レイコ「これで最後か……木陰でこの世とお別れできるだけでも私としたら上出来ね………」
………
レイコ「…ハッ!!…まだ私生きてるの……?」
レイコ「……お巡りさんが何人かいる…って言うことは交番かしら?木の下で倒れているところを保護されたのかも…」
警官「ハラ減った……。給料使い切って3日間、なにも食ってねえ……」
レイコ「警察官なのに、この身だしなみのひどさと緊張感のなさ……こんなお巡りさんが現実にいるわけがないわ、きっとあやかし……楽しませてくれそうね」
元スレ
レイコ「両ちゃん、私を好きにしていいわ」(こち亀・夏目友人帳)
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1459713191/
レイコ「ねえ、私と勝負しない?私に勝ったら食べ物をあげるわ。何なら私を食べても良いのよ。だけど私が勝ったら名前を……」
警官「その言葉忘れるな!いくぞ!」
レイコ「え、いきなり!?」
警官「ジャンケンポン!!」
レイコ「ポ、ポン…あっ!」
警官「わしの勝ちだ!!カツ丼の上、頼んだぞ」
レイコ「え、それだけ……」
警官「なら、ラーメンもつけてくれ」
レイコ「そう言う意味じゃなくて……名前を賭けた勝負で本当に食べ物だけ?私を食べなくてもい……」
警官「馬鹿言うな。お前に遊び半分でスケベなことしたら部長に間違いなく殺されちまうだろうが」
レイコ「食べるってそういう……」
両津「しかし、いまさらわしの名前なんて聞いてどうするんだ?両津勘吉、十分わかっているだろう。姓名判断でもするのか?旧字なんか使ってないぞ?」
レイコ「あのう、両津……さん。ひょっとしてあなた人間?」
本田「いくらなんだって、それはひどいですよ。先輩見てると確かに人間とは思えませんけど」
両津「本田、てめえ殺されたいのか。麗子、さっさとカツ丼買ってこい。腹ペコで死にそうだだだ」
レイコ「は、はい……」
レイコ” …この人どうして私の名前を……?たぶん誰かと勘違いしてるんだろうけど、とりあえず変な波風立てないようにカツ丼買ってこよう……
あれ、ガラス戸に映ってる婦警さんも立った。私と同じ風に動いて……”
レイコ「うわっ!!!私、外人の婦警さんになってる!!!」
両津「麗子、なにさわいでるんだ?」
レイコ「何でもない。すぐ買ってくるわ」
・・・・1時間後・・・・
両津「ああ、うまかった。じゃあ、本田行くぞ。今日は駅前のビルの外装工事な」
本田「ダメですよ、先輩。ボク、午後はパトロールに行かなきゃなんないんですから。クビになっちゃいますよ」
両津「バイトすっぽかしたら金が入ってこないだろうが!そうしたらわしの飯はどうなる!お前のクビとわしの飯とどっちが大事なんだ!!」
本田「クビに決まってるじゃないですか!!麗子さんからもなんか言ってくださいよ」
レイコ「え、あ……えーと、お巡りさんがバイトするのは良くないんじゃないかしら。確か公務員は……」
本田「ほら、麗子さんだって言ってるじゃないですか」
両津「うーむ、しょうがない。一人で行くか……でもそれでは工事が終わらんな……。そうだ、あいつを呼ぶか……おーい、ちょっと来ーい」
ポワーン
レイコ「な、なにこの煙は!突然現れたごっつい大工の親方みたいなカッコしたおじさんは何者?」
両津「ちょっと工事手伝ってくれ。今日中に終わらせて工期を守らないとバイト代を値切られる」
???「つまらないことで呼び出すな。こっちだって忙しいんだぞ。抗争が激しくなって人知れず死んでいくヤツも多いし、不景気で自殺するやつが増えるわ、中東ではテロの犠牲で……」
両津「どうでも良い、そんなこと。死ぬやつよりよりバイト代が大事だって、陽水も歌っていただろう」
レイコ「バイト代が大事じゃなくて、”傘がない”じゃないの?」
両津「だいたい同じようなもんだ。おい、行くぞ」
???「こら、そんな引っ張るんじゃない。ちゃんと行くから……」
レイコ「行っちゃった。登場の仕方といい、今度こそあやかしに違いないわ。楽しませてもらわないと…なんて言ってる場合じゃないかしら、死んだと思ったら外人さんになってるのに。
でも、婦警さんてことは外人じゃなくて国籍は日本よね。ひょっとしてハーフ?……まあいいわ、悩んでたってしょうがないし。好きなようにやらせてもらうわ」
・・・数時間後・・・
???「うー、疲れた。こんなにこき使うやつはあいつぐらいだ……」
レイコ「休憩室にご飯があったから、おにぎりでも作ってあげましょうか?」
???「それは助かる」
レイコ「……はい、どうぞ。で、つかぬことをお聞きしますが…」
???「なんだ?」
レイコ「人間じゃないわよね?」
???「そんなものと一緒にするな。一応大工のとめ吉ということになってはいるが」
レイコ「その口ぶり、さぞや、上級の大妖ね。ねえ、私と勝負しない?私が勝ったらこの紙に名前を書いて。私が負けたら、食べてもいいわよ」
???「ん?お前はもう……まあいい、面白い娘だ。乗ってやろう」
レイコ「行くわよ!あっち向いてホイッ!」
???「ホイッ!むっ!あっち向いてホイで勝負するとは。不意を突かれた……」
レイコ「約束よ、名前書いて」
???「仕方あるまい…カキカキ…」
レイコ「なんて読むの?」
両津「お前それも知らないでケンカを売ったのか?よくそんな怖いことできるな」
レイコ「怖くないわよ、だって、私強いもの」
両津「閻魔大王だぞ」
レイコ「え!!!閻魔大王って地獄の?!」
閻魔「まあ、わしがいるのは地獄の手前だが…」
レイコ「閻魔様の像にとりついた妖怪ってわけじゃなくて?」
両津「正真正銘、本物だ」
レイコ「閻魔様に勝負を挑んだりしたら地獄いき?」
閻魔「心配するな、プライベートは仕事に持ち込まない主義だ。さてそろそろ帰るぞ、もうつまらない用事で呼ぶなよ」
両津「じゃあな」
レイコ「閻魔様って意外とさばけた人なのね……」
両津「人じゃないけどな。まあ、人かどうかなんてたいした問題じゃないが」
レイコ「大した問題じゃない…」
両津「ああ、中身が大事だ。わしの小遣い稼ぎに役立つかどうか」
レイコ「それって中身?」
両津「わしにとってはな」
レイコ「ハハハ、面白い人」
両津「だけど、麗子も閻魔にあったことなかったか?」
レイコ「そ、そうだったかしら?」
両津「…まあ、閻魔ぐらいで驚いてたら下町の交番勤務は務まらんな」
レイコ ”東京は怖いところだと聞いていたけど想像以上だわ。閻魔様が日常的に現れるなんて……“
両津「閻魔より怖い部長もいることだし。ハハハハハ…」
部長「なら、お前をもう一度地獄へ叩き落してやろうか?」
両津「ぶ、部長!!いつの間に!いやあ、いつもながらご慈愛に満ちた笑顔が神々しく…」
部長「針の山に無期限の出向だ」
両津「ぶちょーーー、それはいくら何でも」
部長「そうしたいのはやまやまだが、その代わりに九州へ行ってこい」
両津「九州に?」
部長「今年はやくざの抗争やらサミットの準備やらでどんたく祭りの警備が手薄になってしまうそうだ。で、警視庁に応援要請があり、お祭り警備に適任の警官として不本意ながらお前が選ばれた」
両津「確かに私こそ最適、お祭り警備のために生まれてきたといっても過言では……」
部長「ふざけるな!!いつも警備を途中で逃げ出して神輿担いでいただろうが!!」
両津「そ、それは……」
部長「わしとしてはお前をいかせることなど東京の恥を九州にさらすようなものだと反対したんだが、本署の決定では今更覆すこともできん。もし九州から苦情が来たらそのまま尖閣勤務にするからな!」
レイコ「九州か……」
両津「ん?九州に何かあるのか?」
レイコ「え、いえ、そういうわけじゃ……」
両津「……部長、麗子も連れて行っていいですか?」
部長「なに麗子君も?うーむ、確かに両津を一人で野放しにするぐらいなら麗子君に監視してもらったほうがいいかもしれんな。麗子君、頼めるか?」
レイコ「はい、わかりました!」
・・・どんたく祭り会場・・・
両津「なんだか大規模な学芸会みたいだな」
レイコ「山笠のほうがもう少し荒っぽいわね」
両津「どんなことやるんだ?」
レイコ「追い山って言ってね、山車でタイムトライアルやるの。スタートとゴールの神社前のカーブが腕の見せ所。毎年大けがする人が出るけどすごい盛り上がりよ。私は山笠のほうが好き」
両津「そうか、お前とは気が合いそうだな」
レイコ「そうね……え?」
両津「しかし、子供たちのダンスばっかりで飽きてきたな」
レイコ「かわいらしいけど」
両津「こんな子供たちのトップがAKBだとすればあいつらも大したもんだな」
レイコ「AKB?」
両津「なんだ、麗子。そんなことも知らんのか。子供たちを集めて歌やダンスを…」
レイコ「フィンガー5みたいなもの?」
両津「ずいぶん違うぞ。というかフィンガー5って本当にお前21世紀の人間か?」
レイコ「えっ、21世紀!」
両津「なに驚いてるんだ。21世紀になってから何年たったと思ってるんだ?」
レイコ「そ、そうよね…今がいつか考えてもいなかった……あ、何かしら、そこで大騒ぎしている集団は?」
両津「そんなのいるか?何も見えないぞ…?」
レイコ「そこに犬の会って幟を持った集団が……あ、ヒノエ!!」
ヒノエ「あんた、私たちが見えるっていうのかい?」
レイコ「何言ってるの、レイコよ!」
ヒノエ「レイコって……まさか夏目レイコ!でも、もう死んだはずじゃあ、って言うかあんた外人さんじゃないか」
レイコ「なんでこうなったか私もわからないけど、この人の体を借りてる状態になっちゃって…ねえ、犬の会ってなに?」
中級A「“夏目様”のしょうもない悩みやお節介に付き合って、呼び出しあらば犬のごとく馳せ参じようという有志の集まりでーす」
レイコ「夏目様って?」
ヒノエ「夏目貴志、あんたの孫さ」
レイコ「私の…孫……私の子供は?!」
ヒノエ「詳しく聞いたことはないが…ナツメがまだ小さいころ…父親も…」
レイコ「そう……。その私の孫ってどんな子?」
ヒノエ「本当にかわいい子さ」
レイコ「珍しいわね、ヒノエが男の子を嫌わないなんて」
ヒノエ「あの子だけは特別さ、気に入ったんだからしょうがない。なんだかんだ言って三篠殿だって……」
三篠「ヒノエ、余計なことを言うな」シャリーン
レイコ「あなたも犬の会なの?!さすが私の孫ね、三篠を子分にするなんて……」
無線機“”暴力団員の乗ったトラックが暴走中、敵対組織の息のかかった屋台を狙っているらしい、場所は両津巡査長の担当している付近!!“”
両津「あのトラックか!!麗子、歩行者を安全な場所に誘導しろ!間に合わないかもしれんが…」
レイコ「トラックはどうするの?!」
両津「どうにかしてわしが止める」
レイコ「どうにかって?」
両津「体当たりでも何でもして止めてやらあ、あとは任せたぞ」
レイコ「無茶よ、そんなの!あっ、まっすぐトラックのほうに向かって突っ込んでいく…いくらなんだって生身の人間がトラックを止められるわけないじゃない!」
レイコ「そうだ!三篠、あのトラックを止めて!」
三篠「今名前を預けているのは夏目様、レイコの言うことを聞く筋合いはない……」
レイコ「お願いよ!あの人を守って!」
レイコ「……筋合いはないが昔のよしみもある。承知!」シャリーン
トラック グシャ
両津「トラックがペシャンコに……おまえがやったのか…?」
レイコ「私ってわけじゃないけど…」
・・・・・・・・・・・・・・・
両津「そうか、お前は夏目レイコっていうのか」
レイコ「ごめんなさい。入れ替わってしまったこと隠してて」
両津「なに言ってるんだ、最初から分かっていたぞ」
レイコ「えっ?」
両津「本物の麗子なら腹が減っているときのわしに勝負を挑むような馬鹿な真似はしない」
レイコ「…ならどうして今まで気が付かないふりを…」
両津「お前は悪いやつじゃなさそうだったからな」
レイコ「それだけ?」
両津「ああ。おかしいか?」
レイコ「普通じゃないと思うわ…」
両津「そうか?中身が入れ替わるぐらいの事、うちの派出所では大したことじゃないからな。それよりお前妖怪見ることができるんだろう。わしもどんな奴がいるのか見たい」
レイコ「見たいって言われても……そうだ、陣を書いてその中に入れば見えるかも。ちょっと待って……コキコキコキ……よし、これで良いわ。みんなこの中に入って」
妖怪の皆さん ゾロゾロ
両津「おお、こいつらがお前の子分か。妖怪ウオッチとはずいぶん雰囲気が違うな…子分がいるってことは、博多がお前のふるさとか?」
レイコ「違うわ。そう言えば、なんで出不精のあなたたちが博多まで来ているの?」
河童「夏目親分が友達と祭りに行くというのでこれはお供をせねばと…終わった後、中州で犬の会定例会を開催する予定で…」
レイコ「え、近くにいるの!」
ヒノエ「会いたいのかい?」
レイコ「それは……でも、あの子から見れば私は何十年も前に死んだ人間よ。不安にさせるだけだわ」
両津 ポンポン
レイコ「なに?」
両津「悪の道に進みそうな子供を更生させるのも警察官の仕事だ」
レイコ「どういうこと?」
両津「祭りで遊び歩いている少年に職務質問することは珍しくないってことだ」
レイコ「そうか、いま私婦警さんなんだ!!ヒノエ、彼は今どこにいるの?」
ヒノエ「すぐ近くさ、河童、案内してあげな」
河童「今、皿が乾きそうでフラフラなんです…」
ヒノエ「肝心な時に役に立たないね。じゃあ、チビ狐行っといで。夏目の近くに行ってもはしゃいでお前が顔見せるんじゃないよ。怪しまれるからね」
子狐「わかりました。ついてきてください!」
………
レイコ「ちょっといいかな?」
貴志「あ、婦警さん。なんですか?」
レイコ「話を聞かせてほしいんだけど……」
貴志「別に悪いことはしてませんが?」
レイコ「そ、そうよね。それはわかっているんだけど、えーと、ご趣味は?」
貴志「趣味?特に無いです…なんでそんなことを?」
レイコ「え、あ、関係ないわよね…ハハハ…」
貴志「はあ」
レイコ「手に持っているのは…」
貴志「普通の綿飴です。いつもお世話してもらってる人にお土産と思って…。あっ万引きしたものじゃないですよ」
レイコ「綿飴おいしいものね、きっと喜んでくれるでしょう……じゃあ、あなたの好きな食べ物は?」
貴志「は?」
両津「もう、見てられん。少年、すまんな。こいつ新人だしハーフの帰国子女だからまともに話も聞けないんだ。君の名前と年齢、住んでいるところを教えてくれ」
貴志「夏目貴志、高校一年生です。幼いころ両親を亡くしたので親戚の藤原さんの家で面倒見てもらっています」
レイコ「親戚の藤原さん?」
貴志「ええ、藤原滋さんと言います」
レイコ「えっ、滋君!?」
貴志「滋さんとお知り合いなんですか?」
レイコ「少しだけ……」
貴志「へえ、意外だな。滋さんこんなきれいな婦警さんと知り合いなんて」
レイコ「あ、でも昔の事だから…滋君がまだ子供のころ。この後の予定は?」
貴志「友達が天神で服を買うっていうから…」
レイコ「あなたは?」
貴志「付き合うだけです」
レイコ「そう……」
両津「……そうだ、警視庁の企画に協力してくれないか」
貴志「協力?」
両津「警視庁の広報誌で”婦警さんに選んでもらおう、コーディネートはこうでねえと“というファッション企画をやってるんだ。こいつに服を選ばせてやってくれ」
貴志「でも、僕あまりお金持ってきてないんです」
両津「警察の経費で落とすから心配するな。おい、レイコ行ってこい」
レイコ「そんな企画やってたの?」ナイショバナシ
両津「そうじゃない。服の一つも買ってやって、おばあちゃんらしいことしてやりてえだろう」コソコソ
レイコ「だれがおばあちゃんよ!!」ムカッ
両津「孫なんだろう?」ボソッ
レイコ「そうだけどおばあちゃんといわれるのは…でも、お財布にお金ほとんど入ってないわ」コソコソ
両津「お前の体の持ち主は普段から現金を使わんのだ。財布の中に黒いカードが入っているだろう。
ちゃんとした店ならお前の顔とセットで見せればどんな品物でもそのまま渡してくれるはずだ。お前の顔を知らん程度の店なら適当にローマ字で名前を書いとけ」
レイコ「そんな便利なものがあるの?」
両津「お前クレジットカードを知らんのか?」
レイコ「マルイマルイのってやつ?よく知らないけど」
両津「間違ってはいないが……まあいい、とりあえずカードを見せればいい」
レイコ「わかったわ。貴志君行きましょ」
・・・一時間後・・・
レイコ「どう?かっこいいでしょ?」
両津「なんか古臭いな。いくらなんだって今どきの高校生にアイビールックはないだろう」
レイコ「結構流行っていたんだけど」
両津「もうちょっと最近の流行りのブランドがよかったんじゃねえのか?」
貴志「いいえ、僕はこういう落ち着いたのが好きです。本当にありがとうございます」
レイコ「貴志君が気に入ってくれて本当によかったわ」
両津「もし東京に遊びに来ることがあれば亀有公園前派出所にも寄ってくれ。浅草を案内してやる」
貴志「はい、その時はお願いします」
両津「じゃあな。行くぞ、レイコ」
レイコ「はい」
貴志“この人ハーフなのにレイコっていうのか。まあよくある名前だからな”
・・・犬の会宴会会場・・・
ドンチャンドンチャン
河童「さすが両津の親分、言い飲みっぷりですね」
両津「けっ、当ったりめえだべらぼうめ!こちとら、産湯につかってる時から一杯飲んでたんだ。そこらの酒飲みとは鍛え方が違う」
ヒノエ「下品な飲み方だねえ」
両津「なに言ってやがる。お、ちょっと艶っぽいじゃねえか。こっちにきて酌をしろ」
ヒノエ「やなこった」
両津「なんだと!」
ヒノエ「男はガサツだから嫌いなんだよ!」
両津「てめえ、やる気か!」
ヒノエ「いつでもかかってきな!」
レイコ「やめてよ、二人とも。お酌なら私がしてあげる。機嫌直してよ」
両津「ああ」
レイコ「私があやかしを見ることができるって知っても気味悪くないの?私の周りの人たちは誰も近づいてこなかったわ」
両津「そうか。それで、むくれて妖怪たちをボコボコにしたあげく友人帳ってやつを作ったのか。あんまりいい了見じゃないな」
レイコ「そんなのわかってるわ」
両津「まあ、お前は、たまたま運が悪かっただけさ。もし浅草の下町に生まれてみろ、妖怪を見ることができるなんて言ったらヒーローだぜ。女だからヒロインか」
レイコ「ヒロインか…悪くないわね。私も浅草に生まれたかったな」
両津「お前の本体はどんな顔なんだ?」
レイコ「さっきの貴志君は私にそっくりよ」
両津「だとすれば、なかなかいい女じゃねえか」
レイコ「そんなこと誰も言ってくれなかったわ、ハハハハハ」
両津「周りのやつに見る目がなかったんだ。お前、わしとそんな齢違わないだろう?浅草に生まれてたら今頃わしの嫁さんになってたりしてな」
レイコ「……」ギュッ
両津「ん、どうした?急に抱き着いてきて…」
レイコ「わからない……」
両津「……しょうがねえな。こういう時、なんて言えばいいか教えてやる」
レイコ「……」
両津「わしらは友達だよな?」
レイコ「そうか……そう言えてたら友人帳なんて作らなくてもよかったのね……。ねえ、私たち友達よね?」
両津「あたりまえじゃねえか、わしらは親友だ」
レイコ「ありがとう。なんか胸のつかえがとれた気がするわ。ちょっと夜風にあたってくる」テクテク
両津「暗いから気をつけろよ。わしは、こいつらと飲んでるぞ……」
ヒノエ「無粋な男だね」
両津「なんだと?」
ヒノエ「鈍感って言ってるんだよ」
両津「……しょうがねえだろ。なんであいつが麗子の体に引っかかったかはわからねえが本当の居場所じゃないことぐらいはわかる。たぶんすぐ別れなきゃならんのだ」
ヒノエ「フン、出会いに別れは付き物だろうに……一杯飲みな。ありがとうよ……人の子も悪いもんじゃないねぇ」
・・・・・・・
レイコ「友達っていいものね。でも、友達から先は……痛っ、石に足ぶつけちゃった。あれ、ただの石じゃない。お地蔵さまだ」
地蔵「そろそろ行かねばならん」
レイコ「えっあなた妖怪?」
地蔵「ある時は地蔵、またある時は大工のとめ吉……」
レイコ「果たして、その実態は?」
地蔵「多羅尾伴内……ちがう!!七つの顔を持つ男ではない!!」
レイコ「あなたがふったんでしょ」
地蔵「まあ、そうだが……わしは閻魔大王だ」
レイコ「へー、お地蔵さまにも化けるの?」
地蔵「そうではない。閻魔大王も地蔵もわしの一面にすぎぬ。迷った魂を救うのも地蔵の仕事の一つだ」
レイコ「そうなの、知らなかった」
地蔵「この世への未練は断ち切ったか?未練は執着をよび執着は人を鬼とする……」
レイコ「別に未練があったわけじゃないけど……いいえ、やっぱりあったわね。それに新しく未練が増えちゃった。これじゃ鬼になって地獄行きね」
地蔵「地獄から追い出されるかもしれないぞ。仮にも閻魔大王の名前を奪って子分にした人間だからな」
レイコ「子分じゃないわ、友達よ」
地蔵「友達か。やはり面白い娘だ、行くぞ」
・・・・・・
両津「レイコのやつ遅いな、ちょっと見てくる……お、いたいた。おい、レイコ、そんなところで寝ていたら風邪ひくぞ……」ユサユサ
麗子「あ、両ちゃん。私居眠りしてた?あれ、ここは?」
両津「夜風にあたるって言って……”両ちゃん”!?」
麗子「それがどうかしたの?いつも両ちゃんて呼んでるじゃない?」
両津「そうか、レイコのやつもう行っちまったか…」
麗子「私はここにいるわよ?」
両津「麗子じゃねえ、レイコだ」
麗子「私じゃない私っていったいどういうこと?」
両津「…話せば長くなるが…」
・・・その日の藤原家・・・
塔子「あら、貴志君。お洋服買ってきたの?お小遣いだけじゃ足りなかったでしょ?言ってくれればいいのに」
貴志「それが警察の広報企画ということでプレゼントしてもらって……」
滋「へえ、そんなことがあるのかい?」
貴志「すごい美人でスタイルのいい婦警さんが選んでくれて。本当にモデルさんみたいにきれいな人でした」
滋「そんな美人さんなら会ってみたかったな」
塔子「滋さん!!」
滋「すまんすまん」
貴志「そういえば、滋さんのこと知ってるって」
塔子「ふーん、滋さん、隅に置けないわね」ジトッ
滋「そんな美人の婦警さんの知り合いはいないが……」ヒヤアセ
貴志「子供のころの滋さんに会ったことがあるみたいで」
滋「おれが子供のころを知ってる?じゃあ、美人ていっても結構なおばさんじゃないか」
貴志「いいえ、二十歳そこそこぐらいの…」
滋「でも俺が子供の頃こんな感じのファッションがはやっていたよ。やっぱり若作りのおばさんだよ」
貴志「そんなことはないですよ、そのままアイドルでも出来そうなぐらい…でも、そういえばおかしいな……」
滋「名前は聞いたのかい?」
貴志「名前は確か…レイコって呼ばれてた……レイコ!!」
塔子「どちらにしても、その人、貴志君の事よっぽど気に入ったのよ。これだけ似合う服を選べるんだから。ちょっと妬いちゃうわ。
そうだ、ひょっとしたらその婦警さん、貴志君に一目ぼれしたんじゃないかしら?」
貴志「そんなことあるわけないじゃないですか、からかわないでください」
塔子「フフフ、わからないわよ。さて晩御飯にしましょうか。今日の晩御飯は、お刺身よ。にゃん吉君よろこんでくれるかしら」
https://www.youtube.com/watch?v=-2Zn8784rko
・・・1週間後亀有公園前派出所・・・
本田「へえ、どんたく祭りで警備していた時は別の人が体を動かしていたんですか?」
麗子「そうなの。だから、せっかく福岡まで行ったのに何にも覚えてないのよ。両ちゃんは、どんたく祭りのあと妖怪たちとさびれた神社で夜中まで飲んでたらしいんだけど」
本田「先輩なら酒さえあれば相手が妖怪だって宇宙人だって楽しめそうだなあ」
麗子「私が気が付いた時には誰もいなくなったあとだったわ。妖怪を見るための陣っていうのがうっすら残っているだけで。
それを見たら両ちゃんしょんぼりして、中洲で飲み直してくるっていなくなっちゃったの。それから会ってないんだけど」
本田「そういえば、先輩出勤してませんねえ。中洲がそんなに気に入ったのかなあ?」
部長「諸君おはよう」
麗子「おはようございます。両ちゃんがちょっと遅れてるみたいですけど…」
部長「あいつなら心配いらん。警備の途中で逃げ出し神社で一人飲んだくれてる警官がいるという通報があったので、種子島で科学の進歩のために貢献してもらうことになった」
麗子「部長、両ちゃんは決してサボっていたわけでは……でもそんな通報誰が?」
部長「何でも建設業のとめ吉さんとか…」
テレビ「もうじきH3Aロケットの打ち上げ時刻となります。H3Aは従来価格がネックとなっていたH2シリーズの問題点を、江崎教授が日本古来の技術を活用して徹底的に改良し、1億分の1に経費を削減しています。安定飛行の実現のために機上機関士を1名搭乗させ…」
麗子「あ、両ちゃん!」
両津「ぶちょーーーー!許してくださーい!こんなのロケットじゃない!ロケット花火に人間を縛り付けてるだけですよーーーー!コロ助!導火線に火をつけるんじゃねえ!あ、だめだ!わああああああぁぁぁぁ……」チュドーーーーン!!
https://www.youtube.com/watch?v=K4PXYt8B0Xc
終 わ り
53 : 以下、名... - 2016/04/04 06:27:14 KF89CFPQ 53/54ということで、両津と夏目レイコといういくらでも派手に動けそうなキャラを二人使いながらこの物足りなさ。
これぞ、マジンガーZ vsゲッターロボ以来の伝統芸、コラボの醍醐味です……ゴメンナサイ
54 : 以下、名... - 2016/04/04 08:49:00 LCIHulSk 54/54乙
中々良かった