1 : 以下、名... - 2016/02/12 15:26:29.54 xkKgg9HX0 1/113


ハルヒ「……」

朝倉「……」

朝比奈「……」

古泉「……」

キョン妹「有希ちゃん!」

キョン「……長門」

長門「……なに」

キョン「お前は……いつから『そこ』にいた?」

長門「…………」

長門「一刻程前」

朝倉「う、嘘……それ、まだ朝の五時じゃない……」

ハルヒ「その時から、ずっと……一人で?」

朝比奈「な、長門さん……」

長門「問題ない」

長門「これがわたしの役目、優先すべき第一事項だから」

ハルヒ「有希……」

朝倉「長門さん……」




























長門「おかわり」モグモグ

新川「少々お待ちを」

ハルヒ朝倉「「んなわけないでしょーーが!!!!!!」」ビッシィ!


元スレ
ハルヒ「キョンTUEEEEEEEEE!!!!!!!!!」 キョン「憂鬱入ってるよなぁ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1455258389/

2 : 以下、名... - 2016/02/12 15:29:28.03 xkKgg9HX0 2/113


朝倉「なに!? 五時から二時間ぐらい一人でずっっと朝食食べてたの!!?」

長門「そう」モグモグ

朝倉「いや『そう』じゃないわよ!! 一体いつまで、というかどれだけ食べてるのよ長門さん!!!」

朝比奈「き、昨日スキー終わりの夕食でもあれだけ食べてたのに……」

古泉「合宿時の長門さんはやはり違いますね」

朝倉「新川さん、ごめんなさい。長門さんがご迷惑をかけて」

新川「ごめ―――」

長門「ご迷惑だなんてとんでもない」モグモグ

朝倉「……」キッ!

長門「……と、彼の言おうとしたことを代弁しただけ」

新川「はっはっは! まさしくその通りですな。若い人の食べる姿をみるのはこちらとしても大変嬉しゅうございます」

朝倉「だからってそんな五時から今まで料理し続けるだなんて……」

新川「心配ありません。森もいましたし、それに……」

キョン「やあ」スッ

キョン「おう、お疲れ」

ハルヒ朝倉朝比奈「「「!」」」ビクッ!

新川「ご友人様にも手を貸していただいていたので」

ハルヒ「分身するポイントが意味不明すぎるわよ……いつからやってたのよ」

朝倉「というかキョンくんって料理できたのね」

キョン「なんのことだ?」

ハルヒ「? 新川さんの料理手伝ってたんじゃないの?」

キョン「いんや。俺はただ新川さんが若い人の食べる姿を見るのが好きっていうから、厨房でずっとご飯食べてただけっっ!!?」ガスッッ!!

朝倉「二時間にわたってうっとうしい邪魔してるだけじゃないの!!!! あなたたち二人朝から何やってんのよ!!!!」

キョン「朝倉ママのお怒りだぞ長門、どうする?」

キョン妹「お母さんっ!?」ビクッ!!!

長門「…………おかわり」

4 : 以下、名... - 2016/02/12 15:32:10.41 xkKgg9HX0 3/113


ハルヒ「ったくもう……あ、朝倉さん。二日酔いはもう大丈夫?」

朝倉「……ええ、もうすーーっかり良くなったわ、すっかりね」ゴゴゴ

キョン「(悪かったって。あとで吐いたのは二日酔いって改変じゃなく、単に気分が悪かっただけってことに改変しとくから!)」

朝倉「(そこじゃないわよ!! 吐いたことにするのをまずやめなさいよ!! なんで吐かす必要があるのよ!!?)」

ハルヒ「有希は? 昨日はあの後本当になにもなかったみたいだけど……本当に調子悪いとかない?」

長門「ない」

ハルヒ「祈りは?」

古泉「(いら)ないかと」

ハルヒ「……そう? でも万が一のために、大事をとって今日は中で遊ぶことにするわ」

キョン「お前にしては意外だな、てっきり今日も雪原を蹂躙するのかと」

朝倉「言い方」

鶴屋「うんうん! あたしも賛成だねっ! 家の中でだからこそできることもあるしっ!」

キョン妹「わー! なにして遊ぶのーー!?」

鶴屋「んー、とはいえスキーするのがメインの別荘だからねー」

鶴屋「室内遊戯となると……うーん、ちょっと限られてくるっさ」

古泉「でしたら―――」












キョン妹「ねーねー、あたしかくれんぼしたいなー!」













キョン「ちょ、まっ」ビクッ

ハルヒ「それいいわね! この別荘の広さなら十分満足できそうだし!!」

鶴屋「ふっふっふ、この別荘を誰よりも知ってるあたしが有利にょろよー!」

キョン「ハルヒ、鶴屋さん、あの……」

朝倉「?」

5 : 以下、名... - 2016/02/12 15:35:32.78 xkKgg9HX0 4/113


古泉「では、妹さんのご希望に沿う形で、かくれんぼに致しましょうか」

ハルヒ鶴屋「「さんせーっ!!」」

朝倉「かくれんぼかぁ、やったことないわね」

朝比奈「かく、れんぼ……?」

長門「……」

キョン「ハルヒ、本当にやるのか?」

ハルヒ「いいじゃない、久しぶりに童心にかえって隠れつくしてやるわよ!」

キョン「お前はいつでも童心だろ、それにもう隠れる側のつもりかよ……古泉、お前も本当にいいのか?」

古泉「僕は特に断る理由はありませんので、団長の決定ですしね」

キョン「……お前の用意した謎解きとやらの時間が無くなってもか」ボソッ

古泉「何か、仰いましたか?」

キョン「いや、別に。ただ、こんなトコにまできて妹の相手しなきゃならんとなると……はぁ」

ハルヒ「じゃルールは一つ! 隠れる側は鬼に見つかったら負け!! 鬼は見つけられなかったら負け!!」

ハルヒ「制限時間は……そーねぇ、多く見積もって2時間ってトコかしら? それだけあれば十分でしょ!」

鶴屋「うん! くまなく探すだけの時間はあるにょろ!!」

キョン「それで、鬼は古泉と誰がやるんだ?」

古泉「えっ」

ハルヒ「キョンでしょ? 何言ってんの?」

キョン「えっ」

キョン妹「あははー! 人を呪わば穴二つー!!」キャッキャ

古泉朝比奈「「……」」

鶴屋「あ! あと鍵のかかってる部屋には入らないで欲しいっさ!おやっさんの私室だったりするしねっ!」

ハルヒ「それじゃ10分したら探しに来ていいわよ!! 言っとくけど、全員見つけられなかったら罰ゲームだかんね! それじゃっ!」

キョン「…………」

古泉「無条件で鬼になってしまいましたね、まぁなってしまった以上健闘させていただきますが……おや、どうしました?」

キョン「ん、罰ゲームを喰らう準備をしようと思ってな」イソイソ

古泉「あなたにしては随分弱気ですね、ってなんでズボンを脱いでるんですかやめてください」

6 : 以下、名... - 2016/02/12 15:41:06.42 xkKgg9HX0 5/113


キョン「はー……」

古泉「そんなにかくれんぼがお嫌いですか? それとも罰ゲームが憂鬱であるとか……」

古泉「確かに、長門さんや朝倉さんが本気で隠れたならば見つけ出すのは困難でしょうが……」

キョン「長門、朝倉……違う、違うんだよ古泉。このゲームにおいてのラスボスはその二人じゃない」

古泉「と、言いますと?」

キョン「ウチの妹だよ、今から日が変わるまでに本気で見つけられるかどうか……」

古泉「…………」

キョン「おっと、冗談じゃないぞ? なんなら俺は既に妹以外の隠れ場所は把握しているからな、場所は言わんが」

キョン「俺は妹とはかくれんぼではなく、鬼ごっこをするつもりで挑むからな、ハルヒとか他の人間は古泉、お前が探してくれ」

古泉「…………えっと、どこまでが本気でしょうか?」

キョン「だーかーら、全部だよ全部! ったく、俺が鬼じゃなかったらいつまで経っても妹なんぞ見つけられんぞ」

キョン「えーっと……今奴のいる空間は……あらまあ、時間座標と空間座標を転々としてやがる……妹もガチだぞこりゃ」

古泉「……つかぬことをお聞きしますが、妹さんは一体何者で……?」

キョン「あん? ただの俺の妹だよ、妹。ちぃと好奇心旺盛だが、十分年頃の範疇で治まるだろ」

古泉「そう……でしょうか?」

キョン「お前も罰ゲームが嫌なら本気で他の人間を探すんだな、ヒントとして予想通り長門と朝倉は結構探しにくいところにいるぞ」

古泉「探しにくいところ……ですか」

キョン「あと鶴屋さんとハルヒは見つけん限り時間制限関係なしに隠れ続けるつもりだ」

古泉「ご自分で時間設定をしておいて!!?!? さすが涼宮さん、自由ですね!」ガーン!

キョン「さて、10分たった……ゲーム開始だ」

キョン「古泉、幸運を祈る」

古泉「え、ええ。人並みに頑張らせていただきます」

キョン「スゥ……任務開始≪ミッション・スタート≫!!」シュン!!

古泉「…………今までで一番マジじゃないですか、かくれんぼなのに」

7 : 以下、名... - 2016/02/12 15:44:57.42 xkKgg9HX0 6/113


古泉「(とはいえ、やはりは高々かくれんぼ。彼の言うことも恐らくは誇張でしょう)」

古泉「(いくら妹さんがかくれんぼの名人とはいえ、さすがに日が変わる時刻まで見つからないなんてことはない)」

古泉「(そこまで隠れ続けるのなら全員で探すという方法もとれますし、長門さんや朝倉さんに協力してもらえばいい)」

古泉「(よって、僕が今とる行動は簡単にして、簡潔です)」

古泉「涼宮さんの言う通り、童心にかえってかくれんぼを楽しめばいいだけですね」

古泉「(さて、まずは部屋をまわらないと始まりませんね、正確に何部屋あるのか把握していませんし)」

古泉「(それに彼のくれた長門さんと朝倉さんの居場所のヒントも気になるところです、が……)」

古泉「(しらみつぶしに、まわっていくのが定石ですかね)」

キョン「―――ッ!!」シュン!!

古泉「っおわっ!? 急に出てこないでくださいよ、驚きました」

キョン「ん、あぁ古泉、久しぶりだな」

古泉「久しぶり? 数分前に分かれたばかりですが……」

キョン「ん? あ? あ、そうか……こっちじゃそうなってんのか」

古泉「……あの、今あなたはどこでなにをやって……」

キョン「あぁ? お前こそ忘れちまったのか? 今はウチの妹発案のかくれんぼ大会中だろうが、お前も早く探し出せよ」

古泉「すいません、僕にはあなたがかくれんぼをしているように見えなかったので……」

キョン「何してるように見えたってんだよ?」

古泉「……その、手に持っている宇宙人の頭部らしきものの殲滅作業とか……あと、顔に血が……」

キョン「…………」ベットリ

古泉「…………」

キョン「またな☆」シュン!!

古泉「…………これ本当になんのゲームでしたっけ!!?」ガーーン!!

8 : 以下、名... - 2016/02/12 15:48:31.33 xkKgg9HX0 7/113


客人用寝室


古泉「(この部屋も……客人用の寝室ですか。一見先ほどまでの部屋と変わりないように見えますが……)」

古泉「(ドアが半開きだったことから、誰かがこの部屋に出入りした、と見ていいでしょう)」

古泉「(もしくは、涼宮さんや鶴屋さんといった遊び慣れている人たちからのミスリード……)」

古泉「(まぁとにかく、元々探す以外のコマンドは存在しないわけですが……)」

古泉「…………?」

古泉「(誰もいない【推定】部屋なのに異様に視線を感じる気がする……恐らく後ろのクローゼットの中……)」

古泉「…………」クルッ!

古泉「ここですかっ!?」バタン!







ここじゃないわよ!! キョンのバーカ!!







古泉「…………」

古泉「(外した上に、この張り紙を見つけたのが彼ではなく、僕というところがなんとも……)」

古泉「(にしても、視線の気配が消えたことから、ただの勘違いだったということですか……)」

古泉「……次に行きましょうか」ガチャ













キョン妹「あははー! バレちゃったかと思ったー!!!」ニュルニュル

キョン妹「でもやっぱり一番に見つかるのは嫌―――来るねキョンくん!」シュッ!!

キョン「ここかっ!? チィ、遅かったか……くそっ!」シュン!

9 : 以下、名... - 2016/02/12 15:51:14.71 xkKgg9HX0 8/113


古泉「(……参りましたね)」

古泉「(たかがかくれんぼなどという考えで挑んだせいでしょうか?)」

古泉「(30分が経過して見つけたのは涼宮さんが残したであろう張り紙1枚)」

古泉「(このままでは誰一人見つけられないという、なんとも微妙な空気になりかねない……)」

古泉「と、思っていたんですが」

朝比奈「スー……スー……」

古泉「(何部屋めの寝室になるかは分かりませんが、かくれんぼの趣旨を理解したのかしていないのか分からない朝比奈さんを発見しました)」

古泉「(女性が寝ている部屋に無断で入るというのはモラルに反していますが……不可抗力として見逃していただきましょう)」

古泉「(布団の中に隠れたまま、いつの間にか寝てしまったのでしょう。昨日は初めてのスキーで疲労が溜まっていたことでしょうし)」

古泉「(起こすのは大変心苦しいですが、かくれんぼのルール上見逃すわけにもいきませんし)」

古泉「(何より、僕のモノローグもそろそろ限界ですね、ここら辺でパーティに仲間が加わってもいい頃でしょう)」スッ

古泉「朝比奈さん、見つけました」ポンッ

朝比奈「スー……ふえっ? お母さん?」パチ

古泉「あ、いえ……お母さんでは、ないのですが……」

朝比奈「…………」ボー

古泉「あの、朝比奈さん、今の状況を理解して……ますか?」

朝比奈「……えっとぉ、確か、かくれんぼ中で……隠れるゲームって言われたから、お布団の中に隠れて」

朝比奈「そしたらいつの間にか寝ちゃってて、お母さんに起こされ……起こ……され……」パチ

朝比奈「…………って~~~~古泉くんっっ!!!」ガバッ!

古泉「は、はい。なんでしょうか」

朝比奈「い、今、お母さんって言ったことなし! なしですからぁ!!!」ワタワタ

古泉「そ、それは……はい、僕は何も聞いていないことにしておきますよ」

朝比奈「わ、わたし、あの、寝ぼけて……その、普段はこんなことないんですけど……あぁー! 恥ずかしい……」カアァ

古泉「(……なるほど、これが彼の持つ主人公補正、と言ったところでしょうか)」

古泉「(群像劇的ではありますが、今の 主 役 は僕ですから、このようなイベントも起きる、ということでしょうか)」

古泉「……いやぁ、いいものですね。かくれんぼというのも」

朝比奈「! ちゃ、ちゃんと忘れてくれましたか!? お、お母さんなんて言ってませんからね!! ね!!?」

10 : 以下、名... - 2016/02/12 15:53:56.22 xkKgg9HX0 9/113


朝比奈「……ふわぁ」スタスタ

古泉「お疲れの様ですね、昨晩はあまり眠れませんでしたか?」スタスタ

朝比奈「いえ、ちゃんと眠れたんですが……ただやっぱり運動した日の次の日は疲れが溜まりやすいのかも……」

古泉「そうですね、実を言うと僕も、腕や足が悲鳴を上げていますよ」

朝比奈「鶴屋さんや涼宮さんはあんな元気で……すごいなぁ、ふぁ」

古泉「さて、その鶴屋さんや涼宮さん含む残りの方々ですが……見つけ出すのは艱難辛苦のようです」

朝比奈「みなさん隠れるの上手なんですね。コツとかあるのかなぁ」

古泉「コツ、というよりも言わばいかにして死角に隠れられるかがゲームの鍵となってきます」

朝比奈「死角……ですか?」

古泉「ええ、本来ならば人なぞ到底入れないようなところ……常識的に考えて侵入が不可能なところ……」

古泉「そういった場所に隠れるのがかくれんぼの戦術なのですよ。ちなみに……」

古泉「ご友人の朝比奈さんからみて、鶴屋さんはどの辺に隠れそうか見当はついていますか?」

朝比奈「えっ? うーん……そうですね、鶴屋さんも一緒にいて結構びっくりすること多いですから」

朝比奈「例えば、この壁に掛けられた絵画の裏側に隠れてたりとか、なーんて……」スッ

鶴屋「わお!」

朝比奈「」スッ

古泉「」

朝比奈「…………」スッ

鶴屋「あっちゃー! みつかっちゃったかー! 本気で勝ちに行ってたんだけ―――」

朝比奈「……」スッ

古泉「……」

朝比奈「……」ミクルーミツカッチャッタカラダシテオクレヨー!

朝比奈「……」スッ

鶴屋「や! いやーせまいんだよねここ! 本音言うと見つけてくれてありがたかったり!? おや? どしたお二人さん、茫然として……」

古泉朝比奈「「ホントにいた!!!!! いちゃった!!?!?!!?」」ガーン!

朝比奈「こ、これが死角なんですね古泉くん!! し、しかもこんなところ普通に考えて探そうとも思わない……ッ!」

古泉「朝比奈さんがいなければ見つけられることはなかったでしょう……というかこの別荘こんなギミックがあるんですね……」

鶴屋「?」ニョローン

11 : 以下、名... - 2016/02/12 15:57:07.46 xkKgg9HX0 10/113


鶴屋「いやー! 予想通り一番最初にみくるが見つかってて吹き出しそうになっちゃったよー!!」プクク

朝比奈「ご、ごめんなさい。わたし隠れるの下手で……」

古泉「しかし、朝比奈さんがいなければ鶴屋さんの発見は為されなかったですよ」

鶴屋「おおぅ! さっすがみくる! あたしのことよく分かってるじゃーん!!」

朝比奈「え、えへへ。それほどでも……えへへ」

鶴屋「あたしたちはお互いを分かり合う仲だからね!! あたしもみくるのこと手に取るように分かるよっ!!」

古泉「では、僕が朝比奈さんを発見した時の様子、分かりますか?」

朝比奈「こっ、古泉くん!?」

古泉「まあまあ、まだ何も言っていませんよ」

朝比奈「だ、だけどぉ……うぅ……」

鶴屋「ふむぅ、むー……その様子から察するに……ズバリ!」キランッ

鶴屋「『一樹くんが来たとき、ベッドに隠れていたみくるは寝てて一樹くんがやむを得ず起こした時みくるはついお母さんと呼んでしまった』って感じっ!」

古泉朝比奈「「ホントに当てちゃったぁああぁああーー!!!!!!」」ガーーン!

朝比奈「みみみ、見てたんですか!!? 絶対見てたんですよね!! ねえ鶴屋さん!!!」ユッサユッサ

鶴屋「みみみ、見てないにょろー。あたしのみくるセンサーがそう告げただけっさー!」グワングワン

朝比奈「なんですかー!! そのみくるセンサーなんて非科学的なものー!!! うわぁぁああん!!」

古泉「(やはり……この方の察しの良さには驚かされ―――)」ピクッ!

古泉「お二人共、お静かにっ!!」

朝比奈「えっ?」ピタッ

鶴屋「んっ? どうしたんだい一樹くん」

古泉「何か……聞こえませんか?」 …クーン

朝比奈「あ、ホント……近づいて来てる?」 キ…クーン

鶴屋「これ、妹ちゃんの声だねっ!! かくれるのに飽きて出てきちゃったのかな? 妹ちゃーん! どこにいるのーっ!?」キョンクーン!!

朝比奈「一体どこに……あ、声が遠ざかって……」 ヨンクーン…

鶴屋「あれれー? すぐ側を走り抜けていった感じがしたんだけどねーっ! 気のせいっかなっ!?」 -ン…

古泉「(なんですかこのホラー……あの二人は一体どこでなにを……)」

12 : 以下、名... - 2016/02/12 15:59:48.35 xkKgg9HX0 11/113


鶴屋「さて! 残るハルにゃん、朝にゃん、有希っこの中で誰が比較的見つかりやすいかなっ!?」

古泉「僕の勘的には、まだ朝倉さんは見つけやすい場所に居てくれるのではないかと」

鶴屋「だねだねっ! ハルにゃんや有希っこは本気出せば天井張り付くぐらい余裕でやりそうっさ!!」

古泉朝比奈「「!」」バッ!!

鶴屋「……さすがに冗談だよ?」

朝比奈「い、一応です。一応……」

古泉「その冗談をマジでやられた方がいますから」

鶴屋「朝にゃんは真面目で常識人の委員長タイプだかんねー! 普通の普通に見つけにくい場所にいると思うなっ!」

古泉「(そう、思いたいのですが……彼の助言通りなら朝倉さんは見つけにくい場所に……いや、違う)」

古泉「(彼は『探しにくい場所』と言った。つまり、見つけるのは困難ではないが、探すまでが困難であるということ……)」

鶴屋「おおーっ! なにやら一樹くんが名探偵モードにはいってるにょろ!! 伊達メガネかけとく??」

朝比奈「じゃ、邪魔しちゃダメですよー!」

古泉「(『探しにくい場所』……つまり、僕がいては違和の生じる空間……この別荘で言うと……おそらく)」

古泉「……朝倉さんの居場所が、多分、分かりました」

鶴屋「おおっ!! さっすが名探偵一樹くん!! それでっ!? どこどこ!? どこに朝にゃんはいるの!?」

古泉「今は無人であるはずの、朝倉さんの部屋です」キリッ

鶴屋朝比奈「「…………」」

古泉「勘違いしないでください。かくれんぼにかこつけて、女性の寝室に入ろうなどという考えはございません」

鶴屋「お、おーう……でも一樹くん、前例がだね……」チラッ

朝比奈「……ぅ」

古泉「朝比奈さんの場合は不可抗力です! それに、あそこは朝比奈さんの本来の寝室ではありません。とにかく」

古泉「別荘の目新しいところではなく、目を通した既存の部屋に隠れるという、王道の盲点をついてくるのが朝倉さんなのです。僕はそう信じます」

鶴屋「古泉くん……」

古泉「分かっていただけましたか」ホッ

鶴屋「そうまでして朝にゃんのベッドに入りたい?」

古泉「全然分かってらっしゃらなかった!!!!!!!!!」ガーーン!!

13 : 以下、名... - 2016/02/12 16:02:37.54 xkKgg9HX0 12/113


鶴屋「いやー一樹くんも男だねー!! うん、お姉さん健全なことは応援するよ!! モラルに反した場合は怒髪で突いちゃうけどねっ!」

朝比奈「そ、そういうのはいけないことだと思いますっ!!!」

古泉「で、ですからそうではなく……」

鶴屋「みくるぅー、そういうのって何だい? ん? 具体的には~~?? ん~?」

朝比奈「[ピーーー]が[ピーーー]で[ピーーー]して[ピーーー][ピーーー][ピーーー]の[ピーーー][ピーーー]で、[禁則事項です]!!」

鶴屋「みくるっっ!!?!?!?!? みくるっっっ!!?!?!?」ガーン!
古泉「朝比奈さん!!?!!? 朝比奈さぁあん!??!?!?!?」ガガーン!

朝比奈「?」

















「へぇ、かくれんぼですかー。懐かしいなぁ」

「ふん、くだらん。過去人は随分古臭い遊戯をするんだな」

「古臭いんじゃなくて伝統的と言ってください! ていうか未来ではかくれんぼとか鬼ごっことかないんですか?」

「……そんなもの―――」

「―――する―――相手が―――いない」

「なっ……ッ!?」

「あぁーなるほど。それはトラウマを掘り返してしまったみたいでごめんなさいでした」ペコリ

「っ貴様らだけで問題を完了するな!!! 違う! そうじゃない!! 僕はアウトドアよりかはインドアで!!」

「貧乳―――よりかは―――巨乳」

「やーん」

「こ、の、っ! ポンコツ宇宙人にダメ超能力者が!!!!」

「そして巨乳フェチの未来人、と……あはは、向こうに負けず劣らずキャラ濃いですねこっちも」

「―――ふふ」

「フーッ! フーッ!……ッチ! くだらん! 僕は帰―――」クルッ

「まあまあ、そう言わずに。彼に引き続き君まで帰ることはないだろう」トンッ

「あっ、佐々木さん!」

「っ!? 貴様……っ! 今さら現れて何のつもりだ? あの男に怖気づいたとでもいうのか!?」

「それは君の言った通り、『僕』が彼の前に姿を現すのはまだ早いからさ。今、彼は彼で楽しんでいるようだしね」

「―――奮闘中―――」

「あちらの団よろしく、こちらもみんな仲良くしていこうじゃないか。君は万緑叢中、紅一点ならぬ緑でも青でも黒でも、やや肩身が狭いかもしれないが」

「ふん……僕はただ利用するだけだ。貴様らに有益があるうちはな!」

「……先ほどから立腹のようだが」

「ほら、プロテクト漏れした情報があの人の中で最重要機密だったらしくて……」

「ああ、それは……すまないことをした。謝ろう」

「だから!! そうやって勝手な解釈で問題を解決するなぁぁぁああああああぁぁぁあぁああああ!!!!!!!!!」

14 : 以下、名... - 2016/02/12 16:05:11.75 xkKgg9HX0 13/113


鶴屋「ここだねー朝にゃんの部屋は。本当に入んの?」

古泉「失礼します」コンコン ガチャ

朝比奈「躊躇いなしっっ!!?!?」

鶴屋「そこは逆に男らしくて好感もてるっさ!! さて、ベタな展開だとここで朝にゃんの生着替えにそうぐ―――」

















キョン「あっ!! ちょ! しめて!! 着替えて、着替えてるから今!!!!」ワタワタ

















古泉鶴屋朝比奈「「「」」」

キョン「ったく、びっくりさせないでくださいよ。古泉ならともかく鶴屋さんと朝比奈さんに見られるのはちょっとねぇ……」

朝比奈「……キョ、キョンくん……一体、ここで……なにを?」

キョン「え、いやぁ妹探してたら汗かいちゃって……ちょっと着替えをしようと思って」

鶴屋「ここ、誰の部屋か分かるにょろ……?」

キョン「誰って、ここは俺の……俺の……部屋……」キョロキョロ

古泉「…………」

キョン「………………」

鶴屋「……」

朝比奈「……」

キョン「……ッ!!」

キョン「はーっっ!!!!」パァアアア!!

古泉「!? っ、目がぁあ!?」

鶴屋「ま、眩しいにょろーー!!!」

朝比奈「きゃあぁあぁあ!!?!?」

キョン「……部屋間違えましたすいませんんんんんんんんんんんん!!!」シュン!!

16 : 以下、名... - 2016/02/12 16:08:23.96 xkKgg9HX0 14/113


古泉「……あ、あれ? 今何かものすごいものを見てたような気が……」

鶴屋「あっ、あたしもにょろ……ぽっかり胸になにか記憶の穴が開いたような……」

朝比奈「なんか、眩しかったような記憶が……スキーの時も確かこんなことが」

朝倉「……ね、ねぇ早く次の人さ、探しにいかない?」

古泉「え、ええ……って朝倉さん!? え? 朝倉さん!?」

鶴屋「あっれー!? 探したっけ朝にゃん!!?」

鶴屋「な、なに言ってるんですかー!! 部屋のクローゼット隠れてたら見つけられたじゃないですかー!」

朝比奈「じゃ、じゃあやっぱり朝倉さんは部屋にいたんですね……古泉くんすごい」

古泉「え、ええ……ですが、煮え切りませんねこの違和感……」

朝倉「き、気のせいじゃない? あ、じ、時間もそろそろヤバくなってきたし、あと涼宮さんと長門さん探しに行きましょ!? ね!」

古泉「は、はぁ……」

鶴屋「にょろ~……」

朝比奈「(かくれんぼってこういうゲームなんだぁ、楽しいなぁ!)」

朝倉「(ったく~! なんでキョンくん庇わなきゃいけないのよ!!! 勝手に人の部屋入ってきて脱ぐとかただの変態じゃない!!)」

朝倉「(挙句あたしに何も言わずに出ていっちゃうし……あとで説教しなきゃ、説教!)」

朝倉「……にしても、古泉くん。よくあたしが自分の部屋に隠れてると分かったわね」

古泉「え? えぇ、僕は朝倉さんを信じてましたからね(あと、彼の助言も)」

朝倉「え、え? んん?」

鶴屋「おやおや~」

朝比奈「ふ、二人は一体どういう関係で?」キラキラ

古泉「??」

朝倉「た、他意はないわよ。他意は!」

17 : 以下、名... - 2016/02/12 16:10:33.72 xkKgg9HX0 15/113


ここまでー


前スレ

ハルヒ「キョンTUEEEE!!!!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1440765266/
http://ayamevip.com/archives/45341742.html

ハルヒ「キョンTUEEEEE!!!!!」 キョン「退屈しないだろ?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1441618557/
http://ayamevip.com/archives/45676975.html

ハルヒ「キョンTUEEEEEE!!!!!!」 キョン「暴走するなよ?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1444835920/
http://ayamevip.com/archives/45923311.html

ハルヒ「キョンTUEEEEEEE!!!!!!!」 キョン「消失してるぞ?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1446966133/
http://ayamevip.com/archives/46261370.html

ハルヒ「キョンTUEEEEEEEE!!!!!!!!」キョン「動揺してるな?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1450521607/
http://ayamevip.com/archives/47168491.html


6スレ目です。ハルヒ原作ベースですが、現在やや脱線気味。
前スレから間が空いたけど、ガンバリマス!!

30 : 以下、名... - 2016/02/13 14:48:58.85 HOI+dHo/0 16/113


???


キョン「はぁ、はぁ……ええい、とことん手を焼かせる妹だなおい!」キョンクーン!

キョン「隠れまわるのは勝手だが、俺に探させるんじゃねえよ、ったく……」オーイ!

キョン「……このまま放置しといてやろ、んがっっ!!?!?」ゴチーン!!

キョン「…………」アハハー! ヤーイヤーイ!

キョン「もう許さんぞぉぉぉおおぉぉぉぉおおぉぉお妹ぉぉおぉぉぉおぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!!!」ハヤクミツケタラー?

キョン「見つけ次第尻を3つにも4つにも割ってやる……覚悟しやがれ」キョンクンノエッチー!

キョン「ふん!」シュン! コッチダヨー!






















鶴屋「はてさて、残るところあと30分となって参りました妹ちゃん提案かくれんぼ大会!!」

鶴屋「現在見つかっているのはこのあたし、鶴屋さん! それに朝にゃんとみくる!!!」

鶴屋「見つけ出して現在ハーレム状態の鬼役は~この人っ!! 古泉一樹くんだぁ!!!」

古泉「どうも、ご紹介に預かりました古泉です。古泉一樹です」

鶴屋「んんー!美女を3人も侍らせるとは、中々やりおるようですこのハンサムフェイスくんは!!」

朝倉「テンション高いなぁ……間違いなく涼宮さんと同じジャンルよね、鶴屋先輩」

朝比奈「あと見つかってないのは、涼宮さんと長門さんと妹さんですね」

古泉「ああ、妹さんにつきましては現在、兄上である彼が全力で捜索中です」

朝倉「(キョンくん、位相空間を出入りしてると思ったらやっぱり妹さんが原因か……何者なの?一体)」

鶴屋「さぁー! 残すところ後3人!! 時間以内に見つけることができるのかぁ~~!!」

古泉「時間まで精いっぱい頑張らせていただきます」

朝倉「……この解説風なスタンスはなんなの? 今更だけど。古泉くんも満更じゃないし」

31 : 以下、名... - 2016/02/13 14:53:55.59 HOI+dHo/0 17/113


鶴屋「時間以内に見つけることができるのかぁ~~!! と言ったな、あれは嘘だ」

朝比奈「きゅ、急になんですか」

鶴屋「現在、ゲーム開始からなん7時間が経過ぁー!!! 制限時間オーバーしてるし、隠れてる側も出てこないし大混戦中だぁあ!!」

朝倉「なんで隠れてる側が出てこないかがマジで謎なんだけど、涼宮さんルール分かってる? 自分で時間設定してたわよね? ね?」

朝比奈「ね、熱中すれば時間を忘れるといいますから……」

朝倉「負けず嫌いなだけですよ。いや、制限時間すぎてるから出てきても負けじゃないのに……あーもう!」

古泉「それに、涼宮さんだけでなく、長門さんと妹さんの消息もつかめていません」

鶴屋「おろろ、妹ちゃん大丈夫かねぇ? 変なところに迷い込んでないといいけど」

朝比奈「変なところ?」

鶴屋「ウン千枚のお札が貼ってある部屋、とか……」

朝比奈「キュウ!」バタッ!

鶴屋「あっはっはー!! みくるー! 冗談っさ! そんなにお札が貼ってある部屋なんてあるわけないっさ!!」

鶴屋「お札は四隅にしか貼ってないにょろよー!!!」アーッハッハ!

朝倉「そっちじゃないです鶴屋先輩。数の問題じゃないんです鶴屋先輩」

鶴屋「?」ニョローン

朝比奈「アババ……」

古泉「朝比奈さんの憑依体質も気がかりですが……」

朝倉「そんな尼さんみたいな体質なの朝比奈先輩っ!!?」ガーン!

古泉「このままでは、本当に日を跨いでしまうかもしれませんね……皆さん、少々熱が入り過ぎの様です」

古泉「それに……」

朝倉「それに?」

古泉「……いえ、なんでもありません。早急に残りのみなさんを探すとしましょう」

古泉「(せっかく企画した謎解きゲームをする時間がなくなるなんてことになれば……)」

古泉「(森さんからどんな折檻が待っているのか……考えただけでも体の芯から震えます)」カタカタ

朝倉「?」

32 : 以下、名... - 2016/02/13 14:57:50.49 HOI+dHo/0 18/113


クー


古泉「おや?」

朝比奈「あっ! やだっ! 違うんですぅ! ちがっ」バッ!

鶴屋「この可愛らしいお腹の音はーみくるのもので間違いないっさ!!」

朝倉「(立ち直るの早いなぁ朝比奈先輩)」

朝比奈「うぅ……鶴屋さーん……」

鶴屋「おーよしよし、かわいいなぁみくるは!」ナデナデ

朝倉「そういえばお昼も食べずにずっとかくれんぼしてますね……そんなに隠れてて飽きないものなの?」

古泉「ゲームが続行している以上、隠れている方々を差し置いてご飯を食べるというのも……」

朝比奈「うぅ、大丈夫。我慢しますー……」

鶴屋「おーよしよし。さあ! 一樹くん! みくるのためにもそろそろ残りの人をバンバン見つけちゃっておくれっ!!!」

古泉「はい、頑張らせていただきます」

古泉「このままではディナーも食べられそうにありませんからね」ニコッ

朝倉「」

朝比奈「もー! 古泉くんまで! 大丈夫ですってばぁ!」

朝倉「」

古泉「失礼しま……どうしました?朝倉さん、急に固まっ―――」











長門「                   」ユラァ










古泉「な、長門さん? あれ?隠れてたんじゃ……」

鶴屋「な、なんだか有希っこ、いつにもましてミステリアスなオーラ漂ってる感じににょろ」ゴクリ

朝比奈「アブブ……」ヘタッ

鶴屋「ああっ! みくるが有希っこのオーラにあてられて気を失った!! かくれんぼ中何回意識を飛ばすんだみくるーっっ!!」

長門「                   」

33 : 以下、名... - 2016/02/13 15:02:10.97 HOI+dHo/0 19/113


古泉「と、ともあれこれで長門さんも見つけたことで……」

長門「                   」

古泉「な、長門さん? なぜ何も仰らないのでしょう? いえ、寡黙なのは今に始まったことではありませんが……」

鶴屋「しかも微妙に距離が空いてるね、なんでこっちこないのかなっ?」

朝倉「…………このタイミングで長門さんが現れた以上、原因ははっきりしてるわ」

古泉「え?」

長門「                   」チョイチョイ

鶴屋「ん? 有希っこなんだか朝にゃんを呼んでるみたいだよ?」

朝倉「……なにかしら」スタスタ

鶴屋「気をつけるっさ……」ゴクリ!

古泉「(……何を?)」

長門「                   」

古泉「(耳打ち……? 何かを朝倉さんに伝えている? もしくは尋ねている?)」

朝倉「ええ……ええ、本当よ。うん……残念ながらね」

長門「                   」

朝倉「そう、あまり落ち込まないで。自暴自棄になっちゃダメよ。うん……そうね」

鶴屋「なにやら真剣な顔で話し込んでるね……尋常じゃないっさ、あの二人」

長門「                   」

朝倉「……ええ、そうね。そういうことだから……うん、分かったわ」スッ

古泉「あ、朝倉さん! 長門さんはなんと?」

鶴屋「な、なにか重大な告白が……」

朝倉「……古泉くん」

古泉「は、はい」

朝倉「さっきの話は本当なのか、と」

古泉「さ、さっき……の?」

朝倉「隠れている人を全て見つけ出すまでは……ディナーが食べられないっとっっ!!!!!!」ピッシャーン!

古泉「…………そ ん な こ と !!?!?」ガーン!

長門「                   」グラッ!

鶴屋「おおっっと!!! 有希っこがぐらついたーっっ!!! 朝にゃんの言葉の重みはとんでもなかったみたいだーーっっ!!」ワアァ!

34 : 以下、名... - 2016/02/13 15:05:47.39 HOI+dHo/0 20/113

 
朝倉「長門さんいとっては死活問題よ」キリッ

古泉「た、たった一食で……」

朝倉「合宿での一食は通常時の5食に相当する、らしいわ……いやそれはないでしょ、通常時ってあたしの料理よね? あれ?もしかしてバカにしてる?」イラッ

長門「                   」フルフル

鶴屋「首を横に振っている……そういうことではないらしいにょろ」

古泉「自分で言っておいてイラつかないで下さい……ていうかこのやりとりは家でやってください家で」

朝倉「ま、まぁ長門さんにとってはそれほどディナーが大事だということ」

長門「                   」コクリ

朝倉「そのディナーが食べられなくなるかもと聞いて慌てて飛び出してきたこと」

長門「                   」コクリ

朝倉「なんとしてでも、残りの人をディナーまでに見つけること、それを長門さんはわたしに伝えたわ」

古泉「……それで」

朝倉「……それで…………って」

朝倉「…………」

朝倉「自分で言いなさいよぉぉぉおおぉぉぉおおおぉ長門さん!!!!!!!!!」グワッッ!

鶴屋「朝にゃん、怒りの時差ツッコミ」

長門「                   」ピクッ

長門「迂闊、コミュニケーションを放棄していた」 

鶴屋「おおっ! 有希っこの目に生気が戻ったにょろ!! これで戦力アップだ!!」

古泉「生気を失うほどのショックって…………食だけに?」ボソッ

朝比奈「え?」

古泉「ああ、いやなんでも。ていうか朝比奈さんいつの間に起きて……」

長門「残り二人、なんとしてでも見つけ出す」ゴオォ!

鶴屋「ただもんじゃないオーラを感じる……っ! たらもんじゃねーな有希っこ!!!」

朝倉「……なんかもう……もう!!」ダンダン!

古泉「朝倉さん……すごく分かります」シミジミ

35 : 以下、名... - 2016/02/13 15:09:24.45 HOI+dHo/0 21/113


古泉「さて、これで残すところは涼宮さんと妹さんのお二人ですね」

朝比奈「あの、長門さんは出てくる前はどこに隠れてたんですか?」

長門「あっち」

鶴屋「あっちてどっちっさー?」

長門「……本がある部屋」

鶴屋「本がある部屋? んー客人用の部屋に有希っこが満足するような本なんてあったっかなー?」

長門「…………」

古泉「……あの、朝倉さん?」

朝倉「……なあに古泉くん?」ニッコリ

古泉「恐らく、僕の陳腐な推理によりますと……」

古泉「長門さん、多分鍵のかかった鶴屋さんの御尊父様の書斎かなにかに入ってたんじゃ……」

朝倉「やーねー古泉くん。鶴屋さん言ってたじゃない鍵のかかった部屋には入らないでほしいって。ていうか入れないわよそもそも」アハハ

古泉「それでも長門さんなら……合宿時の長門さんなら……」

朝倉「…………」

鶴屋「およ? どしたの朝にゃん、笑顔のまま固まって……」

朝倉「鶴屋先輩すいませんでしたぁあぁああぁあああ!!!!」ペッコォオ!

鶴屋「ええっ!? きゅ、急になんだい!?」

朝倉「理由はさておき、とにかく謝らせてください!!!」

長門「許可する」

朝倉「何様っ!? 何様なの長門さんっ!!?!? そもそもあなたがっ……ほら! 一緒に謝る!!」

長門「申し訳ない、知的好奇心には勝てなかった」ペコ

鶴屋「んんっ? なんのことっさ?」

古泉「(まぁ、長門さんなら純粋に本以外のものに興味を示してなさそうではありますが……はぁ)」

36 : 以下、名... - 2016/02/13 15:12:12.74 HOI+dHo/0 22/113


朝倉「まったく、みんなルール無視して遊んじゃって……!」プンプン!

長門「怒ってる?」

朝倉「……全然!」プンプン!

鶴屋「ハルにゃんと妹ちゃんはかくれんぼの名人だねーっ! 制限オーバーしてから何回か分かれて探しても見つかんないんだもんねっ!」

朝比奈「でも、本当にどこにいるんだろう……隠れられそうなところは多分全部探しました、よね?」ウーン

朝倉「(……妹さんはともかく、涼宮さんはきっと……)」

古泉「朝倉さん、長門さん」ボソッ

朝倉「ん」

長門「なに」

古泉「そろそろ、僕の力では限界の様です。本当は数時間前から限界なのですが……」

古泉「涼宮さんと妹さんの居場所をこっそりと教えていただきませんか? もちろん、ゲームは鬼側の負けです。罰ゲームも重んじて享受しますよ」

朝倉「ん、そうね。本当はもっと早くに協力してあげたかった……んだけど」

長門「……残念ながら、彼の妹はおろか、涼宮ハルヒの居場所も正確には掴めていない」

古泉「…………あれ?」

長門「このままでは……本当に……ディナーに……」

朝倉「はい、二人共落ち着いて。特に長門さん」パン!

朝倉「正確には、ってだけで涼宮さんの場所に関してはおおよそのあたりはついてるわ」

朝倉「なぜおおよそかと言うと、なんとなーく古泉くんも感じてるとおり、涼宮さん、たかがかくれんぼに『力』使っちゃってます」

古泉「あぁ、ところどころ閉鎖空間に似た空気を感じる場所がありましたね、そう言えば」

朝倉「ただまぁ、ここまで隠れ続けた涼宮さんがそう易々と見つかってくれるのかは、保証できないけど」

古泉「それは……確かにそうかもしれませんね」

37 : 以下、名... - 2016/02/13 15:17:13.34 HOI+dHo/0 23/113


長門「問題は彼の妹の方」

古泉「…………」

長門「時間座標、空間座標、ひいては次元軸を転々としているのを、彼がずっと追っている」

朝倉「まるで鬼ごっこね」

古泉「……彼の言ってた通りですね」

長門「わたしたちインターフェイスの力であのスピードについていくことはほぼ不可能と思われる」

古泉「つまり、彼に一任するほかない、と……」

朝倉「ま、今のところはそうね」

古泉「今のところ……?」

朝倉「それじゃ、まだ見つけるのに現実味のある涼宮さんの方、先に見つけに行きましょうか」

長門「」グラッ

古泉「!? な、長門さん? ど、どうかしましたか?」

長門「……問題な              」スゥ

長門「                   」

古泉「な、長門さんの目からまた生気が……」

朝倉「今で6時1分、これで定時でディナーを食べることはできなくなったわけか」

古泉「あぁ、それで……」

鶴屋「わーお! なんだいっどしたいっ! ゾンビっこ! 有希みたいな顔して!! ありゃ! 逆だったかなっ!? ごめんっ!」

朝倉「今ならまだこうやって茫然としてるだけで済むかもしれないけど」

朝倉「このまま1時間、2時間が過ぎた時、長門さんがどうなってるかは……」

朝比奈「アブブ……」フラッ

鶴屋「みくるーっ!!! ちょっとした恐怖で気絶すんのやめなーっ!! なんとなく手慣れてきてないかいっ!? ねえ!?」ガシッ!

古泉「まだ間に合うなら……今さらですが、急いだ方がいいですねっ!」

朝倉「間に合ってるかどうかは……」

長門「                   」

朝比奈「…………アブバ」

鶴屋「あっはっはーー!! みくるその顔サイコーっ!! 写メとっていいかい!!? いやもうとっちゃえ!! あーっはっは!!!」ゲラゲラ

朝倉「……考えたくないわね」ハァ

51 : 以下、名... - 2016/02/14 01:27:20.76 pCNiUbKn0 24/113


ハルヒ「(くっくっく……開始から既に8時間以上は経過してるわよね)」

ハルヒ「(……ふふふ、考えて見れば……ふふ、初めてかもしれないわね。そう……)」

ハルヒ「(勝負ごとでキョンに勝つのは!!!)」ババーン!

ハルヒ「(いやかくれんぼと言えど勝負は勝負だから、勝ちは勝ちよねこれも)」

ハルヒ「(まぁ? こっちはみくるちゃんや有希もいて、向こうは古泉くんと一緒だったから正確なサシ勝負での勝敗ではないけど)」

ハルヒ「(それでもあたしは!! キョンに!!! 勝った!!! 勝ったのよ!!!!)」

ハルヒ「(勝った!! 勝った!!!……はいいけど……)」

ハルヒ「(そ、そろそろ見つけてくれちゃってもいいのになぁ……制限時間すぎたらさっさと出ればよかったかも……それでも勝ちなんだし)」

ハルヒ「(ええい!! 今さら何言ってんのよあたし! こうなりゃ意地よ!! 見つけてくれるまでは出ないわ!!)」

ハルヒ「(あたし一人見つけられない貧弱な団員はウチにはいないって信じてるからねっ!!! 頼んだわよ二人共!!)」

ハルヒ「(…………でも、遅いなぁ)」
























長門「            」ピクッ

朝倉「ん」ピクッ

古泉「どうしました?お二人共」

朝倉「涼宮さんが無自覚に垂れ流している力が収束しつつある……飽きてきたわね涼宮さん。大分遅いけど……」

長門「            」

朝倉「え? なになに……香りから、ディナーに使っているワインはロマネ知らないわよっっ!!!! なんの話よ長門さん!!?」

鶴屋「あ˝ーでもいい匂いしてきたっさー、これ食べるのいつになるのっかなー?」

朝比奈「(うぅ……お腹減ったよぉ……)」クークー

古泉「既に新川さんにディナーが遅れることは伝えてあります……」

長門「            」

朝倉「い、いちいち動作停止しなくていいじゃない! 分かってたことでしょ! もう!」

古泉「(新川さんの後ろから感じた殺気は森さんのものではない、と思いたい……)」ハァ

朝倉「それで、どうする古泉くん?」ボソボソ

古泉「……涼宮さんがいるであろう場所に、行きましょう」

52 : 以下、名... - 2016/02/14 01:31:15.07 pCNiUbKn0 25/113


キョン「はぁ……今何時だ一体……」

キョン「既に人類の歴史分くらいの時間は経って……ねぇな、8時間ってトコか」

キョン「やれやれ、制限時間はとっくに過ぎちまってるが……ようやく」

キョン「追いつめてきたぞ、愚妹め」シュン!








キョン妹「んっふっふー! もうちょっと逃げ続けられると思ったんだけどねーっ!!」

キョン妹「さっすがキョンくん! あたしのお兄ちゃんだけあるね!」フスー!

キョン妹「じゃ、あと見つかるまでの時間」

キョン「たぁーーーーーっぷり、追いかけてね。キョンくんっ☆」シュン!








ハルヒ「(クンクン……この香りは……調理酒にロマネコン……)」

ハルヒ「(なんて、お腹減ったからって現実逃避しちゃダメよね)」

ハルヒ「(キョンなり古泉くんなりがきっと見つけてくれるから! それまで我慢我慢!!)」クー

ハルヒ「(…………ん? もしかしてあたし抜きでディナー食べてないわよね? え?)」ピクッ!








古泉「……」

鶴屋「うへー」グデー

朝比奈「うぅ……」クー

長門「            」

朝倉「ちょ、な、長門さん空腹で歩けないにしても直立不動はやめて!! せ、背負えない!!!」プルプル

古泉「(……たかが、かくれんぼでこの満身創痍……遊びといえど、侮るなかれ、ですね)」ハァ

53 : 以下、名... - 2016/02/14 01:36:08.46 pCNiUbKn0 26/113


朝倉「古泉くん、ここ、ここよ」ボソッ

古泉「ここって……」

鶴屋「ん? あーそこ、鍵はかかってないけど確か……」


ガチャ


朝比奈「ひっっ!!?!? ほへぇ……」フラッ

鶴屋「さっき説明した通りの四隅にお札が貼ってある部屋だねっ、好んで入る人はウチの家系でも少ないっかなっ!!」ガシッ

古泉「こ、この部屋だったんですね……本当にあるとは……」ゴクリ

朝倉「少ないながら、いるのはいることに驚愕を隠せないわ……うっ、空気の質量が増えたかのように重い……」ズッ

朝倉「(でも、これって……)」

鶴屋「いやー! 入るの久々だけどこんなに異様な感じがする部屋だったかなー!!? どおりでなんの使い道もない部屋になってるわけだ!!)」アハハ!

朝倉「笑い事じゃないですよ、それ……っていうかなんで札だけ貼って放置してるんですか……」

朝倉「(涼宮さんのネガティブな感情がこの部屋のアレやコレやらに影響与えまくってるわね……ヘタなポルターガイストくらいなら起きるわよ、これ)」

長門「           」

朝倉「ん? なに? 長門さん」

古泉「この部屋は……見たのは見ましたが、なんとなく、鍵がかかっていなくても入ってはいけない空気でしたのでスルーしてましたね」

古泉「(冷静に考えてみれば、涼宮さんが喜びそうな部屋ではありますね)」スッ

朝倉「え? フラグ? それってどういう―――」

鶴屋「へ―――?」

朝比奈「キュウ……―――」

古泉「っ―――!?」

54 : 以下、名... - 2016/02/14 01:41:30.69 pCNiUbKn0 27/113


朝比奈「ほへ?」パチ

朝倉「……あ、目覚めたみたいですね、朝比奈先輩」

鶴屋「みくるぅー、目覚めてよかったのか悪かったのか……」

朝比奈「え? それってどういう…………いえ」

古泉「…………ははっ」

長門「            」

朝比奈「…………はい、大丈夫です。これまでの経験と知識から現状を理解しました。させられました本能に」

鶴屋「おおっ、みくる鋭いっさ」

朝比奈「皆さんのどんよりした顔をみれば嫌でも分かります、ええ」

朝比奈「また(やっかいごとに巻き込まれた)ですか!!?!?!?」ガーン!

古泉朝倉「「またですよ!!!! ええ!!!!」」ガガーン!!

鶴屋「(また……?)」ニョローン

朝比奈「また、また……こんっ、こんな……うぅ……う˝ぅ˝!!」グスッ!

鶴屋「み、みくる。何だかわからないけど泣きたいのはみんな一緒―――気絶してる……っ?」

朝比奈「ピャー……」グッタリ

朝倉「ついに……息をするように気絶するようになりましたね朝比奈さん。まるで生活習慣の一部のようですね」

長門「            」

朝倉「長門さん……フラグってそういう……もう遅いわよね……あぁー!!」

朝倉「ここはどこでどうやって出ればいいのよーーーっっ!!!! もう!!!!」キー!

鶴屋「あ、朝にゃんまで慌てちゃダメっさ!!!」

古泉「(どうやら、僕たちは凝りもせず、涼宮さんに振り回されることになったみたいですね……)」

朝倉古泉「「はぁ……」」

鶴屋「おおっ、(ため)息ぴったりにょろ……」

55 : 以下、名... - 2016/02/14 01:47:58.67 pCNiUbKn0 28/113


鶴屋「みーくーる起き……いや、起きてもいっしょか、またすぐオチちゃうねー」

長門「              」

朝倉「……」

古泉「……」

朝倉「……原因は違えど、2連続よ。2連続で訳の分からない空間に閉じ込められてるんだけど……」

朝倉「ていうか普通8時間探して人が見つからなかったら警察沙汰よね? おっかしいわよね根本から……」

朝倉「(……まぁ、どうせキョンくんがあれやらこれやらで違和を感じることをなしにしてるんでしょうけど……はぁ)」

古泉「……いやぁ朝倉さん、原因は違うと決めつけるのは早計かと! これも彼の策略の内で―――」

朝倉「古泉くん」ズィ

古泉「は、はい……」

朝倉「気持ちは分かるけど、あなたまで現実逃避したらさすがにあたしもたないわ、ここはお互い持ちつ持たれつよ」

古泉「……すいません、度重なるアクシデントで投げやりになって自分を見失ってました。猛省します……」

朝倉「それは後よ、まずはこの不思議不穏不明空間から脱出しなきゃ……」

古泉「わっ!?」ボッ!

朝倉「わぁ!? きゅ、急になによ古泉くん、ってなにそれ?」

鶴屋「わーお一樹くんマジシャンにでもなったのかい? 薄暗い中火を出せるのはありがたいねっ」

古泉「そんなところです。朝倉さん、どうやらこの空間内では不完全ですが、僕の力も扱えるようです、つまり……」

朝倉「これは涼宮さんが生み出した空間……ってコトね、でも通常の閉鎖空間とは違うみたいだけど……」

古泉「……以前、涼宮さんが発生させた類似型の閉鎖空間の発生原因はストレスではなく、また別の要因がありました」

朝倉「……つまり、涼宮さんの感情に依存する閉鎖空間は、その感情によって空間構築を変化させる……ってこと?」

古泉「一概には言えませんが……そして恐らく、この空間の発生原因がストレスでなく、なにか別のものであるとしたら……」

朝倉「……ま、大方かくれんぼによくある長時間見つけられなかったら心配になってくるアレでしょ? あたしはやったことないから詳しくないけど」

古泉「……『孤独』でしょうか? 中学時代と違い、周りに多くの存在ができたからこそ、感じられるようになった感情……」

朝倉「まぁ……そうやって考えられるなら、この空間の発生も良いもんだと思えるんじゃない?」

古泉「朝倉さんも、そう思われますか? 涼宮さんの周囲を形成する『大切な存在』として」ニコッ

朝倉「…………あたしは詳しくないけど」ボソッ

56 : 以下、名... - 2016/02/14 01:53:01.59 pCNiUbKn0 29/113


古泉「とはいえ、閉鎖空間には変わりはありませんから、一刻も早く元の世界に戻るべきではありますが……」

朝倉「さてどうしたものか、ってことね」

鶴屋「おっ、利口なお二人さん、作戦会議は終わったかい?」

朝倉「そんなに上等なものではないですけど……とりあえず、止まっていてもしょうがないんで歩いてみることにします」

鶴屋「よしきた、まだ歩けるうちに歩いとかないとねー、なんとなくだけど」

朝倉「長門さん……」

長門「          」

朝倉「は、あたしが運ぶとして……朝比奈さんは……」

古泉「でしたら、僕が」

鶴屋「いやいや、ここはあたしに任せておくれっ、目覚めた時にイケメンの背中だと分かったらみくるまた気絶しちゃうっさ」

古泉「大丈夫ですか?」

鶴屋「なんのなんの、あたし体力には結構自信あるんだっ、さあさ、みくるおんぶしてあげよう」

朝比奈「キュー……」

朝倉「(長門さん、朝比奈先輩は言う間でもなく、鶴屋先輩も結構疲れたまってるみたいね……無理もないか)」

朝倉「(ただでさせ、涼宮さんやあたしたちのこと知らない一般人だものね、巻き込んじゃって申し訳ない……)」

朝倉「(って思うのはあたしの勝手か、鶴屋さんだって涼宮さんの周囲を形成する『大切な存在』の一人に違いないし)」

朝倉「…………あたしは、知らないけど」ボソッ

古泉「? なにか仰いましたか?」

朝倉「……なんでもない、さっ長門さん背負ってあげ……次は体育座りのまま硬直!!? 背負いにくいし持ちにくいわよそれぇ!!」

長門「               」

朝倉「く、っそぉ! 目をそらしたすきに直立不動より楽な姿勢に変えちゃってからに!! もう自分で歩きなさいよもう!」グググ

鶴屋「(と、言いつつちゃんと背負ってあげる朝倉ママなのであった、やっさしいねー)」ホッコリ

朝比奈「ウーン……」

57 : 以下、名... - 2016/02/14 01:57:29.94 pCNiUbKn0 30/113


キョン妹「あれーっ? どこだろここ? なんか変なトコ入っちゃったなー、まいっか!」ビュン!

キョン妹「どーせキョンくんもついてくるだろうし、ここで追いかけっこかくれんぼも楽しそう!!」

キョン妹「んー? どこかで感じたことある感じなんだけどなーっ……まいっか!」

キョン妹「今キョンくんは……んー『spatial coordinate 267188』……やばっ! もうすぐ側だっ!!」ビュン!!

キョン妹「急いで逃げろー!!! 急げ急げ―!!!」キャー!













キョン「っうおっ!? なんだこりゃ? 閉鎖空間? んっ? おっ? おっ? おっ?(^ω^)」シュッ!!

キョン「なんてやっている場合じゃなく、これは……ははーん、やっぱハルヒのやつか」

キョン「まだ見つけてもらえず拗ねたりなんかしてんだろ、ったくだから意地張ってねえで出てこりゃよかったのに」

キョン「さて、ということはあいつもこの空間に迷い込んだわけだ、変なトコ好きだからなーあいつ」

キョン「一見して……暗い薄気味悪い空間だな、閉鎖空間よりも闇々しいな、おい」

キョン「だが……妹よ、ここがお前のゲームオーバーの場だ」

キョン「お前とは……この空間内での経験値の差が違うんだよ、俺は」

キョン「何度、この空間から還って来たのか、お前は知るまい……もはやここは俺の庭だ」キリッ

キョン「勝手に人の敷地に入っといて……逃げ切れると思うなあぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!」ゴオッッ!!


















「面白いことを言うね、君だって入ってるのは人の敷地だよ? 『親友』」

「(やっぱり佐々木さんも一緒にかくれんぼしたかったのかな……?)」

「そんなことはない、そんなことはないよ僕はそんなこと思っちゃあいないよ」

「!(読まれたっ!)」ビクッッ

82 : 以下、名... - 2016/02/16 02:00:01.44 +PIrTVay0 31/113


古泉「……それにしても」

古泉「随分と混沌とした空間ですね、ここは……」

鶴屋「やー、こんなギミックもこんな風に改築した覚えもないんだけどねー。この部屋は」

朝倉「この部屋は……? 意味深なこと言うのやめてください鶴屋先輩」

鶴屋「ごめんごめん、しかし先が見えないってのはどういうことだろうね」

古泉「それほどまでに広大な空間が広がっているか、もしくは……」

朝倉「そもそも目指す場所がないか……」

鶴屋「わーお……そりゃまた、途方もない話だね……」

古泉「(実際、この部屋が閉鎖空間のように拡大し続けているのなら……)」

古泉「(同じように、閉鎖空間の拡大を阻止する手段が存在しているはずですが……)」

古泉「(ストレスの具現化とも言える神人は当然おらず、またそれに該当する存在もいない)」

古泉「(……まったく、こんな時彼のような力が羨ましく感じますね)」ハァ

朝倉「ちょっと、長門さん! いつまでも固まってないでなにか状況を打破する手段とか思いつかないの?」ボソッ

長門「              」

朝倉「ん? あぁキョンくん? 確かに近くにいそうではあるけど……」

朝倉「今は妹さんの捜索中だから助力は期待できそうにないわね」

長門「              」

朝倉「……え? う、うん。 分かったわ」

古泉「なにか、名案でも浮かびましたか?」

朝倉「いや、キョンくんの助力が期待できそうにないって言ったら……」

朝倉「古泉くん、この空間において最も頼りになるのはあなただから……古泉くんを頼れって」

古泉「……それはまた、長門さんからの期待となると……僕には少し重いかもしれませんね」

朝倉「(……長門さんから大した信頼得てるじゃない、古泉くん)」

朝倉「(……いや、単に自分で考えるのが面倒くさかっただけ?)」

83 : 以下、名... - 2016/02/16 02:05:36.90 +PIrTVay0 32/113


ハルヒ「(……いやさ、だってこんなに長い時間見つからないとは思わないわけよ)」

ハルヒ「(いくら広い建物だからって……世界中を探せなんて言ってるわけじゃないんだし)」

ハルヒ「(キョンなんて普段無駄に鋭い勘してる癖に、こんな時は全然見つけてくれないし……)」

ハルヒ「(……いっそのこと見つけやすいようにヒントでも出しといたほうがいいのかしら?)」

ハルヒ「(例えば……部屋の前にカチューシャ落としておくとか……さすがに露骨すぎるか)」

ハルヒ「(あーもう! 誰でもいいからさっさと見つけなさいよ!!!)」

ハルヒ「(……せっかくみんなで合宿してるんだから、一人でこんなところいるのもったいないじゃない!!!)」


















朝比奈「いやぁ……そうじゃないですよぉ……むふふー……」ムニャムニャ

鶴屋「ごきげんな夢みてるようだねーこのお姫様は、ま、こっちも夢みたいなもんだけど……」フゥ

朝倉「とんだ悪夢ですけどね、ええ……」ハァ

長門「             」

朝倉「なに? その海苔が食べたい? いやこれ眉毛だから、うん。食べられませんだから」イラッ

古泉「(涼宮さんがあの部屋に隠れていたのは間違いない。朝倉さんのお墨付きでもある。ではどこに隠れていたのか……)」

古泉「(一見しただけでは当然分かりませんでしたが……部屋の内装は大体把握できた)」

古泉「(所謂、いわくつきの部屋だけあって物が少なく、隠れられる場所も多くなかった……)」

古泉「(使用していなさそうな箪笥、積まれた段ボール、そして何故か……)」

古泉「(部屋の真ん中に位置してる場所に置かれている、祭壇(?)らしきもの)」

古泉「(隠れ場所はこのどこかでしょうが……涼宮さんの性格からして、祭壇(?)に隠れている可能性が高い)」

古泉「(鶴屋家がこの部屋と祭壇を何に使用しているかは不明ですが……色々と、事情がありそうですね)」

朝比奈「ええっ……そんな……鶴屋さんが……?」ムニャムニャ

鶴屋「気になること言うねみくる、夢の中の鶴屋さんがどうしたっていうんだい?」

朝比奈「……差し歯だったなんて」ムニャ

鶴屋「おっと、聞き捨てならないねみくる。この爛々と輝く八重歯がなんと差し歯と申すか、ええっ?」ユサユサ

古泉「鶴屋さん、お尋ねしたいことが……」

鶴屋「一樹くん、一樹くんもあたしのこの歯が差し歯だっていうのかいっ? この犬歯がっ 噛んじゃろか」

古泉「え? い、いえそうではなくですね、ちょっ、噛まないでください! 鶴屋さん!」

朝倉「(文字通り噛みつかれたわね……なんちて)」

84 : 以下、名... - 2016/02/16 02:09:11.96 +PIrTVay0 33/113


鶴屋「いやーごめんごめん、あたしの勘違いっさ。お腹がすいて判断力が鈍ってきたみたいっさ……」

長門「            」

朝倉「分かる。じゃないわよ、あなたはもっと重症よ長門さん」

鶴屋「それで? 聞きたいことがあるんだっけ? あたしのスリーサイズだっけ?」

古泉「いえ」キッパリ

朝倉「(冷静だわ……)」

古泉「お疲れのところ申し訳ありませんが……あの部屋の内装についてお聞きしても?」

鶴屋「ん? 内装? いいよっ、と言っても言った通りあたしも久々に入ったわけだから少し前の記憶になるけど」

古泉「では、あの部屋の真ん中に置かれているものについては……?」

鶴屋「あぁーあれね、あれはね……『棺桶』……」

古泉「えっ?」

朝比奈「んぅー……ヒッ!……ブクブク」

朝倉「あ、朝比奈せんぱーい!! 気絶中に気絶してるっ!!?!? ていうか聞こえてたんですか!?」ガーン!

鶴屋「って呼んでた祭壇だよ、祭壇。なんであの部屋にあるのかはおやじさんが教えてくれなかったっさ」

古泉「やはり……祭壇でしたか。ですが、何故『棺桶』と呼ばれているんですか?」

鶴屋「あっ、呼んでるのはあたしだけなんだけどね、子供のころからそう呼んでるんだけどね」

鶴屋「あの祭壇、中に収納スペースがあるんだよっ、上を開けて収納するための。あたしが寝転んだらちょうど棺桶みたいだったからそう呼んでたんだ」

古泉「なるほど、やはり人が隠れられるだけのスペースがある、と」

鶴屋「うん。あ、でも子供の頃のあたしで少し余る位だったから、もしハルにゃんが隠れてるんだとすると、けっこうキツキツかも」

朝倉「そんなところに8時間以上も……出てきたらいいのに……もう」ハァ

85 : 以下、名... - 2016/02/16 02:14:28.48 +PIrTVay0 34/113


鶴屋「まぁ、ハルにゃんが隠れている場所がそこだとしても……」

鶴屋「今この場所が分からないから見つけてあげられないんだけどねー……ふぅ」

古泉「…………」

朝倉「でも祭壇ってあけることができるんですね、そんなのあるんだ」

鶴屋「まー祭壇って言っても色々あるからね、国から宗教から。そういうのに合わせた作りになってるんじゃないかなっ?」

朝倉「へー、でも本当に何に使われてたんでしょうね」

鶴屋「さあ? 最近はあそこの部屋自体、碌に使ってないはずだからあの祭壇も使われてないはずだよっ」

朝倉「まさに入って隠れるにはうってつけですね、だからってあたしは入ろうとは思いませんけど」

鶴屋「あっはっは、ハルにゃんはあたしと似てるってことだねっ、それも子供の頃の」

古泉「(この閉鎖空間に入る前に感じた浮遊感……入る、というよりは落ちた?)」

古泉「(周囲は暗闇、そしていくら歩いても出口が見られない……)」

古泉「(『孤独』を感じた涼宮さんが発生させた閉鎖空間とするならば……)」

古泉「……同一の状況下を作り出す……?」

鶴屋「ん?」

朝倉「もしかして……脱出の方法でも思いついた? 名探偵さん」

古泉「……確証はないですが、試してみる価値がある方法を思いつきましたよ」

朝倉「……ふふ、さっすが長門さんに頼られるだけあるじゃない! よっ色男!!」バンバン!

古泉「っ、あっ、ありがとうございます……っつ」

86 : 以下、名... - 2016/02/16 02:20:06.04 +PIrTVay0 35/113


チカチカ


キョン妹「ん? なにあれー? 光ってる? キレー!」ビュン!ビュン!

キョン妹「人……? あれ? あれって古泉くん? 有希ちゃんにみくるちゃんも!? あれれっ?」

キョン妹「ここって……元の場所じゃないよねー? じゃあなんで古泉くんたちが……」

キョン妹「……あれかな? もしかして誰かが隠れてた場所だったりして!」ピコーン!

キョン妹「ありゃりゃー、それは悪いことしちゃったかも、一緒の場所に隠れるのはマナー違反だもんね!! かくれんぼの!」

キョン妹「……でもっ! こうなった以上は運命共同体だねっ!! 死なばもろともっ!!!」

キョン妹「あっちに近づいてキョンくんに一緒に見つけられちゃえ!!! いっくぞぉおおお!!!」オーイ!!!

キョン妹「っ、来たねっキョンくん! さあ! 捕まえるまでがかくれんぼだよっっ!!!」ビュン!

キョン「それは鬼ごっこのルールだろうがぁぁあああ!!!! かくれんぼは見つけたら終わりだぁぁああぁあああ!!!!」

キョン「よーやく見つけたぞぉぉおぉおおぉぉお!!!!! 逃がさんっっっ!!!!!」ドンッッ!!

キョン妹「わっ! キョンくんはやっ!! 負けないもんっっ!!」

キョン「バカやろーー!! だからもうかくれんぼのルールじゃねーよそれ!! おとなしく捕まれっっ!!!!」

キョン妹「捕まれと言われて大人しく捕まるバカは(ry ベロベロバー! こっこまでおいでっ!」

キョン「テ、メ、ェ!!!!」ビキビキ

キョン妹「へへー! ん―――? あれっ? なにっ? 光が―――大きく? っ!?」

キョン妹「えっ、やっ、こっちくる!!? ええっ!!? なんなのー!!?」クルッ!

キョン「んあっ!? なに引き返して、っっとぉ!? なんだなんだ? こりゃ―――って、おい―――っ!」

キョン妹「キョンくーーーーーーーん!!!!!!!」ダキッ!!

キョン「ぐほっっ!? お、お前……」プルプル

キョン妹「……あれ、やばくない?」ピカッ!!

キョン「おま―――」

87 : 以下、名... - 2016/02/16 02:24:54.69 +PIrTVay0 36/113


数分前


朝倉「それで? その方法っていうのは?」

古泉「あれです」ピッ

朝倉「あれ?」チラッ

鶴屋「……なにもないよ? 上には」

朝倉「もしかして……上が出口だって言うの?」

古泉「そのまさかですよ、まさしく出口は上に存在するのです」

鶴屋「ええっ? あたしたち扉から入ったんじゃなかったっけ?」

古泉「入ったようにみせかけて、実は落ちていたんですよこの場所に。感じませんでしたか? 浮遊感のようなものを」

鶴屋「言われてみれば……」

長門「         」

朝倉「空腹感は今関係ないから。でも古泉くん、上に出口があるとして、その、出る方法がなくない?」

朝倉「それに上が開いているようにも見えないし……」

古泉「だったらです」

朝倉「え?」

古泉「出口がないなら、作ればいい。開いてないなら開ければいい」

古泉「今ならそれが―――できるんですから」ボッッ!!

鶴屋「い、イリュージョン……すっげー」

朝倉「そ、それで出口を……?」

古泉「どうです? 試してみる価値ぐらいは、あるでしょう?」

88 : 以下、名... - 2016/02/16 02:28:10.66 +PIrTVay0 37/113


古泉「今この状況は、涼宮さんの置かれている状況の再現なんですよ」

鶴屋「ハルにゃんの?」

古泉「ええ、この暗闇、閉塞感、周囲に何もない孤独、まぁ我々は集団ではありますが……」

古泉「ここは、涼宮さんが入っている祭壇の中そのものなのですよ」

朝倉「そのもの……?」

古泉「おそらく、ですが」

鶴屋「んー? つまり探せばハルにゃんもここのどこかにいるってこと?」

古泉「いえ、あくまで涼宮さんは現実世界にいます。我々がいる場所は……そうですね位相違いの空間、というわけですよ」

鶴屋「…………?」

朝倉「あ、あとで説明します」

古泉「位相違いではありますが、涼宮さんは我々のすぐ近くにいる。孤独を感じた涼宮さんが引き寄せたのでしょう」

古泉「そして、ここが祭壇の中だとするならば……入口兼出口は一つしかありません」

朝倉「それが、天井ってわけね……うん、なるほど。納得した」

古泉「―――パンドラの箱というものをご存知ですか?」ボッ!

朝倉「ギリシャ神話の?」

古泉「ええ、あらゆる災害が詰まった箱と言われていますが、全ての災害が外に出た後残るものは希望であると言われています」ボッッ!!

古泉「見たところ、この空間には我々以外、誰も、何もありませんね」ボオッ!!

朝倉「……なに? もしかしてあたしたちが誰かさんにとっての希望とでも言いたいの?」クスッ

古泉「…………いえ、ただ」ボオオォッ!!!

古泉「――――――それが僕の『希望』だと言うだけですよ」ブンッッ!!!!












ゴォオオオォオオォオオォオォオ!!! キャーッ! アァアァアアアアア!!















パキンッ!!!!








118 : 以下、名... - 2016/02/18 21:04:40.99 2/l/4Vrf0 38/113


ハルヒ「(…………ダメね、もう出た方がいいわ)」

ハルヒ「(これだけ長いこと隠れていたら声出してでも探そうとするはず……それがないってことは……)」

ハルヒ「(あたしじゃなく、みんなの方に何かあったってことかもしれない……)」

ハルヒ「(なにか不思、おもしろい目にあってるかもしれない!)」

ハルヒ「(だったら尚更、今更だけど、こんなとこにこれ以上いるわけには……!)」ズッ

ハルヒ「(…………?)」グラッ

ハルヒ「え、なに? じ、地震? 今?」グラグラ!

ハルヒ「ちょ、うそっ! ダメっ! っ、えっ? えっ!!?」グッ!

ハルヒ「あ!? 開い―――っ!!?」バッ!!

ハルヒ「(そ、外に出されるっっ!!!?!?)」ドンッ!

ハルヒ「きゃっっ!!」バタッ!

古泉「っっっ!! 出たっ! 出れたっ!」ッタ!

ハルヒ「へ? え? えええぇっ!!?」

朝倉「わっ! 出た!! ホントに出れた!!」

朝比奈「んぅ……ほへっ? こ、ここどこですかぁ!?」

鶴屋「んっ? あれっ? ハルにゃんだ! ハルにゃんいた!! いたっさ!!」

長門「           」

ハルヒ「え……ま、待って。一体、何がどうなって……ん?」ブニ

キョン「……はやぐお˝り˝ろ˝お˝ま˝え˝ら˝!」グググ

キョン妹「あはっ!!」キャッキャ!

ハルヒ「キョンっ!!? 妹ちゃんも!! ってあぁ、ごめん乗っかってたのね……じゃなくて!!」

ハルヒ「この状況は!!? 一体なに!!? っていうかみんなどこにいたの!? あたしは確かにあの中に……」

朝倉「…………」フゥ

朝倉「古泉くん、それにキョンくん。言うこと、あるじゃない?」

古泉「ええ」

キョン「あぁ……」

古泉キョン「「涼宮さん(妹)みーつけた」」

ハルヒ「あ……うん」

キョン妹「見つかっちゃったー。まっ、楽しかったからいっかー!」

119 : 以下、名... - 2016/02/18 21:09:23.24 2/l/4Vrf0 39/113


ハルヒ「ちょっと!! 見つけられたのはいいけど、いやよくない!! 一体見つけるのにいつまでかかってんのよ!!!」

朝倉「それに関して涼宮さんだっていつまで隠れてるのよ、制限時間いくらオーバーしてると思ってるのよ」

ハルヒ「う」

朝倉「おかげで長門さんが……」

長門「           」

ハルヒ「ごめーーん!! 有希ごめーん!! 今すぐディナーにしましょ!! ねっ! ね!? だからちょっとだけ時間ちょうだい!」

ハルヒ「この際、時間かかったのはもうお互いチャラにしましょ、そんなこといつまで言ってもしょうがないし」

ハルヒ「でも!! これだけはハッキリさせておいて!! 一体何がどうなってみんな急にあそこに出てきたの!?」

朝倉「あー、うー……それは……」

キョン「イリュージョンだよ」

ハルヒ「イリュ、いーや! そんなんじゃ騙されないわよ!! あんたそれ言えば許させると思ってんじゃないでしょうね!」

キョン「勝手にお前が納得してるだけだろう。それに、団長の元に団員が集まるのは不思議なこっちゃないだろう」

ハルヒ「う……ってそれは別に関係な―――」

キョン「ハルヒ」

ハルヒ「なっ、なによっ!」

キョン「みんな揃って腹減ってんだ、飯にしようぜ、な?」

長門「         」コクリコクリ

鶴屋「さんせーっ!! 実はもうペコペコでさーっ! なんかとてつもない悪夢見てた気分なんだーっ! うん? こういうことだよねっ?」

朝比奈「そういえばなんか嫌な夢見てた気が……うーん?」

朝倉「もう、探し疲れちゃったわよ」ヘナッ

キョン妹「ご飯なーに? 七味マヨネーズ!?」

ハルヒ「…………」

キョン「みーんな、ちゃんとお前を探してたんだよ」

古泉「あまりに涼宮さんが隠れるのがお上手で、随分待たせてしまいました、すいません」

ハルヒ「…………なによそれ、結局あたしの質問に答えてないじゃない……でも」

ハルヒ「……よく見つけました! これでいいでしょ! さっ、ごはんいきましょ! ごはん!!」

キョン「…………はぁ、これは自論だが」

古泉「……なんでしょう?」ヘタッ

キョン「かくれんぼで最後まで残る奴に、碌な奴はいないな」ハァ

古泉「……はは、同意できかねますね、それは」

120 : 以下、名... - 2016/02/18 21:15:15.61 2/l/4Vrf0 40/113


長門「……………………ごはん」

朝倉「!!?!?!? な、長門さんが……喋った!! 喋ったわよ!!!」

鶴屋「いやー、有希っこだって喋るよ朝にゃん」

ハルヒ「何言ってんのよ朝倉さん、有希は無口キャラだけど喋らないわけじゃないわよ?」

朝倉「そうじゃなくて!!! そうだけどそうじゃないのよ!!! 言語によるコミュニケーションをとったのよ!!?」

朝比奈「???」

ハルヒ「何言ってんのよ、まるで有希が言語以外のコミュニケーションをとる宇宙人みたいな言い方して……」

朝倉「んぐっっ!!!? ん、うぅ!! ううぅ!!! 長門さんも涼宮さんもバカ!!」

ハルヒ「えぇー……」

長門「……なぜ」



















古泉「今回は、中々に疲れましたよ」

キョン「おー、よく頑張った方じゃねえか」

古泉「最大の褒め言葉として受け取っておきますよ」

キョン「にしても、ウチの妹と同じ時間隠れ続けるとはな……さすがというかなんというか、まぁ、ハルヒらしいな」

古泉「あなたの方は、8時間やそこらでは済んでないのでは?」

キョン「ん、些細なこったそんなもんは。それよか……随分と懐かしいもんがあるじゃねえか」

古泉「懐かしい……まさか、あの祭壇のことですか?」

キョン「何かの縁なのかね、これも。房右衛門のやつ大事に今まで受け継いできたのか……」

古泉「房右衛門……? あの、どちら様でしょうか? 昔の方のようですが……」

キョン「鶴屋さんの何代も前の先祖さ、んでもって……」

キョン「『佐々木』の子供でもある」ドーン!!

古泉「あぁ、鶴屋さんの……………………え? は?」

古泉「ちょ、ちょっとまってください。今、さ、『佐々木』さんと、そう、仰いましたか?」

キョン「おう、言ってなかったっけ? えー『佐々木』になる前の……何代前かは忘れたが」

キョン「俺の親友が『鶴屋』を名乗ってた時もあったってことだ」

古泉「…………まったく、あなたもあなたですよ」

古泉「衝撃の新事実を、また……こんなところで……はぁ」

キョン「そんな衝撃ではないだろう、だろ?」

121 : 以下、名... - 2016/02/18 21:21:20.19 2/l/4Vrf0 41/113


古泉「と、いうことはですよ。鶴屋さんは『佐々木』さんの正当な子孫ということですか?」

キョン「うん」

古泉「うん、って……そんな軽く、あっさりと……」

キョン「なんてことないだろ。『佐々木』の子孫なんて探せば山ほどいるぜ、なんせ平安時代にはもう存在してたんだからよ」

古泉「それはそうですが……」

キョン「ま、それが鶴屋さんという比較的身近にいたのは少々の驚きがあるがな」

古泉「その驚きをもう少し重々しく表現してもらいたかったですね」

キョン「ただ子孫なだけで、ハルヒみたいな『力』とかそういうがあるわけじゃないからな」

キョン「ただ、鶴屋さんは中々察しがいいお方だ。そういう『佐々木』由来のところはあるかもしれん。他の子孫達にも少しはな」

古泉「間違いなく大物のオーラがありますからね、鶴屋さんは……しかし、子孫にも『力』が受け継がれていないとなると……」

古泉「やはり『佐々木』という概念のような存在を打ち壊した涼宮さんは、とんでもないお方と言えるでしょうね」

キョン「まーな。この先、今ハルヒの持ってる『力』がどこにいくかも分かんないしな」

古泉「僕には規模の大きすぎる話ですね……もう一ついいですか?」

古泉「あの祭壇は祭事などを行うためにあなたがおつくりになったものですか?」

キョン「あー、まぁ、あれはだな……言ってしまえば俺がつくったものであるし、本当は棺桶なんだよあれ」

古泉「なんと……それは……」

キョン「『佐々木』いや、当時『鶴屋』の俺の親友が死んだとき用につくったものでよ、本当は土葬する時一緒に埋めちまうはずだったんだが」

キョン「どこから出てきたか遺言状に、『よくできた棺桶だから埋めるのは勿体ない』なんて書いてあるもんだからよ」

キョン「その時代そんなに拘束力を持たない遺言状なのに、息子の鶴屋房右衛門ってやつがその通りにしてよ」

キョン「まぁ、それでここまで受け継がれてきたってわけだとは思う」

古泉「そんな壮大なことが……」

キョン「にしても埋めるためのものなのに勿体ないってどうなんだよ、結局今の今まで使わず受け継がれてるし、保存状態もいいし」

古泉「それだけ大事に受け継がれてきたというわけですよ。しかし、まるでオーパーツのような祭壇ですね」

キョン「俺に時代は関係ないからな」

122 : 以下、名... - 2016/02/18 21:26:19.56 2/l/4Vrf0 42/113


キョン「まぁ、あれ本当に祭壇としても使える親切設計だからな、当時の俺は『発明王』と呼ばれてたし」キリッ

古泉「それは別の人だと思いますが……しかし、そんなに大事に受け継がれてきたものが別荘の、それもこのような部屋にあるとは……」

キョン「あー、それは多分ここが『鶴屋』の生まれ故郷だからだな」

古泉「ほぅ……」

キョン「で、部屋の内装については……一度は死人が入った棺桶なわけだし、霊的なあれでアレな理由があるんだろ」

古泉「ボカしましたね」

キョン「こればっかりは鶴屋家の当主に聞かなきゃわからんだろ、代によって家柄だって変わるし」

古泉「……今日は随分と僕の質問に答えてくれますね」

キョン「あぁ? まぁ……かくれんぼを頑張った褒美みたいなモンだ、ちゃんと全員見つけたようだしな」

古泉「では、そのお言葉に甘んじて……最後に一つ質問してもよろしいですか?」

キョン「なんだ?」

古泉「『鶴屋』の子、鶴屋房右衛門さんですが……」

古泉「この方の父親は……あな―――」

キョン「ないない、鶴屋家に俺はそういう関係を持ってねーよ」

古泉「言い切りましたね。では『鶴屋』とはどのようなご関―――」

キョン「質問はさっきで最後と言っただろ?」

古泉「これはこれは……勿体ないことをしてしまいましたね」

キョン「……と、言いたいところだが、特別にサービスしといてやる」

古泉「おぉ、あなたが僕にサービスとは……雹でも降りますかね、今日は」ニコニコ

キョン「(余裕ぶっこいてても知らねえぞ俺は……)」 

キョン「俺が、『あいつ』との関係を語る以上」

キョン「『親友』以外、それ以上もそれ以下の言葉はでてこねーよ」

古泉「なんと、既に分かり切ったことを聞いてしまいましたね」

キョン「……まったくだ、分かり切ったことを聞くんじゃねーよ」

キョン「……………………………………ったく」

123 : 以下、名... - 2016/02/18 21:30:59.63 2/l/4Vrf0 43/113


古泉「(『佐々木』の子孫……予想していなかったわけではありませんが……)」

古泉「(いかんせん、我々は『佐々木』という人物も、その受け継がれてきた力の系譜も知らない)」

古泉「(調べるあても、力の痕跡すらも感じ取れない……)」

古泉「(謎が謎を呼ぶというのはこういうことでしょうか、彼と出会ってもう一年近くになりますが謎は増すばかり……)」

キョン「古泉」

古泉「(鶴屋さんにしてもそうですが、まるでそのような、『佐々木』の子孫であるような素振りもなかった)」

古泉「(涼宮さんや僕たちと違って本当に純粋な一般人、それでいて涼宮さんと近しい位置にいる……)」

古泉「(これを単なる偶然で片づけていいのか……はたまた涼宮さんに関わった人物全てに『佐々木』の血が流れているのか……)」

古泉「(……ひょっとすると僕の中にも『佐々木』の力の系譜である誰かの血が流れているのかも……)」

古泉「(……まさか、超能力者とはそういう―――)」

キョン「古泉って」

古泉「っ、すいません。少し考え事をしていまして……なんでしょう?」

キョン「いや、何かについて考えるのは結構なことだが……」

キョン「まずは目の前のことから考えた方がいいと思うのは俺だけじゃないと思うぞ?」

古泉「目の前の……こ、と……」ピタッ

新川「お待ちしておりました、さあディナーの準備は整っていますぞ」

ハルヒ「ごめんねっ! こんなに遅くなっちゃって、絶対残さないから安心して!!」

長門「            」

朝倉「長門さん、落ち着いて。ご飯は逃げないから、ね。ね」グググ

朝比奈「ふわぁ……! おいしそうですぅ!! うぅ……!」

鶴屋「たまげたっ!! すんごい腕してるね新川さんっ!! ウチのシェフにだって負けないぐらいっさ!!」

キョン妹「わーー! おいしそーっっ!!!」

古泉「……あの」

「さあさ、古泉様もお席にお座りになって……」

「ゆっくり、していってくださいね」ゴゴゴゴゴゴ!!!

古泉「ふ、不可抗力です!!!! 不可抗力なんです!! 今回僕は頑張りました! 頑張ったんです!!! 本当なんですぅ!!!」

キョン「必死ダナー」

124 : 以下、名... - 2016/02/18 21:35:34.84 2/l/4Vrf0 44/113


「ふふ」スッ

古泉「(あぁ……これも運命なのだとしたら僕は僕の血を呪―――)」ポンッ

「よく頑張ったみたいですね、お疲れ様です」ボソッ

古泉「えっ?」

新川「森」

「失礼しました、古泉様。肩に埃がついていたもので」ニコッ

古泉「え、えっ……はい」

キョン「よかったじゃねえか古泉。お前の功績はちゃんと分かっててもらえたみたいだぞ」

古泉「……はい、というよりも思い返してみれば……」

古泉「僕が不当に説教や折檻を受けたことなど、ただの一度もなく全て指導や反省など、意味のあるものでした」

キョン「被害妄想ってわけだな。ブラック企業じゃあるまいし、ちゃんと評価してくれてるじゃねえか」

古泉「……どうやら僕は、涼宮さん以外にも良い上司に恵まれているようです」ニコッ

キョン「ハルヒ以外にもって、それに上司っておま―――」

ハルヒ「ちゅうもくっっ!!!!」バン!

キョン「近ぇよ、俺にしか言ってねえだろそれ」

ハルヒ「ちょっとは動じなさいよ」

キョン「やだね」

ハルヒ「はいはい、みんなもちょっと注目してもらえるかしら?」

キョン妹「はいはーーい!」

朝比奈「はいー?」

鶴屋「んっ?」

長門「                」プルプル

朝倉「が、頑張って長門さん!! 言わばあれは多分乾杯の挨拶だから!! ホントのホントに最後だから!!」グググ!

125 : 以下、名... - 2016/02/18 21:39:20.52 2/l/4Vrf0 45/113


ハルヒ「良いかしら? ゴホン!」

長門「              」

朝倉「ふぬぬ……っっ!!」ググググ!

朝比奈「(い、いいのかな……?)」

ハルヒ「えーっとまずは……そうね、みんな色々とありがとう」

ハルヒ「この合宿のことだけじゃなく、映画とか、もっと日常的な団活のこととか!」

ハルヒ「あたしは普段口に出して言うタイプじゃないから、こういう場で口に出して伝えときます!」

キョン「なんだなんだぁ、急にらしくねぇハッ!もしかして……SOS団解散式なのかっっ!!?」ガタッ!

朝比奈「ええっっ!!?」ガタッ

古泉「違います、座っていてください」

鶴屋「みくるもっさ」

キョン朝比奈「「あ、はい」」スッ

キョン妹「ええっ!!?」ガタッ!

キョン「ワンテンポ遅ぇよ、座れバカ」

ハルヒ「中々追い求めてる不思議ってのは見つからないけど、結構満足してる日を送れてると思うわ!!」

ハルヒ「キョンも有希もみくるちゃんも古泉くんも、臨時メンバーの朝倉さんも、鶴ちゃんも」

ハルヒ「みんながいて、そういうのって作られてるんだと思う! 今回の合宿然りね!!」

朝比奈「ずずみやざぁん……」ズビ

鶴屋「ええっ、今泣くとこないよーみくるー」フキフキ

ハルヒ「まぁ、長々と話すのもあれだし、つまりあたしが何言いたいかと言うと……」

古泉「涼宮さん、あと『10秒』です」

ハルヒ「うえっ!? こ、古泉くんにしては随分急ね! え、えーっと!」

朝倉「す、涼宮っさんっ!! あと、『5秒』っっ!」ググウグッ!

長門「                   」ギチチッ!

ハルヒ「つっ、つまり!! あたしが言いたいことは――――――っ!!!」

126 : 以下、名... - 2016/02/18 21:41:44.16 2/l/4Vrf0 46/113















ハルヒキョン「「この1年間、お疲れさまでした、ありがとう!!ってこと!! はい、かんぱーい!! あけおめーっっ!!!!」













127 : 以下、名... - 2016/02/18 21:46:06.52 2/l/4Vrf0 47/113


ハルヒ「って」

ハルヒ「新年から一言一句違わず真似してんじゃないわよぉぉおおぉぉおおおぉおぉおぉおおぉおおおお!!!!!!」

キョン「これが新年初トリック……とでも言っておこうかね」

キョン妹「(ふふっ、ここは空気を呼んで二人に言わせてあげるあたしなのであった!」

キョン「後半聞こえてるぞお前、何言ってんだアホ」

朝比奈「あっ、あけましておめでとうございますー。今年もよろしくお願いします!」

鶴屋「あけおめーっっ!! ことよろーっっ!! 畏まった場ではこの後嫌でも固いこと言わなきゃだからっ! ここぐらい崩させてねっ!」

朝倉「ふぅ……新年か、バタバタしたまま迎えちゃったわね……長門さん、あけましておめでとう」

長門「おめでとう」グアッツグアッツ!

朝倉「見向きもせず一心不乱に……はぁ」

古泉「あけましておめでとう、ございます。今年もよろしくお願いいたします」

「こちらこそ、あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願い申し上げます」

古泉「…………ははっ!」ニコッ

「…………ふふっ!」ニコッ

ハルヒ「ん」ズイッ

キョン「なんだその手は?」

ハルヒ「何言ってんのよ、もちろんお年玉よ?」

キョン「馬鹿野郎、お前がやってるのはお年玉ではなく、お年玉の催促だ。誤解を生むようなこと言うんじゃない」

ハルヒ「なんでもいいけど、お年玉。よこしなさい?」

キョン「ほれ」スッ!

ハルヒ「うえっ!!? な、なによこれっ!? お、っも……!!」ズンッッ!

キョン「なんでもいいって言うから、『落とし玉』をだな……」

ハルヒ「くだらない!! くだらなすぎるっっ!! 今日日親戚のおっちゃんでも自粛するわよこんなもの!!!」

キョン「でもスケールが違うだろ? 重すぎて手が動かせないぐらいに。実現できちまうのが俺クオリティ」

ハルヒ「はっ、早くどけなさいよっ!!! くっ、全然動かないわよこれっ!!」プルプル

キョン「……まっ、俺を頼るってこたぁ、これは一種の表現だよ。新年の抱負的な」

ハルヒ「? なによそれ?」

キョン「……ハルヒ、お前は今年も―――」ヒョイッ

ハルヒ「わっ!」

キョン「俺に振り回される年だってこった! 今年もよろしくな、ハルヒ」ニッ!

ハルヒ「…………はん! 望むところよ!  今年もよろしくっ、キョン!」ニカッ!



















多丸兄弟「「あの……」」

                                               猫はどこ行った?(マジで) 完
   

154 : 以下、名... - 2016/02/22 22:58:42.46 4iZQoEdV0 48/113


ハルヒ「うんっ! うん! これはっ! うんっ!」ガツガツ!

ハルヒ「あたしってさ! 今までおせちのこと特においしいとか思ったことなかったのよね! おか、母親のせいもあるんだけど」

キョン「唐突になんだお前、新年から」

ハルヒ「でもね、このおせち。これはほんっっっっとにおいしいの!! もうみんなに食べてほしいぐらい!!!」

朝倉「いやみんな食べてるわよ……普通に」

長門「…………」モシャモシャバクバク!!!

朝倉「…………普通に」フイッ

キョン「現実から目を逸らすな朝倉」

鶴屋「いやー! しっかし新川さんはホントに料理がうまいんだねっ!! 本職なんだっけ? 傭兵?」

ハルヒ「いやホント。正月からこんなにおいしいものが食べれるんだから合宿やった甲斐があるってもんよねー!」

長門「……コクリ」バクバクバクッッ!

朝倉「そこ、微かに返事をしない。合宿の目的ご飯じゃないから」

朝比奈「……」ジィ

「あの、何か……?」

朝比奈「……参考にさせていただきますっ!!」バッ!!

鶴屋「なにをっさ?」

キョン妹「キョンくーん!」

キョン「なんだ? お年玉という名のげんこつなら与えてやっただろう。もう一回か?」

キョン妹「そのお年玉は今度キョンくんを起こす時に返す予定ー、そうじゃなくってぇ」

キョン「ちょ、聞き捨てならんぞ!! 寝込みを襲うのは反則だ!!!」

朝倉「寝込んでなきゃ起こす必要もないんだけど……」

キョン妹「もう一回かくれんぼしよーよ!! みんなで!! やろーー!?」キャッキャ

キョン「……だとよ、古泉。どうする?」

古泉「妹さんには大変申し訳ないのですが……本日は、昨日の内に消化できなかったイベントを行うつもりです」

キョン妹「えーーっ! それって面白いやつー?」

キョン「すまんな。子供は平気で空気を読まず毒を吐く生き物なんだ、許してやってくれ」ゴツン!

キョン妹「あいてーっ!!!」

古泉「もちろん、楽しんでもらえるよう、こちらとしても最大限、努力させていただきますよ」ニコッ

155 : 以下、名... - 2016/02/22 23:03:23.90 4iZQoEdV0 49/113


キョン「しかしだな古泉、せっかくスキー場に来ているのに室内遊戯とは如何なものかとは思うぞ。しかも元旦から」

古泉「それについては至極最もな意見だと重々承知しています、ですから僕はまず、最高意思決定機関に提案をしにいきました」

キョン「そんなにやりたかったのか……」

古泉「まぁ、せっかく準備しましたから」

朝倉「交渉する相手が見えているのはやりやすいわね……」

キョン「んで、ここまで言うからにはすでに了承を得てるっつぅことだな」

古泉「ええ、二つ返事で快く許可してくれましたよ。ただし『絶対に面白いものにすること!』と注文されましたが……」

キョン「答えられるのか?」

古泉「『機関』一同をもって、みなさんを満足させるつもりですよ」

朝倉「前みたく、キョンくんやあたしたちが仕掛ける側にまわることもなく?」

古泉「前回はドッキリのようなものでしたから、今回はゲームですよ。みなさんが一様に楽しめるかんじのね」

古泉「(協力してもらいたいことがあるというのはありますがね)」

キョン「(面倒くさいのはパスだぞ)」

古泉「」ビクッ!

朝倉「? どうしたの?」

古泉「い、いえ。さて、夜にはこの別荘を後にしなければなりませんので……そろそろ始めましょうか」

キョン「……よし! じゃあ俺は部屋で怪しいことやっとくから終わったら起こし―――」ガシッ!

ハルヒ「そろそろ始めるのね古泉くん! いいわ! 全員集合ーー! もちろんあんたもよ!」グググ

キョン「……これだよ」ハァ

朝倉「当然の結果よ。はい、長門さんもそろそろ……うん、まぁ話は聞いといてね?」

長門「…………コクリ」バクガッツゥ!!

キョン妹「かくれんぼーーっ!? おにごっこーーっ!?」

キョン「しねえっつってんだろ。今度は俺がホンマもんの『鬼』になるぞ。マジで。ガチで」

ハルヒキョン妹「「見たいっっ!!!」」キラキラ

キョン「……これなんだよ」ハァ

朝倉「ま、そうなるわよね、うん」

156 : 以下、名... - 2016/02/22 23:07:53.72 4iZQoEdV0 50/113


古泉「えー、昨日のかくれんぼが盛り上がり、時間が押したため出来ずじまいだったゲームを今からやりたいと思います」

キョン「異議あり!! 昨日のかくれんぼが盛り上が―――」

朝倉「あなたも空気読んで黙れないタイプの人だもんねっ!!!!」ガシッッ!

キョン「ムググ……」

鶴屋「一樹くん考案のゲームなのかいっ? それは大いに期待できそうだねっ!! お姉さんハードルあげちゃうよー!?」

朝比奈「それで、何をして遊ぶんですかー?」

キョン妹「みくるちゃん『で』遊ぶ―!!」ピョーン!

朝比奈「きゃあ! も、もう危ないですよー」

キョン「あ、朝比奈さん『と』ではなく、朝比奈さん『で』……だと? 貴様っ……俺も混ぜんか――っ!!!!!」ガッ!!

ハルヒ朝倉「「黙りなさい」」ボゴッッ!!

キョン「グヘアッッ!! ま、毎度毎度ひどすぎるんだよな。この二人からの物理的ダメージ……」

古泉「では、少し場所を変えましょうか。広い空間を使う遊びでして……」

ハルヒ「広い空間を使う……あれかしら、ミステリーサークル作り!」

キョン「んなもんお前ぐらいしかやらねぇよ」

鶴屋「んー、ドッジボールとかかなっ!?」

朝比奈「し、室内ではさすがにやらないんじゃ……」

朝倉「長門さん、移動ですって。移動しましょ? ね?」

長門「……」フルフル バクバク

朝倉「だ、大丈夫だから! 今度はお昼ご飯抜きとかディナーの時間が遅れるとかはないから!」

長門「…………」ピタッ

朝倉「…………多分」

長門「……」バクバクバクバク!!

朝倉「長門さぁぁあああああああああああああーーん!!!!」ガッシィ!

157 : 以下、名... - 2016/02/22 23:12:06.43 4iZQoEdV0 51/113


ハルヒ「あ、やっと来た! 何してたのよ有希、朝倉さん!! ゲーム始めるわよ!!」

朝倉「あ、あはは……ごめんなさい」

長門「…………」

朝倉「(ちょ、いつまで食堂の方に顔向けて首固定してるのよ!!! くっ、未練も後悔も残したような目してっ!!!)」グググ!

長門「(……わたしにはまだ、あそこにやり残したことがある)」グググ!

朝倉「(やり残したっていうか食べ残しただけじゃないの!!! いや残してなかったけど食べ足りなかっただけでしょぉおが!!!)」

朝比奈「(な、なにしてるのかな……?)」

ハルヒ「それじゃ! 古泉くん! ゲームの内容を発表して頂戴っっ!!!」

古泉「はい、それでは発表させていただきます」

キョン「古泉一樹のぉぉお!! 好きな女子ルゥアンキングゥゥゥ!!!!」

キョン妹「一位はぁこの人ォ!! 眉目秀麗、面倒見が良いTHE お母さん! 母性全開、朝倉涼子ォォォォオオォオ!!」

朝倉「えっ」ドキッ

朝比奈「……っ!」ギリッ!

鶴屋「みくる、落ち着くっさ」ポンッ

ハルヒ「古泉くんっ! それは真か否か……ここでハッキリさせてもらうわっ!!」キュピーン!

朝倉「えっ、ちょ、い、今? じゃなくて、ていうかキョンくんが勝手に!」ワタワタ!

古泉「あ、あのゲームの内容は……?」

キョン「ゲームの内容はズバリ『本物はどれだ?(仮)』だが、予定を変えてお送りしまーす」

古泉「ええっ!? アッサリいったーーっっ!!?!?」ガーン!!

キョン妹「ちゅーう! ちゅーう!!」

古泉朝倉「「それはさすがに違う!!!!!!」」

朝倉「色々飛ばしすぎでしょっっ!!!!」

鶴屋「ほほーう朝にゃん、色々とは? お姉さんに色々聞かしてもらいたいなぁ」ガシッ!

ハルヒ「あらあら朝倉さん、ウチの副団長に手を出すとは、あなたも中々計算高い女ねぇー!」ガシッ!

朝倉「だ、だから今そんな話じゃ……ていうかあたしは何も……あの……っ!!」

古泉朝倉「「ゲームは!!!?!?!??!?」」ガーン!!

158 : 以下、名... - 2016/02/22 23:15:34.40 4iZQoEdV0 52/113


キョン「と、二人仲良くツッコんだところで、一先ずこの話題は置いといて」

鶴屋「えー! 気になるっさ!」

ハルヒ「そーよ、そーよ!」

朝比奈「…………」ブツブツ

鶴屋「みくるなんてさっきからブツブツ言っててなんか怖いっさ!!」

朝倉「あなたたち……既にゲームのこと忘れてません? っとおーっと長門さん? どこに行こうとしているのかなぁ? そっちは食堂よ?」ガシッッ!

長門「……ゲーム、しようと」

朝倉「まだルールも説明してないわよー? 勝手にかくれんぼ始めようとしないでくれる?」

キョン妹「かくれん―――」

キョン「しねぇって、古泉進めろ」

古泉「邪魔したのはあなたじゃ……いえ、進行します」

古泉「それでは改めてゲームの内容の説明ですが……」

ハルヒ「……」

鶴屋「……」

ハルヒ鶴屋「「ハッッ!!? 今からゲームするとこなの忘れてた……」」

朝倉「ホントに忘れてんじゃないの!!! 鶴屋先輩、先輩ですけどすいません。あなたたちバカなの!!?!?」ビッシィ!!

ハルヒ「いやー、古泉くんと朝倉さんがちょっと衝撃すぎてねー!」

鶴屋「だねだねっ!! 鼻からスイカが出るくらいビックリしたっさ!」

朝倉「それ出産のときの例えですよね、というかあたしと古泉くんが言ったわけじゃないし……ハッ! また話題がずれてる……」

朝倉「こ、古泉くん、説明お願いします!」

ハルヒ鶴屋「「ヒューヒュー!!」」

朝倉「中学生か!!!」ビシッッ!!

キョン「キレッキレだな、朝倉」

159 : 以下、名... - 2016/02/22 23:20:00.03 4iZQoEdV0 53/113


古泉「え、えー幾度となく中断されたゲームの内容説明ですが、そろそろ本当に始めさせていただきます」

古泉「と言いましても先ほど彼が漏らした通り、題名としましては『本物はどれだ?(仮)』を仮題としています」

キョン妹「意義ありっ!!! なんでキョンくんが漏らしたこと古泉くんが知ってるのかなっ!!?」ビシッ!

キョン「いやビシッ! じゃねーよ、俺漏らしてないから。漏らしたってそういう意味じゃねーから。古泉、誤解を生むような発言はよせ」

ハルヒ「……ホッ」

キョン「……なんか他に勘違いしてそうな人とかいそうだし!!!!」

古泉「失礼しました。ではゲームの説明を行います」

古泉「仮題の通り、これは『本物』を探すゲームとなっています」

鶴屋「『本物』を探す……? うーん、いまいちピンとこないけど……」

朝比奈「ブツブツ…………ハッ!! げ、ゲームは!? は、始まってますか!?」

鶴屋「おかえりみくる、ワンテンポ遅い復帰だけど、まだゲームは始まってないから安心していいよ」

古泉「朝比奈さんも帰還したところで、例題です」ゴソゴソ

キョン「こら、どこイジってんだ古泉!!」

古泉「ポケットですよ」

朝倉「むしろキョンくんがどこにツッコんでんのよ」

朝比奈「つ、っこ……む……?」

鶴屋「みくる、ダメっさ」

キョン「今のは朝倉が悪い、意味深すぎる発言はダメだ」

朝倉「ご、ごめん……え? ごめん?」

古泉「はい、ではこの二枚の硬貨、どちらが『本物』でしょうか?」キラーン!

ハルヒ「硬貨……?」

キョン妹「あーっ! 貨幣損傷等取締法だーっ!(多分)」

キョン「いや、この場合は通貨及証券模造取締法だぞ、妹(知らんけど)」

古泉「…………」

朝倉「いやな兄妹ね……」

160 : 以下、名... - 2016/02/22 23:25:32.81 4iZQoEdV0 54/113


ハルヒ「どっちが本物って……どっちかは偽物ってこと? それは本当に法律的にアウトだと思うけど……んー?」ジィイ!

鶴屋「うーん、よく見ても分かんないねー? これ両方本物じゃないの!? そっくりだよ!?」ジイィ

古泉「実はこれ、どちらかが全く別の素材で作られたものなんですよ」

ハルヒ「別の素材……?」

キョン「MAD素材か……」

朝倉「……」スルー

キョン「……なるほど、小ボケはツッコむまでもない、と」

朝倉「言ってないけど」

鶴屋「んーわかんにゃいなぁ……」

古泉「分かりませんか? 偽物はこちらの硬貨です。どうです? 一見しただけでは分からないでしょう?」

ハルヒ「えー? こっちがホントに偽物なの? 本物と変わらないけど……それで? 全く別の素材ってのは?」

古泉「これです」グニー パキッ!

ハルヒ「っ!!? 曲がった!!? 割れたっ!!?」

キョン妹「!! 今度こそ貨幣損傷等取締法だーっ!!」

キョン「ああ、そのようだな妹よ」

朝倉「(なんだこの兄妹)」

鶴屋「分かった、粘土だねこれ!! へーっ! すっごい良くできてるねこれ!!!」

朝比奈「あっ、粘土……古泉くんが銅を曲げる怪力かと……」ホッ

古泉「このように、一見して本物と区別できないようなものを当ててもらうというゲームです」

ハルヒ「面白いけど……なんか地味じゃない? 大丈夫なの古泉くん」ジィ

古泉「あくまでこの硬貨は例題ようですので。といっても結構苦労して作ったんですけどね、これ」フゥ

朝倉「なら割らなきゃよかったんじゃ……」

古泉「……演出上、どうしても、ね」

朝倉「……大変なのね、色々と」

161 : 以下、名... - 2016/02/22 23:30:53.87 4iZQoEdV0 55/113


古泉「それでは……第一問といきましょうか。森さん、お願いします」

「承知しました」バッ!

ハルヒ「ん? これ別荘で食べた料理じゃない……そっかこの中に本物ってことは……これほとんどが偽物ってこと!?」

長門「……」バッ!

朝倉「……ホント現金で正直なのね」

鶴屋「あれだねっ!! テレビでやってる食品サンプルを当てるのを実際ににやってみるって感じなんだねっ!!」

古泉「そのような感じです。しかし、こちらの品は食べる以外、確認のため触れる、嗅ぐなどしていただいても結構です」

ハルヒ「嗅いでもいいの!? そんなことしちゃバレちゃうんじゃ……バレない自信があるってコトね!!」

古泉「その通りです」ニコッ

キョン妹「んー」クンクン!

朝比奈「えっ、なに?」

キョン妹「みくるちゃんは本物だ―っ!」

朝比奈「???」

キョン「どれどれ……」クンク…

朝倉「何人の匂いを嗅いでんのよっっ!!! 変態っっ!!!」ドゴッッ!!

キョン「オゴッ!!」バタッッ!

長門「……」ジィイ

鶴屋「わーお、真剣だね有希っこ! でも見るだけでいいのかい? 触っても嗅いでもいいらしいよ?」

長門「食べるまでは手をつけない、食事のマナー」

鶴屋「おおぅ、食べるつもりなんだ……さっすがフードファイターだねっ!!」

ハルヒ「むぅ……このパンは……本物? いや、偽物……かしら? 齧るのはセーフだっけ?」

古泉「それはなしの方向でお願いします」

キョン妹「なーんだ」

朝比奈「んー?」

キョン「お前、朝比奈さんを甘噛みなんてしたらマジで校舎裏呼び出しルートだったからな、自重しろよ、おい」グギギ!!

キョン妹「えへへー!」

朝倉「しょ、小学生のしかも女の子に向かってマジになってる高校生って……」ヒキッ

162 : 以下、名... - 2016/02/22 23:37:03.67 4iZQoEdV0 56/113


長門「…………」ジィ

朝倉「(……でも、長門さんをして結構悩ませるって本当に中々いい出来みたいね)」

朝倉「(さすがに構造情報を観測したら分かるんだろうけど……それじゃゲームが成立しな……)」

長門「…………」ブツブツ

朝倉「ストォォオオォオップ!!! 長門さんストォォオオォオップ!!!!」ガッシィイ!

長門「止めないで、ムグ」

朝倉「止めるわよ!! 止めるわよ俄然!!」ガシィ!

朝倉「(これはゲームよ長門さん!! そんなことに情報操作なんか使っちゃダメじゃない)」

長門「(五覚だけでは判断がつかなかった)」

朝倉「(そういうゲームだもの!)」バーン!

長門「(……食べたかったから)」

朝倉「(理由になってない!! 頑張って本物探して!!! 五感をフルに使って!!!)」

長門「…………」

朝倉「ファイト長門さん」

長門「…………」スタスタ

朝倉「お、本物はそっちのスープ……じゃなくてフルーツ……じゃなくてコールスロー……じゃなく、ハッ!!」

長門「…………」ダッ!!

朝倉「コラーー!!!! 食堂に逃げ込もうとしないの!!! 我慢なさい!!! ほら! 食材は目の前のどこかにあるわよ!!」ガッシィイ!

長門「……それが分からない」

朝倉「だからって目の前の問題から逃げないの!! どこかに本物はあるはずだから!!」

長門「わたしは本物しかない空間に行きたい」グググ!!

朝倉「欲望のままか!!! ていうか抵抗する力強っっ!? ゲームに集、中、し、な、さ、いぃぃいぃい!!」グググ!!

長門「食べ物の誘惑で集中なぞ不可能」

朝倉「カッコよくカッコ悪いこと言わないの!!!!」

朝比奈「(なにやってるんだろう……朝倉さんと長門さん)」

鶴屋「すっげー! これ卵料理のはずなのになんだか段ボールみたいな味するよ!!」モグモグ

朝比奈「鶴屋さん!!? 食べるのは禁止ですよ!!?!? ていうか段ボ、えっ? ええっ!!?」ガーーン!

163 : 以下、名... - 2016/02/22 23:41:39.19 4iZQoEdV0 57/113


ハルヒ「むー正直舐めてたわ……ここまで分からないなんて……確かに舐めもしたけど」

キョン「ルール無視して齧ったり食べたりしたらえらい目にあったな……今猛烈な寒気がきてる」ブルッ

キョン妹「舌が痛いよー! うえぇ!」ヒリヒリ

古泉「すいません。みなさんがルールを破るとは……『ほとんど』考えていませんでした」

キョン「嘘つけ、絶対破ると思ってこんな罠しかけたんだろ。むしろ守る奴のが少ねーよ、このメンツじゃ」

古泉「さあ? それでは、みなさん答えは分かりましたか?」

ハルヒ「全然っ!! 悔しいけど全く分からないわっ!! 食べても齧っても!!」

鶴屋「同じくっ! いやーさっきのアレ食べてから舌おかしくなったかな? どれ食べても同じ味がするんだよねー!」

朝倉「食べないでくださいってば……でもあたしも分からなかったわ、すごいわねこれ」

朝比奈「……あの」

古泉「はい、朝比奈さん」

朝比奈「あの、抹茶のケーキなんですけど……あれが『本物』でしょうか?」

古泉「…………お見事!! 正解ですよ朝比奈さん。まさかこの問題で正解者がでるとは、正直予想外ですよ」

朝比奈「や、やったぁ!」パアァ

キョン「EXCELLENT!! さすがです朝比奈さん!!!」グッジョブ!

長門「……」バッ!

朝倉「なにフォーク準備してるのよ、食べる気? 食べる気ね長門さん」

ハルヒ「すっごいわねみくるちゃん!! いつの間にそんなスキルを!!?」

朝比奈「あ、あの。いつも部室でお茶入れてるから……その、お茶の匂いが区別できるようになって」

鶴屋「それすごくない? すごくないかいそれっ!?」

朝比奈「で、他のは分からなかったけど、この抹茶は本物かなーって思って……思いました」

古泉「素晴らしい回答です。朝比奈さんあの精巧につくられた贋作の中見分けるのは至難の業ですよ」

朝比奈「え、えへへ!」ニコニコ

キョン「朝比奈さんに4億ポインツっっ!!!」

朝倉「さっそくインフレしてない? いや基準とか知らないけど、ていうかこれポイント制なの?」

179 : 以下、名... - 2016/03/02 20:42:44.96 ze4UR9wn0 58/113


ハルヒ「くっそー! みくるちゃんに先越されるとはっ……古泉くん第二問よ! 逆転の第二問っ!!」

キョン「4億ポイント差はほぼ逆転不可能だな、これ以降一問2ポイントぐらいだし」

朝倉「デフレだった!!?!? なにその急激な落差っ!!」ガーン!

長門「…………」モグモグ

朝倉「こっちもこっちでちゃっかりいただいちゃってるし……」

鶴屋「あたしもみくるに負けないよーっ!! さあこいっ!! なんでもこいっ!」

キョン妹キョン妹「「どっちが本物でしょー?」」アハハー!

朝倉鶴屋「「!!?!?」」ビクッ!!

古泉「……では、第二問です」

キョン「漢古泉、意外にもここをスルー」

古泉「森さん、お願いします」

「はい」パチンッ!

多丸多丸「「や、やあ」」

朝倉「まさかの妹さんがネタつぶしーーーっっ!!!!」ガーーン!

ハルヒ「しかもこれ森さんお願いしますってかは多丸兄妹にお願いすべきなんじゃ……」

鶴屋「多丸兄弟が森さんのスタッフみたいな感じになっちゃったね!!」アッハッハー!

キョン「やめろぉ!! これ以上言うと多丸兄弟の立つ瀬がないっ!! 古泉っ! 進めろっ!」バッ!!

古泉「は、はい! みなさんっ! 見ての通り第二問は多丸圭一さんに扮した多丸裕さんを見分けるというものです」

「(なんか、すごい気を使われてる気がする……)」タハハ…

圭一「(顔に出すことじゃない、我々は仕事をこなすだけだ)」

180 : 以下、名... - 2016/03/02 20:47:07.28 ze4UR9wn0 59/113


ハルヒ「ふぅむ……」ジロジロ

鶴屋「むむむ……むぅ?」ジロジロ

多丸「ははは、この年になっても女の子に見つめられると緊張してしまうね」

キョン「変態さんか?」

古泉「ピュアと言い換えてください」

朝倉「外見はもちろん、声も雰囲気ですらもそっくりに見えるわ」

朝比奈「これってどうやってるんですかぁ?」

古泉「トップシークレットですよ。まぁ、卓越した変装スキルを持ち合わせている人がいる、ということで」

ハルヒ「骨格とか声帯とかってそんなに簡単にいじれるものなの? どこぞの三世じゃあるまいし」

キョン妹「いじれるよ?」テノール

朝倉「よ、幼女から聞きなれたおそよ男子高校生とは思えない声が!!?」ビクッッ!

キョン「おい」

鶴屋「あっはっはー! キョンくんの物真似っ!? さっすが兄妹よく似てるっさ!」

ハルヒ「古泉くん、これって抓るのはありなの?」

古泉「ええまぁ、あまり痛いのはご両名に申し訳ないのでお心添えをお願いします」

ハルヒ「じゃ失礼するわね」ギュウウゥ!

多丸多丸「「いででででででででででで!!!!」」

古泉「涼宮さんっっ!!?!?」ガーン!

キョン「お前、こいつがどんな女か分かってやらせたのか? だとするとご両名が可哀想だぞ」

ハルヒ「取れないわねぇ……マスクで変装してるとかじゃないのかしら? あ、ごめんなさい、つい夢中になってたわ」パッ!

多丸「は、はは……まぁそんなに簡単に解けてしまっても困るからね」

181 : 以下、名... - 2016/03/02 20:51:51.21 ze4UR9wn0 60/113


ハルヒ「分からないわ……緑色なのに青信号って言う不思議ぐらい分からないわ……」

朝倉「その例えがよく分からないわよ。ていうか信号の件はなんとなく分かるでしょうに」

鶴屋「こういう時は……みんな、双子の見分け方って知ってるっかな!?」

朝比奈「双子の見分け方……ですか?」

鶴屋「うんっ、外見的な特徴はすべて同じ、癖や仕草も全く同じとして!」

朝倉「外見的特徴が全く同じなら……やっぱり内面で判別するしかないんじゃないですか?」

鶴屋「その方法もありと言えばありっさ!! でも、双子って同じ環境で過ごすことが多いから内面も似たようなことになることも多いよねっ!?」

鶴屋「つまり、内面からも確信的な違いが分からないんだとすると……双子の見分け方の答えは……」

朝倉朝比奈「「答えは……?」」ゴクリ

キョン妹「お兄ちゃんっ!」ニコッッ!

多丸「」ピクッ

キョン「おえ」

朝倉「あ」

ハルヒ「おおっ!?」

鶴屋「その通り! ま、反則気味ではあるんだけどそういう『兄弟』であることの反応を見るしかないよねーっ!」

鶴屋「双子の弟の方はお兄ちゃんって呼ばれなれてないから反応が薄いんだよねーっ! 双子に限らずだけど―っ!」

朝比奈「で、でもそれって双子さんの下にまだ兄妹がいたら分からないんじゃ……」

鶴屋「みくる」

朝比奈「は、はいっ?」

鶴屋「確かに、そうかもしれない。でもね、確かにいたんだよ……妹ちゃんの『お兄ちゃん』に反応した……」

鶴屋「ロリコンの圭一さんがねっっっっ!!!!! ずばり、圭一さんはこっちで裕さんはこっちにょろっっ!!!!」

古泉「正解っっ!!! 正解だけど言葉選んでくださいっ鶴屋さんっっっっっ!!!!!」

朝倉「(結局、双子の見分け方なんて何かに依存するものってことなのね)」ハァ

圭一「(……私としたことが……あれほど顔に出すなと言っておきながら……まだまだだな、私も)」

「(グフッ!! ろ、ロリコン……あ、ああ兄貴っ、グフッッ!!!)」プルプル!

キョン「(裕さん、意外とキャラ濃いのな……モブ顔なのに)」

182 : 以下、名... - 2016/03/02 20:56:09.13 ze4UR9wn0 61/113


ハルヒ「圭一さんの意外な性癖が暴露されたことで……第三問いきましょっ!!!」

朝倉「圭一さんの沽券に関わるから言うけど、ロリコンとかじゃないから、ただただ懐かしさを覚えたとかだから」

鶴屋「子や孫を見る目の圭一さんがロリコンなわけないよねっっ!!!」

朝倉「言い出しっぺはあなたですよ、鶴屋先輩」

古泉「では……続く三問目へと参りましょう」

キョン「結局誰が作ったとか、何で出来ているかとかの説明ないんだな。まぁ、その方が―――」

キョン妹「えーっとね、作ってるのはムグゥ!さんで、材料はムゴッッ!とハヴァッッ!とかで作られてたよーっ!」

朝比奈「え、と……?」

キョン「聞かなくていいんですよ朝比奈さん。野暮なネタバラシは聞く必要がありません」

ハルヒ「あっ! これって文化祭の時の―――!」

鶴屋「むむっ、確かに! これは―――!」

朝倉「これ……朝比奈先輩の―――」

キョン「おっと、第三問が始まってるようですよ朝比奈さん」

朝比奈「あ、ホントだ。あ! あああ、あれっててててて!!!涼宮さん! 鶴屋さぁん!////// というかなんで古泉くんこんなものの模造品を!?」

キョン「……ふぃー、まぁいい時間つぶしにゃなるみたいだな」

長門「……そう」モグモグ

キョン「……長門さんや、あなたはいつまで何を食べていらっしゃるのです?」

長門「…………先ほどの料理」モグモグ

キョン「あれは料理じゃなくサンプルで、しかもルール違反即罰則的な味付けがされている所謂ジョーカー食材なんだが……」

長門「問題ない、こちらで構造情報の操作を行い見た目に適した味に作り変えている」モグモグ

キョン「…………そういうとこ、貪欲だな長門」

長門「そう?」モグモグ

キョン「ああ……まぁ、いいけどよ」ハッ

183 : 以下、名... - 2016/03/02 21:01:11.14 ze4UR9wn0 62/113


古泉「さて……数々の難問を出してきましたが……時間の都合上、次がラストの出題となります」

ハルヒ「ハァ……ハァ、ラスト……思えば長い道のりだったわ。楽しかったけど」ボロッ

鶴屋「ハァ……ハァ、あたしらを満身創痍にさせるぐらい手ごわい子達だったっさ!」ボロッ

朝倉「いや……ただのクイズでそんなボロボロになる理由が分からないんですが」

キョン「カットされた間になにかあったんだろ、察せ」

朝比奈「?」

古泉「では、最終問題のお題はこちら……ドン!」ドン!

朝倉「(古泉くんもテンション上がって自分で『ドン!』とか言っちゃてるし……)」

古泉「『猫はどこ行った?』」

ハルヒ鶴屋朝比奈「「『猫はどこ行った?』??」」

キョン「あれだろ、確かカンボジアとかその辺に……」

朝倉「多分、いや絶対その猫じゃないわ」

古泉「正直、この最終問題のために『本物はどれだ?(仮)』が企画されたといっても過言ではありません」

ハルヒ「まさに、最終問題にふさわしいってやつね……腕が鳴るわ」ニッ!

長門「……」

朝倉「(……あっ、長門さんは『腹が減るわ』とか思ってそう、とか思われてそう……)」ハッ

古泉「それでは、森さん。お願いします」

「はい。それではお願いします」

圭一「それっ」

「そーれ」

朝倉「いやだから森さん経由する必要あるのそれ?」

朝比奈「わっ!! すごっ、えっ、えっ!!」

キョン妹「わーー!! これぜーーーーーーーんぶ!!! 猫ちゃん!!?!?!?」キラキラ

鶴屋「いやいや妹ちゃん……このゲームから察するに多分このゲームは……」

ハルヒ「『この中から【猫】を探す』……ゲームよねっ!?」

古泉「ご名答。この中に存在する猫の数は……一匹です!」ドン!

朝倉「(あ、今度は『ドン!』って言わない……)」

184 : 以下、名... - 2016/03/02 21:06:06.11 ze4UR9wn0 63/113


ニャー ニャー ドルァ!!


ハルヒ「……に、しても」

鶴屋「この中にたった一匹だけしか猫がいないって言うのは……」

朝倉「無理があるんじゃない古泉くん。これ、全部猫なんでしょ?」

古泉「いいえ。これらは全て生物学分類上他の生物となっております」

ハルヒ「猫にしか見えないけど……ハッ!? もしかしてこの子達改造とか遺伝子組み換えされた猫っ!!?!?」ワクワク!

キョン「動物愛護団体に訴えられるぞ、お前の思想。ワクワクするなよ」

古泉「ご安心を。そのようなことは一切行っておりません。ただ、猫に見えるようトリックアート的な演出は施していますがね」

キョン妹「あれー? この猫ちゃんおひげないよー?」ヒョイ

古泉「したがってそれは猫ではないということです。多分猿か何かでしょう。ああ、もちろん後で元に戻しますよ、なんの影響もなくね」

朝比奈「え! こ、これがお猿さんなんですか? え? え? どーみても猫……いや、お猿……さん?」

朝倉「(いやいや……さすがにそんなトリックアート存在するわけないわよ。そこまで人間の目はチープじゃないでしょ。これは恐らく)」チラッ

キョン「すげー……この猫喋るぞ!」

キョン妹「あははー! キョンくんのアホ―!」

キョン「間違えた、これ俺んとこの妹だったわ」ポイッ!

キョン妹「アハハー! 投げられた―!!」キャッキャ!

古泉「(さすがにペイントだけでは限界がありますからね、彼に協力してもらったの視覚効果でそれっぽく見せてもらっているのですよ)」

古泉「(よく見れば分かる。そのギリギリのラインで、この数多の猫に化けた『化け猫』から本物の猫を探していただきます)」

鶴屋「おやー? 君は猫じゃなくって……鶴!! 鶴だね君!! いやー、鶴と猫を見間違えるなんて耄碌したかねあたしも!」アッハッハ!

ハルヒ「猫、猫……あんたは……あ、亀か……ん、あんたは……あぁ、鹿、いやキョンか……」キョロキョロ

古泉「…………」

古泉「やり過ぎましたかね?」ボソッ

朝倉「間違いなくね、はぁ」

185 : 以下、名... - 2016/03/02 21:10:41.56 ze4UR9wn0 64/113


ニャーニャー! ヒャーー!! ッハーー!!


キョン「にしてもよ」

古泉「はい、なんでしょう?」

キョン「なんでまた猫探しがメインになるようこのゲームを企画したんだ? 別にハルヒが猫好きなわけでもあるまいし」

古泉「おや、当然あなたは僕の『意図』見抜いていると思っていましたが……ご存じではありませんか?」

キョン「存じ上げようと思えば存じ上げれるが、ゲームマスターのお前に華を持たせてやってんだよ」

古泉「なるほど。あなたなりのお心遣いといったわけですか」

キョン「んで、理由は?」

古泉「ありませんよ、そのようなものは」

キョン「……ほぅ」

古泉「予想していたかのようなリアクションですね」

キョン「数ある予想の範囲内の回答だからな」

古泉「ふふっ、まだ僕は凡人の枠から出れていないようですね。それが喜ばしいことなのか嘆かわしいことなのかはさておいて……」

古泉「『本物』を探す。それがテーマになりえるなら、内容はどうでもよかったんですよ」

キョン「それをテーマにしてお前はなにがしたかったんだよ」

古泉「『本物』……我々は普段意識せず、物事を真や偽に判断していることがある」

古泉「それは常識や倫理や道徳といった曖昧模糊とした規準から下されるものであり、世間に大きく影響を受けるものでもある」

キョン「まどろっこしいぞ古泉、お前は何が言いたいかだけを言え」

古泉「……『宣戦布告』、とでも言いましょうか」

キョン「宣戦布告だぁ……?」

古泉「失礼、言い方が少し物騒になってしまいましたね、ここは『牽制』と言い換えておくべきでしょう」

古泉「長門さんも朝倉さんも、朝比奈さん……は定かではありませんが……」

古泉「先の雪山の遭難以来、いや本当はもっと以前から感じているのですよ」

古泉「ご存じ『敵対勢力』の存在といったものをね」

キョン「…………」

186 : 以下、名... - 2016/03/02 21:15:45.11 ze4UR9wn0 65/113


古泉「おおよそ、ここまできてやっとか、と言うべきですが……」

古泉「『敵対勢力』の狙いが分かりました。つまり、涼宮さんをどうしたいのか、ということが」

キョン「…………」

古泉「このゲームの概要は暗喩的なものです。『本物はどれだ?(仮)』タイトルからしてこちらが言いたいことは向こうに伝わるはずです」

古泉「今もこちらをどこかしらか見ているであろう方々にね」

キョン「……『本物』ね。『器』だの『力』だのは確かに最近話の通じない宇宙人から聞いたよ」

キョン「古泉、お前はその『敵対勢力』とやらと争いたいのか?」

古泉「とんでもない。僕はこの平穏かつ刺激的な日々を心より愛してますよ」

古泉「故に」

古泉「それを保持するために全力を注ぎこむ……ことぐらいしかできないのですよ」

キョン「……だからこその『宣戦布告』いや『牽制』か」

キョン「『本物はどれだ?(仮)』ね。無論、機関サイド的にはそれはハルヒになるわけだし」

古泉「『敵対勢力』的にはまた違う人物になりえます。その為の牽制……」

古泉「『相容れない』という明確な意思表示を暗喩めいた表現方法で、オブラートに包んで伝えているのですよ」

キョン「…………」

古泉「…………あなたの懸念なさっていることは分かります。口酸っぱく言われる―――」

キョン「『仲良くいきたい』最近は言ってなかったような気もするが……まぁ」

キョン「どんな世界で、環境で、状態でもそれが叶うっつぅんなら」

キョン「『平和』なんて言葉は生まれないし、『仲間』の意味も分からねえだろうさ」

古泉「…………」

キョン「いいぜ、古泉。お前の意志と意識は俺に伝わった。止めようとも咎めようとも俺はしない」

キョン「お前は、お前のしたいように『SOS団』を守ってくれりゃいい。頼んだぜ、副団長さんよ」ポンッ

古泉「……心得ていますよ、雑用さん」ニコッ

キョン「よぉし、こういうのはどうだ? 古泉の全身をばらして生肉と並べて『本物はどれだ?(肉)』っつぅ……」

古泉「すいません、あなたに宣戦布告したつもりはありませんでした」 

221 : 以下、名... - 2016/03/14 01:00:23.89 d7GaXyzd0 66/113


ミャー ミャー!


鶴屋「うーん、これホントに本物の猫ちゃんいるのかい? むしろ猫より珍しい生き物の方が多いんだけど……キリンとか」

朝比奈「あはっ、や、ダメっ……く、くすぐったぁい! あはは!」

キョン妹「みくるちゃんアリクイに舐められてるー!! いいなー!」

朝倉「(どういう意味でのいいなーなのかしら……)」

ハルヒ「……むっ! 今度こそっ!」キラーン!

古泉「おおっ」

ハルヒ「こいつだぁぁああぁぁぁああぁぁぁあああああああああああああ!!!」キャッチ!

キョン「にゃあ!」

ハルヒ「邪魔すんなっっ!!!」ブン!

キョン「づぅっ!!!!」グッシャァアアア!!

朝倉「なんでそんな馬鹿な真似を……」

ハルヒ「コイツコイツ! この三毛猫!! 古泉くん! 猫の本物はコイツでしょ!? 絶対!!」

古泉「…………涼宮さん。さすがです。その三毛猫こそが、探す出すべき本物の猫です!」

ハルヒ「やった!! やったわ!!! 最後の最後で本物が見つけられたわっ!!」

長門「……オス猫」

朝倉「あら、ホント。確か三毛猫のオスは珍しいんじゃなかったっけ?」

キョン「ギザ十ぐらい珍しいぞ」

ハルヒ「さすがにもっと珍しいでしょ!!? 何千万分の一とかでしょ!? まさかこの猫何か不思議な力でも持ってるんじゃ……!」

古泉「ははっ、確かに三毛猫のオスは大変珍しいですが、その猫は他に特に珍しいことは何も―――」

「如何にも」

古泉「―――ない……っ!!?!?」

朝比奈「ええっ!!? いいい、今そ、その猫ちゃんしゃ、しゃべっ……ええっ!?」

キョン妹「イカにもタコにもっ!! その猫ちゃんはなんと喋る猫だったのだっ!!」バァーン!

キョン「いや黒幕ぶってるお前は誰だよ」ビシッ

222 : 以下、名... - 2016/03/14 01:04:38.85 d7GaXyzd0 67/113


ハルヒ「~~~っ!! ちょっと! アンタ! 今喋ったわよね!? もう一回!! もう一回なんか喋ってみなさいっ!!」ユサユサ!

「ぐ、ぐむぅ……」

古泉「す、涼宮さん。猫が喋るなんてありえませんよ。きっと何かの聞き間違いじゃ……」

キョン妹「それは無理があるよ古泉くんっ! ここにいるみんなが猫の声を聞いたであろうリアクションをとったんだから!!」

キョン「だからお前はどの立場の誰なんだよ。場をややこしくしようとすることに努めるんじゃない」

朝倉「ちょっとキョンくん! また何かしたの!?」ボソボソ!

キョン「今度は俺じゃねーよ。さっきハルヒが自分で言ってただろ。この猫にはなにか不思議な力があるんじゃないかって」

朝倉「涼宮さんがそう本気で思ったから……ああなったって?」

キョン「いつも通りだろ」

朝倉「……えぇ、いつも通り。ぶっとんだ展開よね、これ……どうするわけ?」

キョン「平穏かつ、平和的な解決を望む俺はこうする、『イグニッション・長門有希』発進」スッ

長門「了解した」スタスタ

朝倉「な、長門さん?」

ハルヒ「ほら! 喋るのよ! さっきみたいに!! 偶然じゃないでしょ!!」ユッサユサ!

鶴屋「あのーハルにゃん? そろそろ揺さぶるのやめてあげないと、猫ちゃんの顔色がドリンクバーを全部混ぜたみたいな色になるっさ?」

古泉「涼宮さん、落ち着い……長門さん? 何を……?」

長門「涼宮ハルヒ」

ハルヒ「んっ? 有希? 何? あっ、有希も聞いたわよね!? さっきこの猫が喋ったの!! 待ってて! 今証明するか―――」

「ええい! いい加減離さんか小娘っっ!」ニャ!!

ハルヒ「っ!!!! しゃ、喋っ―――!!」

長門「今のは腹話術」

古泉「え?」

鶴屋「ん?」

朝比奈「ふぇ?」

ハルヒ「―――は? 有希? 今なんて……?」

長門「今のは腹話術」

223 : 以下、名... - 2016/03/14 01:09:47.42 d7GaXyzd0 68/113


朝倉「……あれが、解決法なの?」

キョン「あぁ、あれが一番ことを穏便に済ませることができる方法だ」

朝倉「いや、あんなので涼宮さんが納得するとは思えないんだけど……」

ハルヒ「……えーっと、有希? つまり、この猫が喋ったことはさっきも今も全部、有希の腹話術だったってこと?」

長門「そう」

ハルヒ「…………」

ハルヒ「ってなんでやねーん!」ビシッ!

長門「……」

ハルヒ「あれ? ツッコミ待ちじゃない……?」オロオロ

朝倉「(正しいリアクションなんだろうけど……不憫ね涼宮さん)」 

鶴屋「…………」フム

鶴屋「わーお! 有希っこ多才だねーっ!! なんと腹話術までマスターしてたとはっ!! ははーっ! 御見それしましたーっ!」

朝比奈「え? え? 長門さんが喋ってたんですか? え?」

古泉「……さすがは長門さん。ゲームマスターである僕をも驚かせるとは……」

ハルヒ「ちょ、ちょっと! みんな違うってば! これは有希なりのジョークなのよ、ジョーク!」

ハルヒ「だって実際腹話術とは思えないほどこの猫が喋ってるように見えて……」

「先ほどから我輩が言葉を発した、発していないでもめているようだがそもそも何を持って―――んぐっ?」ジィイ

キョン「(やかましい猫だな、とりあえずお口にチャックだ)」シーッ

朝倉「(最初からそれやればいいんじゃ……)」

ハルヒ「ほらぁ!」

長門「腹話術」

ハルヒ「えぇ……」

224 : 以下、名... - 2016/03/14 01:13:01.50 d7GaXyzd0 69/113


ハルヒ「じゃ、じゃあ有希! 今からあたしの言うことを腹話術でこの猫に喋らしてみてよ」

長門「よかろう」

ハルヒ「既に腹話術の話し言葉だわっ!!!!」ガーン!

ハルヒ「じゃ、じゃあ……『SOS団サイコー!!』って腹話術で言わせてみて」

キョン「中坊かよ」

朝比奈「(涼宮さんかわいい)」

朝倉「(子供ね)」ハァ

鶴屋「(ハルにゃんも子供っぽいトコあるんだねぇ)」

長門「リョウカイシタ」

キョン「長門、それ違う。それ悪い宇宙人ユキのやつだ」

長門「迂闊。では……」

ハルヒ「……っ」ゴクリ

「…………んぐぐ」

長門「…………」スッ

キョン「(お口チャック解除)」

「プハァッ!……っぁ? え、『SOS団サイコー!!』……なに!?」

ハルヒ「ほ、ホントに言った!! え、嘘!! じゃ、じゃあ次……」

キョン妹「『キョンくんのバーカ!!』って言って!!」

キョン「テメェ!!! 余計なことを―――!」

「ングッ?……『キョンくんのバーカ!!』」

長門「…………」

ハルヒ「ほ、ホントに有希の腹話術……なの? きょ、キョンどう思……なに凹んでんのよ。バカなんて言われ慣れてるでしょ」

キョン「……な、長門にバーカって……た、多分地球で初めて言われた人間と思う……」ズーン

朝倉「なにそのちょっと分かりにくいような分かりやすいような傷つくポイント」

225 : 以下、名... - 2016/03/14 01:19:29.85 d7GaXyzd0 70/113


「先程から我輩に何をしておる小娘! これ以上は危害とみなし、こちらも対応を……」

ハルヒ「はぇー、有希にこんな特技があったなんてねー。この猫のキャラ付けはよく分かんないけど」

朝比奈「猫ちゃんかわいいです」

鶴屋「いい感じに愛嬌ある顔してるよねっ、この猫ちゃん!」

「こ、こやつら……言葉が通じておらんのか?」

キョン「猫の言葉が分かるかよ」スッ

「! お、お主は我輩の言葉が―――んぐっ!?!」

キョン「ま、とりあえず腹話術で場が収まったんだから悪いけど黙ってもらおうか。猫語は話せるようにしとくからよ」

「ニャ、ニャー!!」

キョン「(どうしてもの用があるならこっちで話してこい)」

「(!!? て、テレパスだと? お主……何者だ?)」

キョン「にゃーにゃー」

ハルヒ「急にキモイわよ、なんなの?」

「(お主!! こら! 話を聞け!! 逸らすな!!)」

キョン妹「(じゃーあたしとお話しするー?)」

「(小童!? こ、こやつら一体何奴……まさかっ!?!?)」

キョン妹「あははー!! 遊んでやるぞーっ!! シャーミー!!!」

「ニャッ! ニャー! ニャァアアア!!!」ジタバタ!

朝倉「シャーミー?」

古泉「長門さんの思わぬ特技に感嘆したところで、ゲームは以上となります」

鶴屋「いやー! 中々に中々遊べたっさ!!! 大満足っっ!!!」

ハルヒ「結構レベル高かったもんねっ!! 古泉くん! さすが副団長!」

古泉「……そのお言葉、ありがたく頂戴いたします」

朝倉「よ、よかったわねぇ古泉くん……く、苦労が報われて……」ホロリ

キョン「お前はどんだけ古泉に感情移入してんだ、おい」

226 : 以下、名... - 2016/03/14 01:23:30.31 d7GaXyzd0 71/113


鶴屋「それで? このゲーム一体だれが優勝なのかなっ?」

朝倉「え? それは……問題を当てた数で言えばキョンくんか鶴屋先輩で……」

キョン「ポイント的には朝比奈さんが断トツの4億ポインツ越えで……」

朝倉「まだその設定引きずってたんだ……てかポインツって言わないでよ、なんか腹立つ」

朝比奈「で、でも一番難しかったのは最後の問題で、それを解いたのは……」

ハルヒ「…………」ソワソワ

朝倉キョン「「…………」」

ハルヒ「…………な、なにかしら? あ、あー誰が優勝なのかしらねー?」ソワソワ

鶴屋「一樹くんに決めてもらえばいいっさ! 平等に! ゲームマスターだしねっ!」

古泉「そうですか。では、ゲームマスターの僕の一存で優勝者を決めたいと思います」

ハルヒ「…………」ソワソワ

キョン妹「ハルにゃん、おしっこ?」

朝比奈「お、女の子がそんなこと言っちゃダメですよ!」ワタワタ

古泉「『本物はどれだ(仮)』優勝者は…………」

キョン「デレレレレレレレレレレレレレレレレレレレレ!!!!!!」

朝倉「あ、ドラムロールね。壊れたのかと思った」

キョン「壊れてもこうはならねーよ!!」

古泉「優勝は……涼宮さんです!! おめでとうございます!」

朝比奈「おめでとうございますー!」

鶴屋「おめーっ!!!」

ハルヒ「や、やった!! やっぱり団長は勝ってしかるべきなのよっ!!!!」

キョン「……完全な出来レー」

朝倉「言わない。古泉くん頑張ったんだから」

キョン「オレモガンバッタンダヨー」

キョン妹「アハハ!」

「ンニャァア˝ア˝!!!」バタバタ!

227 : 以下、名... - 2016/03/14 01:29:29.96 d7GaXyzd0 72/113


古泉「おっと、あまりにゲームに白熱している間にもうこんな時間ですね」

キョン「出来レースに続き白々しいノリをまだ続けるのかね、古泉くん」

朝倉「出来レース言わない。鬱陶しいノリを終始続けてる人が言うセリフじゃないわよねそれ」

鶴屋「楽しい時間はあっと言う間っ!!! 実に愉快な時間だったっさ!!」

朝比奈「色々初めてのことが出来て楽しかったです!」

キョン「……………………」

朝倉「そこ、意味深な沈黙と視線を送るのをやめなさい」

キョン「だって朝比奈さんの初めてって……」

朝倉「中学生か!!」ビシッ!

ハルヒ「それじゃあ各々部屋に戻って帰る準備しましょうか!! とりあえず、遊ぶのはここで打ち止めね!!」

鶴屋「いやー一樹くん。楽しませてもらったっさ!! またなにかゲームをする時はぜひ呼んでちょうだいっ!!」バシバシ!

古泉「ははい、ありがとうございます。是非、次回もお呼びさせていただきますよ」

鶴屋「頼むよっ!! さー!みくる! 部屋に戻ってお片付けだよっ!! 急げーっ!」

朝比奈「わわっ! つ、鶴屋さん待ってぇえ!」

ハルヒ「じゃあたしも仕度してくるわ、あんたたちも遅れないようにねっ! あ、あと古泉くん」

古泉「はい、なんでしょう?」

ハルヒ「……余は満足じゃ! 天晴! 古泉くんっ!! それじゃまた後でっ!」ニコッ!

古泉「…………」

キョン「……」

朝倉「…………」ボロボロ

キョン「なんでボロ泣きしてんだよ朝倉、怖いよ」

朝倉「だ、だって……い、今の古泉くんの、し、心境を考えると……っ、ほ、ホントに報われた、って。うえぇ……」

キョン「お前は古泉をどういう風に見てるんだ。どれほど可哀想な人として見てるんだお前は」

朝倉「うえぇえぇん! よかったわねぇ……古泉ぐぅん……」

古泉「………………ええ、頑張った甲斐がありましたよ」ニコッ

228 : 以下、名... - 2016/03/14 01:34:41.67 d7GaXyzd0 73/113


キョン「じゃ、朝倉頼んだぞ長門」

長門「御意」

キョン「それ違う。まだ腹話術残ってるぞ」

長門「迂闊、油断した」

朝倉「うえぇん……うえぇ……」ヒック

キョン「古泉……女を泣かせるとは罪な男だ」

古泉「いやぁ、僕のことであんなに泣いてくれるのはありがたいんですが……」

古泉「僕、本当に朝倉さんにどう思われてるのか真剣に気になってきました……」

キョン「間違いなく『只の可哀想な人』以下の見方されてるよな。それでもあの泣き所は謎だけど」

古泉「……でも、楽しんでいただけたようでよかったです」

キョン「……ま、かくれんぼに引き続きよく頑張った方ではあるかな」

古泉「おや、ではまた僕の質問にお答えしていただけるんでしょうか?」

キョン「バーカ、もう答えることなんてねぇよ」

古泉「聞きたいことはまだまだあるのですが、それは残念ですね」

キョン「それよりも……」チラッ

キョン妹「アハハ!」

「ニャー!! ニャアァア!!」

キョン「……あれ、どうすんだよ?」

古泉「あぁ、三毛猫ですか」

キョン「いや、俺の妹の方」

古泉「……それは知りませんよ。それに僕には手に負えません」

キョン「…………そうか」ハァ

古泉「……猫の方ですが、よければお引き取り願えますか?」

キョン「……えっ、なんでそんな急に図々しく? えっ?」

古泉「そ、そんなつもりでは……ただ、妹さんがとても気に入ってる様子であることと……」

古泉「喋る猫に対して、耐性があるのはあなたの家ぐらいではないかと、判断したのですよ」ニコッ

キョン「えぇ……」

229 : 以下、名... - 2016/03/14 01:40:49.71 d7GaXyzd0 74/113


古泉「もちろん、機関で保護してもいいのですが……」チラッ

キョン妹「アハハノハ!!」キャッキャ!

「シャーー!!」

古泉「……随分、妹さんと相性が良さそうなのでね」ニコッ

キョン「嘘つけ、どこみたらそうなんだよ。全身の毛逆立ってんじゃねえか。ニコッじゃねえよ、適当な笑みを浮かべるな」

古泉「では、機関が引き取りましょうか?」

キョン「…………ハァ、分かったよ。こっちで引き取る」

古泉「それはそれは、本当によかったのですか?」

キョン「なんとしてでも引き取らせようとしたくせによく言うぜ」

古泉「そんなつもりはありませんよ、ただ妹さんと猫との相性が―――」

キョン妹「アハハ!」ドクドク

「シャー!!!!! シャーー!!」

キョン「めっちゃ血出てるけどな。2、3回どころか数十回は引っかかれてるであろう傷があるけどな」

古泉「あはは……」

キョン「ま、引き取る以上、猫並の生活ぐらいは保障してやるさ」

古泉「どうも。では、僕も帰り支度と締めの会議がありますので、これで」

キョン「おう、ご苦労さん。また後でな」

キョン「さて……」

キョン妹「アハー! あ、キョンくん! 見て見て! シャミすっごい元気なんだよ!!」ドクドク

キョン「おぉ見りゃ分かるってか、その状態で猫よりお前の方が元気なんだが……シャミだと?」

キョン妹「シャミセン!! この子の名前! あたしが飼うのー!!」

キョン「いや、まぁ飼うのは了承済みだからいいが……なんでそんな名前になったんだ?」

キョン妹「んー? なんでだろ? んーーなんとなくー?」

キョン「……あっそ。ちゃんと世話するんだぞ、そしたら飼っていい」

キョン妹「ホントっ!? やったー!! わーい! シャミー! シャミミー!」

シャミセン「ニャーー!! ニャーー!!」

230 : 以下、名... - 2016/03/14 01:46:07.40 d7GaXyzd0 75/113


シャミセン「(シャミセンだと!? ふざけた名前をつけおってからに……! それに飼うだと!?)」

キョン妹「かわいいでしょー!! ねーえ!!」

キョン「ま、猫のセンスと人間のセンスは違うからなぁ。この名前は人間からしても異端のセンスだけどな」

シャミセン「(我輩には歴とした『タマ』という名が……)」

キョン「すごいありきたりだな。ありきたりすぎて逆に少ない気がする」

シャミセン「(それよりもお主! 先ほどの質問に答えてもらおうか!!)」

シャミセン「(一体お主らは何者で何故このような『力』を―――!)」

キョン妹「んー?」

キョン「……やれやれ、ぶっちゃけ気になってんのはこっちの方だってのに」

キョン「お前こそ、どうしてこれが『力』だと知っている。テレパスに関してもそれほど驚いてはいないだろう」

キョン「まるで、この『力』の存在を知っており、以前どこかで目にしたことがあるような……そんな感じだ」

シャミセン「(……………………)」

キョン「古泉がお前を連れてきたのも作為的な何かか……古泉が仕組んだわけじゃないのは見れば分かる」

キョン「……ただの猫がハルヒの力を借りて喋ったところまではいい。だがな」

キョン「お前には俺と『こうして』話すことが出来る知性があるだろうが。こんなもん猫が本来持つもんじゃねえ」

キョン「お前本来が持つ情報に関してはハルヒの力は関係ないからな……」

キョン「改めて、こちらから質問させてもらおうか……」

キョン「お前は誰だ?」

シャミセン「(…………我輩は)」

シャミセン「(我輩は猫である!!! 名前はまだない!!)」ドーン!

キョン「……は?」

キョン妹「えー! あるよー! シャミセンだよーシャミセン!!」

シャミセン「ゴロニャー!」

キョン「……答えたくない、ってか。まぁ、別に答えてもらわんでも」

キョン「既に色々と、様々な手段でぜーんぶ分かっちゃたんだけどな!」ニッ!

シャミセン「(!! き、貴様……っ!!)」

シャミセン「ニャー! ニャー!! ニャァアア!!」

キョン妹「あーシャミ怒ってるー!!」

キョン「はいはい、猫語でなに言われても分かりませんね。『タマ』さんよ」

キョン「…………なるほどねぇ」

231 : 以下、名... - 2016/03/14 01:52:06.55 d7GaXyzd0 76/113


ハルヒ「それではっ! 皆さんお手を拝借して……よぉおおおおお!」パン!

鶴屋「締まったねー!!」

朝比奈「締まっちゃいましたねー」

長門「…………」

朝倉「……なんだかんだで、合宿の終わりは名残惜しくなるわね」

ハルヒ「そうよね……もう一泊しちゃう?」

朝倉「そんなネカフェに連泊するような気軽さで連泊なんてできないから」

古泉「名残惜しいのは確かですが、これ以上SOS団のホームグラウンドを留守にするわけにもいきませんので」

キョン「俺らってホームを持たない部活じゃなかったっけ?」

朝倉「そんな港を持たない海賊みたいな……」

ハルヒ「それもそうね、SOS団なくしてあの街は成り立たないもんね!!」

朝比奈「…………」

鶴屋「みくる、リアクションに困るならいっそノーリアクションの方がいいっさ。互いに」

ハルヒ「それじゃ色々あった別荘にお別れして、森さんと新川さんと圭一さんと裕さんに送りのお願いして……」

ハルヒ「帰りましょっっ!!!! 地元にっっ!!!!!!」

鶴屋「おうっ! 帰ろう帰ろう!! 急いで帰ろうっっ!!!」

キョン「じゃあ俺は一足先に帰って寝てるから……」ズイッ

ハルヒ朝倉「「許さないわよ?」」

キョン「……はい」

古泉「おや? 妹さんは……?」

キョン「あぁ、奴なら猫と一緒に先に帰ったぞ」

朝比奈「……???」

朝倉「えぇ、理解しようとしないのが正解ですよ朝比奈先輩。この兄妹に関しては」

ハルヒ「それじゃ全員(?)揃ったことだし、出発よ出発―!!」

キョン「……まったく」

キョン「………………『本物』に『宣戦布告』、か…………やれやれ」


                                               本物はどれだ(仮)【猫はどこ行った?】 完

254 : 以下、名... - 2016/03/21 20:25:26.34 a/dLSDfe0 77/113


朝比奈「(……わたしの名前は朝比奈みくる)」

朝比奈「(どこにでもいる普通の未来人。珍しいことといえばメイドを兼任してるぐらいのごく普通の未来人)」

朝比奈「(そんな……そんな普通の未来人の周りにはとってもおかし、ゴホン、個性的な人たちがいます)」

朝比奈「(自らの願望を実現できる『力』を持った活発艶麗な団長)」

朝比奈「(特殊な機関に所属し、超能力を扱う頭脳明晰な副団長)」

朝比奈「(宇宙人であり、ちょっぴり食欲旺盛だけど、何でもできる完全無欠の文芸部部長)」

朝比奈「(……そして)」

朝比奈「(自称、宇宙人であり、未来人であり超能力者である存在。その実正体不明の……ひ、平団員さん)」

朝比奈「(……そんなおか、エホン、個性的な人たちに囲まれていてはわたしみたいな未来人なんて普通の中の普通です)」

朝比奈「(普通のわたしは普通のことしかできなくて……)」

朝比奈「(みんなみたいに考えて動くことができなくて……)」

朝比奈「(だから……)」

朝比奈「(…………だから、いつだってそう)」

朝比奈「(言われるがままの自分の行動にいつだって自信が持てない)」

朝比奈「(……一番現場をよく知る人間のはずなのに)」

朝比奈「(今回だって……きっと……)」

朝比奈「…………」ハァ

ハルヒ「ねぇ、なんかみくるちゃん今日おかしくない? アンニュイっていうか……」コソコソ

古泉「確かに……何やら元気がないように見えますね」

長門「…………」

キョン「ふむ……」

257 : 以下、名... - 2016/03/21 20:29:33.51 a/dLSDfe0 78/113


ハルヒ「どれ、ここは一丁団長のあたしがみくるちゃんを元気づけてやりますか! 少々のセクハラには目を瞑ってちょうだいっ!!」グッ!

キョン「言動がまんまおっさんだな、お前」

ハルヒ「みーくーるーちゃ―――!」

朝比奈「……」ガタッッ!

ハルヒ「わっ! きゅ、急に立ち上がってどしたの? みくるちゃん」

朝比奈「あ……あの、や、やかんの水がきれたので、その……入れてこようと……はい」

ハルヒ「そ、そう……それじゃ、よろしく頼むわ」

朝比奈「はい……行ってきます」トボトボ

ハルヒ「…………」バタン!

古泉「…………」

長門「…………」

ハルヒ「絶対なんかあったってこれ! みくるちゃんの精神にあれだけ影響を与える何かがあったって!!」バンバン!

古泉「やはり、女性の精神にあれだけ影響を及ぼすと言うと……失恋、とか」

ハルヒ「し、つ、れ、ん!! 失礼ね古泉くん!!! みくるちゃんに限って恋が成就しないわけないでしょ!!!」

古泉「おっと、これは失礼しました。んっふ」

ハルヒ「でも、だとすると一体……」ムムム

長門「……『そういう』日だった」

ハルヒ「…………あの、有希? えーっと、それは一体どういう意味の『そういう』日なのかしら?」ン?

長門「どういう意味?」

ハルヒ「いや、深い意味がないならいいのよ? うん、まぁ深い浅いもないんだけどね。有希がこんなこというとは思わなかったから」

長門「?」

ハルヒ「ねぇ、キョン。あんたなにか原因知らない?」

キョン「さあな、朝比奈さんだっていつでも笑顔でいれるわけないだろ。思いつめたり、考え事してる時だってあるってことだ」

ハルヒ「あのみくるちゃんが!?」ガーン!

キョン「あの朝比奈さ……お前、とんでもなく失礼だぞ、おい」ビシッ

ハルヒ「やーねぇ、褒め言葉よ」ケラケラ

キョン「まったくもって意味の分からんフォローをやめろ」

258 : 以下、名... - 2016/03/21 20:32:56.27 a/dLSDfe0 79/113


朝比奈「…………」トボトボ

朝比奈「…………ハァ」

朝比奈「……きゃっ!?」ズシッ

朝比奈「あれ……? お水入ってる……?」

キョン「お久しぶりの、イリュージョン。なんてね」

朝比奈「きょ、キョンくん!? なんで……って分身ですか、ですよね」

キョン「おおっと、いつの間にか朝比奈さんにも驚かれなくなりましたね。持ちますよ、それ」

朝比奈「ありがとう…………あの、キョンくん」

キョン「なんです?」

朝比奈「あの、お願…………っ!?」

キョン「……オネガ? そりゃ新種の宇宙生物かなんかですか? 聞いたことないですね」ハテ?

朝比奈「(ダメ……ここで、ここでまた何も知ろうとせず、キョンくんや長門さんや古泉くんに頼りっぱなしになってたら)」

朝比奈「(わたしがこの時代にいる意味が……本当に、なくなっちゃう……!)」

キョン「…………朝比奈さん?」

朝比奈「……い、いえ……ごめんなさい、なんでもないです」

キョン「…………そうですか」

朝比奈「(……わたしが……わたしが一人でやらなくちゃ……)」

キョン「…………」

朝比奈「(未来人のわたしが過去の事象に干渉するのはご法度……だけど)」

朝比奈「(それを言えば未来を知るキョンくんに協力してもらうことだって、本来ならダメなはず……だったら)」

朝比奈「(制限されていようが、多少禁則事項を侵そうが……できるところまで……できるだけ)」

朝比奈「(…………わたし一人の力で)」

キョン「あーっ! 朝比奈さん外見てください!! 空飛ぶお茶葉流星群がぁ!!! あぁ!!」ガラッ!

朝比奈「…………」

キョン「……あ、あれ?」アセアセ

259 : 以下、名... - 2016/03/21 20:35:17.00 a/dLSDfe0 80/113


朝比奈「……あっ! ご、ごめんなさい! 急に黙っちゃって……も、戻りましょうか」

キョン「いえ、いいんですよ。フライング・ティー・メテオなんてなかったんだ……っと、それよりも」

キョン「朝比奈さん、さっき俺に何か言いかけたことはよかったんですか?」

朝比奈「あ、はい……いいんです、ホントに……」

キョン「そうですか……」

朝比奈「も、戻りましょキョンくん! 涼宮さん達がお茶待ってますし……」

キョン「……そうですね」

朝比奈「…………」トボトボ

キョン「(……やれやれ)」

キョン「(この様子じゃ、俺に悩み事が筒抜けってこと本気で忘れてるみたいだな)」

キョン「(自分の行動に自信がない、か……)」

朝比奈「…………ハァ」

キョン「(……ひどく落ち込んでらっしゃるみたいだし、ここはまぁ温かい目で見守るのも悪くな―――それは……ダメだな)」

キョン「(……それなら俺よか適任なやつに朝比奈さんを任せるとするか)」クルクル

朝比奈「…………あ、キョンくんヤカンもらいまっ!!?」ビクッッ!

キョン「(どうにかして話しつけて、偶然出会わせる形でいけるな)」グツグツ

朝比奈「キョキョキョ、キョンくん!!? やや、ヤカンが!! ヤカンの原型が、が!!?」

キョン「(そーすりゃ朝比奈さんの過去干渉のルール違反もどうにかなるはずだ、うん)」

キョン「よし、これでいこう! うん!」パァン!!

朝比奈「や、ヤカンがーーっっ!!?!!??」ガーーン!

260 : 以下、名... - 2016/03/21 20:39:14.01 a/dLSDfe0 81/113


朝比奈「…………ハァ」トボトボ

ハルヒ「けーきょく、一日中みくるちゃんはあんな感じだったわね。途中決意を秘めた目をしてる時あったけど」

古泉「何か、我々が手助けできることがあるのでしょうか?」

ハルヒ「うーん、手伝いたいのは山々だけど何に悩んでるかが分かんない以上、どうすればいいのか……」

古泉「あなたは何か名案が?」

キョン「ん、特にねーよ」

ハルヒ「薄情なやつね、考えなさいよあんたも、みくるちゃんのために」

キョン「…………生憎、俺の朝比奈さんの評価は結構高くてな、自分の悩みぐらい一人で解決できるお方だ」

ハルヒ「バカね! そんな些細な悩み事だって一緒に悩んであげるのが仲間ってもんでしょ!!」ドーン!

古泉「おおっ、さすがです涼宮さん」パチパチ

ハルヒ「ふふん、でしょ?」

キョン「へいへい、ならお前らはそうしてくれ。俺はちっと寄るところがあるんで先に帰るぞ、んじゃな」シュン!

ハルヒ「ちょ、待……なんて……なんて……っ!」

ハルヒ「便利な奴……っ!!」クゥ

古泉「あ、そっちなんですね」

ハルヒ「とにかくあたしたちだけでも考え……あ、あれ? みくるちゃんは?」

古泉「どうやら先にいってしまわれたようですね」

ハルヒ「それにいつの間にやら有希も……」

古泉「おかしいですね、さっきまで後ろにいたはずなんですが……」

ハルヒ「…………これは」ゴクリ

古泉「どうしますか?」

ハルヒ「これって……神隠しかしら!?」

古泉「え?」

ハルヒ「そんな気がするわ!! くそぅ、よくも我が団員を隠したわね!! 探してやるから覚悟しなさいっっ!! 行くわよ古泉くんっ!!」ダッ!

古泉「あ、あの朝比奈さんのことについては……っ!?」ダッ!

ハルヒ「人間、二つぐらい同時に行動ができるのよ!! 走りながら探しながら考える!! アーユーレディ!?」

古泉「す、既に始まっているような……仰せのままにっ!」

261 : 以下、名... - 2016/03/21 20:42:31.88 a/dLSDfe0 82/113


長門「ただいま」ガチャ

朝倉「あら、長門さん。おかえりなさい、もうご飯できてるわよ」

キョン「今日の晩御飯なに?」

朝倉「今日は鰈の煮つ……っ」

キョン「なるほど、『カレー』違いか」ホゥ

長門「嫌いではない」

朝倉「あのー……キョンくん? あなたの一動作にリアクションするのもそろそろ癪だから反応しないけど」

朝倉「なんでいるのっ!!?」ガーン!

キョン「しっかり反応してくれる朝倉マジツッコミの母」

朝倉「誰が母よ。それで、一体何の用があってここに来たのよ」

キョン「用がなけりゃ来ちゃいけな―――!」

朝倉「前も言ったけど、それはもういいから」

長門「……」モグモグ

キョン「そうか、そんじゃ朝倉出ずっぱりなお前に悪いが」

朝倉「出ずっぱり? どういう……」

キョン「ちと俺から頼みがある」

朝倉「キョンくんが? あたしに? あたしだけに?」

キョン「あぁ、古泉や長門でなく、お前に頼みたいことがある」

朝倉「…………えぇー」

キョン「何故そんな面倒くさそうな顔をする。俺が頼み事なんてめったにしないんだぞ?」

朝倉「だからよ、だから。何言われるか想像もつかないじゃない」

キョン「安心しろよ、タイマンで魔獣を狩れなんて言わないからよ」

朝倉「当たり前よ!! アマゾネスかあたしは!!! いやできるけどね!!?」

キョン「最後なんの意地張ってんだよ……別にできなくてもいいっつぅの」

262 : 以下、名... - 2016/03/21 20:45:05.58 a/dLSDfe0 83/113


朝倉「まったく……それで、わざわざあたしに頼みたいことって言うのはなんなのよ」

長門「……恐らく、朝比奈みくるのこと」

キョン「お、さすが長門。鋭い」

長門「……」モグモグ

朝倉「朝比奈先輩のこと? それがあたしに頼みたいことと関係あるの?」

キョン「大ありだ、じゃ説明するぞ―――」









朝比奈「(大丈夫……大丈夫……)」

朝比奈「(わたしだって、やればできる……はず、だから……)」

朝比奈「(いつまでも、何も分からないままただ流されてるだけなんて……いや)」

朝比奈「…………フゥ」

朝比奈「……頑張れわたし」グッ!









古泉「あのー!! 涼宮さーーん!! もう遅いですし!!! 明日改めて捜索をーーっ!!」

ハルヒ「ダメよ古泉くん!!! あたしはね! あの合宿で隠れ続けることの恐怖を知ったのよ!!」

ハルヒ「だから一刻も早く有希とみくるちゃんを探し出してあげないとダメなのよ!!!!」ドーン!

古泉「す、推測ですが!! お二方とも既に家に帰られているかとー!!」

ハルヒ「言ったことなかったっけー!!? あたし、自分の目で見たことしか信用しないのよ!!!!」

古泉「(だ、ダメだ……スイッチが入った涼宮さんは僕如きが止められるお方ではない……)」

ハルヒ「いーま見つけてあげるからね!! 有希!! みくるちゃん!!!」

古泉「(幸い、明日明後日は休日……まぁ、団長の気が晴れるまで付き合うとしますか)」フゥ

ハルヒ「っっ!!??!? 古泉くん!!! 宇宙人!! 宇宙人いたかもだわっっ!!?!?」

古泉「え? 長門さんですか?」

ハルヒ「え?」

263 : 以下、名... - 2016/03/21 20:48:19.90 a/dLSDfe0 84/113


日曜日


朝比奈「(不思議探索の予定が入ってなくてよかった……いえ、きっとこれも既定事項……)」

朝比奈「(だとすると、わたしがこうして命令に背いて一人で行動するのも既定事項……?)」

朝比奈「(きっともう私の行動は未来に知られているはずなのに、なんの連絡もない……これって)」

朝比奈「(……ダメダメっ! 考えて行動するのはいいことだけど、後ろ向きな考えはダメっ!)」ブンブン!

朝比奈「(とにかく……あくまで指示通りに……『誰か』にやってもらうんじゃなくて、わたしがやるってだけ……)」

朝比奈「…………よし、行こ―――」















朝倉「あ、あれ? あ、朝比奈先輩ジャナイデスカー! うわーグーゼン!」バッタリ














朝比奈「え、あ、朝倉さん? こ、こんにちはぁ。が、学校の外で会うなんて偶然ですねぇ!」

朝倉「え、ええホント! まったくもってその通りデスネー! アハハ……」

朝比奈「あはは……」

朝倉「……」

朝比奈「……」

朝倉「(キョンくんんんんんんん!!!!!! これならまだ魔獣狩る方が簡単なんだけどぉぉぉぉおおおお!!?!?)」

264 : 以下、名... - 2016/03/21 20:50:38.69 a/dLSDfe0 85/113


数日前


朝倉『あ、あ、朝比奈先輩とデートしてほしいですってぇ!!?!?』ガガーン!!

キョン『ああ、世の男どもが血涙を流して羨むイベントを体験してくれ』

朝倉『ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ!! で、デートって……あたし別にそんな趣味は……』

キョン『長門なら?』ボソッ!

朝倉『いやまぁ、長門さんなら手を繋いで一秒たりとも見逃さず買い物できるけれども……』キリッ

長門『……ごちそうさま』ガタッ

朝倉『あ、今日はおかわりなしなのね……』

キョン『だが、ただデートをしろって言うんじゃない』

朝倉『た、ただじゃないデート!!? そ、それってお金を払ってってこと!!? 見損なったわキョンくん!! あなたそこまで堕ちて―――!』

キョン『落ち着け朝倉、誰もそんなこと言ってないしやってない。ていうか俺は今どこまで堕ちてるんだよお前の中で』

朝倉『モグラぐらい?』

キョン『地中かよ、もはや埋まってんじゃねーか』

朝倉『一体、あたしと朝比奈先輩をデートさせてキョンくんになんのメリットがあるっていうのよ?』

キョン『ふむ、メリット……強いて言うならば美少女同士の濃厚な絡みを期待』

朝倉『殴るわよ?』グッシャァアア!

キョン『有言実行が早いっっっ!!』グッチャァアア!

朝倉『……ホントは?』フキフキ

キョン『ま、早い話朝比奈さんを支えてあげて欲しい。俺もお前も損得勘定抜きでな』

朝倉『朝比奈先輩を……支える?』

キョン『……朝比奈さんは今、言われたままのことしかしない自分の行動に自信を持てなくなっている』

朝倉『~~~っ!』

キョン『あぁそう。かつて世界改変を引き起こしたお前と同じ悩みを抱えていらっしゃるってわけだ。どうだ? 懐かしいだろ?』

朝倉『……懐かしいってか……恥ずかしぃ……』カアァ

キョン『そう思えるようになったってことは、十分成長したってことだ』

265 : 以下、名... - 2016/03/21 20:53:54.13 a/dLSDfe0 86/113


キョン『それで、言われるがままの行動しかしない自分を変えるべく、朝比奈さんは自分一人の力で問題を解決しようとしてる』

キョン『未来の人間が過去に干渉するというルール違反をしてまでな』

朝倉『……焦って周りが見えていない。あの時のあたしそのままだわ』

キョン『行動を起こすことも、失敗することも間違いじゃない。俺はそう思ってるし、実際お前にそう言った』

キョン『だから、この行動を起こした朝比奈さんを批判しないし、たとえ失敗しようが同情したりしないだろう』

キョン『未来人である彼女が、ルール違反を自覚してまでとった行動に、彼女自身が責任を持つべきだからな』

朝倉『……たまにキョンくんって真面目になるわよね』

キョン『バカ言え、俺はいつだって真面目だ』

朝倉『で、話を聞く限りだとあたしは何もやることないみたいだけど? 精々朝比奈さんの行動を見守るぐらいじゃない?』

キョン『と、ここまでが前言だ』

朝倉『はい?』

キョン『んで、前言撤回』

キョン『朝倉!! 行動を起こした朝比奈さんが失敗しないようにサポートしてやってくれぇ!! 頼むっっ!!』ドゲザッ!!

朝倉『え、えぇぇぇぇえええぇえええぇぇぇええぇえぇぇえええええええ!!?!? それじゃ今までの話なんだったの!!?!?!?』ガーン!!

朝倉『ていうか世界改変するまで好きにやらせてたあたしと随分対応違うくない!!? これって差別? 区別っ!!?』

キョン『依怙贔屓だ!!』ドンッ!

朝倉『より一層ダメだーーっっ!!!!』ガガーン!

朝倉『ちょっと! いまさっきまで講釈たれてたのが一気に薄っぺらくなっちゃうじゃない。せっかく感心してたのに』

キョン『依怙贔屓は言い過ぎだが、俺は朝比奈さんに対してやや感情的に、突き詰めて言えば過保護になってしまうらしい』

朝倉『なんでっ!?』

キョン『今回彼女の行動が裏目に出で彼女から笑顔や残り少ない自信が失われてしまうと考えたら……あぁ! それだけは絶対だめだ!』

朝倉『……むー。あたしの時だってそれぐらい心配してくれたらよかったのに』

キョン『心配ないとか、手のかからないってのは無関心じゃなく信頼の裏返しだ。それだけ俺はお前を買ってるってことなんだよ朝倉』

朝倉『…………長生きしてるだけあって口だけは達者なんだから、もう』

266 : 以下、名... - 2016/03/21 20:57:16.85 a/dLSDfe0 87/113


キョン『とまぁ、前言だの、過保護だの。前置きはここまでにしといて』

朝倉『えっ、前置き? 本題まだだったの!?』

キョン『実は、さっき言った未来人が過去に干渉するのはルール違反ってのは結構厳密に制約されてるんだよ』

朝倉『つまり……普通ならこんなことしようと思ってもできない、ってこと?』

キョン『そりゃもう、違反しようものなら未来からのラブコールが頭の中でガンガンガンガン鳴りっぱなしの状態だぞ?』

朝倉『うわぁ……地味にキツイわね、それ』

キョン『さすがにそれを無視してまで行動しようと思うほど朝比奈さんは無謀な人じゃないから』

キョン『恐らく、それほどこのルール違反を重いものだと意識していない。いや、してはいるんだが、それ以上のものだとは分かっちゃいない』

朝倉『そんなにダメなことかしら? 例え本当は未来人だとしてもこの時代にいる以上はこの時代の人間なのに』

キョン『人間が犬の群れに入ったからってそれで犬にはならねぇだろう? 仮に犬に育てられ犬のように育ったってなら話は別だが』

朝倉『?』

キョン『……朝比奈さんは未来のことをよく知るお方だ。そんな人が、そんな未来を知る力を持った人が過去を変えちゃならない』

キョン『……未来のお偉方が決めなさったことさ』

朝倉『ふーん、よくわからないけど、組織っていうのは難しくて面倒くさそうね……でも』

朝倉『それだけ厳重に徹底したルールを敷いている未来人が、今回の朝比奈先輩のルール違反をまさか黙って見ているはずはない、わよね?』

キョン『その通り、ご名答だ朝倉。何らかの原因で朝比奈さんのルール違反を知れない状況、または連絡のつかない状況……まぁなんでもいいが』

キョン『今現在、いや今未来とでも言うべきか、未来人が朝比奈さんのルール違反を制止することはできない、それは何故か?』

朝倉『…………例によって』

キョン『……懲りないやつらだよ、どうも』ハァ

朝倉『スキー合宿の時釘刺したって言ってなかったっけ?』

キョン『どうやら、俺は予想以上に舐められてるらしいな。ちっとも気にしとらんようだ』

キョン『まぁ大方未来人を妨害できるのは同じ未来人ぐらいのもんだろ、あんの巨乳フェチめ……』

朝倉『え? きょ、巨乳……?』

キョン『ま、とにかく朝比奈さんのことは頼んだぞ。くれぐれも無茶はさせないでくれ、マジで』

朝倉『ちょ、プレッシャーかけないでよ! 頼むってキョンくんは一緒じゃないの?』

キョン『あぁ、俺は俺でやることがあるからな』

朝倉『……それって――――』

キョン『……あぁ』

267 : 以下、名... - 2016/03/21 20:59:45.67 a/dLSDfe0 88/113
























キョン「おっっらぁああぁあああ!!! 巨乳フェチぃいいぃぃいいいい!!! テンメェしつけぇんだよぉおお!!!!」ドッガン!

「なっっ!!?!?!? お、か、過去人っっ!!?!? そ、騒々しく入ってくるな!!! 心臓に悪いだろうが!!」

キョン「よくもまぁ逆ギレ出来たもんだなぁ!!! 巨乳フェチぃいいぃいぃい!!!!」

「ま、ず、は……その名で呼ぶのをやめろぉぉぉおぉおぉぉおぉおぉおおおお!!!!!!」





















288 : 以下、名... - 2016/03/23 21:08:24.24 /foAgZh/0 89/113


朝比奈「……」

朝倉「(……こ、こっからどうしよう)」

朝比奈「あ、あの……」

朝倉「は、はい!?」

朝比奈「わたし、ちょっと行くところがあるんで、これで……」

朝倉「えっ、あっ、き、奇遇ですね!! あたしもそこに行こうと思ってたんですよ!!」

朝比奈「え、どこに行くとは言ってないんですけど……え?」

朝倉「あ……え、と……」

朝比奈「…………?」

朝倉「…………」

朝比奈「そ、それじゃあ、わたしはこれで……さようなら」スッ

朝倉「え、あ……さようなら……」スッ

朝比奈「…………」スタスタ

朝倉「…………」スタスタ

朝比奈「…………」スタスタ

朝倉「…………」スタスタ

朝比奈「……」クルッ

朝倉「……っ?」

朝比奈「……なななんでっっ!!??!? どど、どうしてついてくるんですかぁ!!?!?」ガーン!

朝倉「あ、い、いやぁー! ぐ、グーゼンですよ! グーゼンあたしもこっちの方に用がありまして……」

朝比奈「朝倉さんこっちの方から来ましたよね!!? 来た道を引き返してるだけですよね!!?」

朝倉「あ、いや、その、よ、用事を思い出しまして……あ、あはは!!」

朝倉「(や、やっぱりあたしには荷が重いと思うんだけど!!? キョンくーん!!)」

289 : 以下、名... - 2016/03/23 21:13:08.36 /foAgZh/0 90/113


キョン「お前らも懲りん奴だな、なぁおい」

「フン、懲りる懲りないじゃあないんだ。これは僕がやらなければならない既定事項なんだ」

キョン「それで、朝比奈さんから未来への通信を断たせてお前は何を企んでる?」

「知りたいのか? ならお得意の『力』とやらでココを覗けばいいだろう?」トントン

キョン「……ちっ」

「ハッ! どうやらあんたもあの女には敵わないらしいな! 僕にかけられたプロテクト一つ破れないとはな!」

キョン「お前一人で満足に情報を守れないやつがなに言ってんだ」

「なんとでも言うがいいさ。あんたはこれから朝比奈みくるがとる行動によって変動する未来を知ることはできないんだろう」

「あの宇宙人をつけたのは小細工のつもりか? なにも変わりはしないだろうがな」

キョン「随分でかい口を叩くじゃないか、デカい胸が好きなだけある」

「い、いい加減にっっ―――!!!」ガラッ

「あれ? いらしてたんですか?」
















「藤原さん」

藤原「っ、橘京子……」
















「あら、あなたも来てたんですね。まぁゆっくりしていってください。あ、だから佐々木さんがいないんだわ」

キョン「一応、敵陣であるここでゆっくりなんてできるわけないだろう」バリバリ

藤原「……あんたはもう少し発言に責任を持つべきだ。どこの世界に敵陣で煎餅を頬張りながら横になるやつがいるっ!!」ガァア!

290 : 以下、名... - 2016/03/23 21:17:40.72 /foAgZh/0 91/113


「粗茶ですが」コト

キョン「ん、朝比奈さんや長門のがうまい」ゴクゴク

「あはは、あたし普段お茶とかいれませんしね」

藤原「……何を慣れ合っているんだ」

「別に険悪になる必要ないじゃないですか、平和的に解決できるならそれが一番です」

キョン「その意見には同意するが、平和の意味をはき違えてるお前らに教えてやろう」

キョン「お前らの言い分が一方的に通った解決方法は平和的解決とは言わん」

「……」

キョン「まぁ、前の軽い牽制程度でお前らの行動を規制できるとは正直期待してなかったさ、案の定この様だしな」

キョン「ただ、だからと言って―――」シュン!!

「!? っっなっ!?!?」ガシッ!

藤原「っっ、何をっ!?」ガシッッ!!

キョン「舐められたまま引き下がるってのもどうかと思ってな、ここらで一つ本当の恐怖っつぅモンを教えておこうか?」

「……っ」ブルブル

藤原「……っ脅しか?」

キョン「そう思うか?」グググ

藤原「ぐっ……、クッ!!」

キョン「……………………なんてな」パッ

「……っっ??」

藤原「っ、ハッ! やっぱりただの腰抜けじゃないか!! ここまでされておいて何もできないなんてな!」

キョン「ここまでされておいて? 確かにちょっかいをかけられた覚えはあるが、大した被害を被った覚えはないな」

キョン「……今、頭掴んでお前らから直接情報を抜き取ろうとしたんだが……」

藤原「「!!!」」

キョン「……さすがは『佐々木』、ここまでやってもダメだとはな」

「……はぁ」ホッ

藤原「……フン」

291 : 以下、名... - 2016/03/23 21:21:07.13 /foAgZh/0 92/113


「……っ先日の、古泉さんの機関からの……メッセージ? 意思表明?」

「あたしたちとは『相容れない』っていう内容の……」

キョン「『本物はどれだ?(仮)』のことか」

「……あれは、事実上の決定的な決別宣言だと思っています、あたしたちは」

藤原「決別もクソもないだろう、元々手を組むつもりもない、まぁ利害が一致していなければ僕もこちらと手を組むことはなかったがな」

キョン「(……コイツさえいなきゃまぁまぁ平和的に、それこそ話し合いとかで解決できるんじゃないかなぁ……やっちまおうかなぁ?)」ウズ

藤原「……?」ゾクッ!

「もしかしたら、互いの主張の落としどころが見つけられるかもって思ったけど……やっぱりダメでした」

「だから、だからもう……あたしは、あたしが『本物』だと思った行動をとるしかできなくて……」

藤原「フン、それの何が悪いことなんだ? 涼宮ハルヒにお熱な連中と何が違うと言うんだ?」

藤原「あんたはどう考えてるんだ? 涼宮ハルヒと『佐々木』、どちらに付く方が正解なんだ?」

キョン「…………だから俺は平和的に、いつも後出しして先延ばしにしてたんだよ」

「えっ……?」

キョン「……その通りだ藤原」

藤原「なに?」

キョン「あっ、巨乳フェチ」

藤原「合ってる! 合ってるから言い直さなくていい!! わざわざ!!」

292 : 以下、名... - 2016/03/23 21:25:53.04 /foAgZh/0 93/113


キョン「俺は別に、お前らの主義主張も、朝比奈さんや古泉や長門の主義主張も間違いだなんて思っちゃいない」

キョン「だからこそ、平和主義者だとか謳ってお前らに直接的な手は下さず、今まで見逃して来たんだ」

藤原「それが? あんたの言い分も涼宮ハルヒの取り巻きの主張も端からこちらは意に介していない」

「ちょ、ちょっと! 藤原さんがこっちの意見の代弁者って訳じゃないんですから! 少なくともあたしはそう思ってな―――」

藤原「黙れ」ギロッ!

「っ!!」ビクッ

藤原「あんたも、自分の行動がぬるいと感じているなら早急にそのスタンスを変えた方がいいぞ」

藤原「敵に塩を送るつもりはないが……まぁそもそも、あんたは敵の立場にいれるのか定かではないか」

藤原「どうする? 今ならまだ歓迎してやってもいいんだぞ? 一々チマチマした挑発であんたを呼ぶのも飽きてきたところだ」

キョン「俺を呼び寄せることが本来の目的じゃねぇだろうに……それと」

キョン「どちらにつく、つかない以前に……俺はSOS団団員だ。他の団に属すことはできねぇよ」

「……だ、だったら、あたしたちを止めもしない。好き勝手やらせてるあなたは一体なんのつもりなんです……?」

「こ、こっちから仕掛といてなんですが……結構あなたがいなければ大変なことになってたコトもありましたし」チラッ

藤原「……フン」

キョン「……そんなもしも話はいらない。現に、俺がここにいるんだから」

キョン「俺がいる間に、誰かがいなくなることは認めん」

藤原「あんたがいなくなったら?」

「ちょっと!」

キョン「…………それは考えたことなかったかな」

キョン「……いなくなられるのが当然だったもんでな」

「(…………『佐々木』さんのこと?)」

293 : 以下、名... - 2016/03/23 21:31:00.60 /foAgZh/0 94/113


朝比奈「……あ、あのぅ」

朝倉「は、はいいぃ!? な、なんでございましょう!? 朝比奈先輩っ!」ビシッ!

朝比奈「ちょ、直立不動はいいですからぁ!! え、と朝倉さん結局朝倉さんは、その総合デパートに何の用が……」

朝倉「え、えっと……そ、そう! 晩御飯の買い出し! 買い出しをですね!!」

朝比奈「えっ、『スーパー平安時代!!』じゃなくて? しかもエコバッグを持ってない朝倉さんが買い物……?」ジッ

朝倉「じゃなかった!!! そう買い物じゃなくてですねー!! ハッ!ていうか今日卵の特売セー……ちくしょう!!」

朝比奈「あ、あの……」

朝倉「ああいえ! なんでもありません! あははー! さ、最近物忘れが激しくって激しくって!! 自分の名前も忘れる時あるんですよ!」

朝比奈「そ、それはさすがにダメなんじゃ……」

朝倉「あ、あぁ! え、えーっとですね!! あのー!」

朝比奈「…………朝倉さん」

朝倉「そう! この近くに諜報員……は、はい?」

朝比奈「もし、もしお時間があるんでしたら……一緒に付き合ってくれませんか?」

朝倉「……え?」

朝比奈「わたし、部活用のお茶見たくて……お料理する朝倉さんなら味とかよく分かるんじゃないかなぁって」

朝比奈「だから、その……ですね?」

朝倉「……あ、はい! よ、喜んで!! に、荷物持ちでもなんでもやります! はい!」

朝比奈「に、荷物持ちはいいですよぉ! お茶選ぶの手伝っていただければ、それで……」

朝倉「で、でも……今更言うのもあれですが、ご一緒してもいいんですか?」

朝比奈「……はい! あっ、朝倉さんがよければなんですけど……大丈夫ですか?」

朝倉「ぜ、全然問題ないですよ! い、いきましょ朝比奈先輩!」グイグイ

朝比奈「わ、わわっ!」トテッ!

朝倉「(お、思ってたよりホントにデートっぽくなっちゃったわ……朝比奈さんファンクラブの皆さん、ごめんなさい)」

朝倉「(……いやあたし同性だし気にすることなくない!? ていうかデートじゃないし!! なんでこんな緊張してるのあたしっ!!?)」ギュッッ!!

朝比奈「きゅぅう!! あ、朝倉さん手が! 手が!! こ、小指が!! 小指がギュッって!! ギュッてぇぇえ!!」ギュッッ!!

294 : 以下、名... - 2016/03/23 21:36:17.75 /foAgZh/0 95/113


朝倉「わっ、お茶ってこんなに種類あるんですね」

朝比奈「ふふっ、そうですよぉ。こだわると結構おもしろいんですよぉ。あ、これとかおすすめですね」

朝倉「ん……飲みやすいですね、これ。煎茶……ですか?」

朝比奈「すごい! わかるんですね! やっぱりお料理できる人は舌がいいんだぁ……」

朝倉「そ、そんなことないですよ! おいしいおすすめを知っているのは朝比奈先輩の知識ですし」

朝比奈「わたしの……」

朝倉「そうですよ! だからあんなにおいしいお茶を入れることができるんですよ!」

朝比奈「…………」

朝倉「朝比奈先輩?」

朝比奈「(……一人でやるって決めたのに、いざってなると他の人に頼ってる……)」

朝比奈「(い、いや! じ、時間にはまだあるし、実行はわたしが……わたしが……)」

朝倉「(思った以上に悩んでるみたいね……そういえばキョンくんから具体的に何をすればいいのか聞いてないわ)」

朝倉「(時間、タイムリミットがあるのか、それともまだ始まっていないのか……)」

朝比奈「あっ、朝倉さん。あそこのお団子屋さんでお茶飲みませんか? 今買ったお茶を淹れてくれるんですよぉ」

朝倉「(どちらにせよ、朝比奈先輩にそれらしい行動をとらせちゃダメってことか……)」

朝倉「……難しいこと言ってくれるわね」ボソッ!

朝比奈「ええっ!? だ、ダメですか?」

朝倉「えっ、あっ、いえ!! 全然おっけーですよ!! はい! えーっと……何するんでしたっけ?」アハハ!

朝比奈「…………き、記憶に関する病院って……せ、精神科?」

朝倉「ああっ、だ、大丈夫!! 大丈夫ですよ!! ギ、ギリギリ日常生活に支障はないですから! ね! ねぇ!?」

295 : 以下、名... - 2016/03/23 21:42:16.09 /foAgZh/0 96/113


朝比奈「あ、おいし……」モグモグ

朝倉「ホント……お茶に合うって感じですね」モグモグ

朝比奈「ですね」チラッ

朝倉「(……時間を気にしてるわね……そろそろなのかしら?)」

朝比奈「……この時代はいい時代ですね」

朝倉「……えっ?」

朝比奈「あ、いや、急にごめんなさい。ちょっと考えちゃって」

朝倉「いえ、それは全然……やっぱり、未来とは全然違いますか、この時代は」

朝比奈「それは、はい……具体的にどう違うとは言えないけど……」

朝比奈「未来では知ることができなかったこともあるし、なにより……あれ?」

朝倉「? どうしました?」

朝比奈「い、いえ……」

朝比奈「(き、禁則がかかっていない……? な、なんで?)」

朝倉「(……妨害に気付いた?)」

朝比奈「(……こ、これも既定事項……なのかな?)」

朝倉「(あらら……でも、仕方ないわよね。いつだってなんの説明もなしに言われるがままなんじゃ……)」

朝倉「(一体、何が正解か分かりはしない……だからこそ、自分から動いてしまう……結果が見えてたとしてもね)」

朝比奈「???」アレー?

朝倉「(……ぶっちゃけ、朝比奈先輩があたしたち涼宮さんの周囲にいるものの中で一番不遇よね)」

朝倉「(あたしには長門さんや他のインターフェース、古泉くんには機関の仲間……それぞれの拠り所と言えるものがある)」

朝倉「(朝比奈先輩は時代も違う、頼る当てもずっと遠い未来で、僅かな情報だけを持たされて……ここに)」

朝比奈「(……とにかく、『何 か』が起こるまではもうあまり時間がない、そろそろ行かなきゃ!)」

朝倉「(……おーいキョンくん? どうやら今回も、朝比奈先輩は何をするかご存知ではないらしいですよ?)」タラー

朝倉「(……『何 か』って何!!? ていうか朝比奈さん何をするか分からないのに一人でやろうとしてたんですか!!?!? そんな……)」ガーーン!

朝倉「…………ううっ、不遇すぎる」ポロッ

朝比奈「っ朝倉さん!? ど、どうしましたか? お、お茶が苦かったとか? だ、大丈夫ですか? ジュース飲みます?」

朝倉「うぅ、あんまり労わらないでくださいぃ!! ぅうぅうぅう!!」

朝比奈「え、ええっ!!!?」

323 : 以下、名... - 2016/04/05 19:52:25.07 cbByM2oq0 97/113


朝比奈「あ、そろそろ……」

朝倉「なにか……他の用でもあるんですか?」

朝比奈「ええ……まぁ、そう……なんです」

朝倉「……それじゃ、あたしもそろそろ……」スクッ

朝倉「と、いつもなら長門さんの夕ご飯の仕度があるんですが」

朝比奈「え?」

朝倉「今日は、仕度はしなくていいんで、もう少し、朝比奈先輩と一緒にいてもいいですか?」ニコッ

朝比奈「え? ええ、と……その」

朝倉「……お邪魔になりますか?」

朝比奈「えっと……あの……」

朝倉「…………」

朝比奈「……じゃ、じゃあ、ちょっと一緒にお散歩……してくれますか?」

朝倉「…………よろこんでっ!」ニコッ!

朝比奈「……っ、それじゃいきましょうか」

朝倉「はい、朝比奈先輩の赴くままにご一緒しますよ」

朝比奈「あ、でも長門さん……本当に大丈夫なんですか? ごはん作らなくて……」

朝倉「今日に限っては、平気です。応援要請してますから」

朝比奈「応援要請……?」

朝倉「はい」ニコッ


























長門「違う。そうではない、そのようにはならない。朝倉涼子はこんなものを製造していない」

喜緑「あらら、お料理って難しいんですね……でも食べれないことはないですよね? ねぇ?」グツグツゴボゴボッ!

長門「……………………」

324 : 以下、名... - 2016/04/05 19:56:00.29 cbByM2oq0 98/113


朝比奈「…………」スタスタ

朝倉「…………」スタスタ

朝比奈「…………」

朝倉「(こ、この間がなんとも……)」タラー

朝比奈「…………この道」

朝倉「へっ?」

朝比奈「あっ、えっとSOS団で、不思議探索っていうのをやってるんです」

朝倉「あぁ、週末にやってるやつですよね?」

朝比奈「はい、それの第一回目の午後の部……初めて」

朝比奈「……初めて、キョンくんとここの道を歩いて、キョンくんのお話を聞いたのを思い出して……」

朝倉「……もう、10ヶ月近く経つんですね」

朝比奈「……早いです」

朝倉「……本当ですね」

朝比奈「……わたしは」

朝倉「えっ?」

朝比奈「わたしは、この時代に来てよかったんでしょうか……?」

朝倉「あ、朝比奈先輩っ? な、なにを言って……」

朝比奈「未来人としてのわたしが、ここにいる意味ってなんなんでしょう……?」

朝倉「それは、涼宮さんの……」

朝比奈「分かってるんです。誰にでもできることなんだって。できて当たり前なんだって……」

朝比奈「でも、誰にでもできることをやるのだって立派なことだと思うんです。思うからこそ……」

朝比奈「わたしは……『当たり前』すらできていない……そう、思ってるんです」

朝倉「…………」

325 : 以下、名... - 2016/04/05 19:58:55.84 cbByM2oq0 99/113


朝比奈「……あっ! ご、ごめんなさい……なんか、へ、変な話しちゃって……」

朝倉「いえ……そんなこと……」

朝比奈「ほんとに……気にしないでください……」

朝倉「…………」

朝比奈「(もう……すぐ、なはず……)」キョロキョロ

朝倉「……あの、朝比奈さん、何か……お探しですか?」

朝比奈「ふぇ!? い、いえ……な、なにも……ナイデスヨ?」キョドキョド

朝倉「ソウデスカー」

朝比奈「(うぅ……い、今更だけど、ホントになにをすれば……)」キョロキョロ

朝倉「(確かに……朝比奈先輩が何をしなきゃ分かってなきゃあたしが何していいかも分からないし……)」キョロキョロ

朝比奈「…………」キョロキョロ

朝倉「…………」キョロキョロ












「あーーっっ!!!! いたーーっっ!!!!!!」ガサッッ!!












朝倉朝比奈「「っっ!!?!?」」ビクッッッ!!

ハルヒ「みくるちゃぁぁああぁああん!!!」ダキッッ!!

朝比奈「す、涼宮さんっっ!? な、なんで? え? え?」

古泉「……あ、朝倉さんも……どうも……」ガサッ!

朝倉「こ、古泉くんも一緒っ!!? ていうか二人共なんで制服っ!? あと大分やつれてるように見えるんだけど!?」

朝倉朝比奈「「なにがあったの!!?!?!?」」ガーン!

327 : 以下、名... - 2016/04/05 20:02:58.04 cbByM2oq0 100/113


朝倉朝比奈「「…………」」ポカーン

ハルヒ「と、いうわけで……ってなーに二人してアホみたいに口開けてるのよ、ねぇ古泉くん」クルッ

古泉「…………」ポカーン

ハルヒ「って古泉くんも!!?!?」ガーン!

古泉「……ハッ! し、失礼しました。ぼ、僕の方は呆気ではなく空腹によるもので……あ」

ハルヒ「呆気? なーんで呆気にとられるのよ朝倉さんとみくるちゃんが、ねーぇ?」

朝倉「…………ねーぇ、じゃ」

朝倉「ないわよぉぉぉおおおぉおおぉぉお!!!! バカなの!? バカなの涼宮さん!!! ねぇ!」

ハルヒ「え、ちょ、何!?」

朝倉「『みくるちゃんと有希が神隠しにあったと思って丸二日間捜索してた』ですって!!?!?」

朝倉「馬鹿か!!!!!!」ドーン!!

ハルヒ「ど直球!!?!?」ガーン!

朝倉「そりゃ古泉くん疲労で朦朧とするわよ!!!! 目の焦点が合ってないのも納得するわよ!!!」

古泉「朝倉さん、目の焦点が合ってないなんてことはありませんよ」

朝比奈「あの、朝倉さんはあっちです古泉くん……」

古泉「…………おや?」ハテ

ハルヒ「で、でも実際神隠しに合ってたら大変じゃない!! あ、あたしは団長として団員の身の安全を保障しなきゃ……」

朝倉「警察!!! なんのために警察がいるの!!? というか冷っ静に考えると神隠しなんてありえないから!!!!」

ハルヒ「あ、ありえるわよ!! 事件になってたりするし……」

朝倉「あなたが!!! 団員を!! 大事にする限り!!!! そんなことは!!!! 起こらないの!!! 絶対!!!!」

ハルヒ「す、すごい剣幕っ!!! だ、だけどどこからそんな自信が……」

古泉「それはですね、涼宮さん。あなたの持つ願望実現―――」

朝比奈「す、ストップ!! 古泉くんダメぇぇえええ!!! 言っちゃダメですからそれえ!!!」アワワー!

328 : 以下、名... - 2016/04/05 20:06:31.41 cbByM2oq0 101/113


ハルヒ「まったく、なんであたしが……」ブツブツ

古泉「おや、こんなところにチョコレートが落ちていますよ? ねぇ、森さん。森さん?」ボー

朝倉「ダメだわこの二人……正常な精神状態を失っている……いつからこの状態で捜索なんてしてたのよ」

朝比奈「…………」

ハルヒ「ていうかみくるちゃんたちもさっきキョロキョロしてたわよね? あっ! もしかしてなにかしらのUMAの情報とか持ってたり!!? するっ!!?」キラキラ

朝倉「ちょっとハイになってるあたり相当危ないんじゃ……朝比奈さん?」

朝比奈「(……指示は、もしかして涼宮さんを保護すること? 観察対象の身の安全の保持?)」

朝比奈「(……他に、特に気に付くようなことは……)」キョロキョロ

ハルヒ「んぁ? あれっ、あの子……ハカセ? ハカセじゃない?」

朝比奈「ハカセ……?」ジィ

朝倉「……あなたには博士というか医者が必要なんじゃ……」

ハルヒ「そうじゃないってば!! あの子、あたしがたまに家庭教師している子なのよ」

朝倉「何教えてるのっ!!!!」グワッ!

ハルヒ「それはさすがに失礼だと思うっ!!! あたしだって小学生に宇宙人やらなんやら言うわけないでしょ!」

朝比奈「(……あの子…………『あの人』はっ!!?)」

朝倉「(―――!!)」ダッ!

ハルヒ「おーーい!!! ハカセーー!!! ハカ―――!!! ダメッッ!!!!! 前見て!!!!」

古泉「ボー…………ハッ! えっ?」

朝比奈「待っ――――――っ!!!」



















「あ、お姉さ――――――――――――え」




















ブォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンン!!!!!!

329 : 以下、名... - 2016/04/05 20:09:31.19 cbByM2oq0 102/113


キョン「…………」

「…………」ビクビク

藤原「……ふん」

キョン「……これが、お前のやり方か」

藤原「僕のやり方? ハン、僕の行動に僕の意志など介入しない。既定事項に則った行動をしたまでだ」

キョン「……なるほど、所詮お前は未来の言いなりってわけだ」

藤原「なに……?」

キョン「既定事項だ未来だ、お前は決まった行動しかとれないロボットかよ」

藤原「その決まった行動をとることが、僕たち未来人にとっての『当たり前』なんだ! 過去人には分からないろうがな!」

「……あ、あの」ビクビク

藤原「あぁ!?」ギロッ!

「あ、な、なんでもナイデス……」

キョン「……『当たり前』か。重要なことだろうよ、それも。だがな……」

キョン「自らの意志のない行動に、成長や自信や結果はついてこないんだよ」

藤原「…………何を、言っている?」

キョン「考えて行動しろって言ってんだよ。ゴールが分かってる道を歩くんじゃなくて、ゴールを探しながら歩くんだよ」






『もちろん、初めからゴールは見えているからね。あとは必要なプロセスを踏んでいくだけだ』






キョン「…………だから、違うんだよ」

「……???」

藤原「……何のことだ? 何を言っているんだ? あんたは……」

352 : 以下、名... - 2016/04/07 23:01:11.26 PVsz/5Kj0 103/113


朝比奈「――――――っ……!」ヘナッ

古泉「朝比奈さん! 大丈夫ですか?」ガシッ

ハルヒ「ッ!!」ダッ!

ハルヒ「ハカセっっ!!!!」

ハルヒ「朝倉さんっっ!!!!!」


















朝倉「っ……、間一髪セーフだわ。よかった……」ギュ

「あ……え……?」


















ハルヒ「二人共! 怪我は!? あ、頭とか打ってない!? き、救急車……!」

朝倉「大丈夫よ涼宮さん、大丈夫。どこも怪我してないわ」

ハルヒ「ほ、本当……?」

朝倉「ええ、ね? あなたもどこも痛くないでしょ?」

「……え、あ……うん」

ハルヒ「……そっ、それならよか……よくないっっ!!!! なにあの車!!! 信号無視して減速もせずツッコんできたわよ!!?!?」

古泉「お怒りになるのも無理はありません。非常に、危険な運転でした。僕の方で被害届を出しておきましょう」ピ!

ハルヒ「お願いするわ!!」プンプン

朝倉「(ふぅ……多分、これ、よね? キョンくんが言ってたことは……あの車はきっと敵対組織の妨害で……)」

朝比奈「……………………」

353 : 以下、名... - 2016/04/07 23:06:30.32 PVsz/5Kj0 104/113


朝比奈「……」スッ

「え? あの……」

朝比奈「ケガしてない?」

「……うん」

朝比奈「よかった。ね、お名前教えてくれない?」

ハルヒ「ハカセくんよ」ドーーン!

朝倉「誰がこのタイミングであだ名を知りたいのよ」

「――――――」

朝比奈「……そう、ありがとう。あと、わたしと約束してくれる?」

朝比奈「これから……もしかしたら、今日みたいな事故、というか危険なことにまた巻き込まれるかもしれない」

朝比奈「その時にまた、朝倉さ……『この』お姉さんのような人に助けてもらえるかは分からない」

朝倉「…………」

朝比奈「……だから、できるだけ。できるだけいろんなことに注意して、注意して……」

朝比奈「……立派に生きることを、約束してほしいの」

ハルヒ「み、みくるちゃん? な、なにもそこまで見ず知らずの子に求めないでも……ま確かにこの子は賢いけどね」フフン!

古泉「…………」

朝比奈「約束、してくれる?」スッ

「……する、気をつけます。今後……」スッ

朝比奈「……じゃあ、指切りげんまん……、指切った」

朝比奈「……覚えておいてね、この約束……ずっと未来まで」ニコッ

「…………う、はい。あの……」

朝倉「ん? あたし?」

「危ないところを救っていただき、ありがとうございました」ペコッ

朝倉「え? あ、いいのよ全然」ニコッ

「以後、もっと注意するよう心がけます。では、失礼します」

朝比奈「えぇ、さよなら……」

ハルヒ「帰り道気をつけるのよー!! あ、ハカセ―!!! お母さんに次のお菓子はカステラがいいって伝えといて―っ!!!」オーイ!!

朝倉「厚かましっっ!!! よりにもよって今伝言頼むとか……厚かましっ!!!」ガーン!

354 : 以下、名... - 2016/04/07 23:11:40.17 PVsz/5Kj0 105/113


藤原「ふん、これも既定事項……だが」

藤原「気に入らないな、アンタが仕組んだのか? あの場に存在する未来人以外の存在を……特に」

藤原「涼宮ハルヒを」

キョン「……だったらどうしたと言うんだ」

藤原「……フッ、困るじゃあないか。この結果は確かに既定事項だが、あの女、涼宮ハルヒの力が介入したのだと言うなら話は別だ」

藤原「僕が涼宮ハルヒの掌の上で踊らされていることになってしまう」

キョン「ダメなのか?」

藤原「ダメダメさ……なんせ僕がついているのは『佐々木』なんだからな、そうだろう? 橘?」

「えっ、まぁ……はい。今回、あの少年が助かったのが涼宮さんの力ということにされては……困るところがあります」

藤原「そうだろう、事象の結果に『涼宮ハルヒ』という名前がでるようではダメなんだ」

藤原「それを変えるべく未来から、宇宙からわざわざやってきたのだというんだからな」ニッ

キョン「そうかいそうかい、そりゃご苦労なこって。で、その割には随分ご機嫌なようじゃないか」

キョン「あの場にハルヒがいたんじゃ困るんだろ? その他になにかいいことでもあったのか?」

藤原「ハン! それは―――!」

周防「―――巨乳が―――いた」フワッ

「あ、周防さん」

キョン「朝比奈さんのことかぁぁあぁあぁああああああああ!!! テメェどこみてんだぁぁああぁぁああ!!!」ガタッ!

藤原「勝手な妄想はやめろといっただろうがぁぁぁあああああ!!! それに彼女がそこにいるのは既定事項だ!!」

「ああっ! ま、また喧嘩するのはやめてください!! っと、ところで周防さんは今までどこに?」

周防「―――『佐々木』―――のところ」

キョン「『佐々木』だぁ? 近くにいるのか?」

藤原「ふぐぅ……あ、あんた普通にて、手を出し……ガクッ」ボロッッ!

「藤原さーん!!! 目を離したすきにぼ、ボロ雑巾のように……」

キョン「鉄拳制裁だ、風紀を乱す者には容赦せん。安心しろ、ミネウチだ」ポイッ

藤原「ゴフッッ!」ドサッ!

「……峰打ちってどんな意味だっけ?」

キョン「おい」ズイッ

周防「―――」クスッ

キョン「案内しろ。『佐々木』のところに」

周防「―――ふふ―――こっち」スッ

「え!? あ、会わせちゃっていいんですか!? 周防さん? 周防さーん!!?」

藤原「イタイ……イタイ……ネエ、ぐっ……お、覚えていろ、過去人……」ガクッ

「藤原さーーん!!?」

「……あれっ? これって結構なピンチじゃないですか!? カチコミで一人はやられ次は大将戦っっ!!?」ガーーン

356 : 以下、名... - 2016/04/07 23:14:52.49 PVsz/5Kj0 106/113


ハルヒ「古泉くん!! 暴走車の特定ができ次第教えて頂戴!! カチコミよ!! いっぺんぶん殴ってやる!!!」

古泉「はい、全力で特定を急ぐつもりです。ねぇ森さん。森さん?」アレ?

朝倉「ちょっと、いい加減あなたたち家に帰りなさいよ、朝比奈先輩の安全も確認できたでしょ?」

ハルヒ「まだ有希が!!! 有希が見つかってない!!!」

朝倉「はいはい、長門さんならちゃんとウチに帰ってるから、あたしが保証するわ」

ハルヒ「え……てことは、朝倉さんが神隠しの実行犯!!?!?」ガーン!

朝倉「なんでよ!!? ほら! 頭まわってないじゃない!! さっさと帰って食べるか寝るかしなさいあなたたち!!」

ハルヒ「だってみくるちゃんにしろ有希にしろ朝倉さんが一緒にいるなり、居場所を知ってるなりしてるナリ!!!」ドーン

朝倉「落ち着いて落ち着いて、語尾が変。とにかく、探す側から探される側になる前に帰りなさい、古泉くんもね」

古泉「えぇ、それは十分に承知していますよ……朝田さん」キリッ

朝倉「……ダメだこりゃ。朝比奈先輩、この人たち―――」

朝比奈「うっ、うぅ……っ、うっ……うぅうぅうう……!!」ポロポロ

朝倉「あ、朝比奈先輩!!? な、泣かないでください、えーっと、その……!」アセアセ

ハルヒ「んん!? あーっ! 朝倉さんがみくるちゃん泣かしてるーっ!! 朝倉さんと言えどみくるちゃんに手をあげることは……許さんっ!!」ギッ!!

朝比奈「うわぁああぁぁあぁぁあ……うわぁあああぁぁぁぁああああああああん!!!!」

朝倉「あの、えっと……あさ、朝比奈先輩……」オロオロ

古泉「おや、森さん。こんにちは」

朝倉「だから古泉くん、そんなこと言ってないで―――」

「どうも」

朝倉「……あれ? も、森さん? なんで、って……まぁ、聞くまでないか」

「涼宮さんと古泉は私たちが保護します。そして暴走車の件もこちらで……ですので、そちらの」ボソッ

「朝比奈さんに関しましては、お任せしても?」ニコッ

朝比奈「うぅ、っ……ひっぐ……うっ、うっ……!」

朝倉「…………ええ、頼まれたことですから」ニコッ

「……では、失礼します」ニコッ

古泉「おや森さん? 一体どこへ?」ズルズル

「あなたが呼んだのでしょう古泉? どうせ次に起きた時記憶はないのでしょう? なら、とっておきを行いましょうか」ニコニコ

涼宮「あ、ちょっ! こら! 誰!? 今みくるちゃんが泣いてるんだったら慰めるのが団長の役目でしょうが!! あっ、離、して!」グググ

朝倉「…………さて、うるさいのがいなくなったところで」

朝比奈「うっ……うっ……」

朝倉「……お話しましょうか、朝比奈先輩」

357 : 以下、名... - 2016/04/07 23:18:06.15 PVsz/5Kj0 107/113


朝比奈「スン……っ、スン……」

朝倉「……落ち着きましたか?」

朝比奈「……うん、っ大丈、夫……あっ、朝倉さんこそ、怪我は……」

朝倉「ええ、何度も言うようですが全然ダイジョブですよ! 例え轢かれてても大丈夫なんですから!」フン!

朝比奈「そう……よか……いえ、よくないです。なにもかも、よくなかったですね……」

朝比奈「……ごめんなさい! 朝倉さん! こんな、訳を伏せたまま危険なことに巻き込んでしまって!!」

朝倉「そんなっ! 謝らないでください先輩っ! あたしは―――!」

朝比奈「『知っていた』んですよね……?」

朝倉「―――っ!!!」

朝倉「ちがっ、いえ、そうなんですけど! あたしは、今日何かが起こることを知っていただけで、具体的に何がどうとかは……その」

朝比奈「……ごめんなさい。わたしには冷静さが足りませんでした……どう考えたってわたしより朝倉さんや長門さん、古泉くんの方が色々知ってるのに」

朝比奈「こんな、騙すような真似……いや、騙されてもいないからわざわざわたしの我儘に乗っかってもらうような真似を……」

朝倉「違う!! 違います朝比奈先輩! あなたはそんな考えで動いてたんじゃない!!!」

朝比奈「我儘なのには変わりないんです。こんな……危険な……知らされてない方がおかしいような事……」

朝倉「っ、それはっ! 敵対組織の未来人が未来とのコンタクトを妨害して……あっ!」

朝比奈「…………そう、だったんですね。はは、やっぱり……わたしの知らない場所で、問題は発生したり、解決したり……」







朝比奈「…………っ、また、何も分からなかった……っ!!」ポロッ 







朝倉「…………」グッ!

朝比奈「うっ……うっ! うぅ!」

朝倉「………………朝比奈先輩は」

朝比奈「……う、っ……えっ?」

朝倉「失敗することが……間違えることが、怖いですか?」

358 : 以下、名... - 2016/04/07 23:19:49.30 PVsz/5Kj0 108/113

>>357 ミス

朝比奈「スン……っ、スン……」

朝倉「……落ち着きましたか?」

朝比奈「……うん、っ大丈、夫……あっ、朝倉さんこそ、怪我は……」

朝倉「ええ、何度も言うようですが全然ダイジョブですよ! 例え轢かれてても大丈夫なんですから!」

朝比奈「そう……よか……いえ、よくないです。なにもかも、よくなかったですね……」

朝比奈「……ごめんなさい! 朝倉さん! こんな、訳を伏せたまま危険なことに巻き込んでしまって!!」

朝倉「そんなっ! 謝らないでください先輩っ! あたしは―――!」

朝比奈「『知っていた』んですよね……?」

朝倉「―――っ!!!」

朝倉「ちがっ、いえ、そうなんですけど! あたしは、今日何かが起こることを知っていただけで、具体的に何がどうとかは……その」

朝比奈「……ごめんなさい。わたしには冷静さが足りませんでした……どう考えたってわたしより朝倉さんや長門さん、古泉くんの方が色々知ってるのに」

朝比奈「こんな、騙すような真似……いや、騙されてもいないからわざわざわたしの我儘に乗っかってもらうような真似を……」

朝倉「違う!! 違います朝比奈先輩! あなたはそんな考えで動いてたんじゃない!!!」

朝比奈「我儘なのには変わりないんです。こんな……危険な……知らされてない方がおかしいような事」

朝倉「っ、それはっ! 敵対組織の未来人が未来とのコンタクトを妨害して……あっ!」

朝比奈「…………そう、だったんですね。はは、やっぱり……わたしの知らない場所で、問題は発生したり、解決したり……」







朝比奈「…………っ、また、何も分からなかった……っ!!」ポロッ 








朝倉「…………」グッ!

朝比奈「うっ……うっ! うぅ!」

朝倉「………………朝比奈先輩は」

朝比奈「……う、っ……えっ?」

朝倉「失敗することが……間違えることが、怖いですか?」











『間違って当然なんだよ!!! どんな完璧な人間だって間違えたことがないわけねえだろ!!!』

『間違って当然!!? そんなのありえないわよ!!! だって!! だって……!!!!!』









『あたしはもうこれ以上……間違えるのが怖いもの…………』

359 : 以下、名... - 2016/04/07 23:24:16.35 PVsz/5Kj0 109/113


朝比奈「……どういう……?」

朝倉「あたしは怖かった。いや……今も本当は失敗を恐れている、と言ってもいいかもしれない」

朝比奈「……それは、わたしも……そう、かも……しれません」

朝倉「考えて行動するのって難しいですよね、ホント嫌になっちゃうくらい」

朝倉「だから、考えることをやめて、言われたことだけをやって、それで失敗しないなら、それでいっかって……思うようになったんです」

朝倉「でも、違った……違ったんですよね、それって」

朝比奈「……」

朝倉「受け売りなんですけどね、これ。ある人がですね言ってたんですよ」

朝倉「失敗を重ねて成功を探すんだ、って。失敗を成功に繋げればそれでいいって……」

朝倉「……まぁ、ぶっちゃけ綺麗事ですよね、それって。失敗は失敗であって、例えその後成功したとしても消せるものではないから」

朝倉「全部が全部、成功に繋がっているなら挑戦を諦める人はいなくて、後悔や挫折なんて言葉は生まれない」

朝倉「……だけど、そんな綺麗事に、あたしは救われた。なんでかは分からないです。言ってる人の持つ絶対的な説得力のせいかもしれません」

朝倉「……だから、だからですね。ええと、あたしが言いたいことはつまり……その」

朝比奈「……?」

朝倉「あたしじゃ……お手本はおろか、説得力も……頼りにもならないんですけど」












朝倉「一緒に、失敗したもの同士、頑張りませんか? なんて……受け売りを言っただけのあたしが言うのも調子がいんですけどね」エヘヘ











朝倉「分からないことや、迷ったことがあれば互いになんでも相談しあうというか……励まし合う?」

朝比奈「…………」

朝倉「……あ、あれ? あたし言ってること支離滅裂でした? やだっ、も、もっと考えて話せばよかったかしら……」

朝比奈「……あ˝ざぐら˝ざぁ˝ん!!!」ギュウウゥ!

朝倉「うぅっっ!!? っ、朝比奈先輩っ!? ちょ、痛つつつつつつつつつ!!!!!」ギギギ!!

360 : 以下、名... - 2016/04/07 23:30:35.35 PVsz/5Kj0 110/113


朝比奈「あの子……あの人は、わたしたちにとって、とても大切な人です。大切な人になります」

朝倉「ハカセくん……でしたっけ? いかにも賢そうな……」

朝比奈「あの子の命を守ることがわたしに伏せられて伝えられた指令だったと思います」

朝倉「そんなに重要なことなら言った方がいいんじゃ……」

朝比奈「っ……わたしの能力不足だと思います、すいません」ズーン

朝倉「あっ! いや、そんなつもりじゃなくてですね! その、未来の指示系統に違和と言うか、その!」

朝倉「決して!! 朝比奈さんの能力不足なんてことはありません!! それはあたしが保証できます!」

朝比奈「……ふふっ、大丈夫です。もう取り乱したり、冷静さを失ったりしません」

朝比奈「今のわたしの立ち位置が、下の下の、地面よりもっっっっと深いところだったとしても」

朝比奈「一緒に、失敗から頑張ってくれる人がいてくれますから」ニコッ!

朝倉「うっ……!」ドキッ!

朝倉「(す、すごい美少女だわ、改めて……これで堕ちない人はいないわよね)」

朝比奈「今は……今日みたいに、何も分からない、知らないままかもしれません。けど」

朝比奈「いつか、いえ、すぐにわたしも……みなさんと同じように……」

朝倉「……朝比奈さんならすぐに成功につなげられますよ。だって」

朝倉「今日の我儘は、既に自分で考えて行動した失敗を恐れない姿勢なんですから」

朝比奈「……あ、朝倉さん」ジーン

朝倉「……で、でも未来人の朝比奈さんが過去にダイレクトに干渉するのは、本気でまずいことなんじゃ」ボソボソ

朝比奈「え? あっ! そ、それは……そう、ですけど……おかしいんです、いつもなら禁則には制限が……!」

朝比奈「へっ? あっ? えっ!? きゃっ!? 嘘!! つ、通信が……ご、ごめんなさい朝倉さん! ちょっと席を外しますっ!!」タタッ!

朝倉「(……『向こう』でキョンくんが手を打ってくれたみたいね……ともかく)」

朝倉「…………ふぃー」クタッ

朝倉「……つっかれた……こんなに宇宙人と未来人が仲良くしていいものなのかしら……? でも」

朝倉「約束……守れたわよね? キョンくん。これで、借りは一つ返せたかしら?」

朝比奈「はい……はいぃ! はい、はい! 了解です、失礼しまっ、ひぃい!? す、すいません朝倉さんお待たせしましたぁ」

朝倉「…………未来はなんて言ってたんです?」ニッ

朝比奈「それは…………ふふっ! 『禁則事項』ですっ!」ニコッ!






  
                                                       朝比奈みくるの憂鬱 完

361 : 以下、名... - 2016/04/07 23:34:38.36 PVsz/5Kj0 111/113








































キョン「よう……親友」

「……………………」

周防「――――――ふ―――ふふ!」

362 : 以下、名... - 2016/04/07 23:36:12.01 PVsz/5Kj0 112/113

ここまでー! で、このスレは終わりですー
レスどうも! 励みになりました!!
次スレ立てたら誘導します! ではっ!

401 : 以下、名... - 2016/05/08 21:38:05.43 YftqaD2k0 113/113


ハルヒ「キョンTUEEEEEEEEEE!!!!!!!!!!」 キョン「陰謀だろうな」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1462708290/


次スレ立てましたー。よろしくお願いしますーー。

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