あやめ速報-SSまとめ-

【エキシビションマッチ打ち上げ終了後】

――聖グロリアーナ学園艦――

オレンジペコ「大洗の温泉は気持ち良かったですね」

ローズヒップ「ジェットバスも最っ高でございましたわ！」

アッサム「ほら、ローズヒップ。はしたない」

ルクリリ「中身というよりジェットという響が気に入ってるんじゃないのか？」

オレンジペコ「あの露天風呂をそっくりそのまま、私たちの学園艦に持ち込みたいくらいです」

ダージリン「まぁ、ペコったら。フフ」

ｺｺｺ,ｺﾝ

聖グロ生徒「ダージリン様、ニルギリです」

ダージリン「よろしくてよ」

ニルギリ「ご歓談中申し訳ございません、ダージリン様」ｶﾞﾁｬ

ニルギリ「大洗女子学園生徒会長、角谷様より通信が入っております」

ダージリン「そう」ｽｯ

オレンジペコ「先ほどお土産を頂いて別れたばかりだというのに、何でしょう？」

アッサム「そういえば打ち上げの途中、呼び出しがあったために彼女とはそれっきりでしたね」

ダージリン「すぐ戻るわ」

【通信室】

ダージリン「待たせてしまったかしら？」

会長『そうでもないよー、大丈夫。今日はほんとにありがとね』

ダージリン「いいえ、こちらこそ。それで、ご用件は？」

会長『…………。……実は――――

ダージリン「…！」

* * *

ダージリン「えぇ、えぇ。それでは、また……」ﾁﾝ...

* * *

ｶﾞﾁｬ

ローズヒップ「ペコ、ダージリン様がお戻りになられましたわ」

オレンジペコ「先ほどのは冷めてしまいましたね、お取替えしますか？」

ダージリン「お願いするわ」

ペコ「かしこまりました」ｽｯ

ローズヒップ「先ほどの通信はどんなお話だったんですの？」

ルクリリ「ローズヒップ、そういう時はダージリン様から仰るのを黙って待つものだ」

ペコ「ダージリン様、どうぞ」ｶﾁｬ

ダー様「ありがと。……………大洗の廃校が、決定したそうよ」

ペコたち「「「　！？　」」」ｶﾞﾁｬﾝ‼

ダージリン「気持ちはわかるけれど、落ち着きなさい。聖グロリアーナの戦車道はいかなる時も優雅」

ダージリン「心に吹き荒れる嵐が表へ出てしまうなら、せめてティカップの中へ落とすものよ」

アッサム「なんとも、耳を疑いたくなる話ですね……」

ペコ「そんな……。皆さん、あんなに頑張って、ちゃんと優勝したのに……！」

ルクリリ「約束を反故にされるとは……」

ダージリン「確約ではないと押し切られたそうよ」

ローズヒップ「あんまりですわ！」

ペコ「今後大洗の皆さんは、どうなるんですか？」

ダージリン「転校先が決まるまで、しばらく母港付近で待機すると言っていたわ」

ダージリン「――――アッサム」

アッサム「……行ってまいります」ｽｯ

ローズヒップ「アッサム様、情報収集に向かわれますのね？　お見送りさせていただきますわ！」ｶﾞﾀ

ルクリリ「私も、磯辺に連絡をとってみます……」ｶﾀ

ダージリン「今は退艦の準備を始めているようだから、個人的なやり取りは夜までお待ちなさい」

ルクリリ「……っ、そう、ですね……。すみません、少し風にあたってきます」

ペコ「ダージリン様……」

ダージリン「ペコ、心配はわかるけれど、あの会長さんは転んでもタダで起き上がるような人ではないわ。今は苦い忍耐の草を食んでも、甘く柔らかい実が結ぶのを待ちましょう」

ペコ「……カール・ジムロック、ですね……。はい……」

ダージリン「もう一杯、いただける？」

ペコ「はい、すぐに……あ、お湯が。少しお時間を頂きますね」

ダージリン「焦らなくていいわ」

ペコ「はい。失礼します」ﾊﾟﾀﾝ

【聖グロリアーナ艦内】

ｽﾀｽﾀ

アッサム「しかし腹立たしいものね」

ローズヒップ「そうですわ！！　嘘つきは泥棒の始まりですわ！！」ﾌﾟﾝｽｶ

アッサム「それもあるけれど、それだけじゃない」

ローズヒップ「どういうことですの？」

アッサム「決勝戦には私たち聖グロリアーナを含め、各対戦校が大洗を応援するために集まったでしょう」

アッサム「一生懸命で真っ直ぐな大洗が好きになったから、勝ってほしい。優勝して、学園を存続させたらもう一度試合をしたい。自分も学園艦が好きで、廃校を阻止したい気持ちがよくわかるから応援する。色々な気持ちがあそこには詰まっていた」

ローズヒップ「優勝が決まった時は、みんな自分事のように喜んでましたわね」

アッサム「簡単に言えば、廃校撤回を白紙に戻すということは、私たちのそういった気持ちも全て踏みにじったということでもある。まぁ、あちらには関係ないことでしょうけど」

ローズヒップ「そうですわ！！　全くもって許せませんわ！！」

アッサム(私たちも勿論だけど、より入れ込んでいたペコや、それこそダージリンは――――）

【外部扉付近の廊下】

聖グロ隊員「あ、ルクリリ様！　大洗の件は既にご存知でいらっしゃいますの？」

ルクリリ「ああ、ダージリン様に向こうの会長から通信があった」

隊員「他の隊員たちは今TVの速報で見て、内心憤慨の収まらないものばかりですわ」

ルクリリ「分かってるとは思うけど、聖グロの戦車道規範を軽んじないよう、よく注意しておきなさい」

隊員「承りましたわ。ダージリン様のご様子は？」

ルクリリ「……久々だよ」

隊員「はい？」

ルクリリ「思えば、紅茶を送った好敵手が実力を認められず理不尽な仕打ちを受けたんだ。ダージリン様は聖グロリアーナの代表、大洗を貶めるのは聖グロリアーナの心意気を侮辱したも同然」

ルクリリ「表情も声音も、立ち振る舞いもほぼいつも通りだったけど、あんなダージリン様は久々に見た」

ルクリリ「あんな――――」

【紅茶の園別室：給湯室】

ｼｭｼｭｼｭ...ｶﾁ

ペコ(大洗の皆さんは今……どれだけ辛い、気持ちなんでしょう)

ペコ(私ですら胸が締め付けられる思いなのに、彼女たちは……西住さんは……)

ｺﾎﾟｺﾎﾟ...

ペコ(思えばあの時から、私たちが一番大洗を見続けてきたんですよね)

ペコ(戦車道、復活したばかりだったのに、ダージリン様なんて紅茶まで送って……)

ｶﾁｬ...ｶﾁｬ...

ペコ(全国大会もずっと応援に行って……決勝、すごかったな)

ペコ(優勝した時は、本当にうれしかった)


ｶﾁｬ...


ペコ(今日のエキシビション、楽しかったな……)

ペコ(皆さんと一緒に温泉に入って、ご飯、食べて……)

...

ペコ(また試合、したいな)

ペコ(……っ)



ペコ「……いけない。……いかなる時も、優雅……」

ペコ(ダージリン様だって――――)



ペコ(あんなに我慢していらしたんだから)

ダージリン「……」

　　　　ｷﾞ　　　　ﾘ　　　　ｯ