1 : 以下、名... - 2015/12/25 21:35:42.23 1S8pNreW0 1/14



「明日って和ちゃんの誕生日?」

「そうね、それを直接本人に聞くとはいい度胸してるわ」


元スレ
唯「もしかしてだけど」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1451046942/

2 : 以下、名... - 2015/12/25 21:36:04.98 1S8pNreW0 2/14




12月25日 12:00



「確実だと思ってね!」

「間違えようはないけど、もうちょっと方法あったでしょうに……」

「う~ん、そうかなあ……じゃあお詫びとして一番に和ちゃんの誕生日を祝うよ!」

「いいわよそういうの。0時きっかりにメール送るとか、そういうことでしょ?」

「甘いよ……、ショートケーキのいちごぐらい甘いよ、和ちゃん!!」

「はあ」

「それはそうとあの時のいちごを返して和ちゃん!!」

「それいつの話よ! ……高校にいた頃の話じゃない」

「だっていちごはケーキのハートだよ、ソウルだよ、魂だよ!?」

「後ろ二つはどっちも魂よ。っていうかあの日から全然成長してないわね」

「あの日のいちごの怨念は、まだ和ちゃんに憑りついたまま……」

「……そんな恐ろしいものを食べたかったの?」

「ケーキの亡霊になら憑りつかれてもいいかも」

「たとえ唯が憑りつかれたとしても、あまり変わりそうにないわね」

「それどういう意味ー?」

「そのままの意味。ほら、ケーキでしょ。今から買って帰りましょう」

「わーい」

3 : 以下、名... - 2015/12/25 21:36:42.92 1S8pNreW0 3/14




12月25日 14:00



「お邪魔しますっ」

「上着はこっちにかけて。洗面所はあっち」

「……」

「唯?」

「いやあ、これが和ちゃんの新居なんだなあって……」

「まだまだ家具も少ないから殺風景だけれど」

「それも含めて和ちゃんっぽいよ~」

「……ありがとう、というべきなのかしら」

「うふふー、和ちゃんの家に初訪問~」

「なにが嬉しいんだか。ま、あんたの前に澪とか来てくれたけどね」

「えぇ!?」

「あら、聞いてなかったの。そんな驚くこと?」

「ひどいよ和ちゃん……わたしという人がいながら、先に澪ちゃんを誘うなんて……」

「人の誕生日忘れてた口でよく言うわ」

4 : 以下、名... - 2015/12/25 21:37:18.38 1S8pNreW0 4/14




12月25日 16:00



「唯も仕事大変そうね」

「うん。新任だからクラス担任じゃないけど、色々ね~」

「懐かしいわね、学校。さわ子先生も元気かしら」

「結婚できたかなあ」

「唯はどっちだと思う?」

「あ、じゃあさっき買ってきたケーキ半分を賭けてみよっか」

「唯がいいならそれでもいいけど」

「んーと、じゃあね……」

「……」

「あー……」

「……」

「……和ちゃん。わたし、とんでもないことに気づいちゃったよ」

「言ってみなさい」

「これ、賭けになってない」

5 : 以下、名... - 2015/12/25 21:38:09.46 1S8pNreW0 5/14




12月25日 18:00



「確かに誕生日は忘れてたわたしだけど、今日がクリスマスだってことは忘れてないよ!」

「そうね、さすがの唯でもそこまではね」

「だけど肝心のクリスマスプレゼントを家に忘れてきたよ!」

「さすがね」

「だから帰ったら郵送で送るね~」

「なにをプレゼントするつもりでいたの?」

「うん、絶対に邪魔にならないものをって思って」

「えぇ」

「焼き海苔100枚をプレゼント!」

「……」

「これで来るお正月シーズンも大丈夫! お餅の強い味方!」

「唯……」

「和ちゃん……?」

6 : 以下、名... - 2015/12/25 21:38:48.95 1S8pNreW0 6/14


「……わかってるじゃない」

「……うん、和ちゃんならそう言ってくれるって信じてたよ」

「じゃあわたしはマラカス送ってあげる」

「な、なんて地味な嫌がらせ……! というか本当は怒ってるでしょ!?」

「それも毎年よ」

「一年に一個マラカスが増えるお家なんて嫌だよ!!」

「誕生日プレゼントにも送りつけてあげるわ」

「二個に増えた」

「暑中見舞い、寒中見舞い、事あるごとに送ってあげる。覚悟なさい」

「の、和ちゃんが社会に出て凶暴に……」

「ちなみにあっちの部屋の隅を見てもらえるかしら」

「……あ、あれは……マラカス……!?」

「前に澪がこの家に来たって言ったわね。あのときのものよ」

「澪ちゃんが」

「その際のセリフは、これを振ってると落ち着くんだ、だったかしら」

「疲れてるんだね……」

「きっとそうね。たまには唯から会いに行ってあげて」

「うん」

「きっとマラカスをくれるはずよ」

「和ちゃんはどうしてもわたしにマラカスを受け取らせたいの?」

7 : 以下、名... - 2015/12/25 21:39:25.40 1S8pNreW0 7/14




12月25日 20:00



「晩ご飯も食べ終わったし、そろそろケーキタイムだね~」

「ケーキといえば唯、本当によかったの? ショートケーキのほうが食べたかったんじゃないの?」

「うん、でも和ちゃんの誕生日もあるし、和ちゃんの好きなケーキを食べてほしかったから」

「唯……」

「それにわたし、チーズケーキも好きだよ!」

「このケーキ、いちごが乗ってないのよ」

「えっ」

「……よく見てなかったのね」

「えっ?」

「……」

「……えっ?」

「………………」

「……ねえ和ちゃん、この近くのコンビニってどこかな?」

「出たらすぐ右に曲がって、直進すれば見えてくるわ」

「ちょっと行ってくる」

「いってらっしゃい……」

8 : 以下、名... - 2015/12/25 21:40:33.75 1S8pNreW0 8/14




12月25日 20:15



「いちご大福買ってきた!」

「あんたはそれでいいの!?」

9 : 以下、名... - 2015/12/25 21:41:03.75 1S8pNreW0 9/14




12月25日 22:00



「そういえばこの家ってゲームないんだね?」

「昔は唯かわたしの家でよく対戦ゲームをやってたけど、
 今じゃそんな機会もないもの」

「そうだねぇ。わたしもすっかりやらなくなっちゃったよ」

「仕事が忙しくて?」

「うんうん」

「お互い大変な身になっちゃったわね。
 そういえばゲームはゲームでも、テーブルゲームならあるわよ」

「……まーじゃんだ……」

「この前遊びにきた大学の後輩が置いてったわ。
 また来るからそのときこれで遊びましょう、って」

「わたしに負けず劣らずのマイペースな子だね、その人」

「その子大学に入ってすぐになにしてたと思う? 麻雀の役を覚えていたのよ」

「大学生と麻雀を安易に結びつけるのはどうかと思うよっ」

「巻き込まれてわたしもいくつか覚えたわ」

「そんな、あの品行方正な和ちゃんが……」

「なにゲーム一つで人の道外れたみたいな。それに役を二つ三つ覚えただけよ。
 それ以外の流れは全然」

「それなのに後輩は一式を置いてったんだ?」

10 : 以下、名... - 2015/12/25 21:41:44.63 1S8pNreW0 10/14


「いわく、次の機会には一から十まで教えてくれるそうよ」

「なんでその子はそんな熱が入ってるの!?」

「知らないわよ。麻雀に命でも救われたんじゃない?」

「和ちゃんの学校怖い……」

「そうよね、唯には平和で穏やかな生活が似合ってるわ。
 これからも些細なことで怒ったりせず、平穏に生きていきなさい」

「うん、そうだね。些細なことで怒ったりせず……」

「……」

「……そういえば和ちゃん、ケーキのいちご」

「些細なことよ」

「なんでわたしはいちご大福を買って満足してたんだろう」

「些細なことだったのよ」

11 : 以下、名... - 2015/12/25 21:42:29.52 1S8pNreW0 11/14




12月25日 23:58



「あら、電話」

「誰から?」

「例の麻雀に命を救われた女の子」

「殺伐としてるねえ」

「わたしの学校はそんな世紀末じゃないわ」

「その子の周りだけが世紀末なの?」

「多分ね。……はい、和です。久しぶり。えぇ、メリークリスマス」

「……」

「え、明後日? 来るの?
 わたしは、仕事終わったあとでいいならいいけど」

「……」

「まだ家に置いてあるわよ。捨ててもいいなら、すぐにでも捨てるけど?」

「和ちゃ……」

「覚える暇ないわよ、それに覚えてもやる暇もない」

「……」

「……あ、ちょっといいかしら。えぇ、少しだけ外すわ」

「……和ちゃん?」

「唯、もう少しでクリスマスが終わるわ」

「そうだね」

「ずっと一緒にいたくせに、そういえば一度も言ってなかったと思って。
 今日はありがとう、メリークリスマス」

「あ、うん、メリークリスマス!」

「それと……」

「それと……?」

12 : 以下、名... - 2015/12/25 21:43:01.62 1S8pNreW0 12/14




12月26日 0:00



「今日はわたしの誕生日らしいわよ」

「あ……、あっ、えっと、誕生日おめでとう、和ちゃん!!」

「えぇ、ありがとう。その言葉が今年で一番嬉しいわ」

「……う、うん」

「……あ、もしもし。え、今日? そうよ誕生日よ。
 ありがと、でも残念だったわね。一番に祝ったのはあなたじゃないわ」

「……?」

「ふふ、ごめんなさい。今日は家に幼馴染が来てるの。
 ……ありがとう、それじゃおやすみ」

13 : 以下、名... - 2015/12/25 21:43:44.59 1S8pNreW0 13/14




12月26日 0:05



「もしかしてだけど、和ちゃん」

「一番に祝ってくれるって言ったものね?」

「全部お見通しだったんだ……」

「サプライズのつもりだったの? だとしたらヒントを出し過ぎてるわね」

「こんなときにダメだしー!?」

「でもホントに嬉しかったわ。一度は忘れてたとはいってもね」

「さ、些細なことで怒らないでね?」

「そうね。だから唯も、プレゼントをちょっと間違えるような、
 些細なミスにも怒らないでちょうだいね?」

「マラカスを送り付けるつもりだ」

「なんのことかしら」

「じゃあわたしも海苔送り付けるからっ」

「あら、海苔なら普段から使えるし、わたしは大歓迎よ」

「あるぇ~?」

「実用度に差がありすぎたようね」

「わかっていながら和ちゃんはマラカスを送ってくるわけか~……」

「……そうそう、誕生日といえばケーキね。
 今晩食べたのはクリスマスケーキだし、明日の朝に改めてケーキを買いに行きましょう」

「おー」

「唯もついて来てくれるわね?」

「え、いいけど、なんでわたしも?」

「些細なことよ」

「……あ、もしかしてだけど!」

「もちろん。買うのはいちごのショートケーキよ」

「さっすが和ちゃん! わかってる~!」

「ついでにマラカスも買っておきましょう」

「それはもういいよっ!」



 おしまい

14 : 以下、名... - 2015/12/25 21:44:35.36 1S8pNreW0 14/14

メリークリスマス
そしてちょっと早いですが誕生日おめでとうございます

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