結衣(京子は私のことどんな風に見てるんだろう? 友達以上ではあるだろうけれど……)
結衣(女同士なんて気持ち悪いとか思ってるかも知れないし)
結衣(振られたときのことを考えるだけで怖くなってくる。友達としてもうまく行かなくなっちゃうかも)
結衣(だめだ、だめだ。告白する前から弱気になっちゃ)
結衣(善は急げだ。今日の帰りに屋上に呼びだそう)
ちなつ「結衣先輩、どうしました? さっきからぼーっとしてますけど」
結衣「あ、ごめん。ちょっと考え事してて……」
京子「朝からエッチな妄想とはやるな、結衣!」
結衣「そんなことするのは京子ぐらいだろ」
京子「いやー、男子の大半はすると思いますよ?」
結衣「わざわざ、そんなツッコミを入れなくていいから」
元スレ
結衣「京子に告白しよう」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1313936564/
京子「んじゃ、放課後ねー」
あかり「うん!」
ちなつ「ゆ、結衣先輩!」
結衣「なに、ちなつちゃん?」
ちなつ「折り入ってお話したいことが……」
京子「結衣なんかじゃなくて私に相談したほうがいいよ?」
ちなつ「京子先輩はさっさと教室に行ってください!」
京子「ひどっ!」
結衣「まぁまだ時間もあるし、いいよ。ほら、京子は行った行った」
京子「結衣まで裏切りおって、今日の部活で後悔させてやるんだから!」
結衣「はいはい……行ったか。ちなつちゃん、話しって?」
ちなつ「廊下じゃ人目につきますし、近くの空き教室にでも」
結衣「分かった」
ちなつ「結衣先輩」
結衣「ん?」
ちなつ「わ、私……えっと、その」
結衣「少し肩の力抜きなよ。別に逃げも隠れもしないからさ」
ちなつ「は、はぃいっ!」
ちなつ「私っ、結衣先輩のことが好きです! つ、付き合ってください!」
結衣「!」
ちなつ「…………」
結衣「…………」
ちなつ「先輩の、答えを聞かせてください」
結衣「私は……」
結衣「ごめん、ちなつちゃんの気持ちには応えてあげられないよ」
ちなつ「っ!」
ちなつ「うっ、ううっ……うわああああんっ!」
ちなつ「なんで、なんでぇ! わたしは結衣先輩のことが好きで好きでしょうがないのにぃっ!」
結衣「本当に、ごめん」
ちなつ「私に悪い所があったら直します……。結衣先輩がして欲しいこと何でもします……だから、だから!」
結衣「やめて、ちなつちゃん。私は今のちなつちゃんが好きだ、だからそのままで居て欲しい」
ちなつ「じゃあ、何で……だめなんですか?」
ちなつ「もしかして他に好きな人がいるんですか?」
結衣「そ、それは……」
結衣(こんな状況で言えないよ……)
結衣「別に、特別に好きな人がいるわけじゃないよ」
ちなつ「!」
ちなつ「本当ですか?」
結衣「う、うん」
ちなつ「それなら、何で私じゃだめなんですか……」
結衣「あ、えっとね……私、同性で付き合うとか、そういうのよく分からないから」
ちなつ「あ、そ、そうですよね。女の子同士でなんておかしいですよね!」
ちなつ「そっかぁ、それなら仕方ないですよね……ごめんなさい、気持ち悪いですよね」
結衣「そ、そんなことはないよ。私こそ、ごめんね」
キンコーンカーンコーン
ちなつ「予鈴、なっちゃいましたね。私、教室に行ってきます」
結衣「うん」
結衣「…………」
結衣(嘘、ついちゃった。しかも二つも)
あかり「あれ、遅かったねちなつちゃん。おトイレ?」
ちなつ「…………」
あかり「ちなつちゃん、顔真っ赤だよ……何かあったの?」
ちなつ「ううん、別に何もないよ」
あかり「本当? これ、使って!」
ちなつ「何コレ」
あかり「冷えピタだよっ」
ちなつ「いやいや私が言いたいのはそこじゃなくて。何で冷えピタなんて持ってるの」
あかり「だって夏って暑いんだもん。そんな時に冷えピタがあればひんやりしてて快適だよっ!」
ちなつ「ぷっ……」
あかり「あ、今ちなつちゃん笑ったよね。あかりのことバカにした感じで」
ちなつ「笑ってない」
あかり「笑ったもん!」
ちなつ「笑ってないって」
ちなつ「まぁせっかくだし……一応使ってあげる」
昼休み――
結衣(一つ目の嘘。好きな人はいない)
結衣(二つ目の嘘。同性恋愛には興味ない)
結衣(最悪じゃん。これじゃあ京子に告白なんて出来ないよ……)
結衣「はぁ……どうしよ」
京子「なーにため息ついてんだよ結衣。あれか、あれの日なのか?」
結衣「人がため息ついてる所で下ネタ振るなよ……」
京子「えぇ? 私下ネタなんか振ってないけど。何を想像したのさ、いやらしい子!」
結衣「あぁ、もう!」
京子「おわっ、いきなり大声出すなって」
結衣「今日一人でご飯食べるから、じゃ」
京子「おい、待てって京子……って速ッ! 陸上部に勧誘されるだけのことはあるな」
部室――
結衣「誰もいないみだいだし、今日はここでご飯食べよう」
結衣「はぁ……何であんな嘘ついちゃったんだろ」
結衣「どうにかしないと、京子に一生告白できないよ」
部屋の外から、小さな物音が聞こえた。
結衣「誰!?」
結衣(しまった、誰か来てたのか? ちなつちゃんだったらどうしよう)
結衣はすぐさま立ち上がり扉を開けた。するとそこにいたのは……。
結衣「あかり……」
あかり「ゆ、結衣ちゃん! ごめんね別に盗み聞きなんてするつもりは……」
結衣「聞いちゃったか」
あかり「うん……結衣ちゃんは京子ちゃんのこと好きなんだね、友達以上の意味で」
結衣「言葉に出されるとすごく恥ずかしいな」
あかり「あかりでよければ、お話し聞くよ。今の結衣ちゃん、すごくつらそう」
あかり「そんな結衣ちゃんの顔を見てると、あかりもつらくなっちゃう」
結衣「あかり……」
あかり「そっか、ちなつちゃんが……」
結衣「勇気を出して告白してくれたのに、私は嘘をついて逃げたんだ」
あかり「でも結衣ちゃんが正直に答えてたら、ちなつちゃんもっとつらくなったかもしれないよ」
結衣「それは分かってる。でもそれを理解した上で、正直に話すべきだったんだよ」
結衣「ちなつちゃんのことを本当に思うなら、さ」
あかり「…………」
あかり「結衣ちゃん」
結衣「なに?」
あかり「謝ろう、ちなつちゃんに」
結衣「でも」
あかり「どんなウソでも、いつか絶対バレちゃうよ」
あかり「それならいっそ、自分でバらしちゃったほうがいいんじゃないかなぁ」
結衣「……うん」
あかり「なんとか間に合ったー」
ちなつ「あかりちゃん、どこ行ってたの?」
あかり「部室だよー」
ちなつ「部室? いったい何してたの?」
あかり「えっとね、ご飯食べてた」
ちなつ「? ふーん……」
ちなつ(私はまだ諦めてませんからね、結衣先輩)
ちなつ(好きな人がいないなら、まだチャンスはある!)
ちなつ(たとえ結衣先輩が同性愛に興味なくても……諦めないんだから。頑張れチーナ!)
放課後――
ちなつ「あかりちゃん」
あかり「はーい?」
ちなつ「ちょっと相談したいことがあるんだけど、今日いい?」
あかり「いいけど……」
あかり(たぶん結衣ちゃんのことだよね)
ちなつ「よかった。それじゃ喫茶店にでも行こっ」
あかり「うん。あ、京子ちゃんたちに連絡入れておくね」
京子「なんですとおおおおお!」
結衣「うわぁっ! どうしたんだよ京子」
京子「あかりとちなつちゃんが今日部活休むってさ!」
結衣「えぇ!?」
京子「何で結衣までそんなに驚くのさ……」
結衣「ごめんごめん」
結衣(今日ちなつちゃんに謝ろうと思ったのに……)
京子「ちなつちゃんが居ないのは残念だけど、結衣とふたりきりなんて久しぶりだし、それもありかな」
結衣(! た、確かに。告白する絶好の機会じゃないか)
結衣(でもダメだよね。まずはちなつちゃんに謝るのが先だ)
京子「うーん……ふたりきりなんて久しぶりだから、何をするか思いつかん」
結衣「そうだな。あかりとちなつちゃんが居ないとこんなに静かになるんだ」
京子「心配ご無用! この私が三人分騒いでしんぜよう!」
京子「ちなつちゃん可愛い、頬ずりしたい!」
京子「きゃー、京子先輩ステキですぅ! もっと頬ずりしてくださぁい!」
結衣「ちなつちゃんはそんなこと言わない」
京子「えー」
結衣「てかあかりはどうしたのさ」
京子「え、いたよ」
結衣「どこに」
京子「ちなつちゃんの次の行あたりでアッカリーンしてる」
結衣「あかり、不憫な子……」
京子「ちなつちゃんは結衣にべったりだもんなぁ」
京子「結衣先輩、キスしてくださぁい! ……なんちゃっ」
結衣「やめろ!」
京子「っ!?」
結衣「あ、ごめん……」
京子「心臓止まったぞ」
結衣「ごめん……」
京子(いや、ここツッコミを入れるところなんだけど?)
京子「何かあったのか、今朝」
結衣「何で今朝?」
京子「ちなつちゃんに呼び出された後から、なんか変だもん結衣」
結衣「気づいてたんだ」
京子「まぁ、長い付き合いだしな。んで、何があったんだよ」
結衣「今は、話せない」
京子「…………」
結衣「ごめん、でも絶対に話すから」
京子「そっか。んじゃ、気長に待つとしよう」
結衣「……ありがと」
結衣「結局だらだらしてるだけだったな」
京子「これぞごらく部。うーん、お腹へったなぁ。ラムレーズン食べたい」
結衣「しかたない、帰りに買ってあげるよ」
京子「ははーっ! ありがたき幸せでございます、結衣様!」
結衣「はいはい」
京子「あ」
結衣「ん?」
京子「今日の私、三人分だからみっつね!」
結衣「調子にのるな!」ボカッボカッボカッ
京子「パンチは三人分もいらないよ……」
あかり「京子ちゃん、いきなり大声だすから驚いたよぉ」
あかり「あかりはともかくちなつちゃんが来ないってどういうことだあああああああっ! だってさ」
あかり「ひどいよねぇ、あかりはともかくなんて!」
ちなつ「なんというか、京子先輩らしいね」
あかり「むー、ちなつちゃんまでひどいよっ」
ちなつ「あはは……この店でいい?」
あかり「いいよぉ」
ちなつ「抹茶にあんみつ……うーん、最高!」
あかり「うんうん、ここのあんみつはおいしいよね」
ちなつ「あれ、あかりちゃんもここ来たことあるの?」
あかり「前に池田先輩と来たの」
ちなつ「へぇ……」
あかり「ちなつちゃん、今日の相談っていうのはなにかな?」
ちなつ「えっとね、実は今日の朝――」
あかり「そっかぁ、結衣ちゃんに……」
あかり(聞いたとおりだね)
ちなつ「でもさ、結衣先輩に好きな子がいないってことは、まだチャンスあるよね?」
あかり(結衣ちゃん、京子ちゃんが好きなんだよぉおおおっ!)
ちなつ「女の子同士の恋愛には興味ないって言われたけど……なんとかなるよね?」
あかり(結衣ちゃん、京子ちゃんに興味しんしんだよぉおおおっ!)
ちなつ「あのー……聞いてる、あかりちゃん?」
あかり「う、うんっ」
ちなつ「それならいいんだけど」
ちなつ「あかりちゃんから見てさ、結衣先輩は私に振り向いてくれると思う?」
あかり「え、えぇっと……」
あかり(正直に言ったら結衣ちゃんが困るし、でもウソついたら……)
あかり(ふぇえええんっ! あかりはどうすればいいのぉおおおっ!)
ちなつ「答えてくれないってことは、無理だと思ってるから?」
あかり「そ、そういうわけじゃないよ」
ちなつ「じゃあ、答えてよ」
あかり「ご、ご、ご……」
ちなつ「ご?」
あかり「ごめんなさぁあああいっ!」
ちなつ「ちょっ、あかりちゃん!? 待って、逃げないで!」
ちなつ「…………」
ちなつ「やっぱり、無理なのかな」
結衣「うーん、眠れない……」
結衣(明日謝るって決めたけど、もしちなつちゃんが許してくれなかったら……)
結衣(ちなつちゃんが京子をねたむかもしれない)
結衣(ちなつちゃんが学校にこなくなるかもしれない)
結衣(私がウソをついたことが知られて、いろんな人に嫌われるかもしれない)
結衣(少なくとも、今まで通りの日常を送るのは無理になるよね……)
結衣(そんな危険を冒してまで、正直に話すべきなのかな)
結衣(…………)
結衣(何を考えているんだ私は! あかりも言ってたじゃないか、ウソはいつかバレるって)
結衣(私がまいた種なんだ、ちゃんと蹴りをつけないと)
結衣(どうなるか分からなくて怖いけど……弱気になっちゃだめだ、私)
次の日――
イツモミラクルー イェイ! イツモミラクルーワオ!
ちなつ「ううーん……電話? こんな朝早くに一体……ゆ、結衣先輩!?」
結衣『ごめんね、こんな朝早く』
ちなつ「ぜ、全然オッケーです! こんな朝早くから先輩の声が聞けて最高ですっ!」
結衣『あ、ありがと。今日さ、早めに学校これるかな?』
結衣『話したいことがあるの』
ちなつ「!」
ちなつ(ま、まさか……実は結衣先輩が私のことを!? 昨日のは照れ隠し!?)
ちなつ「わ、分かりましたっ! 今から学校行きます!」
結衣『別にそんなに焦らなくても……。ちゃんと顔洗って、ご飯食べてからでいいから』
ちなつ「もう家を出ました!」
結衣『えぇ!? 私まだ家なんだけど』
ちなつ「先輩はどうぞゆっくり来てください!」
結衣『ちなつちゃんを待たせるわけには……。私もすぐ行くから、部室で待ってて』
ちなつ「はいっ!」
結衣(なんだかちなつちゃんが、とんでもない勘違いしてる気がするぞ)
結衣(急がないとな。朝ご飯は……うーん、食パンでもくわえていくか)
結衣「…………」
結衣(一人で登校なんて、初めてな気がする)
結衣(昔から隣には京子とあかりがいて……今はちなつちゃんもいる)
結衣(なんだかちょっと寂しいな)
ちなつ「結衣先輩!」
結衣「お待たせ、ちなつちゃん」
結衣「電話でも言ったけどさ、ちなつちゃんに大事な話があるんだ」
ちなつ「は、はいっ」
結衣(なにこの笑顔……絶対に勘違いしてるよ)
ちなつ「?」
結衣(うぅ、無垢な笑顔がいたい……でも、言わないとね)
結衣「私、昨日ちなつちゃんに……」
ちなつ「はい」
結衣「ちなつちゃんに、ウソをついた。本当にごめん!」
ちなつ「やっぱり!」
結衣「えっ」
ちなつ「昨日のは照れ隠しだったんですね」
結衣「は、はぁ?」
ちなつ「もう、とぼけないでくださいよぉ」
結衣「いや、別にとぼけてるわけじゃ……」
ちなつ「昨日私の告白を断ったのが、ウソなんですよね?」
ちなつ「そんなウソついちゃう先輩は可愛いですけど、もうやめてください」
ちなつ「昨日は本当に、ショックだったんですから……」
結衣(何だかどんどん言いづらい雰囲気に……な、流されるな)
結衣「違うんだ、ちなつちゃん」
ちなつ「?」
結衣「私がついたウソっていうのは……二つ」
結衣「一つ目、好きな人がいないってこと」
結衣「二つ目、同性愛に興味がないってこと」
ちなつ「それって、誰か好きな女の子がいるっていうことですか?」
結衣「うん」
ちなつ「結衣先輩の言い方的に、その相手は私じゃないんですよね?」
結衣「そう。私が好きなのは、京子だ」
ちなつ「……ッ!」
結衣「ごめん」
ちなつ「そっか。結衣先輩は、京子先輩が……」
結衣「待って、どこに行くの?」
ちなつ「結衣先輩には関係ないでしょう」
ちなつ「結衣先輩なんて……」
ちなつ「嘘つきな結衣先輩なんて、大嫌いですっ!」
結衣「……っ」
京子「部室に忘れ物したんだよなぁ……しかも一限の宿題、危ない危ない」
京子「あれ、誰かの足音が……あいたっ!」
ちなつ「きょ、京子先輩!?」
京子「ちなつちゃん? いきなり私の胸に飛び込んで来るなんて……大胆」
結衣「待って、ちなつちゃん!」
京子「あれ、結衣?」
ちなつ「…………」
京子「あ、ちなつちゃん!」
京子「……行っちゃった。でも結衣の足なら追いつくと思うぞ?」
結衣「いや、やめとく」
結衣(嘘をついてちなつちゃんを傷つけた私に、追う資格なんてないさ)
京子「さて、そろそろ話してもらえるのかな」
京子「結衣好き好き人間のちなつちゃんが結衣から逃げるだなんて……一体何があったのさ」
結衣「私、ちなつちゃんに嘘をついた」
京子「嘘ってどんな?」
結衣(これを話すってことはつまり……私が京子のこと好きって分かっちゃうんだよな)
結衣(でも、仕方ない。これ以上隠し通すなんて無理だ)
結衣「それは……」
京子「そっか。結衣は私のこと、好きなんだ」
結衣「うん。大好き」
京子「私も結衣のこと、大好きだよ」
結衣「それはどういう意味で?」
京子「結衣の私に対する好きと、同じ意味で」
結衣「!」
京子「でもね、今は結衣と付き合うことはできないよ」
京子「結衣も大事だけど、ちなつちゃんも大事だからさ」
ちなつ(やっぱり、もう竹も短冊も残ってないか……)
ちなつ(うれしかったな、結衣先輩にキスしてもらえて。おでこだけど)
ちなつ(はぁ……あの時は楽しかったな。告白なんてしなければよかった)
ちなつ(しなければ、結衣先輩が私のことを好きかもしれないって思い続けられたのに)
ちなつ(…………)
結衣「七夕から一週間も経てば、竹も短冊もなくなっちゃうか」
ちなつ「ゆ、結衣先輩!?」
結衣「どうしたの、そんなに驚いて」
ちなつ「な、なんでここに……っていうか授業始まってますよ!?」
結衣「授業よりちなつちゃんの方が大事」
ちなつ「それも嘘でしょう、どうせ」
結衣「嘘じゃない」
ちなつ「じゃあ、何で学校で追いかけてきてくれなかったんですか!」
結衣「嘘でちなつちゃんを傷つけた私に、ちなつちゃんを追う資格なんてないと思ったから」
結衣「でも、資格なんていらなかったんだ。いや、私は持ってたんだ」
結衣「ちなつちゃんの友達っていう資格」
ちなつ「やめて。優しく、優しくしないでください!」
ちなつ「中途半端な優しさなんていりません! 苦しいだけですよ!」
結衣「ちなつちゃん……」
ゆっくりとちなつに歩み寄る結衣。
ちなつ「近づかないで、ください……」
その言葉には従わず、ちなつに近づいていく結衣。
ちなつ「京子先輩が好きなんでしょう、なら早く京子先輩のところに行ってください!」
結衣「…………」
ちなつ「こないで、こないでくださいっ!」
ちなつがそう叫んだ時、結衣はちなつのすぐそばまで近づいていた。
そして無言でちなつの身体を抱きしめる。
ちなつ「なっ!?」
結衣「…………」
ちなつ「なんで、なんで……うぅっ、こんなことされたら私、期待しちゃうじゃないですか……」
ちなつ「うっ、ううっ……うわぁぁああああああんっ!」
ちなつ「前からなんとなく分かってたんです。結衣先輩が京子先輩のことを好きなの」
ちなつ「でも私は結衣先輩が好きで好きでしょうがなくて……僅かな可能性に賭けて告白をしました」
ちなつ「賭けは大失敗ですね……結衣先輩と京子先輩は恋人になっちゃうし」
結衣「ちなつちゃん……」
ちなつ「そんな顔しないでください、結衣先輩」
ちなつはいきなり右手を伸ばし、結衣の胸を触る。
結衣「きゃっ!」
胸を触られて混乱している結衣の唇に、ちなつは自身の唇をそっと重ねる。
結衣「んんっ……!?」
ちなつ「ん……ぷはぁっ」
結衣「はぁ、はぁ……うぅ、キスしたことないのに」
ちなつ「今回の件はこれで許してあげます」
ちなつ「私、結構諦め悪いですからね? 絶対に京子先輩から結衣先輩を奪い取って見せますから!」
結衣「はは、お手柔らかにね……」
結衣(大事なものを失ったけど、ちなつちゃんはもっと大事だし……まぁ、いいか)
結衣「さて、学校に戻ろうか」
ちなつ「絶対1時間目終わってますよね……ごめんなさい」
結衣「大丈夫、京子に絶対にノート取れって言っておいたから」
ちなつ「まったくアテにならない気がします……」
結衣「ちなつちゃんのためにがんばるぞーって張り切ってたよ」
ちなつ「はぁ……」
京子「Zzz……」
先生「歳納はまた寝てるのか……ったく、爆発させんぞ」
あかり「あ、ちなつちゃんに結衣ちゃん! 遅刻だよー!」
結衣「はは、重役出勤にもほどがあるよね」
ちなつ「あかりちゃん……」
あかり「ちなつちゃん、昨日は逃げてごめんなさいっ! でもあかり……」
ちなつ「結衣先輩に聞いたよ。あの時あかりちゃんは全部知ってたんだね……だから仕方ないよ」
あかり「ちなつちゃん……」
ちなつ「とりあえず、お金ちょうだい?」
あかり「カ、カツアゲぇえええっ!」
結衣「ちょ、ちょっとちなつちゃん」
ちなつ「忘れたの、あかりちゃん。喫茶店でお金払わずに逃げたでしょ!」
結衣「そういうことか」
あかり「あ……」
ちなつ「まったく、私が立て替えてあげたんだからね」
あかり「ご、ごめんねー」
結衣「じゃ、私も教室行くから。部活でね」
ちなつ「は、はいっ!」
あかり「ばいばーい」
ちなつ「さて、2時間目の準備を……」
ちなつ「…………」
あかり「どうしたの?」
ちなつ「かばん持って来てなかった!」
あかり「えぇえええっ!?」
ちなつ「朝に結衣先輩に呼ばれて、うれしさのあまり何も持って来てなかったんだった!」
京子「お、結衣。どうだった?」
結衣「なんとか……って感じかな」
綾乃「船見さん、1時間目まるまるサボるなんて……罰金バッキンガムよ!」
結衣「プッ!」
千歳「まぁまぁ、綾乃ちゃん。きっと何か事情があるんよ」
京子「そういうこと。許してくれよぉ、綾乃」
綾乃「し、仕方ないわね。今日だけよ!」
千歳「!」スッ…
京子『も、もう許してっ……くれよぉ! あぁんっ!』
綾乃『仕方ないわねぇ……今日だけよ? 明日はもっと激しくしちゃうんだから』
綾乃「攻守逆転もええなぁ……」ブフーッ
結衣「千歳、鼻血鼻血!」
放課後――
京子「さーて、やっと授業が終わったぞ!」
結衣「ほとんど寝てただろ……しかも1時間目もまったくノート取ってないし」
京子「ごめんごめん。それじゃ、部活行くか」
結衣「部活の前に、屋上に来てくれないか」
京子「! わかった」
結衣(相手の気持ちは分かってると言っても、緊張するなぁ……)
結衣「京子、私は……」
京子「うん」
結衣「私は、京子が大好きだ。私の恋人になってくれないか!」
京子「…………」
結衣「京子?」
京子「ごめん、緊張しちゃって」
結衣「お、驚かさないでよ……」
京子「私も結衣のこと……大好きだよ」
結衣「京子……目、閉じて」
京子「キ、キスするのか!?」
結衣「そうだけど、ってか少しは空気読んだ発言しようよ……」
京子「いやー、実は私キスしたことないんだよね。結衣はあるの?」
結衣「えっと、その、まぁ……ね」
結衣(今日奪われましたよ、えぇ)
京子「そっかー、なんか負けた気がして悔しいなぁ」
京子「まー、それなら経験ある結衣に身体を委ねるとしようではないか!」
結衣(さっきまでのいい雰囲気はいったいどこへ……ま、京子らしいっちゃらしいんだけどさ)
結衣は左腕を京子の背中に回して、右手を京子の後頭部に回す。
そして目を細めながらゆっくりと顔を近づけ、二人の唇が触れ合う。
結衣「んっ……!」
京子「んん……」
結衣(京子とキス、しちゃった。京子の唇……柔らかくて気持ちいい)
結衣(もっと、もっとキスしたい)
数十秒ほど唇を重ねていたところで、いきなり京子が唇を放した。
結衣「えっ?」
京子「ゼーハー、ゼーハー……」
結衣「な、なんでそんなに息が荒いんだ?」
京子「口塞がってたら呼吸できないじゃん!」
結衣「いや、鼻があるだろ」
京子「そういえばそうだった。もっと早く言ってよ」
結衣「京子はムードってものを学んだほうがいいよ……」
京子「よし、気を取り直してもう一回だ!」
結衣「次はちゃんと鼻で息しなよ?」
京子「うんうんうんうん雲南市!」
結衣「…………おい」
京子「てへっ」
結衣「あー、もう!」
ムードを学べと言った矢先にオヤジギャグをかます京子にしびれを切らしたのか、
京子の唇を思いっきり自分の唇で塞ぐ。
そして舌を京子の口内へ強引にねじ込み、京子の舌と絡めた。
京子「んうっ! ううっ……んっ!」
結衣「んっ……んぁっ……」
結衣(京子が、京子が悪いんだからな)
舌と舌が絡みあうことによって、つばの混じり合う淫靡な音が響き渡る。
京子「ん……はぁっ、はぁっ! す、すごいキスだな……ディープってやつだっけ?」
結衣「んんっ……そ、そうだよ」
京子「いったいどんだけキスしてきたんだ、結衣は」
結衣「ディープなんてこれが初めてだよ……」
京子「初めてでこれとかいやらしいなぁ結衣は」
結衣「む……」
京子「でも私もいやらしいかもなー。結衣とキスしてる間、ドキドキが収まらなかったもん」
結衣「私もだよ、京子」
京子「結衣……あのさ、もう一回」
結衣「うん、そうだね……」
ちなつ「探しましたよ、結衣先輩!」
京子「ち、ちなつちゃん!」
結衣「な、なんでここに……?」
ちなつ「何時迄経っても部室に来ないからですよ……学校中を探しまわったんですからね」
京子「ちなつちゃんに探してもらえるなんて、なんて私は幸せものなんだ!」
ちなつ「私は結衣先輩しか探してませんよ」
京子「うぅ……ひどいなぁ」
ちなつ「一応、二人の交際を認めましたけど……まだ結衣先輩のことは諦めてませんからね!」
結衣「あはは……」
京子「いくらちなつちゃんでも、結衣は渡せませんなぁ」
結衣「今日はこのまま、帰っちゃう?」
京子「そだね」
ちなつ「行きましょ、結衣先輩!」ガシッ
京子「あ、さり気なく手繋いだ! ずるいぞー、私もだ!」ガシッ
結衣「ふ、ふたりとも痛いってば。もっとゆっくり歩いて……」
部室――
あかり「うーん、みんな遅いなぁ……」
おわり

