サターニャ「あ、おはよう」
ヴィーネ「おはようサターニャ」
ガヴリール「おはー……今日はラフィエルはまだ来てないのか?」
サターニャ「来たけどすぐに自分の教室に行ったわよ」
ガヴリール「ふーん。珍しいな」
ヴィーネ「日直なんじゃない?」
ガヴリール「日直……ねぇ」
元スレ
ガヴリール「ラフィエルがホームシックになった」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1498346277/
ガヴリール(日直だったらサターニャより早く登校しそうな気もするけどな……)
ヴィーネ「どうしたの?」
ガヴリール「ん、いやなんでもない」
ガヴリール(あいつは何かあったら一人で背負い込むきらいがある……)
ガヴリール(少し気になるな)
グラサン「ホームルーム始めるぞ。席につけ」
休み時間
ヴィーネ「んーお昼かーっ」グイー
サターニャ「学食いきましょ!」
ヴィーネ「はいはい……ガヴも行きましょ?」
ガヴリール「ん」
ヴィーネ「あ、ラフィも呼んでくるわね」
ガヴリール「ん」
学食
ヴィーネ「今日は何にしようかな……」
サターニャ「ちょっとまだ決めてなかったの?」
ガヴリール「デンジャラスな味とかどうよ」
ラフィエル「……」
サターニャ「ラフィエル?早く食券買いなさいよ。後ろ並んでるわよ」
ラフィエル「……すみません、ちょっと迷っていたので」
サターニャ「今日は激カレー♪」トテテテ
ヴィーネ「滑って落とさないでよ?」
ラフィエル「見るからに辛そうですね」
サターニャ「それがたまらないんじゃない!」
ヴィーネ「よく食べられるわね……」
ガヴリール(ラフィエルは平然としている……見たところなんともない、って普通の人は思うだろうな)
ガヴリール(……平然を装うとき……無意識の内になんらかの仕草をしてしまうもの)
ガヴリール(しかしラフィエルは弱ってるところを他者に見せようとしないからその仕草はわかりにくいものだ)
ガヴリール(天界にいた頃からずっと一緒にいる私じゃないと気づけられないくらいには……な)
サターニャ「ラフィエルー辛さ足りてないんじゃない?タバスコ分けてあげてもいいわよ?」
ラフィエル「遠慮しておきますー」
ガヴリール(まったく……仕方のないやつめ)
放課後
ラフィエル宅
ラフィエル「はあ……」
ラフィエル「早く夏休みにならないでしょうか……」
ラフィエル「まさか家族から離れることがここまで辛いものだったとは……思いませんでした」
ラフィエル「いっその事、次の土日に帰っちゃいましょうか……?」
ラフィエル「でも……やっぱり修行しに下界に来てるわけですし……そんな理由で帰るのは……」
ラフィエル「こういう時……家族の写真が唯一の心の支えですね……」
ラフィエル「でも……これはこれで……早く会いたくなってしまいます……」
ラフィエル「うぅっ……帰りたい……早くっ……皆に会いたいっ……」ポロポロ
ピンポーン
ラフィエル「っ!?」
ラフィエル「誰でしょう……新聞の勧誘はお断りしたはずですが……」
ガチャッ
ガヴリール「よっ」
ラフィエル「ガヴちゃん……?えっと……一人ですか?」
ガヴリール「うん」
ラフィエル「ええと……珍しいですね。ガヴちゃんが一人で私の家……」
ガヴリール「ま、たまにはね。お邪魔していい?」
ラフィエル「……どうぞ」
ラフィエル「今お茶入れますね」
ガヴリール「大丈夫。ジュース持ってきた」
ラフィエル「そうでしたか」
ガヴリール「それでさー……どうしたの?」
ラフィエル「どうした……とは」
ガヴリール「とぼけなくていい。何年一緒にいると思ってるんだ」
ラフィエル「ガヴちゃんには、敵いませんね……」
ラフィエル「えっとですね……。ちょっと実家が恋しいといいますか……家族に会いたくなったといいますか……」
ガヴリール「ああ、ホームシックか」
ラフィエル「ざっくり言えばそうなりますが……」
ガヴリール「なんだーホームシックだったのか……もっと重大な何かかと思った」
ラフィエル「ちょっと恥ずかしかったんですよー……」
ガヴリール「別に恥ずかしがることないと思うけどね。普通の感情でしょ」
ラフィエル「ガヴちゃんは……ホームシックになったことは?」
ガヴリール「ないな」
ラフィエル「まったく……ですか?」
ガヴリール「……完全にゼロって言ったら嘘になるけど……それでも今の生活のほうが楽しいからなぁ」
ラフィエル「私も今の生活のほうが楽しいですよ。サターニャさんやヴィーネさんもいますから」
ラフィエル「ですが……それでもやっぱり家族が恋しくなってしまいます……」
ラフィエル「思えば家の中では大抵誰かと一緒にいましたから……」
ガヴリール(その内訳は8割くらい例の執事になってそうだな……)
ラフィエル「なので家の中で一人でいると……ふとした瞬間寂しくなります……」
ラフィエル「ガヴちゃんは……どうやって寂しさを紛らわせてるんですか?」
ガヴリール「趣味とか?ゲームしてたら寂しさなんて忘れてたし」
ラフィエル「ゲーム……ですかぁ……」
ガヴリール「私だって別にそういう寂しさを全く感じない冷徹な天使じゃない」
ガヴリール「天界にいた頃、姉さんが修行しに下界に行ったときは泣いてたし」
ラフィエル「……」
ガヴリール「下界に来たての頃、駄天する前もラフィエルみたいに寂しがってたし」
ラフィエル「……今は?」
ガヴリール「その寂しいって感情自体は消えてないと思う」
ガヴリール「ただ下界の娯楽に触れてのめり込めるものを見つけたから寂しさが気にならなくなったというか」
ガヴリール「今になっては姉さんは私の駄天を認めないだろうし、あまり会いたくないくらい」
ラフィエル「……」
ガヴリール「それに二度と会えなくなるわけじゃないしね。娯楽やらで埋められる程度に収まってるよ」
ラフィエル「私は……下界の娯楽にそこまでハマっていないので……」
ガヴリール「……何も娯楽とかで寂しさを紛らわす必要はないかな」
ラフィエル「と、いいますと……?」
ガヴリール「ん」
ラフィエル「……?」
ガヴリール「私がいるだろ」
ラフィエル「……」
ガヴリール「ちょっと待って。恥ずかしくなってきた」
ラフィエル「ええと」
ガヴリール「つまり!寂しいからなんだ……その……なんか胸が苦しいんだろ?」
ガヴリール「だからさ、その……なんていうんだ。例えばさ、思いっきり泣いたらスッキリするじゃん」
ガヴリール「でも一人で泣くくらいならなんていうかその、誰かの胸で泣いたほうがなんか……いい効果ありそうじゃん」
ガヴリール「ほら、私達付き合い長いしさ……ちょっとは落ち着くかもしれないじゃん……そういう感じのをやりたかった」
ラフィエル「……」
ガヴリール(まさかまだ通じてないのか、それともからかってるのか……!?)
ガヴリール「だから――」
ダキッ
ラフィエル「こういうこと……ですよね」ギュッ
ガヴリール「……そうだよ」
ラフィエル「またこうしてもらえるなんて……今のガヴちゃんはこういうことしなさそうで」
ガヴリール「……まあ、今はもう滅多にしないだろうな」
ラフィエル「ガヴちゃんの胸……懐かしいです……姿は変わっても……ここは変わってません……」ギュゥ
ガヴリール「それ、成長してないって言ってるようなものだろ……」
ラフィエル「胸の内とも掛けてたんですよー」スリスリ
ガヴリール「ああ……そういう……。まあ、そうかもね」
ラフィエル「……昔みたいに、頭も撫でてほしいです」
ガヴリール「はいはい」ナデナデ
ラフィエル「……♪」
ガヴリール「ラフィも……変わってないな」ナデナデ
ラフィエル「ですね……」
ガヴリール「……」ナデナデ
ラフィエル「……ガヴちゃんのお胸、濡らしちゃってもいいですか?」
ガヴリール「いいよ」ナデナデ
ラフィエル「……うぅっ……うぅぅぅぅぅっ!!」ポロポロ
ガヴリール「うん。好きなだけ泣け。スッキリするまで……ずっと付き合うからさ」ナデナデ
ラフィエル「お母さぁぁぁぁん……!!ぅぅっ……うぅぅぅぅぅ……!!」
ガヴリール「うん、うん。お母さんだぞ」ナデナデ
ラフィエル「ガヴちゃんは゛ぁっ……お母さんじゃないですよぉぉ……」
ガヴリール「ごめん」ナデナデ
ラフィエル「うぅぅぅぅぅぅ……!!」ギュゥゥッ
ラフィエル「うぅっ……お父さんにもっ……サラちゃんにもっ……会いたいっ会いたいですぅぅぅぅぅ……!!」ポロポロ
ガヴリール「うん、うん」ナデナデ
ラフィエル「マルティエルも……いつも変なことばかりしてきますがっ……やっぱり会いたいですっ……」ポロポロ
ガヴリール「そっか……」ナデナデ
ラフィエル「料理長のコックハママツさんの手料理も……食べたいですぅぅぅ…‥!!」ポロポロ
ガヴリール(誰だよ)ナデナデ
ラフィエル「ひっぐ……えっぐ……」ポロポロ
ガヴリール「すっきりしたか?」ナデナデ
ラフィエル「まだ……このままでいさせてください……」ギュゥゥ
ガヴリール「ん、いいよ」ナデナデ
ラフィエル「……」ギュッ
ガヴリール「それにしても、ラフィんとこの執事が聞いたら大喜びだな。きっと」
ラフィエル「マルティエルには絶対に内緒ですよ……」
ガヴリール「わかってるって」ナデナデ
ラフィエル「絶対ですよ……」
ガヴリール(ヴィーネやサターニャが知らないラフィの顔……私にしか見せない、ありのままの姿)
ガヴリール(下界に来てから……ラフィはサターニャにばかり興味を示してた。私はおまけみたいな感覚で……)
ガヴリール(ちょっと、ムカムカしてた。でも……あいつらが知らないラフィを知っている……そんなことがちょっとした優越感)
ガヴリール(ちょっと、嬉しいな)ナデナデ
ラフィエル「……だいぶ、すっきりしました」
ガヴリール「そうか」
ラフィエル「ですが……まだ……このままでいたいです」ギュッ
ガヴリール「ん……」ナデナデ
ラフィエル「もしかしたら……ホームシックだけじゃなかったのかもしれません」
ガヴリール「ん?」
ラフィエル「実際に……ガヴちゃんに……こうして抱きついて……なつかしくて……」
ラフィエル「ずっと、ずっとガヴちゃんに触れられなくて……」
ガヴリール(あの時胸を押し付けてきたのって……そういう……)
ラフィエル「ガヴちゃんとは同じ学校になれても別のクラスで……なかなか会う機会がなくて……」
ラフィエル「それに……ガヴちゃんはヴィーネさんばっかりで……」
ガヴリール(なんだ……私だけじゃなかった。ラフィも……似たようなこと考えてたのか……)
ラフィエル「確かにいつも会って、会話してたりもするんですが……」
ラフィエル「二人きりでこうして会うことって少なかったじゃないですか……」
ガヴリール「そう、だったな……」
ラフィエル「それが……とっても寂しかったみたいです……」
ガヴリール「そうか……」ナデナデ
ラフィエル「……」コクッ
ガヴリール「ラフィ……」
ラフィエル「ガヴちゃん……私達、これからも友達でいられますよね……」ギュッ
ガヴリール「……当たり前だろ」ナデナデ
ラフィエル「ヴィーネさんや、サターニャさんがいつか魔界に帰って……私達が天界に帰っても……」ギュゥッ
ガヴリール「うん」ナデナデ
ラフィエル「ずっと、ずっと友達……ですよね……?」ギュゥゥッ
ガヴリール「ああ、もちろんだ」ナデナデ
ラフィエル「……あは、すっきりしました」ニコッ
ガヴリール「力になれたみたいでよかった」
ラフィエル「ごめんなさいガヴちゃん。服をびしょ濡れにしちゃって」
ガヴリール「このくらい別にいいよ」
ラフィエル「ふふふ、ガヴちゃんの胸……胸は硬かったですが……とても柔らかい……優しさに包まれました」
ガヴリール「おー余裕が出てきたみたいでなによりだ」
ラフィエル「ふふ、ごめんなさい」
ガヴリール「許さん。今度はラフィが私に胸を貸す番だ」
ラフィエル「ちょっと今のガヴちゃんはなにをしでかすかわからないので~」
ガヴリール「あの時押し付けたり乗せたりしたくせによく言うな。いいから貸せ!」
ラフィエル「あ~♪」
ガヴリール(まったく……ほんとしょうがない奴だな)
数ヶ月後
ガヴリール(あれから時たまラフィエルはホームシックになり、その度に胸を貸していた)
ガヴリール(このまま、来年度も別のクラスだと……きっと寂しいだろう。二年生になれば修学旅行もある)
ガヴリール(私達と同じ班になりたいだろう。私も……ラフィエルと同じ班の方がいい)
ガヴリール(だから……ちょっと手を加えさせてもらった)
ガヴリール(このくらいならバレたとしても軽い注意ぐらいで済むだろ)
ガヴリール(クラス替えの結果……ヴィーネもサターニャも、もちろんラフィエルも気になってることだろう)
ガヴリール(ま、私は結果を知ってるから別にいいんだけど)
ラフィエル「あっ……!!ガヴちゃんっ!ヴィーネさん、サターニャさんっ!!」
ヴィーネ「わーっ!今年からはラフィも同じクラスになのね!」
サターニャ「ふーん……面倒なことになりそうねっ」
ヴィーネ「サターニャ、嬉しいなら素直に喜びなさいよ~」
サターニャ「べっ別にぃ~!?嬉しいとかそんなわけないし!?」
ヴィーネ「またまた~」
ラフィエル「ふふふ、これからよろしくお願いしますね♪」
ヴィーネ「ええ♪」
サターニャ「ふ、ふんっ」
ラフィエル「ガヴちゃんもっ」
ガヴリール「ん、もちろん」
ラフィエル「……ひょっとして、ガヴちゃんが?」
ガヴリール「さあ、何のことやら」
ラフィエル「天使の力はこういうところに使うものではないですが……」
ラフィエル「とても、とても嬉しいですっ」
ガヴリール「何の話をしてるのかさっぱりだな~」
ラフィエル「ふふふ……♪」
ガヴリール(この前のあれと比べたら……バレたとしても受けるバツなんて大したことないでしょ)
ガヴリール(それで……この4人が同じクラスになれるのなら……そんな学校生活が送れるのなら)
ガヴリール(安いものじゃないか。こんなお得な買い物滅多にないぞ)
ガヴリール「皆同じクラスになって気分もいいし、タプリスの入学祝いでもしてやるか」
ラフィエル「いいですね♪」
ガヴリール(やっぱラフィエルには……笑顔が一番似合うな)
END