【天界・天真家】
ゼルエル「ああ、気持ちのいい天気だな。こういう日は書道を嗜みたくなるものだ」
ゼルエル「やはり筆を持つと背筋が伸び、気持ちが引き締まる」スッ
ゼルエル「ほう、今日は筆の走りも良い」サラサラサラ
ハニエル「?」
ハニエル「ゼルお姉ちゃん、なに書いてるの?」
ゼルエル「ん、これか?これはだな」
ゼルエル「『一日お姉ちゃん券』だ」
ゼルエル「これをガヴリールに渡してお姉ちゃんになってもらおうと思ってな」ウキウキ
ハニエル「ゼルお姉ちゃん…………」
元スレ
ガヴリール「止まらないシスコン姉さん」
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【下界・ガヴリール宅】
ゼルエル「来たぞ」
ガヴリール「…………」
ガヴリール「そういや月に一度様子を見にくるとかなんとか言ってた気が……」
ゼルエル「うむ。月初は私に会えると思って楽しみにしていなさい」
ガヴリール「家空けていようかな、もう」
ゼルエル「来月は10月10日あたりにくるのがいいかな」
ガヴリール「やめて姉さん。その日は大事な日だから絶対来ないで」
ヴィーネ「あ!こんにちは、お義姉さん」
ゼルエル「ん、君も来ていたのか」
ゼルエル「ところで、そのお義姉さんとはいったい誰のことな」
ヴィーネ「あっ、いまお茶を入れるのでくつろいでいて下さい」
ゼルエル「無視か」
ゼルエル「いやいや負けないぞ私は。君がお義姉さんと呼ぶのはまさか私の」
ガヴリール「そんなに気を使わなくていいよヴィーネ」
ヴィーネ「気を使ってるわけじゃないわ。美味しいお茶を買ったから、ゼルエルさんにぜひ飲んで貰いたいの!」
ガヴリール「私にはくれないのに!」
ヴィーネ「出してるわよ。ガヴが気付いてないだけでしょ!」
ゼルエル「お姉ちゃんくじけないぞ……!」
ゼルエル「お茶美味しい」ズズズズ
ヴィーネ「えへへ、ありがとうございます」
ガヴリール「それで?姉さん今日は何しにきたの?まさかお茶だけ飲みにきたわけじゃないでしょ」
ゼルエル「ああ、お前に渡すものがあってな」ゴソゴソ
ゼルエル「これだ」スッ
ガヴリール「なにこれ、『一日お姉ちゃん券』?」
ヴィーネ「すごい達筆ね……」
ガヴリール「これがどうしたの?」
ゼルエル「私のお姉ちゃんになってください」
ガヴリール「は?」イラッ
ガヴリール「ふざけてるの姉さん」
ゼルエル「ふざけてないです。お願いします」ペコリ
ガヴリール「土下座はやめてよ……」
ガヴリール「実の姉から姉になってくれと頼まれるってなんなの……」
ヴィーネ「なるほどお姉ちゃん券か……」カキカキ
ガヴリール「ヴィーネ、作ってるとこ申し訳ないんだけど、お前からお願いされてもやらないからな」
ゼルエル「わかった。次の帰省でドーナツをたくさんご馳走してあげよう」
ガヴリール「何されても無理だよ。絶対やらないよ。ていうか今めっちゃひいてるよ私」
ゼルエル「…………」
ゼルエル「ところで昨日ハニエルが将来の夢という課題をやっていてな」
ヴィーネ「また急に話題を変えてきたわね」
ゼルエル「その中で『お姉ちゃんのお嫁さんになりたいです』って書いていたんだ」
ゼルエル「二人の妹から愛されてしまうなんて私は罪な姉だな」テレテレ
ヴィーネ「……いや、それって」
ガヴリール「………………」
ゼルエル「後でハニエルには、姉妹で結婚はできないと教えてあげないといけないな。はっはっは」
ゼルエル「よし、ではお姉ちゃんになってくれガヴリール」
ガヴリール「いや一回雑談を挟んだってやらないからね?」
ガヴリール「かなり衝撃的な雑談でもあったけど」
ゼルエル「一回ぐらいやってくれてもいいと思う」
ガヴリール「……ちなみにお姉ちゃんってどんなことすればいいの?」
ゼルエル「うむ。ナデナデしてくれたり、抱っこしてくれたり、慈愛に満ちたキスをしてくれたり、あと耳かきとかだな」
ガヴリール「それお母さんじゃね?」
ガヴリール「そう言うの得意なのがここにいるからやって貰えば?」
ヴィーネ「えっ、私!?」
ガヴリール「ヴィーネの面倒見の良さは母親レベルじゃん。お世話されてる私が自信持って言える」
ヴィーネ「私まだ高校生なのに!」
ガヴリール「お母さんって呼んでみる?」
ヴィーネ「やめて!」
ヴィーネ「ガヴ、お母さんはイヤ……」
ガヴリール「そうなの?」
ヴィーネ「だってガヴのこと自分の子供だと思ったことないし、それって対等な立場じゃないって言うか……」
ヴィーネ「私、ガヴとは同じ目線で付き合いたいの。お世話好きな私だけど、誰でも良いわけじゃないわ」
ヴィーネ「ガヴだから、気になっちゃうの……!」
ガヴリール「ヴィーネ……」
ヴィーネ「私は、お母さんよりも、ガヴの恋び―――」
ゼルエル「待て待て待て待て」
ゼルエル「待ちなさい。待ってください」
ゼルエル「やめて?お姉ちゃん目の前で愛する妹が告白されるとことか見たくない。そういうのやめてね?」
ガヴリール「姉さん邪魔だから帰って」
ゼルエル「お願い。もう少しだけ私のガヴリールのままでいてくれ」
ガヴリール「初めから姉さんのじゃないし……」
ガヴリール「もう私の様子も見たでしょ?帰りなよ」
ゼルエル「だめだ!今のお前たちを二人にするとなんか危ない気がする!」
ゼルエル「しばらくここに居座るぞ!」
ガヴリール「姉さん……」
ヴィーネ「お義姉さんも寂しいのよガヴ。たまには甘えてあげて?」
ゼルエル「君のその余裕さが私に精神的暴力を振るっている」
ピンポーン
『ガヴリールー!遊びに来てあげたわよー』
ゼルエル「この声は!」
サターニャ「お邪魔してやるわガヴリール!」
ヴィーネ「お邪魔します、でしょ!」
ゼルエル「会いたかったぞ小悪魔!」
サターニャ「うわ……でた……」
サターニャ「私もうあんたがいても驚かないわ」
ゼルエル「よし、これでガヴリールがいい雰囲気になる事は防げる」
ガヴリール「なにしに来たんだよお前」
サターニャ「ガヴリールを構いに来てあげたのよ!」
ガヴリール「頼んでねーよ。いっつも私の家に勝手に来やがって」
サターニャ「ヴィネットだって来てるじゃない!」
ガヴリール「ヴィーネは比較的大人しくしてるからいいんだよ」
ヴィーネ「比較的って」
ガヴリール「お前、毎回いたずらしたりうっとおしい絡みしてくるじゃん」
サターニャ「それはあんたが私に構っ……勝負してくれないからじゃない!」
ガヴリール「そんなに暇じゃないから」
サターニャ「ひ、暇って……!」
サターニャ「私は暇だとか暇じゃないとかで考えた事ないわよ!」
ガヴリール「は?」
サターニャ「私は、あんたと一緒にいるとすごく楽しいって言うか、会えると嬉しいって言うか」
ガヴリール「え、え? サターニャ?」
サターニャ「暇だから遊びに来てるんじゃなくて、ガヴリールに会いたいから、きてるの……」
ガヴリール「はぁ!?なに言って……!」///
サターニャ「わ、わたし!ガヴリールと、ずっとずっと一緒にいた―――」
ゼルエル「おいこら告白流行ってるのか?許さんぞ勝手なマネは」
ゼルエル「やめなさい。私が大泣きするから今すぐやめなさい」
ガヴリール「…………」
ヴィーネ「…………」
サターニャ「…………」
ゼルエル「なんだこれは。小悪魔が来ても全く事態が好転しない」
ゼルエル「むしろ早く帰れオーラを一身に受けている気がする」
ゼルエル「お姉ちゃんさすがにくじけそう」
ゼルエル「ガヴリール、慰めてくれ」スッ
『一日お姉ちゃん券』
ガヴリール「ヤダ」ポイ
ピンポーン
ゼルエル「この気配は……!」
ラフィエル「ガヴちゃん、遊びに来ちゃいました♪」
ガヴリール「ん」
ヴィーネ「…………」
サターニャ「…………」
ラフィエル「なんですかこの雰囲気」
ゼルエル「ラフィエル助けてくれ。悪魔たちと妹がいい雰囲気になりかけて困っているんだ」
ラフィエル「なるほどなるほど?」
ラフィエル「そういう事なら」
ラフィエル「ガヴちゃん」
ガヴリール「ん?」
ラフィエル「私、ずっと前からガヴちゃんの事が好きでした」
ゼルエル「おい!!!?」
ラフィエル「今まで抑えていましたが、本当は誰にも渡したくないんです。私だけを見ていて欲しい」
ラフィエル「ちょっと嫉妬深い所もありますが、こんな私を受け入れてくれますか……?」
ガヴリール「ラフィ……」
ゼルエル「受け入れるわけないだろ!?絶対に天真家の敷居を跨がせないぞ!!」
ラフィエル「あ、ガヴちゃんは白羽家に嫁いでもらうので、天真家の敷居を跨ぐつもりはないです」
ゼルエル「ラフィエル!!!!」
ゼルエル「くすんくすん」メソメソ
ヴィーネ「えーと……ごめんなさいゼルエルさん。ちょっと冗談が過ぎちゃいましたね」
サターニャ「別にこれぐらいはしてもいいでしょ」
ゼルエル「冗談?今までのは冗談なのか?」
ヴィーネ「はい」
ゼルエル「本当に冗談?」
ヴィーネ「…………」
ヴィーネ「はい」フイッ
ゼルエル「どうして目線をそらすんだ?」
ラフィエル「ほうほう」
ラフィエル「『一日お姉ちゃん券』ですか」
ラフィエル「こんな物を作るなんて、ゼルエルさんもお暇なんですねー」
ゼルエル「暇だから来てるんじゃないぞ。ガヴリールに会いたいから来てるんだ」
サターニャ「ちょっと!!それさっきの私のセリフじゃない!」///
ラフィエル「うふふ、ガヴちゃんがお姉さんというのも楽しそうですね」
サターニャ「駄目姉でしょ?全然面倒見てくれなそうじゃない?」
ヴィーネ「そう?ハニエルちゃんにはデレデレしてるわよ」
ガヴリール「そんなしてないよ」
ラフィエル「してますよー」プニプニ
ガヴリール「ほっへをつまみゅな」
ガヴリール「そもそも姉さん。なんでこんな物を作ったの?」
ゼルエル「よくぞ聞いてくれた。ガヴリール」
ゼルエル「私はやさぐれてしまったお前も嫌いではないが、流石に今の状態は天使としてどうかと思っていてな……」
ゼルエル「一度世話をする立場になり、慈愛の心を取り戻せば更生の一歩になるのではないかと考えた」
ゼルエル「それには姉という立場が最適だと気が付いたのだよ」
ガヴリール「それ、本当にそう思ったの?」
ゼルエル「ああ」キリッ
ヴィーネ「ハニエルちゃんに会えばいい話なんじゃ」
ゼルエル「い、いや、それは、ハニエルはまだ下界に来ちゃいけないから……」
ラフィエル「ガヴちゃんが天界に戻っては?」
ゼルエル「が、ガヴリールは修行中だし、あんまり家に帰っちゃだめだと思うなっ」
ラフィエル「前は一週間ほど天界に連れ帰ってたじゃないですか」
ゼルエル「だから、それはその、えーっと……!」
サターニャ「めっちゃしどろもどろじゃない」
ゼルエル「別に私が妹になったっていいだろう!」
サターニャ「おかしいわよ!姉でしょあんた!」
ゼルエル「私は立派に妹を演じてみせる!!」
ゼルエル「ガヴリールに甘えに甘えて甘え尽くしてやろう!」
ガヴリール「姉さん、正直そういう所がウザい」
ゼルエル「」ガ-ン
ゼルエル「わ、私は姉としてお前を……」
サターニャ「もしあんたみたいな姉が私にいたら相当面倒くさいわ」
ヴィーネ「ちょ、ちょっとサターニャ……!」
ラフィエル「私も、少々うっとうしく感じるかと……」
ゼルエル「そんな!」
ゼルエル「」チラ
ヴィーネ「わ、私は別に……!」
ヴィーネ「………………ちょっと、嫌かも」
ゼルエル「」ガ-ン
ゼルエル「…………」グス
ゼルエル「ガヴリール、これ、あげる」スッ
ガヴリール「もう『一日お姉ちゃん券』はいいよ。そんなのやらないって……」
ゼルエル「違う。ガヴリールに使って欲しい」
ガヴリール「ええ?」
ゼルエル「もう贅沢は言わない……でも、ガヴリール。私を見捨てるのだけは……」
ゼルエル「私は、もうガヴリールに愛を注げるならなんでも……」
ガヴリール「姉さん……」
ガヴリール「見捨てたりするわけないでしょ。私のお姉ちゃんはゼルエル姉さんだけなんだから」
ゼルエル「本当か?」
ガヴリール「うん」
ゼルエル「じゃあその券使ってくれる?」
ガヴリール「……仕方ないな。姉さんは」
ガヴリール「うん、使うよ。姉さんにナデナデしてもらいたい」スッ
ゼルエル「ガヴリール…………」
ガヴリール「姉さん…………」
ゼルエル「使ったな?」
ガヴリール「ん?」
ゼルエル「その券、使ったな。ガヴリール」
ガヴリール「え?なになに?」
ゼルエル「ふははははは!!!!使ってしまったなガヴリール!!それをよく見るがいい!」
ガヴリール「は?」
『一生夫婦券』
ガヴリール「なにーーーーーーー!?」
ガヴリール「おい!!なにこっそり一日お姉ちゃん券に手加えてんだよ!?卑怯だろこれ!!」
ゼルエル「きちんと確認しなかったお前が悪い!書類には全て目を通しなさいと何度も教えただろう!」
ゼルエル「これでガヴリールは私のものだ!お前達には絶対に渡さないぞ!」
ヴィーネ「ええー……」
ラフィエル「あららー」ニコニコ
ガヴリール「姉さんやる事が悪魔だよ!」
ゼルエル「姉さんじゃない!夫婦なんだからゼルエルさんと呼びなさい!」
ゼルエル「呼び捨てでも可!」
ガヴリール「絶対いやだ!!!」
ゼルエル「挙式はいつにしようか!ガヴリール!」
ガヴリール「姉妹では結婚できないって言ってたよね!?」
ゼルエル「?」
ゼルエル「夫婦なんだからできるだろ」
ガヴリール「色々おかしい!!!!!」
ゼルエル「さあ、これからいっぱいナデナデも抱っこもしてやるぞガヴリール!覚悟しなさい!」
ガヴリール「いやあああああああああ」
サターニャ「ガヴリールと付き合うとアレが付いてくるのは…………ちょっとキツイわ」
ラフィエル「そうですか?すごく楽しそうでいいじゃないですか」ニコニコ
ヴィーネ「まずはお義姉さんに負けないようにならないとね……」
ゼルエル「夫婦だからちゅーもしないとな!」ググググ
ガヴリール「こんな姉もういやだ!!!!」
完