―――――訓練場―――――
曙(ふぅ……今日の自主練はこれくらいでいいかしら)
曙(今日は出撃もないし、部屋に戻ってゆっくりしよう)トコトコ
赤城「あ、曙さん!こんにちは」
加賀「……こんにちは」
曙「あら、一航戦じゃない、そっちも訓練?あたしは帰るとこだから、頑張ってね。それじゃ」トコトコ
赤城「まぁまぁまぁまぁ、ちょっとお話しませんか?」ガシッ
曙「……は?」
曙「聞こえなかった?あたしは帰るところなんだけど」
赤城「あれを見てください」
曙「?」
曙「ああ、二航戦と五航戦が訓練してるわね」
赤城「そうです、よって、空母用の訓練スペースが空いていないんです」
曙「そんなの空くまで待ってればいいだけじゃないの。ってか後ろからアドバイスでも送れば?」
赤城「めんどくさいじゃないですか」
曙「加賀ならまだしも赤城がそんなこと言うとは思わなかったわ」
加賀「めんどくさいじゃないですか」
曙「言えって意味じゃないわよ」
赤城「ですので、空くまでの間、私たちの話し相手になっていただけないでしょうか?」
曙「それこそめんどくさいじゃない」
加賀「赤城さんは暇を潰せて、私も暇を潰せる・・・・・・まさにWIN-WINかと」
曙「その損得勘定にあたしを入れなさいよ」
曙「話すっていっても話題は何よ?」
加賀「……今日はいい天気ね」
曙「下手か」
赤城「なんてことを言うんですか!コミュ障の加賀さんが無い知恵絞って発言したのに!」
曙「あんたもしかして加賀のこと嫌い?」
赤城「あ、聞きましたか?この前、吹雪ちゃんが1人で敵戦艦を沈めたらしいですよ!」
曙「へぇ、それは初耳だわ、すごいじゃないの」
赤城「まあウソなんですけど」
曙「ホント一航戦は人に殺意を抱かせるのが上手いわね」
加賀「赤城さんを食ってばっかりのぐうたら女だと思ったら大間違いよ」
曙「あんたら仲悪いのね?」
曙「早く二航戦と五航戦の訓練終わらないかしら」
赤城「そんなにあの4人と話したいんですか?」
曙「冗談みたいな理解力の無さね」
加賀「頭にきました」
曙「どこに?ねぇ、あんたの逆鱗はどこなの?あたしもう発言しなくていい?」
加賀「そもそも、曙とこうして話すことはほとんどありませんから」
曙「まあそうね、そうでなくても、あんたらはけっこう話す相手が固定化されてるんじゃないの?」
加賀「……提督と赤城さん以外と話すのは2週間ぶりね」
曙「あんたどうやって生きてるのよ」
赤城「私は5日前に潮ちゃんにぶつかった際に『ご、ごめんなさい!』って言われたからセーフですね!」
曙「会話って意味を辞書で調べてきなさい」
曙「その割に普通に話せてるじゃないの」
赤城「ウソですからね」
曙「1発殴ってもいい?」
赤城「昨日も榛名さん、衣笠さん、鬼怒さん、村雨さん、長波さんとご飯食べに行きましたし」
曙「急に社交的になるのやめなさいよ、謎のメンバー構成に混乱するじゃないの」
加賀「私も、日向、羽黒、神通、初雪、響とご飯に行ってきたわ」
曙「その面子で?お通夜じゃなくて?」
加賀「盛り上がりすぎてお店に何度も注意されてしまったわ」
曙「これ以上あたしの好奇心を刺激しないでくれると助かるんだけど」
赤城「そういえば、曙さんは釣りが趣味って聞きましたよ」
曙「別に趣味ってほどじゃないわ、気が向いた時に少しやるくらいよ」
加賀「もしも釣った魚が多すぎて処理の方法に困ることがなきにしもあらずなのだとすれば遠慮などせずに私たちに渡してくれても良いかもしれないというアドバイスをしてもいいと思うかしら?」
曙「回りくどすぎて途中から聞いてなかったわ」
赤城「余った魚ください!」
曙「いきなり160km/hのストレートを投げ込むのもやめて」
曙「それに、ああいうのは自分で釣るから美味しいのよ」
赤城「そんなことありません」
曙「釣る側に言うとはいい度胸としか言いようがないわね」
加賀「誰が釣ろうと魚は魚よ」
曙「あんたらには人間の心が無いの?」
赤城「では、今度釣りに同行させてもらってもいいですか?」
曙「まぁ……それならいいけど」
赤城「ありがとうございます!加賀さん、何が釣れますかね?」
加賀「……シーラカンス?」
曙「どうぶつの森のやりすぎよ」
加賀「赤城さんは何が釣りたいの?」
赤城「架空の艦娘を作って提督を釣りたいですね」
曙「釣りへの認識に重大な齟齬があるわ」
赤城「やっぱり胸は大きい方が釣れると思うんです」
曙「冷静に需要をマーケティングするのやめてくれない?」
加賀「食いしん坊キャラは需要が薄いと思うわ」
曙「その後ろからナイフを突き立てるようなやり取り流行ってるの?」
赤城「ツンデレももう飽和状態ですよね」
曙「流れ弾やめなさいよ」
加賀「例えば年末になった途端に大掃除アピールをする娘もどうかと思うのだけれど」
曙「あたし今普通に泣きそうよ?」
赤城「とまあ冗談は置いておいて」
曙「あんたらの存在が冗談であってほしいわ」
加賀「酷いことを言うのね」
曙「10秒前の自分たちに言ってきてちょうだい」
加賀「しかし訓練が長いわね」
赤城「力ずくでどかしますか?」
曙「物騒なこと言うんじゃないわよ」
加賀「まあ後ろから見つめ続ければ気を利かせてくれるとは思うけど」
曙「面倒な先輩そのものじゃないの」
赤城「じゃあ加賀さん、あの話を曙さんにしてあげてくださいよ!」
加賀「あの話・・・・・・?」
赤城「ほら!あの“雪風さんが撃った弾が敵の装甲をピンボールみたいに跳ね回って扶桑さんに当たった”話ですよ!」
曙「全部聞こえちゃったわよ」
加賀「曙、面白い話があるのだけど」
曙「残念だけどたった今面白くなくなったわ」
赤城「もう、わがままですね」
曙「そっくりそのまま返していいかしら」
加賀「そろそろ訓練が終わるころだと私の第六感が言っているわ」
曙「パワプロのケガ率くらいアテにならなそうね」
赤城「いえ、LINEを放置した後の『ごめん寝てた』くらいは信用していいはずです」
曙「あんたたちみんなの見てない所で殴り合いとかしてない?不安になってきたわ」
曙「あ、ホントに終わったみたいね、やるじゃない加賀」
加賀「やりました」
赤城「チッ」
加賀「気分が高揚します」
曙「舌打ちもおかしいけど加賀もなんで煽るの」
赤城「では、訓練に行ってきますね」
曙「冗談でもなんでもなくせいせいするわ」
加賀「また話しましょう」
曙「普通にイヤ」
赤城「ふふふ、ツンデレさんですね」
曙「どこにデレがあったのか教えて欲しいくらいよ」
曙「ふう……ようやく行ったわね。帰ろう」トコトコ
扶桑「あら、曙ちゃん。ちょうどよかった、訓練スペースがいっぱいだから、少しおしゃべりしない?」
曙「沈め」
扶桑「ええ!?」ガーン
おわり