1 : 書きため無し、即興で書いていきます - 2015/12/15 16:55:19.10 b/CDElXCo 1/22

「……あ」

「俺は見てはいけないものを見てしまったのか?」

「このことは秘密」

「恥ずかしくて誰にも言えねえよ」

元スレ
「ちょっと通りますよー。ぷっぷー」「……何してんだ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1450166118/

2 : 以下、名... - 2015/12/15 16:57:20.69 b/CDElXCo 2/22

「何でこんなところに?」

「いつも帰ってる道が工事してたんだ」

「そう」

「で、何してたんだ?」

「忘れて」

「夢に出てくるほどインパクトが強くてな」

「……」

「悪かった、ちょっと意地悪しただけだ」

「そう」

「じゃあ、また明日。学校でな」

「うん」

3 : 以下、名... - 2015/12/15 16:59:22.33 b/CDElXCo 3/22

「うーん、うーん」

「通りますよー。ぷっぷー。ぷっぷー」

「くそっ……」







「おはよう」

「目の下にクマ。どうしたの?」

「お前が夢に出てきたんだよ」

「そう」

「ぷっぷーってな」

「……そう」

「すまん、八つ当たりだ」

4 : 以下、名... - 2015/12/15 17:02:24.73 b/CDElXCo 4/22

「なあ、ストレスでも溜まってんのか?」

「なんで?」

「ぷっぷーって」

「別にストレスは溜まってない」

「あれが素か?」

「……知らない」

「そうか、じゃあ俺帰るわ」

「うん。ばいばい」





「ぷっぷー。とおりまーす。危ないですよー」

「やっぱり素じゃねえか」

「何故いるの」

「お前こそ昨日の今日で同じ場所でやってるんじゃねえよ」

「迂闊」

5 : 以下、名... - 2015/12/15 17:04:48.77 b/CDElXCo 5/22

「何か変なものでも見えてるのか?」

「何故?」

「だったら何を避けさせてるんだよ!」

「車でひいたら危ない」

「答えになってねえよ!」

「ごめんなさい」

「いや怒ってるわけじゃ」

「そこ危ないですよ、すみませーん。ぷっぷー。どいてくださーい」

「もう少し我慢できないわけ?」

6 : 以下、名... - 2015/12/15 17:06:41.60 b/CDElXCo 6/22

「とりあえずお前に不思議な趣味があるということは分かった」

「趣味ではない」

「なんとか飲み込もうとしたのに!」

「私は、好きでやっているわけじゃない」

「そうかいそうかい」

「うん」

「じゃあ、程々にするんだぞ」

「またね」

7 : 以下、名... - 2015/12/15 17:09:24.18 b/CDElXCo 7/22

「ぷっぷー。ぷっぷー。とおりますよー」

「よく飽きないな」

「飽きる飽きないではない」

「じゃあなんだというんだ」

「……」

「本当に不思議な奴だよ」

「ありがとう」

「褒めてはいない」

「ショック」

「クラス内では大人しくしてるのに、普段はなんでそんななんだ?」

「分からないから」

「何が?」

「何も」

「俺にも分かるように喋ってくれ……」

「私も分からないだけ」

8 : 以下、名... - 2015/12/15 17:12:21.99 b/CDElXCo 8/22

「なあ、お前さあ」

「何」

「お前、好きな人とかいるの?」

「なんで?」

「お前の事が好きだっていう不思議な奴がいるんだよ。同じクラスの奴なんだけど」

「そう」

「お前その変な趣味治せよ。せっかくモテるのに」

「治したい」

「やめればいいだけじゃん?」

「やめようとは思ってる」

「はあ……?」

「あなたには分からないだけ」

「あっそ。まあ、とりあえず秘密は黙っといてやるから頑張れよ」

「うん」

9 : 以下、名... - 2015/12/15 17:15:31.52 b/CDElXCo 9/22

「で、どうだったの?」

「何が」

「告白」

「うん」

「されたんでしょ?」

「された」

「結果は?」

「断った」

「まじ?」

「うん」

「なんで? あいつめっちゃイケメンだし、性格もいいじゃん」

「どうでもいい」

「あっそ。お前が決めることだもんな」

「うん」

「じゃ、帰るわ。お前も気を付けて帰れよ」

「分かった」






「ぷっぷー、ってな」

10 : 以下、名... - 2015/12/15 17:17:17.87 b/CDElXCo 10/22

「……え?」

「……は?」

「お前、今、え? その年になって、ぷっぷーって。え?」

「見間違いだろ」

「いや、まあ、いいや。うん」

11 : 以下、名... - 2015/12/15 17:21:25.74 b/CDElXCo 11/22

「ぷっぷー、ぷっぷー」

「うわー車がきたああああ」

「「あははははは」」

「もしかして、言ったの?」

「いや、あれは俺が馬鹿にされてるんだ」

「……なんで?」

「ちょっと真似した所を見られちまった」

「そう」





「ぷっぷー。ぷっぷー。通りまーす、道を開けてくださーい」

「……」

「ぷっぷー……なに?」

「いや。その、なんだ」

「……?」

「通行人だよ。危ないからクラクション鳴らしてくれよ。轢かれちまう」

「うん。ぷっぷー、そこの人危ないですよー。どいてくださーい」

「わー、危なかった! ありがとう運転手さん!」

「……」

「なんか言えよ」

12 : 以下、名... - 2015/12/15 17:29:17.76 b/CDElXCo 12/22

「あいつあいつ。いい年してぷっぷーとか言いながら走り回ってたらしいよ」

「完全に頭おかしい人だよね」




「ちょっと泣きそうだ」

「元気を出して」

「女の子連れてドライブデートでちゅかー?」

「そんな車降りてこっちで一緒にドライブなんてどうだい? ぶおんぶおん」

「「あははははは!」」

「……ぷっぷー。危ないですよ。どかないと轢いちゃいます。ぷっぷー」

「え?」「は?」

「おい……いやー、すまんすまん。言えって言ったんだよ。ノリいいだろ? はは」

「だ、だよなー! でもお前まじでつまんねーぞ、そういうの。二度と言わせるんじゃねえぞ」

「そんな奴と一緒に居たら頭おかしくなっちゃうから、こっちにおいで」

「何度も言わせないで。どかないと危ないですよ、早く消えてください。ぷっぷー」

13 : 以下、名... - 2015/12/15 17:34:01.02 b/CDElXCo 13/22

「はあ……お前。何であんなことしたんだ」

「分からない」

「おかげでお前も一緒に頭がおかしい人だと思われてるぞ」

「別に」

「まあ、なんかあったら俺を頼れよな。仲間同士、頑張って卒業しようぜ」

「仲間……」

「おう、仲間だ。もしいじめられたりしたら言えよ?」

「うん」





「ぶるんぶるん!」

「ぷっぷー! あぶねーぞこら!」

「ふぁんふぁんふぁん」

「当事者じゃなけりゃ笑える光景なんだろうな」

「別に、面白くもなんともない」

「俺らはな。あいつらは面白くてたまんねーんだろうよ」

「なんで?」

「さあ、正当化して子供っぽいことできるからかもしれないし。他人を馬鹿にして楽しんでるだけなのかもしれないし」

「そう」

「図書室行こうぜ」

「うん」

14 : 以下、名... - 2015/12/15 17:38:57.84 b/CDElXCo 14/22

「あー、みんなが帰るの待ってたら雨が降って来た」

「今日の天気予報は雨」

「夕方からだったから、傘持ってきてない」

「ある」

「そうか、じゃあな」

「何故?」

「いや、傘あるなら帰れよ」

「あなたは?」

「小降りになった時を狙って帰る」

「風邪をひく」

「そしたら学校も休めて万々歳だな」

「……」

「っと、すまん。俺がいないといざって時に頼れないよな。大丈夫、馬鹿は風邪ひかないから」

「ダメ。一緒に帰る」

「一緒にって、相合傘でもすんのか?」

「うん」

「いや、うん。俺は別にいいんだけどさ、嫌じゃないの?」

「嫌じゃない」

「あ、そう。ほんとに?」

「うん」

「そっかー……。あー、じゃあ、帰るか。途中まででいいから」

「うん」

15 : 以下、名... - 2015/12/15 17:42:13.71 b/CDElXCo 15/22

「……」

「……」

「……あのさ」

「なに?」

「どこに向かってるの、これ」

「私の家」

「いやいやいやいや、いやいや。ダメだって、ね?」

「何がダメなのか分からない」

「いやいろいろダメだって!」

「着いた」

「着いちゃった」

「上がって」

「ほら、親に迷惑掛けちゃうから。急に男が来たりしたら、ほら、いろいろ、ね?」

「親はいない」

「なおさらダメだって! 帰って来た時に俺殺されちゃうよ!」

「帰ってこない。気にしないで上がって」

「……分かった」

16 : 以下、名... - 2015/12/15 17:45:02.35 b/CDElXCo 16/22

「あー、その。一人暮らし?」

「そう」

「なんというか、偉いね」

「そう」

「いつから?」

「覚えていない」

「……お金は?」

「たまにポストに入ってる」

「……あー、その」

「シャワー使って。風邪ひくよ」

17 : 以下、名... - 2015/12/15 17:49:03.48 b/CDElXCo 17/22

「ありがとう。上がってから気付いたんだけど、先に使ってごめんね」

「気にしないで、私はあまり濡れてない」

「そっか、ジャージもごめんね。ゴムとか伸びちゃったら」

「気にしないで」

「うん、じゃあ。待っとけばいいのかな……?」

「上がったらご飯を作る。よかったら食べて行ってほしい」

「あ、じゃあ親に……いや、なんでもない。ゆっくり入ってきてくれ」





「ごめん母さん。友達の家でご飯食べて帰るわ」

「そう。親御さんにちゃんとお礼言っておくのよ」

「……うん。分かった」

19 : 以下、名... - 2015/12/15 18:05:38.05 b/CDElXCo 18/22

「お、上がったか」

「お待たせ」

「で、飯作るんだっけ? 何手伝えばいい?」

「いい、座ってて」

「手伝わせてくれ」

「……そう」





「で、これ皮むき終わったけど。生ごみはここでいい?」

「うん」

「お湯沸騰したぞ」

「うん」

「鶏肉も多分茹で上がったんじゃないか? よく分からないから見てくれ」

「……うん」

「何で泣いてるんだ」

「……分からない」

「たまねぎ、染みたか」

「玉ねぎを使う料理ではない」

「気使ったんだよ」

「そう」





「あー、美味かった。ごちそうさま」

「ありがとう」

「いやいや、礼を言うのはこっちだって! 皿洗うわ。座ってて」

「そう言うわけには」

「こういう時は甘えておけって」

「甘える……うん。分かった」

「よしよし。良い子だ……って、ごめん。なんかつい子ども扱いしちまった」

「……」

「あー、すまん。馴れ馴れしく頭撫でちまって。じゃあ、洗ってくるわ」

「……ぁっ、お父さん……」

「っ! ごめん」

20 : 以下、名... - 2015/12/15 18:10:52.43 b/CDElXCo 19/22

「洗い終わったぞーっと……」

「……うん」

「ごめん。何か辛いこと思い出させたか?」

「分からない」

「俺で良ければ話聞くけど」

「……分からないの」

「何が、分からないんだ?」

「何も、なんにもっ!」

「お父さんって、どんな人なんだ?」

「分かんない」

「お母さんは?」

「……分かんない!」

「俺は何か力になれるか?」

「……あ」

「何?」

「頭を、撫でてほしい」

「お安い御用で」

「……ぅっ、ぐすっ」

「泣け泣け、辛かったな」

「うわあああああん!」

21 : 以下、名... - 2015/12/15 18:17:33.11 b/CDElXCo 20/22

「落ち着いたか?」

「……うん」

「そっか。そりゃ、良かった」

「私ね」

「ん?」

「私、思い出したの」

「何を?」

「お母さんが、死んだ時のこと」

「……辛かったら、言わなくていいんだぞ」

「ううん、聞いて?」

「ああ」

「お母さんね、私のせいで死んじゃったの」

「……」

「それでね、私。私ね」

「ゆっくりでいいから、ね?」

「うん、うん……。私、覚えてるのが、クラクションの音と、必死に車を退かそうとしてる声だったの」

「退かそうとする声?」

「道を開けてくださいって、必死に! でも! それだけしか……覚えてないの」

「そっか……お父さんについては、聞いてもいい?」

「多分、お父さんは愛想を尽かしちゃったんだと思う。お父さんは、小さい時は一緒にいたの」

「……うん」

「でも、お父さん泣きながら、家を出て行っちゃって」

「そっか……」

「ごめんなさい」

22 : 以下、名... - 2015/12/15 18:22:12.55 b/CDElXCo 21/22

「あのさ、もしよかったらなんだけど」

「……何?」

「俺が……お父さんの代わりになることはできないかな?」

「……ううん、ダメだよ」

「あー、ごめん。ちょっと思い付きで言っただけだからさ」

「うん……ごめんなさい。やっぱりお父さんはお父さんで、あなたのことはお父さんだとは思えないから」

「分かってる。ごめん」

「でも、お父さんじゃなくて、一緒に居てほしいなって。そのままで、一緒に居たいなって」

「え?」

「こういうのは、男から言うものだと思ってたんだけど、私から言わせてください」




「こんな子供っぽい私ですが、付き合って下さい!」

23 : 以下、名... - 2015/12/15 18:22:38.24 b/CDElXCo 22/22

終わり

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