「……あ」
「俺は見てはいけないものを見てしまったのか?」
「このことは秘密」
「恥ずかしくて誰にも言えねえよ」
元スレ
「ちょっと通りますよー。ぷっぷー」「……何してんだ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1450166118/
「何でこんなところに?」
「いつも帰ってる道が工事してたんだ」
「そう」
「で、何してたんだ?」
「忘れて」
「夢に出てくるほどインパクトが強くてな」
「……」
「悪かった、ちょっと意地悪しただけだ」
「そう」
「じゃあ、また明日。学校でな」
「うん」
「うーん、うーん」
「通りますよー。ぷっぷー。ぷっぷー」
「くそっ……」
「おはよう」
「目の下にクマ。どうしたの?」
「お前が夢に出てきたんだよ」
「そう」
「ぷっぷーってな」
「……そう」
「すまん、八つ当たりだ」
「なあ、ストレスでも溜まってんのか?」
「なんで?」
「ぷっぷーって」
「別にストレスは溜まってない」
「あれが素か?」
「……知らない」
「そうか、じゃあ俺帰るわ」
「うん。ばいばい」
「ぷっぷー。とおりまーす。危ないですよー」
「やっぱり素じゃねえか」
「何故いるの」
「お前こそ昨日の今日で同じ場所でやってるんじゃねえよ」
「迂闊」
「何か変なものでも見えてるのか?」
「何故?」
「だったら何を避けさせてるんだよ!」
「車でひいたら危ない」
「答えになってねえよ!」
「ごめんなさい」
「いや怒ってるわけじゃ」
「そこ危ないですよ、すみませーん。ぷっぷー。どいてくださーい」
「もう少し我慢できないわけ?」
「とりあえずお前に不思議な趣味があるということは分かった」
「趣味ではない」
「なんとか飲み込もうとしたのに!」
「私は、好きでやっているわけじゃない」
「そうかいそうかい」
「うん」
「じゃあ、程々にするんだぞ」
「またね」
「ぷっぷー。ぷっぷー。とおりますよー」
「よく飽きないな」
「飽きる飽きないではない」
「じゃあなんだというんだ」
「……」
「本当に不思議な奴だよ」
「ありがとう」
「褒めてはいない」
「ショック」
「クラス内では大人しくしてるのに、普段はなんでそんななんだ?」
「分からないから」
「何が?」
「何も」
「俺にも分かるように喋ってくれ……」
「私も分からないだけ」
「なあ、お前さあ」
「何」
「お前、好きな人とかいるの?」
「なんで?」
「お前の事が好きだっていう不思議な奴がいるんだよ。同じクラスの奴なんだけど」
「そう」
「お前その変な趣味治せよ。せっかくモテるのに」
「治したい」
「やめればいいだけじゃん?」
「やめようとは思ってる」
「はあ……?」
「あなたには分からないだけ」
「あっそ。まあ、とりあえず秘密は黙っといてやるから頑張れよ」
「うん」
「で、どうだったの?」
「何が」
「告白」
「うん」
「されたんでしょ?」
「された」
「結果は?」
「断った」
「まじ?」
「うん」
「なんで? あいつめっちゃイケメンだし、性格もいいじゃん」
「どうでもいい」
「あっそ。お前が決めることだもんな」
「うん」
「じゃ、帰るわ。お前も気を付けて帰れよ」
「分かった」
「ぷっぷー、ってな」
「……え?」
「……は?」
「お前、今、え? その年になって、ぷっぷーって。え?」
「見間違いだろ」
「いや、まあ、いいや。うん」
「ぷっぷー、ぷっぷー」
「うわー車がきたああああ」
「「あははははは」」
「もしかして、言ったの?」
「いや、あれは俺が馬鹿にされてるんだ」
「……なんで?」
「ちょっと真似した所を見られちまった」
「そう」
「ぷっぷー。ぷっぷー。通りまーす、道を開けてくださーい」
「……」
「ぷっぷー……なに?」
「いや。その、なんだ」
「……?」
「通行人だよ。危ないからクラクション鳴らしてくれよ。轢かれちまう」
「うん。ぷっぷー、そこの人危ないですよー。どいてくださーい」
「わー、危なかった! ありがとう運転手さん!」
「……」
「なんか言えよ」
「あいつあいつ。いい年してぷっぷーとか言いながら走り回ってたらしいよ」
「完全に頭おかしい人だよね」
「ちょっと泣きそうだ」
「元気を出して」
「女の子連れてドライブデートでちゅかー?」
「そんな車降りてこっちで一緒にドライブなんてどうだい? ぶおんぶおん」
「「あははははは!」」
「……ぷっぷー。危ないですよ。どかないと轢いちゃいます。ぷっぷー」
「え?」「は?」
「おい……いやー、すまんすまん。言えって言ったんだよ。ノリいいだろ? はは」
「だ、だよなー! でもお前まじでつまんねーぞ、そういうの。二度と言わせるんじゃねえぞ」
「そんな奴と一緒に居たら頭おかしくなっちゃうから、こっちにおいで」
「何度も言わせないで。どかないと危ないですよ、早く消えてください。ぷっぷー」
「はあ……お前。何であんなことしたんだ」
「分からない」
「おかげでお前も一緒に頭がおかしい人だと思われてるぞ」
「別に」
「まあ、なんかあったら俺を頼れよな。仲間同士、頑張って卒業しようぜ」
「仲間……」
「おう、仲間だ。もしいじめられたりしたら言えよ?」
「うん」
「ぶるんぶるん!」
「ぷっぷー! あぶねーぞこら!」
「ふぁんふぁんふぁん」
「当事者じゃなけりゃ笑える光景なんだろうな」
「別に、面白くもなんともない」
「俺らはな。あいつらは面白くてたまんねーんだろうよ」
「なんで?」
「さあ、正当化して子供っぽいことできるからかもしれないし。他人を馬鹿にして楽しんでるだけなのかもしれないし」
「そう」
「図書室行こうぜ」
「うん」
「あー、みんなが帰るの待ってたら雨が降って来た」
「今日の天気予報は雨」
「夕方からだったから、傘持ってきてない」
「ある」
「そうか、じゃあな」
「何故?」
「いや、傘あるなら帰れよ」
「あなたは?」
「小降りになった時を狙って帰る」
「風邪をひく」
「そしたら学校も休めて万々歳だな」
「……」
「っと、すまん。俺がいないといざって時に頼れないよな。大丈夫、馬鹿は風邪ひかないから」
「ダメ。一緒に帰る」
「一緒にって、相合傘でもすんのか?」
「うん」
「いや、うん。俺は別にいいんだけどさ、嫌じゃないの?」
「嫌じゃない」
「あ、そう。ほんとに?」
「うん」
「そっかー……。あー、じゃあ、帰るか。途中まででいいから」
「うん」
「……」
「……」
「……あのさ」
「なに?」
「どこに向かってるの、これ」
「私の家」
「いやいやいやいや、いやいや。ダメだって、ね?」
「何がダメなのか分からない」
「いやいろいろダメだって!」
「着いた」
「着いちゃった」
「上がって」
「ほら、親に迷惑掛けちゃうから。急に男が来たりしたら、ほら、いろいろ、ね?」
「親はいない」
「なおさらダメだって! 帰って来た時に俺殺されちゃうよ!」
「帰ってこない。気にしないで上がって」
「……分かった」
「あー、その。一人暮らし?」
「そう」
「なんというか、偉いね」
「そう」
「いつから?」
「覚えていない」
「……お金は?」
「たまにポストに入ってる」
「……あー、その」
「シャワー使って。風邪ひくよ」
「ありがとう。上がってから気付いたんだけど、先に使ってごめんね」
「気にしないで、私はあまり濡れてない」
「そっか、ジャージもごめんね。ゴムとか伸びちゃったら」
「気にしないで」
「うん、じゃあ。待っとけばいいのかな……?」
「上がったらご飯を作る。よかったら食べて行ってほしい」
「あ、じゃあ親に……いや、なんでもない。ゆっくり入ってきてくれ」
「ごめん母さん。友達の家でご飯食べて帰るわ」
「そう。親御さんにちゃんとお礼言っておくのよ」
「……うん。分かった」
「お、上がったか」
「お待たせ」
「で、飯作るんだっけ? 何手伝えばいい?」
「いい、座ってて」
「手伝わせてくれ」
「……そう」
「で、これ皮むき終わったけど。生ごみはここでいい?」
「うん」
「お湯沸騰したぞ」
「うん」
「鶏肉も多分茹で上がったんじゃないか? よく分からないから見てくれ」
「……うん」
「何で泣いてるんだ」
「……分からない」
「たまねぎ、染みたか」
「玉ねぎを使う料理ではない」
「気使ったんだよ」
「そう」
「あー、美味かった。ごちそうさま」
「ありがとう」
「いやいや、礼を言うのはこっちだって! 皿洗うわ。座ってて」
「そう言うわけには」
「こういう時は甘えておけって」
「甘える……うん。分かった」
「よしよし。良い子だ……って、ごめん。なんかつい子ども扱いしちまった」
「……」
「あー、すまん。馴れ馴れしく頭撫でちまって。じゃあ、洗ってくるわ」
「……ぁっ、お父さん……」
「っ! ごめん」
「洗い終わったぞーっと……」
「……うん」
「ごめん。何か辛いこと思い出させたか?」
「分からない」
「俺で良ければ話聞くけど」
「……分からないの」
「何が、分からないんだ?」
「何も、なんにもっ!」
「お父さんって、どんな人なんだ?」
「分かんない」
「お母さんは?」
「……分かんない!」
「俺は何か力になれるか?」
「……あ」
「何?」
「頭を、撫でてほしい」
「お安い御用で」
「……ぅっ、ぐすっ」
「泣け泣け、辛かったな」
「うわあああああん!」
「落ち着いたか?」
「……うん」
「そっか。そりゃ、良かった」
「私ね」
「ん?」
「私、思い出したの」
「何を?」
「お母さんが、死んだ時のこと」
「……辛かったら、言わなくていいんだぞ」
「ううん、聞いて?」
「ああ」
「お母さんね、私のせいで死んじゃったの」
「……」
「それでね、私。私ね」
「ゆっくりでいいから、ね?」
「うん、うん……。私、覚えてるのが、クラクションの音と、必死に車を退かそうとしてる声だったの」
「退かそうとする声?」
「道を開けてくださいって、必死に! でも! それだけしか……覚えてないの」
「そっか……お父さんについては、聞いてもいい?」
「多分、お父さんは愛想を尽かしちゃったんだと思う。お父さんは、小さい時は一緒にいたの」
「……うん」
「でも、お父さん泣きながら、家を出て行っちゃって」
「そっか……」
「ごめんなさい」
「あのさ、もしよかったらなんだけど」
「……何?」
「俺が……お父さんの代わりになることはできないかな?」
「……ううん、ダメだよ」
「あー、ごめん。ちょっと思い付きで言っただけだからさ」
「うん……ごめんなさい。やっぱりお父さんはお父さんで、あなたのことはお父さんだとは思えないから」
「分かってる。ごめん」
「でも、お父さんじゃなくて、一緒に居てほしいなって。そのままで、一緒に居たいなって」
「え?」
「こういうのは、男から言うものだと思ってたんだけど、私から言わせてください」
「こんな子供っぽい私ですが、付き合って下さい!」
23 : 以下、名... - 2015/12/15 18:22:38.24 b/CDElXCo 22/22終わり
HTML化依頼出してきます
男女は書いてほしかった。