1 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:15:41.65 pBtaMbai0 1/133

 失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した 失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した 失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した
あたしは失敗した失敗した失敗した失敗した 失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗したあたしは失敗

 こんな未来望んでなかった。
 こんなことになるんなら――。

----------------------------------------



元スレ
鈴羽「またあたしのお尻なの…?」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1313324141/

4 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:17:45.74 pBtaMbai0 2/133

 私が部屋に飛び込んだとき、目の前の惨状を理解するのに酷く努力を要した。
 私が倒すはずだったラウンダー達が蜂の巣になっていることも。
 椎名まゆりが額に穴を開けて死んでいることも。
 牧瀬紅莉栖が胸から血を流して死んでいることも。
 ……電話レンジが壊れていることも。
 全ては夢の中の出来事のように、酷くゆっくりと理解されていった。

5 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:18:51.47 pBtaMbai0 3/133

ダル「お、オカリン!オカリンッ!」

 橋田至は嘔吐しながら、涙を流しながら叫んでいた。

岡部「……黙れ」

ダル「でも、でもッ――!まゆ氏と牧瀬氏が!」

岡部「黙れ」

6 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:19:32.84 pBtaMbai0 4/133

ダル「死んでるんだよおぉぉぉ!!」

岡部「黙れぇぇぇ!!」

 岡部倫太郎は怒りにまかせて手にしていた小銃を床に叩き付けた。
 その形相は普段からは想像できないほど険しく、鬼気迫っていた。


8 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:21:07.06 pBtaMbai0 5/133

鈴羽「……岡部倫太郎。これは、君が?」

岡部「……鈴羽か。今回は来るのが遅かったのだな」

 岡部倫太郎は口元だけ笑いながら言った。

鈴羽「こ、今回は?」

9 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:22:12.87 pBtaMbai0 6/133

岡部「俺は……もう何度もタイムリープをしてきた。だが、もうおしまいだ。
まゆりも……紅莉栖も……殺されてしまった。電話レンジももう使えない……俺は……失敗した」

鈴羽「……あ、あたしは実はジョン・タイターなんだ」

岡部「知っている」

鈴羽「っ!?わ、私が持っているタイムマシンを使えば――」

岡部「無理だ。あのタイムマシンは壊れている。先日降った雨のせいでな。現代の技術力ではどうあがこうが完全修復できないことも、俺は知っている」

鈴羽「そんな!」

12 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:23:28.09 pBtaMbai0 7/133

岡部「俺は……望みすぎたのかも知れない。
みんなが幸せになれる世界を……何から何まで手に入れようとした結果が……コレか?」

 低い笑い声が永遠と続いた。
 岡部倫太郎は壊れてしまったのだろう。
 あたしも目的を果たせないことを知りショックを受けていたが、目の前の光景が衝撃的すぎて狂うまでには至らなかった。
 むしろ、絶望的なこの状況を乗り切れるのは、あたしの力を持って他は無いとの危機感が脳を冴え渡らしているくらいだった。

13 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:24:45.95 pBtaMbai0 8/133

鈴羽「岡部倫太郎、橋田至。君たちは――レジスタンスを作って。
あたしが何とかする。あたしの未来の知識を最大限利用してこの世界線の突破口を開く!」

 意外にも先に反応したのは橋田至だった。

ダル「……や、ってやる。なんでも。なんでもやってやる」

 大粒の涙を流しながら橋田至は憎悪を瞳に宿らせていた。
 そして、そのまま笑い続ける岡部倫太郎の胸元をねじり上げる。

14 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:25:28.84 pBtaMbai0 9/133

ダル「いつまで笑ってるんだオカリンっ!
お前はタイムリープを何度も繰り返して来たんだろ?
だったらその経験を少しでも役立てろ!
僕はやるぞ!レジスタンスでも何でも――何でもやってやる!
オカリンはどうなんだ!?」

岡部「俺は……」

 たぶんあたしはその目を生涯忘れないと思う。

岡部「俺もだ……。なんでもやってやる。例え……何を犠牲にしてでも……こんな結末を無かったことにしてやる!」

 狂気にも似た信念の宿ったその瞳を。

----------------------------------------


16 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:27:35.69 pBtaMbai0 10/133

 まずあたしがやったことは二人の逃亡の手助けだった。
 その後、ある大物政治家に二人を面会させた。
 レジスタンス創立にこの政治家が一役買っていたことを知っていたのでそうしたのだが、正直、こんなにも上手く事が運ぶとは思ってもみなかった。
 その政治家は初めこそ警戒していたが、岡部倫太郎の話を聞いていく内に神妙な顔つきへと成っていった。
 どうやら、CERNが最近タイムマシンの核心理論に至るための技術を手に入れたとの極秘情報を、この政治家はすでに握っていたようだった。

18 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:28:20.65 pBtaMbai0 11/133

 そこで、最後にあたしが未来から来たことを告げ、レジスタンス創設の助力をして欲しいとのだめ押しをした。
 その政治家はこの世界がこれからたどる世界を知って落胆していたが、熱心な心で抵抗勢力を作るための準備をすると誓ってくれた。
 その後数年間、お互いにやはり多少の警戒心を持ち続けてでは合ったが、この政治家との付き合いは続いた。

19 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:28:42.43 pBtaMbai0 12/133

 こちらの交渉材料は株と為替の変動。世界情勢が主であった。
 あたし達はその利益から流れてくるお金を利用し、武器や必要になる物を大量に密輸した。
 この役は主に橋田至が買って出ているのだが、彼がどのようなルートで武器を輸入しているのかは知らなかった。
 橋田至はその武器を各地に分割して隠しているようだった。

20 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:29:37.12 pBtaMbai0 13/133

岡部「……ダル。種は蒔いたか?」

 それは、世界の運命が大きく傾いた日だったのだと思う。

ダル「いつでもいける。スナイパーの気分次第だな。スナイパーが撃ったと同時に、あの政治家と僕たちを繋ぐ全てを焼き消す」

 扉の外で会話を聞いてしまったあたしは迷わず飛び込んだ。

鈴羽「撃つって誰を!?まさか、あの政治家のおっちゃんじゃないよね?」

21 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:30:05.48 pBtaMbai0 14/133

岡部「……立ち聞きがお前の仕事じゃないだろ」

鈴羽「答えてよ!どうしてあのおっちゃんを殺す必要があるの?」

 詰め寄ろうとした私の前に橋田至が立ち塞がった。
 それだけであたしはたじろいでしまった。
 なぜか、橋田至にはあたしを威圧するような迫力があった。
 負ける気はしないが、不思議な威圧感のような物がある。

22 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:31:09.00 pBtaMbai0 15/133

ダル「阿万音。お前の仕事は俺達の護衛だ。それ以外に口を挟む必要は無いし、むしろ邪魔に成るから黙っていてくれないか?」

 橋田至はこの数年間で特に変わった。
 口調はまともと言うよりは冷淡になり、体型も痩せてすらっとしている。
 最近は可愛い婚約者が出来たとの噂もあるが、今の橋田至を見ていれば、美人と付き合っていても何ら不思議では無い気がする。
 とはいえ、その女性と付き合い始めたのは痩せる前との話もあるが……。

23 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:33:25.02 pBtaMbai0 16/133

鈴羽「だ、黙らないよ。何で殺すのか理由を教えてよ。納得できない!
あんなにあたし達を応援してくれたおっちゃんを殺すだなんて……納得できないよ!」

ダル「これからの計画に邪魔だから殺す。それだけだ」

 あたしが反射的に言い返そうとした所に岡部倫太郎が割り込んできた。

24 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:33:48.15 pBtaMbai0 17/133

 彼はこの数年間、見た目だけはなにも変わっていないように思える。
 しかし、内面となれば別で、不思議な魅力で仲間を集め、操っていた。
 岡部倫太郎はあるときラウンダーを集める方法と同じだと自嘲気味に言っていたが、今の段階で仲間が徐々に増えているのは、彼の魅力あってこそなのだと思う。
 会ったこともない人間に、あそこまでの尊敬を抱かせるものは何なのであろうか?
 一つ答えがあるとすれば、意志なのだと思う。
 彼の力強い意思を敏感に感じ取った者は、抗いがたいその力に惹かれているのだと思う。

27 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:34:40.31 pBtaMbai0 18/133

岡部「計画を前倒しするためだ」

鈴羽「ま、前倒し?」

岡部「俺達はタイムマシンの理論を完成させた。
あの無能の集まりではタイムマシンを完成させられるか分からんからな」

 タイムマシンの理論を……完成?

29 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:35:46.98 pBtaMbai0 19/133

岡部「俺達はこの理論をSERNに送りつける。理論は完璧でも機材と人材をそろえると成れば一苦労だからな。
あえてこの理論を奴等に渡して奴等にタイムマシンを作らせる。
そして――完成したタイムマシンを奪う」

鈴羽「それとおっちゃんを殺す事に何の繋がりがあるの!?」

岡部「分からないのか?
俺達がタイムマシンの理論をSERNに渡したとあいつが知ったらどうなる。
当然、俺達は窮地に立たされる。
事前に知らせておくのも手としてはあるが、リスクを伴うから却下だな。
あいつを殺して全ての予定を早めるが一番効率が良いのだ」

30 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:36:47.18 pBtaMbai0 20/133

鈴羽「そんな……だって……あんなに、あんなに熱心にあたし達のこと――!」

岡部「だからこそだ」

 岡部倫太郎の目にぎらりと意志の炎が光った。

岡部「だから俺達は何としてでもこの世界線を最悪の結末で収束させないための義務がある。
それが、例え誰を裏切ろうとも。
誰の意思を踏みにじろうとも。
何を犠牲にしようともだ」

鈴羽「そんなことって……」

32 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:37:55.99 pBtaMbai0 21/133

ダル「SERNにタイムマシンの理論を渡せば世界情勢は急速に展開し始めるはずだ。
準備をしておくんだな。自分の意志を無駄にしたくないのなら」

----------------------------------------

33 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:38:27.40 pBtaMbai0 22/133

 数日後、政治家のおっちゃんは殺された。
 同時におっちゃんがの関連する多くの場所で火の手が上がったことからも、政治家の汚職を隠蔽するために消されたのではないかという世論が賑わっていた。

鈴羽「岡部倫太郎」

 部屋に入ると岡部倫太郎は明りも点いてない部屋で携帯を見つめているだけだった。

36 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:39:25.76 pBtaMbai0 23/133

鈴羽「おっちゃんは死んだよ。おっちゃんが用意してくれたマンションに住んでる気分はどうなの?」

岡部「……問題ない。このマンションとあの政治家との繋がりを示す物はもう何もない。
俺達に関する情報も全て改ざん済み。ここに住み続けようとも何も問題は起きない」

 岡部倫太郎は携帯画面を見つめながら微笑んだ。
 慈しむような笑みは、この瞬間しか見られない。
 携帯の画面を見ているその瞬間にしか。

37 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:40:00.28 pBtaMbai0 24/133

鈴羽「そんな事を言ってるんじゃないよ。良心の呵責はないのって聞いてるの」

岡部「ある。だからどうした?」

 あたしは携帯を素早く取り上げた。
 その画面に映ってるのは……牧瀬紅莉栖、椎名まゆり。

38 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:40:40.10 pBtaMbai0 25/133

鈴羽「だったらどうしてそんなに落ち着いてるのかなぁ」

岡部「悲しんだ所で何にも影響しないからだ。これは必要な事だった。
俺達にはすでにあの政治家を超える人脈と金と力がある。
これからの世界情勢の展開に障害となりそうな者も着いてこられない者も必要ない」

40 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:41:48.98 pBtaMbai0 26/133

 岡部倫太郎はパソコンを起動させた。
 フォルダを開き、グラフィックを展開させる。
 今度は橋田至が何故かどや顔で写っている写真が画面に広がった。
 写真の橋田至は太っており、楽しそうだった。
 岡部倫太郎がクリックする度に写真は次々と変わっていく。
 牧瀬紅莉栖、椎名まゆり、橋田至、ブラウン管の店長、椎名まゆり、牧瀬紅莉栖、牧瀬紅莉栖、橋田至――。

41 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:42:26.64 pBtaMbai0 27/133

 永遠に岡部倫太郎はクリックし続ける。
 この写真達は岡部倫太郎の携帯電話に残っていた過去の記録だ。
 彼はコレを複数のハードに保存するなどして厳重に保管しており、暇を見てはこれらを眺めていた。


42 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:43:36.27 pBtaMbai0 28/133

鈴羽「あのさぁ……いい加減それ止めたら?」

岡部「お前に言われる筋合いはない」

 岡部倫太郎は素早く言い返して来た。

鈴羽「そんな事をする暇があったら大事な大事なこれからの計画でも練ればー?」

岡部「黙れ。お前は外でも警戒していろ」

44 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:44:13.85 pBtaMbai0 29/133

 普段なら抑えていたのだろうが、度重なるストレスで一気に頭に血が上り、気付けば岡部倫太郎を床に組倒していた。

鈴羽「……ねぇ?あたしってそんなに使えない人間かな?護衛にしか役に立たない人間?」

 岡部倫太郎は溜息を吐いた。至極どうでも良いというように。
 そして、私が握っている携帯に目を向ける。

45 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:44:52.90 pBtaMbai0 30/133

鈴羽「っ!こんな物!」

 力任せに投げた携帯電話は壁にぶつかり粉々になった。

鈴羽「ただの写真だ!なんの役にも立たない!
あたしが……あたしだけが岡部倫太郎に本物の日常を取り戻させてあげられるんだ!だから!あんなもの必要ない!!」

岡部「そうか。ではよろしく頼むぞ」

47 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:45:40.85 pBtaMbai0 31/133

 岡部倫太郎は下から肩を押し返してきた。
 あたしはそれに抵抗して顔を近づける。
 唇同士を触れ合わせ、抵抗がないことを良いことにそのまま好き勝手に貪る。
 ここぞとばかりに無様に岡部倫太郎の口内を味わう自分を、どこか冷静な自分が滑稽だと笑っていた。
 自分を見てもらえないことに対する子供じみた意地。
 あわよくばと前々から狙っていた欲望。
 すべてが茶番だった。
 顔を離して岡部倫太郎の様子を窺う。

岡部「終わったか?」

48 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:46:36.80 pBtaMbai0 32/133

鈴羽「……まだだよ。ねぇ?岡部倫太郎はあたしにちゃんと仕事をして欲しいよね?」

岡部「腕っ節だけで見れば右に出るものはいないからな。
確りと護衛をして欲しいとは思って居るが?」

鈴羽「だったらちょっと協力してよ。最近……体の奥が熱いんだ。
今まで戦い尽くしだったから無縁と思ってたけど、やっぱ性欲は誰にもある物なんだねー。
このままじゃ仕事に支障が出るかも知れないよ」

49 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:47:05.19 pBtaMbai0 33/133

岡部「支障が出るのなら俺も考えねばならないと思うが?」

鈴羽「物騒なこと言わないでよ。ちょっと、君が協力してくれればいい話なんだからさ」

岡部「なるほど」

 今度は岡部倫太郎の方からキスをしてきた。
 それだけで脳髄が痺れた。
 心臓が躍った。

53 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:52:58.52 pBtaMbai0 34/133

岡部「自分から求めてくるような奴に前戯など必要あるまい。
ベッドに両手を突いてこちらにこちらに尻を向けろ」

 なんでそんな事……と思ったけど言われた通りにした。
 この機会を逃すと次は無いかも知れない。

55 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:53:27.59 pBtaMbai0 35/133

岡部「なるほど。確かに性欲を持てあましているようだな。スパッツの股の部分が湿っているぞ」

鈴羽「うそ!?」

 本気で驚いた。
 自分ではまったく気がついていなかったから。

56 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:53:51.45 pBtaMbai0 36/133

岡部「嘘では無い」

 岡部倫太郎は私の股間に手を伸ばしてきた。
 反射的に足を閉じかけたが、身を強ばらせながらも耐える。
 岡部倫太郎の指があたしの大事な部分をこねくり回す度に、水気を帯びた音が響く。

鈴羽「あっ!き、聞かせないでぇ!」

岡部「お前が望んだことだろ」

57 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:54:13.77 pBtaMbai0 37/133

 岡部倫太郎はあたしのお尻を力任せに揉みしだいた。
 股間よりかは感官は遥かに劣るが、その荒々しさに呼吸が高まるのが自分でも分かった。
 痛いほど指が食い込むのが良かった。
 必死に触ってくれるのが良かった。

岡部「乱暴にされる方が好きなのか?貴様はマゾか?」

鈴羽「ち、ちがっ……」

58 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:57:23.84 pBtaMbai0 38/133

岡部「違わないだろ」

 ギリギリと指が臀部に食い込む。
 もはや暴力ととられても良い行動であったが、あたしは何故かその行動に身を捩っていた。

岡部「やはり変態か」

鈴羽「こ、これは何かの持ちがいで……」

59 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 21:58:16.83 pBtaMbai0 39/133

岡部「言い訳などどうでもいい。まずお前はコレを大きくしろ」

 眼前に突き出された物に思わず悲鳴を上げてしまった。
 グロテスクな肉の棒、それを見るのは初めてだったから仕方が無いだろう。

鈴羽「ど、どうやって……大きくしたら?」

岡部「それくらい自分で考えろ。手でも口でも何でも使え」

64 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:03:44.37 pBtaMbai0 40/133

 手?口?
 言っていることがよく分からない。
 でも、あれが俗に言う準備完了の状態で無いことは分かった。
 性的興奮があると立つと聞いていたが、あれはどう見ても準備万端の状態では無い。
 あたしはなんだかプライドを傷付けられた気がした。
 そして、勢いに任せてそれをくわえ込む。

65 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:04:00.61 pBtaMbai0 41/133

岡部「おい!噛み千切るつもりか!?」

鈴羽「ち、ちがうよ。ちゃんとやるよ」

岡部「くれぐれも歯を立ててくれるなよ」

鈴羽「分かったよ」

67 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:05:00.32 pBtaMbai0 42/133

 下手だったと思う。
 ただ、色んな場所を舐めたり咥えたりするだけだったから。
 それでも、岡部倫太郎のが反応して、徐々に堅くなるのが嬉しかった。
 あたしの舌に反応してくれているのが分かったから。
 あたしは夢中でしゃぶり続けた。
 岡部倫太郎のしょっぱいのが無くなって全部あたしの唾液に濡れてもずっと舐め続けた。

70 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:07:52.76 pBtaMbai0 43/133

岡部「もういいだろう。尻をもっと高く上げろ」

鈴羽「う、うん」

 スパッツが下にずらされる。
 割れ目が見えてしまうとか、変な所はないだろうかとか、考えていると、ずり降ろされるその手は途中で止まった。

72 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:11:36.35 pBtaMbai0 44/133

鈴羽「なにをして――」

 あたしは身を震わせた。
 お尻に穴に、突然刺激が走れば誰でもそうなる。

鈴羽「な、なにを!?」

岡部「性欲の処理だろ?ならこちらで十分だろ」


74 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:12:31.08 pBtaMbai0 45/133

 あたしが身を固くしたことで、岡部倫太郎のアレをお尻で挟み込む状態と成ってしまった。
 岡部倫太郎が腰を押し出してくる。
 強制的に穴に入り込もうとする異物に、筋肉を締めて必死に抵抗する。

鈴羽「無理!無理だよ!」

75 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:13:05.70 pBtaMbai0 46/133

 岡部倫太郎が覆い被さるようにして耳元で囁いた。

岡部「良いから力を抜け。それとも止めるか?」

鈴羽「……え?……あ、あぅ」

 あたしは考えるまでも無く――。

鈴羽「あぁぁ!入ってくる!入ってくるよ!」

 力を抜いていた。

78 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:15:19.16 pBtaMbai0 47/133

岡部「もっと力を抜け鈴羽」

 岡部倫太郎は腰をゆっくりと動かして来た。
 胸を揉んだり股間をいじったりしながらずっと腰を振っていた。
 それは、あたしが力の抜きかたを学ぶまで続けられた。

岡部「大分こなれてきたようだな」

鈴羽「あっ……うん。ちょっと変な感じだけど気持ちいいかも」

80 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:21:34.29 pBtaMbai0 48/133

岡部「物足りないだろう。いま、思いっきり突いてやる」

鈴羽「え?まっ、待ってぇ!」

 深く突き刺さった一撃に目の前が真っ白になった。
 岡部倫太郎の笑い声が響く。

岡部「やはりマゾでは無いか!潮まで噴いてそんなに良いか?」

鈴羽「えぅ?あっ、あぅ……あっ……」

82 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:26:09.61 pBtaMbai0 49/133

 二発目。今度は分かった。突かれて股間から何か漏らしてしまっているのが。
 それは突かれるたびに股間から飛び出てベッドを濡らしていった。

岡部「まったく!アナルセッ○スは初めてなのだろう?
初めてでこんなに潮を吹くとは驚きだな!」

 もっと……もっと……あたしを見て。
 壊すくらい真剣になって。
 全部忘れて。

85 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:27:01.01 pBtaMbai0 50/133

岡部「出すぞ!全て受け取れ!」

 何かが大量に体内に注入された。
 それは留まることを知らず、怖いほどだった。
 
 岡部倫太郎のアレが抜かれるとき、精液が溢れ出て驚いた。
 お尻を締めてさらに溢れ出そうとするのをくい止める。
 岡部倫太郎が呼吸を乱しているんが面白かった。
 今、私の所為で彼は呼吸を乱しているのだ。

86 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:28:47.32 pBtaMbai0 51/133

鈴羽「お、岡部倫太郎……き、気持ち――」

岡部「もう満足したか?これで満足してないというのならもう俺はもう付き合い切れんが」

鈴羽「……うん」

岡部「良かった。なら仕事に励んでくれよ」

87 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:29:19.09 pBtaMbai0 52/133

鈴羽「うん。……また頼んでも良いかな?」

岡部「頻繁には無理だ。俺もお前も暇ではないのだからな。
無駄なことに体力を裂いている余裕は無いと思うぞ」

鈴羽「……うん。そうだね。……たまに頼むことにするよ」

岡部「そうか。なら今日はもう寝ておけ。警戒装置の点検を忘れずにしておけよ?」

89 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:30:16.30 pBtaMbai0 53/133

 部屋を出て行ったと言うことは、今日はこの部屋を寝床として使って良いと言うことだろうか?
 あたしは身を投げ出して溜息をついた。
 溜息と同時に涙がうっすらと浮かんだ。

鈴羽「岡部倫太郎。君って可哀想だね」

----------------------------------------

90 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:32:52.64 pBtaMbai0 54/133

 岡部倫太郎と橋田至の思惑通り、CERNにタイムマシン理論を送りつけた後からの世界情勢は急激な物だった。
 世界恐慌だとか問題の多い年だとか世間では言われていたが、その殆どはタイムマシンを巡って各国が裏で暗躍している影響だった。
 岡部倫太郎は手下を使ってタイムマシンの完成を見守らせたりもしていた。
 それを橋田至がハッキングで情報を集め、タイムマシンの完成度合いをかなり高いレベルで予測していた。

91 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:34:08.18 pBtaMbai0 55/133

岡部「ヒューマンイズデッド ミスマッチ」

ダル「また失敗か。SERNの奴ら、やる気はあるのか?」

岡部「馬鹿共がいくら考えようと自分たちの失敗には気付かないだろう。
もっと人体実験を行って理論の穴を無くしていくしかないのだ」

ダル「早く完成させろ。早く」

 橋田至は祈るように言った。

93 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:35:26.77 pBtaMbai0 56/133

鈴羽「最近はあたし達も大所帯になってきたね。なにか手伝えることは無いかな?
兵隊の訓練とかならあたしにも――」

岡部「お前は俺達の護衛をしておけば良い。部下達には絶対顔を見られるなよ?
迂闊な行動はするな」

 携帯電話が鳴った。
 無機質な電子音だった。
 橋田至がこちらに視線を送ってくる。

94 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:36:01.02 pBtaMbai0 57/133

岡部「鈴羽。部屋を出ていろ」

ダル「……いや。もう良いんじゃないか?
いっその事ここで全てばらしておいた方が、今後の危険も無いだろう」

岡部「ふむ。興味本位で計画が破綻するようなことになっては馬鹿らしい……か」

ダル「そういうことだ」

 橋田至は耳に携帯電話をあてがった。

96 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:37:33.20 pBtaMbai0 58/133

ダル「生まれた?そうか、ありがとう。本当にありがとう。
僕も出来るだけ早くそっちに行くよ…………うん。仕事を切り上げて行くつもり。
……大丈夫。大事なことだから」

 橋田至は携帯を閉じて深く溜息をついた。

岡部「鈴羽。何となく分かっただろうがダルに子供が生まれた」

鈴羽「え!?お、おめでとう……で良いんだよね?」

 橋田至に子供。
 あの橋田至に子供?


97 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:42:15.92 pBtaMbai0 59/133

岡部「ダルの妻の名前は阿万音という」

鈴羽「……阿万音……?」

岡部「そして、生まれてくる子供は鈴羽と名付けられるだろう」

 理解力が追いつかなかった。
 また何か恐ろしい計画でも建てているのだろうか?


99 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:46:22.62 pBtaMbai0 60/133

鈴羽「お、おとう……さん?」

 あたしは直後、後悔した。
 言うんじゃ無かった。
 迂闊なことをするんじゃ無かった。

 橋田至の目が語っていた。
 ――どうでもいいことだと。

100 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:48:11.06 pBtaMbai0 61/133

鈴羽「な、なんでそんな目……」

 涙が別の意味で流れる。

ダル「僕は……ある目的の為だけに阿万音との間に子供を作った。
鈴羽……お前をこの世に生み出すためだけに。
いずれあの子はタイムマシンに乗ってIBN5100を岡部の元へと届ける運命を課せられるだろう。
それだけで良い。この世界線ではそれが必要だからだ」

101 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:48:54.12 pBtaMbai0 62/133

 あたしは泣き崩れてしまっていた。
 抑えきれない感情が涙となって止めどなく溢れる。
 橋田至はそんなあたしの隣を――素通りした。

岡部「全ては俺の計画だ。恨むのなら俺を恨め」

 橋田至が部屋から出て行った後に、岡部倫太郎はぽつりと言った。

----------------------------------------

103 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:53:46.84 pBtaMbai0 63/133

 もう何度目か分からない行為に耽る。
 絡み合う二つの体。
 あたしは岡部倫太郎が反応する場所を全て把握していた。
 牧瀬紅莉栖より椎名まゆりより他の誰よりもあたしが岡部倫太郎を知っているはずだった。

104 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:54:50.67 pBtaMbai0 64/133

鈴羽「ねぇ。親友の娘とする気分ってどんなのかな?教えてよ?」

岡部「別段、特別な感慨はないな」

 岡部倫太郎の首筋を舐める。
 もう何度もしていることだ。
 岡部倫太郎の味なんていつでも思い出せるけど、何度でも求めてしまう。

105 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:55:32.99 pBtaMbai0 65/133

岡部「お前こそまだ俺にこのような要求をしてくるとはな。
俺が言うのもなんだが、少し変わっているのではないか?」

鈴羽「そうかもねぇ」

岡部「……吹っ切れたか」

鈴羽「もうどうでも良いよ。……来て……」

106 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:56:41.41 pBtaMbai0 66/133

 あたしは岡部倫太郎に足を絡ませる。
 竿に割れ目を押し当てて、あたしの愛液まみれにする。

鈴羽「今日はこっちで――」

 岡部倫太郎はあたしの腕を引っ張り俯せにさせた。
 お尻に熱い物が押し当てられる。

鈴羽「またあたしのお尻なの…?」

108 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:57:48.20 pBtaMbai0 67/133

岡部「それで満足するんだ。十分だろ?」

 肉を掻き分けて熱い物が入ってくる。
 ここで我慢が出来れば前でもしてもらえる。
 そう思ったりもするのだが、その我慢が出来たことは今まで一度も無かった。
 激しく突かれるたびに嬌声が漏れた。
 激しく突かれるたびに愛液が溢れた。
 激しく突かれるたびに眼前が揺れた。

鈴羽「そこぉ!そこぉぉ!」

岡部「言われなくても突いてやる」

109 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:58:26.84 pBtaMbai0 68/133

鈴羽「もっと……もっと激しくしてぇ!」

岡部「とんだ淫乱だな」

鈴羽「違うのぉ!あっ!違う!」

岡部「黙れ」

110 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:59:02.79 pBtaMbai0 69/133

 一際激しく内側を擦り上げられる。
 意識をそこに集中して中に入っている物の形を細部まで感じ取る。
 確かに気持ち良い。
 ゴリゴリと中側を抉られる度に意識が飛びかけるほど。
 でも……空しい。

113 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 22:59:51.92 pBtaMbai0 70/133

岡部「出すぞ」

鈴羽「うん……きて……出して……私の、中に」

 目の前がホワイトアウトする。
 流し込まれるそれを一滴も逃さないように岡部倫太郎のアレを深く沈め込ませる。

鈴羽「あん!あっ……あぁぁぁ!」

 それからはいつも通り。
 岡部倫太郎は部屋を出て行き、あたしは一人でベッドの上。

114 : 以下、名... - 2011/08/14(日) 23:00:24.91 pBtaMbai0 71/133

鈴羽「あー。気持ちよかったー。岡部倫太郎もこんなに出して気持ちよかったって事だよね?」

 どろりと溢れてきた精液を指でもて遊び、割れ目に塗ってみたりする。

鈴羽「ふふっ……こんなことしてたら赤ちゃんが出来ちゃうかもねー。
そうなったら岡部倫太郎はどんな反応するかな?」

----------------------------------------

115 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 23:03:10.67 pBtaMbai0 72/133

 橋田至がある情報を得てから回りの環境は一気に慌ただしくなってきた。

 それは、CERNがタイムマシンを完成させたというものだった。

 岡部倫太郎がリーディングシュタイナーで世界線が変わった事を観測したとも言っていたので間違いないと思う。
 改竄された内容は株の利益配分だった。
 岡部倫太郎はこれ自体は大した事では無いけどCERNに先手を打たれる前に潰すと言っている。
 あらゆる事は以前から準備されていたことで滞りなく対処されていった。

117 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 23:04:00.93 pBtaMbai0 73/133

岡部「コマは上手く動きそうか?」

ダル「命令されれば自ら命を絶つような奴らだけを厳選してある。前から目星をつけていた奴等だ。自分の役割は果たすだろう」

岡部「やっと……か。やっと……」

ダル「CERNはタイムマシンを完全なものにした。あれからたった数年だったけど……長かったな」

118 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 23:04:46.90 pBtaMbai0 74/133

岡部「あぁ。……奴等がディストピアを完成させる前に潰す。計画実行は3日後だ」

ダル「3日……長いな……もう、それ以上は待てない!
僕たちは十分待った!そうだろ!」

岡部「もう、待つ必要は無い。最後の計画を実行する。
コマを現地に送る手はずを整えておけ」

ダル「もうやった。……あぁ……やっと……やっと……」

 橋田は感無量と言った様子だった。

119 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 23:05:47.02 pBtaMbai0 75/133

岡部「鈴羽。最初で最後の正面対決だ。
俺達はSERNからタイムマシンを奪取する。お前が過去へと跳ぶんだ。そこで……過去の俺達を救ってこい」

鈴羽「うん。分かってる。分かってるよ。もう何度も聞いたから」

ダル「岡部……やっとなんだな」

 橋田至は驚いたことに大粒の涙を流していた。
 今まで冷酷なまでに計画を進行させて来た彼が、あの日以来見せたことの無い涙だった。

ダル「絶対に助けような?絶対に……まゆ氏と牧瀬氏を……そして……僕たちの未来を」

岡部「無論だ」

----------------------------------------

121 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 23:07:33.38 pBtaMbai0 76/133

 作戦を次の日に控えていた日。
 あたし達は観光客として海外に渡り、SERN本部から一番近いホテルに宿泊していた。
 コマはすでにSERN本部の回りに潜ませている。

鈴羽「入るよ」

 返事も待たずに部屋に入る。
 岡部倫太郎は携帯の画面を見ていた。

122 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 23:08:21.81 pBtaMbai0 77/133

岡部「返事も待たずに入室するな」

鈴羽「ごめんねー。また、アレ良いかな?」

岡部「作戦は明日決行なんだぞ?」

鈴羽「明日の夜じゃん。作戦に支障は来たさないよ。
むしろ、ここでアレをしないことの方が作戦に支障を来たすかも」

岡部「まあいいだろう。……こい」

126 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 23:10:20.40 pBtaMbai0 78/133

 体をぶつけるようにして胸に飛び込む。
 そのままキスをする。
 初めての時より長く、激しく。

岡部「貴様は俺を窒息させるつもりか?」

鈴羽「とか言いつつ余裕なんだね」

128 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 23:11:21.94 pBtaMbai0 79/133

 いつまでも続ける。
 どうせ岡部倫太郎からの抵抗はない。
 舌をいくら絡み合わそうが歯を舐め回そうが、あたしが満足するまで付き合ってくれる。

岡部「止めた方が良いのではないか?」

鈴羽「なんで?」

岡部「……泣いているではないか」

129 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 23:11:46.49 pBtaMbai0 80/133

 必死になりすぎて気がつかなかった。
 馬鹿だな。あたしは。

鈴羽「自分でやっといてちょっと苦しかったかも。……大丈夫。……して」

 正面から受け入れようとする。
 でも、例に漏れず岡部倫太郎はアレをお尻にあてがった。

鈴羽「最後までお尻なんだね」

130 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 23:12:25.62 pBtaMbai0 81/133

 無言のまま貫かれる。

鈴羽「――くふっ!相変わらず、深いっ!」

 我慢しよう。
 我慢すればきっと前にも――。

132 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 23:13:42.79 pBtaMbai0 82/133

鈴羽「あっ!」

 目の前が真っ白になった。
 いきなり出した?何で?
 そして、出した直後にもかかわらず岡部倫太郎はまったく萎えていないそれで突き上げてくる。

鈴羽「こんなのって!ひ、卑怯だよ!!」

133 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 23:14:10.46 pBtaMbai0 83/133

 正直、私の体の中で岡部倫太郎の精液がかき混ぜられている音だけでもイッテしまいそうだった。
 抵抗空しくいつも通りなすがままになる。
 我慢などできるはずが無かった。
 嬌声を上げながら汁をまき散らす。
 結局――岡部倫太郎は最後まで前でする事は無かった。

----------------------------------------

134 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 23:15:33.35 pBtaMbai0 84/133

 そして作戦当日の夜。
 あたし達はコマの一つとして作戦に参加した。

岡部「……皆、配置についたか?」

ダル「一班から三十四班までの確認を完了」

岡部「では、作戦……開始だ!」

135 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 23:17:23.12 pBtaMbai0 85/133

 合図と同時に大型トラックがCERNの門をなぎ倒し、建物へとそのまま激突した。
 警報が鳴り響き間髪いれずに重装備の警備兵が飛び出してくる。

岡部「少ない。中に待機させているのか?」

ダル「ノロマなだけだろ」

岡部「3班、4班に突撃の合図を。10班から14班はスナイピングで援護だ」

 激しい銃撃戦が始まった。
 CERNがただの研究機関で無いことは、この応戦射撃を見ても明らかだった。

137 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 23:18:02.66 pBtaMbai0 86/133

岡部「素早く決めるぞ。鈴羽、俺達も突撃だ」

鈴羽「オーキードーキー」

 アクセルを思いっきり踏み込む。
 道路脇に隠しておいた車は勢いよく飛び出し、銃撃戦の混乱を縫ってSERN本部の入り口に猛進する。
 警備兵が叫びながら撃ってきたがこの車は完全防弾だ。
 特にフロントガラスの部分は強化してあり、銃弾が抜けることは無かった。

岡部「構わん。ひき殺せ」

139 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 23:19:20.11 pBtaMbai0 87/133

 言われるまでもなくそうする。
 SERNの入り口を突き抜けてもアクセルを緩めることはしなかった。
 装甲車をあえて使わず、防弾強化の車をあえて使った理由はコレだ。
 この車体の大きさなら車を降りずに建物内を進むことが出来る。

岡部「こちら三十五班。SERN本部に突入した。二十五班から三十四班も後に続け」

140 : 以下、名... - 2011/08/14(日) 23:20:23.93 pBtaMbai0 88/133

 進める所まで進む。
 その間に何人をひき殺しただろうか?

ダル「岡部!あそこだ!」

岡部「よし!鈴羽、あの扉の前で車を止めろ」

 滑り込むように緊急停車させる。
 この重厚な鉄の扉を開くのは破壊という手段を使ってでは難しいであろう。

141 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 23:20:47.90 pBtaMbai0 89/133

岡部「ダル!」

ダル「オーキードーキー!」

 橋田はカードを取り出すと機械に通し、パスワードキーを叩いた。
 難攻不落に思えた扉があっさりと入門を許す。

142 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/14(日) 23:21:12.04 pBtaMbai0 90/133

鈴羽「伏せて!」

 中で銃を向けて待ち構えていた警備兵がこちらを撃ってくるより早くAK-47で薙ぎ倒した。
 心構えが違った。
 こちらは初めから目に映る敵を物全てを殺すつもりだった。
 岡部倫太郎と橋田至が白衣だったことも、何らかしらの心理的影響を与えたのかも知れない。

岡部「こちら三十五班。第一関門を突破した。各自、役割を果たしてくれ」

158 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 00:02:28.68 /z3R99Hb0 91/133

 ここからは歩きだ。
 階段を登ったその先で警備兵と激しい銃撃戦を繰り広げる。
 後ろから追いついて来た仲間の援護もあり、あたしたちの進む勢いがおちることは無かった。
 岡部倫太郎も橋田至もサブマシンガンで必死の応戦をしている。

161 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 00:05:06.99 /z3R99Hb0 92/133

鈴羽「ちょっと!二人とも後ろに引いて!死にたいの?」

 これでは護衛どころの話しでは無い。
 死ににいく人間を護衛するのは難しいからだ。

鈴羽「二人が死んだら作戦が全部台無しなんだよ?
戦いはあたしに任せて二人は身を守ることだけ考えて!」

岡部「ここで足止めされる訳にはいかん!じり貧になるぞ」

ダル「外からの援護も気になる。軍隊が突入してくる可能性も否定できん!」

163 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 00:05:38.64 /z3R99Hb0 93/133

 あたしは銃弾の中に飛び出していた。

岡部「鈴羽っ!――ッ!お前達、あいつはこの作戦の重要人物だ!援護しろ!」

 相手の銃口がどこを向いているのかを見定める。
 多数の銃口が向けられようとそれが出来れば死ぬことは無い。
 特に、このような乱戦状態では狙いが甘くなる。
 警備兵の銃口が火を吹く、それでもあたしは走り続けられていた。
 不用意に身を乗り出した警備兵を撃つ。
 慌てて銃口を向ける警備兵を撃つ。
 撃つ、撃つ、撃つ――。

 最後まで殺し続けてあたしはそれでも立っていた。

164 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 00:06:17.62 /z3R99Hb0 94/133

岡部「馬鹿かお前は!不用心な行動は慎め!」

鈴羽「だったら岡部倫太郎も謹んで」

岡部「……ちっ!ダル!この次は確か――」

ダル「恐らく研究ホールだな。そこを抜けて地下に行った所に――」

岡部「タイムマシンがある!」

165 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 00:07:25.75 /z3R99Hb0 95/133

 橋田至は他の班に連絡を取り始めた。
 研究ホールは素早く制圧するために、別行動班と同時に突入する事が決められていた。
 これにより、後退した敵側の勢力を一気に叩き潰す算段だ。

ダル「くそ!ノロマ共!死ね!」

岡部「どうした?」

ダル「別働隊が遅れてる。くそぉ……」

岡部「まずいな。パスワードクラッカーは?」

ダル「もちろん準備してある。でも、こいつを使うとなると……」

167 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 00:08:39.29 /z3R99Hb0 96/133

岡部「仕方があるまい。奴等もそこまで馬鹿じゃない。最後の扉のパスワードは変更されているはずだ。そいつを使う覚悟をしておいた方が良い」

鈴羽「ギリギリまで目的地まで寄せておこうよ」

岡部「今俺達に出来ることはそれくらいか。
…………おい!別働隊が遅れている!俺たちは限界まで目的地に接近して待機だ!」

 コマたちは大人しく従っていた。
 どこか不思議な様子で岡部倫太郎の顔を見ているコマもいたが、声を掛けようとはしなかった。

169 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 00:09:25.78 /z3R99Hb0 97/133

ダル「早くしてくれ、早く、早く、早く早く早く!」

岡部「落ち着けダル」

ダル「落ち着いていられるか!」

 橋田至は叫んだ。

岡部「……ダル」

ダル「僕はこの地獄にもう一秒たりとも居たくないっ!
あの時――あの時僕が伏せなければこんな地獄に落ちることは無かった!
まゆ氏も牧瀬氏も!死ぬことは無かった!」

171 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 00:10:48.82 /z3R99Hb0 98/133

岡部「……ダル、それは違うぞ。
まゆりが殺されたのも紅莉栖が殺されたのも俺の所為だ。
俺はまゆりが殺されることを知っていた。
知っていたのに動揺して……それで撃たれた。
紅莉栖は俺を庇って死んだ。だから紅莉栖の死も俺の所為だ。
そこから後も全て俺の所為だ、狂って抵抗して馬鹿みたいに銃撃戦繰り広げて……気付いたら電話レンジが……」

ダル「違う!僕もあの時何かで来たはずだ!
いや……せめて何もしなければ!ただ突っ立てさえいれば。僕が伏せなければ銃弾は僕に当たっていた筈だった!
そしてら、電話レンジは無事で岡部はもう一度やり直せた!」

岡部「考えすぎだ。あらゆる世界線を移動してきたが、ラボでラウンダーに襲われたときのダルの行動は大抵似通っていた。
ダルが床に伏せていたことも何度もあったが電話レンジが壊れることなど無かったぞ。
あれは、あの時の世界線が偶然が生んだ悲劇だったのだ」

ダル「でも、この世界線で僕は立っていなくちゃいけなかった!あの時僕が――!」

 橋田至は言葉を続けることが出来ず泣き喚いた。
 岡部倫太郎はそんな彼を止めるでも無く、冷静な目で見ている。

----------------------------------------

174 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 00:12:01.01 /z3R99Hb0 99/133

ダル「すまなかった。取り乱した」

岡部「構わん。ここで全てを発散させておいた方が良いだろう」

ダル「……すまん」

 橋田至は各班に連絡を取った。
 中には連絡のつかない班や、重大な損害を与えられて他の班に吸収されたものもあった。

ダル「いけるぞ。岡部」

岡部「よし。俺達も合流だ」

182 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 00:32:20.33 /z3R99Hb0 100/133

 仲間達は今か今かと待ち構えていた。
 岡部倫太郎に向けられる視線の数から、かれがこの組織の頂点にある人間であることを見抜いている者も多いのかも知れない。

岡部「皆配置についたか?」

ダル「……完璧だ」

 岡部倫太郎が目を瞑る。
 そして、大きく息を吸った。

184 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 00:35:15.85 /z3R99Hb0 101/133

岡部「ここまで戦い抜いてくれた戦士達に感謝を!
俺達はCERNがディストピアという闇で世界を覆う未来を消し去る!
それはタイムマシンによってのみ可能だ!
世界は……再構築されるのだ!
ここまで戦ってくれた皆に俺は嘘は吐かん。みんな、世界の為に犠牲となってくれ!
……突撃」

 合図は各班同時に出された。
 皆、雄叫びを上げながら研究ホールに雪崩れ込む。

岡部「……俺達もいくぞ」

鈴羽「嘘吐きだね。岡部倫太郎」

186 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 00:37:12.76 /z3R99Hb0 102/133

 研究ホールでは、案の定警備兵からの激しい抵抗に遭った。
 後退した敵勢力の全てがここに集まっている。
 だが、勢いだけならこちらも負けては居なかった。

ダル「あそこだ!最後の扉!」

岡部「今近づくのは危険だな」

鈴羽「頭を低くして!」

 相手も必死だ何でもしてくる。
 手榴弾を抱えて走って来たときは本当に肝を冷やした。
 岡部倫太郎が爆発がタイムマシンに与える影響を気にしていたが、どうすればそこまで冷静になれるのだろうか?

188 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 00:39:54.14 /z3R99Hb0 103/133

岡部「鈴羽、ここは他の奴等に任せておけ。
いくらお前でもこの中では無力だ」

鈴羽「今下手に動くと的だよ。じっとして――!?」

 目の前の警備員が向けているのは何?
 ロケットランチャー?
 まずい!
 もう標準が!

鈴羽「岡部倫太郎!逃げ――」

 激しい爆発が起こった。

191 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 00:42:47.55 /z3R99Hb0 104/133

 ただし、それはわたしたちの遥か手前で。

岡部「……盾になったか」

 直前に仲間が数人飛び出して来た。
 偶然……と言うことは無いだろう。
 彼らは自らの意思でそうなることを望んだのだった。

ダル「やはり、人選は間違ってなかったな」

鈴羽「二人とも……」

192 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 00:45:04.38 /z3R99Hb0 105/133

 直後、更なる増援が警備隊の一団に横撃を仕掛けた。
 直前まで身を隠して機会を窺って居たようだ。
 この攻撃のおかげであたし達の前に突破口が開いた。

岡部「いくぞ!外から援軍が来る前に全てに蹴りをつける!」

 扉まで辿り着いた。
 最初に突破した鉄の扉と同タイプのものだ。
 橋田がカードを通しパスワードを打ち込む。

ダル「くそっ!やっぱりパスが変更されてる!」

194 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 00:48:24.07 /z3R99Hb0 106/133

 岡部倫太郎と橋田至は特殊なドライバーで扉の解錠装置分解して中の機械を露出させると、パスワードクラッカーを端子につなげた。
 この機械は正式名称を「未来ガジェット64号 オルタナティヴ・エディション、バージョン5.66」いう。
 橋田至がこの扉を突破するだけのために作り出したものだ。
 扉と外部を独立させてパスワードを解析することでリアルタイムでのパスワードの改変を不可能に出来るらしい。
 あとは、この機械が最後に変更されたパスワードを解析する。
 最大の難点は時間だろうか?
 ものの五分程度なのであたしにはそう長く感じないのだが、彼らはそれが致命的と言わんばかりだった。
 初期作品は解析に90分かかるとされていたのをここまで縮めたのだから、それだけで満足するべきだと思う。

195 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 00:50:08.91 /z3R99Hb0 107/133

ダル「早く早く!」

鈴羽「この扉の向こうに……タイムマシンが……」

岡部「あぁ。ようやくここまで――ぬっ!?」

鈴羽「岡部倫太郎、どうした――」

----------------------------------------

198 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 00:51:55.16 /z3R99Hb0 108/133

岡部「こ、ここは!?」

鈴羽「嘘吐きだね。岡部倫太郎」

ダル「何してるんだ!早く行くぞ!」

 研究ホールでは、案の定警備員からの激しい抵抗に遭った。
 だが、勢いでこちらは遥かに勝っていた。

ダル「あそこだ!最後の扉!」

岡部「まて、先程リーディングシュタイナーが発動した!」

鈴羽「どうして!?」

200 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 00:53:09.68 /z3R99Hb0 109/133

岡部「恐らくCERNの連中が時間跳躍を行ったのだろう。
俺達が考案したタイムマシン理論は時間跳躍に時間が掛かる。
この奇襲作戦の根幹から潰すことは出来ないだろうが、なにか近未来で俺達に良くないことが――」

 岡部倫太郎は物陰から手榴弾を抱えて走って来た警備兵を、そちらを見ずに打ち殺した。
 爆風に煽られるがまったく動じた様子がない。
 どうすればそこまで冷静になれるのだろうか?

岡部「なにかが――何かが変わっているはずだ!」

204 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 01:01:09.73 /z3R99Hb0 110/133

鈴羽「今下手に動くと的だよ。じっとして――!?」

 目の前の警備員が向けているのは何?
 ロケットランチャー?
 まずい!
 もう標準が!
 引き金が引かれる瞬間、この場に似つかわしくない白衣を着た研究員がその警備員を後ろから撃ち殺した。
 目の前に仲間が飛び出してくる。

岡部「ッ!そういうことか!」

 白衣の研究員がロケットランチャーを担ぐ。

岡部「そこに隠れている奴等!ランチャーで狙われている!その場から離れろ!」

205 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 01:04:16.47 /z3R99Hb0 111/133

 直後、研究員は壁を狙ってロケットを発射した。
 粉々にその場を吹き飛ばす。

岡部「くそ!遅かったか!?」

 仲間が白衣の研究員を撃ち殺す。
 その仲間も警備兵達に撃ち殺される。
 ここからあの警備兵の一団を潰すのは、障害物などの影響でかなり骨が折れる。

鈴羽「なにか手は?」

岡部「ここでこれ以上爆発物は使いたくない。
タイムマシンの動作に影響が出るかもしれん」

鈴羽「ならどうすれば!」

ダル「まずい!火力がここに集中してるぞ!」

岡部「今考えて――」

211 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 01:07:56.95 /z3R99Hb0 112/133

 爆破された壁の向こうから血まみれの男達が飛び出してくる。
 後数分も持たないだろうが、彼らは自らの仕事をこなした。
 警備隊の一団は思わぬ横撃を受けて浮き足立つ。
 この攻撃のおかげであたし達の前に突破口が開いた。

岡部「生き残っていたのか!?よし、いくぞ!外から援軍が来る前に全てに蹴りをつける!」

 銃弾をかいくぐり死体を踏みにじって進む。
 そして、ようやく扉まで辿り着いた。
 最初に突破した鉄の扉と同タイプのものだ。

岡部「ダル!パスワードはすでに改変されている!すぐにパスワードクラッカーの準備だ!」

ダル「オーキードーキー!」

 二人は慣れた手つきで作業を進めた。

ダル「早く早く!」

鈴羽「この扉の向こうに……タイムマシンが……」

岡部「あぁ、ようやくここまで来られた。俺達は……過去を改変する」

鈴羽「そうなれば……何もかも元通りなんだね」

212 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 01:10:45.23 /z3R99Hb0 113/133

ダル「……頼むぞ。必ずあの忌まわしい過去を改変してくれ」

鈴羽「うん。分かってるよ」

岡部「紅莉栖……まゆり……」

 岡部倫太郎はかみ締めるように言った。
 あたしはその姿に気を取られすぎて――影から飛び出して来た警備兵に気が付けなかった。

214 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 01:14:48.89 /z3R99Hb0 114/133

 まずい。
 そう思った時にはナイフが眼前に迫っていた。
 最後の最後に馬鹿をやらかすだなんて……岡部倫太郎はさぞや失望するだろう。
 酷く世界がゆっくりなのに体が動かない。
 頭だけ高速回転して体は鉛のようだった。
 これは走馬燈の一種なのだろうか?
 分からないけど、ただ一つ私に分かることがある。
 失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した 失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した 失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した
あたしは失敗した失敗した失敗した失敗した 失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗したあたしは失敗

 こんな未来望んでなかった。
 こんなことになるんなら――。

215 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 01:17:18.86 /z3R99Hb0 115/133

 僅かな時だけでも良い。岡部倫太郎を自分だけのモノにするんだった。
 あんな決意させるんじゃ無かった。
 あの時、みんなで――死んでおくべきだった。

ダル「避けろ!馬鹿!」

 体が横に弾き飛ばされる。
 地面を転がり、直後に見たのは橋田至の胸に深々とナイフが突き刺さっているところだった。
 あたしは反射的にナイフを捻り込んでいる警備兵の頭を撃ち飛ばす。

岡部「ダル!!」

218 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 01:20:57.71 /z3R99Hb0 116/133

ダル「し……心配するな。ここまで来れば扉は自動的に開く。
初めの設定だけだからなこの機械で僕が必要なのは……。
岡部、お前も、自分の役割を、……果たせよ」

 岡部倫太郎は言葉をぐっと飲み込んだ。

岡部「……ご苦労だった。さすがは……我が右腕」

鈴羽「橋田至!どうして!?」

 橋田至は苦しげに血の塊を吐いた。

ダル「か、勘違いするな。僕は自分の役割を、果たしただけだ。
お前には、お前の役割を果たして貰わなくては、ならない」

223 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 01:24:37.54 /z3R99Hb0 117/133

 息も絶え絶えだった。
 橋田至の命はまさに目の前で尽きようとしていた。
 冷酷だったのに、優しくしてくれたことなんて一度も無かったのに、涙が零れる。
 橋田至はそんなあたしを見て――なにも言わずに目を閉じた。

岡部「……ダル」

 パスワードクラッカーが電子音を響かせ、扉が自動的に開く。

岡部「……いくぞ。鈴羽。ダルの死を無駄にするつもりか?」

 あたしは涙を拭って立ち上がった。
 無防備に扉に侵入する岡部倫太郎の後を追う。





ダル「オカリン……頼むぞ。みんなを……助けてくれ。
僕が……鈴羽の……鈴羽の父親だって胸を張って良い世界線に……きっと――」

----------------------------------------

225 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 01:28:31.17 /z3R99Hb0 118/133

 廊下を抜けて室内に入る。
 そこには怯えきった研究員が数名いて巨大な装置が置かれていた。

岡部「コレだ……コレが……タイムマシンだ」

「お、お前達は何者だ!こんなことをしてただで済むと――」

 一人の研究員が喚き始めると同時に、それぞれの研究員が自分の母国語でそれぞれに叫び始めた。

岡部「鈴羽。全員殺せ」

 その言葉に初老の……恐らくあたし達の言葉が分かったので日本人なのだろう。
 その男が慌てて捲し立てた。

初老の研究員「ま、まて!私達を殺せばこのマシンを動かすことは誰にも出来なくなるぞ!」

227 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 01:30:54.99 /z3R99Hb0 119/133

 岡部は機械をゆっくりと眺め回した。

岡部「少し手を加えているようだが、基本は俺達の作ったタイムマシン理論に則っているようだな。
この程度の機械を扱うことなど、俺にとっては児戯に等しい」

初老の研究員「――なっ!?まさかお前が――」

岡部「やれ、鈴羽。
間違っても機械を傷付けるなよ」

初老の研究員「ま、待て!他の者もみんなお前に好きなものを与えると――」

 あたしはハンドガンを抜いて研究員達の胸を一発づつ撃っていく。

岡部「俺の欲しいものは……お前達に用意できない」

 伏せていた研究員に銃弾を撃ち込む。

鈴羽「……終わったよ。岡部倫太郎」

230 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 01:34:27.46 /z3R99Hb0 120/133

岡部「あの台の上に立ってハッチを閉めろ」

鈴羽「うん。……その前に……岡部倫太郎。抱きしめてくれない?」

 岡部倫太郎は溜息をつくと3秒間ほどそうしてくれた。

岡部「これでいいか?」

鈴羽「……うん」

 短い階段を登っていく。

岡部「予定していた通りお前をあの日に送り出す。
時間跳躍に掛かる数時間の間、ここは俺達が死守しておくから安心しろ。
現地についたらあらかじめ決められて居たように行動してくれよ。
では、頼んだぞ」

鈴羽「オーキードーキー」

232 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 01:37:46.45 /z3R99Hb0 121/133

 ハッチを閉めると中は狭く、窓一つ無かった。
 しかし、小さな画面に岡部倫太郎が映っており、マイクから外からの音声が聞こえてきた。

岡部「やつらめ……創意工夫という言葉をしらんのか?
ここまで簡単な装置だと逆に怖くなってくるな」

鈴羽「岡部倫太郎。こっちは準備完了だよ」

岡部倫太郎「む?意外と時間跳躍に時間が掛かるな」

鈴羽「あれ?」

 あたしからの声は岡部倫太郎に届いていない様子だった。

鈴羽「えーと。通信機能は――これかな?」

235 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 01:40:47.87 /z3R99Hb0 122/133

 勝手にいじって良いものかと悩んでいると、岡部倫太郎の方も準備が完了したようだった。
 マイクの存在に気付かずに大声で準備が終わった事を伝えてくる。

岡部「準備は整った。そちらはどうだ!」

 あたしも同じように大声で返す。

鈴羽「こちらも準備完了。いつでも良いよ!」

 岡部倫太郎はスイッチに手を伸ばした。
 たぶんあのスイッチが押されると時間跳躍が始まる。
 あたしは世界線をただしに行かなくてはならない。
 この苦しかったけど岡部倫太郎の居たこの世界線をただしに……。
 この世界線の岡部倫太郎はあたしを愛してはくれなかったけど、確かに彼はあたしだけのものだった筈だ。
 それを、無かったことにしなくてはいけないなんて――そんなこと――。

237 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 01:44:02.84 /z3R99Hb0 123/133

岡部「鈴羽……」

 岡部倫太郎の声が狭いタイムマシンの中に響いた。

鈴羽「何?岡部倫太郎」

岡部「鈴羽……」

鈴羽「……あれ?」

 マイクの存在に気がついたかと思ったけどどうやらそうではないらしい。
 岡部倫太郎はスイッチを押す寸前の所で固まっている。

岡部「鈴羽……鈴羽鈴羽……鈴羽……」

 岡部倫太郎が涙を流していた。
 あの岡部倫太郎が。
 常に冷静だった岡部倫太郎が。
 いつもあたしを突き放してきた岡部倫太郎が。

240 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 01:46:21.99 /z3R99Hb0 124/133

岡部「鈴羽……鈴羽鈴羽鈴羽鈴羽鈴羽……」

 あたしはボロボロと涙を零していた。
 あたしは嬉しかった。岡部倫太郎が何も変わってないことが。
 彼は――優しい人だった。
 常に人のために犠牲になってきた。
 世界線を正すために冷酷徹し、全てを犠牲にしてきた岡部倫太郎。
 たぶん、一番犠牲にしていたのは……自分自身の心だった。

 だからあたしは――。

鈴羽「何やってるの!早くタイムマシンを作動させて!」

 大声でそう言った。
 彼の犠牲を無駄にしないためにも。

岡部「っ!す、鈴羽……いけぇ!鈴羽ぁ!」

 岡部倫太郎はスイッチを……押した。

----------------------------------------

242 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 01:51:20.26 /z3R99Hb0 125/133

 意識が海に漂い続けているようだった。
 ようやく意識がハッキリしてくると――あたしはラジ館の屋上に立っていた。
 どうやら時間跳躍は成功したようだ。

鈴羽「あたしは……世界線をただす……」

 すぐに未来研ガジェット研究所を目指す。
 そして、岡部倫太郎に会った。
 この日の12時30。
 岡部倫太郎がラボに一人でいる事は決定事項だったので簡単な仕事だった。

岡部「……信じられん……まさか、そのようなことが起こるとは……」

鈴羽「全部事実だよ。君は何かを手に入れる為に、何かを犠牲にしなくちゃいけない」

岡部「それは……皆を犠牲にしろと言うことか……」

鈴羽「そうだよ。でないと君はきっと後悔する。あたしはそれをずっと見てきたんだ」

 岡部倫太郎は無言のまま考え続けた。
 その苦悩は端から見ていても痛いほど伝わる。

244 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 01:54:21.61 /z3R99Hb0 126/133

岡部「……分かった。早速今から今からタイムリープをしよう。
……世界を……俺達の望む世界線に導くために。
その先でさらにDメールを送り、過去を改変する。少し、やり残したことがあるのでな」

 岡部倫太郎はそういうなり、早速タイムリープマシンのヘッドフォンの様な装置を装着した。

鈴羽「忘れないで。
冷酷に徹して。
何を犠牲にしてもダイバージェンス1%の向こう側だけを目指して」

岡部「お前には……なんといって良いのか……」

 岡部倫太郎は申し訳なさそうな表情をした。
 きっとあたしの話から苦労を汲み取ってくれたのだろう。
 悪戯心が沸き上がってくる。

246 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 01:57:15.39 /z3R99Hb0 127/133

鈴羽「なに?美人になったって言いたいの?」

岡部「んなっ!?た、確かに美人ではあるが、この俺、狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真がそのような事を軽々しく口に――」

鈴羽「あははー。言ってる言ってるー」

 岡部倫太郎は携帯電話を取りだして耳に当てる。

岡部「俺だ……あぁ、今、未来からのエイジェントから精神攻撃を受けている。
もし、生きて帰れなかったら両親に伝えて欲しい。
愛している……と」

鈴羽「……すっごく久しぶりだね……それ」

岡部「そ、それとはなんだ。俺は機関から追われている身だ。
いかなる状況に陥ろうともこの定期連絡を欠かすことは――」

鈴羽「うん。うん。」

岡部「…………そろそろ……行くとするか。未来の俺が世話になったようだな。礼を言っておく」

249 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 01:59:42.09 /z3R99Hb0 128/133

 タイムリープマシンが起動する。
 放電現象が起きたときあたしは自分の役割を果たすことが出来たことを実感した。
 長かったけど最後はあっさりと終わった。
 こんなに簡単な事に何年も苦しめられてきた。
 
 ここ最近は泣いてばかりだ。今だって涙が止まらない。

鈴羽「岡部倫太郎……お父さんっ!あたし……あたし……!成功したよ!
良かった、本当に良かったよぉ!」

岡部「すずh――」

----------------------------------------

251 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 02:02:48.98 /z3R99Hb0 129/133

 ん?こんな所に錆が。

鈴羽「えー?なんでー?小まめに手入れしてるのに」

 お気に入りのMTB。
 手入れに抜かりは無いはずだけど使用頻度が多いためか、時々錆が浮いている場所がある。

鈴羽「しょうがないなー」

 と、言いつつも。
 この錆を落とす作業も実は好きだったりする。

岡部「擦りすぎでは無いのか?」

 鼻歌を歌いながら作業をしていたら、後ろから岡部倫太郎が声を掛けてきた。

鈴羽「おっはー!岡部倫太郎」

253 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 02:05:02.23 /z3R99Hb0 130/133

岡部「そんなお前にはこれをやろう」

鈴羽「なにこれー?」

岡部「さび止めだ。無色透明だから仕上げに噴いてみると良いぞ。
恐らくバイト戦士が熱心に手入れをしすぎているせいで、塗装が一部剥がれてしまっているのだろう」

鈴羽「うわー。ありがとう!」

岡部「それはこの狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真からの贈り物だ。大切に使うのだぞ」

鈴羽「うん。そうするよ!」

 そういって岡部倫太郎を見ると、日常会話を行っているのには相応しくないほどの真面目な顔つきだった。
 不意打ちに自然と胸が高まるのを感じた。

256 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 02:08:15.39 /z3R99Hb0 131/133

鈴羽「ど、どうしたの?随分と真剣な顔つきで……なにか悩み事なら相談に――」

岡部「バイト戦士よ。戦士に必要な心構えは、自分を犠牲に出来るかどうかと言うことだけだ。
他人を犠牲にしてでも自分の心を殺し、任務を遂行することが出来る人間だけが……戦士を名乗る資格がある。
バイト戦士よ。お前にはその資質が十分にあるようだな。
敬意を込めて呼ばせて貰うぞ。バイト戦士と」

 岡部倫太郎の言葉はよく分からなかったけど、聞いていると胸が高まった。
 感極まったと言っても良い。
 馬鹿みたいな事だけど涙腺が少し緩んだ。
 岡部倫太郎はそれだけ言うと白衣を翻して去って行った。

鈴羽「ちょっと待って!岡部倫太郎」

257 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 02:11:00.10 /z3R99Hb0 132/133

岡部「なんだ?」

 彼は振り返らずに言う。
 な、なんであたしは岡部倫太郎を呼び止めちゃったんだろう!?
 な、何でも良いから話題を、何か言わないと。

鈴羽「あ、そ、その。だ、抱きしめてくれない?」

 言った自分が一番驚いた。
 何の脈絡も無しにこんな事を言って絶対岡部倫太郎に頭がおかしい奴だと思われたはずだ。

岡部「それが……バイト戦士の望みなら」

 岡部倫太郎はあり得ないことにあたしを抱きしめてくれた。
 それは、痛いほどに。

262 : 空疎篭手三千 ◆1UtFJ90Cyo - 2011/08/15(月) 02:14:06.68 /z3R99Hb0 133/133

鈴羽「お、お、岡部倫太郎っ!さ、先のは冗談で――」

岡部「鈴羽。俺は……何を犠牲にしてでも未来を掴む。
お前も……笑顔で居られる……戦わなくても良い世界に連れて行ってやる」

鈴羽「……岡部倫太郎」

 岡部倫太郎の声は決意に満ちていた。
 これほどの意思を持つ人間を見たことが無かった。
 彼なら至るだろう。ダイバージェンス1%の向こう側に。

鈴羽「うん……うん!」

岡部「俺がこう決めたからには絶対だ。
それが――シュタインズ・ゲートの選択だ」


fin

記事をツイートする 記事をはてブする