シンジ「僕が?」【1】
シンジ「僕が?」【2】

420 : 以下、名... - 2017/02/26 22:30:46.69 FmKNp9rU0 358/697

- ネルフ本部 医務室 -

ミサト「シンジくんの容体は⁉」

リツコ「検査結果はなにも問題ないわよ」

ミサト「……ふぅ……碇司令からは、なにかあった?」

リツコ「今の状態を伝えたら、処置なしと判断されたわ」

ミサト「ん? ちょっとひっかかる言い方ね。検査に問題はなかったんでしょ?」

リツコ「外傷、及び疾病の心配はないと言ったつもりだけど?」

ミサト「……それじゃ、他に問題があるってこと? もしかして精神的なやつ?」

リツコ「遠からずも近からずと言ったところかしらね」

ミサト「もったいぶるじゃない、私は監督者なのよ。いい加減教えなさいよ」

リツコ「シンジくんのことを1番理解しているんでしょ? 当ててみたら?」

ミサト「ぬぐ……っ! あんた、変なところで根に持つわね」

リツコ「すぐに改善できるような症状ではないもの。ミサトで少し遊んでるだけよ」

ミサト「……シンジくんでしょ? だったら、また、乗りたくなくなったとか?」

リツコ「はずれ」

ミサト「……わかったっ! 命令違反で営倉にはいるのを怖がってるとか!」

リツコ「それもはずれ」

ミサト「ん、んん~」

リツコ「……ふぅ。あなた、それでよくシンジくんのこと1番わかってるなんて言えたものね」

ミサト「じゃあなんなのよぉ」

リツコ「シンジくんは――」

421 : 以下、名... - 2017/02/26 22:44:36.94 FmKNp9rU0 359/697

- ネルフ本部 女子ロッカールーム -

アスカ「――シンジが記憶喪失ぅ⁉」

ミサト「……みたいなのよねぇ」

アスカ「みたいなのよねぇってちょっと⁉ そんなにノンビリ構えてる場合⁉」

ミサト「私としても困惑しっぱなしなのよ~」

レイ「……碇くんは、どこまでの記憶があるんですか?」

ミサト「リツコによると、エヴァに乗る時、第三新東京都市に来てからの記憶がすっぽりと抜け落ちてるみたい」

アスカ「そんな⁉ それじゃ私のこともまったく覚えてないの⁉」

ミサト「う~ん、まぁ、そうなっちゃうわよねぇ」

マナ「…………そんな、シンジくんが」

ミサト「とにかく、これからやらなければいけないことが山積みだわ。シンジくんのシンクロテストもそうだけど、戦自の正体不明機のことも気になるし」

マナ「あの、そのことなんですけど……」

ミサト「うん? そういえば、あの時、あなた無事かって言ってわよね」

マナ「はい。私、霧島マナといいます。実は、あの正体不明がなにか知っています!」

ミサト「……詳しく聞かせてもらえるかしら」

マナ「はい、かまいませんけど、あの、安全は保障してもらえますか?」

ミサト「まずは内容を聞いてみないとなんとも。ただ、有用であった場合は出来うる限りのことは協力させてもらうわよ」

アスカ「……そんな、シンジが記憶喪失だなんて」

ミサト「――アスカ? 大丈夫?」

アスカ「シンジに会いに行く! 今は医務室よね⁉」

ミサト「いいけど……覚えてないの見てもショック受けないでね?」

アスカ「思い出させてやるわよ!」


422 : 以下、名... - 2017/02/26 23:02:38.84 FmKNp9rU0 360/697

- ネルフ本部 医務室 -

アスカ「シンジッ!」

シンジ「……?」

アスカ「大丈夫なの⁉」

シンジ「……平気、だけど」

アスカ「……あれ? なんだ、いつもと変わらない――」

シンジ「あの、部屋間違えてませんか?」

アスカ「……っ⁉ うそ⁉ 本当に忘れちゃったの⁉」

シンジ「えっと……?」

アスカ「私よ! 私のこと本当に覚えてないの⁉」

シンジ「あの、僕と、どこかで会ったことあった?」

アスカ「――……そ、そんなっ」

シンジ「……?!」


ガチャ


レイ「……碇くん」

シンジ「また? えーと、名前知ってるみたいだけど、どちら様ですか?」

レイ「…………」

アスカ「……ファースト」

レイ「……なに?」

アスカ「ミサトは?」

レイ「転校生と話をしてる」

アスカ「そ。それじゃ、私ミサトのところに行くから」

レイ「碇くんは、もういいの?」

アスカ「どうしてこうなったのか聞かなきゃおさまりつかないでしょ!! あったまきてんのよっ!!!」ガンッ

シンジ「ひっ⁉」

レイ「…………」


423 : 以下、名... - 2017/02/26 23:16:08.98 FmKNp9rU0 361/697

- ネルフ本部 女子ロッカールーム -

ミサト「つまり、あの正体不明機は戦自が秘密裏に開発したロボットってこと?」

マナ「はい……」

ミサト「ふぅん。でも、一体なんの為に?」

マナ「ネルフへの、対抗兵器なんだと思います。私が聞いた話だと、エヴァじゃなくても使徒と戦えるという話でした」

ミサト「……ま、使徒がきてから戦自はいつも尻拭いだもんね」

マナ「そのパイロットが、私の友人のムサシとケイタです」

ミサト「今回のは暴走か、なんらかの不都合が起きたと見ていいのかしら?」

マナ「おそらくは。テスト試行は近々行われる予定でしたが、本格的な実用化はまだまだ先の話で……」

ミサト「先っていうと、どれぐらい」

マナ「6年後、だったと思います」

ミサト「6年⁉ なんとも気の長い話ねぇ~」

マナ「……ですから、パイロットも20歳になるのを想定して現在14歳の両2名が選出されました」

ミサト「まるきり一般人てわけでもないんでしょ?」

マナ「はい。2人は少年兵で。もともと、志願して乗っています」

ミサト「でも、マナちゃんは2人を助けだしたいの?」

マナ「大人たちに都合のいいように利用されてるだけなんですっ! だから目を覚ませないとっ!」

ミサト「……なるほど」

マナ「……あの、どうにか、できそうですか?」

ミサト「ちょっと話が大きすぎて、私じゃなんとも言えないわね……」

424 : 以下、名... - 2017/02/26 23:27:40.16 FmKNp9rU0 362/697

カシャ


ミサト「あら、アスカ。 シンちゃんどうだっ――」

ガンッ!!!

マナ「っ⁉」

アスカ「……ミサト」

ミサト「なぁに?」

アスカ「今すぐ経緯を話すか殴り合いをするかどっちがいい?」

ミサト「人を殺しそうな迫力ね」

アスカ「望まれればやるわよ。我慢なんかとうに終わってるわ」

ミサト「……わからないって言ったら?」

アスカ「――っざけんじゃないわよっ!! シンジをどうするつもり⁉」

ミサト「とりあえず、経過を見るとしか言えないわね」

アスカ「はぁ? 経過を見てそれで記憶が戻るの⁉ もっと具体的な対策案がなにかあるでしょ⁉」

ミサト「赤木博士からは、すぐに戻るような状況ではないと聞いているわ」

アスカ「ネルフってそんなに無能なの⁉ 一流の大学出た秀才達が集まってんでしょ⁉ そんな奴らの見解がそれ⁉」

ミサト「……アスカ。わめいてもシンジくんの記憶は戻らないわよ」

アスカ「嘆いてんのよ! あんた達のあまりの頼りにならなさに!!」

ミサト「…………」

アスカ「……シンジをかえして……」

ミサト「……シンジくんはいるわよ……」



アスカ「シンジを返しなさいよっ!!!」ガンッ!!

425 : 以下、名... - 2017/02/26 23:48:00.31 FmKNp9rU0 363/697

- 帰宅中 -

アスカ「…………」テクテク

マナ「……あの、アスカ」テクテク

アスカ「…………」ピタッ

マナ「わっ」

アスカ「あんた、ミサトに話てよかったの?」

マナ「えっ?」

アスカ「ミサトに話するってことはネルフに話が通るってことよ?」

マナ「え? ――あの、そういう手はずだったはずじゃ?」

アスカ「……詳しく聞きたいけど、監視されてるかも」

マナ「あ、うん。そうよね」

アスカ「歩きながらでいいわ。あんたに話をしたのはメガネでいいわよね」テクテク

マナ「うん。メガネはかけてた」

アスカ「そいつと何か、計画したの?」

マナ「折り合いがついたら、やることを指示されてたの。アスカにネルフに連れていってもらったのもそれが理由」

アスカ「……それならそうと最初から言いなさいよ」

マナ「あの時は、私も気が動転してて……」

アスカ「シンジについては?」

マナ「シンジくんが私達を守ってくれるって、それだけ」

アスカ「……ふぅん」

マナ「あの、シンジくんは、記憶、取り戻せるよね?」

アスカ「取り戻せるわ。取り戻してもらわなきゃこまる」

マナ「……よ、よかった……私も安心できるし……」

アスカ「あんた、シンジのこと心配してるわけじゃないのね」

マナ「あ、ごめん……そんなこと、ないんだけど……」

アスカ「(あのメガネは次いつ現れるのよ⁉)」

426 : 以下、名... - 2017/02/27 00:02:09.69 zHGVZawt0 364/697

- 翌日 第壱中学校 ホームルーム前 -

トウジ「記憶喪失ゥ~⁉」

ケンスケ「そんな漫画みたいなこと本当にあるのかぁ?」

アスカ「……そうよ」

ヒカリ「碇くん、大丈夫なの?」

アスカ「うん……。外傷はとくにないから」

ヒカリ「アスカ……。辛いね」

アスカ「ありがと。ヒカリ」

トウジ「センセも火傷の次は記憶喪失とか、ほんまエヴァパイロットっちゅーもんは大変やのぉ!」

ケンスケ「記憶は戻りそうなのか?」

アスカ「まだなんとも言えない。でも、取り戻すわよ。私はそう信じてる」

トウジ&ケンスケ&ヒカリ「…………」

アスカ「ま、そういうわけだから。シンジが登校してきてもあんた達、いつも通りやんなさいよ」

トウジ「登校してきて大丈夫なんか?」

アスカ「午前は検査で、今日の昼から来るわよ」

427 : 以下、名... - 2017/02/27 00:14:16.25 zHGVZawt0 365/697

- 第壱中学校 昼休み -

ガラガラ

シンジ「…………」キョロキョロ


アスカ「……っ!」

ヒカリ「あ、い、いかり――」

アスカ「ヒカリ、黙って」

トウジ「なんや、話かけんのかいな?」

アスカ「……覚えてないのが嫌なのよ」

トウジ「シンジはシンジやろ! まったく! よー見ておけ!」ガタッ

ケンスケ「お、おい、トウジ――」


スタスタ


トウジ「よっ! シンジ!」

シンジ「……?」

トウジ「昼から出勤とは社長顔負けやなー! 記憶なくしたって聞いとるが?」

シンジ「あぁ、ってことは、僕が記憶をなくす前の知り合い?」

トウジ「……まぁ、そんなとこや。登校してきて大丈夫なんか?」

シンジ「うん。日常生活の中で思い出すことがあるかもしれないからって赤木博士が」

トウジ「さよか」

シンジ「あの、僕の席ってどこかな?」

トウジ「あぁ、それならあそこやで」

シンジ「ありがとう」

トウジ「なぁ、ほんまにワシたちのこと忘れてしもうたんか?」

シンジ「……うん。ごめん」

トウジ「そうかぁ……。まぁ、そゆこともあるやろ」

シンジ「なかなか、ないと思うけど」

428 : 以下、名... - 2017/02/27 00:22:35.56 zHGVZawt0 366/697

トウジ「…………」チラッ


アスカ&ヒカリ&ケンスケ「…………」ジー


トウジ「(あいつら、そんなに気になるなら話かければええのに、せや!)」

シンジ「……あの、まだなにか用?」

トウジ「なぁ、シンジ。記憶てどこからがないんや?」

シンジ「あ、うん。えっと数ヶ月前からなんだけど。えーと、たしか第三新東京都市にきてすぐから」

トウジ「それなら、シンジに彼女がおるのも覚えないんか?」

シンジ「えぇ⁉」

トウジ「ちなみに今も熱々で、昼休みになるといつも一緒に食べてたぐらいなんも?」


アスカ&ケンスケ&ヒカリ「……っ!」ガタッ


シンジ「そんな人が僕にいたの?」

トウジ「誰か知りたいか? ちょい耳貸せ」コショコショ

シンジ「――あっ。そうなんだ」

トウジ「声かけたれ。きっとあいつも待っとるからの」

429 : 以下、名... - 2017/02/27 00:37:54.88 zHGVZawt0 367/697


スタスタ


アスカ「こ、こっちに来るわよ」

ヒカリ「(鈴原にしてはいいことやったかも)」

ケンスケ「よっ。碇。こっちこっち」

シンジ「あっ……。ここでいいんだね」

ケンスケ「記憶喪失とは大変だったな。俺は相田ケンスケって言うんだ」

シンジ「僕は、って、自己紹介の必要はないのか」

ケンスケ「こっちに用があったんだろ?」

シンジ「あ、うん。実は僕に彼女がいるって聞いて」


アスカ「彼女って私、まだ付き合ってるって言ってないのに」コショコショ

ヒカリ「いいじゃないアスカ。碇くんがこうして来てくれたんだもの」コショコショ


シンジ「ええと、あの、うまく言えないんだけど」

アスカ「……ふん、どうせあんたの――」


シンジ「心配かけてごめんね。洞木さん」


ヒカリ「へぇっ?」

アスカ「……ヒカリ?」


シンジ「僕、記憶なくなっちゃったけど、その、なんとかやるから」スッ

ヒカリ「へ? あの? い、碇くん? やだ、手」

アスカ「…………」パクパク

シンジ「どうしたの?」


トウジ「――なはははっ! 大・成・功!」

シンジ「……?」

ヒカリ「すぅ~~~ずぅ~~はぁ~らぁ~~っ!!」

アスカ「あんたの人生も今日で終わりね」

トウジ「なはは……は……なんや。冗談にマジになるなや!」

ヒカリ「やっていいことと悪いことがあるでしょう! 碇くんを騙して!」

ケンスケ「案外、委員長もドキッとしてたりして?」

ヒカリ「な、何言ってるのよ!!」

アスカ「ヒカリ、こいつらそろそろ一度きついのが必要だと思わない――?」

430 : 以下、名... - 2017/02/28 01:00:51.66 u+wDA+/70 368/697

- ネルフ本部 ??? -

冬月「どうなることかと思ったが、我々にとっては良い結果だな」

リツコ「はい。シンジくんの記憶がなくなったことでアスカとの関係がなかったことになったのは僥倖と言えます」

冬月「やはり、あの2人になにかあったのは間違いないのかね?」

リツコ「間違いないかと。報告によるとクラスでも付き合っていると噂になっていたそうですわ」

ゲンドウ「子供の情報収集には子供が一番ということか」

リツコ「一概には言えませんが、往々にして距離感が近い者同士が打ち解けやすいのはたしかです」

冬月「この機会を逃す手はないな。今のうちにレイを近づけるべきか……」

リツコ「手を打ちますか?」

ゲンドウ「ああ……。邪魔がはいらないように警戒をしろ」

リツコ「承知いたしました」

431 : 以下、名... - 2017/02/28 01:11:06.35 u+wDA+/70 369/697

- シンジ 夢の中 -

シンジ(少年)『キミは誰?』

シンジ「碇シンジ。君は?」

シンジ(少年)『ボクもシンジだよ』

シンジ「違うっ! 僕がシンジだ!」

シンジ(少年)『ボクのこと認めるのがこわいんだね』

シンジ「な、なに言ってるんだよ……」

シンジ(少年)『失敗するのがこわい? 自分が傷つくのがこわいんでしょ?』

シンジ「違う。こわくなんかない。僕はもう、逃げないって決めたんだ」

シンジ(少年)『今も逃げてるじゃない』

シンジ「誰から?」

シンジ(少年)『自分から。ボクから。アスカから。綾波から。父さんから。まわりから』

シンジ「違う。逃げてないんだっ!」

シンジ(少年)『逃げてちゃ、守れないよ』

シンジ「逃げてない! 逃げてないんだよ!」

シンジ(少年)『見たくないものは見ない。それもいい。だけど、見なくちゃいけない時がある』

シンジ「なんなんだよお前! 僕の話を聞けよ!」

シンジ(少年)『僕はキミだよ。話を聞いてないのはキミ』

432 : 以下、名... - 2017/02/28 01:20:55.22 u+wDA+/70 370/697

シンジ(少年)『ボクは、子供じゃいられない。まわりが許してくれないんだ』

シンジ「うるさいっ! もうやめてくれよ!」

シンジ(少年)『子供でいたいんだね。なにもわからないふりして、見ないふりしたいんだね』

シンジ「うるさい、うるさい、うるさい! みんな守ってみせる! それでいいじゃないか!」


シンジ(少年)『クスクス。それはできない』パチン


アスカ『シンジ! 私を助けて! ひっ⁉』グシャァ

レイ『碇くん! 助けて……‼』グシャァ


シンジ「そ、そんなっ⁉ アスカッ⁉ 綾波⁉」


シンジ(少年)『自分を守りたいの?』

シンジ「僕は……僕は……」

シンジ(少年)『見たくないモノから、逃げてちゃだめだ』

シンジ「……ぐっ……なんで僕ばっかりこんな目に!! 見たくないモノを見なくてなにが悪いんだよぉッッッ!!!」


433 : 以下、名... - 2017/02/28 01:38:47.24 u+wDA+/70 371/697

- 第三新東京市立第壱中学校 授業中 -

シンジ「――……はっ!」ガタガタッ

先生「……授業中に居眠りとは、関心しませんな」


クスクス


アスカ「(あのバカっ! なにしてんのよ)」

シンジ「あ……えっと、す、すみません」

先生「授業をすすめてもよろしいですかな?」

シンジ「どうぞ……」スッ

トウジ「センセが居眠りとはめずらしいのー」コショコショ

シンジ「そ、そうかな」

トウジ「なんや? すごい汗かいとるやないか。顔色悪いが、大丈夫か?」

シンジ「いや、なんでもない……えっと、鈴原くん」

トウジ「――トウジや。鈴原くんなんてやめぇ」

シンジ「あっ、ごめん。その、後で記憶の無くなる前の僕のこと教えてもらっていいかな」

トウジ「お安い御用や。ケンスケも一緒に話した方がよさそやな」

ケンスケ「おい、トウジ! 先生が見てるぞ!」コショコショ

トウジ「おぉ、わかった」

434 : 以下、名... - 2017/02/28 02:03:56.21 u+wDA+/70 372/697

- 第三新東京市立第壱中学校 放課後 -

トウジ「おまっとさん」

ケンスケ「よいせっと」

アスカ「…………」むっすぅ

ヒカリ「あはは……」

マナ「…………」

シンジ「あの、こんなに?」

トウジ「まぁ、知っとる人間は多い方がええやろ」

ケンスケ「綾波も誘ったんだけどさぁ」

シンジ「あっ……えっと、綾波さんも仲が良かったの?」

トウジ「うん? まぁ、そやなぁ。他に比べたらセンセはダントツちゃうか」

シンジ「そうなんだ……」

アスカ「シンジ! なんで居眠りなんかしたの⁉」

ヒカリ「ちょ、ちょっとアスカ……」

シンジ「えーと、惣流さんでいいのかな」

アスカ「ちがっ……!」

ヒカリ「アスカって呼んでたよ! 前の碇くん!」

シンジ「あっ、そうなんだ。ごめん。アスカさん」

アスカ「……っ!」

ヒカリ「アスカ……」

トウジ「まぁ、シンジも悪気があるわけやない。記憶がないんや」

ケンスケ「僕たちがいつも通りにしてやらなくちゃなぁ」

トウジ「せや。ゴリラ女もホームルームの時そう言っとったやろ」

435 : 以下、名... - 2017/02/28 02:11:55.14 u+wDA+/70 373/697

シンジ「なんか、色々気を使わせてるみたいだね……」

マナ「あの、シンジくん?」

シンジ「えぇと」

マナ「あ、私、霧島マナっていうの。マナって呼んで」

シンジ「……ごめん。霧島さんも僕と仲良かったの?」

マナ「……うぅん。私、そんなに話したことないの。知り合って間もなかったから」

シンジ「へぇ」

マナ「だから、私だったらフラットに話せると思う。みんなもいい? 足りなかったら補足してくれる?」

トウジ&ケンスケ&アスカ&ヒカリ「…………」コクリ

シンジ「……ありがとう。それで、記憶のなくなる前の僕なんだけど」

マナ「うん。シンジくんはエヴァっていう乗り物のパイロットなのはもう知ってる?」

シンジ「赤木博士からそう聞いた」

アスカ「前のシンジはリツコさんって呼んでたわよ」

シンジ「そうなんだ……。呼び方まで、って、それはそうか」

アスカ「…………」

マナ「は、話を続けるね? それでエヴァのパイロットとしてみんなから頼りにされてたの」

436 : 以下、名... - 2017/02/28 02:21:57.21 u+wDA+/70 374/697

シンジ「頼りに? 僕が?」

マナ「エヴァのパイロットはみんなの生活を守ってくれてるんだもの。友達としても、もちろんだけど」

シンジ「なんだか、実感がわかないや」

マナ「使徒っていう宇宙からきてる怪獣をもう何体も倒してるんだよ?」

シンジ「それも僕が?」

アスカ「私も殲滅してるけど、半分以上はあんたの手柄ね」

トウジ「日本中から電力かき集めたのもあったなぁ」

ケンスケ「ヤシマ作戦だろ? 僕たちも参加した」

ヒカリ「うん……」

マナ「ね? 少なくとも嘘じゃないっていうのは、わかる?」

シンジ「うん、まぁ……」

マナ「シンジくんは、ネルフに通いながら学校生活を送ってたの」

トウジ「この場合、どっちが本業なんやろな?」

ケンスケ「両方だろ」

437 : 以下、名... - 2017/02/28 02:31:04.30 u+wDA+/70 375/697

マナ「それで、その内に、ここにいるみんなと仲良くなっていったの」

シンジ「僕ってどういう性格だった?」

トウジ「まぁ、そやなぁ、一言でいえば……」

ケンスケ「根暗かなぁ……」

シンジ「えぇ……」

アスカ「まぁ、パッと見はさえないやつよね」

ヒカリ「私も最初は関わろうとはしなかったな」

シンジ「……そ、そうなんだ」

トウジ「せやけど、悪いやつやなかったことはたしかや」

ケンスケ「ま、悩みながら前に進もうとしてたしね」

アスカ「かけてほしい言葉をかけてくれたわね」

ヒカリ「私はみんなの話を聞いて……でも、使徒から守ってもらってたから」

シンジ「…………」

マナ「私のこと、マナって呼ぶことからはじめない?」

アスカ「………」ピクッ

シンジ「でも、いいのかな」

マナ「記憶をなくす前に呼んでたわけじゃないから気にしないで。いつまでも霧島さんじゃ距離感じちゃうもの」

シンジ「……わかったよ。マナ」

アスカ「はぁ……。私はアスカ」

シンジ「うん。よろしく、アスカ」

438 : 以下、名... - 2017/02/28 02:46:06.13 u+wDA+/70 376/697

- 帰宅中 -

シンジ「……あの、アスカの家と僕の家って方向同じなの?」

アスカ「えぇ? なにも聞いてないのぉ?」

シンジ「……?」

アスカ「はぁ……。あんたと私、一緒に住んでるのよ」

シンジ「えぇ⁉」

アスカ「(シンジのバカっ! どうして思い出さないのよ!)」

シンジ「あの、理由聞いていい?」

アスカ「……エヴァパイロットだからよ」

シンジ「ぱ、パイロット同士って一緒に住むんだね……」

アスカ「詳しいことは、ミサトに聞いて。私はめんどくさいからパス」

シンジ「あ、ごめん。もしかして、僕たちってあんまり仲良くなか………っ!」


バチンッ!!!


アスカ「……あんた……」

シンジ「……いっつぅ~~。なにもいきなりビンタすること――⁉」

アスカ「知らないっ! 1人で帰りなさいよ!」


タタタッ


シンジ「……なんで、なんで泣くんだよ……」

440 : 以下、名... - 2017/02/28 02:58:29.74 u+wDA+/70 377/697

- ミサト宅 リビング -

ミサト「たっだいま~ん!」

シンジ「あ、おかえりなさい。葛城さん」

ミサト「……ミサト、でいいわよん♪」

シンジ「え? でも……」

ミサト「気にすることないわ。それよりアスカは?」

シンジ「あぁ、部屋から出てこなくて」

ミサト「ふぅ。やっぱりちょっとショックだったか」

シンジ「あの、葛城――」

ミサト「ミサトさん、でしょ?」

シンジ「み、ミサトさん、腕に痺れがあって夕食あんまり作れなかったんですけど、食べますか?」

ミサト「あらぁ? ありがと! アスカも呼んでいらっしゃい!」

シンジ「わかりました。それと、み、ミサトさんの家にはいつまでお邪魔してれば――」

ミサト「シンちゃん? ここはあなたのウチなのよ?」

シンジ「……わ、わかりました」

ミサト「はやく、呼んでいらっしゃい」

444 : 以下、名... - 2017/02/28 03:19:06.42 u+wDA+/70 378/697

アスカ「…………」もぐもぐ

シンジ「…………」もぐもぐ

ミサト「(き、気まずいわね)」

アスカ「……ごちそーさま」

ミサト「あら? もう食べたの?」

アスカ「私、部屋に戻ってる」

ミサト「その前にちょっと話ましょ」

アスカ「なに? シンジのことなら――」

ミサト「違う違う。シンジくんのことじゃなくて、あの霧島マナって子」

アスカ「……なに?」

ミサト「諜報部から色々と裏付けがとれたの。あの子の証言は、ほぼ信用できそうよ」

アスカ「それで?」

ミサト「内部告発しちゃったから、あの子を保護対象におくわ。それとロボットについてなんだけど、しばらく経過を見て――」

シンジ「――それじゃダメだ」

ミサト「シンジくん?」

シンジ「アスカ。マナは僕たちが守らないと。ミサトさん。戦自に潜入している諜報部から連絡があったのはいつです?」

アスカ「……シンジ?」

ミサト「は? え、ええと、さっきも言ったとおり、今日だけど?」

シンジ「なら、もう予定はそう遠くない」

ミサト「ちょ、ちょっと? シンジくん? なに言って――」

シンジ「アスカ。少し散歩に行こう」グイッ

アスカ「はぁ? ちょ、ちょっと! わ、わわっ!」


タタタッ ガチャ バタンッ


ミサト「な、なんなの……?」

455 : 以下、名... - 2017/03/02 21:25:48.60 dHH1A+GA0 379/697

- 近くの公園 -

アスカ「ちょ、ちょっと待ちなさいよ、ねぇっ、シンジってば!」

シンジ「強引に連れ出してしまってごめん……。だけど、どうしても伝えたいことがあったんだ」

アスカ「……なに?」

シンジ「このままだとマナは、戦自にさらわれてしまう。僕は、それをどうしても阻止したい」

アスカ「どうしてシンジにそれがわかるのよ?」

シンジ「うまく言葉で説明できない……違う、言っても信じてもらえるかわからないから」

アスカ「話をするまでわからないでしょ? どうして決めつけるのよ!」

シンジ「――そうだね。アスカの言う通りだ。だけど、僕だってこわいんだ。プレッシャーで今にも押しつぶされそうで」

アスカ「シンジ……どうしたの? 記憶が戻ってるの……?」

シンジ「父さんの計画とゼーレの計画。そして今、進行されてるもう一つの計画。それを僕たちはきっと阻止できるはずなんだ! アスカ!」ガシッ

アスカ「……あんたがなにを抱えてるかわからないけど、考えがあるなら話して。私もそれを受け止めてみせるから」スッ

シンジ「……ぐっ」ズキンッ

アスカ「シンジ、お願い。私もあんたの味方でいたい。でもシンジのやりたいことがわからなくちゃどうしたらいいかわからないのよ」スッ

シンジ「マナの友達がのってるロボットを止めなくちゃ……ぐぅぅ」

アスカ「シンジ⁉ 頭痛いの⁉」

シンジ「綾波にも、父さんの……ダミーには……」

アスカ「シンジ⁉ ねぇ! なに言ってるかわからない!」

シンジ「――……はっ!」

アスカ「シンジ……?」

シンジ「――あれ……? アスカ? こんなとこでなにやってるの?」

アスカ「は、はぁ?」

シンジ「というか、なんでここに僕いるんだろう?」

アスカ「どうなってるのこれ……」

456 : 以下、名... - 2017/03/02 21:48:54.62 dHH1A+GA0 380/697

- 翌日 ネルフ本部 ラボ -

リツコ「あら? めずらしい」

アスカ「……ふん」

リツコ「それで、今日は何のご用? カウンセリングにきたのではないみたいだけど」

アスカ「頼るのは癪だけど、意見を聞かせてほしいの」

リツコ「プライドの高いあなたが私を頭をさげるのはよっぽどのことがない限りないはず。他に頼れる人か、専門的な知識がほしいのね」

アスカ「私の分析をするなら帰るわよ」

リツコ「癖みたいなものよ。気にしないで」

アスカ「…………」

リツコ「…………」

アスカ「………ふぅ」

リツコ「コーヒー、飲む? インスタントだけど」

アスカ「(こいつに話しちゃ危険なのかもしれない。だけど、メガネに連絡がつかないから、頼れる人がいない)」

リツコ「いらないみたいね。私は飲むわよ」コポコポ

アスカ「――多重人格ってどういう症状なの?」

リツコ「解離性同一障害ともいうわね。いわゆる精神分裂症とはまた別の症状、で答えになってるかしら」

アスカ「精神病とはまた別ってこと?」

リツコ「アスカは24人のビリーミリガンというダニエルキイスの著書を読んだことがある?」コトッ

アスカ「いいえ」

リツコ「そう。かなり端折っていうと頭の中から別人達の声が聞こえるのが多重人格。精神分裂は外からの声によるものね」ふーっふーっ

アスカ「…………」

リツコ「……あつ。温めすぎたわね」

アスカ「もし、そういう人がいたら特定する方法は?」

リツコ「症状ひとつとっても重い軽いの違いがあるまのよ。重い症状の場合は、側から見てもはっきりとした違いがわかるはず」

アスカ「軽かった場合は?」

リツコ「長い時間をかけて、本当にその症状と合致するのか判断する必要があるわ」

アスカ「…………」

リツコ「シンジくんに疑いでもあるの?」

アスカ「……っ⁉ ち、ちがっ! 私はそんなこと一言も!」

リツコ「あなた本人にその心配がなければ、誰のために動くか考えたら自然とそうなるわよ」

アスカ「あっ……」

リツコ「(エリートといえど、根っこの部分はまだまだ子供ね)」






457 : 以下、名... - 2017/03/02 22:07:27.89 dHH1A+GA0 381/697

アスカ「……シンジが記憶喪失になって、私のことを覚えていないのがショックなのよ」

リツコ「気持ちはわからないでもないわよ」

アスカ「それで、不安で誰に頼っていいかわからなくて……」

リツコ「そう。夜は寝れてるの?」

アスカ「あんまり……」

リツコ「薬に頼るばかりでは依存してしまうことはおろか、効き目も悪くなる。眠れないのが続くようならいらっしゃい」

アスカ「ありがと、コーヒー少しもらうわね」

リツコ「あっ……」

アスカ「……ぬるぅ~い。もしかして、猫舌?」

リツコ「…………」

アスカ「かわいいとこもあんのね。よく見たら猫のマグカップだし。もしかして家でも、猫飼ってるの?」

リツコ「――はやくさがりなさいっ!」

458 : 以下、名... - 2017/03/02 22:21:27.94 dHH1A+GA0 382/697

- 第三新東京都市立第壱中学校 昼休み -

アスカ「ヒカリ、マナ」

ヒカリ&マナ「アスカ?」

マナ「今日はもうネルフはいいの?」

アスカ「あぁ、ちょっと話があっただけだから。それよりも2人とも今は暇?」

ヒカリ「どうしたの? 私達ならお弁当食べ終わって暇してたとこだけど?」

アスカ「それなら、図書室で調べ物手伝ってほしいのよ」

マナ「私は大丈夫だよ」

ヒカリ「私も。鈴原たちにも協力してもらう?」

アスカ「あいつらがいると寄り道しちゃいそうだから今回はパス。私達だけでやりましょ」

マナ「なにを調べるの? テスト範囲でわからないところあった?」

アスカ「マナは知らなかったと思うけど、こう見えて私、大卒なのよ。中学校の授業なんて幼稚なのでわからないことなんかない」

マナ「――えっ? でも、アスカってあんまりテストの成績」

ヒカリ「あ、あの、それはっ!」

アスカ「ヒカリ、なにか言ったの?」

ヒカリ「……あ、ごめん。テスト結果の時の話でアスカが赤点ギリギリだったことだけ」

アスカ「はぁ……。そういうこと」

マナ「えっと……?」

アスカ「日本語が読めなかったの。テストの問題」

マナ「え? じゃあ、それが理由で?」

アスカ「世界共通語は英語なのよ? なんで今さら日本語の読み書きなんか勉強しなくちゃ、だいたい、この教育システム自体に欠陥が――」

ヒカリ「あ、アスカ……」

アスカ「あぁっと、そうそう。そういうわけで、理由は別。とりあえず図書室に移動しましょ」

459 : 以下、名... - 2017/03/02 22:34:45.45 dHH1A+GA0 383/697

- 図書室 -

アスカ「それで、調べてほしいのは、多重人格についてなんだけど」

ヒカリ「多重人格? っていうと、何人も何人も別の人格がある人のことだよね?」

アスカ「そう」

マナ「どうして、そんなことを?」

アスカ「まだよくわからないんだけど、昨日、不思議なことがあったの」

ヒカリ&マナ「……?」

アスカ「……シンジが、急に記憶を取り戻したのかと思えば、わけのわからないことを言いだして」

マナ「し、シンジくんの記憶が戻ったの⁉」ガタッ

ヒカリ「――ちょ、ちょっとマナ! 静かに! ここ図書室だよ!」ヒソヒソ

アスカ「今思うと、記憶が戻ったのかもあやふやなところがあるの。もしかしたら一時的なものだったのかも……」

マナ「……それで、アスカはシンジくんが多重人格になったんじゃないかって?」

アスカ「一晩考えてみても答えはでなかった。シンジもその時のことはまったく身に覚えがないらしくて、その後はまた、記憶がなくなった状態だったの」

ヒカリ「…………」

アスカ「……お願い。可能性としては、万が一程度なんだと思う。だけどもしそうなら、私はシンジを助けてあげたいの」

マナ「…………」

アスカ「鈴原たちにも言わないで。誰にも。もし多重人格でなければそれはそれでかまわないのよ」

ヒカリ「ふぅ……。わかった。手分けして調べましょ」

マナ「うん。私もできる限りやる」

アスカ「ありがと……」

ヒカリ「アスカは思いこみが激しいところもあるけど、それでもアスカはアスカだもん。ほっとけないよ」

マナ「私は、アスカのこと、まだわからないこと多いけど、心配してるってのは伝わってきたから」

460 : 以下、名... - 2017/03/02 22:57:49.16 dHH1A+GA0 384/697

- 厚木基地 某所 -

加持「準備はいいか?」

マリ「いつでもいけるよー。でもさぁ、この旧式の対戦車ライフルって反動凄くて嫌いなんだよねー」カチャ カコン

加持「――飛距離に問題は?」

マリ「素人だと思っちゃ困るなー。目標までの距離と軌道の計算は既に終えてるって。狙った的は外さないってね」ペロリ

加持「そいつはすまなかったな。なにしろ軍資金に乏しいもんでね。満足な装備は用意しやれない」



パタパタパタパタッ



加持「ほら、オスプレイのご登場だぞ。撃ち落としてやれ」

マリ「アイサァー♪」カチャ


マリ「…………よっと」キリキリ カチリッ


加持「――撃て」



マリ「オラァッ!」


バァーーーーーーンッ


フォンフォンフォン ドカーーーンッ


マリ「くぅ~~いっつぅ~。肩痛めるかと思った」

加持「お見事。それじゃ速やかに撤収するぞ、急げ。射撃位置はバレてる」

マリ「人使い荒いなぁ~もう」

461 : 以下、名... - 2017/03/02 23:23:26.52 dHH1A+GA0 385/697

- 移動中 車内 -

マリ「はぁ、疲れた~疲れた疲れた疲れたつ~か~れ~たぁ~」

加持「はぁ……人類の明日がかかってるってことわかってる?」

マリ「ゲンドウくんの狙いもゼーレの計画も私にとってはどうだっていいし。私の計画がうまくいけばいいだけ」

加持「さようですか」

マリ「姫に会いにいこっかにゃ~」

加持「おいおい、今マリに抜けてもらっちゃ困るんだが」

マリ「そっちはそっちで勝手にやってよ。私は姫を助けるのも仕事なんだし♪」

加持「しかしだなぁ、さっきのヘリに乗ってたの官房長官だぞ。やつがいなくなったことでロボットの管轄権は国防大臣に引き継がれる」

マリ「それが狙いだったんしょ? なにを今さら」

加持「無能は扱いやすいが、一歩間違えれば、予期せぬ自体を引き起こすことになる。バカとハサミは使いようというが――」

マリ「それなら、尚のことそっちで後は勝手にやって。裏工作は私の分野じゃない。加持くんの得意分野でしょ?」

加持「俺はただの内偵屋さ。元な」

マリ「とにかく! 一度、姫の様子を見にいく。ワンコくんの記憶喪失もちょっと気にかかるし」

加持「……ふぅ、わかった。こっちのことはまかせろ」

462 : 以下、名... - 2017/03/02 23:43:02.35 dHH1A+GA0 386/697

- 図書室 -

キーンコーンカーン コーン


ヒカリ「……やっぱりだめね。学校の図書室じゃ」

マナ「うん……。寄贈書ばかりだから、年代が古いものが多いし、専門書は少ないね」

アスカ「私が迂闊だったわ。市立の図書館に行けばもっとたくさんある?」

ヒカリ「そうね……。それだったら、少なくともここよりはあると思う」

マナ「今日の放課後にでも行ってみようか?」

アスカ「2人は時間、大丈夫なの?」

ヒカリ「私は夕飯の時間までに帰れれば」

マナ「うん。私も、あまり遅くならなければ」

アスカ「それじゃ、そうしましょ」

マナ「あの、アスカ」

アスカ「……?」

マナ「シンジくんのどこがそんなによかったの?」

アスカ「愚民を助けるのはエリートの義務……っていうのはウソ」

マナ「…………」

アスカ「なんでだろう。最初に会った時から好きになったのかもしれない。それに、懐かしく感じたっていうか」

マナ「わっ。それって、一目惚れ?」

アスカ「電撃が走ったっていうか、ビビっとこの人っていう感じではないのよ。デジャヴュみたいな」

ヒカリ「……それは、私もはじめて聞いたかも」

アスカ「そうだっけ?」

マナ「シンジくんもそう感じたとかあったの?」

アスカ「シンジに会ったことある?って聞いたら、ないって答えてたから、たぶん、気のせいなんでしょ」

マナ「そうなんだぁ。2人とも感じてたら運命みたいで素敵だなぁ」

ヒカリ「運命⁉ マナも少女漫画好き⁉」ガバッ

マナ「え? なに?」ビクッ

アスカ「ヒカリのこれは病気みたいなもんだから気にしないで」

463 : 以下、名... - 2017/03/03 00:09:28.48 /j+k9HQL0 387/697

- アスカ 夢の中 -

アスカ(少女)『私は一人で生きるの、パパもママもいらない! 一人で生きるの。私はもう泣かないの! 』

アスカ「でも、まだ泣いてる…なぜ、泣いてるの?」

継母『あの子、苦手なんです』

アスカ父『なんだ、弱気とは医者の君らしくないな』

継母『医者も人間ですのよ。前にも言いましたけど』

アスカ父『しかし、君のような女性が子供相手に』

継母『妙に大人で……張り詰めた絶対的な拒絶があって……時々恐いんです。あなた、そう感じたことありません?』

アスカ父『いや、とにかく君は、アスカの母親になったんだ』

継母『その前に、私はあなたの妻になったのよ』

アスカ父『……同時にだろう?』

継母『社会的立場からはそうですわ』

継母『あなたはあの子の父親を辞められないけれど、私はいつでもあの子の母親を辞めることができますのよ』

アスカ「勝手な言い草! 大人はみんな勝手! 私はなんでも1人でできるようになる!」

アスカ(少女)『止めてママ! ママを辞めるのは止めて! 私、ママに好かれるいい子になる! だから、ママを辞めないで! だから私を見て! 止めてママ! 私を殺さないで!」

アスカ「また……私?」

キョウコ『あなたのパパはママが嫌いになったの。いらなくなったの。ううん、最初から好きじゃなかったのよ。最初からいらなかったのよ、きっと』

キョウコ『だから、ママと死にましょう。パパは私たちがいらないもの』

アスカ「私は邪魔なの? いらないの?」

キョウコ「一緒に死んでちょうだい……」

アスカ「いや! 私はママの人形じゃない! 自分で考え、自分で生きるの!」

464 : 以下、名... - 2017/03/03 00:16:34.78 /j+k9HQL0 388/697

- 第三新東京都市立第壱中学校 授業中 -

アスカ「んぁ……?」ゴチンッ


シーーン


アスカ「あ、あれ? ここ、教室?」

先生「エヴァのパイロットというのは、居眠りをする癖でもあるのかな?」


クスクス


アスカ「あ、その、すみませぇん……」



トウジ「今度はゴリラ女とはお前ら夫婦は居眠りするのも一緒か!」コショコショ

シンジ「……へ?」

ケンスケ「トウジ、碇は記憶がないんだからそんなこと言っても通じないって」

465 : 以下、名... - 2017/03/03 00:46:05.24 /j+k9HQL0 389/697

- 第三新東京都市立図書館 -

アスカ「(なんで、今さらあんな夢。ママは、弐号機にいるってわかったのに……)」

ヒカリ「アスカ、これなんだけど……」スッ

アスカ「(ふっきれたと思ったけど。私の中でまだシコリがあるのかな……)」

ヒカリ「アスカ? 聞いてる?」

アスカ「あ、ご、ごめん。なに?」

ヒカリ「うん。多重人格って後天性の重い症状の一種でもあるみたい」

アスカ「先天性ではないの?」

ヒカリ「どちらのケースもあるって書いてある。ここ見て」ペラッ

アスカ「あんまり日本語読めないのよ」

ヒカリ「あぁ、そっか。ごめんね。えっと、生まれつきじゃない、後天性の場合、強いストレスとかで別の人格を産み出してしまうことがあるらしいの」

アスカ「ふぅん」

ヒカリ「それで、本当かどうかわからないけど、発覚するまでに二桁の人格を産み出してしまう人も少なくないんだって」

アスカ「でもそれは、診断を下した人間の主観である場合もあるわよね」

ヒカリ「うん。統計的にそうなのかわからないけど、それもちょっと怪しいし」

マナ「シンジくんの場合は、どうなんだろうね」

アスカ「多重人格だと前提しても、二桁の人格がいるようには見えないわね」

ヒカリ「アスカが見たのって少なくとももう1人? だけだもんね」

マナ「それなら、二重人格ってことになる?」

466 : 以下、名... - 2017/03/03 14:03:10.47 /j+k9HQL0 390/697

アスカ「見えてる範囲で、という話でならそうなるかも」

ヒカリ「あっ、でもここ見ると核となる人格があって、他の人格を隠してしまうケースもあるんって書いてるよ」

アスカ「つまり……」

マナ「わからないってことだね」

ヒカリ「ネルフに相談はできないの? 専門の人いるんじゃ?」

アスカ「午前中にその話をしてみたのよ。だけど、なぜそう思ったのか詳しくは話したくない」

マナ「うぅん」

ヒカリ「私たちだけじゃ限界があるのも事実だし……」

マナ「ねっ? いっそのことシンジくんになにかショックを与えてみたら?」

アスカ「……?」

マナ「ほら、よく漫画とかであるじゃない? 性格がオンオフで切り替わるみたいな」

ヒカリ「そ、それって眼鏡をはずしたら性格が変わる王子様とか、さっそうとピンチを助けてくれる……」

マナ「そ、そうじゃなくて! ただ何もしないよりは試してみる価値あると思うの!」

アスカ「ショックねぇ」

マナ「私たちで変わりばんこに告白でもしてみる?」

アスカ&ヒカリ「えぇ⁉」

マナ「……やっぱり、ダメかな?」

アスカ「な、な、な、なんでそんな話になるのよ!」

ヒカリ「そうだよ! それに碇くんはアスカの!」

マナ「でも、それぐらい外部的な衝撃を与えてみないと」

アスカ「そもそも、ショックになるの? 嬉しいだけじゃない?」

ヒカリ「戸惑いの方が強いんじゃないかな……」

マナ「それじゃ、殴ってみる? ガツーンと!」

アスカ「マナって……」

ヒカリ「意外に強引なところあるんだね……」

467 : 以下、名... - 2017/03/03 14:24:15.41 /j+k9HQL0 391/697

- ネルフ 本部 ??? -

リツコ「失礼いたします」

ゲンドウ「…………」

リツコ「今は副司令はいらっしゃないんですね」

ゲンドウ「わかっていて来たのだろう」

リツコ「言ってしまわれるのは野暮ですわ」スタスタ

ゲンドウ「レイとシンジの案件についてはどうなっている」

リツコ「ご心配なく、次のプラグテスト日にシンジくんを昏睡状態にさせる予定です」

ゲンドウ「アレは自分がやったという行為に責任を感じるやつだ。昏睡させては意味がない」

リツコ「ご子息のことを理解していらっしゃるのですね。前回、興奮剤を投与したのも自身の意思でやったというのを印象づけるために?」ギシッ

ゲンドウ「……椅子から降りたまえ。今はそんな気分では」

リツコ「――既成事実を作ってしまえばなんら問題はありません。責任を作ることはたやすいことです。例えあの子がどんなに受け身でも、最後に手をだすのは男ですもの」ギシギシッ

ゲンドウ「それならばいい」

リツコ「それとも、あなたが私を犯した時のように衝動的な刹那を体現させたいのですか? 私に性の昂ぶりをぶつけ、汚したように――」プチ プチ

ゲンドウ「…………」

リツコ「――もっと、私を汚して。その手で」パサッ

468 : 以下、名... - 2017/03/03 14:36:13.91 /j+k9HQL0 392/697

- ミサト宅 夜 -

ミサト「シンちゃん、怪我の具合はどう?」

シンジ「すこし痒くなってきてますけど、大丈夫です」

アスカ「(ショックねぇ……)」

ミサト「……? アスカ、ぼーっとシンちゃん見てどしたの?」

アスカ「別に……」

ミサト「もしかして、シンちゃんに見とれちゃってたとか?」ニマニマ

アスカ「ミサトのオヤジ化って日に日に深刻になってるわよね」

ミサト「まだ枯れちゃいないわよん」

シンジ「あの、アスカ、後で少し話がしたいんだけどいいかな?」

アスカ「……わかった。急ぎ?」

シンジ「そうじゃないよ。暇な時でいい」

ミサト「(記憶をなくしてもうまくやれそう……かな……)」

469 : 以下、名... - 2017/03/03 14:49:19.27 /j+k9HQL0 393/697

- シンジ 部屋 -

アスカ「(なんだか、不思議。記憶をなくしてるシンジと2人になってもぜんぜんドキドキしない)」

シンジ「家で落ち着いて、話をするのって、はじめてじゃないのかもしれないね……」

アスカ「まぁ、そうね。記憶がないあんたとは話をすることあったし」

シンジ「……やっぱり、記憶のない僕と記憶のある僕って違うのかな」

アスカ「…………」

シンジ「そうだよね。やっぱり、僕も実感ができないんだ。みんなの中の僕と今の僕がかけ離れすぎてて」

アスカ「これまでやってきたことは事実よ」

シンジ「そうだとしても、できるとは思わないんだ、僕が」

アスカ「自分で自分の限界を決めつけてるってこと?」

シンジ「…………」

アスカ「(やっぱりこんなの、コイツ、シンジじゃない。ガワだけ)」

シンジ「そうかも、しれない。自信がないのかも」

アスカ「あんたがどう思おうと勝手だけど、私たちには大切な思い出があんのよ。それを他ならないあんたが! 嘘にするな!」ビシ

シンジ「…………」

アスカ「不愉快だわ。話が終わりならでてくけど」

シンジ「あっ、まだ話は終わってなくて、あの、こんなこと言うと怒るかもしれないけど」

アスカ「ウジウジすんな。みっともないのよ。なに? 聞くだけなら聞いてあげる」

シンジ「――エヴァに乗らなくて済む方法ってないかな?」

アスカ「……はぁ?」

シンジ「こ、こわいんだ。エヴァに乗るのが。あんなわけのわからないモノに乗ってなにと戦えっていうのさ」

アスカ「…………」

シンジ「ミサトさんに言うのは最後の手段として、まずはアスカに聞いてみようと思って――」

アスカ「歯くいしばれ」

シンジ「えっ――」


――バチンッ!!!

470 : 以下、名... - 2017/03/03 15:09:59.38 /j+k9HQL0 394/697

- ミサト宅 リビング -

ミサト「な、なにごとっ⁉」


ガラガラ ピシャンッ!


アスカ「……ふん」

ミサト「あら? アスカ? シンジくんと喧嘩でもしたの?」

アスカ「あんなのシンジじゃない」

ミサト「え?」

アスカ「エヴァに乗りたくないんですってよ」

ミサト「あっちゃぁ~。シンジくんが、聞くまでもないか」

アスカ「どうするつもり? あんなのが実戦にでたところで足手まといになるのは目に見えてるわよ」

ミサト「ふぅ……。シンジくんが記憶喪失になったと聞いた時にこうなることは予想すべきだったわ」

アスカ「ミサトは予想できたっていうの?」

ミサト「こっちに来た頃のシンジくんは、それはもう臆病で、自分を表すのに不器用だったのよ。使徒三体を殲滅するまでにも家出したり色々あったもの」

アスカ「……そういえば、記憶がなくなる前にそうだったって話は少し聞いたことある。命令違反したんでしょ?」

ミサト「二体目の使徒の時かしら。鈴原くんたちをプラグ内に乗せるまではよかったんだけど、その後、私の命令を無視して独断で使徒に向かっていったの」

アスカ「やっぱり、今のシンジとは全然違うじゃない」

ミサト「それがそうでもないのよ。アスカはシンちゃんと会った時にはもう見ていないから、わからないのかもしれないけど」

アスカ「…………」

ミサト「シンジくんは? 部屋にいるの?」

アスカ「思いっきりビンタしたから、気絶してるかも。まだ手がヒリヒリする」

ミサト「あ、あんた。シンジくんはまだ怪我人なのよ?」

アスカ「はん……。死ぬわけじゃないでしょ。それに、私だって世話してあげたいって思ってるわよ。だけど、今のシンジはなんかだめ」

ミサト「うぅ~~ん……」

471 : 以下、名... - 2017/03/03 15:32:58.90 /j+k9HQL0 395/697

アスカ「シンジから直接話を聞いてみたら?」

ミサト「前回と同じことになるのは私も避けたいけど、甘やかしすぎるのもシンジくんの為にならないと思うのよね」

アスカ「あっそ。それじゃ、ほっとくの?」

ミサト「ううん、悩みどころではあるわね」

アスカ「なんでもいいけど、パイロットの監督官なんだからなんとかしてよね。記憶取り戻す方法を見つけてくるとかさ」

ミサト「……えぇ」

アスカ「なんかそういう劇薬みたいなのないの?」

ミサト「そんな都合の良いものあったらとっくに使ってる――まてよ」

アスカ「え? 本当になんかあんの?」

ミサト「えぇと、たしか部屋の、アスカちょっちそこで待ってて」

アスカ「……?」

472 : 以下、名... - 2017/03/03 15:47:16.04 /j+k9HQL0 396/697

- ミサト宅 シンジ部屋 -

シンジ「むぐっ! むぐぐぐぅ~!(なんで僕が縛られてるんですか!)」

アスカ「とりあえずがんじがらめに縛っておいたけど、こんなもんでいい?」

ミサト「えぇ、かまわないわ」

シンジ「むふむむむぅ!(何考えてるんだこの人たち!)」ジタバタ

アスカ「黙れ、エビ男、暴れんじゃないわよ」グニ

シンジ「むぐっ!(踏むな! なんなんだよ!)」

ミサト「アスカ、シンジくんを座らせる格好にして、背中を壁に立てかけるようにすればいけるでしょ」

アスカ「はいはい。でも、本当に効果あんのぉそれぇ? 入門編って書いてあるけど」

ミサト「催眠術で記憶を呼び覚ますって映画で見たことがあんのよ。だからやってみる価値はあるでしよ」

シンジ「むぐぐぐぅ!(そんなのめちゃくちゃだ!)」

アスカ「おもっ……よっと――っ! はい、おっけー」

ミサト「それじゃぁ、シンちゃんリラックスしてこの5円玉の動きを目だけで追うのよ?」

シンジ「ふぁむむぐっむぐぅ!(リラックスできるわけないだろ!)」

アスカ「さっさとやりなさいよ」

シンジ「ぐむっ……!(仕方ない、今だけ言うことを聞いて、解放されたら出ていこう!)」


ユラ~リ ユラ~リ


ミサト「見つめているとあなたの意識がぼんやりとしてきます。ゆっくり息をすってぇ~はいてぇ~」

アスカ「はぁ……」

シンジ「ふぅー、ふぅー」

ミサト「リラックスしてぇ~。あなたは今は南の島にいます。そこでハンモックに揺られながら、ジュースを飲んでいます」

473 : 以下、名... - 2017/03/03 16:00:27.54 /j+k9HQL0 397/697

シンジ「ふーっ、ふーっ(はやく終わってよ!)」

ミサト「シンジくん? ちゃんとリラックスしなきゃだめよ?」

シンジ「…………」コクコク

ミサト「……ふかぁ~いふかぁ~い、海の底をイメージしてください~」

アスカ「…………」ポリポリ

ミサト「ワン、ツー、スリーを合図に指を鳴らします。すると、あなたは意識が落ちます」

シンジ「…………(バレないようにかかったふりしないと!)」

ミサト「ワン、ツー、スリー」パチン

シンジ「…………(指? どこかで聞いたような)」


シンジ(少年)『それはできない』パチン


シンジ「…………(そうだ、たしかあの夢で……あれ……本当に意識が……)」

ミサト「どう? シンちゃん? かかった?」

アスカ「……ミサトが聞いてどうすんのよ」

ミサト「あはは……そっか」

アスカ「だんだんアホらしくなってきたわ。ほら、シンジ、かかったふりしなくていいから」

ミサト「やっぱりだめかぁ~。そうね、もうやめましょうか。シンジくんの口のガムテープはがして紐もほどいてあげて」

アスカ「はいはい」ビリッ

シンジ「…………」ガクッ

アスカ「……? ちょっと? シンジ? かかったふりしなくてもいいのよ? あんなのでかかるわけないんだから」

ミサト「あらぁ? シンちゃんってば演技もできたの?」

シンジ「…………」ダラァ

アスカ「……シンジ? ねぇっ? ちょっと?」ユサユサ


474 : 以下、名... - 2017/03/03 16:07:57.33 /j+k9HQL0 398/697

ミサト「え? え? これって……」

アスカ「そ、そんなわけないじゃない! あんなのでかかるなんて聞いたことないわよ!」

ミサト「いやでも、ほら」

アスカ「こ、これは演技よ! そうでしょ⁉ こら! 起きろ!」バシバシ

シンジ「…………」グテェ

ミサト「い、息は? してるわよね?」

アスカ「……うん。息はしてる。いい? シンジ? まだ続けるつもりなら思いっきりひっぱたくわよ」

ミサト「ちょっとアスカ」

シンジ「…………」

アスカ「まだ続けるのね。いい根性じゃない。ちょっと今のあんたも見直したわ。いくわよっ!」ブンッ


バチンッ!!!


ミサト「ちょ、ちょっと!」

シンジ「…………」ダラァ

アスカ「おかしい、演技にしても表情が全然かわらないなんて……。これってもしかして……本当に……」

ミサト「うそぉ⁉」

アスカ「ミサト! 続けて!」

ミサト「え? どうやって?」

アスカ「はぁ? 続け方書いてるんじゃないの⁉」

ミサト「そ、そっか! だってかかると思ってなかったから!」

475 : 以下、名... - 2017/03/03 16:14:44.82 /j+k9HQL0 399/697

ミサト「えぇと」ペラペラ

アスカ「まだ⁉」

ミサト「急かさないでよ、あったあったここね」

アスカ「……っ」ゴクリ

ミサト「あなたは記憶をなくしてますか? YESなら首を1回、NOなら首を2回縦にふってください」

アスカ「ちょっと、もう少し踏みこんだ質問できないの? 誰でも答えられることじゃない!」

ミサト「最初は軽めの質問からだって書いてるのよ!」

シンジ「…………」コクリ

ミサト&アスカ「頷いた……」

ミサト「続けるわよ――」

476 : 以下、名... - 2017/03/03 16:30:36.79 /j+k9HQL0 400/697

――――
―――



ミサト「いくつか簡単な質問はしたし、それじゃぁ、いよいよ、踏みこんだ質問にいくわね」

アスカ「はやく」

ミサト「記憶を取り戻すのは可能ですか?」

シンジ「…………」コクリ

アスカ「どうすれば? 知りたいのは方法なのよ!」

ミサト「質問を変えてみましょう。催眠術で記憶を取り戻すのはできますか?」

シンジ「…………」

アスカ「首をふらない? どっちなの?」

ミサト「シンジくんにもわからないのかも」

アスカ「やってみる?」

ミサト「わからないことをやるのは危険かもしれないわ」

アスカ「ちょっとまってミサト。この質問聞いてみてくれる? シンジは多重人格なのかって」

ミサト「え? シンジくんが?」

アスカ「念のためよ。記憶喪失じゃない場合だって考えられるじゃない」

ミサト「……あなたは多重人格ですか?」

シンジ「…………」コクリコクリ

アスカ「二回……ってことは違うのね! よかったぁ!」

ミサト「肝心の記憶を取り戻す方法がわからないんだから安心できないわよ」

アスカ「ワードを言っていけいばいつかは当たるんじゃない?」

ミサト「そうねぇ。記憶を取り戻す方法はアスカですか?」

アスカ「ちょ、ちょ!」

シンジ「…………」コクリコクリ

ミサト「あらぁ~違うのね。アスカ、ドンマイ」

アスカ「ふざけてるでしょ!今の質問必要あった⁉」

ミサト「とにかく思い当たることは全部言っておくべきでしょ。次、私は関係ありますか?」

シンジ「…………」コクリコクリ

ミサト「あらぁ、これも違うのね。一晩ぐらいならシンちゃんと――」

アスカ「ミサト! ぶちのめすわよ!」

ミサト「おぉ、こわ。それじゃエヴァと関係ありますか?」

アスカ「お父さんとかそういうんじゃ――」

シンジ「…………」コクリ

ミサト「そうねぇ、やっぱり……って」



アスカ&ミサト「――……え?」

477 : 以下、名... - 2017/03/03 20:35:11.32 /j+k9HQL0 401/697

ミサト「エヴァに関係があるのか……」

アスカ「やっぱり、前の出撃の時になにかあったんじゃないのぉ?」

ミサト「いつも通りだったわよ! 途中からシンジくんがいきなり回線遮断しちゃったけど」

アスカ「その前後は?」

ミサト「エヴァの内部電源内では目標に追いつけそうになかったから、停止するように求めたわ」

アスカ「そしたら?」

ミサト「シンジくん、いきなり回線を切っちゃって」

アスカ「なら、問題はその後ね。中で何かがあったのよ」

ミサト「でも、停止するまで初号機はひたすら目標をおっかけてたし、2分ぐらいの間なのよ?」

アスカ「時間が短いかどうかなんて関係ない。問題は出来事と過ごした密度よ。なにか強烈なことがシンジに起こったんだわ」

ミサト「ふぅん。それで記憶喪失に?」

アスカ「……いえ、そうじゃないのかもしれない」

ミサト「ちょっと、わかるように説明してよ」

アスカ「昨日! 夕食のあと! シンジの様子がおかしかったでしょ」

ミサト「あぁ、そんなこともあったわね」

アスカ「しっかりしてよ。その時のシンジはなにか焦ってたのよねぇ」

ミサト「アスカとシンジくんが2人で出かけた時?」

アスカ「う~ん……(ミサトにやりとりを言えるのはここまでかな……)」

ミサト「記憶が一時的に戻りかけてたのかもしれないわね」

アスカ「きっかけは?」

ミサト「あの時を思い出してみればわかるはず、でしょ?」

アスカ「マナのことよね。でもそれもおかしいわ。シンジは記憶をなくす前も今もマナと特別仲良いってわけじゃないもの」

ミサト「マナちゃんが忘れてるだけでシンジくんと元々知り合いだったとか?」

アスカ「そんな話聞いたことないわよ。ネルフの資料にそんなデータあるの?」

ミサト「あの子の証言を調べる時に身元調査もしたんだけど、たしかに、住んでる所に接点なんかなかったわね」

478 : 以下、名... - 2017/03/03 20:43:24.60 /j+k9HQL0 402/697

アスカ「明日、初号機に乗せてみるってっていうのは?」

ミサト「えぇ? シミュレーションプラグじゃなくて初号機に?」

アスカ「当時の条件をできるだけ再現してみたらなにかわかるかもしれないじゃない。シミュレーションプラグの中で起こったわけじゃない」

ミサト「だけど、承認されるかどうか……。エヴァは玩具じゃないのよ」

アスカ「パイロットとして機能しなくなるほうが問題でしょ。適当に理由つけなさいよ」

ミサト「……減俸もありえるかもしれないのよ」

アスカ「そうならないように、言い訳、考えたら?」

ミサト「はぁ……。ペンペン~、おつまみ減ったらごめんねぇ~」

ペンペン「クェッ⁉」

アスカ「それはそうと、シンジの催眠そろそろといてあげなきゃ」

ミサト「あぁ、そうだった。それじゃー解くわよ。あなたはぁ~ワンツースリーと言って手を叩いたら目が覚めます」

シンジ「…………」

ミサト「ワン! ツー! スリー!」パンッ

シンジ「…………」

ミサト「あ、あら?」

アスカ「ちょっと?」

ミサト「慌てないの。もっかい。……ワンツースリー!」パンッ

479 : 以下、名... - 2017/03/03 20:50:46.66 /j+k9HQL0 403/697

シンジ「…………」グテェ

アスカ「ちょっと! 起きないじゃなぁい!」

ミサト「シンジくん! 起きなさい! 起きて! 起きるのよ!」パンッパンッパンッ

アスカ「ど、どどどどうするのよ⁉」

ミサト「シンちゃん⁉ 私、左遷は嫌よ! クビも嫌!」パンッ

アスカ「保身に走ってんじゃないわよ!」

ミサト「ネルフにバレたら困るのよ! 起きて!」

アスカ「どうするの⁉ 連れてった方がいいんじゃ!」

ミサト「アスカ! チューして!」

アスカ「はぁ⁉」

ミサト「眠れるお姫様、じゃないけど。キスで起きるとかあるじゃない!」

アスカ「そんなので起きる⁉」

ミサト「アスカが嫌だったら私が……!」グイッ

アスカ「ま、待ちなさいよ!」ガシッ

480 : 以下、名... - 2017/03/03 20:58:12.98 /j+k9HQL0 404/697

- ネルフ本部 ??? -

諜報部員「ご報告いたします。葛城三佐宅のご子息の部屋で慌ただしい動きがありますが」

冬月「こちらに映像をまわせ」

諜報部員「了解。そちらに映像をうつします」

ゲンドウ「…………」


ミサト『………!』

アスカ『………!』


冬月「音声は拾えないのか?」

諜報部員「音声は指示がなかったので」

冬月「指示がなくとも盗聴器ぐらい取り付けておけ!」

諜報部員「り、了解。失礼いたしました!」

冬月「……取っ組み合いしてなにをしているんだ? 君の息子は縛られてるようだが」

ゲンドウ「…………」

冬月「やれやれ、おおかた家族ごっこか。このご時世に呑気なものだな」

481 : 以下、名... - 2017/03/03 21:17:01.45 /j+k9HQL0 405/697

- ミサト宅 シンジ部屋 -

アスカ「私がやるって! 言ってんでしょぉが!」ググッ

ミサト「だから! はやくやってよ! それでもだめなら私がやるからね!」ググッ

アスカ「だから! なんでそうなるのよ! ネルフに連れてくでしょ普通!」

ミサト「ネルフにバレたくないんだってばぁ! パイロットを催眠術にかけて昏睡状態とか笑い者になるわよぉ!」

アスカ「しかたないでしょ! こうなっちゃったんだからぁ!」

ミサト「いや、いやよ。もう再就職先見つけるのだって厳しいのに」

アスカ「生々しいこと言ってんじゃないわよ!」

ミサト「……わかった。落ち着きましょ。とりあえず、アスカしてみて」

アスカ「落ち着いたら普通やめようとかならないの?」

ミサト「いいから! はやく!」

アスカ「…………わかったわよ。あっち向いてて」

ミサト「はいはい。はやくね」

アスカ「ふぅ……。なんなのよこれ」

ミサト「……どう? やった?」

アスカ「まだ!」

ミサト「はやくね……」

アスカ「……それじゃぁ、いくわよ……」スッ


シンジ「…………」

アスカ「……(ちょっと待って、ここ監視されてるってメガネが言ってなかった?)」

ミサト「まだ? アスカ」

アスカ「(もしそうだとしたら、今って筒抜け⁉ なんで気がつかなったのよ!)」

ミサト「どぉ? シンジくん覚めた? 覚めたわよね?」

アスカ「……ミサト」

ミサト「うん?」

アスカ「やったけど、シンジは起きなかった(やってないけど)」

ミサト「あぁ……万事休すだわぁ~」

アスカ「落ち着いて、方法は間違ってない?」

ミサト「たしかにさっきの通り書いてあるわよ」

アスカ「…………」

ミサト「……はぁ。碇司令になんて報告すればいいのよ……」

アスカ「…………」パチン

ミサト「アスカ、指なんか鳴らしても、それは導入の時に」


シンジ「……ん? あれ?」


ミサト「シンジくん⁉」

シンジ「僕、いったい……あっ! いっ! なんか頬が痛い……そうだ! これほどいてくださいよ!」

アスカ「…………(指の音に反応したの?)」

482 : 以下、名... - 2017/03/03 21:35:29.35 /j+k9HQL0 406/697

シンジ「こんなのめちゃくちゃだ! 僕はもうここを出て行きます!」

ミサト「シ、シンちゃん?」

シンジ「アスカも僕のことが嫌いならそう言えばいいだろ!」

アスカ「……なに?」

シンジ「いきなり縛って身動きするなんて考えられないよ!」

アスカ「誰が誰のこと嫌ってるって?」

ミサト「アスカ! 待ちなさい!」ガシッ

シンジ「アスカに決まってるだろ! いっ⁉」

アスカ「あらぁ? シンジ様。次はどこを踏みつけられたいのかしら?」ゲシッ

シンジ「ぐっ……なんなんだよ!」

ミサト「アスカ! 足だけで器用にやらないで!」

アスカ「あんた、ほどいたら出てくの?」

シンジ「出てくよ! 先生のところに帰るんだ!」

ミサト「……シンジくん。そうなったら、監視体制が24時間でつくことになるわよ」

シンジ「それでもここよりはいい!」

アスカ「ミサト、明日、朝イチで初号機に乗せましょ」

ミサト「……や、やっぱり?」

アスカ「そうしなきゃ、碇司令になんて説明するの?」

ミサト「そ、そうよね」

シンジ「な、なに言ってるんだよ! 僕はアレに乗りたくないんだ!」

アスカ「こんなに嫌がってるんだし、碇司令も事情を説明すればわかるわよ」

ミサト「でも、これって大丈夫かしらん?」

アスカ「人間、死ぬ気になればなんでもできるものよ。シンジ、まだ口で嫌がる余裕があるでしょ」

シンジ「そ、そんな……」

ミサト「それもそっか」

シンジ「なんで納得するんですか! ミサトさん!」

アスカ「と、いうわけで」

ミサト「シンジくんはこのまま朝を迎えてもらいましょうか」

シンジ「そんなバカな……こと……」

アスカ「さぁ、シンジぃ~? 気を失うか、寝るかどっちがいいぃ~?」

シンジ「ちょ、ちょっと落ち着いてよ、アスカ」

ミサト「私はなにも見てないなにも見てないなにも見てないなにも…………」

483 : 以下、名... - 2017/03/03 22:26:01.02 /j+k9HQL0 407/697

- 翌日 ネルフ本部 格納庫 -

ガラガラガラガラッ

作業員「お疲れ様です、葛城三佐。お急ぎのようで ――」

ミサト「技術班は⁉」

作業員「はぁ、まだ時間もはやいので、チラホラ見かける程度ですが……台車に乗ってるのはサードチルドレンですか?」

ミサト「いるだけでかまわないわ!急いでかき集めて! それとプラグエントリー準備!」

作業員「なにも聞いてないですが、上からの承認はおりてるんで?」

ミサト「……せ、せせせ、責任は私が持つわ! つべこべ言わないでさっさとやる!」

作業員「り、了解しまし――」

リツコ「――なんの騒ぎ?」ヒョイ

ミサト「あっちゃぁ~。リツコ。いたのね」

リツコ「エヴァの点検に立ち会っていたのよ。それでミサトは? あら? アスカも?」

アスカ「…………」

リツコ「今日は学校のはずでしょ? テストは……そこでプラグスーツを着てるのはシンジくん⁉」

ミサト「……エヴァに少し乗せたいのよ」

リツコ「あなた、一体なに考えてるの! 理由を今すぐ言いなさい!」

ミサト「シンジくんがエヴァに乗るのをこわがってるから、そんなにこわいものじゃないって教えようと思って」

リツコ「気を失ってるんじゃなくて⁉」

ミサト「昨日、すこし暴れたのよ~」

リツコ「ミサト⁉ だからって気絶させたの⁉」

ミサト「ちょっとやり方が強引だっていうのはわかってる」

リツコ「許可できないわ! トラウマになって二度と乗らなくなる!」

ミサト「……これは必要な処置よ。私が、そう判断したの」

リツコ「何様のつもり⁉ 碇司令に報告したら厳罰は免れないわよ!」

ミサト「赤木博士。シンジくんの記憶が取り戻せるかもしれないのよ。そうしたら乗らなくなる心配はない」

リツコ「なんの根拠があってそんなことを言うの⁉」

ミサト「……その、昨日催眠術にかけたら、そうシンジくんが答えたから」

リツコ「催眠術ですって⁉ 素人が⁉ かかるはずないじゃない!」

ミサト「かかっちゃったのよぉ! それで、その時にエヴァに原因があるって」

リツコ「その話、本当なの?」

484 : 以下、名... - 2017/03/04 22:31:10.51 DPOdR4qy0 408/697

ミサト「まぁ、その、なんつーかね」

リツコ「どっちなのよ……」

ミサト「シンジくんの記憶さえ戻れば何も問題はないのよ! 今回だけは目を瞑って!」

リツコ「……っ! 葛城三佐!」

アスカ「チッ、また押し問答ね。シンジが戻る可能性があるなら賭けてみる。たまにはそういう荒療治やってみてもいいんじゃないの?」

リツコ「あら? 2人で結託したの?」

アスカ&ミサト「はん、まさか」

リツコ「…………」

アスカ「私たちは目的が同じであるという共通意識があるだけよ」

ミサト「普段なら止めるところなんだけど、初号機のパイロットはシンジくんしかいない。私もそう思ってる。だから、アスカのやることに協力してるわ」

リツコ「エヴァに関連があるとしても、プラグに乗せることが解決策とは限らないのよ」

ミサト「悪化を恐れる気持ちはわかる。しかし、研究者としては試してみる価値はあるんじゃなくって?」

リツコ「……(レイとのきっかけを作る為にはどうしても承認できない)」

ミサト「ね? お願い、今回だけでいいから。少しプラグに乗せるだけよ」

リツコ「却下します。くわえて今回のことは碇司令にも報告させてもらうわ」

ミサト「また碇司令? あんた最近、碇司令と距離感近くない?」

リツコ「仕事よ! 公私混同しないでちょうだい!」


485 : 以下、名... - 2017/03/04 22:40:49.73 DPOdR4qy0 409/697

ミサト「ふぅん?」

リツコ「碇司令が今日から不在なのが痛いわね」

ミサト「え? 碇司令、いないの?」

リツコ「南極に。今頃は飛行機の中でしょうね……」

ミサト「それじゃあ、不在の時の指揮権は?」

リツコ「それは、ミサトに……あっ」

ミサト「ナァ~~イスタイミングッ!」

リツコ「……はぁ」

ミサト「はいはぁ~い! みなさぁ~ん! サードチルドレンエントリースタンバーイ!」

リツコ「あ、あなたね! 任されてると言っても代理なのよ! わかってるの⁉」

ミサト「もちろん、碇司令が戻ってきたら、きちーんとご報告させてもらうわよ? でもそれまでは、私の管轄下よね? あ・か・ぎ・は・か・せ?」

リツコ「…………くっ!」

作業員「葛城三佐ぁ~! 作業にとりかかってもよろしいんですかぁ~?」

ミサト「オッケーですー! パパッと取り替かっちゃってくださーいっ!」

リツコ「失礼するわっ!」

アスカ「どこ行くの? 見てけばいいのに」

リツコ「衛生電話よ! 連絡が届く範囲になったらすぐにでもかけさせてもらうわ!」

ミサト「死の海、南極でしょ? 電波はいらないと思うけど」

リツコ「くっ、ミサト! 覚えておきなさいよ!」コツコツ

486 : 以下、名... - 2017/03/04 22:56:32.82 DPOdR4qy0 410/697

- ネルフ本部 発令所 -

マヤ「初号機、エントリースタンバイにはいります」

ミサト「ごめんねぇ~。マヤちゃん、朝早くから」

マヤ「いえ。でも、どうしていきなり?」

ミサト「ま、ちょっとした事情があんのよん。それよりリツコは?」

マヤ「先輩なら衛生電話を持ってラボに引きこもってましたけど」

ミサト「……あはは」

作業員「おーい! パイロット投げるぞー!」

シゲル「MAGI、パイロットの搭乗を確認。LCL加圧スタートします」

マコト「でも、使徒も来てないのにいいんですか?」

ミサト「うっ。みんなして言わないでよ」

マコト「一応、マニュアルでは第二次警戒体制に移行する決まりですが、どうします?」

ミサト「今回はなにもしなくていいわ。シンジくんを乗せるだけだもの」

マコト「了解、あとシンジくんの意識は?」

ミサト&アスカ「あ、忘れてた」

シゲル「えぇ~?」

アスカ「私がいって起こしてこようか?」

ミサト「う~ん。それもひと手間かかっちゃうし、待つわけにもいかないし、ちょっと濃度高めてくれる?」

マコト「えぇ⁉ か、葛城さん! シンジくん今記憶ないんでしょ⁉ 慣れてないのに大丈夫なんですか⁉」

ミサト「ここまでやってしまったら後には引けないわ。シンジくんの根性に賭けましょ」

マヤ「シンジくん、かわいそう……」

シゲル「あ~」

マコト「無茶するなぁ、まったく」

ミサト「……ご、ごほんっ! どうしたの? はやくしなさい!」

487 : 以下、名... - 2017/03/04 23:06:45.58 DPOdR4qy0 411/697

- 初号機 エントリープラグ内 -

シンジ「……がはっ!……ぐぅっ……」ゴボゴボゴボゴボ

シンジ「……息が……っ!」

ミサト『おっけー! 日向くん! シンジくんおきたみたいだから元にもどして』

シンジ「……はぁっ……はぁっ……」

ミサト『シンジくん? 聞こえるー?』

シンジ「な、なんですかここっ⁉ なんなんですか! どうして僕ここにいるんですか!」

ミサト『そこは初号機の中よ。正確にはエントリープラグ内だけど』

シンジ「どういうことですか! なんで乗ってるんですか! 乗りたくないって言ったでしょ⁉」

ミサト『なにも戦わせようってわけじゃないのよ。とりあえず、シンクロしてみるだけだから』

シゲル『電源、はいります』


ブゥーン


シンジ「嫌だ! 僕は降りる! 開けて! 開けてくださいよ!」ドンドンッ

ミサト『かまわないから、シンクロはじめちゃって』

マヤ『りょ、了解。指揮系統からシンクロ、開始します」

シンジ「な、なにやるんですか! や、やめてくださいよ! ミサトさん!」

ミサト『さて、どうなるかしら』

アスカ『変化が起こるといいけど』

488 : 以下、名... - 2017/03/04 23:17:34.96 DPOdR4qy0 412/697

- ネルフ 本部 発令所 -

シンジ『ミサトさんっ! おろしてくださいよ!』

ミサト「数値はどう?」

マヤ「シンクロ率、40.2%。3分が経過しましたが状況に変化はありません」

シンジ『このっ!』ガンガンッ

ミサト「……そう。乗せるだけじゃだめなのかしら」

シゲル「しかし、変ですね」

アスカ「なにかあったの⁉」

シゲル「あぁ、いや……シンジくんのバイタルが正常値なんです」

ミサト「あれだけ嫌がってるのに?」

シゲル「えぇ、ですから、口では嫌がっても精神では嫌がっていないことになります。むしろいつも通りといった感じですね」

マコト「こちらも、なにか妙です」

ミサト「なに?」

マコト「シンクロ率にまだ余裕があります。テストプラグじゃないのに」

シンジ『ミサトさんっ! ミサトさ……ミサト……ミサ……』

アスカ「……? ねぇ、シンジの様子がなんかおかしい」

ミサト「データはどうなってる?」

シンジ『う……うぅ……うぅ……』

マヤ「なんら異常は……」

ミサト「シンジくん? どうしたの? 気分でも悪いの?」

489 : 以下、名... - 2017/03/05 00:23:47.07 CuFupm8M0 413/697

ブーッ ブーッ ブーッ ブーッ

ミサト「エマージェンシーコール⁉」

アスカ「なにがはじまったの⁉」

ミサト「状況は⁉」

シンジ『く、クククククッ……』

マコト「パルス逆流! 絶対防衛線を突破します!」

シゲル「す、すべてのメーターが振り切られています! こりゃぁ、まるで、感情の波が押し寄せてるみたいだ」

マヤ「デストルドー反応増大! 危険域に入ります! このままでは自我が持ちません!」

シンジ『血の匂いが……』

ミサト「回路を強制的に切って!」

シンジ『ミサトさん。とれないんですよ』

マコト「エヴァ、信号を拒絶!」

ミサト「初号機の電源は入っていないはずでしょ⁉ エントリープラグだけなんじゃないの⁉」バンッ

シンジ『はぁ……。もういい』


アスカ「シンジッ!!!」


シンジ『アスカ……?』

アスカ「あんた! なに勝手に記憶喪失になんかなってんのよ! どういうつもり⁉」

シンジ『わからないんだ。僕はなにができるのか』

アスカ「あんた何かしたいことがあんでしょ⁉ だったらやってみればいいじゃない! やる前から諦めるな!」

シンジ『本当は、自信なんかないんだ』

アスカ「みんなそうなのよ! それでも試して、トライ&エラーで生きてんの! あんたまさか私を置いてどっかに行っちゃう気⁉」

490 : 以下、名... - 2017/03/05 09:34:36.43 CuFupm8M0 414/697

ミサト「アスカ、シンジくん記憶もどってるの⁉」

リツコ「まさか……」

マヤ「パイロットの精神汚染がはじまっています!」

リツコ「プラグから⁉」

マヤ「違います! 初号機からの侵蝕です!」

リツコ「まずいわ!」

アスカ「シンジ! あんた私を守るって言ってくれたじゃない! 全部放り投げるつもり⁉」

シンジ『…………』

アスカ「記憶戻ってるんでしょ! うぅん、違う、あんた本当は記憶がなくなってたんじゃない! 多重人格になってたんでもない!」

シンジ『…………』

アスカ「記憶をなくした「ふり」だったんでしょ! 本当は全部覚えてた! 違う⁉」

ミサト「なんですって……」

アスカ「思いかえせば全部おかしかったのよ! あんたの行動も記憶をなくしたタイミングもなにもかも!」

マヤ「……? 初号機、侵蝕、止まりました」

リツコ「…………」

アスカ「こわかったんでしょ⁉ だってあんた、臆病だから」

シンジ『…………』

アスカ「自分の殻に閉じこもって、エヴァに乗ってからのことをなかったことにした」

リツコ「そうか……」

ミサト「リツコ?」

アスカ「でも、見なくちゃいけないことがあるのもわかってる! だから私達にわざわざヒントを与えてたんでしょ⁉」

リツコ「シンジくんは記憶喪失なんかじゃない。現実と虚構の間をせめぎ合っていたのよ。危うい天秤のバランスで成り立っていたんだわ」

ミサト「……でも、演技だけで私達全員の目をごまかせる」

リツコ「嘘に真実を織り交ぜれば判断は鈍り、目が曇る。シンジくんがそのことに気がついていたのかはわからないけど、彼はそれを実践していた」

ミサト「私たちはシンジくんに記憶喪失だと思わせるようにミスリードされてたってこと?」

リツコ「おそらくね。医師の目をごまかせたのも、彼が殻に閉じこもっていたせい。多重人格とはいかないまでも、擬似的な人格を作りあげていたのよ」



アスカ「――なんとか言いなさいよっ!!! バカシンジ!!」

491 : 以下、名... - 2017/03/05 09:53:50.71 CuFupm8M0 415/697

シンジ『やっぱり、すごいや。アスカは』

アスカ「――っ! 私はあんたがなにを言ってるのかほとんどわからない。なにを見なくちゃいけないのかも」

シンジ『そうだね……』

アスカ「だけど、私は今のあんたを見てんのよ! エリート舐めんじゃないわよ!!」

シンジ『……ふぅ。たしかに殻を破ってくれるきっかけがほしかったのかもしれない』

ミサト「シンジくん? ……アスカの言ってることは本当なの?」

シンジ「僕自身、そうなのかわからないところもあるんです。だけど思い当たる節はありますね」

リツコ「無自覚だからできたんでしょうね。中学生がやろうと思ってできることではないわ」

ミサト「……そんな。シンジくん? なにがあったの?」

シンジ『嫌になってしまったんです。なにもかも。守りたい、けど、僕はまた、逃げることを選んでしまった』

アスカ「…………」

シンジ『守れないかもしれないというプレッシャーから。できるかわからないという不安から。見ないようにして我慢してきたけど』

リツコ「……今日、初号機に乗ったのはどういうきっかけが必要だったのか聞いてもいい?」

シンジ『僕の居場所はここしかないって……嫌でも実感できるから』

アスカ「あんたバカァ? 自分の居場所なんて自分で決めるものでしょ」

シンジ『あははっ。そうだね。アスカの言う通りだ』

シゲル「すべての数値が元に戻っています」

ミサト「安定した……?」

リツコ「(まずいわ。アスカとシンジくんの絆は確実に深くなっていっている。これでは碇司令の計画が……)」

アスカ「これぐらいで文句が済むと思ったら大間違いだからねっ! アザのひとつやふたつ覚悟しときなさいよ!」

シンジ『わかったよ。アスカ』

アスカ「ふんっ! べーーーっだ!」

493 : 以下、名... - 2017/03/05 12:16:19.76 CuFupm8M0 416/697

- ネルフ本部 男子シャワールーム -


ザァーーッ


シンジ「ふぅ………」

シンジ「なにもかも、見破られちゃったんだろうな」

シンジ「ロボットに体当たりしたあの時、僕は、全部思い出した。アスカのことも、綾波のことも、マナのことも、そして、カヲルくんのことも」

シンジ「(見なくちゃ、向き合わなくちゃいけないんだ。そう、僕がなぜ知っているのか、僕自身から)」


キュッ キュッ


シンジ「……冷水が気持ちいいや」

494 : 以下、名... - 2017/03/05 12:29:21.42 CuFupm8M0 417/697

- ネルフ本部 第三通路 -

――バチンッ!!

シンジ「……っ」

アスカ「なにも言わないのは褒めてやるわ」

シンジ「なにも言えな――」

バチンッ!!

シンジ「ぐっ……」

アスカ「よくもこのあたしに嘘をついたわね」

シンジ「…………」

アスカ「私は他の誰を騙してても別に責めたりしない。だけど! 私を騙すなんてどういうつもり!」

シンジ「悪かったよ」

アスカ「痛いでしょ! 私だって手がヒリヒリすんのよ! でも、それ以上に、心が痛いの!」

シンジ「…………」

アスカ「子供を言い訳になんでも許されると思う⁉ 今回のあんたは自分のことしか考えてなかった! 私のことなんか考えてなかったでしょ⁉」

シンジ「そうだね……」

アスカ「ふぅ……ふぅ……」

シンジ「気の済むまで殴っていい、と言いたいところだけど、アスカだって不満があるから殴ったりすんだもんね」

アスカ「…………」

シンジ「アスカがスッキリするならいい。でも、きっと、今回のことは、殴ったところでアスカの気持ちは晴れないと思うんだ」

アスカ「…………」

シンジ「だから、もうこういうことは二度としないよ。ごめんアスカ。僕から言えることはこれだけだ」

アスカ「……それだけ?」

495 : 以下、名... - 2017/03/05 13:17:27.84 CuFupm8M0 418/697

シンジ「僕は完璧なんかじゃないんだ。不器用で下手くそで。でも、もう嘘はつかない。だから、許してほしい」

アスカ「……そんな小難しい話をしてんじゃないのよ。私が許せないのは、あんたが私に嘘ついたこと」

シンジ「うん……」

アスカ「あんたにはあんたのペースがあって、私には私のペースがあんのよ。なにからなにまで同じって話じゃない。意味わかる?」

シンジ「みんな違うよね……」

アスカ「私も日本に来てから多くのことを知ったわ。違うから知ろうとする。わかり合おうとすんのよ。かと言って、完璧にわかり合うなんて無理な話でしょ」

シンジ「僕たちは他人だから」

アスカ「突き詰めるとそうよね。だけど、分かり合えた時、嬉しいって思える。そこに価値があんのよ」

シンジ「うん……」

アスカ「……心配したんだからね……もぅ……バカァ……」

シンジ「ごめん……」

アスカ「あんたの記憶が戻らなかったら今までのこと全部……なくなるんじゃないかって……う……うぅ……」ポロポロ

シンジ「僕が、馬鹿だったんだ」ナデナデ

アスカ「うぅ……ぐす……うっ……」ギュウ

496 : 以下、名... - 2017/03/05 14:20:24.84 CuFupm8M0 419/697

- ネルフ本部 ラボ -

リツコ「いらっしゃい、シンジくん」

ミサト「アスカとは、仲直りできた?」

シンジ「すみません……。みなさんにも迷惑かけました」

ミサト「子供はそれぐらいのが可愛げがあんのよ」ペチン

シンジ「…………」ペコ

リツコ「シンジくん、いくつか質問してもいい?」

シンジ「はい」

リツコ「まず、あなたの記憶喪失についてなんだけど、あれは演技だったと断言していい?」

シンジ「全てが演技というわけではありません。記憶がないと思いこんでいたんでしょうけど」

リツコ「それは、エヴァのせい?」

シンジ「そうですね。戦うのが嫌になったと思います」

リツコ「そういうケースがないわけではないわね」

ミサト「ちょっと、リツコ。なにも今質問しなくっても」

リツコ「人は時間がたてばたつほど記憶が曖昧になっていくのよ。シンジくんは若いからすぐに忘れるってことはないけど、すぐに聞けば鮮明なの」

シンジ「僕はかまいませんよ」

リツコ「もうエヴァに乗るのが嫌じゃないの?」

シンジ「嫌じゃないわけじゃありません。だけど、守りたいものがあるなら、そうも言っていられません」

リツコ「守りたいものとは、アスカのこと?」

シンジ「……みんなです」

ミサト「みんな?」

シンジ「はい。ミサトさんもリツコさんも」

ミサト「ちょっとちょっとシンちゃ~ん! 嬉しいこと言ってくれるじゃない!」

リツコ「ミサト。……生憎だけど、私は子供に守られるつもりはないわ」

シンジ「精神的に守るなんて大層なことを言ってるんじゃないんです。僕はエヴァに乗ることができる。みんなを守ることができるんです」

ミサト「……シンちゃん」

リツコ「ふぅ。たしかにあなたはエヴァのパイロットね。使徒を殲滅して私たちを守ることはできるわ」

シンジ「はい」

リツコ「だから、もう乗るのはためらわないと?」

497 : 以下、名... - 2017/03/05 14:25:31.91 CuFupm8M0 420/697

ミサト「リツコ! いい加減にしてよ! 今の言葉が聞けただけで充分でしょ!」

リツコ「判断するのは私よ」

ミサト「シンジくんは家で休ませるわ!」

リツコ「ミサト? シンジくんに手をだすつもり?」

ミサト「馬鹿なこと言ってんじゃないわよ! 私はパイロットの監督官です!」

リツコ「あなたは個人的にシンジくんを利用しているだけでしょ」

ミサト「……っ! あんた、なに言って」

リツコ「復讐」


バチンッ!!


リツコ「……っ!」キッ

ミサト「それ以上喋ったらただじゃ済まさないわよ!」

リツコ「あなたもアスカと同じね。お似合いの家族ごっこだわ!」

ミサト「なんですって!」

リツコ「シンジくんは、加持くんの代わりにはならないわよ!」

ミサト「……行くわよ、シンジくん」

シンジ「はい……」

498 : 以下、名... - 2017/03/05 14:43:51.15 CuFupm8M0 421/697

- 車内 移動中 -

ミサト「アスカは先に帰したから、家で待ってると思うわ」

シンジ「はい」

ミサト「今日はみんなでパーっと焼き肉でも食べに行きましょっか?」

シンジ「あの、ミサトさん」

ミサト「ん? なぁに?」

シンジ「さっきの話なんですけど」

ミサト「あぁ、リツコとのこと? シンちゃんは気にする必要ないわよ。私たちああやってたまにぶつかり合うの」

シンジ「そうじゃないんです」

ミサト「ん~?」

シンジ「僕は、ミサトさんとリツコさんの時間を知らないことばっかりだから、わかったようなこと言えません」

ミサト「…………」

シンジ「だけど、みんな違うからぶつかるのはわかります。もう、人の顔色を気にするのはやめようと思うんです」

ミサト「ほぅ」

シンジ「ミサトさんの願いも、平和の先にあることも叶うといいですね」

ミサト「平和の先って?」

シンジ「考えてみたらいいんじゃないですか。使徒がこなくなったら、全部倒したらどうするか」

ミサト「……そうね。そうかもしれない。ま、私はネルフが解体されたらどっかの職員にでもなってるんでしょうけど」

シンジ「はい」

ミサト「ぷっ、ガキがあんまり難しいこと考えてんじゃないわよ。シンジくん、若い内は、なんでもぶつかっていきなさい」

シンジ「そうします」

ミサト「行き先なかったら、シンちゃん、お嫁にもらってくれる?」

シンジ「みんなが驚きますね」

ミサト「だっはっはっ! そりゃそうよね~!」

502 : 以下、名... - 2017/03/05 17:19:17.32 CuFupm8M0 422/697

一言ご注意

中学生が酒を飲むシーンがあります
現実だと法律的に問題ありますが創作物としてご容赦ください

503 : 以下、名... - 2017/03/05 17:30:16.21 CuFupm8M0 423/697

- ミサト宅 リビング -

ミサト「そいじゃあ! シンちゃんの記憶回復を祝ってぇ! かんぱぁ~い!」コチン

アスカ「ミサトはかこつけて飲みたいだけでしょ」

ミサト「あらハズレ。そうじゃなくても飲むわよ」

アスカ「堂々と言うこと⁉」

ミサト「さぁ、お肉焼くからどんどん食べてね! 野菜もちゃんと食べるのよー!」

アスカ「しかも家で焼き肉って……」

シンジ「……ミサトさん、僕にももらってもいいですか?」

ミサト&アスカ「えぇ⁉」

シンジ「変かな?」

ミサト「変とかそういう問題じゃないわ! あなたまだ中学生でしょ!」

アスカ「シンジ、グレたの?」

シンジ「少し、どんな味なのかなって興味があって」

ミサト「あぁ~な~る。たしかにそういうことに興味を持つお年頃でもあるわね」

アスカ「苦いわよ?」

シンジ「アスカは飲んだことあるの?」

アスカ「ドイツにいる時に少しだけ。法律ではもちろん禁止だけど、まぁ、ちょこっともらうぐらい誰にでもあるでしょ」

ミサト「シンちゃんも飲んでみたい?」

シンジ「はい」

ミサト「じゃぁ~まぁ、しょうがないっかぁ~。ただし、このことは秘密よ? アスカも言わないでね?」

アスカ「はいはい」

シンジ「ありがとうございます」

ミサト「それじゃコップ、ビールでいいわよね」

シンジ「はい」スッ

ミサト「あら? コップ傾けるの知ってるの?」

シンジ「注いでるの見たことはありますから」

ミサト「それもそっか。これはね、泡をたたせすぎないようにやるのよ。これも社会勉強の内かな」トクトクトクトク

シンジ「………ととっ」

ミサト「はい、どーぞ」

アスカ「シンジのことだから一口で酔っ払うんじゃない?」

504 : 以下、名... - 2017/03/05 17:37:57.59 CuFupm8M0 424/697

シンジ「乾杯」

ミサト「はい、乾杯」コチン

シンジ「……んくっ……んくっ……」ゴクゴク

アスカ「ちょ、ちょっと、シンジ?」

ミサト「シンちゃん? 若いからってイッキは」

シンジ「ふぅ」コトン

アスカ「ぜ、全部飲んじゃった」

ミサト「あららぁ~」

シンジ「悪くない味、ですね」

アスカ「えぇ……」

ミサト「シンちゃんもしかしてイケるクチなの~⁉ もう一杯いっとく?」

シンジ「はい」

ミサト「ささ、どーぞ。お酌します」トクトクトクトク

アスカ「ちょっと、シンジ? ミサトもやめなさいよ!」

ミサト「いいじゃない? お酒は無礼講って相場が決まってんのよ。たまには息抜きも、ね?」

アスカ「……たくっ」

シンジ「……んくっ……んくっ……」グビグビ

アスカ「シンジ⁉ もうちょっと落ち着いて飲んだら⁉」

ミサト「加減がわからないのかしら……」

シンジ「うん、おいしいや」コトン

ミサト「あら、また空……」

シンジ「ミサトさんも注ぎますよ」

ミサト「あ、あらら? そぉ?」

505 : 以下、名... - 2017/03/05 17:55:06.11 CuFupm8M0 425/697

ミサト「碇司令ってお酒強かったっけ?」

シンジ「さぁ、父さんとはほとんど話をしたことがありませんから」

ミサト「あ、そう。遺伝かどうかわからないか」

シンジ「ミサトさん、そっちのワインってどんな味なんですか?」

ミサト「そっちも飲んでみたい?」

アスカ「ミサト! もう止めなさいよ!」

シンジ「アスカも飲んでみる?」

アスカ「あ、あたし⁉ 別にいい!」

ミサト「にへへ。アスカもまだまだお子ちゃまなのね」

アスカ「だぁれが⁉」

シンジ「なら、飲んでみる?」

アスカ「シンジ? そんなキャラだった?」

シンジ「僕はいつも通りだよ」

ミサト「さぁ、シンちゃんからのお誘いよん?」

アスカ「少しだけ! 少しだけだからね!」

ミサト「まぁ、シンジくんと違ってお子ちゃまのアスカにはうまさがわからないか」

アスカ「満タンにちょうだい!」

ミサト「はいは~い♪ さ、二人ともコップ」

506 : 以下、名... - 2017/03/05 18:09:57.11 CuFupm8M0 426/697

シンジ「――アスカ、アスカ、大丈夫?」

アスカ「ヒック……うるひゃいわねぇ~……こんなのお茶の子さいさいなんだならぁ~」

ミサト「こっちはワイン3杯で酔っ払うのね」

アスカ「体があつぅ~い」

ミサト「このワイン度数高くないんだけど、ゲルマン人の血はどこいったのかしら」

アスカ「あたしはクォーターだって、いってんれひょ」

シンジ「アスカってクォーターだったんだ」

アスカ「そうよ! あ、ひょっか。シンジに言ってなかったんだ」

シンジ「うん、初めて聞いた。ミサトさん、どうぞ」

ミサト「あら、ありがと」

アスカ「はぁ……だめ。まわる、世界がまわる」

ミサト「ここまで出来上がるなんて安上がりね」

アスカ「ねる……もう……ねちゃうんだから……」

シンジ「アスカ、寝るなら部屋で寝なよ」

アスカ「うぅん、むりぃ」

シンジ「はぁ、仕方ないな」ガラ

アスカ「う~ん」

ミサト「お優しいのね」

シンジ「からかわないでくださいよ。ほら、アスカ、肩に捕まって」

アスカ「シンジ~。すきぃ~」

ミサト「ヤる時はゴムつけるのよん」

シンジ「しませんよ! アスカを寝かせたら戻ってきます、よっと」

ミサト「わぉ、お姫様だっこなんてだいたん」

507 : 以下、名... - 2017/03/05 18:23:32.38 CuFupm8M0 427/697

ミサト「……家族ごっこか」

ミサト「ちょっと、無理にはしゃぎすぎちゃったかな。見透かされてないといいけど」


ミサト(少女)『……お父さん……」

ヒデアキ『…………』


ミサト「っと、いけないいけない。何を思い出してんだか」


トタトタ


シンジ「――ミサトさん、アスカ、ベットに寝かせてきましたよ」

ミサト「ご苦労様」

シンジ「あの、そっちのってどんな味なんですか?」

ミサト「ん~? あぁ、これぇ? これはちょっと、シンジくんには早いわよ」

シンジ「少し、飲んでみたいなって。ダメですか?」

ミサト「ウィスキーよ?」

シンジ「知ってます」

ミサト「はぁ……。しょうがない。水割りでいい? えーと、たしか冷蔵庫にかち割りが」ガラ ガチャン

シンジ「はい」

ミサト「気分が悪くなったらすぐに言うのよ。酔いは遅れてやってくる場合もあるから」トクトクトク

シンジ「まだ、大丈夫みたいです」

ミサト「慣れてるわけないのに、本当に強いのね。はい」

シンジ「……」カラン

ミサト「ちょ、ちょっとシンちゃん? なんだか慣れてない?」

シンジ「そうですか?」

ミサト「指でまわすなんて誰に教わったの?」


508 : 以下、名... - 2017/03/05 18:36:36.81 CuFupm8M0 428/697

シンジ「見て覚えたんですよ。マネしたかっただけです」

ミサト「まぁ、そうかも……しれないけど」

シンジ「ミサトさんは飲まないんですか?」

ミサト「の、飲んでるわよ」グビグビ

シンジ「じゃあ、僕も……んっ、甘いんですね」

ミサト「ブランデーだからね。そのお酒、ちょっと高いのよ?」

シンジ「へぇ……」

ミサト「さっきみたいにイッキはしないの?」

シンジ「香りがいいから、少しずつ飲もうかと思って」

ミサト「(ど、堂にはいってる?)」

シンジ「ミサトさん、おつまみはアーモンドでいいですか」ガラ

ミサト「そうね……。結局、あんまり焼き肉食べなかったわね」

シンジ「明日にでも使えますから」

ミサト「…………(この子、なんか急に大人びた? え? でもお酒飲めたからそう思うだけ?)」

シンジ「どうぞ」スッ

ミサト「シンちゃんって主夫向きよね」

シンジ「家事やってればそう思うかもしれませんね」

ミサト「まぁ、なんていうか、気配りとか」

シンジ「顔色伺って生きてきたから、身についただけですよ。ミサトさん、そういうのあんまり好きじゃないでしょ」

ミサト「ぶっ」

シンジ「あぁ、いや、いいんですよ。素直な反応がいいっていうのもわかりますから」カラン

509 : 以下、名... - 2017/03/05 18:44:53.64 CuFupm8M0 429/697

ミサト「…………」ゴクゴク

シンジ「……あ、もうなくなっちゃった」

ミサト「(ぺ、ペースがはやい)」

シンジ「ミサトさん、飲んでます?」

ミサト「飲んでます! そりゃもう!」グビグビ タンッ

シンジ「そっか、じゃあ注ぎますよ。ロックって飲んでみてもいいですか?」

ミサト「えぇ⁉」

シンジ「でも高いならもったいないかな」

ミサト「いや、本来の味を楽しむためにはロックが……って、大丈夫?」

シンジ「あれ? そっちのお酒はなんだろう?」

ミサト「そ、それは! 昇進祝いのおふざけでいただいた……」

シンジ「スピリタス?って読むのかな?」

ミサト「シンジくん! それはだめよ! アルコール度数いくつか知ってるの⁉」

シンジ「まぁ、試しってことで」

ミサト「ちょ、ちょっと待ちなさい!」ガシッ

シンジ「ミサトさん、飲めないんですか?」

ミサト「くっ、飲めるに決まってるでしょうが!」

510 : 以下、名... - 2017/03/05 18:52:19.03 CuFupm8M0 430/697

ミサト「グラスはちっちゃいのにしなさい!」

シンジ「えーと」

ミサト「指の長さぐらいのやつあるでしょ!」

シンジ「あぁ、これか」カチ

ミサト「本当に無理だったらトイレにかけこむのよ! 瞳孔開いてもだめよ! 吐きなさい!」

シンジ「これって度数そんなに高いんですか?」

ミサト「世界最高度数といわれてるものよ。シンジくん、理科の授業でアルコールランプ使ったことあるでしょ?」

シンジ「あぁ、はい」

ミサト「厳密には違うけど、あれ飲むようなものよ」

シンジ「へぇ……そんなに強いんだ」カシュ

ミサト「や、やめないのね」

シンジ「試しですから。若い内はなんでもでしょ?」トクトク

ミサト「言うじゃない」

シンジ「どうぞ」スッ

ミサト「まぁ、私はへっちゃらだけど」

シンジ「じゃあ、乾杯しますか」

ミサト「……乾杯」

ミサト&シンジ「……んくっ……」タンッ

ミサト「……くぅ……(これは効く)」

シンジ「うん、悪くないな」

ミサト「はぁ⁉」


511 : 以下、名... - 2017/03/05 18:57:12.93 CuFupm8M0 431/697

シンジ「さ、もう一杯どうぞ」トクトク

ミサト「(この子、もしかしてザルなの? わ、私が潰される)」

シンジ「どうしたんですか? 手が震えてますけど」

ミサト「中学生にプレッシャーかけられるほど落ちぶれちゃいないわよ! 飲み会で鍛えた社会人舐めんじゃない!」

シンジ「どうぞどうぞ」

ミサト「……ふぅ……んくっ……」グビ タンッ

シンジ「お見事」

ミサト「はぁ……どう? これが社会人の……」

シンジ「……んっ……」グビ タンッ

ミサト「…………」

シンジ「どうしますか? 無理ならやめますけど」

ミサト「上等っ!!!」

513 : 以下、名... - 2017/03/05 19:04:33.16 CuFupm8M0 432/697

シンジ「――ミサトさん、大丈夫ですか? ミサトさん」

ミサト「はい、葛城ミサト、だいじょーぶであります」

シンジ「寝ますか?」

ミサト「ま、まだ寝ない。でも、もうやめとく」

シンジ「わかりました」グビ

ミサト「シンジくん、あなた本当の本当に強いのね」

シンジ「僕もはじめて知りましたよ」

ミサト「たまには飲みに付き合ってもらうのもいいかも」

シンジ「1人じゃ物足りない時もあるでしょ。そういう時は付き合いますよ」

ミサト「まだ顔は幼いんだけどね……」

シンジ「……」

ミサト「そんなに今回の出来事が大きかったの?」

シンジ「どうかな。自分じゃわからなくて」

ミサト「……今日は酔っ払っちゃったわ。だから今から話をすることは聞き流して」

シンジ「どうぞ」

515 : 以下、名... - 2017/03/05 19:13:52.96 CuFupm8M0 433/697

ミサト「私の父はね、自分の研究、夢の中に生きる人だったわ。そんな父を許せなかった。憎んでさえいたわ」

シンジ「…………」

ミサト「母や私、家族のことなど、構ってくれなかった。周りの人たちは繊細な人だといってた」

ミサト「でも……ほんとは心の弱い、現実から、私たち家族という現実から、逃げてばかりいた人だったのよ。子供みたいな人だったわ」

シンジ「…………」

ミサト「母が父と別れたときも、すぐ賛成した。母はいつも泣いてばかりいたもの」

ミサト「父はショックだったみたいだけど、その時は自業自得だと笑ったわ」

ミサト「けど、最後は私の身代わりになって、死んだの。セカンドインパクトのときにね」

ミサト「私には分からなくなったの。父を憎んでいたのか、好きだったのか」

シンジ「…………」

ミサト「ただ一つはっきりしているのは、セカンドインパクトを起こした使徒を倒す。そのためにネルフへ入ったわ」

ミサト「結局、私はただ父への復讐を果たしたいだけなのかもしれない。父の呪縛から逃れるために」

516 : 以下、名... - 2017/03/05 19:30:09.34 CuFupm8M0 434/697

シンジ「僕はその代行者ってわけですか」

ミサト「…………」

シンジ「ミサトさんが指揮するネルフで僕が使徒を倒す。そうすることで、逃れようとしている」

ミサト「ご明察」

シンジ「いいんじゃないですか、それで」

ミサト「えっ」

シンジ「僕も使徒を倒したい、だから目的は一緒です」

ミサト「…………」

シンジ「僕が嫌々乗っていたり、言われるがまま、乗っていたら、どうして背負わせるのかって話になるんでしょうけど」

ミサト「…………」

シンジ「状況が変わった」

ミサト「……そうね」

シンジ「このアーモンドおいしいですね」

ミサト「ありがと……」

シンジ「女の子ってずるいですよね」

ミサト「お、女の子?」

シンジ「心の中では、感謝してないわけじゃない。けど、はっきりと区切りをつける」ガタッ

ミサト「な、なに?」

シンジ「みんながそうだとは言いませんけど。守らなければいけないルールがありますから」

ミサト「ちょ、ちょっとシンジくん、ちか」

シンジ「ミサトさんは、なにを守りたいんですか?」スッ

ミサト「……やっ……」

シンジ「……さて、寝ますか」

ミサト「………はっ?」

シンジ「僕は部屋に戻ります」

ミサト「えっ、あの、ちょっと」ポケー

517 : 以下、名... - 2017/03/05 19:34:05.89 CuFupm8M0 435/697

- シンジ 部屋 -


ゴロン


シンジ「(ふー、全然酔わなかったな)」

シンジ「(僕の、僕の実年齢はやっぱり……)」

シンジ「(いや、まだ子供でいられるなら子供でいよう。今はそれでいい)」

シンジ「(アスカにも全てを話せるわけじゃない。だから、今はまだ……)」

518 : 以下、名... - 2017/03/05 19:37:59.28 CuFupm8M0 436/697

- ミサト 部屋 -

ミサト「ちょっと待って、ちょっと待って、ちょっと待って」カリカリ

ミサト「なんであの瞬間私、キスされようとしてた?」

ミサト「はぁ⁉ シンジくんに⁉」

ミサト「……み、見事に虚をつかれた」

ミサト「うーん、男の子の成長ってすごいのねー」

519 : 以下、名... - 2017/03/05 19:47:18.58 CuFupm8M0 437/697

- 翌日 第三新東京市立第壱中学校 -

シンジ「おはよう、みんな」

トウジ「シンジ、おはよーさん」

シンジ「トウジ、僕を一発殴ってもらえないかな」

トウジ「はぁ? やぶからぼうになんやねん?」

アスカ「……シンジ、別に言わなくたって」

シンジ「いいんだ。僕がこうしたいだけだから」

ケンスケ「なんだなんだぁ?」

シンジ「トウジもケンスケも、ごめん。僕は記憶喪失じゃなかったんだ」

トウジ&ケンスケ「はぁ⁉」

シンジ「演技だったんだ。嫌なことから目を背けるための」

トウジ「演技ってお前、そんなこと、できたんか?」

ケンスケ「そ、そうだよ! とても演技には見えなかったぞ!」

シンジ「嘘をついてたんだ。だから、殴ってほしい」

トウジ「……今の話、ほんまなんか?」

アスカ「全部ってわけじゃないのよ! ただ」

シンジ「アスカ、いいんだ。アスカは僕をかばってるだけだよ」

トウジ&ケンスケ「…………」

トウジ「よし、わかった。ワシも細かいことは嫌いや。そんなワシの性格を知って言うとんのやろ」

シンジ「うん」

トウジ「せやったらワシはシンジの心意気に答えなあかん」

ケンスケ「と、トウジ」

ヒカリ「なに? どうしたの?」

マナ「なにかあったの?」

520 : 以下、名... - 2017/03/05 19:52:47.60 CuFupm8M0 438/697

アスカ「鈴原! あんた!」

トウジ「女はだぁっとれ! これは男同士の会話や! なぁシンジ」

シンジ「うん、そうだね」

ヒカリ「え? アスカ?」

マナ「鈴原くん?」

トウジ「思いっきり行くで。手加減なんか期待すんなや」

シンジ「いいよ」

トウジ「……っ! オラァッ!」


ガンッ ガタガタ


シンジ「いつっ……」

アスカ「シンジ!」

ヒカリ「す、鈴原ぁっ!」

マナ「あ……」

シンジ「いいんだ。洞木さんもマナもごめん。僕、記憶喪失なんかじゃなかったんだ」

ヒカリ「えぇ⁉」

マナ「シ、シンジくん……?」

トウジ「これでワシはチャラや!」

523 : 以下、名... - 2017/03/05 22:50:49.53 CuFupm8M0 439/697

- 第三新東京市立第壱中学校 昼休み -

トウジ「なんかよーわからんのー」

ケンスケ「つまり、碇は無意識に別人になりきってたってことかぁ?」

アスカ「この単細胞ども。別人じゃないわ。記憶をなくしてたふり」

ヒカリ「そうだったんだ……」

マナ「…………」

シンジ「みんな、ごめん」

トウジ「あぁ、もう謝るのはなしや」

ヒカリ「それだけ、プレッシャーがあったってことだよね。それなら私も、なにも言えないよ」

マナ「……でよ」

ケンスケ「ん?」

マナ「なんでよ! 守ってくれるって約束だったじゃない!」

シンジ「…………」

トウジ「な、なんや?」

アスカ「ちょ、ちょっと、ここ教室」

マナ「私がどんな気持ちで賭けたかわかる⁉ ムサシとゲンタの安否がかかってるのに……」

シンジ「守ってみせるよ」

マナ「えっ……」

シンジ「もう逃げないって決めたから」

マナ「だって、シンジくん。一度……」

シンジ「たしかに僕は逃げた。それについては言い訳はしようがない。だけど、まだ取り返しがつく」スッ

マナ「えぅ、あの……手」

シンジ「マナは一度賭けた。後戻りはできないはずだ。だからもう一度、僕に賭けてほしい」ジッ

マナ「えっ、えぇ……」

シンジ「みんな、無事で会えるように、僕は精一杯頑張るよ。だから、もう一度、チャンスがほしいんだ」

マナ「…………」

アスカ「…………」

ヒカリ「…………」

シンジ「ダメだって言っても、僕は助ける。一度した約束なんだ、守るよ」

マナ「あ……あの……取り乱してごめんなさい」

524 : 以下、名... - 2017/03/05 22:53:16.90 CuFupm8M0 440/697

ヒカリ「あ、アスカ」コショコショ

アスカ「え、えっ?」

ヒカリ「碇くん、どうしちゃったの?」

アスカ「あー、うーん? えーと」

ヒカリ「ちょ、ちょっとカッコいい……」

アスカ「だ、だめよ! あれは私のだから!」

ヒカリ「あ、ちが、その、雰囲気、大人びてる、余裕を感じるの」


マナ「あの、ごめんなさい。……その、手、離してくれると……」

シンジ「信じてくれて嬉しいよ。ありがとう」

マナ「……か、かっこいぃ」ポー


ヒカリ「マナ、大丈夫かな」

アスカ「な、なにが?」アセアセ

ヒカリ「碇くん、凄く人気でると思うよ。アスカ、しっかりね」

525 : 以下、名... - 2017/03/05 23:03:09.84 CuFupm8M0 441/697

トウジ「ほぇ~。やるもんやのー」

ケンスケ「僕が守ってみせる! キリッ! 言ってみたいなー」

シンジ「トウジ」

トウジ「はいはい、なんや?」

シンジ「今度、一緒にお見舞いに行くよ」

トウジ「あぁー、気を使ってるんやったら……」

シンジ「そうじゃないんだ。親友の妹のお見舞いに行くのそんなに迷惑かな?」

トウジ「…………親友か、へへ、はじめてやな。シンジからそう言ってきたのは」

シンジ「ケンスケのこともそう思ってるよ」

ケンスケ「あぁ? ぼ、僕も?」

シンジ「うん。なにかあったら何でも話そう」

ケンスケ「あ、あぁ……」

トウジ「よしっ! わかった! 親友となったら紹介せんわけにはいかんわな!」

シンジ「うん。何でも、話そう。ぶつかる時があってもいいんだ。仲直りできるから」

トウジ&ケンスケ「……シンジ」

トウジ「おぉ! なんか青春しとる気になってきたぁ!」

ケンスケ「まぁ、この僕に頼みたいことがあったらなんでも言えよな!」

526 : 以下、名... - 2017/03/05 23:15:49.15 CuFupm8M0 442/697

マナ「……シンジくんってかわいい系だったよね……」

ヒカリ「な、なんで? 中心に立つタイプだった?」

アスカ「ま、まぁ、私が育てたっていうのかしら。まったく、シンジもまだまだね」

ヒカリ「アスカ、どんな魔法使ったの……」

シンジ「さ、続き食べよう」

アスカ「……あの、シンジ? なんか急に大人びてない? 背伸びしてんでしょ?」

シンジ「ん? そんなつもりないけど、ハナにつくかな」

アスカ「まぁ、いや! かなりキザ!」

ヒカリ「ちょっとアスカ」

シンジ「そうかな」

アスカ「……そうかなってそれだけぇ?」

シンジ「普通でいるだけだけど、まだ慣れてないんじゃない?」

アスカ「慣れてないっていうか、困惑っていうか」

シンジ「あ、それおいしそうだね。洞木さん」

ヒカリ「こ、これ? 得意なんだ。よかったら食べる? えへへ」

シンジ「そう? じゃあもらお……」

アスカ「人の話聞きなさいよ!」スパーンッ

527 : 以下、名... - 2017/03/05 23:34:58.90 CuFupm8M0 443/697

シンジ「いてて……」

ヒカリ「ちょ、ちょっとアスカ! 碇くん食べようとしてただけじゃない!」グイッ

シンジ「っとと」

ヒカリ「碇くん、大丈夫?」

アスカ「ヒカリ? なにしてんの?」

ヒカリ「いきなりぶつなんてひどいわよ!」

アスカ「…………」ピクッ

シンジ「いや、僕ならいいんだ」

ヒカリ「でも……」

アスカ「へぇ~~~?」ピクピクッ

シンジ「だって、2人は仲良いじゃないか。洞木さんもアスカのことわかってるはずだよ」

ヒカリ「…………」

アスカ「気に入らない気に入らない! なんかシンジ変よ!」

シンジ「どう言えばいいか」

アスカ「その困ったような感じもムカつくわ! 1人で大人になったつもり⁉」

シンジ「(こうなったらアスカは止まらないからなぁ)」

アスカ「私の方が全然っ!」

シンジ「(アスカはプライドが高い。同年代だからこそ負けず嫌い。でも、そこを指摘しても素直に認められない、かといって謝るのも……)」

530 : 以下、名... - 2017/03/05 23:59:10.57 CuFupm8M0 444/697

アスカ「聞いてるの⁉」

シンジ「うん、聞いてるよ」

アスカ「へぇ、じゃあなんて言ってた? 今」

シンジ「アスカの方が頭もいいし、僕はアスカにかなわないって思ってるところが多いんだ」

アスカ「そうじゃな……」

シンジ「それに、僕は、アスカと喧嘩したくないんだ」

アスカ「うっ……」

シンジ「ぶつかることが嫌なわけじゃない、ただ、仲良くできるなら、話してわかることならそうしたい」

アスカ「…………」

シンジ「アスカはどうしたい?」

アスカ「私は、1人で大人になってるつもりなのが気に入らない! それだけよ!」

シンジ「僕は、子供だよ。今もどうしていいか一生懸命考えてるんだ」

アスカ「はん。また人の顔色うかがってるじゃない」

シンジ「誰にでもじゃないよ。僕はアスカと向き合いたい。それだけだ」

アスカ「…………」

シンジ「…………」ジッ

アスカ「……ふん」

531 : 以下、名... - 2017/03/06 00:04:56.04 FoWh17/L0 445/697

マナ「……き、気まずいね……」

トウジ「まぁ、シンジは苦労するやろなー」

ケンスケ「僕らもこの空気に慣れた方がいいのかもしれないな」

ヒカリ「…………」

トウジ「およ? 委員長、どないしたんや」

ヒカリ「う、うぅん。なんでもない」

532 : 以下、名... - 2017/03/06 00:11:29.04 FoWh17/L0 446/697

シンジ「アスカ、少し屋上に行かない?」

アスカ「なんで? ここで食べればいいじゃない」

シンジ「少し話したいことがあるんだ」

アスカ「私、わかってると思うけど、今機嫌悪いのよ」

シンジ「そうだね」

アスカ「それでも行きたいわけ?」

シンジ「うん、お願いしたい」

アスカ「……はぁ。わかったわよ」

トウジ「お? ご夫婦で移動か?」

シンジ「うん。ちょっと移動するから」

ケンスケ「いやぁ、碇から愛されてるねぇ~」

アスカ「べ、別にそんなんじゃ!」

シンジ「……さ、行こうか」

アスカ「あ、うん。ちょっと待って」

533 : 以下、名... - 2017/03/06 00:23:20.14 FoWh17/L0 447/697

- 学校 屋上 -

アスカ「それで、話って?」

シンジ「マナのことなんだけど、アスカにも協力してほしいんだ」

アスカ「……具体的になにするの?」

シンジ「そうだな……。まずはロボットの無力化なんだけど」


マリ「やっほ~! おひさぁ~!」ヒョコ


アスカ「あっ! あんた!」

シンジ「……?」

マリ「いやぁ、ちょうどいいところに来てくれたにゃ~。学校の中はガードが固くて」

アスカ「いつもいつも屋上なのも特定されないわけ?」

マリ「ん~? まぁ、そうなったらそうなった時?」

シンジ「アスカ、この人は?」

マリ「あっれぇ~? ひどいなぁ~ワンコくん! 私のこと忘れちゃったの~?」

アスカ「…………」ピクッ

シンジ「……どこかで会った?」

マリ「会った会った! んもー! 更衣室であんなに話したのにー!」

アスカ「ちょっと、なに言ってるわけ?」ピクピクッ

シンジ「更衣室……あぁ、えぇと、マリ、さん?」

マリ「いやぁ~もうちょっと頭の回転はやかったらいいんだけどにゃ~。でも、まっ、及第点♪」

シンジ「アスカと知り合いだったの?」

マリ「いろいろあってねぇ~。改めまして、よろしく♪ ネルフのワンコくんっ♪」

534 : 以下、名... - 2017/03/06 00:31:52.24 FoWh17/L0 448/697

アスカ「ちょっと、現れてほしい時は出てこなくてなにやってたのよ」

マリ「戦自と政府への破壊工作やってたよー。肩がこっちゃった」

アスカ「さ、さらりと言うのね」

マリ「うん。別になんてことないし」

シンジ「…………」

マリ「ごめんねぇ、姫。本当は今日も姫に会いに来たんだけど、今、興味あるのはワンコくんなんだよねぇ」

シンジ「僕?」

マリ「君、雰囲気かわったね?」

シンジ「…………」

マリ「どこまで、思い出したの?」

シンジ「……君は、誰だ?」

マリ「さて、誰でしょ? あれ? 自己紹介してなかった?」

アスカ「……?」

シンジ「僕は、マリという人を知らない」

マリ「そりゃそうだよねぇ~。イレギュラーなんだもの」

シンジ「…………」

マリ「エヴァの呪い。実年齢、違うんでしょ?」

シンジ「……っ!」

アスカ「あんた達、なに言ってるの……?」

シンジ「どこかで落ち着いて話したいって言ったら?」

マリ「おっ♪ ワンコくんがエスコートしてくれるの?」

シンジ「そういうことになるね」

マリ「いやぁ~、心惹かれちゃうなぁ~」

535 : 以下、名... - 2017/03/06 00:40:09.67 FoWh17/L0 449/697

シンジ「駆け引きは好きじゃないんだ」

マリ「私は面白いことだぁ~いすき」

シンジ「僕をからかうのは楽しい?」

マリ「まぁ、退屈しのぎにはなるかにゃ?」

アスカ「んもぉ! こっちの話を聞け!」

マリ「あぁ、ごめんごめん。姫。ワンコくんに夢中になっちゃった」

アスカ「なんの話をしてるの?」

マリ「さぁて? 何の話かにゃ?」

シンジ「…………」

アスカ「し、シンジ?」

マリ「おぉ、ワンコくんそんな目もできるんだ」

シンジ「どっち側?」

マリ「ふふ~ん。どちらでもないって言ったら?」

シンジ「それじゃもう一つだね」

マリ「いいなぁ~その目。ゾクゾクするなぁ~」

アスカ「…………」

536 : 以下、名... - 2017/03/06 00:50:50.53 FoWh17/L0 450/697

マリ「姫がいるから、これ以上踏み込んだ話はできないねぇ~」

アスカ「私が邪魔ってこと⁉」

シンジ「……そうじゃないんだ」

マリ「そーそー。色々あるんだよ」

アスカ「いいわ。黙ってるから話しなさいよ。ただし、私もここで聞く」

マリ「助かるぅ~! それじゃワンコくんに質問! 思い出したのはいつ?」

シンジ「つい最近だよ。厚木基地の出撃の時に」

マリ「にゃるほどー、うーん、早すぎるなー。本当はもっと辛い思いをしてもらってからだったんだけど」

シンジ「そうか、だから知ってたんだね」

マリ「ま、そゆこと♪」

シンジ「それで、マリさんはいつから?」

マリ「にゃはは、女性に聞くのは失礼じゃない?」

シンジ「……でも、僕とは違う。だって、僕はマリさんを知らない」

マリ「…………」

シンジ「さっき、イレギュラーといったよね」

マリ「言ったっけ?」

シンジ「……イレギュラー……本来ならいるはずがない……だけど、僕と似ていて僕のことを知ってる……」

マリ「おっおっ? ちょっとヒント与えすぎ?」アセアセ

537 : 以下、名... - 2017/03/06 00:59:13.04 FoWh17/L0 451/697

シンジ「……もうひとつの……協力者がいるね。誰?」

マリ「ちょっとマズったかにゃ」

シンジ「アスカ」

アスカ「……なによ?」

シンジ「マリさんと知り合ったのはいつ?」

アスカ「ん、と、浅間山の出撃のあと」

シンジ「それからマリさんの知り合い誰かいた?」

アスカ「…………」

マリ「(ひめぇ~! 言わないでぇ~!)」ブンブン

アスカ「……はぁ。加持さんよ」

マリ「あちゃぁ」ガックシ

シンジ「加持さんが。…………そうか。だから最初に僕にコンタクトをとってきたのか。わざわざ印象づけるために」ブツブツ

マリ「…………」

シンジ「加持さんは、僕に打ち明けようとしてたのか。でも、なぜ? 味方に引き入れるため?」

マリ「それは違うよ。私たちは姫とワンコくんの味方。引き入れるんじゃなくて、味方なの」

シンジ「…………」

マリ「ゲンドウくんとゼーレ、そして私達。三者の対立構造はやがて激化するよ。それは避けて通れない」

シンジ「……そんなことはさせない」

538 : 以下、名... - 2017/03/06 01:18:39.15 FoWh17/L0 452/697

マリ「んーん、これは既定路線なのよ。決定づけられた運命といっていい」

シンジ「…………」

マリ「運命を仕組まれたチルドレン。そして、ゼーレは裏死海文書を、ゲンドウくんは目的の為に。ワンコくんもわかってるっしょ?」

シンジ「ガフの部屋は開かせない」

マリ「それ、無理。必要なマテリアルは全て揃うよ。そうなったらもう誰にも流れは止められない」

シンジ「全部エゴじゃないか! 認められない!」

マリ「どうするつもり? 相手はネルフ、そして世界政府だよ」

シンジ「………」

マリ「エヴァで世界を滅ぼす? 量産計画が間に合ってない今なら可能かもしれないけど、本末転倒じゃん!」

シンジ「……なんとかしてみせる」

マリ「ワンコく~ん。根性論じゃどうにもならないんだって。妥協案って必要じゃない?」

シンジ「それじゃだめなんだ!」

マリ「ふぅん。それならお手並み拝見しようかな?」

シンジ「…………」

マリ「姫を助けてあげてね」

シンジ「まだ、時間は残されてる」

マリ「あ、もしかしてワンコくんって夏休みの宿題を最終日にやっちゃうタイプ? 時間なんてあっというまにすぎてくよー」

540 : 以下、名... - 2017/03/06 01:34:05.38 FoWh17/L0 453/697

シンジ「アスカにこだわるのはなぜ?」

マリ「さぁて? なんでかな?」

シンジ「…………ふぅ」

マリ「おりょ? 乗ってこない? もっと言葉遊びしよーよー」

シンジ「いや、情報はもう渡すつもりないんだよね」

マリ「せいかぁ~い」

シンジ「だったら、戦自の話をしようか」

マリ「気がついてた?」

シンジ「アスカに先にコンタクトをとってたのは、裏でなにかやってた。それぐらいはわかるよ」

マリ「ま、さっき破壊工作してたって言っちゃたしね」

シンジ「加持さんがルートを用意してくれてるの?」

マリ「アフターケアはおまかせあれ。ワンコくん達はロボットね」

シンジ「流れは同じか」

マリ「今までと同じだよ。おおまかな流れは一緒。だけど、微妙にズレてきてる」

シンジ「うん」

マリ「でも、最後も違うなんて希望は持たないでね。例えばAルートとBルートがあっても辿り着く場所は同じ。収束しちゃうよ」

543 : 以下、名... - 2017/03/06 13:42:11.83 FoWh17/L0 454/697

- 放課後 洞木宅 -

アスカ「ごめんね。ヒカリ、いきなり遊びにきて」

ヒカリ「どうしたの? 友達なんだから普通だよ」

アスカ「……うん」

ヒカリ「――碇くんとは一緒に帰らなくてよかったの?」

アスカ「うん、なんか、距離感じちゃってさ。あいつ、どう思う?」

ヒカリ「どうって……?」

アスカ「記憶戻ってからおかしいのよね。少なくとも、私に話してないことあるのはたしかだわ」

ヒカリ「なにかあったの?」

アスカ「昼休みの屋上ですこし。なにを話してるかちんぷんかんぷんだったけど」

ヒカリ「私は……今の碇くん素敵だと思うな」

アスカ「……そうかな」

ヒカリ「人ってまわりの影響で変わっていくものだもの。時には子供になったり、大人になったり。碇くんの変化をアスカが受け止めてあげなくちゃ……かわいそうだよ」

アスカ「そうなのかな……。なんか急すぎてついてけない。私が引っ張ってやってたのに、なかったことにされてるみたいで、1人で抱えこんじゃってさ」

ヒカリ「ふふっ。アスカだって最初の頃と比べてだいぶ変わったんだよ。この短い期間に」

544 : 以下、名... - 2017/03/06 13:50:03.80 FoWh17/L0 455/697

アスカ「あぁ~ぁ、難しい」ゴロン

ヒカリ「難しくしてるのはアスカだと思うな。考えすぎなところ、あると思う。最初の頃のアスカは碇くんのことしか見えてなかった」

アスカ「…………」

ヒカリ「今も、碇くんのこと考えてるのは変わらないんだろうけど、落ち着いて、余裕もできた分、色々と考えすぎてるんだよ」

アスカ「恋愛がめんどくさくなって投げだす人の気持ち、今なら少しわかる」

ヒカリ「まだはやいよ。見切りをつけるのは簡単だけど、焦っちゃだめ。碇くんに色々、助けてもらったんでしょ?」

アスカ「…………うん」

ヒカリ「なんで、アスカばっかり」ボソッ

アスカ「ん? なに?」

ヒカリ「うぅん。なんでもない。とにかく、一度、碇くんと話してみて。じゃないと、本当に碇くん、どこかに行っちゃうかもしれないよ」

アスカ「シンジが、どこかに、ねぇ――」

545 : 以下、名... - 2017/03/06 14:07:12.83 FoWh17/L0 456/697

- 夜 ミサト宅 -

シンジ「おかえり」

アスカ「……ただいま。ミサトは?」

シンジ「今日は、少し遅くなるってさっき連絡があったよ」

アスカ「ふぅん、あっそ」

シンジ「夜ご飯はどうする?」

アスカ「食べる。けど、あぁそうか、私が久しぶりに作ってあげるわ」

シンジ「いいの? 嬉しい」

アスカ「なにがいい?」

シンジ「昨日の肉がたくさんあるから野菜炒めとかどうかな?」

アスカ「いいわよ」

シンジ「あの、アスカ」

アスカ「ん? なに? あ、冷蔵庫にあったプリンなくなってる。ミサトね」ガチャ

シンジ「昼間の屋上のことなんだけど、アスカ、わからないことだらけだと思うんだ」

アスカ「…………」

シンジ「話せる時になったら、最初に言うよ」

アスカ「あたし、メガネにもあんたにもついていけてない」

シンジ「うん」

546 : 以下、名... - 2017/03/06 14:08:54.10 FoWh17/L0 457/697

アスカ「シンジのことは好き。だけど、ワガママになってるのね」

シンジ「…………」

アスカ「前は、シンジに見てもらうことが叶えばなんでもよかった。私だけを見てほしかった。それが全部だった」

シンジ「うん」

アスカ「今は見てもらうだけじゃいや。もっと別のこと、相手に求めることが増えてるってわかる」

シンジ「……それは、なにもおかしいことじゃないよ」

アスカ「嘘をつかれるのはいや。1人で先にいかれるのもいや。私のことを考えてくれないのもいや」

シンジ「ぜ、全部は、時と場合によっては、難しいと思うけど」

アスカ「頭の中でぐるぐる考えても、最後は、あんたのことが好きなのよ。悔しいことにね」

547 : 以下、名... - 2017/03/06 14:16:31.74 FoWh17/L0 458/697

シンジ「僕の方が、アスカに助けてもらってるんだ。今の僕があるのも全部アスカのおかげだよ」

アスカ「…………」

シンジ「本心なんだ。心の底からそう思ってる。これからも、アスカの助けが僕には必要だよ」

アスカ「それで?」

シンジ「お願いだよ。アスカ。どうか、僕のこと見捨てないでほしい」

アスカ「はぁ?」

シンジ「な、なんかおかしなこと言ったかな」

アスカ「普通今の流れで……ま、そっちのがあんたらしいか……」

548 : 以下、名... - 2017/03/06 14:41:39.87 FoWh17/L0 459/697

- ネルフ本部 発令所 -

ミサト「使徒?」

マコト「二分前に突然現れました」

オペレーター「第6サーチ、衛星軌道上へ。接触まで後2分」

シゲル「目標を映像で捕捉」


第10使徒サハクィエル「…………」


職員「おおっ……」

マヤ「お、おっきい」

シゲル「マヤちゃん、今の台詞、もっかい」

マヤ「……不潔」

ミサト「でかすぎない? 常識を疑うわね」

リツコ「見た目から推測すると、重量、質量、共に過去最高でしょうね」

マコト「探査衛星、目標と、接触します。」

オペレーター「サーチスタート。データ送信、開始します」

シゲル「受信確認……過去のデータをモニタリングします」


第10使徒サハクィエル「…………」キィィン ドーン


ミサト「ATフィールドを落とした?」

リツコ「新しい使い方ね」

ミサト「たいした破壊力ね。こんな使い方もあったなんて……」

マヤ「落下のエネルギーをも、利用しています。使徒そのものが爆弾みたいなものですね」

リツコ「とりあえず、初弾は太平洋に大外れ。で、2時間後の第2射がそこ。後は確実に誤差修正してるわ」

ミサト「学習してる、ってことか」

マコト「N2航空爆雷も、効果ありません」

シゲル「以後、使徒の消息は不明です」

ミサト「……来るわね、多分」

リツコ「次はここに、本体ごとね」

ミサト「その時は第3芦ノ湖の誕生かしら?」

リツコ「富士五湖が一つになって、太平洋とつながるわ。本部丸ごとね」

ミサト「碇司令は? まだ連絡つかないの?」

シゲル「衛星通話の有効範囲内ですが、使徒の放つ強力なジャミングのため、連絡不能です」

ミサト「MAGIの判断は?」

マヤ「全会一致で撤退を推奨しています」

リツコ「どうするの? 今の責任者はあなたよ」

ミサト「日本政府各省に通達。ネルフ権限における特別宣言D-17。半径50キロ以内の全市民は直ちに避難。松代にはMAGIのバックアップを頼んで」

549 : 以下、名... - 2017/03/06 14:49:37.51 FoWh17/L0 460/697

マコト「ここを放棄するんですか?」

ミサト「いいえ。ただ、みんなで危ない橋を渡ることはないわ」


放送『政府による特別宣言D-17が発令されました。市民の皆様は速やかに指定の場所へ避難してください』

放送『第6、第7ブロックを優先に、各区長の指示に従い、速やかに移動願います』


リツコ「やるの? 本気で?」

ミサト「ええ、そうよ」

リツコ「あなたの勝手な判断で、エヴァを3体とも棄てる気? 勝算は0.00001%。万に一つもないのよ」

ミサト「ゼロではないわ。エヴァに、いえ、シンジくんたちに賭けるだけよ」

リツコ「――葛城三佐っ!」

ミサト「現責任者は私です!」

ミサト「やることはやっときたいの……。使徒殲滅は私の仕事です」

リツコ「仕事? 笑わせるわね。自分のためでしょ?あなたの使徒への復讐は」

ミサト「そうよ。でもあの子たちなら、シンジくんならきっとやってくれるわよ」

550 : 以下、名... - 2017/03/06 14:56:52.27 FoWh17/L0 461/697

- ネルフ本部 作戦戦術室 -

アスカ「えーっ、手で、受け止める!?」

ミサト「そう。落下予測地点にエヴァを配置、ATフィールド最大で、あなたたちが直接、使徒を受け止めるのよ」

レイ「使徒がコースを大きく外れたら……?」

ミサト「その時はアウト」

アスカ「機体が衝撃に耐えられなかったら?」

ミサト「その時もアウトね」

レイ「……勝算は?」

ミサト「神のみぞ知る、と言ったところかしら」

アスカ「これでうまく行ったら、まさに奇跡ね」

ミサト「奇跡ってのは、起こしてこそ初めて価値が出るものよ」

アスカ「つまり、何とかして見せろ、って事?」

ミサト「すまないけど、ほかに方法がないの。この作戦は」

アスカ「作戦と言えるの!? これが⁉」

ミサト「ほんと、言えないわね。だから、いやなら辞退できるわ」

アスカ&レイ&シンジ「…………」

ミサト「みんな、いいのね。一応規則だと遺書を書くことになってるけど、どうする?」

アスカ「別にいいわ。そんなつもりないもの」

ミサト「終わったらステーキおごるから、食べに行きましょ」

レイ「……葛城三佐」

ミサト「ん?」

レイ「私、肉、嫌いです」

ミサト「あぁ、はい」

551 : 以下、名... - 2017/03/06 15:13:40.74 FoWh17/L0 462/697

マヤ「データ、だします。これが最後のデータです。使徒による電波撹乱のため、目標喪失」

ミサト「具体的な話にはいるわ。正確な位置の測定ができないけど、ロスト直前までのデータから、MAGIが算出した落下予想地点が、これよ」

アスカ「こんなに範囲が広いの?」

リツコ「目標のA.T.フィールドをもってすれば、そのどこに落ちても本部を根こそぎえぐることができるわ」

ミサト「ですから、エヴァ全機をこれら三個所、A、B、Cに配置します」

レイ「この配置の根拠は?」

ミサト「勘よ」

アスカ「カン?」

ミサト「そう。女の勘」

アスカ「げぇっ⁉ 何たるアバウト、ますます奇跡ってのが遠くなっていくイメージね」

シンジ「…………」

ミサト「シンジくん、さっきから黙ってるけど、緊張してる?」

シンジ「あ、いえ」

アスカ「ま、シンジは私が守ってあげるから心配ないわ!」

554 : 以下、名... - 2017/03/06 18:06:37.13 FoWh17/L0 463/697

- ネルフ本部 発令所 -

シゲル「目標を最大望遠で確認!」

マコト「距離、およそ2万5千!」

ミサト「高高度からきやがったわね……エヴァ全機、スタート位置!」

アスカ&レイ&シンジ『了解!』


ピュイ ピピピ………


シンジ『アラート? この動いてるのなんですか?』

シゲル「厚木基地方面より正体不明の信号が受信! この信号は、前回と同じやつです!」

ミサト「このクソ忙しい時にっ! 距離は⁉」

マコト「音速を超えるスピードで接近中! 2分後にこちらに到着します!」

シンジ『――そんなっ⁉ 嘘だっ!』

555 : 以下、名... - 2017/03/06 18:20:07.13 FoWh17/L0 464/697

- 初号機 エントリープラグ内 -

ミサト『レイ、アスカ、シンジくん、時間がないわ。今回はあっちは無視して。使徒殲滅を最優先』

シンジ「(そんな、こんな流れ、僕は知らない)」

レイ&アスカ『了解!』

ミサト『シンジくん? どうしたの? 返事は?』

シンジ「ミサトさん! お願いがあります! 僕達の判断に全てをまかせてくれませんか!」

ミサト『シンジくん……?』

シンジ「必ず使徒は止めてみせます! ミサトさん! お願いします!」

ミサト『マナちゃんのことが心配なのね?』

シンジ「……っ! そうです! だから、お願いします!」

ミサト『1人と人類を天秤にはかけられないわ。悪いけど命令は……』

シンジ「くそっ! くそっ!」ガンッ

アスカ『……シンジ、どうしたいの?』

シンジ「アスカ……?」

アスカ『なにか、やりたいことあんでしょ。言ってみなさい』

ミサト『アスカ! エヴァ三機でも成功率は限りなく0なのよ⁉』

アスカ『どっちみち死ぬなら同じことでしょ。今さらなにビビってんのよ。賭けるなら最後まで賭けてみなさい』

ミサト『そういうことじゃ……』

シンジ「アスカ! 戦自のロボットを止めに行ってくれ! こっちに向かってるのなら時間はかからないはず、それまでは僕が持ちこたえてみせる!」

レイ『……命令違反』

シンジ「綾波、ごめん。今回は少し痛い思いするかもしれない」

レイ『痛いのは、いい。成功する?』

シンジ「成功させるんだ!」

アスカ『ま、今のタイミングならそのあんたも悪かないかも。ミサト、シンジが熱血してるけど、どうするの?』

556 : 以下、名... - 2017/03/06 18:40:15.14 FoWh17/L0 465/697

ミサト『目標は光学観測による弾道計算しかできないわ。ということは、MAGIが距離1万までは誘導しか無理』

リツコ『予測落下地点に間に合わなくてもアウトよ?』

ミサト『シンジくん、あなたに、人類、いえ、私達の命全てを賭けることになる』


シンジ「それでも僕は、やるって決めたんだ! みんなを守ってみせます!」


ミサト『男はそうでなくっちゃ! 少しでも躊躇ったら撤回させるつもりだったけど、シンジくんの好きな通りやってみなさい!』

リツコ『……はぁ。私達、死んだわね』

シンジ「アスカ! 音速は直線上じゃないと維持できない! レーダーを見ながら最速で走って! 5秒後にカウントする! マヤさん、カウントお願いします!」

アスカ『了解!』

マヤ『り、了解! カウントスタート5秒前』

シンジ「綾波は僕と一緒に使徒を止める落下地点を目視しながらだよ、マコトさん!こちらも10秒後にでます!」

マコト『了解した! カウントスタート10秒前』

マヤ「カウント開始します! 5.4.3.2……弐号機スタート!」

アスカ『……っ!」ドンッドンッドン

シゲル「アンビリカルケーブル切断を確認! 弐号機内部電源に切り替わりました! 厚木基地方面に向かい加速状態に入ります!」

557 : 以下、名... - 2017/03/06 19:01:14.77 FoWh17/L0 466/697

オペレーター『使徒接近中! 高度は2万3000!』

シンジ「(……母さん……)」

マヤ『初号機! シンクロ率が100%を突破!上昇を続けています!』

マコト『5.4.3.2……スタート!』

シンジ「綾波! 行くよ!」ドンッドンッドン

レイ『……っ!』ドンッドンッドン

シゲル『初号機、零号機もアンビリカルケーブル切断を確認! 内部電源に切り替わりました!』

シンジ「ぐぅぅぅ……っ!」

マコト『弐号機もシンクロ率100%を超えました!』

レイ『碇くん! 座標がずれてる!」

シンジ「ミサトさんっ!」

ミサト『緊急コース形成! 107から105! 急いで!』

オペレーター『使徒! 加速! 高度1万5000!』

レイ『――だめ! 碇くん、こっちじゃ間に合わない』

シンジ「僕が間に合う!」キーーン

アスカ『シンジっ!! 死んだら承知しないからね!!」

シンジ「大丈夫だよ! アスカ! 通信する余裕があるかわからない! 遭遇したら動力部だけを狙って止めて!」

アスカ『了解!』

559 : 以下、名... - 2017/03/06 19:21:47.44 FoWh17/L0 467/697

シンジ「――ここだっ!」ズザザザザァ

オペレーター『初号機、確定地点に到達! 高度1万を切りました!』

ミサト『思ったよりもでかい!』

レイ『……っ!』

マヤ『零号機! 速度あがりません! 到達までおよそ30秒!』

レイ『碇くん!』

シンジ「――綾波、気にすることないよ。エヴァは心を写す鏡なんだ」

レイ『……っ』


シンジ「フィールド全開っ!!!」


マコト『初号機と使徒、まもなく接触します!」

マヤ『す、すごい、この数値は』

リツコ『…………』


第10使徒サハクィエル「…………」

シンジ「こいっ! 僕が受け止めてやるっ!」


アスカ『こっちもあと10秒で遭遇する! すれ違いざまに横殴りぶちかましてやる!』

レイ『くっ……』

アスカ『ファースト! 底意地の悪いところ見せてやりなさいよ! あんた! 人形じゃないんでしょ!』

レイ『……私は……私は……』

560 : 以下、名... - 2017/03/06 19:38:55.88 FoWh17/L0 468/697

- ネルフ本部 発令所 -

シンジ『……ぐぅぅぅう……!』ググッ

第10使徒サハクィエル「…………」


マコト「初号機に接触!」

ミサト「シンジくん! レイとアスカが来るまで持ちこたえて!」


シンジ『うあぁあああっ……!」グググゥッ


ドドーンッ!


ミサト「なに⁉ 衝撃波⁉」

シゲル「初号機より強烈な電磁波を確認! 使徒のATフィールドを中和しています!」

ミサト「ここ地下どれだけだと思って……その余波がここにとどいたの⁉」

レイ『フィールド全開!』

シゲル「零号機も速度あがりました!」

リツコ「マヤ、初号機のシンクロ率は?」

マヤ「300%付近です!」

リツコ「……人に戻れなくなるわよ。シンジくん」

ミサト「っ⁉ シンジくん! 聞こえる⁉」


シンジ『ぐあぁああ……な……なん……ですかぁ……!』グググゥッ

第10使徒サハクィエル『…………!』ググッ


ミサト「それ以上、シンクロ率を上げてはだめよ! 上げられるならだけど!」

マヤ「初号機、左腕、及び右腕損傷!」

レイ『碇くんが見えた! 弐号機は?』

アスカ『――こっちもそろそろ、ロボット見えたぁっ!」

561 : 以下、名... - 2017/03/06 20:00:24.23 FoWh17/L0 469/697

- 第三新東京都市 シェルター内 -

ヒカリ「――鈴原ぁっ! またお菓子持ってきたの⁉」

トウジ「ええやないか。これが人生最後のお菓子かもしれへんし」

ケンスケ「ま、シンジたちがなんとかしてくれるさ」

ヒカリ「んもぅ! でもさっきの揺れ凄かったね」

マナ「……私、ちょっと見てくる」

トウジ「はぁ⁉ あかん! それはあかんで! 前ワシらそれで死にそうな目に!」

ケンスケ「悪いことは言わないからここにいろって!」

マナ「あなた達は無責任すぎる! シンジくんたちは命をかけてるのよ!」

トウジ「……まぁ……」

ヒカリ「…………」

マナ「なにかできるかじゃない、見に行かなくちゃ。友達がどんな場所で戦ってるのかを」

ケンスケ「…………」

トウジ「……わかった。せやけど、前、ワシらはえらいことしてしもうたからな。今回はシェルターでたとこから眺めるだけや」

ヒカリ「ちょ、ちょっと、だけど、こわいよ」

マナ「……シンジくんたちはもっとこわいよ。目の前にいるんだよ、わけのわからないものが」

ヒカリ「…………」ギュゥ

ケンスケ「少し、見るだけなら――」

562 : 以下、名... - 2017/03/06 20:20:53.66 FoWh17/L0 470/697

- 第三新東京都市 シェルター 外 -


ビュウーーー バタバタバタ


ヒカリ「空が紫……?」

ケンスケ「風が……台風みたいだ!」

トウジ「なんや、なにが起こってるんやこれ」


マナ「――……見て! あっち! 丘の上!」


ケンスケ「あれは……初号機だ!」

トウジ「シンジか! なんで1人しか! 初号機ってあんなに小さかったか?」

ケンスケ「場所が遠いってのもあるけど、体が半分以上埋まってみたいだ!」

マナ「もう1つきてるみたい!」

ヒカリ「……うそ……あの大きいの受け止めるの……碇くん……あんなことしてたの……」

ケンスケ「あっちの機体は綾波だ! うっ! 風を巻き上げてる」

ヒカリ「ゴホゴホッ……アスカは⁉」

トウジ「あぁ、えぇと、赤いやつやったよな?」

ケンスケ「見当たらない……」

マナ「なにかあったんだわ、なんだろう」

トウジ「おっ! 綾波もシンジと一緒に押し返すみたいやで! よっしゃー! やったれー!」

ヒカリ「なんで? こわくないの? ……私、こわい」

マナ「ヒカリ?」

ヒカリ「私、戻りたい。ねぇ、もう戻ろう」

マナ「…………」

ヒカリ「私達とは違うんだよ。シンジくん達がすごいっていうのはもうわかったから」

トウジ「委員長、それは違うで」

ケンスケ「シンジ、泣いてたからなぁ」

ヒカリ「えっ」

トウジ「ワシらが前に抜け出した時、シンジ、泣いとったんや」

ヒカリ「あっ……」

マナ「みんなこわいのよ……死ぬのは、痛いのは、誰だってこわい」

563 : 以下、名... - 2017/03/06 20:33:19.39 FoWh17/L0 471/697

- 弐号機 エントリープラグ内 -

アスカ「まったく、邪魔くさいんだからぁっ!」キーーーン

ムサシ『赤い機体、引き返せ。使徒は俺たちが片付ける』

アスカ「通信回線? ってことは、あんたがマナの言ってたやつね!」

ムサシ『マナ⁉ マナを知ってるのか⁉』

アスカ「おかげで今こっちはいい迷惑よ!」

ムサシ『ま、待て、マナは今――』

アスカ「ごちゃごちゃうっさいわねぇっ! 忙しいのよ! 動力部だけ狙うから大人しくしてなさい!」

ムサシ『――こちらを落とす気か! 前回はうまくやられたが今回はそうやすやすとは!」

アスカ「黙ってろッッ!!!」

564 : 以下、名... - 2017/03/06 20:48:21.75 FoWh17/L0 472/697

- ネルフ本部 発令所 -

シゲル「弐号機、目標とせっしょ――あ、いえ、正体不明機失速! 推進力を失った模様!」

ミサト「ナイスよアスカ!」グッ

アスカ『シンジッ! 私がつくまで持ちこたえてっ!』

リツコ「引き返すのに止まっては駄目! 勢いをたもったまま旋回して!」

アスカ『了解!』

シゲル「弐号機! 速度をたもったまま大きく迂回!」

シンジ『ぐぅぅぅ!』

レイ『……あぅっ!』

マヤ「零号機、脚部損傷!」

リツコ「やはり、エヴァ二体では無理なんだわ」

ミサト「シンジくんのシンクロ率は高いのに……!」ギリッ

リツコ「あの使徒はATフィールドそのものよ。自身を爆弾にして落下してきている。初号機が400%を超えれば可能でしょうけど」

綾波『……っ!』

シゲル「零号機が衝撃に耐えられそうにありません!」

シンジ『綾波……っ! ぐぅぅうああああっ!!!』グググゥッ

マヤ「初号機さらにシンクロ率が上昇! 310.315.320………」

リツコ「やめなさいシンジくん!」


シゲル「し、使徒を押し返しはじめています!」


シンジ『――綾波! 今だっ! プログナイフを!』

綾波『私が離したら……』

シンジ『はやくッッ!!!』

綾波『了解』ジャキン

565 : 以下、名... - 2017/03/06 21:03:25.83 FoWh17/L0 473/697

綾波『……っ!』 ビュン

グサッ

第10使徒サハクィエル「」


ドーーーーンッ



職員「おぉ……っ! やった! やったぁ!」パチパチ

ミサト「ふぅ……」

リツコ「シンジくん? 聞こえる? シンジくん?」

シンジ『はぁはぁ……はい、聞こえてますよ』

リツコ「はぁ。なんとか間に合ったようね」

マヤ「こ、今回は死んじゃうかと思いました」

シゲル「俺も俺も~」

ミサト「シンジくん、アスカ、レイ、よくやったわ」

シンジ『はぁはぁ……』

レイ『碇くん、ごめんなさい』

シンジ『え? どうしたの?』

レイ『私、なんの役にもたたなかった』

シンジ『あははっ。綾波がいたから倒せたんだよ』

アスカ『シンジ! ロボットは止めといたわよ!』

シンジ『アスカもお疲れ様』

アスカ『あんなの雑魚よ。私にも残しておきなさいよねぇ~本命は使徒なんだから』

シンジ『次は、そうする……だけど、少し疲れた。ミサトさん』

ミサト「ん? なに?」

シンジ『回収班がくるまで、少し眠ります。それと、賭けてくれて、ありがとう……』

ミサト「私達はまた、シンジくんに守られたわね。ゆっくり眠りなさい――」

566 : 以下、名... - 2017/03/06 21:23:47.27 FoWh17/L0 474/697

- 東京第三新東京都市 某所 屋上 -

マリ「いま~わたしの~ねがぁ~いごとが~♪」

マリ「――……ふぅん……同時に処理できちゃったかぁ」ペロリ


ゴロン


マリ「どうしよっかなぁ」


加持「――パンツ見えてるぞ」

マリ「うん? どーでもいい」

加持「シンジくんにご執心みたいじゃないか」

マリ「まぁ、流れを止めるつもりみたいだからねぇ」

加持「それが……ダブルブッキングをした理由か」

マリ「試す権利ってあるじゃん?」

加持「女に試されるのはいつものことなんでね」

マリ「まぁ~~全然違うけど、どうしよっかなぁ」

加持「…………」

マリ「私達はワンコくんと姫の味方だけど、私の計画とワンコくんのやりたいこと違うってことなんだよねぇ~……でも、味方。これって矛盾してない?」

加持「…………」

マリ「どうしよっか♪」

加持「なにを考えてる?」

マリ「ワンコくんにさぁ、きつーく睨まれた時、ゾクゾクしちゃってさぁ~。ワクワクしちゃったんだぁ~」

加持「時間は着実に進んでいる。ターニングポイントになる参号機はもうすぐさ」

マリ「――かなぁ~うならば~♪ つば~さぁ~を~…………」

568 : 以下、名... - 2017/03/06 23:36:58.46 FoWh17/L0 475/697

- 南極大陸 戦艦上 -

リツコ『――報告は以上です』

ゲンドウ「そうか」

リツコ『安否の心配はしてくださらないんですのね』

ゲンドウ「結果は聞いた。話せていることが無事の証明になる」

リツコ『ご子息の件はいかがいたしますか?』

ゲンドウ「なぜ、変わった」

リツコ『おそらく、セカンドチルドレンの影響だと推測されますが――』

ゲンドウ「自己犠牲もか」

リツコ『その件に関しては……』

ゲンドウ「ダミーは最終調整段階に入っている」

リツコ『はい、まだいくつかテストは必要ですが、近い内に実用化できます』

ゲンドウ「シンジはそれまでもてばいい」

リツコ『……と、言われますと』

ゲンドウ「洗脳しろ。自己犠牲は必要ない。アレに残る用途は予備の道具としての価値だけだ」

リツコ『し、しかし、どうやって』

ゲンドウ「方法はまかせる。帰国次第、葛城三佐に通達。シンジとセカンドチルドレンの同居を正式に解消する」

リツコ『……人格破綻する可能性が高いですが』

ゲンドウ「かまわん。廃人になってもいい。――以上だ」

プッ

冬月「やりすぎではないのか?」

ゲンドウ「……やりすぎということはない。遅すぎたぐらいだ」

冬月「しかし、ユイくんの息子でもあるんだぞ。廃人にまで追い詰めては……」

ゲンドウ「目的のためだ。犠牲はやむを得ない」

冬月「……うぅむ……」

ゲンドウ「冬月。これまでたくさんのものを犠牲にしてきた。無駄にしないための生贄だ」ニィ

569 : 以下、名... - 2017/03/06 23:54:57.73 FoWh17/L0 476/697

- 翌日 ネルフ本部 ラボ -

ミサト「――はぁぁあ⁉」

リツコ「そんなに大きな声をださなくても聞こえるわよ」

ミサト「だ、だだだぁって! リツコが⁉ シンジくんと住むぅっ⁉」

リツコ「碇司令の命令でね」

ミサト「な、なんでぇ⁉」

リツコ「パイロット2人の面倒を見させるのは負担になると判断されたそうよ」

ミサト「碇司令がぁ? それ本当? 私を気づかってくれたってわけぇ??」

リツコ「もちろん、それは建前。日向くんに仕事を押しつけたのが内部監査員の報告でバレたみたいね」

ミサト「げぇっ⁉ まぁじぃ⁉」

リツコ「よってミサトはこれからは1人の面倒を見るだけでよく、尚且つデスクワークに専念できるってわけ」

ミサト「あ、あぁ~~それなら、納得」

リツコ「…………」カキカキ

ミサト「でも、シンちゃんは家庭的だから食事の心配ないし、アスカもシンちゃんのこと好きだから、2人で暮らした方がいいんじゃ?」

リツコ「2人きりでいる時間が長くなって子供でも妊娠したらどうするつもり?」

ミサト「あぁ~」

リツコ「コンドームをつけても100%避妊できるってわけではないのよ」

ミサト「それは……たしかに……」

リツコ「ミサトが帰宅しなければ、歯止めがきかなくなる可能性がある。会うなとは言ってないわ。ただ、それは避けるべきよね」

ミサト「そうね。会えないわけじゃないものね……」

リツコ「シンジくん達にはミサトの口から言う?」

ミサト「はぁ……。言いづらいけど、そっちのがいいでしょうね……アスカになんて言われるか……」

リツコ「それも監督官の仕事のうちね。がんばって」

570 : 以下、名... - 2017/03/07 00:15:36.95 K9j1+Tdp0 477/697

- 第三新東京都市第壱中学校 昼休み 屋上 -

シンジ「――あれ? 洞木さん?」

ヒカリ「碇くん。1人でいるのめずらしいね。アスカ達は?」

シンジ「お昼食べてるよ。洞木さんこそ、こんなところでめずらしいね」

ヒカリ「……うん。なんだか、1人で考え事したくて」

シンジ「そっか。ここっていい場所だよね。誰もいないし、そういう時は」

ヒカリ「みんな使わないもんね。景色もいいんだけど、なんでだろうね」

シンジ「そうだね……言われてみればそうかも」

ヒカリ「碇くんも1人になりたかったの?」

シンジ「少し、考え事してたから。一緒だね」

ヒカリ「うぅん。一緒なんかじゃないよ」

シンジ「ん?」

ヒカリ「はぁ……。実は、昨日ね、鈴原達とシェルターにいる時、少し外に出てみたの。あ、ほんとに出ただけなんだけど」

シンジ「…………」

ヒカリ「碇くんやアスカや綾波さんってあんなのと戦ってたんだね」

シンジ「うん、まぁ」

ヒカリ「選ばれるってだけでも凄いのに、勇気がいるんだなって思った。私達とは違うってこわくなったの。でもそんな時マナに言われたの――」

シンジ「…………」

ヒカリ「――誰だってこわいって。アスカや碇くんたちに申し訳なくなっちゃって」

シンジ「僕たちはエヴァのパイロットだけど、結局は大人の都合で乗ってるんだ。誰でも乗れるわけじゃないから、乗るしかない」

ヒカリ「…………」

シンジ「アスカはプライドを持って乗ってる。綾波は繋がりを求めて。僕はたまらなくこわくて嫌だった」

ヒカリ「……うん」

シンジ「パイロットとしての価値しかないって思うとむなしくてさ」

ヒカリ「でも、みんな感謝してるよ」

シンジ「それでも、僕が望んだわけじゃなかったから。でも、今は違うんだ。自分の意志で乗ってる。パイロットとしての価値しかなくてもそれでいいんだ」

ヒカリ「……どうして?」

シンジ「みんなが、それぞれ違うみんながいるのが当たり前だから」

571 : 以下、名... - 2017/03/07 00:24:02.05 K9j1+Tdp0 478/697

シンジ「洞木さんは真面目だから、自分を責めることなんかないよ」

ヒカリ「そ、そうかな」

シンジ「うん。僕だってパイロットじゃなかったらシェルターにいる。立場が変われば、その視点でしか物事が見えなくなるから」

ヒカリ「……ちょっと、難しいね、えへへ」

シンジ「あぁ、えっと、その、つまり」

ヒカリ「いいの。言いたいこと、なんとなくわかるから」

シンジ「……そっか。とにかく気にしなくていいよ。アスカともいつも通りいてくれたら喜ぶと思う」

ヒカリ「うん……友達だもの」

シンジ「そうだね……」

ヒカリ「ふぅ……風が気持ちいいね」

シンジ「うん」

ヒカリ「もし、もしもっとはやく碇くんに話かけてたら――」

シンジ「ん?」

ヒカリ「うぅん……なんでもない、なんでも」

572 : 以下、名... - 2017/03/07 00:43:59.00 K9j1+Tdp0 479/697

- 夜 ミサト宅 -

アスカ「はぁっ⁉ どういうことよ⁉」バンッ

ミサト「ですからぁ~シンジくんはリツコの家に引っ越しすることになりましたぁ~」

シンジ「……どうして?」

ミサト「あのぅ~わたしのサボりが碇司令にバレたらしくぅ~」

アスカ「なんですってぇ⁉ ミサトが馬車馬のごとく働いてきなさいよ! 休日返上で!」

ミサト「……そ、そりはぁ、したくても、したら死んじゃうっていいますかぁ~」

アスカ「許さないわよ!」バンッ

シンジ「でも、僕たちだけでも生活できますよ?」

アスカ「そうよ! 私だって料理覚えたんだし!」

ミサト「そこはねぇ~。シンジくんたちが仲よすぎるのが問題なのよ」

アスカ「はぁ?」

ミサト「その、私がいないことで、子供でも妊娠したら困るっていうか」

シンジ「ぶっ」

アスカ「……あぁ~」

ミサト「歯止めがきかなくなるのを心配してるのよ」

アスカ「まぁ、そうねぇ」

シンジ「いや! そこは否定しようよ!」

アスカ「私に欲情しないの?」

シンジ「いや、そんなことを言ってるわけじゃ」

ミサト「学校でも会うんだし、放課後とかデートする分には何も言わないわ。ただ、その、ね? 連日やっちゃうとゴムしてても妊娠の確率あがるのよ」

アスカ「……私達が我慢したら?」

ミサト「隠れてヤルでしょ? 若さってのはそういうもんよ」

アスカ「(どっちみち監視されてる状況でやるつもりなんかないのに)」

シンジ「僕は1人暮らしでもいいですけど」

ミサト「シンちゃんもせっかく打ち解けやすくなってきてるんだし、もったいない気がすんのよね。リツコもそんなに悪いやつじゃないし」

573 : 以下、名... - 2017/03/07 01:00:19.74 K9j1+Tdp0 480/697

アスカ「……私はいや!」

シンジ「(また知らない流れだけど、アスカと距離が近づきすぎたのが原因か……それなら、納得できるか)」

ミサト「学校とかでも会えるじゃない! お願いっ!」パンッ

アスカ「嫌よ! なんで⁉ なんで毎回毎回こんなに邪魔がはいるの⁉ きっと誰かが邪魔しようとしてんじゃないの⁉」

ミサト「それは考えすぎよ」

アスカ「だいたいミサトがサボらなければこんなことには……!」

ミサト「サボらなかったら帰ってこれなかったから、結局、同じことよ?」

アスカ「仕事はやく処理できない無能だって言ってんのよ!」

ミサト「お、鬼上司ね……」

シンジ「(どうしようかな。ミサトさんに乗ってもいいけど、アスカの為には反対すべきかな)」

ミサト「シンちゃんはどう?」

アスカ「…………」

シンジ「僕も反対です。アスカと住みたいと思ってます」

ミサト「え、えぇ? シンジくんも?」

アスカ「し、シンジ……」

シンジ「はい、僕たちはパイロット同士ですからなにも起きませんよ」

アスカ「う、嬉しい……」ギュウ

ミサト「抱きついてる状況を見せつけられても?」

シンジ「ちょ! こ、これは! アスカ! 離れて!」

アスカ「……はっ⁉……ごほん……」バッ

ミサト「碇司令の決定だから、覆すのは超がつく難易度よ。反対しても保安部を使って力づくでって話もありえるわ」

アスカ&シンジ「…………」

ミサト「正式な辞令が降りるのは碇司令が帰国するまで、今日を含めて2日の猶予がある。だから、それまでに2人で折り合いをつけておいて」

アスカ「なによ、結局お願いって言ってもこうなるんじゃない。拒否権なんかなかったんだわ」

ミサト「……ごめんなさい。穏便にいくならと思ったんだけど」

アスカ「言い訳は聞きたくない」

シンジ「………(リツコさんかぁ、なるべく近づきたくないなぁ)」

574 : 以下、名... - 2017/03/07 01:37:22.51 K9j1+Tdp0 481/697

- ミサト宅 アスカ部屋 -

ゴソゴソ

シンジ「……あの」

ゴソゴソ

シンジ「アスカ?」

アスカ「(ここでもない、あっちでもない、どこにあんのよ監視カメラは)」

ゴソゴソ

アスカ「シンジ、漫画でも読んでて」

シンジ「うん……」

ゴソゴソ

アスカ「(こういうのってコンセントとかが相場じゃないのぉ⁉)」

シンジ「アスカ、少女漫画読むの?」

アスカ「あ? あぁ、それ、ヒカリの」

シンジ「借り物か」ペラッ

バサバサッ ゴトン

アスカ「(ない、ないないないないないない! どこにあんのよ!)」

シンジ「アスカ……離れてくらしても、大丈夫だよ」

アスカ「――いやっ! 絶対にいや!」

シンジ「父さんは、容赦ないから。ミサトさんが言うように取りつく暇もないと思う」

アスカ「それでも嫌なの! 泣きそうになる!」

シンジ「……アスカ、大丈夫」ギュウ

アスカ「シンジは平気なの? 今まで暮らしてきたのに」

シンジ「平気なんかじゃないよ。仕方なくもない。アスカと暮らしたいよ」

アスカ「シンジ」ギュウ

シンジ「僕はアスカのことを守りたいんだ」

アスカ「……うん」

シンジ「逃げても、いいと思ってるんだ。アスカと一緒なら」

アスカ「ほ、本当? そ、そこまで私のことを……?」

シンジ「もちろんだよ」

アスカ「シンジ。ちょっと変わったぐらいでひどいこと言ってごめん。私、なんでもやる」

シンジ「いや、それはいいんだ」

アスカ「違うの。私どうかしてた。殺してやりたい昨日の私」

シンジ「いや、あの」

アスカ「なんで、私のことこんなに求めてくれただなんて。私全然気がついてなかった。シンジ、だって、まだ好きだって言ってくれてないんだもん。ヒカリから告白は聞いたけど、私達の関係だってエッチしたけど、でも――」

シンジ「ちょ! アスカ!」

アスカ「今の言葉で全部どうでもよくなった。全部。簡単だって思われてもいい。シンジのこと好きだから。シンジだから。もっとはやく言ってくれたら昨日の使徒だって、あぁ、あの時の私殺してやりたい。死にたい。でも幸せすぎて死にたくない」

シンジ「……あの?聞こえてる?」

アスカ「ごめん、シンジ、私コロコロ変わってワガママで矛盾しててごめん。でもシンジが私のこと愛してくれるなら、私シンジのことなんでもしてあげる。だから一緒に――」

575 : 以下、名... - 2017/03/07 01:51:29.17 K9j1+Tdp0 482/697

ピンポーン


シンジ「アスカ、こんな時間に誰だろう?」

アスカ「――えっ?」


ドタドタドタドタ


ミサト「シンジくん! アスカ! って抱き合ってるとこごめん……じゃなかった! すぐ離れて!」

シンジ「み、ミサトさん? なんですか?」

保安部員「失礼します」スッ

アスカ「……っ⁉」

保安部員「本日付けでサードチルドレンは赤木博士宅にご移動願います」

ミサト「ちょ、ちょっと! いきなり⁉ まだ碇司令帰国してないでしょ⁉」

保安部員「たった今、辞令がおりました。文書はおって通達されます」

アスカ「聞いてたのね⁉」

ミサト「……?」

アスカ「タイミング! おかしいじゃない!」

保安部員「……荷物は必要ありません。赤木博士宅に後日、配達されます」

アスカ「ミサト! こいつら私達の会話聞いてたのよ! こんなの許されるの⁉」

ミサト「あ、アスカ? どういうこと?」

シンジ「まさか、父さんが――?」

アスカ「監視カメラと盗聴器があるんでしょ⁉」

保安部員「存じ上げません。上の決定ですので」

アスカ「なんでよ! あんたら考える脳みそないの⁉」

保安部員「手段は問わないとの通達です」カチャ

ミサト「――拳銃⁉ ちょっと!誰の家で抜いてんのよ!」





576 : 以下、名... - 2017/03/07 02:05:14.32 K9j1+Tdp0 483/697

アスカ「くっ……!」

ミサト「銃をおろしなさい、腕折るわよ」ガシッ

保安部員「仕事です。葛城三佐」

ミサト「アスカ、監視って本当なの?」

アスカ「状況考えてみなさいよ!」

ミサト「……なにもここまでやらなくてもいいはずよ。命令したのは誰?」

保安部員「答えられません」


リツコ「――ミサト、お邪魔してるわよ」


ミサト「リツコッ⁉」

アスカ「やっぱり、あんたの仕業だったのね!」

リツコ「誤解しないでちょうだい。監視をしていたのは認めるわ」

ミサト「どういうこと! 監視カメラがここにあるの⁉」

リツコ「盗聴器もね。今、2人は逃げる算段をたてようとしていた。保険をかけていたのよ」

ミサト「監視なんて! 私は聞いてないわ!」

リツコ「あなた、言ったらバレてたでしょう。家族ごっこにうつつをぬかすようじゃ」

ミサト「なんですって!」

リツコ「逃避行なんて許されないわよ。シンジくん、アスカ」

アスカ「とことん趣味の悪い女! 吐き気がするほど嫌いなのよ! 他人の覗きが趣味⁉ ぶち殺してやりたいわ!」

リツコ「どうぞ、できるものならね。でも、今は無理なようだけど」

シンジ「…………」

リツコ「シンジくん。アスカを殺人者にしたいの? 逃げた所で、捕まるのは時間の問題よ」

577 : 以下、名... - 2017/03/07 02:16:49.99 K9j1+Tdp0 484/697

シンジ「父さんの命令ですか?」

リツコ「どうして?」

シンジ「リツコさんがエヴァに乗るのを強制はしない。するならば父さんだ」

ミサト「……リツコ、あんた、まさか、碇司令と……」

リツコ「碇司令はあなたにやる気がないなら乗るなと言ったはずだけど?」

シンジ「それは建前です。僕が乗らなければ、困るのは同じでしょ」

リツコ「…………」

シンジ「僕が行けば、アスカ達の安全は保障されますか?」

アスカ「いやっ! シンジ! それはいや!」

シンジ「アスカ、会えなくなるわけじゃないんだ、大丈夫だよ」

リツコ「賢明な判断ね。あなた達の今後はミサトから聞いた通りまでなら許可します」

シンジ「踏みこむタイミングを狙ってたんでしょ」

ミサト「……っ! リツコ! あんた!」

リツコ「私はミサトほど甘くはないわよ、さ、行きましょうか」

アスカ「シンジ! ごめん! 私があんなこと言ったから! ごめん!」

シンジ「いいんだよ、アスカ。理由なんていくらでも作られたんだろうから。また学校でね」

リツコ「……シンジくん。変わったわね」

シンジ「そうでもありませんよ、行きましょうか。リツコさん――」

584 : 以下、名... - 2017/03/07 16:06:23.17 K9j1+Tdp0 485/697

- 車内 移動中 -

リツコ「恨んでる?」

シンジ「いえ、そんなことはないですよ。驚きもありません」

リツコ「それはそれで拍子抜けね。もっとふてくされると思ったけど」

シンジ「怒ってもいいんだと思います。やり方は汚いですから」

リツコ「あなたがアスカと仲良くなりすぎたことがきっかけ。それに伴い様々な問題がでてきたのよ」

シンジ「それも全て、父さん達にとってでしょう」

リツコ「違うわ。人類にとって」

シンジ「そんなのは詭弁です。僕にとっては、アスカと引き剥がされた。その事実しかない」

リツコ「――前回の出撃の時、あなたは人をやめようとしたわね」

シンジ「………」

リツコ「あのまま初号機だけでも第10使徒は殲滅できたでしょう。しかし、残る使徒はどうするつもりだったの?」

シンジ「人をやめるだなんて、そんなつもりはありませんよ」

リツコ「あのまま初号機とのシンクロが進めば、あなたは初号機に取り込まれ、人ならざる者へ、すなわち、擬似神化していたのよ」

シンジ「…………」

リツコ「私達はアスカが原因だと考えている。だからこそ、あなた達2人を引き離すことが人類の為になるわ」

シンジ「僕に、納得してほしいんですか。仕方ないから受け入れろと」

リツコ「いいえ、ただの挨拶よ。これから一緒に住むことになるんだもの。――よろしくね、シンジくん」

585 : 以下、名... - 2017/03/07 16:18:11.03 K9j1+Tdp0 486/697

- ミサト宅 リビング -

アスカ「……うっ……ぐすっ……ぐすっ……」

ミサト「……アスカ、もう泣きやみなさい」

アスカ「こんなの、おかしいわよ」

ミサト「私も知らなかったのよ。名ばかりの監督官ね。碇司令から任されていたわけではなかったんだわ」

アスカ「赤木博士はシンジをどうするつもりなの」

ミサト「……わからない」

アスカ「ミサトの友達でしょ⁉」

ミサト「たしかに、私達は学生時代から続く友人関係よ。少しの衝突では揺るがない自信もあるし、お互いの性格を理解している」

アスカ「だったら! なんとかしてよっ!」

ミサト「でもね、アスカ。だからこそわかることもある。女同士の友人関係が壊れるってわりと一瞬なのよ。なにが原因かわかる?」

アスカ「…………」

ミサト「……男よ。大人になってもそれは変わらないの。恋愛感情は理屈では考えられない。だから、裏切るし、我慢できないの」

アスカ「き、危害を加えることはないわよね? 私達、パイロットなんだもの? そ、そうよね?」

ミサト「私からも調べてみる。もしかしたら、ネルフは、そんなに甘いところじゃないのかもしれないわ」

586 : 以下、名... - 2017/03/07 16:53:51.85 K9j1+Tdp0 487/697

- リツコ宅 リビング -

リツコ「散らかってるけど、気にしないでね」

シンジ「うわぁ……」

リツコ「間取りはミサトのところとほとんど変わらないわ。空き部屋があるからそこを使ってちょうだい」

シンジ「リツコさんって綾波みたいな無機質な家に住んでるのかと思ってました」

リツコ「お金は私のクレジットカードを渡しておくわね。好きなものを買ってかまわないわよ。……そう見える?」

シンジ「研究者ってイメージが強いからかな。猫グッズがこんなにあるとは、思ってもみませんでした」コトッ

リツコ「シンジくん。初見で女性の部屋を物色するのは感心しないわね」

シンジ「あ、すみません。でも、かわいいところあるんですね」

リツコ「ふぅ。プライベートを垣間見たからと言って舐めないでもらえる? あなたにはなんの感情もない。仕事なのよ」

シンジ「はい、お世話になります」

リツコ「これ、飲んでちょうだい、済んだら寝てかまわないわ」スッ

シンジ「なんですか、これ?」

リツコ「シンクロが高すぎるのを抑制する薬よ。新しく開発されたの。まだ試験薬だけど、効果があるのか治験もかねて」

シンジ「…………」

リツコ「そんなに考えこまなくても大丈夫。気分を高めるのを抑える薬だと思ってちょうだい。アスカにも飲んでもらうし、副作用の心配もないわ」

シンジ「わかりました」

リツコ「(あなたのは特別製だけどね)」

シンジ「水もらいます」

リツコ「どうぞ」

シンジ「…………」ゴク

リツコ「あとは、好きにしてかまわないわ。あぁ、それと、テレビはヘッドホンかイヤホンをして見てね」

587 : 以下、名... - 2017/03/07 17:09:24.43 K9j1+Tdp0 488/697

- 翌日 リツコ宅 リビング -

ジュージュー

シンジ「――よっと」

ガラッ

リツコ「…………」

シンジ「おはようございます、リツコさん」

リツコ「家庭的だとは聞いていたけど、早起きなのね」

シンジ「あぁ、まぁ日課みたいなものですから」

リツコ「ミサトはズボラだから、苦労したでしょう」

シンジ「えぇ、でも慣れれば普通でしたよ、目玉焼きでよかったですか?」

リツコ「私の分まで?」

シンジ「ついでですよ。それとも朝は食べない主義でした?」

リツコ「いえ、いつもはスティックバーだから」

シンジ「そうですか」コトッ

リツコ「シンジくん、あなた、なにを考えているの?」

シンジ「……?」

リツコ「私と仲良くなろうって魂胆?」

シンジ「いや、そんなつもりは。ただのついでですよ。本当に」

リツコ「……そう。私、犬派じゃないわ。猫派なのよ」

シンジ「はぁ」

リツコ「シンジくんは犬だから、個人的に仲良くなることはないわね」

シンジ「そう、ですね」

リツコ「それだけよ、それじゃいただくわ」

588 : 以下、名... - 2017/03/07 17:30:13.95 K9j1+Tdp0 489/697

- 第三新東京市第壱中学校 ホームルーム -

アスカ「…………」ソワソワ

ヒカリ「碇くん、まだ来ないね」

マナ「うん、いつもはアスカと一緒なのに。今日は違かったの?」

アスカ「シンジ、引っ越しちゃったのよ。昨日」

トウジ「そらほんまかいな⁉」

ケンスケ「1人暮らし?」

アスカ「ネルフの人と一緒」

ヒカリ「そうだったんだ……でも、突然なのね」

アスカ「…………」

トウジ「なんや、1人暮らしだったら遊びいこうと思ったのに」

ケンスケ「新しい人もミサトさんみたいに綺麗な人なのかなぁ~? くぅ~! 碇ぃ、羨ましいぞぉ!」

トウジ「大人の女性の魅力! ワシらにはわかるからなぁ!」

ヒカリ「鈴原と秋田くんってなんでいつもそうなのよ……」

トウジ「そら、ワシらは人の心っちゅーもんがあるからなぁ!」

ケンスケ「そうだよ! 君たちには人を思いやる気持ちというのがないのだろうか!」

マナ「どういうこと?」

トウジ「マジに聞いとるんけぇ? 冷たいやっちゃのぅ」

ケンスケ「ミサトさんだってまだ若いんだぞ! 中学生2人の面倒を見るのがどんなに大変かっ!」

アスカ「……はぁ。逆に私達がミサトの食事の面倒を見てたわよ。あんた達はどうせ性欲の塊なんでしょ、このサル」

トウジ「なんやと? ワシらだけやで、人の心を持っとるんわ」

ケンスケ「そーそー」

アスカ「ふぅん」チラッ

ケンスケ&トウジ「おっ⁉」

アスカ「ふん……ちょっとスカートめくったぐらいで反応しちゃって。口だけね」

トウジ「あ、いや、今のは」

ケンスケ「じょ、条件反射ってやつだよ!」

トウジ「せや! それや!」

ヒカリ「本当に最低……」

マナ「……あはは」

589 : 以下、名... - 2017/03/07 19:41:53.77 K9j1+Tdp0 490/697

- ネルフ本部 ラボ -

リツコ「火傷の傷はだいぶ癒えてるわね」

シンジ「はい、痺れもそこまでは。思っていたより支障はありません」

リツコ「シンジくん、口数が増えたわね」

マヤ「あ、それ、私も思いました」

シンジ「自分では、よくわかりません」

リツコ「そう」

マヤ「それより、先輩。さっき、葛城三佐から聞いたんですけど、シンジくんと住み始めたんですか?」

リツコ「ミサトから……。ええ、そうよ」

マヤ「わぁっ! いいなぁ、シンジくん」

シンジ「…………」

リツコ「マヤ、余計なことは慎んで」

マヤ「あ、す、すみません」シュン

リツコ「今日は学校に行かなくてもいいわ。新兵器のテストがあるから、シンジくんにやってもらいます」

シンジ「僕がですか?」

マヤ「伝達です。先の第4使徒で使用されたポジトロンスナイパーライフルの開発が進み小型化運用の目処がたったので、そのテストを行ってください」

シンジ「……わかりました」

リツコ「と、いっても機械が全てをやってくれるからあなたは指示に従って操作すればいいわ。パレットライフルの時と同じ要領ね」

マヤ「陽電子砲の準備は完了しています。ヒトヒトフタマル時より、テスト開始予定です」

シンジ「なぜ、今なんです?」

リツコ「これからの使徒との激化する戦闘に向けて兵器は数多くあった方がいい。それ以上になにがあると思う?」

シンジ「…………」

リツコ「機械に全てをまかせるわけにもいかない。さっきの言葉と矛盾するけれど、マヤ、なぜだかわかる?」

マヤ「プログラム、だからですかね。機械は与えられた行動しかできませんから」

リツコ「MAGIという例外もあるけどね。あれは特別中の特別。臨機応変に対応できるのは、人間の特権なの」


590 : 以下、名... - 2017/03/07 19:58:50.10 K9j1+Tdp0 491/697

シンジ「決められたパターンしか、行動できないから、人の手でやるわけですか」

リツコ「全ての可能性をあらかじめ入力していれば機械も人間に追いつくことができるでしょうね。しかし、それでは自立思考型のAIでない限り、天文学的数字になってしまう」

マヤ「目標までの距離や弾道の湾曲計算などは機械がやった方が圧倒的に効率がよく、また、はやいですけどね」

シンジ「じゃぁ、結局、僕が覚えるってことですか」

リツコ「そうね。機械の補助と人間の知恵。それらを掛け合わせることでより確実なものへとなっていく」

シンジ「…………」

リツコ「シンジくんは物を覚える時に、読んで覚える、書いて覚える、聞いて覚える、様々な方法があるけど、どれが一番忘れにくい?」

シンジ「どれかな……」

リツコ「中学生には難しかったかしらね。マヤ?」

マヤ「はい。手続き記憶ですね。身体に覚えさせることです」

リツコ「そう。1度、自転車の乗り方を覚えてしまえば、乗れなくなるようなことはないと言われている。どれだけ間隔をあけようと、身体が覚えているということは感覚で覚えていること。つまり、できていた自分をイメージしやすい」

シンジ「操作を身体に染みこませるってわけですか」

リツコ「それも目的のひとつってわけね」

シンジ「……わかりました」

リツコ「今後、シンジくんには実験に積極的に参加してもらいたいんだけど」

シンジ「どうしてですか?」

リツコ「親睦を深めるため、ではどう?」

シンジ「今朝と矛盾してますけど。仲良くならないんじゃなかったんですか?」

リツコ「目的があるなら話は別。ある程度、仲良くなれるかもしれない」

マヤ「先輩がこんなに積極的なのもめずらしいですね」

リツコ「同じ目的があれば、お互いに歩みよろうとするものよ」

591 : 以下、名... - 2017/03/07 20:17:00.27 K9j1+Tdp0 492/697

レイ「――赤木博士」

リツコ「レイ、いらっしゃい」

シンジ「綾波?」

リツコ「レイも実験に参加してもらうことが多いのよ。これからは、レイと一緒に行動する機会が増えると思うわ」

シンジ「(そうか、そういうことか。父さん……)」

レイ「…………」

リツコ「不満がなければ、話を進めてもかまわないかしら?」

シンジ「拒否権はあるんですか?」

マヤ「あっ……」

リツコ「嫌ならば別の方法を考えるけど、レイ、シンジくんはあなたと行動するのが嫌らしいわよ」

シンジ「…………」

レイ「……はい」

シンジ「ち、違うんだ、僕はそういうわけじゃ」

リツコ「では、話を進めてもかまわないということね?」

マヤ「せ、先輩……」

リツコ「マヤ、目的があるなら手段は選ばない。時には必要なことよ」

マヤ「…………」

リツコ「潔癖症はね、つらいわよ。生きていくのが」

シンジ「……なにをすればいいんです?」

リツコ「零号機と初号機のパーソナルデータがほしいのよ。互換性をたしかめたいの」


592 : 以下、名... - 2017/03/07 20:33:59.43 K9j1+Tdp0 493/697

- ネルフ本部 第三通路 -

シンジ「(このままじゃだめだ。なんとか、リツコさんを牽制しないと)」

レイ「……碇くん」

シンジ「ん? どうしたの?」

レイ「私と行動するの嫌で、ごめんなさい」

シンジ「あっ! さっきのは、違うんだ! そういうことじゃないんだ!」

レイ「…………」

シンジ「……綾波になにか悪いところがあるわけじゃない。ただ、その、色々納得できないところがあって」

レイ「無理強いされるのが嫌なの?」

シンジ「あぁ、ううん、そういうんじゃないんだけど」

レイ「使徒の時、支えてくれてありがとう」

シンジ「いいよ。僕も綾波がいてくれて助かったから」

レイ「…………」

シンジ「綾波は、父さんとはどう?」

レイ「どうって?」

シンジ「僕よりは一緒にいる機会、多いと思うんだけど。話せてる?」

レイ「良く、してくれてると思う」

593 : 以下、名... - 2017/03/07 20:42:00.01 K9j1+Tdp0 494/697

シンジ「そっか。それならいいんだ」

レイ「…………」

シンジ「綾波、僕は綾波も助けたい。守りたいんだ、だから、自分の命を簡単に投げ出しちゃだめだよ」

レイ「……碇くんが、私を守る?」

シンジ「守ってもらってばかりだったから、今度は僕が助ける」

レイ「……?」

シンジ「綾波は綾波しかいない」

レイ「私? 私しかいない?」

シンジ「うん」

レイ「違う……だって、私は、3人目だと思うから」

シンジ「殻に閉じこもってちゃだめだ。綾波は人形なんかじゃない。自分で考えられるんだ」

レイ「いか、りくん?」

シンジ「誰も綾波の代わりになんかなれない。いい?」

レイ「あ……う、うん……」

594 : 以下、名... - 2017/03/07 21:01:53.19 K9j1+Tdp0 495/697

- 第三新東京市第壱中学校 昼休み -

ヒカリ「碇くん、こないね……」

マナ「う、うん……そうだね……」

アスカ「…………」カタカタカタカタ

トウジ「うっさいのー! 貧乏ゆすりやめーや!」

アスカ「……ちっ」ピタ

トウジ「シンジには何の心配もあらへんやろ! ネルフの用事かもしれへんし!」

ケンスケ「一緒に住んでないから予定がわからないんだろぉー?」

ヒカリ「あんたたち! いい加減にしなさいよね!」

トウジ「なんや! たかだか数時間いないぐらいでなんやっちゅーねん!」

ケンスケ「会えないってわけでもあるまいしさぁー」

トウジ「せや! だいたい、一緒に住んどることがおかしかったんや! なぁ⁉」

ケンスケ「そーそー」


アスカ「……ふぅ」


ガンッ!!!


トウジ「うぉっ⁉」

ケンスケ「お、おい! 椅子が飛んだぞ! 女の脚力で飛ぶもんなのか⁉」

ヒカリ「アスカ! だめよ! 落ち着いて!」

マナ「鈴原くんたちも謝って!」

トウジ「ワシらなにも間違ったこと――」

アスカ「…………」

ケンスケ「お、おい、なんかやばいぞ。いつもと違って一言も発しない!」

トウジ「な、なんや? それがなんや!」

ケンスケ「いいか! 本当に人間やばいときは言葉を発しない時なんだよ! ジェットコースターに乗ってる時だって怖かったら喋る余裕ないだろ!」

トウジ「それとこれとは話が」

アスカ「…………」ガシッ

トウジ「い、う、息が……」

ヒカリ「ひっ⁉ アスカ首をしめちゃだめ! 相田くんも引き離して!」

ケンスケ「――うぐぐっ、なんでこんなに力が……」

トウジ「……が、がはっ」

マナ「だめ! アスカ! 離して! ……くっ、強い」グイッ


595 : 以下、名... - 2017/03/07 21:10:05.84 K9j1+Tdp0 496/697

ヒカリ「ちょっと男子達! 見てないで助けて!」

男子生徒「な、なんだあ?」

ヒカリ「アスカを引き離して! はやく!」


トウジ「……ぁっ……あ……」

アスカ「……っ!」ググッ


男子生徒「ちょっと! これマジで力強いぞ! もう1人こい!」グイッ

ケンスケ「うああっ!」グイッ


ガタタッ


トウジ「ひゅーひゅー……か、かはっ……」

アスカ「…………」

ケンスケ「ぜぇぜぇっ、男子3人がかりっておかしいだろ……エヴァのパイロットでこんななのかよ」

ヒカリ「アスカ、平気?」

トウジ「……げほっ……げほっ……」

ケンスケ「お、おい。トウジ? 平気か?」

マナ「鈴原くん? ……気動確保しなきゃ。落ち着いて深呼吸して」

トウジ「……すぅー……はぁー……」

596 : 以下、名... - 2017/03/07 21:21:54.33 K9j1+Tdp0 497/697

男子生徒「細腕のどこにそんな力が、アニメや漫画の世界じゃあるまいし……」

ケンスケ「僕たちが悪かった。だから、許してくれ」

アスカ「…………」

マナ「……鈴原くん? 意識ある? 聞こえる?」

トウジ「……あ、あぁ……」


ガラガラ


レイ「…………」チラッ

アスカ「……っ! ファースト、ちょっと待って」

レイ「なに?」

アスカ「シンジはどこ?」

レイ「ネルフにいたわ」

アスカ「いたってどういうこと? なんで過去形なの?」

レイ「兵器の試験のため、今はネルフにいない」

アスカ「本当にそれだけ? 他になにか理由ない?」

レイ「……ないわ」

アスカ「じゃあ、今日は学校にこないのね?」

レイ「なぜ?」

アスカ「なぜって、知りたいからよ!」

レイ「答える必要がないわ」

597 : 以下、名... - 2017/03/07 21:32:08.42 K9j1+Tdp0 498/697

アスカ「……っ!」ギリッ

レイ「…………」

アスカ「ふぅ。私も聞き方が悪かったわ。ただ、知りたいだけ。教えてくれると助かる」

レイ「他に理由はないわ」

アスカ「わかった。ありがとう」

ヒカリ「……アスカ、明日になれば、会えるわよ」

アスカ「そうね、鈴原も、悪かったわね」

トウジ「……あぁ、まぁ……」

ケンスケ「ま、マジで止めなかったらどうなってたんだ?」

アスカ「さあ?」

トウジ「お前、実は体重100キロ超えてるとかあるんか?」

アスカ「はぁ?」

トウジ「どう考えてもおかしいやろが。力あるように見えへんし、持ち上げるのも軽そうやし」

アスカ「ま、ちょっとしたコツがあんのよ」

ケンスケ「こ、コツねぇ」

マナ「アスカ、戦自にはいったら?」

アスカ「はいはい、バカなこといってないで、続き、食べましょ」

598 : 以下、名... - 2017/03/07 21:53:17.60 K9j1+Tdp0 499/697

- ネルフ本部 発令所 -

放送『弐号機と零号機のアポトーシス作業は、MAGI-SYSTEMの再開後予定通り行います』

シゲル「作業確認。450より670は省略」

マコト「発令所、承認」

リツコ「さすがマヤ、早いわね」

マヤ「それはもう、先輩の直伝ですから」

リツコ「あ、待って、そこ。A8の方が早いわよ。ちょっと貸して」

マヤ「さっすが先輩……」

ミサト「…………」

リツコ「葛城三佐、今日のテストには間に合わせたわよ」

ミサト「了解、ご苦労さま」

リツコ「シンジくんなら、新兵器テストのため技術班と一緒に今頃は二子山よ」

ミサト「聞いてる。ポジトロンライフルの小型化が実現できそうね」

オペレーター「MAGI-SYSTEM、再起動後、自己診断モードに入りました」

マヤ「第127次、定期検診異常無し」

リツコ「了解。お疲れさま。みんな、テスト開始まで休んでちょうだい」

ミサト「リツコ、ちょっと、話、いい?」

リツコ「えぇ、かまわないわよ」

599 : 以下、名... - 2017/03/07 22:06:50.68 K9j1+Tdp0 500/697

- ネルフ本部 ラボ -

リツコ「なんのご用?」

ミサト「短い付き合いじゃないから、単刀直入に言うわ、シンジくんをどうするつもり?」

リツコ「どうもしないわよ。貴重なパイロットですもの。ミサトもそのことは重々承知しているでしょ」

ミサト「見え透いた嘘はいいのよ! あんた! 碇司令と寝たんでしょ⁉」バンッ

リツコ「…………」

ミサト「碇司令には、奥さんがいたでしょ⁉ ちゃんと応えてくれそうなの⁉ 私たちの歳で不倫はズルズルいっちゃうわよ!」

リツコ「本筋からズレてると思うけど? 聞きたいのはシンジくん? それとも私と碇司令の関係?」

ミサト「どっちもよ。碇司令からなにを命令されてるの?」

リツコ「守秘義務があるわ」

ミサト「そう、あんたっていつもそう。なんでそんなに不器用な恋愛ばっかり選ぶの?」

リツコ「余計なお世話よ……っ!」

ミサト「私はあんたのことを思って!」

リツコ「ミサトっ! 自分のことを棚にあげるつもり⁉」

ミサト「なんですって!」

リツコ「加持くんから逃げ出したのはあなたでしょ⁉ 本当は加持くんは受け入れてくれるつもりでいたのに!」

ミサト「そ、それは……」

600 : 以下、名... - 2017/03/07 22:12:36.91 K9j1+Tdp0 501/697

リツコ「あなたは父親の怨念にとらわれすぎているのよ! まわりをよくごらんなさい!」

ミサト「……っ! あんたがそれを言う⁉ 親についてコンプレックスを持ってるのは同じじゃない!」

リツコ「私は母さんのようにはならないわっ!」

ミサト「いいえ、そうなるわ。あなたの生き方を見てきた私だからわかる」

リツコ「ミサト! 不愉快だわ!」

ミサト「シンジくんをどうするつもりなのよ、愛した男に捧げるつもり?」

リツコ「パイロットなのよ! そんなことするはずないでしょう!」

ミサト「本当にそうかしらね。ただ、乗れればいいと考えてるんじゃないの?」

リツコ「……っ!」

ミサト「碇司令の残酷なやり方は私にだって少しはわかる。だからこそ、あんたと! シンジくんのことが……私は心配なのよ」

リツコ「葛城三佐……もう、さがって」

ミサト「リツコ……」

リツコ「下がりなさいっ!」ガシャンッ

601 : 以下、名... - 2017/03/07 22:42:35.84 K9j1+Tdp0 502/697

- 第三新東京都市第壱中学校 放課後 屋上 -

アスカ「…………」

マリ「ふぅ、まだ帰らないの?」

アスカ「あんたを待ってたのよ。ようやく現れたわね」

マリ「うーん、私、お便利屋さんじゃないんだけどにゃ~」

アスカ「ありったけの情報を今すぐ渡して。わかるように。シンジを狙ってるのは碇司令なのね?」

マリ「ふぅん」

アスカ「でも、なぜ? どうしてシンジなの? シンジとメガネが話してたことに関係あるんでしょ?」

マリ「さぁ、知らない」

アスカ「知らないってことないでしょ⁉ あんたは全部知ってる! 加持さんもあんたから聞いたって言ってた! シンジのことも全部知ってるんでしょ⁉」

マリ「それよりもー、大事なのはワンコくんの安否じゃにゃいのー?」

アスカ「シンジに危険でもあるの⁉ わからないのよっ! なんにも!」

マリ「…………」

アスカ「知りたくてもわからない、このもどかしさがあんたにわかる⁉」

マリ「はぁ……まぁ、そんなマジにならなくても」

アスカ「だったら説明しなさいよ!」

マリ「言えることと言えないことがあってさぁ~」

アスカ「言えることってなに?」

マリ「まず、ワンコくんなんだけど、ちょっとピンチかもしれない」

アスカ「どういうこと?」

マリ「ゲンドウくんがいよいよ本腰あげてきたみたいだから、どうなるかまだわからないけど」

アスカ「……シンジのお父さんなんでしょ?」

マリ「うん。でも家庭によっては様々な事情があるからさぁ。他所は他所、うちはうちって言うじゃん?」

アスカ「シンジと碇司令ってそんなに?」

マリ「うーん、道具と使う者って感じ? ワンコくんはねぇ、あくまで道具なんだよ。ワンコくんも、それに気がついた」

602 : 以下、名... - 2017/03/07 22:51:04.32 K9j1+Tdp0 503/697

アスカ「それで?」

マリ「それでぇ、ワンコくんは道具で終わるつもりがないみたい」

アスカ「それがシンジのやりたいことってことね」

マリ「まぁ、そーだね。この前話してたのはそのこと。そんなのは無理って私が言ってたの」

アスカ「……私はどうしたらいいの?」

マリ「うーん。自分で考えてみたら?」

アスカ「……っ!」

マリ「姫、なにかを待ってるだけじゃだめだよ。ああしなさい、こうしなさいでは私の操り人形になっちゃうよ?」

アスカ「でも、どうしたらいいかわからない」

マリ「だから、考えるんでしょ? バックアップはしてあげるよ」

アスカ「…………」

マリ「考えて、悩んで、また考えて。それで悔いのない選択をする。私たちができることってそんなに多くないんだよ、姫」

アスカ「…………」

マリ「はぁ、やっぱりこういうのガラじゃにゃいな~。疲れちゃうわ、もう帰っていい?」

アスカ「シンジは、どうなるの?」

マリ「わからないって言ったっしょー。姫がどうするかもわからないけどねー」

603 : 以下、名... - 2017/03/07 23:04:49.94 K9j1+Tdp0 504/697

- ネルフ本部 ??? -

リツコ「長旅お疲れ様でした。碇司令」

ゲンドウ「報告をしろ」

リツコ「はい。シンジくんは予定よりはやくセカンドチルドレンと引き離しました」

ゲンドウ「…………」

リツコ「現在は私と同居させており、洗脳は準備を進めております」

冬月「時間はどれぐらいかかる」

リツコ「薬剤の投与を開始いたしております。一週間もあれば全て整います」

冬月「まわりに怪しまれてはいないだろうな?」

リツコ「申し訳ありません。葛城三佐が勘づいているようです」

冬月「……ふぅ。どうする? 碇」

ゲンドウ「放っておけ。どうせなにもできん」

リツコ「…………」

ゲンドウ「サードチルドレンは今どこにいる?」

リツコ「兵器テストの為、本日は二子山にて試験を行っておりました。現在はまだネルフ本部にいるかと」

冬月「レイと行動を共にさせていたのか?」

リツコ「本日は同行していませんが、そちらも滞りなく、これから機会は増えるでしょう」

冬月「廃人にさせるのはできれば、避けたいのだが」

リツコ「はい。あくまで可能性のひとつとしてそういう恐れがあるということだけ。シンジくんの洗脳がうまくいけば、レイしか見えなくなるはずです」

ゲンドウ「わかった。シンジをここに呼べ」

604 : 以下、名... - 2017/03/07 23:25:34.30 K9j1+Tdp0 505/697

- 初号機 格納庫 -

放送『第1ロックボルト固定。排水作業は第2フェーズへ移行します』

シンジ「……ととっ」

ミサト「シンちゃ~ん、お疲れ様!」

シンジ「ミサトさん? どうしてここに」

ミサト「仕事がひと段落した時に、初号機が帰ってきたって連絡あったから様子見にきたのよ」

シンジ「わざわざありがとうございます」

ミサト「どお? 昨日はあれからなにもなかった?」

シンジ「特に、なにもなかったですよ。寝ただけです」

ミサト「なにかあったら、遠慮なく――」

リツコ「シンジくん」

シンジ「リツコさんまで?」

リツコ「碇司令がお呼びです、一緒に行きましょう」

シンジ「父さんが?」

ミサト「リツコ、待って」ガシッ

リツコ「なに? 今急いでるんだけど」

ミサト「私も一緒に行くわ」

リツコ「葛城三佐は呼ばれていないわ」

ミサト「報告したいことがあるからそのついで。行っちゃいけないってことはないでしょ?」

リツコ「はぁ、勝手にしなさい、行きましょう。シンジくん」

シンジ「…………」

605 : 以下、名... - 2017/03/07 23:43:41.21 K9j1+Tdp0 506/697

- ネルフ本部 ??? -

ゲンドウ「シンジ、そこに座れ」

シンジ「…………」スッ

ミサト「碇司令、ご報告がございます」

冬月「あとにしたまえ」

シンジ「…………」

ゲンドウ「初号機のシンクロ率が300%付近まで上がったと聞いたが」

シンジ「はい」

ゲンドウ「なぜ、そこまで上げることができた」

シンジ「わかりません。無我夢中だったので」

ゲンドウ「初号機はお前が思っているほど軽くはない」

シンジ「…………」

ゲンドウ「初号機を傷つけるな」

ミサト「ま、待ってください! 先の戦闘では初号機の戦果は褒められたものであって――」

ゲンドウ「作戦司令。子供に決定権を与えるとはどういうつもりだ」

ミサト「も、もうしわけありません……!」

シンジ「いいんです、ミサトさん」

ゲンドウ「シンジ……お前の仕事はなんだ」

シンジ「エヴァに乗ることです」

ゲンドウ「そうだ、お前がやる気になる必要はない」

シンジ「――だったら今すぐ僕を降ろせばいいだろっ!! 僕を降ろせばっ!!」

606 : 以下、名... - 2017/03/07 23:53:45.58 K9j1+Tdp0 507/697

シンジ「父さんは初号機しか頭にないんだろ!!」

ゲンドウ「…………」

シンジ「乗る気になったら乗る気になったで、今度はやる気を出すなだって⁉」

ゲンドウ「…………」

ミサト「シンジくん……」

シンジ「乗るしかないんだろ、父さん」

ゲンドウ「そうだ。お前が乗らなければ人類は滅ぶ」

シンジ「だったらひざまづいてお願いしてみろよ!」

リツコ「シンジくん! 口の聞き方に気をつけなさい!」

冬月「…………」

ゲンドウ「葛城三佐。シンジを連れてさがっていい」

シンジ「父さん、僕は初号機に乗る。初号機パイロットだから!」

ゲンドウ「…………」

シンジ「だけど! みんなを守るって決めたんだ!」

ゲンドウ「子供の戯言は充分だ。はやく退がれ」

リツコ「はい。葛城三佐、なにしてるの、さがりなさい!」

シンジ「くそっ! 僕の話を――」

ミサト「シンジくん、行きましょう……」

607 : 以下、名... - 2017/03/07 23:58:54.77 K9j1+Tdp0 508/697

冬月「――碇、お前の息子は変わったな」

ゲンドウ「ただの稚魚だ。綺麗事を並べているだけにすぎん」

冬月「若さとは、えてしてそういうものではないのかね」

ゲンドウ「理想と現実は違う。到達できないものに時間を割いている余裕はない」

リツコ「…………」

ゲンドウ「赤木博士、シンジの洗脳を優先事項にしろ」

リツコ「了解いたしました」

ゲンドウ「――以上だ」

608 : 以下、名... - 2017/03/08 00:09:44.00 BconFYhG0 509/697

- 車内 移動中 -

ミサト「……リツコのマンションまで送るわ」

シンジ「ふぅ……ミサトさん、なにか食べて帰りますか?」

ミサト「あ、あら? へこんでないの?」

シンジ「まぁ、いつものことですから」

ミサト「へぇ、シンちゃん! 強くなったじゃない!」

シンジ「(これで、父さんの僕に対する印象は変わらないはずだ)」

ミサト「でも、そっちのがいいかもね。ちょっと心配してたけど」

シンジ「ミサトさんも大変ですね」

ミサト「うん、まぁ、色々あるからね」

シンジ「人間関係って大変ですよね」

ミサト「だっはっは! やだぁ! やめてよー! 面白いこと言うじゃなーい!」

シンジ「そうですか?」

ミサト「シンジくんの口からそういうこと聞くのは意外だわー」

シンジ「僕も思う時あるんです。分かり合えたらいいなって、でも全部は無理ですから」

ミサト「……そうね、みんなそれぞれペースがあって、やりたいことがある。したいようにしたいのはみんな同じだもの」

シンジ「うまくいくといいんですけどね」

ミサト「たまに噛み合う時はあるんだけどね。ボタンのかけ違いをする時もある」

シンジ「仕事だとまた違うんですか?」

ミサト「うん? まぁ、似たようなもんよ。仕事は学校と違って、気の合う仲間だけで集まれるわけじゃないもの。趣味や気性が違う人がいて当たり前なの」

シンジ「そっか。大変そうですね」

ミサト「まぁ、シンちゃんも働くようになればわかるわよ」

シンジ「そうですね」

609 : 以下、名... - 2017/03/08 00:23:40.07 BconFYhG0 510/697

- 夜 ミサト宅 -

ミサト「たっだいまーん」

ドタドタドタッ

アスカ「ミサト! シンジの様子どうだった⁉」

ミサト「シンちゃんなら、なにも心配いらないわ。あの子、前に比べれば本当に強くなったわね」

アスカ「本当⁉ なにかされてない⁉」

ミサト「今のところは、なにも心配ない。といってもまだ1日目だけど」

アスカ「……よかった。明日は学校にくる?」

ミサト「あっ、そうね。うーんどうかしら」

アスカ「えぇ~~⁉ まだなんかあんのぉ⁉」

ミサト「リツコがね。マヤちゃんに聞いた話だと実験に協力させれることが多くなるみたい」

アスカ「……赤木博士が?」

ミサト「まぁ、すぐにどうこうって話じゃないと思うけど」

アスカ「シンジが変わったってことがまずいのなら、碇司令達がなんかするんじゃないの?」

ミサト「……アスカ、誰かからなんか聞いた?」

アスカ「う、うぅん。なんとなく、女の勘」

ミサト「そう……。シンジくんの変化は隠そうと思ってもできるほど些細なものではないわ。自己主張しなかった子がするようになった、これだけでも大きな変化だもの」

アスカ「…………」

ミサト「碇司令に見破られてるかもしれないわね」

アスカ「(どうしたらいい、考えなくちゃ)」

ミサト「そんなに深刻そうな顔しないで。アスカがシンちゃんを変えたのよ」

アスカ「わ、私が?」

ミサト「そ。女で男にしてあげたんでしょ。もっと信じて待ってあげなさい」

610 : 以下、名... - 2017/03/08 00:30:57.06 BconFYhG0 511/697

ミサト「――そうだ。リツコが近くにいるなら、レイと行動を共にすることが多くなるかもしれないわね」

アスカ「ファースト?」

ミサト「ええ。元々、リツコの実験に協力してたのは、レイだから。そこにシンジくんが加わるってことになるんじゃないかしら」

アスカ「ファースト……が……」


レイ『言う必要ないもの』


アスカ「……っ!」ギリッ

ミサト「レイに色々聞いてみたら? 近況わかること増えると思うわよ」

アスカ「……えぇ、わかったわ。そうする」

611 : 以下、名... - 2017/03/08 00:52:28.03 BconFYhG0 512/697

- リツコ宅 -

シンジ「(どうしようかな、これから。ここも監視されてる可能性があるけど、リツコさんがいるからなぁ)」



ガチャ



シンジ「あ、おかえり――」

レイ「お邪魔します」

シンジ「あ、綾波?」

リツコ「驚いた?」

シンジ「り、リツコさん。どうして綾波が?」

リツコ「たまにこうして連れて帰ってきてるのよ」

シンジ「(嘘だっ! そんなことあるはずない!)」

リツコ「レイ、いつも通りラクにしていいわよ」

レイ「はい」

シンジ「……わかりました。今日は泊まるんですか?」

リツコ「そうね。レイはシンジくんの向かいの部屋を使って」

シンジ「(そこって間取り的にアスカがいた部屋と同じ)」

リツコ「それじゃ、シンジくん、今日の分のお薬」スッ

シンジ「これって、毎日飲むんですか?」

リツコ「常服する薬はなんでもそうだけど、最初から多めに飲ませたりはしないわ。徐々に体を慣らしていくの」

シンジ「…………」

リツコ「アスカには、同じ薬を明日、渡すわよ」

シンジ「本当に気分抑える薬ですか?」

リツコ「そうよ。シンジくんが自力でシンクロ率を操作できるなら飲む必要はないけど」

シンジ「……わかりました」

612 : 以下、名... - 2017/03/08 01:08:15.06 BconFYhG0 513/697

- 翌日 第三新東京市立第壱中学校 ホームルーム -

ガラガラ

レイ「…………」

アスカ「ファースト! 待ってたわよ!」

レイ「なに?」

アスカ「……ふぅ。平常心、平常心。シンジのこと考えれば大丈夫」

レイ「…………」

アスカ「昨日、ミサトから聞いたの。赤木博士とシンジ一緒にいること多くなったって」

レイ「えぇ」

アスカ「それで、あんたも一緒にいること増えるって本当?」

レイ「そう命令されてるわ」

アスカ「そっか。命令じゃ仕方ないわよね。シンジの近況のこと、できるだけ教えてほしいんだけど」

レイ「昨日、赤木博士のマンションで一緒にいたわ」

アスカ「……え?」

レイ「碇くんの向かいの部屋で私は寝た」

アスカ「な、なに言って……」

レイ「これから、そうなることが増えるかもしれないわ」

アスカ「…………」

レイ「近況はこれぐらい。席にいっていい?」

アスカ「そこ、私の場所よ」

レイ「……私は、命令されてる」

アスカ「そう、命令じゃ、しかたないわね」

レイ「だけど、碇くんのことを考えると、前より、胸があたたかい」

アスカ「……っ!」

レイ「もう、席にいくわ」

613 : 以下、名... - 2017/03/08 01:19:42.98 BconFYhG0 514/697

トウジ「お、おい。今の話聞こえたか?」

ケンスケ「聞こえてしまった」

ヒカリ「ど、どうしよう……」

マナ「アスカってもしかして合気道とかやってるのかな」

ヒカリ「マナ、いきなりなに?」

マナ「昨日、男子でも引き剥がせなかったことあったでしょ。コツだって言ってたけど、もしかして重心じゃないかって思って」

トウジ「それよりも今は血の雨がふる心配をやな」

マナ「違うの。アスカが暴れた時、止める方法は必要だよ」

ケンスケ「たしかにそうかもな。でも、ドイツで合気道なんか教わるのか?」

マナ「アスカってエリートなんでしょ? 私から見てもよく足あがってるし、なにか格闘技やってたのは間違いないと思うんだけど」

トウジ「私から見てもって、マナもなんかやっとったんか?」

マナ「あっ! いや、あの、ダンスをすこし」

ヒカリ「碇くん、今日もこないのかな。アスカ、碇くんと話をすれば我慢できると思うんだけど」

ケンスケ「そうかぁ? シンジがいた時も暴走気味なとこあったけど」

ヒカリ「見れば安心できることってあると思うし……」

マナ「見たから不安になるってこともあるけどね……」




トウジ&ケンスケ&ヒカリ&マナ「…………はぁ」


続き
シンジ「僕が?」【4】

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