1 : 以下、\... - 2017/05/17 10:37:32.599 3KD2myyS0 1/20

「本当に仕方ないわね、ガヴは」

2 : 以下、\... - 2017/05/17 10:37:52.493 3KD2myyS0 2/20

つい最近、彼女がこう呟くようになった

そんなこと、自分でも分かってる

友達に、自分の世話をさせる天使なんてどうしようもないことくらい

4 : 以下、\... - 2017/05/17 10:38:26.119 3KD2myyS0 3/20

でも、そんな天使にもついてきてくれる人がいる

それにしても、どうして彼女はこうまで私の世話を焼いてくれるのだろう

……分からない

でも、いつまでもそんな日常が続く

……そう私は思っていた

6 : 以下、\... - 2017/05/17 10:39:03.925 3KD2myyS0 4/20

それはある日のこと

「ほら!起きなさい!ガヴリール!」

「んー、眠い~!起きたくない!」

「だめよ!起きなさい!」

「しんどい!学校休む~」

「ほら、着替えて着替えて」

「やだ!休む!」

「もう、ワガママばっかり言わないで!」

「休むっていったら休むんだ!」

「そんなワガママばっかり言ってると……」

7 : 以下、\... - 2017/05/17 10:39:27.337 3KD2myyS0 5/20

「いつか見放されちゃうわよ?」

8 : 以下、\... - 2017/05/17 10:40:01.495 3KD2myyS0 6/20

……見放される?

私が?ヴィーネに?

……嫌だ

それだけは……絶対に嫌だ

9 : 以下、\... - 2017/05/17 10:40:24.287 3KD2myyS0 7/20

「だから早く着替え……」

サッサッ

「あら?」

「よ、よし、着替えたぞ。じゃあ学校いこうか」

「えらいじゃない!いいこいいこ!」ナデナデ

「……うん、いい子だから、いい子にするから……さ」

「ん?」

「……なんでもない」

10 : 以下、\... - 2017/05/17 10:41:01.096 3KD2myyS0 8/20

その日から私は「いい子」を心がけた

……かつて、私が演じたように

11 : 以下、\... - 2017/05/17 10:41:28.542 3KD2myyS0 9/20

「ガヴ、起きなさい……ってもう起きてる!」

「おう、おはよう」

「槍でも降るんじゃないかしら……」

「何言ってんだよ、これくらい普通だろ?」

「……そうね、普通よね?……これからもその調子で頼むわよ!」

この調子なら、きっと……

12 : 以下、\... - 2017/05/17 10:41:49.401 3KD2myyS0 10/20

「……ちょっと掃除した」

「えっ!あのガヴが!?けっこう綺麗になってるじゃない!えらいえらい!」

「……へへ」

「ご飯も作ったよ、ヴィーネも食べる?」

「えっ……うん!おいしいおいしい!」

13 : 以下、\... - 2017/05/17 10:42:07.340 3KD2myyS0 11/20

私が「いい子」を演じている時、彼女は嬉しそうにしていた

だから私は「いい子」を演じ続ける

全ては彼女に見放されないために

ずっと彼女のそばにいたかったから

……だが

14 : 以下、\... - 2017/05/17 10:42:43.875 3KD2myyS0 12/20

「ガヴ~、起きて~」

「もう起きてるよ」

「あっ、もう着替えてるのね、じゃあ行きましょうか……」

「……」

「……」

「ガヴ、最近ちゃんとご飯たべてる?」

「当たり前じゃん?三食きちんと食べてるよ。コンビニ飯とかじゃなくてちゃんと自分で作って」

「……そう」

「……うん」

……なんだろうこの胸のもやもやは

15 : 以下、\... - 2017/05/17 10:43:17.531 3KD2myyS0 13/20

「いい子」を演じているのに、どうして彼女は嬉しそうにしなくなったのか

……それに、なぜか以前より距離が遠くなった気がする

なんで?どうして?

一体何がいけないのか……

まだ「いい子」を演じる努力が足りない?

16 : 以下、\... - 2017/05/17 10:43:39.080 3KD2myyS0 14/20

「最近バイトを週5に増やしたんだ、マスター大喜びでこっちまで嬉しくなるね」

「ふーん、えらいわね」

「公園の掃除とかしてると自然に子供たちがなついてきちゃってさ、体中が筋肉痛になるくらい遊ばされちゃって……」

「ふーん」

「……ネトゲもやめたんだ」

「……ふーん」

17 : 以下、\... - 2017/05/17 10:44:32.760 3KD2myyS0 15/20

ねぇ、どうしてなにも言ってくれないの?

こんなにがんばってるのに

……もっと私を褒めてよ

……もしかして、もうすでに見放されちゃってるのかな

……嫌だよ、私の所に戻ってきてよ、ヴィーネ……

18 : 以下、\... - 2017/05/17 10:44:58.425 3KD2myyS0 16/20

「ヴィーネ!」

「私こんなに頑張ってるのに!こんなにいい子にしてるのに!どうして何も言ってくれないの?」

「……ガヴ?」

「私を見放さないでよ!この調子でこれからも頑張るからさぁ……だから、もっと私の事を見てよ!私の事を考えてよ!」ポロポロ

涙と共に溢れる思いがこみあげてくる

……彼女も幻滅したかな

私がこんなに重い女だったなんて

2人の関係も終わりなの……かな

私の心が壊れてしまいそうだ

19 : 以下、\... - 2017/05/17 10:45:34.808 3KD2myyS0 17/20

「……見捨て……ないで……」

「ガヴ、安心して」

「私はあなたを見捨てたりはしないわ」ダキッ

「え……」

壊れてしまいそうな、私の心

それを柔らかに包む天使の抱擁

21 : 以下、\... - 2017/05/17 10:46:25.519 3KD2myyS0 18/20

「ごめんね、ガヴ。私正直怖かったの」

「以前のようなガヴに戻っちゃうと、もう私のことなんて見てくれないんじゃないか、もう用済みになるんじゃないか……って」

「……ひどいわよね、友達のこと……あんたのこと、信用出来なかったの」

「……」

「幻滅したかしら?」

「ううん、そんなことないよ」

……彼女も私と同じ気持ちだったんだ

私が彼女を求めているのと同じように、彼女も私を求めている

どうしてそれに気付かなかったのか

24 : 以下、\... - 2017/05/17 10:48:28.685 3KD2myyS0 19/20

「私こそごめんね?こんなに重いグータラ自堕落天使で……」

「……ううん、私はあなたのそういう所が好きなの。好きで世話を焼いてるんだから」

「そっか……ありがとう」

「……だからこれからも、ずっとあなたのお世話をさせてね?」

彼女は以前の自堕落な自分を求めてくれている、欲してくれている

……演技などではない、本当の自分を

「本当にしかたないな、ヴィーネは!」

この日、私は再び「いい子」を演じるのをやめた

おわり

25 : 以下、\... - 2017/05/17 10:48:53.188 3KD2myyS0 20/20

共依存ガヴィーネを書きたかったんです

ありがとうございました!

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