1 : ◆eUwxvhsdPM - 2014/08/22 21:41:25.54 t5Ay+egi0 1/490※初めに
・このSSは「静・ジョースターの奇妙な日常」の続き・第十三話です。
タイトル通り、ジョジョの透明な赤ちゃんが成長した姿を書いております。
・オリジナルです。ご了承下さい。
・投稿スピード遅いですが、いつもの事です。エタらないよう支援してくださると助かります。
・長くなりましたが、書かせていただいます。
一話
静・ジョースターの奇妙な日常
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363790589/
http://ayamevip.com/archives/50359976.html
二話
仗助「静のやばい物を拾ったっス」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1365094145/
http://ayamevip.com/archives/50388491.html
三話
静「ジャンケン教師がやって来た」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1367669400/
http://ayamevip.com/archives/50455923.html
四話
静「引きこもりのうちへ遊びに行こう」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1368951927/
http://ayamevip.com/archives/50455979.html
五話
静「泥棒をしよう」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1370177583/
http://ayamevip.com/archives/50469446.html
六話
静「ペーパー・バック・ライターは父親に憧れる」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373404472/
http://ayamevip.com/archives/50469515.html
七話
静「お見舞いへ行こう」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1379932767/
http://ayamevip.com/archives/50478595.html
八話
静「日本料理を食べに行こう」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1383137249/
http://ayamevip.com/archives/50482658.html
九話
静「幽霊屋敷に住もう」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1386418852/
http://ayamevip.com/archives/50495972.html
十話
静「双葉双馬は静かに暮らしたい」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1391689545/
http://ayamevip.com/archives/50496017.html
十一話
静「吉岡純はお金が好き」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1398837668/
http://ayamevip.com/archives/50504998.html
十二話
静「杜王町の人々」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404738764/
http://ayamevip.com/archives/50505043.html
元スレ
静「静・ジョースターはキャンプをする」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408711275/
「うぅううううぅぅぅううう……苦しい……くるしいわ……」
「なんで……どうして……どうしてなのォ……」
「何故……私は……全てを捨てたのに……人間をやめたっていうのに……」
「こんなにも……苦しまないと……いけないの……?」
メイ「教えてよ……ねえ?……チェスタ……!」
オオォォォオオオ……
チェスタ「……」
ウォーケン「……クク……」
メイ「『血』が……『生命』が足りないのよ……!……どんどん私の身体から、力が失われていくのがわかる。生命を吸わなければ、この身体はもろくも崩れ去ってしまうのよ……!」
チェスタ「……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
メイ「何故……『食事』を、させてくれないの……?チェスタ?」
チェスタ「……」
チェスタ「……本当に、済まないと思っている」
メイ「……」
チェスタ「しかし、あの『イタリア人』だ。二人組の……彼らは周到に俺を付け狙っている。食事を用意しようとも、彼らが先回りしてそれを――」
メイ「そんな事は聞いていないの!!」
ドンッ!
チェスタ「……」
メイ「違うの……そうじゃあない。でしょう?……本当にほんとうに、ホントォ――ッにっ私に『忠誠』を誓っているのなら……どんな困難があろうとも、私のために動いてくれる……でしょう?そうじゃあないの?ン?」
チェスタ「……」
メイ「ねえ?……チェスタ?」ズイッ……
ウォーケン「……」ジッ……
メイ「ねえ……貴方の忠誠は、その程度のものなの?……私、貴方の事がわからない……全然まったくわからないわ。……私がこんなに苦しんでるのに、何故貴方は平気なの?ねえ……チェスタ?」
チェスタ「……平気では無いさ」
メイ「嘘。……うそ、ウソ、嘘よッ!大嘘ッ!!貴方はきっと喜んでるんだわッ!私が日に日に衰弱していくのを楽しんで見ているんだわッ!!ああ、嗚呼……チェスタ、何故……?」
ガシイッ!
メイ「何故……貴方が吸血鬼にならなかったの……?何故、私に『押し付けた』の……?」
チェスタ「……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ウォーケン(フフ……追われる恐怖と、死の実感……二つに挟まれて疑心暗鬼って所か。忠実なイヌであるチェスタを疑うなんてな。……悲しいもんだ)
チェスタ「……」
メイ「……」ジッ……
ウォーケン(まあ~~……『そこ』がまた可愛らしい所でもあるんだが、な……フフフ……!)ペロリ
チェスタ「……」
メイ「答えてよ、チェスタ……貴方は今でも、私と『天国』を待ってくれるっていうの……?」
チェスタ「……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
チェスタ「一つ、『訂正』しておこう」
メイ「……」
チェスタ「今、君は俺に様々な事を聞いたが……その中からたった『一つ』だけだ。しかも、質問に答えるんじゃあなく、『訂正』するだけだ。……だが、大切な事なんでな。『訂正』させてくれ」
メイ「……」
チェスタ「……俺は君に対して、『忠誠』なんて持っていない……」
バン
メイ「!!」
チェスタ「何故なら、俺は君の『信頼できる友』であるからだ」
ドン
ウォーケン「……」
メイ「……何?」
チェスタ「もし君が、今はそう思っていなくとも……いつかは君の『友』となる。いつわりの『友達』なんかじゃあない。唯一無二の『信頼できる友』だ。……俺はそれになる」
メイ「……?……??……」
チェスタ「……本当の『友』ならば……『忠誠』なんていうものは無いはずだ。それは、目下の者が目上の者に対して誓うものだからな。だから、俺は君に対して『忠誠』なんて持ってない。……しかし、君をこの世の誰よりも愛している」
メイ「……」
・ ・ ・
チェスタ「だから……メイ。……『これ』を……」
スッ……!
メイ「!」
ウォーケン「ナッ!……(『ナイフ』ッ!?)」
チェスタ「……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
メイ「なッ……なあに?チェスタ……そのチンケなものは?……それで、私を『殺す』……って、いうの?……いくら私が弱っていようとも、私は……わ、私は……!!」ガタガタ
チェスタ「……メイ」
メイ「……はッ……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
チェスタ「……『受け取ってくれ』」
ヒュッ――
ド ス ッ
メイ「……」ポタッ
ウォーケン「!……なッ……!?」
チェスタ「……ぐッ……!」
ブシュウッ!
メイ「あ、あああ……ああっ!チェスタッ!?どうして……なんでッ!?」
チェスタ「……め、メイ……!」ドクドク……
メイ「どうして……『自分の手を刺したの』ッ!!?」
ドクッ!ドクッ!
チェスタ「『受け取ってくれ』」ス……
メイ「!!」
・ ・ ・
チェスタ「……君は生きなければならない。少なくとも……『天国』へ到達するまでは、君は生きなければならないんだ。そのためならば、他の全てを犠牲にしなくてはならない……」
メイ「……」
チェスタ「……そう俺は思っている。だから……だ。時には……俺も『犠牲』にしなくてはならないんだ……」
メイ「……」
チェスタ「今はこれで、命をつないでくれ。……また食料を調達してくる。もしも、それが出来なかったら……いつでも俺を食ってくれ。覚悟は出来ている。……今はこれで、君は生きてくれ……」
ドクドク……
メイ「ちぇ……すた……う……ううう……!!」
ゴクゴク
ゴク
ゴクゴクゴク
ゴクゴク……
ウォーケン「……この世は全て作り物。……だから、ネェ、仕方ないさ。……フン!」
…………
…………
8月某日
東方家(新築)――
ミーンミンミン……
康一「仗助くーん……アレ、いないのかな?オーイ!」
キョロキョロ
康一「車はあるし、今日はお仕事休みって聞いてたんだけどなァ。仗助くーん!『スイカ』……おすそ分けに来たんだけどォ~~……」
コンコンッ
康一「?……アレッ、玄関の扉は開いてるぞっ」
ガチャ
康一「不用心だなァ……まあ、誰もいないなら書き置きでもして、家の中にスイカ置かせてもらおうかな」
キイッ……
康一「お邪魔しまー……」
「ちょっと兄さんッ!!どういう事よッ!?」
バンッ!
康一「!?」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
康一「この『声』は……『静ちゃん』?……リビングの方から聞こえたぞ……?」
ススッ……
康一「あ、あの~~……?」
ヒョコッ
仗助「……」
静「……ううう~~ッ……!」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
康一「うッ!(す……スゴイ表情で、二人が睨み合ってるぞ。どうしたんだろう……?)」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
仗助「オメーが『納得』しなくともよォー。おれは何度でも言うぜ。……お前を連れて行く事は『出来ない』……!」
静「……それが意味わかんないって言ってんのよ、兄さん……どういう事?なんで……兄さんに決められなきゃあなんないの……!?」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
仗助「静。オメーは『妹』でおれは『兄』だぜ。『兄』のいう事は聞かなきゃあなんねえ……だろッ?」
静「ふざけた事ばっか言ってんじゃあねえわよ。あたしにだって意見を言う権利くらいあるわ……!」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
康一(も、もしかして……仗助くん、『言っちゃった』の?……つまり、『吸血鬼・有栖川メイ』退治に、静ちゃんを関わらせたくないって……そうハッキリ言っちゃったんじゃあ……!?)
仗助「……」
静「……兄さん……!」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
康一「ちょ、ちょっと二人ともっ!落ち着いて――……」
静「なんっで『海』なんかに行かなきゃあなんねェ――のよォ――ッ!!普通『山』だろッ!!ゼッテェー『山』ァァ~~ッ!!」バン!
仗助「『山』なんか連れて行けっかよォーッ!ダンゼン『海』ッ!こりゃあ決定だぜェ~~ッ!!」ババン!
康一「……」ガクッ
康一「ちょ……っと待って。二人とも。ストップ。いいかな?」
静「え?……あ、康一さん。こんにちは」ペコッ
仗助「おう康一。どうかしたかよォ~~?」
康一「エット、『どうかしたか』っていうのはぼくの台詞なんだけど……二人して言い争ったりして、どうかしたの?」
仗助「ああ、その事なんだがよ~~。ちょっと言ってやってくれよ。コイツかなりのゴージョーッパリで……」
静「康一さん聞いてよッ!兄さんったらイジワルばっか言うのよっ!?あたしに死ね!っつってるよーなモンよッマジでェェ~~ッ!!」
康一「……えーっと、その前に……」
静「?……何?」
康一「……何で二人とも、水着着てるの?」
仗助「……」カイパーン
静「……」ビキニーン
仗助「……康一、これにゃあ深ーいふか~~い訳があるんだよ……」
康一(絶対ウソだ……)
仗助「おれもよぉー、世間は夏休みだが普通に仕事あったからよ。最近は遺跡の発掘作業とかで中々忙しくって、静をどこにも連れてってやれなかった訳だよ」
康一「うん」
仗助「で!今日はおれ休みだったんだが、静のヤロー『夏休みだからどっか行きたい!』ってダダこねてな」
静「ダダじゃあねーわよ。ガクセーとして当然の事言っただけよ」
仗助「おれは家でゆっくりしたかったからよォ~~。……仕方ねえから家で水着来てパンケーキ食って、気分だけハワイ旅行してたんだ」
康一「……ハワイ……」
仗助「そしたら『違う……そうじゃあない……絶対違う……』ってブツブツ言い始めて」
康一「まあそうだろうね。ぼくも親に『ハワイ連れてってあげる!』って言われて家でパンケーキだったら怒るよ」
仗助「あんまりにもうるせーんで、仕方ねえからどっか旅行連れて行く事なったんだけどよォ~~……」
静「あたしは『山』がいいのよッ!絶対山!キャンプとかしてみたいわ。炭火でバーベQッ!とかしてみたりしてッ!」
仗助「だからよォ~~ッ、嫌って言ってんじゃあねーか」
静「何でよッ!?」
仗助「山とか発掘作業思い出すんだよッ!休日くれぇー土の臭いがしない所がいいぜッ!だから『海』だッ!ムフフ♪な『出会い』があるかもしんねえしなァ~~」ムフッ
静「あたしが海嫌いって知ってて言ってんのかッコラァーッ!!海とかマジ無理ッ!ジンマシン出る!溺れ死んだらどうするんだってのーっ!!」
ギャーギャー!……
康一「まあまあ仗助くん、落ち着きなよ……ここはさ、静ちゃんの行きたい所に連れてってあげようよ?」
仗助「なッ!?……康一、オメー静の肩持つのかよぉ~~」ガックリ
静「やったぁっ♪康一さんはやっぱりわかってるわよねぇ~~ッ!好き♪」
康一「とりあえずさ。由花子さんの実家からスイカ頂いたんだけど……食べながら話さない?」ガサッ
仗助「おっ!悪いな。いつも何かもらっちゃってよォ~~。静、皿と包丁とまな板と塩だ」
静「スイカに塩かけて食うと早死にするわよ?あたし普通に食うもんねーっ」
…………
…………
シャクッ!
静「うンまぁぁ~~ッ!!ヤバッコレッ!マジヤバッ!」シャクシャクッ
仗助「塩かけて食うと甘さがより際立つんだよなァ~~」シャクッ
静「かけすぎだっての。兄さんもうダメね。塩没収。自然の甘みで十分だから。……プッ!」
仗助「タネ床に落とすんじゃあねーぞ。掃除面倒だからな~~」シャクシャク
康一「ああ本当、甘いねこのスイカ……うん」モグモグ
康一「いやあ、ぼくの所はまだ二人暮らしだから、こういうのいっぱいもらっちゃうと少し困るんだよね。ホント助かるよ二人とも」
仗助「こちらこそありがとうだぜ。……それで、康一。……オメーマジで言ってんのかよ?その……おれに静を『山』に連れてけってよ」
康一「うん。静ちゃん海嫌いって言ってたし……それに、ホラ……杜王町で暮らす初めての夏でしょう?」
仗助「!……」
康一「杜王町はスッゴク綺麗ですばらしい町だって、ぼく思うんだ。そんな町で暮らす初めての夏だから……自分の行きたくない所じゃあなく、自分の行きたい、すごしたい所で夏を感じてほしいって思うな」
仗助「……けどなァ~~……」
静「何よ兄さん。そんっなに不満?まさかムシがイヤとか言うんじゃあねーでしょうね?」
仗助「……おめー『キャンプ』っつったよな?」
静「うん。夏!山!キャンプ!……でしょっ?」
仗助「……おれキャンプとかやった事ねえぞ。林間学校くらいだ」
静「……はァ~~っ?」
静「なんでよ、兄さんいっつも発掘だー遺跡だーとか言ってんじゃん」
仗助「付近のビジネスホテル泊まってるんだよ。海外の山奥ならともかく、現代日本にゃあいくらでも宿があるぜ」
静「うっげェ~~幻滅したッ!昔おじいちゃんが女装して人の目を欺いたっていうエピソード聞いた時くらい幻滅したッ!」
仗助「女装と同じレベルにすんじゃあねーッ!オメーはどうなんだよ。アメリカでじじいと一緒にキャンプ……とかッ?」
静「炭に火をつけた事すらないっての」
仗助「……」
静「日本で言う『平成生まれ』に何期待してんのよ」シレッ
仗助「……康一は?」
康一「ぼく?あまり無いかなあ……子供のころに家族と一緒に行ったくらい」
仗助「……静、諦めようぜ。パンケェ――キィィッ食うか?」
静「やだ!絶対やだもんねーっ!山でキャンプ!んでバーベQ!これ決定よ。もう胃袋は肉の受け入れ準備してるってのーっ!」
仗助「そもそもキャンプしようにもッ!『テント』が無ェだろ~~がよ~~ッ!肉焼く『グリル』も『炭』もねーッ!ついでに『寝袋』もッ!キャンプするには道具が必要なんだぜ~~!」
静「?……持ってるじゃん?」
仗助「……何?」
静「ほら。兄さんの実家……朋子さん家。ガレージの奥の物置で見かけたわよ、キャンプグッズ」
仗助「?……??……」
静「あたしがこっち越してきて色々荷物とかもらったり置いたりした時に見たけど……アレって兄さんのじゃあないの?」
仗助「……ああ、もしかして……じいちゃんの、か。……そういやまだ捨てずに置いてるモンあったな……」
静「……『けど』……」
仗助「……ああ……」
仗助「物置は……恐ろしく『汚い』……!!」
静「うん。……ホコリまみれでゴチャゴチャいろんなモン詰め込んでるしね……」
康一「……」
仗助「……」
静「……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
仗助「こいつはぁ~~グレートなことになりそうだぜ~~」
静「……やれやれね」
康一(……これ、ぼくも手伝わないといけない流れなのかなあ……)
…………
…………
東方家(実家)――
ガタガシャガタ……
仗助「えーと……どこにしまったんだ?キャンプグッズってよ~~」ガシャガシャ
静「ペッペッ、ホコリ口に入っちゃったわ」ガタガタッ
康一「あ、炭あった。湿気てなかったらいいんだけど……」ガサッ
仗助「肝心のテントは何処にあるっつーんだ?見つけてもカビだらけで使えねえんじゃあねえのか?」
静「何のための『クレイジー・ダイヤモンド』よ。どんなに汚かろーが破れてよーが、兄さんがいれば大丈ブイッ」
仗助「……なんか、良いように『使われてる』みてーで嫌なんだよな~~……」ブツブツ
康一「……あれ?これ、仗助くんの学生カバンじゃあないの?」ゴソッ
仗助「お、本当だな。そういやここに仕舞った覚えがあるぜ」
静「……なんか、シミとかついてるわよ。ボロいし古臭いし。使わないならさぁ~~捨てた方がいいんじゃあないのォ?」
仗助「なんかよ~~、思い入れのあるものって捨てづらいっつーか残しときたいっつーか……大したモンは入れなかったが、三年間使い続けたもんだからな~~」シミジミ
静「兄さん、もしかして『捨てられない男』ってヤツゥ?勘弁してよー……今迷惑してんの兄さんのせいって事?」
仗助「ここに詰め込んであるほとんど物はじいちゃんのモンだぜー」
静「で!それを残してるのは朋子さんって事か。……血筋?そーいうのって遺伝すんの?」
康一「どうだろうね……」ゴソゴソ
朋子「久々に顔出したと思ったら、仗助……あんたいつから掃除婦になったのよ」
ジャン
仗助「別に掃除婦になった覚えはねーぜ、おふくろ。ちっとは物置掃除しろよな~~」
朋子「あのさ。あたしってよく『トシより若く見えますね』って言われる方でさ。結構自分でも若々しいかなァ~~って思う事もあるんだけど……もう五十過ぎてんのよ。そんなあたしに物置の掃除なんて、重労働させる気?あたしに死ね!って事?」
仗助「そ、そんな訳じゃあ……」
朋子「まったく、家出てからロクに連絡もしないで、たまに帰ってきたと思ったら掃除なんて……親孝行したいときには親はなしって言葉知ってんの?女手一つであんた育てんのは苦労したんだから、きちんと孝行しなさいよね。そろそろ孫の顔が見てみたいわよ、あたしは。ハァ~~……」
仗助「ぐ、ググ……」
朋子「あんた、昔っから女には結構モテてたみたいだけどさあ……今どうなの?お付き合いしてる人とか」
仗助「い、いやまあ……考えてはいるけどよ」
朋子「……あんたねえ、もう大人なんだからそろそろ先の事とか考えなさいよ。もうすぐしたら異性なんか寄り付かなくなっちゃうんだから。あたしがあんたの歳くらいには――……」
仗助(こ、これだから家帰んのはイヤなんだよなァーッ……なんか違う話題とか無えのかよォ~~……)ウゲェー
ガラガラガラァン!
静「あいったァ~~ッ!の、脳ッ!脳飛び出るッ!」グワングワン
仗助「だ、大丈夫かよ~~静ッ?」(サンキュ~~ッ!)タタタッ
静「上から木箱落ちてきて、頭に……カドが当たった。泣いちゃいそうだわ……グスン」
康一「わっ、コブになってるよ静ちゃん」
仗助「ったくよー。気をつけろよなァ~~」スッ……
ズキュン!
仗助「よし、まだ痛い所あるか?」ポンポンッ
静「ん、大丈夫……ありがと、兄さん」
朋子「仗助、静ちゃんにあんまし危ない事させないでよ?静ちゃんは女の子なんだからね?……静ちゃん、掃除なんか仗助にまかせてお茶飲まない?鎌倉カスターあるわよ」
静「いえ、お構いなく。元々あたしが言い始めた事なんでー」
仗助「別に危ねえ事なんかさせてねえだろうよ。今のはこいつの不注意が悪いぜ~~」
静「ムム、その通りだけど……なんかムカつくっての」ムスッ
朋子「とにかく、気をつけて掃除しなさいよ。結構適当に詰め込んでるからね。下から引っこ抜いたらガラガラ崩れるわよ。……康一くんもほどほどにしといてね。別に綺麗にしなくていいから」
康一「あ、ドウモ」ペコリ
朋子「じゃあ、あたし家ん中いるから。一応ゴミに見えるもんでもあたしの許可取ってから捨ててね」スタスタ……
静「はーい」ガサゴソ
康一「……仗助くんのお母さん、静ちゃんの事大切に思ってるんだね」ヒソヒソ
仗助「おふくろ、娘が欲しかったってよく言ってたからなぁ~~っ」
静「朋子さん、いい人なんだけど……あたしと二人っきりになったらニコニコしながら漢字教えようとするもん。善意ってわかってるけど、ちょっとねえ……」
仗助「おめーの国語の成績が悪いのが原因だぜ」
康一「そういえば、静ちゃんの上に落ちてきたこの木箱って何だろう?結構重いけど……」
静「貸して、康一さん」
康一「ん?」ヒョイッ
静「『ワイルド・ハニー』」スッ……
スゥゥーッ!
静「……中は陶器のツボ……かしら?割れちゃってるけど……」
仗助「静~~」
静「んー」ヒョイッ
仗助「『クレイジー・ダイヤモンド』」コンッ
カチャッ!カチャッ!カチャッ!
仗助「……問題なく治したぜ」
康一(……『スタンド』って便利だなあ……)
仗助「この特徴的な表面のまだら模様は、堤焼きか?詳しく調べてみねえとわかんねーが、結構古いな……江戸末期のもんか」
静「高い?ねえこれって高いの?」
仗助「さあな。おれは一応考古学のセンセーだが、骨董品は専門外だぜ。まあ売ればそこそこの値段はすんじゃあねえのか?」
静「よっし、バーベQは国産和牛ね。これ決定」
仗助「これじいちゃんのモンだからなあ……おふくろが譲ってくれたり売ったりするとは思えねえぞ」
静「……『ワイルド・ハニー』でツボごと全部透明にして、持って帰ろうかな……」
仗助「……オメー悪くなったなあ……」
静「……悪くなった……静ちゃん悪い子?おじいちゃん悲しむかな……けどおじいちゃんも承太郎さんも兄さんも昔は悪い子だったし、ジョースターとして……でもなあ……」ブツブツ
仗助「何ぶつくさ言ってやがんだよ」ハァー
康一「……あっ!これってテントなんじゃあないの?」ゴソッ
仗助「おおっ!やったぜ康一ッ!これでなんとかキャンプは出来そうだな」
静「あ、これって寝袋かな?米俵みてーだけど」ゴロンッ
仗助「探せばあるもんなんだなぁ~~っ。キャンプグッズを買わないで済みそうだぜ」
康一「……けど、寝袋一つしか無いよ?」
静「まだ肉焼くグリルも見つかってないしね。……もしかして無いのかな?見たと思ったんだけど……」
仗助「まあまあ、とにかくこのテントと寝袋、表で広げてみようぜ。壊れてるならともかく部品が無かったりしたらどうしようもねえからな」
…………
…………
ドサッ!
静「ふーっ、表に持ってきたのはいいけど……」
仗助「……康一、テントの組み立て方わかるか?」
康一「ぼ、ぼく!?知らないよ……ぼくもこういうのほとんど経験無いし」
仗助「……そうなんだよなあ……」ハァー……
静「あ、けどちゃーんと骨組みとかはあるみたいよ?道具も揃ってるっぽいし、古臭いけど布地も破れてないし。なんとかなるんじゃあないのォ~~?」
仗助「なんとか、なあ……しかたねえ。ちょっと手探りで組み立ててみるぜ」ガチャッ
静「兄さん、ガンバッ♪」
仗助「オメーも手伝うんだよッ!静ッ!!」
ガチャガチャ……
仗助「うーん……こうか?静、ちょっとそこ引っ張ってくれ」ガサッ
静「……兄さん、これ違うくない?杭をそこに打つのよ、たぶん」
康一「骨組みが曲がって見えるよ~~……もっと中心に持ってこないと」
仗助「……こうか?」ガサッ
静「……あ、兄さん。……今気づいたんだけど、まずこのシート敷くんじゃあない?」ガササッ
仗助「いや、それは上からかぶせるんじゃあねえのか?」
康一「うーん……」
ガサガサガサ……
チリンチリーン……
億泰「……おっ?仗助~~っ」
キキイッ!
仗助「うん?……おお、億泰」
億泰「実家に帰ってるなんて珍しいじゃあねえか。何してんだァ?」シタッ
仗助「ちょっとな……色々とあって」ガサッ
康一「あれっ、億泰くん?」ヒョコッ
静「げげ、億泰」
億泰「お~~う康一。静もいんのか?賑やかなこったなァー」
静「……億泰が仕事もせずにサイクリングしてる……暇なの?」
億泰「仕事中だッ仕事チューッ!日本料理の出前やってんだよ」
仗助「『出前』?」
億泰「お家で本格料亭の味ィ~~っ!っつってな。お年寄りとかに好評なんだぜェ~~ッ。結構儲かるし」
静「うわ、億泰が考えて商売してる……オーマイガッ」
億泰「どういう意味だッコラァーッ!」
仗助「静、このアイデアきっと億泰の奥さんだぜ。億泰が出前なんざ考える訳ねえだろ?」
静「ああ、納得だわ。さすが兄さん、わかってんのねーっ」
億泰「お、おまえら……(実際そうだけど、ユルセン……!)」プルプル
康一「お店の方はどうしてるの?」
億泰「今はカミさんが回してるぜェ~~。那由他も手伝ってるがよ」
静「フ~~ン、そりゃあ大盛況でしょうね……億泰が板に立つとお客さん逃げそうだもん」ボソッ
億泰「……仗助、オメーこいつにどういう教育してんだ?」ションボリ
仗助「別に何も言ってねえよ。なぁ?」
静「うん。まあ……そういう事にしとこうかな」
億泰「……」プルプル
仗助「……静、そろそろからかうのはやめとこうぜェ~~。泣かれても困るしな」ヒソヒソ
静「それはそれで見てみたいけど、確かに困るわね。了解ィィー」ヒソヒソ
億泰「……で?オメーら何してたんだ?ん……こりゃあテントか?」
仗助「静のやつがよー、キャンプしたいって言い出したから引っ張りだしてきたんだよ。心配だったが何とか使えそうだな~~」
億泰「使うって……仗助、おめーこりゃあ『一人用』のテントじゃあねえか」
仗助「……」
康一「……」
静「……えっ?」
億泰「数年前に流行ったんだよな、こういう小さいテント。けどこりゃあ型もフルいしよォー、こいつでキャンプすんのは少し厳しいんじゃあねえのか~~?」
仗助「まて待て待てマテ!億泰おめー……わかるのか?その……『キャンプ』について?」
億泰「……ああん?」
億泰「ああ……おれ高校卒業した後よ、包丁一つとテント担いで数年間料理の修行したからなァ~~。こういうのはお手のモンだぜ」フフンッ
静「じ、時代錯誤というか何というか……ホントにやるか?そーいうの、フツウ……」
康一「そういや億泰くん、全国回ってたね……その旅の途中で出会ったのが今の奥さんなんだっけ?」
億泰「おうっ!修行中立ち寄った日本料理の老舗の、箱入り娘さんでな~~。お義父さんも最初は許してくれなかったが、おれの料理の腕を見て――」
仗助「んな事ァ今どーでもいいだろうがよォーッ!!億泰、一個聞きたい事があるッ!」
億泰「??」
仗助「そのー……おめーもしかして、今も……キャンプグッズ、家にあったり……すんのか?」
億泰「?……おお、あるぜ。今もっつーかよォー、いつか家族でキャンプしようと思って、大型のテントにタープにグリルと、全部買ったのよ」
仗助「……そーかそーか……全部あるのか……」ニヤニヤ
康一「……仗助くん?」
仗助「いや何、ちょっと仗助くん、いーい事考えちまってよォ~~……」
仗助「どうせなら静!もっと大勢集めてキャンプしねえか?」
ジャン!
静「……『大勢』?」
仗助「おめーの友達なんかも集めてよォ~~、おれらの方もダチやらなんやら集めて、杜王町のみんなでキャンプするのよ!題して!『ドキッ!スタンド使いだらけの杜王町民キャンプ大会』ッ!!ってなァ~~ッ!!」
静「お……おおーッ!!兄さん天才!?ヤッベ!それグレートにやっばいわァーッ!!」キャーッ!
仗助「だっろォ~~?みんなでキャンプしたら絶対盛り上がるしよォーッ!それに……」
仗助(おれはなーんにもしないで、肉食ってビール飲んでテントでゴロゴロできるもんねーッ!ウププ!)ニヤニヤ
康一「仗助くん、悪い顔してるよ~~……」
億泰「おい仗助、それはあれか?もうおれは参加の流れなのかよ?別にいいけどよォ~~……」
仗助「っつー訳で静!ちょっとお前友達に声かけてこいよ」
静「うん!じゃあ行ってきまーす!」タタタッ
仗助「億泰はキャンプの道具準備して、康一は……あ、そういや康一、由花子の事もあるから来るのは無理か?」
康一「うーん、少し難しいかなあ?ぼくもあまり由花子さんから離れたくないし」
仗助「だよなあ。じゃあ他に誰か呼んで――……」
億泰「じゃあ仗助、『幹事』は任せたぜェ~~」
仗助「…………えっ?」
億泰「『えっ?』じゃあねえだろうが。言い出しっぺはお前なんだからよォー、『幹事』やるのが筋ってモンだぜ」
仗助「……『幹事』って、その……何かすることあるのかよ?」
康一「そりゃあ、今どき大学生の飲み会ですら幹事がいるんだし……」
億泰「人数集めたりキャンプ場手配したり金の管理したり皆の日程調整したり!色々とやる事あるだろ?」
仗助「…………」
仗助「……ガキの頃は良かったよな……そんな面倒な事考えず、遊んでりゃあいいんだからよ……」
億泰「いきなり何言ってやがんだよ、オメーッ……じゃあまた、仕事終わりに連絡すっからよォ~~」ガチャッ
キコキコキコ……
仗助「……はあ……」
仗助(結局一番メンドーな事になってない?おれ……)
…………
…………
日本料亭『にじむら』――
静「……って訳でェ~~。この度あたし達っ!『キャンプ』へ行こうと思いまーすッ!!」
バーンッ!
那由他「きゃあーッ♪本当ですかっお姉さまッ!!」ピョンピョン
静「まあ詳しい事は億泰……那由他ちゃんのお父さんが言ってくれると思うわ。一応聞くけど、大丈夫よね?那由他ちゃん、お泊りとか苦手だったりしないわよね?」
那由他「はいッ!あたし、そういうの憧れてまして……お姉さまと大自然の中キャンプなんて、楽しみです!」
静「んー、可愛い事言ってくれるわねーッ。ウホホホッホッホーッ」ナデナデ
那由他「うふふ♪」
静「……で……」チラリ
静「当然!アンタも来るわよね?……『双馬』」
双馬「……」
シーン……
双馬「……食事中だ。黙ってろ静」パクパク
静「アンタ、この店よく来るの?常連さん?」
那由他「あ、ハイ。お兄さまはよく来てくれますよ」
双馬「静かにしてくれるか?那由他ちゃん」
静「え?あたしィ?」
双馬「……」モグモグ
静「また日にちとか詳しい事は決まったら連絡するから。どーせ夏休みヒマでしょうけど、スケジュールすぐ空けられるようにしときなさいよ?」
双馬「待て。……いつ僕が行くと言った?」
静「?……来ないの?」
双馬「……ハア~~……静、お前は致命的に頭が悪いのが欠点だな。……それ以外にも欠点は、トムとジェリーに出て来るチーズみたいにボコボコとあるが」
静「にゃにぃ~~?」
双馬「わかっているのか?お前?僕が東方仗助の事をどう思っているのか……」
静「……」
双馬「僕にとって、東方仗助はどういう存在だ?ほら、言ってみろ」
静「……父親を殺された。親の仇……」
双馬「そうだろうが。そんな相手と仲良くキャンプファイヤーしろっていうのか?……ありえないね」
静「……双馬」
双馬「何だ、まだ言いたい事があるのか?」
静「……アンタ、『良い奴』じゃん」
双馬「…………何を言っている?イカれてるのか?」
静「あたしにはわかる。アンタはマジで良い奴……たぶん、お母さんの育て方が良かったんだと思う。悲しみは背負っちゃったけど、アンタは……ずっと長い間、人を憎むなんて出来ないヤツよ。お父さんに会いたいのはマジだろうけどね」
双馬「やめろ。鳥肌が立つ」
静「……口には出さないけど、兄さん……アンタに会いたがってたわ」
双馬「……」
静「その……ゴメン、なんかいつものノリで誘っちゃったけど、真面目に言うわ。……今回のキャンプで、色々な『わだかまり』を無くしましょう。そのために、来て欲しいのよ……」
双馬「断る」
静「!……双馬、アンタねえッ……!!」ガタッ
双馬「なんだ、やるのか?やるっていうのなら……受けて立つぞ?」ユラッ
紙人間『ペラ……』
静「……」
双馬「……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
那由他「あ、あの……ケンカはやめましょう?お姉さま、お兄さま」
静「……」
双馬「……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
静「『ワイルド――……」ヴォッ……!!
那由他「お、お姉さまッ!!」
ゴトンッ!
億泰妻「はーいッ!静ちゃんお茶!淹れてきてあげたわよォ~~ッ!これでも飲んでゆっくりしていってねェェ~~ッ!!」
ジャンッ!
静「ハッ!?……あ、ハイ……どうも……」
億泰妻「他に何か頼む?ご飯以外にも、和菓子とかぁ~~夏限定でかき氷とかあるけど?」
静「あ、いえ……結構です。すみません……」
双馬「……」
那由他「……ホッ(ナイスタイミング、ママ……)」
億泰妻「あ!双馬くん、ご飯無くなってるじゃあないのォ~~。今おかわり入れるわね?」カチャッ
双馬「あ、いえ。僕はもう……」
億泰妻「もうッ!双馬くんは身体細いんだから、たっくさん食べなきゃあダメよ?おっくんみたいなたくましい男の人になれないわよぉー?キャッ♪」
双馬「お……『おっくん』……」タラリ
静「……いつもこんな感じなの?那由他ちゃんのお母さんって」ヒソヒソ
那由他「パパと結婚してから毎日ハッピー♪って言ってました」
静「そ、そう……なんか、圧倒されるわね……」
億泰妻「じゃあ、私は奥にいるから。何かあったら呼んでね?那由他と仲良くしてあげて」
静「そ、そりゃあもう!言われなくても……ね?」
双馬「な、僕に振るなよ」
那由他「お兄さま……あたしと仲良くするのは嫌、ですか?」グスン
双馬「別に嫌な訳では無いが……まあ、その……ハイ。仲良くします……」ブツブツ
億泰妻「それじゃっねェ~~!ルンルンッ♪」テクテク
シィーン……
那由他「……ふう」
双馬「……」
静「……」
双馬「……嵐のような人だな」
静「なんか、ちょっとスージーQおばあちゃんに似てるかも」
双馬「……」
静「……」
双馬「……オホン、とにかく……僕はキャンプに行くつもりは無い。家で本を読んでいる方がよっぽど有意義だからな。……わかったか?わかったなら、帰れ」
静「……ムム……」
那由他「お、お姉さま……嫌がる人を無理やり連れて行くのも、どうかと思いますよ……?」
静「……そうね。わかった……諦めるわ。アンタ連れてくのは」
双馬「フン……」
静「アンタってどっからどう見ても、インドア派の根暗メガネだもんね~~」
双馬「……何だと?」ギロッ
静「きっと、炭に火ィつける事すら出来なくって、釣り針に餌のミミズ付けるのにも怖がって、テントに入ってきた蛾に叫び声あげるようなヤツなんだわ……それがバレるのが怖いから、アウトドアしないのよね。うんうん」
双馬「おい、静……お前何言って」
静「ううん!わかってる!あたしにはぜェーんぶわかってるわ!アンタがカブトムシすら掴めないマンモーニだって事はよーくッわかってる!これはあたしの胸にそっと秘めておくから!誰にも言わないから安心して!!」
双馬「……」ピクピク
静「……それにしても……蛾一匹で大騒ぎする双馬……想像するだけで……プッ!ククク……!」プルプル
双馬「」プッツーン
双馬「この双葉双馬を馬鹿にするんじゃあないぞッこのダササングラス女がァ――ッ!!」ガターン!
静「んなッ!!……テメェー今あたしのサングラスの事何て言ったァァァ――ッ!!」ガタターン!
双馬「いいぞッ!やってやるッ!こう見えても施設のイベントなんかで野外オリエンテーションは何度もやったんだ!僕が役に立たないオタクメガネでは無い事を証明してやるッ!!」
静「よーしオッケー、じゃあキャンプ場で勝負よッ!どっちが真のアウトドアマンかっていうね!」
双馬「逃げるなよ」
静「そっちこそ!!」
静・双馬「「ふーんッ!!」」ツンッ
那由他「……」
那由他(お兄さま、良いように扱われていますよ……言った方がいいのかな?いや……やめておこ)
…………
…………
玉美「いやあ、ちょいとその辺りは仕事が忙しくてよォー……行きたいのは山々なんだが」
仗助「ま、そうだよなァ……悪ィな玉美。いきなりこんな話してよ」
玉美「別にいいぜ。また何かあったら呼んでくれ。……一応言っておくけどよ」
仗助「あん?」
玉美「……今回キャンプに行かねえのは、マジで仕事が忙しいからであって!……別におめーの妹と顔合わせづらいとか……そういうんじゃあねえからなッ!」
仗助「?……何の話だ?そりゃあ?」
玉美「……何も聞いてねえなら、それでいいんだよ。……それじゃあな」ブルルンッ!
ブゥーン……
仗助「ハァー……ガクセーは夏休みだっつうのに、結構みんな仕事仕事で予定合わねえみてえだな……(裕也は来るけど)」
康一「仕方ないよ、仗助くん。ぼく達ももう大人なんだし」
仗助「なんか、悲しいもんだよな~~。高校生の頃が懐かしいぜ……えーっと、あと声をかけてねえのは、早人とトニオさんと……」
康一「……仗助くん、あのさ……」
仗助「うん?」
康一「……仗助くんの事だから、わざとかもしれないけど……声をかけてない人、いるよね?」
仗助「えっ?……お、おれ誰か忘れてるっけ?」オロオロ
康一「いや、あのさ……」
露伴「キャンプ?ぼくが?フン!……下らないね。漫画家っていう職業は君が思っているほど暇じゃあないんだよ」
バン
仗助「そ、そうっすよねェ~~ッ!あは、アハハ……」
仗助「……おい康一、だからおれは嫌だったんだよーッ……なんでわざわざ露伴を誘って、怒られなきゃあならねーんだッ」ヒソヒソ
康一「でも露伴先生の事だから、声かけなかったらスネちゃうよ。きっと」ヒソヒソ
仗助「そうかもしれねえがよォ~~……内緒にしとくとかで良かったんじゃあねえのか?」ヒソヒソ
露伴「……堂々と目の前でヒソヒソ話なんてするもんじゃあないぜ。仗助くん……君はぼくをイラつかせに来たのかい?」
仗助「ぜッ!全然そんな事ないっすよォ~~もうッ!」アハハ……
康一「すみません露伴先生。こんな話しちゃって……やっぱり忙しいですよね、仕事」
露伴「いいよ康一くん。『ピンクダークの少年』のアニメが、少し前から始まったんだけどね。そのせいで新規のファンが増えて仕事も忙しいんだ。全く……ガキくさいアニメを見てハマった薄っぺらな奴らに、ぼくの漫画の素晴らしさが理解出来るとは思えないんだが」
仗助(や、やっぱりコイツ……性格悪ィ~~ッ)
露伴「……それに、実はぼくはもう、キャンプなら死ぬほどやったんだよ」
康一「え?そうなんですか?」
露伴「『ピンクダークの少年』の第7部が、アメリカを舞台にしていたんだが……」
康一「知っていますよッ!馬のレースの話でしょう?最後の展開はドキドキしましたよッ!」
露伴「キャンプシーンを描くためにね、ぼくもテントを担いで山の中に入ったんだよ。取材としてね……ぼくの所有地である山でキャンプしたんだ。ぼくが買った、山の中で……ね」
仗助(……性格悪ィーッ)
露伴「ある『嫌な事』があったから、『六壁坂村』には近づかないようにと考えて、数日間キャンプをしたんだよ。……しかし……」
康一「?……何かあったんですか?」
露伴「……『六壁坂』は、以外と多い。山の中に……何匹もいるんだ……」
康一「……?」
仗助「……?」
露伴「……キャンプをするなら、気をつけた方がいいぜ。康一くん。意外にも、人類の思いもしない生き物ってのが、この世には何匹も存在するんだからな……」
康一「は、はい。……あ、ぼくは行かないかもしれないんですけど」
露伴「それと、仗助くん。……ぼくの所有地でキャンプをするなら、きちんとぼくに許可を取ってくれよ?それがマナーってやつだからな」
仗助「……康一、後で露伴先生の所有する山とはかけ離れたキャンプ場探してくれ」ヒソヒソ
康一「自分で探しなよぉ~~……もうっ」
康一「それでは、失礼しましたー」ペコリ
仗助「どうもです、露伴先生ィ~~ッ」
スタスタ……
仗助「さーてッ、あと声かけてねえのは……結構大変だな、これ」
康一「ぼくも手伝うからさ、頑張ろうよ仗助くん」
仗助「じゃあ、ここからは手分けしてやろうぜ。康一は早人とジャンケン小僧のとこ行ってくれ。おれは……あ、そうだ」
康一「?」
仗助「……一応、呼ばなきゃあならねえ人がいるよなあ……」
…………
…………
虻村「なんだ、静かよォ~~。どうした?俺に何か用か?」ノソッ
静「別にィ~~……って、アレ?康司と委員長は?」キョロキョロ
虻村「康司は親戚のとこに行って、委員長は海外旅行だよ。いいよなァ~~ッ」
静「フーン……え?じゃあ、アンタ一人?」
虻村「おうっ!そうだぜェェーッ!……で?結局何の用なんだよ?どっか遊びに行くのか?」
静「……あー……じゃあ、いいわ。アンタ一人なら、別に」
虻村「オイッ!テメェーなんか俺に冷たくねえか?もっとこう……なあ?」
静「じゃあねェーッ」スタスタスタ
虻村「おいおいおいおいおいおいおい!静ちょっと……えっ?マジかッ!?お前マジに無視すんのかよォォーッ!?」
…………
…………
大林「キャンプぅ~~?行かないね。却下。ごめんだ」
静「……」
大林「山なんか虫多いし、刺されるし、ヘビとかいるし、女の子が水着じゃあねーじゃんか。撮りがいが無いんだよ撮りがいが……川あんのか?泳ぐ予定は?」
静「いや……今ん所は、なんとも」
大林「じゃあ、いいや。俺は行かないよ。一人海行ってナンパに写真撮影と洒落込むぜ。せっかく夏休み前に退院出来たんだからなァ~~楽しまねえと!ウヒヒッ!……あ、法に触れるよーな写真は撮らねえよ、マジで」
静「うん……そうね。できたらそうして」
静(ハァー……なんであたし、こいつに声かけたんだろ。……もしかしてあたし、友達少ないのかな……?)
…………
…………
純「だァーかァーらッ!!私に声かけんなっつってんだろうがァ――ッ!!静ァ――ッ!!」ゴオッ!!
静「……よ、予想はちょっぴりしてたけど……ひどくない?」グスン
純「この前100万やっただろ?あれで満足出来ないのか?ア?……私はあれで全部チャラッ!っつったよなァ?……なのにお前は、今ぜんっぜん金持ってねえ私から、まァーだムシり取ろぉってえのかッ?ア゛アッ!?」
静「……お金、持ってないの?」
純「全部処分したんだよッ!霊園にくれてやったッ!」
静「……霊園?」
純「ああ、そのー……あれよ……うちの、その……父さんの、墓をさ……」
静「……ああ……」
純「と、とにかくッ。私は今クリーンな金で生きてんの。毎日毎日バイトで忙しいったらありゃしないわ。だから、貴女に金はマジでやれねえから……勘弁して」
静「金の話じゃあないっての。実はさ……今度キャンプ行くんだけど」
純「……はあ?」
静「その……一緒にどうかな?って……」
純「無理。忙しい。同じ事何回も言わせないで」
静「……」
純「……何よ?」
静「純……アンタちょっと痩せた?」
純「別に……夏バテよ、夏バテ」
静「……ご飯、ちゃんと食べてる?」
純「食べてるわよッ!お前は私の母親か!……母の記憶なんて無いけど」
静「昨日何食べたの?」
純「……おにぎり」
静「……え?マジ?……それだけ?コンビニのって事?」
純「……」
静「……」
純「……あ、あと……あんぱんも食べた」
静「……な、何も言わないで……なんか泣きそうなってきた」
純「しょうがないじゃん……父さんの事について、警察の取り調べは全部『知らない』で通したけど、家住めなくなっちゃって……安いホテルに素泊まりするしかねえんだもん」
静「……」
純「確かに、弁当買えなくなったのは辛いけど……」
静「……え?……い、今までは晩御飯に、弁当を食べてたの?」
純「うん。……?……何かおかしい?」
静「だって、その……料理とか……えっと、ううん。なんでもない……なんか、ゴメン」
純「?」
静「……その、さ?純……キャンプに来たらさ?」
純「……何よ」
静「……美味しいバーベQ、食べ放題よ?」
純「……」ピクッ
静「お昼はカレーとか作るだろうし、朝ごはんにはパンとソーセージと目玉焼き!お魚だって釣れるかもしれないし、もしかしたら山の幸なんかも……あるかもよ?」
純「……この私が、メシごときで釣られると思ってんの?」
静「別にそういう訳じゃあねーっての。メシ抜きにしても、あたしは……色々あったけど、今はアンタと仲良くしたいって……そう、思ってるわ」
純「……」
静「……純」
純「……」
純「……バイト、あるから……行けないわ」
静「……そう……わかった」
純「……悪いわね、静」
静「ううん、あたしの方こそ、ごめん。……無理言っちゃって」
純「……」
静「……バイト、頑張って。……あたし、アンタの事応援してるから」
純「いらないわよ、馬鹿」
静「……じゃあね」クルッ
純「あっ、静――」
タッタッタッタ……
純「…………ハァ……」
純「……なんで、こう素直じゃあないかなあ。私……」
純「……」チラッ
ゴォォォオオオ……
純「……仲良く、かあ……ハハ……バッカじゃあないの」
純「……」
ブゥウーン……キキーッ!!
プププーッ!パパーッ!
純「……山から見る、景色は……」
純「……」
純「この、杜王町の町中より……綺麗、なんだろうな……」
純「……」
スッ
ピッポッパッ
純「……あ、もしもし……吉岡です。はい……店長お願いします」
純「……」
純「あ、店長……すみません。ハイ……お仕事中、ハイ……」
純「こ、こんな事言うのもアレなんですけど……」
純「……ええっと~~……」
ニコッ
純「少しその……お休みの、お願いをですね…………」
…………
…………
杜王グランドホテル――
承太郎「キャンプ、か……」
仗助「そうっす。静連れて、夏休みの旅行なんスけどー……」
バァァァアア……
承太郎「……」
仗助「えーっとォ~~っ……その、承太郎さんも、どうっすかねェェ~~っ?っとォ……」
承太郎「……」
承太郎「……興味深い話ではあるが……今回は、やめておこう」
仗助「そ、そうっすよね!承太郎さん、『キャンプ!』っつぅーガラじゃあねえし……アハハ!」
承太郎「そうでもない。おれも静くらいの年の頃には、よくキャンプをしたものだ……」
仗助「えっ?じょ、承太郎さんが?……外で?」
承太郎「ああ。エジプトへ向かう旅の途中でな」
仗助「あー……納得っす」
承太郎「ラクダが死んだり飛行機が墜落したりサンドバギーが壊れたりするたびに、よくキャンプをしたものだ。……蜃気楼やディーゼル機関車に襲われたりと散々だったが」
仗助「……どういう事っすか?それ?」
承太郎「いや……話すと長くなるのでな。今はよそう」
仗助「?……はぁ。それじゃあ、何で今回のキャンプは……?」
承太郎「……『吸血鬼』の事だ」
仗助「!!」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
承太郎「未だ、奴らの動きは把握出来ていない。何処に隠れ潜んでいるかもな。しかし……この町の何処かにいるのは確実だ。フーゴとシーラEの二人は、吸血鬼メイの下僕であるチェスタと接触をした」
仗助「……」
承太郎「……犠牲者を出さないためには、誰かが町を守らねえとならないんでな。仗助、お前たちと一緒におれまで町を出ては危ないだろう」
仗助「そ、そういう事ならおれも――」
承太郎「その必要はない」
仗助「一緒にっ……え?」
承太郎「これはお前にしか出来ない事なのだ。……静を、じじいの娘であり、お前の妹である彼女を、『幸せ』にするっていうのはな。……兄であるお前にしか出来ないのだ」
仗助「……」
承太郎「町の事なら、おれに任せておけ。……お前は精一杯、静を幸せにしてやってくれ。それが……じじいの望みでもある」
仗助「……」
承太郎「……わかったな?」
仗助「はあ……けど、自信はねェーっすよ?ただ、キャンプに行くだけで……」
承太郎「それでいい。……きっと、静も喜ぶだろう」
仗助「……そういう事なら……ハイ」
承太郎「……キャンプ、か……」
仗助「?……どうかしたっすか?」
承太郎「いや……」
仗助「?」
承太郎「……おれは、娘と……そのような家族の触れ合いを……した事が無い、と……思ってな」
仗助「……」
承太郎「……何でもねーぜ、仗助。ただの、独り言だ」
仗助「……何でもなくねえっすよ」
承太郎「ム……」
仗助「今からでも遅くねェーっすよ、承太郎さん。離れ離れで育めなかった『家族の愛』ってェーヤツは、すぐに築きあげる事が出来るモンなんスよッ!おれ、静と一緒に暮らしてよーくわかりましたッ!」
承太郎「……うむ……」
仗助「徐倫ちゃん……でしたっけ?この件が一段落したら、連れてってやったらどうっすか?なんなら、おれ達と一緒に!」
承太郎「……そうだな……」
承太郎「…………楽しみだ」
…………
…………
『カフェ・ドゥ・マゴ』テラス――
シーラE「キャンプ、ねえ……なかなか面白そうな事言うじゃあないの」カリカリカリ
フーゴ「……」カリカリカリ
静「はい。なので、その……お二人も、どうかな?って思ったんですけど……」
シーラE「何?」カリカリカリ
フーゴ「……」カリカリカリ
静「……もしかして、あの……忙しい、ですか?」
シーラE「んー……そうかも。フーゴ、そこの地図取って」
フーゴ「どれ?」
シーラE「杜王町北部の。昨日周った所」
フーゴ「ああ、これかい」スッ
シーラE「……フーゴ、昨日探索した所、書いてないわよ」
フーゴ「あー……すまない。こっちのデータで精一杯で」
シーラE「あたしの『ヴードゥー・チャイルド』で得た情報の?」
フーゴ「いや、そっちじゃなくって、行動パターンの」
シーラE「……それ意味ある?ランダム性が強いと思うんだけど……」
フーゴ「しかし、前回ヤツと出会えたのはこのデータの通り動いたからで、それから先犠牲者は――」
シーラE「けど探索マップでは、そっちのデータよりもこっちの……あれ、南部の地図は?」
フーゴ「それはさっき君が――」
シーラE「だからこれによると――」
ワイノワイノ……
静「……あ、あのォ~~……えっと?」オソルオソル
シーラE「あ、悪いわね静ちゃん。ちょっと最近、いい所まで行っててさ。……もう少しで完璧に追い詰める事が出来そうなのよ」
静「……メイの事、ですか」
フーゴ「うーん、どちらかというとその手下の、チェスタの方かな」
静「……」
シーラE「そういう訳だから……その、キャンプだっけ?あたし達は行けそうに無いわ。あまり他の『スタンド使い』の方たちと仲良い訳でもないしね」
静「あ、あのっ!」
フーゴ「?」
静「そういう訳でしたら……あたしも、その……キャンプ行くのやめて、追い詰めるの……協力したいんですけど」
フーゴ「……」
シーラE「……」
静「……ダメ、ですかね?」
フーゴ「……シーラE?」
シーラE「……ハァ~~……」
シーラE「却下。ハッキリ言って、邪魔だわ」ズパッ
静「う……そ、そうですか……」ガックリ
フーゴ「シーラE、なにもそんな……」
シーラE「うるさいフーゴ。あのね……」
スッ
シーラE「こうでも言わなきゃ、この娘は絶対こっち付いてくるでしょーが!スタンド使いとはいえ、一般の女子高生をこんな危険な事件に巻き込める?」ヒソヒソ
フーゴ「しかし……彼女、ショックを受けてるようだけど?」ヒソヒソ
シーラE「……」チラッ
静「……」ズーン……
シーラE「……ハァ~~~~っ……面倒くさいわね、アンタ」
シーラE「あのね、こんな事言うのもアレだけど……あたし達はアンタくらいの年の頃には、もう危険な非日常の中にいたの」
静「……『非日常』?」
シーラE「殺して、殺されて、銃を撃って、撃たれて、夜の闇の中命の取り合いをする……そんな世界よ」
静「!……ぎゃ、『ギャング』の……」ゴクリ
シーラE「あたしもこいつも、かなりの修羅場くぐってる。アンタとは違うのよ。住む世界がね……」
フーゴ「……」
静「……」
シーラE「……そんな訳だから、さ……」
シーラE「さっきのアンタの……幸せな日常の台詞は、すっごい嬉しかった。これは本当よ」
静「!……それなら……」
シーラE「だけど、あたし達は行く事が出来ない。あたし達は非日常の存在だから。……そして、そんな非日常の世界を生きてきたからこそ……」
静「?」
シーラE「……アンタには、日常の幸せな世界で生きてもらいたいのよ。あたしが望んでも生きる事が出来なかった世界でね」
静「!……」
シーラE「……行ってきな。楽しみなんでしょう?キャンプ。……その間この町は、アンタの代わりにあたし達が守るわ」
フーゴ「……ああ」
静「……すみません」ペコリ
シーラE「謝ってほしくてやってる訳じゃあないわよ」
静「じゃあ……ありがとうございます」ペコリ
シーラE「……礼だって欲しくないわね。……まっ」
シーラE「……悪い気は、しないけどさ」
フーゴ「……」ニコリ
…………
…………
東方家――
静「……」キュッ!
ガチャッ
仗助「ただいまァ~~っとォ……おっ、静。帰ってたか」
静「ん……おかえり、兄さん」
仗助「キャンプの日時だけどよォー……って、何だこりゃあ?」
静「んー?」
キュウッ!
ズラッ!
仗助「……『てるてる坊主』かよォ~~……ちょっと作りすぎなんじゃあねえのか?お前年いくつだよ」
静「16歳」
仗助「……」
静「……うーん、もう一個作ろうかな」
仗助「……静?……調子悪いのか?腹でも痛いのか?」
静「別にィ。……ただ、晴れたらいいなって、ね」
仗助「……キャンプの事か?」
静「うん」イソイソ
仗助「気が早ェーぜおめー。まだ日時も詳しく決まってねえだろうがよー」
静「うん。けどさ……なんか、失敗したくなくって」
仗助「……どうかしたかよ?」
静「……あのね、兄さん」
仗助「おう」
静「……あたしが幸せに生きる事でさ、誰かが幸せになる事だって……あるんじゃあないかな、って……」
仗助「……」
静「……思うんだけど……違う、かな?」
仗助「……いや……」
仗助「少なくともよーっ、二人は……喜ぶ奴がいる事は確実だぜ」
静「二人?」
仗助「……おれと、天国にいるじじいだよ」
静「……そっか……」ニコッ
静「絶対、楽しいキャンプにしようね。兄さん」
仗助「当たり前だぜ、静。……テント張るの手伝えよな」
静「当然だっての。この静様をナメないでよ?兄さんなんかより万倍上手いんだから」
仗助「はいはいそうだなァ~~。当日を楽しみにしとくぜッ」
静「うん。……ふふっ、本当に、そう……」
静「キャンプが楽しみだわ」
…………
…………
チュンチュン……
ゴトッ!
仗助「肉良ーし、野菜良ーし、米良ーし。準備万端だぜェ~~ッ」ガチャッ
クルッ
仗助「静ァー。いつまでグズグズやってんだァ?そろそろ時間だぜーッ」
静「ちょ、ちょっと待って兄さん!まだ準備出来てないってのーッ!」
ガタガタゴトンッ!
仗助「……おめーなーッ……」ハァーッ
仗助「今からキャンプだっつーのにッ!なんでこんな大量の荷物になるんだァ?着替えありゃあそれでいいだろうがッ!ボストンバッグにキャリーにポシェットぉ~~っ?海外行くのでもこんな荷物なんねーぞッ!」
静「もしもの事あったらどうすんのよッ!準備はしすぎといて損はないわッ!」
仗助「『もしも』ォォ~~っ??」
静「もしも変なモン食ってお腹こわしたら?ハイ!胃薬ィーッ!もしも急に小腹が空いたら?ハイ!ポテトチップスぅーッ!コンソメね」
仗助「……こっちのカバンは?」ガサッ
静「あ、それは夜テントで遊ぶゲーム」
仗助「……カバン一つでか?」
静「?……うん」
仗助「……」ジジーッ
仗助「……えっと……『トランプ』に『UNO』に『ジェンガ』に……『モノポリー』に『人生ゲーム』に『マジック・ザ・ギャザリング』?……おめーは一晩にどんッだけゲームする気だコラァッ!分身でも出来んのかよッ!」
静「こんだけあったらどれかは当たるでしょ~~ッ。那由他ちゃんの嫌いなゲームあったらどうするの?もしも死ぬほどトランプ嫌いだったら?」
仗助「ねえよ!ありえねえよ!トランプ一つありゃあ何でも出来るだろうが。他のは置いてけッ!何だこの気持ち悪いイラストのカードは」
静「兄さんアメーボイド知らないの?おっくれってるゥー」
ワイワイ……
双馬「……ハァ……」
双馬「僕は来る所を間違えてしまったのかな?……たしか、朝7時にここに集合だったはず、だけど……」
ジャン!
静「お、双馬。おはよっス」
双馬「おはよう。……おい、一泊二日なんだよな?何だその荷物……お前一人は山に永住するのか?」
静「違うっつーの。何よみんなして……っていうか、双馬。その格好……」
双馬「何だ」
静「……フーン、なんかアンタが学生服以外の服着てるの見るの、初めてだわ。結構新鮮。っていうか似合うじゃあないの」
双馬「……土で学生服を汚したくないだけだ。フン……おい、来るのは僕だけなのか?」
静「もっと来るわよ。今に……あ」
ブゥーン……
キイッ
那由他「お姉さまァーッ!」バタンッ!
静「那由他ちゃん。おはよーっ」
那由他「おはようございます。お兄さまも!うふふ……あたし、今日が楽しみでたのしみで、昨日はよく眠れませんでした!」
静「奇遇ねー那由他ちゃん。あたしもよ」
双馬「ガキめ……」
バタンッ
億泰「おい那由他ァ~~。いきなり車の外に出るんじゃあねえよ。危ねえだろう?」
仗助「おう億泰。遅かったな?」
億泰「おお、ちょっと康一と早人を拾ってたからなァー」
バタンッ
康一「おはよう、仗助くん」
早人「おはようございます」ペコリ
仗助「おう、二人とも。早人……なんか久しぶりだなーッ。元気そうじゃあねえか」
早人「ええ。おかげ様で……」
ブゥゥーン……キキッ!
噴上「おっと……遅れちまったか?」ガタッ
億泰「いや、ナイスタイミングだぜェ~~裕也ッ」
仗助「これで全員か?ジャンケン小僧の大柳は?」
早人「誘ったんですけど、サッカー部の指導が忙しいって断られました」
億泰「フーン……しかし、裕也に康一が来るのはちょいと意外だったな~~っ。てっきりカミさんが心配で来ねえかと思ってたが」
康一「うん、ぼくとしては由花子さんのそばにずっといたかったんだけど、たまには気晴らしに旅行でも行って来いって言われちゃって……」
噴上「おれも似たようなもんだ。アケミのやろー変な気ィ回しやがって……ま、何かあったらいつでも駆けつけられるよう、最速のバイク持ってきたがな」
億泰「おめーこのバイクでキャンプ場まで行く気かよ?結構距離あるぜェ~~?」
噴上「んなもん、愛だ。愛」
仗助「しかし、裕也はともかく康一は……昔は由花子の方がベッタリだったっつーのに、人間変わるモンだよなァ~~ッ」
康一「もう、やめてよ仗助くん!昔の話はさ」テレテレ
億泰「そういやそうだったなァーッ。高校生の頃なんざ康一のやつ……」
康一「だから、やめてってばーっ!」
ワイワイ……
早人「……あ、おはよう静さん。と、双馬くん……だっけ?中等部の」
双馬「……おはようございます」ペコリ
静「うぇ、早人先生も来るの?なんかそれって気ィ休まらないっつうか、監視されてるような気がするっつうか……」
早人「アハハ、今回ぼくは先生としてではなく、仗助さん達の友達として参加してるだけだよ。別にあーだこーだ言うつもりは無いから、安心して」
静「そういう事ならいいんですけど……ホントに何も言わない?マジで?……成績影響しないよね?」
早人「……悪い事はやめてよ?」
静「それに……ふーん……」
噴上「……な、何だ?静ちゃん」ドキドキ
静「いやいや。裕也さんも来るんだ、って思って」
噴上「ま、まあな。仗助達とは古い付き合いだし……」
静「いや~~。いーい旅になりそうね、これは」
噴上「?……えーっと……そいつはどういう意味だろうか……?」
静「……100万」ボソッ
噴上「親切丁寧にエスコートさせていただきます、静お嬢様ッ」ペコオーッ!
静「むふふ♪お嬢様はやめてよ~~裕也さんったら!」
仗助「……何やってんだ?おめーら……」
スタスタスタ……
仗助「……ん?」
ザッ
双馬「……おはようございます、東方仗……いえ、仗助さん」
仗助「……お、おォ。……おはよう」
双馬「……」
仗助「……あー、その……何だ。……えっと……」
双馬「……」
仗助「……おめーの、その……父親の事は……その……おれも思う所はあって……だから、おれ……ずっと謝らないと、って……」
双馬「……いいんです」
仗助「……え?」
双馬「今回、僕はその事を蒸し返しに来た訳じゃあない。……水に流して、なんて都合の良い事は言わないし、僕は決して忘れはしません。あんたに対する恨みは。……けど……」
仗助「……」
双馬「……今回のキャンプは……楽しいキャンプにしましょう」
仗助「!……おお、そうだな……」
双馬「……はい」
億泰「裕也、荷持はこっち積んでやるぜ。これ炭か?」
裕也「おう。持ってくるのは苦労したぜ」
仗助「えーっと……これで全員か?」
静「あ、ちょっと待って兄さん」
仗助「あん?」
静「もう一人、その……そこの電柱の影にいて」
仗助「?」
クルッ
純「ゲッ」チラリ
静「純、何してんの?置いてくわよ?」
純「う……うっせェーなーッ!別に私は、そのッ……キャンプに参加しに来た訳じゃあなくって!そのッ……違ェーからなァーッ!」
静「しっかりリュック持ってきてんじゃん。あ、意外とコンパクト」
純「だから、違ッ……私はなッ!肉!肉食いに来たんだよッ!だから、おめーと仲良しこよしでキャンプするつもりなんて全然無ェーッ!わかったかこのスケスケスケベ人間!」
静「んなッ!スケるのとスケベは関係無いでしょーがッ!っていうか純の方がスケベじゃんかさーッ!」
純「うっせ、うっせえ!何よ、ったく…………二人っきりかと思ったのに、こんな人いるとか聞いてねえっつうの……」ボソッ
静「?……どうかした?」
純「何でもねーッ!ほら、さっさと肉食う場所まで連れてけッ!」
早人「あれ、吉岡純さん?キャンプに来るんだ?」
純「……何でセンコーまでいるんだよ……クソ……」ブツブツ
早人「へぇー。静さんと仲良いんだね?」
純「どこが!?早人先生それどこ見て言ってンのッ!?静ァ、こいつバッカなんじゃあないのーッ!?」
静「早人先生、純のヤツ照れ屋なんでやめてあげて下さい」ペコリ
早人「あはは、そうみたいだね。うん」
純「ちーがーうーッ!静ァ!殴るわよッこの!」
静「はいはい殴るのはやめてね。……あ、兄さん。この子ダチの純」
純「だからダチなんかじゃッ……!」
仗助「おお、よろしくなーっとォ」
純「……よ、よろしくおねがいします……?」マジマジ
仗助「?……どうかしたか?」
純「い、いえ……その……」マジマジ
静「?」
純「……その『髪型』……」
仗助「……」ピクン
静「!!――っげェー似合ってるわよねッ!?純ッ!!?」ガシイッ!
純「んわっ!?……え?」
静「ね?兄さんの髪型、今日もバッチリ決まっててグーよね、グー!いやーイカしてるわ……妹のあたしも誇らしく思う。ウンウン」
仗助「……そうか?まあそれならいいんだけどよォ~~」
純「……静、いきなり何?ちょっと痛いんだけど」ヒソヒソ
静「純、ちょっとこっち来て」ヒソヒソ
純「は?なんで?」ヒソヒソ
静「いいから来るッ!」ヒソヒソ
…………
…………
静「……あのね、兄さんの髪型をケナすのはマジ禁止だからね?」
純「……はあ?別にケナすつもりなんか無いっつうの。……まあ、ちょっとフルくせー髪型かな?とは思ったけど……」
静「だから、それが禁句なんだってのーッ!さすがに兄さんも初対面の女の子をボコボコにするようなマネはしないけど、こっから先キャンプがずーっと重い空気に支配されるわよ?」
純「……そ、そんな怒るの?アンタの兄さん……髪バカにされただけで?」
静「妹のあたしだったら躊躇なく殴るわね。今アンタ本気でヤバかったんだから……」
純「だから、私はバカにするつもりは無かったんだって!」
静「じゃあ、何言おうとしたの?」
純「別に……ただ……」
純「うちの父さんがさ、よく酔ったら『リーゼントのせいで人生ムチャクチャにされた』って愚痴ってたのよ。……それ聞いてたから、なんかアンタの兄さんの髪型見て、思い出しただけ」
静「……」
純「……一応聞くけど……関係無いわよね?その……うちの父親と」
静「無いでしょ。さすがに……っていうか、アンタのお父さん、リーゼントに何されたの?」
純「……取り引きを無茶苦茶にされたって」
静「兄さんが意味も無くそんな事しねえって。もう……」
純「……それならいいんだけどさあ……なんか……うん……」
…………
…………
仗助「話は終わったのか?何だいきなり、二人してコソコソしやがって……」
静「な、なんでもなぁ~~いっ!全然なんでも!ねえ、純?」
純「はあ?なんでそこで私に……まあ、その、ハイ。なんでもないデス……」
億泰「おい、そろそろ出発しようぜーッ。このままトロトロしてたらキャンプ場着くの夜になっちまうぜ」
康一「そうだね。ぼくと早人くんは億泰くんの車でいいのかな?」
那由他「あ、パパッ!あたしお兄さまとお姉さまと同じおくるまがいいっ!」ピョンピョンッ
仗助「じゃあ~~子供連中はおれの車乗せるぜ」
静「大人のレディーなんですけど」
純「席どうすんの?私助手席がいいんだけど」
双馬「勘弁してくれ。なんで僕が後ろの席でスシ詰めにされなきゃあならないんだ」
純「はあ?年功序列ってあるでしょーが。譲りなさいよメガネ」
双馬「双葉双馬だ。年下のワガママは聞くもんだぞ?年増」
純「吉岡純よ。ムカつくガキね……静の恋人?お互い恋人の趣味悪いわねーッ」
静・双馬「「違うッ!」」
那由他「静お姉さま、純お姉さま。あたしお二人の間がいいですッ!」
静「決定ね。純左でいい?」
純「ちょっと、今の一言で決定なの?私さァー結構車酔いするタイプだから、マジで助手席が……」
那由他「イヤ、ですか?……純お姉さま?」ウルウル
純「うッ……嫌じゃあないけど……その……まあいいんだけど……」
那由他「やったァ!お二人の、あいだぁ~~っ♪」クルクルッ
静「那由他ちゃん、泣き落としを覚えたのね……将来ワルい女になるわよ」
純「……っていうか、『お姉さま』ってやめてよ。なんかゾワゾワする……」
バタンッ!
双馬「よろしくお願いします、仗助さん」
仗助「おう、よろしくなァーッ」
双馬「……安全運転で頼みますね」
仗助「おう。……それで、悪いんだが……」
双馬「何です?」
ドサッ!
双馬「ぐふっ!?」
仗助「その地図帳見て、ナビゲーションして欲しいんだよ。この車ナビついてなくってよォ~~」
双馬「……僕が、ですか?」
仗助「おう。いつも遠出する時は静がやってくれてんだ。まあ今回は前に億泰の車あるから、大丈夫だろうけど」
双馬「……今どき、スマホとかでナビくらい」
仗助「山ん中走るから、最悪電波通じねえぞ」
双馬「……静、今から代われないか?」クルッ
静「え?いいけど……代わりに那由他ちゃんと遊んでくれるの?」ヨシヨシ
那由他「え?」キラキラッ☆
双馬「……目的地何処です?」
仗助「S市から離れた所のだな――……」
仗助「よーしッ、出発すんぜーッ!シートベルト閉めたか?大丈夫だなーッ?」
那由他「はーいッ!」
静「出発進こーうッ!YEAAAAAAAAA!!」
純「テンション高すぎるわよ……ハァ」
ブウウーッ……
双馬「あ、仗助さん、道逆です」
仗助「えっ?」
…………
…………
ブゥゥーン……
那由他「あっ!お姉さま、海ですよ海ィッ!」グイッ!
静「イタタ、那由他ちゃんいきなり身を乗り出すのやめてよ……しかし、フーン。海ねぇ……」
那由他「綺麗ですよね、ね!」
静「いや、あたし実は全然海でテンションあがんなくてさ。てゆーかァァ~~『水』が溜まってる場所とかチョー苦手。『水槽』とか『池』とか『プール』とか『水族館』とかァァァー」
純「プ!アンタ、水なんがか怖いの?息出来ないからお水に顔つけられませーんって?」
静「水以外にも、魚とか海藻とかカニとかエビとかも結構苦手よ」
純「そーいう事言ってんじゃあねーぞまったくよォ――」
静「こーいう事言ったら承太郎さんに怒られるかもだけど、赤ん坊の時に溺れたせいで、マジにトラウマなのよ。魚や海が好きな人間って、アンビリーバボー!信じらんない!水族館とかバカ高いカネ払って魚なんか見て、何が楽しいのよ……那由他ちゃん席変わる?」
純「意外とガキね、あんた……そういや体育の水泳の時間、ずっと見学してたっけ」
静「他の競技でグンバツの成績取ってやったけどねーッ。見学分は余裕で取り返したわよ」
純「泳ぐのなんか簡単じゃあないの。グーッって息止めてズパーッて身体伸ばしてバシャアーッって足動かしゃあいいでしょう?ちょっと海飛び込んでこいよ」
静「いやもうマジ無理だから。海流も速いからきっと流されるだろうし~~。来週の朝はハワイ沖かなあ~~」
純「……」
那由他「来週ハワイかぁ……」
バァァ――ァッ……
双馬「……」
仗助「双馬ァ~~。おめーはどっちのキャラが好きだよッ?」
双馬「?……」
クマちゃん『……』
戦闘ロボ『……』
仗助「クマちゃんと戦闘ロボ、どっちが好きだ?」
双馬「……どっちも好きじゃあないですね。こんなガキっぽいの」
仗助「じゃあおめーは『マジメちゃん』だなッ!」
双馬「……」ジロリ
仗助「おいおい、んなこえー顔する事ァねーだろッ?今のはただの心理テストってヤツだよ。ホラ!自覚はなくともおめーがどういう人間かある程度推測できる……」
双馬「……あのですね、仗助さん。何か……『勘違い』しているようですから、言っておきますが」
仗助「?」ブゥゥーン
双馬「今回のキャンプ……僕は精一杯、楽しいキャンプとなるよう努力するつもり……ですが。……貴方に対する恨みは消えた訳では無く――」
静「兄さん、双馬ァーッ。キャラメル食べる?」ヒョコッ!
双馬「…………」
仗助「おっ、ありがとよーッ静。けど今手ェ離せねえからよ。口に放り込んでくれ」
静「そんくらい自分でやれってのーッ」ヒョイッ
仗助「ングッ……ありがとう。いや、ありがとう」モグモグ
双馬「……静、お前……お前なあ……」
静「何?双馬。もしかしてあめちゃんの方がいいの?」
双馬「もういい……キャラメルで構わない。それでいい……もうどうでもいい……」ブツブツ
静「?……変なの」
ァァァ――ァァ……
静「んーッ!車で遠出するなんて久しぶりだけど、こうして流れる景色見てたら気持ちいいわねーッ」
那由他「そうですわね、お姉さま」
純「フン!……何がいいのよ、こんなの……」ムスッ
静「純、テンション低いわよ。もっとアゲアゲでいかないとォーッ!イェイッ♡!」
純「……こうして、車乗ってぼーっとしてる時間あったら……その時間に勉強していい大学行くのも、カネ稼ぐのも本読んで知識蓄えるのも出来るじゃあないの。……私、旅行が……っていうか、旅行の移動時間が嫌いなのよ」
静「……えーっと……」
双馬「……本で読むだけでは得られない経験というのもあるさ」
純「たとえそんな経験があろうとも、私にはいらねーッ。ハァ~~……はやく到着しないかな」ブスッ
静「……純」
純「何よ。私は肉食いに来ただけであって!それ以外の事を楽しむようなヤツじゃあねーのよーッ」
静「……」
純「……」
静「……『しりとり』しない?」
双馬「……」
那由他「……?」
仗助「……ん?」
純「……あァ?」
静「旅行の移動時間、退屈な時間ンーッ……楽しいゲームをしたら一瞬!でしょっ?ハイ!静ちゃん天才ィィィ――ッ!!♡」
双馬「……この流れでか。この空気でそんな事言うのか、お前はッ!」
純「いいよーッ」
双馬「い――いのかよォォ――ッお前もォォ――ッッ!」
純「それで?……『ルール』は……どうするの?」
静「?……『ルール』?」
純「使っていいのは単語や物・人の名前、地名とかでェェー、文章や台詞やことわざ・四字熟語は無し。一人持ち時間は『10秒』で、自分の番が周ってから10秒を超えたら負け……って事でいい?もっと詳しくルール決めとく?」
静「い、いや……そのくらいで」
純「で?……『賭け金』はいくら?」
静「……はあァッ?」
静「純ッ!!この『賭けジャンキー』がッ!んなのナシに決まってんでしょーがーッ!!」
純「はああああッ!!?んじゃあそんなゲームしても何の意味も無いじゃあない!くっだらねー事言ってんじゃあねーぞォォ――ッ!!」
静「アンタもうそーいうの足洗うんじゃあなかったの?この世の中はね~~意味の無い事ばっかで埋め尽くされてんのよ。身動き出来なくてエコノミー症候群になっちまうくらいにねーッ!」
那由他「エコノミーなんだぁ……」
純「……なるほど。そんな意味の無い事に慣れるためのお勉強、って事?」
静「そこまで深くは言ってない」
純「いいわよ……やってやる。私くらいになると『しりとり』だって圧勝よ」
静「オーケー、那由他ちゃんもやるわよね?」
那由他「もちろんですッ」
静「双馬と兄さんは?」
双馬「地図帳とにらめっこするので忙しい」
仗助「おめーらのシリがふきトんでもいいならやるけどよ~~」
静「兄さん、安全運転でよろしく」ビッ
純「じゃあ、しりとりの『り』から……『リンゴ』」
那由他「『ゴリラ』」
静「『ラッパ』」
純「パ……『パイ』」
那由他「い?……『家』」
静「えー……『エイジャの赤石』」
純「き……ちょっと待て」
純「静、あんた反則」
那由他「イエロー?レッド?」
純「ギンギンのレッドよ」
静「なんでよッ!?」
純「聞いた事がねーわよッ『えーじゃのせきせき』なんてッ!何?宝石の名前?言っとくけど私そーいうのは詳しいんだからな」
静「あ、知らない?マジに?ホントに知らないの?フーン……『エイジャの赤石』を知らないなんて、可哀想……かつてこの世界を救った大英雄のお話を知らないのね」
純「……」
静「……聞きたい?興味ある?」
純「別に……聞きたくないわよ。そんなの」
仗助「おれは興味あるぜーッ。それはアレだろ?じじいの話だろ?おれ詳しく聞いた事がねえんだよな」
静「ふふふ、しっかたないわねーッ。じゃあ~~この静ちゃんが!親切丁寧に教えてあげるわッ!あたしのおじいちゃん……父ジョセフ・ジョースターが、若かりし頃歴史の影でどのような活躍をしたのかッ!」
双馬「……へえ……」
純「……」ピクピクッ
那由他「ど、どのような話なのですか?お姉さまッ!」
静「そうね……まず、おじいちゃんがアメリカで警察をブチのめした話なんだけど」
純「静、その話本当に大丈夫なんだろうな?」
……ゥゥーン……
キキッ!
仗助「よーし、着いたぜェ~~ッ……っとォ」ガチャッ
双馬「……地図通りならここで合ってますが……億泰さんの車、無いですね」ガチャッ
ガチャッ!
純「だから、オメーの言う事はさっぱりわかんねーわよッボケーッ。何よ、柱の男って?」
静「さっきから言ってるでしょ?そいつが全部悪いんだっての。吸血鬼生み出して食うのよ」
純「それがマジだったら今すぐここに来て欲しいわね。全部解決すっからよーッ。メイ食ってもらおうぜッ!」
静「……宇宙に飛んでったらしいけど、降ってくるかな?」
那由他「降って来たら大変ですね……地面に穴あいちゃう」
双馬「……何の話だ、それ」
噴上「おう、遅かったな仗助。受付終わらせといたぞ」テクテク
仗助「おお、裕也ァー。ありがとよーッ」
噴上「キャンプ場所はあっちだ。Aの6……ん?億泰達はどうした?」
仗助「それが、まだ来てないみてえなんだよ。きっともうすぐ……」
……ゥゥー……
静「あ、来た」
ガチャッ!
億泰「おう、遅れちまったな。すまねーッ」バタンッ
仗助「どうしたんだ?一体よ~~ッ」
康一「それが……早人くんが車酔いしちゃって。コンビニで休憩してたんだ」バタッ
早人「うう……すみません……オゲッ」ヨロッ
純「アハハハハハハ!早人先生なっさけなーい♡すっかりグロッキーじゃん!」
早人「あまり得意じゃあないんだ、乗り物って……車でこんな長距離移動するの、小学校の社会見学以来だし」
純「それにしてもこんなヨロヨロなるなんて……ププ!笑いが止まんないわ!」
静「……アンタも車酔いするタイプなんでしょーがッ純~~ッ」
双馬「……酔い止め、一応ありますけど……もう遅いですよね」
早人「いや、ありがとう。いただくよ……オエエ」グッタリ
那由他「……あっ♡お姉さま、来てくださいッ!」
静「え?」
タタッ!
バァァアアア……
那由他「綺麗……大きな湖ですね……!」
静「……うん、そうね……うん……」
双馬「……静、お前少しイヤそうな顔してないか?おい?」
静「そ、そんな事無いわよォォ~~ッ?あたしハッピー!キャッ♡」
純「……スーッ……ハーッ……空気が美味しいわね……」
双馬「え?」クルッ
純「……なんでもねーわよックソメガネ。むこう向いてろッ!」
噴上「おいお前ら、キャンプ場所はこっちだぞ」
仗助「道具運ぶん手伝えーッ」
4人「「「「はーい」」」」タタッ
ドッサアッ!
静「ふー……肩コっちゃったわ」コキコキ
純「ざけんなッオメー『スタンド』使ったろ」
早人「……ううう……」ウゲッ
那由他「せんせい、大丈夫ですか?お水飲みます?」
早人「いや、大丈夫。ありがとう……」ヨロッ
仗助「しっかし広いキャンプ場だぜ。こんな所初めてかもな~~ッ」
康一「まず、何をすればいいの?億泰くん」
億泰「決まってるだろーがよーッ。キャンプといったらまずテントだぜッ!次にタープゥ~~ッ!」
噴上「?……テントはわかるが、タープ?なんだそりゃあ?」
双馬「……日差しや雨を防ぐための、簡易な屋根のようなものです。8月の日差しは厳しいですからね……ノンビリするにはタープの下がいいでしょう」
億泰「おッ!よくわかってんじゃあねーかッ!オメーもしかしてアウトドア好きかぁ~~ッ?見た目はそうじゃあねーけどよッ!ギャハハハ!」
双馬「……常識の範囲内です」クイッ
噴上「じゃあ手分けして張っていこうぜ。これがテントか?」ガサッ
純「オッサン、張り方わかるの?」
噴上「いや、わかんねえが……なあ、お兄さんと呼んでくれねえか?地味に傷つくぜ……」
純「特別に『パパ♡』って呼んであげてもいいけど?」
静「純、那由他ちゃんいるから」
……カンカンカンカン……
億泰「次に、この位置にペグ……この杭を打ってよ~~ッ」
仗助「なんだ、結構簡単じゃあねーか。用はこの布を杭で引っ張りゃあいいんだろ?」
億泰「綺麗~~ィに張るにゃあチョイとコツがいるんだよ、コツが~~ッ」
那由他「パパ、あたしもお手伝いしたいですっ!」ピョンピョン
億泰「お?そうか?じゃあこのハンマーを……注意して持てよ。危ないからなーッ」
双馬「……」カンカンカン
静「双馬、あたしにもやらせて!ね、ね?」
双馬「嫌だよ。お前がやるとズレるだろ」
静「やってみたいのよ!やらせて!やらせてくれよォ!」
純「自ら望んで肉体労働したいなんて、アンタ物好きね……私はパスよ、パス」
静「だって!なんか面白そうじゃあないのよーッ!カンカンって叩いて!」
仗助「確かになァ~~。俺もやってみてえが、ハンマーの数が……」
静「!……静ちゃん、閃いちゃったわ!」ピコーン!
仗助「あン?」
静「ハンマーの数が足りなくっても……『ワイルド・ハニー』でッ!」ギャン!
ワイルド・ハニー『ドラア!!』
ドッガア!
シュウウ……!
双馬「……」
静「ねッ!どーよコレッ!?これならお手伝い出来るわよッ?静ちゃん天才!っていうか健気ねェ~~そこまでして手伝おうなんて……泣ける」
双馬「……おい、静」
静「あ!お礼ならいらないわよ双馬ッ!あたしが自主的にやっただけだしィ~~。っていうかパワー型じゃあない双馬や純の分まで、あたしが頑張らないとねッ!ウフフ♪」
双馬「……ペグ打つ場所が違う」
静「……えっ」
双馬「……」
静「……」
仗助「……おい、抜けるのか?この杭……深々と刺さってんぜ」
…………
…………
ガサアッ!
億泰「後はここを引っ掛けてェ……っとォ。よし!完成だぜェ~~ッ!」
バーン!
那由他「おーっ!すごい、すごーい!」ピョンピョン
純「へえ、結構本格的。こっちのちょっと小さいのが女性用?」
億泰「おう。あっちの大きい方が男連中のだ。双馬ァ~~。オメーも当然向こうだからよーッ。夜は仲良くしようぜ~~ッ」
双馬「……イビキとかやめて下さいよ?僕、そういうの苦手なんで」
静「よーし!では早速……」ヂーッ!
静「1番、静・ジョースター!テントの寝心地を確かめさせていただきまーすッ!」
ピョーンッ!
億泰「あ、静」
静「え?」
ゴンッ!!
静「~~!!……!!~~!!」ゴロゴロ!
億泰「……地面にシート敷いただけだからよ~~ッ。下に石とかあったら危険だって言いたかったんだが……」
静「……もっと早く言ってよッ!!」ガバッ!
純「アーハハハハハハハハハ!!!ギャハハハハハハハ!!」
静「純うっさい!笑いすぎだってのッボゲッ!」
双馬「おい、静見てみろ。テントの下にこんな大きな石があったんだが……」ガサッ
静「?……何?」
双馬「……石まで笑ってるぞ。大爆笑だ。ほら、ここの文章……笑いで埋め尽くされてる」ペラッ
静「どっか遠くに捨ててきてッ!あたしの半径1キロ以内に近づけんなーッ!!」
ギャーギャー!……
噴上「フーッ。何にせよ一段落……って所か」ガタッ
仗助「お、裕也その椅子どうした?」
噴上「億泰の車に積んでた。人数分出してるぜ……そこ置いてる」
康一「よいしょっと。……早人くん、落ち着いた?もしあれだったら、テントで寝ておく?」
早人「いえ、大丈夫です。もう吐き気は治まりました……ふう」
静「ちょっと兄さん、椅子座って休憩してる場合?見てよ!テントよテント!あたしが立てた!」
双馬「……お前は邪魔ばかりしてただろうが」
純「ホントそうよね。お邪魔虫よね。マジありえねーッ。ギーッ!って感じ」
那由他「……純さんは何もしてなかったですけど」
仗助「おう、すげーすげーッ。今夜は気持ちよく寝られそうだな……ジュース飲むか?」
静「今はそれどころじゃあねーってのッ!」
静「何てったって、『杜王町探検隊』の本部基地が完成したんだからね……!」
双馬「おい、何だそれは。初めて聞いたぞ」
静「え?ダメ?杜王町探検隊。良いネーミングじゃあない?これから野山を探検して遊びつくすんだから、こーいうチーム名とかアリじゃあない?」
純「アリかナシかで言うとナシね……ダサい」
双馬「それに、その名前だと杜王町を探検するみたいだ」
静「うっせーわねーッ。那由他ちゃんは良いと思うわよねッ?」
那由他「えッ!?……す、すごく素敵だと思いますわ……」
静「ホラ!ね?」
純「思いっきり言わせてんじゃあないの……」
双馬「で?何て言ったか?……本部……?」
静「本部基地、ベースキャンプよッ!ここを拠点として、我ら『杜王町探検隊』は行動を開始するッ!いいわねッ?おおーッ!!」グオッ!
那由他「お、おー!」グイッ
純「小学生かッオメーは」
億泰「いいじゃあねえか。面白そうでよ~~ッ」
静「むふふ……こういうの、好きだったのよねーッ。おじいちゃんから冒険話聞いて育ったから、子供ん頃は冒険ごっこばかりしてたわ……懐かしい」
双馬「……フーン……」
静「と、言うわけで……早速探検に行ってくるわね、兄さん……いえ、指令ッ!」ビシッ!
仗助「おれが指令かよ。悪い響きじゃあねーけどよ~~ッ」
億泰「あ、待て静。探検行く前によーッ。やっておく事……あるんじゃあねえか?」
静「?……やっておく事……ウンコ?」
億泰「腹ごしらえだよッ腹ごしらえーッ!今からメシを作るぜッオメーらよーッ!!」
静「メシ……って、料理?」
億泰「キャンプん時の昼飯と言ったらッ!『カレー』だぜェ~~ッ!全員で協力して!とびっきり美味えカレー作ってもらうからな~~ッ!!」
ドーン!
双馬「……カレー、か。まあ……ルーを使えば簡単な料理だな」
那由他「そうですね、ハイ」
静「あ、そうなの?」
双馬「……ん?」ピクッ
純「バッカねえ、静。カレーなんて水沸かしてルー入れたら終わりの簡単料理でしょ」
静「え?アレ?……玉ねぎとか肉とかは?」
純「じゃあ~~それもついでに入れたらいいだけの簡単料理だッ!」
静「なるほどォ~~ッ!簡単料理ねーッ!」
純「そうよッ!簡単カンタンン~~ッ♪」
静・純「「アハハハハハハハハハハハハハハ」」
双馬「……(静、純……こいつら、『作れる』……のか?……)」タラリ
…………
…………
ズラッ!
億泰「食材と道具は用意してっからよー、全員役割分担して作ってみな。怪我はしねえようにな」
静「ふむふむなるほど……アレ?兄さん達は?作るの手伝ってくれないの?」
仗助「大人連中は休憩だ、休憩ィー。運転やらなんやらで疲れてるからな……カレーは杜王町探検隊で作ってくれ」ブラーン
静「ちょッ……兄さん待って!それ何?……『ハンモック』?スッゲ、楽しそうじゃん!代わって代わって!!」
仗助「後でなァ~~ッ。あ、コレヤバい。意識が遠くなってくるぜ……」スヤァ
静「ムググ……あたしハンモックで横になるまで料理しないッ!」
純「いいから、ホラ!さっさと作んぞ静ァ……ああめんどい……」
ドンッ
双馬「……役割分担、と言ってもだな……静、お前料理の経験は?あるのか?」
静「毎日兄さんの作る手料理食べてるから、味見なら自信あるわよ」
双馬「……僕は料理の経験を聞いているんだが」
億泰「マ!おれが監修してやっからよ。そうキばらずに軽ゥ~く作ってみりゃあいいんじゃあねえか?この、料理人である、億泰様がなァ~~ッ」どやっ!
純「……那由他ちゃんのお父さんって、日本料理専門なんだっけ?カレーって日本料理か?」
双馬「……カレーライスは、インドカレーを日本人の好みに合うよう改良されたものらしいが……どうだろうな……」
静「料理なんて簡単よ、簡単ンーッ。まずアレでしょう?食材切っちゃえばいいんでしょう?」ガシッ
双馬「!……静、オイ」
静「何よ?」
双馬「……包丁の持ち方が変だ」
静「……」
那由他「ど、どうしてそんな方向に刃があるんですか……?お姉さま、危ないですよ?」
静「ちょ、ちょっとしたちゃめっ気だよ~~ん!やだなァ~~もう!本気にした?アハハハハ……」スチャッ
双馬「……お前左利きじゃあないだろうが。何で左手で包丁持つんだ」
静「……今右手で持ったら文句言ったじゃんか」
双馬「『持ち方が変だ』と言っただけだ」
静「……」
静「あーもうッ!こんなの切れりゃあいいのよ、切れりゃあさーッ!玉ねぎなんて、こうしてズバーッっと……」スッ……
双馬「!!ちょ、待――」
紙人間『ペラア!!』
ドゴオ!
静「うげェーッ!?……なッ!!どォーしていきなり殴るのよッ双馬ァ――ッ!!?」イデェーッ!
双馬「お前はアホかッ!?アホなのかーッ!?玉ねぎを皮ごと切ってどうするつもりだ!?皮食うのか?切ってから皮取り除くつもりか?オイッ!」
静「え?……『皮』?」
双馬「……」
那由他「お、お姉さま……玉ねぎの皮は、食べられないんですよ。剥かないと」
静「ウッソ、玉ねぎって剥いても剥いても中身が無いんじゃあないの?食いしん坊のおばけの子ォ~~ッ♪ってさ」
那由他「……」
双馬「億泰さん、僕コイツとは一生解り合えません」
億泰「ま、まあまあまあまあ……」
億泰「静、オメー料理出来るんじゃあなかったのか?お菓子作れるって仗助から聞いてたけどよー」
静「お菓子はね……お菓子は作れるの。淑女の嗜みだって言ってさ、教わったから。……けどさ、実家ではローゼスさん……あ、お孫さんの方ね。ローゼスさんがあたしを厳チーい目で見ててさァ~~ッ。刃物とか持たせてくれなくって……」
億泰「つまり……野菜や肉切ったりっていう料理の経験は無いって事かよ?」
静「だよッ。こっち来てからは兄さんが料理作ってくれてるし……」
純「アハハハハハハハ。静、貴女カレーすらまともに作れないの?くっだらねーッ!」
静「……そういうアンタは、純。……料理出来んの?」
純「ハア?何で私が料理なんかしなくっちゃなんないの?」
静「……」
純「腹減ったら弁当買うとか『パパ』に奢ってもらうとか、いろいろ方法あるしィ~~ッ。わざわざメシ作る必要なんか無いっていうか……作れる必要ある?」
静「……言ってる事矛盾してるわよ、アンタ……」ハァ……
純「作れなくってもカレーくらい楽勝って話よ。私の頭の良さ知ってんでしょ?成績オール5よ?」
双馬「……じゃあ、質問だが……このニンジンはどうやって切る?」
純「え?切らなくっても良くない?」
双馬「……」
那由他「……」
純「煮込んだら良い形の大きさになる……んじゃあ、ないの……?アレ?」
双馬「圧倒的に経験不足だな……お前ら食材に近づくな」
純「なッ!?」
静「『ら』?……え!?あたしも?」
双馬「決まってるだろうがッマヌケ!むしろなんで今自分を除外したんだッ」
那由他「申し訳ないですけど、あたしの方が料理上手な自信がありますよ?お姉さま……」
億泰「まあ、那由他はおれのお手伝いをよくしてくれてるからな~~」ウンウン
静「不公平よッ!そんなの英才教育じゃんッ!」
双馬「兄が夕食作る手伝いすりゃあいいだろうが」
静「……論破されちゃったわ」グスン
純「怖ェー中坊ね……年上をもっと敬ったらどうなの?そんなんじゃあ将来社会出てから人間関係苦労するわよ?」
双馬「余計なお世話だ。お前らが尊敬出来ないよーな行動ばかりするからだろ……」
トントントン……
双馬「へえ、上手いものだな……その年でそこまで包丁を扱えるとは」ガシュッガシュッ
那由他「パパに教わりましたから♡」
億泰「パパは鼻が高いぜ……フフーン」どやっ!
那由他「お兄さまは、玉ねぎを炒めてもらえますか?」
双馬「ああ……億泰さん、バーナーの火が安定しないんですけど、もっとポンピングした方がいいんですか?」
億泰「あまりしすぎても良くねーぜ。時間が経てば安定するんじゃあねえのか?」
ワイワイ……
静「……なんか、あそこだけ『キャンプ!』って感じね」ポツーン
純「ふ、フン!別にッ肉体労働なんてしたくねェ~~しィ~~ッ……」ショボーン
億泰「おっと、そうだな~~……料理出来ないズ」
静「んな不名誉な名前で呼ぶんじゃあねーわよッダボ泰ッ」
億泰「オメーらにピッタリの仕事があったぜ……『ごはん』を炊いてもらおうかッ!」
バーン!
静「『ごはん』?『飯ごう炊さん』って事?そんくらいだったら、まあ……包丁持った事は無いけど、炊飯器のスイッチ押した事だったらあるし」
億泰「……失敗したら『おかゆカレー』だぜ?責任重大だ」
静「ぐ……」プレッシャァーッ
純「ごはんを……炊く?」
静「純~~、さすがにそれくらいはわかるでしょ?お米は食べた事あるわよね?純粋な日本人なんだから」
純「……『レンジ』はあるの?」キョロキョロ
静「純、それ違う……米から炊くのよ、ごはんを」
純「???」
億泰「……大丈夫か?コイツ?」
静「えーっと……まあ、たぶん……」
億泰「まずはだな、米を研いで綺麗に……」
静「億泰、この静ちゃんをバカにしすぎよ。たしかに育ちはアメリカだけど、そんくらいわかるっての」
億泰「そうか?ちょいと不安でよ~~」
純「?」
静「純、アンタごはん炊くの初めてなんでしょ?練習がてらにさ、お米洗ってよ」
純「洗う?……洗剤は何使うの?」
億泰「……」
静「……」
純「……あ!何その目は?わかってるって……食器用でしょ?これで洗うんでしょ?……アレ?けど『食器』って……?」
静「純……さすがのあたしでも、キツいわ。それ……」
億泰「あー……その、おれもよ~~……家庭事情にゃあ深くは突っ込まねえが……家でごはんを炊いた事無えのかよ?炊飯器あるか?家に?」
純「……無い」ボソッ
億泰「……無い、のか……」
静「……アンタ、大きくなって金稼げるようになるまで、どうやって生きてたの……?」
純「……盗んだりとか……父親の食ってる酒のつまみ、かじったりとか」
億泰「や、やめてくれ……おれももうトシでよォー、そういうの聞くと涙が……ズビッ!」
純「?……」
静「純、もういいわ……あたしがおいチーイごはん炊くから……アンタ、ゆっくりしてて……ね?」ニッコリ
純「?……何よ、急に優しくなって」
静「いいのよ。ホラ!大自然に囲まれてゆっくりしてなって……ね?」ニコッ!
純「??……変なの」テクテク
静「……」
億泰「……頑張ろうぜ、静」ポンッ
静「うん……静ちゃん、目玉が飛び出るくらい美味しいごはん、作ってやっからね……!」
…………
…………
パカッ!
静「どれどれ?……おっ!」
ホッカホカァ~~ッ♡
静「ヤッベ!グレートにうまそうッ!あたしごはん炊く才能ある?こりゃあみんなもビックリね。キャーッ!♡」
那由他「カレーも出来ましたよ、お姉さま」
双馬「このバーナー、弱火が強いんですけど……玉ねぎ少し焦げちゃいましたよ」
億泰「几帳面なヤローだな。兄貴かよッオメー」
静「兄さん、康一さん、早人先生に裕也さーん。カレー出来たよー。静ちゃん特製のねッ!」
仗助「んんー……?……スピー……ZZZ……」
静「兄さんッ!起きろコラーカレー食わせねえぞッ!」ペチペチ!
静「後は、純が……あれ、純は?」
タッタッタ……
純「しッ……静!静ァっ!」ハァハァ
静「おっ?何よ純。息切らせて走ってきて……どこ行ってたの?」
純「あのね、暇だったから早人先生と湖行ってたんだけど……ホラ!」
ピチピチッ!
純「魚!釣れちゃった!!」
静「うおおおおおおおああああああああああああああ!!!」ビクウッ!
静「純ーッ!んなモンいきなり突きつけないでよッ!グロ注意ッ!グロ注意ッ!魚がいるぞォ!」
那由他「わあ、すごいですッ!バケツいっぱいに魚が!」ピョンピョン
純「早人先生も結構釣り上手でさ。教えてもらったんだけど、あたしも半分くらいは!」
双馬「……ていうか、純……楽しんでるな、アウトドア」
純「ま、まあ……なんていうか、悪くないっつうかさ……うふふ♪」
億泰「ほーう、やるじゃあねえか。早人もグッタリしてるだけじゃあなかったんだなー」
早人「ハハ、どうも。といっても、ぼくも初心者なんですけどね……」
億泰「こいつらは夜に焼いて食うか」
静「えェ!?あたし食わないわよッ!?絶対ヤだもんねーッ!」
純「美味いのこれ?なんか臭そうだけど」
億泰「キチンと調理して香草で臭み消せば大丈夫だろッ!腕が鳴るぜェ~~ッ」
静「やだ、やだ、やだ!ぜぇーッたいヤダッ!あたし食わないって魚なんて!確かに前食ったサバは、その、ちょっとは美味かったけど……コレはもうダメ。生理的にムリ!」
純「じゃあ~~私が食うからお前は食うなッ!美味くってもやらねーぞーッ!」
静「美味い訳ねーっての、もう見た目からしてダメだもん。魚とか……クソ、次チェスタって奴に会ったらボコボコにブチのめしてやるッ!」
億泰「誰に当たってんだよオメーは……」
康一「静ちゃん、ごはんはこのくらいでいい?」ホカホカッ
静「あ、康一さん。あたしがみんなのお皿にご飯入れるわよ」
噴上「ほおー、美味そうなニオイだぜ。クンクン…………ちょっと焦げたニオイがキツいが」
静「裕也さん、知らないの?ごはんって『おこげ』が美味しいのよ?裕也さんのにはたっぷり入れてあげるわね」ポンッ!
噴上「あ、ああ。ありが……うっ!」マックロ!
仗助「へえ、静が炊いたのかよォー。なかなか良い出来じゃあねえか」
静「当然でしょー?ハイ兄さんの」ポンッ
仗助「ありがとよ~~ッ」
噴上「……なあ、仗助……お前の『クレイジー・ダイヤモンド』って、腹痛とかにも効くのか?」
仗助「?……外傷じゃあねえから、微妙だな……どうした?」
噴上「い、いや……」ブスブスブス……
ガタガタッ
早人「テーブル、この位置でいいです?」ガタッ
億泰「いや、もーう少し康一の方が奥だな。グラついてるぜ」
康一「こっち?よっ……と」ガタンッ
仗助「億泰、スプーンどこだ?このカバンか?」ガサゴソ
億泰「そっちの布のカバンの方だぜ。飲み物の担当は早人だったか?」
早人「ああハイ。持ってきてますよ。クーラーバッグに入れてます」
噴上「よーし子供たちィー。何が飲みたい?裕也お兄さんが入れてやるぜーッ」
静「あたしコーラ」
双馬「……水ありますか?」
那由他「日本茶でお願いします!」
純「オレンジジュース無いの?それかスプライト」
噴上「バラバラじゃあねーか」
トクトクトク……
コトッ!
仗助「……よーし、それじゃあ……カレーを作ってくれた子供たちに感謝を込めて!」
「「「「「いっただっきまーす!!!」」」」」
カチャカチャカチャ……
静「……ん!うまーい!……けど、ちょっと甘い?」
双馬「甘口だよ。那由他ちゃんがいるからな……タバスコでもかけてろ」
仗助「うん、美味えじゃあねえか。ジャガイモもホックホクでいい火の通り具合だぜ」
億泰「それなんだがよーッ、双馬の野郎スゲーっ料理上手でよーッ!こりゃあ修行すれば良い料理人になるぜーッ!」
双馬「……自炊してるってだけですよ」
億泰「どうだ?おれの下で修行とかよ?」
那由他「ええ!?お兄さまが、うちで修行っ?キャーッ!♡」
純「あ、いいじゃん双馬。ブアイソーなアンタもちょっとはマシになるんじゃあねえのーッ?アハハハハハハ」
双馬「遠慮しておきます」ペコリ
早人「本当、よく出来てるね……ぼくはあまり料理しないからさ。こんなすごいのを外で作るなんて、信じられないよ」
康一「……けど、少ぉし……ちょっぴりごはんが固いかな?」
静「あ、アハハハハハハ!あたしって固いごはんの方が好きだからさーッ……アハ、アハハ……」
純「静、コメがマズイ」
静「ハッキリ言うんじゃあねーわよッコラア!これでも頑張ったのよ?アンタはコメ炊く事すら出来ないじゃあないのよーッ!!」
双馬「うるさいぞ、静……食えないほどじゃあないよ、このごはんは」モグモグ
静「それフォローなってないでしょ、双馬……」ジトッ
噴上「…………」プルプル
仗助「?……どうかしたか、裕也?小刻みに震えてるけどよーッ?」
噴上「……ぐ……」
噴上「グベッ!!」ゴフッ!
ドシャアーッ!!!
仗助「ゆッ!……裕也ァ――ッ!!?」
ド――ン!!
早人「なッ……え?」
億泰「ど、どういう事だッオイィッ!?」
仗助「わ、わからねえッ!いきなり裕也が倒れてッ……新手のスタンド攻撃っすかッコラアッ!?」
康一「仗助くんッ!早く治してあげてッ!」
仗助「もうやってるぜーッ!けど目が覚めねえッ!何が起こってるんだァ――ッ!?」
ド ド ド ド ド ド ド ド
噴上「……く、くさい……コゲ臭いぜ、これ……ゴフッ」ガクッ
仗助「……え?」
・ ・ ・
純「……静?」クルッ
静「……ピ、ピュルル~ルル~♪」
双馬「……口笛ふいてる場合か、お前……」
静「……」
那由他「……」
静「……ご、ごめんなさい……?」
双馬「……ハァ……」
…………
…………
バァァアアア……
静「ねえ……兄さん。行ってもいいかな……?」
仗助「うん?」
静「『探検』……」
仗助「……」
静「……」キラキラキラ
仗助「ああ、いいぜ……気をつけろよ。くれぐれも怪我とかしねえようにな」
億泰「那由他ァ~~。クマに注意!だぜ。出会ったら死んだフリしろよ」
静・那由他「「はぁーい」」
静「よーし、行くわよ杜王町探検隊ッ!あたしについて来ーいッ!」オーッ!
純「どこ行く気よ。このあたり何もねーわよ?」
静「バカね純。山があるじゃあないの。山ァーッ。山があれば何でもあるようなモンよ?」
双馬「……何を言ってるんだお前は」
ザッザッザッザ……
仗助「……さて、子供連中は行っちまったし……どうするかな~~、おれらはよッ」
噴上「ノンビリするのもいいが……せっかくだしな。何かするか」
早人「あ、一応色々持ってきてますよ?『ボール』『バドミントン』『スポーツカイト』『ブーメラン』……」ゴチャゴチャ
億泰「早人オメー、やたらと荷物多いと思ったらよ……こんなにオモチャ持って来てたのか」
早人「アハハ……生徒と遊んだら楽しいかなって思って、買っちゃったんですよ。フリスビーとかどうです?」
仗助「おっ、いいじゃあねーか。こんなのガキん時以来だな~~ッ」
康一「そうだ。フリスビーに『エコーズACT2』の尻尾文字をつけたらさ、面白いんじゃあない?」4
仗助「……取りそこねたらシャレになんねーから、やめとこうぜ……」タラリ
億泰「っしゃあ!行くぜェーッ仗助ッ!!」グォッ……
仗助「えっ?」
ザ・ハンド『ッシャアアアーッ!!!』
ドギャウ!!
仗助「うおおおおおおお!?」
クレイジー・ダイヤモンド『おおおおおお!!』ガッシイッ!!
シュウウウ……
億泰「ナイスキャッチ!やるじゃあねえか仗助ェ~~ッ」
仗助「ッメー何不意打ちで全力で投げてんだコラアッ!!おれじゃあなかったら死んでる所だぜッ!!!」ヒイーッ!
噴上「大丈夫だ、全力で投げて遠くにいっちまっても、おれの鼻ならフリスビーを追跡出来る」
仗助「そういう事じゃあねーッ!!!」
早人「あの、ぼく見学してていいですか……?」ドキドキ
康一「そうだね……早人くん、一緒に違うゲームしようっか?」
ドラア!
ダボガァーッ!!……
…………
…………
ザァアアアア……
静「よーしッ、全員いるわね?番号ッ!いーちッ!」
那由他「……に、2?」
双馬「…………サン」
純「……………………よん」ボソッ
静「良し(ベネ)。山に入った事だし、本格的に気を引き締めて探検していくわよ」
双馬「……遊びにそこまで全力出さないといけないのか」
静「当然。遊びだからってさあ~~~~気をユルめてボサッとしてっと死ぬわよ?アンタ知ってんの?子供がキャンプ中事故死するってニュース。川とかで溺れてさァ~~。……だからあたしは水には近寄らねーッ」
純「……まあ、小さい子供もいるしね……注意しとくに越したことはないわ」
静「という訳で……隊長であるこの静ちゃんに、ついてきなさーい」フフーンッ
純「……待ちなさい、静」
那由他「!」
双馬「……」え?
静「……どうかした?純?」
純「……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
純「……どォーッでもいい事なんだけど……それでも大切な事よ……」
静「……?」
純「……貴女が『隊長』……『隊長』ですってェ……?『リーダー』って事?『トップ』って事ォ?……私を差し置いて?」
純「そいつはメチャゆるせんよなああああ。取り消せ静ッ!テメーが私より上!っつーのが気に入らねーッ!!」
双馬「……子供か」
純「うっせえぞッ双馬ッ!どーでもいいけどコイツが上に立つのが腹立つんだッ!リーダー?笑わせんじゃあねーわよーッ。プッ!」
静「オーケーオーケー、よくわかった……なんだかんだで前戦った時は、一勝一敗みたいなモンだったしね……」
純「あーあそうよッ。最終的には私が負けたが、その前には私が勝ってた!」
静「そうね……あたしもあの負けは結構キたわ。今はもういいんだけど、それでも純が勝敗決めたいっていうのなら……」
那由他「……」
静「今ここで、『勝負』して決めよっか?白黒ハッキリつける?どっちが上かってさァー」
純「ハッ!スタンドでの殴り合い以外だったら負ける気しねーッ……何で決める?『ポーカー』か?『グラスとコイン』か?『チンチロリン』でもいいわよ……?」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
静「……キャンプに来てまで、んなインドアゲームやんねーわよ……道具も無いしね。『勝負』の内容……それは……」
静「『セミ取り』で勝負よーッ!!」
バァ――ン!!
純「ふざけんなああァァァアアアアア!!!」
ギャ――ン!!
純「何であんな『地球外生命体』取らないといけねーんだッ!!『セミ』とかありえないだろッ!!静お前見たことあるのかッ!?コンクリートの上で裏返って死んでる『アレ』をよーッ!!」
静「ダメ。勝負内容はアウトドアらしく『セミ取り』よ。これ決定だっての。やらないんならあたしの勝ちね。フフン♡」
純「しょ……勝負内容の変更を提案するッ!フェアじゃあねえわ!」
静「え~~ッ。じゃあ純ーッアンタ何か思い浮かぶ?アウトドアらしくって白黒ハッキリつけられる勝負ってさあ~~……思い浮かばなかったら負けよ」
純「……『魚釣り』で勝負だッ!!」バンッ!
静「イヤぁああああああああ!!!」
オーン!!
純「イヤとは言わせないからなーッ!『セミ取り』がアリなら『魚釣り』もアリでしょッ!これでナシだったらオメーのもナシだッ!」
静「ふッ……不公平よッフコーヘーッ!あたしが水嫌いって知ってて言ってんでしょーッ!魚とか……ウワッ!考えるだけでサブイボがッ!」ブルルッ!
純「知るかァ――ッ!アンタにとっての『魚』が私にとっての『セミ』だッ!お前は魚を食えるかもしれねーが私はセミは食えねーッ!」
静「あたしだって未だに魚は苦手だってのーッ!!それに!だったらあたしもセミは食えねーわよォーッ!!!」
ギャーギャー!!……
那由他「……双馬お兄さまが『隊長』になったらどうですか?」
双馬「バカ言うな……そんなの死んでもゴメンだ」
…………
…………
静「ふーっ……風が気持ちいいわね……」
ザアッ……
純「……」クルッ
静「?……どうかした?純」
純「……いや……何でもない」
ザッザッザ……
双馬「キャンプ場に近い山だから、そこまで危険は無いが……それでも道は険しいな」
静「そう?険しい方が楽しくない?」
純「貴女だけよ、それは……あっ、ちょっとチビっ子!足元気をつけなさいよ……あのアホサングラス、配慮とかそーいうの何も考えてないからね」
那由他「いえいえ、楽しいですよ?とっても……こんなおっきい山なんて、来るの初めてですから……」
静「……双馬ァ~~。なんかさ、ここ……『キノコ』生えてるんだけど……」
双馬「ん?……ああ、そうだな」
静「これって食べられる?いける?ダイジョブ?ねえねえ?」
双馬「……食べられるけど、やめとけ」
静「なんで?」
双馬「吐くから」
静「……」
純「……そりゃあー食べられるって言わないだろ、メガネ」
双馬「あのな、そんな事言ったら『コーヒー』だって飲み過ぎたら死ぬんだぞ?カフェインは神経毒性を有するからな……もっとも、コーヒーで死ぬには一気にバケツ4、5杯は飲まないとならないが」
静「別の意味で死ぬわね、それ」
双馬「致死量にさえ達しなければ、こういったものは食べられるんだよ……むしろ、毒成分そのものが旨味成分となっているから、食べるとムチャクチャ美味しいらしいぞ、このキノコは」
那由他「へえー……お兄さまは物知りなんですねえ」
双馬「……まあ、食べ過ぎたら吐くし、死ぬがな」
静「那由他ちゃん、キノコに手出さないようにね。美味しそうでも、拾い食いしちゃダメよ」
純「オメーじゃあ……オホン。犬じゃあねえんだからさあ」
静「あっ!あの木になってるの、『グミの実』じゃあないの?丁度いいし、あれ食べながら休憩しよう」
双馬「本当、お前は何でも食べようとするな……まあ、休憩には賛成だ」
純「……そうね……」チラッ
那由他「……純さん、どうかしましたか?」
純「え?」
那由他「さっきから、後ろを……ずいぶん気にしてるようですけど……?」
純「……」
静「……忘れモンでもした?純」
純「……いや、あのさ……」
純「……尾行(ツ)けられてない?私達……」
双馬「……」
静「……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
純「……気のせいなら……それでいい。それが一番ベスト。けど……視線を感じる。今もよ。ずっと」
静「誰?裕也さんの『ハイウェイ・スター』が、心配して見に来てる……とか?」
純「違う。……ねっとりと絡みつくよーな『視線』よ。気持ち悪い……ストーカーみてーな気配を感じる……」
那由他「……あたしは……なんにもわかりませんけど……?」
純「……もしかして……いや、そんな……」
静「何?」
純「……えっと……」
双馬「……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
純「……『ウォーケン』じゃあ……ない、だろうな?……尾行けてるヤツ……!」
静「!!……」
双馬「馬鹿な、ありえない……ここはまだS市内だが、杜王町からどれだけ離れてると思う。何故そいつがこんな所にいるんだ」
純「……けど……」
静「そうよ、純。それにあたし、このキャンプの事は親しい人にしか言ってない……日程も急に決まったようなモンよ?そんな旅行に、なんでその『殺人鬼』がいるのよ。どっから情報入手してる訳?」
純「……『親しい』って……静、貴女はまだ日本に来て数ヶ月でしょう?」
静「……」
純「その『親しい人』が『敵』かも……って事は……考えられないの?」
静「……」
双馬「…………」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
那由他「な、何の話かわかりませんけど……視線を感じるのなら、こちらから向かってみてはどうですか?『何かご用ですか?』って……」
純「ハ!やっぱ子供ねえーアンタは……そんな事出来る訳無いでしょう?向こうは尾行してる訳なんだから……」
静「いや、それで行こう」
バン
純「……ハア?」
バッ!
静「コラアッ!!そこでコソコソしてるヤツッ!!何の用よ?用があるなら出てこいっての――ッ!!」
ド――ン
純「バッ……馬鹿静ァッ!!」
純「マッ、マジに敵スタンド使いだったらどうすんのよッ!!私戦えないわよ!?私はまだ死にたくないわよォーッ!!」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
静「チマチマ向こうの様子伺うのってどうなのよ。尾行するような根性なし、あたしの敵じゃあねーわよ」
双馬「お前、確かにこっちはスタンド使いが4人だが……僕達は近距離パワー型じゃあないんだぞ。相手によっては――」
那由他「い、いやけどそれよりッ!大真面目に出て来るとは限らないですし。敵スタンド使いじゃあないかもしれませんし……ハハ……」
ガサッ!!
純「!!」ギクッ
双馬「!」スッ……
那由他「!!」ビクッ!
静「……」
ガサガサ……
ガサッ!!
タヌキ『……』
ヒョコッ
静「……え?」
双馬「……」
那由他「……た……『タヌキ』?」
純「……」ヘナヘナッ
タヌキ『…………ブツ……ブツブツ……』ウロウロ
静「何よォー純……視線を感じるって……コレ?コレなの?」
純「うっ……うっせぇなーッボケエッ!本当ォーに感じたんだから仕方ないでしょッ!良かったジャン、敵じゃあなくってさーッ!!」
タヌキ『……ブツ…………ブツ……』ガサガサッ
双馬「……まあ、人の手が入っているキャンプ場とはいえ、山だからな……こういった生物がいてもおかしくないか」
タヌキ『…………ブツブツ……』
那由他「わああ……可愛いタヌキさんですねえ。触ってもいいですか?」
純「や、やめときなさいよ那由他ちゃん……マジマジと見ると気持ち悪いわよ。それに野生生物って病原菌だらけよ?オゲーッ」
タヌキ『……ブツブツ…………ブツ……』ガサガサッ
純「それに、なんかブツブツ鳴いてるしさあ……ちっせえ声で鳴きやがって。鳴くなら大きな声で鳴けばいいのに」
静「タヌキさんの生活ジャマしちゃあ悪いし、向こう行こうっか。那由他ちゃん」
那由他「はいっ!」
静「あっ!あの木はコナラ?樹液が出てればカブトムシなんかがいるかもよっ!?」タタッ
那由他「本当ですか、お姉さまっ!きゃあーッ♡」タタタッ
純「ああもうッ、走るな危ないだろッ!ムシの何がいいんだか……ケッ!」
双馬「カブトムシ、か……そういうの、もう何年も見てないな……」
ザッザッザッザ……
・ ・ ・
タヌキ『…………ブツ…………ブツブツ……』
『…………人間め……ブツブツ……勝手にわたし達の領域へ……ブツブツ……ブツ……許さない……ブツブツ……絶対に……許さない…………ブツブツ……』
…………
…………
カチャカチャ……
億泰「勝負はおれの勝ちだよなァ~~仗助ッ。約束通り、今晩の皿洗いはオメーだぜェ~~ッ」トントントン
仗助「いきなり何言ってんだよオメーはよーッ。いつおれがんな約束したよ?」カチャカチャ
億泰「確かに言ったぜおれはよォーッ。フリスビー対決、負けた方が皿洗いってな」ピッ
仗助「最終的にフリスビーを『ザ・ハンド』で消しちまうのは、負けじゃあねーのかよ?コラ」
億泰「ヌヌッ」ズイッ
仗助「またやるか?」ズイイッ
康一「はいはい二人とも、もう遊びはいいからね……億泰くん、魚の下ごしらえはこんなのでいい?」
億泰「おっ、十分だぜ康一。ありがとよォ~~っとォ」
仗助「皿はこれでいいのか?もう一ついるか?」カチャッ
億泰「一枚でいいんじゃあねえか?おれはタレだけでいいしよォー」
噴上「おれはポン酢も欲しいな……もう一枚くれ」
仗助「はいよォ~~」スッ
早人「さて……じゃあそろそろ、火をおこしますか?」
億泰「そうだな……子供たちにやらせんのもいいかと思ったけどよ、まだ帰ってこねえし――」
静「たっだいまァーッ!!」タタタタッ!
仗助「お、ウワサをすれば……だな」ニコッ
静「指令、任務完了しましたァーッ!」ビシッ!
仗助「おうそうか。どんな任務だったかは知らねえがよーッ」
静「周囲の探索任務に救援物資の補給任務!」
仗助「救援物資ぃ?」
静「ホラ、ヘビイチゴ取ってきた。あーん♪」
仗助「んぐっ……うーっ!酸っぺェ!」
那由他「ただいま、パパァーッ♪」トテトテ
億泰「ケガはねえか?那由他。危険な事は無かったろうなあ?」
純「大丈夫だって……一応私らが注意して見てたし。ハァ~~疲れたァーッ……」グデッ
双馬「ああ、晩御飯の準備してたんですね……手伝いますよ」
噴上「おお、ありがとうよ。晩御飯はバーベキューだぜ。静ちゃんリクエストの」
純「やたッ!肉・肉・肉ぅ~~っ!」ルンッ♪
静「あ!その前にさ、兄さん!ほら、お土産よおみやげっ!」
仗助「『おみやげ』?」
静「どジャアァあああ~~~~ン」パッ!
クワガタ『……チキチキ……』カチカチ
仗助「おっ!カブ……いやクワガタ虫か」
静「ミヤマよ、ミ・ヤ・マぁぁああ~~っ。一匹だけノンビリと木に引っ付いてたのよ。マヌケよね……簡単に捕まえる事が出来たから、兄さんにあげるわ」
仗助「何ィ?『ミャ・ン・マー』ぁ?」
静「『ミ・ヤ・マ』ぁ~~っ」
仗助「ミャ・ン・マー。ミャ・ン・マぁああ~~ッ」
静「ミャンマー・ミャンマー・ミャンマァァーッ」
仗助「ミャンマー、ミャンマーミャンマー、ミャンマー……」
静「ミャンマーミャンマーミャンマーミャンマー……ミャンマー!」
仗助・静「「ミャンマーミャンマーミャンマーミャンマーミャンマーミャンマー……」」
静「にゃん……あっ!!」
仗助「ハイ!静の負・けェーッ!だぜッ!」
仗助・静「「アハハハハハハハハハハハハハハ」」
双馬「……」シラケーッ
静「で!億泰にはコレね」スッ
億泰「おっ!おれにも土産があんのかよォ~~?何だ何だぁ?」
ピトッ!
億泰「……ん?」
セミ『ジーッ!!ジーッ!!ジィィ――z__ッッッ!!!』ワンワン!
億泰「アッ……ヒィィイーッ!!?セッセッ……『セミ』ィッ!?」
那由他「パパ、すっごくお似合いッ!背中にピッタリくっついてるッ!キャッキャ♡」
億泰「とっ!取ってくれェッ静ァーッ!おれァ~~こーいうの苦手なんだよッ!ウゲッ!ワ、ワサワサしてやがるぜッ!ウヒイッ!」
静「いやー、面白そうだったから一匹取ってきてくっつけてみたけど……かなり大爆笑。イイねーッ。逃げないし……居心地いいのかな?」
仗助「何匹背中にくっつけられるかやってみるか?」
静「最高。今の時間ならヒグラシとかがイイかもねーッ」
億泰「康一ぃ~~っ!助けてくれェェ~~~~ッ!!」ヒイーッ!
早人「……何やってるんですか、もう……」
純「……最悪だわ、アイツら……セミを背中につけるとか、悪魔よ……人間じゃあねーわ……関わらないようにしよおっと」スススッ
双馬「おい、僕の背中にくっつくんじゃあないぜ。暑苦しいだろうが」
純「うっせえなーッ。アンタの役割は壁よ。いい?セミがこっち飛んできたら『スタンド』使って叩き落とすのよ?」
双馬「ああ……叩き落とせるくらいゆっくり飛んできたらいいな……」ボソッ
純「……ねえ、私よく知らないんだけど……もしかしてアンタの『スタンド』って、弱いの?」
双馬「さあな。……噴上さん、この炭に火つけたらいいんですか?」
噴上「ん?ああ、そうだな……だが恥ずかしながら、おれはアウトドア初めてでな……炭に火をつけるなんざ、やった事がなくてよ」
双馬「……僕は一応、経験あります。昔住んでいた施設で何度か、野外オリエンテーションを行ったので」ガサゴソ
静「あッ!ちょォーっと待った双馬!火つけるのはあたしがやるっての」
双馬「……お前がァ?……本当にィ?マジで言ってるのか?」
静「何よ」
双馬「いや、まあいいんだけどな……ホラ、炭と着火剤とライターと新聞紙と……枯れ枝使うか?うちわは?あ、億泰さん竹筒も持ってきてたんですね」
億泰「おう。それがあると火をおこす時便利だからなァ~~ッ」
双馬「わかります。いや本当、キャンプ道具が充実していて良かった……静も使うか?それともお前、まさかバーナーを使って火をおこすとか言わないよなァ?」
静「……うっ……あああーもうッ!!意味わかんねー言葉グダグダ並べんじゃあねーわよおッ!あたしはライターで十分だからッ!」バッ!
双馬「……そうか……(ライターだけでは無理だろう……)」
静「用はアレでしょう?炭に火をつけたらいい訳だ」
双馬「ああ、そうだな」
静「なら、こうやって……」スッ……
双馬「……お前、炭に火がつくまで、そうやってずーっと手に持っておくつもりか?炭は花火じゃあないんだぞ?」
静「……」
早人「……あー……ゴホン、オホン……」ゴホッゴホッ
早人「……す、炭を並べて……火がつきやすい新聞紙や枯れ枝に火をつけたら……ゴホン。……いいかなぁ~~って……オホン、ゴホッ」
静「……」
双馬「……」
静「……こう?」ゴチャゴチャ
早人「あ、それじゃあ火がつかないよ……風が通るように並べないと」
純「静それ、炭置きすぎでしょ。網かぶせらんねーわよ」
双馬「あと、大きい炭は後に入れろ。火がつきにくい……まず小さい炭を並べて火をおこすんだ」
静「あーもう!何よみんなして!!そんっなにやりたきゃあ自分らでやればいいじゃんかさーッ!」
双馬「無茶苦茶だな、お前……お前が火をおこしたいって言ったんだろうが……」
…………
…………
パチパチ……パチ……
静「おー、燃えてる燃えてるゥ……フーッ」グイッ
康一「静ちゃん、顔が炭で所々黒くなってるよ?」
静「努力の証、ってねェーッ。あたしが火ィおこしてやったんだぞ、っていうさーッ」
純「ヒゲみたいになってんわよ」
静「え!嘘!?」
噴上「ほら、濡れタオル……」
静「ありがとう、裕也さん……んっ」グシグシ
那由他「わあ……綺麗に燃えてますね!」
双馬「燃えすぎだ馬鹿。直接炎で焼く訳じゃあないんだぞ」
静「え?そうなの?」
双馬「何のための炭だ……赤くなった炭の熱で焼くんだよ。少し炭をバラして火を抑えろ」
静「なかなか難しい事言うわねー……」ガラッガラッ
億泰「よーしッ!そろそろ網を置いて焼き始めるぜェーッ!」
仗助「お前ら皿にタレ入れろーッ。ハシ全員持ったかー?」
純「準備万端よ」フンフンッ
静「ちょ、あたしまだハシもお皿ももらってないっての!純早すぎるわよッ!」
早人「まあまあ、まだ焼いてもいないし……はい、静ちゃんのお皿」スッ
ガゴンッ
億泰「脂を塗って……っとォ。肉は仗助が用意したんだったな?」ジュジュウッ
仗助「そうだぜ~~。食材担当はおれだからな。奮発しまして……なんと!『国産和牛』を買ってきましたあッ!!」
ジャーン!!
静「う……うおおおおおっ!!」
純「『脂』が……輝いて見えるわ……ううっ!」
那由他「お、美味しそうですねえ……おなかペコペコですう」グーッ
ジュウウウウ……!
噴上「おっ、いいニオイだな……肉の焼けるニオイってのは、どうしてこうも食欲をそそるのかね」
静「焼けた!?ねえもうこれ焼けた!?」
双馬「どう見ても真っ赤っ赤だろうが。ちょっと落ち着けお前」
億泰「あーッおい那由他!ナマの肉を食事用の箸で触るんじゃあねえよ!こっちの割り箸使えッ!」
那由他「あっ、ごめんなさーいパパぁ……」
仗助「牛肉はナマでも食えるんじゃあねーのかよーッ?」
億泰「子供は身体が弱ェーんだから、そーいうのはダメなんだよッ!」ボケエッ!
康一「みんな、お野菜もあるから食べてね。栄養バランスとか考えないと……」
純「……タン塩は……レモンをキュッ!と絞ってェ……」ジュウウ……
パクッ!
純「……んっ!!……んーんんーんんん~~~~ッ!!」プルプル
静「あーッ!純先に食べるなんて反則よッ!あたしもッ……」
パクッ!
静「……ん!まァァァ~~~~いッ!!!」ペカーッ!
早人「……これ、大丈夫ですか?まだ赤いように見えますけど……?」オソルオソル
億泰「そのくらいなら問題ねえぜ。豚肉や鶏肉はよく焼いた方がいいけどよーッ」
双馬「……うん、なかなか……」モグモグ
仗助「あー……うめえ」ゴクンッ
噴上「……こうも美味いと……飲みたくなってくるよなァ。……『ビール』がよ~~ッ」
仗助「静、飲んでいいか?まだ時間は早いけどよ?」
静「え?うーん……まあ、いいけどさ。グデングデンになんないでよ?後で面倒くさいから」
仗助「よーしッ!静のお許しも出たし……飲むか!一杯グイッ!っとよーッ!」
純「……酒、かあ……」ボソッ
静「あ。アンタは飲むの禁止よ?学生はガクセーらしく、ね」
純「フン!わかってるわよ……それに私、お酒は苦手だし……」
静「そう?……実はあたしもなのよね。兄さんたまーに飲み会から帰ってきたら千鳥足でさ……絡み酒っての?もうウゼーのなんのって……」
康一「はい、仗助くん。ビールだよ」
仗助「おっ!黒ビールとはまた通だな……たまにはこういうのもいいかもな~~」
億泰「チューハイある?カシスオレンジ」
噴上「おめー結構甘いの好きだよな、億泰……まあいいんだけどよ。早人、お前は何飲む?」
早人「あ、ぼくはアルコール苦手で……コーラでいいですよ」プシュッ!
仗助「えー、では……少し順序が逆になりましたが……あ、子供たちも飲み物持ってくれるか?」
静「?」スッ
那由他「何ですか?」スッ
仗助「えー、ゴホン。……車の運転やらテント立てやら、今日一日お疲れ様っしたァ~~ッ……乾杯!!」
「「「「「かんぱァーい!!!」」」」」
カンッ!
ジュウウー……
…………
続き
静「静・ジョースターはキャンプをする」【後編】