1 : ◆E1giTRkk1Cov - 2016/03/30 13:16:26.33 Z5x0UT69o 1/549
・本編より前のお話という設定です
・設定はまもりたいけど……目をつむっていただけると幸いです
・キャラ崩壊にご注意を
元スレ
フィアンマ「ローマ正教内部を見学しようと思うのだが……」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1459311386/
………イタリア・聖ピエトロ大聖堂………
フィアンマ「どうだ?」
教皇「それは……」
フィアンマ「それはなんだ? 続きを言わないと分からないぞ」
教皇「好奇心があるのは悪いことではないだろう」
教皇「しかし、その好奇心は今まで秘匿され続けていた神の右席の存在を明るみに出すような行為につながりかねない」
フィアンマ「そんな回りくどい言い方をするな」
フィアンマ「要は、見学とか面倒なことはやめてくれ、と言いたいんだろ?」
教皇「分かっているのなら、わざわざ口に出して私に尋ねなくても良いだろう?」
フィアンマ「いや、やめてくれと言われてもやめるつもりはなかったからな」
フィアンマ「つまり、さっきのはただの独り言だ」
教皇「やめて欲しい理由が分かるのならやめてもらえないものか……」
フィアンマ「拒否だ。やめろと言われてもやめるつもりは毛頭ないと言っただろう?」
フィアンマ「人の話はちゃんと聞いておくべきだ」
フィアンマ「そもそも、おかしいのはお前たちの方だろう?」
教皇「何のことだ?」
フィアンマ「ローマ正教の裏のトップである俺様が全く組織の内情を把握できていない」
フィアンマ「これは大問題だろ!!」ギリギリ
教皇「お前にあまり詳しい事情を知られると、勝手に行動し、そのことによって神の右席の存在が露見してしまう恐れがある」
フィアンマ「……どう動くかはその報告を聞いた後、俺様が決めることだ」
フィアンマ「それに、バレないための配慮くらい俺様だってしている」
教皇「万が一にも知られてはならないのだから、本当なら有事の時以外は閉じ込めておきたいくらいなんだぞ?」
フィアンマ「……俺様の立場、分かっているのか?」
教皇「私の……相談役だ」
フィアンマ「……まあ、力関係的には逆転しているが、そこは置いておこう」
教皇「……」
フィアンマ「本来なら下から現在のローマ正教について記された書類などが渡されて当然なはずだ」
フィアンマ「しかし何も無い」
フィアンマ「ならば、俺様自らの足で調べるしかないじゃないか」
教皇「……書類などを渡しても即燃やしてしまうだろう?」
フィアンマ「そんなのは当然だ」
フィアンマ「目を通して覚えたものは必要ないだろ?」
フィアンマ「未来の俺様がそんな紙切れ一つに足を引っ張られる羽目になるのも興ざめだしな」
教皇「……紙がもったいないとは思わないのか?」
フィアンマ「全く。少しも思わないな」
フィアンマ「なんのためにあんなに大量の寄付金を集めているんだ?」
フィアンマ「……紙代程度で困るほど金不足になるはずないだろう? 宗教というものは稼げるからな」
教皇「宗教は金を稼ぐ道具ではない」
フィアンマ「そうかい。だが、そんな話はどうでもいいんだ」
フィアンマ「実際問題、信者どもから金を取っているのだからな」
教皇「っ……」
フィアンマ「まあ、そのことについてどうこう言うつもりは全くない」
フィアンマ「俺様はただ単にローマ正教に属する奴らの活動を観察したいだけだからな」
教皇「……」
教皇(困った、神の右席の存在は一般教徒に知られるわけにはいかない……)
教皇(配慮していると言ってはいるが、何かあった時に自分の正体を明かしてしまう危険がある)
教皇(その上フィアンマは他人のことなど気にしない……騒動を起こしかねない)
「それなら私が同行するのである」
フィアンマ「ん? アックアか」
フィアンマ「ここに入るときはちゃんとノックしろと言っただろう」
アックア「はじめから中にいたんだが」
フィアンマ「!!?」
教皇「……いいのか?」
アックア「もちろん、フィアンマを一人で歩かせるとどうなるか想像もできないのである」
フィアンマ「む、それはどういう意味だ。返答次第では殴るぞ」グ-
アックア「お前が私を殴っても、お前の関節を痛めるだと思うが……それでもいいなら殴ればいい」
フィアンマ「……攻撃するぞ、魔術で」
アックア「はぁ……お前が一人で敷地内を歩くと迷うだろう?」
アックア「だから私が案内をしてやろうという提案をしたのである」
フィアンマ「ああ、なるほどな。そういう意味か」
フィアンマ「てっきり俺様を馬鹿にしているのかと思ったじゃないか」
アックア(本当はそういう意味だったけど黙っておくべきか)ウンウン
教皇「ふむ、分かった」
教皇「アックアを連れていくならローマ正教内部を見学することを許可しよう」
アックア「了解した」
フィアンマ「アックアが話に参加してから進むのがスムーズすぎるだろう……」
教皇「あともう一つ条件がある」
フィアンマ「なんだ? さっさと言え」
教皇「身分を隠すことだけは厳守してもらいたい」
フィアンマ「……いいだろう」
フィアンマ「神の右席の存在を隠したいというお前の意思をたまには尊重してやるのも悪くはない」フム
フィアンマ「だが、それだと自由に見て回れないな……」
フィアンマ「一般の見学者は表の部分しか見学できないのだろう?」
アックア「確かにそうだな……」ウムム
教皇「それは……この紙を持っていれば大丈夫だ」サラサラ
フィアンマ「ふむ、署名付きの許可証か」ピラリ
教皇「それさえ見せれば大体のことは許可がもらえるはずだ」
フィアンマ「……よし、行くぞ、アックア」
アックア「分かった」
教皇「頼んだ」ソコッ
アックア「任せるのである」
……………………
フィアンマ「……」ウズウズ
アックア「そんなに楽しみなのか?」
フィアンマ「楽しみ? 遊びに来ているんじゃないのだから楽しみを求めるわけが無いだろう」
アックア「そ、そうか」
フィアンマ「純粋に俺様がローマ正教のために何かできることはないかと考えただけの話だ」ニヤリ
アックア(嘘であるな)
アックア(まず、フィアンマのことを語るために純粋という単語を使うことがありえない)
フィアンマ「なにか失礼なこと考えているだろう」
アックア「まさか、新参者の私がそんなことをするわけがないだろ」
フィアンマ「……ずっと前からローマ正教に属している俺様より、ついこの前きたお前の方が地の利があるとはどういう事なんだろうな?」
アックア「さあ?」
アックア(きっと、今までの行動から判断されたに違いない)
フィアンマ「奴からの信頼度も違うみたいだしな」
アックア「ん? 気づいてたのか」
フィアンマ「当たり前だ。その程度の感情を察知できなければ、俺様は今生きてないさ」
アックア「……人の気持ちがわかるとは……見直したのである」
フィアンマ「いや、それは普通に失礼だぞ」
フィアンマ「……今回の見学もとい視察はより人間の感情について調べる、という意味もあるんだからな?」
アックア「わざわざそんなことをしてどうするつもりだ?」
フィアンマ「今後の俺様の活動方針を固めるためだ」
フィアンマ「人の感情とは利用できるか否か、それをこの際よく調べておこうと思ってな」フフン
アックア「……む、さっきの見直したというのは訂正させてもらおう」
アックア「やはり自分の為でしかないのか……」
フィアンマ(……)ニヤァ
フィアンマ「おいおい、俺様だって年頃の男だぞ?」
フィアンマ「友とかガールフレンドとやらも欲しくなるものだ」
アックア「そ、そうか……邪推してすまない」
フィアンマ「いやいや」
フィアンマ「俺様も誤解させるようなことを言ってしまったからな」
フィアンマ(ま、新参者のお前に俺様の思考を理解できる訳が無い)
フィアンマ(物心ついた頃から俺様に付きまとうマタイの奴でさえ、俺様の考えは闇だ、と理解を放棄している有様だからな)
フィアンマ(くくっ、結果が楽しみだ……)
アックア「なぜニヤニヤしている?」
フィアンマ「新しい領域に踏み込むというのは実に興味深いものだからじゃないか?」
『マジカル☆シスターズ』
フィアンマ「はぁはぁ、別の建物に移動するなんて聞いてないぞ」
フィアンマ「第三の腕使用での移動もできないから疲れたんだが」
アックア「移動するのは当たり前である」
アックア「全て一箇所に集結させていたら、襲撃を受けた際にローマ正教の全機能が停止してしまうのである」
フィアンマ「いや、その理屈は分かるが、この距離じゃ意味が無いだろう?」
フィアンマ「バチカンから少し出ただけじゃないか。それでもかなり歩いたが」
アックア「ああ、この程度の距離じゃ施設を分けているとはいえない」
アックア「まあ、それは考えあってのことなのであろう」
フィアンマ「……意味がなかったらショックだな」ハァ
フィアンマ「で、ここは?」
アックア「アニェーゼ部隊の本拠地である」
フィアンマ「アポしたのか?」
アックア「アポする? ポアみたいに言うな」
フィアンマ「……アポとったのか?」
アックア「いいや。突撃しないと視察の意味が無いのである」
フィアンマ「ふむ……確かにそれは一理あるな」
アックア「しっかり普段の動きを見たいなら隠れてみるのが一番であるが……無理だな」チラ
フィアンマ「……ああ、体を使わねばならない行動はあまり得意ではない」
アックア「見栄はらないでできないと正直に言うのである」
フィアンマ「キャンノットではない。だが、ウェルでもない」
アックア「……」
フィアンマ「……まあ、入るか」
アックア「であるな」
フィアンマ「……」コンコン
アニェーゼ『はいはい、今出るんで待っててください』
ガチャ
アニェーゼ「もう出発って命令ですか?」
フィアンマ「……視察に来たぞ」
アニェーゼ「……え?」
アックア「お邪魔させてもらうのである」ズイ スタスタ
アニェーゼ「ちょ、あ、え? あんたら何もんですか!!」アセアセ
フィアンマ「強引で申し訳ないが、これでも見て理解しろ」スッ ズイ
アニェーゼ「ちょ、待ってくださいっての!!」グッ バタン
フィアンマ「!?」ズザッ
フィアンマ(……アックアは入れたのに俺様は小娘に押し戻される……だと?)
アニェーゼ「あ、すみません」アセ
アニェーゼ「まだ中で着替えていたもんで」
フィアンマ「……いや、俺様も悪かったな。強引に入る必要はなかった」スック
アニェーゼ「分かってもらえてよかったです」
フィアンマ「ところで、先に入ったゴルフウェアのようなものを着た男はどうしている?」
アニェーゼ「ええと、ちょっと待っててください……」ガチャ
バタン
アニェーゼ「タコ殴りにされてますね」
フィアンマ「それって大丈夫なのか?」
アニェーゼ「まあ、私たちは戦闘部隊ですが、シスターなんで貞操観念はしっかりしてますよ」
フィアンマ「いや、その殴っているシスターたちの手とかは問題ないのか、という意味で聞いたんだ」
アニェーゼ「鍛えてますから」
アニェーゼ「殴った程度で痛めるほどやわな手をしちゃいません」
フィアンマ「そうか、それならいいんだけどな」
アニェーゼ「……あの男性の心配はしないんですか?」
フィアンマ「心配する必要性がないからな」
アニェーゼ「で、もう一度聞きますが、あなた達は一体何者なんですか?」
アニェーゼ「視察とか何とか言っていましたけど」
フィアンマ「それはその紙に書いてあるはずだ」
フィアンマ「読んで分からなかったら、俺様に聞け」
アニェーゼ「は、はあ……」ジー
フィアンマ「……読み終わったか?」
アニェーゼ「教皇のサイン付き!?」
フィアンマ「ああ。俺様とさっきの付き人は教皇公認で視察に来ている」
アニェーゼ「そ、それは失礼いたしました!!!」ペコリ
フィアンマ「そんなに改まる必要はないぞ。さっきのままでいい」
アニェーゼ「……ま、誠に申し訳ありません……」
フィアンマ「だから、さっきのままでいいと言っているだろう」
フィアンマ「反省しているなら、さっさとそこをどいて通してもらいたいのだが」
アニェーゼ「は、はい。分かりました」ガチャ
アニェーゼ「どうぞ」
フィアンマ「……最初からこれを見せるべきだったな」
フィアンマ「次からは気を付けるとしよう」
アックア「お、やっと来たのであるか」
シスター「はあはあ……殴っても蹴ってもびくともしない」ポカポカ
シスター「一体何者? 聖人レベルの耐久力じゃない」ボコボコ
アックア「だから私は聖人だと何度も言っているのである」
シスター「人の着替え中に部屋に押し入ってくる聖人がいる訳無いです」ドスドス
シスター「さっさと出て行って下さい!!!!」ナミダメ
フィアンマ「えっと……お前はそういう趣味の持ち主だったのか?」
アックア「断じてそんな事は無いのである」
フィアンマ「……この状況を見てその言葉を信用できる者はそうそういないだろうな」
シスター「な!! 別の男が入ってきてる!?」
シスター「ど、どういうことですか、シスター・アニェーゼ!!」
アニェーゼ「静まって下さい!!」
アニェーゼ「この二人は教皇公認で視察に来た方々です!」
シスター「ええ? この男どもが!?」
シスター「そんな……」
アニェーゼ「とにかく! この二人に危害を加えるのは教皇に逆らうことと同義です」
アニェーゼ「幸いにも今までの無礼は水に流してくれるそうなので、今後一切無礼の無いよう気を付けてください!」
シスター「……り、了解しました」
シスター「あ、あの、先ほどはすみませんでした。そんなお方だとは知らず……」
アックア「構わないのである。聖人はあの程度では痛くもかゆくもないのでな」
シスター「本当に聖人だったんですか」
アックア「だからそうだと何度も言っている」
フィアンマ「このシスターたちもよくこんな小娘の言うことを聞くな」
アニェーゼ「人心掌握は結構得意なんです」エッヘン
フィアンマ「ふむ、コツとかはあるのか?」
アニェーゼ「そうですね……しいて言うなら部下の言葉はちゃんと聞くこと、ですかね」
フィアンマ「……」
アニェーゼ「あ、こんな小娘が偉そうにすみません」
フィアンマ「いや、参考になった」
フィアンマ「ところで、俺様は無礼な行為を水に流すとは言ってないんだが……」
アニェーゼ「……えっと、そこは小娘の人心掌握術に免じて見逃してもらえませんかね?」アハハ…
フィアンマ「さて、どうしようか」
フィアンマ「俺様はこのシスター軍団がどうなろうと構わないからなぁ……」ニヤニヤ
アニェーゼ「っ……」
フィアンマ「……ま、人心掌握術は役に立ちそうだし、見逃してやろう」クク
アニェーゼ「いいんですか!!」
フィアンマ「魔術を使わずにこの人数をまとめ上げる手腕には驚いたからな」
アニェーゼ「よ、よかった……。本当にすみません」ペコリ
フィアンマ「まあ、顔をあげろ」
フィアンマ「それに自分の部下を守ろうと必死な感じも伝わってきたからな」
フィアンマ「そういうところを下の奴らは慕っているのかもしれない」フッ
アニェーゼ「……」カア
アックア「話は終わったのであるか?」
フィアンマ「ああ。正式に話を付けてきた」
アックア「そうか」
フィアンマ「なあ、少し聞きたいんだが」
アックア「なんだ?」
フィアンマ「そういう趣味を持っているわけでもないのに、なぜあのシスター達の攻撃を甘んじて受けていたんだ?」
フィアンマ「疑われても仕方がないと思うぞ」
アックア「手加減があまり利かないからである。怪我させるのはまずいだろう?」
フィアンマ「なるほどな。聖人も大変だな」
アックア「大変というほどでもないのである。もう昔からの習慣だからな」
フィアンマ「ふむ……そういうものか」クビカシゲ
フィアンマ「おい」
アニェーゼ「な、なんですか?」
フィアンマ「俺様が入ろうとした時、出発が何だかんだって言っていただろう?」
フィアンマ「今何をしている所なんだ?」
アニェーゼ「ああ……それは……」
ガチャ
ルチア「……!!」
ルチア「な、何です、この男どもは!!」
アンジェレネ「どうしたんですか?」ヒョコ
ルチア「あなたは私の後ろに隠れてなさい!!」
フィアンマ「おいおい、あいつらもお前の部下だろう? ちゃんと指導しておくべきだぞ」
アニェーゼ「では少しこの紙借りますね」ピラリ
フィアンマ「あ、ああ」
アニェーゼ「心配いらないです。シスター・ルチア、シスター・アンジェレネ」
アンジェレネ「え?」
アニェーゼ「この二人は……視察の方々なんで」ピラ
ルチア「教皇のサイン付き……!?」ビク
アンジェレネ「この印籠が目に入らぬか、みたいですね!!」ワクワク
アックア「どこかで聞いたようなセリフであるな」
フィアンマ「説明するのが面倒だからと言ってその紙で片付けるのははどうかと思うぞ」
アックア「ならお前が説明すればいいのである」
フィアンマ「そういう説明をするのが上司の役割だろ」
ルチア「……失礼ですが、あなた方のお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか」
フィアンマ「いいだろう。俺様は神の右s、モガッ」ガバ
アニェーゼ「神のう?」
アンジェレネ「噂か何かで神の右席とかいう組織が存在するって聞いた事有りますよ!!」
アックア「いや、噂の裏組織とは何も関係ないのである」アセアセ
アックア「えっと、彼は教皇の親戚なのである。なあ、フィアンマ?」
フィアンマ「あ、ああ、そうだ」
フィアンマ「将来はローマ正教の中核を担うことになるかもしれないからよろしく」
アニェーゼ「……そんなすごいお方だったんですか!?」
フィアンマ「ま、まあそんなところだ」
フィアンマ(やりづらい役だな……)
フィアンマ「で、こっちは聖人のアックアだ。俺様の付き人だな」
アックア「よろしくなのである」
アックア「私へのちょっとした攻撃なら見逃すが、フィアンマに攻撃した者には容赦しない」
シスター達「ひぃっ」ビクッ
フィアンマ「そんな気遣いは無用だ」コソ
アックア「私だって本気でそんなことをするつもりはないのである」コソ
アックア「だがそれくらい言っておかないと、付き人らしくないのであるから、仕方があるまい」コソ
フィアンマ「なるほどだが、気色悪いな」コソ
アニェーゼ「何話してんですか?」
フィアンマ「いや、こっちの話だ。気にする必要はない」
アニェーゼ「そうですか」
アニェーゼ「でも現教皇の親戚ってことら、次期ローマ正教の教皇候補ですか……」ボソ
アニェーゼ「きちんとゴマすっておかねぇと……」
ルチア「シスター・アニェーゼ、声に出してもいいんですか?」
アニェーゼ「あっ……」
フィアンマ「ごますりか」
フィアンマ「まあ、頑張るといい」
アニェーゼ「なっ! 今のは、今のは無しで頼みます!」
フィアンマ「面白いことを言う女だな」
フィアンマ「ただ俺様は頑張っていたらその分だけ報告してやろう、という意味で言ったんだがな」
アニェーゼ「え、そうなんですか?」
フィアンマ「ああ。俺様は嘘はつかないからな」
アックア(信頼を得るためとはいえ、思ってもないことを言うとはな)
アックア(まあ、偽りの言葉は人間関係においても重要か)
フィアンマ「ところで、今は何をしているんだ?」
フィアンマ「さっきはとある二人のせいで内容を聞くことができなかったからな」
アニェーゼ「それは……」
アンジェレネ「ある魔術結社討伐の準備ですよー」
ルチア「し、シスター・アンジェレネ! 口にしてはならないと言ったでしょう!」
ルチア「相手に聞かれてたらどうするんです!」
アニェーゼ「いや、もうとっくにバレていたみてぇですよ」
ドゴオオオォォォン……
アンジェレネ「私たちの結界が破られた!?」
ルチア「これは、まずそうですね」ジャキッ
アニェーゼ「いやぁ、私たちだけ別の建物に移動しておいて正解でした」ハァ
フィアンマ「ふむ……しばらく後ろで見ているとしよう」スタスタ
アニェーゼ「ええ! ちゃんと見ててください!」ジャラ
アニェーゼ「で、上に報告頼みますね」ダッ
フィアンマ「はいはい。頑張れよー」
フィアンマ「俺様が助太刀したらゲームバランス崩壊だからな」
アックア「ゲームバランスとか言うな」
アックア「というか、どこでそんな単語を学んだ?」
フィアンマ「そこでアンジェレネとかいうガキとゲームの話をしていた時だ」
アックア「視察中にゲームの話などするな!」
フィアンマ「アニェーゼ部隊といったか、この組織はどれほどの規模なのだ?」
アックア「この魔術が飛び交う中でよくそんな話ができるな」
フィアンマ「効かない攻撃は怖くないからな」
アックア「現時点で百人いかない程度の人数らしい」
フィアンマ「そうか……やはりそこそこ大きなグループだというわけか」ジー
フィアンマ「俺様はたった三人をまとめることもできないというのに……」
アックア「神の右席のリーダーぶるのやめてもらえるか?」
フィアンマ「実質リーダーだからいいだろう」
フィアンマ「ま、神の右席は一人一人の癖が強過ぎるからまとめるというより、うまく動くよう仕向けるっていうのが正しいがな」
アックア「人身掌握術を聞いた意味がなかったみたいであるな」
フィアンマ「仕方が無いだろう? 組織によって違うのさ、そのあたりはな」ジー
アックア(軽口をたたきつつもしっかり戦闘を観察している辺り、視察に来たというのはふざけているわけではないらしいな)
アンジェレネ「行けっ!!」ジャリリリ
魔術師「金貨の入った袋、か」
魔術師「火焔の鎖よ、溶かせ!」ゴオォォ!
アンジェレネ「火!?」
アンジェレネ「は、弾けて!!」ブツッ ジャラララララ
魔術師「っ……」ドドドッ
魔術師「いってぇな……でも、もう武器はなさそう、だな?」ニヤ
フィアンマ「……自分の身を守るものを自爆させてどうするんだ……」スック
アックア「ん? ゲームバランス崩壊ではないのであるか?」
フィアンマ「助っ人とかではない。ゲーム知識のお礼だ」
アックア「無理矢理な言い訳であるな」
フィアンマ「ふん、俺様が見ていたのに人が死んだら神の右席の名が泣くだろう」
魔術師「柱支えし者の一人、嵐となりて、仇なす悪鬼をねじ伏せ――」
アンジェレネ「っ!」
アンジェレネ(かなり強いのが来る!!)
「怒りを鎮め、席へ還れ」
魔術師「なっ、解呪されただと!?」
フィアンマ「よっと、間に合ったみたいだな」スタッ
アンジェレネ「フィアンマさん!」
フィアンマ「あまり人が集中しているところから離れるな」
フィアンマ「あまり離れると下手したら集中砲火を喰らうぞ」
フィアンマ「まあ、相手は上手くバラして一人ずつプチプチ潰すつもりだったらしいが」チラ
魔術師「なんだ、コイツは?」
フィアンマ(この腕が使えれば瞬殺なんだがな)
フィアンマ「とにかく俺様が適当に引きつけているうちに、このコイン袋でも使って、再度術式を構築しろ」ジャラッ
フィアンマ「丁寧に、な」
アンジェレネ「わ、分かりました!」タッ
フィアンマ「さてと、お待たせしたな」クルッ
フィアンマ「また詠唱しなくてはならないのは面倒だから、さっさと勝負をつけさせてもらうぞ」
魔術師「っ……一度術を見破ったくらいで調子に乗るなよ?」グッ
女魔術師「はいはいどいてねー」ペタッ
魔術師「なっ、お前はリーダーのガキと戦えと言ったはずだ!!」
女魔術師「そっちよりもこっちのお兄さんの方がよっぽど強そうだったから助太刀に来たのよ」ズザッ
魔術師「な、何をする!」ズテ
女魔術師「ほら、伏せないと頭飛ぶわよ。お姉さんの胸にでも頭うずめてなさい」パチン
魔術師「もごご……」ガシッ
ドゴオオオォォォン モクモクモク……
魔術師「やったか?」
女魔術師「……それ、フラグよ」ジッ
フィアンマ「ほう、面白い魔術を使うではないか」カツッ
フィアンマ「見破るのに少し時間がかかった」
女魔術師「まあ……効くわけないか」アハハ…
フィアンマ「いやいや、なかなか面白かったぞ」
フィアンマ「そのお礼と言ってはなんだが俺様のとっておき手前の技を見せてやる」パチン
魔術師「うぐっ」バタ
女魔術師「ぐっ」バタ
アンジェレネ「え、な、何したんですか?」
フィアンマ「頭に衝撃波を叩き込んだ。これでしばらくは起きないはずだ」
フィアンマ(ちなみにとっておきでもなんでもない)
アンジェレネ「あ、危ないところをありがとうございました!」
フィアンマ「いや、お礼とかはいいからさっさとその二人を縛って、他の奴らの援護に行くといい」
フィアンマ「これでゲーム知識の恩は返せただろう」スタスタ
アックア「お疲れなのである」
フィアンマ「ああ。普通の魔術もたまには悪くないな」
アックア「瞬殺だとつまらないからな」
フィアンマ「む、お前らしくない事を言うな」
アックア「そうであるか? 強い相手と戦うのは私も好きなのである」
フィアンマ「まあ、俺様の前では強い弱いは全く関係ないがな」
アックア「それは非常につまらない戦いであるな」
フィアンマ「楽だからいいのさ」フッ
…………………………
……………
アニェーゼ「はぁ、はぁ、なんとか倒せました……」
アニェーゼ「皆さんお疲れ様です」
アンジェレネ「拘束拘束!」タタタッ
ルチア「づっ……終わりましたか」ガクッ
アニェーゼ「シスター・ルチア、どうしたんです?」タッ
ルチア「背中を少し深く斬られて……でも大丈夫です」
アニェーゼ「回復魔術が得意なのは……」
シスター「皆、魔力は残ってません!」
アニェーゼ「そうですよね……」ジー
アンジェレネ「……」ジー
フィアンマ「なぁ、俺様達すごい見られてないか?」
アックア「いや、私は見られてないのである」
アックア「全シスター達の目線がお前に集まっている」
フィアンマ「……期待しているところ非常に申し訳ないが、俺様は他人のための魔術にはそこまで聡くないのだが」ボソボソ
アックア「こっちを向いて小声で言うのをやめるのである」
アックア「男に小声で話しかけられても気色が悪いだけである」
フィアンマ「え、俺様の意図汲んでくれないの?」
フィアンマ「どう断ればいいんでしょうか、という意味で言ったんだぞ」
アックア「別に断る必要はないのである」
アックア「ガールフレンドが欲しいのだろう? なら絶好のチャンスだろう? 出来ないわけじゃないんだから」
フィアンマ「……」
フィアンマ(仕方が無い)
フィアンマ(今回は俺様が面倒な嘘をついてしまったツケだ)
フィアンマ「はぁ……今回だけ特別に俺様が回復魔術かけてやるから、傷がひどい奴だけ俺様を呼べ」
フィアンマ「とりあえず、ルチアといったか」
ルチア「……は、はい」
フィアンマ「悪いが体に触れるぞ。その方が魔術の効率が上がるんでな」
ルチア「お願いします」ペコ
フィアンマ「動くな。傷に響くぞ」スッ
ルチア「っ……」ピク
フィアンマ「……」パアァ
フィアンマ「……こんなところだ。傷はとりあえずは塞いだが、あまり激しい動きをすることはオススメしない」スック
ルチア「!! ありがとうございます!」
フィアンマ「ああ。ここはどういたしまして、と言うべきか」
フィアンマ「次いるか?」
フィアンマ(俺様のせいとはいえ、なぜ俺様がこんなことをしなくてはならないのだ……?)ハァ
……………………
フィアンマ「ふう、こんなところか」
アックア「であるな」
アニェーゼ「ありがとうございます。おかげで助かりました」
フィアンマ「そんなに改まるな。変な気分になる」
アックア「ふっ、普段とはまるで別人のようなことを言うのであるな」
フィアンマ「うるさいうるさい!」
フィアンマ「俺様のことはどうでもいいだろう」
ルチア「シスター・アニェーゼ、反省会は?」
アニェーゼ「ええ、拘束が終わったら始めます」
シスター「拘束、終わりました!」
アニェーゼ「よし、じゃあ受け渡しの担当が来るまで反省会します」
フィアンマ「反省会か。なら少し俺様から言いたいことがあるのだがいいか?」
フィアンマ「戦闘を見てて気になった点なんだが」
アックア「!」
アニェーゼ「おおー、ちゃんと見ててくれたってわけですね」
フィアンマ「当たり前だ。視察に来たのだからな」
フィアンマ「部下の得意戦法を見極めるいい機会にもなった」
アンジェレネ「じゃあ弱点も見えましたか?」
フィアンマ「ああ。それを今話そうと思う」
アックア(フィアンマが人にアドバイスをするだと……)
フィアンマ「まずアンジェレネといったか。お前からだ」
アンジェレネ「は、はい!」
フィアンマ「お前はもう少し術式の隙をなくせ。簡単に解呪されるぞ」
フィアンマ「それどころか術に割り込まれて、乗っ取られかねないな」
アンジェレネ「隙をなくすって、どうしたらいいんですか?」
フィアンマ「……術の理論をしっかり頭で理解することが一番大事だろう」
フィアンマ「そうしたら術の中から相手が割り込めるような隙が減るはずだ」
フィアンマ「それに詠唱も短縮できるはずだ」
アンジェレネ「なるほど……」
フィアンマ「あとは相性悪い相手と当たってしまった時のため、弱点を補い合うことのできる奴と組んで動くべきだ」
フィアンマ「そうだな……水属性の魔術が得意な奴と組むといいんじゃないか?」
フィアンマ「金は水の効果を増幅させると聞いたこともあるしな」
アンジェレネ「ペアを組むべき……水属性」メモメモ
フィアンマ「だが、まあ、金が火に弱いことを覚えていたのは良かったと思うぞ」
アンジェレネ「あ、ありがとうございます!!」
フィアンマ「次は車輪女……ルチアだったな。お前へのアドバイスだ」
フィアンマ「聞くも聞かないもお前次第だが」
ルチア「……」ゴクリ
フィアンマ「お前はもう少し術と術の間をなくせ。蜂の巣にされるぞ」
フィアンマ「術式そのものの精度は歳から考えると見上げたものだが、遅い」
フィアンマ「そのせいで隙が目立つ」
ルチア「……」
フィアンマ「少し思い出してみろ」
フィアンマ「車輪の形を戻す時とか隙だらけだろう?」
フィアンマ「戦闘開始直後はそこにフォローが入っていたから、攻撃を受けずに済んでいたみたいだな」
フィアンマ「だが、終盤はみな個々の相手に必死だった。だから、相変わらず隙だらけなお前は背中を斬られた」
ルチア「……よく見てますね」
フィアンマ「さっきも言ったが、視察に来たんだから当然だ」
フィアンマ「話を戻すが、隙ができてしまうことへの根本的な解決にはやはり、魔術の鍛錬は必要不可欠だ」
フィアンマ「だが、それだと時間がかかる」
フィアンマ「だから、対症療法的な方法で申し訳ないが、相手の足を止められる程度の魔術を習得するのが一番手っ取り早いだろう」
フィアンマ「車輪の形を戻しながら行使できるくらいの簡単なものでもいい」
フィアンマ「隙だらけの自分に敵を近づけないことが最優先だ」
ルチア「……」フムフム
フィアンマ「そんなところだ。術式の精度は誇っても良いくらいだから、その良さを損ねないよう鍛錬に励んでくれ」
ルチア「分かりました! 有益な助言をありがとうございます」ペコ
フィアンマ「頭を下げられるほどではない。思ったことを言っただけだからな」
フィアンマ「最後に、アニェーゼ、お前にも一言ある」
アニェーゼ「へっ!?」
アニェーゼ「わたしもですか?」
フィアンマ「ああ」
フィアンマ「私は何も言われねーに決まってますよ、みたいな顔をしていたからな。言いたくなった」
アニェーゼ「Sですね」
フィアンマ「なんとでも言えばいい」
アックア「フィアンマは何を言われても全く意に介さないから、言っても無駄だと思うのである」ハァ
フィアンマ「そういうことだ」ウンウン
フィアンマ「まず……」
フィアンマ「さすがはリーダーだな。組織をまとめ上げるに足る強さだと思うぞ」
アニェーゼ「え、マジですか?」
フィアンマ「マジだ。俺様は嘘は言わないと言ったような気がするが?」
アニェーゼ(確かにお世辞は言えねぇでしょうね)
フィアンマ「死に物狂いで努力したんだろうということが伝わってくるような座標攻撃の正確さだった」
フィアンマ「ローマ正教以外に何か趣味なかったの? 人生損しているぞ、と煽りたくなる程だな」
フィアンマ「……褒めすぎは毒だな」
アニェーゼ「いえ、後半は悪口でしかなかったです」
フィアンマ「まあ、謙遜するな」
アニェーゼ「してません」
フィアンマ「だが、やっぱり組織全体での連携をもう少し取った方がいいと思うぞ」
フィアンマ「常に戦況を見極め、皆の能力を把握し、的確な命令をするのが司令官の仕事だ」
アニェーゼ「指揮官……」
フィアンマ「さっきもアンジェレネとかいうシスターにも言ったが、これだけの人数いたら個々の苦手を補い合うことができるだろう?」
フィアンマ「魔術の発動が遅い奴のフォローに武器を振り回す系の奴をまわす、とかな」
フィアンマ「その辺をより円滑に、効率よくするため、お前の指示があった方がいいと思うぞ」
アニェーゼ「つまり、連携のための指示ですか?」
フィアンマ「ああ。出来ると見込んでのアドバイスなんだが、どうだ?」
フィアンマ「上手くいけば車輪女のような目に遭うシスターは減り、戦力ダウンも抑えられる」
アニェーゼ「……いいじゃないですか。やってやりましょう」
アックア「……意外と真面目なアドバイスができるのであるな」カンシン
アックア(……善意であるかは判断できないのであるが、な )
フィアンマ「お前は一体俺様を何だと思ってるんだ……」
アックア「いや、馬鹿にしているわけではないのである。ただ、魔術面だけの指摘ではなかったということに驚いた」
フィアンマ「ああ、そういうことか」
フィアンマ「実戦に関しては遠見の霊装でよく見てたしな。暇つぶしに本も読んでいた」
フィアンマ「天才だからといって、努力しないわけではないのさ」
アックア(自分で天才というのはどうかと思うんだが……)
アニェーゼ「意外ですね」フフッ
フィアンマ「知り合って間もないお前に言われたくはない」ムカー
アニェーゼ「いや、私にあんなこと言うくらいですから、さぞかし高尚な趣味をお持ちなのかと予想してたんですよ」
アニェーゼ「だけど実際は私と大差ないですねって思っただけです」
フィアンマ「もしかして、俺様は煽られているのか?」
フィアンマ「お前も趣味持ってないじゃないかって嘲られているのか?」
フィアンマ「人生損してるぞって馬鹿にされているのか?」
アニェーゼ「戻ってきてくださいよ」ツンツン
アニェーゼ「すこし皮肉っただけですから」
フィアンマ「そうか……俺様は皮肉られていたのか」
アックア「……私の趣味を紹介しようか?」
フィアンマ「そ、それは全力で拒否させてもらう」
フィアンマ「ところで、そこの奴らはどうするんだ?」
アックア(……物理的にも魔術的にも拘束されているのである)
魔術師「……」
アニェーゼ「ローマ正教に仇なす存在ですし……まあ普通でしたら拷問の後、処刑でしょうね」
フィアンマ「拷問か」
アニェーゼ「不愉快な想像させちまいましたか?」
フィアンマ「いや、別にそんなことはないが、拷問はイギリス清教の十八番じゃなかったか?」
アニェーゼ「ああ……確かにイギリス清教には劣りますけど、ローマ正教もそこそこいい設備が整ってるらしいですよ」
アニェーゼ「気持ちのいい話ではねえですけどね」
フィアンマ「……ほう、初耳だな」
アニェーゼ「上の方に拷問の話をすることなんて滅多にないですから」
アックア「イギリス清教の拷問、か……」
フィアンマ「アックアは何か知らないのか?」ボソ
アックア「そんな機密事項を教会派でもなかった私が知っているわけが無いのである」ボソ
アニェーゼ「さってと、そろそろ話はやめて、引き渡しのための準備でもしますか」
ルチア「分かりました」
アンジェレネ「了解しましたー」トテトテ
ザワザワ……
………………………
フィアンマ「そういえば」
アニェーゼ「どうしました?」
フィアンマ「この女だけやたら現代っぽい服装だが……リーダーか何かなのか?」
女魔術師「……」
アニェーゼ「えっと、事前に行った調査結果の中にはなかった顔なんで、多分雇われでしょう」
フィアンマ「雇われか……それにしては強かった気がするが」
アニェーゼ「よくあることなんです。戦力が心配な魔術結社が強い魔術師を雇うことは」
アックア「つまり傭兵のようなものということであるな」
アニェーゼ「ええ。まあ、そんな感じです」ウンウン
フィアンマ「……」ジー
フィアンマ「……」ジー
アックア「どうしたのであるか? そんなに黙りこくって」
フィアンマ「おい、アニェーゼ」
アニェーゼ「何ですか?」
フィアンマ「……俺様がこの女の尋問担当してもいいか?」
アニェーゼ「は?」
アックア「な、何言ってるのである。それは拷問官の仕事である」
フィアンマ「俺様がしようと思っているのは拷問じゃない。尋問だ」
フィアンマ「雇われなら口を開きやすいかもしれないだろう?」
フィアンマ「組織の思惑なぞ雇われた身からしたらどうでもいいだろうしな」
ルチア「そんなことはないかと。高額な口止め料をもらっているはずなので」
フィアンマ「……」
ルチア「いかにあなた方、司教クラスの権力を持っているの人間であろうとも教皇の許可なく拷……尋問の代行はできないかと」
アニェーゼ「いや、そんなことないです」スッ
アニェーゼ「この方々は今回の戦闘の功労者ですし、この紙を使えば間違いなく融通を利かせてもらうことができます」ニヤ
アニェーゼ「大した情報もってなさそうですしね」
ルチア「しかし……」
アニェーゼ「いいじゃないですか」
アニェーゼ「魔術を封じたとはいえ相手は肉弾線も得意な雇われの魔術師」
アニェーゼ「わりとボロボロな私達じゃ引渡しまで不安ですよ」
ルチア「……」
アニェーゼ「その上調査結果にはなかったんで、他にも隠し技がある可能性あります」
アニェーゼ「わたし達はそれに対処する余力はねぇかもしれません」
ルチア「……そ、それは……」
アニェーゼ「なら、聖人をつれている彼の方が安心じゃないですか?」
アニェーゼ「それにあっちから提案してきたことですし、万が一のことがあっても、私たちの組織が潰されるって事は無いでしょうし」
ルチア「……分かりました」
フィアンマ「どうだ、話はついたか?」
アニェーゼ「ええ。一応隠し技などがあるかもしれませんのでご注意ください」
アニェーゼ「ま、言う必要無いと思いますけど、一応ってことで」
フィアンマ「ああ、その辺りはアックアに何とかさせる」
アックア「人任せとは、神の右席が聞いて泣くな」コソ
フィアンマ「おや、俺様が言おうとすると一々口を塞ぎに来るくせにお前は普通に口にするんだな」
アックア「小声ならいいと判断しただけだ」
フィアンマ「……さてと、じゃあいくぞ、アックア」
アックア(やはり、私が運ぶことになるのか……それ自体に文句はないが……)
アックア「それではお邪魔して済まなかった」ヨッコラ
アニェーゼ「いえいえ、うまく情報を引き出してくださいよー」
フィアンマ「ああ、尋問の結果は後で報告書でも作成して伝えてやる。楽しみに待ってるといい」
ガチャ
アンジェレネ「楽しみですね」
ルチア「そうですか? 私はただ心配なだけですけど」
アニェーゼ「さて、どうなるか……」
アニェーゼ「報告書が楽しみですね」
『尋問体験』
アックア「視察はもう終わりにするのか? 流石に早すぎる気もするが……」
フィアンマ「続ける」
フィアンマ「ただし尋問の後だ」チラ
女魔術師「……」グッタリ
アックア「……なぜそんなにこの女の尋問にこだわるのであるか?」
アックア「他の奴の尋問でも大差はないと思うが」
フィアンマ「やってみたいから」
アックア「は?」
フィアンマ「やってみたいからだと言った」
アックア「まさか、それだけとは言わないよな?」
フィアンマ「そうだが、ダメなのか?」
フィアンマ「細かいことはアニェーゼがやってくれるはずだから気にする事は無いだろう?」
アックア「むむ、私はあくまでお前が変なことをしないか観察するためだけに来ているのである」
アックア「だから無理に止めるつもりはない」
フィアンマ「それは結構」
アックア「ところで、どこで拷、尋問する気なんだ。このまま行くとお前の部屋にたどり着く」
フィアンマ「仕方がないだろう? どこに何があるか分からないのだから部屋も借りられないのさ」
アックア(その辺りをあのシスターたちに任せればよかったのでは?)
アックア「……まあ、お前の部屋なのだから何をしても別に構わないか」
フィアンマ「そうだ。お前が案ずることではない」
………フィアンマの部屋………
フィアンマ「ようやく到着だ」
アックア「誰に言っている?」
フィアンマ「この女」ユビサシ
女魔術師「……」
フィアンマ「目隠しされてるから分からないだろう?」
アックア「それもそうか」
ガチャガチャ
アックア「……開かないのである」
フィアンマ「ああ、少し待ってろ。開け方があるから」ガチャ
フィアンマ「開いたぞ」
アックア「……防犯対策はしっかりしているみたいだな」
フィアンマ「ああ、俺様以外はこの部屋に侵入できないよう防衛、迎撃術式を展開させている」
アックア「迎撃……そこまで用意する必要はあるのか?」
フィアンマ「当然だろう。極秘の書類なども結構置いてあるのだからな」
アックア「燃やすんじゃなかったのか?」
フィアンマ「……燃やさないものもある。予算案とか、教会の建設計画書とかだな」
アックア「割と現実的だな……」
フィアンマ「どうでもいいだろう、そんなこと」
フィアンマ「それより、入らないのか?」
アックア「仕掛けなどがありそうな予感がするのである……」
フィアンマ「勘が良いな。だがさっき解除したから心配いらない」
アックア「それでは……失礼するぞ」ガチャ
アックア「……」
フィアンマ「人の部屋に来たのに感想もなしか?」
アックア「あまりに普通すぎて驚いていただけだ」
フィアンマ「普通って……俺様は別に変な趣味を持っている訳じゃないんだから、部屋が普通なのは当然だ」
アックア「……そ、そうであるな」
フィアンマ「それより、そろそろそいつ降ろしたらどうだ? そこの椅子使わせてやるから」
アックア「……ふう」
フィアンマ「お疲れ様だ。お前はその辺で休んでるといい」
フィアンマ「俺様は尋問を始めるからな」
アックア「別に大したことは無かったが、ここは素直に休んでおくか」
フィアンマ「まず、名前は?」
女魔術師「……」モゴモゴ
フィアンマ「あれ……なぜ黙ってる?」
アックア「……はぁ、口封じである」
アックア「拘束中に仲間と意思疎通ができないよう口が利けないようになる魔術を使っていたはずだ」
フィアンマ「あ、なるほどな。解呪しないとならないのか」
フィアンマ「……」サッ
フィアンマ「これで大丈夫だろう?」
女魔術師「あら、ホントだ。声が出る」
女魔術師「……お兄さん、さっきも思ったけど本当に魔術上手なのねえ」
フィアンマ「まあ天才だからな。というか、お前と年の差は大してなさそうだが?」
女魔術師「でも坊やって年でもないでしょう? だからお兄さんでいいじゃない」
フィアンマ「俺様はフィアンマだ。ちゃんと名前がある」
女魔術師「怖い顔しないでよ。お姉さんのマゾな部分に火がついちゃうでしょう?」
フィアンマ「名前は?」
女魔術師「無視!?」
フィアンマ「名前を言え」
女魔術師「……お姉さんの名前はオリアナ=トムソンよ」
フィアンマ「オリアナ=トムソンか」カキカキ
フィアンマ「……とりあえず、これでも飲め」スッ
オリアナ「自白剤かしら?」
フィアンマ「いやいや、そんな科学っぽいものを俺様が持っているわけ無いだろう?」
オリアナ「じゃあ何かしら? 媚薬とか?」
フィアンマ「……普通のココアだが、どうしても心配なら確かめてみればいい」
オリアナ「どうやって? 私は今魔術を封じられているのよん」ニコ
フィアンマ「なら解呪しようか」
オリアナ「は?」
アックア「何を言ってるのである」
フィアンマ「いいじゃないか。この女一人が暴れたとしてもそれを鎮圧するのは赤子の手をひねるより容易だろう?」
アックア「そ、そうであるが……」
フィアンマ「まあいいや。いらないなら無理に飲ませる気はない」
フィアンマ「俺様が飲もう」ゴクゴク プハー
フィアンマ「長丁場になるかもしれないから、と好意で糖分補給を勧めたというのにな」ニヤニヤ
オリアナ「そういうことは先に言ってもらわないと分からないわ」
フィアンマ「……いるか?」スッ
オリアナ「ただのココアならいただきたいところだけど、拘束されてるから飲めないわね」
フィアンマ「アックア、飲ませてやれ」
アックア「……分かった」
オリアナ「それで、お兄さんたちは私とそういうコトしたいから助けてくれたのかしら?」
フィアンマ「頭大丈夫か」
アックア「念のために回復魔術かけておこう」パアア
フィアンマ「アックア、生まれつきの欠損にはどんな魔術であっても効果は無いぞ」
アックア「魔力の無駄か……」
オリアナ「え、ひどい反応」
フィアンマ「そもそも俺様はお前を助けたわけじゃない」
フィアンマ「だから今のところお前が処刑されるのを止めるつもりもないし、道理もない」
フィアンマ「ただ、捕まっているのに妙に余裕そうな表情をしているのが気になったから連れてきただけだ」
オリアナ「あら、そんなに私のこと見てくれてたの?」
オリアナ「お姉さん嬉しすぎて少し濡れちゃったみたい」
フィアンマ「……会話しづらいな……」コンワク
フィアンマ「……話し方がどうであれ、お前が有益な情報を持っていたのなら、刑を軽くするように言ってやってもいいがな」
オリアナ「それはつまり、身体で払えってことかしら?」ウフン
フィアンマ「アックア……疲れた、交代してくれ」ヘナー
アックア「断固拒否だ。これほど面倒な人間は初めてだからな」フン
フィアンマ「……じゃあ少し感情のスイッチを切らせてもらう」スゥ
フィアンマ「とりあえずあの組織について知っていることがあるなら全て吐け」
フィアンマ「ここで沈黙を貫いても何もいいことはないぞ。むしろ状況は刻一刻と悪化していく」
フィアンマ「返答次第では処刑は免れるかもしれないのだから、どんなに小さなことでもいいから答えろ」
フィアンマ「分かったな?」
オリアナ「あら、本格的に無視の体制に入っちゃったか」
オリアナ「分かった。お姉さんも真面目に話すからその冷たい目はやめてもらえるかしら」
フィアンマ「……本当だな?」
オリアナ「ええ。お姉さんの目を見たら裏切るつもりはないってわかるでしょう?」
フィアンマ「……そう言って、油断した俺様に目を合わせる事によって発動するまじないか何かを使おうとしていることは読めている」ギロ
オリアナ「あらら、お兄さん本当に頭が冴えてるのね」
フィアンマ「魔術は封じられているとはいえ、魔術まで至らないおまじない的行為は警戒しているに決まってるだろう」フン
オリアナ「うーん、もう降参。小細工加えたりしないでちゃんと答えたげるわ」
フィアンマ「初めからそうしてもらいたかったな。今の会話でどれくらい時間を無駄にしたことか」ハァ
オリアナ「仕方ないわ。それがお姉さんの個性だから」
フィアンマ「これほど相手に迷惑をかける個性は初めて見た」
オリアナ「お姉さんの個性については後でいいわ。それより早く尋問始めましょう?」
フィアンマ「自分からそんなことを言うなんてな」
フィアンマ「まあいい」
フィアンマ「まず、あれは何を目的とした魔術結社なんだ?」
オリアナ「ローマ正教という邪教を排除し、宗教に縛られない世界をつくる、とか言ってたわ」
フィアンマ「ありがちでつまらないな」
オリアナ「まあ、お姉さんはそんなのはどうでも良かったんだけどね」クスクス
フィアンマ「……」サラサラ
フィアンマ「主に使う魔術系統は?」
オリアナ「北欧系から陰陽師系統まで国や宗教関係なく様々な種類の魔術を使う感じだった気がするわ」
オリアナ「色々取っ替え引っ替えってのはあまり好みじゃないんだけど。お姉さんは一途なのが好きよ」
フィアンマ「……その余計な語りはいらない」ハァ
オリアナ「あら、ついクセで」
フィアンマ「……それにしても、ずいぶんサクッと話すんだな」
フィアンマ「口を開こうとしない被疑者を、様々な手を使って自白させることを楽しみにしていた俺様としては少し拍子抜けなんだが」
オリアナ「様々な手って、エロ漫画みたいなことするのかしら?」
フィアンマ「お前に言った俺様が馬鹿だった……」
アックア「実際どんな手を使うつもりだったのだ?」
フィアンマ「言わない」サラサラ…
オリアナ「聖人のお兄さん、私が実際黙ってみれば分かるんじゃない?」
フィアンマ「それはやめろ。面倒な予感しかしないから」カキカキ
オリアナ「じゃあ普通に続けましょう?」
フィアンマ「……そうだな」
フィアンマ「組織のボスは?」
オリアナ「あの、お兄さんに解呪された魔術師よん」
フィアンマ「え? それは本気で言ってるのか?」
オリアナ「もちろん」
フィアンマ「リーダーと言えるほど強くないだろ……」
オリアナ「擁護するわけじゃないけど、そこそこの強さはあるわ。だってあのシスターちゃんは苦戦してたでしょう?」
フィアンマ「た、確かにそうだが……そんなものなのか?」
オリアナ「たかが小さな魔術結社にそんな戦力を期待しないでね。明け色の陽射しとかとは違うんだから」
フィアンマ「黄金、か」
フィアンマ「確かに万が一それが標準だとしたら、世の中はとても危険になるな」
オリアナ「分かってもらえて良かったわ」
フィアンマ「一つ関係ないかもしれないが、いいか?」
オリアナ「拒否権はないでしょう?」
フィアンマ「まあそうだが……」
フィアンマ「俺様としてはありがたいし、心配するようなことでもないんだが、口止めとかはどうしたんだ?」
オリアナ「あら? そんなことどうでもいいんじゃない?」
オリアナ「でも、強いて言うなら、お兄さんの独特な雰囲気に惹かれたから、かもしれないわ」
フィアンマ「……」
オリアナ「分かった、分かったからスルーはやめて?」
フィアンマ「もう、こんなに疲れるとは思ってなかったから、限界が見えてきてな……」ハァ
フィアンマ「……よし、話してくれ」
オリアナ「大丈夫?」
フィアンマ「ああ、俺様はそんなにヤワじゃない。疲れたけど」チラ
アックア「私の方を見るな。お前がやりたいと言い出したんだから最後まで責任をもってやるのである」
フィアンマ「分かってる」
オリアナ「えっと、本当はまだ口止め料貰ってなかったのよ」
オリアナ「というか、契約金みたいなのもなくて、完全に成功報酬って感じだった」
オリアナ「だから今回の件は完全にタダ働きだったってわけ」
オリアナ「お金を払ってもない、情もない組織のために私が身を削ってまで情報を隠す必要はないでしょ?」
フィアンマ「なるほど、アイツらがバカだったという話か」カキカキ
オリアナ「バカっていうか、結果を急ぎすぎたのが運の尽きだったのかな?」
フィアンマ「だが、なぜそんな報酬が出るかもわからない仕事を受けようと思ったんだ」サラサラ
オリアナ「上手くいけば、私の目的も果たすことができそうだったから協力したってだけ」
フィアンマ「なるほど。目的が達成できるなら報酬なんかいらないか」
フィアンマ(目的を聞くのも悪くないが……急ぐこともないか)サラサラ…
フィアンマ「次は、あの単語帳のような魔導書……にしては不安定すぎる紙を使う魔術は一体なんなんだ?」
オリアナ「だいたい分かってるんじゃない」
フィアンマ「確認だ。万万が一俺様の理解が間違えていたら面倒だからな」カキカキ
オリアナ「使い捨ての魔導書。様々な要素の組み合わせによって無限と言っても過言じゃないくらいの魔術パターンを即座に構築して、扱うことができるわ」
オリアナ「持続時間は短いけどね」
フィアンマ「ふむ、まあ安定していないのだから、持続時間が短いというのも納得か」サラサラ
オリアナ「……お兄さん、字綺麗ね」ジー
フィアンマ「と、唐突だな」ピタッ
オリアナ「あら、ごめんなさいね。気になっただけなの」
フィアンマ「……別に言うほど綺麗じゃないがな」
オリアナ「謙遜はいらないわ」
フィアンマ「事実だ」
フィアンマ「と、とにかく、続きやるぞ」
オリアナ「はいはい、分かったわ」
フィアンマ「なぜ捕まってしまったという絶体絶命の危機に妙に余裕に満ちた表情をしていたんだ?」カキカキ
オリアナ「そうね……やっぱり逃げきれるだろうという気持ち半分と、お兄さんの何かを企んでいるような顔に賭けてみようって気持ちが半分ね」
フィアンマ「だな」
フィアンマ「完全に油断していた俺様も悪かったが、あの局面で魅了を使おうと思うお前にも少し興味が湧いたから拾ってやった」
フィアンマ「お前の命をな」
オリアナ「あら、バレちゃってたの?」
フィアンマ「当然だな。俺様に魔術的な隠し事をしようとしても無駄だ」
フィアンマ「だが、気に入った」
オリアナ「あら……意外なこともあるのね」
フィアンマ「お前の性格、言動はとても苦手だが、行動は嫌いじゃない」
アックア「へ? 何を言ってる?」
フィアンマ「俺様が雇う」
オリアナ「え?」
フィアンマ「オリアナは俺様が雇う」
アックア「ど、どうしたのである」
アックア「この女は一応罪人なのであるぞ」
フィアンマ「そんなことは言われなくても分かってる」
フィアンマ「だが、俺様が直接使える部下も欲しい」
フィアンマ「それもそこそこ腕の立つ奴だ」
オリアナ「え? 聖人のお兄さんは……?」
フィアンマ「…………あ、アックア以外にもってことだ」
アックア「……」
アックア(確かにフィアンマが動くより、この女が動いた方が周囲の被害は少なくて済むかもしれない……)
アックア(フィアンマを抑えることは私にはできないが、この女を抑える事なら容易……)
アックア「悪くはないかもしれない……」
フィアンマ「一応言っておくが、教皇には言うなよ?」
フィアンマ「面倒なことになるからな」
オリアナ「えっと、お姉さんが言うのもアレだけど、これはいったいどういうことなのかな?」
フィアンマ「お前を俺様が雇ってやる、と言ってる」
フィアンマ「このままだとどうせ給料未払いのまま処刑されるだけだろう?」
フィアンマ「この程度の情報では処刑は免れるのはほぼ不可能だろうしな」
フィアンマ「悪くない条件だと思うんだが……」
オリアナ「それは大人しく部下になれば見逃してもらえるってことかしら?」
フィアンマ「ああ。少し面倒かもしれないが、必ずなんとかすることを誓おう」
オリアナ「対価はカラダなのかな?」
オリアナ「お姉さんはそれでもいいんだけど、どう?」
フィアンマ「そのいちいち異性を誘惑するような面倒臭い話し方も徹底的に直してやる」
オリアナ「あら? もしかしてお兄さんも誘惑されちゃってたのかしらん?」
フィアンマ「俺様がその程度の言葉に揺れると思ったら大間違いだ」フン
アックア(少し赤くなっているのである)
オリアナ(揺れてるわけじゃないけど、ウブなだけなのかな)
オリアナ(可愛いところも有るのに惜しいわね)
フィアンマ「お前ら、今失礼なこと考えていただろう?」
アックア「そんなことはない。被害妄想は良くないと思うぞ」
オリアナ「お兄さんは基本鋭いけど、こういうところまで鋭いのは少し手強いなぁ……」
フィアンマ「まあいい」
フィアンマ「拒否権は無に等しいが、一応お前の意志を確認するとしよう」
フィアンマ「無理矢理部下にしたせいで、後になって裏切られても困るしな」
オリアナ「無理矢理って……そういうのも嫌いじゃないけど、今回は合意の上でってことにするわ」
オリアナ「よろしくね、お兄さん」
オリアナ「と、聖人のおじさん」
アックア「私はまだそんな歳ではない」ムッ
オリアナ「冗談冗談、よろしく、聖人のお兄さん」
アックア「うむ」
オリアナ「じゃあ契約の証としてプレゼントをあげるわ」
フィアンマ「はじめから思っていたが、馴れ馴れしいぞ」
フィアンマ「今は部下なんだからそれっぽく振舞え」
フィアンマ「ここは割と上下関係が厳しいのだから、そんな態度だとつまみ出されるぞ」
オリアナ「うーん、じゃあ少し気をつけてみるわね」
フィアンマ「ああ、一度やってみろ」
アックア「……」ドキドキ
オリアナ「契約の証としてプレゼントをあげましょう」
フィアンマ「よし、諦めよう」
オリアナ「奇遇ね。お姉さんもそう思ってたわ」
フィアンマ「アックア、とりあえず拘束を解いてやれ、プレゼントをくれるらしい」
アックア「いいのであるな」
フィアンマ「いいって。何かあっても俺様が何とかしてやる」
フィアンマ「それに女からのモノを拒む男など有り得ないだろう」グッ
オリアナ「その言い方は少しお姉さんでも反応に困るわね」
フィアンマ「ほう、お前が反応に困ることもあるのか」
フィアンマ「これは役に立つ……覚えておくべきだな」フム
アックア「……解いたのである」スッ
オリアナ「ありがとう、聖人のお兄さん」チュッ
アックア「!?!?」
フィアンマ「おい、反応しすぎだ」
アックア「お前には言われたくない!!」
フィアンマ「で、プレゼントってのは何なんだ?」
フィアンマ「唐突過ぎて良く分からないんだが」
オリアナ「ん? 期待しちゃってるのかしら?」
フィアンマ「なんでもいいだろう。余計なことを言ってないで、さっさと見せてみろ」スッ
オリアナ「雰囲気もクソもないわね」
フィアンマ「元々そんなものは期待してはない」
オリアナ「……だから女の子に嫌われるのよ、お兄さんは」
フィアンマ「……」
オリアナ「まあ、私は雇われた以上嫌でもお兄さんの性奴隷として生きなきゃならないわけだけど」
フィアンマ「……俺様は嫌われていたのか……確かに自覚はあったが」
アックア「お前が接触したことのある女なんて、ヴェントぐらいしかいないだろう?」
アックア「だから、そう気を落とすな」
フィアンマ「そ、そうだな」シュン
フィアンマ(実際そこまで女に興味なくても刺さるものだな)
フィアンマ(アックアも嫌われていること自体は否定しなかったし)
オリアナ「お、お兄さん? お姉さんは別にお兄さんのこと嫌ってないわよ」
オリアナ「さっきお兄さんに惹かれたって言ったじゃない」
フィアンマ「そ、そうか」パァ
オリアナ(……大人びたように振舞ってるけど、年相応の表情もあるのね……)
オリアナ「さっきのはあんな態度を取り続けてたら女の子に嫌われちゃうよっていう忠告よん」
フィアンマ「……ふん、俺様はそんな理由で行動を変えたりしたりはしない」
オリアナ「そうね。そういうとは思ってたけど」クスッ
フィアンマ「あと……性奴隷ってなんだ?」
フィアンマ「俺様が雇うと決めた存在をそんな劣悪な職場環境に放り込むわけが無いだろう」ムカ
フィアンマ「俺様を舐めてもらっちゃ困る」
オリアナ「なめる?」ペロリン
フィアンマ「舌引き抜くぞ」ハァ
オリアナ「冗談よ、お姉さんジョークだって」
フィアンマ「お姉さんジョークは俺様には通用しないから諦めるんだな」
オリアナ「そうね」クス
オリアナ「あ、そうそう、プレゼントね」スッ
フィアンマ「ありがとう……って携帯電話か?」
アックア「ガラケーと呼ばれるタイプっぽいな」
オリアナ「そう、それはガラケーよ」
フィアンマ「……英語を無理矢理日本語に訳したみたいな話し方をするな」
フィアンマ「それにしても、なぜこんなものを用意してたんだ?」
オリアナ「私のスペアよん。ここで通信の魔術を使ったら盗聴されかねないでしょう?」
フィアンマ「魔術を使わない連絡用ってことか?」
オリアナ「そういうこと」フフッ
フィアンマ「ふむ……面白いな」ポチポチ
フィアンマ「まあ、俺様レベルの魔術なら盗聴されることもないだろうがな」ドヤ-
オリアナ「お姉さんレベルだと心配なのよ。だからこういう時は科学に頼るの」
オリアナ「私のせいでお兄さんの足を引っ張っちゃうといけないでしょ?」
フィアンマ「……くくくっ、よく考えてるじゃないか」ポチポチ
アックア「確かにお前には盗聴されてはならないような情報に溢れているからな」
フィアンマ「だな」ポチポチ
フィアンマ「まあ、全く使い方は分からないがな」ポチポチ
オリアナ「あ、分からなかったの?」
オリアナ「ここはこうして……」ポチポチ
アックア「ふぁあ……」ゴシゴシ
チュンチュン
フィアンマ「ぬ……朝か」ムク…
アックア「お、起きたか」
フィアンマ「んー」ノビー
フィアンマ「ふう……俺様は早起きだからな」
フィアンマ「にしても椅子で寝たせいか体の節々が痛いな……」モミモミ
フィアンマ「おい、アックア、揉んでくれないか?」ポンポン
アックア「拒否する。ちゃんとベッドで寝なかったお前のせいであろう?」
フィアンマ「冷たいことを言うなよ。俺様達の仲じゃないか」
アックア「俺様達の仲という程じゃないだろう」
フィアンマ「……くくっ、それもそうか」
フィアンマ「ところで、オリアナはどうした?」
フィアンマ「そっちの椅子に座っていたはずだが……」キョロキョロ
アックア「お前と同じで寝落ちしていたから、お前のベッドに運んでおいた」
フィアンマ「は!?」
フィアンマ「なぜそんな余計なことをしたんだ……」
アックア「あれでも一応女だ」
アックア「お前は言っていたよな?」
アックア「俺様が雇う以上、そんな劣悪な労働環境には置かないとかなんとか……」
フィアンマ「……確かにお前の言い分も分かるが……この場合は主人である俺様を運んでおくべきだろう」
アックア「お前がいくら華奢だからといって、男が男を抱き上げてると意味深に見えてしまうだろう?」
フィアンマ(華奢……)
アックア「特にあの女はそういう妄想に走りかねない」
フィアンマ「いや……誰も見てないんだから気にするな! まさか自意識過剰なのか?」
アックア「いや、お前が寝落ちしてからしばらくは彼女は起きていた」
フィアンマ「それはつまり……」
アックア「お前が一番早く寝たということだ」
フィアンマ「……そうだったか……」ハァ
アックア「そのせいで私はオリアナ=トムソンの監視のため起きていなくてはならなくなったんだぞ」
フィアンマ「……それは悪いな」
フィアンマ「だが、この部屋はセキュリティは抜群だって言わなかったか?」
フィアンマ「俺様の許可なしにはドアの開け閉めもできないように魔術的ロックをかけている」
フィアンマ「だから解析されたりしない限り、監視などいらないぞ?」
アックア「それを先に言え!」ブンッ
フィアンマ「お、おい!」
フィアンマ「徹夜明けのイライラを俺様にぶつけるな!!」アセッ
……………………
アックア「ちっ、さすがに建物を壊すのは気が引けるからこの辺でやめておいてやる」アスカロ-ン
フィアンマ「やっと落ち着いたか……」
フィアンマ「これでは聖人というより野蛮人じゃないか」ハァ
アックア「確かに私たちがどちらになれる素質も兼ね備えていることは否定しない」
フィアンマ「自覚あるのか」
アックア「ちっ」ブン
フィアンマ「花瓶を投げるな!」パシッ
フィアンマ「こんなところで第三の腕使っているのを見られたらどうするんだ」
アックア「……」ツーン
フィアンマ「知らないふりか。そんな奴が俺様の監視なんか務められるものなのかね」
アックア「寝ている時も観察しているから問題ない」
フィアンマ「犯罪臭しかしないな」
アックア「変なことを言うな。私のイメージが悪くなるだろ」
フィアンマ「事実なのだから諦めろ」
アックア「……犯罪臭と言えば」
フィアンマ「そこから話を広げないでくれ」
アックア「彼女はお前の寝顔を見てニヤニヤしていたぞ」
フィアンマ「確かに少しは犯罪臭するが、お前の発言の方がよっぽど……」
アックア「まあまあ、この話には続きがある」
フィアンマ「……」
アックア「お前の寝顔を見て言ったことが……」
オリアナ「起きている時はあんなにむすっとしてるのに、寝てると可愛いのね、だったかしら?」ムク
アックア「む?」
フィアンマ「お、起きてたのか?」
オリアナ「ぐっすり寝てたけど、お兄さんたちの喧嘩がうるさくて起きちゃったわ」
フィアンマ「そうか。それは悪いことをしたな」
フィアンマ(第三の腕見られてないよな?)
オリアナ「大丈夫よ」
フィアンマ(心読まれた!?)
オリアナ「男は拳で語り合うものだもんね」
フィアンマ「……そ、そうだな」ハァ
オリアナ「男と女はあんなことやこんなことで語り合うんだけど」ウフフ
フィアンマ「朝からそんな話をするな」
オリアナ「……夜ならいいのかしら?」
フィアンマ「夜だけにしろ、と言っても言うこと聞かないだろう?」
オリアナ「うーん、一応雇われの身だからある程度のことならいうこと聞くわ」
フィアンマ「そうか、なら卑猥なことは一切言うな」
フィアンマ「ピュアな俺様のためにも」
アックア(ピュアな……俺様……)フッフフ
オリアナ「それはお姉さんに死ねって言ってるのと同じよ。だからゴメンね」
フィアンマ「そんなこと言うからアックアに犯罪臭と言えば、とか言われるんだ」
オリアナ「それは仕方ないわ。お姉さんは存在が変態って言われたこともあるくらいだし」
フィアンマ「存在が変態か……簡潔にお前の性質を言い表せて便利だな」
オリアナ「お兄さんに言われるとすごい腹が立つんだけど」ムッ
フィアンマ「そうか。それはその画期的な言葉を作り出した奴に言え」
フィアンマ「俺様としては、そいつを褒めたたえて、それなりの報酬を与えたいレベルだがな」
オリアナ「そこまで言うの!?」
フィアンマ「ああ、自覚を持て」
フィアンマ「……さてと、じゃあそろそろ朝食持って来させるから少し待っててくれ」
アックア「私たちの分はどうなる?」
フィアンマ「アックアの分は普通に持ってきてもらうが……」
オリアナ「……ん?」
フィアンマ「オリアナの分は俺様の分を多めにしてもらって分けるという形でいいか?」
オリアナ「ええ」
フィアンマ「……妙に物分かりがいいな」
オリアナ「……お兄さんと間接キスできるんでしょう?」
フィアンマ「はじめに分けるから無い」
オリアナ「そんなにムキにならないで。寝てる時は可愛いんだから」
フィアンマ「例えそうだとしても起きている時は可愛くないということを覚えておけ」パシッ
アックア「それは?」
フィアンマ「質問ばっかりだな」ムッ
アックア「お前の部屋は初めて入るから今のうちに情報を集めなくてはならないだろう」
フィアンマ「犯罪臭しかしないな……」
アックア「犯罪臭などしないのである」
フィアンマ「一応答えてやるが、これはただの通信礼装だ」フリフリ
アックア「ふむ……あまり見ない形である」
フィアンマ「見たら分かる形にしたら防犯上良くないだろ?」
アックア「なるほど……」
アックア「だが、あんなに強固な守りがあるのに警戒する必要はあるのか?」
フィアンマ「昨日も言ったはずだが、俺様の情報はある種、パンドラの箱でもあるからな」
アックア「パンドラの箱か……言い得て妙だな」
オリアナ「……?」
フィアンマ「じゃあ連絡するから少し待ってろ」
オリアナ「はーい」
………………………………
…………………
フィアンマ「さてと、腹ごしらえも終わったし視察再開するか」
オリアナ「お姉さんはどうしたらいいかな?」
フィアンマ「……」
アックア「とりあえずはここで待たせておけばいいと思うが、どうする?」
フィアンマ「……そうだな」
フィアンマ「俺様がなんとか話をつけてくるから、それまでは待機だな」
オリアナ「分かったわ」
オリアナ「はやく話つけてくれるとありがたいわ」
フィアンマ「ああ。まあ、大して時間はかからないだろう」
オリアナ「じゃあその間にお兄さんのエロ本でも探してようかしら」
フィアンマ「……そんなものは無い」フン
オリアナ「まずはベッドの下ね」
フィアンマ「迎撃術式を作動させておくか」
オリアナ「図星ってことか」
オリアナ「それならゆっくり術の解析でもして待ってることにするわ」
フィアンマ「ふん、できるもんならやってみろ」
フィアンマ「行くぞ、アックア」
アックア「はぁ、大人しくしているんだぞ」
オリアナ「はいはーい、いってらっしゃい。進展あったら電話ちょうだいね」
フィアンマ「進展あったらな」
ガチャ
………アニェーゼ部隊の部屋・跡地………
アニェーゼ「あ! フィアンマさんとアックアさんじゃないですか!」タッ
フィアンマ「ん、アニェーゼか。昨日の魔術師達の移送は終わったんだな」
アニェーゼ「ええ。一日経ちましたし」
アックア「ならなぜこんなところにいるのであるか?」
アニェーゼ「えーっと……それはあなた方に報告でもしておこうかと思いまして」
アニェーゼ「あそこまで手伝っていただいたのに事後報告なしってのは恩知らずかと」
アニェーゼ「でも中々居場所が掴めねぇんで、昨日いた場所を右往左往してたってわけです」
フィアンマ「なるほどな。それは見つかって良かったな」
アニェーゼ「ええ」
アニェーゼ「魔術師達の移送は無事完了いたしました、ご協力ありがとうございます」ペコリ
フィアンマ「ああ。感謝されるほどでもない」フイ
アックア「ふっ、あまり感謝されたことないから恥ずかしいのだな」
フィアンマ「からかうな!」
アニェーゼ「あ、そうそう……」ゴソゴソ
アニェーゼ「これ、ありがとうございました」スッ
フィアンマ「ああ、教皇の紙か」
アニェーゼ「上手く話、通しておきましたよ」ニヤリ
フィアンマ「そうか。それは何よりだ」ニヤリ
アックア「おい、その表情は何なのであるか」
フィアンマ「さあな」フイ
アックア「目を逸らすな、こっちを見るのである」
フィアンマ「おいおい、がっつくなよ。俺様はガールフレンドうんぬんは言ったが、ボーイフレンドはお望みではないぞ」
アックア「そういう意味ではない!」
アニェーゼ「……あ、あはは」
フィアンマ「ほら、苦笑いされているぞ」
フィアンマ「見苦しいものを見せてしまったな」
アニェーゼ「いえ、上層部の方にもこんなおかしな方々……じゃなくて、面白い方々がいらっしゃると知ることができて良かったです」
フィアンマ「おかしな方々、だと?」ガ-ン
フィアンマ(おかしな方々……俺様が? 冗談じゃない)
フィアンマ(もし、万が一俺様がおかしな方々の一員だとしたら、ローマ正教の実質トップはおかしな方が務めていることになるんだぞ!)
フィアンマ(ローマ正教終わりじゃないか)
フィアンマ「……」ブツブツ…
アニェーゼ「あ、あれ? どうしたんです?」
アックア「問題ないのである」
アックア「たまに独り言ぶつぶつ呟いていることがあるからな」
アニェーゼ「それって大丈夫なんですか?」
アックア「もちろん」
アニェーゼ「そ、そういうことにしておきます……」
アニェーゼ「ところで、尋問は順調ですか?」
フィアンマ「……ああ、とても順調だが……」フッカツ
フィアンマ「というか、もう聞き出せることは聞き出しきった」
アニェーゼ「えっ、早くないですか? まだあの女の判断力も落ちてないでしょうに」
フィアンマ「口止め料も払ってない組織の情報を隠してやる義理なんかないって言ってたぞ」
アニェーゼ「うわぁ、そりゃ馬鹿な組織ですね……」
アニェーゼ「そんな奴らに私達が押されてたと思うと悔しいですね……」
フィアンマ「……こういう場合は結果オーライというのではないのか?」
フィアンマ「もちろん次に同じような事があったときは負けることはおろか、押されることすら許されないが……」
フィアンマ「今回の経験は次への糧になるのではないか、と思うぞ」
アニェーゼ「……ずいぶんポジティブですね」
フィアンマ「俺様はポジティブが売りだからな」
アックア「それは絶対にないのである」
フィアンマ「この世に絶対などないさ」
アニェーゼ「ポジティブですか……」
フィアンマ「ああ」
フィアンマ「とりあえずは、昨日俺様が言ったところを中心に、気になるところを少しずつ改善していけば俺様みたいに強くなれるかもしれないぞ」ドヤ
アニェーゼ「いえいえ、あなたのようにローマ正教が趣味の方レベルまで強くはなれませんよ」
アニェーゼ「うちの部隊は皆自由時間は本当に自由に過ごしてますし」
フィアンマ「お、おい、俺様の趣味を勝手に決めるな」
フィアンマ「その言い方だと俺様がローマ正教大好きみたいになるじゃないか」
アニェーゼ「違うんですか?」
フィアンマ「違う!」
フィアンマ「……っ、と、とりあえず報告書だ」バッ
アニェーゼ「っと、昨日の今日なのに結構枚数ありますね……」パラパラ…
フィアンマ「ついつい夜まで話し込んでしまったからな」
アニェーゼ「よ、夜まで話し込んだって、やっぱりローマ正教大好きじゃないですか」……パラパラ
フィアンマ「それは違うと言っているだろ」ムカー
フィアンマ「夜まで話し込んだというのも、別の話に花を咲かせてしまっていたからだ」
フィアンマ「聞くべきことはすぐに聞き終えてしまったのでな」ウンウン
アニェーゼ「……あの女との会話がそんなに楽しかったんですか?」
フィアンマ「いや、むしろいちいち気分を害してくる変態だった、な?」
アックア「気分を害してくるかは知らないが、変態というところは激しく同意である」
アニェーゼ「そ、そうなんですか……」パラパラ
フィアンマ「……ここに書いてあるだろ。性格に難アリって」ピラ
アニェーゼ「あ、本当ですね」
アニェーゼ「って、ここから三十枚くらい性格の問題について指摘し続けてるじゃないですか」パララララ
アニェーゼ「……組織の情報にはどれくらい触れてるんですか」パラパラ
フィアンマ「その束のうち五枚分もないだろうな」
フィアンマ「ほとんどは性格、言葉遣いについて記させてもらった」
アニェーゼ「あ、あはは……」
フィアンマ「問題があるなら言ってくれないと分からないぞ?」
フィアンマ「そういうものを書くのは初めてだからいまいち勝手がわからないんでな」
アニェーゼ「……あの……アックアさんはこれ見て何も思いませんでしたか?」バサバサ
アックア「私はフィアンマが変なことをしないように見張るのが主な……じゃなかった」
アックア「ごほん、私はフィアンマの警護が主な仕事。それゆえその他のことには基本的に口を挟まないのである」
アックア「……だから少し性格について書きすぎじゃないかとは思ったが、スルーさせてもらった」
アニェーゼ「あ、やっぱりおかしいとは思ったんですね」
フィアンマ「なんだか俺様抜きで価値観の共有が行われているんだが……」
アニェーゼ「このまま提出しちまっていいんですか?」パラパラ
フィアンマ「もちろんだ。一応、正式書類の形式はマタイのを盗み見て学んでるからな」
アックア「……」ピク
アニェーゼ「ま、マタイ? もしかして教皇のことですか?」
フィアンマ「……そうだが。何かおかしいか?」
アニェーゼ「……そういえば親戚だって言ってましたね」パラ…パラ…
フィアンマ「ああ。奴……じゃなくて彼は俺様が小さな時から良くしてくれた」フフフ
アックア「そ、そうであったな」
フィアンマ「アックアは昔からこうだったが」
アックア「変なことを言うな」ムッ
アックア(ある程度の嘘は見逃すが、私のイメージを悪くするのはよさないか)ツウシン
フィアンマ(こんなところで魔術つかってるとバレるぞ。自重しろ)ケッ
アックア(その言葉そっくりそのまま返すのである)
アニェーゼ「教皇に良くしてもらってた、ですか……いいですね」パラ…パラ
フィアンマ「まあ、良くも悪くも善良だからな」
フィアンマ「俺様のこの素晴らしい人格を形成するのに一役買っているのは間違いなかろう」
アックア「素晴らしい人格……」クツクツ…
フィアンマ「どうだ? 最後まで目を通せたか?」
アニェーゼ「ええ、まあ、とりあえずは」
フィアンマ「不備などは無いはずだがどうだ?」
アニェーゼ「ええ、それも大丈夫なんですけど……」
フィアンマ「ん? 何かあったか」
アニェーゼ「俺様が彼女を雇用することに決定したってどういうことですか?」
フィアンマ「ああ、それはそのままの意味だ。俺様の手足としてこき使うことにした」
フィアンマ「技量も十分だしな」
アニェーゼ「は、はあ……」
アニェーゼ「良かったですね……」
アニェーゼ「罪人の処遇は拷問官の裁量に委ねることができるっていう規則があるんです」
アックア「そ、そんな規則があったのか」
アニェーゼ「ええ、放免も処刑も拷問官の匙加減一つ。もちろん重罪人は除きますが」
アニェーゼ「だから罪人からの賄賂などがはびこらないよう、拷問官には信心の篤い者が選ばれるんですよ」
アニェーゼ「で、そういう者たちは教皇と神は絶対な人種なんです」
アニェーゼ「だからあの教皇のサインで簡単に説得できたってわけなんです」
フィアンマ「それこそローマ正教大好き人間だな」
アニェーゼ「そうですね。彼らは真性です」
アニェーゼ「私らとは真剣さが違いますし」
フィアンマ「話は変わるんだが、お前、今日暇か?」
アニェーゼ「私ですか?」
フィアンマ「アニェーゼ以外いないだろ。アックアは俺様に勝手にくっついてくるしな」
アックア「言い方が気に食わないのだが」
フィアンマ「少し黙れ」
アックア「……」ムッ
フィアンマ「もし暇なら俺様の視察案内を頼みたいんだが」
アニェーゼ「忙しいって程ではないですけど……」
アックア「案内なら私で十分なのである」
フィアンマ「もう忘れたのか?」
フィアンマ「お前がアニェーゼたちの更衣室に特攻していったせいで大変な目に遭ったことを」
アニェーゼ「いや、更衣室じゃないです」
フィアンマ「あれをもう一度体験させるのは酷だろうと思っての提案だったんだが……」
アニェーゼ「私は全然構いませんよ。あれは確かに悲惨でしたし」ウンウン
フィアンマ「じゃあ決定だ」
『写メと携帯解説者』
フィアンマ「……」スタスタ
アニェーゼ「あの……私が後ろをついて行って大丈夫なんですか?」
アニェーゼ「案内役の意味を全くなしていないような気がするんですけど」
アックア「さあな。私はもういちいち突っ込むことに疲れた」
アニェーゼ「く、苦労しているんですね」
アニェーゼ「表情が本当に死んじまってますよ」
アックア「ああ、本当に常識はずれな人間の相手をするのは疲れるから仕方がない事なのである」ハァ
アックア「だから放っておいた方が楽なんだが……」チラ
フィアンマ「この部屋にでも突撃でもしてみるか」
フィアンマ「案内役、この部屋には何があるもしくは居る?」
アニェーゼ「そ、その部屋は……!!」
アックア「枢機卿であるペテロ=ヨグティスの部屋だったはず」
フィアンマ「ふむ、まあそれなら構わないだろう……」
アックア「どうした?」
フィアンマ「実は、アイツのことはあまり好ましく思っていないんだよな……」
アニェーゼ「あ、アイツ、ですか?」フルフル
アニェーゼ「枢機卿のことを言ってるんですよね?」
フィアンマ「ああ。アイツなんてアイツでいいんだ」
アニェーゼ「……ここでそんな話してて聞こえたりしてねぇんですか?」
フィアンマ「そりゃ、聞こえているに決まってる」
アニェーゼ「ええ!?」
フィアンマ「というか、あちらさんも必死にこっちの会話に耳を傾けている頃だろうよ」
アックア「分かっていたのか」
フィアンマ「まあな」
フィアンマ「悪口は聞こえるように言ってやらんと陰口になってしまうというのが俺様の持論だ」チラ
フィアンマ「さて……そろそろ待ちくたびれている頃だろうし、入るか」
コンコン
アニェーゼ「あの、ノックした後に言うのもなんですが」
フィアンマ「なんだ?」
アニェーゼ「私みてぇなただのシスターが入ってもいいんでしょうか?」
ギイイイイ
フィアンマ「いいんじゃないか? 扉も勝手に開いたし」チラ
フィアンマ「恐らくようこそということなんだろう」
アニェーゼ「て、適当じゃないですか!!」
フィアンマ「まあ、そんなに固くなる事は無い。マタイの奴に比べたら奴はただの小者だ」
カツッ
フィアンマ「久しぶりだな」スタスタ
ペテロ「さっきまで私の陰口を言っていたお前がそんなことを言うとは思って無かったな」
フィアンマ「俺様は人の予想を裏切るのが趣味なんでね」
フィアンマ「あと、もう一度言っておくが、聞こえるような悪口は陰口ではない」
ペテロ「それはお前の持論でしかないだろう」
アニェーゼ(空気重っ、今すぐ帰りてぇんですけど……)
ペテロ「おっと、自己紹介が遅れたな」
フィアンマ「いや、いらないけど」
ペテロ「いいや、初めましての者もいるから一応な」
ペテロ「フィアンマから紹介されていると思うが、私がペテロ=ヨグティスだ」
ペテロ「よろしく」
アックア「初めまして、だったか。私はアックア。所属は……」
ペテロ「それはいい。事情は噂で聞いてるからな」
フィアンマ「お前には噂を教えてくれる相手などいないだろう?」ククッ
ペテロ「お前ほどじゃないさ」
ペテロ「して、そちらのお嬢さんは?」
フィアンマ「無理していい人キャラ作る必要もないだろう?」
フィアンマ「今までの会話のせいで何の意味もなくなっているぞ」
ペテロ「……はあ、別にそんなつもりは全くなかったが」
ペテロ「もう一度聞かせてもらうが、君は?」
アニェーゼ「アニェーゼ=サンクティスと申します」
ペテロ「ふむ、昨日の異教徒集団殲滅戦にあたったアニェーゼ部隊の指揮官ってことかな?」
アニェーゼ「はい。昨日は襲撃を許してしまい……」
ペテロ「いやいや、謝る事は無い。任務はこなしたのだからな」
ペテロ「今回の件は諜報部隊に問題があっただけだ」
ペテロ「ま、たまたまフィアンマとアックアがいてよかったな。おかげで組織ごと潰される事は無かったんだから」
フィアンマ「む? まさか今回失敗したら潰す気だったのか?」
ペテロ「さあ? そんな小さなことに私は関与する気はないさ」
ペテロ「だが、その程度の任務の達成さえできない組織は淘汰されるのがこの世の理だ」
フィアンマ「そうか。ならこの世の理にならうなら、組織の戦力低下も厭わないのだな」
ペテロ「その辺はもちろんよく考えて切り捨てていくべきだとは思っている」
ペテロ「組織力の低下はそのまま組織の瓦解につながる」
フィアンマ「まあ、その考えを否定する気は無いが……」
ペテロ「そんなことより何をしに来たんだ?」
ペテロ「その様子を見ると私に何か大事な用があるわけでもないらしい」
フィアンマ「視察だ」
ペテロ「……なるほど、どおりで教皇がずっとそわそわしているわけだ」
ペテロ「私がそんなことを頼んでやる義理はないが、もう少し奔放な行動は控えたらどうだ?」
フィアンマ「そんなの俺様が気を使う必要はないな」
フィアンマ「奴にだされた条件は守っているのだから文句をつけられるのはおかしいだろう?」
ペテロ「それもそうか」
ペテロ「……話は戻るが、視察とは言ってもここは見るものなどないぞ?」
フィアンマ「いやいや」パシャパシャ
ペテロ「け、携帯電話?」
フィアンマ「ああ、カメラ機能付きのな」パシャ
ペテロ「っ、フラッシュ!?」バッ
フィアンマ「何故だろうな」カツカツ…
ペテロ「……何がだ」
フィアンマ「みな枢機卿の名を聞くとアニェーゼのように硬直してしまう」
フィアンマ「だが、枢機卿といえども自分たちと変わらない人間だろう?」
フィアンマ「だから一般信徒にもそれを理解してもらい、親近感を持ってもらうための掲示物でも作成しようかと思ってな」
フィアンマ「そのための写真撮影だ」
ペテロ「親近感を持たれる必要などない」
フィアンマ「そうお固いこと言うなよ。頭が固いのはいいことではないぞ」
ペテロ「だが……」
フィアンマ「……誰かさんは言ったらしい。神のもとではみな平等とな」パシャパシャ
フィアンマ「人気になるのは悪くないと思うぞ?」パシャパシャ
フィアンマ「良いことはあれど、悪いことはない」
ペテロ「例えば?」
フィアンマ「くくっ、やはり食いついてくるか」
フィアンマ「まあ、一番わかりやすい例を挙げるとすれば、人気がある方が次の教皇の椅子を手に入れやすいんじゃないか?」コソ
ペテロ「教皇選挙は一般人に投票権はない」
フィアンマ「ふん、そんな当然の事を言うな」
フィアンマ「他の枢機卿の奴らだって権力大好きなギラギラした眼の奴より人望厚いギラギラした眼の奴に投票したいに決まってる」コソ
ペテロ「私の目はギラギラしている前提なのか?」
フィアンマ「もちろん。信じられないなら鏡でも見てみるといい」パシャパシャ
フィアンマ「あ、この画像でも良く分かるぞ」スッ
アニェーゼ「な、何を話してるんでしょう?」コソ
アックア「さあ? だがフィアンマのことだ。多分黒い話でもしているのだろう」
アニェーゼ「え、そういう人なんですか?」
アックア「初めからそうだ。まあ、今回の視察自体は黒い目的の為ではなさそうだがな」
アニェーゼ「つまり、純粋にローマ正教を見て回ろうと思ったけどついついいつもみたいなことしちゃった、みたいな感じですか
ね?」
アックア「いつもみたいなことか。そんな感じかもしれないな」
アニェーゼ「へぇ、意外ですね」
アックア「それは見かけのイメージに騙されているだけである」
アニェーゼ「見かけのイメージですか?」
アックア「認めたくはないが、フィアンマは少しクセがあるものの、基本はただの爽やか系美形である」
アニェーゼ「あ、認めたくねぇんですね」
アックア「……まあ、それ騙されないよう注意するべきであるな……うん」
アニェーゼ「……確かに人は見かけじゃないって言いますね」
アックア「それに、普段はアニェーゼ部隊の視察の時のように良い人系な振る舞いはしない」
アックア「……と教皇は言っていた」
アニェーゼ「あ、伝え聞いた話なんですね」
アックア「まあ、意味もなく相手に害をなすことはないはずだから安心してもいいだろう」
アニェーゼ「はぁ、それ聞いて安心しました」
アックア「……そうか」
アックア(逆に言えば、意味があれば他人の犠牲などは厭わないんだが……ま、それを言う必要はないな)
ペテロ「どうだ、良い写真は撮れたか?」
フィアンマ「……ま、まあまあだな」
フィアンマ(……携帯電話の画質で良い写真なんか撮れるわけがないだろう)
フィアンマ(いや、電話のせいじゃないな。俺様の技術不足も目立つ)
フィアンマ(逆光、手ブレ、指の写り込み……隠しておかなくては)
ペテロ「ちょっと見せてみろ」スッ パシッ
フィアンマ「なっ、返せ!」
ペテロ「……」
フィアンマ「おい、勝手に見るな!!」
ペテロ「ほう、この写真とかいいじゃないか」スッ
フィアンマ(逆光の!?)
ペテロ「さすがと言うべきか、普段見ることのできない技法が使われているみたいだな」
ペテロ「被写体の輝きを写真に投影するという技か?」
フィアンマ(そんな技ないぞ!! だが……うまく誤魔化せるかもしれない)
フィアンマ「よ、よく分かったな。俺様の技を見破るとは見上げたものだ」
ペテロ「ふっ、これでも芸術センスはあるほうだと自負しているからな」
フィアンマ(絶対に言わないが、お前の芸術センスは皆無だ)
アックア「どんな写真なのだ?」
ペテロ「これだ」スッ
アックア「……」
アニェーゼ「っ……」
アックア(逆光……)
アニェーゼ(え、逆光じゃねぇんですか?)
フィアンマ(お前ら、絶対に言うなよ?)
フィアンマ「そ、そろそろ返せ」
ペテロ「そうだな。このレベルの技術を持っているならカメラマンを志せば良かったのにな」スッ
フィアンマ「いやいや」
フィアンマ「今の生活は俺様の能力にぴったりだからほかの生活なぞ考えられないさ」
フィアンマ「これはあくまで遊びだ」
ペテロ「確かに今のはお前にとって天職か」
ペテロ「お前の力はそのためのものだと言って間違いないしな」
フィアンマ「そういうことだ」ウンウン
ペテロ「では、張り紙楽しみにしているからな」
フィアンマ「あ、ああ……」コンワク
アックア「なんだかんだで乗り気なのか」
ペテロ「せっかく撮ったのだから支持率上昇のために使って欲しいだろう?」
フィアンマ(やっぱりギラギラした目をしているではないか)ハァ
フィアンマ「分かった。俺様が言い出したことだし何とかする」
ペテロ「ああ、頼んだぞ」
フィアンマ「……じゃあ、次行くか」カツカツ
アックア「それではまた」ペコ
アニェーゼ「失礼しました」ペコ
ギイイイイイ バタン
アニェーゼ「はぁ、緊張した……」ヘナヘナー
フィアンマ「そんなにか?」
アニェーゼ「私みたいな普通のシスターが枢機卿に会うことなんて滅多にないので大目に見てくだせえ」アハハ…
フィアンマ「ふーん、やはりそういうものか」
アックア「私も初対面だから少し緊張していたが、大したことなかったな」
アニェーゼ「聖人と普通のシスターじゃ違うんです!」プン
アックア「……すまなかったのである」
フィアンマ「ふっ、変なこと言って悪かったな」
アニェーゼ「いえいえ」
フィアンマ「さて、次行くか」デンゲンオン
アニェーゼ「どこに行くんですか?」
フィアンマ「……ん? 気の向くままに、風の吹くままに、だ」ポチポチ
フィアンマ「俺様もどこへ向かってるかは知らないさ」ポチポチ
アニェーゼ「風は吹いてませんよ」
フィアンマ「……物の例えだ」ポチポチ
アックア「ずっと携帯をいじっているようだが、何をしてるんだ?」
フィアンマ「画像の選別だ」
フィアンマ「ブレてたり、逆光になってたりするモノを消している」ポチポチ
アニェーゼ「……もしかして、本当に撮った写真を張り紙にするつもりですか?」
フィアンマ「そんなわけないだろ」
フィアンマ「綺麗な写真で面白いコラ画像を作って楽しむだけだ」ポチザザザザザッ
フィアンマ「暇があったら張り紙も作ってやってもいいがな」
アックア「そんなことの為に携帯を使いこなすのか……」
アニェーゼ「ガラケーでコラ画像って作れるんですね」カンシン
フィアンマ「まあな。俺様の努力の結晶だ」
アニェーゼ(なぜガラケーなんだろう)
アニェーゼ(時代はスマホなのに……?)
プルルル
アニェーゼ「鳴ってますよ?」
フィアンマ「そ、そんなこと分かってる!!」プルルル
フィアンマ「……」アセアセ
アニェーゼ「出ないんですか?」
フィアンマ「……どうやって応答したらいいのかわからないんだが!!」プルルル
アニェーゼ「……ちょっと見せてください」スッ
フィアンマ「どうしたらいいんだ?」プルルル
アニェーゼ「……ここを一回押したら出られるはずです」
フィアンマ「こ、ここだな?」
アニェーゼ「ええ」
フィアンマ「こんな時にかけてくるだなんて……オリアナか?」ピッ
???『はぁーい? あ、やっと繋がった』
フィアンマ「えっと……どちら様ですか」
???『ヴェント、前方のヴェント』
フィアンマ「……そうか。じゃあ切るぞ」
ヴェント『ちょっと、え?』
ヴェント『何十回もかけてようやく繋がったのにそれはひどくなあい?』
フィアンマ「何十回もだって?」
フィアンマ「……」
ヴェント『え、沈黙?』
フィアンマ「……お前は俺様のストーカーか何かか?」
ヴェント『繋がらないんだから仕方がないでしょ』
フィアンマ「……怖いんだが」
ヴェント『いや! だからストーカーじゃないから!』
フィアンマ「じゃあ質問だが、なぜ俺様の番号を知ってるんだ?」
ヴェント『そりゃアンタんとこの新入りさんに聞いたからに決まってるでしょ』
フィアンマ「は?」
フィアンマ「いや、オリアナは俺様の部屋に閉じ込めておいたはずだが……?」
ヴェント『そうだね』
ヴェント『でも解析させてもらったのさ』
フィアンマ「な、どういうことだ!」
ヴェント『そのまんまの意味だよ』
ヴェント『最近視察を称して、遊び歩いてるらしいじゃん?』
フィアンマ「視察だ、遊び歩いてなどない」ムカ
ヴェント『視察だろうと遊びだろうと私にとってはどうでもいいんだけどね』
ヴェント『とにかく、少し相談したいことがあって、アンタの部屋に行ったんだけど、いつもどおり強固なセキュリティがあった』
フィアンマ「ああ」
フィアンマ「だが、お前もいつもはそれを突破しようとなどしないだろう?」
ヴェント『そうだね……まあ、ちょっと私の話を聞きな』
フィアンマ「拒否だ」
ヴェント『強制だよ』
………フィアンマの部屋の前………
ヴェント「……」コンコン
シーン
ヴェント「……」ガチャガチャ
シーン
ヴェント「……留守だなんて珍しいこともあるもんだ」ハァ
ピーン
ヴェント「……ん? 魔力?」チラ
ヴェント「……」
ヴェント「気のせいじゃないか……」
ヴェント「でもアイツの魔力ではないし……」
ヴェント「だけど、自分の部屋においそれと他人を招くような奴でもなかったはず」
ヴェント「……よし、こうなったら突き止めないと気が済まないね」
ヴェント「……まあ、アイツの魔術だしね、そう簡単に解呪できるわけもないか」
ヴェント「どんな系統の術を重ね掛けしてるのかは何となくわかるんだけど……解く方法はサッパリだ」
ヴェント「……いや、待てよ?」
ヴェント「中の人物にコンタクト取れりゃいいんだから、防音の部分だけ取り除けばいいのか」
ヴェント「中の人ー? 聞こえてんなら少し手伝ってくんないかなぁ?」
ヴェント「アイツが部屋ん中入れるくらいだし相当の手練だと思うんだよね」
ヴェント「まあ、無理にとは言わないけど」
ヴェント「手伝ってくれたらそれなりの見返りは保証してあげる」
ヴェント(……反応ありか。よし、行ける気がしてきた)スッ
ヴェント「よしっ、とりあえず防音だけは突破だ……」フゥ
オリアナ「どうかしらー? 声届いてる?」
ヴェント「良好だよ」
オリアナ「そう。じゃあひとまずお疲れ様ね」
ヴェント「お互い様でしょ」
オリアナ「それもそうか」クスッ
オリアナ「ところで、突然聞くのも失礼かもしれないけど、どなたかしらん?」
オリアナ「お兄さんの知り合い?」
ヴェント「うーん……」
ヴェント「上手い言い方が浮かばないから、先に教えてくれるとありがたいんだけど」
オリアナ「そうね、お姉さんとしたことがうっかりしてたわ」
オリアナ「お姉さんはオリアナ=トムソン。オリアナとでも呼んでちょうだい」
オリアナ「ただの魔術師なんだけど、昨日お兄さんに拾われて雇われたところ」
オリアナ「よろしく」
ヴェント(ただの魔術師だって?)
ヴェント(あのプライドの塊であるフィアンマがただの魔術師なんか雇うとは考えづらいんだけど……)クビカシゲ
ヴェント「私はヴェント」
ヴェント「厳密には違うけど、フィアンマの同僚だと考えてくれればいいかな」
オリアナ「ど、同僚? あの堅物そうなお兄さんに同僚がいるなんて驚きね……」
ヴェント「堅物か……ま、アイツが人にどう判断されようと知ったことじゃないか」
ヴェント「で、オリアナはどうしてその中に閉じ込められてるのかな?」
オリアナ「……まだ信頼できる実績がないからかしらね?」
ヴェント「へぇ、自分で雇っておきながら信頼できないとは、笑い草だね」
オリアナ「……雇われることになった経緯が経緯なだけに、信用してよ、とは言えないわね」フフ…
ヴェント「ふーん、まあアイツが人を信用することなんてそうそうないから、落ち込むことはないさ」
オリアナ「落ち込んでなんかいないわよん。まあ、多少萎えてはいるけどね」
オリアナ「そんなことより、ヴェントさんはどんな用があってここに来たのかしら」
ヴェント「……フィアンマに少し話したいことがあってね」
オリアナ「話したいこと……それなら電話すればいいんじゃない?」
ヴェント「電話? アイツは電話なんか持ち歩いてなかったはずだけど……?」
オリアナ「今は持ってるはず、とりあえず番号は教えるわね」
ヴェント「番号はってどういうこと?」
オリアナ「番号を教える代わりに……」ゴニョゴニョ
ヴェント「へぇ……それならやってやるしかないか」
ヴェント『……こんな感じで電話番号を手に入れたわけだ』
フィアンマ「こんな感じで、じゃないだろ」
フィアンマ「なぜ二人がかりで俺様の努力の塊を崩しにかかってるんだ!」
ヴェント『だってアンタが人を部屋に入れるなんて気になるじゃないか』
フィアンマ「……いよいよ俺様が一人ぼっちみたいになってきてるんだが……」
ヴェント『神の右席の中では奴の部屋は魔境だ、とか奴が認めた者しか入れない、とか言われてるよ』
フィアンマ「……おい、誰だ、そんなふざけたことを言い出したやつは」
ヴェント『誰ってわけじゃないさ。自然に流れはじめた噂だよ』
フィアンマ「ず、ずいぶん悪意に満ちた噂だな」メキッ
アニェーゼ「あ、携帯が……」
アックア「相当怒らせるようなことを言ったんだろう」
アニェーゼ「フィアンマさんをあそこまで怒らせるとは、一体何者なんでしょうね」
アックア「いや、怒らせるぐらいならフィアンマの周囲にいる奴はみなやってのけるから、それだけで判断するのは難しいな」
アニェーゼ「え」
アックア「フィアンマの周りにいる奴は私も含めてみなクセがある奴ばかりだからな」
アックア「あれくらいなら度々ある」
アニェーゼ「そ、そうなんですね……」
アックア「まあ、電話から漏れ聞こえる声を聞けば誰からの電話か判断するのは容易だがな」
アニェーゼ「え、聞こえるんですか?」
アックア「聖人だからな」
アックア「普通の人間より聴力は優れている」
アニェーゼ「へぇ……電話相手は誰なんですか?」
アックア「……この声はヴェントだな」
アニェーゼ「ヴェント? 女の人ですか?」
アックア「ああ、かなり面白い魔術を使う、フィアンマの同僚といったところか」
アニェーゼ「フィアンマさんの同僚……確かにクセがねえとやってられないでしょうね」
アックア(……私も同じ立場なのだがな……)
フィアンマ「アックア」ギロ
アックア「なんだ?」
フィアンマ「俺様の部屋の噂は知ってるか?」
アックア「当然だ。だからこそあまりに普通の部屋で驚いていたのである」
フィアンマ「……そうか」
フィアンマ「なら今度は俺様の部屋は普通だと広めておけ。何なら画像も渡す」
アックア「……努力しよう」
アックア(……自分の噂とか気にするのであるな……)
フィアンマ「……で、オリアナは電話番号の代わりに何を要求したんだ」
フィアンマ「どうにも嫌な予感しかしないんだが……」
ヴェント『大したことじゃないから気にしないで』
フィアンマ「……大したことじゃないなら言ってもらおうか」
ヴェント『……はぁ、女の好奇心にいちいち口を挟むなんて野暮だね』
フィアンマ「あいつは女である前に部下だ」
フィアンマ「しかも俺様の部屋で何かをしているとなったら把握しておきたくなるのも当然だ」ケッ
ヴェント『……男の部屋に入った時の定番、ブツ探しの手伝いに決まってる』
フィアンマ「ブツ探しの手伝いだって?」
フィアンマ「……ブツが何なのかは置いておいて、お前は外にいるんだよな」
ヴェント『もちろんさ』
ヴェント『これ以上、無理矢理ドアの防御を突破しようとしたら、迎撃術式が作動してしまいそうだからね』
フィアンマ「はぁ……だよな。少しは安心した」
ヴェント『なぜそんなことを聞くのかな、俺様のセキュリティには自信があるんじゃないの?』
フィアンマ「万が一ということがあったら困るからな」
フィアンマ「後で脆弱性を確認した上で、もう二度と突破されないよう、穴を埋めておくから覚悟していろ」
ヴェント『別に普段はそんなことしないし、どうでもいいんだけど』
フィアンマ「……とりあえずセキュリティ面では当面の危機は去ったらしいから置いておこう」
ヴェント『そろそろ私から話してもいいでしょう』
フィアンマ「……そうだな、少し話が一方的過ぎたかもしれない」
フィアンマ「自由に話せばいい」
ヴェント『結局のところなんで彼女を雇ったの?』
フィアンマ「自由に使える部下を確保するためだ」
フィアンマ「他意はない」
ヴェント『……アンタの他意はない、ほど信頼のおけない言葉はないね』
ヴェント『誤魔化さないで正直に言いな。女の勘は誤魔化せるもんじゃない』
フィアンマ「……お前にも女の勘などがあるのだな」クツクツ
ヴェント『話を逸らそうとしたって無駄さ』
フィアンマ「……いいだろう、それなら今からそっちで話してやる」
ヴェント『え、こっちで?』
フィアンマ「ああ、どうせまだ俺様の部屋の前で色々してるんだろ?」
フィアンマ「ブツ探しやら何やらは近くにいないと何もできないだろうからな」
フィアンマ「それを上司として、被害者として、しっかり叱ってから話してやる」
ヴェント『ちょ、待って』ピッ
フィアンマ「アックア、アニェーゼ、行くぞ」
アックア「だいたい把握した。まあ、今回は奴にも非があるのである」
フィアンマ「奴にも、というか、奴にしかないだろ」
アニェーゼ「あの……えっと……」
フィアンマ「……心配はいらない。ヴェントの話を直接聞いてやるためという建前もあるからな」フッ
アニェーゼ(なんの話してるんです?)
フィアンマ「ん? なぜそんなポカーンとした顔をしているのだ?」
フィアンマ「アニェーゼが怯える必要はない」
フィアンマ「ヴェントは装飾が異常だから嫌悪感を持つかもしれないが、そこまで怖くはないぞ」
アニェーゼ「……あの」
フィアンマ「なんだ?」
アニェーゼ「事の顛末が分からないんですけど……」
フィアンマ「それは……済まなかった」
………………………
フィアンマ「というわけだ」
アニェーゼ「ブツ探しって何なんでしょうね」
フィアンマ「それは……俺様も知らないから聞きに行くんだ」
アックア「嘘は感心しないぞ」
フィアンマ「黙れ」
アニェーゼ「アックアさんは知ってるんですか?」
アックア「この世には知らない方がいい物もあるのである。そう私は思うから今回は
フィアンマに加担させてもらう」
アニェーゼ「知らない方がいい物……?」
フィアンマ「それが女に露見したが最後、俺様のイメージは崩壊してしまうだろう」グッ
フィアンマ(だが、俺様もなんだかんだ言って年頃の男なんだがな……)
フィアンマ(体裁を保つのも面倒なものだ……)ハァ
アニェーゼ「……ブツ探し、手伝いたいですね」ボソッ
フィアンマ「そんなこと言ってると置いていくぞ」
フィアンマ「わざわざ敵を増やすような真似はしたくないからな」フン
アニェーゼ「い、いえ! 冗談ですよ!」
フィアンマ「信用ならないな」ジト-
アックア「裏切ったら許さないぞ?」
アニェーゼ「裏切りませんって!!」
アックア「それならいい」
アニェーゼ(あまり仲が良さそうには見えない二人がブツ探しの件では半端じゃないくらいの連携をとっている……)
フィアンマ「男という名の運命共同体だからな」
アックア「被害が私にも拡大しては困るのである」
アニェーゼ「……そうですか」ハァ
………フィアンマの部屋の前………
ヴェント「次はどんな術がある?」
オリアナ「うーん……解読するから待っててねん」ブツブツ…
フィアンマ「間に合ったか」ザッ
ヴェント「うわ、急いだけど間に合わなかったか……」チッ
アックア「もうやめるのである」ヌッ
ヴェント「アックアまで!?」
ヴェント「二対一は卑怯じゃない?」
フィアンマ「ふん、どうせならテッラを呼んでもいいんだぞ?」
ヴェント「ちっ、オリアナ! フィアンマが帰ってきたよ」
オリアナ「聞こえてるわ。でも、やりきらないと、女がすたる!」
フィアンマ「すたれていいからやめろ!!」
ガチャ
オリアナ「か、帰ってきちゃったわね」
オリアナ「ヴェントさんにも手伝って貰ったのに……お姉さんの負けよ」ガクッ
フィアンマ「ふん、俺様の魔術に勝負を挑もうとすること自体無謀なのさ」
フィアンマ「もう少し腕を磨いてから再挑戦するといい」ククク
オリアナ「……そうね。二人なら何とかなるかもって少し舐めてたわ」
フィアンマ「だから舐めるなと言っただろう?」
フィアンマ「ヴェントもな」
ヴェント「ぐっ……」
アックア「……ということは、まだ見つかってなかったか」
フィアンマ「ああ、ここで見つかっていたら皆を道連れにしてしまいかねないからな」
アックア「……とりあえずは安心ということであるな」ハァ
オリアナ「お姉さんの探索能力でも見つからないなんて……」
オリアナ「本当にこの部屋にはブツなんて存在しないんじゃないかと疑いたくなるわね……」
オリアナ「いや、それは男じゃないか」
フィアンマ「存在するわけがない。というか、アニェーゼの教育によくないからよせ」
オリアナ「アニェーゼ?」
フィアンマ「俺様達が世話になったシスターだ」
フィアンマ「……あの戦闘の時にいたシスター軍団のリーダーだな」
オリアナ「ああ……あの杖を持った……」ナットク
アニェーゼ「おお、これがフィアンマさんの部屋ですかー」トトトッ
ヴェント「シスター? この娘はいったいどうしたんだ?」
フィアンマ「……俺様がオリアナに説明してたのを聞いてなかったか?」
ヴェント「あまりの悔しさに打ちひしがれてたし、あまりに普通の部屋で驚いてたから」
フィアンマ「もう一度だけ言うからちゃんと聞いていろ」
フィアンマ「……俺様達が昨日から世話になっているシスターだ」
アニェーゼ「アニェーゼと申します、よろしくお願いします」ペコ
ヴェント「へぇ、フィアンマが素直に世話になったって認めるとはね……相当すごいことをやってのけたってことかな?」
アニェーゼ「い、いえ、むしろ私たちの方がお世話になりました」
アックア「謙遜は不必要である。フィアンマの無茶な要望にもある程度応えてくれて……」
アックア「少し申し訳ないと思うくらいである」
フィアンマ「申し訳ないとまで言わなくてもいいだろう!」
オリアナ「あの……楽しく談笑している所申し訳ないんだけど……」
前方・右方・後方「楽しく談笑などしてない!!」
アニェーゼ(ハモった!)
オリアナ「お兄さんたちは何をしに帰ってきたのかしらん?」
フィアンマ「俺様の部屋にいつ帰ってこようと俺様の自由だろ」
オリアナ「そうだけど、理由を聞きたいなって思っただけよ」
オリアナ「もしかしたらお姉さんと刺激的な時間を過ごしたくなったのかもしれないでしょ」
フィアンマ「……それはない」ハァ
アニェーゼ「し、刺激的な時間!?」
ヴェント「……確かに教育によくないね」
オリアナ「あ、お嬢ちゃんにはまだ早かったかしらね」
フィアンマ「……答えるから黙っていてくれないか?」
オリアナ「もう、最初からそう言ってくれればいいのに」
フィアンマ「……ヴェントの相談とやらを受けてやろうと思ってな」
フィアンマ「ついでにブツ探しをする輩を潰して、オリアナを雇った理由を話してやろうと思ってきた」
ヴェント「ついでに、の使い方を間違えているみたいだね」
フィアンマ「安心しろ、わざとだ」
フィアンマ「本当はブツ探しを止めるのが最優先事項だった」
フィアンマ「後はどうでも良かった」
アックア「であるな」ウン
アニェーゼ「止められて良かったですね」
フィアンマ「ふふふ、そもそも俺様の魔術は何人かで解読しようとしてできるほど脆弱じゃないのさ」
フィアンマ「だから、本来なら心配いらないんだが……」
フィアンマ「自信があってもやはり不安はつきもの。こればかりは人間の性というものなのだろうな」
オリアナ「ここでブツ見つけることができたならお嬢ちゃんみたいな純粋な子も、男の本性を知ることができたのに……」
フィアンマ「それは残念だったな」
フィアンマ「俺様たちは安心したという気持ちしか無いがな」
ヴェント「……じゃあそろそろついでに入るとしよう」
フィアンマ「ヴェントの相談だな」ウン
ヴェント「いや、オリアナを雇った理由」
アニェーゼ「確かに気になりますね」
アックア「……」
オリアナ「お、お姉さん?」
フィアンマ「扱いやすい部下が欲しかったからだと言ったろう?」
フィアンマ「アックアはとてもじゃないが、扱いやすいとは言えないからな」
アックア「否定はしないのである」
ヴェント「本音のところはどうなんだ?」
ヴェント「アンタが部下として普通の魔術師を雇うとは、意外だよ」
フィアンマ「普通の魔術師? いやいや、あれはただの変態だ」
フィアンマ「ただ、その潔さを気に入っただけさ」ククッ
ヴェント「潔さ、か」
オリアナ「ふふふ、潔いだって」
アニェーゼ「ただの変態とも言われてましたけどね」
オリアナ「ダメダメ、そこは突っ込むところじゃないのよん」
アックア「別の意味に聞こえるのである」ズーン
フィアンマ「アックア、いい加減慣れろ」ハァ
アックア「そ、そうだな……」
ヴェント「潔いって絶対褒め言葉ではないよね」
フィアンマ「褒めてるに決まってるだろう?」フン
フィアンマ「それよりも早くお前の相談とやらを聞きたいのだが?」
アックア「ここで聞くのか?」
フィアンマ「俺様もここで答えたんだから当然だろう」
ヴェント「別に大したことじゃないんだけどね」
フィアンマ「なら、さっさと言うんだな」
ヴェント「なぜ視察なんてしようとしたんだ?」
フィアンマ「それは相談じゃなくて質問じゃないか」
ヴェント「……それもそうだね」
ヴェント「本当は別に話があったんだけど、どうでもよくなっちゃったのさ」
フィアンマ「ふーむ、まあ確かに突然視察するぞ、とか言い出したら不審だもんな」
ヴェント「そうそう、遊び歩いてるわけじゃないって言い張るんだし、それなりに理由はあるんでしょ?」
アニェーゼ(ローマ正教の中核を担うだとか何とか言ってましたっけ……?)
オリアナ(そういえば聞いた事なかったわね)
アックア(今回はどう誤魔化すのか見物であるな)フム
フィアンマ「……」
フィアンマ(腹をくくるしかないみたいだな)
フィアンマ「俺様が視察をしようと言いだした理由は……」
フィアンマ「見識を広めるためだ」
オリアナ「へぇ、お兄さん向上心あるのねえ」カンシン
アックア(ガールフレンド云々はどうした!?)
アニェーゼ(まあ、そうでしょうね)
ヴェント(将来のために情報を仕入れるって意味か)
フィアンマ「今まで言っていたのはほとんど建前だ」
フィアンマ「別に隠す必要もなかったがな」
オリアナ「ならお姉さんもお兄さんに倣ってブツ探しに精を出さなくちゃならないわね」
ヴェント「そうね」ウン
アックア「それはおかしいのである!!」
フィアンマ「言いたいことがそれだけなら俺様たちは視察に戻るが、もう何もないか?」
オリアナ「無いわ」
オリアナ「お姉さんはブツ探しに戻らないと」
ヴェント「私もないね」
フィアンマ「そうか、オリアナは……やっぱりまだここにいろ」
オリアナ「言われずとも」ニコ
フィアンマ「……じゃあ、オリアナ以外皆部屋から出ろ」
フィアンマ「ロック掛けるから」
ヴェント「はいはい……」スタスタ
続き
フィアンマ「ローマ正教内部を見学しようと思うのだが……」【中編】

