1 : 以下、\... - 2017/03/03 19:09:15.686 70cFPG5S00303.net 1/34

暗い夜道――

「あーあ、予備校で自習してたらすっかり遅くなっちゃった」

「こんな夜道は……幽霊かなんか出てきそうで怖いなぁ……」

お冷や娘「あのー……」ボァァ…

「うわぁぁぁっ! マジで出たぁぁぁっ!」

「お願いします! 俺、受験を控えてるんです! だから助けて……!」

お冷や娘「お冷やいかがですか?」

「へ?」

元スレ
お冷や娘「お冷やのお代わりいかがですか?」男「ありがとう!」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1488535755/

5 : 以下、\... - 2017/03/03 19:12:15.121 70cFPG5S00303.net 2/34

「え、と……じゃあいただきます」

お冷や娘「どうぞ」

「……」ゴクゴク

「うまい! こんなおいしい水は初めてだ!」

お冷や娘「本当ですか? ありがとうございます!」

お冷や娘「よろしければ、お冷やのお代わりいかがですか?」

「ありがとう!」

7 : 以下、\... - 2017/03/03 19:15:17.476 70cFPG5S00303.net 3/34

お冷や娘「お冷やのお代わりいかがですか?」

「いや……もういいよ。五杯も飲んだし」

「ところで、君は何者なの?」

お冷や娘「私は“お冷や娘”という妖怪なんです」

「へぇ~、妖怪なんだ。見かけは普通の女の子なのに……」

お冷や娘「あ、あの……」

「なに?」

お冷や娘「私、今までも色んな人にお冷やをおすすめしたんですけど、飲んでもらえなくて……」

お冷や娘「あなたみたいな人、初めてで……」

「……」

お冷や娘「これからもあなたのためにお冷やを入れてもよろしいですか?」

「もちろんいいとも! こんなおいしい水なら大歓迎だよ!」

お冷や娘「ありがとうございます!」

8 : 以下、\... - 2017/03/03 19:17:30.437 70cFPG5S00303.net 4/34

―自宅―

(○○大学目指して、勉強、勉強っと……)カリカリカリカリ…

「ノドが渇いたなぁ……」

お冷や娘「お冷やのお代わりいかがですか?」

「おっ、ありがとう! 喜んでいただくよ!」

「……」ゴクゴク

「よーっし、勉強再開だ!」

(この子の入れてくれた水を飲むと、頭がスカッと冴えるんだよな~)

13 : 以下、\... - 2017/03/03 19:20:13.834 70cFPG5S00303.net 5/34

―予備校―

「やったー! 模試の成績がグンとアップした!」

お冷や娘「おめでとうございます!」

「これも君のお冷やのおかげかもしれないな」

お冷や娘「でしたら……お冷やのお代わりいかがですか?」

「もちろんいただくよ!」

「……」ゴクゴク

「よーっし、受験本番まで残りわずか! 水を飲んでラストスパートだ!」

14 : 以下、\... - 2017/03/03 19:23:18.805 70cFPG5S00303.net 6/34

試験当日――

―受験会場―

「ううう~……緊張してきた……」

(まずいな……こんなんじゃ実力の半分も出せるかどうか……)

(あの子のお冷やが飲みたい……)

お冷や娘「お冷やのお代わりいかがですか?」

「さすが妖怪! こんなところまでついてくるなんて!」

「いただきます!」ゴクゴク

15 : 以下、\... - 2017/03/03 19:26:09.865 70cFPG5S00303.net 7/34

――

「303番、303番……あった! あったぞ!」

「やったーっ! 志望校に合格した!」

お冷や娘「やりましたね!」

「うん……長年の苦労が報われたよ!」

お冷や娘「お冷やのお代わりいかがですか?」

「いただきます!」ゴクゴク

「ぷはーっ、うまい! よーし大学生活をエンジョイしてやるぜ!」

16 : 以下、\... - 2017/03/03 19:30:32.670 70cFPG5S00303.net 8/34

―大学―

学生A「おーい!」

「ん?」

学生A「今日、飲み行こうぜ!」

「え、でも、こないだ飲み会やったばかりじゃん」

学生B「可愛い女の子もいっぱいくんのよ~」

「マジ? なら行く行く!」

(大学入ってからは、酒飲んでばかりでお冷やあまり飲まなくなったな……)

18 : 以下、\... - 2017/03/03 19:33:42.660 70cFPG5S00303.net 9/34

―居酒屋―

カンパーイッ!!!


学生A「ウェーイ!」

学生B「ウェ~~~イ!」

女子大生「キャハハ、やだぁ~!」

「ウェイウェイウェ~イ!」グビグビッ

(楽しいぃ~! 毎日、飲んで酔っ払ってドンチャン騒ぎ! 大学生ってのはこうでなくちゃ!)

19 : 以下、\... - 2017/03/03 19:36:41.378 70cFPG5S00303.net 10/34

お冷や娘「あの……」

「うわ、ビックリした! いきなり出てくんなよ!」

お冷や娘「お冷やのお代わりいかがですか?」

「お冷やぁ~?」

「いやいらないよ……。酒飲んでるし、いい感じに酔ってるし」

お冷や娘「そう……ですか」

(こんなにノリにノッてるのに、水なんか飲んだら文字通り水差されちまうよ)

21 : 以下、\... - 2017/03/03 19:39:32.945 70cFPG5S00303.net 11/34

学生A「あれ? 今、そこに女の子がいなかったか?」

学生B「ああオレもたしかに見えた」

「!」

「え、あ……気のせいだろ? さ、つまらんことは気にせず、ガンガン飲もうぜ!」

「イッキイッキ!」

「ウェイウェイウェ~~~~~~~~~イ!!!」

ウェーイッ!!!

22 : 以下、\... - 2017/03/03 19:43:06.225 70cFPG5S00303.net 12/34

(あー……すっかり酔っ払っちまったな……いい気分だ……)ヒック…

(これで、女の子と知り合えれば最高なんだけど……)

女子大生「ねえねえ」

「……ん?」

女子大生「あたし、なんだか酔っちゃったかな~なんて……」ヨロッ…

(おいおいマジかよ! お持ち帰りチャ~ンス!)

「じゃさじゃさ、俺この近くでアパート借りてるから、そこ行こうよ!」

女子大生「いいけど、変なことしないでよ?」

「しないしない!(するする!)」

24 : 以下、\... - 2017/03/03 19:47:05.185 70cFPG5S00303.net 13/34

―アパート―

「ささ、どうぞどうぞ! 上がって上がって!」

女子大生「へ~、結構キレイにしてるんだね」

「もちろん!」

「ほら、布団もバッチリ……」

女子大生「ほぉら~、やっぱり下心あるんじゃない~」

「ハハ、まぁね……」

女子大生「でも、とりあえずまずは水を飲みたいなぁ~」

「ああ、水ね、うんうん。ちょっと待っててね、すぐ持ってくるから」

(水を飲ませたら……やったるでぇ!)

25 : 以下、\... - 2017/03/03 19:49:01.559 70cFPG5S00303.net 14/34

お冷や娘「お冷やのお代わりいかがですか?」




「!?」

女子大生「!?」

26 : 以下、\... - 2017/03/03 19:53:04.504 70cFPG5S00303.net 15/34

(ちょっ……なんで今出てくんだよ……!)

「いらない! いらないから! さ、早く消えろ!」

お冷や娘「ええっ……でも……その女の人、お冷やを……」

「いいから消えろ!」

女子大生「……」

女子大生「ちょっとぉ、今の子なんなの?」

「あ、いや、親戚の子で……」

女子大生「そんな子が来てるなら、最初に言ってよ! あ~あ、もうすっかり冷めちゃった」

女子大生「あたし帰るね」バタンッ

「……」

(ふざけやがって~……!)ギリッ…

27 : 以下、\... - 2017/03/03 19:55:43.335 70cFPG5S00303.net 16/34

やがて――

―アパート―

「よしっ! いよいよ就職活動だ!」

「スーツよし、ネクタイよし、ヘアスタイルよし、バッグよし!」ビシッ

「面接にしゅっぱーつ!」

(絶対一流企業に入社してやるぞ……!)

28 : 以下、\... - 2017/03/03 19:58:26.295 70cFPG5S00303.net 17/34

―面接会場―

面接官「それではまず……志望動機をお答え下さい」

「は、はいっ!」

「えぇ~と、私は、私は御社の……えぇ~と……あの、その……」

「なんと申しますか……その……隠蔽体質が素晴らしいと思いまして……」

(まずい……うまく声が出せない……!)

面接官「落ち着いて、ゆっくり話して下さい」

「すみません、緊張してノドが……」

29 : 以下、\... - 2017/03/03 20:02:32.350 70cFPG5S00303.net 18/34

お冷や娘「お冷やのお代わりいかがですか?」

「うわっ!?」

面接官「え!?」

「いらねえよ!」

お冷や娘「ひっ!」

「なんでこんな大事な場面で出てくんだよ! 空気読めよなぁ~!」

お冷や娘「ご、ごめんなさい……」

面接官「あの……私はいただこうかな」

お冷や娘「はいっ!」

「……」イライラ…

(あ~もう落ちたよ、この面接! こいつのせいで!)

30 : 以下、\... - 2017/03/03 20:06:13.286 70cFPG5S00303.net 19/34

―アパート―

「……」

お冷や娘「あの……今日はごめんなさい……」

お冷や娘「今度からは出てくるタイミングに気をつけますから……」

「……出てけよ」

お冷や娘「え」

「俺ももういい大人だ! もうお冷やなんていらねーんだよ!」

「酒を飲みたいし、コーヒー飲みたいし、紅茶飲みたいし、緑茶飲みたいんだよ!」

「バイトだってやってるし、就職するし、水が飲みたきゃ自分でミネラルウォーター買うわ!」

「もうお前なんかいらねえんだよ!」

「――出てけっ!!!」

33 : 以下、\... - 2017/03/03 20:10:25.688 70cFPG5S00303.net 20/34

お冷や娘「分かりました……出ていきます……」

お冷や娘「失礼します……」フッ…



「……」

(これでよかったんだ……)

(俺だってもう社会人になるんだ……)

(いつまでもあいつにつきまとわれたんじゃ、たまったもんじゃないからな)

34 : 以下、\... - 2017/03/03 20:13:33.425 70cFPG5S00303.net 21/34

―会社―

プルルル…

「お電話ありがとうございます、××株式会社です」

「はい……はいっ……! あ、すみません、すぐ確認します!」

「はいっ、すみませんでした……」ガチャッ

「あ~……毎日忙しい。水分補給するヒマもねーや」

「おーい、お冷や!」



(……って、あいつはもういないんだった……)

35 : 以下、\... - 2017/03/03 20:16:55.203 70cFPG5S00303.net 22/34

「あのー、OLさん」

OL「なに?」

「お茶を入れてくれたら、嬉しいなぁ~……なんて……」

OL「ハァ? 女子社員をお茶くみ係扱いするなんてサイテー!」

OL「セクハラよ、セクハラ! 訴えてやる! 社会的に抹殺してやる!」

「ひっ、すみません! 訴えないで下さい!」



「……はぁ」

(なんつうか、あいつがいなくなってから、調子悪くなったような気がする……)

37 : 以下、\... - 2017/03/03 20:20:17.854 70cFPG5S00303.net 23/34

課長「君ィ!」

「は、はいっ!」

課長「なにをやっとるんだ!」

課長「こんな初歩的なミスをしでかすなんて! 損害は1000万を超えるぞ!」

「申し訳ありません! 申し訳ありません!」ペコペコ

課長「謝って済む問題じゃないだろう!」

(あぁ~……俺としたことが、なんでこんな凡ミスを……!)

(頭を落ち着かせるためにお冷やを飲みたい……でも、あいつはもういない……!)

39 : 以下、\... - 2017/03/03 20:23:23.212 70cFPG5S00303.net 24/34

そして――

「お話しとはなんでしょう、課長」

課長「うむ、君のサハラ砂漠支社への転勤が決定した」

課長「頑張ってくれたまえ」

「!」ガーン

(サハラ砂漠支社勤務っていったら、左遷中の左遷だ……流刑みたいなもんだ……)

(終わったな……俺の人生)

42 : 以下、\... - 2017/03/03 20:27:41.538 70cFPG5S00303.net 25/34

―サハラ支社―

(辞めることもできず、本当に来ちゃったよ、サハラ砂漠……)

サハラ課長「この書類をオアシスにある取引先まで届けてくれたまエ!」

「は、はい……」

「あのー、オアシスってどうやって行けばいいんですか?」

サハラ課長「ここから西へ500kmほどダ」

「500km!?」

「ここには営業車も電車もありませんし……まさか……徒歩で?」

サハラ課長「ラクダがあるヨ」

(マジかよ……)

45 : 以下、\... - 2017/03/03 20:32:12.958 70cFPG5S00303.net 26/34

―サハラ砂漠―

ラクダ「……」ポッコポッコ

「ハァ、ハァ、ハァ……」

(見渡す限りの砂、砂、砂……)

(いったいどこまで続くんだ、この砂漠は……)

(しかも昼はクソ暑いし、夜はクソ寒いし、空気は乾いてるし……生き地獄とはこのことだな……)

「……」グビグビ…

(やべえ、水もうなくなっちまった……ペース配分ミスった)

(今日中にオアシスにたどり着かないと……死んじまう……!)

46 : 以下、\... - 2017/03/03 20:35:53.424 70cFPG5S00303.net 27/34

「ハァ、ハァ、ハァ……」

「ううっ……」ドサッ…

ラクダ「……」

「ラクダ、助けて……」

ラクダ「お前がいない方が楽だ」ポッコポッコ

「そんな……見捨てないで……!」

ポッコポッコ…

「あああ……!」ガクッ

51 : 以下、\... - 2017/03/03 20:40:10.951 70cFPG5S00303.net 28/34

(もう……体が、動かない……)

(体がみるみるうちに干からびていく……)

(俺はここで死んでミイラになるのか……)

(ノド渇いた……水飲みたい……)

(日本にいる時は、水がこんなに大切なものだなんて分からなかった……)

(水が……お冷やが……飲みたいよぉ……!)

53 : 以下、\... - 2017/03/03 20:42:30.320 70cFPG5S00303.net 29/34

「お冷やのお代わりいかがですか?」





「……え!?」

54 : 以下、\... - 2017/03/03 20:46:30.674 70cFPG5S00303.net 30/34

お冷や娘「なんていってる場合じゃありませんね」

お冷や娘「さ、飲んで下さい! ムリヤリ飲ませますよ!」グイッ

「……」ゴクゴク

「っぷはっ! あ、ありがとう! 生き返ったよ!」

お冷や娘「お冷やのお代わりいかがですか?」

「もちろんいただくよ!」

ゴクゴク…

「うまい! もう一杯!」

お冷や娘「喜んで!」

57 : 以下、\... - 2017/03/03 20:49:11.950 70cFPG5S00303.net 31/34

「ありがとう……助かった……。おかげで、生きてオアシスまでたどり着けそうだ……」

お冷や娘「いえいえ」

「でも、どうして……!? どうして戻ってきたんだ!? 俺はあんなひどいこといったのに……」

お冷や娘「ひどいことって……私があなたの邪魔をしたのは事実ですし」

お冷や娘「それに……あなたが私のお冷やを必要とすれば、どこへでも駆けつけますよ!」

お冷や娘「たとえ火の中水の中、砂漠の中!」

「うっ……」グスッ…

60 : 以下、\... - 2017/03/03 20:53:39.229 70cFPG5S00303.net 32/34

「ごめんよ!」ギュッ…

お冷や娘「あっ……」ポッ…

「あんなひどいこといって、本当にごめん!」

「だけど、もし許してくれるなら……まだ俺にお冷やを入れてくれるっていうなら……」

「これからずっと……一生……俺にお冷やを入れてくれ! ――俺のために!」

お冷や娘「……!」

お冷や娘「……はいっ」


――――

――

62 : 以下、\... - 2017/03/03 20:57:07.983 70cFPG5S00303.net 33/34

―サハラ支社―

サハラ課長「おーい、この書類仕上げてくレ!」

「分かりました!」

サハラ課長「いやー、このところ君の仕事ぶりはめざましいネ」

サハラ課長「この調子なら、日本の本社に帰れる日も近いだロウ」

「いやー、俺はこのままサハラ砂漠に骨をうずめてもいいですけどね」

「砂漠生活もすっかり気に入っちゃいましたし」

サハラ課長「ハハハ……お世辞でもそういってもらえると嬉しいヨ」

64 : 以下、\... - 2017/03/03 21:00:32.686 70cFPG5S00303.net 34/34

「しっかし、今日も暑いな~、サハラ砂漠は」

「俺も砂漠にだいぶ適応してきたけど、ノドが渇いてきちゃった」

「ってわけで……」

お冷や娘「お冷やのお代わりいかがですか?」

「ありがとう!」





―おわり―

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