとか優しいとか、いくらでも理由を付けることは出来るけど、この気持ちにそういう理由は貼り付けたくないな」

「僕は幼が幼だから好きになんだ。小さいころからずっと一緒だったから、幼が僕を信頼してくれているのを知っているから、誠実に気持ちを伝えたいんだ」

「何が起きたとしても、幼が幼であるならこの気持ちは変わらないと思う」

「……そっか」

(なんか、妙に腑に落ちた)

(男は、私のこの気持ちも説明してくれたのかもしれない。そこまで考えてないだろうけど)

34 : 以下、名... - 2017/10/28 13:45:52.76 NOidhBLf0 34/39

「わたしも……」

(いつの間にか男は私を追い抜いて、気持ちに追いつけないと思ったから、答えられなかった。自分をぶつけて失望されるのが怖かったから)

(それでも、勇気を出せ。言ってしまえ。男の信頼に答えなければいけないんだ。どれだけ怖くても、このまま男を裏切り続けてしまう方がずっと怖い)

「私も、男が……」

「男が好き。大好き。男が男だから。だから……ずっと一緒に居たい 」

「私と付き合ってほしい」

35 : 以下、名... - 2017/10/28 13:46:50.87 NOidhBLf0 35/39

「え?」

「幼が、僕を……」

「うん、好き。絶対に離れたくない、離してほしくない。男以外の人なんて考えられない。他の誰よりも男のことが好き、大好き


「…や……」

「や?」

「っ、たあぁああああああああああああああああああああああああぁぁ!!!」

「うわぁ!?うるさい!聞こえちゃうでしょ!しーっ、しーっ!」

「静かになんてなれないよ!幼!!」ギュッ

「ひゃあ!?やめて、抱き着かないで!」

「いやだ!絶対に離さない!幼、僕も大好きだ!!結婚しよう!!」

「分かった、分かったから!回るな回るな!」

36 : 以下、名... - 2017/10/28 13:47:33.08 NOidhBLf0 36/39

「ううぅ……よかった、よかったあ…僕、たまに、幼は僕のこと嫌い、鬱陶しいって思ってるんじゃないかって考えたりして……不安だったんだ」

「はぁ……鬱陶しいは鬱陶しいけどね、あんたのこと嫌うわけがないじゃない。そうじゃなきゃあ、何年も付き合ってられないわよ」ギュッ

「ありがとう、幼。ありがとう…産まれてくれて、一緒にいてくれて、好きになってくれて…」グスッ

「泣いてるの?」

「ちょっとだけ。大丈夫、すぐに泣き止むから。僕はもう泣き虫じゃないよ」

「ふふ……そうね。あんたは泣き虫じゃないわ」ナデナデ



「そろそろ帰りましょう。親が心配しちゃうわ」

「うん……そうだね。暗くなってきたしね」

「あ、そうだ……」

「うん?」

「手、繋ごっか?」

37 : 以下、名... - 2017/10/28 13:48:19.30 NOidhBLf0 37/39

「ああ、もう着いちゃった。離れたくないなあ」

「そういうわけにもいかないでしょ。大丈夫よ、もう離れたりしないから」

「そっか。そうだよね。もっとたくさん話したいけど、明日からはずっと、一緒にいられるんだもんね」

「うん。でも、その前にちょっと目、閉じて」

「……うん」

「……………んっ」

「…………は、ぁ…」

「………あはは、しちゃった、ね」

「えへへ……しちゃった」

38 : 以下、名... - 2017/10/28 13:52:03.39 NOidhBLf0 38/39

「あんたが紅くなるなるなんて、すごく珍しいわね」

「そういう幼だって、真っ赤だよ」

「幼」

「なに?」

「結婚しようね。きっと幸せにするから」

「……うん、結婚しよう。男と一緒なら、絶対に幸せになれるに決まってるわよ」

「……んじゃあ、また明日ね。男」

「うん、また明日。おやすみなさい、幼」

39 : 以下、名... - 2017/10/28 13:52:33.41 NOidhBLf0 39/39

終わり

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