ヴィーネ「相談とか、たくさん乗ってくれてありがとね、ガヴ」
ガヴ「まぁ、一応私も天使だし…ちょっとくらいは善行積まないとね」
ヴィーネ「…まったく、ブレないわねぇ、ガヴは」
ガヴ「いやいや、私だってちゃんとヴィーネを祝福したい気持ちはあるよ」
ヴィーネ「ほんと~?」クスクス
ガヴ「ほんとほんと。…おめでとう、ヴィーネ」
ヴィーネ「ふふ、ありがと」
ガラガラ
タプリス「月乃瀬せんぱーい!一緒に帰りましょう!」
ヴィーネ「はいはい、じゃ、また明日ね?ガヴ」
ガヴ「おー」
ガヴ「………」
元スレ
ヴィーネ「私、タプちゃんと付き合えることになったの」ガヴリール「よかったじゃん」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1488875576/
ガヴ「………」カタカタカタ
ガヴ(ヴィーネ、今何してるのかな…)
ガヴ(タプリスと一緒にいるんだろうけど…)
ガヴ(…折角実った恋だもんね。きっと、すごく嬉しいだろうなぁ)
ガヴ「…………あっ」
ガヴ「…死んだ」
『おいおいどうした~?』
『今日のお前なんかキレ悪いぞ?』
ガヴ「………」
ガヴ「『ごめん。ちょっと調子悪いわ今日』っと…」
ガヴ「……はぁ」
ガヴ「……なんか、ゲームもやる気しないな」
ガヴ「飯、作るか。もうこれからは、ヴィーネに頼ってなんかいられないし」
ガヴ「調理部の二人が料理するとこは何度も見たし、私でもたぶん…」
ガヴ(…出来た、な。見栄えはなかなかだ)
ガヴ(そういや天界にいた頃は妹におやつ作ったりもしてたっけ…)
ガヴ「…いただきます」
モグモグ
ガヴ「……うまい」
ガヴ(コンビニ弁当なんかよりは、よっぽど)
ガヴ(でも)
ガヴ「……ヴィーネが作った方が、美味しいな」
ガヴ「………」
ガヴ「ご馳走様でした」
ガヴ「…まだ、8時か」
ガヴ「……したいことも、特にないな」
ガヴ「…寝てしまおう」
ガヴ(……こんな早い時間に寝るなんて、いつぶりかな)
ガヴ(ヴィーネは、いつもこのくらいの時間に寝てるらしいけど…)
ガヴ(……ヴィーネ、は)
ガヴ(……もう、寝たんだろうか?)
ガヴ(…………)
ガヴ(ヴィーネのタプリスへの気持ちを私が知ってからおよそ一ヶ月が経つ)
ガヴ(タプリスの好きなものを教えたり、タプリスと二人きりになれるようにしたり、…種族の壁をどうにかしようと、みんなで考えたり)
ガヴ(思えば、この一ヶ月私はヴィーネのために結構働いた)
ガヴ(…なんで、だろう)
ガヴ(単に、ヴィーネとタプリスに上手くいって欲しいと、心から思っていたから?)
ガヴ(だとしたら、なんで私はそんな気持ちになったんだ?)
ガヴ「……わかんない」
ガヴ「生きてきて…こんなの初めてだ」
ラフィ「おはようございます♪」
サターニャ「おっはよー!どうしたの、ガヴリール?元気ないじゃない」
ガヴ「…いや、昨日ちょっとよく眠れなくてさ。それで寝不足なんだ」
サターニャ「アンタが寝不足なんていつものことだと思うんだけど」
ガヴ「…んー、いや、なんつーか。寝覚めが悪かった?みたいな、そんな感じ」
ラフィ「うふふ。もしかしてそれ、ヴィーネさんのことでですか?」
サターニャ「ヴィネットの?なんで?」
ラフィ「あら、サターニャさん知らないんですか?ヴィーネさんとタプリスさんのこと…」
サターニャ「いやそれは知ってるけど…なんでそれでガヴリールの調子が悪くなるのよ」
ガヴ「……ヴィーネは、関係ないよ。昨日ゲームで嫌なことがあったんだ」
ラフィ「あらあら。ガヴちゃんがそういうならそれでいいですけど…」
ラフィ「~~~」
サターニャ「~~~」
ガヴ(そういえば、今朝はヴィーネ見ないな。いつも一緒に登校してるのに…)
ガヴ(…タプリスと、一緒なのかな)
ガヴ(当然だよな、だって恋人同士なんだから…)
サターニャ「ガヴリールっ!」
ガヴ「…お、なんだ急に。大声出して」
サターニャ「話聞いてなかったの?今日は小テストがあるらしいわ!だから、私と勝負しなさい!」
ガヴ「…やだよ。めんどくさいし、どうせお前私に勝てないだろ」
ガヴ(…あーそういや、昨日も宿題やってねぇや)
ガヴ(また、ヴィーネに教えてもらうか)
ガヴ(…それくらいなら、いいよな?)
ガラガラ
サターニャ「ククク…ひれ伏しなさい愚民共。全ての悪を統べる者、胡桃沢=サタニキア=マクドウェルの登校よ!」
ラフィ「あれ?昨日は完全無欠の悪魔大将軍と…」
サターニャ「同じような意味でしょっ!」
ガヴ「……」キョロキョロ
ガヴ(あれ、ヴィーネまだ来てないのか)
ガヴ(まぁ、じきに来るだろ。あいつが遅刻とかするわけないし…)
ガヴ(休みの連絡も…来てないよな、うん)
チクタクチクタク
ガヴ(…まだ、来ないな)
サターニャ「ヴィーネの奴遅いわね。これじゃ宿題写す時間ないじゃない」
ガヴ「…お前勉強したんじゃないのかよ」
サターニャ「はんっ!決められたカリキュラム通りに課題をこなしたところで、真の力はつかないわ!」
ガヴ「もう好きなようにやれよ」
キンコンカンコーン
ガヴ(HR五分前の予鈴が鳴った)
ガヴ(これじゃ、ヴィーネに宿題は見せてもらえないな…)
ガヴ(………)
ガラガラ
ヴィーネ「ふんふふんふ~ん♪」
ガヴ「!」
サターニャ「あっ、やっと来たわねヴィネット!」
ヴィーネ「わ、どうしたのサターニャ」
サターニャ「遅いわよ!心配したじゃない!私を心配させたお詫びに宿題を見せなさい!」
ヴィーネ「どさくさに紛れて楽しようとしない」ペシッ
サターニャ「てっ」
ガヴ「…遅かったじゃん。なんか事故にでもあってんのかと思ったよ」
ヴィーネ「ごめんね。ちょっとタプちゃんに勉強教えてあげてたの」
ガヴ「………へえ」
ヴィーネ「ほら、サターニャ。もうあまり時間ないけど、見てあげるから宿題出しなさい」
サターニャ「ほんと?ありがとうヴィネット!」
ヴィーネ「ガヴも、ほら。どうせ宿題やってないんでしょ?」
ガヴ「…私は、いいよ」
ヴィーネ「…え、そう?ならいいけど」
ガヴ「………」
ガヴ(いやだな、この感じ)
ガヴ(すごく、もやもやする…)
ヴィーネ「~~♪」
ガヴ(…ヴィーネ、機嫌いいな)
ガヴ(授業中も、ずっとにこにこしてて…)
ヴィーネ「~~…?」チラ
ガヴ「…っ!」ビクッ
ガヴ(やば、目合っちゃったっ)ササッ
ヴィーネ「……」
ヴィーネ「ねぇ、ガヴ。さっきの授業中、私何か変だった?」
ガヴ「…え、なんで?」
ヴィーネ「いや、私の方じっと見てたから…」
ガヴ「…や、なんか、やけに今日機嫌いいな~なんて思って…」
ヴィーネ「そ、そうかな?…顔に、出ちゃってる?」
ガヴ「……いや、別に隠さなくてもいいと思うけどね」
ガヴ(……なんか、あれだな)
ガヴ(さっきから私、思ってることと逆のこと言ってる気がする)
ガヴ(…おかしいな、そんなことをしても、意味なんてないのに)
ガヴ(そもそも、私はどうしたかったんだっけ?)
ガヴ(こんな展開を、私は望んでいたのか?)
ガヴ(…いや、別にこれが悪い展開なはずがないんだけど)
ガヴ(少なくとも、ヴィーネとタプリスの2人は、幸せなんだろうし…)
ガヴ(………)
ガヴ(だめだ。これ以上考えちゃ)
ガヴ(…何も、変わってない。ヴィーネとタプリスが付き合おうと、付き合うまいと、私には何の関係もない)
サターニャ「お弁当よー!」
ラフィ「元気ですね。先程まで廊下に立たされていらっしゃった方とは思えない…」
サターニャ「なんでアンタが知ってんのよ別クラスでしょ!?」
ガヴ「…お前ら毎回毎回昼休みになると私の席に来るな」
サターニャ「なによ、悪い?」
ガヴ「いや、別にいいけど」
ラフィ「まぁまぁ、私は好きですよ。この4人で食べるお弁当は」
ヴィーネ「あ、ごめんなさい。私、今日からはタプちゃんと食べるわ」
ガヴ「…え?」
ラフィ「あらあら、お熱いですね」
サターニャ「あー、そういやアンタたち付き合うことになったんだっけ?」
ヴィーネ「も、もう、そういうこと口に出して言わないでよ…!」
サターニャ「別にいいじゃない。おめでたいことなんだから」
ヴィーネ「そ、そうだけど…」
ラフィ「お弁当箱が二つあるようですが…もう一つはタプちゃんの?」
ガヴ「……ぇ」
ヴィーネ「そうよ。たまーに、ガヴにご飯作ってるって話をしたら、『月乃瀬先輩のご飯食べたいです!』って言われちゃって…」
ガヴ(お弁当、なんて)
ガヴ(私、作ってもらったこと、ない)
サターニャ「けっ。仲が良くて結構なことじゃない」
ラフィ「こらこら、サターニャさん?」
ヴィーネ「あ、ごめんね…ちょっと惚気みたいだった?」
ガヴ「………」
ヴィーネ「そういうわけだから…ごめんね。タプちゃん、中庭で待ってるから…」
ラフィ「大丈夫ですよ。行ってらっしゃい♪」
ガヴ「…あんまタプリス甘やかすなよ。あいつ純粋だから餌与えすぎると付け上がってくるぞ」
ヴィーネ「はいはい、気をつけるわね」
ガヴ「………」
サターニャ「…ま、なんだかんだ幸せそうでよかったじゃない」
ラフィ「天使と悪魔…しかも女の子同士ですから、これから先も色々弊害はあるでしょうが…」
ガヴ「…あいつらも物好きだよな。そうまでして一緒にいたいかね」
ラフィ「"好き"ってそういうものなんじゃないですか?私だって、サターニャさんと離れ離れになるなんて死んでも考えられませんし…」
サターニャ「アンタのそれは好意じゃないでしょ!」
ラフィ「…ガヴちゃんも、そんな感情に心当たりがあるはずですが?」
ガヴ「は?ねぇよ。私はゲームさえあれば生きていけるから」
ラフィ「私が言ったのは、その"ゲーム"のことだったんですが…」
ガヴ「………あ」
ラフィ「…ま、これ以上は何も言いませんよ」
サターニャ「さっきから何の話してるの?」
ガヴ(……飯食い終わって)
ガヴ(ラフィとサターニャはどっか行って)
ガヴ(……暇だ)
ガヴ(いつもなら、ヴィーネと校内うろついたり、他愛もないこと話したり)
ガヴ(でも、ヴィーネはもういないから)
ガヴ(……そだ、調理部にでも行こう)
ガヴ(別にヴィーネしか友達がいないわけじゃない)
ガヴ(……別に、寂しいわけでも、ない)
ガヴ「………」
ガヴ(…初めて料理作ってみたって話しようかな)
ガヴ(そして、今度はあいつらと一緒に何か作ってみよう)
ガヴ(パフェの作り方とか教えて貰って)
ガヴ(そうだ、それをヴィーネに…)
ガヴ(………)
ガヴ(……ちがう、ヴィーネじゃない)
ガヴ「……ん?」
ガヴ「…あ、中庭だ」
ガヴ(…調理部行くには、中庭の前通らないといけないんだったっけ)
ガヴ(…………)
ガヴ(……知るか、私には関係ない)スタスタ
ガヴ「………っ」ピタリ
ガヴ(…ま、まぁでも…ちゃんと、二人が付き合えてるのかどうか確認するのも、天使としての役目かもな…)
ガヴ(……別に、二人が仲良く飯食ってるところなんて見たところで、私は何も思わないし)
ガヴ(……ちょっとだけ。柱の影から、覗いちゃえ)
タプリス「……~~」
ヴィーネ「…~~……」
ガヴ(…何か、話してる?)
ガヴ(結構、真剣な話っぽいな…)
ガヴ(しかも、かなり小さな声で…全然聞き取れない)
タプリス「………~~」
ヴィーネ「……~」クス
ガヴ(…ヴィーネが、笑った?)
ヴィーネ「…~~」おかずヒョイ
タプリス「!~~♪」アーン
ガヴ(…………)
ガヴ(……あ、『あーん』だ。は、初めて見た)
タプリス「~~~♡」モグモグ
ヴィーネ「……」おかずヒョイ
タプリス「っ!…~~♪」アーン
ガヴ(………同じ、弁当だろ)
ガヴ(別にそんなことする必要、ねぇだろうがよ)
ガヴ「………」
ガヴ「……かえろ」
スタスタ…
ヴィーネ「………」
タプリス「……」モグモグ
ヴィーネ「……~~」
タプリス「……」コクリ
ヴィーネ「ごめんね、今日もタプちゃんと帰るわ」
タプリス「す、すみません天真先輩…月乃瀬先輩お借りしますっ!」
ガヴ「…あー、いーよいーよ。別に私のでも何でもないしね」
ラフィ「じゃあ、今日は私たちと一緒に帰りませんか~?」
サターニャ「なんでアンタと私が一緒に帰るの前提なのよ!嫌よ!また酷い目にあわせるんでしょ!」
ラフィ「そんなつれないこと言わないでくださいよー」
ガヴ「…いや、いいよ。ちょっと寄るとこあるから、私先帰るね」
ラフィ「あらあら。そういうことなら仕方ありませんね…サターニャさん♪一緒に帰りましょ?」
サターニャ「や、やだあぁっ!」ドタドタドタ
ガヴ「………」
ガヴ(…………)
ガヴ(……ネトゲ)
ガヴ(は、気分じゃないな)
ガヴ(だからといって、他にすることもないんだけど)
ガヴ(……飯、作るか?)
ガヴ(…いや、でも)
ガヴ(……今日はコンビニ飯でいっか)
ガヴ(部屋の、掃除….)
ガヴ(…いつもは、ヴィーネがやってくれたんだっけ)
ガヴ(……結局、すぐ散らかしちゃうんだけど)
ガヴ(……ヴィーネ、か)
ガヴ(私って、ほとんどヴィーネに頼って生活してたんだな)
ガヴ(…登校から、下校まで、宿題写させてもらったり、お喋りしたり、授業でペア組んだり)
ガヴ(休日一緒に出かけたり、金やばい時はご飯作ってもらったりもして、掃除だって、なんだってやってくれて)
ガヴ(…私のことだけを、見てくれていて)
ガヴ(でも、そんなものは全部、今はタプリスのもので)
ガヴ(じゃあ、私はどうすればいい)
ガヴ(……私は、どうしなきゃ、いけなかったんだ)
ガヴ「……ぁ」prrr
ガヴ(気付けば、私はヴィーネの家に電話を掛けていた)
ガヴ(…そんなのは、初めてのことだ)
ガヴ(そもそも、電話なんて使ったのも、これが最初かもしれない)
ガヴ(それほどまでに、私はヴィーネの声を聞きたかった)
ガヴ(なんでもいいから、ヴィーネを感じたかった)
ガヴ「………」
ガヴ(…何を、話そう)
ガヴ(そんなことすら、考えてなかった)
ガチャリ
『はい、もしもし月乃瀬で…』
ガヴ(っ!)
ガヴ「あっ、ヴィーネ?ごめん、こんな夜遅くに―――」
タプリス『天真先輩?』
ガヴ「………」
ガヴ「…た、たぷ。りす?」
タプリス『あ、月乃瀬先輩に用ですか?ごめんなさい、今代わりますね』
ガヴ「……ぁ、あぁ」
ガヴ(……そっか)
ガヴ(付き合ってるんだもんな、そりゃ。家にくらい、行くよな)
ガヴ(……こんな、夜遅くでも、さ)
ヴィーネ『ガヴ?どうしたの、何かあった?』
ガヴ「…ヴィーネ」
ガヴ(ああ、ヴィーネの声だ)
ガヴ(…なんでかな、どこか懐かしい感覚を覚える)
ヴィーネ『ちょっと!黙ってちゃ何もわからないわよ!本当に何があったの?』
ガヴ(…そっか)
ガヴ(このヴィーネは、今だけは私のことを考えてくれてるんだ)
ガヴ(私のことを、心配してくれてるんだ)
ガヴ「…ごめん。なんでもないや」
ヴィーネ『はぁ?』
ガヴ「おやすみ。タプリスと仲良くね」
ガチャリ
ガヴ(………わかんない)
ガヴ(もう、自分がどうしたいのか、何を望んでるのか、ぐちゃぐちゃだ)
ガヴ(エゴとイドがせめぎあって、頭がおかしくなりそう…)
ガヴ(もう何もする気になれない…)
ガヴ(ゲームも、学校も、天使も、世界も、何もかもどうでもいい…)
ガヴ(…ラッパでも吹けば、楽になれるんだろうけど)
ガヴ(そんな気力すら、もう残ってない)
ガヴ「………寝よう」
ガヴ(夢の世界に閉じこもれば)
ガヴ(少しは気も晴れるかな)
先生「天真はインフルエンザだそうだ。最近流行ってるからな、みんなも気を付けるように」
サターニャ「天使でも風邪ってひくのね」
ラフィ「悪魔の中でも風邪を一切ひかないのはサターニャさんくらいだと思いますが」
サターニャ「ふっ、当然よ!大悪魔とあろうものが、いちいち病に伏せていては部下に示しがつかないからね!」
ラフィ「うふふ♪やはり、ナントカは風邪を引かないとは本当ですね」
サターニャ「あーはっはっはっは!」
ヴィーネ「………」
ガヴ「…………」
ガヴ「……ごほっ、ごほっ」
ガヴ(…まぁ、このタイミングでのインフルは、むしろ有難いな)
ガヴ(……見舞いに来てくれなくても、言い訳が立つし)
ガヴ「……ぁ、体が痛い」
ガヴ「なんか食うもんあったかな…」
ガヴ(…誰とも会わず、何をすることもなく、ただ退廃的に、寝て、テレビ見て、飯食うだけの生活)
ガヴ(恐らく、このままだったら私は天界へ強制送還されるだろうが)
ガヴ(…それもいいかもな。もう私には、ここに留まり続けている理由がない)
ガヴ(かつてあれほど私を魅了した人間界の娯楽にも、今や何の価値も見いだせない)
ガヴ(私が唯一欲しいものは、もう手の届かないところにある)
ガヴ(……だったら、私は)
ガヴ「……ごほ、ごほっ」
ガヴ(…熱が下がって、一週間が経つ)
ガヴ(それでも、私は学校に行くつもりはなかった)
ガヴ(もう、誰の顔も、見たくない)
ガヴ(いつかは立ち直らなきゃいけないんだってわかってるけど)
ガヴ(…今の私には無理だ)
ガヴ(まぁ、じきに担任が様子を見に来るだろうが…)
ガヴ(その頃には、とっくに私は天界へ返されてるだろう)
ピンポーン
ガヴ「っ!」
ガヴ(も、もうっ…!?インフルエンザだぞ!一週間くらい大目に見ろよ!)
ピンポーン ピンポーン ピンポーン
ガヴ(くそっ、中に誰もいませんよー!)
「…はぁ」
ガチャリ
ガヴ「……え?」
ガヴ(鍵、空いて…)
ヴィーネ「久しぶり、ガヴ」
ガヴ「……ヴィーネ」
ヴィーネ「合鍵、作っといて良かったわね」
ガヴ「……何しに来たんだよ」
ヴィーネ「お見舞いよ」
ガヴ「……移んぞ」
ヴィーネ「移らないわよ。だってとっくに治ってるじゃない」
ガヴ「………」
ヴィーネ「……全く、せっかく掃除してあげたのにもうこんなに汚して…」
ヴィーネ「どうせロクなものも食べてないんでしょ?何か作ってあげるわ。食べ終わったら、一緒に掃除しましょ」
ガヴ「…………」
ガヴ「」ハフハフ
ヴィーネ「美味しい?」
ガヴ「」コクコク
ヴィーネ「良かった」
ガヴ(……久しぶりの、ヴィーネの料理)
ガヴ(ただのうどんだ。特別なものは何も入ってない)
ガヴ(なのに。どうしてこんなに美味しいんだろう)
ガヴ「…ご馳走様でした」
ヴィーネ「お粗末様でした。…じゃ、この狂ったような部屋を何とかするわよ」
ガヴ「……うん」
ヴィーネ「ちょ、っ、ガヴッ!!なんか臭いと思ったら…トイレはトイレでしなさいよぉ!」
ガヴ「…あ、ごめん。なんかめんどくさくて」
ヴィーネ「…まぁ、熱出てたこともあるし、仕方ないのかもしれないけどさぁ」
ガヴ「ほんっとヴィーネって甘いよね。タプリスが心配だわ…」
ヴィーネ「ちっとは反省しなさい!」
ガヴ「は、はい」
ガヴ(……なんか、久しぶりだ)
ガヴ(この、感じ……)
ヴィーネ「ほらほら、分別はちゃんとして…」
ヴィーネ「コンビニ弁当食いすぎよアンタ。こんなんじゃ栄養偏っちゃうじゃない…」
ガヴ「…いやー、自炊しようかとも思ったんだけど、上手くいかなくてさ」
ヴィーネ「アンタ本当に元学年主席?」
ガヴ「やっぱり頭も体も使ってないと衰えるよね」
ヴィーネ「アンタが堕天してからまだ一年くらいのはずなんだけどね…」
ガヴ「あはは…」
ガヴ(でも、たぶん、ちがう)
ガヴ(私の求めているものは、これじゃない)
ガヴ(ヴィーネ、もういいよ)
ガヴ(ヴィーネには、タプリスがいる。私がこうなる度に、私の面倒を見に来ちゃ、ヴィーネが持たない)
ガヴ(何度も、何度も、喉に引っかかって出てこなかった言葉)
ガヴ(嫌な顔一つせず、私の部屋を綺麗にしてくれるヴィーネ)
ガヴ(そのヴィーネを、私は労うことすらできない)
ガヴ(感謝の言葉すら、まともに言えない)
ヴィーネ「粗方終わったわね…」
ガヴ「…いやー、すごいなヴィーネは。こんなの業者に頼んだって丸一日かかるぞ」
ヴィーネ「そんな部屋を作り出したのはどこの誰だと思ってるのよ…」
ガヴ「ははは、ごめんごめん」
ヴィーネ「全く…大方風邪で辛くて、そのままズルズル休んじゃったってとこなんでしょうけど…」
ヴィーネ「学校は来なきゃダメよ?アンタ本当ギリギリで天使やってんだから」
ガヴ「……うん。そうだね」
ヴィーネ「…じゃ、私は帰るわ。明日は絶対に来なさいよ?」
ガヴ「……っ」
ガヴ(そう言って、ヴィーネは私の前から立ち去ろうとする)
ヴィーネ「タプちゃんが待ってるもの。急がないとね…」
ガヴ「………っ!!」
ガヴ(……そうだ、結局、タプリスだ)
ガヴ(今日ヴィーネが来てくれたのは、ヴィーネの強い責任感がうんだ、ただの気まぐれ)
ガヴ(ヴィーネが見ているのは、ずっと、タプリス一人だけ)
ガヴ(……そんなの)
ガヴ(そんなのっ……!)
ガヴ「……行かないで」ギュッ
ヴィーネ「……ガヴ?」
ガヴ「お願い。行かないで…ヴィーネ」
ヴィーネ「…離してよ。今日は帰らなきゃいけないのよ」
ガヴ「嫌だ。離したら、またどっかいくもん。タプリスのとこに、行っちゃうもん」
ヴィーネ「当たり前でしょ?タプちゃんは私の彼女なんだから」
ガヴ「嫌だ。そんなの嫌だもん。…ヴィーネにご飯を作ってもらうのは私だ。ヴィーネとお喋りして、ヴィーネに勉強教えて貰って、ヴィーネと一緒に登下校するのは私なんだ」
ヴィーネ「…どうして?私は別にガヴのものじゃないのよ?それに…どうして、ガヴはそんなに私と一緒にいたいの?」
ガヴ「…そ、それは」
ガヴ(……私は、何をしなくちゃならなかったのか)
ガヴ(タプリスにヴィーネを取られないために、私は何をすべきだったのか)
ガヴ(今なら、わかる)
ガヴ(今度こそ、間違えない)
ガヴ「……私は、ヴィーネが、好きだから」
ヴィーネ「……ほんと?」
ヴィーネ「ガヴは、私が好き?」
ガヴ「……あぁ。好きだ。悪魔のくせに優しくて、悪魔のくせに面倒見が良くて、悪魔のくせにクソ真面目で」
ガヴ「…誰よりも私を気にかけてくれて、私の世話を甲斐甲斐しく焼いてくれて、そんなお前が大好きだ」
ヴィーネ「……本当に、好き?」
ガヴ「…うん、本当」
ヴィーネ「じゃあ…私のためなら、何だってできる?」
ガヴ「うん。…ヴィーネが、私のそばにいてくれるなら、後は何も要らない」
ヴィーネ「ネトゲもやめる?朝ちゃんと起きる?天使らしく振る舞う?」
ガヴ「ヴィーネが望むなら、なんだってやる。だから…」
ヴィーネ「……そう、ならいいわ」
ヴィーネ「ごめんね、ガヴ。辛い思いをさせて」
ヴィーネ「私はもう二度と、ガヴからは離れないわ」
ーーーーーーーーーーー
タプリス「…天真先輩と付き合いたい?」
ヴィーネ「ええ」
タプリス「なんだって私に…」
ヴィーネ「だ、だって…他に相談できるのが、サターニャとラフィよ?」
タプリス「あぁ、それは確かに…」
ヴィーネ「お願いよ。今のガヴ、ネトゲさえあればなんでもいいみたいな感じじゃない。どうすればいいのか…付き合いの長いあなたなら分かるんじゃない?」
タプリス「そ、そう言われましても…天界の頃の天真先輩と今の天真先輩って、もはや別の存在というか…」
ヴィーネ「…そ、それもそうね」
タプリス「…まぁ、私としても天真先輩を更生させたい気持ちに変わりはありませんし…協力します!月乃瀬先輩なら、先輩を任せられそうですしね!」
ヴィーネ「あぁ、ホントいい子ねタプちゃん…こういうのを天使っていうんだわ…」
ラフィ「お話は聞かせてもらいました~」ヒョイ
ヴィーネ「わあっ、ラフィ!?」
タプリス「白羽先輩!?」
ラフィ「うふふ、酷いじゃないですかヴィーネさんっ!こんな面白…楽しそうなことに、私を参加させてくれないなんて…」
ヴィーネ「大して言い直せてないわよ!」
タプリス「白羽先輩は、何か案とかありませんか?」
ラフィ「そうですね~…というより、そもそもガヴちゃんって今でも大分ヴィーネさんのこと好きだと思いますよ?」
ヴィーネ「…え、えっ?そうかしら…。私は、都合よく使われてるとしか思ってないんだけど…」
ラフィ「何だかんだいつも一緒じゃないですか。ガヴちゃんってあんな性格ですし、どうでもいい人に進んで関わりに行ったりはしないと思います」
ラフィ「それに、前ヴィーネさんが風邪で休んだときも…一日中そわそわしていましたし」
ヴィーネ「そ、そうなんだ…」
ラフィ「そんなヴィーネちゃんにオススメするのはこれっ!」
タプリス「どうしたんです急に!?」
ラフィ「じゃんっ!『押してダメなら引いてみろ!タプちゃんとイチャイチャ、ガヴちゃんヤキモチ大作戦』~!」
ヴィーネ「なっが!?」
タプリス「なんで、なんでそこで私の名前が!?」
ラフィ「簡単な話ですよ。まず、ヴィーネさんがガヴちゃんに『私はタプちゃんが好きだ。だから応援してくれ』と告白します」
ヴィーネ「…え、えぇ…!?う、嘘をつくってこと!?」
ラフィ「するとガヴちゃんは動揺して、自分の気持ちを誤魔化すためにヴィーネさんとタプちゃんを全力で応援してくると思うので、頃合を見計らってヴィーネさんはタプちゃんに告白、二人は付き合い始めます」
タプリス「わ、私が月乃瀬先輩と…!?」
ラフィ「後は適当にタプちゃんとのイチャイチャぶりを見せつけてあげれば、嫉妬に狂ったガヴちゃんはころっとネトゲを捨ててヴィーネさんに靡くという寸法です」
タプリス「な、なるほど…!」
ヴィーネ「ちょっと待ってよ!?そんなに上手くいくの!?」
ラフィ「安心してください♪ガヴちゃんとの付き合いなら長いので♪」
ヴィーネ「昔のガヴを知ってたところで宛になんないでしょーが!」
ラフィ「そうでもないですよ。昔も今も、ガヴちゃんはガヴちゃんです」
ヴィーネ「……」
ラフィ「昔のガヴちゃんも…必死に抑えていましたが、自己中心的な所はありましたし」
ラフィ「今のガヴちゃんも…心のどこかに、人を慈しむ心が残っています」
タプリス「私は白羽先輩の作戦に賭けてみたいと思います…!」
タプリス「天真先輩は純粋なんです。だからこそ、あそこまで人間界の娯楽に傾倒できたんだと思います」
タプリス「その純粋な心を、ヴィーネさんへの想いに傾ければ…」
タプリス「先輩は、昔の先輩に戻ってくれるはずです!」
ヴィーネ「………」
ヴィーネ「……はぁ、わかったわよ。あまり気乗りはしないけど…」
ヴィーネ「…最悪、ガヴを傷つけることになるかもしれないけど、構わないわ」
ヴィーネ「だって私は悪魔だもの…!」
ラフィ「その意気ですよ、ヴィーネさん♪」
ーーーーーーーーーー
タプリス「……と、いうわけなのでした」
ガヴ「」
ヴィーネ「ほ、本当にごめんね…?まさか、ガヴがあそこまで追い詰められるとは思わなくて…」
ガヴ「…タプリス」
タプリス「は、はいっ」
ガヴ「…とりあえずお前は地獄行きだ」
タプリス「わ、私天使なんですが!?」
ラフィ「いやー、最高に面白かったです。ありがとうございました」
ヴィーネ「やっぱラフィはそういう視点だったのね…」
サターニャ「ちょ、ちょっと!納得いかないんだけど!?」
タプリス「何がですか?『なんでヴィネットがタプリスじゃなくてガヴリールと手を繋いで登校してるの!?』という疑問にはちゃんと答えたじゃないですか」
サターニャ「なんで私だけのけものにしてみんなでワイワイやってんのよって話よ!!」
サターニャ「しかも、なぜかタプリスがしれっとその輪に入ってるし!」
ラフィ「それはですね。サターニャさんと絡めるのも面白そうだなとは少し思ったのですが…」
ラフィ「同時に、台無しにされそうとも思ったので…」
サターニャ「なんでよ!?」
ガヴ「…はぁ、全く。そこまでして私を更生させたいかね」
ヴィーネ「当たり前よ。好きなんだもの」
ガヴ「……っ//な、なにきゅうに」
ヴィーネ「い、いや、そういやまだ言ってなかったなーって思って…」
ガヴ「…ったく。そういうのは、もっと別のときに…」
ラフィ「別の時って何ですか~?」
ガヴ「わ、ら、ラフィは黙ってろ!」
ラフィ「あらあら。ガヴちゃんに怒られちゃいました。慰めてくださーい…」
サターニャ「こっち寄らないでよ気持ち悪い!」
ガヴ「…は、はぁ」
ヴィーネ「ねぇ、ガヴ」
ガヴ「ん?」
ヴィーネ「その、別の時って…」モジモジ
ガヴ「わーっ!わーっ!」
タプリス「…ふふ」
タプリス(天真先輩は、今までとは別人のようになった)
タプリス(口調の荒さと、物言いのキツさは相変わらずだけど…)
タプリス(ネトゲもやめ、髪もちゃんと整え、天使らしく振る舞うようになった)
タプリス(私の、憧れの先輩が、帰ってきた)
タプリス「…ま、帰ってきたところで、どうしようもないんですけどね」
タプリス(これから天真先輩は、月乃瀬先輩と一緒に、悪魔を天使に昇天させる方法を頑張って探すらしい)
タプリス(昨日、照れ臭そうに、幸せそうに、語ってくれた)
タプリス(私は、その顔が見れただけでも、十分すぎるほどに満たされた)
タプリス(…だから、この気持ちは)
タプリス(もう、必要ない)
タプリス(好きでした、天真先輩!)
168 : 以下、\... - 2017/03/07 21:58:30.312 o81q079c0.net 51/51終わりです。
読んでくださって有難う御座いました

