1 : 以下、名... - 2015/08/16 21:40:27 YuzQ1md. 1/241

「おい男。餌を寄越せ」

「そんな高圧的な猫にあげる餌なんてありません」

「餌がほしいにゃ~ん」

「キモい狩ってこい」

「なぜ目の前に餌を提供してくれる人間がいるのに狩る必要がある?」

「猫だろ、狩れるだろ。狩ってこいよ」

「飼い猫にそんなスキルはない。それに私は本来悪魔であって、猫は男と対話する仮の姿だ」

「面倒臭いんで母さんとも話せるようになって」

「私は男に憑いた悪魔だから、男以外とは話せない」

「じゃあもう母さんに憑けよ」

「実の母親に悪魔を憑けるとか悪魔だな男は」

「だってお前この家に来てから5年間、ただ俺と話せるだけで何も悪魔らしいことしてないじゃん。せいぜい俺のくらった損害なんて、お前が家に来てから数日間、猫と話す痛い人みたいな目で家族に見られたことくらいだよ」

「私が原因かはともかく、痛いのは確かだな」

「餌やんねぇぞ」

「許してにゃん」

「…………キモいから」

元スレ
猫「あーあ、どうすんの。死んじゃったじゃんその人」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1439728827/

2 : 以下、名... - 2015/08/16 21:46:15 YuzQ1md. 2/241

「しゃあねぇなぁ……」

「あ、カリカリは駄目だ。肉を寄越せ」

「何でしっかり肉食なんだよ。カリカリも初めはうまいうまい食ってたじゃんか」

「お前はうまいからといって、毎日同じものが食えるのか?」

「食えるけど」

「……魂寄越せなんかムカつく」

「なんでだよ」

「もういい……カリカリで我慢してやる」

「だから上から目線やめろよ、餌やんねぇぞ」

「はいはい、にゃーにゃー」

「猫に流された……」

3 : 以下、名... - 2015/08/16 21:53:47 YuzQ1md. 3/241

ガサガサッ

「ほれ、カリカリ」

「御苦労」カリカリ

「……お前さ、魂食えるの?」

「どうした急に」

「いや、なんか魂寄越せとか言ってたから」

「あー、まぁ少なくとも、男が生きている内に魂を食うことはない」カリカリ

「……ふぅん、よくわかんね」

「よくわからなくても構わない、私が理解していればそれで問題ない」カリカリ

「悪魔に憑かれてるのは俺なのに?」

「その内説明するさ」カリカリ

「…………そうかい」

「ゲプッ……食った食った。さて男、布団を用意しろ。私は寝る」

「……その辺で寝ろ猫風情が」

「仕方ないなぁ……」

9 : 以下、名... - 2015/08/18 15:05:13 F8bS.fFA 4/241

「さてと……学校行かなきゃ……」

「……む、今日は随分と早くに出るのだな」

「先生の手伝いを頼まれてね。学年全員分のノートを整理しろってさ」

「ふむ……雑用か」

「運悪く日直が当たったんだ」

「自らのノートの整理を怠る人間が、他人のノートの整理なんて出来るのか?」

「俺がいつも出来てない整理と、今日の整理は違うんだよ」

「ほう、不思議なものだな」

12 : 以下、名... - 2015/08/18 18:25:54 F8bS.fFA 5/241

◆学校◆

先生「お、来たか」

「おはようございます」

先生「なんだ、眠そうだな。夜更かしでもしたのか?」

「いえ……いつもこの時間は起きてますけど、普段は家にいるのでリズム的にまだ辛いなと」

先生「たまに早く来る程度でそう言うな。俺なんか毎日この時間だ」

「……教師にはなりたくないですね」

先生「起床時間で仕事を決めるのかお前は」

「食って寝てお金が欲しいです。ニートじゃなくて、食べて寝るのが仕事なんです」

先生「……はぁ、もういい行くぞ」

15 : 以下、名... - 2015/08/18 18:37:51 F8bS.fFA 6/241

◆教官室◆

「クラスごとにノートをまとめれば良いんですか?」

先生「あぁ。出席番号も、上から一二三四って順番通りになるようにな」

「了解です」

◇◆◇◆◇◆◇◆

 コンコン、ガラガラ(ドア)

先生「お、来たか」

「どうも、おはようございます」

「よー、遅刻じゃね?」

「女の子には色々あるの」

「朝から色々ってなんだよ、どうせ寝坊だろ?」

先生「男、口じゃなく手を動かせ。それと女、遅刻しても処理するノートの量は変わらないからな。急げよ」

「えー……わかりました……」

16 : 以下、名... - 2015/08/18 18:41:47 F8bS.fFA 7/241

「よし、終わった」

「うっそ、はや」

「遅刻してきた奴とは違うんだよ、まぁ頑張れ。俺は先教室行くわ」

先生「お疲れ男。黒板綺麗にしといてくれ」

「…………えぇ……」

「頑張れ男! 速く終った人は違うねぇ!」

先生「うるさい手を動かせ」

「……はぁ」

17 : 以下、名... - 2015/08/18 18:45:56 F8bS.fFA 8/241

◆男の家◆

「学校、どうだった?」

「まぁいつも通り、かな」

「なんだ、面白くない」

「面白い事なんてないよ、大して」

「そういうものなのか、学校とは」

「あぁ、今日あった事なんて、朝から疲れた事くらいだ」

「男は疲れたら、不幸なのか?」

「ん? あぁ、不幸だね」

「それはなんとも、面白いではないか」

「……悪魔め」

18 : 以下、名... - 2015/08/18 18:50:45 F8bS.fFA 9/241

「さて男、宴の時間だ。肉を用意しろ」

「朝も無いって言ったろ。カリカリで我慢しろって」

「しかしだ男、猫はライオンと同じ種族だと言うではないか。ならば、肉を食べさせるのは本来の姿であって、なんら不思議なことは無いと思うのだ」

「不思議じゃなくても、不気味だよ。少なくとも今の日本ではね」

「日本は不便だな」

「人間だけには便利なんだよ」

19 : 以下、名... - 2015/08/18 18:53:50 F8bS.fFA 10/241

「ならば、魚ならどうだ。日本とは猫が魚を咥える国だった筈だろう?」

「まぁ、確かに魚は与える傾向にあるだろうけど、生憎、今家には魚はないんだ。諦めろ」

「……仕方ない、今日も今日とてカリカリか」

「カリカリを楽しめ」

20 : 以下、名... - 2015/08/18 19:51:38 F8bS.fFA 11/241

「……しかし、月曜日ってのは辛いもんだな」

「金曜は楽しそうなのに、なぜ月曜は辛いのだ?」

「学校が始まるからだよ、面倒臭いだろ?」

「そうか? どうせ行くと分かっているのなら、面倒臭いも何もないだろう」

「どうせ行くと分かっているから、面倒臭いんだよ」

「学校は行くべき場所だろう?」

「行かなきゃいけない行きたくない場所だ。もっとも、高校は本来行かなくても構わないんだけどね」

21 : 以下、名... - 2015/08/18 19:59:57 F8bS.fFA 12/241

「男は寿命というのを知っているか?」

「なんだよ急に。知ってるよ寿命くらい」

「寿命があるのを知っているのに、なぜ人間は多くの時間を勉学に使うのか、私には理解できない」

「……俺にも理解できないよそんなの」

「人間の平均寿命が八十歳だとして、大体学生の期間が、大学を含めて二十年程だろう?」

「まぁ……そうだな」

「四分の一も損しているではないか」

「……でも、勉強しっぱなしってこともないし、言うほど時間を無駄にしているようには感じないよ」

「……人間は自由ではないな。その人間に縛られている私もまた、自由ではないのかもしれない」

「はいはい、カリカリ出すぞ」

22 : 以下、名... - 2015/08/18 20:05:48 F8bS.fFA 13/241

「お前は悪魔だろ。悪魔は自由じゃないのか?」ガサガサ

「魂を食わねば死んでしまうし、悪魔にも寿命がある。それに、人間程の縛りではないにせよ、悪魔の世界にもルールはある」

「ふぅん……、ほれ、食っていいぞ」

「まぁ、今は人間より縛られている気もするがな。人間界に来るときは、何かしらの生き物の形をしなければならないんだ」カリカリ

「なんで?」

「ルールだからだ。仕方ない。お前が欲情しても女を襲わないのと同じ事だ」

「その例えは何か嫌だ」

23 : 以下、名... - 2015/08/18 20:15:33 F8bS.fFA 14/241

「月曜日は観る番組がない……」

「何を言うか。月曜日は豊富なラインナップだろうに」

「お前が好きなだけだろ。何観る?」

「この時間ならまる見えだな。決まっている」

「はいはい……」カチッ

 ガチャッ(玄関)

「ただいまー」

「あ、お帰り」

「ご飯どうした? またコンビニ?」

「いや、適当に作ったよ」

「そう。……あら、餌あげてくれたの」

「……ん、あーまぁ、欲しそうにしてたから」

「そ、良かったねー猫ちゃん。男とお話ししたのかにゃぁ?」

「はいはい、もういいよ俺がそいつと話せるってのは」

25 : 以下、名... - 2015/08/18 20:23:57 F8bS.fFA 15/241

「みゃー」

「ほら、なんて言ってるか分かる?」

「あーもういいって、分かんないから」

「まぁそれはいいとして、お風呂沸いてる?」

「あぁ、沸かしてないや」

「じゃあ沸かしてきて。母さんジャンプ買ってくるから」

「帰りがけに買ってきなよそんなの……」

26 : 以下、名... - 2015/08/18 20:34:49 F8bS.fFA 16/241

「風呂の栓閉めて……と」

「そういえば男、私はここ数ヶ月間風呂に入っていない」

「ん、それで?」ピッ ジョボボボ

「汚い」

「いいよ別に、気にならないし」

「まるでゴミのようだ」

「自分でゴミとか言いますか」

「後で私を風呂に入れろ」

「猫って風呂好きだっけ?」

「知らん、私は悪魔だからな」

「……そうかい」

27 : 以下、名... - 2015/08/18 20:39:50 F8bS.fFA 17/241

ピピッ ピピッ

「風呂沸いたよ母さん」

「待って、こち亀読んだら」

「……はいはい」

「漫画か。面白いのか?」

「……」

「少なくとも金を払ってまで読む価値があるのかは、甚だ疑問だ」

「……それでも人間は買うんだよ」

「ん、何か言った?」

「いや、別に何も」

「そ、じゃあ読み終わったし入ってきますかな」

「いってら」

28 : 以下、名... - 2015/08/18 20:48:17 F8bS.fFA 18/241

◆翌朝・家◆

「おい、男」

「ん……なんだよ」

「私の朝飯を早く用意しろ」

「あ、……忘れてた」

「……眠そうだな」

「んー、ゲームしてたから」ガサガサ

「漫画にしても、ゲームにしても、人間は不思議なものに金を使うな」

「人間になれば分かるよ……ほれ、カリカリ」

「人間にはなりたくないものだな……」カリカリ

33 : 以下、名... - 2015/08/19 14:41:44 KQJakzxw 19/241

「お金を払ってまでしたいこと……」

「どうした?」

「いや、もし私が金銭の取引を行う生物なら、何を買うだろうかと」

「あぁ……、お前なら肉とかじゃないのか?」

「……食物は生き延びる為のものだ。除外する」

「じゃあ魂とか?」

「……食物は生き延びる為のものだ。除外する」

「あぁ……そういうくくりなんだ……」

34 : 以下、名... - 2015/08/19 14:42:18 KQJakzxw 20/241

「別に欲しいものが、形のあるものじゃあなくても良いんじゃないか?」

「……というと?」

「マッサージとか……そういう類かな? 固形物としては残らないけど、何かをして貰う為にお金を払う。そういうのだってあるんだよ」

「なるほど……感覚的なものか」

「まぁ……わかりずらいけど、そんな感じ」

「だとすれば……いや、やはり何もないな」

「……何か候補があったような感じだな」

「候補はあったが、考えてみれば必要のない事だった」

「……必要ない?」

「生まれてきた事を無かった事にしたいと思ったのだが、つまりそれは死と同等だ。いずれ訪れるものに金を払う必要なんてないだろう?」

35 : 以下、名... - 2015/08/19 14:43:02 KQJakzxw 21/241

「生まれてきた事を無かった事に……って、なんでわざわざそんなことを?」

「生きているというのは、とても辛いだろう?」

「死ぬのはもっと辛い」

「死ぬのは生まれたことの副産物だ。生まれなければ、死なない。つまり死が辛いと思うのは、生きているのが辛いという事だ」

「まぁ、そうだけど。……いや、そうなのか?」

「往々にしてそういうものだ」

「〈往々にして〉って、そんな使い方だっけ?」

「どうだったか、猫にはわからんな」

「悪魔だろうお前は」

「普段は猫と呼ぶくせに。では、人間である男は正しい使い方をしているのか?」

「まぁ……なんとも言えないな」

「だろう? お前が分からないなら、正しいか正しくないかの論争は無意味だ。往々にしてそういうものなのだよ」

「…………」

36 : 以下、名... - 2015/08/19 14:44:37 KQJakzxw 22/241

◆学校・教室◆

「よっ、男」

「あれ、珍しいなお前が普通の時間に来るなんて」

「流石にそろそろ、遅刻数が目立ってきてさ」

「前から十分目立ってたけどな」

「ま、そろそろ本気で気にしないと進学が危ういからよ」

「前からかなり危ういけどな」

「そう言うなって、遅刻しないよう心掛けるってのは、悪いことじゃねぇだろ?」

「普通の事だから、褒められることでもないんだよ」

37 : 以下、名... - 2015/08/19 14:45:28 KQJakzxw 23/241

「…………なぁ友」

「ん? どうした?」

「お前さ、自分がいつ死ぬか知ってる?」

「はぁ? なんだ急に。病んでんのか?」

「いや、そうじゃないんだけど……」

「いつ死ぬか……ねぇ。まぁ、いつかは死ぬけど」

「分かんないよな……」

「まぁ、フツーに七十歳くらいまでは生きんじゃないの? 大体そんなモンでしょ」

「……んー、そうかね」

「……ま、年をとらなければ、何もない限り死なねぇし。やっぱ不老不死になりてぇなぁなんて思っちゃう訳よ」

「不老不死……ねぇ」

38 : 以下、名... - 2015/08/19 14:45:59 KQJakzxw 24/241

「朝からなに辛気臭い話してんのよ」

「おー、よう」

「おはよう」

「おはよ。珍しく友が私より早く来てると思ったらなに、人生についてでも語ってんの?」

「いや、まぁそんなとこ。人はいつ死ぬかって話」

「不老不死だったら楽だなーってよ」

「小学生みたいな事を……不老不死になりたいってのも分からなくもないけどさ」

「だろ?」

「でもさ……」

「…………ん?」

「……でもさ、死なないって怖くない?」

39 : 以下、名... - 2015/08/19 14:46:30 KQJakzxw 25/241

「……あー、なんか分かるかも」

「どういうこと?」

「なんか、説明し難いけど……死ぬのも怖いし、死なないのも怖いなぁって」

「でも、どちらかと言うと、死ぬ方が怖くないか?」

「まぁね、結局は……生まれて来なければ良かった……なんておもっちゃうよね」

「……………………そうだな、誰かさんも似たような事言ってたよ」

「誰かさんって?」

「いや……まぁちょっとした知り合い」

「……ふぅん」

40 : 以下、名... - 2015/08/19 19:01:38 oPYBhnK6 26/241

(なんか、意外と皆……そんなこと思ってたりするのかな……?)

「あー、やだやだ。朝からテンションさがっちゃうよ」

「悪かったな。まぁたまにはこんな話も悪くないんじゃないか?」

「つまんないよー、私は暗い話苦手なのですー」

「自分から話に入ってきといて」

「友シャラップ。それは言わないように」

「ま、俺達は生きてるんだから、いずれは死ぬことをふまえて人生を謳歌しようじゃあないか」

「謳歌した先に死があるなんて考えたくないよー」

「やっぱ不老不死が良いんじゃん?」

「またそれー? まぁ……確かにそんな気もするかな……」

「どうしたら、不老不死になれると思う?」

「え?」

41 : 以下、名... - 2015/08/19 19:05:47 oPYBhnK6 27/241

「……なに? 男も何だかんだ不老不死になりたいの?」

「いや、そういう訳じゃあないんだけどさ。ちょっと気になるじゃん?」

「どうしたら……か。まぁ現実的には無理なんだろうけど……」

「……んー、時間を戻せる能力を得る……とか?」

「あー……」

「悪魔と契約して、不老不死にしてもらうとか!」

「悪魔って……あんた……」

「なんだよいいだろ? 今は架空の話をしてるんだからよ」

(悪魔……)

42 : 以下、名... - 2015/08/19 19:13:11 oPYBhnK6 28/241

◆男の家◆

「何言ってんだお前。不老不死なんて出来るわけないだろう」

「……あぁ……そう」

「少しは常識を考えてからものを言え」

「常識を逸脱した奴が何を……」

「不老不死になんかしたら、魂を食えないだろう?」

「あー、そういう。なんか納得」

「大体だ、寿命というのはお前ら人間が思っているよりも、随分と単純に出来ているのだ」

「…………単純?」

「寿命は一方通行なのだよ」

「……よく分かんね」

「そのうち分かるさ」

43 : 以下、名... - 2015/08/19 19:25:26 oPYBhnK6 29/241

「ところで男、早く飯を出せ」

「……だからなんで毎回偉そうなんだよ」

「おそらく偉いからだろうな」

「餌あげんのやめよっかなぁ」

「むぅ……仕方ない。ここは折れて下に出るとするか」

「あくまで本来は俺が下なんですか、そうなんですか」

「餌を寄越してくださいお願いします」

「寄越してくださいってなに、全く下に出る気ないよね」

「別に寄越すというのは上から目線の言葉でもないのだがなぁ」

「ニュアンスってのがあるだろ」

45 : 以下、名... - 2015/08/19 21:06:34 oPYBhnK6 30/241

ガチャッ(玄関)

「ただいまー」

「ん、お帰り」

「ご飯もう食べた?」

「いや、今日はまだ食べてない」

「じゃあ買ってきたから、食べようか」

「何買ってきたの?」

「焼き肉弁当と、カレー。どっち食べる?」

「人間は当然のように肉を食えて良いな」

「…………あー、カレーで」

46 : 以下、名... - 2015/08/19 21:10:04 oPYBhnK6 31/241

「ところで男、私はまだ飯にありつけてないのだが」

「…………餌あげなきゃな」

「あ、まだあげてなかったの?」

「あげようと思ってたんだけどさ、丁度母さん帰ってきて」

「あら、母さんのせい?」

「人のせいにするとは……最低だな男」

「…………はぁ」ガサガサ

47 : 以下、名... - 2015/08/19 21:18:40 oPYBhnK6 32/241

◆翌朝・家◆

「男は何座だ?」

「は?」

「このテレビでやってる星座占いとかいうものだ。自分の星座を照らし合わせて楽しむのだろう?」

「あぁ……あんまり気にしないからなぁ、占いなんて。獅子座だよ」

「ふむ、最下位か」

「うげっ、マジで?」

「ラッキーアイテムは赤い服だそうだ」

「えー……学校行くのに」

「中に着ていけば良いのではないか?」

「いいよ別に。占いなんて信じてないし」

「信じてないのか」

「信じてない人の方が多いと思うよ」

「そんなものを流してどうするんだ? 人間は金をかけて無駄な事をするのだな」

「まぁ、ちょっとしたその日の基準にはなったりするのかもな。占いを好きな人だっているんだ、意外にね」

48 : 以下、名... - 2015/08/19 21:25:34 oPYBhnK6 33/241

「人間とはやはり不思議な生き物だな」

「そう? 結構解りやすいとおもうけど」

「……解りやすいか? 人間なんかよりナマケモノの方がよっぽど解りやすいと思うぞ」

「何でナマケモノと比べるんだよ……お前ナマケモノの気持ちが分かんのかよ……」

「さぁ? どうだろうな」

「なんだそりゃ……」

「ナマケモノに会ったことがないからなんとも言えないな。だが推測でものを言うのは、人間がよくやる事だろう?」

「…………」

49 : 以下、名... - 2015/08/19 21:37:35 oPYBhnK6 34/241

◆学校・昼休み◆

「お前ってさ、占い信じる?」

「……え? 占い?」

「うん」

「んー、まぁちょっと見るくらい」

「本気で信じたりはしてないと」

「えっ、あ、うん。どうして?」

「いや、今朝の占いで俺の運勢最悪らしくてな。皆はこういうの信じんのかなぁって」

「まぁ……おまじない程度には信じる、かな……」

「おまじない? あぁ……ラッキーアイテムを持ち歩いてみたりとか?」

「うん、たまにね」

50 : 以下、名... - 2015/08/19 21:45:17 oPYBhnK6 35/241

「ふぅん……ま、そんなもんだよな」

「実は今日も持ってきてたり……」

「お、何持ってきたんだ?」

「白いハンカチ。これが今日のラッキーアイテム」

「ほー、ところで女は今日どんな運勢なんだ?」

「えっと……自信がつく一日です、って書いてあった」

「自信……ねぇ。ハンカチまで持ってきて、何か自信が無いことでもあんのか?」

「いや……何て言うかまぁ……。お、男はどんな運勢なの?」

「俺は……あまり行動的にならない方が良いでしょう、失敗の元です。だったかな」

51 : 以下、名... - 2015/08/19 21:51:05 oPYBhnK6 36/241

「よーっす、飯食おうぜ」

「よーっすじゃねぇよ。お前が買ってくるから待ってろって言うから待ってたんだろうが」

「そーだっけ? すまんすまん」

「…………」

「ん? どうした女、俯いて」

「え? あ、ごめん……ちょっと考え事してて……。さ、食べよ食べよ」

「考え事ぉ? 女の少ない頭でか?」

「あんたよりは詰まってる」

「まぁ、友よりは詰まってるだろうな。間違いなく」

「えぇー……」

56 : 以下、名... - 2015/08/20 17:10:37 TMpsF7RQ 37/241

◆放課後◆

「男ー、帰ろうぜ」

「おー……女はどうする?」

「今日は部活」

「そっか。じゃあまた明日」

「じゃなー」

「ほーい」

57 : 以下、名... - 2015/08/20 17:15:24 TMpsF7RQ 38/241

◆帰路◆

「あー、腹減った」

「昼足りなかったのか?」

「多分それ。コンビニ寄ってこーぜ」

「まぁ良いけどさ。どうせカップ麺でも買うんだろ?」

「なんだよ、旨い安い簡単、つまり最高の一品だろ」

「体に悪そう」

「女子かお前は……」

58 : 以下、名... - 2015/08/20 17:20:23 TMpsF7RQ 39/241

◆コンビニ◆

「え、そっち買うんだったらこっちの方が多くない?」

「…………」

「それ買うんならこっちの方が量同じでカロリーが低いぞ」

「…………」

「おい友、レジの近くに値引きされたカップ麺あったぞ!」

「…………」

「あ、このコンビニじゃがいも安い……買って行こうかな……」

「女子っていうか……主婦だな」

59 : 以下、名... - 2015/08/20 17:25:21 TMpsF7RQ 40/241

「結局じゃがいも買ったんだ……」ズルルル

「母さんが料理作んないから、俺がやんなきゃいけないんだよ」

「まぁ知ってるけどさ」ズルルル

「毎日コンビニ弁当なんて嫌だろう?」

「俺への当て付けか何かか」ズルルル

「早く食えよ、冷凍餃子買ったから冷凍庫に早く入れたい」

「何故買った」

「安かった、今夜の晩餐にする」

「冷凍食品もカップ麺も変わらない気がすんだけどなぁ……健康的には」

60 : 以下、名... - 2015/08/20 17:34:24 TMpsF7RQ 41/241

◆男の家・玄関◆

(さてと……早く冷凍庫に……)ガチャッ

(あれ……鍵掛かってない……。うわぁ、朝掛け忘れたのか)

「おい男」

「うわっ、何だよびっくりした……。何で玄関に……もしかして待ってたのか?」

「よく聞け、さっきこ」グイッ

??「邪魔だ猫」ブンッ

「うにゃあっ!!」ドスッ

「!?」

??「お前、この家の住人か?」

「そ……そうですけど?」

??「ドアから顔を覗かせてないで、中に入れ。騒ぐなよ」

61 : 以下、名... - 2015/08/20 17:53:56 TMpsF7RQ 42/241

(どうする……こいつ、手ぶらみたいだけど、凶器を持ってるかもしれないし、家の中にも凶器はある……)

??「おい」

(やっぱり逃げて……警察に連絡するべきか?)

??「おいっ、早くしろ!」

「はっ、はい……」

??「ったく……」

(駄目だ……どうにも勇気がない……)ガチャッ

??「さて、金目の物があるところを教えろ」

「えっと……貯金箱がリビングに……結構入ったのが……」

??「あ? なかったぞんなモン」

(こいつ……やっぱり空き巣か? どうする…………そういえば、玄関には……)

??「まあ良い、見落としてたのかもしれねぇ。案内しろ」

62 : 以下、名... - 2015/08/20 17:56:26 TMpsF7RQ 43/241

(あった、小学生の頃使ってたバット! ……今なら男が先に歩こうとして背中を向けてる…………いや、でも……)ガランッ

??「あぁ?」クルッ

(…………っ!)

??「なんだぁ、バット? てめぇ舐めた真似すんじゃねぇか」スッ

(ナイフっ……!? ヤバい!)ブンッ





「あーあ、どうすんの。死んじゃったじゃんその人」

67 : 以下、名... - 2015/08/21 20:55:45 qbUoAwBc 44/241

「さて、こうして君は立派に殺人犯となったのだが」

「いやっ……これは正当防衛だろ?」

「……君は正当防衛についてはっきり知っているのかい?」

「…………でも……」

「良くは知らないのだろう? ならばこれは正当防衛なんかじゃなくて、れっきとした殺人かもしれない」

「…………」

「試しに警察に連絡してみたらどうだ? 逮捕されるかもしれないけどね」

68 : 以下、名... - 2015/08/21 21:00:48 qbUoAwBc 45/241

「正当防衛かどうかの判断が正しく出来ないのなら、その思考ははっきり言って無意味なのだよ。往々にしてそう言うものだ」

「……じゃあ、どうすりゃ良いんだよ。通報以外の最善策なんて、俺には検討もつかねぇよ……」

「……さて、男。ひとつ忘れている事はないか?」

「…………忘れてる事?」

「そうだ。警察以外にも、お前には頼れる者が居るじゃないか」

「…………なんだよそれ……」

「勿論、目の前の悪魔だ」

69 : 以下、名... - 2015/08/21 21:05:36 qbUoAwBc 46/241

「…………どうにか、出来るのか?」

「いいや、この状況をどうにかは出来ない。だが、手助けは出来る」

「……何をするんだ?」

「ひとつ、お前に能力を与えよう」

「能力……悪魔の力ってか……?」

「そんなところだ」

「試しに聞くよ。何が出来るようになる?」

「……時間を戻せるのだ」

73 : 以下、名... - 2015/08/22 20:35:31 eQhi7khs 47/241

◆十月十一日・日曜日・男の家◆

「やぁ、気分はどうだい」

「…………最悪だよ」

「しかしなんだ、あんまり驚かないなお前は」

「……まぁ、そんなもんだろ」

「死体を見て意気消沈しているのか、それとも男が少しいかれてるのか……」

「さぁな……後者かもしんねぇな」

「猫と普通に話す時点で、なかなかどうかしてるよ」

「それは別に俺悪くないだろ……」

74 : 以下、名... - 2015/08/22 20:40:48 eQhi7khs 48/241

「この能力には、少し制約があってね」

「……制約?」

「きっかり三日……七十二時間を戻ることしか出来ない。それより早くも、遅くも出来ないんだ」

「水曜日の夕方から戻ったから、今が日曜日の夕方……なるほどな」

「まぁ、それ以外は男の判断でいつでも使えるから、大した問題じゃあ無いだろう?」

「…………」

「勿論、取引をしたからには、死んだときに魂を貰うけどね」

75 : 以下、名... - 2015/08/22 20:47:58 eQhi7khs 49/241

「別に魂を無くしたって、普通に死んだって、男の自信の感覚としては何も変わらないんだ。魂を遺して来世に行こうと、どちらにせよ今の男の感情が完全に無くなってしまう」

「そういうもんなのか?」

「そういうものなんだよ。そう考えれば今の人生で出来ることが広がるとても良い取引だろう?」

「……まぁ、そうかな…………」

「さて、時間移動をどんな事に使っても構わない。もうそれはお前の能力だ」

「……これさ、今からまた戻るってのは出来るのか?」

「ん?」

「……今からまた更に三日前に戻れるのか?」

「あぁ……それは無理だな。すまん、言い忘れていたが、一度戻ってから二十四時間は能力を使えなくなる」

「…………なるほど」

76 : 以下、名... - 2015/08/22 20:53:23 eQhi7khs 50/241

◆十月十二日・月曜日・通学路◆

(眠い……)

(無かった事になったとはいえ、俺は一回人を殺したんだ……)

(……血が付いた……、他人の血を浴びた……)

(……止めよう……朝から気分が落ちる)

「おっとこ」トントン

「うわぁっ!?」

77 : 以下、名... - 2015/08/22 20:56:41 eQhi7khs 51/241

「あれ……、女? 遅刻するはずじゃ……」

「へ? 何言ってんの?」

(そうか……必ずしも前起こった事が起こる訳でもないのか……)

「いやー、しっかし。嫌なタイミングで日直になってしまったもんだね。一日ずれればこんな朝早くに学校行かなくて済んだのに」

「あぁ……そうだな」

81 : 以下、名... - 2015/08/23 18:32:45 l9l68P/g 52/241

◆学校・教官室◆

「終わった……」

「うっそ、はや」

「お前が遅いんだよ」

「も、もう少しで終わるから待ってて」

(確か前は早く戻ろうとしたら、先生に黒板綺麗にしろって頼まれたんだよな…………まぁ、じゃあ女を待つか)

「…………男、手伝って」

(……うげ、こっちはこっちで)

先生「自分でやれ、人に頼るな」

「うー……」

(……助かった)

82 : 以下、名... - 2015/08/23 18:33:19 l9l68P/g 53/241

「終わったー」

「おつかれ、じゃあ行くか?」

「ん、そーだね」

先生「……二人とも、黒板を掃除しといてくれるか」

「えーっ……」

(結局かよ……)

先生「じゃ、頼んだぞ」

「……だってさ、行こう」

「めんどくさー」

(まぁ、前と違うのは女がいるとこかな……)

83 : 以下、名... - 2015/08/23 18:33:54 l9l68P/g 54/241

◆教室◆

ウィィィィン
「……黒板消しクリーナーうるさい…………」

「我慢しろよ……これも綺麗にしといて」

「それ今汚したやつじゃん」

「仕方ないだろ。そっちの黒板消しちょーだい」

「……はい」

「サンキュ」

「……………………ねぇ」ウィィィィン

「……ん? 」

「なんかさ……いいよね。こういう朝も」

「はぁ? どうしたお前」

「別にどうもしてない」

84 : 以下、名... - 2015/08/23 18:34:53 l9l68P/g 55/241

「たまには早起きも悪くないなって」

「お前いつもギリギリまで寝てんの?」

「うっ……まぁ…………」

「ちゃんと朝起きろよな」

「…………男はいつも家出る何分前に起きる?」

「何分前……? 二時間前に起きるけど……」

「二時間前!? …………よく起きれるね……」

(まぁ、今日は寝てないけどな……)

85 : 以下、名... - 2015/08/23 18:35:42 l9l68P/g 56/241

◆男の家◆

ボフッ
「どうしたんだい、ソファに飛び込んだりして」

「眠いんだよ……昨日寝てないって言ったろ」

「もう殺した事は無かった事になったんだ。気にしなくても良いのに」

「出来るかよそんなの……。感触ははっきり覚えてんだ。俺の記憶ではあった事なんだよ」

「ところで男、学校はどうだった」

「……あー、この前と何か違ったんだけど」

「まぁ、だろうな」

「やっぱ変わるものなのか?」

「それはそうだ。未来は不確定なものだからな」

89 : 以下、名... - 2015/08/25 20:01:12 7xWSmqyE 57/241

「……つまり、俺が何かしたから未来が変わるんじゃないのか」

「そうだ」

「何もせずとも、空き巣が来ないであの日が過ぎるってこともあるんだな?」

「まぁ、無きにしも非ずと言ったところか」

「……でもなんか、そっちの方がめんどくさそうだな」

「……タイムリープというのは、移動した者に同じ未来を与えてはくれないんだよ。未来は常に変化して行くのだ」

90 : 以下、名... - 2015/08/25 20:01:52 7xWSmqyE 58/241

ガチャッ(玄関)

「ただいまー」

「ん……お帰り」

「ご飯どうした? またコンビニ?」

「いや、適当に作ったよ」

「そう。……あら、まだ餌あげてない?」

「……あぁ、忘れてた」

「残念だったねー猫ちゃん。男が話を聞いてくれなかったのかにゃぁ?」

「はいはい、もういいよ俺がそいつと話せるってのは」

「みゃー」

「ほら、なんて言ってるか分かる?」

(この会話はそんな変化してないような……、変化しない事もあるのか)

92 : 以下、名... - 2015/08/26 20:55:45 PdAIYdjM 59/241

◆十月十三日・火曜日学校・教室◆

「よっ、男」

「普通の時間に来たな……」

「流石にそろそろ、遅刻数が目立ってきてさ」

「前から十分目立ってたけどな」

「ま、そろそろ本気で気にしないと進学が危ういからよ」

「前からかなり危ういけどな」

「そう言うなって、遅刻しないよう心掛けるってのは、悪いことじゃねぇだろ?」

「前と変わらず……」

「ん、どうした」

「いや、何でもない」

93 : 以下、名... - 2015/08/26 20:56:35 PdAIYdjM 60/241

「……なぁ」

「何だ」

「もしさ、時間を戻せるとしたらどうする?」

「はぁ? タイムマシン的な?」

「タイムマシン……どうだろ…………」

「時をかける少女みたいな」

「あー、そっちだな。そっちのが近いかも」

「そりゃあお前、女子に悪戯しまくって戻るっしょ」

「お前なぁ……」

「無かった事にできるんだし、怖いもんなしだろ」

94 : 以下、名... - 2015/08/26 20:58:10 PdAIYdjM 61/241

「嫌がる女子を押さえつけて色んな悪戯を……」

「最低ね」

「うぉっ! いつからいた!?」

「時間戻れたらなにするってとこから」

(気付いてた)

「まぁ、気にするな女。たとえ時間を戻せてもお前みたいな揉み甲斐のないむブベラッ!」ボキッ

「何か腹立つ」

「ごめん嘘! 揉みたいっす! 超揉みたいっす!」

「……もう一発いくわ」ゴスッ

「いだっ! なんでっ!?」

「朝から騒がしいなぁ……」

99 : 以下、名... - 2015/08/27 21:17:11 jXlCzFgA 62/241

「女は時間戻せるとしたらどうする?」

「どうするって……まぁ何かをやり直すかな」

「何かってなんだよ……」

「何かは何かよ」

「人に言えない失敗でもあんのか」

「べーつに」

「ま、女の方が普通だな」

「何と比べて普通なんだよ。俺か、俺と比べたのか」

100 : 以下、名... - 2015/08/27 21:19:11 jXlCzFgA 63/241

「つかさ、時間戻せたら不老不死になれんじゃね?」

「は?」

「あー、なるほどね」

(そういや前にもこんな話したな……また修正か…………)

「……でもさ、死なないって怖くない?」

(やっぱ戻った……)

「どういうこと?」

「なんか、説明し難いけど……死ぬのも怖いし、死なないのも怖いなぁって」

101 : 以下、名... - 2015/08/27 21:19:50 jXlCzFgA 64/241

◆男の家◆

「それはそうだ。変わらないものは変わらない」

「つまり、勝手に変わることもあれば、俺が何をしても変わらないってこともあるんだな?」

「そうだ、未来が自分の思い通りに行くと思うな」

「……なるほどな」

「出来るのはリセットだけだ。三日前というセーブポイントに辿り着く事しかできない」

「何でゲームで例えた。微妙に分かり辛いわ」

「現実とゲームを一緒くたにするな」

「お前だよ」

102 : 以下、名... - 2015/08/27 21:20:42 jXlCzFgA 65/241

「お前は修正なんて言ってるがな、それは修正などではなく、なるべくしてなる運命なのだ」

「つまり、絶対にそうなることってのが、あるって事だな」

「まぁ……移動した先の時間軸によって左右はされるが」

「時間軸……つまり、移動してくる前の世界とは違う軸の世界にいるってことか?」

「大体そんな感じだ。完全に切り離せる世界ではないから、一概に別世界とは言えないが」

「…………めんどくせぇ……」

「こんなことを気にしたって仕方ない。どうせお前が出来るのは、セーブポイントにもどることだけだ」

「セーブポイントねぇ。セーブしたところに戻っても、その先のストーリーが前回と変わるんじゃあ、なかなか難しいゲームだ」

106 : 以下、名... - 2015/08/28 21:50:37 P1WEsO6M 66/241

◆十月十四日・水曜日・学校◆

(……いよいよ今日、あいつが来る)

(いや……確定してはいないんだ。もしかしたら何事もなく時が過ぎるかもしれない)

「おとこ」

「…………ん、あぁごめん、なに」

「ご飯……食べないの?」

「あ……もう昼休みか」

「どうしたのボーッとして」

「……ちょっと疲れてるのかもな」

107 : 以下、名... - 2015/08/28 21:51:14 P1WEsO6M 67/241

「友ー、ご飯食べよ」

「あー悪い、俺購買で飯買ってから行くわ」

「……え、分かった……」

「どうした?」

「いや別に……。じゃあ行こ、男」

「おー」

「友来ないのかぁ……」

「…………何か問題でもあるのか」

「えっ、ごめんそんなんじゃなくて! なんも問題はないくらいで!」

「…………? まぁいいか。行こうぜ」

「……う、うん」

112 : 以下、名... - 2015/08/29 21:21:51 pKuRXHJ2 68/241

◆男の家◆

「…………残念、二回目だ」

「…………」

「学習しないねぇ君は。また撲殺か」

「…………」

「今度こそは上手くいくとでも思ったのかい?」

「…………」

「だんまりはやめておくれよ。何か言ったらどうなん――――

113 : 以下、名... - 2015/08/29 21:22:43 pKuRXHJ2 69/241

◆十月十一日・日曜日・男の家◆

「…………リセット……か」

「次こそはうまくやる……」

「できるかねぇ、君に」

「できるさ、何度でもリセットすればいい」

「…………」

「そうすれば、いずれ終わりが来る」

「……確かにいつかは終わるだろうね」

「……あぁ」

「ま、楽しみにしてるよ」

114 : 以下、名... - 2015/08/29 21:23:13 pKuRXHJ2 70/241

「……なんだろ、前よりも体が軽い…………」

「どうした?」

「もしかしたら……俺、死体に慣れたのかな」

「…………ほう」

「なんか、前は取り返しのつかないことをした……って、胸が苦しくなったんだ……」

「…………」

「でも、今はなんか、いつも通り」

「……まぁ、リセットできる安心感から、人を殺すのに慣れたんだろう。普通より早くな」

「人を殺すのに普通も何もないだろ……人殺しは普通はやらない」

118 : 以下、名... - 2015/08/31 20:36:11 5Es7cp4A 71/241

「普通とはなんだ」

「なんだって……一般的な思考のことじゃないか」

「お前の一般が、世界の一般とは限らない」

「…………はいはい、分かったよ」

「人を殺すのが悪いことだなんて、普通じゃあないと私は思う」

「じゃあなんだ、殺し合うのが普通だってのか」

「……なんて言うか、人間は面倒臭い生き物だなと」

「…………俺にはわかんねぇよ」

「人間だからな」

「俺が人間じゃなかったら、分かるってのか」

「どうだろうな」

119 : 以下、名... - 2015/08/31 20:36:50 5Es7cp4A 72/241

「私はまだ、独裁国家の方が人間らしいと思うのだ」

「やだよ俺は」

「まあ、嫌なものではあるだろうし、賛同を得てもらおうなんて考えてはいない。ただそう思うというだけだ」

「独裁国家のどこが良いんだ。普通の国は法を作り上げて、言論で解決する。最も人間らしいじゃないか」

「普通の国とはなんだ、独裁国家は普通ではないのか」

「……もういいよ」

120 : 以下、名... - 2015/08/31 20:37:33 5Es7cp4A 73/241

「お前の話はいつも良く分からない」

「世界というのはなかなかに分かり難いものだ」

「お前の話をしてんだよ」

「私の話も然り」

「…………もういい、疲れた」

「疲れは覚えるのだな、良かったじゃないか」

「……は?」

「体が軽いなんて言ってたからな、もしかしたら人を殺すのに躊躇いが無くなったのかと思った」

「……まだ、人間をやめちゃいないよ」

「……そうか、人殺しに慣れたら人間じゃなくなるのか」

「…………なんでそう捻くれた捉え方をするかな」

「なら男が人間じゃなくなる日も近いな」

「……………………」

125 : 以下、名... - 2015/09/01 21:08:42 HijWaoGs 74/241

◆十月十三日・火曜日・学校◆

「お前やつれた?」

「は?」

「いや、なんか大分疲れてる感じがするから」

「そうか……?」

「まぁ何もないなら良いんだけどよ」

(…………原因はなんとなく分かるけど……)

126 : 以下、名... - 2015/09/01 21:09:15 HijWaoGs 75/241

「やっほー」

「よう」

「……今日カラオケ行こうと思うんだけど、二人はどう?」

「誰か他に来る人は?」

「いませーん。どうせ友達少ないですよー」

「皮肉だなぁ……どうする男」

「まぁ、良いんじゃねぇの?」

「よし、決まり」

(気分転換には良いだろ。…………しかし、なかなか大きく前とズレたな……)

130 : 以下、名... - 2015/09/03 20:09:09 LmPvgk7U 76/241

◆カラオケボックス◆

「さ、歌おー」

「女からでいいよ」

「えー、ここはじゃんけんじゃない?」

「女からで」

「むー……分かったよ」ピッピッ

「……何歌うんだ?」

 ピピピピピピピピピピ

 ◇君が代◇

「なんでじゃ」

131 : 以下、名... - 2015/09/03 20:09:51 LmPvgk7U 77/241

「まぁぁぁああ、でぇぇぇ」

「盛り下がるわ」

「最高でしょ、国家」

「国家は別に良いんだけどな……」

「じゃあ次、友で」

「俺か」ピッピッ

「さぁー、人の曲を盛り下がるとか言っといて、アンタは何を……」

 ピピピピピピピピピピ

 ◇お願いだから歌わないで◇

「……………………は?」

132 : 以下、名... - 2015/09/03 20:10:22 LmPvgk7U 78/241

「はぁっ……ぐるじい……」

「なんだこれ…………」

「盛り上がったろ?」

「異常な短さと、妙な疾走感ね」

「辛いわー、このあと俺とか辛いわー」

「さぁ次は男だ!」

「ドリンクバー行ってくる」

「あ、逃げんなよ。つか、飲むの速ぇな」

「……私も行こうかな」

「飲み物めっちゃ残ってんのに?」

「あ……ほんとだ。やっぱいいや」

「……なんだそりゃ、どうかしたのか」

136 : 以下、名... - 2015/09/05 21:13:01 eqTsUHNI 79/241

「いや……べつに…………」

「…………じゃあ、行くか?」

「う、うん」

「じゃあ友、行ってくるわ」

「なんだよ俺一人残されんのかよ」

「お前も来るか?」

「……いや」

「………………」

「いいよ、どうせそんな時間掛かんないだろ」

「おー……そうだな」

「いってら」

137 : 以下、名... - 2015/09/05 21:13:39 eqTsUHNI 80/241

◆ドリンクバー◆

「何飲む?」

「えっと……アイスティーにする」

「じゃあ先どうぞ」

「……ん」ジョボボボボ

「俺はどうしようかなぁ……」

「何でも良いんじゃない?」

「んー、アイスティー美味い?」

「えっ……と、ちょっと……飲む?」

「いや、いいよ。アイスティーにするわ」ジョボボボボ

「ん、そう……」

144 : 以下、名... - 2015/09/09 19:57:43 MWNrLHms 81/241

◆男の家◆

「どうだった、気分転換は」

「…………どっかで見てたのか?」

「いいや、ずっと家に居た」

「じゃあどうして……」

「表情が柔らかくなったのと、いつもより帰りが遅かったのでな。もしやと思っただけだ」

「…………そうかい。まぁ、そこそこ気分は晴れたよ」

「明日また人を殺すかもしれんのにな」

「……うるさい」

145 : 以下、名... - 2015/09/09 19:58:30 MWNrLHms 82/241

「ところで今日は何をしてきたんだ?」

「ん? あぁ、カラオケだよ」

「カラオケ……歌ってきたのだな」

「そういう事だな」

「金を払ってまで歌うなど……理解できんな」

「またそういう……いいだろ、人間はそれで気が晴れるんだよ」

「ならば家で歌えば良いではないか」

「楽器の音楽が欲しいだろ」

「ならばインターネットとやらで見れば良い」

「…………お前、友達いないだろ」

「悪魔に友達などという概念はない」

146 : 以下、名... - 2015/09/09 19:59:06 MWNrLHms 83/241

「ではひとつ聞くが」

「いいよ聞かなくて……」

「友達とはなんだ」

「さぁな、人それぞれじゃねぇの?」

「人それぞれと言うのなら悪魔は人ではないから適応されないな」

「はいはい…………」

「第一、友達がいる方が良いとは誰が決めたのだ」

「世間じゃないか?」

「腐った世界だな」

「……悪魔は腐ってないのかよ」

「さあ、捉え方は悪魔それぞれだ」

「……………………」

150 : 以下、名... - 2015/09/12 18:34:59 038C6HN2 84/241

「人間は他者と同調していないと生きていけないのか?」

「多分そうなんだろうね。一人で居ればぼっちだって笑われてしまうのが今の世の中なんだよ」

「人間というものは恐ろしいな」

「悪魔が何言ってんだよ……」

「人間なんかよりも悪魔の方がよっぽど分かりやすい生き物だと思うのだがな」

「まあ、確かに人間ってのは良く分からない生き物だとは思うよ」

「だろう?」

「でも、それが今の人間の普通なんだよ。その内そんな思想もなくなるかもしれないけど、しばらくの間人間はこんな感じだと思う」

「…………世界というものを変えるのは容易ではないからな」

151 : 以下、名... - 2015/09/12 18:35:30 038C6HN2 85/241

◆十月十四日・水曜日・学校◆

「おはよ」

「おー、おはよ」

「眠そうだね」

(そりゃまあ、もう何度か経験してるとはいえ、人を殺すかもしれない前日に落ち着いて寝れないって)

「男……?」

「ん、ああ……ちょっとね」

「もしかしてカラオケで疲れた?」

「……ま、そんなとこ」

「そんなに歌ってなかったのにね」

「疲れたもんは疲れた」

「ふうん……」

(本当の事なんて、言えるわけないよな……)

152 : 以下、名... - 2015/09/12 18:36:07 038C6HN2 86/241

「……あのさ、おとこ」

「どうした」

「教室……誰も居ないね」

「ああ、そうだな」

「…………あ、あの」

「おはよー、お二人さん」

「……!!」ビクッ

「おー、なんだお前早いな。珍しい」

「いやー、たまにはね」

「……………………」

「で、女。何言おうとしてたんだ」

「えと……なんでもないや」

「…………………………?」

153 : 以下、名... - 2015/09/12 18:36:42 038C6HN2 87/241

◆男の家◆

「……なんにもない………………」

「良いことではないか」

「あの空き巣が来ない時間軸に辿り着いたってことか?」

「……まあ、単純に考えればそうだろうな」

「終わるときはすんなり終わるんだな」

「すんなりとはいうがな、何もないときは何もないのだ。この時間軸では当然の結果ということなのだよ」

「……そっか、終わったのか。もう安心だ」

「…………………………」

 プルルルルルルルルルルルルルル……

「……電話?」

 ガチャッ

「はい、もしもし」

157 : 以下、名... - 2015/09/13 20:44:59 lpclzafA 88/241

◆十月十一日・日曜日・男の家◆

「……どうしたんだい、また時間を戻したりなんかして」

「…………抜け出してなかった………………」

「…………何を言ってるんだい、君が時を戻してまでしたかった目的はもう達成したじゃあないか」

「違う……確かにそれは抜け出した……。でも、不幸からは抜け出してなかった…………」

「母親が死んだんだろう?」

「…………!?」

「勘違いしないでくれよ、私がやったんじゃない」

「何で知ってんだよ…………」

「悪魔だから、とでも言っておこうか」

「ふざけんなよ! お前、母さんが死ぬのも分かってたんじゃないのか……?」

158 : 以下、名... - 2015/09/13 20:46:18 lpclzafA 89/241

「…………勿論」

「てめえ…………!」

「望まれれば、予知能力を与えることだってできた。だが、お前の得た能力は、時を戻すことだ。それ以上のことをお前に教える義理も与える義理もないだろう?」

「…………悪魔が……」

「何を今さら」

「……いいよ、なんとかしてやるさ」

「…………」

「もう何が起こっても驚いたりしない……。何が起ころうと俺はやり直せるんだ……」

「どうぞご勝手に。男の持つ能力を男がどう使おうが私には関係のない事だからな。……君が抜け出せるのか、楽しみにしながら傍観しているよ」

「…………ふん、ご勝手に」

162 : 以下、名... - 2015/09/15 22:01:26 Fz5LzvEs 90/241

◆十月十二日・月曜日・学校◆

(何故母さんは死んだのか……。咄嗟に時間を戻してしまったが、聞いておくべきだったな)

「男? 平気?」

「え……? 何が」

「手止めて凄い苦しそうな顔してるけど……」

「…………そんなに酷い顔してた?」

先生「…………確かに顔色が悪いな。どうする、休んでもいいぞ。残りの処理は女にやらせる」

「えっ」

先生「冗談だ……が、男。本当に大丈夫か?」

「だ、大丈夫です……」

先生「……そうか」

(……少し疲れてんのかな)

163 : 以下、名... - 2015/09/15 22:02:01 Fz5LzvEs 91/241

◆教室◆

「黒板消すなんて普通昨日の日直の仕事じゃないかなー」

「文句言っても終わんないぞ。ほれ、こっちも宜しく」

「まあ、それもそうなんだけどさあ」

「諦めてやるしかないって」

「ま、たまには良いかな……」

(だから……良いって何なんだよ)

164 : 以下、名... - 2015/09/15 22:02:37 Fz5LzvEs 92/241

◆男の家◆

「やあ、お帰り」

「…………」

「おや無視かい。どうせ私は君が死ぬまで君の下に居るんだ」

「……なんだよ、ただいまって言って欲しいのか」

「いいや、ただ無視が気に食わなかっただけだ」

「そうかい」

「これからどうするんだい、君は何が起こるのか知らないんだから、圧倒的に不利だよ」

「わかってるよ、そんなの。それでもやるんだ」

「…………わからないね」

「何が分からないのかが分からないが……お前なんかにわかって欲しくもないな」

165 : 以下、名... - 2015/09/15 22:03:15 Fz5LzvEs 93/241

◆???◆

「なんだい、君は随分近くにいたんだね」

「この辺りの人間に憑いたんだ」

「与えた能力は?」

「…………他の悪魔が人間に与えた能力を聞くのはタブーだろ」

「そうだったかな」

「ま、ひとつ言えるのは、僕が能力を与えた人間は実に人間らしい能力の使い方をしてると思うよ」

「人間らしい……ねえ。はて、人間の定義とは一体なんなのか」

「またすぐそういう事を言う……。君は否定からしか話に入れないのかい」

「そういうつもりはないんだがな。どうにもこういう性格でな。今に始まったことではないだろう?」

「まあな……」

169 : 以下、名... - 2015/09/17 21:51:18 vU9AqgvE 94/241

◆十月十三日・火曜日・学校◆

「な……なんて?」

後輩「ですから……あの、好きなんです。男先輩の事が!」

「えと……いつから……?」

後輩「中学の頃からです!」

(……まあ、確かに仲の良い後輩だったけど。まさか告白してくるとは……)

後輩「…………せ、先輩?」

(でも、多分これはそういう時間軸なんだろうな……)

170 : 以下、名... - 2015/09/17 21:52:05 vU9AqgvE 95/241

(この時間軸を無事に生きれたら、後輩といるのも悪くないかもしれないな)

後輩「付き合え……ませんか?」

「いいよ。俺も後輩のことは好きだ」

後輩「…………!」

「俺なんかで良いのか?」

後輩「も、勿論です! 大好きです!」

(…………やっぱコイツ、そこそこ可愛いな)

後輩「じゃあ、また放課後会いましょう! メールしますので!」

「ほいよ。了解」

後輩「では!」ニコッ

 タタタタタタ

(今回はまた妙な時間軸に来たな……。高校入ってから後輩とはたまに喋るくらいだったから、まさかこんなことになるとは)

176 : 以下、名... - 2015/09/18 21:53:05 o2aHWMoM 96/241

◆教室 ◆

「よう、どこ行ってたんだ」

「ごめんごめん、ちょっと野暮用が」

「まぁいいけどさ、ご飯早く食べよ」

「待っててくれたのか?」

「コイツが男と食べるってうるさくて」

「い、言ってないよ!」

「はは、悪かったよ女。さぁ、食べよう」

「…………うん」

177 : 以下、名... - 2015/09/18 21:55:10 o2aHWMoM 97/241

「でさ、やっぱ気になるんだけど、男はさっき何してたの」

「なんだよ、さっきは流したのに」

「男がどっか行くなんて珍しいしな」

(まぁ……言ってもいいか、こいつらなら)

「野暮用だって濁した所も怪しいよねぇ」

「まぁ、何て言うか、後輩に告られた」

178 : 以下、名... - 2015/09/18 21:55:43 o2aHWMoM 98/241

「……は?」

「えっ……後輩って、男と同じ中学校だった子でしょ?」

「それで? お前はどうしたんだ?」

「…………オーケーした」

「………………………………」

「あー……、ちょいと飲み物買ってくる」

「俺も行くよ、女は?」

「えと……いいや、ここにいる」

「そうか、じゃあ行ってくる」

「……………………うん」

182 : 以下、名... - 2015/09/20 21:01:33 7IvScKUY 99/241

◆自動販売機◆

「さて、何飲もうかなぁー」

「……あのさ、男」

「なに?」

「………………」

「……なんだよ…………」

「……いや、なんでもない。さて何飲もうかな」

「…………いいよ、言って」

「は?」

「言いたいことがあるんだろ? 言えよ」

183 : 以下、名... - 2015/09/20 21:02:04 7IvScKUY 100/241

「……いいや、本当にどうでもいいことなんだ」

「女の事じゃないのか?」

「…………!?」

「図星かよ」

「い、いや…………」

「いいよ、知ってたから」

「…………お前……女がお前の事好きだって知ってたのか?」

「まあ、何となくな。俺は人に好かれるなんて自惚れちゃいないけど、そんな気はしてた。…………ついさっきまでは俺の自意識過剰なんじゃないかって思ってたけど、お前にかまをかけてやっと確証を得たよ」

「…………言わなきゃ良かった……」

184 : 以下、名... - 2015/09/20 21:02:45 7IvScKUY 101/241

「で、なんだ。女の事を思いやって後輩と別れろってか」

「……いや、流石に俺もそこまで言わないけどさ」

「じゃあ、何を言おうとしてたんだ」



「………………お前さ、女の事好きだったろ」



「………………」

185 : 以下、名... - 2015/09/20 21:04:33 7IvScKUY 102/241

「…………なんで」

「見てて何となくさ」

「……気のせいじゃあないか」

「何で後輩で妥協なんてしたんだ」

「妥協って……ふざけんなよ、俺はそんなつもり微塵もねぇ」

「…………そうか」

「俺は別に女が好きだった訳でもないし、今は後輩が好きだ。女とは今まで通り接するよ」

「………………あんまり待たせると悪い。早く飲み物買って帰ろう」

「……………………」

186 : 以下、名... - 2015/09/20 21:05:25 7IvScKUY 103/241

◆放課後◆

後輩「あっ、先輩っ。こっちです」

「よー、ごめん待たせちゃったな。ホームルーム伸びてさ」

後輩「いえ、先輩の悔やむ事ではないです」

「…………んー」

後輩「ど……どうしました?」

「…………敬語やめない?」

後輩「えっ、あ、まぁ。確かによそよそしいですけど……」

「じゃあ、先輩ってのもなしで。敬語も禁止」

187 : 以下、名... - 2015/09/20 21:06:35 7IvScKUY 104/241

後輩「えー……、できるかなぁ」

「まぁ、慣れるさ」

後輩「敬語に萌えを見出だしませんか……?」

「まぁ、中にはそういう人もいるだろうけど。生憎様、俺はそんな趣味はないんだよ」

後輩「では、あえて私が先輩をお兄ちゃんと呼んでみるのはどうでしょう」

「…………それさ、敬語禁止よりハードル高くね?」

後輩「……おにいちゃん?」

「可愛いけどさ……やっぱ普通にしてくれよ」

後輩「可愛い……」

188 : 以下、名... - 2015/09/20 21:07:10 7IvScKUY 105/241

後輩「じゃあ、どうしましょう……男君とでも呼びましょうか」

「そうだな。それと敬語なし」

後輩「…………えと、男君?」

「……おう」

後輩「このまま直接帰る? それとも男君はどこか行きたいとこあるのかな?」

「…………そ、そうだな……」

後輩「………………やっぱ恥ずかしいです……」

「……俺もなんか照れる」

192 : 以下、名... - 2015/09/22 17:49:29 WuUWv6T. 106/241

後輩「やっぱりもうしばらく敬語にしておきましょう。とりあえず、男君と呼ぶ程度で……」

「そうだな……。じゃあどこ行こうか」

後輩「あ、乗り気ですね。どこ行きましょう」

「そんなに時間あるわけでもないし……」

後輩「そうですねぇ……。映画なんてどうでしょうか」

「……そういうのって日曜日に待ち合わせて行くようなものじゃあ……」

後輩「そうですか? 私はよく放課後に友達と行きますが」

「んー……まぁいいか、平日なら混まないだろうし。何か見たいのでもあるの?」

後輩「少し気になってるものがありまして……」

193 : 以下、名... - 2015/09/22 17:50:04 WuUWv6T. 107/241

◆映画館◆

後輩「いやー、面白かったです」

「…………こういう恋愛ものは男にはキツい……」

後輩「最近は結構男性にも寛大なものが多いと思いますよ。この映画も良かったじゃないですか」

「まぁ、面白かったかな」

後輩「予想ど真ん中のハッピーエンドでしたね。意外な展開もいいですけど、こういうのもなかなかです」

「ハッピーエンド……ねぇ」

後輩「もしかして……男君はハッピーエンドとか苦手な感じですか」

「いや、ハッピーエンドは好きなんだけどさ…………」

194 : 以下、名... - 2015/09/22 17:50:42 WuUWv6T. 108/241

「もし、もしもだよ」

後輩「はい」

「…………俺と後輩が結婚したら、それはハッピーエンドなのかな」

後輩「…………はい?」

「い、いや悪い! なんでもないんだ……」

後輩「……………………」

「ごめん…………」

後輩「……プロポーズ……ですか?」

「………………」

後輩「……気が早いですよ…………大好きです」

195 : 以下、名... - 2015/09/22 17:51:17 WuUWv6T. 109/241

後輩「私と男君が結婚したら、それは間違いなくハッピーエンドです」

「…………ごめん……すげぇ恥ずかしい……」

後輩「むぅ……自分から言っといて」

「悪かったよ」

後輩「男君が良かったら、しましょうね…………」

「…………あぁ……しよう。ずっと居てくれ」

後輩「…………嬉しいです……」

「俺も……ずっといるよ……この世界に」

後輩「…………?」

「後輩が告白してくれて良かった。すげぇ嬉しかったよ……」

後輩「…………私も受け入れて貰えて良かったです」

196 : 以下、名... - 2015/09/22 17:52:07 WuUWv6T. 110/241

◆男の家◆

(後輩が告白してくれて良かった……。ようやく決心がついたよ)

「おや、今日は随分と明るい顔をしているね」

「まぁね、良いことがあってさ」

「ほう、気になるねぇ」

(…………もう俺は逃げない。守るものができたんだ……)

「ま、知ってるけどね。君は彼女の告白を受け入れた訳だが…………」

「終わらせてやるよ」

「ん?」

「何があっても、俺はこの世界、この時間軸を捨てたりしない……。絶対にこの世界で終わらせてやる……!」

「…………………へぇ」

197 : 以下、名... - 2015/09/22 17:52:49 WuUWv6T. 111/241

◆十月十四日・水曜日・学校◆

(そういえば……前の時間軸だと、女とラッキーアイテムの話をしてたんだっけ…………)

後輩「どうしました?」

「あぁいや…………今朝の占いを思い出してさ」

後輩「占い……? もしかして、男君も信じてるんですか?」

「男君も……って?」

後輩「私、結構占い好きなんですよ」

「へぇ、因みに今日の運勢は?」

後輩「人間関係に変化があるかも、だそうです。当たってますよ!」

「おー、昨日だったらドンピシャなのにな」

後輩「それを言ったらおしまいですよ」

198 : 以下、名... - 2015/09/22 17:53:42 WuUWv6T. 112/241

「そういや……俺は最下位だったな……」

後輩「何の占いを見たんですか?」

(なんだっけな……最初の時間軸で見ただけだから…………)

後輩「私は朝の8チャンネルのやつです」

「あっ、そうだ。俺もそれだ!」

後輩「奇遇ですね。最下位って……男君は何座なんですか」

「獅子座だよ」

後輩「えっ……?」

「確かラッキーアイテムは赤い服……だったかな」

後輩「男君……あの…………」

「ん?」

後輩「…………私も獅子座です」

199 : 以下、名... - 2015/09/22 17:54:23 WuUWv6T. 113/241

(あぁ……そうか。この時間軸の占いは結果が違ったのか…………)

後輩「違う番組だったんじゃないですか?」

(いや……あれは間違いなく8チャンだった……。これはズレだ……)

後輩「しかし、番組によって占いの結果が違うと、とても困惑しますよね」

「そうだなぁ……ひとつに統一してくれたら見る方も楽なのにな」

後輩「それより、なんですか。男君も獅子座だったんですか。中学の時誕生日とか聞きそびれたから……」

「ん……あぁ、八月十八日生まれの獅子座。これこそ奇遇だな」

後輩「私は八月二十日ですです。近いじゃないですか! いやぁ、誕生日ケーキは一つで済みますね」

「一緒に住んだときの話をしてないかい?」

後輩「なんですか。昨日の話からしておかしな事ではないでしょう」

「…………まぁ、そう言われればそうかもしれんが……」

203 : 以下、名... - 2015/09/24 20:10:19 MX7N.yYQ 114/241

「教室に居ないと思ったら…………」

「友……」

「後輩ちゃんと飯食うのは良いけど、俺とか女に一言声を掛けてくれよ」

「悪かったよ……。わざわざ探したのか?」

「いや……たまたま通りかかってさ。まあ、それだけだから。じゃあ俺は教室に戻るよ」

「……ん」

「悪かったね後輩ちゃん。邪魔しちゃって」

後輩「い、いえ。お久し振りです」

204 : 以下、名... - 2015/09/24 20:11:06 MX7N.yYQ 115/241

「しかし……男よ」

「……なんだ」

「俺はお前が羨ましいよ」

「…………は?」

「ああ、やっぱ後輩ちゃんは可愛いなあ……」

後輩「……っ!?」カアアア

「お前、中学の時もそれ言ってたな」

後輩「……えぇっ!?」

「ほんとなんて言うか……、抱き締めたくなる可愛さっての?」

後輩「……えぇっっ!? 私初耳なんですけど……!」

「まぁ、好きな人にそんなこと平気で言えないって。恋人になったならまだしもさ」

後輩「す、好きって……」

205 : 以下、名... - 2015/09/24 20:11:39 MX7N.yYQ 116/241

「でも男のせいで失恋しちゃったなぁ」

「俺のせいかよ」

後輩「わ、私は! 男君が……好きなので……」

「………………」

「……ほほう」ニヤリ

「なんだよ!」

「いやぁ、別にぃ? じゃあ、今度こそ戻りますかね。じゃあなー」

「じゃあな………………」



「……本当に、羨ましいよ」ボソッ

212 : 以下、名... - 2015/09/27 21:05:13 5OzVANuk 117/241

後輩「私がここでご飯を食べましょうと誘ったのには理由がありまして」

「……ん? ああ、そういやなんで階段の踊り場なんだろとは思ったよ。しかも教室棟から遠いし」

後輩「何でだと思います?」

「なんだろ……椅子があるから?」

後輩「この学校は他の踊り場にも椅子はあります」

「……まあ、分かってるけどさ」

後輩「じゃあ、ヒントです。先程男君が言った通り、ここは教室棟から遠いです。それも一番端っこの一番上の踊り場です。あんまり使われない教室が集まってます」

「ああ、なるほど。何となく分かったよ」

後輩「……では答えをどうぞ」

213 : 以下、名... - 2015/09/27 21:06:11 5OzVANuk 118/241

「人があんま来ないから」

後輩「正解です!」

「…………で、それがどうしたんだよ」

後輩「うー……、人目を気にせず男君とゆっくりしたかったんですよ」

「……ん、まあ、それは俺もだよ……。ありがとな」

後輩「どういたしまして」

「しかし、そう考えるとこういうとこって普通先客がいそうなもんだけどな。……それこそカップルとか」

後輩「最近はオープンなカップルが多いですからねー」

「あー……わざわざこんなとこまで来るなら、教室で食う奴がほとんどか」

214 : 以下、名... - 2015/09/27 21:06:49 5OzVANuk 119/241

後輩「……そうですね。まあ、ここ以外の良さそうな場所は先客がいますし、思いっきり公開してる人ばっかではないみたいですけど」

「わざわざ下調べしたのか……?」

後輩「ええ、まあ。昨日のお昼休み、男君に告白した後に。……楽しみだったんですよ?」

「ん……そう」

後輩「あれ、照れました?」

「いやっ……うるさい……!」

後輩「…………いつまでもそんな男君でいてくださいね……?」

「……どういうことだよ」

後輩「いつまでも私を好きでいてくださいってことですよ。…………そのうち私を見てくれなくなるんじゃないかなって、心配なんです……」

215 : 以下、名... - 2015/09/27 21:07:24 5OzVANuk 120/241

「…………大丈夫だよ。未来の事は分からないけどさ、ずっと好きでいて、大人になったらまた、同じように好きって言うよ」

後輩「……約束ですよ?」

「ああ、約束する」

後輩「ふふっ、良かったです。まあ、昨日付き合い始めたばっかなので、なんとでも言えますよね」

「……なんとでもって……酷いなあ……」

後輩「信じてますよ、男君」

(……昨日付き合い始めたばっか……か。確かにそうだ。後輩は本当に俺が好きなんだろうか……。普通付き合ってすぐにここまでの話をするものなのだろうか)

後輩「……なんか、恥ずかしいですね」

(……まあ、俺も臭い台詞言っちゃったし、おあいこか)

216 : 以下、名... - 2015/09/27 21:08:12 5OzVANuk 121/241

後輩「って、こんな話をするためにクイズを出したんじゃないんです!」

「クイズ……? ああ、何でここで飯を食うことにしたかって奴か」

後輩「そうです。それで、ここが人があんまり来ないからっていいましたよね」

「ああ、そうだな」



後輩「…………普通、こんな所たまたま通りますかね」

221 : 以下、名... - 2015/09/28 21:14:16 EHs8QkKI 122/241

「……たまたまって……友の事か?」

後輩「ええ、他に誰がいるんですか」

「確かにそうだな……友は上から降りてきた……」

後輩「……」

「五階に用があったんだななんて思ったけど、こんなとこ、よっぽどのことがなきゃ…………」

後輩「……ですよね。まあ、本当に友さんが五階に用があったのかもしれませんが」

(いや……友は毎回水曜日は購買にパンを買いに行くはず…………)

後輩「どうしました? そんなに真剣に考えなくても後で友さんに聞けば良いじゃないですか」

「……それもそうだな」

後輩「さ、そろそろ戻りましょう。授業に遅れちゃいます」

(…………この時間軸では、友は購買に行かないってことか………? まあ、そう考えれば何となく納得できるが……)

222 : 以下、名... - 2015/09/28 21:15:00 EHs8QkKI 123/241

◆教室◆

キーンコーンカーンコーン

「ギリギリだな」

「あんまり時間なかったのに、急激な尿意に襲われてな……」

「後輩ちゃんと何してきたんだい?」

「いや……飯食ってたんだけど」

「服、乱れてますよ」

「誤解招きそうなこと言わないで」

「あらやだ……こんな昼間から」

「しばくぞ」

先生「友、うるさいぞ」

「俺だけっすか!?」

223 : 以下、名... - 2015/09/28 21:15:48 EHs8QkKI 124/241

「私後輩ちゃん見たことないんだよね」

「あれ、そうだっけ」

「どんな子?」

「どんな子……ねえ」

「女より胸がある」

「……ほう、そんなに殴られたいのか友よ」

「いえ、ほんとその壁も風情があってとても良いと……」

「壁ってなんだ!」ゴスッ

「ごめんなさいっ!」

先生「友うるせえ!」

「だからなんで俺だけ……!」

224 : 以下、名... - 2015/09/28 21:16:32 EHs8QkKI 125/241

「そう言えばさ、友」

「ん? なに」

「お前、昼休みあんな所で何してたんだ?」

「え……? いや、たまたま」

「たまたま通らないだろあんな所」

「……なんつーの、遠回りでもしようかなって思ってさ」

「ふうん……」

「ま、そういう日もあるだろ……?」

(…………そう言われるともう何とも返せないなぁ……)

「……悪いか俺が歩き回ってたら」

「いいや、そういう訳じゃないんだが…………」

228 : 以下、名... - 2015/09/30 21:34:21 4dwG3XwU 126/241

◆放課後・校門◆

(友は何かを隠してるのか……? それに……後輩も何か変だ……。付き合い始めたばっかで、未来が心配とか言うもんなのか……? 後輩が俺を好きでなくなる事は絶対に無いような物言いだったような気もするし……。少し考えすぎなのかな……、色々あってやつれてんのか)

「ああもう、うるさい思考だね」

「!?」

「……なんだい、君、僕の声が聞こえるんだ」

「……悪魔…………? 俺にとり憑いたのか……?」

「別にとり憑いてなんかないさ。君に既に悪魔が憑いているから僕の声が聞こえるってだけ。そんな事より、さっきから聞いてりゃ、随分悩み事があるみたいだね」

「聞いてた……?」

「心を読んでたのさ。大体想像はつくだろう?」

229 : 以下、名... - 2015/09/30 21:35:14 4dwG3XwU 127/241

「しかし、中々面白いじゃあないか」

「面白い?」

「いいや、こっちの話だ」

「まあ、なんでもいいけど……後輩来たからもう喋んなよ」

「……ほう、あれが後輩か」

後輩「お待たせしました!」

「おー、そんなに待ってないけど」

「…………」

後輩「ん……かわいい鳥」

(悪魔なんだよなあ……)

後輩「あんまり見ない鳥ですね。なんて種類なんでしょう」

「……さあな」

230 : 以下、名... - 2015/09/30 21:35:55 4dwG3XwU 128/241

後輩「それにしても、人間慣れしてるのか全然逃げませんね」

(悪魔だからなあ……)

後輩「あっ、すいません。行きましょうか」

「そうだね。そのまま直行で帰る? それともどっか行く?」

後輩「出掛けましょう!」

「即答……。よし、じゃあ行くか」

後輩「はい!」

231 : 以下、名... - 2015/09/30 21:36:28 4dwG3XwU 129/241

「……お前はさっき、この女の言動を怪しんでたようだが……」

(…………?)

「……安心しろ、この女はお前を心から愛している」

(…………嘘じゃないよな)

「勿論だ、悪魔は嘘をつかない」

後輩「どうしました?」

「ああごめん、行こうか」

後輩「何をボーッとしてたんですか? まあ、男君の事だから大した事でもないでしょうけど」

「ひっで」

後輩「ふふっ、冗談ですよ」

(…………嘘をつかない、か。そう言えば、猫も何だかんだ嘘はついてないような気もするな……)

235 : 以下、名... - 2015/10/02 21:21:48 9bpmmeX. 130/241

◆喫茶店◆

(後輩がもし俺のことを本当は好きじゃなかったとしたら……何で俺に告白をしたんだ…………?)

後輩「……暗い顔して、どうしました?」

「あ、いや。別になにも。それより、何頼む?」

後輩「そうですね……」

「遠慮せず頼みたいの頼んでいいぞ」

後輩「…………奢りですか」

「……そのつもりだけど?」

後輩「……悪いですなんか。自分で払いますよ。私はバイトしてますけど、男君はしてないじゃないですか」

「まあ……そうだけどさ」

後輩「気持ちだけで十分です」

236 : 以下、名... - 2015/10/02 21:22:23 9bpmmeX. 131/241

「悪いな……何か気を使わせちゃって。……バイト探そうかな…………」

後輩「男君はバイトしたことないんですか?」

「夏は去年も今年もプール監視員の短期バイトをしてたよ」

後輩「まあ、男君はあんまり浪費しなさそうですもんね……」

「確かに、今年のバイトで稼いだ金もまだ全然使ってない……。でもこれからは後輩と色んな所行ったりしたいしなあ……」

後輩「……なんか照れますね……。友さん達とはどこか遊びに行ったりしてなかったんですか?」

「大抵俺か友の家でゲーム」

後輩「…………なるほど。しかし私のせいでお金を使わせてしまうというのは心苦しいですね……」

「あっ、いや、別に悪い意味で言ったんじゃないんだ。むしろそういうことがないとお金使わないし」

237 : 以下、名... - 2015/10/02 21:22:59 9bpmmeX. 132/241

後輩「…………んー、バイト紹介しましょうか?」

「え? なんか良いバイトでもあるの?」

後輩「ええ。とっても良いバイトですよ」

「……どういう所が良いんだい」

後輩「なんと、私が居ます!」

「……………………」

後輩「なんですかその感じ! 私がいたら嫌ですかそうですか!」

「いや違うけど、なんか予想通りだったから」

後輩「…………で、どうします? 店の方に聞いてみますけど」

「ああ、頼むよ」

238 : 以下、名... - 2015/10/02 21:23:32 9bpmmeX. 133/241

◆男の家◆

「悪魔は取引や契約といった公平である事を重視する生き物でな。嘘を吐くことは禁止されているんだ」

「……なんだろ、お前が言っても説得力無いな」

「聞いといてそれはないだろう」

「まあ、確かにお前が嘘ついたことはない……ような気がする」

「気がするとは曖昧な。私は嘘をつかない」

「嘘つかなくても、他でなんかねえ」

「しかし、鳥がお前と接触するとは……」

「知り合いなのか?」

「まあ、知り合いでないことはないな」

「………………」

242 : 以下、名... - 2015/10/04 20:44:24 BiZySFRo 134/241

「……おかしい」

「何がだ」

「何も起こらない」

「……この時間軸はそういう時間軸なんじゃないのか?」

「……母さんが死んだって電話が来た時間も過ぎてるし……。なあ猫、この後何か別の事でも起きんのか?」

「さあな。教える義理はない」

「…………もしかして、後輩と付き合うってのが抜け出すのに必要だったのか……? 後輩が告白してくる時間軸だったから何も起こらなかった……?」

「まあ、そういう可能性もあるだろうな」

(でも……まだ何か起きるかもしれない……。前だって何も起きないって油断した途端に母さんが死んだんだ…………)

243 : 以下、名... - 2015/10/04 20:44:55 BiZySFRo 135/241

◆十月十五日・木曜日◆

「じゃあ、行ってきます」

「……行ってらっしゃい」

 ガチャッ

「……………………」

「どうだい、気分は」

「……悪くはないけど、怖いな……」

「喜ばないのかい」

「まだ不安だ……。夜も全然寝れなかった…………」

「……ふうん」

「じゃあ、俺も学校行くよ」

「おや、もう行くのかい。大分早いじゃないか」

「…………何か落ち着かなくてさ」

244 : 以下、名... - 2015/10/04 20:45:41 BiZySFRo 136/241

「戦明け、人生初の木曜日の朝を優雅に過ごしたりしないのかい?」

「…………何だよその例えかた……。まるでもう全てが終わったかのような」

「……お前は水曜日を切り抜けたかったんじゃないのか? 大勝利じゃないか」

「…………お前さ……」

「なんだ?」

「全部知ってんだろ? なあ、俺にはもう何も起こらないのか? もうほんとに落ち着いて良いのかよ!?」

「………………」

「……だんまりかよ」

「………………答える義理はない」

「…………そうかい。……じゃあ、もう行くわ……」

245 : 以下、名... - 2015/10/04 20:46:46 BiZySFRo 137/241

◆学校・教室◆

(誰もいない……)

(まあ、こんな早くに来たら当たり前か……)

(…………木曜日か……)

(ここにくるまでに何日掛かった……?)

(何日も何日もやり直して……ここまで来て……)

(なのに……何だよあの猫の態度は……)

(まるで、まだ何かあるようじゃないか……!)

246 : 以下、名... - 2015/10/04 20:47:25 BiZySFRo 138/241

(…………そう言えば……明日休みか……)

(三年が月曜日に校外授業に行ったから、体育の日の休みを金曜に回したんだっけ……)

(…………たった三連休……か)

(こんなに色々あって、もらえる休みはたったの三日かよ……)

(でも、今まではこんな風に休みの日の事を考えるなんて、出来なかったもんな)

(後輩と、どっか遊びにでも行くか……)

先生「何だお前、早いな」

247 : 以下、名... - 2015/10/04 20:48:09 BiZySFRo 139/241

「……! まあ、ちょっと」

先生「あ、そうだ。あとでもう一度ホームルームの時に言うつもりなんだが……」

(…………なんだ? 何でわざわざ今俺に……)

先生「……お前、仲良かったからさ」

(何だよ……! 止めろよ……なんの話だよ……!)

先生「……受け容れ難いかもしれないが……落ち着いて聞いてくれ」

(止めてくれよ……、もう、終わりにしてくれよ…………!)



先生「昨晩、女が亡くなったそうだ」

248 : 以下、名... - 2015/10/04 20:48:45 BiZySFRo 140/241






「……………………戻れ」

249 : 以下、名... - 2015/10/04 20:49:17 BiZySFRo 141/241

◆十月十二日・通学路◆

「いやー、しっかし。嫌なタイミングで日直になってしまったもんだね。一日ずれればこんな朝早くに学校行かなくて済んだのに」

「…………女……!」

「………………え?」

「生きてる……んだよな?」

「はあ? ……って、何で泣いてんの!?」

「…………ごめん……やっぱ俺……、女の事が好きだ……!」

「え……ちょっと、男!?」

「……やっぱ俺、駄目みたいだ……。……女と居たい……」

「ど、どうしたの!? 何かあったの!?」

「…………ずっと、一緒に居てくれ……!」

250 : 以下、名... - 2015/10/04 20:49:57 BiZySFRo 142/241


「え……っと、よろしくお願いします?」



◆???◆

「後輩を捨てた……か」

「お似合いだったのにねえ」

「……男はちゃんと後輩の事を好きだったみたいだよ……。女の次にね」

「僕は後輩ちゃんと上手くいくように後押ししたんだけどなあ」

「……あんまり干渉すんなよ」

254 : 以下、名... - 2015/10/06 21:11:02 pIIoculs 143/241

◆教官室◆

先生「おっ、来たか。……って、何か目赤くないか男」

「秋の花粉にやられまして」

「男って確か花粉アレルギーないでしょ」

「あれだよ、今年からなった」

「正直に言えばいいのになー」

「なんのことやら」

先生「……よく分からんが、作業始めるぞ。男も涙を拭け」

「いやっ……泣いてないですよ!」

255 : 以下、名... - 2015/10/06 21:11:45 pIIoculs 144/241

先生「さて、始めるぞー」

「…………いつも通り……」

先生「ん?」

「ああいえ……何でもないです」

「めんどくさいなー」

先生「文句言わずに手を動かせ」

「はーい……」

(月曜日……もうここには来ないって決めたのに……。例え母さんが死んでも……何が起きても後輩との時間軸を守るって決めたのに……駄目だな俺は……)

256 : 以下、名... - 2015/10/06 21:12:21 pIIoculs 145/241

「終わったー……」

「はやっ、ちょっと待ってて」

「おー、手伝おうか?」

「え……じゃあ、お願い……」

(肉親が死ぬ覚悟はできでたのに、女が死ぬのは駄目とか……。どうかしてるな俺……。もしかしたら、母さんが死んだらそれはそれで時間を戻してたかもな…………)

「……どうしたの? そんな暗い顔して……」

「……暗い?」

「うん。……告白してきた人とは思えない顔」

(そっか、俺告白したのか……。まあ、そうだよな……ずっと一緒に居てくれなんて、もはやプロポーズ……)


―――― 《もし、もしもだよ》

257 : 以下、名... - 2015/10/06 21:13:30 pIIoculs 146/241

後輩《はい》

《…………俺と後輩が結婚したら、それはハッピーエンドなのかな》

後輩《…………はい?》

《い、いや悪い! なんでもないんだ……》

後輩《……………………》

《ごめん…………》

後輩《……プロポーズ……ですか?》

《………………》

後輩《……気が早いですよ…………大好きです》


―――― 「…………っ!」

「男…………?」

258 : 以下、名... - 2015/10/06 21:14:10 pIIoculs 147/241

「な……何でまた泣いてんの……?」

先生「どうした男……何かあったのか?」

「いや……何でもないんだ……何でもないんです…………」

先生「悩みがあるなら相談してくれても良いんだぞ……?」

「……大丈夫です。もう、済んだことなので……」

「ほ……ほんとに大丈」

「女!」

「はっ、はい!?」

「…………大好きだ……これからも宜しく……」

「えっ、ちょっと……」

先生「…………女……答えてやれ」

「……わ、私も大好きです…………」

「うっ……ありがどう…………女……」

259 : 以下、名... - 2015/10/06 21:14:50 pIIoculs 148/241

◆昼休み◆

「もう本当びっくりしたよ……。いきなり泣くわ先生の前でまた告白してくるわ…………」

「先生はなんて……?」

「なんかしみじみとしてたよ……はあ…………」

「ごめん…………」

「別に良いけどさ……。それよりもほんとどうしたの男? 朝から二回も泣いて」

「ん…………、ちょっと、辛いことがあってさ……」

「まさかその慰めのために私に告白したとか……」

「ち……違うよ。むしろ女が好きだから泣いたと言うかなんと言うか……」

「…………え? 私が何だから?」

「……うるさい! あーもう、良いだろなんでも!」

260 : 以下、名... - 2015/10/06 21:15:41 pIIoculs 149/241

「しかし……二人がカップルかー」

「何だよ……」

「……俺、邪魔かなーなんて」

「にやにやしながら言うな…………」

「まあ、前からお似合いとは思ってたよ」

「な……っ! からかうな!」

「男は上手く隠してたけど、女は男大好きアピール強かったからなあ」

「別にしてない!」

「男は気付いてただろ、女のアピール」

「え、うそ……」

「まあ……うっすらとは……」

「……なんか……もう、恥ずかしいけど嬉しいような…………」

264 : 以下、名... - 2015/10/07 21:29:18 k8M/VXHE 150/241

◆放課後・教室◆

「どこいってたの?」

「トイレ。てか、友こそどこだよ」

「なんか速攻で帰ってった……」

「…………あいつは……」

「どうする? 帰る?」

「……んー、どっか寄り道してくか?」

「そーだねー……ゲーセン行く?」

「ゲーセン……いつもと変わんねーな…………」

「あっ、そうだよね……なんだろ……どうしよ……」

「いや……ゲーセンで良いよ。女と今更改まってどっか行くとかなんかなあ……」

「……むー……じゃあ、デートはまた今度……かな」

265 : 以下、名... - 2015/10/07 21:29:55 k8M/VXHE 151/241

「じゃ、行きますか」

後輩「先輩……」

「……!?」

「……あれ、男呼ばれてない?」

「あ……ああ。そうだな……」

後輩「あのー、男先輩……」

「……よ、よう後輩。久し振りだな……」

後輩「お久し振りです」

「中学の時の後輩さん?」

「まあ……そうだな」

266 : 以下、名... - 2015/10/07 21:30:25 k8M/VXHE 152/241

後輩「ちょっとお聞きしたいことがあるのですが……」

「…………ごめん女、ちょっと待ってて」

後輩「あ、すぐ終わりますよ」

「まあなんかよくわかんないけどわかった」

「ははっ……何だそれ……」

後輩「あの……もしかして先輩と女さんって付き合ってますか……?」

「な……何で?」

「これ私居ていいやつ……?」

後輩「あ、居てもらって構いませんよ」

「ん……自主的退散はオーケーなのかな……」

267 : 以下、名... - 2015/10/07 21:31:11 k8M/VXHE 153/241

後輩「私は……男先輩が大好きです」

(戻れ…………もういい……)

後輩「中学の時から大好きでした」

「うわあ……どうしようこの圧倒的疎外感……」ボソッ

(戻れ……もう無理だ……)

後輩「……ほんとは明日告白しようと思ってました……」

「何で戻らないんだよ…………」

後輩「……え?」

「そうか……そうだよ……あいつ言ってたな……。戻ってから二十四時間以内はもう一回戻れないんだっけ……」

「お……男?」

「悪い、そいつ連れてく」

「……!?」

268 : 以下、名... - 2015/10/07 21:31:44 k8M/VXHE 154/241

後輩「…………友さん」

「よう、久し振り後輩ちゃん。お取り込み中悪いけどさ、こいつ連れてくわ」

「お前……帰ったんじゃ……」

「あとで話す、とにかく行くぞ」

「……どうしたの男は……、やっぱ、今朝から変だよ」

「変……か。もしかしたら、変じゃないかもしれないな」

「それって……どういう……友は何か知ってるの?」

「…………行こう、男」

後輩「…………なん……なんですかね……」

「……わかんないよ……男……朝から変だった」

後輩「すいません……変なこと言いに来ちゃって……」

「ううん……平気…………」

269 : 以下、名... - 2015/10/07 21:32:48 k8M/VXHE 155/241

◆友の家◆

「大丈夫か?」

「大丈夫だけど……お前何で……」

「…………見るのが早いか……」

「…………?」

「……鳥」

「…………え?」

「……いやあ、面白くなってきたねえ」

「何がだよ……全く……」

「お前……!」

「やあ、前の時間軸ぶりかな?」

273 : 以下、名... - 2015/10/08 19:17:35 /NFEI.oE 156/241

「どういう……事だ?」

「見たまんまだ。……お前と同じで、俺にも悪魔が憑いてんだよ」

「……それはいいとして……何でお前は俺が契約者だってわかったんだ?」

「ああ……それは……」

「僕がこいつに与えた能力は、他人の心を読む能力だ」

「…………まぁ、そういうこと」

「いつから……?」

「前の土曜日から」

「……この時間軸ではな。時間軸単位で言うのなら、ひとつ前の時間軸から友は能力を得ている」

「…………鳥は友に憑いていて……友は他人の心を読める…………」

「…………まぁ、まとめるとそういうこと」

274 : 以下、名... - 2015/10/08 19:18:18 /NFEI.oE 157/241

《まぁ、何て言うか、後輩に告られた》

《えっ……後輩って、男と同じ中学校だった子でしょ?》

《それで? お前はどうしたんだ?》

《…………オーケーした》

《………………………………》

《あー……、ちょいと飲み物買ってくる》

《俺も行くよ、女は?》

《えと……いいや、ここにいる》

《そうか、じゃあ行ってくる》

《……………………うん》


―― 「前の時間軸の……どのタイミングでその能力を手に入れたんだ?」

275 : 以下、名... - 2015/10/08 19:19:00 /NFEI.oE 158/241

「お前が今思考したシーンの時には、既に僕は能力を与えている」

「……え? でも…………」

「いや……悪い男。多分その時な、前の時間軸の俺のことはよくわかんねーけどさ……」

「…………?」

「多分……どうしてもお前と後輩が付き合ったなんて、信じられなかったんだと思う……」

「…………どういうことだよ?」

「僕が話そうか。僕は時間軸移動をしてるし、友の心も見ていたからね」

「ああ……頼むわ」

「まず、友は女の事が大好きなんだ」

「うん、ちょっと待て」

276 : 以下、名... - 2015/10/08 19:19:42 /NFEI.oE 159/241

「なんだい」

「なんかこうさぁ……そういうデリケートなことはもうちょい柔らかく包んで言おうよ」

「お前に負けないくらい、友は女が大好きなんだ」

「あーもう! 分かったから早く話を進めろ!」

「…………へー……」

「何だよその反応は!」

「それでだ、僕は友に憑いて、人の心を読む能力を与えた」

「……どうして」

「友は、女とお前の心を見たかったんだ。……もしかしたら相思相愛かもしれないと思ってな」

「結果として……そうだってんだよな……」

「ああ。前の時間軸でも、この時間軸でもな」

277 : 以下、名... - 2015/10/08 19:20:37 /NFEI.oE 160/241

「友は女が好きで、俺と女の心を読みたいと思ってたら、鳥がその力を与えてくれた……と」

「そうだ」

「……鳥は昔から友に憑いていたんじゃないのか?」

「普通はそんなことしないよ。君に憑いてる猫がたまたま一人に長く憑くタイプってだけ」

「…………なるほど……」

「それで……だ。友はお前と女の心を読み、真実を知った」

「………………」

「だが、そのあとすぐにお前が後輩と付き合った」

「……火曜日……か」

「そう、火曜日の朝だ」

278 : 以下、名... - 2015/10/08 19:21:09 /NFEI.oE 161/241

「つまり友は、俺が女の事が好きなのに後輩と付き合ったのを受け入れられなかったってことか?」

「……多分……そういうこと」

「どうしても信じられなかったから、心を読めているのに、あんな態度だったんだよ」

「……ま、その話を今の時間軸の俺にされても困るけどな」

「…………」


―― 《何で後輩で妥協なんてしたんだ》

《俺はお前が羨ましいよ》

《でも男のせいで失恋しちゃったなぁ》


後輩《…………普通、こんな所たまたま通りますかね》


―― 「…………なるほどな……。なんか、納得したわ」

283 : 以下、名... - 2015/10/10 20:32:16 SFeLKogE 162/241

「さてと……どうだい、落ち着いた?」

「お陰さまで……」

「女の事が好きで、でも後輩も好きになって……」

「……そう……だな。……どうすりゃいいんだろうな……俺」

「……少なくとも、まだ折れるなよ。あんなところでやけになるな」

「……簡単に言ってくれるよな。結構キツいんだぜ? 好きな人が死んだから、好きな人を捨てるってのはさ。死んだ好きな人が恋人になって、捨てた好きな人が全部忘れて告白してくるなんて……普通じゃないよ……」

「……簡単に言ってやりたくもなるさ」

「…………?」

「おれは、この時間軸のお前とこれから先も生きていたいんだ」

「………………ホモ?」

「っ……おまえさあ……」

284 : 以下、名... - 2015/10/10 20:32:59 SFeLKogE 163/241

「……冗談だ。ありがとうな」

「おう」

「これから先も……ねえ」

「何だよ。お前もホモ臭いとか言うのか」

「いいや、そうじゃないんだが……」

「何だよ……」

「僕が友に契約の話をしたときに、僕は友から何を奪うって言った……?」

「は? ……確か、俺の人生のうちの五年だろ」

「五年……?」

「男は、魂を条件に出されただろう?」

「あ……ああ」

「まあ、男が受け取った能力が高価だってのもあるんだけど……」

「あるんだけど…………なんだよ」

285 : 以下、名... - 2015/10/10 20:33:42 SFeLKogE 164/241

「ああ、ごめん。やっぱ言えないや。あんまり話しすぎると肩入れしすぎって怒られちゃう……」

「なんだよ……気になるじゃねーか」

「悪魔のなかじゃ、他人の悪魔の話をしすぎるのはルール違反みたいなもんなんだ」

「…………どうしても話せないのか?」

「ああ、無理だ……特に今はね。当人の前で言うなんて出来ないよ」

「…………!」

「あんまりさ、こっちに関わってくんなよ。鳥」

「猫……! 家にいるはずじゃ……」

「そんじょそこらの飼い猫と一緒にしないでくれるか。……男の思念を追ってたら、めんどくさそうな感じになってたから来たんだ」

286 : 以下、名... - 2015/10/10 20:34:15 SFeLKogE 165/241

「…………まあ、結果として大した話でもなかったみたいだが……。鳥、お前ちょっと話しすぎじゃないか?」

「……僕は良心的な悪魔なんだよ。お前と違ってな」

「私と違って? おやおや、それじゃあ私が良心的じゃないみたいじゃないか」

「……そう言ったんだ」

「……相変わらず、変わり者だなお前は……」

「猫……」

「……なんだ」

「お前…………これから起こること、全部知ってるのか?」

「…………ほう、どうして」

「お前……知ってるんだろ? 何もかも……」

「…………………………さあ? 答える義理は無いな」

290 : 以下、名... - 2015/10/12 21:52:30 PEGadbt6 166/241

◆男の家◆

「珍しいじゃないか、お前が外に出るなんて」

「珍しいも何も、男の前では一度も出たことがないからな」

「まあ……そうだな」

「まったく今日は無駄に疲れた」

(結局、猫は何も答えてはくれなかった。都合が悪いであろう質問は全て教える義理はない……だ)

「男は足掻けばいいのだ」

「…………?」

「足掻き、藻掻き、苦しみ、今の時間軸を精一杯生きようとすればそれでいいのだ」

「…………そのつもりだよ」

291 : 以下、名... - 2015/10/12 21:53:06 PEGadbt6 167/241

◆友の家◆

「あの猫ってやつは、どんな悪魔なんだ?」

「いけ好かないやつだよ。自分が楽しければ良いって感情で動いてる。男にとり憑いたのも、いずれこうなるって知ってたんだろうな」

「…………つまり、男があの力を手に入れるのは猫の計算の内だってことか?」

「まあ、そうだろうね。あいつが思い付きで、何年間も能力を与えずに一人の人間にとり憑いていただなんて考えにくいし」

「……なるほど」

「あんまり話すと、まためんどくさいことになるな……。僕の思考はまず読まれないけど、友の思考は猫に読まれてるかもしれないしね」

「……じゃあ最後にひとつ」

「……なんだい?」

「…………悪魔は……人間の味方なのか?」

「……いいや、契約相手さ」

292 : 以下、名... - 2015/10/12 21:53:41 PEGadbt6 168/241

◆十月十三日・学校◆

「あ……男?」

「よっ! おはよう!」

「え……と…………」

「いやー、昨日はちょっとボーッとしててさ。多分土曜日に食ったウイスキーボンボンで二日酔いでもしてたのかもな」

「二日酔い……?」

(無理があるかなあ……。一応今朝、後輩にもそう書いてメール送ったんだけど……)

「あー……そういうこと……なのかな?」

「いやほんとごめんな?」

「ううん、大丈夫。なーんだ本気で心配して損したなあ」

(……まあ、釈然としてはいないだろうな……)

293 : 以下、名... - 2015/10/12 21:54:11 PEGadbt6 169/241

「じゃあもしかして……昨日のあれも酔った勢い?」

「……え?」

「私のこと……好き?」

「あー、言ったなあそんなこと」

「なっ……なにその軽い感じは!」

「いや、好きだよ? もちろん大好きだ」

「あ……あっそ……なら、いいや」

「朝からイチャコラしてるとこ悪いんだけどさ」

「うおっ、いつの間に……」

「ちょっと男借りてっても良いか?」

「……はあ? なんで」

「良いからちょっと……」

297 : 以下、名... - 2015/10/13 21:37:33 lvYeZx6. 170/241

◆自動販売機前◆

「……どうやって説明した?」

「ああ……酒入り菓子で二日酔いって言っといた」

「そうか」

「まあ、気持ちもある程度はもう落ち着いて戻ったよ」

「……鳥は比較的、人間よりの悪魔らしい」

「……?」

「契約を重視して、人間にも悪魔にも納得できる取引を行う……。だがな、男。……猫はそういった最近の悪魔とは違う行動理念で、契約をしているんだ」

「……鳥から聞いたのか?」

「……最初は嫌がってたけどな。しばらくしたら、自分から話し始めた」

「ルール違反じゃないのか?」

「ルール違反……みたいなもの。罰則がある訳じゃあない。マナーみたいなものなんだってさ」

298 : 以下、名... - 2015/10/13 21:38:16 lvYeZx6. 171/241

「あいつ……鳥はさ、悪魔にとりつかれた人間が不幸になるのが嫌なんだってさ」

「……猫とはまるで真反対だな」

「……何でかは教えてくれなかったけど、あいつは人間に肩入れしてるんだろうな」

「…………」

「話を戻すけど……猫が行う契約は、必ず魂と交換される……その理由は……」

「危ないな」ゴスッ

「うがっ…………!」

「…………!? なんだよそれ……」

「ああ……これ? これは普通のバットだよ。君が最初の時間軸であいつを殺したやつだ。……それとも浮いてる理由が聞きたいのかな?」

「それもあるけど……いやちがっ……なんでお前……友を……」

「まあまあ、なんでも良いじゃないか。私にはこいつを殺さなくてはならない何かしらの理由があったということで」

299 : 以下、名... - 2015/10/13 21:38:59 lvYeZx6. 172/241

「ぐ……あ……」

「おや、まだ意識はあるのか……。人間って以外としぶといんだねえ。一撃で人を殺しちまった男のようには上手くいかないものだ」

「……なんで、なんで!」

「しかし、この時間はまだ早いからなのか人が少ないな。もうそろそろわんさか来る頃じゃないか? 人通りの少なそうなこの自販機にだって、誰か来ちゃうんじゃないのかい」

「……!」

「猫が殺したなんて誰が信じるのか……。間違いなく疑われるのは君だろうね」

「……おまえ……!」

「ああでも、僕とて死なない程度に殴ったんだけどね。契約以外で人の命を奪えないのが、悪魔の辛いところだよ……。まあ、殺人未遂……運が良ければ暴行罪くらいで済むんじゃないかな。友だって君の味方な訳なんだしさ」

300 : 以下、名... - 2015/10/13 21:40:18 lvYeZx6. 173/241

「でも……一番賢い方法を君は知っているだろう」

「……ふざけんなよ……」

「さあ、どうだ。選択肢はもう限られてるんじゃないのかい?」

「うるせえ…………!」

「友の意識もようやく途切れたようだ」

「っ……!」

「さあ、リセットしようじゃないか」

「何なんだよお前は!」

「私か……? 悪魔だよ」

「…………! ……戻れ……」

「…………じゃあ、また向こうで」

304 : 以下、名... - 2015/10/14 21:43:51 Y6dbmZRg 174/241

◆十月十日・土曜日・男の家◆

「土曜日か……」

「…………何が目的なんだよ……」

「……まあ、何かしらの目的は持っているけど、君に教える義理はないな」

「またそれかよ、……友を半殺しにして、それでもお前は飄々と……」

「ああ友か! そうだそうだ」

「……はあ?」

「今日が土曜日ということは、つまりそうじゃないか」

「……なんの話だ」

「そうだな……早急に鳥を取っ捕まえなければ」

「おい! なんなんだよ」

「…………君にとって都合の悪い話さ」

305 : 以下、名... - 2015/10/14 21:44:27 Y6dbmZRg 175/241

◆十分後◆

「何なんだよ猫の奴……急にどっか行きやがって……。俺に都合の悪い話って……あいつこれ以上何をする気なんだよ……」

「ただいま」

「…………」

「……! ……鳥?」

「悪いな男……僕が友に話したから……」

「いや…………」

「いやほんと、危なかったよ。もう少しでぜーんぶ男が気付いちゃう所だった」

「…………もう、良いんじゃないのか」

「はあ?」

「満足したろ。……契約を解除してやれよ」

「相変わらず君はきもちわるいね。悪魔の発する言葉とは到底思えないよ。反吐がでる」

306 : 以下、名... - 2015/10/14 21:46:02 Y6dbmZRg 176/241

「もう男だってお前が何か企んでることには気付いてる……。お前の思い通りに事は運ばないよ」

「……」

「構わないよ、別に」

「…………構わないって……」

「なあ、鳥。偉そうに語っているが、君だってもう気付いているんだろう? 君のしていることが無駄ってのにさ」

「…………!」

「……無駄?」

「そう、無駄なんだよ。どうしようもない」

「でも……」

「あーもう、そういうところが悪魔らしくない……。第一、男に何か伝えたいなら、直接言えば良いじゃないか。友に言ってみたりなんて、回りくどいことせずにさ」

307 : 以下、名... - 2015/10/14 21:46:39 Y6dbmZRg 177/241

「……それは」

「出来ないのかい? ほう、随分と……」

「何なんだよ……お前は何を考えてるんだよ猫……」

「鳥に聞いてみたらどうだい? まあ、どういうことか答えたくないみたいだけどね」

「…………」

「……鳥、何なんだ。お前は人間の味方なのか? それともやっぱり……」

「僕は…………」

「初めて会った時から、助言してくれたり……何で今回は駄目なんだ……?」

「俺は…………!」

「まあ、無理かな」

「ごめん男……」バサッ

「あっ…………」

311 : 以下、名... - 2015/10/16 20:53:40 0ioeQW/U 178/241

「さて……あいつどうするかな……」

「どうする……って?」

「友と契約するかどうかだよ」

「…………そうか……土曜日の朝だとまだしてないかもな……」

「多分……契約しないだろうな……」

「どうして」

「無駄だから……それどころか、害悪な事だからだよ」

「害悪……?」

「まぁ、その内教えるさ」

「…………お前は、何を企んでる……」

「……何だと思う?」

「わかんねぇよ……、わかりたくもねぇ」

315 : 以下、名... - 2015/10/17 19:49:11 iV/we53Y 179/241

「君はこれからどうするんだい?」

「…………今まで通り、抜け出すために何かをするさ」

「ほう……何かとは何だ」

「……取り敢えず、鳥を見つけられれば手っ取り早いんだけど……そうもいかないだろうし」

「まあ、どこに居るかなんて分からないからな」

「友に接触しようにも……」

「……まだ契約していないから、無意味だな」

「いや…………まてよ」

「どうした」

「…………そうか……よし」

「おいおい……どういうつもりだい……」

「人の心を読んでるんなら、どういうつもりかも全部分かってるんだろ……。見とけよ、必ず終わらせる……」

316 : 以下、名... - 2015/10/17 19:50:06 iV/we53Y 180/241

◆女の家◆

「おはよ……どうしたの? 朝起きたら男から大事な話があるってメール来ててびっくりしたよ、早起きだなあって」

「……そこかよ……まあ、いつも早いんだ俺は」

「知ってるけどさ……休みの日までとはねえ」

「それより、お前の家で良かったのか?」

「えと……うん、まあ、男なら」

「そっか……。てか、考えてみれば女の家入るの初めてだよな……」

「そうだね……まあ、あんまり私の家に来るって話にはならないからね」

「なあ、女」

「ん? 何?」


「お前さ……父さんの写真持ってる……?」

317 : 以下、名... - 2015/10/17 19:50:52 iV/we53Y 181/241

「え……? な……なんで」

「ごめん、どうしても見たいんだ。俺の見当違いなら良いんだけど……」

「な……なによ、説明してよ」

「見せてくれたら……ちゃんと説明するよ」

「何で……今更あんな人の話を……」

「ごめん……知ってるけどさ、君の父さんの事は……。でも見せて欲しいんだ……」

「良いわよ別に……減るもんじゃないし……」

「ありがとう……ごめんね」

「ちゃんと説明しなさいよ」

「勿論」

「あと、……なんか埋め合わせみたいのも」

「んー……考えとくよ」

318 : 以下、名... - 2015/10/17 19:51:29 iV/we53Y 182/241

(女の父親は昔から柄のいい人間ではなかった)

(女が中学生の頃、女の父親は妻を殺し警察に捕まった。女は母方の叔母の家に預けられ、そのまま中学校を卒業する。中学卒業後は、故郷を離れ一人暮らしを始め、高校もこちらの学校に通う事にした)

(……中学では一部の仲の良かった友達以外とは話すことが無くなり、殺人犯の子供として蔑まれるようになっていったそうだ)

(女はこちらの学校に来て、やり直そうと思った)

(だが、そううまくは行かず、女の出身中に知り合いが居る奴から、女の話は広まっていった)

(一年の一学期。女はすぐに孤立した)

(俺や友とつるんでいるのも、俺がその時期に女を遊びに誘ったからだ。……俺はその時には既に少し女の事が好きだったし、女が俺の事が好きだっていうのも、これが始まりなんだろう)

(まあ、今では女も部活に入ったり、馴染んできている。もう女の昔話をしようなんて輩もほとんどいない)

(では何故、今になって俺はそんな話を本人にしたのかというと……)

319 : 以下、名... - 2015/10/17 19:52:51 iV/we53Y 183/241

「やっぱりそうだ……」

「何が?」

「やっぱり……俺はこの人を……」

「何なの……説明するって言ってたじゃない……」

「俺はこの人を二回殺してる…………!」

「は……はあ!? なに馬鹿みたいなことを……」

「確かお前の親父さんって、情状酌量だかで早くに釈放されたんだよな……確か今年の5月……」

「……う、うん。お母さんにも悪いとこがあったとか言って刑期が縮んだのよ……。あの糞裁判官…………」

「……じゃあ、やっぱ可能だ」

「だから……さっきから何言ってるの?」

「ごめん、今からちょっと変な事言うぞ」

「…………もう十分変なこと言ってるけど」

320 : 以下、名... - 2015/10/17 19:53:32 iV/we53Y 184/241

                                





「俺は悪魔と契約しているんだ」

324 : 以下、名... - 2015/10/19 21:34:07 TqdnKCbw 185/241

「……は?」

「まあ……信じられないとは思うけどさ」

「いや……信じられないとかそんな」

「まあ、見てもらった方が早いな」

「え……?」

「居るんだろ? 出てこいよ鳥」

 バサッ

「えっ、えっ!? どこから……」

「なあ鳥……女に憑けるか?」

「……もう憑いている」

「は……!? しゃべっ……!?」

「こいつは俺にとり憑いてる訳じゃあないんだけど、まあ、悪魔」

「よろしく」

「あ……も、分かったよ……話聞くよ」

325 : 以下、名... - 2015/10/19 21:34:49 TqdnKCbw 186/241

「…………まあ、大体こんなもんか」

「ふうん……つまり、事の始まりはあんたが父さんを殺したことって訳ね」

「そういうこと」

「……何で私の父さんって分かったの?」

「毎回違う事が起きるとしても、もしかしたら俺の不幸の元凶は毎回同じなんじゃないかって思ってさ」

「……まあ、その推論は正しいね。ある程度どこかで繋がっている事がほとんどだ」

「だろ? ……女が死んだ時間軸、もしかしたら女は夜中に殺されたんじゃないかって思った。でも、女は大抵夜は起きてないよな? 外に出掛けたりはしないはずだ」

「まあ、場合によると思うけど……」

「そう……場合による」

「…………?」

326 : 以下、名... - 2015/10/19 21:35:24 TqdnKCbw 187/241

「もし、起きてなきゃいけない理由があったら?」

「……父さんに呼び出される…………?」

「そう、女を外に出せて、尚且つ殺そうという動機がある人間」

「確かに……納得はいく。けど、確証はないんじゃ……」

「だから確認しに来たんだ」

「…………父さんが、私を殺そうとする動機って……?」

「…………恨みでも、あるんじゃないのか」

「そう……なのかな」

「俺の話は、ただの推理だ。もう確認のしようが無いし、俺の家に来た理由とかも分からない。もしかしたら俺の母さんを殺してるかもしれない」

「…………分からない、それが正解なんだよ」

「……え?」

327 : 以下、名... - 2015/10/19 21:36:01 TqdnKCbw 188/241

「一回目の時間軸では、たまたまそいつが男の家にやって来た」

「……一回目では?」

「二回目以降は、男が不幸になるように組まれてるんだ」

「……どういうことだよ」

「何も起こらないと思わせて、母親を殺す。後輩という彼女が出来た段階で、思い人である女を殺す。悪魔と契約した人間はそうやって少しずつ不幸に巻き込まれていくんだ……。契約した能力とその代価が大きいほどね」

「……つまり、俺は不幸を受けとるために、契約したって事かよ……」

「思い人……?」

「えっ、あ、ちが」

「あ、言わない方が良かった?」

「いや……良いんだけど……」

331 : 以下、名... - 2015/10/21 21:48:08 Dfb0/4D. 189/241

「……そ、それよりだ。悪魔の力による不幸の連鎖だかなんだか知らないけどさ、抜け出す方法は無いのか……?」

「……君はひとつ忘れていないかい?」

「え……?」

「抜け出す方法は簡単だよ。何が起きても戻さなければ良いんだ」

「そうじゃない! そうじゃなくて」

「誰も傷つかない方法……かい?」

「……そうだよ」

「……どうだろうね、もしかしたらそういう方法があるかもしれない。……でも、僕はそんなの知らない……」

「自分で見つけろって事かよ。結局糸口は掴めずってか」

「…………」

336 : 以下、名... - 2015/10/23 21:11:05 T1Fv0f6g 190/241

「じゃあ女。何かあったら連絡してくれ」

「……んー、何か無いと駄目?」

「え…………?」

「……さっきの思い人ってさ……」

「ああ……、そういえば」

「覚えてたくせに」

「……そうだよ、女の事が好きなんだ俺は。女が居なくなったら泣いちまうくらいな」

「……ありがと、私も好きだよ」

「じゃあ……帰るね」

「えー、せっかく恋人になったのに……」

「ごめんな。そうだな……明日会おう」

「んー……分かった……じゃあね」

「あぁ。話聞いてくれてありがと」

「……明日で埋め合わせてよね」

337 : 以下、名... - 2015/10/23 21:11:56 T1Fv0f6g 191/241

◆公園◆

「お前はさ、何でそんなに協力的なんだ」

「……まあ、色々あるんだよ、悪魔にもさ……」

「……話してくれないのか」

「あんまり言うような話ではないんだけど……まあ、気になるよね……」

「ああ」

「僕はさ、今でも大分そうだけど、前も比較的人間よりの悪魔だったんだ」

338 : 以下、名... - 2015/10/23 21:12:35 T1Fv0f6g 192/241

◇回想開始◇

「人間は結婚を幸せと考えるものじゃあないのかい? 君はどうして亭主のことを考えて、そんな憂鬱そうなんだ」

「…………人間はね、あなたたちが思うより単純じゃないのよ、悪魔さん」

「……自分の気持ちを伝えたらどうだい」

「嫌よ、何されるか分からないもの」

「……どうせ君はもう死ぬんだよ」

「え………………?」

「最後までもやもやしたまま死ぬのは嫌じゃないかい?」

「ま、待って……。何で死ぬなんてそんな」

「悪魔は嘘をつかないよ」

339 : 以下、名... - 2015/10/23 21:13:20 T1Fv0f6g 193/241

「まあ、大して希望のある人生でもなかったし、あなたの言うことを信じてみるのも悪くないかもしれないわね」

「その人生も、もうすぐ終わりだけどね」

「そうなのかしらね。……さて悪魔さん、あなたは私にどんな能力を与えてくれるの?」

「そうだね……、じゃあこんなのはどうだろうか」

「どんなのでしょうか」

「伝えたいことを、伝える能力」

「……拍子抜けね。悪魔の能力というのはそんなにも……」

「あ、馬鹿にしてる」

「そんなの、能力を貰わなくても、その人の気分次第でどうとでもなるじゃないの」

「でも、君にはそれができないんだろう?」

◇回想終了◇

340 : 以下、名... - 2015/10/23 21:13:53 T1Fv0f6g 194/241

「そうして彼女は、能力を受け取って、僕が伝えた彼女の死ぬ日に自分の夫を罵った」

「……それで?」

「夫は怒り、彼女を殺した。その現場を見た人からしたら、夫に情状酌量の余地あり、何て思えたかもね」

「え……まてよ、まさかその妻って……」

「……女の母親さ」

「……そんなところで繋がって……」

「彼女は最後に言った。あなたから能力を受け取らなければ死ななかったんじゃないか、って。そして彼女は死ぬときに、夫に罵詈雑言を浴びせたことを後悔しながら、死んでいったんだ」

「……お前は…………」

「僕はさ、人間に優しいつもりだった。でも何にも理解してなかった。人間の気持ちをわかってなんかいなかったんだ」

345 : 以下、名... - 2015/10/25 19:14:43 sweMhFBM 195/241

「人は死ぬ。悪魔として僕は何度もその場面を見てきた。……でも、あんなに悲しそうに死んだ人を見たのは始めてでさ」

「……」

「彼女が死ぬことはもう確定していた。僕は彼女に能力を与えれば、彼女は幸せに逝けるんじゃないかなって思ってた。でも、間違いだったよ」

「……お前は悪魔に向いてないんだな」

「そうだね、僕もそう思う」

「……俺も、死ぬのかな」

「…………」

「人はいつか死ぬ。分かってるんだけど、やっぱ何か、嫌な死に方はしたくないなあ」

「幸せな死に方なんかあるもんか」

「……そうだな」

「僕は、君にもしっかり生きてて欲しいと、そう思ってるよ」

346 : 以下、名... - 2015/10/25 19:15:20 sweMhFBM 196/241

「……生き抜いてやるさ、この時間軸を最後にしてやる。悪魔にとり憑かれた人間でも、最後は笑えるってのを見せてやるよ」

「期待してる、いや、応援してるよ」

「さてと、そろそろ昼だ。何か食って帰ろうかな」

「気楽なもんだな」

「こういうときこそ軽く構えないと」

「……そうだな」

「……それに、鳥のお陰で命の重さを再認識した気がするよ。人が死んだらリセットなんて、俺はどうかしてた」

「まあ、混乱した末だろう。仕方ないさ」

「思ったんだ。リセットってさ、俺以外の人類を全員殺してるのと同じなんじゃないかってさ」

「極論じゃないか?」

「そのくらい、おかしいことをしてたんだよ俺は」

347 : 以下、名... - 2015/10/25 19:15:53 sweMhFBM 197/241

◆男の家◆

「お帰りー、どこいってたの?」

「ちょっと女と話してた」

「あー、あんまり聞かない方が良いやつね。了解」

「何でそうなる……」

「朝起きたとき居なかったてことはまさか……」

「なんだよ」

「お盛んですなあ」

「息子にかける言葉かそれが」

「まあ、それは良いとして。ご飯どうする?」

「ああ、食べてこようかなとも思ったんだけど、結局食べてこなかったので、作ってください」

「はーい」

348 : 以下、名... - 2015/10/25 19:16:50 sweMhFBM 198/241

「さて、まずお湯を用意します」

「待ってカップ麺を作ろうとしていらっしゃる?」

「そして、砂時計も用意します」

「俺は良いとして、母さんは寝起きじゃないのかそれでいいのか」

「さて、選べ」

「うん、聞け」

「はい?」

「もう少し健康に気を使おう」

「いつも男が料理作ってくれてるので、健康に気を使った料理の作り方を忘れました!」

「仕方ない息子が作ってやろう」

「よっ! 待ってました!」

「ニャー(うるさい)」

「ほら、猫ちゃんも応援してるよ」

「……猫が何を応援するんでしょうかね」

352 : 以下、名... - 2015/10/27 21:54:32 aweoBO2g 199/241


◆友の家◆

「……悪魔?」

「いや、何もないなら良いんだ。つまり鳥に気を付けろって事。鳥だけじゃなくて動物全般かな」

「どういうことだ……」

「まあ、そんな深く考えなくていいよ」

「なんだそりゃ……」

(多分鳥はとり憑かないだろうしな……)

「てか、それだけ言いに来たのか?」

「ん……まあ、暇だったから」

「何かゲームしてくか?」

「お、そうだな……」

 ◆◇◆◇◆◇

353 : 以下、名... - 2015/10/27 21:55:20 aweoBO2g 200/241

「…………うわ、もうこんな時間か」

「めちゃイケが始まるな……飯食ってく?」

「んー、どうしようかなあ。何か母さんからメールとか……って、やべ」

「どうした、早く帰って来いって?」

「いや……女と明日遊ぶ約束してたの忘れてた。結構ライン来てる……」

「遊ぶって、二人で……?」

「え……まあ、そうだな」

「ふうん……」

(あれ……そういや友が能力を受け取ったきっかけって……)

「やっぱ、そうだよな」

(…………これで、少なくとも俺と女に関することは、友の中で完結した……のかな)

354 : 以下、名... - 2015/10/27 21:56:03 aweoBO2g 201/241

◆十月十一日・日曜日◆

「おはよう!」

「……おはよ」

「テンションひっく……いやいつも通りか」

「それで、何かしたいこととかあるの?」

「うわー……デート感無ぇ……」

「デート感ってなに……」

「イチャイチャしよう!」

「落ち着け俺達にはハードルが高い」

後輩「おや、デートですか?」

「うわあ!?」

後輩「お久し振りです、先輩」

355 : 以下、名... - 2015/10/27 21:56:40 aweoBO2g 202/241

「中学の時の後輩……」

後輩「どうも」

「あー、初めまして」

後輩「初めまして。男先輩にはお世話になりました」

(先輩……まあ、当然っちゃあ当然なんだけど。男君なんて呼ばれてたあの日が懐かしい……)

後輩「さて、邪魔しても悪いですし、私はこの辺で」

「……おう、じゃあな」

後輩「では」

(リセットして、あのときの後輩は死んだ……。もう俺に思いを伝えてはくれない……。なんか、やっぱり悲しいな)

「……どうしたの?」

「ああ、いや。行こうか」

361 : 以下、名... - 2015/10/29 22:02:59 /Rzn5okw 203/241

「しかし、どこに行こうか」

「そうだなあ、女はどこか行きたいところはないのか?」

「んー。そうだなあ……」

「……とりあえず、飯食うか?」

「そうしようか……」

「結局なんかいつも通りだな」

「ご……午後から頑張ろう!」

「頑張るって何をだよ……」

「……イチャイチャ?」

「俺はいつも通りの女の方が落ち着くけどな」

「ん……そう、かな」

362 : 以下、名... - 2015/10/29 22:03:33 /Rzn5okw 204/241

「じゃあ、何を食べようか」

「マックいこう!」

「急にいつも通りですね」

「だってこっちの私の方が好きなんでしょ?」

「……いや、まあ、そうだけど」

「じゃあ、行こうよ」

「はいはい、自分の分は自分で払えよ」

「昼抜きでも良いかな」

「冗談だよ……奢るよ」

「まあ、私も男もバイトしてないし、あんまりお金無いからそれぞれ自分持ちでもいいんだけどね」

「じゃあそうしようか」

「甘えさせてください」

「素直でよろしい」

366 : 以下、名... - 2015/10/31 18:57:28 Fv8utkeQ 205/241

◆ハンバーガーショップ◆

「……なんかごめんね」

「は?」

「いや、本当だったら男を慰めてあげるべきなんだろうけど……なんか私が楽しんじゃって」

「あー……いいよ全然気にしてなかったし。大体俺はお前に慰めて貰うほどに落ち込んでなんかいないよ」

「でも……」

「この世界ではもう“無かったこと”なんだ。気にしてなんかいられない」

「……大丈夫なの? 男はそれで」

「見ての通り」

「そっか……でも、何かあったら言ってね。戻しちゃう前に」

「……了解」

367 : 以下、名... - 2015/10/31 18:58:05 Fv8utkeQ 206/241

「ポテトの味付け薄いなぁ……」

「たまにあるよねそういうの。私の方はいつも通りだけど食べる?」

「おー、じゃあ俺の方もあげるよ」

「いらねぇ……」

「マジトーンで言わないでなんか傷付く」

「正直ちょっとお腹一杯だから男にポテト処理してもらえると嬉しいなーなんて」

「まぁ良いけどさ」

「はい、あーん」

「…………」スッ

「何故別のポテトを取ろうとするのだ」

368 : 以下、名... - 2015/10/31 18:58:48 Fv8utkeQ 207/241

「さてと……飯も食ったし、何する?」

「ねー。どうしようか」

「何もないならここでお開きと……」

「まぁ待て若造、ちとわしの話を聞い」

「じゃあ、また明日!」

「ごめん待って!」

「……はぁ、どうするの?」

「んー……私は男と居られるだけで幸せだからなぁ」

「そういうのはね、可愛いヒロインが言う台詞なんですよ」

「しばくぞ」

「お願いします」

「なん……だと……」

369 : 以下、名... - 2015/10/31 18:59:20 Fv8utkeQ 208/241

「じゃあ、映画とかはどうだ」

「映画かぁ……」

(後輩と見に行ったやつだけど、まぁあれなら外れなさそうだからな)

「そう言えば、ちょっと見たいのがあったんだ」

「お、ちょうど良いじゃん。行こうよ」

「えー、でも恋愛ものだよ?」

(やっぱ後輩と見たやつかな? 女子はあーいうの好きそうだもんなあ)

「男は退屈じゃない?」

「多分平気だよ」

「それに、男とあんま話せなくなる……」

(……そういうのはね、可愛いヒロインが言う台詞なんですよってめっちゃ言いたい)

「何か失礼な事考えてない?」

「いえ何も」

370 : 以下、名... - 2015/10/31 18:59:56 Fv8utkeQ 209/241

◆映画館◆

「いやー、面白かった」

「人類全滅してましたけど」

「努力が報われないってのは悲しいねぇ」

「俺への当て付けか何かかそれは」

「あー……男にはあんな風に、絶望のまま終わってほしくないって事だよ」

「お前それ今考えただろ」

「もしかしてあんまりあーいうの見たくなかった?」

「いや、映画なんてただの創作だから関係ないけどさ……まぁ盛り下がるよね」

「でも、たとえバットエンドでも、男と一緒に死ねるならそれもありかなー……なんて」

「……考えとく」

「待って何を考えるの怖い」

(……なんか、やっぱり女と話してると落ち着くなぁ……)

375 : 以下、名... - 2015/11/06 20:01:35 2wTlvO1k 210/241

◆十月十二日・月曜日・校門前◆

「君は、普通に生活しているな」

「……え?」

「これからまた、何かが起こるかもしれないというのに」

「あぁ……そんなもんだよ。実際何が起こるかなんて分からないんだからさ、あんまり張り詰めても仕方がない」

「そうかもしれないけどさ……」

「……女来た」

「ごめん……ちょっと遅れた! って……鳥?」

「久しぶり……でもないかな?」

「そうだね……おはよ」

「じゃあ行こうか。先生に怒られちゃう」

「あー……なんでこんなタイミングで日直なんて……」

376 : 以下、名... - 2015/11/06 20:02:22 2wTlvO1k 211/241

◆教室◆

「おはよー、ってあら。二人っきりでまさか……」

「別になんもしてねぇよ」

「それにしても、珍しく早いね」

「まあたまにはな」

「雪でも降るんじゃないか?」

「俺が早起きしたら駄目ですか」

「いや別に?」

「それよりよ、さっき校門で鳥を見つけてさ」

「鳥?」

「そう、撫でても逃げないんだぜ、人間慣れしてるんかな? 可愛すぎて天使を見た気分だ」

「あー……くくっ……」

「なんだよ、何が面白いんだ」

「女、その気持ち凄い分かる」

377 : 以下、名... - 2015/11/06 20:02:52 2wTlvO1k 212/241

◆???◆

「なんだい、結局いつも通りだね」

「…………」

「君が何かを企んでいると思っていたが、そんなこともなく……」

「……お前は悪魔だ」

「君もだろう?」

「……俺は…………悪魔なんて……」

「何も無いなら、帰るよ。じゃあ楽しみにしてるよ、最後をね」

378 : 以下、名... - 2015/11/06 20:03:27 2wTlvO1k 213/241

 ◆◇◆◇

ごめんね……

終わっちゃうんだ……

もう、なにもかも

助けられなくて……ごめんね

 ◆◇◆◇

「…………え?」

「やぁ、おはよう。気分はどうだい」

「なんで……ここに? てか、今の声は……」

「…………じゃあ、始めようか。今日を」


 ◆十月十四日・水曜日・男の家◆



「終わるといいね、この負の連鎖が」

383 : 以下、名... - 2015/11/07 21:32:40 CI8ldTnA 214/241

「……さっき、鳥が来ていたようだが」

「ああ、よく分からないけど、おはようの挨拶だけで帰っていったよ」

「そうか、まあそうだろうな。あいつがもうこれ以上余計なことをするとも思えん」

「……でも、何かを伝えようとしてた気がするんだ……。夢の中で、鳥に何かを言われた……」

「何かとは?」

「覚えてないや。夢なんてそんなもんだよ」

「夢か……しばらく見ていないな」

「悪魔でも夢を見るのか?」

「まあ、たまにな。記憶の整理が夢となるのならば、記憶をもつ悪魔も夢を見なければおかしいだろう?」

「……そうかね」

「そうだ、往々にしてそういうものなのだよ」

「…………」

384 : 以下、名... - 2015/11/07 21:33:35 CI8ldTnA 215/241

◆通学路◆

「やあ、さっきぶり」

「……何しに来てたんだ?」

「まあ、色々あるんだよ。僕みたいな者にもさ」

「ああそう」

 ピピピピ ピピピピ ピッ

「…………ん」

「なんだい、女ちゃんは遅刻かい」

「そうみたいだな……寝坊だってさ。ここにいても仕方がないし、行くか……」

後輩「おや、誰かと思えば先輩ではないですか」

「……っ!」

後輩「……そんなに驚きますか、私はお化けか何かですかね」

385 : 以下、名... - 2015/11/07 21:34:24 CI8ldTnA 216/241

「いや、別にそんなつもりはないんだけどさ……」

後輩「まあどうでもいいのですが、それより、可愛い鳥がいるじゃあないですか」

「え……? ああ、こいつか……」

後輩「あんまり見ない鳥ですね。なんて種類なんでしょう」

「……さあな」

後輩「それにしても、人間慣れしてるのか全然逃げませんね」

(悪魔だからなあ……)

後輩「あっ、すいません。行きましょうか」

「あれ……何か今の……」

後輩「どうしました?」

「ああ、いや。なんでもない」

後輩「あ、もしかして女さんを待ってましたか」

「そうなんだけど、ついさっき先行っててなんて連絡が来たから、なんの問題もないよ」

386 : 以下、名... - 2015/11/07 21:35:17 CI8ldTnA 217/241

「じゃあ、僕はこの辺で」

(ん、またな)

「……さっきの会話、二回目だよ」

(…………あっ、そうだ。後輩と付き合ってたときの時間軸で……)

「またね」バサッ

後輩「先輩……?」



後輩《何をボーッとしてたんですか? まあ、男君の事だから大した事でもないでしょうけど》



「…………ああごめん、行こうか」

後輩「……?」

(もう、あの日の後輩は、居ない)

390 : 以下、名... - 2015/11/09 20:06:16 wSG0w4Tc 218/241

後輩「そういえば、先輩とこういう風に二人で話すのは初めてですね」

「え……? ああ、そうか」

後輩「まあ別に特別話したいこともないんですけど」

「話したいことねえ……。確か後輩って獅子座だったよな?」

後輩「おや、よくそんなこと覚えてますね。というよりまずそんなこと話しましたっけ?」

「まあ、俺も獅子座だから印象に残ってたんだよ」

後輩「それで、星座がどうかしましたか?」

「いや特に何も」

後輩「…………そうですか」

「星座で話を広げられるようなトークスキルを生憎持ち合わせてないもんでな」

391 : 以下、名... - 2015/11/09 20:06:56 wSG0w4Tc 219/241

後輩「まあ、そろそろ学校に着きますから。あんまり話が広がっても困りますね」

「じゃあ、パッと終わる話でも」

後輩「そうですねえ、では。先輩は何フェチですか?」

「……は?」

後輩「色々あるでしょう? 異性の好きな部分ですよ」

「なんでそんな事をわざわざ聞くんだよ……」

後輩「私は先輩フェチです」

「はあ? いや、お前……」

後輩「先輩の事が大好きでした。まあ、女さんに先を越されましたが」

(ああそうだ……後輩って結構こういうところあるんだよなあ。あんまり恥ずかしがらないって言うか……たまに何かが吹っ切れるって言うか……)

後輩「それで、先輩は何フェチでしょうか?」

(しかもなんだよ、俺の事好きでいてくれてんだ……。変わんないじゃん……後輩は、後輩なんだ……。なのに……、なのに違うんだよな……前の後輩とは……なんなんだよマジで……)

392 : 以下、名... - 2015/11/09 20:07:38 wSG0w4Tc 220/241

「うっ……」

後輩「えっ……? ちょ、なんで泣くんですか!」

「いや……ごめん、最近涙もろいな俺……」

後輩「人に言う位なら泣いちゃうレベルの特殊フェチなんですか?」

「ははっ……なんだよそれ……」

後輩「ええと、小指フェチとか!」

「本当に特殊だな」

後輩「急に泣き出す人もなかなか特殊だと思いますよ……」

「悪いな……」

後輩「……んー、まあ、いいですけど。釈然としませんが」

(あー、吹っ切れたつもりだったのになあ……。前の時間軸の面影が見えると…………。駄目だな、俺は)

396 : 以下、名... - 2015/11/11 21:01:28 FCw8XxYQ 221/241

◆教室◆

「よー、おはよ」

「よっす。なんだ最近早いな」

「何か目が覚めんのよ。つか、女は? 一緒じゃねえの?」

「ああ、寝坊だってさ」

「なんだよ、遅刻か?」

「お前と違って多分普通に間に合うよ」

「俺と違ってってなにどういう意味」

「気にすんな」

「それじゃあまるで俺が寝坊したら遅刻確定みたいじゃないか」

「……え?」

「え?」

「……ふぁ、ふぁいとっ」

「なにこいつうぜえ!」

397 : 以下、名... - 2015/11/11 21:02:02 FCw8XxYQ 222/241

「朝から元気ね」

「うおっ、女」

「なんだよ、男と来る時間全然変わらねえじゃん」

「ま、絶対に遅刻しない優等生ですから」

「ん?」

「……まあ、それはさておいて。ちょっと男、話したいことがあるんだけど」

「なに?」

「ここだとあれだから、人気の無いところに……」

「朝からお前ら…………」

「そういうのじゃないから……」

398 : 以下、名... - 2015/11/11 21:02:34 FCw8XxYQ 223/241

◆渡り廊下◆

「それで、話とは?」

「今朝、父さんが実家から逃げたみたい。お婆ちゃんから連絡があって……」

「……ほう」

「もしかしたら、こっちに向かってるかも……」

「今までの流れからしたら、多分そうだろうな」

「どうしよう、私、殺されちゃうのかな? だって、そういう時間軸もあったんでしょ?」

「大丈夫だって、俺がついてる。絶対に何も起こさせはしない」

「……じゃあ、さ」

「……?」

「今夜…………泊まっていい?」

「……!?」

404 : 以下、名... - 2015/11/12 21:01:44 IUBVyN3. 224/241

「な、なに言ってんだ……!」

「何って、守ってくれるんじゃないの? 何も起こさせはしないって言ってた」

「いや、言ったけどさ……」

「…………だめ?」

「…………っ、じゃあ、女の家に俺が泊まるってのは?」

「え?」

「俺ん家母さんとかいるしさ……」

「……えと……」

「それじゃあ駄目なのか?」

「ん……わかった、良いよそれで……」

「おけ、じゃあ戻ろうか」

「……ん」

「どうした、もしかして嫌なのか?」

「ううん、違う……。何か、彼氏を家に泊めるって……緊張するなあって」

「…………戻るぞ」

405 : 以下、名... - 2015/11/12 21:02:53 IUBVyN3. 225/241

◆放課後・男の家◆

「1日分の着替えと……何か持ってくもんある?」

「んー、歯ブラシとか?」

「あーそうか。取ってくる」

「ほーい」

「…………」

「…………」

「よし、これで準備完了かな」

「どこかいくのか?」

「きゃっ!」

「なんだ、お前悪魔憑きか。まあ、鳥だろう」

「……そう言えば言ってたね、悪魔飼ってるって」

「ああ、あんまり関わらない方が良いぞ」

「失礼だなあ」

406 : 以下、名... - 2015/11/12 21:03:32 IUBVyN3. 226/241

「ところで男、こいつの家に泊まりに行くのか?」

「そうだよ。こっちに泊めると母さんが茶化してきそうだし」

「……そうか」

「……お前の思い通りになんかなんないからな」

「男は何か勘違いをしているようだ」

「は?」

「残念だが、お前が避けようとしている未来と、私の望む未来というのは、大きく違っている。言っておくが、もうどうしようもない、いや……始めからどうしようもなかった事だ」

「…………訳わかんねえ。行こう、女」

「え、うん……」

(……何なんだよ……どういう事だよ)



「残念でした」ボソッ

407 : 以下、名... - 2015/11/12 21:04:02 IUBVyN3. 227/241

◆女の家◆

「お邪魔しまーす」

「ちょ、ちょっと待っててね」

「……え?」

「片付けてくるから!」

「別に気にし……行っちまった……。気になるもんなのかねえ……」

「…………」バサッ

「お、よう。随分暗いおでましだな」

「やっぱり、言っておこうと思って」

「え…………?」

「何度も、言ってこなかったけど、やっぱり言っておくべきかなって……」

「な……なんだよ」

「君は…………」

408 : 以下、名... - 2015/11/12 21:04:36 IUBVyN3. 228/241

  
  
  
「……君は…………死ぬ」

「…………は?」



  バンッ



??「女あ! 居んだろ!?」

「……!!」

??「ああん? 何だてめえ」

「…………お父さん……!」

413 : 以下、名... - 2015/11/14 20:40:16 qPwQdgXk 229/241

女父「なんだ、女。お前の彼氏さんか?」

「…………」

女父「黙んなよ。……ちっ、まあいい」

「何しに来たの……」

女父「いや……ちょっとな」

(やった! こんな順調に行くなんて……)

「男、落ち着いて……僕の話を…………」

女父「あ? ピイピイうるせえ鳥が居んな。なんだそいつは?」

「……飼ってるの」

「……男! もう駄目なんだ……どうしょうもない!」

「何言ってんだよ……。こいつを殺せば良いだろ……。俺がこいつを殺したのが始まりで、俺がこいつを殺すのが正しい時間軸なんだ」

女父「あ?」

414 : 以下、名... - 2015/11/14 20:40:55 qPwQdgXk 230/241

女父「なんだよ鳥も人間も耳障りな声で鳴きやがって……。ほら、大きな声で言ってみろよ!」

「お前を殺す」

「やめろ……! 君はもう死ぬ……でも抵抗なんてしたら、猫が望むような死に方に……」

女父「うるせえな鳥が!」ゴスッ

「…………!」バサッ

女父「ちっ、ちょこまかと……。で、何だ。俺を殺すとか言ったか?」

「ああ、俺が今を生きるために、お前を殺す」

(駄目だ……聞いてない。思ってた以上に男の心は張り詰めていたのか……? もう女父を殺すのが、正解だと思い込んでる……)

女父「ほー、カッコいいこと言ってくれるじゃねえか。女よお、どうする? お前の父さん殺されちゃうよ?」

「…………死ね!」

女父「………………………………あ?」

415 : 以下、名... - 2015/11/14 20:41:36 qPwQdgXk 231/241

女父「お前も変わったなあ、女よ。性格も変わったし、体も変わった……」

「何よ…………」

女父「まあ、胸はいまいちか……ククッ……」

「……?」

女父「あんまふざけたこと言ってると、売るぞ」

「…………っ!」

「いい加減にしろよ……」

女父「何だよ、威勢だけはいいな。彼女が犯されんのが嫌かい。じゃあ、まず父さんに挨拶してから正式な彼氏になれや」

「お前は…………」

女父「俺の知り合いが使い終わったらてめえにやるよ」

「…………絶対に、殺す」スッ

「…………!」

女父「おお、現代っ子は怖いねえ。平気で刃物を持ち歩いてんのかい」

416 : 以下、名... - 2015/11/14 20:42:12 qPwQdgXk 232/241

女父「まあ、拳で足りるか。嬉しいことにブタ箱ってのは釈放後にまた人を傷つけられるように体を鍛えさせてくれるんだ」

「……狂ってる……」

女父「ふんっ!」ブンッ

「ダメっ!」ドスッ

女父「ぐあっ!」ドタンッ

「やめて……もう…………」

女父「……ち、邪魔だ」ゴスッ

「キャアッ!」ガンッ

「……女っ!」

「…………」

女父「あ? 頭打って気絶したな……ったく、貧弱な娘だ」

「何が娘だ……ふざけんなよ……!」

女父「ほら、叫んでないでこいよ」

「死ねっ!」ダッ

417 : 以下、名... - 2015/11/14 20:42:50 qPwQdgXk 233/241

 
 
 
女父「お前がな」ゴスッ

418 : 以下、名... - 2015/11/14 20:43:31 qPwQdgXk 234/241

 
(……え?)

(……あ、バットか)

(そりゃあ、手ぶらなわけないか)

(何だよ、最初俺が殺ったのと同じ方法で……)

(仕方ないか……)

(しないって決めたけど、死んじゃあ駄目だ)


(リセットしよう)


 ◆◇◆◇

「なんだい、リセットしないだなんて、柔い決断じゃあないか。結局またリセットしようとして」

「……なんだよ、死んじゃったら意味ないだろ。早くリセットさせろよ」

「……そうだね。ひとつ言えることがあるとすれば…………残念でした、かな」

423 : 以下、名... - 2015/11/15 20:54:39 V4vVhMmw 235/241

「どういう事だよ……。あれ……つか、なんだここなんも見えない……」

「分からないのかい? 死んだんだよ君は」

「は? おい、待てよ……、意識が消える前にリセットしただろ!」

「リセットは戻すだけだ。余命は変わらない。いつだったか君が、悪魔の力で不老不死は出来るかと聞いてきた時に答えたはずだ。出来ないと」

「……?」

「覚えてないのかい? 馬鹿だね君は。せっかくヒントをあげてたのに。寿命は単純、一方通行だと言っただろう?」

「つまりなんだ、時間を戻しても、生きた時間は戻されない……。その時点での余命が、過去に戻ったときに引き継がれるだけってことか」

「察しだけは良いな、まあそういうことだ」

「なんだよ……じゃあどうせ俺がいくら頑張っても、確実に死ぬってことじゃないか」

「そうだ、お前は元々早くに命を落とす事になっていた」

「……なら、お前の目的って何だったんだ」

424 : 以下、名... - 2015/11/15 20:55:12 V4vVhMmw 236/241

「……男が惨めに死ぬのを見たかった、と言うところだな。お前がもう少し機転の利く奴だったら、早々にループを脱出され、つまらない死に方をされていた」

「俺の死に様はどうだった」

「最高だったよ」

「そうかい、そりゃあ良かった。……それでこれからどうすんだ」

「お前の魂を貰うわけだが……、何故そんなに落ち着いている。気に食わないな」

「何だよ、いつもみたいに心を読めばいいだろ」

「実態がないものと、他の悪魔の心を読むことは出来ない」

「……そういや、鳥とお前が心を読み合ってんのはみたことないな」

「それで……何故そこまで冷静でいられるのだ。死んだのだぞ? そして、今から私に食われるというのに」

「…………」

425 : 以下、名... - 2015/11/15 20:55:45 V4vVhMmw 237/241

 
 
「いやなんか、まだリセット出来そうな気がして」



「……ならそう信じているがいいさ」ガプッ



 ◆◇◆◇

「……満足か」

「ああ、旨い魂だった」

「そうかい……」

「久々に面白い人間に当たったものだ。本来ならば二週目の時点で終わる程度のしょうもないループのはずなんだがな」

「…………悪魔め」バサッ

「お前もな。……さて、私も行くか……」

426 : 以下、名... - 2015/11/15 20:56:26 V4vVhMmw 238/241

◆女の家◆

女父「さてと……これからどうすっかな」

「…………」スッ

女父「うおっ……何だよ、猫まで飼ってんのか」





「あーあ、どうすんの。死んじゃったじゃんその人」



◆◇ 終 ◇◆

427 : 以下、名... - 2015/11/15 21:02:02 V4vVhMmw 239/241

 というわけで、終了となります。拙い構成の物語ではありましたが、ここまで読んでくださってありがとう御座いました。

 完全に新しい話として、実験体となった少年少女の物語を書き始めました。もし良かったらどうぞ。

少年「あれ……おかしいな、君が居ないよ」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/lite/read.cgi/internet/14562/1447588668/l30

 それと、この話の続編も書きます。猫以外のキャラクターは名前こそ同じでも、全く違う人物となっています。更新頻度は上の作品より低いとは思いますが、もし良かったらこちらもどうぞ。
 
猫「殺さずして人を殺すなんて、出来るわけないだろう?」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/lite/read.cgi/internet/14562/1447588823/l30

 最後まで読んでいただき、本当にありがとう御座いました!
 (。-ω-)zzz

428 : 以下、名... - 2015/11/15 21:09:50 5AuzLBUc 240/241

面白かった
おつ

429 : 以下、名... - 2015/11/15 21:15:28 V4vVhMmw 241/241

>>428
 ありがとうございます。
 書き続けた甲斐がありました!

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