ラフィエル「午後から雨だとわかっていたのに……うっかりしてました」
ラフィエル(ちらほらと傘を持ってきてない生徒を見かけます。やはり朝降ってないと忘れがちになるのかも知れませんね)
ラフィエル(まあ私は特に早く帰らなければならない理由もないですし、図書室で時間を潰すのもありですね)
ラフィエル(たしか夜まで降り続けるらしいですが……そうなったらそうなったで最終手段(神足通)を使えばいいだけですし)
ラフィエル(それにしても……こういう場に直面したときの人間の行動は見ていて面白いですね)
(早く止まないかなぁ……)
ラフィエル(雨が止むのをひたすら待つ人)
元スレ
ラフィエル「私としたことが傘を忘れてしまいました」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1495973450/
「そういえば軍人さんって邪魔になるから傘を持たないって聞いたことがあるんですが」
「たしかに……よし、走るぞ!」
ラフィエル(濡れることを厭わず強引に走り抜ける人)
「うわ……雨とか……傘持ってきてないわ……」
「これ借りちゃえば?w」
「そうするーw困ったときはお互い様っていうしねw」
ラフィエル(人の傘を無断で使用する人……流石にこれは人々を導く天使としては見過ごせませんね)
ラフィエル「あのー失礼ですが……」
サターニャ「ちょっと!それ私の傘なんだけど!」
ラフィエル(サターニャさん!?)
「は?」
「ちょ、こいつ1-Bのあのやばいやつだよ……」
「うわ……ほんとだ……じょ、冗談だよ~胡桃沢さーん……」
ラフィエル(露骨に警戒されてますね……。まああの体力測定の結果(特に握力200kgオーバー)は全校生徒の知るところとなってますし)
ラフィエル(無理もないかもしれませんね)
サターニャ「ったく……。人間め恐ろしいことを……」
ラフィエル「ふふ、(ある意味)人々に恐れられてきましたね。サターニャさん」
サターニャ「な゛っラフィエル!いつからそこに……!」
ラフィエル「サターニャさんが来る前からですよ」
サターニャ「てっきりもう帰ったかと……ん?まさか~?」
サターニャ「傘忘れちゃったの~?」ニマニマ
ラフィエル「そうですが……?」
サターニャ「あはははっ!ラフィエルでもそういうことしちゃうのね!」
ラフィエル(とても嬉しそうですね)
ラフィエル「何も言い返せないですね~」
サターニャ「これは実質……私の勝ちね!?」
ラフィエル(勝ち負けの要素ありましたっけ)
ラフィエル「そういうことになりますかね?」
サターニャ「なーっはっはっはっ!」
ラフィエル(本当に嬉しそうですね)
サターニャ「……」
ラフィエル「……」
サターニャ「……で、どうするのよ」
ラフィエル「どうする、とは?」
サターニャ「この後よ。今日予報じゃ夜まで雨って言ってたし」
ラフィエル「そうですねー……。雨に打たれながら帰るのも悪くはないかもしれませんね」
サターニャ「ふーん……」
ラフィエル「まあ、図書館で時間を潰しつつ最悪神足……」
サターニャ「ん……」スッ
ラフィエル「……えっと。傘をくれるということでしょうか?」
サターニャ「図々しすぎるでしょ!!入れてあげてもいいってことよ!!」
ラフィエル(意外なお誘いが)
ラフィエル「いいんですか?私なんかを」
サターニャ「傘を忘れただけでも無様なのに更に雨でびしょ濡れになるか学校に取り残されるかなんて?まあ可哀想だし?」
サターニャ「大悪魔の慈悲ってやつよ」
ラフィエル(正直学校に居残ることぐらい大して苦ではないのですが……うれしいですね。サターニャさんから誘ってくれるなんて)
サターニャ「それに……この前の借りも返したいし……」
ラフィエル「そういえばこの前の雨の日はサターニャさんが傘を忘れたんでしたね」
サターニャ「そうよ。悪魔は借りを作らないし作ったとしても必ず返すのよ」
ラフィエル「ふふ、そういうことならご一緒させてもらいますね」
サターニャ「勘違いしないでよ?ただの気まぐれ!あんたの無様さに見かねて!ちょうど借りも返せるいい機会だったからよ!?」
ラフィエル「ふふふ、わかってますよ」
サターニャ「本当なんだからね!?」
ラフィエル「はい♪ありがとうございますサターニャさん♪」
サターニャ「……ほら、入りなさいよ」
ラフィエル「では失礼しますね」
サターニャ「……」
ラフィエル「……」
ラフィエル(サターニャさん、相合傘に慣れてないのかずっと傘の位置を調整してますね)
ラフィエル(ふふ、本当に優しい……)クスッ
サターニャ「……!」
サターニャ「か、勘違いしてるようだけど……これは罠よ」
ラフィエル「罠、とは?」
サターニャ「ラフィエル、あんたは雨の牢獄に囚われた。動けるのはこの私が手にする傘の中だけ」
サターニャ「そう、私はあんたの動きを封じたも同然!これから容赦なく襲いかかるデビルズトラップに恐怖することね!」
ラフィエル「ふふ、わかりました。注意してますね」
ラフィエル(……何も言わずに道路の方を歩いてくれている)
ラフィエル(そして私の歩きやすい速さで歩いてくれている)
ラフィエル(偶然でしょうか?)
ラフィエル(……ふふ、詮索するのはあまりよろしくないですよね)ニコニコ
サターニャ「な、なによ」
ラフィエル「いえ、なんでも♪」
サターニャ「……」キョロキョロ
ラフィエル「……」
サターニャ「た、例えばあの水たまり!実はあれが奈落の底につながっているとか!」
ラフィエル「怖いですね~」
サターニャ「向かいから来るトラックがラフィエルに向かってくるとか!」
ラフィエル「洒落にならないですね~」
サターニャ「空からいきなり大量の蛙が!」
ラフィエル「実はファフロッキーズ現象って天界から下界に物を落してしまうことで起こるんですよ」
サターニャ「そうなの!?」
ラフィエル「嘘です」
サターニャ「なんなのよ!!」
ラフィエル(ふふ、サターニャさんは嘘が下手ですね)
サターニャ「……」
ラフィエル「……あの」
サターニャ「なによ」
ラフィエル「やはり二人で一つの傘だと狭いので」
サターニャ「もしかして自分ひとりで使うつもり!?」
ラフィエル「いえ、もっと近づいてもいいですか?こう」ギューッ
サターニャ「……」
サターニャ「まあ、私も濡れたくないし。特別に許すわ」
ラフィエル「……♪」
サターニャ「……」
ラフィエル「ところで罠は?」
サターニャ「あっ」
ラフィエル(『あっ』って。自分でも忘れてたんですね)
サターニャ「こ、これからよ!そう!罠はここから仕掛けられてるの!」
ラフィエル「では楽しみにしてますね」
サターニャ「……」
ラフィエル(そう言いつつ結局罠がでてくることもなく)
ラフィエル(サターニャさんの家が近づいてきました)
サターニャ「……」
ラフィエル「……あ、れ?」
ラフィエル「サターニャさんの家って向こうですよね?こっちは私の家の方ですよ?」
サターニャ「……罠はこっちにあるのよ。別にあんたを家まで送るとかそういうわけじゃないから」
ラフィエル「サターニャさん……」
サターニャ「だ、だから違うってば!」
ラフィエル「ふふ、わかりました♪」
サターニャ「い、いつまで余裕ぶっこいていられるかしら」
サターニャ「今にも泣き縋る姿が目に浮かぶわ!なーっはっはっはっ!」
ラフィエル「怖い、怖いですー♪」
ラフィエル(ただでさえ一緒の傘に入れて貰えただけでも嬉しいというのに……)
ラフィエル(私の家まで送って貰えるなんて……)
サターニャ「……」
ラフィエル「……♪」
ゲコッ
ラフィエル「……!!!」
サターニャ「あ……蛙」
サターニャ「……そ、そう!これが私のデビルズトラップ!どう!?思い知った!?」
ラフィエル「……っ」ギュゥゥゥッ
サターニャ「……」
ゲコッ ゲコゲコッ
ラフィエル「う……!」
ラフィエル(まさかこんなところで蛙が飛び出してくるなんて……あ~近付かないでください……)
ラフィエル(蛙に触れられるくらいなら雨に濡れてでも家まで駆け抜けてしまうほうがずっとマシ……!)ギュゥゥッ
サターニャ「……」
ピョンッ ピョンッ
ラフィエル「ひぃ……」
サターニャ「あー……えーと……よくやったわ蛙!もう十分よ!だから帰りなさい」シッシッ
ゲコゲコ
ピョンッピョンッ
ラフィエル(追い払ってくれた……?)
サターニャ「ほ、本当なら蛙の恐怖に晒してやるところだったけど?」
サターニャ「せっかくの獲物、一瞬で潰してしまうのは勿体無いわ。そう、あえて生かすことで長く苦しめる」
サターニャ「これがサタニキア流悪魔的行為よ」
ラフィエル(サターニャさん……やっぱり嘘が下手なんですから……)
ラフィエル「サターニャさん……」
サターニャ「な、なによ……」
ラフィエル「ありが――」
パパァンッ
ラフィエル(車……雨、水たまり……あっこれって)
バシャァァァァァッ!!!
ラフィエル(や、やっぱりー!)
ラフィエル「……ずぶ濡れ」
サターニャ「……あ、ははは!こ、これが真のトラップ……油断したところでびしょ濡れにする……」
ラフィエル「サターニャさん……自滅してるじゃないですか」
サターニャ「肉を切らせて骨を断つってやつよ……」
ラフィエル「どちらも同じダメージ……むしろサターニャさんのほうが」
ラフィエル(そういえば……サターニャさんずっと道路側を歩いてくれてたんですね)
ラフィエル(……天使や悪魔のあり方は昔と比べて本当に大きく変わりましたね)
ラフィエル宅前
ラフィエル「……」
サターニャ「……着いたわね」
ラフィエル「はい。ありがとうございました」
サターニャ「……その、ごめんなさい」
ラフィエル「?」
サターニャ「びしょ濡れにしちゃって……」
ラフィエル「あれはサターニャさんが悪いわけじゃないですし。気にしてませんよ」
サターニャ「でも私がとっさに反応できてたら……」
ラフィエル「結果論じゃないですか」
サターニャ「でも……」
ラフィエル「というか罠という設定忘れてますよね」クスクス
サターニャ「あ」
ラフィエル「……ふふ、わかりました。ではあれはサターニャさんが悪いということにしておきましょう」
ラフィエル「なので責任を取ってもらいます。ずぶ濡れになりましたし、お風呂で背中でも流してもらいましょうか♪」
サターニャ「それって」
ラフィエル「おっと。その先を言うのは野暮というものですよ」
サターニャ「……そうね。わかったわ。そういうことならお邪魔させてもらうわ」
ラフィエル「ふふふ……いらっしゃいませー♪すぐお風呂沸かしますね」
サターニャ「ええ」
ラフィエル「あ、タオルどうぞ~」
ラフィエル(昔の方々から見れば私たちは天使として、悪魔としては劣っているのでしょう)
ラフィエル「ふぅ……さっぱりしました」
サターニャ「お風呂とー……着替えもありがとう」
ラフィエル「いえいえ。サイズも近くて良かったです」
サターニャ「また借りができちゃったわね」
ラフィエル「ふふ、背中を流してもらったのでチャラですよ」
サターニャ「それなら私だって背中流してもらったし。その分の借りがあるわ」
ラフィエル「なるほど。ではそれはまた後ほど返していただくことにしましょう♪」
ラフィエル(ですが……だからこそ新しいこの世界でみんなに出会えたと言えるのではないでしょうか)
ラフィエル「あ、ついでにご飯も食べていきませんか♪」
サターニャ「いいの?」
ラフィエル「はい♪この際たくさん借りを作って後日いっぺんに返してもらおうかと♪」
サターニャ「なるほど……悪魔的な誘いね……」
ラフィエル「ふふ、どうですか」
サターニャ「いいわ、のってあげる!」
ラフィエル(高みを目指すことは結構なこと。ですが……落ちぶれてしまうのは悪いこととは限らないと思うのです)
サターニャ「まさか成り行きで泊まることになるとはね……」
ラフィエル「一人暮らしならではですよね」
サターニャ「……ところで一緒の布団は狭くない?この前だって狭いって」
ラフィエル「ふふ。今日はそういう気分なんですよ」
サターニャ「ふーん……なら、いいわ」
ラフィエル(少なくとも……私から見れば天使と悪魔が殺し合う残酷な時代よりも……)
ラフィエル(こうして手と手を取り合える平和で優しい世界のほうが素晴らしいと思うのです)
ラフィエル「では……電気消しますね」
サターニャ「ん……」
ラフィエル「サターニャさん」
サターニャ「なによ」
ラフィエル「今日はありがとうございました♪」
サターニャ「……こちらこそ、よ」
ラフィエル「ふふ、おやすみなさい……♪」
サターニャ「ええ……おやすみ……」
ラフィエル(そう、私は思うんです。なんて素晴らしい世界なんだと)
END