フィアンマ「ローマ正教内部を見学しようと思うのだが……」【前編】
フィアンマ「ローマ正教内部を見学しようと思うのだが……」【中編】
フィアンマ「ローマ正教内部を見学しようと思うのだが……」【後編】
664 : ◆E1giTRkk1Cov - 2016/05/29 09:04:05.10 hD4fceuxo 1/82番外編やるつもりだったけど、やっても大丈夫ですかね……?
元スレ
フィアンマ「ローマ正教内部を見学しようと思うのだが……」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1459311386/
テッラ「……やっぱりマズイですねー」ゴクゴク
「……今度は昼間から酒か」
テッラ「おや? フィアンマですか」チラ
フィアンマ「つまみも無しでそんなまずい酒、よく飲んでられるものだな」
テッラ「仕方が無いですよ。楽しむために飲んでる酒ではありませんしねー」
テッラ「仕事の一環って感じですねー」
フィアンマ「それは大変だな」
テッラ「ええ。つまみの一つでもあればもう少し楽しめるかもしれませんが」ゴクゴク
フィアンマ「……そうか」
フィアンマ「じゃあ、俺様の話をつまみに一献どうだ?」コト
テッラ「そうですねー……では、そちらの生ハムでもいただきましょうか」スッ
フィアンマ「おい」
〜〜〜とある朝〜〜〜
フィアンマ「……ん」ムク
オリアナ「おはよう、お兄さん?」
フィアンマ「……オリアナか……」
フィアンマ(いや……待て、なぜ俺様のベッドの中にいるんだ!?!?)
オリアナ「どうしたの? そんなに慌てたような顔をして」
フィアンマ「え、なぜお前がここに……!?」
オリアナ「ああ……昨日は楽しかったわね」ニコ
フィアンマ「お前がそういうことを言うと変な意味にしか聞こえないからやめろ」
オリアナ「そういう意味だよ?」
オリアナ「あんまりにもお兄さんが積極的だったからお姉さんも興奮しちゃった」
フィアンマ「え? 何を言ってる?」
オリアナ「普段は飄々としてるけどベッドの上では私の体を貪りまくってたでしょ?」
オリアナ「予想外すぎて、応えるのは大変だったけど……」
オリアナ「でも激しくてもテクニックは凄かったから気持ち良かったわ」
フィアンマ「お、おい、冗談だよな」チラ
フィアンマ「アックア?」
ガチャ
アックア「呼んだか?」
フィアンマ「俺様とオリアナが一夜を共にした……なんてことはないよな?」
アックア「私は別の部屋にいたから知らないのである」フン
アックア「だが、別に男女の仲についてどうこう言うつもりもない」
アックア「公序良俗に反することのない範囲で勝手にすればいい」
オリアナ「……」ニコ
フィアンマ「お、俺様がそんな無責任な真似をするわけが無いだろう」ブンブン
オリアナ「うん、お姉さんもそう思ってたんだけどね」
オリアナ「予想とはだいぶ違ったわ」
フィアンマ「いや、俺様はきちんと婚姻の儀を交わした相手としかそんなことはしないぞ!!」
フィアンマ「一夜の過ちとか俺様から最も縁遠い言葉なんだからな!」ボスッボスッ
二人(本当にピュアだった)
オリアナ「ゴメンね、坊や」ポンポン
オリアナ「さっきのは嘘なの」
フィアンマ「嘘だと!?」
フィアンマ「いやちょっと待て、嘘なのは安心したが、坊やってどういうことだ!」バシ
オリアナ「あらら、怒らせちゃったかしらん?」
フィアンマ「俺様は上司だぞ!! 坊やは撤回しろ!!」
アックア「いや、坊やで十分だろう」
アックア「……慌てふためく姿はなかなか愉快だったのである」
フィアンマ「アックア、お前……」ギリギリ
フィアンマ(あとでオリアナがいないところで潰してやる」
アックア「フィアンマ、声に出ているのである」
フィアンマ「なら今潰してやる!!!!」タッ
アックア「レッツランニングタイム」ダッ
オリアナ「……さてと、今日は何分持つのかな?」クスクス
テッラ「坊や、ですか」
フィアンマ「ああ。非常に気に食わない」
テッラ「ですが、確かに私から見てもあなたは坊やですねー」
フィアンマ「は?」
テッラ「なに一人前ぶって酒飲んでんだよって常々思ってますねー」
フィアンマ「……そのカミングアウトここでする必要なかっただろ」
テッラ「そうですかねー? 本人に直接言えば問題ないって誰か言ってたような」
フィアンマ「それは陰口から悪口になるだけだ。別に無罪にはならないぞ」
テッラ「そうですか。失敬失敬」
フィアンマ「……はぁ、つまみとしてはどうだ?」
テッラ「悪くないですねー」
テッラ「ローマ正教徒が同じ教徒の不幸を楽しむのは少しまずい気がしますが、あなたなら構わないだろうという思考が働き、非常に楽しみやすいですねー」
テッラ「つまり、この類の話は酒の肴にはピッタリですねー」コポポポ
テッラ「ということで続きをどうぞ」
テッラ「あとこれも」スッ
フィアンマ「やる気なくなるな」ゴクッ
フィアンマ「……マズっ」
フィアンマ「オリアナ、いるか?」
オリアナ「何かしら、坊や?」ヌッ
フィアンマ「坊やはやめろと何度言えばわかるんだ」
オリアナ「仕方ないわね。どうしたの、お兄さん?」
フィアンマ「……まあ、お兄さんなら我慢するか」
オリアナ「何かお姉さんに命令でもしたいの?」
フィアンマ「一応言っておくが、俺様が上司だぞ?」
オリアナ「分かってるわ。だからなんなりとお申し付け下さい」
フィアンマ「……張り紙を作りたい」
オリアナ「張り紙?」
フィアンマ「そうだ。ペテロの画像を使った張り紙だ」
フィアンマ「あんなにバシャバシャ撮ったんだからな」
フィアンマ「それに、皆からの印象が良くなるように使わないと文句言われかねないからな」
オリアナ「……バシャバシャ」
フィアンマ「卑猥な想像を働かせるな」
オリアナ「あれ、バレちゃったか」
フィアンマ「当たり前だ。いい加減お前の思考回路も読めてきたからな」
オリアナ「以心伝心ねん」
フィアンマ「したくないな」
オリアナ「うーん、張り紙かぁ……」
フィアンマ「できないか?」
オリアナ「いや、パソコンがあればできるはず」
オリアナ「これでもお姉さん、デザインするの得意だから」
フィアンマ「そうか、ならその手腕を信じて任せるぞ」
フィアンマ「パソコンはヴェントが持っているから借りるといい」
オリアナ「ヴェントさんが……意外ね」
フィアンマ(最も相手に天罰術式を効くような顔をデザインするために使っていたはずだ……)
~~~数日後~~~
オリアナ「お兄さん、こんな感じで作ってみたんだけど、どうかな?」カチカチッ
フィアンマ「ほう、もうできたのか」
オリアナ「第一案だけだけどね」
オリアナ「ヴェントさんに見せたら大爆笑だったのよね」スッ
フィアンマ「そんなに面白いのか?」ピラ
オリアナ「面白さは求めてないからどこが面白いかは分からないわ」
オリアナ「何か文句があったら言ってね、変えるから」
フィアンマ「……こ、これは……」
フィアンマ「ぶっ、な、何なんだ!」
オリアナ「選挙ポスター風に作ってみたんだけど、何が面白いのか分かるかしら?」
フィアンマ「いくらなんでもやりすぎだろう」クツクツ
オリアナ「そんなに笑われるとお姉さんも困るんだけど……」
フィアンマ「困るのはこっちだ!」
フィアンマ「なぜこんなに美化されてるんだ」
オリアナ「……ああ、顔の加工のことね」
オリアナ「プリクラでも使用されている、美白加工と目を大きくする加工、あとは……顔をシュッとさせる感じに加工しただけよ?」
フィアンマ「つまり別人だということだろう?」
オリアナ「そんなことはないわよん?」
オリアナ「ほら」
フィアンマ「な、何だこれは?」
フィアンマ「証明写真か何かか?」
オリアナ「プリクラ。私の顔もこういう風に加工してくれるのよ」
フィアンマ「……さすが学園都市……おぞましい技術を発明したものだな」
オリアナ「お兄さんの顔も加工してあげようか?」
フィアンマ「本気で言っているのだとしたら、俺様はお前の頭を心の底から心配するぞ?」
オリアナ「あら? ひどい言われようね」
オリアナ「まあいいや、修正が必要ならやるけど?」
フィアンマ「くくっ、いや、このままでいいだろう」
フィアンマ「俺様はあいつのことがあまり好みではないからな」
オリアナ「あらら? 仕事に好き嫌いを持ち込むなんて……公私混同もいいところね」
フィアンマ「構わないさ。俺様はその程度で誰かに咎められるような低い立場ではないからな」
オリアナ「うーん、じゃあ私が咎めるしかないのかな」
フィアンマ「まあそれが一番いいだろうな。いうことを聞くかは別として、な」
フィアンマ「で、できた張り紙はアニェーゼ達に協力してもらって、様々なところに貼ったというわけだ」
テッラ「……いくらローマ正教徒の人間だとは言っても上司にこの態度というのはいただけませんねー」
フィアンマ「分かってくれるか」
フィアンマ「でも一応言っておくと、オリアナだけじゃなく、お前も俺様の部下だからな? 弁えろよ?」
テッラ「いや、神の右席はみな同等の立場ですよ?」
フィアンマ「確かにそうだが、実際は俺様がトップのようなものだろ?」
テッラ「そういうことを言っちゃうから坊やなんですよねー」
フィアンマ「なっ、おい!」
テッラ「どうしても上に立ちたい坊やそのものですねー」
フィアンマ「あまりおちょくってると俺様も怒るぞ」
テッラ「おお、怖い怖い」
フィアンマ「そんなことよりペテロの張り紙、見たくないか?」
テッラ「いや、その辺にありますから嫌でも目に入るんですねー」
フィアンマ「む、それもそうか」
テッラ「ですが、本人はあれを見てどのように激昂したかは気になりますねー」
フィアンマ「激昂? 何言ってるんだ?」
テッラ「え?」
フィアンマ「口では文句のようなことをブツブツ言っていたが、まんざらでもなさそうな顔してたぞ」
テッラ「」ボーゼン
フィアンマ「まあ、その話は後で」
カツカツッ
オリアナ「あ、いたいた」
フィアンマ「噂をすれば影とはよく言ったものだな」
オリアナ「ん? なにか噂してたのかしら?」
テッラ「彼女がオリアナ=トムソンですか」
オリアナ「こちらの方は?」
フィアンマ「左方のテッラだ」
オリアナ「ああ!」
オリアナ(お兄さんがエリマキトカゲっていっていたあの……)
テッラ「あの、フィアンマ?」
フィアンマ「なんだ?」
テッラ「失礼なこと吹き込んでませんかねー?」
フィアンマ「言いがかりはよせ。みっともないぞ」
テッラ「そうですね、すみませんねー」
フィアンマ「おちょくってるだろ」
テッラ「いえいえ、そんなことないですねー」
フィアンマ「その『ねー』ってのがムカつくと言っているんだ!」
テッラ「口癖はそう簡単に治せませんねー。フィアンマが俺様と言うのをやめたら考えてもいいですが」
フィアンマ「悪い、俺様の考えが甘かった」
テッラ「ところで、あなたはここに何の用で?」
オリアナ「ただの雑用よん。お兄さんに書類を届けに来たの」パララッ
テッラ「書類ですか……珍しい」
フィアンマ「くくっ、口を開かなければ優秀な人材が手に入ったんだ」
フィアンマ「使わないと損だろう?」
テッラ「しかし、別に仕事があったのでは?」
オリアナ「あのお嬢ちゃんはここのお兄さんと違って休憩をくれるから大丈夫なの」
テッラ「まさかの労基法違反ですかねー」
フィアンマ「ここに労基法など存在しない。ブラックな俺様についてしまった方が悪いのさ!!」
オリアナ「なんというブラックさ……」
テッラ「そうだ、雑用ついでに少し話していきませんか」
オリアナ「お姉さんが?」
テッラ「ええ。酒がまずいもんで、肴になるような話があったら聞きたいんですがねー」
オリアナ「……あ、とっておきがあるわよ」
テッラ「とっておきですか。フィアンマの恥系の話ですかねー?」
オリアナ「いや、かわいいお兄さんの話よん」
オリアナ「ベロンベロンに酔っ払っててかわいいの」
フィアンマ「おい、それは!」
テッラ「それは面白そうですねー」
オリアナ「私ほどではないけど、お酒に強いお兄さんの話をどうぞ」
………ベランダ………
フィアンマ「……ううっ」
フィアンマ「飲み過ぎたか……」ウッ
オリアナ「あらん? そんなにベロンベロンになってどうしたのかしら?」
フィアンマ「オリアナ……か。お前には関係ないだろ」ヒック
オリアナ「はぁ、お酒の飲み方も知らない坊ちゃんが無闇に飲みまくるからそんなことになるのよん」
フィアンマ「ふん……飲み方くらい、心得ている……」ハァ
フィアンマ「だが、酒を呷ることでしか洗い流せないようなこともあるだろ」
オリアナ「いや、まあ、それは否定しないけど……」
オリアナ「しっかし、ホントに酒臭いわね……」
フィアンマ「……酒飲んだからな」
オリアナ「でも様子を見る限りお兄さんの悩みか何かは酒でも洗い流せてないみたいだけど?」
フィアンマ「……」
オリアナ「何があったのか話してみる気ない?」
オリアナ「やけ酒するよりも人に吐き出してみた方がいいこともあるわ」
フィアンマ「……」
フィアンマ「お前も未成年のくせによく言う……」ウッ
オリアナ「ちょ、吐かないでね?」
オリアナ「とりあえず袋よ」スッ
オリアナ(二日酔いの薬でも探してきた方が役に立つかもしれないわね……この調子だと)
オリアナ「お姉さん、少し薬を……」グイ
オリアナ「え?」
フィアンマ「話、聞くんだろう?」
オリアナ「……」
フィアンマ「聞くって言ったよな?」
オリアナ「言ったけど……このまま飲み続けると明日痛い目見るわよ」
オリアナ「お兄さんはただでさえ頭痛持ちなんだから」
フィアンマ「そんなことはどうでもいい。酒の勢いに任せないと言えないこともある」
オリアナ「……はぁ、仕方が無いわね」
オリアナ「お姉さんが特別にお兄さんの愚痴に付き合ってあげるわん」
フィアンマ「ふっ、頼むぞ」
オリアナ「とりあえず、私も安酒でも持ってこないとね」
オリアナ「人の愚痴なんて酒無しじゃ聞く気も起こらないわ」
フィアンマ「いい、俺様のやつを分けてやる」チャプ…
オリアナ「えー、美味しい酒をやけ酒するのに使うなんてありえないわ」
オリアナ「酒は用途に応じて使い分けないとダメよ」
オリアナ「そのお酒は悩みが解決した時のためにとっておくべき」
フィアンマ「む、そうか」
オリアナ「ってことで、少し待っててねん」タッ
フィアンマ「ああ……」
フィアンマ(はぁ、何バカなことをしているんだ、俺様は)クイッ
フィアンマ(やけ酒をしたからどうなるわけでもないのに)ハァ
オリアナ「よっと、潰れないで待っててくれたかなー?」スタッ
オリアナ「お兄さん?」
フィアンマ「ああ、起きている。嫌に目が冴えてしまうからな」
オリアナ「そ。で、どうしちゃったの?」
オリアナ「そんなになるまで飲んで」
フィアンマ「……よく考えたらわけが分からなくなってな」ククッ
フィアンマ「むしゃくしゃして、この有様だ」
オリアナ「むしゃくしゃ? 悩み事かな?」
フィアンマ「ああ。誰にも言うなよ?」
オリアナ「オーケーオーケー」
オリアナ(話によってはちょうどいい感じに拡散するつもりだけど)
フィアンマ「あ、そうか……後で記憶消しておけばいいのか」
オリアナ「サラッと物騒なこというのね」
フィアンマ「記憶消しで済ませるのは最高のお人よしというか甘ちゃんだろ」
フィアンマ「本気で口封じしたければ殺すのが常識だ」
オリアナ「お兄さんが言うと、本気度100%に聞こえるからやめて欲しいわ」
オリアナ「っと、話がそれたわね」
フィアンマ「別にそれても構わない。夜は長いからな」
オリアナ「でも物騒な話はお姉さんあまり好きじゃないの。だから本題にちゃちゃっと入りましょう?」
フィアンマ「……実はオルソラのことなんだが」
オリアナ「ぷっ、なんだ。予想通り過ぎるわね」
フィアンマ「な、何笑っている」
オリアナ「いや、予想通りだけどあまりに予想通り過ぎるからあえて外してくるかもって思ってただけ」
オリアナ「色恋沙汰ってお姉さんの好物よん」ニヤ
オリアナ「だけど安心して、誰にもいうつもりはないから」
オリアナ(皆、気付いているはずだけど)
フィアンマ「なぜ知ってるんだ?」
オリアナ「そうね……経験不足ゆえのぎこちなさがモロに出てたから、かしらね?」
フィアンマ「け、経験不足だと? 何の経験だ?」
オリアナ「恋愛経験の話」
オリアナ「お兄さん、顔はイケメンだからモテるだろうし、女の子から声かけられたこともあったでしょ?」
フィアンマ「そんなことあるわけないだろ」
フィアンマ「もしそうなら嘘でもガールフレンド云々という理由を言ってまで視察しないぞ」
オリアナ「え? 発言はともかく顔はいいじゃない」
フィアンマ「む、そう言われてもな。無いものはないんだ」
オリアナ「鈍感なだけなのかしらね……じゃあ告白したことは?」
フィアンマ「……無いな。そんな感情を人間に対して抱いたことも皆無だ」
オリアナ「ははっ、そこは予想通りね」
オリアナ「で、オルソラちゃんがどうしたのかしら?」
フィアンマ「よく分からないんだ」
フィアンマ「自分の気持ちがよく分からない」
オリアナ「……自分の気持ちが?」
フィアンマ「ああ、オルソラに対してどんな感情を抱いているのかとかだな」
フィアンマ「何らかの好印象を持ってるのは間違いないが、経験したことのない気持ちなんだ」
オリアナ「……そう。お兄さんってば寝てなくても可愛いところあるのね」
フィアンマ「からかいは無用だ」
オリアナ「ま、端的に言わせてもらうと、お兄さんはオルソラちゃんを好きなんじゃないのかな?」
フィアンマ「……」ゴクゴク フゥ
フィアンマ「……まさか、俺様とあろうものが」
オリアナ「ただの、シスターを好きになるわけがないって言いたいのかしらん?」
フィアンマ「む……」
オリアナ「確かにお兄さんがただのシスターAを好きになることはないかもしれない」
オリアナ「だけどお兄さんにとってオルソラちゃんがシスターであるかどうかは大した問題じゃないのよ」
オリアナ「オルソラちゃんはオルソラちゃんってことよ」
オリアナ「納得いくかしらん? お兄さんにとってオルソラちゃんは有象無象じゃなくて唯一無二ってこと」
フィアンマ「俺様にとってオルソラは唯一無二……」
フィアンマ「……」
オリアナ「実際どうなの? オルソラちゃんと話すお兄さんはかなり楽しそうだって聞くけど」
フィアンマ「ああ、この際だから認めるが、少なくともオルソラと話すのは楽しい」フフッ
フィアンマ「一日の楽しみと言っても過言ではない」
オリアナ「へぇ……やっぱり話しやすいからかな?」
フィアンマ「ああ、ゆるゆる話せる感じが楽しい」
フィアンマ「俺様のどうでもいいような話も笑顔で頷いてくれる辺り、いいヤツだなぁと思うしな」
オリアナ「そうね。お兄さんのどうでもいい話とか誰も興味ないもの」
フィアンマ「……結構バッサリいくんだな」
オリアナ「もちろん。大して面白い話でもないんだろうし」
オリアナ「まあ、そんな話を楽しみにしてる例外はいるみたいだけど」
フィアンマ「例外?」
オリアナ「そこは自分で考えるの。頑張ってね、お兄さん」
フィアンマ「……?」
オリアナ「ま、それは宿題ってことにしておいて、少し吐き出してみて、気分はどう?」
フィアンマ「……話しすぎたな」
オリアナ「いいのいいの。お兄さんの思いの丈を聞けてよかったわ」
オリアナ(参考になるし)
フィアンマ「……なんだか時間差で恥ずかしくなってきたんだが」フイッ
オリアナ「なっ、こんな中途半端なとこで止まってたら、自分で自分の気持ちを理解できないわ!」
オリアナ「さ、飲んで飲んで!」ジャババ
フィアンマ「ええ!?」
フィアンマ「うぐ……少し、やりすぎではないか?」
オリアナ「んー、そうね」
オリアナ「でも、無理にでも話してもらわないと話を進められないわ」
フィアンマ「……」
オリアナ「じゃあ、オルソラちゃんにどんな感情を抱いているのか、話してもらえるかしらん」
フィアンマ「だから、わからないと言ってるだろう」
オリアナ「箇条書き風で良いわよ」
フィアンマ「そ、そうだな……安心感とか、共にいて楽しいとか……でいいのか?」
オリアナ「ええ、そんな感じ」
フィアンマ「そう言えば、毎食食堂へ行くようになったな」
オリアナ「会いたいって気持ちの体現かしらね」
フィアンマ「会いたい……ふむ、間違ってはないな」
オリアナ「……ふーん」
フィアンマ「うーん」ノビ-
フィアンマ「だが、やはり良く分からない。好きだとかなんとかというのは」
オリアナ「だから気持ちの整理がつかなくてむしゃくしゃしてたんでしょう?」
フィアンマ「そ、そうだが」
オリアナ「だから、とりあえず深いことは考えずにぶちまけちゃおうぜ」
フィアンマ「例えば?」
オリアナ「例えば……オルソラちゃんとしたいこととかないの?」
フィアンマ「……」
フィアンマ「……オルソラとご飯を食べつつ他愛もない話をして、あの笑顔を見ている……というのは贅沢だろうか?」
オリアナ「さあ?」
フィアンマ「だが、それがどういうことなのか、何をしたら実現できるのかが全く分からないんだ」
フィアンマ「それが分からないからこそ、さそ俺様はむしゃくしゃしている」
オリアナ(初恋にありがちな悩みねぇ……初々しいのは嫌いじゃないけど)
オリアナ「そうね……なら、オルソラちゃんに相談に乗ってもらえばいいんじゃない?」
オリアナ「彼女もシスターでしょ?」
オリアナ「弱音を吐くのは意外と重要な恋愛のためのファクターだったりするわ」
フィアンマ「弱音など人に聞かせるものではないだろう。しかも張本人だろ!」
オリアナ「いや、現にお兄さんは弱音吐きまくってた気がするんだけど」
フィアンマ「っ……」
オリアナ「大丈夫だって。さっきも言ったけど、彼女はああ見えて凄い優秀なシスターよ」
オリアナ「だから無下にすることだけは決してないなず。誓うわ」
フィアンマ「……そんなこと俺様が一番分かっているさ」
オリアナ「もちろん神の右席のことについては話さないほうがいいと思うけどね」
フィアンマ「それも分かっている」
フィアンマ「オルソラを無駄な争いに巻き込むのは勘弁だからな」
オリアナ「あら、私は巻き込んでもいいって受け取ってもいいのかしらー?」
フィアンマ「おいおい、お前は俺様の直属の部下だろう? 実力を認めている証だから誇っていいだろうさ」
オリアナ「んふ、褒められるのは悪い気はしないわね」クスッ
オリアナ「そう言えば、そのおつまみって……」
フィアンマ「オルソラに作ってもらった物だが……それがどうかしたのか?」
オリアナ「くふふっ、良かったわねおつまみまで作ってもらってるなんて」
フィアンマ「何が言いたいんだ?」
オリアナ「いやいや、何でもないわ」
オリアナ「ただ、結構親しいみたいだな、と」
フィアンマ「……」チラ…
フィアンマ「悪いか」
オリアナ「いえいえ、滅相もない」
オリアナ「お姉さんはお兄さんの恋路を応援してるんだから喜びこそしても、文句を言ったりはしないわ」
フィアンマ「ふっ、恋路とはな。そんな似合わない言葉をどこで覚えたんだ?」
オリアナ「これでも女ですからね」
フィアンマ「よく言うな」
フィアンマ「だが、相談はできない」
オリアナ「そう? 弱みを見せられるってことは心を開いている証拠でしょう?」
オリアナ「心を開いてくれる男を嫌がる女の子なんていないわ」
オリアナ「助けてあげたくなるしね」
フィアンマ「心を開く、か」
オリアナ「お兄さんは多分自分の殻に閉じこもっちゃうタイプだから」
フィアンマ「……」
オリアナ「黙ってないで自分から行動しないとダメよ?」
フィアンマ「だが、オルソラに恋人やら何やらがいたらどうするんだ」
フィアンマ「右席権限で解雇か??」
オリアナ「職権乱用ね」
オリアナ「でも大丈夫よ、オルソラちゃんにはそういう人はいないみたい」
オリアナ「好きな人がいるどうかまでは知らないけど、そこは自分で聞くべきよね」
フィアンマ「……」
フィアンマ「アニェーゼ使って調査させるか」ピッ
オリアナ「おい!!」
フィアンマ「はっ、嘘だ。嘘に決まってるだろう?」
フィアンマ「俺様もたまには本気を出さないとな」ゴクゴク
…………朝・食堂…………
フィアンマ「ふぁあ……」ゴシゴシ
フィアンマ(さすがに酒飲みすぎた次の朝は頭が痛いな)グワングワン
オルソラ「……」トントン
フィアンマ「……おはよう、オルソラ」
オルソラ「は、おはようなのでございますよ。今日は早いのでございますね」ニコッ
フィアンマ「俺様は早起きなんでね」ドヤ
オルソラ「はあ……何か用事があるのでございましょうか?」
フィアンマ「いやいや、特にそういうわけではない」
フィアンマ「ただ……あ、そうだ、昨日のつまみ美味かったぞ」
オルソラ「そうでございますか。良かったのでございます」ニコニコ
フィアンマ「……」フッ
オルソラ「ですが、飲み過ぎは感心しないのでございます」ムッ
フィアンマ「え、なぜ知ってるんだ?」
オルソラ「さっきオリアナさんにフィアンマさんが泥酔していたという話を聞いただけでございます」トントン
フィアンマ(オリアナの奴……)
オルソラ「体調は大丈夫でございますか?」
フィアンマ「まあ、そうだな。多少頭痛はあるが、大したことはない」
オルソラ「そうでございますか……では、りんごでも食べるのでございますよ」スッ
フィアンマ「りんご?」
オルソラ「二日酔いに効くらしいのでございます」トントン
フィアンマ「……ありがとう」シャクシャク
オルソラ「いえいえ、自己責任とはいえ早く本調子に戻ってもらいたいのでございますよ」
フィアンマ「自己責任とは……厳しいな」
オルソラ「これに懲りたら、これからは適度に飲むようにするのでございますよ」
フィアンマ「……そうだな」ハハハ
フィアンマ「そうだ、今日は一緒に飲まないか?」
オルソラ「二人で、にございますか?」
フィアンマ「そうだ。一人酒より楽しそうだし、今日は満月だから月が綺麗だろうからな」
オルソラ「そうでございますね……」ウ-ン
フィアンマ「いい酒もあるぞ」フフフ
オルソラ「……では、お言葉に甘えさせてもらうのでございますよ」
フィアンマ「そうかそうか、良かった」ニマニマ
………………
フィアンマ「……」チビッ
コンコン
フィアンマ「勝手には出てきていいんだが……」
フィアンマ「どうぞ」
オルソラ「失礼するのでございます」ガチャ
フィアンマ「よう、こんばんはの時間だな」
オルソラ「ええ、こんばんは」ニコニコ
フィアンマ「……いつもと変わらない格好なのか……」
オルソラ「ええ、パジャマもありますが、人と会うのにパジャマというのは少し常識知らずでございましょう?」
フィアンマ「そんなに気にしなくてもいいんだけどな」
オルソラ「いえいえ、一応上司なのでございますから、けじめはしっかりしなくてはならないのでございます」
フィアンマ「上司……」
フィアンマ「もしかして、嫌々だったのか?」
オルソラ「そ、そんなわけないのでございますよ!」ブンブン
オルソラ「むしろ楽しみでございましたよ」
フィアンマ「そ、そうか?」
オルソラ「他の方と違って地位の差を感じないような態度で接してくれるから、あまり硬くならずに済むのでございます」
オルソラ「だから私はフィアンマさんのことは好きでございますよ」
フィアンマ「す、好きだと!?」カアアアッ
オルソラ「ええ」
オルソラ「他の部下の方とも仲が良さそうですから、きっと良い人格をしているのでございましょう」
フィアンマ「……いや、良い人格ではないな」
フィアンマ「だが、俺様も……」
オルソラ「俺様も……?」
フィアンマ「お、オルソラのことが好きだぞ」フイッ
フィアンマ(言ってしまった……)
オルソラ「そうでございますか。パジャマの方が良かったのでございましょうか」
フィアンマ「その方が良かったけども! 話戻ってるぞ!」
オルソラ「まあ、すみません……」アセッ
オルソラ「ですが、私の料理が好きと言ってくださるのは自信につながるのでございますよ」
オルソラ「それに、今後のやる気も出るのでありがとうございますね」
フィアンマ「え? 料理?」
オルソラ「え? おつまみが良かったのでございますよね?」
フィアンマ「いや、オルソラは俺様のこと……」
オルソラ「上の方々はこういっては失礼かもしれませんが……」
オルソラ「権力が大好きだったり、人を物のように扱ったりする人が多くて苦手なのでございますよ……」アハハ…
オルソラ「そういう方々に比べてフィアンマさんはまだ若いからかもしれないのでございますが、理不尽に怒ったりしないところに好感が持てるのでございますよ」
フィアンマ「……そんなことを言われたのは初めてだ」
フィアンマ(好きとはそういう意味か……早とちりして恥をかくところだった)
フィアンマ(いや、もう言ってしまったのだが)
オルソラ「みなさん思っているのではございませんか?」
フィアンマ「そんなことないさ。俺様はいつだって目の上のたんこぶ扱いだからな」
フィアンマ「ま、オルソラが本当に許せないやつがいたら俺様が何とかしてやる」
オルソラ「それは不要でございますよ」
オルソラ「そんな形でフィアンマさんに頼りたくはないのでございますよ」
フィアンマ「そうか。ま、別に俺様はどちらでも構わないんだがな」
フィアンマ「さてと、次はもう少し明るい話をしないか」
フィアンマ「……」コポポポ
フィアンマ「ほら」スッ
オルソラ「あ、ありがとうございます……」
オルソラ「これは……?」
フィアンマ「俺様が一番好きなワインだ。口に合うといいんだが」
オルソラ「……」チビチビ
オルソラ「!!」
フィアンマ「どうだ?」
オルソラ「すごい美味しいのでございます」コクコク
フィアンマ「そうか。それはよかった」
オルソラ「ところで、どうして私を誘ってくれたのでございますか?」
フィアンマ「……一人酒より二人酒だろ? 一人ってのはどうにも好きになれないのさ」
フィアンマ「結局ぼっちってことだし」
フィアンマ「だから良かったら付き合ってくれないかって言ったわけだ」
オルソラ「なるほど、一人ぼっちは寂しいものでございますよね」
オルソラ「言いづらいことを言わせてしまい申し訳ありませんでした」
フィアンマ「謝る必要はないさ。俺様は天涯孤独の身だからな」
フィアンマ「……一人には慣れているのさ」
オルソラ「……」
フィアンマ「うむむ……俺様の話をしようとするとどうしても暗くなってしまうな」
フィアンマ「オルソラは何かないか?」
オルソラ「そうでございますね……」
オルソラ「フィアンマさんは好きな食べ物とかあるのでございますか?」
フィアンマ「なんだ? 言ったら作ってくれたりするのか?」
オルソラ「私ができる範囲でよろしければ」
フィアンマ「……ならオルソラの作る似顔絵付きオムライスだな」
オルソラ「いつも頼まれるのでございましたね。ですが、他には無いのでございますか?」
フィアンマ「俺様は基本的に好き嫌いはないからな。オルソラの作る料理は格別だがそれ以外はほぼ同格だ」
オルソラ「そ、そんなお世辞を言う必要はないのでございます」
フィアンマ「お世辞じゃない。俺様はそんな面倒な事は言わない……」フイッ
オルソラ「……そうでございますか……ありがとうございます」カァ
フィアンマ「……顔が赤いが、熱でもあるのか?」
オルソラ「なな、なんでもないのでございますよ!」アセアセ
フィアンマ「ふむ……ならいいんだが……」
フィアンマ「なあ、少しプライベートなこと聞いてもいいか?」
オルソラ「ええ、大丈夫でございますよ」
フィアンマ「オルソラは恋心をいだいている男はいるのか?」
オルソラ「だ、男性の方でございますか!?」
フィアンマ「ああ、どうなんだ?」
オルソラ「……は、はぁ……密かにお慕いしている方でしたら……」チラ
フィアンマ「い、いるのか……」ズーン
オルソラ「ふ、フィアンマさんはどうなのでございますか?」
フィアンマ「いる……で、間違ってないはずだ」ジー
オルソラ「そうでございますか……」ショボン
二人「はぁ……」
フィアンマ「……とりあえずなんだが、そういう悩みの相談を受けてもらいたくてな」
オルソラ「そうでございますか……」
フィアンマ「いいか?」
オルソラ「……ええ、フィアンマさんのためになるのでございましたら」ズーン
フィアンマ「じゃあ早速だが、俺様は好意を持った人間に露骨と言っても過言ではないほどのアプローチをしている」
フィアンマ「……つもりなんだがな?」
フィアンマ「相手は全く気付いてないようなんだ」
オルソラ「あー、良く分かるのでございますよ。私がお慕いしている方もそうなので」
フィアンマ「そ、そうなのか。お互い苦労するものだな……」
オルソラ「ええ。多分、それは鈍感さんでございますよ」
フィアンマ「鈍感さん? なら俺様はどうしたらいいんだ……?」
オルソラ「直接思いを伝える他無いのでございますよ」
オルソラ「鈍感さんは相手の気持ちの変化に鈍いので……」チラ
フィアンマ「やはりそれしかないか」ウムム
オルソラ「もちろん、私にそんな勇気はないのでございますけど」
フィアンマ「くくっ、俺様も同じだよ」
フィアンマ「実行になんか移せないさ」チラ
オルソラ「ですが、早く動かないと誰かに先を越されてしまうのでございます」
オルソラ「……とても魅力的な方なので……」
フィアンマ「……そうだな。俺様もそうかもしれない」ゴクゴク…
フィアンマ「早く動かないとならないのかもしれない」
………………………………
オルソラ「ふにゃー♪」ベロンベロン
フィアンマ「俺様に注意した人間が潰れるってどういうことなんだ……?」ヨッコラ
フィアンマ「ほら、行くぞ」
オルソラ「ふぁいー。んふふ」ガシッ モニュ
フィアンマ「っ!!」ピクッ
フィアンマ「…………はぁ、俺様じゃなかったら襲われてたぞ?」
フィアンマ「……オルソラ?」クルッ
オルソラ「……」スースー
フィアンマ「ずいぶん気持ち良さそうに寝ているものだな……」
フィアンマ「……おやすみ、オルソラ」スタスタ
ギィィィ バタン
フィアンマ「……記憶は消しておいたはずなんだが」ジロッ
フィアンマ「なぜそんなにペラペラ話せてるんだ!」
フィアンマ「というか、朝と夜の話はどこから盗み聞きしてた!!」
オリアナ「酔っ払いの魔術なんて大したことないわ。効くわけないでしょ」
オリアナ「朝と夜の話は普通に盗聴器使っただけよん」
オリアナ「市販の探知機で見つけられちゃうくらいちゃっちい物だけどこんなに役立つとはね」ジャン
テッラ「……」ナマアタタカイメ
フィアンマ「おい、テッラ! そんな目をするな!!」
テッラ「いえ、このことがきっかけになってあなたが少しでも丸くなってくれればこっちとしても嬉しいですねー」
フィアンマ「うるさいうるさい!!」
フィアンマ「そのことはもういいだろう!!」カアァァァッ
オリアナ「あらら? 真っ赤になっちゃって可愛いわね」ニシシ
フィアンマ「だああああああ!」
フィアンマ「真っ赤になんかなってない!!!」バンバンバン
オリアナ「こういう年相応の反応っていいわねぇ」
テッラ「……その、オルソラというシスターのことは好きなんですかねー?」
フィアンマ「そ、そうだが……正しくは共にありたいだけだ」ボソボソ
テッラ(ははあ、本当に丸くなっている様子ですねー。弱み入手っと)
フィアンマ「はぁ、はぁ……」
オリアナ「あはは、マラソンの後みたいになってるわよん」
テッラ「フィアンマがマラソン走れるとは思いませんがねー」
オリアナ「例えに決まってるでしょう」ケラケラ
テッラ「でしょうねー」ケラケラ
フィアンマ「二人揃って俺様のことをバカにするなよ……」ハァ
オリアナ「ごめんね、お兄さん。でもテッラさんのいい肴にはなったと思うんだけど」
テッラ「やはり、普段弱みを見せないというか、存在しないと思われていた弱みを知ることができたのは大きな収穫ですねー」
テッラ「最後の一言とか、肴としても最高ですし」
オリアナ「それじゃあ、休憩もそろそろ終わりだからお嬢ちゃんのとこに行ってくるわね」
フィアンマ「クソっ、勝手に行ってしまえ!」
オリアナ「あらら、少しやり過ぎちゃったかな」
フィアンマ「フン」
オリアナ「まあいいや。後はよろしくねん」タッ
テッラ(面倒なものを押し付けられましたねー)
フィアンマ「……」ムッスー
テッラ(ま、たまにはこういうフィアンマも悪くないのかもしれませんねー)ゴクゴクッ
テッラ「で?」
フィアンマ「……何がで? だ」
フィアンマ「きちんと言語を使ってくれないと分からないぞ」ムカムカ
テッラ「他には無いんですかねー。話は」
フィアンマ「あんな恥をかかせておいて、図々しいにも程があるだろ」
フィアンマ「まあ……無いわけではないが」
フィアンマ「だが、今回の話は面白いというよりはほのぼのとした話だからな。うん」
テッラ「ふむふむ、ですが、私としてはフィアンマがほのぼのしているだけで既にネタとして成立しているのでご心配なく」
フィアンマ「お前は本当に人の神経を逆なでするのが得意だよな……」
テッラ「はぁ、フィアンマが人を褒めるとは……」
フィアンマ「褒めてない!!」
インデックス「フィアンマー!」トテトテ
フィアンマ「ん? アウレオルスはどうした」
インデックス「置いてきた」
フィアンマ「は?」
アックア「何をしているのであるか?」
フィアンマ「いや、インデックスがアウレオルスを置いてきたと言うから……」
インデックス「ええとね、仕事が忙しいって言うから置いてきた」
フィアンマ「なるほど、置いてきたのか」
フィアンマ(インデックスの記憶をそろそろ消さないとならない時期らしいし、何とかする方法でも探しているのだろう)
フィアンマ(俺様なら解呪できないこともないだろうが、イギリス清教との関係を悪化させるわけにはいかないしな……)ハァ
アックア「では、何をしに来たのであるか?」
インデックス「スイーツを食べに行きたくてね!」
フィアンマ「スイーツだと?」
インデックス「うん! アニェーゼたちが食べに行ったらしいんだけど、そこのケーキがすごい美味しかったんだって」
フィアンマ「ふーん、場所は?」
アックア「ここであるな」ユビサシ
フィアンマ「また歩くのか……」チラ
インデックス「?」
フィアンマ(まあ、最後になるかもしれないし、今は不穏な動きもなさそうだし行ってやるか……)ハァ
フィアンマ「よし、行くか。特別に付き合ってやる」
アックア「本当は行きたいだけだな」
フィアンマ「二度とそんなことを言うな」
フィアンマ「別に行きたくなどないが、暇だし、インデックスが行きたいと言うから連れていくだけだ」
アックア「なら、お前は紅茶だけ飲んで待ってるのであるな?」
フィアンマ「極端すぎるだろ。俺様も行きたいと言わなくてはケーキも食べられないのか」
インデックス「喧嘩はダメだよ。みんなでケーキ食べればいいんだよ」
インデックス「美味しいもの食べたらイライラなんて吹き飛ぶし」
フィアンマ「ふっ、それもそうだな」
フィアンマ「あ、でも、お前シスターだったよな?」
フィアンマ「そんなに甘いもの甘いものって言っていていいのか?」
インデックス「むー、オルソラだってシスターなんだよ!!」
フィアンマ「そ、それがどうした。俺様とは関係ないだろう?」
インデックス「シスターのことが好きなフィアンマには言われたくないかも」プクッ
フィアンマ「オリアナの奴……まさかこうも早く噂を広めているとは……」ギリッ
フィアンマ「口が軽い奴は部下失格だな……」
インデックス「オリアナ? 何言ってるの、フィアンマ?」
フィアンマ「え?」
フィアンマ「一応尋ねさせてもらうが、そのことは誰から聞いたんだ?」
アックア「はぁ、そんなこと聞かなくても分かるのである。態度や表情に出し過ぎだ」
インデックス「アックアの言う通りだよ。誰からも聞いてないんだよ」
フィアンマ「……早めに箝口令を敷くべきか」
インデックス「それは意味が無いと思うよ。だって知らないのはオルソラだけだし」
インデックス「恋すてふわが名はまだき立ちにけり人知れずこそ思いそめしか、だよ!」
フィアンマ「え、突然日本語を使うな。訳が分からないだろ」
アックア「こっそりと恋してたが噂になってしまった、か」
フィアンマ「なっ!!」
フィアンマ「だ、だが、オルソラには別に好きな人間がいるらしいからな。俺様の出る幕じゃないのさ」
フィアンマ「だから、この話は早急に忘れろ」
インデックス「……はぁ」チラ
フィアンマ「なんだ! その失望したようなため息は!」
インデックス「……いや、少し呆れただけだよ、ね?」
アックア「……であるな」
インデックス「とりあえず、フィアンマのお話はケーキ食べながら聞くことにしようよ」
アックア「そうであるな。なかなか面白そうな予感がする」
インデックス「それじゃあ早く行こー」グイグイ
アックア「ああ」
フィアンマ「話さないからな!!!」
………とある喫茶店………
カランカラン
アックア「だいぶ落ち着いた感じであるな」
インデックス「あまーい匂い……お腹ペコペコだよ……」
フィアンマ「まあ、適当なところにでも座ろうか」
インデックス「あ! ねぇフィアンマ、アソコがいいんだよ!!」
フィアンマ「テラス席か……まあ構わないが」チラ
アックア「私も構わないのである」
インデックス「早く早くー!!」
フィアンマ「安心しろ。ケーキは逃げないんだぞ?」
インデックス「うむむむむ……すごく迷うんだよ」
インデックス「りんごタルトも美味しそうだし、チーズスフレも捨てがたい……」
インデックス「はわわ、モンブランもいいなぁ」
フィアンマ「俺様はりんごタルトにするか」
インデックス「ええ! 私が食べるつもりだったのにー!!」
フィアンマ「じゃあチーズスフレか」
インデックス「ええええ!」
フィアンマ「……モンブランなら満足か?」
インデックス「ぐぬぬ……」
フィアンマ「……いい加減にしろ。そんなに迷うのなら俺様のも少し分けてやるから一つに絞れ」
インデックス「い、いいの!?」キラキラ
フィアンマ「ああ、相手するのにも疲れたしな」
インデックス「じゃあ、フィアンマはりんごタルトね」ユビサシ
フィアンマ「はいはい」
インデックス「アックアは?」
アックア「ん? 私のケーキも取ろうというのか?」
フィアンマ「……アックア、ここは折れないと永遠に終わらないぞ」
アックア「……はぁ、分かったのである」
インデックス「やった、じゃあ、アックアはモンブランね!」
アックア「了解である」
店員「注文はお決まりでしょうか」
フィアンマ「ああ。おすすめケーキセット三つだ」
店員「ケーキは何にいたしますか?」
インデックス「モンブランとチーズスフレとりんごタルトだよ!」
店員「ご注文は以上でよろしいでしょうか」
インデックス「うん」
店員「それでは、注文確認します」
店員「おすすめケーキセット三つで、ケーキはモンブラン、チーズスフレ、りんごタルトでよろしいでしょうか」
フィアンマ「ああ。よろしいよろしい」
店員「……えっと、それでは失礼します」
フィアンマ「ふう、こういう所には入ったことがないから少し緊張してたが、大したことなかったな」
インデックス「そんなことよりフィアンマの話が聞きたいんだよ」
フィアンマ「俺様は喫茶店の話をしているだろう? それだって俺様の話しさ」
アックア「いや、だったらお前の思うオルソラの話で構わない」
フィアンマ「しないと言っただろう」
フィアンマ「そう言えば、お前たちはオルソラの好きな人間は知ってるのか?」
インデックス「いや……ねぇ?」チラ
アックア「……であるな」
フィアンマ「なんだ、その意味有りげな反応は」
インデックス「うーん」
フィアンマ「言わないなら何も話さないぞ」
インデックス「え、それは困るんだよ。オルソラの好きな人はもがっ」バッ
フィアンマ「なぜ邪魔をする? 話さなくていいのか?」
アックア「話さなくていいのである」
アックア「彼女が好きな人間を知ったらお前は何も成長できないのである」
アックア「この機会にオルソラが好きな人間とかオルソラの気持ちとかを理解しようとしてみることをオススメするのである」
アックア「オルソラは比較的分かり易い人間であるからな」
インデックス「そっか。フィアンマの成長のためなら仕方が無いかも」
フィアンマ「ちっ、こっちはそれが気がかりで夜も眠れないというのに……」
アックア「どうでもいいのである」
フィアンマ「……まあいい。お前たちがそう言うのなら俺様は別の奴に聞くだけだ」
フィアンマ「言うだろう? 聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥と」
アックア「安心しろ。本人以外には箝口令敷いたのである」
アックア「どうしても聞きたければオルソラ本人に聞くのである。それでどう思われても知らないが」
フィアンマ「……それはやめておこう」
店員「お待たせいたしました」
店員「おすすめケーキセットのりんごタルト、チーズスフレ、モンブランと、セットの紅茶です」コト
店員「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
フィアンマ「ああ。大丈夫だ」
店員「それではごゆっくりお楽しみください」
店員「紅茶のポットが空になりましたら、新たなものと交換するので、店員をお呼びください」
スタタッ
インデックス「それじゃあ、いただきます!!」ガブッ
ガツガツ…
フィアンマ「おい、こういうものは味わって食べるべきだろ」チョビチョビ
インデックス「アックアー、モンブラン!」バンバン
アックア「……はぁ」スッ
インデックス「よっしゃ」ガツガツ
アックア「お前はそれでも男であるか?」
アックア「男はもう少しガツガツいくものであるぞ」
フィアンマ「お前の理想の男像を俺様に押し付けるな」
フィアンマ「食べ物をガツガツ食べるのは行儀悪いから苦手なのさ」
アックア「そんなこと言ってチマチマ食べているから……」
インデックス「……」ギラリ
アックア「狙われるのである」
フィアンマ「さ、寒気が……」
フィアンマ「や、やらないからな!!」
インデックス「……」ウルウル
インデックス「もしかしてフィアンマは約束を破るのかな……?」
インデックス「アックアはきちんとくれたのに」
フィアンマ(アックアでさえ二、三口しか食べてないのに……俺様なんかアックア換算で一口分も食べてないんだぞ!!)
フィアンマ「少し待て。半分食べたらやるから」
インデックス「今までのペースだと半分食べるのに五分はかかるんだよ?」
インデックス「待てるわけ無いじゃん」
インデックス「だからさっさと寄こせー!!」ガウウ
アックア(もう諦めるのである)チラ
フィアンマ「ああ、分かったよ!!」
フィアンマ「ほとんど全部と言ってもいいくらい余ってるが、もうやる!」スッ
インデックス「やったー!!」
インデックス「ありがと、フィアンマ!」
フィアンマ(……味は悪くなかったし今度オルソラを誘って来たらいいだけだ)
フィアンマ(あわよくば……)ニマニマ
アックア「何ニヤニヤしているのであるか?」
フィアンマ「ふん、言うわけ無いだろ」
フィアンマ「俺様のケーキを取った奴と、それをサポートした奴にはな!!」
インデックス「もぐもぐ、食べ物の恨みは怖いんだよ」
フィアンマ「お前が言うな!!」
フィアンマ「……と、せっかく行ったというのにケーキをぶんどられた」
テッラ「振り回されてますねー」
フィアンマ「だな。本当に疲れる」
フィアンマ「が、嫌なことばかりではない」
テッラ「ですねー。話を聞く限りじゃ、本当に兄妹みたいですねー」
フィアンマ「そんなものが実際にいたらどうなっていたことやら」ハァ
テッラ「ふむ、それもそうですねー。どんな目に遭うか想像できませんよ」
フィアンマ「だろ? だからいなくて正解だ」
フィアンマ「本当はインデックスみたいに懐いてくれる奴は嫌いではないんだけどな」クツクツ
フィアンマ「次の話は……」
テッラ「いえ、この辺で今日は切り上げておきましょうかねー」
テッラ「今日のノルマはクリアしたんで」
フィアンマ「ふむ、そうか」
フィアンマ「じゃあ俺様は戻るとしよう」
フィアンマ「俺様も暇ではないのでな」スタスタ
テッラ「みたいですねー。ま、私は興味ありませんが」
フィアンマ「……次はもう少し上等な酒を用意しておけよ?」ガチャ
フィアンマ「俺様は酒にはうるさいからな」バタン
テッラ「そんな酒があったら自分で飲みますねー」
769 : とある右方の活動日記 ◆E1giTRkk1Cov - 2016/06/13 22:01:08.27 QPcINuIpo 82/82これでとある左方暴露大会はおしまい。
次はストーリーに割と関係ある部分のifですー