◆艦娘が出て殺す!シリーズ◆

◆ウェルカムトゥ・ネオサイタマ・チンジフ
http://ayamevip.com/archives/44516722.html

◆ラスト・クチクカン・ガール・スタンディング
http://ayamevip.com/archives/48089635.html

◆キックアウト・ザ・ニンジャ・テイトクファッカー
http://ayamevip.com/archives/48089676.html

◆システム・オブ・チンジフ・ストラグル
http://ayamevip.com/archives/48089712.html

◆アトロオーシャン・イン・ネオサイタマオーシャン
http://ayamevip.com/archives/48089731.html

◆ビヨンド・ザ・カグコインデカッタ・フスマ・オブ・サイレンス
http://ayamevip.com/archives/48089747.html

◆デイ・オブ・ザ・ロブスター
http://ayamevip.com/archives/48089755.html

◆ブレードカンムス・ヴェイカント・ヴェンジェンス
http://ayamevip.com/archives/48089779.html

元スレ
【艦殺(艦これ×忍殺)】ブレードカンムス・ヴェイカント・ヴェンジェンス
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1450699298/

548 : ◆utp..QOeek - 2016/04/15 16:32:50.42 UFDZTpCeO 2/359

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

549 : ◆utp..QOeek - 2016/04/15 16:33:32.23 UFDZTpCeO 3/359

◆やっぱもうやります。始まりな◆

551 : ◆utp..QOeek - 2016/04/15 16:37:09.58 UFDZTpCeO 4/359

【シュツゲキ・レイゴウ・オペレイシヨン】

552 : ◆utp..QOeek - 2016/04/15 16:41:36.34 UFDZTpCeO 5/359

夜の海は実際静かである。あたり一面を支配するのは闇の他にない。しかし目を凝らすと小さな光が見えてきた。その光はぽつりと浮かぶちいさな無人島から見えてきているようだ。

553 : ◆utp..QOeek - 2016/04/15 16:48:35.85 UFDZTpCeO 6/359

その光源は焚き火である。そしてそれを囲むように5人の人影があった。「……あのさァ、大将」その中の1人が重い沈黙に耐えかねたように声を発する。彼女が話しかけたのは日の前に座り、淡々と折った枝をくべ続けている人影に対してだ。「…何だマヤ?下手に喋るのはよせ。ジャングルに潜伏しているベトコンに見つかったらどうするつもりだ」

555 : ◆utp..QOeek - 2016/04/15 21:55:42.33 9FbZng/O0 7/359

キョート・チンジフを独断退社した艦娘たち、サヴァイヴァー・チンジフを率いる重巡洋艦娘、ナチは静かに答えた。しかし対するマヤは不機嫌なネコめいてほおを膨らませる。「だってよぉ大将…おれ、ハラが減っ」「言うなッ!」ナチは手元の小枝をへし折り粉々にした。「甘えるな!サヴァイヴするということは常に物資や食料を確保できるということはあり得ない!欲しがりません!勝つまで…うぐっ」

556 : ◆utp..QOeek - 2016/04/15 22:02:19.82 9FbZng/O0 8/359

ナチの口上は己の腹の音に遮られて続かなかった。無理もない!彼女たちはこの数日間の間、十分な食料を確保できていない状況だからだ。「ンだよっ!大将だってハラ減ってんじゃねーかよ!」「うっ、うるさい!空腹などキアイで何とかするのだ!補給兵の到着を待て!」なんたる無茶か!キアイで腹は膨らまぬ!

557 : ◆utp..QOeek - 2016/04/15 22:13:33.10 9FbZng/O0 9/359

「ウワーッ!やだやだやだやだー!腹減ったー!なんか食べてえよー!ウワーッ!」マヤは背中から倒れるとバタバタと暴れた。行き場のない怒りが爆発したのだ!しかし無駄にエネルギーを消費しているだけだと気づいたのですぐに止めた。「チックショー…!これもすべておめーのせいだぞ!」たき火を挟んで自分の前に座っている艦娘に指を突き付けるマヤ!

558 : ◆utp..QOeek - 2016/04/15 22:29:28.27 9FbZng/O0 10/359

「Heyッ!イムヤ?あんなこと言われてるわ!」「へ?イムヤのこと?」「ちげぇよ!おめーだよおめー!アイオワ!お・め・え・だ・よッ!!」マヤは怒りの形相で目の前の戦艦娘を睨み付けた。「What?アタシのこと?」「おめー以外に誰がいるんだよッ!この大メシ食らいが!」「Oh~…」その胸、尻、すべての肢体が規格外に豊満である戦艦娘、アイオワは肩をすくませてみせる。「どんだけ食ったと思ってんだ!?備蓄してたのもペロッとたいらげやがって!」「つまりアタシはジャパニーズで言うタイショク艦ってわけね?アHAHAHAHAHA!」「ウッガーッ!ジョーク言ってる場合かチクショオオオオ!」マヤは行き場のない怒りでジタバタすることしかできぬ!

559 : ◆utp..QOeek - 2016/04/15 22:43:47.89 9FbZng/O0 11/359

そう、お気づきの通りアイオワはサヴァイヴァー・チンジフに所属に所属したばかりの新顔である。以前キョート・チンジフの艦娘建造プラントを襲撃した時、生まれたばかりの彼女をナチが鹵獲かつスカウトしたのだ。彼女はメンバーの中でも頭一つ大きく、その肢体も戦艦娘の中では最大クラスのボリュームである。「小さいことは気にしなーい!次の襲撃作戦もアタシに任せておいて!」「バッキャロー!この前もそんな事ほざきながら食糧倉庫ごとフッとばしたじゃねーか!どんなバ火力してやがんだッ!」「そういうこともあったかしら?…Oops!そういえばアタシ弾薬空っぽだったの忘れてた!そもそも襲撃もできないわね!アHAHAHAHAHA!」「ウアアアアア畜生ウワアアアアーッ!」マヤのメンタルは臨界点寸前であった。

560 : ◆utp..QOeek - 2016/04/16 00:26:44.78 aiolP8bH0 12/359

◆上の2レスを半分ずつ分割ケジメすればよかったと後悔し寝休憩します◆

562 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 11:56:33.42 eTQB3/QA0 13/359

◆1日おき再開◆

563 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 11:57:28.07 eTQB3/QA0 14/359

「Heyッ!イムヤ?あんなこと言われてるわ!」「へ?イムヤのこと?」「ちげぇよ!おめーだよおめー!アイオワ!お・め・え・だ・よッ!!」マヤは怒りの形相で目の前の戦艦娘を睨み付けた。「What?アタシのこと?」「おめー以外に誰がいるんだよッ!この大メシ食らいが!」「Oh~…」

564 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 11:58:27.71 eTQB3/QA0 15/359

その胸、尻、すべての肢体が規格外に豊満である戦艦娘、アイオワは肩をすくませてみせる。「どんだけ食ったと思ってんだ!?備蓄してたのもペロッとたいらげやがって!」「つまりアタシはジャパニーズで言うタイショク艦ってわけね?アHAHAHAHAHA!」「ウッガーッ!ジョーク言ってる場合かチクショオオオオ!」マヤは行き場のない怒りでジタバタすることしかできぬ!

565 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 12:01:37.13 eTQB3/QA0 16/359

アイオワはサヴァイヴァー・チンジフに所属に所属したばかりの新顔である。以前キョート・チンジフの艦娘建造プラントを襲撃した時、生まれたばかりの彼女をナチが鹵獲かつスカウトしたのだ。彼女はメンバーの中でも頭一つ大きく、その肢体も戦艦娘の中では最大クラスのボリュームである。「小さいことは気にしなーい!次の襲撃作戦もアタシに任せておいて!」アイオワは大げさなウインクを飛ばしてきた。

566 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 12:05:10.58 eTQB3/QA0 17/359

「バッキャロー!この前もそんな事ほざきながら食糧倉庫ごとフッとばしたじゃねーか!どんなバ火力してやがんだッ!」「そういうこともあったかしら?…Oops!そういえばアタシ弾薬空っぽだったの忘れてた!そもそも襲撃もできないわね!アHAHAHAHAHA!」「ウアアアアア畜生ウワアアアアーッ!」マヤのメンタルは臨界点寸前だ!再び地面の上で身体を投げ出してバタつき始める。

567 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 13:06:59.28 eTQB3/QA0 18/359

「そんなにお腹すいてるの?イムヤは別にだけどなあ」「ブッダファック!低燃費のおめえと一緒にするな!うう…スシ、ケバブ…食べたいよぉ…!」「フフフ!楽しみだわ。いつかステキなAdmiralに会うのよ!待っててねマイダーリン!Chu Chu!」呆れるイムヤ、ベソをかき始めたマヤ、虚空に投げキッスを飛ばすアイオワをナチは一喝する。「ええい!静まれお前ら!次の襲撃作戦は成功させる!必ずだ!」

568 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 13:16:18.34 eTQB3/QA0 19/359

「でもよお大将…最近オレたち失敗続きだぜ?どうせ、また…」「うぐっ…!」すっかりしょげかえってしまったマヤの言葉にナチは同意しかけてしまう。これは実際図星だ。このところ何もかも全てが上手くいかない。新顔のアイオワのせいという訳ではない、手に入れた物資を手放さざるを得ない、罠に嵌められる、苦労して潜入した倉庫に何もなかった…そんなことばかり起こっている。

569 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 13:24:23.16 eTQB3/QA0 20/359

しかしそんなネガティヴ極まりない感情を振り払うようにナチはアタマをブンブンと振った。こいつらはいずれ共にジゴクに連れて行くつもりである。しかし今はその時ではない、なんとかしなければならぬ。「案ずるな。今回こそは成功する…バイオマングローブ林の奥底にベトコン共の秘密補給基地があるのを突き止めた。次のターゲットはそこだ」「でもなー…イムヤたちもう弾薬も燃料もほとんどないし、この状態じゃあ無理があるよ」

570 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 13:28:14.68 eTQB3/QA0 21/359

「そうだ。だから今回は私の単独任務とする。お前たちは待機していろ」「まっ、待てよ大将!そいつぁ無茶ってもんだろ!」マヤは慌てて跳ね起きる。しかしナチはそれを制した。「この中で弾薬に関して全く必要でないのは私かお前ぐらいだ。しかしお前は潜入任務に向いていない…そうなればこの私以外に誰がいる?」「それは…そうだけどよ」

571 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 13:32:20.35 eTQB3/QA0 22/359

「燃料は現地で調達する。お前たちはここから動くな、もし私が帰らなかったら…その時は分かるな?」ナチの有無を言わせぬアトモスフィアがマヤたちを沈黙させた。だがナチは内心焦っていた。物資不足もそうだが何よりも…「…リュウジョウが逝ってしまう前になんとかしなければ」ナチの視線は簡易ベッドの上に寝かされたリュウジョウに向けられる。

572 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 13:38:35.47 eTQB3/QA0 23/359

「アガ…アガガ…ボーキ、ボーキくれぇ…アガ、アガ…」もともと小柄なリュウジョウの身体はさらに縮んで見えている。虚ろな目でうわ言を繰り返していた。これはボーキ不足の末期症状に他ならない!空母娘や軽空母娘にはボーキ成分が要となる。過剰摂取するのも危険だが不足するのも危険極まりない。このまま自然に大爆発四散してサヨナラしてもおかしくない状態である!

573 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 13:48:22.42 eTQB3/QA0 24/359

「クソ…リュウジョウがこのままじゃ死んじまうよぉ…!」「大将に任せるしかないね。死にかけのバイオ鯉みたいになっちゃってるもの…」「ワオ!この状態アタシ知ってるわ。Japaneseコトワザで…エーット、マナイタの上の…マナイタ?」3人がリュウジョウを心配そうに見つめている。ナチは胸が締め付けられる想いだった。自分には責任がある。ナチは立ち上がる。まずは準備だ。決死の単独作戦が今、始まろうとしていた。

576 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 20:48:59.32 eTQB3/QA0 25/359


ーーーーーーーーーーーーーー


577 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 20:51:33.09 eTQB3/QA0 26/359

数刻後、とあるマングローブ林

578 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 20:56:06.44 eTQB3/QA0 27/359

海上に唐突に現れるこのマングローブ林の異様なシルエットは底知れぬアトモスフィアを醸し出している。海上緑化計画のため、旧世代に生み出されたバイオマングローブが計画の無期限停止を受け放置され拡大、その末にこの島めいた様相を形作ったのだ。このマングローブ林は野生化したバイオテナガザル、バイオパンダなどが生息する危険地帯でもある。

579 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 20:59:40.92 eTQB3/QA0 28/359

人の手が入るべきではない場所であるのは読者諸氏も一目で分かることだろう。「……………」しかし、ひとつのマングローブの上から双眼鏡を覗く者がいる。赤黒い装束、『憲 兵』のカンジが刻まれたメンポをつけたその艦娘はセンダイ、憲兵であり、ニンジャである。

580 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 21:05:38.51 eTQB3/QA0 29/359

彼女の覗く双眼鏡に映るのは…巡回するヤクザスーツの二人組の人物。なぜこのような場所に!?「…やはり、クローン軽巡洋艦か」ナムアミダブツ!クローン軽巡洋艦は暗黒メガチンジフ・セイカンヤの尖兵である。つまりはこのマングローブ林の中にセイカンヤ関連の施設があることは想像に難くない!

581 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 21:11:24.41 eTQB3/QA0 30/359

これは任務である。そのコードネームは『レイゴウ作戦』。旧世代において存在した、戦争時のとあるオペレーションネームから取ったものだ。センダイはその作戦に志願した。先の戦いで全裸ケジメされた肉体的かつその姿をモニタリングされていたという多大な精神的ダメージからなんとか回復し、すぐさま戦線に復帰したというわけだ。

582 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 21:23:09.30 eTQB3/QA0 31/359

(思った以上に警備は厳重か。たやすく秘密施設を発見、侵入できるとは思っていなかったが……ヌウゥゥッ…!まさかあの姿が撮影されていたとは。さらにそれを提督=サンに見られたという事実!やはり敵艦殺すべし…!)なかば八つ当たりめいた感情で、持っていた双眼鏡がミシミシと音を立て始める。しかし今は任務中だ、センダイは心をやや無理やり落ち着かせる。「……そろそろ行動を開始しましょう」

583 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 21:28:44.97 eTQB3/QA0 32/359

センダイは自分の後ろに向かって声をかけた。この任務は単独任務ではない、もうひとり仲間がいるのだ。「ちょっと……待ってくれないか。もう少しで終わるから…」だがその当人はセンダイに背を向け、息を吸い込むと、美味そうに煙を吐き出した。「早めに終わらせて下さい」「悪いね、ウーン…」その人物は傷の目立つ白いコートを着、軍帽の下からこぼれる髪は極めて白い。

584 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 21:37:59.72 eTQB3/QA0 33/359

しかしその不自然な白さの理由をセンダイは知っている。いや、誰でも一目見れば分かるだろう。タバコをもつ逆の手に握られたケースに書かれた『BKT成分10mg』の文字を見れば、その白い髪がBKT中毒者特有のものと分かるはずだ。BKT成分(注釈 : バケツ成分)には鎮痛作用だけでなく思考の鈍化作用を持っている。しばしばBKT成分中毒に陥る艦娘は少なくないが、そのなかでもこの白髪は重度の中毒者ということを表している。

585 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 21:51:20.48 eTQB3/QA0 34/359

「フーッ…待たせたな。行こうか」「ハイ」タバコを揉み消した彼女は重い身体を引き起こす。調子を確かめるように首をこきこきと鳴らしている。「それじゃあ任務開始だ。いざリヒテンデス…リヒテン…エート、なんだったかな…」「Lichten des Ankersですか?」「そうだ!それだそれ。ははは…いかんな、ZBRのやり過ぎで身体をだけでなく頭も重くなってしまったか」自嘲めいて笑う彼女の名はグラーフ・ツェッペリン。その姿からは、以前の生粋の軍人めいた面影がどこにも見受けられなくなっていた。

586 : ◆utp..QOeek - 2016/04/17 21:52:22.18 eTQB3/QA0 35/359

【KANMUSLAYER】

587 : ◆utp..QOeek - 2016/04/18 09:53:51.46 GX5SkgCaO 36/359

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

588 : ◆utp..QOeek - 2016/04/18 09:54:25.58 GX5SkgCaO 37/359

【KANMUSLAYER】

589 : ◆utp..QOeek - 2016/04/18 09:55:31.27 GX5SkgCaO 38/359

センダイとグラーフは木の上をしめやかに移動する。時折、バイオテナガザルが襲いかかってくる事もあるが、センダイがゼロセンで問題なく排除した。「フゥ、こういう任務は久々だ。身体がついていけばいいが…」小休止中、グラーフが軍帽をかぶり直す。そのつばの右側には何かに斬られたかのような大きな切れ込みが入っている。

590 : ◆utp..QOeek - 2016/04/18 10:01:46.92 GX5SkgCaO 39/359

そしてその切れ込みに続くように、グラーフの顔右側に薄っすらとキズが走っている事も分かる。彼女のガイジンめいた白い肌、右目を分断するかのように。さらに右目の色が左に比べやや違う。これはサイバネコンタクトレンズをはめているからであろう。

591 : ◆utp..QOeek - 2016/04/18 10:06:44.59 GX5SkgCaO 40/359

「ならばBKTを控えるべきでは?」「おいおい、それは叶わない話だ。おそらく止めるときは私が沈むときだろうな」センダイはこのセンパイとは昔から面識がある。当時ネオサイタマ・チンジフがマルノウチ・スゴイデカイチンジフと呼ばれていた時、グラーフはセンパイの中でも選りすぐりのエリート艦娘であり、自他共に厳しく、提督とチンジフへの忠誠心に溢れた尊敬を集める存在であった。

593 : ◆utp..QOeek - 2016/04/18 22:15:11.00 3LhR/ntx0 41/359

しかしそれはすでに過去の事。グラーフは『あの日』から、全てが変わってしまった者のひとりだ。つまりセンダイとある意味同じ……「それにしても君は任務となると性格が変わるな。全く別の子と話している気分になる」「スミマセン」センダイは頭を下げた。「アッ!いやいや!悪く言ってるワケじゃないんだ!すまない…私は口下手なんでね」

594 : ◆utp..QOeek - 2016/04/18 22:20:30.22 3LhR/ntx0 42/359

バツが悪そうに頭をかくグラーフ。彼女はチンジフに寄せられたどんな任務でも受ける。断ったことは一度もない。チンジフ近海に住む島民たちから要請される凶暴化したバイオ生物の駆除、物資運搬の護衛、その他クローン妖精でも片づけられるような仕事でも彼女は嫌な顔せずに引き受けてきた。それはある種の信念に従っているからかもしれない。何かの誇りめいたものに。

595 : ◆utp..QOeek - 2016/04/18 22:40:03.22 3LhR/ntx0 43/359

「……シッ」だが次の瞬間、グラーフの表情が変わり、センダイに伏せるように促す。その視線の先には6体ものクローン軽巡洋艦が巡回している。過剰なまでに厳重な警備だ。「いよいよ本拠地は近いというワケか」「排除しますか?」「ああ、だが待ってくれ。私ひとりでやる」

596 : ◆utp..QOeek - 2016/04/18 23:01:25.42 3LhR/ntx0 44/359

ゼロセンを構えアンブッシュしようとしたセンダイを制すると、グラーフは己の懐に手を伸ばし、ホルスターに収まっている得物の感触を確かめるかのように握った。「準備運動とまではいかんが身体を温めておかなければならないからな。任せてくれ」「…分かりました」センダイは素直に手を収める。「まあ万が一マズイ状況になったら助けてくれ!そうならないように努力はするつもりだが……それにあの人数、私向けの状況だ!」次の瞬間!グラーフはマングローブの上から跳躍していた!

597 : ◆utp..QOeek - 2016/04/18 23:16:44.00 3LhR/ntx0 45/359

クローン軽巡洋艦たちが異常に気づくよりも速く、グラーフはコートの内側のホルスターから2丁の得物を抜き放ちトリガを引いた!「イヤーッ!」放たれた大口径の弾丸が一人のクローン軽巡洋艦の頭をトーフめいて粉々に吹き飛ばした!「アバーッ!」そのまま集団の中心に降り立つグラーフ。クロスした両手に握られているのは18世紀に生まれたとされるドイツ純正拳銃、ライヒスリボルバー!「さあ!蹴散らすぞ!」カラテ姿勢を取るグラーフ!「イヤーッ!」ゴウランガ!これは暗黒武道、ピストルカラテの構え!

598 : ◆utp..QOeek - 2016/04/18 23:20:16.79 3LhR/ntx0 46/359

「ナンダテメッコラー艦娘!」クローン軽巡洋艦がロング・ドスダガーを左上段に構えて飛び掛かる!ナムサン!だがグラーフは素早いカラテで斬撃を回避してから、相手の懐へと飛び込む!そして拳銃を握った右腕で、敵のみぞおちに痛烈なボディブローを喰らわせた!リボルバーの重心を深くねじりこむ!「イヤーッ!」「グワーッ!?」

599 : ◆utp..QOeek - 2016/04/18 23:23:04.89 3LhR/ntx0 47/359

痛烈なカラテを叩き込まれ、クローン軽巡洋艦の体が数センチ浮く!内臓破壊の手応え!さらにグラーフは容赦なく引き金を引いた!「イヤーッ!」大口径リボルバーが火を噴き、クローン軽巡洋艦の体に大穴を穿つ!ソクシ!その死体はワイヤーアクションめいて吹っ飛び、ヤクザマシンガンを構えていたもう一体に激突!ナムアミダブツ!

600 : ◆utp..QOeek - 2016/04/18 23:28:32.08 3LhR/ntx0 48/359

たかが旧式と侮るなかれ!ライヒスリボルバーは規格外の強度を誇り、1世紀後に起こった大戦においても使用されたという。さらに改造を加え、極大口径となったそれを制御するのはカンムス筋力を持ってしても至難の業だ。だが、暗黒武道ピストルカラテにおいて、反動は次なるカラテを生むエネルギーである!見よ!グラーフの右背後から迫ってきた敵のこめかみに、信じ難い速度の右エルボーがめり込んだ!「イヤーッ!」「アバーッ!」

601 : ◆utp..QOeek - 2016/04/18 23:31:31.13 3LhR/ntx0 49/359

「ザッケンナコラー艦娘!」接近戦は不利と見たクローン軽巡洋艦の一人が距離を取り、懐からオートマチック拳銃を抜き、グラーフに銃口を向ける!アブナイ!だが、バケツ・アドレナリンと持ち前のカンムス反射神経でニューロンを覚醒させているグラーフにとっては、この程度の攻撃を予測することなどベイビー・サブミッション!

602 : ◆utp..QOeek - 2016/04/18 23:34:14.28 3LhR/ntx0 50/359

敵の銃が唸りをあげる前に、グラーフは素早く身体を捻り、右エルボーを食らわせた瀕死のクローン軽巡洋艦に発砲!「イヤーッ!」「グワーッ!」ネギトロめいた肉片と化す!と同時に2挺分の反動をバックステップの力に追加し、グラーフ自身が後方にワイヤーアクションめいて美しく跳び、見事に弾を回避した!

603 : ◆utp..QOeek - 2016/04/18 23:36:20.44 3LhR/ntx0 51/359

バックジャンプするグラーフの背後には、カタナを構えたクローン軽巡洋艦!このままでは背中から突っ込んでしまう!だがグラーフは空中で右手のリボルバーを左脇の下に通し、射撃してきた敵に向けて二連射!反動を得たグラーフは空中で腰を捻り、背後のクローン軽巡洋艦に対して左足のボレーキックを決める!

604 : ◆utp..QOeek - 2016/04/18 23:43:13.02 3LhR/ntx0 52/359

「アバーッ!」その首がサッカーボールめいて吹っ飛ぶ!それと同時に最後の一人に対し、サイバネコンタクトレンズに表示された補助ターゲティングシステムの狙いから寸分たがわぬ急所に弾丸を叩きこみ即死!着地を決めたグラーフは鮮やかな回転演武を行った後、両手を腰に引いて静かにオジギをした。タツジン!

605 : ◆utp..QOeek - 2016/04/19 00:30:09.13 69cDltME0 53/359

「ザ……ザッケ…」吹っ飛んできた仲間の死体によって押しつぶされ、脳震盪を起こしていたクローン軽巡洋艦が、ふらふらと身体を起こす。「おっと撃ち漏らしていたか!」グラーフはホルスターに仕舞いかけていた左のリボルバーで普通に遠隔射撃を決め、これを射殺。「グワーッ!」巡回部隊は完全に制圧した。

606 : ◆utp..QOeek - 2016/04/19 00:34:52.25 69cDltME0 54/359

恐るべし、暗黒武道ピストルカラテ。何たる対多人数対応力と殺傷力か!だが、その様子を密かに窺う者がいたことを、グラーフも、それを見守っていたセンダイでさえも察知できなかった。マングローブの幹に身を隠した、編笠を被った何者かが戦闘の一部始終を観察していたのだ!

607 : ◆utp..QOeek - 2016/04/19 00:35:31.30 69cDltME0 55/359

【KANMUSLAYER】

608 : ◆utp..QOeek - 2016/04/19 00:38:35.56 69cDltME0 56/359

◆ライヒスリボルバーなるものはネットでググれば出る。しかし検索きのうに頼りすぎるひとはあほになるという研究結果もある。気おつけましょう。以上です◆

612 : ◆utp..QOeek - 2016/04/21 17:47:52.19 id02uR4YO 57/359

◆艦◆カンムス名鑑#67【戦艦アイオワ】キョート・チンジフの建造プラントで生まれた直後に、物資強奪のために潜入していたナチにスカウトされた戦艦娘。規格外の瞬間火力と肢体を持つ。細かいことは考えないアメリカ人めいた思考の持ち主。実際ガイジン。ナチについていった理由は本人曰く、「将来ステキなAdmilalをダーリンにするため」らしい。◆艦◆

613 : ◆utp..QOeek - 2016/04/21 17:49:39.19 id02uR4YO 58/359

◆ZBRを出すべきかBKTのままでやるか考えていた結果ZBRが出ました。作者は速やかにケジメしたので更新は日曜日までにはやると思います◆

615 : ◆utp..QOeek - 2016/04/23 21:01:03.08 4ttp7w9R0 59/359

◆明日な◆

616 : ◆utp..QOeek - 2016/04/24 14:30:51.86 1plIDAWz0 60/359

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

617 : ◆utp..QOeek - 2016/04/24 14:31:43.00 1plIDAWz0 61/359

【KANMUSLAYER】

618 : ◆utp..QOeek - 2016/04/24 14:33:46.37 1plIDAWz0 62/359

数刻前、ネオサイタマ・チンジフ執務室

619 : ◆utp..QOeek - 2016/04/24 15:06:02.68 1plIDAWz0 63/359

「……以上が10番基地の戦闘状況。完全に制圧した。これが奪還できた前線基地のすべてだ」「そうか、悪くねえ」「喜んでもらえて何よりだよ」そこでは提督が1人の艦娘から報告を受けている最中であった。美しい黒髪を持つ駆逐艦娘、彼女の名はハツヅキ、駆逐艦長を務める艦娘である。

620 : ◆utp..QOeek - 2016/04/24 15:10:10.06 1plIDAWz0 64/359

ハツヅキはなおも言葉を続ける。「しかし残りの前線基地では小競り合いが続いている。油断できない状況に変わりはない」「それは分かっている。……だがハツヅキ=サンちょっといいか?」その2人の傍の机では秘書艦のヒュウガが黙々と書類を処理している。執務室は至って静かな様相だ。「何だい?何か問題でも」「チト問題がある」

621 : ◆utp..QOeek - 2016/04/24 15:15:20.15 1plIDAWz0 65/359

彼女の瞳が提督をとらえた。「お前は僕の提督だ。何か打開策があるならば従おう」「違う、それはまだだ」提督はかぶりを振る。「ならば何だい?それならこのまま報告を続かせてもらうよ」ハツヅキは怪訝な表情を浮かべた。「待て、まずはどけ」提督は指差す。「…今すぐここから」たった今ハツヅキが座っている、自分の膝の上をだ。

622 : ◆utp..QOeek - 2016/04/24 15:20:31.87 1plIDAWz0 66/359

「…………僕の案としては優先すべきは12番基地の」「無視するんじゃねぇ…今すぐどけと言っているんだ、こ・こ・か・ら」「……作戦としてはやはり奇襲を」「だから無視するな…!」しかしハツヅキは動かない、根を張ったように提督の膝の上から動こうとしない。その恋人めいた様相にも関わらずヒュウガは素知らぬ顔で書類仕事を続けている。

623 : ◆utp..QOeek - 2016/04/24 15:25:28.08 1plIDAWz0 67/359

やがてハツヅキは小さく溜息をついた。「細かいことは気にしないでくれ。僕とお前の仲だろう?」「いつの間にそんな仲になったんだ。つーか早くどけ、俺の胸をさするな」「いいだろう少しくらいなら。ほら…」「少しもよくねえ」提督はその手を掴んで止めると、ハツヅキを無理矢理膝の上から降ろそうとした。しかしそれに抵抗するようにハツヅキは動かない。

624 : ◆utp..QOeek - 2016/04/24 15:30:39.02 1plIDAWz0 68/359

「そうだ…ひとつお願いがある。今回の褒章についてなんだ。欲しいものがある」「ここからどくなら何でもくれてやる…何が望みだ?」ハツヅキは今回の奪還作戦において前線の指揮をとり、駆逐艦長の肩書きに恥じぬ働きをした。とにかく膝の上から降ろせるならどうにでもしてやろう。そしてハツヅキは目をつむり、提督に顔を向けてみせた。「キスしてくれ」「断る」提督はすかさずその脳天をチョップした。

625 : ◆utp..QOeek - 2016/04/24 15:41:48.45 1plIDAWz0 69/359

ひるんだ彼女の首根っこを提督はすぐさま掴むとドアに向かって歩き始めた。悪戯をした子犬めいて引きずられてゆくハツヅキ。「報告ご苦労。もう戻っていいぞ」「ま…待て、キスじゃなくても良いんだ。抱きしめてくれてもいい」「それも断る」「なら前後しよう」「絶対に断る」外に放り出されたハツヅキの言葉を遮るように扉を閉めると、提督は大きな溜息をつく。「誰だ、アイツに報告させた奴は?前々からここに入れるなと言っていただろうが…」「私は知らないぞ」ヒュウガは素っ気なく言った。

627 : ◆utp..QOeek - 2016/04/24 22:38:56.96 1plIDAWz0 70/359

苦虫を噛み潰したような顔のまま提督はイスに座り、身を預ける。過剰なまでのスキンシップを行ってくる艦娘は少なくない。中には度を越したストーカー行為や変態行為を繰り返す者もいる。彼は実際辟易していた。

628 : ◆utp..QOeek - 2016/04/24 22:45:01.82 1plIDAWz0 71/359

「ヤヨイ=サンのアプレンティス(弟子)はあんなヤツばかり…そのくせ腕が立つのが何よりタチが悪い」「ヤヨイ=サン自身もあんなものだろう」「……とにかくだ、ガキが色気づきやがって。どこであんな卑猥な言葉覚えやがったんだ」「いっそあの子の思い通りにしてやるのはどうだ?さらに出来るようになるかもしれないぞ」ヒュウガはさらりと言ってのけた。

629 : ◆utp..QOeek - 2016/04/24 22:51:53.87 1plIDAWz0 72/359

「バカ言え。あんなガキんちょにデキてもらってたまるか。それともお前は俺がそんな事するヤツに見えるのか?あ?」やや怒った様子の提督を見て彼女は目を細める。「……そうだな。そうは見えないな」「たりめーだ」ヒュウガの目はあくまでも優しかった。「そもそもお前も少しくらいフォローしろってんだ。お前は俺の…」

630 : ◆utp..QOeek - 2016/04/24 23:00:55.61 1plIDAWz0 73/359

しかし提督の言葉はノック音で遮られた。「……チッ、入って来い」提督は不満顔のまま二人の艦娘を部屋に招き入れる。最初におずおずと入ってきた艦娘はハツカゼ、このところよく呼び出されている。そしてその後ろに続いてきたのは、「初めましてと言うべきか?」「ハイ、初めまして。ハマカゼです」その艦娘がぺこりとオジギをすると、下に何もつけていないであろう豊満な胸の揺れが追従した。

631 : ◆utp..QOeek - 2016/04/24 23:01:26.72 1plIDAWz0 74/359

【KANMUSLAYER】

633 : ◆utp..QOeek - 2016/04/26 23:41:23.57 exEwy2eFO 75/359

◆艦◆カンムス名鑑#67【駆逐艦ハツヅキ】ネオサイタマ・チンジフ所属。ヤヨイの4人の弟子のうちの1人であり、駆逐艦長を務める艦娘。その一方でチンジフ暗部、通称「コロス・カンムスクラン」のリーダーを兼任している。極めて冷酷無比な判断力を持ち、レール・カタナによる亜音速イアイでチンジフに仇なす者を断罪する。提督へのスキンシップは過剰。因みに暴走状態の提督に襲われたことはないので処女である◆艦◆

635 : ◆utp..QOeek - 2016/05/02 18:30:44.72 /AeM1Fu8O 76/359

◆原作のひとつのアーケードン版が実装されました。おめでとうメント重点。忍殺コラボの陽は近いのだなあ、始まります◆

636 : ◆utp..QOeek - 2016/05/02 18:31:22.29 /AeM1Fu8O 77/359

【KANMUSLAYER】

637 : ◆utp..QOeek - 2016/05/02 18:38:38.42 /AeM1Fu8O 78/359

提督は彼女、ハマカゼの顔を覗き込んだ。以前のような冷たい無表情はいくらか和らぎ、ほおには薄っすらと赤みが差している。子供めいた艦娘が多い駆逐艦娘らしくない、美しい顔立ちだ。「健康状態は問題ねえようだな」「うん、生体情報はどれも正常値だし気持ちも落ち着いてる。もうキズも治ってるわ」ハツカゼがハマカゼのかわりに応じる。

638 : ◆utp..QOeek - 2016/05/02 18:46:35.31 /AeM1Fu8O 79/359

「大変お世話になっております」ハマカゼが提督とハツカゼに対して再度丁寧にオジギした。その度に豊かな胸の揺れが追従する。「気にしないで!これはあたしの仕事みたいなもんだし、それにさ…姉妹というか、親戚みたいなもんなんだからさ」ハツカゼは照れ臭そうに頭をかいた。ハマカゼに宿るソウルは陽炎型の13番艦のものである。ハツカゼはその7番艦、つまり彼女たちは生まれについて近しい存在なのだ。

639 : ◆utp..QOeek - 2016/05/02 19:49:23.56 2n1x8ooWO 80/359

「それにしても驚いたな、まさかネームシップ(注釈 : 同じ型式の艦船)だったとはね〜…」ハツカゼは改めて自分の妹にあたる艦娘をしげしげと眺める。そして自分のものと比べた。何たる凄惨なまでの差であろうか…!言うなればそれはメロンとミカンの大きさを比べるようなものである!(……やっぱブッダってクソだわ!)ハツカゼは心のなかで歯を食いしばった。

640 : ◆utp..QOeek - 2016/05/02 21:26:18.39 2n1x8ooWO 81/359

「さてハマカゼ=サン、お前にいつか聞くことがある」「ハイ、私に拒否権はありません」提督の声音が若干変わったのをハツカゼは聞き逃さなかった。これは真剣な話をするときだ。静かになった室内で耳に入るのはヒュウガがペンを走らせる音のみだ。やがて提督はハマカゼをほんの一瞬見つめた後、口を開いた。「ならいい、まず最初の質問だ。お前はどこに付く?セイカンヤか?それともキョートか、答えろ」

641 : ◆utp..QOeek - 2016/05/03 12:00:53.30 Oe5kyovx0 82/359

「………私は」ハマカゼは当然、答えに窮した。提督は彼女の拠り所が無いのを踏まえた上で聞いているのだ。たとえ操られていたといえど、自分達に牙を剥いたということは変わりのない事実である。「どうした?答えられないのか」「…………」ハツカゼはその隣でごくりと息を飲む。口を挟もうとしても言葉が出ない。それほどのアトモスフィアを提督が発していた。

642 : ◆utp..QOeek - 2016/05/03 12:17:50.19 Oe5kyovx0 83/359

ハマカゼは重い口を開いた。彼女自身でも十分に理解している。だがそれを口に出すことが、今の彼女にとっては憚られた。「私は……居場所以前に、何者でもありません。だから」「そうか、そうなりゃ答えはひとつだ」提督はおもむろにその手を掴んだ。「え…?」「ならばウチに来い。今日からここがお前の居場所になる」ハマカゼは驚いたように提督の顔を見る。その瞳は強い力を秘めた、確かな意志を彼女は感じとった。

643 : ◆utp..QOeek - 2016/05/03 12:27:27.98 Oe5kyovx0 84/359

「生きている意味が見つからないなら俺たちが与えてやる。いや……お前自身で見つけさせてやる」「そんな資格が、私にはあるのでしょうか」「ある。だから俺たちと共に戦え。仲間と、お前の姉妹とな」ハマカゼはその瞳から目が離せない。しかし、提督に手を取られたまま、彼女は跪いた。「………私はここに、貴方に忠誠を誓います。どんなことにでも従います。だから、私に教えてください。何もかもを」「フッ……上出来だな。ようこそネオサイタマ・チンジフへ、俺が提督だ。お前を沈ませたりしない、決してだ」

644 : ◆utp..QOeek - 2016/05/03 12:36:10.92 Oe5kyovx0 85/359

その様子をずっと傍で見ていたハツカゼは思わず目頭が熱くなってしまう。初めから提督はこうするつもりだったのだ。書類仕事をしていたヒュウガもいつの間にか手を止め、その様子を小さな微笑を浮かべ見守っていた。「色々と教える前にお前には色々と聞いておくことがあると言ったろう。質問を続けるぞ」「ハイ」「その前に……手を離せ。もう十分だろ」ハマカゼはその手を離さず、興味深そうに感触を確かめている。

645 : ◆utp..QOeek - 2016/05/03 12:42:46.10 Oe5kyovx0 86/359

「貴方のような人に会ったことがありません。力強くて、ごつごつしている。とても不思議です」「……まずは男と女の違いから教えてやらなきゃならねーのか。コイツは難儀だな」提督が苦笑した。和やかになったアトモスフィアのまま、向かい合ったソファに場所を移した提督は、いくつかハマカゼに質問していった。多くの事を知らない彼女をハツカゼが横でサポートする。いつの間にか提督の横に座っていたヒュウガがその内容を手持ちのIRCに記録している。

646 : ◆utp..QOeek - 2016/05/03 23:33:01.50 R5SE/or+O 87/359

「下着を着ろと?しかしそれでは運動性能が落ちるのではないでしょうか」「あのねえ〜女の子が常時ノーブラノーパンでいいわけないじゃん!」「もう好きにしろ……次が最後の質問だ」いくつか質問が続き、どうやら次が最後らしい。ハツカゼはやや呆れていた。世間知らずのハマカゼのことだ、また斜め上を行く返答を、「触るぞ」「ハイ」「そうそう、触るのよ…….エッ!?触る!?」

647 : ◆utp..QOeek - 2016/05/03 23:41:01.38 R5SE/or+O 88/359

提督の言葉に素っ頓狂な声を上げるハツカゼ。もはや質問ではない、これは行為だ!しかも通常ならばハラスメントにあたる行為に他ならない!まさか唐突に暴走状態となった提督が職権を乱用し、ハマカゼの肢体をたった今この場で蹂躙しようとでも言うのだろうか!?(な、ナンデ!触るってナンデ!?私なんて言われたことないのに!それは違うちくしょう!とにかくナンデ!?)このままハマカゼはセンパイと姉の前で公開前後インタビューされてしまうのか!?なんたるジゴク!運営よ寝ているのですか!

648 : ◆utp..QOeek - 2016/05/03 23:42:09.33 R5SE/or+O 89/359

【KANMUSLAYER】

650 : ◆utp..QOeek - 2016/05/11 23:06:33.30 w7BvYWtU0 90/359

◆◆◆◆◆◆◆

651 : ◆utp..QOeek - 2016/05/11 23:07:09.31 w7BvYWtU0 91/359

【KANMUSLAYER】

652 : ◆utp..QOeek - 2016/05/11 23:13:46.48 w7BvYWtU0 92/359

「アイエエエ…!触る、だなんてそんな!あまりにも…あまりにも…」思わず顔を覆っていたハツカゼは、恐る恐る指の隙間から二人の様子を垣間見た。彼女に意義を申し立てる度胸は無く、その様子を直視できるはずもない。ハツカゼはオボコだった。しかしえもいわれぬ興味に突き動かされた彼女の見たものは、ハマカゼの前髪をたくし上げる提督であった。

653 : ◆utp..QOeek - 2016/05/11 23:21:30.87 w7BvYWtU0 93/359

提督の視線の先では青い瞳がこちらを見つめている。「…成程。確かにこれは深海棲艦娘と同じ目だ」「あ……ああ、それが目的なのね。そりゃまあ、そうよね。うん」ハマカゼの隣でハツカゼが脱力したようにソファにへたり込んだ。提督はそんなハツカゼを呆れたように一瞥した後、手を放し改めてハマカゼに問うた。「お前はセイカンヤの施設で建造されたんだろう?」「ハイ、そうです」ハマカゼはにべもなく答える。

654 : ◆utp..QOeek - 2016/05/11 23:27:28.20 w7BvYWtU0 94/359

確かにハツカゼが感じたように、ハマカゼには深海棲艦娘のソウルが混じっている。しかしセイカンヤの施設で生まれたという事は聞くほどでもない至極当然のことだ。提督は何を聞くつもりなんだろう?「そこでだ。覚えているか?自分の生まれた場所を」「生まれた…場所ですか?」提督の質問はハマカゼにとっても、無論ハツカゼにとっても予想していなかった内容であった。ハマカゼは言葉に詰まり、やや考えるような面持ちになった。

655 : ◆utp..QOeek - 2016/05/11 23:33:59.71 w7BvYWtU0 95/359

「…よく覚えていません。生まれた直後、私はすぐに逃げ出しました。衝動的に」やがて口を開いたハマカゼの返事はらしくないほど曖昧であり、記憶の断片を拾い集めるかのような口調だ。「私はただひたすらに逃げました。覚えていることといえば……木です」「木だと?」そこで提督の横でIRCを打っていたヒュウガが始めて声を発した。何か合点がいったかのような面持ちである。

656 : ◆utp..QOeek - 2016/05/11 23:40:42.11 w7BvYWtU0 96/359

「そうです。木が見えました。私は木の間を潜り抜け海に出たのです」「木、か…分かった。これで質問はオシマイだ」提督も同じく合点のいったような面持ちになり、ソファに身を預ける。「私が覚えているのはこれだけです。スミマセン」「十分だ、もう行っていいぞ。ハツカゼ=サン、チンジフの中を案内してやってくれ」名指しされたハツカゼはハマカゼの手を取り、立ち上がった。「ヨロコンデー。それじゃ行こっか!」「ヨロシクオネガイシマス」

657 : ◆utp..QOeek - 2016/05/11 23:50:15.90 w7BvYWtU0 97/359

「さてと!我が妹の歓迎会をしなきゃね~何か食べたいものとかある?」「オデンが食べたいです。特に、コンブが」執務室を去っていく二人を見送りながら、提督とヒュウガはソファに向き合って座った。「彼女は木と言っていたな」「ああ」「海に生えるような木はバイオマングローブのみ。つまりグラーフ=サンの見立ては正しいということだろうな」ヒュウガの言葉に提督は頷く。グラーフ、彼女が進言したバイオマングローブ林に秘密施設があるという見立てが現実味を帯びてきたのだ。「おそらくな。しかし…ヤク中のくせに相変わらず鋭いヤツだ。関心するぜ、全く」

658 : ◆utp..QOeek - 2016/05/11 23:51:02.07 w7BvYWtU0 98/359

ーーーーーーーーーーーーーーー

659 : ◆utp..QOeek - 2016/05/11 23:58:00.60 w7BvYWtU0 99/359

「ドーモカスミです!レイゴウ作戦に私がいないなんてお笑いね!私は姉たちと違ってアバーッ!?」「イヤーッイヤーッイヤーッ!」「助け」「イヤーッ!」「アバーッ!サヨナラ!」「やりすぎじゃないか…?」「仕方ありません」センダイはグラーフに言った。

660 : ◆utp..QOeek - 2016/05/16 09:57:12.48 g8q7G/YtO 100/359

◆魔◆唐突な魔が作者アジトをおそう!更新頻度が落ち、さらに途中で力尽きたのは魔が原因だと思われます。なお魔は回復したと言っても過言ではないので更新ペースを戻していきたいと思います。なおカスミ=さんはしんだ。以上です。

665 : ◆utp..QOeek - 2016/05/20 23:01:52.34 I3GNrMei0 101/359

◆作者から鼻づまり・鼻水・耳鳴り・のどの痛みなどの魔が祓われました。なので再開してゆくのだなあ◆

666 : ◆utp..QOeek - 2016/05/20 23:02:30.16 I3GNrMei0 102/359

「ドーモカスミです!レイゴウ作戦に私がいないなんてお笑いね!私は姉たちと違ってアバーッ!?」「イヤーッイヤーッイヤーッ!」「助け」「イヤーッ!」「アバーッ!サヨナラ!」「やりすぎじゃないか…?」「仕方ありません」センダイはグラーフに言った。

667 : ◆utp..QOeek - 2016/05/20 23:09:53.36 I3GNrMei0 103/359

同時刻、潜入作戦中の二人の前に唐突に現れたキョート・チンジフのカスミをアイサツ終了後わずか数秒で大爆発四散させたセンダイはその物言わぬ駆逐艦娘を木に吊るすと、グラーフに向きなおる。「やれやれ…セイカンヤとキョートが共謀していると聞いた時は信じられなかったが」「これが真実です」「そのようだ」

668 : ◆utp..QOeek - 2016/05/20 23:17:16.09 I3GNrMei0 104/359

二人の視線の先にあるのは重厚な鉄扉だ。人の手が入らぬはずのマングローブ林の中に現れたそれは、まさに目的の場所であった。「さてと、そしてこれがお目当ての場所だな」「私が周囲を確認します」センダイは一歩踏み出そうとした。しかしその時!

669 : ◆utp..QOeek - 2016/05/20 23:28:58.83 I3GNrMei0 105/359

木々の葉が擦れる不自然な音をとらえたセンダイは瞬時にカラテ姿勢を取り頭上を仰ぎ見た!逆光に塗りつぶされた人影、正体不明存在の唐突な跳躍アンブッシュである!「イヤーッ!」マングローブ林に響き渡ったシャウトと共に、襲撃者が空中で右手を振り下ろした!

670 : ◆utp..QOeek - 2016/05/20 23:33:55.48 I3GNrMei0 106/359

振り下ろすと同時に空を切り裂くような音が耳をつんざいた。センダイのカンムス視力がとらえた襲撃者の、そのすべての指先にはワイヤーが接続されている!アブナイ!鋼鉄のムチがセンダイを襲う!

671 : ◆utp..QOeek - 2016/05/20 23:40:09.88 I3GNrMei0 107/359

だが!BLAMBLAMBLAM!!その後方から鳴り響く銃声!鋼鉄ワイヤーが防御しようとするセンダイに到達する前に銃弾とぶつかり、その攻撃が逸らされる。「おいおい!いきなりだな!休む暇くらいくれたまえよ!」無論その声の主はグラーフだ!なんたる突発的な状況にも瞬時に対応する彼女のハヤウチのワザマエか!

672 : ◆utp..QOeek - 2016/05/20 23:47:14.09 I3GNrMei0 108/359

襲撃者はアンブッシュ失敗と見るや着地後に3連続でバック転を放ち、二人の眼前の鉄扉の前に立ちはだかり長い髪を振りかざしてオジギした。「今のをかわすとはねえ。相変わらずたいした腕前じゃないの…ドーモ、ヒヨウです。久しぶりね」長髪をリボンで結んだ軽空母娘がグラーフを見て目を細めた。その両腕には黒いグローブがはめられている。

673 : ◆utp..QOeek - 2016/05/20 23:53:48.32 I3GNrMei0 109/359

「ドーモ、グラーフです……お互い知った名前だがね。大丈夫かセンダイ=サン?」「ドーモセンダイです。助かりました」二人の前に立ちはだかった新たな艦娘も無論キョート・チンジフ所属であり、そもそもグラーフとは昔から面識がある。しかしその旧友は自分たちに容赦なきアンブッシュを行ってきたのである。センダイとグラーフは油断なくカラテを構えた。

674 : ◆utp..QOeek - 2016/05/21 00:37:16.88 4D2pqj8h0 110/359

「どうやら数年ぶりの再開を喜べる状況じゃなさそうだな」「残念ながらね。ここはウチの同盟組織の庇護下にある施設…それにあんたたちはネオサイタマの回し者、敵でしかない」ヒヨウの右手グローブに、伸ばされていたワイヤーが収納されてゆく。彼女はマスター位階にして絞殺ワイヤを用いたカラテ暗殺者である。その瞳には敵意以外の何物も浮かんではいなかった。

675 : ◆utp..QOeek - 2016/05/21 00:38:03.37 4D2pqj8h0 111/359

【KANMUSLAYER】

677 : ◆utp..QOeek - 2016/05/29 21:26:45.50 e5p48Gu80 112/359

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

678 : ◆utp..QOeek - 2016/05/29 21:27:19.67 e5p48Gu80 113/359

【KANMUSLAYER】

679 : ◆utp..QOeek - 2016/05/29 21:32:28.34 e5p48Gu80 114/359

(これまでのあらすじ : バイオマングローブ林に隠されしセイカンヤ秘密施設の潜入任務を請け負った我らが殺戮者センダイ、そしてその背中を守るのはグラーフ・ツェッペリン。2人はついにその秘密施設の場所を遂に突き止めたのだ)

680 : ◆utp..QOeek - 2016/05/29 21:35:57.53 e5p48Gu80 115/359

(しかしその前に立ちふさがるものがいる。それはキョート・チンジフの艦娘たちである!もはやキョートはセイカンヤの手に落ちたのか!?目の前の、かつて友だった艦娘、ヒヨウを見るグラーフのサイバネ・コンタクトには何が映るのか…)

681 : ◆utp..QOeek - 2016/05/29 21:42:01.80 e5p48Gu80 116/359

ヒヨウのあからさまなキリングオーラを受けても、グラーフはまだリボルバーに手を掛けていない。「…話し合いで解決、というのはどうだろう」「無理ね」かつて友だった者に語りかけるグラーフ。しかしヒヨウは取り合わない。その眼はかつての友の物ではない。「そうか…残念だ」彼女は諦めたようにグリップを握り、ヒヨウに差し向けた。

682 : ◆utp..QOeek - 2016/05/29 21:46:52.55 e5p48Gu80 117/359

「しかし覚悟がいるぞ。こちらは2人、君はひとりだ。2人を相手にするつもりかい?」「もちろん……と言いたいところだけどね。あんたの相手をするのは私じゃないわ」「何…?」グラーフが片眉を吊り上げたと同時に、風をつんざくような音を彼女のカンムス聴力は捉えた!「ッ!?イヤーッ!」グラーフは瞬時に側転回避を繰り出す!

683 : ◆utp..QOeek - 2016/05/29 21:51:49.83 e5p48Gu80 118/359

そしてグラーフがつい先ほどまでたっていた場所から水飛沫が上がった。アナヤ!狙撃されているのだ!「イヤーッ!」それをノロシと見たかセンダイがゼロセンをヒヨウに向かって投擲!「イヤーッ!」だがヒヨウのグローブに接続された絞殺ワイヤーがゼロセンを弾き飛ばし防御!「おいおい……!こんな場所に狙撃手か!」グラーフはその場から水面を転がってさらに回避!数コンマ遅れて弾丸が水飛沫を上げる!

684 : ◆utp..QOeek - 2016/05/29 21:59:05.58 e5p48Gu80 119/359

「あんたはウチの優秀なスナイパーがお相手するわ!この子は私が頂くッ!イヤーッ!」絞殺ワイヤーの鞭めいた打撃がセンダイを襲う!「イヤーッ!」センダイはあやまたず側転回避!ワイヤーはバイオマングローブを薙ぎ倒しながらヒヨウのグローブに収まった。なんたる破壊力!「ブッダシット!最初から分断するつもりだったって事……うわっ!」悪態をつくグラーフのすぐ真横を弾丸が駆け抜け、バイオマングローブに銃痕を穿つ!木々に囲まれているにも関わらずなんたる精密射撃か!

685 : ◆utp..QOeek - 2016/05/29 22:14:47.91 e5p48Gu80 120/359

「クソッ!狙撃手は私が引き受けるしかないようだな!センダイ=サン!いけるかい!?」「問題ありません。イヤーッ!」センダイは繰り出されるワイヤ攻撃を避けながらカラテ砲撃でヒヨウを牽制する。「すまんね!イヤーッ!」グラーフは銃弾の飛んできた方向、すなわち自分たちが今まで進んできた道を遡るようにスプリントした!襲い来る弾丸をやりすごしながら突き進むグラーフを横目で見、センダイは己の敵を改めて見据えた。

686 : ◆utp..QOeek - 2016/05/29 22:30:20.27 e5p48Gu80 121/359

センダイはヒヨウと面識がない。しかし彼女は本来の敵である深海棲艦娘ではなく、自分と同じ艦娘である。ならばセンダイは躊躇するか?「イヤーッ!」無論!彼女は躊躇しなかった!息もつかせぬゼロセン投擲とカラテ砲撃でヒヨウのワイヤ打撃の連打をいなす。かつて対峙したソウリュウと同じように、彼女の脳天をチョップし眼を覚まさせるだけだ!攻撃を掻い潜りながらも徐々にヒヨウとの距離を詰めてゆく!

687 : ◆utp..QOeek - 2016/05/29 22:40:07.85 e5p48Gu80 122/359

ヒヨウのワイヤ攻撃は中距離においてはつけいる間がなく、反撃の余地がない。やや開けたこの場所から離れるべきかもしれないが、センダイが目指す場所はヒヨウの背後にあるドアのその先である。ならば懐に踏み込み、一瞬で決着をつけるべし!繰り出されたワイヤーがセンダイのブレーサーを削りながらヒヨウの手に引き戻った。この一瞬の隙にセンダイは水面すれすれまで身を屈め、猛然と突進した!

688 : ◆utp..QOeek - 2016/05/29 22:49:11.45 e5p48Gu80 123/359

「イヤーッ!」その突進速度を乗せたカラテストレートを放つセンダイ!対するヒヨウは中距離戦を得意とする艦娘。至近距離ならばこちらに部が………否!「イヤーッ!」ヒヨウは易々とその殺人ストレートを受け止めてみせたのだ!「甘いわ!踏み込んでくるなんてお見通しよ…まだまだヒヨッコのようね?」おお、見よ!ヒヨウの両の掌を!その間にアヤトリ・スリングめいて張り巡らされた絞殺ワイヤーがセンダイの拳を受けとめている。ワザマエ!カンムス器用さを駆使したトリッキーな防御術だ!

689 : ◆utp..QOeek - 2016/05/29 22:57:27.80 e5p48Gu80 124/359

「イヤーッ!」拳を引き戻そうとするセンダイを許さず、その腕を掴み投げとばす!「グワーッ!」投げ飛ばされたセンダイはバイオマングローブに背中から激突。咄嗟に逃した衝撃がその幹に大きなヒビを入れた。殺しきれぬダメージが身体を襲い、立ち上がったセンダイがよろめく。相手はキョート・チンジフ発足当時よりの歴戦の艦娘。一筋縄ではゆかぬ!「アナタのことはウワサで聞いてる。中々の実力らしいけど、経験の差ってものを教えてあげるわ…!」

690 : ◆utp..QOeek - 2016/05/29 22:58:04.30 e5p48Gu80 125/359

【KANMUSLAYER】

691 : ◆utp..QOeek - 2016/05/29 23:02:35.04 e5p48Gu80 126/359

(親愛なる読者の皆さんへ : 作者は今までの分を取り戻すべく更新速度強化プロトコルを開始しました。この先はどんどん更新速度が上がってゆくといいかもしれないのだなあ、と願っている。なのでコーメントンとかもらえると高まる。なおカマッテ・ジツではないことですね?更新速度が落ちがちで大変ご迷惑をおかけしました。以上です)

696 : ◆utp..QOeek - 2016/05/30 00:09:22.24 5wiUhrZQ0 127/359

◆艦◆カンムス名鑑#67【正規空母グラーフ・ツェッペリン】ネオサイタマ・チンジフ所属、チンジフ発足数日後に着任した古株の艦娘。美しい顔立ちだがどこかやさぐれたアトモスフィアを放つ海外艦娘。他愛ないジョークを好むが口下手だと自覚している。重度のBKT中毒者であるが、2丁のリボルバーを用いるピストルカラテを駆使した戦闘能力は衰えを感じさせない。あの日までは他の空母娘と同じくコウクウキ・ジツを得意としていた、しかし彼女はそれを捨てざるを得なかったのだ。◆艦◆

698 : ◆utp..QOeek - 2016/06/01 20:57:42.82 LF9hL0zN0 128/359

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

699 : ◆utp..QOeek - 2016/06/01 21:01:53.18 LF9hL0zN0 129/359

【KANMUSLAYER】

700 : ◆utp..QOeek - 2016/06/01 21:19:58.63 LF9hL0zN0 130/359

グラーフはスプリント体勢から無駄の無い動きで樹木の後ろにカバーする。そしてほんの一瞬前まで自分が立っていた場所から水飛沫を上がるのを確認すると、思わずため息をついた。(おいおい…なんだか狙いが正確になってきるんじゃないか…?)樹木の後ろからほんの少しだけ顔を出し、サイバネコンタクトレンズによる索敵を行う。捉えたのは小さな熱源反応、どうやら小柄な艦娘がスナイパーの正体のようである。

701 : ◆utp..QOeek - 2016/06/01 21:35:31.89 LF9hL0zN0 131/359

ふつうスナイパーへの対処はチームのうち1人が威嚇・制圧射撃を行い、もう1人が懐へと回りこむのがセオリーだ。しかし相棒であるセンダイはヒヨウを任せてある、自分1人でなんとかするしかない。(なんとかするといってもだね、こっちの得物とは射程距離に差がありすぎるだろう。距離を詰めるまでは敵にとってはエンニチのマトアテ状態だぞ?)

702 : ◆utp..QOeek - 2016/06/01 21:44:35.58 LF9hL0zN0 132/359

だが文句を言っているばかりでは事態は好転しない。行動するしかないのだ!「……イヤーッ!」キアイのシャウトとともにグラーフは再度スプリントを開始!間髪入れず襲いかかる銃弾を紙一重で回避しながらスナイパーに向かって肉薄する。先ほどよりも直線的な動きはリスクが多いが、時間を無駄ではできない!(残り100m強!一気に畳み掛ける!)

703 : ◆utp..QOeek - 2016/06/01 21:51:09.26 LF9hL0zN0 133/359

こちらから反撃はできないがスナイパーとの距離は確実に縮んでいる。このまま行けば到達するのはそう時間がかからない……だがその時!「グワーッ!」軽快なスプリントを行っていたグラーフが突如として足を止め、うめき声を上げる!「ちょっと…待て!これは!」彼女は自分の片足を見て驚愕した。設置型拘束トラップ、トラバサミが噛み付いているではないか!

704 : ◆utp..QOeek - 2016/06/01 21:56:44.38 LF9hL0zN0 134/359

「クソッ!」グラーフはすぐさまトラバサミを銃撃破壊するが、それはスナイパーにとっては十分過ぎるほどの隙である!(ブッダ!罠の可能性を忘れていたとでも!?その通りだよ畜生!…ハッ!)そう、何もかもは遅すぎた。飛来する弾丸が、羽織られた白いコートをやすやすと貫き、バイオマングローブの森を静寂が支配した。

705 : ◆utp..QOeek - 2016/06/01 21:57:41.56 LF9hL0zN0 135/359


ーーーーーーーーー

706 : ◆utp..QOeek - 2016/06/01 23:18:26.99 LF9hL0zN0 136/359

「イヤーッイヤーッ!」「イヤーッイヤーッ!」しかしその一方、静寂はほんの一瞬に過ぎなかった!センダイとヒヨウのカラテ・ラリーが森にコダマする!センダイはあれから何度もヒヨウの懐に飛び込むのを試みたがそのたびに防御、もしくはいなされることで決定打を与えられずにいた。カラテ熟練者はそう易々と自分の不利な間合いを許しはしないのである。

707 : ◆utp..QOeek - 2016/06/01 23:22:50.21 LF9hL0zN0 137/359

「イヤーッ!」「グワーッ!」そしてその均衡を破るように、フェイントで撃ち込まれた時間差ワイヤー打撃がセンダイを捉える!センダイは防御した鋼鉄ブレーサーごしの衝撃を受け苦悶!全力のカラテストレートにも勝るとも劣らぬ破壊力だ!

708 : ◆utp..QOeek - 2016/06/01 23:27:39.14 LF9hL0zN0 138/359

「イヤーッ!」間髪いれず容赦なき波状ワイヤ打撃がセンダイを襲う!「イヤーッ!」センダイはダメージをものともせずスウェイングで回避!さらにゼロセンをアンダースローしヒヨウの無防備な足元を狙う!

709 : ◆utp..QOeek - 2016/06/01 23:33:57.66 LF9hL0zN0 139/359

「イヤーッ」ヒヨウは小ジャンプ回避を強いられる。一瞬の無防備!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」センダイはあやまたずゼロセン連続投擲!「イヤーッ!」ヒヨウはワイヤをうちふるいこれを撃墜するが、叩き落とし損ねた一機がヒヨウの肩口に命中した!「グワーッ!」

710 : ◆utp..QOeek - 2016/06/01 23:43:46.90 LF9hL0zN0 140/359

センダイは近くの木に三角跳びし、その勢いを利用したトビゲリを放つ!「イヤーッ!」「イヤーッ!」ヒヨウは辛うじて防御するがその表情は厳しい。「くッ…!」無視できぬダメージを受けた肩口を抑えながら攻撃を終えたセンダイを睨み据える。

711 : ◆utp..QOeek - 2016/06/01 23:55:51.51 LF9hL0zN0 141/359

対するセンダイは全く怯む様子もなく、ヒヨウの出方を窺うようにジリジリと距離を詰めてゆく。「どうしたのです?ヒヨッコに経験の差を教えてくれるのではなかったのですか」ヒヨウは挑発に乗らぬ、冷静なまなざしを保っている。「フン……生意気な後輩ね。その言い草、あんたのところの鉄面無表情空母を思い出して気に入らないわ」しかしその声音にはそれまでの相手を下とみていた余裕は消え、歴戦の戦士たる重々しいアトモスフィアが宿っている。センダイは相手のカラテの高まりを感じ、身を固めた。

712 : ◆utp..QOeek - 2016/06/01 23:57:09.59 LF9hL0zN0 142/359

◆一旦寝休憩◆

715 : ◆utp..QOeek - 2016/06/03 22:26:02.82 JknKbav60 143/359

◆1日置いて再開◆

716 : ◆utp..QOeek - 2016/06/03 22:36:35.18 JknKbav60 144/359

「フンッ!」ヒヨウは両腕のワイヤーを全て展開し、すぐ近くのマングローブの大木に巻きつけた。「お望み通り見せてあげるわ……経験の差ってヤツをね!」ヒヨウの両拳にカラテが漲る!そのカラテがワイヤを伝わり……締め付けられた大木がへし折られた!おお、ゴウランガ!なんたるカラテ力学か!「食らって地の果てまでフッ飛びなさい!イヤーッ!」ハンマー投げ選手めいた回転をかけ、巨大なるマングローブの丸太がセンダイに襲いかかる!

717 : ◆utp..QOeek - 2016/06/03 22:44:46.21 JknKbav60 145/359

「イヤーッ!」センダイはこれを当然ブリッジ回避!追突すれば即、ネギトロ重点不可避!「だからヒヨッコだって言ってるのよッ!イヤーッ!」だがセンダイがブリッジ姿勢から復帰する刹那、丸太から瞬時に外されたワイヤーがセンダイを拘束した。「何!」「かかったわね……前言撤回、フッ飛ばずに正面衝突なさい!」ヒヨウは腕を爆発的な速度でクロスし「イヤーーーーッ!!」丸太とセンダイを激突させる!ナムアミダブツ!危うしセンダイ!

718 : ◆utp..QOeek - 2016/06/03 22:51:17.01 JknKbav60 146/359


ーーーーーーーーーー

719 : ◆utp..QOeek - 2016/06/03 23:09:33.72 JknKbav60 147/359

「…………」アラレはそれまでスコープに押し付けていた目を離した。目標は沈黙、弾丸が獲物を捕らえたのだ。しかし若くして優秀なスナイパーである彼女はつとめて冷静だった。再びスコープを覗く、狙撃は成功したが敵の大爆発四散を確認できていない。艦娘はそう簡単に大破するほどヤワではない。単なるチャメシ・インシデントだ。

720 : ◆utp..QOeek - 2016/06/03 23:15:09.03 JknKbav60 148/359

駆逐艦アラレ、彼女は自分用にカスタマイズした狙撃カラテライフルで敵艦を屠ってきた。今回もいつもと同じことをしたまでだ。敵であるネオサイタマ・チンジフの艦娘を倒す。大破していないならばもう一度撃ち込めばよい……アラレは幼顔に似合わぬ、つとめて冷酷な瞳で対象を今一度確認した。スコープには水面に浮かんだ白いコートが映っている。

721 : ◆utp..QOeek - 2016/06/03 23:19:15.81 JknKbav60 149/359

(………?)その様子をみてアラレは眉をしかめた。中身はどこへ行った?着弾後、目を離したのはほんの一瞬である。その間に傷ついた身体を動かすことなど大抵無理な筈。それとも一撃で沈んでしまったのか?何にせよ確認しなければならない。アラレは再びスコープから目を離し、立ち上がろうと「………………んちゃ」

722 : ◆utp..QOeek - 2016/06/03 23:24:40.14 JknKbav60 150/359

今のは聞き間違いではない!自分が潜伏している木の上に作った小スペースに、自分のすぐ後ろで声がしたのだ!アラレは電撃的な速度でライフルを構えたまま振り向いた。だが!「おっと危ない!子供がこんなもの振り回しちゃいけないぞ!」その声の主はライフルを小脇に抱え、がっちりと押さえつけた。狙撃用ライフルは近距離ではつとめて無力なのだ!

723 : ◆utp..QOeek - 2016/06/03 23:28:48.23 JknKbav60 151/359

「そ、そんな…!ナンデ」「コートに穴は空けられるわ、素潜りはさせられるわ……私は潜水艦娘じゃないんだよ?まったく」そして声の主、グラーフはリボルバーの銃口をアラレの額に押し付けた。おお、ゴウランガ!彼女は大爆発四散していなかったのだ!アラレは未だ状況を把握できていない。抵抗する事も忘れ、唖然としている。

724 : ◆utp..QOeek - 2016/06/03 23:35:11.10 JknKbav60 152/359

いかにして彼女は無傷で生還したのか!?その答えは彼女の髪の毛から滴る水滴、びしょびしょに濡れたノースリーブ軍服型装束から答えが自ずと導き出されるだろう。弾丸に撃ち抜かれる刹那、彼女はコートを翻し、スコープの視界を塞いだ。弾丸は実際着弾しておらず、脇腹を掠めただけであった。そしてそのまま即座に潜水し、アラレが潜伏する木の近くまで泳いで接近したのである!

725 : ◆utp..QOeek - 2016/06/03 23:40:51.81 JknKbav60 153/359

「さてと、降伏してくれるかい?お嬢さん」にこやかに提案するグラーフに対しアラレはハッと我に返った表情になると、しばしの沈黙の後にライフルから手を離した。「よーしよし。なかなか素直なイイ子だ。子供は素直なのが一番…」「イヤーッ!」だがアラレは突き付けられたリボルバーの射線から身を逸らすと、迷彩服の袖に隠していたデリンジャーピストルを逆に突きつけ、引き金に手をかけた!ナムサン!

726 : ◆utp..QOeek - 2016/06/04 23:00:58.03 FXRBiz880 154/359

だが、引き金を最後まで引く前にアラレの意識はブラックアウトした。「ンアッ……」そのままパタリと倒れ、動かなくなる。「………一番、いいと思うんだがね。はぁ」グラーフはアラレの首筋を捉えた自分の手刀を見て溜息をつく。(なるべくなら手を上げたくなかったが…仕方ない)そのままグラーフはアラレの手足を拘束し、その場を後にした。

727 : ◆utp..QOeek - 2016/06/04 23:09:57.08 FXRBiz880 155/359


ーーーーーーーーーーー

728 : ◆utp..QOeek - 2016/06/04 23:15:01.32 FXRBiz880 156/359

「これで終わりよ!死ね!センダイ=サン、死ねーッ!」丸太と激突するその刹那、センダイの感覚は泥のようにスローモーションになった。この状況を打破するためにはどうすればよいのか!?ほんの一瞬のイマジナリー・カラテからセンダイは答えを導き出し、引き絞った両腕を丸太に向かって叩き込んだ!「イヤーッ!」SMAAAAAAAAASH!!

729 : ◆utp..QOeek - 2016/06/05 00:18:24.32 ANEVj4pG0 157/359

迎撃ポムポムパンチは激突するはずだった丸太を見事粉砕!ゴウランガ!恐るべしセンダイの状況判断カラテ!続けてセンダイは絡め取られた身体をひねり、高速回転させる。「イヤーッ!」「なッ…!」そのまま掃除機の巻き取りコードめいてヒヨウに向かって引き寄せられてゆく!

730 : ◆utp..QOeek - 2016/06/05 13:26:34.78 ANEVj4pG0 158/359

「イヤーッ!」「グワーッ!」回転の勢いを乗せた裏拳が、ガードが間に合わぬヒヨウの顔面に突き刺さる!センダイを拘束していた右手のワイヤーグローブが脱げ、ヒヨウはワイヤーアクションめいて吹き飛ばされた。背後の秘密施設への鋼鉄製のドアに激突!「グワーッ!」ナムアミダブツ!吐血する程の凄惨なダメージだ!

731 : ◆utp..QOeek - 2016/06/05 13:37:24.39 ANEVj4pG0 159/359

「あなたをカイシャクする」行動不能になったヒヨウに向かってセンダイはジゴクめいて言い放った。センダイは同じ艦娘であろうと敵に対して慈悲など持ち合わせていない。カラテ艤装をブーストさせ、ぐったりと項垂れるヒヨウに向かって突撃する!カイシャク・ストレートをヒヨウに向かって……放った!「イヤーッ!」

732 : ◆utp..QOeek - 2016/06/05 13:46:53.04 ANEVj4pG0 160/359

だが!「グワーッ!?」センダイの突撃が突如として停止した!なぜ!?おお、見よ!センダイのしなやかな首筋を!絞殺ワイヤーが二重、三重に蛇めいて巻きついているではないか!「ハァーッ…ハァーッ…!だからあんたはヒヨッコなのよ…敵を大爆発四散させるまでは油断厳禁ってね…!」項垂れていたはずのヒヨウはいつの間にか顔を上げ、再燃したキリングオーラに満ち溢れた瞳でセンダイを睨みつけている!

733 : ◆utp..QOeek - 2016/06/05 13:56:16.72 ANEVj4pG0 161/359

「あたしにトドメをさそうとした直線的な攻撃…残ったワイヤーをあんたの首に巻きつけるのはベイビー・サブミッションだったわ」ヒヨウは苦心して立ち上がり、冷酷に笑った。「ヌ…ウッ…!」センダイは首に巻きつくワイヤーをマンリキめいた力で解こうとする。しかし逆にワイヤーの拘束力はどんどん強まり、センダイの意識を徐々に暗闇へと引き込んでゆく!「ムダよ!あたしの残ったカラテを全て込めてあんたを大破させる!あらためて死ね!センダイ=サン!死ねーッ!!」

734 : ◆utp..QOeek - 2016/06/05 14:20:27.27 ANEVj4pG0 162/359

今までにない絶体絶命の危機!ワイヤーを掴む手から力が失われてゆく。このままゆけばセンダイの大爆発四散は確実!我らが殺戮者は、ここで事切れるのか!?仲間たちを、妹の目を覚ますことができないままに!「ヌウウウウッ……!!」「クソッ…!結構しぶといわね。でもどう足掻いてもあんたの負けに変わりない!ロード・バンザイ!キョートの威光に跪きなアバッ」

735 : ◆utp..QOeek - 2016/06/05 14:35:53.77 ANEVj4pG0 163/359

最後のトドメを刺そうとしたヒヨウの首あたりに異物感が横一直線に滑る抜ける感触が走った。水面に鮮血が飛び散る。自分が吐き出した血だ。鮮血?血液ナンデ?さらに彼女は後ろから身体を掴まれ、無理矢理膝をつかされた。ワイヤーの拘束力は途端に無くなり、センダイが解放される。

736 : ◆utp..QOeek - 2016/06/05 14:50:28.47 ANEVj4pG0 164/359

「カハッ、カハッ……」「大爆発四散させるまでは油断厳禁、大いに同意だ」自分の耳元でそう囁くのは、マリーン迷彩装束と編笠姿の異様な艦娘であった。自分を後ろから拘束している。手に持っているのは血塗られたククリナイフ。自分の血だ。「カハッ……あんた……カハッ……」声が掠れ、出てこない。

738 : ◆utp..QOeek - 2016/06/05 17:14:34.54 ANEVj4pG0 165/359

「これがサイゴン・ロアだ。二十四時間、360度。あらゆるところから運営の修正と調整は忍び寄り、目覚めれば昨日までフレンド登録していた提督は死体になっている。ナムは地獄、地獄に適応できぬ者には死あるのみ。ましてやここはジャングルだ」編笠姿の艦娘はヒヨウの首筋にクロスしたナイフを突きつける。「ドーモ。久しぶりだなヒヨウ=サン、ナチです」カイシャク!「……サヨナラ!」ヒヨウは大爆発四散した。

739 : ◆utp..QOeek - 2016/06/05 17:15:26.31 ANEVj4pG0 166/359

【KANMUSLAYER】

742 : ◆utp..QOeek - 2016/06/05 22:37:41.67 ANEVj4pG0 167/359

◆艦◆カンムス名鑑#68【軽空母ヒヨウ】キョート・チンジフ所属。マスター位階、ナガト派閥の艦娘。チンジフ発足時からのベテランの実力者。両手に装備したワイヤグローブによる変幻自在の攻撃を得意とする。妹も含め、ヒヨウ姉妹はコウクウキに頼らず己のカラテのみを振るうナガト派閥らしい戦闘スタイルを持つ。ネオサイタマのグラーフ、同チンジフのナチとは昔からの顔見知りだった。◆艦◆

743 : ◆utp..QOeek - 2016/06/05 22:42:20.42 ANEVj4pG0 168/359

◆艦◆カンムス名鑑#69【駆逐艦アラレ】キョート・チンジフ所属。アデプト位階、スズヤ派閥の艦娘。小柄な容姿に似合わぬ、大型のスナイパーライフルによる狙撃を行い味方をサポートする。被っている帽子には様々なガジェットが搭載されている。無口で冷静な性格であり、「んちゃ」などは言わない。姉たちより実際有能。◆艦◆

744 : ◆utp..QOeek - 2016/06/05 22:43:31.10 ANEVj4pG0 169/359

◆微妙に体調不良を引きずってしまい、更新がふあんていになってしまってすいませんでした。なお来週もがんばる。以上です◆

747 : ◆utp..QOeek - 2016/06/06 23:15:05.60 IKlLH6Ow0 170/359

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

748 : ◆utp..QOeek - 2016/06/06 23:15:36.83 IKlLH6Ow0 171/359

【KANMUSLAYER】

750 : ◆utp..QOeek - 2016/06/06 23:26:37.59 IKlLH6Ow0 172/359

「イヤーッ!」センダイはバック転で距離を取ると、新たなるアンブッシュ者にアイサツした。「ドーモ、センダイです」「センダイ=サン!知っているぞ……あの『死神』と出会えるとは」ナチはヒヨウにトドメを刺したナイフを懐に収めるとニヤリと笑った。「しかし相手がヒヨウ=サンだったといえどこの程度で大破しかけるとは実際情けないものだ。私のアンブッシュがなかったら貴様はどうなっていただろうな?」「…………」

751 : ◆utp..QOeek - 2016/06/06 23:34:38.39 IKlLH6Ow0 173/359

ナチは以前、ネオサイタマ・チンジフの第3部隊を襲撃し、交戦した事実がある。サヴァイヴァー・チンジフなる集団を率いる危険人物だ。センダイは静かにカラテを構える。なぜ自分を助けたのか?「何が目的だ。あなたは私の仲間たちの部隊を襲撃したこともある、返答によってはカラテのち拘束する」

752 : ◆utp..QOeek - 2016/06/06 23:39:33.62 IKlLH6Ow0 174/359

放たれる剣呑なアトモスフィアを物ともせずナチはセンダイに指を突きつけた。「距離を置き貴様らを観察していたのだ。当然、恩を売り取り引きするためである!」偉そうに腕を組むとナチはいかめしく言った。「ヒヨウ=サンの言う通りまだまだヒヨッコだな。実力は大したものだが実戦経験が足りん」センダイは睨んだ。「取り引きだと?」「そうだ!不本意ながら我が隊は戦力が不足している。しかもそのうち1人は死にかけている」

753 : ◆utp..QOeek - 2016/06/06 23:47:28.13 IKlLH6Ow0 175/359

「おーい!無事だったかい!」センダイが口を開こうとしたその時、狙撃手を倒したグラーフがその場に戻ってきた。センダイの姿を認め、安堵の息を吐いた後、大破したヒヨウとその傍らに立つナチの姿を認めると目を丸くした。「ワッツ!?ヒヨウ=サンと戦ってたんじゃないのか!?」「そういう貴様はグラーフ=サン、久しぶりだな。相変わらず不健康そうなツラだ」「余計なお世話だねナチ=サン……おいおい、同窓会でも始めるつもりか?」

754 : ◆utp..QOeek - 2016/06/07 00:01:45.02 gkPKkJ4a0 176/359

「フン、ベトナムで地獄を味わった私は過去のセンチメントなどそこへ捨ててきたのだ。今の私はサヴァイヴのためだけに行動している」大破して意識を失ったヒヨウの装束を脱がし、何か物資がないか確かめながらナチは言った。(一体全体ナチ=サンに何が起こったんだ……軍事マニアだったのは確かだが今のこれは完全にヤバイ奴じゃないか)(分かりませんが危険人物であることに変わりはありません)2人の小声のやりとりをよそにナチは幾つかの収集品を懐に収めるとヒヨウの胸をひと揉みした。(それにしても相変わらず中々豊満なバストだ)

755 : ◆utp..QOeek - 2016/06/07 00:04:08.57 gkPKkJ4a0 177/359

「それで私たちに何か用かい?職務を全うするならば君を捕まえなきゃならないんだが」ナチは手を広げ、偉そうに胸を張った。「いいか!私はこの施設の物資に用があるのだ。目的地は同じ、つまりここに協同の余地あり!貴様らには私が今貸した恩を返す義務がある!」グラーフが頭をかき、困ったように言った。「そうなのかい?」「……スミマセン」センダイは極めてバツが悪そうに頷いた。「アー…そうか。無駄にやりあってもしょうがないよなあ、うん」「交渉成立だな」

756 : ◆utp..QOeek - 2016/06/07 00:19:38.05 gkPKkJ4a0 178/359

ナチは鼻を鳴らして偉そうに言った。「そもそも悲観するのはシツレイだ。むしろ、私の戦力により千人力!実際、この施設内の敵も未確認である。味方は多い方が良い!相互利益!」「………」センダイは渋々頷いた。「おいおい…なんだかおかしなことになってきたぞ」グラーフの溜息をよそにナチはなぜか意気揚々としている。「さあ!それでは進軍開始だ!グラーフ=サンはハッキングの心得があったな?」「まあ多少は」「ならばすぐさまこの扉を開けるのだ!タイム・イズ・マネー!」「………はぁ、仰せのままに」

757 : ◆utp..QOeek - 2016/06/07 00:28:49.94 gkPKkJ4a0 179/359

その頃、施設内の一室でその様子を監視カメラ越しに観ている2人の人物がいた。1人は三日月型の角めいたメンポを装着し、片足にニーソックスを履いた者、そしてもう1人はヘッドフォンをつけ両足にニーソックスを履き、眼鏡をかけた者。しかし後者はモニタ画面を観ていると言うよりも、手元に視線が集中している。彼女の持った薄い本には『2人の提督、秘密の夜戦』というタイトル。これはティーン艦娘向けヘンタイ本である。

758 : ◆utp..QOeek - 2016/06/07 00:38:00.51 gkPKkJ4a0 180/359

そんな2人に共通するのは不穏な光を持つ瞳である。すわ、深海棲艦娘である!「キョートから派遣されてきた艦娘たちがやられたようね」「…その時、僕のバルジを彼の酸素魚雷が貫いた」片足ニーソの深海棲艦娘が片割れに話しかけるが、当人はヘンタイ本に夢中である。「ちょっと」「俺の弾道観測射撃の味はどうだ?一撃で大破しちまいそうだろ……ウケッ、ウケケッ…いいぞぉ!提督同士の顔が近い!アタリ本だな!」

759 : ◆utp..QOeek - 2016/06/07 00:47:08.83 gkPKkJ4a0 181/359

「………」なおもヨダレをたらさんばかりの勢いでヘンタイ本に没頭する眼鏡の深海棲艦娘を無言で片足ニーソの深海棲艦娘はチョップした。「グワーッ!なんだよいきなり!?アタシのセイシンテキを保つための儀式だぞ!邪魔すん…」「だから集積地棲キ=サン、やられたのよ。味方の艦娘たちが」「へ?」そこで初めて、集積地棲キと呼ばれた深海棲艦娘はモニタを見た。「うっわマジかよ!使えねー弱キャラばっかり送りやがったのかキョートは?クソ平坦まな板参謀め!」

760 : ◆utp..QOeek - 2016/06/07 00:47:45.13 gkPKkJ4a0 182/359

◆寝休憩◆

763 : ◆utp..QOeek - 2016/06/08 17:11:42.82 jQWMApssO 183/359

◆再開◆

764 : ◆utp..QOeek - 2016/06/08 17:17:30.68 jQWMApssO 184/359

悪態をつく集積地棲キをよそに、片足ニーソの深海棲艦娘、重巡棲キは冷静な眼差しのまま、集積地棲キの高い背丈の割にやや平坦な胸を一瞥した。「違うわ。最初にやられた子はサンシタだったけど、スナイパーの子とヒヨウ=サンには一定以上の実力がある」「でもやられたら意味ねーじゃんかよ」

765 : ◆utp..QOeek - 2016/06/08 17:22:28.26 jQWMApssO 185/359

「違う、それ以前の問題。あのナチ=サンとかいう艦娘は予想外だった。彼女たちに対抗できるここに残った戦力といえば私たちくらいなのよ」重巡棲キは冷静に状況を分析する。彼女はセイカンヤに着任してそれほど経ってはいないが「姫」級のひとりである。実際この秘密施設、クローン深海棲艦の製造工場の管理を任されている程に指揮能力を買われていた。

766 : ◆utp..QOeek - 2016/06/08 17:28:48.75 jQWMApssO 186/359

「ヘッ!いくらカラテが強かろうがここのセキュリティがアタシの手の中にある限り無意味なんだよ。アタシのイクサは常時イージーモードだ!」そんなことをいいながら集積地棲キは傍らに置いてあるスナック菓子をぽりぽりとかじっている。彼女と重巡棲キはほぼ同期、この態度から見てわかるとおり集積地棲キは奥ゆかしくない性格ではあるがセイカンヤ随一の演算能力とヤバイ級ハッカーの実力を持っている。そして同じく「姫」級のひとりなのだ。

768 : ◆utp..QOeek - 2016/06/08 22:59:29.92 a8MjY3oJ0 187/359

「とにかく彼女たちは中に侵入してくる。迎撃準備を」「アイ、アイ。任せとけって!アタシのお楽しみタイムを邪魔したのを後悔させてやンよ!」重巡棲キは小さくため息をつくとセキュリティルームから退出した。そして懐から小型IRCを取り出し発信する。電話をかけた先は当然、シンカイセイカンヤ本部である。「モシモシ…ハイ、大変お世話になっております。ハイ、その通りです。ここに敵艦娘が侵入を」廊下に重巡棲キの足音が響く。その傍らをクローンエンジニア妖精たちが忙しそうに行き来する。

769 : ◆utp..QOeek - 2016/06/08 23:08:02.26 a8MjY3oJ0 188/359

「…ハイ、ヨロコンデー。了解しました。それではシツレイします…」IRCを懐に収める。本部からの命令は『迎撃した上で、それが不可能ならばこの施設を放棄せよ」とのことだった。クローン深海棲艦の製造施設は重要といえば重要だが、何もこの施設だけではない。現在進行形で建造されている最新式の製造施設もある。それにキョートから技術提供されたクローン妖精の製造技術も相まってクローン深海棲艦との配備率の比は半々になるとされている。この施設の重要性は以前よりも落ちている。

770 : ◆utp..QOeek - 2016/06/08 23:15:07.76 a8MjY3oJ0 189/359

しかし本部はそこまであのセンダイという艦娘を警戒しているのだろうか?いざとなればこの施設の放棄もやむなしと判断するまでに。それとも不確定要素であるナチの為か?はたまたかつてのマルノウチ・スゴイデカイチンジフのエリート艦娘、グラーフ・ツェッペリンの為なのか?疑問こそ感じるが重巡棲キは一切の異議申し立てをしない。ただ命令に従い、それを全うするだけだ。彼女は足を止め、目の前の扉を見る。そこには『倉庫』の二文字が刻まれている。

771 : ◆utp..QOeek - 2016/06/08 23:22:17.75 a8MjY3oJ0 190/359

彼女にとって、敵の襲撃と同じくらい頭を悩ませているものがそこにはある。同僚の集積地棲キは勤務態度こそ悪いが、きちんと業務は全うしている。しかし、それに比べあの子は……重巡棲キはもう一度小さくため息をつくと、倉庫内にエントリーする。やや埃をかぶった物資入りの段ボールが並べられた室内は換気扇の音が響くほど静かだ。彼女はしばらく倉庫内を歩き、足を止めた。檻がある。そして、中に深海棲艦娘が寝そべっている。

772 : ◆utp..QOeek - 2016/06/08 23:29:56.61 a8MjY3oJ0 191/359

「ふああぁ…どうしたの?またここに来てお説教でもしに来たの?」檻の中の深海棲艦娘はこちらに向けた白い尻を行儀悪くかきながら言った。実際態度が悪い。しかし重巡棲キは表情を崩さず、こちらに顔を向けた、後輩に言葉をかけた。「…ドーモ、駆逐水キ=サン。少しは動く気になった?」「ドーモ。残念ながらまったく。あと一年は寝て過ごせそうだわね」

773 : ◆utp..QOeek - 2016/06/08 23:38:21.76 a8MjY3oJ0 192/359

檻の中の、小柄な深海棲艦娘はけだるげな眼のまま再び欠伸をした。「なんだかお説教ムードじゃないみたいだけどさ。何かあったの?敵が来たとか」「その通りよ、今この施設内には3人の侵入者がいる」「ふーん」駆逐水キはさして興味がないように手元の青リボンをいじっている。彼女、駆逐水キはここ最近着任したばかりだが、「鬼」級の一人である。しかしその肩書があるのにも関わらず、駆逐水キには全く仕事意欲がない。あまりにも仕事をしないぐうたらさで、罰としてこの檻に入れられているのだ。

774 : ◆utp..QOeek - 2016/06/09 00:29:32.70 9ZFsztK30 193/359

普通ならばこのような反抗的又は無気力な新人はヤクザ式トレーニングにより、徹底的に研修するのが定例である。しかし駆逐水キは深海棲艦娘の中で、唯一ともいえるテレパスのジツを扱うことが出来る貴重な存在だった。そんな有望視されている人材である彼女の扱いに困った本部が、重巡棲キにその他もろもろも含めてマルナゲしてきたのだ。((んーと、新人の育成も責任者にとって必要なことって訳で、じゃ!そうゆうことだからよろしく~!))マルナゲしてきた張本人である飛行場キが面倒くさがっていたのはあからさまであったのを思い出し、重巡棲キは何度目か分からない溜息をつかずにはいられなかった。

775 : ◆utp..QOeek - 2016/06/09 00:32:48.16 9ZFsztK30 194/359

【KANMUSLAYER】

779 : ◆utp..QOeek - 2016/06/10 17:40:48.32 DWUCQWXfO 195/359

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

780 : ◆utp..QOeek - 2016/06/10 17:44:07.99 DWUCQWXfO 196/359

【KANMUSLAYER】

781 : ◆utp..QOeek - 2016/06/10 17:53:15.76 DWUCQWXfO 197/359

檻の中の駆逐水キは上体だけ起こして伸びをした。小柄でぐうたらではあるが中々のスタイルの持ち主であるようだ。「仮にヤバくなってもあたしのことはほっといていーから。役立たずだし」「そうはいかないわ、あなたも深海棲艦として生まれたからには使命がある。そしてそれを全うする義務がある」「ないない。艦娘は敵だとか、チンジフをやっつけるとかどーでもいいもん。めんどいし」彼女はパタパタと手を振った。

782 : ◆utp..QOeek - 2016/06/10 18:00:58.36 DWUCQWXfO 198/359

もしこの言葉を上司である離島棲キが聞いたら瞬時にオニめいた形相になり、2時間はくどくどと説教するであろうと重巡棲キは思った。しかし彼女は怒るよりも呆れ、説教をする気にもならなかった。自分が何を言おうが駆逐水キは動こうとしないだろう。ここまでの聞かん坊はさすがに手に負えない。「はぁ……とにかく今この施設はそういう状況にある。万が一にも備えておいて」「あーい」

783 : ◆utp..QOeek - 2016/06/10 23:08:07.68 wENcXRQE0 199/359

退出しようとする彼女に檻の中の駆逐水キが声をかけてくる。「あ、そうだ。寝ててもご飯くれるのは嬉しいんだけどさ、スシない?スシ食べたいんだけど」「私たちの仕事を手伝うなら好きなだけ食べさせてあげるわ」「えー…じゃあいいや。はぁ〜あ、敵に捕まったらネオサイタマはおいしい刑務所飯出してくれるかなあ。提督とかいうのに色目使ったらなんか食べさせてくれるかな」重巡棲キはげんなりとしながら倉庫を後にした。

784 : ◆utp..QOeek - 2016/06/10 23:20:24.72 wENcXRQE0 200/359

これまで重巡棲キはつとめて真面目に与えられた業務や任務をこなしてきた。武功を重ね、周囲の評価も上がり出世した。しかし、ただ一段上へ上がっただけなのにこの有様は何だろう?飛行場キから面倒な仕事を頻繁にマルナゲされ、港湾棲キからは日常的にセクシュアル・ハラスメントをされ、装甲空母キの過酷な筋力トレーニングに付き合わされ、(弱いくせに)サケに酔った離島棲キの愚痴を延々と聴かされ……中途半端に出世しても何も良いことはない。重巡棲キはそう思った。

785 : ◆utp..QOeek - 2016/06/10 23:22:09.09 wENcXRQE0 201/359

◆今日はちょっとだけ更新。続きは明日な◆

789 : ◆utp..QOeek - 2016/06/11 21:44:40.93 olsSySTOO 202/359

◆今日更新ができるかも分からなくなったので作者はケジメしました◆

790 : ◆utp..QOeek - 2016/06/12 22:23:30.81 hSnVZ4Qh0 203/359

◆遅ればせ再開◆

791 : ◆utp..QOeek - 2016/06/12 22:45:35.02 hSnVZ4Qh0 204/359

一方その頃、センダイ一行は施設内のダクトを這って移動していた。入り口の鋼鉄ドアはヒヨウが激突し歪み、電気系統がショートしていたためスゴイ級程度のハッカー技術を持つグラーフでも開けることができた。しかしそれ以上は叶わなかった。施設内には強力なファイアウォールがしかれており、無闇なハッキングは逆に返討ちにされニューロンが焼かれてしまう。なのでナチの提案により、セキュリティが行き届いてないと思われるダクト内を移動するに至ったのである。

792 : ◆utp..QOeek - 2016/06/12 22:58:48.02 hSnVZ4Qh0 205/359

先陣を切るセンダイは注意深く前方を警戒している。ダクト内は暗闇だが、3人のカンムス視力を持ってすれば何ら問題はない。しかし2人の間にいるグラーフは難儀そうに吐息を漏らしている。「うぐっ……ちとキツイな。最近太ったか…?」自分の胸と尻がたまにつかえるのだ。「しかもバケツ(注釈:BKT成分)も切れてきたみたいだ……クラクラしてきた」「しっかりして下さい」「ああ……提督にやめろと何回も言われてきたんだがなあ。やめどきが分からんのだよ実際」

793 : ◆utp..QOeek - 2016/06/12 23:02:59.53 hSnVZ4Qh0 206/359

「フン、昔の帝国軍人めいた貴様はどこに行ったのであろうな。クスリにおぼれるとは堕落極まりなし」「返す言葉もないねナチ=サン」しかしそんなことを言いながら後方のナチは先をゆくグラーフの尻を凝視している。水に濡れたスカートがペタリと張り付き、半分ほどめくれ、下着がくいこんでいる。(だがしかし、中々良い光景だ…)ナチは思わずその尻に手を伸ばしかけた。読者の方もお気づきであろうが、彼女は自分の性別さえも判然としていないほど狂気に陥っている。非常に不安定な精神状態なのである。

794 : ◆utp..QOeek - 2016/06/12 23:25:15.61 hSnVZ4Qh0 207/359

「濡れた服も気持ち悪いし散々だな……作戦会議の時にあんな提案するんじゃなかったなこれは」「待ってください」BKT切れのせいでダウナー状態にあるグラーフの文句をセンダイが遮った。「ここから出れるようです」指差した先には鉄格子がはめられており、僅かな光が漏れ出している。「やっと出口か!早く開けてくれ!」「イヤーッ!」センダイは鉄格子に力を入れ無理矢理外した。そのままダクト内から這いずり出る。

795 : ◆utp..QOeek - 2016/06/12 23:32:23.68 hSnVZ4Qh0 208/359

ダクトの出口は天井近くにあるようだ。センダイは廊下にスタリと着地する。「高さがあります。気をつけ…」「うお!?グワーッ畜生!」しかしセンダイの警告むなしく着地仕損なったグラーフは尻を廊下に強打した。「あだ…あだだ……みんなには言わないでくれよ…」「はあ」流石にセンダイもやや呆れたような面持ちになってしまう。かつてのグラーフは軍の規律を過剰に重んじるとても厳しいセンパイとして恐れられていた。しかし今、このセンパイはクスリ切れでフラつきながら身を起こしているのだ。実際情けない状態であるのは否めない。

796 : ◆utp..QOeek - 2016/06/13 00:46:22.91 Ij1auhA70 209/359

「妙だな」その後ろで問題なく着地したナチが呟いた。「何がだい?今のドジはBKTが切れているだけで」「違うわ愚か者め。私が妙だといっているのはこの廊下だ。この廊下には部屋がない」確かにナチの言う通りこの廊下に隣接した部屋はなく、廊下がそこまで長くないのにも関わらず両端が鋼鉄扉によって閉ざされている。「これはひょっとすると……」

797 : ◆utp..QOeek - 2016/06/13 01:11:24.45 Ij1auhA70 210/359

ナチは言葉が終えるその前に、廊下の前方からじわじわ迫ってくる網目状のレーザー光線を睨み据えた。「これは」「やはり罠か!」果たして、後方からも、赤い網目状のレーザー光線が出現していた。アナヤ、この廊下はトラップ廊下だったのだ!突然の窮地に陥った3人を、監視カメラ越しに見下ろす者がいる。((ケケケ……!まんまとハマりやがったな!そのまま3人!仲良く黒コゲになりやがれーッ!))この部屋に誘い込んだ張本人、集積地棲キはモニターに向け、歪んだ笑みを浮かべた。

798 : ◆utp..QOeek - 2016/06/13 01:12:09.17 Ij1auhA70 211/359

【KANMUSLAYER】

803 : ◆utp..QOeek - 2016/06/15 17:05:45.62 sNui1LjBO 212/359

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

804 : ◆utp..QOeek - 2016/06/15 17:06:35.26 sNui1LjBO 213/359

【KANMUSLAYER】

805 : ◆utp..QOeek - 2016/06/15 17:16:09.83 sNui1LjBO 214/359

「ダクト内にアタシの目が行き届いてないと思ってたのかよ?ケケケ……とんだアホAIをつんでるみてーだなぁ~?」ここは秘密施設の中央司令室。そこで集積地棲キは20枚近くのUNIXモニタすべてをヘッドフォン型端末にUSB接続し、俯瞰している。普通ならばニューロンの負荷限界をとうに超えているが、ヤバイ級のハッカー能力を持つ彼女にとってはベイビー・サブミッションに過ぎないのだ。

806 : ◆utp..QOeek - 2016/06/15 17:25:51.18 sNui1LjBO 215/359

集積地棲キが両腕に装備しているブレーサーはとてもIRCのタイプに適した物とは思えぬ大きさである。しかしそのブレーサーの巨大な指先に注目していただきたい!小型ロボットアームが10本全ての指先から展開しており、指一本一本がキーボードを高速物理タイプしているのだ。つまり集積地棲キの演算能力は、単純計算すれば通常の10倍に相当する。なんたる恐るべきカンムスマルチタスク能力か!

807 : ◆utp..QOeek - 2016/06/15 22:01:30.73 Ks3CyQFN0 216/359

セキュリティシステムに多重ログインした集積地棲キにとって監視カメラは己の眼であり、スピーカーは己の耳であり、迎撃システムは己のカラテそのものなのだ!「とっとと終わらせたらァーッ!3人まとめてケバブめいてこんがり焼けちまうがいいぜぇ!」絶え間ない多重高速タイプを続け、使用者の精神をフラットに澄み渡らせる効果のあるザゼンドリンクを啜りながらも集積地棲キはまるでアーケードゲームをプレイするかのように3人を大爆発四散に追い込むことができるのである!ナムアミダブツ!

808 : ◆utp..QOeek - 2016/06/15 22:17:26.07 Ks3CyQFN0 217/359

一方その頃!「イヤーッ!」センダイはゼロセンを投擲!狙いは勿論、ドア近くの壁にある緊急停止スイッチだ!((無駄だぜーッ!))しかしレーザーの隙間をゼロセンが通過しようとしたその瞬間、瞬時にレーザーが収束!KABOOM!ゼロセン撃墜!「イヤーッ!」ナチの折り畳み式ショートボウから射た矢が、そのわずかな隙間を通過する。しかし矢の羽が焼け落ち、スイッチを外れてしまった。羽が無ければ狙いは定まらぬ!

809 : ◆utp..QOeek - 2016/06/15 22:29:05.85 Ks3CyQFN0 218/359

「くっ…」「ホーリーシット!ベトコン共めが!卑劣な罠を!」センダイとナチは次々とゼロセンを投擲し、矢を射るがことごとく撃墜又は的を外れてしまう。レーザー光線はその様子をあざ笑うかのようにタタミ3枚近くまでに接近!このままではレーザー光線に焼かれ、黒コゲ後、大爆発四散は確実!((抵抗しようと無意味なんだよ!連続3KILLでポイント倍点だぜ!うけけけけーッ!))集積地棲キが中央指令室でブキミに笑った。彼女にとってイクサとは、己の腕試し程度のゲームに過ぎないのだ!

810 : ◆utp..QOeek - 2016/06/15 22:36:37.10 Ks3CyQFN0 219/359

しかし絶体絶命の危機に立たされたエネミーキャラクターの一人であるセンダイは、電撃的速度で打開策を導き出した!ゼロセンも矢も羽根がある、しかしそれゆえレーザー光線の狭い隙間に引っかかってしまうのだ。ならば羽根のない、流線型の物体ならばどうだ!?そう、グラーフのリボルバー拳銃ならば!「グラーフ=サン!あのスイッチを!」その言葉を聞いた瞬間、ナチもその意味を理解した。「成程!貴様の弾丸ならば隙間を通り抜けるのは可能!早くやれーッ!」

811 : ◆utp..QOeek - 2016/06/15 22:44:43.65 Ks3CyQFN0 220/359

だが……当のグラーフは二人の間で膝を抱え座り込んでいる!何故!?「グラーフ=サン!?」「バカ者めーッ!何をやっとるかああああ!」しかし二人の言葉も耳に入らない様子でグラーフは何かをブツブツと呟いている。「……そう、だよなあ……昔より太ったし、太ももも太くなったし…髪の毛のツヤも落ちたし……提督も、私になんて魅力感じないよなあ……ハハハ……」「グラーフ=サン!?」「何をいっとんだ貴様ーッ!」

812 : ◆utp..QOeek - 2016/06/15 22:53:36.01 Ks3CyQFN0 221/359

「ワカル、ワカルよ。ヤク中だし、女っけもないし…尻もでかいし。ヒュウガ=サンみたいに奥ゆかしくないし、カガ=サンみたいに真面目でもないし…当然だよな…ハハ」「グラーフ=サン!?」「だッ・かッ・らッッッッ!何をいっとんだ貴様ァアアアアアアーッ!」ナ…ナムアミダブツ!これはBKT中毒者特有の、BKT切れによる極度のダウナー状態だ!思考能力が極端に低下し、ネガティヴな感情がグラーフを支配する!二人の言葉に耳を貸さず、虚ろな眼で乾いた笑いをこぼしている。なんたるブザマ!

813 : ◆utp..QOeek - 2016/06/15 23:00:59.62 Ks3CyQFN0 222/359

「グラーフ=サン!?しっかり気を保って下さい!」「大バカ者が!早く目を覚まして撃てーッ!」ナチが襟を掴みぶんぶんと揺するがグラーフはされるがままである。「ワカル、ワカルよセンダイ=サン…君に比べりゃもう私はオバサンで」「グラーフ=サン!?」「頼むから早く眼を覚ませーッ!」ナムサンこの情けないセンパイは使い物にならない!だがセンダイは、それすらも打開する策を思いついた。グラーフのコートの中に手を突っ込む!「シツレイします!」「ンアーッ!?流石にそんな趣味はないぞ!」「私もです!」

814 : ◆utp..QOeek - 2016/06/15 23:07:58.62 Ks3CyQFN0 223/359

センダイは思い出したのだ、重度のBKT愛好者であるグラーフが、持っているはずの『例のもの』を!センダイは『それ』をグラーフのコート内から見つけ出した。その小瓶にのラベルには『20㎎配合、バケツタブレット』の文字が!そう、これは実際ほぼ違法であるBKT成分を大量に含んだ脱法タブレットなのだ!チンジフ内でもしこれが見つかれば3日間はケジメ、さらにタツタの懲罰拷問が課される程の禁止アイテム。しかしグラーフの眼を覚ますにはこれしかない!

815 : ◆utp..QOeek - 2016/06/15 23:13:49.90 Ks3CyQFN0 224/359

「おおッ!それは!」ナチはセンダイからその小瓶を受け取ると、フタを開け直接グラーフの口内に流し込んだ!「え、アバーッ!!」「いい加減眼を覚ませといっとるんだこのアホがァアアアアアーッ!!」「アババババ!アババババーッ!」多量のBKT成分がグラーフのニューロンと体内を駆け巡る!しかしレーザー光線は3人のタタミ1枚近くまで接近!万事休すか!?

816 : ◆utp..QOeek - 2016/06/15 23:21:25.29 Ks3CyQFN0 225/359

この瞬間、モニター越しの集積地棲キは勝利を確信した。だが、次の瞬間!!「…………YEAAAAAHAAAAAーッ!!!!」凄まじきシャウトと共に立ち上がる者あり!((ワッザファック!?))その主はそう!BKTの過剰摂取によりアブナイ・ハイ状態になったグラーフ・ツェッペリンその人であった!「遥かに!遥かにイイぞッ!見える!私にもイルカチャンが見えるぞーッ!うわっはははははーッ!!」恍惚の笑みを浮かべながら双眸を爛々と輝かせている!コワイ!

817 : ◆utp..QOeek - 2016/06/15 23:28:04.69 Ks3CyQFN0 226/359

「グラーフ=サン!?」「早くあそこのスイッチを撃てーッ!!」「ハイヨロコンデー!!FOOOOOOOOOOOO!!」グラーフは奇妙な姿勢のままリボルバーを三連射!それにも関わらず針の穴を通すかのように正確に撃ち出された弾丸は、レーザーの隙間を……すり抜けた!そのまま3発の弾丸は吸い込まれるようにスイッチに着弾!レーザートラップは3人の半タタミ分で停止し、消失!ゴウランガ…おお!ゴウランガ!

818 : ◆utp..QOeek - 2016/06/15 23:35:36.19 Ks3CyQFN0 227/359

危機を脱し、センダイとナチは思わず床にへたり込む。なんだか分からぬ徒労感が二人を襲う。「ハァーッ……いい判断力だ。若いが見どころがある。お前も私たちとサヴァイヴしないか?」「……お断りさせてもらう」「ハッ!ますますお前に興味が沸いてきた!しかし…」二人はハイになり、自分を見失った艦娘に視線を移した。「おおおッ…!リロードタイムがこんなにも息吹を!イルカチャン!?そうか!いいセンスか!そうだろう!?アハハハハハ!!」「…アイツは置いていくべきか」「………」センダイは目を伏せた。

819 : ◆utp..QOeek - 2016/06/15 23:36:33.16 Ks3CyQFN0 228/359

【KANMUSLAYER】

820 : ◆utp..QOeek - 2016/06/15 23:37:48.69 Ks3CyQFN0 229/359

◆クスリはくれぐれもやめようね。以上です◆

825 : ◆utp..QOeek - 2016/06/25 23:59:22.18 rq2YSwHF0 230/359

◆一週間ほど別のSSを書いて気分転換をしていました。更新明日な◆

827 : ◆utp..QOeek - 2016/06/27 22:45:56.12 uGsDtIGl0 231/359

◆緊急、更新がつらい状況に陥りましたのでまだかかる。ケジメした作者が用事を済ますまでしばしお待ち下さい◆

829 : ◆utp..QOeek - 2016/07/04 00:21:15.84 iG85lGU80 232/359

【親愛なる読者の皆さんへ : ついに作者は向こう側から戻ってくることができました。真実を手に入れることができたので明日からこうしんを再開したいと思います。以上です】

831 : ◆utp..QOeek - 2016/07/04 22:21:56.75 iG85lGU80 233/359

◆◆◆◆◆◆◆

832 : ◆utp..QOeek - 2016/07/04 22:22:30.83 iG85lGU80 234/359

【KANMUSLAYER】

833 : ◆utp..QOeek - 2016/07/04 22:27:21.71 iG85lGU80 235/359

センダイはスプリント体勢を維持したまま、壁からせり出したセントリーガンに向かってゼロセンを投擲!「イヤーッ!」AKBOM!セントリーガン破壊!「イヤーッ!」先頭を駆けるナチも足元に張られていたワイヤートラップを目ざとく発見しナイフ投擲切断!

834 : ◆utp..QOeek - 2016/07/04 22:32:22.97 iG85lGU80 236/359

「センダイ=サン!身を屈めろ!」ナチがそう言うやいなや天井がパカリと開き、振り子ギロチントラップが頭上から襲い掛かる!二名とも姿勢を床すれすれまで倒し回避!しかしタタミ数枚分前の床が突如脱落し、落とし穴トラップが出現!アブナイ!

835 : ◆utp..QOeek - 2016/07/04 22:36:00.30 iG85lGU80 237/359

「「イヤーッ!」」しかし瞬時に姿勢をスプリント体勢に戻した二人は難なく跳躍し穴を飛び越える!ワザマエ!なんたるカンムス身体能力をフル活用したパルクール・アクションか!繰り出されるトラップをものともせず2名は弾丸めいた速度で目的地、中央指令室へと向かう!

836 : ◆utp..QOeek - 2016/07/04 22:41:57.51 iG85lGU80 238/359

「この私に着いてくるとは大したものだ!誰からカラテを習った!?」「それは後だ、今は目的を果たす」二人は壁の電光掲示板に度々表示される『チート行為はちょっとやめないか』『てめえらの頭はぱんぱかぱーんかよ』『運営に通報してBANする』などの威嚇メールを無視しながら突き進む。おそらくこの施設の中心部は近いだろう。

837 : ◆utp..QOeek - 2016/07/04 22:48:17.41 iG85lGU80 239/359

この一歩間違えれば大爆発四散もやむなしのパルクールは、実際ナチのトラップに対する豊富な知識によって保たれている。センダイはナチを信頼したわけではないが、トラップを予測・察知し回避できるナチのワザマエが信頼に値するのは間違いない。ゆえに疑問は深くなる。なぜこの人はおかしくなってしまったのだ?

838 : ◆utp..QOeek - 2016/07/04 23:01:28.45 iG85lGU80 240/359

『着信、着信ドスエ』しかしそんな事を考える間も無く、センダイのIRCにメールが受信した。パルクールを続けながらメールを確認する。別行動を取っていたグラーフからだ。『#NEO SAITAMA TINJIHU : GRAF : マジですまなかった。中央司令室らしき部屋を発見、待機する。 ps.提督には言わないでくれ』どうやら正気を取り戻したらしい。こちらに注意を引かせる作戦は上手くいったようだ。

839 : ◆utp..QOeek - 2016/07/04 23:07:08.43 iG85lGU80 241/359

「グラーフ=サンが中心部らしき部屋を発見した」センダイは前を駆けるナチに簡潔に告げる。「ほう、あのアホも頭以外は衰えていないようだな。そら!私たちもこのフスマを越えればすぐに中央だ!」ナチが指差す先は強化フスマでロックダウンされている。『重点』『普通に入れない』『しめきり』などの文字。すわ!中枢はすぐそこにあるという事を示しているのだ!

840 : ◆utp..QOeek - 2016/07/04 23:15:43.22 iG85lGU80 242/359

「「イヤーッ!」」2人は言葉を交わすこともなく、ほぼ同時に飛び蹴りを放ち、強化フスマを吹き飛ばして室内にエントリーした。しかし!「イヤーッ!」2人が着地した瞬間、電子音声シャウトと共にミニガンが掃射される!BRATATATATATATATATA!ナチは跳躍、センダイは側転しアンブッシュを回避!2人に対する……この鋼の巨体は!?

841 : ◆utp..QOeek - 2016/07/04 23:59:15.29 iG85lGU80 243/359

「アンブッシュ効果なし、アイサツ・モード重点。ドーモ、モータ連装砲=チャン・ツヨシ、デス」電子音でアイサツするのは2つの重厚なキャタピラ脚を備えた鋼鉄のマシーンだ!無骨な戦車めいた胴体と両腕に装備された重武装火器、これらすべてを巧妙に隠すように、愛らしい連装砲=チャンの頭部が装着された試作型殺戮兵器である。「私はマスコットキャラであり、決して兵器ではありません」欺瞞!

842 : ◆utp..QOeek - 2016/07/05 00:00:03.59 s+MFvgK90 244/359

【KANMUSLAYER】

843 : ◆utp..QOeek - 2016/07/05 00:02:24.85 s+MFvgK90 245/359

◆予定を早めて更新しました。新エピソードンに向け、どんどんやりたい。以上です◆

847 : ◆utp..QOeek - 2016/07/06 17:02:02.55 dlsr2fgsO 246/359

◆◆◆◆◆◆◆

848 : ◆utp..QOeek - 2016/07/06 17:02:35.27 dlsr2fgsO 247/359

【KANMUSLAYER】

849 : ◆utp..QOeek - 2016/07/06 17:06:47.25 dlsr2fgsO 248/359

「カンムスソウル検知!2名ともカンムス判定ポジティブ!ゼンメツゼンメツゼンメツだ!マスコットとしてゼンメツだ!」ドッシ!ドッシ!重量2脚で接近、連装砲=チャン・ツヨシがいきなりセンダイに殴りかかる!「イヤーッ!」センダイは鉄球パンチを側転して回避!「機械にアイサツなど要るまい!」

850 : ◆utp..QOeek - 2016/07/06 17:11:31.35 dlsr2fgsO 249/359

「センダイ=サン!」強化バイオバンブーのボーを構えたナチが呼びかける。「貴様の目的地は目と鼻の先。まずはソ連製の鉄クズを片付ける。この戦場を攻略するぞ!」「了解した」センダイは頷き、カラテを構えた。「ゼンメツ!ゼンメツだ!イヤーッ!」鉄球パンチ連打が襲いかかる!

852 : ◆utp..QOeek - 2016/07/06 23:16:42.50 eBjEZgx60 250/359

「イヤーッ!」センダイは鉄球をスウェイ回避すると、振り下ろされたその巨大な腕を蹴ってジャンプ、カワイイ意匠の頭を飛び蹴りした。「イヤーッ!」「ピガーッ!」連装砲=チャン・ツヨシがよろめき、足裏キャタピラで踏みとどまる。なんたる安定感!「イヤーッ!」そこへナチがボーで追撃!

853 : ◆utp..QOeek - 2016/07/06 23:19:56.98 eBjEZgx60 251/359

「ピガーッ!」鋼の四倍の強度を誇るバイオバンブーが関節部に叩きこまれ、破損部から黒いオイルが流れ出す!「イヤーッ!」センダイが戦車めいた胸板にジャンプパンチ!「ピガーッ!」よろめく連装砲=チャン・ツヨシ!さらに戦車めいた胸板にセイケンヅキ!「イヤーッ!」「ピガーッ!」胸部装甲が弾け飛んだ!

854 : ◆utp..QOeek - 2016/07/06 23:26:30.59 eBjEZgx60 252/359

だが、弾け飛んだ胸部からミニガン展開!「ゼンメツゼンメツだ!」アブナイ!「サイゴン!」しかしセンダイを飛び越えたナチがナイフを両ミニガンに突き立て破壊!すかさずセンダイは渾身のカラテ・ストレートをミニガン奥の動力部に放つ!「イヤーッ!」「ピガガガガガガーッ!」

855 : ◆utp..QOeek - 2016/07/06 23:29:02.51 eBjEZgx60 253/359

電子の断末魔をあげ、連装砲=チャン・ツヨシは完全停止した。「よし邪魔者は片付いた、これで……」「待て!」センダイは頭上の闇を睨んだ。「イヤーッ!」転がり避けたその地点に、巨体が落下してきた。新手の連装砲=チャン・ツヨシだ!「まだ……何!イヤーッ!」ナチもまた側転して避ける、そのポイントにさらに一体が落下!新たに現れたるは二体!ナムアミダブツ!なんたる量産型マスコット!

856 : ◆utp..QOeek - 2016/07/07 00:10:27.94 d9DMmUe20 254/359

「ドーモ、モーター連装砲=チャン・ツヨシです、カンムスソウル検知!ゼンメツゼンメツゼンメツ!」「ゼンメツゼンメツゼンメツだ!」「イヤーッ!」すかさずセンダイが戦車めいた胸板にジャンプパンチ!「ピガーッ!」「イヤーッ!」さらに戦車めいた胸板にジャンプパンチ!「ピガーッ!」

857 : ◆utp..QOeek - 2016/07/07 00:13:45.17 d9DMmUe20 255/359

「仮にもマスコットとしてゼンメツだ!」もう一体がセンダイを横から重キャノン砲で攻撃しようとする。だがナチはボーを突き出し阻止!「サイゴン!」「ピガーッ!」脇腹にマチェーテを刺すと、片手で腰の道具袋からボーラ(分銅つき投擲ロープ)を取り出し、センダイがジャンプパンチを続けるもう一体の脚めがけて投げつける!???

858 : ◆utp..QOeek - 2016/07/07 00:17:44.41 d9DMmUe20 256/359

「ピガガガ!ゼンメツだ!」ナチに脇腹を刺された一体の胸板プレートが展開、ミニガンが迫り出す!センダイへ向かって銃弾を乱射!「イヤーッ!」センダイは地面を転がってそれをかわす。「ピガガーッ!」ナチが射線上に引きずり出したもう一体がフレンドリー射撃を受け、なす術なく機能停止!

859 : ◆utp..QOeek - 2016/07/07 00:20:49.84 d9DMmUe20 257/359

「イヤーッ!」ナチはマチェーテを取り出し連装砲=チャン・ツヨシによじ登り、首関節に突き立てる!「ピガガガ!」鮮血めいてオイルが噴出!「イヤーッ!」さらに脇腹のマチェーテを引き抜き、ミニガンに横から突き立てる!「ピガガガガガ、ガガガ!」ミニガンが暴発!火を吹いた!「ピガガーッ!」

860 : ◆utp..QOeek - 2016/07/07 00:24:54.59 d9DMmUe20 258/359

センダイはモータードクロへ向かって全速力でダッシュ!苦し紛れのキャノン攻撃を飛び上がって回避し、飛び蹴りを放った!「イイイ……イヤーッ!」無論狙いは首筋に突き刺さったナチのククリナイフだ!カワイイ意匠の頭部を粉砕・切断する!「ピガ、ピガガガッ!ガーッ!」最後の連装砲=チャン・ツヨシは頭部を吹き飛ばされ、火花を散らして活動を停止した!ワザマエ!

862 : ◆utp..QOeek - 2016/07/07 00:30:16.83 d9DMmUe20 259/359

ナチは破壊された連装砲=チャン・ツヨシからマチェーテとククリナイフを引き抜き、背中の鞘に収めるとセンダイに向き直った。「さあ、これでソ連の援軍は片付いた。これで共闘は終わりだ」「何」「私の目的は中心部への到達ではない!あくまでも物資の補給だ。ゆえにここから先は協力する必要なし」

863 : ◆utp..QOeek - 2016/07/07 00:36:13.93 d9DMmUe20 260/359

「そうやすやすと帰すと思うのか?貴方は捕縛対象だと言ったはずだ」センダイは油断なき視線でナチを見据える。「フン、やりあっても構わんが、今はあのアホの所へ行くべきだと私は思うがな?」これは実際図星だ。ここまできてナチと戦っても潜伏中のグラーフのリスクを高めるだけである、すぐにでも中心部へ向かわなければならぬ。しかし一時的に協力したといえど、以前仲間たちに襲いかかったナチは間違いなく看過できない存在である。

864 : ◆utp..QOeek - 2016/07/07 00:39:47.81 d9DMmUe20 261/359

「おっと……ところでだが、後ろに気をつけた方がいいのではないか?」「…!」ナチが言い終わる前に、センダイは電撃的な速度で振り向いた。「ピ……ガガ…ゼンメ………ツ……」フレンドリーファイアで機能停止していた連装砲=チャン・ツヨシが再起動し、キャノン砲でこちらを狙っている!「イヤーッ!」センダイはカラテ連装砲連射!「ピガガガガーッ!」今度こそ完全停止!

865 : ◆utp..QOeek - 2016/07/07 00:44:52.94 d9DMmUe20 262/359

センダイが再びナチに向き直るとそこにナチはおらず、先ほどキャノン砲によって開けられた穴の近くまで移動していた。その穴は地下室までに達しているようだ。「これでまたひとつ貸しだセンダイ=サン!貴様は最後まで私に助けられてばかり、心底感謝せよ!」「……今回だけだ。もし、また私の仲間を襲うようなことがあれば容赦しない。次に会ったときは貴方を倒す」センダイは背を向け、決別するように言い放った。もはやナチを追う猶予はない。

866 : ◆utp..QOeek - 2016/07/07 00:50:14.09 d9DMmUe20 263/359

「フフフ…ならばいつか貴様とも戦う時が来るだろう!サラバだ。戦略的撤退!オタッシャデー!」ナチはそう言い残すと、穴の中へと消えていった。センダイは迷いを断ち切るように再び駆け出す。あとは中心部に到達し、この施設の責任者の脳天にチョップを食らわすだけだ!「イヤーッ!」決着を目前にし、走れセンダイ!走れ!

867 : ◆utp..QOeek - 2016/07/07 00:50:45.44 d9DMmUe20 264/359

【KANMUSLAYER】

870 : ◆utp..QOeek - 2016/07/08 22:39:29.48 hXNK2wen0 265/359

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

871 : ◆utp..QOeek - 2016/07/08 22:40:04.72 hXNK2wen0 266/359

【KANMUSLAYER】

872 : ◆utp..QOeek - 2016/07/08 22:42:46.52 hXNK2wen0 267/359

ストココココ、ストココココ、ストココココ……。UNIX電算音で満たされた空間、壁に沿って並べられた計器類。眼下、無人のデスクに身を隠すグラーフに背を向ける形で、長身の深海棲艦娘がキーボードを殴りながら罵声を吐いている。おそらくこの施設のセキュリティ主任であろう。

873 : ◆utp..QOeek - 2016/07/08 22:48:30.25 hXNK2wen0 268/359

その深海棲艦娘の他に、アサルトライフルで武装したクローン軽巡洋艦が5人。クローンハッカー妖精、クローンヤクザ妖精が数匹。(((許容範囲内だな…)))グラーフは沈思黙考する。敵はまだ自分の存在に気づいていない。別行動をとっている二人に相当執着しているのだろう。親玉をアンブッシュで仕留めさえすれば後はどうにでもなる筈。

874 : ◆utp..QOeek - 2016/07/08 22:53:08.04 hXNK2wen0 269/359

(((迷っている時間はないな)))二人は過酷なトラップを引き受けてもらっている。到着を待つのもいいが、いたずらに時間を過ごして状況を悪化させるわけにはゆかぬ。とにかく中枢を破壊するのが優先だ。グラーフは意を決するとリボルバーを握る手に力を込め、デスクから上体を跳ね起こした!

875 : ◆utp..QOeek - 2016/07/08 23:01:43.19 hXNK2wen0 270/359

しかしグラーフの視界は何かによって遮られた。(((なッ……!?)))デスクを隔てた目の前にいつの間にか誰かが立っている。モデルめいた体形、白い肌、思慮深げな瞳、そして振り上げた腕の掌中央から放たれる閃光。「ここで銃を撃たないで。備品が壊れたら、始末書を書かなきゃならないから」その深海棲艦娘は呟いた。

876 : ◆utp..QOeek - 2016/07/08 23:06:52.32 hXNK2wen0 271/359

グラーフの判断は早かった!「イヤーッ!」掌から放たれる閃光爆発!これをすんでのところでバックフリップ回避するグラーフ!「おいおいおいおいおい!こんなに近くにいるなら声をかけてくれ!」爆発の余波で後退しながらも、素早くリボルバーを構えなおし、アイサツする。「ドーモ、グラーフです。ちょいとお邪魔してるよ!」

877 : ◆utp..QOeek - 2016/07/08 23:13:27.54 hXNK2wen0 272/359

(((……結局自分で机を壊してしまったわ)))彼女はやや後悔した後、オジギしアイサツした。「ドーモ、重巡棲キです」その両手には強化スーツめいたガントレット。掌中央に備えられた爆発閃光の発射口、手首からひじにかけて備え付けられた蛍光灯めいた発光体、そのいずれからも不穏な赤い光が継続的に放たれている。

878 : ◆utp..QOeek - 2016/07/08 23:19:18.98 hXNK2wen0 273/359

「クソックソックソッ……ン?そこで何してんだ重巡棲キ=サン?って、ソイツ誰だよ!?」流石にセキュリティシステムに没頭していた集積地棲キも気づいたようだ。面食らった様子でこちらを振り向いている。「敵よ。気づくのが遅い」「うっせ!ドーモ集積地棲キです!よく見りゃテメエは腐れ艦娘の残りの一人じゃねーか!」

879 : ◆utp..QOeek - 2016/07/08 23:24:09.66 hXNK2wen0 274/359

「「「ざっけんこらー!」」」「「「ザッケンナコラー艦娘!」」」ナムアミダブツ!もはやクローン軽巡洋艦もクローンヤクザ妖精さえもグラーフに銃を向けている!なんたる完全包囲か!(((なんてこったい……!一転してピンチじゃあないか!)))グラーフの銃を握る手に汗がにじむ。ここでやられては元も子もない!

880 : ◆utp..QOeek - 2016/07/08 23:30:35.97 hXNK2wen0 275/359

「投降して。ここを壊したくない」集積地棲キは掌をこちらに向けている。鉄製の床がひしゃげているのを見ると、閃光爆発に直撃すればただでは済まないだろう。さらにその身のこなしからは極めて高いカラテを感じさせる、グラーフの長年のカンがそう告げる。「投降、ね……中々心が広いじゃないか」グラーフはそう呟き、銃口を下げた。

881 : ◆utp..QOeek - 2016/07/08 23:36:51.82 hXNK2wen0 276/359

全員の視線が僅かに下がった、その刹那!「………答えはノーだけどな!!」サイバネ・コンタクトレンズのデュアルエイムアシスト機能によって放たれた弾丸が、クローン軽巡洋艦とクローン妖精それぞれ2体ずつを撃ちぬいた!「「グワーッ!」」「「あばーっ!」」「イヤーッ!」集積地棲キに向けられた残り1発を重巡棲キは弾き返しガード!そのままグラーフに向かって跳躍する!

882 : ◆utp..QOeek - 2016/07/08 23:42:48.39 hXNK2wen0 277/359

「イヤーッ!」「イヤーッ!」振り下ろされたチョップをクロスして銃身で受け止めるグラーフ!着地した重巡棲キは掌底めいて掌を突き出す!「イヤーッ!」間髪いれず放たれる閃光爆発!「イヤーッ!」グラーフは発砲反動を利用したダッキング回避!「アバーッ!」さらにこちらを狙おうとしていたクローン軽巡洋艦をその弾丸で撃ちぬいた!ワザマエ!

883 : ◆utp..QOeek - 2016/07/09 00:21:19.59 OJjxbVPC0 278/359

グラーフはその勢いのままバック転し、鉄製の棚の後ろに飛び隠れる!一瞬遅れてその軌跡を火線が薙ぎはらう。壁からせり出したマシンガンだ!「テメーもアタシをコケにした奴の1人だよなぁ~!?穴あきチーズにしてやるぜッ!」室内のセキュリティシステムに平行接続した集積地棲キが吠える!グラーフを鉄製棚ごと集中放火!

884 : ◆utp..QOeek - 2016/07/09 00:31:17.91 OJjxbVPC0 279/359

「ムダに弾を使わないで、勿体無い」「努力するよ!オラオラオラオラオラーッ!」削り取られていく鉄製棚の後ろでグラーフは身を縮めながらクイックローダーにはめられた弾丸を投げ上げ、曲芸めいて高速リロードする。(((無茶苦茶やってくれるね畜生!)))鉄製棚が削り切られる直前、飛び出したグラーフはローリングしながらリボルバー連射!「イヤーッ!」「ぐわーっ!」「アバーッ!」火線を一点に集中させていた一部のクローンヤクザ妖精とクローン軽巡洋艦はなす術もなく被弾!

885 : ◆utp..QOeek - 2016/07/09 00:36:44.90 OJjxbVPC0 280/359

◆寝休憩、きょうのごごあたりにつづく◆

886 : ◆utp..QOeek - 2016/07/09 22:09:07.33 OJjxbVPC0 281/359

◆再開◆

887 : ◆utp..QOeek - 2016/07/09 22:17:56.56 OJjxbVPC0 282/359

「イヤーッ!」重巡棲キがジャンプパンチで襲い掛かる!「イヤーッ!」これを側転で回避したグラーフは真横から銃身をねじ込むように拳を放つ。重巡棲キはグラーフの手首を弾きそらし、カウンター掌底と閃光爆発を叩きこむ!「イヤーッ!」

888 : ◆utp..QOeek - 2016/07/09 22:23:11.65 OJjxbVPC0 283/359

しかしこれはグラーフの想定内だ!掌が突き出されたと同時に重巡棲キのワン・インチ距離に踏み込むと、ガントレットを脇に挟み込んだ。無論、閃光爆発はグラーフの後方で炸裂し無効!「イヤーッ!」「グワーッ!」さらにガントレットを抱えたまま頭突きを繰り出す!重巡棲キはたまらず苦悶!

889 : ◆utp..QOeek - 2016/07/09 22:30:08.25 OJjxbVPC0 284/359

グラーフは残りの手でゼロ距離リボルバー射撃を試みたが、重巡棲キもさる者!「イヤーッ!」巧みな体重移動で姿勢を瞬時に変更しグラーフを投げ飛ばす!「イヤーッ!」グラーフは叩きつけられた衝撃をウケミで無効化し、床を蹴って再び重巡棲キに掴みかかかる!「イヤーッ!」「イヤーッ!」2名は木人拳めいたコンパクトな応酬を開始する。まさにチョーチョー・ハッシ!

890 : ◆utp..QOeek - 2016/07/09 22:37:44.90 OJjxbVPC0 285/359

「クソ……クソ!重巡棲キ=サン!ソイツもぎ離せ!狙えねーだろーが!」「今は無理。イヤーッ!」集積地棲キはその様子を歯噛みしながら見守るしかない。ここまで2者の距離が近いとなると援護射撃がフレンドリーファイアなり得るからだ。(((やはり撃ってこないか。とりあえずは狙い通りだ)))グラーフは打撃の応酬を続けながらも、このイクサにおける最適解を選択してゆく。経験にモノをいわせた老獪な戦法である。

891 : ◆utp..QOeek - 2016/07/09 22:44:17.13 OJjxbVPC0 286/359

「イヤーッ!イヤーッ!なあ君!私は君のジツを知ってるぞ!イヤーッ!」舌戦についても優位に立つのも忘れてはいけない。打撃をいなしながら重巡棲キを揺さぶりにかける。「実弾じゃなくてエネルギー!ヒカリ・ジツだろ!?イヤーッ!」「イヤーッ!」重巡棲キは応えない。しかし表情がほんのわずかに変化したのをグラーフは見逃さなかった。

892 : ◆utp..QOeek - 2016/07/09 22:50:06.94 OJjxbVPC0 287/359

通常、艦娘や深海棲艦娘はカラテ砲やカラテ機銃には実弾を用いる。弾丸にカラテを込め撃ち出すのだ。しかし一部には弾丸ではなく、無形のエネルギーを飛び道具として用いる者がいる。プラズマキャノンやレーザーライフルなどが代表される。その中でも図星であろう重巡棲キのヒカリ・ジツは血中カラテを炸裂閃光エネルギーに変換し、叩きこむ強力なジツだ!

893 : ◆utp..QOeek - 2016/07/09 22:58:25.27 OJjxbVPC0 288/359

「ヒカリ・ジツの弱点は!イヤーッ!」一瞬の隙を見計らい銃撃反動肘鉄を叩きこむ!「グワーッ!」「カラテエネルギーの消費が激しく連射が効かない事!」「イヤーッ!」重巡棲キはダメージを振り払い、左掌底を繰り出す!「次は!当たりさえすれば強力だが!」グラーフはアッパー銃撃で左ガントレットを跳ね上げる!撃ち出された閃光爆発は天井に炸裂!

894 : ◆utp..QOeek - 2016/07/09 23:03:38.18 OJjxbVPC0 289/359

「外した時のリスクが大きいことだッ!」「!」無防備になった重巡棲キの額に銃口を向ける!なんたるジツの特性を把握したグラーフの頭脳カラテか!ハイ状態から脱したといえど、いまだグラーフの体内にはBKT物質が駆け巡っているのだ!(((これで終わりだ!)))グラーフはトリガーにカラテを込める!

895 : ◆utp..QOeek - 2016/07/09 23:09:51.81 OJjxbVPC0 290/359

そう、それはまさに銃弾が発射されようとするほんの一瞬の間であった。グラーフのサイバネ・コンタクトレンズを赤い閃光が駆け抜けたのだ。その閃光の軌跡にあったリボルバーの銃身が切断され、ボトリと落ちた。(((………な)))ほぼ本能的にそらした顔の、頬の傷口が焼ける匂いが鼻をつく。「確かに、私のジツは連射も効かないし、外した時の隙も大きい」

896 : ◆utp..QOeek - 2016/07/09 23:17:14.48 OJjxbVPC0 291/359

右手を振りぬいた重巡棲キは静かに語った。「でも、こんな使い方もある」右手ガントレットの蛍光灯めいた発光体から、閃光の刃が飛び出している。やがてそれは光を失って消えた。「これも1度に一回斬りつけたら消えてしまう……それでも、銃身くらいなら簡単に斬れるから」

897 : ◆utp..QOeek - 2016/07/09 23:18:20.18 OJjxbVPC0 292/359


ーーーーーーーーーーー


898 : ◆utp..QOeek - 2016/07/09 23:27:07.71 OJjxbVPC0 293/359

ナチはキャノン砲によって開けられた穴から降り立ち、周囲を見渡す。様々な備品が積まれた棚がずらりと並んでいる。お目当ての倉庫の丁度上で先頭を行っていたという事なのだ。(((モッチャム!)))しかしナチは油断せず、ショートボウを展開してすり足で全身する。警備の者がいれば即座に射殺すのみだ。

899 : ◆utp..QOeek - 2016/07/09 23:30:58.27 OJjxbVPC0 294/359

「うっわ、何かヘンなのが来た」皮肉めかした言葉が聞こえた。ナチはそちらに弓を構え振り向く。その声の主は檻の中で肘を突き、横になっている。艦娘……違う。この雪めいて白い肌は深海棲艦娘だ。彼女の奥の目には、どこかものぐさなアトモスフィアがある。「侵入者ってあんた?ご苦労なこったねー」

900 : ◆utp..QOeek - 2016/07/10 00:04:20.69 gXsK7Fsx0 295/359

「何者だ」ナチは問うた。深海棲艦娘はあくびをした。「何者って?見て分かるでしょーに。あんたらのにっくき敵のひとりでーす。にしてもおかしな格好してんね」「貴様は捕虜か?」「捕虜?」深海棲艦娘は訊き返した。「ぷっ!戦争ゴッコでもしてるの?んなわけないっしょ、同じ深海棲艦娘なのにさぁ」

901 : ◆utp..QOeek - 2016/07/10 00:07:29.72 gXsK7Fsx0 296/359

「では懲罰中か。戦争のドサクサでスシでもつまみ食いしたか」「まだ言ってやんの。あんたの妄想にこっちも付き合わなきゃいかんのかい」「フゥーム」ナチは親指で顎を擦った。「ジャングルの奥地でイクサを投げ出した脱走兵の話は、聞いた事がある。ヤレヤレ!情けない奴め」「アー……もうそういうことでいいや、うん」

902 : ◆utp..QOeek - 2016/07/10 00:11:25.11 gXsK7Fsx0 297/359

深海棲艦娘は尻を掻いた。「とにかくあたしのことはアレだ、いないと思っていいよ。別に通報したりしないし、好きに家捜しすりゃいいんじゃない?ここって割となんでもあるっぽいし、あたしにゃ関係ないけど」「……」ナチは思案した。「私はナチだ。貴様の名前は?」「名前ぇ?駆逐水キだけど」

903 : ◆utp..QOeek - 2016/07/10 00:16:40.39 gXsK7Fsx0 298/359

「とにかくさぁー、アンタなにしにきたワケ?ドロボー?」駆逐水キは言った。「ドロボーではない!施設侵入のち物資強奪だ」「ドロボーじゃん」「やかましい、あるふたりと一時的に協力しここまで侵入してきたのだ」「艦娘?」「そうだ」「………」駆逐水キは目を閉じた。「中央指令室に反応がひとつ。少し離れてもうひとつ」

904 : ◆utp..QOeek - 2016/07/10 00:23:02.63 gXsK7Fsx0 299/359

「居場所が分かるのか?」ナチは言った。駆逐水キは起き上がり、体育座りした。「まあ一応、そういうジツとかなんとかだって。疲れるから使うのヤなんだけどね」「実際有用な能力だ。なぜ檻の中にいる?」駆逐水キは何度目かわからないあくびをしている。「ヨルノヤミガー、コワクテー、コワクテー…」「まじめに答えろ」「仕事がめんどいから」

905 : ◆utp..QOeek - 2016/07/10 00:30:11.08 gXsK7Fsx0 300/359

「職務放棄か」「そーだよ。バツとしてここでこうしてる。。何もする事ないし、寝てるってワケ」駆逐水キは再び寝そべった。「そろそろ行けば?」「……」ナチは檻に手をかけた。「ヌゥーッ……!」「ちょっ…タンマタンマ、なにしてんの?アタシのこと大破させるつもり?それはさすがに勘弁してよ」「大破?何をバカな」格子を捻じ曲げながら言った。「へあ?」「お前は一緒に来い。我がサヴァイヴァー・チンジフに!」ナチはそう言い放つと、さらに手にカラテを込めた。

906 : ◆utp..QOeek - 2016/07/10 00:30:41.84 gXsK7Fsx0 301/359

【KANMUSLAYER】

911 : ◆utp..QOeek - 2016/07/11 22:49:40.41 TILHI/EA0 302/359

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

912 : ◆utp..QOeek - 2016/07/11 22:50:34.39 TILHI/EA0 303/359

【KANMUSLAYER】

913 : ◆utp..QOeek - 2016/07/11 22:57:56.61 TILHI/EA0 304/359

「いやいやいやいや……サヴァなんとか?よく分からんけど、アタシ深海棲艦娘だよ?無理でしょ」「そんな些細なことは関係ない!」「ナンデ?」駆逐水キは心底不可解そうに目を見開いた。ナチは答えた。「そこで寝ていて、何になる」格子が曲がってゆく!「何になる、って、何にもならないけどさ…」困ったように頭をかく駆逐水キ。

914 : ◆utp..QOeek - 2016/07/11 23:02:23.78 TILHI/EA0 305/359

「セイカンヤの使命とかよくわかんないし、出世した重巡棲キ=サンが全然幸せそうじゃなさそうだし、仕事もやる気ないし、寝てるくらいしか……」「ナンデ?」今度はナチが問うた。「檻は空いたぞ。なぜ出ない?」「出る?」「当然だ」ナチは一歩下がった。そして言った。「お前がそこにいる理由は何も無い!しかしこの檻の外には自由がある!」

915 : ◆utp..QOeek - 2016/07/11 23:06:27.14 TILHI/EA0 306/359

「……まあ、そりゃ、無いけど」「ならば共に来い。サヴァイヴァー・チンジフはお前のような戦力を必要としている。自由獲得の為の戦力を!サヴァイヴァルの力をな!」「自由……ねえ」駆逐水キはのそのそと檻から出てきた。 「私たちは組織の道具では無い。わかるか?サヴァイヴァルする為の命だ!厳しいサヴァイヴァル環境に適応できる肉体と力を持つ。ゆえにサヴァイヴァルする。私たちはサヴァイヴァル集団であり、サヴァイヴァルの為に戦う!そして自由を手にする!」ナチは叫んだ。「お前もそうなのだ!」

916 : ◆utp..QOeek - 2016/07/11 23:11:10.85 TILHI/EA0 307/359

「やっぱり何言ってんのかわかんないわ、アンタ」駆逐水キは檻から出ると、その場で大きく伸びをした。「んーっ……でもさァ、寝る・食べる以外に、やることないと思ってたけど、自由に生きる。その言葉、嫌いじゃないかも」「そうだ!自由を勝ち取るのが私たちなのだ」ナチが言った。「深海棲艦娘であろうが敵であろうが関係ない。今からお前は私たちの家族になったというわけだ!」

917 : ◆utp..QOeek - 2016/07/11 23:19:11.90 TILHI/EA0 308/359

「家族、ね。へへへ……もうツッコむのも疲れてきちゃった」「よし。作戦再開だ、駆逐水キ=サン。我々は物資や必要としている」「わかりくいっちゅーに。メディキットだの弾丸だの燃料とかでしょ?この部屋にあるよ、そこのコンテナ」「よし!でかした!」ナチはコンテナに飛びつき、蓋をこじ開けた。中には弾丸や燃料が満載!空母娘用のボーキサイトもある!さらに壁際の棚にヨロシサンエンブレムの箱を発見!メディキットだ!「モッチャム!」バイオフロシキに詰め込む!「待っておれマヤ!イムヤ!リュウジョウ!アイオワ!」

918 : ninsatu - 2016/07/12 00:04:33.05 YrIlK1ZE0 309/359


ーーーーーーーーーーーー


920 : ◆utp..QOeek - 2016/07/12 00:10:21.43 YrIlK1ZE0 310/359

「グワーッ!」グラーフは重巡棲キの右ストレートをまともに受け、大きくのけぞった。「ヒヒーッ!へばってんじゃねーぞォ!」すかさず襲いかかる集積地棲キの遠隔操作マシンガン連射、クローン軽巡洋艦とクローンヤクザ妖精の銃撃の雨!「ぐ…!イヤーッ!」グラーフは連続側転で何とか逃れるが、いくつかの弾丸が身体を掠め、傷つけてゆく!

921 : 以下、名... - 2016/07/12 00:19:17.18 yh7fhVijo 311/359

酉割れとるやん

922 : ninsatuでやってきた - 2016/07/12 00:29:57.22 YrIlK1ZE0 312/359

◆グワーッ酉割れグワーッ!担当者はもういない。別酉で再開しますがほんにんなのであんしんしてね◆

923 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/12 00:30:43.79 YrIlK1ZE0 313/359

「チッ!ムダにしぶとい奴だ。重巡棲キ=サン!とっとと仕留めんぞ!」「わかってる、これ以上モノも壊したくないし」グラーフはわずかに残る遮蔽物の裏で身体中の激痛に耐えた。(((ぐうう…!銃は片方しかない、敵は大勢、残弾は少ない、これはマジでシリアスすぎるぞ…!)))その間にも着々と遮蔽物は弾丸に削り取られ、重巡棲キが接近してくる。もはや前門のタイガーに後門のバッファローたる状況だ!

924 : ◆utp..QOeek - 2016/07/12 00:41:24.34 YrIlK1ZE0 314/359

しかし敵は容赦なく侵入者を排除しにかかる!「イヤーッ!」重巡棲キは遮蔽物に向け閃光爆発を放つ!「イヤーッ!」吹き飛ぶ遮蔽物に紛れ、飛び出したグラーフが連続銃撃!重巡棲キは咄嗟に銃撃をガードする、だがそのまま飛びついたグラーフは膝蹴りを繰り出す!「イヤーッ!」「グワーッ!」重巡棲キは苦悶!しかし、追撃しようとするグラーフの身体にガッチリと組み付いた!「ぐっ!?」「っ…!もう、終わらせる。集積地棲キ=サン、私ごと撃って」

925 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/12 00:47:22.85 YrIlK1ZE0 315/359

「オイ!大丈夫なのか?」「心配ない、この角度なら。それに少しくらいなら当たっても平気」グラーフは集積地棲キたちの銃口に背を向けている状況である。アブナイ!このままではハチの巣にされてしまうぞ!「ヘッ!それじゃあ遠慮なくいくぞ!動くなよ!」「ええ」マンリキめいた力でグラーフを逃さんとする重巡棲キ!(((おいおい……これはもう、ダメか?)))

926 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/12 00:55:53.50 YrIlK1ZE0 316/359

グラーフが大爆発四散を覚悟した、その時だった。「「…あばっ!?」」誰かのうめき声が聞こえたと思うと、集積地棲キの足元に銃弾が跳ね返った。「アイエッ!?」慌てて転びそうになる集積地棲キ!「どうしたの?早く撃って…!」「ま、待て!ゴルァ!ヤクザ妖精ども!どこ撃ってん……え?」彼女は絶句した。ヤクザ妖精が泡を吹き、クローン軽巡洋艦が火花を散らし痙攣している。何が起こったのだ!?

927 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/12 01:05:30.04 YrIlK1ZE0 317/359

「ドーモ皆さん!」扉をこじ開けて侵入したのは新たなエントリー者2名!「私はサヴァイヴァー・チンジフのナチだ。そしてこっちは!」編笠を被ったマリーン迷彩装束の艦娘が指し示した先には、床に膝をつけ、意識を集中させていた深海棲艦娘。「うあー……やっぱ久々にやるとキツイわ。ドーモ、駆逐水キです」立ち上がった駆逐水キはけだるげに鼻血を拭う。しかし、確かな意思をもってアイサツした。

928 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/12 01:06:20.59 YrIlK1ZE0 318/359

【KANMUSLAYER】

929 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/12 01:09:00.22 YrIlK1ZE0 319/359

(親愛なる読者の皆さんへ : 途中で酉バレインシデントがあり、担当者は当然いなくなった。作者も眠気が限界でやばいのでねる。次回からはこの新酉でやっていくのでごりょうしょうください。大変ご迷惑おかけしましたのだなあ。なおもう少しだけ続く。以上です)

932 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/14 17:56:27.81 rEtvi43NO 320/359

◆◆◆◆◆◆◆◆

933 : ninja - 2016/07/14 17:57:20.53 rEtvi43NO 321/359

【KANMUSLAYER】

934 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/14 18:05:24.30 rEtvi43NO 322/359

集積地棲キはほんの一瞬だが絶句した。しかし、すぐさまその表情は憤怒に包まれる!「てめっ……駆逐水キ=サン!何やってやがんだ!?」駆逐水キはテレパス索敵能力に長けた深海棲艦娘だ。さらに、それほど強度は強くないが、テレパスを精神攻撃に利用することもできるのだ。クローン妖精やクローン深海棲艦数体程度なら無効化が可能である。

935 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/14 18:12:57.96 rEtvi43NO 323/359

しかし拭った鼻血から分かるように、ダメージのフィードバックを鑑みればそう多様できるジツではない。しかしなぜそうまでして仲間である自分たちを妨害してきたのか?「んーとね、ちょっとアイサツしとこうと思って。最後の」「はぁ!?」駆逐水キはいつも通りのけだるげなアトモスフィアのまま答えた。何を考えているんだコイツは!?最後の?意味がわからぬ!

936 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/14 18:36:32.29 kzGKxYkw0 324/359

「待って…!」グラーフと組み合いながら重巡棲キは言った。「私たちから、セイカンヤを抜けるつもりなの…!?」「そうだよ」その先の言葉はナチが引き取った。「そういう事だ!駆逐水キ=サンは我がサヴァイヴァー・チンジフに引き抜かせてもらった。そしてこの物資は駆逐水キ=サンの退職金代わりに頂いていくぞ!」そしてグラーフを指差した。「それと貴様にはもう1つ貸しだな!」

937 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/14 18:43:22.16 kzGKxYkw0 325/359

「考え直す気はないの?あなたは深海棲艦娘。その使命を投げ出してはダメ…!」「ゴメンね重巡棲キ=サン。あたしもやりたいことができたの。だからサヨナラ2人とも、お仕事ガンバって」「ということでサラバだ!」駆逐水キはナチに連れられ、中央司令室から走り去っていく。瞬間、重巡棲キを襲ったのはストレス頭痛!頭がスイカめいて割れそうなほどの頭痛である!(((……とんでもないことになってしまったわ。追う前に、まずは)))

938 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/14 18:49:19.16 kzGKxYkw0 326/359

重巡棲キは頭痛を振り払い、目の前のグラーフを睨みつけた。「急用ができたわ。あなたをすぐさま大破させる…!」ダメージのせいで力が上手く入らないグラーフに、無理矢理右掌を近づけてゆく。「ぐうっ…!」掌の閃光が徐々に大きくなる。アブナイ!自傷覚悟のゼロ距離閃光爆発だ!(((恩だと言っても…このヤバイ状況には変わりないじゃないか!もう1恩作ってくれよナチ=サン!)))

939 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/14 18:56:13.57 kzGKxYkw0 327/359




「W a s s h o i ! !」



940 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/14 19:02:14.39 kzGKxYkw0 328/359

しかし次の瞬間!勇ましいシャウトと共に、赤黒い風が中央司令室にエントリーした。その赤黒い風は勢いのまま重巡棲キに向かってトビゲリを放つ!「イヤーッ!」「グワーッ!?」意識外のアンブッシュを受け、吹き飛ばされる重巡棲キ!「イヤーッ!」さらにグラーフを追撃しようとしていた集積地棲キに向かってカラテ砲撃!「うお!?イヤーッ!」咄嗟に巨大ブレーサーでガードする集積地棲キ。新たなるエントリー者は怒りに燃え、アイサツする!「ドーモ皆さん、センダイです。敵艦殺ろすべし!イヤーッ!」立ち上がった重巡棲キに、センダイは間髪入れず躍りかかった!

941 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/14 19:18:19.81 kzGKxYkw0 329/359

「イヤーッ!」センダイの右フックをガードし、重巡棲キは死神と相対す!「ドーモ…重巡棲キです。今更押っとり刀で駆けつけたという訳ね」「オヌシを大爆発四散させるのに遅いも早いもない」センダイは重巡棲キにとって、妹である重巡ネ級を大破させ捕縛した忌むべき仇敵である。怒りを募らせ、センダイを睨み返す。「……あなたには個人的な怨みがある、容赦はしない!イヤーッ!」

942 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/14 21:44:58.10 kzGKxYkw0 330/359

踏み込んだ重巡棲キは掌底を繰り出す!さらに閃光爆発を放ち一瞬で勝負を決めるつもりだった、しかし!「イヤーッ!」センダイは高く跳躍し、放たれた閃光爆発を回避!そのまま急降下ストンピングを重巡棲キの頭に向けて放つ!「イヤーッ!」「イヤーッ!」これを重巡棲キは右手ガントレットで受け止める!即座に右手から閃光の刃を発生させ、頭上のセンダイを斬り上げた!「イヤーッ!」

943 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/14 21:51:21.57 kzGKxYkw0 331/359

なんたるジツを出し惜しみせずセンダイを大破させんという怒りの意志か!だがすでに、センダイが頭上から消えていた。「!?」重巡棲キは目を疑った、センダイの脚が自分の首に巻きついている!空中から倒れこみながら重巡棲キの首筋を脚で絡め取り、逆立ちの姿勢になったセンダイは身体を捻ると、重巡棲キを後方に投げ飛ばした!「イヤーッ!」「グワーッ!」

944 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/14 21:59:25.99 kzGKxYkw0 332/359

(((くっ…!何故ヒカリ・ジツの爆発と斬撃を避けることができたの!?……とでも思ってるんじゃないかね?)))その様子を見て、傷口を抑えて荒い息を吐いていたグラーフはニヤリと笑った。彼女は遮蔽物に隠れるごとに、サイバネコンタクトのブリンク(まばたき)・タイピング機能を使い、センダイのIRCに敵のジツの詳細を送信していたのである!ゴウランガ!なんたる優れたる状況判断能力!

945 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/14 22:05:19.31 kzGKxYkw0 333/359

「おいゴラ白髪野郎!休んでんじゃねーぞォ!?」憤怒のあまり、眼輪筋を震わせている集積地棲キは室内の防衛用マシンガンを全展開し、グラーフに差し向けた!「おいおいおいおい…!あまりにもオーバーキルじゃないかね?」「動くんじゃねーッ!テメェのようなしぶといヤツにはオーバーキルが妥当なんだよ!ここまでコケにされたのは始めてだ!テメーら2人ともまとめてぶっ潰さなきゃ気が済まねえッ!」

946 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/14 22:12:21.24 kzGKxYkw0 334/359

反射的に残った片方のリボルバーを向けるが、あまりある火力の差は避けられぬ事実!「バカめ!そんな豆鉄砲で殺れると思ってンのか!?」しかしグラーフは口角を上げた不敵の表情のままである。「やってみなきゃあ分からないだろう!」ためらわずトリガを引………しかし!「イ……がはっ!?」突如として吐血するグラーフ!鮮血が床に飛び散り、リボルバーを持つ手がもつれる。ナムアミダブツ!ダメージの累積か!?

947 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/14 22:16:55.32 kzGKxYkw0 335/359

「ウッヒャヒャヒャヒャーッ!自分のダメージも分かってなかったのか死に損ない野郎がァ!」身構えていた集積地棲キはふらつき、崩れ落ちようとするグラーフを見て陰気に笑った。すでに立っていることすら困難だったのだ、もはやグラーフに逃げ場無し!「簡単倒れさせねーぞ……銃弾で!愉快なダンスを踊るがいーぜェーッ!ギャハハハハハハハーッ!!死ね!グラーフ=サン!死ねーッ!」

948 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/14 22:25:30.49 kzGKxYkw0 336/359

集積地棲キは排除コマンドを入力し、グラーフをビーハイヴめいて滅多撃ちにせんとした。そして勝利を確信した目で、グラーフを見た。その目から光は消えていない、落としかけていたリボルバーが握り直され、すでにトリガは引かれている。(((………え?)))集積地棲キの泥のように鈍化したニューロンは、そのトリガが目にも留まらぬ速さでクリックされているのを捉えたが、すでに銃弾は吸い込まれるように、自分の傍にそびえ立っている、CPUを保護する物理ファイアウォールを貫いていた。

949 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/14 22:32:35.43 kzGKxYkw0 337/359

そして再び現実時間に引き戻された集積地棲キは、火花を散らす外付けセキリュティCPUを視界に認めたのだ。「ちょ……待」CLAAAAAAASH!!!次の瞬間、火を上げて爆発粉砕するCPU!そこに多重直結していたのは誰だ?そう、紛れもない自分である!「あ………アバババーッ!アババババババババーッ!!??!?」それ同時に集積地棲キは鼻血を噴出!眼鏡が粉々に粉砕!そのまま倒れこむと陸に上がったマグロめいて白目を剥き痙攣し始めた。コワイ!

950 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/15 01:02:51.95 AM4vVijT0 338/359

◆一旦寝休憩。1000まではおさまるのでごあんしんください◆

954 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/17 11:53:19.79 ICWfEj1X0 339/359

◆2日おいて再開、もう終わります◆

955 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/17 12:00:31.71 ICWfEj1X0 340/359

多重ログインは実際システムを支配できるといっても過言ではない、しかしその分、ファイアウォールが物理的、または電子的に破壊されてしまった時のニューロンへのダメージは凄惨たるものになる。咄嗟にいくつかの接続を解除集積地棲キでさえも、ほぼ大破といってもいいほどに戦闘不能!「……ははは、少しフラついてしまったよ。わざとやった訳じゃないんだよ?ほんとに」

956 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/17 12:06:06.19 ICWfEj1X0 341/359

無論これは嘘だ!グラーフは吐血でさえも口の中の傷口から血を溜め吐き出しことで偽装、集積地棲キを油断させてからのハヤウチでシステム本体のCPUを仕留めたという訳である。「どーだいセンダイ=サン?まだまだ私も現役だな!今助けるぞ!」グラーフは重巡棲キとカラテを打ち合うセンダイを援護するべく振り向いた。

957 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/17 12:13:40.63 ICWfEj1X0 342/359

しかしその時!『ピガガガーッ!!!!!システムに深刻深刻深刻な!ダメダメダメダメージドスエドスエドスエドス!!!』火を噴くUNIXから悲鳴めいたマイコ音声が鳴り響いた。どうやら完全破壊はされておらず、システムに誤作動が起きているらしい。『状状状況判断なななな!この施設をををを機機機機密保持重ててん点点!爆破しますドドドドドスエ!カラダニキオツケテテテテテテネ!!!」

958 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/17 12:18:55.99 ICWfEj1X0 343/359

「へ?」グラーフはマメデッポーをヘッドショットされたような顔をした。爆破?今、爆破と聞こえたのか?グラーフは顎に手を当て整理した。(((BKTは……うん、効いてないぞ。極めてクリアでクレバーだ。つまりそういうことは……爆破するってことか!この施設が、成る程な!)))手をポンと打って納得する。しかし次の瞬間、グラーフの全身から汗が滝のように吹き出した。

959 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/17 12:29:21.19 ICWfEj1X0 344/359

「おっ……おいおいおいおいおいおいおい!?ウソだろなんてこった!!せ、センダイ=サン!マジヤバイぞーッ!この施設がフッ飛ぶ!」すでにあちこちで小爆発が発生している!施設の爆破隠滅が開始されているのだ!当然センダイも、重巡棲キもこの危機を把握している。「「イヤーッ!」」空中でケリ・キックを交差し、着地したセンダイは追撃をしなかった。このままカラテを続けていれば爆発に巻き込まれるのは免れない。さらに、重巡棲キにトドメを刺せないのは名残惜しいが、なにより懸念するべき事があったのだ。

960 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/17 12:36:05.54 ICWfEj1X0 345/359

「ま、まさかこんなことになるとは思ってもみな……ぐうッ!?」バックフリップで引き下がってきたセンダイにグラーフが駆け寄ってきた、しかしうめき声を上げたかと思うとガックリと膝をついた。「大丈夫ですか」「だ、大丈夫!大丈夫……じゃないな、いたたた…」激しい戦闘の末、ついにBKT成分が切れたのだ。頭がフラつき、足がもつれ立っていられない。しかし容赦なく継続する各所の小爆発!

961 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/17 12:41:59.76 ICWfEj1X0 346/359

「すまんがセンダイ=サン……肩を貸し」「シツレイします」「うおっ!?」センダイは返事をしながら、グラーフをいきなり担ぎ上げた。「おいおいおいおい!一体何を……」センダイは相撲の米俵かつぎめいてグラーフを肩の上に抱え、出口に向かって駆け出した!「おいおいおいおい!?」「ルートは確保しています。このまま退避を」

962 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/17 12:49:45.83 ICWfEj1X0 347/359

「待った待った下ろしてくれよ!なにもこんな情けないカッコで……」「イヤーッ!」「グワーッ!」グラーフの不満は崩落した天井を飛び越えたセンダイの着地衝撃によって遮られた。「ああ……すまない」「問題ありません」もはやグラーフはされるがままだった。(((結局こんな私らしい情けない終わり方になってしまうのか……とほほほ)))グラーフはしょんぼりとした表情のまま、後方で起こる小爆発を無力そうに眺めるのだった。

963 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/17 12:50:11.52 ICWfEj1X0 348/359


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964 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/17 21:48:16.36 ICWfEj1X0 349/359

「ハイ、ゴメンナサイ。基地は手放しました。自爆機能を偶然利用され…ハイ」重巡棲キは携帯IRCで黙々と本部への報告を行っている。燃え盛るかつての機密工場を見つめながら。「ハイ、分かりました。それともうひとつ……駆逐水キ=サンが、脱走しました。ハイ、ホントです。あなたに冗談は似合わない?冗談ではありません、ハイ」

965 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/17 21:53:08.42 ICWfEj1X0 350/359

あの後、重巡棲キも当然爆発炎上し始めた施設から脱出した。ここは緊急脱出用小型クルーザーの上だ。イクサが始まり隅で震えていたハッカー妖精たちに操縦を任せ、重巡棲キは客室で淡々と報告を続ける。ただ事実を述べているだけだが、電話の向こうの離島棲キの態度がどんどん怒りに満ち溢れていくのをひしひしと感じられずにはいられない。

966 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/17 21:57:32.55 ICWfEj1X0 351/359

しかし電話を切ることは許されない、横に寝かされている未だ気絶中の集積地棲キの鼻血を拭いてやりながら、重巡棲キは報告を続けた。「ハイそうです。ハイ、ゴメンナサイ。どうしようもありませんでした。どうしようもなくない?為せば成る?いえ、ハイ、その通りです。ハイ、ゴメンナサイ」怒号が通話口を駆け抜けてくる、携帯IRCを少し耳から離して重巡棲キは淡々と謝罪した。

967 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/17 22:06:05.10 ICWfEj1X0 352/359

重巡棲キは思った。基地は爆発してなくなった、人材を失った、妹の仇を取りそびれた、同僚が中破した(おそらく修理費用は連帯責任で2人の給料から引かれる)。すべて自分の責任として扱われるのだ。なんでこうなってしまったんだろう?そう思うと涙が一粒ぽろりと落ちた。しかしそれをすぐに拭うと、ただただ携帯IRCに向かって謝罪し続けた。「ハイ、ゴメンナサイ……ぐすっ、ハイ、なんでもありません」仕事はつらい。でも逃げられない。それが人生なのだと重巡棲キは思った。

968 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/17 22:07:04.09 ICWfEj1X0 353/359

【シュツゲキ・レイゴウ・オペレイシヨン】終わり

971 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/18 00:13:06.29 84BHrd6V0 354/359

(親愛なる読者の皆さんへ : パワリオワー!ついに完結しました。とちゅうで誤字脱字がそのままだったり、作者が魔に襲われたり、更新ペースが遅くなったり、酉がばれたりしてすいませんね?次のエピソードンはすでに考えついているのでごあんしんください。以上です)

977 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/18 22:33:48.08 84BHrd6V0 355/359

◆艦◆カンムス名鑑#70【集積地棲キ】シンカイセイカンヤ所属、ヤバイ級のハッカー深海棲艦娘。システムへ多重ログインし、徹底的に破壊もしくは完全に掌握できる程のウデマエを持つ。優秀だが極めて性格に問題があり、激昂すると周りが見えなくなる。フ・クランに所属しているので男どうしの顔が近いのが好き。長身長髪でやや平坦。履いているソックスは同期の重巡棲キとおそろい◆艦◆

978 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/18 22:42:22.97 84BHrd6V0 356/359

◆艦◆カンムス名鑑#71【駆逐水キ】元シンカイセイカンヤ所属の深海棲艦娘。セイカンヤ内で数少ない感知系のジツ、サクテキ・ジツを使うことができる貴重な存在。負担がかかるが精神攻撃も可能。しかしその態度は極めてやる気がなく、ぐうたらな皮肉屋。暇なときは片手に巻いている青いリボンをいじる癖がある。カラテは専門外。寝転んでばかりだが、スタイルが割と良い◆艦◆

979 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/18 22:49:54.74 84BHrd6V0 357/359

◆艦◆カンムス名鑑#72【重巡棲キ】シンカイセイカンヤ所属、中間管理職めいた立場にある深海棲艦娘。理知的かつ合理的な思考と、高い指揮能力を持つ。カラテも強く、専用装備を用いたヒカリ・ジツのワザマエは時期シックスゲイツ候補と評価されている。しかしその立場に大変締め付けられており、いつ何時も気苦労が耐えない。最近、いつも慰めてくれる妹の重巡ネ級と離れ離れになってしまったので寂しい思いをしている◆艦◆

980 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/21 21:07:48.83 FU8EDqYI0 358/359

◆新スレイヤー
【ガール・フー・イズント・ボーイ・アウェイクン】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1469102640/
ワオワオー!新しいスレッドです。最初のエピソードオーは新規かにゅうしゃ獲得のための読み切りになります。とにかくいますぐしよう!以上です◆

983 : ◆IFQSknf/N. - 2016/07/22 00:47:42.92 pj81iAH00 359/359

(親愛なる読者の皆さんへ : シリーズの継続が実際長くなってきたのでさらなるニュービーを増やして行きたい。なので既読者の皆さまの活発化コメントーンやSS紹介スレなどにステマってくれるとうれしい。なおこれは決して読者獲得への強制圧力ではないのでごあんしんください。これからもよろしくお願いしますのだなあ。以上です)

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