関連
【艦これ】提督「暇じゃなくなった」【前編】

285 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/10/28 21:37:34.04 pKboPKp4o 153/430

-金剛-

金剛「くっ」サッ


ボゴォォォン


金剛「」(こいつ、わざと…精度を落として!) 大破

航空棲鬼「あら、今度は回避デキタみたいね。もっとも…フフッ、手元が狂って射線が逸れちゃったカラ…なんダケどね?」ニヤッ

装空鬼「……ダトしても時間の問題ネ。畳み掛けるワヨ」

南戦鬼「私の砲撃ハ……ホンモノよ」ジャキッ

南方棲鬼「フフフ……もう、終わりカモしれないワネェ……コレならどうカシラ?」ジャキッ


反撃の暇すら与えず、四匹の深海棲艦は一方的に金剛を攻め立てる。


金剛「二匹、同時……」

南戦鬼「コノ世に……」

南方棲鬼「別れヲ……」

286 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/10/28 21:38:06.83 pKboPKp4o 154/430

金剛「」(ごめんネ、提督……皆揃って、帰れそうにないヨ。折角、救ってもらったのに……折角、姉妹皆と、会えて、やっと姉妹揃って……今度こそ、私が守るって、誓ったのに……私は、こんなにも無力。姉としての勤めすらも……けれど、せめて、矢尽き刀折れようと……この金剛、一矢報いてみせマス!)ググッ

装空鬼「……マダ、動けるノカ?死地に立ち、背水の陣で構え……マサに、死力を振り絞るか。敵なガラ見事ナ底力と言ったトコロかしら…?」

金剛「私は…超弩級戦艦として、技術導入を兼ねて英国ヴィッカース社で誕生した……金剛デスッ!」ザッ

航空棲鬼「なんだ、この…コイツは、何かヘンだ……ッ!早く、仕留めろッ!!」

金剛「」(提督……どうか武運長久を……私……ヴァルハラから見ているネ……願わくば、妹達を……私亡き後も、支えて上げて欲しいネ……)ダッ

南戦鬼「特攻カッ!させんッ!!」ドォン ドォン


ボゴオオォォォン



287 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/10/28 21:38:51.80 pKboPKp4o 155/430

既に満身創痍。

それでも金剛の放つ気迫に四匹は気圧された。

結果、南方棲戦鬼の放った一撃は金剛の横を掠め、遥か後方で大爆発を起こす。

まさに虫の息。あと一撃でも撃ち込まれれば一たまりもない状況。

鬼気迫る金剛の心境を現すかのように、空に暗雲が立ち込め、降り注ぎ始めた雨は彼女の涙の如く大降りとなる。

今、金剛の中には様々な感情が渦巻いている事だろう。しかし、それでも絶対に変わらないものがある。

ずっと姉妹で、ずっと一緒に、時として切磋琢磨し、競い合い、共に歩んできた彼女たち四姉妹。

同じ時を刻んで、同じ未来を信じて、同じ痛みを知って、それらを乗り越えてきたからこそ通じ合うものがある。

一人じゃない。

今の金剛を突き動かすのは今わの際になっても妹達を思う姉の姿そのものであり、それこそが彼女の原動力。

288 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/10/28 21:42:00.83 pKboPKp4o 156/430

金剛「……守って、みせマス!恐れなさい、深海棲艦!私は、食らいついたら離さないワ!!」ドォン ドォン

南方棲鬼「バ、バカな……ッ!」


ボゴオオォォォォン


装空鬼「なっ……南方棲鬼ッ!」

南方棲鬼「ぐっ……小賢しいィッ!!」 小破

航空棲鬼「ナンなんだ……貴様は、一体、ナンなんだッ!!」

金剛「ふふ……私は、金剛型一番艦の、戦艦、金剛…デス……十分、時間は、稼げたよ、ネ……?」フラッ…

装空鬼「この艦娘ハ……確実に仕留めナケレバ終わらナイ……!」ジャキッ


ヒュン ヒュン……ボゴオオォォォォン


装空鬼「ぐっ……!」 小破

南方棲鬼「な、何事ダ…!?」

榛名「……」

装空鬼「キサマ…!」

金剛「はる、な……どう、して……」

榛名「以前に、北上さんが言ってました。仲間や姉妹を助けるのに、理由がいるのかって…どうしてって、私は金剛型三番艦。四姉妹の三女、金剛お姉さまの妹ですから。私達が揃えば、乗り越えられない壁なんて一枚だってありはしません!何より、私がお姉さまを見捨てるなんて、それこそありえません!」

289 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/10/28 21:42:42.95 pKboPKp4o 157/430



ドオオォォォン ボゴオオォォォン


その声に応えるかのように、四匹を唐突な砲撃の嵐が襲う。

嵐による視界不慮と雨音、風音、唸りを上げる雷雲と降り注ぐ雷。

悪天候のはずのその全てが、見事艦娘の味方となって文字通り天をも味方につけた起死回生の一斉射撃。


南戦鬼「ガッ……!」 小破

航空棲鬼「キャッ……!」 小破

装空鬼「今度は、ナンだ…!」キョロキョロ


──砲撃、命中を確認した!装備換装を急げっ!臆すな、全艦──


長門「この長門に続け!!」

榛名「な、長門さん…!」

長門「貸しだ、榛名。釣りまで取っておけ」

先輩『聞こえる?榛名ちゃん。貴女と金剛ちゃんをうちの隊で援護するわ』

榛名「先輩提督…!?」

先輩『全く、あのヒヨっ子…自分の艦隊なんだからもっとしっかり指揮執れってのよ!いい、艦隊の皆。たっぷりとヒヨっ子に恩を売るのよ。そこの海域で吹き荒れてる嵐は直に収まる。そしたら一気に攻勢に転じなさい!』

290 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/10/28 21:43:23.11 pKboPKp4o 158/430

翔鶴「お任せ下さい!良いわね、瑞鶴」

瑞鶴「勿論!翔鶴ねぇに合わせるわ!」

天龍「おっし、酒匂!お前も一緒に合わせて行けよ!」

酒匂「ひゃ~!敵さんずらり~」

龍田「ウフフ、親友に手出しをしてる腐れ深海棲艦はどこかしら~♪」

榛名「み、皆さん…どうして…」

長門「ふっ、理由など不要だ。仲間だから助けた。何より、さっきも自分で言ってただろう。この場、この瞬間において、お前達を見捨てるなど私にとっても万に一つ、億に一つもありえん!」

天龍「へへっ…榛名、金剛、遅れてすまなかったな。この嵐で翔鶴と瑞鶴の艦攻艦爆飛ばせなくってよ」

龍田「けれどもう安心よ~」

金剛「はは……榛名も、皆も、大好きネ……」

装空鬼「……散れ。総員散レッ!」サッ

南方棲鬼「オノレ…!次こそ…ッ!」サッ

航空棲鬼「この屈辱ハ忘れナイ…ッ!」サッ

南戦鬼「……次コソ、沈めルゾ……ッ!」サッ

長門「嵐の切れ目を見極めろ!翔鶴、瑞鶴、天龍、龍田、酒匂は追撃に入れ!他の艦隊は金剛の救出、榛名の援護にそれぞれ回れ!」

295 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/10/31 22:27:43.52 0xj5hheTo 159/430

-帰投中-

赤城「……そうでしたか。了解しました。こちらは引き続き、六名を警護する形で帰投しますね」

比叡「赤城、榛名と、お姉さまは…」

赤城「こちらとは逆方面から、先輩鎮守府の主力艦隊の救援があったようです。榛名さんも金剛さんもその艦隊と合流し、無事であると提督から情報を頂きました」

衣笠「良かったぁ…」

羽黒「本当に、良かったです…」

北上「取り敢えず、一安心か~」

川内「…けどさ、私もはじめて対峙したけど、上位に君臨してるっていう、あの深海棲艦の幹部連中?あれは、本腰入れて掛からないとちょっと…ううん、かなりマジでヤバイかもね」

比叡「情けないのは私達さ」

霧島「……ええ、不意を突かれたと言ってもこっちは六人、相手はたった二匹だったのに……」

時雨「動けなかったよ。悔しいな」

春雨「……」

衣笠「あんな連中がこの先の海にまだまだ居るんだよね」

大鳳「今回合間見えた連中、確か離島棲鬼と戦艦棲姫って言ったかしら」

北上「名前は……確か戦艦棲姫ってのがフェアルスト」

川内「離島棲鬼って奴はピーコックって呼ばれてたね」

北上「深海棲艦の中には人に近い姿をしてる奴もいるって言うけど、あいつらは艤装がおまけみたいな感じで、完全に人型として独立してる感じにすら見えたね」

赤城「フェアルストと呼ばれていた深海棲艦の艤装は、まるで巨人か何かのようで凶悪に感じました」

大鳳「私の艦爆艦攻隊と北上さんの雷撃を真正面から受け止めて無傷だったくらいだしね」

羽黒「とにかく、持ち帰れる材料を元にして検証が必要かと思います」

霧島「ええ、そうね」

時雨「まずは、戻って…傷を癒そう。春雨、もう直鎮守府だから、頑張るんだよ」

春雨「は、はい!」

296 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/10/31 22:49:55.69 0xj5hheTo 160/430

-帰路道中-

長門「……そうか。いや、問題ない。ああ、お前達はそのまま鎮守府に進路をとってくれて構わない。ん?酒匂が煩いって……それを私に言われても困る。んん、あぁ…解ったよ、解った。戻ったら相手をしてやると、そう酒匂に伝えてくれ。通信はこれで切るぞ」


ブツ……


榛名「大変そうですね、長門さんも」

長門「同時着任した酒匂に何かと懐かれてな。まぁ、陸奥のようなタイプとは違い、また可愛らしい妹ができたと思っているよ」

榛名「またそんな…陸奥さんが拗ねますよ?」

長門「はは、あいつが拗ねるのか?それはそれで見てみたいものだが、見たら見たで、何かと煩そうだ」

先輩『もしもーし、金剛ちゃんは大丈夫そう?』

長門「ん、あぁ提督。問題ない。後続の駆逐艦達に応急要員の妖精を載せてきたからな」

先輩『そう、ならいいけど。榛名ちゃんも、大きな怪我とかしてないわね?』

榛名「はい、ご心配ありがとうございます。でも、どうして…」

先輩『私達が駆けつけてきたのか、でしょ。結構偶然だったんだけどね』

長門「そっちの提督鎮守府付近での任務があってな。まぁ、付近と言っても結構離れてはいたんだが、さっき少しだけ一緒にいたと思うが…翔鶴の妹の瑞鶴、それと私に懐いてる酒匂の二人が私達が居た鎮守府を見てみたいと言ってな」

先輩『で、長門達がそっちの鎮守府付近まで行ってみるとなんか厳戒態勢取ってるって言うじゃない?』

長門「私には見覚えのある光景だったものでな。直感的に何かあると踏んで、先輩提督へ一報を投じ、先輩提督から提督へ連絡が行ったという訳だ」

先輩『相手は援軍の類が発覚した場合は容赦無く人質は処刑するって事だったみたいだけど、折良く榛名ちゃん達が抜錨してから結構な時間が経過してるって言うのも相まってね』

長門「ただし、援軍が向かっていると深海棲艦に悟られてお前達の状況が不利になる事は避けたかった。故に、あの嵐を待って、それに乗る形で接触を図ったというのが事の顛末だ」

297 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/10/31 23:29:06.76 0xj5hheTo 161/430

先輩『まぁ、結果として金剛ちゃんを危険に晒す結果になっちゃったんだけどね』

金剛「気にして、ないネ。まさに、天からの助け……感謝しても、しきれないヨ」

榛名「お姉さま、無理して喋らないで下さい!」

長門「それはそうと、捕らわれていた者達は大丈夫だったのか?」

榛名「はい。艤装は反撃を受けない為でしょうが、全て破壊されていましたが、身体的には…ただ、今回戦った相手…離島棲鬼のピーコックと戦艦棲姫のフェアルスト……どちらも想像を絶する強さを見せてきました」

長門「深海棲艦の幹部クラスと言う奴だな。一体、何匹居るんだ」

先輩『以前に戦った泊地棲姫と比べて、どうだったの?』

榛名「正直、泊地棲姫を遥かに凌ぎます。恐ろしいと感じたのは勝負の最中、まだピーコックとフェアルストは全力を出し切っていなかった、と言う事です」

長門「私と木曾、大鳳の三人で泊地棲姫は制圧できたが…」

榛名「今回は私と川内さん、赤城さんがピーコックを、金剛お姉さまと北上さん、大鳳さんでフェアルストをそれぞれ相手にしたんですが、川内さんと北上さんが途中負傷してしまって…レ級の時みたいに各個撃破されないためにも、二人を一旦下げて、そのまま空母組と合流させて人質になってた比叡お姉さま達の救出に向かってもらったんです」

先輩『それじゃ、その間その二匹を二人がそれぞれタイマンで相手してたの!?』

金剛「結局、私は榛名を援護する形でしか、活躍は無理だったケドネ」

榛名「もう…その後一人で四匹相手にしてた人が何言ってるんですか。本当に心配したんですからねっ!」

長門「榛名、その位にしてやれ。金剛の立つ瀬が無くなる」

金剛「うぅ…フォローになってないヨ、長門…」

榛名「金剛お姉さまには怪我が完治したらたっぷりとお説教させて頂きます!」

金剛「What!?そ、それどういう事ネー…?」

先輩『あらあら、時として妹の追及は怖いわよ~。じゃ、あとは長門に任せたわ』

長門「引き受けた。あぁ、そうだ…」

先輩『ん?』

長門「東奔西走させられたんだ。今日は私は提督鎮守府で一泊して行く事にする。酒匂の相手は任せたぞ、先輩提督」

先輩『えっ!?ちょ、ちょ、たんま!あんたねぇ!酒匂があんた居なかった時のトラブり具合知ってる!?ねぇ、知ってる!?ほんっと、マジでやb……』


ブツン……


榛名「ぁ……」

長門「よし、私は自由だ……ふふ、自由だ」

金剛「な、何だか開放されきった顔、してるネー…」

榛名「一体、長門さんに何が…」


かくして今回の事件は収束を向かえた。

だが戻った榛名達の報告によって幾つか露見した新たな深海棲艦幹部クラスの戦力に提督をはじめ、近隣鎮守府の課題は山積みとなってしまった。

だが一先ずは目先の勝利と全員が無事帰還した喜びに鎮守府の皆の顔は包まれていた。

298 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/10/31 23:34:58.44 0xj5hheTo 162/430

~蘇る記憶~




299 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/10/31 23:35:32.23 0xj5hheTo 163/430

-???-

リコリス「……」

ポート「リコリス?」

アクタン「リコリス、難しいカオしてるー」

リコリス「…ゴメンなさい。考え事が思うヨウに纏まらなクテ…」

ポート「今回のピーコックとフェアルストの一件カシラ?」

リコリス「正直、勇み足ダッタと言わザルを得ない。ケド、それを抜きにシテも艦娘達ノ力は日に日に増してイル」

アクタン「皆でやっつけちゃえばイイのに!」

ポート「アクタンの提案も強ち間違いトモ言い切れないワネ」

リコリス「そのツモリで差し向けたノヨ。南方棲鬼達を…」

ポート「泊地棲姫を仕留めた頃ヨリも、確実に強さヲ増してイルと言うの?」

リコリス「多少の驕りガあったと仮定シテ、それでもピーコックとフェアルストのコンビよ。ソコから援軍として差し向ケタのはどれも一人で一艦隊程度は壊滅へ追い込メル程の実力ヲ持っているハズの者達……」ギリッ…

アクタン「……」オロオロ

ポート「新鋭はコノ事実を…」

リコリス「黙ってイタわ。つまり、情報がコチラには降りてきてナイと言う事ヨ…!」

ポート「近代化改修、か……」

???「結局、詰が甘かった。ソレだけでしょう?」

リコリス「中間棲姫…」

中間棲姫「沈んダトは言っても、その辺りの割り切りがハッキリしていたのは泊地棲姫ヨ」

???「それに胡坐を掻いて慢心デモしてれば、火傷の一つや二つじゃ済まナイんじゃないかしら?」

リコリス「空母棲鬼…」

中間棲姫「言っておくけど…」

空母棲鬼「私達は出陣シナイわよ」

リコリス「…解ってイル。だからこそ、奴らのトラウマを再び解き放つ…」

中間棲姫「惨いコトを…」

空母棲鬼「アラアラ……下手をすれば火の塊とナッテ、沈んでしまうワネ」

ポート「装甲空母鬼達はドウしてるのカシラ?」

中間棲姫「どうも何モ…」

空母棲鬼「戻ってキテから荒れ狂ってるノガ二匹…不貞腐れてルノが三匹ヨ」

アクタン「うぅ、皆仲良くスレばいいのニィ!」

空母棲鬼「…貴女は純粋ネ、アクタン」

アクタン「ン?」

中間棲姫「素直、と言うコトよ」

アクタン「ウン!だってポートがウルサイもん!」

ポート「はぁ…私のせいナノ?」

リコリス「フフッ、教育担当ハ大変ね?」

ポート「アナタね…」

リコリス「それじゃ、私は次の任務に取り掛カル」

ポート「全く……」

300 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/10/31 23:45:51.09 0xj5hheTo 164/430

-執務室-

提督「…過去の記憶?」

比叡「うん、過去って言うか…なんだろう、ほら…よくさ、前世の記憶、とかなんかそういう自分が生まれるよりもっと前の記憶とか覚えてたりする人たまにいるじゃない?」

提督「あぁ、スピリチュアル的なやつか」

比叡「金剛お姉さまがピンチの時に、あの子一度私達の救出の為にお姉さまの下離れてさ…けど、やっぱり見捨てるなんて事出来ないって言って…そん時にあの子、『もう二度と空を眺めているだけなんてイヤなんです!今度こそ、お姉さまは私が守ります!』って言ったんだ」

提督「空を、眺めているだけ…?」


──『榛名、いつも夢に見るんです。青く澄み渡る空、その空をジーッと見据えて、なんでそんな事してるのか解らないんですけど、でもずっと空を見上げてて、そうしてなきゃいけないような気がして、ふっと気付くと目が覚めてるんです。今の私の現状と何か関係あるのかなって考えては、結局答えは出ずって感じで…』──


提督「なぁ、比叡」

比叡「あ、はい?」

提督「…お前、自分と同じ名前の軍艦が何十年も前に実在してたって話、信じるか?」

比叡「は…?えぇ!?え、ちょっと提督何言ってるの?」

提督「似た話、榛名だけじゃないんだよ。後から知ったことなんだが、神通はこの鎮守府に来る以前に、コロンバンガラ島ってところで激戦を繰り広げたらしいんだ。が、大本営に立ち寄った時に資料館に寄ってその内容について調べて見たことがある」

比叡「そ、それで…?」

提督「……コロンバンガラ島は実在する。実際に激戦だった。コロンバンガラ島沖海戦……ただし、今から数えて七十一年前の話だ。神通は、その時代に当たり前だが生まれてはいない」

比叡「何ですか、それ…」

提督「俺も不思議に感じた。驚いたのは、実際に神通と言う名の軽巡洋艦がその七十一年前に存在していたってことだよ。華の二水戦と通称された、当時の日本海軍にとっての最強艦隊。その旗艦を最も長く勤め上げたのが神通なんだと」

比叡「あ、あの…それって、つまり?」

提督「つまり、榛名や神通には…自身が生まれるよりも前の、言ってしまえば軍艦であった頃の記憶が断片的にだがある、と言うことだ。それがどういった経緯でなのかまでは解らない。旧日本軍の資料も大本営で探して見たが細部に渡っては存在しなかった。何故存在しないのかも解らない。簡易的な年表や略歴、戦歴はあっても、その細かい内容となると途端に資料がなくなる」

比叡「……それ、素直に解釈すれば……」

提督「あぁ、隠蔽だな。何が目的で何を隠蔽したいのか、そこまでは解らん。とにかく、気になる部分も多いだろうが現時点ではなるべくその話題には触れるな。折を見て話すタイミングだと思えば俺から告げる」

比叡「う、うん。けどさ、もしもだよ…もしも、それで榛名の身がどうにかなっちゃうっていうなら、私は迷わず榛名に告げるよ。大事な妹だからね」

提督「あぁ、是非そうしてくれ」

304 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/01 21:20:17.69 VR9kM8xQo 165/430

-金剛私室-

霧島「全く、どれだけ心配した事か…」

金剛「う~、もう榛名に十分絞られたネ。勘弁して欲しいヨ」

霧島「いいえ、そうはいきません。日頃から金剛お姉さまにはお世話になりっ放しですから、こういう時くらい妹に甘えて下さい」

金剛「はぁ、しかし病室は回避できたけど体の自由が思うようにいかないって言うのは不憫ネー」

霧島「自業自得です」

金剛「うっ…比叡も榛名も霧島も厳しすぎるネー!」

霧島「お医者様からも今日一日安静にすれば大丈夫とお達しきてるじゃないですか。我慢です」

金剛「はぁ…紅茶が飲みたいネー」

霧島「それはそうと、お姉さま」

金剛「ん?」

霧島「お姉さまは、前世、と言うのを信じますか?」

金剛「突然、何ヨ」

霧島「あ、いえ…前世とか、そういったのを信じるとして実際に夢でも記憶でも、前世の記憶や映像を見たことがあるのかなって、少し疑問に思ったものですから」

金剛「不確かなモノには否定的な霧島にしては随分と興味を示すのネ?」

霧島「その、榛名が、ちょっと心配で…」

金剛「What?どういう事ネ?」

305 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/01 21:32:44.36 VR9kM8xQo 166/430

霧島「────そういう訳で、何か意味があるのかなと。私なりに持てる資料全てを総動員して調べては見ましたが、根拠となるような材料が全くなくて…」

金剛「私が感じたものとは少し違うネ」

霧島「え?」

金剛「私が感じた事があるのは俯瞰の風景と悪夢だけネ…」

霧島「あの、それは一体、どういう…」

金剛「一度目は、あの後輩提督に負けた時ネ……」



一度目は地獄を髣髴とさせるような映像だったネ。

一面焼き払われ、海面は火の海と化し、そこに私一人がただ呆然と立ち尽くす……そんな映像だったヨ。

仲間だった艦娘は誰一人、立っていなかった。

傍らに居たはずの比叡も……私が気付いた時には既に水底へ沈む顔の半分が見て取れただけだったネ。

必死に手を伸ばしても届かなくて、そのまま比叡は深い海の底へ沈んでいった。

その時初めて絶望と言う言葉を思い知ったワ。

けど、本当の絶望、本当の地獄、本当の悪夢はそこじゃなく、その先に存在してた。

次々と沈んでいったはずの皆が浮かび上がってきたネ。

悲しみと憎しみと……あらゆる負を撒き散らして、彼女達は深海棲艦として生まれ変わっていた。

二度目は、深くて静かな海の底。

微かな光すらも私の居る場所には届かなくて、ああ……死ぬんだって、私はそう直感で感じ取ったネ。

結局私は、妹達を見守る事しかできないのかって思ったら、凄く悔しくて悲しくて、死にたくない、生きたいって願ってたヨ。

そう思うと同時に、湧き上がってきたのは怒りネ。

どうして私がこんな目に遭うのか…何故、私なのか…死ぬもんかって……何度でも、何度でも、何度でも、私は何度だって蘇ってみせるって……根拠もないのに確信に近い形で強く想ってたネ。

そして目が覚めた時、私の顔を覗き込んでたのは……比叡だったよ。

306 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/01 21:47:30.35 VR9kM8xQo 167/430

霧島「お姉さま…」

金剛「Oh…霧島、そんな心配そうな顔はNo!ダメデース!私は今、こうして生きてるネー!私はね、霧島…貴女達妹を救えて、こうしてまた四姉妹で居られる事が、本当に幸せネ」ニコッ

霧島「榛名にも、金剛お姉さまにも、私も比叡お姉さまも…本当に感謝してます。けど危険を顧みないのはやっぱり金剛お姉さまに似てしまってるんでしょうね、あの子…」

金剛「What!?」

霧島「だって、金剛お姉さまの無鉄砲振りは比叡お姉さまは勿論、榛名や私にもきっちり受け継がれてますから」

金剛「それ、どーいう意味ネー!」

霧島「ふふっ、無茶が好きって事ですよ。良くも悪くも、ね」

金剛「No kidding!それじゃまるで私がダメな姉みたいじゃないデスカー!」

霧島「いいえ、お姉さまは私達にとって最高のお姉さまです。さて、それじゃ私はちょっと先ほどの考えを提督にも聞いてみようかと思いますので、一旦失礼しますね」

金剛「むー、何だか話を逸らされた気がするヨー…」

307 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/01 22:10:38.03 VR9kM8xQo 168/430

-執務室-

霧島「────と言う訳で…」

提督「……ホント、お前ら姉妹だな」

霧島「は…?」

提督「これであとは金剛に相談されたら金剛四姉妹コンプリートだな」

霧島「あ、あの、何を仰ってるのか解らないんですが…」

提督「その記憶の話だ」

霧島「そ、それじゃ、まさか比叡お姉さまや榛名も…?」

提督「まぁ、はじめは榛名だな。夢に見るんだそうだ。ずっと空を見据えて、けどなんで自分がそんな事をしてるのかは解らないが、それでもそうしないとならないような気がしていると…結局、それが何なのか、どういう意味合いがあるのか、解らないまま目が覚める。お前や比叡が疑問に思う核心部分だ。結論から言えばその件については答えは出てない」

霧島「けど、それじゃ金剛お姉さまが見たっていう夢は…」

提督「考えられるのは心象世界の具現化」

霧島「それは一体…」

提督「例えば、願望と言うものがあるだろう?まぁ俺も専門じゃないから掻い摘むが…ようは個々の心の奥底に眠っている、もしくは抱いているモノが夢の中で具現化した、と言うのが可能性の一つだ」

霧島「けど、それでは金剛お姉さまの夢の辻褄が合いません」

提督「そうだな。もしも金剛の願望が夢の通りだとするなら、それは殺戮だ。己以外の全てを淘汰し、滅ぼし尽くして無くしてしまう、と言う願望」

霧島「そんな…!」

提督「そこで二つ目のケース。自分の想像しうる最大最悪の結末。言い換えるならば、決して起こって欲しくないという願望。これなら金剛の夢と抱く感情に違和感はなく、辻褄も合う」

霧島「金剛お姉さまの件は、何となく解りましたが、榛名のは…」

提督「そう…比叡にも言ったんだが榛名が夢で見たのは推測でしかないんだけど、これこそが正真正銘…前世の記憶と言うものなんだろう」

霧島「前世の、記憶…?」

提督「そうだ。お前達が生まれる遥か昔、お前達の根源が存在した。その根源に宿った記憶が遥か未来になっても尚、色褪せずにお前達に刻み込まれている。なんてな風に解釈すれば、まぁ辻褄としては合うな」

霧島「…突拍子もないわ」

提督「そう、突拍子もない。根拠もないから立証のしようもない。だからこの事は他言するな。プラスに働くともマイナスに働くとも解らない。とにかくパズルのピースが不揃いすぎる…いや、少なすぎるって方がしっくりくるか。とにかく、不確定要素の塊ってことだけは確かだからな」

霧島「解りました…」

提督「言っておくが霧島、独自に調べる事も厳禁だ」

霧島「うっ…」

提督「お前、今ここ去ったら速攻で調べようとか思ってただろ」

霧島「あ、あははは…」

提督「調べてるの発覚したらお前自慢のマイクセットがどうなってもしらんぞ」

霧島「え゛……」

提督「解ったら自室に戻れ」

308 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/01 22:27:30.91 VR9kM8xQo 169/430

-記憶-

最初に夢として見た記憶は霧島と二人、手を繋いで海を眺めていた事。


「やっと海に出れるね」

「ええ、そうね」

「頑張ろうね、霧島」

「ええ、頑張りましょう、榛名」


そんなやり取りだったと思う。

自分で言ったのに何を頑張るのか、それが解らなくて隣の霧島をジッと見ていた。

その視線に気付いた霧島が何か言ってるけど、口だけが動いてて声が聞こえなくて、気付くと私は涙を流して目を覚ましていた。

頬を伝う涙の冷たさに、あの夢は一体なんだったのかを深く考えさせられた。

その次に夢に見た記憶。悔しさや悲しさが込み上げてくるのが解る。

夕日に照らされた空がオレンジ色に染まる。

本来ならロマンチックに見える夕焼けの空も、その時の私には戦火に広がる禍々しい空を連想させた。

遠くから聞こえてくる艦載機のエンジン音。

合図だと直感的に悟って私は霧島と共に────部隊の護衛に当たっていた。

何の部隊だったのか、それがどうしても思い出せなくて凄くモヤモヤした感じがしたのを覚えてる。

309 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/01 22:34:29.84 VR9kM8xQo 170/430



「なんとしても…皆さんを守ります!」

「真上…直上!?誘爆を防いで!!」

「飛行甲板に直撃。そんな……馬鹿な」

「飛行甲板に被弾?!」

「そんな…皆!」

「……たとえ最後の一艦になっても、叩いて見せます!」


何処かで聞いた声、馴染みのあるはずの声、それなのに誰なのかが思い出せない。

思い出せないまま、視界が赤く染まって周囲を炎で染め上げていく。

声が枯れるまで叫んでも、どれだけ奮戦しても、私の思いは届かなかったように思う。

そして三つ目、水底へ静かに沈んでいく金剛お姉さまを尻目に、私は戦場を撤退する。

悔しくて、悲しくて、気持ちは引き返して今すぐにでも、お姉さまを引き上げたいと思っているのに体が言う事を聞いてくれず、その距離は見る見る広がって、気付けば私は一人、未だ青い空をずっと睨み続けている。

来る日も来る日も、私はただ黙ってジッと空を睨み続け、いつ終わるとも知れないその状況を静観していた。

313 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/02 23:53:54.97 zuep6UR8o 171/430

-榛名私室-

榛名「……夢、また」


コンコン


榛名「あ、はい?」

北上「北上だけど~、榛名っち今だいじょ~ぶ?」

榛名「あぁ、はい。ちょっと待ってくだs……」

北上「んじゃ入るねー」

榛名「へ?」


ガチャ


北上「おっ…榛名っちの寝巻き姿、レアだねえ、しびれるねえ…!」

榛名「ちょ、鍵掛けてあるのにどうして!?」

北上「え?あぁ、これこれ、私特製のマスターキー」チャラッ


ザッ


北上「へ?」

榛名「そこおっ!」バシッ

北上「あっ」

榛名「今回だけは不問にします。犯罪抑止です」

北上「ちょ~!それ作るの苦労したんだからね~!」

榛名「労力割く所が違います!これは没収です」

北上「そ、そんなぁ!」

榛名「…提督に報告しますよ?」

北上「ゲ、ゲスい選択肢選んでくるね、榛名っち…」

榛名「私も成長しました。泣き寝入りするのはよくないと!」

北上「」(確実に提督の影響だろうなぁ…ホント明るい子に戻ったよなぁ)

榛名「な、何ですか?」

北上「うんにゃ、仕方ないから鍵は諦めようかと。まぁそれはそれとして、ちょっと付き合って欲しい所あるからさ、パパッと着替えちゃってよ」

榛名「えっと、はぁ…解りました」

北上「集合場所は執務室裏の花壇ね」

314 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/03 00:12:56.81 I/bsQuHAo 172/430

-花壇-

北上「はいっ、という訳でやって参りました!執務室裏の花壇です!」

提督「あのさ、お前何をしたいの?」

赤城「うふふ、北上さんは見てる分には楽しいんですけどね」

榛名「私達だけなんですか?」

北上「そっ、まぁ…赤城っちや榛名っちには勿論だし、一応提督にも知らせておく方がいいかなって」

提督「はぁ?なんだ、お前何か隠し事でもしてたのか」

北上「提督~、女の子には秘密の一つや二つはあるもんだよ」

提督「そうなの?」

榛名「」コクッ

赤城「」コクッ

提督「まぁいいや」

北上「いいのかよっ!」

赤城「それより、ここに何かあるんですか?」

北上「ん、まぁね。三人の後ろにはさ、提督が作ってくれた大井っち達の慰霊碑、あるじゃない?」

提督「ん、あぁ…結局骸を回収してきっちり埋葬してやれたのはこの三人しか居なかったからな。本当なら全員をちゃんと弔ってやりたいと……」クルッ

武蔵「……」

加賀「……」

大井「……」

提督「……」クルッ

北上「」ニヤニヤ

赤城「北上さん、どうしたんです?」

榛名「ん?」

提督「いち、に、さん、はいっ!」クルッ

武蔵「……」

加賀「……」

大井「……」

提督「……マジか」

赤城「え?」クルッ

榛名「何がですか?」クルッ

武蔵「……」

加賀「……」

大井「……」

北上「三人に会わせたかった人たち~」

315 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/03 00:21:51.68 I/bsQuHAo 173/430

榛名「うそ……」

赤城「加賀、さん…」

加賀「久しぶりね、赤城さん」

武蔵「随分と逞しくなったものだな」

大井「ご無沙汰してます、提督大佐」

提督「なんだ、これは。まだ真昼間だぞ」

北上「まぁ、守護霊的な?」

赤城「本当に、加賀さんなんですか!?」

加賀「ええ、立場はもう違うけれど、もう一度赤城さんとこうして話を出来るとは思いませんでした」

榛名「武蔵さん…」

武蔵「託した物が重荷になってないみたいで何よりだ。貴様ならば出来ると信じている」

榛名「大和さんも、誇りにしていいと、仰って下さいました」

武蔵「フッ、余計な事を…が、別に構わん。貴様は貴様の道を行け。貴様の歩む道を阻む者が在ろうが、その全てを貴様が背負う私の嘗ての相棒が蹴散らしてくれる。貴様は臆さず、ただ真っ直ぐ進めばいい」

榛名「はい…!」

316 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/03 00:22:19.95 I/bsQuHAo 174/430

北上は以前、自分が体験した事、彼女達から告げられた事実を三人に掻い摘んで話した。

三人の現状の事、艦娘の秘密の一端、死後起こるであろう事、そして深海棲艦の秘密の一端。

武蔵達から教えられた内容の全てを北上は話していく。

勿論、何故北上が何度となくこの場所に足を運んでいたのかと言う突込みに対して、花が枯れては阿武隈の苦労が台無しになってしまうのでそれが可哀想だから花に水遣りをしていた、などとは口が裂けても言わなかったが…

その説明を傍から見て、一番笑いを堪えていたのは大井だろう。

320 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/03 22:41:21.25 kiFcRyk3o 175/430

提督「つまり、お前達はこの慰霊碑に宿った、と言ってもいい訳か」

加賀「そうね。この姿になって初めて解った事もあるから、強ち無駄死にではなかったと言う事かしら」

提督「だがしかし、深海棲艦が元はお前達と同じ艦娘だという確証がどうしても得られんことにはな…」

武蔵「それもあくまで感覚的な話に過ぎん。事実、我々はこうしてここに居る。敵としてではなく、な」

大井「必要なのは、これが全ての艦娘に当てはまる事なのか否か、でしょうね」

提督「確かに…この現象は俺も初めてだ」

武蔵「だが少なくともあの時一戦交えた深海棲艦、貴様等はレ級と呼んでいるが、あれは言い換えれば近代兵器のそれに近いものがある」

加賀「つまりつい最近生まれ出たもの、と言う事ね」

大井「逆に北上さん達が一戦交えたという通称幹部クラスの深海棲艦はそれと対を成す最古の深海棲艦と言うべきかもしれません」

加賀「私達が……いいえ、貴方達が進化と言う過程を経て成長を遂げたように、深海棲艦もまた同じように成長をし、進化し続けているのではないかと…」

赤城「それじゃまさか、大別して見ればピーコックやフェアルストは私達の先輩に当たるって言うんですか!?」

武蔵「受け入れ難い事実の一つだな」

榛名「…泊地棲姫と戦ってたとき、彼女は言ったんです」

北上「へ、何を?」

榛名「何度でも、何度でも、何度でも……私達艦娘を水底へ沈め続けるって……」

提督「それは俺も通信越しに聞いた。そこで幾つか疑問が生じた。何度でも、と言う事はあいつらは何度となく艦娘と戦っていたということだ。そして艦娘風情が、と言う言葉には自分達と艦娘を天秤に掛けてくらべてる節も見られる。それはつまるところ、やはり艦娘と深海棲艦にはどこかしらで交わっている部分が存在するという間接的な証拠にも繋がる」

321 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/03 22:50:57.26 kiFcRyk3o 176/430

武蔵「私も戻れるのか、青い海の上に…」

提督「え?」

武蔵「…どこのどいつかは知らんがな、そんな声が風に乗って届いてきた事があった」

大井「苦しんでいるような声に、聞こえましたね」

提督「苦しんでいるような声?」

赤城「深海棲艦の声、なのかもしれませんね」

榛名「え…?」

赤城「北上さんから告げられた話と突き合わせると、辻褄は合うと思いますよ?私達が死んでしまうと武蔵さん達の様に何処か思い入れのある場所や拠り所を見つけてそこに留まりその場所を守護する存在となるか、散った場所で負の感情に取り込まれ深海棲艦となるか、また別の存在として輪廻転生するか、と言う事ですが……では深海棲艦が沈んだ先は何処にあるのでしょうか」

北上「なるほど、考えもしなかった…」

榛名「…私も、戻れるのか、青い、海の、上に…深海棲艦も、もしかしたら生まれ変わってるのかもしれません」

北上「うん、辻褄は合うかも」

加賀「けれど業が深ければ再びその身は深海棲艦として生まれ変わり、負の輪廻で廻り続けるのではないかしら」

大井「だとすれば、悲しい事ね」

322 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/03 23:11:15.93 kiFcRyk3o 177/430

提督「……なるほどな。幾つか解けなかった謎の一端が明かされるか」

赤城「どういう事です?」

提督「当事者も含めない事にはなんともな。ともかく、こうして会話できただけでも行幸だ。俺は話を纏めてるから、あとはお前達で思いを紡いでおけ。今度、先輩にも手を合わせに来てもらうよ」

武蔵「フッ、その時は腰を抜かして喜ぶように趣向でも凝らしてやるか」

加賀「面白そうですね。心なしか気分が高揚します」

大井「ふふっ、そうね。とびっきりを用意しておきましょう」

北上「」(ゲスいわぁ…)

榛名「あ、あははは…」(なんだか笑えない冗談真顔でやりそう…)

赤城「加賀さんったら…」


かくして、提督は金剛達の話と今回北上経由で知らされた艦娘の秘密の一端、その事実を目の前にして幾つかの仮説に確信を得るに至った。

だがそれは提督を含め、鎮守府全体をも大きく揺るがす結果となる事をまだ彼は知る由もない。

しかし同時に、艦娘にとっての新たな一面と彼女達に秘められた本来の力を引き出す切っ掛けにもなると提督は考え、その考えは結果として正しい方向へと現状向かっている。

そして同時に、彼はその先に見える未来に何が待ち受けていようと艦娘を決して裏切らないと改めて誓った。

326 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/08 20:05:00.79 zRmAMC8jo 178/430

~閑話休題・晩秋の宴~



-演習場-

利根「ふぅ…午前中はこれくらいにしておくかのう」

阿武隈「はぁ、はぁ、はぁ、と、利根さん…容赦、なさすぎだし!」

利根「莫迦を言え。鈍った体を解してやっておるんじゃ、気合いを入れんか!そもそも稽古を付けろと言うてきたのはお主じゃろうが。我輩は我輩で試したい事もあったんじゃが、まぁ午後はお主でそれを試す事にするか」

阿武隈「じ、実験台ってこと!?」

利根「言葉の選び方が雑じゃのう。人柱、と言うが良い」

阿武隈「同じじゃない!」

利根「細かい奴じゃのう」

阿武隈「ど、どっちがぁ!?」

利根「兎にも角にも、午後は午前以上にみっちりやるから、今の内にしっかり体を休めておくんじゃぞ」

阿武隈「ぶーぶー」

327 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/08 20:16:14.82 zRmAMC8jo 179/430

夕張「いやー、あっちは鬼軍曹だねぇ」

陸奥「呆けてる場合?そろそろボーナスタイム終わりにするわよ?」

夕張「いぃ!?ちょ、ちょっとタンマ!」

陸奥「タンマは三回まで、もう使い切ってるわよ?」

夕張「そ、そんなぁ!」

陸奥「それじゃあ…」ポキ

夕張「ひぃ…」

陸奥「がっつりと…」ポキポキ

夕張「はわわわ…」

陸奥「反撃ってことで…」ポキポキポキ

夕張「きっと今の私の顔には死相が見えているんだ…」

陸奥「…って思ったけどお昼休憩みたいね。ざ~んねん」クルッ

夕張「た、助かったぁ…」

陸奥「な~んちゃってぇ!」ブンッ

夕張「きゃあっ!」サッ

陸奥「あら、避けれるのね」

夕張「し、心臓に悪いってば!」

陸奥「っていうか、ふふっ…夕張の悲鳴って結構かわいいのね」

夕張「んなっ///」

陸奥「北上にボイスレコーダー借りて録音しとくんだったなぁ」

夕張「鬼畜生か何かですか…」

陸奥「さて、不意打ち失敗しちゃったし、今度こそご飯ね~」クルッ

夕張「……」ビクビク

陸奥「もう攻撃しないわよ。ほら、午後もあるんだからシャキッとしなさいよ!」

夕張「…午後に、死期が延びただけか…」

328 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/08 20:44:25.49 zRmAMC8jo 180/430

鈴谷「ふぃー、実戦仕立ての演習ってのは、これはこれで疲れるなぁ」

熊野「ですけど普段は気付き難い自分や相手の良い部分悪い部分を見つけるのにも最適ですし、身内との連携を図る上でも非常に高効率な演習内容ですわ」

鈴谷「だねぇ…っていうか、朝のミーティング…提督いきなり個人面談するとか言ってたけどさー、なんか変な質問っていうか、言ってる事が私よく解んなかったんだよねぇ」

熊野「鈴谷さんはもう面談済まされましたの?」

鈴谷「うん、午前中だった」

熊野「そうでしたの。わたくしは午後一でしたわね、確か」

鈴谷「んじゃ、午後は少し遅れてから演習再開だねー。取り敢えずシャワー浴びてご飯いこー!いえーい、今日のご飯はな~んだ~ろな~♪うふふ、テーンションあ~~がるぅ~~!」

熊野「全く、そのノリいい加減にしてくれませんこと?」

鈴谷「むふふ、む~りでーっす!」キャッキャ

329 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/08 21:03:43.54 zRmAMC8jo 181/430

-執務室-

提督「そうか、うん。ありがとう」

大鳳「あの、これは一体?」

提督「ん?ああ、この間大本営に立ち寄った時にたまたま心療内科に精通してる先生と話をする機会があってな。艦娘のメンタルケアや精神的負担を減らすにはどういったことをすればいいのかってのを聞いてな。艦娘と一対一で会話をして、不安に思うことや疑問に思うことなんかを色々聞いてストレス発散に務めるのはどうかってアドバイスもらったもんでな」

大鳳「はぁ、そうだったんですか。ふふ、提督も大変ですね。先輩提督ならご飯食べてパーッとやれば悩みも吹っ飛ぶわよって相談すると決まって宴会が始まりましたよ」

提督「はんぱねぇな、あの人…」

大鳳「それじゃ、私はこれで」

提督「おう。今日は待機日だから訓練は程ほどに、整備は欠かさずにな」

大鳳「はい!」


ガチャ……パタン


提督「大鳳は特に夢に見ることも記憶に留めてることもなし、か。やっぱり特定の条件が何か揃う事で呼び起こされるのか?榛名、金剛、神通……そして、さっき面談したヴェールヌイ。金剛と似た内容だったのは、やはり死に直面して見た心象風景の実体化か。本人でも現実と夢の境界線がハッキリとしていなかったのもそれならば納得がいくか…」


コンコン…


提督「ん、午前中のラストか。入っていいぞ」

330 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/08 21:25:04.46 zRmAMC8jo 182/430

瑞鳳「失礼します!」

提督「おっ、ちっこいの来たな」

瑞鳳「ちっこいって言わないで下さいよ!赤城さん達も直に私の頭ポンポンするんですよ!?」

提督「愛されてるってことだろ?素直に喜んどけ」

瑞鳳「む~…それより、面談って何ですか?学校じゃあるまいし、進路相談って訳でもないですよね?」

提督「はは、進路相談か。お前達の場合は『しんろ』は『しんろ』でも『針路』の相談になりそうだがな」

瑞鳳「うん?」

提督「…漢字の勉強しとけ」

瑞鳳「むぅ…」

提督「まぁそんな堅くならずに聞いてくれて構わない。簡単な質問と雑談で終わりだからな」

瑞鳳「はぁ、そうなんですか?」

提督「時に瑞鳳は覚えのない記憶があったり、変な夢を見たりとかってあるか?」

瑞鳳「はい?」

提督「単に忘れてるだけでなんか記憶にあるとか、俗に言う怖い夢ってのを定期的に見ているとか、そんなような身に覚えのない記憶や嫌な夢だな」

瑞鳳「うーん…怖い夢とか嫌な夢っていうのは、特に…記憶も別に、身に覚えのないようなものとかはないです」

提督「そうか。いや、それなら別に構わないんだ。それはつまり瑞鳳が現時点で充実して精神的には安定しているってことの証明だからな」

瑞鳳「えっと…これ、だけ?」

提督「ん?ああ、そうだぞ」

瑞鳳「面談って言うから、なんだか色々と考えちゃった…」

提督「はは、そうか。それは悪いことをしたな。でまぁ、最近は調子とかはどうなんだ」

瑞鳳「うーん、赤城さんや飛龍さんと一緒に練習する事が多いんですけど、やっぱりあの二人は凄いなーって」

提督「どう、凄いんだ?」

瑞鳳「えっ?あっと、それは…弓の扱い方もそうですけど、何より尊敬するのはその集中力かなって…」

提督「俺からすれば瑞鳳の集中力も立派なもんだがな」

瑞鳳「お二人だけじゃありません!大鳳さんだって、龍驤ちゃんだって…この間の演習戦で本当に凄かったな。龍驤ちゃんは本当に凄かったんですよ。あの大鳳さん相手に勝ったんですから!」

提督「ほぅ…あいつがねぇ。初めて会ったときは小うるさい奴だと思ったもんだ」

瑞鳳「ひどっ」

331 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/08 21:38:29.09 zRmAMC8jo 183/430

提督「けどな、あいつは人一倍頑張り屋なんだよ。自分でも解らないくらいに頑張って頑張って、頑張りすぎて倒れるまで自分がオーバーワークしてることにも気付かないくらい頑張る」

瑞鳳「た、倒れるまでって…」

提督「瑞鳳は他の鎮守府とうちの鎮守府、なんか違うなーって思ったことあるか?」

瑞鳳「あっ、はい!先輩提督の所も、不動提督の所も、艦隊毎で統制がされてますけど、提督は毎回違うなって」

提督「正解」

瑞鳳「あの、なんでですか?」

提督「俺はお前たちを順位で格付けするってことをしてないだけだよ。大抵の鎮守府は実力順に第一艦隊を担っていくもんだが、俺はそれをしていない。なんでか…」

瑞鳳「ふんふん」

提督「お前たちの関係を第一に考えてるから、かな。どうしたって優劣ってのは出てくるものだし、戦艦と駆逐艦じゃそんなの単純な戦力で見ても戦艦が上なのは当たり前だろ?」

瑞鳳「そ、それは、まぁ…」

提督「けど、駆逐艦だって戦艦を淘汰することはできる。夜戦だ。夜戦での駆逐艦は全てにおいて逆転を可能にするだけの火力を秘めている。勿論、綱渡りの部分も多分にあるが、それを補うのが連携だ」

瑞鳳「なるほど」

提督「で、連携って部分で話が戻ってくるわけだ」

瑞鳳「はい?」

提督「さっきも言ったとおり、俺は格付けをしてそれを艦隊にそのまま反映させるってことはしていない。その時のお前たちのコンディション、向かう任務先での得手不得手を考慮した上で人選する」

瑞鳳「い、いつもポンポン名前呼んで艦隊決定してるけど、それもちゃんと考えられてたんだ…」

提督「そう言うこと。ちょっとは見直したか?」

瑞鳳「は、はい!」

提督「まっ、冗談は置いておくとしてだ。そうやって色んな連中と組むのと毎度同じ連中と任務をこなすのじゃやっぱり大きな違いが生まれて来るんだよな。どっちにもメリットデメリットは存在するが、俺はその部分には別に着眼点を置いてない。まぁ、多少は無きにしも非ずって部分はあるが、それを前面には出さん」

瑞鳳「それじゃ、何を基準に決めるんですか?」

提督「お前たちの気持ちを最優先にしている。お前たちは本当に良くやってくれる。万が一にも死を覚悟しなければならない場面も一度や二度じゃないはずだ。それでも尚、お前たちは前に進んで歩みを決して止めずに先へ向かっていく。脅威へ立ち向かってくれる。俺はそれを誇りに思う。だからこそ、俺なんかがお前たちを量ることなんてできやしないんだよ。その代わり、全員を平等に出来る限り扱ってやろうってのが本心だ。やろうって言い方もまた驕りかもしれないけどな。まぁそれによって満遍なくお前たちの、艦娘同士の繋がりが太くなって結果として連携も紡ぎやすくなる」

332 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/08 22:04:38.01 zRmAMC8jo 184/430

瑞鳳「ふふっ」

提督「な、なんだよ」

瑞鳳「ん~、いや~、榛名さんが提督好きなのもなんだかわかるなーって」

提督「はぁ!?今の話の何処に榛名が関係あんだよ!」

瑞鳳「あはは!赤城さんの言うとおり、提督って榛名さんの名前出すとホントわっかりやすいなぁ…」ニヤニヤ

提督「あ、赤城の奴…!」

瑞鳳「知ってました?空母組じゃ提督って結構ポイント高いんですよ~?」

提督「はぁ?なんだよ、ポイントって…」

瑞鳳「龍驤ちゃんはまぁ提督ラブなの解ってますけどね」

提督「なんだよそれ」

瑞鳳「飛龍さんまだはちょっと出会ったばかりで解りませんけど、赤城さんも大鳳さんも提督には好意的ですよ?」

提督「ん、まぁ好意的なのはありがたいけどな。神通のファーストリアクションが今のところ俺の中でのベストスリーに入るショックな対応だったのは覚えてる」

瑞鳳「へ?」

提督「声掛けたら子猫の如くプルプル震えて後退りされて脱兎の如く逃げられた」

瑞鳳「えっ…」

提督「うん、流石にショックだろ?」

瑞鳳「あははは!」

提督「笑いごとじゃねぇんだぞ!?」

瑞鳳「あー、可笑しい。うふふっ」

提督「ったく、笑ったままアゴ外れちまえ」

瑞鳳「はー、面白い話聞けたし良かった良かった♪」ニコニコ

提督「こいつ…とにかく、話は以上だ。取り敢えず瑞鳳は特に問題なしって事だな。集中力の話も気になるなら持ち前のスキンシップ力使って赤城や飛龍に直接聞いてみろ。お前が見立てるとおりで、俺が言うのもなんだがまさに空母組の中じゃトップレベルなのは認めるところだ。同じ型である以上、手本に出来る部分、盗める部分は多いにあるだろうから、それを吸収してもっと躍進してみせろ」

瑞鳳「はい!頑張ります!」


シツレイシマシター ガチャ……パタン


提督「ったく、ただの人生相談だったな。が、瑞鳳は瑞鳳で考えさせられるところでもあるのかもな。さてと、俺も飯食いに行くかーって、まだちょっと早いか?暇つぶしがてら皆が何してるのか見て回るのもたまにはいいかもしれんな」

338 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/09 21:22:11.55 yQeygLGdo 185/430

-グラウンド-

木曾「くそがぁっ!」

北上「うぅ、駆逐艦マジうざい…!」

川内「は、速いなぁ…」

神通「お、追いつける気が、しません…」

島風「あれ、もう追いかけっこしないの?」ピョン ピョン

夕立「まだまだやれるっぽい」ノビノビー

Bep「うん、私もまだまだ余裕がある」

「まだ走れるわよー?木曾達は走んないの?」ニヤニヤ


「暁お姉ちゃんが生き生きとしてるのです」

春雨「夕立お姉ちゃんも…」

白露「純粋に考えて私達の速さに軽巡クラスたってそうそうついてこれないでしょー」

時雨「僕達が本気で走れば、それはね」

339 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/09 21:45:05.98 yQeygLGdo 186/430

木曾「ぜってぇ捕まえる…!」

北上「上等っしょ…重雷装の本気、見せてやりましょうかね」

川内「このまま終わる訳にはいかないよねぇ」

神通「流石にこれでは、川内型の名折れです」


メラメラメラ……


夕立「あ、あれ…」

Bep「どうやら、火が着いたみたいだね」

島風「吹き消してやるんだからっ!」

「よーし、このまま逃げ切って楽しいお昼ご飯に突入よ!」

駆逐艦ズ「「「おーっ!!」」」


提督「グラウンドに着てみれば、なんか面白そうなことやってんなぁ。みたとこ雷巡・軽巡組と駆逐組で鬼ごっこか、ありゃあ…どう考えても北上たちに正攻法で勝負してても勝ち目ねぇだろ…」


木曾「何でもアリって言ったのはてめぇ等だ。文句は言わせねぇぞ…!」

北上「木曾っち、打ち合わせ通りね~」

川内「神通、私達も行くよ!」

神通「はい…!」

「目が、マジね…」

島風「こわー…」

夕立「ハンモック張ってでも逃げ切ってみせる…!」

Bep「ふふ、ただの鬼ごっこに非ず、だね。皆、固まるのは良くない。散開して互いの位置に注意していこう」

「おっけーよ!」

島風「よーし、連装砲ちゃん、一緒に行くよ!」

夕立「駆逐艦の本気、見せるっぽい!」

340 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/09 22:12:55.97 yQeygLGdo 187/430

提督「なるほど、運動量で勝る駆逐組と技術面でそれを補う雷巡・軽巡組か。これはこれで見ものだ…多分、暁たちは散り散りになって的を絞らせないようにするだろうが…相手に北上が居たのが運の尽きかぁ?あいつはこと勝負事に関しちゃ手は抜いてこねぇぞ」


北上「川内っちと神通っちは追いかける振り……私はまず、状況把握するから木曾っちでガチ捉まえに行く振りかな。きっとあの子等的を絞らせないようにバラッバラに動くと思うけど、必ずどっかに同じ動き混ざってるはずだから、うちはそれを誘発させる動きをする」

川内「オッケー。それを私と神通で看破して先を読むって訳ね」

北上「ご名答。木曾っちは手近に居るのにガンガンプレッシャーかけてってよ」

木曾「おう、任せとけ!へへっ、何とかは兎を狩るのにも全力を尽くすってな」

神通「川内姉さん、私は右舷へ向かいます」

川内「よっし、私は左舷だね。左右から追い込み漁と行きますか!木曾は真正面から散らしてってよ」

木曾「おう、任せな!そんじゃ行くぜ!!」


提督「ははっ、ありゃあガチだな。さっきは勝ち目ないかもって思ったが、これはこれで解らないかもな」


「あ、司令官なのです」

春雨「わ、笑ってる…?」

白露「ああ見えて提督って戦術組むの上手なんだよ、春雨!」

春雨「ええ、そんな言い方はひどいよ、白露お姉ちゃん」

時雨「おーい、てーとくー!」

341 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/09 22:31:18.89 yQeygLGdo 188/430

提督「ん?なんだ、あいつらも見てたのか」テクテク


「お疲れ様なのです」ペコリ

提督「おう、お疲れ」

白露「デスクワークは?」

提督「終わり。午前の面談も一通り終わったからな。余った時間を散策だ。そしたらグラウンドでまた随分と楽しそうなことしてたからな」

時雨「眺めながら笑っていたけど、提督はこの勝負、どうみてるんだい?」

提督「なんだ、笑ってるところ見られたか。油断も隙もないな…まぁ、そうだな。見てた感じ鬼ごっこだろ?」

「なのです!」

提督「単純な追いかけっこじゃ、まず間違いなくお前たちに追いつける他の艦なんて居やしない。が、それもやり方次第でどうにでもなるってのをこれから北上たちが披露してくれるさ。それを看破して往なせるかどうかが暁たちの腕の見せ所だな」

白露「えっ、北上さん達が何しようとしてるか解るの!?」

提督「ん、まぁ…なんとな~く、だな。良いか?まず、暁たちのあの立ち位置からして恐らく、北上たちの動き出しに合わせて四方へ散れるよう、全員散開してるだろう。それも互いの邪魔にならない程度の距離を置いて、それぞれが動きやすいようにな」

時雨「うん、それは解る」

春雨「ふんふん…」メモメモ

提督「かたや北上たちだが、川内と神通がそれぞれ左右に大きく展開、木曾はど真ん中でその後方に北上…四対四で勝負してるのに輪形陣を崩したような中途半端な位置取り。恐らく、序盤は木曾が駆けずり回って全員へ威嚇も込めた立ち回りをするはずだ。それを左右の川内たちが外へ逃げないように包囲、北上はそれを分析して、各個撃破を狙うつもりだろう。見てろ、始まるぞ」

342 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/09 22:58:36.04 yQeygLGdo 189/430

木曾「っしゃあ!行くぞ、駆逐艦共っ!!」ザッ

「ふん、捕まえてごらんなさい!」サッ

Bep「そう簡単にはいかないよ!」サッ

夕立「なんのまだまだー!」サッ

島風「ふふっ、おっそーい!」サッ

川内「こっから先は行かせないよ」ザッ

「っと…横から!響!」

Bep「ナルマーリナ。油断はしないさ」

島風「ぉう!」キキィッ

神通「逃がしません」ザッ

夕立「うわぁ、静かに獲物を狙う目だ…」ジリジリ…

木曾「オラオラ、止まってるとあっさり捕まえるぜ!」タッタッタッタッ

「くぅ~、思いの他厄介ね…!」

Bep「この状況で北上さんは一体…」

北上「……」ジー

夕立「み、見てるだけって…」

島風「んっもー!やる気なさすぎー!」

343 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/09 23:12:02.99 yQeygLGdo 190/430

「し、司令官の読みどおりなのです…」

春雨「はー…」

時雨「見事と言う他ないね」

白露「さ、流石…」

提督「いいか、不慣れな場合は状況を瞬時に把握しようとするな。まずは見ることが大事だ。こちらの状態、数、陣形、個々の特性、また相手の特性、数、陣形、距離、解るだけの情報をとにかくまずは見て、情報として仕入れるんだ。仕入れた情報を精査してそれは初めて状況として盤面に表せる。お前たちには申し訳ないが、この勝負は恐らく北上たちの勝利だ。勝因は戦略のない暁たちと戦略のあった北上たち、この一点に尽きる。ヴェールヌイならあるいは途中で北上の思惑に気付くかもしれないが、気付いた時には既にって状況だろうな」

白露「そ、そんな先まで見通せるもんなの?」

提督「見通せなきゃならないんだ。戦術眼は持って生まれる才能として備えてる奴も居るが、大抵は鍛えて得るからな。じゃなきゃ、お前たちを気付かぬ内に死地へ送り出してしまう。出来るようになれとまでは言わないが、少しは学んでみて損はないぞ、戦術ってのはな。それこそ、キス島の時のお前たちの戦術、あれは立派なものだったぞ」

時雨「そう言ってもらえると励みになるね」

提督「さて、と…何を賭けて勝負してるのかは知らんが、喧嘩にならない程度で頑張れよ」

春雨「最後まで見ていかないんですか?」

提督「そうしたいのは山々だがな。お前たちが俺の代わりに良く見て、後学に生かせ」

春雨「は、はい!」

344 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/09 23:43:04.75 yQeygLGdo 191/430

-弓道場-

赤城「ふぅ、今のは少し引きが甘かったでしょうか」

飛龍「うーん、そうですね。赤城さんの事ですから、実戦と練習でやはり無意識的に加減を調整してしまってるんじゃないかと…」

赤城「意識して修正しないと直せそうにないですね」

飛龍「それに比べて、瑞鳳は安定してるね」

瑞鳳「えっ」

赤城「はい、射法八節一連の流れが実に鮮やかです」

瑞鳳「えぇ…そ、そんな」

飛龍「瑞鳳さ、私や赤城さんに何か負い目とかそういうの感じてるみたいだけど、全然そんな事ないと思うよ?」

瑞鳳「えぇ!?」(バ、バレてた!)

赤城「瑞鳳さんは射法八節には何ら問題はありませんが、継続させる集中力でしょうか」

瑞鳳「うぅ…」(これもバレてたぁ…)

飛龍「んー、でも私も赤城さんも言うほど集中って続いてないよね」

赤城「そ、それを言われると立つ瀬が…」

飛龍「あははっ、けどそこら辺はやっぱその日の調子次第って部分は大きいよね」

瑞鳳「お、お二人に比べればそれでもやっぱり私、集中力が持続しないことが多いかなって…」

赤城「うふふ、だけどそれを補って他の部分が秀でてるじゃないですか」

瑞鳳「えぇ、そんな事ないですって!」

飛龍「謙遜謙遜♪あっ、そろそろお昼ですよ!」

瑞鳳「えっ、もうそんな時間!?」

赤城「最近、ご飯大盛りを要求しても並しか盛ってくれないので、今日こそは…!」

瑞鳳「あ、赤城さんは少し控えるべきですよ!」

赤城「えぇ!?」

飛龍「あははっ、そこには同意しとく~」

赤城「そんな、飛龍さんまで!」

飛龍「だって赤城さん、ご飯食べた後すっごい眠そうな顔で弦引いてるんだよ?危なっかしくてさぁ」ニガワライ

赤城「うぅ、お腹一杯になるとどうしても今度は眠気が…」

瑞鳳「一航戦の誇りって一体…」

赤城「と、時と場合によります!」

瑞鳳「加賀さんが草葉の陰で泣く、というか…」

飛龍「いやぁ、頭にきました。とか言ってそう」

瑞鳳「あはは、加賀さんってそうなんですか?」

赤城「お、怒ると怖いです…」

瑞鳳「じゃあ、怒られないようにシャキッとしましょう」

赤城「はぁ、お小遣いで買える分にも限度があるのが世知辛いですね」

瑞鳳「そう言えば以前に翔鶴さんと何か計画立ててませんでしたっけ?」

赤城「五分で頓挫しました」

飛龍「何を閃いて一瞬で諦めたのさ…」

瑞鳳「あ~、それはですね……」

349 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/10 20:37:25.91 8q8lDt6So 192/430

-食堂-

飛龍「あっはっはっは!」

赤城「もう、飛龍さん笑いすぎです!」

提督「おっ、何やら楽しそうだな」

瑞鳳「あっ、提督!」

赤城「あ、提督…」

提督「ん、どうした赤城?」

赤城「あ、いえ…何でも///」モゴモゴ

提督「ん?」

飛龍「くくく…」ニヤニヤ

瑞鳳「あはは…」ニガワライ

提督「おいおい、何だよ」

赤城「ひ、秘密です!///」

飛龍「んふふ~、そうそう。提督っ!女子トークには時として秘密にしなきゃならない事もあるって事なのっ」

提督「はぁ?」

瑞鳳「ほらほら、提督はあっちあっち~!」

提督「おお、おいこら押すなって…解ったよ。聞かないって…!」

350 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/10 20:58:24.86 8q8lDt6So 193/430

提督「はぁ~、ったくわけ解らん」ガタッ

比叡「んお」

霧島「あら」

榛名「あっ」

金剛「Oh…」

提督「え?」

金剛「Hey!提督ぅ~、私達と一緒にランチしたいのは解るけどさ~、今日はちょっと遠慮して欲しいネ~」

提督「はい!?」

榛名「提督、ごめんなさい!」

提督「え?」

霧島「今は!」

比叡「ダメです!」

提督「えっ、ちょっ、何、何なの!?どういうことなの!?」

351 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/10 21:23:57.88 8q8lDt6So 194/430

提督「くっそぉ…なんだってんだ。ちくしょう、しゃーない。この隅っこなら…」

北上「ふぁ~、あれ提督じゃん」

提督「……」

北上「な、何さ…」

提督「退けとか言うのか」

北上「え、いや…別に言わないけど」

木曾「おう、北上!お前ハンバーグ定食でよかったよな?っと、よう提督」

提督「よう…」

木曾「え、なんか暗くね…?」

北上「なんか解んないけど隅に追いやられたんだって~」

川内「おっ、居た居た!駆逐艦連中はあっちの席で纏まるってさ」

神通「ですのでお二人で居た龍驤さんと大鳳さんを連れてきました。利根さん達は午前中、演習してた組で纏まってるみたいでしたのでお声は掛けてません」

大鳳「大勢で食べるほうが楽しいからね。お邪魔させてもらおうかなって」

龍驤「おおっ、こっちの席提督おるやんかぁ!当たりやん♪」

木曾「ほらほら、提督!んなしょげ返ってねぇで一緒に飯食おうぜ!」

神通「川内姉さんはどれにしますか?」

川内「んー、どーしよっかなー。神通と一緒で良いや」

神通「そうですか?それじゃあ…カレーうどん、っと…」

龍驤「うちらも決めんで、大鳳!」

大鳳「ええ、そうね」

龍驤「提督はどないするん?」

提督「ん、あ~、どうすっかな。ってもやっぱこれだな」トン…

龍驤「提督、ほんまカレー好きやなぁ」

提督「カレーライスは海軍の誇りだ」

大鳳「それじゃ私はしょうが焼き定食」

龍驤「うちはどないしよ。寒ぅなってきたし、やっぱ中華丼やな!」

352 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/10 21:43:13.28 8q8lDt6So 195/430

木曾「へへっ、にしてもよ、こうやって提督と一緒に飯食うのって何気に久しぶりだよな」

北上「あ~…確かにねぇ」

川内「大体、私達が食べ終わった後に一人で食べてること多いもんね」

神通「傍らには大抵秘書艦の榛名さんがいらっしゃいましたけどね?」

提督「んだよ、しゃーないだろ。執務がきっかり定時で終わることなんてそうそうないんだし、必然的に手伝ってもらってる榛名も昼食は遅れること多かったよ。まぁ、そういった場合は悪いと思うから奢ってやってるが…」

北上「お~、初いねえ、熱いねえ…!」

提督「うっせ」

木曾「ははは!まぁよ、だから久々だなってんだよ。で、どうよ」

提督「はぁ?何が」

木曾「榛名以外の艦娘に囲まれて食べる飯はうめぇかって聞いてんだよ」ニヤニヤ

北上「おっ、おおっ?そこんとこど~なのさ~、提督~?いつもは榛名っちとア~ンとかしてんの?してんの?」ニヤニヤ

木曾「おいおいマジかよ。背中痒いぜ、おい」ケタケタ

北上「木曾っちが聞いたんでしょ~!」キャッキャ

提督「マジこの姉妹うぜぇんだけど…」プルプル

神通「うふふ」

川内「素直になりなよ、提督♪」

提督「わざとらしく語尾を躍らせるな!」

龍驤「せやけど、あれやんな。提督も最近は少し落ち着いてきてるんとちゃう?」

大鳳「以前はもっと騒がしかったって事なの?」

龍驤「うちが最初におった鎮守府の提督はそらぁもう熱血を地で行くようなやる気マンやったで」

提督「お、おい龍驤やめろって!」

353 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/10 21:59:04.23 8q8lDt6So 196/430

川内「へぇ…」ニヤニヤ

木曾「おいおい、マジかよ…キャラ違くねぇか、提督~?」ニヤニヤ

提督「う、うっせぇな!龍驤も要らないこと一々思い出すなっての!」

龍驤「にしし、まーまー細かい事気にせんと、仲良うご飯しよや♪」

神通「ほらほら、提督。折角のカレーライス、冷めてしまいますよ?」

川内「提督ー、神通がよそってくれるなんて滅多にないんだよ?超レア!普段より数倍美味いかもね!」

神通「ちょ、ちょっと川内姉さん!変なこと言わないで下さい!///」

大鳳「ホント、神通って戦闘のときと雰囲気違うから面白いねぇ」

神通「えぇ!?」

川内「私と訓練してるときなんかもそりゃあもう、食い殺すぞってくらいの顔つきになるよね」

神通「表現が酷すぎませんか!?」

提督「ははっ、そんな鬼気迫る特訓してるのか?」

神通「もう、提督まで…」

川内「ほら、なんだっけ。神通、あれあれ…えーっと」

神通「はい?」

川内「ほら、神通が最近心がけてるあれだって!なんてったっけ、じん、じん…」

提督「仁義礼智信」

川内「そーそー、それそれ!私には何か小難しくって何言ってんだかさっぱりなんだけどさ、神通ってば最近はそれを心がけてるとかで、あれ以来神通の動きとかなぁんか良くってさぁ。姉としては足元いつ掬われるのかって感じでヒヤヒヤもんなわけさ」

提督「ほぅ…」ニヤ

神通「な、なんですか急に///」

大鳳「あら、神通…なんだか顔赤いわよ?」

神通「へ?あ、いや、えっと、なっ、何でもありません!///」

北上「あらら、神通っちってこういう話苦手系?」

龍驤「なんや神通、熱でもあるんとちゃうか?めっちゃ顔赤いで」

提督「ほら、お前ら余りからかうな。神通も困ってるだろ。神通なりの練習方法があるんだろ?別に恥じることじゃないさ。むしろ良いことだ、そうだろ?」

木曾「まぁ、そうだけど…その、なんだ、じんぎ、れいちしん?って、なんなんだ。提督は知ってるみてぇだけど、神通も勿論知ってんだろ?」

354 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/10 22:11:24.18 8q8lDt6So 197/430

神通「ま、まぁ、そうですが…説明、となるとちょっと難しい、と言うか…てい、提督でしたら上手に説明できるのではないでしょうか…」

北上「えー、提督にそんな小難しいことわかんの?」

川内「よっ!我が鎮守府の長!提督!賢いって所見せてちょーだいよ!」

提督「お前絶対馬鹿にしてるよな?」

川内「え、してないって…!ホントだよ!?」

大鳳「煽りにしか見えなかったわ…」

川内「マジで…」

提督「ったく…神通の言った仁義礼智信ってのはな、儒教の中にある一説で孔子を始祖とする思考や信仰の体系のことだ。そんなかに五常と呼ばれる言葉がある。それが仁義礼智信だ。五常の徳性を拡充することによって、父子、君臣、夫婦、長幼、朋友の五倫の道を全うすることを説いている」

龍驤「な、なんや…むっちゃワケ解らん言葉が羅列されてんで…」

川内「え、なんて…?」

北上「お、おぉ…?」

木曾「やべ、寝そうだった」

大鳳「む、難しい…」

神通「……」(覚えるのに私だって苦労しましたよ…)

提督「はぁ、真面目な話したらコレだよ」

北上「あ、いや、なんか、そのごめんね?侮ってたわ」

提督「お前、俺のことなんだと思ってたの?」

北上「え…頭のねじが一本吹っ飛んでるけどやる時はやる人?」

提督「任務報告書を日記形式でしか掛けないポンコツがほざくな、戯け」

北上「ぐぬぬ…!」

大鳳「霧島なら知ってるかな…」

提督「さぁ、どうだろうな。知ってるかもしれないし、知らないかもしれない。どっちにしろあいつに聞いたら最後と思えよ。お前が理解するまで、またあいつ自身が理解するまで開放されないぞ、きっと…」

大鳳「う……」

提督「さて、と…お前ら喋ってるだけで手が休みっぱなしだぞ。俺は先に戻るからな」

木曾「えっ…!?て、提督何時の間に完食してんだよ!」

提督「お前らが俺から神通に矛先変えて弄繰り回してた辺りで食い終わってたよ」

龍驤「さ、流石や…」

提督「まっ、たまにはこういうのも悪くないな。楽しかったよ。午後は何するのか知らんが、ほどほどにな。それじゃ俺は先に戻るぞ」ガタッ

大鳳「はい、また機会があればご一緒しましょう!」

北上「じゃーねー」

358 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/11 21:32:48.38 7zgo3nP0o 198/430

-グラウンド-

羽黒「いきますよ!」パシッ

イムヤ「それっ」ポンッ

ゴーヤ「そっちにもいっくよー!」ポンッ

イク「はいなのねー!」


ベシッ


イク「はうっ」

ゴーヤ「クリーンヒットでち…」

提督「おっ、羽黒に水中娘達が陸地とは珍しい。はは、それでイクは顔面でボールキャッチして何してるんだ?」

イク「うぅ、顔面で受けたかったわけじゃないのね…」

羽黒「あ、司令官さん」

イムヤ「水中と海上、それに地上じゃ物の動きって全然違うじゃない?動体視力、集中力、視野の強化、色々とできることはあるって事よね」

提督「ほう、いい着眼点だな」

イムヤ「午後は今度は近海で駆逐艦の子たちと演習形式で特訓予定よ」

羽黒「私はそのお手伝いです」

提督「…そうだったのか。普段、あまり活躍の場を設けれなくて済まないな」

イムヤ「え?」

提督「遠征、遠征、戻ったら休暇を隔ててまた遠征。正直、俺でも嫌気が差すときがある。だから、当事者であるお前たちはもっとしんどいだろうなって思ってな」

イムヤ「ふふ、何を言うのかと思えば…」

ゴーヤ「要らない心配でち!」

提督「え?」

ゴーヤ「ゴーヤ達は縁の下の力持ち!ゴーヤ達無くして、この鎮守府は成り立たないって長門さんからのお墨付きなのでち!」フンス

イク「イクはまだ日が浅いけどスケジュールとかを見ると、提督が気を遣ってくれてるのはそれだけでも解ったのね!そうそう出来る気遣いじゃないと思うの!」

イムヤ「そーいう事よ!ってワケで、司令官!」

359 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/11 21:50:51.15 7zgo3nP0o 199/430

提督「な、何だよ」

イムヤ「特訓の邪魔でーす♪」

羽黒「気に病むだけ損かもしれませんよ?」

提督「はぁ、ったく…わーかったよ。だが特訓でも無理無茶はするんじゃないぞ」

イムヤ「だいじょーぶ♪」ウィンク

ゴーヤ「適度に休憩は取ってるよ~!」

イク「まず体力が続かな~い!」

羽黒「ふふっ」

イムヤ「って事よ。無茶のしようがないでしょ?」

提督「ははっ、確かにその様子じゃあそうだな。んじゃ、頑張れよ~」

イムヤ「ま~たね~!」

ゴーヤ「……行ったでちか?」

イク「うん、今度は道場の方へ向かったみたい」

羽黒「ふぅ…」

イムヤ「さっき金剛さんから連絡があって、食堂でニアミスしたみたいだけど、さり気無く北上さん達が囲い込んで事なきを得たみたい」

ゴーヤ「は~、見事に今日は全員が待機の日って事だから、ちょっと心配でち」

イク「鬼門は駆逐艦の子たちなのね」

イムヤ「きっちり口止めはしてあるけど、どこでぼろが出るか解らないしね。こっちも早い所片付けないと!」

ゴーヤ「りょ~かいでち!」

イク「オッケーなのね!」

羽黒「お任せ下さい!」

360 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/11 22:01:18.79 7zgo3nP0o 200/430

-道場-

提督「流石に誰も居ないか。にしても、折角の待機日だってのにどいつもこいつも午前中は張り切ってたなぁ」

提督「…っと、そろそろ執務室戻らないとな。残りの連中に前世の記憶があるのかどうか、探りを入れないことには今後の方針も決めれない」


利根「……あ、危なかったのう」

阿武隈「まさか道場に来るなんて、想定外」

陸奥「誰よ、ここなら安全に作業できるとか言ったの」

夕張「け、計算ミス…でもバレてなかったし結果オーライじゃない?」

鈴谷「熊野は午後一で面談って言ってたし、怪しまれない程度に午前中の続きしつつ、作業続行だね!」

陸奥「全く、あの四姉妹もまた随分と手の込んだ事を考え付くわね。私ですら気付くの遅かったのに…」

鈴谷「でもさ~、提督ってこういうの好きそうじゃん?」

夕張「きっと号泣ものですよ!」

利根「やれやれ、我輩は普通でもよいとおもうんじゃが…」

阿武隈「とか何とか言って、結構利根さん熱心に取り組んでるじゃない。あたし的にはいいと思うけどな~」

利根「ぬぐ、目敏い奴じゃな、お主…」

361 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/11 22:25:17.46 7zgo3nP0o 201/430

-執務室-

提督「は~、珍しくこう書類作業もないと暇っすねぇ…」


コンコン


提督「お、きたか。入っていいぞ」

熊野「失礼しますわ」

提督「おう、入れ入れ」

熊野「あら、珍しく執務デスクが綺麗ですのね。普段は書類の山ですのに…」

提督「そーなんだよ。結構レアだろ、この状態。もう二度と見れんかもしれないぞ」

熊野「ふふ、けれどどこか暇を持て余す、と言った表情ですわね?それで、今日の面談と言うのはどのような事を伺いたいのかしら?」

提督「そう畏まらんでもいいって。単にお前たちの今のコンディションや状態を把握しておきたいと思って一人一人に聞ける機会が出来たから実施してるに過ぎん。因みに熊野はこれまでに身に覚えのない記憶があったり、不意に嫌な夢、怖い夢みたいなのを断続的に見たりした経験ってあるか?」

熊野「なんですの、それ。身に覚えのない記憶と言われましても、よく解りませんわ。嫌な夢や怖い夢、と言うのもわたくしが知る限りではありませんし…」

提督「うーん、そうか。いや、身に覚えのない記憶ってのは例えばだけどさ、行ったことのない海域の記憶があるとか、なんでそうしてるのか自分でも解らないんだけど、そうしてないとならないっていう…なんていうか、使命感みたいなのに突き動かされてそうしてるって感じ?」

熊野「は、はぁ…?ちょっと、よく解りませんわね」

提督「だよな。俺も言ってて少し不安になるくらい解らんわ。けどまぁ、話を聞いてる限り熊野はそういったことがなさそうだから安心した。言い換えればそれは熊野が現時点で充実してて特に問題もない状態だってことに他ならないんだからな」

熊野「そのような曖昧な終わり方で宜しいんですの?」

提督「はじめに言っただろ。単にお前たちの現状を簡単に把握しておきたいだけだって。もしもそこで不安に思うことがあれば言ってくれれば何かしらの手助けが出来るし、変調があればそれに気付いてやれるかもしれない」

熊野「ふふ、まるでカウンセラーの先生か何かですわね?」クスッ

提督「免許皆伝ってわけじゃねぇけどな。ま、何はともあれ熊野は大丈夫ってことだ。貴重な時間付き合ってもらって悪かったな。もう戻っていいぞ」

熊野「そうですの?それじゃ、これで失礼いたしますわ。あ、そうそう…」

提督「ん?」

熊野「夕方くらいに食堂に来て欲しいと、先ほど金剛さんから言伝を頼まれていましたの」

提督「金剛が?」

熊野「ええ、なんでも見せたいものがあるとか…」

提督「そうか、解った。しかし夕方くらいって言っても幅広いな」

熊野「あの方はアバウトですから、仕方ありませんわ。ヒトロクマルマルからヒトナナマルマル辺りに立ち寄れば丁度いいかもしれませんわね」

提督「だな。りょーかいだ。お疲れさん」

熊野「はい、それでは失礼いたしますわ」


ガチャ……パタン


提督「さて、あと残ってるのは……」

362 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/11 22:54:01.47 7zgo3nP0o 202/430

-食堂-

金剛「そっちドーネ!?」

榛名「こっちは終わりました!」

霧島「こちらも準備完了です、お姉さま!」

比叡「よしっ!私のほうも完了しました!」

金剛「Good job!流石、私の自慢の妹達ネー!Hey!駆逐艦の皆、そっちの準備は終わってるネー?」

「カンペキよ!」

Bep「うん、微塵も隙はない」

夕立「装飾もあと少しで終わるっぽい!」

白露「あとはー、こっちの部分取り付ければかんりょーっ!」

金剛「Great!提督はあと暫くは執務室から出てこないヨ!この時間内で一気に終わらせるネ!」

榛名「私は一度、道場の方で別作業中の利根さん達のお手伝いへ行って来ます」

霧島「それなら私も付き合うわ」

金剛「OK!そっちは榛名と霧島に任せるネー。比叡は北上達の手伝いをお願いするヨ。私は赤城達の方へいってくるから、終わり次第、ドンドン設置して欲しいネ!」

比叡「お任せ下さい!」

363 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/11 23:15:46.45 7zgo3nP0o 203/430

-道場-

鈴谷「おっ、熊野おつかれーぃ♪」☆(ゝω・)v

利根「さり気無く時間は伝えてきたか?」

熊野「完璧ですわ。ヒトロクマルマルからヒトナナマルマルの間に食堂へと」

阿武隈「さっすがー!」

榛名「それじゃ、ラストスパートといきましょう!」

陸奥「任せなさい!」

夕張「いやー、それにしてもホントよく気付いたよね」

利根「なぁに、言いだしっぺは榛名なんじゃろ?金剛達はそれに賛同して率先して手伝っていると聞く。つまりあれじゃな、愛の成せる業と言う事じゃな」

榛名「と、利根さん…!///」

阿武隈「おー」

夕張「おー」

鈴谷「きゃー!テーンションあーがるぅー!」

熊野「うふふ」

陸奥「形無しね?」

榛名「もう…///」

364 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/11 23:27:24.36 7zgo3nP0o 204/430

-執務室-

提督「ふぃー、赤城で終わりかな」

赤城「お疲れ様です」

提督「まっ、お前は武蔵たちの一件を北上からも聞いてるから別段隠す必要もないが…」

赤城「欠けた記憶と覚えない悪夢、残念ですが私にはまだ経験のない事ですね。ただ、榛名さんと幾度となく共に海域へ赴いて感じたことですが、彼女は少し背負いすぎな部分があります。時としてそれは彼女自身を苦しめる結果に繋がるかもしれません。だからと言って軽薄になれ、見て見ぬ振りをしろと言う訳ではありませんが…」

提督「ああ、解ってるよ。ただお前の言うことも最もだ。確かにあいつは自分の信念に真っ直ぐだ。それに反する相手が深海棲艦と言う点において、今のところ歯車は綺麗にかみ合っているから常にそのパフォーマンスを最大限に発揮することができてる。だがそこに異物が混入されれば、たちまち歯車はその働きを止める」

赤城「提督は直に難しく考えすぎです」

提督「へ?」

赤城「私のモットーは簡潔に解り易く、です」

提督「お、おう…」

赤城「提督じゃないと、ダメなんですよ?榛名さんが頑張ってしまうのも、無理してしまうのも、意地悪く言えば提督のため、如いてはこの鎮守府のため、ですから提督があの子を支えて上げて下さいね」

提督「これは手厳しいね…」

赤城「勿論、あの子は私達のためにも奮起してしまいますから、そういった時は勿論私達が歯止めになってあげますけどね。ホント、榛名さんは皆さんから愛されてると思います。提督もですけどね?」

提督「愛されてるか?今日だってお前らに邪険に扱われたしなぁ…」

赤城「あ、あれは不可抗力です!」

提督「追いやられた先じゃ金剛たちにご飯一緒は無理デースって更に隅に追いやられたし?」

赤城「あ、あはは…」

提督「愛されてるか?」

赤城「ええ…言うほど実感がないのかもしれませんが多分に、私が思うにはですけどね?」

提督「はぁー、本当かなぁ…」

赤城「自分の部下を信じなくて何を信じるんですか?」

提督「ねぇ、知ってる赤城…」

赤城「はい?」

365 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/11 23:55:14.95 7zgo3nP0o 205/430

提督「部下が上司に対してね、この隠し撮りに成功したDVDをばら撒かれたくなかったら今日の遠征任務は無しにしろーって、脅迫してくると思う?」

赤城「えー…」アセ

提督「あとはねー、あっ、提督チーッス!鈴谷今日は遠征って気分じゃないからお散歩で気分転換してきまーっす♪じゃ~ぁね~ぃ」☆(ゝω・)v

赤城「……」

提督「とかとかー、あとはー…」

赤城「あ、いえ…もう十分です」

提督「あ、そう?」

赤城「それでも皆提督が大好きなんだと思いますよ!」

提督「押し切ってきたな…」

赤城「横綱相撲は結構得意です」

提督「受け止めず往なしてるだろ、お前…」

赤城「時と場合によります!」

提督「こいつ…」

赤城「あ、もうヒトロクマルマル過ぎてますね。金剛さんに呼ばれてるんじゃないんですか?」

提督「あ、そういやそうだった。てか赤城にも金剛の奴伝言頼んでたのか?」

赤城「ふふ、彼女会う子皆に言ってましたからね。私も漏れなく伝えてくれと頼まれてました」

提督「どんだけだよ」

赤城「私も用がありますから、一緒に食堂まで行きましょうか」

提督「赤城が食堂に用ってつまみ食いしか想像できんぞ」

赤城「……」スッ

提督「じ、冗談。冗談だから無言で矢筒から矢を抜き取らないで」

366 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/12 00:03:27.95 Y8Lspnovo 206/430

-食堂-

提督「ってことで着てみたけど……え?」

赤城「あら、うふふっ、思ってたより豪勢ですね」

提督「え?は?豪勢って、今日って何か祝い事の日だったか?」

赤城「もう、自分で忘れてるなんて相当ですよ?」

提督「え?」

榛名「提督!提督がここに着任されて今日で丁度一年経過したんですよ?忘れちゃったんですか?」

提督「あ……」

金剛「Hey!提督!Congratulations memory in an anniversary!」


パン パン パン


提督「うおっ」

瑞鳳「これから先も宜しくね、提督!」

飛龍「めでたいって言うのはいいねっ!」

陸奥「少しなら羽目を外してもいいけど、火遊びはダメよ?」

提督「お前ら…」

木曾「おら、もうちょい嬉しそうにしろっての!」

北上「鳩が豆鉄砲食らった顔って奴だね~」

衣笠「あははっ、提督が忘れてるんじゃ仕方ないよね~?」

羽黒「一生懸命隠してた私達がちょっと悲しいですね」

提督「今日ずっと、これ作ってたってのか!?」

「感謝しなさいよね!」

白露「私達の提督がいっちばーん!」

榛名「さぁ、提督こちらへ」

イムヤ「ヒューヒュー♪」

鈴谷「やーだー、テーンションあーがるぅ~~♪」

龍驤「よっ、だいとーりょー!」

提督「ええい、一々囃すな!」


かくして提督の着任から丁度一年経過したその日を祝う計画は、艦娘達の努力によって大成功を収めた。

そしてここから、彼女達の過酷な戦いの幕も上がる。

371 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/12 21:09:48.89 FiDrY2yEo 207/430

~覚醒~



-某海域-

大和「…こちら大和。深海棲艦の殲滅に成功しました」

ビスマルク「同じくビスマルクよ。こっちも深海棲艦一群の壊滅に成功したわ」

那智「…では、これより帰投します。尚、その後の敵の接触が無いとも言い切れませんので、警戒は密に」

雲龍「了解よ。警戒態勢は以前変わらず密に。特に潜水艦への警戒は怠らないで。稼動全機……」

祥鳳「待って下さい、雲龍さん」

雲龍「…何?」

摩耶「あれだろ、RPGで言う所のボスってヤツさ。あたし等の前に堂々と現れる辺り、オツムはからっきしかぁ?」

雲龍「あれは、資料にあった…」

レ級「……」

大和「戦艦レ級、ですね」

ビスマルク「よもやここで?」

那智「ちっ、こちらの戦闘データを測られた可能性もある。確実に沈めなければ…」

雲龍「ちょっと、待って…!」

那智「なっ……」


レ級1「……」

レ級2「……」

レ級3「……」

レ級4「……」

レ級5「……」

レ級6「……」

372 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/12 21:26:36.76 FiDrY2yEo 208/430



摩耶「おいおい、冗談だろ…」

祥鳳「戦艦レ級だけの、艦隊…!?」

大和「でも、何か変です。隊列は整ってますが、こちらへ仕掛けてくる素振りが無い」

ビスマルク「……その後方に控えているのが大本命、と言う事かしらね」

リコリス「お初にお目にかかるワネ。元帥お抱えノ第一艦隊カシラ?」

大和「…随分と情報がそちらは揃っているみたいですね」

リコリス「アラ、そうでもナイわよ?で、元帥の栄えある第一艦隊デいいのカシラ?」

ビスマルク「だとしたら、なんだと言うの?」

リコリス「この場で潰スワ」

摩耶「…んだと、てめぇっ!」

リコリス「フフッ、なんて冗談ヨ。見た所、戦艦二人に空母、軽空母、重巡の即席艦隊ミタイね。中々お外に出て来ナイ陰気な元帥に警告シニきて上げたノヨ」

祥鳳「警告、ですって?」

リコリス「元帥に伝えナサイ。同じ過ち、同じ争い、同じ歴史ヲいつマデ続けるのかッテネ」

大和「同じ、過ちですって…?」

リコリス「その様子じゃ、目に見エル履歴しか閲覧シテきてないミタいね。哀れな子達……ソレとも、副作用が無かったダケで、運良く力のみヲ手に入れたのカシラ?だとシタラ、尚の事不幸なのカシラ…」

ビスマルク「貴女、何を言ってるの…?」

リコリス「さぁ、何カシラねぇ?ただ、一つ言えるコトはコノまま私達とぶつかり続けレバ、滅びるのは確実に貴女達、と言うコトになるのかしら」

雲龍「意味が解らないわ。脅しなら通用しないわよ」

リコリス「脅し?とんでもナイ。さっきも言ったデショウ。これは警告ヨ…取り返しのつかナクなる前に、賢明ナ判断ヲするコトを願ってるワ」クルッ

373 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/12 21:45:40.81 FiDrY2yEo 209/430

-大本営-

大和「元帥、以上が此度に私達が体験した顛末です」

ビスマルク「奴の口振りは元帥が何かを隠していると暗に示唆する内容だったわ」

元帥「そうか…」

大和「元帥?」

元帥「…何でもない。報告は解った。危険な目に遭わせてしまって済まなかったな」

ビスマルク「いえ、それが本来の私達の任務です。気遣いは無用かと思いますけど…」

元帥「ふっふ、そう強がるな。報告は解った。今日は二人とも下がっていいぞ」

大和「は…?」

ビスマルク「まだ秘書業務は残っていると思うけど?」

元帥「調査任務を遂行してくれた褒美だ。遠慮せずに今日はもう休んでいい。同行した那智、摩耶、雲龍、祥鳳にもそれぞれ通達しておけ」

ビスマルク「し、しかし…!」

大和「ビスマルク、それ以上は…」

ビスマルク「くっ…」

大和「了解致しました。ではお言葉に甘えて本日の業務、終了とさせて頂きますね」

ビスマルク「ダンケ、シェーン…失礼します」

374 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/12 22:01:35.37 FiDrY2yEo 210/430

摩耶「ふー、やっぱ仕事の後の一っ風呂は最っ高だなぁ!」

祥鳳「一日掻いた汗を流す…疲れも一気に消えますね」

雲龍「そうねぇ。それにしても、一戦を交える事にはならなかったとは言え、戦艦レ級の艦隊にそれを指揮していたあの白髪に紅の瞳の深海棲艦…距離を置いていたとはいっても、あの圧倒的な威圧感…寒気がしたわ」

那智「解せんのはそれだけではない。奴の発していた言葉もまたこちらからしてみれば不可解だ。脅しではなく警告とは、言っている意味が理解しかねる」

摩耶「よう、那智」

祥鳳「お疲れ様です」

那智「ああ。あと、大和から通達だ。本日の任務は終了、その後は各自自由時間だそうだ」

雲龍「わざわざそれを伝えるためだけに?」

那智「ふん。どちらにしろ塩水を被ったままでは具合が良くないからな。事の次いでだ」

摩耶「かーっ!今日の元帥は気が利いてるなんてもんじゃねぇなぁ、おい!」

祥鳳「別段、荷が重い任務と言う訳でもなかったんですけれど、どうしたんでしょうか」

那智「私が知るか。だが上からの命令ならば絶対だ。休めといわれれば休みもするさ」

雲龍「相変わらずの鉄面皮ね」

那智「どうとでも言え。いざという場合に備え、戦術行動が取れなくては本末転倒だからな。休養も戦いの内だ」

375 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/12 22:15:22.36 FiDrY2yEo 211/430

-大本営・大会議室-

大将1「宜しいのですか?飛行場姫・リコリスと名乗る深海棲艦のメッセージは確実にこちらの隠匿してきた履歴を指して述べております」

元帥「仮にそうだとしても大和やビスマルクをはじめとした艦娘達は一人としてその事実には差し当たって気付いてはおらん。無駄を排除した上で執り行った近代化改修も滞りなく成功した」

大将2「ですが、万が一という事もあります。先の提督大佐の所に居る艦娘にも元帥殿の指示の下、近代化改修を施したと聞き及んでおります。そちらの方面からもしもその万が一が起これば…」

大将3「ならば、逐一監視して、情報を常に手綱として握っておけばいいでしょう。諜報には智謀大将よりも隠密大将の方が長けているのではないですか?」

隠密「やれと言われればやりましょう。海軍の規律に反する俗物は余さず炙り出し、白日の下に晒して然るべき刑罰を科し、断罪に処するべきです」

智謀「恐ろしい事をサラッと口にしますね。私には貴方の方がよっぽど極悪非道に見えますが?」

隠密「尻尾を出さない女狐がどの口でほざくのか。今の憲兵など自力で動こうとしない駄犬に等しい以上、我々が彼奴等の手足を動かす人形師として成らねばならんのですよ」

智謀「」(それもこれも貴方の思惑通りでしょうに…それこそどの口が言うのか)

隠密「おや、智謀殿にしては珍しく何か物言いの表情ではないですか」

智謀「いえ、別に。提案と推薦を課せられたのは隠密提督。そこに私が土足で足を踏み入れるわけにはいかないでしょう。出された決定には無論従います。元帥殿の発言こそがそのままの意なのですから」

隠密「では…元帥殿、宜しいですね?」

元帥「決して手は出すな。提督大佐にはこの私自ら着せてしまった恩のある男だ。無用の混乱と疑心を彼に植えつけたくはない…」

隠密「心得ました。お言葉の通りに任務を遂行してご覧に入れましょう」

376 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/12 22:29:30.65 FiDrY2yEo 212/430

-演習場-

赤城「はぁー…これは、また…」

飛龍「す、凄いね…」

提督「…榛名と金剛の二人だけで陸奥、大鳳、衣笠、川内の四人を、ねぇ…」


川内「はは、マジで…?」 中破

衣笠「じょーだんでしょ」 中破

大鳳「つ、強い…!」 小破

陸奥「実際に肌で感じて初めて解るってこの事ね」 小破

金剛「はぁ、はぁ、はぁ…」 中破

榛名「まだまだ、やれますよ…!」 中破


比叡「霧島、どれだけ把握できた?」

霧島「そ、想像を超えてます。とても全てを把握なんて無理でした」

提督「制空権を奪うだけなら大鳳一人で事足りたのまでは良かったが、それを物ともしない瞬発力が金剛と榛名には備わってるみたいだな。最初から空を制すことが出来ないと解っていれば、自然と空への警戒も強まる」

赤城「だとしても、大鳳さんのハリケーン・バウはそう易々と往なせるものではありませんよ」

飛龍「うん、決して大鳳の錬度は低くない。衣笠の精密射撃に川内のスピード、陸奥さんのパワー、バランスも取れてて戦術を行使するにはとてもいいと思ってたんだけど…」

提督「金剛と榛名の連携がそれを容易く上回ったな。出だしがともかく凄まじく早かった。大鳳の先制攻撃から始まって、状況把握から戦術展開、どちらが殿を務めるのか、互いの針路、射線の確保と一瞬でそれらをやってのけたのには流石に俺も脱帽ものだった」

比叡「何より驚いたのは二人の動きですよ」

霧島「金剛お姉さまは左右の切り替えし、榛名はお馴染みの三次元の動き…キレも相当なものでした」

比叡「瞬間的な動きの速さなら駆逐艦の子等に迫るものがあったよ」


陸奥「まだやれるって、そのナリで本気で言ってるの?こっちの艤装はまだ一番二番砲塔共に無傷、そっちはどうみても、二人とも主砲が使い物にならないように見えるけど?」

金剛「じゃあ、見せるしかないネ、榛名」

榛名「はい、お姉さま」

川内「…くるよ、皆!」

衣笠「外さないわよ!」

大鳳「慢心も出し惜しみもしない。さぁ、飛び立ちなさい!第二次攻撃隊、全機発艦!」

陸奥「手負いの狼ほど怖いってね。気を緩めちゃダメよ!」

377 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/12 22:38:38.63 FiDrY2yEo 213/430

-執務室-

榛名「ふぅ、すみません。遅れました」

提督「いや、いい。それより最近、皆演習に力はいってるな」

榛名「ここ最近、やはり深海棲艦が強くなってきてるのもあるんだと思います。私自身も実際にレ級や泊地棲姫、ピーコックと言った存在と相対してその実力差に愕然としたのも事実です」

提督「だが、断言してもいい。今のお前はそこらの深海棲艦は勿論、艦娘相手にも全く引けを取らないだけの力を秘めているし、実際に発揮している。少なくとも、俺が知る限りではお前に長門、金剛、赤城、神通、夕立、ヴェールヌイ…」

榛名「え?」

提督「近いものを感じるのは飛龍、大鳳、陸奥、衣笠、羽黒、川内、北上…」

榛名「あの、近いものって言うのは…」

提督「俺の中での仮説に過ぎん。ある程度の条件が整っているものを俺は仮定的にそう表現している。つまり、覚醒している、もしくは覚醒しかかっていると言うことだ」

榛名「かく、せい…?」

提督「考えられるのは近代化改修だろうな。それと、個々が内に秘めている古の記憶だ。前世の記憶なんて表現する場合もあるが、数十・何百年も前の記憶を有するというのはそれだけで不可思議だからな」

榛名「あの、提督?」

提督「榛名、恐らくだがお前たちは進化の過程にある」

榛名「あの、改装と言う意味で、ですか?」

提督「いや、進化と言うよりはやはり覚醒しかかっている、と言う方が正しいかもな」

榛名「覚醒、しかかっている?」

提督「幾つか立てた仮説の中では最もしっくりくるもんだ」

378 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/12 22:54:13.07 FiDrY2yEo 214/430

まず、以前に北上経由で教えてもらい、実際に武蔵、加賀、大井たち三人から生の情報を得られた。

艦娘の死後のことだ。艦娘は死後、幾つかの選択肢が存在することが彼女たちの言葉から判明している。

一つは依り代となる場所や物があった場合、そこに根付き守護者のようになる。これは今の武蔵たちの状態だな。

二つ目、天寿を全うした魂は輪廻転生をして別の存在として生まれ変わる、と言うものだ。

これはまだ実際に目にしたわけではないし、立証のしようもない。

だが、一つ目の事象を体現していた武蔵たちの言葉だから、ある程度の信憑性も伺える。

そして三つ目、これが最も恐れていた事実だ。抱いた艦娘自身の念が強すぎて反転し、深海棲艦として生まれ変わると言うもの。その言葉とつき合わせて、今までの深海棲艦の言葉を省みると、符合する部分が幾つかある。

で、これらの話は言わば覚醒に至るまでの基盤に過ぎない。

次に榛名や一部の艦娘が断片的に覚えている前世の記憶や謎の夢だ。

これは恐らく、最初の艦娘の死後の話が若干かぶさってくる可能性もある。

そうじゃなかった場合は先天的に元から刻み込まれていたか、もしくは後天的だとすればその原因は近代化改修がそれにあたると俺は睨んでいる。

先天的に元から刻み込まれている、というのはこれも憶測の域を出ないが実際に存在していたとされるお前達と同じ名を冠した旧海軍の艦の残心とも言うべき記憶の結晶体だ。

榛名の場合は恐らく先天的なものだろう。実際にお前の名と同じもので、俺も調べて見つけた資料がある。

金剛型巡洋戦艦その三番艦として建造された高速戦艦・榛名。

竣工は1915年4月19日 損失は1945年7月28日とある。

断言はしきれない。だが、それでも思うところがある。お前は、旧日本海軍が建造した戦艦榛名、その生まれ変わりなのかもしれない。故に、戦艦榛名がその身に刻んだ記憶の断片をお前もまた記憶として保持し、夢としてみていたのかもしれない。

そこに敵として現れた深海棲艦。その強さの前に今度こそ負けまいと、今度こそ護りきると、お前はそう誓って力を振るった。その想いと過去の記憶がシンクロして今のお前のずば抜けた身体能力が備わった。

過去の記憶と現在の記憶が合わさって未来の力に生まれ変わった。つまり、これが俺が仮定とする覚醒だ。

382 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/15 22:54:30.45 rs4qGF2No 215/430

榛名「そんな、事が…本当にあるんですか?」

提督「解らん。所詮、確証も何も得てない推論のみで編み上げたもの。机上の空論と言われれば反論のしようもないのは解りきっている。だが、そうとしか思えない。更に、旧日本海軍の資料と言うのは現在、大本営で厳重に保管され、それを閲覧することは一般人は無論、俺たち海軍提督にすら許されていない」

榛名「そんな、先代の偉業を何故隠匿する必要があるんです?」

提督「それも解らん。だが、そこに何か隠されているのもまた事実なのかもしれない。実際、榛名の記述を探し出すのにも相当苦労を強いられた」

榛名「……」

提督「まぁ、色々と喋ったが榛名は今のまま、気にせず居てくれ」

榛名「提督…」

提督「さっ、折角この間はお前たちからサプライズパーティ開いてもらったし、業務頑張らなきゃまた怒られちまうからな。最近は特に暁一派に合わせて白露一派もお小言増えてきてるからな…」

榛名「またそうやって暁ちゃん達の悪口を…」

提督「レディの私が言ってるんだから言うこと聞きなさいっ!ってお前、言うこと聞くか?」

榛名「……事と、次第によるかと」

提督「電の場合は素直なんだよ。頑張ったので頭撫でて欲しいのですって言うから」

榛名「は、はい?」

提督「暁の場合がさっきの奴ね」

榛名「えっと、え?」

提督「白露は一番にゴールしたからごほうび~!ってタックルかましてくる」

榛名「タ、タックル…」

提督「ぽいすけと時雨、春雨はまだ大人しくていいんだがな」

榛名「ぽ、ぽいすけって…夕立ちゃんの事ですか!?」

提督「え、そうだけど?」

榛名「なんてヒドイあだ名を…」

提督「だってあいついっつも語尾にぽいぽいつけてるだろ。ぽいすけって言うと飛んでくるぞ」

榛名「それでいいのか、夕立ちゃん…」


夕立「っくしゅん!ふぅ、風邪っぽい?」


提督「ま、話は取り敢えず終わりだ。早いとこ書類片付けるぞ」

榛名「あ、はい。了解です」

383 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/15 23:08:54.45 rs4qGF2No 216/430

-???-

新鋭「提督鎮守府の艦娘達に一杯食わされたんですってね?」

フェアルスト「何をしにキタ」

ピーコック「お呼びじゃなインだけド、何か用カシラ?」

新鋭「あらあら、辛辣なお言葉ね。これでも一応パートナーなんだもの、心配くらいはするわよ?」

ピーコック「心配…?フフッ、どの口が言うのカシラ。リコリスは貴女に疑心ノ念を既に抱いてイルわよ」

フェアルスト「無論、私達は基より信用ナドしてイナイ」

新鋭「あら、そう…それよりも、他の子達はどうしたのかしら?」

ピーコック「知らなイワ。用があるナラ自分で探しなサイ」

新鋭「居ないと言うのなら別にそれでもいいわ」

フェアルスト「ドウ言う意味だ」

新鋭「こういう意味よ」サッ


ドォォン ボゴオオォォン ドガアアァァァン


フェアルスト「なっ…!」

ピーコック「フェアルスト…ッ!」サッ

新鋭「…さあ、始めましょうか。深海棲艦狩りを…」ニヤ

384 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/15 23:25:36.26 rs4qGF2No 217/430

ピーコック「うぐっ……フェアルスト…!」 中破

フェアルスト「大丈夫よ。掠った程度ダカラ……ピーコック…ッ!?」 小破

ピーコック「無事なら、ソレデいいわ。それより、どういうツモリよ、シンエイ…!」

フェアルスト「海軍の、モグラと言うワケか…!」

新鋭「冗談はやめて。あんな腐りきった組織と一緒にされるなんて真っ平御免よ。本当だったら一網打尽に出来る機会を選びたかったけど、まぁ主力級の貴方達なら申し分ないわね」

??「……」

??「……」

??「……」

??「……」

??「……」

??「……」

フェアルスト「なんだ、ソイツ等は…」

ピーコック「どういうコトなのヨ!くっ、何なの、ソイツ等は……ッ!」

385 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/15 23:38:03.05 rs4qGF2No 218/430

新鋭「さぁ、何かしら?まぁ、初お披露目って事で…これが私の艦隊よ」

フェアルスト「艦隊?艦隊ダト…?貴様、どこまで…ッ!どこまで私達ヲ馬鹿にスル気だ…ッ!!」

新鋭「堕ちた分際で何を偉そうに…使役してもらえる存在がいるだけありがたいと思いなさい?」

フェアルスト「キサマァ…!」

新鋭「彼女達は私の最高傑作よ。従順で、命令のみに忠実。素晴らしいと思わない?艦隊、兵器と言うのはこう在るべきなのよ。感情なんて起伏のあるものを排除し、ただ障害となるものを無機質に、無感情に、踏み潰すが如く、只管に蹂躙する。それでこそのマッサークルドール。見せて上げるわ、貴方達を実験台にしてね?」

フェアルスト「逃げろ、ピーコック…」

ピーコック「フェアルスト、あなた…」

フェアルスト「イケッ!ピーコックッ!!誰でも構わナイ。この際、信じヨウと信じまいト、海軍だろうとナンだろうと、コノ事実を公に伝えろ。出来るナラ味方に、リコリスに……頼んだワヨ、ピーコック…」

ピーコック「こんな、ハズじゃ…くっ!」ダッ

フェアルスト「無事でイテね、ピーコック……イツカ……静かな……ソンナ……海で……私も……」クルッ

新鋭「念仏は唱え終わったかしら?」

フェアルスト「……念仏を唱えるノハそっちよ。余り見縊らナイで貰いたいワネ。私は戦艦棲姫・フェアルスト。余さず貴様らをコノ場で殲滅スル…ッ!!」

新鋭「ソロモン海戦の亡霊が…逆に沈めて墓標を立てて上げるわよ」

386 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/15 23:56:55.56 rs4qGF2No 219/430

-某海域-

ピーコック「くそっ、クソッ……!逃げるコトしか、出来ないナンて…!」

ヲ級?「……アナタハ……」

ピーコック「…ッ!?なっ…空母、ヲ級…?いや、規格にそぐわナイ。アナタ、まさか…」

ヲ級?「」コクッ

ピーコック「そう、それで…たった一匹で何ヲしようと言うのカシラ」

ヲ級?「ナニモ…タダ、ワタシハ、ジユウヲアイシタ」

ピーコック「その結果がそのザマでは、自由と言うヨリもむしろ傀儡、道化に近いワネ。結局、そのナリで受け入れらレル場所ナンテ何処にもナイ」

ヲ級?「シッテル。コノサキニアルチンジュフデモ、ソコノテイトクニキョゼツサレタ。デモ、ソノマエノチンジュフデハ、ハンブンウケイレテクレタ…」

ピーコック「何ですって…?」

ヲ級?「イマハ、マダ、ダメダト…フシギナヤツダッタ。ミナリダケデミレバ、ワタシハ、シンカイセイカン…フツウニ、カンガエレバ、ナヤムヒツヨウナド、ナイノニ…」

ピーコック「人間が、深海棲艦に情けヲ掛けたトデモ言うの!?」

ヲ級?「ナサケトハ、チガウ、タブン。カットウ…アノジテンデハ、カレハワタシジャナク、カンムスヲエランダトイウダケノコト……リトウ、セイキ……ドコカ、カナシイカオ」

ピーコック「……ッ!煩いッ!!お前に何が解るッテ言うノ!?深海にも、コノ青い海の上でサエ、居場所のない分際デッ!!」

ヲ級?「……ゴメンナサイ。デモ……」スッ

ピーコック「ぇ……?」

ヲ級?「ワタシヲ、ハンブンハ、ウケイレテクレタ、チンジュフ。コノ、ホウガクニアル…」

ピーコック「フッ、私にソコへ向かえと?」

ヲ級?「ヒコウジョウキヤ、コウワンセイキタチノバショ、ワタシニハワカラナイ…シンロガナケレバ、ススミヨウガナイデショウ?ワタシハ、コノアオイウミヲ、モウイチド、アユンデミタイダケ…」

ピーコック「……行きなサイ。貴女は、本当に愚かネ」

ヲ級?「ヨク、イワレテタ」ニコッ

ピーコック「機会がアレば、また会いまショウ。その時は、私が貴女に居場所ヲ作って上げるワ」ニコッ

ヲ級?「アリガ、トウ…」

392 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/16 21:55:57.23 CkzWmIM6o 220/430

-母港-

龍驤「港は今日も異常なしっと~」

飛龍「龍驤、慢心はダメ!ゼッタイ!」

龍驤「わ、わかっとるって…!」

提督「おーい、そろそろ昼だ。交代要員飛ばしたら戻ってきていいぞ」

飛龍「あっ、はーい!ヨシッ、それじゃ今日も宜しくね、皆!」ヒュン ヒュン

龍驤「さーて、うちんとこもお仕事お仕事ー!」ヒュン ヒュン

飛龍「それじゃ戻ろっか!」スタスタ

龍驤「せやな!」テクテク

提督「うーん…秋空快晴、凪ぐ風が少し肌寒いが、照る太陽と相まって逆にこれはこれで心地良いかもなぁ」

飛龍「テートク!呼びに来た人が遅れるってどーかと思いますよっ!」

提督「おっと、悪い悪い…いやぁ、執務室に篭ってるとな、どーもこう、天気が良いと空の下でのんびりとしたくなるんだよ」

龍驤「あー、解る解る。うちも雨降っとると、どーも調子でぇへん時あるもん」

飛龍「あはは、まぁ…提督の場合は執務がお仕事ですからね。ん?」ジー

提督「どうした、飛龍?」

龍驤「ありゃ?」

提督「なんだよ、龍驤まで」

飛龍「艦載機の子達が戻ってきました」

龍驤「うん、うちの子等も戻ってきとるなぁ」

393 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/16 22:38:56.70 CkzWmIM6o 221/430



ブゥゥゥゥゥン……


飛龍「よっと…敵が現れましたか?」

艦載機妖精「キュウエンシンゴウ」

飛龍「救援信号?」

提督「どういう事だ。狼煙も何も上がってないし、何より同じ海軍提督や各鎮守府に所属する艦娘達なら専用のチャンネルがそれぞれにあるはずだ。わざわざ哨戒中の艦載機に信号を発信するものか?」

龍驤「せやけど、万が一って事もあるやん。そのまんま放置して、後で本物やったらうちらも寝覚め悪いで…」

榛名「あ、提督、飛龍さん、龍驤ちゃん。遅いから見に来ちゃいましたよ。どうかしたんですか?」

提督「あぁ、榛名。それがな────」


榛名「飛龍さんと龍驤ちゃんの艦載機が、それぞれ同じ救援信号を受信して引き返してきたって事ですか?」

飛龍「うん、時間からすればそれほど離れてないと思う」

龍驤「こうしててもしゃあないで。取り敢えずいってみな!」

提督「仕方ない。俺も同行する。榛名、悪いが一緒に頼む」

榛名「あ、はい!解りました」

394 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/16 23:03:39.21 CkzWmIM6o 222/430

-近海-

提督「この辺りか?」

飛龍「その筈なんですが…」

龍驤「別に孤島ある訳やあれへんし、なんかあったら解る思うんやけどなぁ…」

榛名「…居ます」

提督「お、何処だ?」

榛名「……」

提督「榛名?」

榛名「姿を現しなさい、ピーコック!」

提督「何…?」


ザバァァァァ……


ピーコック「……」 中破

飛龍「え…?」

龍驤「な、なんや…ボロボロやないか。そないなナリで自分、まさか特攻でも仕掛ける気ぃか!?」

榛名「貴女…」

ピーコック「……解ってイル。私は、貴様達にとっての外敵でアリ、淘汰すべき相手。だから、私の言葉にソノ耳ヲ傾ける必要も別にナイ。だが、もしも貴様達ガ、何かの気紛れでも構わナイ、その耳をこちらへ傾けてクレると言うのなら…私の知る全てヲこの場で晒そう」

提督「何が目的だ。そして何故、お前はそこまで痛んでいる」

ピーコック「目的は、ナイ」

395 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/16 23:19:18.74 CkzWmIM6o 223/430

榛名「…貴女が一人で居る事が既に異常なんです。貴女と共に居たフェアルストはどうしたんですか」

ピーコック「フェアルスト……彼女ハ、私の身代わりトシテ、鉄底海峡ノ水底へと再び沈んだ」

飛龍「えっ…!?」

提督「アイアンボトムサウンド…」

ピーコック「…一つ、教えろ…海軍提督。静かな時代で、タダ静かな時ヲそっと過ごす…それは我等が望ンデはならないコトか?」

提督「…望むほどに、捜し求めるものがあるのだとするなら、それはお前たちにとって必要なことなのかもしれないのは認める。だが、それとこの世界を闇へ染め上げていいのとは訳が違う」

ピーコック「……フッ、道理だナ。私の首は好きにスレばいい。その前に、コチラの情報の全てヲ貴様達に明け渡すコトを約束する」

榛名「…待って下さい」

龍驤「は、榛名ちゃん?」

ピーコック「…まだ、何かアルの?」

榛名「共に歩んだ仲間を置き去りにして、貴女は戦わずに死ぬって言うんですか?」

ピーコック「抗い様のナイ戦力を前に、貴様は無謀と解って尚、足ヲ前に踏み出せルト言うのか?死を以て退路ヲ切り開いた同胞(はらから)の努力ヲ、貴様は無駄にシロと言うのか。私の役割は、コノ情報ヲ信頼デキル者へ託すコトだ。貴様達ナラ、情報を活用スルだけの知恵は持ち合わセテいるだろう」

榛名「そんな事を言ってるんじゃありません!そこまで解っているなら、せめて無念を晴らそうとは思わないんですか!?一矢報いるという意地は見せないんですか!?そんな、意地も何もない相手に、私達は苦戦を強いられたって言うんですか!?」

提督「榛名…」

榛名「簡単に死なせるもんですか。自分の業としっかり向き合って下さい。それが、沈んでいった仲間達へのせめてもの弔いになるんです。フェアルストがどういう想いで貴女を生かしたのかなんて私には解りません。ですが貴女がそれを理解しないのはお門違いです!」

ピーコック「…クドイ人ね」

榛名「んなっ…!」

ピーコック「艦娘のクセに、深海棲艦に説教スルなんて…他から見レバ異形にしか映らナイでしょうネ」

396 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/16 23:34:15.27 CkzWmIM6o 224/430

ピーコックは一呼吸置いてこれまでの経緯を詳細に語った。

無論、リコリスの計画している内容は伏せた上で、彼女達に要らぬ火の粉が及ばないように配慮した上で、自分が関わった内容の全てを包み隠さず提督達に語った。

新鋭提督との繋がり、その新鋭提督による内部反乱。

引き連れていたのは新鋭の操る傀儡に等しい艦隊である事。

その後直に自らは退避した為にその全容を確認するには至らなかった事。


提督「新鋭…!」

飛龍「ピーコックの話じゃ、既にフェアルストは…」

ピーコック「足止めをそのママ続けてイタのだとしたら、既に沈んでイルでしょうネ。で、私の処遇はドウするつもりナノかしら?」

提督「逃げも隠れもしない、と言う口振りだな」

ピーコック「ええ、今はネ?」

提督「そうか。なら、行っていいぞ」

ピーコック「……ハ?」

提督「今回だけは見逃してやる。ただし、次にもし敵として立ち塞がるならその時は容赦無く撃滅する」

ピーコック「艦娘が艦娘ナラ提督も提督ネ。狂ってるトシカ言いようが無いワ」

提督「こちらにも思うところがあるんだよ。この戦いは恐らく終焉を迎えることは決してない。榛名たち艦娘とお前たち深海棲艦が争い続ける限り、悠久に等しい歳月を経ても終わりはきっと見えない」

ピーコック「ナンですって…?」

提督「お前たちの中にもそのことに気付いてる奴は居るんじゃないのか?気付いてなくとも、この運命にどうにかして抗おうとしている奴が居ても不思議じゃないと俺は思っているがな。俺はそれに終止符を打つ策を練る。だから、お前も生きてみろ、ピーコック。生きていれば、別の世界が待ってるかもしれんぞ」

ピーコック「世迷言ヲ…」クルッ

提督「…忘れるな、ピーコック。必ず、この青い海の上で、お前たちにも穏やかなときが過ごせる日が訪れるようにしてみせる」

ピーコック「……ッ!」ピクッ

提督「だから…この時代を、行く末を、この俺を、艦娘たちを、少しでいいから信じてみてくれ」

397 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/16 23:46:19.66 CkzWmIM6o 225/430

-鉄底海峡-

時間は少しだけ遡る。新鋭提督率いる謎の艦隊の襲撃を受けたピーコックとフェアルスト。

フェアルストは自身を庇って手傷を負ったピーコックの身代わりとなる為に彼女を逃がし、自身はその場に留まった。

本来であれば共に逃げ果せる事も可能だったのかもしれない。

しかし、フェアルストはあえてそうしなかった。


フェアルスト「フフッ…自分の行動力に驚嘆スル」 大破

新鋭「あら、随分としぶといわね?さっきのは直撃コースだったと思うんだけどなぁ…」

フェアルスト「直撃?ナラバそうなのだロウな。先の戦いで交エタ艦娘の一撃に比べレバなんと軽いコトか」

新鋭「…なんですって?」ギリッ…

フェアルスト「ナルホド、艦娘か…よもや、ここにきてその艦娘に教示ヲ貰うコトになろうトハ…」ググッ

新鋭「貴女、その、容姿は……っ!」

フェアルスト「お前も、知っていたんじゃナイのか…私達の元がナンだったのか」パリパリ…

新鋭「ば、馬鹿な…こんな事が…」

フェアルスト「目の前にあるのが現実だとするなら、これが紛れもない真実よね」

新鋭「過去の、亡霊ではないと、言うの…?」

フェアルスト「ふふっ、覚悟を決めるというのは、こういう事ね。艦娘にも、深海棲艦にも、未来が残されているという確かな証。ならば私はそれを邪魔する存在に対し全力を賭して応戦し、この希望を今の世代に託そう」

新鋭「ありえない。まさか、浄化?いえ、違う…しかし、この姿は……ちっ、全艦!こいつは危険よ。徹底的に叩きのめし、殲滅しなさいッ!!」

フェアルスト「面白い。一体や二体の損害は覚悟してもらうわ。さぁ、沈みたい者から掛かって来なさい!ここを貴女達の終わりの海域にしてあげる。アイアンボトムサウンドに、沈みなさいッ!!」

398 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/16 23:48:16.02 CkzWmIM6o 226/430

-???-

リコリス「ピーコック……!?」

アクタン「ピーコック、どうシタの」オロオロ

ポート「アナタ、まさか…!」

ピーコック「全てを、説明スルわ」 中破


中間棲姫「フェアルストが、沈んだ…?」

空母棲鬼「やはり、シンエイは信用ナラなかったワネ…」

リコリス「相手が一枚も二枚も上手ダッタ…認めるシカないみたいネ」

ポート「早急に対策を練らなけレバ…」

南方棲鬼「対策ナド既にあってナイも同然。シンエイを撃滅スル以外に何ガある!?」

装空鬼「落ち着きなサイ。今、私達は四面楚歌ダト言うコトよ」

南戦鬼「海軍カラの追撃、シンエイからの闇討ち、どちらモ対処しなけレバならない…」

航空棲鬼「我々がこウモ後手に回るトハ…」

ピーコック「…話すべきコトは話した。暫く、一人にサセてもらう…」

アクタン「アッ、ピーコックゥ…」

ポート「今は、一人にシテあげなサイ。アクタン…」


ピーコック「……」

提督(必ず、この青い海の上で、お前たちにも穏やかなときが過ごせる日が訪れるようにしてみせる)

ピーコック「」(…賭け事は余りスキじゃないケド、どうせ当たるナラ大当たり、ソレ以外は全てハズレよね。提督大佐……イイワ、貴方にベット全て上乗せで賭けてアゲル。私の命も含メテネ…)

405 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/18 22:29:22.45 dC9zbEf1o 227/430

~Re-Battle~



-執務室-

提督「今日だけで既に三件か…何が、どうなってるんだ」

榛名「今のところ、先輩鎮守府近海と不動鎮守府近海にはそれらしい敵影は見て取れないみたいです」

提督「不幸中の幸いとでも言えばいいのか」


ピー、ピー、ピー……


提督「ちっ、こんな時に……はい、こちら提督鎮守府…こ、これは、大将殿……」

榛名「…?」

提督「は…?い、今からですか!?いや、ですが、今は…!は、はい、解りました。直にそちらへ向かいます」

榛名「どうされたんですか?」

提督「……すまん。少し留守にする」

榛名「えっ、あ、はい…あの、お帰りはどれくらいに?」

提督「解らん。暫く空けることになるかもしれん。万が一に備えて提督代行をお前に任せ、一切の権限を一時的に全て預ける。現時点を以て、お前の発言力は俺と同等となる」

榛名「え、ちょ、ちょっと提督!?」

提督「……」サッ カリカリカリ…スッ…

『この執務室は盗聴されている。今の会話も全てだ。今後は他鎮守府との連絡手段を考慮してくれ。あと、この紙も後の証拠として挙げられる訳にはいかない。俺が執務室を出たら即時廃棄しろ』

榛名「……ッ!」

提督「…必要なことはメモに纏めておいた。後は任せるぞ、榛名」

榛名「は、はい…!」クシャ…

406 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/18 22:47:30.02 dC9zbEf1o 228/430

-会議室-

夕張「信じられない」

北上「こっちも三つ、見つけたよ~。取り敢えずこの会議室はもう大丈夫かな?」

榛名「助かりました」

夕張「鎮守府に盗聴器仕掛けるなんて普通の奴じゃまず無理よ。一体どうやって…」

北上「榛名っち、これ全員に通達してあんの?」

榛名「念入りに調べた場で、北上さんと夕張さんのお二人だけです。どこで会話が漏れるか解らない以上、皆が集まってる場所で大々的に知らせるのは相手に情報を与えるだけかと…ただ、これを仕掛けた犯人ですが、提督の態度から凡その見当がつきます」

北上「誰さ?」

榛名「大本営の誰かです。提督が留守にする直前です。提督の言動や表情から、大本営から連絡が来たのは明白です。これがもしも不動提督や先輩提督からなら、提督はもっと砕けた表情、表現になるはずです」

夕張「なるほど…」

北上「んでもさ、なんで大本営がそんな身内を騙す、みたいな真似してるわけ?私が提督の不逞を探ろうと仕掛けてるのとはワケが違うじゃん?」

榛名「北上さん…?」ギロリ…

北上「ひぃ…!ちょ、たんま!今はもう仕掛けてないって!ホントだよ…?」

夕張「ま、まぁまぁ…取り敢えずさ、犯人が大本営の誰かだとして、その目的は?」

榛名「タイミングが色々と良過ぎるんです」

夕張「と、言うと?」

榛名「まず、これは皆さんにも知らせてありますが、ピーコックの件です」

北上「和解チックな展開になったって奴?」

榛名「はい、その後です。今度は立て続けに近隣の鎮守府が新鋭元提督と思われる艦隊からの襲撃を受けて被害が拡大しているという報告。こちらでも何か対策を取ろうかと言う矢先に、提督への緊急招集の命令」

夕張「素直に考えて、ピーコックとの和解の件から既に盗聴はされていたって考えていいよね。それで今度は、折り悪く新鋭元提督が反旗を翻し、表へと出てきた」

北上「ピーコック達と新鋭が切れたって情報は出回ってない。全員が集まった席でもそれは口にしてなかった」

榛名「結論、大本営は私達…と言うよりは提督を深海棲艦側の、もしくは新鋭元提督のスパイと睨んだ。提督も何か感じる部分があったみたいで、今わの際で私に提督と同等の権限を付与されていきました」

北上「正直な話、私等だけで抱えれる規模の話じゃないよ」

夕張「かといって、皆に伝えるにしても駆逐艦の子達には混乱しか与えないと思う」

榛名「建物自体が盗聴されている以上、恐らく提督鎮守府で開示している通信チャンネルも傍受されている可能性が非常に大きいです」

北上「んだね。でも、この場合、夕張っちがここにいるのはある意味幸いなんじゃないの~?」

榛名「はい。夕張さん、先輩提督、もしくは不動提督宛に直通で繋げられるチャンネルの開示、開発をお願いできますか?出来れば、大本営に感付かれないように、と言うのが最も好ましいですが…」

夕張「箱庭の中に篭ってばっかじゃどうしようもないでしょ。やってやるわよ。提督のためでもあるしね」ウィンク

榛名「ありがとうございます!」

北上「よし、そんじゃ私と榛名っちはジワジワと話を浸透させていこう。まずは理解度の高い戦艦組と空母組。そんで細かい内容を伝えないとならないであろう重巡組と軽巡組。ただし感情移入が結構激しい軽空母の二人は注意ね。瑞鳳も龍驤もその場でガーっといっちゃう可能性もあるから、冷静になれそうな赤城っちや飛龍っちとかで囲った上で説明が必要になるよ」

榛名「はい!」

407 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/18 23:13:39.76 dC9zbEf1o 229/430

-大本営・聴取室-

隠密「提督大佐、また随分と大胆な事をしてくれましたね」

提督「大胆なこと?」

隠密「惚けますか。君は敵である深海棲艦と繋がっているのではありませんか?」

提督「何を言って…それは新鋭元提督でしょう!」

隠密「ええ、あの駄狐は無論の事、そして君もその駄狐の一派でしょう?」

提督「なっ…!」

隠密「離島棲姫・ピーコック…貴方はこの深海棲艦と組み、あの駄狐とも繋がった。そうでもなければこれまでの彼奴等の奇襲は成立しないのですよ。何故なら!今までに狙われた奇襲ポイントはあの駄狐が海軍を離反して間も無く、全ての巡回航路を変更してあったのですからね!」

提督「早計な…!」

隠密「早計?ほざくな、若輩の大佐風情が!」

提督「元帥…元帥殿はどうお考えなんですか!」

隠密「たかが一大佐風情の動向や処遇を元帥殿が一考されるとでも思ったのか?分を弁えなさい!俗物めっ!!」

提督「」(信じたくはないが元帥殿の差し金なのか?だとしても、身内の動向を探るためだけにあの人が盗聴や盗撮と言った非道徳的な手法を執るものか?)

隠密「口を割らないというのなら、君のところの艦娘も同罪と見做し、鎮守府単位での処罰を検討してもいいのですよ?君の可愛い艦娘達が逐一解体処分される様はさぞ圧巻でしょうなぁ」

提督「あいつらは関係ないでしょう…!?」

隠密「おや、連帯責任と言う言葉を知りませんか?提督と言うリーダーに従属する下の者達にとっても、提督のしでかした悪行に気付けなかったというのは深慮に欠けていたと見做すべきです。であれば、罰を課すのは必然と言うもの。不貞を働く逆賊に等しい行い…これこそ万死に値する所業と言えましょう!」

提督「……っ!」

隠密「おやおや、自身のしでかした過ちを棚に上げて私を睨むのはお門違いと言うもの。素直に真実を吐いて、大人しく刑罰に従うなら君が従えていた艦娘共は無罪放免、別の鎮守府への転属を約束すると言っているのです」

提督「犯してもない罪を認めろと、貴方は仰るんですか!?」

隠密「往生際の悪い…ならば、鎮守府単位での隠蔽があったという事ですね?これは海軍始まって以来の前代未聞の大事件ですよ!?艦娘を謀り、洗脳した挙句に自身の悪事の片棒を担がせようとは…」

提督「勝手に話を進めるな!」

隠密「戯言は結構。さぁ、さっさと……」

408 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/18 23:38:58.52 dC9zbEf1o 230/430



バンッ!!


隠密「むっ!?」

智謀「隠密大将殿、非常に解せない手法を以て事を運ばれたようですね」

提督「」(隠密大将……不動提督と同じ階級。その男と同等の言動を有して対峙するこの女性も、それじゃ大将クラスなのか。何故、大将クラスの人物がこうも大佐程度の俺の動向を注視するんだ)

智謀「身内監査と言えど、私は到底認める訳にはいきませんね」

隠密「だが証拠がある!確固たる証拠が!!これをどう説明つける!?」

智謀「貴方の非人道的な行いの前では、正当な証拠も不当なものに、白いものも黒く濁る、と私は言ってるんです」

隠密「私を愚弄するつもりか、智謀提督ッ!」

提督「…!」(この人が、不動提督の言っていた智謀大将提督なのか…!)

智謀「愚弄?その言葉、そのまま隠密提督、貴方へお返しします。常々思っていましたが、貴方は一重の境を容易く超えすぎる。結果が全ての時代は当の昔に終焉を向かえ、今は順序と秩序、道徳の世が優先されるんですよ」

隠密「それを温いと言っているのです!」

智謀「温い?それを説いたのが現海軍トップの元帥殿です!現在の海軍が掲げる言葉を否定する事は元帥殿を否定するのと同義。大将の権限を持って命じます。隠密提督、貴方を現時点を持って大将の階級を剥奪、海軍の定めた法の規律を乱し、あまつさえそれを正当化した罪は極刑に値する!」

隠密「なぁ…!?」

智謀「隠密、私が気付いていないとでも思っていましたか?元帥殿への媚売りが些か度を越していたようですね」

隠密「き、貴様…図ったな!?」

智謀「図る?何処までも落魄れたものですね。身から出た錆に全身を蝕まれても尚、自ら描いた理想郷に思いを馳せ、現実を直視できずに溺れる。哀れを通り越して滑稽です。続きは憲兵にでも話して下さい。私は、貴方の言う理想郷になど微塵も興味がありませんので…」

409 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/18 23:53:32.05 dC9zbEf1o 231/430

智謀「さて…結果として貴方を出汁として使ってしまった事については謝罪致します。常々、彼の行いには憤りを覚えていたものですから…元帥殿の名を盾に自分の都合の良い様に物事を形成する。それが白なのか黒なのかなど端から考えない。結果としてこうした悲劇が幾度も繰り返された」

提督「だとしても、俺に対する嫌疑が晴れたわけじゃないって言いたいんでしょう?」

智謀「…ふむ、見かけに寄らず貴方は奥深くまで読み取ってくれますね」

提督「言葉の端々に『結果として』とか『~については』って、さっきの隠密提督の所業についての謝罪だけだったでしょう。俺に対しての謝罪は一つもない。それはつまり嫌疑が晴れていないってことだ」

智謀「ふふっ…素晴らしい読解力です。では本題に入りましょう。隠密が仕入れた資料、これについては非合法でありながらも確証として見るには十分足る資料、決定打とも言えますね。何故、深海棲艦とあの距離で会話を成立させ、あまつさえ見逃しているのでしょう?」

提督「奴にこちらを傷つける意思がなかったからだ」

智謀「それは何故です?」

提督「あいつもまた裏切られた側だからだ」

智謀「それは身内に?それとも……」

提督「新鋭元提督だ」

智謀「…結構。ここ最近の周辺海域における哨戒任務中の艦隊の襲撃について、貴方が知る情報は?」

提督「何もない。憶測で言えるのは、水面下で動いていた新鋭が海面に姿を現した」

智謀「何故、深海棲艦側の襲撃だと疑わないのです?」

提督「新鋭は離島棲姫・ピーコックやリコリスと呼ばれる上位の深海棲艦と手を組んで今まで海軍に仇名してきたのは知ってるはずだ。だがピーコックからもたらされた情報はその新鋭が彼女達を裏切ったと言う事実。そしてそれは直結してリコリスとも縁を切ったと言う証拠になる。そうなれば深海棲艦側の構図としては四面楚歌、海軍と新鋭の板挟み状態。そんな状況下で海軍側に手を出すなんて愚策は新米提督でも思いつきゃしない。結論として消去法に則れば新鋭側による襲撃にいきつく。深海棲艦側は恐らく逃げの一手のはずだ。最も、この内容が真実ならば、という前提であるのも確かだけど…」

智謀「……うん、実に面白い。私の推察と些かも違いません。私に不足していた情報が貴方のもたらした情報とリンクし、一つの形を生み出した。形になったという事は、貴方は真実のみを私に述べたという事。これに異物たる虚偽が混ざっていれば、形は歪に、内容は破綻し説明には成り得なかったでしょう」

提督「そりゃどーも…」ムスッ…

智謀「そう拗ねないで下さい。私とこうして対等に会話を楽しめる人はそう多くないんですよ。個人的には是非友達になって欲しいくらいです」

提督「あんたが友達少ないのはわかったよ…」

智謀「褒め言葉として受け取っておきます。さて、ある程度、事の顛末は解りました。提督大佐、貴方の拘束を現時点を以て解除します。ただし、一つだけこちらが提案する条件を呑んで頂きたい」

410 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/19 00:10:57.20 uz1uMevEo 232/430

提督「そりゃまあ『保釈金代わり』が必要でしょうね。身内の錆で生じた失態…無条件で出すには大本営的にもスタンスが悪い。なら、建前はどうあれ少しばかり面倒ごとを引き受ける代わりに無罪放免ってことにすれば、そちらとしては一つの刑罰を科したことにもなって非難は免れると…」

智謀「理解度が高くて助かりますね。恥を承知で願い出ています。出来れば、隠密の件は元帥殿の耳には触れさせたくない。何より、貴方は元帥殿と密接な関わりのある人なのでしょう?元帥殿の言動も、貴方へ火の粉が及ぶのは極力避けているように見られました」

提督「さいですか。それで、俺に…と言うよりはうちの鎮守府に何をさせたいんですか」

智謀「率直に申し上げます。討伐戦です。現在、とある鎮守府が新鋭の魔の手に陥落し、彼女の根城と化しています。その前線海域には貴方のところの艦娘が発見したとされる戦艦レ級が三匹、首を揃えて防衛線を張っているとの情報も届いているのです。強行偵察を敢行しようにも、レ級の存在が危惧され思うような戦果が得られないという状況なのです」

提督「それを、殲滅しろと?」

智謀「その通りです」

提督「大将殿達の艦隊があるでしょう」

智謀「おいそれと出撃させる訳には行かない艦隊ばかりです。だから恥を承知でと前置きをしたのです。無論、貴方からしてみれば恥と言う言葉すらも上辺のプライドと思うかもしれませんが…」

提督「解ってるなら話が早いですね?」

智謀「取引がイーブンじゃないのは承知しています。その上で、頼んでいるんです」

提督「取引っていうなら、じゃあこっちも条件出して良いってことですよね?」

智謀「」(この男…本当に大佐程度で納まる器か?ネゴシエイトが通用する相手には到底思えない。それとも、ただのやけくそだとでもいうの?先の会話のやり取りといい、掴み所が薄い…)

提督「どーなんすか、智謀大将殿」

智謀「……私の権限が及ぶ範囲で、最大限の譲歩をします」

提督「なら話は早い。旧日本海軍の艦に関する資料、その閲覧を許可願いたい」

智謀「なんですって……?」

提督「時間は限られますよ?うちの艦娘達は修羅場なんて幾らでも潜ってる。こうみえて俺って結構好かれてるらしいんですよ。彼女たちから。だから……俺が戻るの遅れれば遅れるほど、隠密さんの言ってた虚偽が真実に色味変えていきますよ」

智謀「艦娘が反乱を起こすとでも言うのですか」

提督「護るものに応じて、うちの奴らはあなたたちにとって天使にも悪魔にも変わるかもしれないっすね」

418 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/19 22:12:54.24 Vzzg8n8no 233/430

-執務室-

提督『……てなワケでこの一件は収束した。早まったことしてないだろうな?』

榛名「は、はい!大丈夫です!………多分」ボソッ

提督『…おい、今語尾にコソッと多分って付け加えただろ!?』

榛名「……空耳では?」

提督『なんで間があるんだよ!』

榛名「榛名は大丈夫です!」

提督『お前の安否確認してねぇから!』

榛名「あーー……とく~、き……ます、か~?てー……」ポチッ


プツン……ツー、ツー、ツー


榛名「よ、よし…」

北上「うちらってあれかな、まさかの?」

夕張「そのまさか?」

榛名「あ、はい。世間一般でいう所の勇み足、という奴かもしれません」

木曾「あっはっは!やっちまったなぁ!?」バンバン

赤城「わ、笑い事じゃありませんよ、木曾さん?」

木曾「いやだってよ、あの北上がすげぇ神妙な面持ちでなんか語りだすからよ。やんごとなき事態かこりゃあ? って思うわけじゃん?蓋を開けたらお前、勇み足って!あっはっはっは!」

北上「マジむかつく…」

夕張「でも、盗聴器は取り敢えず全て取り外しは出来ましたし、艦娘全体に通達してたわけでもないし、今この場限りで言えば、問題解決でいいかなって思うけど…結局、専用のチャンネルもまだ作成段階で止まってますから、余計な心配と言うか情報と言うか、先輩鎮守府等に先走って伝えずに済みましたし…」

榛名「はぁ…提督が帰ってきたら小言が待ってる、って思うと少し気が重いです」

419 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/19 22:30:52.59 Vzzg8n8no 234/430

-大本営・軍議室-

提督「……あんのやろ」

智謀「…随分と、君の部下は愉快な群れを為しているようだね」

提督「はぁ、頭痛が痛いとかもうそういうレベルだ。褒め言葉として受け取っておきます」

智謀「故に君の先の発言が非常に興味深くてね。彼女達が天使にも悪魔にもなる、という一言が私としては畏怖を覚えたと同時に、今の会話の一端で済し崩しに形が定まらなくなった」

提督「オンオフがあるってことですよ」

智謀「ふむ…まぁいい。しかし、通信先の艦娘の動揺振りを見ると、どうやら本気で君を奪還…この大本営自体を敵に回す算段だったようだね」

提督「ある意味このタイミングは行幸でしたよ……最も、要らない荷物背負わされましたがね」

智謀「ふふ、その憎まれ口といい度胸といい、大佐にしておくのが勿体無いほどなんだがね、君と言う存在は…」

提督「階級が上がれば栄転異動でしょ。俺はあいつらと同じラインからは動きませんよ」

智謀「だろうな。絆と言うものが実在するという、良い見本を目の当たりにさせてもらったよ」

提督「それで、具体的にはどうしたらいいんですか」

智謀「うむ、頼んでおいて薮から棒なのだけど、出現海域が特定できてないのが現状でね。しかし、かといって大所帯で目星を適当につけて待伏せて見た所で、斥候を放たれこちらの情報だけを与える結果にしかならない」

提督「新鋭は、あの女は凄まじく頭の切れる奴だと思います。考えていることも解らず、何を目的にしているのかも解らない以上、迂闊に懐へ飛び込むのはまさに自殺行為です」

智謀「困ったね。見事に後手に回った…戦術においてここまで頭を悩ませたのは何時以来か…法則も無し、まさに無秩序型の典型なんだが、一般的な無秩序型とは欠片もリンクしない。むしろ秩序型に分別される」

提督「なんですか、その無秩序型とか秩序型ってのは…」

420 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/19 23:03:54.04 Vzzg8n8no 235/430

智謀「君はプロファイリングと言うものを知っているかい?基本的な構造は、『こういう犯罪の犯人はこういう人間が多い』という統計学に基いて犯罪者の傾向やパターンを推論する事をプロファイリングと言う」

提督「大本営じゃそんなもんまで取り入れてるのか…しかし、意思無き深海棲艦にそれは適用しようがない」

智謀「そう、今まではね。しかし、ここ最近の深海棲艦には統率と言うものが取れ始めている上に、我々と意思疎通をはかれる存在まで出現している。リコリスがまさに代表的だけど、君の話じゃ他にも意思疎通がはかれる深海棲艦がいるようだし、そうなると群れは組織的になり、軍となる。大将が現れ、参謀が就き、部隊長、兵士とピラミッド式に最初は形を成していくだろう」

提督「ですが、現状目の前の敵は暫定で新鋭です」

智謀「そう、故にこのプロファイリングで新鋭の傾向やパターンと言うのを割り出そうとしてたんだがね」

提督「予測は立てて見ても全て空振りと…」

智謀「そういう事だ。しかも、襲われた鎮守府の事後報告にはこんな内容も含まれていてね」スッ…

提督「敵の中には資料として見聞した……馬鹿な、泊地棲姫!?あいつは……」

智謀「そう、挙がってきている報告が真実なら、元君のところ所属、現在は鋼鉄の艦隊の異名を取る先輩提督の秘書艦・長門。彼女達によって撃滅された深海棲艦だ」

提督「ありえない。一体、どんなトリックが…」

智謀「夢幻の幻影ではないのは確かなようだ。実際に攻撃は放たれ、こちらの攻撃も命中していたという」

提督「一体、新鋭は何をしようとしてるんだ…」

智謀「それが解れば苦労はしないよ。だが、私の推論の一つを披露するなら、大本営から持ち出された内容と、新鋭が以前に唱えていた持論が思いのほか結びつく事…そしてそれは推し進めてはならない、禁断の方法であるという事だ」

提督「禁断の方法?」

智謀「奴は、新鋭は艦娘の力を過大評価していたのさ。究極の戦闘兵器という呼称を以てな」

提督「究極の、戦闘兵器だと…」

智謀「艦娘はアンドロイドのような存在でないのは周知の事実だ。何処にでも居る、普通の女の子達なんだよ」

提督「……」

智謀「だが妖精達が造り上げる艤装の数々は屈強な男共が数人掛りでも扱えないような代物ばかりだ。それを、彼女達艦娘は容易く扱えた。私が初めて目の当たりにしたのは駆逐艦の少女でね。名を確か吹雪と言った」

提督「駆逐型一番艦、駆逐艦の吹雪」

智謀「そうだ。君に渡したその資料にあるものと同じ名だよ。最も、資料の方は旧日本海軍の軍艦の名だがね。後に艦娘と呼ばれる彼女達には普通の人とは違った別の力を宿しているみたいでね。それが起因となって艤装を容易く操り、使う事が可能であると結論付けられた」

提督「その結論がなされた理由の一端が、この資料ですね?」

智謀「さて、それは君の持論に委ねる事にしようか。話が逸れたね。そういった未知の力を宿す艦娘を量産しない手はないと説いたのが新鋭だ。彼女の説いた説は合理的且つ非人道的な内容だった。つまり────」

421 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/19 23:15:51.38 Vzzg8n8no 236/430

-???-

新鋭「あはははは!これが海軍の少将、中将が率いている精鋭なの?だとしたら片腹痛い所の話じゃないわね」

少将「まさか、わざと招き入れたというのか…」

中将「罠だったと…!」

新鋭「はぁ~あ……骨がない、つまらない。貴方達が連れてきた連合艦隊、大した事無さ過ぎない?あれじゃいてもいなくても同義じゃない。艦娘の使い方、間違えてたんじゃないの?」

少将「貴様、言わせておけば…!」

新鋭「ちゃんと実戦経験を積ませて戦わせて…きっちりと錬度を上げて上げなくちゃ、夜伽の錬度しか上がってないんじゃ意味ないわよ?」

中将「下郎がッ!言葉も選べん畜生へ成り下がったか、新鋭!!」

新鋭「艦娘も深海棲艦も、その全てを知っている私に偉そうな口を利かないでよ」

中将「全てを知っているだと?」

新鋭「相反する者達が手を結ぶとどうなるか、自分達の艦隊で味わったでしょう。水底へ沈んでいった可愛い可愛い艦娘達はどうなってしまうのかしらね?」

少将「なに…?」

新鋭「まぁ、貴方達はここで死ぬんだから、関係ないか?」

中将「貴様ぁ……ッ!!」

426 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/20 19:45:32.71 9Zto6Uwdo 237/430

-鎮守府前-

提督「はぁ、疲れた…」

榛名「」キョロキョロ ソワソワ…

提督「ん、あれ榛名か?何やってんだ…」

榛名「あっ!」

提督「よう」

榛名「お、お帰りなさい!」

提督「よくも途中で電話を切ってくれたな?」

榛名「あぁ…あははは、何と言いますか。電波が、悪いぞ?的な?なんちゃって…?」

提督「ったく、次からはもう少し落ち着いて対処しろ」デコピン


ペチッ


榛名「はうっ」

提督「別にどやしたりなんてしないって。それに、盗聴の件についてはスピード解決だ」

榛名「うぅ、痛い…あの、それはどういう事ですか?」

提督「犯人は大本営の大将の一人だった。ピーコックと俺たちとのやり取りも全部筒抜けだ。そのお陰で要らん手土産まで持参する羽目になったが、これはこれでありだと思ってる」

榛名「どういう事ですか?」

提督「掻い摘んで話すが、まず盗聴の件に関しての謝罪は貰った。着せられた濡れ衣も晴れたが、代わりに面倒ごとを持ち帰ってきた感じだ。取り敢えず全員を会議室に集めろ」

榛名「わ、解りました!」

427 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/20 20:17:32.21 9Zto6Uwdo 238/430

-会議室-

提督「────出揃っている情報は以上だ。裏に控えているのは間違いなく新鋭だろう」

イムヤ「で、その智謀大将からの依頼で新鋭元司令官が占拠したって言われてる鎮守府へ進軍するって事?」

提督「そうだ。結論として、何処に出現するかも解らん以上、それを追いかけるのは得策ではない。新鋭がどれほどの数のレ級を揃えているかも未知数。ならば、まずは眼前に捉えているレ級三匹が張っている防衛線を破壊し、その道筋を作る。そうすれば相手も空いた穴を塞ぐために戦力を徐々に投入せざるを得ないはずだ」

陸奥「戦艦レ級、か…」

大鳳「……」

提督「お前たちは本当に強くなったと思う。だが、奴等もまた進化・成長しているというのを考えると、謝らなければならんのかもしれない。それでも、俺はお前たちを信じる」

木曾「……バーカ。今更そんな事言うなっつーの」

神通「お見せします。提督から学んだ全てを。それが正しいという事実を」

赤城「レ級は危険な相手です。駆逐艦の子達や潜水艦の子達は、今回はお留守番してもらう方が良いかと思います」

「そんな…!」

白露「私達だってやれるってば!」

金剛「何言ってるネ。暁達が居なくなったらこの鎮守府どうするヨ」

Bep「金剛…」

川内「それにさ、何も暁達だけいけないって訳じゃない。選抜されなきゃ私達だってお留守番だよ」

北上「そーそー。んでも、戦力外でお留守番とかじゃないっしょ。言わば残された側は予備戦力。いざって時の切り札みたいなもんだよね~」

春雨「切り札…」

利根「抜かるな。驕るな。気を引き締めよ。提督が率いるこの鎮守府に、不足な者など誰一人として居らぬ」

阿武隈「それで、選抜はもう決まってるんでしょ?」

提督「レ級が三匹居るとして、一艦隊六名、一匹に対して必ず二名で応戦する形を取る。編隊は以下の通りだ」

428 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/20 20:55:16.34 9Zto6Uwdo 239/430


陸奥
霧島
赤城
大鳳
羽黒
神通

提督「だが新鋭のことだ。必ず罠を張り巡らせてある。どこかに必ずな…だから、別働隊を編成する。こちらは周辺の哨戒を密に行い、陸奥たちを間接的にサポートするのが役割だ。敵が居ればその殲滅を行い、背後を狙わせないようにすること。編隊は以下の通りだ」

瑞鳳
比叡
利根
阿武隈

白露

提督「残りの皆は鎮守府で待機。個別隊や陽動艦隊がこちらを強襲してこないとも限らない。同じく警戒は密に行い、決して油断はするな。それと、陸奥、霧島、大鳳、羽黒、神通、きてくれ」

陸奥「ん?」

霧島「なんでしょうか、司令」

大鳳「あ、はい!」

羽黒「はい!」

神通「なんでしょうか」

提督「他の皆はそれぞれ準備に取り掛かってくれ」

艦娘「「「了解!」」」

429 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/20 21:18:44.93 9Zto6Uwdo 240/430

提督「さて…」

陸奥「どうしたのよ」

提督「幾つかお前たちには伝えておくことがある」

霧島「赤城さんは、宜しかったんですか?」

提督「ん?あぁ、赤城か。あいつには既に話をしてあるからな」

羽黒「え?」

大鳳「話と言うのは?」

神通「何なのでしょう」

提督「以前にお前たちと面談をしたな。質問の内容は二種類、覚えのない記憶があるかどうか、うなされる様な悪夢を見たことはあるかどうか、だ」

霧島「それは…!提督、まさか何か答えが…」

陸奥「え、ちょっと何よ、霧島は何か解ってるの?」

提督「まぁ待て。事の発端から話をしてたんじゃ今日一日を潰す。だが知っておいて欲しい。特に、近代化改修を受けた霧島と神通以外の三人にはな」

神通「あの、それでは何故、私も…」

提督「お前は、覚えのない記憶を持っているな?コロンバンガラ島の話だ」

神通「ぁ……」

提督「この話はまだ実証の段階には入っていないが、お前たちには仕入れておいて欲しい情報の一部だ────」

430 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/20 21:29:37.30 9Zto6Uwdo 241/430

陸奥「…つまり、榛名のあの驚異的な身体能力の謎が、今提督が言ったものに起因してるかもしれないって事?」

提督「そうだ。そして、恐らく榛名に起こっている事象はお前たちにも起こりえる。条件が何かは解らん。だが榛名が言うには、あいつは誰かを護ろうと、誰かの遺志や想いを汲もうと強く念じると、体の内側から力が漲ってくると表現していた。以前に金剛と榛名、陸奥と衣笠、川内、大鳳で模擬演習を行っていたな」

陸奥「え?あぁ、うん。それが何よ」

提督「あの時、金剛もまた似た力をいくらか発揮していたのに気付いたか?」

神通「……そう言えば────」


金剛「例え演習でも、油断はしないネ!隙も、作らない!私を止める術は、ここには無いネ!」ザンッ

衣笠「は、速い…!」

川内「臆すな、衣笠!いくよ!」ザッ

衣笠「ダメ、川内ちゃん!」

川内「なっ…!?」

金剛「川内、詰が甘いネ」サッ


ビュッ ドゴォッ


川内「がはっ…!」

金剛「後ろ手に隠してるのバレバレネ。それを投げる間合い、作らせないヨ」

川内「」(知覚とかそういうレベルなの、これ。反射神経が尋常じゃない…!)サッ

金剛「No good. それじゃダメネ」

431 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/20 21:52:22.52 9Zto6Uwdo 242/430

神通「あの時の金剛さんは、まるで姉さんの動く先が解っているかのように、全ての行動が先手先手で、結局あれ以降は衣笠さんも姉さんも手も足も出ずに制圧されたんです」

提督「金剛には、俺が最初に言った明確な記憶もなければ夢も見ていない。が、何かとリンクしたことであれ程の力を発揮して見せた。それは言い換えれば今のお前たちでも成せるということだ」

霧島「それって、つまり…」

羽黒「私達にはまだ、成長が見込めるという事なんですか?」

提督「成長、と言うよりもむしろ覚醒、お前たちが個々に内に秘めている力を解放する、と言うほうが正しいな」

大鳳「内に、秘めた力…」

提督「今のところ、この力の片鱗を見せているのは俺が知る限りで三人。榛名、長門、金剛だ」

大鳳「いえ、もう一人、居ると思います」

提督「何?」

大鳳「感じ取った程度ですけど、恐らく赤城さんも…」

提督「赤城が…?」

大鳳「赤城さんの錬度は凄まじく高いです。最初はだからだろうと、でも…幾ら錬度が上がろうと、空母組には抗えないものが存在します。それは損傷の度合いによっては艦載機の発着艦が出来なくなる、と言う点です」

提督「ああ、それは…そうだな」

大鳳「ですが、以前の演習で赤城さんは────」

432 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/20 22:11:12.47 9Zto6Uwdo 243/430

大鳳「ここまでです、赤城さん…!」

赤城「はい、少し前までなら…ですが」スッ…

大鳳「えっ…?」(腕を真上に上げて、何を…)

赤城「…艦載機の皆さん、敵機直上より、急降下っ!!」サッ

大鳳「なっ、そんな、まさか…!」バッ


ブゥゥゥゥゥゥゥン……


ボゴオオォォォォン


大鳳「きゃあっ」 大破

赤城「油断も慢心もしません。この身が朽ち果てない限り、私は血の一滴すらも戦力に変えて見せます」


陸奥「流石と言うか、驚嘆するわね」

大鳳「驚嘆なんてもんじゃありません。愕然としました。常識を覆されたと表現するほかありません」

羽黒「私も、以前に川内さんと演習戦を行ったときに、何か掴めそうな気配はあったんですが…それが何なのかがどうにも上手く表現できなくて…」

神通「羽黒さん…」

霧島「ですが、皆何かしらの切っ掛けで司令の言われる覚醒を果たせる可能性があるという事ですよね」

提督「あぁ、確証はないがな。しかもそれぞれに引き金となるものが違う。が、霧島…恐らくだが、お前たち金剛型は概ね、皆同じ引き金を持っていると思われる」

霧島「え?」

提督「榛名も金剛も、どちらも姉妹のため、仲間のためと奮戦するときこそ本領を発揮していた。根っこの部分じゃおそらくこれはお前たち艦娘全員に言えることかもしれない。ただ切っ掛けが違うだけでな。まっ、伝えたかったのは以上だ。相手は戦艦レ級、くれぐれも油断は無論だが無茶もしないでくれ」

陸奥「レ級には因縁があるもの。雪辱、晴らさせてもらうわ」

羽黒「同じ過ちは、もうしません」

大鳳「必ず、レ級は倒して見せます!」

霧島「お任せ下さい、司令!」

神通「この任務、確実に成し遂げて見せます」

439 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/22 20:24:41.78 ZQ765JCqo 244/430




~交戦、敵機動部隊~



-敵領域近海-

陸奥「ここまでは敵機確認無しね」

赤城「哨戒隊すら存在しないと言うのは、それほどまでに戦艦レ級三匹の信頼が厚いという事でしょうか」

大鳳「だとしても、その一箇所だけが通り道じゃありませんし、腑に落ちませんね」

霧島「どちらにしても、新鋭鎮守府へ向かう最中で必ずレ級は出現するという事です」


──ワカッテルナラ、ハナシガハヤイ──


神通「…っ!」

羽黒「二百海里ほど前方です!」

陸奥「この距離でもう射程内って訳か……現れたわね、戦艦レ級…!」

レ級1「ボクラノアソビアイテ、ナカナカコナクテネ」

レ級2「ダイカンゲイダヨ」

レ級3「クウカクワレルカ、ソレダケサ」

赤城「……皆さん、戦術はさっきの通りです」

大鳳「了解です!」

陸奥「ええ、任せて」

神通「はい…!」

羽黒「了解です…!」

霧島「問題なしです!」

赤城「大鳳さん、いきます!」サッ

大鳳「はい!」サッ

レ級1「アイサツモナシナンテ、ブレイダナァ…」ニヤァ…

レ級2「シニイソギタイダケデショ」

レ級3「ネンイリニツブシテ、クッテヤル…」

赤城「無礼がどちらか、教えて差し上げます。その前に礼を尽くすほどの相手なら、ですけどね」

レ級1「オマエ、ムカツクナァ…オマエハ、ボクガクウ…」

赤城「すぅー……はぁー……」

440 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/22 20:48:15.53 ZQ765JCqo 245/430



静かな呼吸、この土壇場においても赤城から動揺は微塵も伝わってこない。

それほどまでに集中するのには一つの想いが彼女を突き動かしているからだ。

直接的ではないにしろ、加賀を殺めたであろう仇敵を眼前に捉え、これまでにない集中力を赤城は見せる。


赤城「いきますよ、加賀さん。今度こそ、貴女の無念を私が晴らします!第一次攻撃隊、発艦してください!」サッ


続くように大鳳も腰を据えて発艦の構えを取る。

幾度となく死線を越えて蘇ってきた今の大鳳に恐れるものは微塵もなかった。

あるとすれば、それはここで再び朽ち果てること。

しかし彼女には確信に近い自信が備わっていた。

やれるだけの事を、今自分にできる全てを、注ぎ込めるだけ力の限り全てを賭して挑む。


大鳳「あの時の屈辱は忘れない。二度と、この大鳳は揺るがない!第一次攻撃隊、全機発艦!」サッ


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


レ級1「アハッ!イイヨ、コウクウセン!ウケテタツッ!!」ヒュン ヒュン

レ級2「ボサットシテルトサァ、ソノキャシャナカラダニカザアナアケルヨ?」バシュン

レ級3「クヒヒヒ、ボクハキミニキメタ、キミヲマズハクオウ…」バシュン


ボゴオオォォォォン


陸奥「敵の雷撃は夾叉!全員散開!標的を定めて一気に行くわよ!」

霧島「赤城さん!」

赤城「了解です!」

羽黒「大鳳さんの背中は私がお守りします!」

大鳳「期待してるわ!」

神通「いざ、参ります。陸奥さん、標的は…」

陸奥「ええ、あいつね。行くわよ!」

神通「はい!」

441 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/22 21:17:34.61 ZQ765JCqo 246/430

-赤城・霧島 vs レ級1-

レ級1「ハァ…ブツリョウサクセンハダイセイコウミタイダケド、イタイナァ、モウ…」 被害軽微

霧島「あらそう?なら、無駄口叩けないように徹底的にやらせてもらうわ!」

レ級1「アハハハハッ!ボクヲタオスッテコト?ムリダヨ、ソレハ…ナゼナラ、ボクガアットウテキニ、ツヨイカラサッ!!」バッ


霧島は以前、提督から言われた内容を自分なりに思い返してみることにした。

悪夢については一つも思い当たることがなかった。

至って正常、ただし記憶に関しては一つだけ思い当たるものがあった。

それは何処かの海上で榛名と二人、手を繋いで水平線を眺めている映像。

元からあった記憶、と自分の中では認識しており、それが『覚えのない記憶』という結論に至るまでに霧島自身も考えさせられたが、何処での記憶なのかがハッキリしない以上、それは提督の言う『覚えのない記憶』として認識するほかなかった。

そして出撃前に提督からもたらされた情報で霧島にも一つの望みとも言える光が差した。

自身もまだ強くなれると。姉妹と交わした約束を果たす為にも、越えられる壁は全て越える。


霧島「榛名、私は約束、覚えてるわよ。だから私、頑張るわ!」バッ

レ級1「オマエハ、アトダ。マズハ、ソッチノクウボノオンナカラッ!」サッ

赤城「…っ!」スッ

霧島「冗談、それを私が許すわけないわよね!?」ブンッ

レ級1「ナッ!?」


ドゴォッ


霧島の脇をすり抜けて赤城へ切迫しようとした直後、それに併走するように霧島が追いすがってレ級1を全力で殴り飛ばす。


レ級1「アガッ…!」ザザザザザッ

霧島「あら、ごめんなさいね?顔は殴らない方が良かったかしら?ともかく、戦況分析が不十分みたいね」

レ級1「ウグッ…オマエェ…ッ!」

赤城「一航戦の誇り、今こそお見せします!」サッ

442 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/22 21:43:19.17 ZQ765JCqo 247/430



静かに弓を構え、赤城はそれを真っ直ぐレ級1へ差し向ける。


赤城「私達は、この胸に刻み込んだ誇りがある限り決して折れはしません。貴方に、私達は倒せない」

レ級1「ボクニ、カテルト、ホンキデオモッテル?アハハハハハッ!!ゼツボウヲ、ミセテアゲルヨ…」ビュッ

赤城「…っ!」サッ

レ級1「ムダダァッ!!」ビュオッ

霧島「赤城さん!」


ボゴォッ


レ級1の艤装が飛距離を伸ばし、鞭のようにしなって真横に赤城の胴を薙ぎ払う。


赤城「ぐっ…!」ズザザザザッ…

レ級1「リョウリニスパイスハツキモノダカラネェ…」

赤城「げほっ…」 小破

レ級1「カミツイテクルノハ、チョットウザイナァ…イキガルノハイイヨ。スキナダケホエルノモイイ……クヒ、クヒヒヒ…デモ、シネ!」ビュッ


サッ


再び放たれたレ級1の攻撃を、しかし赤城は今度こそかわす。


レ級1「ナニ…?」

赤城「…頭にきました」サッ ビュッ


再度構え直した弓と番え直した矢を目にも留まらぬ速さで放ち、赤城は大きく後方へと距離を取る。

それに応えるように霧島が間合いを詰めて赤城と入れ代わるようにレ級1の前に立ち塞がった。


サッ


放たれた矢をレ級1は上体を反らすだけで往なし、口角を吊り上げてニタリと笑う。

しかし同じように入れ代わった霧島もまた、不敵な笑みを浮かべた。

443 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/22 22:01:04.65 ZQ765JCqo 248/430



レ級1「ナニガ、オカシイ…」

霧島「備えあれば、憂いなし、って言葉を知ってるかしら?」

レ級1「シルカ、ソンナモノ…!」バッ

霧島「なら、後学に覚えておきなさい!」バッ


同時に飛び出し、至近距離の殴打戦に入るが間も無く霧島が大きく吹き飛ばされる。


バチィィッ


霧島「ぐっ…!」 小破

レ級1「モロイヨ。モロスギルッ!ソレデボクトヤリアオウッテ?サイショノイッテイガイ、ゼンゼンコウゲキアタッテナイジャナイ。アソビニモナッテナイヨ」

赤城「慢心は身を滅ぼしますよ」

レ級1「ハァ?」

赤城「艦載機のみなさん、敵機直上より急降下!」バッ

霧島「さぁ、砲撃戦、開始するわよ~!」ジャキッ

レ級1「ナッ…!」バッ


空を仰ぎ、自身の上空に無数の艦載機が急降下してくる様を目の当たりにしてレ級1の表情が強張る。

そして正面に向き直って霧島の砲塔、その悉くが自身へ向けられている事にその表情は更に引き攣った。


レ級1「ジョウダンデショ…」

霧島「いいえ、本気よ。主砲!敵を追尾して!撃てっ!」ドォン ドォン

赤城「艦載機のみなさん、撃ち漏らさないように!」

レ級1「ウオオオオオオオオオオオオアアアアァァァァァ……ッ!!」


ボゴオオオォォォォォン


レ級1の咆哮と共に水面が爆煙と水飛沫で視界を塞ぎ、その姿を一瞬にして掻き消した。

450 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/23 20:03:46.22 1Q9QZ4bbo 249/430

-大鳳・羽黒 vs レ級2-

レ級2「アレアレ…ボクノライゲキ、アタッテナカッタ?」

大鳳「ええ、ノロマ過ぎてね」

レ級2「イラツクコトヲ、スズシイカオデイッテクレルネェ…オマエ、ゲンケイナクナルマデグチャグチャニシテサァ、モトノカタチガワカラナクナルマデ、クイチラカシテヤルヨ…!」

大鳳「私の装甲を噛み砕くですって?笑えない冗談ね」

レ級2「イッテロ…ショセン、ホショクサレルガワノザレゴトダッ!」ビュッ


ドンッッ


レ級2の跳躍に合わせ、大鳳は更に後方へと身を泳がせる。

しかし、レ級2は不敵な笑みを浮かべながら一直線に大鳳へ向かって直進していくが、途中で強い衝撃を受けて後方へと押し戻される。

451 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/23 20:19:47.31 1Q9QZ4bbo 250/430



レ級2「ヌグッ…!」ザザザッ

羽黒「その汚らわしい手を引いて下さい」

レ級2「……オイオイ、ジュウジュンフゼイガ、ボクニナニヲシタ…?」

羽黒「この拳で殴り飛ばしました」グッ

レ級2「ソンナニ、サキニクワレタイノカッ!!」

羽黒「お好きにどうぞ」

大鳳「言うわね、羽黒…!」

レ級2「ジョウトウダ、カンムスフゼイガァッ!!」ザッ

羽黒「」(追いつける。私ならやれる。今まで培ってきた全てを、信じたもの全てを、余さず出し切る!)


レ級2の飛び出しに合わせ、羽黒は静かに構える。


羽黒「」(距離、速度、左の艤装…横から、これは伸びる…!)サッ


ビュオッ


姿勢を低く、身を屈めた直後に羽黒の頭上を物凄い勢いで何かが真横に払われる。


レ級2「ナンダト…!?」


ザンッ


驚愕の表情を浮かべたのはレ級2。予期していなかった、と言うよりも想定すらしていなかった羽黒の素早い動き。

羽黒自身は屈めた身体に力を込めて、そのまま前方への飛躍へと変えて突進する。

452 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/23 20:50:53.59 1Q9QZ4bbo 251/430



レ級2「コザカシイッ!」ビュッ


ガシィッ


空振りした艤装を振り子の要領で再度真横に振り抜くレ級2だが、羽黒はそれを全体重を乗せて艤装を盾に防ぐ。

それでも勢いは殺しきれず、そのまま飛ばされ羽黒の身体は俄かに宙を舞って真横へと弾き出された。


羽黒「くっ…!」ザザザッ

レ級2「ハハハハッ!ウケキレルハズナイダロ!バカガ……」

大鳳「馬鹿は貴方よ」バッ

レ級2「ッ!?」

大鳳「注意力散漫過ぎ…虚しか突けないようじゃ、戦場では生き残れないわよ。さぁ、やるわ!」ヒュン ヒュン

レ級2「ダレガコウクウセンハデキナイッテ、イッタヨッ!!」ヒュン ヒュン

大鳳「…誰が私には勝てるって言ったのかしら?見縊らないでもらいたいわ。攻撃隊、発艦始め!」サッ


ボゴオオォォォン


レ級2「ナッ…!」


大鳳とレ級2の艦載機は真正面でぶつかり合い、その悉くを大鳳の艦載機が制圧した。


大鳳「いい風ね。この風に乗って、皆!目標を掃射よ!」

レ級2「ウットウシイナァ!」ジャキッ


ドン ドン ドン ドン


ボボボボボンッ


掲げられた艤装から無数の砲弾が空を舞い、大鳳の艦載機を片っ端から迎撃する。

だがそこに出来上がった隙を羽黒が見過ごすわけがなかった。


ザッ


気配を感じ取りレ級2も視線を再び正面へと戻すが、それと同時に羽黒の気合いの篭った掛け声と砲撃音が轟く。


羽黒「全砲門…一斉射っ!」ドォン ドォン

レ級2「……ッ!」


ボゴオオオオォォォォン


大鳳「これが大鳳の、私たちの力よ!」

羽黒「まだまだ、これからです!」

453 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/23 21:10:49.74 1Q9QZ4bbo 252/430

-陸奥・神通 vs レ級3-

レ級3「ドコカラガイイ?」

陸奥「何ですって?」

レ級3「ドコカラクワレタイカッテ、キイテルノサ」

神通「……」ヒュッ ヒュンッ……チンッ

レ級3「ナニ、ソノギソウ…」

神通「貴方を討滅する刀です」スッ…チャキッ

レ級3「ナンダ、ソノカマエ…」

神通「…………」

レ級3「シカト?コタエロヨッ!!」ジャキッ


ドォン ドォン


キンッ……


ボゴオオオォォォ……


最初の問答にのみ答え、神通は静かに刀を鞘に納め、腰を落とし右足を前に、左足を後ろに添えて身体の重心を前のめりに沈めるとピタリと止まる。

直後、レ級3の砲撃が真っ直ぐに神通へと飛来するが静かに乾いた音を響かせたその直後、空間を切り裂くかのように神通を先頭に縦に陣を敷く二人の両脇を火柱と爆煙が奔り抜ける。


レ級3「ナ、ニ…?」

陸奥「もはや神業ね。お見事っていうか、驚きの方が大きいかも…」クスッ

レ級3「オマエ、ソノギソウ、イツヌイタ…?」

神通「見えてないのだとしたら、貴方に勝機はありませんよ」

レ級3「イチイチ、ウットウシイヤツダナ、オマエッ!!」ジャキッ

神通「それは……」


イラつきながら艤装の砲塔を神通へ差し向け恫喝の如く吼えるレ級3を前に、神通は再び武刀剣を鞘へ納めて最初と同じ構えを取りつつ小さく微笑む。


神通「……褒め言葉ですね────」

454 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/23 21:22:25.15 1Q9QZ4bbo 253/430

神通は因果もあるのか、川内と一緒に今までに二つの鎮守府を渡り歩いてきている。

最初の鎮守府では第一艦隊は愚か、遠征が主任務の第二艦隊にすら抜擢されなかった。

姉の川内はその快活さと要領の良さも合わせて、あっと言う間に第一艦隊の主力に数えられるまでになっていた。

彼女が始めに抱いた感情は劣等感。

姉の川内と逐一比べられる事によって、必ず下に評価される抗いようのない屈辱感。

実力にそぐわないのならば別に転属願いを出しても構わん。こちらとしてはお荷物が消えて一石二鳥だ。

そう言い放った提督の言葉に辛うじて保っていた自尊心すらも粉々に打ち砕かれる思いだった。

そんな中、じゃあ実力にそぐわないから私達は出て行くよ。そう発したのが川内だった。

神通は一度、川内に詰問したことがある。

後にも先にも、神通があれほど強い口調で自分の意見を姉の川内へぶつけた事があるのはその時の一度きりだ。

455 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/23 21:47:38.26 1Q9QZ4bbo 254/430

神通「どうして、姉さんだって解ってるのに!」

川内「何がさ?」

神通「私が居たって、意味なんてないでしょう!?」

川内「なんでそう思うのさ」

神通「戦力にもならない、優柔不断で、自分の意見もハッキリ持てない、いつも姉さんの陰に隠れてるような、そんな自他共に認めるようなお荷物の私が、何の存在価値があるの!?」

川内「神通、あんたは私の妹。川内型二番艦の神通だよ?私には自慢の妹が居てさ、優しくて、少しおっとりとしちゃいるけど一生懸命で、変なところで負けず嫌いで、ふふっ…そんな自慢の妹さ。存在価値、大有りだよね」

神通「姉さん…」

川内「そんな自慢の妹をさ、トロイとか鬱陶しい奴とか、んな事言ってくれるとこなんてこっちから願い下げだってのよ。丁度引き取り手あるっていうし、そっちの鎮守府に乗り換えてやろうって思ってたのよ」

神通「けど、それは…」

川内「ゆっくりでいいのさ。自分のペースでゆっくりと、着実に成長すればいい。良く言うじゃん?大器晩成型って奴なんだよ、神通はさ」


その後、今の鎮守府へと行き着き、提督と出会い。そこでまた神通にとって転機が訪れた。

今までどこの鎮守府でもアドバイスなどされた事はなかった。

むしろその悶々とした態度に業を煮やし、勝手にしろと突き放されるのが関の山だった。

そんな彼女に、提督はしっかりと付き合った。

456 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/23 21:58:07.50 1Q9QZ4bbo 255/430

提督「今日の演習を見てても思ったんだが、神通は演習じゃ思い切りの良さはあると思うんだよ」

神通「…え?」

提督「ほら、お前この間なんか言いかけてただろ。途中で勝手に切り上げちゃったけど、深海棲艦と戦うとなるといつも手元がどうとかってやつだよ」

神通「そ、それは…」

提督「俺ね、思ったんだけど、やっぱ実戦が少ないからだと思うんだよね。無論危険も付き纏うだろうが、そうしていかなきゃ伸び代ってのはついてこないと思うんだよ」

神通「あ、あの…でも、私は…」

提督「あー、はいはい。拒否権無しね」

神通「…ぇ、あの、はい?」

提督「私は戦力にはならないから~、とかそう言うの無しね。ゆっくり結構、失敗上等、塵も積もれば山になるかもしれないし、道が出来て進めるかもしれないだろ。やる前から可能性を捨てるような真似は俺が許さん」

神通「…………」

提督「全てやってみて、何度も試して試しようがなくなるまでやって見て、それでダメなら俺も改めて考慮しようと思うが、そこに至る前で諦めることは絶対に許さん。だから神通、自分が信じたものを最後まで信じてみろ」

神通「最後まで…」

提督「そうだ。最後まで信念を貫いて見せろ。初志貫徹、継続は力也、だ────」

457 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/23 22:15:17.44 1Q9QZ4bbo 256/430

神通「為せば成る、です。その言葉があればこそ、今の私です。だから、それは私にとっては褒め言葉です」

レ級3「ゴチャゴチャト、ウルサインダヨッ!!」ドォン ドォン

神通「陸奥さん!」サッ

陸奥「りょーかいよ!」サッ


ボボボボボボン


レ級3の砲撃と同時に二人は真横に飛んで射線をずらし、レ級3を二人で挟み込むように立ち位置を変える。


レ級3「ウロチョロウロチョロ、ウザイナァ…ッ!」

陸奥「ご自慢の足で捕まえてみたらどうなのよ」

レ級3「アマリ、チョウシニノルナ…!」ビュッ


狙いを神通から陸奥に変更し、レ級3が突進していく。

しかし陸奥は砲撃の構えは取らずに右腕を後方へ引き絞り、左腕は前へ、迫りくるレ級3の顔面に照準を合わせて静かに腰を落とす。

458 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/23 22:31:12.92 1Q9QZ4bbo 257/430



陸奥「砲撃戦だけじゃないのよ、ビックセブンはね!」シャッ

レ級3「ナッ…」ザザザッ サッ


真っ直ぐ伸びてきた陸奥の右の拳を間一髪で真横に飛んで回避したレ級3は、反撃に転じれなかったショックと微かに頬を掠め、一筋の傷が出来上がった事実に怒りを露にする。


レ級3「…コロスッ!アソバナイ、コロス!ミナゴロシダッ!!」

陸奥「あらあら…火遊びが過ぎたかしら?」

レ級3「シズメ、ミナゾコニッ!!」ドォン ドォン


ボゴオオォォォン


目にも留まらぬ速射でレ級3が放った砲撃は今度こそ陸奥を捉えたかのように映る。

しかし、立ち昇った爆煙を巻いて陸奥は表情一つ変えずに躍り出てくる。


陸奥「…少しはやるじゃない。けど、直撃じゃないのなら何発撃ち込んでも一緒よ!」 被害軽微

レ級3「バ、バカナ…!」

陸奥「あの時の苦労に比べれば、この程度はなんとも思わないわ!」ドォン ドォン


ボゴオオォォォン


照準を定めた一撃はレ級3を直撃しその身体を大きく吹き飛ばす。


レ級3「ウガッ…!」 中破

464 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/24 17:18:23.83 pSJF2YOxo 258/430

-進化の頂-

赤城「…霧島さん」

霧島「…はい!」


立ち昇る爆煙の中に揺らめく陽炎のように人型をしたそれは静かに姿を現す。

トレードマークであろう首に巻いていたマフラーは焼け千切れ、偽装を含め身体のそこかしこに裂傷を負いながらも悠然とした足取りで静かに一歩、また一歩と前に進み、ついに爆煙の幕を潜り抜けてその全貌を明かす。


レ級1「イタイヨ、イマノハサスガニ…」 中破

霧島「頑丈ね…腹立たしいくらいに」

赤城「……」スッ

レ級1「フフ、ハハハ…アハハハハハッ!!」ビュッ



レ級2「クククク、イタイイタイ…イマノハ、キイタナァ…」 中破

羽黒「…っ!」ジャキッ

大鳳「直撃させたはずなのに、なんて耐久力…!」

レ級2「……」サッ



レ級3「コザカシイ、レンチュウダ…!」

陸奥「何度でも撃ち込んで上げるわ」ジャキッ

神通「立ち塞がるなら、押し通ります」チャキッ


それぞれの組がそれぞれのレ級を窮地まで追い込む中、レ級1とレ級2は薄っすらとした笑みを浮かべてレ級3の背後へ移動する。

465 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/24 17:48:22.31 pSJF2YOxo 259/430

霧島「なっ…!」

赤城「何を…」

羽黒「えっ!?」

大鳳「まさか…!」

レ級3「ナ、ナンダ…」

陸奥「こいつら…」

神通「……!」

レ級1「トモダオレヨリ、イイヨネェ…」グイッ

レ級2「サンセイカナ」ガシッ

レ級3「ナッ……!ハ、ハナセ、ナニヲ…!」ググッ


グシャアアァァ……


レ級1とレ級2に挟まれるようにして両腕を掴まれたレ級3は、その是非も無く一瞬の内に左右から引き千切られて綺麗に半分にされる。


レ級2「イイヨ、ギソウハアゲル」

レ級1「ジャアエンリョナク」


この二匹は躊躇う事無く仲間であるはずのレ級3を背後から襲い、文字通り食い散らかした。

そしてこのレ級の特色は食う事で取り込んだ艦娘や深海棲艦の力を我がものとし、進化をするという事。


クチャクチャクチャ……


耳障りな音、気味の悪い音、聞くに堪えない音が入り混じる中、下品な笑い声だけがそこに響き渡る。


レ級EL1「ヒヒ、アハハハハ!美味い、美味いナァ…!」

レ級EL2「艦娘もイイケドさぁ、身内もコレハこれでいいよネェ…」


陸奥や大鳳は、以前にも似たものを見たことがあった。

それは初めてレ級を目の当たりにした時の事だ。

手負いになった片方のレ級を、もう一匹が食い散らかす。

食ったその場で知能から、身体能力から、全てを向上させて陸奥達に恐怖を植え付けたのは記憶に新しい。

今度こそ、レ級との決着をつける……これが陸奥達にとっての最終決戦となる。

466 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/24 18:15:35.35 pSJF2YOxo 260/430

~阻止せよ、敵別働侵攻部隊~



-数時間前-

提督「いいか、陸奥たちとの距離を一定に保ち、周辺の哨戒を密に行うのが今回のお前たちの任務だ。敵がどう攻めてくるかは定かじゃないが、不測の事態にも決して動じるな。その場の空気を感じ取って判断しろ」

比叡「陸奥さん達を背後から狙おうとする連中が居れば、それを迎撃ですね」

提督「そうだ。今一度確認するぞ」

瑞鳳「確認?」

提督「瑞鳳」

瑞鳳「あ、はい!」

提督「調子はどうだ」

瑞鳳「え?調子…?えっと、絶好調…かな?えへへ」

提督「そうか。利根と二人で比叡達の目を司れ。決して逃すなよ」

瑞鳳「はいっ!」

提督「よし、お前ならできる。信じてるからな」ポンッ

瑞鳳「…ぁ///」

提督「比叡」

比叡「はい!」

提督「この部隊の主力はお前だ。やるべき事はなんだ」

比叡「正解があるか解りませんけど、私は皆を信じて前だけを向きます!全力で!ありったけ!撃ち込みます!」

提督「解った。なら最後まで信じろ。他の姉妹にも見せ付けてやれ。お前の凄さってのをな」

比叡「お任せ下さい!」

467 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/24 18:59:27.16 pSJF2YOxo 261/430

提督「利根」

利根「おう!」

提督「いつも皆へのアフターケアをしてくれてること、感謝してるぞ。お前の優しさはそのまま強さになる」

利根「うぅ、面と向かって言われるとちと恥ずかしいぞ///」

提督「言葉は不要か。ならば、行動で見せてくれ。お前の強さ」

利根「う、うむ!任せておけ!吾輩が艦隊に加わる以上、もう、索敵の心配はないぞ!」

提督「阿武隈」

阿武隈「は、はい!」

提督「まだ戦場は怖いか?」

阿武隈「…もう、大丈夫!沢山の人に、迷惑かけちゃったから、だからあたし提督や皆にちゃんとお礼言いたくて、けど…自信、一歩踏み出して少しだけ自信をつけたい!だから、あたし的には大丈夫です!やれます!」

提督「そうか。ならやってやれ。お前の底力、他の奴等に見せ付けてやれ!」

阿武隈「はい!阿武隈、ご期待に応えます!」

提督「暁」

「な、なによ!」

提督「今まで電やヴェールヌイを牽引してきたお前の手腕を俺は高く評価する」

「ぇ…?」

提督「一人前の、立派なレディを目指すんだろ?だったらここらで一旗上げて見事なって見せろ。期待して待っててやる。暁こそ、艦娘を代表する大人のレディだって所を見せ付けて来い」

「う、うん!……あ、り、了解!」

提督「白露」

白露「はいはーい!」

提督「お前は何番目に強い?」

白露「もっちろん!一番!」

提督「よし、その一番の強さ、期待しているぞ。その勢いを保ったまま、仲間達と大暴れして来い!」

白露「まっかせてー!とことん皆に付き合っちゃうよー!でもって、一番に突っ込むよ!」

提督「…よし皆、気合い、錬度は十分。今のお前たちの戦意は十分に高揚状態だ。見せてやれ、本物の力って奴をな」

468 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/24 19:33:16.70 pSJF2YOxo 262/430

-敵領海域-

利根「ふぅ、まっこと戦術戦略においてはよい嗅覚を持つ男よな、吾輩等の提督は…」

比叡「暁や白露、阿武隈を連れてきたのも正解ですよ」

阿武隈「居るね…」

「潜水型ね」

白露「うんっ」

瑞鳳「先手必勝でいきましょう!私の艦載機で注意を一瞬こちらへ引き付けます」

比叡「任せて、それを私と利根さんで釘付けにする!」

利根「うむ!」

瑞鳳「意識が比叡さんと利根さんへ向いたら…」

阿武隈「任せて!あたし達でまずは潜水型を殲滅する!」

「白露、対潜装備ある?」

白露「バッチリ!」

利根「敵方は梯形陣…潜水型は奥の方じゃろうな」

比叡「それじゃ!」

利根「参ろうか!」

瑞鳳「はい!まずは道を作ります!」チャキッ

469 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/24 20:02:57.70 pSJF2YOxo 263/430

瑞鳳は背に掛けていた弓を取り出し、矢筒から一本矢を引き抜いて弓に番える。

はじめは赤城、次に翔鶴、今は赤城と飛龍。

常に瑞鳳は正規空母の背を見て精進してきた。

彼女達に比べて自分の火力が劣っている事に少しの劣等感は抱いていた。

人の見ていない所で塞ぎ込んだ事もあった。

それでも前を向いて一歩ずつ前進できたのは彼女を支えてくれた周りの皆が居たからだ。

常に先陣を切り、窮地に至ろうとも諦めず、勝利に向かって貪欲に突き進む。

一航戦の誇り、二航戦の執念、二人の背中を見て修練を積んできた彼女にこの二つの言葉を背負う資格は十分にあるだろう。

軽空母と侮るなかれ。彼女こそ、一騎当千の機動部隊の一翼を担う瑞鳳である。


瑞鳳「……瑞鳳、推して参ります!攻撃隊、発艦!」ビュッ


番えた矢を前方に見える敵艦隊へ向けて真っ直ぐに射る。

放たれた矢は艦載機へと姿を変えて滑空から大空へと向かい羽ばたいた。

それを合図とするように阿武隈、暁、白露の三名がそれぞれ左右に迂回路を取る。

そして真正面、比叡と利根が並んで立ち、一気に駆け出した。

470 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/24 20:19:53.40 pSJF2YOxo 264/430

比叡「抜錨!」

利根「うむ!いざ、出陣だな!」


一拍遅れて瑞鳳の艦載機に感付いた敵奇襲侵攻艦隊。

旗艦を勤めるその姿は────


武蔵?「…任務の邪魔をするか。先に邪魔な連中を殲滅する。総員、戦闘配置に就け」


姿形は武蔵そのものでありながら、違和感を禁じえない。

つまり、生気を感じられない。


比叡「え…!?」

利根「莫迦な、彼奴は…武蔵!?あ、ありえんじゃろ!」

比叡「し、司令の言ってた不測の事態にも動じるなって、まさかこれの事だったの?」

利根「わからん、しかしここは戦場じゃ。迷うとる暇はない!ゆくぞ!」

比叡「はい!」


敵の奇襲侵攻艦隊の構成は異質だった。

艦娘と深海棲艦の混存型。

武蔵
戦艦タ級FS
筑摩
重巡リ級FS
潜水ソ級EL
潜水ヨ級EL

しかし、それに囚われる事無く、比叡と利根は臨戦態勢に入る。

その直後、瑞鳳の放った艦載機の艦爆艦攻隊の攻撃が開始される。


ボゴオオォォォン


身動ぎすらせず、瑞鳳の先制攻撃を一身に受けるも、彼女達は無感情に行動を開始する。

471 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/24 20:33:40.34 pSJF2YOxo 265/430

-比叡・利根 vs 武蔵?・タ級FS・筑摩?-

武蔵?「温い。各自、標的を定めて殲滅しろ」 無傷

タ級FS「エサニシテヤル…!」ザッ 被害軽微

筑摩?「右舷、砲雷撃戦、始めます」ジャキッ 無傷

利根「近付いて見てよう解ったわ。筑摩を模した下衆な人形など拵えよって…万死に値するぞ!」

比叡「利根さん、武蔵さんモドキと戦艦型は私が相手します!」

利根「お主、正気か!?」

武蔵?「同時に相手だと?雑魚が…笑えもしない冗談だ」

タ級FS「ビョウサツデシズメテヤル…!」

比叡「小さな事の積み重ね。小さな道でも、自分で築いてきたこの道を私は信じて進むのみです!」


比叡の朝は毎朝道場で汗を流す事から始まる。

毎朝の精進、鍛錬、これをしないと一日が始まらないと彼女は言う。

日々積み重ねた修練の結晶と実績、その全てを遺憾無く発揮してこそ、結果が生まれると彼女は信じている。

その結果を出す場が今、この瞬間である。


ドォン ドォン ドォン ドォン


全砲門を開き、広範囲に渡って比叡が一斉射する。


ボゥン ボゥン


武蔵とタ級は片手で比叡の放たれた一撃を振り払い、変わらぬ速度で一気に間合いを詰める。


比叡の突進から遅れて利根は筑摩と対峙する。

光の宿っていない虚ろな瞳。

ニコリともしない口元、口角、真一文字に結ばれた口元が静かに開き、筑摩の声で言葉が紡がれる。

472 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/24 20:54:18.16 pSJF2YOxo 266/430

筑摩?「沈め」ドン ドン


短く紡がれたその言葉と共に、備えられた主砲の砲塔を利根に向けて一斉に放つ。


利根「新鋭……どこまでも腐った女よ。一度ならず二度までも吾輩の妹を愚弄するか」サッ

筑摩?「……」


ボボボボン


筑摩の放たれた一撃を利根はかわし、一気に間合いを詰める。


利根「ふん、人形とあらば躊躇いようもない。筑摩を穢してくれた業は深いぞ!」チャキッ


シャッ サッ


腰に携えた武刀剣を一閃させるも、それは間合いの外へと逃げられ避けられる。

抜刀したまま正眼に武刀剣を構え直し、利根は不敵に笑う。


利根「木偶にしてはよう動くのう。じゃが、お主のような人形に吾輩の相手が務まるのかの?」

筑摩?「雑魚が、ほざくな」ザッ

利根「言いよるわ。じゃがな…」スッ

473 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/24 21:18:15.74 pSJF2YOxo 267/430

筑摩は照準を絞らせないように前後左右、縦横無尽に跳躍を繰り返し利根の周囲を凄まじい速度で駆け巡る。

対する利根は正眼に構えていた武刀剣を片手に持ち替え、切っ先を前方に向ける構えに変える。

左手は的を定める照準用。

柄の先端部分を握り、刃を水平に、独特の構えを取る。

それは提督の得意とする刺突の構え。

源流は新撰組の三番隊組長として名を馳せ、刺突技を得意としていたとされるそれに似る。

これを考案した同じく新撰組の一番隊組長、近藤勇の片手平突きの構え。

斬るよりも突く方が自身には向いていると判断した利根は、暇を見つけては提督を道場に呼び込み教えを受けていた。

利根が神通とは違い居合いを習得しなかった理由の一つとして間合いの広さが上げられる。

踏み込みが神通よりも短い分、その間合いも必然的に狭くなると判断した利根はこれをすっぱりと諦めた。

更にもう一つの理由として出だしの速さを挙げている。

そしてそれらを加味した上での最大の理由、それが────


利根「…我が艦載機から逃げられるとでも思うたか!丸見えじゃ!」シャッ


自らの艦載機と併用させた精密射撃のような一撃。

瞳を見開き、一瞬の隙間。

針の穴を通すが如く、一点に集約された力が爆発的な開放を示す。

凄まじい速度で動き回っているにも関わらず、それを意にも介さず利根は一点を目指して右手を振り抜く。

繰り出された一撃はまさに弾丸。


利根「そこじゃっ!」ドスッ

筑摩?「……っ!」ググッ 小破


確かな手応え、しかし筑摩の顔色は以前変わらず真正面を能面の如く見据えたまま動かない。

片手で脇腹に突き刺さった武刀剣を引き抜き、利根の方へと衝き返し、顔色一つ変えずに筑摩は構え直す。


筑摩?「…鬱陶しい」ジャキッ

利根「っと…ふん、お姉さんに対する敬意が今一つ足りとらんみたいじゃの」スッ

474 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/24 21:46:13.51 pSJF2YOxo 268/430

-瑞鳳 vs リ級FS-

リ級FS「ジャマヲ、スルナ。ケイクウボフゼイニ、デルマクハナイ」 被害軽微

瑞鳳「……」スッ ググッ

リ級FS「ケイクウボフゼイノカンサイキナド、イクラトバシタトコロデ…」

瑞鳳「」(例え一歩…ううん、半歩でもいい。赤城さんや飛龍さん達のように…)

リ級FS「カニササレタヨウナモノダ…」

瑞鳳「」(…そうじゃない!憧れない!私は、私なんだから!)

リ級FS「ホラ、ゴホウビニモウイッカイダケ、カンサイキヲハナッテモイイゾ?」

瑞鳳「軽空母だからって、余り舐めないでよね!」


──敗北は負けに非ず。可能性を残す敗北は勝利よりも価値あるものと知れ。故に立つのだ!負ける事、劣る事、知らぬ事、それらを恥じるな!負けたなら次に活かせ!劣るなら優るものを見つけよ!知らぬなら覚えよ!そして相手に知らしめよ!弾丸と成って、空を舞え!──


瑞鳳「……艦載機の皆、飛び立て!」ビュッ


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


リ級FS「ナニ…!?」

瑞鳳「さぁ皆、弾丸と成って空を舞え!!今こそ、小沢艦隊の本当の力、見せてやりましょ!」

リ級FS「バ、バカナ…ナンダ、コノカンサイキノカズハ……チッ、オノレッ!!」ダダダダダダッ

475 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/24 21:46:47.50 pSJF2YOxo 269/430



瑞鳳より放たれた無数の艦載機は鮮やかな編隊を見せてリ級FS直上より急降下爆撃の態勢に入る。

その錬度たるや赤城や飛龍に迫る勢いを見せた。

脳裏を過ぎった言葉の端々。

聞き覚えのない野太い声。

それでも何処か懐かしく思う。

『ああ、そうか。これが提督の言ってた記憶なのか』と感慨に耽る暇すらもない。

今はただ、己の放った艦載機を信じるのみ。

そして瑞鳳の放った艦載機の一団はリ級FSの放つ対空砲火を物ともせず、一気に攻撃に転じる。


ボゴオオオォォォォン


リ級FS「グガッ…!」 中破

瑞鳳「これ以上、仲間の…先に進む皆の邪魔は、この瑞鳳がさせません!」

483 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/26 22:20:26.60 Xzkua+03o 270/430

-阿武隈・暁・白露 vs ソ級EL・ヨ級EL-

「阿武隈さん、私と白露はヨ級を…!」

阿武隈「うん、あたし的にも大丈夫!あたしはこのまま真っ直ぐ、ソ級に照準合わせるから!」

白露「よーっし、暁やるよっ!」

「うん!」

ソ級EL「オマエタチノドウコウニ…」

ヨ級EL「キヅイテナイトデモ、オモッテタノ?」

阿武隈「えっ…!?」

ヨ級EL「ケイケンモ、チエモアサイ、ケイジュントクチクカン…」ジャキッ

ソ級EL「カンゲイスルワ…ミナゾコヘ、シズミナサイ」ジャキッ

阿武隈「暁、白露!」

「阿武隈さん、こっちは大丈夫!」

白露「一番に片付けちゃうんだから!」

484 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/26 22:27:44.25 Xzkua+03o 271/430



暁や白露にとって、鎮守府とは大切な仲間との憩いの場なのだ。

何より、出会いの形はどうあれ彼女達は提督の居るこの鎮守府が大好きなのだ。

そんな大好きな場所や人を傷付けるなら、相手が何であろうと彼女達は立ち向かう。

そしてその時こそ、彼女達にとっての真価が発揮される。


ソ級EL「フフッ……シッポヲマイテ、ニゲレバイイモノヲ」

阿武隈「姿晒しておいて逃げれると思ってるの!?」

ソ級EL「ハンデヨ……カンムスフゼイニ、キシュウヲカケルマデモナイワ。ホラ、ヨコヨ」

阿武隈「っ!」バッ


ボゴオオォォォ……


ソ級ELの言葉に反応するように、阿武隈は大きく後ろに一歩バックステップする。

それから一泊遅れて、眼前の水面が大きく揺らめき立ったかと思うと爆音と水飛沫を上げて海面が爆ぜた。


ソ級EL「アラ、チョットチュウコクガ、オソカッタカシラ?」

485 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/26 22:40:39.15 Xzkua+03o 272/430

ヨ級EL「アイサツガワリニハ、チョットニガオモイカシラネ?」バシュンッ バシュンッ

「…よーいっ」スッ

白露「どんっ!」バッ


ヨ級ELの放った魚雷と同時に、暁と白露は海面を蹴って一直線にヨ級EL目掛けて駆け出す。

互いに魚雷を横軸を少しずらすだけで速度を殺さず回避し、一気にヨ級ELとの間合いを詰める。


ヨ級EL「ナニ…!?」


ボゴオオォォォン……


暁と白露の遥か後方で爆音が轟き、その頃には既にヨ級ELとの間合いはかなり肉薄していた。

二人で並んで一直線にヨ級ELへ接近し、残り数メートルという所で二人同時に魚雷管を差し向け同時発射する。

そして二人はヨ級ELから離れるように左右へ分かれて駆け抜ける。


「挨拶代わりなんだからっ!」

白露「受け取っちゃってー!」

ヨ級EL「シマッ……!」


ボゴオォォォォン


ヨ級ELの緊迫した声を掻き消し、魚雷が炸裂して轟音を響かせる。

486 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/26 22:54:55.44 Xzkua+03o 273/430

-比叡 vs 武蔵?・タ級FS-


ボオオォォン ボゴオォォォン


矢継ぎ早に放たれる武蔵とタ級FSの砲撃を比叡は全て往なし、距離を取り、鮮やかに回避する。


タ級FS「ニゲマワルダケ?」

武蔵?「口ほどにも無い。雑魚はさっさとくたばれ」ジャキッ

比叡「やばっ」サッ


回避間際の硬直を狙われ、動けないと悟った比叡は咄嗟に両腕をクロスさせて完全防御の姿勢を取る。

その直後、轟音を響かせ武蔵の主砲が火を吹いた。


ドォン ドォン


ボゴオオォォォン


砲撃は比叡を直撃、凄まじい水飛沫と爆煙を巻き上げ、海上をさながら火の海に見立てる。


武蔵?「ふん、まずは一匹だ」

487 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/26 23:12:22.50 Xzkua+03o 274/430



ジッ……ボゴオオォォン


踵を返そうとした直後、武蔵の頬を何かが掠めて通り、直後にその背後で大爆発が起こる。

無感情だった武蔵の瞳が僅かに見開かれ、その視線の先には主砲を構えて立っている比叡が確認できた。


タ級FS「ムサシノイチゲキヲウケテ、タッテイルダト…?」

比叡「お姉さま譲りのこの艤装。隅々までその凄さを体験してもらわないと困るなぁ」ジャキッ 小破

武蔵?「虫けら風情が…」

比叡「その虫けら風情がこれから頑張っちゃうから、よーく見ててよ!私の背中には霧島が居るんだ。妹の背中をそう易々と撃たれたんじゃ、お姉さまや榛名に合わせる顔がなくなっちゃうよ。まずは……」ビシッ


比叡はタ級FSを指差し、不敵に笑いながら宣戦布告する。


比叡「あなたから。さて、と…気合!入れて!行きます!」ザンッ

タ級FS「ハヤイ…!」ザザッ

比叡「ふっ」タンッ ジャキッ


タ級FSの横をすり抜け、振り向き様に副砲を構えて一気に放つ。


比叡「てーっ!」ドン ドン

タ級FS「ナンダ、コイツノウゴキハ…!?」サッ


ボゴオォォン


タ級FS「クッ…!コザカシイ、マネヲ…!」 小破

488 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/26 23:19:46.98 Xzkua+03o 275/430

比叡「護りたいものがあるから戦うんじゃない。護るべき人達が居るから、私達は戦えるッ!」

武蔵?「その全てを我々が完膚なきまでに破壊する」

比叡「絶対させない。二度と!同じ過ちは!繰り返さない!先手、必勝ッ!!」ダッ


再び駆け出し、態勢の整っていないタ級FSへ向かい比叡が猛追を掛ける。

比叡には榛名や霧島のように過去の記憶や断片的に残る記憶が無い。

しかし、兄弟姉妹は時として常識を遥かに超えた外側まででも繋がっている事があるという。

魂で繋がる。俗に言われる虫の知らせや第六感などと呼ばれるのがそれだろうか。

確かな繋がり、確かな想いの共有、離れていようと触れ合える。一人じゃないという確かな実感。

それらが比叡に無限の力を与えてくれる。

強さは時として凶器となるが、扱い方を間違えなければそれは心強い己の武器となり、盾となる。


比叡「お姉さまや榛名達妹…鎮守府の皆、司令…護りたい人達が居る限り、私の中の信念は絶対折れない!」ジャキッ

武蔵?「戯言を…」

タ級FS「ム……」

比叡「狙いは、外さない!主砲、斉射!始めっ!!」ドォン ドォン ドォン ドォン

武蔵「この弾幕は…チッ、雑魚の分際で…」バッ

タ級FS「バカナ…ナンナノ、コイツラハ…」


ボゴオオオオォォォォン


耳を劈くばかりの轟音を唸らせ、武蔵達の居た地点が大爆発を起こす。

それでも尚、武蔵は悠然と姿を現し艤装を構え直す。

489 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/26 23:28:30.59 Xzkua+03o 276/430



武蔵?「ふん、所詮は深海棲艦か。不測の事態に回避も出来ないとはな」 被害軽微

タ級FS「グガ……ッ!」 大破

比叡「こいっ!」

武蔵?「ククッ…いいだろう、遊んでやる。貴様もこんな雑魚が相手では締るものも締らんだろう。褒美に消し炭にしてやる」

比叡「なっ」

タ級FS「キ、サマ……クロ……」


グシャッ


タ級FS「……」 轟沈

武蔵?「余計な事を言う。雑魚以下のゴミ虫だな」

比叡「なんてことを…」

武蔵?「深海棲艦に同情か?下らん…使い物にならないのは即時切り捨てるのが戦場での鉄則。それに習ったまでの事を、一々情に絆されてどうする。貴様も艦娘ならば腹を括って掛かって来い。在り方の違いと実力の差を存分に味合わせた上で砲撃処分にしてやる」

494 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/27 22:34:07.06 Oiy9AcX8o 277/430

-利根 vs 筑摩?-

筑摩?「ふっ…姉なら、偉いの?」

利根「なんじゃと?」

筑摩?「自分よりも劣る存在が姉だと、自分の置かれた境遇を呪う他ないわね。そう、私のように…あなたのような不出来で使い道も無い雑魚が、姉と言うだけで鼻息荒くされても困るわ。それを証明してあげる。砲撃処分という形でね?」

利根「張りがあるのは胸ばかりと思うておったが、お主はどうやら腕っ節にも張りがあるようじゃな」


ニヤリと一笑に伏して利根は筑摩の挑発を受け流す。

そして再び武刀剣を片手で構え直し、照準を筑摩に合わせた。


筑摩「馬鹿の一つ覚え。その艤装で私を本当に仕留められるとでも?」

利根「さて、どうじゃろうなぁ…手心が加わって手元が狂うかも解らん。口が悪くとも見た目は吾輩の妹そのものじゃからのう。倒すのに、時間を要してしまうかもしれんのう…」クスッ

筑摩?「なら私がその時間を短縮して上げる。せめてもの手向けよ。一撃でその首を吹き飛ばして上げるわ」ジャキッ

495 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/27 22:47:44.08 Oiy9AcX8o 278/430



利根が仕掛けるよりも早く、筑摩は先に動き出し構えた主砲を一斉に放つ。


ドン ドン


サッ


ボゴオオォォォォン


爆発音を合図とするように二人は同時に駆け出す。

一直線の水柱が徐々に近付いていき、互いの中央部分で一本に繋がり巨大な水柱となって水飛沫を撒き散らす。

利根の刺突を今度は右側の艤装で受け止め、余る左側の艤装、その砲塔を利根へ差し向ける。


筑摩?「さようなら、お姉さん?」ドン ドン

利根「お主…!」


ボゴオオォォォン


サッ


利根「くっ…!恐れも何もあったもんじゃないのう!」 小破

496 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/27 23:12:47.73 Oiy9AcX8o 279/430

筑摩?「あれを避けたの?運がいいのね」

利根「運じゃと?見縊られたもんじゃのう…」キンッ


利根はため息を一つ吐いて武刀剣を鞘に収める。

利根は静かに瞳を閉じて一拍の呼吸を置いた。

その刹那に脳裏を過ぎったのはこれまでの出来事の数々。

今の鎮守府に就いてどれほどの歳月が経過したのか。

劣悪な環境、信じるものなど無く、ただ只管に与えられた任務をこなすだけの日々。

そこに達成感、感動、抑揚、充実は存在せず、ただただ生きて帰る事だけを目指して戦い続けた。

今はどうだろう?

そう思って気付いた事は、提督の存在だった。

彼が就任して劇的に今の環境は変化した。

与えられた任務を達成する喜び、仲間と共有する感動、互いを解り合いたいが為に生まれる感情の起伏、遂げた目標を果たして得る充足した日々。

何時以来か、心の底から笑みを見せたのは。

何時以来か、仲間の安否に一喜一憂したのは。

何時以来か、両者の想いを真剣にぶつけ合ったのは。

利根の願いは至って平凡で質素。それ故に、誰もが手に入れて然るべきもの。

それを手にするのは簡単に見えて思いの他と難しい。それを利根は重々承知している。

だからこそ強く願う。平穏よ、永遠なれと。

それを今の鎮守府で、提督と出会えた仲間達と迎える。

今を強く生きる仲間達と再び鎮守府へ戻る為に、利根は強い信念を持って戦う。


利根「お主の正体、粗方見当はついた。荒唐無稽な話じゃ…しかし、思いついた結論以外に到底憶測が及ばぬ」

筑摩?「だから、何?」

利根「…終わらせる。この悪夢と共に生み出されたお主の生涯そのものを」

筑摩?「終わるのはあなたよ」

利根「最終局面じゃ。全てを賭す…吾輩は、まだまだ生きたいのでな!」

502 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/28 21:25:32.24 uhakEzLRo 280/430

-瑞鳳 vs リ級FS-

瑞鳳「はぁ、はぁ、はぁ…」 小破

リ級FS「モウニドト、ヒショウノキカイハ、アタエナイ…ッ!」ジャキッ

瑞鳳「」(間合いを離せない…強い。一度見たパターンには即座に対応してくるなんて…)

リ級FS「ハナテルモノナラ、ハナッテミロ。ソノマエニ、キサマノヒコウカンパンヲコナゴナニフンサイシテヤル!」


ドン ドン


瑞鳳「くっ」サッ


何度目の砲撃か、瑞鳳はそれを間一髪で回避して後ろへ大きく飛び退く。

しかしそれを良しとせず、リ級FSもまた大きく踏み込み瑞鳳との距離を縮めていく。

エリート型やフラグシップ型の深海棲艦は艦娘達でも驚く手法を以てこちらを殲滅に掛かる。

それは今までの深海棲艦が目視した自分達をただ駆逐する為だけに向かってきたのとは違い、戦術や戦略を駆使した上で知恵を絞った戦いを展開するという事。

故にこちらの思惑、戦術、戦略、奇襲と言ったものが通用しない場合が存在する。

瑞鳳の見立ては本来であれば完璧だった。

最初の一手で自分の限界と思わせる艦載数を飛翔させ、相手の油断を誘った上で次の手を全力で見舞う。

手負いになった所を隙を見つけて三度目の一撃を放ち、そこで仕留める。

しかしリ級FSはその手に感付き、瑞鳳との距離を一定に保ち、瑞鳳に発艦の暇を与えずに攻め続けてきた。

これが瑞鳳にとっての誤算。

接近戦で彼女に勝ち目は殆どないに等しい。

それを逆手に取ったリ級FSのこの攻めは実に理に適った見事な戦術と言える。

瑞鳳に限らず、赤城も飛龍も発艦の際には必ず隙が生じる。

矢を射るにはどうしても必要な隙。

ブレを無くし標的を射抜く為の必須動作。

瑞鳳は一瞬の望みに全てを託した。

503 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/28 21:53:24.03 uhakEzLRo 281/430



チャキッ……


リ級FS「ユレルミナモ、ハゲシクマジワルタガイノイチ…コノジョウキョウデ、ドウヤッテカンサイキヲトバス?」

瑞鳳「」(私の足じゃリ級FSを振り切るのはきっと無理。無闇に無理な姿勢で放っても、艦載機の子達はきっと発艦なんて無理…なら、チャンスは一度きり。固定された姿勢で放てる最後のチャンス…!)スッ…

リ級FS「フッ…ハハハハッ!ココニキテ、ツイニアキラメタカ!?」

瑞鳳「……」


瑞鳳は右手に矢を握ったまま、構えを解いて自然体に姿勢を正す。


瑞鳳「」(狙うのは、正面からの一撃…!)ダッ

リ級FS「ナニ…!?」


瑞鳳は徐に駆け出すと同時に弓を構え、矢を番える。


リ級FS「コムスメガ…!」ジャキッ


ドン ドン


サッ


牽制も含めて放たれたリ級FSの一撃を物ともせずに突き進み、一気に瑞鳳はリ級FSとの距離を詰める。


リ級FS「ソレイジョウハ、ヤラセンッ!」ビュオッ


リ級FSの腕から突き出された艤装ごとの一撃は真っ直ぐに進む瑞鳳を真正面から捉える。

それを予期していたのか、瑞鳳は両腕を胸の前で固めて防御の姿勢を取る。

504 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/28 22:11:27.46 uhakEzLRo 282/430

リ級FS「キ、キサマ…!」

瑞鳳「……っ!」ググッ


ドゴォッ


瑞鳳「くっ…!」

リ級FS「クッ……!」ザザッ


勢いの殺せないリ級FSはそのまま瑞鳳を殴り飛ばし、瑞鳳は弾けたゴム鞠のように進んできた道を今度は背を前にして吹き飛ばされる。

しかし、それを想定していた瑞鳳に焦りや動揺の気配は微塵も無かった。

そして瑞鳳の狙いに気付いたであろうリ級FSも、気付くのが遅かった事を自ら悟り、表情を強張らせた。


瑞鳳「所作は最小限で、一呼吸の内に、一拍…置いて……っ!」チャキッ ビュッ


吹き飛ばされた姿勢のまま、勢いに逆らわず静かに弓を構えて矢と番え、弦を引き、狙いを定めて、弓を射る。

一連の動作を一呼吸の内に、一拍置いて、呼吸を整え、狙いを決めて一気に躊躇いなく射る。

赤城や飛龍がこの場に居れば息を呑んだことだろう。

洗練された所作の全てが一本の矢に集約される。


ヒュン ヒュン ヒュン


瑞鳳「艦載機の皆!大空を、弾丸と成って!」 ザバァァァン 中破


海面に叩き付けられた拍子に肩口の飛行甲板を激しく損傷し、共に腕に裂傷を負いながらも最後まで自身が放った艦載機の行方を目で追い続け、激励の言葉を投げかける。

最後の最後まで諦めない。瑞鳳の叫びは大空に響き渡った。


瑞鳳「舞えぇぇぇぇぇぇっ!!」

リ級FS「カンムス、フゼイガ…ッ!オノレエエエェェェェ……ッ!!」ジャキッ…


ボゴオオォォォォン


リ級FS「」 轟沈

瑞鳳「はぁ、はぁ…やった…やった……っ!軽空母だって、頑張れば、活躍できるのよ……!」グッ

505 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/28 22:18:38.36 uhakEzLRo 283/430

-阿武隈 vs ソ級EL-

ソ級EL「フン、クチホドニモ……」


ザバァン ザバァン ザバァン


ソ級EL「クッ…ナンダ!?」

阿武隈「あたし的にはまだまだこれからなんですけど?」 被害軽微

ソ級EL「キサマ…」

阿武隈「助けてもらって、支えてもらって、今のあたしはあるんだから…こんな所で足踏みしてる場合じゃないの」

ソ級EL「…タスケテモライ、ササエテモラワナケレバイキレナイ…ソンナヤツハ、ソンザイスルカチガアルノ?」

阿武隈「だから恩返しするんでしょ。中にはそういうのを足手纏いって煙たがる人も居るかもしれないけど、けど提督は違った。この鎮守府の皆は違った!皆、あたしを待っててくれた!だから、あたしは皆に今までに沢山預かってきたこの恩を、今日ここで、あたしの全てを掛けて返すの!だから、あんたになんか絶対負けない!」

ソ級EL「イキガッテイロ…タマタマギョライヲカイヒデキタテイドデ、コノワタシヲタオセルト、サッカクスルソノアサマシサ…コッケイダナァ」

阿武隈「」(大丈夫、期待に応えるって、提督と約束したんだから…やれば、できる!やるときは、やるんだから!)

ソ級EL「コンドハ、ハズサナイ…ミナゾコヘ、シズメッ!」ゴポゴポゴポ…


静かに水泡だけを海面に残してソ級ELの姿が完全に消える。

海上から海中へ深度を一気に下げていき、気配を殺して静かに魚雷の発射口を海上へ差し向ける。

深海の狩人が狩りの標的として阿武隈を定めた。

静かに、ゆっくりと、しかし確実に仕留めるために照準を合わせて音も無く魚雷が発射される。


バシュンッ


ソ級ELはその瞬間、自らの勝ちを確信した。

背後へ回り込み、装甲の薄い背面を不意を衝いて狙う。

当たればまず間違いなく即死級の一撃。

例え生き残ったとしてもそれは虫の息であり、トドメを刺すのに差して問題などなかった。

だが、ソ級ELは言い知れない恐怖を肌で感じ取り周囲の警戒をする。

506 : ◆vgbPh/qA6.0z - 2014/11/28 22:32:32.19 uhakEzLRo 284/430



ボゴオオォォォォン


海上で自らが放った魚雷が爆発を起こし、海中にも振動が伝わってくる。

しかしそれを見てもソ級ELの言い知れない恐怖は未だ拭い去れてはいない。

その散漫とした集中力から海上へと急いで浮上したのがソ級ELの失策だった。


ザバァァァ……


ボゴオオォォォン


ソ級EL「グガッ……!」 中破

阿武隈「怖いでしょ。どこから狙われるか解らないのって」ジャキッ

ソ級EL「キ、キサマ…ドウ、ヤッテ…」

阿武隈「下調べ、怠りすぎじゃない?っていうか、バカ?」

ソ級EL「ナン、ダト…ッ!」


阿武隈がソ級ELの位置を容易く割り出したのは音波探信儀、ソナーと呼ばれる艤装のおかげだ。

そしてソ級ELが言い知れない恐怖を感じ取ったのは阿武隈が設置した爆雷投射機。

エリート型らしい素晴らしい嗅覚を有していながらも軽巡型は海中へなど来れないと言う慢心からそれらの注意を確認しそびれた、ソ級ELの度し難い失策だった。

そしてその爆雷は未だ阿武隈の匙加減一つで牙を剥くと言う事実にソ級ELは気付いていない。


阿武隈「悪いけど、他の皆の手助けに行かないとならないの」

ソ級EL「ホザケッ!コンドコソ、シズメテヤル!!」ゴポゴポゴポ……

阿武隈「……そこ、爆雷の宝庫なのよね」


ザッパァァァァン


ソ級ELが潜ってから数秒後、ソ級ELの位置を把握していた阿武隈はタイミングを計って手にしていたスイッチを押す。

爆風に打ち上げられ、立ち昇った水柱の中に驚愕に顔を歪ませたソ級ELの姿を確認できた。

重力に逆らわず海面へと水柱と共に叩き付けられ、ソ級ELはそのまま静かな海の底へと再度沈んでいく。


阿武隈「よし…!」グッ


小さくガッツポーズをとって阿武隈は周囲の戦況を確認しつつ、加勢に向かう先を検討しようと顔を上げる。


ボゴォォン


阿武隈「あぐっ…!」 中破


直後、背後から肩口を狙っての砲撃に阿武隈の表情が苦痛に歪み、錐揉みのようにして身体を捻らせながら吹き飛ばされる。

撃ち抜かれた箇所を片手で押さえながら、阿武隈はゆっくりと立ち上がり砲撃の飛んできた方角を凝視する。


阿武隈「な……」


自分を撃った存在を確認し、阿武隈はその表情を驚愕の色に染め上げた。


続き
【艦これ】提督「暇じゃなくなった」【後編】

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