あやめ速報-SSまとめ-

？？「はぃ？」

？？「べ、弁護士さん　艦娘刑って」

「判決　被告人を2年6か月の艦娘刑に処す」
この言葉に頭は真っ白となった。

突然の逮捕　留置所　取り調べ　この一か月半驚きの連続であったがこれには驚いた

まさか罰金刑じゃない…？

しかも執行猶予もない…？

だいたい刑の名前がわけわかんない…？

弁護士「あー　刑務所に入れられる代わりに艦娘として徴兵される制度」

弁護士「更生の可能性が高く、適性ある女性受刑者専用の制度ですわ　戦果によって刑期も短縮されますよ

弁護士「要は無駄飯食わせるより兵隊としてこき使おうということですなぁＨＡＨＡＨＡ」

国選弁護士はニヤニヤ説明をする　さすが国選、やる気のやの字もない

？？「そうじゃなくて執行猶予は！？」

弁護士「あんた強盗致傷犯なんだからそんなもんつきませんよｗｗｗ」

？？「私酔った勢いで遊園地で着ぐるみの頭もぎ取っただけ」

弁護士「力ずくでね」

？？「…はい」

弁護士「着ぐるみって中の人いるでしょ？」

検察官「その時中の人はころんで膝をすりむいた」

裁判官「他者から力ずくでもの取ってケガさせたら強盗致傷ですなぁ」

弁護士「よりによって相手がミ○キー」

？？「普通、普通そんなの酒の上での失敗談として」

検察官「誰それ？　ってキャラだったら傷害で略式。罰金刑だけどねぇ　社会的影響が違う」

弁護士「判決ってなにやったかじゃないのね　検察官が起訴する時のやる気と罪名で決まるの」

検察官「うちの娘がミ○キー好き」

弁護士「あ、控訴するなら着手料再度ね　覆る率は消費税以下だけど」

裁判官「では　閉廷！」


？？（裁判が終了すると私はすぐに病院へと護送され艦娘改造手術を受けた）

？？（新しい顔　新しい体　新しい名前）

？？（私はこうして艦娘　高速戦艦霧島となった）

提督「よく来てくれた　我々は君のことを歓迎する」

霧島「…はぁ」

高速戦艦霧島　と、なった私は研修を終えるとすぐに南方に輸送
迎えてくれたのは一組の男女

提督「私は提督　まぁ看守のようなものだ」

金剛「HEY霧島！　あなたの姉金剛デス　ヨロシクオネガイシマース！」

霧島「姉？」

提督「各鎮守府ではエルダー制をとっていてな　疑似の姉妹関係を構築している」

金剛「四人姉妹ということになるネー　刑期明けまでヨロシクー」

大体状況は理解
この明るくとっつきやすい感じの美人が直属の先輩ということらしい

前の会社の陰口大好きお局さまより百倍も好感触ではあるが…ここにいるということは

霧島「金剛さん…金剛姉さまもなにか犯罪を？」

ずばっと聞いてみた

金剛「yes ワタシ英国籍なのに偽装パスポートで日本にいたねー　日本人の旦那様ほしくテー」

霧島「その程度なら強制送還では？」

金剛「太平洋戦争時は英国＝敵国　そんなことインポッシボー」

金剛「でも～　そのおかげで提督と運命の出会いを！」

一理あり
でも敵国民が着任してるのはいいんだろうか
あと提督は微妙に腰が引けてますよ金剛お姉さま

提督「あと待遇についてだが」

金剛「基本的に刑務所と同じ　衣食住は保障するけど最低賃金は適用されないヨー」

提督「ＭＶＰで一週間　敵艦1回撃破で1日刑期が短縮される。働きに期待する」

金剛「Congratulations！　戦艦は戦果が稼ぎやすーい！」

提督「でも難マップに派遣されやすい」

金剛「dead endの可能性大ー　……前の霧島も　あ、いやなんでもないネー」

あ、今アカンこと言われた
控訴しとけばよかったかも…

提督「じゃ　とりあえず他の着任者と一緒に現在のメンバーと顔合わせするから」

金剛「雑居房式だから寝床は他人と一緒　仲良くしなきゃNo！」

説明が終わり、同期着任者と一緒に艦娘達の前、檀上に並ばされました

他の着任者は4人か……うわっやっぱしガラ悪いのがいて話かけてきます

？？「フフフ　オレの名は天龍　怖いか？」

？？「木曾ということになっている　戦艦だからって舐めるんじゃねーぞ」

霧島「眼帯…　あのーお二人はいったい何を？　傷害？ 暴行？　ま、まさか殺人では」

天龍「言えないねぇ」

木曾「ま、言わぬが花ってことさ」

霧島「その筋のお方でしょうか　へへぇ」

提督「無駄話はそのへんにしとけー」　

提督「じゃ5人とも自己紹介　艦名と罪状を名乗るように」

天龍＆木曾「えっ」

天龍「あ、あの天龍ッス　罪状は……アニメの違法アップロードでして」

木曾「木曾だ　匿名掲示板に爆破予告したら…」

霧島「おい」

霧島「っていうか本当に罪状まで言うんですか？」

提督「全員似たようなもんだ誰も引かないから」

まぁ確かに留置所でも実質強制で言わされましたね

ええい、ここは思い切って！！

霧島「じゃ　ええと強盗致傷で捕まりました　でもそんなひどいことしては！」

「強盗！？　仲間ー」　「あ、私も強盗致傷」　「こっちもだよー」

わー　仲間がいっぱーい　
嬉しくねぇー

霧島「……とまぁ着ぐるみの頭にマイクが付いているとも知らず叫んでたら現在位置がバレて」

霧島「…というわけです。　終わりなので残りの2人も自己紹介どうぞ」

大井「大井です　婦女暴行です」
愛宕「私は愛宕　児童虐待でーす　よろしくね♪」


全員が静まり返りました

二人が
『合意で百合しただけなのに相手が豹変して告訴された』
『かわいい男の子に告白されて思い出に優しくしてあげたらアレ児童虐待になるのね　知らなかった』

と事件の詳細を話すまで空気が凍りました

ちょっとだけ追加　　

『初出撃』

提督「戦艦は当然旗艦、一部隊を任せるから頑張ってくれ」

とかいきなり無茶振りすぎだろおい
私は適性診断で霧島という戦艦の魂を宿す適性があっただけで、その霧島が旗艦となるべき戦艦だっただけで
つまり任されても困りますレベル１です

霞「ったく見てらんないわ！　ほら、陣形の組み方はこう！　波が来たら姿勢はこう！」

随伴として付けられた5人のロリのうち1人が色々教えてくれるのでなんとか
口は悪いが心根はやさしそうな子
…でもここに居るってことは

霧島「ツンデレ風パンチが傷害にでもなりました？」

吹っ飛ぶ級に殴ったら普通に障害事件

霞「は？　なにそのつんでれって　私はその…」

霞「急いでる時に職務質問されたからちょっとイラっときて…」

霞「ち、ちょっと振り払おうとしただけなんだからね！　突き飛ばす気はなかったんだからね！」

霞「そしたらいきなり手錠が…　冗談じゃないっ…た…ら」（涙）

やっぱ殴ってるじゃん

朝潮「霞は乱暴すぎると思います　それでは人から誤解されます」

霰「そうなの……　もっと素直になるの…」

霞「ううう、うるさいわねぇ！」

霧島「ふふっ。ところであなた達二人はなにやったの？　かわいく見えて悪い子ねっ♪」

朝潮「はっ　浮浪していたところ補導されました」
霰「戦災孤児は行くとこなんてないの……　軍か遊郭の二択なの……」

霧島「………」

不幸な状況下でも励む姿にお姉さん感激　眩しい！　いや、人生って…

霧島「そ、そちらのあなたはなにやっちゃったのかなー？」

取りあえず話をそらそう

荒潮「うふふふふ」

答えてよ

もう一人の子が「カツアゲでジャンプさせてたらお廻りが来て気分サゲサゲ…」
という話をしていたところ敵の一軍と遭遇しました

「左舷、敵艦発見！　攻撃します！！！」　
「んちゃ」
「ふんっ馬鹿みたい」
「それ！どーん！」
「仕方ないわね～」

各人指定セリフ朗読しつつ攻撃
皆さん刑期短縮ＭＶＰのため必死です

随伴駆逐艦の力で敵艦隊は壊滅
残りは大破状態ただの的が１騎

初出撃の私でもあれくらいなら

Ｓ勝利　やった！
ＭＶＰは…あれっ？　なんで私？

あ、なんか駆逐艦達の目が冷たい

霞「そうだった…そうやってあんたたちはＭＶＰを持っていく」

朝潮「ＭＶＰは最多ダメージ。規則ですから　理不尽でも仕方ありません」

霞「はっ、なんで戦艦なんか助けようと思ったのかしら。あたしってホントバカ」

なにこれ気まずい

あ、こちらを睨んでいない子もいた

霰（……どうせ出所したって帰るとこなんかないの　同じなの）

『鎮守府内の食事』

１日３回決まった時間
ご飯は麦７：米３　たまに粟とか雑穀が交じります

留置所ではどこかの仕出し弁当だったので白米でしたがついに麦飯
おかわりは禁止　
もっともおかわりをするほど御飯がすすむおかずはありませんが…

もっとも一部の元浮浪児系駆逐艦に言わせると
「このような豪勢な食事……なんという奮発　正月にはおせち！？」
「うひひひひ　麦飯にお米が入ってます！　いひいひひひひひ」
「カレーが週に一回も…　月に一回ではないのかい？　そうか。嬉しいよ」

などと大好評

だけど一部の方にとっては耐えがたい苦痛なようで…

赤城「た～り～ぬ～　く～わ～せ～ろ～」
加賀「そう…　おかずが味噌汁と味の薄い煮物にちくわ天だけ…　そう…」

あの２人には近づかないほうが賢明です。

シャリあげされます。

シャリあげってなにかって？　

留置所も刑務所も中は完全体育会系。同じ雑居房に１日でも先に入った者が先輩で絶対正義

普段の食事などの一部を先輩命令で供与するという少年刑務所で多く見られる制度です

あっ、またサラの子がその被害に……

赤城「おうおうおう　新入りちゃん　そのちくわ天お姉さんにわけてくださいな」
加賀「煮物を所望します　断れば全員で教育いたしますが如何に？」

武蔵「あん？」

赤城「…ところで姐さんどちらの組の方で
加賀「その佇まい　お目にかかれて気分が高揚します」

ヤーさんは別格で新入りでも特別待遇
ただし、自分から組員と名乗っても真偽は不明。でもオーラでわかる…らしい

霞「あんたも最初はそっちかと思ったわよ」

……え？　なんで？　外見（整形）優しそうじゃないですか

霞「朝雲から戦艦霧島の武勇伝はかねがね…」

年代がバラバラなのは仕様（）です


『暇』

出撃がない時間　囚人こと私たち艦娘は自らの雑居房で待機

下手すると一ヶ月くらい何もしないで待機

レアだけど能力平凡駆逐艦なんて多くが待機したたま刑期を満了するようです

……ものすげー暇

官本（鎮守府所有の本）日に３冊まで貸出可能
や
差し入れの本（差し入れてくれる人がいればの話）くらいしか娯楽は用意されておりません

必然的に娯楽は同室の相手との会話となります。

比叡「それで手料理をふるまっただけなのに泡吹いてそのまま……過失なのに懲役７年なんて」

榛名「榛名はただ連帯保証人になっただけです　共謀してたわけじゃないのに」

多く話されるのは罪状についての会話です。

その場にいる者の罪状　あと他の部屋の奴でも珍しい罪状についてはよく話題に

金剛「そういえば今度来たポーラの罪名聞いたですカー？」

榛名「いいえ、榛名は存じません」

比叡「見た目的には……毒殺？」

金剛「ブッブー　正解ワー……公然わいせつ罪」

金剛「なんでもｗｗｗ　日伊の友好パーティで泥酔して全裸でシコ踏んだらしいデースｗｗｗ」

榛名「こｗくｗじょｗくｗｗｗｗ」

比叡「不浄負けですねー」

金剛「『二カ国の友好を深めたかった　同姓の相手が裸になってぶつかり合うのが伝統と聞きました～』と証言」

榛名「ファーｗｗｗ」

比叡「個室でぶつかり合えば犯罪にならなかったのに…」

基本的に話題はないので会話は尋常じゃなくしょーもありません

金剛「霧島は最近一緒に出撃した子で珍しいことやったのはいませんでしたカー？」

霧島「えーとですね　ローマさん　これもイタリアの」

金剛「oh　あの洋風の霧島ネ？」

霧島「『イタリア人はナポリタン見ると怒るんでしょ？って言ってきたのは貴様が100人目だ！！』
　　　とオッサンを殴打して逮捕」

榛名「ゲラゲラゲラゲラｗ」

金剛「洋風のも怒らせると怖いネー」

比叡：ガクガクブルブル

霧島「なにか？」

※初日　トッピング（新人の飯に変な調味料かける伝統行事）してきた比叡を腹パンＫＯ

比叡「善意だったのに…」

青葉「鎮守府内新聞の投稿俳句コーナー」


『起きてみつ　寝てみつ　獄の広さかな』

青葉「うーん。一人部屋の悲哀が伝わってくるいい句ですねー」

霧島「独居房ほど辛いものはないといいますね　極道は強制独居房にされることが多いらしいです」

青葉「首都高で１０５キロ違反の島風ちゃん投稿でした　では次」

『ＭＶＰ　話に聞くが　影も見ず』

青葉「えーとこれは撃破０ ＭＶＰもちろん０で明日刑期満了の磯波さんの投稿」

青葉「罪状は未成年だから買えなかったエロい漫画の万引き」

霧島「……そのぐらい許してあげましょうよ」


『脱獄に　使えぬものか　戦闘機』　

青葉「搭載98機全使用したら加賀さん飛べないですかね？」

霧島「飛行空母　私の計算によると……一番飛べそうなのは93機の瑞鶴」

青葉「体重的に？」

霧島「ほほほ」

青葉「でも駆逐艦に7.80機くくりつけたら飛べそうですよね」

青葉「なお、投稿者は千歳さんでーす」

霧島「ああ、ダイエット…」

『乱闘や 仮釈 遠くなりにけり』

青葉「先日、殴り合いをやらかした摩耶さんの句」

霧島「…仮釈放とかあるんですか？」

青葉「さぁ　青葉は政治犯終身刑なのでそういうのはちょっと」

霧島「なにした」



青葉「最後は詩のコーナー」

　「愛しています　骨の一本一本までしゃぶりたいくらい」

霧島「…出だし１行でちょっと頭痛が」

メンタル削られそうだから精神安定剤飲んどこ

青葉「気付けてください　心臓にも応えますよ」

霧島「これ書いたの誰です？」

青葉「筑摩さん」

霧島「罪状は？」

青葉「遺失物横領で懲役８か月」

霧島「ああ、なんだ結構まとも…」

青葉「その遺失物の持ち主は行方不明　遺体もなく起訴もできず」

続き読むのが怖くなってきたな

「愛しています　骨の一本一本までしゃぶりたいくらい

　共に過ごして早二万とんで三十二分

　喜びも悲しみも幾年月

　一億と二千年前から愛してた
　
　そのうち何分貴女を眺めていたことか

　夢みたいな君に出会えた奇跡
　　
　ああ、私は貴女がいれば　幸せだなぁ

　例えあなたがおばさんになっても

　どこにだってついていくわ　一生一緒に居てくれや私にとってあなたが全てぇ…」

青葉「大丈夫ですか」

霧島「精神安定剤ダブルの水割り飲めば大丈夫　ふふふ、わりと普通じゃない」

青葉「これを読んだ利根さんは恐怖のあまり卒倒しました」

霧島「そらそうだ」

青葉「相手を卒倒させた＝傷害ということで筑摩さんは懲罰房に隔離されました」

霧島「よかったな…」

『懲罰房』

懲罰房とは刑務所内で違反を犯した者が入れられる一人部屋のことである

無論、懲罰と言っても体罰や拷問があるわけではなく、その差は本が読めなくなる程度

雑居の人間関係に疲れ、自ら問題を起こして入るものも多くいるという


天龍「霧島さん聞いてくれよ…　俺、懲罰受けようかなって…」

同期の１人がそんなことを言い出した

霧島「同室の方と何かトラブルでもありましたか？」

確か彼女は龍田とかいう美女とマンツーマン
睦月型のように出荷される豚のような悪辣部屋環境とかはないはずであるが…

シャリあげでもされたかな？

天龍「別になんもされてないんだけど……怖い」

天龍「オレ、あの人と同時に出撃するとこ多いんだよ、ＯＪＴ教育ってことで」

天龍「すげーの。悲鳴上げてる深海棲艦をじっくりじっくり解体して壊してくの」

天龍「『もう声も出ませんか？』ってガチスプラッタ映画　ホテヘルじゃないよホステルだよ」

天龍「そしてそいつと同室の俺」

天龍「……あの人猟奇殺人犯だったりすんのかな？」

現実問題、各地の刑務所では殺人犯と同室の受刑者もいるのかな？

夜中に上にのしかかって首絞めてきそうで怖いですね

霧島「司令には話してみましたか？」

天龍「いや　だってなんもやられてない」

天龍「それどころか優しいんだよ　相手の眼球を抉り出した手で飯とかよそってくれて」

天龍「物腰も柔らかくて甲斐甲斐しくて　でも本性は　きっと」

天龍「それと一日中同部屋とか俺は俺はもう……」

霧島「あ、うんがんばってね」

スタスタ

君子危うきに近寄らず

翌日、天龍は懲罰房入りしたがどの懲罰房も満員だったので筑摩との二人部屋になった

※規定収容が1名なだけで空きがない必要な場合は2人入れます

※各種ソースはほりえもんの刑務所体験記（古い）なので今はどうか知らない

『出所』

提督「おめでとう」

霧島「おめでとうございます」

比叡「おめでとう」

金剛「おめでとうデース」

榛名が刑期満了で出所が決まりました。

ＭＶＰと敵撃破で一年半ほど早く刑期を満了。私もあやかりたいものです

比叡「シャバにでたら手紙かいてくださいね」

榛名「はい　榛名報奨金で真っ先に手紙と便箋買います！」

提督「もう悪いことはするんじゃないぞ　ほれ餞別だ」つポケットマネー

榛名「…はい。おやっさん」

提督「誰がおやっさんだ。ところで…顔はどうする？」

艦娘への改造手術を受けた際に私たちは顔の整形手術を受けています

戦果報道時犯罪者だと顔バレさせないため

士気高揚のためには戦果上げた者が美女のほうがいいとかなんとか

榛名「榛名はこのままで大丈夫です」

尚、九割以上がそのままの顔で出ていく様子

提督「そういえば金剛ももうすぐだな」

金剛「はい　私も来月で出所デース　寂しくなりますね」


強制送還できない国の密入国者が刑期満了したらどうなんだろう？

比叡「……ぐすっ　金剛お姉様と離れるなんて。逮捕＆裁判。不安で一杯だった私を温かく迎えてくれた」

金剛「大丈夫ネ　私が出所したら戦艦金剛の魂は別の受刑者に宿ってまたこの部屋に来るヨ」

それ失礼すぎ。戦艦に

比叡「お、お姉さま…」ｸﾞｽﾝ

霧島「っていうか志願兵とかに魂宿せないんですか？」

提督「誰が戦艦の魂宿すから整形しよう！　だなんて話に志願して来るんだよ」

確かに

提督「大体才能がないと艦娘にはなれないし」

霧島「人員調達も楽ではないですね」

提督「まぁ刑期終わったけど志願して残ってる奴はいるから助かる　確か鳳翔さんなんかもう３年くらい」

～翌月～

『新金剛＆新榛名』

新金剛「ニーハオ　よろしくアル」

新榛名「マガンダング　タングハリ」


霧島「…は？」

提督「新　戦艦金剛と榛名の魂が宿せた適合者2人です」

比叡「顔は同じですけど…」

提督「まぁ全員モデルの顔に整形してるからな」

霧島「それで2人とも何の罪で」

新金剛「私ビザ更新忘れてただけアルヨ！　日本人おかしいヨ！」

新榛名「アング　カガンダーハン　モ」

提督「なぜか金剛の適性者は毎回入管から送られてくる」

霧島「はぁ」

『出所　part2』

明日で出所が決まっている霞ちゃんの出所前祝い
6人組を組んでいた朝潮型何人かと鳳翔さんのところにやってきました

霧島「えー、こほん。本日はお集りありがとうございます。
　　　皆さまグラスの用意はよろしいですか
　　　では、このたびは駆逐艦霞の人生の新たな門出を祝して……え、長い？」

「「「「「カンパーイ」」」」

霞「ふんっ　あんたがＭＶＰ持ってかなけりゃ先月には出られてたんだけどね」

荒潮「あらぁ～いいじゃない　元々の罪状が大したことないんだから」

霞「……結局あんたはなにやったの」

荒潮「うふふふふ」

霞「しっかし短い間だったけど　艦娘の役目が終わって……帰ったらなにすればいいのよ」

朝潮「まずは家族と話し合うのがよいと思います」

霞「家族とか気まずいし…」

大潮「その後は仕事探し！　ドーンと高月給狙いましょう！」

霞「想像つかない……　あんたらは艦娘としての期間が終わったらどうする気よ」


「「「「「…………」」」」」

霞「って誰も考えてないの！？　馬鹿ばっかね！！」

朝潮「そ、そもそも労働基準法上まだ働けないので」

霰「身元保証人がいないの…」

大潮「艦娘としてのスキルは表だと役立たず　シオシオでーす」

荒潮「実名報道されちゃってるから～」

霧島「……ここにいる間の職歴の空白をなんて説明すべきでしょうか、前科ありとか履歴書に書いたら
　　　採用してくれる会社なんてないし、前職は逮捕時点で懲戒解雇で退職金も出ませんでした」

霞「あーうん。ごめん」

鳳翔「もしこの鎮守府から出たらどうなるのか　不安に思うのは当然ですよ」

空気が重くなったところで鳳翔さんが料理と口を差し出してくる
そういえばこの人…

霧島「鳳翔さんはもう刑期終えてると聞きましたが」

鳳翔「ええ、ですけれどお金も頼れる親戚も友人もいませんので…」

鳳翔「おかしなものですね　こんな自由がなく、命の危険もある場所でも表に出ることが怖いのです」

鳳翔「居続けるほど社会復帰は難しくなるとわかっていても似ている境遇の人が多いのが心地よくて」

鳳翔「刑期が残っているころは出たくてたまらなかったんですけどね」

翌日、霞ちゃんは何度も何度も頭を深々と下げて出て行きました

田舎で農業やってる家族の元に帰ることにしたそうです


～一ヶ月後～

霞「ドイ　ボン　ローイ」

提督「ベトナムからの留学中に傷害やったnew霞　よろしく頼む」

だから日本語通じない子やめませんか？って
顔は同じだから違和感パナイ

提督「戦艦の魂を宿せる才能は少ないんだ　人種どころか犬猫でも宿せたらやるぞ上層部は」

時津風って…まさか

『知能犯と粗暴犯』

隼鷹「逮捕理由？　あたしが旧財閥のお嬢様で隠し資金を知ってるってネタで信用させて金を」

翔鶴「保険金詐欺　違うんです　1年で5回事故して家が燃えたのは本当に偶然で…」　

龍驤「現役女子小学生って　イメージビデオ発売したらマジで児童ポルノ扱いされたっつーねん　冤罪や」

祥鳳「博徒です」

飛鷹「脱税　巫女の振りすれば非課税だと思ったのになー」


空母班の皆さんは多くが知能犯
あの複雑な艦載機運用を行うだけの能力がないと駄目だそうです

長門「ばれぇぼうるというものをしてな。アタックの当たりどころが」

加古「あー……その　居眠り運転　弁当屋の軒先にパーンって突っ込んでさー」

鳥海「私の計算では診断書出ないレベルだと思ったんですが…」

羽黒「痴漢の爪の裏に安全ピン刺しました…ごめんなさい」

妙高「説教がモラハラと告訴され」


一方戦艦系の私たちは粗暴犯が多め
こうなんていうか艦隊の頭脳としては瑞雲積みたくなってきますね

秋津洲「かも！」

知能…犯？

秋津洲「かもっ　かもっ　かもっ？」

ふ、不敵な笑いっ

『重火器持ってるし』

霧島「艦隊帰投します。戦果をご確認されますか？」

霞「チョイ　サップ　ムア」

提督「ああ、頼む」

帰還し、報告をする際にいつも思うこと
艦娘の一人がその気になったらこの人楽勝に人質にとれますよね

っていうかいざというとき囚人を制圧できない看守って凄い本人恐怖じゃないのかしら

艦娘として強化された今の私の腕力なら提督の頭なんて握り潰せ……あれっ？
なんか視界が歪む

提督「変なこと考えたか？　艦娘改造手術の時、指揮者には害意を与えられないようにしてある
　　　ＳＦモノのロボとか改造人間定番だろうが」

納得

提督「便利だろー　ただ害意を与えられない→大切だから→愛してる！？
　　　とかよくわからん論理展開をする奴が多いのがネック」

確かに現実でも　自分が何かしてあげた人＝いい人だと認識してしまう傾向があると言いますね

自分が相手のためになにかしてあげた＝『相手がいい人だからだ』　と勝手に脳内で理屈付けがされるとのこと

貢ぐ人が相手をいい人だと誤認識する理屈
『相手がいい人』という前提をねつ造しないと自分が貢いだ行為が正当化できないからね

あれっ、でもよく執務室をアウトレンジ爆撃されてるような

提督「あれは本人の中で愛情表現だからセーフらしい」

懲罰房ってレベルじゃねーぞ

提督「でもまぁそれぐらいしてもいいと思うよ」

？？？

提督「執行猶予付かないって聞いた時どんな気持ちだった？」


霧島「なんで着ぐるみの頭もいだ程度で　中身までもいでないのに」

翔鶴「だから私無実なんです～」

長門「あれは事故だ　殺意はなかった」

木曾「起訴事実を認めたら木曾になるとかコントかと」

秋津洲「懲役3年でよく済んだと思ったかも！」

提督「すまん」

突然
土下座

提督が懐から新聞を取り出して広げる
『不当裁判！？　戦力確保のために有素質者に対して不当量刑？』

はて？

提督「なんでも逮捕後、艦娘の素質ありと確認されたものは刑を重く。執行猶予がつかないように調整していたらしい」

提督「それどころか素質ありそうなものに難癖をつけて拘束→起訴した事例もあったようだ」

提督「三権分立とか軍の前ではフィクション　マジ国家権力」

提督「自分のこの記事で知った。本当にすまない」

なーるほど。どうりで殺伐とした人が少ないわけだ
着任前は不知火さんとか武蔵さんとかみたいな人ばっかだと思ってた

提督「というわけで全員裁判はやり直し　再度の判決が出るまでは被疑者の立場なので本国の拘置所へと移送される」

提督「無罪になれば即時釈放だし　改めて有罪のものも相当の減刑があるだろう」

秋津洲「自由の身かも！」

木曾「アイムフリーダム！？」

提督「というわけで来週迎えの船がくるから全員帰国『残してもらうわけにはいきませんか？』

鳳翔「ここに……残してもらうわけには参りませんか？」

真剣な顔だった

鳳翔「私は6年前　横領をして…　出来心を起こして…　あの時親も兄弟からも縁を切られました」

鳳翔「実名で報道もされています　また社会に戻れる自信がないのです」

鳳翔「どうやって家を　仕事を　居場所を作ればいいのか……」

提督「だからってこんな給料も出ない命がけの仕事なんて」


霰「霰も残りたいの……　今更解放されてもどう生きていけばいいかわからない」

大潮「毎日重火器磨いて生きてきましたからねー　役立つスキル０じゃ駐車場の係員にだってなれませんよー」

荒潮「うふふ　表に出たって友達もいないし一人はさみしいわ～」

朝潮「帰る家があるから釈放です」

提督「…………あの……えっと」

こんな困った顔の人はいないだろうくらい困った顔

提督「この鎮守府の閉鎖はもう決まっていて…だな」

これを見ているのも面白いけれどそろそろ助けてあげますか

霧島「昨日霞ちゃんから手紙が来まして…」

～半年後～

提督「とりあえずサンクリスタル乳剤を散布しておいた　アブラムシ対策はこんなもんか？」

霧島「ふむ　充分かと」

霞「バカばっか！！　アルバリン顆粒水和剤も使わないとダメでしょ！！」

提督＆霧島「ご、ごめんなさい」


現在、私たちは霞ちゃんの実家。過疎化が進む農村にて自給自足生活を行っています
各自が役割分担しながら農業や養豚や養蜂などに従事

初期費用は提督の貯金と退職金と 国家賠償法に基づくなんちゃらで

鳳翔「ごはんですよ～」

霰「…うん」

大潮「ひゃっほーい♪」

全員に労働を行きわたらせ、極力外の世界とは距離を置いた暮らし
これで実名報道されてても安心　仕事にあぶれる心配もない

朝潮「重い…です」

荒潮「あら～　いくら強化手術済みでも女の子が一俵は無理よぉ～」

全員重火器振りまわすパワフル女なので農業も大丈夫


秋津洲「かもかもかも♪　田舎なら組織の目も届かないかも」

霧島「働け」

ガツン

秋津洲「ふぎゃ」

龍田「見て見て天龍ちゃん　このトマトほら～　人の血液より赤い」

天龍「…そーですね」

木曾「インターネットもなにもないが自分で作った野菜の旨さは身に染みるぜ、なぁ姉貴？」

大井「……キュウリ銜えるのはやめた方がいいと


金剛「ＨＥＹ　霧島～　農業実習生なら在留資格降りるのネー　知らなかったヨー」

榛名「比叡お姉様はもう1年くらい入ってから来るそうです」

新金剛「アイヤー　同じ顔ネ」」

新榛名「シノ イト？」

金剛＆榛名「「誰だ！？」」


前科者が一人で世間に頬り出されたら後ろ指

でもまぁ人間贅沢しなければ自分の食いぶちくらい稼げるもの

万歳！　自給自足


おわり