1 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:24:37.86 DwUT03Vz0 1/24

ガチャ

吾郎「……トシ」

寿也「……吾郎君、清水さんとの婚約、おめでとう」

吾郎「……う、うは、はっはは」

吾郎「悪ィなトシ。別に隠してたわけじゃなかったんだけどよォ」バンバンバン

吾郎「こーゆーのってよ、昔からの知り合い程言い出しづらいっつーか……分かンだろ、お前なら」

吾郎「だから……」


        バァン!!!



元スレ
寿也「僕に君の子供を妊娠することはできない」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1466864677/

2 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:25:47.43 DwUT03Vz0 2/24


吾郎「っ……!?」

寿也「……誤魔化されやしないよ、吾郎君」

吾郎「……何だよ、誤魔化しって。ただ俺ぁ……」

寿也「怖かったんでしょう? 僕と向き合うのが」

吾郎「……」

吾郎「……はァ?」

寿也「君は、昔からそうだったよね」

寿也「リトルの時も、海堂の時も、プロに入るその時も、そして今だって」

寿也「環境の変化を、自分から他人に告げるのを、極端に恐れる」

寿也「自分の決断に自信が持てないからって、否定されたくなくてビビってるんだろ」

寿也「……つまんない男だよね、ホントに」


3 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:26:28.32 DwUT03Vz0 3/24


吾郎「……トシ」

吾郎「黙って聞いてりゃ、てめえ……!!」グイッ

寿也「……違うって言うなら」

チュッ

吾郎「……!?!?!?」

寿也「ここで証明してごらんよ」

寿也「僕を捨てて清水さんに」

寿也「女の子に走る自分が正しいっていう、その証明をさ……!!」

吾郎「……トシ、お前、おかしいぞ」

吾郎「今ならいきなりその……キスしたことについては許してやるよ。だから」


4 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:27:13.99 DwUT03Vz0 4/24


寿也「……逃げるっていうなら、それでもいいさ」

寿也「と言っても、今の吾郎君なんかじゃ、清水さんのことを満足させられるとは、到底思えないけどね……」

寿也「どうせ、尊敬するギブソンにも妻や息子がいると知って、慌てて手近な女で枠を埋めようとしたってトコだろ」

寿也「断言するよ。君に清水さんを幸せにすることなんて、できやしない」

吾郎「……てめぇ、トシ!!」グイ バンッ

寿也「つっ……」

寿也(……相変わらずだね、吾郎君)

寿也(ちょっとプライドを刺激しただけで、こんなちゃちな挑発に乗ってくるなんて)

寿也(……まぁ)

寿也「そんな吾郎君だからこそ、僕はずっと目が離せずにいるのかも知れないね……」

吾郎「……あン?」


5 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:28:04.64 DwUT03Vz0 5/24



寿也「……あぁ、気にしないでよ」

寿也「僕のことを殴って気が済むならそれでいい」

寿也「それ以上のことをしたいって言うなら、そうすればいいさ」

寿也「……安心してよ、メジャーリーグの懲罰委員会に告げ口したりなんてしないさ」

寿也「……もっとも、僕が訴え出るほどの事をする度胸が、今の吾郎君にあるとは思えないけどね……」

吾郎「……上等じゃねェか」グイッ

寿也「っ」ドキッ

吾郎「そこまで言われちゃ、俺も黙っちゃいられねえ」

吾郎「やってやるぜ、今、ここでな……!!」


6 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:28:56.77 DwUT03Vz0 6/24


寿也(かかっ……たッ!?)

ジュポッ  ジュジュジュ!!!

寿也「ご、ご、吾郎君、いきなりそんな」

寿也(吾郎君はクローザー登板だからいいとしたって)

寿也(僕は1回からフル出場……)

寿也(キャッチャープロテクターを付けて……まだシャワーも浴びてないって言うのに……!)

吾郎「っぷ……いきなりビビっちまったのかよ、トシちゃんよ」

吾郎「お前も俺と長げぇ付き合いなんだ、いい加減覚えただろ」

吾郎「勝負時の茂野五郎さんの決め球は」

吾郎「小細工なし、最初からど真ん中の一球勝負ってことがよ……!!」ジュポッ

寿也「ぐううッ……!!」

吾郎「悪りぃがお前相手に、遊び球はナシだ」

吾郎「一気に決めるぜ……!!」ジュボッジュボッジュボッ


7 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:29:49.60 DwUT03Vz0 7/24



寿也「……!!」

ドンッ!!

吾郎「何……ッ!!!」ドサッ

寿也「……く、ふ、ふふふ……」モゾモゾ

吾郎「ってぇ……な、トシてめえ何をッ」

寿也「驚かされたよ吾郎君……まさかこの状況に適応するどころか、逆に責め立ててくるなんてさ……」ヌギヌギ

寿也(そう)

寿也(茂野五郎の本当に恐ろしいところは、野球の才能なんかじゃない)

寿也(その類稀なる反骨精神と……適応力)

寿也(左腕転向の時も、夢島でも、その恐ろしさは見せつけられてきたはずだ)

寿也(だけど、僕がずっと夢見てきたこの男色というフィールドでだけは)

寿也「僕の方が先輩だ……負けられやしないッ!!」ペロ

8 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:31:32.63 DwUT03Vz0 8/24


吾郎「ひイっ!?」

寿也「情けない悲鳴だね吾郎君」ペロペロ

寿也(僕はずっとトレーニングを重ねてきたんだ)

寿也(自分の体を利用したフィジカルトレーニング、そして)

寿也「次は左」ペロッ

吾郎「はァ……ッ!!」

寿也(一流のメジャーリーガーの投球をつぶさに観察して作り上げた愛撫プログラム)

寿也(乳首、首筋、脇腹、太腿へバランスよく遊び球を散らしながら、最後には鋭く打ち取るメソッド)

寿也(”TOSHIYA・SYSTEM”の前に、君は情けなく屈するのさ)

寿也(……僕の愛しい、吾郎君!!)


9 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:32:57.16 DwUT03Vz0 9/24


吾郎「……」

寿也「気持ち良すぎて声も出せないようだね」ペロペロ

寿也「さあ、次は……」

ガシッ

寿也「!?」

吾郎「ここらで俺のバットをしごきに来る……」

吾郎「……随分甘く見られたもんだな」

寿也「……どうして、分かったんだ」

吾郎「言ったはずだよな、長い付き合いだって」

吾郎「お前の好みそうな攻略のパターンなんて……」

吾郎「こっちにゃぁとっくに、お見通しなんだよッ!!」ドサッ

10 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:33:36.47 DwUT03Vz0 10/24


寿也「ご、吾郎君、君は……」

吾郎「……勘違いすんなよ。俺に元々ソッチの気はねぇよ」

吾郎「だけどな」

吾郎「俺達は長年切磋琢磨してきた恋女房(バッテリー)だろ」

吾郎「お前の性癖が歪んでる事くらい、とっくに気づいてたっつーの」

寿也「……じゃあ、どうして、僕の事……」

吾郎「……さァな」


11 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:34:09.61 DwUT03Vz0 11/24




吾郎「俺がどんな無茶振りしようが、必ず傍に居る……」



吾郎「……頼りになるヤツだと思ったからじゃねーの」ポリポリ



12 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:34:38.84 DwUT03Vz0 12/24



寿也「……」

寿也「……また、それかよ」

吾郎「……何だよ」

寿也「……君はずっと昔から」

寿也「本当に欲しい時だけは、本当に欲しい言葉をくれる」

吾郎「……」


寿也「……だから」


13 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:35:06.80 DwUT03Vz0 13/24




寿也「だから好きなんだよ、吾郎君」



14 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:35:50.97 DwUT03Vz0 14/24



吾郎「……おぅ」

寿也「……僕の望むことも、もう分かってるんだろ?」

吾郎「……ああ」

寿也「煩いことは、もう言わないよ」

寿也「清水さんや皆にも、絶対に話したりしない」

寿也「だから」

吾郎「……もう何も言うな、トシ」

寿也「……」

吾郎「二度と忘れられないくらいに、刻みつけてやるよ」

吾郎「サイ・ヤング賞投手の」

吾郎「MAJOR(メジャー)級のピッチングをな……!!」


15 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:36:40.21 DwUT03Vz0 15/24



スパァン!! スパァン!! スパァン!! 

寿也「吾郎、くっ、あああああっ!!!」

スパァン!! スパァン!! スパァン!! 

寿也「吾郎君っ!! 吾郎君ッ!!!!!!!!」

スパァン!! スパァン!! スパァン!! 

吾郎「15回オモテも三者連続三球三振、ってな。次はお前の攻撃だぜ、トシ」

寿也「……ズル、いよ、吾郎君」

寿也「僕に攻撃の余力なんて、残してくれてないくせに……」ガクガク

吾郎「しょーがねーヤツだな……」グイッ

寿也「はアッ!!?」

吾郎「エースで4番が茂野吾郎さんの指定席、ってな」コスコスコス

16 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:37:41.91 DwUT03Vz0 16/24


寿也「ぐ、う、ひいいいいっ」

吾郎「……トシ、もしかしてお前演技入ってないか? 流石に……」

寿也「……そうじゃないんだ、吾郎君」

寿也「ずっと」

寿也「ずっと追い続けてきた君が」

寿也「ずっと振り向いてくれなかった君が」

寿也「僕を捕まえて、抱きしめてくれていることが、あんまりにも嬉しくて……」グスッ

吾郎「……へへっ」

吾郎「そうかい……じゃあもっと、気持ちよくしてやらなきゃ、なあッ!!」ヨロッ スパァン

寿也「……吾郎君? 今」

吾郎「な、何でもねぇよ。アーユーオーケーアイムオーケー」

寿也「まさかっ」ペタッ

17 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:38:29.56 DwUT03Vz0 17/24


ドロッ

寿也「これは……血……」

吾郎「……大したこたぁねぇよ」

寿也(そうか……僕の締め付けがあまりにも強すぎて)

寿也(急に僕のマスコットバットをもてあそび始めたのも、傷が……)

寿也「……もう止めよう、吾郎君」

寿也「僕に君の子供を妊娠することはできない」

寿也「この先清水さんを孕ませる必要だってある」

寿也「これ以上君のバットに負担をかけるわけには……」

吾郎「……」ズブッ パンッ

寿也「ひゃ、ご、吾郎君ッ!!!」

18 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:39:24.77 DwUT03Vz0 18/24


吾郎「今更なこと、言わせるんじゃねーよ、トシ」

吾郎「俺はマウンドに上がったとき、終わった後の損得なんて一切考えちゃいねー……」

吾郎「その一瞬一瞬に、最高の勝負ができればそれで十分なんだ」

吾郎「そうして、最後に前のめりに倒れたとしても、おとさんだってきっと祝福してくれるさ」

寿也「それは野球の話だろう!?」

吾郎「同じだよ」

吾郎「俺にとっては、お前とこうして向き合うことも」

吾郎「何にも変わらない、俺の真剣勝負なんだ……!!」

寿也「……吾郎君……!!!」

吾郎「さあ、受けてくれ寿也」

吾郎「これが俺の」

吾郎「全身全霊の……一撃だッ!!!!!!」




寿也「あああああああああああッ!!!!」




19 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:39:52.90 DwUT03Vz0 19/24























20 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:40:21.92 DwUT03Vz0 20/24


寿也「……」

「眠れないの?」

寿也「……ああ」

「そう」

「……何を、考えていたの?」

寿也「……別に、何も」ゴロン

「……」

「ねえ」

「野球って、キャッチャーがマスクをつけるルールで、よかったわね」

寿也「……?」

「自分では、どう思っているか知らないけれど」

「よくよく顔に出てるわよ、考えてること」

21 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:40:58.21 DwUT03Vz0 21/24


寿也「……きっと、君だから分かるんだよ」

「……そんなことない」

「もし貴方の世界を覗いている人がいたら、きっと十人中十人が、あなたの想いを理解している」

寿也「……だとしたら、別れたい?」

「もう、そういうトコが、見え見えだって言うのよ」

「もう少し、隠してくれてもいいんじゃないかなぁ」

寿也「……」

「……別に、いいよ」

22 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:41:24.53 DwUT03Vz0 22/24


「叶わなかった恋の話なんて。誰にでも一つや二つあるものだわ」

「もちろん、私にだって、ね。だから、いいの」

寿也「……」

「そう、ありふれた話なのよ。叶わなかった恋の話なんて」

「例えば、その相手が」

「日本人でも誰もが知っている、偉大なメジャーリーガーだったりしても、ね」

寿也「……」

寿也「……こっちに、来ないか」

「……遠慮しとくわ」

「おやすみなさい」

23 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:41:56.22 DwUT03Vz0 23/24





寿也「……おやすみ」



     

24 : ◆LeBgafvn/6 - 2016/06/25 23:42:54.02 DwUT03Vz0 24/24





             ~おしまい~




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