戦車喫茶ルクレール黒森峰支店…
エリカ「で、一体どういう集まりなのよ」
小梅「まあまあ、いいじゃないですか、女子会でたまには戦車から離れた集いってことで」
直下(仮名)「そうそう、ただ集まってお茶飲むだけで、ねえ隊長?」
まほ「まあこうやって休日に集まって親睦を深めるのも悪くないと思うがな」
元スレ
【ガルパン】逸見エリカの初恋
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1475402335/
まほ「でも、女子会とかお茶会とかいままであまり縁がなくて、こういう席ではどんな話をしてるんだ?」
小梅「まあ普通に世間話ですね」
直下(仮名)「あと、女子会の定番といえば恋バナでしょうか」
エリカ「ちょっと、恋バナって…」
まほ「恋バナか、女子校通いの上に実家があんなだから浮いた話なんて生まれてこのかた一度もないな」
小梅「いや、最近の話じゃなくても昔の初恋の話とか…」
まほ「ない」
直下(仮名)「そ…そうですか…」
エリカ(初恋か…、あの子は今頃どうしてるのかしら…)
彼の第一印象は、『男の子なのに戦車が好きなんて変わってるな』だった。
あれは私が10歳のときだった。夏休み、お盆で帰省する母とともに、彼女の実家のある茨城に行ったときのことだ。その日、私は叔父や従妹たちと一緒に近所で開催された戦車のイベントを見物しに行った。
正直、あまり興味はなかった。皆と離れ、所在なく場内をぶらぶらしていたとき、彼に出会った。
展示してあったポーランドの軽戦車を熱心に眺めていた少年に気付いた。男の子なのに戦車が好きなんて変わってるな、初めはそう思った。
でも、瞳を輝かせて一心不乱に戦車を眺めている横顔に、何故か惹かれた。
「戦車、好きなの?」
「うん!大好きなんだ!」
「変わってるんだね」
「そうかなあ?」
あの頃、今よりもずっと引っ込み思案で人見知りもひどかった私が、何故自分の方から声を掛けたのか、今でもよくわからない。旅先で気分が高揚していたのか、それともあの少年に何か特別なものを感じたのか。
今考えてみると彼の中に私に似た何かを見つけたのかもしれない。
「これはね、7TPっていってね…」
興味はなかったが拙い言葉で一生懸命に解説してくれたことがとても嬉しかった。その後、2人で手をつないで場内を回った。
展示してあった戦車を見て回ったり、地元企業の実業団チームの戦車に試乗させてもらったり、自販機でジュースを買って2人で分けて飲んだりした。
とても楽しかったことを、今でもよく憶えている。あの夏の一番の思い出になった。
でも、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。彼の両親が迎えに来たのだ。
「じゃあね!」
父親に手を引かれて、朗らかに微笑みながら手を振ってくれた。あの笑顔は忘れられない。彼が去ってから初めて気がついた。連絡先どころか名前すら聞いていなかったことを。
あの時、もし一歩踏み出して名前や連絡先を聞いていたら、今とは全く違った私になっていたかもしれない、今でも時々そう考えることがある。その後、しばらくの間は彼のことを思い出す度に、胸が締め付けられるような、切ないような感じになった。
それが初恋だというものかもしれないと思いだしたのは、だいぶ先だったが。
その翌年、私は小学校のスポーツ少年団に入って戦車道を始めた。
理由は2つあった。一つはその年から同級生になった少女と、一つ年上の彼女の姉の活躍に心の底から憧れたこと。
もう一つは、戦車に乗っていればまたあの戦車好きな変わった少年に会えるかもしれないと思ったこと。
でも、あれ以来彼には会えずにいる。今頃どうしてるのだろうか、今でも戦車が好きなのだろうか、思い出してそんなことを考える時もある。
(そういえば、迎えに来たお父さんとあの子の髪型が全く同じでちょっとおかしかったっけ、あの子、本当にどうしてるのかしら…)
まほ「おいエリカ、なにニヤニヤしてるんだ?」
エリカ「え?私笑ってました?」
小梅「思い出し笑いですか?いやらしいなあ」
直下(仮名)「男!?男のことですか!?」
エリカ「そそそそんなわけないでしょ!」
まほ「エリカって本当にわかりやすいなあ」
この後、3人掛かりで幼い頃の甘酸っぱい思い出を無理矢理白状させられた。当分の間はこれをネタにいじられると思う。こいつらいつか絶対に泣かせてやるわに。
大洗女子学園…
沙織「ねえゆかりん、大学選抜との試合の時に見せてくれたシュトゥルムティーガーの写真なんだけど…」
みほ「なんかその…、個性的な髪型だね」
優花里「それ言わないでくださいよ、自分の中では黒歴史の一つなんですから」
(そういえば、この写真撮った後、かわいい銀髪の女の子と知り合って一緒に遊んだっけ…、あの子、今頃どうしてるかなあ、私のことなんて忘れてるだろうなあ…)
終