1 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/04 22:22:33.04 6Sp9IiYwo 1/299


――金剛型ティータイム

霧島「ん?」

比叡「へ?」モグモグ

榛名「……です」

金剛「……」コクリ

金剛「榛名、もう一度言ってごらん?」

榛名「う……その……」

【18禁(予定)】


元スレ
榛名「榛名だってイチャイチャしたい」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1417699343/

2 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/04 22:25:37.93 6Sp9IiYwo 2/299


・この物語は、夕張「提督の夜のデータ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1409305994/
http://ayamevip.com/archives/47343580.html

の続きになります

・この物語は、私の脳内妄想劇場です。あなたの鎮守府の娘たちとは多少相違があるかもしれません

・キャラ崩壊、口調崩壊あります

・書くの遅い


3 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/04 22:29:00.28 6Sp9IiYwo 3/299


金剛「……」ジー

榛名「な、なんでも……ない、です……」シュン

金剛「はぁ……」

金剛「榛名……どうしてそこで尻込みするノ?」

榛名「……え?」

金剛「榛名だって、提督が好きなんでショー?」

金剛「だったら遠慮なんかしちゃ、ノー! なんだからネー!」

金剛「これをlook!」ピッ

4 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/04 22:29:42.38 6Sp9IiYwo 4/299


テレビ『どもども、青葉です! どうですか榛名さん、楽しんでますかー?』

榛名「……?」

テレビ『姉の金剛さんや先任戦艦の陸奥さんすら抜いて、鎮守府のエースと名高い榛名さんですが……ずばり、何を目標に頑張っているのですか?』

比叡「これは……?」

金剛「私達金剛型がここに揃った時の記念partyのvideoネー!」

霧島「それはまた懐かしいものを……どこから引っ張り出してきたんです?」

金剛「この前青葉に貰いました!」

5 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/04 22:31:40.16 6Sp9IiYwo 5/299


テレビ『目標……ですか? それはもちろん、提督のお役に立つことです』

榛名「榛名、こんなインタビュー受けた記憶ありません……」

金剛「この時の榛名、珍しく酔ってたからネー」

テレビ『提督の期待に応えたい、勝利を提督に捧げたい……そう思って榛名は頑張ってきました。それは、これからも変わりません』

テレビ『そしてゆくゆくは、提督のお嫁さんになれたら……なんて』

榛名「」

榛名「な!? なっ……!?」パクパク

6 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/04 22:37:56.83 6Sp9IiYwo 6/299


テレビ『おぉ!? なんかよくわかりませんが、急に大胆発言頂きましたー!』

テレビ『っ……っ……』テレテレ

霧島「自分で言って照れてる……」

榛名「えっ? えっ……?」カァァァ

比叡「それはこっちの榛名も同じみたいだけど」

金剛「ん~…流石私の妹ね! 榛名は昔も今もso prettyダヨー!」ギュー

榛名「わぷっ、お、お姉さま……?」

金剛「榛名の提督へのloveはもうみんな知ってるんだから、今更恥ずかしがらなくても良いデショー?」ギュー

比叡「お姉様、その初々しさも榛名の美徳ですよ」

金剛「Oh! もちろんわかってるヨー?」

7 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/04 22:42:13.10 6Sp9IiYwo 7/299


金剛「このvideoからもわかるように、榛名は提督とイチャイチャしたい! そうデショー?」

榛名「は、はい……」カァァ

金剛「OK! ここは私達に任せておいて!」

榛名「え……よろしいのですか? その、お姉さまも提督のこと……」

金剛「ノープロブレム! 私も提督のことは好きだけど……妹の幸せを願うのも、姉の役目ネー」

金剛「それに榛名、最近頑張ってたでしょう?」

比叡「たしかに、ミッドウェーの時も渾の時も……本土防衛の旗艦を任されてたのは榛名でしたね」

霧島「最近の出撃でも、好成績を残してます」

金剛「イエース! そろそろ大本営から練度向上の認可が降りても良い頃……と、提督も言ってマシタ!」

榛名「ほ、本当ですか!?」パァァ

8 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/04 22:44:25.76 6Sp9IiYwo 8/299


霧島「練度があがったら、99……榛名も、ケッコンカッコカリできるようになるんだね」

榛名「榛名……やっとここまで……」

金剛「これでバリちゃんに追いつける……だから、もう遠慮はいらないんダヨ?」

榛名「お姉さま……」

金剛「これは頑張った榛名へのご褒美とお祝いネー!」

金剛「各自、提督が榛名loveになるための案を考えてくること!」

霧島「私も、ですか?」

金剛「オフコース!」

比叡「お姉様の頼み、榛名のためなら……気合、入れて、行きます!」

霧島「そうね……艦隊の頭脳。榛名のために使いましょう!」

金剛「大船に乗ったつもりでいてクダサーイ!」

9 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/04 22:45:57.74 6Sp9IiYwo 9/299


榛名「あ、ありがとうございます!」

比叡「よし、榛名! 今夜は前祝いに飲んで食べて!」

榛名「ひ、比叡姉様、気が早いですよ……」

比叡「いいからいいから!」

ワイワイ

金剛「……」ニコニコ

霧島「金剛お姉様、本当によろしいのですか?」コソッ

金剛「ん~? ノープロブレム! 榛名は今まで本当に頑張ってきました。その努力は報われるべき……私はそう思いマス。それに……」

金剛「私はハーレム賛成派デース!」

霧島「ハーレム、それは……」

金剛「わかってます。But……提督が本当に1人しか選んでくれないのなら、それは……きっとバリちゃんネ。 私ではなく……」

霧島「お姉様……」

10 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/04 22:46:56.17 6Sp9IiYwo 10/299


金剛「榛名は……私たち、いえ、この艦隊の中でバリちゃんの次に提督に愛されてる娘だと私は思いマス」

金剛「だから、なんとか榛名とジュウコンさせてハーレムへの抵抗を減らし、そこから姉妹まとめて可愛がってもらいマース」

霧島「なんと」

霧島(したたかっ)

金剛「……と、考えていますけど、正直そう上手くいくかはわかりません」

霧島「そもそも、提督がちゃんと榛名と"そう"なってくれるかすら……」

金剛「……」コクリ

金剛「でも、榛名に幸せになって欲しいって気持ちも、自分も提督に愛されたいって気持ちも……嘘ではないデス」

霧島「……お姉様」

金剛「……」ニコリ

金剛「私はきっと、夢を見させて欲しいんだと思います」

霧島「夢……ですか?」

金剛「提督はバリちゃんも私達もみんなまとめて愛してくれる……そう思いたい。だから、私は……」

霧島「……」

金剛「……私はきっと、良いお姉さんではないデスね」

20 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 21:59:54.30 W6dhaGb0o 11/299


――叢雲の部屋

提督「……」

叢雲「……それで、何の用なのよ」

提督「いや、その……相談に」

叢雲「……」ジトッ

提督「……」メソラシ

叢雲「また面倒くさい話じゃないでしょうね? 少なくとも、アンタがヘタれな話なんてもう聞く気はないからね」

提督「……い、いや、今回は違う、と思う」

叢雲「今の間は何」

提督「う……し、仕方ないだろ!? こういう相談できるの、お前ぐらいだし!」

叢雲「……」ワタシダケ

叢雲「はぁ……まあいいわ。話してみなさい」

21 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:00:59.64 W6dhaGb0o 12/299


叢雲「榛名とジュウコンすべきかどうか……ですって?」

提督「はい……」

叢雲「……あんたね、"そういうの"私が助言したとして、その通りにするわけ?」

提督「それはわからない……けど、参考に、というか」

叢雲「参考、ね……」

提督「……」

叢雲「まあジュウコンしたら、少なくとも夕張は悲しむでしょうね」

叢雲「あんただって、それがわかってるから私に相談しにきたんでしょ」

提督「……」

叢雲「でも、そんなに深く考えなくても良いんじゃない? ケッコンカッコカリは、あくまでも艦娘の限定解除が目的なわけだし」

青葉「それはどうですかねぇ」

提督「」ギョッ

22 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:04:29.36 W6dhaGb0o 13/299


青葉「ケッコンカッコカリ……確かに主目的はそうでしょうけど、私達にとってそう簡単なものではないですよ。なんせケッコンですからね。大本営も思い切ったことをしたものです」ウンウン

青葉「申請には婚姻届にも似た書類が必要になりますし、その媒体は指輪です。加えて、初めてケッコンカッコカリした時に大本営から何が送られました?」

提督「……布団だ」

青葉「そうです! もはや同衾しろって言ってますよね! ケッコンカッコカリするほど苦楽を共にし、確固たる絆を築いた男女が同じ布団で寝て何も起こらないことがありましょうか!?」

叢雲「……半年手を出せなかった男ならそこにいるじゃない」

提督「うぐっ」

青葉「ヘタれの話は今はいいんです!」

提督「ぐはっ」

青葉「大事なのは、大本営が同衾を咎めないどころか推奨してる節すらあるということですよ!」

青葉「これは、大本営が提督と艦娘が関係を結ぶことを黙認する、と言っているようなものです!」

23 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:09:10.28 W6dhaGb0o 14/299


青葉「そんなケッコンカッコカリを突きつけられて、期待しない人はいませんよね? 夕張さんだってそうだったでしょう?」

青葉「ですから当然、榛名さんも期待してますよ! もちろん青葉もです!」

叢雲「……あんた、練度いくつだっけ?」

青葉「1です!」

叢雲「……」

青葉「……」ブワッ

青葉「どうせ青葉はケッコンカッコカリに最も遠い艦娘の一人ですよ!」シクシク

叢雲「別に何も言ってないじゃない。それよりあんた、どこから入ったわけ?」

24 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:17:19.14 W6dhaGb0o 15/299


青葉「むぅ、流石叢雲さん……青葉の突然の侵入にも涙にも冷静ですね。鎮守府最古参の年季は伊達じゃないってことですか……ぐすっ」メモメモ

提督「あ、青葉お前いつから……」

叢雲「……あんた、つけられたわね」

青葉「考え事してる提督は無防備で助かります」フフン

提督「なんと……」

叢雲「でも、部屋の鍵はかけておいたはずだけど?」

青葉「開いちゃいました」テヘペロ

提督「それは開けたって言うんだよ!?」

青葉「最近、川内さんに弟子入りしましたから、気配消しもバッチリです」ニンニン

青葉「でも安心してください! 今回の話はオフレコにしますから!」

提督「……本当か?」

青葉「処女かけてもいいですよ!」

叢雲「……」

提督「……」

25 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:18:30.53 W6dhaGb0o 16/299


青葉「処女かけ「おい」」

提督「女の子なんだから身体は大切にしなさい」

青葉「はい」

叢雲「それで、あんたはどうしたいわけ?」

提督「え?」

叢雲「ジュウコンの話よ」

青葉「ちなみに、ジュウコンは大本営も公に認めていますよ!」

提督「……"提督"としては、榛名の練度をこのまま99で燻らせとくのは勿体無いと思ってる。だから、指輪は受け取ってもらいたい」

26 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:19:24.48 W6dhaGb0o 17/299


叢雲「……」

提督「でも、俺には夕張がいるから……榛名とそういう……恋仲、みたいになるのは無理だ」

叢雲「そ。ならそう言えばいいじゃない」

提督「っ、でもそれは」

叢雲「榛名を傷付ける?」

提督「っ」

叢雲「そんなの当たり前じゃない。こんな惚れた腫れたの話だもの、あんたが1人しか選べないって言う以上、みんな幸せなんて無理な話だわ」

提督「う……」

叢雲「無理なら無理って、はっきり言ってやるのも優しさよ」

27 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:21:09.69 W6dhaGb0o 18/299


青葉「……」ニヤニヤ

叢雲「……なに」

青葉「司令官、叢雲さんはこう言いたいんですよ」

青葉「『あんたもこの艦隊を纏める提督なら、私達みんなまとめて囲うぐらいの甲斐性見せなさいよ!』」

提督「……」キョトン

叢雲「……」スッ

青葉「あ、あらぁ? 叢雲さん、それ魚雷ですよ? え、待って、あや謝んぶ」

叢雲「あんた、もう帰りなさい」グイグイ

提督「え……」

叢雲「私は私の考えを言ったわ。あとは、あんたがちゃんと考えて決めないと駄目よ」

提督「……そう、だよな」

叢雲「まったく……あんたはいつまで経っても頼りないのねぇ……」

提督「……」

叢雲「大丈夫よ。あんたがちゃんと考えて決めたことなら、きっと悪いようにはならないわ」

提督「……ああ」

28 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:25:27.40 W6dhaGb0o 19/299


――翌朝 廊下

比叡「――だからそこで言ってやったわけ、ケーキ オン ザ 苺……ってね!」

榛名「ふふふ、比叡姉様ったら」

金剛(苺の上にケーキ……)

ダダダッ

金剛「お?」

ドタドタドタ

霧島「これは……また、ですかね」

提督「赤城てめぇこらぁ!」ダダダッ

赤城「……」タタタ

提督「また備蓄の食料食いやがったな!?」

赤城「……っ」タタッ

金剛「ヘイ提督ぅ! 朝から大変そうですネー!」

提督「おう金剛シスターズ、おはよう! じゃあ急ぐから!」

金剛「応援してまーす!」

提督「」グッ

29 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:28:53.41 W6dhaGb0o 20/299


提督「っとと、榛名!」

榛名「は、はい!」

提督「大事な話があるから、後で執務室に来るように」

榛名「はい! 大事な……大z、えぇ!?」

赤城「……」モグモグ

霧島「あの、司令……赤城さんがまた何か食べながらこっち見てますけど……」

提督「なん……てめぇそれ! 俺の備蓄のダッツじゃねぇか!?」

赤城「上々ね」ウットリ

提督「本当に毎度毎度……鳳翔さんも間宮さんも大変ご立腹です! 今日はもう許さんからなっ!」ダッ

赤城「……ふふっ」タタタッ

ドタドタドタ

夕張「待ってぇ……」パタパタ

パタパタパタ

30 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:30:48.62 W6dhaGb0o 21/299


霧島「……嵐のようでしたね」

比叡「ひえ~……しかし、赤城さんも懲りませんねぇ。お腹が減るなら、お菓子なり保存食なり買い込んどけば良いのに」

金剛「ノー。アレはただ、提督に構ってもらいたいだけネー」

比叡「えっ」

金剛「比叡は着任が遅かったですから、あの赤城しか知らないんデスネ」

霧島「昔の赤城さんは、まさに大和撫子。才色兼備、クールビューティのお姉さんって感じだったんですよ」

比叡「……まっさかぁ」ハハッ

金剛「ホントダヨ? まああの頃から食べる量は多かったですが……分別もあったし、何より大事なのは戦果をあげることって感じでしたから」

霧島「でも、ある日を堺に提督と親しげになったなーって思ってたら、"ああ"なってました。時々熱のこもった目で提督を見つめてますから、赤城さんも提督にホの字なのでしょう」

金剛「まあ今までキリングマシーンのようにやってきたみたいですから、アプローチの仕方も甘え方もわからない……といったところでしょうね!」

比叡「流石お姉様! 素晴らしい分析です!」

金剛「ふふーん」

霧島「……」ワタシハ?

榛名「……」

金剛「それより……」

31 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:31:42.69 W6dhaGb0o 22/299


金剛「はーるな!」ギュッ

榛名「きゃっ」ビクッ

榛名「お、お姉さま……?」

金剛「んふふ……大事な話、楽しみですネー」ニコッ

榛名「あ……は、はい」カァァ

霧島「これはもしかすると、もしかしちゃうんじゃない?」

榛名「そ、そうかな……?」ソワソワ

比叡「勝負パンツ……履く?」

榛名「しょ、しょ……ぱ……!?」

霧島「姉様、先走り過ぎ」

32 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:32:45.56 W6dhaGb0o 23/299


――――
――

ドタドタ

提督「あか、赤城……ぜぇ、待てこら……はぁ」

赤城「うふふ、体力落ちたんじゃないですか? 提督」

提督「うっせぇわ! 絶対捕まえたるかんな!」ダッ

赤城「負けません!」タッ

赤城「あら?」

加賀「……?」

加賀「赤城さん? なに――」グイッ

赤城「さあ、加賀さんも一緒に」タタッ

加賀「ちょ、ちょっと赤城さん、わけがわからないのだけど……」タタタ

提督「加賀お前もかぁぁ!」

加賀「?」

赤城「うふふ、楽しいですね!」

加賀「え?」

赤城「提督との追いかけっこ」

加賀「追いかけっこ……」クルッ

提督「待てこらぁぁ!」

加賀「……」

加賀(提督に追いかけられている……)

――加賀ビジョン

提督「待て~!」キラキラ

加賀「!」

加賀「流石に気分が高揚します」ダッ

33 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:34:21.56 W6dhaGb0o 24/299



提督「ぜ、はぁ……くそっ、流石に体力に差がありすぎる……こうなったら!」

提督「」ピューイ

提督「……」タタタ

ポイ

提督「……」タタタ

ポィィィイイイ

提督「……来たか」

夕立「提督さん! お呼びっぽい!?」ガバァ

提督「うわっぷ」ドターン

時雨「……」ギュッ

34 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:35:31.54 W6dhaGb0o 25/299


夕立「提督さん! 提督さん! ご用事はなぁに?」ワフワフ

提督「おぉよしよし。お願いがあってな……」

時雨「いいよ。何でも言ってよ」

提督「赤城と加賀を捕まえてくれ」

時雨「またつまみ食いでもしたのかな?」

提督「そういうことだ」

夕立「任せて! 夕立、提督さんのためなら何でも頑張れるっぽい!」チラッ

時雨「うん」コクリ

夕立「さあ、最高に素敵なパーティしましょ!」ズギャッ

時雨「時雨、行くよ……!」シュン

35 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:36:14.39 W6dhaGb0o 26/299


赤城「この2人をけしかけるのは卑怯です!」スマキ

加賀「駆逐艦と侮りました」スマキ

夕立「夕立ったら、結構頑張ったっぽい? 提督さん、褒めて褒めてー♪」

提督「もちろんだ! でかしたぞ夕立!」ナデナデ

夕立「」ムフー

時雨「……」チラッチラッ

提督「時雨も、よくやってくれたな」ナデナデ

時雨「あ……」パァァァ

提督「さて……」

「「」」ビクッ

36 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:37:02.25 W6dhaGb0o 27/299


提督「お前ら、ホントいい加減にしろよな。どうして食料庫に手をつける? 3食に加え、食べるに困らない程度の給料は与えているはずだが」

赤城「……」ヒューヒュー

加賀「赤城さん、吹けてません」

提督「はぁ……夜中腹が減った時のために予め食料買っておけ。どうしようもないなら食料庫に行く前に俺の部屋に来い」

提督「俺だって多少料理の心得はあるし、夕張もいる。ある程度の食べ物なら部屋に置いてあるから、何かしらは出してやれるだろう」

赤城「提督の手料理!?」ガタッ

加賀「流石に気分が高揚します!」ガタッ

夕立「夕立も食べたいっぽい!」

時雨「ここは譲れない」

提督「お、おう……まあそれはそれとして、罰は受けてもらうけどな」パチン

37 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:38:40.01 W6dhaGb0o 28/299


明石「どうもお疲れ様でーす」

赤城「えっ」

加賀「ちょ」

提督「おーおーいい顔だな。ふふふ、怖いか」

提督「じゃ、あとよろしく」

明石「本当によろしいんですか?」

提督「あくまで罰の範囲でな」

明石「」グッ☆

赤城「ま、ままま待ってください!」

加賀「反省してます」

明石「あ、そうだ。せっかく2人だし、アレ、試してみようかな」

赤城「アレ!? アレってなんですか!?」

加賀「流石に気分が落ち込みます」

提督「あ、後から夕張も行くからな」

「「」」

時雨「鎮守府の二大変態エンジニア(褒め言葉)が仕置人とは、流石に同情するよ」

明石「それじゃ、工廠までごあんな~い」

赤城「一航戦の誇り、こんなところで失うわけには……」ズルズル

加賀「そんな……馬鹿な」ズルズル

38 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:39:26.22 W6dhaGb0o 29/299


夕立「提督さん! 夕立、提督さんの手料理がたべたい!」

提督「お?」

時雨「僕もお願いしても良いかな」

提督「機会があったらな」

夕立「……」ジー

時雨「……」ジー

提督「……わかった。約束な」

夕立「」ポーイ

時雨「」パァッ

提督「それじゃ、今回はありがとな。戻っていいぞ」

夕立「はーい」

時雨「また何かあったらいつでも呼んでよ」

パタパタ

夕張「や、やっと追い……追いつきました」

39 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:40:12.10 W6dhaGb0o 30/299


提督「おお、遅かったな」

夕張「……どうせ速力も体力もありませんよ」

提督「怒るな怒るな。2人は明石が連れてったから」

夕張「はい。私も後で向かいますね……」

夕張「ところで、提督?」

提督「は、はい」

夕張「昨夜は、いったい何処に言ってたんですか……?」

提督「いや、その、アレだよ。散歩……少し、考えを纏めたくて」

夕張「……榛名さんのことですか」

提督「……うん」

夕張「……」

提督「その、とりあえず指輪は渡そうと思う」

夕張「っ」ズキッ

40 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:40:51.78 W6dhaGb0o 31/299


提督「……提督として、榛名を今の練度のまま燻らせておくのは勿体無いと判断した」

夕張「そう、ですか……」

提督「もちろん、榛名と関係を結ぶつもりはないし、その旨もちゃんと伝える」

夕張「……」

提督「……お前が嫌だって言うなら、指輪渡すのもやめるけど」

夕張「……」ムー

夕張「仕方ありません、ね……艦隊のためを思えば、榛名さんの強さは不可欠です」

夕張「でも!」

提督「」ビクッ

夕張「ホントのお嫁さんは私、なんですからね!」ニコリ

提督「は、はい!」

41 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:43:29.20 W6dhaGb0o 32/299


――――
――
――執務室前

榛名(ケッコンカッコカリ……昨年の秋頃、大本営が発表したシステム)

榛名(それまで上限があった艦娘の能力を引き上げるもの)

榛名(その媒体として指輪が用いられ、初めてケッコンカッコカリした提督と艦娘には布団が送られる……)

榛名(榛名は、提督の初めてにはなれなかったけど、これでやっと……)ドキドキ

榛名「はっ……いけません。まだその話かどうかもわからないのに……」

榛名(そう言い聞かせても、鼓動は早鐘のように鳴って収まらず、扉に伸ばした手は期待と緊張で震えている)

榛名「……よし! 榛名、いざ! 参ります!」

42 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:44:03.74 W6dhaGb0o 33/299


ガチャ

榛名「きゃっ」

夕張「あ、ごめんなさい! って……榛名さん?」

榛名「ゆ、夕張さん……」

夕張「どうしたんです? 扉の前で突っ立って」

榛名「榛名はその、提督に呼ばれて……」

夕張「ああ……そう、ですか」

43 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:44:52.51 W6dhaGb0o 34/299


榛名「……」

夕張「……」

夕張「どうぞ、入ってください。私はこれから、少し席を外しますので」

榛名「あ、はい。失礼します」

夕張「……おめでとうございます、榛名さん」

榛名「え?」

夕張「でも、提督は渡しませんから。それじゃ」

スタスタ

榛名「……榛名だって、負けません」

トントン

榛名「提督、榛名です。今、よろしいでしょうか」

ドア<おー、入ってくれ

44 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:46:00.26 W6dhaGb0o 35/299


榛名「失礼します」

提督「おう。まあ座ってくれ」

榛名「はい。失礼します」

提督「……」

榛名「……」

提督「昨夜、大本営から通達があった。榛名、お前の練度は99だ」

榛名「あ……ほ、本当、ですか」

提督「ああ」

榛名「」パァァァ

提督「今まで、本当によくやってくれた。榛名には本当に感謝しているし、頼りにもしている」

榛名「そんな……榛名には勿体無いお言葉です」

提督「それで、その……俺も提督として、榛名がこのまま練度が上がらないのは勿体無いと考えてる」

提督「だから……」スッ

提督「指輪を用意させてもらった」

45 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:46:51.92 W6dhaGb0o 36/299


榛名「あ……」ジワッ

提督「もちろん、受け取るかどうかは榛名次第だ。嫌だったら、断ってくれて良い」

榛名「とんでもないです! 榛名はずっと、提督のことをお慕いしています」

提督「……ありがとう。その気持ちは、本当に嬉しい」

提督「でもな、榛名。だからこそ、渡す前にこれだけは言っておかなくちゃいけない」

榛名「はい……?」

提督「知っての通り、俺はもう夕張とケッコンカッコカリしている」

榛名「……」

提督「……俺が好きなのは夕張だ。だから、もし榛名とケッコンカッコカリしても、榛名と恋人……のような関係になることはできない」

榛名「……え?」

46 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:47:56.69 W6dhaGb0o 37/299


榛名「ど、どうして、ですか……?」

榛名「だって、ケッコンしたら、榛名も……え……?」

提督「すまない」

榛名「あ……」ジワッ

榛名「……」ポロポロ

榛名「……ごめんなさい」グイ

榛名「少し……考えさせてください」

47 : ◆0EJWPPUT0k - 2014/12/13 22:48:49.39 W6dhaGb0o 38/299


――廊下

榛名「……」

榛名(あの時、最初は何を言われたのかわからなかった)

榛名「……提督」ジワッ

榛名(ケッコンカッコカリすれば、提督の寵愛を受けられるのだと思っていた)

榛名(恋人のように寄り添って過ごせるのだと思っていた)

榛名(愛してもらえるのだと……)

榛名「うぅ……」ポロポロ

榛名(でも、黙って頭を下げる提督の姿に、そんなものは榛名の勝手な思い込みで、幻想でしかなかったのがわかった)

榛名("わかって"しまった)

52 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/01/17 23:16:28.71 eunPUcPZo 39/299


金剛「ヘイ榛名! こんなとこで立ち止まってドウシ……榛名?」

榛名「あ……」ゴシゴシ

榛名「き、奇遇ですね! お姉様!」

金剛「ん~?」ズイ

金剛「どうしたの? どうして泣いてるの」

榛名「い、いえ、泣いてなんて……榛名は大丈夫です」

金剛「榛名?」

榛名「……」

榛名「提督に、はっきり言われてしまいました……恋仲にはなれない、と……」

金剛「……嘘」

53 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/01/17 23:18:05.35 eunPUcPZo 40/299


榛名「榛名、馬鹿みたいですよね? 勝手に盛り上がって、はしゃいで……」グス

金剛「榛名……」

比叡「お姉様~!」タタタ

比叡「あら? お取り込み中でした?」

比叡「……? 榛名、どうして泣いてるの……?」

榛名「比叡姉様……」

54 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/01/17 23:19:16.42 eunPUcPZo 41/299


比叡「……なるほど。話はわかりました。提督も罪作りな人ですね」

金剛「いえーす……」

比叡(それでお姉様も元気ないのか……まあお姉様はこれぐらいで諦めるとは思えないけど)チラッ

榛名「……」

比叡(このままだと、榛名はヤバそうかな)

比叡「でも、まあ……榛名。いいんじゃない? 今がどうだってさ」

榛名「え……?」

比叡「たしかに今、提督と夕張は好き合ってる。それは覆らない」

比叡「でもさ、結婚したわけじゃない。ケッコンカッコカリはあくまでもシステムで、(仮)なんだよ」

比叡「だから、まだ大丈夫だよ」

比叡「最終的に、提督が本当に"結婚"するってなった時に、榛名が嫁になってれば良いんだから」

榛名「比叡、姉様……」

比叡「あ、でも金剛お姉様が提督の嫁になるのだとしたら……あれ、どうしたら良いんだろう……」

金剛「比叡……天才ですか?」

比叡「ひゃっほーい! お姉様に褒められたぁぁぁ!」

55 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/01/17 23:23:19.41 eunPUcPZo 42/299


榛名「最終的に、榛名が……」

金剛「たしかにその通りデース。私としたことが、少し弱気になりました……」

金剛「私のLVOEは、一度フラれたぐらいで諦められるような簡単なモノじゃありまセン」

金剛「たとえ提督が私以外の人を愛していても、何度フラれても……きっと私は提督のことが好きだって胸を張って言い続けます」

榛名「お姉様……」

金剛「どんなに辛くても苦しくても……私は、この恋を諦めたくない」

榛名「それなら!」

榛名「それなら榛名だって同じです! 榛名だって提督に愛されたい! 抱きしめてもらいたい! 好きだって!」

榛名「……好きだって、言ってもらいたいんです」

56 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/01/17 23:28:21.16 eunPUcPZo 43/299


金剛「だったら、やることは1つ、デショ?」ニコッ

比叡「そうだよ。なりたいんでしょ? 提督のお嫁さん」

榛名「はい」

比叡「諦められるの? 提督のこと」

榛名「諦めたくありません」

比叡「え? 聞こえないよ?」

榛名「榛名、諦めたくありません!」

比叡「その言葉が聞きたかった」

金剛「……比叡、考えてきたんですね?」

比叡「ええ……私の案はこれです!」

比叡「王道に、提督に尽くましょう! 男はみな貞淑で従順な良妻が好きと言いますし、榛名にもぴったりです!」

金剛「……」

榛名「良妻……」

祥鳳「それ、今までと変わらなくないですか?」

比叡「」ガーン

59 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/01/17 23:37:14.52 eunPUcPZo 44/299


金剛「Oh! 祥鳳、ビックリするから急に出てこないでクダサーイ」

比叡「」

祥鳳「私が思うに、榛名さんに足りないものはズバリ、"押し"!」

祥鳳「榛名さんの奥ゆかしさ、そして良妻に成り得るその潜在力は既に十分過ぎるほどアピールできてるはずです」

金剛「……なるほど。一理ありマース」

祥鳳「ここで必要なのは攻め! あの奥ゆかしい榛名さんがまさか、こんな大胆な……! そう思わせるギャップが最高に萌えるんです」

金剛「たしかに榛名は少し堅苦しすぎますネー」

金剛「もっと私のようにフランクに接しても良いはずデース」

榛名「お姉様のように、ですか……? ですが榛名、お姉様のように可愛らしく愛嬌を振りまくのはその、恥ずかしい、です……それに、もし拒絶されたら――」

金剛「ノー! 榛名、イチャイチャしたいんでしょう?」

60 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/01/17 23:47:08.82 eunPUcPZo 45/299


金剛「アプローチするのって確かに不安だし怖いかもしれません。でも、だからって何もしなかったら叶うものも叶わないヨ?」

榛名「……」

金剛「大切なのは、気持ちを伝えること! この際提督の都合なんて度外視ネ!」

金剛「察しと思いやりがJapaneseの美徳なんて言うけれど、言葉にしなきゃ、態度で示さなきゃ伝わらないこともあるヨ」

金剛「もちろん、時と場所とムードも大切にネ!」

榛名「お姉様……」

祥鳳「そうですね……まずは、提督と過ごす時間を増やしてみてはどうでしょう? 例えば――」

比叡「秘書官になる! ですね!」

榛名「榛名が、秘書官に……?」

金剛「イエース!」

榛名「……はい! 榛名、頑張ります!」

61 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/01/17 23:54:11.51 eunPUcPZo 46/299


――翌朝 執務室

提督「は……?」

夕張「え……?」

榛名「榛名にも秘書官をやらせてください」

提督「えっ、でも、それは……」チラッ

夕張「……」

提督「その、指輪は受け取ってくれる、ということでいいのか? ……昨日のことを承知した上で」

榛名「はい。提督が、榛名と"そう"なってくれないことはわかりました。でも、少しでも榛名をお側において欲しいんです……」

榛名「週に何回かで構いません。夕張さんと交代で秘書官を務めさせてください」

夕張「……」

榛名「だめ、でしょうか……」

夕張「……その提案は、宣戦布告、と受け取っていいんですか?」

榛名「……」ニコッ

提督「宣せっ!? で、でも榛名、俺は――」

夕張「提督は黙っていてください」

提督「お、おう」ビクッ

夕張「……」ズズズ

榛名「……」ゴゴゴ

ドドドドドド

提督(やだ……こわい)

62 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/01/18 00:06:59.17 xiGWArqVo 47/299


夕張「……」フゥ

夕張「わかりました」

提督「夕張!?」

榛名「……いいんですか?」

夕張「正妻の余裕ってやつです」

夕張「不安なら、そんな提案受け入れるわけないですよね?」フフン

榛名「」ムッ

榛名「その余裕、榛名が崩してみせます」

夕張「無駄です。提督は私にゾッコンなんですからぁ!」

提督「……あの、そういう話俺の前でしないで欲しいんだけど」

63 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/01/18 00:25:01.62 xiGWArqVo 48/299


――――
――

夕張「うわぁぁ! 助けてむらえもーん!」ガバァ

叢雲「……遠征から帰ってきて早々なんなの」

秋月「あの……」

夕張「うわぁぁぁ」ギュー

天津風「夕張さん?」

叢雲「……」

夕張「叢雲ちゃんいい匂いする!」スンスン

叢雲「」ヒュッ

夕張「へぶぁ!」

叢雲「さ、遠征の報告に行きましょ」

秋月「え、でも、あの……」

叢雲「いいから」スタスタ

天津風「……夕張さん、ああいうこともするんですね」

73 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/02/22 16:02:42.37 kuraEkwEo 49/299


――――
――執務室

叢雲「……」

榛名「」ニコニコ

提督「……」

叢雲「珍しいわね。夕張が秘書官じゃないなんて」

榛名「はい! 今後は夕張さんと交代で務めさせて頂きます」

叢雲「へぇ……」ジトッ

提督「……」サッ

秋月「あの! 榛名さんもケッコンされたんですよね? おめでとうございます!」

榛名「ありがとうございます」ニコッ

天津風「ねえ」

提督「ん?」

天津風「あなた、練度が99になった娘とは……その、誰とでもケッコンカッコカリしてくれるの……?」

提督「うぇ!? えっと……」チラッ

叢雲「……」コッチミンナ

74 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/02/22 16:05:34.20 kuraEkwEo 50/299


提督「……まあその、なんだ。そういうことになるかもしれないな。もちろん練度向上のためだぞ? やましいことはないし、するつもりもない。榛名とのケッコンカッコカリだって練度のためで、ビジネスライクなものだ」

榛名「そう、ですね……残念ながら、今はまだ」

秋月「今は」

天津風「まだ?」

提督「榛名」

榛名「申し訳ありません。出すぎた発言でした」

榛名「提督の仰る通りです。榛名はもう、フラレてますから」

秋月「えぇっ!?」

天津風「嘘っ!?」

叢雲「へぇ……?」

提督「……」

75 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/02/22 16:08:22.75 kuraEkwEo 51/299


秋月「でも、それならどうして榛名さんが秘書官を?」

榛名「それは榛名の我儘を聞いて頂いただけです」

天津風「それじゃあ榛名さんはまだ……?」

榛名「ええ。お慕いしています。残念ながら、榛名は提督の特別にはなれなかったようですが……今はこうして指輪をいただいて、お側にいさせて頂けるだけで嬉しいんです」

提督「……」キマズイ

叢雲「……あんたらね、こいつの前であんまりそういう話を」

天津風「それって、十分特別なんじゃないですか?」

榛名「え?」

提督「ん?」

天津風「夕張さんはあなたにとって特別なのよね。そんなことは"見ていれば"わかる。だから、指輪を最初に渡した」

天津風「でもそれって、あなたにとってもケッコンカッコカリの指輪が単なる限定解除のためのものではなかったってことよね」

提督「っ」

天津風「それに、その2つ目の指輪……あなたの自費なんでしょ?」

76 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/02/22 16:11:25.60 kuraEkwEo 52/299


天津風「だったら、この鎮守府で二番目に指輪を受け取ることができた榛名さんもあなたにとっては十分特別ってことじゃないの?」

叢雲「……」フム

天津風「たとえ二番目のケッコンカッコカリだったとしても、他の皆を差し置いてそれを行うことができた。その事実がすでに特別だという証……違う?」

提督「そ、それは……」

榛名「え、え……?」パァァァ

天津風「ウチには大和型のお二人も、長門型のお二人もいるわ。一航戦だって、雷巡だって……強い人なんて他にもたくさんいるのに、ウチのエースは榛名さんなんだから」

天津風「それは、あなたにとって榛名さんが特別だということじゃないの?」

77 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/02/22 16:13:33.15 kuraEkwEo 53/299


提督「……違わない。確かに、俺にとって榛名は特別だ。戦力も、その人となりも本当に信頼してる。風貌だって、正直俺好みだ」

榛名「提督……!」

提督「でも、それでも、だ。俺にとって一番は夕張なんだ」

提督「その夕張が悲しむことはしたくない」

提督「だから、このケッコンカッコカリもあくまで練度のためだ。それ以上のことはない」

榛名「……」

天津風「ふぅん……ま、とりあえずそれでいいわ。練度が99になれば、あなたがケッコンしてくれる。それがわかっただけでもいい」

提督「っ……お前、それは」

天津風「そういうこと。まあ私にはまだまだ先の話だけど……」

天津風「私達にとってあなたがどれだけ重要な存在なのか……あなたはもう少し自覚すべきだわ」

提督「」ボーゼン

天津風「……っ」カァァァ

天津風「し、失礼するわ!」タタッ

78 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/02/22 16:15:35.07 kuraEkwEo 54/299


秋月「あ、あの! 秋月もその、頑張りますから! し、失礼します!」タッ

提督「……まじか」

叢雲「はぁ……モテモテね。あんた」

提督「……正直複雑だ。好かれてるのはそりゃ嬉しいけどさ」

榛名「提督は素敵な方ですから、当然かと」

叢雲「……あんたもブレないわね。じゃあはいこれ。今回の遠征の報告書」

提督「お、おう」

叢雲「ま、頑張りなさい。誰かに刺されないことを祈ってるわ」

提督「……演技でもないこと言うな」

榛名「ご安心ください! 万が一何かがあっても提督は榛名がお守りします!」フンス

叢雲「……」

提督「……」

榛名「ど、どうして黙るんですか!?」

79 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/02/22 16:23:56.21 kuraEkwEo 55/299


――――
――叢雲の部屋

叢雲「……ふぅん。そういうこと」

叢雲「それで今日アイツの隣にいるのが榛名だったわけね」

夕張「……うん」

叢雲「嫌なんだったら断れば良かったじゃない。なんで受けたのよ」

夕張「……強者感が出てかっこいいかな、と」

叢雲「帰れ」

夕張「じょ、冗談だから!」

夕張「……本当は、私もすこし考えてるの」

夕張「これからの艦隊のあり方、というか……ケッコンカッコカリはどうしても直面してしまう問題だと思うから……」

叢雲「……へぇ。あんたはてっきりアイツを独占したいのかと思ってたけど」

夕張「もちろん、それがベストだけど……」

夕張「……」

80 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/02/22 16:25:19.33 kuraEkwEo 56/299


夕張「私、これでも皆のことが好きなの。私には姉妹艦はいないけど、いたらこういう感じなのかなって……この鎮守府の皆のこと、家族みたいに思ってる」

夕張「だから、皆には幸せになって欲しい。いつ何があるかわからいから尚更、ね」

夕張「けど、私だって提督のことが好き。愛してる。独り占めしたい。誰にも渡したくない……」

夕張「でも、皆も提督が好きなこと、わかるから……私がそうすることで皆の士気が下がったり、それが原因で万が一のことがあったりしたら――」

叢雲「……」

夕張「私、もうどうしたら良いのかわからなくて……」

81 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/02/22 16:29:03.80 kuraEkwEo 57/299


叢雲「……正直、なんとも言えないわ。私も良い助言ができる気がしない」

夕張「だよね……」

叢雲「もっともアイツは……あんた以外と関係を結ぶ気は今のところ無さそうだけどね」

夕張「そう、かな……」

叢雲「ええ。良かったじゃない。愛されてるわよ、あんた」

夕張「」ニコッ

夕張「……」

叢雲「……どうして限定解除がケッコンカッコカリなのかしらね」

夕張「え?」

82 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/02/22 16:30:00.81 kuraEkwEo 58/299


叢雲「どのみち、あんたとアイツが折り合いをつけないと片付かないことだわ」

夕張「うん……」

叢雲「……色恋沙汰だもの。頭で難しく考えたって答えなんて出ないわよ」

夕張「けど、だったらどうしたら……」

叢雲「だから、もっと簡単でいいんじゃないかってこと」

夕張「え?」

叢雲「自分がどうしたいのか……」

叢雲「秘書官として、とか倫理的にどうこうじゃなくて、あんたが……あんたたちがどうしたいのか」

叢雲「本当は、それぐらい単純なことなんじゃない?」

夕張「……そうなの、かな」

叢雲「ま、よく考えなさい。そこのとこも含めてね」

夕張「……」

叢雲「……まったく。あんたたちは本当にもう」ハァ

叢雲「あんたが私達を家族だと思ってくれてるのと同じように、私も、きっと皆だってあんたのこと大切に思ってる。だから、あんたがどんな答えを出したって恨んだりしない」

叢雲「そりゃ場合によっては多少ギクシャクしたりはするかもしれないわ。でも、大丈夫よ」

叢雲「家族って、そういうものでしょう?」

夕張「叢雲ちゃん……」

83 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/02/22 16:44:33.44 kuraEkwEo 59/299


――廊下

夕張「……」スタスタ

夕張(叢雲ちゃんはああ言うものの、どうしたものか)

夕張(私が思うようにって言ってもなー……正直それが難しい)ウムム

夕張「はぁ……」

夕張(これから榛名さんと祥鳳さんとの定期女子会あるし、正直どんな顔していけばいいかもわからない)

夕張(いっそ欠席しちゃおうかな……)

夕張「……」ガシガシ

夕張「あぁぁ、もう!」

夕張(榛名さんは来るのかな……来るだろうな。ここで欠席とか逃げたようなものだし)

夕張「うぅ……気が重い」

「あっ!」

夕張「」ビクッ

84 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/02/22 16:46:15.24 kuraEkwEo 60/299


五月雨「夕張さ~ん!」テテテッ

夕張「小走りの効果音がテテテッとか可愛すぎでしょ」

五月雨「お疲れ様です!」タンッ

夕張「うん。お疲れ様五月雨ちゃん」

五月雨「お仕事はもうお終いですか?」

夕張「うん」

五月雨「じゃあ一緒に帰りましょう!」ニコー

夕張「うん!」

85 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/02/22 16:46:48.05 kuraEkwEo 61/299



五月雨「それで、涼風ったら――夕張さん?」

夕張「……え?」

五月雨「もー、話聞いてました?」

夕張「……ごめん、少しボーっとしてた」

五月雨「お疲れですか?」

夕張「そんなことないよ。元気元気!」

五月雨「……」ジーッ

夕張「……本当は、少し悩み事があってさ」

86 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/02/22 16:52:12.18 kuraEkwEo 62/299


五月雨「わたしじゃ、力になれませんか?」

夕張「そんなことない。でも、これは私が解決しなくちゃいけないことだから……」

五月雨「そうですか……でも、何かあったらすぐ私に言ってくださいね! わたしじゃ力不足かもしれませんけど……わたし、頑張っちゃいますから!」

夕張「五月雨ちゃん……」ブワッ

五月雨「うわわ、どうして泣くんですか!?」

夕張「五月雨ちゃんが天使過ぎてつい……」ポロポロ

五月雨「もー、なんですかそれ……本当に大丈夫ですか? 夕張さん、元気ないし心配です……」

夕張「……じゃあ五月雨ちゃん、あれやってよ!」

87 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/02/22 16:55:27.12 kuraEkwEo 63/299


五月雨「え、またですか? で、でも、あれは少し恥ずかしくて……」

夕張「お願い! やってもらえれば、頑張れるから!」

五月雨「じゃ、じゃあ……」テレ

夕張「ふわぁぁ……照れてる五月雨ちゃん可愛い……」ポロポロ

五月雨「も、もう! いきますよ!」

五月雨「」ギュッ

夕張「ぉふ……」

五月雨「夕張お姉ちゃん、頑張って!」ギュー

夕張「超元気でた」キリッ

93 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/03/08 17:32:41.35 teUzoBc3o 64/299


――――
――食事処 鳳翔

夕張「……」

榛名「……」

祥鳳「……」ゴクゴク

祥鳳「ぷはっ……あの、状況は理解してるつもりですけど、もう少し楽しそうにしてくれません?」

祥鳳「飲みたいから今日来たんですよね?」モグモグ

夕張「……ま、そうですね。ずっとギスギスしてても仕方ないですし」

榛名「榛名も……そう思います」

青葉「さ、それじゃもう一回乾杯しましょう!」

榛名「え?」

夕張「は?」

祥鳳「……本当に神出鬼没ですね」

青葉「気配を消すのも記者の嗜みです」ニンニン

94 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/03/08 17:34:18.00 teUzoBc3o 65/299


青葉「それで、実際のところどうなんです? 秘書官交代制になったわけですけど、榛名さん提督のことおとせそうですか?」

夕張「それ、私の前で聞きますか……」

榛名「……まだなんとも」

夕張「」ホッ

祥鳳「でも夕張さん……交代で秘書官を務めることを決めたってことは、なんだかんだ言って一夫多妻制も視野に入れてるってことなんじゃないですか?」

夕張「っ……そ、そんなことはないです! 私は今でも提督のこと独り占めしたいって思ってます」

青葉「でも、私達の練度が上がれば上がるほどケッコンカッコカリする人はどんどん増えてくるわけですよね?」

青葉「もちろん皆が皆提督とそうなりたと思っているわけではないと思います。ですが、そうなりたいと思って頑張ってきた人がそうなれないと知った時……士気の低下は著しいと思いますよ?」

夕張「それは……」

95 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/03/08 17:35:52.66 teUzoBc3o 66/299


青葉「実際、榛名さんがケッコンし、交代制で秘書官を務めていることで、今提督は夕張さんと榛名さんを囲っていると思っている人がほとんどだと思います。中にはそれに嫌悪感を示す人もいるでしょうが……」

青葉「青葉の独自調査によると、幸か不幸か、この鎮守府はハーレムに寛容なようです」

夕張「……」

青葉「……まあ、ケッコンカッコカリを練度の限定解除ではなく、そういうものだと認識してる私達サイドにも問題があると思いますが」

榛名「……」

祥鳳「どのみち、どうするのか早めに決断して鎮守府全体に告知しないと……荒れますよ?」

夕張「わかってます。だけど……少し考えさせて欲しいかなって」

榛名「……でも」

夕張「え?」

榛名「でも榛名は……夕張さんが立ち止まっている間も手を緩めるつもりはありません」

榛名「提督や夕張さんにはご迷惑かもしれません。榛名のやっていることは、世間的にもあまり胸の張れることではないと思います」

榛名「でも……榛名、諦めないことにしたんです」

夕張「……榛名、さん」

96 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/03/08 17:38:15.80 teUzoBc3o 67/299


祥鳳「もちろん私もです」

祥鳳「と、言いたいところなんですが」

ダン!

祥鳳「どういうことなんですか!? 私最近、すっかり出撃できてないじゃないですか!」

夕張「はて……」

榛名「ふむ……」

祥鳳「へぇ……?」ガタッ

夕張「い、いや、私たちは何もしてないですよ!?」

榛名「そ、そうです! 艦隊の編成はあくまでも提督の采配ですから!」

97 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/03/08 17:45:51.46 teUzoBc3o 68/299


祥鳳「……」ワナワナ

祥鳳「私、大規模作戦の時しか出撃してないんですよ!?」

夕張「と、トラック泊地防衛の時は大活躍だったじゃないですか」

青葉「第一波の防衛作戦だけですけどね」

祥鳳「」ブワッ

榛名「あ、青葉さん!」アワアワ

夕張「で、でもまだ鎮守府No.3の練度ですし!」

祥鳳「……ってきてるんです」

夕張「え?」

祥鳳「追いつかれてきてるんです! 重雷装巡洋艦と一航戦と帰国子女に!」

98 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/03/08 17:48:30.70 teUzoBc3o 69/299


青葉「」フッ

青葉「良いじゃないですか、それぐらい」

青葉「青葉なんて……未だに練度1ですからね!?」ブワッ

榛名「あっ……」

祥鳳「なんと……」

夕張「ぱねぇ……」

青葉「くっ……青葉、司令官に嫌われてるのでしょうか……」

夕張「そんなことはないと思いますけど……実際、練度が低いままの人もまだ結構いますし」

夕張「大規模作戦や度重なる改二の実装で全員を出撃させることができないだけだと思います。特に大規模作戦の際は、主力を出さざるを得ませんし……」

青葉「うぅ……」

夕張「大丈夫ですって、いずれチャンスありますよ! ほら、今日は飲みましょう!」

99 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/03/08 17:51:19.37 teUzoBc3o 70/299


青葉「こうなりゃヤケです! 今日は潰れるまで飲みます!」

夕張「ええ、付き合いますよ!」

ワハハハハ

祥鳳「……ふふっ」

榛名「どうかしました?」

祥鳳「……いえ、こうしてきっちり定期女子会を開いて飲んでるあたり、私達の仲ももうよくわかんないなって思って」クスッ

榛名「……」

榛名「そうですね。榛名もそう思います」ニコ



金剛「……」ジー

100 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/03/08 17:53:59.40 teUzoBc3o 71/299


――――
――

提督(榛名と夕張が交代で秘書官を務めるようになって、しばらく経った)

提督(一時はどうなることかと思ったが、特に問題もなく業務を行っている)

提督(どうやら2人は一緒に飲みに行ったりもしてるらしく、不和が生まれるような素振りもない。少なくとも、表向きは)

榛名「……」ニコニコ

提督「榛名、そこの資料取ってくれないか?」

榛名「はい。こちらですね?」

提督「ありがとう……はぁ」

榛名「お疲れですか?」

提督「ん……すまない。流石に、少しな」

榛名「少しお休みになってはいかがでしょう」

提督「ありがとう。でも、この書類は書き上げないといけないから」

榛名「では、それが終わったら休憩にしましょう。休むことも必要です」

提督「……そうだな。じゃあ――」

ダダダッ

「提督ー!」

バァン

蒼龍「提督! 加賀さんと瑞鶴がぁ!」

提督「……はぁ」

101 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/03/08 17:56:49.94 teUzoBc3o 72/299


提督「また喧嘩してるのか」

蒼龍「そうなんです! 止めてくださ~い!」

提督「赤城は……入渠中か。翔鶴はどうした?」

榛名「今日は非番で外出中です」

提督「そうだったか……祥鳳は?」

蒼龍「ずほちゃんを弄ってて取り合ってくれないんですよね……」

提督「……」

提督「仕方ないな……」

榛名「提督」スッ

榛名「ここは榛名にお任せください。提督のお手を煩わせることではありません」

提督「しかし……」

榛名「提督はそちらの書類を終わらせて、どうぞお休みになっていてください。今回は榛名が対応します」

提督「……わかった。ありがとな」

榛名「いえ。提督のお役に立てることが、榛名の喜びですから」ニコッ

102 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/03/08 18:00:01.65 teUzoBc3o 73/299


榛名「榛名、ただいま戻りました」

提督「Zzz……」

榛名「提督? あ……」

榛名(榛名が戻ってくると、提督はソファに座ってうたた寝しているようでした)

榛名(最近忙しかったですし、やはりお疲れだったようです)

榛名「何かかけるものものは……」ゴソゴソ

榛名(見つけたタオルケットを提督にかけながら、ふと思う)

榛名(今なら、提督に触れられるのではないだろうか。身を寄せることができるのではないだろうか……と)

榛名(でもそれは、きっと卑怯なことで、もし提督にバレてしまったら……きっと困らせてしまう。もしかしたら、軽蔑されて距離を置かれるかもしれない)

榛名(そう思っているはずなのに、ダメだとわかっているのに……榛名の身体は提督の隣に身を寄せ、手は提督の頬をなぞっていた)

103 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/03/08 18:03:23.75 teUzoBc3o 74/299


榛名「提督……」

榛名(小さく呟きながら、ほぅっと息を吐く)

榛名「卑怯な榛名をお許し下さい」

榛名(提督の左肩に頭を預け、右手を絡めるように重ねた)

榛名(提督の手はゴツゴツとして力強く、彼の心を表しているかのように暖かい)

榛名(頬が熱を持ち、胸は早鐘のように高鳴った)

榛名「榛名は今、提督に触れているんだ……」

榛名(ニヤけてしまいそうになる唇を必死に引き結びながら、榛名は自分の指を彼のそれとそっと絡めた)

104 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/03/08 18:05:02.42 teUzoBc3o 75/299


提督「ん……Zzz」

榛名(提督の手ははまるで赤ちゃんのように榛名の手を握り返しくる)

榛名「ふわ……」

榛名(じわじわと滲み出てきた多幸感に榛名は包まれていった)

榛名「はふ……」

榛名(もしかしたら、夕張さんだと思ったのかもしれない。榛名とは全然関係のない夢をみているのかもしれない)

榛名(でも……それでも、今、提督の隣で彼の手を握っているのは間違いなく榛名なのだ。その事実は間違いなく榛名の心を満たしていた)

105 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/03/08 18:06:02.08 teUzoBc3o 76/299


榛名「提督」

榛名(絡めた指にそっと力を込めながら私は最愛の人の名前を呼ぶ)

榛名(たったそれだけのことで、たしかに榛名の心は満たされた気がした)

榛名(最初に感じた罪悪感なんてもう消し飛んでいた。それぐらい嬉しかった。提督に寄り添うことができる、触れることができる……甘い蜜のように溢れ出る陶酔感に榛名は抗えなかった)

榛名「……」フフッ

榛名(絡めた指から伝わる温もりを感じながら、そっと目を閉じる)

榛名(やがて訪れたまどろみの中で、榛名はたしかに気付いていた。榛名はきっと、もう抗えない。抗いたくないのだということを――)

112 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/08 20:46:06.39 MPB7Kkmoo 77/299


――――
――

榛名「提督、提督」ユサユサ

提督「ん……」

榛名「提督、起きてください」

提督「……榛名?」

榛名「はい。おはようございます、提督」

提督「ああ……」ポー

提督「はっ! 今何時だ!?」ガバッ

榛名「もう少しでちょうど1900です」

提督「嘘だろ!? 寝過ぎた!」

榛名「あの、提督……書類なら、榛名がやっておきました」

提督「へ?」

榛名「ですので、確認をお願いします」

提督「……マジ?」

榛名「お疲れのようでしたので」

提督「どれ……」パラパラ

提督(ざっとみた感じだと……完璧だ)

提督「榛名、お前……超優秀じゃん。ありがとう、助かった」

榛名「榛名には勿体無いお言葉、ありがとうございます。お役にたてたのなら嬉しいです」

113 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/08 20:51:09.85 MPB7Kkmoo 78/299


提督「……」ペラペラ

提督(しかこの書類たち……本当に良い感じに仕上がってるな)

提督(秘書官をやり始めてまだそれほど経ってないのに、もう仕事覚えたってのか)パネェ

榛名「あの、提督……」モジ

提督「……ん?」

榛名「その、差し出がましいとは思ったのですが……」モジモジ

榛名「お夕飯、を……作らせていただきました。もし良かったら……召し上がっていただけますか」

提督「まじ?」

提督(普段夕飯は、鳳翔さんのところに行くか、夕張と食べることが多いが……)

榛名「……」フアンゲ

提督(せっかく作ってくれたのに無碍にはできないか)

提督「ああ、頂くよ」

榛名「」パァァァ

榛名「今お持ちしますね!」タタッ

114 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/08 20:55:01.58 MPB7Kkmoo 79/299


榛名「……」ソワソワ

提督「じゃ、いただきます」

榛名「い、いただきます」

榛名「……」ジーッ

提督「」パクッ

榛名「……」ドキドキ

提督「」モグモグ

提督「……うまい」

榛名「本当ですか!?」ガタッ

提督「ああ、榛名は料理も上手なんだな」

榛名「」ヤリマシタ!

115 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/08 20:56:50.90 MPB7Kkmoo 80/299


榛名「こちらは、榛名の一番得意な料理なんです!」

提督「たしかに美味い」モグモグ

榛名「これは隠し味に梅干しを入れてるんです。臭みが消えて、味も引き締まるんですよ」

提督「へぇ~」パクパク

榛名「それからこちらは――」

提督「ふんふん」

榛名「」ハッ

榛名「す、すみません食べてる時に。鬱陶しい、ですよね……」

提督「? そんなことはない」

榛名「提督はお優しいですね」

提督「俺は榛名と話しながら食べるの楽しいよ」

榛名「っ」カァァァ

榛名「……その」モジモジ

榛名「たくさん練習……したんです。だから、提督に美味しいって仰って頂けたことが本当に嬉しくて……」

榛名「榛名、今とっても幸せです」ニコッ

提督「」グハッ

提督(なにこれキュン死する)

116 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/08 21:00:07.88 MPB7Kkmoo 81/299


――――
―― 翌日

夕張「……それで、榛名さんの手料理を堪能したわけですか」ムスッ

提督「うん」ポニテサワサワ

夕張「こんなの浮気ですよ浮気! 」カキカキ

提督「いやだって、せっかく作ってくれたのに断るのもさー……」カミノケサラサラー

夕張「提督は少し無防備過ぎます! 榛名さんの好意は明らかなんですからあんまり甘やかさないでください!」

大淀「……どうでもいいですけど、業務中にイチャつくのやめてくれません?」

提督「え?」

夕張「はい?」

大淀「そんな何言ってのみたいな顔されても困ります!」

夕張「でも私仕事してますよ?」

大淀「だったら、提督はどうして夕張さんの髪の毛を玩んでいるんですか!? そして夕張さんがそれを諌めないのは何故!?」

提督「いや、夕張の髪の毛さらさらで気持ちよくて……」

夕張「別にいつものことなので……」

提督「ポニテにしろロングにしろふわふわにしろ女性の艶やかな髪っていいよね」

大淀「そんなことは聞いてません! 少しは弁えてもらわないと困ります! だいたい、お二人は――」

ガミガミ


榛名「……」コソッ

榛名「……髪の毛」ジー

117 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/08 21:02:57.28 MPB7Kkmoo 82/299


提督「……」カキカキ

榛名「」ソワソワ

提督「んー……」

榛名「」チラチラ

榛名「」ファサッ

提督「……榛名」

榛名「はい!」

提督「今日の演習なんだけどさ、摩耶の練度を――ん?」

―― ドアの隙間

霧島「」パクパク

提督(何やってんだあいつ)

霧島「」サッ

提督(何だあれ……カンペ?)

霧島『髪を褒めて』

提督「髪?」

榛名「」ピクッ

118 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/08 21:04:11.63 MPB7Kkmoo 83/299


榛名「」スススッ

ドア<バタン

提督(なんだったんだ)

榛名「」サラッ

提督「……それで榛名、演習なんだけど」

榛名「……はい」ショボン

提督「?」

提督(なんか榛名が近い)

提督「……榛名、なんか近くない?」

榛名「気のせいかと」

提督「でもさ――」

榛名「……」ファサッ

提督「ああ、そういう……」

榛名「?」

提督「いや、こうして見ると榛名って綺麗な髪してると思ってな」

榛名「」パァァァッ

119 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/08 21:05:35.44 MPB7Kkmoo 84/299


提督(とりあえず、霧島の言うように褒めてみたが……)

提督「……」ジーッ

提督(なるほど、こうして見ると榛名の髪はたしかに綺麗だ)

提督(濡羽色の髪の毛はその名の通り濡れたような艶を伴ってしっとりと波打ち、しかし彼女が身体を動かすとそれに合わせてサラサラと流れるように舞った)

提督(その美しさときたら、彼女の巫女服と美貌も相まってもはや神秘性まで感じるほどである。正直健全な日本男子としては胸ときめかずにはいられない)

提督「……」

提督(加えて、近くにいるせいで見え隠れする胸元とその肌や髪から立ちのぼる甘い香りに胸の高鳴りも止まらない)

提督「その、やっぱり良いシャンプーとか使ってるのか?」

榛名「どうでしょう……ただ、少し気を使っていはいます」

提督「そうか。なんか甘い香りもするしさ」

榛名「そうでしょうか……その、お嫌いですか?」

提督「いや、榛名によく合った良い匂いだと思うよ。でも、その……」

榛名「ありがとうございます!」

提督「ちょっと離れようか。流石に近い」

榛名「嫌です!」

提督「え、あれ? えぇー……?」

120 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/08 21:07:57.54 MPB7Kkmoo 85/299


ドア<ガチャ

夕張「提督、装備改修のことで明石さんから提案があったんですけど」

提督「お、おお夕張! なんだ?」ガタッ

夕張「あら、なんです? わざわざ席を立って。座っててもそっち行きますよ?」

提督「いや、すこし身体を動かしたくてな」

夕張「ふぅん……?」チラッ

榛名「……」ムー

夕張「……」フム

提督「それで、明石がなんだって?」

夕張「あ、はい。それでですね――」

提督「それは――」

榛名「……」ジー

夕張「でも、それなら――」

榛名「!」

121 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/08 21:09:52.22 MPB7Kkmoo 86/299


榛名「」ゴソゴソ

榛名「」ムスビムスビ

榛名「」ポニーテール

提督「――って感じで伝えてくれ」

夕張「わかりました」

榛名「あの、提督!」

提督「ん?」

榛名「……」モジモジ

提督「なんと……」

夕張「……榛名さん?」

榛名「榛名も髪を結ってみました……どうでしょうか?」

夕張「わ、私の真似したからって、提督が靡くわけじゃないですから」

榛名「別に真似したわけじゃありません。ちょっとした気分転換的なものです!」ムスッ

122 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/08 21:10:58.95 MPB7Kkmoo 87/299



榛名「それで提督、どうでしょうか。似合いますか?」

提督「正直めちゃくちゃ可愛い」

夕張「おい」

提督「い、いや! もちろん夕張のポニテもかわいいよ!?」

夕張「そっ、そうじゃなくて――ん?」

榛名「」プルプル

夕張(ニヤけそうになるのを必死に堪えてる……)

提督「……榛名?」

榛名「は、ひゃい!」ニヘラ

榛名「」ハッ

榛名「す、すみません! 見ないでください! 今榛名、とてもだらしない顔してますから!」カオカクシ

夕張「……」

提督「……」

提督(なんだこれ俺に褒められたのがそんなに嬉しかったの?顔真っ赤にしてニヤけそうな唇を必死に引き結んで返事声裏返ってるしその拍子ににやけちゃってるしそれでまた照れちゃったりしてそのはにかんだ笑顔を写真におさめたい)

夕張(なんなんですかこれさっきからポニテ褒められたぐらいでそんなに嬉しそうにしてニヤけるの我慢したり顔隠したりしゃがみこんだりカリスマガードですかあざといにもほどがるでしょいい加減にしてくださいアニメじゃない萌がここにある)

「「可愛い」」

榛名「っ」カァァァ

提督「かわいい」

榛名「う、嬉しいです……」

夕張「かわいい!」

榛名「も、もう……!」テレテレ

提督「青葉! 青葉を呼べ!」

夕張「青葉さぁぁぁん!」

霧島「いい加減にしてください」ヒュッ

提督「ぶっ」

夕張「ぴっ」

123 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/08 21:12:03.60 MPB7Kkmoo 88/299


「「」」

霧島「まったく……いくらなんでも騒ぎ過ぎです。ね、榛名?」

榛名「っ……っ」テレテレ

榛名「榛名褒められちゃった……提督にも夕張さんにも」モジモジ

霧島「……嬉しいのはわかったから、そのニヤけた面どうにかして」

榛名「うふふ」ニコニコ

霧島「金剛お姉様が呼んでるからおいで?」

榛名「でも榛名、今日の業務が……」

霧島「大丈夫。終わったら私も手伝うしさ。それに……」チラッ

提督「」シーン

霧島「司令もこんな状態だし、業務にならないでしょ?」ニコッ

榛名「はは……」

青葉(これが、霧島ネキと言われる所以ですねわかります)パシャパシャ

132 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/27 21:34:58.95 oaNnB/Uto 89/299


――金剛の部屋

金剛「……さて、今日こうして集まってもらったのは他でもありません。榛名と提督についてmeetingするためデス!」

比叡「おー」パチパチ

榛名「えっ」

金剛「以前私は言いました。各自、提督が榛名loveになるための案を考えてくること!と……」

金剛「そろそろいい頃合いです。みんな、当然考えてきましたヨネー?」

比叡「……」サッ

霧島「……」メガネキラッ

金剛「っと、そのまえに現状を聞きましょうか。どうなの? 榛名」

榛名「えっと……先ほど髪が綺麗だと褒めて頂きました!」

霧島「……」

金剛「……」

榛名「……」ニコニコ

比叡「え、終わり?」

133 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/27 21:36:42.32 oaNnB/Uto 90/299


霧島「……霧島の分析によると、これは何も進展していませんね」

榛名「そ、そんなことは……」

金剛「じゃあ進展したんデスカ?」

榛名「……こ、この前提督の手を握りました」テレッ

比叡「ほぅ……」

金剛「ふむふむ」

霧島「……」

榛名「……」エヘヘ

比叡「え、終わり?」

榛名「」テレッ

霧島「いや、照れるところじゃないでしょ」

金剛「だー! 全然話が進みません! ボーイ&ガールじゃあるまいし、もっとこう……ガッといきなさい!」

比叡「」ウンウン

霧島「ケッコン前までは虎視眈々と提督を狙う狩人の眼をしていたのに……どうしたの?」

榛名「それは……」

134 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/27 21:37:53.97 oaNnB/Uto 91/299


榛名「いざケッコンしてしまったら迫るのが恥ずかしくなったというか……」

霧島「本当は?」

榛名「……その、一度フラレてるし、勇気が出なくて」

金剛「ノー! そんなこと言ってたら、いつまで経っても進展しないヨ!?」

榛名「ですが……」

比叡「提督だって榛名のこと憎からず思ってるだろうし、ガンガンいっても良いと思うけど」

榛名「無理に迫ったら避けられてしまうような気がして……榛名は提督に未練たらしい面倒くさい女だと思われたくないのです……」

金剛「んー……」

霧島「はい!」

金剛「ハイ、霧島」

霧島「夕張さんという特定の相手がいる以上、提督を落とすのは難しいと思います」

榛名「……」シュン

霧島「ですが、だからこそ突破口があります!」

霧島「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ。提督を落とす前に夕張さんを味方につけたら良いんです! これが私の案です!」ドヤァ

比叡「おー」

135 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/27 21:38:46.97 oaNnB/Uto 92/299


金剛「悪くない考えネ! どのみち、バリちゃんと対立していては略奪愛しか道はなくなるわけだし?」

榛名「それは榛名も本意ではありません。艦隊に修復不可能な不和が生まれるのは榛名も嫌ですから」

霧島「問題はその方法ですが……」

金剛「ふむ……」

榛名「でも榛名はもう夕張さんと仲良しだと思う……」

比叡「たしかに……よく一緒に遊び行ってるもんね」

金剛「んー……うん。飲み会、partyしましょう!」

榛名「ぱーてぃ?」

金剛「イエース! 私達姉妹と提督、バリちゃんの6人でネ!」

金剛「たしかに榛名とバリちゃんは仲良しネ! But お互いまだ話してないこともあるはずデース。ここはお酒の力を借りちゃいましょー! 私たちでガンガン飲ませマース!」

榛名「えぇっ!?」

霧島「……そうですね。ノミニケーションとも言いますし、ここらで一度腹を割って話すのも必要かもしれません」

金剛「That's right! バリちゃんもここのところ何か考えてるみたいだし、その辺の話も聞きたいところデスネ! そしてあわよくば、酔った勢いで提督にアプローチ!」

榛名「夕張さんの前でですか!?」

金剛「フォローは任せて!」

榛名「で、ですが」

霧島「そうと決まれば日取りを決めて提督を誘わないとですね!」

榛名「ちょ、ちょっと話を」

比叡「なんだか燃えてきたね!」

榛名「……はい」モウヤルシカナイ

136 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/27 21:40:58.55 oaNnB/Uto 93/299


――――
―― 食堂

叢雲「……それで、最近どうなわけ?」モグモグ

提督「どうって?」

叢雲「そんなの夕張と榛名とのことに決まってるじゃない」ショウユトッテ

提督「いや、特に問題はないが……」ハイ

叢雲「ふぅん? 正直意外ね。ぐいぐい迫られてるのかと思ったわ」

提督「……まあ俺も最初はどうなることかと思ったけどな。でも榛名は分別もあるし」

提督「それに一応……ちゃんとフッてるからな」

叢雲「……」モグモグ

叢雲「ま、そうね。それよりあんた……私に何か言うことあるんじゃない?」

提督「ん? んー……」パクパク

提督「改二おめでとう?」

叢雲「ありがと。でもそれは実装当日に聞いたわ。ほら、改二になった私を見て何かないわけ?」

137 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/27 21:43:48.54 oaNnB/Uto 94/299


提督「う~ん……」

叢雲「……はあ。もういいわ。こういうのって催促することでもないと思うし」

提督「催促ってことは、俺がなんかお願いされたりしてるってことか?」

叢雲「違うわ。別に気にしなくて大丈夫よ。大したことじゃないし」

提督「そうか……むむ」

夕張「提督ー! そろそろ時間ですよ!」

提督「……っと、すまん。そろそろ行くな」

叢雲「はいはい。演習指揮頑張りなさい」

提督「そうは言っても相手は元帥殿だからな……」

叢雲「何言ってんの。あんただって甲勲章貰ってるんだから実力は遜色ないはずよ。負かしてやるぐらいの気持ちでいきなさい」

提督「……なんか叢雲ってオカンみたいだよな」

叢雲「へぇ……?」ニコッ

提督「おっと、もう行かないと」アワワ

提督「ああ、その新しい制服も似合ってるぞ。なんかエロいし」ガタッ

叢雲「……あんたはさっきから一言余計よね」

提督「じゃあな」タタッ

叢雲「まったく……」

叢雲「似合ってる、か。ちゃんと言えるじゃない」

叢雲「……」ニヘラ

138 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/27 21:45:59.20 oaNnB/Uto 95/299


――――
――

提督「……」カリカリ

榛名「提督、先の演習の件で元帥からお褒めの言葉と観艦式の依頼が来ています」

提督「観艦式ぃ? ちょっと見せて」

提督「……ちょっと張り切りすぎたな」

榛名「勝っちゃいましたもんね」

提督「でも元帥殿だって主力ではなかったはずだ」

榛名「それはこちらも同じです。もっとも、夕張さんが旗艦で提督が指揮を取るとなった時点で負けはないと榛名は思ってましたよ?」

提督「その信頼は素直に嬉しいが……この展開は正直面倒だな。光栄ではあるが……当然主力級を出さなければならないのだろうな」

榛名「それを期待されていると思います」

提督「しかしまさか主力全員でここを空けるわけにはいかないしな。少し考えるか……後で」

榛名「忘れちゃダメですよ?」

提督「わかってる。でも、忘れてても榛名が教えてくれるだろ?」

榛名「もう……ずるいです。そう言われては、榛名が忘れるわけにはいきません」

提督「はは、冗談だ。でも、頼りにしてるのは本当だよ」ニコッ

榛名「~っ」キューン

139 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/27 21:48:11.28 oaNnB/Uto 96/299


榛名「……あの、提督。今度お姉様たちとお酒を飲みに行くんです。と言っても、鳳翔さんのところでですが……もし良かったら提督もご一緒に如何ですか? もちろん、夕張さんも一緒に」

提督「ん……珍しいな。金剛が酒を飲むなんて」カキカキ

榛名「はい。ですので提督もご一緒にどうかと思いまして」

提督「そうだな。せっかくだから混ぜてもらおうかな」

榛名「はい! 夕張さんにも榛名から伝えておきますね」

提督「わかった。楽しみにしてるよっと……ふぅ」ノビー

榛名「……お疲れでしたら、少し仮眠なさいますか?」

提督「そうだな……」

提督(以前仮眠を取ってから、榛名はこうして度々休憩を進めてくるようになった)

提督「うん。20分ぐらいで起こしてくれ」

提督(秘書官としての榛名の働きぶりは素晴らしく、長い間秘書官を務めていた夕張と比較しても遜色ないレベルだ)

提督(その安心感もあり、緊急の用件が無い限り榛名の好意に甘えるようにしている)

140 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/27 21:49:21.42 oaNnB/Uto 97/299


提督「榛名も休んでていいからな?」

榛名「ありがとうございます。この報告書の確認が終わったら休憩させていただきます」

提督「うん。じゃあ、すまないが少し寝るな」

提督(仮眠を取るようになってから身体の調子はすこぶるよく、作業効率も上がっている。気付かないうちに疲労は溜まっているのだと実感した)

提督(ソファに腰掛けながら榛名をちらりと見やると、こちらを見ていた彼女とパチリと目が合った)

提督(彼女は照れたように微笑み、ごゆっくりおやすみくださいと優しく言った)

提督(瞼を閉じて数分と経たずに押し寄せてくる睡魔に俺が負けるのにそう時間はかからなかった)

141 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/27 21:50:02.54 oaNnB/Uto 98/299


榛名(書類を片付け、大きく伸びをする。提督は静かに寝息をたてていた)

榛名「……」チラッ

榛名(提督が眠りについてからまだ5分ぐらいしか経っていない。指定の時間まであと15分はある)

榛名「」ソーッ

榛名(提督を起こさないように静かに近付き、その隣に腰を降ろす)

榛名(提督の右手と榛名の右手を絡ませ、胸に顔を埋める)

榛名(大きく息を吸い込むと提督の匂いが鼻腔をくすぐり、ピリピリとした電流が身体中を荒々しく駆け巡った)

榛名「ん……ふぁ……」

榛名(頭の中が焼けるように熱い。眼の奥で光が瞬いて、じわじわとお腹に熱がこもった)

榛名「~っ」ビクッ

榛名(全身を駆け巡る刺激が徐々に治まるにつれて、身体が脱力していく。同時に甘い蜜のような幸福感がじんわりと浮き立った)

榛名(激しくなった動悸が収まるのを待ってから、榛名はそっと顔をあげた)

142 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/27 21:52:12.93 oaNnB/Uto 99/299


榛名(あれから、榛名はこの行為をやめられなくなっていた)

榛名(それどころか、どんどん積極的になっていく自分を抑えられないでいる)

榛名(最初は隣に座り、手を握るだけだった)

榛名(次は抱きついてみた。提督の胸に顔を埋めると胸が高鳴った)

榛名(身体をなぞり、頬を撫で、ともかく榛名は提督に触れた。提督の温もりを感じたかった。身体に、心に焼き付けたかった)

榛名「提督……」

榛名(頬に触れ、唇をなぞり、なぞった指にそっと口付ける)

榛名(頬が火照り、呼吸が少しずつ荒くなっていく。早鐘のように高鳴る心臓の音が鼓膜の奥でうるさいくらいに反響していた)

榛名「……」ゴクッ

榛名(接吻……をすれば、このドキドキは収まるのだろうか)

榛名(けど、それはあまりにもリスクが高過ぎる。そして卑怯極まりない)

榛名(……でも、こうして眠っている提督に近付き、触れている時点で榛名は卑怯で卑屈な女なのかもしれない)

143 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/27 21:54:01.15 oaNnB/Uto 100/299


――――
―― 居酒屋 鳳翔

榛名「……」コクコクッ

榛名「ぷは。はぁ……」

足柄「あら? 榛名じゃない。珍しいわね。1人で飲んでるなんて」

陸奥「ほんとね。今日は夕張や祥鳳はどうしたの?」

鈴谷「榛名さんちーっす」

榛名「榛名だってたまには1人で飲む時もあります。そちらも……なんだか珍しい組み合わせですね」

陸奥「そう? ま、たまにはね」

鈴谷「せっかく会ったんだし、榛名さんも一緒に飲もー?」

榛名「え、ですが……」

足柄「いいからいいから! 色々話聞かせなさいよ」

144 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/27 21:55:08.43 oaNnB/Uto 101/299


陸奥「それで? 提督と何かあった?」

足柄「え?」

鈴谷「そうなの?」

陸奥「いや、珍しく1人で飲んでるからさ」

榛名「いえ……そういうわけでは」

足柄「んー? 何々? なんかあるならここで全部吐き出しちゃいなさいよ」

榛名「……その」

榛名「提督と何かあったというわけではないのですが……少し、自己嫌悪を……」

鈴谷「自己嫌悪? 榛名さんみたいな良い人が?」

榛名「とんでもないです。榛名はそんな立派な人ではありませんから」

足柄「よくわからないけど、提督絡みではあるってことよね」

榛名「まあ……」

足柄「う……」

鈴谷「う?」

足柄「羨ましい!」

145 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/27 21:56:24.78 oaNnB/Uto 102/299


足柄「うわぁぁぁ! 私だってそうやって提督とのことで悩んだり落ち込んだりしたぃぃぃ!」

鈴谷「あはは、足柄さんじゃ無理っしょー」ケラケラ

足柄「なんでよ!?」

鈴谷「だってさー、明らかに練度低いじゃん」

足柄「うぐっ」

陸奥「……まあそうねぇ」←練度80

鈴谷「……」←練度59

榛名「……」←練度116

足柄「……」←練度1

足柄「なにこれおかしくない?」

足柄「べ、別に練度低いからって提督と良い関係になれないわけじゃないし!」

榛名「ええ。提督はこの鎮守府で嫌いな人はいないと仰っていましたよ?」

足柄「良いこと言った!」

陸奥「でも練度が私達にとって特別なものになってるのは確かよね」

146 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/27 21:57:44.34 oaNnB/Uto 103/299


足柄「はぁ……もう直談判しに行こうかしら。いい加減戦場に出ないとなまっちゃいそうだわ」

鈴谷「練度は大本営の認可がないと上がらないもんね」

足柄「そうなのよねぇ……ケッコンなんて遠すぎるわ。もうなんとかして既成事実を作るしかないのかしら」

陸奥「物騒なこと言うのね」

足柄「婚活よこんかつ!」

足柄「既成事実(こんかつ)」

鈴谷「なにそれこわい」

榛名「残念ですが、提督を陥落させるのは難しいですよ?」

足柄「私頑張る!」

鈴谷「ははぁ~ん。さては榛名さん、遠慮しちゃって提督と進展してないなぁ?」

榛名「う……遠慮と言いますか。その……」

足柄「何!? そんなんじゃ駄目よ! せっかくケッコンしたんだから突撃よ! 突撃!」

榛名「ですが、そう単純な話ではなくて……」

147 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/27 21:59:02.97 oaNnB/Uto 104/299


足柄「よくわかんないけど気にすることないわよ! 男と女だもの、それは色々なことがあるに決まってるわ!」

足柄「私もそうだもの」

陸奥「ん?」

鈴谷「え?」

榛名「……」

足柄「でも、そうやって色々あるうちにいつの間にか絆が生まれてるの。私もさ、昔はね……」フゥ

足柄「あれはそう、私が艦娘になる前……まだピッチピチのJKだった頃の話よ……ふふっ、懐かしい」

榛名「……」

足柄「……」

陸奥「……」

鈴谷「……」

足柄「……」

陸奥「……」モグモグ

足柄「……」

鈴谷「……」ゴクゴク

足柄「えぇそうよ! ないわよ! そんな経験全っ然ないわよ! 」

鈴谷「ぶふっ、急に切れないでよ」ゴホッ

陸奥「なんですぐにバレる見栄を張ろうとするのか理解に苦しむわ」

148 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/27 22:02:11.62 oaNnB/Uto 105/299


足柄「いいじゃないちょっとぐらい! イメージトレーニングはバッチリだから大丈夫よ!」

足柄「ともかく! 榛名はもっとグイグイ行きなさい! 姉の金剛をもっと見習うべきよ!」

陸奥「まあそれは同意するわ。榛名、あなたの働き次第では私達まとめて提督に愛してもらうことも夢じゃないの。わかるわね?」

陸奥「もちろんあなたがハーレムに反対していなければ、だけど」

榛名「そういうことでしたら、そもそも榛名は夕張さんと提督の中に割って入ろうとしているわけですから……ハーレムが嫌だという我儘は言えません」

榛名「ですが、提督はああいうお人なので……あまりハーレム、というのは好まないようです。そういうところも素敵ですが」

鈴谷「……でもさ、男の人的にはハーレムってやっぱ夢じゃないの?」

榛名「どうなのでしょう……」

足柄「実際のところさー、榛名がその身体を使って誘惑したらコロッといくんじゃない? 意外に」

陸奥「……コロッとはいかなそうだけど、なし崩し的に関係は持てそうよね」

鈴谷「そうだったらチョロ過ぎじゃん?」

榛名「そんな簡単にはいかないと思いますが……」

149 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/27 22:03:40.89 oaNnB/Uto 106/299


榛名「それに榛名、特段身体に自身があるわけではないですし。一応スタイルが崩れないよう気を使ってはいますが……」

足柄「あんたそれ、龍驤の前でも同じこと言えるの?」

榛名「う、えっと……りゅ、龍驤さんも引き締まった良い身体をしていると思いますよ?」

鈴谷「とりあえずさ、榛名さんはサラシやめてブラにしよ?」

榛名「え、急になんです?」

鈴谷「やっぱりさ、サラシより可愛いじゃん? それにせっかく立派なモノ持ってるんだからさ、サラシで潰しちゃうのは勿体無いよ」

榛名「ブラ……」

陸奥「何なら私が見繕ってあげるけど?」

榛名「本当ですか? それなら是非! 本当は少し憧れてたんです」

足柄「そしてその勝負下着で夜這いをかけるってわけね!?」

榛名「えっ」

150 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/04/27 22:09:17.80 oaNnB/Uto 107/299


陸奥「夜這い……は無理じゃないかしら。きっと夕張さんと一緒に寝てるだろうし」

足柄「なんて羨まけしからん」

鈴谷「一緒に、かぁ……」

榛名「……」

足柄「榛名負けてるじゃない! そんなんじゃ駄目よ!」

榛名「榛名はまだ大丈夫です……」

足柄「仕方ないわねぇ……カツを! カツを食べましょう!」

鈴谷「ぅえっ!? 重いよ!」

足柄「験担ぎよ! もちろん勝つためにね! しっかり食べて元気つけなさい」

榛名「足柄さん……」

陸奥「カツはまあ無理して食べなくてもいいけど」

足柄「なんでよ!」

陸奥「あなたの思うように、悔いがないように……頑張ってみなさい。お姉さん、応援してるからさ」

鈴谷「鈴谷も相談ぐらいなら乗れるし」

足柄「ケッコンしてるんだから、遠慮なんていらないのよ!」

榛名「みなさん……ありがとうございます」

榛名「榛名、頑張りますね!」

足柄「そうと決まればカツを食べましょう!」

鈴谷「もう自分が食べたいだけでしょ……」

榛名「はい! 榛名、カツ食べます!」

足柄「お、いいわね! ガンガン行きましょう!」

榛名「榛名、ガンガンいきます!」

榛名「榛名、気合!入れて!食べます!」

157 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/05/20 23:10:30.55 USC7fjcio 108/299


―― 大浴場前 廊下

夕張「……」パタパタ

夕張(まさか部屋にシャンプーを忘れちゃうなんて……また提督待たせちゃうから少し急がないと)

夕張「ん?」

ビスマルク「……」キョロキョロ

夕張(ビスマルクさん? お風呂の前でいったい何を……)

ビスマルク「」コソコソ

夕張「ちょちょっ!」

ビスマルク「」ビクッ

夕張「ビスマルクさん、そっちは男湯ですよ!」

ビスマルク「あ、あら夕張じゃない。あなたもお風呂?」ファサッ

夕張「そうですけど……今、男湯に入ろうとしてませんでした?」

158 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/05/20 23:13:34.44 USC7fjcio 109/299


ビスマルク「……」プイ

金剛「そっぽ向いたって無駄デース! 私だってしっかり見ましたからネ!」

夕張「うわ、金剛さんいつの間に……」

金剛「今バスタイムが終わったところネー」スタスタ

金剛「こっちは今提督が入浴中です! そこに入っていこうなんてなんて羨ましい!」

夕張「……本心が隠しきれてませんけど」

金剛「大方ラッキーすけべ? をしようとしたんでしょうけど、そうはいきません」

金剛「大体そういうのは偶然起こるから許されるのであって、意図的に行ってはただの覗きと一緒デース!」

ビスマルク「し、失礼ね! 覗きなんてしないわよ! 私はただ、アトミラール……提督の下着を少し借りようと思っただけ!」

夕張「えっ」

金剛「What!?」

夕張「え? あの、えー?」

金剛「……変態でしたか」

ビスマルク「何よ。これがこの国での愛情表現じゃないの?」

159 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/05/20 23:16:09.16 USC7fjcio 110/299


夕張「いや、そんな愛情表現普通しませんよ」

ビスマルク「え? みんなやってるんでしょう?」

金剛「無知を装って誤魔化そうたってそうはいきません! 公然と行われることだと思ってるなら、なんでコソコソしてたデース!? やましい気持ちがあったに決まってマス!」

ビスマルク「私の国には無い風習だから少し恥ずかしかっただけよ」

夕張「いや、だから日本にもそんな風習はありませんって」

金剛「いくらHENTAIの国とはいえ、リアルにやったら犯罪デース」

ビスマルク「なっ、え……?」

ビスマルク「そ、そんなはずないわ! だってプリンツがそう言ってたもの!」

ビスマルク「あの娘、そう言っていつも私の下着を持って行くわ」

金剛「Oh……」

夕張「……マジですか」

160 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/05/20 23:20:50.48 USC7fjcio 111/299


夕張「とりあえず、それは嘘なので下着は諦めてください。それと、オイゲンさんとは一度お話する必要があると思います」

ビスマルク「……ホント、なの?」

夕張「……」コクリ

ビスマルク「オイゲン……あの娘……!」ワナナワ

ビスマルク「用事ができたから失礼するわ!」

夕張「困ったことがあったら相談してください」

ビスマルク「Danke. 助かるわ」

夕張「もう提督の下着盗んだりしたらダメですからね!」

夕張「ふぅ……まったく」

夕張「……」

夕張(……どう取り繕っても、やっぱり提督に好意を持つ人は多い)

金剛「……とんだ変態どもでしたね」ヤレヤレ

夕張(そろそろ、腹をくくらないとかな……)

夕張「はぁ……」

夕張「とりあえず金剛さんはそのポッケの下着を返してくださいねー」

金剛「」ドキーン

161 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/05/20 23:24:45.95 USC7fjcio 112/299


――――
――

夕張「……」カリカリ

提督「……」フムフム

夕張「……あの、提督」

提督「うん?」

夕張「広報から届いた榛名さんのポスター眺めてないで仕事してくれません?」

提督「ん……いや、でもこれ可愛くてさ。なかなかいい仕事するよな。こんぷてぃーく」

夕張「可愛いですけど……それはそれ、これはこれです」

提督「や、もちろん夕張も可愛いぞ!」

夕張「……ありがとうございます。でも、仕事はしてくださいね」

ドア<コンコン

夕張「はーい」

162 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/05/20 23:28:34.05 USC7fjcio 113/299


榛名「失礼します」

提督「ん」

榛名「あの、本日はお日柄も良くて……」

提督「うん」

榛名「その……」

夕張「?」

榛名「覚えておいでですか? 先日お話した……」

提督「ああ、飲み会か?」

榛名「」パァァァッ

榛名「はい! そうです! ぱーてぃ、です!」

榛名「失礼かとは思ったのですが、一応確認に参りました!」

提督「はは、心配症だな」

夕張「そうですよ。提督が飲みの日を忘れるわけないじゃないですか」

163 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/05/20 23:29:37.63 USC7fjcio 114/299


夕張「そんなに楽しみだったんですか?」

榛名「はい! 最近は提督とご一緒できなかったですし……」

夕張「ですって。ほら、時間までに仕事終わらせないと」

提督「む……そうだな。そう言われては片づけざるを得ない」

榛名「今日はたくさん仕事あるんですか?」

夕張「そういうわけじゃないんですけど……提督ったら、榛名さんのポスター眺めて全然仕事しないんですから」

榛名「えっ」

提督「いや、だってさ……良く撮れてるよこれ。ほら、こんなに可愛い」

榛名「っ」カァァァ

榛名「も、もう提督! ちゃんと仕事しないと駄目ですよ」

榛名「か、可愛いと仰っていただけるのはとても嬉しいですが……今日は飲み会もありますので」

提督「ん……そうだな。すまない」

榛名「それに、提督がお望みでしたら榛名はいつだってお側に参りますから……もっと実物の榛名を見て欲しい、です……」モジモジ

提督「榛名……」キューン

夕張「ちょっと! 私がいるのにいい感じにならないでください!」グイッ

提督「ととっ」

164 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/05/20 23:31:35.71 USC7fjcio 115/299


榛名「……」ムーッ

夕張「ほら、仕事しますよ!」

提督「はいはい」

榛名「……では、今夜楽しみにしてますね」

提督「ああ。19時だったよな?」

榛名「はい! お姉様たちも待ってますから……遅刻しないでくださいね?」

提督「もちろんだ。今日の飲み会は俺も楽しみだからな。心配しなくても遅刻なんてしないよ」

夕張「さ、そうと決まれば仕事ですね」

提督「ん、うん……そうね。仕事だね……」

夕張「ほら、やりますよ」

165 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/05/20 23:32:35.84 USC7fjcio 116/299

――――
――

提督「おい夕張、急げ急げ!」

夕張「もう完全に遅刻ですねこれ……」パタパタ

提督「まさかあのタイミングでな……」

夕張「えぇ……那珂ちゃんにあんな絡まれるなんて」

提督「うぅむ……遠征ばっかでフラストレーションが溜まっているのだろうか」

夕張「う~ん……そういうわけではないと思いますが……たまには目一杯歌わせてあげたらいいんじゃないですか? 神通も怖いですし……」

提督「……そうだな。那珂ちゃんを蔑ろにすると怖いもんな。神通」

夕張「溺愛してますよね」

提督「まあしちゃう気持ちはわかる。あんな可愛い妹がいたらそりゃあなぁ……」

166 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/05/20 23:35:21.29 USC7fjcio 117/299


夕張「……お兄ちゃんって呼んであげましょうか?」

提督「いや、いい」

夕張「なんでですか!?」

提督「え、いや……だってお前妹じゃなくて嫁候補だし」

夕張「提督……」

提督「」テレッ

夕張「候補ってどういう意味ですか?」

提督「深い意味は無いよ!? ただまだ結婚カッコガチはしてないからさ!」

夕張「ふぅん……?」

提督「いや、その……この戦」

夕張「わぁーストップストップ! それ以上は駄目です! フラグですからぁ!」

提督「……」

夕張「……」

提督「……じゃ、じゃあ急ごうか! 榛名たちも待ってることだし」

夕張「……はぁ。ですね」

167 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/05/20 23:37:39.71 USC7fjcio 118/299


――居酒屋 鳳翔

ガラッ

提督「榛名たちはどこだ?」

夕張「えっと……」キョロキョロ

隼鷹「お、提督じゃーん!」

提督「ん?」

龍驤「あー、ちょっとキミキミ! こっち来て!」

提督「すまんな。今日は先約があるんだ」

隼鷹「かぁ~、固いこと言うなよなー」

千歳「そうですよ提督、私達の仲じゃないですか」ムギュ

提督「ほわぁっ!?」

千歳「うふふ、なんです? 変な声出して」

提督「なんです? じゃないわ! いきなり後ろから抱きつくな!」

千歳「ふふっ、当ててるんですよ?」

夕張「ちょっと! 私の前でそんなことするなんていい度胸ですね!」

168 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/05/20 23:39:35.54 USC7fjcio 119/299


千歳「あら、これは失礼」パッ

夕張「……」ムー

隼鷹「おーそのまま連れてきてよ」

千歳「だそうですよ?」タユン

夕張「ぐぬぬ」

龍驤「うぎぎ」

提督「いや、今日は先約があるって」

千歳「まあまあ。少しだけですから」グイッ

提督「うわわ」

夕張「あ、ちょっと!」

169 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/05/20 23:41:12.89 USC7fjcio 120/299


千代田「もうお姉! ちょっと近すぎじゃない!?」

提督「まったくもって同感だ」

隼鷹「ほらほら駆けつけ三杯!」

千歳「はい、どうぞ」トクトク

提督「いや、だから待てって」

隼鷹「……私さぁ改二祝い何も貰ってないよね」

龍驤「それならウチもや!」

千歳「そう言えば私も貰ってませんね」

千代田「……千代田もだけど」

提督「……一杯だけな」

隼鷹「ひゅー! そうこなくっちゃ!」

夕張「ちょっと提督!」

170 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/05/20 23:42:02.82 USC7fjcio 121/299


金剛「テイトクぅ~!」ゴゴゴ

提督「ひっ」

金剛「遅刻して来た上に何やってるデース!」

提督「いや、違うんだよ金剛。これはだな……」

金剛「違わないデス! もう! 提督が遅刻したせいでこっちは大変なんですからね!」

金剛「ほら! 早く来てください!」グイッ

隼鷹「ちょっと待ちな! 先約があるのはわかった。だが、提督か夕張のどっちかは置いてってもらおうか!」

提督「先約あるのわかってないだろそれ」

金剛「そう言われても、はいどうぞって聞くわけにはいかないデース!」

龍驤「ふぅん? だったらどうするん?」

金剛「バリちゃんを置いていきマース!」

夕張「知ってた」

171 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/05/20 23:43:09.30 USC7fjcio 122/299


金剛「ただし、1時間だけネ!」

夕張「……仕方ありませんね。ほら、榛名さんも待ってるでしょうし、提督は行ってください」

提督「いいのか?」

夕張「酔っぱらいに道理は通じませんから。それに……」チラッ

千歳「?」タユ

夕張「千歳さんとはさっきのこととかちょっとお話があるので」

龍驤「ほぅ……手貸すで」

提督「ほ、ほどほどにな?」

金剛「OK! そうと決まればレッツゴー!」グイッ

180 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/17 22:59:09.40 8IKW9oQ+o 123/299


提督(金剛に連れられて辿り着いた先はそう、混沌だった)

提督(比叡は右手の箸に刺し身を挟んだままテーブルに突っ伏し、霧島は榛名に絡まれて青い顔をしている。テーブルの上はたくさんの皿で埋め尽くされ、榛名はというとあろうことか一升瓶を抱えてそれを飲んでいた)

提督「おい金剛……榛名ってこんな飲み方するやつだったか?」

金剛「……」ジトッ

金剛「あの榛名がこんな飲み方する理由をよく考えてください」

提督「うぐっ……」

金剛「今帰ったヨー」

榛名「」パァァァッ

榛名「お姉様! と……?」

提督「よお榛名。ごめんな、遅れちゃって」

榛名「提督!」

榛名「遅いです! もう待ちくたびれて待ちくたびれて……榛名はもう……!」プンスカ

提督「すまん……」

榛名「提督」ポンポン

提督(榛名は彼女のすぐ隣をポンポンと叩いた)

提督「……座れって?」

榛名「」ニッコリ

提督「……じゃあ失礼して」ヨイショ

181 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/17 23:08:31.30 8IKW9oQ+o 124/299


榛名「……」ジーッ

提督(めっちゃ見られてる)

金剛「ハイ提督。とりあえず、乾杯しましょー!」

提督「お、おう」

金剛「それじゃ、カンパ~イ」チン

提督「乾杯」チン

榛名「です」チン

金剛「」コクコク

提督「」ゴクゴク

榛名「」ゴクゴクゴク

榛名「ぷはぁ!」

提督「お、おう。良い飲みっぷりだな」

榛名「提督!」

榛名「どうして遅刻したんですか!?」

182 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/17 23:17:39.86 8IKW9oQ+o 125/299


提督「俺も遅刻はしたくなかったんだが……のっぴきならない事情があってだな」

榛名「」ムー

榛名「……した」

提督「ん?」

榛名「遅刻しないって言いました!」

提督「そ、それはそうだが……ごめんな」

榛名「……」プクゥ

金剛「テイトクぅ……榛名は今日を本当に楽しみにしてたんです。 ごめんの一言で済んだらポリスメンはいらないですよ?」

提督「ぐっ……」

金剛「テ・イ・ト・ク?」ジーッ

提督「……わかった。どうしたら良い?」

金剛「」ニコッ

金剛「榛名、提督に何して欲しい?」

183 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/17 23:21:20.45 8IKW9oQ+o 126/299


榛名「……抱っこ、して欲しいです」

提督「いや、それは駄目だろ」

榛名「抱っこ!」

提督「……酔ってますね榛名さん」

金剛「提督? いいじゃないですか抱っこぐらい」

提督「いや、そうもいかないだろ。子供を抱っこするのとは違うんだぞ」

金剛「心配いらないヨー? 酔った榛名はちょ~っと幼くなるから」

提督「そういうことじゃなくてさ……」

榛名「……」ムー

金剛「No! できるはずですヨ!」

榛名「」イソイソ

金剛「本当にごめんなさいって思ってるなら……申し訳ない気持ちで胸がいっぱいなら……相手が誰であれ抱っこできる……!」

榛名「」スクッ

金剛「たとえそれが……榛名?」

榛名「」ヨイショ

提督「ん?」

榛名「」ストン

提督「んん?」

榛名「」ギュッ

提督「榛名さん!?」

184 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/17 23:31:24.96 8IKW9oQ+o 127/299


榛名「ふふっ」スリスリ

提督(あぐらを組んで座っていた俺の膝に上に彼女はいた)

提督(とろん、と蕩けたような瞳で俺を覗きこみ、すりすりと俺の胸に顔を埋める)

提督(ほんの少し開いた彼女の胸元では柔らかそうな双丘がちらつき、その下では彼女の短い袴が今にもめくり上がらんばかりにはだけている)

提督「」ゴクリ

提督(これはやばい。色々やばい)

金剛「ん~榛名、Good job!」

提督「全然グッジョブじゃないよ!?」

榛名「榛名は大丈夫です!」

提督「俺が大丈夫じゃないから!」

榛名「なんてったって改二ですから! ケッコンもしましたし」ギュー

提督「ちょ、そんなにくっつかないで……」

提督「って、酒臭! 誰こんなに榛名に飲ませたの!?」

185 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/17 23:41:35.29 8IKW9oQ+o 128/299


榛名「もう提督! 女の子に臭い、なんて、めっです!」

金剛「そうですよ提督? それに飲ませたなんて心外デース。榛名が自分で飲んだんデスヨ」

金剛「飲んだ理由はわかりますよね?」

提督「そ、それは……はい」

金剛「なら、やるべきこと……わかりますよネ?」

提督「わかった……が、とりあえずこの姿勢はやめてくれ。俺の理性がヤバイ」

榛名「いやです!」

提督「嫌かぁ……」

186 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/17 23:50:00.09 8IKW9oQ+o 129/299


榛名「提督、榛名が食べさせてあげます! 何か食べたいものはありますか?」

提督「えっと……」チラ

金剛「」ニコッ

提督「……じゃあその唐揚げを」

榛名「はい! あ~ん」スッ

提督「あ、あーん」パク

榛名「美味しいですか?」

提督「うん」モグモグ

榛名「このお刺身も美味しいですよ。どうぞ」

提督「あー」パク

榛名「」ニコニコ

提督(なにこれ。恥ずかしいけど正直幸せ)


187 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/17 23:58:53.45 8IKW9oQ+o 130/299


金剛「提督? 自分ばかりじゃなくて、榛名にも食べさせてあげてください」

提督「ほぁ!?」

榛名「え、いいんですか?」

金剛「もちろん!」

提督「いや、ちょ」

榛名「あ、あー」テレテレ

提督「えー……」

榛名「……」アー

提督「えっと、じゃあ……」スッ

榛名「」パクッ

榛名「とっても美味しいです」ニコッ

188 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/17 23:59:43.78 8IKW9oQ+o 131/299


金剛「」ニコニコ

金剛「そういえば提督ぅ……榛名とケッコンしたということは、今提督は私の義弟ってことだよネー?」

提督「はぁ……?」

金剛「お姉ちゃん、って呼んでも良いんだよ?」

提督「何言ってんのお前」

榛名「」スリスリ

金剛「ノー! 恥ずかしがらないでクダサーイ!」

榛名「」スンスン

提督「恥ずかしいとかじゃなくてさ……榛名、匂い嗅がないで」

榛名「」シュン

提督「今更呼び方変えるのもな……お姉ちゃんなんて言う柄でもないし」

189 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/18 00:02:18.39 gjjOPDwho 132/299


金剛「むー……」

提督「いや、確かにお前は良い姉だと思うよ?」

榛名「」サワサワ

提督「でもさ、俺はお前を姉とは思えないし……榛名、俺の胸に手を這わせるのをやめなさい」

榛名「」ムー

金剛「むー……姉弟プレイはお預けですか」

提督「プレイって……お前そういうのどこで覚えてくるんだよ」

榛名「」ンー

金剛「トップシークレット、ですよ?」

榛名「」チュー

提督「榛名、ストップ」ガシッ

提督「何しようとしてんの?」

榛名「ちゅー……」

提督「それはいけない」

190 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/18 00:09:09.70 gjjOPDwho 133/299


榛名「もう! あれもダメこれもダメって、提督は我儘です……」

提督「いや、どう考えてもそんなことはないと思う」

榛名「それに、さっきからお姉様とお話してばかり……榛名ともお話してください!」

金剛「Oh、ごめんね榛名」

榛名「いえ、榛名は大丈夫です!」ニコー

提督「ん、そうか」

榛名「提督は大丈夫じゃないです!」プクゥ

提督「あれ!?」

榛名「……」ジトッ

提督「……なんでしょう」

榛名「」スッ

提督「急に頭差し出して何?」

金剛「撫でろってことですヨ!」

191 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/18 00:12:22.08 gjjOPDwho 134/299


提督「えぇ? じゃあ……」スッ

提督「……」ナデナデ

榛名「……」パァァァッ

提督「……」ナデナデ

榛名「んふふ」スリスリ

提督(……可愛い)

ガタッ

金剛「お?」

夕張「……」ワナワナ

夕張「提督! 何してるんですか!?」

192 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/18 00:15:27.89 gjjOPDwho 135/299


提督「ち、遅刻のお詫びです……」

夕張「近すぎます! 離れてください!」

提督「まあ、そうなるな」

夕張「」ギロッ

提督「はい! ただいま!」

提督「そういうわけだから……榛名、もう離れて」

榛名「嫌です」

提督「いや、でも俺ももうこれめっちゃ怒られそうっていうか、怒られてるっていうか」

提督「だから、な?」グイッ

榛名「ん!」ギュー

夕張「……」

提督「榛名! 夕張が怒ってるから! 青筋ビキィだから!」

夕張「……」スタスタ

榛名「……」ギュッ

193 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/18 00:18:50.07 gjjOPDwho 136/299


夕張「……」ジトー

提督「あの、夕張さん……?」ビクビク

夕張「……」スッ

夕張「」ギュッ

提督「ふわっ!? 夕張……?」

夕張「静かに」ギュー

金剛「ヘイ提督ー、これが両手に花ってやつデスネー?」

提督「正直そんな羨ましい状況なのかはわからないが……」

榛名「」ムムム

夕張「」フン

榛名「榛名が先に座ったんですよ!」

夕張「そんなの関係ありません。提督は私のなんですから」

194 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/18 00:19:38.72 gjjOPDwho 137/299


榛名「夕張さんはいつも提督と一緒にいるじゃないですか!」

夕張「当然です。私は提督の奥さんなんですから!」

榛名「それなら榛名だって提督のお嫁さんです!」

夕張「私が正妻です! 榛名さんなんて良くて側室ですよ側室!」

榛名「」ムー!

夕張「私はもうキスもHもしましたし」フフン

提督「こ、こら夕張……そういうこと言うな」アワアワ

榛名「は、榛名だって……」

夕張「してませんよね? 当然です。提督は私のなんですからね!」

榛名「……」ムー

榛名「」ジワッ

榛名「うわぁぁん。お姉様ぁ……!」ヨタヨタ

金剛「よしよし。泣かないの」ナデナデ

榛名「うぅ……榛名だって榛名だってぇ」ギュー

金剛「うん。わかってます。わかってマスヨ」ナデナデ

195 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/18 00:21:02.26 gjjOPDwho 138/299


提督「ゆ、夕張……榛名泣いちゃったぞ」アワワ

夕張「……知りません」ギュッ

夕張「提督は私のなんですから……」ギュー

提督「……」ポリポリ

榛名「……夕張さんのアホー!」グス

夕張「」イラァ

夕張「榛名さんこそ全然大丈夫じゃないんじゃないですか? この前だって下着の柄ゴシップ誌にすっぱ抜かれたくせに!」

榛名「なっ……! それは言わないでください!」

榛名「夕張さんだっていっつもおへそだして露出狂か何かですか!?」

夕張「むっかぁ!」

196 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/18 00:21:44.83 gjjOPDwho 139/299


提督「お、おい夕張……榛名も喧嘩はやめろ」オロオロ

「「提督は黙っててください!」」

提督「そんなありがちにハモらなくても……」

金剛「」コクコク

金剛「ぷはぁ……」

提督「金剛、悠長に飲んでないで止めた方が……」

金剛「ノー、提督。こういうのはとりあえず気が済むまでやらせとけばいいんです。二人共お酒はいってるし、明日には仲直りしてますよ」

金剛「度が過ぎるようだったら、そこで止めれば十分ネ!」

提督「そういうもんか?」チラッ

榛名「」ハルー!

夕張「」バリー!

提督(不安だ)

金剛「大丈夫。そのうち疲れて止めますよ」

197 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/18 00:22:10.46 gjjOPDwho 140/299


――――
――

榛名「……」スヤスヤ

金剛「……」ヨシヨシ

夕張「……提督」スヤァ

提督「お前が言った通り……嵐は過ぎ去ったな」ナデ

金剛「ですね」

榛名「お姉様ぁ……」ギュッ

金剛「……」ナデナデ

提督「……こうして見ると、やっぱりお前は姉なんだなって思うわ」

金剛「これでも長女ですカラ……この子たちにとって、良い姉であるかはわかりませんけど」

提督「それだけ慕われてるんだ。良い姉だよ、お前は」

金剛「……」カァッ

金剛「提督に褒めてもらうのは、特別嬉しいデス」

198 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/18 00:22:58.02 gjjOPDwho 141/299


金剛「……」

金剛「提督は……榛名に不満があるんですか?」

提督「なんだいきなり?」

金剛「どうして手を出してあげないんです?」

提督「……その話か」

金剛「……榛名は提督にとって魅力的ではないのですか?」

提督「そんなわけないだろ。こんな良い娘なかなかいない」

金剛「提督みたいな良い人もなかなかいませんよ?」

提督「……お前、唐突に褒めるのやめろ」

金剛「あら? 提督照れてます?」

提督「悪いかよ」

提督「お前だって榛名に負けないぐらい魅力的だ。そんな女性に褒められて動じないほど俺は手馴れてない」

金剛「……提督こそ、そういうの真面目に言うのは卑怯です」

提督「……」

金剛「……こほん」

199 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/18 00:23:46.77 gjjOPDwho 142/299


金剛「榛名が魅力的だって言うなら、どうして手を出さないのです?」

金剛「他の鎮守府ではハーレムを築いてる提督だっているって聞きマース」

金剛「提督だってその気になればハーレム作れますヨ?」

提督「……」

提督「……例えば、夕張の前にそれはそれは素敵な男性が現れたとする」

金剛「はい?」

提督「性格も良く、容姿だって申し分ない。この人と一緒になってもきっと幸せになれる……そんな相手だ」

金剛「……」

200 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/06/18 00:25:03.64 gjjOPDwho 143/299


提督「もし夕張がその男と関係を持ったら……俺は凄く悲しいし、正直正気を保てる自信がない。だから、俺もそういうことはしない。たとえどんなに魅力的な女性が俺を好いてくれたとしても、夕張が俺を慕ってくれているなら俺はそういうことをするわけにはいかない」

金剛「……提督」

金剛「さっきの抱っこもかなりグレーゾーンだと思いますよ?」

提督「煽ったお前がそれ言うかよ」

金剛「ふふ、冗談です」

提督「……こういうこと言ったの恥ずかしいから内緒にしてくれな」

金剛「秘密を共有できるなんて幸せデース」ニコッ

提督「……」ゴクゴク

金剛「……本当、バリちゃんが羨ましい」ボソッ

204 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/07/19 21:48:15.37 pQzdPTcNO 144/299

――――
―― 翌日

榛名「昨日は本当にご迷惑を……」

比叡「謝らなくていいよ。結構楽しかったしさ」

霧島「そうそう。榛名は普段から気を使いすぎなんだし、たまには暴れてもいいでしょ」

金剛「可愛かったデスヨ? 昨日の榛名」

榛名「うぅ~……止めてください。思い出しただけで榛名、恥ずかしいです……」

金剛「提督ともいっぱいボディタッチできたし、いいじゃないですか」

榛名「それは……そうですが」

榛名「……榛名、提督にも謝ってきます」

金剛「気にしなくてもいいと思いマスが……それで榛名の気が済むなら行ってらっしゃいな」

榛名「はい……」

金剛「……」

金剛(今回の飲み会、榛名もバリちゃんも泥酔してしまったから当初の予定通りにはいかないかと思いましたが……)

金剛(榛名は酔った勢いでアプローチできましたし、バリちゃんの言動もなかなか興味深いものがありました)

金剛(バリちゃんの口から側室という言葉が出ました。これはバリちゃんもそれを視野に入れてるということ……)

金剛「風向きが変わりそうですネ」ニヤリ

205 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/07/19 21:49:58.67 pQzdPTcNO 145/299


――執務室

夕張「……頭痛い」

提督「おい、大丈夫か」

夕張「もう隼鷹さんたちと飲むの怖い……」

提督「確かに酒豪揃いだが、無理に飲ませる奴らではないと思うが」

夕張「違うんです。楽しくて気付いたらベロベロになってるんです」

夕張「ペースも早いから一緒に飲んでると気付いたらこっちも結構飲んじゃってて」

提督「あー」

提督「まあ今日は特に出撃とかはないから、休みながら働けばいいよ」

夕張「すいません……」

ドア<コンコン

提督「はいはい」

榛名「失礼します……」

206 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/07/19 21:51:33.08 pQzdPTcNO 146/299


提督「ああ、榛名。おはよう」

榛名「おはようございます」

榛名「あの、昨夜はご迷惑をおかけして……ごめんなさい!」

提督「はは、ベロベロに酔ってしまったことか? そんなことは謝らなくていい」

夕張「……そうですよね。提督は良い思いしたみたいですし」ジトー

提督「あ、あはは」

榛名「ですが……」

提督「……じゃあ今日の執務を手伝ってくれないか? 見ての通り夕張は二日酔いでな」

提督「もちろん、榛名に支障がなければだが」

榛名「は、はい! 榛名は大丈夫です!」

207 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/07/19 21:52:44.63 pQzdPTcNO 147/299


提督「さて、とりあえず今日中に決めときたいのは観艦式に誰を行かせるかってことだけど……」

提督「あ、夕張は旗艦で出席確定だから」

夕張「まじですか」

提督「まあしょうがないよなぁ……前の演習の旗艦お前だったし」

夕張「……」←凄い嫌そうな顔

提督「俺は同伴できないけど、お前が行くなら安心だし」

夕張「まあ仕方ありませんね……」

提督「あとは……どうするか」

夕張「有事の際を考えると、いつものフルメンバーとはいきませんからねぇ」

提督「かといって、元帥からの依頼だ。極端に練度が低い者を送るわけにもいかない」

榛名「各艦の二番手か三番手で構成するのが順当では?」

208 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/07/19 21:53:42.54 pQzdPTcNO 148/299


提督「まあそうなるかー」

夕張「二番手で揃えるなら、戦艦は金剛さん、正規空母は瑞鶴さん、軽空母は準鷹さん、重巡は……あ、航巡はどうします?」

提督「つっても現状前線で戦えるレベルの航巡はウチでは筑摩と鈴谷しかいないしな……熊野もいけなくはないって感じではあるが」

榛名「利根さんはまだ重巡ですしね……」

夕張「じゃあ航巡は熊野さんということで」

榛名「それなら、重巡は羽黒さんですね。駆逐艦は時雨ちゃん、潜水艦はイクちゃんでしょうか。航空戦艦も出すなら伊勢さんが該当しますが……航巡と同様の状況であることを鑑みると、No.3の山城さんでしょうか。重雷装巡洋艦は……」

提督「もともと3人しかいないからな……3番手の木曽に行ってもらうか」

提督「で、そうなると……10人か。人数の指定はあったか?」

榛名「たしか艦隊2つ分……12人ですね」

夕張「となると、あと2人ですか」

提督「あー……観艦式だし、大和にでもいかせるか。華やかになるだろうし」

榛名「榛名は那珂ちゃんをいれてあげると喜ぶと思います」

夕張「なんと……!」

提督「天才?」

提督「たしかに観艦式はアイドル的にはライブ的な感じになりうる。これは那珂ちゃんのご機嫌取りに使えるな!」

209 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/07/19 21:55:14.10 pQzdPTcNO 149/299


夕張「喜んで貰えれば、神通にも怒られませんね!」

提督「よし、観艦式のメンバーはその12人で決定。夕張、指示書の作成と連絡よろしく」

夕張「わかりました……すいません榛名さん、書類作るの手伝って貰えますか?」

榛名「ええ、もちろんです」

提督「……」

提督(金剛の言う通り、2人は昨夜の衝突なんて無かったかのように話している)

提督(昨夜の榛名の言動から察するに、榛名はまだ俺のことを好きでいてくれているのだろう)

提督(このままでいいわけはないのだろうが……毅然とした態度で彼女をあしらうことができないでいる。それはやはり、彼女に一途に慕われることにどこか喜びを感じていしまっているからなのだろう)

提督「……」ガシガシ

提督(昨日金剛にあんな偉そうなこと言っててこれだもんな)

提督「……よくない、よなぁ」

祥鳳「何がですか?」

提督「ほわぁ!?」

210 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/07/19 21:56:10.78 pQzdPTcNO 150/299


提督「祥鳳、いつの間に?」

祥鳳「なんです? 人を忍者かなにかみたいに」クスクス

祥鳳「ちゃんとノックして入って来ましたよ? ドアを開けてくれたのは榛名さんですし」

祥鳳「考え事ですか?」

提督「……」メソラシ

祥鳳「悩み事あててあげましょうか」

提督「いや……」

祥鳳「ふふっ」

祥鳳「……提督の悩みを解消する方法を教えてあげます」スッ

祥鳳「みんな抱いちゃえばいいんです」ボソッ

提督「っ!?」

211 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/07/19 21:57:31.75 pQzdPTcNO 151/299


提督「冗談だろ?」

祥鳳「冗談じゃないですよ?」

提督「……」

祥鳳「」ニコッ

提督「……用件は何だ?」

祥鳳「いえ、特に用があったわけではないんです」

提督「は?」

祥鳳「ただ最近……提督とお話できてないな、と思って……ダメでした?」

提督「……そう思ってくれるのは嬉しいぐらいだけど、お前それ俺の悩みわかってて言ってるよね?」

祥鳳「それに対する解決案を私は提案しましたよ?」

212 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/07/19 21:58:30.06 pQzdPTcNO 152/299


提督「だが、それは……」

祥鳳「そうすれば概ね解決です。提督がみんなを愛してくれれば、それで……」

祥鳳「何を隠そう、私も提督をお慕いしてる一人ですよ?」

提督「は……?」

祥鳳「……」

提督「……」エ?

祥鳳「……あの、何か言ってください。恥ずかしいじゃないですか……これでも勇気を振り絞ったんですよ?」

提督「祥鳳、すまないが俺は……」

祥鳳「わかってます。でも、私は諦めませんよ?」

213 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/07/19 21:59:45.10 pQzdPTcNO 153/299


提督「……」

祥鳳「ごめんなさい。提督を困らせたいわけじゃないんです」

提督「どうしてお前たちは揃いも揃って俺のことを……」

提督「ここにいる男が俺ぐらいだから、それで好きだと勘違いしてるだけなんじゃないのか?」

祥鳳「……提督。流石に怒りますよ? 同じ事を夕張さんにも言えますか?」

提督「……すまない」

祥鳳「確かに私たちは男性の知り合いは少ないです。親密になったのは提督が初めてと言ってもいいぐらいの子がたくさんいます」

祥鳳「だからといって、そんなことでこの気持ちを否定されたくないです」

祥鳳「私が提督をお慕いしているのは本当です。勘違いなんてことはありえない」

祥鳳「全機発艦したら触ってもいいって……言いましたよね?」

提督「祥鳳……」

夕張「……あの、さっきから2人でこしょこしょと何を話してるんです?」ジトッ

祥鳳「」ハッ

214 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/07/19 22:03:41.77 pQzdPTcNO 154/299


祥鳳「ごめんなさい。少し熱くなってしまいました」

祥鳳「本当はこんなこと言うつもりじゃなかったんですけど……」チラッ

夕張「……」ジトー

祥鳳「提督、私が言ったこと……少しは考えてみてくださいね?」

祥鳳「失礼します」ペコッ

夕張「……」ジトー

提督「……」

榛名「……」ナニハナシテタンダロ

榛名「……あ、あの! 榛名、指示書貼ってきますね!」タタッ

ドア<パタン

夕張「……提督、考えとくって何をです?」

提督「い、いや……別に」

夕張「……」ジトー

提督「……ハーレム作れって言われた」

夕張「っ……そうですか」

215 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/07/19 22:14:04.23 pQzdPTcNO 155/299


夕張「……」

夕張「どうするんです? 作るんですか……ハーレム」

提督「そんなわけないだろ」

提督「……たしかに榛名や祥鳳たちのことも大切に思っている」

提督「彼女たちにこんなにも思われて嬉しくないと言えば嘘になる」

提督「けど、俺にとっての一番はお前だし、お前にとっての一番は俺であって欲しいと思ってる」

夕張「提督……」

提督「だから、お前が望まないことはしたくない」

夕張「提督!」ガバッ

提督「うわっと」ギュッ

夕張「嬉しいです……んー」チュー

提督「んむ……お前、ここ執務室だぞ」

夕張「初めてだってここだったんですし、いまさらじゃないですか」

提督「それはそうかもしれんが……んんっ」

夕張「ん……ぷは、今夜は熱い夜になりそうですね」

提督「……そうかもしれんけど、照れるから言わんでくれ」

216 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/07/19 22:17:31.40 pQzdPTcNO 156/299


――――
――観艦式前日

提督「それじゃ皆、しっかりな」

金剛「任せてくだサーイ」

那珂「ねえねえ! 那珂ちゃん本当にセンターでいいの!?」

提督「ああ、もちろんだ。楽しんでこい」

那珂「」パァァァ

提督「大和も久しぶりの出番が遠征で申し訳ないが、よろしく頼む」

大和「はい、この大和にお任せを」

夕張「じゃ、行ってきますね」

提督「気をつけてな」

217 : ◆0EJWPPUT0k - 2015/07/19 22:20:49.73 pQzdPTcNO 157/299


榛名(明日は観艦式……先日3人で選んだ面々が出撃していく)

榛名(観艦式は明日行われ、その後彼女たちはまた一泊してこちらに戻ってくる)

榛名(つまり、今日から3日間は榛名が秘書官で、鎮守府内もいつもより人が少なくなる)

榛名(……もちろん、夕張さんもいない)

榛名「……」

提督「……さて、今日の仕事を始めますか」

榛名「……」

提督「? 榛名?」

榛名「あ、はい!」

提督「どうした? ぼーっとして。疲れてる?」

榛名「いえ、榛名は大丈夫です!」

榛名「……大丈夫、です」ボソッ


続き
榛名「榛名だってイチャイチャしたい」【後編】

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