サターニャ「…タイムマシン?」
魔界通販『ええ。これを使えば、なんと戻りたい過去に戻ることが出来ます!』
魔界通販『多少お値段は張りますが…この性能でこのお値段はまさに破格と言っていいでしょう!』
魔界通販『さらに今ならポイント2倍に目覚まし時計と台所用洗剤、卓上クリーナーにマンガン乾電池40本をお付けして…』
サターニャ「クックック…過去に戻って、自分の都合のいいように過去を改変する…素晴らしいじゃない。なんて悪魔的な装置…!」
サターニャ「今月の仕送り全部はたいて買わせてもらうわ!」prrrrr
元スレ
ガヴリール「時をかけるサターニャ?」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1489587779/
ガヴ「で、あと1ヶ月は何も食べれないし何も買えない、と…」
ヴィーネ「サターニャ…」
サターニャ「…う、うるさいわ、よぉ…」グウウウ
ラフィ「タイムマシンですか…本当に存在するなら、興味深いですね」
ヴィーネ「そんなものあるわけないでしょ。あったとしたら大問題よ…」
サターニャ「え、えぇっ!?ないの!?」
ガヴ「いや、さすがに気付けよ…つーか、そのタイムマシンとやらはもう届いたのか?」
サターニャ「あ、明日届くわ…」
ラフィ「まぁ、楽しみですね。サターニャさんは、いつの時代に行ってみたいと思いますか?」
サターニャ「そうね…とりあえず魔界通販に騙される前の馬鹿な私を助けに行きたいわ…」
ラフィ「さ、サターニャさんが自身の行いを反省している…!?」
ヴィーネ「あなた本当にサターニャ!?」
ガヴ「お前そんな辛い思いをしてるのか…」
サターニャ「うるさいって言ってるでしょ!3日も何も食べなきゃこうもなるわよ!」
ヴィーネ「3日も!?は、早く言いなさいよ!ああ、まだ購買開いてるかしら…」
ラフィ「ダメですよヴィーネさん!今のサターニャさんに無償でご飯を与えてしまうなんて勿体なさすぎます!」
ヴィーネ「ラフィは黙ってなさい!」
ガヴ「…ったくしょうがないな。ほら」
サターニャ「え?」
ガヴ「パン、やるよ」
サターニャ「あ、ありがと…」
ヴィーネ「え?が、ガヴ?熱でもあるの?」
ラフィ「ガヴちゃん、なんて勿体ないことを…!」
ガヴ「いや、さすがに三日間絶食は可哀想って思ったからさ…」
サターニャ「……」モグモグ
ヴィーネ「ガヴでもそんなこと思うのね」
ガヴ「一応天使なんだぞ私」
ラフィ「ところで、なんですかあのパン。『焼きそばクリームシチューパン』…?」
ガヴ「クリームパン買ったつもりがなんかすごい地雷臭のするパン買っちゃってさ」
ヴィーネ「…平常運転で安心したわ」
サターニャ(おいしい…)モグモグ
サターニャ「ごちそうさま!」
ガヴ「おー。まぁ金は来月でいいぞ。500円な」
ラフィ「惣菜パンの相場って高くても200円くらいだと思うんですが…」
サターニャ「…まぁ、今回ばかりは助けられたわ。一応お礼を言ってあげようかしら」
ガヴ「自業自得とはいえこれから一ヶ月絶食は辛いだろうし、これからも何回かメシおごってやるよ」
ガヴ「ヴィーネが」
ヴィーネ「私!?まぁ、別にいいけど…」
サターニャ「……そ、そう。それは殊勝な心がけね…」
♆サタニキアハウス♆
サターニャ(……そうよね、すっかり忘れてたけど、ガヴって天使なのよね)
サターニャ(でも、あいつが私の最大のライバルなのは変わりないわ…!)
サターニャ(……まぁ、今日のことは、感謝しておいてあげるけど)
ピンポーン
サターニャ「…ん?誰かしら」
「お届けものでーす」
サターニャ「あっ、もしかしてタイムマシン!?」
「はい、確かに確認しました」
サターニャ「ご苦労だったわね。光栄に思いなさい?貴方は今、世界を変えるアイテムを運び終えたのよ!」
「はぁ。では、さよなら」
サターニャ「予定では明日という話だったけど…ふふ、さすがは魔界通販!輸送速度も業界ナンバーワンね!」
サターニャ「ククク……ご飯食べたら、なんか力が漲ってきたわ!魔界通販の商品は信用できる!このタイムマシンだって本物に違いない!」
サターニャ「えーっと、なになに」
『ここに行きたい時間、行きたい街を選択してください』
『使えるのは一回きり、留まれる時間は最大三日。ここのボタンを押せば、すぐに元の時間軸へ戻って来れます』
『貴方がタイムスリップをしている間も、ちゃんと元の時間軸は進んでいます』
『タイムスリップ中、パラドックスを回避するため、貴方の姿は他の人からは別人のように見えます』
『以上のことを踏まえた上で、快適な時間旅行をお楽しみください』
サターニャ「っと…何言ってんのかよくわかんないわね」
サターニャ「まぁいいわ。早速使ってみましょう。行きたい時間か、そうね…」
サターニャ(……そういえば、ヴィネットやラフィエルが言ってたけど
サターニャ(ガヴリールって、前はちゃんと天使やってたのよね)
サターニャ(今日のガヴリールも、その頃の名残だったりするのかしら…)
サターニャ(……ふふ、いいことを思いついたわ)
サターニャ(昔に戻って、ガヴリールの駄天を防いでやるのよ!)
サターニャ(そうすれば、もう私の敵はいない…!)
サターニャ(ガヴリールに圧勝することができるわ!!)
サターニャ(ふふふ…なんて悪魔的行為っ!)
サターニャ(そうと決まれば、早速時間指定…)
サターニャ(移動先はこの街、行く時間は…入学直後の、四月下旬くらいまで戻ればいいかしら?)
サターニャ(じゃあ、飛ぶわよ!)
ウイイイイイイイン
サターニャ(…………)
サターニャ(……ここ、は)
サターニャ(………どこ?)
ワイワイキャアキャア
サターニャ「…ん、公園?」
サターニャ「…子供たちが遊んでるわね」
サターニャ「桜が咲いてる……ってことは、本当に…」
サターニャ「本当に、タイムスリップしたんだ、私……!!」
サターニャ「……うへへへ、笑いが止まらないわ…!」
サターニャ「まさか、本当に、タイムマシンが実在したなんて…!」
サターニャ「奇跡も魔法もあるのね!」
サターニャ「仕送り全部飛んだことなんてもはやどうでもいいわ!」
サターニャ「さぁ、早速ガヴリールを探すわよ!」
少女「あ、すみません。隣よろしいですか?」
サターニャ「……ん?あ、別にいいわよ」
少女「そうですか。ありがとうございます」ニコ
サターニャ(…可愛いらしい子ね。ちっちゃくて、さらさらの金髪、あどけない顔)
サターニャ(小学生くらいかしら。まるで、天使みたい…)
サターニャ(……でも、なんだろう、どこかで会ったような)
少女「…あの」
サターニャ「え、なに?」
少女「少し、お話しませんか?」
サターニャ「お話?別にいいけど…」
少女「ありがとうございます。私、最近ここに引っ越してきたばっかりで、わからないことが多くて…」
少女「だから、この街のことをもっとよく知るために、色々な人とお話をしたいと思ってるんです」
サターニャ「…小さいのにしっかりした子ね」ナデナデ
サターニャ(ガヴリールにこの子の爪の垢を煎じて飲ませてやりたいわ…)ワシャワシャ
少女「ん……ぅ、え、えっと、私、高校生なんですけど…」
サターニャ「え、うそ!?」
少女「ホントですよ。そこの、舞天高校の、一年生です」
サターニャ「ま、舞天高校…?私の通ってる高校じゃない!」
少女「え、本当ですか?」
サターニャ「あれ?おかしいわね。今この時間で高校一年なら、私と同級生のはず…」
サターニャ「こんな小さい子、私の知る限りじゃたった一人…」
サターニャ「……まさか」
少女「まさか同じ学校なんて、これは神様が私たちに与えてくださった奇跡です!差し支えなければ、お名前を伺っても?」
サターニャ「……ぇと、その前に、貴方の名前を聞かせてもらっていいかしら?」
少女「私、ですか?私は天真=ガヴリール=ホワイトといいます」
サターニャ「」
ガヴ「気軽にガヴって呼んでください♪」
サターニャ「」
ガヴ「ど、どうしたんですか?顔色が…」
サターニャ「……こ、こんなの」
ガヴ「え?」
サターニャ「こんなのガヴリールじゃなーーーーーーいっ!!!」
ダダダダダダダダダ
ガヴ「え!?あの、お名前は…!?」
サターニャ(は、話には、聞いてたけど!)
サターニャ(やっぱ、無理!気持ち悪すぎ!何あのキラッキラしたガヴリール!)
サターニャ「……はぁ、はぁ。に、逃げてきちゃった…」
サターニャ(…少し悪いことをしたかしら。別にあのガヴリールは、何も悪いことしてないのに…)
サターニャ(……でも、本当だったのね)
サターニャ(ガヴリールって、ちゃんと天使やってた時もあるんだ…)
サターニャ(……まさかあそこまで別人とは思わなかったけど)
サターニャ(お、怖気付いている場合じゃないわ)
サターニャ(私の悪魔的行為は、ガヴリールの駄天を防ぐこと…)
サターニャ(駄天したガヴリールをあの気持ち悪いガヴリールに戻してやることなんだから…!)
サターニャ(…そのためには、まず、ガヴリールのことをもっとよく知る必要があるわ)
サターニャ(今、ガヴリールの部屋はもぬけの殻ね。侵入ってやるわ…!)
ガチャ
サターニャ「普通に扉空いたわね。全く…天使共は無防備すぎよ」
サターニャ「さて、まずはどうしてあげようかしら…」
サターニャ「ガヴリールが堕天した原因はネットゲームらしいわね…」
サターニャ「そうだ!じゃあガヴリールからそのネットゲームって奴を奪っちゃえばいいのよ!」
サターニャ「えーっと、ガヴリールはいつもぱそこんって奴を弄ってたから…」ゴソゴソ
サターニャ「あったっ、ぱそこんっ!」
サターニャ「えーっと、ここが電源ね?」ポチッ
サターニャ「おお、なんか画面が映ったわ!」
サターニャ「え~っと、ガヴリールがやってるネトゲはどこにあるのかしら…?」クリクリ
サターニャ「…うーん、どこにもないわね」
サターニャ「確かこういう時は…」
サターニャ『ねぇガヴリール!!ザンジバル島ってどこにあるの!?』
ガヴ『知るかよ。ググれカス』
サターニャ「ググればいいのよね!」
サターニャ「ググるくらい私にもわかるわ、ヴィネットに教えてもらったもの!」
サターニャ「えーと、ガヴリールのやってるゲームのタイトルはっと…」カチカチ
サターニャ「確かこんな名前だったはず……」
サターニャ「見つけたわ!じゃあさっそく、これを奪おうかしら…」
サターニャ「……どうやって?」
サターニャ「わからない……画面に手を突っ込む?うーん…」
サターニャ「そもそもこのネトゲって、何で出来ているの…?」
サターニャ「…とりあえず立ち上げてみようかしら。え~っと、『ゲームを始めるならここをクリック!』ね。えいっ」ポチッ
『ようこそ、ヴァルハラ王国へ!』テーレッテッテッテレー
サターニャ「なんか始まったわね。この中に、このゲームを消す方法が載ってたらいいけど…」
サターニャ「ちゅーとりある?って奴終わったけど、そんな説明されなかったわ」
サターニャ「新しくキャラクター作っちゃったけど良かったのかしら…とりあえず恰好いい悪魔らしい見た目にはしといたけど…」
『助けて!』
サターニャ「わ、びっくりした」
サターニャ「……へえ、『クエストのお誘いが届いたら、こういう風に通知されるよ』ですって」
サターニャ「まぁどうでもいいわ」カチカチ
ヴィーネ「ガヴ、何してるの?こんな所で」
ガヴ「ヴィーネ。実は、ついさっき公園で舞天の生徒に会ったんですけど…」
ガヴ「名前を名乗ったら、逃げられちゃって…今探してるんです」
ヴィーネ「名前を…?ガヴ、なんて名乗ったの?」
ガヴ「フルネームで…」
ヴィーネ「ああ…多分その人、悪魔ね」
ガヴ「悪魔?…あっ、そういうことですか」
ヴィーネ「…平和な時代とはいえ、未だに天使を目の敵にしているような悪魔もいるのよね」
ガヴ「…悲しいですね。私は、天使も悪魔も人間も関係なく、みんなと仲良くしたいのに」
ヴィーネ「…私も。私の知り合いの悪魔も、ちょっとそういう感じの子で…悪い子ではないんだけど」
ガヴ「私、もっと探します。そして、あの悪魔さんと友達になってくる」
ヴィーネ「私も手伝うわ。特徴を教えてくれる?」
ガヴ「ありがとう…!えっとね、赤い髪で、背が高くて、美人さんな……」
【数時間後】
サターニャ「一向にわからない!」カチカチ
サターニャ「どうやったらこのゲーム消せるの!?私は何をすればいいの!?」カチカチ
サターニャ「ガヴリールもこんな感じで駄天していったの!?」カチカチ
サターニャ「……ふ、ふう。やっとこのすてーじもクリアしたわ」
サターニャ「今度こそ、このゲームを奪う方法を教えてくれるのよね?」
『2-5が解放されました!』
サターニャ「なんでよおおおおお!?」
※PCごと盗むという発想がないサターニャ
サターニャ「……ここに、キャラクター削除、ってあるわね。もしかしてこれを押せば…?」
サターニャ「で、でもこれで本当に消えたら今までの苦労が…」
サターニャ「く、くうっ」ポチッ
『チュートリアル終了!好きなキャラを作ってね!』
サターニャ「ぎゃあああああっ!ちゅーとりあるに戻っただけ!?」
(玄関のドア)ガチャリ
ガヴ「ただいまー」
サターニャ「!?」
ガヴ(結局あの人見つかりませんでした…)
サターニャ(で、電源ボタン押してっ!ど、どこか隠れるところっ……!)
パソコン<スリープ…
サターニャ(く、クローゼットに入るわ!音を立てないように……)
(廊下のドア)ガチャリ
ガヴ(やっぱり、天使と悪魔では分かり合えないんですかね…ヴィーネは、正直悪魔に見えませんし…)
サターニャ(…大丈夫よね?バレないわよね?あっ、この隙間からちょっと部屋覗ける)
ガヴ(……ううん、弱気になってちゃだめです、私。明日学校で会えるかもしれないんですし!)
サターニャ(幸いこのスペースにはパジャマとか入ってないから、ガヴリールがここを開けることはないと思うけど…)
ガヴ「…ご飯作って、宿題やって…お掃除でもしましょうかね」
ガヴ「ふんふふ~ん♪」
サターニャ(あ、いい匂い……)
サターニャ(……そういえば、あのパン食べてから今まで何も食べてないわね)
ガヴ「できたっ!じゃ、食べましょう」
サターニャ(……おいしそう)
ガヴ「はふ♪はふ♪…下界のご飯は本当に美味しいですね」
サターニャ(……なんか、このガヴリールにも慣れてきたわね)
サターニャ(というか、アレとこのガヴリールを同一視できなくなってる自分がいる…)
サターニャ(見たところ、ガヴリールの駄天はまだ始まっていないし…)
サターニャ(でもこのままじゃ時間の問題だわ…早くガヴリールからゲームを奪わないと)
カチャカチャ
ガヴ「よしっ、洗い物終わり!」
ガヴ「では、お風呂に…」ヌギヌギ
サターニャ(っ!?ちょ、こんな所で…!)
サターニャ(いや、一人暮らしだし当たり前か…)
ガヴ「ええと、パジャマとタオル…」
サターニャ(!!こ、こっち来るっ)ササッ
サターニャ(って何恥ずかしがってんのよ私!!)
ガヴ「えーっと、ここかな~」ゴソゴソ
サターニャ(ば、バレませんようにバレませんようにバレませんように…)
ガヴ「ふんふふ~ん♪」
サターニャ(……行った)
サターニャ(……ひ、人の私生活の覗き…なかなか悪魔的な行為ではあるけれど)
サターニャ(これはなかなか精神衛生上よろしくないわね…)
サターニャ(あくまで私の目的はガヴリールの駄天を防ぐこと…)
サターニャ(とりあえず、ガヴリールがお風呂に入ってる間に、この家から出よう)
コソコソ…
ガヴ「はあ~♡いいお湯でした」
ガヴ「それでは宿題を始めましょう」
ヴィーネ(よしっ、お野菜安く買えたわ!)
ヴィーネ(今日はシチューにしましょう…うふふ、ガヴにもお裾分けしてあげようかしら…)
ヴィーネ(そういえば…結局、例の悪魔さん見つからなかったわね)
ヴィーネ(赤い髪で、背が高い…似顔絵も描いてもらったけど、魔界にいた時、こんな人見たことあったかしら?)
ヴィーネ(まぁ、魔界も広いし、私が知らないだけの可能性もあるけど…)
ヴィーネ(……ん?)
ヴィーネ「って、え!?誰か倒れてる!」
ヴィーネ「だ、大丈夫ですか!?」
「う、うう…」
ヴィーネ「すごく顔色悪い…!そ、そうだ。救急車…」
「……あ、あの」
ヴィーネ「!?ど、どうしました!?」
「………ごはんを」
サターニャ「」ガツガツガツガツ
サターニャ(…そういえばお昼にガヴリールのパン食べてから、何も口にしてなかった)
サターニャ(まさか倒れるとは思わなかったけど…)
サターニャ「おかわり!」
サターニャ(ヴィネットが通りかかってくれて助かったわ。あのままだったら、どうなってたことか…)
ヴィーネ「沢山あるので、どんどん食べてくださいね」
サターニャ「望むところよ!」
ヴィーネ「ふふ」ニコニコ
ヴィーネ(…咄嗟に家にあげちゃったけど、どう考えてもこれ私が非常識よね)
ヴィーネ(でも…多分この人、ガヴが言ってた先輩っぽいし…)
ヴィーネ(悪魔なら、やっぱり悪魔として助けてあげないといけないし…)
サターニャ「ごちそうさまっ!いやー、助かったわ!」
ヴィーネ「…いえ、別にいいんです。あなた、悪魔ですよね?」
サターニャ「ん?何言ってるの?ていうかなんで敬語なのよ」
サターニャ(確かヴィネットとはこの頃もう既に知り合いだったはずだけど…)
ヴィーネ「は…?いえ、一応初対面ですし、見た感じ先輩っぽいので…」
サターニャ「……?あっ」
『タイムスリップ中、パラドックスを防ぐため、貴方の姿は他人からは別人に見えます』
サターニャ(…なるほど、そういうことなのね)
サターニャ「え、ええ。私は悪魔よ!もしかしてあなたも悪魔なのかしら?」
ヴィーネ「はい、そうなんです。…ところで、昼間にあなたと話した天使のことを覚えていますか?」
サターニャ「…ガヴリールのこと?」
サターニャ(そういえば、走って逃げてきちゃったんだっけ…)
ヴィーネ「はい。…誤解のないように言いますが、あの子は悪魔に対してなんの偏見もありません。天使も悪魔も関係なく、みんなと仲良くしたいって、そう言ってました」
サターニャ「…ふうん」
ヴィーネ「だから、どうかあの子の友だちになってあげてくれませんか?あの子、今日も必死になってあちこち探し回って…」
サターニャ「……そ、そう」
サターニャ(………そういえば、なんだかんだであいつ、私に敵意を向けないわよね。そこが腹立たしいところでもあるんだけど…)
サターニャ(みんなと仲良くしたい、か。…ガヴリールの駄天を防げば、そういう未来も…)
サターニャ(って何考えてるの私!!ガヴリールが駄天しなければ、私がガヴリールに固執する理由もなくなるのよ!)
サターニャ「悪いけれど、私は天使なんかとは馴れ合わないわ。他をあたってちょうだい」
ヴィーネ「そうですか…残念です」
ヴィーネ(やっぱりこの人もサターニャと一緒で…)
サターニャ(仲良くなんかしてないわ…!ガヴリールとよく一緒にいるのは、あいつが私のライバルだから!)
ヴィーネ「…ところで、アナタは、どうしてあんな所で倒れてたんですか?」
サターニャ「あ、それは…」
サターニャ(タイムスリップした…っていうのはさすがに安直すぎね)
サターニャ「…つい最近こっちに来たばっかりで、お金も家もなくて、何も食べてなくて…」
ヴィーネ「え、ええ!?お金も持たずにこっちの世界に来たんですか!?」
サターニャ「ぐっ…。正確には、こっちに来る際にお金全部使い果たしちゃったのよ…」
ヴィーネ「下界ってそんな旅行感覚で来れるところじゃないはずなんですけど…」
ヴィーネ(まぁ、悪魔にも色々あるのね…)
ヴィーネ「そういうことなら、しばらくうちに住みますか?」
サターニャ「え、いいの?」
ヴィーネ「いいですよ。同胞を助けたことで、少しは仕送りも上がるでしょうし…」
サターニャ「やったぁ!これでしばらくはこっちに居れるわ!」
ヴィーネ「あ、一応お名前を伺ってもいいですか?私はヴィネット。月乃瀬=ヴィネット=エイプリルといいます」
サターニャ「私は…サーニャよ」
ヴィーネ「サーニャさんですか。よろしくお願いしますね」
サターニャ「ええ。しばらくの間だけど、よろしく」
サターニャ(ぎ、偽名使っちゃった…!ちょっと憧れてたのよね…!)
ヴィーネ「ベッドは狭いですが…ぎりぎり二人でも寝れますね。冷蔵庫の中にあるものには、手をつけないでくれると助かります。パソコンは自由に使ってくれていいですよ。服は私のを貸しますけど…サイズ合いますか?」
サターニャ「う、うん。ありがとう」
ヴィーネ「シャンプーは右、リンスは左です。タオルは上から3番目の引き出し、あとそれから…」
サターニャ(…至れり尽せりね)
ガヴ「……ふう、宿題終わり」
ガヴ「さて、そろそろ…」
パソコン<『助けてー!』
ガヴ「!?…こ、この中から、声が…」ポチリ
ガヴ「あ、なんだゲームですか…」
ガヴ「これが下界の娯楽…人間を学ぶためにも、少しやってみましょうか…」
カタカタカタカタ…
サターニャ「…んぅ」
ヴィーネ「あ、起きました?朝ごはん出来てますよ」
サターニャ「ホントに何から何まで悪いわね…」
ヴィーネ「私たち悪魔は、支えあって生きていくべきだと思うんです」
サターニャ「…私は、あなたに何もしてあげられないけど」
ヴィーネ「いいんですよ。じゃあ、学校に行きましょう」
サターニャ「……ん?」
ヴィーネ「え?…あなた、舞天の生徒では?」
サターニャ「……あっ」
サターニャ(確かガヴリールにそんなこと言ったわね)
ヴィーネ「……学校に行けない事情があるなら、深く詮索はしませんけど…」
サターニャ「そ、そうなの。ちょっと今学校行きづらくて…」
ヴィーネ「そうですか。では、私は行ってきますね」
サターニャ「ええ、行ってらっしゃい」
サターニャ(…さて、寝場所は確保したし、これで思う存分ガヴリールを監視できるわ…)
サターニャ(といっても、ガヴリールは学校に行ってるのよね)
サターニャ(もう一回ガヴリールの家に行こうかしら…)
サターニャ(…いえ、もうちょっと情報を集めてからの方がいいわね)
サターニャ(あのゲームについて、もう少し調べてみましょう)
サターニャ「パソコンは使っていいのよね…」
サターニャ「『ゲームを始めるにはここをクリック!』…へぇ、ヴィーネもこのゲーム持ってたのね」
サターニャ「それじゃあ始めましょうか」
サターニャ「…やっぱり、このゲームをやっていても特に情報は得られないわね…」
サターニャ(そもそもぱそこんの中にあるものをどう奪えというのだろう)
サターニャ「……うーん、もうお手上げかしら」
『クエストいこっ?』
サターニャ「あら、クエストのお誘い?」
サターニャ「気付けば結構レベル上がってたわね」
サターニャ「まぁ、誘われたからには参加するけど…」
サターニャ『はーはっはっは!!待たせたわね、大悪魔サタニキア様が来てあげたわよ!』
『よろしくお願いします』
『よろしくー』
『よろしくお願いします。初心者ですけど、大丈夫ですか?』
サターニャ『そんなことは気にする必要はないわ!私だってつい昨日始めたばかりだもの!』
『まぁ、俺らもそんな上手くないけど、任せてくれて大丈夫だよ』
『ありがとうございます』
サターニャ「ふん、初心者だからって何を気後れしているのよ」
サターニャ「私のように堂々としていなさい…えーっと、こいつの名前は…」
サターニャ「『ガヴリール』…」
サターニャ「……ん?」
サターニャ(ぐ、偶然よね。だって、あのガヴリールはまだ駄天してないし…)
サターニャ(…役職はプリースト、見た目は金髪碧眼の女の子…)
サターニャ(最終ログイン時間は…14時間前。14時間!?)
サターニャ(14時間前からずっとやってんのこのゲーム!?)
『初心者って言う割には装備揃ってるよね。その杖課金アイテムでしょ?』
『はい。皆さんのお役に立ちたくて…』
『そんな志でゲームやってる奴初めて見たw』
『えへへ…志なんて、そんな大層なものでは…』
サターニャ「か、課金…?」
サターニャ「確か、ガヴリールはそのせいで毎日かつかつで過ごしてるって……」
サターニャ「こ、これはまずいわ……!」
ヴィーネ「…ガヴ、今日休みなの?」
ヴィーネ「えーっとLINE、LINE…」
ヴィーネ「……何も来てない」
ヴィーネ「…何かあったのかしら。もしかして急な病とか…!」
ヴィーネ「学校終わったら、すぐにガヴのとこ行かないと…!」
サターニャ(一刻も早くガヴリールにゲームを止めさせなきゃ、ガヴリールが堕天しちゃう…!)
サターニャ(でも、どうして?私が昨日見たときは、ガヴリールはぱそこんに見向きもしていなかったのに…)
ガヴ『+終焉のサタニキア+さん!クエスト始まってますよ!』
サターニャ『あ、ごめんなさい。今行くわ』
サターニャ(とりあえず、今はゲームを…!)
サターニャ(ガヴリールの奴、自分のこと初心者って言っていたわね…)
サターニャ(つまりまだこのゲームを始めてから日は浅いということ!ならば私がゲーム内から、ガヴリールのやる気を削いでいくわ!)
サターニャ『さぁ、行くわよ!ガヴリール、アンタは回復魔法で私たちの援護をしていなさい!』
『ああ、頼んだぜプリースト!』
『俺たちの戦い方見てしっかり学べよ!』
ガヴ『はい、わかりました!』
サターニャ(ククク…つまらない後方支援をさせることで、このゲームをさっさと飽きさせるわ!)
サターニャ(私はガンガン前線に出てパーティの足を引っ張りまくる!)
サターニャ(負け続けるゲームほどつまらないものはない!ガヴリールがこのゲームを止めるのも、時間の問題だわ!)
『ぐっ!?こいつ、手強い…』
『ちょっ、何やってんだサタニキア!』
サターニャ『あら、ごめんなさい。手が滑ってしまって…』
ガヴ『ああ、皆さん仲良く…』
サターニャ『おらおらおら!』
『そんな前出んな!パーティメンバー全員合わせて3回しか死ねないんだよ!』
『くそ、このままじゃ…!』
サターニャ『…ごめんなさいっ!』
ガヴ『………』
サターニャ(ククク……気持ちいいわね……他2人も熟練者じゃなくてよかったわ…)
ガヴ『すみません、前出ますね』
サターニャ『え?』
『え、ちょ、ガヴリール!?』
ドチュン ドチュン バキーーン
ガヴ『はい、部位破壊』
サターニャ「」
ガヴ『こうこう、こうして』
「QUEST CLEAR!!」テッテレー
ガヴ『終わりましたよ』
サターニャ『』
『…お、おう』
ガヴ『この敵、足が弱点なんですよ。だからこのステージのここに立って、打撃属性武器の攻撃モーション②を撃ち続けたら勝手に倒れてくれるので』
ガヴ『そっからはもっと大きな弱点である頭を叩けばいいんです』
『…へえ、そうなんだあ』
『よく知ってるね…』
ガヴ『スレに書いていましたよ。2chのPCゲー板に建ってる奴です。結構便利なので、あなた方も見てみては?』
『うん…そうする…』
サターニャ『…あ、あの、ガヴリール』
ガヴ『ああ、サタニキアさん』
サターニャ『何かしら?』
ガヴ『初心者なのは私も同じなので、その点についてはいいんですが、初心者ならもう少し周りを見て、人の話を聞きましょうね?』
ガヴ『そんなプレイを続けていれば孤立してしいますよ?』
サターニャ『え、うん、はい』
ガヴ『…っと、すみません!ゲリラクエです…!』
ガヴ『経験値ゲリラ…!申し訳ないです、私一旦パーティ抜けますね!お疲れ様でした!』
『おー、おつか』
『「ガヴリール」が離脱しました』
『…れ』
サターニャ「………」
サターニャ「……ガヴリール怖い」ガタガタガタガタ
『いやー…ガチ勢の初心者か。凄いもん見たな』
『たぶん数日後にはトッププレイヤーとかになってんだろうなぁー』
サターニャ「…そんなことはさせないわ」
サターニャ「フレンドにはなった!次はメッセージ機能を使って、ガヴリールのやる気を削いでやる…!」
ガヴ「……っち、報酬しょっぱいなぁ」
ガヴ「こんなレベルじゃ、まだまだ皆さんのお役に立つことなんて出来ない…」
ガヴ「2chを読んでると、凄い人は本当に凄いと実感します…」
ガヴ「私もいつか彼らと肩を並べたい…彼らを支えたい…」
ガヴ「そして共にヴァルハラ王国を救うのです」
ガヴ「さて、『今日のゲリラの報酬少なくね?』っと…」カタカタ
ガヴ「……んーぅ、ゲリラも終わったことですし、そろそろ寝ましょうかね」
ガヴ「今の時間は……」
ガヴ「…………………………え、?」
ガヴ「……うそ、嘘ですよ、こんなの」
ガヴ「だって、私がゲームを始めたのは、ついさっきで……」
ガヴ「やばい……やばいやばいやばい」
ガヴ「が、学校にも、ヴィーネにも、何も…」
ガヴ「それに、このことが天界に知れたら…!」
『+終焉のサタニキア+さんからメッセージが届いています』
ガヴ「……っ」
『アンタ14時間もゲーム続けてるみたいだけど、ちゃんと学校は行きなさいよ!』
『課金はほどほどにね!後戻り出来なくなってもしらないわよ!』
ガヴ「……う、うるさいっ!」
ガヴ「わかってますっ、わかってます……!」
ガヴ「とりあえず、学校へ…!」
『+終焉のサタニキア+さんをブロックしました』
サターニャ「秒の速さでブロックされた!?」
サターニャ「なんで!?私何か気に触るようなこと言った!?」
サターニャ「ああん!これ以上メッセ送れないし!」
サターニャ「……ど、どうしよう」
サターニャ「ガヴリールの家に特攻するしかないか…どうせ三日経てば私はいつでも元いた時間に戻れるわけだし…」
サターニャ「そうと決まれば行くわよ!」
ガヴ「…ひ、人をブロックしてしまいました…」
ガヴ「イライラしてたとはいえ……あの人は何も悪いことをしていないのに…」
ガヴ(なんでしょう……こんな感情、初めてです。他人を気遣ってる余裕がない…)
ガヴ(……今まで気付かなかっただけで、これが私の本性なのかな)
ガヴ「今から行けば、お昼休みには間に合うでしょうか…」
ガヴ「…今更行っても、受けれる授業は2コマだけ…」
ガヴ「って、何を考えてるんです私!走りますよ!」
ガラガラッ
ガヴ「……はぁっ、はぁっ」
ヴィーネ「!?が、ガヴ!?」
ガヴ「遅れて……すみません……」
ヴィーネ「ちょ、何があったの!?髪ボッサボサだし、クマ酷いし…」
ガヴ「……ちょっと、寝坊しちゃって」
ヴィーネ「ね、ねぼう……?」
ヴィーネ(あのガヴが?6時間も寝坊?)
ヴィーネ「ねぇ、本当に何があったの?」
ガヴ「……寝坊は寝坊です」
ヴィーネ「………」
ガヴ(嘘をついてしまった…)
ガヴ(ヴィーネはあんなに私を心配してくれているのに…)
ガヴ(でも、でも。ゲームをやってて、学校に遅れたなんて…言いたくない…)
ガヴ(……ああ、私はこんなにも駄目な天使だったんですね)
サターニャ(そろそろガヴリールが帰ってくる頃かしら…)
サターニャ「じゃあ、外に出るわよ…」
サターニャ「このメロンパンを持ってね!!」
サターニャ(幸いガヴリールの家には買い置きしていたメロンパンがあった)
サターニャ(作戦はこうよ)
サターニャ(まず、このメロンパンを使っていつもの犬を召喚し、私を襲わせる)
サターニャ(そして、その犬を通りがかりのガヴリールが撃退!)
サターニャ(私は感謝の言葉を述べ、報酬としてメロンパンをガヴリールに贈呈する!)
サターニャ(今のアイツはまだ本質的には天使!感謝される喜びを、人を助ける快感を味あわせれば、ゲームなんてどうでもよくなる!はず!)
サターニャ(我ながら完璧すぎる悪魔的作戦…!ククク…ガヴリールの嬉しそうな顔を見るのが楽しみね…!)
犬「ハッハッハッハッハッ」
サターニャ「…さあ、来なさい、犬!!」
ヴィーネ「ガヴ、一緒に帰ろ?」
ガヴ「…ごめんなさい。今日はちょっと用事があるので」
ヴィーネ「え…」
ガヴ「すみません」
ガヴ(……ダメです。逃げてたって、いいことにはならないのに…)
ヴィーネ(絶対何かあったんだわ…!たぶん、今日の用事というのもそれ…!)
ガヴ(授業も全く身に入りませんでした。早く立ち直らないと…私は主席天使として、人々を導かねばならないんです…)
ヴィーネ(…私に話してくれないのは、たぶん天界についてのことだからでしょうね。…力になれるかわからないけど、今日から天界について少し調査をしてみようかしら)
ガヴ「…ゲームがしたい」
ガヴ「もっと沢山の人を助けたい…」
ガヴ「感謝をされたい…」
ガヴ「この欲求は天使として仕方のないことなんです…」
ガヴ「……大丈夫、もう時間を忘れるなんてことはありません」
ガヴ「ゲームというものの恐ろしさは身に染みてわかりました。同じ轍は踏みません」
「は~な~せ~!!」
ガヴ「……?」
ガヴ「大変…!女の人が犬に絡まれてる!」
ガヴ「大丈夫ですか!?」
サターニャ「おっそいわよガヴリール!」
ガヴ「へ!?」
犬「がるるるる…」
サターニャ「ちょ、やめなさいよ!これは私のメロンパンよ!」
ガヴ「こら!ダメですよ、犬さん!めっ、です!めっ!」
犬「く、くぅん」
ガヴ「ほらほら、パンをお姉さんに返して」
犬「きゃいんきゃいん!」タッタッタッタッ
ガヴ「…もう大丈夫です。怪我はありませんか?」
サターニャ「え、ええ…ありがとう。助かったわ」
ガヴ「……って、あなた」
サターニャ「ああ、久しぶりね。この間は逃げてごめんなさい」
サターニャ「…今回は本当にありがとう。これはほんのお礼よ」
ガヴ「メロンパン…いいんですか?」
サターニャ「いいのよ。そもそもそれあなたのものだし…」
ガヴ「え?」
サターニャ「いやなんでもないわ!!」
ガヴ「そ、そうですか…。では、そうですね。ありがたく頂戴します」
サターニャ「…ふっ、受け取ったわね!」
ガヴ「?」
サターニャ「今のその気持ち、忘れるんじゃないわよー!」ダダダダ
ガヴ「あっ、ちょっと!待ってくださ…」
ガヴ「…行っちゃいました」
サターニャ「ミッションコンプリート!!」
サターニャ「…後はガヴリールからゲームを奪えれば完璧だったんだけど」
サターニャ「必要ないわね。なにせこの私がメロンパンをあげたのよ!これで感涙に咽び泣かない天使なんていないわ!」
サターニャ「さて、そろそろ帰ろうかしら」スッ
サターニャ(このスイッチを押せば、元いた時間の一日後に、私は戻る)
サターニャ(その時間には、あの駄天したガヴリールは、もういない)
サターニャ「…少し寂しい気も…って、しないっ!」
サターニャ「でも、帰る前に…ヴィネットには会っておこうかしら」
サターニャ「」ガチャガチャ
サターニャ「あれ?鍵かかってる…」
サターニャ「まぁ、合鍵もらってるけど」
ガチャリ
サターニャ(…?誰もいないじゃない)
サターニャ(ん、これ書き置きかしら?)
『ちょっと暫く魔界へ帰ります。お留守番よろしくね ヴィーネ』
サターニャ「……なんで急に?」
サターニャ「まあいいか」
『私は元いた世界に帰ることにするわ!短い間だったけど、ありがとね! サーニャ』
サターニャ「これでよし」
サターニャ「…じゃあ、戻るわよ」
サターニャ「さよなら、天使ガヴリール」
サターニャ「また、未来で会いましょう!」
ウイイイイイン…
ガヴ(………おかしい)
ガヴ(人を助けて、感謝をされて)
ガヴ(私はそれを生きがいにしてきたはず)
ガヴ(…なのに、なんで)
ガヴ(私の心は、全く震えないのでしょう)
ガヴ(……じゃあ、この、狂いそうになるほどの…ゲームへの欲求は、何なのですか)
ガヴ(どうして、私は……)
ガヴ「…クエスト、行きますか」
ガヴ「このパーティに参加しましょう」
バキュン バキュン
ガヴ(……っ!ああ、この高揚感…)
ガヴ(……これです、これが私が求めていたもの…)
ガヴ(そうだ。人を救えるから、とか、天使だから、とか、関係ないんだ…)
ガヴ(私は、これが楽しいから、やりたいんだ…!)
ガヴ(…これが、私だったんだ)
ガヴ(今まで必死に押し殺して、優等生になろうと、立派な天使になろうと、頑張ってたけど)
ガヴ(私が本当にしたいことは…これだったんだ)
ガヴ(ようやく、気付いた…!!)
数日後
ヴィーネ「はあ…結局、何もわからなかった」
ヴィーネ「サーニャさんは突然帰っちゃうし…」
ヴィーネ「ガヴがあんなに苦しんでるのに、力になってあげられないなんて…」
ヴィーネ「…ううん。弱気になっちゃダメ」
ヴィーネ「こうなったら、ガヴの家へ行って話をしよう」
ヴィーネ「どんな真実でも、私は受け入れてみせる…!」
ヴィーネ「だって私たちは友だちだもの!」
ピンポーン ピンポーン
ヴィーネ「…あれ?出ない。留守なのかしら」
ドンドンドンドン
ヴィーネ「ガヴー!?いないのー!?」
ガチャ
ヴィーネ「あ、開いたっ、ちょっとガヴ、一体何が…」
ガヴ「……どちらさまで?」
ヴィーネ「っ……!?」
ヴィーネ(ま、前見たときよりやつれてる…)
ガヴ「…って、なんだ。ヴィーネか。どこ行ってたの?ここ数日学校にも来ずに…」
ヴィーネ「え?魔界に帰るって、連絡してなかったっけ?」
ガヴ「連絡…?ああ、暫く携帯見てなかったからな…」
ヴィーネ「そ、そう…」
ヴィーネ(あれ?何かおかしい)
ヴィーネ(ガヴってこんな子だったっけ。こんな口調だったっけ)
ガヴ「とりあえず上がる?汚いけど」
ヴィーネ「え、うん。…お邪魔します」
ガチャリ
(ゴミの山)
ヴィーネ「……き」
ヴィーネ「きゃあああああああああっ!?」
サターニャ「な!ん!で!!」
ガヴ「おい…急にどうしたんだよサターニャ」
サターニャ「なんで!戻ってないのよおおおおおっ!!」
ヴィーネ「ちょっと、サターニャ!」
サターニャ「離しなさいっ!」
ラフィ「あらあら~随分と面白いことになっていますね」
ガヴ「あ、ラフィ。助けてくれよ。今日いきなり現れたかと思えばこの調子でさ…」
ラフィ「うーん…まぁ、元気そうで何よりです」
サターニャ「はあ、はあ……」
ガヴ「気は済んだか?」
サターニャ「なんで……私の作戦は……完璧だったはずなのに…」
ラフィ「それよりも、気になることがあるんですけど…」
ヴィーネ「どうしたの?」
ラフィ「サターニャさん、昨日一日どこに行っていたんでしょう?学校にも来ずに、家にも居ずに…」
ヴィーネ「えっ!?サターニャ家にも居なかったの?」
サターニャ「こうなったらもう一回戻ってやるわ!!今度こそガヴリールを更生させるのよ!」スッ
ガヴ「何言ってんだお前」
サターニャ「えいっ!」ポチッ
サターニャ「……え?何も起きない」
ヴィーネ「…どうしたの、サターニャ?」
サターニャ「こ、こんなはずはないのよ!だって昨日は、これで……!!」
サターニャ「これで、過去に戻ったはずなのよ!」
ガヴ「……マジで何言ってんだお前」
ヴィーネ「サターニャ……ショックが強すぎて、偽りの記憶を……」
サターニャ「そんな哀れむような目で見るなああああああっ!!」
ラフィ「…くすくす、それは面白…愉快な経験をしたんですね」
サターニャ「ラフィ!?ラフィは信じてくれるわよね!?」
ラフィ「ええ。…過去に戻る、ですか。たまにはそういう夢を見ることもあるでしょう」
サターニャ「だから夢じゃないっつってんでしょーが!!」
ガヴ「…ま、どっちにしろ、お前が過去に戻ろうと、戻るまいと、結局未来は変わらなかったんだろ?」
サターニャ「ぐっ…」
ガヴ「ならそれは妄想となんら変わらない。違うか?」
サターニャ「うううううっ…」
サターニャ「ホントだもん!!タイムマシン本当にあったんだもん!!」ダダダダ
ヴィーネ「ああ、待ちなさいよサターニャ…」
ガヴ「どうせこの後すぐ授業なのに…」
ラフィ「………」
ラフィ「…そういえば、ガヴちゃんが駄天したのって、いつの時だったんですか?」
ガヴ「なんかその日ははっきり覚えてるな。4月の下旬辺りだった気がする」
ガヴ「変な女がメロンパン持って犬に絡まれてて、それを助けてあげて」
ガヴ「その時、私は自分が本当にしたいことに気付いたんだ」
ヴィーネ「そういえば…ガヴが駄天する前後に、一日だけ居候させてあげた女の人がいたっけ…」
ヴィーネ「あの人、今どうしてるかな…」
ラフィ「ほうほう……それはそれはっ」
ガヴ「…なんか楽しそうだな?ラフィ」
ラフィ「うふふ。ちょっとサターニャさんの所へ行ってきますね~。面白い話が聞けそうですのでっ!」
ヴィーネ「あまりサターニャ虐めちゃダメよ?」
【1ヶ月後】
サターニャ「」
サターニャ「し、仕送りめちゃくちゃ増えてる……」
サターニャ「……ふっ、ようやく魔界もこの私の悪魔的オーラに気付いたのね!」
サターニャ「はーっはっはっはっは!!」
end
152 : 以下、\... - 2017/03/16 12:37:01.000 Ilf+nqFUM.net 74/74保守ほんとうにありがとう……
一話のアレから妄想膨らまして結果こんな感じになりました