勇者「な、なにを言ってるんだ……?」
魔王「言葉通りだ。貴様の力に敬意を表して、淫魔国の国王に据えてやろうと言っている」
勇者「ふざけるな! 俺はお前を滅ぼす為だけに―――!!」
魔王「魔界の女はいいぞ、勇者よ。中には、堕ちた女神や堕天女もいる」
勇者「だ、だからなんだ」
魔王「ふふふ。あの者達の美しさたるや、地上の美姫など醜女に思えてくるほどだ」
勇者「……!」
魔王「交われば、もたらす快楽はそれこそ比類ない……神々ですら一度味わえば蕩け溺れる」
勇者「ゴクッ」
魔王「さらに魔界にしか存在せぬ性の魔具や魔導、淫の果実―――」
勇者「マ……マジで? い、いや! そんな誘惑に惑わされる俺では……」
魔王「淫魔の王になれば、その全ての歓待を独り占めできるのだぞ? 永遠の、無限の快楽だ」
勇者「…………ちょ……ちょっと考えさせて?」
魔王「いいだろう。じきに日付も変わる。ID腹筋などしながらよく考えるが良い」
元スレ
魔王「世界の半分はやらぬが、淫魔の国をくれてやろう」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1321385276/
魔王「世界の半分はやらぬが、淫魔の国をくれてやろう」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1323147951/
勇者「……どうしよう、マジで悩む」
魔王「ならば、お試しでどうだ?」
勇者「何?」
魔王「まずは一週間、その国で王として過ごしてみよ。その後で決めるが良い」
勇者「そんな事ができるのか?……あ、いや……迷ってるわけじゃないぞ!」
魔王「無論だ。一週間後、貴様の返答を聞こうではないか」(何かゲート的な物が開く)
勇者「……いいか、試すだけだぞ。試すだけなんだからな!」
魔王「いいからさっさと行け。紳士が風邪引くべや」
一日目
勇者「……ん、ここは……?」
???「お目覚めですか、陛下」
???「もー!早く起きて下さいよー!」
勇者「え、何……ええええええええ!?」
目が覚めると、豪華なベッドに裸で寝ている事に気付き――そして、二体のサキュバスが両側に侍っていた。
勇者「えーと……これ、どういう状況なんだ?」
サキュバスA「どう、って。昨夜はあんなに激しかったのに、覚えてませんの?」
サキュバスB「ねぇ。殺されるかと思ったよー。Aちゃんなんてすっごい下品な声出してたじゃん」
サキュバスA「っ……貴女だって、『もう許してください』って泣いてたじゃないの」
勇者「」
???「失礼します」
真っ黒なドレスを着た、闇のように黒い髪の女性が入ってくる。
白目があるべき部分は黒く染まり、黒目があるべき部分は血のように赤く、瞳は爬虫類のように細い。
それ以外は、勇者がこれまでに見た事もないような、抗いがたい魅力の美女だった。
勇者「…げ、ちょ、待っ……あなたは!?」
???「…?陛下の補佐を任されております、堕女神でございますが?記憶に障害が出る程とは。
……差し出がましい事とは思いますが、少しお控えになられた方が」
サキュバスB「あれ?陛下、なんで前隠してんの?」
サキュバスA「……今さらですよ。そうだ。堕女神さんもどうです?朝の一発…」
堕女神「…いえ。勤務中ですので」
勇者「(……見えてきた。見えてきたけど何だよこれ……怖ェ。あまりに旨すぎて怖ェ……)」ガクガクブルブル
勇者「えーっと、とりあえず着替えるから、出t……ゴホン。……着替えを持ってこい」
堕女神「……失礼ながら、お体の調子が悪いのですか?普段なら、朝の猛りを鎮めるため、三回は……」
堕女神が、勇者の額に手を添える。
彼女の見た目や雰囲気とは裏腹に、どこか懐かしい暖かみのある手の感触が伝わった。
勇者「あ、いや、その……そういう気分で、その」
堕女神「…なんて事!?こんなに低いなんて!いつもの陛下なら、手が発火するほどなのに……!」
勇者「普段はいったいどんな奴なんだよ!?」
サキュバスA「え?…あ、本当ですね。陛下、私達に暖めさせていただけますか?B、手伝って」
サキュバスB「はーい!」
有無を言わさず、ベッドの上に引きずり倒され、両側から抱き着かれる。
二人の蒼白い肌から体温が伝わり、二の腕にそれぞれ押し付けられた豊かな乳房。
その柔らかさは、地上には到底存在し得ない、極上にして禁断の領域。
勇者「(や、ヤバい……ヤバすぎる。勃つ。勃たない方がおかしいって……!)」
息遣い、温もり、そして乳房に挟み込まれた二の腕には、とくん、とくんと脈打つ鼓動が伝わる。
サキュバスA「……どうです?暖かいですか?」
サキュバスB「…Aちゃんよりこっちの方が暖かいですよねー?」
両側から囁かれ、首筋がぞくりと震える。
まるで花のように芳しい吐息が勇者の鼻腔をくすぐり、意識を朦朧とさせた。
堕女神「失礼します、陛下。……上になる無礼をお許し下さい」
次いで、裸身となった堕女神が上から、覆いかぶさるように肌を重ねてくる。
両側のサキュバスを上回る大きな乳房が勇者の胸郭の上で潰れて形を変える。
偶然に乳頭同士がぶつかり合い、勇者、堕女神ともに小さく息を漏らす。
勇者「だ、大丈夫だって。……もう治ったから。頼むから、どいて……無理。無理だって……もう…」
限界を迎え、ついに勇者の剣がいきり立つ。
堕女神「…んあぁ!」
瞬間、堕女神の秘裂をなぞり、彼女の体が跳ね、背筋を反らせた。
勇者「あっ……その、すみませ…」
サキュバスA「ようやく元気になってくれたんですね」
サキュバスB「うんうん。いつも通り、立派ですよー」
勇者「うっ…頼むから、どいてくれないか。もうアルテマソードが……」
堕女神「もう……。ここまで来て、『やめろ』とは言いませんでしょう?」
勇者「え、その……いいんですくぁ」
堕女神「もとより、この身は余すところ無く陛下のものでございます」
勇者「……分かった、分かったから、一旦どいてくれ君達。命令するから」
その言葉に、意外にも素直に従い、三人が身を起こす。
勇者「(とは言うけど、どうすんだよ。いつの間にかマトモそーな人までノリノリじゃねーかよ)」
堕女神「あの、陛下……」
勇者「え、あー。ゴホン。……『口でしろ、堕女神。余さずに全て飲め』…なーんt」
堕女神「はい、かしこまりました」
勇者が訂正する前に、堕女神は勇者の陰茎に手を添える。
直後――隆起したそれに口を寄せ、亀頭に軽いキスをする。
勇者「うっ…!」
柔らかく暖かい唇の感触が伝わり、震えた。
先端を軽く吸いながら舌先で亀頭の切れ込みをなぞり、いとおしげに陰嚢をさする、たおやかな指先。
淫魔二人に見られながら、堕ちた女神が、自分の不浄な部分に奉仕する。
異常なまでの背徳感と、有り得ないシチュエーションに興奮が高まり、さらに陰茎は硬度を増し、グロテスクに血管を浮き上がらせる。
続いて、亀頭全体を口内に収めていく。
艶めかしく光る、赤い唇が勇者自身を飲み込む。
絶え間なく動く舌が口内で裏筋をとらえた。
勇者「ううあぁっ…!」
気付けば、両手で堕女神の頭をがっちりと抑えていた。
行き場を失った手が、快楽をもたらす彼女を遠ざけようとしたのか。
あるいは――彼女の口を、まるで道具のように使って快楽を貪ろうとしたのか。
どちらにしても、お構いなしに彼女は奉仕を続ける。
ずずず、と、ゆっくりと陰茎を飲み込んでいき、七割ほどを口の中に頬張る。
更に唇を進め、ついには根元にまで辿り着く。
唇がぴったりと根元に張り付き、喉の窄まりまでも押し広げて収まった。
頬の粘膜は温かく、それでいて喉の奥にはひんやりと、鼻から吸っている息が良い刺激となる。
何より、通常の人間であれば喉奥にまで咥え込めば息苦しさに呻くであろう、この状況。
にも関わらず、彼女は笑っていた。
それどころか、快楽に打ち震え、秘裂からは雫が滴り落ち、シーツをじんわりと濡らしていた。
今度は少しずつ唇から陰茎を抜いていき、亀頭先端まで達したところで、再び根元まで一気に咥え込む。
勇者「っ!」
今になって気付いた。
彼女の唾液は、人間のものとは違う。
さしずめ、媚薬効果を持ち、神経を昂ぶらせる濃密なローションだ。
揮発した唾液の匂いが勇者の鼻へ届き、その香りは脳髄を直接殴りつけて麻痺させるかのような、
あまりに濃厚すぎる、異世界の花の香り。
香りに酔っている間にピストンは繰り返され、陰嚢が膨れ上がり、まるで張り詰めた風船と化したような錯覚を覚えた。
勇者「っ……出る。出るよ……!」
往復運動が20回を数えぬ内に、勇者は果てた。
脳が文字通り真っ白にそまり、蕩けた脳が、内臓を道連れに陰茎から全て抜け出すような感覚。
全身の筋肉が鋼のように硬く硬直し、直後に液体のように弛緩する、臨死の快楽。
彼女の口内に、幾度と無く脈打ちながら白濁が注ぎ込まれていく。
喉を鳴らして飲み下していくが、量があまりに多い。
堕女神の両腕が勇者の腰に回され、根元まで咥えながら、飲み込む。
二回、三回、四回。
脈動が続き、尋常じゃない量の精液が、堕ちた女神の口内を埋め尽くす。
やっとの事で収まり、つぅっと糸を引きながら彼女が唇を離す。
口内に残っていた精液をこくり、と飲み干し、何度か息をついてから、口を開く。
堕女神「……ご満足、いただけましたか?」
勇者「……うn……(じゃないな)ああ、ご苦労。……『サキュバスB、お前の口で清めろ』」
サキュバスB「はい!……えへへ、Aちゃん出番なしー」
言って、進み出た爛漫な淫魔が口を近づける。
堕女神の唾液と自身のカウパー、そして精液を舐め取っていく。
幼さの残る顔立ちに、無邪気な笑みを浮かべながら。
直後、再び陰茎が脈を打ち、サキュバスBの幼い顔に精液が吐き出される。
サキュバスB「きゃっ……」
勇者「あっ……!」
サキュバスB「…えへへ、元気ですね。さすが陛下です」
不満さえ述べず、白濁で顔を穢したまま、口で勇者自身を清めていく。
拭おうともせず、不快感すら見せず、まるで、親に撫でられ、褒められた幼子のような表情で。
勇者「もういい。ご苦労」
言って、サキュバスBの後頭部からうなじにかけ、何度も撫でさする。
気持ち良さそうに目を閉じ、達成感を味わう彼女。
勇者「次、……サキュバスA」
サキュバスA「……はい」
勇者「……着替えを手伝え」
サキュバスA「えっ……?」
サキュバスAは戸惑ったような表情を浮かべた。
蒼白い肌、二つの捩れた角、そしてどこか儚げな印象の淫魔だ。
勇者「……着替えを手伝え、と言ったんだ」
サキュバスA「……はい」
哀しげに顔を伏せ、堕女神が持ってきた着替えを手に取る。
勇者はベッドから立ち上がり、ひんやりとした大理石の床の上に立つ。
着替えを手伝う間中、サキュバスAは不満げな表情を浮かべていた。
勇者「ご苦労、サキュバスA。さて、堕女神。今日の予定は?」
堕女神「はい。隣国の女王との謁見が控えております。……次いで、城下の視察が」
サキュバスBですら、どうフォローしたか考えあぐねているようだ。
まるで冷たくあしらわれる彼女に、まるでかける言葉が見つからない。
勇者「……ああ、サキュバスA」
サキュバスA「…は、はい」
勇者「今夜は、お前一人で部屋に来い。分かるな?」
サキュバスA「は……・?」
勇者「二度言わせるのか?……今夜は、お前だけで来い」
サキュバスA「は、はい!」
サキュバスB「えー!ずるいよ、Aちゃんだけ王様独り占めしてー!」
堕女神「陛下、そろそろ……」
勇者「ああ。……さて、行くか」
言って、勇者は堕女神に付き添われて寝室を出た。
道中、何人かの使用人とすれ違った。
黒い翼を持つ、スレンダーな肢体のメイド。
蝙蝠の翼を持つ、肉感的な美女の園丁。
廊下にはいくつもの絵画が飾られていたが、そのどれもが男女の交わりを描いていた。
勇者「……隣国の女王、と言った?」
堕女神「はい。会食の予定も含まれております」
勇者「えーと、それって…どんな」
堕女神「一言で言うと、『貧相』です」
勇者「?」
堕女神「まるで栄養が足りていません。胸なんて子供です。わが国では考えられません」
勇者「把握」
勇者「待たせたかな」
玉座の間へ入る。
壮麗な外観に威圧されなくもないが、そこは勇者、押さえ込む。
堕女神を伴って玉座に腰掛けると、眼下には隣国の女王と思しき少女、そしてその従者が跪いていた。
確かに胸は小さく、体つきも華奢。
小さな蝙蝠の羽が生えているが、サキュバスのものとは違って遥かに小さい。
勇者「……で、用件は?」
隣女王「……」
勇者「…申せ。余は暇ではない」
気分を出して勇者が言うと、少女は身を強張らせた。
隣女王「……我が国は、未曾有の飢饉に見舞われまして」
勇者「………」
隣女王「我が民を飢えさせる訳にはいかないのです。……どうか、お助け下さい。出来る事なら、何でもいたします」
勇者は、酔っていた。
淫魔の国の王となり、人界には存在しない美女達に、どのような命令も下せる権利に。
善悪が頭の縁に過ぎってはいるが、勇者でさえ抗えないほどの強烈な魅力。
勇者「……例えば、何をしてくれるのだ?」
隣女王「…お救い頂けたなら、如何様にも」
勇者「例えばだ。……この場で服を脱ぎ、純潔を捧げろと言っても?」
隣女王「…!!」
女王の顔は青ざめ、心臓を冷え切った手で鷲掴みにされたような感覚を覚えた。
堕女神は驚かず、むしろ、当然だとでも言いたげな表情を、隣国の女王と従者に向けていた。
勇者「それぐらいの覚悟はあるんだろ?」
隣女王「……は、い」
勇者「……冗談だ」
隣女王「…え?」
勇者「弱みを握ってどうこうしよう等とは思わないよ。可能な限り援助する」
隣女王「あ、ありがとうございます!」
勇者「さて、食事にしよう。……堕女神」
堕女神「はい、準備はできております」
勇者「うん。……さて、行こうか?」
会食を終え、城下の視察へ入る。
堕女神を始め、数人の護衛を伴い、城下を歩く。
男性は一人もいない。
堕天使、サキュバス、側近と同じく堕ちた女神、邪妖精。
魔へと寝返った美女達が、彼へと熱狂的なエールを送る。
勇者「……なぁ、変な事を聞いていいかな」
堕女神「何でしょうか」
勇者「彼女らは、いったいどうやって増えるんだ?」
堕女神「……お言葉ですが。みな陛下のお情けで子種をいただいているのではないですか?」
勇者「mjd?」
更に時が飛び、夜。
サキュバスAとの、約束の時間。
夕食を終え、執務を終え、寝室に入る。
勇者「……(おいおい、スゲーなこの国)」
身を横たえ、しみじみと、目が覚めてからの事を振り返る。
起き抜けに淫魔二人と戯れ、堕女神に献身的な奉仕をさせ、
あどけなさの残る淫魔に処理させ、隣国の女王ですら性の玩具になり得る。
勇者「…い、いかん!俺は勇者だ!勇者なんだ!!」
サキュバスA「陛下。……入ってもよろしいですか?」
勇者「あ、ああ。入れ」
サキュバスA「はい、失礼します」
勇者「…隣に来い」
サキュバスA「……はい」
勇者「Bと違うんだな、お前は」
サキュバスA「私は…陛下のお傍にいられるだけで、満足です」
勇者「…欲の無い淫魔もいるんだな」
サキュバスA「はい……ん、んむ……ちゅ……」
勇者「………これでも、まだ、か?」
サキュバスA「……私のような者に口づけを頂けるのですか?」
勇者「今夜は、お前が我が恋人だ。接吻の何が悪い」
サキュバスA「身に余る光栄です、陛下……」
サキュバスAの頬が赤く染まり、身をくねらせる。
気恥ずかしげでもあるが、満ち足りた様子でもある。
淫魔と言うにはあまりにも奥ゆかしい。
勇者「身を任せろ。別に俺に取り入らなくていい」
サキュバスA「陛下……」
勇者「……足を開け」
命令を受け、彼女は足を大きく開く。
いやらしくぬめぬめと光る恥部が晒され、羞恥に顔が染まる。
サキュバスA「い、いけません!そんなっ……んっ…だ、駄目です……そんな……」
舌を這わされ、抗議の声を上げる。
本来なら、自らが奉仕する立場。自らの恥部を舐めさせるなど、あまりにも恐れ多い。
恐怖すら抱きながら、彼女は、足を閉じる事は出来ない。
勇者「言っただろ?……今夜、俺とお前は恋人なんだ」
びくり、と身を震わせ、彼女は軽く達する。
淫核を唇で吸われ、あるいは陰唇を舌で弄ばれ、背筋を仰け反らせて。
勇者「……気持ちいい?」
サキュバスA「き、もち…いい、です……!」
手で膝裏を持ち上げながら、彼女は荒く息をつきながら言う。
禁断の快楽は、人間にだけのものではない。
一介の国民に過ぎぬ淫魔に注がれる、王の惜しみない愛撫。
それもまた、紛れも無く『禁断の快楽』だった。
溺れる。
それ以外に、表現の術は無い。
舌を動かすごとに、息苦しさをも感じるほどに淫魔の蜜が溢れる。
城下を通ると、ふわりと漂ってきた香り。
何の事もない。彼女らは涙も唾液も、愛液も、尿ですら熟した桃のような、または咲きすぎたバラのような、
様々に濃厚な香りをまとっていたのだ。
淫魔もまた、口淫をされる側に慣れていないのか、腰が砕け、骨髄が凍てつくような快楽に溺れて。
勇者「……俺を溺死させるつもりか?」
サキュバスA「…いえ、そん……な、ああぁぁ!」
下品な音とともに蜜を吸い上げ、硬くしこった淫核を甘噛みする。
不意打ちについ脚を閉じてしまいそうになるが、必死で堪える。
勇者「…そろそろ、か」
膨れ上がった勇者のモノが、姿を現す。
雁首が太く、反り返った、およそ人界においては「名器」とも呼ばれる逸物。
淫魔は、その暴力的なまでの剣に魅入る。
サキュバスとしては、彼女はあまりにも少数派だった。
男性をかどわかし、精気を吸い取る事こそ心得ていたものの、奥底の被虐願望は常に燻っていた。
今、彼女は尋常ではない興奮と充足感を得ていた。
やっと――責めて、もらえる。
息は荒く、目が潤み、蒼白の肌には気持ちほどの赤みが差す。
充血した淫核も、蜜を垂れ流す裂け目も、擂鉢のような尻奥の窄まりも、城に向けて手を振る民衆のように、『王』を求めていた。
サキュバスA「陛、下……どうか…お情けを下さりませ」
淫魔の口から出たとは思えない、懇願と切望。
それは、淫魔の国の王となったとはいえ、元は高潔なる救国の士であるはずの勇者にさえも。
勇者「……『俺にまかせろ』」
言って――太ももの付け根を掴み上げ、秘裂に先端を押し付ける。
ぎちり、と湿った音を立て、ゆっくりと呑み込まれていく。
肉の割れ目を強引に押し広げ、淫魔の秘所が貫かれる。
サキュバスA「ぁ…う、大き……!」
亀頭全体が飲み込まれ、カリが「返し」の役目を果たし、抜け落ちまいとする。
先端が入っただけだというのに、彼女は口を割り、荒く不規則な息をついて悶える。
勇者「大丈夫か?」
サキュバスA「は……い。どうか……奥、ま、で……」
勇者「ああ、分かった」
そう言うのならば、と――勇者は、腰を入れ、奥まで一気に突き込む。
子宮口にまで先端が達した瞬間、彼女は耳をつんざくような叫び声を上げた。
男性を誘い、二度と戻れない快楽の沼地へと引きずり込む魔物。
上げた叫びに、もはやその矜持は無い。
その逆、インキュバスに魅入られた生娘、と言った方が近い。
勇者「ぐっ……!(何て締め……っつか、中身一体どうなってんだ!?)」
予想通りと言うべきか、中の具合も人間を凌駕していた。
無数の暖かく湿った柔らかい粒が、まるで意思を持つかのように肉棒をしごき上げる。
何十人もの小さな妖精にキスされているかのような、ひと時の油断すらさせない刺激。
子宮口の先端がぴったりと亀頭に張り付き、艶めかしく動いて先端をくすぐる。
名器というよりは、むしろ――『妖器』。
サキュバスA「陛下っ……だめ、です。私、もう……」
勇者「…駄目だ、許さん」
達したい、という願いを却下し、一度、肉棒を出口近くまで引く。
再び奥まで突く。
その度に彼女の心臓にまで余韻が伝わり、背筋を弓なりに反らせて豊かな胸を強調しながら打ち震える。
こなれてきた勇者が前後の運動をゆっくりと繰り返しながら目を向けたのは、彼女の、たわわに実った魔の果実。
サキュバスA「ひっ…!」
乳房を鷲掴みにされ、彼女の喉が震えた。
痛み、それもあるが今彼女の脳裏にあるのは、恐らく彼女自身も気付いていないもの。
吸い付いてくるような張りのある、瑞々しい感触。
掴んだ手が、そのままどこまでも埋まっていくような、豊かさと柔らかさ。
何より、かような大きさを持ちながら形は驚くほど美しく、そして感度も驚きに値する。
重力に従って垂れ下がる事は無い。
つん、と上を向いた乳首は、先端に僅かなへこみを持って存在を主張する。
勇者「胸を弄ばれるのが好きなのか?」
サキュバスA「い、いえ…そのような……!」
勇者「隠さなくていいだろ?」
言って、勇者は彼女の右の乳房に顔を寄せる。
舌先で乳首を軽くつつけば、その度に軽く締め付けられた。
舌先で乳首を弄ばれ、彼女は悩ましく吐息を漏らす。
サキュバスA「…ひ、あ……止め、て…くださいませ…」
左の乳房を指でこね回され、右の乳房に口による刺激を受け、力が入らず、手を握る事さえもはや叶わない。
刹那、乳首を通し、脳髄に突き刺さるような快感。
彼女は、「それ」が自分の声だと最初は思わなかった。
どこかで、ナニか、自分ではない獣が上げたように聞こえた。
乳首に爪を立てられ、甘噛みしたまま引っ張られ、全身を激しく仰け反らせ、それと同時に括約筋が一気に収縮する。
快感に打ち震えている、と言うにはあまりにも、何もかもが激しい。
ともすれば、このまま死んでしまうのではないか、とすら錯覚する。
勇者「うぅっ…!」
呆気なく。
呆気なく、勇者の精は吐き出されてしまった。
勇者「く、そっ……!搾り、取られ……!」
射精の波は、収まらない。
次から次に押し寄せ、洪水のように彼女の子宮に注がれていく。
絞り上げられる。
まるで全身の血液が全て精液へと化け、吸い上げられているかのようだ。
射精の絶頂感が、まるで永遠に続いているように思える。
脈動は留まる所を知らず、淫魔の子宮内へ、強烈な圧を持って精液を叩き込み続ける。
ふと締め付けが緩み、かつて勇者が湖上の岩に刺さった剣を抜いた時のように、するりと抜け落ちた。
生臭い精液に、甘ったるい愛液の香り。
それら相反する二つをまとい、肉棒は凶暴性を潜めてしまっていた。
勇者「……大丈夫か?生きてんの?おい?」
サキュバスA「……う…」
勇者「生きてたか。まぁ……考えてみればサキュバスだしなぁ」
勇者「(……結局、あの後二回もしちまった)」
サキュバスA「……身に余る光栄です、陛下」
勇者「は?何が?」
サキュバスA「私のような者と、二人きりで夜を過ごして頂けるなんて。普段は、四人は同時にお相手なさるのに」
勇者「(おいおい、マジで普段どんなヤツなんだ)」
サキュバスA「それに、語らうお時間に感謝いたします。普段は、二時間もしないうちに四人とも気絶させてしまうのに」
勇者「(淫魔四人気絶させるって何なんだよもう誰とかじゃなく、いったい何をどうやってんだよおいー)」
サキュバスA「こんなに満たされた気持ちは、235年ぶりですわ」
勇者「え?」
サキュバスA「え?」
勇者「……お前、年は?」
サキュバスA「ええと……20942歳ですわ」
勇者「え?」
サキュバスA「え?」
勇者「サキュバスBは?」
サキュバスA「…確か、3419歳……いや、18だったような……」
勇者「あー……」
サキュバスA「堕女神さんはこのお城でも古株ですけど、確か……」
勇者「やめろ、もういい」
サキュバスA「変な事を気になさりますのね」
勇者「いや、ちょっとね」
サキュバスA「さて、どうなさいます?私としては、あと20回は大丈夫ですが」
勇者「遠慮しとく。もうゆっくり寝たい」
サキュバスA「はい、それでは陛下、私は失礼し……!?」グイッ
勇者「……一緒にいろよ」
サキュバスA「…は、はい//」
二日目
勇者「……ん、朝か」
サキュバスA「おふぁよう、ごふぁいまふ」
勇者「っ何やってんだ!!」
サキュバスA「なに、っへ……」
勇者「んっ……。じゃなくて、咥えたまま喋んな!」
サキュバスA「……お言葉ですが、以前、言われたでしょう。『俺より早く起きて、しゃぶりながら起こせ』と」
勇者「いやー、それは流石に想定の範囲内だな、そろそろね」
サキュバスA「続きを?」
勇者「いや、今日はいい。ふやける」
コンコン
堕女神「失礼します、陛下」
勇者「ああ、入れよ」
堕女神「よく眠れましたか?」
勇者「ああ」
堕女神「早速ですが、今日の予定をお伝えいたします」
勇者「頼むよ」
堕女神「と、その前にひとつだけ」
勇者「ん?」
堕女神「『ゆうべはおたのしみでしたね』」
勇者「で、今日の予定は?」
堕女神「朝食後、昨日の隣国の女王が参ります。援助を表明いたしましたので、細かい打ち合わせを」
勇者「うむ。…まぁ、他は後で聞く。着替えは?……先に言うが、今日はいい。一人で着替えるからな」
堕女神「お珍しい。普段なら嫌がる私を無理y」
勇者「あーあー!聞こえない!」
堕女神「?」
勇者「いいから、着替えるから出て行ってくれよ。命令するから」
堕女神「はい。それでは……」パタン
勇者「ったく、一体どういうヤツだったんだよ……前任者は」
サキュバスA「さて、それでは私が御召し替えの手伝いを…」クリクリ
勇者「あふぅっ……じゃねーよ、乳首摘まむなコラ!」
サキュバスA「え?そういう事じゃありませんの?」
勇者「お前さー、昨夜と全然キャラ違うよね?」
サキュバスA「それを言うなら陛下も、朝から堕女神さんに咥えさせて、Bちゃんにお掃除させたじゃありませんか。
なのに今朝は人が変わったように……」
勇者「……まぁ、男だからね。色んな意味でね」
サキュバスA「成る程。私も、久々に満足させていただきましたので、しばらくは大丈夫ですわ」
勇者「……何かもう、昨日は最初から最後までクライマックスだったけどさ」
勇者「これはこれで、疲れるよなー……」
勇者「……はぁ」
コンコン
堕女神「失礼します。お召し替えはお済みでしょうか?」
勇者「ああ、今行くってば」
サキュバスA「…変な陛下ですね」
大食堂へ移動中
勇者「…………」ピタッ
堕女神「…どうなされました?」
勇者「…おい、そこのメイド」
メイド「はい、何でしょう、陛下」
勇者「……裸になって、俺のをしゃb」
メイド「はい、失礼いたします」ゴソゴソ
勇者「ちょ、待っ……取り消す。服を着て仕事に戻れ」
メイド「……?はい、かしこまりました」
堕女神「……変な事をしますね」
勇者「……そうか?」
堕女神「はい。普段なら絶対にお止めになりませんわ」
勇者「あー、そっちね。ハイハイハイ」
食事中
勇者「……美味いな」
堕女神「お気に召したようで。……それでは、食後、中庭にて隣国の女王と……」
勇者「いや、これマジで美味いって。本当に。今まで生きてきて一番……」
堕女神「…………////」
勇者「…ん、どうした?顔が赤いな」
堕女神「……何でも、ありません」
勇者「あ、もしかしてこれ作ったのって……堕」
堕女神「いいから、早く食事を済ませてください!!」
中庭
勇者「……待たせたな」
隣女王「…ごきげんよう、陛下。我が国への援助、感謝の言葉もありません」
勇者「ああ、いや。気にするな」
堕女神「それでは、まず最初に……」
勇者「いや、ちょっと待ってくれ」
堕女神「はい?」
勇者「……少し、共に庭を歩こうか。隣女王よ。他の者はついてくるな」
隣女王「はい、陛下。仰せの通りに」
勇者「……」テクテク
隣女王「……あの、どうなさったのですか?」
勇者「……隣女王」
隣女王「はい」
勇者「…年は?」
隣女王「15歳になったばかりです」
勇者「はぁぁぁぁっ!!?」
隣女王「!?」ビクゥッ
勇者「いや、省略しなくていいから。本当は4015歳だとか、10万と15歳とか言うんだろ。そういうパターンだろ」ガシィッ
隣女王「っ……いえ、本当に15歳なんです。生まれて15年しか経っていません」
勇者「マジ?」
隣女王「…あの、陛下。お手を離して……」
勇者「………」モミッ
隣女王「き、きゃああああああああ!何するんですか!!」
勇者「す、すまない。つい……感覚が麻痺して……」
隣女王「陛下の国の法にあった筈ですよ!?『1800歳以下の、せ、性行為を禁ずる』と!」
勇者「そんなの分かるか!」
隣女王「わ、私なんて……どう見ても1800歳以下じゃないですか!未成年ですよ!」
勇者「ああ、何か俺が悪い気になってきた」
勇者「いや、すまない。見た目同じぐらいで、3000歳超えてる奴がいるもので」
隣女王「全く……」
勇者「……重ね重ね変な事を聞くが、淫魔、なんだろう?」
隣女王「はい、そうです。この国の方々と違って、翼は小さいですが」
勇者「寿命も短かったりするのか?」
隣女王「はい、長くても200歳ほど」
勇者「長いのか短いのかわかんねぇよ」
勇者「興味は尽きないが、まぁ、ともかく戻ろうか」
隣女王「はい」
堕女神「お戻りになられましたか」
勇者「ああ、待たせたな」
堕女神「陛下」
勇者「何だ?」
堕女神「未成年に手を出すのは流石にどうかと」
勇者「いいから早く話を進めるぞ。突っ込む気力もねぇ」
勇者「………という訳で、いいかな」
隣女王「はい、陛下。まことに、この度は陛下の……」
勇者「そういうのはいい」
隣女王「ですが……」
勇者「君と君の国は困ってて、我が国には救える。それだけの事だ」
隣女王「……変わりましたね、陛下」
勇者「何?」
隣女王「噂では、同様の陳情に参った他国の女王に『毎日10人の若い処女を差し出せ』とお仰せになられたとか」
勇者「俺はそれでもいいんだけどさ。……うん、それもいいな」
隣女王「あ、い、いえ……失礼いたしました!」
勇者「ジョークだったのに、さっさと帰っちまいやがった」
堕女神「ジョークだったのですか?」
勇者「俺、一体どんだけだったの?」
堕女神「それはそうと、次の予定が控えております」
勇者「聞こうか」
堕女神「街外れにある駐屯地の視察です」
勇者「あれ、軍隊なんてあったのか?」
堕女神「軍隊の無い国なんてありますか?」
勇者「おっしゃるとおり」
堕女神「それでは、馬車の準備が出来ておりますので、どうぞ」
勇者「……さすがに軍隊なら、変なアレは無いだろうさ」
司令官「ようこそ、陛下。ご足労まことに痛み入ります」
勇者「ああ、出迎えご苦労。……早速だが、案内を頼めるか?」
司令官「無論です。こちらへどうぞ」
勇者「へぇ、中々本格て……おい、繋がれてるアレは何だ?」
司令官「アレとは?」
勇者「ほら、アレ。なんかすんげー触手いっぱいで、もうデジャヴっつーかスゲー見覚えあるよこれ確実に」
司令官「ああ、ローパーですよ。大丈夫、飼い慣らしてあります」
勇者「あれ飼えるのかよ」
司令官「はい、苦労しましたが。これから、地下に移送するところですが、ご覧になりますか?」
勇者「まぁ、予想はできるけど。一応見とくか」
司令官「はい。お足元にどうかお気をつけて」
勇者「ほらほらもう、凄い湿った音と甘ったるい声が聞こえてくるもの」
司令官「性欲処理、の目的もありますが、新兵に対しての罰として効果的なんですよ」
勇者「淫魔なのに?これが罰になるのか?」
司令官「淫魔は気位が高い種族ですから、ほかの魔物に犯されるのを嫌がるんです。
新兵は特に、鼻っ柱だけの跳ね返りが多いもので」
勇者「ほう」
司令官「万年発情で相手が雄なら何でもいい、と思われがちなんですがね、淫魔は」
???「く、離せ!離せよ!!」
勇者「あれは?」
司令官「ああ、新兵のようですね。彼女は素行に改善が認められませんので、已む無く」
勇者「……で、ローパーと一緒にする、と」
司令官「ちなみにローパーにも色々いまして。私は、五番の檻にいるのがお気に入りですね」
勇者「訊いてないよ」
司令官「まぁ、せっかくですから見ましょう。ほらほら、檻の前の特等席へどうぞ」
勇者「あ、ああ。うむ」
司令官「何をしている?早くそいつを中へ入れろ」
新兵「うわっ!」ドスンッ……ガシャン
赤いショートカットが特徴的な、少年的な淫魔が無造作に檻の中へ突き飛ばされる。
すぐに鍵がかけられ、その格子の向こうには、椅子に座った『男』と、駐屯地の司令官。
新兵「出せよ!こんな事して、アタシが言う事を訊くと思ったら……」
にゅるり、と何かが尻を撫でる。
咄嗟に払いのけ、伸びてきた暗闇を目を凝らして見る。
何かがいる。
単なる懲罰用の独房だとばかり思っていたが――違う。檻の外にいる二人は、ニヤニヤとこちらを見ている。
何かが、いる。
新兵「ひぃっ……」
彼女がその場に尻餅をつき、何とか逃れようと、遠ざかろうと、手を鉄格子に向かって伸ばす。
その時、この檻の「主」が姿を現した。
醜い。
赤黒い無数の触手に阻まれ、奥にあるであろう「本体」は見えない。
粘液を滴らせ、新兵の頬を一本の触手が撫でた。
新兵「や、だ……やめろ、来るな!出せよ!ここから出せ、オイ!」
司令官「駄目だ。これは、罰なのだ」
新兵「だ、だからって……こんなの……嫌…」
司令官「それに、お前はラッキーだ。……新しく入ったローパーの具合を、最初に試せるんだからな?」
新兵「そん、な……くそ、ヤダ!ふざけんな、ローパーなんて…!」
頬をなでる触手を払いのけようとした途端、
何本もの触手が彼女の腕に巻きつき、同時に両足首にも巻きつく。
そこから先は――不思議なほど、何もしてこない。
手足に巻きつくだけで、それ以上の事はしない。
とはいえ、それはあまりにも耐え難い嫌悪感をもたらした。
糸を引く粘液をまとった、生臭さに包まれた触手がむき出しの手足を撫でる。
ここに移される際、下着以外はすべて剥ぎ取られた。
その時点で、こうなる事を予想できたのかもしれないのに。
いや、予想できたとしても、防ぐ事はできなかった。
勇者「……何もしないのか?」
司令官「報告によると、あのローバーは簡単な命令を実行する知能をも有しているとの事です」
勇者「つまり、命令を待ってるって事か」
司令官「はい、陛下」
勇者「なら、試してみるか」
つかつかと檻へ歩み寄る。
嫌悪感に耐え、必死で悲鳴を上げまいと涙を浮かべている淫魔には、まるで魔王のように映る。
勇者「……『がんがんいこうぜ』」
「命令」を受け取った瞬間、ローパーの本体がぴくりと反応した。
10本、20本、闇の奥から触手がその数を増やして近寄る。
新兵「…ゃ。嫌……!」
四肢を弄んでいた触手が、少しずつその先端を進めていく。
腕に巻きついていた触手は、乳房へ。
脚に巻きついていた触手は、太腿を経て、下着に包まれた陰部へ。
先端が、下着越しに柔い秘部をつつく。
新兵「やめろ!…やめ……お願い、やめて……!」
生臭い粘液がショーツに染み込み、恥部を穢す。
不快感、恐怖、嫌悪感に支配されてしまい、ついには助けを求めてしまった。
司令官「……言っただろう。これは、罰なんだ」
勇者「なぁ、ちょっと可哀想になってきたな」
司令官「いえ。ここで止めては教育になりませんし、何より…」
勇者「何より?」
司令官「収まりがつかない者達がおりますので」
勇者「……野暮だったかな。あ、続けろ」
その間にも、淫魔に対する蹂躙は続いていた。
勇者自身、ローパーを見るのは初めてではなく、戦った事すら何度もある。
だが、ローパーが淫魔と交わり…否、泣き叫ぶ淫魔を『犯す』事など見た事は無い。
新兵「やめ、……あ、うぁっ!ん……!」
薄い布越しに、感触を楽しむかのように陰部を刺激し続ける。
粘液をなすり込むように撫でたり、割れ目を浮き上がらせるように押し込んだり、
危険がないかを探っているようにも見えた。
下だけではなく、ローパーは上もまさぐり始める。
胸を隠す簡素なブラは既に取り除かれ、豊満とまではいかないものの、程よい大きさと美しい形、
そして頂点の小さな飾りが露わとなっていた。
二本の触手が近づき、ねっとりと二つの乳房に絡みつく。
乳首に近づけば近づくほどに鋭敏な感覚が、彼女の身を震わせる。
触手の先端が小さな乳首に、まるで挨拶するかのように軽く触れた。
新兵「ひゃんっ……!」
頓狂な声を上げ、びくん、と背筋を跳ね上げる。
キモチイイ。
そう感じてしまった事を激しく恥じながら、彼女は唇を噛み締める。
彼女の羞恥を知ってか知らずか、乳房を重点的に責め始める。
揉みしだき、乳首を弄び、乳輪をなぞり。
そうしていると少し小さな、先端に穴の開いた触手が二つ、突き出されてきた。
まずい
非常に[田島「チ○コ破裂するっ!」]したい
新兵「や……。何……?」
薄れそうな意識の中、二つの触手に目を向ける。
小さな穴が空いているのに気付いた瞬間。
新兵「っ……!あ、ああああぁぁぁぁぁぁ!!」
先端がめくれ上がり、無数の小さな触手を蠢かせる内側が明らかになる。
まるで顎門を開いた蛇のように、両方の乳首にそれぞれ喰らいつく。
乳輪を完全に覆い隠し、乳房を四分の一ほど呑み込み――無数の触手が、乳首を弄ぶ。
内部でいかなる愛撫が行われているのか、勇者や司令官には分かろうはずもない。
一つだけ言うとすれば、淫魔でさえも狂わせてしまうような、人外の快楽。
もはや、彼女には抵抗の意思も、救いを求める意思もない。
溺れているかのようにパクパクと口を動かし、涙を流しながら喘ぐ。
脳神経が焼き切れてしまいそうな快楽に、脚を大きくばたつかせ、声にならない叫びを紡ぐだけ。
その時、ローパーは触手を硬く強張らせ、彼女の両足を、開かせたままで固定する。
もがく自由さえも奪われ、彼女は背を反らせ、僅かに気を紛らわす事しかできない。
股布、両サイドのウエスト部分、三箇所に触手が引っかかり、力を込める。
あっけなくショーツが引き裂かれ、陰部が白日の下に晒される。
ややあって、乳首を犯していた二つの触手が外れた。
肩で息をつきながら、激しくむせ返る彼女に、状況を認識する術はない。
むせる毎にひくひくと収縮する二つの穴に、触手が近づく。
呼吸を落ち着かせると、すぐに、秘所に近づく触手に気付いた。
気付いたが、取り乱しはしない。
頬を紅潮させ、被虐心と、異常な性的興奮が体に満ちる。
願わくば、あの触手で膣内をめちゃくちゃにかき回してほしいという欲望。
同時に、忌まわしい怪物に体を許してはならない、という激しい拒絶。
二つは引き算ではなく『乗算』となり、彼女の身体を激しく昂ぶらせる。
司令官「……効いてきたか」
勇者「何だって?」
司令官「あの顔です。元々彼女は淫魔の割りに初心でしたが……もう、その心配はありません」
勇者「えっと……つまり?」
司令官「…教育、もとい懲罰はこれにて終わりと」
勇者「ダメだ、許さん」
司令官「このまま見ていたいのはやまやまですが……見世物、という訳でもありませんので」
勇者「おい、待て。せめてあと十分」
司令官「いえ、たとえ陛下といえどもこれだけはまかりなりません」
勇者「……どうしても?」
司令官「…昂ぶらせ、途中で取り上げる事で彼女への教育が成し遂げられるのです。
最後までやらせ、満足させてしまっては『懲罰』の意味が無いではないですか」
勇者「……なるほど」
司令官「ご理解いただけて何よりです。……おい、彼女を出すぞ。ローパー、お前は奥へと引っ込んでいろ」
新兵「あ……。ダメ、待って!行かないでよぉ!犯して、犯してってば……!」
司令官「お前への懲罰は終わりだ。訓練に戻るぞ」
新兵「やだぁ……!離して!離してください!」
司令官「口の聞き方は覚えたようだな。分かっているだろうが、訓練中の自慰行為は許さん。見つけ次第、追放とする」
勇者「鬼だな」
司令官「陛下ほどではありませんよ。三ヶ月前に……」
勇者「その話はもういい」
司令官「…?はい」
勇者「しかし、ローパーなんてよく飼い慣らせるな」
司令官「淫魔の国では日常茶飯事です」
勇者「何、これ犬とかそういう感じなの?」
司令官「人界には、性的な目的で犬を飼う女がいるじゃありませんか」
勇者「なるほど」
司令官「教えたら、芸もしてくれるんですよ」
勇者「ほうほう、例えば?」
司令官「『拘束して二穴責め』と『媚薬注入』の二つがオーソドックスですね」
勇者「やっぱりそうなるのかよ」
司令官「ローパーがオーソドックスですが、中にはスライムを飼ってる者もいるとか」
勇者「何すんの?」
司令官「ローパーにはない肌触りと、最下級の魔物に犯される屈辱感が良いのだとか」
勇者「色々極まってんなー」
司令官「ああ、それと夏場はひんやりとしていて実に心地よいと」
勇者「それはちょっと羨ましいな」
司令官「さて、陛下。この後はどうなさいます?ご希望は?」
勇者「……そうだな。実際の訓練を見ておこうか」
司令官「はい、了解いたしました」
勇者「ちゃんと戦闘の訓練なんだろうな?夜の格闘技とかじゃなくて」
司令官「大丈夫です。今は白兵訓練の時間ですから」
勇者「否定しなかったよな?マジで夜の戦いの訓練があるのか?」
訓練場
勇者「お、やってるやってる。何だ、普通じゃないか」
司令官「今日は陛下がいらっしゃるから皆真面目に取り組んでおりますね」
勇者「なーんか聞き捨てならないな」
司令官「ともかく、ご安心いただけたでしょうか」
勇者「うん、とりあえずな」
司令官「さて、この後は?お試しになられますか?生え抜きの精鋭を20人ほど用意できますが」
勇者「それってどっちの意味で?」
司令官「両方です」
勇者「……いい。帰る」
城
堕女神「お帰りなさいませ、陛下。どのような様子でした?」
勇者「何かもー、あれだな、予想以上に予想以上だった」
堕女神「お食事の準備を?それとも、先に沐浴なさいますか?」
勇者「とりあえず、風呂に入りたい」
堕女神「はい、かしこまりました。大浴場にてお待ちいたします」
勇者「ああ。……ところで」
堕女神「はい?」
勇者「大浴場って、どこだっけ?」
勇者「…あんな変な顔する事ないじゃないか」
勇者「お、ここだな……」
???「陛下!こっちですよ!」
勇者「…?誰かいるのか?」
サキュバスB「誰か、じゃないですよぅ!お忘れですか?」
勇者「ああ、3419歳の幼女か」
サキュバスB「え?違いますよ。3418歳ですよ、まだ。年間違えるなんて失礼ですねー」
勇者「……すまんな」
サキュバスB「そういえば、親戚のお姉さんに『永遠の1700歳』って言い張ってる人がいますよ」
勇者「どう反応すりゃいいんだ、それ」
勇者「で、何故お前がここにいるよ」
サキュバスB「沐浴のお供です」
勇者「愚問だった。とりあえず入ろうか、寒くなってきた」
サキュバスB「はーい」
勇者「ふぃー……」ザブーン
サキュバスB「陛下、失礼しますっ」トプン
勇者「お前も入るのか?」
サキュバスB「ダメですかあ?」
勇者「いや、構わん」
サキュバスB「それにしても、陛下って昨日から変ですね」
勇者「耳が腐るほど聞いたよ」
サキュバスB「Aちゃんから聞いたんですけど、すごい優しくしてもらったーって」
勇者「おい、自分の情事を人に話したのか?あいつ」
サキュバスB「だって淫魔ですもん」
勇者「それ話終わっちゃうよ」
サキュバスB「『チューしてもらっちゃった』って嬉しそうに言ってました」
勇者「想像つかないわ。詳しく話せ」
サキュバスB「はいー」
サキュバスB「…えっと、まず『昨日はどんな事したの』って話になって」
勇者「すでに直球だな」
サキュバスB「そうしたら、Aちゃんが詳しく、じっくり、音の一つ一つにいたるまで話し始めたんです。何故か三人称視点で」
勇者「人間同士の猥談とはレベルが違う!」
サキュバスB「で、内容の説明は終わったんですけど、感想を訊いてみたんです」
勇者「それでそれで」
サキュバスB「『陛下が優しくて、嬉しかった』って真っ赤になって言ってて、もーすごい可愛かったですよ」
勇者「翌朝はサキュバスそのものの態度だったけどね」
サキュバスB「あははは、きっと照れ隠しですって。それにしてもさすが陛下です!Aちゃんがあんなしおらしくなっちゃうなんて!」
勇者「褒めてんのかそれ」
サキュバスB「とにかくメロメロでしたよ、Aちゃん」
勇者「喜ぶ所……なのかなぁ」
サキュバスB「……それはそうと、どうします?」
勇者「『何が?』……って言うのは野暮かな」
サキュバスB「いつも通り、私がお口でしますか~?」
勇者「…いや、遠慮する」
サキュバスB「残念です~」
勇者「その代わり。……昨日はAだったから、今日はお前だ」
サキュバスB「え!?いいんですかぁ?」
勇者「ああ。一人で来い」
夕食
堕女神「……どうでしょう、お口に合いますか?」
勇者「ああ、美味いよ。…やっぱり、作ったのは堕女神か」
堕女神「陛下の為に、腕を奮わせていただきました」
勇者「……ところで、女神と言っても色々いる訳だが」
堕女神「…?」
勇者「堕ちる前は、一体何を司る女神だったんだ?」
堕女神「…………『愛』です」
勇者「わぁお」
堕女神「まぁ、今は『性』ですね、さしずめ」
勇者「あんまり変わらなくね?」
堕女神「あ。以前依頼いたしました彫刻と肖像画が、明日届きます」
勇者「肖像画?誰の?」
堕女神「陛下の」
勇者「へぇー(…普通に考えて、前の王のだよな?)」
堕女神「国内でも随一の芸術家に依頼いたしましたので、きっとご満足いただけると思います」
勇者「楽しみにしておこうか。……依頼したのはいつだったかな」
堕女神「はい、三ヶ月前ですわ」
勇者「なら大丈夫か」
堕女神「?」
勇者「いやいや、こっちの話。……ごちそうさま。美味しかったよ」
勇者「うーん……。まだ二日目か」
勇者「………なんだか、エロ関係なしに居心地が良いな」
勇者は、魔王に辿り着くまでの道のりを思い描く。
『お前は勇者の子孫だ』と祭り上げられ、武器を渡されて旅に出される。
数え上げるのが馬鹿馬鹿しくなるほどの危険を掻い潜り、何度も殺されかけてやっとの事で「手がかり」の一つを見つけ出した。
行く先々の国では問題を押し付けられ、『勇者』と持て囃されていたのは、雑用をさせるためのゴマすりだったのか。
魔王を倒したくない訳では無かった。
ただ、王国を苦しめる魔術師も、旅人を襲う山賊も、強敵ではあったが『勇者』でなければ倒せない程の敵ではなかった。
見捨てよう、等とは思わない。
しかし、彼らの頼みを聞いている間に、それだけ魔王の手は進む。
それだけ魔王は遠ざかる。
「勇者殿の助けになりたいが、我が国は問題を抱えている」
それは、彼らが勇者に「おねだり」をする時の、ありきたりなフレーズだった。
魔王「……調子はどうかな、勇者よ」
勇者「お前は……!どこだ、どこにいる!」
魔王「陳腐だが、貴様の心に直接語りかけている。……随分と、お楽しみではないか?」
勇者「黙れ!……お前は、何をした?」
魔王「端的すぎるな。…何とは、『何』だ?」
勇者「恍けるな。なぜ、この国の者は俺を『王』だと思っている!?」
魔王「『王』である事に理由があるか?王を『王』だと思う事に何も不思議はあるまい。貴様の質問ではないな」
勇者「お前が、この国の者達の記憶を操作したのか?」
魔王「……さてな。どの道、明日になれば分かるだろう?……それに、まだ五日間もあるのだぞ」
勇者「…………」
魔王「クククク、おやすみ。……いや、貴様は仲間にこう言っていたかな。……『いろいろやろうぜ』」
勇者「おい、待て!魔王!質問に答えろ……!」
サキュバスB「……陛下、入っていいですかー?Bですよ」
勇者「チッ……。ああ、入れ」
サキュバスB「失礼しまぁす。……陛下、どうしたんです?息を切らして。それに顔が真っ赤……」
勇者「何でもない」
サキュバスB「でも……」
勇者「何でもないと言っているだろうが!!」
サキュバスB「っ……」ビクッ!
勇者「………す、済まない」
サキュバスB「い、いえ……すみません、陛下。わ、私なんかが……」
勇者「すまない、と言っただろう。……こっちに来い」
サキュバスB「え……?」
勇者「いいから、来るんだ」
寝台に深く腰掛け、少女の姿をした淫魔を呼び込む。
意図を察し切れていないのか、ただ言われた通り近づいていく。
勇者「……翼、しまえないか?」
サキュバスB「…はい、仰せの通りに」
蝙蝠に似た翼が、黒い霧へと変わって虚空に溶ける。
そのまま歩みを進め、勇者に指示されたとおり、脚の間に挟まるように、背中を預けて腰掛けた。
勇者「…………大声を出して、すまなかった」
背中越しに抱き締められ、彼女は一度だけびくりと反応し、そこから先は大人しくなる。
小さな肩を抱きしめる温もり、首筋に感じる息吹、背中から伝わる勇者の心音。
それらは、遠い昔に誰かから与えられたもの。
――彼女は、そんな感傷を覚えた。
勇者「……お前」
サキュバスB「……?」
勇者「随分と鼓動が早いな」
サキュバスB「……へ、陛下のせいですよ」
勇者「…すまない」
サキュバスB「あ、謝らないでくださぁい!」
勇者「……いいのか?」
サキュバスB「…はい」
返事が返ってくると同時に、彼女を抱いたまま後ろに倒れこむ。
仰向けに二人重なって寝転がった状態となり、勇者の胸に彼女の体重がかかる。
サキュバスB「あ、あの……!咥えなくて、いいんですか?」
勇者「いい」
サキュバスB「でしたら……そ、そうだ、手でするのも練習したんですよ。Aちゃんに教わったんです」
勇者「いらん。……今日は、俺が『してやりたい』んだ」
ふっ、と彼女の耳に息がかかる。
か細い声とともに吐息が漏れ、悩ましく身をくねらせた。
勇者「…しかし、顔の割りに大きいな」
両手で、そっと彼女の乳房に触れる。
言動や容姿と反して、程よく大きい。
ゆるやかにくすぐるように触っていき、その手は段々と頂点に近づき。
サキュバスB「あっ……」
そして、乳首に触れる事無く、再び下っていく。
勇者「……どうした、残念か?」
サキュバスB「そん、な、事……」
勇者「じゃあ、触らなくてもいいんだな?」
サキュバスB「………」
勇者「黙っていては分からないな」
つぅ、っと指先が乳輪の縁をなぞる。
小さな声を漏らして、非常に小さく身を強張らせるのを、彼は見逃さなかった。
勇者「……気持ちいいのか」
サキュバスB「そ、そんな事……!」
言葉を待たず、再び、下から頂点へ向かって揉み上げる。
やわやわと、まるで小さな動物を撫でるかのように。
指に吸い付くような感触、『王』に身を任せる緊張からか、かすかに汗ばんだ肌。
小さく粒のようだった乳首は、少しずつ、硬さを増していった。
勇者「どこかで聞いたような言葉だが。……体は、そうとは言っていないな」
サキュバスB「ちが……」
勇者「違うのなら、止めようか?」
サキュバスB「………ぃで、ください」
勇者「何?」
サキュバスB「……やめないで、ください」
勇者「……何を?」
サキュバスB「……おっぱい、触るの……やめないで……」
勇者「良く言えたな」
指先を、頂に向かって進めていく。
そして―――遠慮なく、乳首を捻り上げた。
サキュバスB「あひぃぃぃっ!!」
電流が走る。
有り体にいえば、そうだ。
お預けをくらって待たされた神経は、脳細胞が焼ききれるほどの快楽をもたらした。
絶頂にこそ達してはいないが、ひとたび気を抜くだけで達してしまう。
精神年齢が低めの彼女でさえ、ここで気を抜いてはいけないと感じている。
淫魔の一人として、最も性的魅力に溢れた魔族として、達してはいけない。
乳房を弄ばれただけで達するなど、まるで人間の淫売だ。
達する訳には、いかない。
サキュバスB「…っ……ん、はぁう……」
乳首を重点的に責められながら、健気に耐える。
こりこりと指先で嬲られ、その度に意識が飛んでいきそうになる。
勇者「……顔を、向けるんだ」
言って、彼女の顔を右へ向けさせ、自身の首を右へ若干曲げる。
そのまま――仰向けに重なった状態で、唇を塞ぐ。
彼女は眼を見開き、状況を把握しようと試みた。
同時に両乳首を摘み上げる。
彼女の痙攣が少しずつ大きくなり、やがて背筋を跳ね上げる。
尿道が弛緩し、だらしなく尿を飛び散らせながら、彼女は達してしまった。
きゅうっ、と秘所が収縮し、開き、括約筋を痺れさせる快楽に彼女は震える。
サキュバスB「だ、め……ん、むちゅ……はぁ……い……っちゃう……」
シーツに染みを作り、彼女は一気に現実に戻る。
達したばかりか、失禁までしてしまった事に。
それも、王の上に乗ったままで。
サキュバスB「ご……ごめんなさい……!」
勇者「……構わん」
サキュバスB「すみません……陛下のベッドを穢してしまって……」
勇者「いいさ。こんなに広いんだしな」
サキュバスB「…怒らないんですか?」
勇者「いや。むしろ、こっちこそ調子に乗ってすまない。……お前が、あまりに可愛くてね」
サキュバスB「……Aちゃんが言ってた通りです」
勇者「?」
サキュバスB「陛下が、すごく優しくしてくれて、胸の中があったかくなるって」
勇者「そうか?」
サキュバスB「……もう一回、キスしてください」
勇者「ああ。……いいよ」
言って、彼女を隣に下ろし、横たわったまま唇を合わせる。
艶のある薄い唇を割り、磁器のような歯、歯根を舌でなぞり、じっくりと味わう。
サキュバスB「んふ……、む、ぷふぅ……」
舌先に乗せた唾液が口内へ注がれ、同時に多幸感が過剰なほどに満ち満ちる。
優しく、それでいて激しいキスが彼女の心を侵し、暖かなものが注がれていくのが分かる。
下腹部にじんわりと熱がこもり、不思議な事に、それは単純な色情へ繋がらなかった。
もっと、キスをしたい。
もっと、肌の温もりを感じたい。
もっと――抱き締めてほしい。
それは、『王』へ対して、抱いてはいけない気持ちかもしれなかった。
王の愛情を、この身に受けたい。
ほかの誰にでもなく、自分だけを愛してもらいたい。
しかし、それを望んではいけない。
理解した時、彼女の双眸から、熱いものが零れ落ちた。
勇者「……どうした」
サキュバスB「え……?い、いえ、何でもないんです。ただ……嬉しくて」
勇者「…そうか?」
勇者が、指先で彼女の涙を拭う。
金色の瞳を波立たせながら、彼女は彼の眼を見た。
あまりにも、あまりにも暖かすぎる。
淫魔として生を受けて以来、三千余年。
自分を見る「男」の目が、こんなにも穏やかであった事など無い。
『魅了』を受けた男の、蕩けたような我を失くした目とも違う。
血走り、欲望をむき出した目とも違う。
その目は、まるで。
サキュバスB「……このまま、寝ちゃってもいいですか?」
勇者「…ああ、いいよ」
言って、勇者は彼女の後ろに回していた手を離す。
サキュバスB「…お願いします、離さないで……ください」
勇者「……ああ」
三日目
勇者「ん……」
目が覚めると、すぐ目の前に、彼女の寝顔があった。
左腕を枕にして、右腕を彼女の背中に回して、眠りにつく前と全く同じ体勢で。
腕に倦怠感を感じるが、悪くは無い。
彼女の安心しきった寝顔も、規則正しい寝息も、寝息とともに感じる甘やかな芳香も。
窓の外から響く鳥の唄も、降り注ぐ陽光も、上等の寝台の温もりも。
勇者がこれまでの旅で感じる事が無かった、時の移ろいをも忘れる一時。
堕女神「失礼します、陛下。お目覚めですか?」コンコン
勇者「……入れ。静かにな」
堕女神「はい」
勇者「…おはよう」
堕女神「………これはまた珍しい」
勇者「何が?」
堕女神「彼女が、陛下の前で眠っているなんて」
勇者「……誰だって、夜は寝るだろ?」
堕女神「ですが、普段は朝に奉仕しながら起こすのが一般的な」
勇者「いいんだ。……俺が、いいと言ったんだから」
堕女神「陛下が良いのなら。……早速ですが、ご依頼の陛下の彫像と肖像画が届きました」
勇者「……見に行きたいが、これではな」
堕女神「起こせばいいでしょう」
勇者「正論だな」
堕女神「……では、後20分、部屋の外で待ちましょう。それまでに何とかしてください」
勇者「ああ、助かるよ」
堕女神「………」
勇者「どうした?」
堕女神「…いえ、何でも」パタン
勇者「……おい、起きろ」
サキュバスB「ううん……」
勇者「起きろってば」
サキュバスB「………」
勇者「………俺にも考えがあるぞ」ズブッ
サキュバスB「ひゃあぁっ!」
勇者「おはよう、よく眠れたか?」グリグリ
サキュバスB「い、ひ……お尻……に……」
勇者「俺は、早く肖像画を確かめたいんだ。困らせないでくれよ」ヌプッ
サキュバスB「…お尻なんて……汚いですよ」
勇者「…その割に、随分と気持ちよさげだったじゃないか」
サキュバスB「ち、違……びっくりしただけです……」
勇者「さて、起きたんなら俺は行くぞ」
サキュバスB「……はい」
勇者「お前の寝顔、可愛かったな」
サキュバスB「そ、そんな事ないですっ!」
勇者「照れるなよ。……それじゃ」
サキュバスB「……やっぱり、意地悪です」
勇者「さっき、何か言いたそうだったな」
堕女神「いえ、特に」
勇者「……そんな事ないだろ?」
堕女神「いえ」
勇者「……ひょっとして、妬いてるとか?」
堕女神「そんな訳はありません」
勇者「つまり、俺に興味が無いと」
堕女神「誘導尋問はやめてください」
勇者「それはそうと、まず朝食にしたい」
堕女神「はい、そう仰られると思って準備は整えております」
食後
勇者「……ふぅ。相変わらずのお手前」
堕女神「少しお休みになられたら、肖像画をご覧になってください。玉座の間に運び込んでおりますので」
勇者「堕女神は、もう見たのか?」
堕女神「とんでもない。陛下より先になど」
勇者「そうか。……さて、このお茶を飲み終えたら行くとしようか」
堕女神「……陛下、お耳に入れたい事が」
勇者「ん……?聞こうか」
堕女神「取るに足らない事ではありますが。……南方のオークの群生地で、何らかの異変が起こったとの事」
勇者「何かあったのか」
堕女神「何者かに侵略を受けたのか、それとも他種族との諍いか分かりませんが、力を失いつつあるそうです」
勇者「……あるいは内乱、という所か?」
堕女神「定かではありませんが、不安の種には違いありません。現在、調査中です」
勇者「ふむ」
堕女神「さて、行きましょう。続きは玉座の間にて」
勇者「ああ、分かったよ」
勇者「ほう……。デカいな」
玉座の間に入ると、すぐに、大きな幕で覆われた額縁が目に入る。
その傍らには、小柄な、堕天使と思われる種族の画家が立っていた。
勇者「……さて、早速だが見せてくれるか?」
そう言うと、画家は幕の縁に手をかけ、一気に引き摺り下ろす。
ばさ、と翻り、その下から、王の姿を描いた肖像画が現れた。
勇者「………どういう、事だ」
画家「……お、お気に召しませんでしたか?」
勇者「……どうして」
画家「え?」
勇者「どうして……『俺』が描かれているんだ?」
描かれているのは、紛れも無く……”勇者”だった。
精密に、写実的に、誤魔化しも美化も一切ない、ありのままを描いた絵。
画家「ど、どうしてと申されましても……陛下の肖像画を、との事でしたので」
勇者「……いつだ?いつから描いていた?」
画家「ご依頼をいただいてすぐ。三ヶ月ほど前から」
勇者「…………そんなはずが、あるか」
間違いなく、今日で三日目。
淫魔の国の王となって、三日目。
にもかかわらず、三ヶ月前の絵に「自分」が描かれていた。
吐き気がする。
何か、自分の理解を著しく超えた、何かの存在を感じて。
この体験には、気楽に捉えられない何かがある。
魔王の罠、というのも考えられた。
ともすれば――この国自体が、勇者に対する罠、なのか。
勇者「………すまん。寝室に戻らせてもらう」
堕女神「陛下、お体の具合でも悪いのですか?」
勇者「少しな。……誰も、部屋に近づけないでくれ」
堕女神「……肖像画に、ご不満な点が?」
勇者「違う。肖像画には……不満は無い。よくやった」
画家「お、お褒めに与り光栄です」
勇者「……少し休ませてくれ」
堕女神「はい。……後ほど、薬と食事をお運びいたします」
寝室
勇者「どういう事なんだ!」
魔王「……見てきたか。随分といい出来栄えではないか?『陛下』」
誰もいない寝室で、虚空に向かって叫ぶ。
間髪いれず、勇者にだけ聞こえる声が響く。
勇者「この国自体が、貴様のまやかしか」
魔王「……全く、貴様ら人間はいつもそうなのだな」
勇者「何だと?」
魔王「全てを我のせいにして、事態の説明をつけようとする。
我とて神ではない。不死身ではない。『魔王』も万能ではないというのに」
勇者「では、一体何だ?何が起こっている!?」
魔王「答え合わせは、七日目を終えた時だ。それまで考える事だな」
勇者「……待て、まだ話は……!」
勇者「………クソ、何なんだよ……意味が分からない」
どこまで、魔王が関わっている?
自分が何故、三ヶ月以上前からこの国の王となっている?
欲望のままに生き、彼女らを激しく求めていたのも自分だった?
勇者「畜生っ!!」
白い壁に、衝撃が走る。
叩きつけた拳の方が痛み、その痛みは、勇者を今少し落ち着かせた。
無言でベッドに腰掛ける。
どうやらシーツは未だ取り替えていないらしく、朝と同じ、乱れたままの状態だ。
夜を共にした淫魔の香りもまだ残っている。
勇者「魔王……全部、お前の生み出した幻なんだろう?そうだと言ってくれ……」
無力感、頭を埋め尽くす無数の疑問符、そして魔王に対しての複雑な感情。
それは堂々巡りを繰り返し、勇者の精神を蝕んでいく、毒。
堕女神「失礼します。お薬をお持ちしました」
勇者「………」
堕女神「……陛下?入ってもよろしいでしょうか?」
勇者「……入れ」
堕女神「それでは、失礼いたします」
勇者「おい」
堕女神「はい、何でしょう?」
勇者「……俺は、誰だ?」
堕女神「…質問の意図が分かりかねます」
勇者「…答えろよ!俺について、何を知っている!?」
堕女神の細い首を片手で掴み、引きずり倒す。
一瞬の事だった。
彼女は小さな悲鳴とともに、ベッドの上に叩きつけられた。
堕女神「陛下……!いったい…何を?」
勇者「命令だ。……『俺』についてお前の知っている事を、全て言え」
堕女神「…あなたは、『淫魔の国』の王です」
勇者「いつからだ!?」
堕女神「ぐっ……3年ほど前、あなたは王座に就かれました」
勇者「その他は?」
質問のたび、無意識のうちに首を掴む手に力が篭る。
あとほんの少し力を入れただけで、へし折れてしまいそうなほどにか弱い。
堕女神「…あな…た……は、か…つて……『勇者』……だった……」
絞り出した声、紅潮して息苦しさに喘ぐ顔、紫色に残る指の痕。
彼女の、淫魔の国の住人から初めて飛び出した、幾度と無く呼ばれた、『彼』を差す言葉。
その二つが合わさり、やっと、彼は冷静さを取り戻した。
首に巻かれていた手から力が抜けると同時に激しくむせ返り、
遮断されていた分の酸素を取り込もうと彼女の鼻と口が一気に稼動する。
勇者「……今……なんて…?」
堕女神「はぁ、はぁ……。…お忘れになられたの……ですか?あなたは、人界の『勇者』だったのです」
勇者「………え…?」
堕女神「あなたが夜毎、添い寝役をいたぶりながら口にしておられた事です」
勇者「何だ、それ」
堕女神「陛下、何が起こられたのですか?……ここ三日ほどの陛下は、まるで別人です」
勇者「……俺にも分からないよ」
堕女神「…お体の具合は、戻られましたか?」
会話の切れ目に発せられた言葉は、心から、勇者の体を案じているように受け取れた。
突如締め上げ詰問を浴びせるという暴挙に出てなお、彼女は『女神』のような言葉を口にした。
勇者「…すまなかった。許してくれ」
堕女神「……いえ、お気になさらないで下さい。……『慣れて』おります」
勇者「………」
堕女神「陛下?」
勇者「……今日、他の予定は?」
堕女神「午後から、南方のオークの動乱を受け国境警備の見直しを。その後も雑務が少々」
勇者「…分かった、行こう」
堕女神「はい」
内容として、そう難しくはならなかった。
とにかくオークの内部で何かが起こっている。あるいは外部からの刺激を受け、オーク全体が不安定になっている。
どのような事になるかの予想もつかないため、差し当たって、南方の砦へ援軍を送っておく。
調査も並行して行い、事態の把握に努める。
妥当な落とし処というか、それ以外にすべき事は見つからない。
勇者「……オーク、か」
亜人種としては耳慣れた存在。
豚のように醜く、知能が低く凶暴、最低限度として族長を上に置いた階級社会が形成されているものの、
その族長すら何度も入れ替わるという有様。
性欲が異常なほど高く、エルフであろうが人間であろうが犯し、エルフ以外の全ての種族を受胎させる事が可能。
魔族に対してもそうなのかは不明であるが、警戒するに越した事は無いだろう。
堕女神「ここ数十年は落ち着いていたのですが、それだけに気になりますね」
勇者「ふむ、なるほど」
勇者「一度、視察に行きたいな」
堕女神「…陛下が、御自ら……ですか?」
勇者「いけないか?」
堕女神「いえ、そのような事は……」
勇者「それとも、『珍しい』?」
堕女神「……畏れながら」
勇者「…すまん、困らせた。……ともかく、視察には行きたい」
堕女神「はい。……それでは、明日にでも出発いたしましょう」
勇者「やけに段取りが早いな」
堕女神「恐れ入ります」
勇者が、憂愁に閉ざされた面持ちで、中庭から夕日を見つめる。
分からない事だらけだ。
自分の存在も、そもそもこの淫魔達の国は、人界なのかそれとも魔界なのか。
四日後に、魔王とどんな面で戦えばいいのか。
どこまでが、魔王の陰謀なのか。
徐々に山の向こうに夕日が落ちていき、空が薄橙を経て紫へと変化する。
美しい、と表現はできるが、それと同時に、虚しい。
サキュバスA「お風邪を召されますよ」
勇者「お前か」
いつの間にか、隣に淫魔の一人が佇んでいた。
中庭を望む小高いテラスに、並んで夕日を見つめる勇者と淫魔。
サキュバスA「陛下、何かお悩みが?」
勇者「……まぁな」
サキュバスA「……あの日の朝から、まるで別人のようですわ」
勇者「…ある意味、別人なのかもな」
サキュバスA「さながら……『勇者』のように、活力と慈愛と、そして淀んでいない精力を感じますもの」
勇者「お前に、何が分かるんだ」
サキュバスA「……分かりますわ」
勇者「………」
サキュバスA「何より、『目』が違います。あの子も、今朝から様子が違っていて。
……まるで、恋する乙女。いや、報われないと分かっていながら恋焦がれる乙女、でしょうか」
勇者「淫魔らしい例えだな」
サキュバスA「まあ。…心外ですわ」
勇者「……ひとつ、訊きたい」
サキュバスA「はい、陛下。なんなりと」
勇者「『以前』の俺は、どうだったんだ?遠慮せずに教えてくれ」
サキュバスA「……そうですわね」
サキュバスA「一言では申せませんが……張り詰めた……いや、張り詰めたものが全て抜けたかのように、奔放な方でした」
勇者「というと?」
サキュバスA「肩の荷が下りたかのように、欲望のままに生きていらっしゃいました」
勇者「………」
サキュバスA「豪奢な料理と美酒に酔い痴れ、片時も空かせずに欲望を処理させて。
喜悦と快楽に顔を歪ませ、その実、誰にも気を許さずに生きていらっしゃいました」
勇者「……ほう」
サキュバスA「毎日何十人もの国民が情けをいただき、そのお顔は……まるで」
勇者「……『魔王』?」
サキュバスA「…有り体に表現するのなら。そうそう、堕女神さんに対しても」
勇者「?」
サキュバスA「一時期は、彼女をご寵愛なさっていましたね。……毎夜毎夜、彼女を激しくいたぶって」
勇者「……何だって?」
サキュバスA「嗜虐的というか、差し出がましいですが、彼女に対してだけは、
私達へとは違う情念をぶつけているように思えました」
勇者「…何故だ?」
サキュバスA「上手くは申せません。まるで……憎んでいるかのようにすらも」
勇者「………」
サキュバスA「いつか、殺されるのではないか。私達は、常に危惧しておりましたわ」
勇者「そうか……」
サキュバスA「兎も角、以前とは別人のようです」
勇者「もう一つだけ、いいか?」
サキュバスA「はい」
勇者「…お前個人の答えでいい。以前と今、どっちの『俺』がいい?」
サキュバスA「……難しい事を訊ねるのですね」
勇者「構わずに答えてくれ」
サキュバスA「私としては、『今』ですわ。……国民としては、『以前』です」
勇者「国民、として?」
サキュバスA「…慈愛に溢れ、添寝役にも惜しみない愛を下さる。それは、確かに理想ですわ」
勇者「続けろ」
サキュバスA「『王』として。あるいは、『勇者』としては。……今の陛下は、魅力的すぎるのです」
勇者「つまり……?」
サキュバスA「…『勇者』は、特別な一人を持つ事を許されないのです」
その言葉に、心臓が跳ねる。
自分ですらも理解していなかった、本質を突かれたかのように、彼女の言葉に聞き入る。
サキュバスA「その愛は、恐らく……惜しみなく、苦難に打ちひしがれる全ての者に分け与えられるべきもの。
『勇者』は、全ての者に平等に『勇者』として接しなければいけません」
勇者「……『勇者』」
サキュバスA「言葉少なに、ただただ民を救い、その姿を以って人々に勇気を分け与える者。……故に、『勇者』。
願望の名前、重責の名前、そして……万人の希望の名前」
勇者「………」
サキュバスA「それ故に、特別な一人を持ってはいけない。誰かに愛を注いではいけない。
雨のように広く、望まれない場合もあり、望まれる場合もあり、仮に疎まれようとも演じなければならない」
サキュバスA「『勇者』とは、生き方の名前なのです」
勇者「……『王』もそうか?」
サキュバスA「私のような者が口にするには、分を過ぎますが」
勇者「いいから、続けてくれ」
サキュバスA「『王』の愛は、特定の人物や層に向けるものであってはいけないのです。
全ての者に平等に愛を与える。あるいは――与えない。
それでも特定の人に愛を与えるとすれば、それは『妃』に」
勇者「……なるほど」
サキュバスA「……申し訳ありません。口が過ぎました。……如何様にも、処分を」
勇者「いや、構わない。……もとより、俺が訊いた事だ」
サキュバスA「……以前なら、『お前が口を開くのは、咥える時だけだ』と言って無理やりに」
勇者「その話はやめろ!」
サキュバスA「…ふふ、ようやく……戻ってくださいましたね」
勇者「…あんな話を聞かされりゃな」
サキュバスA「王としては、ともかく。……今の陛下は、好きです。生き生きとしていらっしゃいますよ」
勇者「…お前の話、腹に染みたよ」
サキュバスA「それは恐縮です。……もしお悩みの事がありましたら、私に。……全てを、受け止めますわ」
勇者「ああ、ありがとう」
サキュバスA「…それでは、私はこれにて」チュッ
勇者「………!」
サキュバスA「……失礼、します」
すっかり日が落ちてしまった中庭から、城内へと歩みを進める。
右頬にひり付くような熱を感じ、じんわりとした暖かさへと変わっていった。
城内エントランスへ入ると、すぐに堕女神の姿を見つけた。
堕女神「…?陛下、何かご用でしょうか?」
勇者「ああ。訊きたいんだが、俺の『剣』はあるか?」
堕女神「…はい、保管しております。……それが?」
勇者「あとで、俺の部屋に持ってきてくれるか?」
堕女神「はい、かしこまりました。何にお使いなさるのですか?」
勇者「……懐かしくてね」
夕餉を終え、自室に戻る。
何度目かの素晴らしく美味な食事を終えて一息つけば、誰かが訪れた。
堕女神「陛下。剣をお持ちしました」
勇者「ああ、ご苦労。……どれ」
何度も見慣れた、妖精の住まう湖上の岩から引き抜かれた剣。
刀身は全てを切り裂き、魔王の喉首にすらも届きうる、希望の牙。
幾つもの首を持つ巨大な竜。
嘘のように肥大した体の、単眼の亜人。
物質界の全てを素通りさせる、深淵の悪霊。
その全てを切り伏せ、勇者を魔王の城へと送り届けた神の剣だ。
勇者「……思った、通りな」
堕女神「如何されました?」
鞘から引き抜かれた刃からは、輝きが失せていた。
勇者が『正義』をもって戦う限りは決して色褪せないと言われた、刀身の輝きが。
今となっては――どこにでもある、数打ちの剣のようだ。
勇者「今朝は、本当にすまなかった。気が動転していたんだ」
堕女神「…お気になさらないでください」
革製の鞘に剣を納め、机の上に置く。
ランプの灯に照らされ、持ち主の物憂げな表情が浮かび上がる。
勇者「……明日の段取りは?」
堕女神「はい、朝食後、すぐに馬車を出します。その後、二日ほどかけ、南方の砦を目指します。
途中で宿を取って一晩過ごす事になりますが、よろしいでしょうか?」
勇者「ああ、問題ない。……馬車の中で一眠り、ってのも悪くはないんだがね」
堕女神「陛下……。それでは、面目が立ちません」
勇者「言ってみただけだ。……慣れてはいるんだよ、野宿にも」
堕女神「変な冗談はお止めください」
勇者「真面目な奴だな」
堕女神「真面目が売りですので」
勇者「……遠い昔、夢を見た」
堕女神「?」
勇者「俺が年端もいかない子供の頃さ。夢に『女神』が出てきた」
堕女神「…陛下、何の話を?」
勇者「翌朝、目が覚めると……俺は、『勇者』になっていてさ。力が内側から溢れ出てきたよ」
堕女神「…………」
勇者「……変な話さ。村にいくらでも同年代の子供がいたのに、よりによって俺が『勇者』になってしまったんだ」
堕女神「…なぜ、そんな話をするのです?」
勇者「畑仕事をして、家畜の世話をして、薪を割って。……なのに目が覚めたら、勇者として『冒険の書』を書き連ねる事になった」
堕女神「……後悔、していらっしゃるのですか?」
勇者「いや」
勇者「……ただ、『俺じゃなくてもいいんじゃないか』と何度も思ってたよ、昔は」
堕女神「……その女神を、怨んでいらっしゃるのですか?」
勇者「どうかな、分からない。……『勇者』だったから守れたものも、たくさんあるしね」
堕女神「失ったものも?」
勇者「そりゃ、あるよ。……平和な生活。命の危険のない日々。気を抜いて休む事ができる寝床」
堕女神「他にも?」
勇者「……柔らかい、女の人の手」
堕女神「随分と、詩的な事を仰られるのですね。どうなさったのです?今日は」
勇者「……さぁ。分からない。分かったら教えてくれよ」
勇者「さて、引き止めて済まなかったな。他に仕事があるんだろう?」
堕女神「この後にもいくつかの雑務と、明日の朝食の仕込みを」
勇者「……いつもいつもすまないな」
堕女神「陛下のご健康のためです」
勇者「…ありがとう」
堕女神「…………」
勇者「顔が赤いな」
堕女神「赤くありません」
勇者「俺も寝るとするよ。……たまには、一人でのんびりとね」
堕女神「はい、おやすみなさいませ、陛下」パタン
勇者「おやすみ、良い夢を」
勇者「……そうか。女神が、夢に出てきたんだったな」
机の上の剣を眺めながら、一心地つく。
思えば、そうだ。
夢のお告げの翌日、勇者の力が目覚めた。
その後も女神の導きに従って旅を続け、ついには魔王城へと辿り着く。
もしかすると、自分は……その女神を、怨んでいた?
勇者「そんなはずがない。………と、言い張りたいな」
サキュバスAから聞いた話。
今朝の、堕女神の反応。
それらからして、堕女神へ対し、過剰につらく当たっていたのは間違いない。
『自分』がそのように苛立ちをぶつけていたのなら、他に理由は思い当たらない。
勇者「『俺』は、どこかで道を踏み外したらしいな」
剣を手に取り、数cmほど抜いて、刀身へ語りかける。
輝きを失った刃は、この国の王となった『自分』が、勇者をやめた事の証。
勇者「………責めないよ、『俺』。……気持ちは、分かるからさ」
刃を見つめたまま、深まっていく夜の城で、彼は睡魔に襲われるまで物思いに耽った。
四日目
目が覚めた。
開ききらない瞼と覚醒しきらない頭のまま、『横』を探る。
誰の肌にも触れない。
手に伝わったのは、シーツの感触だけ。
ああ、そうか。
昨日は「一人」で寝たんだった。
僅かな空虚感に苛まれながら、身を起こす。
勇者「どうにも、具合が悪いなぁ」
堕女神「何がですか?」
勇者「うおっ!?」
堕女神「御返事がありませんでしたので、入らせていただきました」
勇者「……起こしてくれよ」
堕女神「起こしましたよ」
勇者「………」
堕女神「朝食を?」
勇者「ああ、貰う」
堕女神「はい。それでは、お着替えが済みましたら食堂の方へ」
勇者「分かった」
朝の身支度を整える。
四度目だが、今朝はそれに一つだけ、工程を加える。
机の上に置かれていた、『剣』を腰に差す。
やはりというか、この方が具合が良い。
気楽に過ごせるのは素晴らしいが、やはり丸腰では不安である。
全盛の力を失っているとはいえ、その握り心地と重さは変わらない。
勇者「……うん、やっぱり落ち着くな」
一人ごち、扉を開けて食堂へ向かう。
移動中
勇者「なんか、視線を感じるよなぁ」
堕女神「お腰の物のせいでは?」
勇者「ん、これ?」
堕女神「はい。王座に就かれてから、すぐに宝物庫へと放り込まれましたね」
勇者「……ひょっとして、怖がられてるのかな?」
堕女神「……お似合いですよ、凛々しくていらっしゃいます」
勇者「……ん、何か言ったか」
堕女神「…い、いえ。何も」
食後
勇者「……さて、行くか」
堕女神「馬車のご用意は済ませております。それでは参りましょう」
勇者「おい、お前も来るのか?」
堕女神「はい、陛下。僭越ではありますが、身辺警護も兼ねておりますので」
勇者「それは心強い」
堕女神「お望みでしたら、護衛として堕天使の兵士を10人ほど連れて行けますが。元「座天使」級の者もいます」
勇者「物々しいのは嫌だな」
堕女神「かしこまりました」
勇者「……今さらだけど、もしかしてお前も相当強かったりするのか?」
堕女神「自分で言うのも妙ですが、はい」
勇者「意外というか、いや……当然、なのか?」
堕女神「堕ちても女神ですから」
勇者「…頼もしすぎるだろ」
堕女神「それでは、こちらの馬車へ」
勇者「意外とデカいんだな」
堕女神「国王の馬車ですから当然です」
勇者「……なるほどねぇ。お、中も広いな」
堕女神「お席に着かれたなら、すぐに出ましょう。時間も押しております」
勇者「はいよ。頼む」
馬車に揺られながら、外を見る。
未だ城下から出ていない。
通りには活気があり、淫魔も、堕天使も、褐色の肌を持つ異国の夢魔も、皆、笑顔を浮かべている。
魔王のいない世界があったとしたら。
強大な敵のいない世界があったとしたら。
どの街も、此処のように平和で、穏やかでいられるのだろうか。
勇者は、そうではない事を知っていた。
魔王が台頭する前には、勇者の育った国と、隣国との間で戦争を行っていた。
たくさんの兵士が死に、たくさんの妻が路頭に迷い、たくさんの子が泣く事になった。
魔王が世界を征服せんと活動し始めた時ですら、その二国はまるで手を取り合わなかった。
旅の途中で訪れたが、仲間の戦士には侮蔑の言葉を吐かれ、僧侶には下賎な目を向けられ、
勇者にすらも辛く当たられた。
それでも戦争を止めたのは、魔王の影響による。
真の危機が現れたから、二国は戦争をやめられた。
真の危機が現れても、二国は歩み寄る事はなかった。
勇者「………ハァ」
堕女神「…いかがなさいました?」
勇者「別に」
堕女神「それなら良いのですが。…今朝方、報せが入りました」
勇者「オークの?」
堕女神「はい。どうも内部分裂があったようで。新しい族長が古い族長と一派を追い出したそうです」
勇者「ふぅん」
堕女神「結果、新しい住処を求めた旧族長達が、南方の砦付近で活発に行動しているとの事」
勇者「掃いて捨てるほどある話だなぁ」
堕女神「……隣国からも、同様の報告が上がっているそうです」
勇者「……何?」
堕女神「ですから、オーク達が隣国にも向かっているようです」
勇者「確かか?」
堕女神「はい。飢饉で弱っている隣国にとって、『泣きっ面に蜂』ですね」
勇者「………」
堕女神「…陛下、何をお考えに?」
勇者「…………もし何かあったとして」
堕女神「はい?」
勇者「何かあったとして、お前の力で隣国に転移する事はできるか?」
堕女神「……可能か否か、というのでしたら可能です」
勇者「そうか……」
堕女神「…恐らく、今の国力では、隣国にオークの侵攻を止める術はないでしょうね」
勇者「そんなに多いのか?」
堕女神「数もそうですが、隣国の淫魔達は寿命も短く魔力も少ない。繁殖のペースも遅いのです」
勇者「……そういえば、どうやって増えるんだ?サキュバス(女性)だけの国だろ?」
堕女神「人界の一種の生物と同じで、男性としての機能を持つ事も可能なのです。淫魔だけの特性ですが」
勇者「つまり、あれか?サキュバス同士で?」
堕女神「はい」
勇者「……ゴホン。あー、話を戻そうか」
勇者「ともかく、隣国は力に乏しいと」
堕女神「そういう事です。一度オークに攻め入られれば首都まで一直線。後は……」
勇者「なるほど」
堕女神「陛下、どうかお聞きください。……くれぐれも、軽率な行動をなさらぬように」
勇者「ああ。考えるさ」
堕女神「オークに攻めさせ、しかる後に討伐、植民地に。小国とはいえ淫魔達の国を相手にするより、遥かに勝算が」
勇者「…リクツだな」
堕女神「この国は、あなたにかかっているのです。国民の生活を豊かにする義務が、陛下にはあります」
勇者「その割に、ずいぶん妙な顔をするんだな」
堕女神「…………」
308 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) - 2011/11/22 04:14:33.16 oM8tOpElo 128/424>小国とはいえ
この書き方だと戦闘力は淫魔>オークだから微妙に矛盾感じるが
国内感情とかそういうことか?
309 : ◆1UOAiS.xYWtC - 2011/11/22 04:53:43.54 UECKezzXo 129/424>>308
済まない、色々ミスした
オークとやり合わせる→隣国が勝てば、消耗した所を征服
オークが勝てば、そのオークを倒して恩を売って吸収
等と補完してほしい
すまない
310 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) - 2011/11/22 04:56:43.81 oM8tOpElo 130/424どんまい
小国とはいえ、淫魔たちの国を「普通に」相手にするより・・・って読み替えとくぜ
勇者「捨てきれないのも、分かってるよ。どんな身になってもな」
堕女神「………そう言っていただけると」
勇者「…それにしても面白くない話題だな」
堕女神「ええ、全くです」
勇者「何か明るい話は無いのか?」
堕女神「そう言われましても」
勇者「まだ長いんだろ?……一つぐらいあるだろ」
堕女神「……明るいというか、陛下が喜ぶ事が一つだけ」
勇者「何だ?」
堕女神「隣国の法の事です」
勇者「……それで?」
堕女神「隣国では、15歳から性交渉可能です」
勇者「は?」
堕女神「女王は15歳です。問題ありません」
勇者「どっかから怒られそうだな、それ」
堕女神「魔界の、それも一国の法ですから問題はありません」
勇者「サラっと魔界っつったな」
堕女神「今さら何をおっしゃいますか」
勇者「ともかく、何で俺がそれで喜ぶんだ」
堕女神「この前、隣女王の胸を鷲掴みにしたでしょう」
勇者「見てたの?」
堕女神「いえ。何です、本当にやったんですか?」
勇者「カマかけに聞こえないからやめてくれ」
堕女神「はい、控えます」
勇者「……お前は、全く」
堕女神「それはそうと、話している間に宿につきましたよ」
勇者「意外と早かったな」
堕女神「陛下、お降りください。お足元にお気をつけて」
勇者「……OK、わかった。とりあえず言いたい事がある」
堕女神「はい、何でしょうか」
勇者「…何で、俺とお前が同じ部屋なんだ?」
堕女神「ご不満はもっともです。しかし、陛下をお守りするためなのでどうか」
勇者「いやいや、ご不満とかじゃないけどさ」
堕女神「……それでは、何が?」
勇者「見たところ、ベッドが一つしかないんだけど」
堕女神「はい」
勇者「はいじゃなくて、なんで一つしかないんだよ」
堕女神「淫魔の国では、普通は部屋にベッドは一つしかありません。しかし、大きさは十分だと思われますが」
勇者「……ふとしたカルチャーショックってあるよな」
堕女神「食事になさいますか?宿の者に準備は任せております」
勇者「……そうか。しかし、随分と安っぽい場所だな」
堕女神「ここも悪くしたものではありませんよ。これでも、10634年続く、伝統ある宿屋ですから」
勇者「桁がすごいな、おい」
堕女神「特に、サキュバス達には好評ですよ。料理も酒も美味ですし、何より女将の夜伽の腕前と言ったら」
勇者「うーん、さすが淫魔の国」
堕女神「……さて、日も落ちましたし、食事へ」
勇者「わかった。……お前も一緒に?」
堕女神「どうか、同じ食卓につく無礼をお許し下さい。毒見の為でもあります」
勇者「いや、気にしないけど」
夕食中
勇者「………なかなかイケるな」
堕女神「そうですね。特にこのスープなど。まるで湯のように透明、それでいて滋養が溶け込んだ味わい」
勇者「堕女神の料理にはかなわないけどね」
堕女神「………………」
勇者「照れるなよ」
堕女神「照れてません」
勇者「実は結構可愛いよな」
堕女神「変な事を言わないでください」
勇者「いや、だって口の端がニヤけてるし」
堕女神「……!」
勇者「嘘だけど」
堕女神「からかうのはどうか、お止め下さい」
勇者「…そういえば、他の客はいないのか?」
堕女神「はい。陛下がお泊まりになるので、貸切にさせていただきました」
勇者「まぁ、当然の話かもね」
堕女神「普段は大勢の客で賑わっているのですが」
勇者「ちょっと悪い気もするな」
堕女神「一日ぐらい、大目に見てくれるでしょう」
勇者「………」
堕女神「…何ですか?」
勇者「いや。女神でも腹は減るんだなって」
堕女神「意外ですか?」
勇者「ちょっとだけ」
堕女神「用足しにも行きますし、手淫だってしますよ」
勇者「そこまでは訊いてない」
食後
勇者「…喰ってすぐ横になるのは、何故こんなに気分がいいんだろうな」
堕女神「いつもそうなさっているじゃありませんか」
勇者「そうなのか」
堕女神「はい。食事を済ませたらすぐ『寝て』いました」
勇者「アクセントの置き方で把握した」
堕女神「食後の運動と称しておりましたね」
勇者「ああ、なるほど。……まだ、眠らないのか?」
堕女神「…少し、片付けておきたい仕事が」
勇者「いつも助かるよ」
堕女神「ですから、どうかお構いなく、お先にお休みください」
勇者「……少し、外の風に当たってくる」
堕女神「…それでは、私もご一緒に」
勇者「いや、大丈夫だって」
堕女神「万が一にでも何かあれば、私の責任です」
勇者「それを言われると弱いな」
堕女神「では、不肖ながらご一緒させていただきます」
勇者「……一応、剣は持っていくかな」
堕女神「ええ、それがよろしいかと」
勇者「…外は意外と寒いな」
堕女神「あまり長居されるとお体に障ります」
勇者「……もうちょっとこっちに来い」
堕女神「?」
勇者「……」ギュッ
堕女神「…陛下、何を?」
勇者「やっぱりお前の手は、暖かいな」
堕女神「そうでしょうか?」
勇者「うん」
堕女神「……一応、『愛を司る女神』でしたから」
勇者「…声が硬いな」
堕女神「……陛下が仰るのなら、そうなのでしょうね」
勇者「なんでだ?」
堕女神「分かりません。分かりませんけれど……」
勇者「んー?」
堕女神「……何故か、陛下といると……」
勇者「何?」
堕女神「な、何でもありません…」
勇者「……そういえば、お前はまだだったな」グイッ
堕女神「へ、陛下……何を?」
引き寄せられ、こちらを向いた堕女神の唇へ、唇を寄せていく。
驚いた表情が、少しずつ近づいていき―――
堕女神「…ん、ちゅ……っは……な、何……んぅっ……!」
冷静な彼女らしからぬ、戸惑いを孕んだ抗議の声が上がる。
闇と血の色を映した瞳がにわかに潤み、心臓が高鳴っていくのを感じた。
口付けに際し、感じたのは添寝役のサキュバス達と同じ。
暖かさ、優しさ、そして、焦がれるような情念。
唇を起点に意識と脈拍を全て共有しているかのような。
唇を合わせる、それだけの所作から相手の全てを注ぎ込まれるような。
未だ、唇を合わせたままだ。
舌を差し入れて口内を陵辱する事もなく、互いの唾液を味わう事もなく、
人界で恋焦がれる若き恋人たちのように、唇の柔らかさを確かめあうのみ。
にも関わらず、軽く万年を生きる堕ちた女神の心は、容易くも支配されてしまった。
口付けは、こんなにも優しく、心を埋め尽くすものだったのか。
勇者「……っ。お前、なんで……?」
堕女神「え……?」
勇者「涙」
唇を離し、銀の糸を引きながら彼が問う。
闇の瞳からとめどなく流れる、熱い何か。
頬を伝う感触で初めてそれに気付き、掌で拭う。
その所作は平素の彼女からは考えられないほど、初々しく、そして洗練されていなかった。
勇者「……部屋、戻ろうか」
堕女神「…………はい」
二人が、宿屋へと戻り、部屋へと足を急がせる。
木製の床がぎぃ、と音を立てた。
部屋に入ってすぐ、繋いだままだった手を放す。
彼女が声を上げる間もなく、膝裏と背中に手を回し、横抱きの姿勢でベッドへと運ぶ。
顔がぐんと近づき、頬に赤みを差させながら、従う他なかった。
勇者「……いい、のか?」
堕女神「……逆らう事は、できませんので」
勇者「湿っぽいな」
堕女神「……?」
勇者「………何か、して欲しい事は?」
堕女神「…、せ……」
勇者「何だ?」
堕女神「…せ、接吻を……。……駄目、でしょうか」
ベッドに丁寧に、堕ちた女神の体を下ろす。
ぎしり、と音を立て、彼女の身体が横たえられる。
間髪いれず、勇者の身体がのしかかり、唇を奪う。
堕女神「は、ふ……う、うぅん……!」
唇を貪られながら、酔う。
背筋を刺激し続ける快感に身をくねらせ、唇から伝わる、『温もり』に。
鼻の芯がつん、と突っ張り、涙腺を刺激して落涙を催す。
彼女の両手が勇者の腰に回され、さらに激しく唇の感触を求める。
繰り返すが、未だ、ついばむかのような軽いキスの段階だ。
激しく求め合う段階ではなく、体温を確かめ合うかのように。
勇者「…っはぁ。お前……もしかして……キス魔、か」
言葉を受け、彼女は身を大きく震わせる。
漆黒のドレスと下着を、さらに黒く滲ませる生理現象。
まるでサキュバスのように、自らを艶めかしく彩る性癖に気付かれまいと。
勇者「伝わるんだよ。……さっきからな」
高鳴る心拍を抑えながら、彼女は、圧し掛かる『王』を見据えた。
堕女神「……い、え……そんな、事……んっ……!」
再び、唇を奪いながら、彼女の身を包む、漆黒のドレスに手をかける。
胸元を広げるように脱がせれば、重力に逆らうかのような乳房がまろび出た。
それは――サキュバス達を凌駕する質量を以って、勇者の目を奪う。
堕女神「っ……!どうか……見ないで、くださいませ……」
勇者「……それは、無理だな」
白い肌、立派なバストに、少し沈んだ乳頭。
大きさは―――淫魔の国に迷い込んで、それでもなお頂点だ。
勇者「さすが、女神だな?」
堕女神「…そんな、事……!」
抗議の声を上げる暇もなく、乳房に手の感触を感じる。
乱暴ではない。
まるで、恋人同士がそうするように、優しく揉みしだかれる。
乳腺をゆっくりと揉み解すかのように、少しずつ、手の感触と体温が滲んでいく。
同時に感じた唇の感触が、彼女の心を解かす。
堕女神「…ひ、ゃ……!」
唇を割り、舌が進入してくる。
歯茎をなぞり、つるつるとした前歯を弄び、少しずつ、口内へと侵入してくる。
彼女も気付いてない内に下着がしとどに潤い、いやらしい『雌』の匂いを放つ。
勇者「……やっぱり、お前……」
堕女神「……っ…知りませんッ……!こんな……はしたない……」
勇者「…キス、好きなんだよな?」
三度、堕女神の唇を奪う。
いや、――奪われた、という方が正しい。
彼女の方から引き寄せ、そして勇者の唇を求めたのだ。
子供のように唇に吸い付き、舌先で割れ目をなぞり、その手は全く緩まない。
涙すら浮かべて、まるで赤子が乳房を求めるかのごとく、唇を求める。
閉じられた瞼から涙が流れ、飢えているかのように。
勇者「っ……ちょ……待……!」
堕女神「ふんっ……ん、くちゅ……!もっ……と……」
今度は、彼女の舌先が、勇者の唇を割る。
甘い蜜のような香りとともに侵入してきたそれは、勇者の口を激しく蹂躙した。
前歯を嘗め尽くし、舌先を絡め合い、歯の裏側までも。
その間も彼女の手は緩まず、ひたすら、ただひたすらに唇を、『体温』を求める。
堕女神「へ、い……か……」
勇者「ん?」
堕女神「……もっと……抱き締めて……下さい、、ませ……」
勇者「……分かったよ」
勇者の両手が彼女の肩に回される。
肌を密着させながら、外聞もなく甘えた声に従い、強く、強く抱き締める。
堕女神「……っ!」
舌先を激しく吸われながら、堕女神は悶える。
長い――いや、『永い』時間の中で、これほどまで求められた事はない。
永遠に唇を吸いあいたいと思いながら、両手に力が篭る。
下腹部に押し付けられた硬いものにも意識を凝らし、それでいて、『王』との接吻に全霊を傾ける。
堕女神「んっ……う、ん……んぅぅ……!」
激しく求め合うキスの最中、堕女神は遂に達する。
上等な下着を激しく濡らし、肉感的な身体を揺らし。
唇を吸う、その単純な動作だけで。
勇者「……凄いな、お前は」
堕女神「ッ…は、うぅ……!」
勇者「口付けだけで、こんなに乱れるなんてな。……淫らな奴だな。いやらしい」
堕女神「っはあぁ……!ち、違い…ます……!」
勇者「どう違うんだ?……接吻だけでこんなに感じて。……まだ、足りないか?」
堕女神「……そん、な……」
勇者「………引っ込みがつかない。お前も、手伝ってくれよ」
そう言って、勇者は――今にもはち切れそうな、自らの欲望を、彼女の胸元に突きつけた。
口元に運ばれた、昂ぶりきった肉茎。
その一見するとグロテスクな逸物を見ると、心臓が高鳴った。
頬には薄紅の色が差し、揺らぐ視界と激しく脈動する心臓が、判断力を奪っていく。
勇者「……どうした?」
堕女神「…それで、は……」
おずおずと伸ばされた、白魚のような指先が怒張を優しく包む。
彼女の手は、とても優しかった。
まるで絵画に写し取られた、手を差しのべる聖人の肖像かのように。
今行われている事を見ても、それでもただ、優しく美しい。
少しの沈黙の後、ついに、怒張を…一切の遠慮会釈無く、根元まで呑み込む。
口内には唾液が溜められていて、ずるり、とはしたない音とともにこぼれ、シーツを濡らした。
勇者「うっ……!やっぱ……り…凄いな……」
ゆらめくランプの灯に照らされ、影が映し出される。
影絵のように重なり合う二人の姿が、状況と相まって、更に彼女を昂ぶらせていく。
ややあって、怒張から口を離す。
唾液にまみれた肉の茎がぬらぬらと光り、糸を引きながら女神の唇から離れた。
勇者「ん……?」
その感触に、一体何が当てはまるのか分からなかった。
柔らかく、吸い付くような肉の壁に飲み込まれているようだ。
暖かく、それでいて確かな震動が肉茎を通して伝わる。
堕女神「……どう、でしょうか?」
若干躊躇うような声色で訊ねられ、ようやく彼は、その感触を把握した。
豊かで張りのある乳肉に挟まれ、しごかれているのだ。
二つの果実に両手を添え、揉みしだくように肉棒を擦り上げるたびに彼女の口からも息が漏れ出す。
勇者「お前……どこ…で、こんな……」
堕女神「……今、思い……つき、ました」
手馴れているようではない。
探り探りやっているかのように、力の加減を調節しているかのように、不規則な動きをしている。
不意に指先が乳首を捉えてしまい、身を強張らせながら声を抑えているのもそうだ。
勇者「意外と……いやらしい奴だな、お前」
堕女神「そんな事……ありません」
その間にも双丘が絶えず形を変えながら、勇者の怒張を挟み込み、扱き上げる。
順応してきたのか、不規則だった動きに秩序が見え始めた。
女神の唾液、そしてじんわりと滲み出るカウパーが混じり合い、ぐちゅぐちゅと湿った音を立てる。
柔肉を通してかすかに伝わるのは、早鐘のように打つ鼓動、そして息遣い。
胎内に回帰したかのようにすら感じる、懐かしい感覚。
女神の母胎の中で優しく育まれるかのような、快楽とはまた違う、それでいて確かな「安堵感」
勇者「……くっ……」
堕女神「…いい、ですよ。陛下。……いつでも、達して下さいませ」
勇者「ぐぅ……!ま、だ……だ……」
優しい言葉と、今も尚感じ続ける天上の快楽に、達してしまいそうになる。
何とか堪えようと下腹部に力を込める、その時。
勇者「ふ、っぅ……!?」
亀頭を通して、甘く痺れるような信号が全身へとめぐらされる。
乳房から三分の一ほど露出した先端に、彼女は口付けをしていた。
胸を使って肉棒を圧迫するように、包み込むかのように絶えず刺激し、
露出した部分に彼女は口を使って、小鳥が啄ばむかのように軽いキスを繰り返す。
勇者「…やば、い……!」
冷たい針を腰椎に突き刺されるような、薄ら寒さを覚えるほどの快楽を受け取り、刹那。
堕女神「んぐっ……!?ふ……ん、ん……!」
発作的に、勇者は体を前に倒した拍子に彼女の頭を抱え込んでしまう。
自然と自らの肉棒を彼女の口に押し込め、喉深くまで突き入れてしまう形になった。
不意に喉の奥まで咥えさせられ、さしもの彼女も息苦しさに喘ぐ。
唇に肉棒の波打つのを感じた時、口内を生臭く粘性の高い液体が満たす。
なんとか呼吸を確保しようと、飲み込み始める。
一回、また一回と喉に絡みつく精液を飲み下すも、ペースが追いつかない。
呼吸を遮断され、口内には今なお脈打つ怒張。
意識が飛びかけるが、今できるのは、吐き出された精を飲み込む事だけ。
直後、快楽に酔っていた勇者が、彼女を解放する。
抜け落ちた拍子に残りが吐き出され、彼女の乳房を彩る。
勇者「…す、すまない!大丈夫か?」
声をかけるも、彼女の耳には入らない。
口元を零れ落ちた精液が伝い、酸素を求め、激しく咳き込む。
慌てて息を吸ったために、気管にも精液が入ったようだ。
喉から息を漏らしながら、気管に入ったそれを追い出し、再び酸素を取り込もうとする姿は、
堕したとはいえ、女神の姿ではない。
弱々しく、儚く、簡単に壊れてしまいそうな「女」だった。
堕女神「へ……か……」
荒い呼吸とともに紡がれた言葉。
その顔は恨みがましくもなく、まるで……許しを請うかのような。
堕女神「……申し、訳……ありませ……全て……受けき……」
彼女は、謝っていた。
吐き出された精を全て受け止められなかった事。
生娘のように咽返り、逆に吐き出してしまった事。
そして冷静になった頭が、先刻の、分を超えた抱擁を求めてしまった事を悔いる。
勇者「……いいんだ」
堕女神「……っ」
右頬に勇者の手が差しのべられる。
いかなる罰を受けるのかと身を震わせてしまうのは、反射だろうか。
勇者「何故、怯える?」
堕女神「………」
勇者「……『俺』のせいか」
彼女に刻まれた、痛みの記憶。
幾度と無く痛めつけられ、殺されかけた忌まわしい記憶。
影を落としているのは、それか。
彼女は、勇者の目を見た。
憎しみをぶつけてくるような、どす黒く燃える眼差しではない。
冷酷で、温度を感じない眼差しでもない。
その目は、勇者が旅の途中、助けを求める人に向けてきた目。
一度拒絶されても、その奥に秘めた悲鳴を見透かすような。
魔物の惨禍を訴えてくる村人へ向けたような、優しく、それでいて力強い眼光。
堕女神「……陛下」
勇者「ん?」
堕女神「………私を……許して下さるのですか?」
勇者「許すも何も、酷い事をしてしまったのは俺だろう?……許してくれ」
堕女神「初めて、ですね」
勇者「何だ」
堕女神「……初めて、私をそのような目で、まっすぐに見てくださいました」
勇者「……そうか」
堕女神のしなやかな指先が、勇者の肩に回される。
勇者もまた、彼女を抱き起こすように腕を回す。
何度目かの、軽い口付け。
口内からは精液の臭いなど既に感じず、逆に旅先で訪れた花畑の情景が脳裏に過ぎる。
十秒、二十秒。
いや何分もその姿のまま、唇を奪い、奪われ、そしてきつく抱き締めあう。
ランプの油が切れ、室内が闇に包まれても、水音高く、求め合う。
勇者「……いい、か?」
堕女神「…………はい…どうか……きて、くださいませ」
衣擦れの音が、まず上に被さる勇者から。
次いで、下で身を任せる、堕女神から。
勇者が暗闇の中で、膨れ上がったモノを手探りし。
きちり、と音を立て――ゆっくりと、女神の蜜壷へと呑み込まれていった。
悩ましく漏れる吐息が、暗闇に響く。
その後は、勇者に任せるように肌と肌が密着する音が、規則的に続く。
五日目
安っぽいベッドの上で目覚める。
城の素晴らしい寝具になれた身には、早くも宿屋のそれは不足に感じた。
光が注ぐ室内に目を凝らすと、隣には、シーツに包まって眠る裸身の堕女神。
いつも隙なくこなす彼女の寝顔など、そうそう見られるものでもない。
勇者「……おい、起きろよ」
堕女神「……ん」
勇者「起きろって。……昨夜はあんなに激しかったのにな」
堕女神「……!!」
囁かれ、耳元までを赤く染めながら枕に顔を埋める。
昨日までの佇まいがまるで嘘かのように、分かりやすく「羞恥」に染まっていた。
勇者「……すごかったよなぁ。涎垂らしながら喘いでたもんな」
堕女神「……いいから……服を着て下さい!」
勇者「はいはい。……なぁ、『目覚めのキス』は要らない?」
堕女神「っ……。は、早く服を……」
勇者「…今、お前迷ったな?ん?」
堕女神「……さて、それでは朝食を召し上がったら、すぐに発ちましょう」
勇者「すげー切り替えの早さ」
堕女神「当然です」
勇者「昨日なんて、両手両足で絡み付きながら『中に……子胤をくださいませ』って懇願するように」
堕女神「…………」
勇者「……目覚めのキス、する?」
堕女神「……」コクッ
勇者「(冗談のつもりだったんだが)」
堕女神「……む、ん……ぷちゅ……くっ……ふぅ……!///」
朝食中
堕女神「それはそうと、陛下」
勇者「何だ、キス魔」
堕女神「………」
勇者「悪かった。話せ」
堕女神「……はい。オークに動きがあるとすれば、恐らく今日明日中に」
勇者「早いなぁ」
堕女神「それほど、オークの群生地は近くにあったという事です。彼らとて、流石に我が国は攻めないと思いますが」
勇者「女神に堕天使、サキュバスから女怪まで取り揃えてるしなぁ」
堕女神「旧族長の一派は以前、『アラクネ』の集落を襲って返り討ちにあっていますから、考えにくいですね」
勇者「女日照りが続くと、本当に見境なくなるのな」
勇者「……しかし、こういうとアレだけど隣国ってそんな弱いのか?」
堕女神「はい」
勇者「ストレートだな」
堕女神「事実は事実です。寿命は短く、魔力も少ない。……そして何より、『幼形成熟』の特性があるのです」
勇者「……あー、はい?」
堕女神「つまりです。隣国の女王をご覧になりましたね?」
勇者「ああ。子供みたいだったな」
堕女神「あれ以上成長しません」
勇者「俺をからかってんのか?」
堕女神「いえ、陛下。隣国の淫魔は、幼い姿のまま歳を取るのです。人間のような老いもなく」
勇者「……はー」
堕女神「成長が止まる年齢に個人差はありますが」
勇者「……それでもやっぱり、低級なオークすら倒せないほど弱いってのは考えづらいぞ」
堕女神「私も驚きました」
勇者「……………」
堕女神「どうされました?」
勇者「非常にいけない絵面が思い浮かんだ」
堕女神「………ああ、なるほど」
勇者「納得するなよ」
堕女神「大丈夫です」
勇者「何が」
堕女神「大丈夫です、ぬかりありません」
勇者「だから、何が?」
堕女神「いえ、何でも。お気になさらず」
勇者「追求はやめとこうか」
堕女神「恐れ入ります」
勇者「さて、そろそろ行こうか」
堕女神「はい、陛下」
勇者「ところで、朝から思ってたけど」
堕女神「何でしょうか」
勇者「ことあるごとに唇を気にしてるな」
堕女神「……気のせいかと」
勇者「いや、だって以前はそんなクセ…」
堕女神「陛下、時間が押しております。早く参りましょう」
到着
勇者「ここが南の砦か。大きいじゃないか」
堕女神「はい」
勇者「……もしかしてここにもローパーがいたりしないだろうな」
堕女神「もちろんいますよ。大型のものが」
勇者「やっぱりかよ」
堕女神「一度に六人までを相手にできるという噂です」
勇者「だから訊いてねぇよ」
堕女神「ここの司令官には話はつけております。城壁からご覧になられますか?」
勇者「ああ、そうしようか」
堕女神「……それでは、こちらへ」
勇者「しかし、ここの奴らはやる気がすごいな」
堕女神「はい。選りすぐりの精鋭を派遣しております。オークの他にも、コボルトや人狼の脅威も捨て置けませんので」
勇者「重要拠点、って訳か」
堕女神「それ故、彼女らは精力に満ちております」
勇者「いや、むしろ持て余してるんじゃねーかな」
堕女神「そうとも言えるでしょうか」
城壁の上
勇者「見晴らしはなかなかいいな」
堕女神「はい。はるか前方の森がオークの群生地。その向こうにはコボルトが」
勇者「込み入ってるな」
堕女神「妙ですね」
勇者「どうした?」
堕女神「……オーク達の気配を感じません」
勇者「詳しく話せ」
堕女神「荒々しく尖った気配がありません。特有の獣臭も。……もしかして」
勇者「もしかして?」
堕女神「……既に、あそこを出発している?」
勇者「詳しく調べられるか?」
堕女神「……少々お待ちを」
直後、堕女神を中心に風が吹き抜けた。
その風がオーク達の森へ届き、木々を波立たせる。
堕女神「分かりました。……これは?オーク達が、皆……一斉に、隣国を目指しているようです」
勇者「……何?内乱ではなかったのか?」
堕女神「内乱は事実の筈ですが……。何でしょう。一塊に隣国へ」
勇者「ここからだと、追いつくのに何時間かかる?」
堕女神「少なく見て、二日。恐らく、既にオーク達の先遣隊は到着している頃合です」
勇者「…俺を、送れるか?」
堕女神「はい。……ですが、ここは……静観……を……」
薄情な、それでいて現実に則した台詞を紡ごうとする。
しかし、喉が続きを紡いでくれない。
締め付けられるような感覚が、心臓から喉から、彼女を襲う。
勇者「……捨てきれない、だろ?」
堕女神「…い、え」
勇者「捨てきれなくて当然なんだよ。……お前は『愛の女神』で、俺は『勇者』だったんだ」
堕女神「…本当に、行くおつもりですか?」
勇者「どうやら、俺はまだ『勇者』だったらしい。……俺を、止めるか?」
堕女神「陛下が、そうお決めになったのなら」
勇者「お前も来るか?」
堕女神「…はい。私は陛下の補佐であり、護衛です」
勇者「素直じゃないな」
堕女神「……陛下。その剣で……本当に、大丈夫なのですか?」
勇者「ああ」
左腰に下がっていた剣を、数cmほど抜き出し、刀身に目を落とす。
その輝きは取り戻され……魔王城を目指していた頃と、遜色ない。
勇者「――大丈夫だ、問題ない」
二時間ほど前に遡る。
飢饉で弱りきった隣国は、オーク達の襲撃を受けていた。
白い石造りの家が立ち並ぶ街を、幼い姿の淫魔が逃げ惑う。
外見にして、下は10歳、上でもせいぜい18歳。
追いすがり、破壊に精を出すのは醜い豚面の怪物達。
知性の欠片もなく、意味ある言葉も解さず、ただただ欲望のままに。
幼い淫魔の一人が、オーク達に捕まる。
細い足首を掴まれ、助けを求めながら、民家の一つに引きずり込まれる。
獣のような蛮声を放つオークが彼女にのしかかり、身を包む簡素な衣を剥ぎ取る。
幼魔A「っ…嫌、嫌ぁ!助けて、誰かぁっ!!」
身に降りかかる事を予期し、助けを求める。
しかし、通りには人はいない。
皆、逃げてしまって……あるいは、逃げ遅れた者達も、同様の処遇となっているのだろう。
何とか這って逃げようとする彼女に、豚のような鳴き声を上げながら、一匹のオークがのしかかる。
尻肉の間に忌まわしく、ぬめる「モノ」を感じる。
もはや、彼女は―――逃れる術など、なかった。
幼魔A「やだっ……やだやだやだぁ!!やめて、やめてよぉ!」
高く、幼い声が虚しく響き渡る。
それでも助けを求め続ける彼女の頭、すぐ横に棍棒が振り下ろされる。
衝撃と土埃に身を竦ませ、抉れた床を凝視する。
逆らえば、殺される。
静かにしゃくり上げながら、オークの機嫌を損ねないように、大人しく振舞う。
人間の見た目にして、12歳ほどだろうか。
彼女が大人しくなったのを見て、オークは口元を歪ませた。
――前戯も何もなく、膨れ上がった欲望を彼女に叩きつけた。
幼魔A「……痛っ……痛いぃ……!」
幼い姿とはいえ、淫魔。
その彼女にしても、濡れてもいない秘所へ、突き込まれるのは苦痛でしかない。
嫌悪感が、彼女の心を蝕む。
自分は、低級なオークに犯されている。
その事実が彼女のプライドを挫き、屈辱感を植えつける。
涙がとめどなく溢れる。
「早く終わって」と願うしか、彼女に道は残されていない。
腰を叩きつけられ、その度に全身がバラバラになりそうな苦痛が襲う。
彼女の屈辱感や痛みを知る由もなく、オークは腰を振り続ける。
類推するに、このオークは酔っているのだ。
魔界の中でも高位の存在である淫魔を、征服している。
自らの欲望の吐け口にして、涙を流して耐える事しかできない。
征服感、という名称を知るはずもないが、ともかく――彼は、酔っている。
幼魔A「んぁっ……うぅ、……ひゃぁっ……」
驚くべき事に、彼女は感じていた。
忌まわしく下賎な怪物に陵辱されながら、甘い声がときおり混じるのだ。
異常な性的興奮が、彼女の体を満たす。
嫌悪感や屈辱が、消えた訳では無い。
消えてはいないが……それが、スパイスとなってしまっている。
いつの間にか、涙は絶えていた。
かわりに、甘やかな吐息と涎を垂らし、自ら腰を振ってさえいる。
幼魔A「い…ぃ……オークの……ちんちん……気持ちいぃ…よぉっ……!」
豚面の獣人に、その言葉が分かるはずもない。
しかし、言いたい事は分かる。
彼女は――自分に、屈した。
一際高く呻き声を上げると同時に、リズムを上げる。
深く突き入れるたびに甘い声が響き、抜くごとに細く息を吸う音が聞こえる。
突くごとにオークを迎え入れるような淫声が木霊し、その度、笑うようにオークは声を上げる。
幼魔A「……こわれ、ちゃう……!ひぃんっ!」
彼女をそうさせたのは、淫魔の本能によるものか。
それとも、命の危険に際しての、脳内麻薬のいたずらか。
オークの身体が震え、精を吐き出さんと硬直する。
瞬間、彼女の小さな尻を掴んでいた手が固まり、親指を彼女の尻の窄まりへとめり込ませた。
幼魔A「ッ……ん、んぅぅぅ……!!」
小さな身体が震え、オークのペニスを締め付ける。
締め付けに堪えるように、太い親指が彼女の尻穴へ深く食い込んでいく。
それすらも快楽として処理し、オークの精液を搾り取るべく、括約筋が稼動する。
青臭く、指で摘まめるほどに濃い精液が、幼い淫魔の膣内を満たす。
全てを吸い取られるかのような感覚に戸惑いながら、それでも腰を打ちつける。
幼魔A「あぁぁ……!あーーーーー!」
身悶えしながら、忌まわしく活きのいい精液を取り込んでいく。
もはや彼女の目は、どこも見ていない。
濁り、快楽に身を震わせる……ただの、『淫魔』。
数秒後、狩猟用の罠のごとくオークの陰茎を締め付けていた秘所が、緩む。
ずるりと抜け落ちた陰茎が、別れを惜しむかのようにつぅっと糸を引く。
幼魔A「…はぁ……!はぁ……!……ダメ……もっとぉ……」
頬を床土で汚しながら、彼女は両手で陰部を広げて見せた。
開かれた無毛の陰部からオークの精液を滴らせ、見せ付けるように。
視覚からの衝撃に今しがた精を放ったばかりのオークの陰茎が盛り上がり、力を取り戻す。
同時に――入り口から、何体かのオークが入ってくる。
手に手に武器を持ち、血糊がこびりついた斧さえも見受けられた。
ああ――私は、彼らを満足させなければ、殺されるのだ。
その恐ろしい未来すらも、もはや、彼女を発情させるための材料でしかない。
小さな尻を振り乱しながら、オーク達を誘う。
プギィ、と声を発し、オーク達は彼女に圧し掛かる。
今しがた犯され、充血した秘所に再び押し付ける者。
だらしなく開き、唾液を引く口腔に押し込む者。
中には、彼女の小さく未発達な胸に、吸い付く者さえいる。
幼魔A「……ひぃ…や、ぁぁぁぁぁぁ!!」
秘所に再び突き込まれ、尻穴を指で弄ばれて。
それでも心臓の高鳴りが抑え切れず、悲鳴にも似た声が漏れた。
直後にペニスが口を埋め尽くし、舌が動き、オークに対し『奉仕』を始めた。
繰り返す。
力は無いとはいえ、彼女は魔界において最高位に近い存在、『淫魔』なのだ。
にも関わらず―――彼女は、オークの欲望を受け止める事に、至上の快楽を感じてしまっている。
隣女王「オークが、我が国に侵入したのですか!?」
側近「はい。すでに、南方の領土は……」
女王の城、玉座の間。
城主である彼女が、信じられないといった面持ちで聞き返す。
側近は、見た目では女王と同い年ほどだろうか。
隣女王「……撃退せねば、我が領内が……!」
側近「お言葉ですが……防衛隊は全て壊滅……今頃は……」
隣女王「…忌まわしいオークめ……!」
既に、南方の防衛軍は壊滅。
形ばかりの防衛軍は、余すところ無く、オークの便器へと変わり果ててしまった。
側近「……どうか、お逃げ下さい。……女王陛下まで穢されては……」
隣女王「……それしか、ないのですか」
直後。
空間が歪み、隣女王の眼前に、隣国の王と、側近たる堕ちた女神の姿が現れる。
隣女王「え…!?」
勇者「……隣国の危機と知り、馳せ参じた」
堕女神「同じく」
信じがたい。
まさか。
勇者「状況をお教え下さい、女王陛下」
隣女王「……領内に、オークが侵入。……城下が……」
勇者「心得ました」
堕女神「あとは、お任せください」
虚空から現れた二人が、跪きながら、静かに。
側近「ムチャです!少なくとも一万匹のオークがいますよ!?……いくら、なんでも……」
勇者「……『俺にまかせろ』」
城下に出れば、そこは既に地獄だった。
幼い姿の淫魔達がオークに犯され、抵抗した者は強引に穢され、更に抵抗するものは、見るも無残な姿に。
勇者「………ああ、思い出したよ」
堕女神「……何ですか」
勇者「…これが、『怒り』だったな」
堕女神「ええ。私も、陛下に影響されたようです」
飛び掛ってきた三体のオークに、剣先が閃く。
頭を割られ、胴を深く薙がれ、そして刃毀れしきった斧ごと胴体を両断され、
瞬きほどの間に三体の獣人が事切れる。
堕女神に目標を定めたオーク達は、突如として胸郭に大穴を開けて倒れた。
その見えない「攻撃」の動作は、ただ彼女が腕を払っただけだ。
勇者「……援軍は?」
堕女神「遠距離念話で、既に。……ですが陛下。今この瞬間は、私達が『援軍』なのでは?」
勇者「違いないな」
幼い淫魔達を犯していたオークが、身の程を知らずに二人に飛び掛る。
切り裂かれ、あるいは一瞬で灰となって退場する。
物陰に隠れ、様子を窺っていたオークに堕女神が指先を向ける。
一陣の風が吹きぬけ、その直後、真っ二つ……いや、賽のように切り裂かれ、無数の肉片へと化した。
勇者「俺がオークどもをやる。……お前は、淫魔達を助けろ」
堕女神「はい。……了解いたしました」
振り下ろされた剣から、雷が次々と落ち、オーク達を葬っていく。
勇者にのみ扱える雷光の剣技が、醜い獣人達を消し炭へと変える。
輝きを取り戻した神剣がオークを切り裂く。
襲ってくる者達に全て過たずカウンターの斬撃を浴びせながら、勇者は城下を往く。
圧倒的すぎる。
オーク達は畏怖さえ覚え、情けなく声を上げて退いていく。
逃げるオーク達を深追いはしない。
『魔王』であれば決して逃がしはしないが、『勇者』は違う。
力量が敵わずに逃げようとする者を追おうとはしない。
『勇者』は、逃げない者としか戦わない。
勇者「……意外と骨のある連中もいるな」
ぴたりと足を止め、剣を構え直す。
周囲に少なく見て、今いるだけで20体のオーク。
更に付近の民家からぞろぞろと現れ、勇者を取り囲む。
もし彼らに言語を発する事ができるのなら、さしずめ、こんな所だろう。
「俺たちの愉しみを邪魔するな」
勇者がオークを蹴散らす中、堕女神は犯されている幼い淫魔達を救出にあたる。
堕女神「………おや?」
違和感。
白濁を浴び、脱力しきった淫魔を抱き起こした時だった。
城下を南方へ向けて進むのは、勇者。
彼の後に付き従い、露払いをしながら淫魔達を助けているのは自分。
しかし城下町のあちらこちらにぽつぽつと、魔力の高鳴りを感じる。
無論、オークに魔術など扱えるはずもない。
誰かが、戦っている?
援軍が到着するにはまだ時間がある。
仮に堕天使の翼でも、こんなに早く辿り着けるわけがない。
索敵し、転移の魔術を使って、それでもオーク達の蛮行を止めるには間に合わなかった。
堕女神「……一体、何が?」
異変に最初に気付いたのは、民家で幼い淫魔を犯していたオークの一団だ。
既に下腹部が膨れるほどの量を注ぎ込まれ、もう一つの穴はだらしなく開いている。
幼魔B「……やぁっ……もっと、もっとぉ……欲しい…の……」
後ろから両足に手をかけて抱え込まれ、結合部分を見せ付けるようにオークに身を任せていた。
何体かのオークが犯し疲れて休んですらいるのに、彼女は自ら腰を振っているように見えた。
刺激に耐え切れなくなったオークが硬直し、ペニスを脈打たせる。
腕に力を入れてしまい、彼女の太腿に指が沈み込み、彼女は痛みに顔を歪めた。
すでに数える事も忘れていた、子宮の奥に熱く注ぎ込まれる感覚。
幼魔B「熱っ……!あ、う……あぁ…」
凄惨な光景に蛮声を上げていたオーク達だが、少しずつその声は止んでいった。
おかしい。
今なお彼女を犯しているオークの射精が、止まらない。
口の端から泡を吹き、全身を尋常ではない勢いでがくがくと震わせ、鳴き声がか細くなっていくのだ。
幼魔B「……はぁ……きもちい……気持ちいいの……」
噴き上げるような、長すぎる射精が終わった瞬間、彼女を犯していたオークが崩れ落ちる。
死んではいない。
ただ、外観がまるで――年老いて、死期を迎えたかのように変わっている。
脂ぎった身体はひび割れ、無数の皺が刻まれ、両目が深く落ち窪み。
彼らは、侮っていた。
確かにこの国の淫魔はか弱く、体も小さい。
だが、それでも……『淫魔』なのだ。
彼らは、軽視していた。
力の無い淫魔だから、弄び、自由にできるのだと。
本質は、男をかどわかし、その精を吸い取って『力』へと変える恐ろしい魔の住人だというのに。
幼魔B「…え……?何……こ…れ……」
彼女も、高鳴るような、全身の血管に行き渡り、今にも溢れてしまいそうな力の流れに気付く。
ぽっこりと膨らんでいた下腹部が縮んでいく。
注がれた精液が溶け込み、さながら栄養として吸収されたかのようだ。
オーク達は本能からか、じりじりと下がり始める。
植え付けられていた高位の魔族への恐怖が、今目覚めた。
仮にミノタウロスやトロールなら、確かに強力ではあるが数十人でかかれば倒せる。
だが、淫魔に代表される『魔族』は、格が違う。
強大な魔力を操り、微笑みさえ浮かべながら指一本触れずに自分達を殺し尽くせる存在。
その存在を、目覚めさせてしまった。
戸口まで後退していたオークが、外から何者かに蹴り込まれ、再び室内へと戻される。
驚愕の表情でそちらを見れば、淫魔でもオークでもない、輝く剣を手にした者。
魔族ではない。体格からして、恐らく『人間』だ。
だが、何故だろう。
何故、こんなにも勝てる気がしないのか。
勇者「逃げるなら、俺は見逃そう」
勇者は、意外なほどにあっさりと剣を下ろした。
勇者「……だが、お前はどうする?黙って帰すのか?」
幼魔B「え?」
勇者「お前はどうしたいんだ?突如襲ってきて女達を犯し、旗色悪しと見るや逃げるこいつらに」
幼魔B「わたしは……」
勇者「強制はしない。選べ。……こいつらを許すのか」
幼魔B「……わたしは……!」
彼女の瞳が紫の光を発する。
直後、一体のオークが紫色の炎に包まれ、断末魔を上げた。
次いで、平手打ちを繰り出すかのように右手を振るう。
円弧を描く中、彼女の小さな腕を、黒い無数の翼が取り巻いた。
腕から無数に出現する魔力の蝙蝠が、その場のオーク全てに喰らいつく。
肉を削ぎ取られ、血液の一滴までも吸い尽くされ、悲痛な絶叫が響き渡った。
勇者「……力の使い方がわかるのか?」
幼魔B「…はい。何でなのか……わかりませんけど」
勇者「そうか。なら、行こう。……『反撃』にな」
幼魔B「は、はい。あの、貴方はいったい……?」
勇者「……通りすがりの『勇者』だ」
堕女神「間違いない。これは……淫魔の……」
無残に文字通り散らばっているオーク達の死骸の中心で、全身に返り血を浴びた堕女神が呟く。
双子の淫魔が抱き合うように怯えている民家の一室。
どうやら、彼女らは未だ、穢されてはいなかったらしい。
寸での所で、助けが間に合ったようだ。
堕女神「なるほど。きっかけが必要でしたか」
街のあちこちで強まっていく魔力は、彼女の国の淫魔に僅かに及ばない程度。
しかし、低級な魔物を撃退するには十分すぎる。
堕女神「……それにしても、不憫な種族というか」
部屋の隅で怯える、双子の淫魔達に近づき、膝をつき、目線を合わせて優しく頭を撫でる。
言葉に交じる哀れみとは裏腹に、その表情は、あまりに優しく。
堕女神「隠れていなさい。すぐに、オーク達は追い出します。……何か?」
双子『あ、あの……』
堕女神「?」
双子『…た、助けてくれて…ありがとう……』
堕女神「……礼なら、我が王に」
素っ気無く言うと、彼女は足早に立ち去っていく。
背中に注がれる、幼い淫魔の、憧憬を孕んだ視線に気付く事もなく。
彼女の瞳が潤み、緋と闇の瞳から頬を伝って何かが毀れた。
緩慢な足取りで家の外に出て、外壁に背を預け、天を仰ぐ。
堕女神「……何故、涙が」
遠くに聞こえる雷撃の音、オークの悲鳴、魔力が炸裂する空気の震動。
それらが意識を引き戻し、再び両足に力を込める。
ここは未だ戦場で、王からの命令はまだ続いている。
思い出し、再びオークの気配を探して歩き出す。
高密度の魔力が結界を形作り、歩みに合わせて付き従う。
堕女神「……捨てきれない、か」
その後、犯し尽くされ、限界点を超えて覚醒した幼い淫魔達の活躍により、オークを撃退する事に成功した。
結果だけを見れば、オークの自滅、の身も蓋もない言葉に終止する。
だが、犠牲者も出ている。
抵抗してしまって殺された者、苛め殺された者、「家族」を守ろうとして死んだ者。
勇者「……間に合ったのか?俺たちは」
堕女神「陛下、気負う事はありません。……全てを救う事など、できないのですから」
勇者「お前、何か変わったな」
堕女神「そうでしょうか?」
勇者「ああ。何か、すっきりして見えるよ」
堕女神「……陛下がそう仰るのなら、そうなのでしょうね」
女王の王宮に、目から精気を失った淫魔達が運び込まれる。
順番に沐浴で身を清められ、粗末な布で体を覆い、未だ泣き濡れている者も。
『覚醒』を遂げたのは、人数にして、多めに見ても30人ほどだろうか。
その境地に達した者は、見れば分かる。
有り体に言えば、面構えが違うのだ。
自らの身にもオークによる陵辱が降りかかったはずなのに、凛とした佇まい。
彼女らの姿は、勇者がいる国の淫魔達とかぶる。
幾人もの男を迎え入れながらも、決して揺らがない魔族の矜持。
それを感じさせる身のこなしを、身に着けている。
勇者「………どういう種族なんだ」
堕女神「恐らく……男の精を吸い取る事で、魔族としての力が覚醒するのでしょうね」
勇者「淫魔は、最初から『淫魔』なんだと思ってた」
堕女神「推測を加えるなら……条件は、『処女を奪われる事』も含まれるかもしれません」
勇者「……とことん不憫というか何というか」
隣女王「…よろしいでしょうか」
勇者「ん?」
隣女王「……この度のお力添え、感謝の言葉もありません」
勇者「気にしなくていい」
隣女王「いえ、そうは参りません。…何か、お礼できる事は?」
勇者「そうだな。それじゃ……」
隣女王「はい」
勇者「彼女を風呂へ。……それと、飯を食わせてくれないか」
隣女王「え?……それだけ、ですか?」
勇者「……それだけ、とは何だ。領土を半分よこせ、と言って欲しかったのか?」
隣女王「…い、いえそんな」
勇者「ともかく、まず彼女を風呂へ」
隣女王「は、はい!」
堕女神が、女王の側近に導かれてその場を去り、浴場へ向かう。
その間も、二人の国主が話を続ける。
勇者「それにしても、随分と運が悪いな。飢饉に襲われ、オークに侵略され」
隣女王「はい。凶事は続くものではありますけれど」
勇者「それにしたって、ちょっと……」
言葉を続けようとすれば、脳髄を何かが駆け抜けた。
それは、一つの単語だ。
すなわち、『魔王』と。
勇者「考えられなくは無い、か」
隣女王「え?」
勇者「いや、別に」
隣女王「……何故、ですか?」
勇者「何が?」
隣女王「何故、我が国を助けてくれるのですか。食料支援も、今回の事も」
勇者「……変な事を訊くね」
隣女王「見返りも用意できないのですよ?こんな……弱々しく痩せた国の甘えた頼みを、何故聞いてくれるのですか?」
勇者「………」
隣女王「どうして……ですか」
その問いに、彼は表情を変えずに答える。
当然かのように、ただ一言だけ。
勇者「……『いのちをだいじに』」
隣女王「それだけの理由……で…?」
勇者「…十分すぎると思うが、隣女王はそうは思わないのか?」
隣女王「………」
勇者「さて、問答は休みにして腹を満たしたいんだが」
隣女王「……大したものもご用意できませんが……こちらへ」
勇者「表情が暗いな」
隣女王「あ、い、いえ……そうでしょうか?」
勇者「…俺の事を信じきれないか?」
隣女王「そんな……滅相も…」
その頃、大浴場では。
堕女神「…………」
居心地が悪い。
未だ正気を取り戻していない者が、王宮の使用人に手伝われて身を清めている。
体を洗いながら涙を流す者。
使用人に指先を触れられただけで声を漏らし、怯える者。
6割ほどの者は立ち直り、無邪気に沐浴しているが、その分乖離感が酷く、妙な気分になる。
その空気もだが、何より。
幼魔C「…お姉ちゃん、大きいねー」
幼魔D「ねぇ、どこから来たの?」
幼魔E「……っていうかお姉ちゃんって、サキュバス?」
幼い姿の淫魔の中に、一人だけ、魅惑的な空気を漂わす大人の姿の堕女神。
目立たないほうが妙な話だ。
堕女神「…離れてくださいますか」
幼魔C「ね、触ってもいい?」
堕女神「…はい?」
幼魔C「ちょっとだけだから。ね?」
堕女神「…え、ええ」
ちゃぷ、と水面が波立ち、幼魔Cの小さな手が伸ばされる。
ぷかりぷかりと浮かぶ豊かな乳房に触れ、その感触を確かめるために。
幼魔D「えー!ずるいよ、私も!」
幼魔E「……私も」
続いて二人の淫魔の手が伸びる。
続け様に水音を立てながら、遠慮なしにこね回され、乳房が形を変える。
その手つきは荒々しく、まさしく子供が玩具を乱暴に扱う、と言う表現が似合う。
堕女神「い、痛っ……ん、ふぅ……」
幼魔C「…あれ?お姉ちゃん」
幼魔D「ねー、もしかしてキモチイイの?」
堕女神「えっ……ちょ……」
不味い。
空気が変わっている。
オークと同じ、侮ってしまった。
彼女らは幼い姿でも、『淫魔』なのだ。
幼魔C「ねーねー、おっぱい吸っちゃおうか」
幼魔D「うん、いいね。……でも、一人余っちゃうね」
幼魔E「……じゃ、私ちゅーしたい」
堕女神「ちょっと、待……ん、むちゅ…………れろ……」
抗議の声を上げる間もなく、立ち上がった淫魔から容赦なく口内を蹂躙される。
唇をゆっくりと押し広げ、粘膜を嘗め尽くされる。
白く美しい歯を舌先でなぞられ、頭を振って逃れようにも、がっしりと頭を押さえられている。
堕女神「んっ……!?ひゃ、ひゃめ……っ……」
一度引っ込められた舌先が、唾液を乗せて再びやって来た。
一瞬で口内に頭の芯を痺れさせるような香りが広がる。
まずい、これは――『淫魔の口付け』だ。
恐らく、彼女はその行動の意味を分かっていない。
自らが唾液を送り込む行為が、一体どういう結果をもたらすのか。
堕女神「…んっ……」
吐き出そうとした拍子に、胸から二つの快感がやってくる。
幼魔C「…あれ?硬くなってきたよ」
幼魔D「ほんとだ。いやらしーね、お姉ちゃん」
幼魔C「ね、今度は噛んであげよっか」
幼魔D「うん。もっと気持ちよくしてあげよ」
小さな前歯が乳首を捉え、こりこりと甘噛む。
その最中にも舌先が顎の中で乳首を捉え続け、背筋を仰け反らせながら耐えようとする。
直接受ける快感に加え、感じるのは背徳。
自分より小さく、弱く、幼い淫魔達に嬲られている現状。
本気で抵抗すれば振り払う事は容易いが、何故かそうはできない。
そうこうしているうちに、飲んでしまった。
全身の神経を昂ぶらせ、認識を狂わせる、禁断の蜜を。
幼魔C「あれ?……お姉ちゃん、どうしたの?」
幼魔D「何したの?」
幼魔E「……わかんない。ちょっと、よだれが出ちゃっただけなんだけど」
三人が一度攻め手を休めているにも関わらず、小刻みに震えている。
肌を撫でる湯の感覚も、昂ぶりきった神経には愛撫と受け取られた。
幼魔C「とりあえず、お湯から出ようよ」
幼魔D「うん、お姉ちゃんも」
口々に言い、堕女神の体を支えながら浴槽を出る。
浴場の床の上に仰向けに横たえられた彼女を淫魔達が取り囲む。
幼魔C「…どうしよっか」
幼魔D「……どうしよう。…へんな気持ち……」
幼魔E「……もっと、遊んじゃおうよ」
くすくすと笑いあう彼女らの声を、
薄ら甘い靄がかかったような意識の中、堕女神は聴いていた。
勇者「OK、分かった。俺が悪かった」
堕女神「…………」
勇者「俺が軽はずみな事を言ったせいでお前が大変な事になってたのは分かった」
堕女神「……………」
勇者「だから、こっちを向いてくれないか」
隣女王「すみません!本当にすみませんでした!こちらから厳しい処置を下しますので、どうか……」
勇者「なぁ、悪かったって。キスしてやるから機嫌直してくれよ」
堕女神「……」ピクッ
勇者「……お、ちょっと反応したな」
隣女王「キッ……!?え、こ、こんな所で…ですか?」
勇者「もっとすごい事をお仲間にされた訳だが」
勇者「……それにしてもだ。恩に着せるつもりはないが、随分な仕打ちじゃないか」
隣女王「誠に申し訳ございません……」
勇者「ある意味オークより魔神より怖ぇーよ、この国の淫魔は」
隣女王「……弁明させていただく訳ではありませんが、あの子達は『幼い』のです」
勇者「…幼さ故の無邪気。そして、無邪気だから恐ろしい、か」
隣女王「…………」
勇者「…ったく。帰るぞ、堕女神」
隣女王「えっ?」
勇者「別に怒ってはいない。ただ、もうオークの脅威は去ったのだから長居は無用だろう」
隣女王「…既に、お部屋を用意したのですが」
勇者「……気持ちはありがたいんだが」
隣女王「お願い申し上げます。どうか、一晩。一晩だけ、せめて心ばかりのおもてなしをさせてくださいまし」
勇者「堕女神、どうする?」
堕女神「……お受けするがよろしいかと」
勇者「意外だな」
堕女神「女王陛下に恥をかかせる訳にもいかないでしょう」
勇者「ん、まぁ……そういう事なら」
隣女王「ありがとうございます。では、お部屋に案内させていただきますね」
勇者「念のため言うが、さっきみたいな事が起こらないようにしてくれよ、堕女神に」
隣女王「はい、無論です」
堕女神「…………」
続き
魔王「世界の半分はやらぬが、淫魔の国をくれてやろう」【後編】


名作だよね