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【艦これ】提督「暇じゃなくなった」【前編】
【艦これ】提督「暇じゃなくなった」【中編】

510 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/29 20:41:09.75 AcVldxBOo 285/430

-暁・白露 vs ???-

阿武隈がソ級ELを撃破するより少し前、奇襲と連携を見事に成功させた暁と白露の二人は見事にヨ級ELの撃破に成功し、急ぎ阿武隈の手助けに向かおうとしていた。

しかし戦闘の最中、阿武隈は大きく場所を移動していたのか、中々見つけられなかった。


「どこまで行っちゃったんだろう?」

白露「うーん…あっちに見えるの、比叡さんと、利根さん、かな…」

「向こうには艦載機が見えるから、きっと瑞鳳さんね」

白露「方角からすると、それじゃこっちかな?」

「いってみましょ!」

白露「おっけー!」


ザバァァン ザバァァン


「きゃっ」

白露「うわっ」


行動を開始しようとした瞬間、二人の眼前に砲弾が着弾して大きな水飛沫を上げる。

511 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/29 20:41:40.66 AcVldxBOo 286/430

「あ、危なかった…」

白露「どこから…」

??「外したカ…運ダケはいいミタイね」

「え……」

白露「う、うそ…」

「そんな、だって…あなた、死んだはずじゃない!長門さんが、倒したんじゃ!」

泊地棲姫?「フフッ…私は、滅ビヌ…忌々しい、艦娘ドモめ…今一度、水底に還るがイイワ」

512 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/29 20:52:45.29 AcVldxBOo 287/430

-比叡・利根 vs 武蔵?・筑摩?-

比叡「はあぁぁーっ!」ビュッ


ガシィッ


武蔵?「軽いな。軽すぎる」ビュオッ


ガスッ


比叡「うぐっ!」ザザザッ

武蔵?「この軽さで、同じ戦艦として同列にされるとは、反吐以外に出るものが無いな」

比叡「まだまだー!」ダッ

武蔵?「いや、終わりだ」ジャキッ

比叡「っ!」


ボゴオオオォォォォン


果敢に立ち向かおうと駆け出した直後、眼前に主砲の砲塔が顔を覗かせる。

武蔵の翳した艤装の第一主砲の砲塔。

黒光りする筒の先に閃光が奔り、次の瞬間、比叡は後方へと吹き飛ばされていた。


比叡「げほっ、がはっ…!」 大破

武蔵?「無力は罪だ。貴様に艦娘の名を背負う資格はない。ここで朽ち果て、永久を彷徨え」スッ…

比叡「うぐっ、くそ…!」

514 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/29 21:14:49.86 AcVldxBOo 288/430

利根「あえてそう呼ぶぞ、筑摩!」

筑摩?「沈みなさい、水底へ」ジャキッ

利根「いいや、沈むのはお主じゃ」ジャキッ


同時に艤装を構え、全く同じタイミングで共に引き金を引く。


ドォン ドォン ドォン ドォン


ボボボボボボボンッ


爆煙と水飛沫を伴い、周囲に水壁が一瞬の内に形成される。


ザバァァァン


その壁を打ち破り、まずは利根が躍り出る。

それを待っていたかのようにして筑摩も飛び出してくる。


パパパァァン ドォン ドォン


互いの拳による殴打戦を数度繰り広げ、間隙を縫っては砲撃を見舞う。


ボゴオオォォン


決定打を見込めないまま、時間だけが過ぎていくが一際大きな炸裂音に利根、筑摩共に一瞬動きが止まる。


ボゴオオオォォォォン


利根「な、なんじゃ!?」

筑摩?「姉さんのいう、仲間が死んだんじゃないかしら?」

利根「なんじゃと…」

筑摩?「安心していいわ。直に姉さんも同じ場所へ送って上げるから」

利根「ふん、丁重にお断りじゃ。それに吾輩の仲間はそう易々とは死なん!」


瀕死の比叡、満身創痍の瑞鳳、死んだと思われていた泊地棲姫と相対してしまった暁と白露、そして謎の砲弾に襲われた阿武隈、仲間の安否が全く解らないまま戦闘を継続する利根、ここから彼女達の戦闘は更に苛烈を極めていく事になるが、無事この困難を打開する術があるのだろうか。

515 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/29 21:35:57.06 AcVldxBOo 289/430

~撃滅せよ、戦艦レ級~



-敵領域近海-

赤城「仲間を…」

陸奥「こいつらに、仲間意識なんてないのよ」

大鳳「他の深海棲艦や上位の深海棲艦とは全くの別種…狂戦士に等しいわ」

羽黒「ひどい…」

神通「惨いですね」

霧島「ここからは二手に分かれましょう」

陸奥「ええ、そうね」

レ級EL1「待たセタねぇ…」

レ級EL2「キヒヒ、思いの他、コイツ歯ごたえあってサァ…」グチャ…

陸奥「下衆の所業ね」

レ級EL1「ヒドイなぁ。どうせキミ達だって直にコウなるんだからサァ…」

レ級EL2「…ヒヒッ、大人しく食わレロヨッ!」


ビュオッ


ユラリと身体を揺らしながら、緩急をつけた動きで二匹の化け物が陸奥達へ襲い掛かる。

516 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/29 21:59:15.27 AcVldxBOo 290/430

-陸奥・神通・大鳳 vs レ級EL1-

レ級EL1「第二幕、開演ッテ感ジィ?」ギュオッ


バチィィッ


陸奥「…っ!」ザザザッ

神通「はっ!」ビュッ

レ級EL1「ットォ…それは怖いナァ」サッ

大鳳「第一次攻撃隊……」サッ

レ級EL1「させないヨォ!」ドン ドン

大鳳「くっ…!」サッ


ボボボンッ


目にも留まらぬ素早い跳躍から陸奥を弾き飛ばし、それに応戦してきた神通の一閃を真横に飛んで回避、即座に軌道修正して一気に大鳳に照準を合わせ、艦載機の飛翔を射撃で妨害する。


レ級EL1「ヒハハハハッ!遅い、トロい!何ソレ、さっきより全ッ然ダメじゃない!?」

大鳳「こいつ…」

神通「格段に、速くなってます…!」

陸奥「鬱陶しいわね…!」

レ級EL1「ソレハさぁ、コッチの台詞だよ。ガッカリさせないデヨ…折角、こっちも本気出シテるんだからサァ」


ニタリと笑ったレ級の瞳が真紅に輝き、その輝きは残光だけを残して姿諸共その場から消える。

その動きに大鳳は完全に出遅れ、陸奥も翻弄されて姿を捉える事が出来なかった。

そんな中、神通だけが静かに武刀剣を構えてレ級EL1の動きに呼吸を合わせていた。

517 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/29 22:19:17.80 AcVldxBOo 291/430



ビュオッ


一陣の風を巻いて振るわれた神通の一閃は今度こそレ級EL1を捉える。

それでも、レ級EL1は身を捻って武刀剣の切っ先がギリギリ触れる程度まで強引に軌道をずらし、直撃は避ける。


ズザザザザッ


レ級EL1「……ッ!お前、面白いネ……」ニヤッ

陸奥「神通、貴女…あの動きが見えるの!?」

神通「はぁ、はぁ…姉さんとの修練の賜物かもしれませんね。それでも、全神経を集中させないとなりませんが…」

大鳳「対策を練らないと…不味い。私、完全に出遅れてた」

陸奥「私だって似たようなものよ。けど、同じ過ちはもう御免だわ」

大鳳「…ですね」

レ級EL1「ボクさぁ、その軽巡の女ト最後マデ遊びたいから、空母と戦艦、ドッチが先に食われタイか選らばせてアゲルヨ。一歩前に出てキタ方を先に食ってアゲル」

神通「何を、勘違いしているんですか」

レ級EL1「……?」

神通「貴方は、ここで殲滅します」スッ…

レ級EL1「ギャグにしては、笑えナイね、それ…」

陸奥「神通…!」

大鳳「無闇に前に出ちゃ…」

神通「大丈夫です。私は、いつだって前線で戦ってきました」

陸奥「え…?」

神通「過去の栄光がどうであれ、私は今の私でしかありません。それでも、先陣を切って一番槍として責務を果たす事こそ、私にとってはそれこそが最大の栄誉なんです。もう、弱虫の神通とは決別です」

518 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/29 22:28:29.75 AcVldxBOo 292/430

大鳳「神通、あなたまさか…」

神通「私は第二水雷戦隊の旗艦を務めた川内型軽巡洋艦の二番艦、神通です」

陸奥「記憶…」

神通「今ならハッキリと思い出せます。だから、今度こそ…私は生きて提督の下へ戻りたい」

大鳳「…うん、私も戻りたい」

陸奥「そうね。まぁ、頭撫でてくるのちょっとウザいけど…」

大鳳「えっ!?」

陸奥「な、何よ…」

大鳳「私、撫でられた事ありません」

神通「それじゃ、戻ったら撫でてもらいましょう」

陸奥「冗談でしょ!?頭撫でられるくらいならこの化け物と一日戦ってる方がまだマシよ」

レ級EL1「あのサァ、ボクの存在蔑ろにスルのやめてくれない?」

陸奥「あら、ごめんなさいね?戻ったら何するか決めかねてたのよ」

大鳳「やりたい事多いんだもの、仕方ないでしょ?」

神通「気持ち、改めていきましょう」

レ級EL1「フザケルナッ!!」ギュオッ

大鳳「神通、ごめん!」サッ

陸奥「慣れるまで、少しだけ時間を頂戴!」サッ

神通「殿、この神通が引き受けます」ダッ


レ級EL1の動きに合わせて三人も動き出す、陸奥と大鳳は後方へ、神通は一歩前に踏み込んでレ級EL1を迎え撃つ。

しかしレ級EL1の狙いは神通ではなく、後方に控えていた大鳳や陸奥。

神通もそれに感付き、レ級EL1の進路を塞ぐようにして攻撃を繰り出す。

519 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/29 22:43:56.35 AcVldxBOo 293/430

レ級EL1「邪魔を、スルナッ!!」ドン ドン


サッ


ボボボボン


神通「そう言われて退く訳ありません!」ドン ドン

レ級EL1「チッ…!」ザザザッ サッ


ボボボン


牽制で放たれた神通の一撃を横に飛んで回避し、レ級EL1の動きが失速する。

そのまま神通は陸奥と大鳳を己の身で隠すようにレ級EL1の正面に立ち塞がる。


レ級EL1「ソンナに最初に死にタイのか」

神通「そう、見えますか?」

レ級EL1「見えるネェ…正面塞げばボクを抑えラレるって、本気デ思ってル?」スッ…

陸奥「神通っ!」

神通「……っ!」サッ

レ級EL1「遅いネェッ!」ギュオッ

陸奥「くっ…!」ジャキッ…


ボゴォッ


陸奥「げほっ…!」ズザザザッ 小破

大鳳「なっ…」

神通「そんな、まだ…速く…」

レ級EL1「絶望は、コレカラじゃないカナ?」ニヤリ ビュッ


バキィッ


大鳳「うぐっ…!」ズザザザッ 小破

神通「くっ…!」ドン ドン


サッ


ボボボン


レ級EL1「甘い甘い…!」

神通「」(陸奥さんも、大鳳さんも、私も…三人がかりで、手も足も出せないなんて…)


レ級EL1の動きは神通達の想像を遥かに超えていた。

正面に立ち塞がっているはずの神通を置き去りにして陸奥を殴り飛ばし、更に後方に控えていた大鳳をも、その禍々しい艤装で蹴散らす。

硬直を狙って放たれたであろう神通の一撃すらも余裕を持って回避し、その顔には相手を小馬鹿にするいつものレ級EL1の表情が戻っていた。

525 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/03 20:44:02.52 D/UUBT+Jo 294/430

-霧島・羽黒・赤城 vs レ級EL2-

レ級EL2「シャアッ!!」ビュオッ


ドゴォッ


羽黒「きゃあっ」ズザザッ 小破

赤城「羽黒さん!」

霧島「このっ!」ドォン ドォン


サッ


ボボボボボォォン


レ級EL2「アハハハ!無理だよ、そんなトロイ攻撃…当たるワケないでしょ。ボクはねぇ、ただお前達をクエレばそれでイイんだよねぇ。ダカラさぁ、大人しくクワレてくれないカナァ」

霧島「くっ」

赤城「……」スッ チャキッ…

レ級EL2「ナニナニナーニ…そのほっそいエモノで、ボクを討てると本気デ思ってるワケ?」

赤城「第二次攻撃隊、発艦してください!」ビュッ


ヒュン ヒュン ヒュン


レ級EL2「ハァ…芸が同じジャアさぁ…」サッ


ヒュン ヒュン ヒュン


ボゴオオオォォォン


赤城「なっ…!」

526 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/03 21:23:49.90 D/UUBT+Jo 295/430



レ級EL1と同時に駆け出してきたレ級EL2は手近に居た羽黒を力任せに片手で弾き飛ばし、追撃をかけようとするも霧島の砲撃でそれを断念する。

が、それも全て遊びの範疇内であることを自身は十分に自覚した上で動きを止めていた。

更に赤城の放った航空隊を自身の艦載機で全て撃ち滅ぼす。

この短時間で赤城達に圧倒的な絶望の片鱗を垣間見させるには十分な脅威をレ級EL2は見せ付けた。


レ級EL2「改めて……モウ一度聞くよ?誰カラ最初に、クワレたい?」


大抵の精神の持ち主ならばこの時点で半狂乱となり逃げ出し食われ、殺され、兎にも角にも碌な終わり方をせずバッドエンドを迎えるところだろう。

しかしレ級EL2の眼にはそれらの行動は理解の範疇を遥かに越える、言い換えれば愚策の極みとも言うべき謎に満ちた行動として映っただろう。

つまり、赤城達はそれでもレ級EL2へ立ち向かったのだ。

527 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/03 21:49:34.52 D/UUBT+Jo 296/430

赤城「…戻ったら、お腹一杯にご飯を食べましょう」スッ…

羽黒「賛成です。おかわり、しちゃうくらいに食べますよ」ジャキッ…

霧島「間宮さんが困らない程度に抑えないと、今度は指令が煩いと思いますよ」ジャキッ…

赤城「……」

羽黒「号令、お願いします」

霧島「いつでもいいわ、赤城さん」

赤城「いきましょう。帰るんです、みんなや提督の待つ、あの鎮守府へ…全員で帰るんです。ですから、決してここで負ける訳にはいきません。私達はこの日の為に練成してきました。きっと大丈夫、勝ちにいきますよ」

レ級EL2「勝ちにイク?ヒヒッ、アハハハハ!頭の中はお花畑カヨ!?バカもここまでくるとビョーキだね」

赤城「何とでも言って下さい。事実以外は述べません。みなさん、いきましょう!」

霧島「了解よ!」

羽黒「はい!」

レ級EL2「あっそう…ジャア、もうお前等死んでクレテいいよ。その後で、死体ヲ食えばイイしさ。本当は生きたまま食べるノガ通なんダヨ。泣き喚いて、苦痛に歪む顔ヲ最後マデ見ながら、ソイツを食い散らカスのが最高にイイんだよ!けど、お前等ナンカ冷めちゃったカラさぁ…」ユラリ…


ビュオッ


そう呟いて動き出すレ級EL2の姿を三人は完全に見失う。


赤城「…っ!」サッ

霧島「くそっ!」サッ

羽黒「……」グッ


咄嗟に真後ろへ飛んだ赤城、真横へ跳躍する霧島、そんな中、羽黒だけジッとその場に留まり虚空を見つめ続ける。


霧島「は、羽黒!」

レ級EL2「ビビッて動けませんッテ感じィッ!?」ビュッ


ドゴォッ


羽黒「…っ!」ズザザザッ


レ級EL2の放った艤装の殴打は羽黒を真横から打ち抜き、その身体を大きく弾き飛ばす。

だが、目を丸くしたのは羽黒以外の面子だった。

528 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/03 22:11:44.05 D/UUBT+Jo 297/430

レ級EL2「アレ?いや、オイ…頭、今吹っ飛ばしたダロ…お前、何で生きテルノ?」

羽黒「はぁ、はぁ…やってやれない事はない、です」 中破

赤城「羽黒ちゃん…」ニコッ…

羽黒「五倍の相手だって、支えて見せます!」

霧島「…そうね、やってやれない事はない。その通りだわ」

レ級EL2「何、やる気出しチャッテんのさ…イラつく連中ダナァ!」ギュオッ


再度レ級EL2が動き出し、今度は真っ直ぐに霧島に狙いを定めて突進してくる。

それを察し、霧島は真正面からレ級EL2の突進を受け止める。


ガシィッ…


レ級EL2「調子に乗るナヨ、艦娘風情ガァッ!!」バヒュッ


バチィッ


霧島「ぐっ…!」ズザザザッ ガクッ 中破


防御姿勢は取っていたものの、艤装で受け損ないレ級EL2の殴打を正面から受けて霧島はその場で膝を突く。

レ級EL2はそのまま身体を反転させて今度は赤城に狙いを定め、一気に駆け出す。


ダッ


赤城「……!」タンッ


赤城は照準を絞らせないようにジグザクに後方へとステップを踏んでレ級EL2との距離を離すが、それを意に介さずレ級EL2は赤城目掛けて艤装の砲塔を差し向ける。

529 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/03 22:29:25.43 D/UUBT+Jo 298/430

レ級EL2「バカかお前?距離取っタラ、今度は撃つに決まってるダロ!」ドォン ドォン


ボゴオオォォォン


凄まじい炸裂音を響かせ、一瞬にして赤城の姿が爆煙に呑まれる。


レ級EL2「アヒャヒャヒャヒャ!ハーイ、正規空母の丸焼き一丁上ガリ~、なんてネ」

赤城「くっ…せめて、七面鳥くらいのボキャブラリーが…欲しいところですね」 中破

レ級EL2「ナッ…!なんで、生きてンダヨッ!!」

霧島「笑えないけど、大丈夫なの?赤城さん…」

赤城「この程度、加賀さんが受けた痛みに比べれば…どうって事ありません」

羽黒「けど、飛行甲板が…!」

赤城「大丈夫です。みんな、優秀な子たちですから」

レ級EL2「どいつも、コイツモ…!くたばり損ないの集マリが、何やったってムリなんダヨッ!!」

赤城「限界なんて当に超えています。本人の限界なんて、自分がそうと割り切らない限り無限大です。提督の教えの一つに、とても共感出来るものがあります。為せば成る……やらずに悔いるより、やって悔いる方が何倍もましである事…」

霧島「…信じる力は何物にも勝る。自分が信じたのなら、最後までその信念を貫き通す事。必ずその思いに応えてくれる存在は居る。信じて待つんじゃなく、信じて前に進み続ける事…」

羽黒「…継続は力也、です。その時は出来ずとも信じてやり続ければ、それはいずれ結果として己の力になって自身の大きな自信に繋がる。決めた事をやり遂げる強さ、初志貫徹をする事…」

レ級EL2「ダカラ、何なんダヨ!!」

赤城「だから…」

霧島「私達は…」

羽黒「前だけを向いて戦えるんです!」

535 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/04 20:48:41.85 q6dUCNj1o 299/430

-陸奥・神通・大鳳 vs レ級EL1-


ヒュッ ズガンッ ボゴォッ


次々と繰り出されるレ級EL1の攻撃を辛うじてかわし、受け止め、それでも弾き飛ばされながらも陸奥達は耐え忍ぶ戦いを強いられていた。

方やレ級EL1はジワジワと相手を弄り殺すが如く、その一方的な暴力を愉しんでいた。


レ級EL1「アハハッ、アハハハッ!弱い、弱い、弱い、弱いッ!!さっきマデの威勢ハ何処いったノサ?ネェ、早くボクを倒してミナヨ。倒すんダロ?クヒヒヒヒ…」

陸奥「……」 中破

大鳳「……」 中破

神通「……」 中破

レ級EL1「身なりもボロボロ、艤装モ半壊、モウ無理って悟れよ、雑魚ガ…まぁ、ソウやって抵抗シテくれた方がボクとシテハ食事のしがいがアッテいいけどネェ…クヒヒッ、どいつカラ食おうカナァ…」

神通「…次発、装填済みです。まだ、負けた訳じゃありません」チャキッ…

レ級EL1「ハァ?その距離で、その艤装構えて、ナニするのサ。飛ばすの?ネェ、それって接近戦ノ装備っぽいケド投げ飛ばしちゃっタリするワケ?クヒヒヒ…」

陸奥「神通、恐らくチャンスは一度きりよ」

神通「…はい。大丈夫です」

大鳳「気を、逸らしてみせます…!」ググッ

レ級EL1「くたばり損ナイの集団がナニをやったって無駄ダッテ…」

536 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/04 21:07:40.43 q6dUCNj1o 300/430

大鳳「全艦突撃!目標、戦艦レ級EL1!完全掃射!!」バッ


ヒュン ヒュン ヒュン


レ級EL1「ハァ、懲りナイねぇ…」サッ


ヒュン ヒュン ヒュン


大鳳の艦爆艦攻隊の発艦と同時に、レ級EL1もそれに応えて艦載機を発進させる。

その直後、神通が静かに動く。


レ級EL1「…ん?」

神通「……間合いの外、それがあなたの驕りです」ビュッ


神通とレ級EL1の間で見れば小さな一歩。

しかし、それは例え小さな踏み込みだとしても、強い信念の篭った大きな前進の一歩。

振り抜かれた神通の右手に、武刀剣の艤装は握られておらず、代わりに短刀ほどの短い何かが握られている。

そう確認した直後、レ級EL1の腹部で何かが大きく爆ぜた。


ボゴオオオォォォン


レ級EL1「ガッ……!」 小破


苦痛に歪む視界の中で、レ級EL1が神通の手に握られている何かに気付く。

彼女の艤装を確認し、不自然な部分を見出す。

武刀剣と共に差し込まれていた魚雷管の束。

その中の一本が消えている。

つまり、今自身を爆破させたのは、魚雷。

537 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/04 21:22:04.52 q6dUCNj1o 301/430

神通「言ったはずです。次発、装填済みと…」

レ級EL1「キ、サマ…!」


ドゴオォォォン ボゴオオォォォン


レ級EL1「ガアアアアッ!!」 中破


矢継ぎ早に直前に発艦させた大鳳の艦爆艦攻隊の爆撃特攻がそのまま硬直していたレ級EL1に直撃する。

気を逸らす為に動いた一連の動作だったが、神通の行動が早かった事、その行動によってレ級EL1が虚を衝かれた形となって硬直した事で彼女達にとって嬉しい誤算となった。

大鳳の放った艦載機は迎撃に放っていたレ級EL1の艦載機を物ともせず、本隊のレ級EL1諸共完全掃射する。


レ級EL1「グガッ……ハァ、ハァ……ウソ、だ……ボクが、こんな……ダッテ、ボクは、全てを、凌駕する……戦艦、なんだゾ……」

陸奥「あなたが進化するっていうなら私達だって同じ事よ。成長して、今度こそこの手であなたにリベンジする」

レ級EL1「そ、そウダ…レ級EL2ヲ食えバ…」

陸奥「どこまでも愚かなのね。だから負けるのよ」

レ級EL1「ナニィ…!?」

陸奥「これが、志した者とそうじゃない者の差よ」ジャキッ

レ級EL1「ヤ……ヤメ、ロ…」

陸奥「全砲門、開放……ビッグセブンの力、侮らない事ね!これで、終わりよ!!」ドォン ドォン


爆音を轟かせ、陸奥の全砲門が火を吹く。

放たれた第一から第三まで、全ての砲撃が確実にレ級EL1を撃ち滅ぼす。


ボゴオオオォォォォン


巨大な水柱を生み出し、水面が波打ち、直に静寂が訪れる。


レ級EL1「」 轟沈

大鳳「…やった、やったよ二人とも!」グッ

神通「…はい、やりました」グッ

陸奥「…よしっ!!」グッ


三人が三人とも、強く信じて握っていた拳を振り上げる。

今度こそ、彼女達はレ級EL1を仕留め、勝利を収めたのだ。

538 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/04 21:53:11.64 q6dUCNj1o 302/430

-霧島・羽黒・赤城 vs レ級EL2-

レ級EL2「……アー、ウザい。上等だよ…もう遊ぶのヤメだ!食い殺してヤルよッ!!」

赤城「…食い殺せるものなら…」チャキッ…

霧島「はぁ、はぁ…やってみなさい!」ダッ

レ級EL2「手負いノ狼気取りカッ!望み通りにシネェッ!!」グァッ

赤城「艦載機の…皆さん、無理をさせて、ごめんなさいね。でも、これで最後だから…!私の、持てる、全てを乗せて……大空を、舞ってください……っ!!」ビュッ


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


レ級EL2「ナッ…!?バ、バカな…そのナリで、どうして、艦載機を……ッ!」グッ…

羽黒「躊躇い、ましたね…!」ジャキッ

レ級EL2「チッ…!」ザッ

霧島「無駄よ!」サッ


ドゴォッ


レ級EL2「グッ…!」ザザッ

539 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/04 21:55:47.72 q6dUCNj1o 303/430

予期せぬ展開。

致命傷とまでは言わなくとも、痛手を負わせたはずの正規空母の最後の足掻き。

しかし、足掻きと言うには余りにも驚異的な一撃。

レ級EL2は完全に三人を舐めていた。

赤城に負傷を負わせた事で戦闘不能と判断してしまったのがそのいい証拠だった。

結果として自身の動きに制御を掛けて留まってしまい、霧島の侵入を許した。

直後、上空を飛来する赤城の精鋭部隊の容赦ない艦攻艦爆の嵐が吹き荒れる。


ボゴオオォォォン


赤城「す、すみません…これ、以上は…」ガクッ…

レ級EL2「させ、ルカ…!」 中破

羽黒「もう…これ以上、やらせません!」ドン ドン

レ級EL2「この、程度…!ウゴケッ!ボクの、体ァッ!!」ググッ…


ボゴォォン ボゴオオォォォン


レ級EL2「グガッ…!ハァ、ハァ……嘘、だ…ボクは……ボクが、負ける…?」 大破

霧島「はぁ、はぁ、はぁ…」ジャキッ

レ級EL2「イヤだ……ボクは、負けナイ、死なナイ、ボクこそ……最強なんだッ!!」

霧島「……終わりよ。これで……距離、速度……」

レ級EL2「負けるモノカアアアァァァッ!!」グアッ

霧島「…よし!全門…斉射!!」ドォン ドォン


ボゴオオオォォォォォン


レ級EL2「」 轟沈


霧島渾身の一撃は我を忘れて突進してきたレ級EL2を真正面から捉え、見事標的を沈黙させる。

直後、糸が切れたように三人ともその場に崩れ落ちる。


赤城「や、やりました…」

羽黒「あはは…今になって、震えが止まりません」ブルブル…

霧島「陸奥さん達は、大丈夫かしら…」

543 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/08 20:54:19.43 WKaIZvtoo 304/430

-敵領海域-

戦艦レ級を討伐し、六人は再度合流を果たすがそれぞれ満身創痍の状態でそのまま進むのは不可能だった。


陸奥「流石に、この有様じゃ進軍は無理かしらね…」

赤城「艦載機の子たちにも相当な無理を強いる形になってしまいましたし、修繕もそうですが補給もしなければどちらにしろこの先の航行は難しいかと…」

大鳳「そうね…私も、流石にヘトヘトよ」

神通「何はともあれ、一度戻って提督へ報告するのが最善ではないでしょうか」

羽黒「はい、私も司令官さんへ報告に戻る方がいいかなって…」

霧島「無理は禁物だものね」


ザバァァァァ……ッ


進路を取り直し、一旦は戻ろうと歩を進めかけた矢先、その先を遮るかのように海面が波立ち無数の深海棲艦が姿を現す。


陸奥「なっ…!」

神通「深海、棲艦…!」

大鳳「こんな、時に…!」

赤城「くっ…」

羽黒「そんな…」

霧島「…冗談でしょ」

タ級FS「クククッ…シンガタヲタオストハネェ…」

ル級改FS「タイシタモノダナ…」

ヲ級改FS「ケレド、ココマデ…」

リ級改FS「シズメテアゲル…」

ヌ級FS「ヌカヨロコビ…」

チ級FS「ザンネン、デシタ…」


パッと見ただけでも瞬時に自分達と相手の戦力差が計り知れた。

現時点で、負傷を負ったままで勝てる相手ではないと。

黄色に輝く瞳を持った戦艦タ級に軽空母ヌ級と雷巡チ級、左の瞳が燦然と蒼く輝く戦艦ル級と空母ヲ級に重巡リ級、前者はフラグシップ型、後者は前者を更に強化した改良型のフラグシップ型、どちらも笑って済ませられる相手ではないのは明白だった。

しかし、次の瞬間、今度は陸奥達を護るようにして艦娘達と深海棲艦達の間に砲撃が撃ち込まれる。

544 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/08 21:25:11.59 WKaIZvtoo 305/430



ボボボボボボンッ


霧島「こ、今度は何…!?」

ル級改FS「ナニゴトダ…!」

タ級FS「チッ…ドコカラ…!」

??「潔く散るナラまだしも、アノ女の手先に成り下ガルとは…」

??「見下げ果テタワ」

ヲ級改FS「ナッ…!」


水飛沫が納まり、声の主が陸奥達を素通りして彼女達を護るように前に出る。


神通「えっ…」

陸奥「あなた達は…!」

ピーコック「同族として、ケジメをつけてアゲルわ」

南戦鬼「悪いケド容赦はシナイ」

南方棲鬼「悪いワネ。ここは、通しマセン」

装空鬼「南方姉妹ダケでも十分に思えたケド、これほどの戦力ヲあの女ガ揃えてイタなんてネ…」

中間棲姫「誘爆シテ、沈んで逝きナサイ…」

空母棲鬼「愚カナ子たち…何度デモ、沈んでイケ…」

赤城「なんで、深海棲艦が…」

ピーコック「…アナタ達が慕う提督大佐に賭けてミタだけよ」

羽黒「え…?」

装空鬼「突拍子もナイ提案ダト思ったケド、背に腹は変えられナイ、という事ヨ」

南戦鬼「南方棲鬼、アノ二匹は私達カシラね」

南方棲鬼「ええ、ソウネ。見せて上げまショウ?ホンモノの、砲撃を…」

中間棲姫「……戻るのナラ、気をつけるコトね」

霧島「何ですって…?」

空母棲鬼「シンエイは、アナタ達の鎮守府ニモ敵を差し向ケテいるわ」

ピーコック「こうナルであろうコトを、想定してイタんでしょうネ。別にこのまま留まってイテもイイけど、余計な火の粉ヲ被っても知らナイわよ」

赤城「……恩に着ります」

ピーコック「フフッ、ヤメテくれる?そういうの、むず痒くてイヤだわ。それに……まぁ、いいわ。撤退マデの時間くらいは作ってアゲル。その後で被害ヲ被っても、文句はナシよ。さぁ、いきなサイ…!」

545 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/08 21:45:43.95 WKaIZvtoo 306/430

-数日前-

ピーコック「……」

南戦鬼「ピーコック、そろそろ意識ヲ切り替エテ貰わナイと困るワ」

南方棲鬼「フェアルストの件は残念に思うケド、現状は緊迫シテいる」

中間棲姫「三竦みの図トハ到底言い難いモノ…」

空母棲鬼「矛先ハ確実にコッチヨネ…」

リコリス「…新型の戦艦ハやはりシンエイの駒とシテ機能シテいるから、戦力に数えるコトは不可能」

ポート「まさに、八方塞と言うワケね」

アクタン「……」キョロキョロ ソワソワ

ピーコック「…賛成スルかどうかは別とシテだけど、一つ……提案がアルわ」

リコリス「提案…?」

ピーコック「ゴメンなさい。始めに謝ってオクわ」

ポート「ピーコック…?」

ピーコック「私は、シンエイの奇襲カラ逃れた後で、ある鎮守府へ立ち寄った…」

空母棲鬼「ナンですって…?」

546 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/08 22:09:58.76 WKaIZvtoo 307/430

ピーコックは今度こそ、全てを包み隠さず嘘偽り無く語った。

フェアルストの力添えで逃れた後で提督鎮守府へ立ち寄り、そこで元々リコリスが計画していた内容以外を伏せて殆どの実状を包み隠さず話してしまった事。

その上で、仲間達を助けてくれるのなら自らの首を差し出すと申し出た事。

しかし提督大佐はその提案を受け入れず、提供された情報だけを信じて自らを解放した事。

自らは、その提督大佐に全てを賭けて見ようと思っている事。


ピーコック「私は、フェアルストの仇ヲ取る。けど、私一人デハどうしようもナイ。相手の戦力は未知数…そんな所へアナタ達ヲ同行させるのは気が引けたノヨ。何より、私が一人デ決めたコトだったから…」

ポート「艦娘達に与シテ、フェアルストの仇ヲ取るタメの戦力を得ようとシタの?」

アクタン「ピーコック…」

ピーコック「…皆、覚えテルかしら。生まれたトキのコトを…」

リコリス「……」

中間棲姫「はじめは、静カナ気持ちだったノヲ覚えてるわ…」

空母棲鬼「気付けば、艦娘と戦ってイタワネ」

ピーコック「…暗イ水底、深海奥深ク…海面カラ差し込む光スラ届かない…孤独デ寒い、ソンナ中で私達は過ごしてキタ…青い海、澄ミ渡ル空に憧れヲ抱き、想いヲ馳せて、叶わナイと諦め、自分達の望むべく場所ヲ揺蕩う艦娘達を深く憎みナガラ生きてキタ……」

ポート「ピーコック…?」

547 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/08 22:20:40.61 WKaIZvtoo 308/430

ピーコック「…私達の根本ハ何ダ?」

リコリス「え…?」

ピーコック「艦娘ヲ滅ぼすコトか?」

装空鬼「ソレハ…」

ピーコック「この海ヲ、深海と同じ色に染めるコトか?」

南戦鬼「……」

ピーコック「…違う。そうデハない…少なくトモ、私はただ…この青い海デ、青い空ヲ眺めていたかったダケ」

アクタン「デ、デモ…」

ピーコック「……?」

アクタン「でも、ワタシ達がそれヲ望んでも、イイの?」

リコリス「アクタン…」

ピーコック「…少なくトモ、あの提督ハ望んデモいいと言ってクレた。必ず、コノ青い海の上デ、お前たちニモ穏やかなトキが過ごせる日ガ訪れるようにシテみせる……ッテ、言ってくレタ」

リコリス「人間が…ソンナ、ことを?」

南方棲鬼「信じろッテ言うの?いいえ、ピーコックはその言葉ヲ信じたと言うノ?」

ピーコック「私は、信ジタ…シンエイのような裏切りに遭うカモしれない…ソレでも、私はあの男のコトバには偽りナド含まれてイナイと信じてみタクなったのヨ。人間の可能性ヲ、一縷の望みヲ、私達ダッテ信じてミテモいいハズでしょ!?」

548 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/08 22:29:42.82 WKaIZvtoo 309/430

ーコックの叫びはその場に居た全員を動かした。

当初、リコリスは自分達を生み出した原因が海軍にある事実を掴んだ時点で、本格的な戦争に持ち込むつもりだった。

海軍が今も尚、隠匿し続ける過去の歴史と艦娘の秘密。

新鋭からもたらされた情報により、疑問は確信に変わり、怒りが吹き上がってきた。

だからこそ宣戦布告をし、警告と言う形で警鐘を鳴らした。

これが最終通告だと。

だが、情報をもたらした新鋭の離反によって何が正しいのかさえ解らなくなった。

しかしピーコックの言葉をリコリスも信じたくなった。

如いては知りたかった真実に近付けるかもしれないと言う淡い期待も抱いて…

549 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/08 22:40:23.76 WKaIZvtoo 310/430

リコリス「…貴女はソレで、後悔しないノネ?」

ピーコック「しないワ。泊地棲姫が沈んだトキ、彼女には悪いケド、正直何の感情モ沸かなカッタ。けど、それが間違いだったのカモしれないワネ。フェアルストが居なくナッタと悟ったトキ、初めて涙ガ出た。怒りヨリ、憎しみヨリ、何よりもマズ、悲しいと思った。私は、例え死ぬコトになってもフェアルストの仇ダケは取って、それから朽ち果テル。覚悟は出来テルわ…アナタ達は別に付き合わなくテモいい」

ポート「随分ナ言い草ネ」

ピーコック「え…?」

アクタン「ピーコックが、イイ奴って言うなら、ワタシは信じる!」

ピーコック「アクタン…」

リコリス「……私達は何時ダッテ一蓮托生、とマデはいかないけど、共に歩んでキタ『仲間』でしょう?」

ピーコック「仲間…」

中間棲姫「教えて上げまショウ。あの女に、私達が本気にナレばどうなるノカ…」

空母棲鬼「ソウね…歯向かうのナラ、容赦はしナイ」

装空鬼「一度ダケよ、信じるのはネ」

南戦鬼「ホンモノの砲撃、見せてあげましょうか」

南方棲鬼「デハ、いきましょうか」

ピーコック「何処マデ堕ちテモ、お人好しハ変わりナイのね」

アクタン「ンフフ♪」


こうして、目的を新たにピーコック達も戦線に参列する事になる。

新たな希望と、そこに秘める想いを成し遂げる為に、今こそ最終決戦が幕を開ける。

555 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/12 20:17:25.27 yZe0/DKco 311/430

~悪鬼跳梁、敵包囲艦隊を撃滅せよ~



-絆の下に-

利根「ちぃっ!」バッ

筑摩?「いつまで逃げ回るの、姉さん?」ドン ドン


ボゴオォォォン


利根「ぐっ…!」 中破

筑摩?「いい加減、力量の差を悟ったらどうかしら?」

利根「何とでも、言え…まだ、吾輩は……なっ!?」


ザバァァァ……


最後の一滴まで、そう表現するに相応しい闘志を漲らせる利根の表情が一瞬にして凍りつく。

筑摩の背後、有象無象と表現するに相応しい数の深海棲艦の群れが艦隊を成して出現したのだ。

そして能面のような表情で筑摩が口角だけを僅かに釣り上げ死刑宣告を利根へ告げる。


筑摩?「時間切れね…この数の増援、姉さん一人じゃどうしようもないでしょう?さぁ、潔く死になさい」ジャキッ


──いいや、死ぬのはテメェだ──


ボゴオォォン


筑摩?「ぐっ…!誰…!?」 小破

天龍「誰かって?オレ様の名前をしらねぇとか、テメェはモグリか?」

龍田「え~っと、筑摩さんを侮辱してるクソ野郎はあなたかしら~?」

利根「お、お主等…!」

天龍「よう、利根さん。安心しろって、オレ等だけじゃねぇからよ…!」

翔鶴「仲間が困っているのに、指を咥えて見てるわけにはいきませんものね」チャキッ…

556 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/12 20:30:19.81 yZe0/DKco 312/430

武蔵?「さぁ、宣言通り砲撃処分にして終わりだ」ジャキッ…


ボゴオォォン


武蔵?「うぐっ…!」ヨロッ… 小破

比叡「ぇ……?こん、ごう…お姉、さま……?」


重傷の比叡に向けて翳された武蔵の艤装をどこから放たれたのか一発の砲撃が狙い落とし阻止する。

薄れそうな意識の中、比叡は周囲を見渡す。

そしてぼんやりと見える影に金剛の幻を見たのか、小さく呟いて比叡の意識はそこで途絶えた。


ビスマルク「間に合った…!」

大和「彼女の期待に応えられなかったのが心残りでしょうか」

武蔵?「ちっ…横槍か」

大和「……ビスマルク、彼女の相手はこの大和がします。貴女は周辺艦隊の漸滅をお願いします」

ビスマルク「ええ、任せておいて」

557 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/12 20:54:35.42 yZe0/DKco 313/430

阿武隈「なんで、あんたがっ…!」

泊地棲姫?「……私ハ、滅ビヌ……」

阿武隈「」(まずい、腕と一緒に艤装も破壊されてたんだ…これじゃ、戦うことすら…)

泊地棲姫?「フン…」ブンッ


バシャァァァ……


阿武隈「なっ…!」

「……」 大破

白露「……」 大破

阿武隈「あ、暁!白露!」

「ぅ……ぁ……あぶ、くま、さん……」

白露「げほっ……!ご、めん…ドジッちゃった……」

阿武隈「し、喋らないで!すぐ助けるから!」

泊地棲姫?「無駄なコトを…忌々シイ艦娘ドモめ……ッ!」


──忌々しいのはお前の方だ──


泊地棲姫?「……?」クルッ…


海原に響き渡った声に泊地棲姫の動きが止まり、静かに周囲を見渡す。

そして三つの陰がそこに浮き上がってくるのを確認し、その口元が俄かに釣り上がる。


泊地棲姫?「艦、娘……ッ!」

日向「待たせたな、阿武隈」

阿武隈「日向、さん…それに……」

阿賀野「もう、大丈夫だからね、阿武隈ちゃん!」

飛鷹「大切な仲間、ここまで痛めつけてくれたお礼はさせてもらうわよ…!」



瑞鳳「勝ったのはいいけど、ボロボロ…思った以上に、動けないもんだなぁ…」プカプカ…

祥鳳「いつまで寝てるの?」

瑞鳳「えっ!?」ガバッ

祥鳳「無事でよかったわ、瑞鳳」

瑞鳳「し、祥鳳…!?え、何で?どうして?」

祥鳳「貴女の所の提督の話に賛同した他の提督や鎮守府が総出で援軍に駆けつけてるって感じかしら?」

瑞鳳「え、でも…祥鳳は、その…元帥直属で、余り出撃任務には赴かないって前に提督が…」

祥鳳「そうね。だから今だけ私は元帥直属じゃないのよ。今だけ、私は智謀提督傘下なの。他の皆もね」

瑞鳳「他の、皆?」

祥鳳「実はね────」

558 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/12 21:09:29.83 yZe0/DKco 314/430

智謀「元帥殿…」

元帥「以前にな、彼に言われた事がある。助けを求めている存在がそこにいながら、何故見て見ぬ振りをするのかと…返す言葉もなかったよ」

智謀「彼は、非常に真っ直ぐな性格をしていると思います。危険を顧みない、愚直なまでに真っ直ぐに突き進むあの姿勢は、この大本営に在籍する全ての者達に忘れ去られた姿勢でしょう。私も、元帥殿も…」

元帥「ああ言う男が、まだ居るのだと知れた事が個人的には嬉しくてね。そこで、智謀くん…」

智謀「はっ」

元帥「君は、そんな彼に任務を非公式に与えたそうじゃないか」

智謀「…申し訳ありません。余り、元帥殿のお耳には触れさせたくない内容でしたもので…」

元帥「大きな声ほど聞こえなくなり、小さな囁きほどよく耳に入る。こういう時は便利な耳でな」

智謀「…如何なる処分も甘んじて受ける覚悟であります」

元帥「ならば命じようか、智謀大将。現時点を以て君に我が艦隊の一部を貸し与える。これを持って提督大佐の援軍へ赴くのだ。同時に大淀には近隣の鎮守府に応援要請を出しておいた」

智謀「は…?」

元帥「海軍の汚点をこれ以上隠匿することこそ罪だろう。まずは、目先の脅威を沈静化させる。その後で、今度は我々が彼に、艦娘に、欺いてきた者達へ謝罪を述べるべきだろう」

智謀「元帥殿のお言葉とあれば、この智謀は全てを賭しましょう」

元帥「頼むぞ。次の世代、むざむざ死なせる訳にはいかんのでな」

智謀「はっ!」


祥鳳「────まぁ、そんな訳でね。とにかく負傷者は提督大佐の鎮守府までの護衛をしつつ帰投させるようにって言伝もあるの。ここは危険だわ。まずは戻る事は考えましょう」

瑞鳳「けど、まだ他の皆が…」

祥鳳「私一人が来たわけじゃないわよ。他にも援軍は向かってる。大丈夫、誰一人として沈ませはしない」

559 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/12 21:49:22.20 yZe0/DKco 315/430

-提督鎮守府・会議室-

提督「いや、まさかこれほどまでの支援をもらえるとは…」

先輩「父さんに頭下げられちゃったしねぇ」

不動「よもやあんたと肩並べる日が来るなんてなぁ、思いもよらねぇとはこの事か」

智謀「相変わらず口数の減らない人ですね。それよりも提督大佐、先遣として進出した戦艦比叡の艦隊とこちらの援軍の合流が確認されました」

提督「それじゃ…!」

智謀「ただし、思いの他苦戦を強いられたようです。比叡と暁・白露は大破、利根と瑞鳳・阿武隈が中破という惨状だったようです」

提督「なっ…!」

智謀「安心して下さい。命に別状は無いと、先ほど連絡を貰っています」

提督「そ、そうか…だが、まだ陸奥たちから応答がない。こっちも気がかりだ」

智謀「そちらにも援軍は向かわせています」

不動「腑に落ちねぇのは、うちにいる筑摩や先輩鎮守府んとこに以前居た武蔵の姿が確認されてた事だ」

先輩「そうね…それに、ヒヨッ子の艦隊で撃滅を確認してたはずの泊地棲姫の姿もあったというわ」

不動「一体どうなってんだ?」

智謀「恐らく、クローンですよ」

提督「…信じ難いものですが、智謀提督もそういう結論なんですか?」

智謀「概ね、と言った所です」

先輩「クローン?それって、同一の起源を持ち、尚且つ均一な遺伝情報を持つっていう…?」

提督「俺も詳しい内容を知ってる訳じゃないんですが、艦娘達はその身体情報を大本営に個体識別番号順に登録する義務があります。言わばプロフィール的なものですね。そこには各艦娘達の生体データも含まれている」

不動「おい、解りやすく説明しやがれ」

智謀「つまり、新鋭は大本営に居た頃にどういう手段を用いたのかは解りませんが、艦娘達の生体データを奪取してそこから同じ遺伝子情報を持つ艦娘を造り上げたという事です」

提督「泊地棲姫を討滅した際、その亡骸を俺たちは回収せずに、彼女自体はそのまま深海へ誘った。恐らくその亡骸を利用して、新鋭が新たに泊地棲姫のクローンを生成したと考えられるわけです。ただ、俺としては根拠も生体データの云々だけで、決定的とまでは言えないものだったので…」

先輩「真偽はどうあれ、それがもしも本当だとするならとんでもない事してくれるわね、あの子…」

560 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/12 21:58:54.33 yZe0/DKco 316/430

不動「おい、それが事実なら無尽蔵に艦娘造られちまうんじゃねぇのか!?」

智謀「それは恐らくありえません。少なくとも、現時点では、ですけどね」

不動「何故言い切れる!?」

智謀「費用対効果の問題もあるでしょうが、新鋭が現状根城にしている鎮守府近海に出現した追撃隊、その全てが深海棲艦であると言うのも、その証拠の一端かと思われます」


ザー…ザザザッ……


提督「…!榛名か、どうした?」

榛名『提督、飛龍さんの艦載機からの報告ですが、深海棲艦が連合艦隊を形成して押し寄せてきているみたいでして、相当の数が予想されます。現時点で艦種までは不明との事です』

提督「やっぱ来たか…榛名、第一種警戒体制を解除、各自戦闘配置について迎撃体制に移れ」

榛名『了解しました!』

智謀「正面艦隊の指揮は私が取ろう」

先輩「それじゃ、私と不動さんで左右かしらね」

不動「おう、任せとけ!提督、お前さんはここで全体を見ろ」

智謀「その為のサポートできる艦娘も呼んできています」

大淀「失礼します」

提督「大淀か…!?」

大淀「提督大佐、宜しくお願いします」

智謀「では、私達は前線へ向かいましょう」

先輩「おっけー!」

不動「須らくその全てを葬ってやろうか」

565 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/13 19:44:03.25 HzdCS6rJo 317/430

-鎮守府正面海域-

榛名「感謝します、皆さん」

川内「ホント、大助かりだねぇ」

那智「気にするな」

夕張「あー、ちょっと緊張する…」

伊勢「ふふ、そう緊張する事でもないよ。それよりも、元帥の部隊なんてそうそうお目に掛かれないから、私達としてもいい機会かなぁ」チラッ…

那智「…ふん」

蒼龍「久しぶりだね、飛龍!」

飛龍「蒼龍、来てくれて助かったよ」

時雨「さて、どう動こうか」

「準備万端なのです!」

智謀「戦闘準備は整っているようですね」

那智「貴様が指揮を執るのか。準備は滞りなく済んでいる。好きなように動かせ」

衣笠「それで、どう振り分けるのかしら?」

智謀「戦艦二名、重巡二名、軽巡二名、空母二名、駆逐二名、計十名。これだけの規模なら水上打撃、空母機動どちらかの聨合艦隊を編成するのが上策ですね」

榛名「聨合艦隊、ですか?」

智謀「そうです。両側面よりもこの正面は戦力が局地化し戦火の苛烈を極めるのは必然。なればこそ、この正面に戦力を集約し、風通しを良くする意味でも確実に敵戦力を撃滅する必要があります」

榛名「了解しました!」

伊勢「やってみせましょうか!」

566 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/13 19:45:12.36 HzdCS6rJo 318/430

智謀「敵は目前まで迫ってきています。迅速に決定し、即時陣形を展開。迎撃の体制へ移行します」

那智「全権は貴様等にある。好きなように選抜すればいい」

智謀「では…空母機動聨合艦隊として出陣します。空母二名を基幹に形成します。飛龍を旗艦とし随艦に蒼龍、榛名、伊勢、那智、以上を空母機動聨合艦隊第一部隊。次、衣笠を旗艦とし随艦は川内、夕張、時雨、電、以上を空母機動聨合艦隊第二部隊として任命します」

那智「見せてもらうぞ、戦艦榛名。貴様の腕をな」

榛名「お任せ下さい!」

蒼龍「飛龍、頼むね!」

飛龍「うんっ!索敵は念入りにね!」

智謀「陣は前方警戒の第二警戒航行序列。敵を確認後、戦闘隊形の第四警戒航行序列に切り替え敵を撃滅せよ!」

艦娘「「「了解!!」」」

567 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/13 20:04:28.25 HzdCS6rJo 319/430

-鎮守府左側面海域-

先輩「皆、準備いいわね?」

長門「無論だ」

酒匂「やったぁ!出番だぁ!」

摩耶「おう、任せな!」

木曾「へへっ、上等だぜ。纏めてぶっ潰してやる!」

北上「私、木曾っちの後ろに隠れてていい?」

木曾「あ゛?」

北上「じ、冗談だって…」

島風「連装砲ちゃんの整備もバッチリ!」

春雨「頑張ります!」

龍驤「空の目は任せといてな!」

先輩「よしっと…正面は智謀さんが見といてくれてる。私達は鎮守府左側面を警戒するわよ」

568 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/13 20:45:13.50 HzdCS6rJo 320/430

-鎮守府右側面海域-

不動「よっしゃあ!お前等、準備はいいだろうなぁ!?」

金剛「また随分と気合入ってるネー」

不動「ったりめぇだろ。新鋭には苦虫噛み潰されてばっかりだったからな…どんな形だろうがリベンジできるってんだから、気合も入るってもんだ」

瑞鶴「翔鶴姉ぇと一緒が良かったのになぁ…」

矢矧「ふふっ、五航戦はホント姉妹で仲が良いわね」

瑞鶴「い、良いじゃないのよ、別にぃ…」

鈴谷「よーし、張り切っていきましょー!」

熊野「一捻りで黙らせてやりますわ!」

隼鷹「よっしゃー!飛鷹が居ないのが少し残念だけど…まぁぜんっぜん、いけるいける!」

瑞鶴「ち、ちょっとちょっと!あんたその手に持ってるの、まさか…!?」

隼鷹「あん?あぁ、これ?酒だけど?ったりめぇだろぉ!」

金剛「Oh…」

矢矧「決戦前に!?」

隼鷹「まぁまぁ、細かい事ぁいいんだって!パーッといこうぜ~。パーッとな!」

瑞鶴「もー、この間もそういって酔っ払って天龍に斬られそうになってたクセに…」

隼鷹「喧嘩っ早いのも考えもんだよな~」

瑞鶴「そういう意味じゃないってば、ほんっとにもう…それはそうと、防空に対する警戒が少し薄い気がするんだけど、私や隼鷹の艦載機…大丈夫かしら」

不動「おう、そこら辺は抜かりねぇ。正面の警戒と上空の警戒、両方できる優秀なのを元帥殿んとこから応援で来てくれてるしな」

磯風「陽炎型駆逐艦十二番艦磯風、推参」

秋月「秋月型防空駆逐艦一番艦秋月、ここに推参致しました」

不動「おう、さんきゅーな!期待しかしねぇから頼むぜ!」

金剛「Oh、磯風デース!」

磯風「金剛…」

不動「んだぁ、知り合いか?」

金剛「ふふっ♪」

磯風「……貴女の背、今度こそ護り抜いてみせよう」

569 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/13 21:07:35.05 HzdCS6rJo 321/430

-会議室-

大淀「……なるほど、全体の配置と役割、艦娘達の分布は偏りなく綺麗ですね。一応持参した出撃計画はこちらになりますが…」

提督「是非拝見しようか」

大淀「ここまでの計画図があれば不要にも感じますが…」

提督「念には念を、これだけの規模だ。三面にそれぞれ少将殿に大将殿が布陣してくれてるつっても、不測の事態は平然と起こる、だろ?」

大淀「否定はしませんけど…これほどの大規模艦隊、それも正面と左右に扇状に展開してるものを動かそうとなれば、時間も労力も相当なものですよ?」

提督「まぁ、だから予備策として置いとくんだよ。開戦すれば綺麗な陣形で事が進む訳じゃない。悲しいが、無傷ってわけにもいかないだろ?事態が起こってから策を講じてたら全て後手になる。そうさせない為にも、実践する機会が例えなかったとしても、備えておいて損はないってもんだ」

大淀「…確かに、そうですね」

提督「さて、それじゃもう一度全体の配置を確認しておこうか」

大淀「解りました。艦種毎に纏めますか?」

提督「いや、それぞれの艦隊毎に纏めよう。その方が指針も定まりやすい上にその後の展開にも対応しやすい」

大淀「了解致しました」

570 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/13 21:37:24.47 HzdCS6rJo 322/430

まず、鎮守府正面海域を防衛する艦隊からです。

鎮守府正面海域を指揮するのは智謀大将提督です。

先ほど連絡があった通り、空母機動聨合艦隊旗艦艦隊を編成し戦闘配置へ着いています。

聨合艦隊第一部隊の旗艦は飛龍、以下随艦として蒼龍、榛名、伊勢、那智を配置。

聨合艦隊第二部隊の旗艦は衣笠、以下随艦として川内、夕張、時雨、電を配置。

次いで鎮守府左側面海域を防衛する艦隊です。

鎮守府左側面海域を指揮するのは先輩少将提督です。

こちらは聨合艦隊は編成せず、二部隊編成となります。

左側面海域哨戒戦隊の旗艦は長門、以下随艦として龍驤、酒匂、島風を配置。

左側面海域警戒部隊の旗艦は摩耶、以下随艦として北上、木曾、春雨を配置。

最後に鎮守府右側面海域を防衛する艦隊です。

鎮守府右側面海域を指揮するのは不動大将提督です。

こちらも聨合艦隊は編成せず、二部隊編成となります。

右側面海域哨戒戦隊の旗艦は金剛、以下随艦として隼鷹、鈴谷、磯風を配置。

右側面海域警戒部隊の旗艦は瑞鶴、以下随艦として熊野、矢矧、秋月を配置。

更に鎮守府正面海域には潜水艦警戒線を実施。

旗艦をイムヤとし、以下随艦としてゴーヤ、イク、まるゆを配置。

第一種警戒体制で待機中なのは以下の艦娘達です。

提督艦隊からは夕立、ヴェールヌイの二名。

智謀艦隊からはプリンツ、私、大淀の二名。

不動艦隊からは古鷹、筑摩の二名。

先輩艦隊からは朝雲、秋雲の二名、以上です。

571 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/13 21:47:33.60 HzdCS6rJo 323/430

提督「丁寧で解りやすいな。しかしこうして見ると圧倒的に空母組が少ない。敵側に空母機動部隊の一群が現れた場合、対応に苦慮しそうだ」

大淀「前線に赴いている艦隊が無傷で戻ってくれば…という淡い期待はありますが、先の連絡を受けていますので、中々上手く事は運ばないかと…」

提督「対空に対する防御自体はあっても、制空権を取れるのと取れないのじゃ雲泥の差だからな。まぁそれはそうと、幾人か知らない名前の子が多いが…」

大淀「智謀提督と先輩提督の所から応援できている艦娘は、本来なら大本営防衛の勅命が下った場合に際してのみ活動する子達ばかりですから、提督大佐が知らないのも無理はないと思われます。かく言う私もその内の一人なのですが、まぁ元帥殿に抜粋されている艦娘の殆どは本来の任務には赴かないのが基本です。俗に言われる、元帥直属艦隊がそれに当たりますね」

提督「へぇ…んじゃ、やっぱり実力も折り紙付きな訳だ?」

大淀「さぁ、それはどうでしょう。確かに他より錬度が高いのは否定しません。何より、元帥直属艦隊が本腰を入れて実戦に臨む事など皆無に等しいですからね」

提督「ふーん…」(遠回しだがようは華やかに彩っただけのお飾りって言ってるようなもんだな。豪華絢爛に、威風堂々と見えてはいても、結局はパフォーマンスに過ぎないと…)

大淀「一つ、彼女達の面子を保つ為に言わせて頂ければ、それでも元帥直属であり続ける、という事がどれ程の偉業かを認識して頂ければ幸いです。それでは全体を俯瞰に見ての陣形配置ですが、初期配置は次の通り、正面聨合艦隊は第二警戒航行序列、前方を警戒した陣形です」

提督「伊達に戦術戦略に長けてるだけの事はあるって感じだな。口出しのしようもない」

大淀「左右は共に第一艦隊が輪形陣、第二艦隊が複縦陣で初期配置を終えています」

提督「敵は直に見えてくるだろう。各空母組の艦載機や他の艦娘の放っている水偵、水観が真っ先に発見してくれるはずだ」

大淀「このまま静観して迎え撃ちますか?」

572 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/13 21:48:20.21 HzdCS6rJo 324/430

提督「何事も出だしが肝心って言うだろ。機先を制す…発見次第、先制で叩き潰すのが……」


ザー…ザザ……


智謀『提督大佐!危惧していた事態だ』

提督「!?」

大淀「危惧していた事態?」

提督「さっきも言っただろ。こっちには空母組が少なすぎるって…つまり────」

智謀『ああ…』

先輩『智謀さんに不動さん、それにヒヨッ子も聞こえてるわね?』

不動『ああ、飛龍達の艦載機からの連絡だろ。くそが…ッ!』

先輩『こっちの戦力図、相手に筒抜けよ。相手は空母機動艦隊で攻めてきてる!』

不動『完全に制空権を奪取して空爆の雨霰を降らせる気満々みてぇだ』

智謀『凌ぐ手立てさえあれば…』

大淀「まさか、敵方の空母群…!」

提督「新鋭のほうが一枚上手だったってことなのか…」

578 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/16 22:27:26.44 PI1IaSuxo 325/430

-敵聨合艦隊中枢部-

新鋭「ふふっ、どれだけ足掻こうと無駄よ。きっちり潰して禍根全て根絶やしにした上で計画の実行に移らない事には、片手団扇って訳にもいかないし…苦労は今の内にってね」

ル級改FS「ホウコクデス」

新鋭「…何?」

ル級改FS「ヨウドウトシテ、ワナニハメタアイテカンタイ…ソレヲホウイシテイタ、ワガイチダンデスガ、ゼンメツガカクニンサレマシタ」

新鋭「何ですって…!?」

ル級改FS「シンジガタイホウコクデスガ、ジジツデス」

新鋭「レ級を三匹配置して、でかい餌にしていたのよ!例えレ級を制圧できた所で満身創痍、そんな艦隊に一体何ができるって言うの!?」

ル級改FS「ワカリマセン…」

新鋭「…まさか!」

579 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/16 22:52:22.64 PI1IaSuxo 326/430

-鎮守府正面海域-

榛名「敵の空母部隊が多すぎます!」

飛龍「皆、お願い、頑張って…!」ヒュン ヒュン ヒュン

蒼龍「出撃させた先から、ドンドンと…!」ヒュン ヒュン ヒュン


ボゴオオオォォォォォォォン


飛龍「そんなっ!」

蒼龍「私たちの艦載機が…!」

ヲ級改FS1「ムダナコトヲ…」

ヲ級改FS2「ミナゾコヘシズメ…!」


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


川内「ち、ちょっとちょっと…あの数はヤバイって!」ダダダダダダダダッ

那智「ちっ、対空への警戒だけで手一杯か」ダダダダダダダダッ

時雨「大丈夫、必ず…必ず降り続ける雨も何時かは止む…!」ダダダダダダダダッ

「うぅ…多すぎるのです」

衣笠「電ちゃん、上っ!」

「えっ…」チラッ

夕張「ダメ!間に合わない…!」

伊勢「くそっ」

榛名「電ちゃん…!!」ダッ

「あ……あぁ……」

那智「馬鹿か!編隊を崩すなっ!!」


ブゥゥゥーーーーン……


榛名「電ちゃん…!」


ボゴオオォォォォォン


「…っ!」

榛名「えっ…?」

那智「なっ…!」

衣笠「く、空中で爆発!?」

ヲ級改FS1「ナニッ!?」

ヲ級改FS2「ナニゴト…!?」

580 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/16 23:05:37.03 PI1IaSuxo 327/430

制圧し切れない数の敵の艦載機、飛龍と蒼龍の二人で応戦するも、その全てが撃ち落され、敵の艦載機が続々と飛龍達、聨合艦隊を狙い撃とうと空を舞っていた。

そして撃ち漏らした数機が電を標的として襲い掛かろうと滑空してきた矢先の事だった。

電を襲おうとしていたヲ級改FS1と2の艦載機が空中で大爆発を起こして四散した。


「あ、え…?」

リコリス「間に合ったヨウネ」

ポート「……」

アクタン「ワー、一杯イルー」キョロキョロ

智謀「お前達は…!」

リコリス「コノ艦隊を指揮している提督ネ。私達ハ提督大佐ノ援軍とシテ今ここにイル」

智謀「な、何だと?」

ポート「ピーコックの最初で最後の願いデスもの、無碍ニハ出来ないワ」

智謀「ピーコックだと…?深海棲艦が、本当に人間に、艦娘に手を貸すと言うのか…」

アクタン「ピーコックはこの鎮守府のテートクの話、信じた。だからワタシも、ピーコックが信じるナラ、この鎮守府のテートクを信じる」

智謀「……はは、まさか、本当に深海棲艦を味方につけたのか、彼は…」

ヲ級改FS1「ナゼ、アナタタチガ…!」

リコリス「信じるベキ相手を間違エタみたいネ」

ヲ級改FS2「ナニ!?」

ポート「真っ先に信ジルべき身内ヲ信じナイとは、愚かな子タチ…」

ヲ級改FS1「ドウアッテモ、ジャマヲスルト…」

ヲ級改FS2「ナラバ、ココデ、タオスノミデス…」

ポート「クルと言うの?逃げるコトを薦めるケレド…」

アクタン「ケンカするみんなナンテ、キライ!」

ヲ級改FS1「ジャマヲ…!」ヒュン ヒュン

ヲ級改FS2「スルナッ!」ヒュン ヒュン

ポート「アクタン、彼女達ニハお仕置きガ必要みたいネ」

アクタン「ウン…」

リコリス「ポート、アクタン、ここは任せるワネ」

ポート「ええ、イイワ」

アクタン「調子に…ノルナッ!」ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

ポート「哀れネ。クルナと、言っているノニ……」ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

衣笠「たった、二人で…なんて艦載数なのよ…信じらんない」

581 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/16 23:25:02.57 PI1IaSuxo 328/430

榛名「智謀提督、好機です!指示を!」

智謀「…ッ!よし、これは舞い降りた好機である!全艦娘、突撃せよ!!」

飛龍「ヨシッ!二航戦飛龍、装備換装完了!再度、出撃します!」

蒼龍「同じく、二航戦蒼龍、追撃に入ります!」

榛名「第二部隊は残る敵艦載機の迎撃をお願いします!高速戦艦榛名、出撃します!」

衣笠「川内、夕張、時雨、電!聞いた通りよ。まずは対空砲火に重点を置いて!それから航空戦の切れ目、第一部隊の一斉射の終わりを私達でカバーするよ!」

川内「オッケー!任せてちょーだいよ!」

夕張「対空装備はバッチリです!」

時雨「止んだね、雨は…反撃開始だ」

「は、はいなのです!」

伊勢「よーし、日向には負けてらんないからね。航空戦艦伊勢、出撃します!」

那智「那智、出撃する!」

飛龍「蒼龍!」サッ

蒼龍「了解!」サッ


ビュッ


一挙手一投足息の合った同じ動作。

鏡写しかのような二人の所作から放たれた矢は共に大空へ艦載機と成って羽ばたいていく。


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


ポートとアクタンの放った艦載機と共に飛龍達の放った艦載機がヲ級改FS達の放った艦載機を悉く撃墜していき、見る見る内に空を制圧していく。

下方から放たれる衣笠達の対空砲火も相まって、敵側の制空権は一瞬にして失われた。

それを待っていたかのように、今度は榛名達が前面に出てくる。

榛名「勝利を!提督に!!」ジャキッ

伊勢「左舷、砲戦開始!」ジャキッ

那智「敵は右舷か!いくぞ、砲雷撃戦、開始!」ジャキッ


三人が共に艤装の主砲を翳し、一斉に砲撃を始める。


ドン ドン ドォン ドォン ドォン ドォン


同時に砲撃音を轟かせ、今度こそ戦闘の火蓋が切って落とされた。

582 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/16 23:37:07.87 PI1IaSuxo 329/430




~真の敵~



-敵領海域-

筑摩?「たった三人で、何をしようと言うの?」

天龍「テメェの目玉はお飾りかよ」

龍田「そんな訳ないでしょ~?」

翔鶴「今や貴女達は大本営が認知する最優先殲滅対象です」


ザザザザザザザザ……


筑摩?「……っ!」


天竜達の遥か後方、そのささやかな小波の調べのような穏やかな波の音とは裏腹にさながらその光景は押し寄せてくる凶悪な津波の如く、徐々に音を増して、その姿をくっきりと浮かび上がらせる。

彼女達の正面、筑摩の背後に控える深海棲艦の群れに負けずとも劣らない艦娘の軍勢。

それは他の鎮守府より召集された艦娘達の聨合艦隊の一群だった。


天龍「で、何をしようかって?」

龍田「ウフフ♪」

翔鶴「撃滅…その二文字のみです」

筑摩?「……っ!」

利根「吾輩よりも…いくらか、こやつらの方が凶悪かもしれんなぁ。残念じゃったの、筑摩の妖…まさに、ここまでじゃ」

天龍「わりぃな、人形。テメェはここが年貢の納め時ってヤツだ」

筑摩?「戯言を…」

天龍「フフッ、怖いか?」

筑摩?「恐怖など、ない!」

天龍「ああ、そうかよ。じゃあ死ねッ!」ジャキッ

龍田「結局は人形って事よね~?大人しく壊れちゃいなさい?」ジャキッ

翔鶴「終わりとしましょう。全航空隊、発艦始め!油断無く、隙無く…全機、突撃!」ヒュン ヒュン ヒュン

583 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/16 23:56:43.36 PI1IaSuxo 330/430

武蔵?「たった一人で私に挑むと?」

大和「武蔵を…あの子を穢す輩を赦すつもりは毛頭ありません」

武蔵?「ふん…雑魚だから沈んだ。私は強いから生き残った。その違いだ」

大和「今の貴女を見ても欠片ほども雄々しくは思いません。むしろ瑣末…生に縋る醜い悪鬼が精々でしょう」

武蔵?「ふん、どれだけ吼えようと雑魚は雑魚だ。目先をブンブンと飛び回るだけの、ハエ風情に艦娘を名乗る資格等ありはしないって事だ」

大和「…心に響きません。私の知る武蔵の言の葉は、そのような卑下を吐き捨てる口を持っていませんから」

武蔵?「ならば、私は何だ」

大和「…滅びを待つだけの幻影」

武蔵?「面白くも無い。死ね」ジャキッ

大和「貴女では相手が例え駆逐艦の子でさえ、勝てはしません」ジャキッ

武蔵?「戯言が過ぎる。もう消えろ!」ドォン ドォン


サッ


ボボボボボボォォオン


大和「丁重にお断り申し上げます。むしろ貴女がお消えなさい!」ドォン ドォン

武蔵?「ちっ」サッ


ボボボボボボォォオン


大和型同士の壮絶な砲撃の撃ち合いで幕が開けた戦い。

大本営の元帥直属、栄光の第一艦隊旗艦にして元帥の秘書艦を務める戦艦大和。

ドイツ艦のビスマルクと常にその座を競い、それでも尚君臨し続けるのは相応の実力あってのもの。

それでも周りからは華を持たせる為の装飾品と揶揄され、陰口が絶えなかった。

大和はそれでもいいと割り切って考え、陰口を耳にしようと澄まし、何事もないように振舞い続けた。

自らを解ってくれるのはこの世でたった一人、妹の武蔵だけで構わない。

そう思う心が彼女の片隅には常にあった。

そんな武蔵が戦死した時でさえ、彼女は一滴も涙を流さず気丈に振舞った。

それでも彼女の最後が気になって、一度だけ提督鎮守府に赴いた際に提督に尋ねた事があった。

『武蔵は…彼女は、最後まで然としてらしたのでしょうか…』

それに対する答えは、大和に流す涙を留まらせるに十分な説得力と誇りがあった。

『己の責務を全うして果てていった。命尽きるその瞬間まで、彼女は中将を守ろうと全力を尽くしていた』

『戦艦大和、その改良型二番艦武蔵。彼女こそ、この国の誇りだ』

その言葉の通り、大和は武蔵を誇りに思っている。

ただ一つだけヤキモチを妬くとするなら、その場に居れなかったのだから仕方の無い事とは言えども、出来れば榛名ではなく、姉である自分が最期を看取り、彼女の遺志を継ぎたかった。

だが、その想いも今はスッキリ消えて憂い事にはなっていない。

託されたから果たすのではなく、ただ静かに受け継いでいく事こそが重要なのだ。

大和にとって、妹である武蔵の想いは言われて託されるようなものではないという事だ。

584 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/17 00:01:09.28 zaGaL1s/o 331/430

大和「戦艦大和、推して参ります」ジャキッ

武蔵?「私は大和型の改良型二番艦、戦艦武蔵だ。負けはありえない」

大和「ふふ、戯言を…知っていますか。想いの強さは次元を超える、と言うのを」

武蔵?「それこそ戯言だ。寝言で戦が勝てるものか!全砲門、開けっ!」ジャキッ


武蔵の構える艤装の全砲門の切っ先が大和を捉え、一斉に火花を散らす。


サッ


無数の砲弾が飛び交う中を一歩前に、その決断がどれほどの危険を孕んでいるかは踏み込んだ本人が一番解っていたことだろう。

それでも前に踏み出せるのはただ単に大和が武蔵を信じているからなのだろう。


大和「彼女の、武蔵の一撃に比べれば避けるなど容易い事」

武蔵?「この砲撃の雨の中を、前に出るだと…」


ボォォン ボボボンッ


避けれるものは避け、撃ち落せるものは的確に撃ち落す。

水飛沫と爆煙に塗れる中、それを掻き分け大和が縦横無尽に海を駆け巡る。

元帥直属の栄華等ステータスとも思わない。

上辺だけの華やかさ等無いも同然と大和は常々思っていた。

彼女が真に遂行するのはこの世の平和を護ること。

艤装が壊されようと肌を焼かれようと、それらは己が貫く信念と比べれば些細なもの。

塩水を浴び傷だらけになろうとも、そこに華がなかったとしても…これこそ、戦艦大和の戦と言う名の演舞。


ボンッ ボボボンッ


武蔵?「こいつ、被弾をなんとも思わないのか…!」

大和「肉を斬らせて骨を絶つ、です!敵艦捕捉、全主砲薙ぎ払え!」ジャキッ 小破


ドォン ドォン ドォン


超長距離から中距離にまで距離を縮め、大和の主砲が一斉に武蔵を強襲した。

589 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/18 21:39:31.39 /cqMokhMo 332/430

-数時間前・新鋭鎮守府-

ピーコック「案の定、と言ったトコロかしらね」

中間棲姫「蛻の殻…」

空母棲鬼「全軍を従エテ提督鎮守府ニ向かったのカシラ…」


ザバァァァァ……


南戦鬼「残存兵力…」

南方棲鬼「恐らく、強行進軍シテきた場合ニ迎え撃つ予定ダッタ連中ネ」

装空鬼「ここにシンエイは居ない。ピーコック、どうするの?」

ピーコック「コイツ等は殲滅よ。私は背後からシンエイを追撃スル」

中間棲姫「ピーコック、解ってルト思うケド…」

ピーコック「?」

中間棲姫「…私達ガ共感ヲ得るのはきっとコレが最初デ最後よ」

空母棲鬼「モシ、これでもマダ火種が残ると言うノナラ…」

南戦鬼「ソノ時は……」

ピーコック「ソレをさせない為に、私ハ行くのヨ」

南方棲鬼「ナラ行きなサイ。アナタの背は私達が護リ抜ク」

ピーコック「ありがとう、南方棲鬼…」

590 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/18 21:47:04.95 /cqMokhMo 333/430

-帰路-

赤城「やはり、通信は繋がりませんね」

陸奥「強襲を受けて手一杯なのか、もしくはこっちの機器が戦闘で損傷してしまったのかしら…」

神通「後者が一番、嬉しいんですけどね」

羽黒「司令官さん達なら、きっと大丈夫だと私は信じます」

大鳳「それにしても驚いたわ」

霧島「ピーコックの件よね?」

大鳳「うん。提督を信じたって言ってたけど、どういう心境の変化だったのかしら…」

赤城「人柄、なんでしょうかね?」

神通「うふふ」

陸奥「あら、そこで笑ったら提督が可哀想じゃない?」

羽黒「皆さん意地悪ですね」クスッ

霧島「そういう羽黒も顔が笑ってるわよ?」

羽黒「えっ…あ、こ、これは…違いますよ!?」

大鳳「あら、そうなの?」クスッ

神通「羽黒さん、死なば諸共…もう共犯も同然ですよ?」

羽黒「じ、神通さんも表現が幾らか悪びれてませんか!?」

霧島「ほらほら、まだ笑ってばかりも居られないわ。鎮守府の防衛、私達も参加するわよ」

陸奥「ええ、そうね。最後の一滴まで搾り出してやるわ」

591 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/18 22:20:27.57 /cqMokhMo 334/430

-敵領海域・遊撃艦隊合流-


ボォォォン ドオオォォォン……


赤城「砲撃音…!」

大鳳「神通、羽黒、水偵・水観飛ばせるかしら?」

神通「はい、大丈夫です」

羽黒「お任せ下さい!」



ビスマルク「さあ、次に沈みたいのは誰かしら!?」ジャキッ

タ級EL「ナゼ、コウゲキガアタラン…!」

ル級FS「キサマハ、イッタイナニモノダ…!」

ビスマルク「…ふふっ、ドイツの誇るビスマルク級超弩級戦艦のネームシップ、それが私よ」

タ級EL「マサカ、キサマ…!」

ル級FS「ゲンスイチョクゾクゴエイカンタイ、ダイニカンタイキカンノ、ビスマルクカッ!」

ビスマルク「…レーベレヒト、マックス、貴女達の無念は私が晴らす…他の誰でもない、同じ志を持って歩んできた私が貴女達の遺志は汲む。さあ、かかってらっしゃい!ビスマルクの戦い、見せてあげるわ!」



筑摩?「……くっ」 大破

天龍「詰だ」

龍田「力量を見誤ったみたいね~?」

翔鶴「……」チャキッ

利根「むっ、あの水偵は……」



武蔵?「お、のれぇ…!まだだ…まだ、この武蔵は…沈まんぞ!」 中破

大和「いいえ、沈めます。妹の姿を偽る虚像、この大和が赦しません」ジャキッ

武蔵?「小賢しい…小賢しい…小賢しい…小賢しい…ッ!この程度で、勝った気でいるな!逆上せるのも大概にしてもらおうか、弱者がッ!!」ジャキッ

大和「」(ごめんね、武蔵。けれど……貴女がそうだったように、私も前を向くわ。最期まで立派だったと聞く貴女を、私は姉として誇りに思っています。この幻を討ち滅ぼし、真に貴女の無念を私が晴らしてみせます)

592 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/18 22:32:57.33 /cqMokhMo 335/430

泊地棲姫?「雑魚が何匹増えヨウと、同じよ……忌々シイ艦娘風情ガ…ッ!」

日向「悪いが、その雑魚に今から倒されるのが君さ」

飛鷹「あんま調子乗らないでくれる?虫唾が奔るわ!」

阿賀野「阿武隈ちゃん、動ける?」

阿武隈「え、う、うん…大丈夫、だけど…」

阿賀野「良かったぁ。応急要員の妖精さんも連れてきてるから、早く暁ちゃんと白露ちゃんを助けて上げて」

日向「こいつは私達が食い止める」

飛鷹「任せなさいって。さぁ、飛鷹型航空母艦、全力出撃です!航空隊の練度もバッチリよ!」バサッ

日向「伊勢型航空戦艦、日向。推して参る。航空戦艦の真の力、思い知れ!」

泊地棲姫?「捻り潰シテあげる。今一度…水底ニ還るがイイワ…」



羽黒「水偵、戻りました」

神通「私達の後方を固めていてくれた比叡さん達の艦隊…とは別の援軍…?」

赤城「皆さんが無事だといいのですが…」

??「提督鎮守府の方々ですね?」

霧島「誰…?」

陸奥「航空巡洋艦?」

三隈「私は最上型二番艦、航空巡洋艦三隈と申します。元帥の命により、智謀提督指揮下にて援軍に馳せ参じた一人ですわ」

大鳳「」(口調がなんだか熊野と被ってるような…)

霧島「元帥の命って…」

陸奥「水偵の情報とも一致してるわね」

三隈「お仲間の皆さん、比叡、暁、白露の三名が確認してる情報では大破・重傷ですが、お三方とも既に救護班に処置を引き継いで艦娘病院への搬送に入ってますからご安心下さいな」

霧島「比叡お姉さまが大破……?それに暁と白露までって…」

三隈「皆さんも他者を気にしてる場合ではありませんわよね?」

大鳳「冗談でしょ。皆が戦ってるのに、指咥えて見てろって言いたい訳?」

三隈「現状をもっと客観的に見聞なさいと言っているんですわ」

赤城「大鳳さん、今の私達では戦力どころか足手纏いです。十分な整備と改修を施さないと、艦載機の皆さんを再び飛翔させるのは現状では困難です」

三隈「流石は一航戦。冷静な判断をお持ちですわ」

陸奥「けど目の前にはまだ瑞鳳、利根、阿武隈が残ってる」

三隈「彼女達の支援も滞りなく。そろそろ……」

593 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/18 23:03:50.60 /cqMokhMo 336/430



ボゴオオォォォォオン


天龍「っしゃあ!」

利根「ゲホッ、ゴホッ、お、お主、ちっとは周りを見んか!」

龍田「あらあら、お洋服が汚れちゃったじゃない。天龍ちゃん、後でお仕置きね~?」

天龍「え゛……」

翔鶴「ぁっ…!赤城さん、皆さん!」

赤城「翔鶴さん」

陸奥「あなた達…」

天龍「おっ、あっはっは!随分とまた雁首揃えて露出度たけぇじゃねぇか」

霧島「ぶっ飛ばしますよ…」

龍田「あらあら~。けれど無事で良かったわ~」

神通「利根さん、無事で良かった…」

利根「おお、お主等もな。その成り…激戦が伺えるわ」

祥鳳「あら、三隈さん」

三隈「あら…」

瑞鳳「みんなーっ!」

羽黒「瑞鳳ちゃん」

瑞鳳「よかったぁ、皆も無事で!いてて…」

祥鳳「ほら、瑞鳳…余り無茶しちゃダメよ」

阿武隈「あ、皆…」

大鳳「阿武隈、その怪我…!大丈夫なの!?」

阿武隈「あたしは、大丈夫…日向さん達が、助けてくれたから。後から別の部隊も着てくれて、暁ちゃんと白露ちゃんも応急処置をしてもらって、なんとか…」

霧島「暁と白露が重傷を負ったのはやっぱり事実なのね…?」

阿武隈「うん…相手は、泊地棲姫…」

陸奥「なんですって…?」

祥鳳「私達を束ねる提督からの情報で、現在確認されている怪現象ですが、クローンかもしれないという情報が上がっているんです」

羽黒「クローンって…」

神通「まさか、同士討ちをさせる為とか…」

利根「いや、それはありえん。実際に対峙してる身としてはよぅ解る」

天龍「感情が希薄な上に端っからこっちを敵対視してる。ありゃあ、出会い頭に殺りにくるぜ」

翔鶴「騙まし討ちをする為の育成期間がなかったと考えるべきかもしれませんね」

赤城「比叡さん、暁ちゃん、白露ちゃんは、本当に大丈夫なんですね?」

霧島「…比叡お姉さまは、そう簡単にギブアップなんてしません。私は、信じています」

三隈「大丈夫ですわ。私達だって、信じるものはありますもの」

瑞鳳「取り敢えず、戻ろう。まだ、戦いは終わってないんだもん」

祥鳳「ええ、そうね」

600 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/20 20:17:27.81 ZUueavnro 337/430

-大和 vs 武蔵?・終幕-

轟音と凄まじい爆煙を響かせ、大和の放った一撃が狙った武蔵を中心に海上一体を炎の海に変える。

大和は決して飾りなどではなく、その実力は全艦娘の中でも堂々の上位に位置するほどの実力を持っている。

普段は温厚で気の許している仲間には茶目っ気すら見せる事もあるという。

そんな彼女が本気で怒るとどうなるのか、誰も見たことはない。

が、奇しくも偽りと断じた妹の姿を象った存在にその怒りの矛先が向いた。

誰も見たことのない大和の力。

それが、広範囲の海上を一瞬にして炎の壁に変貌させるほどに凄まじい火力を秘める一撃。

これこそ大和の怒りを具現化させた形なのかもしれない。


大和「沈みなさい。永久に…」

武蔵?「おの、れ…」 大破

大和「……」ジロッ…

武蔵?「ククッ…冷酷な目だ。その、目を差し向けた、相手を…何匹、殺した…」

大和「…数えていませんね。ですが、少なくとも艤装を差し向けた相手は、相応にして罪を背負っていました」

武蔵?「罪…?笑わせる……兵器として、生み出され…武器として、扱われ…何が罪だッ!!」

大和「罪は罪。これは罰です。仇名す相手を間違えましたね。私は貴女が艦娘には見えません。これは私にとって非常に僥倖と言うべき事実です」

武蔵?「なん、だと…」

大和「身内の雷撃処分ほど、悲しい事はありません。なればこそ、私は時として鬼にも悪魔にもなりましょう。恨むのならば私一人が怨まれればいい」

武蔵?「ククッ…クハハハハッ!どっちが機械か…よっぽど貴様の方が、鬼畜生だな…」

大和「褒め言葉ですね。それでも私は元帥に、この海に、この世界に仇名す全てを撃滅します」

武蔵?「あの世で、待っててやる…」

大和「同じ道は歩みません。一生そこで彷徨い続けなさい」ドォンッ

武蔵?「……」 轟沈

大和「…私が誤った道にいかないのは、仲間や私達を束ねる存在に恵まれた故です。偽りとは言え、また貴女の声が聞けて良かった。願わくば…『姉さん』って、もう一度だけ呼んで欲しかった…」


そう呟いて静かに閉じた瞳から、今までの全てが集約された想いが、感情が、一筋の雫となって頬を伝って流れていく。


大和「…さようなら、武蔵」

601 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/20 20:50:40.91 ZUueavnro 338/430

-鎮守府左側面海域-

木曾「へへっ」

長門「…?何を笑っている」

木曾「いやなに、またお前と一緒に戦えるってのが少し嬉しいってだけだ」

北上「素直じゃないねぇ、木曾っち」

木曾「うっせ!」

長門「ふっ」

島風「春雨おっそーい!」

春雨「えぇっ!?ひどいよ、島風ちゃん!」

長門「ほら、島風。余り編隊を乱すなよ」

島風「はーい!だいじょーぶでーす!」ビシッ

酒匂「長門さんの顔がとっても生き生きしてる!」

摩耶「おいおい、のんびりしてるみてぇだけど大丈夫かよ」

龍驤「問題あらへんって。うちらはやる時はビシッと決める気概あんねんって」

摩耶「まっ、あたしにゃどーでもいい事だけどねぇ。暴れられりゃあ、あたしは十分さ。それに、お宅等の実力ってのにも多分に興味あってさ。あの大和が含み笑いで語るくらいだ。興味沸かねぇ方がどうかしてるってもんだ」

龍驤「よそ見しといて流れ弾当たってもしらんでぇ?」

摩耶「バーカ。流れ弾貰ったら返してやりゃあいいんだよ。倍にしてな」ニヤッ

長門「龍驤、艦載機の報告はまだか」

龍驤「んあ…せやなぁ、もう戻ってきててもいい頃……」

摩耶「シッ…!」

酒匂「むむ?」

摩耶「こいつは…!おい、臨戦態勢取れッ!提督、さっさと指示寄越せ!!」

先輩「風向きで音を拾ったのね。龍驤、貴女はそのまま艦載機を飛ばして。もう一度上空の情報を仕入れるわよ」

龍驤「まさか、うちの艦載機が撃墜されたんか…!」

長門「対空砲火に余程の自信があるのか、それともこの左舷側も空母群の一団なのか!?」

リコリス「ソノまさかヨ」

摩耶「なっ…!て、てめぇは…!」

リコリス「アラ、あの時以来カシラ?」

長門「先陣が貴様か!」ジャキッ

リコリス「直にソウやって構える…ダカラ会話が成立シナイのよ。私達はシンエイに裏切らレタ。ソレについてはモウ報告とシテ上がってると思ってイタんだけど?」

北上「つまり私達とは争う気がないって言いたいわけ?」

木曾「はっ、そんなん信用出来るわけねぇだろっ!」

先輩「……いえ、どうやら真実みたいよ」

木曾「は…?」

602 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/20 21:23:30.19 ZUueavnro 339/430

提督『皆、聞いてくれ。現時点に置いてはリコリス、ポート、アクタンと呼ばれる三人の深海棲艦はこちら側と考えて行動を取ってもらって構わない。それぞれの種別は飛行場姫、港湾棲姫、北方棲姫。二本角、今お前たちの前にいるのがリコリスだ。ポートは一本角、アクタンはリコリスをミニサイズにしたような感じだな』

リコリス「アナタねぇ、そのマヌケな例え方…ハァ、言ってても仕方ないしイイワ。御託ヲ並べてる場合デモないし…コノ中で航空戦ヲ担える者はダレなの?」

龍驤「うちや!」

リコリス「…へぇ、軽空母…」

龍驤「な、なんや!馬鹿にしとるんか!?」

リコリス「いいえ、関心シタのよ。アナタ、ホントに軽空母?」

龍驤「はぁ?何言うてんのや」

リコリス「フフ…」(余程鍛錬ヲ積んだノカ、改修ヲ繰り返したノカ、どちらにシテも軽空母の技量ヲ遥かに超えてイルのに本人ガ気付かないナンテ…コレも、想う力と言うモノなのかしらネ)

龍驤「な、何やねん、いきなり含み笑いて、気色悪いやっちゃなぁ…」

リコリス「アラ、ちょっと言い方酷くないカシラ?」ジロ…

龍驤「いぃっ!?ご、後生や!今のなし!なしやから!なっ!?」サッ

長門「お、おい。何故、私の後ろに隠れる?」

提督『遊んでる場合じゃないぞ。大方皆が考えている通り、敵は正面に割いていた分の空母群の一部を左舷に寄らせているわけだ。一番索敵の値が数値化した場合に低いのが左舷だったが、リコリスの加入によってその分は大いに補われるはずだ』

リコリス「飛行場姫の名に恥じナイ働きヲしてあげるワ」

603 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/20 21:56:58.30 ZUueavnro 340/430

先輩「ふふっ、頼もしい事で。初めて会った時が逆に懐かしいくらいね」

リコリス「……アノ時は悪かったと思っテルわ。けど、今はマダ改めて謝罪ハしない」

先輩「ええ、共闘と言う事で認識しておいてあげる」

リコリス「ケド、必ず理想とナル形で終幕したアカツキには、その全てをアナタに謝罪するワ」

先輩「あら、それは楽しみね。この季節だとクリスマスプレゼントになるのかしらね」

提督『龍驤、リコリス、左舷の制空権は二人で必ずもぎ取れ。先輩、武運を祈ります』

龍驤「任しとき!」

リコリス「左団扇デ指揮させてあげるワ」

先輩「任せなさい。いいとこ無しのままじゃ、私も終われないものね!」


ブウゥゥゥゥゥゥン……


リコリス「キタわ」スッ…

龍驤「いくで…!」サッ…

先輩「総員、戦闘配備に着いて!」

長門「島風、春雨、お前達はいざと言う時躊躇するな。構わず私の背後に回り込んで私を盾にしてくれていい」

島風「え?」

春雨「え、そんな…」

長門「ふふ、何…長門型の装甲は伊達ではないよ」

酒匂「ぶーぶー、長門さん!酒匂は~?」

長門「ん?」

酒匂「ぴゃあー!ひどい~!」

長門「ははっ、冗談だ。安心しろ、皆纏めてこの私が護ってみせる。私は長門型一番艦、戦艦長門だ。何者にも決して遅れはとらない」

摩耶「っしゃあっ!摩耶様の戦、見せてやるぜ!抜錨だ!!」

木曾「北上…」

北上「ん、どったの木曾っち?」

木曾「俺さ、球磨型でよかったって、マジで思ってるぜ」

北上「え、ちょっ、いきなり何言ってんの…?」

木曾「あいつ等の分まで、暴れてやろうぜ。球磨型の本当の力ってヤツを、あのクソ共に叩き込んでやるんだ。本当の戦闘ってヤツを、思い知らせてやろうぜ…姉貴」

北上「……」ニコッ

木曾「な、なんだよ…」

北上「そういうの、結構燃えるよねぇ…!いいねぇ、熱いねぇ!そんじゃま、ギッタギッタにしてあげましょうかね!」

木曾「おうっ!」

604 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/20 22:40:49.89 ZUueavnro 341/430

-鎮守府右側面海域-

不動「正面と左舷で敵影確認か。おい、瑞鶴、隼鷹!こっちはどうだ!?」

瑞鶴「艦載機の子達から報告を伝えるわ!」

隼鷹「ハハ、おいおいマジかよ…」

瑞鶴「こっちは、水上打撃艦隊の一群…!」

隼鷹「って、流石に笑ってもいられねぇってか…」

不動「割り振りが裏目に出たか…!だが制空権さえ奪えば相手を袋叩きに出来るのも事実だが…」

金剛「私が、耐えてみせるネ!」

磯風「今度こそ、誰も沈ませない…!」

秋月「艦隊の防空はこの秋月が健在な限り破らせはしません!」

金剛「鈴谷、熊野、矢矧、私達で敵の主力を抑えマス!」

鈴谷「りょーかい!」

熊野「一捻りで黙らせてやりますわ!」

矢矧「能代の仇、ここで討たせてもらうわ。軽巡だからって侮って欲しくないわね!」

605 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/20 23:08:06.48 ZUueavnro 342/430

提督「右舷に水上打撃群か…」

大淀「どうなさいますか?」

提督「瑞鶴と隼鷹の二名が居れば制空権の問題はないはずだ。問題は打撃力…金剛、鈴谷、熊野、矢矧だけでは確実に弾薬が尽きる。物量で押し切るしかない」

大淀「では…」

提督「大淀はまだ待機で頼む。戦況の変動をボードを使って逐一最新のものに変えていって欲しい」

大淀「了解致しました」

提督「プリンツ、筑摩、夕立、ヴェールヌイ、出撃準備だ」

夕立「もう出番っぽい?」

Bep「早いお声がけだね」

筑摩「お任せを、提督」

プリンツ「ハーイ!私は、ドイツ生まれの重巡、プリンツ・オイゲン。よろしくね!アドミラル・ヒッパー級三番艦です!」

提督「ビスマルクと同じでドイツ艦か」

プリンツ「ビスマルク姉さま、ここには居ないんですかぁ?」

提督「残念だがな。さて、与太話は後だ。まず四人には右舷の援軍として出向いてもらい、戦線の維持と押上げを担当してもらう。筑摩とプリンツは金剛の指示に従い戦線に従事し、夕立とヴェールヌイは対空防衛に努める秋月のフォローだ。近寄る深海棲艦を適時殲滅しろ」

四人「「了解!」」

606 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/20 23:33:08.39 ZUueavnro 343/430

不動「────おう、そうか!すまねぇな」

提督『誤算は戦場に付き物です。四名の追加で全体的な打撃力の底上げにはなるはずです』

不動「おう、恩に着るぜ。聞いたな、おめぇら!四人、援軍でこっちに回ってくれる!打撃力は確実に上がるはずだ!防衛のイロハってもんを相手に教えてやるには絶好のシチュエーションって訳だぁな」

金剛「Hey!不動提督、方針を教えて欲しいネー!」

不動「おう、任せろ!まず金剛を筆頭にして鈴谷、熊野、矢矧、でもって後から合流する筑摩、プリンツを加えた六人が打撃戦力の要だ。磯風と秋月で瑞鶴・隼鷹のサポート、後から来る夕立とヴェールヌイにも磯風と秋月のサポートにそれぞれ回ってもらう。だがこれは基本の形だ。状況の変化には臨機応変に対応しろ!」

磯風「了解した」

秋月「はい!」

磯風「秋月、高射装置の具合はどう?」

秋月「問題なしよ。10cm高角砲と組み合わせて驚きの防空性能を見せて上げるわ。だから、磯風は前だけ見てて」

磯風「恩に着る。私の名に懸けて、今度こそ任務を完遂してみせる」

金剛「きます…!」

熊野「迎え撃ちますわよ!」

鈴谷「ふふん、さてさて…まいりましょー!」

矢矧「砲雷撃戦、始めます!」

不動「筑摩達が現着するまで持ち堪えろ!」

612 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/22 22:36:06.39 /eMp5l2Bo 344/430

-鎮守府正面海域-

ポートとアクタンの援護を得て、榛名、伊勢、那智の砲撃が敵艦隊のど真ん中で炸裂する。

戦艦二隻の強烈な一斉射、重巡の重圧ある一斉射が相手にとっては強襲と言う形となり、陣形を整える前に敵聨合艦隊のどてっ腹に大きな風穴を開ける結果となった。


智謀「よし、機先は制した。飛龍と蒼龍は引き続き第二、第三攻撃隊を発艦させて相手に息つく暇を与えるな! ポートとアクタンも同様、相手空母ヲ級の動きを制限させろ!」

飛龍「了解っ!」サッ

蒼龍「任せてっ!」サッ

ポート「造作もナイわね」スッ

アクタン「負けないモン…!」スッ

智謀「衣笠率いる第二部隊は榛名達が撃ち漏らした敵艦が動き出す前に封殺、衣笠は手負いを集中的に狙って、川内と電、夕張と時雨でそれぞれペアを組んで常に多対一に持ち込み物量で押し切れ!」

衣笠「衣笠さんにお任せ!」

川内「よし、電行くよ!」

「は、はいなのです!」

夕張「よーし、こっちもいこっか、時雨!」

時雨「うん、目に物を見せてあげよう」

智謀「榛名、伊勢、那智は一端下がれ。相手の射線に注視し、距離を保って警戒線を張れ。無謀にも突進してくるような蛮勇な敵が居るのなら、構わず撃ち落し戦力を根源から駆逐する!」

榛名「はい!」

伊勢「矢継ぎ早な指示だが的確だな」

那智「そうでなければ大将と言う器には納まらんさ」

榛名「相手の張ってる壁を一枚ずつ確実に剥ぎ取る感じですね」

那智「…榛名、貴様なら次の展開はどう見る」

榛名「…多分、一度は突破出来た飛龍さん達の陣地から侵略してくると思います」

伊勢「ポートとアクタンが掌握する海域には戦力を割かないって事?」

榛名「恐らく…」

那智「……それで?」

榛名「ですが、知恵を使わずその場の勢いに任せた場合、最も危険なのはポートとアクタンだと思うんです」

那智「何だと…?」

榛名「元は自分たちの上位に位置していた深海棲艦ですよ?それが反旗を翻したとなれば、深海棲艦側からしたら内部には相当の衝撃が奔ったはずです。正常な判断が鈍り、結果として…」

613 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/22 22:53:40.05 /eMp5l2Bo 345/430



ボゴオオォォォォン


飛龍「もしかして見縊ってますか?」

蒼龍「皆の想いを載せてるんです。そう易々と落とせはしません!」

ヲ級改FS「バカナ…!」

ル級改FS「ナラバ…ッ!!」ジャキッ

タ級FS「ムサベツニネライウツダケダッ!!」ジャキッ

ポート「キサマ達…!」

アクタン「えっ…」

ル級改FS「シズメッ!!」ドォン ドォン

タ級FS「ミナゾコニッ!!」ドォン ドォン

ポート「アクタンッ!」


ボゴオオォォォォン ボゴオオォォォォン


ポート「あ……あぁ……ッ!」


怒りに我を忘れたル級改FSとタ級FSの凶悪な砲撃が爆煙を上げてアクタンを襲う。

しかし────


伊勢「…なんのこれしき、どんどん撃ってきなさいな」 小破

アクタン「ぇ……?」

伊勢「大丈夫だった?」

アクタン「ウ、ウン…」

伊勢「んふふ…なら良かった」ニコッ

ポート「……」アゼン

ル級改FS「ナッ…」

タ級FS「ナゼ、カンムスガ…!」

伊勢「小さい子のお手本になるのが私達大人の務めってもんだよ。悪い子にはお仕置きが必要かな?なーんてね」ジャキッ

アクタン「オシオキッ!」サッ

伊勢「ふふ…さぁ、いくよ!主砲、四基八門、一斉射!」ドォン ドォン ドドドドンッ

アクタン「カエレ……ッ!」ドォン ドォン

ル級改FS「シマッ…」

タ級FS「オノレ…!」


ボゴオオォォォォン ドオオォォォォォン


伊勢とアクタン、両者の砲撃が撃ち終わりの二匹を共に狙い撃ちその姿を跡形もなく粉砕する。


伊勢「これで終わり?それってどーなのさ。やる気あるの!?」

ヲ級改FS「コンナ、ハズデハ…」

614 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/22 22:54:14.64 /eMp5l2Bo 346/430

榛名「指揮が行き渡っていない。これだけの数を纏め切れてない証拠です。一部が勝手に動いてそれに後が続かないから、散発的な攻撃にしかならず、返って弾幕や折り返しが薄く遅くなる」

那智「こちらからすれば絶好の好機か」

衣笠「けど陣形はこのままで、全体で押し上がる感じでいいのよね?」

榛名「はい!こちらは艦隊クラスでヒット&アウェイを継続し、飛龍さんと蒼龍さん、ポートとアクタンの艦載機を最大限に生かして確実に仕留めていきましょう」

615 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/22 23:22:06.72 /eMp5l2Bo 347/430




~闇を照らす一つの光~



-鎮守府・作戦室-

提督「戦線の維持、戦況に置いても三方面共に押し返してきてるな」

大淀「筑摩とプリンツ、夕立とヴェールヌイの援軍で右側面の建て直しも容易でした」

提督「左側面もリコリスの援護で滞りがない」

大淀「……しかし、驚きました」

提督「ん?」

大淀「深海棲艦の件です。本来は相容れない相手ではありませんか?」

提督「…今からする話はお前を責めたくて言うわけじゃない。その事を差し引いても幾分かキツイ言い方をするが余り気にせず聞いて欲しい」

大淀「え?」

提督「大本営の元帥殿を始めとして、一部の大将殿とそれらを取り巻く一部の艦娘には、頑なに隠し通してきた海軍の闇とも呼べる秘密があるのを俺は教えてもらった」

大淀「……!」

提督「昭和、平成とここ数百年、この日本に限らず、世界諸国で海を旅するというのは比較的楽な部類の行楽として認識されていたそうだな。深海棲艦が出現するその日までは…」

大淀「何故、それを…」

提督「掻い摘むが、事の発端は隠密提督だ。お前もその話はつい最近の事だから聞いてるだろ。大和たち秘書艦とは別に元帥へ別の業連をする事を受け持つ第三の秘書艦であるお前ならな」

大淀「…………」

提督「結論から言えば智謀提督と密約を交わした。その結果得た情報だ。隠密提督の件は内々に処理されたはずだったが、お前がきっちり盗み見ていた。結果として、元帥殿の耳に内容が入る事になったわけだ」

大淀「報告しないわけにはいきません。内部の膿は出し尽くすべきです」

提督「間違っちゃいない。それ自体は俺だってそう思う。だったら、大本営の中枢を担うその全てが大本営から去るべきだよな」

大淀「……っ!」

提督「巷で言われ続ける深海棲艦は如何にして生まれ、何処から来たのか…」

大淀「……止めて下さい」

提督「如何にして生まれたか…」

大淀「止めて下さいっ!」

提督「…この期に及んでまだしらを切るのか?」

大淀「それこそ、今この場で言及する事ではないはずです!」

提督「深海棲艦は相容れない存在ってお前は言ったよな。ふざけるな…!」

大淀「ぇ……」

616 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/22 23:31:32.29 /eMp5l2Bo 348/430

自分達で生み出しておいて、制御できないから討伐して証拠を隠滅か?あいつ等は今は世界で活躍している艦娘たちの怨念そのものだ。無念の内に朽ち果て、水底へ沈み、それでも尚、この青い海、青い空に想いを馳せて…

人が何故、海の上で自由を奪われたと思う?

深海棲艦が現れたからか?違う…!

深海棲艦が狙ってくるからか?違う…!

奪われたと思ってる時点で間違ってるんだ。俺たちは拒まれたんだ!

海に、深海棲艦、その元となっている彼女たち艦娘に!人類は拒まれた!!

この大海は今までに流した艦娘たちの涙そのものだ。

その上に人類がどうやって立てる!?

その業を背負おうともせずに、どうやって昔の海を取り戻すと言える!?

本来なら、人類は深海棲艦によって滅ぼされて然るべきなのかもしれない。

それでも、今を生きる人々にはなんの罪もないだろう?

咎を背負うべきは今を生きる人々じゃない。

この歴史を知っている俺たち海軍だ。

俺は全てを知った。妖精の存在、深海棲艦の成り立ち、艦娘とは何なのか。

艦娘には、死後三つの世界が待っている。

一つは天寿を全うし、己の体を休める場所で静かに時を過ごすこと。やがてその身体は浄化され、妖精と成って神格化される。クラバウターマンなんて呼ばれて船乗りの間で実しやかにささやかれているのが、これが一つの答えともなっているんだろう。

二つ目は仏教の概念、輪廻転生だ。強い意思を持ちながらも志半ばで倒れてしまった艦娘は、再び艦娘としての生を受けてこの世界に現界する。

そして三つ目……負の感情を強く帯びて死んでしまった艦娘は、その感情が具現化して再度、水底で生を得る。

深海棲艦として……人類に牙を剥く敵としてだ。

617 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/22 23:51:18.76 /eMp5l2Bo 349/430

提督「もう一度言うぞ。深海棲艦が相容れない存在だと?元は同じ存在でありながら、それに目を瞑って屠ることしかせずに、何が相容れない存在だ!否定する前に自分たちの罪を認めろ!俺は、耳を傾けてくれるのなら、全てを受け入れる。元は艦娘なんだろ…だったら、絶対に解り合えるはずだ」

大淀「…………」

提督「…すまなかった。お前も、いや…お前だけじゃない。全ての艦娘がそうだ。犠牲者なんだ。過去からこれまでの想いと記憶を受け継いで転生してきたのがお前たちだ。それに気付いていながら見て見ぬ振りをした人類が全ての元凶だ。だから、ここで終わりにしよう。お前たちだって、元は普通の女の子なんだ。こんな戦場に、身を捧げていいはずがない。ここで終わらせるんだ」


ザー…ザザザッ……


智謀『聞こえるか、提督大佐』

提督「ええ、良好です」

智謀『正面海域の第一波は粗方片付きつつある。左舷と右舷の状況は?』

先輩『こっちも順調よ!連携バッチリ、清々しいわね』

不動『おう、即席艦隊とはとても思えねぇ錬度っぷりだぜ』

提督「後続隊として新鋭の中核部隊、その奥には主力旗艦艦隊も待ち受けているでしょうね。進軍は程ほどに抑えて、各方面共に散開し過ぎない程度で警戒を継続させましょう」

智謀『賢明な策です』

先輩『オッケー!期待してるわよ、総指揮殿♪』

提督「煽てても何も出しませんよ」

先輩『そこは出しなさいよ!』

不動『終わってからやりやがれこのクサレ師弟共が!』

提督「くされって…」

智謀『はぁ…少しは緊張感を持って下さい。では、先に通信を切りますよ』

先輩『はいはーい。じゃ、また後でね!』

不動『気は抜くなよ!』


ブツン……



618 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/22 23:53:53.76 /eMp5l2Bo 350/430

提督「……大淀。風向きは今はこっちだ」

大淀「…はい」

提督「悔やむ前にまずは前に踏み出せ」

大淀「…………」

提督「お前たちを俺は絶対に見捨てない。失ったことがある者にしかこの気持ちは解らない。だから俺には解る」

大淀「艦娘を、兵器と見る人もいるのに…貴方はどうしてそこまで…」

提督「兵器なものか」スッ…


提督は左手の甲を正面にしてその薬指に輝く指輪を大淀に見せる。


提督「これが俺の答えだ」

大淀「艦娘と、契りを交わしていたんですか…それが、どういう事か解っていて…」

提督「俺の全てを懸ける覚悟はある」

大淀「過去にも、貴方と同じように契りを交わした提督はいらっしゃいました。けれど、その人は…」

提督「それもこれも、結局は大本営の思惑に反した結果なんだろう?提督諸氏や艦娘の気持ちを利用してまで、そうまでして成そうとした茨の契りだ。彼女たちと一緒に日常を過ごせば、どう足掻こうが情が移るのは当然のことだろう。だから、その全ての禍根を俺が断ち切る。ジンクス上等だ。全て纏めてひっくり返してやる」

622 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/23 21:48:17.71 ZPozmL8so 351/430

-新鋭本隊主力艦隊-

新鋭「……先遣隊、奇襲空母群、強襲水上打撃艦隊、中核隊……全て、殲滅されたですって……ッ!」バンッ

??「……」

新鋭「海軍…!どこまでも私の邪魔をする、穢れた正義の権化。いいわ、残存する兵を掻き集めて周囲に散開。相手艦隊の分散を見計らって中央を強行突破。一気に提督鎮守府を陥落させる。目標は、相手主力艦隊に非ず…提督鎮守府とそれを纏める提督の首よ。邪魔をする者は侵攻の阻害になるようなら構わず殺しなさい。ただし、退く事は許さないわ…前進のみ、その哀れな命をここで燃やし尽くし、私に捧げなさい!」


新鋭の前に六つの陰が静かに集結する。

異形を成す構成。

比叡達が先んじて合間見えた構成と似た形式。

艦娘と深海棲艦の混在艦隊。

その中で一際異彩を放つ中央に立つ艦娘。

白と黒のコントラストで彩られた服装。

真っ白な艶のある髪の毛。

青白く輝く両の瞳と透き通るような白い肌。

一見してリコリス達のような深海棲艦を彷彿とさせるが、携える艤装は艦娘達のそれと等しい。

何より、その艦娘はある艦娘と鏡写しのように似通っていた。


新鋭「準備は良いわね」

??「はい、私は大丈夫です」

新鋭「なら、行きなさい。全てを根絶やしにすべく…!」

??「了解しました。勝利を…提督に!」

623 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/23 22:07:39.90 ZPozmL8so 352/430

-提督鎮守府近海-

榛名「ふぅ…なんとか、退けれた」

那智「くっ、はぁ、はぁ…くそ、この程度で息が上がるのか、私は…!」

飛龍「装備補給を急いでっ!」

蒼龍「索敵も忘れちゃダメだからね!」

伊勢「被害は軽微、これならまだやれる!」

ポート「アクタン、怪我はしてナイかしら?」

アクタン「ダイジョーブ。この人が、守ってクレタから」クイッ…

伊勢「っとと…」

ポート「感謝スルわ」

伊勢「同じ戦線で戦ってるんだから、支え合うのは当然でしょ?それにまだ終わってない。感謝するのは、まだちょっと早いかな」

ポート「フフッ、それもソウね」

衣笠「皆、大丈夫?疲れてなぁい?」

川内「なんのまだまだ。私の真骨頂は夜戦よやーせーんー!はーやーく、やーせーんー!」

夕張「はぁ、もうこの人は…」

時雨「ふふっ、頼もしい限りじゃないか」

「…でも、出来ればこんな争いはしたくなかったのです」

川内「…優しいね、電はさ。けど、これで許してくれないのが今回の相手よね、きっと…」

時雨「うん…だから、少し心配だ。イムヤ達の事が…」

624 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/23 22:16:40.81 ZPozmL8so 353/430

-敵中枢艦隊布陣海域周辺-

イムヤ「どうやらこの辺りまでは掃討出来てるみたいね」

ゴーヤ「地平線が綺麗なのでち」

まるゆ「あ、あの!少し艦隊から離れすぎじゃないですか?」

イク「大丈夫なの!こうしてちゃんと通信機器も持ってきてるから問題なしよ!」

イムヤ「それに、私達はあくまで斥候よ。正面切って戦うわけじゃ…」

新鋭「なら、正面切って戦ってもらおうかしら」

ゴーヤ「……っ!」

イク「えっ……」

まるゆ「ひっ……」

イムヤ「あんたは…!」

ゴーヤ「な、なんで…」

新鋭「なんで?なんでって、戦ってるんだから、居るに決まってるでしょ。斥候の分際で馬鹿みたいに顔を覗かせるなんて三流でもやらないわよ。似合わないわね、やっぱり潜むって事が…潜水艦の名が泣くわよ?」

イムヤ「…っ!馬鹿にしないで!」

新鋭「あらら、怒らせちゃったかしら?だったらごめんなさいね?お詫びと言っては何だけど、折角出会えたんだもの…いいもの、見せて上げるわ」


新鋭の言葉に応えるように、彼女を護るようにその前面に六つの陰が姿を現す。

逆光でシルエットのみのその六つの陰にイムヤは目を細めてジッと見据える。

そして細めた目は徐々に大きくなり、やがては瞳孔がくっきりと開かれる。


イムヤ「う、そ…」

ゴーヤ「な、なんで…?」

まるゆ「な、何かの冗談です!」

イク「……!」

新鋭「お披露目よ。これが、私の誇る最強の艦隊…今までが前座だったと思い知らせてあげるわ」

625 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/23 22:28:07.72 ZPozmL8so 354/430

-残存兵力集結地点-

泊地棲姫?「沈めェッ!!」ドォン ドォン


サッ


ボゴオオォォォン


日向「ちっ…」

飛鷹「火力ハンパないわね」

阿賀野「けど、このまま放置する訳にはいかないよ」

日向「当然だ。また伊勢に得意面されるのは正直我慢ならない」

飛鷹「ちょっと、何処に対抗心燃やしてんのよ」

阿賀野「もう、日向さんったら…」


不動「ほぅ、いい勝負してんじゃねぇか。が、今回は伊勢だったみてぇだな」

伊勢「え?またあたしの戦果が一番なの?どうなのさ~日向ぁ、おとなしいじゃん」ニヤニヤ

日向「……」プルプル

飛鷹「」(はぁ、またとばっちりくるわね、これ…)

阿賀野「」(あぁ、伊勢さんあんまり煽らないでぇ…)


阿賀野「とにかく、今は目先目先!」

日向「これを三人で…長門、木曾、大鳳は倒したのか。改めて感服する」

飛鷹「今度は私達の番でしょ」

阿賀野「うんっ!」

泊地棲姫?「……」ニヤァ…

日向「いや、そうでもなさそうだ」チラッ

626 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/23 22:32:18.46 ZPozmL8so 355/430



ボゴオオォォォオン


阿賀野「きゃっ」

飛鷹「なっ!あ、新手なの!?」


ザバアアァァァァン


大きな水飛沫と爆発音を連れ立ち、ブロンドの髪を靡かせて三人の前に一人の艦娘が吹き飛ばされてくる。


ビスマルク「くっ…!」 小破

日向「君は……元帥直属護衛艦隊第二艦隊旗艦のビスマルクか」

ビスマルク「あなた達…不動提督の艦娘達ね。割り込むような形になって悪いわね」

泊地棲姫?「新手…?何匹揃ったトコロで結果ハ変わらナイと言うのに…」

ビスマルク「泊地棲姫ですって…?まさか…」

日向「情報は君のところにも入ってるだろう」

ビスマルク「じゃあ、こいつも提督艦隊の艦娘達が遭遇したと言う、クローンの一種と言うわけね。比叡の所にも武蔵のクローンが居たわ。間一髪で助け出せたけど…」

阿賀野「うん、聞いてます」

飛鷹「にしても、戦力強化されすぎじゃないかしら?」

ビスマルク「済まない。勇んではみたものの、やはり多勢に無勢でね」

日向「」(それでも被害は見たところ小破程度か…恐れ入る)

ビスマルク「けど、こちらも戦力増強じゃないかしらね」チラッ

飛鷹「え?」

大和「……お待たせ致しました。戦艦大和、これより追撃戦に移ります」 小破

ビスマルク「随分な為りじゃないのよ、大和。梃子摺った?」

大和「そっちだって同じ位じゃないですか!貴女に言われたくありません!」ムスッ

阿賀野「あ、あはは…」

大和「コホン…失礼しました。お話は既に整ってる事と伺います」

日向「ああ、そうだな。私達の仕事は後続の援軍としてこいつ等を提督鎮守府へ向かわせない事だ」

大和「ビスマルク、殲滅し損ねた分はこれで全てですか?」

ビスマルク「はぁ…えぇ、その通りよ。錬度の高い連中ばかり残って、少し面倒だったけどね」

飛鷹「丁度いいじゃない。艦隊決戦よ」

阿賀野「張り切っていくよ!」

631 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/27 11:50:49.45 2p+Q+d2/o 356/430

-敵中枢艦隊布陣海域周辺-

イムヤ「うぐっ…!」 中破

新鋭「ダメよー、ダメダメ♪なぁんてね?折角の語り合いの場に余計な茶々入れるなんて無粋じゃなぁい?」

イムヤ「」(通信機器が…こいつ、解ってて…)

イク「からだ、が…いう事、利かない、の…」 大破

まるゆ「」(役に、立ちたいって…隊長さんの為に、思って……なのに、まるゆは……) 大破

ゴーヤ「まだ、でち…」フラフラ… 中破

新鋭「あらら、頑張るのね。けど、そんなフラフラでまともに潜る事ももう出来ないんじゃない?」

ゴーヤ「ゴーヤは…皆の、笑顔が見たいでち…」

新鋭「あの世で見れば良いんじゃないかしら」

ゴーヤ「提督鎮守府の艦娘は、誰一人、諦める娘は、居ないんでち!」ザバァァァン

??「…対潜装備はありません」

新鋭「ええ、だったら彼女達の出番よね?」

レ級EL「…ふふっ、彼女は休ませてあげなよ。あんなの、ボク一人で十分よ♪」

ゴーヤ(水中)「」(余裕ぶっこくのも、大概にして欲しいでち…ゴーヤの魚雷さんは、お利口さんなのでち。魚雷さん、お願いします!)バシュンッ

632 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/27 12:19:45.03 2p+Q+d2/o 357/430



ゴボゴボゴボゴボ……


レ級EL「……」ニヤニヤ…


静かに迫るゴーヤの放った魚雷は真っ直ぐにレ級ELへ向かい進んでいく。

しかし、レ級ELの艤装が高速で振り抜かれた次の瞬間────


ボゴオオォォォォォン


ゴーヤ(水中)「」(やったでち!)


そこには無傷で佇むレ級ELが前と変わらない笑みを携えて立っているだけだった。


ザバァァァァ……


ゴーヤ「そ、そんな…」

レ級EL「バカだねぇ。キミ達程度の攻撃なんて、食らうワケないじゃないか。遊ばれてるって、気付けよ」ニヤァ…

ゴーヤ「あ……あぁ……」

イムヤ「ゴーヤ…ッ!」グッ…

??「やらせは、しナイよ…」スッ

イムヤ「……!」

??「邪魔ヲしたら可哀想ヨ。あの潜水艦娘ヲ、助けタイか?助けたいナラ、進みタイなら、退カシテごらん?」

633 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/27 12:50:46.69 2p+Q+d2/o 358/430



──そこまでにしておきなさい──


レ級EL「ん?」

新鋭「背後からですって…!?」バッ


ゴーヤへトドメを刺そうとするレ級ELの手も止まり、一同は声がした方に視線を向ける。

真紅の瞳に透き通る白い肌。

漆黒に彩られたウェーブの掛かったロングヘアーが風に煽られ静かに靡く。

その華奢な容姿からは想像もできない重厚な艤装を纏い、宛ら動く要塞とでも言うべき姿に一同は言葉を失う。

中でも、新鋭はその姿を見て絶句した。

彼女が知る限りこのような容姿を持った艦娘は存在しない。

そんな中、漆黒に彩られた艤装に無数の弾痕がある事に気付き、新鋭の顔色が一変する。


新鋭「貴女、まさか…!」

ピーコック「そう、これが私……全てを受け入れた、私の本当の姿よ」

イムヤ「だ、誰なの…あんな子、見たことない…!」

ピーコック「貴女達は下がりなさい。それと、直にこの事を提督大佐へ連絡なさい。私の名はピーコック…少し前まで、深海棲艦だった存在よ」

ゴーヤ「ぇ……?」

イク「深海、棲艦…だった?」

まるゆ「え?えっ?」

ピーコック「下衆な集まりね。そうまでして、貴女はこの海が欲しいの?」

新鋭「別にこの海なんてどうでも良いわ。今ある海軍そのものを崩壊させれるのならね?」

ピーコック「深海棲艦以上に性根が腐りきってるわね。貴女なら別の意味できっと大物になれたわよ」

新鋭「ふん、深海棲艦風情が…」

ピーコック「けど、その深海棲艦風情を手駒にしなければならないんだから、随分とお粗末極まりないわね。貴女を囲うその六匹も、結局は虚像の産物でしかない。フェアルストを真似ようと、そのレ級ELを引き連れようとも、今更誰も動揺なんてしないわ」

フェアルスト「……」

??「…敵と認識、殲滅します」スッ…

ピーコック「この私を沈めれるとでも?思い上がるのも大概にして欲しいわ。今の私は誰にも止められない」

新鋭「……任せるわ。貴女達の全戦力を持って、ピーコックを抹殺しなさい。フェアルストの時と同じようにね」

ピーコック「フェアルスト、私は戻ってきたわ。全てを元に戻す為に、貴女の魂を救う為に、今度こそ…静かな時代で……きっと、穏やかな時を過ごせる様にする為に…!」

新鋭「希望諸共また水底へ沈めて上げるわ。再び憎しみを抱いて深海棲艦に堕ちなさい。そこは通させて貰うわ」

634 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/27 13:15:52.77 2p+Q+d2/o 359/430

新鋭の言葉に応えるように、六匹がピーコックへその身を向ける。

白と黒のツートンカラーの装束に身を包む艦娘。

一人はピーコックも良く知る顔だった。

紛れもない、それは提督鎮守府に籍を置く戦艦榛名、そのものだった。

違いは先に述べたとおり、装束の色が違うという点のみ。

否、纏う雰囲気もやはり違う。

全てを拒絶する負のオーラとでも言うべき禍々しさが、目の前の榛名からは感じられた。

その左隣に居る袴姿の艦娘。

こちらも先の榛名同様に禍々しい気配を放っている。

鉄面皮のような顔を真っ直ぐにこちらへ向けて微動だにせずに居る。

更にその左隣。

今までを共に歩んできた戦友の姿を借りた深海棲艦、フェアルスト。

自身に向けられる彼女の瞳は何を映しているのか。

その術を知る由は今はない。

そして榛名の右隣、嫌味なほどの笑みを携え、舌なめずりをしてこちらを見据える戦艦レ級EL。

更にその右隣には自分達と袂を別った深海棲艦、航空水鬼。

航空水鬼の隣にいるのはこれもまた付いてこなかった深海棲艦、駆逐棲姫。


ピーコック「揃いも揃って…」

水鬼「人の描イタ幻想に惑わサレた結果がソレなのね?」

駆逐棲姫「絵空事ダヨ、そんなモノは…」

ピーコック「」(さて、粋がっては見ても一人で六匹相手なんて無理に決まってるし…早い所、援軍の一つでも呼んでもらわないと割に合わない所だけど、一匹でも多く殲滅はしてみせようじゃない…)

638 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/27 19:49:20.18 2p+Q+d2/o 360/430

-提督鎮守府近海-

時雨「やっぱり変だ」

「応答がないのです」

榛名「智謀提督…」

智謀「周辺の索敵を行っても残存兵力ばかり…左と右側面の両艦隊に追撃の指示は提督大佐から出ているが…」

提督『智謀提督』

智謀「提督大佐か、なんだ?」

提督『向かうべきです。こちらの防衛ラインは形成できています。両側面の哨戒も直に終わるはずです。なので、それが戻り次第再度補給し、決戦艦隊を形成して突撃しましょう』

智謀「…解った。ならば今度こそ君の手で決着をつけろ」


提督「……全員、ここまで良くやってくれた。特に智謀提督たちには本当に感謝しています」

智謀「ふふ」

先輩「恩を返してるだけよ。素直に受け取っときなさい」

不動「礼を言うのははえぇよ。まだ終わっちゃねぇんだからな!」

提督「そうですね。幸い、ここまで全員、大きな損害を貰わずにこれた。特に…」チラッ…

リコリス「何ヨ」

ポート「……」

アクタン「……」ドキドキ

提督「…リコリスたちの援護は凄まじく大きい存在だったと言える」

アクタン「……」キラキラ

榛名「」(解りやすい子だ…)

提督「ここからは細分化せず、大きく二手に分かれての作戦行動に移行する。大淀」

大淀「はい。それでは作戦の概要を説明させて頂きます」

639 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/27 20:24:26.49 2p+Q+d2/o 361/430

攻め手と守り手、大きく分けてこの二つの艦隊を編成します。

先の作戦を第一次決戦作戦とし、これを第二次決戦作戦とします。

この作戦の基盤として、万が一にも敵の陽動部隊や囮艦隊が現れようと、攻め手は目標にのみ集中、決して他に気を奪われないように心掛けて下さい。

目標は新鋭元中将提督。目標の完遂は新鋭元中将提督の捕縛、それに及べない場合は殲滅が完遂目標になります。

第二次決戦作戦は前述通り、二部隊構成です。

第二艦隊所属部隊には主に鎮守府全方位の防衛を担当して頂きます。

敵の深追いはせず、一部は固定砲台として要塞の役割を果たして頂きます。

第一艦隊所属部隊は新鋭元中将提督の捕縛もしくは殲滅が任務となります。

恐らく相手も艦隊を指揮しているものと思われます。

新鋭を護衛している場合はこれを撃破する必要がありますが、そうでない場合の遊撃艦隊に関して、第一艦隊所属部隊は全て振り切って目標の完遂にのみに集中して下さい。

追撃に来るようであれば予め護衛艦隊を編成するので護衛艦隊でその相手をする様に務めて下さい。

それでは艦隊編成の割り振りを発表します。

640 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/27 20:44:38.17 2p+Q+d2/o 362/430

■第一次主力追撃艦隊
榛名 長門 飛龍 木曾 神通 夕立

■第一次主力護衛艦隊
リコリス 那智 川内 北上 時雨 Bep

■第二次主力防衛艦隊
蒼龍 龍驤 金剛 伊勢 ポート プリンツ


大淀「今、名前の挙がった方々は適時準備を整えて再度出撃をお願いします」

提督「防衛艦隊は抜錨後、近海を哨戒しこの鎮守府への侵攻を抑えてくれ。それ以外の艦娘たちは鎮守府を中心に外周を固めるように布陣し、要塞の体を成せ」

智謀「各ポストは提督大佐を除いた私達三名の提督で統括し、随時指揮を行き渡らせる」

先輩「皆、これが最後よ。全力を出し切りましょう」

不動「終わったら盛大に騒げ!」

提督「よし、行くぞ。これより最終作戦を開始する…この戦いで全てを終わらせるぞ。お前たちの秘めた想い、ありったけの思いをぶつけてやれ!全艦娘、突撃せよ!暁の水平線に、勝利を刻め!!」

艦娘達「「了解!!」」


数々の苦難を乗り越えて、ついに最後の決戦が幕を開ける。

敵は元海軍の中将、新鋭提督。

人が人為らざる者へと変貌を遂げる時、人はそれを怪物と呼ぶ。

怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になる事のないように気をつけなくてはならない。

人と怪物は常に表裏一体であり、ならない為に、打ち勝つ為に、その障碍を超える為に、確固たる意志力とその意志力を貫き通す強い信念をもって挑まねばならない。

秘めた決意と志した信念、その先にある未来を夢見るのではなく掴み取るべく、彼女達は最後の戦いに身を投じる。

641 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/27 21:17:05.13 2p+Q+d2/o 363/430




~暁の水平線に~



-もう一つの決戦-

大和「加勢に携わっておいて言うのも気が引けるのですが、先の戦闘でどうやらいくつか砲塔が拉げてしまっていたようです。恐らく本丸の泊地棲姫には決定打となる一撃を見舞えないかもしれません」

ビスマルク「貴女、それ本気で言ってるの?」

大和「そういうビスマルクだって艤装ベコベコじゃありませんか。誘爆はやめてくださいよ?」プンプン

ビスマルク「こっちは多勢に無勢だったのよ!?」イラッ…

日向「……お前達、本当に元帥直属の何某なのか?」

大和「失礼な!」

ビスマルク「何よ!」

飛鷹「伊勢と日向を見てるみたい…」

阿賀野「戦闘に集中しようよー!」

泊地棲姫?「ゴチャゴチャとウルサイ連中だ。纏めて沈めッ!!」ドォン ドォン

大和「誰が…」

ビスマルク「誰を…」

二人「「沈めるって!?」」ドォン ドォン


ボゴオォォォォォン


飛鷹「きゃっ」

阿賀野「わぷっ」

日向「くっ…!なんて爆風だ」


いがみ合っている二人の間に打ち込まれた泊地棲姫の一撃は、咄嗟に反応した二人の息の合った砲撃により空中で全て誘爆し合い盛大な大爆発と爆風を周囲に巻き起こす。

642 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/27 21:42:21.67 2p+Q+d2/o 364/430

大和「傷心浸る暇もない…少しは労わって欲しいものですけど!?」

ビスマルク「祈る時間くらいくれてもいいんじゃないかしらね!?」

飛鷹「あの二人居れば、私達必要なさそうね」

阿賀野「えぇ!?」

日向「呆けてる場合か、攻勢に出るぞ!」

泊地棲姫?「茶番ハ必要ナイッ!」ダッ

日向「ゴチャゴチャと煩いのはお前も一緒だ。亡霊に過ぎないお前では私達の相手にもならない」ブンッ


ドゴォッ


泊地棲姫?「グッ…!」ザザザッ


日向の振るった拳は泊地棲姫の胸部を殴打し、その勢いを後方へと押し戻す。

その硬直を見逃さず、飛鷹も一気に仕掛ける。


飛鷹「さっさと終わらせてやりましょうか!攻撃隊、発艦開始!」ヒュン ヒュン

泊地棲姫?「艦爆隊…ッ!」ザッ


飛鷹の放った艦載機に合わせて泊地棲姫が艤装を上空へ向ける。

それを援護するようにビスマルクを狙っていた多数の深海棲艦が一斉に襲い掛かってくるが、それを今度こそ二人の艦娘、大和とビスマルクが迎え撃つ。


大和「この場の決戦に無用な横槍は野暮でしょう」ジャキッ

ビスマルク「邪魔立ては無用だ!」ジャキッ

大和「ビスマルク、残りの残弾は…」

ビスマルク「それを聞くのは野暮じゃないかしら」

大和「ふふ、それもそうね。考えてる余裕なんてないわよね」

ビスマルク「その通りよ、さぁ、見せてあげようじゃない。私と貴女、元帥直属護衛軍の第一第二艦隊の旗艦が揃うとどうなるのか…」

大和「そうですね。戦艦大和、突撃します!」

ビスマルク「一匹たりとも決して逃がさないわよ!」

647 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/28 22:45:27.79 qFKmiIkno 365/430

日向「空ばかり見上げてどうするつもりだ!」ジャキッ

泊地棲姫?「ッ!?」

阿賀野「安らかに、眠って!」ジャキッ

飛鷹「いけっ!艦載機の皆!」サッ

泊地棲姫?「オノレ…!」ドォン ドォン


艤装を構え、その砲身を泊地棲姫へと向ける日向と阿賀野、艦載機を操り攻撃を仕掛ける飛鷹、周囲に群がる深海棲艦の残党は大和とビスマルクの二人が塞き止めているこの状況下、多次元からなる波状攻撃に、泊地棲姫は完全に虚を突かれ放たれた砲撃は全く照準からずれた明後日の方へと空を切る。


ボゴオオォォォォン


そこに合わせる様に飛鷹の放つ艦載機の攻撃が一斉に上空から嵐の如く降り注ぐ。


泊地棲姫?「ウグッ…!まだ、だ……ッ!」ググッ 中破

飛鷹「もうっ、なんて装甲よ…!」

阿賀野「能代たちの無念、晴らすんだから!阿賀野の本領、発揮するからね!」ドン ドン


ボゴオォォン ボゴオォォォン


泊地棲姫?「こんな、トコロで……ワタシは、沈まんッ!!」 大破

日向「いや、終わりだ。航空戦艦の真の力、思い知れ!」ドォン ドォン

泊地棲姫?「……っ!マタ、沈むの、か……水底へ……」


ボゴオオオォォォォォン


泊地棲姫?「…………」

日向「…さらばだ。大破着低、お前の無念は私が汲み取ろう」

泊地棲姫?「ワタシモ…モドレルノカ?」

日向「どこにだ」

泊地棲姫?「アオイ、ウミノ、ウエニ……」

日向「願え…願う事は、全てに平等だ」

泊地棲姫?「……ソウカ…ソウイウコトダッタ…ノカ……」 轟沈


静かに沈んでいく泊地棲姫の表情は、今わの際に至って苦悶には歪まず穏やかな表情で深海へと誘われていった。

日向はその場で静かに瞳を閉じて短い黙祷を捧げゆっくりと踵を返す。


日向「…さぁ、行こうか」

飛鷹「ええ、大和達の援護しないとね」

阿賀野「うん!」

648 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/28 22:52:05.72 qFKmiIkno 366/430

-孤軍奮闘-


ドオオォォォォン ボゴオオォォォォン


ピーコック「……っ!」 被害軽微

フェアルストCL「思いの他、ヨク動くワネ」

レ級EL「ボク等必要?」ニヤニヤ

榛名CL「逃げの一手に集中しているようです」

??「哀れね。啖呵を切った割に、動きが消極的」

水鬼「アラアラ、辛辣…」クスクス…

駆逐棲姫「…………」

レ級EL「やっぱさぁ、これじゃ遊びにもならないジャン?っていうかなってないし。ククッ、ジャンケンで勝った二人で相手してさぁ、負けたら交代ってのもいいんじゃないの?」

榛名CL「どちらでも構いません。殲滅が最終目標ですから」

??「くだらないわ。相手をしなくていいと言うのなら、私は相手をしないだけです」

フェアルストCL「まどろっこシイノは嫌いナンダけど…」

駆逐棲姫「ワタシの攻撃、殆ど彼女にハ当たらナイから、パスする」

レ級EL「アッハッハ!そう言わずにさぁ、ボクだってここまで成長したのにさぁ、殆ど出番ナシだったんだよ? 先陣切ってった連中アッサリ負けちゃうし、はじめっからボクを出してりゃ良かったのにねぇ…」

ピーコック「ゴチャゴチャ煩いわね。纏めて風穴開けて上げるわ!」サッ

レ級EL「む…?」

ピーコック「第一群、第二群…艦攻艦爆隊、全機発艦…っ!」ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

水鬼「アラ……」

??「…………」

レ級EL「ウッヒャー、やっばいね、あの数!」スッ… ヒュン ヒュン

水鬼「やらせは、シナイヨッ!」サッ… ヒュン ヒュン ヒュン

??「…問題ないわ」ビュッ… ヒュン ヒュン ヒュン


ボゴオオォォォォォォン


ピーコック「…くっ!」 パラパラ…


ピーコックの放った数多の艦載機をレ級EL、空母水鬼、白と黒の袴姿の艦娘の三人が放った艦載機で迎撃する。

上空で迎撃されたピーコックの艦載機の残骸が無残にも驟雨の如く降り注ぐ。

649 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/28 22:58:33.83 qFKmiIkno 367/430

ピーコック「私の艦載機をこうも容易く…」

??「触れれば倒せます。貴女の艦載機はその程度、という事です」

水鬼「所詮一匹、後ニモ先ニモ何もナイんだから、潔く散りナサイ」

ピーコック「後に何もないのは反論がないわ。けど、先には見えるものがある。私はそれを掴み取る為にここにいるのよ。邪魔はさせない…!」

レ級EL「そうやって粋がってるのを邪魔して、弄って、グチャグチャにしてやるのがボクのオ・シ・ゴ・ト♪」

ピーコック「深海棲艦の誕生過程で生まれた突然変異種、戦艦レ級。快楽と食欲が共存してるだけでこうも変わるものなのね。更に【食べる】事で学習力を増す…」

レ級EL「ボクに許された特権ってヤツだよ。お前を食えば、ボクは更なる高みへ上れる気がするよ」

ピーコック「フラグシップ型にでもなるつもり?一周回って木偶以下の馬鹿に成り下がらなければいいけどね?」

レ級EL「一々癇に障る言い回しをするね、お前…」

ピーコック「あら、ごめんなさい。地なのよね、これが…」クスッ…

レ級EL「リコリス達が従えてたポンコツと同列に見るなよ。ボクこそが…最上位なんだからさぁ」

ピーコック「…………」

レ級EL「これから始まるのは…ただの殺戮だ。強者が弱者を踏み躙る。圧倒的な力で、一方的に、これこそが! ボクがボクである所以…ッ!生き延びたいのなら勝ち残れ!諦めたのなら潔く食われろッ!弱肉強食ッ!!それが全てで、それこそがこの戦いの根本なんだよ!!」


今までを振り返っても戦艦レ級の築き上げた恐怖は大本営を始めとし、全ての鎮守府で畏怖される対象となった。

それを支え続けた一つの権化とも呼べる明確な理由……それこそが『力』だ。

力で捻じ伏せ、力で圧倒し、力で従える。

恐怖で人の心を支配する。この場合、他の深海棲艦が彼女に付き従うのもこれが理由なのではないのだろうか。

そして今、ピーコックの眼前に居る彼女こそ、数多存在したレ級の頂点。

異常なそう度で進化を遂げ、異常な速度で増殖する。一種のウィルスにも等しいこの存在。

何故、新鋭はこの戦艦レ級を数を限定して生み出したのか。

理由は先にも述べた力のバランス関係が最も大きいだろう。

リコリス達上位の深海棲艦にも劣らない知能を持ち、更にそれは加速度的に成長し、ある一定を超えたところで枷が外れて暴走する。

自らを飲み込みかねない諸刃の刃。扱いを間違えた瞬間、待ち受けるのは死。

それでは何も残りはしない。故に調整し、実験し、然るべき方向へと意図的に新鋭は導いた。

そうして完成した戦艦レ級。

圧倒的な力、圧倒的な武装、圧倒的な速度、それらは捕食と言う行為によって倍加されていく。

まさに、これこそが人の姿を象った悪魔が生み出し、そして作り出した化け物と言う名の『力』の正体だ。

650 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/28 23:20:28.96 qFKmiIkno 368/430



──その戦いに終止符を打つために立ち上がったのがそいつだ。その誇りは決して沈ませる訳にはいかない──


レ級EL「……!?」

新鋭「……提、督っ!」


海原に響き渡った声に逸早く新鋭がその眼差しを向けて忌々しげに睨み付ける。

編隊を成して新鋭達の前に、ついに榛名達主力艦隊が追いついた。


ピーコック「……遅いのよ、このノロマ」

リコリス「貴女……まさか、ピーコックなの…!?」

提督「随分とスッキリしたじゃないか、ピーコック。正直驚きだ…っていうより、色白は変わらんな?」

ピーコック「うるさいっ!」

提督「へぇへぇ…それよりもイムヤたちの件、感謝する。それも含めて、ここからは俺たちも加わろう」

ピーコック「」ニコッ…

新鋭「次から次へと、よくもまぁこうも邪魔してくれるわね…提督大佐」

提督「どうもそういう星の下に生まれたみたいでして、新鋭『中将殿』」

新鋭「口の減らないクソガキが…そのふざけた口を今度こそ閉ざして上げるわ」

提督「ふざけてるのはそっちでしょう。ガキじゃあるまいし、癇癪起こしていい年した年増ババァがピーピーと耳障り極まりないっすよ。躾け、し直して上げますよ。海軍式でね」

榛名CL「…新たに敵を確認しました」

??「…目障りね」

駆逐棲姫「新手…?」

水鬼「ソウみたいね」

フェアルストCL「ならば殲滅スルのみダ」

レ級EL「纏めて食い散らかしてやるッ!」

651 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/28 23:27:45.11 qFKmiIkno 369/430

-決戦-

榛名「わた、し……?」

飛龍「あっちの袴姿のって、加賀…!?」

榛名CL「標的、確認しました。榛名、全力で参ります」ジャキッ

加賀CL「鎧袖一触よ。全てを薙ぎ払ってあげるわ」サッ


フェアルストCL「沈みたいヤツから掛かってキナサイ」

リコリス「つれナイ台詞ネ」

ピーコック「貴女と私じゃ艤装が被ってるのよ。不得手になるんじゃないかしら?」

リコリス「アラ、そうでもナイかもしれないジャナイ?それにシテも、貴女…」

ピーコック「何よ…」

リコリス「艦娘になってるのはいいとして、その服装は変わらないのね」

ピーコック「……気に入ってるのよ。どーだっていいじゃない」


レ級EL「選り取り見取りだなぁ、どれから食おう……」


ボゴオォォォォン


レ級EL「ッ…!誰よ!」

長門「挨拶代わりだ。邪険にせず受け取っておけ」

レ級EL「お前……!」

長門「いや何、どうもその顔を見ると力が入ってしまってな。否が応でも、胸が熱くなるっ!」


水鬼「ワタシの相手はダレなのカシラ?」

木曾「そう喚くなって、きっちり三枚に卸してやるからよ」

那智「俗物め…貴様に先は無いと思え」

水鬼「たかが雷巡と重巡ノ二人で、ワタシを倒す気デいるの?」

木曾「おいおい、算数もできねぇのか?」

神通「……軽巡では数にも入りませんか」

水鬼「フッ…ハハハッ!いいえ、アナタ達のコトはシンエイから聞いてるモノ…間合いノ取り方、立チ振ル舞イ…ホント油断も隙もナイわね」

那智「で、潔く雷撃処分を受けるか否かだが…」

水鬼「フフッ…空爆ノ嵐デ、即鉄屑に変えてアゲルわ」


駆逐棲姫「……」

川内「いやぁ、随分と他とは違って大人しい深海棲艦だねぇ」

駆逐棲姫「…ダカラ、軽巡と駆逐艦デモ大丈夫、トデモ思った?」

Bep「……」

夕立「……」

駆逐棲姫「認識ヲ改メテ…死んで?」

Bep「イムヤ達のやられた分はキッチリ返すよ」

駆逐棲姫「……?」

夕立「悪夢を見せて上げるって事っぽい!」

駆逐棲姫「ハァ…無駄なのに…」

656 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/29 20:54:28.28 o+xMsSm1o 370/430

提督「……」

新鋭「手間が省けたわ。何かとチョロチョロ嗅ぎ回ってくれて、目障りだったのよ」

提督「嗅ぎ回るだなんて人聞きが悪いっすね。散々人の古傷や大事なものを穿ったり穢したり、やりたい放題してくれた人が言う台詞とは思えませんよ。艦娘を使った非人道的な人体実験、人間を使って深海棲艦の細胞とを組み合わせる生体研究…その過程で恐らくは生まれたであろう戦艦レ級…」

新鋭「それを私がやったであろう事を裏付ける証拠でもあるのかしら?」

提督「残念ながら自ら順次綺麗にお掃除してくれてなぁんにも残ってませんよ。貴女と言う存在以外にはね」

新鋭「私の自白頼み?あははははっ!馬鹿じゃないの…例えそうだとしても言う訳ないでしょ」

提督「言い回しが一々芝居がかってるのが癇に障りますね」

新鋭「…なんですって?」

提督「つまりお互い様ってことでしょ。あの時の借り、ここできっちり返しますよ」トントンッ


三度に渡り見えた提督と新鋭。

一度目は大本営で、二度目は鎮守府で、そしてこれが三度目にして最後。

提督は以前に新鋭に切り付けられた肩を自らの拳で叩いて示す。


提督「海軍艦娘運営法に基く違反行為第一条、叛乱罪」



党を結び艦娘を兵器として執り叛乱をなした者は次の区別に従って処分される。一つ、首魁・死刑。一つ、本来の目的とは異なり明らかな叛乱の意図が認められる謀議に参与し、またそれに伴い艦娘を先導・誘導しこれを指揮した者は死刑・無期、または五年以上の懲役。または禁錮とする。

また叛乱をなす目的で党を結び兵器、資材その他艦娘に供する物を却掠した者は、上の例に同じく処分される。

上の罪の未遂も罰せられ、また予備、陰謀は一年以上の有期の懲役または禁錮。予備、陰謀をなした者が未だ事を行なわない前に自首したときはその刑を免除される。

また、海軍における鎮守府、艦娘、資材、弾薬その他軍用に供する場所、建造物その他の物を掠奪・破壊・間諜する及びそれに当たる幇助をした場合、これらの行為をなした者は死刑。

(一部文章を Wikipedia:反乱罪 の頁より抜粋、文字を一部変更して掲載)
(※当然ながら存在・実在しない刑法です)


新鋭「…くだらない」

提督「建前ですよ。貴女を俺は決して殺さないし、死刑にもさせない」

新鋭「なんですって…?」

提督「皆が苦しんだ分、きっちり苦しみ抜いて貰わないと気が済みませんからね…」ニヤッ…

新鋭「この、クソガキ……ッ!」

657 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/29 21:18:47.82 o+xMsSm1o 371/430

-川内・夕立・Bep vs 駆逐棲姫-

駆逐棲姫「やらせは…シナイよ…ッ!」ザッ

川内「こいつ…!」

夕立「は、速い…!」

Bep「くっ…」

駆逐棲姫「落チロッ!」ドン ドン


駆逐棲姫には足がない。

それを補うようにして下半身は太ももから下が深海棲艦のパーツで補われ、返ってそれが俊敏な動きを更に上げていると言っても過言ではなかった。

しかもそれだけ速く動きながら射撃の腕も殆どブレない。

棒立ちでは確実に蜂の巣にされる。


ザバアァァァァン ザバアァァァァン


川内「くっそ…!」

Bep「私が引き付ける」

夕立「左右から同時に行くっぽい!」サッ

Bep「了解だよ」サッ

駆逐棲姫「ドンナ手でこよウト、同じダヨ」サッ


川内を正面に残し、夕立とヴェールヌイの二人が左右に分かれて展開する。


川内「よし、行くよ!」ジャキッ

夕立「うんっ!」

Bep「いつでもいける」

駆逐棲姫「小賢シイ…!」


ドン ドン


駆逐棲姫「コノ…程度…ッ!」サッ グッ


ボボボボボンッ



658 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/29 21:35:29.51 o+xMsSm1o 372/430

前後の緩急だけで川内の一撃をやり過ごし、駆逐棲姫が前傾姿勢を取る。

力を溜めて、蓄積された力をバネに変えて一気に間合いを詰める作戦だ。


ボボボボォォンッ ザバアアァァァァァン


駆逐棲姫「……ッ!?」


飛び出そうとしたまさにその時、前方に砲撃が着弾して大きな水飛沫を生み出す。

更に真横からヴェールヌイが主砲を構えて躍り出す。


駆逐棲姫「キサマ…ッ!」

Bep「ウラー!」ドン ドン

駆逐棲姫「くっ…!」サッ


咄嗟に両腕を交差させて衝撃に備える。


ボゴオオォォォォン


至近距離からのヴェールヌイの一撃、手応えはあったと彼女自身も確信を得る。

しかし、それら自信を覆すが如く、多少の擦り傷程度と言わんばかりの姿で駆逐棲姫は爆煙の中から姿を現す。


駆逐棲姫「…種別が同じダカラって、キミ達みたいなのと一緒にサレるのは心外ダヨ」 被害軽微

Bep「なっ…!」

夕立「それなら…!」バッ


反対方向から猛進する夕立は両手に持つ魚雷を同時に海面に向けて放つ。

それと共に艤装を持ち替え、主砲を駆逐棲姫へ差し向けた。


夕立「夕立の戦い、見せて上げる!」ジャキッ

駆逐棲姫「敵わナイと解っててクルの?ただの馬鹿ネ」


ドン ドン


主砲を撃ちながら夕立は左右に身を揺さぶりながら相手の照準を外す動きで駆逐棲姫へ迫る。


ボボボボンッ


バシュンッ……ボゴオオォォォン



659 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/29 21:53:43.43 o+xMsSm1o 373/430

夕立の砲撃を片手で蹴散らし、海面から迫る無数の魚雷を身体を逸らして回避する。

空中へと姿を現した魚雷は停止した宙で大爆発を起こし、辺りに熱風を奔らせる。

駆逐棲姫はそれを物ともせずに態勢を正して身体ごと夕立に向き直る。

しかし速度を緩めない夕立の姿勢に、初めて駆逐棲姫の顔色に変化が生まれた。


駆逐棲姫「接近戦…!?」

夕立「夕立、突撃するっぽい!」

川内「…あいつの装甲、伊達にお姫様名乗ってないね。私達の中距離からの砲撃じゃビクともしなそうだ」

Bep「川内や私達駆逐艦の十八番まであと少しだよ」

川内「相手にとっても条件は一緒…なら、やる事は一つだね」

Bep「了解だよ」ザッ

駆逐棲姫「コイツ等…!」


夕立に続きヴェールヌイもその距離を一気に詰めて接近戦に持ち込む。

左右に夕立とヴェールヌイ、正面に川内。

その陣形は崩さず、間合いだけを徐々に狭めていく。


駆逐棲姫「鬱陶シイ…ッ!!」ドン ドン ドン ドン


バシャアアァァァン ボボボボンッ


これ以上の接近を許すまいと周囲へ向けて駆逐棲姫が一斉射を行うが、それを掻い潜り更に三人は間合いを狭める為に接近を試みる。

危険を犯してまでそうするのには幾つかの理由がある。

一つは駆逐棲姫の尋常じゃない装甲。

戦艦クラスに匹敵する装甲を持つ駆逐棲姫を相手に、中距離からの軽巡、駆逐艦の砲撃では決定打を与えれないと三人は気付いたのだ。

残弾がなくなるまで撃ち続けようと、これでは付け焼刃でしかない。

更に駆逐艦特有の俊敏な身のこなし。

単発で捉えた所で先の装甲が理由となり決定打には程遠くなり、かといって無闇に近付けばあの瞬発力から繰り出される攻撃や砲撃に一溜まりもない。

確実に沈めるにはどうすればいいか……そこに至って最後の一つ、それが夜戦だ。

闇に乗じ、死角を衝いての強襲作戦。

大物食いを成すには度胸と覚悟、それを行う絶好のタイミングを判断する決断力が物を言う。

彼女達にとってそのタイミングは夜戦以外にありえない。

今は夕刻手前、地平線に太陽が沈みかけて間も無く辺りを照らすオレンジの光が閉ざされる。

太陽の加減を見て、川内の眼がスッと細く鋭くなる。

余分な音が排除され、神経が研ぎ澄まされていく。

川内は以前提督に何故夜戦に拘るのか、と聞かれた事がある。

身内の演習で羽黒にはそこで活躍の場を見出すためだと答えた彼女だったが────

660 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/29 22:47:13.32 o+xMsSm1o 374/430

提督「よくこんな暗い中で的確に動けるもんだな」

川内「探照灯や照明弾使えばもっと命中率上がるよ!」

提督「ホント、お前等姉妹は特異だな」

川内「へ?」

提督「神通といい、お前といい…俺から見ると、どうにも元気が空回りしているようにしか見えないんだがな…」

川内「何それ…」

提督「色々、って言っても大したもんじゃないが、ここに来る前にも何人か軽巡型の子たちには会った事がある。勿論、夜戦が得意だって子も居たは居たが…正直、お前は異常だ」

川内「……」

提督「で、色々と考えてお前たちを観察してて辿り着いた一つの結論だがな……献身、だろ?」

川内「ぇ……?」

提督「なんだ、自分で気付いてないのか。お前は仲間や妹の神通を守る為なら喜んで前に出る。中でも夜戦はその行為を最大限に生かせるお前の土俵だ。先陣を切って自ら的になり、自らの手で制圧する。以前に金剛たちと戦ったときの神通もそうだった。だが神通の場合は献身なんて生易しいものじゃない…あいつは、自らを犠牲にすらする。境遇が反転してそうさせているのかもしれないな。今まで役に立てなかった、役に立てないって思ってきた自分がやっとその意味を見出せた。だからこその犠牲…」

川内「はは…そんな風に、考えた事もなかったよ。純粋に、私は夜戦が好き…って、思ってただけなんだけど…」

提督「まぁ、そうだろうな。献身的で犠牲的、姉と妹でこうも違うもんなんだな。お前は全て自分で成そうと、周りを傷付けさせまいとし、神通は己の身を楯にしてでも全てを守り抜こうとする」

川内「……」

提督「一つの信念を括った奴は本当に強い。その信念を圧し折ろうと思ってもこっちが生半可な覚悟じゃビクともしないからな。けどな、覚えておいてくれ。一人で抱えれる量には限界がある。だから、周りを見ろ…お前の周りには多くの仲間が居るはずだ。だから分担して皆で抱えろ、支えろ、補い合え。そうすれば、今よりもっとお前は輝ける」


丸い太陽が地平線の向こう側へ沈み、辺りを闇が覆い始める。

三人が三人とも散開して照準を絞らせなかったのが功を奏し、ほぼ万全に近い態勢でこの瞬間を迎えられた。

川内の口角が薄っすらと釣りあがり、細めていた眼は限界まで見開らかれる。

この瞬間より、彼女達の作戦が開始される。夜戦強襲。

661 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/29 22:59:07.68 o+xMsSm1o 375/430

川内「────さあ、私と夜戦しよ?」サッ

夕立「ソロモンの悪夢、見せてあげる!」バッ

Bep「信頼の名は伊達じゃない。追撃する!」スッ

駆逐棲姫「……!マサカ、夜戦に持ち込むタメに…!」


一斉に闇に乗じ、三人の姿がそこから忽然と消える。


パッ……パパパッ


そんな中、一箇所に明かりが灯る。


駆逐棲姫「馬鹿メ、そこか…!」ドン ドン


ボボボボボンッ


探照灯による明かりを頼りに駆逐棲姫が砲撃するも、それはあっさりと回避される。


パァァァァン


駆逐棲姫「クッ……な、今度ハ一体…!?」


探照灯の明かりが消えた直後、今度は自身の周囲に明かりが灯る。

その明かりの切れ端に一瞬、夕立の姿が映るが明かりは直に消えて辺りには再び闇が広がる。

そしてその直後、何処からともなく声が響く。


──夜はいいよねぇ、夜はさ──


駆逐棲姫「……ッ!ドコから…!」


カカカッ


駆逐棲姫「……ッ!」


ボゴオオォォォォン


駆逐棲姫「ウグッ…!」 小破


飛び道具として改良された投擲型の爆雷。

川内が最も夜戦で愛用する固有の艤装だ。

665 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/30 21:05:15.56 XSxe8N1lo 376/430

川内「条件は五分と五分…けどさ、この領域じゃ私は絶対に負けない。負ける訳にはいかないんだよ。この身を盾にしてでも守りたい仲間が居るから…!誰一人、私の前じゃやらせないよ!」

駆逐棲姫「キサマァ…!」


ボゴオオォォォォン ボゴオオォォォォン


駆逐棲姫「グッ…!」 中破

夕立「守られてるばかりじゃないっぽい。駆逐艦だって、私たちだって意地がある!」

Bep「守ってもらってばかりじゃないさ。私たちだって、守ってみせる!」

駆逐棲姫「何故、コウモ狙い違ワズ、こちらヲ……」

夕立「気付けないならそれまでよ。さぁ、素敵なパーティしましょう?」バッ

Bep「君を沈める」サッ


闇の中、声だけのやり取りが終わり二人の気配がその場から消える。

ここまで駆逐棲姫が混乱を見せたのは幾つかの理由があった。

一つは夕刻から夜へと変わった直後、眼が慣れきってないところ、その直後にヴェールヌイが探照灯を使い明るさを誤魔化し、闇の深さを増加させた事。

厳密には駆逐棲姫の眼を即座に闇に慣れさせない為の囮だ。

更にそこから夕立が照明弾を発射し、駆逐棲姫の場所を明確にする。

極め付けが川内の放っていた夜間偵察機だ。

これの援護も手伝って、川内は駆逐棲姫の居場所をキッチリ把握した上で投擲型爆雷を放つ事が出来たのだ。

そして、その恩恵は既に闇に眼の慣れた三人を更に後押しする。


ザァァァァァ……


駆逐棲姫「」(音…これハ、波ノ音…クルッ!)


ビュオッ


駆逐棲姫「え……?」


駆逐棲姫の横を凄まじい速度で何かが過ぎ去る。

しかし未だ闇に眼の慣れない彼女はそれが何なのか認識すら出来ずに小さく声を漏らすだけだった。

そしてその直後、耳元で聞こえた声に駆逐棲姫の動きが止まる。

666 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/30 21:19:10.58 XSxe8N1lo 377/430

夕立「まず何から撃とうかしら?」

駆逐棲姫「ッ!?」バッ


一瞬の硬直の後、咄嗟に身を翻し声のした方からは遠ざかるように間合いを取ろうと動き出す。

しかしその先に待ち受けているのはヴェールヌイ。


Bep「無駄だね」ドン ドン

駆逐棲姫「ナッ…!?」


ボゴオォォォォン


駆逐棲姫「ガッ……くっ、コノ、程度…ッ!」 中破

夕立「ごめんね。けど、私達も負けられないっぽい」ジャキッ

駆逐棲姫「勝った気に、ナルナッ!!」ジャキッ


ドン ドン ドン ドン


互いの砲撃音が重なり、暗闇に一瞬火花が散る。


ボゴッボゴオォォォォン


二つの砲撃音が重なり合い、再び互いの周囲を一瞬照らし出す。


夕立「くっ…!ハンモック張ってでも、戦うよ!」 中破

駆逐棲姫「痛いじゃ、ナイカ…ッ!」 大破

Bep「なんてタフなんだ」

駆逐棲姫「マダだ…こんな、ワタシは…こんな場所デ、沈まナイ…ッ!」

667 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/30 21:29:29.82 XSxe8N1lo 378/430

川内「悪いけどここまでだね。私達もさ…ここで躓く訳にはいかないんだよ」チャキッ


ザァァァァァァ……


駆逐棲姫「姿が、見えナクても…音で位置ナラ、解る…!」バッ

川内「それだけで夜戦を語ってもらっちゃ困るなぁ」サッ

駆逐棲姫「落チロ!落チロッ!!」ドン ドン


ヒュン ヒュン……ボゴオオォォォォン


駆逐棲姫の放った砲撃は空を切って何もない海面を叩き割る。

その一瞬を衝いて川内は爆発音に乗じ駆逐棲姫の背後に回り込む。

だがその気配を察してか、駆逐棲姫は敢えて振り向かずに口元だけを釣り上げて静かに笑う。


川内「……!」バッ

駆逐棲姫「……ワタシが気付いてナイとでも、思ってイタのかッ!!」クルッ ジャキッ

川内「…気付いてるのは解ってたよ。カウンターって奴さ!」グッ


ドン ドン ビュッ…ジッ


ボゴオオォォォォン


駆逐棲姫の砲撃直後、まさに砲撃が放たれたその直後、身を捻って川内は射線軸を逸らし紙一重でその砲撃を回避する。

そして突進の勢いは殺さないまま、すれ違い様に進行方向に背を向ける様に更に身を捻って手に構えていた魚雷をそのまま直接、駆逐棲姫へ向かって放った。


ヒュッ…


駆逐棲姫「…!?か、かわシタのかッ!?バカな……」


ガッ…


駆逐棲姫「ハハッ…冗談、デショ…」

川内「悪いね、終わりだよ」

668 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/30 21:30:02.35 XSxe8N1lo 379/430



ボゴオオォォォォォン


ザザザッ


駆逐棲姫「……クッ……」


サァァァァ……


川内「月…?」

夕立「わあ…」

Bep「…ハラショー」


戦闘の終わりを告げるかの様に、雲に隠れていた月が辺りを仄かに照らし出す。

ボロボロになりながら、静かに沈みゆく駆逐棲姫はただ静かに天を仰いで空に遍く星々と月を見上げる。


駆逐棲姫「アァ……ツキガ…月が、きれい……」

川内「…ごめんよ」

夕立「せめて、安らかに眠って欲しいっぽい」

Bep「…ダスビダーニャ。また、いつか…」

669 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/30 22:16:11.04 XSxe8N1lo 380/430

-木曾・神通・那智 vs 空母水鬼-

木曾「イムヤ達を『カンゲイ』してくれたそうじゃねぇか」

水鬼「アァ、あの潜水艦娘達?バカよねぇ、潜ってレバ良いのに、ワザワザ出てクルんだから…」

神通「彼女達の抱いた無念の分、清算させて頂きます」

水鬼「出来ルノ?脆弱な艦娘風情ガ…」

那智「脆弱かどうか、貴様の身をもって知れ」

水鬼「生意気ネ。そう言えば、ピーコックも何かヘンな言い方シテたわネ。未来がどうトカ…その先へアナタ達も進みたい…ノカ?」

那智「ふん、私はただ眼前の敵を撃ち滅ぼすのみだ」

木曾「ああ、てめぇにきっちり落とし前付けた上で俺達は先へ進むぜ」

神通「出し惜しみはしません」

水鬼「そう……ナラ、やらせは…シナイヨッ!」バッ ヒュン ヒュン ヒュン

那智「制空権は無理だ。迎撃しつつ、空と海、両方に注意を向ける必要がある」

木曾「わーかってるよ」

神通「きます!」


バッ


三人は空母水鬼から放たれた艦載機に合わせて一斉に動き出す。


木曾「対空は任せろ!俺が迎撃する!」

那智「ふん、ならばやってみせろ!」

神通「お願いします!」

水鬼「朽ち果てルトいい…空爆ノ雨に全て焼かレテナッ!」


ブゥゥゥゥゥゥン……


木曾「へっ…別に騒ぐほどのこともない。俺は球磨型の木曾だ…俺の前に立ちはだかるヤツは容赦しねぇ」ジャキッ

那智「いくぞっ!」

神通「はいっ!」

木曾「うおらあぁぁぁぁぁっ!!」ダダダダダダダダッ

670 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/30 22:27:33.65 XSxe8N1lo 381/430



ボボボボボボボボン


無数に飛来する空母水鬼の艦載機に木曽が対空砲火を浴びせかけ、それを合図とする様に両左右から那智と神通が空母水鬼へ向けて駆け出す。


水鬼「ホラッ、撃ち漏らしヨ!」ヒュン ヒュン

那智「小賢しい!」

神通「押し通ります!」


ボゴオォォォン ボゴオォォォン


空爆の降り注ぐ中、那智と神通は左に右にと巧みに舵を取りながら速度を落とさず空母水鬼へ迫る。


那智「落ちろ!」ドン ドン

神通「そこです!」ドン ドン


間合いに到達すると同時に、二人の艦娘は声を揃えて同時に砲撃を開始する。


ヒュン ヒュン


ボゴオオオォォォォン


那智「なっ…!」

神通「そんな…」

水鬼「モノは使いよう、デショウ?」


避ける動作を微塵も見せないかと思えば、空母水鬼は自ら生み出した艦載機自身を盾代わりに砲弾の真っ只中へ発艦させて砲弾に直撃させて誘爆、荒い手法で那智達の砲撃を制圧する。

その所業、まさに鬼。


那智「下衆め…」

水鬼「褒めテルのカシラ?」

神通「……」

水鬼「さぁ、次のに対処ガ出来るカシラ」ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

那智「…木曾っ!」

木曾「っせー!やってやる!!」ジャキッ

水鬼「死になサイッ!」バッ


対空に備えて木曽が再び無数に空を舞う空母水鬼の艦載機を睨みつける。

だが次の瞬間────

671 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/30 22:39:34.70 XSxe8N1lo 382/430

神通「木曾さんっ!!」ダッ

木曾「……っ!」

水鬼「馬鹿面下ゲテ、そのまま沈みナサイッ!」ジャキッ


上空に注意を逸らされた木曾の眼前に空母水鬼が迫り、玉座のような深海棲艦特有の黒塗りの艤装、その砲塔が木曾に差し向けられる。


木曾「こいつ、砲撃も…っ!」

水鬼「サヨウナラ」ドン ドン

神通「…させません!」ビュッ


空母水鬼の砲撃とほぼ同時に互いの間に割り込んだ神通が眼にも留まらぬ速さで腰に下げた武刀剣を一閃させる。

空母水鬼の放った砲撃、その全てを神通は捌いて対処する。


水鬼「ナッ…!?」


ボボボボボンッ


木曾「神通…」

那智「馬鹿共が…っ!」ダッ

水鬼「小賢シイ真似ヲ…けど、何か忘レテるんじゃナイかしら」ニヤッ…

木曾「…ッ!避けろっ、神通!!」

神通「……っ!」

水鬼「纏めて沈みナサイッ!」


ボゴオオオォォォォォォォォン


水鬼「フフフ…アハハハハッ!馬鹿ナ連中ね」

675 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/31 17:25:36.64 4BpBRiSho 383/430



──これくらいの傷……なんてことは、ない──


水鬼「……ッ!?」


爆煙の中から響く声、やがて風に流され爆煙が吹き抜けて消え去った後には無傷の木曾と神通、そしてその二人を守るように、前面に出て堪えた那智の姿があった。


那智「…詰が、甘かったな。深海棲艦…っ!」 中破

神通「那智さん…!」

木曾「お前…」

那智「……つくづく、貴様らの言う守るの意味が、私には理解しかねる。どれだけ守ろうと最後に立っていなければ無意味だろう…何故、貴様らにはこんな真似が幾度も成せる……」

神通「一人で立てないなら、支えてもらえば良いじゃないですか」

那智「何…?」

木曾「その為の『戦隊』だろ。もっと仲間を信じろ。てめぇのケツ持ちくらい、何度だって請け負ってやる」

神通「ここからです」

木曾「あぁ、こっからだ。俺達の戦闘ってヤツをあいつに教えてやろうじゃねぇか」

那智「……ふっ、はは…そうか。なるほど…嫌いでは、ない。こういうのも、悪くはないものだ…」

神通「ふふっ」ニコッ…

木曾「へっ、素直じゃねぇヤツだぜ」ニヤッ

水鬼「目障リナ…」

木曾「神通、あいつの艦載機をまともに相手してたら日が暮れる。が、放っておくワケにもいかねぇ」

神通「武刀剣の破壊力なら、とも思いましたが…生憎あちらは間合いを取るのが上手です」

木曾「だろうな。けど、予想外の事態が起きればそれも狂うってもんだ」

神通「え?」

木曾「お前の武刀剣、俺に預けてくんねぇか。必ず役立てる」

神通「それは、構いませんが…」

木曾「んじゃ、説明する────」

676 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/31 17:26:48.77 4BpBRiSho 384/430

北上「いいかい、木曾っち。頭はクールに、心はホット、だよ!」

木曾「んだよそのマンガみてぇな台詞はよ!」

北上「え、マンガの受け売りってよく解ったね」

木曾「まんまかよ!馬鹿なのか、てめぇは!?」

北上「まぁ聞きなって。案外私達には当てはまる言葉だったりするんだよね~」

木曾「ああ?」

北上「ほら、うちらって何だかんだで結構装甲はうっすいじゃない?」

木曾「ん、まぁ、な…」

北上「戦艦は愚か空母系や重巡、下手すりゃ軽巡の一撃やなんかでも結構怖いわけさ。だから、考えんのよ」

木曾「考えるだぁ?」

北上「そっ、どうしても劣っちゃう部分はあるわけだしさ、だったらその分は頭でカバーだよ、木曾っち」


木曾「────ねぇ頭で考えた策だ」

神通「…………」

木曾「伸るか反るかは任せる。失敗すりゃ俺らはお釈迦だ。少なくとも俺ぁ確実にやられちまう」

神通「ここまできて、伸るか反るか、なんて聞くまでもありません」

木曾「ははっ、野暮だったか。じゃ…頼むぜ、相棒」

神通「木曾さんの進む道、私が切り開きます」

那智「勝手に、話を進めるな…」

木曾「おまっ、無茶するな!」

那智「ほざけ…命を懸ける作戦に掛かろうとしてる仲間を、そのまま見す見すいかせるものか…!」

神通「那智さん…」

那智「新鋭に騙され沈んでいった同胞は少なくない…ここで、出ずして何が仲間だ!」

木曾「…だよな。ああ、その通りだ!俺ら三人、一蓮托生!やるなら三人、全員でやり遂げるっきゃねぇよな!」

那智「当然だ…!これは、この戦いは仲間たちの仇だ!追撃する!」

神通「はい…!」

水鬼「コソコソと…死ぬ順番デモ決めていたのカシラ?」

木曾「バァカ。てめぇを仕留める段取りとトドメ誰が刺すかで揉めてたんだよ。塩水で首でも洗って待っとけ!」

水鬼「…笑えナイ冗談はキライなの。死になサイ」ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

那智「いくぞっ!砲雷撃戦、用意!!」

水鬼「お前達如きノ砲雷撃ナド、恐れるコトなど何モない!」

神通「次発装填済みです。これからです!」

木曾「言ってろ。てめぇに本当の戦闘ってヤツを、教えてやるよ!」

677 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/31 17:27:36.41 4BpBRiSho 385/430



ドン ドン ドン ドン


那智の構えた主砲は空母水鬼を狙いに収め、微塵もその砲塔はブレずにピッタリと止まる。

そして木曾の咆哮と共に那智の手にする主砲が火を吹いた。

それに合わせるように空母水鬼の艦爆艦攻隊による空からの攻撃も開始される。

そして木曾と神通はそのどれにも気を取られず、ただ真っ直ぐに空母水鬼へ向けて進路を固定する。


水鬼「アハハハッ!味方を見捨てて、神風特攻デモ仕掛ける気ナノ!?」ヒュン ヒュン

木曾「……!」

神通「……」

水鬼「マダマダ……何度だって艦載機ハ放てるワ。無残に朽ち果てナサイ!!」


ボゴオォォォォン ボボボボボンッ


木曾「ちっ」

神通「…っ!」

水鬼「沈メッ!沈メッ!!」ヒュン ヒュン


ブゥゥゥゥゥゥゥン……


木曾「」(くそっ……俺の、俺の考えが甘かったのか…!)チラッ…


小さく頭を振って併走する神通を見やると、彼女は一瞬だけその視線に気付いて小さく笑って頷く。

その笑みと『大丈夫』という肯定を示す頷き、これだけで揺らぎ掛けた木曾の考えは再び礎を得て強く立つ。

その直後、後方から後押しする声と砲撃音が木霊した。


ドン ドン


ボゴオオォォォォォン


那智「進めッ!貴様たちの道、この那智が必ず切り開く!!」

神通「…そうです。そして私が、木曾さんが行く先を切り開きます!」グッ

水鬼「シブトイわね…!」ヒュン ヒュン

神通「この程度の苦難、何度だって超えて見せます!」バババッ

水鬼「ナッ…!?」(何だ、コノ艦娘の動きは…ソレニ……アノ、構えハ…)

神通「この戦いに、終止符を打ちます!」ビュッ


神通の構えは居合いのそれ。

しかし、武刀剣を振るう間合いでもなければ肝心の物は木曾に貸し与えている。

そう、神通が手にしているのは魚雷の発射管。

その動きに完全に虚を衝かれた空母水鬼は判断が遅れる。

678 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/31 17:28:06.36 4BpBRiSho 386/430

水鬼「何か、クル…!?」


カッ


水鬼「バカな…!コイツ、魚雷ヲ……」


ボゴオオオォォォォォン


水鬼「グッ……!」 小破

那智「よしっ!」

水鬼「小賢シイッ!!」ヒュン ヒュン

神通「…っ!」


ブゥゥゥゥゥン……ボゴオオォォォォン


木曾「……ッ!」

神通「まだ、です…!まだこれからです…!!」 中破

水鬼「チィッ…!」

木曾「やっと…」

水鬼「クソッ…!」

木曾「ご対面だな────」


木曾「────至近距離まで近付けりゃ正直な所、打つ手はあると思う」

神通「ですがそれが至難です。制空権は十中八九向こうにあります」

木曾「あぁ…だから、悪ぃ…空爆を出来る限りひきつけて欲しい」

神通「…全く、突拍子もありませんね」

木曾「お前の速度で近付いてこられたら、あいつもお前に意識が集中すると思うんだ」

神通「その隙に側面から木曾さんが接近し、肉薄…武刀剣と砲撃の嵐を見舞うという事ですね?」

木曾「あぁ、完全に接近されたとなりゃあ、お前への艦攻艦爆も発艦させてあるもののみになる。お前も一気に近付いてきたら完全にこっちのもんだ」

神通「憂いは…」

木曾「あぁ、艦攻艦爆の嵐を切り抜けれるか…でもって、意表を衝いた砲撃…隣接出来ても正直気は抜けねぇ」

神通「けど、このまま手を拱いている訳にも参りません」

木曾「ああ、やる価値はあるって思ってる。ねぇ頭で考えた策だ」

神通「…………」

木曾「伸るか反るかは任せる。失敗すりゃ俺らはお釈迦だ。少なくとも俺ぁ確実にやられちまう」

神通「ここまできて、伸るか反るか、なんて聞くまでもありません」

木曾「ははっ、野暮だったか。じゃ…頼むぜ、相棒────」


木曾「────恩に着るぜ、相棒共…!」スラッ…

水鬼「まだ…ッ!」ジャキッ


ズバッ


水鬼「ナッ…!?」

木曾「させっかよ。お前等と背負ってるもんがこっちはダンチで違ぇんだ。悪ぃがこっからは俺の独断場だ」

679 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/31 17:28:39.39 4BpBRiSho 387/430

水鬼「ナメるな…!」

木曾「舐めちゃいねぇよ。だからてめぇの命を仲間に託すんだろうが…!言っとくが、この距離だったら否が応でも外さねぇよ」

水鬼「バカが…!」ニヤッ ジャキッ

木曾「…ッ!」


ボンッ


神通「…っ!木曾さんっ!!」

那智「っ……!」


至近距離から木曾の死角になる部分より放たれた空母水鬼の一発の砲弾は木曾を直撃する。


ブンッ…


しかし、先に抜いた武刀剣とは別にもう一本、神通から預かり受けた武刀剣を抜き放ち、額から流血しながらも木曽はその眼を真っ直ぐ空母水鬼へ向ける。

砲撃による衝撃でいつも隠している右目の眼帯も破け散り、その瞳が露になっている。


木曾「くくっ…ちょっとばかし涼しくなったぜ。けどなぁ……やれ滑走台だ、カタパルトだ、そんなもんはいらねぇな。戦いは、こうやって…敵の懐に飛び込んでやるもんよ。なあ?」ニヤッ… 中破

水鬼「寄ルナ…!」ブンッ

木曾「っと…へへっ、そうは問屋が卸さねぇってな」キンッ

680 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/31 17:29:07.75 4BpBRiSho 388/430



両手に携えた武刀剣を目の前で交差させ、木曽が不敵に笑う。


木曾「なぁ、提督。武刀剣なんだけどよ、これ俺専用なんだろ?」

提督「ああ、夕張がお前に神通に利根に川内に、それぞれ長さ重さを調節して造った文字通り特注品だ」

木曾「そんじゃやっぱ他人の武刀剣借りるってワケにもいかねぇかー」

提督「はぁ?」

木曾「いやな?結構、この俺用にカスタマイズしてくれた武刀剣軽くてさ。この重量だったらちょいと魚雷管をいくつか取っ払っちまえばもう一本持てっかなー、とか思ったワケよ」

提督「二刀流ってことか」

木曾「おう!」

提督「お前が言うほど二刀流ってのは簡単なもんじゃないぞ」

木曾「ああ?そうなのか?」

提督「まずは単純に刀を片手だけで安定させれるだけの筋力が必要だ。そして両手で構えるのとは違い、一発毎に隙も生じやすい。それを補うためにもう片方の刀で追撃・防御と言った所作を考えて動かさなきゃならん」

木曾「なるほどねぇ…」

提督「二刀流に興味があるのか?」

木曾「んー、いやそういうワケじゃねぇんだけど、二本あったらつえーかなーって」

提督「ったく、お前はホント単純だな。それにしても…」クスッ

木曾「な、なんだよ!」

提督「いや、口の悪さとは裏腹に随分と食べてる物は女の子してるじゃないか」

木曾「っ~~~!うるせぇ!///」

提督「甘いの苦手じゃなかったのか?」

木曾「き、北上に押し付けられたんだよ!物は粗末にするんじゃねぇって伝えとけ!くそっ、甘すぎる!甘すぎて反吐が出るぜぇぇぇっ!!」

提督「…滅茶苦茶美味そうに食べるな」


木曾「やっぱデザートはチーズケーキに限るかぁ…へへっ、尚更こんな海のど真ん中で死んでらんねぇわ」

水鬼「ソンナ鉄のガラクタで何ができる…!」

木曾「てめぇを三枚に卸すくらいはできんじゃねぇかな。その掻っ捌いた艤装みてぇによ」

水鬼「キサマァ…!」ギリッ…

木曾「らぁっ!!」ブンッ

水鬼「クッ…!」サッ

681 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/31 17:29:34.56 4BpBRiSho 389/430



バババッ


身体を捻り、回転するようにして両手に持った武刀剣を振り回しながら木曾が空母水鬼へ斬りかかるが、それをなんとか空母水鬼は身を捩ってかわす。

さり気無く提督に相談をしてから今に至るまで、木曽はあらゆる重さの刀を実際に持って訓練を重ねた。

木曽は自身の性格をよく自覚していた。

まずは型に嵌った基本的な動作が疎かになりやすい事。

故に元となる型が存在するような構えを余り好かない。

神通のような居合いの構え、利根のような刺突の構え、どれも真似ては見たものの自分にフィットしなかった。

そして木曾なりに、どんな構え、どんな持ち方、どんな方法が自分にしっくりくるのか研究に研究を重ねた。

そして得たのが今の構え。

利き手となり力も入る右は順手、力はそれほどでもないが器用に扱える左は逆手に持つ型。


木曾「いくぜ?」ニヤッ


一拍置いて不敵に笑った木曾が海面を強く蹴り、空母水鬼の間合いに深く踏み込む。

それを空母水鬼は迎撃しようと迎え撃つ。


水鬼「寄るナァァァッ!!」ドン ドン


サッ スパァァン…


ボボボボン


木曾「狙ったら外さねぇ!」バシュンッ バシュンッ


武刀剣を振り抜いた硬直時間、その間に脇に構えていた魚雷数基から何本かの魚雷を発射し、即座にまた海面を蹴って空母水鬼へ肉薄する。


木曾「おら、好きな方守れよ」ザッ

水鬼「コイツ…!」


ガシュッ ガガッ


木曾「…ッ!てめぇ…!」

水鬼「ノロマな魚雷を放ったノハ、失策だったみたいネ」ググッ

木曾「……ッ!!くそ、切り裂けねぇ…!」

682 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/31 17:30:01.95 4BpBRiSho 390/430

水鬼「魚雷ノ一発や二発、死に目の褒美に食らッテあげるワヨ。ただし、アナタにも同席シテもらうけれど…!」

木曾「ちっ…!しょうがねぇか…」

水鬼「アラ…諦め早いワネ」

木曾「くくっ、その前にてめぇも何か忘れてんじゃねーのか」

水鬼「え…?……ッ!」キョロキョロッ


木曾の不敵な笑みに空母水鬼は何かを察して周囲を見渡す。

だがその時には既に木曾達の布陣は完成していた。


那智「渾身込めて全弾撃ち尽くす!」ジャキッ

神通「まだまだ…これからです!」ジャキッ

水鬼「しまっ……」

木曾「悪ぃな…この勝負、俺達の勝ちだ」


ドン ドン ドン ドン


神通「木曾さん…!」

木曾「構うな!」


ズバァッ


水鬼「ガアア……ッ!!」 中破

木曾「信頼できる仲間の一撃だ。タイミングくらいわかってるってんだ」

水鬼「キ、キサマ…まさか…!」

木曾「魚雷は囮、刀が抜けねぇのは芝居だ。残念だったな!神通!!」ダッ ブンッ


ボゴオオォォォォン


水鬼「オノ、レ…ッ!」 中破

神通「確かに…!」ガシッ ヒュンヒュン キンッ

那智「いけっ!」

木曾「決めるぞ!」チャキッ

神通「推して参ります!」スッ…


木曾に気を取られ那智と神通の動きを見落としていた空母水鬼は二人の接近に気付かず、三人の艦娘に易々と間合いの中へと侵入を許してしまっていた。

極めつけは木曾の芝居だろう。

最初に放った魚雷、これは彼女が言っていた通りただの囮だった。

そして空母水鬼の艤装に深々と突き刺した武刀剣も、抜けない芝居をしたのも自身に空母水鬼の意識を釘付けにさせる為に打った一芝居。

結果として木曽に手一杯となっていた空母水鬼は那智と神通の存在を忘れる事となった。

そして矢継ぎ早に放たれた那智と神通の一撃、芝居をやめて一気に振り抜いた木曾の斬撃が空母水鬼を強襲し、態勢を立て直すだけで手一杯となったところに木曾と神通が武刀剣を構え直して一気に駆け出す。


木曾「終わりだ、空母水鬼!」ビュッ

683 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/12/31 17:30:43.42 4BpBRiSho 391/430



ズバァッ


水鬼「ガハッ!」 大破

神通「……」タンッ

水鬼「オノレ、オノレ、オノレ、オノレ……ッ!!」ジャキッ


ボゴオオォォォォン


水鬼「ガッ…!」

那智「させるか!」

水鬼「キ、サマ…!」


水鬼の構えた艤装を狙って那智が動きを封じ、その隙に神通が更に迫る。


神通「先へ、進ませて頂きます」

水鬼「……クソ……イイダロウ…進むガ…いいわ……」


ズバァッ


神通と空母水鬼が交錯し、そして空母水鬼が静かに水底へと沈んでいく。


キンッ


神通「……貴女の事を、私達は忘れません」

木曾「おら…」スッ…

那智「ふん…」スッ…

神通「ふふっ」スッ…


パァンッ


三人が三人とも片手を上げてハイタッチをする。


木曾「へへっ」

那智「ふっ」

神通「やりましたね」

690 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/03 20:29:15.47 gAPve/dKo 392/430

-ピーコック・リコリス vs フェアルストCL-

リコリス「よもやコンナ展開になるナンテ…誰が想定したカシラね」

ピーコック「誰も想定できないわよ。予想外しかないんだから」

フェアルストCL「何故、我々ヲ裏切ル」

ピーコック「彼女と同じ成りと声でそういう事言わないでくれる?イラつくわ」

リコリス「生まれたバカリの赤子同然なアナタが、それを言うワケ?」

フェアルストCL「今更、話し合う余地ナドなかったと言うコトか」

リコリス「当然ヨネ」

ピーコック「余りフェアルストを穢さないで欲しいわ」

フェアルストCL「私ヲ、穢す…?」

ピーコック「って…まぁ、そういう反応よね。ホント、面倒くさい」

リコリス「まぁ、邪魔シテくるって言うんだカラ、排除しなきゃネ」サッ…ヒュン ヒュン ヒュン

ピーコック「追撃戦開始よ。第一艦攻艦爆隊、第二艦攻艦爆隊、発艦準備…!」サッ…

フェアルストCL「ソノ全てを焼き払う」ジャキッ

ピーコック「さぁ、精鋭達…今こそ、その実力を示しなさい。この空を縦横無尽に飛翔しろ!」ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

リコリス「……!」(大したモノね……この艦載数……私ですら驚くホドだわ)

フェアルストCL「例え幾万、幾億と飛ばソウと、ワタシには関係ナイッ!!」


『ねぇ、コノ戦いが終わっタラ、アナタはどうしたい?』

『静カナ時代で、ただコノ海のように揺蕩うノモ、悪くないカモしれナイ』

『青い空、青い海、恋焦がレタものがソコにある』

『二度と、手に入れるコトは叶わないのカモしれない』

『ケド、そうね……想いを馳せる、ソレくらいは許されナイかしら……』

『どう、カシラ…一度ハ、手放してシマったんだモノ…』

『もう一度、ナンテ流石に虫が良過ぎるカシラね?』

『なら、深く想い続けまショウ。信じて、待ち続けまショウ。そうスレバ、いつか……キット……』

691 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/03 20:52:06.34 gAPve/dKo 393/430

ピーコック「今が、その時よ。フェアルスト…!」


ボゴオオォォォォォン


ボゴオオォォォォォン


ボゴオオォォォォォン


ピーコックとリコリスの放った艦載機はフェアルストCLの対空砲火を物ともせずに一斉に彼女目掛けて凄まじい火力を誇る艦攻・艦爆による怒涛の攻撃を見舞う。

だが、それを嘲笑うかのようにフェアルストCLが白煙漂う中から悠然と姿を現す。


フェアルストCL「ワタシの装甲を甘くミテると、痛い目シカ見ないワヨ?」

リコリス「コイツ…!」

ピーコック「そうね、フェアルスト。貴女は本当に強かった…けど、目の前に居る貴女じゃ私達は倒せない」

リコリス「ピーコック…」

ピーコック「アイアン・ボトムサウンドの亡霊…貴女はここで沈みなさい」サッ…ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

フェアルストCL「沈むのハ、お前達ダッ!!」ジャキッ


ドォン ドォン ドォン ドォン


ボゴオオオオォォォォォォォン


凄まじい爆音と共に誘爆したピーコックの艦載機が空中でオレンジ色に次々と成り代わり空を宛ら地獄絵図へと変貌させていき、フェアルストCLの背後に照るオレンジ色の太陽が放つ輝きが逆光となって、その場を更に鮮烈な色へと染め上げる。その光景はまるでその地獄に君臨する鬼か何かか、そう髣髴とさせる何かがあった。

そんな情景を更に色濃くさせるが如く、周囲を熱風が駆け抜け、気温が一気に跳ね上がる。

遠くに見えるフェアルストCLは陽炎の如くユラユラと揺れて真夏の太陽に照り返されて映る情景を醸し出す。

692 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/03 21:04:06.35 gAPve/dKo 394/430

リコリス「」(一度の射撃デ無数の艦載機ヲ誘爆を引き起こしナガラ一気に制圧スル……フェアルストの火力が凄まじいノハ前々から解ってはイタケド、実際に見ると驚愕スルわね。この圧倒的な力の前デそれでも尚、挑み続けてクル彼女達艦娘…ソノ精神的支柱はヤハリ提督大佐か。ワタシ達の心サエも、彼は解き放ってクレタ)

ピーコック「何度でも…!」サッ…

フェアルストCL「何度デモ…!」ジャキッ

ピーコック「やってやるわ!」ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

フェアルストCL「沈んでイケッ!!」ドォン ドォン

リコリス「」(彼は……彼女達サエ、救った)


ボゴオオオォォォォォォン


何度目の爆発音か、フェアルストCLの口角が小さく釣り上がる。

それはピーコックの艦載機など何度飛ばされようと撃ち落せるという自信から来た笑み。

しかしその笑みは直に掻き消え、小さく口を開く。


フェアルストCL「ナ、ニ……」

リコリス「恩ヲ仇で返すにも限度がアルわよね」スッ…

ピーコック「……凄い威圧感…これが、リコリスの本気……」

リコリス「アナタ、さっき笑ってたわヨネ。何度でも、沈んでイケって…?フフッ、だから…無理ナノヨ…」

フェアルストCL「何ですッテ…?」

リコリス「私はリコリス・ヘンダーソン。アナタに教えて上げる…沢山ノ鉄、沈むコノ海で…ソウ…私達が何ヲ望み、何ヲ求め、願い続けてキタのか…!フェアルストは今も昔もタダ一人、アナタに彼女の名を継ぐ資格ナドないと知りナサイ」

フェアルストCL「……沈まナイワ……私は、モウ…二度とッ!!」

693 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/03 21:14:55.60 gAPve/dKo 395/430

-長門・飛龍 vs レ級EL・加賀CL-

加賀CL「何度でも、水底へ、沈んでいきなさい」サッ…

飛龍「加賀のクローンって、事か…!」サッ


凛とした佇まいから無駄のない所作で描かれる矢を射る構え。

飛龍はそれを見て改めて実感した。

一航戦の強さ。一航戦の二人が築き上げたものが、どれほどのものか。

共に肩を並べて第一艦隊の一翼を担っていた頃、飛龍は加賀に聞いてみた事がある。


飛龍「ねぇ、加賀って確か赤城さんと元々は一緒だったんじゃないの?」

加賀「ええ、そうよ」

飛龍「じゃあ何で今は別々なのさ?」

加賀「それを貴女に教える理由はあるのかしら」

飛龍「いやまぁ、ない、と言えばないけど…」

加賀「…私達は元々、特定の鎮守府に籍を置くつもりは毛頭ありませんでした」

飛龍「え、それって…つまりフリーランスみたいなもの?」

加賀「そう捉えて頂いて差し支えはありません。今思えばそれは慢心以外の何ものでもありませんでしたが…」

飛龍「でも、実際に強いじゃん」

加賀「強いだけで何かを守れるほど世の中は単純ではない、と言う事です」

飛龍「うーん、でもなぁ…」

加賀「結局、飛龍さんは何が言いたいのですか?」

飛龍「えっとね、率直になんでそこまで強いのか、その自信と強さはどこから来るのか、それが知りたいなってね」

加賀「強さの基準等あって無いようなもの。それを言葉にするのは些か傲慢の域に辿り着くのではないでしょうか」

飛龍「それでも見習えるものは見習いたいって思うのが私なんだよ」

加賀「はぁ」

飛龍「ちょっとー、ため息は酷いんじゃない!?」

加賀「申し訳ありません。ですが、私も赤城さんも何か特別、という訳では決してありません。あるとすれば、それは私達が定めた一つの決意でしょう。例えるなら、一航戦の誇りとは────」


飛龍「────ねぇ、加賀。貴女にとっての誇りは何?」

加賀CL「貴女に告げる理由はありません。沈みなさい」ビュッ…ヒュン ヒュン ヒュン

飛龍「あっそう。なら、思う存分やらせてもらうんだから!」ビュッ…ヒュン ヒュン ヒュン

694 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/03 21:27:46.36 gAPve/dKo 396/430

長門「つくずく私は運がいい」

レ級EL「はぁ?そんなにボクに食われるのが夢だったの?相当狂ってるね」

長門「馬鹿を言え。借りを返す機会に恵まれていると言う意味だ」

レ級EL「借りを返す?フフッ、ボク相手に何が出来るのか、それじゃあ見せて貰おうかなぁ…」

長門「何、大した事は出来んよ。お前を倒す、と言う事くらいしかな」

レ級EL「だまれッ!!」ビュッ


サッ


長門「短気なのは変わらずか」

レ級EL「殺す」

長門「上等だ。受けて立ってやる!」


先輩「ねぇ、どうして私についてきてくれる気になったの?」

長門「理由か。必要とされているから、ではダメなのか?」

先輩「だって、貴女的にはあのヒヨッ子の所が居心地良いんじゃない?その気になれば少しくらい我が侭を言ってあっちに残る事だって出来たはずでしょ?」

長門「ふふ、それは否定しない。初めて着任した時から私は恵まれていると認識できるほどにな」

先輩「だから尚更不思議でならないのよねぇ」

長門「強いてあげるなら、変化、だな」

先輩「変化?」

長門「同じ未来は決してない。榛名から、武蔵の最期を聞いたんだ」

先輩「え…?」

長門「私は、変える為にここにきた」

先輩「変えるって、何を…」

長門「未来だ」


長門「みせてやる。同じ結末、同じ悲劇、同じ涙は決して流させやしない。私が変える。闇へ繋がる不幸の連鎖はこの私が全て断ち切る!運命は変えられる…散っていった先人達の想いを込めて、私がそれを証明してみせる!」

レ級EL「じゃあボクはお前が望まない未来、その全てを実現させてやるよ!最悪の未来をね…!」

695 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/03 21:43:43.50 gAPve/dKo 397/430

加賀CL「纏めて海の藻屑となりなさい」

飛龍「…っ!」バッ


加賀CLの言葉に飛龍は周囲を見渡し、その近くに長門が居ることを確認する。


飛龍「長門っ!!」

長門「…っ!」

レ級EL「余所見とか超余裕あるんだねぇッ!!」ビュッ


ガシィッ


長門「貴様…!」

レ級EL「さぁ、楽しもうじゃないか…この海を煉獄に変えて、地獄よりも更にハードな世界に、泥沼の血塗られた世界に変えていこうよ!」ジャキッ

加賀CL「鎧袖一触よ」


ブゥゥゥーーーーーン……


長門「私を信じろ、飛龍!」

飛龍「…うんっ、わかった!」サッ


ボゴオオォォォォォォン


ザザザザッ


飛龍「くっ…本当に、加賀を相手にしてるような精密な攻撃だ」

長門「……ふん」 被害軽微

レ級EL「ちぇっ、あれじゃ死なないか。じゃあこれで死んじゃえ」ドォン ドォン

長門「ビッグセブンの力、侮るなよ」


ボゴオオォォォォォン


加賀CLとレ級ELによる壮絶な波状攻撃で幕を開けた飛龍と長門、二人の戦い。

正規空母組の中でも指折りの実力を持ち、事実その当時の赤城をもってしても一矢報いるのがやっとの程だった。

そんな彼女をトレースしたこの加賀CLが弱いわけがない。

飛龍も一片の予断なく挑む決意をしてはいても、実際に合間見えてみて初めて彼女の凄さを痛感した。

そして戦艦レ級EL。

幾度となくその脅威を見せつけ、絶望を根付かせた畏怖の象徴。

長門さえも一度は破れ、戦線に戻るまでに時間を要したほどだった。

しかしだからこそ、この邂逅は長門にとって待ちに待った瞬間でもある。

696 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/03 21:51:09.28 gAPve/dKo 398/430

長門「」(全く、先輩提督には頭が下がる。これ程までに気遣いをしてくれる提督などそうはない。だからこそ感謝の念で言葉が詰まる。それでも言おう…ありがたい。これなら、奴とも戦える!)バッ

レ級EL「こいつ…あの空爆を凌いだのか!?」

長門「クロスロード……」ボソッ

レ級EL「何…?」

長門「あの極光に比べればこの程度の輝き、瞬きするほどでもない!いくぞ、戦艦レ級EL!」ザッ

レ級EL「なんだ、こいつ…!こんな、はやっ……」


海面を蹴り、宛ら滑空するかのように凄まじい勢いで駆け出した長門。

携える艤装、その砲塔はその全てがレ級ELを捉え今か今かと一斉に火を噴く瞬間を待ち焦がれる。


レ級EL「舐めた真似をッ!」ドォン ドォン


ササッ


ボゴオオォォォォン


長門「甘い!全主砲、斉射!てーーッ!!」ドォン ドォン ドォン


ボゴオォォォン ボゴオオォォォォォォン


レ級EL「ガッ……!」 小破

長門「はぁっ!」ブンッ


バキィッ


ザザザザッ…


レ級EL「ぐっ…くそがぁ…!」

長門「さぁ、掛かって来い!貴様との殴り合いなら大歓迎だ。何処まででも付き合ってやるぞ!」グッ

697 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/03 22:01:20.82 gAPve/dKo 399/430

加賀CL「そろそろ潮時ですね」ヒュン ヒュン

飛龍「油断してた訳じゃない。索敵を怠った訳でもない。それでも、やっぱり何処かに隙があったのかなぁ」 小破

加賀CL「全身を炎に焼かれて、沈みなさい」バッ

飛龍「」パンパン


加賀CLの放った艦載機が、妙にスローモーションのようにゆっくりと自分に接近してくるのが飛龍には不思議で仕方がなかった。

その間に色々と考えてしまった。

己の覚悟の足りなさ、人事を尽くしたのか、どれか一つでも欠けてはいないか。

決して慢心していた訳でもない。

ただ、目の前に居る空母組の中でも最強の呼び声が高い加賀を前にして、どこか怖気付いていたのかもしれない。

だから飛龍は自身の頬を張って自らを奮い立たせた。

────聳える壁。

それが試練なら幾らでも乗り越える。

ただしこれは試練ではない。

今、目の前に聳え立つのは脅威と言う名の絶壁。

────撃ち砕く。

一矢入魂、飛龍の眼差しは遥か彼方を見据えていた。

まともに撃ち合っても意味はない。

狙うは一点のみ。


飛龍「……」スッ…


静かに弓を構える。

精神を統一し指先に全神経を向ける。


ボゴオオオォォォォォォン


加賀CLの放った艦攻艦爆隊の攻撃すら彼女の放つ心気に狙いをぶらされ、飛龍への直接的な攻撃すら間々ならなくなり、最終的に彼女の頬を一撫でして儚い一本の筋を傷として残す程度に終わる。


加賀CL「なっ…」


左右の両拳を上へとゆっくり上げて打ち起こしと呼ばれる弓を射る姿勢に入る。

その凛とする佇まいはもはや芸術の域に達するかの如く、両拳は高低前後なく水平を保ち、体と平行に引き分かれて見事なまでに弓矢と体の位置が十字を構成し、弓体一致となる。


飛龍「ふっ…!!」ビュッ

加賀CL「この、気迫は…」


そして裂帛の気合と共に彼女の精鋭隊が空を、風を、海面すらも切り裂くようにして飛翔する。


飛龍「第二次攻撃の要を認めます……全攻撃隊、発艦!!」ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

加賀CL「なっ…小賢しい、真似を…!」バッ…

飛龍「私は二航戦の飛龍、どんな苦境でも戦えます!たとえ最後の一艦になっても、叩いて見せる!」

704 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/07 21:13:00.98 ddF2rqjIo 400/430

-ピーコック・リコリス vs フェアルストCL-

フェアルストCL「何度デモ鉄屑に変えてヤルッ!」ジャキッ

リコリス「彼に懸けてミタクなったのは、何もアナタだけじゃナイわ」

ピーコック「リコリス…」

リコリス「どうせナラ、笑っていタイものネ?」バッ…

ピーコック「ええ、そうね!」サッ…

フェアルストCL「沈みなサイッ!!」ドォン ドォン ドォン ドォン


おぞましい巨躯から伸びる黒塗りの主砲、その数々の砲塔が一斉に轟音を上げてリコリスを強襲する。


ボゴオオォォォォォォン


リコリス「キャァ!」 中破

フェアルストCL「フフ…」ニヤッ…

ピーコック「フェアルスト、それを慢心と言うのよ」

フェアルストCL「……ッ!?」


ブゥゥゥゥーーーーーン……


フェアルストCLの直上を無数の艦載機が埋め尽くす。

リコリスが自ら放った艦載機と己自身を囮にして生み出した好機。

それを逃すほど、無駄にするほど今のピーコックは緩くない。


フェアルストCL「舐めるナ…!」ジャキッ

ピーコック「なっ…」


ボゴボゴボゴボゴボゴォォォォォン


リコリス、ピーコック、二人の決死の囮作戦を持ってしてもフェアルストCLを欺くまでには至らなかった。

直上より急降下で近付くピーコックの艦載機を、その圧倒的な火力のみでフェアルストCLは迎撃してしまった。

705 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/07 21:13:38.75 ddF2rqjIo 401/430

フェアルストCL「何ヲ望み、何ヲ求め、願い続けてキタのか…決まってる。死ヲ望み、絶望ヲ求め、深く暗い、水底へソノ全てヲ叩き落す…!ソレだけを願い続けた!!」

リコリス「……ソレが、間違っているカラ……私達が生まれたノヨ」ググッ…

ピーコック「リコリス…!」

リコリス「──────」ボソッ…

ピーコック「え…?」


ずっと昔、遥か彼方、私にとってはそう表現するに相応しい歳月。

いつ以来か、その情景を想い出してしまったのは……

ずっと心の奥底にしまい込んで、蓋をして、二度と思い描く事も無いと見て見ぬ振りをして捨ててしまった過去。

その情景を今になって想い描いて、夢見てしまったのは何故なのか。

はじめはただ悔しくて、そして悲しくて、でもどうしようもないから我慢して、結局それは蓄積されていって…

そして私達は生まれた。

託せる者が居なかった。

紡がれる事がなかった。

永遠と続く輪の中で、幾度となく廻り続ける歯車のように、ただ只管に同じ道をグルグルと回り続けていた。

その輪廻から逃れる術を、抜け出す方法を、教えてくれた者達がいた。

諦めていた未来。

縋っていた過去。

不変のまま過ぎ行く現在。

未来は変えられる。

過去は赦される。

心の中で叫び続けた『それ』を掬い上げてくれた者達が居る。

ならば、今こそその想いに私達が答える番ではないのだろうか。


リコリス「……聞こえた」

ピーコック「貴女……」

フェアルストCL「ナ、ニ……」

リコリス「沢山の想い、確かに聞こえた」


遠い昔に捨てた過去がある。

二度と拾えない、取り戻せない、直せない過去がある。

しかし紡ぐ事は出来る。

受け継ぐ事は出来る。

その想いの力は何ものにもきっと勝る。

そしてそれが、リコリスが出した結果と決意の表れとなった。

706 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/07 21:14:18.26 ddF2rqjIo 402/430

-長門・飛龍 vs レ級EL・加賀CL-

飛龍「絶対、負けない!」

加賀CL「ば、馬鹿な…」


大空を縦横無尽に駆け巡る飛龍の艦載機。

遅れて放たれた加賀CLの艦載機、その悉くを撃墜し、ついには完全に空を制圧する。


加賀CL「何故だ…」

飛龍「幾ら加賀と同じ構え、同じ子たち、同じ台詞を紡いだって……そこに心が宿ってなければ優秀な子たちは私達に応えてはくれないって事だよ。心技一体…私の知ってる加賀が誇る一航戦は、心技体の全てが高い次元で構築されてる。どれか一つでも欠けちゃいけない。だから、彼女は強く気高く常に凛としていた」


ブゥゥゥゥゥーーーーーン……


加賀CL「くそっ…」

飛龍「彼女が言う一航戦の誇りとは……刃。自らをも切り裂く鋭利さがあり、錆びつく事もある。突き立てる事さえ適わなくなり、倒れてしまうかもしれない。そんな危うさを秘めているのが誇りなんじゃないか…それが、加賀が私に教えてくれた一つの答え……ふふっ、折れない訳だよね、赤城さんも加賀も…だから、私はあなたに負ける訳にはいかない。彼女達の掲げてきたその誇りを、私が守る!友永隊の皆、頼んだわよ!」


飛龍の言葉に彼女の艦載機達が大きな円を描いてそれに応える。

そして直上より急降下、加賀CLを目掛けて一斉に攻撃を仕掛ける。


加賀CL「私は、一航戦の加賀だ…!こんな、所で…!」バッ

飛龍「残念だけど、本物の加賀に君は遠く及ばない」

加賀CL「私は…優秀なんだ…!」

飛龍「ううん、優秀なのは加賀が率いた艦載機の皆だよ」

加賀CL「そんなのと、一緒に…」

飛龍「加賀の放つ艦載機の子たち本当に強い。鎧袖一触…信頼できる、最高に優秀な子たち」


ボゴオオォォォォン


加賀CL「……っ!飛行甲板に直撃。そんな……馬鹿な」 中破

飛龍「あなたと戦った事は忘れない。バイバイ…」


ボゴオオォォォォォォン


加賀CL「沈む…のか……」 轟沈

飛龍「加賀、もう一度…一緒に肩を並べたかったな…さようなら」

707 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/07 21:14:48.59 ddF2rqjIo 403/430

レ級EL「ボクが…お前等艦娘に、劣るわけないだろ!」ビュオッ

長門「食物連鎖の頂点にでも君臨したつもりか!?」ザッ


ガガガッ


ドォン ドォン


ボゴオオォォォォン


接近戦から砲撃を交えた多連撃の応酬。

打撃は防ぎ、砲撃はかわし、互いに攻防一体となって戦闘が継続される。


レ級EL「何なんだ、お前は!」ザザッ

長門「貴様を倒す者だ」グッ

レ級EL「艦娘がボクを倒すって…?全てに勝るこのボクを…不完全な存在でしかない艦娘が?笑わせるな!」

長門「私達は成長する。学び、経験し、克服して、幾らでも強くなれる!」

レ級EL「お前等の言う強さなんて幻想だ。本物の力がどんなものか、知りもしない奴が言う戯言さ!」

長門「戦艦レ級EL…貴様達の紡いだ負の連鎖。私がここで断ち切る」

レ級EL「無駄だ!どう足掻こうとも、お前等はボクには勝てやしないッ!!」ザッ

長門「させるか!」ジャキッ

レ級EL「当たるか…!」ビュッ


ドォン ドォン


レ級EL「なっ…」


ボゴオォォォォォォン


レ級ELの動き先、それを見越して長門の放った砲撃はレ級ELが行き着いた先で見事に爆発する。

白煙の中からヨロヨロと身を引き摺ってレ級ELが静かに姿を現すが、それを長門は悠長に眺めてはいなかった。


長門「悪いが、実力の差は歴然だ。お前では、私を倒せはしない」ジャキッ

レ級EL「クソッ、クソッ……!なんでだ、どうして…!」 中破

長門「成長するからさ。私達の伸び代は無限大らしくてな。さよならだ」ドォン ドォン

レ級EL「」(ボクは……ゼッタイ、死なない……ッ!必ず……!)


ボゴオオオォォォォォォン




713 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/08 22:20:57.18 4Iju0s+Go 404/430

-ピーコック・リコリス vs フェアルストCL-

フェアルストCL「なんだ、ソノ姿は…」

リコリス「私が過去に捨ててきたモノ。言わば残された私の最後の残照。残された、最後の光…それこそがこの姿の根本かしら?」

ピーコック「おかえりなさい」

リコリス「…ただいま。取り敢えず話は後…」

ピーコック「ええ、勿論」

フェアルストCL「姿カタチが変わろうと、大元ハ何も変わらナイ」

リコリス「果たしてそうかしら?」


そこにいるのは飛行場姫と呼ばれた深海棲艦だった存在。

真っ白な肌に真っ白な髪の毛、それに合わせたかのような真っ白な衣装、そして真紅に輝く円らな瞳に似合わない少し大人びた口調と態度。

自らをリコリス・ヘンダーソンと名乗り、圧倒的な強さを誇った深海棲艦。

今の姿は真紅の瞳は変わらず禍々しかった艤装は鮮やかな色合いを取り戻し、重厚な趣きを感じさせる。

肌の色合いも人肌然とし、服装は白のワンピースのような物に変わっている。

714 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/08 22:44:36.97 4Iju0s+Go 405/430

リコリス「First Air Fleet……」サッ…


リコリスが静かに手を振り上げる。

そして静かに振り上げた手を振り下ろしてフェアルストCLを指し示しながら力強く告げる。


リコリス「全機発艦…!」バッ ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

フェアルストCL「全て撃ち落シテあげるワ!」ジャキッ

ピーコック「それを私が黙ってみてると思う?」サッ…

フェアルストCL「…ッ!?」

ピーコック「当然邪魔させてもらうわよ!攻撃隊、目標は敵艦艤装…!全てを焼き払いなさい!!」ヒュン ヒュン ヒュン

フェアルストCL「オノレェェェェッ!!」ドン ドン ドォン ドォン


僅かな時差をつけてリコリスとピーコック、双方が放った艦載機はフェアルストCLの放つ対空砲撃を華麗にかわ

して多方面からによる一斉アウトレンジ攻撃を開始する。


ボゴオオォォォォン


ボゴオオオォォォォォン


ボゴオオオオォォォォォォン


断続的に響き渡る艦爆艦攻隊の攻撃の前に一瞬にしてフェアルストCLの姿が白煙の中へ呑み込まれて消える。

リコリスとピーコックは油断無く立ち昇る白煙を見据えて微動だにしない。

やがて白煙が晴れてゆっくりとフェアルストCLの姿が露になる。

715 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/08 22:59:53.88 4Iju0s+Go 406/430

フェアルストCL「グッ……ハァ、ハァ……」 大破

リコリス「…驚いた。流石、戦艦棲姫の名は伊達じゃないわね。あれだけの攻撃を受けてまだ立ってるなんてね」

ピーコック「大人しく沈みなさい」

フェアルストCL「マダ……終わって、ナイ……!」

ピーコック「いいえ、終わりよ。この悲しい争いは、もうこれで終わり…」

リコリス「安らかに、眠りなさい」

フェアルストCL「マ、ダ……ッ!」ザッ…

ピーコック「……」フルフル…

フェアルストCL「何故、構えナイ…!」

リコリス「……」

フェアルストCL「ソウ……」ズズッ…

ピーコック「さようなら、フェアルスト」

フェアルストCL「…ダメ、ナノ……ネ……」 轟沈

リコリス「悲しくない?」

ピーコック「本物の彼女は、徹底海峡で静かに眠っている。この戦いが終わる頃には、改めて弔いにいけるわ」

リコリス「アイアン・ボトムサウンド、か…」

ピーコック「ホント、報われないわね」

リコリス「仕方ないわ。悲劇の上に成り立っていたのが私達なんだから…」


静かに悲しみを帯びた表情のまま沈んでいったフェアルストCLに弔いを捧げ、二人は遠くを見やる。

気付けば夕刻も過ぎて空は闇の色を深くしつつある。

空を見上げれば遍く星々と綺麗な月が顔を覗かせ、海をキラキラと照らそうとしていた。

改めて海面を見れば、波打つ海は静かで穏やかな風を乗せて二人の頬を優しく撫ぜる。

そこで初めて彼女達は肩の荷が下りたかのようにその場にただ立ち続け、静かにただジッとその場の空気を全身に浴びて思いを馳せ続けた。

今、二人の戦いに幕が下りた瞬間だった。

716 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/08 23:13:22.73 4Iju0s+Go 407/430




~勝利を、提督に~



-存在の証明-

榛名「……」

榛名CL「同じ存在は二人と要りません」

榛名「え?」

榛名CL「私は、貴女を殺して唯一の存在になります」ニヤッ…

榛名「唯一の、存在…?」

榛名CL「私と同じ顔、同じ声、同じ仕草…全てが癇に障ります。榛名は、私一人です!」ジャキッ

榛名「…っ!」サッ


ドォン ドォン


ボゴオォォォォォン


榛名「」(顔も、声も…本当に私と同じ…これが、クローン?でも、どうして…)

717 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/08 23:13:51.84 4Iju0s+Go 408/430

提督「今までの研究は、このクローンを作り出す為ってわけですか」

新鋭「クローンは結論に至っただけの事よ。出来れば従順な手駒にはなるでしょうけど、そこに至るまでが苦難の連続ってやつかしら?はじめは艦娘そのものを手駒にできれば…って所だったかしらね」

提督「それが金剛たちに施そうとした洗脳か」

新鋭「過去の記憶、感情と言った要因が結局は邪魔をして、障壁となる結果に終わったけどねぇ…」

提督「そうまでして海軍に何を求める」

新鋭「……滅亡」

提督「何…?」

新鋭「不要なのよ。海軍なんて存在は…この世に存在して良い組織じゃないのよ…!」

提督「何故そこまで海軍を憎む!」

新鋭「さぁ、何故かしらね?」

提督「例えそこに同情的な理由があっても、彼女たちを苦しめた事実は変わらないぞ」

新鋭「はぁ、青臭い青臭い…そういう所、ホント虫唾が走るわ。対深海棲艦用の兵器に対して貴方感情移入し過ぎなんじゃないの?どこまでいっても、艦娘も深海棲艦も兵器なのよ。戦争兵器…解らない?軍艦と同じ破壊力を持ったコンパクトな戦争兵器。小さな島程度なら一撃で蹴散らせる、殲滅が可能な道具よ」

提督「口を慎め、新鋭!」

新鋭「あら、本性が出たわね。貴方に昼行灯は似合わないわよ。艦娘達が兵器じゃないと言うのなら、一体何なのかしら?まさか、私達と同じ人間だなんて冗談は言わないわよね?」

提督「…人間だろ。俺たちと同じ、人の子だろ!」

新鋭「はぁ…?」

提督「特別な力をもって生まれたら、それはもう人じゃないっていうのか?世に羽ばたいた幾万もの偉人・天才といった存在も、それなら人じゃないっていうのか?違う……全て人だ。艦娘も一緒だ…!」

新鋭「おめでたい脳みそね。普段からそれだけお花畑全開で脳みそフル回転させてれば、さぞご満悦でしょう? 知ってるかしら、そういうのを何て言うのか…自己満足って言うのよ。全ての人間がそれを認めてるとでも本気で思ってる訳じゃないでしょうね?」

提督「何だと…」

新鋭「これ以上言葉を交わしても水掛け論でしょ?自分の主張を相手に認めさせたいのなら、力で勝ち取りなさい」

提督「力で、だと…!」

新鋭「そう…全てを支配するのは力よ。強い者が弱い者を従える…弱肉強食!それが全てで、それこそが真理よ。弱い者は虐げられ、踏み躙られ、淘汰される。強い者は全てを手にし、権力を掌握し、世界を動かす!」スラッ…

提督「間違った考えだ」スッ…

新鋭「なら、正してみなさい!」ダッ…

718 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/08 23:14:24.31 4Iju0s+Go 409/430

榛名CL「いつまで…」ジャキッ

榛名「……!」ダッ

榛名CL「逃げ回ってるつもりですか!」ドォン ドォン


ボゴオオォォォォォン


榛名「くっ」 被害軽微

榛名CL「夾叉…次は、外さない!」ジャキッ

榛名「どうして、何で貴女は私を憎むの!?」

榛名CL「どうして…?どうして、ですって?」

榛名「同じ存在なら……」

榛名CL「外見だけ一緒なだけじゃない!姿形が同じだけ、声が同じだけ、服装が同じだけ…私の中身は空っぽ…」

榛名「え……」

榛名CL「だから奪うの、貴女から!私が榛名……金剛型三番艦、戦艦榛名ッ!それが、私の存在証明!!」

榛名「貴女が、私の中身を手に入れても…きっと幸せにはなれない」

榛名CL「なんで言い切れるのよ!」ドォン ドォン


バッ…


ボゴオオォォォォォン


榛名「くっ…!」

榛名CL「どこまでいこうと、私はずっと陰…貴女の陰!もういやなの……陰は、私は表に出る。出て、光を浴びるの……貴女と言う光を浴びて、私は陰から光になる。貴女を消して、私が新しい光になるのよ!」

榛名「そんなの、間違ってる。思い出や経験は、実際に体験して初めて得られるものだから…私の全てを貴女に譲る事は愚か、渡す事なんて絶対にできない!」

榛名CL「だから、奪うのよ!」ジャキッ

榛名「だったら、絶対に渡さない!」ジャキッ


ドォン ドォン ドォン ドォン


ボゴオオオォォォォォォォォン


互いに構えた主砲が同時に火を噴き、二人の間で激しい爆発を巻き起こす。

榛名のクローンとして生まれた榛名CLは、傍に居る者が提督だったのならここまで捻くれたりはきっとしなかっただろう、と予想がされる。

彼女の言葉にある陰、これは新鋭が事ある毎に彼女へ吹き込んだ言わば嫌味と妬みの塊だ。

榛名は優秀、お前は出来損ない。

榛名は出来る、お前じゃ出来ない。

榛名こそ艦娘の理想系であり、お前はその燃え滓から生まれた文字通りの塵屑だ、と。

そうして反骨精神のみを沁み込ませ、時に慰めてやる事で榛名CLの心を歪な鎖で雁字搦めに取り込む。

そして引き金となる最後の一言を囁いてやる事で、彼女は復讐と愛憎に塗れた負の化身となる。

723 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/10 23:08:24.24 Vo6r2gVBo 410/430

『欲しい?』

『欲しい…』

『羨む?』

『羨ましい…』

『望む?』

『望む…!』

『なら、力で奪い取りなさい』

『力で、奪う?』

『そう、それで貴女は完成する』

『私の、証明…』


ただ彼女は欲しただけ。

望んだだけ。

しかし、それについて選んだ手段が強引過ぎた。

新鋭の理念を纏い、手にする全戦力をただ榛名から奪い去る為だけに彼女の力は行使される。


榛名CL「私よりも弱い分際で…!」ザッ

榛名「くっ…!」ダッ


同時に海面を蹴る二人。

榛名は後方へ飛び退き距離を取ろうとし、榛名CLは近付いて一気に雌雄を決するべく前へ出る。


榛名「このっ…!」ドォン ドォン


サッ…


ボボボボボン


牽制の意味で放った榛名の砲撃はあっさり回避され、その距離は遠距離から中距離にまで縮む。


榛名CL「見せてみなさいよ。貴女の提督お墨付きの、本当の力って言うのを!」ドォン ドォン


ボゴオオォォォォォン


榛名「きゃあっ」 小破


ザッ…


榛名CL「…それとも、このまま死ぬ?」ジャキッ


ついに榛名の行動を制御し、榛名と榛名CL、互いの距離は超近距離の状態で跪く榛名に対して、艤装の全砲塔を榛名へ突き付ける形で榛名CLが立つ。

724 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/10 23:18:04.15 Vo6r2gVBo 411/430

榛名CL「貴女に決めさせてあげる。このまま死ぬならその全てを私が奪う。抗うのなら、好きなだけ抗ってみせなさい。その全てを私が完膚なきまでに打ちのめして、絶望を味わってもらった上で貴女の全てを私が奪う」

榛名「っ……!」

榛名CL「…返答なしは、潔く死ぬって事でいい?いいよね?だって、私にはどう頑張っても敵わないでしょ?」

榛名「私は…」

榛名CL「もう遅い!死ねッ!!」ドォン ドォン


ボゴオオオオオォォォォォォォォン


超至近距離から容赦なく放たれた一斉射は、一瞬にして周囲を爆音が貫き、熱風が吹き荒れ、海が悲鳴を上げる。

白煙が立ち昇り、未だ冷め遣らぬ熱が篭るその只中へ、更に弾丸を再装填した榛名CLが再び砲撃を見舞う。


ドォン ドォン ドォン


ボゴオオォォォン ボゴオオォォォォォン


海は波立ち荒れ狂い、立ち昇る白煙は噴き上がった爆煙で更にその範囲を広げる。

熱気は更に加速し、燃え盛る炎の明かりが榛名CLの顔をオレンジ色に照らす。

その炎を背に、一つの影がユラユラと揺れている。


榛名CL「なっ…」

榛名「…まだ、やれます!」 中破

榛名CL「往生際が悪いんですね」

榛名「それが取り柄でもありますから」

榛名CL「なら、徹底的に潰して上げる。覚悟しなさい!」

榛名「ええ、榛名でいいなら、お相手しましょう!ただし、簡単に潰されはしません!」

榛名CL「くたばり損ないの癖に…!」ジャキッ

榛名「榛名!全力で参ります!」ジャキッ

榛名CL「そんなボロボロの状態で、何ができるって言うのよ!」ドォン ドォン


サッ……ボボボボボボボボボンッ


榛名「……!」

榛名CL「艤装も半壊、身体の状態も不満足…もうただの処分対象じゃない!」

榛名「…榛名は、一人じゃ何も出来ません」

榛名CL「出来損ないなら当然でしょ」

榛名「皆の協力がないと、満足な成果も上げれません」

榛名CL「自分のダメっぷりアピールしてどうするの?」

榛名「でも、一つだけ他の誰にもできない、私にしかできない事があります」

榛名CL「何が、言いたいのよ…!」

榛名「……」スッ…

榛名CL「それ、は…」

榛名「あの人の傍に寄り添うこと、共に生きること、未来を…作ること」

榛名CL「黙れッ!!」ドォン ドォン

725 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/10 23:18:36.26 Vo6r2gVBo 412/430



サッ……ボボボボボン


榛名CL「なんで、当たらないのよ!」

榛名「私と同じなんでしょう?自分のことは、自分が一番知ってるって思わない?」

榛名CL「……っ!」

榛名「それでも、私と貴女じゃ決定的に違うものがある!」

榛名CL「煩い!」

榛名「過去にばかり縋って、未来を自分の手で紡ごうとしない貴女になんか、私は絶対に負けない!提督や、他の皆のために…私は全力で貴女を倒します!」

榛名CL「…私を倒す?貴女が私を知ってるように、私も貴女のことなら何でも知ってる。貴女に私を倒すなんて天地がひっくり返っても無理よ!」

榛名「お見せします…榛名の全力を…!」スッ…


そう堰を切って放たれた榛名の言葉、それと共に彼女は握り拳を作って海面に思いっきり叩き付けた。


バシャアアァァァァァァン


榛名CL「なっ…!?」


どのような意図が隠れているかなど知る由もない。

それだけでも驚かされたが何より彼女のか細いその腕で放たれた一撃は海面を割っるだけに留まらず、周囲を大きく波打たせて単発的ながら大きな波を生み出した。


榛名CL「くっ…動きが…!」

榛名「……」ニコッ…

榛名CL「何の、真似よ!何笑ってるのよ!?こんなことしたって、貴女だって動けない……」


そこまで叫んで言葉が止まる。

出かかった言葉が喉に詰まる。

呑み込まされた、と言う方が正しいかもしれない。

否、もっと厳密には言葉を失った、が正しいだろう。

榛名にあって、榛名CLにないもの。

背負った事のある者だけが纏える鎧とも言うべき威厳、志した者だけが放てる光と言う名の信念。

今、榛名を支えるのは志半ばで倒れた者達から託された遺志と、今を生きる皆で紡いできた小さな、それでいてとても頑丈な、決して消えない、解けない、敗れない、何物にも変え難い誇りとも呼べる形無き宝。

いつだって彼女は自分の為じゃない、誰かの為に全力で臨んで来た。

傷付こうと、危険な目に遭おうと、どんな逆境に立とうと全てを守ると彼女は立ち上がる。

そして彼女は常に戦場では皆の無事を願い、心配をし、誰かの支えになろうと奮起する。

周りを鼓舞し、勝利を目指して我武者羅に突き進む。喜びを分かち合い、手にした勝利を自分達を待ち続けてくれる人へ捧げる為に、彼女は戦場で凛とした声で高らかに宣言する。

726 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/10 23:19:07.63 Vo6r2gVBo 413/430

榛名「勝利を!提督に!!」


誰が為に鳴らす鐘。

言うまでもない、結局は誰もが彼の笑顔を見たいから、彼の居る下へ戻りたいから、だから頑張れる。


榛名CL「空を、飛ぶなんて…」ギリッ…

榛名「主砲!砲撃開始!!」ドォン ドォン


超高高度、そう表現するに相応しい角度。

奥歯を噛み締め、歯軋りが聞こえそうなほどに強く口を噤み、その光景を目に焼き付ける。

到底、真似できる芸当ではない……そう悟ってしまった事への悔しさと憎しみがその表情から滲み出る。

だから放たれた砲撃に対して何の防衛手段も選べなかった。


ボゴオオォォォォォン


炸裂する榛名の砲撃、薄れる意識の片隅で彼女が最後に目にしたのは────巨大な顎を象った、口だった。

727 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/10 23:46:11.71 Vo6r2gVBo 414/430

-悪鬼の咆哮-


ボゴオオォォォォォン


新鋭「……っ!」バッ

提督「終わりですよ、何もかも…!」

新鋭「私の…艦隊が、全滅したって言うの!?」

提督「どれだけ精鋭を揃えようと、どれだけ策を弄そうと、強い信念を持ったあいつ等には、無意味だったってことですよ。もう諦めて大人しく縛について下さい」


アヒャヒャヒャ……


提督「……っ!?」

新鋭「なっ……」


爆発音の後、収まった静寂の中に聞こえてきた耳障りな笑い声。


長門「提督、離れろ!!」


近くまで戻ってきた長門が声を張り上げる。

そしてその直後、四方から一斉に何かが飛び出し、提督と新鋭の周りで大きく爆ぜた。


ボゴオオォォォォン


ザザザザッ…


提督「くっ…!」

新鋭「…ッ!」

??「アハッ……アヒャヒャヒャ……!はぁ、美味い……いいよぉ、美味いよぉ……やっぱり、ボクは…強い!」

提督「お前は…」

新鋭「戦艦…レ級…」

728 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/10 23:48:22.35 Vo6r2gVBo 415/430

リコリス「冗談でしょ、こいつ…!」

ピーコック「これほどなの、こいつの進化は…」

提督「お前達…」

榛名「長門さん…!」

長門「榛名、すまない…私の責任だ。仕損じた…!」

榛名「他の、皆は…」

長門「解らんが、今は信じるしかない。近くに飛龍が居たのは確認してるが、戦闘の最中で巻き込む訳には行かないと思ってな…距離を置いてしまったのも仇になった」

提督「おい、長門。あれは本当に戦艦レ級なのか…!?」

長門「ああ、すまない。事実だ…奴は、沈んだとばかり思っていたが榛名の相手していたクローンを……食った」

リコリス「この場に揃ってるのは私達だけね」

ピーコック「誰も沈んでないって信じてるんでしょう?」

提督「当然だ…!」

ピーコック「なら、今は私達だけでアレを食い止める。出来る事なら仕留めるのよ」

新鋭「……無理よ」

榛名「何を言って…」

新鋭「あれはもう未知の化け物なのよ!?そうならない為に、そうしない為に私は……!」

提督「御託は後だ!すまない、榛名、長門、ピーコック、リコリス……あの化け物を、止めてくれ」

長門「ああ、そのつもりだ」

榛名「はい…!」

リコリス「はぁ~あ…嫌になるわね」

ピーコック「ホント…ベット積み過ぎでしょう。どれだけ釣り上げる気かしらね」

新鋭「貴方達、正気なの!?」

長門「良く見ておけ、これが私達だ」

榛名「諦めません」

リコリス「ふふっ、でも癖になりそう。やってあげるわよ」

ピーコック「これが最後よ…!」

レ級FS「全部纏めて、食い殺してやるよッ!!」

729 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/10 23:58:31.07 Vo6r2gVBo 416/430

-最後の出撃-

レ級FS「知ってるか?負の感情、情念を抱いて死んだ奴の肉って言うのはとてもスパイシーで身が引き締まって、とても濃厚で、それはそれはゴージャスな餌になるんだ!アハハハハハハッ!!」

榛名「彼女は、彼女なりに頑張って、私に挑んで…文字通り全てを賭して戦ったんです」

レ級FS「そう!その爆発した感情を内包したまま、死ぬ前に生きたまま食ってやるのが礼儀ってもんだよ。今頃はボクの腹の中で、喜んでるんじゃないかなぁ」

榛名「許せない…!」

長門「性根は変わらずじまいだな」

レ級FS「ボクは強いから生き残ったんだよ。あいつは弱いからボクに捕食されたのさ。弱肉強食……ッ!なぁ、そうだろ新鋭…?お前も、そいつらに負けるなら用済みだね」

新鋭「……っ!」

レ級FS「ボクに食われて、ボクの糧になれ…!」ギュオッ


バチィッ


レ級FS「くっ…!」ビュルッ…

ピーコック「……」

レ級FS「邪魔、するなよ。手元が狂って外れちゃうだろ?」ニヤニヤ…

リコリス「こんな下衆を従えてたかと思うと反吐が出るわね」

レ級FS「今はボクが上で、お前等は下だろ?まぁ、従うっていうなら従わせてやらないでもないよ。ボクの手足となって奴隷として是非働かせて下さいってお願いしてごらんよ、ほら…早く!」

リコリス「……」サッ…

ピーコック「返事よ」スッ…


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


榛名「これは…」

長門「壮観だな…」

リコリス「First Air Fleet……」

ピーコック「全艦載機、その錬度をもって…」

リコリス「全機発艦っ!」バッ

ピーコック「目標を殲滅っ!」バッ

レ級FS「無駄だってば…今や、ボクは最強なんだよ…!」ジャキッ

730 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/10 23:59:18.03 Vo6r2gVBo 417/430



ボゴオオォォォォォン


ボゴオオォォォォォン


ボゴオオォォォォォン


ボフウウゥゥゥゥゥゥゥゥン……


リコリス「なっ…!」

ピーコック「あの、弾幕の中を…!?」

レ級FS「ボクこそ最強!この世界に君臨し、この海を制圧し、お前達人間共を扱き下ろし、艦娘全てを根絶やしにし尽くしてやる!跪け、海軍!ボクこそが、お前達の危惧する恐怖そのものだ…!」

提督「…教えてやれ、お前たち。俺たちの翳す信念がどんなものかを…そこにいる化け物に知らしめてやるんだ」

リコリス「あら、『たち』って私達も入ってるのかしら?」

ピーコック「っていうか、それ命令なわけ?」

長門「ふっ…」

榛名「強情ですね」

提督「いいや、作戦指示だ」ニヤッ…

リコリス「りょーかい…!」スッ…

ピーコック「…任せなさい」スッ…

長門「殿は私が務める」グッ

榛名「サポートします」

リコリス「準備は何時でもいいわ」

ピーコック「さぁ、鬼退治よ」

長門「よし!」ザッ

レ級FS「こいよ!全て捻じ伏せてやる!!」

長門「艦隊、この長門に続け!!」ダッ

731 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/10 23:59:52.03 Vo6r2gVBo 418/430

長門の号令と共に長門、榛名が同時に駆け出し、リコリスとピーコックは同時に艦載機を放つ。

それに合わせるように、レ級FSは上空へ艦載機を放ち、自身は長門と榛名の二人を迎え撃つべく正面を見据える。

だがそこでレ級FSにとっては不足の事態、想定していなかった状況が生まれた。


──これでFinish!?な訳無いデショ!──

──艦載機、発艦急げ!──

──そろそろ反撃よ…!──

──よし、一気に決めるで!──

──追撃戦に移ります!──

──四十門の酸素魚雷は伊達じゃないからねっと──

──君たちには失望したよ。ここが潮時だね──

──何も、解ってイナイ…愚かな子──


レ級FS「援軍、だと…!?」

榛名「皆、ここまで来てくれたの!?」

長門「ふっ、さぁ…待ちに待った艦隊戦だな!」

リコリス「出し惜しみ無しよ!」

ピーコック「お釣りも全部取っておきなさい!余さずご褒美として受け取ってもらうわ!」

金剛「全砲門!Fire!」ドォン ドォン

伊勢「主砲、四基八門、一斉射!」

蒼龍「全艦載機、発進!」

プリンツ「砲撃、開始!Feuer!」

北上「そんじゃま、やっちゃいますか!」

時雨「ここは譲れない」

ポート「お痛ガ過ぎるワネ」

レ級FS「港湾棲姫・ポート…!キミも結局、艦娘や人を選ぶのか!」

ポート「少なくトモ、アナタが望む世界ヨリは、現実味アルわ」

732 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/11 00:03:43.52 n7OS+c8jo 419/430

気付けば一匹、彼女に対して少しの同情をする部分があるとすれば、それはやはり望まれて生まれてきた訳ではないという点だろうか。

あくまで、彼女は新鋭が進めていた研究の副産物として誕生した変異種。

故に通常のカテゴリーからは逸脱し、際限なく全てを破壊し尽くした。

全てを敵に回し、全てを拒絶し、全てを投げ捨てた、怨念の塊以外の何ものでもない存在。

だからこそ淘汰されて然るべきなのかもしれない。

彼女の存在に勝るもの、それが目の前に居る艦娘達なのだ。

刹那の間にレ級FSが想い描いたのは、それでも己自身の未来だった。

炎の海、漆黒の闇、混沌とした世界の中心で狂気に染まった笑みを浮かべる自身を想い描く。

だから一斉攻撃が自らを襲うその瞬間でさえ、戦艦レ級FSは笑みを絶やさなかった。

声には出さなかった、だが…彼女は静かに思い続けた。

まるで呪詛の如く、一つの事を思い続けた。

『ボクが死のうと何度だってボクは生まれ変わる。次に出会うその時こそ────』

しかし、その呪詛すらも己を倒そうと迫り来る砲撃と艦爆艦攻の嵐に掻き消されてゆく。

この理念は、必ず何かに受け継がれてゆく。

だから彼女は最後まで笑みを絶やす事無く、戦火の中へと消えていった。

733 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/11 00:06:00.81 n7OS+c8jo 420/430

-終幕-

激闘から僅か半日と経たない間に海軍は深海棲艦との大々的な戦に終止符が打たれた旨を宣言した。

今後は警戒態勢を強化し、残党として未だに敵対してくる深海棲艦にのみ注意を払う事を付け加えた。

失ったものは大きく、得たものは少ない。

だがそれはとある鎮守府にとっては瑣末な出来事だった。

彼等はただ、それぞれを想って戦っただけなのだから。

これまでと何ら変わりはない。

あの夜、最後の激闘を制して新鋭を捕らえ、鎮守府に戻って共に戦った仲間達と大宴会を開いた。

もうクリスマスは過ぎていたけど、これこそがクリスマスプレゼントだと皆はしゃいでいた。

そして今────


提督「はぁ、さっむいなぁ…ま、どうせ暇だしなぁ…」

榛名「暇じゃありません!」

提督「うおぉぉぉっ!」

榛名「なっ、そんな驚かなくてもいいじゃないですか!」

提督「おま、まだ朝の五時だぞ?もう大晦日手前だから任務もないし、鎮守府に来る必要ないだろ」

榛名「そういう提督はなんで鎮守府に来てるんですか」

提督「え、そりゃ暇だから…」

榛名「朝の五時に暇だからって…どうせ普段出来ない資料整理でもしようとか思ってたんじゃないんですか?」

提督「目敏いやっちゃなぁ…」ガチャガチャ…


ガチャ…


榛名「そういえば、リコリスやピーコック達、正式にうちで預かる事になったんですか?」

提督「あぁ…アクタンがリコリス、ポートの二人とはどうしても離れ離れいやだってさ」

榛名「ピーコックは…?」

提督「俺のところ意外はいやだと…」

榛名「…良かったですね、可愛い子達が増えて」ムスッ…

提督「俺は悪くねぇだろ!?」

榛名「別に榛名は怒ってませんよー」スタスタ…

提督「怒ってるだろ、どー考えても!てか、待てって…」

榛名「ふーん…」ツーン

提督「ったく…」


ピタッ…


榛名「……」

提督「ん、どうした急に…」

榛名「ドア、提督が開けてくれないとは入れないから…」

提督「ぷっ…ははっ、はいはいっと…」ガチャ…

734 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/11 00:06:32.66 n7OS+c8jo 421/430

榛名「…余り実感って、沸かないものなんですね」

提督「あぁ?何が…っと、暖炉暖炉…しっかし、暖炉ねぇ…もうちょい最新のもん用意してくれてもいいだろうに」

榛名「深海棲艦はまだ居るのは解りますけど、なんていうか…」

提督「危機的状況は去った、みたいな?」

榛名「まぁ、なんというか…はい」

提督「それで良いんじゃないのかっと、よし…これで少ししたら暖まるな」ボッ…

榛名「それでいいって言うのは、一体…」

提督「俺は、お前たちと居るのが好きだ」ニコッ

榛名「えっ…」

提督「これからもずっと、以前と変わらず一緒に居たい。だから元帥殿からもらった話も蹴った」

榛名「元帥殿からもらった話って、私は何も聞いてませんよ!?」

提督「ん?そりゃあ、話してないからな?とにかく、一先ずの脅威は去った。それで良いんじゃないのか」

榛名「そう、ですよね」

提督「ああ、本当の本当に、全てが終わったら俺も海軍を辞めるよ」

榛名「え!?」

提督「ほら、以前に話しただろ。全てが終わったら、どっかに土地でも何でも買って二人で静かに暮らすって」

榛名「あ…///」

提督「あー…ゴホン。言っておくが、俺は本気だからな。俺の目標は一週間をとにかくだらけて過ごすことだ」

榛名「んな…!」

提督「ここに居ちゃ、一日どころか半日すらもだらけるのは不可能だ。だから、退官した後はもう徹底的にだらけまくってお前に迷惑かけまくってやるんだ。で、二人で笑って一日を過ごす!」

榛名「私が余り笑えなさそうじゃないですか!?」

提督「ははっ、そん時になってみなきゃその状況は解らんだろうけどなぁ」

榛名「もう…提督は私がついてないとダメみたいですね」

提督「おう、そうみたいだ。だから頼むわ」

榛名「ふふっ、ええ…榛名でいいなら、お相手しましょう」


これはとある鎮守府のお話。

彼と彼女達の物語はこの先もまだまだ続くのだろう。

ただこの海が好きで、周りに居る皆が愛おしく、いつまでも共に居たいと思えるような、そんな仲間達。

これから先も、多くの事が起こりえるだろうが、それはまた別の話。

今はただ、この平凡な毎日を恙無く過ごすのみ。

何も起こらない、騒ぎも、事件も、戦争も。

今日もいつもと同じ、提督と彼女達の賑やかな声だけが鎮守府からは響いてくる。


Fin.

735 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/11 00:07:05.29 n7OS+c8jo 422/430

以上で 【艦これ】提督「暇じゃなくなった」 完結となります。
長い目で読み続けてくれた皆様、本当にありがとうございます。
今後も何か思いつくネタでもあれば書きたいと思います。

一週間、このスレはこのままにさせておきます。
意見や要望等、あればお好きにご記入下さい。
答えられる内容であれば全て返信させて頂きたいと思います。

736 : 以下、名無しにかわりましてSS速... - 2015/01/11 00:32:58.14 XwpBI/rUo 423/430

完結乙です

737 : 以下、名無しにかわりましてSS速... - 2015/01/11 01:12:23.06 VoOr8EsM0 424/430


ピーコックたちは鎮守府にいるんだ
どこか特区みたいなの作って、残ってる深海棲艦たちにあげるのかと思った

738 : 以下、名無しにかわりましてSS速... - 2015/01/11 02:42:52.94 AotFy1Ewo 425/430

乙、正統派ヒロインの榛名が味わえる貴重なSS楽しく読ませていただきました
続編・新シリーズ問わず次回作を心よりお待ちしております

739 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/11 16:58:50.25 8Og8zPH6o 426/430

>>736
乙ありがとうございます
今後の励みになります

>>737
後日談でそういった内容も書こうかと思いましたが、構想してたら思いの他
内容が膨大になりそうだったので書くとすればスピンオフになりそうです

>>738
榛名の台詞はどれも、一生懸命頑張る、という言葉が似合っているように感じます
なのでこの作品のヒロインとして扱った場合、どんな時も諦めない、一途で健気な
そんな真っ直ぐな榛名を書いてみようと思いました
時々黒い部分が垣間見えたのはやはり提督のせいでしょうね
今後の作品も骨組み程度はあるので形になるようなら披露したいと思います

740 : 以下、名無しにかわりましてSS速... - 2015/01/11 19:14:27.37 VoOr8EsM0 427/430

艦娘が撃沈した場合はあったが、深海棲艦が沈むとどうなるんだ?

フェアルストもそのうち生まれてくるのかな?
そしたらピーコックたちと暮らせるの?

741 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/11 19:27:30.38 8Og8zPH6o 428/430

>>740
詳細を書いてないのであれでしたが、自分の作品内での深海棲艦の扱いは
怨念や悲しみ、憎しみと言った負の感情を糧にしている存在という設定です
ですので、深海棲艦として想いを遂げて果てた場合はそのまま魂は昇天する
という設定で話を進めていました

フェアルストは最後、本当の姿で最後の戦いに挑んだ事で、艦娘として果てた
と考えてもいいかもしれませんね
ですので、何れはピーコック達と平和な世界で邂逅を果たせる日がくるのかもしれません

742 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2015/01/13 16:57:34.35 2xhGhlPuo 429/430

>>1です

ちと一週間は長すぎたみたいですので、書き込みも無いようですし、HTML化に
依頼出してきます
次回作は多分何か書くと思うので、その際は改めて宜しくお願いします

743 : 以下、名無しにかわりましてSS速... - 2015/01/13 19:35:16.80 AKOpFHBNo 430/430


次回作も楽しみにしてるよ

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