1 : 以下、名... - 2017/10/04 22:45:31.24 Ned9OrTLo 1/16

「あっ!」

「どうしたの?」

「もうこんな時間……終電、なくなっちゃった」

「え……」

「どうしよう、歩いて帰るわけにもいかないし……」チラッ

「……」

元スレ
女「終電……なくなっちゃった」チラッ 男「俺が何とかしてやる!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1507124730/

2 : 以下、名... - 2017/10/04 22:48:10.43 Ned9OrTLo 2/16

(俺としたことが、終電時刻のことをすっかり忘れてた!)

(こんな暗い夜道を彼女に帰宅させるわけにはいかない……危険すぎる!)

(俺が……俺が何とかしなきゃ!)

(愛する彼女のために!!!)

「そういえば、あなたの家ってここからすぐ近く――」

「俺が何とかしてやる!!!」

「!?」ビクッ

3 : 以下、名... - 2017/10/04 22:52:08.58 Ned9OrTLo 3/16

プルルル…

「もしもし、鉄道会社ですか?」

「終電時刻を過ぎてしまったので、俺の彼女が家に帰れなくなってしまったんです!」

「だから特別に電車を動かして下さい!」

「え!?」

「……なに!? ダメ!? ――そこをなんとか!」

「これほど頼んでもダメだというのか!」

「ちくしょうっ、なんて融通のきかない会社だ! 人が困ってるというのに!」

「ちょ、ちょっと……」

「心配しないで。必ず俺が何とかするから」

4 : 以下、名... - 2017/10/04 22:54:38.48 Ned9OrTLo 4/16

「こうなれば……鉄道を作るしかない!」

「ええ!?」

「緊急コール! 俺の部下達、緊急招集だ!」ピッポッパッ

「待っててくれ。すぐ君の家までレールを敷いてあげるから!」

「あ、あの……」

「大丈夫、俺の部下はみんな頼りになる奴らさ!」

5 : 以下、名... - 2017/10/04 23:00:01.57 Ned9OrTLo 5/16

ザッ!

部下A「お呼びで」

部下B「あなたの望むことは」

部下C「必ず成し遂げてみせます」

「今から新しく鉄道を作る。この地点から、彼女の家までの土地を全て買い取れ!」

「金はいくらかかってもかまわん!」

部下全員「ははっ!」

「えええ……」

7 : 以下、名... - 2017/10/04 23:01:51.23 Ned9OrTLo 6/16

部下A「……申し上げます!」

「どうした?」

部下A「ある老人がどうしても立ち退きに応じないのです。何億、何兆でも土地を売らん、と」

「俺の経験からして、そういう人間は金で釣ろうとしても無駄だろう」

部下A「消しますか?」

「いや、そういう手段を好まない」

「俺が直々に出向こう。案内を頼む」

部下A「ははっ!」

8 : 以下、名... - 2017/10/04 23:04:38.83 Ned9OrTLo 7/16

老人「なんじゃ、また土地買い取りの話か?」

老人「何度来ても無駄じゃ! 先祖から伝わってきたこの土地は絶対に売らん!」

「……お願いします!」

老人「いくら頭を下げたところで……」

「私の愛する女性を助けるためには……どうしても必要なことなのです!」ギンッ

老人「!」

老人「う……むむむ……!」

老人(この男、なんという澄み切った、まっすぐな瞳をしておるのじゃ……)

9 : 以下、名... - 2017/10/04 23:08:20.17 Ned9OrTLo 8/16

老人「分かった……売ろう」

「……ありがとうございます!」

老人「しかし、条件がある」

「なんでしょう?」

老人「おぬしの愛する女性とやら、必ず救って下されよ」

「もちろんです!」



部下A「お手数をおかけしました。あなたに出向いてもらうなど、部下失格です」

「気に病むな。俺の手が必要であればいつでもいってくれ」

「俺は部下を顎で使うような男にはなりたくないからな」

部下A「ありがたきお言葉……!」ドバァァァァァ

(涙が土石流のように……)

10 : 以下、名... - 2017/10/04 23:11:11.29 Ned9OrTLo 9/16

部下A「指定された地点と、ガールフレンド様の家までの土地、全て買収完了しました!」

部下B「障害となる家屋や建物は全て撤去しました!」

部下C「国や自治体、マスコミへの根回しも終わりました!」

「ご苦労」

「ではさっそく、この地点から彼女の家まで、線路を作るのだ!」

「突貫工事で行え! なおかつ安全性には徹底的に気をつかってもらいたい!」

部下全員「ははっ!」

トンテンカン…

トンテンカン…

11 : 以下、名... - 2017/10/04 23:13:54.29 Ned9OrTLo 10/16

ズラーッ!





「おお……瞬く間に一本の線路が出来上がっていく。まるで早送りを見ているかのようだ」

「どうだい? すごいだろう?」

「え、ええ……すごい……(すごすぎ……)」

12 : 以下、名... - 2017/10/04 23:15:57.50 Ned9OrTLo 11/16

部下A「線路ができました!」

「よくやった。続いて駅と、走らせる列車を作るのだ!」

「駅には彼女が不便しないよう、キヨスクはもちろん、さまざまなショッピングモールを誘致してくれ!」

「さらにこの鉄道は24時間稼働させるから、複数の運転士を破格の条件で雇ってくれ!」

部下全員「ははっ!」

13 : 以下、名... - 2017/10/04 23:20:31.22 Ned9OrTLo 12/16

ジャン!!!



「できた……!」

「ついに完成したぞ! この地点と、君の家までを24時間結ぶ鉄道が!」

「や、やったね!」

「ホントにそう思ってるのかい?」

「!」ギクッ

「そのわりに“何もここまでしなくても”って顔してるけど」

「いえいえいえ! そんなことない! そんなことないから!」

「ならよかった」ホッ

14 : 以下、名... - 2017/10/04 23:22:51.86 Ned9OrTLo 13/16

運転士「ただいまより、運転を開始します。二人とも、お乗りになって下さい」



「さ、乗ろうか。君の家に帰ろう!」

「う、うん」

プシュー…

ガシャン…



ガタンゴトン… ガタンゴトン…

15 : 以下、名... - 2017/10/04 23:27:05.21 Ned9OrTLo 14/16

ガタンゴトン… ガタンゴトン…



「お、君の家が見えてきたよ!」

「……本当ね」

「嬉しくないのかい?」

「う、嬉しいわ」

「そのわりに“ホントはもっと違う展開になることを期待してたんだけどな”って顔してるけど」

「ううん! そんなことないから! もうすっごく嬉しい! サイコー!」

「ありがとう」ホッ

16 : 以下、名... - 2017/10/04 23:30:00.88 Ned9OrTLo 15/16

「……着いた」

「君を無事家まで送り届けることができてよかったよ」

「こちらこそ。わざわざ鉄道まで作ってもらっちゃって……」

「だけど、俺……本当は……」

「?」

「今まで言う勇気がなかったんだけど……」

「本当は俺……帰れなくなった君に、俺んちに泊まって欲しかったんだ……!」

「!」

「なぁ、よかったら俺の家に泊まらないか?」

「うん……泊まらせて!」

17 : 以下、名... - 2017/10/04 23:34:35.30 Ned9OrTLo 16/16

「すみません、運転士さん」

「彼女の家に着いたばかりで申し訳ないけど、今すぐここから俺の家のある駅まで戻ってくれ!」

運転士「はいっ!」

運転士「これからお楽しみのようですね」ニヤッ

「か、からかわないでくれ」

「ふふっ」

「愛してるよ」

「私も……」

ガタンゴトン… ガタンゴトン…



二人の愛の列車に終電はない――










おわり

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