関連
男「ダクソ学園高等部?」【前編】

328 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/03 23:47:03.86 NUsVZ0Yl0 83/173

side story

  『恋する、ミルドレット』


ミルドレット「――ね、ねぇクラちゃん? こっちとこっち……、どっちのずた袋のほうが可愛いかな?」ソワソワ

クラーナ「はぁ?? ついに頭イカれたのか」

ミルドレット「こ、これは真剣なのっ! ねぇっ! どっちが可愛い??」ズイッ

クラーナ「い、いや、どっちが……って言われても……。違いがわからんのだが……」

ミルドレット「もうっ、冗談はいいから。クラちゃんだって、ずた袋の一枚や二枚持ってるでしょ?」

クラーナ「お前と一緒にするなよ。しばき倒すぞ」

ミルドレット「あーどうしよう……! もう、帰りのHR始まっちゃうよぉ……」ソワソワ

クラーナ「はぁ……急にどうした? なにかあったのか?」

ミルドレット「ダメッ!! いくらクラちゃんでもこればっかりは言えないわっ!」ノーッ‼

クラーナ「あぁそうか。じゃ、がんばれ」フイッ

ミルドレット「ちょ、ちょっとぐらい食い下がってくれてもいいじゃない!?」

クラーナ「興味ないな」

ミルドレット「じ、実はなんだけどねっ! 私、見つけちゃったかもしれないの……。私の……運命の――」


キーンコーンカーンコーン


ミルドレット「――って! は、早くいかなきゃ! じゃ、また後でね!」ダッシュ

クラーナ「はぁ……。まったく、なんなんだあいつは……――」




ミルドレット「――…………はぁぁあああ……」ズーン

クラーナ「………………」

ミルドレット「あぁーあ……。…………はぁ…………」

クラーナ「――それじゃ、私は帰るぞ」スクッ

ミルドレット「待ってよっ!」ガシッ

クラーナ「………………」ウンザリ…

ミルドレット「そんなあからさまに面倒くさそうな顔しないでよっ!?」

331 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/06 23:04:14.81 9aQbvvFo0 84/173

クラーナ「――運命の人を見つけた? へえ、よかったじゃないか」

ミルドレット「えへへへへへ…………。……まぁ、帰りのHRには居なかったんだけど……」

クラーナ「しかし、どうしてまた急に……」

ミルドレット「前言ってたことが本当にあったのっ!」

クラーナ「ほう」

ミルドレット「そう、それは沼地ですらも輝く、七色石のような…………」キラキラ

クラーナ「輝く……――?」ハッ



「――――わかりやすいように、名前とか光ってるんじゃないか?」


ピカー

「――――……なんで名前が……――」



クラーナ「………………あー…………」ボソッ

ミルドレット「はぁーっ、運命って本当にあるのねっ!」

クラーナ「あ、あぁ……、えっと……。み、ミルドレット? その、言い辛いんだが……――」

ミルドレット「もう、合コンもお酒もやめるっ! もっといいずた袋も買って……。あぁ、包丁も毎日研がないとっ! あとは……あとは……――」ホワァ…

クラーナ「………………」

クラーナ「…………いや、このままにしといた方がおとなしくなるか……」ボソッ

ミルドレット「――えっ? 何か言った?」

クラーナ「いや、私は応援すると言ったのさ。きっとお前が頑張れば、それが誰だかは知らんが、そいつもきっと振り向いてくれるだろ」グッ

ミルドレット「あ、うん。ありがとう……。――……い、いつもなら軽く流すのに、なんでか妙に乗り気じゃない? クラちゃん……」

クラーナ「そんなことはない。これで私への被害が減るだなんて、ちっとも思っちゃいない」

ミルドレット「そ、そう……? な、ならいいんだけど」


ミルドレット「――よ、よーしっ! がんばるぞー!」ゴゴゴゴゴ…


クラーナ「…………すまんな、男くん。……犠牲になってくれ……――――」ボソッ

335 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/18 23:06:39.50 FRDJmD4J0 85/173


―――男の部屋

「――ックシュン!!」

「うぅん……、なんだ風邪か?」

「この世界って薬とかちゃんとあるんだろうか。……あ、魔法で直せるのかな」

「さて、明日は……。……そうだ、実戦の授業なんだっけ?」

「実戦って…………。そ、そんなマジな奴じゃないよね? 柔道とか、そんな感じだよね?」

「…………さ、最悪見学でいいかな……」

「――おっと、もうこんな時間か。……寝よう」

「…………あ、そうだ。ちゃんと鍵と……チェーンもかけて……」ガチャガチャ

「よし。寝るか……――」



チュンチュン…

ユサユサ…

「うぅん…………?」

ユサユサ…

「あぁ……はい。起きます……」ムニャムニャ

「――んー……っと」モソモソ

カチャカチャ

「えっ? コーヒー? ……あぁ、ミルク入れてほしいな」

「……うん。ありがとう」

「いやー、やっぱりコーヒーは淹れたてが………………………………」ハッ‼


ロザリア「………………」トントントン…


「……あっ…………あれ…………?」

(おかしいな……。……台所に立ってるのは……ロザリアさん? ……まだ夢を見てるんだろうか)

「あ、あの……ロザリア……さん? ……ね、ねぇ、なんでここに――」

ロザリア「………………?」クルッ ギラッ

「――あっ、えっと……なんでも……ないです」

336 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/18 23:32:47.61 FRDJmD4J0 86/173


ロザリア「………………」ニコッ

トントントントン…

(し、しまった……。包丁持って振り返られたから、なんかつい日和ってしまった……)

(ダメだ。ちゃんと言わないと……。ちゃんと…………――)



「――あ、おいしい」

ロザリア「………………!」

「ロザリアさん料理もできるんだ。すごいね!」ニコッ

ロザリア「………………」カァアア…

「……と、ところで……その……――」

ロザリア「………………」スッ

「――あ、どこに……」

ロザリア「………………」フリフリ

「あぁ、うん。それじゃ、学校で…………」

カチャ…カチャン

ギィィ…バタン

ガチャリ


「――……あれ?」

「…………鍵が……閉まってる……」

「じ、自分のは……あるよね」

「………………」

「こ、これも奇跡ってやつなのか……?」

「い、いやでも、こんな奇跡あったら不法侵入し放題じゃないか……」

「………………」

「こ、このままじゃダメだ……。今日、ロザリアさんとちゃんと話さないと……」

「まぁ、でも……――」


「ご飯はおいしいな……」

337 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/19 23:24:43.14 yh5DPJE20 87/173


―――学校

ガララッ

アオニート「――おいーっす」

「おはよー」

ヨルシカ「あ、おはようございます」

ロザリア「………………!」

「あっ……、ろ、ロザリアさん。……おはよう」オドオド

ヨルシカ「………………?」

アオニート「――いやーっ、しかしよぉ! 今日は実戦の授業だぜっ!? やっとだぜ……」

「あー、アオニートくんは楽しみにしてたんだ」

アオニート「あったりめぇよ。ふっふっふ、見てろよ男。ここからファランの不死隊で活躍するであろう、俺の伝説が始まるんだ……」キラキラ

「へぇー……。がんばってね」

アオニート「……なんか、少しも気持ちが伝わってこないんだが……」

「そ、そんなことはないよ!」

キーンコーンカーンコーン

「――あっ、ほらチャイムなったよ。席につかないと……」

アオニート「……そういや、ミルドレット先生がいつも参加してる合コンをキャンセルしたって……さっきだれか言ってたなぁ」

「へぇ……?」

アオニート「――まぁ、そんなこと、都市伝説級にあり得ない――」

ザワザワ…

ガララッ

ピタッ


ミルドレット「みんな、おはようございます。……うん、今日もみんな居るみたいで、先生安心したわ」ニコッ


アオニート「――はず……なんだが……」アゼン…

「あれ……。なんだかいつもと雰囲気が違うね……」

ミルドレット「それでは、出席をとります。今日は実戦の授業だから……もし具合が悪い人とか居たら、先に言ってね?」

アオニート「……これは……、いったい……なにがあったっていうんだ…………っ!!?」ゴクリ…

「そ、そんな大げさな……」アハハ…

338 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/22 17:48:10.24 Fcd++89L0 88/173


ミルドレット「――はい、みんな出席ですね。それでは、これで朝のHRを終わりにします」

キリツ、キヲツケ。

レイ。

ザワザワ…。

アオニート「おぉおおお…………。いまだかつて、これほど安全なHRがあっただろうか……!?」

「そ、そうだね……。なんか平和過ぎて、みんな戸惑ってるね……」

アオニート「…………まさか、男ができたとかっ!?」ハッ‼

「あぁー……。ま、まぁそれなら、みんな平和で……――」


ミルドレット「――あっ、男くーん」


「」


ミルドレット「……ごめんね、プリント運ぶの手伝ってくれない?」ニッコリ


「えっ。な、なんでおれ……――」

アオニート「………………」

「ち、違うでしょ? ね、ねぇ、なんか言ってよアオニート君……!」

アオニート「……俺、先にグラウンド行ってるから……」

「ちょっ――」


ミルドレット「お・と・こ・くん? ……聞こえたかな?」


「あっ、はい。手伝いますっ!」ビシッ‼


――――――

――――

――


ミルドレット「――うん、ここでいいかな。……手伝ってくれてありがとうね?」ニコッ

「あ、あぁ……いえ……これぐらいは」

(あれ、なんだ……。ただ本当に手伝ってほしかっただけなのかな……? まぁ、なんで俺が選ばれたのかがわからないけど……)

339 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/22 18:03:31.68 Fcd++89L0 89/173


ミルドレット「それじゃ、授業に遅れちゃいけないし。もう行っていいよ」

「あっ、わかりました……」

(これで終わりか、よかった……。……それじゃ、誰か別の人を見つけたってことかな? どんな人なんだろう……気になる)

「…………あ、あの~……ミルドレット先生?」

ミルドレット「ん? どうかしたの?」

「いや、大したことじゃないんですけど……。何か、いいこととかあったんですか?」

ミルドレット「え、えっ? どうして……?」

「うーん……。なんていえばいいんだろう……」

「なんか急に、親しみやすくなった気がして……あはは」

ミルドレット「……っ!! ――あ、あぁ~……ちょっとね……」

ミルドレット「あ、あの……えっと。ち、ちなみに……男くんは、今の先生のほうが……良い?」

「えっ?」

(――あぁ、相手の人のタイプになれるようにってことかな? ……まぁ、前のときよりは……」

「そうですねっ。そう思います」ニコッ

ミルドレット「――――っ!」ドキッ

「それじゃ、これで失礼しまーす」

ミルドレット「あ、あぁ、うん……。気を付けて……ね」


ガララッ

ピシャン


ミルドレット「………………………………」

クラーナ「――ん? どうしたんだ、そんな間の抜けた顔して……」


ミルドレット「……あっ、クラーナ先生。おはようございます……」

クラーナ「」


クラーナ「………………………………おはよう……」

クラーナ「あぁ……っと…………………………。……きょうも、がんばろうな」グッ

ミルドレット「え? あぁ、うん……?」


340 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/22 18:21:40.08 Fcd++89L0 90/173


「――さぁって……気を取り直して……」

「はぁ……しかし、授業怖いなぁ……。ケガとかしないよね……」

「ロザリアさんに奇跡教えてもらえばよかったなぁ……。――って、そうだ。ロザリアさんに今日の事聞かなきゃいけないし……」ブツブツ


「――やぁっ!」


「うわぁっ!」

「あははっ、どうしたんだい? なにか考え事?」

「あー……うん、そんなとこ。えぇっと君は確か、昨日の…………――」


「――エンジェル?」

ヘイゼル「ヘイゼルだよ。……まぁ、悪い気はしないけど」アハハ


ヘイゼル「……あっ、もしかして今のは、男くん風の口説き文句だったりしたのかな?」

「い、いやっ! そんなつもりじゃなかったけど……」アセアセ

ヘイゼル「あははっ、冗談だよ。いやー、やっぱ面白いね。男くんは」

「あ、あはは……」

「……って、その……ヘイゼルさんは――」

ヘイゼル「呼び捨てでいいよっ。なんかむずかゆいし……」

「じゃ、じゃあヘイゼルは……。えぇっと………………」

ヘイゼル「――敵なんじゃないか……って?」

「……うん。……俺に何かしにきた……ってわけじゃないよね?」

ヘイゼル「……さぁ? どうだろうね……?」ニコッ

「………………」ゴクッ


ヘイゼル「……なーんてねっ! 大丈夫さ、心配しないでっ。あたしはただ、シーリスちゃんが面白くて側にいるだけだからさ」


「そうなの……?」

ヘイゼル「うんっ。いやー、おかげで毎日笑わせてもらってるよー」アハハッ

(なんか、すごい陽気な人だな。一緒に居ると、こっちまで楽しくなりそうな……)

ヘイゼル「――おっと、そうだそうだ。ちょっと男くんに訪ねたいことがあるんだったよ」ポンッ

「訪ねたいこと……?」

341 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/22 18:37:53.82 Fcd++89L0 91/173


ヘイゼル「うんっ。――カークくんと同じクラスだったよね?」

「カーク……。――あぁ、トゲトゲの」

ヘイゼル「そうそうっ! ちょっと探しててね。どこに居るか知らない?」

「あー、俺もいま先生に頼まれごとをやってたから……。――仲がいいの?」

ヘイゼル「えっ? うーん、仲が良いっていうか……。……同じクラブに入ってるんだよね。先生からの伝言を伝えようと思ったんだけど……」

「へぇー……。どんなクラブなの??」

ヘイゼル「ふふーん……ひ・み・つ。……よく言うでしょ? 女は秘密が多い方が綺麗になれるって」

「ははっ、そっか。……じゃ、カークくんに聞いてみるよ」

ヘイゼル「…………まぁ、教えてくれないと思うけどね……」ボソッ

「えっ?」

ヘイゼル「――ううんっ、何でもない。……じゃ、カークくんは何とか探してみるよ!」

「あ、あぁうん。力になれなくてごめんね」

ヘイゼル「気にしないでよっ」

ヘイゼル「……キミはいい人だね」

「そんなことないよ。……もう、いろいろと精いっぱいで、逆に落ち着いてきたぐらいだね」

ヘイゼル「あははっ」

ヘイゼル「…………アタシは、個人的にはキミの事……結構気に入ってるんだよね」

「……それは……どういう?」

ヘイゼル「――まぁ、がんばってねってことさっ! 応援してるからっ。……それじゃ、またねっ!」ダッシュ

「あ、あぁうん……じゃあね」

「……なんか、嵐みたいな人だったなぁ……――」






「――ってか、あの頭はなんなんだ……。突っ込んじゃいけないのか……?」


――――――

――――

――

343 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/23 23:13:55.42 5VmSTupk0 92/173


―――校庭

「――ってことで、安心したよ……」

アオニート「ふーん……。他にねぇ……」ウーン…

「と、ところで……」キョロキョロ…

ガチャガチャ

キンキンッ

「な、なんかみんな物騒じゃない……? あ、危ないよ……ねぇ?」

アオニート「はぁ? 危ないって、授業だろ? なに言ってんだよ」

「あー、そうなんだ……。そうだよね……」


キーンコーンカーンコーン


アオニート「――よーっし、ついにこの時間がやってきたぜ……。ふふふっ……」

「………………」

「――あれ? ……ヨルシカさんとロザリアさんは見学なの?」

ヨルシカ「はい。ちょっと、私たちは……。あまりこういうのは得意ではないので」

ロザリア「………………」

「そっか……。……俺も――」

ヨルシカ「――私、男さんのこと応援してますからっ! 頑張ってくださいねっ?」ニコッ

ロザリア「………………っ!」

「――あぁ……うん。がんばる」グッ


「よぉおおっし、皆の者……集まれぃ!」


「……はぁ…………」トボトボ…

アオニート「おっ、あれはバンホルト先生じゃないか? 学はないけど、武はかなり凄いらしいぜ」

「へぇ」

アオニート「なんだよ元気ねぇな……。あぁ、そうか。確かにこの授業は得意そうじゃないしな」

「ははっ、まぁね」

アオニート「ふっふっふ……。これでやっと、俺のすごいところを見せられるってわけだ……」ニヤリ

「ははは…………」

344 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/23 23:45:06.72 5VmSTupk0 93/173

バンホルト「えぇー、今日のこの授業は、このバンホルトが受け持つことになったっ!! よろしく頼むぞっ!」

ハーイ

バンホルト「――うむ、いい返事だ。しかし、某も君たちを一人ひとり見てあげたいところだが、残念ながら体が足らぬ」

バンホルト「そこでっ! 三年生の中から、某が選りすぐった者たちに協力してもらうことにした! 皆の者、遠慮なぞせずじっくりと見てもらうといい」


キアラン「風紀委員のキアランだ。よろしく頼む」

シバ「同じく、風紀委員のシバだ」

ロートレク「はぁ……ロートレクだ。まったく、面倒くさい……」


バンホルト「よぉし! それでは、存分に鍛錬と参ろうではないか! この蒼月の剣にかけて、真面目に取り組むのだぞ!」


アオニート「うおぉおおお! 盛り上がってきたぜぇえええ!」

「………………」

アオニート「うおぉおおおおお!!」

ガンッ‼‼

アオニート「――がっ……!」

ジークリンデ「なーに叫んでんのよ、うるさいわね……。男くんが困ってるでしょ?」

「あっ、ジークリンデさん。……ジークリンデさんもやるの?」

ジークリンデ「まぁね。奇跡でもいいんだけど、やっぱり剣も使えないとね」スラッ

「そっか……。すごいね」

ジークリンデ「そ、そうかな? えへへ、でも――」

ガンッ‼‼

ジークリンデ「――ぐっ……!」


アオニート「おうおうおうおうおう、こんのクソ玉ねぎ野郎がぁ……!! いい機会だ。ここでボッコボコにしてやるよ……」ゴゴゴゴゴ…

ジークリンデ「へぇ……っ!!? 受けて立とうじゃない。……後悔するんじゃないわよっ!!」

ガンガンッ‼

キンッ‼


「……あー…………」

「――おや、君はもしかして男くんかな?」

347 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/25 23:58:33.36 YIbnwHw+0 94/173

「は、はいっ! え、えっと……もしかして……キアラン先輩……ですか?」

キアラン「そうだ。直接話すのは初めましてになるかな? グウィンドリンのやつから話は聞いているよ」

「自分も、入学式の時には助けてもらいまして……。ありがとうございます」

キアラン「ん? あぁ、そうか……。それで、グウィンドリンを行かせたんだったな」

「そうですね。それから、グウィンドリン先輩にお世話になってます」

キアラン「そうか。まぁ、それも縁なんだろう」

キアラン「――そうだ。せっかくだし、この授業。私が男くんのことを見ようか」

「えっ? あ、あの……その……実は俺は……」オドオド

キアラン「……? ――あぁ、もしかして武器を持ってないとかかい?」

「ま、まぁ、そうといいますか……そういう問題でもないといいますか…………」

キアラン「ははっ、まぁ気にすることはないよ。実際、そういう一年生もたまには居るからね」

キアラン「――そうだ!」ゴソゴソ

「えっ?」

キアラン「……これを、君に上げよう」スッ

ギラッ

「あ、あの、これは……?」

キアラン「私が昔使っていた短剣だ。今はもう使わないし、ちょうど学校に寄付でもしようかと思っていたんだが。……ちょうどよかった。もし、迷惑じゃなければ受け取ってくれないか?」

「は、はい……。なら……」スッ

キアラン「これなら、きっと初心者にも使いやすいと思う。……どうかな?」

「そ、そうですね……」

キアラン「――よし、それじゃさっそくやろうか。……まずはその武器になれるとこから始めようか」

「は、はいっ! がんばります……!」



キアラン「――おぉ、なかなか筋がいいじゃないか。これはグウィンドリンが目をかけるのもわかるな」

「あ、あはは……。ありがとうございます……」ハァハァ…

キアラン「よーし、じゃあ次は……――」

「――い、委員長っ!! すいません緊急で……。ちょっといいですかっ?」

キアラン「なに? ……わかった。――悪いな男くん。すこし急用ができた……。また、機会があれば続きを教えるよ」

「わ、わかりました。またお願いします!」

351 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/26 22:13:58.45 cs2sQTWi0 95/173

「緊急な事ってなんだろう? なんかあったのかな……」

「まぁ、俺には関係ないか」

「しかし、これ……もらっちゃったけど……。危ないよな……。いやまぁ、他の皆はもっと危ないもん持ってるんだけど……」

チクッ

「……いっ! ――……え?」

カーク「――あぁ、ごめんね男くん。僕の不注意で……」ギロッ

「あ、うん……。き、気を付けてね……?」

(わ、わざと……だよね?? あれ、俺なんか嫌われることしたかな……)

カーク「……そうだ。いい機会だし、ちょっと手合わせしようよ」スッ

「あ、えっと……。お、俺は……その……あまり得意じゃなくて……さ。できれば、別の人と――」

カーク「ほら、構えなよ」

「…………ほ、本気……?」ビクビク

カーク「そっちから来ないなら……、こっちから行くよッ!」ブンッ

「――うわぁっ!!?」

スカッ

「いっ……」

(よ、よかった、かすっただけか……。…………というか、いま本気だったよね……?)

(あんなトゲトゲの剣で斬られたら…………。――い、いや、考えたくない)

カーク「まだまだっ!!」ブンッ

「――っ!!」サッ

(だ、ダメだ……。に、逃げないと……!)

ドンッ

「えっ?」

(しまった! 誰かにぶつかった……?)

カーク「………………っ!」

「――ろ、ロザリアさんっ!? な、なんでここに……」

352 : ベルトコンベア ◇EwTy/47GRIPz - 2016/10/27 21:32:39.29 mLB5vGbk0 96/173


ロザリア「………………っ」ホワァ

「えっ……。……ロザリアさん……わざわざ傷を治しに……?」

カーク「…………お前……ばかり……っ!!」

「――えっ?」

カーク「…………ロザリアさん……どいてくれるかな。…………これは、僕と男くんとの問題なんだ」

(え、えぇええっ?? いったい何のことかわからない……)

ロザリア「………………っ」フルフルッ

カーク「…………っ!」

カーク「――わかったよ……。そこまで言うなら……もうっ――!!」



ガッシャーン‼‼

キャーキャー
ワーッ



「……えっ? な、なんだ……??」

「に、逃げろーッ!!」



「 ダークレイスだッ!! 」



キャーッ‼
ニゲロー‼


「えっ? ……えっ?? い、いったい何が……??」

アオニート「――男っ!! なにやってんだ、早く逃げるぞッ!!」

ジークリンデ「男くんッ! 早くっ!!」

「う、うんわかった!!」ダッシュ



353 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/27 21:49:56.95 mLB5vGbk0 97/173

ロートレク「――おいおいおいおい……。どうなってんだよこれは……」

バンホルト「おぉ、これも三年生が用意したイベントか?」

ロートレク「そんなわけがないだろバカか。……そういえば、たしかにダークレイス注意報はでてたが……」

バンホルト「えっ、い、いま先生に向かってバカって……――」

シバ「なぜここまで入られるまで気が付かなかった……? 門番のグンダさんはどうしたというのだ……」

ロートレク「とりあえず、考えてる暇はない。面倒くさいが、一年生が居るんだ。……やるぞ!」

シバ「仕方がないな――!」


キンッ‼

ザシュ‼

ワー‼
キャー‼



「――はぁ……はぁ……。あ、アオニートくん!? こ、これはいったい……?」

アオニート「はぁ!? ……あぁもうっ、説明してるヒマなんかねぇよッ! さっさと、校舎の中に逃げるぞッ!」

ジークリンデ「こ、こんなことってあり得るのっ!? ま、まさか、ダークレイスが……」

アオニート「俺が知るかよッ!」


ヨルシカ「――ロザリアさんっ!! ロザリアさん、早くッ!!」


「――えっ!?」バッ


ロザリア「………………!」ガタガタ…

(ろ、ロザリアさんが座り込んでる……。立てないのかっ? ――って、あの黒いのが……!)

ヨルシカ「ロザリアさんッ!!」

(ロザリアさんが……やられちゃう……っ! ……俺のケガを治しに来てくれたから……!?)

「だ、誰か助けに――っ」

カーク「あっ…………あ……」ガタガタ…

「――あぁ、もうっ!!!」ダッ‼


「うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」

356 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/27 22:13:21.35 mLB5vGbk0 98/173


アオニート「――男っ!?」

(――もう、剣が振り下ろされちゃう……!! ロザリアさん……っ!!!)


ロザリア「………………」ガタガタ

ダークレイス「………………」スッ


ダークレイス「――――ッ!」ブンッ‼

ロザリア「…………っ!!」


「――ォオオオオオオオッッ!!」グッ‼


バァンッ‼


(――……なんだ? 俺は、いま……なにをしたんだ……?)


ジークリンデ「……す、すごい……っ!!」

アオニート「あの野郎……。パリィしやがった……!?」


キアラン「――男くんッ!! 今がチャンスだッ!!」


「――――ッ!」ギラッ


ザシュッ‼


ドサッ


「……な、なんだ……体が……勝手に……?」

(……まるでこの動きを、俺の体が覚えてるみたいだ……)

ダークレイス「………………っ」ギロッ

「あ、あ……他にもいっぱい……」

キアラン「……いけないっ! ――男くんっ、早くそこの女の子を連れてこっちへ来るんだっ!!」

「は、はい……っ。――だ、ダメだ……。今頃震えが……」ガタガタ…

キアラン「――くっ! ……間に合うか……っ?」ダッ‼

ダークレイス「――――――ッ!」

357 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/27 22:34:52.24 mLB5vGbk0 99/173


(さ、さっきと同じことをすれば……! ――い、いや、正直自分でもどうやってたのかわからない……)

ギュッ

ロザリア「………………」ガタガタ…

「ロザリアさん……。――大丈夫、俺が守るから!」グッ‼

ロザリア「………………っ!」

(――とは、言っても……)


ガシャガシャ

ワラワラ…

ダークレイス「――――――ッ」スッ

「……もう、ダメか……」





ザシュッ‼




キアラン「…………ッ!」

ジークリンデ「男くんっ!!」

ヨルシカ「男さん……っ!」

アオニート「男ォッ!!」




「…………っ! ――……あ、あれ? 斬られて……ないっ??」



アルトリウス「――もう大丈夫。……男くん、ボクは君と知り合うことができて、光栄に思う」



「あ、アルトリウス先輩……?」

アルトリウス「自らの危険を顧みず、他の誰かを救うということは、誰にでもできることじゃない。……心から、君の事を尊敬する」

「あ、ありがとう……ござい……――せ、先輩ッ! 後ろにッ!!」

358 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/27 22:52:35.46 mLB5vGbk0 100/173


ダークレイス「………………ッ!」ヨロ…

ドサッ‼


キアラン「――まったく……。おいしいところを持っていくじゃないか」

アルトリウス「ははっ、まぁね」

キアラン「しかしよかった……。ケガは?」

「だ、大丈夫です……」

キアラン「……それにしても、まだ教えていなかったのに、よくパリィできたな」

「ぱ、ぱりぃ……? お、俺も、もう無我夢中で……」

キアラン「まぁ、何はともあれよかった……。……その指輪は、確かにふさわしい人へと渡ったようだ」

「えっ……?」

アルトリウス「キアランっ! 来るよ!」スッ

キアラン「あぁ、わかってる!」

アルトリウス「男くんは少しジッとしててくれ。……安全はボク達が確保しよう」

キアラン「…………しかし、数が多いな……。なんだってこんな……」

アルトリウス「…………うん? ――男くん、その指輪……見せてもらってもいいかな?」

「えっ? あ、こ、コレですか?」

アルトリウス「いや、スズメバチの指輪じゃない。もう一つの……」

「あ、どうぞ……」

アルトリウス「………………これは……。男くん、これは君のかい?」

「い、いや……それはアオニートくんに……。――と、いうかアオニートくんも、えっと……パッチって人に買わされたみたいなんですけど……」

アルトリウス「なるほど……。これ、もらってもいいかな?」

「いいですけど……」

アルトリウス「……これはどうやらダークレイスを引き付けてしまうみたいだ。……男くん、つける指輪は選んだ方がいいよ?」

「そ、そんな指輪だったんですかっ!?」

アルトリウス「よし……。――さぁ、そこの子を連れて早くみんなのところにっ!」

「――はいっ! ……行こう、ロザリアさんっ」ガシッ

ロザリア「………………っ!」コクンッ


359 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/27 23:18:48.20 mLB5vGbk0 101/173



キアラン「――懐かしいな、お前とこうして背中を預けるのも」

アルトリウス「そうだね……。それにしても、色々と不運が重なるね……」

キアラン「シースの件か? 気負わなくていい。あれはお前の責任じゃない」

アルトリウス「………………」

キアラン「それに、グウィンドリンのやつも行かせてる。大丈夫だ」

アルトリウス「……それもそうか――」


アルトリウス「――しっかし、今回のダークレイスは数が多いねぇ……。やれるかい、キアラン?」

キアラン「そうだな……。あと一体多かったら無理だったかもしれん」

アルトリウス「ははっ、そっか。……それじゃ、その一体はボクが倒そう」

キアラン「え? ……なんだ、お前もやるのか」ニヤッ

アルトリウス「はぁ、まったく……――」アハハ…

キンッ‼

ザシュ‼



ヨルシカ「――ロザリアさんっ! よかった……本当によかった……」

ヨルシカ「男さん、ありがとうございます……! ありがとうございます……!」ガシッ

「いや……。俺もアルトリウス先輩が居なかったらどうなってたか……」

ジークリンデ「男くんはすごいよっ! 胸を張っていいんだよ」

アオニート「……悔しいけどよ、俺は動けなかった……。とりあえず、お前が無事でよかったぜっ」

「みんな……。ありがとう!」


カーク「――……男くん」

「あ……。カークくん……」

カーク「…………僕の負けだ。……僕も……動けなかった……」

「あっ、いや……――」

(――……ダメだな。なんて言葉をかければいいのかわからない……)

カーク「…………ありがとう。…………でも、次こそは……負けない……」グスッ

「…………うんっ」

368 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/29 00:21:12.28 5CyXwB1E0 102/173


キンッ‼

グサッ‼

ザシュッ‼


アオニート「……それにしても……、アルトリウス先輩すげぇな……。いつものんびりしてると思ってたぜ……」

「俺も……。キアラン先輩もすごいね」

ジークリンデ「やっぱり、風紀委員長ともなると強くなくちゃいけないのね……」

「風紀委員……」

「――あれっ? あの、ロートレクって先輩とシバって先輩も風紀委員なんだよね?」

ヨルシカ「えぇ、あとあそこにいるのも風紀委員のルカティエル先輩です」

「……グウィンドリン先輩は?」

アオニート「あぁー、さっきキアラン先輩が話してたのをチラッと聞いたんだけどよ。なんか別の問題もあったらしいぜ」

「へぇー……。風紀委員って大変なんだね」

アオニート「まぁ、さすがに人が足りないらしくて……――」






アオニート「――生徒会も、一緒らしいけどな」





「――――えっ?」

「……あ、アオニートくん……。それってどういうことっ?」

アオニート「え? ……どういうことも何も、そのままの意味だろ」

「………………」

(……大丈夫……だよね? 生徒会って……。――で、でも、グウィンドリン先輩も知ってるはずだし……)

ヨルシカ「……どうかしたんですか? 顔色が悪いようですけど……」

「あぁ……っと……」

(……ここは、正直に言おう)

「じ、実は……――」

369 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/29 00:40:50.64 5CyXwB1E0 103/173


――

――――

――――――

アオニート「――はっ! お前、いくら何でもそれはないぜ」

「で、でも……」

アオニート「たしかに、入学式の時にそんな噂があるってことは言ったけどよ。……でもだからといって、生徒会がグウィンドリン先輩を狙う意味はないだろ?」

「…………まぁそうかな……」

ヨルシカ「私も……。男さんを疑うわけじゃないんですけど、もしかしたら別の会話を聞き間違えたのかも……?」

ジークリンデ「私はよくわからないけど……。生徒会のサリヴァーン先輩とマクダネル先輩は成績も先生からの評価も優秀って話だよね」

「やっぱ、そうなのかな……」

アオニート「そうそうっ! 男の聞き間違えだろっ、忘れろよ。――そんなことより、見ろよアレ! かっこいいよなぁ……!!」

「………………」




グイッ


「…………? ――あれ、オーベック君?」

オーベック「いまの話、……あの時のか?」

「……うん。はは……やっぱり、俺の聞き間違い――」

オーベック「確かめにいくか」

「えっ?」

オーベック「ただ、様子を見に行くだけだ。……まぁ、別に行かないのならそれでもいいが」

「…………一緒に行ってくれるの?」

オーベック「……俺も、生徒会にはまったく疑問を感じてないわけじゃないからな……」

オーベック「――で、どうするんだ?」

「……行こう。やっぱり、このモヤモヤをそのままにしておけないから……」

オーベック「場所ならわかる。着いてこい」

「う、うん……っ!」

アオニート「――ん? おい、男。どこ行くんだよ?」

「俺は……ちょっとトイレに。すぐ戻ってくるよ」

371 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/29 20:38:59.68 5CyXwB1E0 104/173


「――……ねぇ、聞いていいかな?」

オーベック「くだらない質問なら応えないぞ」

「……オーベック君ってさ。もしかして、生徒会のこと調べてたりするの?」

オーベック「…………なんの話だかわからんな」

「……そっか。まぁ、なんとなくそう思っただけなんだけどさ」

オーベック「ふん…………」

オーベック「――そうだな。……『言えない』。それが答えだ」

「……わかった」

オーベック「……そろそろ着くぞ」



「――あ、あれは……!?」

(で、でかい……竜みたいな……。本当にいるんだ……)

オーベック「シース。普段なら厳重に戸締りしたうえで飼育されていたもんだが……。どうやら、逃げ出したらしい」

オーベック「何者かの手によって……な」

「……昨日、アルトリウス先輩がオルニフェクス先輩と話してたのは、それだったのかな……」

オーベック「――居たぞ」



グウィンドリン「――クッ……。全部貴様らの仕業だったのか……!!」

サリヴァーン「はっはっは……。これで話を聞く気になりましたか? グウィンドリン……」


「――ぐ、グウィンドリン先輩……っ」

オーベック「よせっ! ……俺たちが出たところで、事態は何も変わらん」

オーベック「どうやったのかは知らんが、シースを手なずけてるようだ。……俺たちが敵う相手じゃない」

「……でもっ」

オーベック「様子を見るだけだと言っただろ。冷静になれ」

「………………」

「――俺は冷静だよ。……だから、オーベック君。戻って、誰かに知らせて」

オーベック「……お前はどうする――お、おいっ!」

373 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/29 21:29:37.62 5CyXwB1E0 105/173


「――グウィンドリン先輩っ!」

グウィンドリン「えっ!? お、男くんっ? ど、どうして……ここに……?」

サリヴァーン「……何者だ?」

マクダネル「ど、どうしようっ! み、見られちゃったよっ! さ、サリヴァーンくん……っ」

サリヴァーン「ふんっ。どちらにしろ、ここまで来たらもう引き下がれるわけもないでしょう」

サリヴァーン「それに、一人に見られたところで――」



サリヴァーン「――なかった事にすればいい」



「――ッ」ゾクッ

(ヤバい……。今まであった人の中でも……特に……)

「………………」チラッ

オーベック「…………チッ」ダッ

「――……え、えぇっと……、な、なにしてるのかなーって思ったんですけど……」

(……しまった、勢いで出ちゃったけど……俺、何もできないんじゃないのか……)

グウィンドリン「――お、おいっ!! 彼は関係ないだろう……!?」

サリヴァーン「ほう、そうですねぇ……。まぁ、それも貴方の答え次第といったとこでしょうか……」

グウィンドリン「……男くん。こっちに……っ」

「ご、ごめんなさい……。グウィンドリン先輩……」

グウィンドリン「いや、心強いよ。私も一人では、恐いから」

サリヴァーン「次期風紀委員長ともあろう貴方が、私たちの前では手も足も出ない。……滑稽ですね」

グウィンドリン「シースまで使っておいて何を……。ダークレイスも貴様たちの仕業だろう? 関係のない生徒まで巻き込むなんて……っ」

サリヴァーン「それもこれも……。すべてはエルドリッチ先輩のためっ! まぁ、グンダさんには悪かったとは思ってますよ」フフッ…

「エルドリッチ……? それって確か、生徒会長の……? ぐ、グウィンドリン先輩、何かしたんですか?」

グウィンドリン「………………い、いや。……まぁ…………うーん………………」

「………………?」


サリヴァーン「――さぁっ!! そろそろ答えていただきましょうか、グウィンドリンっ!!」


374 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/29 21:56:08.68 5CyXwB1E0 106/173


(いったいなんなんだ……!? ここまでの大事件を起こしてまで、グウィンドリン先輩にしてもらいたいことって……?)


マクダネル「も、もう観念したほうが……いいぞ……」


サリヴァーン「言えっ!! エルドリッチ先輩と…………――」





サリヴァーン「 ――付き合うとっ!! 」





「えっ」


グウィンドリン「だ、だから何度も言っているだろう……っ!!」





グウィンドリン「 私は、お・と・こ・だッ!! 」





「えっ」


グウィンドリン「えっ?」



サリヴァーン「 それでもいいッ!! 」



「えっ」


「………………えっ」


384 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/30 18:41:26.40 Q4shObMF0 107/173


サリヴァーン「半年前……。エルドリッチ先輩は貴様に告白して、フられた……」

グウィンドリン「当たり前だ」

サリヴァーン「そのショックで学校を休むようになり……。最近になると、ついに来なくなってしまった……!」

サリヴァーン「このままでは卒業も危うい……。――グウィンドリンッ! 貴様の責任は大きいぞッ!」

グウィンドリン「私の知ったことかッ!! だいたいメンタルが弱すぎるだろうッ!」

グウィンドリン「――というか、問題はそこじゃない! 最初に私の事を女だと勘違いしてたのは、百歩譲ってまだいいが……。なぜわかった時点で諦めないんだっ」

サリヴァーン「……エルドリッチ先輩は気付いたのですよ……。本当の愛の前には、性別など関係がないということにね……」

グウィンドリン「別にエルドリッチの愛とやらの考え方はどうでもいいっ。それを私に押し付けるなっ!」

グウィンドリン「――男くんもそう思うだろうっ?」

「へっ!? あ、あぁ……そう……ですね……。グウィンドリン先輩……」

グウィンドリン「………………な、なぁ、まさかとは思うんだが……。もしかして君も……」

「――いいいいやいやいやいやっ!! わかってましたよっ!? えぇ、わかってましたともっ!!」

グウィンドリン「そうだよなっ。よかった……」ホッ…

マクダネル「い、いや……ど、どう考えてもあいつも……」

「――と、とりあえずアレじゃないですかっ!? ぐ、グウィンドリン先輩が嫌がってるわけですからっ、諦めたほうがいいんじゃないですかっ?」

サリヴァーン「ふんっ、部外者は黙ってるがいい」

グウィンドリン「言ってしまえば、お前たちも部外者なわけだが」

グウィンドリン「――それに、こういう場合。エルドリッチ本人が来るのが筋ってものだろう。なんで貴様らが……。しかも、こんな事件まで起こすような真似を……」」

サリヴァーン「エルドリッチ先輩はシャイなんですよ」

「なんだそれ」

サリヴァーン「………………」ギロッ

「うっ……ごめんなさい」

サリヴァーン「ゴホン……。……なぜ、こんな計画を立てたか……ですって……? それは……――」


サリヴァーン「――どんな手段を用いても、お前をエルドリッチ先輩のとこへ連れていくためですよ」


グウィンドリン「――っ!」

サリヴァーン「ふはははっ!! 三年の風紀委員はダークレイスの事で手がいっぱいでしょう? ……どうです、大人しくしてくれれば、優しくしてあげますよ?」

グウィンドリン「私を……甘く見るなよ……っ!!」

385 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/31 00:03:56.45 A3l71zdO0 108/173

今ダクソやってて分かったんだけど。

ロザリアはずっとフードみたいのつけてるんだろうなと思ってたら、よく見たら髪の毛なんだね。

あまり影響ないとは思うけど、俺はフード付きローブみたいのを着てる設定で書いてたから、変なところあっても脳内変換お願いします。

388 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/31 18:45:06.27 A3l71zdO0 109/173


グウィンドリン「――男くんはここに居て。……動かないでジッとしてるんだっ」

「は、はい……っ」


バシュッ‼

ガキィン‼


サリヴァーン「――さすが、と言ったところでしょうか」

グウィンドリン「そんな余裕ぶってて大丈夫なのか?」

サリヴァーン「えぇ……。――シースッ!!」

グウィンドリン「――――ッ!!」

ピィイイ‼

「な、なんだ……あれ……!? 結晶……?」

サリヴァーン「ほう……、避けましたか。……そうでなくては」

グウィンドリン「……くっ!」





サリヴァーン「――……もう、諦めたらどうです? グウィンドリン……。勝ち目がないのはわかっているでしょう?」

グウィンドリン「はぁ……はぁ……! まだ……ッ!」

マクダネル「さ、サリヴァーンくん……。そろそろ……」

サリヴァーン「……時間か。――さて、できるだけ傷つかないようにしたかったのですが……。私は、お前の力を少し見くびっていたようです」

グウィンドリン「はぁ……くっ……」ガクッ

サリヴァーン「……抵抗されても面倒ですからね。私の剣で終わらせてあげましょう」スッ

(マズい……。もう、グウィンドリン先輩は動けない……!)

サリヴァーン「……では――」ブンッ

「――グウィンドリン先輩っ!!」ダッ

グウィンドリン「……っ! だ、ダメだ男くん、こっちへ来ては……――っ!」


バァン…ッ‼


サリヴァーン「――――なっ!!?」

389 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/10/31 19:00:13.82 A3l71zdO0 110/173


グウィンドリン「お、男くん……!」

「で、できたっ!!」

「――うおぉおおおおッ!!」グッ

サリヴァーン「こ、この……っ!!」


ガキィンッ‼


「――は、弾かれた……っ!?」

サリヴァーン「………………っ!」ブンッ

ドゴッ‼

「――うぐっ!?」ドシャァ

グウィンドリン「男くんっ!!」

サリヴァーン「危なかった……。……一年生だと思って、油断してましたよ。まさか、この私がパリィされるなんてね……」

グウィンドリン「――ま、待ってくれ! 私が……、私が大人しくすればいいんだろうっ!? だから、彼は……!」

サリヴァーン「……もう遅い」

グウィンドリン「なっ……」

サリヴァーン「……少しでも危険は減らしたいものでね。……私がやるのはやめましょう。――……シース!」

シース「………………っ」キュィイン

サリヴァーン「それじゃあ……今度こそ、終わりです」

シース「………………ッ!!」ピィイイイ‼

グウィンドリン「く、くそっ……!!」



ビュンッ‼‼


ギャァアアアア‼



サリヴァーン「――な……に……!? シースッ!!」

グウィンドリン「……あ、あの矢は……!!」

グウィンドリン「ゴー先輩……っ!!」

397 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/01 23:13:14.02 022Z8xDJ0 111/173


――

――――

――――――

ゴー「――ふははっ、命中だ」

「すごいっす。おでには、ぜんぜん、みえないっす……」

ゴー「急がなくていい。いずれ、見えるようになる」

「しょうじん、するっす」

ゴー「――さて、あとは任せたぞ、アルトリウス……」




「――う、うぅん……」

グウィンドリン「目が覚めたか、男くんっ!」

「は、はい……。……って、なにがあったんですか……!?」

グウィンドリン「ゴー先輩の矢だ。間一髪だったよ……」

「矢……? で、でも……どこにも――」キョロキョロ

グウィンドリン「たぶん学校の屋上から射ったんだろう。……あの人はそういう人だ」

(学校の屋上……!? そんな距離から……)

グウィンドリン「今のうちに、逃げるぞっ!」

「は、はい――!」


サリヴァーン「――逃がすと思っているんですか?」


グウィンドリン「しつこい……ッ!!」

「グウィンドリン先輩っ!!」

グウィンドリン「私はいいっ! 先に行け!」

サリヴァーン「ふんっ、どちらも逃がしはしませんよっ!」

「――なっ、ぶ、分身した……っ!!?」

グウィンドリン「お、男くん――っ!!」


ザシュッ‼

398 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/01 23:39:36.67 022Z8xDJ0 112/173


サリヴァーン「……そ、そんな…………!!」

グウィンドリン「……あ、あなたは……」



アルトリウス「――ははっ、また間一髪だったね……。こんな機会、そうそうあってほしくはないんだけど……」

シフ「………………」グルル…



「アルトリウス先輩……!!」

サリヴァーン「――馬鹿なっ! 早すぎる……!! まだ、時間は……」

アルトリウス「……サリヴァーンくん。……君は優秀だ」

アルトリウス「――が、キアランを含む三年生風紀委員を集めてしまったのはマズかったね。……バンホルト先生にそう吹き込んだのは君だろう? ただ、そのおかげで、ボクが抜け出せてしまった」

アルトリウス「……もちろん、他にも実力のある生徒がいるしね」

サリヴァーン「…………く、クソッ……!!」

アルトリウス「――グウィンドリンくん。……悪かった、こうなったのはボクの責任でもある」

グウィンドリン「そ、そんなことはありません! シースが逃げられたのも、サリヴァーンが……――」

アルトリウス「いいや、ボクの管理が甘かったんだ……。――だから、ボクに責任を取らせてくれ」

アルトリウス「……男くん。ボクがここに来られたのも、君が友達を送ってくれたおかげだ。……まぁ、危ない事に手を出したのは、あまり褒められたことではないけど……ね」

「す、すいません……」

アルトリウス「――さぁ、コレを使って帰るんだ。グヴィネヴィアさんが待ってるよ」

グウィンドリン「ま、待ってくださいっ! 私も戦います!」

アルトリウス「……ごめんね。こう見えて、ボクは結構怒っているんだ。――……わかるね?」ゴゴゴゴゴ…

グウィンドリン「…………っ! ――わ、わかりました……」

グウィンドリン「――さぁ、男くん。……行こう」

「…………はい」

「――あ、アルトリウス先輩っ! ……頑張ってください」

アルトリウス「……あぁ、ありがとう」


シュイィイイン…


399 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/01 23:57:10.59 022Z8xDJ0 113/173


アルトリウス「……それにしても、流石はゴーだね。百発百中だ。――なぁ、シース」

シース「…………ッ」ビクゥッ‼

アルトリウス「あんなに優しく世話してあげたのに……、残念だよ」ゴゴゴゴ…

シース「………………」ガタガタガタガタッ

シフ「………………」グルル…

サリヴァーン「――ふ、ふんっ! た、確かに計画は失敗したが……、こちらはシースもいる! お、おぉおおお前など敵ではないッ!!」ガタガタ…

アルトリウス「………………」ゴゴゴゴゴ…

マクダネル「………………」ショワァ…

アルトリウス「……君たちが今回の黒幕ってことで、いいんだよね……?」ゴゴゴゴゴゴ…

サリヴァーン「………………あ……いや…………」ガタガタ…



アルトリウス「やるよ、シフ」




ギィヤァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア……――


――――――

――――

――







シュイィイイイン…

「――うわぁ……。なんだ、変な感じ……」

グヴィネヴィア「男くんっ! グウィンドリンっ!」ガシッ

「えっ……むぐっ!」

グウィンドリン「ね、姉さん……!」

グヴィネヴィア「心配したんですよっ! ――ケガはっ? どこか痛いところはっ?」アセアセ


406 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/02 22:53:01.38 h6nELIdV0 114/173


グウィンドリン「私は大丈夫だ。男くんのほうを見てやってくれ」

「い、いやっ! 俺も大丈――っつ……」

グウィンドリン「無理をするな。サリヴァーンにやられていただろう。……姉さん」

グヴィネヴィア「少し……ジッとしててくださいね」ホワァア…

アオニート「――男ッ! お前トイレに行ってたんじゃねぇのかよ……。……まったく、あまり心配させないでくれよ……」

「あはは、ごめん。でも、見過ごせなかったんだ」

ジークリンデ「本当……男くんはすごいな。尊敬する」

ヨルシカ「男さん……。さっきは疑って……ごめんなさい……」グスッ

「ううん。ヨルシカさんの反応は当たり前のことだよ。気にしないで」

ギュッ…

ロザリア「………………っ」ギュッ

「……ロザリアさんも、心配してくれたの? ……ありがとう」

ロザリア「………………」ポカポカ

「あはは……」

グヴィネヴィア「……男くんは、みんなに慕われてるんですね……」

「いい友達ばかりで……。俺にはもったいないくらいです」

グヴィネヴィア「――男くん。……改めて言わせてください」

グウィネヴィア「……ロザリアちゃんと、弟のことを助けてもらって……。……本当にありが――」



ドォオオオオオンッ‼



「――――っ!!? な、なんだ……!?」ビクゥッ



「 妹たちよぉおおおおッ!!! お兄ちゃんがいま助けに来たぞぉおおおおおおおおおッ!!! 」


グヴィネヴィア「あぁ…………」

グウィンドリン「あー…………」

ヨルシカ「あっ…………」

ロザリア「…………ぁ」

408 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/03 18:59:30.15 YliWUShl0 115/173


スモウ「ふぅんっ!! ……あの、お方は……」

ザシュッ‼

オーンスタイン「きたな……。グヴィネヴィアファンクラブ創設者にして、グヴィネヴィア様の実の兄……! その名も――」バリバリッ

ドォオオンッ‼

オーンスタイン「――――先輩がっ!!」

スモウ「もう、ダークレイスなんか、敵じゃ、ない」

オーンスタイン「あぁっ! こんな奴ら、さっさと片付けてやるぜっ!」





(でっかい鳥に乗ってる……。あの人は味方なんだよね……? 妹たちって……?)

アオニート「あっ……あれはっ!! ま、まさかお目にかかれるとは思わなかったぜ……!!」

「あ、アオニートくん。知ってるの?」

アオニート「もちろんだっ! あれは何を隠そう……グウィネヴィア先輩たちの――」



グヴィネヴィア「――知らない人です」キッパリ



アオニート「――あ……え……?」

グヴィネヴィア「……ですよね? グウィンドリン?」ゴゴゴゴ…

グウィンドリン「えっ……。あ、あぁ……うん……」

グヴィネヴィア「ねぇ? ヨルシカ?」ゴゴゴゴ…

ヨルシカ「は、はいっ! 知らない人ですっ!」

グヴィネヴィア「……ロザリアちゃんも……あの人なんて知らないよね……?」ゴゴゴゴ…

ロザリア「………………っ!」ブンブンッ

(す、すごいプレッシャーだ……)



「ウオォオオオオオオオッ!! こんな奴らさっさと蹴散らしてやるからなぁあああああッ!!」バリバリッ

ドォオオオオオンッ‼

417 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/05 19:46:34.61 kZrkiwSx0 116/173


――

――――

――――――

「――す、すごい……。あっというまに、ダークレイスが居なくなっちゃった……」

アオニート「まさに一騎当千って感じだったな……」


ドスゥン…


「――はっはっは! 探したぞ、可愛い妹たちよッ!!」

「おぉ、ヨルシカか。大きくなったなぁ……!」シミジミ…

ヨルシカ「………………」シラー

「んっ? そこに居るのはロザリアちゃんか? いやー、可愛くなっちゃって!」

ロザリア「………………」フイッ

「――おぉっ、グウィンドリンじゃないか! ……そうだっ、この後にでも男同士で温泉にでも行こうじゃないか! なぁっ?」

グウィンドリン「あ……いや………………」シラー

グヴィネヴィア「………………」ツカツカ… シュィイイン…

「……はっはっは。我が最愛の妹、グヴィネヴィアよ! お前も俺に会いたかったか! そうだっ、お前もこの後一緒に――ごふぅっ!!?」 ドゥンッ‼

グヴィネヴィア「………………」シュィイイン…

「――ちょ、ちょっ!! あ、あれかっ!? この前風呂を覗いたのをまだ――ぐはぁっ!!」 ドゥンッ‼


「な、なんだ……? グヴィネヴィア先輩を中心に何かが……?」

ジークリンデ「……あれは、神の怒りね。――……ほら、私や男くんも一回放つフォースをやったじゃない? あれの元になった術よ」

「へ、へぇ……」

ドゥンッ‼

アオニート「……しかし、すげぇな……。グヴィネヴィア先輩の神の怒りをあれだけ食らっても、まだ意識があるなんて……」

ドゥンッ‼

「――ぐ、グヴィネヴィア? こ、これ以上は本当に……――ごはぁっ!」 ドゥンッ‼

グヴィネヴィア「………………」シュィイイン…

グウィンドリン「――ね、姉さんっ!? さ、さすがに神の怒りをそこまでやったら……えっと……そこの人も……――」


グヴィネヴィア「 フォースです 」

418 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/05 20:05:24.01 kZrkiwSx0 117/173


グウィンドリン「えっ」

グヴィネヴィア「フォースです。――ねぇ、ヨルシカ?」ゴゴゴゴ…

ヨルシカ「は、はいっ!! フォースです!」

グウィンドリン「い、いや……さすがに……」


「………………」チーン…


グヴィネヴィア「…………はぁ。しょうがないですね……」

グヴィネヴィア「――シバさん、ロートレクさん?」

シバ「は、はいっ!」ビシッ

グヴィネヴィア「ここに、風紀の乱れの塊のような男が居ますよ。……あぁ、弟は少し怪我をしてまして……。お手を煩わせて、申し訳ないのですが……」

ロートレク「い、いや……しかし……」

グヴィネヴィア「…………そうですか」


グヴィネヴィア「――なら、私がやります」シュィイイン…


グウィンドリン「あ、ああっ!! もうケガは大丈夫だからっ! 私がっ、私がやるよっ!」

グヴィネヴィア「ダメですよグウィンドリン、無理しちゃ。…………終わらせますから」

シバ「――や、やりますっ! ここは風紀委員にお任せくださいっ!!」

ロートレク「おいっ! さっさと連れていくぞっ!」


ワーワー…――


「……怖い」

アオニート「奇遇だな。俺も同じ感情だよ」ガタガタ…

「……でも、これで終わったのかな」

アオニート「あぁ……たぶんな……――」

――――――

――――

――

「――あっ! ……さっきはありがとう。……助けを呼んできてくれて」

オーベック「……ふんっ。……貸しだからな」

「……うん、わかった――」ニコッ

427 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/06 18:21:23.75 EYWXY6vk0 118/173


―――次の日

アオニート「――しっかし、昨日はあんな大事件があったのに、学校あるなんてなぁ……」

「あはは……。まぁたしかに、休みでもよかったよね」

スタスタ…

「……あっ……」


シーリス「――あら、御機嫌よう。男くん」ニッコリ


「ご、ごきげんよう……?」

アオニート「ん? 知り合いか?」

「ま、まぁ……。そんなとこ……」

アオニート「お前って、地味に交友関係広いよな。色々と知らないにしては」

「あ、あはは……」

アオニート「――ま、なら俺は先に行ってるぞー」

「う、うん……」

シーリス「………………」ジーッ

「………………」

(な、なんだ……? ってか、同じ人……だよね?)

「えっと……。どうしたの?」

シーリス「………………」ジーッ

ヨルシカ「……ほらっ! シーリスさん?」

「あれ、ヨルシカさん……?」

ヨルシカ「おはようございます。……どうやら、シーリスさんが男くんに言いたいことがあるようで、私も付き添うことにしたんです」

「言いたいこと……?」

シーリス「そ、そんなこと言ってないでしょっ! いい加減な事言わないでっ!」キーッ‼

(……あ、さっきはアオニートくんが居たから、猫かぶってたのか……)

シーリス「………………とう……」

「へっ??」

シーリス「あ……アリガ……トウ……」

「…………はぁ?」

428 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/06 19:04:45.12 EYWXY6vk0 119/173


シーリス「――――ッ!! だ、だからっ、昨日ロザリアさんを救ってくれてありがとうって言ったんですっ!! 一回で聞き取れないんですかっ!?」

「あ、あぁ……そういう……」

シーリス「ふんっ! ――だからと言って、いい気にならないことですね! ……私だって、その場に居れば同じことをしてました。……それじゃ、それだけですので」プイッ

スタスタスタスタ…

「わ、わかっ――って、居なくなるの早いな……」

ヨルシカ「シーリスさんは、あぁ見えてすっごく感謝してるんですよ。……それはわかってあげてください」

「う、うん……」

ヨルシカ「それじゃ、私たちも学校に行きましょうか」

「そうだね。そうしよう……――」




―――学校

ガララッ

「おはよー……――うわっ!?」ドンッ

ロザリア「………………」ガシッ

「ろ、ロザリアさん……おはよう」アハハ…

ロザリア「………………っ」ギロッ

ヨルシカ「ち、違いますよっ! お、男さんとはついさっき会ったばかりでっ……。ぐ、偶然ですよ偶然っ」

ロザリア「………………」フイッ

ギュゥウウウ…

「あー……」


(――昨日のあの一件から、ロザリアさんの行動がより積極的になった)

(当たり前のように、今日の朝も部屋にいた。でも、もう何も言えなかった)

(……ダメと言ったら、どんな行動に出るのかがわからなくて怖い)

(まぁ、別に何かが盗まれる……とは言っても、盗むものもないんだけど。そういう被害があるわけでもなく、ただただご飯を作りに来てくれるだけなので、そのままでもいいかという気持ちだ――)


カーク「………………」ゴゴゴゴゴ…


(――ただ、最近カークくんが怖い)

429 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/07 00:09:18.50 McCs8gDL0 120/173


『楽しい放課後』


―――とある日の放課後

キーンコーンカーンコーン


「――うぅーん……。今日も終わった……」

アオニート「そういや男はよー。放課後なんか予定とかあるのか?」

「えっ? あぁー、いや。そういえば、今日は飼育委員もいいって言われてたなぁ」

アオニート「おぉ、ならちょうどよかった。そいじゃ、この後――」


カルラ「――話を割ってすまない。……男くん、今日は暇ってことでいいのかな?」


「あ、あぁ、カルラさん……。まぁ、そういうことになるのかな……」

カルラ「それじゃ、どうだろう? 実は私は監獄巡りをするのが好きなんだが……、この後一緒に行かないか?」

「か、監獄巡りっ!? ……でも、なんだろう。少し興味があるなぁ」

アオニート「………………」ポツーン…

カルラ「そうかっ。なら、さっそく……」

グイグイッ

「――えっ? ろ、ロザリアさん……?」

ロザリア「………………っ!」

「え……約束……??」

ツネッ‼

「いたいっ! ――あ、あぁ、奇跡?? そ、そっか、教えてもらうって言ったもんね」

ガシッ‼

カルラ「……すまないね、ロザリアさん。今日は私のほうが先だ……。諦めてくれないか……?」グググ…

ロザリア「………………っ」グググ…

カルラ「自分のほうが先だって……? どうなのかな、現にいま男くんは知らなかったように思えるが?」ニヤッ

ロザリア「………………」グルル…

(なんだこの状況……)

アオニート「……俺、帰るわ」トボトボ…

「あ、あぁ……なんか……ごめんね……」

440 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/08 22:39:08.06 KHvt6c/t0 121/173

『部活動見学』


―――弓道場

グウィンドリン「――さあ、こっちだよ男くん」

「あ、はい……」

(――流れに流されて、なんか弓道場まで誘導されてしまった……。部活なんて、やる気はないんだけどなぁ……)

コンチワーッス‼

オツカレサマデス‼

「……というか、アレですね。グウィンドリン先輩は弓道部だったんですね」

グウィンドリン「あぁ、一応だけどね。普段は風紀委員が忙しくて、あまり顔出せないんだけど……」

ドスゥン…

ゴー「……ん? ――おぉ、これはこれは……。部活に顔を出すなんて久しぶりじゃないのか?」

(巨人…………。……遠くからでしか見たことなかったけど、近くで見ると迫力があるなぁ……。――しかし、慣れって怖いな。別に不思議じゃなくなってきた……)

グウィンドリン「えぇ、すいません忙しくて……。――それで、この一年生が噂の男くんなんですよ」

グウィンドリン「男くん、この人がゴー先輩だ。先日シースを射抜いたのもこの人だ」

グウィンドリン「ゴー先輩はすごいんだぞっ。弓道大会の巨人の部で、数々の賞をとってるんだ!」

「こ、この人が……。――この前はありがとうございましたっ」

ゴー「ふははっ! なぁに、友に頼まれた事をしただけだ……。……それで、君も弓道部に入る……ということでいいのかね?」

「えっ??」

ガシッ

グウィンドリン「ふふ……。男くんは……まだ部活は決めてないんだったよね……?」

「い、いや……そうですけど……」

グウィンドリン「それはよかった。……ね?」

「いや、ね? じゃないですよっ! お、俺だって、飼育委員がありますし……」

ゴー「まぁまぁ……。君を取ったとアルトリウスに知れたら、私が怒られてしまう。……だから、委員会優先でかまわないぞ」

「そ、そういうことじゃないんですよっ! ぐ、グウィンドリン先輩……これを狙って……」

グウィンドリン「いやいや……。でも、どうだ? 弓の扱いは覚えておいて損はないんじゃないかと、私は思うんだけどなぁ……?」

「ゆ、弓って言われましても……」

442 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/09 07:11:56.60 Gdijlu8G0 122/173

「フゥーハハハッ!! 話は聞かせてもらっ――」

グウィンドリン「――あぁ、あれは無視して構わない」

「えっ」

「お、おいっ、グウィンドリンっ! 一応俺は先輩だぞっ!」

グウィンドリン「はぁ……。どうしたんですか? ファリス先輩」

ファリス「お、お前……ゴーと扱いの差が……。――いや、まぁそれはいい」

ファリス「入部するということなら、この弓道部部長のファリスを通してもらわないと困るなぁっ!」

「あっ、ゴー先輩が部長じゃないんですか」

グウィンドリン「そういうのを嫌う人なんだ。……あと、趣味でプロレスもやってるから、忙しいのもあるな」

「マジですかっ!?」

ファリス「話を聞けっ! ……ただ、知っての通り……今年は新入部員も少ない。是非とも男くんに入っていただきたいと思う」

「あ、あの、俺は……」

ファリス「そこで……だ。賭けをしないか?」

「か、賭け……?」

ファリス「あぁ……。――見よっ!!」バッ‼

ガラーン…

「……えっ??」

ファリス「……見えるか? 1キロ先にある的がっ!!」

「ま、的……!?」

(小さすぎて見えない……)

ファリス「……キミはあの的を射抜けると思うか?」

「あ、あれを……? ……そ、そりゃ、無理だと思いますけど……」

ファリス「ふっ、やはりな……。……ならこれでどうだ?」

ファリス「あの的を見事、射貫けたのなら……キミには弓道部に入ってもらう」

「えっ、イヤです」

ファリス「そしてっ、射抜けなかったら……。ふふっ、君にはこのファリス印の弓をプレゼントしようっ!」

「いや、いらないです」

ファリス「……よしっ! ――やれっ、ゴーっ!」

「――って、ファリス先輩がやるんじゃないんですかっ!?」

443 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/09 07:26:58.86 Gdijlu8G0 123/173


ファリス「フゥーハハハッ! 誰が私がやるなどと言ったのだ! 私には無理だっ!」

「す、すごい堂々としてる……!」

ゴー「ふははっ。……そういうことなら、見事……射貫いてみせよう」

「い、いやっ!! その前に俺は良いって言ってないんですけどっ!」

グウィンドリン「まぁまぁ……。出来ないと思うんだろう?」ニヤッ

「そ、そりゃ……」

(……でも、待てよ……。この前のシースの時も、すごく遠くから狙ってきてたわけだし……)


「――わかりました」


ファリス「おぉ、そうかそうかっ!」

「ただっ! 条件があります」

グウィンドリン「条件……??」

「そうです! ……えっと……そうだなぁ……。ゴー先輩には目隠しをしてもらうってのはどうですか?」

ファリス「なっ……! そ、それじゃ……」オドオド

「正直、俺にこの勝負を受ける義理なんてないわけですし、これでも譲歩したほうですけど……?」

グウィンドリン「しかし、さすがに……」

「なら、帰ります!」


ゴー「――ふははっ! よし、ならば受けてたとう」


「…………えっ??」

ゴー「目隠しとはな……。たしかに、私はまだ目に頼りすぎているのかもしれない」

「えっ、あ、あの……」

ゴー「…………よしっ、これでいいかな?」ギュッ

ゴー「――では、行くぞ……。……むぅうううん……っ!!」ギリギリ…



バシュッ‼



――こうして、男は弓道部に入った。

451 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/09 23:39:01.77 Gdijlu8G0 124/173


『パッチという男』

―――校舎裏

パッチ「――けっ!! ……ったく、なんで俺が怒られなきゃなんねぇんだよっ」

パッチ「まさか、あの拾った指輪がそんな奴だったとは……。あぁーあ、めんどくせぇ」

カランッ…

パッチ「ん? なんでこんなところにスコップが……」

パッチ「………………あっ」ピコーンッ

パッチ「へっへっへ……。よぉーっし、ちょっとやる気だすかっ!」ザッ‼

ザクッ…

ザクッ…


―――1時間後

パッチ「――よーしよし、こんなもんでいいだろ」

ポッカリ

パッチ「まぁまぁ、いい穴ができたんじゃねぇかな。んじゃ、うまくカモフラージュして……」ポンポン

パッチ「へへっ……。これでわからねぇ」

パッチ「さてと……。落ちたやつから金でも巻き上げて、それでうまいもんでも食うかっ!」

パッチ「ここなら先公の目もないだろ。んじゃ、あっちで寝てるかな」

パッチ「誰か落ちたら音でわかるだろ。そいじゃ……――」

グーグー…


「――うおぉおおおお!!??」

ズサァア‼

ドシャッ‼

パッチ「――はっ!! ……すっかり寝ちまったぜ。……でも今の音……へへっ!」ダッ‼

パッチ「――おうおうおうおう! ずいぶんと間抜けな奴だなぁ……。……ま、とりあえず出して欲しけりゃ、金を――」


グウィン「い、たたたた……。――んん、君は……??」


パッチ「……あっ……どうもー……――」


――パッチ、停学。

455 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/10 23:20:18.44 QflkHR6J0 125/173


『怪しい委員会』


「――また最後にミルドレット先生に頼み事されちゃって、時間かかっちゃった……」

「早く飼育委員行かないと……」ダッダッ…

「…………ん? あれって……?」



ユリア「あぁ……たんだ……」

「それは…………ですね…………」



「あれは……ユリア先生……だっけ? そっか、ここは折れた直剣委員会の前か……」

「でも、今更遠回りも面倒くさいし……。何気ない顔でスルーしないと……」

「――……こんにちは~……」スルー…


ユリア「――おぉ、男くんじゃないか。まぁ、待ちたまえ」


「あっ、はい」

(ダメだったー)

「……あら、それじゃ私は帰ることにするわ」

ユリア「あぁ、ではまたな」

ペタペタ…

(……裸足? 変な人だなぁ……。――って、この世界じゃ変でもないのか……)

「え、えっと……大丈夫だったんですか? お客さんじゃ……」

ユリア「ん? ――あぁ、気にしなくていい。あれは私の姉でね。近くの村でちょっとした絵画教室を営んでいるんだ」

「あっ、そうだったんですか」

ユリア「まぁ、私の事はいい。……それで、どうかな? 折れた直剣委員会に興味は?」

「じ、実はもう飼育委員に入ってしまいまして……。ごめんなさい」

ユリア「なんだ、そうだったのか。――いや、かまわないよ」

ユリア「…………些細なことだ」ボソッ

「…………えっ?」

ユリア「――君には素質がある」

461 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/12 12:25:31.36 OIwTwrXw0 126/173


「素質…………?」

ユリア「あぁ…………――」



ユリア「 ――主役になる、素質だ 」



「…………?? す、すいません、意味が……」

ユリア「じきにわかるさ」

ユリア「……まぁ、折れた直剣委員会はいつでも君を歓迎しよう。時が来る、その時まで」

「い、いや、多分それは無いと……」

ユリア「………………」

「………………あ」

「――えっと! それじゃ、さようならっ!!」ダッ‼

ユリア「……あぁ、気を付けるんだぞ」





ユリア「――待つさ、何年でもな」



「……ユリア先生? どうしたんですか」

ユリア「おぉ、アンリくんか。……ふふっ、面白くなってきたな」

アンリ「はぁ……。――あ、そういえばホレイスは遅れてくるって言ってました」

ユリア「ふむ、そうか。……いや、優秀な新入生が入ってくれて助かるよ」

アンリ「またまた……」

ユリア「……そういえば、ついこの間のあの大事件。……君のお兄さんは何をしてたんだ?」

アンリ「さぁ……? いつも通り引きこもっていたと思いますけど……」

ユリア「……そうか」

アンリ「はぁ……卒業する気あるんですかねぇ……」

ユリア「まぁ……、なるようになるものさ……――」


462 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/12 12:29:01.73 OIwTwrXw0 127/173


「アンリくん」ってなってるけど、一応女の設定です。

464 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/17 02:04:16.76 qeobhv200 128/173


『クラーナ先生の贖罪』


ミルドレット「――ねぇねぇ、どうかなっ? これ、今流行のずた袋なんだって!」キャッキャ

クラーナ「へ、へぇ……そうなのか……」

レア「あ、あのっ! ミルドレット先生っ! ちょ、ちょっと聞きたいことがあるんですけど……」

ミルドレット「あっ、はい。なんですかーっ?」ニコニコ

レア「……え、えっと……ここなんですけど――」


コルニクス「……最近、ミルドレット先生が……うーん、なんというか……。…………変わりましたな」

クラーナ「あ、あぁ、コルニクス先生……。えぇ、まぁ……ぷ、プライベートで何かあったようで……あはは……」

コルニクス「ほうほう。まぁ、なにはともあれいいことだ。いやぁ、前までのミルドレット先生は……――」

クラーナ(……もしかして、私の立ち位置っていうのも、結構面倒くさいんじゃないだろうか……)

クラーナ(ミルドレットを止めたほうが……? ……いや、しかし…………――)

コルニクス「――先生? クラーナ先生? どうかしましたかな?」

クラーナ「あ、あぁっ、いや! す、すいません、授業がありますので、これで……」ソソクサ…

コルニクス「………………?」



キーンコーンカーンコーン

クラーナ「……はぁ…………」

「……あれ? クラーナ先生がため息ついてる……。なんだろう、疲れてるのかな?」

アオニート「いやぁ、なにか悩んでる姿も美しいな……」ホワァ…

「あっ……そう……ね」

クラーナ(――いかんな。今は授業に集中しないと……)


クラーナ「えー、それじゃ今日は実技に入る。……目を瞑って、暗闇の中の火を想像するんだ」

シーン…

クラーナ「そうだ、集中しろ……。私がいいというまで、火を見つめるんだ」

クラーナ「………………」

クラーナ「…………ん? 男君、呪術の火はどうした?」

「へっ??」

465 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/17 02:26:39.88 qeobhv200 129/173


「あ、え……っと…………??」

クラーナ「呪術の火だ。まさか、持ってないのか?」

「………………??」ポカーン

クラーナ「……男君? なぜちゃんと準備をして――」

クラーナ「………………」

クラーナ(……しかし、私にこの子を責める資格があるのだろうか……。なんだろう、罪悪感がすごいな……)

「あ、あの…………ご、ごめんなさい……」

クラーナ「――ほら、私のをやる」ホウッ…

「えっ、あの、これは……!」

クラーナ「いい。なんだ……その……まぁアレだ。……大事にしろよ」

「あ、ありがとうございます!」

クラーナ「それじゃ、さっき言ったとおりにするんだ。……目を瞑って、そこに燃える火を思い浮かべるんだ」

クラーナ「そして……――」


ボウッ‼


「――うわぁっ!!?」

クラーナ「……な……っ!?」

「び、びっくりした……。――で、でも、これって成功ですかっ?」

クラーナ「あ、あぁ……そうだが……」

「えへへ、やったー!」

クラーナ「…………っ」ドキッ

クラーナ(………………なんだ、いま……私は……)ギュッ…

クラーナ「ま、まぁ、あまり浮かれないことだ……」

「そ、そうですね……。すいません……」

クラーナ「うっ……。……し、しかしまぁ、よくやった」ポンッ

「あ、ありがとうございますっ!」


クラーナ(――…………しかし、それにしてもこんな短時間で……。この子はいったい……?)


476 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/17 23:59:29.25 qeobhv200 130/173


『オーベックの秘密』


「――オーベックよ。この度の働き、よく動いてくれたな」

オーベック「……いえ」

「生徒会の動きにいち早く気づき、そして行動を起こしたことは素直に褒めよう。…………しかし、だ……」

オーベック「………………」

「生徒会の居場所を突き止めたとき、何故まず我々に報告をしなかった?」

オーベック「報告するまでもないかと……」

「それはお前の決めることではない」

「……聞いた話じゃ、貴様がアルトリウスに場所を知らせたらしいじゃないか」

オーベック「……そうするのが最良の行動だと判断しました」

「……何が『最良の行動』だ。……おかげでアルトリウスの奴が勘付いた。あいつは基本的には自分から動くタイプではないが、人脈と人望がある。敵に回られると厄介なんだ。わかるだろう?」

オーベック「申し訳ございません」

「まったく、本当にわかっているのか? 貴重なチャンスを――」


「――まぁまぁ、いいじゃないか」


「ろ、ローガン先生……」

ローガン「時間ならある。……それより、優秀な若手が来てくれたことを喜ぼうじゃないか……カリオン先生」

カリオン「………………」

ローガン「――オーベック君……だったな? 期待しているぞ……」ポンッ

オーベック「………………はい……」



キーンコーンカーンコーン

「――……あっ、オーベックくん! 俺もいま委員会の帰りなんだけど、オーベックくんも委員会とかだったの?」

オーベック「まぁ……そんなとこだ」

「そうそう! この前教えてもらった照らす光なんだけど――」ペラペラ

オーベック「………………ふっ……」

「――いやー、トイレの時使っちゃダメだね! 危うく大惨事に……。……ってあれ、どうかしたの?」

オーベック「……いや、お前らしいなと思ってな……――」フンッ

479 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/18 19:14:15.37 oxSS6CW/0 131/173


『ドキドキ・体育祭』


―――教室:朝

ワイワイ…

「――体育祭???」

アオニート「あぁ、そろそろそんな季節だなぁ、ってさ」

「あー……。……そういえば学校だもんね、ココ……」

アオニート「は?」

「い、いやまぁ……。……とはいえ、そんな盛り上がるもんなの?」

アオニート「正直微妙だな。兄貴のは見たことあるけど、まぁ……それなりだ」

「だよねぇ。……ほどほどに頑張るよ」

ガララッ

ミルドレット「――はーい、みんなおはようございます」

ミルドレット「……うん、全員居るかな。連絡事項は……――」


ミルドレット「――と、このぐらいかな。……あ、それと、今日の放課後は来月に控えた体育祭について話し合うから、みんなちょっと教室で待っててね」

エーッ‼

ミルドレット「まぁまぁ、これも行事だから……。それじゃ、朝のHRを終わりにします」

キリーツ
キヲツケー
レイ

ザワザワ…


アオニート「噂をすれば、もう体育祭について話し合うんだな」

「出場する競技を決めるとかそんなことでしょ?」

アオニート「多分な。あー、めんどくせぇ……」

「あはは……」

ミルドレット「――男くーん! ちょっと手伝ってほしいなー」ニコッ

「あっ、はいっ! ……ちょっと行ってくる」

アオニート「おーう。……しかしミルドレット先生、よく男に頼み事してるよな」

「うーん、そうかな? まぁ、頼られるのは悪い気はしないから、気にしてないけど……――」

481 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/18 19:49:49.13 oxSS6CW/0 132/173


―――放課後


ミルドレット「――それじゃプリントを配るから、みんな見てー」

ミルドレット「その紙に、今年の体育祭で行われる競技が書いてあるから、自分が出たい競技にチェックしてね」

ミルドレット「あ、そうそう。もちろん、みんな必ず一つは何かに出ないとダメだからね~」


アオニート「はぁー、どれにしようかなー。男はどれにする?」

「えっ……いや……。えっ……これは…………えっ……」

アオニート「ん? どうした」

(こ、これは……!? 競技って50m走とかじゃないのっ??)

「あ、アオニートくん。こ、この『竜の炎障害物競争』って……」

アオニート「へぇ、それに出たいのか? たまに思うけど、度胸あるよな、お前」

「いやいやいやいや……。ど、どういう感じなのかな? って、思って……」

アオニート「どういう感じって……。竜の炎を避けながら競争するんだろ。逆にそれ以外なにがあるんだよ」

「あっ、そういう感じなんだ……。へぇー、あっ、そうなんだ……」ゴクリッ

(ヤバい。これはヤバい……。『結晶トカゲ取り競争』って、飼育してるやつ?? 見たことはあるけど……、アレをどうするんだ……。想像できねぇ……)

アオニート「――あっ、そっか。お前飼育委員だからそれ参加できねぇじゃん。残念だったな」

「えっ? あっ、そうなの……。そっか、なんとなく理由はわかるけど……」

(やべぇ、体育祭やべぇ……。俺なんかが出れるのあるのだろうか……)

「――あっ、この『沼走り競争』なら……」


ミルドレット「男くん、それにでるのっ?」


「わぁっ!?」ビクッ

ミルドレット「実は、それ先生得意なんだ。……もし出るなら、私が手取り足取り……――」

「い、いやっ! ま、まだ考え中です……」

ミルドレット「……そっかぁ。まぁ、いつでも言ってね?」ニコッ

「は、はい!」

(……なんだ、なんか危険を感じた……。これは避けよう……)

(でも、これ以外で安全そうな種目かぁ……――)


485 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/18 20:17:08.81 oxSS6CW/0 133/173

「――こ、これは……!?」

「あ、アオニートくん! こ、これはどういう競技なのかな!?」

アオニート「あん? ……どういうって、お前やったことないのか、これ?」

「い、いや、そういうわけじゃないんだけど、俺の知ってるのと違うかもしれないから……」

アオニート「そんなことあるか?」

アオニート「――……まぁ、これはクジを引いて、そこに書いてあるものを持ってゴールするやつだろ」

「だ、だよねっ! 『借り物競争』ってそういうやつだよねっ!!」

「こ、これなら……!」


トントン…

ガララッ

ミルドレット「……あら! みんな、応援団長が来たようね!」

「応援団長……。へぇー、もう決まって――…………えっ」


グヴィネヴィア「一年生の皆さん! この度、我が青組の応援団長になりました、グヴィネヴィアです! みんな初めてで不安でしょうけど、頑張りましょうねっ!」グッ‼




 シ ー ン …



 ウ オ ォ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ !!!!



グヴィネヴィア「――あらっ、みんな元気ですね!」ニッコリ

「………………」ポカーン…

ヨルシカ「ね、姉様……!?」

グヴィネヴィア「――あぁヨルシカ、男くん。ふふっ、同じ組でよかった」

「ぐ、グヴィネヴィア先輩……。た、体育祭とか好きなんですか??」

グヴィネヴィア「えっ? ……いや、実はそういう訳じゃないんですけど……。……でも、やっぱり最後の体育祭だから、がんばろうって思ったんです!」ニコッ

「あっ、そう……ですよね!」

グヴィネヴィア「一緒に、頑張りましょうね!」グッ‼

487 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/18 21:20:04.90 oxSS6CW/0 134/173


――

――――

――――――

ミルドレット「――それじゃ、そろそろいいかな?」

ミルドレット「体育委員の……ホレイスくん。プリント集めてもらえる?」

ホレイス「……はい……」



ホレイス「――……集計……できました……」

ミルドレット「はい、ありがとう。……こ、これは……」

ミルドレット「えぇっと……、すごく偏っちゃったなぁ……」


アオニート「男は結局何にしたんだ?」

「『借り物競争』だよ。……それ以外は……ねぇ?」

アオニート「やっぱり、考えることは一緒だよな」

「えっ、アオニートくんも――?」


ミルドレット「えー、『借り物競争』に過半数が集まっちゃってるから、じゃんけんしましょう」


「」


(――でも、そうか……。怖いのは俺だけじゃないんだ……)


(……しかし、このじゃんけん……負けられないっ!!)ゴゴゴゴゴ…


アオニート「ふっ、俺も負けないぜ、男……!!」

ワーワー‼
ウオォオオ…‼



「――勝った…………っ!!」ハァ…ハァ…

アオニート「くっ……!! ちくしょーっ!」

(よかった、本当によかった……! 心臓が飛び出そうになるくらい緊張したよ……)

アオニート「……はぁ、しょうがねぇな! それじゃ、後は任せたぜ男っ!」

「うんっ! 全力で頑張るよっ!」グッ‼

488 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/18 22:37:20.50 oxSS6CW/0 135/173


――後日


「――で、何とか借り物競争だけ頑張ればよくはなったけど……」


イーッチ‼
ニーッ‼

ファイトー‼


「ほかの競技にでるみんなが、すごい熱くなってる……」

「でもまぁ、応援団長がグヴィネヴィア先輩だしね……。たしかに、頑張りたくはなるか……」

ヨルシカ「――あっ、男さん……。男さんは練習しないんですか?」

「あぁ、ヨルシカさん。……まぁ、借り物競争だしね」

ヨルシカ「まぁ、そうですよね」アハハ…

「ヨルシカさんは何の競技に出るの?」

ヨルシカ「私は奇跡しか取り柄がないので……。『雷のやり投げ』ですね」

「へ、へぇ……」

ヨルシカ「まあ、グヴィネヴィア姉様ほどではないですけど……」

「いやいや、がんばってねっ!」

グイッ

ロザリア「………………っ」

「もちろん、ロザリアさんのことも応援してるよ!」

ヨルシカ「最近は、ロザリアさんもいつも男さんの傍に居ますね」

「あ、あはは……」

ヨルシカ「……少し……嫉妬しちゃいます……」ボソッ

「えっ?」

ヨルシカ「い、いえっ! ……で、でも……その……――」

ヨルシカ「――……た、たまには、私とも……仲良くしてくださいね……?」ボソッ

「…………?? もちろん、ヨルシカさんは大事な友達だよっ!」グッ‼

ヨルシカ「……あー…………」


ヨルシカ「……ふふっ、ありがとうございます」ニコッ

489 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/18 23:08:18.43 oxSS6CW/0 136/173


――――そして、体育祭当日……


「――つくづく思うけど……」


ドォオンッ‼

ワーワー‼


「これは、体育祭なのか……。もうゲームとかで見るような、神々の戦争のようにも見えるよ……」

「本当に借り物競争でよかった…………。……まぁ別の競技だったら、もう休むけど……」


グヴィネヴィア「がんばってくださーいっ!」フレッフレッ‼


「……でも、グヴィネヴィア先輩に余計な心配させたくないしなぁ」

「借り物競争は最後のほうか……。それまでに得点がひらいてくれてればいいんだけど……」

アオニート「なんだ、もう自分の事心配してるのか?」

「まぁね……。やっぱり緊張はするよ」

アオニート「まぁ大丈夫さ。――あ、そうそう、当たりカードは俺が書いてやったからな」

「へっ? 当たりカード??」

アオニート「あ? なんだ、知らなかったのか……」

アオニート「当たりカードってのは、借り物競争の時に、クラスで三枚まで作ることができるんだよ」

アオニート「自分のクラスが有利になるように作っていいことになっててな」

アオニート「運よくその三枚のうちの一つが引ければ……。ってことだ」

「な、なるほど……。……ちなみにアオニートくんはなんて書いてくれたの?」

アオニート「おいおい……。決まってるだろ? 言わせんなよっ」アッハッハ…

「………………???」

アオニート「――まぁ、引ける可能性なんてほとんどないだろうし、あんま期待はするなよ」

「そっか……。まぁ、そうだね」

(…………待てよ? 当日になって今更だけど……、借り物が普通じゃない可能性も…………)

「…………いやいやっ! もう、覚悟を決めよう……」グッ‼

アオニート「――よっしゃ! 次は、俺の竜の炎障害物競走だぜっ! 応援してくれよなっ!」

「そ、そっか……。き、気を付けてねっ!」

アオニート「おうっ!

494 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/19 09:51:04.74 Kh4LIDSK0 137/173


――――――

――――

――

アオニート「……も、燃え尽きたぜ…………」プスプス…

「す、すごいね……。執念のゴールだったね……」

アオニート「ま、まぁ……、グヴィネヴィア先輩のためだしな……」ヘヘッ…

(……というか、ごく普通に燃えたけど……。……この世界では俺も魔法が使えたように、燃えても大丈夫なんだろうか……)


ジークリンデ「――やったーっ! 『フォース相撲』で1位になったよっ!」キャッキャ


「あっ、ジークリンデさん。おめでとう! すごかったね!」

ジークリンデ「本当っ? いやぁ、やっぱりジークバルドくんは手ごわかったけど……。でも、なんとか勝ったわっ!」

アオニート「まったくだ。……あの玉ねぎ対玉ねぎの戦いに、みんな肩を震わせて――」

ガンッ‼

アオニート「――ぐっ……! て、てめぇ……俺は怪我人だぞ……」

ジークリンデ「ふんっ、怪我人なら怪我人らしくおとなしくしてろってのよ」

ジークリンデ「……で、でも男くん……。もしかして、みんな笑ってた……??」

「いやいやっ! 全然そんなことなかったら安心してっ!」グッ‼

(……まぁ、どっちがジークリンデさんかわからなかったから、どっちを応援すればいいのかもわからず困りはしたけど……)

ジークリンデ「そ、そっか! よかった……」

ジークリンデ「――って、そろそろ借り物競争じゃない??」


 「えぇー、次は『ハベルの鎧徒競走』です。……借り物競争に出る選手は集合場所に集まってください」


「あっ、本当だ! じゃ、じゃあ、行ってくるね!」

ジークリンデ「うんっ! 応援してるから!」


「――はぁ……すげぇ、緊張してきたなぁ……」

トントンッ

「えっ?」

グヴィネヴィア「ふふっ、次はいよいよ男くんの番ですか?」

「グヴィネヴィア先輩……。そうですっ、がんばりますっ」グッ‼

495 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/19 10:20:49.60 Kh4LIDSK0 138/173


グヴィネヴィア「まぁ、頼もしいですね。……それじゃ、男くんにはこれを」スッ

「えっ……、指輪……?」

(金の蛇……? しかし、やたらと重いな……)

グヴィネヴィア「これは、お守りです。……それでは、頑張ってくださいねっ?」ギュッ

「は、はい――!」



「――それでは、これより借り物競争を行います」

「一年生の部、出場選手は……――」


(よ、よかった……。コースの途中にすげぇ障害物とかあるんじゃないかと思ったけど、なにもない……)

(……しかし、得点差は微妙だなぁ……。トップは黄色組で、青組は2位か……。……これ、割と重要な立場じゃないか?)

(……でも、負けるわけにはいかない……! グヴィネヴィア先輩にとっては、最後の体育祭なわけだし、あんなに頑張ってるんだから……!)

(アオニートくんだって焼かれながらも2位をとったし、ヨルシカさんも1位をとってた……。ジークリンデさんも、オーベックくんも、ロザリアさんだって頑張ったんだ……!!)

(黄色組にだけは、負けちゃいけない……。黄色って……)チラッ


ヘイゼル「ふっふっ……。どうやら、キミとは戦わないといけない宿命みたいだね……!」


「ヘイゼルさん……!」

(あっ、ちゃんと黄色い鉢巻してるんだ……。分かりづらい……)

ヘイゼル「悪いけど負けないからねっ。特に、キミに負けるとシーリスちゃんがうるさいからさっ」

「俺だって負ける気はないよ……!」


「それでは、ルールを説明します」

「ゴールまでの途中に置いてある箱にくじが入っています。それを引いて、そこに書いてあるお題をもってゴールした選手の勝ちになります」

「くじの引き直しは、二回まで可能です。ただし、二回引き直してもできない場合は失格とします」

「くじの中には、クラスが書いた当たりカードが入っていますので、それに賭けるかは選手次第です」

「箱の中には約50枚のくじが入ってますので、よく考えてください」

(多いなっ! ご、50分の3か……)


「それでは始めます。第一レース、一年生の方、並んでください」


496 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/19 10:40:22.84 Kh4LIDSK0 139/173


「ふぅ……。――よしっ!!」パンッ

ヘイゼル「ふふふっ、気合入ってるねっ」

「俺が足を引っ張るわけにはいかないからね……」


「位置について……」

「よーい……――」


 パァンッ‼


「よしっ!!」ダッシュ‼

ヘイゼル「うっ……風の抵抗が……」


ワーワー‼

ガンバレー‼


(走る速さは、俺の居た世界と変わらないっぽいし、これなら……!)


「青組の男くんっ、勢いよくスタートを切りました! 次点に赤組のアンリさん! そして、出遅れたかっ黄組のヘイゼルさん!」

「――そして青組、一番最初にくじへとたどり着いたーっ!」


「で、でてくれ……当たりカード……!」ガサゴソ…


「――これだッ!!」スッ‼


(……この紙、青色? も、もしかして……――)


「おーっと!! なんという強運!! 青組の男君はいきなり当たりカードを引き当てたっ!!!」


ウオォオオオ!

ワーワー‼

ガンバレー‼


「や、やった……!! な、中身は…………――!!」カサカサ…



 『愛している人』


「」

502 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/19 12:00:42.27 Kh4LIDSK0 140/173


「どうしたどうした!? 当たりカードを引いたはずの青組、固まってしまったーっ!!」


(う、嘘だろ……!? なんでアオニート君がこんなものを……っ!?)

「…………いや、違う……。この文字……アオニートくんの字じゃない……??」

「ど、どこかで見たことが……――はっ!!」バッ‼


ロザリア「………………」ジーッ


(ロザリアさんの字だ……っ!! ど、どういうことなのっ!? 当たりカードって……)


ヘイゼル「――着いたっ! いよーっし……!」ガサガサ…

ヘイゼル「……お、これはっ!」


「おっとぉ!! なんとなんと黄組も当たりカードを引いたぁっ!! いきなりの大波乱! このレースの行方はどうなるっ!?」


ヘイゼル「ふむふむ……レオナールくんの仮面か……。ふふっ、シーリスちゃんが書いたやつかなっ」

(シーリスさん「が」……!? って、ことは……当たりカード三枚は、クラスの別々の三人が書いている!?)

ヘイゼル「それじゃ男くん、何を悩んでるかわからないけど、お先にっ!」ダッ‼

「あっ……!!」

ヘイゼル「うぅっ……風の抵抗で首が……」

(どうする……!? これで……、いやでも…………。悩んでる暇はない…………。――……クソッ!!)


「ひ、引き直しますっ!!」ガサゴソ…


「な、なんとぉっ!!? 当たりカードが出たにもかかわらず、青組が引き直したァッ!!」

キラッ

「――これでっ!!」バッ


「なっ……! なんという豪運ッ!!! 青組、再び当たりカードを引いたァアアアア!!」


「す、すごい……!! な、流れが来てるぞ……!!」カサカサ…



『おっぱいが大きい人』


「」

511 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/19 13:26:01.54 Kh4LIDSK0 141/173


「し、しかし、再び青組固まったぁああッ!! なんだ、あの紙にはなんて書いてあるんだァ!?」

(あ…………あ、あの腐れニートや――ッ!!)

(――いや、違うッ!? これもアオニートくんの字じゃない……!!?)

(い、いったい誰が…………!?)チラッ


ホレイス「………………っ」グッ‼


(う、うおぉおおお……!! グッ、じゃねぇよこのむっつり鉄仮面野郎がァアアア……ッ!!)ダンッ‼

ガンバレー‼

ワーワー‼

ドウシター‼

「青組の男くん、悔しそうに机を叩いていますっ!! なにがあったんだぁ!?」


ヘイゼル「――ほーらっ!! 早く仮面貸してよっ!」

レオナール「だ、ダメだっ!! これを外すと、封印がぁああ……っ!」


「しかし、当たりカードを引いた黄組も何やらもめている様子っ! これは最後までわからないぞっ!!」


(ど、どうする……!? これは、えっと…………えっと…………っ!!)アセアセ


グヴィネヴィア「――男くーんっ! がんばってくださーいっ!」フレッフレッ


「………………っ!」


「――ひ、引き直します……っ!!」

(ごめんなさい、グヴィネヴィア先輩……! 俺は根性無しです……)ガサガサ…

「な、なんとォ! 二度の当たりカードを置いて、再び引き直したァッ!!?? い、いったいどうなっているんだァ!」

キラッ

「――こ、これでッ!!」バッ

「な、なななななっ!!? またしても当たりカードォオオオオオオッッ!!! すごいっ!! 今までの歴史でもこんなことがあったでしょうかっ!!?」

「こ、これは……、アオニート君のだよねっ!!? や、やったぞ……っ!!」カサカサ…



『おっぱいがすごく大きい人』


「――あんのクソ野郎ッッッ!!!!」ダンッ‼

516 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/19 16:45:58.76 Kh4LIDSK0 142/173


ワーワー‼

ガンバレー‼


「前代未聞の強運を見せてくれている青組っ! しかし、その顔はあまり優れないようです!」

「しかしっ! 引き直しは二回まで! そもそも当たりカードを引き直すのもおかしな話ですが、これ以上は失格となります」


「………………ッ!!」

(もう……やるしか……)


「………………」チラッ

カルラ「……なんだ…………?」ドキッ

「………………」チラッ

ヨルシカ「えっ…………?」ドキッ

「………………」チラッ

ロザリア「………………」ジーッ


グヴィネヴィア「がんばってくださーいっ!」バインッ


「あぁ、もうっ!!」


「――グヴィネヴィア先輩っ!! 一緒に来てくれませんかっ!!」

グヴィネヴィア「え、えっ?? わ、私ですかっ?」

「はいっ! お願いしますっ!」ガシッ‼

グヴィネヴィア「あっ……はい……」ドキッ


レオナール「わ、わかったっ!! なら、一緒にゴールすればいいんじゃないかっ!!?」

ヘイゼル「えっ? ……まぁ、たしかに……それもそっか。じゃ、行くよっ!」グイッ


グヴィネヴィア「はぁ……はぁ……」バインッ

(……あれ、なんだこの生暖かい視線は……?)ハァ…ハァ…

オォ……

デカイナ…

フゥ…

(…………あれ、もしかして借り物競争の人気が高かった理由って…………)

517 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/19 17:08:19.93 Kh4LIDSK0 143/173


パァンパァンッ‼

「ついにゴールしましたっ! 一着は……――」


「――青組ですっ!!」


ウオォオオオ‼

ヤッター‼

ワーワー‼


「はぁ……はぁ……。す、すいませんグヴィネヴィア先輩……いきなり……」

グヴィネヴィア「だ、大丈夫ですよ……! ……あ、あの……男くん……手が……」カァアア…

「――あっ、ご、ごめんなさいっ!」バッ

グヴィネヴィア「い、いえ…………」


「二着は黄組っ! ……赤組のアンリさんは、気絶していたため残念でした」


(あっ、やっぱり普通のやつは危ないんだ……)


「それでは、くじの内容と正しいか発表しましょうっ!!」


「えっ」

「まずは黄組から。……レオナールくんの仮面……と。たしかに、本人が居ますが、良しとしましょう」

ヘイゼル「あーあ……。レオナールくんがさっさと仮面貸してくれれば、一着だったのにー」

レオナール「だ、だから、仮面をはずすと封印が……――」

「それでは、青組っ! これで合っていれば、青組は黄組と得点が逆転しますっ!」

グヴィネヴィア「そういえば……どういう内容だったんですか? ――あっ、身長が高い人……とかですか? 私、体が大きいですし……」

「あ、あぁぁあああのっ!! べ、別に発表しなくても……!!」


「えー………………………………。あ、青組はおっ……む、胸が大きい人ということで! 見事、青組一着ですっ!!」


ワーワー‼

ヤッタゼー‼

ウオォオオ‼


「………………」カァアアア…

グヴィネヴィア「………………」カァアアア…

519 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/19 17:40:07.08 Kh4LIDSK0 144/173


ワーワー‼

イエー‼

「あ、あの……ぐ、グヴィネヴィア先輩……」

グヴィネヴィア「………………」カァアア…

「…………ごめんなさい……」


ツネッ‼


「――イッ!!? ろ、ロザリアさんっ!?」

ロザリア「………………っ!」ゲシゲシッ

「ま、待ってよっ! 勝ったんだよっ!? よ、喜ぼう――」

ガシッ

カルラ「――いやぁ……こんな痩せた貧相な体で申し訳なかったなぁ……男くん?」ギリギリ…

「誰もそんなこと思ってないよっ!? ちょ、ちょっと話を……」

ヨルシカ「………………」ジーッ

「よ、ヨルシカさんっ! た、助け――」

ヨルシカ「………………っ」プイッ

「えぇっ!?」

アオニート「……いやぁ、最高だったぜ」グッ‼

「ぐっ……最初っからこれが狙いだったんだね……っ!」

「こ、この……ッ!!」

グイッ

ロザリア「………………っ!」ギュゥウ…

カルラ「まぁまぁ……、ちょっと話し合おうじゃないか、男くん……なぁ?」ニッコリ

「あぁ……、うん…………――――」




――――こうして、体育祭は青組の優勝に終わったが、その後数カ月の間、男は巨乳好きという話だけが広まった。


523 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/20 18:04:12.37 mz4R+v4B0 145/173


『ロザリアの日常』

―――ロザリアの部屋


チュンチュン…


ロザリア「………………」ガバッ‼


ロザリア「………………っ」セッセッ


ロザリア「………………」シュイィイイン…




―――男の部屋


シュイィイイン…


「………………」グー…グー…


ロザリア「………………」…ィイイン


ロザリア「………………」スクッ


「………………うーん……」スピー…


ロザリア「………………」ジーッ…


ロザリア「………………っ」グッ


カチャカチャ…

ジューッ…

チーンッ


――――――

――――

――

526 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/20 21:23:18.86 mz4R+v4B0 146/173


ユサユサ…

「――………………んー……」ムクッ

ロザリア「………………っ」ニコッ

「……あぁ……おはよう……」

ロザリア「………………!」

「あっ……うん。ありがとう……」

ロザリア「………………♪」

「お、おいしいよっ」

ロザリア「………………」カチャカチャ…

「………………」

「――ね、ねぇ、ロザリアさんっ」

ロザリア「………………っ」ピクッ

「あ、えっと……なんていうかな……。う、うれしいんだけどさっ?」

ロザリア「………………」

「や、やっぱ、こういうのってあまりよくないんじゃないかなぁ……って……」

ロザリア「………………」バリバリッ…‼

「…………思ったり……思わなかったり…………あの…………」


ロザリア「………………」バチバチッ‼


「――って、言うのは冗談でっ!! い、いつもありがとうねっ?」ニゴッ


ロザリア「………………っ♪」ニコッ

「あ、あはは…………――」

ロザリア「………………」カチャカチャ…




ロザリア「――………………っ!」フリフリ

「う、うん。学校でね……」

528 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/20 21:57:22.58 mz4R+v4B0 147/173


ガチャ…

バタンッ


ロザリア「………………」ゴソゴソ


ガチャリ


ロザリア「………………~♪」



――――――

――――

――




ヨルシカ「――あら、ロザリアさん……。どこか出かけてたんですか?」

ロザリア「………………!」

ヨルシカ「さ、散歩……? ろ、ロザリアさんが……??」

ヨルシカ「――あっ、ご、ごめんなさいっ! そうですよねっ、朝のお散歩も気持ちがいいですもんねっ?」

ロザリア「………………っ♪」

ヨルシカ「……ふふっ、ロザリアさんも変わりましたねっ」

ヨルシカ「…………あれ、でも……。『家路』使えましたよね? 最近使ってるの見たことないですけど……」

ロザリア「………………っ!」

ヨルシカ「一つしかできない……?? ……えっと、それは……――?」

ロザリア「………………っ」

ヨルシカ「あ、あぁ、そうですね。学校の準備をしないと……」

ロザリア「………………♪」

ヨルシカ「………………」

ヨルシカ「……まぁ、良い変化ですよねっ。ふふっ……」


――――――

――――

――

531 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 15:30:15.01 iRRBAEcC0 148/173


―――そして、時は流れ……


キンッ‼

ドンッ‼


アオニート「――ぐっ……!!」ドシャ

スッ

アオニート「……ま、マジかよ……」ガクリッ

ジークリンデ「う、ウソ……っ! 男くんの勝ちよっ!」

「はぁ……はぁ……!! やった……!」

ロザリア「………………っ!」

ヨルシカ「すごいですっ! 純粋な実戦でアオニートくんに勝っちゃうなんて……」

アオニート「……ったはぁ……!! ……まさか、負けるとはなぁ……」ドーン…

「いやぁ……、自分でもびっくりだよ……」

ジークリンデ「ホークウッドはこんなやつだけど、実戦だけでいったら上位の成績なのに……」

ヨルシカ「……それに、このまえ奇跡検定も2級とってましたよね……。もう、私が教えてもらう立場になってしまいそうです……」

ロザリア「………………っ」

「いやいや! グヴィネヴィア先輩とか、ヨルシカさんロザリアさん、ジークリンデさんがよく教えてくれたからだよっ!」

アオニート「でも、魔術も2級とったんだっけ?」

ジークリンデ「呪術もとってたよねっ? ……すごいよ。天才ってこういう人のことを言うんだね」

「い、いや、そんな大げさな事じゃ……」

ポンッ

アオニート「――やめろよ。じゃあなんだ、最後の頼みの綱だった実戦までも負けた俺の立場がねぇじゃねぇか……」

「あ、あぁ……ごめん……」

アオニート「あぁーっ!! 見てろよ、男っ!! 次やるときは絶対に負けないからなっ!!」

「……うんっ! 俺も負けないように頑張るよっ!」

ジークリンデ「無理に決まってるでしょ……。剣しか使えないあんたとは違って、男くんはどんな武器でも使えるんだから……」

アオニート「あぁんっ!? うるせぇよっ! 一つを極めれば、なんとやらっていうだろっ!!」

「あ、あはは……――」

532 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 15:31:00.34 iRRBAEcC0 149/173



アオニート「――それじゃ、また明日なー」

「うん、じゃあね!」

ガチャ
バタンッ

「……ふぅ……」


(――この学校に入学してから、もうすぐで一年が経つ)


(どうにかして帰れないかといろいろ考えたこともあったけど、なんだかんだでここまで来てしまった)


(やっていけるかと不安に思っていた日々もあったけど……。不思議なことに、やってこれた)


(――と、いうより、自画自賛するわけではないのだけど、なんでもできてしまうのだ)


(魔術も、奇跡も、呪術も。……しっかりと、授業を受けて、教えてもらいながらやるとだいたいできてしまう)


(逆に、俺から見れば、何故みんなができないのかよくわからないほどに)


(武器の使い方もそう。武器を握り、何回か使っているうちに、なんとなくその武器の使い方がわかる)


(でも、周りの人はそうではないみたい……。だから、なんか変な感じだ)


(休日とかに特にやることもないから、みんなが薦めるままに試験とかを受けていたら、資格をとれていたこともあるみたい……)


(――まぁ、何に使えるのかもよくわからないんだけど……)


ドサッ

「でも……、もう帰れないのかなぁ……」


(やっぱり、寂しくはなる。このままでいいんだろうか……)


(最初と違って、この世界の居心地が悪いわけではないけど……)


(俺は…………もう………………――)


――――――

――――

――


533 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 15:31:30.76 iRRBAEcC0 150/173



―――学校

ワイワイ

ガヤガヤ

アオニート「――……そういや、そろそろあの季節だなぁ」

「…………? ……焼き芋とか?」

アオニート「ちげぇよ。……もうすぐ三年生は卒業だろ?」

「あぁ……まぁ……そうだねぇ。……在校生で何かやるの??」

アオニート「在校生でっていうか……。――あぁ、そっか。なんか懐かしいな、これも」

「な、なにが……??」

アオニート「いやさ、最初は男が何も知らなかったから、よく教えてやってたよな」

「あぁー、そういうことね……」

アオニート「しっかし、これも知らないとはなぁ……」

「ま、まぁまぁ……。じゃあ、あの時みたいに教えてよ」


アオニート「――三年生の卒業記念にさ、演劇をやるんだよ」


「演劇……?? え、演劇って……あの??」

アオニート「割と常識じゃないか?」

「あぁー……そう……だったような気も……しなくも……ないような……」アハハ…

(……まぁ、でも……。元の世界にもそういう学校が、探せばあるのかもしれない……かな?)

アオニート「まぁ、一年生に名前の付いた役なんて滅多にもらえるもんじゃないから、気楽にやればいいんだよ」ハハッ

「……ん?? 誰がやるの??」

アオニート「誰がっていうか、学校全体でやるんだよ」

「へぇー…………」

(体育祭とか、文化祭みたいなもんなのかな……)

(しかし、何をやるんだろう……? まさかシンデレラとかじゃあるまいし……。まぁ、その時わかるのかな……――)

――――――

――――

――


534 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 15:32:00.64 iRRBAEcC0 151/173


―――放課後

キーンコーンカーンコーン…

「――よぉーっし……。今日も終わった……」

アオニート「男は今日も委員会か?」

「まぁね。アオニートくんも?」

アオニート「あぁ、いつかお前に勝つためにトレーニングもしねぇとな」

「あははっ、負けてらんないね……――」


ピンポンパンポーンッ


『えー、生徒の呼び出しをします。――……一年生の男くん。一年の男くん。至急、学園長室のほうへ来てください』


ピンポンパンポーン…


「えっ……俺?」

アオニート「なんだ、なんかやったのか?」

「いやっ……。なにもやってないとは思うんだけど……」

「――ま、まぁ、とりあえず行ってくる」

アオニート「おーう。じゃ、また明日なー……」




―――学園長室前

「――ふぅ……。なんか緊張するな……」

「よしっ……!」

トントンッ

「し、失礼しますっ!」

ガチャ…

「……あ、あれ……っ??」

グヴィネヴィア「あぁ、こんにちは、男くん」ニコッ

グウィンドリン「やぁ、男くん」

「な、なんで先輩方が……??」

535 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 15:32:34.05 iRRBAEcC0 152/173



グウィン「――……ほう。君が男くんかね?」

「……っ! は、はいっ」ビシッ

(う、うわぁ……。こんな学園長先生をまじまじと見たのは初めてかも……)

グウィン「ふむふむ……。なるほどな……」ムム…

「………………??」オドオド

グウィン「ほうほう……。うむ……たしかに……」ムムム…

「えっ…………あ、あの……??」

グヴィネヴィア「……ごほんっ。……お父様」ボソッ

グウィン「――おぉっ! いかんいかんっ、すまんな男くん。はっはっは……」

「は、はぁ……」

グウィン「……さて、君を今回呼び出したのは、君に是非にと頼みたいことがあってな」ホッホッホ…

「た、頼みたいこと……ですか??」

グウィン「うむ。……今度、三年生の卒業制作で演劇をやるということは、もちろん知っているな?」

「は、はいっ。もちろんです……」アハハ…

(よかった……。ちょうど聞いてて……)

グウィン「とはいえ、君も一年生だからあまり知らないかもしれんが……。通常ならば、この演劇は三年生が主体となってやるものなのだ……――」


グウィン「――が、しかーっしっ!!」


「…………っ!」ビクッ

グウィン「今回……ワシの頭に、まるで雷のごとき衝撃があってなっ! とても素晴らしい物語を思いついたのだっ!!」

「あっ……と、いうことは……学園長先生が脚本を……??」

グウィン「その通りッ!!」グワッ‼

(す、すごい勢いだな……)

グウィン「……しかし、これには問題があってな」

「問題……?」

グウィン「うむ……。脚本はできたのだが……、これが大作でな。とても今年の演劇だけに収められなくなってしまったのだ……」

「あ、あぁ……そうなんですかぁ……」

グウィン「――だから、思い切って三回に分けることにしてな」

536 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 15:33:32.77 iRRBAEcC0 153/173


「は、はぁ……分ける……」

グウィン「うむっ! 実にワシとしても心苦しいわけではあるのだが、しかして――っ」

グヴィネヴィア「――お父様。……そろそろ本題に」

グウィン「おぉ、そうだなっ!」

グウィン「……男くん、君には……――」




グウィン「 主役をやってもらいたい 」




「…………はっ??」

グウィン「三年生の中から主役を選ぶとなると、毎年主役が変わってしまうのがどうもワシのイメージとは離れてしまってな」

グウィン「ならば、と。初の試みではあるが、一年生である男くんに主役をやってもらいたいのだ」

「ちょ、ちょっ……ちょっと待ってくださいっ! な、なんで俺……っていうのは、置いといて……」

「も、もしかして、それだと……三年間、俺に主役をやれ……ってことですかっ!?」

グウィン「うむっ、理解が早いなっ」

「む、むむむむ無理ですよっ!!? い、イヤですっ! お断りしますっ!!」

グウィン「――今回、一年生の中から主役を探すとなったとき、真っ先に名前が挙がったのが君だ」

「な、なんで……」

グウィン「多くの先生方が君の名前を言うのだ。ミルドレット先生、クラーナ先生、レア先生、バンホルト先生……そのほかにもたくさんの先生方がね」

グウィン「そして、ここにいる我が子たちにも、一年生の中にいい子は居ないかと聞いてみると、なんと二人そろって君の名前をいうのだ」

「せ、先輩……?」

グヴィネヴィア「私は、男くん以外には居ないと思っています」ニコッ

グウィンドリン「私もそう思っている」

グウィン「勉学の成績も優秀そのもの。それに加えて、実戦、奇跡、呪術、魔術……、その全てが一年生の中では上位の実力だそうじゃないか」

グウィン「こう見えても、ワシは人を見る目はあると自負している」

グウィン「……そして、いま会ってみて確信した。ワシも君になら主役を任せられるとな……」

「……で、でも…………」

537 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 15:34:03.15 iRRBAEcC0 154/173


トントンッ

ガチャリ…

グウィン「――おぉ、ユリア教頭先生」

ユリア「いや、遅れてすいません。……やぁ、男くん」

「こ、こんにちは……」

(……ユリア先生と……誰だろう? 見たことない女の人……)

ユリア「ははっ、その様子だともう用件は伝わったようだ」

グウィン「そうだそうだ、ユリア先生も男くんのことを強く推していていてな」

「えっ? そ、そうなんですか……?」

ユリア「言ったろう? ……君には素質があると」

「――あっ……。あれって、そういう……」

ユリア「……さて、どうですか? この子は……」


「…………確かに。この子なら大丈夫でしょう」


グウィン「おぉ、それはよかった。これはこれは、火防女協会からわざわざ……」

火防女「いえ…………」

(ひ、ひもりめ……?? な、なんだ……なんか話が大きいんじゃないか……!?)

ユリア「火防女協会のことは……。――まぁ、追々でいいだろう」


グウィン「――それで、引き受けてくれるかな? 男くん」


「い、いや……でも…………」


グヴィネヴィア「男くん……心配しないで」

グウィンドリン「……大丈夫だ」

ユリア「……さぁ、どうする?」


「…………お、俺は……――」


――――――

――――

――

538 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 15:34:37.81 iRRBAEcC0 155/173


―――次の日の朝:教室


ワーワー

ザワザワ…

アオニート「――マジかよッ!!? お、お前が主役ッ!??」

ヨルシカ「す、すごいですよっ! たぶん、初めての事なんじゃないですかっ?」

ロザリア「………………っ!」

カルラ「さすがだな……」フフッ

ジークリンデ「……でも確かに。一年生の中から選ぶとなると、男くん以外には居ないよね……! おめでとうっ!」

「あ、ありがとう……? よく、わかってないんだけど……」

(……あの後結局、場の空気からイヤとは言えなかった……)

「ま、まぁ、でもっ! やるからにはしっかりやらないと……だよね」

アオニート「おいおいっ。そんな弱気で大丈夫かよ」

「弱気っていうか、正直自信は無いよ……」


ガララッ


ミルドレット「はーい、みんな席についてー。……それじゃ、出席をとります――」




ミルドレット「――うん、連絡事項はこんなところかな……」

ミルドレット「……では、みんなも気になってると思うけど、今年の演劇のことについて話をしたいと思います」

ワーワー
ザワザワ

ミルドレット「まずはっ、今年の主役……。異例で一年生の中から選ぶことになりましたが、なんと我がクラスの男くんに決まりましたっ! はい、拍手!」

ワーワー‼
パチパチパチパチッ‼
スゲー‼

「あ、あはは……」

ミルドレット「――それじゃ、みんなの役割の書いてある紙を配ります。みんな、ちゃんと目を通してねー」

アオニート「なんかワクワクするな……。どんな感じなんだか!」

「そ、そうだね。本当、どんな感じなんだろう……」

539 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 15:35:33.67 iRRBAEcC0 156/173


ミルドレット「――これで行き渡ったかな? まぁ、一年生は雑用の仕事が多いかもしれないけど、責任をもって行動しましょう」

ハーイ
ザワザワ

ミルドレット「それでは、これでHRを終わりにします――」


「あ、俺には紙ないんだ……。アオニートくんはどんなことをやるの?」

アオニート「え、えっ!? あ、あー……。――き、気にすんなよっ! お前は自分の事だけ気にしてろって!」

「そ、そう……。なら、まぁ……詳しくは聞かないよ……」

ジークリンデ「――お、男くんっ!! やったよっ!」

「えっ? ジークリンデさん……どうしたの?」

ジークリンデ「私ねっ、役をもらえたのっ!」

「ほ、本当にっ? うわぁ、どんな役なの?」

ジークリンデ「えっとね……――」


ジークリンデ「ジークマイヤーさんも出るんだけど、私はその娘役なんだってっ!」


「へ、へぇー……?」

(娘役……。……しかし、まったく何も聞かされてないけど……。どういうストーリーなんだろう……?)

ジークリンデ「きっと、ジークマイヤーさんが私を薦めてくれたのかな。うわぁ、一年生で役をもらえるなんてっ」

アオニート「……ふんっ、見た目が奇抜だからだろ」ボソッ

ブンッ‼

アオニート「――うおっ!? あっぶねぇなっ!!」

ジークリンデ「あら、ごめんなさい。……で、あんたはどんな役割なのよ?」

アオニート「あぁっ!? うるせぇな、お前に言う義理はねぇ」

ジークリンデ「そうね。私もあんたのことに興味ないから、言わなくてもいいわ。……まあ、男くんと私の邪魔はしないでよね?」フンッ

アオニート「お? よし、喧嘩か? いいだろう、やってやるよコンチクショーっ!!」

ワーワー
ギャーギャー

「はぁ、一年たっても変わらないなぁ……」アハハ…



540 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 15:36:09.29 iRRBAEcC0 157/173


「――ヨルシカさんと、ロザリアさんはどんな役割なの?」

ヨルシカ「ふふっ、私たちは雑用ですね。……えっと『罠を踏んだ時に出てくる矢の補充役』です」

ロザリア「………………」コクコクッ

「え、わ、罠っ!?」

(ど、どういうことなの……!?)

ヨルシカ「まぁ、一年生はだいたいこういう雑用が多いと思いますよ?」

「へ、へぇ……。カルラさんも?」

カルラ「あぁ、私も似たようなものさ」

(いや、罠がでてくるって……?? 俺、なにやらされるの……)


カーク「――男くん」

「あ、あぁカークくん……。どうしたの?」

カーク「実は、僕も役を貰えたんだ」

「そ、そうなんだっ! どんな役なの?」

カーク「あー…………いや、ごめん。やっぱり内緒にしておくよ。……ビックリさせたいからさ」

「び、ビックリ……? そ、そっか……、わかった。楽しみにしてるよ」

カーク「……うん。楽しみにしててね。フフ……フフフフ……」スタスタ…

「な、なんか……怖いな……」

「――オーベックくんはどんな感じなの?」

オーベック「俺も雑用だ。お前と違って目立ってもないしな」

「お、俺だって、目立ちたくて目立ってるわけじゃないよ……」


ピンポンパンポーンッ

『男くん、男くん。学園長室まで来てください』

ピンポンパンポーン…


オーベック「お呼びだぞ。……たぶん演劇の事じゃないのか」

「あぁ……そうかな……?」

――――――

――――

541 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 15:36:36.90 iRRBAEcC0 158/173


―――学園長室前

「――あれっ、グヴィネヴィア先輩。グヴィネヴィア先輩も……?」

グヴィネヴィア「あぁ、男くん。私も呼ばれまして、調度いま着いたところなんです」

「そうなんですか。……そうだ、グヴィネヴィア先輩は何か役を……?」

グヴィネヴィア「ふふっ、私は『主役に大切なものを渡す』役です。……楽しみですね」

「へぇー……。……それにしても、俺は物語について何にも知らないんですけど……。なにか知ってます?」

グヴィネヴィア「さぁ……? もしかしたら、それを話すために呼んだのかもしれませんし、とりあえず中に入りましょうか」

「あ、そうですね」

トントンッ

ガチャ…

「失礼します。……って、あ――!?」


アルトリウス「――おっ、やっと主役がきたね」


「……先輩も呼ばれてたんですかっ?」

(……というか、思ってたより人がいる……。みんな三年生の人なのかな?)

アルトリウス「あぁ……。まぁ、詳しくは言えないけど重要な役をやることになってね」

「そ、そうなんですか……」

グウィン「おぉ、来たか男くん。……これで重要な役は集まったな」

グウィン「まぁ、他にもゴーくんとかにも頼んでいるが……。彼はここに入れないからな、後で伝えるとしよう」

グウィン「――それでは、諸君。いまここに居るのは、重要な役目を持っている者たちだ。……今回の演劇は君たちにかかっているといっても過言ではない」

グウィン「だがもちろん、他にも頑張ってくれる生徒たちがいる。そして、君たちは彼らが居てこそのものだということを忘れないでほしい」

ハイッ‼

グウィン「……では、それぞれに台本を渡そう」

ザワザワ…

「――…………あれ?」

「あ、あのっ! じ、自分のが無いみたいなんですが……」

グウィン「――おぉ、うっかりして言うのを忘れていた。……実は、君にはないんだ」

「へっ??」

542 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 15:37:05.77 iRRBAEcC0 159/173


グウィン「ふっふっふ……。この演劇の面白いところはな、男くん……」

グウィン「何も知らない主役……というところにあるのだよ」

「……は……はぁ……?」

グウィン「何も知らない主役ということは、何も知らない観客たちと同じになる。……いわば、観客も主役になるのだ」

「………………」

(まぁ……わかるような……わからないような…………)

「……で、でも……。さすがに無理がありそうなんですけど……」

グウィン「大丈夫だ。物語はそういう風にできているからな」

「うーん…………」

グウィン「気持ちはわかる。……だが、そんな君を支えるために、彼らも居る」

「………………」

グウィン「男くんが笑う、怒る。座るのか、立つのか。それとも歩くのか、走るのか……。それでたとえ転ぼうが、すべてが物語になる。……素晴らしいとは思わないか?」

「………………と、いうことは……――」


「全部、アドリブってことじゃ……――」


グウィン「――さてっ、みんな帰ってしっかりと読みこんできてくれたまえ」

「いやいやいやいやっ!!? これはあまりにも乱暴な気が……!!」

ポンッ

アルトリウス「――さっ、委員会に行くぞ」

「えぇっ!? い、いや、行きますけど……、行きますけどもっ!」

アルトリウス「まぁまぁ、それをカバーするために僕たちが居るんだから、どーんと大船に乗ったつもりで居なよ」

「…………わ、わかりました……」シブシブ…

(でも、本当に大丈夫なのかな……?)


――――――

――――

――



543 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 15:37:57.44 iRRBAEcC0 160/173



―――さらに時は経ち……本番当日


ザワザワ…
ワーワー
ジュンビスルゾー‼


「――うわぁ……」

(なんか…………想像してたのと全然違うなぁ……)

アオニート「おう、男。……いよいよ当日だな」

「あ、あぁ、うん……。でも、アレだね……。すごいスケールだね……」

アオニート「まぁ、それが見どころだしな」

アオニート「いやー、しかしお前と出会って、もう一年経つんだな……。早いもんだぜ」

「……そうだね。入学式で、話しかけられたときは怖かったけど」

アオニート「はぁ!? なんでだよっ、怖い要素ないだろ!?」

「あははっ、あの時は不安でいっぱいだったからさ」

アオニート「ふーん……」

「――しっかし、それにしても本当にストーリー教えてもらえないとは……」

アオニート「らしいなー。……俺も役割しか教えてもらってないし」

「というか、今更ではあるんだけどこれは演劇と言えるのかな」

「演劇ってさ、もっとこう……、舞台の上でお客さんの前でやるものじゃない??」

アオニート「…………あぁ、だからいいんだろ?」

「……え? どういうこと??」

アオニート「だから……――」



アオニート「――ここが舞台で、客もいるんだから」



「………………えっ?」

ホワァン…

「――わぁっ!? な、なんだ、文字が出てきた……」


544 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 15:38:27.95 iRRBAEcC0 161/173


アオニート「おっ、それはアレじゃないか? なんか聞いた話だと、主役を務める人にしか見えない字があるらしいぜ」

「そ、そんなのあるんだ……」

アオニート「そろそろ本番だから見えるようになったのかもな」

アオニート「多分、なんかアドバイスとか書いてあるんじゃね?」

「へ、へぇー……そうなんだ……。えっと……――」






『帰りたい』





「――――えっ……?」


『絶望』                            『やっちまった…』

 『悲しみ』              『よく考えろ』


『またここか…』    『助けてくれ…』                     『無駄』


(なんだよ……これ……)

(しかも……これって…………――)



「――俺の……字……?」


(そんな……っ。こんなところ、来るのも初めてなのに……っ!??)


『がんばれよ』                             『ここからが本番だ』


         『立ち止まるな』           『そんな馬鹿な…』


(…………でも、間違いない。……これは、俺の字だ……)



545 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 15:39:22.64 iRRBAEcC0 162/173


『帰りたい…』        『太陽万歳』

       『心が折れそうだ…』        『よく考えろ』

『諦めろ』

 『立ち止まるな』      『夢みたい…』        『勇気』


「…………俺は……ここに来るのが……初めてじゃ……ない……?」


「――おいっ」


「――――ッ!?」ビクッ


アオニート「それでよっ! なんて書いてあるんだ??」


「あ……あぁ……えっとね……」


「………………」


「――『がんばれ』とか、そんなことだよっ」


アオニート「あー、そうなのかー。なんだつまんねー」


「あはは……。――ね、ねぇ、アオニートくん?」


アオニート「んー?」


「……去年も演劇ってあったんだよね……? 去年は誰が主役だったの?」


アオニート「おいおい、俺だって今年から入ったんだから、知るわけねぇだろ?」


「……そ、そう……だよね……」


ソロソロイキマースッ


アオニート「――おっ、そろそろか。じゃ、俺も行くわ」


「うん……」


アオニート「…………あっ、そうそう――」


546 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 15:40:41.98 iRRBAEcC0 163/173


「えっ?」


アオニート「いつだかに言いそうになっちまった事があるんだけどよ」


アオニート「俺が三兄弟ってことは言ったよな?」


「あ、あぁ……そういえば、聞いた気がする」


アオニート「俺んちは代々やらなきゃいけないことがあってな」


「やらなきゃ……??」


アオニート「あぁ……――」



アオニート「 ――監視と説明……ってな 」



「……そ、それって……どういう……?」


アオニート「――まっ、アレだ。俺の兄貴が出るからよろしくって事だよ。……じゃ、今度こそ行くわ」


「ま、待っ――。ダメだ……意味がわからないよ……」



『覚悟はできたか?』



「できるわけないだろ……。――でも……」

「なんだろう、不思議だな……。少し、元気が出たよ」ハハッ

「本番行きまーすっ」

「――やるしかないんだ……やろう……」


「きっと、そうすれば……俺がここに居る意味も分かるのかもしれないから……――」



         古い時代 世界はまだ分かたれず、霧に覆われ……――――

お わ り

547 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 15:53:04.00 iRRBAEcC0 164/173


これで終わりとなります。

半年以上の間お付き合いしていただき、ありがとうございました。

元々はグヴィネヴィアのあったかふわふわを見てたら思いついた物語でしたが、書いててなかなか楽しかったです。

今のところ、ブラボとかデモンズの設定でやる気はないです。

もし、書きたいという人が居るなら全然やってくれていいです。私も見たいです。

最初は文化祭とかもやるかなーとか思っていたんですが、さすがに長くなってきたのと、これ以上はダレてきそうなので、あとはみなさまの優秀なフロム脳にお任せします。

一応、補足説明みたいなものもこの後に出したいと思います。

ただ蛇足になるかもしれないので、見なくても大丈夫です。


まだ次は考えていないですが、もし機会がありましたらまた暖かく見守っていただけると嬉しいです。


さて、皆さんの操っていた主人公はいったい……――。

それでは。

550 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 16:15:42.07 iRRBAEcC0 165/173



・三年生


『グヴィネヴィア』

 主役に、王の器を渡す役。その後、卒業。


『アルトリウス』

 主役の前に立ちはだかるボス役。ただし、左腕で盾を持てなかったため、シナリオも多少変更された。その後、卒業。


『ゴー』

 主役を助けるサポート役。しかし、攻撃されると自慢のプロレスで応戦する。その後、卒業。


『キアラン』

 アルトリウスの親友役。その後、卒業。


『ソラール』

 初期から主役を助ける役。その後、卒業。


『ジークマイヤー』

 主役の助けとなる役。ジークマイヤーからの提案でジークリンデも役をもらえることになった。その後、卒業。


『ロートレク』

 ちょっぴりヒール役。少し本人は不満そう。だが、枠にはまっていた。その後、卒業。


『シバ』

 団長の役。アルヴィナには嫌われている。その後、卒業。


『エルドリッチ』

 グウィンドリンに振られたのが原因で、不登校になる。その後、出席日数も足りず、留年。

 不登校は次の年まで続いたが、また勇気を出してグウィンドリンに告白するも、玉砕。再び不登校になり、また留年。

 その次の年にはグウィンドリンが卒業したこともあり、学校をやめるかもしれないという噂になった。

 しかし、サリヴァーンとマクダネルの機転によって、その年の演劇にはグウィンドリンのコスプレで登場。

 主役の前にボス役として立ちはだかった。その後、グウィンからの温情もあり卒業。

551 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 16:53:34.06 iRRBAEcC0 166/173



・二年生


『グウィンドリン』

 主役のサポートする役。しかし、場合によっては主役と戦うボス役を二年生でこなす。
 
 三年生になった年も参加するかと思ったが、PTAから親の贔屓を受けてるんじゃないかと疑われ、自分から辞退した。

 三年生の時にエルドリッチに告白されるも、一蹴。その後、卒業


『オーンスタイン』

 グヴィネヴィアが居る部屋を守る役。グウィンから勝手に仲がいいと勘違いされ、二人で守ることになる。

 どちらか片方がやられた際のアクションはアドリブ。

 三年生の時にも、ちょっとしたボス役をもらう。その後、卒業。


『スモウ』

 グヴィネヴィアが居る部屋を守る役。

 三年生の時には悪さがバレ、役をもらえなかった。その後、卒業。


『ルカティエル』

 主役を助ける役。その後、卒業。


『ペイト』

 ダークレイス事件に関わっていたんじゃないかと疑われるも、証拠がなく御咎めなし。

 しかし、その後は生徒会にも入れず、一応役をもらい。普通に卒業する。


『パッチ』

 グウィンを落とし穴に落としたことにより、停学になる。
 
 しかし、その時グウィンに目を付けられ、役をもらえることになる。

 出席日数が足りず、一回留年はしたものの、三年間同じ役をこなす。その後、無事卒業。


『オルニフェクス』

 主役にアイテムを売ったりする役。その後、卒業。


『サリヴァーン』

 あれだけの事件を起こしたということで、留年。

 しかし、成績だけはよかったので何とか退学にはならなかった。

 だが、学校に復帰したときにはエルドリッチが不登校だったため、見捨てては置けず、また留年。

 その後、マクダネルと協力して何とかエルドリッチを復帰させる。

 そして、主役の前に立ちはだかる強力なボス役を演じる。演じるというよりは本気である。その後、卒業。


『マクダネル』

 エルドリッチと同じ。

 ある意味で主役をサポートする役。

 しかし、マクダネル本人が緊張でしゃべれなくなってしまうため、本番ではまったく言葉も動きもない役をすることになる。その後、卒業。

552 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 17:21:37.24 iRRBAEcC0 167/173



・一年生(主に三作目)


『ホークウッド(アオニート)』

 一年生の時には、主役が北の不死院に戻ってきたときにたいまつをもって襲い掛かる亡者役。

 二年生の時にも亡者役をするも、三年生の時には念願の役をもらえる。

 そして、場合によっては主人公に立ちはだかる役。三年生になり強くなったのを見せつける。その後、卒業。


『ロザリア』

 主役の助けをする役。

 しかし、男が居ないときは持ち場に居ないことが多い。その後、卒業。


『ヨルシカ』

 主役の助けをする役。

 三年の時には風紀委員の委員長となり、その後、卒業。


『カルラ』

 主役に色々教える役。

 本人たっての希望で牢屋の中で主役を待つ。その後、卒業。



『ジークリンデ』

 一年生の時に、ジークマイヤーの娘役として抜擢。

 しかし、二年生の時には雑用になり、三年生の時もジークバルドに役をとられてしまった。その後、卒業。


『ジークバルド』

 主役を大いに助ける役。

 男とは仲良しではないが、グウィンが男といつも一緒に居る(本当はジークリンデ)と勘違いして採用された。その後、卒業。


『オーベック』

 主役に魔術を教える役。

 元はローガン率いる隠密に所属していたが、一年生の時にローガンが問題を起こしたため、うやむやになる。

 本人は内心ホッとしている。その後、卒業。


『シーリス』

 主人公の助けを(嫌々ながらも)する役。しかし、ロザリアに近づくと敵対する。

 共闘するときも手を抜いてることが多い。その後、卒業。


『レオナール』

 主役に助言と敵対する役。

 演技とはいえロザリアに危害を加えたことになっているので、シーリスに雑巾扱いされる。その後、卒業。


『ヘイゼル』

 闇霊として主役に襲い掛かる役。しかし、少し不満そう。

 場合によっては主役の味方にもなる。その後、卒業。


『カーク』

 リーシュ先生のごり押しとその特徴的な見た目もあり、一年生の時から主役を襲う役をもらう。

 しかし、結局勝つことはできなかった。その後、卒業。

553 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 17:40:04.96 iRRBAEcC0 168/173



・先生とその他


『グウィン』

 脚本・監督を務める。

 そのためか、一作目と三作目で最後のボス役をする。

 職権乱用じゃないかと噂されるが、もみ消す。


『ミルドレット』

 一作目において主役を襲う役。

 しかし、その後は主役を助ける役になる。

 だが、張り切り過ぎて溶岩に突っ込み、倒れることもある。


『クラーナ』

 一作目において、主役に呪術を教える役とミルドレットを監視する役。

 ちょっとデレる。


『レア』

 一作目において、主役に奇跡を教える役。

 ペトルスと近くに居るのを嫌がるため、グウィンにペトルスだけ別行動にするように頼む。


『ペトルス』

 (一応)主役に奇跡を教える役。

 しかし、あまりいい扱いはされなかった。


『リーシュ』

 二作目において、主役に奇跡を教える役。

 裏の顔は闇霊クラブの長。カークを気に入っており、ごり押しで役につけさせた。


『ローガン』

 その実は学園を乗っ取ろうと画策する、隠密の長。

 ……しかし、一作目において本番前に酒を飲み、パンツ一丁で登場するという問題を起こし、謹慎することになる。


『グンダ』

 学園の警備員。

 二作目で鏡の騎士役として出る。その演技力をグウィンに買われ、三作目でも登場。主役を苦しめる。


『ユリア』

 三作目において、主役のサポート役。

 実は次期学園長を狙っている。そして、主役をたぶらかす。

 展開によっては最後に……。



554 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/11/30 17:46:55.51 iRRBAEcC0 169/173


こんなもんかな。


あと、私の頭の中の設定では、学年はループするようになってます。

男たちが二年生になった時には、新入生としてグヴィネヴィア達が入学しますが、気づくことができません。

そして、男が三年生になり卒業した時には、また一年生になります。この時に記憶が無くなります。

しかし、中にはループがわかっている生徒もいます。



依頼は出しますが、もし質問があれば答えます。


557 : 以下、名... - 2016/11/30 20:11:12.43 bEccSkUso 170/173

男が色んなことできたのはSLめっちゃ上げまくってたからなのか
とっくにカンスト世界ですねこれは

559 : 以下、名... - 2016/11/30 20:51:20.32 IUL9/gyEO 171/173

しかも時々別の周回の男にも侵入されるわけだな

563 : 以下、名... - 2016/12/01 08:20:20.04 Fv9aZSbhO 172/173

うちのは女なんですがそれは・・・

565 : ベルトコンベア ◆EwTy/47GRIPz - 2016/12/01 13:11:32.44 UYOF7L+A0 173/173


みんなありがとう。


>>563

すまん、>>554に書き忘れた。

ループしてるってことになるんだけども、ただそうすると留年してるエルドリッチ達とパッチの辻褄が合わないのよね。

「男」が三年生になって卒業するときに、ループすると同時にリセットされると思ってほしい。

そして、その時に「女」としてやり直すこともある。



「女」が主人公だったら、今度はアオニートとかオーベックとか、グウィンドリンもヒロイン(?)になる。

カークの「女」とロザリアの間で揺れる恋心とか、アオニートとジークリンデとの三角関係とか、シーリスのガチレズの対象にもなるから、そっちが主人公でも面白かったかもね。

記事をツイートする 記事をはてブする