関連
さやか「西木野先生」【前編】
さやか「西木野先生」【中編】

432 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/30 01:12:48.26 LodWDTYb0 299/477

ーーマミルーム・浴室ーー

ジャアアア

マミ(美樹さんが家出したって鹿目さんから連絡があった)

マミ(私も見回りをしたけど、途中で魔女に遭遇したり、
   結局見つける事は出来なかった)

マミ(魔法少女には他には分からない悩みもある。
   鹿目さんの話だと、例の上条君の事が関わってるのかも知れない)

マミ(恋愛の事は、正直分からない。
   でも、先輩として、
   あの美樹さんがそこまで追い詰められるのをフォロー出来なかった)ギリッ

マミ(先輩として、失格かも)カベドンッ

ーーマミルーム・リビングーー

マミ「………」カミフキフキ

スマホ チャーラララーチャーラララー

マミ「!?」タタッ

マミ「美樹さんっ!?」

433 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/30 01:18:05.61 LodWDTYb0 300/477



真姫「もしもし、巴マミさんですか?」

マミ「あなたは?」

真姫「私、西木野と申します」

マミ「………もしかして、西木野真姫先生ですか?
   上条君の主治医の」

真姫「ええ。家出した美樹さやかさんを今こちらで預かっています。
   なんでも、濁りを取るものを至急持って来て欲しい、との伝言です。
   お願い出来ますか?」

マミ「どちらに伺えばいいですか?」

ーー児童公園ベンチ付近ーー

真姫「巴マミさんですね?」

マミ「はい、西木野先生ですね?」

真姫「ええ」

さやか「ああ、ごめん、マミさん」

マミ「美樹さん、顔色悪いけど」

さやか「うん、なんかちょっと、
    アレが溜まり過ぎちゃったみたいで」

マミ「そう」チラッ

真姫「………」

434 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/30 01:23:30.91 LodWDTYb0 301/477


真姫「………さやかさんとは知らない仲でもないけど、
   立場上、家出少女を勝手に泊めるのは色々問題があるから、
   お友達ならそちらで引き取っていただいても?
   出来れば早急に保護者の方に連絡を入れて、
   それが無理ならまどかさんだけにも」

マミ「鹿目さんの事を?」

真姫「時々病院で会ってるから。彼女、心配してる」

マミ「分かりました、有難うございました」ペコリ

さやか「有難うございました」ヨロッ

真姫「じゃあ、くれぐれも体に気を付けて」

さやか「………はい」

スタスタスタスタ


マミ「………真っ黒じゃない」

グリーフシード ズグォォォォォォォ

さやか「ごめん、ちょっと無茶し過ぎて」

マミ「………男の子にでも振られて魔女相手に憂さ晴らしでもしてた?」

さやか「………そんなトコかな?」

マミキッ

435 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/30 01:28:43.76 LodWDTYb0 302/477


パアンッ

さやか「………ごめんなさい」ヒリヒリ

マミ「あ、こっちこそ、ごめんなさいね、その、
   本当は私がフォローしなきゃいけなかったのに、
   そんな、恋愛の事とかも」

さやか「ううん、あたしが悪い。
    マミさんの事だから、すっごく心配してくれてたの分かる。
    心配かけてごめんなさい」

マミ「お願いだからそんな無茶はしないで。
   感情任せで魔女退治なんてやってたら命が幾つあっても足りないんだから、
   そんなの私が許さない」

さやか「うん、もうしないよ。
    なんか、少しすっきりしたし、ソウルジェムも綺麗になったし。
    やっぱり、浄化すると随分楽になるんだ」

マミ「そう、良かった」

さやか「マミさんのグリーフシード使わせてごめんなさい」

マミ「………お家に帰り難いなら、今夜だけうちに泊まる?」

ーーマミルーム・浴室ーー

ジャアアアア

さやか「………ふうっ………」

436 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/30 01:32:33.22 LodWDTYb0 303/477


ーーマミルーム・リビングーー

マミ「………完全に、限界ね。
   どれだけ溜め込んでたのよ」ポイッ

QB キュップイ

QB「マミ」

マミ「何かしら?」

QB「西木野真姫には気を付けた方がいい」

マミ「どういう事?」

QB「さやかから魔法少女と魔女の事を聞き出している」

マミ「………なんですって?」

QB「さやかは精神的に相当不安定になっていたからね。
   それで、寄り添っていた西木野真姫が事情を聞き出したと言う訳さ」

マミ「………そう」

QB「さやかから事情を聞くかい?」

マミ「ううん、今はやめておく。
   美樹さんが話してくれるか、少し待ってみる。
   美樹さんの話でも、きちんとしたお医者さんだと思う。
   さっき直接話さなかったのも、考えがあるんだと思う」

QB「そうかい」

437 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/30 01:36:04.32 LodWDTYb0 304/477


 ×     ×

ーー朝 見滝原中学校・教室ーー

オハヨー
オハヨー

ほむら(結局、美樹さやかは見つからなかった)ファァ

ほむら(今回はどこに巣を作ってるのやら)

ほむら(まあ、いっそまどか達がその場面に直面していないなら………)ファサァ

スタスタスタ

ほむら「………」

ほむら「………」オメメゴシゴシ

ほむら「………………!?!?!?」

ドガッシャァァァァァァァァァンッッッッッッッッッ

中沢「わっ!?」

まどか「ほむらちゃんっ!?」

恭介「暁美さん?」

モブ女子A「暁美さんっ!?」

モブ女子B「ちょっ、大丈夫っ!?」

モブ男子A「白」

438 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/30 01:39:48.40 LodWDTYb0 305/477


「ありゃ? 大丈夫転校生?」

ほむら(な………………

    なぜ

    お前が

    ここにいるッ!?)

「もしもーし、聞こえてる転校生?」

ほむら(奇跡、ッ………………

    そんなものの

    存在をっ

    認めろと

    言うのかッッッッッ)

さやか「………マジで大丈夫? 保健室行く?」

ムクッ
スタッ
パンパン

ほむら「それには及ばないわ」ファサァ

さやか「あ、そう。
    ちょっと後で顔貸してくれる?」

まどか「さやかちゃんっ!!」

さやか「まどか………ごめん、
    心配かけて、それにひどい事とか言ったよね。
    本当にごめん。もう大丈夫だから」

まどか「うんっ」グスッ

439 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/30 01:43:14.27 LodWDTYb0 306/477


ーー見滝原中学校・廊下ーー

ほむら「無事、だったのね。
    随分追い込まれてたと思ったんだけど」

さやか「ん? 心配してくれてた?」

ほむら「………自惚れないで」

さやか「あ、そ。まあいいや。
    市立病院の西木野先生って、知り合い?」

ほむら「………昔、少しね」

さやか「そう。先生があんたと話したいって」

ほむら「西木野先生が?」

さやか「先生、魔法少女の事知ってるから」

ほむら「なんですって?」グッ

さやか「あー、うん、一般人巻き込んだのは反省してる。
    あんたが今言ったみたいにちょっと追い込まれてさ、
    それで、たまたま先生に助けてもらって、説明せざるを得なくなったと言うか」

ほむら「それで、私の事まで喋った、と言うの?」

さやか「そういう事だね。
    なんか、あんたの事気にしてたし、本当にごめん」

ほむら(………やっぱり、早めに消しておくべきだったかこの青魚)ギリッ

ほむら(………ま、そんな事本当に出来るなら苦労はしないんだけど、マドカァ)ハアッ

440 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/30 01:46:25.03 LodWDTYb0 307/477


ほむら「話は分かった。前向きに考えさせてもらう」

さやか「………どこのお役人よ?」

ほむら「そんなドジな話、すぐすぐ結論出せる訳ないでしょ?
    こっちだって色々考える事があるのよ」

さやか「ホントにごめん」

ほむら「もういいわね」

スタスタスタ

ほむら「………美樹さやか」

さやか「ん?」

ほむら「………なんでもない」

さやか「あ、そう」

コッコッコッ

ほむら(いのちが助かるにこしたことはないさ………
    あの漫画、昔、少しだけ憧れた………)

ーー夜 見滝原市立病院ーー

ピーポーピーポーピーポー

ーー見滝原市立病院救命医局ーー

医師A「先生、西木野先生」

真姫「え?」

医師A「以上ですか?」

真姫「ええ、引き継ぎは以上です」

441 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/30 01:49:51.89 LodWDTYb0 308/477


医師A「大丈夫ですか?」

真姫「ええ、大丈夫。今夜は中ぐらいにハードだったから」

医師A「そうですねぇ」

真姫「歳かなぁ、帰って休ませてもらうわ」タハハ

医師A「それでは、お疲れ様でした」

真姫「お疲れ様でした」

ーー病院廊下ーー

コッコッコッ

真姫(事故で搬送されて来てオペ室で死亡、泣かれたなぁ………)

真姫(重態患者は今後の病状も多分家族の生活も見込み最悪………)

真姫(もちろんやるべき事はやった。
   少しは慣れたつもりだったけど)

真姫(奇跡、かぁ………)

真姫(医者にとっては心の毒だよ)タハハ

真姫「………」カオパンッ

真姫「………ファイトだよっ………」ボソッ

ーー見滝原市内路上ーー

コツコツコツ

真姫「………」

442 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/30 01:53:16.69 LodWDTYb0 309/477


ーー公園内ーー

ザッザッ

真姫「久しぶり、でもないけど。
   今夜は、少しはゆっくりお話しできるのかしら?」

ほむら「………」

ほむら「………」スチャッ

真姫「!?」

真姫(銃、口………)

444 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/03 01:45:53.21 3YQmMVfh0 310/477

真姫(………銃口から煙………火薬の匂い?)

真姫(発砲した? いつ?)

真姫(銃口が反れた、少なくとも私じゃない?)

ほむら「いいから、ここから消えなさい」

真姫(何? 盾に拳銃を?
   制服っぽく見えるけど見滝原じゃない。
   つまり、ガチで魔法少女)

真姫(………なるほど………)

真姫「邪魔者、追い払ってくれた?」

ほむら「率直に言って、あなたも邪魔です」

真姫「ご挨拶ね」

ほむら「美樹さやかを助けていただいた、
    その事はお礼を言います」ペコリ

真姫「どういたしまして」

ほむら(やり難い………)

ほむら「………何を、どこまで知っているのか教えていただけますか?」

真姫「私が美樹さんから聞いたのは魔法少女と魔女の事ね」スッ

ほむら(………チャート図?)

445 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/03 01:51:07.14 3YQmMVfh0 311/477


真姫「願いをかなえるために魔法少女になる。
   魔女を退治してグリーフシードを獲得してソウルジェムの濁りを取る。
   ソウルジェムは魔法少女の魂で、
   肉体は魂を抜かれたゾンビ、と、表現する魔法少女もいる」

ほむら「………」

真姫「それから、キュゥべえ。
   魔法少女の契約相手、黒く濁ったグリーフシードを食べる。
   基本、素質のある少女にしかその存在を認知出来ない。
   私は、さやかさんを通して一度キュゥべえから聞き取りをする事が出来た。
   聞いた話から分かるのは、こんな所ね」

ほむら「………先生がそれ以上の事を知る必要はありません。
    もう関わらないで下さい」ペコリ

真姫「関わるな、と言われてもね………」

ほむら「そこまで分かっているなら理解出来る筈です。
    先生に、普通の人間、お医者さんに出来る事はありません。
    先生が私達に関わってもお互い何の利益もない。
    何も出来ない人にうろちょろされても迷惑なだけです」

真姫「………言う様になったわね」

ほむら「………ゴメンナサイ」

真姫「正直、嬉しいわよ。
   だからこそ、放っておけない」

ほむら「分からないんですかっ!?」スチャッ

真姫「おもちゃ、じゃないわよね」

ほむら「ええ。そして、私もあの頃の私じゃない」

真姫「殺せる?」ゴクッ

ほむら「出来ないとでも?」

真姫「人間の形をした人間を」

446 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/03 01:56:19.58 3YQmMVfh0 312/477


ほむら「!?」

真姫「どうしたの?」

ほむら「………何を知ってるんですか?」

真姫「知らないわよ、これ以上の事は何も。
   だって、これ以上の事を教えてくれる相手は誰もいないんだし、
   私が直接魔法少女として関わる事も出来ない」

ほむら「そう、ですか………」

真姫「ええ、だからさやかさんも知らない。
   だって、あなたは何も教えてくれない。
   それで、行く先々に現れるから意図が分からない、
   さやかさんはそう言っていた」

ほむら「………」ギリッ

真姫「巴マミさんは、グリーフシードが目的であなたが妨害している、
   と推測してるみたいだけど、
   あなたの行動を見るとそれは不自然だからさやかさんも疑問を持ってる。
   つまり、あなたの行動には他に動機がある。
   だけど、さやかさんやキュゥべえから聞いた魔法少女の話からは、
   その動機が見えてこない」

ほむら「先生が、それを知る必要があるんですか?」

真姫「暁美さんが契約を妨害していた理由、
   グリーフシードじゃなければ、最初はゾンビになるからだと思った。
   実際、その事も当初さやかちゃんは知らなかったみたいだしね」

ほむら「そうじゃないと思っているんですか?」

真姫「理由を言わずに契約を妨害していた、その事が引っかかった。
   わざわざ理由を言わず、確執を作ってでも止める理由なのかと。
   それに、それだけだと説明がつかない事がある」

ほむら「ですから、先生がそれを知る必要があるんですか?
    まどかや美樹さやかもそうですけど、
    興味本位で首を突っ込んだら、死にますよ。
    先生の思いがどうあれ、先生にはこの世界で身を守る術が無い」

447 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/03 01:59:45.33 3YQmMVfh0 313/477


真姫「見えない事、聞いていない事っ」

ほむら「先生っ!」

真姫「そして、言えない事。
   さやかさんは知らないから知っている事を話す事が出来た。
   本当に知っている人はそれを口に出す事が出来ない。
   違うっ!?」

ほむら「………どうして、そう思うんですか?」

真姫「色々あったけど、キュゥべえと話をした時ね。
   最良のコンディションを維持するためには
   常にソウルジェムの濁りを取っておく必要がある。
   ここで説明が止まっていた。

   今時、こんな説明で同意書取ってオペしてたら、
   そんな病院あっと言う間に裁判所に潰されるわ。
   そう、最良と最悪、それがあってもなくても、
   最悪の説明自体が存在しないオペなんてイミワカンナイ」

ほむら「………」ギリッ

真姫「そして、さやかさんの説明もそこで止まっていた。
   これは、恐らく大元であるキュゥべえの説明がそこで止まっていたため。
   そして、巴さんも同じ理由でそれ以上の事を知らないと思っていい。
   グリーフシードを使ってソウルジェムを浄化しなければならない、
   その本当の理由に就いて」

ほむら「先生は、その理由を知っていると言うんですか?」

真姫「知っている、とは言えないわね。
   多分、本当にそれを確かめる事が出来たなら、
   現状ではその時が私の命日になる」

ほむら「では、長生きを選択して下さい、お願いですから。
    あなたには関係ない」

真姫「………」ブチッ

448 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/03 02:03:17.49 3YQmMVfh0 314/477


真姫「良かった」

ほむら「え?」

真姫「それが願いなのかしら?
   それとも、魔法少女そのもののパワー?」

ほむら「………」クッ

真姫「私は暁美さん、ほむらちゃんに長生きして欲しかった。
   友達と笑って、恋をして、希望を、幸せな未来を掴んで欲しかった」

真姫「だって、とても素敵な女の子なんだもの。
   でも、可愛らしい笑顔はほんのわずかにこぼれるだけ、
   閉ざされた分厚い緞帳はぴくりとも動かない。
   それを望むには私も、そして医学も無力だった」

真姫「今、こうして目の前に元気なあなたがいる、その事はとても嬉しい」

真姫「その希望が絶望かも知れない、それが関係ない?
   どの口で言えるのよ?
   ええ、私は関わりだけで言えばほとんど他人かも知れないわね。
   だけど、それは私だけの事よ。

   もちろん、一番重いものを背負っているのはあなた。
   だけど、あなたの視界の片隅にいた無力な医者でもこうなの。
   他にあなたには、そして他の魔法少女達には、
   その視界には誰の事も見えないの?」

ほむら「………」

真姫「それが理由よ」

ほむら「先生が関わる理由ですか?」

449 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/03 02:06:54.49 3YQmMVfh0 315/477


真姫「あなたが理由を隠して契約を妨害していた理由。
   魂がソウルジェムになる、それだけでは決定打じゃないってね。
   そもそも、キュゥべえが隠していたとしても、

   魔法少女が何故その事を知らないのか?
   私が知っているだけでもさやかさんに巴マミ、サクラキョウコって子もいるみたいね。

   見滝原だけじゃない、他所にも魔法少女はいるかも知れない。
   そもそも、魔法少女が何時の時代からいたのかも分からない」

ほむら「………」

真姫「あなたには長生きして欲しい。
   そして、あなたは今、治療困難だった心臓病を克服してここにいる。
   だけど、魔法少女の中では、基本的な情報すら断絶している。
   アポトーシス」

ほむら「?」

真姫「私の立場で、一番最初に想像するのがドーピングね。或は癌細胞。

   つまり、魔法少女になったが最後、
   実は、契約で取引をした時点で寿命が半分になってるとか、
   そのマジカルなパワーを引き出すために短期間に寿命を使い果たして、
   後に何かを伝える暇も無くこの世を去ってしまう。
   当然、キュゥべえはそんな事は説明しない。

   いい線行ってると思うんだけど、これもちょっとおかしい。
   それなら尚の事、本人に説明をすれば遠ざかる筈」

ほむら「………」アセツツーッ

450 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/03 02:10:14.25 3YQmMVfh0 316/477


真姫「チャートに不自然な抜けがある。
   グリーフシードが魔女の卵で、
   養分となるソウルジェムの穢れが蓄積する事で卵が孵化して魔女になる。
   この穢れがソウルジェムに蓄積され続けると、
   魔法少女としてのパフォーマンスが低下して肉体、或は精神にも悪影響を及ぼす。
   ここまでは分かってるけど、この先が分からない、明確な説明が無い」

真姫「卵、と言う言葉を文字通りに考えるなら、
   それは生物の生殖行為生殖機能に繋がる。
   卵、と言う言葉を文字通りに考えて、そこにキュゥべえと言う謎の言葉を繋ぐ。

   キュゥべえは八兵衛でも十兵衛でもない、恐らく発音からの当て字。
   生殖機能としての卵とキュゥべえと言う発音を繋ぐと、
   一つ、有力な候補が出て来るんだけど、心当たりは?
   心当たりは?」

ほむら「………インキュベーター」ポツッ

真姫「インキュベーター、孵卵器、たまごを孵化させる装置。
   それがキュゥべえの名前だとすると、
   むしろ、退治すべき魔女を孵化させるのが役目、と言う事になる。
   それだけなら飛躍のし過ぎかも知れない。
   だけど、魔女と魔法少女と言う言葉」メモサラサラ

真姫「この漢字を当てて考えて構わない。
   それはキュゥべえ自身に確認した。
   魔法少女は暁美さんもさやかちゃんも、
   見せてもらったけど、それは見た目からして魔法少女そのもの」

真姫「だけど、魔女は違う。
   私も一度遭遇したらしいけど覚えていない。
   さやかちゃんにも聞いたけど、全くもってイミワカンナイ、
   正体不明のモンスターだと聞いている。
   なんで、そんなものが魔女と呼ばれるのか」

ほむら「………」グッ

451 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/03 02:13:27.43 3YQmMVfh0 317/477


真姫「今までの一つ一つのパーツとチャートの空白、
   そこに集約させたら自ずと答えは出て来る。

   卵と女、この二つの言葉は言語と生物学的に直結してる。
   魔法少女の契約はおよそ思春期の女子に限定されている。

   魔女の卵であるグリーフシードに穢れが蓄積されると、
   それを養分として魔女が孵化する。
   その穢れは本来、魔法少女が魔力を消費するのと引き換えに
   魔法少女の魂、魔法少女そのものであるソウルジェムに蓄積されるもの。

   ソウルジェム、女の子の、第二次性徴期、
   その肉体と精神が母親としての機能を備え始める女の子の魂に、
   魔女を生み出す養分となる穢れが蓄積される。その先の事は誰も言わない。

   何故、正体不明のモンスターが魔女と呼ばれるのか。
   魔法少女のアポトーシスの行き着く先はどこなのか?」

542 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/11 22:21:41.19 2P30GVMm0 318/477

ほむら「………じゃ、ない………」

真姫「?」

ほむら「無力なんかじゃ、ない。
    先生は美樹さやかを助けた。
    私には、出来なかった」

ほむら「それが医学の限界でも、
    どの先生も、看護師さんも、私のために一生懸命だった。
    力の限り、頑張ってくれた。
    西木野先生と出会えて良かったって、心から思ってる」

真姫「有難う」

ほむら「伝記で読んだ野口英世」

真姫「ん?」

ほむら「天才的で努力する天才でもあって、
    それでも道徳的には相当愚かしい人だったみたい。
    業績とされたものも、本物の業績もあるけど、
    後から見たら無理があるものが幾つもある。
    その死に様も、今から見たら本当は絶対に出来ない事をしようとして、
    そのために命を懸けて犬死した愚か者」

ほむら「その時の技術と努力の最大値で、
    文字通り命を削って命を救うために邁進した。
    それを後から笑うなんて、それこそ愚か者のする事。
    だけど、今回は結果が分かってる。
    魔法少女と魔女、これは根本的に今の医者の手に負える事じゃないって」

543 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/11 22:27:06.91 2P30GVMm0 319/477


ほむら「医者だからと言って、
    みんながみんなエボラの真ん中に突入してる訳じゃない。
    日常の中で、ありふれた病気やケガと精一杯戦ってる。
    そんな先生を、私は尊敬している」ポロッ

ほむら「先生には、先生が救える、
    救わなくちゃいけない患者さんがこれから幾らでもいる。
    絶対に出来もしない事にこだわってる暇なんてない。
    先生に何かあれば悲しむ人、仲間が一杯いる」

ほむら「だから………
    だから、もう、これ以上、関わらないで下さい、っ」ポロポロポロ

真姫「………」

ほむら「………」グシッ

真姫「………なんだ」

ほむら「?」

真姫「やっぱり、ほむらちゃんじゃない」スタスタ

真姫「泣き虫で、病気が色々な事を妨げて、
   それがコンプレックスになって、死の影に怯えていた。
   私はそれを、忸怩たる思いで見ていた。
   痛みを知ってるとても優しい子」

真姫「………有難う」

真姫「有難う、心配してくれて」

ほむら「………」グスッ

真姫「うん、無理はしない。
   だって、私だってまだまだ死にたくないから」

ほむら「………」コクッ

544 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/11 22:32:20.92 2P30GVMm0 320/477


真姫「ほむらちゃんが正確な情報を教えてくれたら、ね。
   だって、現状どこが地雷原だから分からないから。
   フィールド全部がそうだって言われて、
   それで関わらずに引き籠もってろって言われてもそれは無理」

ほむら「ウッ………」

真姫「もう、私の周りで魔法少女に関わり過ぎてる」

ほむら「魔法少女や魔女の事で、あなたに出来る事は………」

ほむら(実際に結果出されると、無い、と断言できないのが厳しい。
    でも、それを認める訳には………)

真姫「だから私は出来る事を、やるべき事を行う。
   そのためにこそ、分を弁え引くべき所を弁える。
   それが医者として、大人として譲れない事だから」

ほむら「諦めない、つもりですか?」

真姫「そのために、例え微力でも、
   マイナス100にならない様に、
   0.1%でも、その力がプラスに向く様に。
   私に力を貸して暁美ほむらさん」

ほむら「………」

真姫「心配して、助けたいと思っても、
   現実が残酷過ぎると伝えられない事もある。

   伝えたらどういう事になるか分からない、
   それでも救いたいと思うなら、
   時には誤解も六階も上等で黙って突っ切るしかない、
   そうやって誤解が誤解を生んで悪循環になる事もある。

   直接は何も出来ないかも知れないけどさ、
   いっぺん、物の試しに話して見てよ、
   関係の無い、役に立たない部外者だから、
   今の所肉体的には痛くも痒くもない私に」

545 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/11 22:37:30.72 2P30GVMm0 321/477


ーーほむホームーー

ほむら「どうぞ」ウーロンチャ

真姫「………有難う」チャブダイ

ほむら「………」チャキッ

ベレッタ シュウウウ

真姫「ゴキブリは片付いた?」

ほむら「ええ」

真姫「じゃあ聞くけど、
   渡した資料、書かれている事に間違いは?」

ほむら「ない。
    美樹さやかとゴキブリから聞き出した事が
    端的にまとめてある。そういう事ですね?」

真姫「そう。さやかちゃんとゴキブリから聞き出した事、
   この二つが語った事だけが書かれている。
   間接的に巴マミさんからも。
   だから、嘘は書いていない代わりにとんでもない空白がある。
   そういう事でいいのかしら?」

ほむら「ええ………」

真姫「じゃあ、そろそろ肝心な所を確認しましょう」

ほむら(余白に書き込み?)

真姫(四文字書き込んで、その真ん中の二文字を二本線で………)

真姫「と、言う事でいいのかしら?」

ほむら「………」コクッ

546 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/11 22:45:59.30 2P30GVMm0 322/477


真姫「はあぁーあーっ」テンヲアオグ

真姫「何と言うか、なんか凄い最悪な状況に見えるんだけど」

ほむら「最低最悪、それ以外のなんでもないです」

真姫「一体、なんなのこれ?
   当然、あのゴキブリはこの事知ってるのよね?」

ほむら「全ての元凶です」

真姫「インキュベーター、孵卵器、
   卵を孵化させるって言うんなら、
   一番簡単な連想は魔女の卵グリーフシードって事になるんだけど、
   それが奴の役割だって言う事? 一体何のために?」

ほむら「宇宙の寿命を延ばすため、って言ってたわね」

真姫「」

ほむら「説明、続けてもいいかしら?」ファサァ

真姫「………是非(これ以上、語れる理屈があるって言うんなら)」

ほむら「エントロピー、って言ったかしら?
    とにかく、宇宙全体のエネルギーが消費され、目減りされ続けている。
    そのエネルギーを補充するためにキュゥべえは魔法少女の契約を行い、
    そして、その魔法少女を魔女にしている」

真姫「両者の関係が全然見えないのは気のせい?」

547 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/11 22:49:17.99 2P30GVMm0 323/477


ほむら「先生の理解力に問題はありません。
    まだ説明していないだけですから。

    宇宙の寿命のために補充するエネルギーとは何か?
    それが、思春期の少女の感情エネルギーが最も効率がいい。
    それも、希望から絶望に相転移した際のエネルギーが最もその目的にかなう。
    希望から生まれたソウルジェム、魂が燃え尽きて絶望から魔女が生まれる。
    その時に発生するエネルギーを回収する事が目的だと。

    ………一応言っておきますけど、
    私が個人的に所有している黒いノートの落書きじゃなくて、
    あくまでキュゥべえの説明に従った場合、そういう事になる、
    と言う話ですのでその辺りの事はご理解下さい」

真姫「ええ、大丈夫。
   広い宇宙には、もしかしたらトマトジュースを燃料に飛ぶUFOがあるのかも知れない、
   って前提で考えるなら、理屈はむしろ単純だから。

   それに、魂の宝石であるソウルジェム、魔法少女契約、ソウルジェムの濁り、
   精神エネルギーが何らかの物理的エネルギーに直接繋がっている。
   そういう原理である事もなんとなくは理解してる」

ほむら「ご理解いただけて助かります」

真姫「つまり、キュゥべえは、
   少女に希望を与えて、それが絶望に転移する時に発生するエネルギーを回収して、
   それを宇宙の延命のためのエネルギーに充てている。
   その相転移のエネルギー発生を具体化させるために魔法少女契約、
   魔法少女から魔女への転移現象を引き起こしている、そういう事?」ペントント

ほむら「その理解で正しい、と思います。
    ………飲み込み、早いですね」

真姫「ここまで来たら、いっぺん説明された理屈を
   丸のみするぐらいじゃないとついていけないから。
   それに、実際希望から絶望への転移、
   そこから発生するエネルギーは物理的じゃなくても怖いし」

ほむら「そう、なんですか?」

548 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/11 22:52:22.25 2P30GVMm0 324/477


真姫「私の仕事が何だか覚えてる?
   転移自体がこっちの仕事の言葉でもあるし。
   私の立場で無駄に希望を与えたらどういう事になるか、
   後になって、どれだけの振り幅、反動が発生するか、
   暁美さんなら理解出来るんじゃないかしら?」

ほむら「………確かに」

真姫「に、しても、見れば見る程、
   こっち側から見たらとんでもないシステムね。
   あのキュゥべえって、結局何なのよ」

ほむら「キュゥべえは単体ではありません、
    と言うか、生き物であるかどうかも怪しい所があります。
    殺しても殺しても沸いて来る。どうも、新たに製造されているみたいです。
    そして、全てのキュゥべえは同じ意思を引き継いでいる」

真姫「まさにゴキブリ」

ほむら「ええ、一匹見かけたら百匹いそうです」

真姫「巨大なスーパーコンピューターに無線接続されて
   バックアップのコンピューターと
   こちら側との情報を送受信するだけの大量の端末みたい。
   実際、ソウルジェムも無線接続みたいなものだったし」

ほむら「そんな所だと思います」

真姫「キュゥべえの目的は分かったけど、
   やっぱり分からないのはあなたの事ね」

ほむら「私の………」

真姫「こんなシステム、サイクルに他人を巻き込まない、
   だけど下手に口に出す訳にもいかない、だから妨害していた。
   これでかなり分かり易くなった。

   それでも、色々と分からない事がある。
   そもそも、暁美さんは何を願って魔法少女になったのか?
   やっぱり、心臓病の治療?」

549 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/11 22:56:02.62 2P30GVMm0 325/477


真姫「さやかさんは、ごく最近転校して来たあなたが
   さやかさん、まどかさんの行く先々に現れて契約を妨害している。
   そう話していた」

真姫「SFを全部肯定して推測するなら仮説は二つ。
   一つは、水晶玉やタロットカードを駆使して立ち回り先を察知しているか、
   あるいは、魔法少女、宇宙人と来て、実は未来人だった。
   まあ、バックに謎の機関があって驚異的な情報収集力を駆使している、
   と言う可能性もゼロではないけど。
   まず聞くけど、この中に正解はあるかしら?」

ほむら「………」コクッ

ほむら「ここに、見滝原に来たばかりの頃の私は、
    西木野先生の知っている私、もっともっとひどくなっていたかも。
    あの苦しみ、その先にあるものに怯え続けて入院の負担も重なって、
    勉強も運動も出来ない、親にとっても重荷であり続けて、
    それで心も弱くなって意思表示も碌にできない。
    心にあるのはコンプレックスだけ、それが、あの頃の私」

真姫「………」

ほむら「まどかは、転校したばかりのそんな私に、優しく声を掛けてくれた。
    そんな私だから、簡単に魔女に魅入られて、殺されそうになった。
    そんな私を救ってくれたのが、巴マミであり、まどかだった」

真姫「まどかさんが、救ってくれた?」

ほむら「…コクッ…まどかは、魔法少女でした。
    私はまどかと巴マミから魔法少女の事を、魔女の事を教わりました。
    でも、二人とも、魔女との戦いで、命を落とした」

真姫(何? え? 我慢、我慢………)

ほむら「だから私は、キュゥべえに願った
    鹿目さんとの出会いをやり直したい、
    守られる存在から、守れる存在になりたい、と。
    手に入れた能力が、これ」

550 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/11 22:59:38.27 2P30GVMm0 326/477


真姫(盾………)

ほむら「この中には一か月サイクルの砂時計が内蔵されています。
    砂時計の落下を止めると時間が止まる。
    落下が終わった砂時計を引っ繰り返すと一か月前にタイムスリップする」

真姫「じゃあ、さっきからピストルがサイレンサーで何時の間にか発砲されていたのも」

ほむら「時間停止中に発砲したから。
    一か月前、転校直前に戻った私は、まどか、巴マミと魔法少女として合流した」

真姫「ちょっと待って」

ほむら「はい」

真姫「タイムスリップ、って言ったけど、
   一番有名な机の中から移動する青いロボットが
   一時間前の自分と追いかけっこしている、
   あのタイプのタイムスリップではない訳ね?」

ほむら「違うみたいです。
    発動した次の瞬間に、私が一か月前の私になってる。
    世界も一か月前の世界。
    但し、魔法少女の契約を交わした後の状態で。そんな感じです」

真姫「オーケー、過去の世界にもう一人の暁美ほむらがいる訳ではないと。
   それで、もう一つの疑問、心臓病の事は?」

ほむら「はい、私は一人だけでした。
    心臓病が治ったのは魔法少女として身体機能が強化された結果みたいです。
    本来、魔法少女としての契約を行うと、
    魔女と戦うために身体機能、特に戦闘能力が強化されます。
    でも、私の場合、その効力が心臓の強化に充てられたために、
    魔法少女としての通常の機能強化は限定的なものにとどまりました」

真姫「つまり、魔法のベホ○ミと安全ドーピングのセット。
   ベ○イミの総量自体は同じで、
   全体を見て、まずマイナス入ってる所に優先的に注入されると」

ほむら「はい。そこで、魔法少女のまどか、巴マミと一緒に
    魔女を退治して過ごしていました。でも………」

551 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/11 23:02:57.97 2P30GVMm0 327/477


真姫「?」

ほむら「でも………まどかが魔女になって、
    魔法少女の正体を、知る事になった」

真姫「タイムスリップ、それが、例外的に魔法少女の正体を知る事になった理由」

ほむら「はい。その後、最悪の事態を回避しようと、
    最初はみんなを説得して、キュゥべえに騙されてると、
    出来ればまどかの契約も回避したいと。
    まどかの契約の時期は、私が戻る時期とギリギリだから」

ほむら「私は、何度も、私は、
    その度に、美樹さやかや佐倉杏子も絡んで、上手く、いかなくて」

真姫「ん?」

ほむら「私は、何度も、何度も戻って、
    まどかの契約、魔法少女の魔女化を止めようと、
    何度も、何度、何度も………」

真姫「!? 暁美さん、暁美さん?
   暁美さん聞こえるほむらちゃん?」

真姫「ほむらちゃん、大丈夫よほむらちゃん。
   ほむらちゃん大丈夫よほむらちゃん」テ、ガシッ

真姫「ここにあなたを脅かす者はいない。まだ、誰も魔女になっていない誰も死んではいない。
   だから大丈夫、大丈夫だから、ゆっくり深呼吸して、大丈夫よほむらちゃん大丈夫、
   泣きたいなら泣いてもいいし吐きたいなら吐いてもいいから、
   ここは安全だから誰もあなたを脅かさないから」

552 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/11 23:06:27.60 2P30GVMm0 328/477


ほむら「ハア、ハアッ………」

真姫「大丈夫、大丈夫よ、ほむらちゃん」

ほむら「ハアッ、ハアッ………」アセヌグイ

真姫「ちょっと、脈診るわね」

ほむら「すいません」

真姫(頻脈、雰囲気から見ても、見たものは想像以上、
   想像から言ってもガチ戦場クラスとか………)

ほむら「…ヒッ、グッ…」ポロッ、ポロポロッ

ほむら「まどか、まどかを助けたくて、でも、出来なくて、
    私、何もできなくて、何度やっても出来なくて、
    本当に無力なのは私で、私、私何も私………」ボロボロ

ちゃぶ台 ボタッボタボタッ

真姫「………ストレートにしたんだ」ナデナデ

真姫「おさげも可愛かったけど、綺麗な黒髪だったものね。
   クールな美人さんに最高に似合ってる」スウウッ

ほむら「………ウウッ」

真姫「そう、頑張ったんだ。
   こんな袋小路な状況で、
   あのほむらちゃんが一人で、ずっと頑張って来たんだ」

ほむら「グスッ」

真姫「あなたにとって、大事な人だったのね鹿目まどかさんは」

ほむら「………大切な、友達、で………」

553 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/11 23:10:18.80 2P30GVMm0 329/477


真姫(って、瞳孔っ!?)

真姫「無理、しなくていい。無理して話さなくて、考えなくていい。
   誰もあなたに強制はしない、今は安全だから、安心していいから。
   言いたいなら吐き出してもいいけど、無理はしないでっ」

ほむら「………ごめんなさい………」ハア、ハアッ

真姫「謝るのはこっちの方よ。
   事実確認をしたかったけど、急ぎ過ぎたみたい」

ほむら「そんな事は………」

真姫「暁美さんの負担を軽視していたみたい。
   まだ中学生で、それで、そんな過酷な経験を繰り返して来た事を。
   不用意に触れてはいけない記憶だったのね。
   本当にごめんなさい」

ほむら「私の負担………」

真姫「私は能力と判断の限り患者に利益すると思う養生法をとり、
   悪くて有害と知る方法を決してとらない。
   これ以上のヒアリングは、外科医である私でも不許可だと分かる。
   今日はここまでにしましょう」

556 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/14 02:59:09.76 iUi6VHJZ0 330/477

ほむら「時間が、ない」

真姫「えっ?」

ほむら「ワルプルギスの夜が来る」

真姫「ワルプルギス、って、確かゲーテだったかな?
   ドイツの魔女の宴、って、あれ魔法少女の世界でリアルにあるの?」

ほむら「多分それが語源です。
    こっちの世界では、とてつもなく強力な魔女の事です」

真姫「とてつもなく、って………」アセツツーッ

ほむら「とてつもなく、です。
    物凄く強力だから結界を作る必要すらない。
    出現したら、空中に巨大怪獣の様に実体化します」

真姫「巨大怪獣、ね。それがこの見滝原に?」

ほむら「はい」

真姫「そのままそっちの専門家にスクランブルしてもらって
   撃墜してもらうっての、ナシ?」

ほむら「魔女の本体は魔法少女にしか見えないから無理です。
    多分、対空センサーにも引っかかりません。
    引っかかるならもっと早くどうにかなってる筈です」

真姫「まさか………自衛隊が入手したデータが政府によって隠蔽されてる、
   なんて事はないでしょうね………」

558 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/14 03:04:28.85 iUi6VHJZ0 331/477


ほむら「そこまで関心を持ってもらえてるなら助かるんですけど。
    少なくとも、魔法少女と魔女に関して、
    その手の国家権力絡みの怪しい陰謀に巻き込まれた経験はありません」

真姫「そうねぇ、それだけの能力なら、
   利用しようとする輩が出て来てもおかしくないものね。
   政府の裏の機関がひそかに接触して脅迫して
   ろくでもないボディーガードとかの特殊任務をやらせるとか」

ほむら「先生の言う通り、本来長生きの難しい魔法少女を
    長い事やってたらそれなりに色々あり過ぎて記憶が曖昧になる事もありますが、
    基本、政府絡みの協力は諦めた方が現実的だと思います」

真姫「今から警察から自衛隊からNASAから国連事務総長から
   こども電話相談室まで電凸して協力を仰いでも、
   成功の見込みは薄いわね」

ほむら「鉄格子の入った病室に入院してる余裕はないですから。
    最悪グリーフシード切れで命に関わります」

真姫「余り本職の前でベタな偏見は語らない様に」

ほむら「ごめんなさい」

真姫「巨大怪獣、って、
   それ、見滝原の街を踏み潰して歩くの?」

ほむら「いえ、基本、本体は空に浮いています。
    但し、巨大台風を身にまとい使い魔を大量にばら撒いて
    甚大な被害をもたらします。
    だから、一般人の世界では突発的に発生する巨大低気圧、
    スーパーセルとして観測されています」

真姫「つまり、そのワルプルギスが現れたら、
   その場所に突発的に巨大な台風が発生すると」

ほむら「はい、そういう事です」

559 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/14 03:09:40.97 iUi6VHJZ0 332/477


真姫「………そんなに、ヤバイの?」

ほむら「都市一つ壊滅します」

真姫(ヴェェ………)

真姫「それって、退治出来るの?」

ほむら「出来ない事は、無い筈なんですけど………」

真姫「ほむらちゃん?」

ほむら「はっきり言って過去の、何度もやり直した私達、
    私達が壊滅したほとんどの理由がワルプルギスの夜です」ハアッ、ハアッ

真姫(あちゃー………)

真姫「避難する、と言うのも余り現実的ではないわね。
   一人一人ならとにかく、家族や親しい人、親しい人の親しい人。
   いっそ、行政から県外への避難指示が出ればいいんだけど、
   それは無理かしら?」

ほむら「無理です。確かに避難指示は出ます。
    でも、そこまでの破壊力を想定していません。
    だから………だから、私、途方もない魔女の、
    途方もない、被害を見てきました」

真姫「うん、分かった、有難う教えてくれて」

真姫「じゃあ、退治するしかない、
   魔女に勝つ事が出来る魔法少女が、そういう事なの?」

ほむら「そういう事です。
    だから、私はずっと準備を進めて来ました」

真姫「………巴マミさんやさやかさんとはコンタクト、とってないのよね?」

ほむら「ええ。あの二人に関しては、
    今の時点まで生き残っている事自体がイレギュラーに近い状態です」

ほむら「………上手く行った、試しがない………
    もう、誰にも、頼らない………」フウッ

560 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/14 03:14:56.13 iUi6VHJZ0 333/477


真姫「………それじゃあ、そのイレギュラー、起こしてみましょうか?」

ほむら「?」

真姫「ごめん、魔法少女の事とか、タイムスリップの事なんて、
   本当の意味では分からないんだと思う。
   だけど、やっぱり放ってもおけない」

真姫「タイムトラベラーとして、
   今迄全部のやり方は試した、そのつもりかも知れないし本当にそうかも知れない。
   でも、結局、暁美さんは袋小路に追い込まれて狭い思考の中で痛々しくあがいてる」

真姫「大体、見捨てられないからそうやってあがいているんでしょう?
   こんなになる迄戦って、痛い思いをして哀しい思いをしても。
   本当だったら、前もって知ってるならあなた一人ならどうにでも出来たんだから」

ほむら「………」コクッ

真姫「今まで出来なかったのなら、
   ブレイクスルーするには今迄からのイレギュラーを起こすしかない」

ほむら「どう、するんですか?」

真姫「それが分かればイレギュラーじゃないないんだけど、
   あなたから見て突拍子もない突破口を見つけるしかないって事でしょう。
   取り敢えず、一人で戦うのは賛成できない。
   分かっているだけでも巴マミ、美樹さやか、サクラキョウコ、
   この人達と協力を取り付ける見込みは?」

ほむら「佐倉杏子とは話を進めています。
    但し、佐倉杏子と巴マミには少々因縁があります。
    巴マミ、美樹さやかとの協力、と言う事になると………」モゴモゴ

真姫「私、役に立てないかしら?」

ほむら「先生が?」

真姫「私に魔法少女の事を教えてくれたのはさやかさん、
   そして、その事はマミ先輩にも多分伝わっている。
   どっちにしろ、この人達とは私も一度話をしなければならない」

561 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/14 03:18:05.73 iUi6VHJZ0 334/477


ほむら「………………お願い、出来ますか?
    いや、でも、決して甘く見ないで下さい。
    魔法少女は、中学生でも桁違いの力を持って
    殺し合いの世界を生きて来たイレギュラーな存在です。
    生身の人間である先生が、今までみたいに上手くいくとは限らない」

真姫「そうね。心しておく。
   でも、もう避けても通れない。
   ワルプルギスとか言われたら、私も当事者以外の何物でもない訳だし」

ほむら「………一般人の先生を巻き込んで、
    本当にごめんなさい」バサッ

真姫「と、すると………
   問題は、魔法少女が魔女になる、って事ね」

ほむら ギクッ

真姫「今、思えば凄く危なかった。
   さやかちゃんのソウルジェムもかなり黒くなってたし」

ほむら「危ない、ってレベルじゃありません。
    生きてるのが奇跡なぐらいです」

真姫「そんなに?」

ほむら「私の統計によると」

真姫「だったら尚の事、話しておく必要があるわね。
   知らないままって危険極まりない」

ほむら「………駄目………」

真姫「ん?」

ほむら「先生の言う通りです。
    だからこそ、話す訳にはいかないんです」

真姫「ずっと、知ってて黙ってたわねこの事」

562 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/14 03:21:21.42 iUi6VHJZ0 335/477


ほむら「………殺されかけました」ポツッ

真姫「!?」

ほむら「巴マミです。この、最悪のシステムを知った巴マミに」

真姫「あの、さやかさんの先輩の女の子?」

ほむら「はい」

ほむら「美樹さやかの魔女化で真実を知った、巴マミは、私達の事を………」

真姫「どういう子なの、巴マミさんって?」

ほむら「私の知る限り、この街でも一番のヴェテランです。
    実力派の魔法少女で、後輩にも面倒見が良くて………
    でも、私は、あの人が苦手だった」

ほむら「強がって無理し過ぎて、そのくせ誰よりも繊細な心の持ち主で、
    あの人の前で真実を暴くのは、いつだって、残酷過ぎて辛かった」

真姫「………そんな彼女の事を嫌いじゃない、
   いや、慕っていた、慕っている」

ほむら「………グスッ………(涙腺が)………。
    ソウルジェムの穢れを取るグリーフシードは魔女が持っています。
    その魔女は、魔法少女のソウルジェムが穢れに満ちた時に生まれるか、
    使い魔が何人もの人を殺す事で魔女に成長するか」

真姫(ヴェェ………)

ほむら「どちらにしても、人が死んで、殺して、
    その上に立つ事でしか生き延びられない、
    それが魔法少女、たった一つの願いの代償です。

    魔法少女が魔女になる事、美樹さやかをそんな魔法少女の世界に導いた事、
    かつての魔法少女を殺し続けて来た事、
    そして、これからも殺し続けないと生きていけない事。
    その重さに耐えられる程、巴マミは強くない。

    たった一つの願いと引き換えに、耐えられる方がおかしい………。
    だから、あの人、魔女になる私達、殺して………」ハアッハアッ

563 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/14 03:24:34.48 iUi6VHJZ0 336/477


真姫「暁美さん、大丈夫っ?
   事情は分かったから、無理して話さなくていいから呼吸を整えて」

ほむら「はい」

真姫「確かに、危険ね。
   だからこそ、話さなければならない」

ほむら「………なんとなく、先生ならそういうと」

真姫「ワルプルギスの夜の事もあるし、
   そういう人だからこそ、リスクを減らす必要がある。
   突発的に真実が知られたら事態をコントロールする事が出来ない」

ほむら「………技術者的な発想なんですよね。
    ですけど、本当に危険ですよ。
    今言った通り、私は殺され掛けました。
    巴マミの戦闘能力、殺傷能力はトップクラス、
    本気で殺す気になったら魔女でも魔法少女でも勝てる相手はほとんどいない」

真姫「でも、第一に、そうだとすると私に手を掛ける理由ってあるのかしら?
   もちろん、邪魔しない限り、と言う前提だけど」

ほむら「あ………」

564 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/14 03:28:09.50 iUi6VHJZ0 337/477


真姫「まあ、そこの所は油断しない様にするけど、
   出来る事なら暁美さんにも力を貸して欲しい」

ほむら「………なんと言いますか、
    乗り掛かった舟です。協力はします」クルクルクルクル

真姫「………辛かったら言ってちょうだい」

ほむら「大丈夫です。難しいですけど、
    本質的な所では優しくて、聡明、だと思う。
    確かに、殺す必要のない先生がいれば、とも思えてしまう。
    だから、危ない事は絶対にしないで下さい」

真姫「ん。随分夜更かししたわね。
   取り敢えず連絡先交換して。
   急ぐ必要はあるけど、明日の事もあるから。
   私の方でも、さやかさん達と話進めておく」

ほむら「分かりました………
    もう一度言います、逃げたければいつでも逃げて下さい。
    正直、そっちの方が私の気が休まります。
    ワルプルギスの夜の直前には連絡しますので先生だけでも」

真姫「その場合、私は病院に詰めてると思う」

ほむら「………話すんじゃなかった………」ポツッ

ほむら「でも、手遅れ、なんですよね」

真姫「そういう事。
   じゃあ、今夜はこの辺でお開きにしましょう」

565 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/14 03:31:59.39 iUi6VHJZ0 338/477


ーー真姫ルームーー

冷凍庫 ガチャ

タンカレーボトル トットットッ

真姫「くううっ………」

真姫「あれ、本物だったわよね。
   私はどこのマント医者だって言うの。
   私は只の勤務医なの。あー無理無理無理無理イミワカンナイッ」

ベッド ドサッ

真姫「乗り掛かった舟、か。
   とんでもないタイタニック………」

真姫「問題はほむらちゃん自身。
   本来なら薬物処方や眼球運動も検討すべき段階」

真姫「だけど、深刻だからこそ外科医の手に余る。
   だからと言って、まずこれに関わる事が出来る専門医がいるか。
   いたとして、費用はどうするかヴェェェェ………」

真姫「………鹿目まどかは、大切な人………
   魔法少女は魔女になる、
   魔女を殺して、殺さないと生きてはいけない………」

真姫「そういう、事か。ほむらちゃん………」ツツーッ

真姫「………最っ低………」

608 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/26 02:15:53.81 VKv6WxzC0 339/477

 ×     ×

ーー朝 真姫ルームーー

ゼリー食品 ジュウウウ

ーー御茶ノ水駅ーー

真姫「………」

ーースパ施設浴室ーー

檜浴槽 ドプッ

真姫「んー………」

ーー昼過ぎ 「ごはんのおとも かよりん」本店直営食堂ーー

テーブル席 ゴトッ

民芸風和装女子店員「いらっしゃいませー」

真姫「朴葉御膳、まだ大丈夫かしら?」

店員「かしこまりました」

609 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/26 02:21:01.04 VKv6WxzC0 340/477


ーーーーーーーー

店員「お待たせしました」

割り箸 パチン

真姫(既にして、かつてないほどの唾液が)

真姫「いただきます」ペコリ

真姫(漬け物入りの焼き味噌と一人炊きの釜炊きご飯。
   味噌汁に鯵の開き………
   ………普通に、泣けるんですけど………)

和服親父「………………」クワッ

女性記者(嫁)「美味しいっ、このご飯」

黒スーツ息子「まず、米がいい。いい米を使っている。
       米と水、どちらも良質のものを選び、
       絶妙の加減で炊き上げている」

和服親父「むうっ、しっとりとしながら緩さも硬さも出過ぎない。
     研ぎ加減、水加減火加減、
     この米の性質を正しく把握して、
     何よりも白米を心から愛するからこその出来栄え」

和服親父「………」ズズッ、ズッ

和服親父「合わせ味噌にいりこ出汁。
     何の変哲もない豆腐の味噌汁」

和服親父「舌に熱く、それでいて風味を損なわない火加減。
     良質な味噌の個性を知り具材を知り、考え抜いた調合。
     しっかりと大豆の味わいがある豆腐、それらを引き立たせる葱。
     一品の料理として飯の供として、何の変哲の無い平凡な一杯の中に、
     一片のごまかしもない愚直な迄の生真面目さと感性が込められている」

611 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/26 02:26:22.20 VKv6WxzC0 341/477


女性記者「鯵の開き………美味しい。
     脂が乗って、それでいて風味が良くて」

黒スーツ記者「養殖だな。良質の牧場同様、自然に近づけた環境の中で、
       数以上に質を重視して十分に配慮されて健康に育てられた。
       そうじゃなければこの風味は出ない。
       天日干しに天然塩、今やそれだけでも贅沢になったものを見事に焼き上げている」

女性記者「しっとり、こんがり。
     鯵の開きと一緒にお願いした骨スープも
     いいお出汁が出て、ご飯が進む。

和服親父「合鴨の陶板焼きか。
     お品書きにも書かれているが、田んぼの合鴨か?」

「はい。お陰様でこうしていただいています」

女性記者「美味しい。
     野趣のある、それでいてしつこくない鴨肉の旨味が
     口の中にジューシーに溢れ出る」

黒スーツ息子「田んぼの中で、青草や虫、泥鰌や田螺を餌に健康に育った事が味に表れている。
       十分な期間の飼育を続けて、シメた後も日数をかけて熟成させた、
       餌代と肉の重量、タイムロスのコスト計算よりも
       成熟された味わいを優先させる事で生まれるのがこの奥深い旨味だよ」

和服親父「合鴨を葱味噌で付け焼きにしたか。
     葱もいい、いい条件で育てたものだろう。
     練りと味付けに本物の味醂を使っているな」

「はい」

和服親父「そして、味噌は自家製味噌」

「プロデュースと言う形ですが」

和服親父「老舗には及ばぬものの、如何にも手作りの風味。
     いい原料から作った味噌を昔通りの製法で年単位で熟成させて初めて、
     合鴨に負けず、火を通して益々芳しいこの味噌の味わいが生まれると言うもの」

612 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/26 02:31:58.06 VKv6WxzC0 342/477


女性記者「胡瓜の糠漬けに小梅が美味しくて、とてもご飯が進むわ。
     丼にして良かった」

「女性の方でも、丼を注文される常連さんは多いんですよ」

黒スーツ息子「健康に育った米の糠でなければこの味、風味は出ない。
       そこから糠床を育てて野菜を漬け込んで。
       一つ一つ地道に手順を踏んだ味だ」

黒スーツ息子「確かに、上を見るならきりがない。
       だが、手の届く値段の中で、譲れない、確固たるものが
       この一皿一皿に現れている」

女性記者「ええ、一見すると本当に平凡なお料理だけど、
     平凡だからこそ、これほど味わい深く輝く料理、
     それもこのお値段で、となると滅多にないわ」

黒スーツ息子「うん。この値段でこの内容なら十分過ぎる程だ。
       価格の限界、味へのこだわりを精一杯の工夫と最大限の誠意で補っている、
       これこそがご馳走、懸命に走り回って作り上げた一品一品だ」

和服親父「込められた信念は米、白米への、惜しみない愛情と言ってもいいだろう。
     それだけは決して裏切らないと言う強い決意と
     それを可能とするだけの、才能の光が見える。
     それにより、この白米は正に銀舎利の輝きを見出した。
     才能の片鱗は見える、が、まだまだだ。
     まだまだ伸びるものがある。精進せい」

「有難うございます」

ガラッ

「お迎えですよー」

「じーじ」

「じーじ」

和服親父「………………」クワワアッ

613 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/26 02:34:57.09 VKv6WxzC0 343/477


ーーーーーーーー

「お待たせしました、
お持ち帰りの白米スムージーです」

女性記者「有難うございます」

アリガトーゴザイマシター

真姫(ん、美味しかった)

焙じ茶 コトッ

真姫「?」

店員「サーヴィスでございます」

「いらっしゃーいっ」

花陽「いらっしゃい真姫ちゃん」

「いらっしゃいにゃー」

真姫「ん、社長に専務、直々に有難う」

「もぉーっ。いいかな?」

真姫「もちろん」

椅子 ズズッ

花陽「それで、どうなの? ニコちゃんのお母さん?」

真姫「ん、あんまり詳しい事は言えないんだけど、
   良くも悪くも動いてない、って所かな。
   色々有難う。二人とも大変なのに、
   お金の事とか、地元でも動いてくれてるって」

614 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/26 02:38:46.76 VKv6WxzC0 344/477


「ニコちゃんもお礼言いに来たから」

花陽「………私達にも素直だった。
   それだけ、大変なんだよね」

真姫「………そうね」

花陽「少しでも、いい結果になればいいね」

真姫「………フウッ………
   でも、二人で出て来て本当に大丈夫なの?」

花陽「うん、ちょうどお昼のピーク終わったトコかな?」

真姫「そう」

花陽「真姫ちゃんの方は? お仕事とか」

「リストラ?」

真姫「おーい、どこぞの春○部のじゃがいも小僧かい。
   昨日準夜勤だっただけよ」

花陽「お疲れ様」

真姫「有難う。だからこそね、
   この真っ当な朝ごはんセットが染みるわ、お昼過ぎでも」

花陽「有難うございます」ペコリ

真姫「本当に、ご飯ってこんなに美味しいものなのね。
   これは厳選されたちょっとしたご馳走だけど、
   ご飯に味噌汁に鯵の開き。
   朝、普通に作るのもなかなかね」

「忙しいんだ、お医者さん」

真姫「ん、まあ、一人分はどうしても、ってのもあるけど。
   お昼時にも覗いたけど、商売繁盛結構結構。
   ネット上の評価も相変わらずの高値安定」

615 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/26 02:42:13.91 VKv6WxzC0 345/477


花陽「お陰様で、なんとかごひいきにしてもらって」

真姫「本当に、商品の評判は上々。
   名門の取引先だって幾つも持ってるんでしょう」

「うん、いいお店が定期購入してくれてる。
  だから、本当はそろそろ若い子にも暖簾分けして販売量を増やしたい所。
  いいお話しだったモールの出店も断ったし。
  かよちんは絶対反対にゃ」

花陽「絶っっっっっ対に駄目。
   今は現状維持。
   いい線行ってる、順調に育ってる、だからこそだよ。
   後三年は私の下で修行させないと、うちの暖簾でお出しできません」

「イケてると思うんだけどにゃー」

真姫「そうね、流れに乗ってる時だからこそ、
   調子に乗って数だけ増やして味を落として、
   それでいっぺんに信用無くした店なんて幾らでもある」

「うん。凛は経営者。
  だからこそ、かよちんの舌を信じるよ」

花陽「有難う」

真姫「ふふっ………白米に青春と人生懸けるって、
   本当に懸けちゃったもんね花陽」

花陽「懸けてから言いなさい、って言葉もあるからね。
   そんな無茶な話に凛ちゃんも付き合ってくれた」

「んー、どうせやるならそっちの方が、
  かよちんの好きな事を一緒に頑張る方が面白そうかな、って」

真姫「よくやったわよ凛は。
   あの、凛が、一から経営の勉強して、
   今や雑誌にも取り上げられる辣腕経営者」

「今思い出してもあの頃の勉強って、頭の中がぐるぐるだにゃー」

616 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/26 02:45:34.88 VKv6WxzC0 346/477


真姫「そりゃあ、あの頃の凛を知ってたら。
   あの、凛が、花陽の助けもなしにあれだけの成果を上げるとかって」

「だって、かよちん私なんかよりもっともっと大変だったにゃ。
  厳しいお店で修行して食材探しに奔走して。
  その間に私は私の勉強をしてただけ。
  地元での商売の事、雪穂ちゃんや絵里ちゃんにも色々教えてもらった」

真姫「ええ、まさしく白米パワー恐るべし。
   だって、人が十年かかる事を三年でやり遂げたって、
   白米Love極まれりよ」

花陽「んー、夢中だったから。でも………」

真姫「でも?」

花陽「十年を三年で。
   それって、あの頃の私達の事じゃないのかな?」

真姫花陽「フフフフッ」

真姫「そうだったわねぇ」テンヲアオグ

真姫「あの頃だって、むしろちょっと賢いつもりだからこそ、
   出来ない事は当たり前にある、って分かってるつもりだった。
   でも、やっぱり若かったのね」

「モロにおばさん発言だにゃー」

真姫「アハハ」

花陽「このお店もね、廃業するお爺さんと物件探してた私達が知り合いの知り合いで、
   それで凄くいい条件で借りられた。

   特に最初の頃の取引先がそうだけど、私達の昔の事、マイナスに見られた事もあったけど
   それ以上に評価してもらって、お話しの取っ掛かりだけでも役に立つ事が一杯あった。

   なんか実利的になっちゃうけど、
   それだけでもあの時、μ‘sで頑張ってて本当に良かった、って」

真姫「そうね。わざわざ売りにしなくても色々とね。
   地元に残ったあなた達は特に」

617 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/26 02:48:57.35 VKv6WxzC0 347/477


花陽「………やっぱり、お医者さんって大変なの?」

真姫「まあね、奇跡や魔法がある訳じゃない、
   どんな仕事もそうかも知れないけど、
   一日一日が圧倒的な現実だから。
   そっちはどうなの? ちょっと確認した限り堅実みたいだけど」

花陽「うん、順調だよ。食堂もお漬物も順調。
   念願の自家製味噌の熟成も終わって」

「これが、すっごく評判いいの。
  でも、地元優先に配分しちゃったからね。
  もう少し残しておいたら良かったんだけど。
  有名店からも欲しいって引き合いを幾つも断っちゃったから」

花陽「それも、地元のお店や会社が口コミしてくれたんだから。

   もちろん成功するつもりでやってたけど、
   あれだけ手間暇かけてなけなしの資金投入して、
   それで、もし、失敗だったら、って。

   今でもカビた塩漬け大豆に埋もれて債権者に追いかけ回されて
   二人で身ぐるみ全部剥がされてお仕事してる夢見るんだから」

「あのお味噌、かよちんの夢だったもんね。
  自家製、って言っても流石に直接は厳しいから
  プロデュースと言うか系列みたいにして。
  それでもリスク考えると無謀だった筈なんだけど、
  でも、止める気は全然しなかったにゃ」

真姫「こんなに美味しいんだからね」

花陽「うん。ここまで来るのに大変な事も嫌な事だって色々あったけど、
   一つ一つ乗り越えてみんなに助けてもらってここまで漕ぎ着けた」

「なんか、それだけ聞くとやってる事変わんないにゃ」

真姫「結局、そんなモンかもね」

618 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/26 02:52:27.94 VKv6WxzC0 348/477


花陽「奇跡とか魔法とかって、
   頑張って勉強してお仕事して、それで美味しいものが出来上がって
   美味しいって喜んでもらえる。それってもう、奇跡だと思える。
   だって、真姫ちゃんに連れて行ってもらったNYの白米、
   泣く程美味しかったんだから」

真姫「あー、あったあった」クククッ

「私達って一回すっごく大きな奇跡を起こしたけど、
  人が毎日一所懸命起こしてる小さな奇跡って、
  それって本当に大事なんだってよく分かるよ。
  だって、そんな一日一日が今に至ってるんだから」

真姫「そうねぇ、やり切れない事だって山ほどあるし、
   現実的に色々ある訳だけど、
   だけど、それでもそれがあるからやめられない、
   ってのも確かだから。
   多分、そんな仕事って結構一杯あると思う」

「そうそう、そして、凛はまだ野望を成し遂げてはいない」

真姫「ん?」

花陽「クククッ」

「星空凛の野望」ビシッ

真姫(人差し指一本?)

「十年、十年にゃ。
  十年以内に、この店の姉妹店として、
  究極にして至高のラーメンライスのお店をオープンさせるのにゃ」ビシイッ

真姫「それって、
   スープに何か出場停止的なコンソメ使ってないでしょうね?」

花陽「急がば回れ、練習は嘘をつかない、
   手抜きは絶対に嘘をつかない、だからね」

619 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/26 02:55:40.49 VKv6WxzC0 349/477


真姫「………大丈夫なの? 本当に?」

花陽「難しいけど勝算が無い訳じゃないと思う。
   材料だってお味噌を初めそっち向けのいいものも幾つか手に入ってるし」

「勝算がある、と言う事は、
  やり遂げると言う事にゃ、私達にとっては」

真姫「違いない」クスクス

花陽「それに、欲張りでもなんでも、凛ちゃんの本気なら、私も本気で付き合いたいなって。
   だって、大事なパートナーだから」

「かよちぃーんっ」ダキッ

花陽「わわわっ、まだまだ先の先の話だからね」

「うん、分かってる。
  凛知ってるよ、今は堅実に、油断したら一日で綺麗さっぱり消えてなくなる
  お店の信頼を確固たるものにする局面だって、確固たる商品で」

真姫「フフフッ」

「ん?」

真姫「良かったなぁーって」

花陽「うん」

真姫「みんなに会えて、本当に良かった。
   花陽にも凛にも、他のみんなにも。
   色んな面白い娘達と本気でぶつかって、泣いて、笑って、
   力一杯思い切り青春してた。
   音ノ木坂に入った時には、そのずっと前から、
   そういうの私の柄じゃない、って勝手に決めつけてたから」

「孤高のお嬢様だったもんね」

真姫「否定はしないわ」ファサァ

620 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/26 02:59:45.34 VKv6WxzC0 350/477


花陽「あれ、格好いい………」

「でも、それってもちょっと髪の毛長い方がいいにゃ」

真姫「クククククッ」クスクス

花陽真姫「あはははははははっ」

ガララッ
イラッシャイマセー

真姫「それじゃあ、私はそろそろ。
   美味しかった」

花陽「うん、有難う」

「又来てにゃー」

真姫 スクッ

花陽「………もう、当たり前かも知れないけど」

真姫「ん?」

花陽「最高だった。音ノ木坂で真姫ちゃんに、
   みんなに出会ってみんなでやり遂げたの」

「とーぜんにゃ」

真姫「うん」

625 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/28 22:47:51.77 AjTiPIr50 351/477

ーー放課後 カラオケボックス個室ーー

ほむら「………」

真姫「………」

真姫「こういう所、不慣れだったかしら?」

ほむら「………問題ないわ」ファサァ

真姫「いくつか詰めておきたい事があってこうして会ってる訳だけど。
   暁美さんはまどかさんを助けるために タイムリープを繰り返して来た。
   逆に言うと、それだけまどかさんには魔法少女絡みの問題があった、
   と、言う事でいいのかしら?」

ほむら「その理解で正しい、です。
    まどかは、極めて強い魔法少女の素質を持っています。
    その分………魔女になった時の呪いはとてつもない」

真姫「確か、例のワルプルギスの夜が都市を一つ壊滅させる、とか」

ほむら「比較になりません。桁が違い過ぎて、
    まず魔女になって数日中に世界が滅亡しますし
    退治とかなんとか言う次元の魔女ではありません」

真姫「」

真姫(ほむらちゃんが敢えて口に出している、と言う事は、
   冗談や盛り過ぎてるとはとても思えない)

真姫「絶対、駄目って事よね。それでも、まどかさんは契約を?」

626 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/28 22:53:06.13 AjTiPIr50 352/477


ほむら「先生も知っての通りの事情で、まず、魔女化の事自体がなかなか伝わりません。
    しかも、まどかは本当に優しい娘です。
    うっかりすると、自分よりも他人のために、
    魔法少女と魔女に関わって他人がどうしようもなく追い込まれると、
    誰かを助ける事を優先してしまう、そういう娘です」

真姫(そうなんだ。一見ちょっとトロくて頼りないけど、
   やる事が決まったら変に腹が座ってるタイプ。
   あの母親の娘だから?)

真姫「それから巴マミさん。魔法少女の先輩、なのよね」

ほむら「はい。昔は私もお世話になりましたし、
    今でも美樹さやかやまどかは彼女の所に出入りしている筈です」

真姫「どういう娘か、分かるかしら?」

ほむら「交通事故で両親を亡くしています。
    同じ車に乗っていた巴マミもその場で死ぬ状態でしたが、
    そこに現れたキュゥべえと契約する事により命が助かった」

真姫「」

真姫「そして今、さやかさんやまどかさんと行動を共にしている」

ほむら「ええ………ひょっとしたら、
    お茶を共にする相手が欲しいのかも知れない………
    正直その事に苛立つ気持ちもありますけど、
    今はそれを責めたいとも思えない」

真姫「………ちょっと、いいかしら?」

ほむら(耳栓?)

真姫「少しの間、お願い」

ほむら「はい」キュッキュッ

スマホ トトトッ

真姫「ちょっと、最初にはい、いいえだけで答えてくれるかしら?」

627 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/28 22:59:04.61 AjTiPIr50 353/477


ーーミキハウスーー

さやか「はい、あたしの部屋です。
    言われた通り一人で、あいつもいません。
    ええ………聞きたい? マミさんの事?」

ーーカラオケボックス個室ーー

スマホ ツー

真姫「もういいわ」オヤユビタテ

ほむら キュッキュッ

真姫「当面の問題、
   ワルプルギスが来るタイミングがいつなのか、分かる?」

ほむら「ええ、恐らく…………日………」

真姫「日付が分かってるの?」

ほむら「統計では、その可能性が高い」

真姫「そう………」

真姫「………」

真姫「………ギリギリ、か………」

ほむら「?」

真姫「………もし、私が心から信頼する仲間を信じてくれるなら、
   私に少し、考えがある」

628 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/28 23:04:13.05 AjTiPIr50 354/477


ーー夜 見滝原市内路上ーー

ほむら「………」コッコッコッ

ーー廃ビル内ーー

ほむら「………」コッコッコッ

盾 カチッ

肥料爆弾パック 廃ビル包囲支柱セット

ーー路上ーー

廃ビル\Dooooooooooo………………/ガラガラガラガラ

ほむら「………」ファサァ

曲がり角 ヌッ

ほむら「………」チッ

キリカ「………」ガルルルルルルル

織莉子「まあ、こうなる事は分かってたから。
    防犯カメラは避けたけど、長居は無用じゃなくて?」ドウドウドウ

盾 カチッ

ーーコンビニ近く路上ーー

ほむら「………」コッコッコッ

自動ドア ガー

コッコッコッ

織莉子「人通りもある所で、変身前の私に何か脅威はあるかしら?」

ほむら(キョウイは、ある、か………?)

ほむら「ご用件は?」

629 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/28 23:07:59.29 AjTiPIr50 355/477


織莉子「あなたに協力する、そういう話よ」

ほむら「話が見えない」

織莉子「ワルプルギス、私の能力で
    なんとかその到来予測の精度を上げる。
    ………それが、鍵になる筈」

ほむら「………どういうつもり?」

織莉子「元々、私もこの街の人間でこの街の魔法少女、
    あのワルプルギスに暴れてもらっていい事なんてない………
    あなたにとって、問題はその後かしら?」

ほむら(ソウルジェム)キュッ

織莉子「実際にはその手段、
    大勢を救うための僅かな犠牲と嘯いての救世は諦めてる、
    恐らく、今の私の心はそれを行う程に強くはない、
    弱さを知った、と言った方がいいかしら?
    でもいいわ、言葉で言っても信じるとも思えない」

ほむら「………そうね。あなたが私の懸念を理解している時点で、
    その意思あり、と疑わざるを得ない」

織莉子「それならそれでいい。
    ワルプルギスが解決するまで、取り敢えずあなたとのパイプを繋ぎたい」

ほむら「もう一度聞く、どういうつもりなの?」

織莉子「もう一度言う、
    私はこの街の魔法少女でワルプルギスはこの街に巨大な災厄を齎す魔女。
    もっとも、最近までは、
    むしろ裏切られたこの街の事なんて些細だ、と言えたかも知れない」

ほむら「今は違うと?」

織莉子「あの娘程じゃないけど、
    私にも多少なりとも恩義を感じる心はある。
    その程度の事よ。
    その人は、ワルプルギスの時、その渦中にいる筈」

630 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/05/28 23:11:54.54 AjTiPIr50 356/477


ほむら「それも、予知?」

織莉子「そうでもあるし、恐らくはそうでなくても。
    そして、私の想いのためには、
    今の所はそちらのラインに乗るのが一番見通しがいい」

ほむら「私達と組みたいの?」

織莉子「………」フルフル

織莉子「事情により、直接の参加は遠慮させてもらう。
    当日には合流するつもりだけど、
    それまではあなたの情報源の一つと言う事にしておいて」

ほむら「訳が分からないわ」

織莉子「主に、私の勝手な人間関係の問題。
    当面、あなたとだけパイプを繋いでおくのが好都合なのよ。
    やっぱり、寝首を掻かれるのが怖いかしら?」

ほむら「正直言って、今すぐにでもその懸念を確実に払拭したい所だけど」

織莉子「それはやめておいた方がいいわね。
    強くお願いしておいたけど、いい加減痺れを切らせそうな娘も近くにいるし」

ほむら「………少しでも怪しい素振りを見せるなら容赦はしない」

織莉子「そうね。今の所、最悪の破局もビジョンは遠ざかっている。
    それに、最悪の根源を断とうとしていた時には、
    あなたと言う障壁を生きて突破出来るビジョンを見た事はなかった。
    それなら、マシな選択をさせてもらう」

ほむら「………そう願いたいわね」

織莉子「それじゃあ、連絡先を交換しておきましょう」

633 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/04 02:20:42.03 fSePARyA0 357/477

ーマキルームーーー

ベッド ドサッ

真姫(ほむらちゃんの話だと、
   巴マミはキュゥべえを友達の様に思ってる)

真姫(事故で両親を亡くして魔法少女になって、
   しかも、見た目と声がアレとか)

真姫(キュゥべえも感情が無いとか言ってるけど
   素でやってるのかなんなのか)

真姫(どっちにしろ………ちょっと、骨ね)

ー午前 見滝原市立病院内科医局ーーー

真姫「それじゃあ、昨日も?」

内科医「ええ。熱中症の方はおよそ大丈夫だったんですけど、
    何と言いますかね。
    それがトリガーになって今までの疲労が色々噴出した感じですかね」

真姫「色々忙しいとは聞いていましたが」

内科医「発熱、嘔吐………検査結果に特別な異常もなく風邪と言えば風邪。
    点滴打って薬出して、一日休めば当面は大丈夫だとは思いますが」

634 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/04 02:25:44.06 fSePARyA0 358/477


ーー見滝原市立中学校教室ーー

オハヨー
オハヨー

さやか「あ、仁美、おはよう」

仁美「お、おはようございますさやかさん」

さやか「大丈夫? なんか体調崩したとか聞いたんだけど」

仁美「ええ、ちょっとお稽古が過ぎたみたいで」

さやか「忙しいもんね仁美、体には気を付けなよ」

仁美「………」ジワッ

さやか「ん?」

仁美「良かった、です。さやかさん、ご無事で………」ククッ

さやか「ん、ごめんね仁美、心配かけて」

仁美「あ、あの………」

さやか「うん、まあ、ややこしい事はおいおい、ゆっくり話そ」

仁美「はい」

まどか「………」ホッ

ほむら「………」

639 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/04 02:31:22.45 fSePARyA0 359/477


ーー休み時間女子トイレーー

さやか「………まさかあんたとこういうトイレタイムするとはね」キョロキョロ

ほむら「全く以て同感ね」ファサァ

さやか「それじゃあ………」

ほむら「ええ、そういう事で頼めるかしら?」

さやか「やってみる。
    あいつが何と言おうが完っ全に騙された訳だし、
    いつまでも有耶無耶にしてられないからね」

ほむら「お願いするわ。
    人脈的に言って、あなた以外に適任者がいない」

さやか「分かった………なんか、素直になった転校生?」

ほむら「私は私の目的に従うだけよ。
    そういうなら、いい加減その呼び方はどうなのかしら?」

さやか「ま、善処するよ」

ーー放課後 風見野廃教会ーー

さやか「やっ」

杏子「………よう」

さやか「………」キョロキョロ

杏子「もしかしてあいつ? 追っ払ったトコだけど?」

さやか「丁度良かった。
    色々ごめん。なんだかんだで、
    あんたにも手間かけさせたよね」

646 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/04 02:36:28.04 fSePARyA0 360/477


杏子「………随分、ご機嫌じゃねーの。
   こないだまで男に振られてうじうじやってたのと全然違うじゃん」

さやか「別に振られてないけどね。
    それで、面倒ついでにちょっと頼まれてくれないかな?」

杏子「何だ?」

さやか「………ちょっと、マミさん所まで付き合って欲しい」

杏子「………」スチャッ

さやか(喉元に槍、って怖いから普通に、
    魔法少女でもチビリそうだからぁ)

さやか「何があったか知らないけど、
    仲直りしろとかそんな事言わないから。
    只、大事な話があるんだ」

杏子「大事な話だぁ?」

さやか「この話の出所は例の転校生。
    あんたにも関わる大事な事だから聞くだけでも聞いて欲しい、って。
    お願い」ガバリ

ーーマンション玄関ーー

インターホン カチカチ

マミ「はい」

まどか「あの、私です」

マミ「鹿目さん?」

まどか「はい。あの、西木野先生が、
    私と一緒にマミさんとお話しをしたいって」

マミ「………分かった」

647 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/04 02:39:37.82 fSePARyA0 361/477


ーーマミルーム玄関ーー

真姫「先日はどうも」

マミ「その節はお世話になりました」

まどか(既にしてなんか緊張………)

ーーマミルーム リビングーー

マミ「それで今日は、どの様なご用件でしょうか?」

真姫「鹿目まどかさんの今後に就いて、
   巴マミ先輩と一度とっくり話しておきたいと思いまして」

マミ「そうですか」

真姫「そこに、キュゥべえはいるのかしら?」

まどか「ええ、います」シセン

真姫「少し、席を外してもらえるかしら?」

マミ「どういう事ですか?」

真姫「今回はキュゥべえ抜きで話をしたい、そう言ってるの。
   仮に契約する事になったとしても、
   頭を冷やす時間はあった方がいい」

マミ「分かりました。キュゥべえ」

QB「マミがそういうのなら」

648 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/04 02:42:51.29 fSePARyA0 362/477


玄関ドア ガチャ

まどか「少し、表に出てて」

QB「分かった」テクテクテク

パタン

真姫「お話しを開始しましょうか?」

マミ「………かなりの所まで、知ってるみたいですね」

真姫「そうね」

ーー路地裏ーー

ほむら「………」

イヤホン「お話しを開始しましょうか?」

ほむら(合図)

盾 ニュルニュル

漬物樽(プラスチック) ドンッ

漬物石(円柱形既製品) ドンッ

SIGザウエル スチャッ

SIG パシュッ

ほむら(22LRの一発、致命的ではない)

逆さ漬物樽(プラスチック) ドンッ

漬物石(円柱形既製品) ドンッ

盾 カチッ

649 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/04 02:46:00.12 fSePARyA0 363/477


ーーとある屋上ーー

さやか キョロキョロ

さやか「うわぁ、ホントにみんな止まってる」

杏子「………」

ほむら「行くわよ」

ーーマミルーム リビングーー

真姫「想像以上」

マミ「え?」

真姫「お茶請けのクッキー、これ手作りでしょう。
   お菓子が趣味とは聞いていたけど、
   これはいいものよ。それに、紅茶も本格的」

マミ「有難うございます」ペコリ

ドンドン

マミ「?」

ベランダガラス戸 ドンドンッ

さやか☆マギカ「エレェーンッッッ!」ドンドンッ

マミ「!? 美樹さんっ!?」

さやか☆マギカ「ああ、マミさん。
        すいませんが入れてもらえたら有り難いんですけど」

マミ「………」チラッ

真姫 コクッ

まどか コクッ

マミ「………何やってるのよ………」ガラッ

650 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/04 02:49:38.58 fSePARyA0 364/477


さやか☆マギカ「お邪魔します」クツリョウテ

ほむら☆マギカ「お邪魔します」クツリョウテ

きょうこ☆マギカ「ちーす………」クツリョウテ

マミ「………」

空中マスケット×100「………」

真姫「取り敢えず、この三人が変身解除して、
   それを確かめてから巴さんが変身を解除する、
   と言う手順でどうかしら?」

ーーとある屋上ーー

漬物石乗せ防音加工逆さ漬物樽(プラスチック) ゴトッゴトゴトゴトッ

660 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/12 21:53:27.30 qO6WuZP50 365/477

さやか「………」セイザ

ほむら「………」セイザ

杏子「………」セイザ

マミ「これは、西木野先生の差し金でしょうか?
   魔法少女同士でこんな事をされたら
   殺し合いになっても文句は言えないんですけど」

真姫「普通に考えても犯罪のやり方で申し訳ないとは思ってる。
   だけど、今回はそうしなければならない理由があるの」

マミ「理由ですか?」ジッ

真姫「あー、もうっ」

マミ「」ビクッ

真姫(とにかく状況が状況で
   本当だったら私だってイミワカンナイorzなんだけど)

真姫「って、私が逆ギレする筋合いでもないんだけど、
   騙し討ちになった事は本当に謝ります、ごめんなさい。
   その上で、とにかく一度全員、話し合うと言う意味でも物理的な意味でも
   同じテーブルについてくれるなら非常に助かるんですけどっ。
   この状態だとどっちにしろ話が進まないし」クルクルクルクル

マミ「………そうですね。
   先日の御恩に免じて今回だけは先生を信じます」

真姫「ありがとう。本当に助かる」

マミ「と、言う訳だから、テーブルで待ってて。
   お茶の用意をするけど、変身したら即座に敵対行為とみなすから」

さやほむら(それでもお茶は用意してくれるんだ)

661 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/12 21:59:05.38 qO6WuZP50 366/477


ーーーーーーーー

テーブル周り コウチャズズッ

真姫「ちょうど、大きなガラステーブル」

マミ「?」

真姫「話を進めたいから、
   全員、この上にソウルジェムを置いてくれるかしら?
   取り敢えず不意打ちはしないと言う証しに」

さやか「………コクッ………」コトッ

ほむら「………」コトッ

杏子「………チッ」コトッ

マミ「………」コトッ

マミ「それでは、一体どういう事か、
   納得出来る様に説明していただけますか?」

真姫「そうね。
   本当の所は、私の方が説明を求めたいんだけど。
   暁美さん」

ほむら「はい」スクッ

マミ「………」ジッ

ほむら「………」スタスタ

マミ(ベランダ?)

キャスターホワイトボード ガラガラガラ

真姫「巴さん」

マミ「はい」

662 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/12 22:04:27.17 qO6WuZP50 367/477


真姫「そもそも、魔法少女とはなんなのか、
   あなたから素人の私に説明していただけないかしら?
   独自に収集した情報はあるにはあるけど、
   まず、この中の最古参であるあなたから正確な情報を確認したい」

マミ「どこまで、知っているんですか?」

真姫「あなたがさやかさんに話した事は、多分全部知ってる。
   それでいいかしら?」

さやか「うん。ごめんなさい、行きがかりと言うか」

マミ「そう………」

真姫「ええ。只、こちらで関わるにしても退くにしても、
   正直情報が中途半端なのが一番困る。それはお互いにそうだと思う」

マミ「………分かりました」

ーー説明中ーー

メガ真姫「つまり………」ホワイトボードヨウマジック

真姫「素質のある思春期の少女がキュゥべえと契約して、
   一つの願いと引き換えに魔法少女になる。
   魔法少女となって魔女を退治する。

   原因不明の自殺や失踪のかなりの部分は魔女が絡んでる、と言うか捕食されてる。
   魔女を退治すると魔女の卵グリーフシードを得られる事がある。

   契約によって得られる魔法少女の変身アイテムがソウルジェムで、
   ソウルジェムは魔法を使う事で濁りを増して、普段の疲労でも濁りが蓄積される。
   グリーフシードはその濁りの基となる穢れを吸収する機能があって、
   吸収した穢れが限度を超えると卵が孵化して魔女が生まれる。

   魔法少女のパフォーマンスはソウルジェムの輝きに比例して、
   ソウルジェムの濁りが強くなるとパフォーマンスも低下する。
   まとめると、こういう事でいいのかしら?」キュッキュッ

マミ「そういう事です」

663 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/12 22:09:31.58 qO6WuZP50 368/477


真姫「これが、あなたの知っている全ての事?」

マミ「ええ、全てお話しした筈です………」

さやか「………」

ほむら「………」

杏子「………」

マミ「………ゴクッ………
   もしかして、私が知らない何か、があるとでも言うんですか?」

真姫「ありていに言えばそういう事ね。
   問題はそのソウルジェム」

マミ「ソウルジェムがどうかしたんですか?」

真姫「そのままの意味だと魂の宝石。
   それが本当に魂なんだとしたら?」

マミ「どういう事ですか?」

664 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/12 22:13:35.35 qO6WuZP50 369/477


真姫「論より証拠。これから一つ、実験をします」

マミ「実験?」

真姫「ええ。最初に言っておくけど、
   この実験自体は安全なものです。
   だから、何かあっても慌てる前に私の話を聞いて欲しい」

マミ「………分かりました」

真姫「まどかさん」

まどか「はい」

真姫「暁美さんとさやかさんのソウルジェムを持って、
   マンションの廊下を遠くに移動してくれるかしら?
   階段を下りても構わない。
   携帯にはいつでも出られる様に用意して」
   二人とも、それでいい?」

ほむら「私は構わないわ」

さやか「………いいよ」

マミ「………なんなの?」

ーーマンション廊下ーー

まどか「………」コツコツ

QB「やあまどか、話は済んだかい?」

まどか「………まだだから、もう少しそこにいて」

QB「僕と契約して魔法少女になるつもりは?」

まどか「ない」

665 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/12 22:18:38.30 qO6WuZP50 370/477


ーーマミルームーー

ほむら「」クテッ

真姫「はい」ササエッ

さやか「」クテッ

杏子「とっ」

マミ「な、何?」

真姫「もしもし、まどかちゃん?
   もう少しだけ遠くに行ってストップ。
   合図したら引き返して」

マミ「美樹さん? 暁美さんっ!?
   これは一体っ!?」

真姫「騒ぐのは少しだけ待って………
   これは………本当に………
   巴さん、自分の目で確認して下さい」

マミ「ええ………
   何? これ、って、嘘? えっ?」ストンッ

真姫「………OK、戻って」

マミ「………」クチパクパク

ほむら「………」パチッ

さやか「ん、んーっ」

マミ「美樹さんっ!?」

ほむら「………やっぱり、いい気分じゃないわね」コキコキ

マミ「どう、言う、事?」ハア、ハアッ

666 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/12 22:22:21.85 qO6WuZP50 371/477


ほむら「取り敢えず、念のためこれを」グリーフシード

マミ「え、ええ。ああ、本当に少し濁ってる。
   そりゃそうよ。だって、今、あなた達………」

さやか「やっぱり、死んでました?」

マミ「………ふざけてるの?」

真姫「全然ふざけていない。
   わきの下にピンポン玉を入れた訳でもない」

マミ「………死んで、ましたよね今………」

真姫「脈無し呼吸停止心音停止、まず心肺停止状態。
   前もって知らなかったら迷わず心肺蘇生除細動で救急車。
   CPA病院でも蘇生できなければ死亡診断書書いてる」

まどか「戻りました………」

マミ「一体、何がどうなってるの?」

真姫「ソウルジェムは魂の宝石。
   これは単なる名称じゃないって言う事よ」スクッ

マミ「イミ、ワカンナイ………」

667 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/12 22:26:10.60 qO6WuZP50 372/477


真姫「最初に言っておくけど、キュゥべえを呼び戻すのは少し待って」

マミ「そう、キュゥべえ!?」

真姫「ええ、キュゥべえに確認したいなら後で幾らでもして頂戴。
   だけど、今だけは私達だけで話を進めたい。
   お願いだから」アタマサゲ

マミ「何か、事情があるん、ですよね?」

真姫「ええ。だから………」

マミ「分かり、ました。
   一体、何がどうなってるんですか?
   みんな、この事を知ってたの?」

真姫「後者の質問に就いてはYes。
   さやかさんが仮死状態になって、それでここにいる面々には発覚したみたいね。
   私はそれを又聞きした。
   第一の質問に就いて、説明させてもらっていいかしら?」

マミ「お願いします」

メガ真姫「ソウルジェムと魔法少女」ホワイトボードキュッキュッ

真姫「ソウルジェムは魂の宝石。
   仮に、この魂を霊魂と解釈すると比較的分かり易い」

真姫「霊魂は、通常は肉体と不可分。死亡して初めて
   肉体から離脱してこの世に幽霊として残るかあの世に迎えられるか」テンシワッカショウテン

真姫「ソウルジェムは、その霊魂、或は生命そのものを宝石の形に凝縮して分離した。
   本来、肉体と霊魂は分離されると死亡状態になる。
   魔法少女の場合は、霊魂であるソウルジェムと肉体が何か電波みたいなもので接続されているから、
   物理的な距離が開くと死亡状態となり、肉体が機能出来る内に再接続すると蘇生する。
   そういう仕組みみたいね」カキカキ

668 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/12 22:31:12.70 qO6WuZP50 373/477


真姫「もちろん、こんな理屈医者として口に出したら廃業だけど、
   それを言うなら魔法少女自体が、と言う事だから。
   それに、医学は医学として、スピリチュアルなイメージと言うか、
   素朴な信仰心とは無縁ではいられない。
   そして、この基本的な原理を説明してくれたのがキュゥべえ」

マミ「キュゥべえが?」

真姫「さやかさんが一度仮死状態になって、
   その時に説明したって事よ。
   つまり、聞かれない限り答えるつもりはない、そういうスタンスみたい」

マミ「そんな………」

真姫「パソコンがあります。
   キーボードを叩き壊そうがモニターを金属バットでホームランしようが
   全体的にマシンガンで蜂の巣にしようが、

   ハードディスク、その中に流れている電流と磁気の極限まで細かい順序。
   それさえ保全出来ていれば、
   壊れた部品を修理交換すれば同じパソコンとして使用する事が出来る。

   理論的には人間だって同じ。
   拒絶反応が出ないクローン人間を培養して、
   損傷した内臓や腕や脚を交換する、なんて医療サスペンスはもう何十年も前から存在する。
   脳、或はその中の何か、それさえ保全出来たら、ってね」

マミ「そんな………それが、魔法少女の、魂? 肉体?」

真姫「そうやって、生命の根源を可能な限り凝縮して、
   攻撃がヒットするポイントを限りなく小さくして、
   肉体は魔法で強化しながらいつでも再生可能な部品として扱う。
   それが、キュゥべえ印の魔法少女と言う名の兵士のコンセプト」

さやか「そう。だから、キュゥべえはソウルジェムの事を私達そのもの、本体、
    この体を脱け殻だって言ってたよ」ギリッ

マミ「ソウルジェムが、私………」

669 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/12 22:36:47.11 qO6WuZP50 374/477


真姫「巴マミさん」

マミ(目と目を合わせて)

真姫「僭越ながらあなたの事情は聴いた。
   あなたはこうやって、私の目の前で生きている。
   幼い子どもの内に亡くなる筈だったあなたが、こうして生きて私に相対している。

   あなたにとって、ソウルジェムの事は細かい事なんかじゃない。
   それは理解する。
   だけど、あなたが生命を繋いだその価値を否定すると言うのなら、
   ソウルジェムなんてどうでもいいと私は言う」

マミ「………」コクッ

真姫「有難う………辛いかも知れないけど、
   この先の話、気をしっかり持って聞いて欲しい」

672 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/22 03:32:08.61 QY7CbO8+0 375/477

杏子「ソウルジェムが魂で、距離が開いたら死ぬ。
   それはこないだの件で分かった事だけど、
   あんたはその前から分かってたのか?」ジロッ

ほむら「………」

真姫「その事も含めて、
   これから続きを話すと言う事でいいかしら暁美さん?」

ほむら「ええ」

杏子「続き、って、これ以上なんかあるとか言うのか?」

さやか「………あ、はは、
    なんか悪い予感しかしないねぇ………」

ほむら「………あなたって、鋭いわ」

さやか「そりゃあ、ねぇ………」アセタラー

マミ「………本当にこれ以上、問題があるの?」

真姫「ある」

杏子「マジかよ」テンヲアオグ

真姫「巴マミさん。取り乱すな、と言っても難しいかも知れないけど、
   どうか今は、説明を聞いて状況を把握して下さい」

マミ「………分かりました」

真姫「ありがとう」スクッ

673 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/22 03:37:32.43 QY7CbO8+0 376/477


ホワイトボード キュッキュッ

メガ真姫「改めて、今ここで共有されている情報をチャートにまとめました。
     暁美さんが配っているのはプリントアウトしたレジュメです」

さやか(こういう仕組みなんだ………)

真姫「問題はここ、魔力の消費や通常の疲労によっても
   ソウルジェムに穢れが蓄積されて濁りが強くなる。
   ソウルジェムが濁ると魔法少女としてのパフォーマンスが低下する。
   だから、グリーフシードに穢れを吸収させてソウルジェムの輝きを維持する事で
   高いパフォーマンスを得る事が推奨されている。
   佐倉杏子さん、この理屈に間違いは?」

杏子「ないね。だから、グリーフシードの確保は最優先、
   集めるだけ集めたグリーフシードにソウルジェムの穢れを吸わせる事で、
   効率的に魔女退治が出来るって事さ」チラッ

さやか「………」

真姫「そう。そして、ソウルジェムの穢れを吸収したグリーフシードからは魔女が孵化する。
   だから、魔女の卵グリーフシードが魔女として孵化する前にキュゥべえに食べさせる。
   これも間違いないですね巴マミさん」

マミ「はい、間違いないです」

メガ真姫「つまり、ソウルジェムは本当に魂の宝石であった。
     それでは、グリーフシードが魔女の卵である、と言う言葉も言葉通りに受け取るならば、
     ソウルジェムの穢れは魔女の卵に成熟を促す栄養分である。
     そういう解釈も成り立ちます」カキカキ

さやか「おーっ」

真姫「卵、と言う言葉をそのまま用いるならば、生物学的な生殖機能が連想されます。
   鶏の卵でも亀の卵でも魚の卵でも………」
   そして、関連するキーワードの中には、
   これ以外にも生殖機能に関わる言葉が存在しています」

674 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/22 03:43:30.57 QY7CbO8+0 377/477


一同「?」クビカシゲ

ほむら「………」

まどか「?」

さや(生殖機能、卵、卵から産まれるとか他の言葉って………)

マミ(卵、生殖機能、って、
   生殖機能、つまり赤ちゃんを作る機能で赤ちゃんを作る方法で………)

ホワイトボード キュキュッ

さやか「女?」ポツッ

真姫「今は虹色の話はおいておいて、
   何のために二つに分類されているのかと言えば、
   最も原始的な分類基準が生殖機能による分類、
   それを表す言葉、そういう事になります」

マミ「あー………」テノヒラポン

杏子「女、って………」

さやか「魔女………」

杏子「そりゃそうだろ。だって、魔女の卵がグリーフシードで
   魔女が孕んでるのがグリーフシードなんだから」

真姫「はいその通り、鶏が卵を孕んで産み落とす、その卵がヒヨコから鶏に成長するのであれば、
   魔女が魔女の卵を産み落としてその卵が魔女に成長する、
   当たり前と言えば当たり前の話です。
   人間から見たら魚の卵に近いかも。
   筋子とか鱈子とか唐墨とか蝶鮫とか、この場合は成熟し過ぎても美味しくないけど、
   頃合いのいい魚を捕まえてその腹を裂いて産卵前、もちろん孵化する前の卵をいただく」

杏子「そりゃそうだな。鮭をシメて
   腹の中から卵取り出してイクラにして食ってるみたいなもんだよな」

真姫「そういう事です」

675 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/22 03:49:19.41 QY7CbO8+0 378/477


ほむら「鮭と言うより蝶鮫どころか
    ホオジロザメならまだマシなレベルだけど」ファサァ

マミ「何の話をしているのかしら?」ジトッ

メガ真姫「失礼、卵は卵、ファンタジックな装いではあるけれど、
     案外言葉通りの理屈付けで成り立っていると言う話です。
     植物ではない大概の動物は卵から産まれる訳ですが、
     人間を初めとした哺乳類にしても、卵細胞から始まって、
     卵細胞から成熟成長して独立した個体として誕生する事に変わりはありません」ランサイボウカキカキ

真姫「そして魔女、魔女の卵であるグリーフシードが孵化するには条件があります。
   少なくとも、退治した魔女から取り出した時点では、
   そのまま隔離して放置しても孵化はしない、これで合ってますか?」

マミ「ええ、私達が持ってるだけなら安全です。
   ソウルジェムの穢れを限界まで吸わせない限り孵化はしません」

メガ真姫「そう、グリーフシードが魔女になる、
     成熟する鍵となるのがソウルジェムの穢れです。
     使い魔が人間を食べる事で魔女に成長する、そういう話も聞きましたが」

杏子「ああ、それで間違いない。
   何人か人間を食べてグリーフシードを孕む」チッ

真姫「と、すると、仮説としてはソウルジェムの穢れは精神的なエネルギー、
   それもマイナスなもの。そういう推測が成り立ちますね。
   ソウルジェムが穢れる要因と魔法と言うスピリチュアルな、
   肉体的な医学常識を超越した存在である事を考えると」

マミ「理屈は分かりませんが、多分それで合ってます。
   ソウルジェムや魔法と心、精神的な揺れは、
   感覚的に言っても密接に結びついていますから」

真姫「つまり、グリーフシードは魔法少女、
   引いては人間の精神から生ずるソウルジェムの穢れと結びつく事によって成熟し、
   魔女として成長を遂げる。
   仮説を言うならば、使い魔が人間を捕食すると言うのも、
   人間ごと最悪にマイナスな精神エネルギーを食い尽くすため、と言う解釈も成り立ちます」

676 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/22 03:53:53.21 QY7CbO8+0 379/477


杏子「まあー、そんなトコかもな」イライラ

杏子「で、何が言いたい訳?」

メガ真姫「人間は、卵細胞から成長して赤ちゃんとして出生し、
     そのままホモ・サピエンス、生物学的な人間として成長します。
     鶏は産み落とされた卵からヒヨコが生まれて鶏に成長します」ヤジルシカキカキ

真姫「つまり、卵、と言うのは未成熟な子どもの中でも一番最初、
   そういう意味にもとる事が出来る、と言う事です。
   多くの生物は、卵から始まりそこから始まらなければ生まれません。

   その意味では、グリーフシードは魔女の子どもの大元、とも言えます。
   そのグリーフシードが大人の魔女として成熟して成長するためには、
   ソウルジェムの穢れを注ぎ込まなければならない。

   ソウルジェムの穢れを注ぎ込まれる事で、大人の魔女として成熟する。
   そういう仕組みになっています」

杏子「だから、分かってるって言うか、
   そんなの小難しく言わなくても私らなら誰だって知ってるよ」

677 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/22 03:57:15.53 QY7CbO8+0 380/477


真姫「魔女の卵を大人の魔女に成熟させる成分或はエネルギーは、
   元々どこにあるものだったかしら?」

杏子「だから、ソウルジェムから吸わせるんだろ?」

真姫「ソウルジェムからグリーフシードに穢れを吸わせる。
   それでは、穢れを吸わせる、
   と言う作業を行わなければどういう事になりますか?」

杏子「ソウルジェムに穢れが溜まって戦いにくくなるけど?」

真姫「………」カキカキ

ホワイトボード「魔法少女=ソウルジェム」

メガ真姫「色々思う所はあると思うけど、この現実は先程確認しました。
     ソウルジェムは魔法少女そのものであると。

     ソウルジェムは言わば魔法少女の本体とも言われるもの、
     少なくともキュゥべえはそう表現しています。

     その、魔法少女そのものに、
     魔女を生み出す穢れと呼ばれるものが多かれ少なかれ常時蓄積し続けている。
     この事実に間違いはないですね?」

マミ「ソウルジェムが魔法少女である、と言うのなら
   それに間違いありません」

さやか「………」ゴクッ

杏子「………」ジッ

681 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/23 00:14:13.82 43V+CPef0 381/477

真姫「そもそも、魔法少女は何故魔法少女と呼ばれるのか?
   この疑問自体はそれ程疑問ではありません。
   私も実物を見ましたが、確かに魔法少女は見るからに魔法少女です。
   その認識に間違いはないですか巴さん?」

マミ「はい。私も何人か知っていますけど、
   大体魔法少女は魔法少女に見える姿をしています」

真姫「なるほど。巴さんは、この中でもヴェテランの魔法少女、
   魔女退治の機会も多かった、そういう事でいいですか?」

マミ「そう、だと思います」

真姫「順序として変な事から尋ねますが、
   巴さんは実際に魔女を見た事はありますか?」

マミ「はい」

真姫「それでは、黒い装束を着て箒に跨って空を飛ぶ老婆。
   あるいは、同じ格好で空を飛んで鰊パイを配達している様な女の子。
   そういう外見の魔女、と言うのは見た事がありますか?」

マミ「いえ、ないです」

真姫「そもそも、魔女と言うのは人間に見えるものですか?」

マミ「絶対に見えません。
   怪物と言うか怪獣と言うか、そういうものです」

真姫「………では、それは外見から雄か雌か判別できますか?」

マミ「………そう言えば、難しいですね。
   確かに、デザインがなんとなく女っぽい魔女と言うのはいたかも知れませんけど、
   基本的にそれと分かる魔女と少ない筈です」

683 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/23 00:19:28.18 43V+CPef0 382/477


さやか「あれ?」

杏子「?」

さやか「それじゃあ、魔女はどうして魔女って言うんだろ?」

真姫(いい質問ですねぇ)

杏子「あ? そう言や、確かに」

真姫「それが魔女であると、誰に聞いたのかしら?」

一同「………キュゥべえ」

真姫「さっきも聞いた事ですが、魔女の外見と言うのは、
   本当にイミワカンナイ怪物、正体不明のモンスターなんですか?」

マミ「ええ………いえ、そうとも言い切れない」

真姫「?」

マミ「魔女は結界の主として住み着いていますけど、
   この結界は魔女ごとに個性的、特徴的ですし、
   そのイメージはある程度私達にも理解できます」

さやか「そう言えば、確か、最初は花で、
    それからお菓子とかテレビとかなんとか………」

マミ「ええ、不気味な花園だったり大量のお菓子があったり………
   結界の中は、そう、ですね。
   むしろ人間が作ったものと言うか、
   そう、人が好きなものを滅茶苦茶に描いた絵画が実体化したって言うか。
   今思えば、なんとなくポスターっぽい様な」

真姫「そんなだったら、
   コンサートホールとかバレリーナの魔女なんかがいても不思議じゃなさそう」

マミ「いてもおかしくないと思います」

ほむら「………」チロッ

さやか「ん?」

684 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/23 00:24:55.17 43V+CPef0 383/477


真姫「結界は割と人間臭くて、魔女自体はモンスターなんですね。
   魔法少女は見るからに魔法少女、魔法を使う女の子に見える。
   だけど、魔女自体は、少なくとも私達の常識では
   その外見だけで魔女と呼称する事は難しい。これで合ってますか巴さん?」

マミ「はい、魔女の外見で言えばその通りです」

真姫「その魔法少女の本体、魔法少女そのものに穢れ、
   と呼ばれるものが蓄積され続けていて、
   その穢れをグリーフシードに限界まで蓄積させると、
   魔女の卵であるグリーフシードは魔女として孵化する」

杏子(なん、だこれ?)

真姫「そして、このチャートには、見過ごせない空白があります」

さやか「空白?」

真姫「ソウルジェムに穢れが蓄積されるとパフォーマンスが低下するから
   出来る限り常時ソウルジェムの穢れをグリーフシードに吸収させた方がいい。
   そこまでは聞きました。でも、その先の事が不明なんです」ハテナカキカキ

さやか「その先の事?」

マミ「………」

真姫「そう。グリーフシードに限界まで穢れが蓄積すると魔女として孵化する。
   それは聞きました。
   でも、その魔女の要素である穢れが
   魔法少女の本体であるソウルジェムに限界まで蓄積したらどうなるか?
   その事を私は誰からも聞いていません」

さやか「………あ………」

マミ「え? ………」

686 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/23 00:30:14.02 43V+CPef0 384/477


真姫「魔女の卵であるグリーフシードは、
   ソウルジェムの穢れを蓄積する事で魔女として孵化します。

   そんな、魔女の素となる様な成分が魔法少女の魂、
   魔法少女そのものに蓄積され続ける事で何が起きるか?
   この情報の欠落は明らかにおかしい。

   ムンテラをやってる立場から見て、
   実際に蓄積される事で害になっている事に就いて、
   それ以上の害があるにせよないにせよ、最悪のある無しも分からない、
   こんな中途半端な告知で済ますって、碌でもない想像しか出来ない」

杏子「碌でもない、ね。
   確かに、魔女を魔女だって言ったのもキュゥべえ、
   ソウルジェムの事も碌に教えなかった奴だしな」

真姫「そういう事よ」

マミ「キュゥべえが、これ以上何かを隠していると?」

ほむら「………現実問題として、
    あるべき情報がすっぱり欠落している、その事は認めるわね」

マミ「それは………」コクン

真姫「さっき、魔女の結界は好きな事を滅茶苦茶に描いた絵、って言ったわね。
   それは、願望、と言う事かしらね?」ガンボウハテナカキカキ

マミ「えっ?」

真姫「ソウルジェムの穢れをグリーフシードに限界以上に吸わせると
   グリーフシードは魔女になる。
   つまり、この穢れは魔女を生み出す、少なくとも魔女の誕生に繋がる成分。
   そんなものが魔法少女の生命、魂そのものに蓄積され続けたら一体どういう事になるのか?」

さやか「それって………死ぬんじゃあ」ゴクリ

マミ「まさかっ!? いや、それは………あり、える………」

杏子「ああー、健康的な事じゃないのは間違いないからな。
   死んでもおかしくないかもよ。
   ま、あたしはそんな真似しないけど」

687 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/23 00:34:01.05 43V+CPef0 385/477


真姫「魔法少女は一つの願いを叶えるためにキュゥべえと契約する………」ホワイトボードトントン

さやか「ん? ちょっと待って?
    魔法少女は、願い、魔女の結界、願望? ………」

杏子「な、に?」

真姫「大概の動物は卵、卵細胞から成長、成熟して雛になり
   子どもになりそして成熟した個体に成長します。

   魔女と言われるものも同じ過程を辿っている。
   グリーフシードと言う卵から始まり、魔女と言う成熟した個体に至る。

   魔女、魔法、魔術、に連なる女、と呼ばれる多分生き物は、
   グリーフシードから始まる成長で成熟した個体である、
   と今は推測されています」マジョセイジュクカキカキ

真姫「では、魔女は、何が成熟した存在なのですか?」

杏子「いや、だから今言っただろ、グリーフシード………」

マミ「………」ミヒラク

真姫「………」ホワイトボードカキカキ

ホワイトボード「姦」

さや「?」

マミ「それって、あの、つまり………」

真姫「女が三人寄って姦しい、と言います」

ほむら「………」プリントハイフ

さやか「国語辞典のプリント………こういう意味」

689 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/23 00:37:29.46 43V+CPef0 386/477


真姫「ええ、この一文字だとこういう意味です。
   女が三人寄って姦しい。ここにいるだけでも四人の魔法少女が存在します。
   ですが、まあ、私は縁があって接触しましたが、
   魔法少女に関する情報は外部に漏洩していない、
   この年頃の女の子がメインターゲットにしては、不自然な程に」

マミ「それは、契約した途端に初期の魔女との戦闘で死ぬ可能性がかなり高い、
   と言う事もあると思います。
   それに、魔法少女はグリーフシード確保の関係もあってかなりの所が個人主義です。
   こうやって四人集まっている事自体、先生の相当な力技ですから」

真姫「その辺の事情も想像はつくけど、それにしても不自然です。
   想像して下さい。あなたに接したのと同じペースでキュゥべえが魔法少女を勧誘する。
   その、魔法少女の素質の持ち主がどの程度希少であるかにもよりますが、
   その状況で魔法少女の事が知られていない、と言う事は不自然ではありませんか?」

さやか「かなり、不自然かも………」

杏子「まあー、下手っぴが調子こいたら即死、
   結界の中で死んだら死体も残らないのが魔法少女だからな。
   いつの間にか綺麗さっぱりなくなってても不思議じゃない、
   って言っても、確かにちょっと、な………」チッ

真姫「そう。契約をしてその事を知っている魔法少女からそれ以外の世界に、
   何か、情報がぷっつり途絶える強力な理由がある筈。
   もっと言うと、ソウルジェムに穢れが限界まで蓄積したらどうなるか?
   今まで、その事を思い付いた魔法少女はいなかったのか?
   いたとしたら、魔法少女の内部ですら、
   どうしてそのアンサーが伝わっていないのか?」

ホワイトボード「魔法少女」カキカキ

ホワイトボード(真ん中二文字に二本線)キュッキュッ

690 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/23 00:42:37.21 43V+CPef0 387/477


一同「………」

真姫「………」コクッ

さやか「はい?」ポカン

杏子「おいおい………」

真姫「少し、考えてみて。魔女は何故魔女と呼ばれるのか?
   魔法を使う女の子が成長したらなんと呼ぶのが相応しいのか?
   その女の子、魔法少女の魂、魔法少女そのものであるソウルジェムに
   魔女を育てる成分が蓄積し続けたら一体何が起こるのか?
   今の魔法少女の肉体は本体から分離してリモートコントロールされている部品に過ぎない。
   魔法少女と呼ばれる存在は、その、ソウルジェムの中に凝縮されている。
   魔法少女に、魔女の成長を促す成分が限界迄蓄積されたら何が起こるのか?」

マミ「………ハア、ハア、ハア、ハア、ハア………」

真姫「巴さんっ」

マミ「………」クルーリ

真姫「………深呼吸して」

マミ「スー、ハー」

杏子「ちょっと待ておい」

真姫「はい」

杏子「魔法少女の事、魔法少女の情報が、
   ソウルジェムに蓄積し続けたらどうなるかって事が、
   そういう事が全然伝わってない、その理由、って………」

真姫「恐らく、あなたが想像している通りの理由よ」

マミ「………それは、西木野先生の論理的な推測ですか?」

真姫「そうでもあるけど、証人もいる」

マミ「証人?」

691 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/23 00:45:51.15 43V+CPef0 388/477


杏子「まさか………」ジロッ

ほむら「………」

真姫(ギリギリまでロジックで外堀を埋めて、
   ほむらちゃんの説明負担を減らしたつもりだけど、
   みんながどう出るか………)

マミ「暁美さん? ねえ、証人、ってあなたの事なの?」

ほむら「そうよ。ソウルジェムの穢れが限界まで蓄積すると、
    ソウルジェムはグリーフシードを生み、魔法少女は魔女になる」

さやか「なんで、そんな事知ってるのよ?」

ほむら「私自身が見たからよ」

杏子「他の魔法少女が魔女になるのを見た、って言うのか?」

ほむら「ええ、そうよ」

さやか「だったら………なんで、その事黙ってたのよ………」

ほむら「ショックが大き過ぎる。
    私の知っている魔法少女は、その事………」

マミ「………」

マミ「………理屈は、合ってる………」

マミ「………」

マミ「………ソウルジェムが………」

マミ「………魔女を、生むなら………」

695 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/27 02:40:28.17 RaFmLECd0 389/477

マミ「………確かめさせて」

ほむら「………」コクッ

マミ「魔法少女は、魔女になるの?」

ほむら「ええ」

マミ「私が、殺して来たのは魔法少女なの?」

さやか「!?」

ほむら「ええ、そうよ」

マミ「………そう」

杏子「契約して魔法少女になって、
   その後は魔女になって後に続く魔法少女に狩られてる。
   だから、ソウルジェムに穢れが限界まで蓄積した後の事は誰も知らない。
   そういう仕組みって事かよ」

真姫「只、死ぬってだけじゃあ辻褄が合わないのよ。
   それだけだと、
   キュゥべえが聞かれないと称して隠している事が少し不自然になる」

さやか「どういう事?」

真姫「素質の大きい小さいはあるみたいだけど、
   奇跡の効力が人一人の命だけだと大問題ではあっても何かがおかしい。

   ここまで凄い奇跡が起こせるなら、元々魔女退治も命懸け。

   わざわざペテンすれすれの事をしなくても、
   ソウルジェムのメンテと魔女退治さえ出来れば即死する訳でもないなら
   文字通り命懸けで願いを叶える女の子も一定数いると思う。
   数は少なくなるけどね」

696 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/27 02:46:59.08 RaFmLECd0 390/477


杏子「ああー、いるだろうよ。
   多少寿命は短くなっても、目先の奇跡に目が眩む奴がな」

真姫「でも、その秘密はここまで秘匿されて来た。
   どうしてかしらね暁美さん?」

ほむら「誰も知らない前提だと、例えソウルジェムが濁っていても、
    身近な魔法少女が突然魔女になって対応出来る魔法少女は稀。
    逆に、その瞬間を見ていない場合、魔法少女が魔女になる、と言う想像が及ばない。
    例え同じ結界に元の魔法少女の脱け殻があったとしても、
    魔女に殺された、としか思えない」

杏子「………その瞬間に対応出来なきゃその場で食い殺される、って訳ね」

マミ「しかも、魔法少女の多くは個人主義、
   魔法少女の事をそれ以外の人に話すケースも少ない。
   基本的にはそれはやらない不文律もある」

真姫「なんか、いわゆるバカッターとかで口滑らす魔法少女も出て来そうだけど」

マミ「普通に考えて只のおかしな人にしか見えないでしょうね。
   そんなネット上で本格的に暴露とか始めても、
   知らない人には信じられないし、
   草の根分けても探し出して口を封じようって魔法少女も出て来そうで。
   魔法の中には探査系とかも色々あるらしいから」

杏子「どっちにしても、他人にバラす様な事じゃないからな」

真姫「………」チラッ

ほむら「………」コクッ

ほむら「そろそろ、詳しく話をさせてもらう。
    キュゥべえの目を盗むのも簡単じゃないから」

さやか「うん」

ほむら「私は、未来から来た」

ほぼ全員「」

697 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/27 02:56:05.96 RaFmLECd0 391/477


ほむら「それが、私の願いだから。
    私はあなた達と出会って、そして、魔法少女になる前に悲惨な結果を見た。
    だから、魔法少女になって過去に戻る能力を手に入れた。

    この、過去に戻る能力は色々と限定されてて条件が揃わないと発動できない。
    それでも、結末を変えようと、今まで何度も時間を巻き戻して、やり直して、
    それでも、上手くいかなくて、そして今に至っている」

さやか「………えーと、悲惨な結末って、つまり、
    あたし達が魔女になるとかそういう………」

ほむら「それも含まれていると思っていい」

さやか「ごめん、なんか面倒かけて」

ほむら「いいわよ、今更。
    そういう訳で、このシステムの事はキュゥべえからも直接聞いた。
    但し、今のキュゥべえは私から聞かれたと言う経験をしていない。

    ここまでの話が疑問なら、後で直接聞けばいい。
    直接聞かれた事には嘘は言わないから。
    只、出来る事なら、私が未来から来た事は伏せて欲しい」

真姫「人間の魂を食い物にし続けて来たゴキブリ宇宙人に、
   出来るだけその正体を直接知っている、
   その理由となる手品の種もカードも見せたくない」

さやか「宇宙人?」

ほむら「ええ。キュゥべえによると、
    この魔法少女と魔女のシステムは、宇宙のためなのだそうよ」

ほぼ全員「」

698 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/27 03:01:34.55 RaFmLECd0 392/477


ほむら「なんでも、エントロピーがなんとかかんとか、
    今の宇宙を維持するエネルギーは目減りを続けていて、何れ宇宙は滅亡する。
    それを回避するために補給するエネルギーは、
    思春期の少女の希望が絶望に相転移する時のエネルギーを採取するのが一番効率がいい。

    その希望から絶望へと変わるエネルギーを採取する仕組みが
    この魔法少女、魔女のシステム。奴はそう言ってた。
    だから、インキュベーター、それが奴の本当の名前」

真姫「インキュベーターは孵卵器、つまり、卵を孵化させる、
   卵を孵化させて魔女を生み出す、
   魔女の卵であるグリーフシードの元になるソウルジェムを少女の魂から生み出して、
   そのソウルジェムをグリーフシードとして孵化されて
   その時のエネルギーを採取するのが奴の本当の役目って事。
   取り敢えずレジュメは作って来たけど」バサッ

マミ「そして、そうやって、
   魔法少女から生み出された魔女を私達は退治して、殺して来た」

真姫「現実のロジックだけを言うわよ。
   リアルタイムの魔女は既に人を食べて街に現れた熊みたいなもの。
   同情の余地はあっても、死者を増やさないために選択をしなければならない」

杏子「笑えねぇな………」

杏子「そして、今度はあたし達が人食い熊になって狩られる側に回る、って事?」

真姫「毒にならない薬は無い。
   完璧に解決出来なくてもマシな選択をしなければならない事もある。
   今すぐに人の命が危うい状況で、
   例え全部が最善でなくても自分が出来る妥当な対応をし続けた、
   それも子どもを責めるなんて出来る話じゃない」

杏子「覚悟が違う、かよ」フンッ

真姫「………明日はお休みね。巴さん」

マミ「………はい」

699 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/06/27 03:07:32.62 RaFmLECd0 393/477


真姫「デザートには最悪過ぎる話になったけど、
   美味しいお茶をご馳走になった。
   明日の午前中、私は又ここに来るわ」

マミ「明日、ですか?」

真姫「ええ、今度はこちらからご馳走したいから。
   だから、明日の午前中、もう一度ここで会いましょう」

マミ「………」

真姫「結構自信あるから美味しいものをご馳走出来ると思うわよ。
   だから、明日の午前中、
   私とお茶を共にするって約束して欲しい」

真姫「色々考える事もあると思うけど、
   明日、美味しいお茶をいただく事を頭に入れておいて欲しい」メヲアワセテ

マミ「………分かりました」

真姫「衝撃的な事実の判明で一杯一杯、
   今日はここまでにしましょう(本当にギリギリになるけど)」

ほむら「………」コクッ

ーーエレベーター内ーー

ガー

杏子「………」

杏子「約束、明日、ね………」

707 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/07/01 03:25:50.44 ZqDxgxJk0 394/477

ーー会合後・マミルームーー

QB「話は終わったのかい?」

マミ「………ソウルジェムが濁り切ったら魔法少女は魔女になる。
   これは、本当の事なの?」

QB「訂正するほど間違ってはいないね」

マミ「どうして、黙ってたの?」

QB「聞かれなかったからね。
   この国では、成長途中の女性のことを、少女って呼ぶんだろう?」

マミ「だから、魔法少女が成長したら魔女になる。
   確かに、簡単な話ね。気付かなかった私が馬鹿だった」

QB「それは少し違う。
   魔法少女の中でも、その事に気づく者は決して多くは無いよ」

マミ「それだけ騙して来たって、
   そこまで言われるといっそ清々しいわね」

旧式拳銃「………」ジャキッ

マミ「あなたは私達の命をなんだと思っているの?」

QB「僕はただ、君達の願いを叶えたに過ぎないよ」

QB「僕との契約で交わした願いは、
   確かに君の心からのものだったはずだ」

QB「叶えた願いの対価を受け取る権利はあってもいいはずだよ?」

708 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/07/01 03:30:55.96 ZqDxgxJk0 395/477


マミ「願いを叶えた対価が、魔女になり他の人を食べて魔法少女に狩られる事。
   魔法少女になって、そんな、魔法少女だった魔女を狩る事。
   確かに、笑えないわね」

QB「その情報の出所や理由も見当が付きそうだけどね。
   どうするんだい? 僕としては………」

マミ「………消えて」

マミ「今はあなたと話すことなんてなにもない。一人にして」

ーー浴室ーー

マミ「………」

シャワー ザーザー

マミ「」ヘタッ

シャワー ザーザー

マミ「………お父さん、お母さん………」ウウウ

ーーベッド上ーー

枕 バフッ

マミ「………」グスッ

マミ「………ソウルジェムが、魔女を生むなら………」

スマホ チャーラララーチャーラララー

マミ(美樹さん?………)

マミ「………もしもし………」

709 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/07/01 03:36:31.19 ZqDxgxJk0 396/477


真姫「もしもし」

マミ「あ………西木野先生?」

真姫「ああ、起きてた?
   ちょっと確認しておきたいんだけど、
   巴さん、アレルギーとか大丈夫だったかしら?」

マミ「え、ええ、特にないですけど」

真姫「そう。お菓子作りが趣味だって聞いたから
   多分大丈夫だとは思ったけど、念のためね」

マミ「そのためにわざわざ?」

真姫「ええ、ごめんなさいね」

マミ「………いえ、わざわざありがとうございます」

真姫「まあ、マミ先輩のハイレベルなお茶会は聞いてるから
   あんまり期待されると厳しいけど、
   それなりに楽しみにしてて」

マミ「はい」クスッ

真姫「それじゃ、又明日」

 ×     ×

ーー朝・マミルームーー

目覚まし pppppppp

マミ「………」カチッ

710 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/07/01 03:41:47.05 ZqDxgxJk0 397/477


浴室ドア「♪ー♪ー」ザーザー

トースター チン

冷蔵庫ドア ガチャ

マミ(野菜ジュース野菜ジュース)

掃除機 ガーガー

ピンポーン

マミ「はーい♪」パチン

ツインドリル縦ロール シュルルルッ

ーーーーーーーー

マミ「いらっしゃい、美樹さん鹿目さん、西木野先生」

さやか「お邪魔しまーす」

まどか「お邪魔します」

真姫「お邪魔します」

さやか「先生が作ると思った?
    残念、さやかちゃんでした」

マミ「………」

さやか「えーと」

マミ「期待してるわ」ニコッ

さやか「アハハハハ」アセツツーッ

まどか「ウェヒヒヒ………」ツツー

711 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/07/01 03:45:17.66 ZqDxgxJk0 398/477


ーーリビングーー

真姫「具合はどうかしら?
   昨日は色々洒落になってなかったから」

マミ「平気、と言えば嘘になりますけど、
   なんとか大丈夫だと思います」

真姫「そう。少しばかり説明を省いたけど、
   いつもご馳走になってるから、
   今日はさやかさんとまどかさんがご馳走したいって」

マミ「そうですか。楽しみにさせてもらいます」

マミ「………西木野真姫先生」

真姫「はい」フフッ

マミ「確かに、昔の映像とかと同じ人ですね」フッ

真姫「あんな頃もあった」

マミ「すごく可愛くて、格好良かったです」

真姫「有難う」

ーーマンション廊下ーー

QB「………」

715 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/07/02 02:23:18.18 Kg/ihob/0 399/477

ーーーーーーーー

まどか「出来ました」

さやか「お待たせー」

カチャカチャ

マミ(真っ白に粉砂糖を振ったスポンジケーキ)

マミ(………ジャム?)

真姫「それじゃあ」

一同「「「いただきます」」」

マミ(濃い目の紅茶をお湯で割って………)

マミ(スプーンで甘いジャムを舐めて、その甘味でお茶をいただく。
   苺の原形が残ってる、ジャムと言うよりシロップね)

マミ(オレンジに近い焼き色のスポンジケーキ。
   上は粉雪みたいに真っ白で、それ以外は飾り気の無い素朴な作り)

マミ(それを切り分けて………)

マミ(もったりと練ったスポンジの素を型に途中まで入れて、
   その上に林檎を並べてから残りのスポンジを注いで焼き上げた)

マミ(林檎は銀杏に切って甘く炒めたもの。
   薄い焼き林檎とスポンジのシンプルなケーキ)

さやか「どう、かな?」

マミ「ええ、美味しいわよ。
   シンプルな分素朴な味わいで」

716 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/07/02 02:28:30.64 Kg/ihob/0 400/477


まどか「良かったぁ」

マミ「これは西木野先生が?」

まどか「はい、先生から教わって」

マミ「お仲間から教わったものですか?」

真姫「ええ。正直、私が作ってもあれには遠く及びません」

さやか「先生がそんなだから、
    あたしも正直厳しいんだけど、どう、ですかねマミさん?」ウェヒヒヒ

マミ「そうね………」

マミ「これ、無理にソフトに作ったでしょう。
   素朴さが売りなんだから、野暮ったいぐらいでちょうどいいんだけど」

さやか「ええ、なんか最初に作ったのがベタ甘になっちゃいまして」

マミ「うん。作りがシンプルな分、味付けに少しコツがあるのよ。
   今度、一緒に作りましょう」ニコッ

さやかまどか「「はいっ」」

真姫「いい、パートナーが出来たわね」

マミ「はい」クスッ

さやか「………」

ガバッ

マミ「?」

さやか「………」キリツ

さやか「有難うございましたっ」ガバッ

マミ「え?」

717 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/07/02 02:37:31.02 Kg/ihob/0 401/477


さやか「マミさんのお蔭で、私もまどかも、命が助かりました。
    マミさんに魔法少女の事を教えてもらって、
    それで、仁美を、大切な友達を助ける事が出来た。

    なんか、知らない内にかなりとんでもないもの背負っちゃったけど、
    それでも、みんな生きてます。
    あのまま、仁美とお別れなんて絶対嫌だったから」

まどか「わたしも同じです、ありがとうございました」ペコリ

マミ「美樹さん、鹿目さん………でも………」

さやか「とにかくっ、それだけでも掛け替えのない、
    本当なら一生頭上がらないぐらい滅茶苦茶大事な事です。
    それが重いって言うならすいませんけど、
    でも、その事だけはもういっぺん、きちんと言わせてもらいます。

    なんか凄く色々マイナスの事あったけど、
    それでも、あたしにとっては掛け替えのないプラスだったって。
    本当に、有難うございました」

マミ「………有難う………どういたしまして」

さやか「まだまだ頼りないかも知れないけど、
    それでも、これからもマミさんと一緒に魔女を退治して、
    たまにはこんな風にあたしがマミさんにご馳走したりもしたい」

まどか「わたしも、魔法少女にはならなくても、
    それでもマミさんの、お友達で、いいですか?」

マミ「ええ、こちらこそ。
   私だって、本当は怖くて頼りなくて、そんな魔法少女よ。
   そんな私でも、一人で無理して頑張る、必要が、ない、って………」ポロッ

さやか「マミさん?」

マミ「ごめん、なさい。有難う、本当に。
   美樹さん、鹿目さん先生」ウウウッ

718 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/07/02 02:42:46.74 Kg/ihob/0 402/477


真姫「あなたは、もう、一人じゃない。
   命懸けの魔法少女でも、だからこそ、
   ずっとずっといつでも賢くて可愛くて格好いい立派な先輩でい続ける必要なんてない。
   それって、結局パンクするのがオチだから」

さやか「何と言うか、マミさんがてっぺん取ってる時って
    実はちょっと抜けてるとか、ちゃんと分かってますから」

マミ「なんですってぇ」ククククッ

さやか「すいませんっ」フフフッ

マミ「………先生、仕掛けましたね美樹さんの事?」

真姫「………聞いただけよ」

マミ「聞いた?」

真姫「ええ、マミ先輩がどういう人で、
   さやかさんがどう思っているか。
   その事を聞いてみただけ。
   一度ご馳走しよう、って事になって、
   それでいいレシピを紹介したりはしたけど」

マミ「そう、ですか。やっぱり西木野先生、
   賢くて、そして強いんですね」

真姫「強い、のかしらね?
   只、ちょっとばかり年食ってるだけかも知れない。
   もう、すっかりあなた達が眩しいおばさんだから」

マミ「………」

まどか「………ウェヒヒヒ………」

さやか(普通に反応に困る)

真姫「私が大事な人の命を直接扱っていても、
   やっぱり失敗した事未熟だった事後悔した事、色々ある。
   もう、泣く事も少なくなったけど、それでも、
   ソウルジェムじゃないけど胸の奥に溜まり続けてるのかも知れない」

719 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/07/02 02:47:09.12 Kg/ihob/0 403/477


マミ「………」

真姫「私は能力と判断の限り患者に利益すると思う養生法をとり、
   悪くて有害と知る方法を決してとらない。

   細かい方法論や優先順位は色々あっても、
   それでも、このルールだけはブレない様にして、
   今、自分の出来る事、やるべき事、自分だけでは出来ない事、
   それを見極めて一つ一つマシな選択をするしかない。

   それが、トータルして少しでも後悔を減らす唯一の方法」

マミ「………」コクッ

真姫「例え素人より何かが出来てそれを誇りとして研鑽していても、
   絶対の万能な力や人間なんて存在しない。
   ましてや、あなた達はまだ子ども、
   忘れそうになるけど、私も昔は子どもだったから」

マミ「後悔、して来ました色々と、
   助けられなかった事色々」ズズッ

マミ「忘れられないけど、
   それでも、少しでも誰かを助けられたら、って。
   でも、それも、私が生き残るために魔法少女を殺して、そういう事だった」

真姫「その魔女になった魔法少女も、かつては希望を願ったのよね。

   まず、昨日も言ったけど、
   現状では精神的に厳しいけど仕方がない、と言わざるを得ない。
   ソウルジェムが濁ってあなた達が魔女になっても被害が増えるだけだし、
   哀しい魔女を退治せずに放置しても、やっぱり犠牲者が増えるだけ。

   暁美さんに確認した限りだけど、
   魔女になった魔法少女を殺す、以外にどうにかする手段は今の所存在しない。
   そんなものが存在しているなら、
   今頃もう少しマシな事になってるから本当だと思っていい」

さやか「だよね。昨日も話したけど、それならもっと色々知られていい筈。
    キュゥべえの奴………」

マミ「それが、現実なんですよね」

720 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/07/02 02:50:17.39 Kg/ihob/0 404/477


真姫「ええ、そうよ。あなたがかつての魔法少女を殺して来た事も、
   その事によって、
   恐らくは殺した数を大きく上回る罪なき人々の命が救われた事も、
   そして恐らく、客観的に言ってそれが一番公共の利益に適うマシな選択だった事も」

マミ「………納得、しなきゃいけないんですよね………」

真姫「簡単になんて割り切れないわよ。
   仕事柄、人の、子どもの命が目の前で零れ落ちて、
   理屈ではそれが仕方がない。そういう経験は何度もしているけどね。

   どうしようもない危険な感染症とか
   死にそうな人達の中からでも助ける順番を選ばざるを得ない大きな事故とか、
   そんな事になったら誰を助けて助けないで見殺しにするか、
   もっと厳しい選択も迫られる。

   本当はあなた達みたいな子どもにそんなものを
   常時おっ被せてるのは間違ってるんだけど、
   それも、この事に関しては本当に無力な私は、
   正しくない現実から辛うじてマシな選択をせざるを得ない。

   安易に謝ったり、理解出来るとも言えないぐらい」

マミ「いえ、その言葉だけでも」

さやか コクッ

マミ「それしか、ないんですよね。
   でも、少し、楽になったかも知れない。
   だって、そこまで踏み込んだ事とか、話した事もなかったから」

さやか「少しでもマシな選択になる様に………
    魔法少女としては全然頼りないかも知れない、けど、
    それでも、あたしがマミさんを手伝います。
    マミさんが少しでも辛くない様に、
    あたしも独りじゃ厳しいし」

721 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/07/02 02:53:28.58 Kg/ihob/0 405/477


まどか「わたしは………」

さやか「うん、まどかはさ、そうやっていてくれるだけでも、
    あたしの事なんか、荒れてた時は本当に酷い事とかも言っちゃったよね。
    それでも、あたしの事を見捨てずにいてくれた。
    それって、魔女と戦ってるよりずっと強いのかも知れない」

まどか「ウ、ェヒヒヒ」

真姫「それじゃあ、そろそろ。
   流石にこのケーキのサイズと人数じゃあバランスに問題あるわね」

スマホ スッスッ

真姫「また、ベランダでいいかしら?」

マミ「ええ、このサイズだと、
   深刻な問題の前にウエストがソウルジェムに響きそうですから」

ーーーーーーーー

杏子「へぇー、まあまあかな」ムシャムシャ

さやか「ほぉー、思い切りゴチになっててそれか?」

まどか「どう、かな。ほむらちゃん?」

ほむら「…………………美味しいわ………………」

まどか ホッ

ほむら「………」ポロッ

さやか「?」

ほむら「………」ポロッ、ポロポロ

まどか「ほむら、ちゃん?」

722 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/07/02 02:57:41.40 Kg/ihob/0 406/477


ほむら「ごめん、なさい。
    みんなでこうやって、お茶会が、なんか、凄く、幸せで。
    私、なんか最近、涙腺が急に緩くなって、みっともない………」グスッ

マミ「………」スクッ

フワッ

杏子「………」フンッ

マミ「みっともなくなんてないわ」キュッ

さやか(頭、すっぽり抱き締めてもらって)

マミ「泣きたくもなる、って言うか、私もついさっきまで泣いてたぐらいだから。
   そうじゃなくても、魔法少女になってから後悔に泣いた事なんて何度もある。

   まして、魔法少女の真実を知って、それで悲惨な現実を何度も何度もやり直した、って、
   どれだけ辛かったか、想像もつかないもの。

   暁美さんがそうせざるを得ない様に、
   暁美さんが会った未来の私も先輩として至らなかったんだと思う」

ほむら「それは………」ウウウッ

マミ ナデナデ

マミ「落ち着いた?」

ほむら「はい」グスッ

杏子つティッシュソッポムイテ

ほむら「有難う」チーン

ほむら「………」グシグシ

ほむら「話がある」

さやか「うん」

723 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/07/02 03:00:42.53 Kg/ihob/0 407/477


ほむら「ワルプルギスの夜が、この見滝原に来る」

さやか「ワルプル………」

マミ「伝説的な巨大魔女ね」

ほむら「ええ、巨大な、物凄く強力な魔女で、結界から必要とせずにこの世界に現れる。
    巨大な台風が周囲を取り巻いて、都市を一つ壊滅させる程の被害をもたらす」

さやか「………って、それって、ヤバイじゃんっ!!」

マミ「ええ、本当に現れるんだったら、魔法少女として絶対退治しなければならない。
   じゃないと、とんでもない被害が発生する。
   いつ来るかは分かってるの?」

ほむら「恐らく………日」

さやか「って、もうすぐっ!?」

ほむら「ええ。最初に言っておくけど、逃げたいなら逃げなさい美樹さやか。
    ルーキーのあなたがあの修羅場にいて、役に立つのか足を引っ張るのか。
    いのちが助かるにこしたことはない」

さやか「ふんっ、ペース戻って来たんじゃないの泣き虫転校生。
    お礼は言っておくけど、逃げたりはしないよ魔法少女として、
    マミさんを手助けする、って誓ったばかりだから………!?」

ほむら(胸倉っ)

杏子「吹いてんじゃねーぞひよっこ。
   ひよっこ抱えて馬鹿強い魔女と戦うってどういう事だか分かってんのか?」グイッ

さやか「分かってる。マミさん、お願いします」グッ

マミ「厳しく鍛えるわよ」

杏子「………あたしは前からこいつに頼まれてたから。
   もらうモンもらってるし今更反故にはしねーよ」チッ

ほむら「有難う、助かる」

724 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/07/02 03:03:47.77 Kg/ihob/0 408/477


まどか「わたしは………」

ほむら「まどかは家族と一緒に避難していて。
    出来れば見滝原を離れていて欲しいんだけど、口実もないし難しいでしょうね。
    ………間違っても、魔法少女の契約だけはしないで」

まどか「うん………」

ほむら「これがもう一つ、まどかは絶対に魔法少女の契約をしてはいけない」

さやか「分かってる。こんだけ問題あり過ぎるんだからね」

ほむら「その問題が桁外れなのよ。まどかの魔法少女の素質の事を聞いた?」

マミ「ええ、キュゥべえは鹿目さんは非常に高い素質を持っている、って」

ほむら「魔法少女の素質が高過ぎるんです。
    結果、魔女としての魔力も桁違い」

さやか「あ………」

杏子「どんぐらい、なんだ? ワルプルギス………」

ほむら「だから桁が違うわ。ワルプルギスは都市一つ壊滅させるけど、
    私の見た限り、それを秒速でやってのける。
    キュゥべえは、世界そのものを数日で、と言ってた」

さやか「いや、いやいや、ちょっとそれ………マジ? ………」

ほむら「………」コクッ

マミ(力強くて、哀しい目)

真姫「決まりね、都市一つ守って世界滅亡じゃ洒落にもならない。
   分かったわねまどかさん」

まどか「ウェ、ヒヒヒヒ………」コクン

さやか「そりゃまあ、笑うしかないわ………」

マミ「それじゃあ、私達でワルプルギスの事、考えないと」

726 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/07/02 03:11:40.46 Kg/ihob/0 409/477

真姫「私はそろそろ失礼させてもらう」

マミ「色々、有難うございました」

真姫「ええ、これから仕事、救命の夜勤。
   又、只の人間の限界を覗いて来る。
   あなた達と関わって、正直心にきついものはあるわよ。
   奇跡と魔法、誰よりも心から欲してそれが得られない。
   そういう場所が私の職場、戦場だから」

マミ「………覚えています。もう、具体的な事も覚えていないけど、
   それでも、私が助かった事だけでも、大事に思ってくれた。
   私のために一生懸命関わってくれた。
   それが温かかった事も、辛かった事も。お仕事、頑張って下さい」

真姫「行ってくる」

734 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/04 02:46:10.02 zi/b9lXW0 410/477

ーー帰路ーー

ほむら「………」

さやか「ちょっと、転校生」

まどか「………」

ほむら「何かしら?」

さやか「ちょっと、顔貸してくれる?」

ーーカラオケボックスーー

ほむら(………大体、考える事は同じね)

まどか「ほむらちゃん」

ほむら「何かしら?」

さやか「さっきさ、まどかが魔女になった時の事、話してたよね」

ほむら「ええ」

まどか「わたしが魔女になった時の事、知ってるの?」

ほむら「ええ、さっき話した通りよ」

まどか「………そう、なんだ」

ほむら「あくまでまだ訪れていない未来の話。
    そして、私が知っている未来の中でも例外的な話よ」

735 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/04 02:51:16.94 zi/b9lXW0 411/477


さやか「例外?」

ほむら「ええ。まどかか魔女になる事は滅多にないわ」

さやか「でも、魔法少女はソウルジェムが濁り切ると魔女になるんだよね」

ほむら「そうよ。だけど、まどかはその前にワルプルギスの夜に挑んで命を落とすか………」

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「魔女になる寸前のあなたのソウルジェムを、私が撃ち抜いた事もある」

さやか「ちょっと、それって」

ほむら「ええ、私がまどかを、殺した。
    ソウルジェムが限界を迎えて、今にも魔女が生まれる。
    そういう状況で………事情を知ってる魔法少女として、
    やむを得ない、選択と言う奴ね」フアッ、サッ

さやか「声、震えてるよ。あんたの顔も見えないし。
    転校生はまどかの事知ってた? 仲間だった?」

ほむら「仲間で………大切な、友達だった………」

さやか「だから、殺した?」

ほむら コクッ

ほむら「大切な人を、大切な人達がいるこの世界を傷付けたくない、
    それが、まどかの願いだった。
    あの時の私は、まどかに頼まれた通りにする事しか、出来なかった」

さやか「うん、まどかならそう言うんじゃないかって、そう思う」

ほむら「今のあなたにとっては、私は得体の知れない転校生
    イミワカンナイ、気持ち悪いだけかも知れない。
    それでも、あなたを私に守らせて」

736 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/04 02:56:48.94 zi/b9lXW0 412/477


まどか「………」キュッ(ほむらの両肩掴む)

まどか「………有難う。
    ごめんね、未来のわたしが、ほむらちゃんにそんな辛い思いをさせて」

ほむら「まどか………」ジワッ

まどか「それに、ほむらちゃんはわたしの、今のわたしの大切な友達だから」

ほむら「まどか………」ウウッ

さやか「だからさ、ワルプルギスの夜なんて、
    この正義の魔法少女さやかちゃんがぱぱーんって退治しちゃうんだから、
    まどかは大船に乗ったつもりで見ててよ」

まどか「ウェヒヒヒ………」

ほむら「エエ、トッテモキタイシテイルワ、ミキサヤカ」

さやか「何かなー、その、如何にも(棒)って書かれてそうな台詞は?」

ほむら「あら、書かれてないって事は作者が書き忘れたのかしらね?」ファサァ

さやか「このおっ! ま、そういう事だから、
    ワルプルギスとかはあたし達に任せて
    まどかは後ろであたし達に守られててちょうだい」

まどか「守られて………」

さやか「そりゃあねぇ。だって、
    まどかはあたしの嫁になるのだぁーっ」ワッシャワッシャ

まどか「さやかちゃあんっ」ウェヒヒヒ

ほむら「………」

さやか「あー、そこのナイト様二号、
    最終決戦では間違って後ろからあたしの事撃ち抜いたりしないよーに」

ほむら「心配ないわ」

737 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/04 03:02:14.28 zi/b9lXW0 413/477


ほむら

    狙いを外して

    後ろからあなたを蜂の巣にするとかミサイルで木っ端みじんにするとか、

    そんな事は絶対にありえないから」ファサァ

さやか「そりゃどーも」スッ

さやか「………」

さやか「だからさ、まどかはあたし達に守られるお姫様、って事で。
    もしかしたらそれで負い目とかあるかも知れないけど、
    それでも、頼むわ。あたしも、それにこいつも、
    魔女になるとかじゃなくても心から願ってるから」スッ

まどか「………」スッ

さやか「ほら、転校生、暁美ほむら」

ほむら「………」オズオズ

さやか グイッ

三つの手が重なり、三人が頷く。

738 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/04 03:05:37.70 zi/b9lXW0 414/477


 ×     ×

ーーテレビ局スタジオ内ーー

にこ「到着待ち?」

AD「ええ、飛行機が遅れているとかで、すいませんが」

ーー廊下ーー

コッコッコッ

にこ「………」

英玲奈「やあ」

にこ「うん」

英玲奈「少し、かかりそうだな。
    今日の収録の目玉だ、いなきゃ始まらない」スマホ

にこ「ちょっと、面倒な事になってるわね」

英玲奈「雪かきで済むトラブルなら良かったんだがな」

にこ「あったなぁ、そんな事も」

ツバサ「いたっ!」

英玲奈「ん?」

ーー楽屋ーー

にこ「どうしたニコ私まで?」

ツバサ「何やってんのよあんた達っ!?」

にこ「はあっ?」

739 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/04 03:08:54.13 zi/b9lXW0 415/477


あんじゅ タブレット

英玲奈「動画サイト?」

ツバサ「音ノ木坂アイドル研の現役組が、
    改築予定の学校でイベントやってるのよね」

にこ「ええ、昔から付き合いのある学校だから、
   改築前にイベントやろうって体育館で」

あんじゅ「騒ぎになってるわねぇ、
     Legend μ‘sがサプライズ登場って」

英玲奈「本当だ………手を振っているのは彼女達………
    Live映像?」

にこ「まあ、そういう事もあるんじゃない?」

英玲奈 カタカタカタカタ

ノートPC カタカタカタカタ

英玲奈「確かに、音ノ木坂のアイドル研と向こうの学校では公式扱いだ、
    事前告知の上で動画配信もされてる。
    但し、Legend μ‘sはシークレット扱い。
    知っていたのか?」

にこ「まあね。向こうの学校とも知らない間柄じゃないし、
契約の関係で私は行けないけど、話ぐらいは聞いてたわ」

740 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/04 03:12:50.44 zi/b9lXW0 416/477


英玲奈「なるほど………アルゼンチン・タンゴ?」

あんじゅ「わお、園田さんの男役にドレスの南さん」

ツバサ「マッキーのピアノ生演奏。
    音もダンスもばっちり決まってるじゃない」

にこ「やるじゃない。ことりはいい女になったし、
   未だにこれでキャーキャー言われるぐらいイケてるって」

英玲奈「ダンスの次は現役組のパフォーマンス、ボカロ曲か」

あんじゅ「新曲ね。これってマッキー、じゃあないわよね」

にこ「当然でしょ、流石に余裕ないわよ」

ツバサ「でも、相当クラシックを嗜んでる人間の新曲よ。
    ピアノと言うより………」

744 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/10 03:14:32.53 AWKvSRzv0 417/477

ーー志筑邸・仁美ルームーー

PC ♪ー♪ー

仁美「ううっ」グスッ

恭介「志筑さん」

仁美「ごめんなさい、せっかく上手く行ったのに」

恭介「うん、志筑さん、みんなのお蔭だよ。有難う」

さやか「ホント、大変だったよマジで」アハハ

仁美「西木野先生のお誘いでしたのね」

恭介「うん、最初に作ったのを初心者向けの所で上げてみて、
   それを先生にも教えたら、
   すぐにこれを基に表に出せる曲を作れるか、って?」

さやか「それで、ホントに作っちゃったんだ」

恭介「うん。流石に最初は躊躇したけどね。
   こっちの方じゃ初心者だし、ましてこの腕に慣れた訳でもないし、
   μ‘sに繋がる、って言ったら、
   詳しくない僕だって生半可じゃ済まないって分かるから。
   何より日数が全然なかったし」

さやか「にっぽんいち、だもんね。
    それでもやった、やり遂げちゃったんだ」

恭介「やっぱり、音楽の事で頼まれて、
   それも、事情も音楽も知ってる西木野先生から頼まれて、
   もちろん、最大限に配慮した言い方だったけど、
   それでも、やっぱり断るのは………」

745 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/10 03:19:42.32 AWKvSRzv0 418/477


さやか「男が廃る?」

恭介「それが正直な所だった。
   音楽で頼られる、その事を諦めたくなかった」

仁美「立派、ですわ。わたくしも畑違いでしたけど、
   それでも、こんなに喜んでいただいて、わたくしが聞いても」

恭介「ありがとう、志筑さん。志筑さんのお蔭でもあるから」

さやか「仁美、ピアノ弾けるもんね」

仁美「わたくしのは淑女の嗜み、
   上条君のイメージにはとても追いつきません。
   お手伝い程度で上条君の言葉と譜面を音に直すのがやっとでしたわ」

恭介「うん。正直、上手くいかなくて
   何回か志筑さんに当たったり酷な事を言ったかも知れない、
   それは本当にごめん」ペコリ

仁美「とんでもない。あくまでわたくしの意思で
   それを分かっていて上条君を手伝うと言ったんですから。
   ピアノは淑女の嗜み、あの方もそうだと伺いました」

恭介「うん。当時は限られた練習で、ましてやアイドルは全くの畑違い。
   そこから、セミプロ、実質的な専門校までも押し退けて
   あれだけの結果を出した。
   自分で弾けなくなった、ってのは大きいけど、
   それでも、そこまでやられたら夢ぐらい見たくなる」

さやか「それなら、第一歩は成功、って所かな」

恭介「さやかのお蔭だよ。
   何しろ腕がこれだし、アイドル関係は疎い方だったから。
   ネットとかなんとか、集められるだけの情報集めて整理してくれて、
   本当に助かった」ペコッ

さやか「うん。これって情報戦でもあるからね。
    もちろん、中身の音楽が駄目なら話にならないけどさ、
    ちょっと気合い入れさせてもらったよ」

恭介「うん、有難う」

746 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/10 03:25:18.78 AWKvSRzv0 419/477


仁美「ふふっ、確かこういうんでしたわね。
   みんなで叶える物語」

さやか「そう」

仁美「但し、世の中には一等賞以外は譲れない、
   そういう唯一無二の闘いもある、その事はお忘れなき様」ウフフフフ

さやか「とーぜん」フフフフフ

恭介 カチッ

電子キーボード ♪ー♪ーアメリカンネコネズミアニメ

さやか「なーに他人事ぶっこいてんのかなぁこのボカロ馬鹿は?」ヒクヒク

中沢「オー、エリーチカノンタンスッッッゲェェェェェ」

恭介「さやかと一緒に色々調べてくれてありがとう。
   こっちの方はよく知らなかったけど、男子にも女子にも凄い人気だって言うから、
   両方の視点の情報が集まって助かった」

中沢 オヤユビグッ

ーーテレビ局楽屋ーー

英玲奈「アハハハハハハハハ」

あんじゅ「何これアハハ」ワライナミダ

ツバサ「前座のコント、終わったみたいよ」ククククク

にこ「もーっ、真面目なウエイター絵里とすっとぼけた希バニーって、
   二人の掛け合いが前座でそのまま司会で」

英玲奈「ほお、コサック・ダンスか」

あんじゅ「りんぱなコンビで、可愛いわね」

にこ「いい感じにコミカルじゃない」

747 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/10 03:30:36.10 AWKvSRzv0 420/477


ツバサ「流石ね。一線退いてた筈なのに、
    よくここまで仕上げて来て」

英玲奈「うむ、生真面目な感じがむしろ面白い小泉花陽も見事なものだが」

あんじゅ「星空凛、一見わたわたにコミカルなのが、
     実は安全に計算して踊ってる。
    それに共鳴して小泉さんの真面目なダンスも面白く見える」

ツバサ「ええ、この一見ドジッぽい動きを事故なくコントロールしてやるって、
    並の運動神経じゃ出来ない、正に猫のバランス。
    演奏の西木野真姫も崩れそうで筋の通った音楽をよくやってる」

英玲奈「………」アゴユビナデ

にこ「どうかした?」

英玲奈「いや………」

あんじゅ「さあ、現役期待の四人組よ」

にこ「………ええ、いい線いってるわ、
   可愛いし歌も上々。これ、人気出るんじゃない」

ツバサ「ええ、手強い事になりそう」

にこ「そっちはどうなの?」

英玲奈「無論、来るべき時のため、最高を目指している」

あんじゅ「楽しみにしてていいわぁ」

ツバサ「そういう事。ええ、仕上がりは上々よ」

にこ「それは、楽しみにしてるわ」

748 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/10 03:33:58.52 AWKvSRzv0 421/477


英玲奈「ああ………又だ」

にこ「ん?」

あんじゅ「そうねぇ」

ツバサ「うん、演し物と演し物の間のマッキーのピアノ」

にこ「ああ、間に弾いてるわね」

あんじゅ「間奏、って言えばそうだし、
     一応音楽にはなってるんだけど………」

にこ「そう言えば、聞いた事ないわね。オリジナル?」

英玲奈「………」ユビトントントンユビトントントン

にこ「同じ曲、って言うか、曲にしては………」

ツバサ「短い音を幾つか」

にこ「って、次、なにするつもりこれっ?」

英玲奈「マジックショー………」

あんじゅ「キリッとしたウエイターとおとぼけバニーのマジックショー、
     なかなかテンポよくやってるじゃない」

ツバサ「あらあら、ウエイターがコサックコンビに
    箱に押し込められてるんだけど」

にこ「いや、今度は希バニーも隣の箱に、
   ここで海未登場?」

英玲奈「若武者か、相変わらず凛々しいな」

749 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/10 03:37:42.82 AWKvSRzv0 422/477


ツバサ「えーっと、りんぱなコンビはちょこまかと」

にこ「床に刀を刺しまくってるわね」

ツバサ「昔、この状態で襲撃されて終わった将軍がいたって聞いたけど」

あんじゅ「そして、引き抜いて、刺す!!」

にこ「いや、海未気合い入れ過ぎだって」ミミイテー

ツバサ「迫力満点素晴らしい臨場感ね」

にこ「あーあー、ぐっさぐさ、
   はい、あっちからエリーチカ出て来ましたぁ」

英玲奈「ああ、東條も当然………
    ほう、衣装交換済みか」

にこ「へぇー、希のウエイターも意外と似合う」

英玲奈「ああ、そちらも似合っている、が、こ、これは………」

あんじゅ「クオーターで樽化を免れて子ども二人産んでこれ、って………」

ツバサ「奇跡も、魔法もあるんだよ………」

にこ「否定するほど間違ってはいないわ………」

750 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/10 03:40:56.84 AWKvSRzv0 423/477


英玲奈「また、間奏か」

にこ「………ちょっと、長いわね」

あんじゅ「何か、待ってるみたいねぇ」

ツバサ「テンポもダレ初めて、お客も少しザワついて来たわ」

にこ「何か、あった?」

ツバサ「始まった」

にこ ホッ

英玲奈「ジャズ・スタンダードか」

あんじゅ「大昔の映画ねぇ」

英玲奈「ああ、ノスタルジックなピアノ、に………」ジッ

あんじゅ「………………わお……………」ホウッ

ツバサ「そりゃあ、ねぇ」フフッ

にこ コクッ

ツバサ「彼女抜きじゃ、始まんないでしょ」

にこ「デッショー、って冷や汗搔いてるわよ本当に」

英玲奈「言えてる」

あんじゅ「ね」クスッ

シミジミ

751 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/10 03:45:23.99 AWKvSRzv0 424/477


ツバサ「シメは新旧合同パフォーマンス来たわ」

英玲奈「オー」

あんじゅ「フルハウス」パチパチパチ

AD「到着しましたー」

にこ「ありゃー」

ツバサ「それじゃあ、私達はプロの仕事といきましょうか」

にこ「とーぜん。小娘と片手間なんて十年早いって見せてやるわよ」

英玲奈「だな」

あんじゅ「私達の道は、こっちだものね」

755 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/24 02:25:01.41 jlQcatfA0 425/477

ーー居酒屋小上がりーー

ネーアレ
ミューズ?
オー
シャメシャメ
ヤメトケッテ

\かんぱーいっ!!/

キャッキャッアハハハッウフフフッ

スマホ ♪ー♪―

真姫「もしもし」

あんじゅ「はぁーい」

英玲奈「久しぶりに、楽しませてもらった」

真姫「ふふっ」

ツバサ「いいものを見せてもらったわ」

真姫「ありがとう」

756 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/24 02:30:20.83 jlQcatfA0 426/477


 ×     ×

ーー病院廊下ーー

オハヨー
オハヨーゴザイマス

ーー外科医局ーー

真姫「お早うございます」

先輩医師「お早う………湿布」

真姫「臭います?」ウェェ

先輩医師「多少はな。なかなか弾けてたな」

真姫「ネット見ても普通にBBA無理スンナですよ」タハハ

部長「ま、支障がない程度にな」

真姫「はい」

757 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/24 02:35:48.46 jlQcatfA0 427/477


 ×     ×

ーー夜・乗用車内ーー

真姫「明日の朝、でいいのね?」

ほむら「はい。正式な避難情報が発令されるのは明日の朝7時。
    時刻は統計上の判断ですが、
    明日の午前がヤマになるのは間違いありません」

真姫「朝7時、よりによって………」

ほむら「都合が悪い事が?」

真姫「病院がね」

ほむら「引き継ぎですか」

真姫「時間が微妙過ぎる。もし日勤スタッフの到着前に交通が塞がったら………」

ほむら「最悪、夜勤スタッフだけで災害下の病院を何時間も回す事になる」ゴクッ

真姫「このトランクには必要なものを詰め込めるだけ詰め込んだ。
   私は今夜と明日の半分は休みの予定。
   発令後十分で病院に滑り込んで人手が要るか確かめる。
   本当はもっと人手を集めておきたいところだけど、
   時間が悪過ぎて足止めする口実が無さ過ぎる」ギリッ

758 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/24 02:41:10.17 jlQcatfA0 428/477


ーーほむホーム周辺歩道ーー

真姫(車内から)「明日早いから、今日はよく寝るのよ」

ほむら(歩道)「はい」

真姫「………」

ほむら「………」

真姫「暁美さん」

ほむら「はい」

真姫「今度、ほむらちゃんの恋バナでも聞いてみたいわね」

ほむら「………それは、年上優先でお願いします」

真姫「ヴェェ………」

ほむら「………」

真姫「………」ケイレイ

ほむら「………」ケイレイ

乗用車 ブロロロロ

真姫(この日本で子どもが命懸けの戦場に行く。
   見送る事しか出来ない………最っ低………意味、分かんない)

759 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/24 02:44:30.07 jlQcatfA0 429/477


ほむら(あくまで逃げる、と言う選択肢はとらなかった)サイケイレイ

カタポンッ

マミ「………」キリッ

杏子「………」オヤユビクイッ

さやか「それじゃあ、秘密基地で作戦会議といきますか」

ほむら「………そうね」

さやか「まどか、感謝してた。
    先生からも当面必要なもの教えてもらって」

ほむら「そう」

 ×     ×

ーー朝・マキルームーー

目覚まし時計 ppppppppppppp

目覚まし時計 AM5:55

真姫「ヴェェ………」

テレビ オハヨウゴザイマス

ラジオ カチッ

浴室ドア ザアァァァ

電子レンジ チン

真姫「………作り置きの具沢山雑炊。
   朝っぱらから、って言うか半分夜から。これも戦いの内か」イタダキマス

760 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/24 02:48:27.78 jlQcatfA0 430/477



ーー見滝原・薄闇の街ーー

コッコッコッコッ

ほむら「………」

スマホ ヴーヴー

ほむら「もしもし」

織莉子「もしもし、そちらの状況は?」

ほむら「作戦通り、現地に向かってる」

織莉子「こちらも予定通り、
    あなた方とは反対方面から攻撃に入る」

ほむら「あくまで、私達とは合流しないのね?」

織莉子「ええ、こちらの勝手な都合だけど。
    その代わり、そちらには力強い援軍が到着するわ。
    それも理由の一つではあるけど。
    じゃあ、最終確認はいいわね」

ほむら「ええ………
    あなたのお蔭で精度の高い予測が出来た、有難う」

織莉子「どういたしまして。健闘を」

ほむら「あなたも」ピッ

ーー瓦斯灯交差点ーー

マミさやほむ「………」ザッザッザッ

761 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/24 02:51:52.60 jlQcatfA0 431/477


ーー見滝原中学校体育館臨時避難所ーー

オトマリーキャンプー
ソウダネ

詢子「まどか」

まどか「何? ママ」

詢子「助かったよ。なんか、家ん中でテキパキ支度してくれてさ」

知久「そうだね、ちょっと驚いたよ」

まどか「そんな」ティヒヒ

詢子「あたしもこんな経験は滅多にないからな。
   こないだも話してたけど、いざって言う時に腹が座るのかね。
   立派なお姉ちゃんだなぁタツヤ」

タツヤ「ねーちゃ」

まどか「ウェヒヒヒ………」

まどか(さやかちゃん、ほむらちゃん、みんな………)

762 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/24 02:54:59.06 jlQcatfA0 432/477


ーー河川敷広場ーー

さやか(なんか、象とかいるんですけど)ネンワ

杏子(フツーに使い魔だわ)ネンワ

ほむら(無害な雑魚に関わってる暇はないわ)ネンワ

マミ「出始めの使い魔がこの規模、それも結界の外で、って」

杏子「ああ、言ってた通り、想像以上だな」

さやか「想像とか言うレベルじゃない」ゴクッ

杏子「怖気づいたかヒヨッコ?」

さやか「誰が………」

ほむら「二人とも、脚震えてるわよ」

杏子「何をっ………」

ほむら「私だって、私の心にだって平静な所なんて何所にもない。
    この中では一番よく知ってるんだから」ツツーッ

ポンッ

マミ「未経験だろうが、少しは先輩ぶらせてもらうわよ」コクッ

ほむら「頼りにしてます」グッ








763 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/24 02:58:24.87 jlQcatfA0 433/477


ーー外科医局ーー

パタパタッ

看護師「どこかで、爆発があったんじゃないかと」

真姫(始まった………)

先輩医師「警報が発令されたとは言え、ここの影響はどうか行政がどう動くか。
     手当のかさむ休日出勤の可否は上が協議してる。
     たまたま顔を出して自主的にここで休んでいると言うのなら止めるつもりはない。
     自主的にすぐに仕事を始められる様に準備をすると言うのも以下同文だ」

真姫「有難うございます」

先輩医師「こっちこそだ」チラッ

テレビ「引き続き………情報を………」

先輩医師「かなりヤバイ事になりそうだ」ツツーッ

真姫(ほむらちゃん、さやかちゃん、みんな………)

電話機 プルルル

看護師「もしもし………西木野先生っ」

ーー救命医局ーー

救命部長「俺の権限で休日出勤を要請する、すぐに来てくれ」ガチャッ

救命医「戻りました」

救命部長「避難車両に看板が落下した、来るぞっ」

救命医「はいっ」

ホットライン「………逃げ遅れた作業員が救助されました………状態は………」

救命部長「受けろっ!」

看護師「受け入れ可能です」

764 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/24 03:02:16.97 jlQcatfA0 434/477


テレビ「引き続き………関連の情報を………」

救命医「避難、上手くいってないのか………」

主任看護師「かなりの部分は避難所に入ったみたいですが、
      スーパーセルの展開が物凄く早い。早朝なのが良かったのかどうか」

救命医「こっちは最悪だ。引き継ぎ直前の時間に」

タタタッ

救命部長「伝えた通りだ、オペ行けるか?」データバサッ

真姫「直ちに」

電話機 プルルルル

救命部長「事務長か? 院長は………出たか、分かった」ガチャッ

救命部長「スタットコール」

主任看護師「はいっ」

救命部長「院長の許可が出た、徒歩圏内の全スタッフに出勤要請がかかる。
     安全第一、自分でベッド埋める様な真似だけはするな、とな。
     持ち堪えるぞっ!」

一同「「「はいっ!!!」」」

765 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/08/24 03:05:28.48 jlQcatfA0 435/477


ーー鉄橋周辺ーー

ズダダダダッ
ドカッ、ズバッ

マミ「なかなか、近づけないわね」ダダダッ

杏子「雑魚が多過ぎっつーのっ!」

ほむら「………」パララララッ

さやか「はあ、はあっ」ズバッ

さやか(いや、これ全然雑魚じゃないしっ)バシュッ

さやか「つっ(目に汗? 雨?)」

マミ「美樹さんっ!!」

ほむら(本体から黒い何かがっ!!)タテニテヲ

杏子「!? バッキャロ………」

ドドオンッッッッ

さやか(死ん、だ?)

さやか「?」

さやか「………影?」

さやか(でっかい壁?)

マミ「大きな、盾?」

「大丈夫だった?
あれがワルプルギス。想像以上ね………」ビュウンッ

769 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/01 14:03:09.01 ooiKLCIt0 436/477

ーー見滝原市立病院ロビーー

「ぶはっ、はっ」
「うっ、うええっ」

看護師A「どうしましたっ!?」

看護師B「………病棟………」

看護師C「………病棟………出勤、しました。
     着替えて処置に入ります………」

看護師A「お願いしますっ!」

ーー救急搬入口ーー

ピーポーピーポー
イチニッサンッ

外科部長「避難中に遭遇した、出血性ショックを何とか抑えてる状態だ。
     まずそれをなんとかする、処置室でかまわん、着替え次第私が入る」

看護師「はいっ」

ーー手術室ーー

ブウンッ

真姫(停電………)

看護師「電源切り替わました」

真姫「オーケー再開するわよ」

770 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/01 14:08:19.01 ooiKLCIt0 437/477


ーー見滝原市内鉄橋周辺ーー

「そぉれえっ!!」ズバアッ

杏子「斧にもなるのか」

マミ(長身のナイト様。ちょっと、格好いいわね)

さやか「えーと、どちら様?
    魔法少女は分かるけど」

小巻「私は浅古小巻。
   案外近場で魔法少女やってん、だけどねっ!!」ドカアッ

さやか「あたしは美樹さやか、助けてくれてありがとうっ」バシュッ

小巻「どうしたしましてっ!!」ズバッ

ーー鉄橋上ーー

マミ「………」ドンドンドンッ

杏子「野郎っ!」ズバアッ

マミ「!?」パパパンッ

使い魔 バババッ

杏子「!? こ、のっ………」

マミ(もう一匹、間に合わない、っ!?)スチャッ

771 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/01 14:13:51.96 ooiKLCIt0 438/477


「リーミティ・エステールニッ!!」

バババシュッ

マミ「なに、っ!?」

「チャオ♪」

杏子「お、まえ」

マミ「あなた………」

杏子「はっ、暫くだな。
   何やってんだこんなとこで?」

かずみ「もしかして佐倉杏子ちゃん?
    悪いんだけどわたしは昴かずみ。
    和紗ミチルの親戚、かな?」

杏子「に、しちゃあそっくりだけど、よっ」ズバッ

かずみ「それからお姉さん、お名前は?」

マミ「巴マミよ」

かずみ「もしかしてミチルの事助けてくれた?」

マミ「そうね、あなたにそっくりな女の子を助けた覚えはある」

かずみ「そう、有難う。
    今度美味しいパスタご馳走したいな」

マミ「それは、楽しみね」

杏子「おいおい、それはあたしが先約なんだけどなっ」

「パラ・ディ・キャノーネッ!!」ドコオッ

「よくってよ」ズバアッ

772 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/01 14:19:29.43 ooiKLCIt0 439/477


スタッ スタッ

カオル「かずみのパスタ先約とか、十年早いんじゃないの?」

マミ「お知り合い?」

海香「巴マミさんね? 御崎海香です」

カオル「あたしは牧カオル。
    大事なチームメイトで、親友って事で」オヤユビ

かずみ ニコニコ

マミ「そう、それじゃあ………」

マミ杏子かずみ海香カオル キリッ

マミ「パスタ・パーティーの前に邪魔者を片付けましょうかっ!」

さやか「マミさーんっ!」

杏子「追いつきやがったヒヨッコ」

海香「私達がしんがりを引き受けても?」

マミ「お願いできますか?」

かずみ「任せて」

マミそれじゃあ、行くわよっ!!」

タタタッ

カオル「海香」

海香「よくってよっ」

カオル「ロッソ・ファンタズマッ!!」

杏子「………おいおい、なんか聞き捨てならないものが聞こえたぞ」タタタッ

マミ「懐かしいわね。終わったらこってり問い詰めましょう」ダダタダッ

773 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/01 14:22:30.47 ooiKLCIt0 440/477


ーー見滝原市街ーー

織莉子「オラクルレイッ!!」バババッ

キリカ「織莉子、無理しないでよっ!!」ズバッ

織莉子「ええ、大丈夫。
    最近は予知も随分安定してるから」ドカカッ

キリカ「それはいいけど、去ね去ね使い魔っ!!
    ヴァンパイア・ファングッ!!!」ドカアッ

織莉子「フフッ………!?」

ドカアンッ

織莉子「キリカっ!!」

キリカ「えっ?」

織莉子(強風に乗って、砕けた外壁の破片がこっちにっ)ダッ

キリカ「あ、っ………」

バキイッ

「つーっ、大丈夫?」

キリカ「あ、ああ………」

織莉子「あなたこそ、大丈夫?」

「うん、なんとか。簡単に壊れてたら話にならないし」テ、フリフリ

織莉子(また、使い魔が迫って来る)

織莉子「あなたは? もちろん魔法少女ね?」

774 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/01 14:25:55.59 ooiKLCIt0 441/477


茉莉「日向マツリ、ホオズキ市から来ました」バシュウッ

織莉子「私はっ、美国織莉子。有難う」ドカッ

キリカ「呉キリカ。お礼は後でたっぷりと、恩人」ズッバァーンッ

織莉子「覚悟、しておく事ねフフッ」

ーー見滝原市内住宅街ーー

佐木京「いいのかなぁ? 思い切り管轄外なんだけど」バババッ

人見リナ「これだけの規模です、地元の魔法少女だけでは追いつきません。
     放置すれば被害は桁違い、私達は正しい事を遂行します!!」バババチッ

朱音麻衣「なんでもいいっ、とにかく数が多い私達がやられるっ、
     斬って斬って斬りまくるぞっ!!!」ズババババッ

優木沙々「やれいけー、そらいけー、
     あーあ、なんでこんな事やってんでしょうかねーっ」

麻衣「あれだけ卑怯な真似をした挙句にフルボッコ負けして、
   靴でもなんでも舐めますと泣き付いたのは貴様だ」

リナ「私達が早期に対処したからまだ良かったものの、
   償いの真似事ぐらいはしてもらいます」

沙々「へーへー」

775 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/01 14:29:15.77 ooiKLCIt0 442/477


ーー見滝原市内・鉄橋上ーー

災害報道用強化車両 ダンシンダンシンノッストッダンシン

ーー強化車両内ーー

ダンシンダンシンレッミードゥー

英玲奈「思春期の少女達の希望と絶望」

あんじゅ「全然不十分とは言え、UTX学園みたいにややこしい学校が
     何の伝手も対策も持っていないと本気で思ってたのかしらぁ?」

ツバサ「UTXを、人間を少し甘く見過ぎたみたいねインキュベーター!」

ーー鉄橋上ーー

ビュゴオオオッッッッッ
イノチヅナツケタワネ

A-RISE「………」

魔法少女達「………」

ツバサ「何か見えた?」

英玲奈「あれかな?」ソウガンキョウ

「聞こえるか喇叭の音が」

「暗き曇天、地は災厄に満ち満ちて今審判の時を待つ」

「神殿は開かれた、あれは契約の箱」

「今ここに集いしあらゆる天変地異」

「黙示録の刻は来た。今こそ………」

776 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/01 14:33:05.26 ooiKLCIt0 443/477


英玲奈「看板が落ちたな」

あんじゅ「雷も落ちたわねぇ」

ツバサ「東海勢も合流したみたいね」

A-RISE「「「さあ、行くわよっ!!!」

UTX魔法少女大同盟「「「「「「私達は一つ!!!!!」」」」

ーー避難区域外境界付近ーー

ヒュウウウッ

μ‘s大漁旗 ドンッ

海未「さあっ!」

絵里「始めましょうか」ガクガクガクガクブルブルブルブル

全国魔法少女大連合「「「「「みんなで叶える物語!!!!!」」」」」

絵里「あっちに、その、ワルプルギスの夜、っているのよね?」ガクガクガクガクブルブルブルブル

海未「恐らくは」

クラクション パッパーッ

災害報道用強化車両 ダンシンダンシンノッストッダンシン

絵里「」バビュウンッ

「凛知ってるよ、あれが全盛期の凛を軽くぶっちぎる猛ダッシュだって」

777 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/01 14:37:23.72 ooiKLCIt0 444/477


ーー強化車両内ーー

ツバサ「お待たせ」

海未「どうも。それで、例の白い物の怪は?」

某魔法少女「大丈夫、ここにはいません」

絵里「それは何より」キリッ

海未「モニターで街中の様子が?」

あんじゅ「主に高感度カメラからの映像よ」

英玲奈「かなりの部分、使えなくなっているがな」

海未「………市立病院は、大丈夫ですかね?」

あんじゅ「これは公式情報の方が早いけど、無事稼働中みたいよ」

英玲奈「彼女が詰めているのか?」

海未「ええ、その様に聞いています。
   しかし、真姫も驚いていましたよ、そちらからの申し出に。
   もちろん我々も」

英玲奈「×月×日、朝、ワルプルギス、見滝原、魔女、魔法」ユビトントンユビトントン

あんじゅ「知らない人にバレても、ちょっと厨二病な音遊び、で済みそう」

ツバサ「学校の性質上、トップの私達には秘かに聞かされる情報もあったから。
    イベントの音に混ぜ込まれた単語。
    まさかと思ってマッキーに確かめたらそのまさかだった」

絵里「私達だって、真姫の紹介で
   暁美ほむらさんに直接確かめるまではとても信じられる話じゃなかった」

英玲奈「それで、こんな真似をしたと言う事か」フッ

あんじゅ「みんなで叶える物語」

ツバサ「時が過ぎても変わらぬ絆、相変わらず驚かせてくれるわね」

778 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/01 14:40:29.84 ooiKLCIt0 445/477


ーー見滝原市立病院廊下ーー

コッコッコッ

真姫(少し、落ち着いた?)

真姫(いや………この状態は………)

真姫「珍しいわね、姿を見せてくれるの?」

QB「信じられない、何が起きているんだ?」

真姫「外は大嵐、だから私達は大忙し」

QB「君は、僕の目を盗み、僕との接触を遮断して
   一部の魔法少女と接触して何かを企んでいた。
   恐らくは鹿目まどかの契約阻止、そのためのワルプルギスの夜対策。
   君と親しい暁美ほむらもその方向性で動いていた筈だ」

真姫「さあ、どうかしら?」

QB「そんな事に、大勢の魔法少女が、協力している。
   大勢の魔法少女がワルプルギスの夜退治に協力している」

真姫「そんなに不思議な事かしら?」

QB「魔法少女は利己的な存在だ。そうでなければ生きてはいけない。
   僕らと微妙な関係にあるUTXにも動きがあった事は察知していた。
   だけど、恐らく何かに勘付いているあの学校にしたって、
   これだけの魔法少女を動員する組織力なんてない筈だ。
   一体、何が起きているんだ?」

779 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/01 14:43:56.51 ooiKLCIt0 446/477


真姫「昔、ピアニストになりたかった女の子がいた」

QB「君の事かい?」

真姫「綺麗な音に憧れ、お姉さん達のドレスに憧れて、
   そして、それは憧れだけで終わる筈だった。
   現実にやらなければいけない事があり過ぎたから。
   それでも、心に残した一欠片の希望と努力は、
   ほんの一時だけでも輝く事が出来た。それだけでも一生ものの満足だった。
   条理を超えた奇跡も、魔法も望まなかった」

QB「例え資質があっても、僕と契約せずに満足する者も一定数はいるらしいね」

真姫「だったら………正義の味方になりたい、日曜の朝みたいな魔法少女をしてみたい。
   例え一時でも単純にそう思った魔法少女が五人や十人増えても
   たまには希望の卵が無償で孵化するのを
   見るのもいいんじゃないかしら? インキュベーター?」

QB「百人ぐらいいるかも知れないんだけどね」

真姫「………マジ?」

QB「わけがわからないよ」

783 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/10 03:09:27.84 fAkaIr3I0 447/477

ーー高架橋上ーー

杏子「ひゃー、集まったもんだねー」ソウガンキョウ

杏子「例のイベント動画の暗号だけで、こんだけ集まったって訳?」

ほむら「UTXには魔法少女に多少のパイプがあったと言うけど、
    人数から言って大半は自分で、ネットの口コミも含めて、
    あのメッセージに気付いた魔法少女と見ていいでしょうね」

マミ「正義の味方になりたい魔法少女………
   作戦を聞いて、少しでもいてくれたら、って思ったけど………」

ほむら「ここまでとは………」

さやか「あ、はは、ねえ転校生、

    こんな格言を知ってる?



ほむら「何かしら?」

さやか

    魔法少女とスクールアイドルには、

    夢とか希望とか大切なものが全て詰まっているんだって



ほむら「初耳ね」ファサァ

さやか「今作った」ドヤァ

784 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/10 03:14:29.14 fAkaIr3I0 448/477


杏子「いいんじゃねーの?」

杏子「やり遂げちまったんだろ? μ‘sって。
   只の廃校寸前の素人集団からさ」

さやか「そ、すっごいんだから」

杏子「たまにはさ、そんな夢見たい奴が集まっても」

ほむら「夢を叶えたからこそ、その夢に憧れる者が集まった。
    それだけの存在だからこそ、
    その本当の意味に気付いた者は只の遊びだとは思わなかった」

マミ「有難う、西木野先生と一緒にその人達を説得してくれて」

ほむら「私は、何も。お膳立ては全部あちら。
    私は証拠を見せに行っただけです」プイッ

マミ「ふふっ、折角来てくれたんだもの、
   地元の私達がいいトコ見せないとね。
   さあ、行くわよっ!」

ほむさやか「「「!?!?!?」」」

ほむら(あれを、っ、)

杏子(やるのか、っ?)

ほむら(只でさえ切迫したスケジュールの中)

杏子(満面の笑顔のティロフィナーレの下で展開された)

さやか(地獄の特訓)

785 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/10 03:20:05.76 fAkaIr3I0 449/477


ーー強化車両内ーー

絵里「あら? バレエ、いや、フィギュアかしら?」

海未「ふむ、ブレイクダンスですね。
   まあ、魔法少女とやらですから体力はあるんでしょうね」

英玲奈「クインテット、いや、カルテットか。
    上手、と言うには少々厳しいな」

ツバサ「魔法少女って事で外の悪条件を無視させてもらうなら、
    ここで決めポーズがはまらない、って言うのは痛いわね。減点対象」

あんじゅ「いいじゃない、初々しくて。
     いかにも魔法少女に憧れた魔法少女、って感じ」

ーービル屋上ーー

アハハハハハアハハハハハ

杏子「いっくぜえっ!!!」ダッ

さやほむ ダダッ

使い魔群 ビュウッ

さやか(空中戦、始まるっ!)

杏子「そおらあっ!!」ズバアッ

さやか「やあああっ!!!」バババッ

ほむら「………」ズダダダダッ

さやか「こ、のおっ!!」ズバアッ

杏子「まだかあっ!?」バシュウッ

786 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/10 03:35:11.45 fAkaIr3I0 450/477


トポトポトポトポ

マミ「まだだめよ」トポトポトポ

マミ「まだだめよまだだめよ」トポトポトポ

マダダメヨーマダダメヨー
マダダメヨーマダダメヨー
マダダメヨーマダダメヨー
マダダメヨーマダダメヨー
マダダメヨーマダダメヨー

ーー強化車両内ーー

絵里「これって………」

英玲奈「魔法少女の」

ツバサ「舞踏会」

ーービル屋上ーー

マダダメヨーマダダメヨー
マダダメヨーマダダメヨー
マダダメヨーマダダメヨー

杏子「マミっ!」ギシイッ

さやか「マミさんっ!!」ガキイッ

マミ「まだだめよ………」トポトポ

787 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/10 03:38:26.72 fAkaIr3I0 451/477


ポタッ

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

マミ バッ

マミ「ティロ………」

「「「「「フィナーレッ!!!!!」」」」」

ズッガアアアンンンンンッッッッッッッッ

杏子「すっげぇっ!」

さやか「やった、かっ!?」

ーー見滝原市上空ーー

ワルプルギスの夜「アハ、アハハハハ、アハ………」

ほむら「………」

ほむら(今の砲撃、流石に無傷では済まない)

ほむら(やっぱり、基部が露出してるっ)タテニテヲ

巨大クロスボウ ビュウンッ

ほむら(手作りで重さは論外、サイズも人が扱うギリギリ、魔法少女なら)ジャキッ

ほむら(通常攻撃が無理でも、露出した柱と歯車の中枢部に
    目一杯の魔力を込めて………)

788 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/10 03:41:36.48 fAkaIr3I0 452/477


さやか「なーにやってんのかなぁ転校生?」ガシッ

杏子「マミが見せ場作って、本当のフィナーレは一人で持ってくってか?」ガシッ

ほむら「あなた達っ!? でも、これは魔力の消耗がっ」

さやか「だーから、それ一人でやるつもりだった?
    上手くいっても最悪魔女化でっしょー」

杏子「ここまで来てそりゃねーだろ。
   ひとりぼっちは、寂しいもんな、っ」

ほむら「………そう、ね」

ーー見滝原市立中学校体育館ーー

ゴオオオオッ

まどか ガバッ

まどか(お願い、ほむらちゃん、さやかさん杏子ちゃんマミさん。
    魔法少女のみんなも、他の人達も、どうか、無事で………だから………)

789 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/10 03:44:50.35 fAkaIr3I0 453/477


ーー見滝原市上空ーー

ビーム ドゴオッ

さやか「うわっ!」

杏子「危ねっ! もたもたしてんじゃねーぞ」

使い魔 ビュウウッ

マミ「くっ」パパパパパッ

カオル「ロッソ・ファンタズマッ!!」ドドドドドッ

ほむら「援護感謝するわっ!!」

さやか「もっと上もっと上っ!!」

杏子「オーライッ、しっかり狙えっ!!」

ほむら「照準、オッケー。

    これで終わりにする。

    これで願いが叶う。

    だから、始めましょうかっ!!



「「「「「みんなで叶える物語!!!!!」」」」」

792 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/13 03:14:51.57 yQy6aqYo0 454/477

ーー見滝原市立病院外科医局ーー

真姫 ムシャムシャ

先輩医師「牛肉の缶詰にフリーズドライの野菜スープ、
     飲むバナナパック。用意がいいな」

真姫「災害用の備蓄です。お湯が使えてまだ助かりました」

ーー同・職員WC周辺ーー

コッコッコッコッ

真姫「………」

真姫(………窓………)

真姫「そろそろ、かしらね?」

真姫「………ファイトだよっ」ホホパシッ

QB「終わったよ」

真姫「始まるわ」

QB「ワルプルギスの夜は、倒された」

真姫「なんにせよ、私達の仕事は起こった後が始まりだから」

QB「何故だ?」

真姫「何故?」

793 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/13 03:19:57.52 yQy6aqYo0 455/477


QB「なぜ、只の人間、それも頭の固い大人の君にここまでの事が出来た?
   なぜ、この仕組みを理解して、そして、絶望を覆す行動する事が出来た?
   利己的で短絡的な、そんな少女達の力をあれだけの規模で結集して、
   そして、あのワルプルギスの夜を退治するなんて事が出来たんだい?
   恐らく人間の中では賢い君が、何故そんな見込みの薄い事にコストとリスクを?」

真姫「うーん、そうね………だって………」

QB「なんだい?」

真姫「だって、可能性、感じたんだもん」

院内PHS ピーピーピーピー

QB「わけがわからないよ」

ーー見滝原市内・ビル街ーー

海香「それでは」

マミ「はい、それじゃあ」

スタスタ

ほむら「打ち合わせ、終わったのかしら?」

マミ「ええ、まだまだこれからの事だけど」

杏子「あーあ、なんかあたしまで巻き込まれてるけど、
   面倒な事はしねーからな」

マミ「ええ、分かってる。
   来てくれた娘達に少しだけカマかけてみたけど、
   魔法少女の中でも例の事を知ってる娘って意外といたものね」

ほむら「ホオズキ市のあの娘もそうだったけど、
    有名作家を味方につけたのは少し心強い」

794 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/13 03:25:10.74 yQy6aqYo0 456/477


さやか「じゃあ、いっそ例の事を小説にしてもらうとか、なんか、
    勝ったらカードが願いを叶えるカードゲームで
    真実を小説にしたとかなんとかそんな話が」

ほむら「却下、リスクが高すぎる」

マミ「あの事を知ってる人と知らない人に分けて交流の場所を、
   今の所はちょっとしたSNSで取り扱いも最大限注意、だけど、
   これは大きな一歩になるわ」

ほむら「そうだと、いいわね………
    今日、ここに来た時点で志のある魔法少女とは言えると思うけど、
    取り扱いには、本当に気を付けて」

杏子「ま、あれだ………
   ひとりぼっちは、寂しいもんな」

ほむら「だからよ。先生も裏顧問みたいに協力してくれるけど、
    トラブルが実力行使になったら
    当然法律も役に立たないから血を見るしかないは同じ。
    SNSでおかしくなるケースは普通でも幾らでもある。
    まして、私達は、だから、一応管理人みたいな形になっても、
    絶対に無理に抱え込んだりしないで下さい」

マミ「有難う」ニコッ

ほむら「………試みは有意義だとは、思いますけど
    ハイリスクでそちらでトラブッたらこっちまで危ないですから」プイッ

さやか「やっぱ、マミさんの人徳だわ。近場だとマミさんの事知ってる人も結構いたし、
    それで、ワルプルギス退治のセンターって事で業界の評判爆上げだもんね」

マミ「その意味では、
   本当は話を持って来たのもトドメを刺したのも暁美さんなんだけどな」ニコッ

ほむら「言っておきますけど、私に交流ネットワークとか、
    絶対に無理ですから」

さやか「うん、期待してない」

杏子「全くな」

795 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/13 03:30:34.75 yQy6aqYo0 457/477


ほむら「理解が早くて助かるわ」ファサァ

ほむら「………やっぱり、そういうのは、
    やるんだったら先輩の役割だと思います。
    だからこそ、無理だけはしないで下さい。その………
    出来るだけの協力は、しますから」

杏子「………ま、そういう事でここまでやって来たんだしな」

さやか「正直、ちょっと楽しみ。
    やっぱり他の娘の事とか、知りたい事もあるし」

マミ「そうね。それじゃあ、まずはサイトの名前を決める事から」

ほむら「………ゆっくり、やりましょう。
    取り敢えず、この惨状が落ち着いてお茶会の席が持てるまで」

ほむら アイコンタクト
さやか アイコンタクト
杏子 アイコンタクト

(((それまでに、絶対まともな名前を考えるっ!!!)))

 ×     ×

ーー朝・見滝原市立中学校体育館ーー

詢子「ん、んっ………」

まどか「ママ、起きた?」

詢子「ああ、タツヤは?」

まどか「ここにいるよ」

たつや「まーま」

詢子「ふぁーあ………」

知久「お早う。でも、まだ早いからもう少し休んでてもいいよ」

796 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/13 03:40:14.93 yQy6aqYo0 458/477


詢子「ああ、朝から大変だったからな。
   まあ、よく眠れたよ。まどかはどうだ?」ンーッ

まどか「大丈夫、ちゃんと眠れた………」スマホ

詢子「まだ、携帯駄目か?」

まどか「そうみたい」

知久「駄目なのは基地局みたいだね。
   ラジオを持って来ておいて助かったよ」

詢子「こういう時は意外とアナログが強いんだ。
   それに、まどかもすぐに持って行こうって言ってたしな」

詢子「もしかして雨、上がったか?」

知久「ああ、ピークは過ぎたみたいだね。
   ラジオでも解除情報が入り始めてる。
   ただ、破壊の規模が酷くてすぐには帰れそうにないよ」

ーー見滝原市立病院・カンファレンス・ルームーー

救命部長「まずはこの悪天候、シフト変更、
     諸々を押しての働きに厚く礼を言う。有難う。
     前置きは以上だ」

「……………」

救命部長「今は、小康状態に過ぎない。
     二次災害の恐れで停滞していた救助活動はこれから本格化する。
     交通が回復して、応急処置で無理やり保たせていた患者の搬送依頼も始まる。
     消防からの情報では、決して楽観出来る被害規模ではない」

院長「既に非常招集は発令はされました、今更言う事はありません。
   別命あるまで、各病棟は引き続き災害の影響を配慮し、
   維持する人員を配置の上で通常外来を停止。
   応援部隊は総員ロビーの前線本部に移動して救命部の指揮下に入って下さい」

救命部長「以上、準備に入れっ!!!」

一同「「「「「はいっ!!!!!」」」」」

797 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/13 03:43:58.64 yQy6aqYo0 459/477


ーーワンボックス車内ーー

(スニーカー)キュッ

絵里(ヒッツメ髪・キャップ)キュッ

海未(剣先スコップ)スチャッ

海未「それじゃあ」

絵里「行きましょうか」

ーー見滝原市立中学校体育館ーー

詢子「………ん?………」

まどか「何? ママ?」

詢子「なんだ? 聞こえる」

まどか「え? ………あ………」

ダンシンダンシンノッストッダンシン

オイオイ
マジ?ホンモノ?

ーー見滝原市立中学校グラウンドーー

災害仕様車両 ダンシンダンシンレッミードゥー

あんじゅ「お早うございまぁす」

英玲奈「この度の災害、心よりお見舞い申し上げます」

にこ「ニコニー & A-RISE
   もしくは、A-RISE& ニコニー
   お見舞いに参上しましたっ」

ツバサ「お水と野菜ゼリーパック、お粥パックとパンの缶詰でーす、
    粉ミルクとおむつもあります。
    本当にお疲れ様です」

798 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/13 03:47:18.92 yQy6aqYo0 460/477


ガヤガヤ

詢子「なんだなんだ? 女性陣で顔の利きそうな人に来て欲しいって?
   あたしはどっちかって言うと仕事で地元離れてるけど………」

あんじゅ「女性用品の用意がありますので、
     口コミをお願いします」

スタッフA「………ダントツの一番乗りだな」

スタッフB「たまたま彼女らが近場にいてスケジュールが空いてて、
      被害が洒落にならないから事務所の支援物資出してくれって言って来て」

スタッフA「元々登山の準備をしてただかで、一緒にいた園田海未が
      衛星携帯持って現場アタックで彼女達に詳しい情報伝えたって言うけど」

スタッフB「売名だなんだ言ってもそれでウインウインならいいじゃねぇかって。
      だから事務所でも車ごと常備してたけど、それすぐに動かして、
      しかも、一緒だったニコニーとのコラボまで許可させた彼女らの発言力もな」

キャッキャッワイワイ

にこ「んもぉーっ、しっかたないわねーっ、
   いーい、いくわよぉー、はい」

タツヤ「ニッコニッコニー」

にこ「ふんっ、なかなかやるじゃないっ、
   いーい、これが本物よーく見てなさい………」

まどか ニコニコ

まどか「矢澤にこさん」

にこ「なぁに?」

まどか「あの、有難うございました」

まどか「私………その、暁美ほむらちゃんの友達、です」ボソボソ

799 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/13 03:50:36.74 yQy6aqYo0 461/477


にこ(目、見開く)「お名前は?」ボソボソ

まどか「鹿目まどかです」ボソボソ

にこ「あ、そう。一つだけ言っておくわ」ボソボソ

まどか「はい」

にこ「作戦成功、お友達も無事」ボソボソ

まどか(目、見開く)

にこ「まだ知らなかった? 携帯もイカレてるしね」ボソボソ

まどか「………」ジワッ

まどか フカブカ

「まどかっ!」

まどか「ほむら、ちゃんっ!?」クルッ

ほむら「………」ハア、ハアッ

ほむら「………まど………」フラッ

まどか「危なっ」ダキッ

ほむら「まど、か………」ジワッ

まどか「ありがとう、ほむらちゃん」ナデナデ

800 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/13 03:54:07.83 yQy6aqYo0 462/477


さやか「やっと着いたー」

マミ「遅くなりまして申し訳ありません」

さやか母「いえいえ、今までこの天気の中で娘を預かっていただきまして」

さやか「マミ先輩のトコでお泊り勉強会してたらこれだもんね。
    高くて頑丈なマンションだったから待機してたけど電話も繋がんないし、
    みんな無事でよかった………あれっ?」

マミ「?」

さやか「せんせーっ」タタタッ

真姫「あら。成功、したのね」ボソボソ

さやか「お陰様で」ボソボソ

マミ「有難うございました」ペコリ

さやか「先生もこっちに?」

真姫「うん、保健所に協力して持病やお薬、健康状態の確認に」

マミ「大丈夫なんですか? 確か、昨日から病院詰めてたって」

真姫「ハードなのが一段落して、応援に引き継いで一休みしてたけど、
   一番コンディションいいのが私だったから」

さやか「お疲れ様です」

真姫「ええ。それじゃあ」

801 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/13 03:57:33.16 yQy6aqYo0 463/477


ガヤガヤガヤガヤ

タツヤ「ねーちゃ」

まどか「うん」

ほむら「ごめんなさい、みっともない所を」

にこ「なーに言ってるの、
   なんだか知らないけどハッピーエンドなんでしょ。
   それじゃあ、そっちのお姉ちゃん」

まどか「はいっ」

にこ「それじゃあ弟さんもお友達も」

まどか「ニコニコ」グイッ

ほむら「え? あ、ちょっとっ」

にこ「はい皆さんご一緒にっ」

にっこにっこにぃーっ

さやか「西木野先生」本編―了―

805 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/14 01:33:15.34 W14mlVKf0 464/477

蛇足的後日談

 ×     ×

ーー見滝原市立病院外科医局ーー

真姫(医局の私宛の手紙)ガサガサ

手紙「家裁の仲裁により、伯父が後見人に就任しました」

手紙「少しは腹を割ったお話しも出来ましたが、
   お屋敷の事も、伯父にも多少の思い入れがあるらしく時間の猶予を頂きました」

手紙「お互い、正直好きか嫌いかと言われれば後の方に傾きますが、
   そのぐらいでちょうどいい距離感の様です。
   むしろ、その事を確かめ合った上で、
   後見人としての責任を引き受けて下さった事に感謝します」

真姫「んーっ」ノビッ

真姫(診察行くか)

ーー白女廊下ーー

名家組A「父は医師、協会の会長なのよ」

小巻「………」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

織莉子「それでは、あなたも将来はお医者様なのかしら?」スッ

名家組A「(うげっ)ま、まあね」

織莉子「そう。それでは、お父様ではなくて、
    あなたが患者と向き合うのね」ニッコリ

小巻「へえ、その時にその自信があればいいけどね。
   だけど、今のあんたに診てもらうのだけはごめんだね」

806 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/14 01:38:19.00 W14mlVKf0 465/477


ーー白女中庭ーー

小巻「ああ言うのがいるんでしょ、医者の世界って」

織莉子「手に職を付けたいと思ったから」

小巻「手に職、ってレベルの職業じゃないけど………
   それで、高校からは外の進学校で医学部を目指す、か」

織莉子「やはり、今の身の丈を考えようと。
    それに、自分の手で、自分に出来る精一杯で人の命を救う。
    一人だけではなく信頼出来る誰かと、
    一つ一つそういう仕事をしていきたい、そう思った」

小巻「ま、頑張るんだね。今の成績なら夢って程遠くもないし、
   自分の手で努力するって当たり前だけど嫌いじゃない」

織莉子「ありがとう」ニッコリ

小巻 ウッ

スタスタ

小巻(乗り越えた、って言うんなら、
   そのメンタル。いい医者になるよ)

807 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/14 01:44:00.92 W14mlVKf0 466/477


ーー夜・居酒屋小上がりーー

真姫「地元でいい家が見つかって、あなた達のお蔭」

花陽「バリアフリー改装して最近まで住んでたんだけど、
   子どもさんも遠くに住んでて維持が難しくなったから」

「お仕事で結構長い付き合いだったから正直寂しいけど、
  それで、お互いに事情が分かっていい条件で貸してくれる事になって」

海未「今の調子なら、引越しもこちらの人脈でなんとかなりそうですね」

真姫「頼もしいわ」

「海未ちゃんは顔が広いからにゃー」

真姫「ええ、特にお役所に顔が利くから色々助かった」

海未「流派や地域活動での伝手が、微々たるものです。
   ご家族の誠心誠意があればこそ」

真姫「なんにせよ、当事者も助ける方も、
   情は大事だけど抱え過ぎて共倒れしない様に、
   そこが一番肝心ね」

海未「そうですね、私達にとっても今までにない長丁場ですから」

「その点、商いは牛の涎、よーく心得てるにゃ」

真姫「地道に頑張って来たもんね」

海未「それは、真姫もです」

真姫「ありがとう」

花陽「ああ、真姫ちゃんにお土産あったんだ」

真姫「何かしら?」

808 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/14 01:49:54.06 W14mlVKf0 467/477


ーーマキルームーー

真姫「ふーっ」ベッドドサッ

真姫「なんだかんだあったけど、
   復興も始まって収拾付いた感じかな?」

真姫「ただ、根本的な事は何一つ解決してないのよね………」

コーヒーコポコポ

真姫(まだいるのかなあの白い畜生は?
   近々μ‘sのみんなともこの件で話したいけど、そのためには、
   まず見張り役の魔法少女、出来ればほむらちゃんの協力を………)

真姫(巴マミさんが外部の魔法少女とネットワークを始めた、
   UTXの極秘情報も少しずつリンクする。
   もっとも、向こうも極秘だけに微々たるものらしいけど)

真姫(子どものSNSは正直魔窟、
   ストレスフルで理論的には絶望的な魔法少女なら尚の事)

真姫(私も、行きがかり上裏顧問みたいな立場だけど、
   正直どこまでフォロー出来るか?
   それでも、今まではチーム、
   精々地域単位で閉塞されていた蛸壺状態は打破しないと)

真姫(今の所、外部で教えているのはμ‘sとA-RISEの
   絶対的に信頼出来るメンバーだけ)

真姫(ゆくゆくは、社会的な支援は絶対に必要だけど、
   それは慎重の上にも慎重に進めないと、
   世界破綻レベルの悪用や文字通りの魔女狩りに繋がりかねない)

真姫(正直、一生ものの事業。
   改めて、行きがかりでとんでもないものに関わったものだわ)ヴェェ

真姫(やっぱり、これかな?)

真姫「ファイトだよっ」

809 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/14 01:53:31.81 W14mlVKf0 468/477


真姫「………そうだ」ムクッ

真姫「さっきのお土産、山菜ごっそりもらったんだっけ?」

真姫「取り敢えず、灰汁抜きしないと。
   どこしまったかなぁ」ガサゴソ

真姫「あったあった………灰汁抜きかぁ………」

真姫「あんな風にアクが溜まって………」

真姫「………」

真姫「まさか、ね………
   上手く出来たら山菜蕎麦、マミさん達を誘って蕎麦打ちパーティーなんていいかも。
   山菜の扱いとか知ってるかしらね、あのパティシエ?」

蛇足的後日談-了-

おまけに続く

810 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/14 01:57:42.72 W14mlVKf0 469/477

==============================

おまけ

抽象イメージ的なものですので、余り深く考えないで下さい。

 ×     ×

ーー見滝原市内ビル街ーー

コッコッコッ

リボほむ「………」ザッザッザッ

コッコッコッ

リボほむ(女の人? まだ若い?)

リボほむ(ラフな格好で、何かの機材?)

リボほむ(こっちに向かって来るならちょうどいい、
     そのままこの場を離れてくれれば)

コッコッコッ スッ

通行人「………」フッ

リボほむ(笑った? 口元がちょっとだけ………お愛想?)

コッコッコッ

リボほむ(女の人、か。昔、巴マミも助けてたっけ)

リボほむ(子どもの頃に、
     先生、と言うより、白衣を着たお姉さん………)

811 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/14 02:01:30.29 W14mlVKf0 470/477


ーー荒涼たる光景ーー

リボほむ「………」スチャッ

魔獣s オオオオオオオオオ

ババババババババッ

リボほむ「?」

リボほむ(聞こ、える)

リボほむ(歌? 誰か、いる?)

魔獣s ビーム

リボほむ「つっ!」

リボほむ黒翼 ズゴォォォォォォォォ

リボほむ(確かめては、いられない。さっさと終わらせるっ!!)

天の矢 パアアアアアアアアッ

ーー見滝原市内ビル街ーー

リボほむ キョロキョロ

リボほむ(大人の歌、ジャズ? さっきの女性ヒト?)ダッ

812 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/14 02:05:00.41 W14mlVKf0 471/477


ーービル街の公園ーー

リボほむ(聞こえる、こっち………)タタタッ

リボほむ(見えた、やっぱりさっきの………今、終わった)

背中(………)スタスタ

リボほむ「………」ハァハァ

リボほむ(緑地に入って、見失った)

リボほむ(まあいいか、と言うか何をやってるのか?
     無事魔獣が退治出来たなら、私には関係の無い事)

リボほむ(そう、私には関係の無い事。まどかはもういない。
     何時か来るその日まで、私には何の、関係もない事)テクテク

リボほむ「………」ジワッ

リボほむ(そう、私はその日まで戦い続ける、それだけ。
     だけ、ど………願わくば………)

リボほむ「!?」クルッ

ニッコリ

「思い続けた、時を経ても変わらぬ絆」

「翔べるよ」

パアアアアッ

リボほむ(これ? まぶしっ、ひか、り?)

オネガイネ

813 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/14 02:08:32.06 W14mlVKf0 472/477


 ×     ×

ーー見滝原中学校・教室ーー

「暁美さん、暁美さんっ」

ほむら「ん………あら?」

「大丈夫? 暁美さん?」

ほむら「えっと? あれ? 今………」

モブ女子「もうHR終わったよ。
     授業途中から爆睡してて、
     先生も色々疲れたのかも、って寝かせてくれたんだけど」

ほむら「そう………ちょっと待って、今、何日だっけ?」

モブ女子「本当に大丈夫? …月…日だけど」

ほむら「そう、有難う。ええ、大丈夫。
    お陰様で休ませてもらったから」ガバッ

ーー見滝原市内・歩道ーー

ほむら(まずいわね、こんな事で出遅れるなんて)ダダダッ

ほむら(病院まで後何分、間に合うか………)タタタッ

ほむら(………間に合ったとしても、また、決裂して、それで………)

ほむら(どうして、こうなる?)

ほむら(あの人だって、悪い人じゃない。優しくて、頼もしい先輩、だった。
    昔は、丸でお姉さんみたいに………)

ほむら(だけど、その無理してるのが辛い人だった)ギリッ

814 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/14 02:12:01.70 W14mlVKf0 473/477


ほむら(病院、か………ずっと病院に通って………)

ほむら(お姉さん………先生、と言うより白衣を着たお姉さん………)

ほむら(とにかく、今は急いでっ………)

「ほむらちゃん?」

ほむら(ん?)

「やっぱりほむ………暁美さんだ」

ほむら(あれ? あれって………)

オネガイネ、マキチャン

ファイトだよっ

おまけ-了-

後書きに続く

815 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/14 02:17:16.26 W14mlVKf0 474/477

==============================

後書き

お陰様でなんとかここまで辿り着きました。

今回は、いわゆる「天啓」タイプのスタートでした。

2015年の中頃、何かのきっかけで突如として
本作のアイディアからプロットまでがまとめて降りて来まして、これで行くしかないと。
当初から、プロットが頭から尻尾まで、
珍しいぐらいにぶち抜きでクリアに思い描かれましたので、
これは割と楽に行けるかな、と、思ったのですが………

基本、ノベライズの方がやり易いタイプなのですが、
今回に関してはノベライズだと思い浮かんだプロットのリズムと
私のくどめな書き癖の相性が絶望的に悪い、と、言う事で、
まずは先達の傑作を読み漁り今回の形式を覚える事から始める事に。

あらゆる意味で目の肥えた厳しい客層のど真ん中に突入する事が予測される中、
改めて各方面の考証、作法を叩き込んだり、
見直した有名医療サスペンスにドハマリしたり。

作品、その元ネタに関して言えば、

メインキャラの西木野真姫。
正直言って、絶えず「誰だこいつ?化」との戦いでもありました。
まどマギは物語として筋の通った愚かさと絶望が作品として素晴らしいからこそ、
二次、特にクロスではそこに一矢報いる誘惑にかられて
一歩間違えると踏み台クロスと呼ばれる様な事にもなりかねず。

そんな中で、原作を踏まえつつ創造する余地と悩みのある本作設定で、
結局は覚える事は覚えて後はプロットの上を信じる方向に、と言う感じでもありました。
あの輝く青春を目一杯駆け抜けた一人の少女。
勝手に作った新たなステージに、その面影を些かでも描く事が出来たなら幸いです。

816 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/14 02:21:52.23 W14mlVKf0 475/477


まどマギ側はスレタイからして本編メインの予定でしたので、
今回は外伝、特におりキリ組は休みかな? と漠然と考えつつ
半ばスケジュール調整での登場があったりもしていたのですが、
原作側の展開と本作のコンセプトから、
まことに僭越ながら放っておけなくなったと言う心情で。
お陰さんで、原作から見てワルプルギス迄の期間が
よーく見ると結構延びていそうだったり
上条君が再入院すると言う痛い力技な展開になったりしたのは、
主に私のスケジュール管理能力の欠如によるものであったりします。

他には、魔法少女の中でも西木野先生と直接接点のあった、
世界観そのもののキーパーソンでもある暁美ほむらの方が
接点が多くなった気がして、スレタイこれで良かったのか?
関わり始めたきっかけがきっかけだしまあいいか、てな事を時々考えたり。

原作では、風穴を残して実質的に中学生に閉じた世界観で、
更にその中に閉じているのが暁美ほむらです。
特にクロスになると、異なる展開知らない世界で人と接する事でどう反応し、成長するのか。
こちらにとっても未知の世界を描くのは悩ましくも新鮮な感覚でした。
その流れで、なんか後半いい感じに緊張の糸が切れたなほむほむ、
な感じのキャラクターになったりしましたが。

最後、ワルプルギスの辺りは、本来はそれぞれ自分の戦いに赴く、
と言った感じの描き方中心で最後に繋げるつもりだったのですが、
描いている内に、終盤、やっぱりラブライブ! らしい事、
何せアレを成功させたラブライブ! らしい奇跡も魔法もあるんだよ、
と言うのも一つ描いてみたくもなりました。

裏話はこの辺で、後の感想は読者の皆様のものとして。

個人的な事情やら機能停止やらも続き、
見事に前書き詐欺でこの時期まで引っ張ってしまいました。

勝手にお借りした尊敬する原作と
読者の皆様に感謝しつつ。

本作はここまでです。縁がありましたら又どこかで。
HTML依頼は折を見て。

==============================
今回投下はここまでです>>805-1000
それでは失礼します。

823 : 以下、名... - 2016/09/16 22:46:14.35 JBvxXWDH0 476/477

完結乙です
ラブライブあまり知らないまま読んできたけど、西木野先生良かったわ
勤務医としての激務に耐えながら、人生の先輩として登場人物たちにどう向き合ったらと考えながら行動しているところが

優れた頭脳と人生経験のほかは魔法も何も使えない人間が魔法少女たちの間に入って、むごい真実を知性と配慮をもって伝えていく
理系のトップの頭脳の持ち主でありながら人間性も真摯であるただの人間が、少女たちにときに共感しときに叱咤し、
距離に配慮し苦悩しながら前に向かって伴走したからこそのラストだなと思いました

824 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/09/16 23:50:23.31 /nGEy0030 477/477

感想どうもです

>>823
時々お見かけしたと思いますが、そう言っていただけると冥利です。
有難うございました。

ぼちぼち依頼行って来ます。

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