6年前の夏のある日。
小学2年生の京子は、結衣とあかりと一緒に、いつもの公園で遊んでいた。
結衣「今日は何して遊ぶ!?」
あかり「はい、結衣隊長!あかりはブランコがやりたいです!」
京子「私、すべり台がいい・・・」
恥ずかしそうにしながらも、何とか自分の意見を言う京子。
元スレ
京子「結衣とあかりとの、6年前の思い出」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1350303130/
京子は、ひどく引っ込み思案な子どもだった。
小学校の給食の時間、デザートが余ったときには決まってじゃんけんによる争奪戦が繰り広げられたものだが、京子は決してその輪に入らなかった。
元々、何かを奪い合うような活発なキャラではなかったのだ。
しかし、心の中ではそうした争奪戦に加わりたいと密かに思っていた。
ある日のこと、珍しく給食に出たアイスの余りを賭け、ジャンケンが始まった。
「いくぞー!」
「最初はグー!ジャンケンポン!!」
京子(いいなぁ…アイス)
アイスは京子の大好物だった。
正直、欲しくて欲しくてたまらなかった。
15人ほどで行われているジャンケン大会を横目で見ながら、京子はため息をついた。
友達A「京子ちゃん、行かなくてよかったの?」
京子「え?わ、私、アイスが欲しいわけじゃ…」
友達A「そうなの?なんかうらやましそうに見てたから」
京子「そんなこと、ないよ…」
友達A「それにしても元気いっぱいだよね~、結衣ちゃん」
京子「うん、本当に…」
京子のさみしげな視線の先には、威勢のいい声でジャンケンに夢中になっている結衣の姿があった。
京子(私も、結衣みたいに活発になれたらなぁ…)
以前は、結衣からジャンケン大会に誘われたこともあったが、断ってしまった。
仮に京子がジャンケンに加わっていたところで、誰もそこまで変だとは思わなかっただろう。
ただ、京子自身としては、自分がガラにもないことをするのがひどく恥ずかしく思えたのだ。
そんな京子だったが、幼馴染の結衣とあかりは毎日毎日仲良く明るく接してくれた。
京子(もし、結衣ちゃんとあかりちゃんがいなかったら…)
そう考えるとたまらない不安に駆られるほど、2人は京子の心の拠り所となっていた。
ただ、いつまでも他人に依存していてはいけない…と幼心に思うようになっていった。
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あかり「はい、結衣隊長!あかりはブランコがやりたいです!」
京子「私、すべり台がいい・・・」
結衣「よし!間を取って、ジャングルジムだ!」
京子(ジャングルジム…?)
いつもの京子なら、特に疑問も抱かず結衣の意見に従うだけだった。
しかし今日に限って、京子の心の中に小さな疑念が生まれていた。
京子(ジャングルジムって、ブランコも滑り台も関係ない…)
京子(もしかして結衣、自分がジャングルジムやりたいだけ…?)
実際、結衣はそんな自分勝手なことを考える子ではない。
結衣としては、本当に"間を取った"つもりだった。
あかり「わぁい!あかりジャングルジムも大好き!」
結衣「よし、決まりだ!」
京子「…ちょ…ちょっと待って」
結衣「どうした?京子」
京子「あ、あのね…私…」
あかり「どうかしたの?京子ちゃん」
京子「私…やっぱりすべり台がいい…」
結衣・あかり「え…?」
突然の京子の言葉に面食らう2人。
京子が自分の意見を通そうとしてきたことなどたぶん初めてだったから、無理もなかった。
結衣「そ…そっか」
結衣「ごめんね、ジャングルジム嫌だった?」
結衣から戸惑いの表情を向けられ、京子の心がズキンと痛む。
普通に考えて特に気にすることではないのだが、これまで結衣の意見を曲げたことのない京子は、罪悪感を感じていた。
京子「あ…。い、嫌じゃないよ!」
結衣「…そうなの?」
京子「うん、ただ何となく言ってみただけ…」
結衣「…あはは、そうだったのかぁ。でも、もしすべり台の方がいいなら今日はそっちにしようか?」
あかり「あ、あかりも、全然そっちでもいいよ!」
結局、その日はすべり台で遊ぶことになった。
結衣もあかりも、いつも通り明るく元気に遊んでくれた。
しかし、心なしか2人の笑顔に陰りがあるように京子には感じられた。
結衣「あー、今日も楽しかったぁ!」
あかり「ホントホント!」
京子「……」
結衣「…京子、さっきからなんか元気ないよね?」
京子「え…」
あかり「元気出してよ、京子ちゃん!」
京子「わ、私、元から元気じゃないし…」
弱々しい声でそう言ってうつむく京子を見て、結衣が少しだけ眉をひそめた。
結衣「京子、さっきからどうしたっていうんだよ!? 私、何か悪いことしたかなぁ?」
京子「…!」ビクッ
あかり「ちょ、ちょっと結衣ちゃん…」
結衣「京子は、やっぱりもっとしっかりするべきだよ!」
京子「ゆ、結衣…?」
京子の目に、涙があふれた。
京子「ごめん、私…!」
くるりと結衣たちの方へ背を向け、突然走り出す京子。
結衣「あ、待って京子!」
あかり「京子ちゃん!」
京子(あれ、なんで私、こんなに逃げてるんだろう…)
自分の行動が自分でもよくわからなくなっていた。
もしかすると、急に声を荒げた結衣が、そのまま一気に自分を嫌いになってしまう気がして、その場にいるのがたまらなく怖くなったのかもしれない。
京子は必死に走ったが、まだ30秒とたたないうちに、勢いあまって石につまづいてしまった。
そのまま地面に倒れる京子。
京子「いたっ!」
結衣「京子!大丈夫か!?」
あかり「京子ちゃん!」
すぐに京子に追いついた2人が駆け寄る。
京子「うぅ、結衣ぃ…。あかりちゃん…。本当にごめん…」
2人の目の前で、京子はポロポロと大粒の涙を流した。
結衣「…京子!」ガバッ
京子「結衣…?」
突然結衣に抱きしめられ、戸惑う京子。
結衣「ごめんね、京子」
結衣「おとなしくても、いつもニコニコ笑っててくれる可愛い京子が、私は大好きなんだよ!それなのに、さっきみたいなこと…」
あかり「結衣ちゃん…」
京子「ううん、いいの。私こそ、変な態度とっちゃって…」
京子「結衣が無理やりジャングルジムやろうとしてるのかな、とか変なこと考えちゃったんだ…。本当にごめん」
結衣「ううん、謝らないで。それより私、本当にひどいこと…」
今度は、結衣がポロポロと涙を流し続ける。
ちゅっ
結衣「え…?」
ふいに、京子が結衣の頬に口づけをした。
京子「これ、仲直りのおまじない…。お父さんとお母さんが昔やってたんだって」
結衣「京子…」
京子「だから、ね?もう泣かないで」ニコッ
結衣「京子…!」ガバッ
京子「ちょ、ちょっと苦しいよ、結衣ぃ…」///
しばらく抱き合って離れた後、顔を見合わせてほほ笑む2人。
京子「結衣、大好きだよ…」
あかり「あ~っ、さっきから2人ばっかりずるーい!あかりも入れてよぉ!」
ガバッ
あかり「え、京子ちゃん…?」
突然京子に抱きつかれ、一瞬戸惑うあかり。
京子「あかりちゃん…私、あかりちゃんのことだって大好きなんだよ?」
あかり「な、なんだか照れるよぉ…」///
京子「あかりちゃん、顔真っ赤だよ?」
あかり「え!?だ、だって…急に抱きついてくるんだもん」///
結衣「はは、あかり緊張してるんだな」
あかり「もー結衣ちゃん!からかわないでよぉ」
京子「あかりちゃん、こういうことするの嫌だった?」
あかり「い、嫌じゃないよ!あかりも京子ちゃんのこと大好きだよ!」
京子「じゃあ、私のことギューってして…」
あかり「う、うん…」
あかりは少し力を込めて、京子を抱きしめた。
年上とはいえ、華奢で可愛らしい京子を抱きしめて、あかりは一瞬ドキっとしてしまった。
あかり(京子ちゃん…、やっぱり可愛いなぁ…)
しばらく抱き合ったのち、先ほどの結衣と京子のように見つめあう。
京子「ありがとう、あかりちゃん。わがまま聞いてくれて…」
あかり「う、ううん!なんていうかその…あ、あかりも嬉しかったし…」
結衣「ふふ、あかり照れてるなあ」
あかり「もー、結衣ちゃんってば!」
結衣「あはは」
あかり「あ、京子ちゃん…あかりのわがままも聞いてほしいなぁ」
京子「どんな?」
あかり「……ん」
あかりは、自分の頬を指差した。
京子「…うん、わかった」
京子はニコっと笑って、あかりの頬に口づけをした。
あかり「ありがとう、あかり嬉しい…」
京子「えへへ」///
京子(やっぱり私は、結衣とあかりちゃんから当分自立できそうにない)
京子(でも、それでもいいや)
京子(大きくなっても、ずっとこうして結衣とあかりちゃんと一緒に過ごせたらいいな…)
京子「結衣、あかりちゃん、大好きだよ!」
◇おしまい◇

