1 : ブラッキー好き - 2014/08/09 23:33:35.08 ovrGUfTeO 1/39

穂村「ん?なんじゃあ?」

九兵衞「わしと契約して…野菜を買うてくだせえ!」

穂村「邪魔じゃ!」

九兵衞「お安くしときますからあ…」


元スレ
九兵衞「わしと…契約してくだせえ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1407594815/

2 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/09 23:40:59.68 nPrDYuJlO 2/39

穂村「おい!汚ねえ手で触るな!無礼者が!」

ドガッ!

九兵衞「い、いてえ!」

穂村「百姓の分際で…わしの袖を汚しおったな…?わしが誰か、心得てのことか!」

シャキン!

5 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/09 23:48:23.21 nPrDYuJlO 3/39

九兵衞「ひっ!お許しくだせえ!」

穂村「わしはなあ…鹿目公康(かのめ きみやす)様のお抱え自警団総長、穂村十蔵(ほむら じゅうぞう)!」

穂村「見窄らしい百姓めが!今すぐわしの前から消え失せい!」

6 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/09 23:57:56.27 nPrDYuJlO 4/39

九兵衞「は、腹が減って…もう…歩けねえです!」

穂村「ほう…久しく喰っておらんのか?」

九兵衞「へい…」

9 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 00:02:36.85 uY2CAxHXO 5/39

穂村「その野菜を喰えばよかろう?」

九兵衞「これは…喰えねえです。わしの娘が…病で伏せっておりまして…この野菜を売って…薬を…!」

穂村「薬を買うゼニが無いのだな?」

九兵衞「へい…。わしは死んでもええ…娘だけは…」

10 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 00:10:58.91 uY2CAxHXO 6/39

穂村「気に入ったぞ!」

九兵衞「?」

穂村「籠を降ろして、野菜を見せてみい。わしが買うてやるぞ。」

九兵衞「ほ、本当ですけえ!?ありがとうごぜえますう!!」

11 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 00:19:34.77 uY2CAxHXO 7/39

ドサッ!

穂村「ほお、ええ野菜じゃのお。」

九兵衞「へえ!昨日採ったばかりで!」

穂村「よし、全部もらおうか。」

九兵衞「おおお!ありがてえ!ありがてえ!」

穂村「籠ごといただくぞ。」

12 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 00:28:18.16 2vcQAXwbO 8/39

九兵衞「ほ、穂村様!ゼニは…」

穂村「何を言うか。わしが代金など、払うわけが無かろう。」

九兵衞「そ、そんな…!」

穂村「鹿目様に献上するのじゃ!ほほほほ!」

スタスタ

九兵衞「穂村さまあ!…待ってくだされ!」

13 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 00:33:28.63 2vcQAXwbO 9/39

九兵衞「あ…あ…」

ガクッ

九兵衞「もう…動けん…時子…すまねえ…」

九兵衞「…」

三木「いかがした!大丈夫か!」

九兵衛「う…?」

三木「顔色が悪い…起きれるか?」

14 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 00:37:08.54 2vcQAXwbO 10/39

九兵衞「腹が…減って…病気の…娘が…」

三木「む…仕方ない。そなたの家へ行こう。ここから近いのか?」

九兵衞「へい…そこに…」

15 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 00:40:08.47 2vcQAXwbO 11/39

…………


九兵衞「…かたじけねえ…。」

三木「だいぶ具合も治ったようだな。」

九兵衞「こんな汚い百姓めを…救っていただけるとは…」

九兵衞「そ、それに…娘のために薬まで…!かたじけねえ!!」

16 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 00:44:17.68 2vcQAXwbO 12/39

三木「身分なぞ関係ない。そなたとその娘は死にそうであった。だから助けた。それだけの話よ。」

九兵衞「なんと…素晴らしいお方じゃ…。」

九兵衞「お侍さんや、せめてお名前をお教えくだされ…」

三木「私は佐谷加藩士、三木実盛(みき さねもり)。」

17 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 00:49:10.66 2vcQAXwbO 13/39

三木「そしてついに…この藩にいらっしゃるということを突き止めたのだ。」

九兵衞「巴様…!ぞ、存じ上げておりまする!」

三木「なにっ!本当か!?」

九兵衞「し、しかし…」

三木「居場所を知っておるのか!」

九兵衞「巴様は…晒し首に…」

18 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 00:55:39.06 2vcQAXwbO 14/39

三木「な…なんとっ!どういうことだ!!」

九兵衞「五日ほど前にごぜえます…。異端流派の後継者だと…お殿様に…。」

三木「…切腹…か?」

九兵衞「へい…そのようでごぜえます。」

三木「…なんということ!」

ドタッ

九兵衞「み、三木様!」

19 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 01:01:56.02 2vcQAXwbO 15/39

三木「私の6年間は…無駄であったのか…。」

九兵衞「ここのお殿様は…ひでえお方です…。」

九兵衞「民は皆、重税に悩まされております…。」

三木「そうであったか…!」

三木「許さぬ…許さぬぞ…!民をないがしろにし、美しき武芸を潰す暴君め!」

20 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 01:05:07.93 2vcQAXwbO 16/39

九兵衞「三木様…、あなた様に、お見せしたい物がごぜえます。」

三木「?」

九兵衞「わしの先祖代々伝えられてきた…不思議な石にごぜえます。」

サッ

三木「光っておるな…初めて見る…。」

21 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 01:10:35.02 2vcQAXwbO 17/39

九兵衞「蒼琉璽廻夢(そうるじえむ)と呼ばれておるそうです…。でも、わしには価値が分からんのです…」

九兵衞「これを…受け取ってくだされ!」

三木「しかし…家宝であろう?」

九兵衞「三木様は…わしと娘の命を救ってくださった…!どうか!お受け取りくだされ!どうか!」

三木「そこまで言うのなら…いただこう。」

九兵衞「ありがとうごぜえます!」

22 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 01:15:37.86 2vcQAXwbO 18/39

…………

三木「さて、鹿目公康とやらに一泡吹かせたいところだが…。」

三木「私一人では何とも…はて?」

サッ

三木「石が熱くなっている…光も増したようだ…」

三木「む?何やら石に模様が…?」

23 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 01:20:41.16 2vcQAXwbO 19/39

ピカアアアアア

三木「ぬ!何だ!?」

キラキラ…

三木「体が…輝いて…」

三木「む?妙な気分だ。力が満ちてくる!!」

24 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 01:28:26.91 2vcQAXwbO 20/39

三木「ふん!!」

バキッ!

三木「なんと!拳の一突きで木が折れるとは!!」

三木「ダッ!」

ズン!

三木「なんと!足の一踏みで地面に穴が!!」

25 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 01:34:13.41 2vcQAXwbO 21/39

三木「これならば!鹿目公康なぞ…一捻りだ!!ふははは!!」

ドドドドド!

ー円華城(まどかじょう)ー

鹿目「ぐへへへへへへ!今日の飯も美味えのお!」

くっちゃくっちゃ!

穂村「上様!昨日取れた、新鮮な野菜にございます!」

26 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 01:38:19.85 2vcQAXwbO 22/39

鹿目「ぐへへへへへへ!ええぞ!民は苦しみ働き、わしのために生きる!なんと快いこと!!」

穂村「まったく!その通りにございます!」

鹿目「ぐへへへへへへ!」

「上様あああ!」

ドタドタ

鹿目「なんじゃ!騒々しい!」

27 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 01:42:38.70 2vcQAXwbO 23/39

「城内に…曲者が!」

穂村「なんじゃと!?」

「じ、城門を破って!こちらへ向かっております!」

穂村「城門を破ってだとっ!?わしをからかっておるのかっ!」

バリバリ!

穂村「な!?」

グシャア

「ごふ…」

28 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 01:48:58.58 2vcQAXwbO 24/39

穂村「か、壁からだと…?ぐ、ぬ」

バタッ

鹿目「な、なんじゃおぬし!?何者じゃ!?」

三木「私は…佐谷加藩士、三木実盛!」

三木「苦しむ民に代わり…そなたを滅する!鹿目公康!」

鹿目「畜生め!殺苦楽!!」

ストッ!

殺苦楽「は…上様。」

29 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 01:55:07.31 2vcQAXwbO 25/39

鹿目「こやつを止めるのじゃ!」

殺苦楽「…はっ。」

ダダダッ!

三木「…」

殺苦楽「…」

三木「何者だ…?」

殺苦楽「兇虎流(きょうこりゅう)…斬鬼の殺苦楽(さくら)…。」

三木「忍びの者か…面白い!」

30 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 01:58:50.89 2vcQAXwbO 26/39

…………


ー天守閣ー

鹿目「ふう!ふう!疲れたわい!」

鹿目「あやつ…殺苦楽でも止められぬか…?」

鹿目「仕方あるまい…!」

ガラッ!

三木「鹿目!もう逃げられまい!」

31 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 02:03:24.76 2vcQAXwbO 27/39

鹿目「ふん!やはり来おったか!」

三木「観念するがよい!」

グオオオオ!

三木「な、何だ!今の音は!」

鹿目「ぐふ…ぐふふ…」

鹿目「ぐへへへへへへへへへへ!!」

三木「!?」

32 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 02:06:55.02 2vcQAXwbO 28/39

鹿目「わしにはのお!とてつもなくでかい、ある計画があったのよ!!」

三木「計画…?」

鹿目「その名も!『江戸壊滅計画』!!」

三木「江戸…壊滅だとっ!?」

33 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 02:11:31.81 2vcQAXwbO 29/39

鹿目「わしは…この国に残る太古の技術、『??畏怖死威怒(ぐりいふしいど)』を見つけ出した!」

鹿目「その技術を使い…わしは怪物を作り上げた!」

三木「怪物!?」

鹿目「その怪物を江戸に解き放つ!江戸城は破壊され、城下は燃やし尽くされる!!」

34 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 02:15:29.82 2vcQAXwbO 30/39

三木「それが…『江戸壊滅計画』か!外道め!」

鹿目「そなたがわしを殺すというのなら…今、この怪物を解き放つ!ぐへへへへへへ!」

ガシャーーーン!!

ぐおおおおおおおおおおん!!

三木「ぬわあっ!なんという大きさ!形容しがたい異形の怪物!なんと恐ろしい!」

36 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 02:18:22.26 2vcQAXwbO 31/39

鹿目「ぐへへへへへへ!ぐへへへへへへ!」

ぐおおおおん!!

バキイッ!

三木「か、鹿目の体が真っ二つに!!」

三木「あの触手…!逃げなくては!」

38 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 02:23:28.00 2vcQAXwbO 32/39

バリイ!!

三木「ぐわっ!危うく首が飛ぶところであった!」

ドスン!ドスン!

ぐおおおおん!!

三木「こいつ!城を壊すつもりか!?」

バリイ!

三木「危ないっ!」

39 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 02:26:22.76 2vcQAXwbO 33/39

ゴゴゴゴゴ!

三木「床が…崩れる!」

サッ!

三木「もう道は無い!せめてもの抵抗だ!この光る石を投げつけてくれる!」

ゴゴゴゴゴ!

三木「南無三!!でええええい!!」

シュッ!

40 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 02:30:54.32 2vcQAXwbO 34/39

ピカアアアアア!!

ギャアアアアアアアアア!!

三木「き、効いたのか…?」

ガラガラガラ!

三木「ゆ、床が…!うわあああああ!!!」

ガシャーーーン!
ドドドドド!

41 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 02:33:59.31 2vcQAXwbO 35/39

…………


三木「…ぐ…」

三木「腕が…折れたようだ…。だが、奇跡的に…生きている!」

ムクッ

三木「城が…瓦礫と化している。」

三木「怪物は…消えたようだな。」

九兵衞「やりましたな…三木殿。」

三木「!?そなたは先程の…。」

42 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 02:39:02.43 2vcQAXwbO 36/39

九兵衞「とにかく、あなたは江戸を救った。未来は保たれました。」

三木「…未来?」

九兵衞「私は、元の世界に戻るといたしましょう。その石は、永久にあなたの物です…。」

三木「な…いつの間に?腕も治っている!」

43 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 02:43:26.02 2vcQAXwbO 37/39

九兵衞「では…ご機嫌よう…。」

スウ

三木「消えた…?」

三木「私は…何かとんでもないことをしたのだろうか…。」

チラッ

三木「この石で…私はいつでも力を手に入れることが出来る…。」

44 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 02:48:46.23 2vcQAXwbO 38/39

三木「だが…私はこの力を、人々のために使おう!鹿目公康のようにはならぬ!!」

農民「い…家が、下敷きに…」

三木「待っておれ!今、手伝いに行くぞ!」

………


それから彼が、力を使って人々を助け、英雄になったのか…
それとも誘惑に負け、人々を服従させる手段として使い、暴君となったのか…

それは定かではない。



45 : ◆vsLe.HQcMU - 2014/08/10 02:52:38.04 2vcQAXwbO 39/39

こんな夜中に変なSSに付き合っていただき、ありがとうございました。

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