407 : VIPに... - 2011/11/30 00:02:42.19 upkYjnbp0 1/226レス程頂きます。未来設定注意です。
それではよろしくお願い致します。
元スレ
▽【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-34冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1320320521/
僕のお母さんは近所でもとても評判の美人さんです。
みっちゃんもあっちゃんもいつもいいな〜って言ってくれます。
お母さんは意地悪で、イタズラを仕掛けてきては僕より子供みたいに喜んだりするけど、とっても優しくてあったかいです。
だから僕はお母さんが大好きです。
僕とお母さんはマンションの11階に住んでいます。
僕にはお父さんがいません。お母さんに訊くと
『宇宙皇帝と相討ちになった』
『カジキマグロを獲りに出て行方不明』
『二股かけて刺された』
お母さんはいつも違う事を言って僕にイジワルな顔で笑って煙に巻きます。
どれが本当なのか、どれも嘘なのかはわかりません。
だけどお母さんがあまり話したくないことだけはわかります。
僕のお家にたまに男の人が遊びに来ます。
お母さんはその人が来るといつもケンカしながらご飯を作ったり、ゲームをしたり、DVDを観たりします。
それから僕にお留守番をお願いして二人で出掛けたりします。
お母さんはその人の事を「大っ嫌い」と言うけれど、それは多分違うと思います。
だってその人が来る日になるとお母さんはいつもより二時間も早く起きます。
それからお化粧をして、綺麗なお洋服を着て、鏡の前で何度もくるりと回っては髪の毛をいじったりして、ソワソワしています。
お休みの日はいつも僕に起こされないと起きないお母さんがです。
僕はソワソワワクワクしてるお母さんはとても可愛いいと思います。
男の人はいつも僕を見ると何だか困ったような顔をしてから、ゆっくり頭をなでます。
優しくないのに僕はそんな時いつも胸が苦しくなります。
男の人は僕とお揃いです。
白い髪の毛も
赤い目も
「お揃いだね」と言うと男の人はますます困った顔をします。
お母さんは何も言わすに僕と男の人を見ています。
男の人はときどき女の子を連れて来ます。
僕と同い年の可愛い女の子です。
栗色の髪の毛に栗色の目をしたその子は何となくお母さんに似てる気がします。
女の子は男の人の子供で、やって来てもいつも男の人の手にしがみ付いて離れません。
男の人が僕の頭を撫でようとすると男の人の手を引っ張って怒ります。
お母さんが女の子を撫でようとすると女の子は逃げます。
そんな時お母さんは悲しそうな顔で笑います。
だから僕はあまりその子が好きじゃありません。
男の人が居なくなると、お母さんは
「あーあ、やっと帰ったよあの糞野郎。ミサカ肩凝っちゃった〜」
と言って僕を膝の上に乗せます。
僕の頭にあごを乗せて、それから力いっぱいぎゅっとします。
いつものぎゅっよりも強くて、苦しくなります。
でも、苦しいとは言いません。
だって、お母さんの手は震えてるから。
男の人が帰るとお母さんは一人でお風呂に入ります。
いつもは僕が嫌がっても一緒に入りたがるのに、その日だけは一人で入ります。
そして僕がサザエさんを観ている間、ずっと泣いています。
僕は聞こえないふりをします。僕にはきっと何もできないから。
お母さんの泣き声を聞かないように、クッションを頭に押し付けて、僕は目を瞑ります。
お風呂から出てくるとお母さんはいつものお母さんです。
イジワルで優しい大好きなお母さんです。
だけど、その日はいつもお母さんの目は僕とお揃いで真っ赤なままです。
男の人がやってきた日は、必ず僕とお母さんは一緒に眠ります。
お母さんは僕を抱き締めて、僕の髪に顔をくっ付けます。
僕はお母さんを抱き締め返して、お母さんの胸に頭を乗せます。
こんなに悲しむのに、お母さんは男の人をお家に呼ぶのを止めません。
だったら一緒に暮らせばいいのに、そう言うとお母さんは首を振ります。
「ミサ…お母さんにはアンタがいればそれで十分。それ以外は邪魔だよ、あはっ」
それはきっと本当のことで、嘘なんだと思います。
でも、僕はうなずくことにしています。
お母さんがそれでいいと言うなら、それでいいと僕も思います。
「僕はお母さんの側にずっといるよ」
そう言うとお母さんは本当に嬉しそうに笑って僕を抱き締めてくれるから。
だから僕はその度にそれ以上は要らないと、思っています。
僕とお母さん、僕達親子は二人だけで十分なんだと、そう思います。
414 : 6/6でした……orz - 2011/11/30 00:19:20.73 upkYjnbp0 8/22以上で投下終了です。
それでは失礼致します ノシ
418 : 補足 - 2011/11/30 00:30:49.10 upkYjnbp0 9/22一方さんは愛人別宅においてぬふふふというわけじゃなく番外さんの負の感情を抽出する機能が完全に無くならなかったので、結婚生活は難しいという理由で結婚せずに別々に暮らしてるという設定です。
番外個体が枕を涙で濡らしてることには変わりないのですが。それでは。
572 : VIPに... - 2011/12/07 21:41:16.54 dIYf3/cF0 11/22>>407-414を投下した者ですが、この前の番外通行未来設定の続編というか別視点のお話を投下してしまってもよろしいでしょうか?
573 : VIPに... - 2011/12/07 21:45:24.20 dIYf3/cF0 12/22途中で書き込んでしましました。
番外通行未来設定。恋愛感情捏造注意です。10レスくらい使わせて頂きます。
このミサカに“息子”という存在が自分にいることが不思議に思える。
こんなミサカが産み、育て、共に暮らす。
ドラマで母親が子供を抱き締めるシーンを鼻で笑って見ていた。
小説で子供が母親と他愛も無い喧嘩をするシーンで首を傾げていた。
そんなミサカが母親なのだ。
何かの冗談なのではないだろうか。
そう思いながら気が付けば6年が経っていた。
アイツは毎月会いに来る。
自分から来てくれとは言わない。
ただ、自分が電話をするとアイツは翌日やってくる。
「来て」とも「会いたい」とも「顔を見せて」とも言わない。
思い出したように電話を掛けてやると、仕事上不規則な生活を強いられている男の第一声は不機嫌な呻き声。
いい気味だと言ってやると、唸るように男の声が低くなる。
心地良さと高揚感に任せてからかい、口喧嘩のようなじゃれ合いを数分続ける。
そうするとアイツは翌日やってくるのだ。
ご丁寧に常に持参する手土産は、普段ミサカとウチの子が食べるのよりも0の数が一つ多いケーキの詰め合わせ。
熱した包丁で切り分けて息子と三人で食べる。
甘いものが苦手なヤツの分まで用意するのは当然嫌がらせだ。
息子の口の回りに付いたクリームを拭ってやりながら、小さくフォークで切り分け眉間に皴を寄せて口に運ぶ男をそっと盗み見ると胸の奥が温かくなる。
きっと、悪戯心が満たされているからだと、決め付けておく。
「医者ってそんなに儲かるんだ。どうせ金があるんだったら高級ホテルの宿泊券くらい持ってきなよ気が利かないな~勿論、ウチの子とミサカの二人分だけだよ?」
何か言いたげな顔はほんの一瞬、薄い唇から短く舌打ちを零すだけで会話を終わらせようとするのは変わらない。
こんな人相で患者に怖がられないのかが不思議で仕方が無い。
男の苦々しい表情の訳は知っている。
男からの養育費や生活費を断っているのは自分なのだ。
こんなケーキぐらいではコイツの気が済まないのだろう。
「言っておくけどさ、そういうのホント迷惑だから。負い目とかじゃなくて、貴方に飼育されるみたいじゃない。考えるだけでゾッとしちゃう」
自分のワガママであり、好き勝手やっているのは自分なのだからという言葉は言わない。
それは自分らしくないし、向こうも望んではいない。
何より、自分のやりたいことをやっているのに誰かへの依存の上にそれが成り立っているというのは好きじゃない。自分の力で成り立つからこそ、ワガママを通せる。
子供のような力技の理屈なのは今更だ。
アイツは家に来ると戸惑うようにおそるおそるあの子の頭を撫でる。
自分そっくりの真っ白な髪を、訝しげに見下ろしながらどう扱えばいいのかわからず途方に暮れるように。
傍若無人な嘗ての姿を存分に目の当たりにしてる身としては、小さな子供に困惑しきっているアイツの姿はミサカに備わり続ける嗜虐心を十分に満たしてくれる。
アイツが娘を連れてくる時は正直困る。
家に来るたびにアイツの袖を掴んだまま威嚇するように見上げてくるその少女が苦手だ。
その子はミサカがアイツの困る顔を堪能しているといつも鳶色の瞳で睨みつけてくる。
自分そっくりの鳶色の頭を何となく撫でてやろうとすると、少女は猫の子のようにするりとミサカの手から逃げていく。
可愛くない子だと思う。
当然だ、だってその子はミサカにそっくりなのだから。
子供達に留守を任せると二人で出かける。一時間か二時間。長いときは三時間を越す。
二人きりで出かけるといっても特別に何をするか決めているわけではない。
洒落たカフェでお茶をする訳でも、特集が組まれたデートコースを歩くのでもない。
ミサカの気まぐれにアイツが付き合うという形で気の向くままに歩くばかりだ。
公園のベンチでぼーっと過ごすこともあれば、真冬の誰もいない遊園地に足を運ぶこともある。
今日のように寒い日は、手近なホテルに足を運んで寝て終わる時もある。
ミサカもアイツも寒いのが嫌いなくせに、二人で出かけるときは買い食いばかりする。
人通りの少ない公園のベンチで、未だに美味さがわからぬ苦いばかりのコーヒーと、肉厚なホットドックを食べる。
わざとアイツの目の前でウインナーに舌を這わせてみたり、歯を立ててみたりする。
アイツは呆れたように軽く頭を小突いてくる。そしてミサカにとっては軽いジャブ程度の悪態をつく。
言葉にして出したことは一度も無いし、これからもきっと無いが、こんなじゃれ合いがミサカは多分好きだ。
互いに話すのは他愛ない近況報告。
暗黙の了解になっているのは、互いに自分からは聞かないということ。
彼はウチの子のことを、ミサカは向こうの子のことを。
それでも会話の端に登れば自ずと耳を傾けてしまうのは本能的な親としての性なのか、互いに抱く罪悪感なのかミサカにはわからない。
アイツの手が不意に頭に回されて抱き寄せられた。
熱い吐息が耳に掛かって、少し心音が早くなった気がする。
後頭部にある縫い跡を指でなぞる。
職業柄、触診を受けているような気がして、ムードも欠片もない。
そのまま、気分が盛り上がってったのかどうかはわからないが、壊れ物に触れるように髪を人差し指と中指でかきあげられた。
イヤだな。
昔のような嫌悪感や不快感が無く、ただ胸の奥をそっと引っ掻かれるような痛みが走る。
そんな自分がイヤで、そんな気持ちにさせる目の前の男がイヤだった。
不器用と臆病の塊だったのに随分と手馴れたものだ。なかなか女の髪に触れるのがサマになっている。
この六年の間に結構遊んだ?
そう言ってやると露骨に顔を顰めたので、僅かに溜飲が下がる。
イヤだな。
もう一度思った。
まるで、この男の恋人ヅラしたセリフだ。
自分から何もかも捨てておいて何を今更というのに。
ミサカは疲れることも煩わしいことも我慢することも嫌いだ。
アイツへの感情に、艶めいたものを自覚するようになってから同時に見出した結論。
どうやら自分が柄にも無く夢想したようなハッピーエンドは無理そうだという答え。
植えつけられた男への悪意を抽出するシステムは後遺症となって、男を嫌悪しようと、困らせようと常に心の秤を傾けるように働きかけ、自分がようやく手にした自分だけの感情との間の軋轢に自分が耐え続けられるとは思えなかった。諦めでも恐れでもなく、冷静に分析した予測であった。
自分の精神は自分が期待してた程強くはない。
それを耐えてでも側に居たいの、などというセリフは自分には逆さにひっくり返しても出て来ないし、気の利いたセリフで抱き締めてもらおうなどとこの男には期待も望んでもいない。
何より、そう思い詰めるだけの確信をあの頃の自分は持てなかった。
はじめて抱いた感情に付ける名には最後まで(仮)が付いていたし、この男にいたっては気づいてすらいない。
それでも望んだのは、浅ましい希望なのか、下卑た欲望なのかわからない。
嫌い、死ね、殺す、殺して、死にたい、死のう、憎い、気持ち悪い、消えろ。
その間に紛れ込ませるように呟いた「■している」と「■き」という自分の声は今でも耳の奥に沁み込んでいる。
汗と涙と熱で何もかもが溶けてわからなくなるような日を一ヶ月と一週間と十日過ごした結果はわかりやすい形で残った。
ミサカの中に生まれたミサカだけのアイツへの想いに付けるべき名。
それに確信がようやく持てた時には、隣りにいた男は消え、腕の中には彼そっくりの雪のような髪と肌を持った赤子がいた。
自分にそっくりの子が生まれたら殺そう。
彼にそっくりの子が生まれたら産もう。
男には告げず、自分ひとりでそう決めていた。
だから、もう一人を殺さなかったのは自分の譲歩であり、彼への感謝のつもりだった。
多分、誰にも理解出来ない形だっただろう。
彼だけは理解してくれると、期待していたのかもしれない。
消えたのは自分で、奪うように連れてきたのも、捨てて行ったのも自分だったが、何故か罪悪感は無く、ただ奇妙な安心感があった。
赤子が鳩の血のような紅い瞳を幾度も瞬かせるのを見て安心感は強くなり、そうして自分は街を出た。
「なァ……オマエさ、俺達と」
アイツの顔がすぐ近くにある。
くしゃりと眉を寄せて、目を細める癖、ホント嫌になるくらいあの子と同じ。
困って、無い物ねだりだってわかっててするあの子の顔と同じだ。
ミサカね、その顔結構好きだよ。
言ってあげないけど。
「何泣きそうな顔してるのさ。何、もしかしてショックだったりするのかな。第一位は仕事から疲れて帰ってきたら裸エプロンのミサカにおかえりのチューでもしてもらえる生活を妄想しちゃってたりするのかな。ばっかじゃねぇぇの?そんなのありえねーって!」
「オマエ」
「ミサカね、今の生活が凄く好き。折角鬱陶しいしがらみから離れて、気ままに自由に好き勝手に、それも貴方よりもずーっといい男と二人っきりで暮らしてるんだからさ。だから邪魔しないでよね。ミサカはさぁ……二人で、うん、二人がいいよ。あの子と二人、それだけで」
一緒には暮さない。
貴方があの子を持て余すのはわかるし、
ミサカもあの子を好きになれる自信が無いもん。
自分を好きになれない人間が、自分そっくりの存在を愛せるのか、試そうとする気は無い。
マフラーと鳶色の髪に隠された白い肌が見たくて、猫のような柔らかな髪に触れた。
同情なのか、流されただけなのかわからなかった感情が昂ぶるのがわかる。
多分、俺はこの女のことが■きなンだ。
感情に突き動かされるように言いかけた言葉は嘲笑で遮られた。
その言葉は強がりだ。
すぐにわかる。
そして、自分が彼女の強がりに気づいている事を彼女もわかっている。
互いに互いの強がりから目を背ける。
『お父さんと私、二人がいいよ』
6歳になったばかりの娘が大人びた横顔でぽつりと呟いたのは、此処に来る途中のバスの中。
その言葉が今のアイツの言葉に重さなる。
言いたいことを言い終えて歩き出したアイツの後ろ姿を眺める。
その後ろ姿は、誰かに肩を抱かれなければ立っていられぬ程か弱くはなく、
その歩みは、誰かと腕を組む程甘えたものでもなかった。
強いて、あの後ろ姿に付け加えるとすれば、そっとあの手を握る小さな手だけだろうか。
だから、思い知らされてしまう。
コレが俺達が俺達らしいままでいられる一番正しい距離だと。
584 : VIPに... - 2011/12/07 22:05:30.51 dIYf3/cF0 22/22以上で投下終了です。
一人称を最後までミサカにすべきか悩みましたが、アイデンティティですからね。
長々と失礼いたしました。 それでは ノシ