とある小学校の教室
先生「はい、それでは今から席替えを始めます。順番に前のくじを引いていってください」
ワイワイガヤガヤ
友「席替えかー、もうこの席になってからそんなに経つんだね」
幼女「ねえねえ、友ちゃん何番だった?」
友「あ、私まだ引いてないの。でも今までみたいに近い席だといいね」
幼女「うん!」
ガヤガヤ
ポニテ「……」
元スレ
幼女「友達になろうよ!」 ポニテ「……なんで」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453187790/
幼女「引いた?」
友「うん、えっと……3番」
幼女「あー、なんだ全然ダメじゃん」
友「あらら、むしろ真逆だね。まあくじだからこんなもんだよ。残念だけど」
幼女「ちぇー」
友「幼女ちゃん、窓側の一番端っこの席なんだね。羨ましいなー、寝てても先生にばれなさそう」
幼女「そお?でもさ」
友「なに?」
幼女「私の席の隣だけピンク色なんだけど……」
友「え?なんの話?」
幼女「みんな隣白いのに」
友「あ、ああ、黒板の座席表の文字の話?ピンクが女子で白が男子だよ」
幼女「うん、でも」
友「そっかー、このまえ転入生が来て女子が男子より二人多くなったから女子同士の席ができたんだね」
幼女「?」
友「えっと、普通は男子と女子で一緒の席になるんだけど、女子が二人多くてその分……」
幼女「???」
友「……ま、要するに幼女ちゃんの隣には女の子が来るってこと」
幼女「へー、そっかー、だれだろー」
先生「はい、みなさんくじを引き終わりましたね。じゃあ番号の場所に席を移動していってください」
ガタガタガタ
幼女「よいしょ、よいしょ、よし到着」
幼女「隣の人はまだ来てないのかー」
幼女「だれだろうなー、仲いい人かなー、全然話したことない人かなー」ワクワク
ガタン
幼女「お?」
ポニテ「……」
幼女「……」ジー
ポニテ「……?」
幼女「ああっ!てんにゅーせー!」
ポニテ「」ビクッ
ポニテ「な、なに」
幼女「てんにゅーせーだ」
ポニテ「指ささないでよ」スワリ
幼女「隣なの?」スワリ
ポニテ「まあ、そうみたい」
幼女「ほー」
幼女「」ジロジロ
ポニテ「……」
幼女「てんにゅーせーはどこから来たんだっけ」
ポニテ「てんにゅーせーじゃなくて、ちゃんと名前あるから、私」
幼女「何?」
ポニテ「ポニテ……」
幼女「私は幼女!よろしく!」
ポニテ「……」
幼女「それでどこから来たんだっけ」
ポニテ「別にどこでもいいでしょ……」
幼女「とおいところ?」
ポニテ「まあ、それなりに」
幼女「ほー、今までどの席だったっけ」
ポニテ「……あっちらへん」
幼女「誕生日いつ?好きな食べ物は?」
ポニテ「……何」
幼女「何って、せっかく隣になったんだしいろいろ知りたいでしょ?」
ポニテ「私の誕生日がいつだろうと、私の好きな食べ物がなんだろうとあんたには関係ない……」
幼女「そうかな」
ポニテ「……」
先生「全員移動しましたね、それでは授業を始めます」
先生「それでは教科書の……」
先生「……なのでここの式が……そこの男子二人うるさいですよー、集中してください」
ポニテ「」カリカリ
幼女「んー……んー?」
幼女「難しい……」カリカリ
ポニテ「」カリカリ
ポニテ「」ポロッ
幼女「あ」
幼女「ポニテちゃん、消しゴム落ちたよ」ヒロイ
ポニテ「あ……ありがと」
ポニテ「……」カリカリ
幼女「」ジー
ポニテ「」ポニーテールユラユラ
幼女「」バシッ
ポニテ「……」
幼女「」バシッバシッ
ポニテ「やめて」
幼女「ああっ!見てたらつい」
ポニテ「猫?猫なの?」
幼女「猫じゃないけど、でも綺麗な髪だねー」
ポニテ「そう」
幼女「」カリカリ
ポニテ「」カリカリ
幼女「……」
ポニテ「」カリカリ
幼女「」ゴソゴソ
幼女「ポニテちゃんポニテちゃん」ツンツン
ポニテ「何」
幼女「じゃーん、ポニーテール」
ポニテ「……」
幼女「おそろい」
ポニテ「あっそ」
幼女「……」
ポニテ「」カリカリ
幼女「……」
幼女「」マジックデオヤユビニカオカキ
幼女「やあ!こんにちはポニテちゃん!(裏声)」
ポニテ「……」
幼女「ボク、親指の里から来たオヤユビーン9世!君の名前は?」
ポニテ「」ギロッ
幼女「ひっ」ビクッ
ポニテ「……」
幼女「に、睨まないで……」
ポニテ「冗談か何かのつもりだろうけど、おもしろくない」
幼女「そっかー、じゃあねー、この前友ちゃんを笑わせまくった渾身の一発ギャグを……」
ポニテ「あのさ」
幼女「?」
ポニテ「話しかけないでくれる?」
幼女「え」
ポニテ「私、あんたみたいな人、苦手だし、嫌いだから」
幼女「……」
ポニテ「」カリカリ
幼女「……」
先生「……じゃあこの問題、幼女さん」
幼女「……」
先生「幼女さん?」
幼女「っ!はっ、はい!」ガタッ
先生「解いてください」
幼女「あ、えーと、うーん、そ、その……」アタフタ
先生「わかりませんか?」
幼女「あっ!いえ!わかります!その、えと……」
幼女「じゅ、じゅうさん……」
先生「……」
幼女「……ち、違いました?」
先生「じゃあかわりにポニテさん」
ポニテ「はい、十八です」
先生「そうですね、それでは次の問題……」
幼女「……」
ポニテ「」カリカリ
休み時間
男子「よーし!みんなでサッカーやろうぜ!全員校庭集合な!」
ワーワーガタガタ
友「はー、男子は毎日飽きもせずよくやってるよねー」
幼女「おー、サッカーかー、私もやってみたいなー」
友「えー、やめときなよー、校庭行っても男子しかいないよー」
幼女「そっかー」
友「そんなことより幼女ちゃん、一緒に図書館行こうよ、このまえ借りた本まだ返してないんでしょ?」
幼女「なんだっけ」
友「ほら、図書委員に催促されてたじゃん。はよ返せって」
幼女「あー!そうだった!じゃあいこっか」
図書館
ピッ
幼女「よし、返却っと」
友「あー!このシリーズ新刊出てたんだー!うわー、知らなかった」
幼女「」キョロキョロ
友「ねえねえ幼女ちゃん、これ……」
幼女「」ジー
友「幼女ちゃん?」
ポニテ「……」
幼女(ポニテちゃんだ)
幼女(本読んでる)
幼女「」タタタ
ポニテ「……」ペラ
幼女「」ソー
ポニテ「……」
幼女「」ノゾキ
ポニテ「……」
幼女「」ウロチョロ
ポニテ「……何」
幼女「」ビクッ
幼女「」アセアセ
ポニテ「……」
幼女「」ユビサシ
ポニテ「?」
幼女「」ジェスチャー
ポニテ「何?なんでジェスチャーしてんの?」
幼女「」ジェスチャー
ポニテ「喋っていいから」
幼女「だって話しかけるなって……」
ポニテ「そういう意味じゃないから」
ポニテ「なにしにきたの」
幼女「なに読んでるのかなーって」
ポニテ「だから、関係ないって言ってるでしょ?」
幼女「もらいっ」バシッ
ポニテ「あ、ちょっと、返してよ」
幼女(難しそうな本。文字が小さい……)ペラペラ
ポニテ「……読みたいの?」
幼女「うん」
ポニテ「……」
幼女「……」
ポニテ「……」
幼女「……」
ポニテ「……」
幼女「……」
ポニテ「……何してんの?」
幼女「……」
ポニテ「おーい」
幼女「読んでる……」
ポニテ「本持って突っ立ってるようにしか見えないんだけど」
幼女「……」
幼女「」ペラ
ポニテ(や、やっとページめくった……おっそ)
ポニテ「もう、イライラする!」バシッ
幼女「ああっ、読んでる途中だったのに」
ポニテ「あんたさ」
幼女「何?」
ポニテ「今日の授業、あんたあてられたとき」
幼女「うん」
ポニテ「なんであんな簡単な問題も解けないの?」
幼女「ええ、簡単じゃないよ、難しいよ」
ポニテ「しかもさ、わからないならわかんないって言えばいいのに、どうして中途半端に意地張ってるの?男子とか、クスクス笑ってる奴いたよ?」
幼女「だって……」
ポニテ「とにかく、もうかかわらないでね、いい加減」
幼女「……」
ポニテ「」スタスタ
幼女「……」
友「だ、大丈夫?なんかあった?」
幼女「大丈夫……」
友「大丈夫に見えないんだけど……ポニテさんとなんかあった?」
幼女「隣の席になったの」
友「あ、幼女ちゃんの隣ってポニテさんになったんだ……」
幼女「うん」
友「あ、あのさ、ポニテさんなんだけど、あんまりしつこく話しかけない方がいいかも」
幼女「なんで?」
友「ポニテさんが転入してきたときの話なんだけど」
幼女「うん」
友「ほら、転入生って注目されるじゃん?だから転入してきたその日はいろんな人がポニテさんの近くに集まってさ。
ポニテさん、質問攻めにあっちゃって」
友「それでポニテさんも最初は適当に答えてたんだけど、繰り返し繰り返しあーだこーだいわれて……」
友「周りのみんなをすっごい睨んだの。口には出さなかったけど、もうやめろ、近寄るなかかわるなみたいな」
幼女「あ、私もポニテちゃんに睨まれた……」
友「先生はあんまり人と話すのが好きじゃない子だって言ってたけど」
友「だからあんまり……」
幼女「うーん……でも」
友「でも?」
幼女「隣だから」
授業中
先生「はい、ここで作中の主人公は……」
幼女「ポニテちゃん、話しかけてもいい?」
ポニテ「……」
幼女「じゃーんみてこれ」
ポニテ「……あ」
幼女「ポニテちゃんが読んでた本だよ。探したら同じのあったから借りてきた」
ポニテ「はあ……」
幼女「?」
ポニテ「あんたがそれ読めるわけないでしょ……」
幼女「なんでさ」
ポニテ「ページめくるのにあんなに時間かかってたのに……」
幼女「それでも読めるよ」
ポニテ「推理小説だよ?仮に全部読めたとしても、話分かるの?」
幼女「わかるよ!」
先生「ちょっと、幼女さん静かに」
幼女「あっ……すいませ……」
ポニテ「はあ……」
幼女「とにかく、私この本読むから」
ポニテ「あんたさ、何がしたいの?」
幼女「何って」
ポニテ「さっきから私の周りうろちょろうろちょろ、なんでそんなにつきまとってくるの?」
ポニテ「何?一緒に遊んでほしいの?周りのやつらとへらへら笑って適当に馴れ合いたいなら別のやつのとこ行けばいいじゃん。
私じゃなくても」
ポニテ「隣だから?関係ない。いい加減にして」
幼女「……だって」
ポニテ「だってなに?」
幼女「友達に……なりたくて」
ポニテ「……」
幼女「友達になろうよ!」
ポニテ「……なんで」
帰り道
ポニテ「」スタスタ
幼女「」トコトコ
ポニテ「……ねえ」
幼女「なに?」
ポニテ「なんでついてくるの」
幼女「別についてきてないよ!私だって帰ってる途中だもん」
ポニテ「明らかに遠回りしてるでしょうが……私の帰り道にあわせてるでしょ」
幼女「」キョロキョロ
幼女「ここら辺の道、人通り少ないねー」
ポニテ「……」スタスタ
幼女「ねえポニテちゃん!ポニテちゃんの家ってどこにあるの?」
ポニテ「! まさか家までついてくるつもりじゃ」
幼女「友達になるんだから、どこに家あるかくらい知りたい!」
ポニテ「冗談じゃない……なんであんたに家の場所なんて教えなくちゃいけないの」
幼女「だって友達」
ポニテ「友達になんてならないから!ついてこないでよ!」
幼女「えー……」
ポニテ「」ダッ
幼女「あっ!待ってポニテちゃん!」
ポニテ「はあ、はあ、ここら辺曲がり角多いからうまくまけば……」タッタッ
幼女「まて~!」ダダダ
ポニテ「うっ!速っ!」
幼女「捕まえた!」
ポニテ「へぶっ!」
幼女「逮捕だ」
ポニテ「わ、わかったから、はなして」
幼女「よし、じゃあ交代ね」
ポニテ「こ、交代?」
幼女「今度私が逃げるからポニテちゃんが追いかけて捕まえて」アシブミ
ポニテ「はあ?鬼ごっこじゃないんだから。あのね、ふざけてるわけじゃ……」
ポニテ「ん……いや……そう、だね、鬼ごっこしよう」
幼女「よしきた!」
ポニテ「じゃあ私が十数えるからその間に逃げてね」
幼女「うん!」
ポニテ「じゃあいくよ、十……」
幼女「つかまえてごらーん!」ダダダ
ポニテ「……」
幼女「」ダダダ…
ポニテ「……」
ポニテ「さてと帰るか……」
次の日
幼女「」ムスー
ポニテ「……何」
幼女「なんで昨日おいていったの」
ポニテ「なんのこと」
幼女「私あれから結構走り回ってたんだからな!」
ポニテ「ふん、騙されるのが悪いんじゃん」
幼女「なんだとー!」
幼女「怒った!もうポニテちゃんとは口きいてあげないから!」
ポニテ「へえ、嬉しい」
幼女「あ……」
幼女「じゃあ逆!口きく!ききまくる!一日中ポニテちゃんに喋りかけまくるから!」
ポニテ「あっそ、別に、何言われようが無視するだけだから」
幼女「むー!」
授業中
幼女「」カリカリ
ポニテ「」カリカリ
幼女「……?」
幼女「ポニテちゃん、この問題」
ポニテ「……」
幼女「ちょっとよくわからないんだけど、解き方教えて?」
ポニテ「」プイ
幼女「……むぅ」
幼女「人を無視すると地獄に落ちるってお母さん言ってたぞー」
ポニテ「……」
休み時間の図書館
幼女「ポニテちゃーん」
ポニテ「……」
幼女「まえの本ねー、十ページまで読んだよー」
ポニテ(まだ十ページ)
幼女「なんかね、えっと、すっごいおもしろいと思う!」
ポニテ(十ページじゃまだ何もわかんないでしょ)
幼女「私もなんかポニテちゃんに紹介してあげる!絵本いっぱい読んだのあるから!」
ポニテ(絵本とか、ださ)
給食中
幼女「」パクパク
ポニテ「」モグモグ
幼女「ポニテちゃん、今日のご飯おいしいね!」
ポニテ「」モグモグ
幼女「……?」
ポニテ「」モグモグ
幼女「ポニテちゃん、野菜食べないの?」
ポニテ「……」
幼女「たしか前も残してたよね、嫌いなの?」
ポニテ「……」
幼女「ポニテちゃーん、好き嫌いはよくないよ、こんなにおいしいのに」パクパク
ポニテ「」イラッ
ポニテ「」スッ
幼女「お?」
ポニテ「」パク
幼女「おー」
ポニテ「」パクパク
幼女「なんだ食べれるんじゃーん、だったらわざわざ残さなくても……」
ポニテ「げほっ!」
幼女「!? ポニテちゃん!?」
ポニテ「げっほ!ごほごほ、ごほっ」
幼女「えええ、だ、大丈夫!?あ、えと、せ、せんせ!ポニテちゃんが!」
ナンダナンダザワザワ
昼休み
幼女「ごめんなさい……」
ポニテ「……」
幼女「ま、まさか吐くほど嫌いだなんて知らなくて……」
ポニテ(吐くとか言ったらゲロ吐いたみたいじゃんやめてよ)
幼女「で、でも!昨日のこともあるから!これでおあいこだね!」
ポニテ「……」
幼女「今日も一緒に帰ろうね!」
ポニテ「」プイ
当番「これで帰りの会を終わります、きりーつ、さようならー」
ガヤガヤ
幼女「さてと……」
友「幼女ちゃーん」
幼女「あ、友ちゃん」
友「一緒に帰ろー」
幼女「あー……ごめん、今日別の友達と帰る約束してるから」
友「あ、そうなの?じゃあさ、ちょっとこれだけ話しときたいんだけど……」
幼女「何?」
友「じゃ、そういうことで、じゃあね幼女ちゃんまた明日」
幼女「うん、じゃあねー」ノシ
友「」スタスタ
幼女「……?」
幼女「はて、何か忘れているような……」
幼女「! そうだ!ポニテちゃん!」
幼女「い、いない……先に帰っちゃったんだ、私と友ちゃんが話してる間に……」
幼女「くそー、一緒に帰るって言ったのにー!いまから追いかければ間に合うかな……」タタタ
帰り道
ポニテ「はあ……」
ポニテ(一日中あいつに付きまとわれたし……)
ポニテ(ほんとなんなのあいつ……友達になりたいとか、意味わかんないし……)
ポニテ(はあ、もういいや、はやく帰ろ)
ニャー
ポニテ(……?)
ポニテ(にゃー?)
子猫「ニャー」
ポニテ「!?」
子猫「ニャー」
ポニテ(え、え、猫?なんでこんなことろに……)
ポニテ(ダンボール……捨て猫かな)
子猫「ニャー」
ポニテ(う、うわあ……ちっさ……か、かわ……)
子猫「」ジー
ポニテ(こ、こっちみてる……)
ポニテ(さわれるかな……)
ポニテ「」ソー
子猫「ニャ」
ポニテ「」ナデナデ
子猫「ニャーン」
ポニテ(ふ、ふわふわだ……)
ポニテ「」ナデナデ
子猫「」ゴロゴロ
ポニテ(だ、だっことか、できる?)
子猫「ニャ」
ポニテ「」ソー
ポニテ「」ダッコ
子猫「」ゴロゴロ
ポニテ「」ナデナデ
子猫「」ゴロゴロ
幼女「……」
ポニテ「ナデナデ」
子猫「」ゴロゴロ
ポニテ「」ニコニコ
幼女「……ポニテちゃん?」
ポニテ「」ビクッ
ポニテ「……あ」
幼女「」ジー
ポニテ「」スッ
ポニテ「」ダッ
幼女「」ガシッ
ポニテ「うっ」
幼女「今日は逃がさないからな!」
ポニテ「わ、わかったよ、わかったから、どこにも逃げないからはなして」
幼女「お、ポニテちゃん口きいた」
ポニテ「もういいから、そういうの」
幼女「……猫?」
ポニテ「……うん」
幼女「捨て猫?」
ポニテ「ダンボールに入ってるから……多分」
子猫「ニャー」
幼女「ポニテちゃん今すごい顔してたよ、すごいニコニコ、にへーって」
幼女「ポニテちゃんってあんな顔するんだね」
ポニテ「っ……やめてよ」
ポニテ「」ナデナデ
子猫「ニャア」
幼女「かわいいねー」
ポニテ「うん……」
幼女「猫好きなの?」
ポニテ「まあ……嫌いじゃないけど」
幼女(嘘だ、嬉しそうだもん、すごい好きなんだ)
子猫「」ゴロゴロ
幼女「どうするの?」
ポニテ「なにが?」
幼女「拾っちゃえば?かわいいし」
ポニテ「……」
幼女「?」
ポニテ「うちのアパート……ペット禁止だから」
幼女「そうなの……」
ポニテ「……帰るね」
幼女「え」
ポニテ「……」
幼女「いいの?」
ポニテ「……」
幼女「ここの通り人少ないし、このままほっといたら……」
ポニテ「……でも」
ポニテ「ちゃんと飼えないのに拾うわけにいかない。衝動的に動いて無責任なのが、一番、ダメ」
ポニテ「……大丈夫、全く人がいないわけじゃないから。そのうちもっとちゃんとしたいい人が拾ってくれるよ」
幼女「……」
ポニテ「……ついてこないでね」
ポニテ「」スタスタ
幼女「……」
次の日の朝
ポニテ「」スタスタ
ニャー
ポニテ(あ……)
ポニテ(今日もいる……)
子猫「ニャー……」
ポニテ「……」
ポニテ(はやく誰か拾ってあげれば……)
子猫「ニャ……」
ポニテ「……」
また次の日の朝
ポニテ「……」
子猫「ニャ……」
ポニテ(まだいる……)
子猫「……」
ポニテ(……やっぱり)
ポニテ「」ゴソゴソ
数日後
当番「きりーつ、さようならー」
幼女「ポニテちゃーん!」
ポニテ「うわ、何」
幼女「今日は一緒に帰るぞ!久しぶりに!」
ポニテ「思い出したように……今まではどうしてたの」
幼女「あ、ちょっと新しく仲良くなった友達がいるからその子と帰ってた。でも今日はポニテちゃんと帰る」
ポニテ「じゃあずっとそうしてればいいじゃん……ついてこないでって言ってるでしょ」
幼女「ついてくるんじゃなくて、一緒に帰るんだよ、友達でしょ?」
ポニテ「友達じゃないからっ」
幼女「それに、あの猫の事も気になるんだよねー、どうなった?やっぱり誰かが拾ってくれた?」
ポニテ「……」
幼女「?」
子猫「ニャー」
幼女「ま、まだいるんだ……」
ポニテ「……」
幼女「あれ?でも……」
幼女「ご飯が用意されて……それにこの毛布……」
ポニテ「……」
幼女「ポニテちゃんがやったの?」
ポニテ「……うん」
ポニテ「毎朝……来るたびに」
幼女「へえ……」
ポニテ「あと……おしっこの処理とかも……した」
幼女「……ポニテちゃん」
ポニテ「?」
幼女「ポニテちゃんってやっぱりいい人だよね、優しい」
ポニテ「……」
ポニテ(優しい?私が?)
ポニテ「」ナデナデ
子猫「」ゴロゴロ
幼女「かわいー」
ポニテ「」ニコ
子猫「ニャー」
幼女「……」
ポニテ「……きなこ」ボソッ
幼女「……きなこ?」
ポニテ「あッ……いや、なんでも……」
幼女「?」
ポニテ「……名前」
ポニテ「きな粉色だから……」
幼女「へえー、いい名前じゃん!」
ポニテ「……」
幼女「きなこー」ナデナデ
きなこ「ニャー」ゴロゴロ
ポニテ「はあ……」
幼女「どうしたの?」
ポニテ「ダメだよね……私」
幼女「え、なんで」
ポニテ「まともに飼ってあげられるわけでもないのにこんな風に相手して」
幼女「そ、そんなことないよ、ポニテちゃんはなにもダメじゃないよ」
ポニテ「育てられないのに、中途半端に可愛がって、そういうのが、ダメなんだよ」
ポニテ「わたしだって……」
ポニテ「……」
幼女「わたしだって?」
ポニテ「……なんでもない」
幼女「ねえ、やっぱりポニテちゃんが飼ってあげたほうがいいんじゃないかな」
ポニテ「え……」
幼女「ずっとお世話してあげてたんでしょ」
ポニテ「お世話っていうか……」
幼女「きなこもポニテちゃんになついてるし」
ポニテ「うん、でも……」
幼女「……やっぱりだめか」
ポニテ「前も言ったけど、ペット……」
幼女「……あのねポニテちゃん」
ポニテ「何?」
幼女「このまえね、お母さんに捨て猫見つけたから飼ってもいいかって聞いたら、ちゃんと世話するなら飼ってもいい、って言われたの」
ポニテ「……」
幼女「私はポニテちゃんが飼うのが一番よくって、ベストだと思うけど、ポニテちゃんも事情があるみたいだし」
幼女「ずっとこのまま放っておいたら可愛そうだから……ね?」
ポニテ「……」
ポニテ「」ダッコ
きなこ「ニャーン」
ポニテ(なにそれ)
ポニテ(それって、きなこが、幼女ちゃんちの猫になるってことじゃん)
ポニテ(それって……)
ポニテ(……)
ポニテ(……でもきなこは私の猫じゃないし)
ポニテ(幼女ちゃんの言う通りこのまま放っておいたら)
ポニテ(それに)
ポニテ(きなこも、そっちのほうが幸せだ)
ポニテ「……」
幼女「……ポニテちゃん」
ポニテ「……お願い」
ポニテ「ちゃんと飼ってね」
幼女「うん!」
きなこ「ニャー」
次の日
幼女「ポニテちゃーん、私結局ポニテちゃんの家知れてないんだけど」
ポニテ「知らなくていいから、そんなの」
幼女「なんでさー、友達なんだから遊びに行きたいよー」
ポニテ「だから友達じゃ……」
幼女「あ、そうだ、じゃあ逆に私の家に遊びに来る?」
ポニテ「別に、行く意味ないし」
幼女「そんなことないよ、一緒にあそぼーよーねー」
ポニテ「そんなことより」
幼女「?」
ポニテ「きなこ……どうなった?」
幼女「あーうん!家にいるよ!」
ポニテ「どんな感じ?」
幼女「えっとね、最初は怯えててダンボールから出てこなかったんだけど……でもしばらくしたら出てきて、
ご飯も食べてた!私が外からねこじゃらしとってきて、それで遊んだよ!」
ポニテ「そう、元気なんだ」
幼女「うん!」
ポニテ「よかった……」
幼女「……」
ポニテ「……」
幼女「ポニテちゃん」
ポニテ「何?」
幼女「家、来る?」
ポニテ「え?」
ポニテ「だから別に、行く意味ないって……」
幼女「意味ならあるよ!きなこ、見たいでしょ?」
ポニテ「……」
幼女「きなこもうすっかり元気だし、かわいいから見においでよ!
きなこも、世話してくれたポニテちゃんの顔見て安心すると思う!」
ポニテ「そうかな……」
幼女「うん!」
ポニテ「……」
帰り道
ワイワイガヤガヤ
ポニテ「……」キョロキョロ
幼女「どうしたの?」
ポニテ「いっぱいいる……」
幼女「あー、ポニテちゃんの通学路人少ないもんねー、こっちの方角から帰る人多いから」
ポニテ「家、どこにあるの?」
幼女「んー、あっちらへん」
ポニテ「どっちよ」
幼女「あっち」
ポニテ「自分の家の地区の名前くらい憶えときなさいよ……」
幼女「ふふふー、私の家ねー、畳屋なんだー」
ポニテ「畳屋?」
幼女「そ!家の隣にお父さんが畳つくるところがある!」
ポニテ「へー……」
幼女「あ、ここを曲がっていくんだよ!」
ポニテ(人通り少なくなってきた、みんなバラバラの方向に帰ったんだ)
ポニテ「まだなの?」
幼女「もうすぐ着くよ」
ポニテ「」トコトコ
幼女「ふふ、隣」
ポニテ「?」
幼女「私今ポニテちゃんの隣にいる」
ポニテ「うん」
幼女「学校でも隣にいる」
ポニテ「うん」
幼女「えへへ」
ポニテ「何……へんなの」
幼女「あ!着いたよ!ここだよ!」ユビサシ
ポニテ「へー」
幼女「どう?」
ポニテ「どうって……別に、普通の家じゃん」
幼女「ここが畳つくるところ!」
ポニテ「……」
幼女「ここが玄関!」
幼女「あそこがトイレ!あそこが子供部屋!あそこが……」
ポニテ「ストップ、外から指さして説明されてもわかんないから」
幼女「そうだね!じゃあ入って」
ポニテ「……お邪魔します」ボソッ
幼女「おかーさーん!友達来たー!」トタトタ
ポニテ「……」
母「あら、こんにちは。ちょっと幼女、ちゃんと手洗いなさい」
ポニテ「こ、こんにちわ」
幼女「ポニテちゃーん!きなここっちにいるよー!」
母「えーと、来たことある子?」
ポニテ「あ、いえ、ポニテです。初めて来ました」
母「だよね、よかったー、私が覚えてないだけかと思った」
母「幼女も妹もいろんな子連れてくるのよー、全員ちゃんと覚えられなくって。このまえ初めましてって言ったら来たことありますって
言われて。いやでしょー、もう」
ポニテ「はは……」アイソワライ
母「あ、お菓子なんか持ってくるからちょっと待っててね」
ポニテ「あ、お構いなく……」
ポニテ「……」
幼女「ポニテちゃーん、こっちこっち!」
ポニテ「うん……」
幼女「えーと、このダンボールの中に……」
幼女「……あれ」
ポニテ「いないじゃん」
幼女「おかーさーん!きなこはー?」
母「猫ちゃん?猫ちゃんなら妹がなんか持って行ってたわよ。はいチョコあったからあげる。幼女、一人で全部食べちゃダメよ」
幼女「食べないよ!はいポニテちゃん」
ポニテ「ああ、うん……それできなこは」
幼女「妹多分子供部屋にいると思う、来て」
ポニテ「うん」
幼女「」トタトタ
ポニテ(階段……二階か、いいな……)
幼女「ポニテちゃんー」
ポニテ「」トタトタ
子供部屋
幼女「いもうとーいるー?」ガチャ
妹「答えよ、そなたは何者じゃ」
きなこ「ニャー」
妹「ふむ、猫か。やはり吾輩は猫であるなら名前はまだないのか」
きなこ「ニャー」
妹「ならばつけてしんぜよう、うーぬ」
きなこ「ニャー」
妹「ニャー助!ニャーとなくからニャー助だ!ニャー助ー」ナデナデ
きなこ「ニャーン」
幼女「……なにやってんの?」
妹「あッ、お姉ちゃんいたの?」
ポニテ「……」
妹「? お姉ちゃんの友達?」
幼女「そうだよ」
妹「ふーん」ジー」
ポニテ「……」
幼女「ねえ妹、きなこかして」
妹「ニャー助は今私と取り込み中です」
幼女「にゃ、ニャー助じゃないよ、きなこだよ!いいからかして!」
妹「えーなにきなこって。ニャー助の方がイケてるー、ねーニャー助」ナデナデ
きなこ「ニャー」
幼女「もういい加減にしてよ!きなこって名前はポニテちゃんが……!」
ポニテ「いいよ」
幼女「え?」
ポニテ「いいよ、ニャー助で。元々私に名前付ける資格なんかなかったし、
もう幼女ちゃんちの猫なんだから好きにつければ」
幼女「で、でも……」
妹「だってさーニャー助ー」ナデナデ
幼女「……妹、一階にチョコあるよ」
妹「え、ほんと!?」
妹「」ガチャトタトタ
ポニテ「……」
幼女「」ナデナデ
きなこ「」ゴロゴロ
幼女「きなこー」ナデナデ
きなこ「」トコトコ
ポニテ「?」
きなこ「」スリ
ポニテ「あ……」
きなこ「」スリスリ
幼女「やっぱりちゃんと覚えてるね、ポニテちゃんの事」
ポニテ「きなこ……」
きなこ「ニャー」スリスリ
ポニテ「」ナデナデ
きなこ「ニャー」
ポニテ「」ニコ
幼女「会えてよかったねー」
ポニテ「べ、別に……昨日も会ってたし」
きなこ「」ゴロゴロ
ポニテ「……」
ポニテ(お別れ言わなきゃ、もう幼女ちゃんちの猫なんだから)
ポニテ(いい家にこれてよかったね、きなこ)
ポニテ(あ……そうか、もうきなこじゃないんだ)
ポニテ(……)
きなこ「」ゴロゴロ
ポニテ「妹いたんだ」
幼女「うん!あとお姉ちゃんもいるよ!」
ポニテ「へえ……結構多いね」
幼女「うん!五人家族!」
ポニテ「五人と一匹、ね」
幼女「そっか!ねえポニテちゃんは兄弟いるの?」
ポニテ「いないよ、一人」
幼女「ほんとー?いいなー」
ポニテ「え、なんで」
幼女「だってさ!外で食事するとき喧嘩にならないじゃん!一人っ子だったらいつでも自分の好きな店に行けるでしょ!」
ポニテ「そんな理由……」
幼女「ポニテちゃんやっぱり外で食べるとき好きなとこ連れてってくれるの?」
ポニテ「……外食自体、あんましない」
幼女「そっかー、私が一人っ子だったら毎回あそこのレストランにするんだけどなー」
ポニテ「……」
幼女「そうそう!ねえ聞いてよー!兄弟で思い出したんだけどさ!」
ポニテ「なに」
幼女「私自分の部屋持ってないんだよー!この部屋!子供部屋ってひとくくりにされてさ!妹と共有なの!」
ポニテ「ふーん」
幼女「しかもさ!それなのにお姉ちゃんは自分の部屋持ってる!ずるいでしょー、お母さんはお姉ちゃんが一番上だからって
言うけど、私だって自分の部屋欲しい!ねえ、どう思う?」
ポニテ「どう思うって言われても」
幼女「友達に聞いたらさー、私の部屋にはテレビついてるよー、とか。羨ましいなーほんと」
ポニテ「私の部屋テレビあるけど」
幼女「ほんと!?うわー!ますます行きたい!ていうか部屋あるんだ!いいなーいいなー」
ポニテ「……べつに、そんないいもんじゃないから」
幼女「ちぇー、部屋持ってるからそういうこと言えるんだよーぶーぶー」
ポニテ「……」
きなこ「」ゴロゴロ
ポニテ「私、もう帰るね」
幼女「えっ!?まだ来たばっかじゃん!もうちょとゆっくりしてけばいいのに」
ポニテ「猫に会いにきただけで、遊びに来たわけじゃないから。もう十分」
ポニテ(お別れも言ったし)
幼女「そう……じゃあお見送りするね」
ポニテ「別にいいよ」
幼女「そんなこと言わずに」
ポニテ「」トタトタ
ガラガラ
ポニテ「?」
姉「ただいまー」
幼女「あ、お姉ちゃん帰ってきた」
母「もう、姉も、ちゃんと手洗いなさい」
姉「わかってるよーもう、いちいち言わなくていいからさー」
ポニテ「……」
姉「お、知らない子」チラッ
ポニテ「……」
姉「」スタスタ
母「あら、ポニテちゃんもう帰るの?」
ポニテ「あ、はい、長くいると悪いので」
母「別にそんなことないのにー、またいつでも遊びに来てねー」
ポニテ「ど、どうも」
ガラガラ
ポニテ「別に見送りとかいいって言ったのに」
幼女「それじゃ、次はポニテちゃんの家行くからね」
ポニテ「来なくていいから」
幼女「絶対行くから!」
ポニテ「うるさいな……」
幼女「じゃ、また明日」
ポニテ「うん……」
幼女「……」
ポニテ「……ニャー助」ボソッ
幼女「!」
ポニテ「よろしくね」
幼女「……」
ポニテ「」スタスタ
幼女「待って!」
ポニテ「?」クルッ
幼女「私はね、ポニテちゃん」
幼女「きなこを飼うとは言ったけど、違うの。もらった訳じゃない」
幼女「ポニテちゃんは事情があるから、私がかわりなの。預かってるだけなの」
幼女「きなこは今でもきなこだし、きなこは今でもポニテちゃんの猫だよ!」ニコッ
ポニテ「……幼女ちゃん」
幼女「だから、さ、これからもこうやって会いにおいでよ。きなこもポニテちゃんに会いたがってるよ!」
ポニテ「……」
幼女「ね?」
ポニテ「……」
ポニテ「……都合のいいこと言わないで」
ポニテ「そうやって調子いいこと言って、私を定期的に家に誘う気でしょ」
幼女「ええ、いや、そういうわけじゃ……」
ポニテ「私だってきなことお別れは嫌だったけど、もう、いいから、そういうの。余計な心配しなくても、いい」
ポニテ「今回の猫の一件で、仲良くなった気にならないで」
幼女「……」
ポニテ「……」
幼女「……」
ポニテ「……でも」
幼女「……?」
ポニテ「……ありがと」
幼女「……」
ポニテ「じゃあ、ね、また明日」
ポニテ「」スタスタ
幼女「」ニコッ
幼女「じゃーねー!ポニテちゃん!明日も一緒に帰ろうねー!!」ノシ
ポニテ「」ノシ
先生「はい、それではこの前の国語のテストを返したいと思います。よんだ人から順に取りに来てくださーい……」
幼女「……」
ポニテ「」スタスタ
ポニテ「」スワリ
幼女「ねえねえポニテちゃん、テストどうだった?」
ポニテ「別になんともないけど」
幼女「見てもいい?」
ポニテ「ん」
幼女「ひゃ、百点……」
ポニテ「それがどうかしたの?」
幼女「ポ、ポニテちゃんってやっぱり頭いいんだねー」
ポニテ「別に、国語のテストなんて漢字さえ覚えちゃえばあとは勉強しなくたって百点とれるよ」
幼女「そ、そうなの?」
ポニテ「あんたはどうだったの?」
幼女「うう……」
ポニテ「?」
幼女「」チラ
ポニテ「四十三点……」
幼女「いっつもこんな点数……」
ポニテ「はあ……どうせ宿題もまともにやってないんでしょ、だからそんな点数なんだよ」
幼女「なっ!やってるよ!」
ポニテ「ほんとに?」
幼女「毎日ちゃんと全部やって出してるよ!ほんとだよ!」
ポニテ「ええ、それって、勉強してるのにそんな点数ってこと?」
幼女「……うん」
ポニテ「それってどうなの」
幼女「どうなのって……」
ポニテ「ま、あんたの成績なんて別にどうでもいいけどね」
幼女「そうだなー、誰か頭のいい人に教え込んでもらえればいいと思うんだけどなー」
ポニテ「……」
幼女「」ジー
ポニテ「え、何、私?」
幼女「いやぁ」
ポニテ「うん、まあ授業中にわからない問題の解き方教えてあげるくらいしてもいいけど」
幼女「んー、どうかなー、それじゃ薄いなー、もっとこう……」
幼女「その頭のいい人の家に行って一緒に勉強するくらいしないと……」
ポニテ「な、そうきたか……」
幼女「ね、いいでしょ、勉強会だよ勉強会!」
ポニテ「いいわけない、あんたを家にあげる気なんてさらさらないから」
幼女「なんでさー、私の家にも来たんだから次はポニテちゃんの番だと思わないー?順番的に」
ポニテ「どういう順番だ、とにかくダメ」
幼女「ちぇー、ちぇちぇちぇのちぇーだ」
ポニテ「なんでそんなに私の家に来たがるの」
幼女「なんでって、一緒に遊ぼうよ!ポニテちゃんの家どんなか知りたい!」
ポニテ「私の家なんて何もないよ、面白いもの」
幼女「そんなことないよ!この前部屋にテレビあるって言ってた!」
ポニテ「そんなのたいしたことないから、ホントに」
幼女「それでも行きたいよ!友達でしょ!?」
ポニテ「またそう言う……」
幼女「ね?」
ポニテ「どんなに言っても無駄だから、諦めなさい」
幼女「うう……ちくしょー」
帰り道
ポニテ「」トコトコ
トコトコ
ポニテ「」トコトコ
トコトコ
ポニテ(き、聞こえる……後ろから露骨に足音が)
ポニテ「」クルッ
幼女「」ビクッ
幼女「」サッ
ポニテ「……それでばれずについてきてるつもりなの」
幼女「ヒ、ヒトチガイジャナイデスカネー」
ポニテ「尾行して人の家勝手に知ろうとするなんて、ほんと最低」
幼女「だって、入れてくれないだろうから、せめて場所だけでもと思って……」
ポニテ「呆れた……」
幼女「ご、ごめんね?私帰るから……あ、でも諦めないからね、絶対諦めないから」
ポニテ「……」
幼女「」スタスタ
ポニテ「待て」
幼女「え」
ポニテ「来れば?来れば満足なんでしょ?じゃあ勝手にすれば」
ポニテ「毎日家行きたい家行きたいキーキー言われたらたまったもんじゃないから。
一回入って満足したらもうその話、しないでね」
幼女「え、えと」
ポニテ「……あんたにはきなこの恩があるし」ボソッ
幼女「え?」
ポニテ「何でもない、こっち」スタスタ
ポニテのアパートの前
幼女「ほー……」
ポニテ「ここの二号室が私んとこ」
幼女「」ジー
ポニテ「なにしてんの」
幼女「ここがポニテちゃんの家かー……」
ポニテ「家っていうか、アパートだけど。早くしてよ閉め出すよ?」
幼女「あー、うん、ちょっと待って」トコトコ
幼女「おじゃましまーす……」ガチャ
シーン…
幼女「……」
ポニテ「ね、なにもないでしょ?満足した?」
幼女「」キョロキョロ
ポニテ「……」
幼女「」ジー
ポニテ「ひ、人の家そんなにジロジロ見ないでよ……」
幼女「ポニテちゃんのお母さんは?」
ポニテ「いない、仕事」
幼女「じゃあお父さんは?お父さんも仕事?」
ポニテ「いない、離婚したの、うち。それでこのアパートに来たの」
幼女「りこん」
ポニテ「……だから、離婚ってのは結婚してる人達が別れるってこと、つまり……」
幼女「???」
ポニテ「はあ……馬鹿らし。上がりたいなら上がりな、別に飲み物とか出さないから」
幼女「」トタトタ
幼女「」トタトタ
幼女「」トタトタ
ポニテ「……なにやってんの」
幼女「」クルッ
幼女「あそこが洗面所!ここが茶の間!あそこがトイレ!」ユビサシ
ポニテ「ねえ、なにやってんの」
幼女「せっかく来たから覚えて帰ろうと思って」
ポニテ「覚えてどうすんのよ……」
幼女「あそこがベランダ!あそこは謎の部屋!」
ポニテ「そこは私の部屋だけど」
幼女「ほほーう?」
幼女「」ソー
幼女「てーい!」ガチャ
幼女「おー!ポニテちゃんの部屋だー!」
ポニテ「何がそんなに面白いわけ」
幼女「テレビある」
ポニテ「うん」
幼女「ベッドある!」
ポニテ「そりゃあるよ、私の部屋だもん」
幼女「ててーい!」ボフッ
ポニテ「あッ」
幼女「えへへー、お布団ー♪」
幼女「おー、ポニテちゃんの匂いがする」
幼女「くんくん」
ポニテ「この」
ポニテ「変ッ態!」バシッ
幼女「あいたぁ!ぶつことないじゃんか……」
ポニテ「全く……だから入れたくなかったんだよ……」
幼女「いいなーベッド、私いつも敷布団で寝てるんだよ」
ポニテ「これから宿題するから、邪魔しないでね」
幼女「おー、やっぱり帰ってきてすぐ宿題する感じかー、えらいなー」
ポニテ「別に、それが普通だから。やることなかったら帰ってね」
幼女「……」
ポニテ「」カリカリ
幼女「……」
ポニテ「」カリカリ
幼女「ポニテちゃんちって静かだねー」
ポニテ「そう?」カリカリ
幼女「私んちはいっつもお母さんかお姉ちゃんか妹がいるから……」
ポニテ「それは、あんたんちが騒がしすぎるだけなんじゃないの?」
幼女「ねえ、ポニテちゃんのお母さんっていつ帰ってくるの?」
ポニテ「……夜だよ。暗くなってから」
幼女「へー、お仕事大変なんだね」
ポニテ「……私はいつも」
幼女「うん」
ポニテ「……この家にひとりでいる」
幼女「そっか、だから集中して勉強できるし、頭いいんだね」
ポニテ「……」
幼女「でもポニテちゃん、今は私がいるよ。一人じゃない、二人だ」
ポニテ「あっそ……」
幼女「えへへ、ふたりっきり」
ポニテ「何」
幼女「ほかの友達も、先生も、お母さんも兄弟もいない、ふたりっきり」
ポニテ「ちょっと、隣に座らないでよ」
幼女「……ポニテちゃんの隣って好きなんだ」
ポニテ「学校で散々隣なんだからいいでしょ、座るんだったら向かい側に座ってよ」
幼女「そうだ!私も宿題やろっ、ポニテちゃんに教えてもらえるし一石二鳥だ」
ポニテ「ちょっと聞いてる?」
幼女「」ゴソゴソ
ポニテ「もう……」
幼女「終わったー!」
ポニテ「あんた遅すぎ、どんだけ時間かかってんの」
幼女「でも!ポニテちゃんに教えてもらいながらやったからすっごい頭よくなった気がする!」
ポニテ「そんな一回の宿題くらいで変わったりしないから」
幼女「わかってるよー、でもありがと、ポニテちゃん」
ポニテ「……」
幼女「」ニコッ
ポニテ「ど、どういたしまして……」
幼女「さーて、これからどうしよう」
ポニテ「もう帰りなよ、暗くなっちゃうよ?」
幼女「うーん、じゃあそうしようかなー、ポニテちゃん!今日は家に入れてくれてありがと!」
ポニテ「うん」
幼女「また来てもいい?」
ポニテ「……」
幼女「……ポニテちゃんはこれからどうするの?」
ポニテ「あ……コンピニ行く」
幼女「コンビニ」
ポニテ「お母さんからお金もらってるから、晩御飯買わなきゃ」
幼女「へえー」
ポニテ「じゃあね」
幼女「うん!じゃあまた明日!バイビー!」
ポニテ「……」
幼女「バイビー!」
ポニテ「ば、ばいび……」
幼女「」ニコッ
ガチャッ
バタン
ポニテ「……」
ポニテ「はあ……」
ポニテ「……」
ポニテ「……」
シーン…
『ポニテちゃんちって静かだねー』
ポニテ(ホントだ……静かかも)
ポニテ(てか、当たり前だよ、私しかいないんだもん)
ポニテ(いつも帰ってきたところで、ただいまって言ったところで、なんにもかえってこない空箱みたいな家だし)
ポニテ(……)
ポニテ(いつから……)
ポニテ(……)
―――――――――――――――――――――――――
――――――――――
――
ポニテ(……)
ポニテ(眠れない……)
ポニテ(父さんと母さん……なにを怒鳴りあってるんだろう)
ポニテ(この頃多いよね……なんだろ……)
ポニテ(私が寝てて、聞こえてないって思ってるのかな……)
ポニテ(……)
ポニテ(今日も何か話してる……)
ポニテ(なんだろう……私のこと?)
ポニテ(なんで……なんで父さんと母さんそんなに怒鳴りあったりするの)
ポニテ(なんで私のこと邪魔者みたいに話すの)
ポニテ(なんで……)
ポニテ(……)
――
――――――――
―――――――――――――――――――――――――
店員「はい、こちらあわせて八百三十五円になります」
ポニテ「……」
店員「……お客様?」
ポニテ「……」
店員「お客様?どうされました?」
ポニテ「あっ、す、すいません……」
電子レンジ「ジー」
電子レンジ「ピーピーピー」
ポニテ「」ガチャ
ポニテ「」モグモグ
ポニテ「……」
シーン…
ポニテ「……」
ポニテ(昔のことなんか覚えてない)
ポニテ(覚えて……ない……)
ある日
幼女「ポニテちゃーん!」タタタ
ポニテ「あんまり人の名前大声で呼ばないでよ」
幼女「終わった!」
ポニテ「え」
幼女「終わったよ!」
ポニテ「な、なにが」
幼女「本!読み終わった!」
ポニテ「本?……ああ、推理小説?」
幼女「うん!」
ポニテ「そう、それで?」
幼女「うん?」
ポニテ「どうだったの?」
幼女「なにが?」
ポニテ「……せっかく読み終わったんでしょ、感想くらい聞かせなさいよ」
幼女「感想?ああうん!えっとね、面白かった!」
ポニテ「何が面白かったの」
幼女「うーんと、えーと」
ポニテ「はあ……もういいよ……だから読んでもわからないって言ったのに」
幼女「わ、わかってるよ!確か犯人が中村って人でー」
ポニテ「とにかくもう返してきなよ、かりたのずいぶん前でしょ?返却期限過ぎてるでしょ」
幼女「うん、だからこれから図書館行こうと思うんだ」
ポニテ「そう」
幼女「ポニテちゃんも来ない?」
ポニテ「は?」
幼女「一緒に」
ポニテ「なんで一緒に行く必要があるの」
幼女「必要っていうか……ほら、一緒のほうが楽しいでしょ」
ポニテ「別に楽しくないよ、図書館なんて一人で十分じゃん」
幼女「そうかな……」
友「幼女ちゃーん、図書館いこー」
幼女「あ、友ちゃん、うん行くー!ちょっと待っててー!」
ポニテ「……」
幼女「みんなと一緒の方がなんだって楽しいよ」
ポニテ「そんなことないから」
幼女「……」
幼女「」タタタ
図書館
ピッ
幼女「ふー、今度からちゃんと期限内に返さなきゃ……」
友「えー、何その本、幼女ちゃんそんなの読むんだ」
幼女「あ、これ?ふふふ、一日十ページずつ読んで昨日やっと全部読み終わったんだよ!」
友「なるほど、だから期限も過ぎちゃったんだね。面白いの?」
幼女「面白いよ!ポニテちゃんが読んでた本なの!」
友「ポニテさんが?」
幼女「うん」
友(だからか、幼女ちゃんがこんな本自分からかりるはずないもんね)
友「推理小説かー、ポニテさんこんな難しい本読むんだね」
友「ねえ、ポニテさんと仲良くなったの?最近よく話してるけど」
幼女「うん!お互いの家に行ったよ!」
友「へえ、もうそんなに」
幼女「そうだ、友ちゃんもポニテちゃんと話してみれば?」
友「私?」
幼女「うん、ポニテちゃんひとりでいること多いし、私以外にも喋れる人いたほうがいいと思う!」
友「そっか……うーん、でも」
ツインテ「おーっす」
幼女「あ、ツインテちゃん」
ツインテ「なになに?何の話?」
幼女「ポニテちゃんの話」
ツインテ「ポニテ……ああ、幼女ちゃんの隣の?仲いいみたいだね」
幼女「そうそう、だからみんなももっとポニテちゃんと仲良くなれればいいなって」
ツインテ「ポニテちゃんねえ……」
友「でも、ねえ……」
ツインテ「ねえ……」
幼女「?」
ツインテ「なんていうんだろ……なんか近寄りがたいオーラあるよねー」
友「あー、うん、わかるー」
幼女「そ、そうかな……」
友「たまに話しかけてもあんまりいい返事しないよね」
ツインテ「そうそう、無愛想な感じ。せっかく話しかけてやってんのに」
幼女「え、えと……」
友「この前の体育の時とか、ひとりで取り残されてたし」
ツインテ「人と話すのが好きじゃないっていうか、ただ単に……」
幼女「あ!あのさ!」
友「?」
幼女「この!この本前読んだとき面白かったよ!すっごく!」
友「あーこれ!私も読んだことある、面白いよね」
ツインテ「え、どれどれ見せて」
友「この本ね、私が好きな作家さんのなんだけど……」
幼女「……」
授業中
幼女「ポニテちゃん」
ポニテ「んー?」カリカリ
幼女「ポニテちゃんって友達どれくらいいるの?」
ポニテ「いないよ」
幼女「あ、えと、わたし、わたし」
ポニテ「あんたはよくても知り合い」
幼女「でも、いないんだったら私が第一号じゃダメかな」
ポニテ「別に、一号も二号もいらない」
幼女「どうしてそんな……」
ポニテ「いらないから。必要ないから」
幼女「そんなことないよ!」
ポニテ「だからあんたが私に友達友達言うのも理解できない」
幼女「うー……」
ポニテ「」カリカリ
幼女「みんなと仲良くなったほうが絶対楽しいのに……」
ポニテ「ホントにそう?」
幼女「そうだよ!だって……」
ポニテ「だって?」
幼女「……」
ポニテ「だってなによ」
幼女「だって、だって……」
ポニテ「もういいよ、ちゃんと授業受けて」
幼女「うう……」
当番「きりーつ、さようならー」
幼女「ポニテちゃん、一緒に……」
ツインテ「幼女ちゃーん帰ろー」
ポニテ「……」
幼女「あ……」
ツインテ「ん?どした?」
幼女「あ、あのねツインテちゃん、今日ポニテちゃんと……」
ポニテ「」ガタスタスタ
幼女「ああ!ポニテちゃん待って!行かないで」
ポニテ「何、あの子と帰るんでしょ」
幼女「でも、今日はポニテちゃんと帰るって決めてたし……」
ポニテ「じゃあ断るの?」
ツインテ「幼女ちゃーん何話してんの?なんか都合悪い?」
幼女「あ、ううんー、違うの。ねえポニテちゃん、ツインテちゃんと一緒に帰ろうよ」
ポニテ「はあ?なんでよ」
幼女「だってそうすればツインテちゃんと仲良くなれるかもしれないでしょ?友達できるよ!」
ポニテ「友達なんていらないって言ったでしょ?聞こえなかった?余計なお世話。帰るね」
幼女「ちょ、ちょちょちょ待って!ツインテちゃん!」
ツインテ「なに?」
幼女「今日図書館で話したこと!」
ツインテ「あー……」
ツインテ(そういえばポニテちゃんと仲良くとか言ってたっけ)
幼女「ポニテちゃん、ツインテちゃんが」
ポニテ「何、早くしてよ」
ツインテ「えー……と」
ツインテ「」ニコッ
ツインテ「あのね、私ツインテって言うの!ポニテちゃんだっけ、幼女ちゃんからよく話聞いてるよ!」
ポニテ「……」
ツインテ「転入してきてからあんまり話してないけど、ずっと仲良くなりたいって思ってたの!ねえ、どこら辺に住んでるの?」
幼女(そう!ツインテちゃん!ナイス!)
ポニテ「……」
ツインテ「推理小説好きなんだって?私もねー結構読むよ、例えば……」
ポニテ「」ギロッ
ツインテ「っ……ごめん、なんかした?」
幼女「ぽ、ポニテちゃん、睨んじゃダメ!」
ポニテ「」プイスタスタ
ツインテ「あ……」
幼女「ごごごごごめんごめんごめんごめん!ポニテちゃん、ホントはいい人なんだよ!ホントに!」
ツインテ「うーむ……」
幼女「あああ!ちょっと待ってポニテちゃん!ごめんツインテちゃん!また明日ちゃんと謝るから!」
幼女「」トタトタ
ツインテ「……」
帰り道
幼女「ぽ、ポニテちゃんってばどうしていつもそうなの……」
ポニテ「なにアイツ、ムカつく」
幼女「そっ、そんな言い方ないでしょ!せっかくツインテちゃんの方から仲良くしてくれようとしてたのに!」
ポニテ「今日の図書館」
幼女「えっ……」
ポニテ「聞いてたよ」
幼女「え、えと……」
ポニテ「……」
幼女「な、なんで……?」
ポニテ「いたの、私。読んだ本返してすぐ教室に戻ったからやっぱり気づいてなかったんだ」
幼女「ご、ごめんなさい……」
ポニテ「なんで謝るの?勝手に陰口叩き始めたのはあいつらの方でしょ?」
幼女「かっ、陰口!じゃ、ないよ……」
ポニテ「簡単だよね、表面だけ取り繕うのは、さ、あんただっていないところで何言われてるかわかったもんじゃないでしょ」スタスタ
幼女「そんなこと……」
ポニテ「ないって言い切れる?」
幼女「……」
ポニテ「小さくて弱い生き物が群れを作って動くみたいに、自分だけ独りになって浮き出さないように
周りで塗り固めて安心してるんでしょ。相手も自分も」
ポニテ「でもそれだけの関係だよね、所詮。
結局ただの都合のいい防護壁としか認識してないんだよ。それで友達とか綺麗な言葉使ってさ、ただの馴れ合い」
幼女「……」
ポニテ「だから私は友達になろうよとか、耳障りだから簡単に行って欲しくないわけ、わかる?」
幼女「わから、ないよ……」
ポニテ「……」
幼女「わからないよ……」
ポニテ「……」
幼女「わから……ない……」ポロポロ
幼女「う……う……ぐすっ……」ポロポロ
幼女「ひっく……うぅ……」ポロポロ
ポニテ「何?泣けば同情してもらえると思った?」
幼女「だっ、て、……う、ぐす、ポニテちゃ……っ、く、どうして、そんなこと、言うの……」ポロポロ
ポニテ「……」
幼女「わたし、は、うぅ……みんななかよ、っ、ぐす……みんな仲良くなれればって……」
幼女「みんな、と、なかよくなれば、ぜったいたのしいって……うぅ……」
幼女「ポニテちゃん……っう、う……」ポロポロ
ポニテ「……」
ポニテの家
幼女「お、おじゃましま……」
ポニテ「」スタスタ
幼女「あ、の、ポニテちゃ……」
ポニテ「洗面所貸すから、顔洗ってさっさと帰って」
幼女「うん……」
幼女「……」
洗面所
キュッ
水道「ツー」
幼女「……」
幼女「」バシャ
幼女「……」
幼女「」バシャバシャ
幼女「」バシャ…
幼女「……」
キュッ
鏡の濡れた幼女の顔『…………』
幼女「……」
幼女「」フキフキ
幼女「っは……」
幼女「ポニテちゃん」
ポニテ「……何」
幼女「顔洗った」
ポニテ「見ればわかる」
幼女「……私帰る、から」
ポニテ「うん、帰れば」
幼女「じゃあねって言いたくて……」
ポニテ「……」
幼女「また明日って」
ポニテ「あっそ」
幼女「ポニテちゃん、今日もコンビニ行くの?」
ポニテ「いや……今日は前に買ったやつがあるから……」
幼女「そう……」
幼女「あのねポニテちゃん」
ポニテ「何」
幼女「……やっぱ何でもない」
ポニテ「何よ」
幼女「だってポニテちゃん、怒るから」
ポニテ「何よ、いいから言って」
幼女「……ポニテちゃんの隣」
ポニテ「……」
幼女「に、いたいって」
ポニテ「……」
幼女「言いたかった」
ポニテ「なにそれ」
幼女「……」
ポニテ「前も言ってたけど、私の隣りがそんなにいいわけ?」
幼女「うん……」
ポニテ「なんで」
幼女「なんで、だろ、でも、すごく……」
幼女「……わかんない」
ポニテ「……へんなの、隣の席なのに」
幼女「……」
ポニテ「やってみれば?」
幼女「……え?」
ポニテ「……隣り」
幼女「えっと……」
ポニテ「私今ここに座ってるから、隣に来れば」
幼女「……いいの?」
ポニテ「別に、減るもんじゃないし」
幼女「うん……」
幼女「」トコトコ
幼女「」スワリ
ポニテ「……」
幼女「……」
ポニテ「……」
幼女「……」
ポニテ「ちょっと、近い」
幼女「近いと、ダメかな」
ポニテ「いや、別に」
幼女「……」
ポニテ「……」
幼女「……」
ポニテ「……」
幼女「……秘密基地」
ポニテ「?」
幼女「私は、今から、秘密基地の、話をします」
ポニテ「そうですか、どうぞ」
幼女「なんか昔……友達と……」
ポニテ「うん」
幼女「秘密基地作ろうって、なって……」
ポニテ「うん」
幼女「……まあ結局作れなかったんだけど」
ポニテ「うん」
幼女「……」
ポニテ「……終わり?」
幼女「いや、それでね、秘密基地って、秘密、だから、知ってる人しか入れないの」
ポニテ「うん」
幼女「だから、えっと、静か、だから、ポニテちゃんの家って静かだと思ってたの、それでね」
幼女「秘密基地みたいだなって……」
幼女「私と、ポニテちゃんの」
ポニテ「……」
幼女「だって私とポニテちゃんしかいないし」
幼女「私とポニテちゃんが話さなければ静かだし、話せば、話し声が聞こえるし」
幼女「だから……普段から言えないことでも、言える」
幼女「……言えないことってあるのかな……」
ポニテ「知らない」
幼女「……ごめん、なんか、ごめん」
ポニテ「いいよ、謝らなくても」
幼女「……」
ポニテ「……」
幼女「……」
ポニテ「……」
幼女「……」
ポニテ「……」
幼女「帰ろう、かな」
ポニテ「うん」
幼女「帰る、ね」
ポニテ「うん」
幼女「じゃあね」
ポニテ「うん」
幼女「また明日」
ポニテ「……また明日」
幼女「」ニコッ
ガチャッ
バタン
ポニテ「……」
シーン…
ポニテ「………………」
ポニテ「んっ……んん……」
ポニテ「」アクビ
ポニテ「……」
ポニテ(今何時だろ……)
ポニテ(うわ、もうこんな時間だ)
ポニテ(ちょっと寝すぎたかな……)
ポニテ「んん……」ゴシゴシ
ポニテ(朝ごはん食べなくちゃ……)
ポニテ「」トースターモグモグ
ポニテ(朝ごはんか昼ごはんかわからなくなっちゃった……)
シーン…
ポニテ「……」
ポニテ(……テレビつけようかな)
ピッ
テレビ『……で話題となった今人気のパンケーキ店!数量限定の商品を求めて朝から行列が……』
テレビ『ワイワイ』
ポニテ「……」
ポニテ(くだらな、やっぱ消そ)
ポニテ「」ピッ
シーン…
ポニテ(やっぱ静かだな……)
ポニテ(前までは別に部屋がどんなに静かだろうと気にならなかったのにな……)
ポニテ(いつからだっけ)
ポニテ(……ああ)
幼女『ポニテちゃんちって静かだねー』
ポニテ(あいつだ、あいつが余計なこと言うから)
ポニテ(何が秘密基地だよ、静かだから何、別に静かだろうとどうだろうと家は家でしょ)
ポニテ「……」
シーン…
ポニテ「うっ……うう……」
ポニテ(なにこれ、なんなの、どうしてこんなに気にしなきゃいけないの)
ポニテ(あいつと関わってからろくなことがない……)
―――――
ポニテ母『ポニテ、引越しの準備終わった?』
ポニテ『え……まだだけど」
ポニテ母『何度も言うようだけど、とっておきたい大事なものは引越し用のダンボールに入れて、
いらないものはもうゴミ袋に捨てちゃいなさい、いいね』
ポニテ『うん……』
ポニテ母『なるべく早く、ね』
ポニテ『……』
ポニテ(いらないものはゴミ袋)
ポニテ(取っておくものはダンボール……)
ポニテ(……)
ポニテ(別にそんな、とっておきたいものなんてないし)
ポニテ(ダンボールに入れるようなものがない……)
ポニテ(大事なものなんて何もないじゃんか)
ポニテ(全部ゴミ袋だ……)
ポニテ(……)
ポニテ『終わった……』
ポニテ母『あれ、ダンボールの中身それっぽっちでいいの?』
ポニテ『うん……いいの、別に』
ポニテ母『そう、でもあれは?』
ポニテ『あれって?』
ポニテ母『寄せ書き、もらったんでしょ?』
ポニテ『……いらないよあんなの……』
ポニテ母『でもせっかくみんなが書いてくれたんだし、とっておいたほうがいいんじゃない?』
ポニテ『どうかな……』
ポニテ母『……もうすぐ引越し屋さんが来るから。そうしたらこの家とはお別れ、わかった?』
ポニテ『……』
ポニテ『ねえ……』
ポニテ母『何?』
ポニテ『……やっぱ何でもない……』
ポニテ母『……』
―――――
ポニテ(……)
ポニテ(変なこと思い出しちゃった……)
ポニテ(もう前の家のことなんて忘れた方がいいのに)
ポニテ(……寄せ書き)
ポニテ(あの時捨てたんだっけ……)
ポニテ(どうだったか)
ポニテ(案外ここら辺の引き出しの中に入ってたりして……)ガラッ
ポニテ(……ホントにあったし)
ポニテ(なんだ……捨ててなかったんだ……見つけなきゃよかった)
ポニテ(……)
「ほかの学校行っても元気でね」
「ポニテさんとはあまり話さなかったけど、元気でいてください」
「元気でな!!!!」
ポニテ(……なによ、私のことなんて何も知らないくせに、上っ面だけ)
ポニテ(どうせ先生に書けって言われて仕方なく適当に書いたんでしょ)
ポニテ(私が転校するときに、悲しそうにしてる人なんて誰もいなかったじゃん)
ポニテ(はあ……)
ポニテ(……)
ポニテ(やることないな……)
ポニテ(もう前まで読んでた本も読み終わっちゃったし)
ポニテ(お母さんは今日もいないし)
ポニテ(なにかしないと……静かなのに押しつぶされそう)
ポニテ(……)
ポニテ(……きなこ)
幼女の家の前
ポニテ「……」
ポニテ(ホントに来ちゃったし……)
ポニテ(……まあ、最近きなこと会ってなかったし)
ポニテ(この前みたいにちょっと撫でて帰るだけだから)
ポニテ(……)
ポニテ(……なにげに私から幼女ちゃんに会いに行くのって、初めて)
ポニテ(まあだから別にどうってわけじゃないけど……)
ポニテ(……きなこに会いに来ただけだから)
ポニテ「」ピンポーン
ポニテ「……」
ポニテ「……」
ポニテ「」ピンポーン
ポニテ「……」
ポニテ(いないのかな……)
ポニテ(よく見たら車ないし……ホントにいないのかも)
ポニテ「……」
ポニテ「はあ……」
ポニテ(帰ろ……)
ドタドタ
ポニテ「……」
ドタドタドタドタ
ポニテ(家の中からすごい足音が聞こえる……)
ポニテ(これどう考えても留守じゃないよね……)
ドタドタドタ
ガチャッ
姉「……」
ポニテ「あ……」
姉「おっと?」
ポニテ「え、と、私」
姉「あ、タンマ!ちょっと待って、あてる!あてるから」
ポニテ「え」
姉「んーとね……幼女の友達!だよね?」
ポニテ「……知り合いです」
姉「知り合い?でもこの家に来たことあるよね、名前は……うーん……」
ポニテ「お姉さんに名前言ってないので知らないと思います」
姉「あぁそーぉ?じゃあ聞いてもいい?」
ポニテ「……ポニテです」
姉「うん!ポニテちゃん、幼女だったら今いないよ、お母さんとお出かけ中」
ポニテ「やっぱり……」
姉「今私と妹しかいないけど」
ポニテ「そうですか……ごめんなさい、じゃあまた……」
姉「ああ、ちょっと待って!ええとね、そんなに長くないと思うよ、もうすぐ帰ってくると思う!」
姉「から、家に上がって待ってれば?」
ポニテ「ええそんな、悪いので」
姉「そんなことないよ、だいじょぶだいじょぶ」
ポニテ「ですが」
姉「そい!」グイ
ポニテ「うわっ!」
姉「ふふふ……この家は一度訪れたら二度と出られない恐怖の館だったのさ……」
ポニテ「ええ……」
姉「まあ冗談だけど。なんか飲み物出すねー、待っててー」
ポニテ(なんかすごい変な人……)
ポニテ(頭ボサボサだし)
姉「ねー、頭ボサボサって思ったでしょ」
ポニテ「え、あ、その」
姉「寝起きなんだー、今のチャイムで起きてきたの、妹は絶対出ないだろうなって思って」
ポニテ「あ、すいません、起こしちゃって……」
ポニテ(だからあんなに慌ててたんだ)
姉「いーよいーよだいじょーぶ、ちょうど起きるきっかけ見失ってたとこだったから、ちょうど良かった」
ポニテ(ていうかこんな時間まで寝てたのかな……)
姉「あ、ポニテちゃんってさ、もしかして猫の子かな」
ポニテ「猫の子?」
姉「ほら、きなこ拾ってきた、幼女がよく話してるよ」
ポニテ「ああ、はい、まあ」
姉「ああー、やっぱり、仲良しみたいだね、最近幼女ポニテちゃんのことばっかり話してるよー」
ポニテ「……そうですか」
ポニテ(そうだ、きなこ)
ポニテ「あの、きなこどこですか」
姉「ああうん、いるよ!どっかに」
ポニテ「どっかって」
姉「ちょっと待ってね、探してくるから」
ポニテ「あ、私も探します」
姉「あー、ありがと、じゃあ二階探して、お願いね」
二階
ポニテ「……」
ポニテ(きなこどこにいったんだろ……)
ポニテ(ていうかなんであいついないのよ……おかげでちょっと気まずいし)
ポニテ(まさかこんなことになるなんて)
ガチャッ
妹「!」
ポニテ「あっ……」
ポニテ(しまった……ここ子供部屋だった)
妹「」ジー
ポニテ「えっ……と……」
妹「」ジー
ポニテ(きなこ?ニャー助?なんて言えば)
ポニテ「……猫、どこにいるか知らない?」
妹「知らない……」
ポニテ「そう……ありがと」
バタン
ポニテ「……」
ポニテ「……はあ」
姉「ポニテちゃーん、いたよー」
ポニテ「あっ……」
姉「ほら」
きなこ「ニャーン」
姉「はいどうぞ」
ポニテ「ありがとうございます……」
姉「きなこちゃんはポニテちゃんの猫だってねー、幼女が力説してたよ、妹は聞かないけど」
きなこ「」ゴロゴロ
ポニテ「」ナデナデ
姉「ちょっとお母さんに電話してみるね、待ってて」
きなこ「」ゴロゴロ
ポニテ「きなこ……」
きなこ「ニャー」
ポニテ「」ニコ
ポニテ「……?」
ポニテ(なんだろう、なんだか視線が……)
妹「」ジー
ポニテ「うっ……」
妹「あの」
ポニテ「うん」
妹「ポニテさんですか?」
ポニテ「そうだ、けど」
妹「」ジー
ポニテ「えっと……」
ポニテ「猫……」
妹「」バッ
ポニテ「あっ」
妹「」タタタタタ
ポニテ(と、取られた……)
ポニテ「……」
ポニテ(なによ……なんなのこれ、こんなはずじゃなかったのに)
ポニテ(もうなんでこういう時に限っていないの……)
ポニテ(このままじゃ私、帰るに帰れないし)
ポニテ(早く帰ってくればいいのに……あいつ)
しばらくして
母「ただいまー」
幼女「ポニテちゃーん!」
ポニテ「」チラ
幼女「すごいすごい!ほんとにいた!ポニテちゃんから来てくれるなんて!」
幼女「ごめんね!どれくらい待った?」
母「もう幼女、友達来るなら言ってくれればいいのに」
幼女「だって知らなかったんだもん!ねえポニテちゃん!遊びに来てくれたんだね!」
ポニテ「……」
幼女「あれ?ポニテちゃん?」
ポニテ「バカ」
幼女「ええっ!?」
ポニテ「……」
幼女「ご、ごめん……そんなに待ったの?」
ポニテ「……」
子供部屋
ポニテ「」ツーン
幼女「ごめんねポニテちゃん、怒らないで……」
ポニテ「別に、怒ってないけど」
幼女(嘘だよお……絶対怒ってるよぉ……)
幼女「あ、あのね!私、ポニテちゃんが来てくれるって知らなかったんだけど、
でも初めてポニテちゃんから来てくれてすっごき嬉しいよ!」
ポニテ「あんたに会いに来たんじゃなくて、きなこに会いに来たの」
幼女「あ、やっぱそうか……うん!それでも嬉しい!で、きなこは?もう会った?」
ポニテ「会った。けど」
幼女「けど?」
ポニテ「妹さんに取られた」
幼女「ええっ!?ほんとに!?」
幼女「もうー!きなこはポニテちゃんのだって言ってるのにー!
ごめんね!すぐ取り返してくるから!」
ポニテ「もういい、十分撫でた」
幼女「そ、そう?まあポニテちゃんがそう言うなら……」
ポニテ「お姉さん」
幼女「う、うん」
ポニテ「高校生くらい?」
幼女「えと、そうだよ、高校一年生」
ポニテ「ふーん」
幼女「あっと……お姉ちゃんになんかされた?」
ポニテ「別に」
幼女「そ、そう……」
ポニテ「」ツーン
幼女「うぅ……」
幼女(どうしよう……どうすれば機嫌直してくれるかな、
このままじゃせっかく来てくれたのに、もう帰るって言いかねないよ……)
ポニテ「私邪魔?」
幼女「あっ、いや、そんなことは」
ポニテ「かえ……」
幼女「わーっ!ちょっっっと待って!」
ポニテ「何」
幼女「えっとね、んっとね、そうだたこ焼き!」
ポニテ「え」
幼女「たこ焼き!」
ポニテ「たこ焼きがどうしたの?」
幼女「が、あるの!私たちね、ちょっと遅くなっちゃったけどこれから昼ごはんなんだ!
でね、さっきたこ焼き買ってきたんだよ!おいしいお店のやつ!みんなで食べようって」
ポニテ「うん」
幼女「ポニテちゃんも一緒に食べようよ!美味しいよ!」
ポニテ「ええ」
ポニテ「そんな、悪いよ」
幼女「ううん、そんなことないよ!ね、食べよ!あそこのお店の美味しいんだよ!知ってる?
大通りにある……」
ポニテ「でも私の分あるの?」
幼女「あ……は、半分こしよう!私の分一パックあるからそれを」
ポニテ「大丈夫だよ、別に。みんなで食べるのに私いたら場違いでしょ」
幼女「そんなことないってみんな訊けばいいって言ってくれると思うよ、そうだね、今訊いてくる!」
ポニテ「あっ、ちょっと……」
幼女「」トタトタ
ポニテ「そんなこと急に言われても……」
幼女「ほら、こっちこっち!」グイグイ
ポニテ「わかってるから、背中押さないでよ」
ガチャ
姉「ようこそ!スペシャルゲストさん!我が家のたこ焼きパーティーに!」
母「いやあ、そんな大したものじゃなくて、ただの昼ごはんだから。ポニテちゃんそこの席ね」
妹「……」
ポニテ「えと……すいません、ご馳走になります」
幼女「よし、これが私とポニテちゃんの分ね、半分こ。あっ!まだ食べちゃダメだよ!
みんなでいただきますいってから食べるんだよ!」
姉「え、マジ?そうだったの?」モグモグ
幼女「ちょっと!なにやってんのもー!」
妹「おねえちゃんのから半分出すよりもみんなで少しずつ出し合ったほうがいいんじゃ……」
母「お、名案。じゃあそうしよっか」
母「はいこれ私のね」
妹「」スッ
ポニテ「あ、ありがとうございます」
姉「私のからし入ってるけど大丈夫かな」
ポニテ「平気です。ありがとうございます」
幼女「ようし。じゃあこれ私のね!じゃーん!マヨネーズかけてるやつ!」
ポニテ「マヨ……」
姉「ははは、すごいねー、よりどりみどり」
ポニテ「すいません、こんないただいちゃって……」
母「だいじょぶだいじょぶ、ねえ昼ごはん食べてきたの?」
ポニテ「えっと……まだです」
母「なるほど!じゃあちょうど良かったね」
ポニテ(あのトーストは結局どっちだったんだろう、まあどっちにしろちょっとしか食べてないし……)
幼女「よし!じゃあいただ……」
姉「いただきます!」パクパク
幼女「あっ!私が言うつもりだったのに!」
姉「じれったいのさ!お姉ちゃんはやく食べたかった!うまー」モグモグ
妹「」ハフハフ
幼女「もー、なんだいなんだい……うーん、おいしー」
ポニテ「」パク
幼女「どう?ポニテちゃん、美味しい?」
ポニテ「……」
幼女「どうどう?」
ポニテ「たこ焼きの味がする」ボソッ
姉「そらそうやがな」ビシッ
妹「ナイスボケ……」
ポニテ(ぼ、ぼけたつもりじゃなかったんだけど)
母「ねえ、うちの幼女とポニテちゃん仲良くしてもらってるみたいだし、ポニテちゃんの
親御さんによろしく伝えてといて」
ポニテ「あ、えっと……はい」
姉「ねー、ポニテちゃんってなんていうの?すっごい礼儀正しいよねーえらい」
ポニテ「いえそんな」
母「そうですよ、うちも見習わないと。とくに姉」
姉「へいへい悪うござんした」
幼女「でもポニテちゃんすっごくいい人なんだよ、きなこ拾ったのもポニテちゃんだし、頭もいいし……」
ポニテ「ちょっと、やめてよ、もう」
きなこ「ニャー」
姉「あ、噂をすれば」
母「ねえ、きなこにちゃんとご飯あげた?」
幼女「あげたよー、えっへん、ちゃんとお世話してるんだよー、ポニテちゃん」
ポニテ「そう……」チラ
妹「……」
妹「……ごちそうさま」
姉「ういー、私もー」
母「はいはい、あ、ポニテちゃんも食べ終わった?」
ポニテ「はい」
幼女「みんな早いよー、ちょっと待って」モグモグ
ポニテ「あの……たこ焼き、ありがとうございました。私、これで帰ります」
母「そっか、じゃあまたいつでも来てね」
幼女「っく!ごちそうさま!ポニテちゃん!お見送りするね!」
姉「おー、また来てねー」
ポニテ「どうも」
ガラガラ
ポニテ「……お腹いっぱい」
幼女「ポニテちゃん、ありがとね」
ポニテ「たこ焼きなんていつぶりかわからないよ」
幼女「へえよかった!あのね、何度も言うようだけど、ポニテちゃんから来てくれて
ほんと嬉しかった!ねえ、また来てね!」
ポニテ「……またきなこに会いたくなったらね」
幼女「ふふふ」
ポニテ「……あのさ」
幼女「何?」
ポニテ「持ってる、よね」
幼女「?」
ポニテ「いいものを」
幼女「……なんのこと?」
ポニテ「……言ったでしょ、私の家なんか何もないって」
ポニテ「自分の部屋なんかより、テレビとかベッドなんかより、ずっとずっといいものを、さ」
幼女「……」
ポニテ「私はまたあの家に帰らなくちゃいけない。誰もいない、天井と壁だけみたいな家に」
幼女「ポニテちゃん……」
ポニテ「だからさ、羨ましがることなんて何もないんだよ、あんたは今、あの家にいられて幸せでしょ」
ポニテ「私とか……」
幼女「……」
ポニテ「ありがと、ね、たこ焼き美味しかった。でももう当分来ないかも」
幼女「……」
ポニテ「じゃ」
幼女「待って」
ポニテ「……なに?」
幼女「……すき」
ポニテ「え?」
幼女「ぁ……ちが……ごめ、なんでもない」
ポニテ「なんなの」
幼女「えっと……ポンテちゃんが言ったことを……そんなことないよって、慰め……
慰めっていうか、なんか、言おうと思って、でもなんて言えばいいかわからなくなっちゃって……」
ポニテ「……そう」
幼女「で、でもね、私はね、ポニテちゃんのことすきだよ」
ポニテ「別に好きって言ってもらいたいわけじゃないけど」
幼女「うん……でも……」
幼女「あ、あのさ!あした、私、ポニテちゃんの家に行くね!」
ポニテ「何急に」
幼女「思いつきだけど……いいこと思いついたの!待っててね!」
幼女「じゃあね!ばいばい!また明日!」
ガラガラピシャッ
ポニテ「……」
ポニテ「……へんなの」
次の日
当番「きりーつ、れい、さようならー」
幼女「ポニテちゃん!今日は約束だからね」
ポニテ「……まあ好きにすれば」
幼女「あ、でも私、一回家帰ってから来るね。材料とってこなくちゃいけないから」
ポニテ「材料?」
幼女「うん」
ポニテ「あんた、私んちで何する気?」
幼女「えへへ、実はねーカレーを作ろうと思いましてですねー」
ポニテ「カレー……?なんでよ」
幼女「昨日言ったけど、ただの思い付き!ほら、ポニテちゃん今日もコンビニのご飯食べるんでしょ?」
ポニテ「まあ、そうだけど」
幼女「だからさ、私が晩御飯作って、それで一緒に食べようかなって」
ポニテ「そんな余計なことしなくてもいいんだけど……」
幼女「ポニテちゃんだってたまにはコンビニ以外の食べたいでしょ?」
ポニテ「別に。食べれればなんだっていいよ。それに、コンビニのご飯だって十分おいしいよ」
幼女「ううん!コンビニのご飯は誰が作ったかわかんないけど、人がその場で作ったご飯なら
誰が作ったかわかるからその分おいしい」
幼女「ってお母さんが言ってた!」
ポニテ「はあ、カレーだか何だか知らないけど……ほんとに作れるの?」
幼女「うん、日頃から夕ご飯作るの手伝ったりしてるしー、あと作り方もちゃんと教わってきたし」
ポニテ「そう」
幼女「じゃ!なるべく待たせないように早く来るから!走ってくる!」
ポニテ「いいよ、そんなに焦らなくって」
ポニテの家
ポニテ「」ガラッ
ポニテ(っと……確かこの辺に……)ゴソゴソ
ポニテ(……)ゴソゴソ
ポニテ(あった、ゲーム機……)
ポニテ(もうずいぶん前のだけど)
ポニテ(懐かしいな、昔ちょっとだけお母さんと一緒に……)
ポニテ(……)
ポニテ(ソフトは……)
ポニテ(よいしょ)
ポニテ(いつこんなに買ったんだろう……)
ポニテ(もうめっきりやらなくなっちゃったな)
ポニテ(まだ動くかな……)
ポニテ(つなげてみよう)
ポニテ(テレビの後ろに……)
ポニテ(うっ……ほこりっぽ)
ポニテ(ちゃんと掃除しておけばよかった……)カチャカチャ
ポニテ(接続)
ポニテ(電源……)ポチ
ゲーム機「ブーン」
ポニテ(よかった、動いた)
ゲーム機「ブーン」
ポニテ(……)
ポニテ(何やってんだろ私)
ポニテ(今更過去を追憶したところで何の意味もないのに……)
ポニテ(……しまお)
ピンポーン
ポニテ(……あ)
ガチャッ
幼女「ポニテちゃーん!」ハアハア
ポニテ「息切れしてるし……ほんとに走ってきたの?」
幼女「早かったでしょ!?」
ポニテ「あせらなくてもって言ったのに……」
幼女「だって待たせたくなくて」
ポニテ「ん……くしゅっ」
幼女「お、どした?」
ポニテ「さっきまでほこりが……」
幼女「ほこり?」
ポニテ「あ、いや、何でもない、とにかくまあ……上がれば」
幼女「ういー」
ポニテ「その袋の中が材料?」
幼女「そうそう、ジャガイモとー人参とーお肉……大丈夫ポニテちゃん、野菜食べれる?」
ポニテ「火を通せば……」
幼女「そっか、ようし、じゃあ台所借りるね」
ポニテ「ほんとに作るの?」
幼女「うん!ほら見てーポニテちゃん、自前のエプロン。可愛いでしょ」
ポニテ「そう」
幼女「そっけなー、もっとなんか感想言ってよ、ほらほら」クルクル
ポニテ「別に感想とか何も持たないから、やるなら早くやってよ」
幼女「ちぇー、じゃあ早速取り掛かりますか、できるまで待っててねー」
幼女「……」トントン
ポニテ「」ジー
幼女「……」トントントン
ポニテ「」ジー
幼女(ポニテちゃんがすごいこっち見てる)
幼女「ねえポニテちゃん、私はここでつくってるから、できるまでなんかやっててもいいんだよ、宿題とか」
ポニテ「いや、結構手際よくやるんだなーって思って」
幼女「そ、そう?」
ポニテ(幼女ちゃんってこんなことできるんだ)
幼女「えと、じゃあポニテちゃんもやる?」
ポニテ「私?」
幼女「じゃあジャガイモの皮剥いて……はい包丁」
ポニテ「……」
幼女「……?」
ポニテ「……」
幼女「ど、どうしたの?」
ポニテ「どうやるの」
幼女「えっ……と……」
幼女「ちょっとかして」
幼女「見てほら、こうやって……ね?」
ポニテ「……」
幼女「はい、やってみて」
ポニテ「……」
ポニテ「」ガッ
幼女「」ビクッ
ポニテ「」ガッガッ
幼女「ちょちょちょちょちょ、ポニテちゃんストップ」
ポニテ「何」
幼女「あ、危ないよーもっと丁寧に……手え切っちゃうよ」
ポニテ「幼女ちゃんと同じようにやったじゃん……」
幼女「ん、んー……ピーラーある?そってのがやりやすいから」
ポニテ「……」
ポニテ「……全部剥けた」
幼女「あ、じゃあ今度は切って、そのジャガイモ」
ポニテ「……」
幼女「き、切れる?」
ポニテ「切れるよ、包丁で切ればいいんでしょ?」
幼女「そう、はいまな板」
ポニテ「……」
ポニテ「」ザクッ
幼女「ぁ……」
ポニテ「」ザクッザクッ
幼女「」ヒヤヒヤ
ポニテ「」ザクッ
幼女「うわぁぁ、危ない!」
ポニテ「うわっ!なにやめてよ、びっくりするでしょ」
幼女「び、びっくりしたのはこっちだよ……」
ポニテ「何よ、普通に切ってただけでしょ」
幼女「うーん……や、やっぱりポニテちゃんは完成まで待ってもらおうかな、
ほら、私が作るって約束だし。手伝わせちゃ悪いし」
ポニテ「……そう?まあいいけど。宿題やってるね」
幼女「うん……」
幼女(危ないよー……私が止めなきゃ絶対手怪我してたよ)
幼女(カレーに血の隠し味が入っちゃうよぉー……)
ポニテ「」カリカリ
ポニテ「んっ……終わった……」
ポニテ「……」クンクン
ポニテ(カレーの匂い……)
ポニテ「」トコトコ
ポニテ「」チラ
幼女「あ、ポニテちゃん」
ポニテ「できたの?」
幼女「うん、もうあと十分煮たら完成!ねえお皿とかどこ?」
ポニテ「そこの棚」
幼女「ありがと、うふふ、一緒に食べよう―ねーポニテちゃん」
ポニテ「……? ねえ」
幼女「なに?」
ポニテ「お米はどうしたの?炊いたの?」
幼女「あ゛」
ポニテ「え、まさか……」
幼女「ど、ど、ど、」
幼女「どうしよー……忘れてた……」
ポニテ「はあ……せっかくちゃんと料理してて見直したところだったのに……」
幼女「こ、困ったな……ルーだけじゃ食べられないよね……うー……」
ポニテ「もういいよ……コンビニ行って冷凍のやつ買って来る」
幼女「ええ!?駄目だよそんなの」
ポニテ「なんで」
幼女「せっかく私がコンビニ以外のものをって、思ったのに、結局それじゃあ……」
ポニテ「別に大丈夫でしょ、ルーは幼女ちゃんが作ったんだから」
幼女「うう……でも……」
ポニテ「……」
幼女「せっかく……私が作ったのに……」
ポニテ「……」
ポニテ「……いいよ、平気」
幼女「え?」
ポニテ「ご飯が冷凍でも、ちゃんと幼女ちゃんが時間かけたカレーだから、平気だよ」
ポニテ「そのカレーを一生懸命作った人のことがわかるんだから、きっとあったかいカレーが食べれる」
ポニテ「と、思う」
幼女「……」
ポニテ「そうでしょ?」
幼女「……ポニテちゃん」
ポニテ「そういうことだから」
幼女「あのさ」
ポニテ「何?」
幼女「丸くなった?」
ポニテ「えっ」
幼女「だってさ、前までポニテちゃん絶対そんなこと言わなかったよね、私に。
だいたい知らないとか、話しかけないでとか、さ」
幼女「最初は私の顔見るだけでも嫌な顔してたのに、やっぱり柔らかくなってない!?」
ポニテ「……」
幼女「今だって割とすんなり家に入れてくれてるし、昨日も……」
ポニテ「」ベシッ
幼女「へぶっ」
ポニテ「知らない、バカ」
ガチャッバタン
幼女「な、なにさー……ぶつことないのにぃー……」
電子レンジ「ジー」
電子レンジ「チーン」
ポニテ「はい、二人分」
幼女「ごめんね、私がもっとしっかりしてれば……」
ポニテ「いいよ、もう。それより早く食べよ」
幼女「うん!うわぁ、すごい美味しそう!」
幼女「はい、じゃあポニテちゃん!いただきます」
ポニテ「い……いただきます」
幼女「」モグモグ
幼女「はー!おいしい!我ながらよくできてる!うまい!」
幼女「ほら、ポニテちゃんも食べて食べて」
ポニテ「」パク」
幼女「どう?」
ポニテ「カレーのあ」
幼女「カレーの味がするはナシ」
ポニテ「……美味しいよ、家で食べるカレーなんていつぶりだろ」
幼女「えへへー、ポニテちゃんに喜んでもらえてよかった!」
幼女「」パクパク
幼女「うん、おいしー」
ポニテ「それより大丈夫?食べてたら暗くなってきちゃうけど」
幼女「ああだいじょぶだいじょぶ、お母さんに晩御飯食べてくるから遅くなるって言ってあるから」
ポニテ「そう」
幼女「いやー、それにしても無事に食べれてよかったよかった」
ポニテ「……久しぶりだよ、こんなあったかいもの食べたの」
幼女「うん?コンビニのもチンするからあったかいんじゃないの?」
ポニテ「うん……そうなんだけど」
幼女「すごいCMやってるからコンビニのもきっとおいしいんだろうなー」
ポニテ「……コンビニのは冷たいよ」
幼女「ん?何?」
ポニテ「……なんでもない」
幼女「ごちそーさま!」
ポニテ「食べるの遅いよ」
幼女「いやあ、ごめんごめん」
ポニテ「片付けは私がやるからもう帰りなよ」
幼女「ええ、悪いよ、私も」
ポニテ「いいよ大丈夫、幼女ちゃんこそ早く帰らないと」
幼女「そう?ふふ、ありがと!じゃあまた来るね!」
幼女「あ……そうだ、また来ていいかな」
ポニテ「別に二回言わなくても」
幼女「違う違う、あのね、また作りに来てもいいかって、晩御飯」
ポニテ「また?」
幼女「うん!たまにでいいの、私もカレー以外の料理もいっぱい覚えるからさ!
ポニテちゃんに食べてもらえるの嬉しいし、野菜嫌いも直したい!」
ポニテ「野菜嫌いは余計だから」
幼女「でも、いいでしょ?」
ポニテ「そんなことしなくていい、言ったでしょ、食べられれば何でもいいって。コンビニあれば十分だから」
幼女「ふふ、そう言うと思った!ダメって言っても押しかけて作るからね!」
幼女「バイバイ!また明日!」
ポニテ「……また明日」
幼女「」ニコッ
ガチャッバタン
ポニテ「……」
ポニテ(片付けしないと)
ポニテ「」カチャカチャ
ポニテ「……?」
ポニテ(なんだろう、静かじゃない……?)
ポニテ(音はしないけど……静けさが……ない)
ポニテ(……なんだろう)
ポニテ(……)
ポニテ(空間を満たしてるカレーの匂いと)
ポニテ(エプロン姿の幼女ちゃんがいたなごり、が)
ポニテ(……)
ポニテ(……あ)
ポニテ(結局幼女ちゃんとゲームやらなかった)
ポニテ(いや、別に幼女ちゃんとやるために出したわけじゃないけどね)
続き
幼女「友達になろうよ!」 ポニテ「……なんで」【後編】