男児「ばーか!」
女児「なによう!」
男児「ばーか、かーす、あばずれ、くそあま!」
女児「ひっどーい!」バチンッ
男児「いたっ! なんでぶつんだよぉ!」
女児「このっ! このっ!」バキッドカッ
男児「いったいな! このディーブイおんな!」
女児「ええいっ!」ドゴォッ
男児「うわぁぁぁん、お母さーん!」
女児「ママーッ!」
母「あらあら」
ママ「まあまあ」
元スレ
父母「子供のケンカに親は出てはならぬ……しかし譲れぬ時もある!」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1508763723/
男児「お母さぁん!」
男児「あの子にぶたれたのぉ!」
母「よしよし」ナデナデ
女児「ママーッ!」
女児「あの子にひどいこといわれたのぉ!」
ママ「だいじょうぶよ」ヨシヨシ
母「うちの子がごめんなさいね」
ママ「こっちこそごめんなさい」
男児「お母さん、しかえししてよ!」
女児「ママ、いいかえしてよ!」
母「二人はああ言ってるけど、子供のケンカに親が出ちゃいけないものねえ」
ママ「その通りよ、放っておけばすぐ仲良くなるわよ」
母「でも……お宅の子、ちょっと乱暴すぎるんじゃない?」
ママ「え?」
母「だって、悪口を言われたからって、殴ったり蹴ったり……」
母「口で言われたら口で返すのが口喧嘩の不文律ってものでしょう?」
母「それなのに手を出すなんて……」
ママ「あら、そうかしら? 言って分からないバカってのも世の中いるしねえ」
母「バカ……?」
ママ「あら失礼」
ママ「それにそちらの子、“アバズレ”とか“クソアマ”とかずいぶん汚い言葉を知ってるのね」
ママ「ご家庭でどんな教育してるのか程度が知れるわぁ」
母「オホホ……」
母「だったらそっちこそ、家庭の教育が知れるってものよ」
母「すぐ殴るってことは、つまりあなたの家庭ではしょっちゅう暴力沙汰が起こってるってことよねえ?」
母「ご主人がDVしてらっしゃるのかしら? それともあなたが? 怖いわぁ~」
ママ「どっちも違うわよ! 多分テレビの影響でしょ?」
母「まぁっ、馬脚をあらわしたわね! そんな暴力的なテレビを子供に見せるだなんて!」
母「お子さんが暴力的になるわけだわ!」
ママ「あら、あなたは子供には一切そういうものを見せないの?」
ママ「そういう子って、かえって暴力に免疫ができないから危険人物に育つっていうわよぉ~?」
ママ「将来犯罪者間違いなしね! インタビュー受けるのが楽しみだわ!」
母「……あ?」
ママ「……あ?」
母「ちょっと言い過ぎじゃありません?」
ママ「そっちこそ……」
母「謝って下さらない?」
ママ「なんで謝らなきゃならないのよ。そっちこそ謝ってよ」ドンッ
母「あ、やったわねえ?」ドンッ
ママ「痛いじゃないのよ」ドンッ
母「やるか?」ドンッ
ママ「おお?」ドンッ
母「なにすんのよ!」ドカッ
ママ「あぁん!?」バシッ
母「この……ッ!」ビキッ
母「……シイィッ!!!」ブオッ
ベシィッ!
母「――!」
ママ「ふっ」シュゥゥ…
母(コイツ……私のローキックをスネでガードしやがった!)
ママ「シャッ!」ガシッ
母「!」
ママ「せいっ!!!」グオッ
母(背負い――!?)
ドシィンッ!
ママ「コンクリへ叩きつけられた気分はどぉう? ……ぬ!?」
母「危ない、危ない……」シュゥゥ…
ママ(この女……完璧な受け身をッ!)
ママ「やるわね……」ジリ…
母「面白い……」ジャ…
男児「お母さん、なにやってんの!?」
女児「やめてよーっ!」
母「ゆくぞっ!」
ママ「応ッ!」
母「せやあああああっ!」ドガガガガガッ
ママ(鋭い突きの連打! だが、これを見切って――)ガシッ
ママ「脇固めっ!」ガシッ
母「――ッ!?」
母「ちいっ!」ブオンッ
ママ「ほう……!」
母「危ない危ない……肩を破壊されるとこだったわ」ガキッ
ママ「自分から関節を外して、技から逃れるとはね……」
父「オイオイオイ」
パパ「お前たち、何やってるんだ!」
母「あなた……!」
ママ「パパ……!」
父「なんで母親同士でケンカしてるんだよ」
パパ「そうだよ、仲良くしなきゃ」
母「子供同士のケンカが発端になって、こっちまでケンカになっちゃって……」
ママ「ついつい言い合いから格闘になって……」
父「やれやれ、しょうがないな」
パパ「世の中付き合いってものがあるんだ。相手の子が多少ワガママでも許してあげなきゃ」
父「ん……?」
父「あの、今のはちょっと引っかかるんですが」
パパ「え? なにが?」
父「ワガママなのはアンタんとこの娘でしょ?」
パパ「なにいってんですか、ウチの娘がワガママなわけない」
父「いやぁ~、だってウチの子の方が見るからに賢そうでしょ」
パパ「いやいや、そんなことないでしょ」
父「じゃあ聞くけど、アンタ学歴は?」
パパ「○×大学だが?」
父「うひょっ、勝った!」
パパ「あ?」
パパ「じゃあ聞くが、てめえはどこ大なんだよ」
父「俺は□△大学ですぅ~」
パパ「いやいやいや、学部によってはウチのが上だから」
父「学部によってはってなんだよ。部分的にしか勝負できない時点で終わってんだよ」
パパ「待てや、□△大の学生はなんか事件起こしてたろ。あれで評判は地に落ちたようなもんだ」
パパ「つまり、終わってんのはてめえの方なんだよ」
父「ほぉ~……やる気かよ? てめえ」
パパ「上等だよ、やってやるよ」
父「よぉ~し……」
父「夫婦タッグマッチ開幕だぁっ!」
パパ「望むところだぁっ!」
母「いよっしゃぁぁぁぁぁ!」
ママ「待ってました!」
男児「四人とも、みっともないよ!」
女児「もうやめてよーっ!」
父「子供のケンカに親は出てはならぬ……」
母「しかし譲れぬ時もあるッ!」
パパ「その通りだ、よくぞ申した」
ママ「それでこそ、私たちの相手に相応しい」
父「ゴングを鳴らせィッ!」
カァーンッ!
父「まずは俺から行くぜっ!」
父「ラリアァァァット!」グアッ
ドゴォッ!
パパ「ぐうっ……! なんのアッパーカァット!」ボッ
ガキィッ!
父「がふぅ!」
父「やるな……」ニッ
パパ「てめえこそ……」ニヤッ
父「うりゃあ! 逆エビ固めだ!」グイッ
パパ「ぐおおおっ……! コイツは効くぜ……!」ミシミシ…
パパ「だが――」チラッ
ママ「カットするわ!」バキッ
父「おぶっ!」
父「いいコンビネーションじゃねえか……だったらお前も来い!」
母「応ッ!」
父「四人同時の大乱闘と行こうぜっ!」
バキッ! ドカッ! ガッ! ドゴッ! ガスッ! ガッ! メキッ! グシャッ! ボゴッ!
父「はぁ、はぁ、はぁ……」
母「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」
パパ「ハァ、ハァ、ハァ……」
ママ「ゼェ、ゼェ、ゼェ……」
父「決着つかねえな……こうなったら合体技で勝負だ!」
パパ「夫婦といえば合体ッ! 合体といえば夫婦ッ! 望むところだァァァッ!」
父「俺が妻を前方に抱え上げッ!」ガシッ
父「その体勢のまま体当たりッ! うおおおおおおっ!」
父「ステーション・ランチボックス・ターックルッ!」ドドドドドッ
パパ「なんのッ!」
パパ「俺と妻が上下逆さに絡まり合い、その体勢のまま転がっていくッ!」
パパ「シックス・ナイン・ローリング!」ギュルルルルッ
ドゴォォォォォン!!!
シュゥゥゥゥ……
プスプス…
父「ダブルノックアウトか……」
ママ「ぐうう……」
母「決着つかず、ね……」
パパ「仕方ない……こうなったら裁判だ!」
裁判所――
裁判官「では、ただより裁判を始めます」
父「奴らはゴミです、カスです、クズです!」
母「私たちはあいつらに侮辱されたんです! 名誉棄損されたんです!」
パパ「あの夫婦は生きてちゃいけない存在なんだ!」
ママ「あいつらはこの国の病気ですわ! すぐにでも切除すべきです!」
裁判官(なんなんだよこいつら……)
裁判官「四人とも落ち着いて下さい。裁判所は罵り合う場所ではありません」
裁判官「もっと冷静になって――」
父「俺は冷静だ! 心はツンドラ気候のように冷え切っている!」
母「奴らに拷問を! 激痛を! 絶望を! 死を!」
パパ「お前の仕事は奴らに死刑判決を与える! ただそれだけだ!」
ママ「死刑死刑死刑死刑死刑死刑ィィィィィ!」
裁判官「……」
母「……追い出されちゃったね」
父「ふん、しょせん司法の力などこの程度だってことさ」
パパ「司法などで俺たちを裁けるわけがないからな。俺たちが浅はかだった」
ママ「じゃあ、どうするの?」
パパ「この国が俺たちを裁けないのなら、俺たちが独立国を作るしかないだろう!」
父「そりゃあいい!」
ママ「面白そうね!」
母「よぉーし、どっちが強い国を作れるか、勝負よ!」
ママ「負けないわよ!」
A国――
父「よくぞ日本という国家から離れ、我らについてきてくれた!」
母「今こそ宿敵であるB国を滅ぼす時ぞ!」
オオーッ!!!
B国――
パパ「偉大なる100万の兵士たちよ! 君たちは選ばれた勇者だ!」
ママ「A国に死と蹂躙を与えよ! 立てよ、兵士たち!」
ワアーッ!!!
ワアァァァァァ……!
ガガガガガッ バキューンバキューン スガガガガッ ガガガガガッ
ドゴォォォォン ズガァァァァァン バゴォォォォォン
司令官「戦局は全くの互角で、こう着状態であります!」
父「うむむ……やむをえんな! 核ミサイルを開発だ!」
母「でもそれだと国連や周辺国の制裁が……」
父「かまわん! やるのだ!」
パパ「核実験はどうだった?」
博士「成功ですじゃ」
パパ「ふふふ、よくやった! さっそくミサイルの弾頭に搭載するんだ!」
ママ「これでいよいよ奴らを滅ぼせるわね!」
父「やい、お前ら! このスイッチがなんだか分かるか?」
母「こっちには大量の核ミサイルがあるのよ! いさぎよく降伏しなさい!」
パパ「なんの! こっちのミサイルもそっちに向けられているぞ!」
ママ「私たちを怒らせたら、そっちの国なんか大焦土よ!」
シーン…
父母「…………」
パパママ「…………」
父「ふふふ……このケンカもどうやらここまでのようですな」
パパ「ええ、核ミサイルの撃ち合いになったら、どっちもただじゃすみませんしね」
母「ここは両者、仲良く矛をおさめるということで……」
ママ「ええ……手打ちといきましょうや」
アハハハハハ……
オホホホホホ……
父「なぁんてなァ! 自滅が怖くてケンカができるかっての!」
母「ここまできたらとことんやるしかねえやな!」
父「うおおおおおっ! ボタン連射連射ァァァァァ!」ポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチ
パパ「やっぱりそうきたか! さすがドクズ夫婦、期待を裏切らねえ!」
ママ「こっちもミサイルの準備出来てるわよ!」
パパ「よぉし、撃って撃って撃ちまくれぇぇぇぇぇ!」ポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチ
………………
…………
……
とある惑星――
「入れ」
ウイーン…
宇宙人「失礼します」
「首尾はどうか?」
宇宙人「はっ、我ら宇宙艦隊は敵艦隊と先程交戦状態に入り」
宇宙人「恒星破壊ビームの撃ち合いとなり、戦争は白熱しております」
「そうか……ご苦労」
「ふ、ふふふ……ははは……」
父「ハハハハハッ!」
母「あなた、ご機嫌ね」
父「当然だろう。あの夫婦が構築した宇宙艦隊もなかなかやるものだからな」
母「私たちのケンカの舞台が宇宙になってからというもの、互いの進歩はめざましいわね」
父「ああ、周囲もみんな盛り上がって、これからもっともっとケンカはエスカレートするだろう」
父「ところで……女児ちゃんが遊びに来てるんだったな?」
母「ええ、二人で仲良く遊んでるわ」
父「そうか、ジュースでも出してあげなさい」
……
男児「あのさ、ぼくたちのお父さんとお母さん、ぜったいたのしんでるよねー!」
女児「うん、もうケンカがいきがいってかんじ!」
男児「ぼくたちはそのぶん、なかよくしようねー! しょうらいはケッコンしよう!」
女児「しよーしよー!」
おわり